JP2004060059A - 手袋およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】グリップ性および柔軟性に優れ、風合いが劣化し難く、十分な耐水性および通気性を有し、しかも安価な手袋を提供する。
【解決手段】スポーツ用手袋10は、手平部12と、手甲部14と、親指部18とが羊皮を原皮とする天然皮革から構成され、前記天然皮革にはアミノ基含有有機変性シリコーンが含浸される。
【選択図】図1
【解決手段】スポーツ用手袋10は、手平部12と、手甲部14と、親指部18とが羊皮を原皮とする天然皮革から構成され、前記天然皮革にはアミノ基含有有機変性シリコーンが含浸される。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、全体あるいは一部が天然皮革から構成される手袋およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、羊、馬、鹿等の天然皮革を素材とする手袋は、合成皮革あるいは人工皮革に比して、グリップ性に優れ、風合いが良く、しかも、柔軟性に富むため、野球、ゴルフ、テニス等のスポーツ用手袋として最適なものとされている。
【0003】
しかしながら、天然皮革は、天然素材であるが故に品質に大きなばらつきがあるため、グリップ性、風合い、柔軟性に優れる高品質な手袋を得ることのできる天然皮革を選択しようとすると、必然的に高価なものとなってしまう。
【0004】
そこで、従来から、天然皮革の加工工程において、柔軟剤や油剤(加脂剤)を天然皮革に含浸させることにより、品質を改良することが行われている。しかしながら、この従来の方法によっても、十分に満足できる品質が得られるものではなく、依然として高価とならざるを得ない状況であった。
【0005】
一方、天然皮革は、水分を吸収し易く、また、吸収した水分が乾燥すると風合いが著しく損なわれるという欠点を抱えている。そこで、この欠点を克服すべく、例えば、天然皮革製のスポーツ用手袋に撥水剤をコーティング処理して水分を吸収し難くすることが行われている。
【0006】
しかしながら、撥水剤をコーティングすると、通気性が低下して使用中に蒸れ感を生じやすくなるといった新たな問題が生じてしまう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、グリップ性および柔軟性に優れ、風合いが劣化し難く、十分な耐水性および通気性を有し、しかも安価な手袋を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、全体あるいは一部が天然皮革から構成される手袋であって、前記天然皮革は、アミノ基含有有機変性シリコーンを含むことを特徴とする。
【0009】
アミノ基含有有機変性シリコーンは、天然皮革と化学的に結合するアミノ基により皮革中に定着し、流出し難い。従って、皮革中に十分な量のアミノ基含有有機変性シリコーンを含浸させておくことができる。このようなアミノ基含有有機変性シリコーンを含浸させた天然皮革を用いることにより、グリップ性および柔軟性に優れ、風合いが劣化し難く、十分な耐水性および通気性を有する高品質な手袋を安価に得ることができる。
【0010】
この場合、天然皮革としては、羊、牛、馬、山羊、鹿、カンガルー、ベッカリー等を原皮として使用することができるが、特に、羊皮を原皮として用いることにより、薄く且つ柔軟性に富む手袋を得ることができる。
【0011】
また、アミノ基含有有機変性シリコーンは、シリコーンの側鎖の一部、片末端あるいは両末端にアミノ基を有する有機変性シリコーンであり、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等を挙げることができる。これらは一般に市販されているものであり、容易に入手可能である。
【0012】
さらに、本発明は、全体あるいは一部が天然皮革から構成される手袋の製造方法であって、前記天然皮革のなめし工程あるいは加脂工程において、アミノ基含有有機変性シリコーンのエマルジョン液を前記天然皮革に含浸させることを特徴とする。
【0013】
