JP2004084847A - 真空断熱パネル及びそれを用いた冷蔵庫 - Google Patents
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Abstract
【課題】真空封止前後での厚み減少率が少なく、熱伝導率及び経時劣化が低く抑えられる高性能真空断熱パネルを提供する。
【解決手段】平均繊維径が3〜5μmのガラス短繊維材を無機バインダーだけで接着した板状コア材13をガスバリヤ性フィルム2中に入れ真空封止して真空断熱パネル11とする。該真空断熱パネル11を、冷蔵庫箱体中に挿入し、シクロペンタンと水混合発泡剤から成る高流動性の硬質ポリウレタンフォーム6を発泡充填する。
【選択図】 図2
【解決手段】平均繊維径が3〜5μmのガラス短繊維材を無機バインダーだけで接着した板状コア材13をガスバリヤ性フィルム2中に入れ真空封止して真空断熱パネル11とする。該真空断熱パネル11を、冷蔵庫箱体中に挿入し、シクロペンタンと水混合発泡剤から成る高流動性の硬質ポリウレタンフォーム6を発泡充填する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷蔵庫等の断熱材に使用する真空断熱パネル、及びそれを用いた冷蔵庫に関する。特に、真空封止前後での厚み減少率が少なく、熱伝導率及び経時劣化が低く抑えられる高性能真空断熱パネル、及びそれを用いた冷蔵庫に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化に対する観点から、家電品の消費電力量削減の必要性が叫ばれている。特に、冷蔵庫は家電品の中で特に消費電力量を費やす製品であり、冷蔵庫の消費電力量削減は地球温暖化対策として必要不可欠な状況にある。冷蔵庫の消費電力は、庫内の負荷量が一定であれば、庫内冷却用圧縮機の効率と庫内からの熱漏洩量に関係する断熱材の断熱性能によってその大部分が決まるため、冷蔵庫の技術開発では圧縮機の効率と断熱材の性能向上を行う必要がある。
【0003】
例えば、特開2000−18485号公報は、真空断熱パネル内のコア材構造において、樹脂発泡体及び該樹脂発泡体上に載置した耐熱性を有する多孔体との二重構造の真空断熱パネルを記載する。特開平9−21498号公報は、絡み合った状態のガラス繊維同士を、嵩高のマット状を保った状態で、絡み合った繊維の交点を中心に熱硬化性樹脂で結合させた断熱材を記載する。特開平9−138058号公報は、グラスウール等の繊維を有機バインダーで成形した断熱材と吸着剤をラミネートフィルム中で真空成形した真空断熱材を記載する。特開平9−145239号公報は、グラスウール等の繊維を無機バインダー及び有機バインダーで固め成形したものを充填材にする真空断熱材を記載する。特開平7−167376号公報は、平均繊維径2μm以下の無機質繊維を集綿して酸性水溶液を付着処理後、圧縮脱水硬化し、平均繊維径2μm以下の無機質繊維同士をそれら繊維より溶出した成分により各交点で結着しているコア材を用いた真空断熱材を記載する。特開2001−165389号公報は、冷蔵庫の内箱と外箱とで構成される箱体内部に、コア材と前記コア材を覆うガスバリヤ性フィルムからなり、前記コア材がシート状無機繊維集合体である真空断熱材と樹脂発泡体とを設けた断熱箱体を記載する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来技術の真空断熱パネルでは、樹脂発泡体や熱硬化性樹脂のような有機物を使用しており、真空中で経時的な分解により発生したガス等が真空断熱パネルの断熱性能に悪影響を及ぼし改良の余地がある。即ち、熱伝導率の経時劣化の進行により真空断熱パネルの断熱性能の劣化が進むと、冷蔵庫からの熱漏洩量や消費電力量が増加する問題がある。また、コア材に熱硬化性樹脂の有機バインダーを使用すると、硬い部分とガラス繊維による柔らかい部分の2つの部分が存在し、ガスバリヤ性フィルム中でコア材を真空形成すると表面に凹凸部分を有する真空断熱パネルになり、冷蔵庫の壁面等に挿入し発泡ウレタンを注入充填した場合に冷蔵庫に外観歪みが生じ易くなる。また、平均繊維径が2μm以下のガラス繊維を用いたコア材は、発泡断熱材に用いる硬質ポリウレタンフォームに比べ10倍以上のコスト高であり、シート状の無機繊維集合体では真空断熱パネルの厚さが薄く繊維内に抱き込まれる空間が少なくなり断熱性能が劣る問題がある。薄いシート状の無機繊維集合体を積層すれば厚さを稼ぐことはできるが、積層するにはコストがかかり冷蔵庫用の断熱材に実用化するには改良の余地がある。
【0005】
本発明は、熱伝導率及び経時劣化特性の低減化ができ、表面外観の凹凸変形も少ない低コストで生産性が優れる高性能真空断熱パネルを実現するとともに、該真空断熱パネルを冷蔵庫箱体中に挿入して、熱漏洩量と消費電力量が低く外観歪みのない冷蔵庫を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、第1に本発明は、ガラス短繊維材を無機バインダーのみで接着した板状コア材を、ガスバリヤ性フィルム中に入れ、真空封止したことを特徴とする真空断熱パネルである。
【0007】
ここで、ガラス短繊維材の平均繊維径が3〜5μmであることが好ましい。ガラス短繊維材は平均繊維径により熱伝導率特性及びコストに大きく影響する。ガラス繊維の主流として用いられてきた、平均繊維径が5μm以上のグラスウール等はコストの点では安価なため実用化し易い素材であるが、熱伝導率及び経時劣化が大きく劣る。その理由は、繊維が同一方向に配列して繊維の接触が線に近く繊維同士がサイジング材やバインダー剤で二重に接着され接触熱抵抗が小さくなり、熱伝導率が高くなり経時劣化も急激に進行すると考えられる。一方、平均繊維径が2μm未満では1枚当たりの厚みが薄く断熱性能が劣るため、シート状の無機繊維集合体を重ねて厚みを稼ぐことで熱伝導率と経時劣化の低減は可能である。しかし、シート状の無機繊維集合体を重ねて厚みを稼ぐことでコア材に用いる枚数が増え、生産性が劣るとともにコストも高騰する。また、平均繊維径が2μm未満で真空断熱パネルを作製すると、封止前後でコア材の厚み減少率が大きくなることも判明した。
【0008】
このように、繊維径が5μm以上になると熱伝導率が高くなるために、伝熱方向に不連続で素材間の接触抵抗を有効に活用する繊維材を選定した。また、接触抵抗の他に熱流路がジグザグとなり、熱抵抗が増大して熱伝導率が低くなる多くの繊維材の中から、平均繊維径が3〜5μmのガラス短繊維材を選定し、無機バインダーを入れて接着したコア材を用いて熱伝導率や経時劣化の低減、厚み減少率の低減及び低コストを両立することができる真空断熱パネルを見出した。
【0009】
無機バインダーとしては、水ガラス、アルミキレート、コロイダルシリカ、アルミナゾル等が例示される。この中で、珪酸ソーダを含有する水ガラスが、熱伝導率の経時劣化が優れる点で好ましい。例えば、水ガラスは二酸化珪素が35〜38%及び酸化ナトリウムが17〜19%含有、又は二酸化珪素が34〜36%及び酸化ナトリウムが14〜15%含有、又は二酸化珪素が28〜30%及び酸化ナトリウムが9〜10%含有するものを使用する。好ましくは、熱伝導率の経時劣化が優れるよう、酸化ナトリウム等のアルカリ成分がより少ないものを使用する。
【0010】
板状コア材の密度は限定されないが、断熱性能の点で80kg/m3未満であることが好ましく、70kg/m3以下であることがより好ましい。また、ガラス短繊維材の繊維方向については、真空断熱パネルの厚み方向に対し水平方向に並んで配列するものが断熱性能の点で好ましい。
【0011】
板状コア材の脱水,脱ガスを目的として、ガスバリヤ性フィルムへの挿入前にエージングを施すことも有効である。このときの加熱温度は、最低限脱水が可能であるということから、110℃以上であることが望ましく、180℃以上がより好ましい。最適エージング処理温度について、含水率及び吸水率等の検討を行った結果、180℃、1時間のエージング処理では板状コア材の含水率は処理無しコア材に比べ70分の1にまで減少し、吸水率も110℃、1時間エージング処理より少なくなることが判った。そこで、板状コア材のエージング温度は180℃で実施することがより好ましい。
【0012】
