JP2004070295A - 偏光板、偏光板用接着剤、光学フィルムおよび画像表示装置 - Google Patents

偏光板、偏光板用接着剤、光学フィルムおよび画像表示装置 Download PDF

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Takezo Hatanaka
畑中 武蔵
Shuji Yano
矢野 周治
Hiroe Maeda
前田 洋恵
Akihiro Nishida
西田 昭博
Takashi Kondo
近藤 隆
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Abstract

【課題】耐湿性の良好な偏光板を提供すること。
【解決手段】偏光子の少なくとも一方の面に、接着層を介して保護フィルムが設けられている偏光板において、前記保護フィルムが、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有してなり、かつ接着層がウレタンポリオールおよびイソシアネート系架橋剤を含有するポリウレタン系接着剤により形成されていることを特徴とする偏光板。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光板に関する。また当該偏光板に用いられる偏光板用接着剤に関する。本発明の偏光板はこれ単独でまたはこれを積層した光学フィルムとして液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置を形成しうる。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置等には、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光子を配置することが必要不可欠であり、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性材料からなる偏光子に、トリアセチルセルロースなどの保護フィルムを貼り合わせた偏光板が用いられている。前記偏光板は、偏光子と保護フィルムを接着剤により貼り合わせることにより製造されている。
【0003】
従来より、前記偏光子と保護フィルムの接着に用いる偏光板用接着剤としては、水系接着剤が好ましく、たとえば、ポリビニルアルコール水溶液にメラミン系等の架橋剤を混合したポリビニルアルコール系接着剤が使用されている。しかし、ポリビニルアルコール系接着剤は、温水に浸漬したときに剥がれが生じるなどの耐湿性に問題がある。
【0004】
これに対して、例えば、偏光板用接着剤としてウレタンプレポリマーを用いることが開示されている(特許文献1参照)。かかる接着剤により耐湿性はある程度改善はするものの、如何に接着剤を改良しても、トリアセチルセルロースフィルムは透湿度が高いため、十分に耐湿性を向上させることは困難である。さらに保護フィルムの透湿度を低下させ、耐湿性を向上させることを目的に、例えば、は、保護フィルムとして熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂シートを用いることが開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、前記ノルボルネン系樹脂シートはフィルムが脆く、また耐溶剤性に劣る(皮脂で劣化する)等の問題があり加工性が不十分である。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−120617号公報
【特許文献2】
特開平5−212828号公報
【特許文献3】
特開平6−51117号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐湿性の良好な偏光板を提供することを目的とする。また当該偏光板に用いられる偏光板用接着剤を提供することを目的とする。また当該偏光板を偏光板を積層した光学フィルム、さらには液晶表示装置等の画像表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す偏光板により前記目的に達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、偏光子の少なくとも一方の面に、接着層を介して保護フィルムが設けられている偏光板において、前記保護フィルムが、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有してなり、かつ接着層がウレタンポリオールおよびイソシアネート系架橋剤を含有するポリウレタン系接着剤により形成されていることを特徴とする偏光板、に関する。
【0009】
上記本発明の偏光板は、偏光子の保護フィルムとして、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有してなる。前記熱可塑性樹脂(A)、(B)の混合物を主成分として含有する保護フィルムは、フィルム強度が低く、柔軟性を有し裂け易い。また耐溶剤性にも優れる。また高温度下や高湿度下において環境耐久性がよく耐湿性のよい偏光板を得ることができる。
【0010】
また偏光子と保護フィルムの接着層の形成に、主剤としてウレタンポリオール用い、かつ硬化剤としてイソシアネート系架橋剤を含有するポリウレタン系接着剤を用いている。かかるポリウレタン系接着剤は、前記保護フィルムと偏光子との密着性が良好であり、しかも耐湿性が良好である。前記ポリウレタン系接着剤のウレタンポリオールは、ポリエーテル系ウレタンポリオールであることが好ましい。
【0011】
前記偏光板は、保護フィルムの偏光子と接着する面に、ドライ処理、化学処理およびコーティング処理から選ばれるいずれか少なくとも1つの易接着処理が施されていることが好ましい。易接着処理により、保護フィルムと偏光子との密着性、耐湿性をさらに向上させることができる。
【0012】
前記偏光板において、保護フィルムが、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向の屈折率をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx、ny、nz、透明性フィルムの厚さをd(nm)とした場合に、
