JP2004114340A - ガスバリヤーフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】フィルムと無機薄膜との密着性が良好で、透明性及びガスバリヤー性に優れたガスバリヤーフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のガスバリヤーフィルムは、非イオン性極性基を側鎖に有するグラフトポリマー鎖と結合した表面を有する支持体上に、無機薄膜を設けてなることを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明のガスバリヤーフィルムは、非イオン性極性基を側鎖に有するグラフトポリマー鎖と結合した表面を有する支持体上に、無機薄膜を設けてなることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、医薬品、電子部品等の気密性や酸素バリヤー性が要求される包装材料として好適な透明ガスバリヤーフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、包装用の透明なガスバリヤーフィルムとして、水蒸気バリヤー性に優れたポリプロピレンフィルムが使用されており、高い酸素バリヤー性が要求される場合にはさらに種々の表面加工が施される。表面加工の方法としては、(1)表面にポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールやエチレンビニルアルコール共重合体などのガスバリヤー性の高い樹脂を塗工するかラミネートして樹脂膜との重層構造とする、(2)表面に金属(アルミニウム等)箔を貼り合わせて金属薄膜を形成する、(3)表面に無機化合物(例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素などの酸化物)を蒸着して、無機化合物薄膜を形成する(例えば、非特許文献1参照。)等が挙げられる。
【0003】
上記(1)の場合、ポリ塩化ビニリデンを使用したガスバリヤーフィルムは廃棄の際の環境汚染が懸念され、ポリビニルアルコールやエチレンビニルアルコール共重合体を使用したものは、高温、高湿下において酸素及び水蒸気に対するバリヤー性が十分でない。
上記(2)の場合は、内容物の視認性や電子レンジへの対応に問題があり、包装材としては重過ぎる。
上記(3)の場合は、その透明性や軽量であることから近年多用されるようになってきたが、単に無機化合物を蒸着したものは、酸素バリヤー性を確保するために蒸着膜を厚くすると、柔軟性に欠け、不透明化し、成膜コストがかかるという問題がある。また、ポリプロピレンフィルムと無機化合物薄膜との密着性が十分でなく、無機化合物薄膜が剥離したり、クラックが生じるなどして、その結果、ガスバリヤー性の低下を招くという問題がある。
【0004】
【非特許文献1】
「繊維学会誌」,2002年,第58巻,第1号,p.34−39
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような先行技術の問題点を考慮した本発明の目的は、フィルムと無機薄膜との密着性が良好で、透明性及びガスバリヤー性に優れたガスバリヤーフィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を、非イオン性極性基を側鎖に有するグラフトポリマー鎖と結合した表面を有する支持体を用いることで解決したものである。
即ち、本発明のガスバリヤーフィルムは、窒素、酸素、硫黄原子などのヘテロ原子を有する疎水的な非イオン性極性基を側鎖に有するグラフトポリマー鎖が存在する表面を有する支持体上に、無機薄膜を設けてなることを特徴とする。
ここで、無機薄膜を構成する無機材料は金属及び金属酸化物であることが好ましい。また、無機薄膜の形成が気相法により行われることが好ましく、さらに無機薄膜の形成が微粒子吸着法により行われることが好ましい。
【0007】
本発明の作用は明確ではないが、本発明においては支持体上に極性グラフトポリマー鎖が存在する極性表面を有しており、このグラフトポリマー鎖に存在する極性基の機能、特にヘテロ原子を有する疎水的極性基の作用により、その表面上に無機材料(例えば、酸化アルミニウムなど)を付着させると、極性相互作用によりグラフトポリマー鎖と強固に吸着し、高密度で均一な層を形成し、結果として、薄層であっても耐摩耗性が増大し、高い耐久性が発現するものと推定される。また、バインダーなどの中間層を設けなくても、密着性の高い無機薄膜が形成されるため、透明性にも優れるという利点をも有する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のガスバリヤーフィルムは、非イオン性極性基を側鎖に有するグラフトポリマー鎖と結合した表面を有する支持体の上に無機薄膜を形成したものである。
上記表面を有する支持体には、グラフトポリマー鎖が直接に基材表面と結合しているものでも、また、基材表面にグラフトポリマーが結合しやすい中間層を設けてその層の上にポリマーがグラフトされているものでもよい。そのような表面は、一般に表面グラフト法により作成されたものであることが好ましい。
【0009】
〔極性グラフトポリマー鎖を表面に導入した支持体〕
表面グラフト法により作成された、非イオン性極性基を側鎖に有するグラフトポリマー鎖と結合した表面とは、基材を構成する表面上に光、電子線、熱などの従来公知の方法にて非イオン性極性基を側鎖に有するモノマーをグラフトし、或いは、非イオン性極性基を側鎖に有するマクロマー、ポリマーなどが基材表面に結合し、極性基を有する表面を形成した状態を指す。
