JP2004069543A - 炭疽菌が有するジアミノピメリン酸型ペプチドグリカンを特異的認識する蛋白質pgrp−le - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、炭疽菌などのバシラス属が有するジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカンを特異的に認識し得るタンパク質を提供するものである。また、本発明は、炭疽菌などのバシラス属の簡便、確実かつ短期間で行える検出・同定法を提供するものである。
【解決手段】本発明は、ショウジョウバエの異物認識タンパク質の一つであるペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)及び検出・同定用の担体を含有してなるジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するもの、例えば炭疽菌などを特異的に認識するための組成物、それを用いた検出・同定方法、及びそのための検出・同定用キットに関する。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)、より詳細にはショウジョウバエの異物認識タンパク質の1種であるペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)及び検出・同定用の担体を含有してなるジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するものを特異的に認識するための組成物、及びそれを用いたジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するものを特異的に検出・同定する方法に関する。より詳細には、本発明は炭疽菌の検出・同定用の組成物、それを用いた炭疽菌の検出・同定方法、及びそのための検出・同定用のキットに関する。
【0002】
【従来の技術】
米国で起きた同時多発テロ事件では、炭疽菌が生物テロ兵器として使用されることが明らかになった。郵送された炭疽菌による感染症で犠牲者を出すにまでいたった。炭疽菌の場合には、適切な抗生物質による早期の治療によって、芽胞に曝された後でも発症を防ぐことが出来るが、生物テロの防止には、早期の炭疽菌の検出・同定が不可欠である。その際には、テロ事件の性格上、特殊な施設でのみ可能な検査法ではなく、郵便局のような市民生活に直結するような場でも簡便に、短期間でかつ確実に実施可能な検査法が必要とされる。
現在行われている炭疽菌の同定法は、グラム染色・ギムザ染色・芽胞染色による補助診断を経て、遺伝子増幅法(PCR)により確定診断されている。補助診断ですら菌の培養施設や顕微鏡などを必要とし、簡便でどこででも実施できるというものではない。さらに、補助診断の結果判定までに少なくとも2日を必要とするし、確定診断のためのPCR法を行うためには特殊な試験施設が必要になる。 また、細菌の検出法として、カイコPGRPを用いた検出法が確立されている(SLP試薬)が、カイコPGRPが多くのグラム陽性菌が有するリシン型のペプチドグリカンを認識するために、炭疽菌を特異的に検出することができない。
【0003】
昆虫などの無脊椎動物は、抗体を持たないために異物認識タンパク質を発達させて、体内に侵入した病原細菌を排除する。異物認識タンパク質は、鋭敏に病原細菌を認識できるので、これまでにも微生物細胞壁成分・エンドトキシンの測定用試薬として開発されてきた。例えば、カブトガニの血球抽出物を利用したリムルステストはエンドトキシンを高感度で検出できる。
このように、ショウジョウバエなどの昆虫は、適応免疫がなくとも、迅速かつ効率的な免疫反応による微生物感染に反応することが知られている(Hultmark,D., (1993) Trends Genet., 9, 178−183)。ショウジョウバエの場合には、微生物感染に反応し、2つの異なるシグナリング経路であるToll経路および免疫不全(imd)経路を持っている。この2つの経路は、哺乳類で言えばそれぞれToll様受容体(TLR)−インターロイキン1(IL−1)受容体シグナリング経路と腫瘍壊死因子(TNF)受容体シグナリング経路とほぼ同じである。imd経路はグラム陰性菌感染やいくつかのグラム陽性菌感染によって活性化され、Toll経路は真菌感染とグラム陽性菌感染によって活性化されるため、ハエは細菌を識別する特異な機構を有している(Lemaitre, B., et al., (1996) Cell, 86, 973−983;Lemaitre, B., et al., (1995) Pro. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 92, 9465−9469など)。
しかし、ショウジョウバエにおける微生物の認識機構はほとんど未解明である。病原菌の認識はパターン認識受容体と呼ばれる宿主タンパクの相互作用に依存すると考えられ、保存された分子構造はリポ多糖類、ペプチドグリカン、1,3−β−グルカンなど病原菌の表面に存在するが、宿主には存在しない(Janeway,C. A., (1989) Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol., 54, 1−13)。認識後、このパターン認識受容体は血リンパおよび免疫反応組織の細胞内シグナリング経路とタンパク分解カスケードを活性化することによって、免疫反応を刺激する。いくつかの哺乳類TLRとは対照的に、Tollは感染後タンパク分解酵素によって切断される内因性リガンド、シュペツレ(Spatzle)に活性化されるのであって、微生物成分の直接受容体として機能するものではなかった(Levashina,E.A., et al., (1999) Science, 285, 1917−1919)。
