JP2004083923A - ブラウン管インナー磁気シールド素材とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面粗さ 0.2〜3μm Raの冷延鋼帯または酸洗熱延鋼帯を、酸水溶液および/または金属イオン含有酸性水溶液を塗布して前処理した後、その表面に本質的にC、HまたはC、H、OまたはC、H、O、Nからなる有機樹脂の厚み 0.1〜6μm の被膜を形成し、鋼帯の表面粗さ(Ra)に対する有樹脂被膜の膜厚(T) の比(T/Ra)を 0.2〜4.0 とする。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はTVブラウン管内に配置されるインナー磁気シールド素材とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
TVブラウン管(陰極管、CRT) は、基本部品として、電子銃と、電子ビームを映像に変える蛍光面とから構成され、これらがパネル部材とファンネル部材とを接合して形成されたガラス管内に収容される。
【0003】
ブラウン管の側面には、電子ビームが地磁気により偏向されるのを防ぐため、磁気シールド部品(以下、単に磁気シールドという)が配置されている。この磁気シールドには、ブラウン管の内部に配置されたインナー磁気シールドとブラウン管の外部に配置されたアウター磁気シールドがある。
【0004】
これらインナーおよびアウター磁気シールドの素材には、高透磁率や低保磁力といった磁気特性に加えて、プレス加工性、放熱性が求められる。通常は、冷延鋼帯、特にアルミキルド鋼、シリコンキルド鋼、またはアルミトレース鋼、シリコントレース鋼等の鋼帯が使用される。アルミまたはシリコントレース鋼とは、AlまたはSi成分が検出限界以下である鋼のことである。
【0005】
従来のインナー磁気シールド素材は、インナー磁気シールドの製造過程およびそのブラウン管への組み込み過程において下記の工程を経る:
素材のプレス加工⇒洗浄⇒黒化処理⇒ブラウン管封着⇒ブラウン管脱気。
【0006】
プレス加工工程では、打抜いた加工素材 (ブランク) から、曲げ加工および/または絞り加工によって、所定形状のインナー磁気シールドを組み立てる。その際に、スポット溶接が行われることが多い。
【0007】
次の洗浄工程では、素材に付着したごみ除去するとともに、素材に塗布された防錆油や潤滑油を除去 (脱脂) する。
黒化工程では、インナー磁気シールドを弱酸化性の高温雰囲気(約 550〜590 ℃)で熱処理して、鋼表面にマグネタイト(Fe3O4)主体の緻密な黒色の酸化鉄被膜 (黒化被膜) を生成させる。
【0008】
その後、インナー磁気シールドを他の部品と共にブラウン管内部に組み込み、分割されていたガラス管(パネル部材とファンネル部材)を高温に熱して封着する。封着工程は、大気雰囲気中(またはそれに近い雰囲気中)で450 ℃前後のガラスの融点に近い高温に40分程度保持することにより行われる。
【0009】
最後に脱気工程で、ブラウン管の内部を真空にする。この工程では、350 ℃程度の温度に保ちながら、ブラウン管の内部をほぼlO−5 Torr の真空度まで脱気する。この真空度は、雰囲気中のガスで電子線が散乱されないようにするために不可欠であり、ブラウン管の性能を左右する。
【0010】
上記工程のうち、黒化処理は、プレス加工で作製されたインナー磁気シールドを、これがブラウン管に組み込まれるまでの間、錆の発生を防止するよう保護する、一次防錆が主な目的である。生成した黒化被膜は、一次防錆に加え、インナー磁気シールドの放熱性を高めたり、電子の乱反射を防止する効果もある。
【0011】
しかし、黒化処理は、鋼素材ではなく、プレス加工後の加工部材に施されるため、ブラウン管の製造メーカー(即ち、磁気シールド素材のユーザー)側で実施される。素材に予め黒化処理を施しても、黒化被膜は密着性が悪いため、ユーザーが実施するプレス加工時に剥離し、必要な耐食性を得ることはできない。そのため、ユーザーが専用の小型の熱処理設備を設置して黒化処理を行うことになり、黒化処理はコストが高くなる。
【0012】
コストが高い黒化処理を不要にするため、インナー磁気シールドの素材そのものに耐食性を付与することが試みられてきた。
例えば、特開平6−36702 号公報には、冷延鋼帯に薄目付けのNiめっきを施した後、焼鈍して、めっきと鋼帯の界面にNi−Fe拡散層を形成した、インナー磁気シールド素材が提案されている。しかし、Niめっきを行うには、電気めっき処理設備と電気エネルギーが必要であり、めっき液から大量の廃液が発生するなど、環境面への影響も大きい。また、めっき後の焼鈍工程では、拡散層の厚みの制御が難しい。拡散が過度に起こると、耐食性が著しく損なわれる。従って、この方法では、安定した品質の製品を製造することが困難である。
