JP2004051524A - クロルピクリン製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ニトロメタンと次亜塩素酸塩を水中で反応させてクロルピクリンを製造するに際して、ニトロメタンの混入の少ない、冷却不可の少ない製造法を提供する。
【解決手段】ニトロメタンを水溶液として次亜塩素酸塩水溶液中へ供給し、減圧下で加熱しながら反応し、クロルピクリンを留出させる。
【効果】得られるクロルピクリンにはニトロメタンが混入せず、反応時の冷却も必要がないため、本発明の製造法は工業的なクロルピクリンの製造法として好適である。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土壌薫蒸剤として知られているクロルピクリンの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
クロルピクリンの製造法は、特公平6−69990号公報に記載されているように、減圧下でピクリン酸カルシウム水溶液を次亜塩素酸カルシウム水溶液で塩素化しながら、クロルピクリンを留出させる方法が知られている。
【0003】
この方法を参考にして、ピクリン酸カルシウム水溶液をニトロメタンに変更し、クロルピクリン合成を行ったところ、ニトロメタンがクロルピクリン中に混入し、品質が悪化するという問題を生じた。
【0004】
また、米国特許3106588号公報に記載されるようにニトロメタンと次亜塩素酸ナトリウム水溶液を常圧下で冷却しながら反応する方法が知られている。
【0005】
ニトロメタンと次亜塩素ナトリウム水溶液を常圧下で反応させる方法では、冷却しながら反応すると記述されており、実際に反応熱を測定してみたところ、クロルピクリン生成1モルあたり360KJと発熱が非常に大きい事が確認された。かかる方法は、反応熱除去のため過大な冷却設備が必要であり、工業的なクロルピクリン製造にはそのままでは不適当である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の問題点に鑑み、本発明は、ニトロメタンと次亜塩素酸塩を水溶液中で反応させる際のこれら従来の技術の問題点である、製品品質の悪化、高い熱負荷を克服したクロルピクリン製造法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ニトロメタンを水溶液とし次亜塩素酸塩水溶液と大気圧未満の圧力下に水溶液中で反応させると同時に、クロルピクリンと水を留出させることで、クロルピクリンへのニトロメタンの混入が防止され、加えてクロルピクリン及び水の蒸発潜熱に反応熱を活用し反応槽外部からの冷却を行わずに反応温度を制御しクロルピクリン留出に使用する熱量を削減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]  ニトロメタンと次亜塩素酸塩を水溶液中で大気圧未満の圧力下で反応させてクロルピクリンを製造するに際して、ニトロメタン水溶液を次亜塩素酸塩の水溶液に浸されたニトロメタン水溶液装入管の供給孔より供給することを特徴とする、クロルピクリン製造法。
[2]  生成したクロルピクリンを留出させるために必要な熱量を維持するために必要な熱量を反応液に供給しつつ反応することを特徴とする[1]記載のクロルピクリン製造法。
[3]  大気圧未満の絶対圧力が20kpa以下である[1]または[1]記載のクロルピクリン製造法。
[4] 未反応のニトロメタンが留出しない深さに設定されたニトロメタン水溶液装入管の供給孔からニトロメタン水溶液を供給することにより、得られるクロルピクリンへのニトロメタンの混入が防止された[1]〜[3]の何れか一項記載のクロルピクリン製造法。
[5] 次亜塩素酸塩が次亜塩素酸塩カルシウムである[1]〜[4]の何れか一項に記載のクロルピクリン製造法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明ではニトロメタンはニトロメタン水溶液として反応に供せられることを特徴とする。ニトロメタン(化学工業データ 新版 蒸気圧線図 p156、157、1983年 化学工業社)の蒸気圧線図に示されるように本発明の反応条件下ではニトロメタンはガス(気体)である。ニトロメタンと次亜塩素酸水溶液の反応は瞬時に起こる非常に早い反応であるが、ニトロメタンを原液で反応に供すると大部分が気化するため、反応律速がニトロメタンガスの反応液への拡散となり、見かけの反応速度が低くなるため気化したニトロメタンが反応終了する前に反応液面に達するため、クロルピクリン中へニトロメタンが混入する。
【0010】
ニトロメタンを水溶液として反応に供すると、水が熱を吸収することによりニトロメタンの気化を低減させること、及びニトロメタンと水は共沸するので生成するガス中のニトロメタン含量が低下することにより、気化するニトロメタンの量が低減される。この結果、ニトロメタンガスの発生量が著しく低減されるため、反応速度に対するニトロメタンガスの反応液への拡散の影響が小さくなり、本来の瞬時反応となるため、製品へのニトロメタン混入が防止できる。
【0011】
ニトロメタン水溶液濃度は溶解度以下ならいかなる濃度であってもよいが、経済性、安全性の面から2〜10重量%が望ましい。
【0012】
ニトロメタンを水溶液として供する場合も、ニトロメタン水溶液の反応液への供給方法が、滴下または位置が浅いディップとすると反応が完結せず、気化したニトロメタンがショートパスすることによりクロルピクリン中にニトロメタンが混入し、製品品質を低下させるため、ニトロメタン水溶液の反応液への供給はニトリメタン水溶液装入管に設けられた供給孔の位置を反応器深部まで十分な深さに浸すことが好ましい。
【0013】
