JP2004089898A - 流体中の浮遊粒子の分離方法と装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】流体中の浮遊粒子の分離流体中に浮遊する粒子を加速して慣性力によって分離する方法であり、主流と支流を分岐路において逆方向に配列し、含粒子流体は支流側へ傾斜した流入路を通って流体加速部を経て導入され、含粒子流体中の粗大粒子は慣性力によって分岐路を通過して主流に乗って除去され、一方、含粒子流体中の微小粒子は慣性力が小さいので分岐路で反転して支流に乗って出て行く。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主流および支流を逆方向に配列することで流体中の浮遊粒子を慣性力で分離する方法に関し、比較的単純な構造であるうえに粒子の除去効率が高く、分離した微小、粗大それぞれの粒子が系内に滞留しない浮遊粒子の分離装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、わが国では、二酸化硫黄、二酸化窒素および浮遊粒子状物質(粒径10μm以下の粒子、以下ではPM10と称する)は、最も重要な大気汚染物質として環境基準が設けられ削減の努力が払われてきた。ガス状汚染質であるこれら二酸化硫黄や二酸化窒素はそれ自体人体に有害であるだけでなく、大気中で硫酸塩や硝酸塩に粒子化されていくが、これらの粒子はPM10の主成分であり、またPM10が強い酸性を示す原因物質となっている。都会の環境保全のためには、大気中に混在するこれらのガス状や粒子状物質を確実に分離し、且つ互いに妨害のないように自動測定して、それぞれの大気含有量の正確な濃度を把握し適切な公害防止策を実施する必要がある。
【0003】硝酸ガスは二酸化窒素が大気中で酸化生成されたもので、微量で規制の対象物質とはなっていないが、硝酸塩粒子生成の前駆物質であり大気化学分野で重要な物質である。大気中の硝酸ガスなどの自動測定装置として、山本らの研究発表[Atoms.Environ.第35巻、5339〜5346頁、1991年発行]がある。近年、米国で粒径2.5μm以下の粒子(以下ではPM2.5と称する)が従来のPM10以上に強い人体有害性を示すことが明らかにされて規制基準が設定された。これに伴い、わが国でも、これまでのPM10より厳しい規制対象物質としてPM2.5の規制が検討されている。
【0004】二酸化硫黄や二酸化窒素などのガス自動測定装置では、大気の微量測定前に不要な粒子をあらかじめ分離する必要があり、除塵用のプレフィルターを取り付けるのが一般的である。このプレフィルターは、使用時間の経過とともに捕集された粒子がフィルター表面に付着して滞留し、フィルター交換を怠ると目詰まりの問題が発生する。このため、測定期間中フィルターの交換作業を定期的に行う必要があり、これは非常に煩雑な作業である。また、このプレフィルターの表面や捕集された粒子上で、二酸化硫黄や二酸化窒素が吸着されてマイナス妨害を起こしたり、硝酸ガスが吸脱着されてプラスやマイナス妨害を起こすことが問題となっている。このようなフィルター表面や粒子の妨害は、測定すべき大気が自動測定の際に吸引気流となってフィルター表面や捕集された粒子上を通過する限り回避できない。硝酸ガスなどの自動測定装置では、このような測定妨害やプレフィルターの定期交換を回避するために、除塵用フィルターを取り付けない場合さえある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ガス自動測定装置において不可欠な除塵過程で、従来のプレフィルター法で生じる前記のようなフィルター表面でのガス吸着およびフィルター上の滞留粒子のガス吸脱着などの妨害をなくすことを要する。また、フィルターの目詰まりによる圧損の影響や取替えの煩雑さを取り除くことが必要である。
