JP2004059904A - ミセル含有有機ポリマー、有機ポリマー多孔体及び多孔炭素材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】X線回折パターンにおいて、少なくとも一つのピークを有し、かつ当該ピークの回折角度(2θ)と格子面間隔(d)の少なくとも1組が下記の関係式(1)を満足し、dは0.8nm以上150nm以下の範囲内の1つ以上の値であることを特徴とするミセル含有有機ポリマー。
2θ=2sin−1(λ/2d) (1)
(λは特性X線のKα1の波長(nm)を表す。)
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ミセル含有有機ポリマー、有機ポリマー多孔体及び多孔炭素材料に関する。さらに詳しくは、電極および吸着材などに有用な有機材料の三次元構造と製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、メソポーラス物質としては、シリカよりなる三次元構造体から構成され、1.5〜10nmの比較的均一な細孔を有する無機系のメソポーラス物質や、有機/無機複合高分子で均一な細孔を有するメソポーラス物質等が知られている(例えば特許文献1、2)。
なお、ここで言うメソポーラスとは、「およそ2〜50nmの径の穴が開いた」という意味である。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−67578号公報
【特許文献2】
特開2000−17102号公報
【0004】
また、SBA−15と呼ばれるシリカ質のメソポーラス粉体を鋳型としてフルフリルアルコールを重合し焼結により炭素化した後、フッ化水素酸で鋳型であるメソポーラス粉体を溶解、除去することにより、鋳型のメソポーラス構造を転写した均一な細孔を持つ炭素材料が知られている(例えば非特許文献1)。
【0005】
【非特許文献1】
NATURE、412巻、12頁、2002年7月発行
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前者のメソポーラス物質は、無機系あるいは有機/無機複合系の多孔材料であるため、脆くて割れやすい。従って、成形加工性が極めて悪く、粉末状のものしか得られず、塊状、繊維状、シート状、又はフィルム等の形態のものは得られないという問題がある。
また、後者の鋳型として、この前者のメソポーラス粉体を用いて得られる炭素材料は、極めて小さい粒径の粉体しか得られず、塊状、繊維状、シート状、又はフィルム等の形態とすることができないという問題がある。
また、均一な細孔を有する炭素材料を得る際には、鋳型であるメソポーラス粉体を除去する必要があり、その際に危険なフッ化水素酸等を使用しなくてはならないという問題がある。
すなわち本発明の目的は、均一な細孔を有し、かつ成形性に優れた多孔体を提供することにあり、さらには塊状、繊維状、シート状、又はフィルム等の様々な形態、かつ均一な細孔を有する多孔炭素材料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定のミセル含有有機ポリマーを用いることにより上記目的を達成することを見いだし本発明に到達した。
すなわち、本発明は、X線回折パターンにおいて、少なくとも一つのピークを有し、かつ当該ピークの回折角度(2θ)と格子面間隔(d)の少なくとも1組が下記の関係式(1)を満足し、dは0.8nm以上150nm以下の範囲内の1つ以上の値であることを特徴とするミセル含有有機ポリマー;およびその製造方法である。
2θ=2sin−1(λ/2d) (1)
(λは特性X線のKα1の波長(nm)を表す。)
【0008】
また、本発明は、細孔直径分布曲線における最大ピークを示す細孔直径の±40%の範囲内の直径に対応する細孔の合計細孔体積が、全細孔体積に基づいて50体積%以上であることを特徴とする有機ポリマー多孔体、多孔炭素材料;およびその製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明におけるX線回折パターンは、例えば、X線回折法の一種である小角散乱測定法により得られる。
X線回折法は、物質に入射したX線の一部が波長が変わらずに散乱される、トムソン散乱という原理を利用したものである。小角散乱測定法は、1〜150nmくらいの微粒子や密度の不均一な領域があると、入射X線方向に散漫な散乱が生じることを利用したものである。この散乱は結晶質、非晶質に拘わらず存在し、粒子及び密度が不均一な領域の内部構造には拘わらず、その内部構造の径が小さいほど広がるという性質を持つ。
これらの方法で得られたX線回折パターンは、縦軸を散乱強度、横軸を回折角度(2θ)として、各回折角度での測定物質の散乱強度をプロットしたものである。なお、λは、測定時に使用した金属の特性X線のKα1の波長を用いる。
【0010】
X線回折パターンにおいて、少なくとも一つのピークを有し、かつ当該ピークの回折角度(2θ)と格子面間隔(d)の少なくとも1組が上記の関係式(1)を測定誤差を除外して実質的に満足するということは、格子面間隔(d)が0.8nm以上150nm以下の間隔で規則的に配列した構造であることを示すものである。
すなわち、このようなX線回折パターンの特徴を有する物質は、次の▲1▼〜▲3▼のいずれかを満たすものとなる。
▲1▼ミセル直径Dm又は細孔直径Dpに均一性があり、ミセル又は細孔の形状が均一である。
▲2▼細孔又はミセルの形状が均一であり、ミセル又は細孔の配列構造に規則性がある。
▲3▼ミセル直径Dm又はDp細孔直径に均一性があり、ミセル又は細孔の配列構造に規則性がある。
【0011】
なお、本発明において、ミセル含有有機ポリマー、ミセル直径などの用語における「ミセル」とは、界面活性剤の集合体を示す。
本発明のミセル含有有機ポリマーの一例としては、ポリマーマトリックスを形成する有機ポリマー(B)中に、界面活性剤(A)などがミセルを形成した構造を挙げることができる。
【0012】
また、格子面間隔(d)は、ミセル直径 又は、細孔直径と関係がある。
(1)空間群が特定できる場合には、以下の手順でミセル直径(Dm)を概算できる。
▲1▼まず、ミセル含有ポリマーの空間群を特定する。ミセル含有ポリマーのX線回折測定を行いミセル含有ポリマーの格子面間隔(d1)の値を求める。特定した空間群と測定の結果得られた格子面間隔(d1)の値からミセル含有ポリマーの空間群の格子定数(r1)を求める。
▲2▼後述の方法でミセルを除いて得られる有機ポリマー多孔体の空間群を特定する。有機ポリマー多孔体のX線回折測定を行い有機ポリマー多孔体の格子面間隔(d2)の値を求める。特定した有機ポリマー多孔体の空間群と測定の結果得られた格子面間隔(d2)の値から、有機ポリマー多孔体の空間群の格子定数(r2)を求める。
▲3▼後述の方法でミセルを除いた有機ポリマー多孔体の細孔直径(Dp)を後述するように細孔分布曲線を用いて求める。
▲4▼ミセル直径(Dm)を、下式(2)から算出する。
(Dm)=(Dp)×(r1)/(r2) (2)
(2)ミセル含有ポリマーの空間群が特定できない場合は、ミセル直径を特定できないが、格子面間隔(d)はミセル直径の指標として用いることができる。
(3)有機ポリマー多孔体、あるいは、多孔炭素材料の空間群が特定できない場合は、細孔直径を特定できないが、格子面間隔(d)は細孔直径の指標として用いることができる。
【0013】
本発明のミセル含有有機ポリマーの格子面間隔(d)(nm)は、0.8以上が好ましく、さらに好ましくは1以上、特に好ましくは2以上であり、また150以下が好ましく、さらに好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。
本発明のミセル含有有機ポリマーの格子面間隔(d)(nm)が0.8未満では、ミセル直径又は細孔直径(nm)が必然的に0.8未満になってしまうため、インクジェット受容層、電気二重層キャパシタ、触媒担体等に使用する際に、細孔内にインク、イオン、分子等が進入しにくくなる傾向があるために好ましいとはいえない。
また、150を超えると、インクジェット受容層、電気二重層キャパシタ又は触媒担体等に使用する際に、表面積の低下、吸着能の低下及び電気特性の低下等の観点から好ましくない。
【0014】
本発明のミセル含有有機ポリマーのミセルの形状としては、棒状、球状及び層状等が挙げられる。
本発明のミセル含有有機ポリマーのミセルの配列は、規則性を有してもよいし、規則性が無くてもよいが、規則性を有するのが好ましい。
ミセルの配列が規則性を有するとは、ミセルの配列構造が空間群で示される対称性を有することを意味する。
空間群とは、対称要素の集合によってつくられる群をいう。
対称要素とは、原子、粒子、空孔、ミセル等を三次元で規則的に無限配列した場合に生じる対称のことをいい、5種の回転軸、対称心、鏡面、回映軸、並進、らせん軸及び映進面等が挙げられる。対称要素の可能な組み合わせは230種であり、全ての規則的配列がこれで説明できる。全ての空間群の詳細な説明や図は、International Table of Crystallography,Vol.A(D.Reidel,1987)に記載されている。
このような空間群としては、例えば、表1に示すもの等が挙げられる。
【0015】
【表1】
【0016】
図1は、ミセル又は細孔と有機ポリマーとが、又は細孔と炭素とが、空間群「2−d hexagonal p6mm」を形成している様子を模式的に表した斜視断面図である。この断面において、斜線部が有機ポリマー又は炭素を表し、白抜き部分が細孔又はミセルを表す。すなわち、有機ポリマー又は炭素中に、ミセル又は細孔が規則的に存在している。なお、図1は空間群の一単位を示したものであり、本発明のミセル含有有機ポリマー、有機ポリマー多孔体又は多孔炭素材料は、このような形状が連続しているのものである(他の図についても同じである)。
【0017】
図2は、ミセル若しくは細孔と有機ポリマーとが、又は細孔と炭素とが、空間群「cubic Ia3d」を形成している様子を模式的に表した斜視透過図である。有機ポリマー又は炭素中に、点線で表した円柱状の立体的に連なったミセル又は細孔が規則的に存在している。
【0018】
図3は、ミセル若しくは細孔と有機ポリマーとが、又は細孔と炭素とが、空間群「cubic Pm3n」を形成している様子を模式的に表した斜視断面図である。斜線部は、有機ポリマー又は炭素の断面であり、これが金平糖状ないしテトラポット状の球状のミセル又は細孔を包むように規則的に存在している。
図4は、ミセル若しくは細孔と有機ポリマーとが、又は細孔と炭素とが、空間群「3−d hexagonal P63/mmc」を形成している様子を模式的に表した斜視断面図である。斜線部は、有機ポリマー又は炭素の断面であり、これが球状のミセル又は細孔を包むように規則的に存在している。
【0019】
本発明のミセル含有有機ポリマーとしては、例えば界面活性剤(A)がポリマーマトリックスを形成する有機ポリマー(B)中でミセルを形成した構造を有していればよく、X線回折パターンにおいて少なくとも一つのピークを有し、かつこのうちの1つのピークの回折角度(2θ)と格子面間隔(d)が関係式(1)を満足するものであればその構造に特に制限はない。
界面活性剤(A)としては特に限定されるものではないが、公知のアニオン界面活性剤(A1)、カチオン界面活性剤(A2)、ノニオン界面活性剤(A3)及び両性界面活性剤(A4)が使用できる。
【0020】
アニオン界面活性剤(A1)としては、カルボン酸及びその塩(A1a)、硫酸エステル及びその塩(A1b)、カルボキシメチル化物及びその塩(A1c)、スルホン酸及びその塩(A1d)並びにリン酸エステル及びその塩(A1e)等が使用できる。
【0021】
カルボン酸及びその塩(A1a)としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の炭素数8〜22の飽和もしくは不飽和脂肪酸;天然由来の高級脂肪酸;4−メチルサリチル酸等の炭素数8〜22の芳香族カルボン酸、及びこれらの塩等が使用できる。
【0022】
また、これらの塩としては、上記のカルボン酸からなるアニオンと以下のカチオンとを組合せてなる塩が使用できる。
その塩を形成するカチオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムイオン等が使用できる。
【0023】
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム及びカリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、バリウム、カルシウムなどが挙げられる。
【0024】
