JP2004107989A - 鋼管チャック装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】径方向に摺動可能に装填された2以上のチャックブロック45がチャックロッド43に固定されたスライドブロック46とテーパ面によって摺接し、アッパロッド2上部に固定された油圧スイベル3から送り込まれた作動油によって油圧シリンダ4が伸縮作動し、油圧シリンダ4の当該出力によってアッパロッド2下部に固定されたチャック機構5のチャックロッド43を上下動させることで、チャックブロック45が鋼管杭の把持及び解放を行うようにした鋼管チャック装置1。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転埋設工法や回転圧入工法を実行する際に回転駆動装置の出力軸に鋼管杭を連結させるためのものであって、特に回転駆動装置に対する鋼管杭の把持位置を調節することができる鋼管チャック装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
土木、建築関係の基礎杭として鋼管杭が圧入される場合、鋼管圧入工法では回転駆動装置が使用されている。鋼管杭は回転駆動装置の出力軸に連結され、杭打機のリーダに沿って昇降しながら回転を受けて地盤に回転圧入され、またそこからの引き抜きなどが行われる。こうした場合回転駆動装置にはその出力軸に鋼管杭を連結させるためのものとして鋼管チャック装置が使用され、従来から当該装置についてのいろいろな提案がなされている。
【0003】
本出願人も特開平11−303079号公報に開示され鋼管杭施工機において鋼管チャック装置を提案している。図14は、同公報に記載された鋼管チャック装置を含む鋼管杭施工機を示した図である。この鋼管杭施工機は、立設した杭打機のリーダ101に装着され、回転駆動装置110に対し鋼管チャック装置120が出力軸である六角孔の穿設された中空軸に差し込まれ、把持した鋼管杭200に回転を伝えるように構成されたものである。
【0004】
この鋼管チャック装置120は、アッパロッド121とその下のキャップ122とから構成されており、アッパロッド121は、回転駆動装置110の中空軸にはまり合う六角ジョイント部125と、その下に位置するホールド溝126とを一組としたものが上下に2組み形成され、下端のキャップ122は、実開平6−30224号公報に記載されているものと同様に、管杭200の頭部に溶接された係止爪201に引っ掛け、当該鋼管杭200に回転を伝達するようにしたものである。
【0005】
こうした鋼管チャック装置120は、鋼管杭を地面下にまで回転圧入することを可能としたものである。すなわち鋼管チャック装置120は、最初アッパロッド121に形成された下方の六角ジョイント部125が回転駆動装置の中空軸にはめ込まれ、回転駆動装置110がリーダ101のストロークエンドまで下降した後、ホールド機構111によってホールド溝126の掴み替えが行われる。そのため、アッパロッド121は図示するように上方の六角ジョイント部125が中空軸にはめ込まれ、更に回転駆動装置110が回転を出力しながらリーダ101を下降することで、鋼管杭200は頭部が地面よりも下になるまで打ち込まれる。
【0006】
一方、回転駆動装置の回転出力を鋼管杭に伝達する鋼管チャック装置には、こうしたカップの引っ掛けによるものの他、特開2000−64282号公報などに記載された油圧式のものが提案されている。この油圧式鋼管チャック装置120は、鋼管杭の管内に2以上の支持爪を挿入し、油圧操作による支持爪を広げたチャック動作によって鋼管杭をチャックするようにしたものである。
【0007】
【特許文献1】
実用新案登録第1572382号公報(第2頁、図1−図5)
【特許文献2】
特開平11−303079号公報(第2頁、図1−図5)
【特許文献3】
特開2000−64282号公報(第5−7頁、図2−図6)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたカップ式の鋼管チャック装置の場合、杭打ちの際に係止爪201を鋼管杭200に溶接しなければならず、また数本の鋼管杭を継ぎ足しながら施工するときには係止爪201が回転圧入させる際の抵抗となるため、逆に鋼管杭200から係止爪201を切断する必要があった。従って、これでは作業効率が悪く、非常に不経済であった。
【0009】