【0006】PM10またはPM2.5の自動測定装置には、空気取り入れ口にそれぞれ10μmあるいは2.5μm以上の粗大粒子を除去するために、遠心力によるサイクロンやバーチャルインパクターを取り付けている。しかしながら、これらの機器は、構造が比較的複雑であるために高価なものとなるうえに、気流の滞留個所が存在するなど粒子の分離性能に悪影響を与えていることが考えられ、より単純な構造のものが求められている。
【0007】バーチャルインパクターは、既存インパクターやサイクロンと同様に構造が複雑である。バーチャルインパクターは、図7に例示するように、大気の導入孔100と、該導入孔と同軸状に下方に配置し且つ第1吸気路102と連通する吸気孔104と、第2吸気路106と連通するハウジング室105とを備えるハウジング108で構成する。第2吸気路106による流出速度を第1吸気路102による流出速度より大きく、例えば、第2吸気路106の気体流量を30リットル/分、第1吸気路102の気体流量を2リットル/分に定める。バーチャルインパクターについて、ハウジング108を適切に設計すると、比較的大きい粒子だけを導入孔100下方の吸気路102に取り込み、粒径による微粒子の正確な分離が可能になる。
【0008】バーチャルインパクターは、分離すべき粗大粒子がハウジング室105に混入することがあり、粒子の除去効率において多少難がある。バーチャルインパクターでは、微小粒子を含む気流が図7の矢印のように横方向に拡がり、この気流拡がりに対応できるようにハウジング室105を設計するため、装置がある程度大型化してしまう。ハウジング室105内には、その下方112で微粒子の滞留が多少生じ、既存インパクターほどでなくても測定誤差が発生する場合がある。
【0009】本発明は、従来の微粒子用の除塵機器に関する前記の問題点を改善するために提案されたものであり、粒子の除去効率が高い浮遊粒子の分離方法と装置を提供することを目的としている。本発明の他の目的は、分離した微小、粗大それぞれの粒子が系内に滞留することが少ない浮遊粒子の分離方法と装置を提供することを目的としている。本発明の別の目的は、比較的簡単な構造によって小型化が可能である浮遊粒子の分離装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る浮遊粒子の分離方法は、主流と支流を分岐路において逆方向に配列し、流体中に浮遊する粒子を加速して慣性力によって分離する。この分離方法では、含粒子流体を支流側へ傾斜した流入路を通って流体加速部を経て導入する。含粒子流体中の粗大粒子は、慣性力によって分岐路を通過して主流に乗って除去され、一方、含粒子流体中の微小粒子は、慣性力が小さいので分岐路で反転して支流に乗って出て行く。
【0011】この分離方法において、流体加速部の間隔は、入口側が出口側よりやや大きいかまたは等しく、しかもそれらの間隔が調整可能であると好ましい。この分離方法は、気体中の浮遊粒子について説明しているけれども、装置に多少の変更を加えると液体中の浮遊粒子の分離にも適用可能である。
【0012】本発明に係る浮遊粒子の分離装置は、前端部をテーパ状に成形する細長いサンプリング管と、該管のテーパ部と対応する傾斜角度を有する円錐孔を設けた基台と、サンプリング管を垂直に支持する受け台とを備える。この分離装置では、サンプリング管を垂直方向に設置してそのテーパ部を基台の円錐孔と近接配置することによって流体加速部を設定する。したがって、流体加速部の水平断面の形状は正確な同心円となっている。基台の円錐孔の頂部から延設する連通路およびサンプリング管の中心孔がそれぞれ流体の吸引路に相当する。