硫酸エステル及びその塩(A1b)としては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコールなどの炭素数8〜22の脂肪族アルコールの硫酸モノエステル等の高級アルコール硫酸エステル;炭素数8〜22のアルコールのアルキレンオキサイド(以下AOと略す)付加物(付加モル数1〜20)の硫酸モノエステル等の高級アルキルエーテル硫酸エステル;炭素数8〜22のカルボン酸残基を有する天然油脂の硫酸化油;オレイン酸ブチル、リシノール酸ブチル、リノール酸ブチルなどの炭素数8〜30の不飽和脂肪酸エステルの硫酸化脂肪酸エステル;オクテン、ドデセン、オクタデセン等の炭素数8〜22のオレフィンの硫酸化オレフィン;及びこれらの塩等が使用できる。
なお、AOとしては、炭素数2〜4のものが使用でき、エチレンオキサイド(以下EOと略す)、プロピレンオキサイド(以下POと略す)、1,2−、2,3−および1,3−ブチレンオキサイド、テトラハイドロフラン等が挙げられる。また、単独で付加してもよいし、2種以上のAOをランダム付加またはブロック付加してもよい。
【0025】
カルボキシメチル化物及びその塩(A1c)としては、炭素数8〜22の脂肪族アルコールのカルボキシメチル化物;脂肪族アルコールのAO付加物のカルボキシメチル化物及びこれらの塩等が使用できる。
【0026】
スルホン酸及びその塩(A1d)としては、オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸;オクチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸;スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステル、スルホコハク酸ジオクタデシルエステル等のスルホ脂肪酸エステル;α−オレフィンスルホン酸;イゲポンT型スルホン酸;及びこれらの塩等が使用できる。
これらの塩としては、スルホン酸からなるアニオンと(A1a)で例示したカチオンとを組合せてなる塩が使用できる。
【0027】
リン酸エステル及びその塩(A1e)としては、ラウリルアルコールリン酸モノエステル、ラウリルアルコールリン酸ジエステル等の高級アルコールリン酸エステル;高級アルコールAO付加物リン酸エステル及びこれらの塩等が使用できる。
【0028】
カチオン界面活性剤(A2)としては、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(A2a)及びアミン塩型カチオン界面活性剤(A2b)等が使用できる。
第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(A2a)としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムカチオン(各アルキル基の炭素数は好ましくは1〜18);ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)等のベンジル基とアルキル基(炭素数は好ましくは1〜18)とを有するアンモニウムカチオン;セチルピリジニウムクロライド、オレイルピリジニウムクロライド等のピリジニウムカチオン;ポリオキシアルキレン基とアルキル基(炭素数は好ましくは1〜18)とを有するアンモニウムカチオンからなる第4級アンモニウム塩等が使用できる。
これらの第4級アンモニウム塩を構成するアニオンとしては、水酸イオン、ハロゲンイオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン)、硝酸イオン、亜硝酸イオン、メトサルフェートイオン、炭素数1〜8のカルボキシルアニオン(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、2−エチルヘサキサン酸、乳酸、りんご酸又はグルコン酸等から誘導されるアニオン)等が使用できる。
【0029】
アミン塩型カチオン界面活性剤(A2b)としては、ラウリルアミンクロライド、ステアリルアミンブロマイド、セチルアミンメトサルフェート等の第1級アミン塩;ラウリルメチルアミンクロライド、ステアリルエチルアミンブロマイド、ジラウリルアミンメトサルフェート、ラウリルプロピルアミンアセテート等の第2級アミン塩;ラウリルジエチルアミンクロライド、ラウリルエチルメチルアミンブロマイド等の第3級アミン塩等が使用できる。
【0030】
ノニオン界面活性剤(A3)としては、AO付加型非イオン界面活性剤(A3a)及び多価アルコ−ル型非イオン界面活性剤(A3b)等が使用できる。
AO付加型非イオン界面活性剤(A3a)としては、2−エチルへキシルアルコール、ドデシルアルコール、オレイルアルコール、リノールアルコール、オブツシルアルコール等の炭素数8〜22の飽和または不飽和の高級アルコールAO付加物(付加モル数3〜100);ステアリン酸EO付加物(付加モル数10〜50モル)、オレイン酸EO付加物(付加モル数10〜50モル)、ポリエチレングリコール(分子量400〜2000)のラウリン酸ジエステル等の炭素数8〜22の飽和または不飽和のカルボン酸AO付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジトリメチロールプロパン、ネオペンチルアルコール、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビト−ル、ショ糖等の炭素数2〜22で2〜8価の多価アルコールのAO付加物(付加モル数10〜120);トリメチロールプロパンモノステアレートEO(付加モル数10〜50モル)PO(付加モル数10〜50モル)ランダム付加物、ソルビタンモノステアレートEO付加物(付加モル数10〜50モル)、ソルビタンジラウレートEO(付加モル数10〜50モル)PO(付加モル数10〜50モル)ランダム付加物等の多価アルコールカルボン酸エステルAO付加物;ソルビタンモノステアリルエーテルEO付加物(付加モル数10〜50モル)、メチルグリコシドEO(付加モル数10〜50モル)PO(付加モル数10〜50モル)ランダム付加物、ラウリルグリコシドEO付加物(付加モル数10〜50モル)等の多価アルコールアルキルエーテルAO付加物;ノニルフェノールEO(付加モル数10〜50モル)PO(付加モル数10〜50モル)ブロック付加物、オクチルフェノールEO付加物(付加モル数10〜50モル)、ビスフェノールAEO付加物(付加モル数10〜50モル)等のアルキルフェノールAO付加物;ラウリルアミンEO付加物(付加モル数10〜50モル)、ステアリルアミンEO付加物(付加モル数10〜50モル)等の高級アルキルアミンAO付加物;ヒドロキシプロピルオレイン酸アミドのEO付加物(付加モル数10〜50モル)、ジヒドロキシエチルラウリン酸アミドのEO付加物(付加モル数10〜50モル)等のカルボン酸アミドAO付加物等が使用できる。
【0031】
多価アルコール型非イオン界面活性剤(A3b)としては、ペンタエリスリトールモノオレート、ソルビタンモノラウレート等の多価アルコールカルボン酸エステル;ペンタエリスリトールモノラウリルエーテル、ソルビタンモノメチルエーテル、ラウリルグリコシド等の多価アルコールアルキルエーテル等が使用できる。
【0032】
両性界面活性剤(A4)としては、アミノ酸型両性界面活性剤(A4a)、ベタイン型両性界面活性剤(A4b)及びイミダゾリン型両性界面活性剤(A4c)等が使用できる。
アミノ酸型両性界面活性剤(A4a)としては、分子内にアミノ基とカルボキシル基を持っている両性界面活性剤で、ステアリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸カリウム等のアルキルアミノプロピオン酸型両性界面活性剤;ラウリルアミノ酢酸ナトリウム、ステアリルアミノ酢酸アンモニウム等のアルキルアミノ酢酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0033】
ベタイン型両性界面活性剤(A4b)としては、分子内に第4級アンモニウム塩型のカチオン部分とカルボン酸型のアニオン部分とを持っている両性界面活性剤であり、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルジメチルベタイン;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のアミドベタイン;ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等のアルキルジヒドロキシアルキルベタイン等が挙げられる。
【0034】
イミダゾリン型両性界面活性剤(A4c)としては、例えば、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン及び2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン等が挙げられる。
【0035】
これらの界面活性剤(A)のうち、カチオン界面活性剤(A2)が好ましく、さらに好ましくは第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(A2a)である。特に好ましくは、テトラアルキルアンモニウムカチオンからなる第4級アンモニウム塩、及びベンジル基とアルキル基とを有するアンモニウムカチオンからなる第4級アンモニウム塩である。
(A)は市販されている商品をそのまま使用でき、また公知の方法で製造したものを使用してもよい。また、2種以上の混合物を使用してもよい。
【0036】
(A)の使用量(重量部)は、ポリマーマトリックスを形成する有機ポリマー(B)100重量部に対して、0.5以上が好ましく、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは30以上、最も好ましくは50以上であり、また200以下が好ましく、さらに好ましくは150以下、特に好ましくは120以下、最も好ましくは100以下である。
【0037】
(A)の使用量(重量部)は、ポリマーマトリックスを形成する有機ポリマー(B)100重量部に対して、0.5以上が好ましく、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは30以上、最も好ましくは50以上であり、また200以下が好ましく、さらに好ましくは150以下、特に好ましくは120以下、最も好ましくは100以下である。
【0038】
ミセルの形状及びミセル配列の空間群は、主に界面活性剤(A)の化学構造により影響される。また、これは、界面活性剤の量、温度、媒体の種類等によっても影響を受ける。
界面活性剤(A)の親水性基の大きさと疎水性基の大きさとのバランスによってミセルの形状を制御することができる。詳細な内容については、文献(超分子科学、東京科学同人、1998)に記載されている。
例えば、水系では、一般的に疎水基が占める体積が疎水基の長さに対して大きくなるにつれて、球状ミセルから棒状ミセルへ、棒状ミセルから層状ミセルへと変化する(例えば、界面活性剤の形状を三角錐と考え、底面部分を親水基とすると、三角錐の体積が疎水基が占める体積、その高さが疎水基の長さとなる。そして、体積の同じ三角錐を考えた場合に、三角錐の高さが短いと底面積の大きい三角錐になり、これを並べれば容易に球状になると考える。一方、三角錐の高さが長いと底面積の小さい三角錐となり、球状ミセルを形成しにくくなると考える。)。
【0039】
また、ミセルの形状によって、形成しうる空間群が決定される。
球状ミセルを形成しうる界面活性剤を用いた場合にとりうる空間群としては、例えば、3−d hexagonal P63/mmc、cubic Pm3n等が挙げられる
また、棒状ミセルを形成する界面活性剤を用いた場合にとりうる空間群としては例えば、2−d hexagonal p6mm、cubic Ia3d等が挙げられる。
層状ミセルを形成する界面活性剤を用いた場合にとりうる空間群としては、例えばLamella L1等が挙げられる。
【0040】
ポリマーマトリックスを形成する有機ポリマー(B)としては、特に限定されるものではないが、公知の熱可塑性樹脂(B1)、熱硬化性樹脂(B2)及びこれらの混合物等が使用できる。
熱可塑性樹脂(B1)としては、ビニル樹脂(B1−1)、ポリエステル(B1−2)、ポリアミド(B1−3)、ポリウレタン(B1−4)及びポリカーボネート(B1−5)等が挙げられる。
【0041】
ビニル樹脂(B1−1)は、非架橋性のビニルモノマー(b1)の1種または2種以上を重合して得ることができる。
ビニルモノマー(b1)としては、ビニル炭化水素(b1−1)、エポキシ基含有ビニルモノマー(b1−2)、ビニルエステル(b1−3)、ビニルエーテル(b1−4)、ビニルケトン(b1−5)、アルキル(メタ)アクリレート(b1−6)、ポリオキシアルキレン基を有するビニルモノマー(b1−7)、カルボキシル基含有ビニルモノマー(b1−8)、スルホ基含有ビニルモノマー(b1−9)、ホスホノ基含有ビニルモノマー(b1−10)、ヒドロキシル基含有ビニルモノマー(b1−11)、窒素含有ビニルモノマー(b1−12)、ハロゲン元素含有ビニルモノマー(b1−13)及びその他のビニルモノマー(b1−14)が用いられる。
