JP2004117349A - 水晶振動子型ナノチャンネルセンサー - Google Patents

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内田 達也
Kitao Fujiwara
藤原 祺多夫
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Abstract

【課題】ナノメートルサイズの細孔内の界面活性剤の存在が与える疎水場に着目し、水晶振動子型センサー機能の新しい展開を可能にする。
【解決手段】 酸化物層が界面活性剤ミセルを内包しているナノチャンネル体薄膜を水晶振動子上の電極面に配設し、ナノチャンネル内での認識試薬とこれに捕集された標的物質による重量変化から、検体溶液中の標的物質の存在を検出する。
【選択図】図2

Description

 この出願の発明は、水晶振動子型ナノチャンネルセンサーに関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、生化学分析、微量成分分析等のためのセンサーとして、医学、衛生、産業、農業、さらには環境評価等の広範囲な領域において有用な、ナノメートルサイズの細孔(ナノチャンネル)構造を利用した新しい水晶振動子型ナノチャンネルセンサーに関するものである。
 従来より、ナノメートルサイズの細孔に注目して、この細孔(メソポーラス)物質を作製することが検討されてきている。これらの従来の検討では、アルコキシシラン化合物の加水分解を界面活性剤の存在下に行うことで、界面活性剤を鋳型として細孔をもつ物質を形成している。たとえば、従来の技術としては、マイカ基板上へのメソポーラス物質の作製(非特許文献1)や溶媒の蒸発によるメソポーラス薄膜の作製(非特許文献2)、メソポーラス薄膜のパターニングとシランカップリング剤による機能化(非特許文献3)等が報告されている。
Hong Yang, et al.,Nature,Vol.379, 22 Feb.1996,p.703-705 Yun Feng Lu, et al.,Nature,Vol.389, 25 Sep.1997,p.364-368 Hongyou Fan, et al.,Nature,Vol.405, 4 May.2000,p.56-60
 しかしながら、たとえば以上のような検討にもかかわらず、ナノメートルサイズの細孔をもつ物質、その薄膜についての機能性材料としての技術的展開は、pHセンサーとしての利用等について示唆されているものの、ほとんど進展していないのが実情である。たとえばナノメートルスケールの細孔構造を利用しての超微量分析等の実現が期待されるもののいまだに具体化されていない。
 このようなこの理由の一つとしては、従来の技術においては、細孔形成のための鋳型として界面活性剤を使用しているが、この界面活性剤は焼成によって除去されており、界面活性剤による疎水場については着目されていないことがある。分析センサー等としての機能の展開のためには、この疎水場はもっと注目されてよい。
 そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、ナノメートルサイズの細孔をもつ物質について、その作製過程に用いられていた界面活性剤の存在が与える疎水場に着目し、その機能としてセンサーへの展開を可能にする新しい技術的手段を提供することを課題としている。
 この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、酸化物層が界面活性剤ミセルを内包しているナノチャンネル体薄膜が水晶振動子微量天秤の水晶振動子上の電極面に配設されているナノチャンネルセンサーであって、捕集された標的物質とによるナノチャンネル体薄膜の重量変化を水晶振動子の周波数変化として検知し、これにより標的物質の存在を検出することを特徴とする水晶振動子型ナノチャンネルセンサーを提供する。
 また、この出願の発明は、第2には、酸化物層によるナノチャンネル体が化学修飾されているナノチャンネル体薄膜が水晶振動子微量天秤の水晶振動子上の電極に配設されていることを特徴とするナノチャンネルセンサーを提供する。
