JP2004067555A - 液相ペプチド合成用担体、液相ペプチド合成法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸化によってキノイド構造となる二つのヒドロキシル基をもつ少なくとも一環の芳香族炭化水素環を有し、ヒドロキシル基の一つがアミノ酸と結合する官能基としてアミノ酸と結合するもので、かつ、酸化によってキノイド構造となってアミノ酸との結合が開裂される液相ペプチド合成法用担体を用いること。特に低電圧の電気分解で上記の反応が実現できる。
【選択図】
図19
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特願2001−385493、特願2002−198242、特願2002−220569で開示された温度により相溶状態と相分離状態とが可逆的に変化する第一・第二の溶媒の組み合わせと第一の溶媒に対し可溶性であり、第二の溶媒に対し難溶性である担体にアミノ酸を逐次ペプチド結合させる液相ペプチド合成において使用される可溶性担体にて、担体とペプチドの結合の開裂を容易にする改善に関するものである。また、この改善された担体を用いた液相ペプチド合成法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医学、薬学、生物学など広範囲の分野においてペプチドの合成技術の重要性はいうまでもない。アミノ酸を特定の順序でペプチド結合させたペプチドは、抗原−抗体相互作用の研究、臨床診断に利用するペプチド抗原の研究、種々の遺伝子研究などきわめて多くの研究にかかわる。免疫でも感染源でもタンパク質の活性はたかだかアミノ酸5個から10個が結合したペプチドで決まる。したがって、その部分の合成は非常に重要であり研究用として多くの需要がある。
【0003】
もちろんアミノ酸10個以上結合したペプチドも重要である。合成可能とされるペプチドの結合数(残基数)の限界は50程度であり、このアミノ酸結合数の限界を超えたペプチドの合成技術も望まれている。研究の成果として、特定のタンパクやペプチドの薬効が検証されれば、化学合成ワクチン等の医薬品向けペプチドの大量需要が発生する。よって、商用規模の大量の需要に対応できるペプチド量産技術が強く望まれている。
【0004】
固体表面に化学的にアミノ酸を連結していく、固相合成法が現在のペプチド合成の主流となっている。しかし、この固相ペプチド合成法(Solid Phase Peptide Synthesis法)には、以下のような欠点がある。まず第一に、固体表面で化学反応を行わなければならないため、試薬が固体表面に接近しにくく、液相反応に比べると反応が起こりにくい。すなわち、固体担体がアミノ酸に比べてきわめて巨大な分子であり、その巨大分子のごく小さな反応部にアミノ酸を結合させる必要があるが、それが確率的に起こりにくい。そのため高価なアミノ酸反応試薬を大量に供給しなければならない。通常反応量の100倍程度を供給する。その結果として反応に関与できない反応試薬が大量に発生し無駄になる。
【0005】
第二には、n番目のアミノ酸の未反応部には次の結合工程で、n+1番目のアミノ酸がn番目として結合してしまうので所望のペプチドではない不純物となってしまう。こういった未反応が、個々の結合反応で5%しか発生しないとしても、50アミノ酸(残基)のペプチドを合成すると、最終的な収率はたったの7.7%となってしまう(0.95の50乗)。30アミノ酸(残基)でも21.5%である(0.95の30乗)。そのため反応時間を十二分に長く取らざるを得ない、という生産効率上の問題があった。この他にも固相ペプチド合成では、目的の反応が進行したことを簡便に確認することができない、固体担体が微小とはいえ数ミクロンの大きさがあるため反応槽をスケールアップすると、巨大なものになってしまう、固相担体が高価で再利用ができない(使い捨て)といった問題があった。
【0006】
上記のように固相合成法は、固体担体を用いて所望のアミノ酸を確実にひとつずつ結合していくことを可能ならしめる画期的なものではあったが、量産性の面などで欠点が多い。そこで、発明者は固相合成法の長所を確保しながら、液相でペプチド合成する新たな方法を開発した。それは、特願2001−254109「相溶性−多相有機溶媒システム」、特願2001−385493「相溶性−多相有機溶媒システムによりアミノ酸を逐次的に付加する液相ペプチド合成法」、特願2002−198242「液相ペプチド合成装置」、特願2002−220569「液相ペプチド合成用アミノ酸試薬」および”A liquid−phase peptide synthesis in cyclohexane−based biphasic thermomorphic systems”,Kazuhiro Chiba, Yusuke Kono, Shokaku Kim, Kohsuke Nishimoto, Yoshikazu Kitano and Masahiro Tada,.Chem. Commun., 2002, (Advance Article),The Royal Society of Chemistry, 1766−1767,2002,.(First published on the web 15th July 2002)に開示された液相合成法および液相合成装置である。
【0007】
固相合成法以前にもペプチドの液相合成がなされていた。しかし、固相合成法の普及後は主流ではなくなった。以下「液相合成」「液相ペプチド合成」と記載した場合は、本発明者が上記特許で開示した技術を示すものとする。液相ペプチド合成法を説明する。
【0008】
<液相ペプチド合成法の溶媒セット>
特願2001−254109「相溶性−多相有機溶媒システム」にて、温度により相溶状態と相分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と第二の溶媒のセット(組み合わせ)が開示されている。ここで第一の溶媒と第二の溶媒のそれぞれは、複数の溶媒の混合溶媒でもよい。
【0009】
液相ペプチド合成に好適な溶媒セットは、特願2001−385493「相溶性−多相有機溶媒システムによりアミノ酸を逐次的に付加する液相ペプチド合成法」に開示されているように、一方の溶媒または混合溶媒(第一の溶媒)を構成する有機溶媒がシクロアルカン系の化合物からなる。
【0010】
第一の溶媒は、基本的には低極性有機溶媒であり、該溶媒を構成する化合物群としては、アルカン、シクロアルカン、アルケン、アルキン、芳香族化合物などで、中でも好ましいものが、シクロアルカン系の化合物であり、特に好適なものとして「シクロヘキサン」を挙げることができる。シクロヘキサンのイス型−舟形配座異性体の変換が他の溶媒との関連で温度的に比較的穏やかな条件で起こることに関連していると推測できる。シクロヘキサンは融点が6.5℃と比較的高く、反応後の生成物などを固化して分離できるという利点もあり、最終工程である回収工程でもメリットがありこの面からも好ましい。
【0011】
一方、第一の溶媒と組み合わせる他方の溶媒または混合溶媒(第二の溶媒)を構成する有機溶媒は、基本的には高極性有機溶媒である。好ましいものとしては、ニトロアルカン、ニトリル、アルコール、ハロゲン化アルキル、アミド化合物およびスルフォキサイドからなる群から選択される少なくとも一種から構成されたものである。
【0012】
