JP2004059475A - 還元糖の精製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】還元糖を含む溶液から混在する不必要な物質を簡便な方法で除去し、還元糖の生産効率向上のための資する技術を提供する。
【解決手段】還元糖を構成糖として含有する天然物に酵素を作用させて還元糖を遊離させることにより得られる還元糖を含む溶液を、温度50〜80℃、pH8.5〜10.5の条件下で炭酸飽充法により処理し、不溶物を取り除くことを特徴とする還元糖の精製方法であり、さらにシュウ酸を添加することにより残存するカルシウムを除去する還元糖の精製方法。
【選択図】 なし
【解決手段】還元糖を構成糖として含有する天然物に酵素を作用させて還元糖を遊離させることにより得られる還元糖を含む溶液を、温度50〜80℃、pH8.5〜10.5の条件下で炭酸飽充法により処理し、不溶物を取り除くことを特徴とする還元糖の精製方法であり、さらにシュウ酸を添加することにより残存するカルシウムを除去する還元糖の精製方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、還元糖の精製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
還元糖は食品等の分野で有用なものが多く、例えばL−アラビノースは、蔗糖に近い味質を持ち、難吸収性のノンカロリーな糖質である。また蔗糖やマルトースなどの二糖が体内に吸収される際に作用する二糖水解酵素を阻害することが知られており、ダイエット用甘味料や糖尿病患者用甘味料としての利用が期待されている。また、L−アラビノースは医薬品の合成原料としても有用な糖である。
【0003】
還元糖を取得する場合、その由来を天然物に求めることが行われている。例えば、L−アラビノースは自然界において単糖の形ではほとんど存在せず、高等植物のヘミセルロース中にアラビナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタンなどの形で存在している。例えば柑橘類やリンゴ、甜菜、大豆、トウモロコシ、コメ、麦、アラビアガムなどのほか、これらの加工食品あるいは加工の際の副産物であるアップルファイバー、ビートパルプ、大豆かす、コーンファイバーや落花生油かす、ミカン果汁絞りかす、コメ糠等に存在することが知られている。そのため、L−アラビノースを取得する手段として、最近では、コーンファイバーやアラビアガム、ビートパルプなどに酵素や酸を作用させるL−アラビノースの製造法が開発されている。
【0004】
原料となるアラビナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタン等の粗繊維はペクチン質や不要な粗繊維等と混在して存在する場合が多く、これらを酵素分解や酸加水分解処理することによって得られる溶液の中にはL−アラビノース等の還元糖の他に、ペクチン質や粗繊維、またこれらの分解物が混在している。そのため、このような溶液からL−アラビノース等の還元糖を得るためには、ペクチン質や粗繊維およびこれらの分解物を除去する必要がある。特に、L−アラビノース等の還元糖を効率的に得るために、酵素分解や酸加水分解処理を十分に行った場合やペクチン質の含量が多い柑橘類やリンゴ、甜菜由来などの原料を用いた場合には、ガラクツロン酸などの有機酸の遊離量も多くなり、これらも除去することが必要である。
【0005】
L−アラビノースを精製する方法に関しては、L−アラビノース含有糖液中のキシロースおよびオリゴ糖と目的のL−アラビノースをイオン交換樹脂によるクロマトグラフィーで分画する方法(特開2000−201700号参照)や、多糖、オリゴ糖や塩類との分離を目的としたイオン交換樹脂によるクロマトグラフィ方法(特開2001−286294号参照)、膜処理等が提案されている。
【0006】
一方、従来一般の製糖工程における多糖類、タンパク質等の除去方法として炭酸飽充法が知られている。粗精製糖液に炭酸ガスを吹き込み、多糖類やタンパク質を不溶物として取り除く方法であり広く用いられているものである。また、キシロース等の還元糖と植物原料の残査を含んだ状態で、pH9.0〜12.5、温度15〜70℃で炭酸飽充する粗糖液の精製方法が提案されている(特開平5−253000号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述したクロマトグラフィーによる分画法や膜処理、イオン交換樹脂等の組合わせによる方法では、多量の不純物が混在する中から目的の還元糖を分離するためには、複雑な工程が必要となり、特にL−アラビノース等の還元糖を効率的に得るために、酵素分解や酸加水分解処理を十分に行った場合、ガラクツロン酸などの有機酸が多く遊離し、イオン交換樹脂の負荷が非常に大きくなること、目的とする還元糖と有機酸の分子量が近似することから膜での分離が困難であるなど、大量に工業的な実施は困難であった。
【0008】
一方、一般の炭酸飽充法では、不純物の除去の他に、スクロースの転化により生じるグルコースおよびフルクトースを分解させることも目的の一つであることから、その条件は温度が80℃以上、pHが11以上であり、L−アラビノース等の還元糖にとっては非常に過酷な条件となっており、この方法をL−アラビノース等の還元糖の精製法として用いることは難しかった。また、キシロース等の還元糖と植物原料の残査を含んだ状態で、pH9.0〜12.5、好ましくは10.5〜12.0、温度15〜70℃、好ましくは35〜50℃で炭酸飽充する粗糖液の精製方法(特開平5−253000号公報)は、過酷な条件では分解する還元糖の精製方法であるが、この方法での不溶性の固形物、多糖類やタンパク質の除去は可能であるものの、ガラクツロン酸などの有機酸が含有されている場合、目的とする還元糖を残存させ、ガラクツロン酸などの有機酸も同時に除去することは困難であった。このため、多量の有機酸が含まれている場合、イオン交換樹脂の負荷が大きくなるなどの問題があった。
