JP2004094084A - ハロゲン化銀写真乳剤、および熱現像感光材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、高感度で保存性のよいハロゲン化銀写真乳剤を提供することであり、さらに高感度で低いDmin、高いDmaxを持ち、かつ処理後の光画像保存性に優れた熱現像感光材料を提供することである。
【解決手段】80モル%以上100モル%以下の沃化銀を含有し、pAgが5.0以下1.5以上であるハロゲン化銀写真乳剤に於いて、ポーラログラフ半波還元電位が−1.1Vより卑で且つLogPが0.68以上であるシアニン色素の少なくとも一つと該シアニン色素のポーラログラフ半波酸化電位よりも0.2V以上卑のポーラログラフ半波酸化電位を持つ化合物の少なくとも一つとを含有している事を特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
【選択図】 なし
【解決手段】80モル%以上100モル%以下の沃化銀を含有し、pAgが5.0以下1.5以上であるハロゲン化銀写真乳剤に於いて、ポーラログラフ半波還元電位が−1.1Vより卑で且つLogPが0.68以上であるシアニン色素の少なくとも一つと該シアニン色素のポーラログラフ半波酸化電位よりも0.2V以上卑のポーラログラフ半波酸化電位を持つ化合物の少なくとも一つとを含有している事を特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀写真乳剤に関するものである。特に分光感度特に短時間露光における感度が改良された高沃化銀からなるハロゲン化銀写真乳剤に関する。さらに、分光感度が改善された高沃化銀乳剤を用いた熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハロゲン化銀写真感光材料における、高感度、良好な保存性、現像進行性、階調、粒状や鮮鋭度などを改善する要望はますます強くなっている。ハロゲン化銀乳剤は通常、所望の光源により露光させるが、そのためには所望の光源に合致させた分光増感が施される。しかしながら、沃化銀含量が40%以下と少ない沃臭化銀乳剤、臭化銀乳剤、塩臭化銀乳剤や塩化銀乳剤では比較的容易に分光増感を施す事が出来、数多くの分光増感が報告されているのとは大きく異なり、沃化銀含量が80%以上100%以下の高沃化銀写真乳剤の有効な分光増感についての具体的な従来知見は極めて少ない。
【0003】
高沃化銀乳剤の分光増感に関しての具体的報告としては、沃化銀でもpAgを下げれば分光増感でき、pAg6では色素から見た沃化銀の伝導体の底のエネルギーレベルは臭化銀のそれと変わらないとの報告(例えば、非特許文献1参照)、シアニン色素の吸着は臭化銀よりも沃化銀に対しての方が強いとの報告(例えば、非特許文献2参照)、アニオン型シアニン、特にJバンド型アニオンシアニンによる沃化銀の分光増感の開示(例えば、特許文献2参照)、あるいは高沃化銀ではポーログラフ半波酸化電位(以下、Eoxと記述する)が1.0Vよりも貴で且つEoxとポーログラフ半波還元電位(以下、Eredと記述する)との差(Eox−Ered)が2.0Vより大きい増感色素が良く分光増感することの開示(例えば、特許文献1参照)があるに過ぎない。
しかしこれらの手段を用いても高沃化銀写真乳剤では分光増感出来ても、臭
化銀乳剤などに比べても得られた感度よりも遙かに低く、実用的に有用なレベルには遠く及ばない感度しか得られなかった。
また、強力なハロゲンアクセプターが存在しないと、沃化銀では露光により生じる沃度ラジカルの強い酸化を受け極めて感度が出にくい事が報告されており、分光増感に於いても同様に沃度ラジカルの強い酸化を受けるので分光増感もまた困難であることを示唆されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0004】
近年、医療分野や印刷製版分野において環境保全、省スペースの観点から写真現像処理のドライ化が強く望まれている。これらの分野では、デジタル化が進展し、画像情報をコンピューターに取り込み、保存、そして必要な場合には加工し、通信によって必要な場所で、レーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより感光材料に出力し、現像して画像をその場で作成するシステムが急速に広がってきている。感光材料としては、高い照度のレーザー露光で記録することができ、高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することが必要とされている。このようなデジタル・イメージング記録材料としては、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像のように診断能力を決定する画質(鮮鋭度、粒状性、階調、色調)の点、記録スピード(感度)の点で、不満足であり、従来の湿式現像の医療用銀塩フィルムを代替できるレベルに到達していない。
【0005】
一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが、例えば、米国特許3152904号、同3457075号の各明細書およびB.シェリー(Shely) による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第2頁、1996年)に記載されている。特に、熱現像感光材料は、一般に、感光性ハロゲン化銀、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した感光性層を有している。
【0006】
熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。その結果、露光領域に黒色の銀画像が形成される。熱現像感光材料は、米国特許2910377号、特公昭43−4924号をはじめとする多くの文献に開示され、また、実用的には医療用画像形成システムとして富士メディカルドライイメージャーFM−DP Lが発売された。
【0007】
この様な有機銀塩を利用した画像形成システムは、定着工程がないため現像処理後の画像保存性、特に光が当たったときのプリントアウトの悪化が大きな問題であった。このプリントアウトを改良する手段として有機銀塩をコンバージョンすることによって形成した沃化銀を利用する方法がUS−6143488号、EP0922995号に開示されている。しかしながら、ここで開示されたような有機銀塩をヨードでコンバージョンする方法では十分な感度を得ることが出来ず、現実のシステムを組むことは困難であった。その他、沃化銀を利用した感材としてはWO97−48014号、WO48015号、US−6165705号、特開平8−297345号、特許第2785129号等に記載があるが、いずれも十分な感度・かぶりレベルを達成できておらず、レーザー露光感材としての実用に耐えるものではなかった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭49‐17719号公報;p.3の一般式(I)〜(IV)、p.7の化合物(1)〜(23)。
【特許文献2】
特開昭56‐164338号公報;請求の範囲、p.2〜p.3。
【非特許文献1】
P.B.ギルマン、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング、18巻(5)、475頁(1974年発行)
【非特許文献2】
W.L.ガードナー、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング、18巻(5)、475頁(1974年発行)
【非特許文献3】
T.H.ジェームス、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング、5巻、216頁(1961年発行)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、分光感度の高い高沃化銀写真乳剤を提供することである。本発明の目的の第2は、高感度で低いDmin、高いDmaxを持ち、かつ現像処理後の光に対する画像保存性に優れた熱現像感光材料を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、下記の本発明のハロゲン化銀写真乳剤、および熱現像感光材料によって達成された。
(1)80モル%以上100モル%以下の沃化銀を含有し、pAgが5.0以下1.5以上であるハロゲン化銀写真乳剤に於いて、ポーラログラフ半波還元電位が−1.1Vより卑で且つLogPが0.68以上であるシアニン色素の少なくとも一つと該シアニン色素のポーラログラフ半波酸化電位よりも0.2V以上卑のポーラログラフ半波酸化電位を持つ化合物の少なくとも一つとを含有している事を特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
(2)支持体の一方面上に少なくとも1種類の感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤及びバインダーを含有する熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀が80モル%以上100モル%以下の沃化銀を含有し、pAgが5.0以下1.5以上で、ポーラログラフ半波還元電位が−1.1Vより卑で且つLogPが0.68以上であるシアニン色素の少なくとも一つと該シアニン色素のポーラログラフ半波酸化電位よりも0.2V以上卑のポーラログラフ半波酸化電位を持つ化合物の少なくとも一つとを含有している事を特徴とする熱現像感光材料。
(3)前記ポーラログラフ半波還元電位が−1.2Vより卑であることを特徴とする(2)に記載の熱現像感光材料。
(4)前記ポーラログラフ半波還元電位が−1.25Vより卑でであることを特徴とする(2)に記載の熱現像感光材料。
(5)前記LogPが0.70以上であることを特徴とする(2)〜(4)に記載の熱現像感光材料。
(6)前記LogPが0.10以上であることを特徴とする(2)〜(4)に記載の熱現像感光材料。
(7)前記ポーラログラフ半波酸化電位が0.3V以上卑であることを特徴とする(2)〜(6)に記載の熱現像感光材料。
(8)前記ポーラログラフ半波酸化電位が0.4V以上卑であることを特徴とする(2)〜(6)に記載の熱現像感光材料。
(9)前記感光性ハロゲン化銀が90モル%以上100モル%以下の沃化銀を含有することを特徴とする(2)〜(8)に記載の熱現像感光材料。
(10)前記感光性ハロゲン化銀の粒子サイズが10nm〜45nmであることを特徴とする(2)〜(9)に記載の熱現像感光材料。
(11)前記感光性ハロゲン化銀を非感光性有機銀塩1モルに対して1モル〜7モル含むことを特徴とする(2)〜(10)に記載の熱現像感光材料。
(12)前記感光性ハロゲン化銀乳剤が予め粒子形成され、化学増感された後に前記非感光性有機銀塩と混合されることを特徴とする(2)〜(11)に記載の熱現像感光材料。
(13)前記pAgが5.0以下、好ましくは4.0以下、およびpAgが1.5以上、好ましくは2.0以上、更に好ましくは2.5以上の条件で分光増感を施されていることを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(14)前記感光性ハロゲン化銀粒子が、エピタキシャル形成された部分を持ち、好ましくはそれが臭化銀、塩化銀を含む(1)および(13)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(15)前記感光性ハロゲン化銀粒子が、転位線や格子欠陥を含む(1)および(13)〜(14)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(16)前記感光性ハロゲン化銀粒子の粒子サイズが、0.5μm以下、好ましくは0.1μm以下、更に好ましくは0.05μm以下であり、および0.005μm以上であり、また粒子サイズの変動係数が、30%以下、好ましくは25%以下、特に好ましくは20%以下である(1)および(13)〜(15)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(17)pAgが5.0以下、好ましくは4.0以下、およびpAgが1.5以上、好ましくは2.0以上、更に好ましくは2.5以上の条件のもと、カルコゲン増感法、金増感法及び還元増感法の少なくとも一つの方法で化学増感されている事を特徴とする(1)および(13)〜(16)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(18)前記感光性ハロゲン化銀粒子が、8族金属、例えば、Fe、Ir、Ru、Rh、Osなどを、さらにそれらの無機や有機の4ないし6配位錯体を含む(1)および(13)〜(17)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(19)前記感光性ハロゲン化銀乳剤が、米国特許5413905号、同5482825号、同5747235号、同5747236号、同5994051号、同6054260号に記載のFED化合物を含む(1)および(13)〜(18)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(20)前記感光性ハロゲン化銀乳剤が(13)〜(19)に記載のハロゲン化銀写真乳剤である(2)に記載の熱現像感光材料。
(21)レーザー光で露光されることを特徴とする(2)〜(12)、および(20)に記載の熱現像感光材料。
(22)前記レーザー光のピーク波長が600nm以上900nm以下であることを特徴とする(21)に記載の熱現像感光材料。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0012】
1.ハロゲン化銀写真乳剤
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀写真乳剤は、沃化銀含有率が80モル%以上100モル%以下と高い組成の高沃化銀乳剤である。この乳剤をpAgが5.0以下好ましくは4.0、およびpAgが1.5以上、好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.5以上の条件のもとでEredが−1.1Vより卑、好ましくは−1.2Vより卑、より好ましくは−1.25Vより卑で、且つLogPが0.68以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは1.0以上であるシアニン色素の少なくとも一つと該シアニン色素のEoxよりも0.2V以上卑、好ましくは0.3V以上卑、より好ましくは0.4V以上卑のEoxを持つ化合物の少なくとも一つとで分光増感することにより本発明を達成できる。
【0013】
1−1.分光増感
分光増感は分光増感色素をハロゲン化銀粒子に吸着せしめ、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を増感させる技術であり、露光光源の分光特性に適した分光感度を付与する為には、分光増感色素がハロゲン化銀粒子に吸着できる事が必要であり、吸着した状態での増感色素の吸収が露光光源の分光特性に出来る限り合致している事が必要である。本発明の熱現像感光材料では、450nm以上900nm、特に600nm以上900nm以下に分光感度ピークを持つように分光増感されていることが好ましい。
高沃化銀を分光増感するには臭化銀よりも、ポーラログラフ還元電位がより卑の色素を用いる必要がある。しかしながら、600nmよりも長波長に分光感度を持ち且つEredが十分卑である色素を設計、合成する事は容易い事ではない。分光増感技術には強色増感と言う技術があるが、この強色増感技術を用いることによって適用できる増感色素のEredの限界をより貴に出来る。
本発明は、増感色素のEoxよりも0.2V以上卑のEoxを持つ化合物を同時に用いる事により、−1.1Vより卑のEredと0.68以上のLogPを持つシアニン色素が好ましく適用できる事を開示した物である。
【0014】
前述、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング 21巻6号325頁1977年発行でのW.H.Gardnerの報告ではシアニン色素の沃化銀粒子に対する吸着は臭化銀に対するよりも強いとされ、特登2,785,129号明細書ではアニオンシアニン色素が沃化銀の分光増感に優れていると開示されているが、大概のシアニン色素ではそのような事実は観測されなかった。親水性の非常に高いものは別として、疎水性の低いアニオンシアニン色素でも臭化銀粒子や沃化銀20モル%以下の沃臭化銀粒子には良好に吸着することは関係技術者には良く知られている事実であるが、本発明の高沃化銀への吸着は、先の文献からの予測に反して、非常に悪かった。例えば、親疎水性の指標であるLogPが0.6位のアニオンシアニンの沃化銀粒子に対する吸着率は50%以下にしか過ぎなかった。かかるシアニン色素ではEredが分光増感の閾値を超える程十分に卑であっても吸着が悪いため、低い分光感度しか得られなかった。
【0015】
かかる状況下にあって、シアニン色素のLogPを大きくすることによって、高沃化銀粒子への吸着を臭化銀並に良化できる事を見出した。即ち、LogPが0.7以上になれば良いことを見出した。より好ましくはLogP1.0以上にすれば良かったがそれでも不十分であった。シアニン色素の吸着はpAgが高い程良いとされているが、意外なことに高沃化銀では、pAg6でのシアニン色素の吸着は悪く、LogPの大きな色素を用いても吸着は不十分であり、pAgがより高くなるとその傾向は増大した。しかしながら、pAgを5.0〜1.5に、より好ましくは5.0〜2.0に保って吸着させれば、LogPが0.7以上のシアニン色素では十分に吸着させられる事を見出した。 それでも、このような、良く吸着しうる色素を、良く吸着出来る条件下で用いても、高沃化銀乳剤では、高い分光感度が得られると限らなかった。例えば、臭化銀乳剤ではEredが−1.30V以上の物で良好な分光感度が得られるが、本発明の高沃臭化銀乳剤では必ずしも高い感度は得られず、Eredが−1.35Vより卑のシアニン色素を、pAg5.0以下1.5以上、より好ましくはpAg4.0以下2.0以上に該乳剤を保って分光増感を施こさねば、高い分光感度が得られなかった。
【0016】
本発明者による大きな発見は、シアニン色素に対して該シアニン色素のEoxよりも0.2V以上卑の化合物を補助増感剤として同時に用いる事によって、Eredが−1.1Vより卑のシアニン色素でも良好な分光感度が得られる事を見出したことである。この事は、適用できる増感色素が広げられ、感光材料の設計、製造にとっては極めて有益且つ価値あるものである。
【0017】
本発明において、シアニン色素のEredは、−1.1Vより卑、好ましくは−1.2Vより卑、より好ましくは、−1.25V より卑である。下限については特に制限がないが、化合物の合成適性や化合物の安定性などから実用的に使用可能な範囲から制約されるものである。
【0018】
本発明において、シアニン色素のLogPは、0.68以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは1.0以上である。上限については特に制限がないが、LogPが高すぎると溶媒への溶解性が低下し実質的に添加あうることができなくなることや塗布液中での安定性が低下し均一な塗布膜が得られないなどの問題が生じるので、実用的に使用可能な範囲から制約されるものである。
【0019】
併用する補助増感剤のEoxは、シアニン色素のEoxとの関係で選ばれ、本発明においてはシアニン色素のEoxより0.2V以上卑であることが必要であり、好ましくは0.3V以上、より好ましくは0.4V以上である。上限については特に制限がないが、化合物の合成適性や化合物の安定性などから実用的に使用可能な範囲から制約されるものである。
【0020】
また、シアニン色素としては、Jハ゛ント゛型の吸収を与える物が、より高い光吸収率をもたらすので好ましい。
【0021】
本発明の増感色素の具体例としては、例えば、リサーチ・ディスクロージャー誌(Reserch Disclosure)176巻アイテム17643(RD17643)、同187巻アイテム18716(RD18716)及び308巻アイテム308119(RD308119)に記載の特許明細書に記載されているようなシアニン色素でEredが−1.1Vより卑で且つLogPが0.68以上であるシアニン色素が挙げられる。
【0022】
補助増感剤として用いられるシアニン色素のEoxより0.2V以上卑の化合物としては、該要件を満たす化合物なら何でもよいが、好ましい化合物としては英国特許1310994号、米国特許3282932号等に開示されているアミノスチリル化合物、特開平5−216152号等に記載の置換ヒト゛ラシ゛ン化合物及び特開平7−5615号、特開平7−13290等に記載の化合物などが上げられるが、次の一般式(SS−I)または(SS−II)で表される化合物が特に好ましい。
【0023】
一般式(SS−I)
【化1】
【0024】
ここで、R1及びR2は炭素総数10以下のアルキル基、アルコキシアルキル基を表すかR1はR3と、R2はR4と連結してフ゜ロヒ゜レン基を形成しても良い。またR3及びR4は水素原子または電子供与性基をも表し、R5は水素原子または電子供与性基を表わすが、同種または異種の基が複数個置換されていても良い事もあわらす。R6及びR7は同種または異種でも良く、水素原子または炭素総数6以下の電子供与性基を表し、R6とR7が連結してヘ゛ンソ゛環、シ゛オキシメチレン環、シ゛オキシエチレン環及びシ゛メチレンオキシ環等のように縮合環を形成できる事も表す。
【0025】
一般式(SS−II)
【化2】
【0026】
ここで、Qは含窒素5員環または6員環を形成するに必要な非金属原子群を表し、Zは硫黄原子、酸素原子、セレン原子をあらわす。
R11、R12及びR13は同一でも異なっていても良く、炭素数6以下のアルキル基またはアルコキシアルキル基を表す。R14は炭素数10以下の鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子が含まれていても良い2価基を表す
R15、R16、R17及びR18は同一でも異なっていても良く、水素原子または炭素総数6以下の電子供与性基を表し、R15とR16、R17とR18がそれぞれ連結してヘ゛ンソ゛環、シ゛オキシメチレン環、シ゛オキシエチレン環及びシ゛メチレンオキシ環等のように縮合環を形成できる事も表す。
【0027】
増感色素のポーラログラフ半波還元電位(Ered)及びポーラログラフ半波酸化電位(Eox)は、谷、大関、関 ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカルソサイティー(T.Tani,K.Ohzeki,K.Seki,Journal of the Electrochemical Society)138巻 1411頁及びレナード、ジャーナル オブ イメージング サイエンス(J.Lenhard,Journal of Imaging Science) 30巻 27頁に記載の位相弁別第二高調波交流ボルタンメトリー法により測定すればよい。
また、本発明に於ける増感色素のLogPは、次式に従い、液体クロマトグラフィーの保持時間により算出した。
【0028】
LogP=Log{(tR−t0)/t0}
【0029】
ここで、tRは増感色素の保持時間、t0は非保持物質(KI)の保持時間である。液体クロマトグラフィーの測定条件は次の通りである。カラムはODS−80TS(TOSO社製)、溶離液は、メタノール・水(60:40)混合液に酢酸及びトリエチルアミンをそれぞれ0.2%含有させた溶液で、25℃で測定した。尚、保持時間が遅い色素については、酢酸及びトリエチルアミンをそれぞれ0.2%づつ含有させたメタノール・水(70:30)の溶離液で測定し、検量線から前述メタノール・水(60:40)溶離液に換算した。
【0030】
該増感色素及び該増感色素のEoxよりも0.2V以上卑のEoxを持つ化合物を本発明の高沃化銀乳剤に添加、含有せしめるには、関係技術者には周知である通常の方法を用いればよい。即ち、直接乳剤中に分散させても良いし、水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセルソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解しても良い。 また、米国特許3,469,987号明細書等に記載の如き色素を揮発性の有機溶剤に溶解し、該溶液を水または親水性コロイド中に微分散した液を乳剤中に添加する方法、特公昭46−23,389号、特公昭44−27,555号、特公昭57−22,091号等に記載されている如き、色素を酸に溶解し、その溶液を乳剤中に添加したり、酸または塩基を共存させて水溶液とし、そのまま乳剤中に添加したり、親水性コロイド中に分散した分散液を乳剤中に添加する方法、米国特許3,822,135号、米国特許4,006,025号明細書等に記載の如き、界面活性剤を共存させて水溶液或いはコロイド微分散物としたものを乳剤中に添加する方法、特開昭53−102,733号、特開昭58−105,141号に記載の如き、水または親水性コロイド中に色素を直接微分散させ、その分散物を乳剤中に添加する方法等を用いることも出来る。
本発明の増感色素は単独で用いてもよく、本発明に関わる色素同士或いは本発明以外の増感色素と組合せて2種以上で用いてもよい。
【0031】
本発明に用いる増感色素を本発明の高沃化銀乳剤中に添加する時期は、沃臭化銀乳剤、塩臭化銀等の他の乳剤で此まで有用で有ることが認められている乳剤調製の如何なる工程中であってもよい。例えば、米国特許2,735,766号、米国特許3,628,960号、米国特許4,183,756号、米国特許4,225,666号、特開昭58−184,142号、特開昭60−196,749号等の明細書に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程または/及び脱塩前の時期、脱塩工程中及び/または脱塩後から化学熟成の開始前までの時期、特開昭58−113,920号等の明細書に開示されているように、化学熟成の開始直前または工程中の時期、化学熟成後塗布迄の時期の乳剤が塗布される前なら如何なる時期、工程に於いて添加されても良い。また、米国特許4,225,666号、特開昭58−7,629号等の明細書に開示されているように同一増感色素を単独で、または異種構造の化合物と組み合わせて、例えば、同一工程中または粒子形成工程中と化学熟成工程中や化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどの異種工程に分割して添加しても良く、分割して添加する化合物及び化合物の組み合わせの種類を変えて添加されても良い。
また、短時間で所定量を添加しても良いし、長時間、例えば粒子形成工程中の核形成後から粒子形成完了迄や化学熟成工程の大半などに亘って任意の工程に於いて連続的または間欠的に添加しても良い。かかる場合の添加速度は等速流量でも、流量をを加速したり、減速しても良いが、所定量の少なくとも一部を添加開始時に一気に添加するのがより好ましい。
増感色素のEoxよりも0.2V以上卑のEoxを持つ化合物の添加時期は特に制限はないが、増感色素と同時か、増感色素を添加した後に添加する方がより好ましい。
添加する温度は任意で良いが、通常は20℃〜75℃が用いられる。一定温度で添加、熟成しても良いし、添加中に温度を変えても、添加時と添加後の熟成時の温度を変えても良い。所定量の少なくとも一部を45℃以下で短時間内に一気に添加しその後50℃〜65℃に上げ、熟成したり、残りを添加する方法はより好ましい。
【0032】
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光性層のハロゲン化銀粒子の表面積1m2当たり1x10−7〜3.5x10−6モルが好ましく、さらに好ましくは8x10−7〜2x10−6モルである。
また増感色素のEoxよりも0.2V以上卑のEoxを持つ補助増感剤の添加量は添加する増感色素全量に対して、2mol%〜200mol%が好ましく、より好ましくは5mol%〜30mol%である。
【0033】
本発明は分光増感効率を更に向上させる為、その他の強色増感剤を用いることもできる。本発明に用いうる強色増感剤としては、欧州特許公開第587,338号、米国特許第3,877,943号、同第4,873,184号、特開平5−341432号、同11−109547号、同10−111543号等に記載の化合物が挙げられる。
【0034】
本発明の増感色素の具体例を下記のS−1〜S−5に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
【化3】
【0036】
本発明の補助増感剤の具体例を下記のSS−1〜SS−5に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【化4】
【0038】
1−2.沃化銀含量
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、沃化銀含有率が80モル%以上100モル%以下と高い組成のものであることが重要である。残りは特に制限はなく、塩化銀、臭化銀またはチオシアン酸銀や燐酸銀などの有機銀塩から選ぶことができるが、特に臭化銀、塩化銀であることが好ましい。この様な沃化銀含有率が高い組成のハロゲン化銀を用いることによって、現像処理後の画像保存性、特に光照射によるカブリの増加が著しく小さい好ましい熱現像感光材料が設計できる。さらに、沃化銀含有率が85モル%以上100モル%以下であると好ましく、特に90モル%以上100モル%以下であることが処理後の光照射に対する画像保存性の観点では極めて好ましい。
【0039】
粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子も好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。コア部の沃化銀含有率が高いコア高沃化銀構造、またはシェル部の沃化銀含有率が高いシェル高沃化銀構造も好ましく用いることができる。また、粒子の表面にエピタキシャル部分とした塩化銀や臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0040】
1−3.ハロゲン化銀粒子サイズ
本発明に用いる高沃化銀の粒子サイズは特に制限はないが、0.5μm以下、好ましくは0.2μm以下、特に好ましくは0.05μm以下が好ましい。さらに本発明の粒子を熱現像感材に用いる場合には、粒子サイズが5nm以上90nm以下であることが好ましい。ハロゲン化銀のサイズが大きいと、必要な最高濃度を達成するために必要なハロゲン化銀の塗布量が増加する。本発明者は、本発明で好ましく用いられる沃化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は、その塗布量が多いと現像が著しく抑制され低感化するとともに現像の時間に対する濃度安定性が悪化し好ましくなく、そのため一定以上の粒子サイズでは所定の現像時間で最高濃度が得られないことを見出した。一方、その添加量を制限すれば沃化銀ながら十分な現像性を有することを発見した。
この様に沃化銀を用いる場合には、十分な最高光学濃度を達成するためにはハロゲン化銀粒子のサイズは十分に小さいことが必要である。好ましいハロゲン化銀の粒子サイズは5nm以上70nm以下であり、さらに5nm以上55nm以下であることが好ましい。特に好ましくは10nm以上45nm以下である。ここでいう粒子サイズとは、電子顕微鏡により観察した投影面積と同面積の円像に換算したときの直径の平均をいう。
【0041】
1−4.ハロゲン化銀の塗布量
この様なハロゲン化銀粒子の塗布量は、後述する非感光性有機銀塩の銀1モルに対して0.5モル%以上15モル%以下、好ましくは0.5モル%以上12モル%以下、10モル%以下であることがさらに好ましい。1モル%以上9モル%以下であることがより好ましく、特に好ましくは1モル%以上7モル%以下である。本発明者の見出した沃化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀による著しい現像抑制を押さえるためには、この添加量の選択は極めて重要である。
【0042】
1−5.ハロゲン化銀粒子形成方法
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特開平11−352627号、特願2000−42336号記載の方法も好ましい。
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができる。本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は複雑な形態を取り得るが、好ましい形態は例えば、R.L.JENKINS etal. J of Phot. Sci. Vol.28 (1980)のp164−Fig1に示されているような接合粒子が挙げられる。同Fig.1に示されているような平板上粒子も好ましく用いられる。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い[100]面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数[100]面の比率は増感色素の吸着における[111]面と[100]面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
【0043】
1−6.重金属イオン
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第8族〜第10族の金属または金属錯体を含有することができる。周期律表の第8族〜第10族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくは、ロジウム、ルテニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10−9モルから1×10−3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加法については特開平7−225449号、特開平11−65021号段落番号0018〜0024、特開平11−119374号段落番号0227〜0240に記載されている。
【0044】
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)6]4−、[Fe(CN)6]3−、[Ru(CN)6]4−、[Os(CN)6]4−、[Co(CN)6]3−、[Rh(CN)6]3−、[Ir (CN)6]3−、[Cr(CN)6]3−、[Re(CN)6]3−などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン)を用いることが好ましい。