【0013】
特開平2−228466号公報には、連続焼鈍ラインの焼鈍雰囲気を制御することによって、鋼表面に予めFeO 主体の黒化被膜を形成する技術が提案されている。しかし、FeO 質の被膜は非常に硬く、プレス加工金型を損傷させたり、磨耗により金型の寿命を縮めるといった問題がある。
【0014】
特表2000−504472号公報には、鋼表面にクロム酸塩をめっきし、更に樹脂を塗布することで、溶剤脱脂工程を省略する提案や、鋼表面に亜鉛めっきを施し、更にクロム酸塩および樹脂を塗布することで、溶剤脱脂工程と黒化処理を省略する提案がなされている。つまり、既存の潤滑処理鋼帯をインナー磁気シールド素材に適用する提案であると考えられるが、樹脂や塗布に関する具体的説明は全くない。
【0015】
しかし、既存の潤滑処理鋼帯をインナー磁気シールド素材に転用しても、次に説明するように、満足できる品質のインナー磁気シールドを作製することはできない。
【0016】
既存の潤滑処理鋼帯は、ブラウン管内で使用することを想定していないため、一般に被膜が厚すぎて、溶接性が不十分となり、素材のユーザーが使用する出力の小さな溶接機では溶接不良を引き起こすことがある。
【0017】
また、適切な樹脂種を選択しないと、ブラウン管の封着工程で樹脂の燃焼分解が不完全となったり、ブラウン管内部で部品から有害なガスが発生する原因となり、ブラウン管の性能に致命的な問題を引き起こす。
【0018】
さらに、樹脂種の選択や樹脂を塗布する前の鋼帯表面の処理が適切でないと、封着工程で大気雰囲気下、高温に曝された時に、ヘマタイト (赤錆) が生成する。このヘマタイトは、鋼帯表面から直立して成長した、厚みまたは径が1μm 前後の葉状または針状結晶の形状をとり、ガスを吸着し易い。そのため、脱気工程でブラウン管の適切な真空度の確保を困難にすることがある。また、この葉状または針状のヘマタイト (以下、葉状ヘマタイトと称する) は脱落し易く、脱落したヘマタイト粉末が電子銃に付着すると電子銃が破損する危険性がある。従って、封着工程での葉状ヘマタイトの生成はブラウン管の寿命を縮めるので、インナー磁気シールド素材にとって許容できない。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
このように、ユーザーによる黒化処理工程の省略を可能にするため予め耐食性を付与したインナー磁気シールド素材においては、制御が困難な焼鈍等の処理を行わずに製造でき、プレス加工が支障なく実施でき、プレス加工後も黒化処理に匹敵する十分な耐食性を示し (インナーシールド素材の保管中やブラウン管の封着工程に至るまでの間の錆を防止でき) 、封着工程では有害なガスの発生と葉状ヘマタイトの生成が防止された素材が今なお求められている。
【0020】
本発明は、このようなインナー磁気シールド素材とその製造方法を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、樹脂被膜を有する鋼帯において、樹脂被膜の樹脂種や膜厚、鋼帯の表面粗さとその前処理を適切に選択することにより、上記課題を解決することができる。
【0022】
本発明は、TV用ブラウン管内に配置されるインナー磁気シールドを製作するためのインナー磁気シールド素材の製造方法であって、
表面粗さ 0.2〜3μm Raの冷延鋼帯または酸洗熱延鋼帯の少なくとも片面に、(1) 塩酸、硫酸、硝酸、およびこれらの酸の2種以上の混酸から選ばれた酸、ならびに(2) Ni、Co、Fe、Zr、Sb、V、Mo、Wから選ばれた少なくとも1種の金属のイオンを含む酸性溶液、の一方または両方を塗布する前処理を行った後、本質的にC、HまたはC、H、OまたはC、H、O、Nからなる有機樹脂の厚み 0.1〜6μm の被膜を形成することを特徴とする、インナー磁気シールド素材の製造方法である。
【0023】
この方法において、下記のいずれかをさらに採用することができる:
・前記前処理の前に鋼帯をアルカリ脱脂する;
・前記前処理の後で鋼帯を水洗する;
・前記鋼帯の表面粗さ(Ra)に対する前記有機樹脂被膜の膜厚(T) の比 (T/Ra) が0.2〜4の範囲である;
【0024】
・前記有機樹脂被膜が大気中450 ℃以下の加熱で燃焼分解するものである;
別の側面において、本発明は、TV用ブラウン管内に配置されるインナー磁気シールドを製作するためのインナー磁気シールド素材であって、
