JP2004106007A - アルミ合金溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミを主成分とするアルミ合金から形成される母材5が有している。溶接面15にU形開先を形成するステップと、U形開先に溶加材4を付加してアーク溶接するステップとを備えている。U形開先が延びる溶接線方向24は、鉛直方向23の成分を有している。U形開先は、溶接面15に隣り合う2つの平坦部分11−1、11−2を有している。2つの平坦部分11−1、11−2は、互いに概ね対向する。本発明によるアルミ合金溶接方法は、V型開先を溶接するより溶着する金属量が小さいので、その分高速で溶接することができる。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミ合金溶接方法に関し、特に、純アルミまたはアルミ合金から形成される2枚の板の端面を突き合わせて溶接する突き合わせ溶接に利用されるアルミ合金溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
加圧された気体または液化ガスを貯蔵する球形タンクがLNG運搬船に適用されて使用されている。その球形タンクは、多数のアルミ合金製の板がアーク溶接により接合されて形成されている。球形タンクの経線に沿って伸びている接合部分を溶接する溶接装置が望まれている。
【0003】
図17は、公知の溶接装置を示している。その溶接装置100は、オシレーション装置101、ワイヤ送給器102および電源装置103を備えている。ワイヤ送給器102は、オシレーション装置101にワイヤ104を供給する。ワイヤ104は、母材105の被溶接部107に付加される溶加材である。オシレーション装置101は、トーチ106を備えている。トーチ106は、被溶接部107にワイヤ104とシールドガスとを供給し、ワイヤ104と被溶接部107との間に高圧の電圧を印加してアークを発生させて被溶接部107を溶接する。オシレーション装置101は、溶加材が被溶接部107に十分に充填されるように、トーチ106を運動させる。電源装置103は、アークを発生させるための高圧の電圧を生成する。
【0004】
図18は、被溶接部107を詳細に示している。被溶接部107は、母材105である2つの板105−1、105−2の端面が突き合わされている領域に形成される。被溶接部107には、母材105の溶接面115にV形開先110が形成されている。V形開先110は、日本工業規格JISにより定義される開先の形状であり、母材105の溶接面115と隣り合う2つの平面部分111−1、111−2と開先の奥に位置しているルート部分112とから形成されている。ルート部分112のルート半径は、概ね6mmである。平面部分111−1、111−2のなす角である開先角度θは、概ね15°である。
【0005】
トーチ106は、ワイヤ104を遥動させながら開先面とワイヤ104の先端との間にアーク114を発生させて、母材105とワイヤ104とを溶解させて溶融金属を生成する。特開昭51−37849号公報には、開先面に対するワイヤの先端の運動が開示されている。その運動によれば、集中的な加熱が防止され、アークが母材に直接当たるために完全な融合が得られ、アンダーカット、ビード外観不良等がなく、極めて良好な溶接を行うことができる。
【0006】
図19は、溶接中の被溶接部107の状態を示している。アルミ合金の表面には、一般的に、金属酸化物から形成される酸化膜が形成され、母材105の平面部分111−1、111−2とルート部分112とには、酸化膜123が形成されている。トーチ106は、シールドガス121を噴射しながら、ワイヤ104の先端と開先面との間にアーク114を生成する。アーク114は、母材105とワイヤ104とを溶解して溶融金属124を生成する。その溶融金属124は、凝固してV形開先110の内部にビード120を形成することにより2つの母材105−1、105−2を溶接する。アーク114は、さらに、酸化膜123をエッチングして、酸化膜123を由来とする金属酸化物が溶融金属124の中に混合することを防止するクリーニング作用を奏する。
【0007】
シールドガス121は、アーク114を大気から遮蔽し、溶融金属124を大気から遮蔽して溶融金属124の酸化を防止する。V形開先の内部の空気122は、ビード120により加熱されて密度が周囲の空気より小さくなるために上昇する、いわゆる、煙突効果が発生する。このような空気122の流れは、シールドガス121が溶融金属124を大気から遮蔽することを妨害し、このとき、ビード120に融合不良および気泡が凝固後に閉じ込められて生じるブローホールを形成することがある。