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
【0045】
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10−5モル以上1×10−2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10−4モル以上1×10−3モル以下である。
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、または化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
尚、六シアノ金属錯体の添加は、粒子形成をするために添加する硝酸銀の総量の96質量%を添加した後から開始してもよく、98質量%添加した後から開始するのがより好ましく、99質量%添加した後が特に好ましい。
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、AgIよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となった。
【0046】
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号段落番号0046〜0050、特開平11−65021号段落番号0025〜0031、特開平11−119374号段落番号0242〜0250に記載されている。
【0047】
1−7.化学増感
P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号などに記載されている不安定硫黄化合物を用いた硫黄増感法、特公昭43ー13489号、同44ー15748号、特開平4ー25832号、同4ー109340号、同4ー271341号、同5ー40324号、同5ー11385号、特願平4ー202415号、同4ー330495号、同4ー333030号、同5ー4203号、同5ー4204号、同5ー106977号、同5ー236538号、同5ー241642号、同5ー286916号などに記載されているセレン化合物を用いるセレン増感法、特開平4ー224595号、同4ー271341号、同4ー333043号、同5ー303157号、同6−27573号、同6−175258号、同6−180478号、同6−208186号、同6−208184号、同6−317867号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号などに記載されている不安定テルル化合物を用いるテルル増感法などのカルコゲン増感法を用いる事が出来る。
特に本発明においてはセレン増感とテルル増感が好ましく、特にテルル増感が好ましい。
また、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金増感剤、金以外の、白金、パラジュウム、イリジュウムなどの貴金属塩を用いる事も出来る。
金増感は単独で用いることもできるが、前記のカルコゲン増感と組み合わせて用いることが好ましい。具体的には金硫黄増感、金セレン増感、金テルル増感、金硫黄セレン増感、金硫黄テルル増感、金セレンテルル増感、金硫黄セレンテルル増感である。
更にまた、本発明においてカルコゲン増感や金増感に加えて、還元増感も併用することができる。とくにカルコゲン増感と併用するのが好ましい。
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、金増感、およびカルコゲン増感の少なくとも1つの方法で化学増感されていることが高感度の熱現像感光材料を設計する点から必要である。
【0048】
本発明における感光性ハロゲン化銀乳剤は、1光子で2電子を発生させる化合物としてFED増感剤(Fragmentable electron donating sensitaizer)を含有することが好ましい。FED増感剤としては、米国特許5413905号、同5482825号、同5747235号、同5747236、同6054260号、同5994051号、特願2001−86161号に記載の化合物が好ましい。FED増感剤の添加する工程としては結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でも好ましい。添加量としては、種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10−7モルから10−1モル、より好ましくは10−6モル〜5×10−2モルである。
【0049】
1−8.ゼラチン
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、分子量は、500〜60,000の低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。
【0050】
1−9.ハロゲン化銀の併用
本発明に用いられる熱現像感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57−119341号、同53−106125号、同47−3929号、同48−55730号、同46−5187号、同50−73627号、同57−150841号などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
【0051】
1−10.ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法
本発明の感光性ハロゲン化銀の粒子は、非感光性有機銀塩の存在しないところで形成され、化学増感されることが特に好ましい。有機銀塩に対してハロゲン化剤を添加することによってハロゲン化銀を形成する方法では十分な感度が達成できない場合があるからである。
このように非感光性有機銀塩の存在しないもとでハロゲン化銀を形成する方法としては、別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があげられる。いずれの方法でも本発明の効果を好ましく得ることができる。
本発明のハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳”液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0052】
2.熱現像感光材料
本発明の熱現像感光材料は、支持体の一方面上に少なくとも1種類の前述の感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤及びバインダーを含有する画像形成層を有している。また、好ましくは画像形成層の上に中間層、表面保護層、あるいはその反対面にバック層やバック保護層などを有してもよい。
これらの各層の構成、およびその好ましい成分について詳しく説明する。
【0053】
2−1.画像形成層
2−1−1.有機銀塩
本発明に用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は還元できる銀イオン源を含む任意の有機物質であってよい。
このような非感光性の有機銀塩については、特開平10−62899号の段落番号0048〜0049、欧州特許第0803764A1号の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号等に記載されている。有機酸の銀塩が好ましく、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。
有機銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、これらの混合物などを含む。本発明においては、これら有機銀塩の中でも、ベヘン酸銀含有率75モル%以上の有機酸銀を用いることが好ましい。
【0054】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はなく、針状、棒状、平板状、りん片状でよく、針状、りん片状が好ましく、特にりん片状が好ましい。
本明細書において、りん片状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機酸銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機酸銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短かい方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
【0055】
x=b/a
【0056】
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは15≧x(平均)≧1.5である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μm以上0.3μmが好ましく、0.1μm以上0.23μm以下がより好ましい。c/bの平均は好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下、さらに好ましくは1以上3以下、特に好ましくは1以上2以下である。
【0057】
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。
【0058】
測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩を市販で得られるレーザー光散乱型粒子サイズ測定装置で測定することができる。
【0059】
本発明に用いられる有機銀塩の製造及びその分散法は、公知の方法等を適用することができる。例えば上記の特開平10−62899号、欧州特許公開第0803763A1、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号、特願平11−348228〜30号、同11−203413号、特願2000−90093号、同2000−195621号、同2000−191226号、同2000−213813号、同2000−214155号、同2000−191226号等を参考にすることができる。
【0060】
なお、有機銀塩の分散時に、感光性銀塩を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下するため、分散時には感光性銀塩を実質的に含まないことがより好ましい。本発明は、分散される水分散液中での感光性銀塩量は、その液中の有機酸銀塩1モルに対し0.1モル%以下であり、積極的な感光性銀塩の添加は行わないことが望ましい。
【0061】
本発明の有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5.0g/m2が好ましく、より好ましくは1.0〜3.0g/m2、さらに好ましくは1.2〜2.5g/m2である。
【0062】
2−1−2.還元剤
本発明の熱現像感光材料は、有機銀塩のための還元剤を含む。該還元剤は、銀イオンを金属銀に還元できる任意の物質(好ましくは有機物)でよい。該還元剤の例は、特開平11―65021号、段落番号0043〜0045や、欧州特許0803764号、p.7、34行〜p.18、12行に記載されている。
【0063】
本発明に用いられる好ましい還元剤は、フェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤、あるいはビスフェノール系還元剤である。特に次の一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【0064】
一般式(I)
【化5】
【0065】
一般式(I)においては、R11およびR11’は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。X1およびX1’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
【0066】
各置換基について詳細に説明する。
1)R11およびR11’
R11およびR11’は各々独立に置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等があげられる。
【0067】
2)R12およびR12’、X1およびX1’
R12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
X1およびX1’は、各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基があげられる。
【0068】
3)L
Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。
R13の無置換のアルキル基の具体例はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基などがあげられる。
【0069】
アルキル基の置換基の例はR11の置換基と同様で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基などがあげられる。
【0070】
4)好ましい置換基
R11およびR11’として好ましくは炭素数3〜15の2級または3級のアルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基などがあげられる。R11およびR11’としてより好ましくは炭素数4〜12の3級アルキル基で、その中でもt−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0071】
R12およびR12’として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などがあげられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基である。
【0072】
X1およびX1’は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基で、より好ましくは水素原子である。
Lは好ましくは−CHR13−基である。
【0073】
R13として好ましくは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基が好ましい。R13として特に好ましいのは水素原子、メチル基、プロピル基またはイソプロピル基である。
【0074】
R13が水素原子である場合、R12およびR12’は好ましくは炭素数2〜5のアルキル基であり、エチル基、プロピル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
R13が炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基である場合、R12およびR12’はメチル基が好ましい。R13の炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が更に好ましい。
【0075】
R11、R11’およびR12、R12’とがいずれもメチル基である場合、R13は2級のアルキル基であることが好ましい。この場合、R13の2級アルキル基としてはイソプロピル基、イソブチル基、1−エチルペンチル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
【0076】
上記還元剤は、R11、R11’およびR12およびR12’、およびR13の組合せにより、種々の熱現像性能が異なる。2種以上の還元剤を種々の混合比率で併用することによってこれらの熱現像性能を調整することができるので、目的によっては還元剤を2種類以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0077】
以下に本発明の一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
【化6】
【0079】
【化7】
【0080】
【化8】
【0081】
特に(I−1)〜(I−20)に示すような化合物であることが好ましい。
【0082】
本発明において還元剤の添加量は0.01〜5.0g/m2であることが好ましく、0.1〜3.0g/m2であることがより好ましく、画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5〜50%モル含まれることが好ましく、10〜40モル%で含まれることがさらに好ましい。
【0083】
本発明の還元剤は、有機銀塩、および感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層、およびその隣接層に添加することができるが、画像形成層に含有させることがより好ましい。
【0084】
本発明の還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
【0085】
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0086】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。好ましくは、サンドミルを使った分散方法である。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることができる。
【0087】
特に好ましいのは、還元剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜2μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
【0088】
2−1−3.現像促進剤
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤として特開2000−267222号や特開2000−330234号等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開2001−92075号記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10−62895号や特開平11−15116号等に記載の一般式(I)、特願2001−074278号に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特願2000−76240号に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物が好ましく用いられる。これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1〜20モル%の範囲で使用され、好ましくは0.5〜10モル%の範囲で、より好ましくは1〜5モル%の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられるが、特に固体分散物または乳化分散物として添加することが好ましい。乳化分散物として添加する場合、常温で固体である高沸点溶剤と低沸点の補助溶剤を使用して分散した乳化分散物として添加するか、もしくは高沸点溶剤を使用しない所謂オイルレス乳化分散物として添加することが好ましい。
【0089】
本発明においては上記現像促進剤の中でも、特願2001−074278号に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物および特願2000−76240号に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物が特に好ましい。
【0090】
以下、本発明の現像促進剤の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
【化9】
【0092】
2−1−4.水素結合性化合物
本発明では、還元剤の芳香族性の水酸基(−OH)と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。
【0093】
水素結合を形成しうる基としては、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、含窒素芳香族基などが挙げられる。その中でも好ましいのはホスホリル基、スルホキシド基、アミド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレタン基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレイド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)を有する化合物である。
【0094】
本発明で、特に好ましい水素結合性化合物は下記一般式(A)で表される化合物である。
【0095】
【化10】
【0096】
一般式(A)においてR21ないしR23は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
【0097】
R21ないしR23が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基などがあげられ、置換基として好ましいのはアルキル基またはアリール基でたとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基、フェニル基、4−アルコキシフェニル基、4−アシルオキシフェニル基などがあげられる。
【0098】
R21ないしR23のアルキル基としては具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、2−フェノキシプロピル基などがあげられる。
【0099】
アリール基としてはフェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、4−t−オクチルフェニル基、4−アニシジル基、3,5−ジクロロフェニル基などが挙げられる。
【0100】
アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0101】
アリールオキシ基としてはフェノキシ基、クレジルオキシ基、イソプロピルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0102】
アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−ヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
【0103】
R21ないしR23としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。本発明の効果の点ではR21ないしR23のうち少なくとも一つ以上がアルキル基またはアリール基であることが好ましく、二つ以上がアルキル基またはアリール基であることがより好ましい。また、安価に入手する事ができるという点ではR21ないしR23が同一の基である場合が好ましい。
【0104】
以下に本発明における一般式(A)の化合物をはじめとする水素結合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0105】
【化11】
【0106】
【化12】
【0107】
水素結合性化合物の具体例は上述の他に特願2000−192191号、同2000−194811号に記載のものがあげられる。
【0108】
本発明の水素結合性化合物は、還元剤と同様に溶液形態、乳化分散形態、固体分散微粒子分散物形態で塗布液に含有せしめ、感光材料中で使用することができる。本発明の化合物は、溶液状態でフェノール性水酸基を有する化合物と水素結合による錯体を形成しており、還元剤と本発明の一般式(A)の化合物との組み合わせによっては錯体として結晶状態で単離することができる。
【0109】
このようにして単離した結晶粉体を固体分散微粒子分散物として使用することは安定した性能を得る上で特に好ましい。また、還元剤と本発明の水素結合性化合物を粉体で混合し、適当な分散剤を使って、サンドグラインダーミル等で分散時に錯形成させる方法も好ましく用いることができる。
【0110】
本発明の水素結合性化合物は還元剤に対して、1〜200モル%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10〜150モル%の範囲で、さらに好ましくは30〜100モル%の範囲である。
【0111】
2−1−5.バインダー
本発明の有機銀塩含有層のバインダーはいかなるポリマーであってもよく、好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ゴム類、ポリ(ビニルアルコール)類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピロリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)類、ポリ(メチルメタクリル酸)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒またはエマルションから被覆形成してもよい。
【0112】
本発明では、有機銀塩を含有する層のバインダーのガラス転移温度は−20℃以上80℃以下であることが好ましく、0℃〜70℃であることがより好ましく、10℃以上65℃以下であることが更に好ましい。
【0113】
なお、本明細書においてTgは下記の式で計算される。
【0114】
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
【0115】
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。
尚、各モノマーの単独重合体ガラスの転移温度の値(Tgi)はPolymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用した。
【0116】
バインダーとなるポリマーは単独種で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用しても良い。また、ガラス転移温度が20℃以上のものとガラス転移温度が20℃未満のものを組み合わせて用いてもよい。Tgの異なるポリマーを2種以上ブレンドして使用する場合には、その重量平均Tgが上記の範囲に入ることが好ましい。
【0117】
本発明においては、有機銀塩含有層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成される場合に、さらに有機銀塩含有層のバインダーが水系溶媒(水溶媒)に可溶または分散可能である場合に、特に25℃60%RHでの平衡含水率が2質量%以下のポリマーのラテックスからなる場合に性能が向上する。
最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
【0118】
ここでいう前記ポリマーが可溶または分散可能である水系溶媒とは、水または水に70質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。
水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルミアミドなどを挙げることができる。
【0119】
また「25℃60%RHにおける平衡含水率」とは、25℃60%RHの雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの重量W1と25℃で絶乾状態にあるポリマーの重量W0を用いて以下のように表すことができる。
25℃60%RHにおける平衡含水率=[(W1−W0)/W0]×100(質量%)含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)を参考にすることができる。
【0120】
本発明のバインダーポリマーの25℃60%RHにおける平衡含水率は2質量%以下であることが好ましいが、より好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以上1質量%以下が望ましい。
【0121】
本発明のバインダーは水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態またはミセルを形成して分散しているものなどがあるが、いずれも好ましい。分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0122】
本発明において水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリ(エステル)類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(オレフィン)類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。
【0123】
これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000、好ましくは10000〜200000がよい。分子量が小さすぎるものは乳剤層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。
【0124】
好ましいポリマーラテックスの具体例としては以下のものを挙げることができる。以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値は質量%、分子量は数平均分子量である。多官能モノマーを使用した場合は架橋構造を作るため分子量の概念が適用できないので架橋性と記載し、分子量の記載を省略した。Tgはガラス転移温度を表す。
【0125】
P−1;−MMA(70)−EA(27)−MAA(3)−のラテックス(分子量37000、Tg61℃)
P−2;−MMA(70)−2EHA(20)−St(5)−AA(5)−のラテックス(分子量40000、Tg59℃)
P−3;−St(50)−Bu(47)−MAA(3)−のラテックス(架橋性、Tg−17℃)
P−4;−St(68)−Bu(29)−AA(3)−のラテックス(架橋性、Tg17℃)
P−5;−St(71)−Bu(26)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg24℃)
P−6;−St(70)−Bu(27)−IA(3)−のラテックス(架橋性)
P−7;−St(75)−Bu(24)−AA(1)−のラテックス(架橋性、Tg29℃)
P−8;−St(60)−Bu(35)−DVB(3)−MAA(2)−のラテックス(架橋性)
P−9;−St(70)−Bu(25)−DVB(2)−AA(3)−のラテックス(架橋性)
P−10;−VC(50)−MMA(20)−EA(20)−AN(5)−AA(5)−のラテックス(分子量80000)
P−11;−VDC(85)−MMA(5)−EA(5)−MAA(5)−のラテックス(分子量67000)
P−12;−Et(90)−MAA(10)−のラテックス(分子量12000)
P−13;−St(70)−2EHA(27)−AA(3)のラテックス(分子量130000、Tg43℃)
P−14;−MMA(63)−EA(35)− AA(2)のラテックス(分子量33000、Tg47℃)
P−15;−St(70.5)−Bu(26.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg23℃)
P−16;−St(69.5)−Bu(27.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg20.5℃)
【0126】
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート、EA;エチルアクリレート、MAA;メタクリル酸、2EHA;2−エチルヘキシルアクリレート、St;スチレン、Bu;ブタジエン、AA;アクリル酸、DVB;ジビニルベンゼン、VC;塩化ビニル、AN;アクリロニトリル、VDC;塩化ビニリデン、Et;エチレン、IA;イタコン酸。
【0127】
以上に記載したポリマーラテックスは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル系ポリマーの例としては、セビアンA−4635,4718,4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(エステル)類の例としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリ(ウレタン)類の例としては、HYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム類の例としては、LACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410、438C、2507(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニル)類の例としては、G351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニリデン)類の例としては、L502、L513(以上旭化成工業(株)製)など、ポリ(オレフィン)類の例としては、ケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。
これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。
【0128】
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、特に、スチレン−ブタジエン共重合体のラテックスが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との重量比は40:60〜95:5であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60〜99質量%であることが好ましい。好ましい分子量の範囲は前記と同様である。
【0129】
本発明に用いることが好ましいスチレン−ブタジエン共重合体のラテックスとしては、前記のP−3〜P−8,14,15、市販品であるLACSTAR−3307B、7132C、Nipol Lx416等が挙げられる。
【0130】
本発明の感光材料の有機銀塩含有層には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。
【0131】
これらの親水性ポリマーの添加量は有機銀塩含有層の全バインダーの30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好ましい。
【0132】