表面粗さ 0.2〜3μm Raの鋼帯の少なくとも片面に、本質的にC、HまたはC、H、OまたはC、H、O、Nからなる有機樹脂の厚み 0.1〜6μm の有機樹脂被膜を有し、鋼帯の表面粗さ(Ra)に対する有機樹脂被膜の膜厚(T) の比(T/Ra)が0.2〜4.0 であることを特徴とする、インナー磁気シールド素材である。
【0025】
有機樹脂被膜の膜厚は、被膜の付着量(g/m2)と被膜の密度(g/cm3) から算出するか、赤外線の吸光度から測定することができる。なお、被膜の付着量(g/m2)は、被膜を有する材料から被膜だけを化学処理により除去し、除去の前後の重量差から算出される。
【0026】
本発明に係るインナー磁気シールド素材は、プレス加工後に黒化処理を行わずに、インナー磁気シールドを製作することができる。
本発明のインナー磁気シールド素材 (以下、本発明材という) は、前述したインナー磁気シールドの製造からブラウン管への組み込みに至る一連の工程において、Niめっき、FeO 被膜、または既存の潤滑被膜を有する、黒化処理不要の従来のインナー磁気シールド素材(以下、従来材という)、あるいは冷延鋼帯または熱延鋼帯 (以下、裸鋼帯という) を黒化処理する場合に比べて、次のように有利な性質を示す。
【0027】
プレス加工工程:
FeO 被膜を有する従来材は、表面が非常に硬いため、金型寿命が短くなる。本発明材は、有機樹脂被膜がある程度の潤滑性を付与するため、プレス加工性が良好である。
【0028】
洗浄工程
従来材のうち、NiめっきやFeO 被膜は、被膜表面が多孔質で、油を吸着しやすいため、裸鋼帯と同じ洗浄条件では脱脂が不十分となる。防錆油や潤滑油はS、Cl、P等を含む成分を含有するため、脱脂が不十分であると、封着工程で腐食性のガスが発生し、ブラウン管性能を損なう。本発明材は、表面が樹脂被膜で被覆されて平坦であるため、裸鋼帯と同等以上の良好な脱脂性を示す。
【0029】
黒化処理工程
裸鋼帯では防錆性付与のために、高コストの黒化処理が必要である。本発明材は、プレス加工後に洗浄して防錆油を除去した後でも、黒化被膜に匹敵する耐食性を有するため、黒化処理を省略できる。
【0030】
ブラウン管の封着工程
本発明材を使用した場合、封着工程での加熱中に有機樹脂被膜が燃焼分解する。本発明材の有機樹脂被膜は、S、Cl、F等を含有する腐食性ガスを発生する恐れのある元素を含んでいないので、加熱中に樹脂被膜が燃焼分解して発生するガスが、ブラウン管の性能を損なうことはない。
【0031】
また、被膜の燃焼分解で発生するCO、CO2 およびH2Oガスが、鋼帯表面近傍の酸素濃度を、マグネタイトが生成し易い濃度に保つ。本発明材に係る方法で製造された素材を使用すると、後述するように、酸化が微視的に均一に進行し、鋼帯表面に黒化被膜に似たマグネタイト主体の黒い被膜が安定して生成する。この被膜は、黒化被膜と同様に、熱放射率を高くし、電子の乱反射を防止する効果を発揮する。
【0032】
従来材は、上記のいずれであっても、封着工程での加熱により、ブラウン管の性能に悪影響を及ぼす葉状ヘマタイト (赤錆) が生成する可能性がある。本発明材では、適切な前処理を行うことにより葉状ヘマタイトの生成を防止できる。
【0033】
ブラウン管の脱気工程
従来材では、封着工程で発生した葉状ヘマタイトにより、前述したように、脱気工程での真空度が不十分となることがあり、ブラウン管の性能が不安定となる。また、葉状ヘマタイトの脱落に起因する電子銃破損の危険性もある。本発明材では、これらの問題が解消ないし著しく軽減される。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明に係るインナー磁気シールド素材は、表面粗さ 0.2〜3μm Raの鋼帯の少なくとも片面に、本質的にC、HまたはC、H、OまたはC、H、O、Nからなる有機樹脂の厚み 0.1〜6μm の被膜を形成したものからなる。
【0035】
鋼帯は、磁気特性に優れたものがよい。そのような鋼帯の例としては、従来よりインナー磁気シールドに利用されている、アルミキルド鋼、シリコンキルド鋼、アルミトレース鋼、およびシリコントレース鋼の鋼帯が挙げられる。鋼帯の厚みは、必要な強度と加工性の観点から、0.05〜3.0 mmの範囲内とすることが好ましい。
【0036】