【0013】この分離装置は、細長いサンプリング管の周壁に雄ネジ部を刻設するとともに、受け台の貫通孔またはその取付部の内周面に雌ネジ部を刻設すると好ましい。この構造により、この分離装置は、サンプリング管をねじ込んで流体加速部つまりノズル部の間隔を任意に増減できる。所望に応じて、サンプリング管を二重管にすることも可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の分離方法では、図1および図2に概略で示すような複数の分流流路を利用し、これらの流路は円形状(図4参照)に2次元で形成し、この場合にはノズルの形状が同心円のリング状である。これらの流路は、垂直面に形成してもよく、この場合にはノズルの形状が矩形である。この分離方法について、その原理を図1によって説明すると、矢印で図示する主流1と支流2を分岐路3において逆方向に配列し、浮遊粒子を含んだ含粒子流体5を支流2側へ傾斜した流入路6を通って流体加速部つまりノズル部7を経て導入する。
【0015】主流1と支流2は、図2のようにポンプや測定器(いずれも図示しない)などによって吸引される吸気路を通る。主流1と支流2で吸引されることにより、大気などの含粒子流体5を流入路6を通して系内へ導入できる。主流1および支流2の流量は、捕集すべき微小粒子8の粒径に応じて適宜変更することにより、所望の粒径である微小粒子8のみを逆方向の支流2に乗せて取り出すことが可能である。この明細書において、例えば、微小粒子8は粒径1μm以下、粗大粒子10は粒径1μmを超える粒子について使用している。
【0016】系内へ吸引された含粒子流体5は、ノズル部7において加速され、粗大粒子10は慣性力が大きいので主流1に乗せて主吸引路12から除去し、微小粒子8は慣性力が小さいので逆方向の支流2に乗せて支吸引路14へ送り込む。この分離方法について、主流1および支流2の流量調整、またはサンプリング管16(図2と図4参照)のような可動部材の上下移動でノズル部7の全長とその間隔を調整することにより、図4に示すような分離装置30の分級特性を変えることができる。
【0017】主流1と支流2は、垂直軸について同軸状に逆方向に配列すればよく、主流1または支流2を多少ずらしたり、傾斜させても浮遊粒子の分離は実質的に可能である。流入路6の傾斜角度は、垂直面に対して約5〜45度好ましくは約10〜20度の範囲に定めると、粗大粒子10の慣性力を保持させて直進させ、分離装置をコンパクトに纏められるうえに、分岐路3において微小粒子8の引き戻しが可能であるので好ましい。また、主流1や支流2が通過する吸引路12,14、流入路6およびノズル部7の表面は、粒子の付着や滞留が生じないように平滑化処理を行うと好ましい。
【0018】図2に示すように、ノズル部7が全長に亘ってその間隔がほぼ一定であると、含粒子流体5がノズル部7で加速されて層流となり、流体中に浮遊する粒子8,10を精度よく分離できるので好ましい。この分離方法において、主流1および支流2の流量は、ガス測定装置の吸引空気量によって異なるけれども、一般に0.1リットル/分以上であると適用可能である。支流2で分離できる微小粒子は、主流1および支流2の流量およびノズル間隔の調節によって粒径約1μm以上でほぼ100%、粒径0.5〜1μmで82%以上、粒径0.05〜1μmでも70%近く分離することが可能である。含粒子流体5が通常の気体である場合には、例えば、主吸引路12の内径を約8mm、支吸引路14の内径を約6mmに定めると、ノズル部7が全長で約6mmになり、その間隔を0.01〜2mmの範囲で調整可能である。
【0019】この分離方法に適用できる流体は、一般に大気、窒素、酸素、不活性気体、都市ガス、プロパンガスのような気体であり、所望に応じて浮遊の固体粒子を含む液体にも適用してもよい。気流体の場合、そこに含まれる浮遊粒子は、粒径約1μm以上であればほぼ100%分離可能であり、大気中に含まれる硝酸塩粒子、硫酸塩粒子、燃焼灰、土壌粒子、花粉などであっても、気体中に浮遊するプリント用トナー粒子、穀物粉、セメント粉なども分離可能である。
【0020】この分離方法において、大気中の降下煤塵や、比較的大きな粒子が重力による沈降で流入路6の器壁に沈着するのを防ぐには、分離装置を図1〜図5に示すように設置することが望ましい。また、大型の分離装置において気流の流速が比較的遅いと、重力によって層流が微小粒子を多く含む上部流れと粗大粒子を多く含む下部流れとに分かれ、微小粒子を含む気流と粗大粒子を含む気流の軌跡が混乱することがあり、この場合には、分離装置を逆立ちさせて使用すると好ましい。
