JP2004069364A - 強制スランプフロー試験方法およびその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】準高流動性コンクリートや軟練りのフレッシュコンクリートの性状を、適正にかつ効率よく評価できる試験方法および試験装置を提供する。
【解決手段】強制スランプフロー試験器1は、スランプコーン2と、円錐部材3と、平板4とからなる。円錐部材3をスランプコーン2内に設置してから、従来のスランプフロー試験方法と同様の方法により試験を行い、平板2上での試料の広がりを強制スランプフロー値として測定する。強制スランプフロー値は試料が円錐部材の円錐面を流下する影響により、従来法におけるスランプフロー値より大きい値をとり、準高流動コンクリートの流動性評価試験として、従来のスランプフロー試験方法に比べ、より敏感な評価を行うことができる。
【選択図】 図1
【解決手段】強制スランプフロー試験器1は、スランプコーン2と、円錐部材3と、平板4とからなる。円錐部材3をスランプコーン2内に設置してから、従来のスランプフロー試験方法と同様の方法により試験を行い、平板2上での試料の広がりを強制スランプフロー値として測定する。強制スランプフロー値は試料が円錐部材の円錐面を流下する影響により、従来法におけるスランプフロー値より大きい値をとり、準高流動コンクリートの流動性評価試験として、従来のスランプフロー試験方法に比べ、より敏感な評価を行うことができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、未硬化のフレッシュコンクリートの試験方法および試験装置に関するもので、特に準高流動コンクリートあるいは軟練りのコンクリートの評価試験に適する。
【0002】
【従来の技術】
未硬化のフレッシュコンクリートのワーカビリティーを評価するための試験方法としては、スランプコーンを用いたJIS A 1101のスランプ試験方法が最も普及している。
【0003】
一方、近年、比表面積の大きい微粉体を用いた流動性が高く自己充填性に優れた高流動コンクリートの施工実績が増えているが、高流動コンクリートは流動性が高すぎて従来のスランプ試験では対応できないため、高流動コンクリートについてはスランプフロー試験方法が利用されている。
【0004】
スランプフロー試験は、上記JIS A 1101のスランプ試験方法におけるスランプコーンを使用し、試料の広がりの直径を基準とするスランプフローとストプップウォッチにより500mm到達時間(t−500)が測定される。
【0005】
また、スランプフロー試験方法の改良型として、L形フロー試験方法があり、スランプフロー試験方法とともに、高流動コンクリートの試験方法として規格化されている。
【0006】
L形フロー試験方法では、図4に示すような鉛直部22と水平部23を有するL型試験器21を用い、鉛直部22に高流動コンクリートの試料を、通常、2層に各5回突いて充填した後、鉛直部22と水平部23を区画する仕切板24を引き上げ、開口から5cmおよび10cm区間の通過時間をセンサで計測するとともに、流動が停止したときの鉛直部22の沈下量と先端までの移動量を計測する。
【0007】
この他、スランプフロー試験方法の改良型としては、例えば特開平9−218196号公報に記載されるフレッシュコンクリートの評価方法のように、スランプフロー試験における平板に同心円状の複数のバリアを設け、スランプフロー値や各バリアまでの到達時間を測定するようにしたものが発明されている。
【0008】
また、特開平9−250980号公報には、高流動コンクリートのコンシステンシー試験方法として、上述した従来のスランプフロー試験と、スランプコーンの外周位置に帯環の周方向等分割位置ごとに垂直脚平を設けたバリアを設置して行うバリアスランプフロー試験を併用し、それらの対比からワーカビリティーに関連するコンシステンシーの評価を行う方法が記載されている。
【0009】
なお、フレッシュコンクリートの挙動をビンガム流体の挙動としてモデル化した場合、スランプ値やスランプフロー値は主として降伏値τf の評価に用いられ、時間的要素を含むスランプフロー試験における500mm到達時間やV漏斗試験が塑性粘度ηplの評価に用いられる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
