JP2004073068A - P1抗原合成用酵素剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ヒト由来のα1,4−ガラクトース転移酵素を、P1抗原合成用酵素剤として使用する。該転移酵素のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転移を有するアミノ酸配列からなり、かつガラクトース受容体であるパラグロボシド中のネオラクトテトラオース糖鎖における非還元末端ガラクトース残基のC4位に、ガラクトース供与体からガラクトース残基を転移する活性を有するポリペプチド。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は血液型に関連するP1抗原を合成するための酵素剤に関し、より詳細にはα1,4−ガラクトース転移酵素のP1抗原の合成に係る用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
本明細書中で表記する糖及び糖残基は、特に明記しない限りすべてD体の光学異性体を示すものとする。
【0003】
P1抗原は赤血球におけるP式血液型の指標となる抗原であることが知られている( Seminars in Haematology, 18(1981),pp.63−71)。この抗原はスフィンゴ糖脂質の一種類であるパラグロボシド(PG)の糖鎖部分であるネオラクトテトラオース糖鎖の非還元末端に存在するガラクトース残基にα1,4グリコシド結合でガラクトースが結合した構造を有する。上述のP1抗原は尿路感染症における細菌感染の標的となりやすいことが知られている(FEMS Microbiology Immunology, 47(1989), pp.363−370)。従ってP1抗原を人工的に大量に調製することができれば、尿路感染症を防止するための細菌吸着剤などを製造することが可能であると考えられる。
【0004】
一方、スフィンゴ糖脂質の非還元末端に存在するガラクトース残基に対してガラクトースをα1,4グリコシド結合で結合する活性を有する酵素としては、α1,4−ガラクトース転移酵素が知られていた(特開2001−224377)。しかし、当該酵素は、ネオラクトテトラオース糖鎖における非還元末端に存在するガラクトース残基にα1,4グリコシド結合でガラクトースを転移する働きを有しないと認識されてきたことから(特開2001−224377実施例2)、P1抗原合成用酵素剤として使用することはできないと考えられていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、PGからP1抗原を人工的に大量合成をすることができるP1抗原合成用酵素剤の提供に対する期待が高まっていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決するために本発明者等は測定系、方法、条件などを鋭意検討し、上記α1,4−ガラクトース転移酵素が、PGの非還元末端に存在するガラクトース残基に対してα1,4グリコシド結合でガラクトースを転移することができることを発見し、当該酵素をP1抗原合成用酵素剤とすることで本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は以下の通りである。
(1) 以下の(A)又は(B)のポリペプチドを含む、P1抗原合成用酵素剤。
(A)配列番号2記載のアミノ酸番号46乃至353からなるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(B)配列番号2記載のアミノ酸番号46乃至353からなるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転移したアミノ酸配列からなり、かつガラクトース受容体のネオラクトテトラオース糖鎖における非還元末端ガラクトース残基のC4位に、ガラクトース供与体からガラクトース残基をα1,4グリコシド結合で転移する活性を有するポリペプチド。
(2) 以下の(A’)又は(B’)のポリペプチドを含む、P1抗原合成用酵素剤。
(A’)配列番号2記載のアミノ酸番号20乃至353からなるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(B’)配列番号2記載のアミノ酸番号20乃至353からなるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転移したアミノ酸配列からなり、かつガラクトース受容体のネオラクトテトラオース糖鎖における非還元末端ガラクトース残基のC4位に、ガラクトース供与体からガラクトース残基をα1,4グリコシド結合で転移する活性を有するポリペプチド。