更に、本発明における極性表面には、グラフトポリマー鎖が幹高分子化合物に結合したポリマー、若しくは、グラフトポリマー鎖が幹高分子化合物に結合し、かつ、架橋しうる官能基が導入されたポリマーを用いて、塗布或いは塗布架橋により支持体表面上に配置されたものや、ポリマー末端に架橋性基を有するポリマーと架橋剤とを含む組成物を用いて、塗布或いは塗布架橋により支持体表面上に配置されたものも包含される。
【0010】
本発明におけるグラフトポリマーの側鎖に用いられる極性基としては、ヘテロ原子を有する疎水的極性基が好ましく、具体的にはヘテロ原子としては窒素、硫黄、酸素などの原子が好ましく、またこれらのヘテロ原子を有する疎水的極性基としては、例えばピリジン基、キノリン基、チオフェン基、ベンゾチオフェン基など窒素原子、硫黄原子を含むヘテロ芳香族基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのアミノ基、エチレンオキシ基、チオエチレンオキシ基などの酸素原子、もしくは硫黄原子をを含むエーテル基、チオエーテル基、またブチロラクトンなどのラクトン基、ピロリドンなどのラクタム基などが挙げられる。
【0011】
本発明のポリマーの特徴は、ポリマーの末端が基材表面若しくは基材表面層に結合し、極性の側鎖を有するグラフト部分が実質的に架橋されていない構造にある。この構造により極性を発現する部分の運動性が制限されたり、強固な架橋構造内に埋没されることがない。このため、通常の架橋構造を有するポリマーに比較して、無機薄膜に対して優れた密着性が発現されるものと考えられる。
このようなグラフトポリマー鎖の分子量は、Mw500〜500万の範囲であり、好ましい分子量はMw1000〜100万の範囲であり、更に好ましくはMw2000〜50万の範囲である。
【0012】
〔(a)表面グラフトの作製方法〕
基材上にグラフトポリマーからなる親水性基を有する表面を作製する方法としては、基材とポリマーとを化学結合にて付着させる方法と、基材を基点として重合可能な2重結合を有する化合物を重合させグラフトポリマーとする方法とがある。
【0013】
(基材とポリマーとを化学結合にて付着させる方法)
まず、基材とポリマーとを化学結合にて付着させる方法について説明する。
この方法においては、ポリマーの末端若しくは側鎖に基材と反応する官能基を有するポリマーを使用し、この官能基と、基材表面の官能基とを化学反応させることでグラフトさせることができる。基材と反応する官能基としては、基材表面の官能基と反応し得るものであれば特に限定はないが、例えば、アルコキシシランのようなシランカップリング基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エポキシ基、アリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基等を挙げることができる。ポリマーの末端若しくは側鎖に反応性官能基を有するポリマーとして特に有用な化合物は、トリアルコキシシリル基をポリマー末端に有するポリマー、アミノ基をポリマー末端に有するポリマー、カルボキシル基をポリマー末端に有するポリマー、エポキシ基をポリマー末端に有するポリマー、イソシアネート基をポリマー末端に有するポリマーである。
【0014】
(基材を基点として重合可能な2重結合を有する化合物を重合させ、グラフトポリマーを形成させる方法)
基材を基点として重合可能な2重結合を有する化合物を重合させ、グラフトポリマーを形成させる方法は、一般的には表面グラフト重合と呼ばれる。表面グラフト重合法とは、プラズマ照射、光照射、加熱などの方法で基材表面上に活性種を与え、基材と接するように配置された重合可能な2重結合を有する化合物を重合によって基材と結合させる方法を指す。
【0015】
本発明を実施するための表面グラフト重合法としては、以下の文献記載の方法が使用できる。
例えば、高分子学会編,「新高分子実験学10」,共立出版(株),1994年,p.135には、表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。
また、竹内監修,「吸着技術便覧」,NTS(株),1999年2月,p.203,695には、γ線、電子線等の放射線照射グラフト重合法が記載されている。
光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては、上記記載の文献、及びイカダら(Y.Ikada et al.),「マクロモルキュールス(Macromolecules)」, 1986年,第19巻,p.1804などに記載の方法を適用することができる。
具体的には、高分子フィルム表面を、プラズマ、若しくは、電子線にて処理して表面にラジカルを発生させ、その後、その活性表面とモノマーとを反応させることによりグラフトポリマー表面層(極性表面)を得ることができる。
光グラフト重合は、上記記載の文献のほかに、特開昭53−17407号公報(関西ペイント)や、特開2000−212313号公報(大日本インキ)に記載されるように、フィルム基材の表面に光重合性組成物を塗布し、その後、水性ラジカル重合化合物とを接触させて光を照射することによっても実施することができる。
【0016】
また最近、表面グラフト重合法として原子移動ラジカル重合を利用することが可能であり、この方法を用いることで高密度のグラフトポリマー表面に結合が作成可能であることが見出されてきている。この重合法は マチヤゼウスキら(K.Matyjaszewski et al.), 「ポリマープレプリント(Polymer Preprints)」,2000年,第41巻,p.411、ブルエニングら(M.L. Bruening et al.),「J. Am. Chem. Soc.」, 2000年,第122巻,p.7616、及び「マクロモルキュールス(Macromolecules)」,2002年,第35巻,p.1175を参考に実施することができる。