ガスバリヤ性フィルムとは、内部に気密部を設けるためにコア材を覆うものであり、材料構成としては特に限定されるものではない。例えば、最外層にポリエチレンテレフタレート樹脂、中間層にアルミニウム箔、最内層に高密度ポリエチレン樹脂からなるプラスチックラミネートフィルム、例えば、最外層にポリエチレンテレフタレート樹脂、中間層にアルミニウム蒸着層を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(商品名エバール、クラレ(株)製)、最内層に高密度ポリエチレン樹脂からなるプラスチックラミネートフィルムとを袋状にしたものなどが例示される。ガスバリヤ性フィルムのこれら各層は、最外層は衝撃などに対応するためであり、中間層はガスバリヤ性を確保するためであり、最内層は熱融着によって密閉するためである。したがって、これらの目的に叶うものであれば、全ての公知材料が使用可能であり、更に改善する手段として、最外層にポリアミド樹脂などを付与することで耐突き刺し性を向上させたり、中間層にアルミニウム蒸着層を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂を2層設けたりしてもよい。熱融着する最内層としては、シール性やケミカルアタック性などから高密度ポリエチレン樹脂が好ましいが、このほかに、ポリプロピレン樹脂やポリアクリルニトリル樹脂などを用いてもよい。ガスバリヤ性フィルム材料の具体的構成としては、例えば、最外層にポリアミド、第2層目にポリエチレンテレフタラート樹脂、第3層目にアルミ箔、最内層に高密度ポリエチレン樹脂からなるアルミラミネートフィルムである。
【0013】
また、真空断熱材の信頼性を更に向上させるために、必要に応じてドーソナイト,ハイドロタルサイト,金属水酸化物等のガス吸着剤、あるいはゼオライト,水酸化カルシウム,塩化カルシウム,塩化リチウム,活性炭等の水分吸着剤を使用することも有効である。
【0014】
真空断熱パネルの形状は、特に限定されず、適用される個所と作業性に応じて各種形状及び厚さのものが適用可能である。
【0015】
第2に、本発明は、外箱と内箱とからなる空間内に硬質樹脂フォームを充填した冷蔵庫断熱箱体及び/又は断熱ドア体において、上記のいずれかに記載の真空断熱パネルと前記硬質樹脂フォームを前記断熱箱体及び/又は断熱ドア体内部の断熱材として用いたことを特徴とする冷蔵庫である。
【0016】
ここで、硬質樹脂フォームとは、例えば硬質ウレタンフォーム,フェノールフォームやスチレンフォーム等が例示される。この中で、シクロペンタン及び水を混合発泡剤とする硬質ポリウレタンフォームが好ましい。
【0017】
硬質ポリウレタンフォームは、ポリオールを基本原料として、発泡剤、整泡剤、反応触媒の存在下でイソシアネートを反応させて得られるものである。ポリオールは、m−トリレンジアミン(2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン)及びo−トリレンジアミン(2,3−トリレンジアミン、3,4−トリレンジアミン)からなる開始剤のプロピレンオキサイド付加物を主に用いた。他の開始剤は、2価アルコールのプロピレングリコール,ジプロピレングリコール、3価アルコールのグリセリン,トリメチロールプロパン、多価アルコールのジグリセリン,メチルグルコシド,ソルビトール,シュークローズ,アルキレンポリアミンのエチレンジアミン,ジエチレントリアミン、アルカノールアミンのモノエタノールアミン,ジエタノールアミン,イソプロパノールアミン、その他のジアミノジフェニルメタン,ビスフェノールA,ポリメチレンポリフェニルポリアミンを種々のアルキレンオキサイドで付加物としたポリオールを用いた。イソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート多核体を主に使用する。ジフェニルメタンジイソシアネート多核体を用いたイソシアネートは、ポリエーテルポリオール溶液と粘度差が小さいので、ポリエーテルポリオールとの相溶性が向上する。ジフェニルメタンジイソシアネート多核体を用いることによって、初期反応は比較的速くなりゲル化や硬化が遅くなるので、脱型時のフォーム膨れ量が小さくなる。少量であればトリレンジイソシアネート異性体混合物、2,4−体100部、2,4−体/2,6−体=80/20,65/35(重量比)はもちろん、商品名三井コスモネートTRC,武田薬品のタケネート4040プレポリマーのウレタン変性トリレンジイソシアネート,アロファネート変性トリレンジイソシアネート,ビウレット変性トリレンジイソシアネート,イソシアヌレート変性トリレンジイソシアネート等も使用できる。4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートとしては、主成分とする純品の他3核体以上の多核体を含有する商品名三井コスモネートM−200,武田薬品製のミリオネートMRのジフェニルメタンジイソシアネート多核体を使用できる。また、発泡剤としては、炭化水素系発泡剤のシクロペンタン及び水を用いるのが好ましい。ポリオール混合物100重量部に対し、12〜18重量部のシクロペンタン及び1.8重量部未満の水を組み合わせる。一般にシクロペンタンと水を多く用いれば容易に低密度化できるが、水が多いと気泡セル内の炭酸ガスの分圧が増加して膨れ量が大きくなり、シクロペンタンが多いと圧縮強度や寸法安定性が劣ってくる。反応触媒としては、テトラメチルヘキサメチレンジアミン,ペンタメチルジエチレントリアミン、3量化触媒を併用して高速反応化とキュアー性を高められる。反応触媒の配合量は、ポリオール成分100重量部に対し、2〜5重量部が好ましい。それ以外に、第3級アミンのトリメチルアミノエチルピペラジン,トリエチレンジアミン,テトラメチルエチレンジアミン、3量化触媒のトリス(3−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、遅効性触媒のジプロピレングリコール,酢酸カリジエチレングリコール等、反応性が合致すれば使用することができる。整泡剤としては、低表面張力の方が気泡セルの大きさがそろうので、フォームは一様に膨れ、一様な強度を有する。整泡剤の配合量は、ポリオール成分が100重量部あたり1.5〜4重量部である。例えばゴールドシュミット製のB−8461,B−8462,信越化学製のX−20−1614,X−20−1634,日本ユニカ製のSZ−1127,SZ−1671を用いる。上記材料を用いて、硬質ポリウレタンフォームを発泡する。発泡機は、例えばプロマート社製PU−30型発泡機が用いられる。発泡条件は、発泡機の種類によって多少異なるが通常は液温18〜30℃、吐出圧力80〜150kg/cm2、吐出量15〜30kg/min、型箱の温度は35〜45℃が好ましい条件である。
【0018】
本発明でいう、冷蔵庫には、家庭用及び業務用の冷蔵・冷凍庫の他に、自動販売機、商品陳列棚、商品陳列ケース、保冷庫、クーラーボックス,冷蔵・冷凍車等が含まれる。
【0019】
内箱と外箱とから構成される箱体内部に有する断熱箱体及び/又は断熱ドア体内部に、真空断熱パネルと硬質樹脂フォームを挿入する方法としては、あらかじめ内箱と外箱とで形成した空間に真空断熱パネルを配設しておき、その後硬質樹脂フォームを注入して一体成型する方法、あるいは真空断熱パネルと硬質樹脂フォームをあらかじめ一体成型した断熱ボードを作製しておき、その断熱ボードを内箱あるいは外箱に貼付又は両者で挟持する等、様々な方法があるが特に限定されるものではない。
【0020】
第3に、本発明は、ガラス短繊維材を無機バインダーのみで接着した板状コア材を、ガスバリヤ性フィルム中で真空引きし、開口部を封止することを特徴とする真空断熱パネルの製造方法である。
【0021】