【0008】
このような溶接は、複数回が繰り返して実行される。その溶接部は、図20に示されているように、ビード120が複数の層を形成して、強固に板105−1、105−2を接合する。母材5は、さらに、溶接面115の反対側の溶接裏面116にV形開先を形成されて、そのV形開先をアーク溶接される。このような溶接方法によれば、板厚が42mmであり、V形開先の開先深さが25mmであり、開先角度θが17°であるときに、ビード120の積層回数が6回で板105−1、105−2を突き合わせ溶接することができる。このとき、複数のビード120の各々は、溶接速度が15〜24cm/min.でV形開先110に形成され、母材105の奥側のビード120は、手前側のビード120よりその溶接速度が遅い。このとき、継ぎ手溶接の所用時間は、1m当たりおよそ31.2分である。より速く溶接するアルミ合金溶接方法が望まれている。さらに、母材をより強固に接合することが望まれ、ビード120は欠陥が少ないことが望まれている。
【0009】
【特許文献1】
特開昭51−37849号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、より速く溶接するアルミ合金溶接方法を提供することにある。
本発明の他の課題は、母材をより強固に接合するアルミ合金溶接方法を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、溶接金属中に発生するブローホールを低減するアルミ合金溶接方法を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、開先面に残存する酸化膜を低減するアルミ合金溶接方法を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、溶接による変形を低減するアルミ合金溶接方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以下に、[発明の実施の形態]で使用される番号・符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明の実施の形態]の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0012】
本発明によるアルミ合金溶接方法は、アルミを主成分とするアルミ合金から形成される母材(5)が有している。溶接面(15)にU形開先を形成するステップと、U形開先の内部に溶加材(4)を付加してアーク溶接するステップとを備えている。U形開先が延びる溶接線方向(24)は、鉛直方向(23)の成分を有している。U形開先は、開先面(11−1、11−2、12)から形成され、開先面(11−1、11−2、12)は、平坦である平坦部分(11−1、11−2)を含んでいる。平坦部分(11−1、11−2)は、第1平坦部分(11−1)と第2平坦部分(11−2)とを含んでいる。第1平坦部分(11−1)と第2平坦部分(11−2)とは、それぞれ溶接面(15)に隣り合っている。第1平坦部分(11−1)と第2平坦部分(11−2)とは、概ね対向し、すなわち、第1平坦部分(11−1)と第2平坦部分(11−2)とのなす角(θ)は、6度以下を示している。
【0013】
本発明によるアルミ合金溶接方法によれば、溶接後のU型開先に形成される溝がV形開先を溶接したときより浅い、または、その溝が形成されない。このため、溝を空気が上昇する煙突効果が低減され、溶融金属のシールドの不良が低減され、母材(5)表面の酸化膜がより確実にエッチングされる。この結果、開先面に酸化膜が残存することが低減され、溶接金属中に発生するブローホールおよび融合不良欠陥が低減し、母材(5)がより強固に接合される。本発明によるアルミ合金溶接方法は、さらに、V型開先を溶接するより溶着する金属量が小さいので、その分高速で溶接することができる。
【0014】
アーク溶接するステップは、トーチ(1)により実行される。トーチ(1)は、溶加材(4)であるワイヤ(4)をU型開先に供給し、ワイヤ(4)と母材(5)表面との間にアークを発生させる。トーチ(1)は、オシレーション装置により運動し、ワイヤ(4)を移動させ、アークが発生する領域を移動させる。アーク溶接するステップでは、ワイヤ(4)が第1平坦部分(11−1)の近傍の第1位置(41−1)と第2平坦部分(11−2)の近傍の第2位置(41−2)とを中央位置(41−3)を経由して往復しながら溶接線方向(24)を鉛直下側から鉛直上側に向かって進行する。その中央位置(41−3)は、第1位置(41−1)および第2位置(41−2)より鉛直上側に位置することが好ましい。