有機樹脂被膜は、鋼帯に耐食性を付与するため、鋼帯表面の凹凸を埋めて、鋼帯表面を完全に被覆することが望ましい。そのため、0.1 μm 以上の厚みの被膜が必要である。有機樹脂被膜は一方で、ブラウン管の封着工程で完全に燃焼分解されることが望ましい。封着工程で除去されなかった有機樹脂被膜は、脱気工程での熱処理時に燃焼分解してガスを発生させるので、脱気効率を阻害する。封着工程で行われる、大気中450 ℃前後で40分程度の加熱により完全に燃焼分解できるようにするため、樹脂被膜の厚みを6μm 以下とする。樹脂被膜の厚みは、好ましくは 0.2〜4μm であり、より好ましくは 0.3〜3μm である。
【0037】
鋼帯の表面粗さが3μm Raを超えると、表面凹凸を埋めるのに必要な樹脂被膜の厚みが大きくなる。樹脂被膜が表面凹凸を完全に埋めることができないと、耐食性が低下し、錆の発生を防止できない。一方、表面凹凸を完全に覆い尽くそうとして被膜を厚くしすぎると、封着工程でガスの発生量が増えるのみならず、前述したように、封着工程後も被膜が残存して脱気効率を阻害する可能性が高くなる。従って、3μm Raを超える表面粗さの素材では、耐食性と脱気効率を両立するように被膜厚さを制御することが難しい。
【0038】
鋼帯の表面粗さが小さいと、表面凹凸を埋めるのに必要な樹脂被膜の厚みは小さくて済む。しかし、表面粗さが0.2 μm Raより小さいと、素材の滑りすぎや密着のため、プレス加工に悪影響が出る。プレス加工工程では、コイル状の素材を巻きほぐし、メジャーロールで送り出して適当な長さに切断した後、打ち抜き加工によりブランクを作製する。この時に素材が滑りすぎると、メジャーロールと素材間でスリップを起こし、正確な長さに素材を切断することができなくなる。また、より一般的なタンデムプレス方式では、打ち抜かれたブランクを重ねてプレス加工場所に搬送し、1枚ずつ剥がしてプレス加工する。この時に素材同士が密着していると、複数枚の素材が一緒にプレス加工されるため、金型を損傷したり、規定された形状に加工できなくなる。
【0039】
以上の理由で、鋼帯の表面粗さを 0.2〜3μm Raとするが、これは好ましくは0.2〜2μm Ra、より好ましくは 0.3〜1μm Raである。
有機樹脂被膜の厚み(T) は、鋼帯の表面粗さ(Ra)と相関させることが好ましい。表面凹凸を埋めて耐食性を確保するには、T/Raの比を0.2 以上、特に0.4 以上とすることが効果的である。一方、T/Raの比が大きくなりすぎると、スポット溶接が阻害されることが判明した。スポット溶接は、プレス加工後にインナー磁気シールドを組み立てるのに利用されることがある。有機樹脂被膜が厚すぎると、溶接電流が流れなかったり(無通電溶接不良)、表面の電気抵抗が高すぎて異常発熱を生じ、溶接チップを損傷することがある。スポット溶接性は、T/Raの比が2.5 を超えると低下しはじめ、特にT/Ra比が4.0 を超えると、著しく悪くなる。従って、T/Ra比は 0.2〜4.0 の範囲とすることが好ましく、より好ましくは 0.4〜2.5 の範囲である。
【0040】
有機樹脂被膜は、本質的にC、HまたはC、H、OまたはC、H、O、Nからなる有機樹脂の被膜であるので、燃焼分解した時に腐食性ガスを発生しない。この有機樹脂被膜は、プレス加工工程で剥離しないような膜強度および密着性を有し、かつ封着工程で除去されるように、大気中で450 ℃に加熱された時に比較的短時間で燃焼分解するものがよい。
【0041】
適当な有機樹脂の例としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0042】
有機樹脂被膜には、耐食性向上や葉状ヘマタイトの生成防止のために、金属酸化物を含有させてもよい。金属酸化物としては、SiO2、Fe3O4 、Fe2O3 、Ni−O、Zr−O、Cr2O3 およびAl2O3 から選んだ少なくとも1種を使用することができる。この金属酸化物は、ゾルまたはサブミクロン微粒子の形態で使用することが好ましい。樹脂被膜中の金属酸化物の含有量は80%以下 (本明細書で、%は特に指定しない限り質量%) であることが好ましい。これより多量に金属酸化物が存在すると、樹脂塗料の粘度が上昇しすぎたり、被膜密着性が低下するなどの悪影響が出てくる。被膜に金属酸化物を含有させる場合のより好ましい含有量は5〜50%である。
【0043】
被膜中の金属酸化物は、ブラウン管の封着工程において燃焼分解せず、金属酸化物の状態でインナー磁気シールド表面に残留するが、封着工程における加熱により鋼帯表面に強固に密着する。また、金属酸化物は、その後の工程でもガス化することはないので、ブラウン管の寿命等に影響することはない。
【0044】
有機樹脂被膜は、着色剤で着色してもよい。着色剤は燃焼した時に腐食性ガスを発生しないものから選択する。
