JP4136427B2 - 熱現像感光材料 - Google Patents

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  • Non-Silver Salt Photosensitive Materials And Non-Silver Salt Photography (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージセッター又はレーザー・イメージャーにより効率的に露光させることができ、高解像度及び鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することができる医療診断用及び写真技術用途の光感光性熱現像写真材料に関する技術が必要とされている。これら光感光性熱現像写真材料では、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することができる。
【0003】
一般画像形成材料の分野でも同様の要求はあるが、医療用画像は微細な描写が要求されるため鮮鋭性、粒状性に優れる高画質が必要であるうえ、診断のし易さの観点から冷黒調の画像が好まれる特徴がある。現在、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像の出力システムとしては満足できるものがない。
【0004】
一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが、例えば、米国特許3152904号、同3457075号の各明細書及びB.シェリー(Shely)による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第2頁、1996年)に記載されている。
【0005】
特に、熱現像感光材料は、一般に、触媒活性量の光触媒(例、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した感光性層を有している。熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀或いは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。そのため、黒色の銀画像は、露光領域に形成される。米国特許2910377号明細書、特公昭43−4924号公報をはじめとする多くの文献に開示され、そして熱現像感光材料による医療用画像形成システムとして、富士メディカルドライイメージャーFM−DP Lが発売された。
【0006】
有機銀塩を利用した熱画像形成システムの製造においては、溶剤塗布により製造する方法と、主バインダーとしてポリマー微粒子を水分散して含有する塗布液を塗布・乾燥して製造する方法がある。後者の方法は、溶剤の回収等の工程が不要なため製造設備が簡単であり、かつ大量生産に有利である。
【0007】
この様な有機銀塩を利用した画像形成システムは、定着工程がないため現像処理後の画像保存性、特に光が当たったときのプリントアウトの悪化が大きな問題であった。このプリントアウトを改良する手段として有機銀塩をコンバージョンすることによって形成したAgIを利用する方法が米国特許6143488号明細書、欧州特許0922995号明細書に開示されている。しかしながらここで開示されたような有機銀塩をヨードでコンバージョンする方法では十分な感度を得ることが出来ず現実のシステムを組むことは困難であった。
その他AgIを利用した感材としてはWO97/48014、WO97/48015、米国特許6165705号明細書、特開平8−297345号公報、特許第2785129号公報等に記載があるが、いずれも十分な感度・かぶりレベルを達成できておらず、レーザー露光感材としての実用に耐えるものではなかった。このような沃化銀含量の多いハロゲン化銀を使いこなす方法の開発が待たれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、高沃化銀含量の感光性ハロゲン化銀を用いつつも、高感度で経時保存性が良好であり、かつ熱現像後の画像保存性が良好な熱現像感光材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、以下の熱現像感光材料によって達成された。
<1> 支持体上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、及びバインダーを含有する熱現像感光材料において、
該感光性ハロゲン化銀が、沃化銀含有量が70モル%以上100モル%以下であり、非感光性有機銀塩の存在しない状態で形成された、粒子サイズが10nm以上50nm以下の粒子であり、かつ下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0010】
【化2】
Figure 0004136427
【0011】
一般式(1)中、Rは1価の置換基を表し、mは1以上4以下の整数を表す。m≧2の場合、複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、複数のRが隣接する場合には、脂肪族環、芳香族環、又はヘテロ環を形成してもよい。
【0012】
<2> 前記感光性ハロゲン化銀が、高沃化銀結晶構造に由来する直接遷移吸収を持つことを特徴とする前記<1>に記載の熱現像感光材料。
【0017】
また、前記<1>又は<2>に記載の熱現像感光材料の画像形成方法としては、以下のものが好ましい。
> 前記<1>又は<>に記載の熱現像感光材料を、波長350mm〜450mmにピーク強度を持ち、1mW/mm2以上の照度を有する光で露光した後、熱現像することを特徴とする画像形成方法。
【0018】
> 前記<1>又は>のいずれかに記載の熱現像感光材料を、390nm〜430nmに発光ピーク強度を有する半導体レーザーを露光光源として露光した後、熱現像することを特徴とする画像形成方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0020】
1.熱現像感光材料
本発明の熱現像感光材料は、支持体上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀(以下、単に「ハロゲン化銀」と称する場合がある)、非感光性有機銀塩(以下、単に「有機銀塩」と称する場合がある)、還元剤、及びバインダーを含有する熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀が、沃化銀含有量が70モル%以上100モル%以下であり、非感光性有機銀塩の存在しない状態で形成された、粒子サイズが10nm以上50nm以下の粒子であり、かつ下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料であることを特徴とする。
【0021】
【化3】
Figure 0004136427
【0022】
一般式(1)中、Rは1価の置換基を表し、mは1以上4以下の整数を表す。m≧2の場合、複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、複数のRが隣接する場合には、脂肪族環、芳香族環、又はヘテロ環を形成してもよい。
【0023】
本発明においては、後述する感光性ハロゲン化銀が、ハロゲン組成として70モル%以上100モル%以下の沃化銀を含有することが重要である。
一般に、高沃化銀含量を有するハロゲン化銀は低感度であり利用価値の低いものであった。
本発明のハロゲン化銀の一部は、直接遷移によって光を吸収する相を有することが好ましい。本発明の露光波長である350nm〜450nmにおいては、六方晶系のウルツァイト構造又は立方晶系のジンクブレンド構造を有する高沃化銀構造を持つことによってこの直接遷移の吸収が実現できることはよく知られている。しかしながらこのような吸収構造をもつハロゲン化銀は一般に低感度であり写真工業的には利用価値の低いものであった。
【0024】
本発明者らによれば、非感光性有機酸銀塩及び還元剤を有する熱現像感光材料において、露光照度を1mW/mm2以上の大照度で短時間(1秒以下、好ましくは10-2秒以下、更に好ましくは10-4秒以下)露光することによって、
上記の如き高沃化銀含量のハロゲン化銀を含有する場合であっても、高感度の熱現像感光材料を達成することができることが分かった。
また、本発明者らによれば、このときのハロゲン化銀のサイズは80nm以下であることが好ましい。このような粒子サイズの小さなハロゲン化銀において特に本発明の効果は明瞭に発揮される。
【0025】
以下、本発明の熱現像感光材料における各構成要素について詳細に説明をする。
【0026】
1−1.画像形成層
1−1−1.感光性ハロゲン化銀
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀について説明する。
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀の平均沃化銀含量は、70モル%以上100モル%以下であることを要する。平均沃化銀含量として、特に好ましくは90モル%以上100モル%以下である。このように高沃化銀含量になるほど本発明の効果は明瞭に発揮される。
【0027】
本発明における感光性ハロゲン化銀としては、350nm〜450nmの間の波長に、高沃化銀結晶構造に由来する直接遷移吸収を示すことが好ましい。これらハロゲン化銀が直接遷移の光吸収を持っているかどうかは、400nm〜430nm付近に直接遷移に起因する励起子吸収が見られることで容易に区別することができる。
図1に、本発明で好ましく用いられる沃化銀乳剤の光吸収を示す。図1に示されるように、420nm付近に高沃化銀の励起子に起因する吸収が見られるのが分かる。
【0028】
この様な直接遷移光吸収型高沃化銀相は、単独で存在してもかまわないが、臭化銀乳剤、塩化銀乳剤、又は沃臭化銀乳剤、沃塩化銀及びこれらの混晶のような350nm〜450nmの波長域において間接遷移吸収を示すハロゲン化銀に接合して存在するものも好ましく用いられる。
このような接合粒子の場合のトータルの沃化銀含量は、70モル%以上100モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは90モル%以上100モル%以下である。
【0029】
このような直接遷移によって光を吸収するハロゲン化銀相は、一般に強い光吸収を示すが、弱い吸収しか示さない間接遷移のハロゲン化銀相に比べて低感度であり工業的には利用されていなかった。
本発明の熱現像感光材料は、上記の如きハロゲン化銀を用いることにより、350nm〜450nmの露光において、露光照度を1mW/mm2以上にすることによって好ましい感度が得られることを見出したものである。
【0030】
本発明における感光性ハロゲン化銀は、その粒子サイズが5nm以上80nm以下であるとより好ましく特性を発揮する。特に直接遷移吸収を有する相が存在するハロゲン化銀粒子において、その粒子サイズが80nm以下と小さい場合によって感度が出るようになることを見出した。
【0031】
感光性ハロゲン化銀の粒子サイズは、より好ましくは5nm以上60nm以下、更に好ましくは10nm以上50nm以下である。ここでいう粒子サイズとは、電子顕微鏡により観察したハロゲン化銀粒子の投影面積(平板粒子の場合は主平面の投影面積)と同面積の円像に換算したときの直径の平均をいう。
【0032】
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、及び米国特許第3,700,458号明細書に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374号公報の段落番号[0217]〜[0224]に記載されている方法、特願平11−98708号明細書、特開2000−347335公報記載の方法も好ましい。
【0033】
ハロゲン化銀粒子の形状としては、立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子が好ましい。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。
感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については、特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い{100}面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては、50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数{100}面の比率は増感色素の吸着における{111}面と{100}面との吸着依存性を利用したT.Tarni;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
【0034】
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)6]4-、[Fe(CN)6]3-、[Ru(CN)6]4-、[Os(CN)6]4-、[Co(CN)6]3-、[Rh(CN)6]3-、[Ir(CN)6]3-、[Cr(CN)6]3-、[Re(CN)6]3-などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
【0035】
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン及びリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン)を用いることが好ましい。
【0036】
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン頬、エステル類、アミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
【0037】
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10-5もモル以上1×10-2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10-4モル以上1×10-3モル以下である。
【0038】
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感及びテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、又は化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
【0039】
尚、六シアノ金属錯体の添加は、粒子形成をするために添加する硝酸銀の総量の96質量%を添加した後から開始してもよく、98質量%添加した後から開始するのがより好ましく、99質量%添加した後が特に好ましい。
【0040】
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、AgIよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となった。
【0041】
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第8族〜第10族の金属又は金属錯体を含有することができる。
周期律表の第8族〜第10族の金属又は金属錯体の中心金属として好ましくは、ロジウム、ルテニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。
好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9モルから1×10-3モルの範囲が好ましい。
これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加法については特開平7−225449号公報、特開平11−65021号公報の段落番号[0018]〜[0024]、特開平11−119374号公報の段落番号[0227]〜[0240]に記載されている。
【0042】
さらに、本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子(例えば[Fe(CN)6]4-)、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号公報の段落番号[0046]〜[0050]、特開平11−65021号公報の段落番号[0025]〜[0031]、特開平11−119374号公報の段落番号[0242]〜[0250]に記載されている。
【0043】
本発明における感光性ハロゲン化銀が用いられる乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、分子量は、500〜60,000の低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時或いは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。