【0042】
ビニル炭化水素(b1−1)としては、脂肪族ビニル炭化水素(b1−1a)、脂環式ビニル炭化水素(b1−1b)及び芳香族ビニル炭化水素(b1−1c)等が用いられる。
脂肪族ビニル炭化水素(b1−1a)としては、炭素数2〜50(好ましくは2〜22)のアルケン、アルカジエン等が使用でき、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン等が挙げられる。
【0043】
脂環式ビニル炭化水素(b1−1b)としては、炭素数5〜50(好ましくは5〜22)の脂環式ビニル炭化水素等が使用でき、例えば、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等が挙げられる。
【0044】
芳香族ビニル炭化水素(b1−1c)としては、炭素数8〜50(好ましくは8〜22)の芳香族ビニル炭化水素等が使用でき、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン等が挙げられる。
【0045】
エポキシ基含有ビニルモノマー(b1−2)としては、エポキシ基とビニル基とを含有するモノマー(炭素数6〜50(好ましくは6〜20))等が使用でき、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
ビニルエステル(b1−3)としては、ビニル基とエステル結合とを含有するモノマー(炭素数4〜50(好ましくは6〜20))等が使用でき、例えば、酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは環状の基である)及びジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖若しくは環状の基である)等が挙げられる。
【0047】
ビニルエーテル(b1−4)としては、のエーテル結合を有するビニル基含有モノマー(炭素数3〜50(好ましくは6〜20))等が使用でき、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル2−ブトキシエチルエーテル、3,4−ジヒドロ1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル、ビニル2−エチルメルカプトエチルエーテル等が挙げられる。
【0048】
ビニルケトン(b1−5)としては、炭素数6〜50のビニルケトン等が使用でき、例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン及びビニルフェニルケトン等が挙げられる。
【0049】
アルキル(メタ)アクリレート(b1−6)としては、炭素数1〜50(好ましくは1〜20)のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート等が使用でき、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート及びフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
ポリオキシアルキレン基を有するビニルモノマー(b1−7)としては、重量平均分子量(以下Mwと略す)100〜10,000(好ましくは300〜5,000)のポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート等が使用でき、例えば、数平均分子量(以下Mnと略す)300のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn500)モノアクリレート、メチルアルコールEO10モル付加物(メタ)アクリレート及びラウリルアルコールEO30モル付加物(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ないし以下において、MnおよびMwは、ゲルパミエーションクロマトグラフィー法(以下GPC法と略す)により測定されるポリスチレン換算のそれぞれ数平均分子量、重量平均分子量である。
【0051】
カルボキシル基含有ビニルモノマー(b1−8)としては、カルボキシル基とビニル基とを含有する炭素数3〜50(好ましくは3〜20)のモノマー及びその塩等が使用でき、例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキル(アルキル基の炭素数1〜10)エステル、フマル酸、フマル酸モノアルキル(アルキル基の炭素数1〜10)エステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキル(アルキル基の炭素数1〜10)エステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜10)、桂皮酸及びこれらのアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アミン塩又はアンモニウム塩等が挙げられる。
【0052】
スルホ基含有ビニルモノマー(b1−9)としては、ビニル硫酸、ビニル硫酸塩及びビニル硫酸エステル等が使用できる。
ビニル硫酸としては、ビニル基とスルホ基を含有する炭素数2〜50(好ましくは2〜20)のモノマー等が使用でき、例えば、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、及び3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0053】
ビニル硫酸塩としては、上記のビニル硫酸からなるアニオンと(A1a)で例示したカチオンとを組合せてなる塩等が使用でき、例えば、ビニルスルホン酸ナトリウム、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸カルシウム及び3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
ビニル硫酸エステルとしては、上記のビニル硫酸と炭素数2〜50(好ましくは3〜22)のアルコールとからなるもの等が使用できる。
アルコールとしては、飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコール(炭素数3〜22)が使用でき、第1級アルコール(炭素数3〜22)、第2級アルコール(炭素数3〜22)及び第3級アルコール(炭素数3〜22)等が使用できる。
【0054】
ビニル硫酸エステルとしては、例えば、メチルビニルスルフォネート及びスルホプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
ホスホノ基含有ビニルモノマー(b1−10)としては、ホスホノ基とビニル基とを含有する炭素数4〜50(好ましくは5〜20)のモノマー等が使用でき、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(ヒドロキシアルキル基の炭素数1〜20)燐酸モノエステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート及び2−アクリロイルオキシエタンホスホン酸等が挙げられる。
【0056】
ヒドロキシル基含有ビニルモノマー(b1−11)としては、ヒドロキシル基とビニル基とを含有する炭素数4〜50(好ましくは4〜20)のモノマー等が使用でき、例えば、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル及び庶糖アリルエーテル等が挙げられる。
【0057】
窒素含有ビニルモノマー(b1−12)としては、アミノ基含有ビニルモノマー(b1−12a)、アミド基含有ビニルモノマー(b1−12b)、ニトリル基含有ビニルモノマー(b1−12c)、4級アンモニオ基含有ビニルモノマー(b1−12d)及びニトロ基含有ビニルモノマー(b1−12e)等が使用できる。
【0058】
アミノ基含有ビニルモノマー(b1−12a)としては、アミノ基とビニル基とを含有する炭素数4〜50(好ましくは5〜20)のモノマー等が使用でき、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4ービニルピリジン、2ービニルピリジン、クロチルアミン、N,N−ジメチルアミノスチレン、メチルα−アセトアミノアクリレート、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルチオピロリドン、N−アリールフェニレンジアミン、アミノカルバゾール、アミノチアゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノイミダゾール及びアミノメルカプトチアゾール等が挙げられる。
【0059】
アミド基含有ビニルモノマー(b1−12b)としてはアミド基とビニル基とを含有する炭素数3〜50(好ましくは3〜20)のモノマー等が使用でき、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N−メチルN−ビニルアセトアミド及びN−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0060】
ニトリル基含有ビニルモノマー(b1−12c)としては、ニトリル基とビニル基とを含有する炭素数3〜50(好ましくは3〜20)のモノマー等が使用でき、例えば、(メタ)アクリロニトリル及びシアノスチレン等が挙げられる。
【0061】
4級アンモニオ基含有ビニルモノマー(b1−12d)としては、炭素数6〜50(好ましくは8〜20)の第3級アミノ基含有ビニルモノマーの4級化物(例えば、メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド及びジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの等)等が使用できる。第3級アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、トリエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及びテトラアリルアミン等が挙げられる。
【0062】
ニトロ基含有ビニルモノマー(b1−12e)としては、ニトロ基とビニル基とを含有する炭素数6〜50(好ましくは6〜20)のモノマー等が使用でき、例えば、ニトロスチレン及びジニトロスチレン等が挙げられる。
【0063】
ハロゲン含有ビニルモノマー(b1−13)としては、ハロゲン原子を有する炭素数2〜50(好ましくは2〜20)のビニル基含有炭化水素等が使用でき、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン及びクロロプレン等が挙げられる。
【0064】
その他のビニルモノマー(b1−14)としては、アセトキシスチレン、フェノキシスチレン、エチルα−エトキシアクリレート、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、シアノアクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
【0065】
(B1)は公知の方法で、(b1)と重合開始剤及び必要に応じて溶媒の存在下、反応させて得ることができる。
上記モノマーを重合するための重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤及びアニオン重合開始剤が使用できる。
ラジカル重合開始剤としては、公知のビニルモノマーの重合に用いられているものであれば、いずれも使用できる。代表的なものとしては、パーオキサイド重合開始剤及びアゾ重合開始剤等が挙げられる。又、パーオキサイド重合開始剤と還元剤とを併用するレドックス重合開始剤を使用してもよい。さらには、これらの2種以上を併用してもよい。
【0066】
パーオキサイド重合開始剤としては、水溶性パーオキサイド重合開始剤が使用でき、例えば、過酸化水素、過酢酸、ならびに過硫酸のアンモニウム塩、カリウム塩及びナトリウム塩等が挙げられる。
【0067】
アゾ重合開始剤としては、アゾビスアミジノプロパン塩、アゾビスシアノバレリックアシッド(塩)及び2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等が挙げられる。
レドックス重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩、過酸化水素及びヒドロペルオキシド等の水溶性過酸化物(上記で例示したものが使用できる)と、水溶性の無機もしくは有機還元剤(第1鉄塩、亜硫酸水素ナトリウム、アルコール、ポリアミン等)とを併用した水系レドックス系重合開始剤等が挙げられる。