【0015】
ワイヤ(4)は、中央位置(41−3)の付近での速さが第1位置(41−1)または第2位置(41−2)の付近での速さより遅いことが好ましい。ワイヤ(4)は、中央位置(41−3)で停止することがさらに好ましい。このような運動によれば、アークはU型開先の開先面(11−1、11−2、12)に沿いながら発生するため、U型開先の開先面(11−1、11−2、12)の金属酸化物を十分にクリーニングしながら溶解させることができる。更に、ワイヤ(4)の先端はU型開先の奥(12)まで到達して、アークはU型開先のルート部分を溶解することができ、溶け込みの不良を防止することができる。
【0016】
ワイヤ(4)が延長される方向と溶接面(15)の法線の方向とのなす角である後退角度(φ)は、溶接面(15)が鉛直下側を向いているときより、溶接面(15)が鉛直上側を向いているときに小さい。このような後退角度(φ)は、溶接による溶融金属が垂れ落ちることを防止する。
【0017】
本発明によるアルミ合金溶接方法は、溶接面(15)の反対側の溶接裏面(16)に他のU形開先を形成するステップと、他のU形開先に溶加材(4)を付加して溶接するステップとを更に備えている。すなわち、母材(5)の両面を溶接することが好ましい。
【0018】
他のU形開先の開先深さ(d′、d″)は、溶接面(15)をアーク溶接したときの母材(5)の変形量に基づく。このような溶接は、溶接による変形を低減することができる。
【0019】
アーク溶接するステップによりU形開先に付加された溶加材(4)の溶着金属の表面は、溶接面(15)より凹んでいる。このとき、母材(5)は、溶着金属の表面の上から再度溶接される。このような溶接は、V形開先を溶接することより速く溶接することができる点で好ましい。アーク溶接するステップによりU形開先に付加された溶加材(4)の溶着金属の表面は、溶接面(15)から盛り上がっていることがさらに速く溶接することができる点で好ましい。
【0020】
本発明による球形タンクは、本発明によるアルミ合金溶接方法を用いて製造されることが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
図面を参照して、本発明によるアルミ合金溶接方法を実行する溶接装置の実施の形態を説明する。その溶接装置は、図1に示されているように、トーチ1を備えている。トーチ1は、給電チップ2と溶接ノズル3とを備えている。給電チップ2は、ワイヤ4を一定の速度で母材5の被溶接部6に供給し、母材5とワイヤ4との間に高圧の電圧を印加する。溶接ノズル3は、シールドガスを被溶接部6に噴射して供給する。そのシールドガスとしては、アルゴンArまたはヘリウムHeが例示される。
【0022】
その溶接装置は、さらに、図示されていないオシレーション装置とワイヤ送給器とを備えている。そのオシレーション装置は、トーチ1を運動させ、ワイヤ4が延びる方向と母材5の表面との角度を変化させる。そのワイヤ送給器は、ワイヤ4をトーチ1に供給する。
【0023】
本発明によるアルミ合金溶接方法は、母材5にU形開先を形成するステップと、高電圧によりそのU形開先とワイヤ4との間にアークを発生させてアーク溶接するステップとを備えている。図2は、被溶接部6を詳細に示している。母材5は、板厚tが42mmである2つの板5−1、5−2から形成されている。板厚tは、40mm以上60mm以下であることが好ましい。被溶接部6は、2つの板5−1、5−2の端面が突き合わされた部分に形成されている。被溶接部6には、U形開先11が形成されている。板5−1、5−2は、溶接面15と溶接裏面16とを有している。U形開先11は、板5−1、5−2の溶接面15の側に形成されている。U形開先11は、開先面から形成されている。その開先面は、平面部分11−1、11−2とルート部分12とから形成されている。平面部分11−1、11−2は、それぞれ板5−1、5−2の端面に形成され、溶接面15に隣り合い、概ね平面を形成している。ルート部分12は、溶接面15から内部側のU形開先11の奥に配置され、円柱の側面を形成し、その円柱の底面の半径であるルート半径rは3mmである。ルート半径rは、2mm以上4mm以下であることが好ましい。平面部分11−1、11−2とルート部分12とは、滑らかにつながっている。
【0024】
溶接面15からルート部分12までの距離である開先深さdは、25mmである。開先深さdは、板5−1、5−2の板厚tにより決定し、たとえば、次式:d≒2/3×t
