JP2004113975A - マイクロカプセルの製造方法及びそれを固着させてなる繊維製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マイクロカプセルを製造するにあたり、一般式[1]で表されるホスホリルコリン類似基を有する単量体又は該単量体を含む単量体混合物を重合してなる重合体を添加することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法、及び、一般式[1]で表されるホスホリルコリン類似基を有する単量体又は該単量体を含む単量体混合物を重合してなる重合体を添加して製造したマイクロカプセルを、繊維に固着させてなることを特徴とする繊維製品。ただし、式中、Rは、水素又はメチル基であり、mは1〜6、nは1〜4である。
【化1】
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロカプセルの製造方法及びそれを固着させてなる繊維製品に関する。さらに詳しくは、本発明は、芯物質として生理活性物質を内包し、繊維製品に固着させて着用したとき、恒常的に皮膚の生理的状態を改善することができるマイクロカプセルの製造方法及びそれを固着させてなる繊維製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロカプセルは、芯物質を壁膜の中に内包する微小な容器であり、芯物質を外部環境から保護する機能を有するとともに、芯物質を調節された速度で外部へ放出する機能を有する。このために、マイクロカプセルは、記録材料、医薬品、人工臓器、工業材料、農業材料、表示材料、化粧品、食品などのさまざまな分野で利用されている。繊維産業分野においては、芯物質としてパラフィンを用いた蓄熱性繊維、香料を用いた芳香性繊維、サポニンを用いた肌荒れ防止繊維、ヒノキチオールを用いた抗菌性繊維、グリチルレチン酸を用いた抗アトピー性繊維、D−リモネンを用いた抗菌性繊維、γ−リノレン酸を用いた保湿性繊維、ビタミンPを用いた血行改善性繊維などが開発されている。
繊維改質用のマイクロカプセルの芯物質については、さまざまな検討がなされているが、壁膜成分についての検討は比較的少なく、例えば、布製品の繊維への付着加工時に耐熱性がありカプセルが破壊されない程度の強度があれば、従来公知のものを採用可能(特許文献1)、ホルマリン系樹脂(特許文献2)などが報告され、提案されているに過ぎない。しかし、壁膜の性質によって、芯物質の放出速度と、放出された芯物質の皮膚への作用に差が生じ、必ずしも期待する効果が得られない場合があった。また、マイクロカプセルの壁膜成分として用いた合成高分子やマイクロカプセルスラリーの乳化分散剤として用いた界面活性剤の刺激炎症作用により、芯物質が有する生理活性作用が十分に発現しない場合もあった。
【特許文献1】
特開平7−243172号公報(第2頁)
【特許文献2】
特許第2562233号公報(第3〜4頁)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、芯物質として生理活性物質を内包し、繊維製品に固着させて着用したとき、恒常的に皮膚の生理的状態を改善することができるマイクロカプセルの製造方法及びそれを固着させてなる繊維製品を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ホスホリルコリン類似基を有する単量体又は該単量体を含む単量体混合物を重合してなる重合体をマイクロカプセルの壁膜成分として用いることにより、又は、該重合体によりマイクロカプセルを乳化分散させることにより、芯物質として内包される生理活性物質が効果的に放出され、皮膚に作用して生理活性を発揮することを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)マイクロカプセルを製造するにあたり、一般式[1]で表されるホスホリルコリン類似基を有する単量体又は該単量体を含む単量体混合物を重合してなる重合体を添加することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法、
【化3】
(ただし、式中、Rは、水素又はメチル基であり、mは1〜6、nは1〜4である。)、
(2)一般式[1]で表されるホスホリルコリン類似基を有する単量体又は該単量体を含む単量体混合物を重合してなる重合体と、該重合体の架橋剤を添加し、架橋した該重合体により、マイクロカプセルの壁膜を形成する第1項記載のマイクロカプセルの製造方法、