【0017】
本発明の表面グラフトにおいて好適に用い得る窒素、硫黄、酸素などのヘテロ原子を有する疎水的極性基モノマーとしてとくに有用なモノマーの具体例としては、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)クリレート、N−モルフォリノエチル(メタ)クリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)クリレート、メバロイックラクトン(メタ)クリレートなどを挙げることができる。
【0018】
このようにして、基材上にグラフトポリマー鎖が存在する極性表面を設けることができる。極性表面を形成する層の膜厚は目的により選択できるが、一般的には1nm〜1μmの範囲が好ましく、10nm〜0.5μmの範囲が更に好ましい。膜厚が薄すぎると耐キズ性が低下する傾向があり、厚すぎる場合には密着性向上効果が低くなる傾向にある。
【0019】
本発明において、グラフトポリマーは基材表面を完全に覆っている必要はない。樹脂基材表面にグラフトポリマーを導入する場合、グラフトポリマーが基材の全表面積に対して10%以上導入されれば、有効な密着性向上効果が発現する。更に好ましくは、グラフトポリマーは基材の全表面積に対して30%以上であり、60%以上であることがより好ましい。
【0020】
〔基材〕
基材としては、機械的強度や寸法安定性を有し、更に、後述する無機薄膜の透明性を生かすために透明性を有するフィルムが好ましく使用される。使用されるフィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ナイロン66フィルム、ナイロン6フィルム、メタキシリデンジアミン共重合ポリアミドフィルム等のポリアミドフィルム;ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリアミドイミドフィルム;ポリビニルアルコールフィルム;エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム;ポリフェニレンフィルム;ポリスルフォンフィルム;ポリフェニレンスルフィッドフィルム;等が挙げられる。これらの中でも、コストパフォーマンス、透明性、ガスバリヤー性等の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムや、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルムが好ましい。これらのフィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよいし、単独で使用しても、異なる性質のフィルムを積層して使用してもよい。
【0021】
また、基材として用いられるフィルムには、本発明の効果を損なわない限り、種々の添加剤や安定剤を含有させたり、塗布したりしてもよい。用い得る添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤などが挙げられる。また、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理、粗面化処理などの表面処理を施してもよい。
【0022】
基材の厚さは、包装材料としての適性を考慮して、適宜、設定することができるため、特に、制限を受けるものではないが、一般的な実用の観点から、3μm〜1mmの範囲であることが好ましく、可撓性や無機薄膜を形成するための加工性の観点から、10〜300μmの範囲であることがより好ましい。
【0023】
<無機薄膜>
次に、前記支持体上に設けられる無機薄膜について説明する。
本発明において無機薄膜を形成する無機材料としては、薄膜の状態でガスバリヤー性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、金属もしくは金属酸化物が好ましい。
また、前記支持体のグラフトポリマー鎖が存在する極性表面に無機材料を導入して無機薄膜を形成する方法としては、無機材料の成膜に使用される公知の方法を適用すればよく、中でも、気相堆積膜形成法(気相法)が、得られる膜の均一性の観点から好ましい。気相法には、化学蒸着などを含む化学的気相成長法(CVD)、真空蒸着法、スパッタリング法などを含む物理的気相成長法(PVD)があり、いずれの方法も好適に使用し得る。また無機薄膜の形成が微粒子吸着法により行われていてもよい。
【0024】
真空蒸着法、スパッタリング法など気相法による成膜に適した無機材料としては、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)などの金属や、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(In2O3)、ITO(インジウム−スズ酸化物)などの金属酸化物、ケイ素(Si)、一酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO2)などのケイ素系化合物、が挙げられる。
また、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、インジウム(In)などを成膜中に酸化して、無機酸化物薄膜としてもよい。
これらの無機材料の中でも、蒸着膜の着色、実用的な蒸発速度、基材との密着性、酸素バリヤー性、材料の価格などを考慮した場合、アルミニウム(Al)を酸化して、酸化アルミニウム(Al2O3)とするのが最も好ましい。
【0025】