【0068】
アニオン重合開始剤としては、公知のものが使用でき、例えば、ストロンチウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム及びリチウム等の塩である強アルカリ性物並びにピリジン等の弱アルカリ性物等を用いることができる。
カチオン重合開始剤としては、公知のものが使用でき、例えば、硫酸、リン酸及び過塩素酸のようなプロトン酸、並びに三弗化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン及び四塩化スズのようなルイス酸等を用いることができる。
これらの重合開始剤のうち、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤及びレドックス重合開始剤が好ましく、さらに好ましくはレドックス重合開始剤、特に好ましくは過硫酸カリウムと還元剤とを併用したレドックス重合開始剤である。
【0069】
重合開始剤の使用量(重量部)は、(b1)100重量部に対して、0.1以上が好ましく、さらに好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.3以上であり、20以下が好ましく、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
【0070】
ポリエステル(B1−2)は、ジオール(b2−2)と、ジカルボン酸(b2−1)またはそのエステル形成基誘導体(酸無水物、酸ハライド、炭素数4以下の低級アルキルエステル)とを脱水縮合させる方法、オキシカルボン酸(b2−3)を脱水縮合させる方法、及びラクトン(b2−4)を開環重合させる方法等により得ることができる。
【0071】
ジカルボン酸(b2−1)としては、炭素数4〜20のジカルボン酸等が使用でき、例えば、アジピン酸、マレイン酸、テレフタル酸及びフタル酸等が挙げられる。ジオール(b2−2)としては、炭素数2〜18のジオール等が使用でき、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,18−オクタデカンジオール及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0072】
オキシカルボン酸(b2−3)としては、炭素数2〜12のオキシカルボン酸等が使用でき、例えば、ヒドロキシ酢酸、ω−オキシカプロン酸、ω−オキシエナント酸、ω−オキシカプリル酸、ω−オキシペラルゴン酸、ω−オキシカプリン酸、11−オキシウンデカン酸及び12−オキシドデカン酸等が挙げられる。
【0073】
ラクトン(b2−4)としては、炭素数6〜12のラクトン等が使用でき、例えば、カプロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン及びウンデカノラクトン等が挙げられる。
【0074】
ジオール(b2−2)と、ジカルボン酸(b2−1)またはそのエステル形成基誘導体(酸無水物、酸ハライド、炭素数4以下の低級アルキルエステル)とを脱水縮合させることにより(B1−2)を製造することができる。(b2−1)/(b2−2)のモル比は、1.1/1〜1/1.1が好ましく、さらに好ましくは1.05/1〜1/1.05である。
エステル化触媒としては、例えば、無機酸(硫酸、塩酸等)、有機酸(p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ポリリン酸エステル等)、アンチモン触媒(三酸化アンチモン等)、スズ触媒(モノブチルスズオキサイド等)、チタン触媒(テトラブチルチタネート等)、ジルコニウム触媒(テトラブチルジルコネート等)、ジルコニウム有機酸塩(酢酸ジルコニル)及び有機酸金属塩触媒(酢酸亜鉛等)等が挙げられる。
【0075】
触媒を使用する場合、触媒の使用量は、モノマー((b2−1)と(b2−2)を用いる場合は二つの合計重量)100重量部に対して通常0.1〜5重量部である。
ポリエステル(B1−2)は公知の方法で、例えば(b2−1)と(b2−2)をエステル化触媒存在下、1torr、200℃で18時間反応させて製造される。
【0076】
ポリアミド(B1−3)は、ジカルボン酸(b2−1)とジアミン(b3−1)を脱水縮合させる方法、アミノカルボン酸(b3−2)を脱水縮合させる方法、ラクタム(b3−3)を開環重合させる方法により得ることができる。
ジアミン(b3−1)としては、炭素数2〜18のジアミン等が使用でき、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2,2−ジメチルプロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、イソホロンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン及びフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0077】
アミノカルボン酸(b3−2)としては、炭素数2〜12のアミノカルボン酸等が使用でき、例えば、グリシン、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペラルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸及び12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
【0078】
ラクタム(b3−3)としては、炭素数6〜12のラクタム等が使用でき、例えば、カプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタム及びウンデカノラクタム等が挙げられる。
【0079】
(b2−1)と(b3−1)を脱水縮合させて(B1−3)を得る場合、(b2−1)/(b3−1)のモル比は、1.1/1〜1/1.1が好ましく、さらに好ましくは1.05/1〜1/1.05である。
ポリアミド(B1−3)は、公知の方法で、例えば(b2−1)と(b3−1)を1torr、200℃で12時間反応させて製造される。
【0080】
ポリウレタン(B1−4)は、ジイソシアネート(b4−1)とジオール(b2−2)とを重付加反応させて得ることができる。
ジイソシアネート(b4−1)としては、炭素数(イソシアネート基中の炭素を除く。以下、同様である。)6〜20のジイソシアネート等が使用でき、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,3−若しくは1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−若しくは2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−若しくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサレンジイソシアネート(水添TDI)、2,5−若しくは2,6−ノルボルネンジイソシアネート、m−若しくはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0081】
(b4−1)と(b2−2)を反応させて(B1−4)を得る場合の、(b4−1)/(b2−2)のモル比は、1.1/1〜1/1.1が好ましく、さらに好ましくは1.05/1〜1/1.05である。
ウレタン化触媒としては、公知のものが使用でき、錫系触媒、鉛系触媒等の金属触媒;トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、N−エチルモルホリン、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、およびこれらの炭酸塩または有機酸塩等のアミン系触媒等が用いられる。
【0082】
触媒を使用する場合、触媒の使用量は、モノマー((b4−1)と(b2−2)の合計重量)100重量部に対して、通常0.1〜5重量部である。
ポリウレタン(B1−4)は公知の方法で、例えば(b4−1)と(b2−2)とウレタン化触媒を窒素雰囲気下、60℃で反応させて製造される。
【0083】
ポリカーボネート(B1−5)としては、ジオール(b2−2)とホスゲン又は炭酸ジエステルとの縮合により得ることができる。
ジオール(b2−2)とホスゲン又は炭酸ジエステルとを縮合させて(B1−5)を得る場合の、(b2−2)/ホスゲンあるいは炭酸ジエステルのモル比は、1.1/1〜1/1.1が好ましく、さらに好ましくは1.05/1〜1/1.05である。
ポリカーボネート(B1−5)は公知の方法で、例えば、(b2−2)とホスゲンを、1torr、120℃で反応させて製造される。
【0084】
熱可塑性樹脂(B1)のMnは、10,000以上が好ましく、さらに好ましくは20,000以上、特に好ましくは30,000以上、最も好ましくは40,000以上であり、また1,000,000以下が好ましく、さらに好ましくは500,000以下、特に好ましくは400,000以下、最も好ましくは300,000以下である。
【0085】
熱硬化性樹脂(B2)としては、熱可塑性樹脂(B1)に架橋反応性基を導入した熱硬化性樹脂(B1a)の架橋硬化体(B2−1)、熱可塑性樹脂(B1)の構成モノマーと架橋モノマーとから誘導される架橋樹脂(B2−2)、エポキシ樹脂(B2−3)、フェノール樹脂(B2−4)、フラン樹脂(B2−5)等が使用できる。
【0086】
架橋硬化体(B2−1)は、熱可塑性樹脂(B1)に架橋反応性基を導入した熱硬化性樹脂(B1a)を、必要に応じて硬化剤、触媒及び/又は溶媒の存在下で、エポキシ化反応、ウレタン化反応及び/又はウレア化反応させることにより得ることができる。
架橋反応性基としては、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基及びイソシアナート基等が挙げられる。
【0087】
(B1a)を得る方法としては、ビニルモノマー(b1)を重合する際に架橋反応性基を有するビニルモノマーを(共)重合する方法等が挙げられる。
架橋反応性基を有するビニルモノマーとしては、(b1−2)、(b1−7)、(b1−8)、(b1−11)及び(b1−12)等が挙げられる。
(B1a)合成する際に使用する架橋反応性基を有するビニルモノマーの使用量(重量部)としては、(B1a)100重量部に対して、5以上が好ましく、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは15以上であり、また100以下が好ましく、さらに好ましくは70以下、特に好ましくは50以下である。
【0088】
硬化剤としては、ジオール、ジアミン、ジイソシアネート及びジエポキシド等が挙げられる。
【089】
硬化剤を使用する場合、硬化剤の使用量(重量部)は、(B1a)100重量部に対して、0.1以上が好ましく、さらに好ましくは1以上、特に好ましくは5以上であり、また50以下が好ましく、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは25以下である。
ウレタン化反応及びウレア化反応の際には、必要に応じてウレタン化触媒を用いてもよい。ウレタン化触媒としては、上記の物が使用できる。
触媒を使用する場合、触媒の使用量は、樹脂100重量部に対して通常0.1〜5重量部である。
【0090】
架橋樹脂(B2−2)は、熱可塑性樹脂(B1)の構成モノマーの一部を架橋性モノマーに置き換え、これを重合することにより得ることができる。
架橋性モノマーとしては、2〜8個またはそれ以上の非共役2重結合を含む多官能ビニルモノマー;ならびに、3〜8個またはそれ以上の官能基を有する高官能カルボン酸、高官能アルコール、高官能アミン及び高官能イソシアネート等が使用できる。
多官能ビニルモノマーとしては、多価アルコール{炭素数2〜50(好ましくは2〜20)、2〜8価(好ましくは2〜4)}のポリ(メタ)アクリレートや、芳香族多官能ビニル化合物等が使用でき、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルケトン及びトリビニルベンゼン等が挙げられる。
【0091】
多官能ビニルモノマーの使用量(重量部)としては、ビニルモノマー(b1)及び多官能ビニルモノマーの総重量100重量部に対して、0.1以上が好ましく、さらに好ましくは1以上、特に好ましくは5以上であり、50以下が好ましく、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは25以下である。
【0092】
高官能カルボン酸としては、炭素数4〜50の多官能(3〜5価)カルボン酸等が使用でき、例えば、トリメリット酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸及びナフタレンテトラカルボン酸等が挙げられる。
