JP2004057841A - 塗工機用ドクターブレード - Google Patents
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Abstract
【解決手段】連続的に移動する原紙ウェブの表面にエッジ部で接して鉱物質顔料を含む塗材の塗工厚を均一に制御するための塗工機用ドクターブレードにおいて、原紙ウェブ表面に対面して塗材と接する側のブレード表面(5)が、バインダー金属層に微細ダイヤモンド粒子を部分的に露呈して分散した金属メッキ層(7)で被覆されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原紙ウェブに塗工された塗材の塗工厚を均一に制御するための塗工機用のドクターブレードに関する。
【0002】
【従来の技術】
製紙工場で、近年需要が増えているアート紙、コート紙などの塗工紙(コーテッドペーパー)を製造する過程において、原紙ウェブ(塗工紙の素地となる巻取紙)に塗工した塗材を掻きとって塗工厚を均一に制御するために、塗工機用のドクターブレードが一般に使用されている。この塗材は、一般に鉱物質顔料(炭酸カルシウム、澱粉等)の粉末が含まれており、ドクターブレードはこの鉱物質顔料を含む塗材を掻きとって塗工厚を均一に制御していることになる。
【0003】
炭酸カルシウムや澱粉などの粉末は研磨材の如く硬質であるため、これらを掻きとるということは、言ってみればドクターブレードを研磨しているのと同じようなことになる。そのために、ドクターブレードは常に過酷な摩耗環境に晒され、早期摩耗の問題は大変深刻なものとなっている。ドクターブレードが摩耗すると塗材の塗工厚にムラが生じたり、必要以上の塗工厚となったりするので、ドクターブレードをメンテナンス(交換、補修など)しなければならないが、早期摩耗が激しく、数時間から二、三十時間でドクターブレードを交換しなければならないといった状況も現実にある。
【0004】
このような早期摩耗の問題を解決するために、従来からさまざまな技術が提案されている。例えば、硬度を高めた工具鋼(SK材、SKH材等)、ステンレス鋼(SUS300系、400系、600系等)を用いたり、また、表面を窒化処理して硬化させたり、あるいは、塗材との接触部にセラミックコーティングしたもの、PVD法(物理蒸着法)により炭化、窒化金属をコーティングしたものなどの技術が提案されている(例えば、特開2001−73290号公報)。
【0005】
上記従来の技術では、耐摩耗性の向上には寄与するものの、次のような問題があった。即ち、セラミックコーティングをした従来技術では、セラミックはドクターブレード母材との付着力、セラミックそのものの靭性不足による剥離、割れ、並びに、欠けといった欠陥が発生する事例が多く、塗工のムラや紙切れの原因となってしまうという問題を抱えている。
【0006】
また、窒化処理する従来技術では、表面硬度がHv1000〜1300程度しか得られないため、十分な耐摩耗性を得るまでには至っていない。しかも、窒化処理は高温環境下で行われるため、ドクターブレード母材が高温(一般的に500℃以上)になって、熱による歪みが生じてしまう。そのため、塗材が塗工された原紙ウェブと接するブレードのエッジ部が一直線でなくなり、塗材を掻きとる際にムラができ、塗工厚が均一とならず、塗工紙の仕上がりを低下させてしまうという問題もある。
【0007】
さらに、上記のPDV法(物理蒸着法)により窒化、炭化チタン等をコーティングした従来技術でも、コーティングの際にブレード母材が高温(約500℃)となり、ドクターブレードの歪みによる上記と同様の問題が生じている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、斯かる実情に鑑み、耐摩耗性が高く、長期間使用できる塗工機用のドクターブレードを提供しようとするものである。さらに、ドクターブレードの母材に被覆層を形成する際に母材が熱変形することのない塗工機用のドクターブレードを提供することを目的とする。