JP2004113941A - ガドリニウム同位体の分離方法および装置 - Google Patents

ガドリニウム同位体の分離方法および装置 Download PDF

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滝 沢 靖 史
Akira Kuwako
桑 子   彰
Masayo Kato
加 藤 昌 代
Noriyasu Kobayashi
小 林 徳 康
Junko Watanabe
渡 辺 順 子
Yoshio Araki
荒 木 義 雄
Kunihiko Nakayama
中 山 邦 彦
Motohisa Abe
阿 部 素 久
Hajime Adachi
足 立   肇
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Abstract

【課題】原子レーザ法を用いながら、濃縮ガドリニウム製品/廃品のガドリニウム金属を効果的に回収することができるとともに、経済性にも優れたガドリニウム同位体の分離方法および装置を提供する。
【解決手段】本発明のガドリニウム同位体の分離方法および装置においては、分離プロセスを経て廃品となったガドリニウム金属の一部を、40%以下の範囲で、かつ予備溶融るつぼ20において溶融させた後に蒸発るつぼ3に供給する。また、製品回収板25の下縁に沿って配設される樋24の断面形状をV字形とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽水型原子炉用の燃料集合体を構成する燃料棒の一部に可燃性毒物として含有されるガドリニウム元素の特定の同位体を、原子レーザ法を用いて分離する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、軽水型原子炉用の燃料集合体を構成する燃料棒の一部には、原子炉の初期反応度を制御するために、可燃性毒物としてのガドリニア(ガドリニウムの酸化物)がウランの酸化物に混合されて使用されているが、このようなガドリニアとして天然の同位体組成のガドリニウムが用いられている。
【0003】
天然のガドリニウムには、図16に示したように7種類の同位体が含まれており、このうち熱中性子吸収断面積の大きい155Gdと157Gdが中性子吸収材として反応度制御の役割を果たしている。これにより、反応度制御の特性を向上させるためには、熱中性子吸収断面積の特に大きな157Gd若しくは157Gdおよび155Gdの同位体の組成比を高めた濃縮ガドリニウムを用いたり、あるいは熱中性子吸収断面積の小さな156Gd等の同位体の組成比を減少させることにより157Gd等の組成比を相対的に高めたガドリニウムを用いたりすることが考えられ、原子レーザ法によりこれらの同位体を分離する試みがなされている。
【0004】
原子レーザ法を用いて同位体を分離する装置においては、図17および図18に示したように、真空容器1の内部を真空排気手段2によって高真空度に保つ。また、真空容器1の内部に配設した蒸発るつぼ3には、ガドリニウム金属原料供給器4から供給されるガドリニウム金属原料と、同伴蒸発金属供給器5から供給される鉄や銅等の同伴蒸発元素とを、原料混合器6において所定の混合比率で混合して連続的若しくは断続的に供給する。蒸発るつぼ3内に装荷されたガドリニウム金属原料と同伴蒸発元素との混合物は、電子銃7から照射する高速の電子ビーム8により加熱し溶融させて蒸発させる。蒸発したガドリニウムおよび同伴蒸発元素の原子蒸気流9は、蒸気整流器としての樋10を通過した後、その上方に設けられているイオン捕集電極板11で挟まれた光反応部12に達する。
【0005】
光反応部12に照射するレーザ光Lは、ガドリニウム蒸気原子を3段階励起法により電離させるのに必要な波長、強度、波長幅等を有する。光電離した157Gdイオンは、高電場を印加したイオン捕集電極板12のうち負の電極板(製品回収電極)に捕集される。レーザ光によって電離されなかった残りの157Gd原子や他のGd同位体原子および同伴蒸発原子の大部分はイオン捕集電極板11を素通りしてさらに上方に設けられている蒸気封入器13の天井下面に付着し、これが流下して廃品回収容器14に回収される。
【0006】
負のイオン捕集電極板(製品回収板)11に捕集された、157Gd同位体が60%以上に濃縮されているガドリニウムと同伴蒸発元素との合金は、製品回収板11の下縁に沿って設置された樋10の内面に沿って流下し、蒸気封入器13の外部に設置された製品回収容器15に回収される。回収された濃縮ガドリニウムと同伴蒸発元素との合金は、容器から取り出された後に化学分離法によって溶融分離され、濃縮ガドリニウムと同伴元素とに分離される。
【0007】
一方、光反応部12にレーザ光Lを照射するレーザシステムは、図19に示したように、波長可変レーザ励起用レーザ(例えば銅蒸気レーザ、CVL)16と、これにより励起される波長可変レーザ(例えば色素レーザ,DL)17とを組み合わせるとともに、発生させたレーザ光を全反射ミラー18a,ハーフミラー18bおよびダイクロイックミラー18cで各レーザ光を合成する構造となっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ガドリニウム元素の特定の同位体を原子レーザ法を用いて分離する際には、以下のような特徴を考慮しなくてはならない。
(1)ガドリニウム金属の天然存在比(同位体比)において、熱中性子吸収断面積の大きい157Gdの値は16%と比較的大きい。
(2)Gd原子の準安定レベルは比較的低エネルギー状態にも多く存在し、蒸気化する際に励起レベルに存在する原子の割合も無視できない。
(3)複数の同位体の吸収スペクトルが混在し、同位体シフトによる選択電離法は適用できず、偏光法による分離法が必要で、この場合の電離率の理論的な上限は70%である。
(4)3段階の効果的な光電離をさせる3つの共鳴波長の組み合わせにおいて、波長差の小さな共鳴波長に電離断面積の大きな場合がある。
【0009】
