JP2004101507A - 車両振動検査方法 - Google Patents

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堀 智裕
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Abstract

【課題】検査ラインにおいて車両の振動状態をすばやく検査することのできる車両振動検査方法を提供する。
【解決手段】被検査車両と同一車種による車輪の振動に対して振動検査点の振動が何倍かを示す係数Kと位相遅延時間φからなる振動伝達特性を読み込み(S2)、被検査車両の車輪を回転させ振動を測定し(S3、S4)、各車輪に起因した振動検査点における振動波Y1〜Y4の位相が合うように各車輪の振動波X1〜X4の位相ずらし量を求め(S6〜S8)、位相ずらし後の振動波X1〜X4をK倍して位相の合った振動波Y1〜Y4を求め(S9)、振動波Y1〜Y4を合成し(S10)、合成した振動波の値から振動判定(S11〜S13)する。
【選択図】      図7

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両振動検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の振動を検査するためには、車両における振動を測定する必要がある。従来の車両振動測定方法としては、たとえば、車両の4輪を独立に駆動して、全車輪の振動を振動計により検出し、検出した振動を高速フーリエ変換により処理し、得られた振動周波の位相が最大となるように4輪の回転数を調整することで、4輪の振動に起因するステアリングの振動が最大となるとようにして、車両の振動を測定、検査する車両振動測定方法がある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特許第3052655号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の車両振動測定方法では、4輪を独立に回転制御する必要があることから、実際の工場で1台1台の車両を検査する際には、その都度各車輪の回転を制御しつつ、振動を測定しなければならなくなり、検査時間が長くなってしまうといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、検査ラインにおいて車両の振動状態をすばやく検査することのできる車両振動検査方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、被検査車両と同一車種の車両における、車輪の振動振幅に対して車両の振動検査点における振動振幅が何倍かを示す係数と、前記車輪の振動位相に対する前記振動検査点における振動位相の遅延時間とからなる振動伝達特性を取得する段階と、前記被検査車両の複数の車輪を回転させて各車輪の振動を車輪ごとに測定する段階と、前記各車輪の振動に起因した前記振動検査点における振動の位相が合うように、前記測定した各車輪の振動の位相をずらす段階と、前記位相をずらした各車輪の振動を前記振動伝達特性を用いて各車輪に起因した車輪ごとの前記振動検査点の振動に変換する段階と、前記変換された車輪ごとの前記振動検査点の振動を合成する段階と、を有することを特徴とする車両振動検査方法により達成される。
【0007】
また上記目的は、被検査車両と同一車種の車両における、車輪の振動振幅に対して車両の振動検査点における振動振幅が何倍かを示す係数からなる振動伝達特性を取得する段階と、前記被検査車両の複数の車輪を回転させて各車輪の振動を車輪ごとに測定する段階と、前記測定した車輪の振動から前記振動伝達特性により各車輪に起因した車輪ごとの前記振動検査点における振動の最大値を求める段階と、前記車輪ごとの前記振動検査点における振動の最大値を足し合わせる段階と、前記振動検査点における振動の最大値を足し合わせた値とあらかじめ決められた振幅基準値とを比較して前記被検査車両の合否判定を行う段階と、を有することを特徴とする車両振動検査方法により達成される。
【0008】
また上記目的は、被検査車両と同一車種の車両における、車輪の振動振幅に対して車両の振動検査点における振動振幅が何倍かを示す係数と、前記車輪の振動位相に対する前記振動検査点における振動位相の遅延時間とからなる振動伝達特性を取得する段階と、前記被検査車両の複数の車輪を回転させて各車輪の振動を車輪ごとに測定すると共に、各車輪の回転に対応した信号を取得する段階と、前記各車輪の回転に対応した信号により、前記取得した車輪ごとの振動データを区切り、区切った区間内の振動データのデータ数を統一する段階と、前記データ数が統一された振動データを高速フーリエ変換する段階と、前記高速フーリエ変換により得られた前記各区間における前記車輪の回転数に対する振動数の比ごとに、前記各車輪の振動に起因した前記振動検査点における振動の位相が合うように、前記振動伝達特性を用いて前記測定した各車輪の振動の位相をずらす段階と、前記位相をずらした各車輪の振動を前記振動伝達特性を用いて各車輪に起因した車輪ごとの前記振動検査点の振動に変換する段階と、前記変換された車輪ごとの前記振動検査点の振動を合成する段階と、を有することを特徴とする車両振動検査方法により達成される。
【0009】
【発明の効果】
本発明によれば、車両の振動伝達特性を用いて車輪の振動の測定値から振動検査点における振動現象を求めて車両の振動を検査することとしたので、振動の位相を合わせるために車輪の回転数そのものを調整する必要がない。したがって、車両の振動検査を短時間で行うことが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明による車両振動検査方法を実施するために必要な装置構成を説明するための図面であり、図1Aは測定系を示すブロック図であり、図1Bは定置走行試験機の概略を示す図面である。
【0012】
車両振動検査方法を実施するために必要な装置は、被検査車両1に対して定置走行試験を行うための定置走行試験機2と、車両1の各車輪11〜14の振動を測定する振動センサ31〜34と、振動センサ31〜34が測定した振動から後述する手順により車両振動検査を実行するコンピュータ40よりなる。
【0013】
