JP2004063029A - 情報記憶装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】データの記憶装置、特にハードディスクドライブ等の記憶装置の耐衝撃性を高めるとともに、耐環境性を向上させることができる情報記憶装置を提供する。
【解決手段】密閉筐体30にHDD14が収納されていて、上記密閉筐体内30に上記HDD14を衝撃から保護する緩衝部材15を備えた情報記憶装置であって、開口部17aを有する空気袋17を備え、上記HDD14は、少なくとも一ヶ所の通気用の穴21aを有すると共に、上記穴21a以外は密閉されていて、全ての通気用穴21aの各々に上記開口部17aが取り付けられたことを特徴とする情報記憶装置を提供する。
【選択図】 図2
【解決手段】密閉筐体30にHDD14が収納されていて、上記密閉筐体内30に上記HDD14を衝撃から保護する緩衝部材15を備えた情報記憶装置であって、開口部17aを有する空気袋17を備え、上記HDD14は、少なくとも一ヶ所の通気用の穴21aを有すると共に、上記穴21a以外は密閉されていて、全ての通気用穴21aの各々に上記開口部17aが取り付けられたことを特徴とする情報記憶装置を提供する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術の分野】
本発明は、ディジタルデータ等を記憶する情報記憶装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータやその周辺機器等の需要が急激に増加していることに伴い、これらの機器に用いられる外部記憶装置として、例えばハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)(以下、HDDという。)の需要も増加している。これは、HDDが例えば他の記憶装置に比べて、記憶容量が大きくかつネットワークとの親和性が高い(アクセス時間が高速である)こと、ビット単価が安いことによるものと考えられる。今後、この特徴はさらに顕在化してくるため、さらにHDDを記憶装置として用いる場面が増えてくるものと思われる。
【0003】
また、音楽やビデオのデータもデジタル化が進むにつれてHDDに記憶させる機会が増えてきている。そのため、従来のヘッドホン付きラジカセと同様に、HDDを野外に持ち出すアプリケーションが今後、ますます増加していくと考えられる。
【0004】
このようにHDDは他の記憶装置に比べ有用性が高いが、その一方で耐衝撃性や耐環境性に弱いため、従来のヘッドホン付きラジカセのように、いつでもどこでも持っていけるという記憶装置ではない。例えば、耐衝撃性について述べると、一般的なHDDでは、非動作時で800G程度の重力加速度が加わると精密部品であるスピンドルモータに損傷が生じ、回転数のムラが無く回転しつづける事ができなくなる。尚800Gは、例えばビニールタイル上10cmからの落下時の衝撃に相当する。一方、動作時には、200G程度の耐衝撃性しかなく、これはビニールタイル上に5cmの高さから落下させた衝撃に相当する。従って、これでは野外を持ち歩いている際に誤って落とすと、間違い無く壊れてしまうことになる。このような耐衝撃性のない製品は野外に持ち出すアプリケーションとしては不向きであると言わざるを得ない。
【0005】
このような問題を解消するために、HDDの周囲に緩衝材を配置して、落下衝撃について耐性を持たせてある製品が数多く発売されているが、これらは次に述べるような耐環境性を併せ持つものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
HDDでは円盤状の記録媒体が回転することで発生する空気の流れに伴う圧力によって、記録再生センサーを搭載した浮上スライダが20nm程度の極めて低い高さに上記円盤状の記録媒体から浮上する。また、それら記録媒体やセンサーには、出来るだけ特性を劣化させないように薄い保護膜を被着させている、ここで記録再生特性を向上させるために、浮上量や保護膜の厚さを極限までに小さくしている、このような極薄膜の厚さ10nm以下の保護膜では、ピンホールが存在する場合もあるし、浮上スライダと媒体が接触した際には、傷が生じることもある。このようなピンホールや傷に対して腐食性ガスが吸着するとその個所から錆びが生じ、データの消失に繋がることになる。
【0007】
また、ピンホールや傷が無い場合でも、腐食性ガスと水分とが反応し、化合物が記憶媒体表面上に生成されることがある。このような場合、データの記録再生のために媒体上を飛行する浮上スライダの浮上量が極低浮上であるため、当該生成物と浮上スライダとが衝突し、浮上スライダが落下、媒体上に傷をつけたり、浮上スライダに搭載されている記録再生センサーが壊れて二度と記録再生を行うことができなくったりすることもある。
【0008】
さらに、気圧の変化によるHDDへの影響については、例えば気圧が小さくなると、HDDは、その浮上スライダの浮上量も小さくなり、気圧が大きくなると浮上量も大きくなるという特性を持っている。浮上量は小さくなりすぎると、浮上そのものが不安定になり、墜落することとなる。したがって、最低気圧を規定しないとHDDの機能を保証することができなくなる。一般的なHDDは3,048mの高地での使用までを保証している。これは、0.7気圧に相当する。したがって、0.7気圧以下での使用はできないことになる。しかし、日本ならまだしも、世界には3,048m以上の高地での生活は珍しくない。ましてや世界的な観光地ヨーロッパアルプスなどは4,000m〜5,000mといった高地である。したがって、このような高地(少なくとも5,000m)では使用できるような方策をとる必要がある。
【0009】
そこで、耐環境性を向上させる為に、上記HDDを包囲して密閉する筐体を具備する構成とすることで、筐体外部の劣悪な環境によって悪影響を受けることはなく、例えば筐体外部において気圧変化や緩やかな温度変化、湿度の変化、あるいは筐体外部に腐食性ガスが発生した場合であっても、密閉された筐体内にあるHDDに上述するような悪影響を及ぼすことはなくなる。
