JP2004097436A - 敏感肌の分類方法 - Google Patents

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横田 朋宏
Shunsuke Yamazaki
山崎 俊介
Takeshi Sakamaki
坂巻 剛
Yasushi Kuwabara
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Abstract

【課題】敏感肌に対する重要なケアのために、敏感肌の皮膚生理特性の総合的分類と鑑別方法を見い出すことにある。
【解決手段】敏感肌被験者に対して、下記(1)〜(3)のパラメーターを測定することによって、敏感肌を下記の3タイプに分類する敏感肌の分類方法。
(1)皮膚の角層水分量、経皮水分蒸散量(TEWL)及び表皮の異常角化量である重層剥離量のいずれか一つのパラメーターが、統計処理にて非敏感肌に較べ有意である表皮バリア機能低下タイプ
(2)皮膚膚内部観察による表皮厚さ、及び/又は真皮乳頭層密度のパラメーターが、統計処理にて非敏感肌に較べ有意である炎症タイプ
(3)電気刺激感受性、及び/又は神経成長因子(NGF)産生量のパラメーターのみが非敏感肌に較べ、統計処理にて非敏感肌に較べ有意である知覚過敏タイプ
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、敏感肌の分類方法に関し、詳しくは、敏感肌を、 (1)皮膚の角層水分量、経皮水分蒸散量(TEWL)及び表皮の異常角化量である重層剥離量のいずれか一つのパラメーターが、統計処理にて非敏感肌に較べ有意である表皮バリア機能低下タイプ、(2)皮膚膚内部観察による表皮厚さ、及び/又は真皮乳頭層密度のパラメーターが、統計処理にて非敏感肌に較べ有意である炎症タイプ、(3)電気刺激感受性、及び/又は神経成長因子(NGF)産生量のパラメーターのみが非敏感肌に較べ、統計処理にて非敏感肌に較べ有意である知覚過敏タイプ、の3タイプに分類する敏感肌の分類方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のマーケット調査によると女性の消費者で自分は敏感肌であると考えているヒトは年々増えている。こうした状況から敏感肌対応化粧品の開発が望まれている。一般的に、敏感肌は表皮バリアがダメージを受けた肌であると考えられている。また、近年、センシティブスキンと言う言葉が、一般的に使われるようになり、雑誌等に多く取り上げられている。また、多くの人が“自分は敏感肌である”と認識している。実際に、女性にアンケートを実施した場合、「敏感肌である」と「どちらかと言えば敏感肌である」と回答した人を合計すると約50%に達している。敏感肌は、太陽光、大気汚染、活性酸素、化学物質、温度、乾燥、喫煙、皮膚過洗浄、ストレス等の環境要因によって引き起こされ増悪すると考えられている。敏感肌の鑑別法としては、角質細胞の大きさ等を指標とする方法(例えば、特許文献1、特許文献2参照)が提案されている。また、敏感肌の皮膚生理的特徴として、経皮水分蒸散量、角質水分量、メントール感受性、抗体量、神経選択的電流知覚閾値に関する報告がある(非特許文献1、非特許文献2参照)。更には、スティンギングテストと皮脂量の関係が報告されている(例えば、非特許文献3参照)。更に又、アトピー性皮膚炎患者の皮疹部はNGF量が多く、掻破スコア、痒疹スコア等と正の相関を示すことが報告されている(例えば、非特許文献3参照)。しかし、見かけ上健康肌であるが敏感肌である肌の詳細なる分類とその鑑別方法については報告がされていない。
【0003】