面内位相差Re=(nx−ny)×dが、20nm以下であり、
かつ厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2−nz}×dが、30nm以下であることが好ましい。
【0013】
保護フィルムの面内位相差は20nm以下、より好ましくは10nm以下であり、かつ厚み方向位相差は30nm以下、より好ましくは20nm以下である。このように位相差値を制御した保護フィルムは、偏光が入射された場合の偏光状態への影響を少なくすることができる。保護フィルムの厚さdは特に制限されないが、一般には500μm以下であり、1〜300μmが好ましい。特に5〜200μmとするのが好ましい。
【0014】
前記偏光板シートにおいて、保護フィルムが、二軸延伸されたフィルムであることが好ましい。延伸手段、その倍率は、特に制限されないが、MD方向、TD方向のいずれの方向にも等倍延伸するのが好ましい。延伸倍率は0. 5〜3倍、さらには1〜2倍とするのが好ましい。一般的なプラスチック材料は、延伸することにより複屈折性を発現することから、偏光状態を維持する場合には無延伸の状態で用いる必要がある。しかし、無延伸フィルムでは強度が不足し、取扱いが困難である。前記熱可塑性樹脂(A)、(B)の混合物を主成分として含有する、本発明の保護フィルムは、延伸により複屈折が発現しないため強度に優れたフィルムを得ることができる。
【0015】
前記偏光板は、30mm×30mmに切断した正方形のサンプルを、60℃の温水に16時間浸漬した後に、保護フィルムの偏光子からの剥がれ量の割合が、正方形の偏光板1辺の長さに対して1%以下であることが好ましい。本発明の偏光板は、耐湿性の点から、前記剥がれ量の割合が、1%以下、さらには0.5%以下であるのが好ましい。
【0016】
また本発明は前記偏光板における偏光子と保護フイルムの接着層の形成に用いられる、ウレタンポリオールおよびイソシアネート系架橋剤を含有するポリウレタン系接着剤からなることを特徴とする偏光板用接着剤、に関する。
【0017】
また本発明は、前記偏光板が、少なくとも1枚積層されていることを特徴とする光学フィルム、に関する。さらには、前記偏光板または光学フィルムが用いられていることを特徴とする画像表示装置、に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の偏光板は、図1に示すように、偏光子1の少なくとも一方の面に、ポリウレタン系接着剤により形成された接着層2を介して、保護フィルム3が設けられている。また図2に示すように、保護フィルム3には、易接着層aを形成することができる。前記易接着層aは保護フィルム3の偏光子1と接着する面にある。図1または図2では、偏光子1の片側にのみ保護フィルム3が設けられているが、保護フィルム3は偏光子1の両側に設けられていてもよい。
【0019】
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0020】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0021】
保護フィルムとしては、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基およびニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有してなるもの使用する。かかる熱可塑性樹脂(A)、(B)を含有する保護フィルムは、たとえば、WO01/37007に記載されている。なお、保護フィルムは、熱可塑性樹脂(A)、(B)を主成分とする場合にも他の樹脂を含有することもできる。
【0022】
熱可塑性樹脂(A)は、側鎖に置換および/または非置換イミド基を有するものであり、主鎖は任意の熱可塑性樹脂である。主鎖は、例えば、炭素のみからなる主鎖であってもよく、または炭素以外の原子が炭素間に挿入されていてもよい。また炭素以外の原子からなっていてもよい。主鎖は好ましく炭化水素またはその置換体である。主鎖は、例えば付加重合により得られる。具体的には例えば、ポリオレフィンまたはポリビニルである。また主鎖は縮合重合により得られる。例えばエステル結合、アミド結合などで得られる。主鎖は好ましくは置換ビニルモノマーを重合させて得られるポリビニル骨格である。
【0023】
熱可塑性樹脂(A)に置換および/または非置換のイミド基を導入する方法としては、従来公知の任意の方法を採用できる。例えば、前記イミド基を有するモノマーを重合する方法、各種モノマーを重合して主鎖を形成した後、前記イミド基を導入する方法、前記イミド基を有する化合物を側鎖にグラフトさせる方法等があげられる。イミド基の置換基としては、イミド基の水素を置換し得る従来公知の置換基が使用可能である。例えば、アルキル基などがあげられる。
【0024】
熱可塑性樹脂(A)は、少なくとも1種のオレフィンから誘導される繰り返し単位と少なくとも1種の置換および/または非置換マレイミド構造を有する繰り返し単位とを含有する二元またはそれ以上の多元共重合体であるのが好ましい。上記オレフィン・マレイミド共重合体は、オレフィンとマレイミド化合物から、公知の方法で合成できる。合成法は、例えば、特開平5−59193号公報、特開平5−195801号公報、特開平6−136058号公報および特開平9−328523号公報に記載されている。
【0025】
オレフィンとしては、たとえば、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−へキセン、2−メチル−1−ヘプテン、1−イソオクテン、2−メチル−1−オクテン、2−エチル−1−ペンテン、2−エチル−2−ブテン、2−メチル−2−ペンテン、2−メチル−2−へキセン等があげられる。これらのなかでもイソブテンが好ましい。これらのオレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を組合せてもよい。
【0026】
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−s−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等があげられる。これらのなかでもN−メチルマレイミドが好ましい。これらマレイミド化合物は単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせてもよい。