(3)一般式[1]で表されるホスホリルコリン類似基を有する単量体又は該単量体を含む単量体混合物を重合してなる重合体と、マイクロカプセルの壁膜成分を添加し、該重合体により、マイクロカプセルを乳化分散させてマイクロカプセルスラリーとする第1項記載のマイクロカプセルの製造方法、及び、
(4)一般式[1]で表されるホスホリルコリン類似基を有する単量体又は該単量体を含む単量体混合物を重合してなる重合体を添加して製造したマイクロカプセルを、繊維に固着させてなることを特徴とする繊維製品、
【化4】
(ただし、式中、Rは、水素又はメチル基であり、mは1〜6、nは1〜4である。)、
を提供するものである。
さらに、本発明の好ましい態様として、
(5)単量体混合物中の一般式[1]で表されるホスホリルコリン類似基を有する単量体の割合が、1〜99質量%である第1項記載のマイクロカプセルの製造方法、
(6)マイクロカプセルが、芯物質として生理活性物質を内包する第1項記載のマイクロカプセルの製造方法、及び、
(7)生理活性物質が、皮膚感作性低減物質である第6項記載のマイクロカプセルの製造方法、
を挙げることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のマイクロカプセルの製造方法においては、マイクロカプセルを製造するにあたり、一般式[1]で表されるホスホリルコリン類似基を有する単量体又は該単量体を含む単量体混合物を重合してなる重合体を添加する。本発明の繊維製品は、一般式[1]で表されるホスホリルコリン類似基を有する単量体又は該単量体を含む単量体混合物を重合してなる重合体を添加して製造したマイクロカプセルを、繊維に固着させてなる繊維製品である。
【化5】
ただし、一般式[1]において、Rは、水素又はメチル基であり、mは1〜6、nは1〜4である。
一般式[1]で表される単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−トリメチルアンモニオプロピルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−トリメチルアンモニオブチルホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェートなどを挙げることができる。これらの中で、2−メタクリロイルオキシエチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェートは、単量体として重合性が良好であり、得られる重合体が、マイクロカプセルの壁膜成分及びマイクロカプセルスラリーの乳化分散剤として優れた性能を有するので、好適に用いることができる。
【0006】
本発明において、一般式[1]で表される単量体と混合して共重合し得る単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシホスホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、マレイン酸、酢酸ビニルなどを挙げることができる。これらの共重合し得る単量体は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。共重合させる単量体の種類と量は、重合体をマイクロカプセルの壁膜成分として用いるときは、組み合わせる架橋剤などに応じて選択することができ、重合体をマイクロカプセルスラリーの乳化分散剤として用いるときは、重合体のHLBなどを考慮して選択することができる。一般式[1]で表される単量体と上記の単量体の共重合体は、ラジカル共重合により容易に製造することができる。
【0007】
本発明において、一般式[1]で表されるホスホリルコリン類似基を有する単量体を含む単量体混合物を重合してなる重合体中の一般式[1]で表される単量体単位の割合は、1〜99質量%であり、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。一般式[1]で表される単量体単位の割合が1質量%未満であると、芯物質の外部放出効果と皮膚吸収効果が低下するおそれがある。本発明において、一般式[1]で表されるホスホリルコリン類似基を有する単量体を含む単量体又は該単量体混合物を重合してなる重合体の質量平均分子量に特に制限はないが、5,000〜5,000,000であることが好ましく、100,000〜2,000,000であることがより好ましい。重合体の質量平均分子量が5,000未満であると、マイクロカプセルの壁膜の強度が不十分となるおそれがある。重合体の質量平均分子量が5,000,000を超えると、溶液粘度が高くなり、取り扱い作業性が低下するおそれがある。