さらに炭酸飽充法では、処理後にカルシウムが残存し、イオン交換樹脂に負荷をかけ、イオン交換樹脂の再生に手間がかかり、また、イオン交換樹脂の寿命を縮めるなどの問題があった。
【0009】
本発明は、還元糖を含む溶液から混在する不必要な物質、特に有機酸も同時に簡便な方法で除去し、還元糖の生産効率向上のための資する技術を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、従来の炭酸飽充法を改良し、L−アラビノース等の不安定な還元糖を分解させることなく、不純物、特にガラクツロン酸などの有機酸も同時に除去することが可能である炭酸飽充法の条件を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、還元糖を含む溶液に、温度50〜80℃、pH8.5〜10.5の条件下で水酸化カルシウムまたは酸化カルシウム及び炭酸ガスを添加することにより、混在物を取り除くことを特徴とする還元糖の精製方法を要旨とするものであり、好ましくは還元糖を含む溶液が混在物として有機酸を含有する溶液であり、また還元糖を含む溶液が、還元糖を構成糖として含有する天然物に酵素を作用させて還元糖を遊離させることにより得られる溶液であり、さらに好ましくは還元糖がL−アラビノースであるものである。
また別の本発明は、還元糖を含む溶液に水酸化カルシウムまたは酸化カルシウム及び炭酸を添加することにより混在物を取り除き、次いでシュウ酸を添加することにより混在するカルシウムを不溶性のシュウ酸カルシウムとして除去することを特徴とする還元糖の精製方法を要旨とするものであり、好ましくは還元糖がL−アラビノースであるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明における還元糖としては、L−アラビノース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、マンノースの他、ラムノース、ソルボース、リボース、タガトース、タロース、リキソース等が挙げられる。
【0013】
本発明で用いる還元糖を含有する溶液は、還元糖が1種類以上混在する糖混合物であり、その取得法は特に限定されない。還元糖を含有する溶液の取得法の一例として、L−アラビノース等の還元糖を含有する溶液の場合を以下に説明する。
【0014】
原料としては、より安価に得るためには、食品産業廃棄物であるビートパルプ、とうもろこし穂軸、りんご、オレンジ等のジュース搾りかす、各種種皮等が用いられる。これらを原料として酸加水分解または酵素分解することで達成される。このような廃棄物や副産物などを原料として用いることは、安価に製造する目的に則するだけでなく、廃棄物の有効利用という環境保護的側面から見ても、非常に望ましい方法であるといえる。
【0015】
上記したように、原料としては粗繊維を含んでいるものであれば特に制限はなく、酸加水分解または酵素分解により還元糖が遊離するものであれば、どのようなものにでも使用することができる。
【0016】
上記した原料の加水分解の条件としては一般的に知られている条件を適用すればよい。一般的には鉱酸あるいは有機酸の存在下で、60〜120℃、2〜30時間処理すればよい。加水分解に使用する酸の濃度は0.05〜6Nが適当であり、塩酸、硫酸、シュウ酸等の酸が使用できる。
【0017】
一方、原料の酵素処理の条件としては、一般的に知られている条件を適用すればよい。使用する酵素としては、アラビナン、アラビノキシラン等の粗繊維に作用し、L−アラビノース等の還元糖を遊離する活性を有する酵素であればよい。例えばアラビナーゼ(アラバナーゼ)、アラビノフラノシダーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、ガラクタナーゼなどのヘミセルラーゼ酵素剤等が挙げられる。さらに、これら異なる活性を有する2種類以上の酵素を混合したり、植物細胞壁を破壊させるマセレイションエンザイムを添加することによりL−アラビノース等の還元糖の収量を上げることができる。また、使用する酵素は起源の菌株の培養物のうち、L−アラビノース等の還元糖を遊離する活性を有するいかなる画分を用いてもよく、また必要に応じてこれらの酵素を含有する画分を常法により精製あるいは部分精製して使用することもできる。
このような酵素を作用させることにより、L−アラビノースを多く含む還元糖を含む溶液を得ることができる。
【0018】
本発明においては、L−アラビノース等の還元糖を含む溶液に対し、保持温度50〜80℃、保持pH8.5〜10.5で炭酸飽充処理を行なう。
【0019】
還元糖を含む溶液の糖濃度としては、固形分重量を1〜70%とするのが好ましく、より好ましくは3〜30%、さらに好ましくは5〜20%とするのがよい。この濃度より低いと炭酸飽充の効果が低下し、この範囲を超えると炭酸飽充操作において発泡が激しく操作性が低下するからである。
【0020】
具体的には、L−アラビノース等の還元糖を含む試料溶液を、50〜80℃、好ましくは60〜80℃、より好ましくは保持温度60〜70℃に維持し、そこに水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムおよび炭酸ガスを撹拌下で添加し、炭酸飽充処理を行なう。このとき水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムおよび炭酸ガスの添加速度をコントロールすることにより試料をpH8.5〜10.5、好ましくはpH9.0〜10.5に維持する。
【0021】
添加する水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムの必要量は、用いる試料によって異なるが、除去対象物質の固形分重量に対し、酸化カルシウム重量換算で10〜300%量程度の添加が望ましい。添加量が多いほど炭酸飽充の効果は高くなることから、それ以上に添加を行なっても差し支えはない。