本発明の真空断熱パネル及び該真空断熱パネルを挿入した冷蔵庫の構造と作製について、図面を参照して説明する。図1には、従来真空断熱パネルの断面模式図を示す。真空断熱パネル1内の繊維方向がランダムに絡み合ったガラス繊維を従来のコア材3としてガスバリヤ性フィルム2で真空封止される構成の真空断熱パネルである。図2には、本発明真空断熱パネルの断面模式図を示す。真空断熱パネル11内の繊維方向が同一方向に配列されたガラス短繊維材をコア材13としてガスバリヤ性フィルム2で真空封止される構成の真空断熱パネルである。図3には、外箱4と内箱5を有し、従来又は本発明真空断熱パネル1,11を挿入した冷蔵庫断熱箱体の斜視模式図を示す。図4には、従来真空断熱パネル挿入細部の断熱箱体一部の断面模式図を示す。鉄板をプレス成形した外箱4とABS樹脂を真空成形した内箱5とがフランジを介して構成される箱体内部の内箱5の外面側に真空断熱パネル1を挿入し、空隙部分には硬質ポリウレタンフォーム6を発泡充填する構成の冷蔵庫である。図5には、本発明真空断熱パネル挿入細部の断熱箱体一部の断面模式図を示す。鉄板をプレス成形した外箱4とABS樹脂を真空成形した内箱5とがフランジを介して構成される箱体内部の内箱5の外面側に真空断熱パネル11を挿入し、空隙部分には硬質ポリウレタンフォーム6を発泡充填する構成の冷蔵庫である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例及び比較例を更に、詳細に説明する。
[実施例1]
真空断熱パネル11は、平均繊維径が3μmのガラス短繊維材を無機バインダーの水ガラスを混入して接着し、板状に成形後乾燥させ、更に180℃で1時間のエージング処理を行って作製した。その後、ガスバリヤ性フィルム2に5種類の大きさ(500mm×120mm×12mm、220mm×120mm×12mm、300mm×80mm×12mm、250mm×200mm×12mm、400mm×250mm×12mm)の板状コア材13を詰め、真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空断熱パネル11の内部圧力が1.3Paになるまで排気した後、端部をヒートシールで封止した。
【0023】
このようにして得られた真空断熱パネル11の厚み減少率と熱伝導率について、英弘精機(株)製のAUTO−Λで測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で35%であった。また、熱伝導率は初期で1.5mW/m・K、60℃下30日経過後でも熱伝導率の経時劣化が1.9mW/m・Kを示す。このことから、本発明の真空断熱パネルは熱伝導率及び経時劣化が優れ、冷蔵庫箱体10に本発明の真空断熱パネルを挿入することにより熱漏洩量の低減及び省エネ化が期待できる。
【0024】
次に、真空断熱パネル11を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に挿入し、更に冷蔵庫箱体10中にポリオールとイソシアネートを、高圧発泡機を用いて注入充填して冷蔵庫の断熱材を作製した。発泡断熱材の硬質ポリウレタンフォーム6は、ポリオールとして、平均水酸基価が450のm−トリレンジアミンにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを40重量部、平均水酸基価が470のo−トリレンジアミンにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを30重量部、平均水酸基価が380のo−トリレンジアミンにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを30重量部の混合ポリオール成分100重量部、シクロペンタン15重量部に水1.5部及び反応触媒としてテトラメチルヘキサメチレンジアミン1.2重量部とトリメチルアミノエチルピペラジン2部、整泡剤として有機シリコーン化合物X−20−1614を2重量部、イソシアネート成分としてミリオネートMRのジフェニルメタンジイソシアネート多核体を125部用いて発泡充填した。
【0025】
その後、冷蔵庫の熱漏洩量及び消費電力量を測定した。冷蔵庫の熱漏洩量は、冷蔵庫の動作状態と反対の温度条件を設定し庫内からの熱漏洩量として測定を行った。具体的には、−10℃の恒温室内に冷蔵庫を設置し、庫内温度を所定の測定条件(温度差)になるようヒータにそれぞれ通電し冷蔵庫の消費電力と冷却性能を比較する温度条件下で測定した。冷蔵庫の消費電力量はJIS C9801測定基準により測定を行った。その結果、真空断熱パネル11を挿入しなかった冷蔵庫と比べて、熱漏洩量で2.1%、消費電力量で1.5%低減できる冷蔵庫を提供できた。
【0026】
[実施例2]
実施例1と同様に真空断熱パネル11を作製した。用いたガラス短繊維材は平均繊維径が3.5μmである。更に、ガラス短繊維材を、無機バインダーの水ガラスを混入して接着し、板状に成形後乾燥させ、板状のコア材13のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル11を作製した。その後、真空断熱パネル11の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で34%であった。また、熱伝導率は初期で2.4mW/m・K、60℃下30日経過後でも3.0mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0027】
次に、真空断熱パネル11を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル11を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル11を挿入しなかった冷蔵庫と比べて熱漏洩量で1.9%、消費電力量で1.4%低減でき省エネ化が可能となった。
【0028】
[実施例3]
実施例1と同様に真空断熱パネル11を作製した。用いたガラス短繊維材は平均繊維径が4μmである。更に、ガラス短繊維材を無機バインダーの水ガラスを混入して接着し、板状に成形後乾燥させ、板状のコア材13のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル11を作製した。その後、真空断熱パネル11の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で32%であった。また、熱伝導率は初期で2.6mW/m・K、60℃下30日経過後でも3.5mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0029】
次に、真空断熱パネル11を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル11を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル11を挿入しなかった冷蔵庫と比べて熱漏洩量で1.8%、消費電力量で1.3%低減でき省エネ化が可能となった。
【0030】
[実施例4]
実施例1と同様に真空断熱パネル11を作製した。用いたガラス短繊維材は平均繊維径が4.5μmである。更に、ガラス短繊維材を無機バインダーの水ガラスを混入して接着し、板状に成形後乾燥させ、板状のコア材13のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル11を作製した。その後、真空断熱パネル11の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で32%であった。また、熱伝導率は初期で3.0mW/m・K、60℃下30日経過後でも4.2mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0031】
次に、真空断熱パネル11を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル11を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル11を挿入しなかった冷蔵庫と比べて熱漏洩量で1.6%、消費電力量で1.2%低減でき省エネ化が可能となった。
【0032】
[実施例5]
実施例1と同様に真空断熱パネル11を作製した。用いたガラス短繊維材は平均繊維径が5μmである。更に、ガラス短繊維材を無機バインダーの水ガラスを混入して接着し、板状に成形後乾燥させ、板状のコア材13のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル11を作製した。その後、真空断熱パネル11の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で31%であった。また、熱伝導率は初期で3.5mW/m・K、60℃下30日経過後でも5.5mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0033】