 第3には、これら上記のセンサーにおいて、ナノチャンネル体の酸化物層が珪素酸化物を主として構成されていることを特徴とする水晶振動子型ナノチャンネルセンサーを提供する。
 そして、この出願の発明は、第4には、上記のセンサーについて、検体液相中の標的物質の存在を検出することを特徴とする水晶振動子型ナノチャンネルセンサーを提供し、第5には、認識試薬と検体溶液とを混合し、認識試薬とこれにより捕集された標的物質とをナノチャンネル内に抽出して標的物質の存在を検出することを特徴とする水晶振動子型ナノチャンネルセンサーを提供し、第6には、認識試薬をあらかじめナノチャンネル内に含浸させ、この含浸された認識試薬に検体溶液中の標的物質を捕集して標的物質の存在を検出することを特徴とする水晶振動子型ナノチャンネルセンサーを提供する。
 さらに、この出願の発明は、第7には、検体気相中の標的物質の存在を検出することを特徴とする水晶振動子型ナノチャンネルセンサーを提供する。
 QCM法(Quartz Crystal Microblance:水晶振動子微量天秤)はngオーダーの質量変化を検出可能なin-situ 測定法として多方面で用いられている。一般的なQCMでは、水晶振動子上の金属極に対する物質の吸脱着に伴う質量変化(周波数変化から換算)を計測する。従って、物質検出量が金属極の表面積で規定されるため、従来では、質量の小さな分子およびイオンの検出には不向きであって、より汎用的な化学センサーとしてQCMを利用するためには、その高感度化が必要不可欠とされていた。このような状況において、以上のとおりのこの出願の発明は、機能性ナノチャンネル薄膜をQCM用の水晶振動子型センサーに応用したものであって、直径数nmの細孔(ナノチャンネル構造)を持ち、極めて高い比表面積(〜1000m2/g)を有するナノチャンネル構造と、ナノチャンネル内の界面活性剤ミセルにより形成される疎水場に着目することにより、ナノチャンネル薄膜を水晶振動子の電極上へ固定化することにより3次元空間を利用したQCM測定を可能とし、検出限界および感度の大幅な改善を図り、その細孔内の疎水環境を利用し、さらには細孔内の化学修飾や、分子認識試薬を活用した化学センシングを実現する。
 この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
 なによりも特徴的なことは、この出願の発明においては、ナノチャンネルセンサーの構造として、酸化物層が界面活性剤ミセルを内包してナノチャンネル内を疎水的な場として保持していることであり、また、この疎水的な場での標的物質の捕集にともなうナノチャンネル体薄膜の重量変化から検体中の標的物質の検出が行われることである。このような特異な構造とその作用を可能とするナノチャンネル体の薄膜は、シリカ層等の珪素酸化物の場合として模式的に示すと、たとえば図1の構成として考慮されるものである。
 このナノチャンネル体は、好適には、まず、原料としての酸化物形成性アルコキシド化合物と界面活性剤含有の酸性アルコール溶液より、加熱もしくは乾燥によって、酸化物層が界面活性剤ミセルを内包するようにして作製することができる。上記溶液の原料濃度が比較的希薄な場合は蒸発乾固の過程でミセルが形成され、それらが鋳型となってナノチャンネル体が形成される。一方、原料濃度が濃厚な場合は高温加圧下で原料等が溶融し、その過程でナノチャンネル体が形成される。
 この場合の酸化物形成性アルコキシド化合物としては、ナノチャンネル構造体の酸化物層を形成するものであれば各種のものであってよい。たとえば代表的には、珪素酸化物層を形成するものとして珪素アルコキシド化合物が挙げられるが、この他にも、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ、ガリウム、希土類元素等の各種のもののアルコキシドを考慮することができる。
 これらのアルコキシド化合物とともに使用される界面活性剤については各種のものが考慮されてよく、たとえば代表的なものとしてはイオン性界面活性剤としての第四級アンモニウム塩型の界面活性剤で挙げられる。また、スルホン酸型のものも挙げられる。ポリエーテル型ノニオン型界面活性剤であってもよい。ただ、なかでも好適なものの一つは、カチオン性の第四級アンモニウム塩型のものである。
