JP2004114552A - 針状体の製造方法および針状体 - Google Patents
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Abstract
【課題】生体医療やマイクロメカニクスに用いられる先端の鋭角な針状体の製造方法および針状体を提供することを目的とする。
【解決手段】金属微粒子、高分子、及び溶剤を混練して混合物を粉砕機で粉砕した金属微粒子分散高分子微粉体12を作製し、前記微粉体を金型に充填して加圧加熱することにより金属微粒子分散高分子膜体12’を作製する。前記金属微粒子分散高分子膜体12’の表面にレーザ光を照射して針状凹部20を形成し、作製したマスタ型13をエポキシ樹脂に転写して針状凸部を有する反転型14を得る。前記反転型14に電気メッキによりメッキ構造体15を形成し、針状凹部を有する金型17を作製する。前記金型17に針状体原料を射出圧縮成形し、金型上に針状成形体16を形成した後、脱型することにより針状体21を得ることができる。
【選択図】 図7
【解決手段】金属微粒子、高分子、及び溶剤を混練して混合物を粉砕機で粉砕した金属微粒子分散高分子微粉体12を作製し、前記微粉体を金型に充填して加圧加熱することにより金属微粒子分散高分子膜体12’を作製する。前記金属微粒子分散高分子膜体12’の表面にレーザ光を照射して針状凹部20を形成し、作製したマスタ型13をエポキシ樹脂に転写して針状凸部を有する反転型14を得る。前記反転型14に電気メッキによりメッキ構造体15を形成し、針状凹部を有する金型17を作製する。前記金型17に針状体原料を射出圧縮成形し、金型上に針状成形体16を形成した後、脱型することにより針状体21を得ることができる。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は生体医療やマイクロメカニクスに用いられる針状体の製造方法および針状体に係り、詳しくは生産性が良く、先端の鋭角な針状体の製造方法および針状体に関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロニードルと呼ばれる微小な針状体を製造する方法として、シリコンウェハに移動マスクを用いて放射光を露光する方法が知られている。しかし、所望のテーパ形状を得るためにはマスクの作製が困難であり、大掛かりな装置が必要であるといった問題があった。またシリコンウェハにエッチングを施して針状体を製造する方法がある。(特許文献1参照)ところが、この手法においては深さ方向の加工に限界があるためアスペクト比の大きな針状体が得られず、先鋭化に限界があった。
【0003】
ここに、大型で高価な装置を必要とすることなく薄膜にマイクロメートルオーダーの微細加工を行う技術として、絞り込んだレーザ光を任意のパターンに従って薄膜に照射する方法がある。金属微粒子を高分子膜中に分散させた金属微粒子分散高分子膜は、金属微粒子に特有の光吸収特性を有するため、特定の波長域に発振波長を有する絞り込んだレーザ光を所定パターンに従って照射すれば、照射部分に形成される凹部からなる任意の微細構造を作製することができる。本出願人は、金属微粒子分散高分子膜を用いた光記録媒体(特開2001−216680号公報)、微細加工型(特開2001−310331号公報)、グレーティング(特開2001−311810号公報)等を開示している。
【0004】
また、前記方法によって作製した凹凸形状から転写型を作製する技術がある。例えば本出願人は先に、シリコーンゴム製の転写型を樹脂製フィルムに押付けることによって微細加工を行う技術を開示している。(特許文献2参照)すなわちレーザ光によって任意の凹凸形状を有する金属微粒子分散高分子膜からシリコーンゴムの転写型を作製、あるいは金属微粒子を分散させたシリコーンゴム製の転写型を直接作製し、前記いずれかの転写型を樹脂製フィルムに押し付けることによって、前記樹脂製フィルムに微細加工が施されるものである。適切な樹脂フィルムを用いれば、マイクロ分析チップ、マイクロニードル、マイクロギヤ等の微細加工部品を作製することができる。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−10753号公報
【特許文献2】
特願2001−231360号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記方法においては改善の余地が残されており、樹脂を溶剤に溶解させたペーストを用いる必要があるため、成形時の収縮が大きくなり、微細な凹凸形状が再現できない問題点があった。またシリコーンゴムの転写型では、一般的な樹脂の成形方法として用いられている圧縮成形や射出成形等に対応できないといった不具合もあった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは汎用の樹脂成形方法の適用が可能で、しかも先端の鋭角な針状体を製造する方法および針状体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本願請求項1記載の発明は、針状体の製造方法にあって、(1)金属微粒子分散高分子膜体を形成する工程、(2)金属微粒子分散高分子膜体の表面にレーザ光を照射して針状凹部を形成し、マスタ型を作製する工程、(3)マスタ型を転写し、針状凸部を有する反転型を作製する工程、(4)反転型にメッキ構造体を形成し、針状凹部を有する金型を作製する工程、(5)金型上に針状成形体を形成する工程、(6)金型から針状成形体を剥離する工程、を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の針状体の製造方法にあって、(1)工程において、金属微粒子分散高分子膜体が、金属微粒子、高分子、及び溶剤を混練した混合物を粉砕加工した金属微粒子分散高分子微粉体を、金型に充填して加圧加熱することにより形成されてなることを特徴とする。