第二の溶媒は、さらに具体的には、ニトロアルカンのアルキル基は炭素数が1、2または3であり、ニトリルのアルキル基の炭素数が1、2または3であり、アミド化合物はN−ジアルキルまたはN−モノアルキルアミドのアルキル基およびアシル基またはホルミル基の炭素数の合計は6以下であり、アルコールは炭素数が8以下であり、スルフォキサイドのアルキル基は炭素数が1、2または3であり、またハロゲン化アルキルのアルキル基は炭素数が6以下である。
【0013】
上記の第一の溶媒と第二の溶媒との溶媒セットは、温度により可逆的に均一相溶混合溶媒系の状態(相溶状態)と複数相に分離した分離溶媒系の状態(相分離状態)とを可逆的に取り得る。
【0014】
<可溶性担体(液体担体)>
さて、特願2001−385493(液相ペプチド合成法)において上記の溶媒セットを用いてアミノ酸を逐次的に付加する液相ペプチド合成法を提案しているが、この合成法にて溶媒セットと共に重要なものは、固相ペプチド合成の固体担体に相当する「可溶性担体(液体担体)」である。これは、特願2001−254109(溶媒システム)において、「第一の溶媒あるいは第二の溶媒いずれか一方のみ溶解する反応に関与する化学成分」と記載したものに相当する。
【0015】
すなわち、第一の溶媒に対し可溶性であり、第二の溶媒に対し難溶性である化合物から誘導され、かつ、アミノ酸系物質と結合する液体の担体である。(ここで「アミノ酸系物質」とは、単独のアミノ酸あるいはアミノ酸残基、複数のアミノ酸がペプチド結合したペプチドを含む。)この担体は、反応状態で液体であるが、常温で固体であってもよい。機能について固体担体と等価であり、これと対比するため特願2002−198242「液相ペプチド合成装置」では「液体担体」と呼称していたが、本明細書では「可溶性担体」と記載する。以下に可溶性担体について説明する。
【0016】
従来技術の固相表面反応を液相の反応に置換すれば、従来問題であった反応性の悪さ(固体担体がアミノ酸に比べてきわめて巨大な分子であり反応部位に接近しにくい)を改善できる。さらに、前述の相分離する溶媒セットをうまく使えば、得られた反応生成物の分離が極めて容易に実現できる。このように画期的な利点をもつ液相ペプチド合成法の実現には、固相ペプチド合成の固体担体に相当する可溶性担体が必要で、発明者はこれを見出した。その可溶性担体は以下の機能を必要とする。
【0017】
すなわち可溶性担体は、ペプチドの形成を開始するアミノ酸との結合部を有すること、アミノ酸を順次結合させ伸長させたペプチド鎖を担持できること、さらにアミノ酸と結合した化合物および合成中のペプチド鎖を担持した化合物が、第一の溶媒に溶解されること、という機能である。つまり担体は、第一の溶媒への溶解性を高める部分を具備して可溶性であり、かつ、アミノ酸と結合する官能基を具備していればよい。
【0018】
これら機能を持つ可溶性担体の候補化合物(親シクロアルカン系溶媒部分とアミノ酸と結合する官能基を有するもの)は、下記の一般式A(化2)で表される芳香族炭化水素環からなる基本骨格化合物である。ここで、担体が具備すべき第一の溶媒への溶解性を高める部分は一般式A(化2)の(RX)nで表される炭素数10以上の炭化水素基をもつ親シクロアルカン系溶媒部分である。
【0019】
【化2】
【0020】
(RX)nのRは、O、S、またはNを結合原子として含んでいても良い炭素数10以上の炭化水素基であり、(RX)nのXはO、C、S、またはNを介して芳香族炭化水素環に結合する任意の残基があっても良い結合部、または、エステル基、イミノ基を介して芳香族炭化水素環に結合する結合部であり、(RX)nのnは、1から5の整数である。Rの例を具体的に図32、Xの例を具体的に図33、図34に示す。
【0021】
(RX)nにおいて、炭素数10以上の炭化水素基とある理由は、担体に結合するアミノ酸を第一の溶媒へ溶解されるのに十分な親シクロアルカン系溶媒部分を形成する必要があるからである。したがって、(RX)nのRの炭素数、および/またはnは、合成すべきペプチドのアミノ酸の数、ペプチドのアミノ酸種、またはペプチド分子量にもとづいて決定すべきである。つまり、ペプチド残基の数が多くなったり、親シクロアルカンでない残基をもつアミノ酸が多くなると、それらの数とアミノ酸種に応じて、炭素数、および/またはnを大きな値として設計製造する。(RX)nの分子量の目安としては合成すべきペプチドの分子量以上であるが、あくまで目安であって溶解実験などを行って実験的に決定するの好適である。
【0022】
一般式A(化2)において、L1は、アミノ酸と結合する水酸基、チオール基、アミノ基、またはカルボニル基と結合する単結合、該水酸基、チオール基、アミノ基、またはカルボニル基と結合する原子団、または点線とも結合して2環の縮合芳香族環を形成する原子団である。また、一般式A(化2)において、点線はHとの結合または前記L1と結合して前記縮合芳香族環を形成する原子団の結合である。
【0023】
さらにまた、担体が具備すべきアミノ酸と結合する官能基が、前記の炭素数が10以上の炭化水素基の分枝鎖および/または置換基にあってもよい。
【0024】
一般式A(化2)は、より具体的には、下記の一般式群B(化3)から選択される。一般式群B(化3)において、X、Rおよびnは一般式A(化2)と同じ。Q1は、単結合または炭化水素基であり、R2はアミノ酸と結合する水酸基、チオール基、アミノ基、またはカルボニル基であり、R3およびR4は、一般式C(化4)の基である。また、一般式C(化4)のR5は、アミノ酸と結合する水酸基、チオール基、アミノ基、またはカルボニル基である。(ここで、R2、R3、R4、R5は後で記載されるR1、R2、R3、R4、R5とは同一ではないので注意されたい。)
【0025】
【化3】
【0026】
【化4】
【0027】
前に説明した第一の溶媒は、分離状態において、上記可溶性担体および可溶性担体とアミノ酸系物質との結合物質を溶解するが、可溶性担体と結合していないアミノ酸(ペプチド結合させるべきアミノ酸)は溶解しない(難溶である)。ここで、アミノ酸系物質とは、単一のアミノ酸あるいはペプチドである。
【0028】
また逆に、第二の溶媒は、分離状態において、アミノ酸(ペプチド結合させるアミノ酸)を溶解するが、上記可溶性担体および可溶性担体とアミノ酸系物質との結合物質を溶解しない(難溶である)特性を持っている。
【0029】
可溶性担体の例を図11の2に示す。2は、前記の一般式群Bにおいて、RがC18H37−であり、XがOであり、nが3であり、QがCH2であり、R2がOHである。名称は、(3,4,5−トリオクタデシルオキシフェニル)メタン−1−オール、〔(3,4,5−trioctadecyloxyphenyl)methan−1−ol 〕である。この可溶性担体1は、第一の溶媒に対し可溶性であり、第二の溶媒に対し難溶性である化合物から誘導され、かつ、アミノ酸系物質と結合する。
【0030】
<液相ペプチド合成法>
可溶性担体は2に限定されることはなく、本明細書に記載(後述)するような改善物質でもよい。ここでは、この可溶性担体具体例2を用いて、本発明者らが先願特許で開示した液相ペプチド合成法を説明する。図11から図14が、液相合成でR1、R2、R3、R4残基アミノ酸ペプチドを合成する反応フローの説明図である。
【0031】
図11は、N末端を保護され、C末端を活性化された(活性化基Xを結合された)R1残基アミノ酸12のC末端を、可溶性担体2に結合する反応(図11中の8)を示す反応フロー図である。ここで、可溶性担体2は、第一の溶媒(A)に2が溶解された第一溶媒溶液(A1)という溶液の状態であり、R1残基アミノ酸12は、あらかじめ第二の溶媒(B)に溶解され、第二溶媒溶液(B12)として準備される。(A、B、A1、B12という表記は図11から図14では略す。)