加えて、初期馴染みを短時間で行える塗工機用のドクターブレードを提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明によれば、連続的に移動する原紙ウェブの表面にエッジ部で接して鉱物質顔料を含む塗材の塗工厚を均一に制御するための塗工機用ドクターブレードにおいて、原紙ウェブ表面に対面して塗材と接する側のブレード表面が、バインダー金属層に微細ダイヤモンド粒子を部分的に露呈して分散した金属メッキ層で被覆されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明において原紙ウェブとは、製袋・塗布・含浸などの加工を施すのに素地となる紙(原紙)がロール状に巻かれた巻取紙(ウェブ)のことであり、例えば、アート紙、コート紙、軽量コート紙、塗工印刷紙などの塗工紙の元となる未塗工状態の巻取紙などが本発明における原紙ウェブに該当する。
【0011】
そして、送り出しロールなどで連続的に移動させるようにした原紙ウェブの表面にエッジ部で接して、原紙ウェブに塗工された鉱物質顔料を含む塗材を掻きとるようにして塗工厚を均一に制御するためのものが塗工機に用いるドクターブレードである。このドクターブレードにおいて、本発明では、原紙ウェブ表面に対面して塗材と接する側のブレード表面にバインダー金属層に微細ダイヤモンド粒子を部分的に露呈して分散した金属メッキ層で被覆したことに特徴を有するものである。
【0012】
ブレード表面で原紙ウェブ表面に対面して塗材と接する側は、前述したように、鉱物質顔料が含まれた塗材と常に摩擦する状態となっている。特に、炭酸カルシウムや澱粉の粉末によって研磨されてブレード表面は摩耗してしまう。しかしながら、本発明では、微細ダイヤモンド粒子を部分的に露呈して分散した金属メッキ層で被覆しているから、微細ダイヤモンド粒子が炭酸カルシウムや澱粉などの硬質な粉末によってブレード母材が摩耗するのを防止できる。即ち、微細ダイヤモンド粒子を部分的に露呈して分散した金属メッキ層で被覆することによって、耐摩耗性が向上し、長寿命化が図れるのである。
【0013】
ここで、微細ダイヤモンド粒子がバインダー金属層に埋め込まれた状態では、ダイヤモンド粒子による母材の保護が発揮されない。そこで、本発明では、バインダー金属層に微細ダイヤモンド粒子が部分的に露呈して分散した状態で金属メッキ層を形成するようにし、この露呈した部分で塗材による母材の摩耗を防止している。なお、微細ダイヤモンド粒子の粒径、分散の度合い(粒子間の距離など)、露呈する部分(バインダー金属層から露呈しているダイヤモンド粒子の高さなど)は、ドクターブレードの使用条件などに応じて適宜決定することができるものである。
【0014】
また、本発明におけるバインダー金属層とは、微細ダイヤモンド粒子をドクターブレードに被覆する接着剤の役割を果たすものであり、例えば、銅、ニッケル等の金属を用いてバインダー金属層を形成すれば良い。勿論、これらの金属に限定されるものではなく、ドクターブレードの母材と強固に密着し、塗材の塗工厚を均一に制御する過程で容易に母材から剥がれたり、容易にダイヤモンド粒子が脱落したりしない程度の接着強度があれば、何れの材料でも適用可能である。
【0015】
さらに、本発明において特筆すべき点は、ドクターブレードに金属メッキ層を被覆したことである。別言すれば、微細ダイヤモンド粒子をブレードの母材にバインダー金属でいわゆるメッキ電着したことに本発明の大きな特徴がある。前述したように、従来技術では、ブレード表面に被覆層を形成する場合には、高温の処理温度が必要であったため、母材が熱変形してしまうという問題があった。
【0016】
しかしながら、本発明では、微細ダイヤモンド粒子をバインダー金属と共にメッキ電着してブレードの母材に金属メッキ層を形成するようにしたので、常温下で母材に被覆層を形成することができる。よって、母材が高温になって熱変形することはない。つまり、金属メッキ層が形成されたドクターブレードは熱変形による歪みもなく、原紙ウェブと接するエッジ部が歪みのない一直線な形状にすることができるのである。これにより、原紙ウェブに塗工された塗材の塗工厚をムラなく均一に制御することができ、従来技術に比べて、より一層高精度な塗工厚制御が行えることとなる。
【0017】