により表現される。U形開先11は、日本工業規格JISにより定義される開先の形状であり、本実施例では、平面部分11−1、11−2のなす角である開先角度θは、概ね6°である。開先角度θは、6°以下であることが好ましい。
【0025】
図3は、母材5とトーチ1との位置関係を示している。トーチ1がワイヤ4を延長するトーチ方向22と母材5の溶接面15の法線21となす角は、後退角度φを形成している。母材5の溶接面15と鉛直方向23となす角は、角度δを形成している。このとき、U形開先は、鉛直方向23に平行である直線を溶接面15に正射影された直線に平行である溶接線方向24に延長するように形成されている。
【0026】
後退角度φは、トーチ1を運動させるオシレーション装置により変更される。図4のグラフは、後退角度φの条件を示している。図4のグラフは、後退角度φと角度δとが取り得る値の範囲を示す領域31を示している。後退角度φは、そのオシレーション装置により領域31に属するように設定される。すなわち、角θは、角度δが0°であるときに、15°以上20°以下に設定される。角θは、角度δが65°であるときに、0°以上10°以下に設定される。角θは、角度δが−65°であるときに、25°以上35°以下に設定される。
【0027】
トーチ1は、オシレーション装置により、U形開先の内側でワイヤ4が左右に往復運動するように平行に運動しながら、溶接線方向に移動する。図5は、ワイヤ4の先端の運動を詳細に示している。ワイヤ4の先端は、U形開先のうちの水平方向に外側である右側位置41−1から反対側の左側位置41−2に軌跡42を通って移動する。左側位置41−2は、右側位置41−1から距離Wだけ離れている。距離Wは、3mm以上5mm以下であることが好ましい。その軌跡42は、鉛直上側に凸である円弧を描いている。すなわち、右側位置41−1と左側位置41−2との水平方向に中央の中央位置41−2は、右側位置41−1と左側位置41−2とより距離dだけ鉛直上方に位置している。距離dは、3mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0028】
ワイヤ4の先端は、さらに、右側位置41−1から左側位置41−2に移動した後に、再度、左側位置41−2から右側位置41−1に鉛直上側に凸である円弧を描いて移動する。このとき、左側位置41−2から戻ってきたときの右側位置41−1は、左側位置41−2から戻ってきたときの右側位置41−1より少し溶接線方向24に移動している。このとき、トーチ1より溶接線方向24の後方には、母材5とワイヤ4とが溶融して凝固した金属であるビード43が蓄積する。ワイヤ4の先端が溶接線方向24に移動する平均速度は、ビード43が溶接線方向24に蓄積する溶接速度と一致している。その溶接速度は、14cm/min.以上16cm/min.以下であることが好ましい。
【0029】
ワイヤ4の先端は、さらに、図6に示されているように、U形開先の深さ方向にも移動している。ワイヤ4は、右側位置41−1から中央位置41−3に到達したときに、ワイヤ4が送り出されて、先端がルート部分12にアークが十分に近づいてルート部分12の近傍にアークが発生するまで停止した後に、左側位置41−2に移動し始める。中央位置41−3で停止している時間は、0.2秒以上0.4秒以下であることが好ましい。ワイヤ4は、左側位置41−2から中央位置41−3に到達したときに、先端がルート部分12に十分に近づくまで停止した後に、右側位置41−1に移動し始める。このような往復運動は、1分当たり35回以上40回以下だけ実行されることが好ましい。このような運動によれば、U形開先のルート部分12も十分に溶解して、被溶接部6により強固な溶接部を形成することができる。
【0030】
なお、ワイヤ4は、先端と開先面との距離が概ね一定になるように移動することもできる。このとき、ワイヤ4は、右側位置41−1または左側位置41−2の付近で速く移動し、中央部分41−3の付近で先端がルート部分12にアークが十分に近づいてルート部分12の近傍にアークが発生するようにゆっくり移動する。
【0031】
図7は、被溶接部6の状態を示している。被溶接部6には、ワイヤ4と母材5とが溶融した溶融金属45と、溶融金属45が凝固したビード43が配置されている。トーチ1は、ワイヤ4を延長するトーチ方向が溶接面の法線から後退角度φだけ傾斜している。このとき、開先面のルート部分12の近傍に配置されているワイヤ4の先端は、後退角度φが0°であるときより、鉛直下側に配置される。このため、ビード43と溶融金属45との界面は、溶接面15の近傍よりルート部分12の近傍が鉛直下側に配置されている。この結果、溶融金属45がルート部分12の近傍に溜まり、溶融金属が溶接面15を垂れ落ちることを防止する。