本発明の有機銀塩含有層(即ち、画像形成層)は、ポリマーラテックスをバインダーに用いて形成されたものが好ましい。有機銀塩含有層のバインダーの量は、全バインダー/有機銀塩の重量比が1/10〜10/1、更には1/5〜4/1の範囲が好ましい。
【0133】
また、このような有機銀塩含有層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層(乳剤層)でもあり、このような場合の、全バインダー/ハロゲン化銀の重量比は400〜5、より好ましくは200〜10の範囲が好ましい。
【0134】
本発明の画像形成層の全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2の範囲が好ましい。本発明の画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0135】
本発明において感光材料の有機銀塩含有層塗布液の溶媒(ここでは簡単のため、溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す。)は、水を30質量%以上含む水系溶媒が好ましい。水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。溶媒の水含有率は50質量%以上がより好ましく、さらに好ましくは70質量%以上が良い。
【0136】
好ましい溶媒組成の具体例を挙げると、水100の他、水/メチルアルコール=90/10、水/メチルアルコール=70/30、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メチルアルコール/エチルセロソルブ=85/10/5、水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール=85/10/5などがある(数値は質量%)。
【0137】
2−1−6.かぶり防止剤
本発明はカブリ防止剤として下記一般式(H)で表される化合物を含有するのが好ましい。
一般式(H)
【0138】
Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
【0139】
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Z1およびZ2はハロゲン原子を表し、Xは水素原子または電子求引性基を表す。
【0140】
Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子求引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207−1216 等を参考にすることができる。
【0141】
このような電子求引性基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子(σp値:0.06)、塩素原子(σp値:0.23)、臭素原子(σp値:0.23)、ヨウ素原子(σp値:0.18))、トリハロメチル基(トリブロモメチル(σp値:0.29)、トリクロロメチル(σp値:0.33)、トリフルオロメチル(σp値:0.54))、シアノ基(σp値:0.66)、ニトロ基(σp値:0.78)、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基(例えば、メタンスルホニル(σp値:0.72))、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基(例えば、アセチル(σp値:0.50)、ベンゾイル(σp値:0.43))、アルキニル基(例えば、C≡CH(σp値:0.23))、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル(σp値:0.45)、フェノキシカルボニル(σp値:0.44))、カルバモイル基(σp値:0.36)、スルファモイル基(σp値:0.57)、スルホキシド基、ヘテロ環基、ホスホリル基等があげられる。
σp値としては好ましくは0.2〜2.0の範囲で、より好ましくは0.4から1.0の範囲である。
【0142】
電子求引性基として好ましいのは、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基、カルボキシル基、アルキルまたはアリールカルボニル基、およびアリールスルホニル基であり、特に好ましくはカルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基であり、カルバモイル基が最も好ましい。
【0143】
Xは、好ましくは電子求引性基であり、より好ましくはハロゲン原子、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。
ハロゲン原子の中でも、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
【0144】
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−または−SO2 −を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO2 −であり、特に好ましくは−SO2 −である。nは、0または1を表し、好ましくは1である。
【0145】
以下に本発明の一般式(H)の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0146】
【化13】
【0147】
【化14】
【0148】
本発明の一般式(H)で表される化合物は画像形成層の非感光性銀塩1モル当たり、10−4〜0.8モルの範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10−3〜0.1モルの範囲で、さらに好ましくは5×10−3〜0.05モルの範囲で使用することが好ましい。
特に、本発明の沃化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀を用いた場合、十分なかぶり防止効果を得るためにはこの一般式(H)の化合物の添加量は重要であり、5×10−3〜0.03モルの範囲で使用することが最も好ましい。
【0149】
本発明において、一般式(H)で表される化合物を感光材料に含有せしめる方法としては、前記還元剤の含有方法に記載の方法が挙げられる。
【0150】
一般式(H)で表される化合物の融点は200℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは170℃以下がよい。
【0151】
本発明に用いられるその他の有機ポリハロゲン化物として、特開平11−65021号の段落番号0111〜0112に記載の特許に開示されているものが挙げられる。特に特願平11−87297号の式(P)で表される有機ハロゲン化合物、特開平10−339934号の一般式(II)で表される有機ポリハロゲン化合物、特願平11−205330号に記載の有機ポリハロゲン化合物が好ましい。
【0152】
2−1−7.その他のかぶり防止剤
その他のカブリ防止剤としては特開平11−65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特開2000−206642号のサリチル酸誘導体、特開2000−221634号の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11−352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6−11791号の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
【0153】
本発明に用いることのできるカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体特開平10−62899号の段落番号0070、欧州特許0803764A1号の第20頁第57行〜第21頁第7行に記載の特許のもの、特開平9−281637号、同9−329864号記載の化合物が挙げられる。
【0154】
本発明における熱現像感光材料はカブリ防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59−193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55−12581号記載の化合物、特開昭60−153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては感光性層を有する面の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。
【0155】
アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。
【0156】
本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10−6モル以上2モル以下が好ましく、1×10−3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
【0157】
2−1−8.その他の添加剤
1)メルカプト、ジスルフィド、およびチオン類
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10−62899号の段落番号0067〜0069、特開平10−186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行、特願平11−273670号等に記載されている。中でもメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
【0158】
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許0803764A1号のp.21,23行〜48行、特開2000−356317号や特願2000−187298号に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロー1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウムおよびテトラクロロ無水フタル酸)の組み合わせ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフタラジン、6−クロロフタラジン、5.7−ジメトキシフタラジン、および2,3−ジヒドロフタラジン)が好ましく、特に、ヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀との組み合わせにおいては、フタラジン類とフタル酸類の組み合わせが好ましい。
【0159】
好ましいフタラジン類の添加量としては、有機銀塩1モル当たり0.01モル〜0.3モルであり、さらに好ましくは0.02〜0.2モル、特に好ましくは0.02〜0.1モルである。この添加量は、本発明の沃化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀乳剤で課題である現像促進にとって重要な要因であり、適正な添加量の選択によって十分な現像性と低いかぶりの両立が可能となる。
【0160】
3)可塑剤、潤滑剤
本発明の感光性層に用いることのできる可塑剤および潤滑剤については特開平11−65021号段落番号0117に記載されている。滑り剤については特開平11−84573号段落番号0061〜0064や特願平11−106881号段落番号0049〜0062記載されている。
【0161】
4)染料、顔料
本発明の感光性層には色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10−268465号、同11−338098号等に詳細に記載されている。
【0162】
5)超硬調化剤
印刷製版用途に適した超硬調画像形成のためには、画像形成層に超硬調化剤を添加することが好ましい。超硬調化剤やその添加方法及び添加量については、同号公報段落番号0118、特開平11−223898号公報段落番号0136〜0193、特願平11−87297号明細書の式(H)、式(1)〜(3)、式(A)、(B)の化合物、特願平11−91652号明細書記載の一般式(III)〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、硬調化促進剤については特開平11−65021号公報段落番号0102、特開平11−223898号公報段落番号0194〜0195に記載されている。
【0163】
蟻酸や蟻酸塩を強いかぶらせ物質として用いるには、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側に銀1モル当たり5ミリモル以下、さらには1ミリモル以下で含有させることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料で超硬調化剤を用いる場合には五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
【0164】
2−1−9.塗布液の調製および塗布
本発明の画像形成層塗布液の調製温度は30℃以上65℃以下がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。
【0165】
2−2.その他の層、および構成成分
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に加えて非感光性層を有することができる。非感光性層は、その配置から(a)画像形成層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる表面保護層、(b)複数の画像形成層の間や画像形成層と保護層の間に設けられる中間層、(c)画像形成層と支持体との間に設けられる下塗り層、(d)画像形成層の反対側に設けられるバック層に分類できる。
【0166】
また、光学フィルターとして作用する層を設けることができるが、(a)または(b)の層として設けられる。アンチハレーション層は、(c)または(d)の層として感光材料に設けられる。
【0167】
1)表面保護層
本発明における熱現像感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層は単層でもよいし、複数層であってもよい。表面保護層については、特開平11−65021号段落番号0119〜0120、特願2000−171936号に記載されている。
【0168】
本発明の表面保護層のバインダーとしてはゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いる若しくは併用することも好ましい。ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。
【0169】
PVAとしては、特開2000−171936号の段落番号0009〜0020に記載のものがあげられ、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。
【0170】
保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3〜4.0g/m2が好ましく、0.3〜2.0g/m2がより好ましい。
【0171】
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3〜5.0g/m2が好ましく、0.3〜2.0g/m2がより好ましい。
【0172】
2)アンチハレーション層
本発明の熱現像感光材料においては、アンチハレーション層を感光性層に対して露光光源から遠い側に設けることができる。アンチハレーション層については特開平11−65021号段落番号0123〜0124、特開平11−223898号、同9−230531号、同10−36695号、同10−104779号、同11−231457号、同11−352625号、同11−352626号等に記載されている。
【0173】
アンチハレーション層には、露光波長に吸収を有するアンチハレーション染料を含有する。露光波長が赤外域にある場合には赤外線吸収染料を用いればよく、その場合には可視域に吸収を有しない染料が好ましい。
【0174】
可視域に吸収を有する染料を用いてハレーション防止を行う場合には、画像形成後には染料の色が実質的に残らないようにすることが好ましく、熱現像の熱により消色する手段を用いることが好ましく、特に非感光性層に熱消色染料と塩基プレカーサーとを添加してアンチハレーション層として機能させることが好ましい。これらの技術については特開平11−231457号等に記載されている。
【0175】
消色染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用する。光学濃度は、0.2〜2であることが好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001〜1g/m2程度である。
【0176】
なお、このように染料を消色すると、熱現像後の光学濃度を0.1以下に低下させることができる。二種類以上の消色染料を、熱消色型記録材料や熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、二種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。
【0177】
このような消色染料と塩基プレカーサーを用いる熱消色においては、特開平11−352626号に記載のような塩基プレカーサーと混合すると融点を3℃(deg)以上降下させる物質(例えば、ジフェニルスルホン、4−クロロフェニル(フェニル)スルホン)を併用することが熱消色性等の点で好ましい。
【0178】
3)バック層
本発明に適用することのできるバック層については特開平11−65021号段落番号0128〜0130に記載されている。
【0179】
本発明においては、銀色調、画像の経時変化を改良する目的で300〜450nmに吸収極大を有する着色剤を添加することができる。このような着色剤は、特開昭62−210458号、同63−104046号、同63−103235号、同63−208846号、同63−306436号、同63−314535号、特開平01−61745号、特願平11−276751号などに記載されている。このような着色剤は、通常、0.1mg/m2〜1g/m2の範囲で添加され、添加する層としては感光性層の反対側に設けられるバック層が好ましい。
【0180】
4)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を表面保護層、およびバック層に添加することが好ましい。マット剤については、特開平11−65021号段落番号0126〜0127に記載されている。
マット剤は感光材料1m2当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1〜400mg/m2、より好ましくは5〜300mg/m2である。
【0181】
また、乳剤面のマット度は、画像部に小さな白抜けが生じ、光漏れが発生するいわゆる星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
【0182】
本発明においてバック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、800秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500秒以下40秒以上である。
【0183】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0184】
5)ポリマーラテックス
本発明の表面保護層やバック層にポリマーラテックスを添加することができる。
このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%) /ブチルアクリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。
【0185】
ポリマーラテックスは、表面保護層、あるいはバック層の全バインダー(水溶性ポリマーおよびラテックスポリマーを含む)の10質量%〜90質量%用いるのが好ましく、特に20質量%〜80質量%が好ましい。
【0186】
6)膜面pH
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは6.6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。
【0187】
膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。
また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等の不揮発性の塩基とアンモニアを併用することも好ましく用いられる。なお、膜面pHの測定方法は、特願平11−87297号明細書の段落番号0123に記載されている。
【0188】
7)硬膜剤
本発明の感光性層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。
硬膜剤の例としてはT.H.James著”THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION”(Macmillan Publishing Co., Inc.刊、1977年刊)77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N,N−エチレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)、N,N−プロピレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号、特開平6−208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などのエポキシ化合物類、特開昭62−89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0189】
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0190】
具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳”液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0191】
8)界面活性剤
本発明に適用できる界面活性剤については特開平11−65021号段落番号0132に記載されている。
本発明ではフッ素系界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤の好ましい具体例は特開平10−197985号、特開2000−19680号、特開2000−214554号等に記載されている化合物が挙げられる。また、特開平9−281636号記載の高分子フッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。本発明においては、特願2000−206560号記載のフッ素系界面活性剤の使用が特に好ましい。
【0192】
9)帯電防止剤
また、本発明では、公知の種々の金属酸化物あるいは導電性ポリマーなどを含む帯電防止層を有しても良い。帯電防止層は前述の下塗り層、バック層表面保護層などと兼ねても良く、また別途設けてもよい。帯電防止層については、特開平11−65021号段落番号0135、特開昭56−143430号、同56−143431号、同58−62646号、同56−120519号、特開平11−84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号、特開平11−223898号の段落番号0078〜0084に記載の技術を適用することができる。
【0193】
10)支持体
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0194】
医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号実施例記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。
具体的な支持体の例は、特開平11−65021同号段落番号0134に記載されている。
【0195】
支持体には、特開平11−84574号の水溶性ポリエステル、同10−186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000−39684号や特願平11−106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。
【0196】
11)その他の添加剤
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。特開平11−65021号段落番号0133の記載の溶剤を添加しても良い。各種の添加剤は、感光性層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10−186567号、同10−18568号等を参考にすることができる。
【0197】
12)塗布方式
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、または米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを 含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F. Kistler、Petert M. Schweizer著”LIQUID FILM COATING”(CHAPMAN & HALL社刊、1997年)399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、またはスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。
【0198】
スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigure 11b.1に ある。また、所望により同書399頁から536頁記載の方法、米国特許第2,761,791 号および英国特許第837,095号に記載の方法により2層またはそれ以上の層を同時に被覆することができる。
【0199】
本発明における有機銀塩含有層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。この技術については特開平11−52509号を参考にすることができる。
本発明における有機銀塩含有層塗布液は剪断速度0.1S−1における粘度は400mPa・s以上100,000mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは500mPa・s以上20,000mPa・s以下である。
また、剪断速度1000S−1においては1mPa・s以上200mPa・s以下が好まく、さらに好ましくは5mPa・s以上80mPa・s以下である。
【0200】
13)包装材料
本発明の熱現像感光材料は、使用される前の保存時に写真性能の変質を防ぐため、あるいはロール状態の製品形態の場合にはカールしたり巻き癖が付くのを防ぐために、酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料で密閉包装するのが好ましい。酸素透過率は、25℃で50ml/atm/m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/atm/m2・day以下であり、さらに好ましくは1.0ml/atm/m2・day以下である。水分透過率は、10g/atm/m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm/m2・day以下であり、さらに好ましくは1g/atm/m2・day以下である。酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、例えば特開平8−254793号、特開2000−206653号に記載されているものを利用することができる。
【0201】
14)その他の利用できる技術
本発明の熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322号、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−43766、同9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568号、同10−90823号、同10−171063号、同10−186565号、同10−186567号、同10−186569号〜同10−186572号、同10−197974号、同10−197982号、同10−197983号、同10−197985号〜同10−197987号、同10−207001号、同10−207004号、同10−221807号、同10−282601号、同10−288823号、同10−288824号、同10−307365号、同10−312038号、同10−339934号、同11−7100号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同11−305377号、同11−305378号、同11−305384号、同11−305380号、同11−316435号、同11−327076号、同11−338096号、同11−338098号、同11−338099号、同11−343420号、特願2000−187298号、同2000−10229号、同2000−47345号、同2000−206642号、同2000−98530号、同2000−98531号、同2000−112059号、同2000−112060号、同2000−112104号、同2000−112064号、同2000−171936号も挙げられる。
【0202】
多色カラー熱現像感光材料の場合、各乳剤層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各感光性層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
多色カラー熱現像感光材料の場合の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。
【0203】
3.画像形成方法
3−1.露光
本発明の感光材料はいかなる方法で露光されても良いが、露光光源としてレーザー光が好ましい。本発明のように沃化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤は、従来はその感度が低くて問題であった。しかし、レーザー光のような高照度で書き込むことで低感度の問題も解消され、しかもより少ないエネルギーで画像記録できることがわかった。このような強い光で短時間に書き込むことによって目標の感度を達成することができる。
【0204】
特に最高濃度(Dmax)を出すような露光量を与える場合、感光材料表面の好ましい光量は0.1W/mm2〜100W/mm2である。より好ましくは0.5W/mm2〜50W/mm2であり、最も好ましくは1W/mm2〜50W/mm2である。
【0205】
本発明によるレーザー光としては、ガスレーザー(Ar+,He−Ne,He−Cd)、YAGレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが好ましい。また、半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いることもできる。好ましく用いられるレーザーは、熱現像感光材料の分光増感色素などの光吸収ピーク波長に対応して決まるが、赤〜赤外発光のHe−Neレーザー、赤色半導体レーザー、あるいは青〜緑発光のAr+,He−Ne,He−Cdレーザー、青色半導体レーザーである。好ましくは、赤色〜赤外半導体レーザーであり、レーザー光のピーク波長は、600nm〜900nm、好ましくは620nm〜850nmである。
【0206】
レーザー光は、高周波重畳などの方法によって縦マルチに発振していることも好ましく用いられる。
【0207】
3−2.熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80〜250℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。
現像時間としては1〜60秒が好ましく、5〜30秒がさらに好ましく、5〜20秒が特に好ましい。
【0208】
熱現像の方式としてはプレートヒーター方式が好ましい。プレートヒーター方式による熱現像方式とは特開平11−133572号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒータからなり、かつ前記プレートヒータの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒータとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒータを2〜6段に分けて先端部については1〜10℃程度温度を下げることが好ましい。
【0209】
このような方法は特開昭54−30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を押さえることもできる。
【0210】
3−3.システム
露光部および熱現像部を備えた医療用レーザーイメージャーとして富士メディカルドライイメージャー−FM−DPLを挙げることができる。該システムは、Fuji Medical Review No.8,p.39〜55に記載されており、それらの技術を利用することができる。また、DICOM規格に適合したネットワークシステムとして富士メディカル(株)が提案した「AD network」の中のレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
【0211】
4.本発明の用途
【0212】
本発明の高沃化銀写真乳剤を黒白およびカラー写真感光材料に用いる範囲には特に制限がなく、撮影感材、プリント感材、印刷感材、医療用感材、工業用感材、拡散転写法感材、あるいは熱現像感材にも用いることができる。中でも熱現像感材に用いるのが好ましい。
本発明の高沃化銀写真乳剤を用いた熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
【0213】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0214】
実施例1.