【0004】
また、ショウジョウバエの免疫反応を消失させる突然変異の大規模スクリーニングのなかで、複数の新たな抗菌防御成分が最近特定されてきた(Sauderhaull,B., et al., (1998) Trenda Immunol., 22, 260−264)。このようなスクリーニングの中で、機能獲得遺伝的スクリーニングを用いて、ショウジョウバエの異物認識タンパク質の一つであるペプチドグリカン認識タンパク質(PGRP−LE)をコード化する遺伝子が見出されてきた。PGRP−LEはショウジョウバエの少なくとも12個のメンバーから成るペプチドグリカン認識タンパク質(PGRP)ファミリーのひとつである(Wemer, T., et al., (2000) Pro. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 97, 13772−13777)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、炭疽菌などのバシラス属が有するジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカンを特異的に認識し得るタンパク質を提供するものである。また、本発明は、炭疽菌などのバシラス属の簡便、確実かつ短期間で行える検出・同定法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
炭疽菌などのバシラス属は多くのグラム陽性菌とは異なりDAP型ペプチドグリカンを有している。本発明者らは、ショウジョウバエの異物認識タンパク質について種々検討してきた結果、ペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)が、炭疽菌が有するジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカンを特異的に認識し、多くのグラム陽性菌が有するリシン型のペプチドグリカンを認識しないことを見出し、このPGRP−LEの性質を利用して炭疽菌を特異的に検出できる検出系を開発できることを見出し本発明に至った。
【0007】
本発明は、ペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)及び検出・同定用の担体を含有してなるジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するものを特異的に認識するための組成物に関する。より詳細には、ショウジョウバエの異物認識タンパク質の一つであるペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を含有してなるジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するもの、好ましくは炭疽菌などのバシラス属を特異的に認識するための組成物に関する。
また、本発明は、前記した組成物からなる炭疽菌の検出・同定剤にも関する。
【0008】
本発明は、被検体をペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を含有する組成物に接触させ、次いで洗浄して非結合状態のペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を分離し、他のタンパク質と結合したペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を検出・同定することからなる被検体中からジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するものを特異的に検出・同定する方法に関する。より詳細には、本発明は、ショウジョウバエの異物認識タンパク質の一つであるペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を含有する組成物に被検体を接触させ、被検体中からジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するもの、好ましくは炭疽菌などのバシラス属を特異的に検出・同定する方法に関する。
また、本発明は、前記した方法に使用されるペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を含有してなる検出・同定用キット、好ましくは、炭疽菌などのバシラス属の検出・同定用のキットに関する。
【0009】
本発明者らは、ショウジョウバエにおいて、血リンパ、プロフェノールオキシダーゼ(proPO)カスケードおよびimd介在性抗菌反応で、PGRP−LEがタンパク分解カスケードを活性化できることを研究してきた。