ここで、定置走行試験機2は、4輪を回転するためのローラ21〜24を有する。この定置走行試験機2は、車両検査ラインにおいて用いられているものであればどのようなものでもよく特に限定されない。したがって、4輪を独立で回転制御する機能はなくてよい。定置走行試験機2としては、たとえば、前輪用と後輪用のローラがベルトによって接続されていて、被検査車両の駆動輪の回転によって駆動輪側のローラが回転し、非駆動輪側のローラが従動して被検査車両の非駆動輪を回転させるタイプのものであってもよい。
【0014】
振動センサ31〜34は、たとえばマグネットにより車両に簡単に取り付けが可能なもので、配線が不要なテレメータ式(遠隔距離測定式)の振動センサが好ましい。振動センサ31〜34は、各車輪の近傍のできるだけ近い位置、たとえば車軸やサスペンションアームなどに取り付ける。テレメータ式の振動センサとしては、たとえば、測定位置に取り付けたセンサが測定した振動値を無線により本体に送信することのできるような振動センサである。
【0015】
また、レーザードップラー振動計などの非接触式のセンサであれば、車両への取り付け取り外しも不要となるのでより好ましい。なお、振動センサとしては、これらに限定されず、取り付け位置における振動を直接測定する機械式のものであってもよい。
【0016】
なお、図1Aにおいては、振動センサ31〜34からコンピュータ40まで線表示により接続しているが、この線表示はあくまでも信号経路を示すものであって、たとえばテレメータ式の振動センサを用いた場合には、実際に導線などによって振動センサ31〜34からコンピュータ40まで配線されていることを示しているものではない。
【0017】
コンピュータ40は、たとえばパソコンやワークステーションなどである。このコンピュータ40は、後述する手順に従ったプログラムが実行されることで、車両の振動検査における振動値の算出および検査判定を行う。なお、コンピュータ40には、ディスプレイやプリンタ(いずれも不図示)が接続されており、測定値や検査結果の表示や出力が行われる。
【0018】
ここでまず、本発明における車両の振動検査原理について説明する。
【0019】
まず、実際の車両振動を検査する前段階として、被検査車両と同じ車種における加振点から振動検査点までの振動伝達特性を求めておく必要がある。
【0020】
ここで加振点は、車両に振動を与えるところであり、車両の振動検査においては走行中における車輪が加振点となる。一方、振動検査点は車両の振動として実際に測定したい点で、ここではステアリングとする。
【0021】
図2は、車両の振動伝達特性を説明するための図面である。
【0022】
加振点(車輪)で発生した振動は、波として車体を伝達して振動検査点(ステアリング)に到達する。図2に示すように、各車輪の振動波をX1〜X4、ステアリングの振動波をY、各車輪からステアリングを振動させる振動伝達系をH1〜H4とする。
【0023】
図3は、車両の振動伝達特性をモデル化した図面である。
【0024】
図示するように、加振点(車輪)から振動検査点(ステアリング)までの振動伝達特性は、各車輪の振動波X1〜X4がそれぞれの振動伝達系H1〜H4を通してステアリングに伝達されて振動波Y1〜Y4となり、この振動波Y1〜Y4が足し合わさって合成振動波Yとなっているものである。
【0025】
図4は、伝達系Hの振動伝達特性を説明するための図面であり、図4Aはモデル図、図4Bは振動波を示す図面である。
【0026】
伝達系Hの振動伝達特性は、車輪の振動波を入力(In)、ステアリングの振動波Yを出力(Out)としたときに、Inの振動振幅に対してOutの振動振幅の大きさが何倍になるかを示す係数Kと、Inの振動位相に対するOutの振動位相の遅延時間φによって表される。
【0027】
したがって、この伝達系Hを表すKおよびφの値が求まれば、振動波XをK倍して、位相をφ遅延することで、振動波Yを求めることが可能となる。
【0028】
このような伝達系Hにおける振動伝達特性は、主に車両剛性、車両形状、振動伝達距離など、加振点から振動検査点までの物理特性に依存し、振動波そのものの周期や大きさには依存しない。したがって、車種が同じであれば被検査車両の固体が異なるものであっても同じ特性を示す。
【0029】
伝達系H1〜H4の振動伝達特性をそれぞれの車輪ごとに個別に求めるには、たとえば、各車輪を別々に回転させて、各車輪の振動とステアリングの振動から求める。このための振動測定装置の構成は、図1に示した装置構成に、さらにステアリングの振動を測定する振動センサを設ける必要がある。また、車輪の振動を検出するために、振動センサを車輪のごく近傍、たとえば車軸やサスペンションアームなどに取り付けておく。
【0030】
振動伝達特性は、まず、一つの車輪を回転させてそのときの車輪の振動とステアリングの振動を測定する。測定によって、一つの車輪の振動の振動波X1と、その車輪の振動がステアリングに伝達した振動の振動波Y1が得られる。得られた振動波X1と振動波Y1の関係から伝達系H1の振動伝達特性K1とφ1が得られる。同様にして他の車輪についても振動伝達特性を求めることで、各車輪からステアリングまでの伝達系H1〜H4の振動伝達特性K1〜K4とφ1〜φ4が得られる。
【0031】
なお、先に説明したように、ここでは伝達系H1〜H4における振動伝達特性を求めるだけであるから、実際の車輪の回転に伴う振動である必要はない。したがって、加振点となる車輪近傍、たとえば車軸やサスペンションアームなどに振動を加え(たとえば打撃振動でもよい)、その振動を車両走行中の加振点となる車輪近傍において測定すると共に振動検査点であるステアリングにおいても測定することで、加振点での振動に対して振動検査点での振動値がどの程度の大きさとなっているかにより係数Kを求め、加振点での振動検出時から振動検査点での振動検出時までの時間の遅れを位相遅延時間φとして求めてもよい。この場合、車両走行試験装置を用いる必要はない。
【0032】
そして、このようにして求めた車種ごとの振動伝達特性は、たとえば車種ごとにデータベースに記憶しておき、被検査車両の振動検査の際に検査ラインから呼び出せるようにしておくとよい。なお、データベースとしては、たとえばコンピュータ40に設けられているハードディスク内に、車種ごとの振動伝達特性を分類して記憶することでデータベースとしたり、また、他のコンピュータ(サーバコンピュータ)内に車種ごとの振動伝達特性を分類して記憶することでデータベースとし、このサーバコンピュータとネットワークによってコンピュータ40を接続して、サーバコンピュータから車種ごとの振動伝達特性をコンピュータ40が取得できるようにしてもよい。
【0033】