次に、真空断熱パネル11を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル11を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル11を挿入しなかった冷蔵庫と比べて熱漏洩量で1.5%、消費電力量で1.2%低減でき省エネ化が可能となった。
【0034】
[比較例1]
実施例1と同様に真空断熱パネル1を作製した。用いたガラス短繊維材は平均繊維径が3μmである。更に、ガラス短繊維材に無機バインダーの水ガラスと有機バインダーのフェノールの1:1混合物で固め板状に成形後乾燥させ、板状のコア材3のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル1を作製した。その後、真空断熱パネル1の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で33%であった。また、熱伝導率は初期で7.4mW/m・K、60℃下30日経過後で12.4mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0035】
次に、真空断熱パネル1を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル1を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル1を挿入しなかった冷蔵庫と比べて熱漏洩量、消費電力量ともに全く低減できず、省エネ化できなかった。
【0036】
[比較例2]
実施例1と同様に真空断熱パネル1を作製した。用いたガラス短繊維材はポリエステル不織布入りのガラスフェルトで平均繊維径が3μmである。更に、ガラス短繊維材を無機バインダーの水ガラスを混入して接着し、板状に成形後乾燥させ、板状のコア材3のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル1を作製した。その後、真空断熱パネル1の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で34%であった。また、熱伝導率は初期で3.9mW/m・K、60℃下30日経過後で既に9.5mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0037】
次に、真空断熱パネル1を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル1を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル1を挿入しなかった冷蔵庫と比べて熱漏洩量で0.3%、消費電力量で0.1%しか低減できず、殆ど省エネ化できなかった。
【0038】
[比較例3]
実施例1と同様に真空断熱パネル1を作製した。用いたガラス短繊維材は平均繊維径が2μmである。ガラス短繊維材にはバインダーを用いた成形を行わず、そのままコア材とした。コア材3のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル1を作製した。その後、真空断熱パネル1の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で80%と大きくなった。また、熱伝導率は初期で2.0mW/m・K、60℃下30日経過後で5.3mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0039】
次に、真空断熱パネル1を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル1を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル1を挿入しなかった冷蔵庫と比べて熱漏洩量で1.8%、消費電力量で1.3%低減でき省エネ化可能となったが、厚み減少率が大きく汎用性に乏しい。
【0040】
[比較例4]
実施例1と同様に真空断熱パネル1を作製した。用いたガラス短繊維材は平均繊維径が6μmである。更に、ガラス短繊維材を無機バインダーの水ガラスを混入して接着し、板状に成形後乾燥させ、板状のコア材3のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル1を作製した。その後、真空断熱パネル1の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果を表1に示す。厚み減少率は真空封止前後で32%であった。また、熱伝導率は初期で5.7mW/m・K、60℃下30日経過後で既に16.0mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0041】
次に、真空断熱パネル1を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル1を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル1を挿入しなかった冷蔵庫と比べて、熱漏洩量、消費電力量ともに全く低減できず、省エネ化できなかった。
【0042】
表1に各実施例及び比較例について、真空断熱コア材に用いたガラス短繊維材等の繊維種、繊維径、バインダー、熱伝導率、熱伝導率経時劣化、真空断熱パネルの厚み減少率、及び真空断熱パネルを挿入した冷蔵庫の熱漏洩量低減率、消費電力量低減率、外観歪の有無を示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、真空封止前後での厚み減少率が少なく、熱伝導率及び熱伝導率の経時劣化が低く抑えられる高性能真空断熱パネルが得られる。特に、有機繊維や有機バインダー及び不織布やマット状フェルトではなく、平均繊維径が3〜5μmのガラス短繊維材及び無機バインダーのみで接着されたガス発生の少ない板状コア材をガスバリヤ性フィルム中に入れ真空封止すると、熱伝導率及び熱伝導率の経時劣化特性が低減でき、且つ低コストで生産性にも優れる表面外観の凹凸変形が少ない高性能真空断熱パネルが実現できる。更に、この真空断熱パネルを冷蔵庫箱体中に挿入し、特にシクロペンタンと水混合発泡剤からなる硬質ポリウレタンフォームを発泡充填することにより、熱漏洩量及び消費電力量も低減できる冷蔵庫が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来真空断熱パネルの断面模式図である。
【図2】本発明真空断熱パネルの断面模式図である。
【図3】従来又は本発明真空断熱パネルを挿入した冷蔵庫断熱箱体の斜視模式図である。
【図4】従来真空断熱パネル挿入細部の断熱箱体一部の断面模式図である。
【図5】本発明真空断熱パネル挿入細部の断熱箱体一部の断面模式図である。
【符号の説明】
1…従来真空断熱パネル、2…ガスバリヤ性フィルム、3…従来のコア材、4…外箱、5…内箱、6…硬質ポリウレタンフォーム、10…冷蔵庫箱体、11…本発明真空断熱パネル、13…本発明コア材
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷蔵庫等の断熱材に使用する真空断熱パネル、及びそれを用いた冷蔵庫に関する。特に、真空封止前後での厚み減少率が少なく、熱伝導率及び経時劣化が低く抑えられる高性能真空断熱パネル、及びそれを用いた冷蔵庫に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化に対する観点から、家電品の消費電力量削減の必要性が叫ばれている。特に、冷蔵庫は家電品の中で特に消費電力量を費やす製品であり、冷蔵庫の消費電力量削減は地球温暖化対策として必要不可欠な状況にある。冷蔵庫の消費電力は、庫内の負荷量が一定であれば、庫内冷却用圧縮機の効率と庫内からの熱漏洩量に関係する断熱材の断熱性能によってその大部分が決まるため、冷蔵庫の技術開発では圧縮機の効率と断熱材の性能向上を行う必要がある。
【0003】