無機薄膜の厚さは、10〜1000nmの範囲であることが好ましく、20〜200nmの範囲であることがより好ましい。厚さが10nm未満では、薄膜が連続膜でなくガスバリヤー性が不充分となる。また、1000nmを超えると、支持体の厚さが薄い場合にカールが発生したり、着色し不透明化したり、可撓性や耐屈曲性が悪くなったりする可能性がでてくる。
【0026】
本発明のガスバリヤーフィルムは、支持体表面に導入された極性グラフト鎖の働きにより、真空蒸着法などで支持体上に形成されたガスバリヤー性の優れた無機薄膜が、極性グラフト鎖の極性基との相互作用により強固で均一に支持体表面に吸着する構造を有する。従って、本発明のガスバリヤーフィルムは、極性表面と、無機薄膜との密着性が良好で、ガスバリヤー性に優れるという効果を奏する。
また、本発明のガスバリヤーフィルムは、比較的簡易な工程で作製することが可能であり、更には、優れたガスバリヤー性を有する無機薄膜の耐久性が良好であるため、多用な目的の包装材料として好適に使用しうるという利点を有する。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
(実施例1、2)
〔グラフトポリマー鎖と結合した表面を有する支持体の作製〕
基材として、膜厚110μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(トヨパール、東洋紡(株)社製)を用い、グロー処理としてマグネトロンスパッタリング装置(芝浦エレテック製CFS−10−EP70)を使用し、下記の条件で酸素グロー処理を行った。
(酸素グロー処理条件)
初期真空:1.2×10−3Pa
酸素圧力:0.9Pa
RFグロー:1.5kW
処理時間:60sec
【0028】
(グラフトポリマーの導入)
上記の方法で処理したフィルムをアルゴン気流下、5−(Trichlorosilylpentyl)2−bromo−2−methylpropionate (開始剤末端シランカップリング剤)の1%トルエン溶液に室温下で終夜浸漬したのち取り出し、トルエン、メタノールで洗浄することにより、表面に開始剤が固定されたポリプロピレンフィルムを得た。
なお、上記 5−(Trichlorosilylpentyl)2−bromo−2−methylpropionate は、ホウカーら(C.J. Hawker et al.),「マクロモルキュールス(Macromolecules)」,1999年,第32巻,p.1424記載の方法にて合成した。
次に、4−ビニルピリジン47.7g、tris(2−dimethylaminoethy)amine 1.0gおよび臭化第一銅0.646gを、イソプロパノール100mlに溶解し、アルゴン気流を15分間通し脱気した溶液に、上記の開始剤が固定されたフィルムを室温にて1時間浸漬の後取り出し、水、メタノールで洗浄、さらにメタノールを含ませた布(ベムコットン)で表面をこすり洗浄した。
以上で得られた支持体を支持体Aとする。この支持体をエリプソメトリー(J.A.Woollam社製 VB−250) で測定したところ、10nmの膜厚で4−ビニルピリジンがグラフトされていることが確かめられた。
また同様に、4−ビニルピリジンを2−ビニルピリジンに変えた以外は上記と同じ方法にて2−ビニルピリジンがグラフトされた表面グラフトフィルムを支持体Bとして得た。
【0029】
〔無機薄膜の形成〕
得られた支持体Aに、酸化アルミニウムをスパッタリング法により成膜し、ガスバリヤーフィルムAを作成した。
スパッタリング装置内に支持体Aを配置し、1.3mPaまで排気した後、アルゴン/酸素を体積比98.5/1.5とした混合ガスを導入し、雰囲気圧力を0.27Paとし、支持体Aの温度を50℃に制御して投入電力1W/cm2でDCスパッタリングを行った。得られた無機薄膜の厚さは50nmであった。また、支持体Bを用いて、上記Aと同様にしてガスバリヤーフィルムBを得た。
【0030】
〔ガスバリヤーフィルムの性能評価〕
(酸素透過率)
酸素透過率は、MOCON社製酸素透過度測定装置(OX−TRAN100TWIN型)を用いて、25℃、相対湿度90%の条件下で測定を行った。酸素透過率が1.0cc/m2・24hr以下である場合、酸素バリヤー性が実用上十分である。
(水蒸気透過率)
水蒸気透過率は、JIS−Z−208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)によって、40℃、相対湿度90%の条件下で測定を行った。水蒸気透過率が1.0g/m2・24hr以下である場合、水蒸気バリヤー性が実用上十分である。
【0031】
ガスバリヤーフィルムAの酸素透過率は、0.25cc/m2・24hrであり、水蒸気透過率は、0.36g/m2・24hrであり、共に良好であることが明らかとなった。
ガスバリヤーフィルムBの酸素透過率は、0.21cc/m2・24hrであり、水蒸気透過率は、0.55g/m2・24hrであり、共に良好であることが明らかとなった。
【0032】
〔膜密着性の評価〕
得られたガスバリヤーフィルムA、Bを、JIS 5400に順じて碁盤目テープ法により膜密着性を評価した。カットした碁盤目に対するテープの引き剥がしテストを行ったところ、いずれも1目の剥離も見られず、密着性に優れることが確認された。
【0033】
〔透明性の評価〕
空気をリファレンスとして、波長550nmにおける光透過率を自記分光光度計UV2400−PC(島津製作所製)を用いて測定し、透明性を評価した。ガスバリヤーフィルムAの光透過率は83%以上であり、ガスバリヤーフィルムBの光透過率は93%以上であり、いずれも可視光の透過性に優れ、透明性が高いことがわかった。
【0034】
実施例の評価結果より、本発明のガスバリヤーフィルムは、酸素バリヤー性及び水蒸気バリヤー性に優れ、表面に形成された無機薄膜の密着性が良好であることが確認された。更に、本発明のガスバリヤーフィルムは、透明性も高く、実用に適する有用なものであることがわかった。
