JP2004059699A - フェノール樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

フェノール樹脂組成物及びその成形体 Download PDF

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Rindai Kitatani
北谷 林大
Hideki Kawakita
川北 英樹
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Abstract

【課題】成形加工性に優れると共に、成形品の塗装性及び塗膜保持性に優れるフェノール樹脂組成物、及びこのフェノール樹脂からなる成形品を提供する。
【解決手段】フェノールノボラック樹脂100重量部に対して、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン15〜25重量部、硬化助剤として消石灰3〜13重量部、無機充填材として炭酸カルシウム8〜25重量部、有機充填材としてセルロース系充填材80〜130重量部、離型剤として融点55〜90℃のエステル系離型剤1〜4重量部を含有する。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として日用雑貨や灰皿(特に自動車用)等に成形加工されるフェノール樹脂組成物及びその成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、フェノール樹脂組成物は、日用雑貨や車載用の灰皿等を成形するために用いられている。このような日用雑貨等は外観が重視される製品であり、このため意匠性を付加するために外面に塗装が施される場合が多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の成形用のフェノール樹脂組成物は、離型剤として脂肪族金属石鹸系の離型剤が配合されており、このためその硬化物は塗装性や塗膜保持性に劣り、塗膜の弾け、剥がれ等が発生しやすいものであった。このようなフェノール樹脂組成物からなる成形体に塗装を施そうとする場合は、成形体の表面を溶剤などで払拭することにより離型剤を表面から除去する必要があり、成形体の製造時の工程数が増大してしまうものであった。また、このような塗装性等の改善を図るために離型剤の添加量を低減すると、成形加工性が著しく悪化してしまうものであった。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、成形加工性に優れると共に、成形品の塗装性及び塗膜保持性に優れるフェノール樹脂組成物、及びこのフェノール樹脂からなる成形品を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係るフェノール樹脂組成物は、フェノールノボラック樹脂100重量部に対して、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン15〜25重量部、硬化助剤として消石灰3〜13重量部、無機充填材として炭酸カルシウム8〜25重量部、有機充填材としてセルロース系充填材80〜130重量部、離型剤として融点55〜90℃のエステル系離型剤1〜4重量部を含有して成ることを特徴とするものである。
【0006】
また請求項2の発明は、エステル系離型剤が、目開き300μmの篩を通過する粒子を80重量%以上含む粒状のものであることを特徴とするものである。
【0007】
また請求項3の発明は、ヘキサメチレンテトラミンが、80メッシュの篩を通過しない粒子が1重量%未満である粒状のものであることを特徴とするものである。
【0008】
また請求項4に係る成形品は、請求項1乃至3のいずれかに記載のフェノール樹脂組成物を成形加工して成ることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
フェノールノボラック樹脂としては、成形用のフェノール樹脂組成物に配合することができる適宜のものを用いることができるが、分子量が2000〜4000の範囲のものを用いることが好ましい。
【0011】
本発明のフェノール樹脂組成物では、このようなフェノールノボラック樹脂100重量部に対して、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを15〜25重量部、硬化助剤として消石灰を3〜13重量部、無機充填材として炭酸カルシウムを8〜25重量部、有機充填材としてセルロース系充填材を80〜130重量部、離型剤として融点55〜90℃のエステル系離型剤を1〜4重量部、それぞれ配合する。
【0012】
硬化剤として配合されるヘキサメチレンテトラミンは、フェノール樹脂の硬化剤として一般的に用いられているものであり、そのフェノール樹脂100重量部に対する配合量が15重量部に満たないと組成物の硬化速度が遅くなって成形品の生産性が悪化したり、成形品の肉厚部にフクレが生じて外観が悪化するおそれがある。またフェノール樹脂100重量部に対する配合量が25重量部を超えると、成形品の充填性に支障を来す場合があり、また成形加工時の安定性が低下してしまう。
【0013】