例えば、特開2000−18485号公報は、真空断熱パネル内のコア材構造において、樹脂発泡体及び該樹脂発泡体上に載置した耐熱性を有する多孔体との二重構造の真空断熱パネルを記載する。特開平9−21498号公報は、絡み合った状態のガラス繊維同士を、嵩高のマット状を保った状態で、絡み合った繊維の交点を中心に熱硬化性樹脂で結合させた断熱材を記載する。特開平9−138058号公報は、グラスウール等の繊維を有機バインダーで成形した断熱材と吸着剤をラミネートフィルム中で真空成形した真空断熱材を記載する。特開平9−145239号公報は、グラスウール等の繊維を無機バインダー及び有機バインダーで固め成形したものを充填材にする真空断熱材を記載する。特開平7−167376号公報は、平均繊維径2μm以下の無機質繊維を集綿して酸性水溶液を付着処理後、圧縮脱水硬化し、平均繊維径2μm以下の無機質繊維同士をそれら繊維より溶出した成分により各交点で結着しているコア材を用いた真空断熱材を記載する。特開2001−165389号公報は、冷蔵庫の内箱と外箱とで構成される箱体内部に、コア材と前記コア材を覆うガスバリヤ性フィルムからなり、前記コア材がシート状無機繊維集合体である真空断熱材と樹脂発泡体とを設けた断熱箱体を記載する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来技術の真空断熱パネルでは、樹脂発泡体や熱硬化性樹脂のような有機物を使用しており、真空中で経時的な分解により発生したガス等が真空断熱パネルの断熱性能に悪影響を及ぼし改良の余地がある。即ち、熱伝導率の経時劣化の進行により真空断熱パネルの断熱性能の劣化が進むと、冷蔵庫からの熱漏洩量や消費電力量が増加する問題がある。また、コア材に熱硬化性樹脂の有機バインダーを使用すると、硬い部分とガラス繊維による柔らかい部分の2つの部分が存在し、ガスバリヤ性フィルム中でコア材を真空形成すると表面に凹凸部分を有する真空断熱パネルになり、冷蔵庫の壁面等に挿入し発泡ウレタンを注入充填した場合に冷蔵庫に外観歪みが生じ易くなる。また、平均繊維径が2μm以下のガラス繊維を用いたコア材は、発泡断熱材に用いる硬質ポリウレタンフォームに比べ10倍以上のコスト高であり、シート状の無機繊維集合体では真空断熱パネルの厚さが薄く繊維内に抱き込まれる空間が少なくなり断熱性能が劣る問題がある。薄いシート状の無機繊維集合体を積層すれば厚さを稼ぐことはできるが、積層するにはコストがかかり冷蔵庫用の断熱材に実用化するには改良の余地がある。
【0005】
本発明は、熱伝導率及び経時劣化特性の低減化ができ、表面外観の凹凸変形も少ない低コストで生産性が優れる高性能真空断熱パネルを実現するとともに、該真空断熱パネルを冷蔵庫箱体中に挿入して、熱漏洩量と消費電力量が低く外観歪みのない冷蔵庫を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、第1に本発明は、ガラス短繊維材を無機バインダーのみで接着した板状コア材を、ガスバリヤ性フィルム中に入れ、真空封止したことを特徴とする真空断熱パネルである。
【0007】
ここで、ガラス短繊維材の平均繊維径が3〜5μmであることが好ましい。ガラス短繊維材は平均繊維径により熱伝導率特性及びコストに大きく影響する。ガラス繊維の主流として用いられてきた、平均繊維径が5μm以上のグラスウール等はコストの点では安価なため実用化し易い素材であるが、熱伝導率及び経時劣化が大きく劣る。その理由は、繊維が同一方向に配列して繊維の接触が線に近く繊維同士がサイジング材やバインダー剤で二重に接着され接触熱抵抗が小さくなり、熱伝導率が高くなり経時劣化も急激に進行すると考えられる。一方、平均繊維径が2μm未満では1枚当たりの厚みが薄く断熱性能が劣るため、シート状の無機繊維集合体を重ねて厚みを稼ぐことで熱伝導率と経時劣化の低減は可能である。しかし、シート状の無機繊維集合体を重ねて厚みを稼ぐことでコア材に用いる枚数が増え、生産性が劣るとともにコストも高騰する。また、平均繊維径が2μm未満で真空断熱パネルを作製すると、封止前後でコア材の厚み減少率が大きくなることも判明した。
【0008】
このように、繊維径が5μm以上になると熱伝導率が高くなるために、伝熱方向に不連続で素材間の接触抵抗を有効に活用する繊維材を選定した。また、接触抵抗の他に熱流路がジグザグとなり、熱抵抗が増大して熱伝導率が低くなる多くの繊維材の中から、平均繊維径が3〜5μmのガラス短繊維材を選定し、無機バインダーを入れて接着したコア材を用いて熱伝導率や経時劣化の低減、厚み減少率の低減及び低コストを両立することができる真空断熱パネルを見出した。
【0009】
無機バインダーとしては、水ガラス、アルミキレート、コロイダルシリカ、アルミナゾル等が例示される。この中で、珪酸ソーダを含有する水ガラスが、熱伝導率の経時劣化が優れる点で好ましい。例えば、水ガラスは二酸化珪素が35〜38%及び酸化ナトリウムが17〜19%含有、又は二酸化珪素が34〜36%及び酸化ナトリウムが14〜15%含有、又は二酸化珪素が28〜30%及び酸化ナトリウムが9〜10%含有するものを使用する。好ましくは、熱伝導率の経時劣化が優れるよう、酸化ナトリウム等のアルカリ成分がより少ないものを使用する。
【0010】
板状コア材の密度は限定されないが、断熱性能の点で80kg/m3未満であることが好ましく、70kg/m3以下であることがより好ましい。また、ガラス短繊維材の繊維方向については、真空断熱パネルの厚み方向に対し水平方向に並んで配列するものが断熱性能の点で好ましい。
【0011】
板状コア材の脱水,脱ガスを目的として、ガスバリヤ性フィルムへの挿入前にエージングを施すことも有効である。このときの加熱温度は、最低限脱水が可能であるということから、110℃以上であることが望ましく、180℃以上がより好ましい。最適エージング処理温度について、含水率及び吸水率等の検討を行った結果、180℃、1時間のエージング処理では板状コア材の含水率は処理無しコア材に比べ70分の1にまで減少し、吸水率も110℃、1時間エージング処理より少なくなることが判った。そこで、板状コア材のエージング温度は180℃で実施することがより好ましい。
【0012】
ガスバリヤ性フィルムとは、内部に気密部を設けるためにコア材を覆うものであり、材料構成としては特に限定されるものではない。例えば、最外層にポリエチレンテレフタレート樹脂、中間層にアルミニウム箔、最内層に高密度ポリエチレン樹脂からなるプラスチックラミネートフィルム、例えば、最外層にポリエチレンテレフタレート樹脂、中間層にアルミニウム蒸着層を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(商品名エバール、クラレ(株)製)、最内層に高密度ポリエチレン樹脂からなるプラスチックラミネートフィルムとを袋状にしたものなどが例示される。ガスバリヤ性フィルムのこれら各層は、最外層は衝撃などに対応するためであり、中間層はガスバリヤ性を確保するためであり、最内層は熱融着によって密閉するためである。したがって、これらの目的に叶うものであれば、全ての公知材料が使用可能であり、更に改善する手段として、最外層にポリアミド樹脂などを付与することで耐突き刺し性を向上させたり、中間層にアルミニウム蒸着層を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂を2層設けたりしてもよい。熱融着する最内層としては、シール性やケミカルアタック性などから高密度ポリエチレン樹脂が好ましいが、このほかに、ポリプロピレン樹脂やポリアクリルニトリル樹脂などを用いてもよい。ガスバリヤ性フィルム材料の具体的構成としては、例えば、最外層にポリアミド、第2層目にポリエチレンテレフタラート樹脂、第3層目にアルミ箔、最内層に高密度ポリエチレン樹脂からなるアルミラミネートフィルムである。
【0013】
また、真空断熱材の信頼性を更に向上させるために、必要に応じてドーソナイト,ハイドロタルサイト,金属水酸化物等のガス吸着剤、あるいはゼオライト,水酸化カルシウム,塩化カルシウム,塩化リチウム,活性炭等の水分吸着剤を使用することも有効である。
【0014】
真空断熱パネルの形状は、特に限定されず、適用される個所と作業性に応じて各種形状及び厚さのものが適用可能である。
【0015】
第2に、本発明は、外箱と内箱とからなる空間内に硬質樹脂フォームを充填した冷蔵庫断熱箱体及び/又は断熱ドア体において、上記のいずれかに記載の真空断熱パネルと前記硬質樹脂フォームを前記断熱箱体及び/又は断熱ドア体内部の断熱材として用いたことを特徴とする冷蔵庫である。