高官能カルボン酸の使用量(重量部)としては、ジカルボン酸(b2−1)、オキシカルボン酸(b2−3)、ラクトン(b2−4)及び高官能カルボン酸の総重量100重量部に対して、0.1以上が好ましく、さらに好ましくは1以上、特に好ましくは5以上であり、また50以下が好ましく、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは25以下である。
【0093】
高官能アルコールとしては、炭素数3〜50の多官能(3〜5価)アルコール等が使用でき、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトール等が挙げられる。
多官能アルコールの使用量(重量部)としては、ジオール(b2−2)、オキシカルボン酸(b2−3)、ラクトン(b2−4)及び多官能アルコールの総重量100重量部に対して、0.1以上が好ましく、さらに好ましくは1以上、特に好ましくは5以上であり、50以下が好ましく、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは25以下である。
【0094】
高官能アミンとしては、炭素数3〜50の多官能(3〜5価)アミン等が使用でき、例えば、ジエチレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。
高官能アミンの使用量(重量部)としては、ジアミン(b3−1)、アミノカルボン酸(b3−2)、ラクタム(b3−3)及び多官能アミンの総重量100重量部に対して、0.1以上が好ましく、さらに好ましくは1以上、特に好ましくは5以上であり、また50以下が好ましく、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは25以下である。
【0095】
高官能イソシアネートとしては、炭素数3〜60の多官能(3〜6価)イソシアネート等が使用でき、例えば、HDIトリマー、IPDIトリマー、TDIトリマー、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナートカプロエート、グリセリンのHDI3モル付加体、ペンタエリスリトールのHDI4モル付加体及びジペンタエリスリトールのHDI6モル付加体等が挙げられる。 高官能イソシアネートの使用量(重量部)としては、ジイソシアネート(b4−1)及び多官能イソシアネートの総重量100重量部に対して、0.1以上が好ましく、さらに好ましくは1以上、特に好ましくは5以上であり、また50以下が好ましく、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは25以下である。
【0096】
架橋樹脂(B2−2)は公知の方法、例えば熱可塑性樹脂(B1)の製造法と同様にして製造される。
架橋樹脂(B2−2)がポリエステルの場合、カルボキシル基のモル数とヒドロキシル基とのモル数の比が、1.1/1〜1/1.1(好ましくは1.05/1〜1/1.05)となるように、ジカルボン酸、多官能カルボン酸、ジオール、多官能アルコール、オキシカルボン酸及びラクトンの使用量を設定することが好ましい。
【0097】
架橋樹脂(B2−2)がポリアミドの場合、カルボキシル基のモル数とアミノ基のモル数との比が、1.1/1〜1/1.1(好ましくは1.05/1〜1/1.05)となるように、ジカルボン酸、多官能カルボン酸、ジアミン、多官能アミン、アミノカルボン酸及びラクタムの使用量を設定することが好ましい。
【0098】
架橋樹脂(B2−2)がポリウレタンの場合、イソシアネート基のモル数とヒドロキシル基のモル数との比が、1.1/1〜1/1.1(好ましくは1.05/1〜1/1.05)となるように、ジイソシアネート、多官能イソシアネート、ジオール及び多官能アルコールの使用量を設定することが好ましい。
【0099】
エポキシ樹脂(B2−3)は、ポリエポキシドを、ポリアミン及び/又はポリカルボン酸(又は酸無水物)等と反応させて得ることができる。
この際に、エポキシ樹脂(B2−3)を熱硬化性樹脂とするために、使用するポリエポキシド、ポリアミン、ポリカルボン酸のうち、いずれか1つの成分が3官能以上である官能基数のものを使用する。また、物性を損なわない範囲で、1官能のエポキシド、1官能のアミン、1官能のカルボン酸を使用してもよい。
【0100】
官能基数1のエポキシドとしては、炭素数2〜50のエポキシド等が使用でき、例えば、EO、PO、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル及びアリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0101】
官能基数2のポリエポキシドとしては、炭素数4〜50のポリエポキシド等が使用でき、例えば、エチレングリコールジグリシジエルエーテル、1,4エポキシシクロヘキサン及びビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。官能基数3〜6のポリエポキシドとしては、炭素数6〜50のポリエポキシド等が使用でき、例えば、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル及びジペンタエリスリトールヘキサグリシジルエーテル等が挙げられる。
ポリエポキシは単独で使用しても良く、混合物を使用しても良い。
【0102】
ポリアミンとしては、ジアミン(b3−1)及び高官能アミン等が使用できる。ポリアミンは単独で使用しても良く、混合物を使用しても良い。
ポリアミンの使用量(重量部)としては、エポキシド100重量部に対して、20以上が好ましく、さらに好ましくは25以上、特に好ましくは30以上であり、また100以下が好ましく、さらに好ましくは60以下、特に好ましくは50以下である。
【0103】
ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸(b2−1)及び高官能カルボン酸等が使用できる。ポリカルボン酸は単独で使用しても良く、混合物を使用しても良い。
ポリカルボン酸の使用量(重量部)としては、エポキシド100重量部に対して、50以上が好ましく、さらに好ましくは50以上、特に好ましくは60以上であり、また150以下が好ましく、さらに好ましくは100以下、特に好ましくは90以下である。
【0104】
フェノール樹脂(B2−4)としては、レゾール樹脂、ノボラック樹脂等が使用でき、フェノールとホルムアルデヒドとを反応させることで得られる。
レゾール樹脂は、水酸化ナトリウム、アンモニア又は有機アミン等の塩基触媒の存在下で、フェノールとホルムアルデヒドとを同量又はホルムアルデヒド過剰の条件で反応させることにより得られる。
フェノール/ホルムアルデヒドのモル比は、1/1〜1/2が好ましく、さらに好ましくは1/1.1〜1/1.9である。
塩基触媒の使用量(重量部)としては、フェノール及びホルムアルデヒドの合計重量100重量部に対して、0.5以上が好ましく、さらに好ましくは0.7以上、特に好ましくは1以上であり、また20以下が好ましく、さらに好ましくは15以下、特に好ましくは10以下である。
【0105】
ノボラック樹脂は、シュウ酸等の酸触媒存在下で、フェノールとホルムアルデヒドとを同量又はフェノール過剰の条件で反応させることで得られる。
フェノール/ホルムアルデヒドのモル比は、1/1〜1/0.7が好ましく、さらに好ましくは1/0.9〜1/0.75である。
酸触媒の使用量(重量部)としては、フェノール及びホルムアルデヒドの合計重量100重量部に対して、0.5以上が好ましく、さらに好ましくは0.7以上、特に好ましくは1以上であり、また20以下が好ましく、さらに好ましくは15以下、特に好ましくは10以下である。
【0106】
フラン樹脂(B2−5)は、フラン及び/又はその誘導体とホルムアルデヒドとの反応により得ることができる。
フラン及びフラン誘導体/ホルムアルデヒドのモル比は、1/0.7〜1/2が好ましく、さらに好ましくは1/0.7〜1/0.9及び、1/1.1〜1/1.9である。
【0107】
さらにその他のフラン樹脂として、フラン及びフラン誘導体の一部をメラミン又は尿素等で置き換えて製造された化合物等も使用できる。
フランをメラミン又は尿素等で置き換える場合、これらの量としては、フラン100重量部に対して、0.1以上が好ましく、さらに好ましくは1以上、特に好ましくは5以上であり、また50以下が好ましく、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは25以下である。
【0108】
その他の熱硬化性樹脂としては、例えばキシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂及びシリコーン樹脂等の公知の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0109】
これらの有機ポリマー(B)のうち、熱硬化性樹脂(B2)が好ましく、さらに好ましくは、熱可塑性樹脂(B1)に架橋反応性基を導入した熱硬化性樹脂(B1a)の架橋硬化体(B2−1);熱可塑性樹脂(B1)の構成モノマーと架橋モノマーとから誘導される架橋樹脂(B2−2);フェノール樹脂(B2−4)及びフラン樹脂(B2−5)である。特に好ましくは(B2−4)及び(B2−5)、最も好ましくは(B2−4)である。
なお、有機ポリマー(B)は、これらのうち1種、または2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0110】
本発明のミセル含有有機ポリマーには、種々の用途に応じ、その特性を阻害しない範囲で他の樹脂用添加剤(E)を任意に添加することができる。
樹脂用添加剤(E)としては、顔料、染料、充填剤(有機及び/又は無機フィラー)、核剤、ガラス繊維、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤及び抗菌剤等が挙げられる。
樹脂用添加剤(E)を添加する場合、(E)の使用量(重量部)としては、(B)100重量部に対して、0.1以上が好ましく、さらに好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.3以上、最も好ましくは0.4以上であり、また30以下が好ましく、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは10以下、最も好ましくは5以下である。
【0111】
ミセル含有有機ポリマーの製造方法としては、特に限定するものではないが、例えば、
(1)有機ポリマー(B)の構成モノマー、界面活性剤(A)、必要に応じて溶媒や樹脂用添加剤(E)を配合した後、構成モノマー中に界面活性剤のミセルを形成しておき、構成モノマーを重合、硬化させた後、必要により溶剤を除去してミセル含有有機ポリマーを得る方法、
(2)プレポリマーを溶媒に溶解しておき、(A)及び、必要に応じて(E)を加えて、プレポリマー中に(A)のミセルを形成しておき、プレポリマーを重合、硬化させた後、溶剤を除去してミセル含有有機ポリマーを得る方法、
(3)有機ポリマー(B)を溶媒に溶解しておき、(A)及び、必要に応じて溶媒や(E)を加えて、(B)中に(A)のミセルを形成しておき、必要により溶媒を除去してミセル含有有機ポリマーを得る方法等が挙げられる。
【0112】
ここでプレポリマーとは、架橋反応性基を有するMn1000〜100000の有機ポリマー(B)を意味する。
ミセル含有有機ポリマーの製造時に使用できる溶媒としては特に限定はないが、例えば、水;ペンタン、ヘキサン、、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、メシチレン等の炭素数1〜12の炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール、グリセリン等の炭素数1〜10のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル等の炭素数2〜12のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3〜12のケトン;ジエチルエーテル、ブチルエチルエーテル等の炭素数2〜12のエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、N−ジエチルアセトアミド等の炭素数2〜12のアミド;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等の炭素数2〜12のスルホキシド等が挙げられる。
【0113】