最近、コンクリートに求められる性能がますます高度化・多様化している中で、上述の高流動コンクリートは粉体量の増加によるコストアップ、収縮量の増加等の問題が指摘されており、厳しい品質管理が求められる。
【0011】
これらの問題点を低減可能と思われるスランプフローがおそよ450±50mm程度の準高流動コンクリートは、自己充填性はないが、バイブレーターなどによる若干の振動を受けることにより良好な流動性を持つとともに、振動条件下においても優れた材料分離抵抗性が期待されている。
【0012】
しかし、従来のスランプ試験方法はスランプ21cm以下のコンクリートの評価に適しているとされ、また、スランプフロー試験方法やL形フロー試験方法、それらの改良方法はスランプフローが600mm以上の高流動コンクリートの評価に適しているとされるが、間に位置する上述のスランプフローがおそよ450±50mm程度の準高流動コンクリート(通常21〜25cm程度のスランプ値をとる)あるいは準高流動コンクリートに達しない比較的スランプが大きい軟練りのコンクリート(スランプ値15cm以上)についてはフレッシュコンクリートの性状を適正に評価できる試験方法がなかった。
【0013】
すなわち、従来のスランプ試験方法では、高流動コンクリートの場合と同様、流動性が高すぎてスランプ値としての測定が困難または不可能となる。
【0014】
また、スランプフロー試験方法では、例えばフローが500mmに到達しなければt−500の測定自体ができない他、500mmにやっと到達する範囲では極端に精度が落ち、スランプフロー値についても高流動コンクリートの領域ではわずかな性能の差がスランプフローに敏感に表れるのに対し、スランプフローがおよそ450±50mm程度の準高流動コンクリートの場合、性能の差がスランプフロー値の差として顕著ではなく、やはり極端に精度が落ちるという問題がある。
【0015】
本願発明は、従来、適正に評価できる試験方法がなかった準高流動性コンクリートや軟練りのコンクリートのワーカビリティーあるいはコンシステンシーといったフレッシュコンクリートの性状を、適正にかつ効率よく評価できる試験方法および試験装置を提供することを目的としたものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に係る強制スランプフロー試験方法は、スランプコーンに未硬化のフレッシュコンクリートの試料を所定の高さまで詰め込み、前記スランプコーンを平板上で引き上げ、前記試料の前記平板上での広がりを測定するスランプフロー試験方法において、前記スランプコーンの下端内側に、前記スランプコーンの下端内径に対応する外径と所定の底角を有する円錐部材を設置し、前記スランプコーンの引き上げの際に、前記試料を該円錐部材の円錐面に沿って流下させることで、前記試料のフローを促進させることを特徴とするものである。
【0017】
スランプコーンとしては、従来のスランプ試験方法やスランプフロー試験方法に用いられているスランプコーンを使用することができる。ただし、新たな規格を設けるなどして寸法や形態の異なるものを用いることも可能である。
【0018】
基本的な原理は従来のスランプフロー試験方法と同様であるが、円錐面で流下が促進されることにより、スランプフロー試験より大きなスランプフロー値が計測されることになる。
【0019】
これは、評価される試料の対象を、従来、適正な評価が困難であった軟練りのコンクリートや準高流動コンクリートとしていることに関連し、高流動コンクリートと比べ相対的にフレッシュコンクリートとしての流動性が低いこれらのコンクリートの試料について、円錐面を利用することで、みかけ上、流動性を増幅させた形で計測を行うものである。
【0020】
この試験方法によれば、主としてワーカビリティー評価の要素の一つであるコンクリートの降伏値(τf )の評価を、従来のスランプ試験方法やスランプフロー試験方法に比べ、より的確に行うことが可能となる。
【0021】
本願の請求項2に係る強制スランプフロー試験器は、試料を充填するためのスランプコーンと、前記スランプコーンの下端内径に対応する外径と所定の底角を有する円錐部材と、前記スランプコーンおよび円錐部材が載置される平板とからなることを特徴とするものである。
【0022】