(3) 以下の(A’’)又は(B’’)のポリペプチドを含む、P1抗原合成用酵素剤。
(A’’)配列番号2記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B’’)配列番号2記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転移したアミノ酸配列からなり、かつガラクトース受容体のネオラクトテトラオース糖鎖における非還元末端ガラクトース残基のC4位に、ガラクトース供与体からガラクトース残基をα1,4グリコシド結合で転移する活性を有するポリペプチド。
(4) (1)乃至(3)何れか記載のP1抗原合成用酵素剤の存在下、ガラクトース供与体と、下記式1記載の構造を非還元末端に有する糖鎖とを接触させて、下記式2記載の構造を非還元末端に有する糖鎖を合成することを特徴とする糖鎖の製造方法。
【0008】
式1:Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
式2:Galα1−4Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
【0009】
上記式1及び2中、「Gal」はガラクトース残基を示し、「GlcNAc」はN−アセチルグルコサミン残基を示し、「Glc」はグルコース残基を示し、「−」はグリコシド結合を示す。数字は前記グリコシド結合に関与するヒドロキシル基が存在する各単糖単位の炭素原子の番号を示し、「α」は前記グリコシド結合がαグリコシド結合であることを示し、「β」は同様にβグリコシド結合であることを示す。
(5) 下記式1記載の構造を非還元末端に有する糖鎖にガラクトース残基を転移して下記式2記載の構造を非還元末端に有する糖鎖を合成するための(1)乃至(3)何れか記載のP1抗原合成用酵素剤の使用。
【0010】
式1:Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
式2:Galα1−4Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
【0011】
上記式1及び2中、「Gal」はガラクトース残基を示し、「GlcNAc」はN−アセチルグルコサミン残基を示し、「Glc」はグルコース残基を示し、「−」はグリコシド結合を示す。数字は前記グリコシド結合に関与するヒドロキシル基が存在する各単糖単位の炭素原子の番号を示し、「α」は前記グリコシド結合がαグリコシド結合であることを示し、「β」は同様にβグリコシド結合であることを示す。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態により本発明を詳説する。
1.本発明酵素剤
本発明酵素剤は、P1抗原合成用酵素剤である。
本発明酵素剤は「ガラクトース供与体から、下記式1の糖鎖(PG中の糖鎖:ネオラクトテトラオース糖鎖)における非還元末端ガラクトース残基のC4位に対して、ガラクトース残基を転移してα1,4グリコシド結合を形成することにより下記式2の糖鎖を合成する酵素活性」(本明細書に於いては「P1抗原合成酵素活性」とも記載する)を有する「ポリペプチド」を有効成分として含む。
【0013】
式1:Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
式2:Galα1−4Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
【0014】
上記式1及び2中、「Gal」はガラクトース残基を示し、「GlcNAc」はN−アセチルグルコサミン残基を示し、「Glc」はグルコース残基を示し、「−」はグリコシド結合し示す。数字は前記グリコシド結合に関与するヒドロキシル基が存在する各単糖単位の炭素原子の番号を示し、「α」は前記グリコシド結合がαグリコシド結合であることを示し、「β」は同様にβグリコシド結合であることを示す。
【0015】
上記「ガラクトース供与体」は、α1,4−ガラクトース転移酵素によるP1抗原合成におけるガラクトースを供与する基質として働く限りに於いて特に限定はされないが、ガラクトース残基を有する糖ヌクレオチドであることが好ましい。そのような物質としては例えばアデノシン二リン酸−ガラクトース(ADP−Gal)、ウリジン二リン酸−ガラクトース(UDP−Gal)、グアノシン二リン酸−ガラクトース(GDP−Gal)、シチジン二リン酸−ガラクトース(CDP−Gal)などが例示され、UDP−Galが最も好ましい。