また、本発明者らは、敏感肌は、細胞間脂質のバランス崩壊による水分量の損失した肌であることを報告したが、細胞間脂質のバランス崩壊以外の敏感肌の皮膚生理特性については不明な点が多かった。敏感肌に対する重要なケアは、それぞれの敏感肌タイプに適した処置をすることである。本発明者らは、これらの敏感肌をケアするために、表皮脂質合成活性化効果を持つ物質を経皮投与したところ、バリア機能が改善し、スティンギングスコア減少したタイプが認められた。しかし、このトリートメントにより全ての人が改善するわけではなく、正常な肌にも係わらず、これら敏感肌タイプの皮膚状態を改善するためのケアが必要であることが判った。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−116623号公報(第2頁、特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開2000−212038号公報(第2頁、請求項14)
【非特許文献1】
須貝一郎、他3名,化粧品で感覚刺激を起こしやすい肌(敏感肌)の皮膚生理的特徴(1),日本香粧品科学会 第27回学術大会,講演要旨,2002年5月30日・31日,p52
【非特許文献2】
須貝一郎、他3名,化粧品で感覚刺激を起こしやすい肌(敏感肌)の皮膚生理的特徴(2) 変動肌について,日本香粧品科学会 第27回学術大会,講演要旨,2002年5月30日・31日,p53
【非特許文献3】
小林雄輔、他5名,アトピー性皮膚炎における角質中の神経成長因子に関する研究:NGF量と臨床スコアとの相関,日本研究皮膚科学会 第27回年次学術大会・総会プログラム,2002年8月2日・3日,p125
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記事情に鑑み、本発明の目的とするところは、敏感肌に対する重要なケアのために、皮膚生理特性から敏感肌の総合的で詳細なる分類方法を見い出すことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のように敏感肌群の特に頬の皮膚生理的な特性について調べたところ、同じではないことが判った。そこで、皮膚生理パラメーターとともに、共焦点レーザー顕微鏡、感覚測定器等の新しい非侵襲法等により敏感肌を詳細に調べたところ、敏感肌群が3個の特長的なグループに分けられることが判った。
すなわち、水分量が少なく、テープストリッピングによる細胞剥離量が多い特徴を有する表皮バリアが崩壊した敏感肌タイプ以外に、表皮が厚く、真皮乳頭層密度が高い特徴を有する継続的炎症を受けている敏感肌タイプと、肌状態が正常ではあるが、神経選択的知覚閾値テストによる電気的刺激に鋭敏であることなどを特徴とする知覚過敏の敏感肌タイプがあることを発見した。
【0007】
すなわち、本発明の請求項1は、敏感肌被験者に対して、下記(1)〜(3)のパラメーターを測定することによって、敏感肌を下記の3タイプに分類する敏感肌の分類方法である。
(1)皮膚の角層水分量、経皮水分蒸散量(TEWL)及び表皮の異常角化量である重層剥離量のいずれか一つのパラメーターが、統計処理にて非敏感肌に較べ有意である表皮バリア機能低下タイプ
(2)皮膚膚内部観察による表皮厚さ、及び/又は真皮乳頭層密度のパラメーターが、統計処理にて非敏感肌に較べ有意である炎症タイプ
(3)電気刺激感受性、及び/又は神経成長因子(NGF)産生量のパラメーターのみが、統計処理にて非敏感肌に較べ有意である知覚過敏タイプ
【0008】
本発明の請求項2は、共焦点レーザー顕微鏡を用い、表皮厚さ、及び/又は真皮乳頭層密度を測定する、請求項1記載の炎症タイプ敏感肌の分類方法である。
【0009】
本発明の請求項3は、テープストリッピングにより角層を剥離し、剥離角層細胞中の神経成長因子(NGF)産生量を測定する、請求項1記載の知覚過敏タイプ敏感肌の分類方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明では、敏感肌被験者に対して、下記測定方法にて測定した各パラメータ値について、非敏感肌の各パラメータ値とを統計処理にて有意検定し、危険率5%以下、または危険率1%以下で有意であるものを、下記分類基準によって各敏感肌タイプに分類する。