【0044】
本発明においては固有感度を増加させる目的で強色増感剤と知られている種々の化合物を用いることができる。本発明に用いる化合物としては、欧州特許公開第587,338号明細書、米国特許第3,877,943号明細書、同第4,873,184号明細書、特開平5−341432号公報、同11−109547号公報、同10−111543号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0045】
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、硫黄増感法、セレン増感法もしくはテルル増感法にて化学増感されていることが好ましい。硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物、例えば、特開平7−128768号公報等に記載の化合物等を使用することができる。特に本発明においてはテルル増感が好ましく、特開平11−65021号公報の段落番号[0030]に記載の文献に記載の化合物、特開平5−313284号公報中の一般式(II),(III),(IV)で示される化合物がより好ましい。
【0046】
本発明においては、化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。特に分光増感後に行われることが好ましい。
【0047】
本発明で用いられる琉黄、セレン及びテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モル程度を用いる。本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、温度としては40〜95℃程度である。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
【0048】
本発明に用いられる感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。
これらに関する技術としては特開昭57−119341号公報、同53−106125号公報、同47−3929号公報、同48−55730号公報、同46−5187号公報、同50−73627号公報、同57−150841号公報などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
【0049】
感光性ハロゲン化銀の添加量は、感材上1m2当たりの塗布銀量で示して、0.03〜0.6g/m2であることが好ましく、0.07〜0.4g/m2であることがさらに好ましく、0.05〜0.3g/m2であることが最も好ましく、有機銀塩1モルに対しては、感光性ハロゲン化銀は0.01モル以上0.3モル以下が好ましく、より好ましくは0.02モル以上0.2モル以下、さらに好ましくは0.03モル以上0.15モル以下である。
【0050】
別々に調製した感光性ハロゲン化銀と、後述する非感光性有機銀塩と、の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、或いは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等がある。
【0051】
この様に、本発明における感光性ハロゲン化銀は、非感光性有機銀塩の存在しない状態で形成されたものである。また、混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。
【0052】
本発明のハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送波量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳“液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章などに記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0053】
1−1−2.一般式(1)で表される化合物
本発明の熱現像感光材料に用いられる下記一般式(1)で表される化合物について詳細に説明する。
【0054】
【化4】
Figure 0004136427
【0055】
一般式(1)中、Rは1価の置換基を表し、mは1以上4以下の整数を表す。m≧2の場合、複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、複数のRが隣接する場合には、脂肪族環、芳香族環又はヘテロ環を形成してもよい。
【0056】
一般式(1)で表される化合物を含有させることによって、生保存による画像濃度の低下が少なく経時保存性が良好で、しかも熱現像後の画像保存性が良好なものとなる。特に、本発明のような、高沃化銀の感光性ハロゲン化銀を含有する熱現像感光材料において顕著に効果が発揮される。これに対して、一般式(1)で表わされる化合物の代わりにフタラジンを用いると、生保存による画像濃度が低下しかつ熱現像保存性が悪くなる傾向がある。
【0057】
一般式(1)で表される化合物について詳細に説明する。
一般式(1)において、Rは1価の置換基を表す。Rで表される1価の置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜3であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブチニル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基等が挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル基、ベンザイル基、ホルミル基、ピバロイル基等が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリニルオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル基、トシル基、などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、ブチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、ヘテロ環基(例えばイミダゾリル、ピリジル、フリル、ピペリジル、モルホリノなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでもあっても異なっていてもよい。
【0058】
上記Rとして好ましくは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基である。
【0059】
mは1以上4以下の整数を表す。m≧2の場合、複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、複数のRが隣接する場合には、脂肪族環、芳香族環、又はヘテロ環(ベンゼン環やジオキソレン環など)を形成していてもよい。
【0060】
一般式(1)で表される化合物のうちでも、下記一般式(1−a)で表される化合物がより好ましい。
【0061】
【化5】
Figure 0004136427
【0062】
一般式(1−a)中、R1はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基を表す。m1は1以上4以下の整数を表す。m1≧2の場合、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、複数のR1が隣接する場合には、脂肪族環、芳香族環、又はヘテロ環を形成していてもよい。
【0063】
一般式(1−a)におけるR1は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基の場合、その好ましい範囲は前記一般式(1)におけるRと同様である。
【0064】
前記一般式(1)で表される化合物の中でも、特に好ましいものとしては、下記式(1−b)、式(1−c)、及び式(1−d)で表される化合物が挙げられる。
【0065】
【化6】
Figure 0004136427
【0066】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例(1−1〜1−49)を、上記式(1−b)、式(1−c)、式(1−d)で表される化合物も含めて挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
【化7】
Figure 0004136427
【0068】
【化8】
Figure 0004136427
【0069】
【化9】
Figure 0004136427
【0070】
【化10】
Figure 0004136427
【0071】
【化11】
Figure 0004136427
【0072】
本発明における一般式(1)で表される化合物は、例えば、R.G.ElderField,”Heterocyclic Cmpounds”,John Wiley and Sons,Vol.1〜9,1950-1967やA.R.Katritzky,”Comprehensive Heterocyclic Chemistry”,Pergamon Press,1984などに記載されている既知の方法によって合成することができる。
【0073】
本発明において、一般式(1)で表される化合物の添加量は、0.001〜10g/m2であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1g/m2であり、さらに好ましくは0.02〜0.7g/m2である。
【0074】
1−1−3.非感光性有機銀塩
本発明に用いられる非感光性有機銀塩について説明する。
本発明に用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。
【0075】
このような非感光性の有機銀塩については、特開平10−62899号公報の段落番号[0048]〜[0049]、欧州特許公開第0803764A1号公報の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許公開第0962812A1号公報、特開平11−349591号公報、特開2000−7683公報、同2000−72711公報等に記載されている。有機酸の銀塩が好ましく、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。
【0076】
有機銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、及びこれらの混合物などを含む。
本発明においては、これら有機銀塩の中でも、ベベン酸銀含有率が好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上の有機銀塩を用いることが好ましい。
【0077】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はなく、針状、棒状、平板状、りん片状いずれでもよい。
本発明においてはりん片状の有機銀塩が好ましい。また、長軸と単軸の長さの比が5以下の短針状、直方体、立方体又はジャガイモ状の不定形粒子も好ましく用いられる。これらの有機銀粒子は長軸と単軸の長さの比が5以上の長針状粒子に比べて熱現像時のカブリが少ないという特徴を有している。
【0078】
本明細書において、りん片状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機酸銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機酸銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短い方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
【0079】
x=b/a
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは20≧x(平均)≧2.0である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
【0080】
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μm以上0.23μmが好ましく0.1μm以上0.20μm以下がより好ましい。c/bの平均は、好ましくは1以上6以下、より好ましくは1.05以上4以下、さらに好ましくは1.1以上3以下、特に好ましくは1.1以上2以下である。
【0081】
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。
単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。
測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。
【0082】
本発明に用いられる有機銀塩の製造及びその分散法は、公知の方法等を適用することができる。例えば上記の特開平10−62899号、欧州特許公開第0803763A1、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号の各公報、特願平11−348228〜30号、同11−203413号、特願2000−90093、同2000−195621、同2000−191226、同2000−213813、同2000−214155、同2000−191226の各明細書等を参考にすることができる。
【0083】
なお、有機銀塩の分散時に、感光性銀塩を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下するため、分散時には感光性銀塩を実質的に含まないことがより好ましい。
本発明では、分散される水分散液中での感光性銀塩量は、その液中の有機酸銀塩1モルに対し1モル%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1モル%以下であり、さらに好ましいのは積極的な感光性銀塩の添加を行わないものである。
【0084】
本発明においては、有機銀塩水分散液と感光性銀塩水分散を混合して感光材料を製造することが可能である。有機銀塩と感光性銀塩の混合比率は目的に応じて選べるが、有機銀塩に対する感光性銀塩の割合は1〜30モル%の範囲が好ましく、更に2〜20モル%、特に3〜15モル%の範囲が好ましい。
混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
【0085】
本発明における有機銀塩は、所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、より好ましくは0.3〜3g/m2、さらに好ましくは0.5〜2g/m2である。
【0086】
1−4.還元剤
本発明に用いられる還元剤について説明する。
本発明の熱現像感光材料には有機銀塩のための還元剤を含むことが好ましい。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質(好ましくは有機物質)であってよい。
このような還元剤の例は、特開平11−65021号公報の段落番号[0043]〜[0045]や、欧州特許公開第0803764A1号公報の第7ページ第34行〜第18ページ第12行に記載されている。
【0087】
本発明において、還元剤としてはフェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤、又はビスフェノール系還元剤が好ましく、下記一般式(R)で表される化合物がより好ましい。
【0088】
【化12】
Figure 0004136427
【0089】
一般式(R)において、R11及びR11'は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R12及びR12'は各々独立に水素原子又はベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは−S−基又は-CHR13-基を表す。R13は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。X1及びX1'は各々独立に水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。
【0090】
一般式(R)における各置換基ついて詳細に説明する。
1)R11及びR11'
11及びR11'は、各々独立に置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ウレイド基、ウレタン基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0091】
2)R12及びR12'、X1及びX1'
12及びR12'は、各々独立に水素原子又はベンゼン環に置換可能な置換基を表す。
1及びX1'は各々独立に水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基が挙げられる。
【0092】
3)L