【0016】
ここで、硬質樹脂フォームとは、例えば硬質ウレタンフォーム,フェノールフォームやスチレンフォーム等が例示される。この中で、シクロペンタン及び水を混合発泡剤とする硬質ポリウレタンフォームが好ましい。
【0017】
硬質ポリウレタンフォームは、ポリオールを基本原料として、発泡剤、整泡剤、反応触媒の存在下でイソシアネートを反応させて得られるものである。ポリオールは、m−トリレンジアミン(2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン)及びo−トリレンジアミン(2,3−トリレンジアミン、3,4−トリレンジアミン)からなる開始剤のプロピレンオキサイド付加物を主に用いた。他の開始剤は、2価アルコールのプロピレングリコール,ジプロピレングリコール、3価アルコールのグリセリン,トリメチロールプロパン、多価アルコールのジグリセリン,メチルグルコシド,ソルビトール,シュークローズ,アルキレンポリアミンのエチレンジアミン,ジエチレントリアミン、アルカノールアミンのモノエタノールアミン,ジエタノールアミン,イソプロパノールアミン、その他のジアミノジフェニルメタン,ビスフェノールA,ポリメチレンポリフェニルポリアミンを種々のアルキレンオキサイドで付加物としたポリオールを用いた。イソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート多核体を主に使用する。ジフェニルメタンジイソシアネート多核体を用いたイソシアネートは、ポリエーテルポリオール溶液と粘度差が小さいので、ポリエーテルポリオールとの相溶性が向上する。ジフェニルメタンジイソシアネート多核体を用いることによって、初期反応は比較的速くなりゲル化や硬化が遅くなるので、脱型時のフォーム膨れ量が小さくなる。少量であればトリレンジイソシアネート異性体混合物、2,4−体100部、2,4−体/2,6−体=80/20,65/35(重量比)はもちろん、商品名三井コスモネートTRC,武田薬品のタケネート4040プレポリマーのウレタン変性トリレンジイソシアネート,アロファネート変性トリレンジイソシアネート,ビウレット変性トリレンジイソシアネート,イソシアヌレート変性トリレンジイソシアネート等も使用できる。4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートとしては、主成分とする純品の他3核体以上の多核体を含有する商品名三井コスモネートM−200,武田薬品製のミリオネートMRのジフェニルメタンジイソシアネート多核体を使用できる。また、発泡剤としては、炭化水素系発泡剤のシクロペンタン及び水を用いるのが好ましい。ポリオール混合物100重量部に対し、12〜18重量部のシクロペンタン及び1.8重量部未満の水を組み合わせる。一般にシクロペンタンと水を多く用いれば容易に低密度化できるが、水が多いと気泡セル内の炭酸ガスの分圧が増加して膨れ量が大きくなり、シクロペンタンが多いと圧縮強度や寸法安定性が劣ってくる。反応触媒としては、テトラメチルヘキサメチレンジアミン,ペンタメチルジエチレントリアミン、3量化触媒を併用して高速反応化とキュアー性を高められる。反応触媒の配合量は、ポリオール成分100重量部に対し、2〜5重量部が好ましい。それ以外に、第3級アミンのトリメチルアミノエチルピペラジン,トリエチレンジアミン,テトラメチルエチレンジアミン、3量化触媒のトリス(3−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、遅効性触媒のジプロピレングリコール,酢酸カリジエチレングリコール等、反応性が合致すれば使用することができる。整泡剤としては、低表面張力の方が気泡セルの大きさがそろうので、フォームは一様に膨れ、一様な強度を有する。整泡剤の配合量は、ポリオール成分が100重量部あたり1.5〜4重量部である。例えばゴールドシュミット製のB−8461,B−8462,信越化学製のX−20−1614,X−20−1634,日本ユニカ製のSZ−1127,SZ−1671を用いる。上記材料を用いて、硬質ポリウレタンフォームを発泡する。発泡機は、例えばプロマート社製PU−30型発泡機が用いられる。発泡条件は、発泡機の種類によって多少異なるが通常は液温18〜30℃、吐出圧力80〜150kg/cm2、吐出量15〜30kg/min、型箱の温度は35〜45℃が好ましい条件である。
【0018】
本発明でいう、冷蔵庫には、家庭用及び業務用の冷蔵・冷凍庫の他に、自動販売機、商品陳列棚、商品陳列ケース、保冷庫、クーラーボックス,冷蔵・冷凍車等が含まれる。
【0019】
内箱と外箱とから構成される箱体内部に有する断熱箱体及び/又は断熱ドア体内部に、真空断熱パネルと硬質樹脂フォームを挿入する方法としては、あらかじめ内箱と外箱とで形成した空間に真空断熱パネルを配設しておき、その後硬質樹脂フォームを注入して一体成型する方法、あるいは真空断熱パネルと硬質樹脂フォームをあらかじめ一体成型した断熱ボードを作製しておき、その断熱ボードを内箱あるいは外箱に貼付又は両者で挟持する等、様々な方法があるが特に限定されるものではない。
【0020】
第3に、本発明は、ガラス短繊維材を無機バインダーのみで接着した板状コア材を、ガスバリヤ性フィルム中で真空引きし、開口部を封止することを特徴とする真空断熱パネルの製造方法である。
【0021】
本発明の真空断熱パネル及び該真空断熱パネルを挿入した冷蔵庫の構造と作製について、図面を参照して説明する。図1には、従来真空断熱パネルの断面模式図を示す。真空断熱パネル1内の繊維方向がランダムに絡み合ったガラス繊維を従来のコア材3としてガスバリヤ性フィルム2で真空封止される構成の真空断熱パネルである。図2には、本発明真空断熱パネルの断面模式図を示す。真空断熱パネル11内の繊維方向が同一方向に配列されたガラス短繊維材をコア材13としてガスバリヤ性フィルム2で真空封止される構成の真空断熱パネルである。図3には、外箱4と内箱5を有し、従来又は本発明真空断熱パネル1,11を挿入した冷蔵庫断熱箱体の斜視模式図を示す。図4には、従来真空断熱パネル挿入細部の断熱箱体一部の断面模式図を示す。鉄板をプレス成形した外箱4とABS樹脂を真空成形した内箱5とがフランジを介して構成される箱体内部の内箱5の外面側に真空断熱パネル1を挿入し、空隙部分には硬質ポリウレタンフォーム6を発泡充填する構成の冷蔵庫である。図5には、本発明真空断熱パネル挿入細部の断熱箱体一部の断面模式図を示す。鉄板をプレス成形した外箱4とABS樹脂を真空成形した内箱5とがフランジを介して構成される箱体内部の内箱5の外面側に真空断熱パネル11を挿入し、空隙部分には硬質ポリウレタンフォーム6を発泡充填する構成の冷蔵庫である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例及び比較例を更に、詳細に説明する。
[実施例1]
真空断熱パネル11は、平均繊維径が3μmのガラス短繊維材を無機バインダーの水ガラスを混入して接着し、板状に成形後乾燥させ、更に180℃で1時間のエージング処理を行って作製した。その後、ガスバリヤ性フィルム2に5種類の大きさ(500mm×120mm×12mm、220mm×120mm×12mm、300mm×80mm×12mm、250mm×200mm×12mm、400mm×250mm×12mm)の板状コア材13を詰め、真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空断熱パネル11の内部圧力が1.3Paになるまで排気した後、端部をヒートシールで封止した。
【0023】
このようにして得られた真空断熱パネル11の厚み減少率と熱伝導率について、英弘精機(株)製のAUTO−Λで測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で35%であった。また、熱伝導率は初期で1.5mW/m・K、60℃下30日経過後でも熱伝導率の経時劣化が1.9mW/m・Kを示す。このことから、本発明の真空断熱パネルは熱伝導率及び経時劣化が優れ、冷蔵庫箱体10に本発明の真空断熱パネルを挿入することにより熱漏洩量の低減及び省エネ化が期待できる。
【0024】