(1)皮膚の角層水分量が有意に少ない、経皮水分蒸散量(TEWL)が有意に多い、及び表皮の異常角化量である重層剥離量が有意に多い、といういずれか一つの有意値を示す表皮バリア機能低下タイプ
(2)皮膚膚内部観察による表皮厚さが有意に厚い、及び/又は真皮乳頭層密度が有意に高い、といういずれか一つの有意値を示す炎症タイプ
(3)電気刺激感受性のみが有意に高い、及び/又は神経成長因子(NGF)産生量のみが有意に多い、という有意値を示す知覚過敏タイプ
【0011】
先ず、敏感肌と非敏感肌の分類をスティンギングテストで実施する。スティンギングテストとは、下記のように、被験物質である皮膚刺激性化学物質の感覚刺激性を判定する試験である。皮膚生理パラメータ測定及び角層のサンプリングは、例えば22℃、45%R.H.条件下にて、洗顔後、20分間馴化し実施する。尚、本発明は、これら測定箇所、測定条件については、これらに限定されるものではない。
【0012】
(1)スティンギングテスト方法
皮膚刺激性化学物質として、クエン酸、乳酸等の水溶性有機酸を用い、例えば2.5質量%クエン酸(1%CMC溶液)を使用する。試験部位は、頬部等の皮膚を使用する。評価方法として、試験物質を塗布開始直後、複数の所定時間後、スティンギング申告累積スコア(刺激を感じない=0、やや刺激を感じる=1、刺激を感じる=2、激しい刺激を感じる=3)が2以上の被験者をその試料に対する感受性群とする。本発明の分類では、感受性群を敏感肌群として、非感受性群を非敏感肌群とする。尚、本テストを含め、以下のテストの測定部位としては、特に明確な相違がでやすい頬部が好ましい。
【0013】
(2)角層水分量の測定方法
皮膚の角層に存在する水分量である角層水分量の測定方法としては、高周波電流を用いて皮膚の電気インピータンスを測定する方法、例えば3.5MHzの高周波電流を直径2mmのカードリングからなる電極を通して皮膚に流してコンダクタンスを測るSkicon−200(IBS社製)や電気容量から水分量を推定するCorneometer(Courage+Khazaka Germany社製)等を用い測定する方法、赤外線スペクトルを用いる方法、マイクロ波を用いる方法、光音響による方法等が挙げられが、その中でも高周波電流皮表コンダクタンスを測定する方法が好ましい。
【0014】
(3)経皮水分蒸散量(TEWL)の測定方法
皮膚内から皮膚外に蒸散する水分量である経皮水分蒸散量(TEWL)の測定としては、皮膚表面から拡散する水分がFickの法則によると仮定し、皮膚上数mmの2点の蒸気圧を求め皮表から蒸散する水分量を測定する方法である、例えばTewameter(Courage+Khazaka Germany社製)、その他、1cmのカプセルを皮膚に密着させ、カプセル内に窒素ガスを導入(300mL/分)し、カプセルに送りだす前とカプセルから回収した窒素ガス中の水分量を測定する方法であるハイドログラフAMU−100(ケイアンドエス社製)等を用いて測定する。
【0015】
(4)重層剥離量の測定方法
粘着面を有する角質層採取シートを用いるテープストリッピング法によって角質層を採取する。表皮の異常角化によって層状に塊として剥離した重層剥離角質層が付着したシートを透過光にて撮像した画面をイメージプロセッサーによって輝度反転画像にすることにより、角質層が厚く付着している部分ほど高輝度となるので、次ぎの数1の式により表皮の異常の角化である重層剥離量を算出する。この測定方法は、特開平9−131323号公報の記載に準じて実施する。
【0016】
【数1】
Figure 2004097436
【0017】
(5)共焦点レーザー顕微鏡による頬部皮膚観察(表皮の厚さと真皮乳頭密度の測定方法)
非侵襲にて皮膚内部の形態観察が可能な機器である、例えば、In vivo共焦点レーザー顕微鏡(Vivascope1000,Lucid社製,USA)を用い、波長830nmのレーザー光源を用いることにより、ヒト皮膚にダメージを与えることなく、皮膚表面から真皮上層までの任意の水平断面像を得ることが可能となる。被験者の頬部にプローブを接着することにより表皮内部観察を行う。本機器には垂直方向のマイクロメータが付属していて、表皮の厚さ測定と真皮乳頭密度の画像観察が可能である。尚、紫外線等の継続的な炎症を受けると、表皮の厚さが増加することは知られいるが、表皮の厚さや真皮乳頭密度と敏感肌との関連についての報告はない。