Lは、−S−基又は−CHR13−基を表す。R13は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。
13の無置換のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基などが挙げられる。アルキル基の置換基の例としては、前記R11の置換基と同様の基があげられる。
【0093】
4)好ましい置換基
11及びR11'として好ましくは炭素数3〜15の2級又は3級のアルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基などがあげられる。R11及びR11'としてより好ましくは炭素数4〜12の3級アルキル基であり、その中でもt−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0094】
12及びR12'として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などが挙げられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基である。
【0095】
1及びX1'として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0096】
Lとして好ましくは−CHR13−基である。
13として好ましくは、水素原子又は炭素数1〜15のアルキル基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基が好ましい。R13として特に好ましいのは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基である。
【0097】
13が水素原子である場合、R12及びR12'は好ましくは炭素数2〜5のアルキル基であり、エチル基、プロピル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
【0098】
13が炭素数1〜8の1級又は2級のアルキル基である場合、R12及びR12'はメチル基が好ましい。R13における炭素数1〜8の1級又は2級のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が更に好ましい。
【0099】
11、R11'、R12、及びR12'がいずれもメチル基である場合には、R13は2級のアルキル基であることが好ましい。この場合R13の2級アルキル基としてはイソプロピル基、イソブチル基、1−エチルペンチル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
【0100】
上記還元剤はR11、R11'、R12、及びR12'の組み合わせにより、熱現像性、現像銀色調などが異なる。2種以上の還元剤を組み合わせることでこれらを調整することができるため、目的によっては2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
【0101】
以下に、本発明の一般式(R)で表される化合物をはじめとする本発明の還元剤の具体例(R−1〜R−34)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0102】
【化13】
Figure 0004136427
【0103】
【化14】
Figure 0004136427
【0104】
【化15】
Figure 0004136427
【0105】
【化16】
Figure 0004136427
【0106】
本発明において還元剤の添加量は、0.1〜3.0g/m2であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5g/m2で、さらに好ましくは0.3〜1.0g/m2である。
画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5〜50%モル含まれることが好ましく、より好ましくは8〜30モル%であり、10〜20モル%で含まれることがさらに好ましい。還元剤は画像形成層に含有させることが好ましい。
【0107】
還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテート或いはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0108】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミル或いは超音波によって分散し、固体分散物を作製する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm〜1000ppmの範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
【0109】
1−1−5.現像促進剤
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤として特開2000−267222号明細書や特開2000−330234号明細書等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開平2001−92075号公報に記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10−62895号公報や特開平11−15116号公報等に記載の一般式(I)、特願2001−074278明細書に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特願平2000−76240明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系又はナフトール系の化合物が好ましく用いられる。
次に本発明に用いられる好ましい現像促進剤の具体例(A−1〜A−10)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0110】
【化17】
Figure 0004136427
【0111】
【化18】
Figure 0004136427
【0112】
これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1〜20モル%の範囲で使用され、好ましくは0.5〜10モル%の範囲で、より好ましくは1〜5モル%の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられるが、特に固体分散物又は乳化分散物として添加することが好ましい。
乳化分散物として添加する場合、常温で固体である高沸点溶剤と低沸点の補助溶剤を使用して分散した平と化分散物として添加するか、若しくは高沸点溶剤を使用しない所謂オイルレス乳化分散物として添加することが好ましい。
【0113】
1−6.水素結合性化合物
次に、本発明で用いられる水素結合性化合物について説明する。
本発明における還元剤が、芳香族性の水酸基(−OH)を有する場合、特に前述のビスフェノール類の場合には、これらの基と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物(以下、単に「水素結合性化合物」と称する)を併用することが好ましい。
水酸基又はアミノ基と水素結合を形成する基としては、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、含窒素芳香族基などが挙げられる。
【0114】
その中でも好ましいのは、ホスホリル基、スルホキシド基、アミド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレタン基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレイド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)を有する化合物である。
【0115】
本発明で、特に好ましい水素結合性化合物は、下記一般式(D)で表される化合物である。
【0116】
【化19】
Figure 0004136427
【0117】
一般式(D)において、R21、R22及びR23は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
21、R22及びR23が置換基を有する場合の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基などが挙げられ、置換基として好ましいのはアルキル基又はアリール基であり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基、フェニル基、4−アルコキシフェニル基、4−アシルオキシフェニル基などが挙げられる。
【0118】
21、R22及びR23で表されるアルキル基の具体的としては、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、2−フェノキシプロピル基などが挙げられる。
21、R22及びR23で表されるアリール基の具体的としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、4−t−オクチルフェニル基、4−アニシジル基、3,5−ジクロロフェニル基などが挙げられる。
21、R22及びR23で表されるアルコキシ基の具体的としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
21、R22及びR23で表されるアリールオキシ基の具体的としては、フェノキシ基、クレジルオキシ基、イソプロピルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
21、R22及びR23で表されるアミノ基との具体的としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−ヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
【0119】
21、R22及びR23としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。本発明の効果の点ではR21、R22及びR23のうち少なくとも一つ以上がアルキル基又はアリール基であることが好ましく、二つ以上がアルキル基又はアリール基であることがより好ましい。また、安価に入手することができるという点では、R21、R22及びR23が同一の基である場合が好ましい。
【0120】
以下に本発明における一般式(D)の化合物をはじめとする水素結合性化合物の具体例(D−1〜D−21)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0121】
【化20】
Figure 0004136427
【0122】
【化21】
Figure 0004136427
【0123】
【化22】
Figure 0004136427
【0124】
水素結合性化合物の具体例は、上述の他に欧州特許1096310号明細書、特願2000−270498明細書、同2001−124796明細書に記載のものが挙げられる。
本発明における水素結合性化合物は、還元剤と同様に溶液形態、乳化分散形態、固体分散微粒子分散物形態で塗布液に含有せしめ、感光材料中で使用することができる。本発明における水素結合性化合物は、溶液状態でフェノール性水酸基、アミノ基を有する化合物と水素結合性の錯体を形成しており、還元剤と本発明における水素結合性化合物との組み合わせによっては、錯体として結晶状態で単離することができる。このようにして単離した結晶粉体を固体分散微粒子分散物として使用することは安定した性能を得る上で特に好ましい。また、還元剤と本発明における水素結合性化合物を粉体で混合し、適当な分散剤を使って、サンドグラインダーミル等で分散時に錯形成させる方法も好ましく用いることができる。
【0125】
本発明における水素結合性化合物は、還元剤に対して、1〜200モル%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10〜150モル%の範囲で、さらに好ましくは20〜100モル%の範囲である。
【0126】
1−7.バインダー
次に、本発明で用いられるバインダーについて説明する。
本発明の有機銀塩含有層(即ち、画像形成層)のバインダーはいかなるポリマーを使用してもよく、好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ゴム類、ポリ(ビニルアルコール)類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピコリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)類、ポリ(メチルメタクリル酸)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒又はエマルションから被覆形成してもよい。
【0127】
本発明では、有機銀塩を含有する層に併用できるバインダーのガラス転移温度は0℃以上80℃以下である(以下、高Tgバインダーということもある)ことが好ましく、10℃〜70℃であることがより好ましく、15℃以上65℃以下であることが更に好ましい。
【0128】
なお、本明細書においてTgは下記の式で計算した。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiは1番目のモノマーの質量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)はPolymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup,E.H.Immergut著(Wiley-Interscience、1989)の値を採用した。
【0129】
バインダーとなるポリマーは、一種単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。また、ガラス転移温度が20℃以上のものとガラス転移温度が20℃未満のものを組み合わせて用いてもよい。Tgの異なるポリマーを2種以上ブレンドして使用する場合には、その質量平均Tgが上記の範囲にはいることが好ましい。
【0130】
本発明においては、有機銀塩含有層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布、乾燥して被膜を形成させることが好ましい。
本発明においては、有機銀塩含有層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成される場合に、さらに有機銀塩含有層のバインダーが水系溶媒(水溶媒)に可溶又は分散可能である場合に、特に25℃60%RHでの平衡含水率が2質量%以下のポリマーのラテックスからなる場合に性能が向上する。最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
【0131】
ここでいう前記ポリマーが可溶又は分散可能である水系溶媒とは、水又は水に70質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。
水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルムアミドなどを挙げることができる。
【0132】
なお、ポリマーが熱力学的に溶解しておらず、いわゆる分散状態で存在している系の場合にも、ここでは水系溶媒という言葉を使用する。
【0133】
また「25℃60%RHにおける平衡含水率」とは、25℃60%RHの雰囲気下で調湿平街にあるポリマーの質量W1と25℃で絶乾状態にあるポリマーの質量WOを用いて以下のように表すことができる。
25℃60%RHにおける平衡含水率={(W1-W0)/W0}×100(質量%)
【0134】
含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)を参考にすることができる。
【0135】
本発明のバインダーポリマーの25℃60%RHにおける平衡含水率は2質量%以下であることが好ましいが、0.01質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.02質量%以上1質量%以下がさらに好ましい。
【0136】
本発明におけるバインダーとしては、水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態又はミセルを形成して分散しているものなどいずれでもよいが、ラテックス分散した粒子がより好ましい。
【0137】
分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、好ましくは5〜1000nmの範囲で、より好ましくは10〜500nmの範囲、さらに好ましくは50〜200nmの範囲である。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。単分散の粒径分布を持つものを2種以上混合して使用することも塗布液の物性を制御する上で好ましい使用法である。