したがって、このような特徴を有するガドリニウムの特定の同位体を原子レーザ法によって分離する際には、以下のような配慮が必要である。
(a)光反応によって生じたプラズマを回収する際にプラズマ密度が大きくなるとイオン回収のロスや電荷交換反応が大きくなるため、蒸気密度に上限がある。
(b)光照射を受ける蒸気中の157Gd同位体の電離率に理論的な上限があるため、高濃度の製品を得るためには製品回収板への光反応に寄与しない蒸気の付着(これを中性原子付着率とよぶ)をできるだけ低くする必要が ある。
(c)複数の同位体の吸収スペクトルが蒸気の光吸収のドップラー広がり程度のものが多く、特に第1励起用のレーザ光は標的同位体のみならず非標的同位体も吸収するため、同位体シフトが大きなものを選択するとともに光反応部の蒸気のドップラ広がりを小さくする必要がある。
(d)異なる波長のレーザ光の合成には、その波長差が10nm以上の大きな場合にはダイクロイックミラーが、波長差が少ない場合には偏光素子が用いられるが、偏光法を利用したGdの原子レーザ法分離においては偏光の向きが限定されており、偏光素子による合成が行えない。したがって、波長差の少ない共鳴波長のレーザ光の合成には合成ロスの少ない波長合成系が必要である。
【0010】
ガドリニウムはこのような特有の性質を有するから、ガドリニウムの濃縮手法としての原子レーザ法を効果的に適用するためには、これらの点を考慮した分離システムが求められる。
【0011】
しかしながら、上述した従来の原子レーザ法によるガドリニウム同位体分離装置においては、図17に示したように、廃品回収容器14に回収した廃品を全て系外に排出し、157Gdを有効に回収するために再利用することがない。
また、図18に示したように、光反応部12に照射するレーザ光Lは波長合成された片道の1ビームのみであり、少ないレーザ出力で効果的な電離を行う工夫がなされていない。
さらに、図19に示した構成のレーザシステムにおいては、レーザ光の波長が近接すると合成効率が悪くなってしまう。
【0012】
そこで本発明の目的は、原子レーザ法を用いながら、濃縮ガドリニウム製品/廃品のガドリニウム金属を効果的に回収することができるとともに、経済性にも優れたガドリニウム同位体の分離方法および装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明においては、蒸気を有効に活用する方法、中性原子付着率を低減しかつ有効に製品/廃品ガドリニウムを分別する方法、レーザ光を有効に利用する方法をそれぞれ提案する。
【0014】
上記の課題を解決する請求項1に記載した手段は、
複数の同位体を含む天然ガドリニウム金属原料をるつぼ上で加熱し蒸発させて得た金属蒸気原子に複数波長のレーザ光を照射して特定のガドリニウム同位体を励起して電離させ、
電場を印加するとともに加熱した製品回収電極により電離イオンを回収して前記特定のガドリニウム同位体を濃縮して回収するガドリニウム同位体の分離方法において、
上記の分離プロセスを経て廃品となったガドリニウム金属の一部を前記天然ガドリニウム金属原料に加えて供給原料とすることを特徴とする。
【0015】
すなわち、天然ガドリニウム金属原料に含まれる157Gdの割合は約16%であるが、これがレーザ照射によってイオン回収される割合は最高でも70%である。
これにより、分離プロセスを経て廃品となったガドリニウム金属中には、最低でも約5%の157Gdが含まれている。
したがって、請求項1に記載したガドリニウム同位体の分離方法によれば、分離プロセスを経て廃品となったガドリニウム金属の一部を天然ガドリニウム金属原料に加えることによって、157Gdを有効に回収することができる。
【0016】
また、請求項2に記載した手段は、請求項1に記載したガドリニウム同位体の分離方法において、廃品となったガドリニウム金属を40%以下の範囲で前記天然ガドリニウム金属原料に加えることを特徴とする。
【0017】
すなわち、請求項2に記載したガドリニウム同位体の分離方法においては、廃品となったガドリニウム金属を40%以下の範囲で天然ガドリニウム金属原料に加えるので、供給蒸気中の157Gdの密度が下がり、イオン回収プロセス過程におけるプラズマ密度が低減され、イオン回収過程における電荷交換量やスパッタリング損失の低減にもつながり、原料の有効利用だけでなく分離プロセス条件の緩和にも有効である。
【0018】
また、上記の課題を解決する請求項3に記載の手段は、
複数の同位体を含む天然ガドリニウム金属原料をるつぼ上で加熱し蒸発させて得た金属蒸気原子に複数波長のレーザ光を照射して特定のガドリニウム同位体を励起して電離させ、
電場を印加するとともに加熱した製品回収電極により電離イオンを回収して前記特定のガドリニウム同位体を濃縮して回収するガドリニウム同位体の分離装置であって、
上記の分離プロセスを経て廃品となったガドリニウム金属の一部を前記天然ガドリニウム金属原料に所定の割合で混合し溶融させた後に前記るつぼに原料供給するための予備溶融るつぼを備えることを特徴とする。
【0019】
すなわち、請求項3に記載したガドリニウム同位体の分離装置によれば、分離プロセスを経て廃品となったガドリニウム金属と天然ガドリニウム金属原料とを、所定の割合で混合し溶融させて原料供給することが可能となる。
また、ガドリニウム金属の溶融温度を低減するために添加する金属、例えば銅や鉄を同時に溶解させることにより、必要濃度の成分比を設定することが可能となる。
【0020】
また、上記の課題を解決する請求項4に記載の手段は、
複数の同位体を含む天然ガドリニウム金属原料をるつぼ上で加熱し蒸発させて得た金属蒸気原子に複数波長のレーザ光を照射して特定のガドリニウム同位体を励起して電離させ、
電場を印加するとともに加熱した製品回収電極により電離イオンを回収して前記特定のガドリニウム同位体を濃縮して回収するガドリニウム同位体の分離装置であって、
前記製品回収電極の傾斜を有する下縁に沿って配設された断面形状がV字形の樋を備え、