これらのうち、水、炭化水素、アルコール及びエステル、ケトンが好ましく、さらに好ましくは水、トルエン、キシレン、メシチレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、酢酸エチル及びアセトンである。
【0114】
ミセル含有有機ポリマーの製造時に溶媒を使用する場合、溶媒の使用量(重量部)に特に限定はないが、界面活性剤(A)1重量部に対して、1以上が好ましく、さらに好ましくは5以上、特に好ましくは10以上、最も好ましくは15以上であり、また100以下が好ましく、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは40以下、最も好ましくは30以下である。
【0115】
本発明のミセル含有有機ポリマーは、様々な形状に加工する事ができる。たとえば、射出成形又は押し出し成形等の方法により、塊状、繊維状、シート状又はフィルム状等の形状とすることができる。
【0116】
成形する場合、成形温度としては有機ポリマーが成形可能な温度であればよいが、200℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは150℃以下である。
【0117】
本発明のミセル含有有機ポリマーは、以下に説明する有機ポリマー多孔体及び多孔炭素材料の原材料とすることができる他に、インク受容層(カチオン界面活性剤を使用したときに特に有効)等としても使用することができる。
【0118】
次に、第2発明の有機ポリマー多孔体について説明する。
本発明の有機ポリマー多孔体において、細孔直径分布曲線における最大ピークを示す細孔直径の±40%の範囲内の直径に対応する細孔の合計細孔体積は、全細孔体積に基づいて50体積%以上であり、好ましくは60体積%以上、さらに好ましくは70体積%以上、特に好ましくは75体積%以上、最も好ましくは80体積%以上である。
ここで、細孔直径分布曲線とは、細孔体積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を縦軸に、細孔直径(D)を横軸にプロットした曲線を意味する。
また、最大ピークを示す細孔直径とは、細孔直径分布曲線のdV/dD値が最大となる細孔直径を意味する。
なお、細孔直径分布曲線は、アルゴンや窒素ガスの吸着量測定により得られる吸着等温線から算出される。また水銀圧入法から得られる空孔分布曲線からも求めることができる。
吸着等温線からは、0.3nm以上50nm以下の細孔直径と細孔体積が求められ、水銀圧入法からは10nm以上1000nm以下の細孔直径と細孔体積が求められる。通常50nm以下を吸着等温線で、50nm以上を水銀圧入法で測定する。両方法を用いることで、好ましい細孔直径の範囲を全て測定することができる。
【0119】
吸着等温線から算出する方法を以下に例示する。
測定サンプルを、液体窒素温度(−196℃)に冷却して、窒素ガスを導入し、その吸着量を定容量法又は重量法で求める。導入する窒素ガスの圧力を除々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットすることにより吸着等温線を作成する。
この吸着等温線から、Cranston−Inklay法(例えばAdv.Catalysis、第9巻、143頁、1957年発行)、又はBJH法(J.Catalysis、第4巻、649頁、1965年発行)等の計算式により、細孔直径分布曲線を求める。
【0120】
水銀圧入法とは、水銀が外圧をかけないと毛細管現象を起こさないことを原理とした測定法である。多孔質のサンプルを水銀に浸し、外圧を加えていくとサンプルの内部に水銀が浸透していく。この時、加えた外圧と、水銀が浸透できる最小の細孔の直径には下記式(3)の関係がある。
D=−4γcosθ/P (3)
(Dは細孔直径(cm)、γは水銀の表面張力(480dyne/cm)、θは接触角(140°)、Pは測定圧力(kg/cm2)を表す。)
また、浸透した水銀の量から、その圧力に対応する細孔直径(D)以上の細孔を有する細孔の全体積が求められる。
得られた結果を、縦軸に細孔体積、横軸に細孔直径としてプロットし、得られた曲線を、微分して得られる曲線が細孔分布曲線となる。
水銀圧入法についての詳細は、J.Amer.Inst.Chem.Engrs.,第2巻,307頁,1956年発行に記載されている。
【0121】
本発明の有機ポリマー多孔体は、有機ポリマー中に多数の細孔が形成された構造を有する。また、本発明の有機ポリマー多孔体の細孔の形状は、かご状、1次元トンネル状、及び3次元トンネル状等が挙げられる。
本発明の有機ポリマー多孔体の細孔の配列は、規則性を有してもよいし、無くてもよいが、規則性を有するのが好ましい。
【0122】
本発明の有機ポリマー多孔体は、X線回折パターンにおいて、少なくとも1つのピークを有し、かつ当該ピークの回折角度(2θ)と格子面間隔(d)の少なくとも1組が下記の関係式(1)を満足し、かつdは0.8nm以上150nm以下の範囲内の1つ以上の値であることが好ましい。すなわち、2θとdが満足する組は1組か2組以上存在するが、dが0.8〜150nmである組は1組あれば十分である。
2θ=2sin−1(λ/2d) (1)
(λは特性X線のKα1の波長(nm)を表す。)
格子面間隔(d)(nm)は、0.8以上が好ましく、さらに好ましくは1以上、特に好ましくは2以上であり、また150以下が好ましく、さらに好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。
【0123】
上記の条件を満足する本発明の有機ポリマー多孔体の細孔の配列は、規則性を有してもよいし、無くてもよいが、規則性を有するのが好ましい。
細孔の配列が規則性を有するとは、細孔の配列構造が空間群で示される対称性を有することを意味する。
このような空間群としては、ミセル含有有機ポリマーと同様のものが例示できる。
【0124】
さらに本発明の有機ポリマー多孔体は、細孔直径分布曲線における最大ピークを示す細孔直径(nm)が0.3以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.5以上、最も好ましくは1以上であり、また100以下であることが好ましく、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは40以下、最も好ましくは30以下である。
この最大ピークを示す細孔直径(nm)がこの範囲未満であると、例えば本発明の有機ポリマー多孔体を、インクジェット受容層、又は触媒担体等に使用する際に、細孔内にインク、イオン又は分子等が進入しにくくなる場合がある。またこの範囲を超えると、上記の用途に使用する際に、表面積の低下、吸着能の低下又は電気特性の低下が生じる場合がある。
【0125】
有機ポリマー多孔体の製造方法は特に限定されないが、ミセル含有有機ポリマーから界面活性剤(A)を除去することにより得ることができる。
ミセル含有有機ポリマーから界面活性剤(A)を除去する方法としては、焼成による方法及び抽出溶媒で処理する方法等が挙げられる。
【0126】
焼成による方法では、ミセル含有有機ポリマーを、一定温度に加熱して、界面活性剤を分解除去することにより有機ポリマー多孔体を得ることができる。
【0127】
加熱分解時の雰囲気としては、ネオン、アルゴン、窒素又は二酸化炭素等の不活性ガス、空気又はこれらの混合物の雰囲気であればよく、これらのうち、空気をが好ましい。また、分解物が除去できるように流入ガス及び流出ガスの出入り口の装着している加熱分解装置を用いることが好ましい。このような装置として、ガスを通気可能な電気炉等が挙げられる。
この方法で除去する場合には、樹脂の軟化温度に注意する必要がある。例えば、有機ポリマーが熱可塑性樹脂であれば、軟化温度以上に加熱した場合、形成した細孔が軟化により消失してしまう可能性がある。
【0128】
抽出溶媒で処理する方法では、ミセル含有有機ポリマー中の界面活性剤(A)を、抽出溶媒によって抽出除去することにより有機ポリマー多孔体を得ることができる。
抽出溶媒としては、界面活性剤に対する溶解度が高く、樹脂との親和性ができるだけ低い溶媒を用いるのが好ましい。樹脂との親和性が高いと、樹脂が抽出溶媒に溶解し、形成した細孔が消失してしまう可能性がある。
このような抽出溶媒としては、例えば、水、エタノール、メタノール、アセトン等の親水性溶媒及びこれらの混合溶液(50体積%エタノール水溶液、80体積%メタノール水溶液及び40体積%アセトン水溶液等);ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の親油性溶媒等が挙げられる。
【0129】
抽出溶媒の使用量(重量部)としては、ミセル含有有機ポリマー1重量部に対して、10以上が好ましく、さらに好ましくは15以上、特に好ましくは20以上、最も好ましくは30以上であり、また200以下が好ましく、さらに好ましくは150以下、特に好ましくは120以下、最も好ましくは100以下である。
【0130】
カチオン界面活性剤を使用した場合、抽出溶媒に強酸(例えば、塩酸)を添加することより、カチオン界面活性剤のカチオンがプロトンでイオン交換されるため、抽出が容易となることがある。また、アニオン界面活性剤を使用した場合、抽出溶媒に強塩基(例えば、水酸化カリウム)を添加することにより抽出が容易になることがある。
酸又は塩基の添加量としては、界面活性剤1モルに対して、1モル以上が好ましく、さらに好ましくは2モル以上、特に好ましくは5モル以上であり、また100モル以下が好ましく、さらに好ましくは80モル以下、特に好ましくは50モル以下である。
【0131】
ミセル含有有機ポリマーを溶媒で処理する場合、必要に応じて酸又は塩基を添加した抽出溶媒を抽出温度に保ち、これにミセル含有有機ポリマーを投入し、必要に応じて、▲1▼超音波を照射して抽出、▲2▼加圧−常圧を繰り返して抽出、▲3▼減圧−常圧を繰り返して抽出、▲4▼加圧−減圧を繰り返して抽出等を行う。
抽出終了後は少量の抽出溶媒で1〜5回洗浄し、付着している抽出溶媒を(減圧)乾燥して、有機ポリマー多孔体を得る。なお、乾燥工程を省くために、有機ポリマー多孔体を使用する際に使用可能な他の低沸点溶剤と置換してもよい。
また減圧乾燥をする場合、減圧度は1〜100torrが好ましく、さらに好ましくは1〜75torr、特に好ましくは1〜50torrである。
乾燥時間(時間)は、1〜24が好ましく、さらに好ましくは1〜18、特に好ましくは1〜12である。
本発明の有機ポリマー多孔体は、以下に説明する多孔炭素材料の原材料とすることができる他に、インクジェット受容層、電気二重層キャパシタ電極物質担体、触媒担体、メディカル用分離膜、上水又は廃水処理用吸着材、GPC用カラム充填材等としても使用することができる。
【0132】
次に第3発明の多孔炭素材料について説明する。
本発明の多孔炭素材料は、細孔直径分布曲線における最大ピークを示す細孔直径の±40%の範囲内の直径に対する細孔の合計細孔体積(体積%)は、全細孔体積に基づいて、50以上であり、好ましくは60以上、さらに好ましくは70以上、特に好ましくは75以上、最も好ましくは80以上である。
【0133】
本発明の多孔炭素材料は、炭素中に多数の細孔が形成された構造を有する。また、本発明の多孔炭素材料の細孔の形状も、かご状、1次元トンネル状、及び3次元トンネル状等が挙げられる。
本発明の多孔炭素材料の細孔の配列は、規則性を有してもよいし、無くてもよいが、規則性を有するのが好ましい。
【0134】
本発明の多孔炭素材料も、本発明のミセル有機含有ポリマー、有機ポリマー多孔体と同様に、X線回折パターンにおいて、少なくとも1つのピークを有し、かつ当該ピークの回折角度(2θ)と格子面間隔(d)の少なくとも1組が下記の関係式(1)を満足し、かつdは0.8nm以上150nm以下の範囲内の1つ以上の値であることが好ましい。
2θ=2sin−1(λ/2d) (1)
(λは特性X線のKα1の波長(nm)を表す。)
格子面間隔(d)(nm)は、0.8以上が好ましく、さらに好ましくは1以上、特に好ましくは2以上であり、また150以下が好ましく、さらに好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。
【0135】
上記の条件を満足する本発明の多孔炭素材料の細孔の配列も、規則性を有してもよいし、無くてもよいが、規則性を有するのが好ましい。細孔の配列が規則性を有するとは、細孔の配列構造が空間群で示される対称性を有することを意味し、このような空間群としては、ミセル含有有機ポリマーと同様のものが例示できる。
【0136】
さらに本発明の多孔炭素材料も、細孔直径分布曲線における最大ピークを示す細孔直径(nm)が0.3nm以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.5以上であり、また100以下であることが好ましく、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは30以下である。