【0018】
(6)電気刺激感受性(知覚閾値)の測定方法
末梢神経検査装置として、例えば、ニューロメーター(NEUROTRON、INCORPORATED社製)等を用いて電気的刺激による知覚過敏の程度を調べる。この方法は例えば、皮膚に直径1cmほどの電極(金メッキ電極)を貼り、微弱な交流電流を流すものである。周波数を変えることで、Aβ繊維、Aδ及びC線維を選択的に刺激して、それぞれの絶対値測定が可能である。被験者が感知できる最低レベルの刺激量は、刺激を認識し始めたときに通電した電流量とする。その値をCPT(Current Perception threshold)値として計測する。これにより知覚過敏の評価を行う。
【0019】
(7)神経成長因子(NGF)産生量の測定方法
頬部等の角層中の神経成長因子(NGF)産生量の測定は次ぎのように行う。角層採取は、テープストリッピング により実施する。頬部等から細胞を剥離した後、細かく切り、抗生物質を添加したPBS(−)中に入れて、−20℃に保存した。それを融解後、氷上で超音波破砕し、遠心分離により得られた上清を、角層抽出液とする。この角層抽出液中のNGF含有量をELISA法により測定する。角層抽出液中のタンパク量は測定キット(Bio−Rad)を用いて定量する。
【0020】
【実施例】
(1)スティンギングテスト
皮膚刺激性水溶性化学物質として、2.5質量%クエン酸(1%CMC溶液)を使用した。試験部位は、頬部を使用した。評価方法として、塗布開始直後、2.5分後、5分後のクエン酸に対するスティンギング申告累積スコア(刺激を感じない=0 やや刺激を感じる=1 刺激を感じる=2 激しい刺激を感じる=3)が2以上の被験者をその試料に対する感受性群とする。クエン酸に対する感受性群を敏感肌群として、非感受性群を非敏感肌群とした。
【0021】
(2)スティンギングテストの結果
健常である女性被験者58名(平均年齢29.2歳)に対し、アンケートを実施したところ、「敏感肌である」と「どちらかと言えば敏感肌である」と回答した人の割合は47%であった。更に、この被験者に対し、頬部を使用して上記スティンギングテストを行ったところ、敏感群(クエン酸対して累積スコア3以上の被験者)は24名であり、この数字は全被験者の41%であった。そして自覚敏感肌の人は有意にスティンギングスコアが高かった。故に、スティンギングテストは、敏感肌と非敏感肌を分ける手段として有効である。この時の非敏感肌の人(スコア0)は17名であった。
【0022】
上記スティンギングテストのような化学物質による刺激では、即時的、つまり塗布して直ぐに刺激を感じる場合が多い。このため、角層経由する以外のバイバスルート(汗腺、毛穴)による物質の透過性の関与が指摘されている。そこで、sweat gland(汗腺)の働きを明らかにする実験を行った。その結果、敏感肌は、amount of sweat(汗の量)/sweat gland(汗腺の数)の比が有意に多いことが明らかになった。
この結果から敏感肌群は、汗腺を経由した化学物質(特に水溶性物質)の透過性が亢進した症状を有する可能性が示唆された。
【0023】
(3)敏感肌タイプの分類
以上は、非敏感肌と比較することにより、敏感肌の特徴を記載した。しかし、全ての敏感肌の人が、これら全ての特徴を有している訳ではなく、敏感肌群について更に詳細にデータの解析を行った。その結果、下記の如く、刺激に対して高い感受性を有している3個の特長的なグループに分けることができ、これらの3タイプは、I.表皮バリア機能低下タイプ、II.炎症タイプ、III.見かけ上健康肌であるが知覚過敏のタイプ、であることが判った。