このヘキサメチレンテトラミンとしては、特に粒状の形態のものを用いることが好ましいものであり、更には80メッシュの篩を通過しない粒子が1重量%未満である微粒状のものを用いることが好ましい。 また更に好ましくは、150メッシュの篩を通過する粒子が98重量%以上であるものを用いることが好ましい。
【0014】
硬化助剤として配合される消石灰は、そのフェノール樹脂100重量部に対する配合量が3重量部に満たないと組成物の硬化速度が遅くなって成形品の生産性が悪化したり、成形品の肉厚部にフクレが生じて外観が悪化するおそれがある。またフェノール樹脂100重量部に対する配合量が13重量部を超えると、成形品の充填性に支障を来す場合があり、また成形加工時の安定性が低下してしまう。
【0015】
また、無機充填材として炭酸カルシウムを配合すると、フェノール樹脂組成物の製造コストを低減することができ、そのフェノール樹脂100重量部に対する配合量が8重量部に満たないと組成物の溶融粘度が低くなり過ぎ、またこの配合量が25重量部を超えると組成物の溶融粘度が高くなり過ぎて、いずれの場合も成形品の外観や成形性に支障を来す。
【0016】
この炭酸カルシウムとしては、平均粒径が2μm程度のものを用いることが好ましい。
【0017】
また、有機充填材として配合されるセルロース系充填材としては、具体的には木粉等を挙げることができる。このようなセルロース系充填材を配合することにより成形性と成形品特性を両立されたものとなる。 但し、そのフェノール樹脂100重量部に対する配合量が80重量部に満たないと成形品特性が悪化し、またこの配合量が130重量部を超えると充填性に支障を来たす。
【0018】
このセルロース系充填材としては、粒径が200μm以下のものを用いることが好ましい。
【0019】
また離型剤として配合されるエステル系離型剤は、脂肪族エステル系化合物を用いることが好ましく、特にカルナバモンタン系エステルワックスを用いることが好ましい。またこの離型剤として融点55〜90℃のものを用いることにより、成形品に充分な離型性を付与すると共に、成形品中における良好な分散性を確保して成形品の外観を良好なものに維持することができる。このエステル系離型剤の融点が55℃に満たないと成形品の離型性に支障を来し、90℃を超えると分散性が悪化して製品外観が悪化してしまう。特に融点が60〜70℃の範囲のエステル系離型剤を用いることが好ましい。
【0020】
またこのフェノールノボラック樹脂100重量部に対するエステル系離型剤の配合量が1重量部に満たないと離型性に支障を来たし、4重量部を超えると成形品外観に悪影響を及ぼすと共に、製品コスト向上となる。
【0021】
また、このエステル系離型剤は、特に粒状の形態のものを用いることが好ましいものであり、更に目開き300μmの篩を通過する粒子を80重量%以上含む粒状のものであることが好ましく、この場合、成形品中における分散性が更に優れたものとなって、成形品の外観を更に向上させることができる。
【0022】
またフェノール樹脂組成物中には着色剤を配合することもできる。着色剤としては適宜の染料や顔料が用いられ、例えばスピリットブラック等のようなジアゾ化合物、カーボンブラック等のようなカーボン等を使用することができ、これにより更に外観の優れた成形品を得ることができる。この着色剤は、フェノール樹脂100重量部に対して1〜4重量部の割合で配合することが好ましく、フェノール樹脂100重量部に対する配合量が1重量部に満たないと色調ムラによる成形品外観不良となり、またこの配合量が4重量部を超えると成形性および成形品特性に支障を来たし、製品コストにも悪影響を及ぼす。特にフェノール樹脂100重量部に対して2〜3重量部配合すると、製品外観上最適である。
【0023】
以上のような組成を有するフェノール樹脂組成物は、上記の各成分を混合し、加熱ロールにて加熱混合・混練するなどして調製することができる。
【0024】
フェノール樹脂組成物を成形加工することにより成形品を得るにあたっては、適宜の条件にて成形を行うことができるが、例えば金型温度160〜170℃、射出圧力80〜120MPa、硬化時間を成形品の最大肉厚(mm)×15〜20(秒/mm)とする条件で、射出成形を行うことができる。
【0025】
このようにして得られる成形品は、成形金型からの離型性が良好であり、またフクレ、ムラ等の発生が抑制されて外観が良好なものとなり、更にアクリル系、エポキシ系等の一般的な塗料にて塗装した場合に優れた塗装性及び塗膜保持性を有するものである。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳述する。
【0027】
(実施例1〜14、比較例1,2)
各実施例及び比較例につき、表1,2中の組成の欄に示す通り各成分を配合した後、ロール径比1:0.8の2軸加熱回転ロールに、80〜120℃、5〜30rpmの条件で、10〜15回通過させることにより加熱混練し、フェノール樹脂組成物を調製した。
【0028】
ここで、表1,2中の組成の欄の各成分の詳細は次の通りである。
・フェノールノボラック樹脂:松下電工株式会社製、商品名「ストレートノボラック」、分子量2800〜3400
・硬化剤1:ヘキサメチレンテトラミン、三井化学株式会社製、品番「S−4」の分級品、80メッシュの篩を通過しない粒子1重量%未満
・硬化剤2:ヘキサメチレンテトラミン、三井化学株式会社製、品番「S−4」の分級品、80メッシュの篩を通過しない粒子1重量%含有
・硬化助剤:消石灰、河合石灰工業株式会社製