この最大ピークを示す細孔直径(nm)がこの範囲未満であると、例えば本発明の多孔炭素材料を、電気二重層キャパシタ用電極材料又は触媒担体等に使用する際に、細孔内にイオン又は分子等が進入しにくくなる場合がある。またこの範囲を超えると、上記の用途に使用する際に、表面積の低下、吸着能の低下又は電気特性の低下が生じる場合がある。
【0137】
多孔炭素材料の製造方法は特に限定されないが、例えば、ミセル含有有機ポリマーを直接的に焼成炭素化するか、有機ポリマー多孔体を焼成炭素化することにより得ることができる。
焼成炭素化雰囲気としては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、二酸化炭素及びこれらの混合ガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0138】
また、焼成炭素化の前に、エージング(予備加熱)を行うことが好ましい。
【0139】
エージング雰囲気としては、ネオン、アルゴン、窒素又は二酸化炭素等の不活性ガス、空気又はこれらの混合物の雰囲気であればよく、これらのうち、空気が好ましい。
有機ポリマーが熱可塑性樹脂の場合、エージングにより有機ポリマー表面を部分酸化しておくことにより、軟化点以上の焼成炭素化温度における細孔の消失又は変形等を防ぐことができる。この場合、昇温速度を30℃/min以上として酸素含有の雰囲気中で一気に軟化点+100℃以上の温度として有機ポリマー表面を部分酸化することが好ましい。
また、焼成炭化及びエージングの際には分解物が除去できるように流入ガス及び流出ガスの出入り口の装着している加熱分解装置を用いることが好ましい。このような装置として、炭化炉及び電気炉等が使用でき、例えば、ロータリーキルン炉、多段撹拌移動床炉及び多段流動床炉等の炭化炉、その他の特殊炭化炉、並びにガスを通気可能な電気炉等が挙げられる。
【0140】
ミセル含有有機ポリマーから誘導される有機ポリマー多孔体及び多孔炭素材料は、ミセル含有有機ポリマーの形状を保持できるため、ミセル含有有機ポリマーを望む形状に予め成形しておくことにより、有機ポリマー多孔体及び多孔炭素材料を所望の形状とすることができる。例えば、粉末、フィルム、シート状又は繊維状のミセル含有有機ポリマーからは、対応する形状の有機ポリマー多孔体又は多孔炭素材料を得ることができる。
【0141】
このように、得られる有機ポリマー多孔体及び多孔炭素材料は、様々な形状が形成でき、また、細孔直径が均一であり、かつ細孔形状及び/又は細孔配列が規則的である。さらに、ミセル含有有機ポリマー及び有機ポリマー多孔体の焼成により得られる多孔炭素材料は危険なフッ化水素酸等を使用する必要もない。
本発明の有機ポリマー多孔体及び多孔炭素材料は電気絶縁性、断熱性、分離能および吸着能等の優れた性能を有する。
従って、多孔炭素材料は、各種電池用電極、電気二重層コンデンサ電極、キャパシタ用電極等の電極用材料;キャニスタ用吸着材、上水又は廃水処理用吸着材、浄水装置又は脱臭装置用吸着材、食品精製用吸着材、ガス用吸着剤等の吸着材料;半導体の絶縁材料、固体電解質等の各電子部品材料、メディカル用分離膜、及び触媒担体等に最適である。
【0142】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、以下において、部は重量部を、%は重量%を示す。
<実施例1>
ステンレス製オートクレーブに、フェノール10部、36%ホルマリン16部、10%水酸化ナトリウム1.5部を仕込み、均一になるまで撹拌した。オートクレーブ内を窒素ガスで置換した後、常圧密閉下75℃で3時間撹拌し、プレポリマーを得た。次いで、オクチルトリメチルアンモニウムクロライド7部、85%乳酸1.8部及びグリセリン1.5部を加え均一になるまで撹拌した。その後、水及び未反応モノマーを減圧下で除去した。得られた粘性の樹脂を型にいれてシート状(4cm×5cm、厚さ1mm)に成形した後、70℃で120時間硬化させて、シート状のミセル含有有機ポリマー(G1)を得た。
【0143】
このミセル含有有機ポリマー(G1)について、以下の条件でX線回折測定を行い、検出された最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表2に示す。
X線回折条件:RINT2200粉末X線回折装置(理学電気株式会社製)を用い、Cu−Kα1(λ=0.154056nm)、40.0KV管電圧、30mA管電流、発散スリット1/2°、散乱スリット1/2°受光0.15mmの条件で測定を行った。
なお、(G1)は前処理として25℃、1torrで2時間乾燥して測定試料とした。
【0144】
<実施例2>
実施例1において、オクチルトリメチルアンモニウムクロライドの代わりにセチルトリメチルアンモニウムクロライド7部を使用する他は実施例1と同様にして、ミセル含有有機ポリマー(G2)を得た。
このミセル含有有機ポリマー(G2)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表2に示す。
【0145】
<実施例3>
実施例1において、オクチルトリメチルアンモニウムクロライドの代わりにEO20PO70EO20(エチレンキサイド/プロピレンオキサイドのブロック共重合体;Pluronic P123(BASF社製))7部を使用する他は実施例1と同様にして、シート状のミセル含有有機ポリマー(G3)を得た。
このミセル含有有機ポリマー(G3)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表2に示す。
【0146】
<実施例4>
ガラス製の容器にエタノール190部、35%濃塩酸9部を加え、均一になるまで撹拌した。次いで、実施例1で得たミセル含有有機ポリマー(G1)3部を仕込み、40℃まで昇温した。超音波(周波数:15kHz)を照射しながら40℃で7時間抽出を行った後、シートを取り出し、エタノール10部で3回洗浄後、25℃、1torrで2時間乾燥してシート状の有機ポリマー多孔体(GE4)を得た。
【0147】
この有機ポリマー多孔体(GE4)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表3に示す。
また、窒素吸着法(0.3nm以上50nm以下を測定)と水銀圧入法(50nm以上500nm以下を測定)により、有機ポリマー多孔体の細孔分布曲線を測定し、最大ピークを示す細孔直径と、V/Vmax(全細孔体積中の、最大ピークを示す細孔直径の±40%の範囲内の直径に対する細孔の合計細孔体積が占める割合)とを求めた。その結果を表3に示す。
窒素吸着法装置:AUTOSORB−1 GAS/SORPTION SYSTEM(Quantachrome Corporation社製)で行った。水銀圧入法装置:MERCURY PRESSUER POROSIMETER MOD220(Carlo・Erba社製)で行った。
なお、細孔分布曲線を測定する際には、実施例1のX線回折測定と同様に前処理して測定試料とした。
また、V/Vmaxは最大ピークを示す細孔直径の±40%の合計細孔体積/全細孔体積×100で求められる。また全細孔体積は0.3nm以上500nm以下の細孔直径を持つ細孔の体積の総和とした。
【0148】
<実施例5>
実施例4において、ミセル含有有機ポリマー(G1)の代わりに、実施例2で得たミセル含有有機ポリマー(G2)3部を使用する他は実施例4と同様にして、中空円柱状の有機ポリマー多孔体(GE5)を得た。
この有機ポリマー多孔体(GE5)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表3に示す。
また、実施例4と同様にして、有機ポリマー多孔体(GE5)について、最大ピークを示す細孔直径と、V/Vmaxとを求めた。その結果を表3に示す。
【0149】
<実施例6>
実施例4において、35%濃塩酸を使用せず、ミセル含有有機ポリマー(G1)の代わりに実施例3で得たミセル含有有機ポリマー(G3)3部を使用する他は実施例4と同様にして、シート状の有機ポリマー多孔体(GE6)を得た。
この有機ポリマー多孔体(GE6)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表3に示す。
また、実施例4と同様にして、有機ポリマー多孔体(GE6)について、最大ピークを示す細孔直径と、V/Vmaxとを求めた。その結果を表3に示す。
【0150】
<実施例7>
実施例1で得たミセル含有有機ポリマー(G1)を、窒素フローの出来る電気炉中におき、空気をあらかじめ10L/minの速度で流しておき、30分かけて250℃まで昇温し、6時間エージングを行った。その後、窒素を10L/minの速度で流し、250℃で30分保持した。650℃まで1時間かけて昇温しこの温度で3時間焼成した。さらに、1時間かけて800℃まで昇温し5時間焼成を行い、シート状の多孔炭素材料(MCG7)を得た。形状はシート状を保持していた。
シート状の多孔炭素材料(MCG7)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表4に示す。
また、実施例4と同様にして、多孔炭素材料(MCG7)について、最大ピークを示す細孔直径と、V/Vmaxとを求めた。その結果を表4に示す。
【0151】
<実施例8>
実施例7においてミセル含有有機ポリマー(G1)の代わりに、実施例2で得たミセル含有有機ポリマー(G2)を用いる他は実施例7と同様にして、シート状の多孔炭素材料(MCG8)を得た。
多孔炭素材料(MCG8)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表4に示す。
また、実施例4と同様にして、多孔炭素材料(MCG8)について、最大ピークを示す細孔直径と、V/Vmaxとを求めた。その結果を表4に示す。
【0152】
<実施例9>
実施例7においてミセル含有有機ポリマー(G1)の代わりに、実施例6で得た有機ポリマー多孔体(GE6)を用いる他は実施例7と同様にして、多孔炭素材料(MCG9)を得た。形状はシート状を保持していた。
この多孔炭素材料(MCG9)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表4に示す。
また、実施例4と同様にして、多孔炭素材料(MCG9)について、最大ピークを示す細孔直径と、V/Vmaxとを求めた。その結果を表4に示す。
【0153】
<実施例10>
ガラス製のコルベン1に、フェノール10部、36%ホルマリン16部、10%水酸化ナトリウム1.5部を仕込み、均一になるまで撹拌した。コルベン内を窒素ガスで置換した後、常圧密閉下75℃で3時間撹拌し、プレポリマーを得た。次に、コルベン2に、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド7部、イオン交換水120部及び35%塩酸2部を加え、室温で均一になるまで撹拌した。ここにコルベン1の内容物を加え、均一になるまで室温で撹拌した。その後、95℃に昇温し、1.5時間撹拌した。析出した固体をろ取し、イオン交換水50部で二回洗浄して粉体状のミセル含有有機ポリマー(G10)を得た。
【0154】
ミセル含有有機ポリマー(G10)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表2に示す。
【0155】
<実施例11>
実施例1において、ステンレス製オートクレーブの代わりにガラス製のコルベンを用い、オクチルトリメチルアンモニウムクロライドの代わりに、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド7部を使用する他は実施例1と同様にして、ミセル含有有機ポリマー(G11)を得た。
ミセル含有有機ポリマー(G11)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表2に示す。
【0156】
<実施例12>
実施例1において、ステンレス製オートクレーブの代わりにガラス製のコルベンを用い、オクチルトリメチルアンモニウムクロライドの代わりに、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド7部を使用する他は実施例1と同様にして、粘性の樹脂を得た。粘性の樹脂13.1部にヘキサメチレンテトラミンを0.85部加え均一になるまで撹拌したのち、樹脂を型にいれてシート状(4cm×5cm、厚さ1mm)に成形し、その後70℃で120時間硬化させて、シート状のミセル含有有機ポリマー(G12)を得た。
ミセル含有有機ポリマー(G12)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表2に示す。
【0157】
<実施例13>
実施例4において、ミセル含有有機ポリマー(G1)の代わりに、実施例10で得たミセル含有有機ポリマー(G10)3部を使用する他は実施例4と同様にして、粉体状の有機ポリマー多孔体(GE13)を得た。