 アルコキシド化合物と界面活性剤との使用割合については、その両者の種類等によって相違し、特に限定的ではないが、一般的には、アルコキシド化合物に対する界面活性剤のモル比として、0.01〜0.5を目安とすることができる。
 アルコキシド化合物と界面活性剤は酸性の水溶液中で混合し、加熱する。この際の加熱温度については、還流温度までとすることができる。酸性条件とするために、塩酸や硫酸、あるいは有機酸を混合することができる。また、水溶液中には、低沸点のエタノール、プロパノール、メタノール等のアルコールを共存させるのが好ましい。
 加熱後にこの出願の発明におけるナノチャンネル体が生成されるが、この際には、加熱溶液を水晶振動子上の電極、たとえば金電極の面上に展開するか、この面上で前記の溶液を加熱する。こうすることによって、図1に模式的に示したようなナノチャンネル体の薄状物が得られることになる。これは薄膜と呼ぶことができる。
 そして、この出願の発明においては、以上のナノチャンネル体の薄膜の形成に際し、アルコキシド化合物、界面活性剤とともに、電極と薄膜の密着性を向上させるための化合物、たとえば金電極の場合のメルカプト化合物や、ナノチャンネル体細孔の疎水性を保持するのに有効であると考えられる疎水化剤、たとえばシランカップリング剤等をナノチャンネル体薄膜の形成用溶液に添加しておいてもよい。
 ナノチャンネル体薄膜を水または水性溶液に浸漬すると、ナノチャンネル(細孔)に内包されている界面活性剤ミセルの一部が水または水性溶液中に溶出し、ナノチャンネル内の疎水性が時間とともに低下することがあることから、このような場合には、あらかじめナノチャンネル内壁を疎水化処理し、界面活性剤ミセルとこの内壁との疎水性相互作用を増すことで、水または水性溶液中への界面活性剤ミセルの溶出を抑えるようにする。
 こうすることにより、水晶振動子型ナノチャンネルセンサーとしての検出感度(精度)を良好に維持することが可能になる。
 電極への密着性の向上の機能とともに、以上のような疎水化剤としての機能を併わせもつ、たとえばメルカプトアルキルアルコキシシラン系化合物を用いることも好適なことが考慮される。
 さらにまた、ナノチャンネル体は、センサーが検出対象とする標的物質の捕捉性を考慮して、そのための化学修飾を施しておいてもよい。たとえば前記メルカプト化合物の場合には、特有の金属イオンの捕捉性を有するものとして化学修飾に有効である。
 たとえば以上のようなプロセスによって作製することのできる界面活性剤ミセルを酸化物層に内包しているナノチャンネル体薄膜によって、この出願の発明の水晶振動子型ナノチャンネルセンサーが構成される。このナノチャンネルセンサーは、検体液相中の標的物質の検出を目的としてもよいし、気相中の標的物質の検出を目的としてもよい。
 また、標的物質との強い相互作用を有する分子認識試薬をナノチャンネル体に共存させてもよい。この分子認識試薬については、その形態としては抽出型と含浸型のものとに大別される。図2はその概要を模式的に例示したものである。
 抽出型では、たとえば検体水溶液中に分子認識試薬を溶解させ、これと標的化学物質を錯形成させつつ疎水性相互作用でナノチャンネル内に抽出する。薄膜中に捕集された化学物質による薄膜の重量変化を水晶振動子の周波数変化をもとに検出する。抽出型の利点は、標的化学物質に分子認識試薬を加えた重量変化として検出され、標的化学物質単体の重量変化で検出するよりも感度が高いことである。一方、含浸型では予め分子認識試薬をその水溶液からナノチャンネル内に導入しておき、その後、検体水溶液中の標的化学物質をチャンネル内に存在する分子認識試薬で捕集し、その重量変化を水晶振動子の周波数変化をもとに検出する。この含浸型は、異なる認識試薬を有するセンサーを同一基板上にそれぞれ配置することによって、多種類の化学物質を一斉に検出することを可能にする。
 以上のいずれの場合においても、認識試薬は各種のものであってよく、標的物質、たとえば金属イオンや無機化合物、合成有機化合物、天然有機物、あるいは生体由来物質等との錯形成が可能なもの、あるいは反応による結合や、物理的な捕捉結合が可能なもの等の各種のものとすることができる。ナノチャンネル内の疎水場においては、認識試薬がその分子構造として各種の官能基をもつものであっても使用することが可能である。また、これらの試薬は、低分子化合物だけでなく、DNA、タンパク質、酵素等の高分子や生物由来のものであってもよい。