図5は、振動波の合成を説明するための図面であり、図5Aはモデル図、図5Bは振動波を示す図面である。ここでは、説明を簡単にするために2つの伝達系による振動を例にして説明する。
【0034】
一つの車輪の振動波をX1、この車輪の振動波X1が伝達系H1(K1およびφ1)によって伝達されたステアリングの振動波をY1とする。同様に、他の一つの車輪の振動波をX2、この車輪の振動波X2が伝達系H2(K2およびφ2)によって伝達されたステアリングの振動波をY2とする。そして、Y1とY2が足し合わさった振動波をYとする(すなわち、Y=Y1+Y2)。
【0035】
車輪による振動波X1、X2のピークの初期位相θ1、θ2は、図5Bに示すように、ランダムである。したがって、そこからの振動波Y1とY2のピークの位相もランダムとなる。
【0036】
車両の振動現象として最も大きな振動が発生するのは、振動波Y1およびY2の振動波のピークが一致したときである。しかし、図5Bに示したように、初期位相θ1およびθ2がランダムである振動波X1、X2からの振動波Y1とY2をそのまま足し合わせても、最大振動とはならない。
【0037】
したがって、2つの車輪の振動波を足し合わせる際には、車輪の振動波X1、X2から得られるステアリングの振動波Y1とY2のピークの位相が同位相となるように、車輪の振動波X1、X2の位相合わせを行って、ステアリングの振動現象における最大値、すなわち最大振動値を求める。
【0038】
図6は、振動波の位相ずらしを説明するための図面であり、図6Aはモデル図であり、図6Bは振動波を示す図面である。
【0039】
位相ずらしは、2つの振動波Y1およびY2のピークが同位相となるように、車輪の振動波X1およびX2の初期位相θ1およびθ2を各々ずらし量Δθ1およびΔθ2だけずらすものである。
【0040】
ずらし量θ1およびΔθ2は、下記式により得られる。
【0041】
θ1+Δθ1+φ1=θ2+Δθ2+φ2=C(一定)
ここで、C=0とすると、
Δθ1=−(θ1+φ1)
Δθ2=−(θ2+φ2)
これにより、元の振動波X1はX1’に、元の振動波X2はX2’に位相が移動する。そして、振動波X1’とX2’からの振動波Y1とY2を足し合わせることで最大振幅を有する振動波Yが得られる。
【0042】
次に、本第1の実施の形態における車両振動検査の処理手順を説明する。
【0043】
図7は、本第1の実施の形態における車両振動検査の処理手順を示すフローチャートである。
【0044】
まず、検査の準備として、被検査車両1を定置走行試験機2に載置し、各車輪近傍に振動センサ31〜34を取り付ける(S1)。振動センサの取り付け位置は、車軸やサスペンションアームなどである。
【0045】
そして、コンピュータ40は、事前に被検査車両と同じ車種において取得された伝達系H1〜H4の振動伝達特性(係数K1〜K4、位相遅延時間φ1〜φ4)を取得する(S2)。ここで読み込む車両の振動伝達特性は、前述したように、たとえばデータベース化された車種ごとの振動伝達特性の中から被検査車両と同じ車種のものを取得する。すなわち、このステップS2の処理が振動伝達特性を取得する段階に相当する。
【0046】
続いて、定置走行試験機2を動作させて各車輪を回転させる(S3)。このとき、各車輪は同期を取る必要はない。
【0047】
続いて、コンピュータ40は、車輪回転中における振動センサ31〜34の測定値を取得する(S4)。すなわち、ステップS3およびS4の処理が各車輪の振動を車輪ごとに測定する段階に相当する。
【0048】
続いて、コンピュータ40は取得した振動値から時間に対する各車輪の振動波X1〜X4を得る(S5)。
【0049】
続いて、コンピュータ40は、各車輪の振動波X1〜X4のそれぞれのピークの位相を求める(S6)。求めたピークの位相を初期位相θ1〜θ4とする。
【0050】
続いて、コンピュータ40は、先に説明したように振動波Y1〜Y4のピークの位相が同位相となるようにするための位相ずらし量Δθ1〜Δθ4を求める(S7)。
【0051】
続いて、コンピュータ40は、求めた位相ずらし量Δθ1〜Δθ4により振動波X1〜X4の位相をずらした振動波X1’〜X4’を求める(S8)。すなわち、ステップS5〜S8の処理が各車輪の振動に起因した前記振動検査点における振動の位相が合うように、前記測定した各車輪の振動の位相をずらす段階に相当する。
【0052】
続いて、コンピュータ40は、振動伝達特性(K1〜K4)を用いて、振動波X1’〜X4’から振動波Y1〜Y4求める(S9)。この時点で、振動波X1’〜X4’は、先のステップS8の処理により振動波Y1〜Y4のピーク位相が合うようにした振動であるので、振動波X1’〜X4’をそれぞれK1〜K4倍することで、位相の合った振動波Y1〜Y4を得ることができる。このステップS9の処理は、位相をずらした各車輪の振動を前記振動伝達特性を用いて各車輪に起因した車輪ごとの前記振動検査点の振動に変換する段階に相当する。
【0053】
これにより振動波Y1〜Y4のピークが同位相となるので、コンピュータ40はこれら同位相となった振動波Y1〜Y4を合成して合成振動波Yを求める(S10)。これにより、得られた振動波Yはステアリングでの最大振幅を持った振動波となる。すなわち、このステップS10の処理が変換された車輪ごとの前記振動検査点の振動を合成する段階に相当する。
【0054】
これにより求められた振動値は、実際にステアリングに振動センサを取り付けて、しかも4輪を独立に制御して位相が合うように調整して最大振動値を計測した場合と同じになる。
【0055】
そして、コンピュータ40は、求めた振動値の最大値とあらかじめ決められた検査基準値とを比較して(S11)、基準値以下であれば検査合格(S12)とし、一方、振動値が基準値を超えている場合には検査不合格(S13)として、処理を終了する。すなわち、このステップS11〜13の処理が合成された振動の振動値とあらかじめ決められた基準値とを比較して車両の合否判定を行う段階に相当する。
【0056】
以上説明した本第1の実施の形態のよれば以下の効果を奏する。
【0057】
事前に求めた車両の振動伝達特性に基づいて、コンピュータが実際に測定した各車輪の振動の位相をずらして、ステアリングにおける各車輪に起因した振動が同位相となるように調整することでステアリングおける振動として最大振幅の振動を求めることとしたので、個々の車輪の振動を測定する際には、振動位相を合わせるために個々の車輪の回転を制御する必要がない。したがって、車両の振動検査時間を短くすることができる。
【0058】