アミノ基含有有機変性シリコーンをなめし工程において含浸させる場合には、通常用いられているなめし剤とともにエマルジョン液を調製して行う。また、加脂工程において含浸させる場合には、通常用いられている油剤(加脂剤)とともにエマルジョン液を調製して行うことが好ましいが、油剤(加脂剤)に代えてアミノ基含有有機変性シリコーンによるエマルジョン液を調製して行っても良い。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に係る手袋およびその製造方法について、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0015】
本実施形態のスポーツ用手袋10は、ゴルフ、野球、テニス、あるいはサイクリング等に使用されるものであって、基本的には、図1および図2に示すように、手平部12と、手甲部14と、親指部18とから構成される。
【0016】
手甲部14には、図2に示すように、使用者の手からスポーツ用手袋10が脱落するのを防ぐための固定用ベルト26が設けられている。また、手甲部14の指部分および親指部18の手甲側の指部分には、通気性を確保するための複数の通気孔28が設けられている。
【0017】
手平部12と手甲部14とは、第1縫目19で縫い合わされ、親指部18と手平部12とは、第2縫目20で縫い合わされ、さらに、親指部18と手甲部14とは、第3縫目30で縫い合わされて一体化する。
【0018】
手平部12、手甲部14、親指部18は、羊皮を原皮として薄く加工し、アミノ基含有有機変性シリコーンを含浸させた天然皮革から構成される。
【0019】
アミノ基含有有機変性シリコーンは、シリコーンの側鎖の一部、片末端あるいは両末端にアミノ基を有する有機変性シリコーンであり、天然皮革と化学的に結合するアミノ基により皮革中に定着されて流出し難い。従って、このようなアミノ基含有有機変性シリコーンを含浸させた天然皮革から製造されるスポーツ用手袋10は、例えば、雨の中で使用された場合であっても、皮革中にシリコーンが定着しているため、グリップ性、柔軟性、風合いが低下することがなく、手袋の使用感が低下することがない。
【0020】
また、耐水性が向上するので、風合いの劣化が阻止されるとともに、撥水剤等のコーティングが不要となる。従って、通気性が損なわれることはない。
【0021】
さらに、羊皮を原皮とする天然皮革は、柔軟性に富むとともに、極めて薄く加工することができる。すなわち、この天然皮革から構成されるスポーツ用手袋10は、柔軟性に優れるとともに、軽量に作成することができるので、手袋の使用感をより一層向上させることができる。
【0022】
次に、上述したスポーツ用手袋10の製造方法について説明する。
【0023】
先ず、生あるいは塩漬けされた状態の皮(原皮)を水漬けして、皮に付着している汚れや塩分等を取り除き、水分を補い生皮の状態に戻す(水漬け工程)。次いで、皮の裏面に付着した不純物を取り除き(裏打ち工程)、さらに、石灰乳に浸漬させ、アルカリにより皮を膨潤させて皮のコラーゲン繊維を解すとともに、毛等の表皮層を分解除去する(脱毛・石灰漬け工程)。
【0024】
次に、脱毛・石灰漬け工程までの処理が行われた皮である天然皮革を、分割機を用いて所定の厚さにした後(分割工程)、前記石灰漬け工程で除去できなかった毛根や脂肪等を取り除き(垢出し工程)、石灰乳に再浸漬させてアルカリにより皮革のコラーゲン繊維のからみを解す(再石灰漬け工程)。さらに、脱毛・石灰漬け工程あるいは再石灰漬け工程において、皮革中に残存した石灰を取り除く(脱灰・酵解工程)。これによって、なめし工程におけるなめし剤および後述するアミノ基含有有機変性シリコーンの浸透を容易にすることができる。なお、酵解とは、酵素によって蛋白質を除去するものである。
【0025】
次いで、植物タンニン等のなめし剤とともにアミノ基含有有機変性シリコーンを調製したエマルジョン液を皮革に浸透させる(なめし工程)。アミノ基含有有機変性シリコーンは、アミノ基が皮革と化学的に結合して定着する。この場合、皮革に対するなめし剤の含浸処理と、アミノ基含有有機変性シリコーンの含浸処理とが、同一の工程で行われるため、アミノ基含有有機変性シリコーンの含浸処理に対する余分な処理時間を必要としない。
【0026】
さらに、皮革中の余分な水分を水絞り機によって搾り出し(水絞り工程)、シェービングマシンで皮革の肉面を削り、一定の厚さに調節する(シェービング工程)。なお、なめし工程で皮革に含浸されたアミノ基含有有機変性シリコーンは、皮革と強固に結合しているため、流出することがない。