有機樹脂被膜は、母材鋼帯の片面だけに形成してもよいが、好ましくは両面に形成する。
【0045】
次に、本発明のインナー磁気シールド素材の製造方法について説明する。
母材鋼帯
母材となる、磁気特性のよい鋼種の冷延鋼帯または酸洗熱延鋼帯を用意する。冷延鋼帯は、熱延コイルを、連続冷間圧延機に通して、ほぼ目標の板厚まで冷間圧延することにより製造される。圧延ロールとして表面ダルロールを用いることで、冷間圧延時に鋼帯表面をダル化し、その表面粗さを 0.2〜3μm Raの範囲内の所定の値に調整することができる。
【0046】
鋼帯の表面粗さは、後で調質圧延を行うことにより調整することもできる。また、表面粗さを比較的大きくしたい場合には、ショットブラスト等で表面粗さを付与することができる。
【0047】
冷間圧延材は、冷間圧延により繊維状に伸ばされた圧延組織を再結晶および粒成長させるために焼鈍することが好ましい。それにより、冷延鋼帯の磁気特性が向上する。焼鈍方法は箱焼鈍と連続焼鈍のいずれでもよい。一般に、この焼鈍は、鋼帯表面の酸化が起こらないようにN2 またはN2+H2 等の非酸化性雰囲気中で行われ、焼鈍温度は通常は 500〜900 ℃である。
【0048】
焼鈍した場合の鋼帯の平坦化やストレッチャーストレインの解消のため、および/または表面粗さの調整のため、最後に調質圧延を行うことができる。しかし、調質圧延は磁気特性を低下させるので、できるだけ軽微に行うか、あるいは行わない方が望ましい。
【0049】
熱延鋼帯の場合は、熱延で生じた表面酸化膜を除去するために酸洗した鋼帯を使用する。熱延鋼帯の表面粗さは、例えば、仕上げロールの表面粗さにより調整できる。
【0050】
本発明に係る方法では、母材鋼帯を予め前処理してから、有機樹脂被膜を形成する。それにより、ブラウン管の封着工程での葉状ヘマタイトの生成を防止することができる。その理由は、次のように推測される。
【0051】
ブラウン管の封着工程では、大気中で約450 ℃に加熱されるため、インナー磁気シールドはその鋼表面が酸化される。一般に鋼表面は微視的には不均一であって、酸化しやすい部分と酸化し難い部分があるため、封着工程での酸化反応も微視的には不均一に進行する。その結果、不均一な厚みの酸化被膜が生成すると同時に、葉状ヘマタイトが成長し、外観は赤錆で粉がふいたような状態になる。この葉状ヘマタイトは、前述したように、簡単に脱落するので、ブラウン管の寿命に悪影響を及ぼす。本発明に従って前処理を施すと、鋼表面が微視的に均一になり、封着工程での酸化反応も微視的に均一に進行するため、葉状ヘマタイトの生成が防止され、樹脂の燃焼分解で生ずる比較的穏やかな酸化環境により、黒色のマグネタイト主体の被膜が生成する。
【0052】
この効果を得るため、本発明では、前処理を、
(1) 塩酸、硫酸、硝酸、およびこれらの酸の2種以上の混酸から選ばれた酸、または
(2) Ni、Co、Fe、Zr、Sb、V、Mo、Wから選ばれた少なくとも1種の金属のイオンを含む酸性溶液、
を使用して行う。
【0053】
(1) の酸による前処理は、鋼帯表面の不活性な個所を除去し、均一化する。一方、(2) の金属イオンを含む酸性溶液による前処理は、活性な個所を金属イオンで補修し、表面を均一化する。(1) と(2) のいずれも、単独処理で効果があるが、両者を併用すれば効果はより向上する。その場合、(1) と(2) のいずれを先に実施してもよく、間に水洗を行う必要はないが、水洗することも可能である。
【0054】
前処理は、(1) または(2) の溶液を鋼帯に塗布することにより行われる。塗布は、浸漬、噴霧、ロール塗布など、任意の好都合な方法で実施することができるが、最も簡便なのは浸漬である。
【0055】
前処理に用いる処理液の温度は、室温〜85℃程度がよく、処理液濃度は、(1) の酸の場合は 0.2〜3%、(2) の金属イオンを含有する酸性溶液の場合は 0.2〜50%の範囲が適当である。(2) の溶液は、例えば、金属の硫酸塩、塩酸塩または硝酸塩の水溶液でよく、必要に応じて酸を添加し、溶液pHを2〜5の範囲に調整することが好ましい。浸漬塗布の場合の浸漬時間は1秒以下から10秒程度とすることが好ましい。
【0056】
前処理した鋼帯は、水洗してから、または水洗せずに、有機樹脂被膜を形成することができる。前処理後に水洗すると、特に(1) と(2) の両方の前処理を併用した場合に、封着工程での葉状ヘマタイト生成の抑制効果が向上することがある。鋼帯の水洗は、どの場合でも、温水 (例、60〜90℃) を使用した湯洗とする方が効果的である。
【0057】