【0010】
一方、耐衝撃性については、前述したように従来よりHDDの周囲の又は一部に配置された緩衝部材を密閉された筐体内に具備することで耐衝撃性が増し、データ記憶装置を野外に持ち出し誤って落下させた場合であっても壊れることはない。
【0011】
しかし、密閉された筐体内に具備されたこの緩衝材は、通常ゴムや発泡樹脂や多孔質の有機物から出来ていて、有機ガス、腐食性ガス、腐食性イオンが多く発生する。この有機ガス、腐食性ガス、腐食性イオンや内在する水分が上述したようなHDDの浮上スライダの衝突や落下を招いて媒体上に傷をつけたり、浮上スライダに搭載されている記録再生センサーが壊れて二度と記録再生を行うことができなくなることに繋がってしまう。
【0012】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、データの記憶装置、特にハードディスクドライブ等の記憶装置の耐衝撃性を高めるとともに、耐環境性を向上させることができる情報記憶装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為に、本発明に係る情報記憶装置は、密閉筐体に記憶装置が収納され、上記密閉筐体内に、上記記憶装置を衝撃から保護する緩衝材を含む情報記憶装置であって、耐衝撃性が増し情報記憶装置を野外に持ち出し誤って落下させた場合であっても壊れることはなく、密閉された筐体により耐環境性も高く、上記筐体周囲の気圧変化も内部に殆ど及ばない。
【0014】
上記において、密閉された筐体は、周囲の気圧の変化による膨張又は収縮を極力抑えるため、耐衝撃性を有する金属や硬い樹脂例えばカーボンファイバーを材料とした構造とするものが好ましい。
【0015】
上記情報記憶装置は、該密閉筐体内に収納された開口部を有する気体溜め部を備え、上記記憶装置は、少なくとも一ヶ所の通気孔を有すると共に、上記通気孔以外は密閉されていて、全ての上記通気孔の各々に上記開口部が取り付けられたことで、上記筐体内で筐体の内壁や密閉用のシール材やパッキン及び緩衝部材から発生する有機ガス、腐食性ガス、腐食性イオンや上記筐体内に内在する水分が上記記憶装置内に流入するのを防止する。
【0016】
このように、記憶装置内への腐食性ガスや水分等の流入を防止することで、上記記憶装置内に組み込まれている記憶媒体に及ぼす悪影響を回避することができる。
【0017】
更に上記気体溜め部は、体積が容易に変わる袋状とし、密閉された筐体の周囲の温度変化や上記記憶装置自身の発熱により筐体内部の上記記憶装置周囲と内部の温度差から発生する気圧差が有ると上記気体溜め部の体積が容易に変わり、上記記憶装置の周囲と内部に気圧差は発生せず、上記記憶装置に気圧差による膨張収縮の歪や隙間が発生しない。
【0018】
上記気体溜め部内部又は上記記憶装置内部の少なくとも一方に活性炭を更に装着することで、上記記憶デバイス内部から発生する有機ガス、腐食性ガス、腐食性イオンや内在する水分が吸収され、上記記憶装置の信頼性が更に維持される。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の形態に係る情報記憶装置10の斜視図であり、図2はその分解斜視図である。この情報記憶装置10は、例えば記憶装置として、HDD(ハードディスクドライブ)14を包囲して密閉するための筐体を構成する、ネジ穴11aを設けた上シェル11と、ネジ穴12aと凹部12bと溝12cと上面部12dとコネクタ19とを設けた下シェル12とを有し、ネジ35が螺着されて上シェル11と下シェル12とがパッキン13を挿んで接合される。空気袋17が貼り付けられたHDD14の周囲には、例えば多孔質性のゴムや樹脂等からなる緩衝部材15が配置されている。具体的には図2に示すように、この緩衝部材15には、HDD14の大きさ程度に形成された嵌合穴15aと、HDD14をこの嵌合穴15aに嵌め込んだ状態でHDD14のフレキシブル配線18を通すための通路部15bとが設けられている。これにより、緩衝部材15はHDD14に対する外部からの衝撃を吸収する。
【0020】
下シェル12には、緩衝部材15の大きさ程度に形成され緩衝部材15を収容するための凹部12bが設けられている。この凹部12bの壁面の一部には、HDD14が嵌め込まれた緩衝部材15を凹部12bに収容した状態で、フレキシブル配線18を外部との間で電気的に接続するためのコネクタ19が設けられている。
【0021】
ここで、一般的なコネクタは端子を樹脂基材に圧入するため、端子と基材の間に隙間が生じる。そのため、コネクタそのものには機密性がない。そこで、本実施形態では、機密性を向上させるため、予め端子を成形金型の中に入れておくインサート成形により作製する。つまり下シェル12とコネクタ19との一体成型である。これにより、0.5気圧(5,000m相当)までの耐気圧性のあるコネクタを提供することができる。
【0022】
図3は、上シェル11と下シェル12との接合部分の拡大断面図である。上シェル11にはネジ穴11aが例えば10個形成され、また、下シェル12の上面部12dにも、ネジ穴11aに対応する位置にネジ穴12aが10個形成されている。これらのネジ穴11a及び12aに、上シェル11の上面からネジ35が螺着されて上シェル11と下シェル12とが接合されている。また、下シェル12の上面部12dには、その上面部12dの矩形形状に沿って形成された溝12cが設けられており、この溝12cにはパッキン13が嵌め込まれている。このパッキン13は例えばゴム等からなり断面が例えば十字形状をなしている。このパッキン13の突起部13aが溝12cに嵌め込まれた上で、上シェル11と下シェル12とが接合されてHDD14が密閉されている。
【0023】
ここで、上シェル11と下シェル12とからなる筐体30の外気圧が低いときにおける膨張を防止するために、上シェル11と下シェル12の材料は、金属のように硬い材料を選択することが好ましい。このとき、製品コストを考慮すると、硬い樹脂、例えば、5%〜12%のカーボンファイバー入りの樹脂等を選択すれば高い強度と低コストの両者を満足することができる。また、あるいは、前述したように下シェル12にはコネクタ19が一体成型されているので、下シェル12の絶縁性を確保するために、下シェル12のみをカーボンファイバー入りの樹脂製としてもよい。上記ような構成とすることにより、絶縁性を維持しつつ筐体30の強度を高め、耐衝撃性及び耐気圧性を向上させることができる。