円錐部材の材質は特に限定されないが、スランプフロー試験の際に容易に移動しないもの、またコンクリートとの接触面における摩擦抵抗が小さいものが望ましく、例えば鋼板で円錐面を加工し、その内側にコンクリートを充填したものなどが利用できる。あるいは全体を金属で形成したもの、任意の材料にコンクリートを充填したもの等、種々の組み合わせ、材質のものが考えられる。
【0023】
試験における作業は、基本的には従来のスランプフロー試験と同様であり、スランプフロー試験で使用する鉄板等の平板の上に、上記円錐部材を置き、この円錐部材が内側に納まるようにスランプコーンを設置し、以下、スランプフロー試験と同様の作業となる。
【0024】
ただし、現行の高流動コンクリート施工指針(案)に規定されている方法に限定されず、例えばスランプコーンの寸法や、試料の締固め方法、測定方法、評価方法等、任意に改良されたものなどに適用することも可能である。
【0025】
請求項3は、請求項2に係る強制スランプフロー試験器において、前記円錐部材の底角が18°〜35°であることを特徴とするものである。
【0026】
ワーカビリティーの評価に関しては、コンクリート降伏値(τf )の他、塑性粘度(ηpl)なども重要な要素となり、一概に決定できない面もあるが、本願発明が主な対象とするスランプフローがおそよ450±50mmの準高流動コンクリート、スランプ値が大きい軟練りのコンクリートの場合において、円錐部材の底角が18°より小さい場合は円錐面における流下促進が十分でなく、感度が悪くなる傾向にあり、また35°より大きい場合は円錐部材の傾斜が大き過ぎることにより本来のスランプフロー以外の要素の影響し、適正な評価ができなくなるおそれがある。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1は本願発明の強制スランプフロー試験器1の一実施形態を示したもので、スランプコーン2と、円錐部材3と、これらが載置される平板4とからなる。
【0028】
本実施形態において、スランプコーン2はJIS A 1101に規定されている上端内径10cm、下端内径20cm、高さ30cmのスランプコーン2を使用し、下端の外径が20cmの円錐部材3をスランプコーン2の下端内側に設置している。また、本実施形態における円錐部材3は鋼板を加工して円錐面を形成し、その内側にコンクリートを充填したものである。
【0029】
次に、この強制スランプフロー試験器を使用した実験例について説明する。
【0030】
実験に用いた材料と物性は以下の通りである。
【0031】
セメント:中庸熱ポルトランドセメント(ρ=3.20)
細骨材:陸砂(ρ=2.60、F.M.=2.54、abs.=1.74%)
粗骨材:砕石(ρ=2.70、F.M.=6.86、abs.=0.59%)
混和剤:高性能AE減水剤(ρ=1.05)
(ρ:比重、F.M.:粗粒率、abs.:吸水率)
実験におけるコンクリートとしては、中庸熱ポルトランドセメントを使用し、セメント量450kg/m3 、水セメント比(W/C)34%、コンクリート中の粗骨材体積割合である粗骨材体積濃度(Xv)を36.6%とした。また、スランプフロー値を下限250mm程度、上限550mm程度に変化させるため、高性能AE減水剤(SP)の添加率を、1.2%から2.6%まで変化させた。コンクリートの練り混ぜは、容量100リットルのパン型強制練りミキサを用いて行った。練混ぜ方法は、粗骨材、細骨材(1/2)、セメント、細骨材(1/2)の順に投入し、1分間攪拌した後、水および混和剤を投入した。これを1分30秒攪拌してから排出した。
【0032】
試験方法としては、上述した図1の強制スランプフロー試験器1を用い、円錐部材3をスランプコーン2内に設置してから、従来と同様の方法でスランプフロー試験を行い、得られたスランプフロー値を強制スランプフローとした。また、同時にスランプ値も測定し、この値を強制スランプ値とした。
【0033】
ただし、コンクリート試料は分離しないものと仮定し、普通コンクリートのスランプ試験と同様に3層25回突きに統一して行った。円錐部材3の底角は、18°、23°、28°の3通りとした。
【0034】
並行して、従来法によるスランプ値およびスランプフロー値を測定した。スランプ試験は「JIS A 1101 コンクリートのスランプ試験方法」に準じて行い、スランプフロー試験は「高流動コンクリート施工指針の試験方法(土木学会基準)(案)スランプフロー試験」に準じて行った。ただし、両者とも3層5回突きとした。