【0138】
本発明において水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリ(エステル)類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(オレフィン)類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。
これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000、好ましくは10000〜200000がよい。分子量が小さすぎるものは乳剤層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。また、架橋性のポリマーラッテクスは特に好ましく使用される。
【0139】
−ポリマーラテックスの具体例−
以下に、好ましいポリマーラテックスの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値は質量%、分子量は数平均分子量である。多官能モノマーを使用した場合は架橋構造を作るため分子量の概念が適用できないので架橋性と記載し、分子量の記載を省略した。Tgはガラス転移温度を表す。
【0140】
P-1;-MMA(70)-EA(27)-MMA(3)-のラテックス(分子量37000、Tg61℃)
P-2;-MMA(70)-2EHA(20)-St(5)-AA(5)のラテックス(分子量40000、Tg59℃)
P-3;-St(50)-Bu(47)-MMA(3)-のラテックス(架橋性、Tg-17℃)
P-4;-St(68)-Bu(29)-AA(3)-のラテックス(架橋性、Tg17℃)
P-5;-St(71)-Bu(26)-AA(3)-のラテックス(架橋性,Tg24℃)
P-6;-St(70)-Bu(27)-IA(3)のラテックス(架橋性)
P-7;-St(75)-Bu(24)-AA(1)-のラテックス(架橋性、Tg29℃)
P-8;-St(60)-Bu(35)-DVB(3)-MAA(2)-のラテックス(架橋性)
P-9;-St(70)-Bu(25)-DVB(2)-AA(3)-のラテックス(架橋性)
P-10;-VC(50)-MMA(20)-EA(20)-AA(5)-AA(5)-のラテックス(分子量80000)
P-11;-VDC(85)MMA(5)-EA(5)-MMA(5)-のラテックス(分子量67000)
P-12;-Et(90)-MMA(10)-のラテックス(分子量12000)
P-13;-St(70)-2EHA(27)-AA(3)のラテックス(分子量130000、Tg43℃)
P-14;-MMA(63)-EA(35)-AA(2)のラテックス(分子量33000、Tg47℃)
P-15;-St(70.5)-Bu(26.5)-AA(3)-のラテックス(架橋性、Tg23℃)
P-16;-St(69.5)-Bu(27.5)-AA(3)-のラテックス(架橋性、Tg20.5℃)
【0141】
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート,EA;エチルアクリレート、MAA;メタクリル酸,2EHA;2−エチルヘキシルアクリレート,St;スチレン,Bu;ブタジエン,AA;アクリル酸,DVB;ジビニルベンゼン,VC;塩化ビニル,AN;アクリロニトリル,VDC;塩化ビエリデン,Et;エチレン,IA;イタコン酸。
【0142】
以上に記載したポリマーラテックスは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル系ポリマーの例としては、セビアンA-4635,4718,4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(エステル)類の例としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD-size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリ(ウレタン)類の例としては、HYDRAN AP10、20、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム類の例としては、LACSTAR 7310K、3307B(以 上大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410、438C(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニル)類の例としては、G351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニリデン)類の例としては、L502、L513(以上旭化成工業(株)製)など、ポリ(オレフィン)類の例としては、ケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。
【0143】
これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。
【0144】
−好ましいポリマーラテックス−
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、特に、スチレン−ブタジエン共重合体のラテックスが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との質量比は40:60〜95:15であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60〜99質量%であることが好ましい。また、本発明のポリマーラテックスはアクリル酸又はメタクリル酸をスチレンとブタジエンの和に対して1〜6質量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜5質量%含有する。本発明のポリマーラテックスはアクリル酸を含有することが好ましい。
【0145】
本発明に用いることが好ましいスチレン−ブタジエン酸共重合体のラテックスとしては、前記のP−3〜P−8,P−15、市販品であるLACSTAR-3307B、7132C、Nipol Lx416等が挙げられる。
この様なスチレン−ブタジエン酸共重合体のラテックスの好ましいTgは10℃以上30℃以下、より好ましくは17℃以上25℃以下である。
【0146】
本発明の感光材料の有機銀塩含有層(即ち、画像形成層)には、必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は有機銀塩含有層の全バインダーの30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好ましい。
【0147】
本発明における有機銀塩含有層(即ち、画像形成層)は、ポリマーラテックスを用いて形成されたものが好ましい。有機銀塩含有層のバインダーの量は、全バインダー/有機銀塩の質量比が1/10〜10/1、より好ましくは1/3〜5/1の範囲、さらに好ましくは1/1〜3/1の範囲である。
【0148】
また、このような有機銀塩含有層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層(乳剤層)でもあり、このような場合の、全バインダー/ハロゲン化銀の質量比は400〜5、より好ましくは200〜10の範囲である。
【0149】
本発明の画像形成層の全バインダー量は、好ましくは0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2、さらに好ましくは2〜10g/m2の範囲である。本発明の画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0150】
1−1−8.好ましい塗布液の溶媒
本発明において、感光材料の有機銀塩含有層塗布液の溶媒(ここでは簡単のため、溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す。)としては、水を30質量%以上含む水系溶媒が好ましい。
水以外の成分としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。塗布液の溶媒の水含有率は50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が好ましい。
好ましい溶媒組成の例を挙げると、水の他、水/メチルアルコール=90/10、水/メチルアルコール=70/30、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メチルアルコール/エチルセロソルブ=85/10/5、水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール=85/10/5などがある(数値は質量%)。
【0151】
1−1−9.かぶり防止剤等
次に、本発明に用いられるかぶり防止剤等について説明する。
本発明に用いることのできるカブリ防止剤、安定剤及び安定剤前駆体は特開平10−62899号の段落番号[0070]、欧州特許公開第0803764A1号公報の第20頁第57行〜第21頁第7行に記載の特許のもの、特開平9−281637号公報、同9−329864号公報に記載の化合物、米国特許6,083,681号、同6,083,681号、欧州特許1048975号の各明細書に記載の化合物が挙げられる。
また、本発明に好ましく用いられるカブリ防止剤は、有機ハロゲン化物であり、これらについては、特開平11−65021号公報の段落番号[0111]〜[0112]に開示されているものが挙げられる。特に、特開2000−284399公報の式(P)で表される有機ハロゲン化合物、特開平10−339934号公報の一般式(II)で表される有機ポリハロゲン化合物、特開2001−31644公報及び特開2001−33911公報に記載の有機ポリハロゲン化合物が好ましい。
【0152】
−ポリハロゲン化合物−
以下、本発明において好ましく用いられる有機ポリハロゲン化合物について具体的に説明する。
本発明における好ましい有機ポリハロゲン化合物は、下記一般式(H)で表される化合物である。
【0153】
一般式(H)
Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
【0154】
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Yは2価の連絡基を表し、nは0又は1を表し、Z1及びZ2はハロゲン原子を表し、Xは水素原子又は電子吸引性基を表す。
【0155】
一般式(H)において、Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子吸引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207−1216等を参考にすることができる。
【0156】
このような電子吸引性基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子(σp値:0.06)、塩素原子(σp値:0.23)、臭素原子(σp値:0.23)、ヨウ素原子(σp値:0.18))、トリハロメチル基(トリブロモメチル(σp値:0.29)、トリクロロメチル(σp値:0.33)、トリフルオロメチル(σp値:0.54))、シアノ基(σp値:0.66)、ニトロ基(σp値:0.78)、脂肪族・アリール若しくは複素環スルホニル基(例えば、メタンスルホニル(σp値:0.72))、脂肪族・アリール若しくは複素環アシル基(例えば、アセナル(σp値:0.50)、ベンゾイル(σp値:0.43))、アルキニル基(例えば、C≡CH(σp値0.23))、脂肪族・アリール若しくは複素環オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル(σp値:0.45)、フェノキシカルボニル(σp値:0.44))、カルバモイル基(σp値:0.36)、スルファモイル基(σp値:0.57)、スルホキシド基、ヘテロ環基、ホスホリル基等があげられる。σp値としては好ましくは0.2〜2.0の範囲で、より好ましくは0.4から1.0の範囲である。
電子吸引性基として特に好ましいのは、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基で、なかでもカルバモイル基が最も好ましい。
【0157】
Xは、好ましくは電子吸引性基であり、より好ましくはハロゲン原子、脂肪族・アリール若しくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリール若しくは複素環アシル基、脂肪族・アリール若しくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。ハロゲン原子の中でも、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−又は−SO2−を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO2−であり、特に好ましくは−SO2−である。nは、0又は1を表し、好ましくは1である。
【0158】
以下に本発明の一般式(H)の化合物の具体例(H−1〜H−24)を示す。
【0159】
【化23】
Figure 0004136427
【0160】
【化24】
Figure 0004136427
【0161】
本発明において、一般式(H)で表される化合物は、画像形成層の非感光性銀塩1モルあたり、1×10-4〜0.5モルの範囲で使用することが好ましく、10-3〜0.1モルの範囲がより好ましく、5×10-3〜0.05モルの範囲で使用することがさらに好ましい。
本発明において、カブリ防止剤を感光材料に含有させる方法としては、前記還元剤の含有方法に記載の方法が挙げられ、有機ポリハロゲン化合物についても固体微粒子分散物で添加することが好ましい。
【0162】
一般式(H)で表される化合物の融点は200℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは170℃以下がよい。
【0163】
−その他のカブリ防止剤−
その他のカブリ防止剤としては、特開平11−65021号公報の段落番号[0113]の水銀(II)塩、同号段落番号[0114]の安息香酸類、特開2000−206642公報のサリチル酸誘導体、特開2000−221634公報の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11−352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6−11791号公報の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
【0164】
本発明の熱現像感光材料は、カブリ防止を目的としてアゾリウム塩を含有してもよい。アゾリウム塩としては、特開昭59−193447号公報に記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55−12581号公報に記載の化合物、特開昭60−153039号公報に記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は感光材料のいかなる部位に添加してもよいが、添加層としては感光性層を有する面の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。
アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行ってもよく、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でもよいが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行ってもよい。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加してもよい。
【0165】
本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でもよいが、銀1モル当たり1×10-6モル以上2モル以下が好ましく、1×10-3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
【0166】
1−1−10.その他の添加剤
1)メルカプト、ジスルフィド、及びチオン類
本発明には現像を抑制又は促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10−62899号公報の段落番号[0067]〜[0069]、特開平10−186572号公報の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号[0033]〜[0052]、欧州特許公開第0803764A1号公報の第20ページ第36〜56行に記載されている。その中でも特開平9−297367号公報、特開平9−304875号公報、特開2001−100358公報等に記載されているメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