【0027】
オレフィン・マレイミド共重合体において、オレフィンの繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、熱可塑性樹脂(A)の総繰り返し単位の20〜70モル%程度、好ましくは40〜60モル%、さらに好ましくは45〜55モル%である。マレイミド構造の繰り返し単位の含有量は30〜80モル%程度、好ましくは40〜60モル%、さらに好ましくは45〜55モル%である。
【0028】
熱可塑性樹脂(A)は前記オレフィンの繰り返し単位とマレイミド構造の繰り返し単位を含有し、これらの単位のみにより形成することができる。また前記以外に、他のビニル系単量体の繰り返し単位を50モル%以下の割合で含んでいてもよい。他のビニル系単量体としてはアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸系単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル単量体、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体、無水マレイン酸のような酸無水物、スチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等のスチレン系単量体等があげられる。
【0029】
熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量は特に制限されないが、1×10 〜5×10 程度である。前記重量平均分子量は1×10 以上が好ましく、5×10 以下が好ましい。熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度は80℃以上、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。
【0030】
また熱可塑性樹脂(A)としては、グルタルイミド系熱可塑性樹脂を用いることができる。グルタルイミド系樹脂は、特開平2−153904号公報等に記載されている。グルタルイミド系樹脂は、グルタルイミド構造単位とアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチル構造単位を有する。グルタルイミド系樹脂中にも前記他のビニル系単量体を導入できる。
【0031】
熱可塑性樹脂(B)は、置換および/または非置換フェニル基とニトリル基とを側鎖に有する熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂(B)の主鎖は、熱可塑性樹脂(A)と同様のものを例示できる。
【0032】
熱可塑性樹脂(B)に前記フェニル基を導入する方法としては、例えば、前記フェニル基を有するモノマーを重合する方法、各種モノマーを重合して主鎖を形成した後、フェニル基を導入する方法、フェニル基を有する化合物を側鎖にグラフトする方法等があげられる。フェニル基の置換基としては、フェニル基の水素を置換し得る従来公知の置換基が使用可能である。例えば、アルキル基などがあげられる。熱可塑性樹脂(B)にニトリル基を導入する方法もフェニル基の導入法と同様の方法を採用できる。
【0033】
熱可塑性樹脂(B)は、不飽和ニトリル化合物から誘導される繰り返し単位(ニトリル単位)とスチレン系化合物から誘導される繰り返し単位(スチレン系単位)とを含む二元または三元以上の多元共重合体であるのが好ましい。たとえばアクリロニトリル・スチレン系の共重合体を好ましく用いることができる。
【0034】
不飽和ニトリル化合物としては、シアノ基および反応性二重結合を有する任意の化合物があげられる。例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα−置換不飽和ニトリル、フマロニトリル等のα,β−二置換オレフィン性不飽和結合を有するニトリル化合物等があげられる。
【0035】
スチレン系化合物としては、フェニル基および反応性二重結合を有する任意の化合物があげられる。例えば、スチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、クロロスチレン等の非置換または置換スチレン系化合物、α−メチルスチレン等のα−置換スチレン系化合物があげられる。
【0036】
熱可塑性樹脂(B)中のニトリル単位の含有量は特に制限されないが、総繰り返し単位を基準として、10〜70重量%程度、好ましくは20〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。特に20〜40重量%、20〜30重量%が好ましい。スチレン系単位は、30〜80重量%程度、好ましくは40〜80重量%、さらに好ましくは50〜80重量%である。特に60〜80重量%、70〜80重量%が好ましい。
【0037】
熱可塑性樹脂(B)は前記ニトリル単位とスチレン系単位を含有し、これらの単位のみにより形成することができる。また前記以外に他のビニル系単量体の繰り返し単位を50モル%以下の割合で含んでいてもよい。他のビニル系単量体としては熱可塑性樹脂(A)に例示したもの、オレフィンの繰り返し単位、マレイミド、置換マレイミドの繰り返し単位等があげられる。かかる熱可塑性樹脂(B)としてはAS樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂等があげられる。
【0038】
熱可塑性樹脂(B)の重量平均分子量は特に制限されないが、1×10 〜5×10 程度である。好ましくは1×10 以上、5×10 以下である。
【0039】
熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の比率は、保護フィルムに求められる位相差に応じて調整される。前記配合比は、一般的には熱可塑性樹脂(A)の含有量がフィルム中の樹脂の総量のうちの50〜95重量%であることが好ましく、60〜95重量%であることがより好ましく、さらに好ましくは、65〜90重量%である。熱可塑性樹脂(B)の含有量は、フィルム中の樹脂の総量のうちの5〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜40重量%であり、さらに好ましくは、10〜35重量%である。熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)はこれらを熱溶融混練することにより混合される。