また、各車輪を個別に回転制御する必要がないため、各車輪の回転数を独立に制御することのできない定置走行試験機を用いても、簡単にステアリングの振動を求めることができる。
【0059】
また、得られたステアリングにおける最大振幅を有する振動は、ステアリングの振動値として振動センサにより測定した場合と実質的に同等の振動値を得ることができる。
【0060】
さらに、遠隔測定式の振動センサを用いることで、車両とコンピュータの間の配線が不要となり、振動測定を容易に行うことができる。
【0061】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、本発明により簡易に車両の振動検査を行うための振動検査方法である。
【0062】
本第2の実施の形態は、位相ずらし処理を行うことなく、元の振動波X1およびX2から車両の振動伝達特性によってそれぞれ得られるステアリングにおける個々の振動波Y1およびY2を求め、求めた振動波Y1およびY2のそれぞれの最大振幅値を足し合わせることで合成振動波Yの最大振幅値を得て、この最大振幅値から振動検査の合否を判定するものである。
【0063】
なお、振動検査のための装置構成については前述した第1の実施の形態と同じであるので、説明を省略する。
【0064】
図8は、本第2の実施の形態における車両振動検査の処理手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートにおいては、前述した第1の実施の形態と同じ処理を行うステップについては同じステップ番号(S番号)を付し、それらのステップにおける処理の説明を一部省略した。
【0065】
まず、第1の実施の形態と同様に、被検査車両1を定置走行試験機2に載置し、各車輪近傍に振動センサ31〜34を取り付ける(S1)。
【0066】
そして、コンピュータ40は、事前に被検査車両と同じ車種において取得された伝達系H1〜H4の振動伝達特性(係数K1〜K4)を取得する(S2)。なお、このとき本第2の実施の形態では、取得する振動伝達特性は、係数K1〜K4のみでよい。
【0067】
続いて、定置走行試験機2を動作させて各車輪を回転させる(S3)。そして、コンピュータ40は、車輪回転中における振動センサ31〜34の測定値を取得して(S4)、時間に対する振動波X1〜X4を得る(S5)。
【0068】
続いて、コンピュータ40は、各車輪の振動波X1〜X4のそれぞれのピークX1p〜X4p(最大振幅値)を求める(S26)。
【0069】
そして、コンピュータ40は、求めたピークX1p〜X4pから振動伝達特性のうち係数K1〜K4により個々の振動波X1p〜X4pに対応するステアリングの振動波Y1〜Y4のピークY1p〜Y4pを求める(S27)。すなわち、ステップS26とステップS27の処理が、測定した車輪の振動から前記振動伝達特性により各車輪に起因した車輪ごとの前記振動検査点における振動の最大値を求める段階に相当する。
【0070】
続いて、コンピュータ40は、振動波Y1〜Y4のピークY1p〜Y4pを足し合わせて、ステアリングでの振動波の最大振幅値を求める(S28)。すなわち、このステップS28の処理が、車輪ごとの前記振動検査点における振動の最大値を足し合わせる段階に相当する。
【0071】
その後、この得られた最大振幅値と、あらかじめ決められた振動波の最大振幅の振幅基準値とを比較して(S29)、振幅基準値以下であれば検査合格(S30)とし、最大振幅値が基準値を超えている場合には検査不合格(S31)とし、処理を終了する。すなわち、このステップS29〜S31の処理が被検査車両の合否判定を行う段階に相当する。
【0072】
以上説明した本第2の実施の形態のよれば以下の効果を奏する。
【0073】
事前に求めた車両の振動伝達特性に基づいて、コンピュータが実際に測定した各車輪の振動の最大振幅値からステアリングの振動の最大振幅値を求めて、その値により合否判定を行うこととしたので、振動位相を合わせるために個々の車輪の回転を制御する必要がない。したがって、車両の振動検査時間を短くすることができる。
【0074】
また、各車輪を個別に回転制御する必要がないため、各車輪の回転数を独立に制御することのできない定置走行試験機を用いても、簡単にステアリングの振動を求めることができる。
【0075】
また、本第2の実施の形態においては、上述したように振動伝達特性としては係数Kしか利用していない。したがって、本第2の実施の形態のために事前に振動伝達特性を求める際には、係数Kのみを求めるだけでよく、事前に車両の振動伝達特性を求める処理も簡単することができる。
【0076】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態は、測定した車輪の振動を高速フーリエ変換(FFT)処理により周波数解析を行うことで、様々な振動周波数成分の中から、特に注目したい任意の周波数を用いて振動検査を行うようにしたものである。
【0077】
そもそも車輪の振動に起因した車両振動は、車輪の振動周波数に対して共振現象を起こす。このため、車両の振動は、車輪の振動周波数に対して自然数倍となった複数の振動が起きている。すなわち、車輪で発生した振動の振動周波数を1次振動とすると、車両では1からn(nは自然数)倍の振動周波数の振動が発生する。
【0078】
そこで、本第3の実施の形態は、このような共振による振動現象を周波数ごとに解析して検査しようとするものである。
【0079】
なお、振動検査のための装置構成としては、コンピュータ40において周知のFFT処理プログラムが実行されることにより、振動センサ31〜34が測定した振動のFFT処理による周波数解析を行うこと以外は、前述した第1の実施の形態と同様である。
【0080】
また、本第3の実施の形態においても本発明の振動検査における基本原理は同じである。すなわち、事前に求めた車両の振動伝達特性に基づいて、コンピュータ40が実際に測定した各車輪の振動波の位相が同位相となるように調整し、ステアリングおける振動波の最大振幅を求めている。この処理の中でFFT処理は、振動波の位相と振幅を周波数ごとに求めるために用いられる。
【0081】
図9は、FFT処理による周波数解析結果を示す図面である。図において横軸(x軸)が実数、縦軸(y軸)が虚数である。
【0082】
車輪の振動を周波数解析することで、図9に示すように、実数軸と虚数軸によって表された座標系において振動周波数ごとにベクトルが得られる。得られたベクトルは、その長さがその振動周波数の最大振幅値であり、実数軸(横軸)に対する傾きが位相θとなる。