一方、前記特許文献3に記載する油圧式の鋼管チャック装置は、回転駆動装置に対して一体的に構成され、回転駆動装置に対する鋼管杭の高さを容易に変更することができる構成にはなっていなかった。そのため、鋼管杭を地面下までの打ち込みに変更する場合には、ヤットコロッドを組み込んでチャック部分を下げる必要があり、現場において装置に変更を加える面倒な作業を行う必要があった。また、油圧ホースが外にむき出しになっているので地中に入って回転することによる油圧ホースの破損や、スイベルジョイントに作動油の圧力がかかったまま回転するので、スイベルのシールが痛んで漏れやすくなってしまうなどの問題もあった。
【0010】
そこで本発明は、かかる課題を解決すべく、回転駆動装置に対する鋼管杭の把持位置を調節することができる鋼管チャック装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の鋼管チャック装置は、貫通した回転駆動装置の中空軸から出力される回転を伝達するものであって、掴み替えによって軸方向の位置決めが可能なアッパロッドと、筒形状のハウジング内にスピンドルが嵌挿され、一方を非回転として他方の回転側へ作動油が流れるように流路が形成された油圧スイベルと、前記油圧スイベルの回転側から送られる作動油によって伸縮作動する油圧シリンダと、径方向に摺動可能な2以上のチャックブロックが、軸方向に移動するチャックロッドに固定されたスライドブロックとテーパ面によって摺接し、スライドブロックの軸方向の移動によって径方向に押されたチャックブロックが鋼管に押し付けられて把持するチャック機構とを有し、アッパロッド上部に固定された油圧スイベルから送り込まれた作動油によって油圧シリンダが伸縮作動し、油圧シリンダの当該出力によってアッパロッド下部に固定されたチャック機構のチャックロッドを上下動させて鋼管杭の把持及び解放を行うようにしたものであることを特徴とする。
【0012】
そして、本発明の実施態様としては、前記アッパロッドに対して上部には下から順に前記油圧シリンダ及び油圧スイベルが、下部には前記チャック機構が取り付けられ、前記油圧シリンダのピストンロッドと前記チャック機構のチャックロッドとの間に、前記アッパロッドに穿設された軸孔にプッシュロッドが挿入されたものであって、前記油圧シリンダの伸長作動によりプッシュロッドを介してチャックロッドが押し下げられ、チャック機構による鋼管の把持動作が行われ、前記油圧シリンダの収縮作動によりチャックロッドとプッシュロッドとが押し上げられてチャック機構による鋼管の解放動作が行われようにしたものであることが望ましい。
【0013】
また、本発明の鋼管チャック装置は、前記アッパロッドに対して上部には油圧スイベルが、下部には上から順に前記油圧シリンダ及び前記チャック機構が取り付けられ、前記アッパロッドに前記油圧スイベルと前記油圧シリンダとの間で作動油を送るための流路が軸方向に穿設されたものであって、前記油圧シリンダの伸長作動によりピストンロッドと一体に形成されたチャックロッドが押し下げられてチャック機構による鋼管の把持動作が行われ、前記油圧シリンダの収縮作動により当該チャックロッドが押し上げられてチャック機構による鋼管の解放動作が行われようにしたものであることが望ましい。
【0014】
よって本発明によれば、油圧スイベルを介して送り込まれた作動油がアッパロッド内をプッシュロッドがチャック機構に動力を伝達し、又はアッパロッド内を通る当該作動油によって油圧シリンダを作動させてチャック機構に動力を伝達して鋼管の把持を行い、そのアッパロッドを回転駆動装置に対して取り付ける位置を変更することで回転駆動装置に対する鋼管杭の把持位置を調節することができる。また、チャック機構を作動させるためのプッシュロッドや作動油を送るための流路がアッパロッド内にあるため、鋼管杭を地面下にまで打ち込む際にもアッパロッド内部のこうした構成に破損が生じるようなことはない。
【0015】
また本発明は、前記油圧スイベルのスピンドルに形成された把持側流路にオペレートチェック弁が配管され、その二次側にアキュムレータが連結されたものであることが望ましい。
本発明によれば、オペレートチェック弁とアキュムレータとによって、スピンドルやアッパロッドに形成された回転部分の流路内の作動油に圧力をかけた状態にするので、施工中に油圧スイベルへ送られる作動油を加圧し続ける必要はなく、シール部分の摩耗を防ぎ油漏れを回避することができる。
【0016】
また本発明は、前記アッパロッドが下端にジョイント部を有し、前記チャック機構又は油圧シリンダが、アッパロッドに対して当該ジョイント部に着脱可能なブロックによって取り付けられるようにしたものであることが望ましい。
よって本発明によれば、アッパロッドに対して径の異なるチャック機構又は油圧シリンダを着脱することができ、鋼管の大きさに応じて容易に構成を変更することが可能である。