ゼラチン36gを含有する70℃の水1400mlを含む反応容器に、攪拌しながら硝酸銀74gを含む水溶液724mlと沃化カリウム113gを含む水溶液800mlとを銀電位が+60mVを保つように同時にコントロールドダブルジェット法にて200分間で添加した。その後限外ろ過法により脱塩と水洗を行い、ゼラチンを追加溶解した後、pHを5.9、pAgを7.5に合わせた。得られた沃化銀粒子は、平均粒子サイズが0.14μm、粒子サイズの変動係数は21%であった。
【0215】
この乳剤を3部に小分けして60℃に昇温した後、表1に示した様に各々のpAgを調製し、その後、硫黄増感剤(チオ硫酸ナトリウム)および金増感剤(塩化金酸)をそれぞれ最高感度をもたらす最適増感になるような量を添加し60分間熟成して乳剤1から3を調製した。次いで各乳剤を更に小分けして50℃で表1に示した様に増感色素を沃化銀1モル当たり2.3ミリモル添加と増感色素よりもEoxが0.2V以上卑の化合物(以下表1に記したようにSS化合物と略記する)を沃化銀1モル当たり0.33ミリモル添加し、30分熟成した。但し、試料番号9及び10に使用した増感色素S−5は前記の添加量では多すぎるので、S−5が最高感度を示した沃化銀1モル当たり0.60ミリモルを添加した。次いで、4−ヒドロキシー6−メチル−1,3,3a、7−テトラザインデンと1−フェニルー5−メルカプトテトラゾール(安定剤とかぶり防止剤) 、さらにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(塗布助剤)、1,2−ビス(ビニルスルホニルアセチルアミノ)エタン(硬膜剤)、フェノキシエタノール(防腐剤)を加えて、ゼラチン保護層とともにトリアセチルセルロースフィルム支持体上に同時押し出し法で塗布し試料1から17を得た。
【0216】
これらの塗布試料を光楔下、富士写真フィルム(株)製シャープカットフィルターSC60を通してキセノン光源を用いて露光(1/1000秒間)したあと、コダック処方D−19現像液にて35℃で20分間現像し、通常の停止、定着を行った。処理済みの試料を濃度測定し、未露光部の濃度をかぶりとし、かぶり+0.1の光学濃度を得るのに必要な露光量の逆数で感度を表し、試料3の感度を100としてそれとの相対値で示した。このようにして求めた値を表1では相対赤感度として表示した。
【0217】
【表1】
【0218】
【0219】
【0220】
表1より明らかなように、本発明の要件を満たして初めて高い分光感度が得られる事が判ろう。特に、試料番号13及び15が好ましい結果を示した。即ち、増感色素が本発明の要件を満たし、かつSS化合物が増感色素のEoxに対して0.465,0.430とより卑である組合せによって本発明の優れた効果が得られることがわかる。また、試料番号9及び10に用いた増感色素S−5はEredが卑であり、高沃化銀以外の、例えば臭化銀ではシアニン色素に劣らない高い分光感度をもたらすメロシアニン色素として知られているが、この例のように高沃化銀乳剤では感度が低く、本発明の併用化合物を併用しても増感効果が殆ど認められなかった。この例のように、高沃化銀以外のハロケ゛ン化銀では高い分光感度をもたらすメロシアニンやロタ゛シアニン色素等のシアニン色素以外の分光増感色素では、色素のEred、LogP及び高沃化銀乳剤のpAgに関する本発明の要件を満たしても、高沃化銀乳剤では極めて低い分光感度しか得られず、色素のEoxよりも0.2V以上卑のEoxを持つSS化合物を併用しても増感効果が殆ど得られなかった。
【0221】
実施例2
実施例1と同様に、但し、反応容器の温度を33℃に、銀電位を+10mVに、硝酸銀と沃化カリウムの添加時間を60分間に変更して、沃化銀乳剤を調製した。その後、限外濾過により脱塩と水洗を行い、ゼラチンを追加溶解し、pAg5.0で実施例1と同様にして最適に化学増感を施した。
得られた沃化銀粒子は、平均粒子サイズが41nm、粒子サイズの変動係数は18%であった。
この乳剤を8部に小分けして40℃に昇温した後、表2に示した様に各々のpAgを調製し、増感色素S−1を沃化銀1モル当たり8.5ミリモル添加し、30分後、表2に示した様にSS化合物を沃化銀1モル当たり1.45ミリモル添加し10分熟成した。次いで、4−ヒドロキシー6−メチル−1,3,3a、7−テトラザインデンと1−フェニルー5−メルカプトテトラゾール(安定剤とかぶり防止剤)、さらにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(塗布助剤)、1,2−ビス(ビニルスルホニルアセチルアミノ)エタン(硬膜剤)、フェノキシエタノール(防腐剤)を加えて、ゼラチン保護層とともにトリアセチルセルロースフィルム支持体上に同時押し出し法で塗布し試料21から27を得た。
【0222】
これらの塗布試料を光楔下、富士写真フィルム(株)製シャープカットフィルターSC62を通してキセノン光源を用いて露光(1/1000秒間)したあと、下記処方の現像液にて38℃で30分間現像し、通常の停止、定着を行った。処理済みの試料を実施例1と同様の方法で濃度測定し、感度を求めた。このようにして求めた値を表2に相対感度として表示した。
【0223】
現像液処方
重亜硫酸ナトリウム 5g
ピロガロール 10g
亜硫酸ナトリウム 25g
炭酸ナトリウム1水塩 50g
沃化カリウム 0.1g
10%ホルマリン液 25ml
水を加えて 1リットルに
【0224】
【表2】
【0225】
表2より明らかなように、実施例1同様に本発明の要件を満たして初めて高い分光感度が得られる事が判ろう。特に、S−1とSS‐4またはSS−2を組み合わせて、pAg=4とした試料25と試料28が好ましい結果を示した。
【0226】
実施例3
3−1.PET支持体の作成、および下塗り
3−1−1.製膜
【0227】
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融し下記構造の染料BBを0.04wt%含有させた。その後T型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作成した。
【0228】
【化15】
【0229】
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
【0230】
3−1−2.表面コロナ処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0231】
3−1−3.下塗り
下塗層塗布液の作成
処方▲1▼(感光層側下塗り層用)
高松油脂(株)製ペスレジンA−520(30質量%溶液) 59g
ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル
(平均エチレンオキシド数=8.5) 10質量%溶液 5.4g
綜研化学(株)製 MP−1000(ポリマー微粒子、平均粒径0.4μm) 0.91g
蒸留水 935ml
【0232】
処方▲2▼(バック面第1層用)
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス 158g
(固形分40質量%、スチレン/ブタジエン重量比=68/32)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−
トリアジンナトリウム塩 8質量%水溶液 20g
ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10ml
蒸留水 854ml
【0233】
処方▲3▼(バック面側第2層用)
SnO2/SbO (9/1質量比、平均粒径0.038μm、17質量%分散物) 84g
ゼラチン(10質量%水溶液) 89.2g
信越化学(株)製 メトローズTC−5(2質量%水溶液) 8.6g
綜研化学(株)製 MP−1000 0.01g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10ml
NaOH(1質量%) 6ml
プロキセル(ICI社製) 1ml
蒸留水 805ml
【0234】
2)下塗り
上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(感光性層面)に上記下塗り塗布液処方▲1▼をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6ml/m2(片面当たり)になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲2▼をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7ml/m2になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲3▼をワイヤーバーでウエット塗布量が7.7ml/m2になるように塗布して180℃で6分間乾燥して下塗り支持体を作製した。
【0235】
3−2.バック層
3−2−1.バック層塗布液の調製
1)塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)の調製
塩基プレカーサー化合物−1を64g、デモールN(商品名、花王(株))10g、ジフェニルスルホン28g、および蒸留水220mlを加えて混合し、混合液を1/4Gサンドグラインダーミル(アイメックス(株)製)にてビーズ分散し、平均粒子径0.2μmの塩基プレカーサー化合物の固体微粒子分散物(a)を得た。
【0236】
2)染料固体微粒子分散液(a)の調製
シアニン染料化合物―1を9.6g、p−ドデシルスルホン酸ナトリウム5.8g、および蒸留水305mlを混合して、混合液を1/4Gサンドグラインダーミル(アイメックス(株)製)にてビーズ分散し、平均粒子径0.2μmの占領固体微粒子分散物(a)を得た。
【0237】
3)ハレーション防止層塗布液の調製
ゼラチン17g、ポリアクリルアミド9.6g、上記の塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)70g、上記の染料固体微粒子分散液(a)を56g、単分散ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ8μm、粒径標準偏差0.4)1.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.03g、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム2.2g、青色染料化合物−1を0.2g、黄色染料化合物−1を3.9g、および水844mlを混合して、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0238】
4)バック面保護層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、ゼラチン50g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.2g、N、N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)2.4g、t−オクチルフェノキシエトキシエタンスルホン酸ナトリウム1g、ベンゾイソチアゾリノン30mg、フッ素系界面活性剤(F−1)37mg、フッ素系界面活性剤(F−2)0.15g、フッ素系界面活性剤(F−3)64mg、フッ素系界面活性剤(F−4)32mg、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合重量比5/95)8.8g、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)0.6g、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.8g、水を950ml混合してバック面保護層塗布液とした。
【0239】
3−2−2.バック層の塗布
上記下塗り支持体のバック面側に、ハレーション防止層塗布液を固体微粒子染料の塗布量が0.04gとなるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作成した。
【0240】
3−3.画像形成層、中間層、および表面保護層
3−3−1.塗布用材料の準備
1)ハロゲン化銀乳剤
【0241】
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
蒸留水1420mlに1質量%沃化カリウム溶液4.3mlを加え、さら0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、35℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を195.6mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム21.8gを蒸留水にて容量219mlに希釈した溶液Bを一定流量で9分間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cと沃化カリウム60gを蒸留水にて容量600mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で120分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。
【0242】
銀1モル当たり1×10−4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10−4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作成した。調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.037μm、球相当径の変動係数17%の純沃化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0243】
上記ハロゲン化銀分散物を38℃に維持して、pAgを5.0に調製してから0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、10分後に47℃に昇温した。次いで、ベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10−5モル加えた後、5分後にテルル増感剤(ビス(N―フェニル−N―メチルカルバモイル)テルリド)を銀1モルあたり0.5ミルモル加えて84分間熟成した。その後、乳剤を12分割し、各乳剤のpAgを表3中に示したように調製した後、表3に示した増感色素を銀1モルに対して9.5ミリモル加え、30分間熟成した。但し、試料番号307及び308に用いた増感色素S−5の添加量は、前記量では多すぎたので、該増感色素で最大感度が得られた銀1モルに対して1.3ミリモルを加えた。
【0244】
その後、各乳剤を35℃に下げ、N,N’−ジヒドロキシ−N”−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンヅイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10−3モル及び1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10−3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤31から37を作成した。
【0245】
(塗布液用混合乳剤の調製)
上記の各ハロゲン化銀乳剤を溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10−3モル添加した。さらに塗布液用混合乳剤1kgあたりハロゲン化銀の含有量が銀として38.2gとなるように加水した。
【0246】
2)脂肪酸銀分散物Aの調製
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22−85R)87.6kg、蒸留水423L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、t−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのt−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。
このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。
また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
【0247】
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.14μm、b=0.4μm、c=0.6μm、平均アスペクト比5.2であった(a、b、cは本文の規定)。レーザー光散乱型粒子サイズ測定装置で測定した結果、平均球相当径0.52μm、球相当径の変動係数15%のりん片状の結晶であった。
【0248】
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kgおよび水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1260kg/cm2に調節して、三回処理し、脂肪酸銀分散物Aを得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0249】
3)還元剤分散物Aの調製
還元剤錯体―1を10kg、水素結合性化合物―1を0.12kg、および変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水7.2kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて4時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤錯体の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤分散物Aを得た。
こうして得た分散物中の還元剤錯体粒子は、平均粒子径がメディアン径で0.46μm、最大粒子径は1.6μm以下であった。得られた分散物を孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0250】
4)ポリハロゲン化合物分散物の調製
(有機ポリハロゲン化合物―1分散物)
有機ポリハロゲン化合物―1を10kgと変性ポリビニルアルコールMP203の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水14kgを添加して、良く混合してスラリーとした。
このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間を基本時間として分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が26質量%になるように調製し、ポリハロゲン化合物−1分散物を得た。
こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0251】
(有機ポリハロゲン化合物―2分散物)
有機ポリハロゲン化合物―2を10kgと変性ポリビニルアルコールMP203の10質量%水溶液20kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgを添加して、良く混合してスラリーとした。 このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が25質量%になるように調製した。この分散物を40℃で5時間加温して、ポリハロゲン化合物−2分散物を得た。
こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子は、平均粒子サイズがメジアン径で0.36μm、最大粒子径1.5μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0252】
5)フタラジン化合物−1溶液の調製
8kgの変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgとフタラジン化合物−1の70質量%水溶液14.28kgを添加し、フタラジン化合物−1の5質量%溶液を調製した。
【0253】
6)メルカプト化合物−1水溶液の調製
7gのメルカプト化合物−1を水993gに溶解し、0.7質量%の水溶液とした。
【0254】
7)顔料−1分散物の調製
C.I.Pigment Blue 60を64gとデモールNを6.4gに水250gを加えて良く混合し、スラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800gをスラリーと一緒にベッセルに入れ、1/4Gサンドグラインダーミル(アイメックス(株)製)にて25時間分散した後、水を加えて顔料濃度が5質量%になるように希釈した。得られた分散物中の顔料の平均粒子サイズは0.21μmであった。
【0255】
8)SBRラテックス液の調製
Tg=23℃のSBRラテックスは以下により調整した。重合開始剤として過硫酸アンモニウム、乳化剤としてアニオン界面活性剤を使用し、スチレン70.5質量、ブタジエン26.5質量およびアクリル酸3.0質量を乳化重合させた後、80℃で8時間エージングを行った。その後40℃まで冷却し、アンモニア水によりpH7.0とし、さらに三洋化成(株)製サンデットBLを0.22%になるように添加した。次に5%水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH8.3とし、さらにアンモニア水によりpH8.4になるように調整した。 このとき使用したNa+イオンとNH4 +イオンのモル比は1:2.3であった。さらに、この液1kg対してベンゾイソチアゾリンノンナトリウム塩7%水溶液を0.15ml添加しSBRラテックス液を調製した。
【0256】
(SBRラテックス:−St(70.0)−Bu(27.0)−AA(3.0)−のラテックス)
Tg23℃ 平均粒径0.1μm、濃度43質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.2mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し、ラテックス原液(43質量%)を25℃にて測定)、pH8.4。
【0257】
3−3−2塗布液の調製
1)画像形成層塗布液−1の調製
上記で得た脂肪酸銀分散物Aを1000g、水104ml、顔料−1分散物30g、有機ポリハロゲン化合物―1分散物6.3g、有機ポリハロゲン化合物―2分散物20.7g、フタラジン化合物−1溶液173g、SBRラテックス(Tg:23℃)液1082g、還元剤分散物Aを258g、メルカプト化合物−1水溶液9mlを順次添加し、塗布直前にハロゲン化銀の塗布液用混合乳剤を117g添加して良く混合した乳剤層塗布液をそのままコーティングダイへ送液し、塗布した。
上記乳剤層塗布液の粘度は東京計器のB型粘度計で測定して、40℃(No.1ローター、60rpm)で25[mPa・S]であった。
【0258】
2)中間層塗布液の調製
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)の10質量%水溶液772g、顔料−1分散物5.3g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液226gにエアロゾールOTの5質量%水溶液を2ml、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を10.5ml、総量880gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、10ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で65[mPa・S]であった。
【0259】
3)表面保護第1層塗布液の調製
イナートゼラチン64gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液80g、フタル酸の10質量%メタノール溶液を23ml、4−メチルフタル酸の10質量%水溶液23ml、0.5mol/L濃度の硫酸を28ml、エアロゾールOTの5質量%水溶液を5ml、フェノキシエタノール0.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.1gを加え、総量750gになるように水を加えて塗布液とし、4質量%のクロムみょうばん26mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを18.6ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で20[mPa・S]であった。
【0260】
4)表面保護第2層塗布液の調製
イナートゼラチン80gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液102g、フッ素系界面活性剤F−1の5質量%溶液を3.2ml、フッ素系界面活性剤F−2の2質量%水溶液を32ml、エアロゾールOTの5質量%溶液を23ml、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm)4g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4.5μm)21g、4−メチルフタル酸1.6g、フタル酸4.8g、0.5mol/L濃度の硫酸44ml、ベンゾイソチアゾリノン10mgに総量650gとなるよう水を添加して、4質量%のクロムみょうばんと0.67質量%のフタル酸を含有する水溶液445mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを表面保護層塗布液とし、8.3ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で19[mPa・s]であった。
【0261】
3−3−3.塗布サンプルの作成
バック面と反対の面に下塗り面上に、順に画像形成層、中間層、表面保護第1層、表面保護第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料を作成した。このとき、画像形成層と中間層の塗布液温度は35℃に、保護層第1層の塗布液温度は36℃に、保護層第2層は37℃に温度調整した。
乳剤層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
【0262】
ベヘン酸銀 6.19
C.I.Pigment Blue 60 0.036
有機ポリハロゲン化合物−1 0.04
有機ポリハロゲン化合物−2 0.12
フタラジン化合物−1 0.21
SBRラテックス 11.1
還元剤錯体−1 1.54
メルカプト化合物−1 0.002
ハロゲン化銀(Agとして) 0.10
【0263】
塗布乾燥条件は以下のとおりである。
塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して196〜882Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。
【0264】
引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10〜20℃の風にて塗布液を冷却した後、無接触型搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥させた。
乾燥後、25℃で湿度40〜60%RHで調湿した後、膜面を70〜90℃になるように加熱した。加熱後、膜面を25℃まで冷却した。
【0265】
作製された熱現像感光材料のマット度はベック平滑度で画像形成層面側が550秒、バック面が130秒であった。また、画像形成層面側の膜面のpHを測定したところ6.0であった。
【0266】
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
【0267】
【化16】
【0268】
【化17】
【0269】
【化18】
【0270】
【化19】
【0271】
【化20】
【0272】
3−4.写真性能の評価
(準備)
得られた試料は半切サイズに切断し、25℃50%の環境下で以下の包装材料に包装し、2週間常温下で保管した。
(包装材料)
PET 10μm/PE 12μm/アルミ箔9μm/Ny 15μm/カーボン3%を含むポリエチレン50μm、酸素透過率:0.02ml/atm・m2・25℃・day、水分透過率:0.10g/atm・m2・25℃・day。
【0273】
上記の感光材料を以下のように評価を行った。
(感光材料の露光)
感光材料は以下の様にして露光処理を行った。
富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DPLを改造して露光・現像処理を行った。露光はFM−DPL搭載の最大60mW(IIIB)出力の660nm半導体レーザーを100μm×100μmに絞って感材を照射した。レーザーの露光量を段階的に変化させて露光を行った。現像は、FM−DPLの熱現像部を用いて、112℃−119℃−121℃−121℃に設定した4枚のパネルヒーターで、合計24秒であった。
【0274】
(試料の評価) 得られた画像をMacbeth濃度計で濃度測定し露光量の対数に対する濃度の特性曲線を作成した。感度は、未露光の部分の光学濃度を被り(Dmin)とし、最高露光量で露光された部分の濃度をDmaxとした。またDmin+2.0の光学濃度が得られる露光量の逆数を感度とし、試料303の感度を100とした相対値で表した。値が大きいほど感度が高いことを示す。
【0275】
【表3】
【0276】
表3の結果より明らかなように、本発明の構成要件を満たした物は非常に高い分光感度をもたらした。即ち、この実施例のように有機銀塩を含ませた試料の熱現像処理では、実施例1のような有機銀塩を含ませず湿式処理を行った場合に比べ、pAg変化に対する感度変化は緩和されるが、同様にpAgを下げた方が高い感度が得られた。しかし、試料番号305及び306、試料番号307及び308に用いた増感色素はEredとしては十分に卑であるが前者のS−4はLogPが小さく、後者のS−5はLogPも十分に大きいがメロシアニン色素である。これらは色素単独でも高い感度が得られないが、表3に示したようにSS化合物を併用しても余り感度が上がらなかったり、試料308に見られるように却って感度が下がってしまった。
【0277】
実施例4
実施例3の試料309及び310と同様にして、ただし還元剤錯体の代わりに以下の化合物を使用することによって熱現像感光材料409及び410を作製した。
(還元剤−2分散物の調製)
還元剤−2を10kgと変性ポリビニルアルコールMP203の10質量%水溶液20kgに、水6kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミルUVM−2にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤−5分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.38μm、最大粒子径1.5μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0278】
(水素結合性化合物−2分散物の調製)
水素結合性化合物−2を10kgと変性ポリビニルアルコールMP203の10質量%水溶液20kgに、水10kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミルUVM−2にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が22質量%になるように調製し、水素結合性化合物−2分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる水素結合性化合物粒子は平均粒子サイズはメジアン径で0.35μm、最大粒子径1.5μm以下であった。得られた水素結合性化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0279】
(熱現像感光材料409及び410の作成)
実施例3の試料309及び310と同様にして、ただし還元剤錯体―1の分散物代わりに還元剤−2の分散物と水素結合性化合物−2の分散物を用いることによって熱現像感光材料46を作製した。乳剤層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
【0280】
ベヘン酸銀 6.0
還元剤−2 0.76
水素結合性化合物−1 0.59
顔料(C.I.Pigment Blue 60) 0.032
ポリハロゲン化合物−1 0.04
ポリハロゲン化合物−2 0.12
フタラジン化合物−1 0.21
SBRラテックス 11.1
メルカプト化合物−1 0.002
ハロゲン化銀(Agとして) 0.09
【0281】
実施例3と同様に評価を行った結果,実施例3と同様にSS化合物を併用することにより2.63倍もの感度増加と言う好ましい結果が得られた。
【0282】
実施例5
実施例4の還元剤−2の代わりに、還元剤―3の化合物(同様に分散物を作成して添加)を用いて、さらに下記の現像促進剤−1の分散物を現像促進剤量として0.01g/m2となるように添加して現像感光材料509及び510を作製した。
熱現像機の搬送速度を変更して熱現像時間14秒で現像処理を行った結果、実施例3と同様に3.02倍もの感度増加が得られた。
【0283】
(現像促進剤−1分散物の調製)
現像促進剤−1を10kgと変性ポリビニルアルコールMP203の10質量%水溶液20kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミルUVM−2にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が20質量%になるように調製し、現像促進剤−1分散物を得た。
【0284】
こうして得た現像促進剤−1粒子はメジアン径0.48μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0285】
実施例7