従来のスピンコートの繰返しによる重ね塗りを行うことなく、膜厚数百μmから数mmに及ぶアスペクト比の高い金属微粒子分散高分子膜が得ることができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の針状体の製造方法にあって、前記金属微粒子として金微粒子、前記高分子としてエチルセルロースが用いられてなることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の針状体の製造方法にあって、(5)工程において、針状成形体は射出圧縮成形により金型上に形成されてなることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、針状体にあって、請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の針状体の製造方法および針状体について詳細に説明する。
針状体を製造するにあたり、(1)金属微粒子分散高分子膜体を形成する工程、(2)金属微粒子分散高分子膜体の表面にレーザ光を照射して針状凹部を形成し、マスタ型を作製する工程、(3)マスタ型を転写し、針状凸部を有する反転型を作製する工程、(4)反転型にメッキ構造体を形成し、針状凹部を有する金型を作製する工程、(5)金型上に針状成形体を形成する工程、(6)金型から針状成形体を剥離する工程、を必要とする。
【0014】
(1)金属微粒子分散高分子膜体を形成する工程としては、まず金属微粒子、高分子、及び溶剤からなる混合物を作製する。ここで金属微粒子は例えば数nm〜数十nmの粒径を有する金微粒子あるいは銀微粒子であって、例えば特開平3−34211号公報に開示されているガス中蒸発法によって溶媒中に独立分散させた状態で得られる。即ち、ヘリウム等の不活性ガスを導入した減圧容器内で各種金属を蒸発させ、不活性ガスとの衝突により冷却され凝縮された金属微粒子を、生成直後の孤立状態にある段階で別途導入されたp−キシレン、トルエン、α−テレピネオール等の有機溶媒の蒸気によって被覆することによって溶媒分散金属微粒子を得る。
【0015】
前記高分子は、金属微粒子を高濃度にかつ凝集させることなく分散させることができる高分子が好ましく、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が好ましく、中でも一定量以上の金属微粒子を均一に分散させるためにはエチルセルロースあるいはエチルヒドロキシエチルセルロースが特に好ましい。
【0016】
前記溶剤は前記高分子を良好に溶解するものであれば特に限定されず、具体的にはp−キシレンあるいはトルエンが好ましい。
【0017】
前記溶媒分散金属微粒子と、前記高分子と、前記溶剤とを混合し、十分に混練して混合物を得る。溶媒分散金属微粒子の高分子に対する混合量は特に限定されないが、高分子に対して10質量%〜20質量%の金属微粒子が含まれるようになるように調整するのが好ましい。溶剤の量も同様に限定されないが、後工程で乾燥することを考慮に入れれば、高分子を溶解するために必要な最低限の量であることが好ましい。
【0018】
前記混合物を室温で乾燥させ、続いて冷凍粉砕機で粉砕し、金属微粒子分散高分子微粉体を作製する。冷凍粉砕機の専用容器に金属微粒子分散高分子を封入し、液体窒素温度下で磁気的に駆動する衝撃子によって粉砕し、粉末状の金属微粒子分散高分子、即ち金属微粒子分散高分子微粉体を得る。金属微粒子分散高分子微粉体の粒径は特に限定されないが、均一な金属微粒子分散高分子膜を得るためには1mm以下であることが好ましい。
【0019】
得られた金属微粒子分散高分子微粉体を、図2に示すように100℃前後の温度に保持した平金型の下金型11に充填する。続いて上金型10で10MPa以上の圧力までプレスし、5分間以上保持しながら金型の温度を上昇させる。ここで金型の温度は、金属微粒子分散高分子微粉体12が十分に溶解する温度以上で、金属微粒子の凝集が発生しない程度の温度未満である必要がある。この温度範囲は使用する高分子によって変動し、例えばエチルセルロースの場合は140℃以上、150℃未満である。なお、プレス温度が低いと、得られる金属微粒子分散高分子膜体表面に粉末状の金属微粒子分散高分子が残存し、良好な微細加工ができない。
【0020】
所定時間のプレスを終えた後、平金型を開放し、室温下で放置して冷却し、金属微粒子分散高分子膜体12’を得る。下金型11に充填する金属微粒子分散高分子微粉体12の量を調整することにより、数百μm程度以上さらには数mm程度に及ぶ膜厚の金属微粒子分散高分子膜体12’を容易に得ることができる。
【0021】
尚、金属微粒子分散高分子膜体12’を基板(図示せず)上に形成するにあたって、汎用のスピンコート法では、十分な膜厚の金属微粒子分散高分子膜が得られないため、反転型を形成する際に前記金属微粒子分散高分子膜体が基板から剥離してしまう恐れがある。また、スピンコート法を用いて数百μm以上の膜厚の金属微粒子分散高分子膜体を作製することは可能であるが、スピンコートを数十回繰返す必要があり、工数が非常に多くかかるだけではなく、重ね塗りに伴って発生する表面のむらのため、良好な金属微粒子分散高分子膜体を得ることが極めて困難であるといった問題がある。
【0022】