【0016】
本発明酵素剤の活性成分である「ポリペプチド」としては、「配列番号2記載のアミノ酸番号46乃至353からなるアミノ酸配列を有するポリペプチド」(A)が例示される。当該アミノ酸配列は、上記α1,4−ガラクトース転移酵素のアミノ酸配列の一部である。上記(A)のポリペプチドはこのα1,4−ガラクトース転移酵素の触媒ドメインを少なくとも含むポリペプチドであり、後述の実施例に記載した通り、P1抗原合成酵素活性を有することがはじめて見出された。
【0017】
また、α1,4−ガラクトース転移酵素は、N末端から順に細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン及び触媒ドメインを有しているので、触媒ドメインに加えて更に膜貫通ドメインを有している「配列番号2記載のアミノ酸番号20乃至353からなるアミノ酸配列を有するポリペプチド」(A’)であっても同様に酵素活性を有していると考えられ、本発明酵素剤の活性成分である「ポリペプチド」として例示される。
【0018】
また、これらのドメインに加えて細胞質ドメインを更に含む「配列番号2記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド」(A’’)も、上述の(A)及び(A’)のポリペプチドと同様にP1抗原合成酵素活性を有すると考えられるため、本発明酵素剤の活性成分である「ポリペプチド」として例示される。
【0019】
なお、一般にアミノ酸配列に1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は転移等の変異が存在していても、酵素の活性が維持されることは当業者にとっては理解されうるところであり、上記(A)、(A’)及び(A’’)のポリペプチドのアミノ酸配列に於いても1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は転移等の変異が存在していても「P1抗原合成酵素活性」を有する限りに於いて上記本発明酵素剤の活性成分である「ポリペプチド」として使用することができる。
【0020】
すなわち、天然に存在するポリペプチドには、それをコードするDNAの多型や変異の他、生成後のポリペプチドの細胞内及び精製中の修飾反応などによってそのアミノ酸配列中にアミノ酸の置換、欠失、挿入又は転移等の変異が起こりうるが、それにも拘わらず変異を有しないポリペプチドと実質的に同等の生理、生物学的活性を示すものがあることが知られている。このように構造的に若干の相違があってもその機能については大きな違いが認められないものも、上記「ポリペプチド」に包含される。人為的にポリペプチドのアミノ酸配列に上記の様な変異を導入した場合も同様であり、この場合には更に多種多様の変異体を作成することが可能である。例えば、ヒトインターロイキン2(IL−2)のアミノ酸配列中の、あるシステイン残基をセリン残基に置換したポリペプチドがIL−2の活性を保持することが知られている(Science, 224(1984), p.1431)。またある種のポリペプチドは、活性には必須でないペプチド領域を有していることが知られている。例えば、細胞外に分泌されるポリペプチドに存在するシグナルペプチドや、プロテアーゼの前駆体等に見られるプロ配列などがこれに当たり、これらの領域のほとんどは翻訳後、又は活性型ポリペプチドへの転換に際して除去される。このようなポリペプチドは、一次構造上は異なった形で存在しているが、最終的には同等の機能を有するポリペプチドであり、本発明酵素剤の活性成分として含まれる「ポリペプチド」に包含される。このような変異は「部位特異的変異法」などの公知の方法により容易に作成することが可能である。
【0021】
なお、ここで「数個」とは、「P1抗原合成酵素活性」を有する限りに於いて「数個」とは上記で例示されたアミノ酸数に限定はされないが、全アミノ酸数の10%以下、好ましくは5%以下程度のアミノ酸数を示す。例えば310個のアミノ酸からなるポリペプチド(例えば上記(A)のポリペプチド)に於いては31個以下、好ましくは16個以下を示し、また334個のアミノ酸からなるポリペプチド(例えば上記(A’)のポリペプチド)に於いては34個以下、好ましくは17個以下を示し、また354個のアミノ酸からなるポリペプチド(例えば上記(A’’)のポリペプチド)に於いては36個以下、好ましくは18個以下を示す。
【0022】
