JP2004099937A - 高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物及びその施工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐溶銑性及び耐滓性が良好で焼結性に優れ、耐用性の良好な施工体を形成することが可能な高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法及び該施工方法に用いられる高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を提供する。
【解決手段】スラグゾーンに対応する壁上部には、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物を用い、メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部には、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物を用いて、いわゆるゾーン施工を行う。
また、スラグゾーン用及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、SiC超微粉:3〜8重量%を含有するものを用いる。
また、スラグゾーン用及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、平均粒径が0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径が0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有するものを用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】スラグゾーンに対応する壁上部には、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物を用い、メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部には、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物を用いて、いわゆるゾーン施工を行う。
また、スラグゾーン用及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、SiC超微粉:3〜8重量%を含有するものを用いる。
また、スラグゾーン用及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、平均粒径が0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径が0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有するものを用いる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、キャスタブル耐火物に関し、詳しくは、高炉主樋のワーキングライニング用流し込み樋材の裏側に施工される高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物及びその施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
高炉主樋のワーキングライニング用流し込み樋材の裏側に施工される高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物には、
(1)流し込み樋材に密着して、流し込み樋材を支持する機能、
(2)主樋全体の構造体の一部として主樋全体の強度を向上させる機能、
(3)流し込み樋材の亀裂から滲み出てきた溶銑・溶滓に1〜2日耐える耐食性などの機能や特性を備えていることが要求される。
【0003】
しかし、従来の考え方では、上記(1)及び(2)の機能が重視され、(3)の機能は補助的な機能とされていた。
したがって、従来の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物では、骨材を電融アルミアと高アルミナの併用、微粉としては高アルミナ粉、仮焼アルミナ粉、焼結アルミナ粉を主体とした耐火原料で構成し、硬化材兼低温強度発現材としてアルミナセメントを5〜10%使用するキャスタブル耐火物が主流であった。また、化学組成としては、Al2O3:70〜90重量%、SiO2:5〜20重量%、CaO、TiO2、Fe2O3の合量:5重量%以下とするものが一般的であった。
【0004】
ところが、近年は樋寿命の延長や、残厚を薄くまで使用する傾向が強くなり、上記(3)の機能が重視されるようになり、材料としては、それ以前の材料にSiCを10〜15重量%使用するキャスタブル耐火物が主流になってきた。すなわち、Al2O3:70〜80重量%、SiC:10〜15重量%、SiO2:5〜10重量%、CaO、TiO2、Fe2O3の合量が5重量%以下というような化学組成の材料が一般的になってきた。
【0005】
それでも、従来の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物における品質設計の基本思想は、あくまでも裏張り材であり、上記(3)の機能は補助的な機能とされている。したがって、このような従来の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物では、主樋ワーキング用流し込み樋材の原単位低減、寿命延長への動きが加速されている現状には対応しきれないのが実情である。
【0006】
すなわち、以前には、12万t通銑×2サイクルで残厚150〜200mmを基準にして修理を行っていたものが、近年では15万t通銑×3サイクルで残厚100〜150mmを基準に修理が行われるようになっており、ワーキング用流し込み樋材は長期間使用すれば焼結が進んで亀裂が発生しやすくなる上に、残厚が薄くなるまで使用するので、亀裂を通しての漏銑・漏滓の頻度と規模が大きくなるに至っている。
【0007】
本願発明は、上記問題点を解決するものであり、耐溶銑性及び耐滓性が良好で焼結性に優れ、耐用性の良好な信頼性の高い施工体を形成することが可能な高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法及び該施工方法に用いられる高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、発明者等は、
(1)上述の従来例のように、SiC量の配合割合を10〜15重量%とすることは、耐溶銑性のみ配慮して耐滓性を無視したものであり、また、
(2)上記従来例では早期焼結の対応をとっていないため、溶銑・溶滓が早く組織に浸透し、急激な損耗を招いていること
などに鑑み、規模の大きな漏銑・漏滓に耐えるためには従来の発想を捨てて、高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物をワーキングライニングの一部(母材)として捕らえる必要があると考え、種々の実験検討を行った。
【0009】
そして、主樋における漏銑・漏滓は、メタルゾーンから漏れるものと、スラグゾーンから漏れるものとがあり、メタルゾーンから漏れる場合、上記(1)のようにSiC量の配合割合を10〜15重量%とした場合、漏れ出した溶銑に対する耐性は確保できるが、早期焼結の対応をとっていないため、溶銑・溶滓が早く組織に浸透し、急激な損耗を招くという問題点があり、また、スラグゾーンから漏れがある場合、上記(1)のように、耐滓性を無視した組成を有し、上記(2)のように早期焼結の対応をとっていない従来の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物では、十分な耐用性を確保することができないことなどの知見を得た。そして、かかる知見に基づいて、さらに、検討、実験を行って本願発明を完成した。
【0010】
本願発明(請求項1)の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法は、
(a)スラグゾーンに対応する壁上部には、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物を施工し、
(b)メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部には、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物を施工すること
を特徴としている。
【0011】
スラグゾーンに対応する壁上部には、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物を用い、メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部には、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物を用いて、いわゆるゾーン施工を行うことにより、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保するとともに、メタルゾーンからの漏れに対しては、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能になり、主樋全体の強度、耐用性を向上させることが可能になる。