なお、本発明において、金属メッキ層で被覆される部分は、ブレード表面のうち、少なくとも原紙ウェブ表面と接する部分(領域)にあれば良い。かかる部分が、原紙ウェブに塗工された塗材の塗工厚を均一にする際に、炭酸カルシュウムや澱粉などの硬質粉末との摩擦によって摩耗が生じる部分だからである。勿論、ドクターブレード全面に亘って金属メッキ層で被覆するようにしても構わない。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の塗工機用ドクターブレードにおいて、微細ダイヤモンド粒子の粒径が3〜10μmであり、分散された微細ダイヤモンド粒子間の隙間が10μm以下であることを特徴とするものである。
【0019】
塗材に含まれる炭酸カルシウムの粉末等は一般に粒径が約10μmであるから、これよりダイヤモンド粒子間の隙間が大きいと隙間に炭酸カルシウムの粉末粒子が入り込んで、バインダー金属層が浸食されてしまい、ダイヤモンド粒子がバインダー金属層から脱落してしまう。よって、これを防止するために、本発明では、粒径が3〜10μmの微細ダイヤモンド粒子を用いて、粒子間の隙間を10μm以下となるように分散した金属メッキ層でブレード表面を被覆している。
【0020】
これにより、塗材に含まれる炭酸カルシウムや澱粉などの硬質の鉱物質顔料が微細ダイヤモンド粒子間に入り込むことを防止でき、微細ダイヤモンド粒子が脱落することなく、良好な金属メッキ層を維持できるのである。即ち、ドクターブレードの長寿命化がより一層確保されることとなる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の製紙用ドクターブレードにおいて、ドクターブレードが工具鋼からなり、金属メッキ層のバインダー金属層が銅又はニッケルからなることを特徴とするものである。
【0022】
本発明によれば、銅又はニッケルをバインダー金属として用い、工具鋼からなるドクターブレードの母材に金属メッキ層を形成するようにしているから、一般に市販されているような材料、設備などを用いて、簡単にドクターブレードを製作できる利点がある。つまり、特殊な材料や特殊なメッキ技術を用いることなく、安価で簡単に本発明に係るドクターブレードを製作できるのである。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗工機用ドクターブレードにおいて、前記ブレード表面の原紙ウェブ表面と接する側のエッジ先端部に微細ダイヤモンド粒子の存在しない平滑領域がブレード長手方向に延在していることを特徴とするものである。
【0024】
一般に、ドクターブレードで塗材の塗工厚を均一に制御する作業の初期段階で、ドクターブレードが原紙ウェブと接するエッジ先端部を、塗材が塗工された原紙ウェブの凹凸に合った良好な接触状態となるように馴染ませる(いわゆる初期馴染み)ことが行われる。
【0025】
具体的に説明すると、所定時間に亘りドクターブレードのエッジ先端部で原紙ウェブに塗工された塗材を掻きとっていくと、塗材に含まれる鉱物質顔料(炭酸カルシウムや澱粉など)がドクターブレードを研磨していく。この研磨によって、ドクターブレードのエッジ先端部は原紙ウェブ表面に合うように摩耗していき、塗材が塗工された原紙ウェブに対してブレードのエッジ先端部が均一に接する状態になる。これが、ドクターブレードの初期馴染みである。
【0026】
この初期馴染みによって、ドクターブレードのエッジ先端部は塗材が塗工された原紙ウェブに均一に接するような直線が形成されて、塗材の塗工厚を高精度で均一に制御できるようになる。逆に言うと、初期馴染みを行ってブレードのエッジ先端部を良好な直線形状にするためには、このエッジ先端部をある程度摩耗させなければならないこととなる。
【0027】
このとき、エッジ先端部全体に微細ダイヤモンド粒子が分散した金属メッキ層で被覆されていると、母材の摩耗が抑止され、初期馴染みに相当な時間が掛かってしまう。そこで、本発明では、ブレード表面の原紙ウェブ表面と接する側のエッジ先端部に、微細ダイヤモンド粒子の存在しない平滑領域をブレード長手方向に延在させているのである。
【0028】