ニトロメタン水溶液装入用のディップ(装入管)の供給孔の反応液液面からの深さは、反応器の形状、ニトロメタン水溶液及び次亜塩素酸カルシウム水溶液の装入条件により決定されるので、一概に決定することはできないが、反応器底部或いは底部付近より供給するのが好ましい。
【0014】
次亜塩素酸カルシウム水溶液中の次亜塩素酸カルシウムの濃度はいかなる濃度であっても良いが、好ましくは5〜15重量%である。
【0015】
本反応は発熱反応であり、反応速度が非常に速いため瞬時に反応し反応熱が生成する。留出物の蒸発潜熱で反応温度上昇を防止するためニトロメタンまたはニトロメタン水溶液の反応液中へのディップしての装入と、次亜塩素酸カルシウム水溶液の装入は、連続的に装入しなが反応させるのが望ましい。
【0016】
また、本反応は化学量論的にはニトロメタン1モルに対し次亜塩素酸分が3モル必要であるが、反応収率向上の点から過剰の次亜塩素酸分を用いる。過剰に用いる次亜塩素酸分の量及は任意でよいが、経済的な面から過剰量は0.3モルから2.0モルが好ましい。
【0017】
またこの反応液中の次亜塩素酸塩濃度は任意で良いが、反応機の容積効率及び製品への着色防止のため0.1重量%〜3.0重量%が好ましい。
【0018】
反応は大気圧未満の減圧下、は20kpa以下の圧力で実施するのが好ましい。この圧力下では反応液は沸騰し、反応液中の水、クロルピクリンが蒸発し、その蒸発潜熱により反応液の温度上昇は防止される。
【0019】
この減圧下で、反応温度はその反応液組成での蒸気圧で規定されるので、本発明では70℃未満の温度である。反応熱の加熱は、外部加熱、反応槽への飽和水蒸気または加熱水蒸気のいずれでも良い。
【0020】
加熱に用いる熱量は、生成して留出するクロルピクリン蒸気に同伴される水蒸気潜熱量と、生成クロルピクリンを蒸発させるための潜熱量に不足する熱量を補う量あればよい。これよりも多い場合は水の蒸発が増えるだけとなり無駄に熱が消費されることとなる。また、これよりも少ないとクロルピクリンが反応液中に残り収率が低下する。
【0021】
反応は撹拌装置を有する槽型反応装機を用いバッチ式あるいは連続式のいずれでも良い。また連続式の場合には反応機は1槽のみ、あるいは2槽以上のいずれでも良く、その滞留時間は任意の時間でよい。
【0022】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を詳しく説明する。尚、%は特に断りのない限り重量%を示す。
【0023】
実施例1
直径13cm、深さ25cmの3リットル容ガラス製反応器に直径8mm、深さ24cmのディップ管をとりつけた反応器1と反応器2(5リットル)をガラス管で連結した。反応器1に1%次亜塩素酸カルシウム水溶液3.0リットル(0.47モル)を装入し、40℃に温水浴中で昇温し、8kpaに減圧した。そこにニトロメタン98.0g(1.6モル)を含む水溶液980gを深さ24cmのディップ管から、8.4%次亜塩素酸カルシウム水溶液5800g(6.85モル)を滴下しながら、それぞれ定量的に70分間かけて反応器1にフィードし、フィード中、反応液は温水浴で加温し40℃に、圧力は8kpaに保った。反応器1をオーバーフローした液は反応器2に流入させた。ニトロメタン水溶液及び次亜塩素酸カルシウム水溶液のフィード中及びフィード後に留出する液を冷却管にて凝縮させ、得られた液を分液し、下層に無色澄明液体としてクロルピクリンを得た。これをガスクロマトグラフで分析したところ得られたクロルピクリン中にニトロメタンは検出されなかった。
収量 256g(1.56モル)
純度 99.8%
収率 97.3%
ニトロメタン 不検出
【0024】
比較例1
ディップ管の深さを7cmとした以外は実施例1と同様に実験を行った。
得られたクロルピクリンをガスクロマトグラフィーで分析したところ、得られたクロルピクリン中にニトロメタンが検出された。
収量 255g(1.56モル)
純度 99.8%
収率 96.9%
ニトロメタン 0.21%
【0025】
比較例2
ディップ管の深さを12cmとした以外は実施例1と同様に実験を行った。
得られたクロルピクリンをガスクロマトグラフィーで分析したところ、得られたクロルピクリン中にニトロメタンが検出された。
収量 253g(1.54モル)
純度 99.8%
収率 96.3%
ニトロメタン 0.08%
【0026】
【発明の効果】
上述したように、本発明により、ニトロメタン水溶液を反応液中にディップしながらフィードし、次亜塩素酸カルシウム水溶液と大気圧未満の減圧下で反応させながら、生成するクロルピクリンを反応熱を蒸発潜熱として利用することで、クロルピクリン品質を確保し、熱を有効活用できる。
このように本発明の方法は、高効率でクロルピクリン製造法をできる工業的に極めて価値のある発明である。

Claims (5)

  1. ニトロメタンと次亜塩素酸塩を水溶液中で大気圧未満の圧力下で反応させてクロルピクリンを製造するに際して、ニトロメタン水溶液を次亜塩素酸塩の水溶液に浸されたニトロメタン水溶液装入管の供給孔より供給することを特徴とする、クロルピクリン製造法。
  2. 生成したクロルピクリンを留出させるために必要な熱量を維持するために必要な熱量を反応液に供給しつつ反応することを特徴とする請求項1記載のクロルピクリン製造法。
  3. 大気圧未満の絶対圧力が20kpa以下である請求項1または請求項2記載のクロルピクリン製造法。
  4. 未反応のニトロメタンが留出しない深さに設定されたニトロメタン水溶液装入管の供給孔からニトロメタン水溶液を供給することにより、得られるクロルピクリンへのニトロメタンの混入が防止された請求項1〜3の何れか一項記載のクロルピクリン製造法。
  5. 次亜塩素酸塩が次亜塩素酸塩カルシウムである請求項1〜4の何れか一項に記載のクロルピクリン製造法。
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