次に(2)金属微粒子分散高分子膜体12’の表面にレーザ光(図中矢印)を照射して針状凹部20を形成し、マスタ型13を作製する工程を図3に示す。金属微粒子分散高分子膜体12’に、金属微粒子の種類に応じて選択されるレーザ光(特定波長域に発振波長を有するレーザ光)を照射すると、金属微粒子が吸収した光エネルギーが熱エネルギーに変換され、その熱エネルギーが金属微粒子周辺の高分子の物性に変化を与え、金属微粒子分散高分子膜中に凹部が形成される。レーザ光を照射しながら金属微粒子分散高分子膜体12’をその面内方向に移動させることによって、任意の形状の凹部を形成することができる。この際、照射条件を必要に応じて調節することにより、円錐状の針状凹部20が形成される。尚、レーザ照射時間が長すぎると凹部の先端が丸くなるという不具合が生じる。また凹部の先端形状はレーザ強度,金属微粒子の濃度により変化するが,出力が数十ミリワットのレーザ光を照射する場合,照射時間は0.5秒以下が望ましい。
【0023】
前記加工は、具体的には例えば図1に示すレーザ光照射系を用いて行うことができる。レーザ光源1としては、波長は金属微粒子分散高分子膜体12’の吸収波長領域内に収まるものであれば特に限定されるものではないが、レーザ光に対する感度を考慮に入れれば、金属微粒子分散高分子膜体12’の極大吸収波長付近の発振波長を有するものが好ましい。出力は十数ミリワット程度の小出力のものでも十分であり、例えば、532nmのグリーンレーザ、514nmその他の波長の光を発振するアルゴンイオンレーザが好適に用いられる。レーザ光は複数のミラー2及びハーフミラー3を介して光学顕微鏡4内に導かれる。モーター駆動により3次元方向に移動可能なXYZステージ5上に載置された金属微粒子分散高分子膜体12’表面は、直上の対物レンズ7及びCCDカメラ8及びTVモニター9、または図示しない接眼レンズを通して観察可能である。レーザ光を遮断した状態で金属微粒子分散高分子膜体12’表面の状態を確認した後、レーザ光を導入する。レーザ光は対物レンズ7によって金属微粒子分散高分子膜上で1μm程度にまで絞り込まれる。金属微粒子分散高分子膜体12’表面をTVモニター9で観察しながら、必要に応じてXYZステージ5をXY方向に所望のパターンに従って駆動することにより金属微粒子分散高分子膜体12’に針状凹部20を形成する。
【0024】
前記方法に従って針状凹部が形成された金属微粒子分散膜体をマスタ型13とし、図4に示すように(3)マスタ型13を転写し、針状凸部を有する反転型14を作製する。この反転型14は、メッキ液に腐蝕されない材料で構成され、後工程のメッキ構造体の形成において、反転型に電気メッキを施す場合は反転型が導電性を有することが必要である。反転型に導電性を付与するためには、表面に電極層を設ける、もしくは、電気メッキが可能な程度の導電性を有する材料で反転型を構成する必要がある。例えば、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などをマスタ型に注型して表面形状を転写した後、この転写体の表面に電極層を形成し、針状凸部を有する反転型とする。電極層の形成方法としては、化学メッキ、真空蒸着法、スピンコート法、ディップ法などの薄膜形成方法が用いられる。もしくは、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などに導電物質を配合した導電性組成物を注型してマスタ型を転写し、針状凸部を有する反転型を作製してもよい。表面の導電物質がメッキ析出の核として作用するため、特別な前処理を必要とすることなく容易に電気メッキからなるメッキ構造体を形成することができる。
【0025】
前記針状凸部を有する反転型14を用いて、図5に示すように(4)反転型14にメッキ構造体15を形成し、針状凹部を有する金型17を作製する。メッキ構造体15を形成する方法としては電気メッキがあり、メッキ可能な金属としては、単金属ではニッケル、銅、クロム、亜鉛、金、白金、銀、合金では、銅−亜鉛、亜鉛−ニッケル、ニッケル−鉄などが挙げられるが、金属製型としての強度、耐食性、熱伝導率等を考慮するとニッケルが最も好ましい。メッキ時間は特に限定されないが、金属製型として十分な膜厚のメッキ構造体15を形成するためには10時間以上が好ましい。
【0026】
所定時間放置した後、メッキ構造体15が形成された反転型14を取り出し、反転型14を除去して、針状凹部を有する金型17を得る。この際、反転型14とメッキ構造体15の両者を剥離してもよく、また反転型14をエタノール、トルエン等の溶剤によって溶解してもよい。
【0027】
上記工程により得られた針状凹部を有する金型17を用いて、図6のように(5)金型17上に針状成形体16を形成する。針状成形体16を金型17上に形成する方法としては、針状体原料を射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形を行うことが考えられるが、通常用いられる射出成形では注入時に圧力が加わるため針状体原料の移動速度が速くなり、微小な凹部に針状体原料が入りにくく、転写率が悪いといった不具合がある。この転写率を向上させるには、射出圧縮成形を選択することが好ましい。射出圧縮成形とは射出成形と圧縮成形を組み合わせた手法であって、高速充填ならびに均一加圧による成形によって微細な形状の転写が可能である。
【0028】
そして(6)金型17から針状成形体16を剥離する。剥離を物理的に行う場合は、金型の微細な凹部に針状体が入り込んでいる為、充分な冷却時間を経てから脱型することが好ましい。また裏面よりメッキ構造体等をエッチング除去して、針状体を得てもよい。図7に針状体21を複数形成した例を示す。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の針状体の製造方法及び針状体について実施例を示しながらさらに詳細に説明する。