【0008】
本発明方法において、一般式[1]で表されるホスホリルコリン類似基を有する単量体又は該単量体を含む混合物を重合してなる重合体を添加してマイクロカプセルを製造する方法に特に制限はなく、例えば、該重合体をマイクロカプセルの壁膜成分とする方法、該重合体をマイクロカプセルスラリーの乳化分散剤とする方法などを挙げることができる。該重合体を壁膜成分としてマイクロカプセルを製造する方法に特に制限はなく、例えば、コアセルベーション法、界面重合法、インサイチュ法などを挙げることができる。これらの中で、一般式[1]で表される単量体又は該単量体を含む混合物を重合してなる重合体と、該重合体の架橋剤を添加し、架橋した該重合体によりマイクロカプセルの壁膜を形成する界面重合法又はインサイチュ法を好適に用いることができる。
本発明方法においては、壁膜成分として、一般式[1]で表される単量体又は該単量体を含む混合物を重合してなる重合体と他の重合体を併用することができる。一般式[1]で表される単量体又は該単量体を含む混合物を重合してなる重合体と他の重合体を併用するとき、一般式[1]で表される単量体を含む混合物を重合してなる重合体の割合は、1〜100質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましい。壁膜成分として併用する他の重合体としては、例えば、メラミン樹脂、ユリヤ樹脂、グアナミン樹脂、アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、多糖類などを挙げることができる。
【0009】
本発明方法において、一般式[1]で表される単量体又は該単量体を含む混合物を重合してなる重合体をマイクロカプセルスラリーの乳化分散剤として用いるとき、マイクロカプセルの製造方法に特に制限はなく、例えば、コアセルベーション法、界面重合法、インサイチュ法などを挙げることができる。本発明方法においては、マイクロカプセルスラリーの乳化分散剤として、一般式[1]で表される単量体又は該単量体を含む混合物を重合してなる重合体と他の乳化分散剤を併用することができる。一般式[1]で表される単量体又は該単量体を含む混合物を重合してなる重合体と他の乳化分散剤を併用するとき、該重合体の割合は、1〜100質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましい。
併用する他の乳化分散剤としては、例えば、アラビアガム、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、アクリル酸重合体又は共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体などの無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸重合体又は共重合物などの水溶性高分子化合物、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキサイド付加物、油脂のアルキレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物などのポリアルキレングリコール類、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール又はソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミドなどの非イオン界面活性剤、脂肪酸セッケンなどのカルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルポリアルキレングリコールエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化脂肪酸又は硫酸化オレフィンの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸などのホルマリン縮合物、α−オレフィンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、イゲポンT型、スルホコハク酸ジエステル塩などのスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩などのアニオン界面活性剤などを挙げることができる。
【0010】