【0024】
図4は、図1及び図2に示したHDD14の一例を示す分解斜視図である。このHDD14は典型的な内蔵型HDDを示しており、本体25にカバー21が図示しないネジ等により取り付けられることで本体25の内部装置が密閉されるようになっている。本体25には記憶媒体となる複数の円盤状の磁気ディスク22がスピンドルモータ23により回転可能に組み込まれている。各磁気ディスク22上には図示しない記録再生センサーを搭載した浮上スライダ27がアクセスアーム24により水平方向に移動可能で、この記録再生センサーを搭載した浮上スライダ27がアクセスアーム24は図示されていないものを含め複数設けられている。また、カバー21の上面には、例えば通気用あるいは気圧調整用の穴21aが穿設されており、さらに、穴21aに空気袋17の開口部17aが取り付けられている。
【0025】
ここで、図5に空気袋17に気体の入っていない状態を、更に図6に空気袋17に気体の入っている状態を示している、この空気袋17の作用効果を詳細に説明する。
【0026】
HDD14の周囲には、例えば多孔質性のゴムや樹脂等からなる緩衝部材15が配置され筐体30により密閉される、これにより筐体30内部で発生するガスや水分、例えば、多孔質性のゴムや樹脂等からなる緩衝部材15や筐体30の内壁及び密閉用のシール材やパッキンから発生する有機ガス、腐食性ガス、腐食性イオンや筐体30内に内在する水分が穴21aを介してHDD14の内部に侵入する恐れがある。従って空気袋17が穴21aをふさぐことで上記ガスや水分のHDD14への侵入を防ぎ、HDD14における浮上スライダの衝突や落下により磁気ディスク22に傷をつけたり、浮上スライダ27に搭載されている記録再生センサーが壊れて二度と記録再生を行うことができなくなることを回避できる。
【0027】
また、筐体30の周囲の温度変化やHDD14の発熱により筐体30内のHDD14の周囲とHDD14の内部の間に温度差で気圧差が発生する、本体25やカバー21が気圧による圧力で膨張収縮の歪が発生したり、本体25とカバー21の間に隙間が発生してしまうことを、後述するような空気袋の容量や予め封入しておく空気量を選択することで防ぐことが出きる、これによりHDD14内の機械精度を保ち前述したガスや水分の侵入を防止出来る。
ここでHDD14及び空気袋17内に不活性ガスなどを封入しておいても良い。
【0028】
更に、空気袋内に、活性炭を織りこんだ不織布が設けられていて、HDD14内部から発生する有機ガス、腐食性ガス、腐食性イオンや内在する水分がこの活性炭に吸収されHDD14に悪影響を及ぼす有機ガス、腐食性ガス、腐食性イオンや水分を除去できる。
【0029】
次に、本発明のさらに具体的な実施例及び実験結果について図及び表を参照しながら説明する。
【0030】
本実施例では、HDDとして2.5インチ型のものを用い、緩衝部材としてエラストマーを用いた。また、パッキンとしてゴムパッキンを使用した。
まず、筐体30により内部が密閉されているか否かを確認するために、組み立てた情報記憶装置10を例えば減圧チャンバーに入れて、周囲の気圧を大気圧から0.3気圧(標高8,000mに相当)へ減じるテストを行った。この際、密閉性が保てていないと、筐体30は減圧環境下で膨張することがない。したがって、減圧環境下での筐体30の膨張量を測定することにより、筐体30の密閉性の確認を行うことができる。図7はそのような減圧環境下での筐体30の膨張量を示しており、図7で1気圧時の膨張量が0mmで減圧後の0.3気圧時の膨張量は、0.7mmとなっており減圧を進めていくと膨張量が大きくなっていることを示している。これにより本実施例で用いる筐体30は密閉性を有している筐体であることがわかる。
【0031】
次に、衝撃試験について説明する。衝撃試験は筐体30をビニールタイル上に自由落下させて行い、その際の筐体30に印加される重力加速度と、筐体30と緩衝材15に保護されたHDD14に印加される重力加速度とを加速度ピックアップを用いて測定する。図8に衝撃試験の結果を示す。図8に示されるグラフは横軸が筐体30に印加される重力加速度を示し、縦軸がHDD14に印加される重力加速度をしめす。この図からもわかるように、例えば筐体30に印加される重力加速度が8000Gの時にHDD14に伝わる重力加速度は800G程で、この場合に重力加速度が1/10程度に抑えられている、又筐体30に印加される重力加速度が2000Gの時でもHDD14に伝わる重力加速度は400G程でこの場合にも重力加速度が1/5程度に抑えられている。このことより、本実施例に係る情報記憶装置10の耐衝撃特性は確保されていることがわかる。
【0032】
さらに、この密閉性と衝撃性を確保している筐体30を用いた腐食ガステストについて説明する。腐食ガステストは以下のような手順で行った。
腐食ガスとしては、SO2、H2S、NO2、Clの4種類を用い、その濃度は、それぞれ順に1.4ppm、1.4ppm、0.07ppm、0.07ppmとする。そしてこれらの各濃度の腐食ガスをチャンバーに流入して、常にその濃度を保てるようにする。さらに、この腐食ガス環境下で35℃,90%の温湿度環境を加える。これらの環境下で96時間の保存をした後に、情報記憶装置10から磁気ディスクを取り外し、ディスクの表面に付着した腐食ガス成分を分析することにより、装置内への腐食ガスの混入の有無を判断する。この際、比較用として、別の内蔵型の2.5型HDDを筐体に入れない状態で腐食ガステストを行う。その結果は、以下の表1に示される。
【0033】
【表1】