【0035】
実験結果は、表1に示した通りである。
【0036】
【表1】
【0037】
また、図2にスランプ値と強制スランプ値との関係を、図3にスランプフロー値と強制スランプフロー値との関係を示した。
【0038】
強制スランプ値については、図2において、スランプ値とほぼ同様の傾向を示し、円錐部材の底角の変化による明確な値の変動は見られなかった。スランプ12cm程度では多少の違いが現れたが、通常21〜25cm程度のスランプ値をとる準高流動コンクリートの範囲において、強制スランプ試験の有用性は認められなかった。
【0039】
一方、強制スランプフロー値については、円錐部材の底角の変化を受け、図3に示すように、特にスランプフロー値が450±50mmの範囲で、強制スランプフロー値の範囲は500±100mmとスランプフロー値より広い範囲をとった。
【0040】
このことから、準高流動コンクリートの流動性評価試験として、従来のスランプフロー試験に比べ、強制スランプフロー試験はより敏感な評価が可能であり、その最適な適用範囲は400〜600mm程度と考えられる。
【0041】
この実験結果において、強制スランプフロー試験により準高流動コンクリートや軟練りのコンクリートの流動性、主として降伏値との関連におけるワーカビリティーの評価が可能であることが分かった。
【0042】
【発明の効果】
本願発明の試験方法、試験装置によれば、従来のスランプ試験やスランプフロー試験では的確な評価ができなかった準高流動コンクリートや軟練りのコンクリートの主として降伏値との関連におけるワーカビリティーの評価を、円錐部材を用いた強制スランプフローの適用により、効率よく、より適正によく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る強制フロー試験器の一実施形態における鉛直断面と、実験に用いた3種類の底角の円錐部材の形態を示す図である。
【図2】実験結果におけるスランプ値と強制スランプ値との関係を示すグラフである。
【図3】実験結果におけるスランプフロー値と強制スランプフロー値との関係を示すグラフである。
【図4】従来例としてのL形フロー試験器を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…強制スランプフロー試験器、2…スランプコーン、3…円錐部材、4…平板
21…L形フロー試験器、22…鉛直部、23…水平部、24…仕切板
【発明の属する技術分野】
本願発明は、未硬化のフレッシュコンクリートの試験方法および試験装置に関するもので、特に準高流動コンクリートあるいは軟練りのコンクリートの評価試験に適する。
【0002】
【従来の技術】
未硬化のフレッシュコンクリートのワーカビリティーを評価するための試験方法としては、スランプコーンを用いたJIS A 1101のスランプ試験方法が最も普及している。
【0003】
一方、近年、比表面積の大きい微粉体を用いた流動性が高く自己充填性に優れた高流動コンクリートの施工実績が増えているが、高流動コンクリートは流動性が高すぎて従来のスランプ試験では対応できないため、高流動コンクリートについてはスランプフロー試験方法が利用されている。
【0004】
スランプフロー試験は、上記JIS A 1101のスランプ試験方法におけるスランプコーンを使用し、試料の広がりの直径を基準とするスランプフローとストプップウォッチにより500mm到達時間(t−500)が測定される。
【0005】
また、スランプフロー試験方法の改良型として、L形フロー試験方法があり、スランプフロー試験方法とともに、高流動コンクリートの試験方法として規格化されている。
【0006】
L形フロー試験方法では、図4に示すような鉛直部22と水平部23を有するL型試験器21を用い、鉛直部22に高流動コンクリートの試料を、通常、2層に各5回突いて充填した後、鉛直部22と水平部23を区画する仕切板24を引き上げ、開口から5cmおよび10cm区間の通過時間をセンサで計測するとともに、流動が停止したときの鉛直部22の沈下量と先端までの移動量を計測する。
【0007】
この他、スランプフロー試験方法の改良型としては、例えば特開平9−218196号公報に記載されるフレッシュコンクリートの評価方法のように、スランプフロー試験における平板に同心円状の複数のバリアを設け、スランプフロー値や各バリアまでの到達時間を測定するようにしたものが発明されている。