実施例3の沃化銀乳剤と同様に但し臭化銀を6%を混合しかつ塩化銀を10%エピタキシャル形成させた塩臭沃化銀乳剤を調製し、実施例3の試料309及び310と同様にして塗布試料709及び710を得た。実施例3と同様の露光現像処理をおこなったところ、実施例3と同様に好ましい結果が得られた。
【0286】
【発明の効果】
本発明によれば、所望の分光感度に合わせた高い分光感度と保存性に優れたハロゲン化銀写真乳剤を提供することができ、さらに高感度で低いDmin、高いDmaxを持ち、かつ処理後の光照射に対する画像保存性に優れた熱現像感光材料を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀写真乳剤に関するものである。特に分光感度特に短時間露光における感度が改良された高沃化銀からなるハロゲン化銀写真乳剤に関する。さらに、分光感度が改善された高沃化銀乳剤を用いた熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハロゲン化銀写真感光材料における、高感度、良好な保存性、現像進行性、階調、粒状や鮮鋭度などを改善する要望はますます強くなっている。ハロゲン化銀乳剤は通常、所望の光源により露光させるが、そのためには所望の光源に合致させた分光増感が施される。しかしながら、沃化銀含量が40%以下と少ない沃臭化銀乳剤、臭化銀乳剤、塩臭化銀乳剤や塩化銀乳剤では比較的容易に分光増感を施す事が出来、数多くの分光増感が報告されているのとは大きく異なり、沃化銀含量が80%以上100%以下の高沃化銀写真乳剤の有効な分光増感についての具体的な従来知見は極めて少ない。
【0003】
高沃化銀乳剤の分光増感に関しての具体的報告としては、沃化銀でもpAgを下げれば分光増感でき、pAg6では色素から見た沃化銀の伝導体の底のエネルギーレベルは臭化銀のそれと変わらないとの報告(例えば、非特許文献1参照)、シアニン色素の吸着は臭化銀よりも沃化銀に対しての方が強いとの報告(例えば、非特許文献2参照)、アニオン型シアニン、特にJバンド型アニオンシアニンによる沃化銀の分光増感の開示(例えば、特許文献2参照)、あるいは高沃化銀ではポーログラフ半波酸化電位(以下、Eoxと記述する)が1.0Vよりも貴で且つEoxとポーログラフ半波還元電位(以下、Eredと記述する)との差(Eox−Ered)が2.0Vより大きい増感色素が良く分光増感することの開示(例えば、特許文献1参照)があるに過ぎない。
しかしこれらの手段を用いても高沃化銀写真乳剤では分光増感出来ても、臭
化銀乳剤などに比べても得られた感度よりも遙かに低く、実用的に有用なレベルには遠く及ばない感度しか得られなかった。
また、強力なハロゲンアクセプターが存在しないと、沃化銀では露光により生じる沃度ラジカルの強い酸化を受け極めて感度が出にくい事が報告されており、分光増感に於いても同様に沃度ラジカルの強い酸化を受けるので分光増感もまた困難であることを示唆されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0004】
近年、医療分野や印刷製版分野において環境保全、省スペースの観点から写真現像処理のドライ化が強く望まれている。これらの分野では、デジタル化が進展し、画像情報をコンピューターに取り込み、保存、そして必要な場合には加工し、通信によって必要な場所で、レーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより感光材料に出力し、現像して画像をその場で作成するシステムが急速に広がってきている。感光材料としては、高い照度のレーザー露光で記録することができ、高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することが必要とされている。このようなデジタル・イメージング記録材料としては、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像のように診断能力を決定する画質(鮮鋭度、粒状性、階調、色調)の点、記録スピード(感度)の点で、不満足であり、従来の湿式現像の医療用銀塩フィルムを代替できるレベルに到達していない。
【0005】
一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが、例えば、米国特許3152904号、同3457075号の各明細書およびB.シェリー(Shely) による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第2頁、1996年)に記載されている。特に、熱現像感光材料は、一般に、感光性ハロゲン化銀、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した感光性層を有している。
【0006】
熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。その結果、露光領域に黒色の銀画像が形成される。熱現像感光材料は、米国特許2910377号、特公昭43−4924号をはじめとする多くの文献に開示され、また、実用的には医療用画像形成システムとして富士メディカルドライイメージャーFM−DP Lが発売された。
【0007】
この様な有機銀塩を利用した画像形成システムは、定着工程がないため現像処理後の画像保存性、特に光が当たったときのプリントアウトの悪化が大きな問題であった。このプリントアウトを改良する手段として有機銀塩をコンバージョンすることによって形成した沃化銀を利用する方法がUS−6143488号、EP0922995号に開示されている。しかしながら、ここで開示されたような有機銀塩をヨードでコンバージョンする方法では十分な感度を得ることが出来ず、現実のシステムを組むことは困難であった。その他、沃化銀を利用した感材としてはWO97−48014号、WO48015号、US−6165705号、特開平8−297345号、特許第2785129号等に記載があるが、いずれも十分な感度・かぶりレベルを達成できておらず、レーザー露光感材としての実用に耐えるものではなかった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭49‐17719号公報;p.3の一般式(I)〜(IV)、p.7の化合物(1)〜(23)。
【特許文献2】
特開昭56‐164338号公報;請求の範囲、p.2〜p.3。
【非特許文献1】
P.B.ギルマン、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング、18巻(5)、475頁(1974年発行)
【非特許文献2】
W.L.ガードナー、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング、18巻(5)、475頁(1974年発行)
【非特許文献3】
T.H.ジェームス、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング、5巻、216頁(1961年発行)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、分光感度の高い高沃化銀写真乳剤を提供することである。本発明の目的の第2は、高感度で低いDmin、高いDmaxを持ち、かつ現像処理後の光に対する画像保存性に優れた熱現像感光材料を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、下記の本発明のハロゲン化銀写真乳剤、および熱現像感光材料によって達成された。
(1)80モル%以上100モル%以下の沃化銀を含有し、pAgが5.0以下1.5以上であるハロゲン化銀写真乳剤に於いて、ポーラログラフ半波還元電位が−1.1Vより卑で且つLogPが0.68以上であるシアニン色素の少なくとも一つと該シアニン色素のポーラログラフ半波酸化電位よりも0.2V以上卑のポーラログラフ半波酸化電位を持つ化合物の少なくとも一つとを含有している事を特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
(2)支持体の一方面上に少なくとも1種類の感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤及びバインダーを含有する熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀が80モル%以上100モル%以下の沃化銀を含有し、pAgが5.0以下1.5以上で、ポーラログラフ半波還元電位が−1.1Vより卑で且つLogPが0.68以上であるシアニン色素の少なくとも一つと該シアニン色素のポーラログラフ半波酸化電位よりも0.2V以上卑のポーラログラフ半波酸化電位を持つ化合物の少なくとも一つとを含有している事を特徴とする熱現像感光材料。
(3)前記ポーラログラフ半波還元電位が−1.2Vより卑であることを特徴とする(2)に記載の熱現像感光材料。
(4)前記ポーラログラフ半波還元電位が−1.25Vより卑でであることを特徴とする(2)に記載の熱現像感光材料。
(5)前記LogPが0.70以上であることを特徴とする(2)〜(4)に記載の熱現像感光材料。
(6)前記LogPが0.10以上であることを特徴とする(2)〜(4)に記載の熱現像感光材料。
(7)前記ポーラログラフ半波酸化電位が0.3V以上卑であることを特徴とする(2)〜(6)に記載の熱現像感光材料。
(8)前記ポーラログラフ半波酸化電位が0.4V以上卑であることを特徴とする(2)〜(6)に記載の熱現像感光材料。
(9)前記感光性ハロゲン化銀が90モル%以上100モル%以下の沃化銀を含有することを特徴とする(2)〜(8)に記載の熱現像感光材料。
(10)前記感光性ハロゲン化銀の粒子サイズが10nm〜45nmであることを特徴とする(2)〜(9)に記載の熱現像感光材料。
(11)前記感光性ハロゲン化銀を非感光性有機銀塩1モルに対して1モル〜7モル含むことを特徴とする(2)〜(10)に記載の熱現像感光材料。
(12)前記感光性ハロゲン化銀乳剤が予め粒子形成され、化学増感された後に前記非感光性有機銀塩と混合されることを特徴とする(2)〜(11)に記載の熱現像感光材料。
(13)前記pAgが5.0以下、好ましくは4.0以下、およびpAgが1.5以上、好ましくは2.0以上、更に好ましくは2.5以上の条件で分光増感を施されていることを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(14)前記感光性ハロゲン化銀粒子が、エピタキシャル形成された部分を持ち、好ましくはそれが臭化銀、塩化銀を含む(1)および(13)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(15)前記感光性ハロゲン化銀粒子が、転位線や格子欠陥を含む(1)および(13)〜(14)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(16)前記感光性ハロゲン化銀粒子の粒子サイズが、0.5μm以下、好ましくは0.1μm以下、更に好ましくは0.05μm以下であり、および0.005μm以上であり、また粒子サイズの変動係数が、30%以下、好ましくは25%以下、特に好ましくは20%以下である(1)および(13)〜(15)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(17)pAgが5.0以下、好ましくは4.0以下、およびpAgが1.5以上、好ましくは2.0以上、更に好ましくは2.5以上の条件のもと、カルコゲン増感法、金増感法及び還元増感法の少なくとも一つの方法で化学増感されている事を特徴とする(1)および(13)〜(16)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(18)前記感光性ハロゲン化銀粒子が、8族金属、例えば、Fe、Ir、Ru、Rh、Osなどを、さらにそれらの無機や有機の4ないし6配位錯体を含む(1)および(13)〜(17)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(19)前記感光性ハロゲン化銀乳剤が、米国特許5413905号、同5482825号、同5747235号、同5747236号、同5994051号、同6054260号に記載のFED化合物を含む(1)および(13)〜(18)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(20)前記感光性ハロゲン化銀乳剤が(13)〜(19)に記載のハロゲン化銀写真乳剤である(2)に記載の熱現像感光材料。
(21)レーザー光で露光されることを特徴とする(2)〜(12)、および(20)に記載の熱現像感光材料。
(22)前記レーザー光のピーク波長が600nm以上900nm以下であることを特徴とする(21)に記載の熱現像感光材料。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0012】
1.ハロゲン化銀写真乳剤
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀写真乳剤は、沃化銀含有率が80モル%以上100モル%以下と高い組成の高沃化銀乳剤である。この乳剤をpAgが5.0以下好ましくは4.0、およびpAgが1.5以上、好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.5以上の条件のもとでEredが−1.1Vより卑、好ましくは−1.2Vより卑、より好ましくは−1.25Vより卑で、且つLogPが0.68以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは1.0以上であるシアニン色素の少なくとも一つと該シアニン色素のEoxよりも0.2V以上卑、好ましくは0.3V以上卑、より好ましくは0.4V以上卑のEoxを持つ化合物の少なくとも一つとで分光増感することにより本発明を達成できる。
【0013】
1−1.分光増感
分光増感は分光増感色素をハロゲン化銀粒子に吸着せしめ、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を増感させる技術であり、露光光源の分光特性に適した分光感度を付与する為には、分光増感色素がハロゲン化銀粒子に吸着できる事が必要であり、吸着した状態での増感色素の吸収が露光光源の分光特性に出来る限り合致している事が必要である。本発明の熱現像感光材料では、450nm以上900nm、特に600nm以上900nm以下に分光感度ピークを持つように分光増感されていることが好ましい。
高沃化銀を分光増感するには臭化銀よりも、ポーラログラフ還元電位がより卑の色素を用いる必要がある。しかしながら、600nmよりも長波長に分光感度を持ち且つEredが十分卑である色素を設計、合成する事は容易い事ではない。分光増感技術には強色増感と言う技術があるが、この強色増感技術を用いることによって適用できる増感色素のEredの限界をより貴に出来る。
本発明は、増感色素のEoxよりも0.2V以上卑のEoxを持つ化合物を同時に用いる事により、−1.1Vより卑のEredと0.68以上のLogPを持つシアニン色素が好ましく適用できる事を開示した物である。
【0014】
前述、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング 21巻6号325頁1977年発行でのW.H.Gardnerの報告ではシアニン色素の沃化銀粒子に対する吸着は臭化銀に対するよりも強いとされ、特登2,785,129号明細書ではアニオンシアニン色素が沃化銀の分光増感に優れていると開示されているが、大概のシアニン色素ではそのような事実は観測されなかった。親水性の非常に高いものは別として、疎水性の低いアニオンシアニン色素でも臭化銀粒子や沃化銀20モル%以下の沃臭化銀粒子には良好に吸着することは関係技術者には良く知られている事実であるが、本発明の高沃化銀への吸着は、先の文献からの予測に反して、非常に悪かった。例えば、親疎水性の指標であるLogPが0.6位のアニオンシアニンの沃化銀粒子に対する吸着率は50%以下にしか過ぎなかった。かかるシアニン色素ではEredが分光増感の閾値を超える程十分に卑であっても吸着が悪いため、低い分光感度しか得られなかった。
【0015】
かかる状況下にあって、シアニン色素のLogPを大きくすることによって、高沃化銀粒子への吸着を臭化銀並に良化できる事を見出した。即ち、LogPが0.7以上になれば良いことを見出した。より好ましくはLogP1.0以上にすれば良かったがそれでも不十分であった。シアニン色素の吸着はpAgが高い程良いとされているが、意外なことに高沃化銀では、pAg6でのシアニン色素の吸着は悪く、LogPの大きな色素を用いても吸着は不十分であり、pAgがより高くなるとその傾向は増大した。しかしながら、pAgを5.0〜1.5に、より好ましくは5.0〜2.0に保って吸着させれば、LogPが0.7以上のシアニン色素では十分に吸着させられる事を見出した。 それでも、このような、良く吸着しうる色素を、良く吸着出来る条件下で用いても、高沃化銀乳剤では、高い分光感度が得られると限らなかった。例えば、臭化銀乳剤ではEredが−1.30V以上の物で良好な分光感度が得られるが、本発明の高沃臭化銀乳剤では必ずしも高い感度は得られず、Eredが−1.35Vより卑のシアニン色素を、pAg5.0以下1.5以上、より好ましくはpAg4.0以下2.0以上に該乳剤を保って分光増感を施こさねば、高い分光感度が得られなかった。
【0016】
本発明者による大きな発見は、シアニン色素に対して該シアニン色素のEoxよりも0.2V以上卑の化合物を補助増感剤として同時に用いる事によって、Eredが−1.1Vより卑のシアニン色素でも良好な分光感度が得られる事を見出したことである。この事は、適用できる増感色素が広げられ、感光材料の設計、製造にとっては極めて有益且つ価値あるものである。
【0017】
本発明において、シアニン色素のEredは、−1.1Vより卑、好ましくは−1.2Vより卑、より好ましくは、−1.25V より卑である。下限については特に制限がないが、化合物の合成適性や化合物の安定性などから実用的に使用可能な範囲から制約されるものである。
【0018】
本発明において、シアニン色素のLogPは、0.68以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは1.0以上である。上限については特に制限がないが、LogPが高すぎると溶媒への溶解性が低下し実質的に添加あうることができなくなることや塗布液中での安定性が低下し均一な塗布膜が得られないなどの問題が生じるので、実用的に使用可能な範囲から制約されるものである。
【0019】
併用する補助増感剤のEoxは、シアニン色素のEoxとの関係で選ばれ、本発明においてはシアニン色素のEoxより0.2V以上卑であることが必要であり、好ましくは0.3V以上、より好ましくは0.4V以上である。上限については特に制限がないが、化合物の合成適性や化合物の安定性などから実用的に使用可能な範囲から制約されるものである。
【0020】
また、シアニン色素としては、Jハ゛ント゛型の吸収を与える物が、より高い光吸収率をもたらすので好ましい。
【0021】
本発明の増感色素の具体例としては、例えば、リサーチ・ディスクロージャー誌(Reserch Disclosure)176巻アイテム17643(RD17643)、同187巻アイテム18716(RD18716)及び308巻アイテム308119(RD308119)に記載の特許明細書に記載されているようなシアニン色素でEredが−1.1Vより卑で且つLogPが0.68以上であるシアニン色素が挙げられる。
【0022】
補助増感剤として用いられるシアニン色素のEoxより0.2V以上卑の化合物としては、該要件を満たす化合物なら何でもよいが、好ましい化合物としては英国特許1310994号、米国特許3282932号等に開示されているアミノスチリル化合物、特開平5−216152号等に記載の置換ヒト゛ラシ゛ン化合物及び特開平7−5615号、特開平7−13290等に記載の化合物などが上げられるが、次の一般式(SS−I)または(SS−II)で表される化合物が特に好ましい。
【0023】
一般式(SS−I)
【化1】
【0024】
ここで、R1及びR2は炭素総数10以下のアルキル基、アルコキシアルキル基を表すかR1はR3と、R2はR4と連結してフ゜ロヒ゜レン基を形成しても良い。またR3及びR4は水素原子または電子供与性基をも表し、R5は水素原子または電子供与性基を表わすが、同種または異種の基が複数個置換されていても良い事もあわらす。R6及びR7は同種または異種でも良く、水素原子または炭素総数6以下の電子供与性基を表し、R6とR7が連結してヘ゛ンソ゛環、シ゛オキシメチレン環、シ゛オキシエチレン環及びシ゛メチレンオキシ環等のように縮合環を形成できる事も表す。
【0025】
一般式(SS−II)
【化2】
【0026】
ここで、Qは含窒素5員環または6員環を形成するに必要な非金属原子群を表し、Zは硫黄原子、酸素原子、セレン原子をあらわす。
R11、R12及びR13は同一でも異なっていても良く、炭素数6以下のアルキル基またはアルコキシアルキル基を表す。R14は炭素数10以下の鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子が含まれていても良い2価基を表す
R15、R16、R17及びR18は同一でも異なっていても良く、水素原子または炭素総数6以下の電子供与性基を表し、R15とR16、R17とR18がそれぞれ連結してヘ゛ンソ゛環、シ゛オキシメチレン環、シ゛オキシエチレン環及びシ゛メチレンオキシ環等のように縮合環を形成できる事も表す。
【0027】
増感色素のポーラログラフ半波還元電位(Ered)及びポーラログラフ半波酸化電位(Eox)は、谷、大関、関 ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカルソサイティー(T.Tani,K.Ohzeki,K.Seki,Journal of the Electrochemical Society)138巻 1411頁及びレナード、ジャーナル オブ イメージング サイエンス(J.Lenhard,Journal of Imaging Science) 30巻 27頁に記載の位相弁別第二高調波交流ボルタンメトリー法により測定すればよい。
また、本発明に於ける増感色素のLogPは、次式に従い、液体クロマトグラフィーの保持時間により算出した。
【0028】
LogP=Log{(tR−t0)/t0}
【0029】
ここで、tRは増感色素の保持時間、t0は非保持物質(KI)の保持時間である。液体クロマトグラフィーの測定条件は次の通りである。カラムはODS−80TS(TOSO社製)、溶離液は、メタノール・水(60:40)混合液に酢酸及びトリエチルアミンをそれぞれ0.2%含有させた溶液で、25℃で測定した。尚、保持時間が遅い色素については、酢酸及びトリエチルアミンをそれぞれ0.2%づつ含有させたメタノール・水(70:30)の溶離液で測定し、検量線から前述メタノール・水(60:40)溶離液に換算した。
【0030】
該増感色素及び該増感色素のEoxよりも0.2V以上卑のEoxを持つ化合物を本発明の高沃化銀乳剤に添加、含有せしめるには、関係技術者には周知である通常の方法を用いればよい。即ち、直接乳剤中に分散させても良いし、水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセルソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解しても良い。 また、米国特許3,469,987号明細書等に記載の如き色素を揮発性の有機溶剤に溶解し、該溶液を水または親水性コロイド中に微分散した液を乳剤中に添加する方法、特公昭46−23,389号、特公昭44−27,555号、特公昭57−22,091号等に記載されている如き、色素を酸に溶解し、その溶液を乳剤中に添加したり、酸または塩基を共存させて水溶液とし、そのまま乳剤中に添加したり、親水性コロイド中に分散した分散液を乳剤中に添加する方法、米国特許3,822,135号、米国特許4,006,025号明細書等に記載の如き、界面活性剤を共存させて水溶液或いはコロイド微分散物としたものを乳剤中に添加する方法、特開昭53−102,733号、特開昭58−105,141号に記載の如き、水または親水性コロイド中に色素を直接微分散させ、その分散物を乳剤中に添加する方法等を用いることも出来る。
本発明の増感色素は単独で用いてもよく、本発明に関わる色素同士或いは本発明以外の増感色素と組合せて2種以上で用いてもよい。
【0031】
本発明に用いる増感色素を本発明の高沃化銀乳剤中に添加する時期は、沃臭化銀乳剤、塩臭化銀等の他の乳剤で此まで有用で有ることが認められている乳剤調製の如何なる工程中であってもよい。例えば、米国特許2,735,766号、米国特許3,628,960号、米国特許4,183,756号、米国特許4,225,666号、特開昭58−184,142号、特開昭60−196,749号等の明細書に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程または/及び脱塩前の時期、脱塩工程中及び/または脱塩後から化学熟成の開始前までの時期、特開昭58−113,920号等の明細書に開示されているように、化学熟成の開始直前または工程中の時期、化学熟成後塗布迄の時期の乳剤が塗布される前なら如何なる時期、工程に於いて添加されても良い。また、米国特許4,225,666号、特開昭58−7,629号等の明細書に開示されているように同一増感色素を単独で、または異種構造の化合物と組み合わせて、例えば、同一工程中または粒子形成工程中と化学熟成工程中や化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどの異種工程に分割して添加しても良く、分割して添加する化合物及び化合物の組み合わせの種類を変えて添加されても良い。
また、短時間で所定量を添加しても良いし、長時間、例えば粒子形成工程中の核形成後から粒子形成完了迄や化学熟成工程の大半などに亘って任意の工程に於いて連続的または間欠的に添加しても良い。かかる場合の添加速度は等速流量でも、流量をを加速したり、減速しても良いが、所定量の少なくとも一部を添加開始時に一気に添加するのがより好ましい。
増感色素のEoxよりも0.2V以上卑のEoxを持つ化合物の添加時期は特に制限はないが、増感色素と同時か、増感色素を添加した後に添加する方がより好ましい。
添加する温度は任意で良いが、通常は20℃〜75℃が用いられる。一定温度で添加、熟成しても良いし、添加中に温度を変えても、添加時と添加後の熟成時の温度を変えても良い。所定量の少なくとも一部を45℃以下で短時間内に一気に添加しその後50℃〜65℃に上げ、熟成したり、残りを添加する方法はより好ましい。
【0032】
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光性層のハロゲン化銀粒子の表面積1m2当たり1x10−7〜3.5x10−6モルが好ましく、さらに好ましくは8x10−7〜2x10−6モルである。
また増感色素のEoxよりも0.2V以上卑のEoxを持つ補助増感剤の添加量は添加する増感色素全量に対して、2mol%〜200mol%が好ましく、より好ましくは5mol%〜30mol%である。
【0033】
本発明は分光増感効率を更に向上させる為、その他の強色増感剤を用いることもできる。本発明に用いうる強色増感剤としては、欧州特許公開第587,338号、米国特許第3,877,943号、同第4,873,184号、特開平5−341432号、同11−109547号、同10−111543号等に記載の化合物が挙げられる。
【0034】
本発明の増感色素の具体例を下記のS−1〜S−5に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
【化3】
【0036】
本発明の補助増感剤の具体例を下記のSS−1〜SS−5に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【化4】
【0038】
1−2.沃化銀含量
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、沃化銀含有率が80モル%以上100モル%以下と高い組成のものであることが重要である。残りは特に制限はなく、塩化銀、臭化銀またはチオシアン酸銀や燐酸銀などの有機銀塩から選ぶことができるが、特に臭化銀、塩化銀であることが好ましい。この様な沃化銀含有率が高い組成のハロゲン化銀を用いることによって、現像処理後の画像保存性、特に光照射によるカブリの増加が著しく小さい好ましい熱現像感光材料が設計できる。さらに、沃化銀含有率が85モル%以上100モル%以下であると好ましく、特に90モル%以上100モル%以下であることが処理後の光照射に対する画像保存性の観点では極めて好ましい。
【0039】
粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子も好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。コア部の沃化銀含有率が高いコア高沃化銀構造、またはシェル部の沃化銀含有率が高いシェル高沃化銀構造も好ましく用いることができる。また、粒子の表面にエピタキシャル部分とした塩化銀や臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0040】
1−3.ハロゲン化銀粒子サイズ
本発明に用いる高沃化銀の粒子サイズは特に制限はないが、0.5μm以下、好ましくは0.2μm以下、特に好ましくは0.05μm以下が好ましい。さらに本発明の粒子を熱現像感材に用いる場合には、粒子サイズが5nm以上90nm以下であることが好ましい。ハロゲン化銀のサイズが大きいと、必要な最高濃度を達成するために必要なハロゲン化銀の塗布量が増加する。本発明者は、本発明で好ましく用いられる沃化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は、その塗布量が多いと現像が著しく抑制され低感化するとともに現像の時間に対する濃度安定性が悪化し好ましくなく、そのため一定以上の粒子サイズでは所定の現像時間で最高濃度が得られないことを見出した。一方、その添加量を制限すれば沃化銀ながら十分な現像性を有することを発見した。
この様に沃化銀を用いる場合には、十分な最高光学濃度を達成するためにはハロゲン化銀粒子のサイズは十分に小さいことが必要である。好ましいハロゲン化銀の粒子サイズは5nm以上70nm以下であり、さらに5nm以上55nm以下であることが好ましい。特に好ましくは10nm以上45nm以下である。ここでいう粒子サイズとは、電子顕微鏡により観察した投影面積と同面積の円像に換算したときの直径の平均をいう。
【0041】
1−4.ハロゲン化銀の塗布量
この様なハロゲン化銀粒子の塗布量は、後述する非感光性有機銀塩の銀1モルに対して0.5モル%以上15モル%以下、好ましくは0.5モル%以上12モル%以下、10モル%以下であることがさらに好ましい。1モル%以上9モル%以下であることがより好ましく、特に好ましくは1モル%以上7モル%以下である。本発明者の見出した沃化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀による著しい現像抑制を押さえるためには、この添加量の選択は極めて重要である。
【0042】
1−5.ハロゲン化銀粒子形成方法
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特開平11−352627号、特願2000−42336号記載の方法も好ましい。
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができる。本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は複雑な形態を取り得るが、好ましい形態は例えば、R.L.JENKINS etal. J of Phot. Sci. Vol.28 (1980)のp164−Fig1に示されているような接合粒子が挙げられる。同Fig.1に示されているような平板上粒子も好ましく用いられる。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い[100]面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数[100]面の比率は増感色素の吸着における[111]面と[100]面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
【0043】
1−6.重金属イオン
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第8族〜第10族の金属または金属錯体を含有することができる。周期律表の第8族〜第10族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくは、ロジウム、ルテニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10−9モルから1×10−3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加法については特開平7−225449号、特開平11−65021号段落番号0018〜0024、特開平11−119374号段落番号0227〜0240に記載されている。
【0044】
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)6]4−、[Fe(CN)6]3−、[Ru(CN)6]4−、[Os(CN)6]4−、[Co(CN)6]3−、[Rh(CN)6]3−、[Ir (CN)6]3−、[Cr(CN)6]3−、[Re(CN)6]3−などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン)を用いることが好ましい。
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
【0045】
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10−5モル以上1×10−2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10−4モル以上1×10−3モル以下である。
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、または化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