 そしてまた、この出願の発明の水晶振動子型ナノチャンネルセンサーとしては、前記の疎水的環境場としてのナノチャンネル(細孔)を活用することで、特段の分子認識試薬を用いることなしに標的化学種を捕捉し検知することに用いることもできる。その代表的な例としては、大気中のVOC(揮発性有機化合物)の検知である。近年、住宅の建材、家具、接着剤などから放出されるVOC(揮発性有機化合物)の影響で頭痛やめまいなどの症状を引き起こすシックハウス症候群が問題となっているが、従来のVOC検出器では検出時間が長く、大型で高価であるという問題点がある。そのため分析機器の小型化、複合化による測定の質やコストの改善が望まれている状況にあって、この出願の発明の、ナノチャンネル薄膜を利用したQCM(水晶振動子微量天秤法)センサーはミセル(界面活性剤)を鋳型として形成され、多数の微少な細孔(〜3nm)構造を持ち、極めて高い比表面積を有し、また、細孔内部は疎水的環境になっているため細孔内にVOCを高効率に捕集することができる。このものは、QCMの検出限界および感度の大幅な改善を可能にする。
 このように、この出願の発明の水晶振動子型ナノチャンネルセンサーはガスセンサーへの応用も可能とされる。もちろん、このガスセンサーの応用は、標的ガス成分に応じて、前記のように特有の分子認識試薬を用いてもよい。
 さらにまた、疎水環境場の利用においては、ナノチャンネルの細孔内を疎水的に化学修飾し、この際の化学修飾物質によって標的化学種を捕捉、検知するようにしてもよい。その際には、場合によっては界面活性剤ミセルを減圧下に加熱してその一部もしくは全部を除去するようにしてもよい。
 なお、以上のいずれの場合であっても、前記のナノチャンネル体薄膜の重量変化の検出は、従来のQCM法の場合と同様にすることができる。
 そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく発明の実施の形態について説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
1.薄膜の作製方法
 まず、以下の手順に従って、水晶振動子上の金電極面にナノチャンネル体薄膜を形成した。
<薄膜作製用溶液の調製例>
 ・薄膜溶液の組成(モル比)を次のとおりとした。
 TEOS:EtOH:H2O:HCl:CTAB:MPS=1:17.54:
      5.04:0.004:0.075:0.1
 MPS:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
 CTAB:セチルトリメチルアンモニウムプロミド
 TEOS:オルトけい酸テトラエチル
 この組成では、MPSを添加することによって、水晶振動子上の金電極に対する薄膜の密着性を向上させている。MPSのチオール基は金表面に化学的に結合するものと考えられる。
 手順は次のとおりである。
 1) EtOH9.7mL,TEOS12.3mL,2.78×10-3MのH   Cl1mLを混合し60℃で90分還流。
 2) 還流後の溶液にEtOH18.4mL,CTAB1.519g,5.4   8×10-2MのHCl4mLを加え30分攪拌。
 3) 2)の溶液1mLにMPS14μLを加えた。
 4) 3)の溶液を50倍希釈
<成膜>
 1) 溶液1μLを水晶振動子上金電極表面に滴下。
 2) 1時間乾燥。
 この成膜については、X線回折の結果から、ナノメートルオーダーの周期構造が薄膜内に形成されていることが確認され、X線回折と示差熱量の同時測定によって、約300℃まで界面活性剤がチャンネル内に存在し、ミクロな秩序構造に顕著な変化がないことが確認された。
2.マグネシウムイオンの検出