【0008】
また、特開平9−250980号公報には、高流動コンクリートのコンシステンシー試験方法として、上述した従来のスランプフロー試験と、スランプコーンの外周位置に帯環の周方向等分割位置ごとに垂直脚平を設けたバリアを設置して行うバリアスランプフロー試験を併用し、それらの対比からワーカビリティーに関連するコンシステンシーの評価を行う方法が記載されている。
【0009】
なお、フレッシュコンクリートの挙動をビンガム流体の挙動としてモデル化した場合、スランプ値やスランプフロー値は主として降伏値τf の評価に用いられ、時間的要素を含むスランプフロー試験における500mm到達時間やV漏斗試験が塑性粘度ηplの評価に用いられる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
最近、コンクリートに求められる性能がますます高度化・多様化している中で、上述の高流動コンクリートは粉体量の増加によるコストアップ、収縮量の増加等の問題が指摘されており、厳しい品質管理が求められる。
【0011】
これらの問題点を低減可能と思われるスランプフローがおそよ450±50mm程度の準高流動コンクリートは、自己充填性はないが、バイブレーターなどによる若干の振動を受けることにより良好な流動性を持つとともに、振動条件下においても優れた材料分離抵抗性が期待されている。
【0012】
しかし、従来のスランプ試験方法はスランプ21cm以下のコンクリートの評価に適しているとされ、また、スランプフロー試験方法やL形フロー試験方法、それらの改良方法はスランプフローが600mm以上の高流動コンクリートの評価に適しているとされるが、間に位置する上述のスランプフローがおそよ450±50mm程度の準高流動コンクリート(通常21〜25cm程度のスランプ値をとる)あるいは準高流動コンクリートに達しない比較的スランプが大きい軟練りのコンクリート(スランプ値15cm以上)についてはフレッシュコンクリートの性状を適正に評価できる試験方法がなかった。
【0013】
すなわち、従来のスランプ試験方法では、高流動コンクリートの場合と同様、流動性が高すぎてスランプ値としての測定が困難または不可能となる。
【0014】
また、スランプフロー試験方法では、例えばフローが500mmに到達しなければt−500の測定自体ができない他、500mmにやっと到達する範囲では極端に精度が落ち、スランプフロー値についても高流動コンクリートの領域ではわずかな性能の差がスランプフローに敏感に表れるのに対し、スランプフローがおよそ450±50mm程度の準高流動コンクリートの場合、性能の差がスランプフロー値の差として顕著ではなく、やはり極端に精度が落ちるという問題がある。
【0015】
本願発明は、従来、適正に評価できる試験方法がなかった準高流動性コンクリートや軟練りのコンクリートのワーカビリティーあるいはコンシステンシーといったフレッシュコンクリートの性状を、適正にかつ効率よく評価できる試験方法および試験装置を提供することを目的としたものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に係る強制スランプフロー試験方法は、スランプコーンに未硬化のフレッシュコンクリートの試料を所定の高さまで詰め込み、前記スランプコーンを平板上で引き上げ、前記試料の前記平板上での広がりを測定するスランプフロー試験方法において、前記スランプコーンの下端内側に、前記スランプコーンの下端内径に対応する外径と所定の底角を有する円錐部材を設置し、前記スランプコーンの引き上げの際に、前記試料を該円錐部材の円錐面に沿って流下させることで、前記試料のフローを促進させることを特徴とするものである。
【0017】
スランプコーンとしては、従来のスランプ試験方法やスランプフロー試験方法に用いられているスランプコーンを使用することができる。ただし、新たな規格を設けるなどして寸法や形態の異なるものを用いることも可能である。
【0018】
基本的な原理は従来のスランプフロー試験方法と同様であるが、円錐面で流下が促進されることにより、スランプフロー試験より大きなスランプフロー値が計測されることになる。
【0019】