【0017】
また本発明は、前記チャックブロックとスライドブロックとの摺接するテーパ面が軸方向に複数段設けられたものであることが望ましい。
本発明によれば、複数段のテーパ面を介してチャックブロックを外側に押し出すようにしたので、各段の部分では径方向の寸法を小さいものとしながらもチャックブロック全体の押圧面積を増やすことで、過大な応力をかけることなく小径の鋼管に対しても十分なチャック力を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の鋼管チャック装置の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、第1実施形態の鋼管チャック装置を示した外観図であり、図2は、その断面図である。鋼管チャック装置1は、大きく分けてアッパロッド2と、その上部の油圧スイベル3及び油圧シリンダ4、そして下部のチャック機構5によって構成されている。
【0019】
アッパロッド2は、前記従来例で挙げたものと同様に六角ジョイント部11a,11bとホールド溝12a,12bが上下2段に形成され、六角ジョイント部11a,11bが回転駆動装置の出力軸である六角孔を有する中空軸に挿入され、その位置でホールド溝12a,12bがホールド機構によって掴まれ、位置決めされるようになっている。アッパロッド2は、図2に示すように軸心を貫通して穿設された軸孔13にプッシュロッド14が挿入され、その軸孔13が軸方向に荷重を受けたプッシュロッド14を座屈させないようにするガイドとなっている。
【0020】
上下に移動可能なプッシュロッド14は、油圧シリンダ4及びチャック機構5と切り離されており、下のチャック機構5を取り外したときに抜け落ちないようスナップリング15が軸孔13から突き出した上端付近に取り付けられている。アッパロッド2の上端部にはアダプタ16がネジ止めされ、そのアダプタ16に油圧シリンダ4が取り付けられている。油圧スイベル3にもアダプタ17が下からネジ止めされ、そのアダプタ17によって油圧シリンダ4の上に油圧スイベル3が取り付けられている。
【0021】
図3は、こうしたアッパロッド2上部の油圧スイベル3及び油圧シリンダ4を示した拡大図である。油圧シリンダ4は、作動油をシリンダ内に送るための貫通孔22やポート23が形成され、そのピストン21に固定して下方に突出したピストンロッド24がプッシュロッド14と同軸に配置されている。
【0022】
油圧スイベル3は、円筒形をしたハウジング25の回転が制限され、そのハウジング25内に挿入されたスピンドル26が上下のベアリング27,27によって回転自在に組み付けられ、取付カバー28,28によって上下から挟み込まれて位置決めされている。ハウジング25にはポート33,36が形成され、内周面に形成された環状のオイル溝31,32に連通し、スピンドル26には、そのオイル溝31,32に開口して油圧シリンダ4の貫通孔22やポート23へ連通する流路33,34,35が形成されている。
【0023】
オイル溝31に開口して形成された流路33は、スピンドル26の軸心を通った流路34に接続され、その流路34には油圧シリンダ4の貫通孔22と、スピンドル26に固定されたアキュムレータ36とが接続されている。また、流路33にはオペレートチェック弁37が配管され、そのオペレートチェック弁37には、把持解放時の作動油をオペレート圧として流す流路38がオイル溝32に開口して形成されている。一方、そのオイル溝32側には流路35が開口して形成されており、ポート39から油圧ホースを介して油圧シリンダ4のポート23に接続されている。
【0024】
図5は、こうした鋼管チャック装置1とベースマシンである杭打機側の流路を示した回路図である。杭打機本体の油圧ポンプP及びタンクTにコントロールバルブ105が接続されており、作動油がリリーフバルブ106で設定された圧力でチェック弁107を通り、そのコントロールバルブ105を図示する中立状態からe,dに切り換えられて鋼管チャック装置1側へと送り込まれるようになっている。作業機本体と鋼管チャック装置1とは油圧ホースが油圧スイベル3のポート29,30に接続され、それが把持側流路108と解放側流路109として構成されている。
【0025】
次に、図4はアッパロッド2下部のチャック機構5を示した拡大図である。アッパロッド2にはホールド溝12bの形成されたジョイント18が設けられ、それに取付ブロック41が差し込まれてチャック機構が一体に構成されている。その取付ブロック41にはケーシング42が下からネジ止めされ、チャックロッド43がこれらを上下に貫いている。チャックロッド43は、取付ブロック41内に装填された戻しバネ44によって上方に付勢される一方、下端にはストッパ47が取り付けられて一定以上の上昇が制限されている。