次に、真空断熱パネル11を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に挿入し、更に冷蔵庫箱体10中にポリオールとイソシアネートを、高圧発泡機を用いて注入充填して冷蔵庫の断熱材を作製した。発泡断熱材の硬質ポリウレタンフォーム6は、ポリオールとして、平均水酸基価が450のm−トリレンジアミンにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを40重量部、平均水酸基価が470のo−トリレンジアミンにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを30重量部、平均水酸基価が380のo−トリレンジアミンにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを30重量部の混合ポリオール成分100重量部、シクロペンタン15重量部に水1.5部及び反応触媒としてテトラメチルヘキサメチレンジアミン1.2重量部とトリメチルアミノエチルピペラジン2部、整泡剤として有機シリコーン化合物X−20−1614を2重量部、イソシアネート成分としてミリオネートMRのジフェニルメタンジイソシアネート多核体を125部用いて発泡充填した。
【0025】
その後、冷蔵庫の熱漏洩量及び消費電力量を測定した。冷蔵庫の熱漏洩量は、冷蔵庫の動作状態と反対の温度条件を設定し庫内からの熱漏洩量として測定を行った。具体的には、−10℃の恒温室内に冷蔵庫を設置し、庫内温度を所定の測定条件(温度差)になるようヒータにそれぞれ通電し冷蔵庫の消費電力と冷却性能を比較する温度条件下で測定した。冷蔵庫の消費電力量はJIS C9801測定基準により測定を行った。その結果、真空断熱パネル11を挿入しなかった冷蔵庫と比べて、熱漏洩量で2.1%、消費電力量で1.5%低減できる冷蔵庫を提供できた。
【0026】
[実施例2]
実施例1と同様に真空断熱パネル11を作製した。用いたガラス短繊維材は平均繊維径が3.5μmである。更に、ガラス短繊維材を、無機バインダーの水ガラスを混入して接着し、板状に成形後乾燥させ、板状のコア材13のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル11を作製した。その後、真空断熱パネル11の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で34%であった。また、熱伝導率は初期で2.4mW/m・K、60℃下30日経過後でも3.0mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0027】
次に、真空断熱パネル11を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル11を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル11を挿入しなかった冷蔵庫と比べて熱漏洩量で1.9%、消費電力量で1.4%低減でき省エネ化が可能となった。
【0028】
[実施例3]
実施例1と同様に真空断熱パネル11を作製した。用いたガラス短繊維材は平均繊維径が4μmである。更に、ガラス短繊維材を無機バインダーの水ガラスを混入して接着し、板状に成形後乾燥させ、板状のコア材13のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル11を作製した。その後、真空断熱パネル11の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で32%であった。また、熱伝導率は初期で2.6mW/m・K、60℃下30日経過後でも3.5mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0029】
次に、真空断熱パネル11を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル11を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル11を挿入しなかった冷蔵庫と比べて熱漏洩量で1.8%、消費電力量で1.3%低減でき省エネ化が可能となった。
【0030】
[実施例4]
実施例1と同様に真空断熱パネル11を作製した。用いたガラス短繊維材は平均繊維径が4.5μmである。更に、ガラス短繊維材を無機バインダーの水ガラスを混入して接着し、板状に成形後乾燥させ、板状のコア材13のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル11を作製した。その後、真空断熱パネル11の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で32%であった。また、熱伝導率は初期で3.0mW/m・K、60℃下30日経過後でも4.2mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0031】
次に、真空断熱パネル11を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル11を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル11を挿入しなかった冷蔵庫と比べて熱漏洩量で1.6%、消費電力量で1.2%低減でき省エネ化が可能となった。
【0032】
[実施例5]
実施例1と同様に真空断熱パネル11を作製した。用いたガラス短繊維材は平均繊維径が5μmである。更に、ガラス短繊維材を無機バインダーの水ガラスを混入して接着し、板状に成形後乾燥させ、板状のコア材13のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル11を作製した。その後、真空断熱パネル11の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で31%であった。また、熱伝導率は初期で3.5mW/m・K、60℃下30日経過後でも5.5mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0033】
次に、真空断熱パネル11を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル11を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル11を挿入しなかった冷蔵庫と比べて熱漏洩量で1.5%、消費電力量で1.2%低減でき省エネ化が可能となった。
【0034】
[比較例1]
実施例1と同様に真空断熱パネル1を作製した。用いたガラス短繊維材は平均繊維径が3μmである。更に、ガラス短繊維材に無機バインダーの水ガラスと有機バインダーのフェノールの1:1混合物で固め板状に成形後乾燥させ、板状のコア材3のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル1を作製した。その後、真空断熱パネル1の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で33%であった。また、熱伝導率は初期で7.4mW/m・K、60℃下30日経過後で12.4mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0035】
次に、真空断熱パネル1を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル1を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル1を挿入しなかった冷蔵庫と比べて熱漏洩量、消費電力量ともに全く低減できず、省エネ化できなかった。
【0036】
[比較例2]