【0040】
保護フィルムの厚さは、一般には500μm以下であり、1〜300μmが好ましい。特に5〜200μmとするのが好ましい。
【0041】
前記熱可塑性樹脂(A)、(B)を含有する保護フィルムは、偏光子の少なくとも片面に設けられる。偏光子の両面に保護フィルムを設ける場合には、もう一方の側の保護フィルムの材料は特に制限されないが、両面の保護フィルムとも前記熱可塑性樹脂(A)、(B)を含有する保護フィルムとするのが好ましい。
【0042】
なお、従来より用いられている保護フィルムの材料としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。アクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型ないし紫外線硬化型樹脂などをフィルム化したものなどがあげられる。
【0043】
前記保護フィルムの偏光子を接着させない面(前記塗布層を設けない面)には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0044】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0045】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0046】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0047】
前記偏光子と保護フィルムとの接着層の形成には、ウレタンポリオールおよびイソシアネート系架橋剤を含有するポリウレタン系接着剤が用いられる。
【0048】
主剤であるウレタンポリオールは、高分子ポリオールとポリイソシアネート化合物を反応させることにより得られる。ウレタンポリオールは、前記ポリオールの水酸基が、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対して過剰になるように反応させたものであり、末端には水酸基を有する。
【0049】
ウレタンポリオールとしては、ポリエーテル系ポリウレタンポリオール、ポリエステル系ポリウレタンポリオール、ポリアクリル系ポリウレタンポリオールがあげられる。ウレタンポリオールとしては、ポリエーテル系ポリウレタンポリオールが好ましい。これらウレタンポリオールの高分子ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール等があげられる。ウレタンポリオールの数平均分子量は、通常、1000〜30000程度が好ましい。
【0050】
ポリエーテルポリオールは、多価アルコールの1種又は2種以上にアルキレンオキサイドを開環重合により付加して得られるものである。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等があげられ、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等があげられる。これらアルキレンオキサイドは1種を単独で用いてもよく、2種以上を使用した共重合体であってもよい。
【0051】
ポリエステルポリオールは、多塩基酸成分とポリオール成分を、多塩基酸成分のカルボキシル基に対しポリオール成分の水酸基が過剰になるように反応させて得られるものである。一般的には、二塩基酸成分とジオール成分からなる直鎖状のポリエステルポリオールが用いられる。
【0052】
二塩基酸成分としては、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、しゅう酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらの酸無水物、低級アルコールエステル等があげられる。
【0053】
ジオール成分としてはエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等があげられる。
【0054】
二塩基酸成分とジオール成分からなるポリエステルポリオールの製造は、二塩基酸成分のカルボキシル基に対しジオール成分の水酸基が過剰になるように反応させる他は、一般的なポリエステルの製法を採用できる。二塩基酸成分のカルボキシル基とジオール成分の水酸基の当量比が水酸基過剰になるように行なう。具体的には、所定量の二塩基酸成分とジオール成分を、触媒の存在下または不存在下に、200〜280℃程度の温度範囲で、3〜20時間程度、脱水縮合することによりエステル化を行なう。触媒としては、一般的なエステル化触媒を使用でき、たとえば、ジブチルスズオキサイド、酢酸亜鉛、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン等を使用できる。その他にポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン、ポリカプロラクトン等があげられる。
【0055】
アクリルポリオールとしては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、かつ水酸基を有する共重合モノマーを共重合した、水酸基を有するするアクリル共重合体である。水酸基を有する共重合モノマーとしては、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸β−ヒドロキシブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸β−ヒドロキシペンチル等のアクリル酸のヒドロキシアルキルエステル又はメタクリル酸の同様なヒドロキシアルキルエステル、さらにグリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールのアクリル酸モノエステル又はこれらと同様なメタクリル酸モノエステル、N−メチロールアクリルアミド又はN−メチロールメタクリルアミド等があげられる。
【0056】