【0026】
ケーシング42には、鋼管杭200を内側から把持するためのチャックブロック45,45…が設けられている。ここで図9は、鋼管チャック装置1のチャック部分を示した図4のA−A断面図である。本実施形態では、4個のチャックブロック45,45…が図9に示すように放射状に配置され、それが図4に示すように2段に構成されいる。チャックブロック45は、ケーシング42に形成された窓42a内に摺動自在に装填され、そのケーシング42から突き出た曲面部分が鋼管杭200の内周面に沿って当接する押圧面45aになっている。
【0027】
チャックロッド43には、チャックブロック45,45…に対応して上下2段に合計8個のスライドブロック46,46…が固定されている。スライドブロック46,46…は、チャックブロック45,45…とテーパ面で摺接し、チャックロッド43に作用する下向きの押圧力を横向きの力に変え、チャックブロック45,45…をケーシング42の外側へ押し出すように構成されている。そして、テーパ面同士で向き合ったチャックブロック45とスライドブロック46とは、図9に示すようにキー溝45kとそれにはまりこんだキー46kが傾斜に沿って形成されている。
【0028】
続いて、本実施形態の鋼管チャック装置1を利用した鋼管杭の回転圧入について説明する。先ず施工に際して図10に示すように杭打機100のリーダ101が起立し、それに回転駆動装置110が昇降可能に装着される。回転駆動装置110には、その中空軸に鋼管チャック装置1のアッパロッド2が差し込まれており、そのアッパロッド2は、回転駆動装置110から上に突き出して下側のホールド溝12bがホールド機構115によって掴まれる。これは、回転駆動装置110を図示するようにリーダ101に沿って最上段にまで上昇させて鋼管杭200を装着する場合に、チャック機構5の位置をより高くすることで長尺の鋼管杭200を使用することができるからである。
【0029】
そうして鋼管杭200は、鋼管チャック装置1に把持されて図示するように吊設される。すなわち鋼管杭200は、その上端が図4に示しようにチャック機構5に下からはめ込まれ、その後油圧操作によって内側から把持される。鋼管杭200を把持する場合、杭打機100の操縦席102からの操作によって図5に示すコントロールバルブ105がe側に切り換えられ、油圧ポンプPから送られる作動油が把持側流路108を通って油圧スイベルへ3と流れる。
【0030】
油圧スイベル3では(図3,図5参照)、作動油がポート29からオイル溝31内に流れ込み、そこに開口した流路33から流路34を通って油圧シリンダ4へと送られ、ピストン21が上方から加圧される。一方、上方から加圧されたピストン21は下方へ移動し、ピストン21下側の作動流体は押し出されて解放側流路109からタンクT側へと流れる。
【0031】
こうした油圧シリンダ4の伸長作動によって、アッパロッド2内のプッシュロッド14を介してチャック機構5のチャックロッド43が押し下げられる。チャックロッド43は戻しバネ44の付勢力に抗して押し下げられ、これに取り付けられたスライドブロック46,46…がチャックブロック45,45…に押し付けられる。チャックブロック45,45…は、テーパ面によって水平方向に作用する力でケーシング42の窓42aを滑って外側へ押し出される。そのため押圧面45aが鋼管杭200の内周面に強く押し当てられ、鋼管杭200が、チャックブロック45,45…の四方に突っ張った外向きの力で内側から掴まれて把持される。
【0032】
次に回転駆動装置110の油圧モータが駆動すると、減速ギヤを介して伝達された回転が中空軸から出力されてアッパロッド2に回転が与えられ、鋼管チャック装置1によって把持された鋼管杭200が回転する。このとき、油圧ポンプPから作動油の供給を断ってもオペレートチェック弁37の二次側でアキュムレータ36が機能しているので、所定の圧力でピストン21が加圧され、チャック機構5による鋼管杭200の安定した把持が行われる。
【0033】
そして、回転の与えられた鋼管杭200は、図11に示すように回転駆動装置110がリーダ101に沿って下降することによって地盤へ回転圧入されるが、その際、チャックブロック45,45…の押圧面45a,45a…の摩擦力により、地盤から受ける回転反力にで鋼管杭200が滑って空回りすることなく中空軸の回転が確実に伝えられる。
【0034】