尚、六シアノ金属錯体の添加は、粒子形成をするために添加する硝酸銀の総量の96質量%を添加した後から開始してもよく、98質量%添加した後から開始するのがより好ましく、99質量%添加した後が特に好ましい。
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、AgIよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となった。
【0046】
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号段落番号0046〜0050、特開平11−65021号段落番号0025〜0031、特開平11−119374号段落番号0242〜0250に記載されている。
【0047】
1−7.化学増感
P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号などに記載されている不安定硫黄化合物を用いた硫黄増感法、特公昭43ー13489号、同44ー15748号、特開平4ー25832号、同4ー109340号、同4ー271341号、同5ー40324号、同5ー11385号、特願平4ー202415号、同4ー330495号、同4ー333030号、同5ー4203号、同5ー4204号、同5ー106977号、同5ー236538号、同5ー241642号、同5ー286916号などに記載されているセレン化合物を用いるセレン増感法、特開平4ー224595号、同4ー271341号、同4ー333043号、同5ー303157号、同6−27573号、同6−175258号、同6−180478号、同6−208186号、同6−208184号、同6−317867号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号などに記載されている不安定テルル化合物を用いるテルル増感法などのカルコゲン増感法を用いる事が出来る。
特に本発明においてはセレン増感とテルル増感が好ましく、特にテルル増感が好ましい。
また、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金増感剤、金以外の、白金、パラジュウム、イリジュウムなどの貴金属塩を用いる事も出来る。
金増感は単独で用いることもできるが、前記のカルコゲン増感と組み合わせて用いることが好ましい。具体的には金硫黄増感、金セレン増感、金テルル増感、金硫黄セレン増感、金硫黄テルル増感、金セレンテルル増感、金硫黄セレンテルル増感である。
更にまた、本発明においてカルコゲン増感や金増感に加えて、還元増感も併用することができる。とくにカルコゲン増感と併用するのが好ましい。
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、金増感、およびカルコゲン増感の少なくとも1つの方法で化学増感されていることが高感度の熱現像感光材料を設計する点から必要である。
【0048】
本発明における感光性ハロゲン化銀乳剤は、1光子で2電子を発生させる化合物としてFED増感剤(Fragmentable electron donating sensitaizer)を含有することが好ましい。FED増感剤としては、米国特許5413905号、同5482825号、同5747235号、同5747236、同6054260号、同5994051号、特願2001−86161号に記載の化合物が好ましい。FED増感剤の添加する工程としては結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でも好ましい。添加量としては、種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10−7モルから10−1モル、より好ましくは10−6モル〜5×10−2モルである。
【0049】
1−8.ゼラチン
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、分子量は、500〜60,000の低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。
【0050】
1−9.ハロゲン化銀の併用
本発明に用いられる熱現像感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57−119341号、同53−106125号、同47−3929号、同48−55730号、同46−5187号、同50−73627号、同57−150841号などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
【0051】
1−10.ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法
本発明の感光性ハロゲン化銀の粒子は、非感光性有機銀塩の存在しないところで形成され、化学増感されることが特に好ましい。有機銀塩に対してハロゲン化剤を添加することによってハロゲン化銀を形成する方法では十分な感度が達成できない場合があるからである。
このように非感光性有機銀塩の存在しないもとでハロゲン化銀を形成する方法としては、別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があげられる。いずれの方法でも本発明の効果を好ましく得ることができる。
本発明のハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳”液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0052】
2.熱現像感光材料
本発明の熱現像感光材料は、支持体の一方面上に少なくとも1種類の前述の感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤及びバインダーを含有する画像形成層を有している。また、好ましくは画像形成層の上に中間層、表面保護層、あるいはその反対面にバック層やバック保護層などを有してもよい。
これらの各層の構成、およびその好ましい成分について詳しく説明する。
【0053】
2−1.画像形成層
2−1−1.有機銀塩
本発明に用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は還元できる銀イオン源を含む任意の有機物質であってよい。
このような非感光性の有機銀塩については、特開平10−62899号の段落番号0048〜0049、欧州特許第0803764A1号の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号等に記載されている。有機酸の銀塩が好ましく、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。
有機銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、これらの混合物などを含む。本発明においては、これら有機銀塩の中でも、ベヘン酸銀含有率75モル%以上の有機酸銀を用いることが好ましい。
【0054】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はなく、針状、棒状、平板状、りん片状でよく、針状、りん片状が好ましく、特にりん片状が好ましい。
本明細書において、りん片状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機酸銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機酸銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短かい方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
【0055】
x=b/a
【0056】
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは15≧x(平均)≧1.5である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μm以上0.3μmが好ましく、0.1μm以上0.23μm以下がより好ましい。c/bの平均は好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下、さらに好ましくは1以上3以下、特に好ましくは1以上2以下である。
【0057】
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。
【0058】
測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩を市販で得られるレーザー光散乱型粒子サイズ測定装置で測定することができる。
【0059】
本発明に用いられる有機銀塩の製造及びその分散法は、公知の方法等を適用することができる。例えば上記の特開平10−62899号、欧州特許公開第0803763A1、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号、特願平11−348228〜30号、同11−203413号、特願2000−90093号、同2000−195621号、同2000−191226号、同2000−213813号、同2000−214155号、同2000−191226号等を参考にすることができる。
【0060】
なお、有機銀塩の分散時に、感光性銀塩を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下するため、分散時には感光性銀塩を実質的に含まないことがより好ましい。本発明は、分散される水分散液中での感光性銀塩量は、その液中の有機酸銀塩1モルに対し0.1モル%以下であり、積極的な感光性銀塩の添加は行わないことが望ましい。
【0061】
本発明の有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5.0g/m2が好ましく、より好ましくは1.0〜3.0g/m2、さらに好ましくは1.2〜2.5g/m2である。
【0062】
2−1−2.還元剤
本発明の熱現像感光材料は、有機銀塩のための還元剤を含む。該還元剤は、銀イオンを金属銀に還元できる任意の物質(好ましくは有機物)でよい。該還元剤の例は、特開平11―65021号、段落番号0043〜0045や、欧州特許0803764号、p.7、34行〜p.18、12行に記載されている。
【0063】
本発明に用いられる好ましい還元剤は、フェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤、あるいはビスフェノール系還元剤である。特に次の一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【0064】
一般式(I)
【化5】
【0065】
一般式(I)においては、R11およびR11’は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。X1およびX1’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
【0066】
各置換基について詳細に説明する。
1)R11およびR11’
R11およびR11’は各々独立に置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等があげられる。
【0067】
2)R12およびR12’、X1およびX1’
R12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
X1およびX1’は、各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基があげられる。
【0068】
3)L
Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。
R13の無置換のアルキル基の具体例はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基などがあげられる。
【0069】
アルキル基の置換基の例はR11の置換基と同様で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基などがあげられる。
【0070】
4)好ましい置換基
R11およびR11’として好ましくは炭素数3〜15の2級または3級のアルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基などがあげられる。R11およびR11’としてより好ましくは炭素数4〜12の3級アルキル基で、その中でもt−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0071】
R12およびR12’として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などがあげられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基である。
【0072】
X1およびX1’は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基で、より好ましくは水素原子である。
Lは好ましくは−CHR13−基である。
【0073】
R13として好ましくは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基が好ましい。R13として特に好ましいのは水素原子、メチル基、プロピル基またはイソプロピル基である。
【0074】
R13が水素原子である場合、R12およびR12’は好ましくは炭素数2〜5のアルキル基であり、エチル基、プロピル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
R13が炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基である場合、R12およびR12’はメチル基が好ましい。R13の炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が更に好ましい。
【0075】
R11、R11’およびR12、R12’とがいずれもメチル基である場合、R13は2級のアルキル基であることが好ましい。この場合、R13の2級アルキル基としてはイソプロピル基、イソブチル基、1−エチルペンチル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
【0076】
上記還元剤は、R11、R11’およびR12およびR12’、およびR13の組合せにより、種々の熱現像性能が異なる。2種以上の還元剤を種々の混合比率で併用することによってこれらの熱現像性能を調整することができるので、目的によっては還元剤を2種類以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0077】
以下に本発明の一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
【化6】
【0079】
【化7】
【0080】
【化8】
【0081】
特に(I−1)〜(I−20)に示すような化合物であることが好ましい。
【0082】
本発明において還元剤の添加量は0.01〜5.0g/m2であることが好ましく、0.1〜3.0g/m2であることがより好ましく、画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5〜50%モル含まれることが好ましく、10〜40モル%で含まれることがさらに好ましい。
【0083】
本発明の還元剤は、有機銀塩、および感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層、およびその隣接層に添加することができるが、画像形成層に含有させることがより好ましい。
【0084】
本発明の還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
【0085】
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0086】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。好ましくは、サンドミルを使った分散方法である。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることができる。
【0087】
特に好ましいのは、還元剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜2μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
【0088】
2−1−3.現像促進剤
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤として特開2000−267222号や特開2000−330234号等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開2001−92075号記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10−62895号や特開平11−15116号等に記載の一般式(I)、特願2001−074278号に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特願2000−76240号に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物が好ましく用いられる。これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1〜20モル%の範囲で使用され、好ましくは0.5〜10モル%の範囲で、より好ましくは1〜5モル%の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられるが、特に固体分散物または乳化分散物として添加することが好ましい。乳化分散物として添加する場合、常温で固体である高沸点溶剤と低沸点の補助溶剤を使用して分散した乳化分散物として添加するか、もしくは高沸点溶剤を使用しない所謂オイルレス乳化分散物として添加することが好ましい。
【0089】
本発明においては上記現像促進剤の中でも、特願2001−074278号に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物および特願2000−76240号に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物が特に好ましい。
【0090】
以下、本発明の現像促進剤の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
【化9】
【0092】
2−1−4.水素結合性化合物
本発明では、還元剤の芳香族性の水酸基(−OH)と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。
【0093】
水素結合を形成しうる基としては、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、含窒素芳香族基などが挙げられる。その中でも好ましいのはホスホリル基、スルホキシド基、アミド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレタン基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレイド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)を有する化合物である。
【0094】
本発明で、特に好ましい水素結合性化合物は下記一般式(A)で表される化合物である。
【0095】
【化10】
【0096】
一般式(A)においてR21ないしR23は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
【0097】
R21ないしR23が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基などがあげられ、置換基として好ましいのはアルキル基またはアリール基でたとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基、フェニル基、4−アルコキシフェニル基、4−アシルオキシフェニル基などがあげられる。
【0098】
R21ないしR23のアルキル基としては具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、2−フェノキシプロピル基などがあげられる。
【0099】
アリール基としてはフェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、4−t−オクチルフェニル基、4−アニシジル基、3,5−ジクロロフェニル基などが挙げられる。
【0100】
アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0101】
アリールオキシ基としてはフェノキシ基、クレジルオキシ基、イソプロピルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0102】
アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−ヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
【0103】
R21ないしR23としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。本発明の効果の点ではR21ないしR23のうち少なくとも一つ以上がアルキル基またはアリール基であることが好ましく、二つ以上がアルキル基またはアリール基であることがより好ましい。また、安価に入手する事ができるという点ではR21ないしR23が同一の基である場合が好ましい。
【0104】
以下に本発明における一般式(A)の化合物をはじめとする水素結合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0105】
【化11】
【0106】
【化12】
【0107】
水素結合性化合物の具体例は上述の他に特願2000−192191号、同2000−194811号に記載のものがあげられる。
【0108】
本発明の水素結合性化合物は、還元剤と同様に溶液形態、乳化分散形態、固体分散微粒子分散物形態で塗布液に含有せしめ、感光材料中で使用することができる。本発明の化合物は、溶液状態でフェノール性水酸基を有する化合物と水素結合による錯体を形成しており、還元剤と本発明の一般式(A)の化合物との組み合わせによっては錯体として結晶状態で単離することができる。
【0109】
このようにして単離した結晶粉体を固体分散微粒子分散物として使用することは安定した性能を得る上で特に好ましい。また、還元剤と本発明の水素結合性化合物を粉体で混合し、適当な分散剤を使って、サンドグラインダーミル等で分散時に錯形成させる方法も好ましく用いることができる。
【0110】
本発明の水素結合性化合物は還元剤に対して、1〜200モル%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10〜150モル%の範囲で、さらに好ましくは30〜100モル%の範囲である。
【0111】
2−1−5.バインダー
本発明の有機銀塩含有層のバインダーはいかなるポリマーであってもよく、好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ゴム類、ポリ(ビニルアルコール)類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピロリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)類、ポリ(メチルメタクリル酸)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒またはエマルションから被覆形成してもよい。
【0112】
本発明では、有機銀塩を含有する層のバインダーのガラス転移温度は−20℃以上80℃以下であることが好ましく、0℃〜70℃であることがより好ましく、10℃以上65℃以下であることが更に好ましい。
【0113】
なお、本明細書においてTgは下記の式で計算される。
【0114】
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
【0115】
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。
尚、各モノマーの単独重合体ガラスの転移温度の値(Tgi)はPolymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用した。
【0116】
バインダーとなるポリマーは単独種で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用しても良い。また、ガラス転移温度が20℃以上のものとガラス転移温度が20℃未満のものを組み合わせて用いてもよい。Tgの異なるポリマーを2種以上ブレンドして使用する場合には、その重量平均Tgが上記の範囲に入ることが好ましい。
【0117】
本発明においては、有機銀塩含有層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成される場合に、さらに有機銀塩含有層のバインダーが水系溶媒(水溶媒)に可溶または分散可能である場合に、特に25℃60%RHでの平衡含水率が2質量%以下のポリマーのラテックスからなる場合に性能が向上する。
最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
【0118】
ここでいう前記ポリマーが可溶または分散可能である水系溶媒とは、水または水に70質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。
水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルミアミドなどを挙げることができる。
【0119】
また「25℃60%RHにおける平衡含水率」とは、25℃60%RHの雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの重量W1と25℃で絶乾状態にあるポリマーの重量W0を用いて以下のように表すことができる。
25℃60%RHにおける平衡含水率=[(W1−W0)/W0]×100(質量%)含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)を参考にすることができる。
【0120】
本発明のバインダーポリマーの25℃60%RHにおける平衡含水率は2質量%以下であることが好ましいが、より好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以上1質量%以下が望ましい。
【0121】
本発明のバインダーは水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態またはミセルを形成して分散しているものなどがあるが、いずれも好ましい。分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0122】
本発明において水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリ(エステル)類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(オレフィン)類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。
【0123】
これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000、好ましくは10000〜200000がよい。分子量が小さすぎるものは乳剤層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。
【0124】
好ましいポリマーラテックスの具体例としては以下のものを挙げることができる。以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値は質量%、分子量は数平均分子量である。多官能モノマーを使用した場合は架橋構造を作るため分子量の概念が適用できないので架橋性と記載し、分子量の記載を省略した。Tgはガラス転移温度を表す。
【0125】
P−1;−MMA(70)−EA(27)−MAA(3)−のラテックス(分子量37000、Tg61℃)
P−2;−MMA(70)−2EHA(20)−St(5)−AA(5)−のラテックス(分子量40000、Tg59℃)
P−3;−St(50)−Bu(47)−MAA(3)−のラテックス(架橋性、Tg−17℃)
P−4;−St(68)−Bu(29)−AA(3)−のラテックス(架橋性、Tg17℃)
P−5;−St(71)−Bu(26)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg24℃)
P−6;−St(70)−Bu(27)−IA(3)−のラテックス(架橋性)
P−7;−St(75)−Bu(24)−AA(1)−のラテックス(架橋性、Tg29℃)
P−8;−St(60)−Bu(35)−DVB(3)−MAA(2)−のラテックス(架橋性)
P−9;−St(70)−Bu(25)−DVB(2)−AA(3)−のラテックス(架橋性)
P−10;−VC(50)−MMA(20)−EA(20)−AN(5)−AA(5)−のラテックス(分子量80000)
P−11;−VDC(85)−MMA(5)−EA(5)−MAA(5)−のラテックス(分子量67000)
P−12;−Et(90)−MAA(10)−のラテックス(分子量12000)
P−13;−St(70)−2EHA(27)−AA(3)のラテックス(分子量130000、Tg43℃)
P−14;−MMA(63)−EA(35)− AA(2)のラテックス(分子量33000、Tg47℃)
P−15;−St(70.5)−Bu(26.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg23℃)
P−16;−St(69.5)−Bu(27.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg20.5℃)
【0126】
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート、EA;エチルアクリレート、MAA;メタクリル酸、2EHA;2−エチルヘキシルアクリレート、St;スチレン、Bu;ブタジエン、AA;アクリル酸、DVB;ジビニルベンゼン、VC;塩化ビニル、AN;アクリロニトリル、VDC;塩化ビニリデン、Et;エチレン、IA;イタコン酸。
【0127】
以上に記載したポリマーラテックスは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル系ポリマーの例としては、セビアンA−4635,4718,4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(エステル)類の例としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリ(ウレタン)類の例としては、HYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム類の例としては、LACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410、438C、2507(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニル)類の例としては、G351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニリデン)類の例としては、L502、L513(以上旭化成工業(株)製)など、ポリ(オレフィン)類の例としては、ケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。
これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。
【0128】
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、特に、スチレン−ブタジエン共重合体のラテックスが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との重量比は40:60〜95:5であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60〜99質量%であることが好ましい。好ましい分子量の範囲は前記と同様である。
【0129】
本発明に用いることが好ましいスチレン−ブタジエン共重合体のラテックスとしては、前記のP−3〜P−8,14,15、市販品であるLACSTAR−3307B、7132C、Nipol Lx416等が挙げられる。
【0130】
本発明の感光材料の有機銀塩含有層には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。
【0131】
これらの親水性ポリマーの添加量は有機銀塩含有層の全バインダーの30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好ましい。
【0132】
本発明の有機銀塩含有層(即ち、画像形成層)は、ポリマーラテックスをバインダーに用いて形成されたものが好ましい。有機銀塩含有層のバインダーの量は、全バインダー/有機銀塩の重量比が1/10〜10/1、更には1/5〜4/1の範囲が好ましい。
【0133】