金属微粒子として20.9質量%金含有トルエン分散金微粒子(真空冶金製パーフェクトゴールド)、高分子としてエチルセルロース、そして溶剤としてp−キシレンを用意し、金微粒子対エチルセルロースの重量比が0.2:1となるように秤量されたトルエン分散金微粒子及びエチルセルロースを少量のp−キシレンと共に乳鉢で混練し、混合物を作製した。前記混合物を冷凍粉砕機(SPEX社製Mill6750)で粉砕し、60℃で1時間乾燥した後、平均一次粒径1mm以下の金微粒子分散エチルセルロース微粉体(金濃度17質量%)を得た。
【0030】
直径φ20mmの平金型を100℃に保温後、前記金微粒子分散エチルセルロース微粉体を前記平金型の下金型に充填した。上金型を300kgf/cm2の圧力でプレスし、金型温度を10℃/分の速度で145℃まで上昇させた。10分経過後、成形品を取り出して室温下で放置し、膜厚約500μmの金微粒分散エチルセルロース膜体を得た。
【0031】
上記金微粒子分散エチルセルロース膜体に、図1に示す照射系を用いて穴加工を行った。グリーンレーザ光(波長:532nm)を対物レンズ(NA0.26×10)で集光し、照射面のレーザ強度が23mWになるように調整し、0.5秒の照射時間で針状凹部を形成したマスタ型を作製した。このマスタ型を用いて、表1に示す物性のエポキシ樹脂に転写し、針状凸部を有する反転型を作製した。図8に得られた反転型のSEM(走査型電子顕微鏡)像を示す。反転型表面に先端の鋭利な針状凸部が転写されてなることが判る。
【0032】
【表1】
【0033】
この反転型を、金蒸着により表面を導電化させた後、表2に示すスルファミン酸ニッケル浴を用いて2A/dm2の条件で24時間電気メッキを施した。得られたメッキ構造体−反転型から反転型を除去し、針状凹部を有する金型を得た。この金型の裏面を銅基板に固着させた後、平板用射出成形装置に固定し、ポリエチレン樹脂を射出圧縮成形した。室温にて冷却した後、成形体を脱型し、複数の針状体を得た。図9に得られた針状体のSEM(走査型電子顕微鏡)像を示す。先端の鋭利な針状体が良好に作製されてなることが判る。
【0034】
【表2】
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本願請求項1の発明は、針状体の製造方法にあって、(1)金属微粒子分散高分子膜体を形成する工程、(2)金属微粒子分散高分子膜体の表面にレーザ光を照射して針状凹部を形成し、マスタ型を作製する工程、(3)マスタ型を転写し、針状凸部を有する反転型を作製する工程、(4)反転型にメッキ構造体を形成し、針状凹部を有する金型を作製する工程、(5)金型上に針状成形体を形成する工程、(6)金型から針状成形体を剥離する工程、を含む針状体の製造方法であって、レーザ加工により形成された凹部は先鋭化された針状凹部であり、これを利用して金型を作製することにより先端が鋭利な針状体を得ることができる。また金型を用いて針状体を製造することから、樹脂成形に汎用に用いられる射出成形・圧縮成形等に対応できるようになる。
【0036】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の針状体の製造方法にあって、(1)工程において、金属微粒子分散高分子膜体が、金属微粒子、高分子、及び溶剤を混練した混合物を粉砕加工した金属微粒子分散高分子微粉体を、金型に充填して加圧加熱することにより形成されてなる針状体の製造方法であって、従来のスピンコートの繰返しによる重ね塗りを行うことなく、膜厚数百μmから数mmに及ぶアスペクト比の高い金属微粒子分散高分子膜が得ることができる。
【0037】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の針状体の製造方法にあって、前記金属微粒子として金微粒子、前記高分子としてエチルセルロースが用いられてなる針状体の製造方法であって、金属微粒子が均一に分散された高分子膜体が得られるといったがある。
【0038】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の針状体の製造方法にあって、(5)工程において、針状成形体は射出圧縮成形により金型上に形成されてなる針状体の製造方法であって、転写率が良好で、生産性良く針状体が得られる。
【0039】
請求項5記載の発明は、針状体にあって、請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法により製造された針状体であって、生体医療やマイクロメカニクスに好適な先端の鋭角な針状体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属微粒子分散高分子膜体へのレーザ光照射系の概略図である。
【図2】本発明の針状体の製造工程において、平金型を用いて金属微粒子分散高分子膜体を作製する状態の断面図である。
【図3】本発明の針状体の製造工程において、金属微粒子分散高分子膜体にレーザ光を照射して針状凹部を形成し、マスタ型を作製する状態を示した断面図である。
【図4】本発明の針状体の製造工程において、マスタ型を転写し、針状凸部を有する反転型を作製する状態を示した断面図である。
【図5】本発明の針状体の製造工程において、反転型に電気メッキを施し、針状凹部を有するメッキ構造体を形成した状態を示した断面図である。
【図6】本発明の針状体の製造工程において、金型に針状体原料が充填された状態を示した断面図である。
【図7】本発明により製造された針状体を示す斜視図である。
【図8】実施例において反転型に形成された針状凸部パターンのSEM像である。
【図9】実施例において作製された針状体のSEM像である。
【符号の説明】
1 レーザー光源
2 ミラー
3 ハーフミラー
4 光学顕微鏡
5 XYZステージ
7 対物レンズ
8 CCDカメラ
9 TVモニター
10 上金型
11 下金型