【0022】
炭酸ガスの導入量は、水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムの添加速度をコントロールすることにより試料を好ましいpHに維持するように導入すれば良い。
【0023】
本発明においては、用いる還元糖を含む溶液は炭酸飽充操作に対し作業性の劣らない程度に濃縮、希釈を行なったり、操作中の発泡を防ぐために消泡剤を添加することも可能である。
【0024】
目的量の水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムの添加が終了後、暫く撹拌した後、生成した沈殿などの混在物の除去を行う。除去方法としては、フィルター濾過、遠心分離等、一般的な方法で除去すればよく、得に制限しない。
【0025】
さらに本発明では、炭酸飽充処理により清浄を行なった糖液にシュウ酸を添加し、糖液に残留しているカルシウムを不溶性のシュウ酸カルシウムとして沈降させることを行なってもよい。
【0026】
炭酸飽充処理により清浄を行なった糖液に添加するシュウ酸は粉末でも水溶液状でもかまわないが、すみやかにシュウ酸カルシウムの沈澱を形成させるためには水溶液での添加が有効である。シュウ酸水溶液の濃度については特に限定されないが、解け残らず操作性の悪くない濃度であればよい。
【0027】
炭酸飽充処理後の糖液に添加するシュウ酸のモル量は、糖液に残留しているカルシウムのモル量に対し0.1〜4倍の添加が望ましく、好ましくは0.5〜3倍量、さらに好ましくは0.7〜2倍量、すなわちカルシウムに対し等モル量程度のシュウ酸添加が最も好ましい。
【0028】
糖液に残留するカルシウムに対し等モル以下のシュウ酸添加では添加量に依存して糖液中のカルシウム濃度が低下することから、残留カルシウムの負荷の低下には有効であるが、過剰なシュウ酸の添加についてはシュウ酸カルシウム等の不溶性の沈澱形成で利用されなかった余剰分のシュウ酸が糖液中に残留し、後に行なうイオン交換樹脂等による精製で負荷となることからあまり望ましくない。
【0029】
糖液中にカルシウム以外にシュウ酸と不溶性の沈澱を形成する性質をもつ物質が溶解している場合は、カルシウムを除去するために必要なシュウ酸必要添加量はさらに増加することになる。
【0030】
炭酸飽充処理後の糖液にシュウ酸を添加するときの温度は特に制限されないが、糖液が溶液状である温度であればよい。
【0031】
炭酸飽充処理後の糖液にシュウ酸を添加するときのpHは特に制限されないが、好ましくはpH12〜2、さらにはpH11〜3が好ましく、シュウ酸カルシウムが溶解する条件でなければよい。
【0032】
目的量のシュウ酸の添加が終了後、暫く撹拌し、生成したシュウ酸カルシウムの沈殿の除去を実施する。除去方法としては、フィルター濾過、遠心分離等、一般的な方法で除去すればよく、得に制限しない。
【0033】
本発明におけるシュウ酸添加による炭酸飽充処理糖液中残留カルシウムの除去により、従来必要としていた軟化の行程を省略し、さらに脱塩のためのイオン交換樹脂への負荷が軽減され、十分脱塩された糖液が得られることから、糖液の処理量の増大、工程の簡略化が可能となる。また、イオン交換樹脂に対し、その再生が容易となったり、寿命の延長等の効果も期待できる。
【0034】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
以下の参考例、実施例に記載の分析は次に示す方法で実施した。
糖質およびガラクツロン酸、シュウ酸等の有機酸の分析は以下に示す2つのHPLC分析法により行なった。
(1)HPLC分析条件
カラム:Aminex HPX87H(7.8×300mm、BIO RAD製)、移動相:0.005N 硫酸、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出:示差屈折計(RI)
(2)HPLC分析条件
カラム:Aminex HPX87P(7.8×300mm、BIO RAD製)、移動相:水、流速:0.6mL/min、カラム温度:80℃、検出:示差屈折計(RI)
【0035】
カルシウム分析は、和光純薬工業(株)製のカルシウム測定用キットである「カルシウムCテストワコー」(OCPC法)を使用した。
【0036】
参考例1(ビートパルプを用いたL−アラビノース含有糖混合物の調製)
ビートパルプ1.2kgに酵素スミチームPX(新日本化学工業株式会社製 ペクチナーゼ)8mLおよび水12Lを加え、55℃で24時間反応させた。このBrix5.6の圧搾液が得られ、この溶液にはL−アラビノースが12.8g/L、グルコースが4.3g/L、ガラクトースが3.9g/L、キシロースが0.2g/L、及びフルクトースが2.5g/Lが含まれていた。また、これには精製の負荷となる可溶性の多糖、オリゴ糖等が約15g/L、ガラクツロン酸が11.7g/L含まれていた。
【0037】
参考例2(とうもろこし外皮を用いたL−アラビノース含有糖混合物の調製)
とうもろこし外皮2Kgに0.1Nシュウ酸5Lを添加し、100℃で2時間作用させた。次に水酸化カルシウムを添加して中和を行なったのち、遠心分離により残さ等の除去を行なった。この遠心上清の糖成分をHPLCにより分析した結果、L−アラビノースが8.2g/L、グルコースが0.4g/L及びキシロースが2.1g/L含まれていた。また、これには精製の負荷となる可溶性の多糖、オリゴ糖等が約25.7g/L含まれていた。
【0038】
比較例1
参考例1で調製した糖液を固形分濃度10%に濃縮した。濃縮液150mLを37℃に保持し、そこへ17重量%の水酸化カルシウム懸濁液を添加し、炭酸ガスを吹き込みながらpHを8.5〜9.0に保持した。糖液の固形分に対する水酸化カルシウム添加重量が280%量(酸化カルシウム換算で212%量)となるまでこの操作を続けた。このとき途中で数回のサンプリングを実施した。この遠心上清のHPLC分析により精製負荷物質除去率を求めた。溶液に含まれているL−アラビノース等の還元糖を分解させることなく、精製の負荷物質である可溶性の多糖、オリゴ糖等を50%およびガラクツロン酸を20%しか除去できなかった。本比較例における各成分の残存率の経時変化を図1に示した。