表1からもわかるように、筐体に入れない状態の内蔵型HDD単体のディスクに付着している腐食ガス成分より、密閉筐体に入れられた本発明の実施の形態に係る情報記憶装置10から取り出したディスクに付着している腐食ガスの方が少ない。これは、筐体30が密閉に保たれているため、外部の腐食ガス成分がHDDに接触することがないためである。今回の実験では、特にSO2について、テスト前の付着量が0.8μgに対し、筐体内に入れない状態でテストされた場合の付着量は26μgと多く付着し、筐体30内に入れてテストされた場合の付着量は、1.2μgと僅かな増かしかなく顕著な効果が現れた。
【0034】
従来、HDDの上記通気孔にフィルタがHDDの内側又は外側に上記通気孔を覆うように取り付けられていたが、これはHDDがオフィス環境で使われることを想定しており、塩素系ガスの多い海岸や、硫化系ガスの多い温泉地、さらには、酸化窒素ガスの多い交通量の激しい交差点などでHDDが使用されることを想定はしていなかった。これに対し、本実験結果からわかるように、例えばSO2ガスの発生が多い温泉地において4日間連続でHDD14を使用した場合であっても、本発明の実施の形態に係る情報記憶装置10には全く影響はない。従来のHDDであれば、このような温泉地等の野外で使用することに保証はできなかった。
【0035】
情報記憶装置10の筐体30内に密封されたHDD14には通気用あるいは気圧調整用の穴21aが穿設されており、この穴に空気袋17の開口部が取り付けられている。
【0036】
この空気袋17は、クリーン状態の商品を包装するのに使われる所謂アルミバッグと言われるPET(ポリエチレンテレフタレート)にアルミを蒸着したフィルムで作製されていて、空気袋の大きさは、空気袋内部に気体が殆ど入っていない状態で70×60mmとし、厚さは、上記フィルム数枚分程度となる。
【0037】
この空気袋17に1ヶ所穴をあけ、この穴17aと上記HDD14に穿設されている穴21aが通気し、且つHDD14と空気袋17内の空気が密閉状態となるような双方の穴の位置で貼り合わされている。
【0038】
ここでHDD14の周囲に急な温度変化があった場合、HDD14の周囲とその内部には温度差が生じる。HDD14の保存温度は−40℃〜60℃であり、通常使用される温度は25℃とする。その時HDD14の周囲が−40℃から25℃に上がった場合65℃の温度差が生じる。一方、−40℃時のHDD14内部の空気は25℃時の82%であることから、HDD14内の空気の容積の略々18%分の空気量をHDD14内に流入させればHDD14周囲と内部に上記温度差が有ってもその間に気圧差は発生しない。ここで上記18%とは、−40℃における値であり、25℃の常温換算では略々22%の空気量となる。したがって上記空気袋17に25℃においてHDD14の内部容積の22%以上の空気量を予め封入しておけばよい。
【0039】
また、HDD14の周囲が急に60℃から25℃に下がった場合も同様に35℃の温度差が生じる。この時、60℃時のHDD14内部容積の12%を排出させれば、HDD14の周囲と内部に気圧差は、発生しない。従って、HDD14の内部容積の12%以上の空気を流入可能とする容積を上記空気袋17は有していれば気圧差は発生しないいことになる。
【0040】
更に、HDD14に空気袋17を取り付けた上記の状態で、上記と同様なガステストを試みた、ここで、ガステストを行う前に、本発明の実施の形態に係る情報記憶装置を構成する各部品において夫々発生するガスの分析を行っている。この発生ガスを分析する際も、上記と同様の温湿度環境下において、所定時間保存した。以下の表2は各部品から発生するガスの種類と量を示し、筐体30の内壁及び筐体30内の緩衝材15とパッキン13からもガスが発生することが分かる。表3はガステストの結果を示す。表3から分かるように、空気袋17を取り付けたHDD14のディスクには、殆どガスの付着が無いことが解る。
【0041】
【表2】
【表3】
ここで上記空気袋17内に、活性炭を織りこんだ不織布を設ける場合の詳細説明をする。
例えば、2.5インチHDDの内部空気容量は略々20ccである。ここで空気袋17に予め封入しておく空気量は、上記HDD内部空気容量の22%以上であり、ここで5ccとすれば上記HDD内部空気容量と空気袋17内の合計の空気体積は25ccとなる。このとき25℃で湿度50%とするとこの空気に含まれる水分は0.29mgとなる。一方、活性炭は、自重の20%の水分を吸収可能である為、空気袋17内に1.5mg以上の活性炭を織りこんだ不織布を設けることにより、図9に示す様に、96時間後には、上記HDD内と空気袋17内の湿度を5%より低くすることが出来る。上記HDD内と空気袋17内の水分を上記活性炭によりほとんど吸収出来たことになり上記HDDの使用及び保存環境をオフィスでの環境以上に向上させたことになる。
【0042】
【発明の効果】
本発明に係る情報記憶装置によれば、特にハードディスクドライブ等の記憶装置の耐衝撃性を高めるとともに、動作及び保存における耐環境性も向上させ動作の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る情報記憶装置の斜視図である。
【図2】図1に示す情報記憶装置の分解斜視図である。
【図3】図1及び図2に示された筐体の接続部分の拡大断面図である。
【図4】図1に示されたハードディスクドライブの構成を示す分解斜視図である。
【図5】図2及び図4に示された空気袋の斜視図である。
【図6】図2及び図4に示された空気袋の空気封入時の状態を示す斜視図である。
【図7】減圧環境下での筐体の膨張量の測定結果を示すグラフである。
【図8】衝撃試験の実験結果を示すグラフである。
【図9】空気袋の有無で保存時間に対する筐体内の湿度の保存時間依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
10…情報記憶装置
14…ハードディスクドライブ
15…緩衝部材
17…空気袋
17a・・空気袋の開口部
19…コネクタ
21…カバー
21a…穴
22…磁気ディスク
30…筐体
【発明の属する技術の分野】