本発明のマイクロカプセルの製造方法においては、水性媒体中での物理的、物理化学的又は化学的な壁膜形成過程を含むマイクロカプセル化法により、マイクロカプセルスラリーを得ることができる。得られたマイクロカプセルスラリーは、そのままの状態で繊維に固着させることができるが、必要に応じて、デカンテーションやろ過などによりマイクロカプセルを単離して取り出し、乾燥して使用することもできる。
本発明において、マイクロカプセルの芯物質は、生理活性物質であることが好ましい。生理活性物質としては、例えば、抗炎症作用を有するε−アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、アラントイン、グリチルレチン酸又はその塩、エラグ酸又はその塩、タンニン、カテキン類、美白作用を有するエラグ酸又はその塩、アスコルビン酸又はその誘導体、γ−オリザノール、抗ストレス作用を有するウルソール酸又はその塩、オレアノール酸又はその塩、抗酸化作用を有する酢酸トコフェロール、植物抽出エキス、保湿作用を有する月見草油、ボラージ油、モルテイエラン油などの油脂及びその脂肪酸などを挙げることができる。
【0011】
本発明に用いるホスホリルコリン基を有する重合体は、生体膜に由来するリン脂質類似の構造を有するので、血液適合性、補体非活性化、生体物質非吸着性などが優れている。一般式[1]で表される単量体又は該単量体を含む単量体混合物を重合して得られる重合体は、ホスホリルコリン類似基を有し、マイクロカプセルの壁膜成分、又は、マイクロカプセルスラリーの乳化分散剤として使用することにより、芯物質となる皮膚感作性低減物質の作用効果を損なうことなく、化学的に安定なマイクロカプセルを製造することができる。
本発明において、マイクロカプセルを繊維に固着するためのマイクロカプセル製剤の形態に特に制限はなく、例えば、マイクロカプセルを有機溶剤に分散した分散液、マイクロカプセルを水に分散したマイクロカプセルスラリーなどを挙げることができる。これらの中でマイクロカプセルを水に分散したマイクロカプセルスラリーは、環境への負荷が小さいので好適に用いることができる。マイクロカプセルスラリーを調製するにあたっては、マイクロカプセル製造時に使用した乳化分散剤及び処理時の安定化剤として、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、プロピルセルロース、カルボキメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ザンタンガム、デンプン糊などを用いることが好ましい。
本発明において、マイクロカプセルを固着させる繊維材料に特に制限はなく、例えば、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアラミド繊維などの合成繊維、これらの繊維の複合繊維などを挙げることができる。繊維製品の形態としては、例えば、糸、編物、織物、不織布などを挙げることができる。
【0012】
本発明において、繊維へのマイクロカプセルの固着量に特に制限はなく、内包される芯物質の生理活性作用の発現濃度により適宜選択することができる。例えば、目付150g/m2の繊維製品の場合、通常は1m2あたり10〜100,000mgであることが好ましく、100〜15,000mgであることがより好ましい。マイクロカプセルの固着量が1m2あたり10mg以下であると、生理活性作用効果の発現が不十分になるおそれがある。マイクロカプセルの固着量が1m2あたり100,000mgを超えると、使用量に見合う効果が得られにくくなるのみならず、繊維製品の風合が損なわれるおそれがある。
本発明において、マイクロカプセルを繊維に固着させる方法に特に制限はなく、例えば、スプレー法、パッド法、浸漬法、コーティング法などにより繊維に付着させ、次いで乾燥し、固着させることにより本発明の繊維製品を得ることができる。さらに、必要に応じて、架橋剤やバインダーなどを併用して耐久性を高めることができる。また、柔軟剤、帯電防止剤、抗菌防臭剤などの繊維の加工剤と併用することにより、多種多用途の加工などが可能となり、他の機能性を付与する加工剤と併用することもできる。さらに、洗濯後のリンス剤としても用いることも可能である。
本発明の繊維製品の形態に特に制限はなく、例えば、下着、ファンデーション、ストッキング、靴下、手袋などを挙げることができる。これらの繊維製品は、直接肌に触れるので、マイクロカプセルから放出される生理活性物質が効果的に皮膚に吸収される。
【0013】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