これにより、ドクターブレードのエッジ先端部の長手方向に延在する微細ダイヤモンド粒子の存在しない平滑領域は、塗材に含まれる炭酸カルシウムや澱粉粉末などで研磨され、短時間で初期馴染みの完了が可能となる。しかも、この平滑領域の以外の部分ではダイヤモンド粒子が分散した金属メッキ層で被覆されているから、平滑領域を超えて摩耗が進展することはない。即ち、初期馴染み完了後は、金属メッキ層で摩耗が抑止されるから、耐摩耗性を犠牲にすることはないのである。
【0029】
ここで、ブレードのエッジ先端部に長手方向に延在する平滑領域の幅があまりに広いと、摩耗によってブレードと原紙ウェブとの間に隙間ができてしまい、塗材の塗工厚が厚くなったり、厚さにムラができたりしてしまう。また、あまりに幅が狭いと、塗材が塗工された原紙ウェブと均一に接するだけのエッジ部が形成されない。よって、平滑領域は、ドクターブレードのエッジ先端部から0.05〜0.3mmの幅で長手方向に延在するようにしておくのが好ましい。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の塗工機用ドクターブレードにおいて、前記ブレード表面の原紙ウェブ表面と接する側のエッジ先端部との境界部にドクターブレードと原紙ウェブ表面との接触角±15度の範囲内の傾斜角をなす面取り部が形成され、前記平滑領域を除き、この面取り部を含む範囲に前記金属メッキ層が設けられていることを特徴とするものである。
【0031】
本発明によれば、ブレード表面の原紙ウェブ表面と接する側のエッジ先端部との境界部(ブレードの二つの平面の交線で形成された当該エッジ先端を境界線とし、この境界線含む部分)に面取り部を形成しているから、この面取り部の面で原紙ウェブと接することができる。よって、エッジ先端(即ち、直線)で塗材が塗工された原紙ウェブの塗工厚を均一にするのに比べて、高精度に塗工厚さの制御が可能となる。即ち、より均一な塗工厚にすることができるのである。
【0032】
また、好適な塗工厚に制御するために、本発明における面取り部の角度は、ドクターブレードと原紙ウェブとの接触角±15度の範囲としている。この角度範囲で面取りが成されることによって、高精度な塗工厚の制御が実現できる。
【0033】
さらに、本発明では、微細ダイヤモンド粒子が存在しない平滑領域を除いて、この面取り部を含む範囲に金属メッキ層が設けられているから、面取り部分の摩耗は抑止され、長期間使用にも十分耐えられるものとなるのである。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。尚、図中、図と同一符号を付した部分は同一物を表わしている。図1は、本発明の一実施形態に係る塗工機用ドクターブレードの概略斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係る塗工機用のドクターブレード1は、工具鋼からなる板状の母材2の先端部分で原紙ウェブ表面に対面して塗材と接する側である表面5に後述する金属メッキ層7(図中の斜線部)が被覆されて形成されている。この母材2の先端部分が、原紙ウェブに塗工された塗材と接して塗工厚を均一にするエッジ先端部3である。
【0035】
エッジ先端部3は、ブレード表面の原紙ウェブと接する側のエッジ先端部との境界部、即ち、ドクターブレード1のエッジ先端部3における母材2の表面5と上面6との交線であるエッジ境界部4から傾斜角度Aをなす面取り部14が形成されている。この傾斜角度Aは、ドクターブレード1と原紙ウェブとの接触角±15度の範囲で決定され、実用的には約30度〜60度の角度である。本実施形態では、図4と共に後述するようにドクターブレード1が原紙ウェブと接する角度が約45度なので、この傾斜角度Aを50度としている。そして、エッジ先端部3のエッジ境界部4を含む面取り部14が、原紙ウェブに接して塗工された塗材の塗工厚が均一となるように塗材を掻きとっている。
【0036】
なお、本実施形態におけるドクターブレード1の大きさは、高さBが約70mm、厚さCが約0.5〜1mmである。そして、エッジ境界部4は、原紙ウェブと接しない母材2の裏面6から約0.2〜0.7mmだけ表面5側の位置に形成されており、この位置から面取り部14が表面5側の下方に向かって傾斜している。