【0039】
比較例2
一般の製糖で用いられる炭酸飽充法に近い条件で処理を実施した。参考例1で調製した40℃の糖液100mLに17重量%の酸化カルシウム懸濁液を添加してpHを10.8とした。次に温度を80℃に上げ、さらに酸化カルシウムを添加してpHを12.4とし、15分間撹拌した。ここに炭酸ガスを吹込んでpH11まで低下させ、生成した沈殿を吸引濾過により除去した。ろ液にさらに炭酸ガスを添加して溶液を中性とした。この遠心分離上清のHPLC分析から、各成分の残存率を求めたところ、精製の負荷物質である可溶性の多糖、オリゴ糖等、ガラクツロン酸が全量除去されていたが、還元糖についても激しい低下が見られ、それらの残存率は0〜5%であり、この条件はL−アラビノース等の還元糖の精製には適していないことが明らかとなった。
【0040】
実施例1
参考例1で調製した糖液を固形分濃度10%に濃縮した。濃縮液150mLを50℃に保持し、そこへ17重量%の水酸化カルシウム懸濁液を添加し、炭酸ガスを吹き込みながらpHを8.5〜9.0に保持した。糖液の固形分に対する水酸化カルシウム添加重量が170%量(酸化カルシウム換算で129%量)となるまでこの操作を続けた。このとき途中で数回のサンプリングを実施した。この遠心上清のHPLC分析により精製負荷物質除去率を求めた。溶液に含まれているL−アラビノース等の還元糖を分解させることなく、精製の負荷物質である可溶性の多糖、オリゴ糖等を60%以上およびガラクツロン酸を30%以上選択的に減少させることに成功した。本実施例における各成分の残存率の経時変化を図2に示した。
【0041】
実施例2
参考例1で調製した糖液を固形分濃度10%に濃縮した。濃縮液150mLを60℃に保持し、そこへ17重量%の水酸化カルシウム懸濁液を添加し、炭酸ガスを吹き込みながらpHを9.5〜10.0に保持した。糖液の固形分に対する水酸化カルシウム添加重量が170%量(酸化カルシウム換算で129%量)となるまでこの操作を続けた。このとき途中で数回のサンプリングを実施した。この遠心上清のHPLC分析により精製負荷物質除去率を求めた。溶液に含まれているL−アラビノース等の還元糖を分解させることなく、精製の負荷物質である可溶性の多糖、オリゴ糖等およびガラクツロン酸をそれぞれ80%以上選択的に減少させることに成功した。本実施例における各成分の残存率の経時変化を図3に示した。
【0042】
実施例3
参考例1で調製した糖液を固形分濃度10%に濃縮した。濃縮液150mLを70℃に保持し、そこへ17重量%の水酸化カルシウム懸濁液を添加し、炭酸ガスを吹き込みながらpHを9.5〜10.0に保持した。糖液の固形分に対する水酸化カルシウム添加重量が170%量(酸化カルシウム換算で129%量)となるまでこの操作を続けた。このとき途中で数回のサンプリングを実施した。この遠心上清のHPLC分析により精製負荷物質除去率を求めた。溶液に含まれているL−アラビノース等の還元糖をほとんど分解させることなく、精製の負荷物質である可溶性の多糖、オリゴ糖等を80%程度およびガラクツロン酸を90%以上選択的に減少させることに成功した。本実施例における各成分の残存率の経時変化を図4に示した。
【0043】
実施例4
参考例2で調製した糖液を固形分濃度10%に濃縮した。濃縮液150mLを60℃で保持し、そこへ固形分濃度17%の水酸化カルシウム懸濁液を添加し、炭酸ガスを吹き込みながらpHを9.5〜10.0に保持した。糖液の固形分に対する水酸化カルシウム添加量が、170%量(酸化カルシウム換算で129%量)となるまでこの操作を続けた。吸引濾過により生成した沈殿物を除去した。得られた溶液のHPLC分析から、各成分の残存率を求めたところ、還元糖については95〜101%であったのに対し、精製の負荷物質である可溶性の多糖、オリゴ糖は25%まで低下しており、有意な減少が認められた。
【0044】
実施例5
実施例2で得られたビートパルプ由来の炭酸飽充処理糖液120mLに撹拌下で2mol/Lのシュウ酸を3.6ml添加し、生成した沈澱を遠心分離により除去した。遠心分離上清のカルシウム濃度を分析したところ、8.3mmol/Lであり、処理前の60mmol/Lから濃度が低下していた。いずれの糖質も濃度に変化は見られず、また糖液中にシュウ酸の残留も認められなかった。これをH型に調製した陽イオン交換樹脂PK216(三菱化成株式会社製、強酸性陽イオン交換樹脂)で精製を行なったところ、精製可能量がシュウ酸処理前の3.1倍に増加していた。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、L−アラビノース等の還元糖を含有する糖混合物に従来より穏やかな条件で炭酸飽充操作を行なうことで、従来の製造法において精製の負荷となっていた物質の除去が可能となった。また、従来の精製方法と比較し、本発明は操作性やコスト面においても極めて有効な精製方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例1で得られた各成分の残存率と時間との関係を示す図である。
【図2】実施例1で得られた各成分の残存率と時間との関係を示す図である。
【図3】実施例2で得られた各成分の残存率と時間との関係を示す図である。
【図4】実施例3で得られた各成分の残存率と時間との関係を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、還元糖の精製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