かつ前記樋は、溶融状態の製品ガドリニウムがその上を流下して回収される内面と、溶融状態のガドリニウム金属原料がその表面に沿って流下して蒸気封入器内に還流される外面と、を有することを特徴とする。
【0021】
すなわち、請求項4に記載したガドリニウム同位体の分離装置によれば、製品回収電極に回収されてその表面を流下する製品ガドリニウムは、樋の内面上に集められるとともに樋の傾斜に沿って流下して回収される。
原料蒸気は、断面形状がV字形の樋によって整流されて製品回収電極間の光反応部に導かれるので、製品回収電極への中性原子の付着を減少させることができる。
また、原料蒸気の一部が樋の外面に付着して溶融状態のガドリニウム金属原料となるが、樋の傾斜に沿って流下し蒸気封入器内に還流する。
これにより、製品ガドリニウムとガドリニウム金属原料とを確実に分離して回収することができる。
【0022】
また、請求項5に記載した手段は、請求項4に記載したガドリニウム同位体の分離装置において、前記樋が、前記製品回収電極の一端側から他端側に向かって斜め下方に傾斜して延びることを特徴とする。
【0023】
すなわち、請求項5に記載したガドリニウム同位体の分離装置によれば、ガドリニウム同位体の分離量が少ない場合に、製品ガドリニウムおよびガドリニウム金属原料を集中的に回収することができる。
これに対して、ガドリニウム同位体の分離量が多い場合には、場複数の製品回収電極にそれぞれ設けられている全ての樋が同一方向、言い換えると製品回収電極の一端側に向かって傾斜するように構成することもできるし、製品回収電極の一端側に向かって傾斜する樋と他端側に向かって傾斜する樋とが交互に並ぶように構成することもできる。
この場合には、樋の外面に沿って流下するガドリニウム金属原料を蒸気封入器内に均一に還流させることができる。
【0024】
また、請求項6に記載した手段は、請求項4に記載したガドリニウム同位体の分離装置において、前記樋が、前記製品回収電極の長手方向中央部から両端部に向かってそれぞれ斜め下方に傾斜して延びることを特徴とする。
【0025】
すなわち、請求項6に記載したガドリニウム同位体の分離装置においては、製品ガドリニウムおよびガドリニウム金属原料がそれぞれ樋の端部に速やかに到達するから、両者を確実に分離させて回収することができる。
【0026】
また、請求項7に記載した手段は、請求項4乃至6のいずれかに記載したガドリニウム同位体の分離装置において、前記樋が、前記外面から下方に突出する突出部を有することを特徴とする。
【0027】
すなわち、請求項7に記載したガドリニウム同位体の分離装置によれば、樋の外面に沿って流下する溶融状態のガドリニウム金属原料を、樋の外面に設けられている突出部を起点として落下させることができるから、ガドリニウム金属原料を製品ガドリニウムから確実に分離させて回収することができる。
なお、突出部は樋の外面の最下端部、言い換えると樋の下縁に設けるとともに、その下端が下方に向かって尖った形状とすることが好ましい。
【0028】
また、上記の課題を解決する請求項8に記載の手段は、
複数の同位体を含む天然ガドリニウム金属原料をるつぼ上で加熱し蒸発させて得た金属蒸気原子に複数波長のレーザ光を照射して特定のガドリニウム同位体を励起して電離させ、
電場を印加するとともに加熱した製品回収電極により電離イオンを回収して前記特定のガドリニウム同位体を濃縮して回収するガドリニウム同位体の分離装置であって、
複数のるつぼを有した単一の真空容器と、
前記複数のるつぼからそれぞれ蒸発する金属蒸気原子が互いに混合することを防止する、前記複数のるつぼの間に配設された隔壁と、
を備えることを特徴とする。
【0029】
すなわち、請求項8に記載したガドリニウム同位体の分離装置によれば、単一の真空容器内に複数のるつぼを配設するから、真空容器や排気装置にかかる装置コストを削減し、経済性を高めることができる。
また、複数のるつぼ間に隔壁を配設するから、他のるつぼから蒸発した中性原子の付着および蒸発原子の光吸収ドップラー広がりを低減して、分離性能が低下することを防止できる。
【0030】
また、上記の課題を解決する請求項9に記載の手段は、
複数の同位体を含む天然ガドリニウム金属原料をるつぼ上で加熱し蒸発させて得た金属蒸気原子に複数波長のレーザ光を照射して特定のガドリニウム同位体を励起して電離させ、
電場を印加するとともに加熱した複数の製品回収電極により電離イオンを回収して前記特定のガドリニウム同位体を濃縮して回収するガドリニウム同位体の分離装置であって、
前記るつぼの鉛直方向上方に配設された前記製品回収電極と前記るつぼとの距離をdとしたときに、前記るつぼの鉛直方向上方に対して角度θをなす方向に配設される前記製品回収電極と前記るつぼとの距離がdcosn/2θであることを特徴とする。
【0031】
すなわち、るつぼの鉛直方向上方でるつぼから距離dの位置における蒸気密度をN(atom/cm)とすると、るつぼの鉛直方向上方に対して角度θをなす方向でるつぼから距離dの位置における蒸気密度はNcosθ(atom/cm)と表すことができる。
一方、蒸気密度はるつぼからの距離の二乗に反比例するため、角度θでるつぼから距離dの位置における蒸気密度は(d/d)cosθとなる。
したがって、るつぼの鉛直方向上方に対して角度θをなす方向でるつぼから距離dの位置における蒸気密度がNと等しくなるためには、距離dの値はd=dcosn/2θでなければならない。
このとき、請求項9に記載したガドリニウム同位体の分離装置においては、るつぼの鉛直方向上方に対して角度θをなす方向に配設される製品回収電極とるつぼとの距離がdcosn/2θであるから、各製品回収電極の光反応部における蒸気密度をほぼ等しくすることができる。
これにより、各製品回収電極におけるイオン密度の違いに無くしてイオン回収率の違いを無くすことができるから、効果的なイオン回収を行うことができる。
【0032】
また、上記の課題を解決する請求項10に記載の手段は、