昆虫の液性免疫は、1次反応および2次反応に依存している。1次反応はプロフェノールオキシダーゼ(proPO)カスケードのような血液(栄養液)リンパ中に存在している構成タンパクのカスケードを活性化することによってメディエートされるが、これに対して2次反応は抗微生物ペプチドの誘導のように防御タンパクの転写活性化を必要とする。ショウジョウバエでは、2次的液性反応はToll経路とimd経路の異なる2つのシグナリング経路から成る。本発明者らは、異物認識蛋白質(ペプチドグリカン認識タンパク質(Peptidoglycan recognition protein(PGRP)))のうちのPGRP−LEが、proPOカスケードおよびimd/Relish介在性抗菌ペプチド誘導の両者を活性化できることを明かにし、PGRP−LEは昆虫の液性免疫の1次反応と2次反応をいずれも活性化し得る免疫因子であることを初めて明らかにしてきた。
PGRP−LEが介在するproPOカスケードの活性化は、細胞内imdシグナリングに依存していないので、メラニン生成および抗菌ペプチドの発現を促す経路は、血液(栄養液)リンパにおけるimdの上流側であると考えられる。PGRP−LEは血液(栄養液)リンパを構成するタンパク質タンパクであるため、病原菌認識と防御反応の下流へのシグナル伝達とに関与する自己防御の最前線を構成していると考えられた。
【0010】
これらの研究をとおして、本発明者らは、PGRP−LEがショウジョウバエのimd経路を活性化できる細菌の細胞壁成分であるジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカンに対して強力かつ選択的な親和性を有することを見出した。
ペプチドグリカンは、細菌の種類に応じて幹ペプチド(stem peptide)に多様なアミノ酸組成を示す。ジアミノピメリン酸(DAP)を含むペプチドグリカン(ジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン)や、リジンを含むペプチドグリカン(リジン(Lys)型ペプチドグリカン)などが知られている。
PGRP−LEをDAP型およびLys型不溶性ペプチドグリカンとともにインキュベートした後、徹底的に洗浄した。洗浄後に回収した連続したヒスチジンペプチドとの融合タンパク質を抗ペンタ−ヒスチジン抗体(QIAGEN)を用いてウエスタンブロット分析によって解析した。結果を図1に図面に変わる写真で示す。図1のレーン1は精製した組換えPGRP−LEであり、レーン2及び3はスタフィロコッカスエピデルミダス(Staphylococcus epidermidis)ATCC 155から精製したLys型ペプチドグリカンを用いた場合であり、レーン4及び5はラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)ATCC 8014から精製したDAP型ペプチドグリカンを用いた場合であり、レーン2及び4はそれぞれ洗浄による可溶性画分から単離した非結合のタンパク質の場合であり、レーン3及び5はそれぞれ洗浄後の不溶性画分から単離した結合したタンパク質の場合である。図1の左の数字は分子量を表示している。
その結果、PGRP−LEはDAP型ペプチドグリカンには保持されていたが、Lys型ペプチドグリカンには保持されなかったことから、PGRP−LEはDAP型ペプチドグリカンに特異的な高親和性を有していることがわかった。
【0011】
DAP型ペプチドグリカンは、グラム陽性菌では炭疽菌などのバシラス属やラクトバチルスがその細胞壁に特異的に有するペプチドグリカンである。なお、グラム陰性菌も細胞壁にDAP型ペプチドグリカンを有しているが、グラム陰性菌はその外側にポリリポサッカライドからなる外膜を有し、これはグラム陰性菌に特有のことである。したがって、通常の状態ではグラム陰性菌のDAP型ペプチドグリカンは細胞表面に露出しておらず、本発明のPGRP−LEと結合することはできない。また、前記の実験では炭疽菌に代えてラクトバチルスを用いているが、これは炭疽菌は毒性が強く通常の実験室では取り扱えないからである。しかし、炭疽菌もラクトバチルスと同じDAP型ペプチドグリカンを有し、同じ結果が得られることになる。
したがって、DAP型ペプチドグリカンを特異的に認識できる異物認識タンパク質PGRP−LEを用いると、このPGRP−LEは、多くのグラム陽性菌が有するリシン型のペプチドグリカンを認識しないので、炭疽菌などを特異的に検出できることになる。しかもこの方法はPCRのような高度な技術を使用する必要が無く、簡便でかつ高感度で確実にDAP型ペプチドグリカンの存在を検出・同定することができ、炭疽菌を特異的に検出できる検出・同定系を提供することができる。
【0012】
したがって、本発明は、被検体をペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を含有する組成物に接触させ、次いで洗浄して非結合状態のペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を分離し、他のタンパク質と結合したペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を検出・同定することからなる被検体中からジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するものを特異的に検出・同定する方法を提供するものである。本発明のペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)は、ジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカンに高親和性で特異的に結合するものであり、被検体としては、必ずしも精製したペプチドグリカンを使用する必要は無い。ペプチドグリカンが本発明のPGRP−LEと結合できる状態になっていればよい。細菌類は細胞壁の成分としてペプチドグリカンを有しているのであるから、通常は細菌類をそのまま被検体として使用することができる。