【0027】
ここで、皮革を染色する場合には、皮革中の酸をアルカリにより中和し、染料が均一に浸透するように調整する(中和工程)。次に、染料を用いて染色するとともに、必要に応じて、皮革に油剤(加脂剤)を加えて柔軟性や豊満性等の感触の特性を付与する(染色・加脂工程)。
【0028】
次いで、機械により皮革中の余分な水分を搾り出し、皮革を伸ばした(水絞り・伸ばし工程)後、皮革中の染料や加脂剤を固着させるために乾燥させ(乾燥工程)、皮革に適当な水分を与え揉み解し易くする(味入れ工程)。
【0029】
さらに、ステーキングマシンにより皮革を揉み解し、柔軟性や弾力性を与えた(ステーキング工程)後、張り板に釘張りし、平らな状態で乾燥させ、味(水分)を除去する(張り乾燥工程)。
【0030】
そしてさらに、製品に仕上げるのに不必要な皮革の縁周り、その他を縁断ちする(縁断ち工程)。その後、皮革の表面のツヤ出し、アイロン当て、型押し、あるいは揉み作業が行われ、最終的には、計量機にかけて革面積を計量する。
【0031】
以上のようにして製造された天然皮革は、手平部12、手甲部14、親指部18毎に所望とする寸法に裁断される。手甲部14に固定用ベルト26と通気孔28を形成し、親指部18の手甲側に通気孔28を形成する。そして、手平部12と手甲部14とを第1縫目19で縫い合わせ、親指部18と手平部12とを第2縫目20で縫い合わせ、さらに、親指部18と手甲部14とを第3縫目30で縫い合わせて、スポーツ用手袋10が製造される。
【0032】
なお、前述したスポーツ手袋10の製造方法では、なめし工程において、アミノ基含有有機変性シリコーンを調製したエマルジョン液をなめし剤とともに皮革に浸透させているが、前記エマルジョン液は、加脂工程において、油剤とともに、あるいは油剤に代えて皮革に浸透させても良い。
【0033】
表1は、羊皮を原皮とする天然皮革に対してアミノ基含有有機変性シリコーンを含浸させた手袋(実施例)と、アミノ基含有有機変性シリコーンを含浸させていない手袋(比較例)とを用いて、風合い、柔軟性、耐水性およびグリップ性について評価した結果を示している。表1によれば、実施例の手袋は、比較例の手袋に比べ、風合い、柔軟性が向上しているとともに、耐水性が優れていることが諒解される。
【0034】
【表1】
【0035】
なお、本実施の形態では、手平部12と手甲部14と親指部18とをアミノ基含有有機変性シリコーンを含有した天然皮革で構成するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、柔軟性が要求される手平部12のみをアミノ基含有有機変性シリコーンを含浸させた天然皮革で構成し、手甲部14および親指部18を天然皮革以外の材料、例えば、合成皮革(人工皮革)で構成するようにしても良い。このようにすることにより、より安価なスポーツ用手袋10を提供することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、グリップ性および柔軟性に優れ、風合いが劣化し難く、十分な耐水性および通気性を有し、しかも安価な手袋を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るスポーツ用手袋の構成を説明する手平側斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るスポーツ用手袋の構成を説明する手甲側斜視図である。
【符号の説明】
10…スポーツ用手袋 12…手平部
14…手甲部 18…親指部
19…第1縫目 20…第2縫目
26…固定用ベルト 28…通気孔
30…第3縫目
【発明の属する技術分野】
本発明は、全体あるいは一部が天然皮革から構成される手袋およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、羊、馬、鹿等の天然皮革を素材とする手袋は、合成皮革あるいは人工皮革に比して、グリップ性に優れ、風合いが良く、しかも、柔軟性に富むため、野球、ゴルフ、テニス等のスポーツ用手袋として最適なものとされている。
【0003】
しかしながら、天然皮革は、天然素材であるが故に品質に大きなばらつきがあるため、グリップ性、風合い、柔軟性に優れる高品質な手袋を得ることのできる天然皮革を選択しようとすると、必然的に高価なものとなってしまう。