【0037】
図2は、本実施形態に係る製紙用ドクターブレード1のエッジ先端部3の部分拡大図である。図2に示すように、エッジ先端部3の面取り部14上にはエッジ境界部4からドクターブレード1の長手方向に幅Dで微細ダイヤモンドの存在しない平滑領域13が形成されている。この幅Dは、0.05〜0.3mmの範囲となっている。この平滑領域13を除き、面取り部14を含む母材2の表面5側には、図中の斜線で示すように金属メッキ層7が被覆されている。
【0038】
この金属メッキ層7の詳細を示した図が図3である。図3に示す金属メッキ層7は、ニッケルをバインダー金属としてメッキ槽の中にダイヤモンド粒子を浮遊させ、平滑領域13、その他のメッキを行わない部分をマスキングした母材2をメッキ槽に入れてメッキ電着して形成されたものである。詳細にいうと、ニッケル金属からなるバインダー金属層9に部分的に露呈した微細ダイヤモンド粒子8を分散して金属メッキ層7が母材2を被覆している。なお、バインダー金属として銅を用いても同様の金属メッキ層7を形成できることは言うまでもない。
【0039】
さらに、この微細ダイヤモンド粒子8(8a,b,...,n)の粒径Eは約3〜10μmであり、この微細ダイヤモンド粒子8a,b,...,n間の隙間Fが10μm以下となるようにバインダー金属層9に分散して金属メッキ層7が形成されている。尚、母材2の表面5のうち、この金属メッキ層7で被覆する部分(範囲)は、ドクターブレードが原紙ウェブと接する部分を考慮して適宜決定すればよい。
【0040】
このように構成されたドクターブレード1の使用態様について次に説明する。図4に示すように、ロール状に巻き取られた原紙ウェブ11は、送りロール10が時計回りに回転することによって下流側に連続的に移動して巻取りロール(不図示)によって巻き取られていく。この過程で、塗材12を水と共に噴射することによって、原紙ウェブ11に塗材12が塗工される。塗材12が噴射される塗材噴射位置Gの下流近傍位置にドクターブレード1が原紙ウェブ11と接触角度約45度で配置されており、ドクターブレード1のエッジ先端部3が原紙ウェブ11に接すると、エッジ先端部3が塗材12を掻きとって、均一な塗工厚に制御する。
【0041】
このとき、ドクターブレード1のエッジ先端部3には金属メッキ層7で被覆されていない平滑領域13が形成されているので、ドクターブレード1で原紙ウェブ11に塗工された塗材12を掻きとっていくうちに、塗材12に含まれる炭酸カルシウムや澱粉等によって平滑領域13の部分の母材2が摩耗する。この摩耗によってドクターブレード1のエッジ先端部3が原紙ウェブ11と馴染んで、塗材12が塗工された原紙ウェブ11と均一に接する良好な接触面が形成される。この段階が、いわゆる初期馴染みである。この初期馴染みによって、塗材12の塗工厚をムラなく均一なものに制御できるようになる。しかも、平滑領域13は微細ダイヤモンド粒子が存在しない領域であるから、初期馴染みのための摩耗を妨げることがなく、短時間で初期馴染みを行えることとなる。
【0042】
そして、初期馴染みが完了した後のドクターブレード1の使用に際しては、金属メッキ層7(の微細ダイヤモンド粒子8)によって、ドクターブレード1のエッジ先端部3は摩耗から保護されているから、長期間使用を実現できることとなる。
【0043】
さらに、図3に示すように、微細ダイヤモンド粒子間の隙間Fが10μm以下になるように金属メッキ層7が形成されているから、一般的に10μm以上の粒径を有する炭酸カルシウムや澱粉の粒子がダイヤモンド粒子間に入り込むことがない。よって、金属メッキ層7中の微細ダイヤモンド粒子8が脱落することがなく、より一層長期間使用に耐えられるものとなる。
【0044】