また、このような有機銀塩含有層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層(乳剤層)でもあり、このような場合の、全バインダー/ハロゲン化銀の重量比は400〜5、より好ましくは200〜10の範囲が好ましい。
【0134】
本発明の画像形成層の全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2の範囲が好ましい。本発明の画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0135】
本発明において感光材料の有機銀塩含有層塗布液の溶媒(ここでは簡単のため、溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す。)は、水を30質量%以上含む水系溶媒が好ましい。水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。溶媒の水含有率は50質量%以上がより好ましく、さらに好ましくは70質量%以上が良い。
【0136】
好ましい溶媒組成の具体例を挙げると、水100の他、水/メチルアルコール=90/10、水/メチルアルコール=70/30、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メチルアルコール/エチルセロソルブ=85/10/5、水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール=85/10/5などがある(数値は質量%)。
【0137】
2−1−6.かぶり防止剤
本発明はカブリ防止剤として下記一般式(H)で表される化合物を含有するのが好ましい。
一般式(H)
【0138】
Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
【0139】
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Z1およびZ2はハロゲン原子を表し、Xは水素原子または電子求引性基を表す。
【0140】
Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子求引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207−1216 等を参考にすることができる。
【0141】
このような電子求引性基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子(σp値:0.06)、塩素原子(σp値:0.23)、臭素原子(σp値:0.23)、ヨウ素原子(σp値:0.18))、トリハロメチル基(トリブロモメチル(σp値:0.29)、トリクロロメチル(σp値:0.33)、トリフルオロメチル(σp値:0.54))、シアノ基(σp値:0.66)、ニトロ基(σp値:0.78)、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基(例えば、メタンスルホニル(σp値:0.72))、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基(例えば、アセチル(σp値:0.50)、ベンゾイル(σp値:0.43))、アルキニル基(例えば、C≡CH(σp値:0.23))、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル(σp値:0.45)、フェノキシカルボニル(σp値:0.44))、カルバモイル基(σp値:0.36)、スルファモイル基(σp値:0.57)、スルホキシド基、ヘテロ環基、ホスホリル基等があげられる。
σp値としては好ましくは0.2〜2.0の範囲で、より好ましくは0.4から1.0の範囲である。
【0142】
電子求引性基として好ましいのは、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基、カルボキシル基、アルキルまたはアリールカルボニル基、およびアリールスルホニル基であり、特に好ましくはカルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基であり、カルバモイル基が最も好ましい。
【0143】
Xは、好ましくは電子求引性基であり、より好ましくはハロゲン原子、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。
ハロゲン原子の中でも、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
【0144】
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−または−SO2 −を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO2 −であり、特に好ましくは−SO2 −である。nは、0または1を表し、好ましくは1である。
【0145】
以下に本発明の一般式(H)の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0146】
【化13】
【0147】
【化14】
【0148】
本発明の一般式(H)で表される化合物は画像形成層の非感光性銀塩1モル当たり、10−4〜0.8モルの範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10−3〜0.1モルの範囲で、さらに好ましくは5×10−3〜0.05モルの範囲で使用することが好ましい。
特に、本発明の沃化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀を用いた場合、十分なかぶり防止効果を得るためにはこの一般式(H)の化合物の添加量は重要であり、5×10−3〜0.03モルの範囲で使用することが最も好ましい。
【0149】
本発明において、一般式(H)で表される化合物を感光材料に含有せしめる方法としては、前記還元剤の含有方法に記載の方法が挙げられる。
【0150】
一般式(H)で表される化合物の融点は200℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは170℃以下がよい。
【0151】
本発明に用いられるその他の有機ポリハロゲン化物として、特開平11−65021号の段落番号0111〜0112に記載の特許に開示されているものが挙げられる。特に特願平11−87297号の式(P)で表される有機ハロゲン化合物、特開平10−339934号の一般式(II)で表される有機ポリハロゲン化合物、特願平11−205330号に記載の有機ポリハロゲン化合物が好ましい。
【0152】
2−1−7.その他のかぶり防止剤
その他のカブリ防止剤としては特開平11−65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特開2000−206642号のサリチル酸誘導体、特開2000−221634号の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11−352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6−11791号の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
【0153】
本発明に用いることのできるカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体特開平10−62899号の段落番号0070、欧州特許0803764A1号の第20頁第57行〜第21頁第7行に記載の特許のもの、特開平9−281637号、同9−329864号記載の化合物が挙げられる。
【0154】
本発明における熱現像感光材料はカブリ防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59−193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55−12581号記載の化合物、特開昭60−153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては感光性層を有する面の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。
【0155】
アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。
【0156】
本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10−6モル以上2モル以下が好ましく、1×10−3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
【0157】
2−1−8.その他の添加剤
1)メルカプト、ジスルフィド、およびチオン類
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10−62899号の段落番号0067〜0069、特開平10−186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行、特願平11−273670号等に記載されている。中でもメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
【0158】
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許0803764A1号のp.21,23行〜48行、特開2000−356317号や特願2000−187298号に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロー1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウムおよびテトラクロロ無水フタル酸)の組み合わせ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフタラジン、6−クロロフタラジン、5.7−ジメトキシフタラジン、および2,3−ジヒドロフタラジン)が好ましく、特に、ヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀との組み合わせにおいては、フタラジン類とフタル酸類の組み合わせが好ましい。
【0159】
好ましいフタラジン類の添加量としては、有機銀塩1モル当たり0.01モル〜0.3モルであり、さらに好ましくは0.02〜0.2モル、特に好ましくは0.02〜0.1モルである。この添加量は、本発明の沃化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀乳剤で課題である現像促進にとって重要な要因であり、適正な添加量の選択によって十分な現像性と低いかぶりの両立が可能となる。
【0160】
3)可塑剤、潤滑剤
本発明の感光性層に用いることのできる可塑剤および潤滑剤については特開平11−65021号段落番号0117に記載されている。滑り剤については特開平11−84573号段落番号0061〜0064や特願平11−106881号段落番号0049〜0062記載されている。
【0161】
4)染料、顔料
本発明の感光性層には色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10−268465号、同11−338098号等に詳細に記載されている。
【0162】
5)超硬調化剤
印刷製版用途に適した超硬調画像形成のためには、画像形成層に超硬調化剤を添加することが好ましい。超硬調化剤やその添加方法及び添加量については、同号公報段落番号0118、特開平11−223898号公報段落番号0136〜0193、特願平11−87297号明細書の式(H)、式(1)〜(3)、式(A)、(B)の化合物、特願平11−91652号明細書記載の一般式(III)〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、硬調化促進剤については特開平11−65021号公報段落番号0102、特開平11−223898号公報段落番号0194〜0195に記載されている。
【0163】
蟻酸や蟻酸塩を強いかぶらせ物質として用いるには、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側に銀1モル当たり5ミリモル以下、さらには1ミリモル以下で含有させることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料で超硬調化剤を用いる場合には五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
【0164】
2−1−9.塗布液の調製および塗布
本発明の画像形成層塗布液の調製温度は30℃以上65℃以下がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。
【0165】
2−2.その他の層、および構成成分
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に加えて非感光性層を有することができる。非感光性層は、その配置から(a)画像形成層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる表面保護層、(b)複数の画像形成層の間や画像形成層と保護層の間に設けられる中間層、(c)画像形成層と支持体との間に設けられる下塗り層、(d)画像形成層の反対側に設けられるバック層に分類できる。
【0166】
また、光学フィルターとして作用する層を設けることができるが、(a)または(b)の層として設けられる。アンチハレーション層は、(c)または(d)の層として感光材料に設けられる。
【0167】
1)表面保護層
本発明における熱現像感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層は単層でもよいし、複数層であってもよい。表面保護層については、特開平11−65021号段落番号0119〜0120、特願2000−171936号に記載されている。
【0168】
本発明の表面保護層のバインダーとしてはゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いる若しくは併用することも好ましい。ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。
【0169】
PVAとしては、特開2000−171936号の段落番号0009〜0020に記載のものがあげられ、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。
【0170】
保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3〜4.0g/m2が好ましく、0.3〜2.0g/m2がより好ましい。
【0171】
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3〜5.0g/m2が好ましく、0.3〜2.0g/m2がより好ましい。
【0172】
2)アンチハレーション層
本発明の熱現像感光材料においては、アンチハレーション層を感光性層に対して露光光源から遠い側に設けることができる。アンチハレーション層については特開平11−65021号段落番号0123〜0124、特開平11−223898号、同9−230531号、同10−36695号、同10−104779号、同11−231457号、同11−352625号、同11−352626号等に記載されている。
【0173】
アンチハレーション層には、露光波長に吸収を有するアンチハレーション染料を含有する。露光波長が赤外域にある場合には赤外線吸収染料を用いればよく、その場合には可視域に吸収を有しない染料が好ましい。
【0174】
可視域に吸収を有する染料を用いてハレーション防止を行う場合には、画像形成後には染料の色が実質的に残らないようにすることが好ましく、熱現像の熱により消色する手段を用いることが好ましく、特に非感光性層に熱消色染料と塩基プレカーサーとを添加してアンチハレーション層として機能させることが好ましい。これらの技術については特開平11−231457号等に記載されている。
【0175】
消色染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用する。光学濃度は、0.2〜2であることが好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001〜1g/m2程度である。
【0176】
なお、このように染料を消色すると、熱現像後の光学濃度を0.1以下に低下させることができる。二種類以上の消色染料を、熱消色型記録材料や熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、二種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。
【0177】
このような消色染料と塩基プレカーサーを用いる熱消色においては、特開平11−352626号に記載のような塩基プレカーサーと混合すると融点を3℃(deg)以上降下させる物質(例えば、ジフェニルスルホン、4−クロロフェニル(フェニル)スルホン)を併用することが熱消色性等の点で好ましい。
【0178】
3)バック層
本発明に適用することのできるバック層については特開平11−65021号段落番号0128〜0130に記載されている。
【0179】
本発明においては、銀色調、画像の経時変化を改良する目的で300〜450nmに吸収極大を有する着色剤を添加することができる。このような着色剤は、特開昭62−210458号、同63−104046号、同63−103235号、同63−208846号、同63−306436号、同63−314535号、特開平01−61745号、特願平11−276751号などに記載されている。このような着色剤は、通常、0.1mg/m2〜1g/m2の範囲で添加され、添加する層としては感光性層の反対側に設けられるバック層が好ましい。
【0180】
4)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を表面保護層、およびバック層に添加することが好ましい。マット剤については、特開平11−65021号段落番号0126〜0127に記載されている。
マット剤は感光材料1m2当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1〜400mg/m2、より好ましくは5〜300mg/m2である。
【0181】
また、乳剤面のマット度は、画像部に小さな白抜けが生じ、光漏れが発生するいわゆる星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
【0182】
本発明においてバック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、800秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500秒以下40秒以上である。
【0183】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0184】
5)ポリマーラテックス
本発明の表面保護層やバック層にポリマーラテックスを添加することができる。
このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%) /ブチルアクリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。
【0185】
ポリマーラテックスは、表面保護層、あるいはバック層の全バインダー(水溶性ポリマーおよびラテックスポリマーを含む)の10質量%〜90質量%用いるのが好ましく、特に20質量%〜80質量%が好ましい。
【0186】
6)膜面pH
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは6.6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。
【0187】
膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。
また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等の不揮発性の塩基とアンモニアを併用することも好ましく用いられる。なお、膜面pHの測定方法は、特願平11−87297号明細書の段落番号0123に記載されている。
【0188】
7)硬膜剤
本発明の感光性層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。
硬膜剤の例としてはT.H.James著”THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION”(Macmillan Publishing Co., Inc.刊、1977年刊)77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N,N−エチレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)、N,N−プロピレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号、特開平6−208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などのエポキシ化合物類、特開昭62−89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0189】
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0190】
具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳”液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0191】
8)界面活性剤
本発明に適用できる界面活性剤については特開平11−65021号段落番号0132に記載されている。
本発明ではフッ素系界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤の好ましい具体例は特開平10−197985号、特開2000−19680号、特開2000−214554号等に記載されている化合物が挙げられる。また、特開平9−281636号記載の高分子フッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。本発明においては、特願2000−206560号記載のフッ素系界面活性剤の使用が特に好ましい。
【0192】
9)帯電防止剤
また、本発明では、公知の種々の金属酸化物あるいは導電性ポリマーなどを含む帯電防止層を有しても良い。帯電防止層は前述の下塗り層、バック層表面保護層などと兼ねても良く、また別途設けてもよい。帯電防止層については、特開平11−65021号段落番号0135、特開昭56−143430号、同56−143431号、同58−62646号、同56−120519号、特開平11−84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号、特開平11−223898号の段落番号0078〜0084に記載の技術を適用することができる。
【0193】
10)支持体
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0194】
医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号実施例記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。
具体的な支持体の例は、特開平11−65021同号段落番号0134に記載されている。
【0195】
支持体には、特開平11−84574号の水溶性ポリエステル、同10−186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000−39684号や特願平11−106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。
【0196】
11)その他の添加剤
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。特開平11−65021号段落番号0133の記載の溶剤を添加しても良い。各種の添加剤は、感光性層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10−186567号、同10−18568号等を参考にすることができる。
【0197】
12)塗布方式
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、または米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを 含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F. Kistler、Petert M. Schweizer著”LIQUID FILM COATING”(CHAPMAN & HALL社刊、1997年)399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、またはスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。
【0198】
スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigure 11b.1に ある。また、所望により同書399頁から536頁記載の方法、米国特許第2,761,791 号および英国特許第837,095号に記載の方法により2層またはそれ以上の層を同時に被覆することができる。
【0199】
本発明における有機銀塩含有層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。この技術については特開平11−52509号を参考にすることができる。
本発明における有機銀塩含有層塗布液は剪断速度0.1S−1における粘度は400mPa・s以上100,000mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは500mPa・s以上20,000mPa・s以下である。
また、剪断速度1000S−1においては1mPa・s以上200mPa・s以下が好まく、さらに好ましくは5mPa・s以上80mPa・s以下である。
【0200】
13)包装材料
本発明の熱現像感光材料は、使用される前の保存時に写真性能の変質を防ぐため、あるいはロール状態の製品形態の場合にはカールしたり巻き癖が付くのを防ぐために、酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料で密閉包装するのが好ましい。酸素透過率は、25℃で50ml/atm/m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/atm/m2・day以下であり、さらに好ましくは1.0ml/atm/m2・day以下である。水分透過率は、10g/atm/m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm/m2・day以下であり、さらに好ましくは1g/atm/m2・day以下である。酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、例えば特開平8−254793号、特開2000−206653号に記載されているものを利用することができる。
【0201】
14)その他の利用できる技術
本発明の熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322号、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−43766、同9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568号、同10−90823号、同10−171063号、同10−186565号、同10−186567号、同10−186569号〜同10−186572号、同10−197974号、同10−197982号、同10−197983号、同10−197985号〜同10−197987号、同10−207001号、同10−207004号、同10−221807号、同10−282601号、同10−288823号、同10−288824号、同10−307365号、同10−312038号、同10−339934号、同11−7100号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同11−305377号、同11−305378号、同11−305384号、同11−305380号、同11−316435号、同11−327076号、同11−338096号、同11−338098号、同11−338099号、同11−343420号、特願2000−187298号、同2000−10229号、同2000−47345号、同2000−206642号、同2000−98530号、同2000−98531号、同2000−112059号、同2000−112060号、同2000−112104号、同2000−112064号、同2000−171936号も挙げられる。
【0202】
多色カラー熱現像感光材料の場合、各乳剤層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各感光性層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
多色カラー熱現像感光材料の場合の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。
【0203】
3.画像形成方法
3−1.露光
本発明の感光材料はいかなる方法で露光されても良いが、露光光源としてレーザー光が好ましい。本発明のように沃化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤は、従来はその感度が低くて問題であった。しかし、レーザー光のような高照度で書き込むことで低感度の問題も解消され、しかもより少ないエネルギーで画像記録できることがわかった。このような強い光で短時間に書き込むことによって目標の感度を達成することができる。
【0204】
特に最高濃度(Dmax)を出すような露光量を与える場合、感光材料表面の好ましい光量は0.1W/mm2〜100W/mm2である。より好ましくは0.5W/mm2〜50W/mm2であり、最も好ましくは1W/mm2〜50W/mm2である。
【0205】
本発明によるレーザー光としては、ガスレーザー(Ar+,He−Ne,He−Cd)、YAGレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが好ましい。また、半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いることもできる。好ましく用いられるレーザーは、熱現像感光材料の分光増感色素などの光吸収ピーク波長に対応して決まるが、赤〜赤外発光のHe−Neレーザー、赤色半導体レーザー、あるいは青〜緑発光のAr+,He−Ne,He−Cdレーザー、青色半導体レーザーである。好ましくは、赤色〜赤外半導体レーザーであり、レーザー光のピーク波長は、600nm〜900nm、好ましくは620nm〜850nmである。
【0206】
レーザー光は、高周波重畳などの方法によって縦マルチに発振していることも好ましく用いられる。
【0207】
3−2.熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80〜250℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。
現像時間としては1〜60秒が好ましく、5〜30秒がさらに好ましく、5〜20秒が特に好ましい。
【0208】
熱現像の方式としてはプレートヒーター方式が好ましい。プレートヒーター方式による熱現像方式とは特開平11−133572号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒータからなり、かつ前記プレートヒータの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒータとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒータを2〜6段に分けて先端部については1〜10℃程度温度を下げることが好ましい。
【0209】
このような方法は特開昭54−30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を押さえることもできる。
【0210】
3−3.システム
露光部および熱現像部を備えた医療用レーザーイメージャーとして富士メディカルドライイメージャー−FM−DPLを挙げることができる。該システムは、Fuji Medical Review No.8,p.39〜55に記載されており、それらの技術を利用することができる。また、DICOM規格に適合したネットワークシステムとして富士メディカル(株)が提案した「AD network」の中のレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
【0211】
4.本発明の用途
【0212】
本発明の高沃化銀写真乳剤を黒白およびカラー写真感光材料に用いる範囲には特に制限がなく、撮影感材、プリント感材、印刷感材、医療用感材、工業用感材、拡散転写法感材、あるいは熱現像感材にも用いることができる。中でも熱現像感材に用いるのが好ましい。
本発明の高沃化銀写真乳剤を用いた熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
【0213】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0214】
実施例1.