【0021】図3には、本発明の分離方法の変形例を示す。この分離方法では、主流20および含粒子流体を導入する流入路24は図1とほぼ同様であるけれども、支流について第1支流21および第2支流22を有する。支流21,22は、例えばサンプリング管を二重管にすることによって比較的容易に達成でき、該二重管はそれぞれ単独で上下移動が可能である。
【0022】主流20と支流21,22は、ポンプや測定器などによって吸引される吸気路を通り、大気などの含粒子流体を流入路24を通して系内へ導入する。系内へ吸引された含粒子流体5は、ノズル部25において加速され、粗大粒子は慣性力が大きいので主流20に乗せて主吸引路26から除去し、より小さい微小粒子を逆方向の支流21に乗せて環状平面の支吸引路27へ送り込み、より大きい微小粒子は慣性力が多少生じるので、逆方向の支流22に乗せて円形平面の支吸引路28へ送り込む。この分離方法は2種の微小粒子を分離できる。この分離方法では、主流20および支流21,22の流量の調節、ノズル部25、二重管の先端位置の調節、およびそれぞれのノズル水平断面を同心円とするための中心軸の調節を正確にすることが必要である。
【0023】本発明の分離装置30は、ステンレス鋼やニッケルなどの金属、ガラス、セラミックスまたはプラスチック製のいずれでもよく、金属製ならば、鏡面仕上げやフッ素樹脂(例えばPTFE樹脂)による表面加工などの平滑化処理を行う。分離装置30は、図4および図5に例示するように、単一または複数部材を一体化した円柱形の基台32を有し、該基台の下方中央部に円錐孔33を設ける。基台32の上方には、チューブなどを介してポンプ(図示しない)などと接続する円筒部34を形成し、該円筒部の中心孔35が円錐孔33の頂部から延設する連通路36である。連通路36は、図1と図2に示す主吸引路12に相当する。
【0024】一方、垂直に配置する細長いサンプリング管16は、その前端部38をテーパ状に成形し、該管のテーパ部38は基台32の円錐孔33とほぼ同じ傾斜角度に設定する。サンプリング管16の後端部40は、チューブなどを介してポンプや測定器(図示しない)などと接続し、該管の中心孔41が図1と図2に示す支吸引路14に相当する。
【0025】サンプリング管16は、下方の受け台42によって垂直に支持し、該サンプリング管は垂直位置を適宜変更できる。受け台42は、基台と一体であっても、複数本の支持棒45などを介して基台32と連結してもよい。サンプリング管16の上下移動は、その後方部に雄ネジ部43を刻設することにより、該雄ネジ部を受け台42の中央取付部44に適宜ねじ込むことで可能となる。このサンプリング管は、スプライン加工してクランプで固定したり、ウォームギヤまたはラックーピニオンなどで上下移動を可能にしてもよい。
【0026】分離装置30において、流体加速部つまりノズル部7(図1と図2)は、サンプリング管16のテーパ部38を基台32の円錐孔33と近接配置して設定し、テーパ部16の外周面と円錐孔33の内周面と間の円錐筒部である。ノズル部7の間隔調整は、サンプリング管16または基台32の上下移動によって行うと容易である。
【0027】分離装置30は、粒径が1μmを超える粗大粒子ならばほぼ100%除去することが可能である。分離装置30の応用例として、大気中のガス自動測定に関して、微小粒子が測定装置に流入しても差しつかえない硝酸ガス自動測定装置や有機ガスの採取装置の場合、本装置をプレフィルターの代わりの粗大粒子除去装置として使用できる。浮遊粒子状物質自動測定装置に関して、PM2.5、PM10の分級器としての用途がある。今後、米国と同様に浮遊粒子状物質の環境基準値が改正された場合、PM2.5の分級器の市場性は広く、大きな経済効果が期待できる。このほか種種の粒子測定機などの部品のうちで分級器としての用途が考えられる。分離装置30をガスおよび粒子の自動測定装置に取り付けるには、例えば、該測定器をチューブを介してサンプリング管16の後端部40と接続し、吸引ポンプをチューブなどを介して分離装置30の円筒部34と接続すればよい。