【0083】
したがって、振幅値および位相は、ベクトルの始点を原点(0,0)としてベクトルの終点の座標値(x,y)から求めることができる。たとえば振動周波数f1の最大振幅値f1pは、f1p=√(x12+y12)によって得られる。
また、振動周波数f1の位相θ1は、θ1=tan−1(y1/x1)により得られる。その他の振動周波数についても同様である。
【0084】
図10は、本第3の実施の形態における車両振動検査の処理手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートにおいては、前述した第1の実施の形態と同じ処理を行うステップについては同じステップ番号(S番号)を付し、それらのステップにおける処理の説明を一部省略した。
【0085】
まず、第1の実施の形態と同様に、被検査車両1を定置走行試験機2に載置し、各車輪近傍に振動センサ31〜34を取り付ける(S1)。
【0086】
そして、コンピュータ40は、事前に被検査車両と同じ車種において取得された伝達系H1〜H4の振動伝達特性(係数K1〜K4、位相遅延時間φ1〜φ4)を取得する(S2)。
【0087】
なお、本第3の実施の形態では、任意の周波数についてのみその振動を検査するものであるため、ここで取得する振動伝達係数についても、検査を実行する任意の周波数に付いての振動伝達係数を使用することになる。したがって、事前に振動伝達係数を測定する際にも、FFT処理を行うことで、任意の周波数における加振点(車輪)から振動検査点(ステアリング)までの振動伝達係数として係数Kと位相遅延時間φを求める。
【0088】
具体的には、一つの車輪に振動と共にステアリングの振動を振動センサにより測定し、両方の振動をそれぞれFFT処理によって周波数解析し、検査に使用する任意の周波数において、車輪のベクトルの長さ(すなわち振動振幅)と、これに対応するステアリングのベクトルの長さ(すなわち振動振幅)から、係数Kを求め、車輪のベクトルの実数軸に対する傾きと、これに対応するステアリングのベクトルの実数軸に対する傾きから、位相遅延時間φを求める。
【0089】
続いて、定置走行試験機2を動作させて各車輪を回転させる(S3)。そして、コンピュータ40は、車輪回転中における振動センサ31〜34の測定値を取得しする(S4)。
【0090】
続いて、コンピュータ40は、時間に対する振動波X1〜X4をFFT処理して、振動波X1〜X4における特定の周波数の振幅と位相を求める(S45)。
すなわち、ステップ45の処理が、測定された各車輪の振動をFFT処理することによって任意の振動周波数についての振動振幅と位相を求める段階に相当する。
【0091】
ここで、任意の周波数は、たとえば、人が感じやすい振動周波数や、ベースとなる車輪の振動周波数(1次振動周波数)および2次振動周波数、3次振動周波数など、あるいは、周波数領域を数Hzごとに設定してFFT処理を行い、最も大きな振幅値を有する周波数(上記ベクトルの長さが最も大きな周波数)により振動検査を行うこととしてもよい。なお、任意の周波数は、一つに限らず複数の周波数であってもよい。
【0092】
続いて、コンピュータ40は、各車輪の振動波X1〜X4の任意の周波数のピークを同位相にするための位相ずらし量Δθ1〜Δθ4を求める(S46)。
【0093】
そして、コンピュータ40は、求めた位相ずらし量Δθ1〜Δθ4により、任意の周波数ごとに、各車輪の振動波X1〜X4の位相ずらしを行う(S47)。
【0094】
続いて、コンピュータ40は、位相ずらし後の振動波X1〜X4から振動伝達特性(K1〜K4およびφ1〜φ4)により振動波Y1〜Y4の任意の周波数における振幅と位相を求める(S48)。
【0095】
続いて、コンピュータ40は、振動波Y1〜Y4の任意の周波数における振幅と位相を逆FFT処理して、任意の周波数における振動波Y1〜Y4を求める(S49)。
【0096】
そして、得られた任意の周波数における振動波Y1〜Y4を合成してステアリングにおける最大振動値を求める(S50)。
【0097】
その後、得られた最大振幅値と、あらかじめ決められた振動波の最大振幅の振幅基準値とを比較して(S51)、基準値以下であれば検査合格(S52)とし、最大振幅値が基準値を超えている場合には検査不合格(S53)とし、処理を終了する。
【0098】
以上説明した本第3の実施の形態のよれば以下の効果を奏する。
【0099】
FFT処理によって車輪の振動を周波数ごとに処理することができるようになるため、任意の周波数について振動検査を行うことが可能になる。また、FFT処理することで、様々な周波数による振動が混ざり合っているような場合でも、確実に振動検査を実施することができる。
【0100】
なお、本第3の実施の形態においても、前述した第2の実施の形態と同様に、簡易的には、位相ずらしの処理を行うことなく、FFT処理によって得られた各車輪の振動のベクトル長さをK倍したものを足し合わせることで、ステアリングにおける最大振動値を求め、この足し合わせた値と基準値を比較することで、振動の合否判定を行うようにしてもよい。
【0101】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態は、前述した第3の実施の形態において、任意の周波数を用いて振動検査を行うようにしたの対し、車輪の回転次数データを元にして、振動検査を行うものである。ここで回転次数データとは、車輪の回転数に対する振動数の比である。なお、振動検査の原理、すなわち、車両の振動伝達特性を求めてから実際の被検査車両の振動検査を行うことは、前述した各実施の形態と同様である。
【0102】
以下本第4の実施の形態について説明する。
【0103】
図11は、本発明による第4の実施の形態における車両振動検査方法を実施するために必要な装置構成を説明するための図面であり、図11Aは測定系を示すブロック図であり、図11Bは定置走行試験機の概略を示す図面である。
【0104】
本第4の実施の形態においては、前述した第1の実施の形態における車両振動検査の測定系(図1参照)に、さらに、各車輪の回転数を計測するための回転センサ51〜54を設けたものである。測定系におけるその他の装置構成については、第1の実施の形態と同様である。すなわち、被検査車両1に対して定置走行試験を行うための定置走行試験機2と、車両1の各車輪11〜14の振動を測定する振動センサ31〜34と、振動センサ31〜34および回転センサ51〜54が測定した回転数と振動から後述する手順により車両振動検査を実行するコンピュータ40よりなる。