冷却管つき四つ口フラスコに、2−メタクリロイルオキシエチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェート11.8質量部、n−ブチルメタクリレート5.7質量部、メタクリル酸0.9質量部、N−メチルロールアクリルアミド1.0質量部及び50容量%エタノール水溶液100質量部を仕込み、均一に溶解した。フラスコ内部を十分に窒素置換したのち、60℃に加熱して、アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を添加し、60℃で10時間重合し、共重合体溶液を得た。得られた共重合体について、リン酸緩衝液を溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより質量平均分子量を測定したところ、104,000であった。
芯物質として抗炎症剤であるエラグ酸1質量部、壁膜成分として上記の共重合体溶液10質量部、乳化分散剤及び壁膜成分として10質量%ポリビニルアルコール水溶液20質量部、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート三量体10質量部及び水59質量部を混合し、室温で、ラボホモミキサーを用いて8,000rpmで撹拌し、一次乳化物を得た。次いで、架橋補助剤としてジエチレントリアミン0.5質量部を加え、室温で2時間、さらに70℃に昇温して2時間反応させ、濃度1質量%のエラグ酸マイクロカプセルスラリーを得た。得られたマイクロカプセルの平均粒子径は、2.5μmであった。
このエラグ酸マイクロカプセルスラリーを、絞り率60質量%で目付150g/m2の綿メリヤスに付着させ、120℃で5分間加熱して加工布を得た。加工布を1cm×1cmに切断し、起炎物質である塩化ベンザルコニウムの1質量%水溶液50μLを点滴し、対象人員20名の上膊内側に貼付し、閉鎖法で24時間の皮膚貼付試験を行った。皮膚炎症の状態は、反応なし15名、紅斑4名、紅斑と丘疹1名であった。
実施例2
芯物質として皮膚感作性低減作用のあるγ−リノレン酸を含む脂肪酸ショ糖エステル[クローダジャパン(株)、CRODESTA GAMMA]10質量部、乳化分散剤として実施例1で得られた2−メタクリロイルオキシエチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェート共重合体溶液20質量部及び少量の苛性ソーダとともに溶解してpH4.5に調整した3質量%スチレン−無水マレイン酸共重合体水溶液50質量部を、室温で、ラボホモミキサーを用いて8,000rpmで撹拌し、一次乳化物を得た。次いで、この一次乳化物に、壁膜成分としてメラミン−ホルマリン反応物[住友化学工業(株)、スミテックスレジンM−3、60質量%水溶液]20質量部を加え、70℃で5時間反応させ、マイクロカプセルスラリーを得た。得られたマイクロカプセルの平均粒子径は、60μmであった。
得られたマイクロカプセルスラリーに大量の水を加え、ろ過し、真空乾燥を行ってマイクロカプセルを単離した。このマイクロカプセル10質量部に、10質量%ポリビニルアルコール水溶液20質量部と水70質量部を加えて均一に分散させ、マイクロカプセル製剤を得た。
得られたマイクロカプセル製剤を、絞り率60質量%で実施例1と同じ綿メリヤスに付着させ、120℃で5分間加熱して加工布を得た。加工布を1cm×1cmに切断し、塩化ベンザルコニウムの1質量%水溶液50μLを点滴し、実施例1と同じ対象人員20名の上膊内側に貼付し、閉鎖法で24時間の皮膚貼付試験を行った。皮膚炎症の状態は、反応なし10名、紅斑8名、紅斑と丘疹2名であった。
【0014】
比較例1
芯物質として抗炎症剤であるエラグ酸1質量部、乳化分散剤及び壁膜成分として10質量%ポリビニルアルコール水溶液36質量部、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート三量体10質量部及び水53質量部を混合し、室温で、ラボホモミキサーを用いて8,000rpmで撹拌し、一次乳化物を得た。次いで、架橋補助剤としてジエチレントリアミン0.5質量部を加え、室温で2時間、さらに70℃に昇温して2時間反応させ、濃度1質量%のエラグ酸マイクロカプセルスラリーを得た。得られたマイクロカプセルの平均粒子径は、3.8μmであった。
このエラグ酸マイクロカプセルスラリーを、絞り率60質量%で実施例1と同じ綿メリヤスに付着させ、120℃で5分間加熱して加工布を得た。加工布を1cm×1cmに切断し、塩化ベンザルコニウムの1質量%水溶液50μLを点滴し、実施例1と同じ対象人員20名の上膊内側に貼付し、閉鎖法で24時間の皮膚貼付試験を行った。皮膚炎症の状態は、反応なし8名、紅斑7名、紅斑と丘疹4名、紅斑と丘疹と小水泡1名であった。