【0004】
そこで、従来から、天然皮革の加工工程において、柔軟剤や油剤(加脂剤)を天然皮革に含浸させることにより、品質を改良することが行われている。しかしながら、この従来の方法によっても、十分に満足できる品質が得られるものではなく、依然として高価とならざるを得ない状況であった。
【0005】
一方、天然皮革は、水分を吸収し易く、また、吸収した水分が乾燥すると風合いが著しく損なわれるという欠点を抱えている。そこで、この欠点を克服すべく、例えば、天然皮革製のスポーツ用手袋に撥水剤をコーティング処理して水分を吸収し難くすることが行われている。
【0006】
しかしながら、撥水剤をコーティングすると、通気性が低下して使用中に蒸れ感を生じやすくなるといった新たな問題が生じてしまう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、グリップ性および柔軟性に優れ、風合いが劣化し難く、十分な耐水性および通気性を有し、しかも安価な手袋を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、全体あるいは一部が天然皮革から構成される手袋であって、前記天然皮革は、アミノ基含有有機変性シリコーンを含むことを特徴とする。
【0009】
アミノ基含有有機変性シリコーンは、天然皮革と化学的に結合するアミノ基により皮革中に定着し、流出し難い。従って、皮革中に十分な量のアミノ基含有有機変性シリコーンを含浸させておくことができる。このようなアミノ基含有有機変性シリコーンを含浸させた天然皮革を用いることにより、グリップ性および柔軟性に優れ、風合いが劣化し難く、十分な耐水性および通気性を有する高品質な手袋を安価に得ることができる。
【0010】
この場合、天然皮革としては、羊、牛、馬、山羊、鹿、カンガルー、ベッカリー等を原皮として使用することができるが、特に、羊皮を原皮として用いることにより、薄く且つ柔軟性に富む手袋を得ることができる。
【0011】
また、アミノ基含有有機変性シリコーンは、シリコーンの側鎖の一部、片末端あるいは両末端にアミノ基を有する有機変性シリコーンであり、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等を挙げることができる。これらは一般に市販されているものであり、容易に入手可能である。
【0012】
さらに、本発明は、全体あるいは一部が天然皮革から構成される手袋の製造方法であって、前記天然皮革のなめし工程あるいは加脂工程において、アミノ基含有有機変性シリコーンのエマルジョン液を前記天然皮革に含浸させることを特徴とする。
【0013】
アミノ基含有有機変性シリコーンをなめし工程において含浸させる場合には、通常用いられているなめし剤とともにエマルジョン液を調製して行う。また、加脂工程において含浸させる場合には、通常用いられている油剤(加脂剤)とともにエマルジョン液を調製して行うことが好ましいが、油剤(加脂剤)に代えてアミノ基含有有機変性シリコーンによるエマルジョン液を調製して行っても良い。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に係る手袋およびその製造方法について、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0015】
本実施形態のスポーツ用手袋10は、ゴルフ、野球、テニス、あるいはサイクリング等に使用されるものであって、基本的には、図1および図2に示すように、手平部12と、手甲部14と、親指部18とから構成される。
【0016】
手甲部14には、図2に示すように、使用者の手からスポーツ用手袋10が脱落するのを防ぐための固定用ベルト26が設けられている。また、手甲部14の指部分および親指部18の手甲側の指部分には、通気性を確保するための複数の通気孔28が設けられている。
【0017】
手平部12と手甲部14とは、第1縫目19で縫い合わされ、親指部18と手平部12とは、第2縫目20で縫い合わされ、さらに、親指部18と手甲部14とは、第3縫目30で縫い合わされて一体化する。
【0018】
手平部12、手甲部14、親指部18は、羊皮を原皮として薄く加工し、アミノ基含有有機変性シリコーンを含浸させた天然皮革から構成される。