【0032】
ビード43は、U型開先を溶接面15まで完全に埋めている。被溶接部6の鉛直下側に溝が形成されていないために、その溝を空気が上昇する煙突効果が低減される。このため、トーチ1から噴射されるシールドガスは、母材5とワイヤ4との間に発生するアークを大気から十分に遮蔽し、そのアークにより生成する溶着金属を大気から遮蔽して酸化を防止する。さらに、開先面に存在する酸化膜は、平面部分11−1、11−2に沿って移動するアークによってエッチングされ、クリーニング作用を十分に発揮することができる。この結果、ビード43には、気泡が凝固後に閉じ込められて生じるブローホールおよび融合不良欠陥が低減され、2つの母材がより強固に溶接されることができる。
【0033】
U型開先を溶接することは、V型開先を溶接することより必要である溶融金属の量が少ない。このため、溶接後のビード43−1は、図8に示されているように、1回の溶接によりU型開先を完全に埋めることができる。ビード43−1の表面51は、溶接面15より盛り上がらせることができる。このような溶接は、V形開先を複数回溶接するより、速く完了させることができる。
【0034】
本発明によるアルミ合金溶接方法は、さらに、溶接面15の反対側の溶接裏面16にU形開先を形成するステップと、そのU形開先をアーク溶接するステップとを備えている。溶接後の母材5は、溶接時に入熱し変形する。図9は、溶接後の母材の溶接変形量を示している。すなわち、溶接裏面16は、板5−1が有する第1溶接裏面16−1と板5−2が有する第2溶接裏面16−2とから形成されている。その溶接変形量gは、第1溶接裏面16−1と第2溶接裏面16−2とのなす角により定義される。
【0035】
図10は、溶接面15の反対側の溶接裏面16に形成されるU形開先を示している。そのU形開先の開先深さd′は、溶接変形量gに基づいて導出される。母材5−1、5−2は、開先深さd′が大きいほど入熱し、溶接後の変形量が大きくなる。すなわち、母材5−1、5−2には、溶接変形量gが大きい部位に開先深さd′が大きいU形開先を形成し、溶接変形量gが小さい部位に開先深さd′が小さいU形開先を形成する。
【0036】
溶接裏面16に形成されるU形開先は、溶接面15に形成されるU形開先と同様にして溶接される。このようなU形開先を溶接することにより、母材5−1、5−2は、溶接面15の溶接による変形を打ち消すように変形し、最終的な溶接による変形を低減することができる。さらに、溶接裏面16に形成されるU形開先の溶接後のビード43−2は、図11に示されているように、1回の溶接によりU型開先を完全に埋めることができる。ビード43−2の表面52は、溶接裏面16より盛り上がらせることができる。
【0037】
本発明によるアルミ合金溶接方法は、ビードの積層回数が2回で板5−1、5−2を突き合わせ溶接することができる。ビード43−1、43−2は、それぞれ溶接速度が14〜16cm/min.で形成され、このとき、このような突き合わせ溶接の所用時間は、1m当たりおよそ13.2分であり、V形開先を複数回溶接するより、速く完了させることができる。
【0038】
本発明によるアルミ合金溶接方法は、複数回の溶接によりU型開先を埋めることもできる。このときに実行される溶接は、既述の実施の形態における溶接と同様にして実行される。溶接面15に最初に形成されるビード43−1は、図12に示されているように、表面53が溶接面15より凹むように形成される。
【0039】
次いで、母材5−1、5−2は、図13に示されているように、部位毎に溶接変形量gに対応する開先深さd″のU形開先を形成される。溶接裏面16に形成されるU形開先は、溶接面15に形成されるU形開先と同様にして溶接され、ビード43−2が形成される。ビード43−2は、図14に示されているように、表面54が溶接裏面16より凹むように形成される。
【0040】
さらに、公知のV形開先の溶接と同様にして、図15に示されているように、ビード43−3を形成し、図16に示されているように、ビード43−4を形成する。このような溶接は、V形開先を溶接するときと同様にきれいに仕上げることができる。本発明によるアルミ合金溶接方法は、ビードの積層回数が4回で板5−1、5−2を突き合わせ溶接することができる。ビード43−1〜43−4は、それぞれ溶接速度が17〜21cm/min.で形成され、このとき、このような突き合わせ溶接の所用時間は、1m当たりおよそ21.4分であり、V形開先を複数回溶接するより速く完了させることができる。