12 金属微粒子分散高分子微粉体
12’金属微粒子分散高分子膜体
13 マスタ型
14 反転型
15 メッキ構造体
16 針状成形体
17 金型
20 針状凹部
21 針状体
【発明の属する技術分野】
本発明は生体医療やマイクロメカニクスに用いられる針状体の製造方法および針状体に係り、詳しくは生産性が良く、先端の鋭角な針状体の製造方法および針状体に関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロニードルと呼ばれる微小な針状体を製造する方法として、シリコンウェハに移動マスクを用いて放射光を露光する方法が知られている。しかし、所望のテーパ形状を得るためにはマスクの作製が困難であり、大掛かりな装置が必要であるといった問題があった。またシリコンウェハにエッチングを施して針状体を製造する方法がある。(特許文献1参照)ところが、この手法においては深さ方向の加工に限界があるためアスペクト比の大きな針状体が得られず、先鋭化に限界があった。
【0003】
ここに、大型で高価な装置を必要とすることなく薄膜にマイクロメートルオーダーの微細加工を行う技術として、絞り込んだレーザ光を任意のパターンに従って薄膜に照射する方法がある。金属微粒子を高分子膜中に分散させた金属微粒子分散高分子膜は、金属微粒子に特有の光吸収特性を有するため、特定の波長域に発振波長を有する絞り込んだレーザ光を所定パターンに従って照射すれば、照射部分に形成される凹部からなる任意の微細構造を作製することができる。本出願人は、金属微粒子分散高分子膜を用いた光記録媒体(特開2001−216680号公報)、微細加工型(特開2001−310331号公報)、グレーティング(特開2001−311810号公報)等を開示している。
【0004】
また、前記方法によって作製した凹凸形状から転写型を作製する技術がある。例えば本出願人は先に、シリコーンゴム製の転写型を樹脂製フィルムに押付けることによって微細加工を行う技術を開示している。(特許文献2参照)すなわちレーザ光によって任意の凹凸形状を有する金属微粒子分散高分子膜からシリコーンゴムの転写型を作製、あるいは金属微粒子を分散させたシリコーンゴム製の転写型を直接作製し、前記いずれかの転写型を樹脂製フィルムに押し付けることによって、前記樹脂製フィルムに微細加工が施されるものである。適切な樹脂フィルムを用いれば、マイクロ分析チップ、マイクロニードル、マイクロギヤ等の微細加工部品を作製することができる。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−10753号公報
【特許文献2】
特願2001−231360号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記方法においては改善の余地が残されており、樹脂を溶剤に溶解させたペーストを用いる必要があるため、成形時の収縮が大きくなり、微細な凹凸形状が再現できない問題点があった。またシリコーンゴムの転写型では、一般的な樹脂の成形方法として用いられている圧縮成形や射出成形等に対応できないといった不具合もあった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは汎用の樹脂成形方法の適用が可能で、しかも先端の鋭角な針状体を製造する方法および針状体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本願請求項1記載の発明は、針状体の製造方法にあって、(1)金属微粒子分散高分子膜体を形成する工程、(2)金属微粒子分散高分子膜体の表面にレーザ光を照射して針状凹部を形成し、マスタ型を作製する工程、(3)マスタ型を転写し、針状凸部を有する反転型を作製する工程、(4)反転型にメッキ構造体を形成し、針状凹部を有する金型を作製する工程、(5)金型上に針状成形体を形成する工程、(6)金型から針状成形体を剥離する工程、を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の針状体の製造方法にあって、(1)工程において、金属微粒子分散高分子膜体が、金属微粒子、高分子、及び溶剤を混練した混合物を粉砕加工した金属微粒子分散高分子微粉体を、金型に充填して加圧加熱することにより形成されてなることを特徴とする。従来のスピンコートの繰返しによる重ね塗りを行うことなく、膜厚数百μmから数mmに及ぶアスペクト比の高い金属微粒子分散高分子膜が得ることができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の針状体の製造方法にあって、前記金属微粒子として金微粒子、前記高分子としてエチルセルロースが用いられてなることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の針状体の製造方法にあって、(5)工程において、針状成形体は射出圧縮成形により金型上に形成されてなることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、針状体にあって、請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の針状体の製造方法および針状体について詳細に説明する。
針状体を製造するにあたり、(1)金属微粒子分散高分子膜体を形成する工程、(2)金属微粒子分散高分子膜体の表面にレーザ光を照射して針状凹部を形成し、マスタ型を作製する工程、(3)マスタ型を転写し、針状凸部を有する反転型を作製する工程、(4)反転型にメッキ構造体を形成し、針状凹部を有する金型を作製する工程、(5)金型上に針状成形体を形成する工程、(6)金型から針状成形体を剥離する工程、を必要とする。
【0014】