【0028】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0029】浮遊粒子の分離装置30は、ノズル形状が同心円であり、少なくとも円柱形の基台32および細長いサンプリング管16によって構成する。基台32およびサンプリング管16は、フッ素樹脂で表面加工したステンレス鋼製である。分離装置30の基台32は、図4および図5に例示するように、相互にねじ合わせて一体化した基台部32a,32bからなる。
【0030】円柱形の基台32において、第1基台部32aは、その下方中央部で貫通する円錐孔33を設け、さらに下端部にフランジ部46を備える。第2基台部32bは、その上方中央に円筒部34を形成し、該円筒部の中心孔35と円錐孔33の頂部との内径は等しい。円筒部34の中心孔35は、図1と図2に示す主吸引路12に相当する連通路36である。例えば、フランジ部46の外径は50mm、中心孔35の内径は10mmである。
【0031】一方、垂直に配置する細長いサンプリング管16は、その前端部をテーパ状に成形し、該管のテーパ部38は基台32の円錐孔33とほぼ同じ傾斜角度を有する。サンプリング管16の後方部に雄ネジ部43を刻設し、位置決め用のナット48をねじ込む。サンプリング管16の後端部40は、チューブを介して測定器(図示しない)と接続し、該管の中心孔41が図1と図2に示す支吸引路14に相当する。例えば、サンプリング管16は全長107mm、外径10mm、中心孔41の内径が6mmである。
【0032】サンプリング管16は、下方の受け台42によって垂直に支持し、該受け台の外径は50mmである。受け台42の中央には、下向きに筒状の取付部44を設置し、該取付部の内周面に雌ネジ部を刻設する。この雌ネジ部はサンプリング管後方の雄ネジ部43と噛み合い可能である。
【0033】3本の支持棒45は、受け台42の外周縁近傍において円周方向に等間隔で垂直に立設し、各支持棒は回転自在であって先端部にネジ部(図示しない)を刻設する。一方、基台32のフランジ部46において円周方向に等間隔で3個のネジ孔(図示しない)を設け、各ネジ孔に支持棒45のネジ部をねじ込む。各支持棒45を適宜にねじ込んで高さを調整すると、サンプリング管16のテーパ部38と基台32の円錐孔33とを正確に位置合わせできる。
【0034】サンプリング管16は、その後方の雄ネジ部43を適宜ねじ込むことにより、その垂直位置を変更して基台32の円錐孔33と近接配置できる。下記の実験を行うために、サンプリング管16のテーパ部外周面と基台32の円錐孔内周面とによってノズル部7(図1および図2)を設定し、該ノズル部が全長6mmであり、その間隔を約1mmに定める。
【0035】実験例
分離装置30つまり粒子除去器に関して、大気中の浮遊粒子の除去効率を求めるため、2台のヘリング型低圧インパクター(図示しない)を使用する。この粒子除去器を2台の低圧インパクターのうち一方に取り付け、2台同時に大気中の粒子を捕集し、それぞれの粒径分布(重量濃度)を比較する。用いるヘリング型低圧インパクターについては、S.V.Heringらの研究発表[Environ.Sci.Technol. 第12巻、667〜673頁、1987年発行]を参照している。
【0036】この粒子除去器の運転条件は、微小粒子を捕集測定する支流2(図1)の吸引流量を600ml/分として、自動測定の大気測定装置(図示しない)の吸引流量と合致させ、且つ大気を排出する主流1(図1)の吸引流量を4000ml/分に定める。一方、低圧インパクターの吸引流量は1000ml/分で引くことに設定されている。このため、粒子除去器を付けた低圧インパクターには、吸引口の前で400ml/分のダストフリーの清浄空気を加え、全流量を1000ml/分として微小粒子を捕集する。