実施例1と同様に真空断熱パネル1を作製した。用いたガラス短繊維材はポリエステル不織布入りのガラスフェルトで平均繊維径が3μmである。更に、ガラス短繊維材を無機バインダーの水ガラスを混入して接着し、板状に成形後乾燥させ、板状のコア材3のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル1を作製した。その後、真空断熱パネル1の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で34%であった。また、熱伝導率は初期で3.9mW/m・K、60℃下30日経過後で既に9.5mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0037】
次に、真空断熱パネル1を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル1を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル1を挿入しなかった冷蔵庫と比べて熱漏洩量で0.3%、消費電力量で0.1%しか低減できず、殆ど省エネ化できなかった。
【0038】
[比較例3]
実施例1と同様に真空断熱パネル1を作製した。用いたガラス短繊維材は平均繊維径が2μmである。ガラス短繊維材にはバインダーを用いた成形を行わず、そのままコア材とした。コア材3のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル1を作製した。その後、真空断熱パネル1の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果、厚み減少率は真空封止前後で80%と大きくなった。また、熱伝導率は初期で2.0mW/m・K、60℃下30日経過後で5.3mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0039】
次に、真空断熱パネル1を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル1を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル1を挿入しなかった冷蔵庫と比べて熱漏洩量で1.8%、消費電力量で1.3%低減でき省エネ化可能となったが、厚み減少率が大きく汎用性に乏しい。
【0040】
[比較例4]
実施例1と同様に真空断熱パネル1を作製した。用いたガラス短繊維材は平均繊維径が6μmである。更に、ガラス短繊維材を無機バインダーの水ガラスを混入して接着し、板状に成形後乾燥させ、板状のコア材3のエージング処理を行い、ガスバリヤ性フィルム2に挿入封止して真空断熱パネル1を作製した。その後、真空断熱パネル1の厚み減少率と熱伝導率を測定した。その結果を表1に示す。厚み減少率は真空封止前後で32%であった。また、熱伝導率は初期で5.7mW/m・K、60℃下30日経過後で既に16.0mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0041】
次に、真空断熱パネル1を実施例1と同様に冷蔵庫箱体10に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。冷蔵庫箱体10中には、真空断熱パネル1を冷蔵庫で温度差が大きいコンプレッサー周辺部及び冷蔵庫背面の内箱5の外面側に5枚挿入し、実施例1のポリオールとイソシアネートを発泡充填して冷蔵庫の断熱材を作製し、熱漏洩量及び消費電力量を評価した。その結果、真空断熱パネル1を挿入しなかった冷蔵庫と比べて、熱漏洩量、消費電力量ともに全く低減できず、省エネ化できなかった。
【0042】
表1に各実施例及び比較例について、真空断熱コア材に用いたガラス短繊維材等の繊維種、繊維径、バインダー、熱伝導率、熱伝導率経時劣化、真空断熱パネルの厚み減少率、及び真空断熱パネルを挿入した冷蔵庫の熱漏洩量低減率、消費電力量低減率、外観歪の有無を示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、真空封止前後での厚み減少率が少なく、熱伝導率及び熱伝導率の経時劣化が低く抑えられる高性能真空断熱パネルが得られる。特に、有機繊維や有機バインダー及び不織布やマット状フェルトではなく、平均繊維径が3〜5μmのガラス短繊維材及び無機バインダーのみで接着されたガス発生の少ない板状コア材をガスバリヤ性フィルム中に入れ真空封止すると、熱伝導率及び熱伝導率の経時劣化特性が低減でき、且つ低コストで生産性にも優れる表面外観の凹凸変形が少ない高性能真空断熱パネルが実現できる。更に、この真空断熱パネルを冷蔵庫箱体中に挿入し、特にシクロペンタンと水混合発泡剤からなる硬質ポリウレタンフォームを発泡充填することにより、熱漏洩量及び消費電力量も低減できる冷蔵庫が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来真空断熱パネルの断面模式図である。
【図2】本発明真空断熱パネルの断面模式図である。
【図3】従来又は本発明真空断熱パネルを挿入した冷蔵庫断熱箱体の斜視模式図である。
【図4】従来真空断熱パネル挿入細部の断熱箱体一部の断面模式図である。
【図5】本発明真空断熱パネル挿入細部の断熱箱体一部の断面模式図である。
【符号の説明】
1…従来真空断熱パネル、2…ガスバリヤ性フィルム、3…従来のコア材、4…外箱、5…内箱、6…硬質ポリウレタンフォーム、10…冷蔵庫箱体、11…本発明真空断熱パネル、13…本発明コア材
Claims (7)
- ガラス短繊維材を無機バインダーのみで接着した板状コア材を、ガスバリヤ性フィルム中に入れ、真空封止したことを特徴とする真空断熱パネル。
- 前記ガラス短繊維材の平均繊維径が3〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱パネル。
- 前記無機バインダーが、珪酸ソーダを含有する水ガラスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空断熱パネル。
- 前記板状コア材の密度が80kg/m3未満であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の真空断熱パネル。
- 外箱と内箱とからなる空間内に硬質樹脂フォームを充填した冷蔵庫断熱箱体及び/又は断熱ドア体において、請求項1から4のいずれかに記載の真空断熱パネルと前記硬質樹脂を前記断熱箱体及び/又は断熱ドア体内部の断熱材として用いたことを特徴とする冷蔵庫。
- 前記硬質樹脂フォームが、シクロペンタン及び水を混合発泡剤とするポリウレタンフォームであることを特徴とする請求項5に記載の冷蔵庫。
- ガラス短繊維材を無機バインダーのみで接着した板状コア材を、ガスバリヤ性フィルム中で真空引きし、開口部を封止することを特徴とする真空断熱パネルの製造方法。
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---|---|---|---|
JP2002248550A JP2004084847A (ja) | 2002-08-28 | 2002-08-28 | 真空断熱パネル及びそれを用いた冷蔵庫 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006038123A (ja) * | 2004-07-28 | 2006-02-09 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 真空断熱材、及びガラス組成物 |
JP2007016806A (ja) * | 2005-07-05 | 2007-01-25 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 真空断熱材 |
JP2010008011A (ja) * | 2008-06-30 | 2010-01-14 | Panasonic Corp | 真空断熱箱体 |
CN108332003A (zh) * | 2018-04-04 | 2018-07-27 | 合肥美菱股份有限公司 | 一种气凝胶真空绝热板及其制造工艺 |
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- 2002-08-28 JP JP2002248550A patent/JP2004084847A/ja active Pending
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