複数の同位体を含む天然ガドリニウム金属原料をるつぼ上で加熱し蒸発させて得た金属蒸気原子に複数波長のレーザ光を照射して特定のガドリニウム同位体を励起して電離させ、
電場を印加するとともに加熱した製品回収電極により電離イオンを回収して前記特定のガドリニウム同位体を濃縮して回収するガドリニウム同位体の分離装置であって、
前記製品回収電極間の光反応部を通過した行きレーザ光を反射して再び前記光反応部を通過させるレーザ光反射機構を備えることを特徴とする。
【0033】
すなわち、請求項10に記載したガドリニウム同位体の分離装置によれば、レーザ光反射機構によってレーザ光を往復させて、製品回収電極間の光反応部に存在する蒸気原子を行きレーザ光および帰りレーザ光の2つのレーザ光で照射するから、少ないレーザ出力で効果的な電離を行うことができる。
【0034】
また、上記の課題を解決する請求項11に記載の手段は、
複数の同位体を含む天然ガドリニウム金属原料をるつぼ上で加熱し蒸発させて得た金属蒸気原子に複数波長のレーザ光を照射して特定のガドリニウム同位体を励起して電離させ、
電場を印加するとともに加熱した製品回収電極により電離イオンを回収して前記特定のガドリニウム同位体を濃縮して回収するガドリニウム同位体の分離装置であって、
前記製品回収電極間の光反応部に照射する3波長のレーザ光を合成する、ハーフミラーとダイクロイックミラーおよびダイアゴナルミラーを有したレーザビーム合成系を備えることを特徴とする。
なお、光反応部に照射する合成されたレーザ光は、1本若しくは2本とすることができる。
【0035】
すなわち、請求項11に記載したガドリニウム同位体の分離装置においては、光反応部に照射する3波長(λ1,λ2,λ3)のレーザ光を合成するビーム合成機構は、ハーフミラー、ダイクロイクミラーおよびダイアゴナルミラーを有するとともに、3波長合成後のレーザビームを1本ないしは2本に設定する。
3波長のレーザ光を合成する順序としては、3本のレーザ光のうち、波長差の少ない2本(例えばλ1とλ2,波長差=|λ1−λ2|<10nm)をハーフミラー合成で2分割し、これを2分割した残りの1波長(λ3)とダイクロイックミラーにより合成し、これら3波長が合成された2ビームをダイアゴナルミラーにて照射前に1本ないしは2本に合成する。
これにより、ガドリニウムの共鳴電離に使用する波長可変レーザ光(λ1,λ2,λ3)を全て光反応に寄与させることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るガドリニウム同位体の分離方法および装置の各実施形態について、図1乃至図15を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、同一の部分に同一の参照符号を付すことによりその説明を省略する。
【0037】
まず最初に図1および図2を参照し、原子レーザ法を用いてガドリニウム同位体を分離する装置100の全体構造について説明する。
【0038】
図1に示した分離装置100の真空容器1は、油拡散ポンプ若しくはターボ分子ポンプまたは油回転ポンプ等の真空排気手段2によって、その内部が10−4パスカル程度の高真空度に保たれる。
【0039】
真空容器1の内側には、天然ガドリニウム金属原料を供給するための原料供給機構が設けられている。この原料供給機構は、ガドリニウム金属原料供給器4から供給されるガドリニウム金属原料と、同伴蒸発金属供給器5から供給される鉄や銅等の同伴蒸発元素とを原料混合器19において所定の混合比率で混合する。混合された原料は予備溶融るつぼ20において加熱して液化させた後、加熱される原料導入管21を介して連続的または断続的に蒸発るつぼ3内に供給され、蒸発るつぼ3内における溶融金属の液位を一定に保つ。
【0040】
原料としてガドリニウム金属単体に代えてガドリニウム金属と銅や鉄を主とした金属との二元以上の合金を用いる際には、例えば銅や鉄などの同伴蒸発元素を10〜60重量%の範囲の比率で混合したガドリニウム合金を用いる。
すると、このような原料は電子ビームによる加熱によって700℃〜1200℃程度で溶融するとともに、2000℃程度に加熱することによって所要の蒸気密度のガドリニウムおよび同伴蒸発元素の蒸気流を得ることができる。
なお、蒸発るつぼ3は銅製であって水で冷却される。
また、ガドリニウム金属は直接蒸発るつぼ3内に設置され、若しくはガドリニウム金属の蒸発効率を高めるためにイットリア・タングステン合金等から製造した断熱性ハースライナが設置される。
【0041】
蒸発るつぼ3内に装荷されたガドリニウム原料金属は、電子銃7から照射される高速の電子ビーム8によって加熱され、溶融して蒸発する。
蒸発したガドリニウムおよび同伴蒸発元素の原子蒸気流9は、蒸気整流器としての樋24を通過した後、その上方に設けられているイオン捕集電極板25で挟まれた光反応部26に達する。
【0042】
光反応部26においては、波長可変レーザ光(例えば色素レーザや波長可変固体レーザ等)によって、天然のガドリニウム蒸気原子に約16%含まれる157Gd同位体のうち熱励起されていない基底レベルの原子のみを3段階励起法により励起して電離させる。
光反応部26に照射するレーザ光は、ガドリニウム蒸気原子を3段階励起法により電離させるのに必要な波長、強度、波長幅等を有する。
【0043】
光電離した157Gdイオンは、高電場を印加したイオン捕集電極板25のうち負の電極板(製品回収電極)に捕集される。
レーザ光によって電離されなかった残りの157Gd原子や他のGd同位体原子および同伴蒸発原子は、その一部分が中性原子のままイオン捕集電極板25に付着して捕集されるが、他の大部分はイオン捕集電極板25を素通りしてさらに上方に設けられている蒸気封入器13の天井下面に付着し、これが流下して廃品回収容器14に回収される。
また、横方向に飛散してイオン捕集電極板25および蒸気整流器(樋)24に到達しなかったガドリニウムおよび同伴蒸発元素の蒸気もまた、蒸気封入器13によって捕獲される。
なお、参照符号31で示す物は熱遮蔽器である。
【0044】