【0032】
前記第一の溶媒(A)に2が溶解された第一溶媒溶液(A1)と、R1残基アミノ酸12が第二の溶媒(B)に溶解された第二溶媒溶液(B12)とが混合される。第二溶媒溶液(B12)は多少過剰に投入されるのが好ましい。その理由は、相対的に第一溶媒溶液が多いとすべてのペプチド反応が生じても、未反応の末端をもつ担体が残留するからである。これは固相合成法と同様であるが、固相合成法のように必要量の100倍も過剰に投入する必要はない。
【0033】
両溶液混合後、それらが相溶状態となる温度に加熱される。すると、可溶性担体2の末端はアミノ酸と結合する水酸基であるので、R1残基アミノ酸C末端とペプチド結合反応(図11中の8)して1afとなる。この1afも、相溶化状態の両溶媒に溶けている。
【0034】
ペプチド反応後、固相合成では未反応アミノ酸等との分離のために洗浄除去などを行っていたが、液相合成では、第一溶媒溶液と第二溶媒溶液とが相分離する温度に冷却すればよい。このことで、1afは分離された第一の溶媒(A)に溶解されたA1afとして、第二溶媒溶液から分離される。その分離状態で第二溶媒溶液を排除する。
【0035】
排除される第二溶媒溶液中には、過剰に投入したため未反応で残留したR1残基アミノ酸、および反応副生物などが溶解している。この分離操作は、従来と比較にならない単純操作であり、かつ不純物の混入もきわめて少ない。したがってクロマトグラフィ等による精製工程も省略が可能である。
【0036】
分離状態にある第一・第二溶媒溶液にて、第二溶媒溶液を排除するのであるが、この排除操作で第一溶媒溶液だけが残留することが重要である。したがって歩留まりは悪くなるが、第二溶媒溶液と共に、多少の第一溶媒溶液も排除してもかまわない。残留した第一溶媒溶液には、1にR1残基アミノ酸C末端が結合した1afが溶解している(A1af)。
【0037】
次の工程である図12では、第一溶媒溶液中の可溶性担体1とR1残基アミノ酸が結合した物質1afのアミノ末端を保護しているFmocを除去して活性化(図12中の10)する。図11同様に、N末端を保護したR2残基アミノ酸12を、あらかじめ第二の溶媒に溶解し、第二溶媒溶液B12として準備し、これら第一溶媒溶液A1aと第二溶媒溶液B12とを混合する。同様に第二溶媒溶液B12は過剰に混合されるのが好ましい。
【0038】
その混合後、再び混合液を相溶化温度に加熱して、相溶状態で溶液中の1aと、R2残基アミノ酸C末端をペプチド結合させる(図12中の11)。その結果、相溶化溶液中に可溶性担体1にR1、R2残基ペプチドが結合した物質1bfができる。
【0039】
上記ペプチド反応後、第一溶媒溶液と第二溶媒溶液とが相分離する温度に冷却し、1bfを分離された第一溶媒溶液に溶解されたA1bfとし、第二溶媒溶液から分離する。その分離状態で第二溶媒溶液を排除する。同様に第二溶媒溶液と共に、多少の第一溶媒溶液も排除してもかまわない。
【0040】
次の工程である図13も同様に、第一溶媒溶液中の可溶性担体2とR1、R2残基ペプチドが結合した物質1bfのアミノ末端を保護しているFmocを除去して活性化(図13中の10)する。同様に、N末端を保護したR3残基アミノ酸12を、あらかじめ第二の溶媒に溶解し、第二溶媒溶液B12として準備し、これら第一溶媒溶液A1bと第二溶媒溶液B12とを混合する。
【0041】
その混合後、再び混合液を相溶化温度に加熱して、相溶状態で溶液中の1bと、R3残基アミノ酸C末端をペプチド結合させる(図13中の11)。その結果、相溶化溶液中に可溶性担体1にR1、R2、R3残基ペプチドが結合した物質1cfができる。(図14も同様であるので説明は略す。)以下同様の操作でペプチドを伸長させていく。
【0042】
このように一連のペプチド結合を行い、それが完了したら、ペプチドC末端を可溶性担体から開裂し、必要に応じて保護基を除去したり付加したりする。このクリーベイジ(cleavage)操作は固相合成と同様である。したがって、開裂操作について問題があるとすると液相合成でも問題解決されていない。これが本発明の「解決しようとする課題」であり、以下に説明する。
【0043】
【発明が解決しようとする課題】
固相合成、液相合成において、ペプチド合成のあとで担体とペプチドを開裂する必要がある。このクリーベイジ(cleavage)操作は、TFA(トリフルオロ酢酸)やフッ化水素などの弱酸を用いて行われる。一方、合成すべきペプチドの要素であるアミノ酸残基には多様な側鎖があり、なかにはペプチド合成プロセスで反応してしまうような反応性の強いものがある。それゆえ、側鎖の種類に応じた多種多様の保護基をつけて保護している。すなわち合成ペプチドには、C末端N末端以外にも上記の保護基が多数結合している。合成の最終段階の開裂操作ならば、これらの保護基も担体とペプチドの開裂とともに脱保護してしまえばよい。しかし、後で述べるような理由で担体とペプチドの開裂だけを行い、その他の保護基はキープしたい場合がある。
【0044】
開裂操作は、以上のようにTFA(トリフルオロ酢酸)やフッ化水素などの腐蝕性あるいは有毒の薬品を使うこと、および、へたをすると必要な側鎖保護基を離脱させてしまい、せっかく合成したペプチドの一部に望まぬ側鎖反応が起こり、純度が落ちてしまう、といったことになりかねない厄介な操作である。それで、開裂操作は頻繁に行えるものではなく、ペプチド合成の最終段階で一回だけ慎重に行う、のが実状であった。
【0045】
さて本案第一の課題は、上記のような開裂操作が、TFA(トリフルオロ酢酸)やフッ化水素などの腐蝕性あるいは有毒の薬品を使用する危険を伴う作業であったため、安全な操作に置換する改善が望まれていた。これを実現することが課題である。
【0046】
第二の課題は、この開裂操作を何度でもできる簡潔な操作、なおかつ温和な操作で、かつ特異性の強く、担体とペプチドの開裂だけを行い、その他の保護基はキープできる操作にすることも課題とする。この第二の課題の理由(ニーズ)はあとで説明する。
【0047】
開裂操作を簡便なものに置換する公知技術の例としては、特開平09−132591「光照射装置を具備するペプチド合成機(株式会社島津製作所)」がある。この開裂技術は、反応槽内で光により開裂するフォトリンカーを介して固体担体に結合させるペプチド合成器、その反応槽内に光を照射する光照射装置が連結されている技術である。これは、ペプチド合成装置の反応槽内でペプチドと固体担体であるレジンの光化学反応による開裂(クリーベイジ)でペプチド回収するものである。具体的には、ペプチド合成後にペプチド合成機内で光反応による開裂を効率よく行なうことを可能とする光照射装置を具備するペプチド合成機、ペプチド固相合成用担体(レジン)としてポリスチエンジビニルベンゼン共重合体を用い、フオトリンカ−として、o−ニトロベンジル型リンカ−を用い、反応槽内で反応液の吸引注入ラインより結合前処理後のアミノ酸、縮合剤等の反応試薬を順次供給してペプチドレジンを合成した後、得られたレジンをDMF等で膨潤させる。その後、反応槽の底部から窒素ガスをバブリングさせながら、光照射用光源から光フアイバ−を通して紫外線を照射して、ペプチドレジンを効率的にクリ−ベイジする、といった技術である。
【0048】