 純水を満たした溶液用セルに前記プロセスにより作製したセンサーを配置し、このセルに8−キノリノール−5−スルホン酸:Qs水溶液、Mg水溶液を順に添加した。その結果を図3に示した。まず、Qsを10μMになるように添加した場合、時間とともに周波数が減少し一定値に達した。これはナノチャンネル内にQsが導入され、膜の重量が増加したためである。さらに、Mgを10μMになるように添加した場合、時間とともに周波数が減少し一定値に達した。これはナノチャンネル内にMgが導入され、膜の重量が増加したためである。一方、図4に示すようにQsを添加せずにMgだけを添加した場合に周波数変化は観測されない。このような差異は、Qs存在下におけるMgによる図3のような周波数変化が、図5に示すように水溶液中に存在するMgがQsと錯体を形成しつつナノチャンネル内に捕集されるために生じることを示している。そして、図6には、周波数変化のMg濃度依存性を検討した結果を示した。Mg濃度の増加にともなって周波数変化は減少し、周波数変化から換算した重量変化は増加している。捕集量はMg濃度に対してほぼ直線的に変化しており、本センサーが化学物質の定量分析に適していることがわかる。QCMの実質的な周波数測定精度は±0.1Hz程度であり、さらに低濃度領域(pptオーダー)の測定も可能である。
3.アルミニウムイオンの検出
 純水を満たした溶液用セルに前記のセンサーを配置し、このセルにQs水溶液、Al水溶液を順に添加した。まず、Qsを200μMになるように添加したところ、時間とともに周波数が減少し一定値に達した。さらに、図7に示したように、Alを10μMになるように添加した場合、時間とともに周波数が減少し一定値に達した。この結果は、本センサーがpptオーダーの金属イオンの検出が可能であることを示している。
4.VOC(揮発性有機化合物)の検出
 前記のセンサーとともに、比較のために、前記作製方法においてCTAB:界面活性剤を含まない溶液から作製したナノ細孔の無いガラス薄膜を水晶振動子金電極上に固定したものとを用意した。
 この両者を、23℃の温度に設定した簡易チャンバー内に静置した。
 周波数安定後、各種VOC(揮発性有機化合物)液を注入し、揮発したVOCガスの吸着を周波数変化から検出した。
 ナノチャンネル薄膜を固定した水晶振動子を用いて注入したベンゼン50mg/Lの検出を試みたところ、図8の実線に示したように、瞬時に200〜300Hz程度の周波数の減少を観測した。図中の黒矢印は50mg/Lのベンゼンの注入を示している。一方、ナノ細孔が無いガラス薄膜(図8の点線)を用いた場合では周波数の減少は見られなかった。これはナノ細孔にクロロホルムが吸着したことによる質量増加が周波数の減少として観測できたためと考えられる。さらに、チャンバー内のベンゼンガスを大気に置換した(図8の灰色矢印)ところ、周波数は増加して初期値まで回復した。これはナノ細孔に吸着していたベンゼンが放出されたためであると考えられる。このことよりナノ細孔に対するベンゼンの吸着は可逆的であることが確認された。同様の実験をクロロホルム、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンで行ったところほぼ同様の結果が得られ、たとえば図9にクロロホルムの場合を例示したように、VOCに関する定量性と、0.1mg/L程度のVOCが検出可能であることが確認された。また、アセトアルデヒドで同様の実験を行ったところナノ細孔が無いガラス薄膜で周波数の減少が観測されたことにより、VOC類とアルデヒド類の選択的検出をナノ細孔の有無によって達成できることが確認された。
5.水溶液中のエタノールの検出
 前記1.の薄膜の作製方法において、TEOS:MPS:CTABのモルを1:0.1:0.0075として薄膜を形成し、水晶振動子型ナノチャンネルセンサーを作製した。次いで、このものを、超純水中に置き、0.01%添加エタノールの検出を行った。その結果を図10に示した。図中の矢印は、エタノールの添加を示している。
 この結果から、この出願の発明の水晶振動子型ナノチャンネルセンサーによって、水溶液中のエタノールが高感度で検出可能であることが確認された。ナノチャンネルのないガラス薄膜の場合にも若干の応答が観測されていることから、エタノールの検出には、薄膜作製時に形成された溶媒分子を鋳型とした細孔による捕集も関与しているものと推定される。
6.水銀イオンの選択的検出
 前記1.の薄膜の作製方法において、TEOS:MPS:CTABのモル比を1:0.1:0.0075として薄膜を形成した。次いで、真空下200℃で加熱処理した。この水晶振動子を溶液用ホルダーに組み込み23℃に設定した恒温水槽内に静置した。周波数安定後、各種金属イオン水溶液を注入し周波数変化を測定した。また、ナノチャンネルの存在しない薄膜を作製し、対照実験に用いた。