負のイオン捕集電極板(製品回収板)25に捕集された、157Gd同位体が60%以上に濃縮されているガドリニウムと同伴蒸発元素との合金29は、この合金29の融点675℃より200℃余り高い900℃程度に製品回収板25を加熱することにより液化して流動し、製品回収板25の表面に沿って流下する。
そして、製品回収板25の下縁に沿って設置された樋24の内面に沿って流下し、蒸気封入器13の外部に設置された製品回収容器15に集められる。
【0045】
また、中性原子のまま蒸気封入器13の天井下面に付着した、157Gd同位体の組成が劣化したガドリニウムと同伴蒸発元素との合金は、蒸気封入器13を加熱することにより液化して流動し、真空容器1の外部に設置された廃品回収容器14に回収される。
さらに、蒸気封入器13のそれ以外の部分に付着したガドリニウムと同伴蒸発元素との合金もまた、蒸気封入器13をその融点以上の温度に加熱することにより液化して流動し下方の蒸発るつぼ3に還流する。
【0046】
このとき、製品回収板25、蒸気封入器13および廃品回収容器14の加熱は、ガドリニウム原料金属と同伴蒸発元素との合金を蒸発させるための電子ビーム8による加熱の輻射熱により行うことができるが、製品回収容器30および廃品回収容器14に至る流動管の加熱を含めて、補助的な抵抗通電加熱手段を併用して加熱することもできる。
【0047】
製品回収容器15および廃品回収容器14にそれぞれ回収された合金は、冷却水によって冷却されて固体金属合金として一時的に保管された後、分離装置100の外部に取り出される。
製品回収容器15に回収された濃縮ガドリニウムと同伴蒸発元素との合金(製品ガドリニウム)29は、製品回収容器から取り出した後に化学分離法によって溶融分離することにより濃縮ガドリニウムを得ることができる。
【0048】
次に、本実施形態におけるガドリニウム同位体分離装置100の特徴部分について説明する。
【0049】
同位体分離においては分離する同位体(これを標的同位体と言い、それ以外の同位体を非標的同位体と言う)の存在率に応じて、標的同位体を選択電離して回収するか、非標的同位体を選択電離して取り除くかの選択が必要になる。
このとき、天然ガドリニウムに含まれる同位体のうち、中性子吸収材として反応度制御の役割を果たす熱中性子吸収断面積の大きい157Gdの存在率は約16%であるから、157Gdを選択的に電離して回収する方が効率的である。
【0050】
ただし、処理量(製品収量)を高めようとして原料供給量(光反応部の蒸気密度)を多くすると光電離イオン密度が高くなり、全ての光電離イオンを回収しきれなくなるばかりでなく、電荷交換やスパッタリングなどによる回収損失が増加する。
したがって、このように比較的存在比の大きな同位体を原子レーザ法により濃縮する際には、光反応部の蒸気密度と光電離イオン密度の最適化を図る必要がある。
また、分離する原料の価格が分離コストに比して無視できない場合には、分離プロセスを経た廃品の再利用もまたトータルコストの低減にも効果がある。
【0051】
ここで、図3は廃品リサイクル率をパラメータとして製品収量と原料使用率の関係を表すグラフを示している。
なお、原料使用率とは単位量の製品Gdを生産するのに用いる原料Gdの量の比をとったものである。
【0052】
ガドリニウム濃縮プロセスにおいては製品中における157Gdの濃縮度は60%と高いものの、原料ガドリニウム中から157Gdを回収できる比率が低いため、原料中に15.6%含まれる157Gdが廃品中にも10%以上含まれることになる。
したがって、そのままでは原料中を多量に使用してしまい濃縮コストの上昇にもつながる。
【0053】
このとき、図3に示したように廃品還流率を高くすると製品収量が減ってしまうために効率的ではないが、廃品還流率40%は製品収量が急に低下する手前であり、還流無しの場合に比べ原料使用量を30%も節約できる。
したがって、劣化ガドリニウムを40%まで還流させて再利用することにより、濃縮コストの経済性を高めることができる。
【0054】
一方、天然ガドリニウム金属原料および廃品ガドリニウムが供給される蒸発るつぼ3においては、157Gdができるだけ均質に混じり合っている必要がある。
また、天然ガドリニウム金属原料にはガドリニウムの溶融温度を低減するために鉄や銅等の同伴蒸発金属を添加するが、これらもまた均質に混じり合っている必要がある。
このとき、本実施形態の分離装置100においては、蒸発るつぼ3に供給する原料の成分比を設定することが可能な予備溶融るつぼ20を設置しているので、安定的な同位体分離が可能となる。
【0055】
図1に示した分離装置100においては、廃品回収容器14に回収された廃品ガドリニウムが流下路35を介して原料混合器19に供給される。
そして、原料供給器4から供給される天然ガドリニウム金属原料と、同伴蒸発金属供給器5から供給される鉄若しくは銅等の同伴蒸発金属と、流下路35を介して供給される廃品ガドリニウムとが、原料混合器19において所定の成分比に混合されて予備溶融るつぼ20に供給される。
【0056】
予備溶融るつぼ20の容量は蒸発用蒸発るつぼ3のように大きい必要は無く、その1/10程度の容量で十分である。
また、原料を溶融させる加熱用電子銃の出力も20kW程度で十分である。
予備溶融るつぼ20から蒸発るつぼ3に供給する蒸発原料を溶融状態に保つために原料導入管21をヒータ加熱するが、この原料導入管21の温度を蒸発原料の融点よりも高く設定することにより、原料導入管21を流れる途中において蒸発原料の均質な混合を促進することができる。
これにより、所望の割合で混合された蒸発原料を溶融状態で蒸発るつぼ3に供給することが可能となるばかりでなく、必要濃度の成分比を設定することも可能となる。
【0057】
次に、図4乃至図10を参照し、樋24および製品回収板25の構造について説明する。
【0058】
図4に示したように、製品回収板25の下縁に沿って傾斜して延びる樋24は、その断面形状が略V字形となっている。