【0012】
また、請求項2の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法は、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、SiC超微粉:3〜8重量%を含有するものを用いることを特徴としている。
【0013】
スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、それぞれSiC超微粉:3〜8重量%を含有するものを用いることにより、焼結を早め、かつ、焼結後の耐蝕性低下を最小限に抑えることが可能になり、スラグゾーンやメタルゾーンからの漏滓、漏銑があった場合にも急激な浸食を防ぐことが可能になる。
すなわち、SiC超微粉は高温で酸化されやすく、シリカガラスを生成し易いため、使用温度の高い主樋材には使用しにくいと考えられていたが、本願発明では、このシリカガラスを生成し易い性質に着目し、SiC超微粉を所定量配合することにより、樋ワーキングライニングが薄くなり、また亀裂から溶銑滓が主樋裏張り材の近くに達し、主樋裏張り材の温度が上昇したときに、シリカガラスを生成して緻密になり、漏銑滓があったときにも急激な浸食が抑制されるようにして、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保するとともに、メタルゾーンからの漏れに対しては、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能になり、主樋全体の強度、耐用性を向上させることが可能になる。
【0014】
また、請求項3の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法は、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、それぞれ平均粒径0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有するものを用いることを特徴としている。
【0015】
スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、それぞれ、平均粒径が0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径が0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有するものを用いることより、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保し、メタルゾーンからの漏れに対しては、早期焼結性、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能になり、主樋全体の強度及び耐用性をさらに向上させることが可能になる。
なお、B4C、NiOはいずれも、焼結を促進させる機能を果たすとともに、B4Cはカーボンの酸化防止材として機能し、NiOは高温でアルミナと反応しニッケルスピネルを生成し、組織強化、強度発現の機能を果たす。
【0016】
また、本願発明(請求項4)の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物は、
高炉主樋裏張りに用いられるキャスタブル耐火物であって、
(a)スラグゾーンに対応する壁上部に施工されるべき、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物と、
(b)メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部に施工されるべき、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物と
を備えていることを特徴としている。
【0017】
本願発明(請求項4)の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物は、スラグゾーンに対応する壁上部に施工されるべき、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物と、メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部に施工されるべき、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物とを備えているので、この高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を用いることにより、請求項1記載の高炉主樋裏張り用耐火物の施工方法を確実に実施して、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保し、メタルゾーンからの漏れに対しては、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能で、主樋全体の強度、耐用性を向上させることが可能な施工体を形成することができるようになる。
【0018】
また、請求項5の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物は、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物のそれぞれが、SiC超微粉:3〜8重量%を含有するものであることを特徴としている。
【0019】
スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物にSiC超微粉:3〜8重量%を含有させることにより、この高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を用いて請求項2記載の施工方法を実施した場合に、焼結を早め、かつ、焼結後の耐蝕性低下を最小限に抑えることが可能で、スラグゾーンやメタルゾーンからの漏滓、漏銑があった場合にも急激な浸食を防ぐことが可能な施工体を確実に形成することができるようになる。
【0020】
また、請求項6の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物は、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物のそれぞれが、平均粒径0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有するものであることを特徴としている。
【0021】
スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物に、平均粒径0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有させることにより、この高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を用いて請求項3記載の施工方法を実施した場合に、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保し、メタルゾーンからの漏れに対しては、早期焼結性、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能で、主樋全体の強度、耐用性をさらに向上させることが可能な施工体を確実に形成することができるようになる。
【0022】
【発明の具体的な構成】
(1)メタルゾーン用キャスタブル耐火物
本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を構成するメタルゾーン用キャスタブル耐火物の骨材としては、従来から使用されている電融アルミナを主体に、一部高アルミナを使用する。また、骨材の一部に電融スピネルを使用することも可能であるが、強度が下がる傾向があるので使用しないほうが望ましい。
【0023】
また、微粉としては、主として易焼結性アルミナとSiC微粉を用いることが望ましい。易焼結性アルミナは従来の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物で使用されているような、平均粒経が2.5μm前後のものを用いることが望ましく、平均粒経が5.0μm前後の仮焼アルミナを一部使用してもよい。これら仮焼アルミナは、合量で10〜15重量%の範囲とすることが望ましく、これは、従来から使用されている範囲である。
【0024】
また、本願発明では、メタルゾーン用キャスタブル耐火物にSiCを10〜20重量%の割合で使用するようにしており、請求項2ではSiC超微粉を3〜8重量%使用するようにしている。SiCとしては、SiC粒、SiC微粉、SiC超微粉を所定の割合で使用することが好ましい。SiC粒としては粒径が、例えば1mm程度までのもの、SiC微粉としては200Fを主体として用いることが可能である。
【0025】