このような本発明酵素剤は、下記式1記載の糖鎖(ネオラクトテトラオース糖鎖)を非還元末端に有する糖鎖にガラクトース残基を転移して下記式2記載の糖鎖を非還元末端に有する糖鎖を合成する糖鎖の製造方法(本発明製造方法)に使用することができる。
【0023】
式1:Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
式2:Galα1−4Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
【0024】
上記式1及び2中、「Gal」はガラクトース残基を示し、「GlcNAc」はN−アセチルグルコサミン残基を示し、「Glc」はグルコース残基を示し、「−」はグリコシド結合し示す。数字は前記グリコシド結合に関与するヒドロキシル基が存在する各単糖単位の炭素原子の番号を示し、「α」は前記グリコシド結合がαグリコシド結合であることを示し、「β」は同様にβグリコシド結合であることを示す。
【0025】
上記「式1記載の構造を少なくとも有する糖鎖」は本発明酵素剤の「ガラクトース受容体の糖鎖」であり、当該「ガラクトース受容体」は前記糖鎖以外の化合物部分を更に有していても良い。すなわち前記「ガラクトース受容体」は上記ネオラクトテトラオース糖鎖を有する限りにおいて脂質(セラミド、スルファチド)やタンパク質が結合した構造を有する糖鎖であっても良い。特に、生体内に於いてP1抗原はパラグロボシドの糖鎖部分(ネオラクトテトラオース糖鎖)にガラクトース残基がα1,4グリコシド結合で結合して生ずることからしても、特に本発明酵素剤は下記式1’の構造からなる化合物(すなわちパラグロボシド)から下記式2’の構造を有する化合物(P1抗原)を合成する働きを有することが好ましい。このような本発明酵素剤は、下記式1’の構造を有する糖鎖から下記式2’の構造を有する糖鎖を製造する方法にも利用することができる。
【0026】
式1’:Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ−Cer
式2’:Galα1−4Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ−Cer
【0027】
上記式1’及び2’中、「Gal」、「GlcNAc」、「Glc」、「−」、「α」、「β」は上記と同様である。数字は前記グリコシド結合に関与するヒドロキシル基が存在する各単糖単位の炭素原子の番号を示し、「Cer」はセラミド残基を示す。
【0028】
本発明製造方法は、上記式1記載の構造を少なくとも有する糖鎖に対して、上述した「ガラクトース供与体」からガラクトース残基を転移して上記式2の構造を少なくとも有する糖鎖を製造する方法である。従って、本発明製造方法に於いては、「本発明酵素剤」の存在下で「ガラクトース供与体」と「上記式1の構造を少なくとも有する糖鎖」とを接触させることが必須となる。
【0029】
ここで「接触」は、水溶液中で行われることが好ましい。「接触」の方法は「ガラクトース供与体」と「上記式1の構造を少なくとも有する糖鎖」とが共存する水性溶媒中に「本発明酵素剤」を添加しても良く、「本発明酵素剤」と「上記式1の構造を少なくとも有する糖鎖」とが共存する水性溶媒中に「ガラクトース供与体」を添加しても良く、「本発明酵素剤」と「ガラクトース供与体」とが共存する水性溶媒中に「上記式1の構造を少なくとも有する糖鎖」を添加しても良く、また「本発明酵素剤」と「ガラクトース供与体」と「上記式1の構造を少なくとも有する糖鎖」とを同時に水性溶媒に添加して行っても良い。また、本発明合成剤を担体、膜等に固定化したものを用いて他の物質を流動させながら連続的に反応させても良く、また個々の反応を個別に行う「バッチ方式」で反応させても良い。
【0030】
ここで、「水性溶媒」とは溶媒として水が含まれている溶液又は懸濁液であって、エマルジョンであっても良い。この場合、溶媒は水のみならず、水に水混和性有機溶媒(例えばエタノール、メタノール、アセトン、アセトニトリル、酢酸など)が混合した溶媒であっても、本発明酵素剤に含まれる「ポリペプチド」が有する「P1抗原合成酵素活性」を損なわない限りに於いて使用することができる。
【0031】
2.本発明酵素剤の調製方法
本発明酵素剤は例えば下記の方法により調製することができる。