これにより、製品回収板25の表面に付着して流下する製品ガドリニウム29は樋24の内面に沿って流下し、かつ樋24の外面に付着した原料ガドリニウム32は樋24の下縁に沿って流下するから、製品ガドリニウム29と原料ガドリニウム32とを確実に分離して回収することができる。
【0059】
また、樋24の下縁に沿って流下する原料ガドリニウム32は、樋24の下縁から下方に向かって突設された3角形状の突出部33の斜縁33aに沿って流下するとともに、その先端33bから落下して蒸気封入器13の下部に還流し、蒸発るつぼ3に至る。
【0060】
なお、製品回収板25は、中性原子の付着率を低くするために原料蒸気流の流れ方向と平行に延びるように配設する必要がある。
これにより、製品回収板25は蒸発るつぼ3を基点して扇型に開くように配設されるため、末端側の製品回収板25は、蒸発るつぼ3から上方に延びる鉛直線に対してかなり傾斜する。
そこで、樋24の上面の途中から製品ガドリニウム29が落下しないように、樋24の上面に製品ガドリニウム29の流れを案内する凹溝を設けることも考えられる。
【0061】
また、断面形状がV字形の樋24は、製品ガドリニウム29と原料ガドリニウム32とを分離して回収する機能だけではなく、光反応部26に流入する原子蒸気流9を整流して製品回収板25への中性原子の付着を減少させる役割をも果たす。
【0062】
また、光反応部26に流入する原子蒸気流9中には、電子銃7が照射する電子ビーム8によってガドリニウム蒸気がイオン化したバックグラウンドイオン(BGイオン)が1%程度存在する。
このとき、断面形状がV字形の樋24は、製品回収板25にイオン回収電圧を印加することにより、光反応部26に流入する前にバックグラウンドイオンを樋24の下面で回収することができるから、ガドリニウムの分離プロセスにおいて極めて効果的な役割を果たす。
【0063】
また、所望する同位体の分離量の規模に応じて蒸発るつぼ3等の蒸発系や製品回収板25の大きさを適正化する必要がある。
このとき、分離量が小さい場合には、図5乃至図7に示した分離装置100のように、製品回収板25の長手方向の一方の側にのみ製品ガドリニウム29および原料ガドリニウム32を流下させて集めることができる。
この場合、図8に示した分離装置110のように、互いに隣接する製品回収板25ごとに製品ガドリニウム29および原料ガドリニウム32の流下方向を変えることにより、蒸気封入器13内における原料ガドリニウム32の還流バランスを保つことができる。
さらに、分離量が大きい場合には、図9および図10に示した分離装置120のように、製品回収板25の長手方向中央部を基点とし、左右の両端側に製品ガドリニウム29および原料ガドリニウム32を分けて流下させることもできる。
【0064】
次に、図12および図13を参照し、真空容器の内部に複数のるつぼを設置した分離装置について説明する。
【0065】
構造や設備を合理化したシステムとして、真空容器1の内部に複数の蒸発るつぼ3を設置した分離装置が考えられる。
このとき、他のるつぼから供給される中性原子の付着や標的同位体以外の原子によるレーザ光の吸収等により、分離性能が低下する。
【0066】
そこで、図12および図13に示した分離装置200においては、左右一対の蒸発るつぼ3L,3Rの間に隔壁13L,13Rを配設することにより、左右一対の蒸発るつぼ3L,3R間における原料蒸気の混合を防止している。
これにより、一つの真空容器1の内部に複数のるつぼを設置することが可能となるから、真空容器1や真空排気手段2のコストを削減して経済性を高めることができる。
なお、一つのるつぼに対して一組の製品回収板を設けるのではなく、図12に示したように複数の蒸発るつぼ3L,3Rに対して一組の製品回収板25を用いて製品ガドリニウムを回収することも可能である。
【0067】
次に、図12を参照し、蒸気封入器13内における製品回収板25の配置について説明する。
【0068】
蒸気封入器13内に複数配設された製品回収板25毎に光電離イオンの密度が異なると、全イオンを製品回収板25に回収するためには最も光電離イオン密度が高い領域に合わせて電圧条件を設定する必要がある。
ところが、光電離イオン密度が低い領域において電圧が過大となると、スパッタリングによる製品ガドリニウムの損失が大きくなってしまう。
したがって、蒸気封入器13の内部において、光電離イオンの密度ができるだけ均一であることが望ましい。
【0069】
そこで、図12に示した分離装置300においては、原料蒸気密度が最も高い中央領域においては製品回収板25を蒸発るつぼ3から遠ざけるとともに、原料蒸気密度が低い周辺領域においては製品回収板25を蒸発るつぼ3に近づけることにより、各製品回収板25における光電離イオンの密度分布ができるだけ均一化されるようにしている。
【0070】
すなわち、蒸発るつぼ3から鉛直方向上方に延びる直線L1上において、蒸発るつぼ3から距離dにおける部分の原料蒸気密度をN(atom/cm)とすると、直線L1に対して角度θをなして延びる直線L2上において蒸発るつぼ3から距離dにおける部分の原料蒸気密度をN(atom/cm)=Ncosθとなる。
このとき、原料蒸気密度は蒸発るつぼ3からの距離の二乗に反比例するから、各製品回収板25の光反応部26における蒸気密度を均一化するためには、角度θ方向にある製品回収板25aの蒸発るつぼ3からの距離を、蒸発るつぼ3の真上に位置する製品回収板25と蒸発るつぼ3との距離のおよそcosn/2θ倍とすれば良い。
これにより、複数の製品回収板25におけるそれぞれの光電離イオン密度の差に起因するイオン回収率の差を無くすことができるから、効果的なイオン回収を行うことができる。
【0071】
次に、図2、図4および図11を参照し、ガドリニウムの同位体を効率的に電離させるためのレーザ光の有効利用について説明する。
【0072】
ガドリニウム同位体分離装置における光反応部26は、回収板間距離で5cm程度、回収板高さで10cm程度の寸法が適正である。この場合、レーザビーム径は幅4cm×高さ8cm程度が適正であり、157Gdについて約70%の電離率を得るためには合計で5mJ/cmレベルの出力密度の波長可変レーザの照射が必要となる。