上記光開裂技術は、フォトリンカーが不安定であるためにペプチド合成の最中に分解しやすいこと、それで反応装置全体を遮光しなければならない、という実用上の問題がある。特に担体の機能として重要な能力であるペプチド合成中にしっかりと結合している能力に不安がある(光分解しやすい)のが致命的である。光開裂技術以外にも、開裂操作を簡便なものに置換する公知技術は提案されているが、光開裂技術を含め実用に値するものはない。
【0049】
ここで、第二の課題の理由(ニーズ)を説明する。固相、液相合成ともにN末端のFmoc保護の技術が確立したこともあって、C末端からN末端へペプチド合成されている。しかしながら、合成後の開裂→開裂されたペプチドC末端の活性化は容易であるので、開列さえ簡素化されれば、C末端側に伸長させるペプチド合成ができるはずである。これが第二の課題の理由(ニーズ)である。具体的なニーズであり、本案方法の実施例でもある課題を以下に挙げる。
【0050】
<C末端に反応保護困難な残基(側鎖)をもつアミノ酸があるペプチド合成>
たとえば、図6に示すメチオニンエンケファリンは、麻酔作用のある薬理上重要なペプチドであるが、そのC末端にサルファ(S)をもつ残基がある。このサルファが非常に反応性である。にもかかわらず、この部分を保護することが困難である。よって従来のペプチド合成では、まずこのメチオニン(Met)を担体に結合させ、Phe、Gly、Gly、Tyrの4回のペプチド合成を行う。これはきわめて不利である。なぜなら反応性のメチオニンが4回にわたって反応にさらされるため、望まない反応が起こる確率も4倍になってしまう。
【0051】
この不利を回避するには、先にメチオニン以外の4残基アミノ酸ペプチドを合成しておき、その後で、かかる4残基アミノ酸ペプチドのC末端を活性化してメチオニンと結合させればよい。それには4残基アミノ酸ペプチドの開裂が必須である。一般的に、ペプチドを構成するアミノ酸で、反応性で不安定であるアミノ酸の残基R0をC末端にもつペプチドを合成するには、図7の「b」に示すようにR0以外のアミノ酸を結合させ、C末端を活性化して、別途R0だけ結合させた図7「a」のR0残基アミノ酸N末端に結合させればよい。それにはR0以外のアミノ酸残基ペプチド(部分ペプチド)の開裂が必須である。
【0052】
<基本ペプチドのC末端結合コンビナトリアル合成>
またたとえば、図8のように基本ペプチドがあって、その両末端にさまざまなアミノ酸を結合させるコンビナトリアル合成において、新規な活性ペプチドを探索的に求める場合にも、同様のニーズがある。図8の「Njoint−conbi」に示すN末端のコンビナトリアル合成は、基本ペプチドを担体に結合したまま大量に合成し、Rn1、Rn2、、、、Rnnで示す結合すべきアミノ酸残基のアミノ酸を付加合成すれば比較的容易に合成できる。一方、図8の「Cjoint−conbi」に示すC末端のコンビナトリアル合成では、担体結合部であるRc1、Rc2、、、、Rcnで示すアミノ酸残基のアミノ酸は個別に異なる試薬で合成していかざるを得ない。そのあとで基本ペプチド部分を付加結合すればよいが、合成される過程の物質はばらばらであって製造上好ましくない(量産できない)。基本ペプチドC末端の開裂が確実にできればこの問題は解決する。
【0053】
<長鎖ペプチドの分割合成>
さらにまた、図9のように長鎖(16残基)のペプチドを合成するにあたって、8残基ペプチドを別途に平行作業で合成して、最後にそれらを結合すれば合成時間の短縮になる。このような長鎖ペプチドの分割合成にも開裂が必須である。また、開裂が簡便で安全、ハイスル−プット(短時間に大量処理可能)であるプロセスであれば、図10に示すように長鎖ペプチドを2、4、8、16、32・・・と倍々で伸長させる合成ストラテジィも成立し実現可能である。以上のように、安全、簡素、ハイスル−プットである担体結合ペプチドの開裂操作が現実のものとなれば、C末端に反応保護困難な残基(側鎖)をもつアミノ酸があるペプチド合成、基本ペプチドのC末端結合コンビナトリアル合成、長鎖ペプチドの分割合成が可能になる。本案は、安全、簡素、ハイスル−プットである担体結合ペプチドの開裂技術を提供する。
【0054】
【課題を解決するための手段】
<酸化してキノンとなる基本構造>
本案は、ベンゼノイド構造とキノイド構造が酸化還元よって可逆変化することを利用する。
この可逆変化の特徴を液相用の可溶化担体に応用することを発明した。キノンとは、芳香族化合物のCH原子団二つをCO原子団に変え、さらに二重結合キノイド構造にするのに必要なだけ動かしてできる化合物の総称である。ここでキノイド構造とは、ベンゼノイド(benzenoid)構造(ベンゼン型構造)に対するもので、ベンゼノイドの環内二重結合が一つ減って、環外二重結合が二つできる。キノイド(quinoid)はキノノイド(quinonoid)ともいう。特に、o位(オルト位)、p位(パラ位)に二つのヒドロキシル基をもつ芳香族化合物は容易に酸化されてキノンになりやすい。
【0055】
図1から図5が、上記の具体例である。図1が、一環(単一環)芳香族炭化水素環の場合の酸化還元によるベンゼノイドとキノイド構造の変換、図2が、二環芳香族炭化水素環の場合、図3が、三環芳香族炭化水素環の場合、図4が、四環芳香族炭化水素環の場合その1、図5が、四環芳香族炭化水素環の場合その2である。特に容易に酸化されてキノンになりやすい、o位(オルト位)、p位(パラ位)に二つのヒドロキシル基をもつ例を挙げたが、本案はこれに限定されない。
【0056】
さて、本案の典型的な担体の例を図15の1に示す。これは、p位(パラ位)に二つのヒドロキシル基をもつもので、酸化されて基本化合物がp−(パラ)ベンゾキノンになる例である。本案の担体が具備すべき特性は、特願2001−385493、特願2002−198242、特願2002−220569で開示された可溶性担体のそれと同様である。すなわち、第一の溶媒への溶解性を高める部分を具備することで可溶性であり、かつ、アミノ酸と結合する官能基を具備する担体である。
【0057】
本案担体の特徴は、酸化によって二つのヒドロキシル基がキノイド構造となる二つのヒドロキシル基をもつ少なくとも一環の芳香族炭化水素環を有し、前記ヒドロキシル基の一つがアミノ酸と結合する官能基としてアミノ酸と結合するものであり、かつ、酸化によってキノイド構造となることによって前記アミノ酸との結合が開裂されることである。
【0058】
図15は、図11の先願特許記載の担体例2を本案の可溶性担体1に置換した反応フロー図であり、図16も同じく図12の2を本案の可溶性担体1に置換した反応フロー図であり、図17も同じく、図13の2を本案の可溶性担体1に置換した反応フロー図であり、図18も同じく図14の2を本案の可溶性担体1に置換した反応フロー図である。これらの合成における説明は従来技術で述べたものと同一であるので略す。
【0059】
図19が、本案の可溶性担体1と合成ペプチドの結合を酸化によって開裂する反応フロー図であり、本案が新規性をもつ開裂技術である。従来は、この開裂操作はTFA(トリフルオロ酢酸)やフッ化水素などの腐蝕性あるいは有毒の薬品で危険を伴う作業であった。本案では、危険でない任意の温和な酸化反応でそれが可能である。好適な酸化の方法は、溶液内の電気化学反応であって、さらに好適な印加電圧はアミノ酸に影響がない1.5ボルト以下で十分である。したがって、従来問題であった開裂で必要な側鎖保護基を離脱させてしまい、せっかく合成したペプチドの一部に望まぬ側鎖反応が起こることは皆無である。
【0060】
<担体構成のバリエーション>