有機ポリマー多孔体(GE13)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表3に示す。
また、実施例4と同様にして、有機ポリマー多孔体(GE13)について、最大ピークを示す細孔直径と、V/Vmaxとを求めた。その結果を表3に示す。
【0158】
<実施例14>
実施例4において、ミセル含有有機ポリマー(G1)の代わりに、実施例11で得たミセル含有有機ポリマー(G11)3部を使用する他は実施例4と同様にして、有機ポリマー多孔体(GE14)を得た。
有機ポリマー多孔体(GE14)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表3に示す。
また、実施例4と同様にして、有機ポリマー多孔体(GE14)について、最大ピークを示す細孔直径と、V/Vmaxとを求めた。その結果を表3に示す。
【0159】
<実施例15>
実施例4において、ミセル含有有機ポリマー(G1)の代わりに、実施例12で得たミセル含有有機ポリマー(G12)3部を使用する他は実施例4と同様にして、有機ポリマー多孔体(GE15)を得た。
有機ポリマー多孔体(GE15)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表3に示す。
また、実施例4と同様にして、有機ポリマー多孔体(GE15)について、最大ピークを示す細孔直径と、V/Vmaxとを求めた。その結果を表3に示す。
【0160】
<実施例16>
実施例7においてミセル含有有機ポリマー(G1)の代わりに実施例10で得たミセル含有有機ポリマー(G10)を用いる他は実施例7と同様にして、粉体状の多孔炭素材料(MCG16)を得た。
多孔炭素材料(MCG16)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表4に示す。
また、実施例4と同様にして、多孔炭素材料(MCG16)について、最大ピークを示す細孔直径と、V/Vmaxとを求めた。その結果を表4に示す。
【0161】
<実施例17>
実施例7においてミセル含有有機ポリマー(G1)の代わりに実施例11で得たミセル含有有機ポリマー(G11)を用いる他は実施例7と同様にして、シート状の多孔炭素材料(MCG17)を得た。
多孔炭素材料(MCG17)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表4に示す。
また、実施例4と同様にして、多孔炭素材料(MCG17)について、最大ピークを示す細孔直径と、V/Vmaxとを求めた。その結果を表4に示す。
【0162】
<実施例18>
実施例7においてミセル含有有機ポリマー(G1)の代わりに実施例12で得たミセル含有有機ポリマー(G12)を用いる他は実施例7と同様にして、多孔炭素材料(MCG18)を得た。形状はシート状を保持していた。
多孔炭素材料(MCG18)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表4に示す。
また、実施例4と同様にして、多孔炭素材料(MCG18)について、最大ピークを示す細孔直径と、V/Vmaxとを求めた。その結果を表4に示す。
【0163】
<比較例1>
実施例1において、オクチルトリメチルアンモニウムクロライドを用いない以外は実施例1と同様にして、シート状のフェノール樹脂(G19)を得た。
シート状のフェノール樹脂(G19)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表2に示す。
【0164】
<比較例2>
実施例7においてミセル含有有機ポリマー(G1)の代わりに比較例1で得たシート状のフェノール樹脂(G19)を用いる以外は実施例7と同様にして、650℃で3時間焼成した後、さらに、1時間かけて800℃まで昇温し5時間焼成を行った。最後に水蒸気賦活して細孔を形成させて炭素材料(MCG19)を得た。形状は、シートの一部が崩れ落ちていた。
炭素材料(MCG19)について、実施例1と同様にして最大ピークの回折角度(°)をもとめた。その結果を表4に示す。
また、実施例4と同様にして、炭素材料(MCG19)について、最大ピークを示す細孔直径と、V/Vmaxとを求めた。その結果を表4に示す。
【0165】
【表2】
【0166】
実施例1〜3、10〜12のミセル含有有機ポリマーは、回折角度が存在し、比較例1のポリマーでは回折が起こらない。すなわち、本発明のミセル含有有機ポリマーは、ミセルの径、ミセルの形状、ミセルの配列のうち、少なくとも2つに規則性を有することがわかる。さらに、次に記載する有機ポリマー多孔体の細孔直径が均一であることから、均一ミセル径を有することが判る。すなわち、本発明のミセル含有有機ポリマーはポリマーマトリックス中に均一径のミセルを含有し、さらに、ミセルの形状が均一あるいはミセルが規則的に配列されていることがわかる。
【0167】
【表3】
【0168】
実施例4〜6、13〜15の有機ポリマー多孔体は、V/Vmaxの値が大きいことから均一細孔直径を有することがわかる。また、さらにX線回折角度が存在しdが求められることから、細孔形状が均一、あるいは細孔が規則的に配列されていることがわかる。
【0169】
【表4】
【0170】
実施例7〜9、16〜18では、焼成炭素化の工程を経ても形状を保持した。また、実施例7〜9、16〜18の多孔炭素材料はV/Vmaxの値が大きいことから均一細孔直径を有することがわかる。また、さらにX線回折角度が存在しdが求められることから、細孔の形状が均一、または、細孔が規則的に配列されていることがわかる。
一方、比較例2の炭素材料では、細孔直径が比較的均一ではあるが、V/Vmaxが実施例に比べて小さいことから細孔直径の均一度は実施例よりも劣る。また、X線回折が起こっていないので、細孔の形状が均一でなく、かつ、細孔の配列も規則性を有しないことがわかる。
【0171】
【発明の効果】
本発明のミセル含有有機ポリマーは有機材料であるため容易に加工でき、フィルム特性にも優れる。これを用いて製造される有機ポリマー多孔体及び多孔炭素材料は、ミセル含有有機ポリマー製造時の形状をそのまま保持できるため、塊状、繊維状、シート状又はフィルム等の様々な形状に形成できる。すなわち、本発明のミセル含有有機ポリマーは、均一粒子径のミセルが、均一形状を有するか、あるいは規則的に配列しており、この形状をそのまま保持することができる。従って、このミセル含有機ポリマーから得られる有機ポリマー多孔体及び多孔炭素材料は、均一細孔直径を有する細孔が、均一形状を有するか、あるいは規則的に配列されることになる。そして、このような均一性・規則性から、本発明のミセル含有有機ポリマー、有機ポリマー多孔体及び多孔炭素材料は、断熱性、分離能及び吸着能等の優れた性能を発揮する。また、多孔炭素材料を電気二重層キャパシタの電極に使用した際には、径が均一な細孔を有するので有効に働く電極面積を大きくでき、電気二重層を高容量にできる。
さらに、本発明の有機ポリマー多孔体及び多孔炭素材料は、危険なフッ化水素酸を使用する必要もないため、有機ポリマー多孔体及び多孔炭素材料を極めて安全かつ簡便に提供することができる。
【0172】
【図面の簡単な説明】
【図1】ミセル若しくは細孔と有機ポリマーとが、又は細孔と炭素とが、空間群「2−d hexagonal p6mm」を形成している様子を模式的に表した斜視断面図である。
【図2】ミセル若しくは細孔と有機ポリマーとが、又は細孔と炭素とが、空間群「cubic Ia3d」を形成している様子を模式的に表した斜視透過図である。
【図3】ミセル若しくは細孔と有機ポリマーとが、又は細孔と炭素とが、空間群「cubic Pm3n」を形成している様子を模式的に表した斜視断面図である。
【図4】ミセル若しくは細孔と有機ポリマーとが、又は細孔と炭素とが、空間群「3−d hexagonal P63/mmc」を形成している様子を模式的に表した斜視断面図である。
Claims (21)
- X線回折パターンにおいて、少なくとも一つのピークを有し、かつ当該ピークの回折角度(2θ)と格子面間隔(d)の少なくとも1組が下記の関係式(1)を満足し、dは0.8nm以上150nm以下の範囲内の1つ以上の値であることを特徴とするミセル含有有機ポリマー。
2θ=2sin−1(λ/2d) (1)
(λは特性X線のKα1の波長(nm)を表す。) - ミセルが、ポリマーマトリックスを形成する有機ポリマー(B)中の界面活性剤(A)により形成されたものである請求項1記載のミセル含有有機ポリマー。
- 界面活性剤(A)が、カチオン界面活性剤(A2)である請求項2記載のミセル含有有機ポリマー。
- カチオン界面活性剤(A2)が、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(A2a)である請求項3記載のミセル含有有機ポリマー。
- 界面活性剤(A)を、有機ポリマー(B)100重量部に対して0.5重量部以上含む請求項2〜4いずれか記載のミセル含有有機ポリマー。
- 有機ポリマー(B)が、熱硬化性樹脂である請求項2〜5いずれか記載のミセル含有有機ポリマー。
- 有機ポリマー(B)が、熱可塑性樹脂(B1)に架橋反応性基を導入した熱硬化性樹脂(B1a)の架橋硬化体(B2−1);熱可塑性樹脂(B1)の構成モノマーと架橋モノマーとから誘導される架橋樹脂(B2−2);フェノール樹脂(B2−4)及びフラン樹脂(B2−5)からなる群より選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂(B2)である請求項2〜5いずれか記載のミセル含有有機ポリマー。
- モノマー及び/又はプレポリマー中に界面活性剤(A)のミセルを形成させた後、前記モノマー及び/又はプレポリマーを重合及び硬化させることを特徴とするミセル含有有機ポリマーの製造方法。
- 細孔直径分布曲線における最大ピークを示す細孔直径Dmaxの±40%の範囲内の直径に対応する細孔の合計細孔体積が、全細孔体積に基づいて50体積%以上であることを特徴とする有機ポリマー多孔体。
- X線回折パターンにおいて、少なくとも一つのピークを有し、かつ当該ピークの回折角度(2θ)と格子面間隔(d)の少なくとも1組が下記の関係式(1)を満足し、dは0.8nm以上150nm以下の範囲内の1つ以上の値である請求項9記載の有機ポリマー多孔体。
2θ=2sin−1(λ/2d) (1)
(λは特性X線のKα1の波長(nm)を表す。) - 細孔直径分布曲線における最大ピークを示す細孔直径Dmaxが0.3nm以上100nm以下である請求項9または10記載の有機ポリマー多孔体。
- 有機ポリマーが、熱硬化性樹脂である請求項9〜11いずれか記載の有機ポリマー多孔体。
- 有機ポリマー(B)が、熱可塑性樹脂(B1)に架橋反応性基を導入した熱硬化性樹脂(B1a)の架橋硬化体(B2−1);熱可塑性樹脂(B1)の構成モノマーと架橋モノマーとから誘導される架橋樹脂(B2−2);フェノール樹脂(B2−4)及びフラン樹脂(B2−5)からなる群より選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂(B2)である請求項9〜12いずれか記載の有機ポリマー多孔体。
- モノマー及び/又はプレポリマー中に界面活性剤(A)のミセルを形成させた後、前記モノマー及び/又はプレポリマーを重合及び硬化させてミセル含有有機ポリマーを形成し、さらに界面活性剤(A)除去することを特徴とする有機ポリマー多孔体の製造方法。
- 界面活性剤(A)の除去が、焼成及び/又は溶媒抽出により行う請求項14記載の有機ポリマー多孔体の製造方法。
- 細孔直径分布曲線における最大ピークを示す細孔直径Dmaxの±40%の範囲内の直径に対応する細孔の合計細孔体積が、全細孔体積に基づいて50体積%以上であることを特徴とする多孔炭素材料。
- X線回折パターンにおいて、少なくとも一つのピークを有し、かつ当該ピークの回折角度(2θ)と格子面間隔(d)の少なくとも1組が下記の関係式(1)を満足し、dは0.8nm以上150nm以下の範囲内の1つ以上の値であることを特徴とする請求項16記載の多孔炭素材料。
2θ=2sin−1(λ/2d) (1)
(λは特性X線のKα1の波長(nm)を表す。) - 細孔直径分布曲線における最大ピークを示す細孔直径Dmaxが0.3nm以上100nm以下である請求項16または17記載の多孔炭素材料。
- 請求項16〜18いずれか記載の多孔炭素材料からなる電極。
- 請求項16〜19いずれか記載の多孔炭素材料からなる吸着材。
- モノマー及び/又はプレポリマー中に界面活性剤(A)のミセルを形成させた後、前記モノマー及び/又はプレポリマーを重合及び硬化させてミセル含有有機ポリマーを形成し、さらに焼成炭素化を行うことを特徴とする多孔炭素材料の製造方法。
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