本発明の方法における被検体としては、ジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するものであるが、ジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカンを有するものとしては、DAP型ペプチドグリカンを有するグラム陰性菌や炭疽菌などのバシラス属などが挙げられる。これらの被検体は適当な媒質で希釈されたものであってもよい。
【0013】
このような被検体と本発明のPGRP−LEとを接触させ、両者が十分に結合できる条件にした後、結合したPGRP−LEと結合していないPGRP−LEとを分離する。両者の分離手段としては特に制限はないが、PGRP−LEは可溶性であり、ペプチドグリカンが不溶性であることから、不溶性画分を十分に洗浄することにより、可溶性の結合していないPGRP−LEを分離することができる。この方法が簡便であり好ましいがこれに限定されるものではなく、被検体を固定化するなどの他の手段を採用することもできる。
このようにして分離された被検体と結合したPGRP−LEを検出・同定する方法としては、通常の標識化や抗体反応による方法などが挙げられる。例えば、PGRP−LEを放射性元素や蛍光物質などで標識化しておく方法や、PGRP−LEに特異的な抗体を用いる方法などがある。また、前記の例で示したように、PGRP−LEにさらにペプチドを融合させておき、融合されたペプチドに特異的な抗体を用いて検出・同定する方法であってもよい。このようなペプチドはPGRP−LEのC末端側やN末端側に融合させることができる。このような融合ペプチドとしては各種のペプチドを使用することができるが、ヒスチジンが連続したペプチドが簡便で好ましい。ヒスチジンが連続したペプチドとしては、ヒスチジンが5個以上、好ましくは6個以上連続したペプチドが挙げられる。
前記した例では、抗ペンタ−ヒスチジン抗体を用いたウエスタンブロット解析を示したが、これに限定されるものではなく、抗体を放射性元素や蛍光物質で標識化した方法やサンドイッチ法などの各種の検出・同定方法を採用することができる。
【0014】
また、本発明は、前記した検出・同定方法に使用できる組成物を提供するものであり、より詳細には、ショウジョウバエ由来のペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)及び検出・同定用の担体を含有してなるジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するものを特異的に認識するための組成物を提供するものである。本発明のこの組成物におけるペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)としては、ショウジョウバエ由来のものが好ましいが、これに限定されるものでは無く、各種の動物、好ましくは昆虫由来のペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を使用することができる。本発明のPGRP−LEは、天然のものを使用してもよいが、遺伝子組換え技術により製造されたものであってもよい。
本発明のこの組成物におけるペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)としては、PGRP−LEの全長であってもよいが、ジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカンを認識できる部分長のものであってもよい。また、この組成物におけるペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)としては、タンパク質そのままであってもよいが、検出・同定を容易にするために放射性元素や蛍光物質などで標識化されたものや、PGRP−LEにさらに検出・同定用のペプチドが融合されたものであってもよい。このような融合タンパク質におけるペプチドとしてはポリヒスチジン、好ましくはヘキサヒスチジンと融合したPGRP−LEなどが挙げられる。
本発明のこの組成物における検出・同定用の担体は必ずしも必要ではないが、組成物を形成するために担体を配合しているのが好ましい。このような担体としては、適当な緩衝液、精製水を入れることにより緩衝液となる成分、安定剤、酸化防止剤、着色剤などが挙げられる。
【0015】