本発明は、ディジタルデータ等を記憶する情報記憶装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータやその周辺機器等の需要が急激に増加していることに伴い、これらの機器に用いられる外部記憶装置として、例えばハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)(以下、HDDという。)の需要も増加している。これは、HDDが例えば他の記憶装置に比べて、記憶容量が大きくかつネットワークとの親和性が高い(アクセス時間が高速である)こと、ビット単価が安いことによるものと考えられる。今後、この特徴はさらに顕在化してくるため、さらにHDDを記憶装置として用いる場面が増えてくるものと思われる。
【0003】
また、音楽やビデオのデータもデジタル化が進むにつれてHDDに記憶させる機会が増えてきている。そのため、従来のヘッドホン付きラジカセと同様に、HDDを野外に持ち出すアプリケーションが今後、ますます増加していくと考えられる。
【0004】
このようにHDDは他の記憶装置に比べ有用性が高いが、その一方で耐衝撃性や耐環境性に弱いため、従来のヘッドホン付きラジカセのように、いつでもどこでも持っていけるという記憶装置ではない。例えば、耐衝撃性について述べると、一般的なHDDでは、非動作時で800G程度の重力加速度が加わると精密部品であるスピンドルモータに損傷が生じ、回転数のムラが無く回転しつづける事ができなくなる。尚800Gは、例えばビニールタイル上10cmからの落下時の衝撃に相当する。一方、動作時には、200G程度の耐衝撃性しかなく、これはビニールタイル上に5cmの高さから落下させた衝撃に相当する。従って、これでは野外を持ち歩いている際に誤って落とすと、間違い無く壊れてしまうことになる。このような耐衝撃性のない製品は野外に持ち出すアプリケーションとしては不向きであると言わざるを得ない。
【0005】
このような問題を解消するために、HDDの周囲に緩衝材を配置して、落下衝撃について耐性を持たせてある製品が数多く発売されているが、これらは次に述べるような耐環境性を併せ持つものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
HDDでは円盤状の記録媒体が回転することで発生する空気の流れに伴う圧力によって、記録再生センサーを搭載した浮上スライダが20nm程度の極めて低い高さに上記円盤状の記録媒体から浮上する。また、それら記録媒体やセンサーには、出来るだけ特性を劣化させないように薄い保護膜を被着させている、ここで記録再生特性を向上させるために、浮上量や保護膜の厚さを極限までに小さくしている、このような極薄膜の厚さ10nm以下の保護膜では、ピンホールが存在する場合もあるし、浮上スライダと媒体が接触した際には、傷が生じることもある。このようなピンホールや傷に対して腐食性ガスが吸着するとその個所から錆びが生じ、データの消失に繋がることになる。
【0007】
また、ピンホールや傷が無い場合でも、腐食性ガスと水分とが反応し、化合物が記憶媒体表面上に生成されることがある。このような場合、データの記録再生のために媒体上を飛行する浮上スライダの浮上量が極低浮上であるため、当該生成物と浮上スライダとが衝突し、浮上スライダが落下、媒体上に傷をつけたり、浮上スライダに搭載されている記録再生センサーが壊れて二度と記録再生を行うことができなくったりすることもある。
【0008】
さらに、気圧の変化によるHDDへの影響については、例えば気圧が小さくなると、HDDは、その浮上スライダの浮上量も小さくなり、気圧が大きくなると浮上量も大きくなるという特性を持っている。浮上量は小さくなりすぎると、浮上そのものが不安定になり、墜落することとなる。したがって、最低気圧を規定しないとHDDの機能を保証することができなくなる。一般的なHDDは3,048mの高地での使用までを保証している。これは、0.7気圧に相当する。したがって、0.7気圧以下での使用はできないことになる。しかし、日本ならまだしも、世界には3,048m以上の高地での生活は珍しくない。ましてや世界的な観光地ヨーロッパアルプスなどは4,000m〜5,000mといった高地である。したがって、このような高地(少なくとも5,000m)では使用できるような方策をとる必要がある。
【0009】
そこで、耐環境性を向上させる為に、上記HDDを包囲して密閉する筐体を具備する構成とすることで、筐体外部の劣悪な環境によって悪影響を受けることはなく、例えば筐体外部において気圧変化や緩やかな温度変化、湿度の変化、あるいは筐体外部に腐食性ガスが発生した場合であっても、密閉された筐体内にあるHDDに上述するような悪影響を及ぼすことはなくなる。
【0010】
一方、耐衝撃性については、前述したように従来よりHDDの周囲の又は一部に配置された緩衝部材を密閉された筐体内に具備することで耐衝撃性が増し、データ記憶装置を野外に持ち出し誤って落下させた場合であっても壊れることはない。
【0011】
しかし、密閉された筐体内に具備されたこの緩衝材は、通常ゴムや発泡樹脂や多孔質の有機物から出来ていて、有機ガス、腐食性ガス、腐食性イオンが多く発生する。この有機ガス、腐食性ガス、腐食性イオンや内在する水分が上述したようなHDDの浮上スライダの衝突や落下を招いて媒体上に傷をつけたり、浮上スライダに搭載されている記録再生センサーが壊れて二度と記録再生を行うことができなくなることに繋がってしまう。
【0012】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、データの記憶装置、特にハードディスクドライブ等の記憶装置の耐衝撃性を高めるとともに、耐環境性を向上させることができる情報記憶装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為に、本発明に係る情報記憶装置は、密閉筐体に記憶装置が収納され、上記密閉筐体内に、上記記憶装置を衝撃から保護する緩衝材を含む情報記憶装置であって、耐衝撃性が増し情報記憶装置を野外に持ち出し誤って落下させた場合であっても壊れることはなく、密閉された筐体により耐環境性も高く、上記筐体周囲の気圧変化も内部に殆ど及ばない。
【0014】