さて担体の構成に説明を戻す。第一の溶媒が、シクロアルカン系の化合物である場合に、本案担体が具備すべきシクロアルカン系の化合物への溶解性を高める部分については、特願2001−385493、特願2002−198242、特願2002−220569で開示された可溶性担体のそれと同様である。すなわち、第一の溶媒が、シクロアルカン系の化合物からなり、担体が具備する第一の溶媒への溶解性を高める部分が、芳香族炭化水素環に結合した下記の一般式S(化5)の(RX)nで表される炭素数が10以上の炭化水素基をもつ親シクロアルカン系溶媒部分であり、Rは、O、S、またはNを結合原子として含んでいても良い炭素数10以上の炭化水素基であり、XはO、C、S、またはNを介して芳香族炭化水素環に結合する任意の残基があっても良い結合部、または、エステル基、イミノ基を介して芳香族炭化水素環に結合する結合部であり、nは、芳香族炭化水素環の数をmとして、2m+2以下の整数である。
【0061】
【化5】
【0062】
Rの例を具体的に図32、Xの例を具体的に図33、図34に示す。これらも特願2001−385493、特願2002−198242、特願2002−220569で開示された可溶性担体のそれと同様である。(RX)nにおいて、炭素数10以上の炭化水素基とある理由は、担体に結合するアミノ酸を第一の溶媒へ溶解されるのに十分な親シクロアルカン系溶媒部分を形成する必要があるからである。したがって、(RX)nのRの炭素数、および/またはnは、合成すべきペプチドのアミノ酸の数、ペプチドのアミノ酸種、またはペプチド分子量にもとづいて決定すべきである。つまり、ペプチド残基の数が多くなったり、親シクロアルカンでない残基をもつアミノ酸が多くなると、それら数とアミノ酸種に応じて、炭素数、および/またはnを大きな値として設計製造する。(RX)nの分子量の目安としては合成すべきペプチドの分子量以上であるが、あくまで目安であって、溶解実験などを行って実験的に決定するのが好適である。これも特願2001−385493、特願2002−198242、特願2002−220569で開示された可溶性担体のそれと同様である。
【0063】
冗長であるが図23、図24は図19と同じ図であり、図中の記号「AA」の説明図である。AAは、N末端Nのないアミノ酸あるいはペプチドの一部である。図25は、AAを用いて図19の本案担体第一例である1のRの炭素数を任意(n1、n2)にしたバリエーションである。この担体のバリエーションのn1、n2は、前述のように合成すべきペプチドのアミノ酸の数、ペプチドのアミノ酸種、またはペプチド分子量にもとづいて、実験などで検証して決定すればよい。図26は、図19の本案担体第一例である1を本案担体第二例である三環芳香族炭化水素環の担体に置換した図である。図27は、本案第一例の担体1の、一環(単一環)芳香族炭化水素環としての図25以外のバリエーションを説明する図である。図28は本案第三例である二環芳香族炭化水素環の担体とそのバリエーションを説明する図である。図29は、本案第二例の担体のバリエーションを説明する図である。図30と図31は本案第四例の四環芳香族炭化水素環の担体とそのバリエーションを説明する図である。このように本案は多彩なバリエーションがある。
【0064】
これら例以外にも本案の担体は多彩な化合物を用いることができる。芳香族炭化水素環の数mは任意であるし、そのmに従属するが、環に結合する親シクロアルカン系溶媒部の数nは、2m+2以下の任意整数であってよい。さらにRの例を具体的に図32、Xの例を具体的に図33、図34に示したが、これらも任意のバリエーションがあり例示した図に限定されない。
【0065】
【発明の実施の形態】<請求項6、7の方法クレーム>
以上説明した本案担体の利用した液相ペプチド合成法には二通りがある。第一は合成ペプチドの最終的な回収のために開裂操作を容易にした合成法(請求項6)。第二は合成過程において、部分ペプチドのC末端を開裂し、これを活性化し、その他のプロセスで合成された他のアミノ酸かペプチドのN末端に結合させる合成ストラテジィである(請求項7)。
【0066】
どちらの方法、ストラテジィにおいても、温度により相溶状態と相分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と第二の溶媒にて、これらを相溶状態にして溶液の酸化を行い、担体をキノイド構造とすることによって、担体とアミノ酸との結合部を開裂する開裂操作を行うことが特徴である。それ以外は特願2001−385493、特願2002−198242、特願2002−220569で開示された可溶性担体のそれと同様である。
【0067】
すなわち、最終的な回収のために開裂操作を容易にした合成法(請求項6)としては、温度により相溶状態と相分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と第二の溶媒の組み合わせを用いて、第一の溶媒に対し可溶性で、第二の溶媒に対し難溶性で、アミノ酸と結合する官能基を有する担体に合成すべきペプチドのアミノ酸または合成すべきペプチドの部分ペプチドを逐次ペプチド結合させるべく、第一の溶媒に担体または担体とアミノ酸の結合物または担体とペプチドの結合物のいずれかを溶解した第一溶媒溶液と、第二の溶媒に結合前アミノ酸または結合前ペプチドを溶解した第二溶媒溶液とを混合する混合ステップと、前記の混合溶液を加熱して相溶状態となる温度以上に保持する混合溶液の相溶状態保持ステップと、前記相溶状態の混合溶液を冷却して相分離状態となる温度以下に保持する混合溶液の相分離状態保持ステップと、前記の相分離状態で第二溶媒溶液を排除する排除ステップが連続した混合、相溶状態保持、相分離状態保持、排除の連続工程を少なくとも一回は有する、液相ペプチド合成方法であって(以上開示特許と同じ)、担体が、第一の溶媒への溶解性を高める部分を具備することで可溶性であり、かつ、酸化によって二つのヒドロキシル基がキノイド構造となる二つのヒドロキシル基をもつ芳香族炭化水素環を有し、前記ヒドロキシル基の一つがアミノ酸と結合する官能基としてアミノ酸と結合するものであり、前記相溶状態保持ステップにおいて第一溶媒溶液と第二溶媒溶液とが相溶状態となった溶液を酸化して、担体をキノイド構造とすることによって、担体とアミノ酸との結合部を開裂する開裂操作を行い、開裂されたペプチドを合成すべきペプチドとして回収することを特徴とした液相ペプチド合成方法である。
【0068】
また、その他のプロセスで合成された他のアミノ酸かペプチドのN末端に結合させる合成ストラテジィ(請求項7)としては、担体に合成すべきペプチドのアミノ酸または合成すべきペプチドの部分ペプチドを逐次ペプチド結合させるべく、(この部分ペプチドがあることが請求項6と異なる)相分離状態で第二溶媒溶液を排除する排除ステップが連続した混合、相溶状態保持、相分離状態保持、排除の連続工程を複数回繰り返す、液相ペプチド合成方法であって、前記相溶状態保持ステップにおいて第一溶媒溶液と第二溶媒溶液とが相溶状態となった溶液を酸化して、担体をキノイド構造とすることによって、担体とアミノ酸との結合部を開裂する開裂操作を行い、前記開裂操作を行った相溶状態保持ステップに続く次の排除ステップで排除された第二溶媒溶液を、該排除ステップに続く次の連続工程の混合ステップにおける第二溶媒溶液とすることを特徴とした液相ペプチド合成方法である。
【0069】