還元糖は食品等の分野で有用なものが多く、例えばL−アラビノースは、蔗糖に近い味質を持ち、難吸収性のノンカロリーな糖質である。また蔗糖やマルトースなどの二糖が体内に吸収される際に作用する二糖水解酵素を阻害することが知られており、ダイエット用甘味料や糖尿病患者用甘味料としての利用が期待されている。また、L−アラビノースは医薬品の合成原料としても有用な糖である。
【0003】
還元糖を取得する場合、その由来を天然物に求めることが行われている。例えば、L−アラビノースは自然界において単糖の形ではほとんど存在せず、高等植物のヘミセルロース中にアラビナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタンなどの形で存在している。例えば柑橘類やリンゴ、甜菜、大豆、トウモロコシ、コメ、麦、アラビアガムなどのほか、これらの加工食品あるいは加工の際の副産物であるアップルファイバー、ビートパルプ、大豆かす、コーンファイバーや落花生油かす、ミカン果汁絞りかす、コメ糠等に存在することが知られている。そのため、L−アラビノースを取得する手段として、最近では、コーンファイバーやアラビアガム、ビートパルプなどに酵素や酸を作用させるL−アラビノースの製造法が開発されている。
【0004】
原料となるアラビナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタン等の粗繊維はペクチン質や不要な粗繊維等と混在して存在する場合が多く、これらを酵素分解や酸加水分解処理することによって得られる溶液の中にはL−アラビノース等の還元糖の他に、ペクチン質や粗繊維、またこれらの分解物が混在している。そのため、このような溶液からL−アラビノース等の還元糖を得るためには、ペクチン質や粗繊維およびこれらの分解物を除去する必要がある。特に、L−アラビノース等の還元糖を効率的に得るために、酵素分解や酸加水分解処理を十分に行った場合やペクチン質の含量が多い柑橘類やリンゴ、甜菜由来などの原料を用いた場合には、ガラクツロン酸などの有機酸の遊離量も多くなり、これらも除去することが必要である。
【0005】
L−アラビノースを精製する方法に関しては、L−アラビノース含有糖液中のキシロースおよびオリゴ糖と目的のL−アラビノースをイオン交換樹脂によるクロマトグラフィーで分画する方法(特開2000−201700号参照)や、多糖、オリゴ糖や塩類との分離を目的としたイオン交換樹脂によるクロマトグラフィ方法(特開2001−286294号参照)、膜処理等が提案されている。
【0006】
一方、従来一般の製糖工程における多糖類、タンパク質等の除去方法として炭酸飽充法が知られている。粗精製糖液に炭酸ガスを吹き込み、多糖類やタンパク質を不溶物として取り除く方法であり広く用いられているものである。また、キシロース等の還元糖と植物原料の残査を含んだ状態で、pH9.0〜12.5、温度15〜70℃で炭酸飽充する粗糖液の精製方法が提案されている(特開平5−253000号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述したクロマトグラフィーによる分画法や膜処理、イオン交換樹脂等の組合わせによる方法では、多量の不純物が混在する中から目的の還元糖を分離するためには、複雑な工程が必要となり、特にL−アラビノース等の還元糖を効率的に得るために、酵素分解や酸加水分解処理を十分に行った場合、ガラクツロン酸などの有機酸が多く遊離し、イオン交換樹脂の負荷が非常に大きくなること、目的とする還元糖と有機酸の分子量が近似することから膜での分離が困難であるなど、大量に工業的な実施は困難であった。
【0008】
一方、一般の炭酸飽充法では、不純物の除去の他に、スクロースの転化により生じるグルコースおよびフルクトースを分解させることも目的の一つであることから、その条件は温度が80℃以上、pHが11以上であり、L−アラビノース等の還元糖にとっては非常に過酷な条件となっており、この方法をL−アラビノース等の還元糖の精製法として用いることは難しかった。また、キシロース等の還元糖と植物原料の残査を含んだ状態で、pH9.0〜12.5、好ましくは10.5〜12.0、温度15〜70℃、好ましくは35〜50℃で炭酸飽充する粗糖液の精製方法(特開平5−253000号公報)は、過酷な条件では分解する還元糖の精製方法であるが、この方法での不溶性の固形物、多糖類やタンパク質の除去は可能であるものの、ガラクツロン酸などの有機酸が含有されている場合、目的とする還元糖を残存させ、ガラクツロン酸などの有機酸も同時に除去することは困難であった。このため、多量の有機酸が含まれている場合、イオン交換樹脂の負荷が大きくなるなどの問題があった。
さらに炭酸飽充法では、処理後にカルシウムが残存し、イオン交換樹脂に負荷をかけ、イオン交換樹脂の再生に手間がかかり、また、イオン交換樹脂の寿命を縮めるなどの問題があった。
【0009】
本発明は、還元糖を含む溶液から混在する不必要な物質、特に有機酸も同時に簡便な方法で除去し、還元糖の生産効率向上のための資する技術を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、従来の炭酸飽充法を改良し、L−アラビノース等の不安定な還元糖を分解させることなく、不純物、特にガラクツロン酸などの有機酸も同時に除去することが可能である炭酸飽充法の条件を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、還元糖を含む溶液に、温度50〜80℃、pH8.5〜10.5の条件下で水酸化カルシウムまたは酸化カルシウム及び炭酸ガスを添加することにより、混在物を取り除くことを特徴とする還元糖の精製方法を要旨とするものであり、好ましくは還元糖を含む溶液が混在物として有機酸を含有する溶液であり、また還元糖を含む溶液が、還元糖を構成糖として含有する天然物に酵素を作用させて還元糖を遊離させることにより得られる溶液であり、さらに好ましくは還元糖がL−アラビノースであるものである。