【0167】
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号公報の段落番号[0054]〜[0055]、欧州特許公開第0803764A1号公報の第21ページ第23〜48行、特開2000−356317公報や特願2000−187298明細書に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノン及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウム及びテトラクロロ無水フタル酸)との組合せ;フタラジン類(フタラジン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフラタジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジン及び2,3−ジヒドロフタラジン);フタラジン類とフタル酸類との組合せが好ましく、特にフタラジン類とフタル酸類の組合せが好ましい。そのなかでも特に好ましい組み合わせは6−イソプロピルフタラジンとフタル酸又は4メチルフタル酸との組み合わせである。
【0168】
3)可塑剤、潤滑剤
本発明の感光性層に用いることのできる可塑剤及び潤滑剤については特開平11−65021号公報の段落番号[0117]に記載されている。滑り剤については特開平11−84573号公報の段落番号[0061]〜[0064]や特願平11−106881号公報の段落番号[0049]〜[0062]に記載されている。
【0169】
4)染料、顔料
本発明における感光性層には、色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322、特開平10−268465号公報、同11−338098号公報等に詳細に記載されている。
【0170】
5)超硬調化剤
超硬調画像形成のための超硬調化剤やその添加方法や量については、同号段落番号[0118]、特開平11−223898号公報の段落番号[0136]〜[0198]、特開平2000−284399号公報の式(H)、式(1)〜(3)、式(A)、(B)の化合物、特願平11−91652号公報の記載の一般式(III)〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、硬調化促進剤については特開平11−65021号公報の段落番号[0102]、特開平11−223898号公報の段落番号[0194]〜[0195]に記載されている。
【0171】
蟻酸や蟻酸塩を強いかぶらせ物質として用いるには、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側に銀1モル当たり5ミリモル以下、さらには1ミリモル以下で含有することが好ましい。
【0172】
本発明の熱現像感光材料で超硬調化剤を用いる場合には五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩を併用して用いることが好ましい。
五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、(四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。
【0173】
特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。
具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカプリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
【0174】
1−1−9.塗布液の調製及び塗布
本発明における画像形成層塗布液の調製温度は、30℃以上65℃以下がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。
【0175】
1−2.層構成等
本発明における画像形成層は、支持体上に一又はそれ以上の層で構成される。一層で構成する場合は有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤及びバインダーよりなり、必要により色調剤、被覆助剤及び他の補助剤などの所望による追加の材料を含む。二層以上で構成する場合は、第1画像形成層(通常は支持体に隣接した層)中に有機銀塩及び感光性ハロゲン化銀を含み、第2画像形成層又は両層中にいくつかの他の成分を含まなければならない。
多色感光性熱現像写真材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号明細書に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。多染料多色感光性熱現像写真材料の場合、各乳剤層は、一般に、米国特許第4,460,681号明細書に記載されているように、各感光性層の間に官能性若しくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
【0176】
熱現像感光材料は一般に、感光性層に加えて非感光性層を有する。非感光性層は、その配置から(1)感光性層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる保護層、(2)複数の感光性層の間や感光性層と保護層の間に設けられる中間層、(3)感光性層と支持体との間に設けられる下塗り層、(4)感光性層の反対側に設けられるバック層に分類できる。フィルター層は、(1)又は(2)の層として感光材料に設けられる。アンチハレーション層は、(3)又は(4)の層として感光材料に設けられる。
【0177】
本発明における熱現像感光材料は、支持体の一方の側に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤を含む感光性層を有し、他方の側にバック層を有する、いわゆる片面感光材料であることが好ましい。
【0178】
熱現像感光材料は、モノシート型(受像材料のような他のシートを使用せずに、熟現像感光材料上に画像を形成できる型)であることが好ましい。
【0179】
1)表面保護層
本発明における熱現像感光材料は、画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層は単層でもよいし、複数層であってもよい。表面保護層については、特開平11−65021号公報の段落番号[0119]〜[0120]、特願2000−171936明細書に記載されている。
【0180】
本発明における表面保護層のバインダーとしては、ゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いる若しくは併用することも好ましい。ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。
PVAとしては、特開2000−171986公報の段落番号[0009]〜[0020]に記載のものがあげられ、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m2当たり)としては、0.3〜4.0g/m2が好ましく、0.3〜2.0g/m2がより好ましい。
【0181】
2)アンチハレーション層
本発明の熱現像感光材料においては、アンチハレーション層を感光性層に対して光源から遠い側に設けることが好ましく行われる。
【0182】
アンチハレーション層については、特開平11−65021号公報の段落番号[0123]〜[0124]、特開平11−223898号、同9−230531号、同10−36695号、同10−104779号、同11−231457号、同11−352625号、同11−352626号等の各公報に記載されている。
アンチハレーション層には、露光波長に吸収を有するアンチハレーション染料を含有する。本発明の場合は、露光レーザーの波長は350nmから450nmにビーク波長を持つものであるため、アンチハレーションもこの波長を吸収するような染料を用いることが好ましい。
【0183】
可視域に吸収を有する染料を用いてハレーション防止を行う場合には、画像形成後には染料の色が実質的に残らないようにすることが好ましく、熟現像の熱により消色する手段を用いることが好ましく、特に非感光性層に熱消色染料と塩基プレカーサーとを添加してアンチハレーション層として機能させることが好ましい。これらの技術については、特開平11−231457号公報等に記載されている。
【0184】
消色染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用することが好ましい。光学濃度は、0.15〜2であることが好ましく0.2〜1であることがより好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001〜1g/m2程度である。
【0185】
なお、このように染料を消色すると、熱現像後の光学濃度を0.1以下に低下させることができる。二種類以上の消色染料を、熱消色型記録材料や熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、二種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。
【0186】
このような消色染料と塩基プレカーサーを用いる熱消色においては、特開平11−352626号公報に記載のような塩基プレカーサーと混合すると融点を3℃(deg)以上降下させる物質(例えば、ジフェニルスルホン、4−クロロフェニル(フェニル)スルホン)、2−ナフチルベンゾエート等を併用することが熱消色性等の点で好ましい。
【0187】
3)バック層
本発明に適用することのできるバック層については特開平11−65021号公報の段落番号[0128]〜[0130]に記載されている。
【0188】
本発明においては、銀色調、画像の経時変化を改良する目的で300〜450nmに吸収極大を有する着色剤を添加することができる。このような着色剤は、特開昭62−210458号、同63−104046号、同63−103235号、同63−208846号、同63−306436号、同63−314535号、特開平01−61745号、特開平2001−100363の各公報などに記載されている。
このような着色剤は、通常、0.1mg/m2〜1g/m2の範囲で添加され、添加する層としては感光性層の反対側に設けられるバック層が好ましい。
【0189】
4)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を添加することが好ましく、マット剤については、特開平11−65021号公報の段落番号[0126]〜[0127]に記載されている。マット剤は感光材料1m2当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1〜400mg/m2、より好ましくは5〜300mg/m2である。
本発明においてマット剤の形状は定型、不定形のいずれでもよいが好ましくは定型で、球形が好ましく用いられる。平均粒径は0.5〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1.0〜8.0μm、さらに好ましくは2.0〜6.0μmの範囲である。また、サイズ分布の変動係数としては50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは、30%以下である。ここで変動係数とは(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100で表される値である。また、変動係数が小さいマット剤で平均粒径の比が3より大きいものを2種併用することも好ましい。
【0190】
また、乳剤面のマット度は星屑故障が生じなければいかようでもよいが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」及びTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
【0191】
本発明においてバック層のマット度としては、ベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、800秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500秒以下40秒以上である。
【0192】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層若しくは最外表面層として機能する層、或いは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0193】
5)ポリマーラテックス
特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、表面保護層やバック層にポリマーラテックスを用いることが好ましい。
このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣賞編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%)/ブチルアタリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。
【0194】
さらに、表面保護層用のバインダーとして、特願平11−6872号明細書のポリマーラテックスの組み合わせ、特願平11−143058号明細書の段落番号[0021]〜[0025]に記載の技術、特願平11−6872号明細書の段落番号[0027]〜[0028]に記載の技術、特願平10−199626号明細書の段落番号[0023]〜[0041]に記載の技術を適用してもよい。
【0195】
表面保護層におけるポリマーラテックスの比率は、全バインダーの10質量%以上90質量%以下が好ましく、特に20質量%以上80質量%以下が好ましい。
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m2当たり)としては、0.3〜5.0g/m2が好ましく、0.3〜2.0g/m2がより好ましい。
【0196】
6)膜面pH
本発明の熱現像感光材料は、熟現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは6、6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。
膜面pHの調節は、フタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。
【0197】
また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等の不揮発性の塩基とアンモニアを併用することも好ましく用いられる。なお、膜面pHの測定方法は、特願平11−87297号明細書の段落番号[0123]に記載されている。
【0198】
7)硬膜剤
本発明の感光性層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いてもよい。硬膜剤の例としてはT.H.James著“THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION”(Macmillan Publishilg Co.,Inc.刊、1977年刊)77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2、4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N、N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)、N、N−プロピレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号明細書、特開平6−208193号公報などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号明細書などのエポキシ化合物類、特開昭62−89048号公報などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0199】
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
具体的な混合方法としては、添加流量とコーターへの送波量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳“液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章などに記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0200】
8)界面活性剤
本発明に適用できる界面活性剤については、特開平11−65021号公報の段落番号[0132]に記載されている。