すなわち特開2001−224377記載の方法によりα1,4−ガラクトース転移酵素のDNAを含むプラスミド(例えばpVTR1等)を、前記プラスミドの基本ベクターに適合した宿主細胞(pVTR1を用いた場合には基本ベクターのpCDM8の宿主細胞となるほ乳類細胞:例えばL細胞(J. Biol. Chem., 270(1995), pp. 6149−6155)、COS細胞などが挙げられる)に導入して組換体を得た後、当該組換体を生育させ、その生育物(組換体、培養した培地、生体内で生育させた場合には当該生体、生体の分泌物、排出物なども包含する)から調製することができる。例えば配列番号2記載のアミノ酸番号46乃至353からなるアミノ酸配列からなるポリペプチドを発現するプラスミドを導入した組換体は、α1,4−ガラクトース転移酵素を膜貫通領域を含まない形態のポリペプチドとして発現するため、本発明酵素剤は主に上記生育物の水可溶性画分から調製することができる。一方、配列番号2記載のアミノ酸番号20乃至353からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド又はアミノ酸番号1乃至353からなるアミノ酸配列からなるポリペプチドを発現するプラスミドを導入した組換体は、α1,4−ガラクトース転移酵素を膜貫通領域を含む形態のポリペプチドとして発現するため、上記生育物の水不溶性画分(膜画分など)から調製することができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
1.本発明酵素剤の調製
特開2001−224377の実施例記載の方法によりα1,4−ガラクトース転移酵素のDNAを含むプラスミドpVTR1を調製した。このプラスミドとpSV2neoプラスミドとをリポフェクションキット(東洋紡績株式会社製)を用いて、特開2001−224377記載の方法によりL細胞(A. P. Albino博士(スローン−ケタリング癌センター)より恵与)に共導入してpVTR1及びpSV2neoが安定的に導入された組換体(L−VTR1)を得た。この様にして得られた組換体からCancer Res., 53(1993), pp.5395−5400に記載された方法に従って膜画分を調製し、本発明酵素剤1とした。pVTR1の基本ベクターであるpCDM8(インビトロジェン社製)をL細胞に導入して同様の手法で調製したL細胞の膜画分を対照とした。
【0033】
2.本発明酵素剤の「P1抗原合成酵素活性」の確認
0.1mMのUDP−Gal(シグマ社製)又は2.5×105dpmのUDP−[14C]Gal(NEN ライフサイエンスプロダクト社製)、2.5μgのパラグロボシド(ウシ赤血球よりJ. Biol. Chem., 263(1988), pp.14939−14947記載の方法に従って精製した)、20μMのシチジン二リン酸−コリン(シグマ社製)、100μgのホスファチジルグリセロール(シグマ社製)を含む混合物を調製した。24℃で10分間エバポレーションした後、これに250μgのα−ラクトアルブミン(シグマ社製)及びタンパク質量換算(ローリー法による)で100μgの本発明酵素剤1を添加し、10mMの二酸化マンガン、20mMのガラクトノラクトン(シグマ社製)、及び0.3%のTriton X−100(商標名:シグマ社製)を含む20mMのカコジル酸ナトリウム−HCl緩衝液(pH6.8)を添加して50μlの反応液とした。この反応液を37℃で3時間インキュベートし、その後C18 Sep−Pakカートリッジカラム(Waters社製)で反応生成物を単離し、シリカゲルを用いた薄層クロマトグラフィーで分析した。反応生成物はバイオイメージングアナライザーBAS2000(富士写真フイルム株式会社製)を用いたオートラジオグラフ(図1)と、抗P1モノクローナル抗体(HIRO59:日赤東京血液センター内川誠博士より恵与)を用いた免疫染色法で検出した(図2)。図1、図2共にレーン1は対照を示し、レーン2は放射能で標識したガラクトース供与体(UDP−[14C]Gal)を使用した実験群である。レーン3は放射能で標識していないガラクトース供与体(UDP−Gal)を使用した実験群である。泳動像での位置の表示のうち、「P1」はP1抗原の推定される移動位置に相当するバンド位置であり、「?」は未知の物質の確認されたバンドの存在位置である。
【0034】
その結果、オートラジオグラフでは、P1抗原近辺に強い放射能が現れ、「P1抗原合成酵素活性」は確認することができなかった(図1レーン1及び2:レーン3はUDP−[14C]Galを用いていないため放射能は検出されなかった)が、免疫染色法によりP1抗原を検出すると、本発明酵素剤1を用いた場合に明らかに抗P1抗体によって認識されるバンドが存在すること判明した。すなわち、本発明酵素剤1は上記式1’記載の構造からなる化合物(PG)から上記式2’記載の構造からなる化合物(P1抗原)を合成する「P1抗原合成酵素活性」を有することが明かとなった。