【0073】
このように高いレーザ出力密度を必要とするレーザシステムの規模を合理化するために、前述した分離装置100,200は共に、図2、図4および図11に示したように光反応部26の上半分領域の蒸気を行きレーザビーム41によって照射する。
そして、真空容器1の外部に設けた多重反射ミラー(反射機構)42によって行きレーザビーム41を反射し、今度は光反応部26の下半分領域の蒸気を帰りレーザビーム43で照射する。
これにより、より小さいレーザ出力のレーザシステムを用いつつ、光反応部26におけるガドリニウム蒸気原子を効率良く光電離させ、図4に示したように光電離イオン流44を製品回収板25に向かわせることができる。
【0074】
次に、図14および図15を参照し、ガドリニウム蒸気原子に照射する3波長のレーザ光を合成するためのレーザ光合成機構について説明する。
【0075】
図14に示したレーザ光合成機構50においては、各波長可変レーザ(例えば色素レーザDL)51,52,53を用いて波長がλ1,λ2,λ3のレーザ光をそれぞれ発生させた後、各ビーム整形光学系54に導く。
第1波長可変レーザ51が発生させた波長がλ1の波長可変レーザ光55は、全反射ミラー58で反射されてハーフミラー59に達し、全反射ミラー60に向かう部分と全反射ミラー61に向かう部分とに2分割される。
また、第2波長可変レーザ52が発生させた波長がλ2の波長可変レーザ光56は、全反射ミラー62で反射されてハーフミラー59に達し、全反射ミラー60に向かう部分と全反射ミラー61に向かう部分とに2分割される。
これにより、全反射ミラー60および全反射ミラー61に向かう波長可変レーザ光63,64は、それぞれ波長がλ1の波長可変レーザ光55と波長がλ2の波長可変レーザ光56とを合成したものとなる。
【0076】
一方、第3波長可変レーザ53が発生させた波長がλ3の波長可変レーザ光57はハーフミラー69に向かい、全反射ミラー66,67,68に向かう部分と全反射ミラー69,70に向かう部分とに2分割される。
全反射ミラー68に達した波長λ3の波長可変レーザ光57は、ダイクロイックミラー71で反射される際に、このダイクロイックミラー71を透過してくる波長可変レーザ光63と合成される。
これにより、全反射ミラー72で反射されてダイアゴナルミラー73に向かう波長可変レーザ光74は、それぞれ波長がλ1、λ2、λ3の波長可変レーザ光55,56,57を合成したものとなる。
【0077】
同様に、全反射ミラー70に達した波長λ3の波長可変レーザ光57は、ダイクロイックミラー75で反射される際に、このダイクロイックミラー75を透過してくる波長可変レーザ光64と合成される。
これにより、全反射ミラー76で反射されてダイアゴナルミラー73に向かう波長可変レーザ光77は、それぞれ波長がλ1、λ2、λ3の波長可変レーザ光55,56,57を合成したものとなる。
【0078】
そして、各波長可変レーザ光74,77はダイアゴナルミラー73で反射される際に一体となり、1本のレーザビーム78として分離装置100,200の光反応部26に導かれる。
これにより、全ての波長可変レーザ光55,56,57をガドリニウムの共鳴電離における光反応に寄与させることができる。
なお、図15に示したように、各波長可変レーザ光74,77をダイアゴナルミラー73で反射する際に2本のレーザビーム79,80として、分離装置100,200の光反応部26に導くこともできる。
【0079】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、原子レーザ法を用いながら、濃縮ガドリニウム製品/廃品のガドリニウム金属を効果的に回収することができるとともに、経済性にも優れたガドリニウム同位体の分離方法および装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施形態のガドリニウム同位体分離装置を示す正面図。
【図2】図1に示した分離装置の側面図。
【図3】廃品ガドリニウムの還流率と製品収量との相関を示す図。
【図4】製品回収板間における光反応部を示す正面図。
【図5】製品回収板および樋を示す側面図。
【図6】図5に示した製品回収板および樋を示す斜視図。
【図7】図5に示した製品回収板と樋および蒸気封入器を示す斜視図。
【図8】製品回収板と樋および蒸気封入器の変形例を示す斜視図。
【図9】他の実施形態の製品回収板および樋を示す側面図。
【図10】図9に示した製品回収板と樋および蒸気封入器を示す斜視図。
【図11】他の実施形態の分離装置を示す側面図。
【図12】図11に示した製品回収板と樋および蒸気封入器を示す斜視図。
【図13】製品回収板のるつぼに対する角度および距離の関係を示す概念図。
【図14】本発明に係るガドリニウム同位体分離装置に用いるレーザシステムの全体概念図。
【図15】図14に示したレーザシステムの変形例を示す全体概念図。
【図16】天然ガドリニウムの組成を示す図。
【図17】従来の原子レーザ法によるガドリニウム同位体分離装置を示す正面図。
【図18】図17に示した装置の側面図。
【図19】図17に示した装置に用いるレーザシステムの構造を模式的に示す図。
【符号の説明】
1 真空容器
2 真空排気手段
3 蒸発るつぼ
4 ガドリニウム金属原料供給器
5 同伴蒸発金属供給器
6 原料混合器
7 電子銃
8 電子ビーム
9 原子蒸気流
13 蒸気封入器
13L,13R 隔壁
14 廃品回収容器
15 製品回収容器
19 原料混合器
20 予備溶融るつぼ
21 原料導入管
24 樋
25 製品回収板(イオン捕集電極板)
26 光反応部
31 熱遮蔽器
32 原料ガドリニウム
33 突出部
41 行きレーザビーム
42 多重反射ミラー
43 帰りレーザビーム
44 光電離イオン流
29 製品ガドリニウム
35 流下路
50 レーザ照射システム