(1)金属微粒子分散高分子膜体を形成する工程としては、まず金属微粒子、高分子、及び溶剤からなる混合物を作製する。ここで金属微粒子は例えば数nm〜数十nmの粒径を有する金微粒子あるいは銀微粒子であって、例えば特開平3−34211号公報に開示されているガス中蒸発法によって溶媒中に独立分散させた状態で得られる。即ち、ヘリウム等の不活性ガスを導入した減圧容器内で各種金属を蒸発させ、不活性ガスとの衝突により冷却され凝縮された金属微粒子を、生成直後の孤立状態にある段階で別途導入されたp−キシレン、トルエン、α−テレピネオール等の有機溶媒の蒸気によって被覆することによって溶媒分散金属微粒子を得る。
【0015】
前記高分子は、金属微粒子を高濃度にかつ凝集させることなく分散させることができる高分子が好ましく、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が好ましく、中でも一定量以上の金属微粒子を均一に分散させるためにはエチルセルロースあるいはエチルヒドロキシエチルセルロースが特に好ましい。
【0016】
前記溶剤は前記高分子を良好に溶解するものであれば特に限定されず、具体的にはp−キシレンあるいはトルエンが好ましい。
【0017】
前記溶媒分散金属微粒子と、前記高分子と、前記溶剤とを混合し、十分に混練して混合物を得る。溶媒分散金属微粒子の高分子に対する混合量は特に限定されないが、高分子に対して10質量%〜20質量%の金属微粒子が含まれるようになるように調整するのが好ましい。溶剤の量も同様に限定されないが、後工程で乾燥することを考慮に入れれば、高分子を溶解するために必要な最低限の量であることが好ましい。
【0018】
前記混合物を室温で乾燥させ、続いて冷凍粉砕機で粉砕し、金属微粒子分散高分子微粉体を作製する。冷凍粉砕機の専用容器に金属微粒子分散高分子を封入し、液体窒素温度下で磁気的に駆動する衝撃子によって粉砕し、粉末状の金属微粒子分散高分子、即ち金属微粒子分散高分子微粉体を得る。金属微粒子分散高分子微粉体の粒径は特に限定されないが、均一な金属微粒子分散高分子膜を得るためには1mm以下であることが好ましい。
【0019】
得られた金属微粒子分散高分子微粉体を、図2に示すように100℃前後の温度に保持した平金型の下金型11に充填する。続いて上金型10で10MPa以上の圧力までプレスし、5分間以上保持しながら金型の温度を上昇させる。ここで金型の温度は、金属微粒子分散高分子微粉体12が十分に溶解する温度以上で、金属微粒子の凝集が発生しない程度の温度未満である必要がある。この温度範囲は使用する高分子によって変動し、例えばエチルセルロースの場合は140℃以上、150℃未満である。なお、プレス温度が低いと、得られる金属微粒子分散高分子膜体表面に粉末状の金属微粒子分散高分子が残存し、良好な微細加工ができない。
【0020】
所定時間のプレスを終えた後、平金型を開放し、室温下で放置して冷却し、金属微粒子分散高分子膜体12’を得る。下金型11に充填する金属微粒子分散高分子微粉体12の量を調整することにより、数百μm程度以上さらには数mm程度に及ぶ膜厚の金属微粒子分散高分子膜体12’を容易に得ることができる。
【0021】
尚、金属微粒子分散高分子膜体12’を基板(図示せず)上に形成するにあたって、汎用のスピンコート法では、十分な膜厚の金属微粒子分散高分子膜が得られないため、反転型を形成する際に前記金属微粒子分散高分子膜体が基板から剥離してしまう恐れがある。また、スピンコート法を用いて数百μm以上の膜厚の金属微粒子分散高分子膜体を作製することは可能であるが、スピンコートを数十回繰返す必要があり、工数が非常に多くかかるだけではなく、重ね塗りに伴って発生する表面のむらのため、良好な金属微粒子分散高分子膜体を得ることが極めて困難であるといった問題がある。
【0022】
次に(2)金属微粒子分散高分子膜体12’の表面にレーザ光(図中矢印)を照射して針状凹部20を形成し、マスタ型13を作製する工程を図3に示す。金属微粒子分散高分子膜体12’に、金属微粒子の種類に応じて選択されるレーザ光(特定波長域に発振波長を有するレーザ光)を照射すると、金属微粒子が吸収した光エネルギーが熱エネルギーに変換され、その熱エネルギーが金属微粒子周辺の高分子の物性に変化を与え、金属微粒子分散高分子膜中に凹部が形成される。レーザ光を照射しながら金属微粒子分散高分子膜体12’をその面内方向に移動させることによって、任意の形状の凹部を形成することができる。この際、照射条件を必要に応じて調節することにより、円錐状の針状凹部20が形成される。尚、レーザ照射時間が長すぎると凹部の先端が丸くなるという不具合が生じる。また凹部の先端形状はレーザ強度,金属微粒子の濃度により変化するが,出力が数十ミリワットのレーザ光を照射する場合,照射時間は0.5秒以下が望ましい。
【0023】
前記加工は、具体的には例えば図1に示すレーザ光照射系を用いて行うことができる。レーザ光源1としては、波長は金属微粒子分散高分子膜体12’の吸収波長領域内に収まるものであれば特に限定されるものではないが、レーザ光に対する感度を考慮に入れれば、金属微粒子分散高分子膜体12’の極大吸収波長付近の発振波長を有するものが好ましい。出力は十数ミリワット程度の小出力のものでも十分であり、例えば、532nmのグリーンレーザ、514nmその他の波長の光を発振するアルゴンイオンレーザが好適に用いられる。レーザ光は複数のミラー2及びハーフミラー3を介して光学顕微鏡4内に導かれる。モーター駆動により3次元方向に移動可能なXYZステージ5上に載置された金属微粒子分散高分子膜体12’表面は、直上の対物レンズ7及びCCDカメラ8及びTVモニター9、または図示しない接眼レンズを通して観察可能である。レーザ光を遮断した状態で金属微粒子分散高分子膜体12’表面の状態を確認した後、レーザ光を導入する。レーザ光は対物レンズ7によって金属微粒子分散高分子膜上で1μm程度にまで絞り込まれる。金属微粒子分散高分子膜体12’表面をTVモニター9で観察しながら、必要に応じてXYZステージ5をXY方向に所望のパターンに従って駆動することにより金属微粒子分散高分子膜体12’に針状凹部20を形成する。