鋼管杭200は、図11に示すように回転駆動装置110がリーダ101の最下端に下降するまで打ち込まれる。その後、一旦ホールド機構115が外され、鋼管杭200及びそれを把持した鋼管チャック装置1はそのまま地面にあずけられる。そし、て図12に示すように回転駆動装置110がリーダ101を上昇し、上部の六角ジョイント部11aから回転を伝えるようにホールド機構115によって上部のホールド溝12aへの掴み替えが行われる。その後同じように回転駆動装置110が下降しながら中空軸から回転が出力され、鋼管杭200は、図13に示すように頭部が地面下に入るまで打ち込まれる。
【0035】
鋼管杭200のチャックを解除する場合には、杭打機100の操縦席102からの操作によって図5に示すコントロールバルブ105がd側に切り換えられ、油圧ポンプPから送られる作動油が解放側流路109を通って油圧スイベル3へと流れる。油圧スイベル3ではポート30からオイル溝32に作動油が流れ込み、そこから流路35及びポート39,23を通って油圧シリンダ4へと送られてピストン21が下から加圧される。このとき油圧スイベル3では、オペレートチェック弁37にオペレート圧がかかって弁が開き、ピストン21が上昇して押し出された作動油がタンクT側へと流れる。
【0036】
ピストン21が上方へ押し上げられると、ピストンロッド24から解放されたプッシュロッド14が戻しバネ44の付勢力によってチャックロッド43とともに押し上げられる。そのためチャックロッド43のスライドブロック46,46…が上昇し、チャックブロック45,45…とスライドブロック46,46…とは、そのキー46k及びキー溝45kがテーパ面の傾斜に沿って摺動し、チャックブロック45,45…が窓42aを摺動してケーシング42の内側に引き入れられる。そして、押圧面45a,45a…が鋼管杭200内周面から離れ、把持が解放される。
【0037】
以上、本実施形態の鋼管チャック装置1によれば、油圧制御によって鋼管杭200の把持を制御する油圧式としたため、前記特許文献1のように鋼管杭200に係止爪を溶接するといった加工を必要とせず、効率よく、かつ経済的に施工を行うことが可能となった。また、アッパロッド2を掴み替えすることによって、回転駆動装置110に対するチャック高さを簡単に調節することができるようになった。更に鋼管チャック装置1では、油圧シリンダ4の出力をアッパロッド2内のプッシュロッド14を介して伝達し、下のチャック機構5の把持動作を行わせるようにしたため、前記特許文献3に記載するもののように油圧ホースが地中に入って破損させるなどの不都合もない。
【0038】
また、本実施形態では上下2段に設けたチャックブロック45,45…によって鋼管杭200をチャックするようにしたので、鋼管杭200に押し当てる押圧面45a,45a…の総面積が広くなった。これは鋼管杭200を回転圧入させるための摩擦抵抗を大きくすることができ、硬い地盤でも滑って空回りすることなく鋼管杭200に回転を確実に伝達させることができる。従って、チャックブロック45の押圧力を小さくでき、過大な内側からの応力によって薄肉の鋼管杭などにおける変形が回避できる。そして、テーパ面を軸方向に増やしたことで、チャックブロック45及びスライドブロック46の径方向の寸法を小さくしながらも押圧面積を増やすことができ、チャック部分の径を小さいものとすることが可能となった。
【0039】
また、オペレートチェック弁37とアキュムレータ36とによって、スピンドル26内の作動油に圧力をかけた状態にするので、施工中に油圧スイベル3へ送られる作動油を加圧し続ける必要はなく、シール部分の摩耗を防ぎ油漏れを回避することができる。
更に、鋼管チャック装置1では、アッパロッド2に対して取付ブロック41を介してチャック機構5を取り付けるようにしたので、チャックブロック45の把持径が異なる数種のチャック機構5を用意することによって径の異なる鋼管杭200の施工に適応させることができる。
【0040】
次に、本発明に係る鋼管チャック装置の第2実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。図6は本実施形態の鋼管チャック装置を示した断面図であり、前記第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付している。この鋼管チャック装置51は、アッパロッド52の上に油圧スイベル53を設け、下に油圧シリンダ54とチャック機構55を配置した構成になっっている。アッパロッド52は、回転駆動装置110の中空軸に形成された六角孔に対して挿入する六角ジョイント部11a,11bと、回転駆動装置110に対して位置決めするホールド機構115に掴み込まれるホールド溝12a,12bとが上下2段形成されている。