本発明は、ペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)が、ジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカンに高親和性で特異的に結合するという新規かつ有用な性質を有していることを見出したものであり、PGRP−LEの新規かつ有用な用途を提供するものである。したがって、本発明はペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)からなるジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカンの検出・同定剤、好ましくは炭疽菌などのバシラス属の検出・同定剤を提供するものである。
【0016】
さらに、本発明は、前記したジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するものを特異的に検出・同定する方法に使用されるペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を含有してなる検出・同定用キットを提供するものである。本発明のキットは、前記した検出・同定用の組成物又は検出・同定剤の単独からなるものであってもよいが、さらに検出・同定のための各種の抗体や結果を可視化するための材料などが組み合わされたものが好ましい。
このような本発明のキットを使用することにより、被検体中のジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するものを特異的に、簡便に、高感度で、短時間で、かつ確実に検出・同定することができる。
【0017】
本発明は、昆虫の異物認識応答を利用した、炭疽菌などの迅速・簡便、かつ鋭敏な新しい検出・同定法を提供するものである。米国で起きた同時多発テロ事件では、炭疽菌が生物テロに使用され、郵送された炭疽菌による感染症で犠牲者を出すにまでいたった。この結果、日常生活で使用される多くの白い粉末に恐怖感を抱くようになってしまった。これは、炭疽菌を検出・同定できる簡便な方法が確立されていなかった結果である。
本発明によれば、菌の培養を必要とせず、本発明の検出・同定用キットとそれを保存する家庭用冷蔵庫と本発明の検出・同定方法を実施できる容器さえあれば、数時間以内に試薬の発色で結果が判定できる検出系が確立できる。これであれば、市民生活の場での早期検査が可能で、炭疽菌による感染症のまん延防止、予防が飛躍的に向上するだけでなく、不必要なパニックを防ぐという観点からも、テロ対策上からも非常に重要である。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0019】
実施例1 (PGRP−LEの製造)
ショウジョウバエのPGRP−LEをコードするcDNAを用いて、さらに6つのヒスチジン残基をカルボキシ末端に有するペプチドをコードする遺伝子を用いて、リコンビナントPGRP−LEを、バックパックバキュロウイルス発現系(BacPAK Baculovirus Expression System(Clontech))を用いてSf21で発現させ、DEAEカラムクロマトグラフィーとNi−NTAクロマトグラフィーにより精製した。
【0020】
実施例2 (DAP型ペプチドグリカンの検出・同定)
DAP型ペプチドグリカンおよびLys型ペプチドグリカンは、小谷ら、及び河田らの方法(Kotani,S., et al., (1975) BIKEN J., 18, 93−103;Kawata,S.,et al., (1984) Agric. Biol. Chem., 48, 2253−2263)にしたがい、それぞれLactobacillus plantarum ATCC 8014およびStaphylococcus epidermidis
ATCC 155から精製した。
実施例1で製造したリコンビナントPGRP−LEはアフィニティーを用いて精製し、結合実験は吉田らの方法(Yoshida,H., et al., (1996) J. Biol. Chem., 271, 13854−13860)に準じて行った。
精製したリコンビナントPGRP−LE約0.5μgと0.32mgのスタフィロコッカスエピデルディス(S. epidermidis)由来の不溶性ペプチドグリカン(レーン2および3)、精製したリコンビナントPGRP−LE約0.5μgと0.32mgのラクトバチルスプランタルム(L. plantarum)由来の不溶性ペプチドグリカン(レーン4および5)を、それぞれとインキュベートした。
可溶性画分から非結合タンパク質(レーン2および4)を回収し、不溶性画分を1mol/L NaClを含有するトリスマレイン酸緩衝液、並びに1mol/L NaCl及び0.2% ツィーン20で洗浄して結合タンパク質(レーン3および5)を回収した。比較のために、精製したリコンビナントPGRP−LE約0.5μgをインキュベートした(レーン1)。
これらを抗ペンタ−ヒスチジン抗体(QIAGEN)を用いてウェスタンブロット分析によって解析した。
結果を図1に図面に変わる写真で示す。図1の左側の数字は分子量を示す。
【0021】
実施例3 (DAP型ペプチドグリカンの検出・同定)
実施例2と同様な方法により、実施例1で製造したリコンビナントPGRP−LEと、リシン型のペプチドグリカンを有する細胞壁、あるいはDAP型ペプチドグリカンを有する細胞壁をインキュベートした。それぞれの細胞壁に結合しなかったPGRP−LEを洗浄し、細胞壁に結合したPGRP−LEをヒスチジンタグに対する抗体で検出したところ、DAP型ペプチドグリカンを有する細胞壁が特異的に検出できた。