比較例2
乳化分散剤として少量の苛性ソーダとともに溶解してpH4.5に調整した6.7質量%スチレン−無水マレイン酸共重合体水溶液70質量部を用いた以外は、実施例2と同様にして、マイクロカプセル製剤を調製した。マイクロカプセルの平均粒子径は、86μmであった。
調製したマイクロカプセル製剤を、絞り率60質量%で実施例1と同じ綿メリヤスに付着させ、120℃で5分間加熱して加工布を得た。加工布を1cm×1cmに切断し、塩化ベンザルコニウムの1質量%水溶液50μLを点滴し、実施例1と同じ対象人員20名の上膊内側に貼付し、閉鎖法で24時間の皮膚貼付試験を行った。皮膚炎症の状態は、反応なし2名、紅斑8名、紅斑と丘疹7名、紅斑と丘疹と小水泡2名、大水泡1名であった。
比較例3
実施例1で用いた目付150g/m2の綿メリヤスを1cm×1cmに切断し、塩化ベンザルコニウムの1質量%水溶液50μLを点滴し、実施例1と同じ対象人員20名の上膊内側に貼付し、閉鎖法で24時間の皮膚貼付試験を行った。皮膚炎症の状態は、反応なし3名、紅斑11名、紅斑と丘疹3名、紅斑と丘疹と小水泡3名であった。
実施例1〜2及び比較例1〜3の結果を、第1表に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
第1表に見られるように、マイクロカプセルの芯物質としてエラグ酸を用い、壁膜成分として2−メタクリロイルオキシエチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェート共重合体とポリビニルアルコールを用いた実施例1と、壁膜成分としてポリビニルアルコールのみを用いた比較例1を比較すると、実施例1の方が皮膚炎症を起こさない人が多く、皮膚炎症を起こした人も実施例1の方が軽症である。マイクロカプセルの芯物質としてγ−リノレン酸を含む脂肪酸ショ糖エステルを用い、乳化分散剤として2−メタクリロイルオキシエチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェート共重合体とスチレン−無水マレイン酸共重合体を用いた実施例2と、乳化分散剤としてスチレン−無水マレイン酸共重合体のみを用いた比較例2を比較すると、実施例2の方が皮膚炎症を起こさない人が多く、皮膚炎症を起こした人も実施例2の方が軽症である。
かりに、反応なしを5点、紅斑のみを4点、紅斑と丘疹を3点、紅斑と丘疹と小水泡を2点、大水泡を1点として平均点を求めると、実施例1が4.7点、実施例2が4.4点、比較例1が4.1点、比較例2が3.4点、比較例3が3.7点となる。
上記の結果から、2−メタクリロイルオキシエチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェート共重合体を壁膜成分として用いたマイクロカプセル又は該共重合体を乳化分散剤として用いたマイクロカプセルを繊維に固着させることにより、マイクロカプセルの芯物質の皮膚感作性低減作用を十分に発現させることができる繊維製品を製造することが可能となる。
【0017】
【発明の効果】
本発明方法により製造されたホスホリルコリン類似基を有する共重合体を壁膜成分又はスラリーの乳化分散剤として用いたマイクロカプセルから調製されたマイクロカプセル製剤を繊維製品に固着させることにより、容易に皮膚保護作用を有する繊維製品を製造することができる。
また、本発明方法により製造されたマイクロカプセルを用いることにより、繊維製品に固着している皮膚感作性低減作用を有する薬剤を、少量ずつ長期にわたって経皮吸収させることができ、アトピー性皮膚炎の人や、敏感肌の人が、日常的に用いられる化粧品、毛髪洗浄剤、食器洗浄剤などに含まれる界面活性剤などによる皮膚障害を防止することができる。本発明の繊維製品は、下着、ファンデーション、ストッキング、靴下、手袋などの直接肌に接する衣類にとして特に有用である。
Claims (4)
- 一般式[1]で表されるホスホリルコリン類似基を有する単量体又は該単量体を含む単量体混合物を重合してなる重合体と、該重合体の架橋剤を添加し、架橋した該重合体により、マイクロカプセルの壁膜を形成する請求項1記載のマイクロカプセルの製造方法。
- 一般式[1]で表されるホスホリルコリン類似基を有する単量体又は該単量体を含む単量体混合物を重合してなる重合体と、マイクロカプセルの壁膜成分を添加し、該重合体により、マイクロカプセルを乳化分散させてマイクロカプセルスラリーとする請求項1記載のマイクロカプセルの製造方法。
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