また、SiC超微粉は、従来、微粉部の耐蝕性向上を目的に使用温度の低い滓樋材や溶銑樋材には使用されているが、使用温度の高い主樋材には使用されていない。これは、SiC超微粉は高温で酸化されやすく、シリカガラスを生成し易いためである。本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を構成するメタルゾーン用キャスタブル耐火物は、このシリカガラスを生成し易い性質に着目したものであり、SiC超微粉を所定の割合で配合することにより、樋ワーキングライニングが薄くなり、また亀裂から溶銑滓が主樋裏張り材の近くに達し、主樋裏張り材の温度が上昇したときに、シリカガラスを生成して緻密になり、漏銑滓があったときにも急激な浸食を抑制、防止することが可能になる。
【0026】
SiC超微粉の使用量は3〜8重量%が適切であるが、これは、SiC超微粉の割合が3重量%未満になると、シリカガラスの生成が少なくなり、緻密化の効果が不十分になること、SiC超微粉の割合が8重量%を超えると、流動性が悪くなることによる。なお、SiCの全体量としては、請求項1に規定されているように10〜20重量%の範囲で特に問題はない。
【0027】
また、本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物においては、メタルゾーン用キャスタブル耐火物の焼結を促進させるための材料として、B4C又はNiOを適量使用する。B4Cはカーボンの酸化防止材として添加するのでノンカーボン材質の主樋裏張り材には通常添加しない。しかし、本願発明では溶銑滓からの距離が小さくなったとき及び溶銑滓に接したときに、裏張り耐火材を急激に緻密化させる機能を果たすことに着目して、B4Cをガラス化促進材として使用している。その使用量は0.3〜0.8重量%の範囲が適切である。これは、0.3重量%未満ではガラス化促進効果が小さくなり、0.8重量%を超えるとガラスの融点が低くなりすぎることによる。
【0028】
NiOはコークス炉などの溶射材に使用された実績はあるが、高炉主樋裏張り用などの樋材関係の耐火材に使用された事例のない材料である。このNiOは高温でアルミナと反応しニッケルスピネルを生成し組織強化、強度発現の機能を果たす。
高炉主樋裏張り耐火材には通常、易焼結性アルミナが使用されるが、1500℃以下では焼結しない。これに対し、本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物では多量のシリカガラスで焼結させるよう設計するとともに、それをより強化するために、NiOの添加によるニッケルスピネルの生成を利用している。
なお、NiOの添加量は0.3〜2.0重量%の範囲とすることが適切である。これは、0.3重量%未満では強度発現強化が不十分になり、2.0重量%を超えると焼結強度が高すぎてスポーリングを発生しやすくなることによる。
【0029】
また、本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物において、メタルゾーン用キャスタブル耐火物の焼結を促進させるための材料としては、ミクロシリカを使用することも可能である。ミクロシリカは従来の主樋裏張り材にも2〜6重量%程度の範囲で使用されているものである。なお、ミクロシリカの配合割合が3重量%未満では低温から中温での強度発現と焼結促進の効果が少なく、5重量%を超えると乾燥収縮が大きくなる傾向があるので、ミクロシリカは3〜5重量%の範囲で使用することが望ましい。
【0030】
さらに、本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物においては、メタルゾーン用キャスタブル耐火物の硬化強度を確保する目的で、アルミナセメントを使用することが可能であり、その配合割合としては、5〜7重量%の範囲とすることが望ましい。
【0031】
また、メタルゾーン用キャスタブル耐火物には、材料の流動性、硬化を制御する各種分散剤、硬化調整剤を適宜添加することが可能であり、その使用に特別の制約はない。
【0032】
(2)スラグゾーン用キャスタブル耐火物
本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を構成するスラグゾーン用キャスタブル耐火物の骨材としては、従来から使用されている電融アルミナ及びSiCを使用する。電融アルミナの品位はアルミナ純度92%以上であればよい。また、SiCの品位はSiC純度85%以上であればよい。ただし、SiCの純度が92%以上のものを用いることが望ましい。SiC純度が低いと混練水量が多くなり緻密さが低下する場合があり、また、不純物としてのカーボンが増加し、早期焼結を阻害する場合がある。なお、これらSiCについての要件は、メタルゾーン用キャスタブル耐火物に用いられるSiCについても当てはまるものである。
【0033】
また、微粉としては、主として易焼結性アルミナとSiC微粉を用いることが望ましい。易焼結性アルミナは従来の耐火材で使用されているような、平均粒経が2.5μm前後のものを用いることが望ましく、平均粒経が5.0μm前後の仮焼アルミナを一部使用してもよい。これら仮焼アルミナは、合量で10〜15重量%の範囲とすることが望ましく、これは、従来から使用されている範囲である。
【0034】
また、本願発明では、スラグゾーン用キャスタブル耐火物にSiCを20〜40重量%の割合で使用するようにしており、請求項2ではSiC超微粉を3〜8重量%使用するようにしている。SiCとしては、SiC粒、SiC微粉、SiC超微粉を所定の割合で使用する。SiC粒としては粒径が、例えば1mm程度までのもの、SiC微粉としては200Fを主体として用いることが可能である。
【0035】
また、SiC超微粉は、従来、微粉部の耐蝕性向上を目的に使用温度の低い滓樋材や溶銑樋材には使用されているが、使用温度の高い主樋材には使用されていない。これは、SiC超微粉は高温で酸化されやすく、シリカガラスを生成し易いためである。本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を構成するスラグゾーン用キャスタブル耐火物は、このシリカガラスを生成し易い性質に着目し、SiC超微粉を所定の割合で配合することにより、樋ワーキングライニングが薄くなり、また亀裂から溶銑滓が主樋裏張り材の近くに達し、主樋裏張り材の温度が上昇したときに、シリカガラスを生成して緻密になり、漏銑滓があったときにも急激な浸食を抑制、防止することが可能になる。
【0036】
SiC超微粉の使用量は3〜8重量%が適切であるが、これは、SiC超微粉の割合が3重量%未満になると、シリカガラスの生成が少なくなり、緻密化の効果が不十分になること、SiC超微粉の割合が8重量%を超えると、流動性が悪くなることによる。なお、SiCの全体量としては、請求項1に規定されているように20〜40重量%の範囲で特に問題はない。
【0037】
なお、スラグゾーン用キャスタブル耐火物のSiC超微粉とSiC粒(SiC微粉以外のSiC成分)の合量は、(1)耐スラグ性を向上させることができること、(2)メタルゾーン用キャスタブル耐火物の膨張率とスラグゾーン用キャスタブル耐火物の膨張率を一致させることができること等のバランスから決定することが必要である。両者の膨張率を一致させないと、長期使用の間にメタルゾーン用キャスタブル耐火物とスラグゾーン用キャスタブル耐火物の間に水平亀裂を発生させることになる。なお、スラグゾーン用キャスタブル耐火物のSiC超微粉とSiC粒の合量を、実験室の調査で決定することは通常困難であり、本願発明においては、実機における経験から、スラグゾーン用キャスタブル耐火物のSiC粒とSiC超微粉の合量を20〜40重量%の範囲とした。
【0038】
また、本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物においては、スラグゾーン用キャスタブル耐火物の焼結を促進させるための材料として、B4C又はNiOを適量使用する。これら原料の機能と適正量はメタルゾーン用キャスタブル耐火物の項で詳しく述べているのでここではその説明を省略する。
なお、焼結を促進させるための材料としては、ミクロシリカを使用することも可能である。
【0039】
また、スラグゾーン用キャスタブル耐火物には、材料の流動性、硬化を制御する各種分散剤、硬化調整剤を適宜添加することが可能であり、その使用に特別の制約はない。
【0040】
【実施例】
以下、本願発明の実施例を示して、その特徴とするところをさらに詳しく説明する。
表1に示すような割合で、電融アルミナ、易焼結性アルミナ、SiC、シリカ、B4C、NiO、ステンレスファイバー、金属アルミニウム(Met.Al)、アルミナセメント、分散剤、及び硬化調整剤などを配合して、本願発明の実施例にかかる高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物(実施例A,B,C,D,E,Fの試料)を作製した。
なお、実施例A,B,C,D,Eは、メタルゾーン用キャスタブル耐火物であり、実施例Fは、スラグゾーン用キャスタブル耐火物である。
また、比較のため、SiCの200Fは含むが、SiC粒(1mm〜)及びSiC超微粉を含まず、かつ、B4C、NiOを含まないキャスタブル耐火物を作製した。
【0041】