【0019】
アミノ基含有有機変性シリコーンは、シリコーンの側鎖の一部、片末端あるいは両末端にアミノ基を有する有機変性シリコーンであり、天然皮革と化学的に結合するアミノ基により皮革中に定着されて流出し難い。従って、このようなアミノ基含有有機変性シリコーンを含浸させた天然皮革から製造されるスポーツ用手袋10は、例えば、雨の中で使用された場合であっても、皮革中にシリコーンが定着しているため、グリップ性、柔軟性、風合いが低下することがなく、手袋の使用感が低下することがない。
【0020】
また、耐水性が向上するので、風合いの劣化が阻止されるとともに、撥水剤等のコーティングが不要となる。従って、通気性が損なわれることはない。
【0021】
さらに、羊皮を原皮とする天然皮革は、柔軟性に富むとともに、極めて薄く加工することができる。すなわち、この天然皮革から構成されるスポーツ用手袋10は、柔軟性に優れるとともに、軽量に作成することができるので、手袋の使用感をより一層向上させることができる。
【0022】
次に、上述したスポーツ用手袋10の製造方法について説明する。
【0023】
先ず、生あるいは塩漬けされた状態の皮(原皮)を水漬けして、皮に付着している汚れや塩分等を取り除き、水分を補い生皮の状態に戻す(水漬け工程)。次いで、皮の裏面に付着した不純物を取り除き(裏打ち工程)、さらに、石灰乳に浸漬させ、アルカリにより皮を膨潤させて皮のコラーゲン繊維を解すとともに、毛等の表皮層を分解除去する(脱毛・石灰漬け工程)。
【0024】
次に、脱毛・石灰漬け工程までの処理が行われた皮である天然皮革を、分割機を用いて所定の厚さにした後(分割工程)、前記石灰漬け工程で除去できなかった毛根や脂肪等を取り除き(垢出し工程)、石灰乳に再浸漬させてアルカリにより皮革のコラーゲン繊維のからみを解す(再石灰漬け工程)。さらに、脱毛・石灰漬け工程あるいは再石灰漬け工程において、皮革中に残存した石灰を取り除く(脱灰・酵解工程)。これによって、なめし工程におけるなめし剤および後述するアミノ基含有有機変性シリコーンの浸透を容易にすることができる。なお、酵解とは、酵素によって蛋白質を除去するものである。
【0025】
次いで、植物タンニン等のなめし剤とともにアミノ基含有有機変性シリコーンを調製したエマルジョン液を皮革に浸透させる(なめし工程)。アミノ基含有有機変性シリコーンは、アミノ基が皮革と化学的に結合して定着する。この場合、皮革に対するなめし剤の含浸処理と、アミノ基含有有機変性シリコーンの含浸処理とが、同一の工程で行われるため、アミノ基含有有機変性シリコーンの含浸処理に対する余分な処理時間を必要としない。
【0026】
さらに、皮革中の余分な水分を水絞り機によって搾り出し(水絞り工程)、シェービングマシンで皮革の肉面を削り、一定の厚さに調節する(シェービング工程)。なお、なめし工程で皮革に含浸されたアミノ基含有有機変性シリコーンは、皮革と強固に結合しているため、流出することがない。
【0027】
ここで、皮革を染色する場合には、皮革中の酸をアルカリにより中和し、染料が均一に浸透するように調整する(中和工程)。次に、染料を用いて染色するとともに、必要に応じて、皮革に油剤(加脂剤)を加えて柔軟性や豊満性等の感触の特性を付与する(染色・加脂工程)。
【0028】
次いで、機械により皮革中の余分な水分を搾り出し、皮革を伸ばした(水絞り・伸ばし工程)後、皮革中の染料や加脂剤を固着させるために乾燥させ(乾燥工程)、皮革に適当な水分を与え揉み解し易くする(味入れ工程)。
【0029】
さらに、ステーキングマシンにより皮革を揉み解し、柔軟性や弾力性を与えた(ステーキング工程)後、張り板に釘張りし、平らな状態で乾燥させ、味(水分)を除去する(張り乾燥工程)。
【0030】
そしてさらに、製品に仕上げるのに不必要な皮革の縁周り、その他を縁断ちする(縁断ち工程)。その後、皮革の表面のツヤ出し、アイロン当て、型押し、あるいは揉み作業が行われ、最終的には、計量機にかけて革面積を計量する。
【0031】
以上のようにして製造された天然皮革は、手平部12、手甲部14、親指部18毎に所望とする寸法に裁断される。手甲部14に固定用ベルト26と通気孔28を形成し、親指部18の手甲側に通気孔28を形成する。そして、手平部12と手甲部14とを第1縫目19で縫い合わせ、親指部18と手平部12とを第2縫目20で縫い合わせ、さらに、親指部18と手甲部14とを第3縫目30で縫い合わせて、スポーツ用手袋10が製造される。