最終的な回収のために開裂操作を容易にした合成法(請求項6)を説明する図が、図35である。図35「a」「b」それぞれが、混合、相溶状態保持、相分離状態保持、排除の連続工程である。この連続工程を少なくとも一回は行って相溶状態でペプチド合成反応する。ペプチド合成反応はアミノ酸がダメージされない60℃以下の温度でよい。相溶温度も第一・第二溶媒の選定でそのような温度に設定可能である。むしろ30℃以下の低温でアミノ酸をダメージしないで合成したいので、溶媒の組み合わせ、あるいは第一・第二溶媒どちらも複数の有機溶媒のブレンドでよいのでブレンド比率を工夫して温度を設定できる。これは特願2002−198242に詳しく記載されている。
【0070】
図36の「a」が回収を示す図である。全ペプチドとして合成が完了したら、その相溶状態で溶液を温和に酸化して開裂する。開裂後は図37のように一度温度を下げて相分離させ、第二溶媒溶液に溶け出した合成ペプチドを回収すればよい。合成したとき用いた第二の溶媒でペプチド回収することが難しい場合には、図38のような第二溶媒溶液の置換を行えばよい。すなわち、全ペプチドとして合成が完了しても開裂はせず、いったん一度温度を下げて相分離させ、第二溶媒溶液(ペプチド回収することが難しい溶媒)を排除する。その後ペプチド回収しやすい第二の溶媒を加え混同し温度を上げて相溶状態とし、そこで開裂する。そうすればそのあとで相分離温度にしたとき合成ペプチドは、あとで加えたペプチド回収しやすい第二の溶媒に溶解しているので回収容易である。
【0071】
さて、その他のプロセスで合成された他のアミノ酸かペプチドのN末端に結合させる合成ストラテジィ(請求項7)を説明する。図20が本案によるC末端側が反応性で不安定な残基をもつペプチド合成法の説明図であって、図19で開裂されたR1、R2、R3、R4残基アミノ酸のN末端を活性化したものと、本案担体と反応性で不安定であるアミノ酸残基R0アミノ酸との結合物質1zとを結合させて、C末端側が反応性で不安定な残基をもつペプチド合成できる。これは従来理想的合成法であって実用的実施が困難であった図7を実施するものである。
【0072】
図19で開裂されたR1、R2、R3、R4残基アミノ酸は、担体から離脱されているので第一溶媒には溶解しない。そのため、相分離状態では第二溶媒溶液に溶解している。そのC末端を活性化し、図20の合成の第二溶媒溶液として混合し相溶化、合成する。ここにおいて、R1、R2、R3、R4残基アミノ酸は合成すべきペプチドの部分ペプチドである。これを図20でも12pと記載した。部分ペプチドから見れば、そのC末端にR0を伸長することになる。このように、従来は困難だったC末端へのペプチド伸長ができるので、上記のようなC末端側が反応性で不安定な残基をもつペプチド合成が、部分ペプチドに対してC末端アミノ酸を結合する方式で可能になる。
【0073】
図36の「b」が部分ペプチドを合成するまでを示す図である。それに続く図39「a」が部分ペプチドを第二溶媒溶液に分離されるまである。この分離された第二溶媒溶液が、開裂操作を行った相溶状態保持ステップに続く次の排除ステップで排除された第二溶媒溶液である。それをC末端活性化して、B12pの矢印として図示されるように、該排除ステップに続く次の連続工程の混合ステップにおける第二溶媒溶液として混合する。それが図39「b」の混合であり、相溶化、相分離と進む。その後は他のプロセスと同様である。
【0074】
ここにおいて、次の連続工程の混合ステップとは、あくまで時間的に連続する「次の」であって、混合する第二溶媒溶液を分離した第一溶媒溶液に再結合するのではない。(分離したものをまた同じように混ぜるのではない) 混合させるべき第一溶媒溶液は、その他のプロセスで合成された他のアミノ酸かペプチドが溶解されたものである。たとえば前例の場合、反応性で不安定であるアミノ酸残基R0アミノ酸と担体の結合物質1zが溶解されている(A1z)。
【0075】
さらにまた、従来は実用的実施が困難であった長鎖ペプチドを2、4、8、16と多分割して合成する理想的合成法である図10も、本案の実施例である。簡単な4残基ペプチド合成で説明する。すなわち、図21にてR3、R4残基アミノ酸を開裂して、そのC末端を活性化し、図22のようにR1、R2残基アミノ酸のN末端を活性化したものとペプチド合成する。これは2から4残基ペプチドの合成例である(図10の2R→4R列)が、8、16、32・・・であっても全く同様である。図21のR3、R4残基アミノ酸開裂が、図39「a」で行われ、その第二溶媒溶液が、部分ペプチドをR3、R4残基アミノ酸ペプチドを12pとするB12pとして分離される。その後、その第二溶媒溶液が、排除、C末端活性化され、図39「b」のB12pとして、別プロセスで合成された図22のR1、R2残基アミノ酸のN末端を活性化したものを溶解した第一溶媒溶液と混合、相溶化されペプチド合成される。
【0076】
同様に、従来実用的実施が困難であった図8の基本ペプチドのC、N末端に多様なアミノ酸を結合させてなるコンビナトリアル合成のC末端結合バリエーションも、基本ペプチドを液相合成で量産した後に開裂して、それを第二溶媒溶液中の12pとし、B12pを排除、それをコンビナトリアル合成したい複数のC末端アミノ酸を第一の溶媒に溶解した第一溶媒溶液群に振り分け、それぞれ図39「b」の混合操作をすればよい。ここでは基本ペプチドが量産処理できるので実用的である。
【0077】
また同様に、従来実用的実施が困難であった図9の長鎖ペプチドを二つに分割して合成し、それらを結合させる理想的合成法もごく容易に実現可能である。説明は略す。どの実施例も、C末端伸長する部分だけをみれば、混合、相溶状態保持、相分離状態保持、排除の連続工程が二回の繰り返しであって、第一の連続工程の排除ステップで排除された第二溶媒溶液にC末端活性化したアミノ酸あるいは部分ペプチドが溶解し、それを第二の(別の)連続工程の混合ステップにおける第二溶媒溶液として混合している。その第二の(別の)連続工程の混合ステップにおける第一溶媒溶液のアミノ酸またはペプチドのC末端での結合(伸長)が実現されている。
【0078】
本案では、C末端活性化したアミノ酸あるいは部分ペプチドができるので、そのあとのペプチド合成は本案以外の合成法に、これらC末端活性化したアミノ酸あるいは部分ペプチドをもちいても良い(組み合わせプロセスとしても良い)。たとえば、図39「b」のプロセスは、特願2002−198242、特願2002−220569で開示された可溶性担体を用いたプロセスでも良い。
【0079】
<酸化と還元の電気化学反応>
以上説明した本案の開裂操作は、図40から図42に示す電気化学反応(電気分解)で行うことが好適である。担体の酸化、開裂は電気分解陽極で起こる。図から明らかなように電気分解の初期(図40)には、溶液中に含有する水分が陰極で反応し水素を発生させる。電気分解中期(図41)には、酸化されてできたキノンが陰極で還元され担体として再生される。反応の最終段階(図42)では、還元された担体がさらに陽極で酸化されキノンとなり、キノンと担体の酸化還元の平衡状態となる。
【0080】
上記のような反応を利用し、陰極にて起こる還元によってキノイド構造をベンゼノイド構造になして担体を再生する再生操作をおこなわせることができる。すなわち、開裂操作の後に担体が含まれる溶液を還元して担体を再生する再生操作を加えることができ、担体の再利用に役立てられる。図40から図42に示すように、開裂操作の酸化または再生操作の還元は、溶液内に配設された正負の電極間に電圧を印加する電気化学反応で行われる。好適な印加電圧はアミノ酸、アミノ酸残基、側鎖保護基などに影響をあたえない1.5ボルト以下で十分である。
【0081】
この印加電圧について補足すると、より正確な電圧を得るため、溶液中に参照電極参照電極を入れてそれを基準に測定している。具体的には、印加電圧が銀/塩化銀(飽和塩化カリウム水溶液)参照電極に対して1.5ボルト以下である。