 周波数の安定した状態で最終濃度が71μMとなるように水銀イオン:Hg(II)水溶液を注入したところ、周波数の大幅な減少が観測された。一方、ナノチャンネルの存在しない薄膜では、水銀イオン注入による周波数変化は観測されなかった。これより、観測された周波数の減少は、水銀イオンが水溶液中から薄膜細孔内へ捕集されたためであることが確認された。続いて、水銀イオン測定と同条件の薄膜を固定化した水晶振動子を用いて、亜鉛イオンと鉛イオンについても同濃度での実験を行った。その結果、周波数の減少は水銀イオンの結果と比較して鉛イオンで1/35程度、亜鉛イオンでは1/70程度であった。これらより、MPSによるチオール基修飾薄膜が水銀イオンに対し高い選択性を有すると推察される。
 図11は、水銀イオン:Hg(II)の場合の周波数の変化(実線)と、亜鉛イオン:Zn(II)の場合の周波数の変化(点線)を例示したものである。また、図12は、水銀イオン:Hg(II)の定量検出が可能であることを示したものである。
 この出願の発明によって、以上詳しく説明したとおり、ナノメートルサイズの細孔をもつナノチャンネル体が内包する界面活性剤の存在が与える疎水場に着目し、水晶振動子型センサーとしての機能の新しい展開を可能にすることができる。
ナノチャンネル体薄膜についてこれを模式的に示した図である。 抽出型と含浸型のセンサーについて模式的に示した図である。 実施例における水晶振動子ナノチャンネルセンサーによるMgイオンの検出を例示した図である。 Qs非存在下における水晶振動子型ナノチャンネルセンサーの応答性について示した図である。 ナノチャンネル内ミセルによる金属錯体の捕集について示した模式図である。 周波数変化(重量変化)のMg濃度依存性について例示した図である。 水晶振動子型ナノチャンネルセンサーによるアルミニウムイオンの高感度検出を例示した図である。 大気中での、VOCのうちのベンゼンの検出を周波数変化として例示した図である。 VOCのうちのクロロホルムの定量検出性を例示した図である。 水溶液中のエタノールの検出を例示した図である。 水銀イオンの検出を例示した図である。 水銀イオンの定量検出性を例示した図である。

Claims (7)

  1.  酸化物層が界面活性剤ミセルを内包しているナノチャンネル体薄膜が水晶振動子微量天秤の水晶振動子上の電極面に配設されているナノチャンネルセンサーであって、捕集された標的物質によるナノチャンネル体薄膜の重量変化を水晶振動子の周波数変化として検知し、これにより標的物質の存在を検出することを特徴とする水晶振動子型ナノチャンネルセンサー。
  2.  酸化物層によるナノチャンネル体が化学修飾されているナノチャンネル体薄膜が水晶振動子微量天秤の水晶振動子上の電極に配設されているナノチャンネルセンサーであって、捕集された標的物質によるナノチャンネル体薄膜の重量変化を水晶振動子の周波数変化として検知し、これにより標的物質の存在を検出することを特徴とする水晶振動子型ナノチャンネルセンサー。
  3.  ナノチャンネル体の酸化物層が珪素酸化物を主として構成されていることを特徴とする請求項1または2の水晶振動子型ナノチャンネルセンサー。
  4.  検体液相中の標的物質の存在を検出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの水晶振動子型ナノチャンネルセンサー。
  5.  認識試薬と検体溶液とを混合し、認識試薬とこれにより捕集された標的物質とをナノチャンネル内に抽出して標的物質の存在を検出することを特徴とする請求項4の水晶振動子型ナノチャンネルセンサー。
  6.  認識試薬をあらかじめナノチャンネル内に含浸させ、この含浸された認識試薬に検体溶液中の標的物質を捕集して標的物質の存在を検出することを特徴とする請求項4の水晶振動子型ナノチャンネルセンサー。
  7.  検体気相中の標的物質の存在を検出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの水晶振動子型ナノチャンネルセンサー。
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