【0035】
【発明の効果】
本発明のガスバリヤーフィルムは、フィルムと無機薄膜との密着性が良好で、透明性及びガスバリヤー性に優れるという効果を奏する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、医薬品、電子部品等の気密性や酸素バリヤー性が要求される包装材料として好適な透明ガスバリヤーフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、包装用の透明なガスバリヤーフィルムとして、水蒸気バリヤー性に優れたポリプロピレンフィルムが使用されており、高い酸素バリヤー性が要求される場合にはさらに種々の表面加工が施される。表面加工の方法としては、(1)表面にポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールやエチレンビニルアルコール共重合体などのガスバリヤー性の高い樹脂を塗工するかラミネートして樹脂膜との重層構造とする、(2)表面に金属(アルミニウム等)箔を貼り合わせて金属薄膜を形成する、(3)表面に無機化合物(例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素などの酸化物)を蒸着して、無機化合物薄膜を形成する(例えば、非特許文献1参照。)等が挙げられる。
【0003】
上記(1)の場合、ポリ塩化ビニリデンを使用したガスバリヤーフィルムは廃棄の際の環境汚染が懸念され、ポリビニルアルコールやエチレンビニルアルコール共重合体を使用したものは、高温、高湿下において酸素及び水蒸気に対するバリヤー性が十分でない。
上記(2)の場合は、内容物の視認性や電子レンジへの対応に問題があり、包装材としては重過ぎる。
上記(3)の場合は、その透明性や軽量であることから近年多用されるようになってきたが、単に無機化合物を蒸着したものは、酸素バリヤー性を確保するために蒸着膜を厚くすると、柔軟性に欠け、不透明化し、成膜コストがかかるという問題がある。また、ポリプロピレンフィルムと無機化合物薄膜との密着性が十分でなく、無機化合物薄膜が剥離したり、クラックが生じるなどして、その結果、ガスバリヤー性の低下を招くという問題がある。
【0004】
【非特許文献1】
「繊維学会誌」,2002年,第58巻,第1号,p.34−39
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような先行技術の問題点を考慮した本発明の目的は、フィルムと無機薄膜との密着性が良好で、透明性及びガスバリヤー性に優れたガスバリヤーフィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を、非イオン性極性基を側鎖に有するグラフトポリマー鎖と結合した表面を有する支持体を用いることで解決したものである。
即ち、本発明のガスバリヤーフィルムは、窒素、酸素、硫黄原子などのヘテロ原子を有する疎水的な非イオン性極性基を側鎖に有するグラフトポリマー鎖が存在する表面を有する支持体上に、無機薄膜を設けてなることを特徴とする。
ここで、無機薄膜を構成する無機材料は金属及び金属酸化物であることが好ましい。また、無機薄膜の形成が気相法により行われることが好ましく、さらに無機薄膜の形成が微粒子吸着法により行われることが好ましい。
【0007】
本発明の作用は明確ではないが、本発明においては支持体上に極性グラフトポリマー鎖が存在する極性表面を有しており、このグラフトポリマー鎖に存在する極性基の機能、特にヘテロ原子を有する疎水的極性基の作用により、その表面上に無機材料(例えば、酸化アルミニウムなど)を付着させると、極性相互作用によりグラフトポリマー鎖と強固に吸着し、高密度で均一な層を形成し、結果として、薄層であっても耐摩耗性が増大し、高い耐久性が発現するものと推定される。また、バインダーなどの中間層を設けなくても、密着性の高い無機薄膜が形成されるため、透明性にも優れるという利点をも有する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のガスバリヤーフィルムは、非イオン性極性基を側鎖に有するグラフトポリマー鎖と結合した表面を有する支持体の上に無機薄膜を形成したものである。
上記表面を有する支持体には、グラフトポリマー鎖が直接に基材表面と結合しているものでも、また、基材表面にグラフトポリマーが結合しやすい中間層を設けてその層の上にポリマーがグラフトされているものでもよい。そのような表面は、一般に表面グラフト法により作成されたものであることが好ましい。
【0009】
〔極性グラフトポリマー鎖を表面に導入した支持体〕
表面グラフト法により作成された、非イオン性極性基を側鎖に有するグラフトポリマー鎖と結合した表面とは、基材を構成する表面上に光、電子線、熱などの従来公知の方法にて非イオン性極性基を側鎖に有するモノマーをグラフトし、或いは、非イオン性極性基を側鎖に有するマクロマー、ポリマーなどが基材表面に結合し、極性基を有する表面を形成した状態を指す。
更に、本発明における極性表面には、グラフトポリマー鎖が幹高分子化合物に結合したポリマー、若しくは、グラフトポリマー鎖が幹高分子化合物に結合し、かつ、架橋しうる官能基が導入されたポリマーを用いて、塗布或いは塗布架橋により支持体表面上に配置されたものや、ポリマー末端に架橋性基を有するポリマーと架橋剤とを含む組成物を用いて、塗布或いは塗布架橋により支持体表面上に配置されたものも包含される。
【0010】