それから、各耐火物(試料)に、それぞれの配合に適した水分を添加し、万能ミキサにより混練して、鋳込み型に流し込んだ。その後、常温で24h養生した後、脱枠し、110℃で24h乾燥して試料とした。
【0042】
そして、このようにして得た試料について、気孔率、常温曲げ強さ、溶損指数(耐蝕性)を調べた。
なお、気孔率(見かけ気孔率)、曲げ強度などの物理特性は、還元雰囲気で1100℃×3h、1400℃×3h、及び酸化雰囲気で1100℃×3h、1400℃×3hの条件で焼成した後、測定した。
また、溶損指数(耐蝕性)は、還元雰囲気で800℃×3h焼成した後、ロータリー式耐蝕性試験機にセットし、銑鉄と高炉スラグを、銑鉄70重量%、高炉スラグ30重量%の比率で混合した浸食材を投入し、1550℃で溶融させて3h浸食テストを行った結果であり、溶損指数は比較例の溶損量を100とした場合の相対値である。
気孔率、常温曲げ強さ、溶損指数の結果を表1に併せて示す。
【0043】
【表1】
【0044】
本願発明のメタルゾーン用試料AではSiC増量とSiC超微粉使用の効果を確認した。樋材での実験結果および実機使用の結果からSiCの合量は19重量%を選択した。またSiC超微粉の使用量は5重量%とした。この試料Aの溶損指数は相対植で79と浸食は低減した。しかし、焼成後の曲げ強さ及び気孔率は比較例とほぼ同じで、早期焼結化の効果は特に認められなかった。
【0045】
試料B、Cでは、試料AにさらにB4Cを各々0.3重量%、0.8重量%添加した。試料B、Cのように、B4Cを添加することにより、溶損指数は試料Aの79より若干少なくなる(試料Bで71、試料Cで75)程度であったが、酸化焼成後の気孔率の減少は大きく、とくにB4Cを0.8重量%添加した試料Cでは、1100℃酸化焼成後では1100℃還元焼成後より4.4%低くなり、1400℃酸化焼成後では1400℃還元焼成後より2.0%低くなっており、気孔率低減の効果が大きかった。ただし、融液をあまり多く生成させると、磨耗の強いメタルゾーンでは施工体が削り取られる危険性があることから、本願発明ではB4Cの配合割合の上限を最大0.8重量%としている。
また、B4Cを添加することにより、中間温度の酸化雰囲気において早期焼結の効果が得られることが確認された。ただし、還元雰囲気での気孔率の減少及び強度向上の効果は比較的小さかった。
【0046】
試料D、Eでは、試料Cに、さらにNiOを各々0.5重量%、2.0重量%添加した。試料D、Eのように、NiOを添加することにより、溶損指数は試料Cの75よりやや増加する(試料Dで77、試料Eで78)が、比較例よりは少なくなっている。一方、還元雰囲気での気孔率の減少及び強度向上は明らかで、早期焼結が実現されることが確認された。
【0047】
また、SiCが34重量%配合された、本願発明のスラグゾーン用キャスタブル耐火物の実施例である試料Fは、比較例に比べて溶損指数が少なくなり、酸化雰囲気及び還元雰囲気のいずれにおいても、焼結性の向上が図られていることがわかる。
【0048】
なお、実機を用いた試験により、上記実施例A〜Eの各試料をメタルゾーンに施工し、スラグゾーンに実施例Fの試料を施工することにより、残厚管理100mmが可能になり、樋材原単位が大幅に低下することが確認されている。
【0049】
なお、本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物において、耐火物原料の配合割合は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内においてその配合割合を変更することが可能である。
【0050】
本願発明は、さらにその他の点において上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0051】
【発明の効果】
上述のように、本願発明(請求項1)の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法は、スラグゾーンに対応する壁上部には、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物を用い、メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部には、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物を用いて、いわゆるゾーン施工を行うようにしているので、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保するとともに、メタルゾーンからの漏れに対しては、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能になり、主樋全体の強度、耐用性を向上させることが可能になる。
【0052】
また、請求項2の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法のように、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、SiC超微粉:3〜8重量%を含有するものを用いた場合、焼結を早め、かつ、焼結後の耐蝕性低下を最小限に抑えることが可能になり、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保するとともに、メタルゾーンからの漏れに対しては、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能になり、主樋全体の強度、耐用性を向上させることが可能になる。
【0053】
また、請求項3の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法のように、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、平均粒径が0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径が0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有するものを用いた場合、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保し、メタルゾーンからの漏れに対しては、早期焼結性、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能になり、主樋全体の強度及び耐用性をさらに向上させることができるようになる。
【0054】
また、本願発明(請求項4)の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物は、スラグゾーンに対応する壁上部に施工されるべき、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物と、メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部に施工されるべき、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物とを備えているので、この高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を用いることにより、請求項1記載の高炉主樋裏張り用耐火物の施工方法を確実に実施して、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保し、メタルゾーンからの漏れに対しては、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能で、主樋全体の強度、耐用性を向上させることが可能な施工体を形成することができる。
【0055】
また、請求項5の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物のように、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物にSiC超微粉:3〜8重量%を含有させることにより、この高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を用いて請求項2記載の施工方法を実施した場合に、焼結を早め、かつ、焼結後の耐蝕性低下を最小限に抑えることが可能で、スラグゾーンやメタルゾーンからの漏滓、漏銑があった場合にも急激な浸食を防ぐことが可能な施工体を確実に形成することができるようになる。
【0056】
また、請求項6の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物のように、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物に、平均粒径0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有させることにより、この高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を用いて請求項3記載の施工方法を実施した場合に、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保し、メタルゾーンからの漏れに対しては、早期焼結性、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能で、主樋全体の強度、耐用性をさらに向上させることが可能な施工体を確実に形成することができる。