バリア機能が崩壊した敏感肌タイプ(I)のみ、図1に示す通り、Tewameter(Courage+Khazaka Germany社製)を用いて測定した経皮水分蒸散量(TEWL)の有意な増加が認められた。また、図2に示す通り、Skicon−200(IBS社製)を用いて測定した角層水分量に有意な低下が認められた。例えば、経皮水分蒸散量(TEWL)で、タイプIのグループだけ増加しているが、他のタイプのグループは非敏感肌とほぼ同じTEWL値を示している。このことから、これは表皮バリア機能低下タイプ(I)のグループの特徴であることがわかる。
【0024】
次ぎに、皮膚内部観察機器として、In vivo 共焦点レーザー顕微鏡(Vivascope1000,Lucid社製,USA)を用い、波長830nmのレーザー光源にて皮膚内部を非侵襲で観察し、表皮厚さ計測を行った。計測は各部位につき5ヶ所ずつ行い、その平均値を各部位の測定値とした。その結果、表3に示すように、敏感肌群の一つのグループのタイプIIのみが有意に表皮が厚かった。また、真皮乳頭層の共焦点画像を図4に示すが、通常頬部は真皮乳頭層の凹凸が少ないが、太陽光の露光部の肌に特徴的である乳頭層の顕著な凹凸を示す真皮乳頭層の密度が、この炎症タイプ(II)のグループのみに高く、他のグループにはなかった。このことからも、この敏感肌グループは微弱な炎症反応を起こしていると考えられる。
【0025】
更に、電気刺激感受性である知覚過敏反応を客観的データで示すことを目的として、被験者の感じる刺激の絶対評価が可能なニューロメーター(NEUROTRON、INCORPORATED社製)を使って、電気的刺激の知覚閾値の差を測定した。250Hzの電気刺激はAδ線維を選択的刺激し、5Hzの刺激はC線維を選択的に刺激する。その結果を図5に示すが、IIIタイプの敏感肌グループは有意に知覚閾値が低かった。つまり、このグループは化学物質に対する刺激だけではなく、電気的刺激に対しても感受性が高い群であることを示している。
尚、人工的にドライスキンを作製した場合に、表皮への神経線維の陥入が報告され、前記のようにアトピー性皮膚炎患者の痒疹病変部では顕著な神経線維の増加についても報告されている。このことから、敏感肌の特徴的な知覚過敏反応は神経線維との密接な関与が考えられる。このIIIタイプのグループは、電気感受性及び/又はNGF量以外の他の皮膚性状パラメーターが非敏感肌とほぼ同一であるこのことから、この神経線維が関与する知覚過敏反応が特異的に関与しているものと考えられる。
【0026】
続いて、テープストリッピングにより角層を剥離し、前記方法によって角層細胞中のNGFの測定を行ったところ、図6に示す通り、全ての敏感肌グループで、非敏感肌より有意にNGF量が多く、スティンギングスコアが全てのグループで高いことと共通した結果であり、このIIIタイプの知覚過敏グループは、電気感受性及び/又はNGF量以外の他の皮膚性状パラメーターが非敏感肌とほぼ同一であるこのことから、IIIタイプの知覚過敏グループが敏感肌が神経線維との密接な関与が更に示された。
【0027】
上記結果から、今まで同一の特徴を有すると考えられてきた敏感肌について、下記表1の評価シートに示すように、敏感肌を、I.表皮バリアが崩壊したタイプ表皮バリア機能低下タイプ、II.炎症タイプ、III.見かけ上健康肌であるが知覚過敏タイプ、の3タイプの特長的なグループに分類できることが明らかになった。表1で上向きの矢印及び下向きの矢印のパラメーターは各タイプの肌と相関性が高く有意であるパラメーターであり、特に二本の矢印のパラメーターは特に相関性が高く有意であるパラメーターであることを示す。
【0028】
【表1】
Figure 2004097436
【0029】