【0024】
前記方法に従って針状凹部が形成された金属微粒子分散膜体をマスタ型13とし、図4に示すように(3)マスタ型13を転写し、針状凸部を有する反転型14を作製する。この反転型14は、メッキ液に腐蝕されない材料で構成され、後工程のメッキ構造体の形成において、反転型に電気メッキを施す場合は反転型が導電性を有することが必要である。反転型に導電性を付与するためには、表面に電極層を設ける、もしくは、電気メッキが可能な程度の導電性を有する材料で反転型を構成する必要がある。例えば、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などをマスタ型に注型して表面形状を転写した後、この転写体の表面に電極層を形成し、針状凸部を有する反転型とする。電極層の形成方法としては、化学メッキ、真空蒸着法、スピンコート法、ディップ法などの薄膜形成方法が用いられる。もしくは、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などに導電物質を配合した導電性組成物を注型してマスタ型を転写し、針状凸部を有する反転型を作製してもよい。表面の導電物質がメッキ析出の核として作用するため、特別な前処理を必要とすることなく容易に電気メッキからなるメッキ構造体を形成することができる。
【0025】
前記針状凸部を有する反転型14を用いて、図5に示すように(4)反転型14にメッキ構造体15を形成し、針状凹部を有する金型17を作製する。メッキ構造体15を形成する方法としては電気メッキがあり、メッキ可能な金属としては、単金属ではニッケル、銅、クロム、亜鉛、金、白金、銀、合金では、銅−亜鉛、亜鉛−ニッケル、ニッケル−鉄などが挙げられるが、金属製型としての強度、耐食性、熱伝導率等を考慮するとニッケルが最も好ましい。メッキ時間は特に限定されないが、金属製型として十分な膜厚のメッキ構造体15を形成するためには10時間以上が好ましい。
【0026】
所定時間放置した後、メッキ構造体15が形成された反転型14を取り出し、反転型14を除去して、針状凹部を有する金型17を得る。この際、反転型14とメッキ構造体15の両者を剥離してもよく、また反転型14をエタノール、トルエン等の溶剤によって溶解してもよい。
【0027】
上記工程により得られた針状凹部を有する金型17を用いて、図6のように(5)金型17上に針状成形体16を形成する。針状成形体16を金型17上に形成する方法としては、針状体原料を射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形を行うことが考えられるが、通常用いられる射出成形では注入時に圧力が加わるため針状体原料の移動速度が速くなり、微小な凹部に針状体原料が入りにくく、転写率が悪いといった不具合がある。この転写率を向上させるには、射出圧縮成形を選択することが好ましい。射出圧縮成形とは射出成形と圧縮成形を組み合わせた手法であって、高速充填ならびに均一加圧による成形によって微細な形状の転写が可能である。
【0028】
そして(6)金型17から針状成形体16を剥離する。剥離を物理的に行う場合は、金型の微細な凹部に針状体が入り込んでいる為、充分な冷却時間を経てから脱型することが好ましい。また裏面よりメッキ構造体等をエッチング除去して、針状体を得てもよい。図7に針状体21を複数形成した例を示す。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の針状体の製造方法及び針状体について実施例を示しながらさらに詳細に説明する。
金属微粒子として20.9質量%金含有トルエン分散金微粒子(真空冶金製パーフェクトゴールド)、高分子としてエチルセルロース、そして溶剤としてp−キシレンを用意し、金微粒子対エチルセルロースの重量比が0.2:1となるように秤量されたトルエン分散金微粒子及びエチルセルロースを少量のp−キシレンと共に乳鉢で混練し、混合物を作製した。前記混合物を冷凍粉砕機(SPEX社製Mill6750)で粉砕し、60℃で1時間乾燥した後、平均一次粒径1mm以下の金微粒子分散エチルセルロース微粉体(金濃度17質量%)を得た。
【0030】
直径φ20mmの平金型を100℃に保温後、前記金微粒子分散エチルセルロース微粉体を前記平金型の下金型に充填した。上金型を300kgf/cm2の圧力でプレスし、金型温度を10℃/分の速度で145℃まで上昇させた。10分経過後、成形品を取り出して室温下で放置し、膜厚約500μmの金微粒分散エチルセルロース膜体を得た。
【0031】
上記金微粒子分散エチルセルロース膜体に、図1に示す照射系を用いて穴加工を行った。グリーンレーザ光(波長:532nm)を対物レンズ(NA0.26×10)で集光し、照射面のレーザ強度が23mWになるように調整し、0.5秒の照射時間で針状凹部を形成したマスタ型を作製した。このマスタ型を用いて、表1に示す物性のエポキシ樹脂に転写し、針状凸部を有する反転型を作製した。図8に得られた反転型のSEM(走査型電子顕微鏡)像を示す。反転型表面に先端の鋭利な針状凸部が転写されてなることが判る。
【0032】
【表1】
【0033】