上記前処理は、最初に鋼帯をアルカリ脱脂した後に実施することが好ましい。アルカリ脱脂は、鋼帯表面に付着している油分や汚れを落とし、樹脂を鋼帯表面に付着しやすくする。そのため、形成された有機樹脂被膜の密着性が高まる。但し、アルカリ脱脂は封着工程での酸化反応にはほとんど影響しないので、アルカリ脱脂を省略しても、葉状ヘマタイトの生成を防止することができる。前処理が酸性の処理であるので、アルカリ脱脂した場合には、その後に鋼帯を水洗してから前処理を行う。なお、上記の前処理の後にアルカリ脱脂を行うと、前処理の効果が失われるので、アルカリ脱脂は前処理の前に行う。
【0058】
有機樹脂被膜の形成
前処理した鋼帯に、本発明に従って、厚み 0.1〜6μm の有機樹脂被膜を形成する。有機樹脂被膜は、常法に従って、樹脂液の塗布と焼付けにより形成することが好ましい。しかし、樹脂によっては、光硬化や常温乾燥といった他の乾燥方法も採用できる。樹脂液は溶剤系でも水系でもよく、溶液型でも分散または乳化型でもよい。環境面からは水系樹脂液を使用することが好ましい。
【0059】
樹脂液の塗布は、生産効率や被膜厚さの制御の観点から、ロール塗布とすることが多いが、カーテンフロー塗布、噴霧塗布、浸漬等の他の塗布法も採用できる。焼付けは、樹脂種に応じて被膜の硬化に必要な温度で行う。
【0060】
以上の各処理工程は、母材鋼帯に対して連続的に (1ラインで) 実施することが操業効率の点で好ましい。
【0061】
【実施例】
以下の実施例で使用した鋼帯は、表1に示す組成(残部;Feおよび不可避不純物)の低炭アルミキルド鋼の熱間圧延と冷間圧延により得た、厚み0.15 mm の冷延鋼帯であった。この冷延鋼帯を、連続焼鈍設備にて、N2 雰囲気で800 ℃×5秒保持の熱処理により焼鈍した後、調質圧延した。この調質圧延に使用するロールと圧延条件を変化させて、表面粗さの異なる冷延鋼帯を作製した。
【0062】
【表1】
【0063】
(実施例1)
表面粗さ0.5 μm Raの冷延鋼帯に、連続ラインにて、表2に示す前処理を施した後、その両面に樹脂液のロール塗装と焼き付けにより、厚み1.7 μm のウレタン系有機樹脂被膜を形成して、インナー磁気シールド素材を作製した。
【0064】
表2に記載した各処理の条件は次の通りであった:
アルカリ脱脂:水酸化ナトリウム1%、60℃、2秒浸漬;
湯洗:水温80℃、2秒浸漬;
溶液▲1▼:硫酸1%、60℃、2秒浸漬;
溶液▲2▼:硫酸ニッケル10% (pH 4) 、60℃、2秒浸漬。
【0065】
使用した樹脂液は、市販の水系ウレタン塗料用の樹脂液であり、塗装後の焼き付け条件は約120 ℃の温度で10秒間であった。焼き付け後、鋼帯を空冷し、コイルに巻いた。
【0066】
得られた各鋼帯について、塗装性と赤変性を次にようして調査した。
塗装性
塗装焼き付けした素材の仕上がり外観を目視で観察し、塗りムラの有無を評価した。また、この素材をアルコールまたはトリクロロエチレンで超音波洗浄し、洗浄後に塗膜の脱落の有無を調べ、塗膜の密着性を評価した。
【0067】
◎:塗りムラがなく、超音波洗浄で塗膜の脱落がない、
○:わずかに塗りムラが発生するが、ハジキではなく、超音波洗浄で塗膜の脱落がない、
×:ハジキが発生する著しい塗りムラとなり、超音波洗浄でも塗膜の脱落がある。
【0068】
赤変性
塗装焼き付けした素材に大気中で450 ℃×120 分の加熱処理を行い、加熱処理後の赤変 (葉状ヘマタイト発生) の程度を顕微鏡および目視で評価した。
【0069】
◎:全く又はほとんど赤変しない、
○:わずかに赤変するが、目視では赤変を確認しにくい、
×:著しく赤変し、葉状ヘマタイトが粉状になっていて、目視でも明確に赤変を確認できる。
【0070】
【表2】
【0071】
表2からわかるように、本発明に従って溶液▲1▼または▲2▼を用いて前処理を行うと赤変性が改善され、溶液▲1▼と▲2▼の両方で前処理を行うと、赤変性はさらに改善される。従って、これらの前処理は、ブラウン管の封着工程での葉状ヘマタイト(赤錆) の生成を防止する効果がある。アルカリ脱脂のみ、または前処理の最後にアルカリ脱脂を行うと、葉状ヘマタイトの生成を防止できない。
【0072】
塗装性はいずれの場合も良好であるが、最初にアルカリ脱脂を行うと、塗装性がさらに改善される。しかし、アルカリ脱脂は、赤変性には影響を及ぼさない。これに対し、前処理の最後に湯洗を行うと、場合によって、赤変性が向上することがある。
【0073】
赤変性が最も良好な表2のNo.10 およびNo.12 について、赤変性試験で加熱処理された試験片の表面被膜の状況をX線回折により調べた。その結果、X線回折図には、マグネタイト(Fe3O4) および地鉄(Fe)に帰属される回折ピークのみが現れ、加熱処理でマグネタイト主体の被膜が生成したことが確認された。