所で、敏感肌を改善し健康な肌を取り戻す為には、各敏感肌タイプ毎に適切なケアをする必要がある。例えば、バリア機能低下の改善を試みた場合、バリア崩壊タイプは、肌の状態も改善して、刺激に対する感受性も軽減する。しかし、炎症グループと知覚過敏のタイプに対しては明確な効果が得られないことが推測される。何故なら、前述したように、それぞれのタイプのにおいて敏感肌の原因が異なるからである。そこで、敏感肌改善への第1歩として、表皮脂質合成活性化効果を持つ、例えばナイアシンアミド2質量%を含む化粧水(2%NB)を用いて、敏感肌グループの中で、高いスティンギングスコアを有していた女子20名(平均年齢 31.1歳)を前記の3つの敏感肌タイプに分類し、顔面の左右に1品ずつ(placebo、2%NB)の化粧水を1日2回、4週間継続塗布した。皮膚生理パラメーターの測定とスティンギングテストは、試験開始前と4週間の使用試験終了後に行った。半顔による使用において、プラセボ側は連用前後でスティンギングスコア、経皮水分蒸散量とも変化しなかったが、図7、図8に示す通り、表皮バリア機能低下タイプ(I)のグループでは、ナイアシンアミド塗布側で、有意にスティンギングスコアが減少し、TEWLについても減少した。このことから、バリア機能崩壊グループの被験者に対し、細胞間脂質の合成促進効果を有する本剤を塗布することにより、バリア機能が改善し、その結果、刺激に対する耐性も向上した。
【0030】
しかし、本発明者らの予想通りに、このトリートメントにより全ての被験者が改善したわけではなく、スティンギングスコアが変化しない被験者もいた。この被験者は、知覚過敏タイプや炎症タイプに属していた被験者であり、これらのグループには知覚過敏や炎症性の皮膚状態を改善するためのケアが必要であることが判った。
【0031】
【発明の効果】
敏感肌群の頬の皮膚生理的な特性について、非侵襲法により調べたところ、敏感肌を一つのタイプを纏める事は出来ないのであり、敏感肌群が3個の特長的なタイプに分けられることが明らかになった。すなわち、表皮バリアが崩壊し刺激に対する耐性が低下した肌、継続的な炎症を受け、刺激が受けやすくなっている肌、肌状態は正常であるが知覚過敏の肌である。このように敏感肌を一つのタイプを纏める事は出来ないのであり、自分が敏感肌であると感じる人に関して、問診と本発明の皮膚状態測定をきめ細かく行い、その人がどのタイプに属しているかを適切に判断して、それぞれのタイプに対する化粧料等での適切なケアをすることにより、敏感肌は改善できるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】各敏感肌タイプのTEWL値を示す図である。
【図2】各敏感肌タイプの角質水分量を示す図である。
【図3】各敏感肌タイプの表皮厚さを示す図である。
【図4】炎症タイプ(II)の真皮乳頭層の共焦点画像を示す図面代替写真である。
【図5】各敏感肌タイプの電気刺激感受性(知覚閾値)を示す図である。
【図6】各敏感肌タイプのNGF産生量を示す図である。
【図7】表皮バリア機能低下タイプ(I)のナイアシンアミド連用によるスティンギングスコアを示す図である。
【図8】表皮バリア機能低下タイプ(I)のナイアシンアミド連用によるTEWL値を示す図である。

Claims (3)

  1. 敏感肌被験者に対して、下記(1)〜(3)のパラメーターを測定することによって、敏感肌を下記の3タイプに分類する敏感肌の分類方法。
    (1)皮膚の角層水分量、経皮水分蒸散量(TEWL)及び表皮の異常角化量である重層剥離量のいずれか一つのパラメーターが、統計処理にて非敏感肌に較べ有意である表皮バリア機能低下タイプ
    (2)皮膚膚内部観察による表皮厚さ、及び/又は真皮乳頭層密度のパラメーターが、統計処理にて非敏感肌に較べ有意である炎症タイプ
    (3)電気刺激感受性、及び/又は神経成長因子(NGF)産生量のパラメーターのみが非敏感肌に較べ、統計処理にて非敏感肌に較べ有意である知覚過敏タイプ
  2. 共焦点レーザー顕微鏡を用い、表皮厚さ、及び/又は真皮乳頭層密度を測定する、請求項1記載の炎症タイプの敏感肌の分類方法。
  3. テープストリッピングにより角層を剥離し、剥離角層細胞中の神経成長因子(NGF)産生量を測定する、請求項1記載の知覚過敏タイプの敏感肌の分類方法。
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