・無機充填材:炭酸カルシウム、日東粉化工業株式会社製、品番「NS#200」、平均粒径2μm
・離型剤1:脂肪酸金属石鹸系離型剤(粉末ステアリン酸亜鉛)、日本油脂株式会社製
・離型剤2:脂肪酸エステル系離型剤(カルナバモンタン系エステルワックス)、大日化学工業株式会社製、商品名「EWKワックス」の分級品、融点61℃、目開き300μmの篩を通過する粒子80重量%以上
・離型剤3:脂肪酸エステル系離型剤(カルナバモンタン系エステルワックス)、大日化学工業株式会社製、商品名「EWKワックス」の分級品、融点61℃、目開き300μmの篩を通過する粒子80重量%未満
・染料:ジアゾ化合物(C.I.ソルベントブラック7)、オリエント化学工業株式会社製、商品名「SPIRIT BLACK SAP−L」
・有機充填材:木粉、三和セルロシン株式会社製、商品名「木粉80」
(評価試験)
a.試験片形成
各実施例及び比較例につき、フェノール樹脂組成物の試験片を形成した。
【0029】
▲1▼成形品特性用試験片;JIS K6911で定められた形状の試験片金型を用いて、金型温度165〜175℃、射出圧力120〜130MPa、硬化時間75秒とする条件で、射出成形を行い、試験片を形成した。
【0030】
▲2▼塗装性評価用試験片;110×110×3mm形状の試験片金型を用いて、金型温度165〜175℃、射出圧力125〜135MPa、硬化時間60秒とする条件で、射出成形を行い、試験片を形成した。
b.成形品特性(JIS K6915)評価
JIS K6915に規定される各項目の試験を行い、全ての項目において、中級絶縁用ノボラック形フェノール樹脂成形材料(PM−GE)に要求される品質をクリアーしたものを「○」、この品質をクリアーしない項目があるものを「×」として評価した。
【0031】
c.塗装性(JIS S2029)評価
JIS S2029に準拠した塗装性評価試験を行い、塗膜の剥がれが発生しなかったものを「○」、塗膜の剥がれが発生したものを「×」として評価した。
【0032】
d.成形性(押出流出時間)評価
JIS K6911に準拠して、挿入質量30g、金型温度120℃、圧力29.4MPaの条件における押出流出時間を測定した。
【0033】
以上の結果を表1,2に併せて示す。
【0034】
【表1】
Figure 2004059699
【0035】
【表2】
Figure 2004059699
【0036】
【発明の効果】
上記のように請求項1に係るフェノール樹脂組成物は、フェノールノボラック樹脂100重量部に対して、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン15〜25重量部、硬化助剤として消石灰3〜13重量部、無機充填材として炭酸カルシウム8〜25重量部、有機充填材としてセルロース系充填材80〜130重量部、離型剤として融点55〜90℃のエステル系離型剤1〜4重量部を含有するため、このフェノール樹脂組成物を成形して得られる成形品は、成形金型からの離型性が良好であり、またフクレ、ムラ等の発生が抑制されて外観が良好なものとなり、更にアクリル系、エポキシ系等の一般的な塗料にて塗装した場合に優れた塗装性及び塗膜保持性を有するものである。
【0037】
また請求項2の発明は、エステル系離型剤が、目開き300μmの篩を通過する粒子を80重量%以上含む粒状のものであるため、成形品中における分散性が更に優れたものとなって、成形品の外観を更に向上させることができるものである。
【0038】
また請求項3の発明は、ヘキサメチレンテトラミンが、80メッシュの篩を通過しない粒子が1重量%未満である粒状のものであるため、成形品中における分散性が更に優れたものとなって、良好な成形品の外観を維持させることができ、塗膜保持性が良好なものとなる。
【0039】
また請求項4に係る成形品は、請求項1乃至3のいずれかに記載のフェノール樹脂組成物を成形加工して成るため、成形時の成形金型からの離型性が良好であり、またフクレ、ムラ等の発生が抑制されて外観が良好なものとなり、更にアクリル系、エポキシ系等の一般的な塗料にて塗装した場合に優れた塗装性及び塗膜保持性を有するものである。

Claims (4)

  1. フェノールノボラック樹脂100重量部に対して、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン15〜25重量部、硬化助剤として消石灰3〜13重量部、無機充填材として炭酸カルシウム8〜25重量部、有機充填材としてセルロース系充填材80〜130重量部、離型剤として融点55〜90℃のエステル系離型剤1〜4重量部を含有して成ることを特徴とするフェノール樹脂組成物。
  2. エステル系離型剤が、目開き300μmの篩を通過する粒子を80重量%以上含む粒状のものであることを特徴とする請求項1に記載のフェノール樹脂組成物。
  3. ヘキサメチレンテトラミンが、80メッシュの篩を通過しない粒子が1重量%未満である粒状のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のフェノール樹脂組成物。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載のフェノール樹脂組成物を成形加工して成ることを特徴とする成形品。
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