【0041】
ここで、図7は、油圧スイベル53を拡大して示した断面図であり、図8は、油圧シリンダ54およびチャック機構55を拡大して示した断面図である。先ず油圧スイベル53は、前記第1実施形態のものと同様に構成されたものであるが、スピンドル61に形成された流路に変更が加えられている。本実施形態の鋼管チャック装置51では、アッパロッド52を通して下の油圧シリンダ54に作動油を送るための流路が形成されているからである。
【0042】
ハウジング25内を回転するスピンドル61には、把持動作時の作動油が送られるオイル溝31に流路63が開口して形成され、それに流路64が連結されている。そして、この流路63にはオペレートチェック弁37が、流路64にはアキュムレータ36が設けられている。解放時の作動油が送られるオイル溝32には流路65が開口して形成され、その流路65から作動油をオペレート圧として流す流路66が形成されている。スピンドル61は、アダプタ67が下からネジ止めされ、このアダプタ67を介してアッパロッド52の上端に固定されている。アッパロッド52には2本の流路71,72が穿設され、それぞれスピンドル61に形成された流路64,65とシールカップリング68,69を介して連結されている。
【0043】
アッパロッド52は、図8に示すように最下端にホールド溝12bの形成されたジョイント18が溶接されており、それにシリンダブロック75が差し込まれて一体になっている。シリンダブロック75にはピストン76が摺動可能に装填されており、その上室には流路77が、下室には流路78が連通して形成され、その流路77,78がアッパロッド52の流路71,72と連結されている。連結部分にはセルフシールカップリング81,82が設けられ、オイル漏れを生じさせることなく簡単にシリンダブロック75が着脱できるようになっている。
【0044】
シリンダブロック75には、下蓋83が固定されてピストン76が摺動する気密な室が構成され、ピストンロッドと一体化したチャックロッド85がその下蓋83を貫通している。下蓋83にはケーシング42が固定され、前記第1実施形態と同様にチャックロッド85に固定されたスライドブロック46,46…が、ケーシング42の窓42aに装填されたチャックブロック45,45…とテーパ面で摺接している。
【0045】
次に、本実施形態の鋼管チャック装置51の作用について説明する。本実施形態の場合も、図10に示すようにリーダ101に装着された回転駆動装置110の回転出力がチャック機構55に把持された鋼管杭200に伝えられ、回転駆動装置110が下降することによって回転圧入が行われる。そして、ホールド機構115の掴み替えによって地面下まで鋼管杭200が打ち込まれる。
【0046】
鋼管杭200の把持及び解放は、前記第1実施形態と同様に図5に示すコントロールバルブ105の切り換えによって制御される。そこで、油圧ポンプPから送られる作動油が油圧スイベル53のポート29からオイル溝31に流れると(図7参照)、流路63,64からアッパロッド52の流路71を通って下端の油圧シリンダ54へと送られてピストン76が上から加圧される。
【0047】
ピストン76が加圧されてチャックロッド85が下降すると、スライドブロック46,46…がチャックブロック45,45…をテーパ面で押し付け、水平方向に作用する力でそのチャックブロック45,45…がケーシング42の外側へと押し出される。ケーシング42の窓42aを滑って押し出されたチャックブロック45,45…は、その押圧面45aが鋼管杭200の内周面に強く押し当てられ、四方に突っ張った外向きの力で鋼管杭200が内側から掴まれて把持される。
【0048】
そこで、回転駆動装置110の駆動によって把持された鋼管杭200が回転する場合、油圧ポンプPから作動油の供給を断ってもオペレートチェック弁37の二次側でアキュムレータ36が機能しているので、所定の圧力でピストン76が加圧され、チャック機構5による鋼管杭200の安定した把持が確保される。
【0049】
一方、鋼管杭200の把持を解放する場合には、油圧ポンプPから送られる作動油が油圧スイベル53のポート30からオイル溝32に流れ込み、流路65からアッパロッド52の流路72を通って下端の油圧シリンダ54へと送られてピストン76が下から加圧される。このとき油圧スイベル53では、オペレートチェック弁37にはオペレート圧がかかって弁が開き、ピストン上室の作動油は下からの加圧によって押し出され、タンクT側へと流れる。
【0050】