【0035】
【発明の効果】
本発明により、新規なP1抗原合成用酵素剤及びそれを用いた糖鎖の製造方法が提供される。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明酵素剤の「P1抗原合成酵素活性」をオートラジオグラフで確認を試みた結果を示す図である。
【図2】本発明酵素剤の「P1抗原合成酵素活性」を抗P1抗体を用いた免疫染色法で確認した図である。
Claims (5)
- 以下の(A)又は(B)のポリペプチドを含む、P1抗原合成用酵素剤。
(A)配列番号2記載のアミノ酸番号46乃至353からなるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(B)配列番号2記載のアミノ酸番号46乃至353からなるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転移したアミノ酸配列からなり、かつガラクトース受容体のネオラクトテトラオース糖鎖における非還元末端ガラクトース残基のC4位に、ガラクトース供与体からガラクトース残基を転移する活性を有するポリペプチド。 - 以下の(A’)又は(B’)のポリペプチドを含む、P1抗原合成用酵素剤。
(A’)配列番号2記載のアミノ酸番号20乃至353からなるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(B’)配列番号2記載のアミノ酸番号20乃至353からなるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転移したアミノ酸配列からなり、かつガラクトース受容体のネオラクトテトラオース糖鎖における非還元末端ガラクトース残基のC4位に、ガラクトース供与体からガラクトース残基を転移する活性を有するポリペプチド。 - 以下の(A’’)又は(B’’)のポリペプチドを含む、P1抗原合成用酵素剤。
(A’’)配列番号2記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B’’)配列番号2記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転移したアミノ酸配列からなり、かつガラクトース受容体のネオラクトテトラオース糖鎖における非還元末端ガラクトース残基のC4位に、ガラクトース供与体からガラクトース残基を転移する活性を有するポリペプチド。 - 請求項1乃至3何れか一項記載のP1抗原合成用酵素剤の存在下、ガラクトース供与体と、下記式1記載の構造を非還元末端に有する糖鎖とを接触させて、下記式2記載の構造を非還元末端に有する糖鎖を合成することを特徴とする糖鎖の製造方法。
式1:Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
式2:Galα1−4Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
上記式1及び2中、「Gal」はガラクトース残基を示し、「GlcNAc」はN−アセチルグルコサミン残基を示し、「Glc」はグルコース残基を示し、「−」はグリコシド結合を示す。数字は前記グリコシド結合に関与するヒドロキシル基が存在する各単糖単位の炭素原子の番号を示し、「α」は前記グリコシド結合がαグリコシド結合であることを示し、「β」は同様にβグリコシド結合であることを示す。 - 下記式1記載の構造を非還元末端に有する糖鎖にガラクトース残基を転移して下記式2記載の構造を非還元末端に有する糖鎖を合成するための請求項1乃至3何れか一項記載のP1抗原合成用酵素剤の使用。
式1:Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
式2:Galα1−4Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
上記式1及び2中、「Gal」はガラクトース残基を示し、「GlcNAc」はN−アセチルグルコサミン残基を示し、「Glc」はグルコース残基を示し、「−」はグリコシド結合を示す。数字は前記グリコシド結合に関与するヒドロキシル基が存在する各単糖単位の炭素原子の番号を示し、「α」は前記グリコシド結合がαグリコシド結合であることを示し、「β」は同様にβグリコシド結合であることを示す。
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