また別の本発明は、還元糖を含む溶液に水酸化カルシウムまたは酸化カルシウム及び炭酸を添加することにより混在物を取り除き、次いでシュウ酸を添加することにより混在するカルシウムを不溶性のシュウ酸カルシウムとして除去することを特徴とする還元糖の精製方法を要旨とするものであり、好ましくは還元糖がL−アラビノースであるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明における還元糖としては、L−アラビノース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、マンノースの他、ラムノース、ソルボース、リボース、タガトース、タロース、リキソース等が挙げられる。
【0013】
本発明で用いる還元糖を含有する溶液は、還元糖が1種類以上混在する糖混合物であり、その取得法は特に限定されない。還元糖を含有する溶液の取得法の一例として、L−アラビノース等の還元糖を含有する溶液の場合を以下に説明する。
【0014】
原料としては、より安価に得るためには、食品産業廃棄物であるビートパルプ、とうもろこし穂軸、りんご、オレンジ等のジュース搾りかす、各種種皮等が用いられる。これらを原料として酸加水分解または酵素分解することで達成される。このような廃棄物や副産物などを原料として用いることは、安価に製造する目的に則するだけでなく、廃棄物の有効利用という環境保護的側面から見ても、非常に望ましい方法であるといえる。
【0015】
上記したように、原料としては粗繊維を含んでいるものであれば特に制限はなく、酸加水分解または酵素分解により還元糖が遊離するものであれば、どのようなものにでも使用することができる。
【0016】
上記した原料の加水分解の条件としては一般的に知られている条件を適用すればよい。一般的には鉱酸あるいは有機酸の存在下で、60〜120℃、2〜30時間処理すればよい。加水分解に使用する酸の濃度は0.05〜6Nが適当であり、塩酸、硫酸、シュウ酸等の酸が使用できる。
【0017】
一方、原料の酵素処理の条件としては、一般的に知られている条件を適用すればよい。使用する酵素としては、アラビナン、アラビノキシラン等の粗繊維に作用し、L−アラビノース等の還元糖を遊離する活性を有する酵素であればよい。例えばアラビナーゼ(アラバナーゼ)、アラビノフラノシダーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、ガラクタナーゼなどのヘミセルラーゼ酵素剤等が挙げられる。さらに、これら異なる活性を有する2種類以上の酵素を混合したり、植物細胞壁を破壊させるマセレイションエンザイムを添加することによりL−アラビノース等の還元糖の収量を上げることができる。また、使用する酵素は起源の菌株の培養物のうち、L−アラビノース等の還元糖を遊離する活性を有するいかなる画分を用いてもよく、また必要に応じてこれらの酵素を含有する画分を常法により精製あるいは部分精製して使用することもできる。
このような酵素を作用させることにより、L−アラビノースを多く含む還元糖を含む溶液を得ることができる。
【0018】
本発明においては、L−アラビノース等の還元糖を含む溶液に対し、保持温度50〜80℃、保持pH8.5〜10.5で炭酸飽充処理を行なう。
【0019】
還元糖を含む溶液の糖濃度としては、固形分重量を1〜70%とするのが好ましく、より好ましくは3〜30%、さらに好ましくは5〜20%とするのがよい。この濃度より低いと炭酸飽充の効果が低下し、この範囲を超えると炭酸飽充操作において発泡が激しく操作性が低下するからである。
【0020】
具体的には、L−アラビノース等の還元糖を含む試料溶液を、50〜80℃、好ましくは60〜80℃、より好ましくは保持温度60〜70℃に維持し、そこに水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムおよび炭酸ガスを撹拌下で添加し、炭酸飽充処理を行なう。このとき水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムおよび炭酸ガスの添加速度をコントロールすることにより試料をpH8.5〜10.5、好ましくはpH9.0〜10.5に維持する。
【0021】
添加する水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムの必要量は、用いる試料によって異なるが、除去対象物質の固形分重量に対し、酸化カルシウム重量換算で10〜300%量程度の添加が望ましい。添加量が多いほど炭酸飽充の効果は高くなることから、それ以上に添加を行なっても差し支えはない。
【0022】
炭酸ガスの導入量は、水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムの添加速度をコントロールすることにより試料を好ましいpHに維持するように導入すれば良い。
【0023】
本発明においては、用いる還元糖を含む溶液は炭酸飽充操作に対し作業性の劣らない程度に濃縮、希釈を行なったり、操作中の発泡を防ぐために消泡剤を添加することも可能である。
【0024】
目的量の水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムの添加が終了後、暫く撹拌した後、生成した沈殿などの混在物の除去を行う。除去方法としては、フィルター濾過、遠心分離等、一般的な方法で除去すればよく、得に制限しない。
【0025】
さらに本発明では、炭酸飽充処理により清浄を行なった糖液にシュウ酸を添加し、糖液に残留しているカルシウムを不溶性のシュウ酸カルシウムとして沈降させることを行なってもよい。
【0026】
炭酸飽充処理により清浄を行なった糖液に添加するシュウ酸は粉末でも水溶液状でもかまわないが、すみやかにシュウ酸カルシウムの沈澱を形成させるためには水溶液での添加が有効である。シュウ酸水溶液の濃度については特に限定されないが、解け残らず操作性の悪くない濃度であればよい。
【0027】