【0032】
なお、前述したスポーツ手袋10の製造方法では、なめし工程において、アミノ基含有有機変性シリコーンを調製したエマルジョン液をなめし剤とともに皮革に浸透させているが、前記エマルジョン液は、加脂工程において、油剤とともに、あるいは油剤に代えて皮革に浸透させても良い。
【0033】
表1は、羊皮を原皮とする天然皮革に対してアミノ基含有有機変性シリコーンを含浸させた手袋(実施例)と、アミノ基含有有機変性シリコーンを含浸させていない手袋(比較例)とを用いて、風合い、柔軟性、耐水性およびグリップ性について評価した結果を示している。表1によれば、実施例の手袋は、比較例の手袋に比べ、風合い、柔軟性が向上しているとともに、耐水性が優れていることが諒解される。
【0034】
【表1】
【0035】
なお、本実施の形態では、手平部12と手甲部14と親指部18とをアミノ基含有有機変性シリコーンを含有した天然皮革で構成するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、柔軟性が要求される手平部12のみをアミノ基含有有機変性シリコーンを含浸させた天然皮革で構成し、手甲部14および親指部18を天然皮革以外の材料、例えば、合成皮革(人工皮革)で構成するようにしても良い。このようにすることにより、より安価なスポーツ用手袋10を提供することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、グリップ性および柔軟性に優れ、風合いが劣化し難く、十分な耐水性および通気性を有し、しかも安価な手袋を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るスポーツ用手袋の構成を説明する手平側斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るスポーツ用手袋の構成を説明する手甲側斜視図である。
【符号の説明】
10…スポーツ用手袋 12…手平部
14…手甲部 18…親指部
19…第1縫目 20…第2縫目
26…固定用ベルト 28…通気孔
30…第3縫目
Claims (3)
- 全体あるいは一部が天然皮革から構成される手袋であって、
前記天然皮革は、アミノ基含有有機変性シリコーンを含むことを特徴とする手袋。 - 請求項1記載の手袋において、
前記天然皮革は、羊皮を原皮とすることを特徴とする手袋。 - 全体あるいは一部が天然皮革から構成される手袋の製造方法であって、
前記天然皮革のなめし工程あるいは加脂工程において、アミノ基含有有機変性シリコーンのエマルジョン液を前記天然皮革に含浸させることを特徴とする手袋の製造方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2002215620A JP2004060059A (ja) | 2002-07-24 | 2002-07-24 | 手袋およびその製造方法 |
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JP2002215620A JP2004060059A (ja) | 2002-07-24 | 2002-07-24 | 手袋およびその製造方法 |
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Cited By (2)
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KR101538334B1 (ko) * | 2014-03-13 | 2015-07-23 | 주식회사 형제인터내셔널 | 실리콘 코팅장갑의 제조방법 |
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-
2002
- 2002-07-24 JP JP2002215620A patent/JP2004060059A/ja active Pending
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