【0074】
(実施例2)
表面粗さの異なる各種の冷延鋼帯を、実施例1の表2の試験No. 10に従って、アルカリ脱脂⇒湯洗⇒溶液▲1▼(硫酸溶液) 塗布⇒溶液▲2▼(硫酸ニッケル溶液) 塗布⇒湯洗の順で連続処理した。その後、同じライン内で、樹脂液をロール塗装した後、実施例1と同様に焼き付けて、インナー磁気シールド素材を得た。
【0075】
使用した樹脂液は、ウレタン系樹脂液またはウレタン系とアクリル系の混合樹脂液であり、市販の水系塗料用樹脂液を利用した。一部の樹脂液には、金属酸化物としてシリカゾルを添加した。
【0076】
表3に、冷延鋼帯の表面粗さ(Ra)、樹脂種、樹脂被膜厚み(T) およびT/Raの比を示す。
従来のインナー磁気シールド素材 (従来材) として、従来技術として説明した、Niめっき後に焼鈍してNi−Fe拡散層を形成した素材と、熱処理によりFeO 主体の黒化被膜を形成した素材を、同じ冷延鋼帯から作製した。
【0077】
これらのインナー磁気シールド素材のプレス加工性、スポット溶接性、耐食性、および被膜燃焼性を、次のようにして調査した。これらの試験結果も表3に併記する。
【0078】
プレス加工性
アンコイラーを備えたプレス加工設備を使用し、コイル巻きされたインナー磁気シールド素材をメジャーロールで送りだしながら、打ち抜きと曲げ加工金型または絞り加工金型によるプレス加工を行なった。
【0079】
従来材以外の試験では、このプレス加工時の材料の送り出し時のメジャーロールでの滑りや、打ち抜き加工されたブランクの剥離性(重ねた状態で搬送されたブランクが密着して剥がれず、複数枚のブランクが重なったままプレス加工機に搬送されてしまうかどうか)により、プレス加工性を次のように評価した。
【0080】
○:メジャーロールで材料を送り出す際に滑りを起こさずに所定の長さの材料を送り出すことができ、打ち抜き加工後のブランクの剥離性が良好で、一連のプレス加工工程において全く問題が発生しない;
△:メジャーロールで材料を送り出す際の滑りはないが、打ち抜き加工後に複数枚のブランクがプレス加工機に搬送されるトラブルが発生する傾向がある;
×:メジャーロールで材料を送り出す際に滑りが発生し、一連のプレス加工工程を安定して操業できない。
【0081】
従来材の場合、プレス加工の問題点は、搬送時の滑りやブランクの密着ではなく、被膜が硬すぎて金型の摩耗による金型寿命の低下である。そのため、連続打ち抜き加工における金型の摩耗の程度を、ブランクの切断断面の「かえり」高さの観点から、冷延鋼帯と比較することで、プレス加工性を評価した。ブランクの切断断面の「かえり」高さは、加工を繰り返すと高くなっていく。一般の冷延鋼帯と比較した「かえり」高さの変化により、次のように判定した。
【0082】
○:冷延鋼帯と実質的に差異がない、
△:冷延鋼帯よりわずかに速く高くなるが、金型の調整等の加工方法で対処できる、
×:冷延鋼帯より明らかに速く高くなり、加工方法では対処できない本質的な問題。
【0083】
スポット溶接性
実際の使用条件は素材ユーザー毎に多少の差があるため、平均的な条件として、下記の条件でスポット溶接を行い、溶接の状態 (無通電の有無、チリの発生、大きさ、連続打点時の電極チップの損耗等) を調べた。
【0084】
チップ:上下共、先端形状は5mm径の球頭、純Cu製
荷重: 5kgf
電流: 600 A
サイクル:6サイクル
○:10000 打点以上 (正常に通電してナゲットを形成し、チップの損耗が少なく、良好に溶接できる打点数) 、
△:5000〜10000 打点、
×:5000打点未満で正常な溶接ができなくなる。
【0085】
耐食性
インナー磁気シールド素材を50 mm ×100 mmの大きさに切断して得た試験片を、表面に一般的な鋼板用防錆油(鉱油系)を塗布してから標準的な条件下で脱脂洗浄した後、大気暴露試験に供した。大気暴露試験は、雨などで試験片が濡れない環境で30日間実施した。30日後の試験片の錆発生状況により、次のように耐食性を判定した。
【0086】
○:錆が全く発生しない、
△:やや点錆が発生
×:かなりの錆が発生。
【0087】
観察期間を30日までとしたのは、実際のインナー磁気シールドの生産工程では、何らかの事故が無い限りは、それ以上の保管期間を必要としないこと、大気暴露試験の環境が、実際の使用現場の環境より腐食性の高い状態であることから、30日間の観察期間で妥当とであると判断できたからである。
【0088】