上記において、密閉された筐体は、周囲の気圧の変化による膨張又は収縮を極力抑えるため、耐衝撃性を有する金属や硬い樹脂例えばカーボンファイバーを材料とした構造とするものが好ましい。
【0015】
上記情報記憶装置は、該密閉筐体内に収納された開口部を有する気体溜め部を備え、上記記憶装置は、少なくとも一ヶ所の通気孔を有すると共に、上記通気孔以外は密閉されていて、全ての上記通気孔の各々に上記開口部が取り付けられたことで、上記筐体内で筐体の内壁や密閉用のシール材やパッキン及び緩衝部材から発生する有機ガス、腐食性ガス、腐食性イオンや上記筐体内に内在する水分が上記記憶装置内に流入するのを防止する。
【0016】
このように、記憶装置内への腐食性ガスや水分等の流入を防止することで、上記記憶装置内に組み込まれている記憶媒体に及ぼす悪影響を回避することができる。
【0017】
更に上記気体溜め部は、体積が容易に変わる袋状とし、密閉された筐体の周囲の温度変化や上記記憶装置自身の発熱により筐体内部の上記記憶装置周囲と内部の温度差から発生する気圧差が有ると上記気体溜め部の体積が容易に変わり、上記記憶装置の周囲と内部に気圧差は発生せず、上記記憶装置に気圧差による膨張収縮の歪や隙間が発生しない。
【0018】
上記気体溜め部内部又は上記記憶装置内部の少なくとも一方に活性炭を更に装着することで、上記記憶デバイス内部から発生する有機ガス、腐食性ガス、腐食性イオンや内在する水分が吸収され、上記記憶装置の信頼性が更に維持される。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の形態に係る情報記憶装置10の斜視図であり、図2はその分解斜視図である。この情報記憶装置10は、例えば記憶装置として、HDD(ハードディスクドライブ)14を包囲して密閉するための筐体を構成する、ネジ穴11aを設けた上シェル11と、ネジ穴12aと凹部12bと溝12cと上面部12dとコネクタ19とを設けた下シェル12とを有し、ネジ35が螺着されて上シェル11と下シェル12とがパッキン13を挿んで接合される。空気袋17が貼り付けられたHDD14の周囲には、例えば多孔質性のゴムや樹脂等からなる緩衝部材15が配置されている。具体的には図2に示すように、この緩衝部材15には、HDD14の大きさ程度に形成された嵌合穴15aと、HDD14をこの嵌合穴15aに嵌め込んだ状態でHDD14のフレキシブル配線18を通すための通路部15bとが設けられている。これにより、緩衝部材15はHDD14に対する外部からの衝撃を吸収する。
【0020】
下シェル12には、緩衝部材15の大きさ程度に形成され緩衝部材15を収容するための凹部12bが設けられている。この凹部12bの壁面の一部には、HDD14が嵌め込まれた緩衝部材15を凹部12bに収容した状態で、フレキシブル配線18を外部との間で電気的に接続するためのコネクタ19が設けられている。
【0021】
ここで、一般的なコネクタは端子を樹脂基材に圧入するため、端子と基材の間に隙間が生じる。そのため、コネクタそのものには機密性がない。そこで、本実施形態では、機密性を向上させるため、予め端子を成形金型の中に入れておくインサート成形により作製する。つまり下シェル12とコネクタ19との一体成型である。これにより、0.5気圧(5,000m相当)までの耐気圧性のあるコネクタを提供することができる。
【0022】
図3は、上シェル11と下シェル12との接合部分の拡大断面図である。上シェル11にはネジ穴11aが例えば10個形成され、また、下シェル12の上面部12dにも、ネジ穴11aに対応する位置にネジ穴12aが10個形成されている。これらのネジ穴11a及び12aに、上シェル11の上面からネジ35が螺着されて上シェル11と下シェル12とが接合されている。また、下シェル12の上面部12dには、その上面部12dの矩形形状に沿って形成された溝12cが設けられており、この溝12cにはパッキン13が嵌め込まれている。このパッキン13は例えばゴム等からなり断面が例えば十字形状をなしている。このパッキン13の突起部13aが溝12cに嵌め込まれた上で、上シェル11と下シェル12とが接合されてHDD14が密閉されている。
【0023】
ここで、上シェル11と下シェル12とからなる筐体30の外気圧が低いときにおける膨張を防止するために、上シェル11と下シェル12の材料は、金属のように硬い材料を選択することが好ましい。このとき、製品コストを考慮すると、硬い樹脂、例えば、5%〜12%のカーボンファイバー入りの樹脂等を選択すれば高い強度と低コストの両者を満足することができる。また、あるいは、前述したように下シェル12にはコネクタ19が一体成型されているので、下シェル12の絶縁性を確保するために、下シェル12のみをカーボンファイバー入りの樹脂製としてもよい。上記ような構成とすることにより、絶縁性を維持しつつ筐体30の強度を高め、耐衝撃性及び耐気圧性を向上させることができる。
【0024】
図4は、図1及び図2に示したHDD14の一例を示す分解斜視図である。このHDD14は典型的な内蔵型HDDを示しており、本体25にカバー21が図示しないネジ等により取り付けられることで本体25の内部装置が密閉されるようになっている。本体25には記憶媒体となる複数の円盤状の磁気ディスク22がスピンドルモータ23により回転可能に組み込まれている。各磁気ディスク22上には図示しない記録再生センサーを搭載した浮上スライダ27がアクセスアーム24により水平方向に移動可能で、この記録再生センサーを搭載した浮上スライダ27がアクセスアーム24は図示されていないものを含め複数設けられている。また、カバー21の上面には、例えば通気用あるいは気圧調整用の穴21aが穿設されており、さらに、穴21aに空気袋17の開口部17aが取り付けられている。
【0025】
ここで、図5に空気袋17に気体の入っていない状態を、更に図6に空気袋17に気体の入っている状態を示している、この空気袋17の作用効果を詳細に説明する。
【0026】