【0022】
【発明の効果】
本発明は、PGRP−LEがジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカンに高親和性で特異的に結合するという新規かつ有用な性質を有していることを見出したものであり、PGRP−LEの新規かつ有用な用途を提供するものである。本発明の方法により、炭疽菌などのDAP型ペプチドグリカンを有する細菌類を迅速・簡便、かつ鋭敏に検出・同定することができる方法、そのための組成物、及び検出・同定用のキットを提供するものである。
米国で起きた同時多発テロ事件では、炭疽菌が生物テロに使用され、郵送された炭疽菌による感染症で犠牲者を出すにまでいたった。本発明によれば、特別の技術や、特別な施設や道具を使用すること無く、簡便な方法で被件体中の炭疽菌を検出・同定することができ、市民生活の場での炭疽菌の早期検査が可能で、炭疽菌による感染症のまん延防止、予防が飛躍的に向上するだけでなく、不必要なパニックを防ぐという観点からも、テロ対策上でも非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のPGRP−LEを、不溶性DAP型ペプチドグリカンおよび不溶性Lys型ペプチドグリカンとともにインキュベートした後、抗ペンタ−ヒスチジン抗体を用いてウエスタンブロット分析によって解析した結果を示す図面に変わる写真である。図1のレーン1は精製した組換えPGRP−LEであり、レーン2及び3はLys型ペプチドグリカンを用いた場合であり、レーン4及び5はDAP型ペプチドグリカンを用いた場合であり、レーン2及び4はそれぞれ洗浄による可溶性画分から単離した非結合のタンパク質の場合であり、レーン3及び5はそれぞれ洗浄後の不溶性画分から単離した結合したタンパク質の場合である。図1の左の数字は分子量を表示している。

Claims (13)

  1. ペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)及び検出・同定用の担体を含有してなるジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するものを特異的に認識するための組成物。
  2. ペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)が、ショウジョウバエ由来のものである請求項1に記載の組成物。
  3. ペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)が、当該タンパク質の検出・同定が可能なアミノ酸配列をさらに有するものである請求項1又は2に記載の組成物。
  4. ペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)の検出・同定が可能なアミノ酸配列が、連続するヒスチジンからなるアミノ酸配列である請求項3に記載の組成物。
  5. ジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカンを有するものが、炭疽菌である請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の組成物からなる炭疽菌の検出・同定剤。
  7. 被検体をペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を含有する組成物に接触させ、次いで洗浄して非結合状態のペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を分離し、他のタンパク質と結合したペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を検出・同定することからなる被検体中からジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するものを特異的に検出・同定する方法。
  8. ペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)が、ショウジョウバエ由来のものである請求項7に記載の方法。
  9. ペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)が、標識化されている請求項7又は8に記載の方法。
  10. 標識化が、特異的な抗体に反応するアミノ酸配列を有するペプチドである請求項9に記載の方法。
  11. ジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカンを有するものが、炭疽菌である請求項7〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 請求項7〜11に記載のジアミノピメリン酸(DAP)型ペプチドグリカン又はそれを有するものを特異的に検出・同定する方法に使用されるペプチドグリカン認識タンパク質−LE(PGRP−LE)を含有してなる検出・同定用キット。
  13. 検出・同定用キットが、炭疽菌の検出・同定用のキットである請求項12に記載のキット。
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