ゼラチン36gを含有する70℃の水1400mlを含む反応容器に、攪拌しながら硝酸銀74gを含む水溶液724mlと沃化カリウム113gを含む水溶液800mlとを銀電位が+60mVを保つように同時にコントロールドダブルジェット法にて200分間で添加した。その後限外ろ過法により脱塩と水洗を行い、ゼラチンを追加溶解した後、pHを5.9、pAgを7.5に合わせた。得られた沃化銀粒子は、平均粒子サイズが0.14μm、粒子サイズの変動係数は21%であった。
【0215】
この乳剤を3部に小分けして60℃に昇温した後、表1に示した様に各々のpAgを調製し、その後、硫黄増感剤(チオ硫酸ナトリウム)および金増感剤(塩化金酸)をそれぞれ最高感度をもたらす最適増感になるような量を添加し60分間熟成して乳剤1から3を調製した。次いで各乳剤を更に小分けして50℃で表1に示した様に増感色素を沃化銀1モル当たり2.3ミリモル添加と増感色素よりもEoxが0.2V以上卑の化合物(以下表1に記したようにSS化合物と略記する)を沃化銀1モル当たり0.33ミリモル添加し、30分熟成した。但し、試料番号9及び10に使用した増感色素S−5は前記の添加量では多すぎるので、S−5が最高感度を示した沃化銀1モル当たり0.60ミリモルを添加した。次いで、4−ヒドロキシー6−メチル−1,3,3a、7−テトラザインデンと1−フェニルー5−メルカプトテトラゾール(安定剤とかぶり防止剤) 、さらにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(塗布助剤)、1,2−ビス(ビニルスルホニルアセチルアミノ)エタン(硬膜剤)、フェノキシエタノール(防腐剤)を加えて、ゼラチン保護層とともにトリアセチルセルロースフィルム支持体上に同時押し出し法で塗布し試料1から17を得た。
【0216】
これらの塗布試料を光楔下、富士写真フィルム(株)製シャープカットフィルターSC60を通してキセノン光源を用いて露光(1/1000秒間)したあと、コダック処方D−19現像液にて35℃で20分間現像し、通常の停止、定着を行った。処理済みの試料を濃度測定し、未露光部の濃度をかぶりとし、かぶり+0.1の光学濃度を得るのに必要な露光量の逆数で感度を表し、試料3の感度を100としてそれとの相対値で示した。このようにして求めた値を表1では相対赤感度として表示した。
【0217】
【表1】
【0218】
【0219】
【0220】
表1より明らかなように、本発明の要件を満たして初めて高い分光感度が得られる事が判ろう。特に、試料番号13及び15が好ましい結果を示した。即ち、増感色素が本発明の要件を満たし、かつSS化合物が増感色素のEoxに対して0.465,0.430とより卑である組合せによって本発明の優れた効果が得られることがわかる。また、試料番号9及び10に用いた増感色素S−5はEredが卑であり、高沃化銀以外の、例えば臭化銀ではシアニン色素に劣らない高い分光感度をもたらすメロシアニン色素として知られているが、この例のように高沃化銀乳剤では感度が低く、本発明の併用化合物を併用しても増感効果が殆ど認められなかった。この例のように、高沃化銀以外のハロケ゛ン化銀では高い分光感度をもたらすメロシアニンやロタ゛シアニン色素等のシアニン色素以外の分光増感色素では、色素のEred、LogP及び高沃化銀乳剤のpAgに関する本発明の要件を満たしても、高沃化銀乳剤では極めて低い分光感度しか得られず、色素のEoxよりも0.2V以上卑のEoxを持つSS化合物を併用しても増感効果が殆ど得られなかった。
【0221】
実施例2
実施例1と同様に、但し、反応容器の温度を33℃に、銀電位を+10mVに、硝酸銀と沃化カリウムの添加時間を60分間に変更して、沃化銀乳剤を調製した。その後、限外濾過により脱塩と水洗を行い、ゼラチンを追加溶解し、pAg5.0で実施例1と同様にして最適に化学増感を施した。
得られた沃化銀粒子は、平均粒子サイズが41nm、粒子サイズの変動係数は18%であった。
この乳剤を8部に小分けして40℃に昇温した後、表2に示した様に各々のpAgを調製し、増感色素S−1を沃化銀1モル当たり8.5ミリモル添加し、30分後、表2に示した様にSS化合物を沃化銀1モル当たり1.45ミリモル添加し10分熟成した。次いで、4−ヒドロキシー6−メチル−1,3,3a、7−テトラザインデンと1−フェニルー5−メルカプトテトラゾール(安定剤とかぶり防止剤)、さらにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(塗布助剤)、1,2−ビス(ビニルスルホニルアセチルアミノ)エタン(硬膜剤)、フェノキシエタノール(防腐剤)を加えて、ゼラチン保護層とともにトリアセチルセルロースフィルム支持体上に同時押し出し法で塗布し試料21から27を得た。
【0222】
これらの塗布試料を光楔下、富士写真フィルム(株)製シャープカットフィルターSC62を通してキセノン光源を用いて露光(1/1000秒間)したあと、下記処方の現像液にて38℃で30分間現像し、通常の停止、定着を行った。処理済みの試料を実施例1と同様の方法で濃度測定し、感度を求めた。このようにして求めた値を表2に相対感度として表示した。
【0223】
現像液処方
重亜硫酸ナトリウム 5g
ピロガロール 10g
亜硫酸ナトリウム 25g
炭酸ナトリウム1水塩 50g
沃化カリウム 0.1g
10%ホルマリン液 25ml
水を加えて 1リットルに
【0224】
【表2】
【0225】
表2より明らかなように、実施例1同様に本発明の要件を満たして初めて高い分光感度が得られる事が判ろう。特に、S−1とSS‐4またはSS−2を組み合わせて、pAg=4とした試料25と試料28が好ましい結果を示した。
【0226】
実施例3
3−1.PET支持体の作成、および下塗り
3−1−1.製膜
【0227】
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融し下記構造の染料BBを0.04wt%含有させた。その後T型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作成した。
【0228】
【化15】
【0229】
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
【0230】
3−1−2.表面コロナ処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0231】
3−1−3.下塗り
下塗層塗布液の作成
処方▲1▼(感光層側下塗り層用)
高松油脂(株)製ペスレジンA−520(30質量%溶液) 59g
ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル
(平均エチレンオキシド数=8.5) 10質量%溶液 5.4g
綜研化学(株)製 MP−1000(ポリマー微粒子、平均粒径0.4μm) 0.91g
蒸留水 935ml
【0232】
処方▲2▼(バック面第1層用)
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス 158g
(固形分40質量%、スチレン/ブタジエン重量比=68/32)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−
トリアジンナトリウム塩 8質量%水溶液 20g
ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10ml
蒸留水 854ml
【0233】
処方▲3▼(バック面側第2層用)
SnO2/SbO (9/1質量比、平均粒径0.038μm、17質量%分散物) 84g
ゼラチン(10質量%水溶液) 89.2g
信越化学(株)製 メトローズTC−5(2質量%水溶液) 8.6g
綜研化学(株)製 MP−1000 0.01g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10ml
NaOH(1質量%) 6ml
プロキセル(ICI社製) 1ml
蒸留水 805ml
【0234】
2)下塗り
上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(感光性層面)に上記下塗り塗布液処方▲1▼をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6ml/m2(片面当たり)になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲2▼をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7ml/m2になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲3▼をワイヤーバーでウエット塗布量が7.7ml/m2になるように塗布して180℃で6分間乾燥して下塗り支持体を作製した。
【0235】
3−2.バック層
3−2−1.バック層塗布液の調製
1)塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)の調製
塩基プレカーサー化合物−1を64g、デモールN(商品名、花王(株))10g、ジフェニルスルホン28g、および蒸留水220mlを加えて混合し、混合液を1/4Gサンドグラインダーミル(アイメックス(株)製)にてビーズ分散し、平均粒子径0.2μmの塩基プレカーサー化合物の固体微粒子分散物(a)を得た。
【0236】
2)染料固体微粒子分散液(a)の調製
シアニン染料化合物―1を9.6g、p−ドデシルスルホン酸ナトリウム5.8g、および蒸留水305mlを混合して、混合液を1/4Gサンドグラインダーミル(アイメックス(株)製)にてビーズ分散し、平均粒子径0.2μmの占領固体微粒子分散物(a)を得た。
【0237】
3)ハレーション防止層塗布液の調製
ゼラチン17g、ポリアクリルアミド9.6g、上記の塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)70g、上記の染料固体微粒子分散液(a)を56g、単分散ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ8μm、粒径標準偏差0.4)1.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.03g、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム2.2g、青色染料化合物−1を0.2g、黄色染料化合物−1を3.9g、および水844mlを混合して、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0238】
4)バック面保護層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、ゼラチン50g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.2g、N、N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)2.4g、t−オクチルフェノキシエトキシエタンスルホン酸ナトリウム1g、ベンゾイソチアゾリノン30mg、フッ素系界面活性剤(F−1)37mg、フッ素系界面活性剤(F−2)0.15g、フッ素系界面活性剤(F−3)64mg、フッ素系界面活性剤(F−4)32mg、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合重量比5/95)8.8g、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)0.6g、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.8g、水を950ml混合してバック面保護層塗布液とした。
【0239】
3−2−2.バック層の塗布
上記下塗り支持体のバック面側に、ハレーション防止層塗布液を固体微粒子染料の塗布量が0.04gとなるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作成した。
【0240】
3−3.画像形成層、中間層、および表面保護層
3−3−1.塗布用材料の準備
1)ハロゲン化銀乳剤
【0241】
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
蒸留水1420mlに1質量%沃化カリウム溶液4.3mlを加え、さら0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、35℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を195.6mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム21.8gを蒸留水にて容量219mlに希釈した溶液Bを一定流量で9分間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cと沃化カリウム60gを蒸留水にて容量600mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で120分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。
【0242】
銀1モル当たり1×10−4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10−4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作成した。調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.037μm、球相当径の変動係数17%の純沃化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0243】
上記ハロゲン化銀分散物を38℃に維持して、pAgを5.0に調製してから0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、10分後に47℃に昇温した。次いで、ベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10−5モル加えた後、5分後にテルル増感剤(ビス(N―フェニル−N―メチルカルバモイル)テルリド)を銀1モルあたり0.5ミルモル加えて84分間熟成した。その後、乳剤を12分割し、各乳剤のpAgを表3中に示したように調製した後、表3に示した増感色素を銀1モルに対して9.5ミリモル加え、30分間熟成した。但し、試料番号307及び308に用いた増感色素S−5の添加量は、前記量では多すぎたので、該増感色素で最大感度が得られた銀1モルに対して1.3ミリモルを加えた。
【0244】
その後、各乳剤を35℃に下げ、N,N’−ジヒドロキシ−N”−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンヅイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10−3モル及び1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10−3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤31から37を作成した。
【0245】
(塗布液用混合乳剤の調製)
上記の各ハロゲン化銀乳剤を溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10−3モル添加した。さらに塗布液用混合乳剤1kgあたりハロゲン化銀の含有量が銀として38.2gとなるように加水した。
【0246】
2)脂肪酸銀分散物Aの調製
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22−85R)87.6kg、蒸留水423L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、t−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのt−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。
このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。
また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
【0247】
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.14μm、b=0.4μm、c=0.6μm、平均アスペクト比5.2であった(a、b、cは本文の規定)。レーザー光散乱型粒子サイズ測定装置で測定した結果、平均球相当径0.52μm、球相当径の変動係数15%のりん片状の結晶であった。
【0248】
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kgおよび水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1260kg/cm2に調節して、三回処理し、脂肪酸銀分散物Aを得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0249】
3)還元剤分散物Aの調製
還元剤錯体―1を10kg、水素結合性化合物―1を0.12kg、および変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水7.2kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて4時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤錯体の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤分散物Aを得た。
こうして得た分散物中の還元剤錯体粒子は、平均粒子径がメディアン径で0.46μm、最大粒子径は1.6μm以下であった。得られた分散物を孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0250】
4)ポリハロゲン化合物分散物の調製
(有機ポリハロゲン化合物―1分散物)
有機ポリハロゲン化合物―1を10kgと変性ポリビニルアルコールMP203の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水14kgを添加して、良く混合してスラリーとした。
このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間を基本時間として分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が26質量%になるように調製し、ポリハロゲン化合物−1分散物を得た。
こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0251】
(有機ポリハロゲン化合物―2分散物)
有機ポリハロゲン化合物―2を10kgと変性ポリビニルアルコールMP203の10質量%水溶液20kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgを添加して、良く混合してスラリーとした。 このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が25質量%になるように調製した。この分散物を40℃で5時間加温して、ポリハロゲン化合物−2分散物を得た。
こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子は、平均粒子サイズがメジアン径で0.36μm、最大粒子径1.5μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0252】
5)フタラジン化合物−1溶液の調製
8kgの変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgとフタラジン化合物−1の70質量%水溶液14.28kgを添加し、フタラジン化合物−1の5質量%溶液を調製した。
【0253】
6)メルカプト化合物−1水溶液の調製
7gのメルカプト化合物−1を水993gに溶解し、0.7質量%の水溶液とした。
【0254】
7)顔料−1分散物の調製
C.I.Pigment Blue 60を64gとデモールNを6.4gに水250gを加えて良く混合し、スラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800gをスラリーと一緒にベッセルに入れ、1/4Gサンドグラインダーミル(アイメックス(株)製)にて25時間分散した後、水を加えて顔料濃度が5質量%になるように希釈した。得られた分散物中の顔料の平均粒子サイズは0.21μmであった。
【0255】
8)SBRラテックス液の調製
Tg=23℃のSBRラテックスは以下により調整した。重合開始剤として過硫酸アンモニウム、乳化剤としてアニオン界面活性剤を使用し、スチレン70.5質量、ブタジエン26.5質量およびアクリル酸3.0質量を乳化重合させた後、80℃で8時間エージングを行った。その後40℃まで冷却し、アンモニア水によりpH7.0とし、さらに三洋化成(株)製サンデットBLを0.22%になるように添加した。次に5%水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH8.3とし、さらにアンモニア水によりpH8.4になるように調整した。 このとき使用したNa+イオンとNH4 +イオンのモル比は1:2.3であった。さらに、この液1kg対してベンゾイソチアゾリンノンナトリウム塩7%水溶液を0.15ml添加しSBRラテックス液を調製した。
【0256】
(SBRラテックス:−St(70.0)−Bu(27.0)−AA(3.0)−のラテックス)
Tg23℃ 平均粒径0.1μm、濃度43質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.2mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し、ラテックス原液(43質量%)を25℃にて測定)、pH8.4。
【0257】
3−3−2塗布液の調製
1)画像形成層塗布液−1の調製
上記で得た脂肪酸銀分散物Aを1000g、水104ml、顔料−1分散物30g、有機ポリハロゲン化合物―1分散物6.3g、有機ポリハロゲン化合物―2分散物20.7g、フタラジン化合物−1溶液173g、SBRラテックス(Tg:23℃)液1082g、還元剤分散物Aを258g、メルカプト化合物−1水溶液9mlを順次添加し、塗布直前にハロゲン化銀の塗布液用混合乳剤を117g添加して良く混合した乳剤層塗布液をそのままコーティングダイへ送液し、塗布した。
上記乳剤層塗布液の粘度は東京計器のB型粘度計で測定して、40℃(No.1ローター、60rpm)で25[mPa・S]であった。
【0258】
2)中間層塗布液の調製
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)の10質量%水溶液772g、顔料−1分散物5.3g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液226gにエアロゾールOTの5質量%水溶液を2ml、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を10.5ml、総量880gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、10ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で65[mPa・S]であった。
【0259】
3)表面保護第1層塗布液の調製
イナートゼラチン64gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液80g、フタル酸の10質量%メタノール溶液を23ml、4−メチルフタル酸の10質量%水溶液23ml、0.5mol/L濃度の硫酸を28ml、エアロゾールOTの5質量%水溶液を5ml、フェノキシエタノール0.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.1gを加え、総量750gになるように水を加えて塗布液とし、4質量%のクロムみょうばん26mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを18.6ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で20[mPa・S]であった。
【0260】
4)表面保護第2層塗布液の調製
イナートゼラチン80gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液102g、フッ素系界面活性剤F−1の5質量%溶液を3.2ml、フッ素系界面活性剤F−2の2質量%水溶液を32ml、エアロゾールOTの5質量%溶液を23ml、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm)4g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4.5μm)21g、4−メチルフタル酸1.6g、フタル酸4.8g、0.5mol/L濃度の硫酸44ml、ベンゾイソチアゾリノン10mgに総量650gとなるよう水を添加して、4質量%のクロムみょうばんと0.67質量%のフタル酸を含有する水溶液445mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを表面保護層塗布液とし、8.3ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で19[mPa・s]であった。
【0261】
3−3−3.塗布サンプルの作成
バック面と反対の面に下塗り面上に、順に画像形成層、中間層、表面保護第1層、表面保護第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料を作成した。このとき、画像形成層と中間層の塗布液温度は35℃に、保護層第1層の塗布液温度は36℃に、保護層第2層は37℃に温度調整した。
乳剤層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
【0262】
ベヘン酸銀 6.19
C.I.Pigment Blue 60 0.036
有機ポリハロゲン化合物−1 0.04
有機ポリハロゲン化合物−2 0.12
フタラジン化合物−1 0.21
SBRラテックス 11.1
還元剤錯体−1 1.54
メルカプト化合物−1 0.002
ハロゲン化銀(Agとして) 0.10
【0263】
塗布乾燥条件は以下のとおりである。
塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して196〜882Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。
【0264】
引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10〜20℃の風にて塗布液を冷却した後、無接触型搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥させた。
乾燥後、25℃で湿度40〜60%RHで調湿した後、膜面を70〜90℃になるように加熱した。加熱後、膜面を25℃まで冷却した。
【0265】
作製された熱現像感光材料のマット度はベック平滑度で画像形成層面側が550秒、バック面が130秒であった。また、画像形成層面側の膜面のpHを測定したところ6.0であった。
【0266】
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
【0267】
【化16】
【0268】
【化17】
【0269】
【化18】
【0270】
【化19】
【0271】
【化20】
【0272】
3−4.写真性能の評価
(準備)
得られた試料は半切サイズに切断し、25℃50%の環境下で以下の包装材料に包装し、2週間常温下で保管した。
(包装材料)
PET 10μm/PE 12μm/アルミ箔9μm/Ny 15μm/カーボン3%を含むポリエチレン50μm、酸素透過率:0.02ml/atm・m2・25℃・day、水分透過率:0.10g/atm・m2・25℃・day。
【0273】
上記の感光材料を以下のように評価を行った。
(感光材料の露光)
感光材料は以下の様にして露光処理を行った。
富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DPLを改造して露光・現像処理を行った。露光はFM−DPL搭載の最大60mW(IIIB)出力の660nm半導体レーザーを100μm×100μmに絞って感材を照射した。レーザーの露光量を段階的に変化させて露光を行った。現像は、FM−DPLの熱現像部を用いて、112℃−119℃−121℃−121℃に設定した4枚のパネルヒーターで、合計24秒であった。
【0274】
(試料の評価) 得られた画像をMacbeth濃度計で濃度測定し露光量の対数に対する濃度の特性曲線を作成した。感度は、未露光の部分の光学濃度を被り(Dmin)とし、最高露光量で露光された部分の濃度をDmaxとした。またDmin+2.0の光学濃度が得られる露光量の逆数を感度とし、試料303の感度を100とした相対値で表した。値が大きいほど感度が高いことを示す。
【0275】
【表3】
【0276】
表3の結果より明らかなように、本発明の構成要件を満たした物は非常に高い分光感度をもたらした。即ち、この実施例のように有機銀塩を含ませた試料の熱現像処理では、実施例1のような有機銀塩を含ませず湿式処理を行った場合に比べ、pAg変化に対する感度変化は緩和されるが、同様にpAgを下げた方が高い感度が得られた。しかし、試料番号305及び306、試料番号307及び308に用いた増感色素はEredとしては十分に卑であるが前者のS−4はLogPが小さく、後者のS−5はLogPも十分に大きいがメロシアニン色素である。これらは色素単独でも高い感度が得られないが、表3に示したようにSS化合物を併用しても余り感度が上がらなかったり、試料308に見られるように却って感度が下がってしまった。
【0277】
実施例4
実施例3の試料309及び310と同様にして、ただし還元剤錯体の代わりに以下の化合物を使用することによって熱現像感光材料409及び410を作製した。
(還元剤−2分散物の調製)
還元剤−2を10kgと変性ポリビニルアルコールMP203の10質量%水溶液20kgに、水6kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミルUVM−2にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤−5分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.38μm、最大粒子径1.5μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0278】
(水素結合性化合物−2分散物の調製)
水素結合性化合物−2を10kgと変性ポリビニルアルコールMP203の10質量%水溶液20kgに、水10kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミルUVM−2にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が22質量%になるように調製し、水素結合性化合物−2分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる水素結合性化合物粒子は平均粒子サイズはメジアン径で0.35μm、最大粒子径1.5μm以下であった。得られた水素結合性化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0279】
(熱現像感光材料409及び410の作成)
実施例3の試料309及び310と同様にして、ただし還元剤錯体―1の分散物代わりに還元剤−2の分散物と水素結合性化合物−2の分散物を用いることによって熱現像感光材料46を作製した。乳剤層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
【0280】
ベヘン酸銀 6.0
還元剤−2 0.76
水素結合性化合物−1 0.59
顔料(C.I.Pigment Blue 60) 0.032
ポリハロゲン化合物−1 0.04
ポリハロゲン化合物−2 0.12
フタラジン化合物−1 0.21
SBRラテックス 11.1
メルカプト化合物−1 0.002
ハロゲン化銀(Agとして) 0.09
【0281】
実施例3と同様に評価を行った結果,実施例3と同様にSS化合物を併用することにより2.63倍もの感度増加と言う好ましい結果が得られた。
【0282】
実施例5
実施例4の還元剤−2の代わりに、還元剤―3の化合物(同様に分散物を作成して添加)を用いて、さらに下記の現像促進剤−1の分散物を現像促進剤量として0.01g/m2となるように添加して現像感光材料509及び510を作製した。
熱現像機の搬送速度を変更して熱現像時間14秒で現像処理を行った結果、実施例3と同様に3.02倍もの感度増加が得られた。
【0283】
(現像促進剤−1分散物の調製)
現像促進剤−1を10kgと変性ポリビニルアルコールMP203の10質量%水溶液20kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミルUVM−2にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が20質量%になるように調製し、現像促進剤−1分散物を得た。
【0284】
こうして得た現像促進剤−1粒子はメジアン径0.48μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0285】
実施例7
実施例3の沃化銀乳剤と同様に但し臭化銀を6%を混合しかつ塩化銀を10%エピタキシャル形成させた塩臭沃化銀乳剤を調製し、実施例3の試料309及び310と同様にして塗布試料709及び710を得た。実施例3と同様の露光現像処理をおこなったところ、実施例3と同様に好ましい結果が得られた。
【0286】
【発明の効果】
本発明によれば、所望の分光感度に合わせた高い分光感度と保存性に優れたハロゲン化銀写真乳剤を提供することができ、さらに高感度で低いDmin、高いDmaxを持ち、かつ処理後の光照射に対する画像保存性に優れた熱現像感光材料を提供することができる。
Claims (12)
- 80モル%以上100モル%以下の沃化銀を含有し、pAgが5.0以下1.5以上であるハロゲン化銀写真乳剤に於いて、ポーラログラフ半波還元電位が−1.1Vより卑で且つLogPが0.68以上であるシアニン色素の少なくとも一つと該シアニン色素のポーラログラフ半波酸化電位よりも0.2V以上卑のポーラログラフ半波酸化電位を持つ化合物の少なくとも一つとを含有している事を特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
- 支持体の一方面上に少なくとも1種類の感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤及びバインダーを含有する熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀が80モル%以上100モル%以下の沃化銀を含有し、pAgが5.0以下1.5以上で、ポーラログラフ半波還元電位が−1.1Vより卑で且つLogPが0.68以上であるシアニン色素の少なくとも一つと該シアニン色素のポーラログラフ半波酸化電位よりも0.2V以上卑のポーラログラフ半波酸化電位を持つ化合物の少なくとも一つとを含有している事を特徴とする熱現像感光材料。
- 前記ポーラログラフ半波還元電位が−1.2Vより卑であることを特徴とする請求項2に記載の熱現像感光材料。
- 前記ポーラログラフ半波還元電位が−1.25Vより卑でであることを特徴とする請求項2に記載の熱現像感光材料。
- 前記LogPが0.70以上であることを特徴とする請求項2〜請求項4に記載の熱現像感光材料。
- 前記LogPが0.10以上であることを特徴とする請求項2〜請求項4に記載の熱現像感光材料。
- 前記ポーラログラフ半波酸化電位が0.3V以上卑であることを特徴とする請求項2〜請求項6に記載の熱現像感光材料。
- 前記ポーラログラフ半波酸化電位が0.4V以上卑であることを特徴とする請求項2〜請求項6に記載の熱現像感光材料。
- 前記感光性ハロゲン化銀が90モル%以上100モル%以下の沃化銀を含有することを特徴とする請求項2〜請求項8に記載の熱現像感光材料。
- 前記感光性ハロゲン化銀の粒子サイズが10nm〜45nmであることを特徴とする請求項2〜請求項9に記載の熱現像感光材料。
- 前記感光性ハロゲン化銀を非感光性有機銀塩1モルに対して1モル〜7モル含むことを特徴とする請求項2〜請求項10に記載の熱現像感光材料。
- 前記感光性ハロゲン化銀乳剤が予め粒子形成され、化学増感された後に前記非感光性有機銀塩と混合されることを特徴とする請求項2〜請求項11に記載の熱現像感光材料。
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