【0037】測定した大気粒子の粒径分布の結果を図6に示す。大気除去器を接続した低圧インパクターは、単独の低圧インパクターと比べて明らかに大気粒子の重量濃度粒径分布が異なり、粗大粒子の量が図6の点模様部分において減少している。図6の点模様部分が、粒子除去器によって分離されたものと判定できる。
【0038】この粒子除去器に関して、下記の表1に捕集粒子の粒径別、粒子分類別および全粒子について、それぞれの除去効率を示す。
【表1】
この表1から、粗大粒子径(>1μm)で100%、微小粒子径(<1μm)で66%、全粒子径で約80%の粒子が除去されることが判明する。
【0039】
【発明の効果】
本発明に係る浮遊粒子の分離方法は、公知のバーチャルインパクターのような粒子分離器と比べて微粒子の除去効率が高いうえに装置の小型化が可能である。この分離方法で除去された粗粒子は、系外に放出されるので捕集粒子による測定妨害や目詰まりの心配がなく、大気中の硝酸ガスや硫酸ガスなどの自動測定装置に用いると好適である。
【0040】本発明に係る浮遊粒子の分離装置は、流入路、ノズル部、主流部、分岐路、支流部の全てが同心円状であり、非対称構造である従来の慣性法装置にみられるようなノズル端点がなく、流路に撹乱の生じる個所がない。従来のいずれよりも極めて単純な構造であり、非常に安価に製造することができる。この分離装置において、ノズル間隔はサンプリング管の回転で容易に変えられるので、ノズルによるジェット流の速度が変わり粒子の除去効率が可変となり、多様な用途への適用が可能である。この分離装置の規模を変えると、粉体やエアロゾルの粒径別分離にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る分離方法を示す概略説明図である。
【図2】図1の分離方法の原理を気流によって示す概略説明図である。
【図3】本発明の分離方法の変形例を示す概略説明図である。
【図4】本発明に係る分離装置の一例を示す斜視図である。
【図5】図4の分離装置の縦断面図である。
【図6】分離装置である粒子除去器による大気粒子の粒径変化を示すグラフである。
【図7】公知のバーチャルインパクターの概略断面図である。
【符号の説明】
1 主流
2 支流
3 分岐路
5 含粒子流体
6 含粒子流体の流入路
7 ノズル部
8 微小粒子
10 粗大粒子
16 サンプリング管
30 分離装置
32 基台
33 円錐孔
42 受け台
Claims (4)
- 主流と支流を分岐路において逆方向に配列し、流体中に浮遊する粒子を加速して慣性力によって分離する方法であって、含粒子流体は支流側へ傾斜した流入路を通って流体加速部を経て導入され、含粒子流体中の粗大粒子は慣性力によって分岐路を通過して主流に乗って除去され、一方、含粒子流体中の微小粒子は慣性力が小さいので分岐路で反転して支流に乗って出て行く流体中の浮遊粒子の分離方法。
- 流体加速部の間隔は、入口側が出口側よりやや大きいかまたは等しく、しかもそれらの間隔が調整可能である請求項1記載の分離方法。
- 前端部をテーパ状に成形する細長いサンプリング管と、該管のテーパ部と対応する傾斜角度を有する円錐孔を設けた基台と、サンプリング管を垂直に支持する受け台とを備え、サンプリング管を垂直方向に設置してそのテーパ部を基台の円錐孔と近接配置することによって流体加速部を設定し、基台の円錐孔の頂部から延設する連通路およびサンプリング管の中心孔がそれぞれ流体の吸引路に相当する流体中の浮遊粒子の分離装置。
- 細長いサンプリング管の周壁に雄ネジ部を刻設するとともに、受け台の貫通孔またはその取付部の内周面に雌ネジ部を刻設することにより、サンプリング管をねじ込んで流体加速部の間隔を任意に増減できる請求項3記載の装置。
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