炭酸飽充処理後の糖液に添加するシュウ酸のモル量は、糖液に残留しているカルシウムのモル量に対し0.1〜4倍の添加が望ましく、好ましくは0.5〜3倍量、さらに好ましくは0.7〜2倍量、すなわちカルシウムに対し等モル量程度のシュウ酸添加が最も好ましい。
【0028】
糖液に残留するカルシウムに対し等モル以下のシュウ酸添加では添加量に依存して糖液中のカルシウム濃度が低下することから、残留カルシウムの負荷の低下には有効であるが、過剰なシュウ酸の添加についてはシュウ酸カルシウム等の不溶性の沈澱形成で利用されなかった余剰分のシュウ酸が糖液中に残留し、後に行なうイオン交換樹脂等による精製で負荷となることからあまり望ましくない。
【0029】
糖液中にカルシウム以外にシュウ酸と不溶性の沈澱を形成する性質をもつ物質が溶解している場合は、カルシウムを除去するために必要なシュウ酸必要添加量はさらに増加することになる。
【0030】
炭酸飽充処理後の糖液にシュウ酸を添加するときの温度は特に制限されないが、糖液が溶液状である温度であればよい。
【0031】
炭酸飽充処理後の糖液にシュウ酸を添加するときのpHは特に制限されないが、好ましくはpH12〜2、さらにはpH11〜3が好ましく、シュウ酸カルシウムが溶解する条件でなければよい。
【0032】
目的量のシュウ酸の添加が終了後、暫く撹拌し、生成したシュウ酸カルシウムの沈殿の除去を実施する。除去方法としては、フィルター濾過、遠心分離等、一般的な方法で除去すればよく、得に制限しない。
【0033】
本発明におけるシュウ酸添加による炭酸飽充処理糖液中残留カルシウムの除去により、従来必要としていた軟化の行程を省略し、さらに脱塩のためのイオン交換樹脂への負荷が軽減され、十分脱塩された糖液が得られることから、糖液の処理量の増大、工程の簡略化が可能となる。また、イオン交換樹脂に対し、その再生が容易となったり、寿命の延長等の効果も期待できる。
【0034】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
以下の参考例、実施例に記載の分析は次に示す方法で実施した。
糖質およびガラクツロン酸、シュウ酸等の有機酸の分析は以下に示す2つのHPLC分析法により行なった。
(1)HPLC分析条件
カラム:Aminex HPX87H(7.8×300mm、BIO RAD製)、移動相:0.005N 硫酸、流速:0.6mL/min、カラム温度:60℃、検出:示差屈折計(RI)
(2)HPLC分析条件
カラム:Aminex HPX87P(7.8×300mm、BIO RAD製)、移動相:水、流速:0.6mL/min、カラム温度:80℃、検出:示差屈折計(RI)
【0035】
カルシウム分析は、和光純薬工業(株)製のカルシウム測定用キットである「カルシウムCテストワコー」(OCPC法)を使用した。
【0036】
参考例1(ビートパルプを用いたL−アラビノース含有糖混合物の調製)
ビートパルプ1.2kgに酵素スミチームPX(新日本化学工業株式会社製 ペクチナーゼ)8mLおよび水12Lを加え、55℃で24時間反応させた。このBrix5.6の圧搾液が得られ、この溶液にはL−アラビノースが12.8g/L、グルコースが4.3g/L、ガラクトースが3.9g/L、キシロースが0.2g/L、及びフルクトースが2.5g/Lが含まれていた。また、これには精製の負荷となる可溶性の多糖、オリゴ糖等が約15g/L、ガラクツロン酸が11.7g/L含まれていた。
【0037】
参考例2(とうもろこし外皮を用いたL−アラビノース含有糖混合物の調製)
とうもろこし外皮2Kgに0.1Nシュウ酸5Lを添加し、100℃で2時間作用させた。次に水酸化カルシウムを添加して中和を行なったのち、遠心分離により残さ等の除去を行なった。この遠心上清の糖成分をHPLCにより分析した結果、L−アラビノースが8.2g/L、グルコースが0.4g/L及びキシロースが2.1g/L含まれていた。また、これには精製の負荷となる可溶性の多糖、オリゴ糖等が約25.7g/L含まれていた。
【0038】
比較例1
参考例1で調製した糖液を固形分濃度10%に濃縮した。濃縮液150mLを37℃に保持し、そこへ17重量%の水酸化カルシウム懸濁液を添加し、炭酸ガスを吹き込みながらpHを8.5〜9.0に保持した。糖液の固形分に対する水酸化カルシウム添加重量が280%量(酸化カルシウム換算で212%量)となるまでこの操作を続けた。このとき途中で数回のサンプリングを実施した。この遠心上清のHPLC分析により精製負荷物質除去率を求めた。溶液に含まれているL−アラビノース等の還元糖を分解させることなく、精製の負荷物質である可溶性の多糖、オリゴ糖等を50%およびガラクツロン酸を20%しか除去できなかった。本比較例における各成分の残存率の経時変化を図1に示した。
【0039】
比較例2
一般の製糖で用いられる炭酸飽充法に近い条件で処理を実施した。参考例1で調製した40℃の糖液100mLに17重量%の酸化カルシウム懸濁液を添加してpHを10.8とした。次に温度を80℃に上げ、さらに酸化カルシウムを添加してpHを12.4とし、15分間撹拌した。ここに炭酸ガスを吹込んでpH11まで低下させ、生成した沈殿を吸引濾過により除去した。ろ液にさらに炭酸ガスを添加して溶液を中性とした。この遠心分離上清のHPLC分析から、各成分の残存率を求めたところ、精製の負荷物質である可溶性の多糖、オリゴ糖等、ガラクツロン酸が全量除去されていたが、還元糖についても激しい低下が見られ、それらの残存率は0〜5%であり、この条件はL−アラビノース等の還元糖の精製には適していないことが明らかとなった。
【0040】
実施例1
参考例1で調製した糖液を固形分濃度10%に濃縮した。濃縮液150mLを50℃に保持し、そこへ17重量%の水酸化カルシウム懸濁液を添加し、炭酸ガスを吹き込みながらpHを8.5〜9.0に保持した。糖液の固形分に対する水酸化カルシウム添加重量が170%量(酸化カルシウム換算で129%量)となるまでこの操作を続けた。このとき途中で数回のサンプリングを実施した。この遠心上清のHPLC分析により精製負荷物質除去率を求めた。溶液に含まれているL−アラビノース等の還元糖を分解させることなく、精製の負荷物質である可溶性の多糖、オリゴ糖等を60%以上およびガラクツロン酸を30%以上選択的に減少させることに成功した。本実施例における各成分の残存率の経時変化を図2に示した。