51,52,53 波長可変レーザ
54 ビーム整形光学系
55 波長可変レーザ光(波長λ1)
56 波長可変レーザ光(波長λ2)
57 波長可変レーザ光(波長λ3)
58,60,61,62,66,67,68,69,70,72,76 全反射ミラー
59,65, ハーフミラー
63,64 λ1とλ2の合成レーザ光
71,75 ダイクロイックミラー
73 ダイアゴナルミラー
74,77 λ1とλ2のλ3の合成レーザ光
78,79,80 照射ビーム

Claims (11)

  1. 複数の同位体を含む天然ガドリニウム金属原料をるつぼ上で加熱し蒸発させて得た金属蒸気原子に複数波長のレーザ光を照射して特定のガドリニウム同位体を励起して電離させ、
    電場を印加するとともに加熱した製品回収電極により電離イオンを回収して前記特定のガドリニウム同位体を濃縮して回収するガドリニウム同位体の分離方法において、
    上記の分離プロセスを経て廃品となったガドリニウム金属の一部を前記天然ガドリニウム金属原料に加えて供給原料とすることを特徴とするガドリニウム同位体の分離方法。
  2. 前記廃品となったガドリニウム金属を40%以下の範囲で前記天然ガドリニウム金属原料に加えることを特徴とする請求項1に記載したガドリニウム同位体の分離方法。
  3. 複数の同位体を含む天然ガドリニウム金属原料をるつぼ上で加熱し蒸発させて得た金属蒸気原子に複数波長のレーザ光を照射して特定のガドリニウム同位体を励起して電離させ、
    電場を印加するとともに加熱した製品回収電極により電離イオンを回収して前記特定のガドリニウム同位体を濃縮して回収するガドリニウム同位体の分離装置であって、
    上記の分離プロセスを経て廃品となったガドリニウム金属の一部を前記天然ガドリニウム金属原料に所定の割合で混合し溶融させた後に前記るつぼに原料供給するための予備溶融るつぼ、
    を備えることを特徴とするガドリニウム同位体の分離装置。
  4. 複数の同位体を含む天然ガドリニウム金属原料をるつぼ上で加熱し蒸発させて得た金属蒸気原子に複数波長のレーザ光を照射して特定のガドリニウム同位体を励起して電離させ、
    電場を印加するとともに加熱した製品回収電極により電離イオンを回収して前記特定のガドリニウム同位体を濃縮して回収するガドリニウム同位体の分離装置であって、
    前記製品回収電極の傾斜を有する下縁に沿って配設された断面形状がV字形の樋を備え、
    前記樋は、溶融状態の製品ガドリニウムがその表面に沿って流下して回収される内面と、溶融状態のガドリニウム金属原料がその表面に沿って流下して蒸気封入器内に還流される外面と、を有する、
    ことを特徴とするガドリニウム同位体の分離装置。
  5. 前記樋は、前記製品回収電極の一端側から他端側に向かって斜め下方に傾斜して延びることを特徴とする請求項4に記載したガドリニウム同位体の分離装置。
  6. 前記樋は、前記製品回収電極の長手方向中央部から両端部に向かってそれぞれ斜め下方に傾斜して延びることを特徴とする請求項4に記載したガドリニウム同位体の分離装置。
  7. 前記樋は、前記外面から下方に突出する突出部を有することを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載したガドリニウム同位体の分離装置。
  8. 複数の同位体を含む天然ガドリニウム金属原料をるつぼ上で加熱し蒸発させて得た金属蒸気原子に複数波長のレーザ光を照射して特定のガドリニウム同位体を励起して電離させ、
    電場を印加するとともに加熱した製品回収電極により電離イオンを回収して前記特定のガドリニウム同位体を濃縮して回収するガドリニウム同位体の分離装置であって、
    複数のるつぼを有した単一の真空容器と、
    前記複数のるつぼからそれぞれ蒸発する金属蒸気原子が互いに混合することを防止する、前記複数のるつぼの間に配設された隔壁と、
    を備えることを特徴とするガドリニウム同位体の分離装置。
  9. 複数の同位体を含む天然ガドリニウム金属原料をるつぼ上で加熱し蒸発させて得た金属蒸気原子に複数波長のレーザ光を照射して特定のガドリニウム同位体を励起して電離させ、
    電場を印加するとともに加熱した複数の製品回収電極により電離イオンを回収して前記特定のガドリニウム同位体を濃縮して回収するガドリニウム同位体の分離装置であって、
    前記るつぼの鉛直方向上方に配設された前記製品回収電極と前記るつぼとの距離をdとするときに、前記るつぼの鉛直方向上方に対して角度θをなす方向に配設される前記製品回収電極と前記るつぼとの距離がdcosn/2θである、
    ことを特徴とするガドリニウム同位体の分離装置。
  10. 複数の同位体を含む天然ガドリニウム金属原料をるつぼ上で加熱し蒸発させて得た金属蒸気原子に複数波長のレーザ光を照射して特定のガドリニウム同位体を励起して電離させ、
    電場を印加するとともに加熱した製品回収電極により電離イオンを回収して前記特定のガドリニウム同位体を濃縮して回収するガドリニウム同位体の分離装置であって、
    前記製品回収電極間の光反応部を通過した行きレーザ光を反射して再び前記光反応部を通過させるレーザ光反射機構を備えることを特徴とするガドリニウム同位体の分離装置。
  11. 複数の同位体を含む天然ガドリニウム金属原料をるつぼ上で加熱し蒸発させて得た金属蒸気原子に複数波長のレーザ光を照射して特定のガドリニウム同位体を励起して電離させ、
    電場を印加するとともに加熱した製品回収電極により電離イオンを回収して前記特定のガドリニウム同位体を濃縮して回収するガドリニウム同位体の分離装置であって、
    前記製品回収電極間の光反応部に照射する3波長のレーザ光を合成する、ハーフミラーとダイクロイックミラーおよびダイアゴナルミラーを有したレーザビーム合成機構を備えることを特徴とするガドリニウム同位体分離装置。
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