本発明におけるグラフトポリマーの側鎖に用いられる極性基としては、ヘテロ原子を有する疎水的極性基が好ましく、具体的にはヘテロ原子としては窒素、硫黄、酸素などの原子が好ましく、またこれらのヘテロ原子を有する疎水的極性基としては、例えばピリジン基、キノリン基、チオフェン基、ベンゾチオフェン基など窒素原子、硫黄原子を含むヘテロ芳香族基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのアミノ基、エチレンオキシ基、チオエチレンオキシ基などの酸素原子、もしくは硫黄原子をを含むエーテル基、チオエーテル基、またブチロラクトンなどのラクトン基、ピロリドンなどのラクタム基などが挙げられる。
【0011】
本発明のポリマーの特徴は、ポリマーの末端が基材表面若しくは基材表面層に結合し、極性の側鎖を有するグラフト部分が実質的に架橋されていない構造にある。この構造により極性を発現する部分の運動性が制限されたり、強固な架橋構造内に埋没されることがない。このため、通常の架橋構造を有するポリマーに比較して、無機薄膜に対して優れた密着性が発現されるものと考えられる。
このようなグラフトポリマー鎖の分子量は、Mw500〜500万の範囲であり、好ましい分子量はMw1000〜100万の範囲であり、更に好ましくはMw2000〜50万の範囲である。
【0012】
〔(a)表面グラフトの作製方法〕
基材上にグラフトポリマーからなる親水性基を有する表面を作製する方法としては、基材とポリマーとを化学結合にて付着させる方法と、基材を基点として重合可能な2重結合を有する化合物を重合させグラフトポリマーとする方法とがある。
【0013】
(基材とポリマーとを化学結合にて付着させる方法)
まず、基材とポリマーとを化学結合にて付着させる方法について説明する。
この方法においては、ポリマーの末端若しくは側鎖に基材と反応する官能基を有するポリマーを使用し、この官能基と、基材表面の官能基とを化学反応させることでグラフトさせることができる。基材と反応する官能基としては、基材表面の官能基と反応し得るものであれば特に限定はないが、例えば、アルコキシシランのようなシランカップリング基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エポキシ基、アリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基等を挙げることができる。ポリマーの末端若しくは側鎖に反応性官能基を有するポリマーとして特に有用な化合物は、トリアルコキシシリル基をポリマー末端に有するポリマー、アミノ基をポリマー末端に有するポリマー、カルボキシル基をポリマー末端に有するポリマー、エポキシ基をポリマー末端に有するポリマー、イソシアネート基をポリマー末端に有するポリマーである。
【0014】
(基材を基点として重合可能な2重結合を有する化合物を重合させ、グラフトポリマーを形成させる方法)
基材を基点として重合可能な2重結合を有する化合物を重合させ、グラフトポリマーを形成させる方法は、一般的には表面グラフト重合と呼ばれる。表面グラフト重合法とは、プラズマ照射、光照射、加熱などの方法で基材表面上に活性種を与え、基材と接するように配置された重合可能な2重結合を有する化合物を重合によって基材と結合させる方法を指す。
【0015】
本発明を実施するための表面グラフト重合法としては、以下の文献記載の方法が使用できる。
例えば、高分子学会編,「新高分子実験学10」,共立出版(株),1994年,p.135には、表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。
また、竹内監修,「吸着技術便覧」,NTS(株),1999年2月,p.203,695には、γ線、電子線等の放射線照射グラフト重合法が記載されている。
光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては、上記記載の文献、及びイカダら(Y.Ikada et al.),「マクロモルキュールス(Macromolecules)」, 1986年,第19巻,p.1804などに記載の方法を適用することができる。
具体的には、高分子フィルム表面を、プラズマ、若しくは、電子線にて処理して表面にラジカルを発生させ、その後、その活性表面とモノマーとを反応させることによりグラフトポリマー表面層(極性表面)を得ることができる。
光グラフト重合は、上記記載の文献のほかに、特開昭53−17407号公報(関西ペイント)や、特開2000−212313号公報(大日本インキ)に記載されるように、フィルム基材の表面に光重合性組成物を塗布し、その後、水性ラジカル重合化合物とを接触させて光を照射することによっても実施することができる。
【0016】
また最近、表面グラフト重合法として原子移動ラジカル重合を利用することが可能であり、この方法を用いることで高密度のグラフトポリマー表面に結合が作成可能であることが見出されてきている。この重合法は マチヤゼウスキら(K.Matyjaszewski et al.), 「ポリマープレプリント(Polymer Preprints)」,2000年,第41巻,p.411、ブルエニングら(M.L. Bruening et al.),「J. Am. Chem. Soc.」, 2000年,第122巻,p.7616、及び「マクロモルキュールス(Macromolecules)」,2002年,第35巻,p.1175を参考に実施することができる。
【0017】
本発明の表面グラフトにおいて好適に用い得る窒素、硫黄、酸素などのヘテロ原子を有する疎水的極性基モノマーとしてとくに有用なモノマーの具体例としては、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)クリレート、N−モルフォリノエチル(メタ)クリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)クリレート、メバロイックラクトン(メタ)クリレートなどを挙げることができる。