【0082】
また、特願2002−220569で記載されているように、本案担体のアミノ酸と結合する官能基(ヒドロキシル基の一つ)にアミノ酸が結合した液相ペプチド合成用アミノ酸試薬を提供することは容易である。この試薬は本案担体のアミノ酸と結合する官能基にアミノ酸のC末端が結合したものであり、該アミノ酸のN末端に保護基が結合されたものであれば好適である。また、同じく特願2002−220569で記載されているように、担体と結合したアミノ酸の種類を弁別するために、該アミノ酸の種類に応じて物性の異なる添加物を混合し、好適にはその添加物が色素を含む光学材料物質、または導電物質であり、アミノ酸の種類に応じて変える添加物の物性が、色を含む光学物性、または電気導電度であってもよい。さらにまた、かかる試薬にて、相分離状態の第一の溶媒と第二の溶媒の界面を検出するために、固有の物性を具備し、かつ第一の溶媒または第二の溶媒への溶解性を高める部分を具備した添加物を混合してもよく、好適にはその添加物が色素を含む光学材料物質、または導電物質であり、添加物の固有の物性が、色を含む光学物性、または電気導電度であってもよい。
【0083】
【発明の効果】
さて本案第一の効果は、開裂操作が、TFA(トリフルオロ酢酸)やフッ化水素などの腐蝕性あるいは有毒の薬品を使用する危険を伴う作業がなくなり、安全な操作となり、大幅な改善が実現できた。反応容器も腐蝕対策の必要が無くなる。
【0084】
第二の効果は、開裂操作が何度でもできる簡潔なものとなり、なおかつ温和な低電圧の電解反応であるので、担体とペプチドの開裂だけを行い、その他の保護基には影響がなく保護基をキープできるようになった。それで、C末端に反応保護困難な残基(側鎖)をもつアミノ酸があるペプチド合成、基本ペプチドのC末端結合コンビナトリアル合成、長鎖ペプチドの分割合成の実施が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸化還元によるベンゼノイドとキノイド構造の変換(一環芳香族炭化水素環の場合)
【図2】酸化還元によるベンゼノイドとキノイド構造の変換(二環芳香族炭化水素環の場合)
【図3】酸化還元によるベンゼノイドとキノイド構造の変換(三環芳香族炭化水素環の場合)
【図4】酸化還元によるベンゼノイドとキノイド構造の変換(四環芳香族炭化水素環の場合1)
【図5】酸化還元によるベンゼノイドとキノイド構造の変換(四環芳香族炭化水素環の場合2)
【図6】C末端側が反応性で不安定な残基をもつメチオニンであるメチオニンエンケファリンの固相合成の説明図
【図7】C末端側が反応性で不安定な残基をもつペプチドの理想的合成法の説明図
【図8】基本ペプチドのC、N末端に多様なアミノ酸を結合させてなるコンビナトリアル合成の説明図
【図9】長鎖ペプチドを二つに分割して合成し、それらを結合させる理想的合成法の説明図
【図10】長鎖ペプチドを2、4、8、16と多分割して合成する理想的合成法の説明図
【図11】可溶性担体2にR1残基アミノ酸を結合する反応フロー図
【図12】可溶性担体2とR1残基アミノ酸が結合した物質1afのFmocを除去活性化し、R2残基アミノ酸を結合する反応フロー図
【図13】可溶性担体2とR1、R2残基アミノ酸鎖が結合した物質1bfのFmocを除去活性化し、R3残基アミノ酸を結合する反応フロー図
【図14】可溶性担体2とR1、R2、R3残基アミノ酸鎖が結合した物質1bfのFmocを除去活性化し、R4残基アミノ酸を結合する反応フロー図
【図15】図11を本案の可溶性担体1に置換した反応フロー図
【図16】図12を本案の可溶性担体1に置換した反応フロー図
【図17】図13を本案の可溶性担体1に置換した反応フロー図
【図18】図14を本案の可溶性担体1に置換した反応フロー図
【図19】本案の可溶性担体1と合成ペプチドの結合を酸化によって開裂する反応フロー図
【図20】本案によるC末端側が反応性で不安定な残基をもつペプチド合成法の説明図
【図21】本案による長鎖ペプチドを2、4、8、16と多分割して合成する合成法の説明図1
【図22】本案による長鎖ペプチドを2、4、8、16と多分割して合成する合成法の説明図2
【図23】図19と同じ図、AAの説明図1
【図24】図19と同じ図、AAの説明図2
【図25】図19の本案担体第一例をその担体のバリエーションで置換した図
【図26】図19の本案担体第一例を本案担体第二例に置換した図
【図27】本案第一例の担体の、図25以外のバリエーションを説明する図
【図28】本案第三例の担体とそのバリエーションを説明する図
【図29】本案第二例の担体のバリエーションを説明する図
【図30】本案第四例の担体とそのバリエーションを説明する図1
【図31】本案第四例の担体とそのバリエーションを説明する図2
【図32】一般式A(化2)の(RX)nのRの具体例
【図33】一般式A(化2)の(RX)nのXの具体例であってO、S、またはNを介して芳香族炭化水素環に結合する任意の残基があっても良い結合部、または、エステル基、イミノ基を介して芳香族炭化水素環に結合する例
【図34】一般式A(化2)の(RX)nのXの具体例であって、Cを介して芳香族炭化水素環に結合する任意の残基があっても良い結合部の例
【図35】混合、相溶状態保持、相分離状態保持、排除の連続工程の説明図
【図36】相溶状態保持ステップにおける開裂操作の説明図
【図37】ペプチドの回収説明図
【図38】ペプチドの回収で第二の溶媒を回収容易な溶媒に置換する例の説明図
【図39】部分ペプチドを開裂、C末端活性化して他のアミノ酸またはペプチドに結合する例
【図40】溶液内の電極間に電圧を印加して生じる電気化学反応の説明図1
【図41】溶液内の電極間に電圧を印加して生じる電気化学反応の説明図2
【図42】溶液内の電極間に電圧を印加して生じる電気化学反応の説明図3
【符号の説明】
1 本案の可溶性担体の例(本案担体第一例)
1a 可溶性担体とR1残基アミノ酸の結合物質
1af 1aのR1残基アミノ酸のN末端に保護基Fmocが結合した物質
1b 可溶性担体とR1、R2残基アミノ酸の結合物質
1bf 1bのR2残基アミノ酸のN末端に保護基Fmocが結合した物質
1c 可溶性担体とR1、R2、R3残基アミノ酸の結合物質
1cf 1cのR3残基アミノ酸のN末端に保護基Fmocが結合した物質
1x 可溶性担体と任意アミノ酸系物質との結合物質
1xf 1xに保護基を結合した物質
1z 可溶性担体と反応性で不安定であるアミノ酸との結合物質
1zf 1zに保護基を結合した物質
2 特願2001−385493、特願2002−198242、特願2002−220569で開示された可溶性担体の例
8 液相担体にR1残基アミノ酸のN末端に保護基Fmocを結合したR1残基アミノ酸を結合
する反応
9 固相担体(レジンなどの樹脂)
10 N末端の保護基であるFmoc等を除去して活性化する操作
11 活性化されたN末端部分に12をペプチド結合反応させる操作
12 N末端に保護基Fmocなどを結合した結合前処理後のアミノ酸
12p N末端に保護基Fmocなどを結合した結合前処理後の部分ペプチド
A 第一の溶媒
A0 任意物質を溶解した第一溶媒溶液
A1 可溶性担体を第一の溶媒に溶解した第一溶媒溶液
A1a 可溶性担体とR1残基アミノ酸との結合物質(1a)を第一の溶媒に溶解した第一溶媒溶液
A1af 1aに保護基を結合した物質(1af)を第一の溶媒に溶解した第一溶媒溶液