【0041】
【発明の効果】
本発明によるアルミ合金溶接方法は、より速く溶接することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明によるアルミ合金溶接方法を実行する溶接装置の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、U形開先の形状を示す断面図である。
【図3】図3は、母材とトーチとの位置関係を示す側面図である。
【図4】図4は、後退角度φの条件を示すグラフである。
【図5】図5は、ワイヤの先端の運動を示す正面図である。
【図6】図6は、ワイヤの先端の運動を示す断面図である。
【図7】図7は、被溶接部の状態を示す断面図である。
【図8】図8は、溶接部の状態を示す断面図である。
【図9】図9は、溶接変形量を示す断面図である。
【図10】図10は、溶接裏面に形成されるU形開先の形状を示す断面図である。
【図11】図11は、溶接部の他の状態を示す断面図である。
【図12】図12は、溶接部のさらに他の状態を示す断面図である。
【図13】図13は、溶接裏面に形成されるU形開先の形状を示す断面図である。
【図14】図14は、溶接部のさらに他の状態を示す断面図である。
【図15】図15は、溶接部のさらに他の状態を示す断面図である。
【図16】図16は、溶接部のさらに他の状態を示す断面図である。
【図17】図17は、公知の溶接装置の実施の形態を示すブロック図である。
【図18】図18は、被溶接部の状態を示す断面図である。
【図19】図19は、被溶接部の状態を示す断面図である。
【図20】図20は、溶接部の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 :トーチ
2 :給電チップ
3 :溶接ノズル
4 :ワイヤ
5 :母材
6 :被溶接部
11−1、11−2:平面部分
12:ルート部分
15:溶接面
16:溶接裏面
21:法線
22:トーチ方向
23:鉛直方向
24:溶接線方向
Claims (10)
- アルミ合金から形成される母材が有する溶接面にU形開先を形成するステップと、
前記U形開先の内部に溶加材を付加してアーク溶接するステップとを具備し、
前記U形開先が延びる溶接線方向は、鉛直方向の成分を有し、
前記U形開先は、開先面から形成され、
前記開先面は、平坦である平坦部分を含み、
前記平坦部分は、第1平坦部分と第2平坦部分とを含み、
前記第1平坦部分と前記第2平坦部分とは、前記溶接面に隣り合い、概ね対向する
アルミ合金溶接方法。 - 請求項1において、
前記アーク溶接するステップでは、前記溶加材であるワイヤが前記第1平坦部分の近傍の第1位置と前記第2平坦部分の近傍の第2位置とを中央位置を経由して往復しながら前記溶接線方向を鉛直下側から鉛直上側に向かって進行し、
前記中央位置は、前記第1位置および前記第2位置より鉛直上側に位置する
ことを特徴とするアルミ合金溶接方法。 - 請求項2において、
前記ワイヤは、前記中央位置の付近での速さが前記第1位置または前記第2位置の付近での速さより遅い
ことを特徴とするアルミ合金溶接方法。 - 請求項3において、
前記ワイヤは、前記中央部分で停止する
ことを特徴とするアルミ合金溶接方法。 - 請求項4において、
前記ワイヤが延長される方向と前記溶接面の法線の方向とのなす角である後退角度は、前記溶接面が鉛直下側を向いているときより、前記溶接面が鉛直上側を向いているときに小さい
ことを特徴とするアルミ合金溶接方法。 - 請求項5において、
前記溶接面の反対側の溶接裏面に他のU形開先を形成するステップと、
前記他のU形開先に溶加材を付加して溶接するステップ
とを更に具備することを特徴とするアルミ合金溶接方法。 - 請求項6において、
前記他のU形開先の開先深さは、前記溶接面をアーク溶接したときの前記母材の変形量に基づく
ことを特徴とするアルミ合金溶接方法。 - 請求項7において、
前記アーク溶接するステップにより前記U形開先に付加された溶加材の溶着金属の表面は、前記溶接面より凹んでいる
ことを特徴とするアルミ合金溶接方法。 - 請求項7において、
前記アーク溶接するステップにより前記U形開先に付加された溶加材の溶着金属の表面は、前記溶接面から盛り上がっている
ことを特徴とするアルミ合金溶接方法。 - 請求項1〜請求項9のいずれかに記載されているアルミ合金溶接方法を用いて製造される
球形タンク。
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