尚、本発明に係る塗工機用ドクターブレードは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0045】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明に係る塗工機用ドクターブレードによれば、バインダー金属層に微細ダイヤモンド粒子を部分的に露呈して分散した金属メッキ層で被覆したことによって、耐摩耗性が向上し、長期間使用が可能となる。しかも、メッキ電着による金属メッキ層を形成することにより、母材が熱変形しないようにできる。よって、塗材の塗工厚を高精度で制御でき、例えば、より一層きれいな仕上がりの塗工紙を製造できるという優れた効果を奏し得る。更に、ドクターブレードのエッジ先端部に微細ダイヤモンド粒子の存在しない領域を設けたことにより、初期馴染みを短時間で行える効果も得ることができる。
【0046】
本発明を塗工紙の製造工程で使用したところ、何らコーティングを施していないドクターブレードに比べて寿命が10倍以上となることが確認できた。さらに、セラミックコーティングしたものに比べて、コーティングの欠け、剥離などのトラブルがなく、寿命が5倍以上も延びることが確認できた。加えて、PVDコーティングしたものと比較して寿命が5倍以上であることも確認できた。
【0047】
しかも、塗材のムラが、従来のものと比べて低くなり、塗材の塗工厚がより均一になることも確認できた。これは、母材にメッキ電着をすることで、母材に金属被覆層を形成する際の熱変形を抑止できることから得られる効果である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗工機用ドクターブレードの概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る塗工機用ドクターブレードのエッジ先端部の部分拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る塗工機用ドクターブレードの金属メッキ層の詳細を説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る塗工機用ドクターブレードの使用態様を説明するための図である。
【符号の説明】
1:ドクターブレード
2:母材
3:エッジ先端部
4:エッジ境界部
5:表面
6:上面
7:金属メッキ層
8:微細ダイヤモンド粒子
9:バインダー金属層
10:送りロール
11:原紙ウェブ
12:塗材
13:平滑領域
14:面取り部
15:裏面
Claims (5)
- 連続的に移動する原紙ウェブの表面にエッジ部で接して鉱物質顔料を含む塗材の塗工厚を均一に制御するための塗工機用ドクターブレードにおいて、
原紙ウェブ表面に対面して塗材と接する側のブレード表面が、バインダー金属層に微細ダイヤモンド粒子を部分的に露呈して分散した金属メッキ層で被覆されていることを特徴とする塗工機用ドクターブレード。 - 微細ダイヤモンド粒子の粒径が3〜10μmであり、分散された微細ダイヤモンド粒子間の隙間が10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の塗工機用ドクターブレード。
- ドクターブレードが工具鋼からなり、金属メッキ層のバインダー金属層が銅又はニッケルからなることを特徴とする請求項1または2に記載の塗工機用ドクターブレード。
- 前記ブレード表面の原紙ウェブ表面と接する側のエッジ先端部に微細ダイヤモンド粒子の存在しない平滑領域がブレード長手方向に延在していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗工機用ドクターブレード。
- 前記ブレード表面の原紙ウェブ表面と接する側のエッジ先端部との境界部にドクターブレードと原紙ウェブ表面との接触角±15度の範囲内の傾斜角をなす面取り部が形成され、前記平滑領域を除き、この面取り部を含む範囲に前記金属メッキ層が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の塗工機用ドクターブレード。
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WO2010040236A1 (de) * | 2008-10-07 | 2010-04-15 | Daetwyler Swisstec Ag | Diamantbeschichtete rakel |
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