ポリイソシアネート化合物としては、通常、ポリウレタンに使用されている芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環族のポリイソシアネート化合物を特に制限なく使用できる。たとえば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4′−ジフェニルスルホキシドジイソシアネート、4,4′−ジフェニルスルホンジイソシアネート、4,4′−ビフェニルジイソシアネートおよびこれらの誘導体等がその代表例としてあげられる。
【0057】
主剤であるウレタンポリオールの調製は、高分子ポリオールの水酸基がポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対して過剰になるように反応させる他は、一般的なポリウレタンの製法を採用できる。ウレタンポリオールの数平均分子量は、通常5000〜100000程度であるのが好ましい。
【0058】
なお、ウレタンポリオールには鎖伸長剤や重合停止剤を構成成分として含有することもできる。鎖伸長剤としては、たとえば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジアミン等のジアミン類、前記低分子グリコール類等があげられる。重合停止剤としては、たとえば、ジ−n−ブチルアミン、モノ−n−ブチルアミン等のアルキルモノアミン類があげられる。
【0059】
イソシアネート系架橋剤としては、少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物を使用できる。たとえば、前記ポリイソシアネート化合物をイソシアネート系架橋剤として使用できる。詳しくは、2 ,4 −トリレンジイソシアネート、2 ,6 −トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1 ,3 −ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メチレンビス4−フェニルイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネートまたはこれらの2量体やイソシアヌル酸トリス(6−インシアネートヘキシル)などの3量体、さらにはこれらのビウレットやトリメチロールプロパンなどの多価アルコールや多価アミンと反応させたものなどがあげられる。イソシアネート系架橋剤としては、接着剤層の黄変を避けるため脂肪族系のイソシアネートが好ましい。またイソシアネート系架橋剤としては、イソシアヌル酸トリス(6−インシアネートヘキシル)などのイソシアネート基を3個以上有するものが好ましい。
【0060】
なお前記イソシアネート系架橋剤は、末端イソシアネート基に保護基を付与したものを用いることもできる。保護基としてはオキシムやラクタムなどがある。イソシアネート基を保護したものは、加熱することによりイソシアネート基から保護基を解離させ、イソシアネート基が反応するようになる。
【0061】
ウレタンポリオールとイソシアネート系架橋剤の使用割合は、固形分として、ウレタンポリオール100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤を15〜330重量部、好ましくは30〜100重量部である。イソシアネート系架橋剤を前記範囲に調整する場合に、密着性、耐湿性が良好である。
【0062】
本発明のポリウレタン系接着剤には、さらにイソシアネート基の反応性をあげるために反応触媒を用いても良い。反応触媒は特に制限されないが、スズ系触媒またはアミン系触媒が好適である。反応触媒は1種または2種以上を用いることができる。反応触媒の使用量は、通常、イソシアネート系架橋剤100重量部に対して、10重量部以下で使用される。反応触媒量が多いと、架橋反応速度が速くなり接着剤の発泡が起こる。発泡後の接着剤を使用しても十分な接着性は得られない。通常、反応触媒を使用する場合には、0.1〜5重量部が好ましく、特に1〜2重量部が好ましい。
【0063】
スズ系触媒としては、無機系、有機系のいずれも使用できるが有機系が好ましい。無機系スズ系触媒としては、たとえば、塩化第一スズ、塩化第二スズ等があげられる。有機系スズ系触媒は、メチル基、エチル基、エーテル基、エステル基などの骨格を有する脂肪族基、脂環族基などの有機基を少なくとも1つ有するものが好ましい。たとえば、テトラ−n−ブチルスズ、トリ−n−ブチルスズアセテート、n−ブチルスズトリクロライド、トリメチルスズハイドロオキサイド、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジラウレート等があげられる。
【0064】
またアミン系触媒としては、特に制限されない。たとえば、キノクリジン、アミジン、ジアザビシクロウンデセンなどの脂環族基等の有機基を少なくとも1つ有するものが好ましい。その他、アミン系触媒としては、トリエチルアミン等があげられる。また前記以外の反応触媒としては、ナフテン酸コバルト、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が例示できる。
【0065】
本発明のポリウレタン系接着剤には、さらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を配合することもできる。
【0066】
ポリウレタン系接着剤は、通常、溶液として用いられる。溶液は溶剤系であってもよいし、エマルジョン、コロイド分散液、水溶液等の水系であってもよい。有機溶剤としては、接着剤を構成する成分を均一に溶解すれば特に制限はない。有機溶剤としては、たとえば、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられる。なお、水系にする場合にも、例えば、n−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類を配合することもできる。水系にする場合には、常法に従って、分散剤を用いたり、ポリエステル系ウレタン、イソシアネート系架橋剤に、カルボン酸塩、スルホン酸塩、4級アンモニウム塩等のイソシアネート基と反応性の低い官能基や、ポリエチレングリコール等の水分散性成分を導入することにより行うことができる。
【0067】