HDD14の周囲には、例えば多孔質性のゴムや樹脂等からなる緩衝部材15が配置され筐体30により密閉される、これにより筐体30内部で発生するガスや水分、例えば、多孔質性のゴムや樹脂等からなる緩衝部材15や筐体30の内壁及び密閉用のシール材やパッキンから発生する有機ガス、腐食性ガス、腐食性イオンや筐体30内に内在する水分が穴21aを介してHDD14の内部に侵入する恐れがある。従って空気袋17が穴21aをふさぐことで上記ガスや水分のHDD14への侵入を防ぎ、HDD14における浮上スライダの衝突や落下により磁気ディスク22に傷をつけたり、浮上スライダ27に搭載されている記録再生センサーが壊れて二度と記録再生を行うことができなくなることを回避できる。
【0027】
また、筐体30の周囲の温度変化やHDD14の発熱により筐体30内のHDD14の周囲とHDD14の内部の間に温度差で気圧差が発生する、本体25やカバー21が気圧による圧力で膨張収縮の歪が発生したり、本体25とカバー21の間に隙間が発生してしまうことを、後述するような空気袋の容量や予め封入しておく空気量を選択することで防ぐことが出きる、これによりHDD14内の機械精度を保ち前述したガスや水分の侵入を防止出来る。
ここでHDD14及び空気袋17内に不活性ガスなどを封入しておいても良い。
【0028】
更に、空気袋内に、活性炭を織りこんだ不織布が設けられていて、HDD14内部から発生する有機ガス、腐食性ガス、腐食性イオンや内在する水分がこの活性炭に吸収されHDD14に悪影響を及ぼす有機ガス、腐食性ガス、腐食性イオンや水分を除去できる。
【0029】
次に、本発明のさらに具体的な実施例及び実験結果について図及び表を参照しながら説明する。
【0030】
本実施例では、HDDとして2.5インチ型のものを用い、緩衝部材としてエラストマーを用いた。また、パッキンとしてゴムパッキンを使用した。
まず、筐体30により内部が密閉されているか否かを確認するために、組み立てた情報記憶装置10を例えば減圧チャンバーに入れて、周囲の気圧を大気圧から0.3気圧(標高8,000mに相当)へ減じるテストを行った。この際、密閉性が保てていないと、筐体30は減圧環境下で膨張することがない。したがって、減圧環境下での筐体30の膨張量を測定することにより、筐体30の密閉性の確認を行うことができる。図7はそのような減圧環境下での筐体30の膨張量を示しており、図7で1気圧時の膨張量が0mmで減圧後の0.3気圧時の膨張量は、0.7mmとなっており減圧を進めていくと膨張量が大きくなっていることを示している。これにより本実施例で用いる筐体30は密閉性を有している筐体であることがわかる。
【0031】
次に、衝撃試験について説明する。衝撃試験は筐体30をビニールタイル上に自由落下させて行い、その際の筐体30に印加される重力加速度と、筐体30と緩衝材15に保護されたHDD14に印加される重力加速度とを加速度ピックアップを用いて測定する。図8に衝撃試験の結果を示す。図8に示されるグラフは横軸が筐体30に印加される重力加速度を示し、縦軸がHDD14に印加される重力加速度をしめす。この図からもわかるように、例えば筐体30に印加される重力加速度が8000Gの時にHDD14に伝わる重力加速度は800G程で、この場合に重力加速度が1/10程度に抑えられている、又筐体30に印加される重力加速度が2000Gの時でもHDD14に伝わる重力加速度は400G程でこの場合にも重力加速度が1/5程度に抑えられている。このことより、本実施例に係る情報記憶装置10の耐衝撃特性は確保されていることがわかる。
【0032】
さらに、この密閉性と衝撃性を確保している筐体30を用いた腐食ガステストについて説明する。腐食ガステストは以下のような手順で行った。
腐食ガスとしては、SO2、H2S、NO2、Clの4種類を用い、その濃度は、それぞれ順に1.4ppm、1.4ppm、0.07ppm、0.07ppmとする。そしてこれらの各濃度の腐食ガスをチャンバーに流入して、常にその濃度を保てるようにする。さらに、この腐食ガス環境下で35℃,90%の温湿度環境を加える。これらの環境下で96時間の保存をした後に、情報記憶装置10から磁気ディスクを取り外し、ディスクの表面に付着した腐食ガス成分を分析することにより、装置内への腐食ガスの混入の有無を判断する。この際、比較用として、別の内蔵型の2.5型HDDを筐体に入れない状態で腐食ガステストを行う。その結果は、以下の表1に示される。
【0033】
【表1】
表1からもわかるように、筐体に入れない状態の内蔵型HDD単体のディスクに付着している腐食ガス成分より、密閉筐体に入れられた本発明の実施の形態に係る情報記憶装置10から取り出したディスクに付着している腐食ガスの方が少ない。これは、筐体30が密閉に保たれているため、外部の腐食ガス成分がHDDに接触することがないためである。今回の実験では、特にSO2について、テスト前の付着量が0.8μgに対し、筐体内に入れない状態でテストされた場合の付着量は26μgと多く付着し、筐体30内に入れてテストされた場合の付着量は、1.2μgと僅かな増かしかなく顕著な効果が現れた。
【0034】
従来、HDDの上記通気孔にフィルタがHDDの内側又は外側に上記通気孔を覆うように取り付けられていたが、これはHDDがオフィス環境で使われることを想定しており、塩素系ガスの多い海岸や、硫化系ガスの多い温泉地、さらには、酸化窒素ガスの多い交通量の激しい交差点などでHDDが使用されることを想定はしていなかった。これに対し、本実験結果からわかるように、例えばSO2ガスの発生が多い温泉地において4日間連続でHDD14を使用した場合であっても、本発明の実施の形態に係る情報記憶装置10には全く影響はない。従来のHDDであれば、このような温泉地等の野外で使用することに保証はできなかった。
【0035】
情報記憶装置10の筐体30内に密封されたHDD14には通気用あるいは気圧調整用の穴21aが穿設されており、この穴に空気袋17の開口部が取り付けられている。
【0036】
この空気袋17は、クリーン状態の商品を包装するのに使われる所謂アルミバッグと言われるPET(ポリエチレンテレフタレート)にアルミを蒸着したフィルムで作製されていて、空気袋の大きさは、空気袋内部に気体が殆ど入っていない状態で70×60mmとし、厚さは、上記フィルム数枚分程度となる。