本発明においては、フッ素系の界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤の具体例としては、特開平10−197985号公報、特開2000−19680公報、特開2000−214554公報等に記載された化合物が挙げられる。また、特開平9−281636号公報に記載の高分子フッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。本発明においては特願2000−206560公報に記載のフッ素系界面活性剤の使用が特に好ましい。
【0201】
9)帯電防止層又は導電層
本発明においては、帯電防止層又は導電層を設けることができ、具体的な例としては、特開平11−65021号公報の段落番号[0135]等に記載されている。
前記導電層としては、金属酸化物を含む導電層を有することが好ましい。導電層の導電性材料としては、金属酸化物中に酸素欠陥、異種金属原子を導入して導電性を高めた金属酸化物が好ましく用いられる。
金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2が好ましく、ZnO2に対してはAl、Inの添加、SnO2に対してはSb、Nb、P、ハロゲン元素等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加が好ましい。特にSbを添加したSnO2が好ましい。
【0202】
異種原子の添加量は0.01〜30mol%の範囲が好ましく、0.1から10mol%の範囲がより好ましい。金属酸化物の形状は球状、針状、板状いずれでもよいが、導電性付与の効果の点で長軸/単軸比が2.0以上、好ましくは3.0〜50の針状粒子がよい。
【0203】
金属酸化物の使用量としては、好ましくは1mg/m2〜1000mg/m2の範囲で、より好ましくは10mg/m2〜500mg/m2の範囲、さらに好ましくは20mg/m2〜200mg/m2の範囲である。本発明における導電層は、乳剤面側、バック面側のいずれに設置してもよいが、支持体とバック層との間に設置することが好ましい。本発明に適用できる導電層の具体例としては、特開平7−295146号公報、特開平11−223901号公報に記載されている。
【0204】
10)その他
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。特開平11−65021号公報の段落番号[0133]に記載の溶剤を添加してもよい。各種の添加剤は、感光性層又は非感光性層のいずれかに添加する。それらについては、WO98/36322、EP803764A1号、特開平10−186567号、同10−18568号等を参考にすることができる。
また、カラー画像を得る方法については特開平11−65021号公報の段落番号[0136]に記載されている。
【0205】
11)支持体
透明支持体としては、二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熟現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号実施例記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。具体的な支持体の例は、11−65021号公報の段落番号[0134]に記載されている。
支持体には、特開平11−84574号の水溶性ポリエステル、同10−186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000−39684号や特願平11−106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。また、帯電防止層若しくは下塗りについては、特開昭56−143430号公報、同56−143431号公報、同58−62646号公報、同56−120519号公報、特開平11−84573号公報の段落番号[0040]〜[0051]、米国特許第5,575,957号明細書、特開平11−223898号公報の段落番号[0078]〜[0084]に記載の技術を適用することができる。
【0206】
12)塗布方式
本発明の熱現像感光材料は、いかなる方法で塗布されてもよい。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、又は米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F,Kistler、Petert M.Schweizer著“LIQUID FILM COATING”(CHAPMAN&HALL社刊、1997年)399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、又はスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigurellb.1にある。また、所望により同書399頁から536頁記載の方法、米国特許第2,761,791号及び英国特許第837,095号の各明細書に記載の方法により2層又はそれ以上の層を同時に被覆することができる。
【0207】
本発明における有機銀塩含有層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。この技術については特開平11−52509号公報を参考にすることができる。
本発明における有機銀塩含有層塗布液は、剪断速度0.1S-1における粘度は400mPa・s以上100,000mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは500mPa・s以上20,000mPa・s以下である。また、剪断速度1000S-1においては1mPa・s以上200mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは5mPa・s以上80mPa・s以下である。
【0208】
13)包装材料
本発明の感光材料は生保存時の写真性能の変動を押えるため、若しくはカール、巻癖などを改良するために、酸素透過率及び/又は水分透過率の低い包装材料で包装することが好ましい。
酸素透過率は25℃で50ml/atm・m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/atm・m2・day以下、さらに好ましくは1.0ml/atm・m2・day以下である。
水分透過率は10g/atm・m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm・m2・day以下、さらに好ましくは1g/atm・m2・day以下である。
該酸素透過率及び/又は水分透過率の低い包装材料の具体例としては、たとえば特開平8−254793号。特開2000−206653号明細書に記載されている包装材料である。
【0209】
14)その他の利用できる技術
本発明の熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−43766、同9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568号、同10−90823号、同10−171063号、同10−186565号、同10−186567号、同10−186569号〜同10−186572号、同10−197974号、同10−197982号、同10−197983号、同10−197985号〜同10−197987号、同10−207001号、同10−207004号、同10−221807号、同10−282601号、同10−288823号、同10−288824号、同10−307365号、同10−312038号、同10−339934号、同11−7100号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同11−305377号、同11−305378号、同11−305384号、同11−305380号、同11−316435号、同11−327076号、同11−338096号、同11−338098号、同11−338099号、同11−343420号の各公報、特願2000−187298、同2000−10229、同2000−47345、同2000−206642、同2000−98530、同2000−98531、同2000−112059、同2000−112060、同2000−112104、同2000−112064、同2000−171936の各明細書も挙げられる。
【0210】
2.画像形成方法
本発明の熱現像感光材料に好適な画像形成方法は、上記した熱現像感光材料を、波長350mm〜450mmにピーク強度を持ち、1mW/mm2以上の照度を有する光で露光した後、熱現像する画像形成方法である。以下に、本発明に好適な画像形成方法について説明する。
【0211】
2−1.露光
前記画像形成方法における照度としては、1mW/mm2以上であり、2mW/mm2以上50W/mm2以下がより好ましく、10mW/mm2以上50W/mm2以下がさらに好ましい。
本発明の熱現像感光材料は、1mW/mm2以上の高照度の光での短時間露光でその特性を発揮する。このような高照度で露光を行うと、本願の高沃度ハロゲン化銀乳剤と非感光性有機銀塩を含む熱現像材料においても十分な感度を得ることができる。即ち、低照度露光に比べ、本発明の高照度露光では高感度を得ることができる。
【0212】
前記画像形成方法における露光波長としては、350nm〜450nmであり、より好ましくは370nm〜430nmであり、更に好ましくは390nm〜430nmであり、特に好ましくは390nm〜420nmである。
露光光源としては、このような光源であればどのようなものでも構わないが、レーザー光であることによって好ましく達成できる。
本発明に好ましく用いられるレーザー光としては、ガスレーザー(Ar+、Kr)、YAGレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが挙げられる。また、レーザーと第2高調波発生素子などを用いることもできる。更に好ましくは青〜紫発光の半導体レーザーである。青〜紫発光の高出力半導体レーザーとしては日亜化学のNLHV3000E半導体レーザーを挙げることができる。
出力35mW、波長405nmのものが公開されている。この様なレーザー光を使用することで、本発明の特に好ましい波長である390nm〜420nmの高照度光を得ることができる。
【0213】
2−2.熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されてもよいが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80〜250℃であり、好ましくは100〜140℃、さらに好ましくは110〜130℃である。現像時間としては1〜60秒が好ましく、より好ましくは3〜30秒、さらに好ましくは5〜25秒、7〜15秒が特に好ましい。
【0214】
熱現像の方式としては、ドラム型ヒータ、プレート型ヒータのいずれを使用してもよいが、プレートヒータ方式がより好ましい。プレートヒータ方式による無現像方式とは特開平11−133572号公報に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒータからなり、かつ前記プレートヒータの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒータとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒータを2〜6段に分けて先端部については1〜10℃程度温度を下げることが好ましい。
例えば、独立に温度制御できる4組のプレートヒータを使用し、それぞれ112℃、119℃、121℃、120℃になるように制御する例が挙げられる。このような方法は特開昭54−30032号公報にも記載されており、熟現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を抑えることもできる。
【0215】
2−3.平均コントラスト
本発明の熱現像感光材料の階調は任意であるが、本発明の効果を有効に発現するためにはその濃度1.5から濃度3.0の平均コントラストが1.5以上10以下であることが好ましい。
ここで平均コントラストとは、レーザーの露光量の対数を横軸にとり、その露光量で露光された感光材料の熱現像後の光学濃度を横軸にとった特性曲線において、光学濃度1.5と濃度3.0を結ぶ線の傾きをいう。
この平均コントラストは1.5以上10以下であることが文字切れの性能向上のためには好ましい。特に好ましくは2.0以上7以下である。さらに好ましくは2.5以上6以下である。
【0216】
2−4.システム
露光部及び熱現像部を備えた医療用のレーザーイメージャーとしては、富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DP Lを挙げることができる。
FM−DP Lに関しては、Fuji Medical Review No.8,page 39〜55に記載されており、それらの技術は本発明の熱現像感光材料のレーザーイメージャーとして適用することは言うまでもない。また、DlCOM規格に適応したネットワークシステムとして富士メディカルシステムが提案した「AD network」の中でのレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
【0217】
3.本発明の用途
本発明の熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
【0218】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0219】
〔実施例1〕
1−1.PET支持体の作製
<製膜>
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い固有絡度IV=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融し下記構造の染料BBを0.04質量%含有させた。その後T型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
【0220】
【化25】
Figure 0004136427
【0221】
これを、周速の異なるロールを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロールを得た。
【0222】
<表面コロナ処理>
ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロールのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0223】
<下塗り>
(1)下塗層塗布液の作製
Figure 0004136427
【0224】
処方▲2▼(バック面第1層用)
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス 158g
(固形分40質量%、スチレン/ブタジエン質量比=68/32)
2,4−ジクロロ6−ヒドロキシ−S−
トリアジンナトリウム塩 8質量%水溶液 20g
ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10ml
蒸留水 854ml
【0225】
処方▲3▼(バック両側第2層用)
SnO2/SbO
(9/1質量比、平均粒径0.038μm、17質量%分散物) 84g
ゼラチン(10質量%水溶液) 89.2g
信越化学(株)製 メトローズTC−5(2質量%水溶液) 8.6g
綜研化学(株)製 MP−1000 0.01g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10ml
NaOH(1質量%) 6ml
プロキセル(ICI社製) 1ml
蒸留水 805ml
【0226】
1−2.下塗り支持体の作製
上記厚さ上75μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(感光性層面)に上記下塗り塗布液処方▲1▼をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6ml/m2(片面当たり)になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲2▼をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7ml/m2になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲3▼をワイヤーバーでウエット塗布量が7.7ml/m2になるように塗布して180℃で6分間乾燥して下塗り支持体を作製した。
【0227】
(バック面塗布液の調製)
<ハレーション防止層査布液の調製>
ゼラチン17g、ポリアクリルアミド9.6g、単分散ポリメチルメタクリレー卜微粒子(平均粒子サイズ8μm、粒径標準偏差0.4)1.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.03g、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム2.2g、青色染料化合物−1を0.1g、黄色染料化合物−1を0.1g、水を844ml混合し、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0228】