これは、評価される試料の対象を、従来、適正な評価が困難であった軟練りのコンクリートや準高流動コンクリートとしていることに関連し、高流動コンクリートと比べ相対的にフレッシュコンクリートとしての流動性が低いこれらのコンクリートの試料について、円錐面を利用することで、みかけ上、流動性を増幅させた形で計測を行うものである。
【0020】
この試験方法によれば、主としてワーカビリティー評価の要素の一つであるコンクリートの降伏値(τf )の評価を、従来のスランプ試験方法やスランプフロー試験方法に比べ、より的確に行うことが可能となる。
【0021】
本願の請求項2に係る強制スランプフロー試験器は、試料を充填するためのスランプコーンと、前記スランプコーンの下端内径に対応する外径と所定の底角を有する円錐部材と、前記スランプコーンおよび円錐部材が載置される平板とからなることを特徴とするものである。
【0022】
円錐部材の材質は特に限定されないが、スランプフロー試験の際に容易に移動しないもの、またコンクリートとの接触面における摩擦抵抗が小さいものが望ましく、例えば鋼板で円錐面を加工し、その内側にコンクリートを充填したものなどが利用できる。あるいは全体を金属で形成したもの、任意の材料にコンクリートを充填したもの等、種々の組み合わせ、材質のものが考えられる。
【0023】
試験における作業は、基本的には従来のスランプフロー試験と同様であり、スランプフロー試験で使用する鉄板等の平板の上に、上記円錐部材を置き、この円錐部材が内側に納まるようにスランプコーンを設置し、以下、スランプフロー試験と同様の作業となる。
【0024】
ただし、現行の高流動コンクリート施工指針(案)に規定されている方法に限定されず、例えばスランプコーンの寸法や、試料の締固め方法、測定方法、評価方法等、任意に改良されたものなどに適用することも可能である。
【0025】
請求項3は、請求項2に係る強制スランプフロー試験器において、前記円錐部材の底角が18°〜35°であることを特徴とするものである。
【0026】
ワーカビリティーの評価に関しては、コンクリート降伏値(τf )の他、塑性粘度(ηpl)なども重要な要素となり、一概に決定できない面もあるが、本願発明が主な対象とするスランプフローがおそよ450±50mmの準高流動コンクリート、スランプ値が大きい軟練りのコンクリートの場合において、円錐部材の底角が18°より小さい場合は円錐面における流下促進が十分でなく、感度が悪くなる傾向にあり、また35°より大きい場合は円錐部材の傾斜が大き過ぎることにより本来のスランプフロー以外の要素の影響し、適正な評価ができなくなるおそれがある。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1は本願発明の強制スランプフロー試験器1の一実施形態を示したもので、スランプコーン2と、円錐部材3と、これらが載置される平板4とからなる。
【0028】
本実施形態において、スランプコーン2はJIS A 1101に規定されている上端内径10cm、下端内径20cm、高さ30cmのスランプコーン2を使用し、下端の外径が20cmの円錐部材3をスランプコーン2の下端内側に設置している。また、本実施形態における円錐部材3は鋼板を加工して円錐面を形成し、その内側にコンクリートを充填したものである。
【0029】
次に、この強制スランプフロー試験器を使用した実験例について説明する。
【0030】
実験に用いた材料と物性は以下の通りである。
【0031】
セメント:中庸熱ポルトランドセメント(ρ=3.20)
細骨材:陸砂(ρ=2.60、F.M.=2.54、abs.=1.74%)
粗骨材:砕石(ρ=2.70、F.M.=6.86、abs.=0.59%)
混和剤:高性能AE減水剤(ρ=1.05)
(ρ:比重、F.M.:粗粒率、abs.:吸水率)
実験におけるコンクリートとしては、中庸熱ポルトランドセメントを使用し、セメント量450kg/m3 、水セメント比(W/C)34%、コンクリート中の粗骨材体積割合である粗骨材体積濃度(Xv)を36.6%とした。また、スランプフロー値を下限250mm程度、上限550mm程度に変化させるため、高性能AE減水剤(SP)の添加率を、1.2%から2.6%まで変化させた。コンクリートの練り混ぜは、容量100リットルのパン型強制練りミキサを用いて行った。練混ぜ方法は、粗骨材、細骨材(1/2)、セメント、細骨材(1/2)の順に投入し、1分間攪拌した後、水および混和剤を投入した。これを1分30秒攪拌してから排出した。
【0032】