ピストン76が上方へ押し上げられると、チャックロッド85のスライドブロック46,46…が上昇し、チャックブロック45,45…とスライドブロック46,46…とは、そのキー46k及びキー溝45kがテーパ面の傾斜に沿って摺動し、チャックブロック45,45…が窓42aを摺動してケーシング42の内側に引き入れられる。そのため押圧面45a,45a…が離れ、鋼管杭200は把持状態から解放される。
【0051】
従って、本実施形態の鋼管チャック装置51でも、前記第1実施形態と同様に油圧式としたため、前記特許文献1のように鋼管杭200に係止爪を溶接するといった加工を必要とせず、効率よく、かつ経済的に施工を行うことが可能となった。そして、アッパロッド2のホールド位置を変えることで簡単にチャック高さを調節することができ、アッパロッド2内を作動流体が流れるため、前記特許文献3に記載するもののように油圧ホースが地中に入って破損させるなどの不都合もない。
【0052】
また、本実施形態でも上下2段に設けたチャックブロック45,45…によって鋼管杭200をチャックするようにしたので、鋼管杭200に回転を確実に伝達させること、過大な内側からの応力によって薄肉の鋼管杭などにおける変形を回避すること、チャック部分の径を小さいものとすることが可能となった。
また、オペレートチェック弁37とアキュムレータ36とによって、スピンドル61やアッパロッド2内の作動油に圧力をかけた状態にするので、施工中に油圧スイベル3へ送られる作動油を加圧し続ける必要はなく、シール部分の摩耗を防ぎ油漏れを回避することができる。
【0053】
更に、アッパロッド52に対してシリンダブロック75を介してチャック機構55を取り付けるようにしたので、チャックブロックの把持径が異なる数種のチャック機構55を用意することによって径の異なる鋼管杭200の施工に適応させることができる。
【0054】
以上、鋼管チャック装置の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなくその趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば前記実施形態では、六角ジョイント部11a,11bとホールド溝12a,12bとが形成されたアッパロッド2を示したが、回転の伝達と軸方向の位置決めが可能であれば、回転駆動装置の構造によって種々変更は可能である。
また、前記実施形態では鋼管杭200を内側から把持したが、例えばチャックブロックを鋼管杭の外側で径方向に摺動可能にし、更にその外側に配置されたスライドブロックをチャックロッドによって上下動させるようにしてもよい。
【0055】
また、前記第1実施形態ではプッシュロッド14をチャックロッド43と分離させ、そのチャックロッド43を戻しバネ44で押し上げるようにしたが、プッシュロッド14にピストンロッド24とチャックロッド43とを一本に組み立てられるようにして戻しバネ44を省略するようにしてもよい。
また、前記第2実施形態ではアッパロッドに2本の流路を形成したが、チャック機構55による把持を解放する場合には戻しバネによってチャックロッド85を押し上げるようにすれば、流路を1本にすることができる。
【0056】
また、前記実施形態のスイベル3はハウジング25を非固定側としてスピンドル26,61を回転側としたが、逆にハウジングを回転側にしてもよい。
更に、チャックブロック45とスライドブロック46とのテーパ面の傾きを逆転させ、チャックロッド43が上昇した場合にチャックブロック45が外に押し出されて鋼管杭200をチャックするようにしてもよい。
【0057】
【発明の効果】
本発明は、アッパロッド上部に固定された油圧スイベルから送り込まれた作動油によって油圧シリンダが伸縮作動し、油圧シリンダの当該出力によってアッパロッド下部に固定されたチャック機構のチャックロッドを上下動させて鋼管杭の把持及び解放を行うようにしたので、回転駆動装置に対する鋼管杭の把持位置を調節することができる鋼管チャック装置を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の鋼管チャック装置を示した外観図である。
【図2】第1実施形態の鋼管チャック装置を示した断面図である。
【図3】第1実施形態の鋼管チャック装置における油圧スイベル及び油圧シリンダを示した拡大断面図である。
【図4】第1実施形態の鋼管チャック装置におけるチャック機構を示した拡大断面図である。
【図5】第1実施形態の鋼管チャック装置とベースマシンである杭打機側の流路を示した回路図である。
【図6】第2実施形態の鋼管チャック装置を示した断面図である。