【0037】
この空気袋17に1ヶ所穴をあけ、この穴17aと上記HDD14に穿設されている穴21aが通気し、且つHDD14と空気袋17内の空気が密閉状態となるような双方の穴の位置で貼り合わされている。
【0038】
ここでHDD14の周囲に急な温度変化があった場合、HDD14の周囲とその内部には温度差が生じる。HDD14の保存温度は−40℃〜60℃であり、通常使用される温度は25℃とする。その時HDD14の周囲が−40℃から25℃に上がった場合65℃の温度差が生じる。一方、−40℃時のHDD14内部の空気は25℃時の82%であることから、HDD14内の空気の容積の略々18%分の空気量をHDD14内に流入させればHDD14周囲と内部に上記温度差が有ってもその間に気圧差は発生しない。ここで上記18%とは、−40℃における値であり、25℃の常温換算では略々22%の空気量となる。したがって上記空気袋17に25℃においてHDD14の内部容積の22%以上の空気量を予め封入しておけばよい。
【0039】
また、HDD14の周囲が急に60℃から25℃に下がった場合も同様に35℃の温度差が生じる。この時、60℃時のHDD14内部容積の12%を排出させれば、HDD14の周囲と内部に気圧差は、発生しない。従って、HDD14の内部容積の12%以上の空気を流入可能とする容積を上記空気袋17は有していれば気圧差は発生しないいことになる。
【0040】
更に、HDD14に空気袋17を取り付けた上記の状態で、上記と同様なガステストを試みた、ここで、ガステストを行う前に、本発明の実施の形態に係る情報記憶装置を構成する各部品において夫々発生するガスの分析を行っている。この発生ガスを分析する際も、上記と同様の温湿度環境下において、所定時間保存した。以下の表2は各部品から発生するガスの種類と量を示し、筐体30の内壁及び筐体30内の緩衝材15とパッキン13からもガスが発生することが分かる。表3はガステストの結果を示す。表3から分かるように、空気袋17を取り付けたHDD14のディスクには、殆どガスの付着が無いことが解る。
【0041】
【表2】
【表3】
ここで上記空気袋17内に、活性炭を織りこんだ不織布を設ける場合の詳細説明をする。
例えば、2.5インチHDDの内部空気容量は略々20ccである。ここで空気袋17に予め封入しておく空気量は、上記HDD内部空気容量の22%以上であり、ここで5ccとすれば上記HDD内部空気容量と空気袋17内の合計の空気体積は25ccとなる。このとき25℃で湿度50%とするとこの空気に含まれる水分は0.29mgとなる。一方、活性炭は、自重の20%の水分を吸収可能である為、空気袋17内に1.5mg以上の活性炭を織りこんだ不織布を設けることにより、図9に示す様に、96時間後には、上記HDD内と空気袋17内の湿度を5%より低くすることが出来る。上記HDD内と空気袋17内の水分を上記活性炭によりほとんど吸収出来たことになり上記HDDの使用及び保存環境をオフィスでの環境以上に向上させたことになる。
【0042】
【発明の効果】
本発明に係る情報記憶装置によれば、特にハードディスクドライブ等の記憶装置の耐衝撃性を高めるとともに、動作及び保存における耐環境性も向上させ動作の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る情報記憶装置の斜視図である。
【図2】図1に示す情報記憶装置の分解斜視図である。
【図3】図1及び図2に示された筐体の接続部分の拡大断面図である。
【図4】図1に示されたハードディスクドライブの構成を示す分解斜視図である。
【図5】図2及び図4に示された空気袋の斜視図である。
【図6】図2及び図4に示された空気袋の空気封入時の状態を示す斜視図である。
【図7】減圧環境下での筐体の膨張量の測定結果を示すグラフである。
【図8】衝撃試験の実験結果を示すグラフである。
【図9】空気袋の有無で保存時間に対する筐体内の湿度の保存時間依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
10…情報記憶装置
14…ハードディスクドライブ
15…緩衝部材
17…空気袋
17a・・空気袋の開口部
19…コネクタ
21…カバー
21a…穴
22…磁気ディスク
30…筐体
Claims (5)
- 密閉筐体に記憶装置が収納され、前記密閉筐体内に前記記憶装置を衝撃から保護する緩衝材を含む情報記憶装置であって、
前記密閉筐体に収納された開口部を有する気体溜め部を備え、
前記記憶装置は、少なくとも一ヶ所の通気孔を有すると共に、前記通気孔以外は密閉されており、全ての前記通気孔の各々には前記開口部が取り付けられたことを特徴とする情報記憶装置。 - 前記記憶装置はハードディスク磁気記録再生装置であることを特徴とする請求項1に記載の情報記憶装置。
- 前記気体溜め部の内部又は前記記憶装置の内部の少なくとも一方に活性炭が装着されたことを特徴とする請求項1に記載の情報記憶装置。
- 常温常気圧(25°C/1気圧)において前記記憶装置に封入される気体の体積の22%以上の体積を有する気体が前記気体溜め部に封入され、更に前記気体溜め部には前記常温常気圧において前記記憶装置に封入される気体の体積の12%以上の空き容量が残っていることを特徴とする請求項1に記載の情報記憶装置。
- 前記密閉筐体には外部機器へ電気的に接続するためのコネクタが設けられ、前記コネクタはインサート成型によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の情報記憶装置。
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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- 2002-07-30 JP JP2002222073A patent/JP2004063029A/ja active Pending
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