【発明の属する技術分野】
本願発明は、キャスタブル耐火物に関し、詳しくは、高炉主樋のワーキングライニング用流し込み樋材の裏側に施工される高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物及びその施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
高炉主樋のワーキングライニング用流し込み樋材の裏側に施工される高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物には、
(1)流し込み樋材に密着して、流し込み樋材を支持する機能、
(2)主樋全体の構造体の一部として主樋全体の強度を向上させる機能、
(3)流し込み樋材の亀裂から滲み出てきた溶銑・溶滓に1〜2日耐える耐食性などの機能や特性を備えていることが要求される。
【0003】
しかし、従来の考え方では、上記(1)及び(2)の機能が重視され、(3)の機能は補助的な機能とされていた。
したがって、従来の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物では、骨材を電融アルミアと高アルミナの併用、微粉としては高アルミナ粉、仮焼アルミナ粉、焼結アルミナ粉を主体とした耐火原料で構成し、硬化材兼低温強度発現材としてアルミナセメントを5〜10%使用するキャスタブル耐火物が主流であった。また、化学組成としては、Al2O3:70〜90重量%、SiO2:5〜20重量%、CaO、TiO2、Fe2O3の合量:5重量%以下とするものが一般的であった。
【0004】
ところが、近年は樋寿命の延長や、残厚を薄くまで使用する傾向が強くなり、上記(3)の機能が重視されるようになり、材料としては、それ以前の材料にSiCを10〜15重量%使用するキャスタブル耐火物が主流になってきた。すなわち、Al2O3:70〜80重量%、SiC:10〜15重量%、SiO2:5〜10重量%、CaO、TiO2、Fe2O3の合量が5重量%以下というような化学組成の材料が一般的になってきた。
【0005】
それでも、従来の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物における品質設計の基本思想は、あくまでも裏張り材であり、上記(3)の機能は補助的な機能とされている。したがって、このような従来の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物では、主樋ワーキング用流し込み樋材の原単位低減、寿命延長への動きが加速されている現状には対応しきれないのが実情である。
【0006】
すなわち、以前には、12万t通銑×2サイクルで残厚150〜200mmを基準にして修理を行っていたものが、近年では15万t通銑×3サイクルで残厚100〜150mmを基準に修理が行われるようになっており、ワーキング用流し込み樋材は長期間使用すれば焼結が進んで亀裂が発生しやすくなる上に、残厚が薄くなるまで使用するので、亀裂を通しての漏銑・漏滓の頻度と規模が大きくなるに至っている。
【0007】
本願発明は、上記問題点を解決するものであり、耐溶銑性及び耐滓性が良好で焼結性に優れ、耐用性の良好な信頼性の高い施工体を形成することが可能な高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法及び該施工方法に用いられる高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、発明者等は、
(1)上述の従来例のように、SiC量の配合割合を10〜15重量%とすることは、耐溶銑性のみ配慮して耐滓性を無視したものであり、また、
(2)上記従来例では早期焼結の対応をとっていないため、溶銑・溶滓が早く組織に浸透し、急激な損耗を招いていること
などに鑑み、規模の大きな漏銑・漏滓に耐えるためには従来の発想を捨てて、高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物をワーキングライニングの一部(母材)として捕らえる必要があると考え、種々の実験検討を行った。
【0009】
そして、主樋における漏銑・漏滓は、メタルゾーンから漏れるものと、スラグゾーンから漏れるものとがあり、メタルゾーンから漏れる場合、上記(1)のようにSiC量の配合割合を10〜15重量%とした場合、漏れ出した溶銑に対する耐性は確保できるが、早期焼結の対応をとっていないため、溶銑・溶滓が早く組織に浸透し、急激な損耗を招くという問題点があり、また、スラグゾーンから漏れがある場合、上記(1)のように、耐滓性を無視した組成を有し、上記(2)のように早期焼結の対応をとっていない従来の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物では、十分な耐用性を確保することができないことなどの知見を得た。そして、かかる知見に基づいて、さらに、検討、実験を行って本願発明を完成した。
【0010】
本願発明(請求項1)の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法は、
(a)スラグゾーンに対応する壁上部には、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物を施工し、
(b)メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部には、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物を施工すること
を特徴としている。
【0011】
スラグゾーンに対応する壁上部には、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物を用い、メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部には、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物を用いて、いわゆるゾーン施工を行うことにより、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保するとともに、メタルゾーンからの漏れに対しては、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能になり、主樋全体の強度、耐用性を向上させることが可能になる。
【0012】
また、請求項2の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法は、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、SiC超微粉:3〜8重量%を含有するものを用いることを特徴としている。
【0013】
スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、それぞれSiC超微粉:3〜8重量%を含有するものを用いることにより、焼結を早め、かつ、焼結後の耐蝕性低下を最小限に抑えることが可能になり、スラグゾーンやメタルゾーンからの漏滓、漏銑があった場合にも急激な浸食を防ぐことが可能になる。
すなわち、SiC超微粉は高温で酸化されやすく、シリカガラスを生成し易いため、使用温度の高い主樋材には使用しにくいと考えられていたが、本願発明では、このシリカガラスを生成し易い性質に着目し、SiC超微粉を所定量配合することにより、樋ワーキングライニングが薄くなり、また亀裂から溶銑滓が主樋裏張り材の近くに達し、主樋裏張り材の温度が上昇したときに、シリカガラスを生成して緻密になり、漏銑滓があったときにも急激な浸食が抑制されるようにして、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保するとともに、メタルゾーンからの漏れに対しては、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能になり、主樋全体の強度、耐用性を向上させることが可能になる。
【0014】
また、請求項3の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法は、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、それぞれ平均粒径0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有するものを用いることを特徴としている。
【0015】
スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、それぞれ、平均粒径が0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径が0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有するものを用いることより、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保し、メタルゾーンからの漏れに対しては、早期焼結性、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能になり、主樋全体の強度及び耐用性をさらに向上させることが可能になる。