ポリウレタン系接着剤の固形分は一般に10〜50重量%で用いられる。固形分が10重量%より低いと接着性が不十分になる傾向があり、一方、固形分が50重量%より高いと接着剤の粘度が高いため、ムラが生じる傾向がある。固形分は20〜40重量%とするのが好ましい。
【0068】
保護フィルムの偏光子と接着する面には、易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、プラズマ処理、コロナ処理等のドライ処理、アルカリ処理等の化学処理、易接着層を形成するコーティング処理等があげられる。これらのなかでも、易接着層を形成するコーティング処理が好適である。易接着層の形成には、ポリエステル系材料、ポリウレタン系材料、アクリル系材料、ポリエチレンイミン、シランカップリング剤等の各種の易接着材料を使用することができる。これらのなかでも、ウレタン変性ポリエステル共重合樹脂を用いるのが好ましい。なお、易接着層の厚みは、通常、0. 01〜10μm程度、さらには0.05〜5μm程度、特に0.1〜1μm程度とするのが好ましい。
【0069】
本発明の偏光板は、保護フィルム(易接着処理したその処理面)と偏光子を、前記ポリウレタン系接着剤を用いて貼り合わせることにより製造する。前記ポリウレタン系接着剤の塗布は、保護フィルム、偏光子のいずれに行ってもよく、両者に行ってもよい。貼り合わせ後には、乾燥工程を施し、塗布乾燥層からなる接着層を形成する。偏光子と保護フィルムの貼り合わせは、ロールラミネーター等により行うことができる。なお、偏光子の耐熱性を考慮すると、加熱乾燥温度は80℃以下とするのが好ましい。乾燥時間は特に制限されないが、24〜72時間程度である。接着層の厚さは、特に制限されないが、通常0.05〜5μm程度である。
【0070】
本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2 や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0071】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0072】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0073】
反射板は前記の偏光板の保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明性フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0074】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0075】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1 /4 波長板(λ/4 板とも言う)が用いられる。1 /2 波長板(λ/2 板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0076】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。上記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0077】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0078】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0079】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0080】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0081】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0082】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0083】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を投下するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0084】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0085】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0086】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0087】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたのものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0088】
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルムには、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0089】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0090】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0091】
偏光板や光学フィルムの片面又は両面への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上または光学フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを偏光板上または光学フィルム上に移着する方式などがあげられる。
【0092】
粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として偏光板や光学フィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板や光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0093】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0094】