【図7】第2実施形態の鋼管チャック装置における油圧スイベルを示した拡大断面図である。
【図8】第2実施形態の鋼管チャック装置における油圧シリンダ及びチャック機構を示した拡大断面図である。
【図9】鋼管チャック装置のチャック部分を示した図4のA−A断面図である。
【図10】杭打機による施工状態を示した全体図である。
【図11】回転駆動装置下降時の施工状態を示した図である。
【図12】アッパロッド掴み替え時の状態を示した図である。
【図13】鋼管杭を地面下にまで打ち込んだ状態を示した図である。
【図14】従来の鋼管チャック装置を含む鋼管杭施工機を示した図である。
【符号の説明】
1 鋼管チャック装置
2 アッパロッド
3 油圧スイベル
4 油圧シリンダ
5 チャック機構
14 プッシュロッド
21 ピストン
26 スピンドル
36 アキュムレータ
37 オペレートチェック弁
41 取付ブロック
42 ケーシング
43 チャックロッド
45 チャックブロック
46 スライドブロック
Claims (6)
- 貫通した回転駆動装置の中空軸から出力される回転を伝達するものであって、掴み替えによって軸方向の位置決めが可能なアッパロッドと、筒形状のハウジング内にスピンドルが嵌挿され、一方を非回転として他方の回転側へ作動油が流れるように流路が形成された油圧スイベルと、
前記油圧スイベルの回転側から送られる作動油によって伸縮作動する油圧シリンダと、
径方向に摺動可能な2以上のチャックブロックが、軸方向に移動するチャックロッドに固定されたスライドブロックとテーパ面によって摺接し、スライドブロックの軸方向の移動によって径方向に押されたチャックブロックが鋼管に押し付けられて把持するチャック機構とを有し、
アッパロッド上部に固定された油圧スイベルから送り込まれた作動油によって油圧シリンダが伸縮作動し、油圧シリンダの当該出力によってアッパロッド下部に固定されたチャック機構のチャックロッドを上下動させて鋼管杭の把持及び解放を行うようにしたものであることを特徴とする鋼管チャック装置。 - 請求項1に記載する鋼管チャック装置において、
前記アッパロッドに対して上部には下から順に前記油圧シリンダ及び油圧スイベルが、下部には前記チャック機構が取り付けられ、前記油圧シリンダのピストンロッドと前記チャック機構のチャックロッドとの間に、前記アッパロッドに穿設された軸孔にプッシュロッドが挿入されたものであって、
前記油圧シリンダの伸長作動によりプッシュロッドを介してチャックロッドが押し下げられ、チャック機構による鋼管の把持動作が行われ、前記油圧シリンダの収縮作動によりチャックロッドとプッシュロッドとが押し上げられてチャック機構による鋼管の解放動作が行われようにしたものであることを特徴とする鋼管チャック装置。 - 請求項1に記載する鋼管チャック装置において、
前記アッパロッドに対して上部には油圧スイベルが、下部には上から順に前記油圧シリンダ及び前記チャック機構が取り付けられ、前記アッパロッドに前記油圧スイベルと前記油圧シリンダとの間で作動油を送るための流路が軸方向に穿設されたものであって、
前記油圧シリンダの伸長作動によりピストンロッドと一体に形成されたチャックロッドが押し下げられてチャック機構による鋼管の把持動作が行われ、前記油圧シリンダの収縮作動により当該チャックロッドが押し上げられてチャック機構による鋼管の解放動作が行われようにしたものであることを特徴とする鋼管チャック装置。 - 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する鋼管チャック装置において、
前記油圧スイベルのスピンドルに形成された把持側流路にオペレートチェック弁が配管され、その二次側にアキュムレータが連結されたものであることを特徴とする鋼管チャック装置。 - 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載する鋼管チャック装置において、
前記アッパロッドは、下端にジョイント部を有し、前記チャック機構又は油圧シリンダは、アッパロッドに対して当該ジョイント部に着脱可能なブロックによって取り付けられるようにしたものであることを特徴とする鋼管チャック装置。 - 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載する鋼管チャック装置において、
前記チャックブロックとスライドブロックとの摺接するテーパ面が軸方向に複数段設けられたものであることを特徴とする鋼管チャック装置。
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