なお、B4C、NiOはいずれも、焼結を促進させる機能を果たすとともに、B4Cはカーボンの酸化防止材として機能し、NiOは高温でアルミナと反応しニッケルスピネルを生成し、組織強化、強度発現の機能を果たす。
【0016】
また、本願発明(請求項4)の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物は、
高炉主樋裏張りに用いられるキャスタブル耐火物であって、
(a)スラグゾーンに対応する壁上部に施工されるべき、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物と、
(b)メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部に施工されるべき、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物と
を備えていることを特徴としている。
【0017】
本願発明(請求項4)の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物は、スラグゾーンに対応する壁上部に施工されるべき、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物と、メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部に施工されるべき、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物とを備えているので、この高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を用いることにより、請求項1記載の高炉主樋裏張り用耐火物の施工方法を確実に実施して、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保し、メタルゾーンからの漏れに対しては、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能で、主樋全体の強度、耐用性を向上させることが可能な施工体を形成することができるようになる。
【0018】
また、請求項5の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物は、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物のそれぞれが、SiC超微粉:3〜8重量%を含有するものであることを特徴としている。
【0019】
スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物にSiC超微粉:3〜8重量%を含有させることにより、この高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を用いて請求項2記載の施工方法を実施した場合に、焼結を早め、かつ、焼結後の耐蝕性低下を最小限に抑えることが可能で、スラグゾーンやメタルゾーンからの漏滓、漏銑があった場合にも急激な浸食を防ぐことが可能な施工体を確実に形成することができるようになる。
【0020】
また、請求項6の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物は、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物のそれぞれが、平均粒径0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有するものであることを特徴としている。
【0021】
スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物に、平均粒径0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有させることにより、この高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を用いて請求項3記載の施工方法を実施した場合に、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保し、メタルゾーンからの漏れに対しては、早期焼結性、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能で、主樋全体の強度、耐用性をさらに向上させることが可能な施工体を確実に形成することができるようになる。
【0022】
【発明の具体的な構成】
(1)メタルゾーン用キャスタブル耐火物
本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を構成するメタルゾーン用キャスタブル耐火物の骨材としては、従来から使用されている電融アルミナを主体に、一部高アルミナを使用する。また、骨材の一部に電融スピネルを使用することも可能であるが、強度が下がる傾向があるので使用しないほうが望ましい。
【0023】
また、微粉としては、主として易焼結性アルミナとSiC微粉を用いることが望ましい。易焼結性アルミナは従来の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物で使用されているような、平均粒経が2.5μm前後のものを用いることが望ましく、平均粒経が5.0μm前後の仮焼アルミナを一部使用してもよい。これら仮焼アルミナは、合量で10〜15重量%の範囲とすることが望ましく、これは、従来から使用されている範囲である。
【0024】
また、本願発明では、メタルゾーン用キャスタブル耐火物にSiCを10〜20重量%の割合で使用するようにしており、請求項2ではSiC超微粉を3〜8重量%使用するようにしている。SiCとしては、SiC粒、SiC微粉、SiC超微粉を所定の割合で使用することが好ましい。SiC粒としては粒径が、例えば1mm程度までのもの、SiC微粉としては200Fを主体として用いることが可能である。
【0025】
また、SiC超微粉は、従来、微粉部の耐蝕性向上を目的に使用温度の低い滓樋材や溶銑樋材には使用されているが、使用温度の高い主樋材には使用されていない。これは、SiC超微粉は高温で酸化されやすく、シリカガラスを生成し易いためである。本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を構成するメタルゾーン用キャスタブル耐火物は、このシリカガラスを生成し易い性質に着目したものであり、SiC超微粉を所定の割合で配合することにより、樋ワーキングライニングが薄くなり、また亀裂から溶銑滓が主樋裏張り材の近くに達し、主樋裏張り材の温度が上昇したときに、シリカガラスを生成して緻密になり、漏銑滓があったときにも急激な浸食を抑制、防止することが可能になる。
【0026】
SiC超微粉の使用量は3〜8重量%が適切であるが、これは、SiC超微粉の割合が3重量%未満になると、シリカガラスの生成が少なくなり、緻密化の効果が不十分になること、SiC超微粉の割合が8重量%を超えると、流動性が悪くなることによる。なお、SiCの全体量としては、請求項1に規定されているように10〜20重量%の範囲で特に問題はない。
【0027】
また、本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物においては、メタルゾーン用キャスタブル耐火物の焼結を促進させるための材料として、B4C又はNiOを適量使用する。B4Cはカーボンの酸化防止材として添加するのでノンカーボン材質の主樋裏張り材には通常添加しない。しかし、本願発明では溶銑滓からの距離が小さくなったとき及び溶銑滓に接したときに、裏張り耐火材を急激に緻密化させる機能を果たすことに着目して、B4Cをガラス化促進材として使用している。その使用量は0.3〜0.8重量%の範囲が適切である。これは、0.3重量%未満ではガラス化促進効果が小さくなり、0.8重量%を超えるとガラスの融点が低くなりすぎることによる。
【0028】
NiOはコークス炉などの溶射材に使用された実績はあるが、高炉主樋裏張り用などの樋材関係の耐火材に使用された事例のない材料である。このNiOは高温でアルミナと反応しニッケルスピネルを生成し組織強化、強度発現の機能を果たす。
高炉主樋裏張り耐火材には通常、易焼結性アルミナが使用されるが、1500℃以下では焼結しない。これに対し、本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物では多量のシリカガラスで焼結させるよう設計するとともに、それをより強化するために、NiOの添加によるニッケルスピネルの生成を利用している。
なお、NiOの添加量は0.3〜2.0重量%の範囲とすることが適切である。これは、0.3重量%未満では強度発現強化が不十分になり、2.0重量%を超えると焼結強度が高すぎてスポーリングを発生しやすくなることによる。
【0029】