なお本発明において、上記した偏光板を形成する偏光子や保護フィルムや光学フィルム等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やべンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0095】
本発明の偏光板または光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板または光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0096】
液晶セルの片側又は両側に偏光板または光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0097】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0098】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0099】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0100】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0101】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0102】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1 /4 波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4 に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0103】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1 /4 波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4 のときには円偏光となる。
【0104】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0105】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、各例中、部および%は特記ない限り重量基準である。
【0106】
実施例1
(透明性フィルムの作成)
イソブテンおよびN−メチルマレイミドからなる交互共重合体(N−メチルマレイミド含有量50モル%)75部と、アクリロニトリルの含有量が28%であるアクリロニトリル−スチレン共重合体25部とを塩化メチレンに溶解し、固形分濃度15%の溶液を得た。この溶液をガラス板状に敷いたポリエチレンテレフタレートフィルム上に流延し、室温で60分放置した後、当該フィルムから剥がした。100℃で10分間乾燥後に、140℃で10分間、さらに160℃で30分間乾燥して、厚さ50μmの透明性フィルムを得た。透明性フィルムの面内位相差Re=4nm、厚み方向位相差Rth=4nm、であった。
【0107】
なお、面内位相差Re、厚み方向位相差Rthは、屈折率nx、ny、nzを自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA21ADH)により計測した結果から算出した。
【0108】
(偏光子の作成)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを0.3%のヨウ素水溶液中で染色した後、4%のホウ酸、2%のヨウ化カリウム水溶液中で5倍まで延伸し、次いで50℃で4分間乾燥させて偏光子を得た。
【0109】
(接着剤の調製)
ポリエーテル系ウレタン(三井武田ケミカル社製,タケラックXW−74−C154)10部およびイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製,タケネートWD−725)3部を、水に溶解し、固形分を25%に調整した溶液を調製した。これを接着剤として用いた。
【0110】
(偏光板の作成)
ウレタン変性ポリエステル共重合樹脂(バイロンUR1400,東洋紡製)をメチルエチルケトン/トルエン=1/1(容量比)に溶解し、固形分濃度が10%の溶液を調製した。当該溶液を上記透明性フィルムの片面に塗工し、120℃のオーブンで1分間乾燥し、易接着層(1μm)を設けた。易接着層を設けた透明性フィルムの易接着処理面に、上記接着剤を塗布したのち、偏光子の両面に貼り合せ機で貼り合せた後、40℃のオーブンで72時間乾燥キュアし、偏光板を作成した。接着剤層の厚みは0.1μmであった。
【0111】
実施例2
(接着剤の調製)
ポリエーテル系ウレタン(三井武田ケミカル社製,タケラックXW−74−C154)10部、イソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製,タケネートWD−725)3部およびスズ系触媒(東京ファインケミカル社製,OL1)0.01部を、水に溶解し、固形分を25%に調整した溶液を調製した。これを接着剤として用いた。実施例1の(偏光板の作成)において、接着剤として上記接着剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして、偏光板を作成した。
【0112】
実施例3
(接着剤の調製)
ポリエーテル系ウレタン(三井武田ケミカル社製,タケラックXW−74−C154)10部、イソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製,タケネートWD−725)3部およびアミン系触媒0.01部を、水に溶解し、固形分を25%に調整した溶液を調製した。これを接着剤として用いた。実施例1の(偏光板の作成)において、接着剤として上記接着剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして、偏光板を作成した。
【0113】
実施例4
(透明性フィルムの作成)