【0041】
実施例2
参考例1で調製した糖液を固形分濃度10%に濃縮した。濃縮液150mLを60℃に保持し、そこへ17重量%の水酸化カルシウム懸濁液を添加し、炭酸ガスを吹き込みながらpHを9.5〜10.0に保持した。糖液の固形分に対する水酸化カルシウム添加重量が170%量(酸化カルシウム換算で129%量)となるまでこの操作を続けた。このとき途中で数回のサンプリングを実施した。この遠心上清のHPLC分析により精製負荷物質除去率を求めた。溶液に含まれているL−アラビノース等の還元糖を分解させることなく、精製の負荷物質である可溶性の多糖、オリゴ糖等およびガラクツロン酸をそれぞれ80%以上選択的に減少させることに成功した。本実施例における各成分の残存率の経時変化を図3に示した。
【0042】
実施例3
参考例1で調製した糖液を固形分濃度10%に濃縮した。濃縮液150mLを70℃に保持し、そこへ17重量%の水酸化カルシウム懸濁液を添加し、炭酸ガスを吹き込みながらpHを9.5〜10.0に保持した。糖液の固形分に対する水酸化カルシウム添加重量が170%量(酸化カルシウム換算で129%量)となるまでこの操作を続けた。このとき途中で数回のサンプリングを実施した。この遠心上清のHPLC分析により精製負荷物質除去率を求めた。溶液に含まれているL−アラビノース等の還元糖をほとんど分解させることなく、精製の負荷物質である可溶性の多糖、オリゴ糖等を80%程度およびガラクツロン酸を90%以上選択的に減少させることに成功した。本実施例における各成分の残存率の経時変化を図4に示した。
【0043】
実施例4
参考例2で調製した糖液を固形分濃度10%に濃縮した。濃縮液150mLを60℃で保持し、そこへ固形分濃度17%の水酸化カルシウム懸濁液を添加し、炭酸ガスを吹き込みながらpHを9.5〜10.0に保持した。糖液の固形分に対する水酸化カルシウム添加量が、170%量(酸化カルシウム換算で129%量)となるまでこの操作を続けた。吸引濾過により生成した沈殿物を除去した。得られた溶液のHPLC分析から、各成分の残存率を求めたところ、還元糖については95〜101%であったのに対し、精製の負荷物質である可溶性の多糖、オリゴ糖は25%まで低下しており、有意な減少が認められた。
【0044】
実施例5
実施例2で得られたビートパルプ由来の炭酸飽充処理糖液120mLに撹拌下で2mol/Lのシュウ酸を3.6ml添加し、生成した沈澱を遠心分離により除去した。遠心分離上清のカルシウム濃度を分析したところ、8.3mmol/Lであり、処理前の60mmol/Lから濃度が低下していた。いずれの糖質も濃度に変化は見られず、また糖液中にシュウ酸の残留も認められなかった。これをH型に調製した陽イオン交換樹脂PK216(三菱化成株式会社製、強酸性陽イオン交換樹脂)で精製を行なったところ、精製可能量がシュウ酸処理前の3.1倍に増加していた。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、L−アラビノース等の還元糖を含有する糖混合物に従来より穏やかな条件で炭酸飽充操作を行なうことで、従来の製造法において精製の負荷となっていた物質の除去が可能となった。また、従来の精製方法と比較し、本発明は操作性やコスト面においても極めて有効な精製方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例1で得られた各成分の残存率と時間との関係を示す図である。
【図2】実施例1で得られた各成分の残存率と時間との関係を示す図である。
【図3】実施例2で得られた各成分の残存率と時間との関係を示す図である。
【図4】実施例3で得られた各成分の残存率と時間との関係を示す図である。
Claims (5)
- 還元糖を含む溶液に、温度50〜80℃、pH8.5〜10.5の条件下で水酸化カルシウムまたは酸化カルシウム及び炭酸ガスを添加することにより、混在物を取り除くことを特徴とする還元糖の精製方法。
- 還元糖を含む溶液が、混在物として有機酸を含有する溶液である請求項1記載の還元糖の精製方法。
- 還元糖を含む溶液が、還元糖を構成糖として含有する天然物に酵素を作用させて還元糖を遊離させることにより得られる溶液である請求項1又は2記載の還元糖の精製方法。
- 還元糖を含む溶液に水酸化カルシウムまたは酸化カルシウム及び炭酸を添加することにより混在物を取り除き、次いでシュウ酸を添加することにより混在するカルシウムを不溶性のシュウ酸カルシウムとして除去することを特徴とする還元糖の精製方法。
- 還元糖がL−アラビノースである請求項1ないし4に記載のいずれか記載の還元糖の精製方法。
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JP2009195158A (ja) * | 2008-02-21 | 2009-09-03 | Unitika Ltd | モノガラクツロン酸の製造方法 |
CN102964395A (zh) * | 2012-12-12 | 2013-03-13 | 石狮市华宝海洋生物化工有限公司 | 一种提高氨基葡萄糖盐酸盐纯度的方法 |
CN109745544A (zh) * | 2018-11-23 | 2019-05-14 | 南京新百药业有限公司 | 稳定的缩宫素药物组合物及其制备方法 |
WO2019189651A1 (ja) * | 2018-03-29 | 2019-10-03 | 東レ株式会社 | 精製糖液の製造方法 |
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2002
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