【0105】
回転センサ51〜54としては、パルスエンコーダを用いており、このパルスエンコーダを車軸に設けることで、車輪の回転数に対応したパルス信号を得るようにしている。
【0106】
なお、回転センサ51〜54としては、この他に、たとえば、車輪自体に印を付けて、それを光学的に読み取り回転数に応じたパルス信号を出力させたり、また、車輪に回転軸を押し付けて、回転軸の回転数から車輪の回転に応じたパルス信号を出力するものなど、車輪の回転数に応じた信号を得ることができるものであれば特に限定されない。
【0107】
なお、その他の装置構成については、第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0108】
次に、本第4の実施の形態における車両振動検査方法について説明する。
【0109】
図12Aは回転センサ51からの信号例を示す図面であり、同図Bは同じ期間における振動センサ31からの信号例を示す図面であり、図13Aは図12Aの部分拡大図であり、同図Bは、同図Aと同じ拡大区間における図12Bの拡大図で、回転パルスにより区切って示した図である。
【0110】
ここで、図13Bを参照すれば、回転パルスで区切られた各区間の振動をx(n、t)で表す(nは区切った各区間を示す番号であり、tはその区間内における一つひとつの振動データを示す番号である。)。各区間内の振動x(n、t)のデータ数は車輪の回転がばらついているため、各区間ごとに一定とならない。
したがって、図13に示すとおり、各区間内における振動のデータを示す番号tの最大値tmaxがそれぞれの区間ごとに異なることになる。
【0111】
ところで、FFT処理においては、周知の通り、連続したデータの中から区間を切り出してフーリエ変換を行う(これを離散フーリエ変換と言う)が、その際、各区間のデータは周期性があるものと仮定されている。ところが、本第4の実施の形態のように、回転パルスによって区間を区切った場合、前記のように各区間のでデータ数が異なることになる。このような場合、FFT処理においては、窓関数を用いて信号に窓関数をかけた結果を離散フーリエ変換する。しかしながら、各区間におけるデータ数が同じであれば、各区間のデータに周期性があるものと取り扱うことが可能となり窓関数が不要になる。
【0112】
そこで、本第4の実施の形態では、各区間におけるデータ数を、2のべき乗倍にスプライン補間などで引き延ばし、これをもともとのx(n、t)のサイズで間引くことで、すべての区間のデータ数を2のべき乗のデータ数に統一している。この統一後の振動をx’(n、k)とする(nは区切った各区間を示す番号であり、kはその区間内における一つひとつの振動データを示す番号で、最大値kmax=256である。)。
【0113】
つまり、図13Bの例では、x(0、t)は137個のデータ数であるが、これを137×256に引き伸ばし、137で間引きするとx’(0、k)は256個のデータとなる。同様にその他の区間nに対してもこの作業を行うと、x’(n、k)の各区間のデータ数はすべて256に統一され、それぞれが1回転分のデータとなる。
【0114】
このx’(n、k)に対してFFTを行う。このときx’(n、k)は1回転ごとに区切られていて、データの最初と最後でギャップが生じることがないので、窓関数が不要となる。
【0115】
x’(n、k)をFFT処理したものを、X(n、ω)とする。これは回転に依存するものなので、それぞれωが0のとき0次、1のとき1次、nのときn次となる。この次数が回転次数データである。
【0116】
そして、この回転次数データを前述した第3の実施の形態における周波数データの代わりに用いることにより、回転に依存するデータのみを抽出することでき、これにより回転に依存しない周波数成分を考慮する必要がなくなる。
【0117】
次に、本第4の実施の形態における車両振動検査の処理手順を説明する。
図14および15は、本第4の実施の形態における車両振動検査の処理手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートにおいては、前述した第1の実施の形態と同じ処理を行うステップについては同じステップ番号(S番号)を付し、それらのステップにおける処理の説明を一部省略した。
【0118】
まず、被検査車両1を定置走行試験機2に載置し、各車輪近傍に振動センサ31〜34を取り付け、同様に各車輪の車軸に回転センサを取り付ける(S61)。
【0119】
そして、第1の実施の形態と同様に、コンピュータ40は、事前に被検査車両と同じ車種において取得された伝達系H1〜H4の振動伝達特性(係数K1〜K4、位相遅延時間φ1〜φ4)を取得する(S2)。
【0120】
なお、本第4の実施の形態では、回転次数データにより振動を検査するため、ここで取得する振動伝達係数についても、検査を実行する回転次数についての振動伝達係数をあらかじめ求めておいて、これを使用することになる。したがって、事前に振動伝達係数を測定する際にも、FFT処理を行うことで、任意の回転次数における加振点(車輪)から振動検査点(ステアリング)までの振動伝達係数として係数Kと位相遅延時間φを求める。
【0121】
具体的には、一つの車輪の振動と共にステアリングの振動を振動センサにより測定し、両方の振動をそれぞれFFT処理によって周波数解析し、検査に使用する任意の回転次数において、車輪のベクトルの長さ(すなわち振動振幅)と、これに対応するステアリングのベクトルの長さ(すなわち振動振幅)から、係数Kを求め、車輪のベクトルの実数軸に対する傾きと、これに対応するステアリングのベクトルの実数軸に対する傾きから、位相遅延時間φを求める。
【0122】
続いて、定置走行試験機2を動作させて各車輪を回転させる(S3)。そして、コンピュータ40は、車輪回転中における振動センサ31〜34の振動測定値と回転センサ51〜54の信号(パルス信号)を取得する(S64)。すなわち、このステップS64が、被検査車両の複数の車輪を回転させて各車輪の振動を車輪ごとに測定すると共に、各車輪の回転に対応した信号を取得する段階に相当する。
【0123】
続いて、コンピュータ40は、取得した回転パルス信号ごとに振動データを区切る(S65)。そして、コンピュータ40は、区切られた各区間内の振動データを2のべき乗倍に引き延ばし(S66)、引き延ばしたデータをさらに元のデータ数で間引いて、各区間のデータ数を統一する(S67)。すなわち、このステップS65〜67が各車輪の回転に対応した信号により前記取得した車輪ごとの振動データを区切り、区切った区間内の振動データのデータ数を統一する段階に相当する。