N−メチルグルタルイミドとメチルメタクリレートからなるグルタルイミド共重合体(N−メチルグルタルイミド含有量75重量%、酸含量0.01ミリ当量/g以下、ガラス転移温度147℃)65重量部と、アクリロニトリル及びスチレンの含有量がそれぞれ28重量%、72重量%であるアクリロニトリル−スチレン共重合体35重量部とを用い、溶融混練して得た樹脂組成物を、Tダイ溶融押出機に供給して、厚さ135μmのフィルムを得た。このフィルムをMD方向に160℃で1.7倍延伸した後に、TD方向に160℃で1.8倍延伸した。得られた二軸延伸透明性フィルムの厚みは55μm、面内位相差Re=1nm、厚み方向位相差Rth=3nmであった。
【0114】
(偏光板の作成)
実施例1において、透明性フィルムとして、上記で作成した二軸延伸透明性フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作成した。
【0115】
比較例1
トリアセチルセルロースフィルムに、ポリビニルアルコール系接着剤を塗布し、偏光子の両面に貼り合せ機で貼り合せた後、40℃のオーブンで72時間乾燥キュアし、偏光板を作成した。接着剤層の厚みは0.1μmであった。
【0116】
比較例2
実施例1において、イソシアネート架橋剤を用いなかったこと、また固形分を30%に調整したこと以外は実施例1と同様にしてポリウレタン系接着剤を調製した。また当該ポリウレタン系接着剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして、偏光板を作成した。
【0117】
比較例3
実施例2において、イソシアネート架橋剤を用いなかったこと、また固形分を30%に調整したこと以外は実施例2と同様にしてポリウレタン系接着剤を調製した。また当該ポリウレタン系接着剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして、偏光板を作成した。
【0118】
比較例4
実施例3において、イソシアネート架橋剤を用いなかったこと、また固形分を30%に調整したこと以外は実施例3と同様にしてポリウレタン系接着剤を調製した。また当該ポリウレタン系接着剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして、偏光板を作成した。
【0119】
実施例および比較例で得られた偏光板について、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0120】
(密着性)
偏光板に手でひねりを加えてねじ切ったときの状態を以下の基準で評価した。
○:偏光子と保護フィルムとが一体化して剥がれが生じない。
△:偏光子と保護フィルムと端部に剥がれが認められる。
×:偏光子と保護フィルムとの間に剥れが認められる。
【0121】
(耐湿性)
偏光板を30mm×30mmに切り取ったサンプルを、60℃の温水に16時間浸漬した。そのときの、サンプルの端からの剥れ量を確認し、剥れ量(mm)測定した。また、サンプル1辺の長さ(30mm)に対する剥れの割合(%)を算出した。
【0122】
【表1】
Figure 2004070295
表1より、本発明の偏光板は、密着性がよい。また、温水浸漬条件下においても、剥がれが少なく、耐湿性が良好であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の偏光板の一例である。
【図2】本発明の偏光板の一例である。
【符号の説明】
1 偏光子
2 接着層
3 保護フィルム
a 易接着層

Claims (9)

  1. 偏光子の少なくとも一方の面に、接着層を介して保護フィルムが設けられている偏光板において、前記保護フィルムが、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有してなり、かつ接着層がウレタンポリオールおよびイソシアネート系架橋剤を含有するポリウレタン系接着剤により形成されていることを特徴とする偏光板。
  2. ウレタンポリオールが、ポリエーテル系ウレタンポリオールであることを特徴とする請求項1記載の偏光板。
  3. 保護フィルムの偏光子と接着する面に、ドライ処理、化学処理およびコーティング処理から選ばれるいずれか少なくとも1つの易接着処理が施されていることを特徴とする請求項1または2記載の偏光板。
  4. 保護フィルムが、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向の屈折率をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx、ny、nz、透明性フィルムの厚さをd(nm)とした場合に、
    面内位相差Re=(nx−ny)×dが、20nm以下であり、
    かつ厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2−nz}×dが、30nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板。
  5. 保護フィルムが、二軸延伸されたフィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板。
  6. 30mm×30mmに切断した正方形の偏光板を、60℃の温水に16時間浸漬した後の保護フィルムの偏光子からの剥がれ量の割合が、正方形の偏光板1辺の長さに対して1%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の偏光板。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の偏光板における偏光子と保護フイルムの接着層の形成に用いられる、ウレタンポリオールおよびイソシアネート系架橋剤を含有するポリウレタン系接着剤からなることを特徴とする偏光板用接着剤。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の偏光板が、少なくとも1枚積層されていることを特徴とする光学フィルム。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の偏光板または請求項8記載の光学フィルムが用いられていることを特徴とする画像表示装置。
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