また、本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物において、メタルゾーン用キャスタブル耐火物の焼結を促進させるための材料としては、ミクロシリカを使用することも可能である。ミクロシリカは従来の主樋裏張り材にも2〜6重量%程度の範囲で使用されているものである。なお、ミクロシリカの配合割合が3重量%未満では低温から中温での強度発現と焼結促進の効果が少なく、5重量%を超えると乾燥収縮が大きくなる傾向があるので、ミクロシリカは3〜5重量%の範囲で使用することが望ましい。
【0030】
さらに、本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物においては、メタルゾーン用キャスタブル耐火物の硬化強度を確保する目的で、アルミナセメントを使用することが可能であり、その配合割合としては、5〜7重量%の範囲とすることが望ましい。
【0031】
また、メタルゾーン用キャスタブル耐火物には、材料の流動性、硬化を制御する各種分散剤、硬化調整剤を適宜添加することが可能であり、その使用に特別の制約はない。
【0032】
(2)スラグゾーン用キャスタブル耐火物
本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を構成するスラグゾーン用キャスタブル耐火物の骨材としては、従来から使用されている電融アルミナ及びSiCを使用する。電融アルミナの品位はアルミナ純度92%以上であればよい。また、SiCの品位はSiC純度85%以上であればよい。ただし、SiCの純度が92%以上のものを用いることが望ましい。SiC純度が低いと混練水量が多くなり緻密さが低下する場合があり、また、不純物としてのカーボンが増加し、早期焼結を阻害する場合がある。なお、これらSiCについての要件は、メタルゾーン用キャスタブル耐火物に用いられるSiCについても当てはまるものである。
【0033】
また、微粉としては、主として易焼結性アルミナとSiC微粉を用いることが望ましい。易焼結性アルミナは従来の耐火材で使用されているような、平均粒経が2.5μm前後のものを用いることが望ましく、平均粒経が5.0μm前後の仮焼アルミナを一部使用してもよい。これら仮焼アルミナは、合量で10〜15重量%の範囲とすることが望ましく、これは、従来から使用されている範囲である。
【0034】
また、本願発明では、スラグゾーン用キャスタブル耐火物にSiCを20〜40重量%の割合で使用するようにしており、請求項2ではSiC超微粉を3〜8重量%使用するようにしている。SiCとしては、SiC粒、SiC微粉、SiC超微粉を所定の割合で使用する。SiC粒としては粒径が、例えば1mm程度までのもの、SiC微粉としては200Fを主体として用いることが可能である。
【0035】
また、SiC超微粉は、従来、微粉部の耐蝕性向上を目的に使用温度の低い滓樋材や溶銑樋材には使用されているが、使用温度の高い主樋材には使用されていない。これは、SiC超微粉は高温で酸化されやすく、シリカガラスを生成し易いためである。本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を構成するスラグゾーン用キャスタブル耐火物は、このシリカガラスを生成し易い性質に着目し、SiC超微粉を所定の割合で配合することにより、樋ワーキングライニングが薄くなり、また亀裂から溶銑滓が主樋裏張り材の近くに達し、主樋裏張り材の温度が上昇したときに、シリカガラスを生成して緻密になり、漏銑滓があったときにも急激な浸食を抑制、防止することが可能になる。
【0036】
SiC超微粉の使用量は3〜8重量%が適切であるが、これは、SiC超微粉の割合が3重量%未満になると、シリカガラスの生成が少なくなり、緻密化の効果が不十分になること、SiC超微粉の割合が8重量%を超えると、流動性が悪くなることによる。なお、SiCの全体量としては、請求項1に規定されているように20〜40重量%の範囲で特に問題はない。
【0037】
なお、スラグゾーン用キャスタブル耐火物のSiC超微粉とSiC粒(SiC微粉以外のSiC成分)の合量は、(1)耐スラグ性を向上させることができること、(2)メタルゾーン用キャスタブル耐火物の膨張率とスラグゾーン用キャスタブル耐火物の膨張率を一致させることができること等のバランスから決定することが必要である。両者の膨張率を一致させないと、長期使用の間にメタルゾーン用キャスタブル耐火物とスラグゾーン用キャスタブル耐火物の間に水平亀裂を発生させることになる。なお、スラグゾーン用キャスタブル耐火物のSiC超微粉とSiC粒の合量を、実験室の調査で決定することは通常困難であり、本願発明においては、実機における経験から、スラグゾーン用キャスタブル耐火物のSiC粒とSiC超微粉の合量を20〜40重量%の範囲とした。
【0038】
また、本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物においては、スラグゾーン用キャスタブル耐火物の焼結を促進させるための材料として、B4C又はNiOを適量使用する。これら原料の機能と適正量はメタルゾーン用キャスタブル耐火物の項で詳しく述べているのでここではその説明を省略する。
なお、焼結を促進させるための材料としては、ミクロシリカを使用することも可能である。
【0039】
また、スラグゾーン用キャスタブル耐火物には、材料の流動性、硬化を制御する各種分散剤、硬化調整剤を適宜添加することが可能であり、その使用に特別の制約はない。
【0040】
【実施例】
以下、本願発明の実施例を示して、その特徴とするところをさらに詳しく説明する。
表1に示すような割合で、電融アルミナ、易焼結性アルミナ、SiC、シリカ、B4C、NiO、ステンレスファイバー、金属アルミニウム(Met.Al)、アルミナセメント、分散剤、及び硬化調整剤などを配合して、本願発明の実施例にかかる高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物(実施例A,B,C,D,E,Fの試料)を作製した。
なお、実施例A,B,C,D,Eは、メタルゾーン用キャスタブル耐火物であり、実施例Fは、スラグゾーン用キャスタブル耐火物である。
また、比較のため、SiCの200Fは含むが、SiC粒(1mm〜)及びSiC超微粉を含まず、かつ、B4C、NiOを含まないキャスタブル耐火物を作製した。
【0041】
それから、各耐火物(試料)に、それぞれの配合に適した水分を添加し、万能ミキサにより混練して、鋳込み型に流し込んだ。その後、常温で24h養生した後、脱枠し、110℃で24h乾燥して試料とした。
【0042】
そして、このようにして得た試料について、気孔率、常温曲げ強さ、溶損指数(耐蝕性)を調べた。
なお、気孔率(見かけ気孔率)、曲げ強度などの物理特性は、還元雰囲気で1100℃×3h、1400℃×3h、及び酸化雰囲気で1100℃×3h、1400℃×3hの条件で焼成した後、測定した。
また、溶損指数(耐蝕性)は、還元雰囲気で800℃×3h焼成した後、ロータリー式耐蝕性試験機にセットし、銑鉄と高炉スラグを、銑鉄70重量%、高炉スラグ30重量%の比率で混合した浸食材を投入し、1550℃で溶融させて3h浸食テストを行った結果であり、溶損指数は比較例の溶損量を100とした場合の相対値である。
気孔率、常温曲げ強さ、溶損指数の結果を表1に併せて示す。
【0043】
【表1】
【0044】
本願発明のメタルゾーン用試料AではSiC増量とSiC超微粉使用の効果を確認した。樋材での実験結果および実機使用の結果からSiCの合量は19重量%を選択した。またSiC超微粉の使用量は5重量%とした。この試料Aの溶損指数は相対植で79と浸食は低減した。しかし、焼成後の曲げ強さ及び気孔率は比較例とほぼ同じで、早期焼結化の効果は特に認められなかった。
【0045】
試料B、Cでは、試料AにさらにB4Cを各々0.3重量%、0.8重量%添加した。試料B、Cのように、B4Cを添加することにより、溶損指数は試料Aの79より若干少なくなる(試料Bで71、試料Cで75)程度であったが、酸化焼成後の気孔率の減少は大きく、とくにB4Cを0.8重量%添加した試料Cでは、1100℃酸化焼成後では1100℃還元焼成後より4.4%低くなり、1400℃酸化焼成後では1400℃還元焼成後より2.0%低くなっており、気孔率低減の効果が大きかった。ただし、融液をあまり多く生成させると、磨耗の強いメタルゾーンでは施工体が削り取られる危険性があることから、本願発明ではB4Cの配合割合の上限を最大0.8重量%としている。
また、B4Cを添加することにより、中間温度の酸化雰囲気において早期焼結の効果が得られることが確認された。ただし、還元雰囲気での気孔率の減少及び強度向上の効果は比較的小さかった。
【0046】
試料D、Eでは、試料Cに、さらにNiOを各々0.5重量%、2.0重量%添加した。試料D、Eのように、NiOを添加することにより、溶損指数は試料Cの75よりやや増加する(試料Dで77、試料Eで78)が、比較例よりは少なくなっている。一方、還元雰囲気での気孔率の減少及び強度向上は明らかで、早期焼結が実現されることが確認された。
【0047】
また、SiCが34重量%配合された、本願発明のスラグゾーン用キャスタブル耐火物の実施例である試料Fは、比較例に比べて溶損指数が少なくなり、酸化雰囲気及び還元雰囲気のいずれにおいても、焼結性の向上が図られていることがわかる。