【0124】
続いて、コンピュータ40は、データ数を統一した各区間内の振動データをFFT処理を行い、車輪の振動波X1〜X4における回転次数ごとに最大振幅と位相を求める(S68)。すなわち、このステップS68が、データ数が統一された振動データを高速フーリエ変換する段階に相当する。
【0125】
続いて、コンピュータ40は、各車輪の振動波X1〜X4の回転次数ごとのピークを同位相にするための位相ずらし量Δθ1〜Δθ4を求める(S69)。位相ずらし量の求め方は、前述した第3の実施の形態と同様であり、ただ第3の実施の形態では任意の周波数に対する位相ずらし量を求めていたものが、本第4の実施の形態では回転次数ごとに求めるのが違うだけである。
【0126】
続いて、コンピュータ40は、求めた位相ずらし量Δθ1〜Δθ4により、回転次数ごとに、各車輪の振動波X1〜X4の位相ずらしを行う(S70)。
【0127】
続いて、コンピュータ40は、位相ずらし後の振動波X1〜X4から振動伝達特性(K1〜K4およびφ1〜φ4)により振動波Y1〜Y4の回転次数ごとの振幅と位相を求める(S71)。すなわち、このステップS70および71が高速フーリエ変換により得られた前記各区間における前記車輪の回転数に対する振動数の比ごとに、前記各車輪の振動に起因した前記振動検査点における振動の位相が合うように、前記振動伝達特性を用いて前記測定した各車輪の振動の位相をずらす段階に相当する。
【0128】
続いて、コンピュータ40は、振動波Y1〜Y4の回転次数ごとにおける振幅と位相を逆FFT処理して、回転次数ごとの振動波Y1〜Y4を求める(S72)。
【0129】
そして、得られた回転次数ごと振動波Y1〜Y4を合成してステアリングにおける最大振動値を求める(S73)。すなわち、このステップS72および73位相をずらした各車輪の振動を前記振動伝達特性を用いて各車輪に起因した車輪ごとの前記振動検査点の振動に変換する段階、および変換された車輪ごとの前記振動検査点の振動を合成する段階に相当する。
【0130】
その後、得られた最大振幅値と、あらかじめ決められた振動波の最大振幅の振幅基準値とを比較して(S74)、基準値以下であれば検査合格(S75)とし、最大振幅値が基準値を超えている場合には検査不合格(S76)とし、処理を終了する。
【0131】
以上説明した本第4の実施の形態のよれば以下の効果を奏する。
【0132】
車輪の回転センサを設けて、この車輪の回転に対応させて振動をFFT処理することで車輪の回転に対応した振動として分析することができるようになり、車輪の回転数が変化した場合でも、的確に車輪から車体に伝わる振動を検査することが可能となる。また、各車輪ごとの回転数の違いを考慮することなく振動検査を実施することができる。
【0133】
さらに、本第4の実施の形態においては、車輪の回転に対応したパルス信号ごとに振動データを区切って、各区切り区間ごとの振動データ数を合わせるようにしたので、FFT処理の際に窓関数を設定する必要がなくなり、データ損失を少なくすることができる。
【0134】
なお、上述した本第4の実施の形態では、回転次数ごとに最終的な振動値を求めているが、これはすべての回転次数ごとに求める必要はなく、特に検査したい回転次数(たとえば振動現象として体感される回転次数など)についてのみ最終的な振動値を求めるようにしてもよい。
【0135】
以上、本発明を適用した実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。たとえば、上述した実施の形態では、4輪の振動波X1〜X4からステアリングの合成振動波Yを求めたが、たとえば、前輪(2つの車輪)の振動波からステアリングの合成振動波を求めることも可能である。
これは、たとえばステアリングの振動として重要なものの一つであるシミー(ステアリング周方向振動)は、主にサスペンションの前後共振で起こることがわかっている。そこで、このシミーを評価するためには、前輪の振動波X1およびX2からステアリングの合成振動波Yを求めればよい。
【0136】
また、上述した実施の形態では、車輪における振動波からステアリングの振動波を求めたものであるが、たとえば事前に求めておく振動伝達特性を求める際に振動検査点としてステアリング以外の点を設定することで、車両における様々な位置での振動を車輪の振動から求め、または検査することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による車両振動検査方法を実施するために必要な装置構成を説明するための図面であり、図1Aは測定系を示すブロック図であり、図1Bは定置走行試験機の概略を示す図面である。
【図2】車両の振動伝達特性を説明するための図面である。
【図3】車両の振動伝達特性をモデル化した図面である。
【図4】伝達系Hの振動伝達特性を説明するための図面である。
【図5】振動波の合成を説明するための図面であり、図5Aはモデル図であり、図5Bは振動波を示す図面である。ここでは、説明を簡単にするために2つの伝達系による振動を例にして説明する。
【図6】振動波の位相ずらしを説明するための図面であり、図6Aはモデル図であり、図6Bは振動波を示す図面である。
【図7】第1の実施の形態における車両振動検査の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施の形態における車両振動検査の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】振動のFFT処理結果を説明するための図面である。
【図10】第3の実施の形態における車両振動検査の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】第4の実施の形態における車両振動検査方法を実施するために必要な装置構成を説明するための図面であり、図11Aは測定系を示すブロック図であり、図11Bは定置走行試験機の概略を示す図面である。
【図12】図12Aは回転センサからの信号例を示す図面であり、同図Bは同じ期間における振動センサからの信号例を示す図面である。
【図13】図13Aは図12Aの部分拡大図であり、同図Bは、同図Aと同じ拡大区間における図12Bの拡大図で、回転パルスにより区切って示した図である。