試験方法としては、上述した図1の強制スランプフロー試験器1を用い、円錐部材3をスランプコーン2内に設置してから、従来と同様の方法でスランプフロー試験を行い、得られたスランプフロー値を強制スランプフローとした。また、同時にスランプ値も測定し、この値を強制スランプ値とした。
【0033】
ただし、コンクリート試料は分離しないものと仮定し、普通コンクリートのスランプ試験と同様に3層25回突きに統一して行った。円錐部材3の底角は、18°、23°、28°の3通りとした。
【0034】
並行して、従来法によるスランプ値およびスランプフロー値を測定した。スランプ試験は「JIS A 1101 コンクリートのスランプ試験方法」に準じて行い、スランプフロー試験は「高流動コンクリート施工指針の試験方法(土木学会基準)(案)スランプフロー試験」に準じて行った。ただし、両者とも3層5回突きとした。
【0035】
実験結果は、表1に示した通りである。
【0036】
【表1】
【0037】
また、図2にスランプ値と強制スランプ値との関係を、図3にスランプフロー値と強制スランプフロー値との関係を示した。
【0038】
強制スランプ値については、図2において、スランプ値とほぼ同様の傾向を示し、円錐部材の底角の変化による明確な値の変動は見られなかった。スランプ12cm程度では多少の違いが現れたが、通常21〜25cm程度のスランプ値をとる準高流動コンクリートの範囲において、強制スランプ試験の有用性は認められなかった。
【0039】
一方、強制スランプフロー値については、円錐部材の底角の変化を受け、図3に示すように、特にスランプフロー値が450±50mmの範囲で、強制スランプフロー値の範囲は500±100mmとスランプフロー値より広い範囲をとった。
【0040】
このことから、準高流動コンクリートの流動性評価試験として、従来のスランプフロー試験に比べ、強制スランプフロー試験はより敏感な評価が可能であり、その最適な適用範囲は400〜600mm程度と考えられる。
【0041】
この実験結果において、強制スランプフロー試験により準高流動コンクリートや軟練りのコンクリートの流動性、主として降伏値との関連におけるワーカビリティーの評価が可能であることが分かった。
【0042】
【発明の効果】
本願発明の試験方法、試験装置によれば、従来のスランプ試験やスランプフロー試験では的確な評価ができなかった準高流動コンクリートや軟練りのコンクリートの主として降伏値との関連におけるワーカビリティーの評価を、円錐部材を用いた強制スランプフローの適用により、効率よく、より適正によく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る強制フロー試験器の一実施形態における鉛直断面と、実験に用いた3種類の底角の円錐部材の形態を示す図である。
【図2】実験結果におけるスランプ値と強制スランプ値との関係を示すグラフである。
【図3】実験結果におけるスランプフロー値と強制スランプフロー値との関係を示すグラフである。
【図4】従来例としてのL形フロー試験器を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…強制スランプフロー試験器、2…スランプコーン、3…円錐部材、4…平板
21…L形フロー試験器、22…鉛直部、23…水平部、24…仕切板
Claims (3)
- スランプコーンに未硬化のフレッシュコンクリートの試料を所定の高さまで詰め込み、前記スランプコーンを平板上で引き上げ、前記試料の前記平板上での広がりを測定するスランプフロー試験方法において、前記スランプコーンの下端内側に、前記スランプコーンの下端内径に対応する外径と所定の底角を有する円錐部材を設置し、前記スランプコーンの引き上げの際に、前記試料を該円錐部材の円錐面に沿って流下させることで、前記試料のフローを促進させることを特徴とする強制スランプフロー試験方法。
- 試料を充填するためのスランプコーンと、前記スランプコーンの下端内径に対応する外径と所定の底角を有する円錐部材と、前記スランプコーンおよび円錐部材が載置される平板とからなることを特徴とする強制スランプフロー試験器。
- 前記円錐部材の底角が18°〜35°であることを特徴とする請求項2記載の強制スランプフロー試験器。
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