<バツク面保護層塗布液の調製>
容器を40℃に保温し、ゼラチン50g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.2g、N、N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)2.4g、t−オクチルフェノキシエトキシエタンスルホン酸ナトリウム1g、ベンゾイソチアゾリノン30mg、フッ素系界面活性剤(F−1)2質量%水溶液2.7ml、フッ素系界面活性剤(F−4)2質量%水溶液2.7ml、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合質量比5/95)8.8g、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)0.6g、流動がラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.8g、水を950ml混合してバック面保護層塗布液とした。
【0229】
1−3.画像形成層、中間層、及び表面保護層
1−3−1.塗布用材料の準備
1)ハロゲン化銀乳剤の調製
<ハロゲン化銀乳剤1の調製>
蒸留水1420mlに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mlを加え、さらに0.5mol/L濃度の統酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、42℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え195.6mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム21.8gを蒸留水にて容量218mlに希釈した溶液Bを一定流量で9分間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。
【0230】
さらに、硝酸銀51:86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム60gを蒸留水にて容量600mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で120分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶接C及び溶液Dを添加しはじめてから10分後に全畳添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。0.5モル/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1モル/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
【0231】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1、2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10-5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Bをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10-4モル加えて91分間熟成した。
N、N’−ジヒドロキシ−N”−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンヅイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10-3モル及び1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1、3、4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10-3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤1を作製した。
【0232】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.040μm、球相当径の変動係数18%の純ヨウ化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0233】
<ハロゲン化銀乳剤2、3、及び6の調製>
ハロゲン化銀乳剤1の調製と同様にして、だたし添加するハロゲン組成を変更することによって、表1に記載のような均一なハロゲン組成を有するハロゲン化銀乳剤2、3、及び6を調製した。
ハロゲン化銀の粒子サイズは、粒子形成時の温度を変化させることによって調整した。調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.04μmのものであった。
【0234】
<ハロゲン化銀乳剤4の調製>
蒸留水1421mlに1質量%臭化カリウム溶液3.1mlを加え、さらに0.5モル/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン31:7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、32℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え95.4mlに希釈した溶液Aと臭化カリウム15.6gを蒸留水にて容量97.4mlに希釈した溶液Bを一定流量で45秒間かけて全量添加した。
【0235】
その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。さらに、硝酸銀30.64gに蒸留水を加えて187.6mlに希釈した溶液Cと臭化カリウム21.5gを蒸留水にて容量400mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で12分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールダブルジェット法で添加した。
その後硝酸銀22.2gに蒸留水130mlを加えた溶液Eと、ヨウ化カリウム21.7gを蒸留水にて容量217mlに希釈した溶液FとをpAg6.3に維持しながらコントロールダブルジエツト法で添加した。銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液C及び溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全畳添加した。
0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
【0236】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1、2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、1分後に47℃に昇通した。昇温の20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10-5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Bをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10-4モル加えて91分間熟成した。
N、N'−ジヒドロキシ−N''−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10-3モル及び1−フェニル−2−へプチル−5−メルカプト−1、3、4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モル当たりに対して5.4×10-3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤4を作製した。
【0237】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.040μm、球相当径の変動係数20%の臭化銀層70モル%に沃化銀層30モル%が接合した粒子であった。
沃化銀構造の結晶構造をもつ部分は直接遷移による光吸収を有していた。
【0238】
<ハロゲン化銀乳剤5の調製>
蒸留水1421mlに1質量%臭化カリウム溶液3.1mlを加え、さらに0.5モル/L濃度の続酸を3.5ml、フタル化ゼラチン31.7gを添加した液をステンレス製反応壷中で攪拌しながら、34℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え95.4mlに希釈した溶液Aと臭化カリウム15.7gを蒸留水にて容量97.4mlに希釈した溶液Bを一定流量で45秒間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。
【0239】
さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム60gを蒸留水にて容量600mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で120分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを6.3に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。
銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液C及び溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。
0.5モル/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
【0240】
その他の条件はハロゲン化銀乳剤4と同様にしてハロゲン化銀乳剤5を調製した。
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.040μm、球相当径の変動係数10%の臭化銀層30モル%に浜化銀層70モル%が接合した粒子であった。沃化銀構造の結晶構造をもつ部分は強い直接遷移による光吸収を有していた。
【0241】
<塗布液用混合乳剤の調製>
表1に示すようにハロゲン化銀乳剤1、2、3、4、5、及び6を溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10-3モル添加した。さらに、それぞれの塗布液用混合乳剤1kgあたりハロゲン化銀の含有量が銀として38.2gとなるように加水した。
【0242】
2)脂肪酸銀分散物の調製
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22−85R)87.6kg、蒸留水423L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、t−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのt−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。
【0243】
このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。
また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
【0244】
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を潰別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
【0245】
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.14μm、b=0.4μm、c=0.6μm、平均アスペクト比5.2、平均球相当径0.52μm、球相当径の変動係数15%のりん片状の結晶であった。(a、b、cは本文の規定)
【0246】
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kg及び水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
【0247】
次に、予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1260kg/cm2に調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0248】
3)還元剤分散物の調製
<還元剤−1分散物の調製>
還元剤−1(6、6'−di−t−ブチル−4、4'−ジメチル−2、2'−ブチリデンジフェノール)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、よく混合してスラリーとした。
このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した模型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤−1分散物を得た。
【0249】
こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子は、メジアン径0.40μm、最大粒子径1.5μm以下であった。得られた還元剤分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の果物を除去して収納した。
【0250】
4)水素結合性化合物分散物の調製
<水素結合性化合物−1分散物の調製>
水素結合性化合物−1(トリ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、よく混合してスラリーとした。
このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えで水素結合性化合物の濃度が25質量%になるように調製し、水素結合性化合物−1分散物を得た。
【0251】
こうして得た水素結合性化合物分散物に含まれる水素結合性化合物粒子は、メジアン径0.35μm、最大粒子径1.5μm以下であった。得られた水素結合性化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0252】
5)現像促進剤分散物、色調調整剤分散物の調製
<現像促進剤−1分散物の調製>
現像促進剤−1を10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgに、水10kgを添加して、よく混合してスラリーとした。
このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて現像促進剤の濃度が20質量%になるように調製し、現像促進剤−1分散物を得た。
【0253】
こうして得た現像促進剤分散物に含まれる現像促進剤粒子は、メジアン径0.48μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた現像促進剤分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0254】
<現像促進剤−2分散物、現像促進剤−3分散物、及び、色調調整剤−1分散物>
現像促進剤−2、現像促進剤3及び色調調整剤−1の固体分散物についても現像促進剤−1と同様の方法により分散し、20質量%の分散液を得た。
【0255】
6)ポリハロゲン化合物分散物の調製
<有機ポリハロゲン化合物−1分散物>
有機ポリハロゲン化合物−1(トリブロモメタンスルホニルベンゼン)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水14kgを添加して、よく混合してスラリーとした。
このスラリーをダイアフラムポンプで送波し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した模型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が26質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物−1分散物を得た。
【0256】
こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0257】
<有機ポリハロゲン化合物−2分散物>
有機ポリハロゲン化合物−2(N−ブチル−3−トリブロモメタンスルホニルベンゾアミド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgを添加して、よく混合してスラリーとした。
このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が30質量%になるように調製した。この分散液を40℃で5時間加温し、有機ポリハロゲン化合物−2分散物を得た。
【0258】
こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.3/μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0259】
7)フタラジン化合物溶液の調製
<フタラジン化合物−1溶液>
8kgのクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgとフタラジン化合物−1(6−イソプロピルフタラジン)の70質量%水溶液14.28kgを添加し、フタラジン化合物−1の5質量%溶液を調製した。
【0260】
<フタラジン化合物−2溶液の調製>
フタラジン化合物−1溶液の調製の際に用いたフタラジン化合物−1の代りにフタラジン化合物−2(5,7−ジメチルフタラジン)を用いてフタラジン化合物−2の5質量%溶液を調製した。
【0261】
<フタラジン化合物−3(比較化合物)溶液の調製>
フタラジ化合物−1溶液の調製の際に用いたフタラジン化合物−1の代りにフタラジン化合物−3(フタラジン)を用いてフタラジン化合物−3の5質量%溶液を調製した。
【0262】
8)メルカプト化合物溶液の調製
<メルカプト化合物−1水溶液の調製>
メルカプト化合物−1(1−(3−スルホフェニル)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム塩)7gを水993gに溶解し、0.7質量%の水溶液とした。
【0263】
<メルカプト化合物−2水溶液の調製>
メルカプト化合物−2(1−(3−メチルウレイド)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム塩)20gを水980gに溶解し、2.0質量%の水溶液とした。
【0264】
9)顔料分散物の調製
<顔料−1分散物の調製>
C.I.Pgment Blue 60を64gと花王(株)製デモールNを6.4gに水250gを添加しよく混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて25時間分散し、水を加えて顔料濃度が5質量%になるように調製して、顔料−1分散物を得た。こうして得た顔料分散物に含まれる顔料粒子は平均粒径0.21μmであった。
【0265】
10)SBRラテックス液の調製
<SBRラテックス液の調製>
Tg=22℃のSBRラテックスは、以下により調製した。
重合開始剤として過硫酸アンモニウム、乳化剤としてアニオン界面活性剤を使用し、スチレン70.0質量、ブタジエン27.0質量及びアクリル酸3.0質量を乳化重合させた後、80℃で8時間エージングを行った。その後40℃まで冷却し、アンモニア水によりpH7.0とし、さらに三洋化成(株)製サンデットBLを0.22%になるように添加した。次に5%水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH8.3とし、さらにアンモニア水によりpH8.4になるように調整した。
このとき使用したNa+イオンとNH4 +イオンのモル比は1:2.3であった。さらに、この液1kg対してベンゾイソチアゾリンノンナトリウム塩7%水溶液を0.15ml添加しSBRラテックス液を調製した。
【0266】
(SBRラテックス:-St(70.0)-Bu(27.0)AA(3.0)-のラテックス) Tg22℃平均粒径0.1μm、濃度43質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.2mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し、ラテックス原液(43質量%)を25℃にて測定)、pH8.4
Tgの異なるSBRラテックスはスチレン、ブタジエンの比率を適宜変更し、同様の方法により調製できる。
【0267】
1−3−2.塗布液の調製
1)乳剤層(感光性層)塗布液−1〜18の調製
上記で得た脂肪酸銀分散物1000g、水276ml、顔料−1分散物32.8g、有機ポリハロゲン化合物−1分散物3.2g、有機ポリハロゲン化合物−2分散物8.7g、表1に記載するようにフタラジン化合物溶液173g、SBRラテックス(Tg:20℃)液1082g、還元剤−1分散物155g、水素結合性化合物−1分散物55g、現像促進剤−1分散物1g、現像促進剤−2分散物2g、現像促進剤−3分散物3g、色調調製剤−1分散物2g、メルカプト化合物−2水溶液6mlを順次添加し、塗布直前に表1に記載するようにハロゲン化銀混合乳剤117gを添加してよく混合した乳剤層塗布液をそのままコーティングダイヘ送液し、塗布した。
塗布液中のジルコニウム量は銀1gあたり0.25mgであった。
【0268】
2)乳剤面中間層塗布液の調製
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)1000g、顔料−1分散物272g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレー卜/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス19質量%液4200mlにエアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を27ml、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を135ml、総量10000gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、9.1ml/m2になるようにコーティングダイヘ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で58[mPa・S]であった。
【0269】
3)乳剤面保護層第1層塗布液の調製
イナートゼラチン64gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質畳%液80g、フタル酸の10質量%メタノール溶液を23ml、4−メチルフタル酸の10質量%水溶液23ml、0.5mol/L濃度の硫酸を28ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を5ml、フェノキシエタノール0.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.1gを加え、総量750gになるように水を加えて塗布液とし、4質量%のクロムみょうばん26mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを18.6ml/m2になるようにコーティングダイヘ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で20[mpa・S]であった。
【0270】
4)乳剤面保護層第2層塗布液の調製
イナートゼラチン80gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液102g、フッ素系界面活性剤(F−1)2質量%水溶液2.7ml、フッ素系界面活性剤(F−2)の2質量%水溶液2.7ml、フッ素系界面活性剤(F−3)の2質量%水溶液2.7ml、フッ素系界面活性剤(F−4)の2質量%水溶液2.7ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%溶液を23ml、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm)4g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4.5μm)21g、4−メチルフタル酸1.6g、フタル酸4.8g、0.5mol/L濃度の硫酸44ml、ベンゾイソチアゾリノン10mgに総量650gとなるよう水を添加して、4質量%のクロムみょうばんと0.67質量%のフタル酸を含有する水溶液445mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを表面保護層塗布液とし、8.3ml/m2になるようにコーティングダイヘ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で19[mPa・s]であった。
【0271】
1−4.熱現像感光材料−1〜18の作製
上記下塗り支持体のバック両側に、ハレーション防止層塗布液を固体微粒子染料の固形分室布量が0.04g/m2となるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作製した。
【0272】
バック面と反対の面に下塗り面から乳剤層、中間層、保護層第1層、保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料を作製した。このとき、乳剤層と中間層は31℃に、保護層第1層は36℃に、保護層第2層は37℃に温度調整した。
乳剤層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
【0273】
ベヘン酸銀 5.55
有機ポリハロゲン化合物−1 0.02
有機ポリハロゲン化合物−2 0.06
フタラジン化合物(表1に記載) 0.19
SBRラテックス 9.67
還元剤−1 0.81
水素結合性化合物−1 0.30
現像促進剤−1 0.004
現像促進剤−2 0.010
現像促進剤−3 0.015
色調調整剤−1 0.010
メルカプト化合物−2 0.002
ハロゲン化銀(表1に記載) 0.091(Agとして)
【0274】
塗布乾燥条件は以下のとおりである。
塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して196〜882Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。
引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10〜20℃の風にて塗布液を冷却した後、無接触型般送して、つるまさ式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥させた。
乾燥後、25℃で湿度40〜60%RHで調湿した後、膜面を70〜90℃になるように加熱した。加熱後、膜面を25℃まで冷却した。
【0275】
作製された熱現像感光材料のマット度は、ベック平滑度で感光性層両側が550秒、バック画が130秒であった。また、感光層面側の膜面のpHを測定したところ6.0であった。
【0276】
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
【0277】
【化26】
Figure 0004136427
【0278】
【化27】
Figure 0004136427
【0279】
【化28】
Figure 0004136427
【0280】
【化29】
Figure 0004136427
【0281】
2.評価
上記にて得られた熱現像感光材料1〜18の各試料について、以下のようにして評価を行った。
【0282】
(熱現像感光材料の露光)
富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DPLの露光部に於いて半導体レーザー光源に日亜化学工業のNLHV3000E半導体レーザーを実装し、ビーム径をしばることによって、レーザー光の感光材料面照度を0及び1mW/mm2〜1000mW/mm2の間で変化させて10-6秒で感材の露光を行った。レーザー光の発光波長は405nmであった。
【0283】
(熱現像感光材料の現像)
露光された感材は、以下のようにして熱現像処理を行った。
富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DPLの熱現像部において、4枚有るパネルヒーターは112℃−115℃−115℃−115℃に設定し、フイルム搬送速度を速めることによって合計熱現像時間が14秒になるように熱現像を行った。
【0284】
(写真性能の評価)
1)感度の評価
熱現像感光材料1において、カブリプラス黒化濃度1.0を得るのに必要な露光量の逆数を100として相対値で示した。数値は大きい程感度が高いことを示す。
【0285】
2)経時保存性の評価
作製した熱現像感光材料は半切サイズに切断し35℃60%の環境で以下の包装材料に包装し1週間後に写真性能の評価を行った。
【0286】
−包装材料−
PET10μm/PE12μm/アルミ箔9μm/Ny15μm/カーボン3%を含むポリエチレン50μm
酸素透過率:0.02ml/atm・m2・day(25℃)
水分透過率:0.01g/atm・m2・day(25℃)
【0287】
評価は、上記条件で保存した時の最大濃度部(3.5〜4.5)の濃度低下(Dmaxの低下)を測定して経時保存性とした。濃度低下は小さい程経時保存性は優れているといえる。
【0288】
2)画像保存性の評価
<画像保存性評価−1>
熱現像後の各熱現像感光材料を、25℃60%RHの部屋におき、蛍光灯100ルクスのもとで30日間放置した。熱現像処理直後のカブリ濃度に対して上記条件のもとで30日間放置した後のカブリ濃度の増加(Dminの増加)が大きい程画像保存性が悪い。この様な放置でもカブリの上昇が少ないことが好ましい。得られた結果を表1に示す。
【0289】
<画像保存性評価−2>
熱現像後の熱現像感光材料を30℃70%RHの環境において、蛍光灯4000ルクスのもとで8時間放置し、濃度=1.2の画像の色調変化を目視により観察し官能評価した。評価点(評価基準)は以下の通りである。実用的には評価点が0又は1であることが必要である。得られた結果を表1に示す。
【0290】
−評価点−
0 − 色調変化は認められない
1 − 色調変化は認められるが、実用上問題なし
2 − わずかに褐色に変化し、実用上不可
3 − 明らかに褐色に変化し、実用上不可
【0291】
【表1】
Figure 0004136427
【0292】
表1の結果から明らかなように、本発明の熱現像感光材料は高感度で経時保存性が良好であり、かつ熱現像後の画像保存性が良好であることが分かった。
【0293】
〔実施例2〕
実施例1の熱現像感光材料1と同様にして、ただし感光性ハロゲン化銀粒子形成時の温度を変化させることによって粒子サイズ70nmのハロゲン化銀乳剤(純沃化銀乳剤)7、及び粒子サイズ100nmのハロゲン化銀乳剤(純沃化銀乳剤)8を作製した。これらの乳剤を用いたこと以外は実施例1の熱現像感光材料1と同様にして、熱現像感光材料19、20、21、22、23、及び24を作製した。
得られた各熱現像感光材料の写真性能について評価を行った。なお、Dmaxは熱現像後の試料の最高光学濃度である。その他の項目については、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0294】
【表2】
Figure 0004136427
【0295】
表2の結果から明らかなように、ハロゲン化銀粒子サイズは小さい方が少ない塗布銀量で高いDmaxを得ることができ、より好ましい実施態様であることが分かった。
【0296】
【発明の効果】
本発明によれば、高沃化銀含量の感光性ハロゲン化銀を用いつつも、高感度で経時保存性が良好であり、かつ熱現像後の画像保存性が良好な熱現像感光材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で好ましく用いられる沃化銀乳剤の光吸収を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 支持体上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、及びバインダーを含有する熱現像感光材料において、
    該感光性ハロゲン化銀が、沃化銀含有量が70モル%以上100モル%以下であり、非感光性有機銀塩の存在しない状態で形成された、粒子サイズが10nm以上50nm以下の粒子であり、かつ下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
    Figure 0004136427
    〔一般式(1)中、Rは1価の置換基を表し、mは1以上4以下の整数を表す。m≧2の場合、複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、複数のRが隣接する場合には、脂肪族環、芳香族環、又はヘテロ環を形成してもよい。〕
  2. 前記感光性ハロゲン化銀が、高沃化銀結晶構造に由来する直接遷移吸収を持つことを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
  3. 請求項1又は請求項に記載の熱現像感光材料を、波長350mm〜450mmにピーク強度を持ち、1mW/mm2以上の照度を有する光で露光した後、熱現像することを特徴とする画像形成方法。
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