【図14】第4の実施の形態における車両振動検査の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】図14に続く、車両振動検査の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…車両
11〜14…車輪
31〜34…振動センサ
40…コンピュータ
51〜54…回転センサ

Claims (10)

  1. 被検査車両と同一車種の車両における、車輪の振動振幅に対して車両の振動検査点における振動振幅が何倍かを示す係数と、前記車輪の振動位相に対する前記振動検査点における振動位相の遅延時間とからなる振動伝達特性を取得する段階と、
    前記被検査車両の複数の車輪を回転させて各車輪の振動を車輪ごとに測定する段階と、
    前記各車輪の振動に起因した前記振動検査点における振動の位相が合うように、前記測定した各車輪の振動の位相をずらす段階と、
    前記位相をずらした各車輪の振動を前記振動伝達特性を用いて各車輪に起因した車輪ごとの前記振動検査点の振動に変換する段階と、
    前記変換された車輪ごとの前記振動検査点の振動を合成する段階と、
    を有することを特徴とする車両振動検査方法。
  2. 前記被検査車両の複数の車輪を回転させて、各車輪の振動を車輪ごとに測定する段階のあとに、前記測定された各車輪の振動を高速フーリエ変換処理することによって任意の振動周波数についての振動振幅と位相を求める段階を有し、
    前記位相をずらす段階は当該高速フーリエ変換処理によって求められた位相を用いて当該任意の振動周波数の位相をずらし、
    前記車輪ごとの前記振動検査点の振動波に変換する段階は当該高速フーリエ変換処理によって求められた振幅を前記係数倍することにより求め、
    前記変換された車輪ごとの前記振動検査点の振動波を合成する段階によって得られた振動が前記任意の振動周波数による振動であることを特徴とする請求項1記載の車両振動検査方法。
  3. 前記変換された車輪ごとの前記振動検査点の振動波を合成する段階のあとに、前記合成された振動の振動値とあらかじめ決められた基準値とを比較して車両の合否判定を行う段階を有することを特徴とする請求項1または2記載の車両振動検査方法。
  4. 前記振動伝達特性は、
    車輪の一つに振動を発生させ、当該車輪に発生させた振動を測定すると共に振動検査点での振動を測定する段階と、
    当該測定によって得られた車輪の振動振幅に対して当該測定によって得られた前記振動検査点の振動の振幅が何倍であるかを示す係数と、当該測定によって得られた車輪の振動位相に対する当該測定によって得られた前記振動検査点の振動位相遅延時間とを求める段階と、によって得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の車両振動検査方法。
  5. 被検査車両と同一車種の車両における、車輪の振動振幅に対して車両の振動検査点における振動振幅が何倍かを示す係数からなる振動伝達特性を取得する段階と、
    前記被検査車両の複数の車輪を回転させて各車輪の振動を車輪ごとに測定する段階と、
    前記測定した車輪の振動から前記振動伝達特性により各車輪に起因した車輪ごとの前記振動検査点における振動の最大値を求める段階と、
    前記車輪ごとの前記振動検査点における振動の最大値を足し合わせる段階と、前記振動検査点における振動の最大値を足し合わせた値とあらかじめ決められた振幅基準値とを比較して前記被検査車両の合否判定を行う段階と、
    を有することを特徴とする車両振動検査方法。
  6. 前記被検査車両の複数の車輪を回転させて、各車輪の振動を車輪ごとに測定する段階のあとに、前記測定された各車輪の振動を高速フーリエ変換処理することによって任意の振動周波数についての振動振幅を求める段階を有し、
    前記測定した車輪の振動から前記振動伝達特性により各車輪に起因した車輪ごとの前記振動検査点における振動の最大値を求める段階は当該高速フーリエ変換処理によって求められた振幅を前記係数倍することにより求め、
    前記車輪ごとの前記振動検査点における振動の最大値が前記任意の振動周波数における振幅の最大値であることを特徴とする請求項5記載の車両振動検査方法。
  7. 前記振動伝達特性は、
    前記車輪の一つに振動を発生させ、当該車輪に発生させた振動を測定すると共に前記振動検査点での振動を測定する段階と、
    当該測定によって得られた車輪の振動振幅に対して当該測定によって得られた前記振動検査点の振動振幅が何倍であるかを示す係数を求める段階と、によって得られたものであることを特徴とする請求項5または6に記載の車両振動検査方法。
  8. 被検査車両と同一車種の車両における、車輪の振動振幅に対して車両の振動検査点における振動振幅が何倍かを示す係数と、前記車輪の振動位相に対する前記振動検査点における振動位相の遅延時間とからなる振動伝達特性を取得する段階と、
    前記被検査車両の複数の車輪を回転させて各車輪の振動を車輪ごとに測定すると共に、各車輪の回転に対応した信号を取得する段階と、
    前記各車輪の回転に対応した信号により前記取得した車輪ごとの振動データを区切り、区切った区間内の振動データのデータ数を統一する段階と、
    前記データ数が統一された振動データを高速フーリエ変換する段階と、
    前記高速フーリエ変換により得られた前記各区間における前記車輪の回転数に対する振動数の比ごとに、前記各車輪の振動に起因した前記振動検査点における振動の位相が合うように、前記振動伝達特性を用いて前記測定した各車輪の振動の位相をずらす段階と、
    前記位相をずらした各車輪の振動を前記振動伝達特性を用いて各車輪に起因した車輪ごとの前記振動検査点の振動に変換する段階と、
    前記変換された車輪ごとの前記振動検査点の振動を合成する段階と、
    を有することを特徴とする車両振動検査方法。
  9. 前記振動伝達特性は、車種ごとに分類されてデータベースに記憶されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の車両振動検査方法。
  10. 前記振動検査点は、ステアリングであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の車両振動検査方法。
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