A1b 可溶性担体とR1、R2残基アミノ酸との結合物質(1b)を第一の溶媒に溶解した第一溶媒溶液
A1bf 1bに保護基を結合した物質(1bf)を第一の溶媒に溶解した第一溶媒溶液
A1c 可溶性担体とR1、R2、R3残基アミノ酸鎖の結合物質(1c)を第一の溶媒に溶解した第一溶媒溶液
A1cf 1cに保護基を結合した物質(1cf)を第一の溶媒に溶解した第一溶媒溶液
媒溶液
A1x 可溶性担体と任意アミノ酸系物質との結合物質(1x)を第一の溶媒に溶解した第一溶媒溶液
A1xf 1xに保護基を結合した物質(1xf)を第一の溶媒に溶解した第一溶媒溶液
AA N末端Nのないアミノ酸あるいはペプチドの一部(詳しくは図23参照)
AANH アミノ酸あるいはペプチドの一部(詳しくは図23参照)
AANHFmoc N末端をFmocで保護したアミノ酸あるいはペプチドの一部(詳しくは図23参照)
B 第二の溶媒
B0 任意物質を溶解した第二溶媒溶液
B12 12を第二の溶媒に溶解した第二溶媒溶液
B12p 12pを第二の溶媒に溶解した第二溶媒溶液
n1、n2、n3、n5、n6 炭化水素基の数であって、Rの条件を満たす整数
R 炭素数10以上の炭化水素基(O、S、またはNを結合原子として含んでいても良い)
R’、R’’ 任意の残基
R0 ペプチドを構成するアミノ酸で反応性で不安定であるアミノ酸の残基
R1、R2、R3、R4 合成すべきペプチド鎖を構成するアミノ酸残基
Rc1、Rc2、、、、Rcn ペプチドのC末端にコンビナトリアル合成結合すべきアミノ酸残基
Rn1、Rn2、、、、Rnn ペプチドのN末端にコンビナトリアル合成結合すべきアミノ酸残基
X 担体とRの結合部(O、C、S、またはNを介して芳香族炭化水素環に結合、任意の残基があっても良い)
x カルボキシル基側の活性化基
Claims (11)
- 温度により相溶状態と相分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と第二の溶媒の組み合わせを用いて、第一の溶媒に対し可溶性であり、第二の溶媒に対し難溶性である担体に合成すべきペプチドのアミノ酸を逐次ペプチド結合させる液相ペプチド合成において使用される、第一の溶媒への溶解性を高める部分を具備することで可溶性であり、かつ、アミノ酸と結合する官能基を具備する担体であって、酸化によって二つのヒドロキシル基がキノイド構造となる二つのヒドロキシル基をもつ少なくとも一環の芳香族炭化水素環を有し、前記ヒドロキシル基の一つがアミノ酸と結合する官能基としてアミノ酸と結合するものであり、かつ、酸化によってキノイド構造となることによって前記アミノ酸との結合が開裂されることを特徴とする液相ペプチド合成法用担体
- 一般式Sの(RX)nのRの炭素数、および/またはnが、合成すべきペプチドのアミノ酸の数、ペプチドのアミノ酸種、またはペプチド分子量にもとづいて決定される請求項1の液相ペプチド合成法用液体担体
- 酸化が、電気化学反応で行われる請求項1から請求項3のいずれかに記載された液相ペプチド合成法用液体担体
- 電気化学反応の印加電圧が、銀/塩化銀参照電極に対して1.5ボルト以下である請求項4の液相ペプチド合成法用液体担体
- 温度により相溶状態と相分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と第二の溶媒の組み合わせを用いて、第一の溶媒に対し可溶性で、第二の溶媒に対し難溶性で、アミノ酸と結合する官能基を有する担体に合成すべきペプチドのアミノ酸または合成すべきペプチドの部分ペプチドを逐次ペプチド結合させるべく、第一の溶媒に担体または担体とアミノ酸の結合物または担体とペプチドの結合物のいずれかを溶解した第一溶媒溶液と、第二の溶媒に結合前アミノ酸または結合前ペプチドを溶解した第二溶媒溶液とを混合する混合ステップと、前記の混合溶液を加熱して相溶状態となる温度以上に保持する混合溶液の相溶状態保持ステップと、前記相溶状態の混合溶液を冷却して相分離状態となる温度以下に保持する混合溶液の相分離状態保持ステップと、前記の相分離状態で第二溶媒溶液を排除する排除ステップが連続した混合、相溶状態保持、相分離状態保持、排除の連続工程を少なくとも一回は有する、液相ペプチド合成方法であって、担体が、第一の溶媒への溶解性を高める部分を具備することで可溶性であり、かつ、酸化によって二つのヒドロキシル基がキノイド構造となる二つのヒドロキシル基をもつ芳香族炭化水素環を有し、前記ヒドロキシル基の一つがアミノ酸と結合する官能基としてアミノ酸と結合するものであり、前記相溶状態保持ステップにおいて第一溶媒溶液と第二溶媒溶液とが相溶状態となった溶液を酸化して、担体をキノイド構造とすることによって、担体とアミノ酸との結合部を開裂する開裂操作を行い、開裂されたペプチドを合成すべきペプチドとして回収することを特徴とした液相ペプチド合成法
- 温度により相溶状態と相分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と第二の溶媒の組み合わせを用いて、第一の溶媒に対し可溶性で、第二の溶媒に対し難溶性で、アミノ酸と結合する官能基を有する担体に合成すべきペプチドのアミノ酸または合成すべきペプチドの部分ペプチドを逐次ペプチド結合させるべく、第一の溶媒に担体または担体とアミノ酸の結合物または担体とペプチドの結合物のいずれかを溶解した第一溶媒溶液と、第二の溶媒に結合前アミノ酸または結合前ペプチドを溶解した第二溶媒溶液とを混合する混合ステップと、前記の混合溶液を加熱して相溶状態となる温度以上に保持する混合溶液の相溶状態保持ステップと、前記相溶状態の混合溶液を冷却して相分離状態となる温度以下に保持する混合溶液の相分離状態保持ステップと、前記の相分離状態で第二溶媒溶液を排除する排除ステップが連続した混合、相溶状態保持、相分離状態保持、排除の連続工程を複数回繰り返す、液相ペプチド合成方法であって、担体が、第一の溶媒への溶解性を高める部分を具備することで可溶性であり、かつ、酸化によって二つのヒドロキシル基がキノイド構造となる二つのヒドロキシル基をもつ芳香族炭化水素環を有し、前記ヒドロキシル基の一つがアミノ酸と結合する官能基としてアミノ酸と結合するものであり、前記相溶状態保持ステップにおいて第一溶媒溶液と第二溶媒溶液とが相溶状態となった溶液を酸化して、担体をキノイド構造とすることによって、担体とアミノ酸との結合部を開裂する開裂操作を行い、前記開裂操作を行った相溶状態保持ステップに続く次の排除ステップで排除された第二溶媒溶液を、該排除ステップに続く次の連続工程の混合ステップにおける第二溶媒溶液とすることを特徴とした液相ペプチド合成法
- 混合、相溶状態保持、相分離状態保持、排除の連続工程が二回の繰り返しであって、第一の連続工程の排除ステップで排除された第二溶媒溶液が、第二の連続工程の混合ステップにおける第二溶媒溶液である請求項7の液相ペプチド合成法
- 開裂操作の後に溶液を還元して担体を再生する再生操作を有する請求項6から請求項8のいずれかに記載された液相ペプチド合成法
- 開裂操作の酸化または再生操作の還元が、溶液内に配設された正負の電極間に電圧を印加する電気化学反応で行われる請求項6から請求項9のいずれかに記載された液相ペプチド合成法
- 印加電圧が銀/塩化銀参照電極に対して1.5ボルト以下である請求項10の液相ペプチド合成法
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-
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