【0018】
このようにして、基材上にグラフトポリマー鎖が存在する極性表面を設けることができる。極性表面を形成する層の膜厚は目的により選択できるが、一般的には1nm〜1μmの範囲が好ましく、10nm〜0.5μmの範囲が更に好ましい。膜厚が薄すぎると耐キズ性が低下する傾向があり、厚すぎる場合には密着性向上効果が低くなる傾向にある。
【0019】
本発明において、グラフトポリマーは基材表面を完全に覆っている必要はない。樹脂基材表面にグラフトポリマーを導入する場合、グラフトポリマーが基材の全表面積に対して10%以上導入されれば、有効な密着性向上効果が発現する。更に好ましくは、グラフトポリマーは基材の全表面積に対して30%以上であり、60%以上であることがより好ましい。
【0020】
〔基材〕
基材としては、機械的強度や寸法安定性を有し、更に、後述する無機薄膜の透明性を生かすために透明性を有するフィルムが好ましく使用される。使用されるフィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ナイロン66フィルム、ナイロン6フィルム、メタキシリデンジアミン共重合ポリアミドフィルム等のポリアミドフィルム;ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリアミドイミドフィルム;ポリビニルアルコールフィルム;エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム;ポリフェニレンフィルム;ポリスルフォンフィルム;ポリフェニレンスルフィッドフィルム;等が挙げられる。これらの中でも、コストパフォーマンス、透明性、ガスバリヤー性等の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムや、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルムが好ましい。これらのフィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよいし、単独で使用しても、異なる性質のフィルムを積層して使用してもよい。
【0021】
また、基材として用いられるフィルムには、本発明の効果を損なわない限り、種々の添加剤や安定剤を含有させたり、塗布したりしてもよい。用い得る添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤などが挙げられる。また、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理、粗面化処理などの表面処理を施してもよい。
【0022】
基材の厚さは、包装材料としての適性を考慮して、適宜、設定することができるため、特に、制限を受けるものではないが、一般的な実用の観点から、3μm〜1mmの範囲であることが好ましく、可撓性や無機薄膜を形成するための加工性の観点から、10〜300μmの範囲であることがより好ましい。
【0023】
<無機薄膜>
次に、前記支持体上に設けられる無機薄膜について説明する。
本発明において無機薄膜を形成する無機材料としては、薄膜の状態でガスバリヤー性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、金属もしくは金属酸化物が好ましい。
また、前記支持体のグラフトポリマー鎖が存在する極性表面に無機材料を導入して無機薄膜を形成する方法としては、無機材料の成膜に使用される公知の方法を適用すればよく、中でも、気相堆積膜形成法(気相法)が、得られる膜の均一性の観点から好ましい。気相法には、化学蒸着などを含む化学的気相成長法(CVD)、真空蒸着法、スパッタリング法などを含む物理的気相成長法(PVD)があり、いずれの方法も好適に使用し得る。また無機薄膜の形成が微粒子吸着法により行われていてもよい。
【0024】
真空蒸着法、スパッタリング法など気相法による成膜に適した無機材料としては、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)などの金属や、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(In2O3)、ITO(インジウム−スズ酸化物)などの金属酸化物、ケイ素(Si)、一酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO2)などのケイ素系化合物、が挙げられる。
また、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、インジウム(In)などを成膜中に酸化して、無機酸化物薄膜としてもよい。
これらの無機材料の中でも、蒸着膜の着色、実用的な蒸発速度、基材との密着性、酸素バリヤー性、材料の価格などを考慮した場合、アルミニウム(Al)を酸化して、酸化アルミニウム(Al2O3)とするのが最も好ましい。
【0025】
無機薄膜の厚さは、10〜1000nmの範囲であることが好ましく、20〜200nmの範囲であることがより好ましい。厚さが10nm未満では、薄膜が連続膜でなくガスバリヤー性が不充分となる。また、1000nmを超えると、支持体の厚さが薄い場合にカールが発生したり、着色し不透明化したり、可撓性や耐屈曲性が悪くなったりする可能性がでてくる。
【0026】
本発明のガスバリヤーフィルムは、支持体表面に導入された極性グラフト鎖の働きにより、真空蒸着法などで支持体上に形成されたガスバリヤー性の優れた無機薄膜が、極性グラフト鎖の極性基との相互作用により強固で均一に支持体表面に吸着する構造を有する。従って、本発明のガスバリヤーフィルムは、極性表面と、無機薄膜との密着性が良好で、ガスバリヤー性に優れるという効果を奏する。