被膜燃焼性
上記と同じ試験片の表面に一般的な鋼板用防錆油(鉱油系)を塗布してから、冷延鋼板が脱脂しうる範囲で可及的に短い脱脂洗浄時間で脱脂洗浄を行った。その後、大気雰囲気で450 ℃に40分間加熱した。この加熱条件は、ブラウン管の封着工程を想定して設定したものである。加熱後の試験片の表面の樹脂の残存を、EPMAによる分析で判定した。また、上記加熱処理中のガス発生量を経時的に測定し、封着工程中にガスの発生が終了するかどうかを確認すると共に、ガスサンプルをTG−MS 法およびPyro−GC−MS法により分析して、S、Cl、F等を含有する腐食性ガスの発生の有無についても調べ、次のように判定した。
【0089】
○:上記条件での加熱処理後に樹脂が残存せず、加熱処理中にガスの発生が終了し、かつ腐食性ガスの発生がなかった場合、
×:樹脂の残存が認められるか、加熱処理中にガスの発生が終了しなかったか、または腐食性ガスが発生した場合。
【0090】
従来材については、被膜が燃焼しないので、樹脂の残存以外の特性、即ち、加熱処理中のガス発生の終了と腐食性ガス発生の有無により、上記と同様に評価した。
【0091】
【表3】
【0092】
表3からわかるように、鋼帯の表面粗さが0.2 μm Raより小さいとプレス加工性が劣化し、3μm Raより大きいと耐食性が劣化する。スポット溶接性は、T/Ra比が2.5 より大きくなると低下し始め、4より大きくなると著しく悪くなる。T/Ra比が0.4 より小さいと、耐食性が低下しはじめ、特にT/Ra比が0.2 未満であると、裸の冷延鋼帯と同じ程度まで耐食性が著しく低下する。2種類の従来材はどちらも、全ての試験項目で良好な結果を示さなかった。
【0093】
【発明の効果】
本発明により、焼鈍が不要な、有機樹脂被膜の形成という手段によって、プレス加工が支障なく実施でき、プレス加工後も黒化処理に匹敵する十分な耐食性を示し、従って、インナーシールド素材の保管中やブラウン管の封着工程に至るまでの間の錆を防止でき、ブラウン管の封着工程では有害なガスの発生と、ブラウン管寿命の低下原因となる葉状ヘマタイトの生成を防止しながら、樹脂被膜が完全に燃焼分解される、インナー磁気シールド素材を提供することができる。
Claims (9)
- TV用ブラウン管内に配置されるインナー磁気シールドを製作するためのインナー磁気シールド素材の製造方法であって、
表面粗さ 0.2〜3μm Raの冷延鋼帯または酸洗熱延鋼帯の少なくとも片面に、(1) 塩酸、硫酸、硝酸、およびこれらの酸の2種以上の混酸から選ばれた酸、ならびに(2) Ni、Co、Fe、Zr、Sb、V、Mo、Wから選ばれた少なくとも1種の金属のイオンを含む酸性溶液、の一方または両方を塗布する前処理を行った後、本質的にC、HまたはC、H、OまたはC、H、O、Nからなる有機樹脂の厚み 0.1〜6μm の被膜を形成することを特徴とする、インナー磁気シールド素材の製造方法。 - 前記前処理の前に鋼帯をアルカリ脱脂する、請求項1記載のインナー磁気シールド素材の製造方法。
- 前記前処理の後で鋼帯を水洗する、請求項1または2記載のインナー磁気シールド素材の製造方法。
- 鋼帯の表面粗さRaに対する有機樹脂被膜の膜厚Tの比(T/Ra)が 0.2〜4.0 である、請求項1〜3のいずれかに記載のインナー磁気シールド素材の製造方法。
- 有機樹脂被膜が、大気中450 ℃以下の加熱で燃焼分解するものである、請求項1〜4のいずれかに記載のインナー磁気シールド素材の製造方法。
- TV用ブラウン管内に配置されるインナー磁気シールドを製作するためのインナー磁気シールド素材であって、
表面粗さ 0.2〜3μm Raの鋼帯の少なくとも片面に、本質的にC、HまたはC、H、OまたはC、H、O、Nからなる有機樹脂の厚み 0.1〜6μm の被膜を有し、鋼帯の表面粗さRaに対する有機樹脂被膜の膜厚Tの比(T/Ra)が 0.2〜4.0 であることを特徴とする、インナー磁気シールド素材。 - 有機樹脂被膜が、大気中450 ℃以下の加熱で燃焼分解するものである、請求項6記載のインナー磁気シールド素材。
- 請求項6または7記載のインナー磁気シールド素材から、黒化処理を経ずに製作されたインナー磁気シールドを備えるTVブラウン管。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の方法により製造されたインナー磁気シールド素材から、黒化処理を経ずに製作されたインナー磁気シールドを備えるTVブラウン管。
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