この反転型を、金蒸着により表面を導電化させた後、表2に示すスルファミン酸ニッケル浴を用いて2A/dm2の条件で24時間電気メッキを施した。得られたメッキ構造体−反転型から反転型を除去し、針状凹部を有する金型を得た。この金型の裏面を銅基板に固着させた後、平板用射出成形装置に固定し、ポリエチレン樹脂を射出圧縮成形した。室温にて冷却した後、成形体を脱型し、複数の針状体を得た。図9に得られた針状体のSEM(走査型電子顕微鏡)像を示す。先端の鋭利な針状体が良好に作製されてなることが判る。
【0034】
【表2】
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本願請求項1の発明は、針状体の製造方法にあって、(1)金属微粒子分散高分子膜体を形成する工程、(2)金属微粒子分散高分子膜体の表面にレーザ光を照射して針状凹部を形成し、マスタ型を作製する工程、(3)マスタ型を転写し、針状凸部を有する反転型を作製する工程、(4)反転型にメッキ構造体を形成し、針状凹部を有する金型を作製する工程、(5)金型上に針状成形体を形成する工程、(6)金型から針状成形体を剥離する工程、を含む針状体の製造方法であって、レーザ加工により形成された凹部は先鋭化された針状凹部であり、これを利用して金型を作製することにより先端が鋭利な針状体を得ることができる。また金型を用いて針状体を製造することから、樹脂成形に汎用に用いられる射出成形・圧縮成形等に対応できるようになる。
【0036】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の針状体の製造方法にあって、(1)工程において、金属微粒子分散高分子膜体が、金属微粒子、高分子、及び溶剤を混練した混合物を粉砕加工した金属微粒子分散高分子微粉体を、金型に充填して加圧加熱することにより形成されてなる針状体の製造方法であって、従来のスピンコートの繰返しによる重ね塗りを行うことなく、膜厚数百μmから数mmに及ぶアスペクト比の高い金属微粒子分散高分子膜が得ることができる。
【0037】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の針状体の製造方法にあって、前記金属微粒子として金微粒子、前記高分子としてエチルセルロースが用いられてなる針状体の製造方法であって、金属微粒子が均一に分散された高分子膜体が得られるといったがある。
【0038】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の針状体の製造方法にあって、(5)工程において、針状成形体は射出圧縮成形により金型上に形成されてなる針状体の製造方法であって、転写率が良好で、生産性良く針状体が得られる。
【0039】
請求項5記載の発明は、針状体にあって、請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法により製造された針状体であって、生体医療やマイクロメカニクスに好適な先端の鋭角な針状体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属微粒子分散高分子膜体へのレーザ光照射系の概略図である。
【図2】本発明の針状体の製造工程において、平金型を用いて金属微粒子分散高分子膜体を作製する状態の断面図である。
【図3】本発明の針状体の製造工程において、金属微粒子分散高分子膜体にレーザ光を照射して針状凹部を形成し、マスタ型を作製する状態を示した断面図である。
【図4】本発明の針状体の製造工程において、マスタ型を転写し、針状凸部を有する反転型を作製する状態を示した断面図である。
【図5】本発明の針状体の製造工程において、反転型に電気メッキを施し、針状凹部を有するメッキ構造体を形成した状態を示した断面図である。
【図6】本発明の針状体の製造工程において、金型に針状体原料が充填された状態を示した断面図である。
【図7】本発明により製造された針状体を示す斜視図である。
【図8】実施例において反転型に形成された針状凸部パターンのSEM像である。
【図9】実施例において作製された針状体のSEM像である。
【符号の説明】
1 レーザー光源
2 ミラー
3 ハーフミラー
4 光学顕微鏡
5 XYZステージ
7 対物レンズ
8 CCDカメラ
9 TVモニター
10 上金型
11 下金型
12 金属微粒子分散高分子微粉体
12’金属微粒子分散高分子膜体
13 マスタ型
14 反転型
15 メッキ構造体
16 針状成形体
17 金型
20 針状凹部
21 針状体
Claims (5)
- 針状体の製造方法にあって、
(1)金属微粒子分散高分子膜体を形成する工程、
(2)金属微粒子分散高分子膜体の表面にレーザ光を照射して針状凹部を形成し、マスタ型を作製する工程、
(3)マスタ型を転写し、針状凸部を有する反転型を作製する工程、
(4)反転型にメッキ構造体を形成し、針状凹部を有する金型を作製する工程、
(5)金型上に針状成形体を形成する工程、
(6)金型から針状成形体を剥離する工程、
を含むことを特徴とする針状体の製造方法。 - (1)工程において、金属微粒子分散高分子膜体が、金属微粒子、高分子、及び溶剤を混練した混合物を粉砕加工した金属微粒子分散高分子微粉体を、金型に充填して加圧加熱することにより形成されてなることを特徴とする請求項1記載の針状体の製造方法。
- 前記金属微粒子として金微粒子、前記高分子としてエチルセルロースが用いられてなることを特徴とする請求項1または2記載の針状体の製造方法。
- (5)工程において、針状成形体は射出圧縮成形により金型上に形成されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の針状体の製造方法。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法により製造された針状体。
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