【0048】
なお、実機を用いた試験により、上記実施例A〜Eの各試料をメタルゾーンに施工し、スラグゾーンに実施例Fの試料を施工することにより、残厚管理100mmが可能になり、樋材原単位が大幅に低下することが確認されている。
【0049】
なお、本願発明の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物において、耐火物原料の配合割合は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内においてその配合割合を変更することが可能である。
【0050】
本願発明は、さらにその他の点において上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0051】
【発明の効果】
上述のように、本願発明(請求項1)の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法は、スラグゾーンに対応する壁上部には、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物を用い、メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部には、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物を用いて、いわゆるゾーン施工を行うようにしているので、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保するとともに、メタルゾーンからの漏れに対しては、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能になり、主樋全体の強度、耐用性を向上させることが可能になる。
【0052】
また、請求項2の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法のように、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、SiC超微粉:3〜8重量%を含有するものを用いた場合、焼結を早め、かつ、焼結後の耐蝕性低下を最小限に抑えることが可能になり、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保するとともに、メタルゾーンからの漏れに対しては、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能になり、主樋全体の強度、耐用性を向上させることが可能になる。
【0053】
また、請求項3の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法のように、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、平均粒径が0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径が0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有するものを用いた場合、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保し、メタルゾーンからの漏れに対しては、早期焼結性、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能になり、主樋全体の強度及び耐用性をさらに向上させることができるようになる。
【0054】
また、本願発明(請求項4)の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物は、スラグゾーンに対応する壁上部に施工されるべき、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物と、メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部に施工されるべき、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物とを備えているので、この高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を用いることにより、請求項1記載の高炉主樋裏張り用耐火物の施工方法を確実に実施して、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保し、メタルゾーンからの漏れに対しては、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能で、主樋全体の強度、耐用性を向上させることが可能な施工体を形成することができる。
【0055】
また、請求項5の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物のように、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物にSiC超微粉:3〜8重量%を含有させることにより、この高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を用いて請求項2記載の施工方法を実施した場合に、焼結を早め、かつ、焼結後の耐蝕性低下を最小限に抑えることが可能で、スラグゾーンやメタルゾーンからの漏滓、漏銑があった場合にも急激な浸食を防ぐことが可能な施工体を確実に形成することができるようになる。
【0056】
また、請求項6の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物のように、スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物に、平均粒径0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有させることにより、この高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物を用いて請求項3記載の施工方法を実施した場合に、スラグゾーンからの漏れに対しては、十分な耐滓性を確保し、メタルゾーンからの漏れに対しては、早期焼結性、残存膨張性を改善して、急激な損耗を防止することが可能で、主樋全体の強度、耐用性をさらに向上させることが可能な施工体を確実に形成することができる。
Claims (6)
- (a)スラグゾーンに対応する壁上部には、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物を施工し、
(b)メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部には、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物を施工すること
を特徴とする高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法。 - スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、SiC超微粉:3〜8重量%を含有するものを用いることを特徴とする請求項1記載の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法。
- スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物として、平均粒径0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有するものを用いることを特徴とする請求項1又は2記載の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物の施工方法。
- 高炉主樋裏張りに用いられるキャスタブル耐火物であって、
(a)スラグゾーンに対応する壁上部に施工されるべき、SiCを20〜40重量%含有するスラグゾーン用キャスタブル耐火物と、
(b)メタルゾーンに対応する壁下部及び敷部に施工されるべき、SiCを10〜20重量%含有するメタルゾーン用キャスタブル耐火物と
を備えていることを特徴とする高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物。 - スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物のそれぞれが、SiC超微粉:3〜8重量%を含有するものであることを特徴とする請求項4記載の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物。
- スラグゾーン用キャスタブル耐火物及びメタルゾーン用キャスタブル耐火物のそれぞれが、平均粒径0.5mm以下のNiOを外掛けで0.3〜2.0重量%、又は平均粒径0.5mm以下のB4Cを外掛けで0.3〜0.8重量%含有するものであることを特徴とする請求項4又は5記載の高炉主樋裏張り用キャスタブル耐火物。
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