また、本発明のガスバリヤーフィルムは、比較的簡易な工程で作製することが可能であり、更には、優れたガスバリヤー性を有する無機薄膜の耐久性が良好であるため、多用な目的の包装材料として好適に使用しうるという利点を有する。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
(実施例1、2)
〔グラフトポリマー鎖と結合した表面を有する支持体の作製〕
基材として、膜厚110μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(トヨパール、東洋紡(株)社製)を用い、グロー処理としてマグネトロンスパッタリング装置(芝浦エレテック製CFS−10−EP70)を使用し、下記の条件で酸素グロー処理を行った。
(酸素グロー処理条件)
初期真空:1.2×10−3Pa
酸素圧力:0.9Pa
RFグロー:1.5kW
処理時間:60sec
【0028】
(グラフトポリマーの導入)
上記の方法で処理したフィルムをアルゴン気流下、5−(Trichlorosilylpentyl)2−bromo−2−methylpropionate (開始剤末端シランカップリング剤)の1%トルエン溶液に室温下で終夜浸漬したのち取り出し、トルエン、メタノールで洗浄することにより、表面に開始剤が固定されたポリプロピレンフィルムを得た。
なお、上記 5−(Trichlorosilylpentyl)2−bromo−2−methylpropionate は、ホウカーら(C.J. Hawker et al.),「マクロモルキュールス(Macromolecules)」,1999年,第32巻,p.1424記載の方法にて合成した。
次に、4−ビニルピリジン47.7g、tris(2−dimethylaminoethy)amine 1.0gおよび臭化第一銅0.646gを、イソプロパノール100mlに溶解し、アルゴン気流を15分間通し脱気した溶液に、上記の開始剤が固定されたフィルムを室温にて1時間浸漬の後取り出し、水、メタノールで洗浄、さらにメタノールを含ませた布(ベムコットン)で表面をこすり洗浄した。
以上で得られた支持体を支持体Aとする。この支持体をエリプソメトリー(J.A.Woollam社製 VB−250) で測定したところ、10nmの膜厚で4−ビニルピリジンがグラフトされていることが確かめられた。
また同様に、4−ビニルピリジンを2−ビニルピリジンに変えた以外は上記と同じ方法にて2−ビニルピリジンがグラフトされた表面グラフトフィルムを支持体Bとして得た。
【0029】
〔無機薄膜の形成〕
得られた支持体Aに、酸化アルミニウムをスパッタリング法により成膜し、ガスバリヤーフィルムAを作成した。
スパッタリング装置内に支持体Aを配置し、1.3mPaまで排気した後、アルゴン/酸素を体積比98.5/1.5とした混合ガスを導入し、雰囲気圧力を0.27Paとし、支持体Aの温度を50℃に制御して投入電力1W/cm2でDCスパッタリングを行った。得られた無機薄膜の厚さは50nmであった。また、支持体Bを用いて、上記Aと同様にしてガスバリヤーフィルムBを得た。
【0030】
〔ガスバリヤーフィルムの性能評価〕
(酸素透過率)
酸素透過率は、MOCON社製酸素透過度測定装置(OX−TRAN100TWIN型)を用いて、25℃、相対湿度90%の条件下で測定を行った。酸素透過率が1.0cc/m2・24hr以下である場合、酸素バリヤー性が実用上十分である。
(水蒸気透過率)
水蒸気透過率は、JIS−Z−208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)によって、40℃、相対湿度90%の条件下で測定を行った。水蒸気透過率が1.0g/m2・24hr以下である場合、水蒸気バリヤー性が実用上十分である。
【0031】
ガスバリヤーフィルムAの酸素透過率は、0.25cc/m2・24hrであり、水蒸気透過率は、0.36g/m2・24hrであり、共に良好であることが明らかとなった。
ガスバリヤーフィルムBの酸素透過率は、0.21cc/m2・24hrであり、水蒸気透過率は、0.55g/m2・24hrであり、共に良好であることが明らかとなった。
【0032】
〔膜密着性の評価〕
得られたガスバリヤーフィルムA、Bを、JIS 5400に順じて碁盤目テープ法により膜密着性を評価した。カットした碁盤目に対するテープの引き剥がしテストを行ったところ、いずれも1目の剥離も見られず、密着性に優れることが確認された。
【0033】
〔透明性の評価〕
空気をリファレンスとして、波長550nmにおける光透過率を自記分光光度計UV2400−PC(島津製作所製)を用いて測定し、透明性を評価した。ガスバリヤーフィルムAの光透過率は83%以上であり、ガスバリヤーフィルムBの光透過率は93%以上であり、いずれも可視光の透過性に優れ、透明性が高いことがわかった。
【0034】
実施例の評価結果より、本発明のガスバリヤーフィルムは、酸素バリヤー性及び水蒸気バリヤー性に優れ、表面に形成された無機薄膜の密着性が良好であることが確認された。更に、本発明のガスバリヤーフィルムは、透明性も高く、実用に適する有用なものであることがわかった。
【0035】
【発明の効果】
本発明のガスバリヤーフィルムは、フィルムと無機薄膜との密着性が良好で、透明性及びガスバリヤー性に優れるという効果を奏する。
Claims (1)
- 非イオン性極性基を側鎖に有するグラフトポリマー鎖と結合した表面を有する支持体上に、無機薄膜を設けてなるガスバリヤーフィルム。
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