JP2004050554A - インクジェット記録用シート - Google Patents
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Abstract
【課題】高湿度環境下において、画像の経時ニジミがなく、シート状でのカール度の小さいインクジェット記録用シートを提供する。
【解決手段】原紙の両側がポリオレフィン樹脂層で被覆されたシート状支持体の一方の側に、水溶性樹脂と無機微粒子と下記一般式(I)で表されるカチオンポリマーとを含む色材受容層を有し、他方の側に(A)水性溶媒中、反応性乳化剤の存在下で2以上の単量体を乳化重合してなる水分散体と(B)カルボキシル基及びスルホン基を有する水溶性高分子化合物若しくはその金属塩または親水性有機高分子水分散物とを含む塗布液が塗布されたインクジェット記録用シートである〔R,R4〜R7:H又はアルキル;Y,Z:連結基;X1,X2:アニオン;Q:エチレン性不飽和基を有する単位;n,p=0〜100モル%、q=0〜60モル%(n+p+q=100%、n及びpは同時に0%でない)、m=1〜6〕。
【化1】
【選択図】 なし
【解決手段】原紙の両側がポリオレフィン樹脂層で被覆されたシート状支持体の一方の側に、水溶性樹脂と無機微粒子と下記一般式(I)で表されるカチオンポリマーとを含む色材受容層を有し、他方の側に(A)水性溶媒中、反応性乳化剤の存在下で2以上の単量体を乳化重合してなる水分散体と(B)カルボキシル基及びスルホン基を有する水溶性高分子化合物若しくはその金属塩または親水性有機高分子水分散物とを含む塗布液が塗布されたインクジェット記録用シートである〔R,R4〜R7:H又はアルキル;Y,Z:連結基;X1,X2:アニオン;Q:エチレン性不飽和基を有する単位;n,p=0〜100モル%、q=0〜60モル%(n+p+q=100%、n及びpは同時に0%でない)、m=1〜6〕。
【化1】
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インク(色材として染料又は顔料を用いたもの)及び油性インク等の液状インクや、常温では固体であり、溶融液状化させて印画に供する固体状インク等を用いたインクジェット記録に供給される被記録材に関し、詳しくは、経時ニジミがなく良好なインク受容性能を有し、かつ高湿環境下でのプリンタ走行性、画像品質に優れたインクジェット記録用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報技術(IT)産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発され、その情報処理システムに適した記録方法及び記録装置も開発され、各々実用化されている。
これらの記録方法の中でも、インクジェット記録方法は、多種の被記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から、オフィスは勿論、いわゆるホームユースにおいても広く用いられてきている。
【0003】
また、近年のインクジェットプリンタの高解像度化に伴い、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきており、このようなハード(装置)の進歩に伴って、インクジェット記録用の記録シートも各種開発されてきている。
このインクジェット記録用の記録シートに要求される特性としては、一般的に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)インクドットの径が適正で均一であること(ニジミのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)印画部の耐水性や耐光性、耐オゾン性が良好なこと、(8)記録シートの白色度が高いこと、(9)記録シートの保存性が良好なこと(長期保存でも黄変着色を起こさないこと)、(10)変形しにくく寸法安定性が良好であること(カールが十分小さいこと)、(11)ハード走行性が良好であること等が挙げられる。
更に、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得る目的で用いられるフォト光沢紙の用途においては、上記諸特性に加えて、光沢性、表面平滑性、銀塩写真に類似した印画紙状の風合い等も要求される。
【0004】
上記した諸特性の向上を目的として、近年では色材受容層に多孔質構造を有するインクジェット記録用シートが開発され実用化されている。このようなインクジェット記録用シートは多孔質構造を有することで、インク受容性(速乾性)に優れ高い光沢を有する。
【0005】
例えば、特開平10−119423号や同10−217601号公報等では、微細な無機顔料粒子及び水溶性樹脂を含有し、高い空隙率を有する色材受容層が支持体上に設けられたインクジェット記録用シートが提案されている。
これらの記録用シート、特に、無機顔料微粒子としてシリカを用いた多孔質構造からなる色材受容層を設けたインクジェット記録用シートは、その構成によりインク吸収性に優れ、高解像度の画像を形成し得る高いインク受容性能を有し且つ高光沢を表すことができるとされている。しかしながら、高湿度環境下に保存された場合の印画画像のニジミ(経時ニジミ)の点では、未だ満足できるものではなかった。
【0006】
一方、高湿環境を含めた経時ニジミの問題を解決するために、以前から多くの技術が提案されている。例えば、特開昭57−36692号には塩基性媒染剤ラテックスを使用する旨が、特開昭53−49113号、同59−198186号および同59−198188号にはポリエチレンイミンを含浸させる方法が、特開昭58−24492号にはカチオン基を有する電解質ポリマーが、特開昭63−307979号にはカチオン性ポリマー媒染剤と親水性基を有する重合体を含有させる旨が、特開昭61−61887号、同61−72581号、同61−252189号および同62−174184号にはポリアリルアミンを媒染剤として使用することが、特開昭63−162275号にはカチオン性媒染剤とカチオン性界面活性剤を併用する旨が、特開平6−143798号にはカチオン変成ポリビニルコールが、特開平8−142496号には特定の2種類のカチオンポリマーを併用して耐水性を向上する旨が、それぞれ記載されている。
【0007】
更に、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−96987号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同61−277484号、同61−293886号、同62−19483号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−203896号、同63−274583号、同63−280681号、同63−260477号、特開平1−9776号、同1−24784号、同1−40371号、同3−133686号、同6−234268号、同7−125411号などには、カチオン性媒染剤を添加してインク染料の定着性を改善する技術が多数開示されている。
【0008】
ところが、先行技術に開示されているものの殆どは、シリカの如き表面がアニオン性である無機微粒子と混合した際に凝集物が形成されやすく、良好な塗布液が調製できなかったり、あるいは塗布膜面の光沢性が著しく低下する等の問題があった。これらを改良する目的で、特開平11−348409号公報において特定のカチオンポリマーと気相法シリカとを組合せる技術が提案されているが、高湿度下における経時ニジミの防止効果としては未だ完全ではなかった。
【0009】
他方、インクジェット記録用シートが高湿度の環境下に置かれた場合、空気中の水分を吸収して色材受容層側にカールし、記録材料としての製品品質を損なう問題があった。高湿度下で上記のようなカールの程度が強くなると、プリンタでのシート走行性が悪くなり、印画の際に給紙された記録用シートのカールが原因で搬送不良(ジャミング)を起こしたり、斜めに搬送されるといった問題があった。この場合には、所定の位置に印画することができなくなったり、最終的に形成される画像の品質を低下させることになる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、これまで高画質の画像を形成しうる技術が提案されてきているものの、高湿度環境下においても常湿環境の場合と同様に、形成された画像が経時で滲んでしまうことがなく、かつプリンタ内での記録用シートの走行安定性(搬送性)を維持して安定的な画像形成が行なえるインクジェット記録用シートを提供できるまでに至っていないのが現状といえる。
【0011】
本発明は、上記に鑑みて成されたものであり、特に高湿度環境下において、形成画像の経時ニジミを抑止して高画質の画像を形成、保持できると共に、シート状にしたときのカール度が小さく、プリンタ内での走行安定性に優れたインクジェット記録用シートを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、前記支持体が、原紙の両方の側がポリオレフィン樹脂層で被覆されてなるシート状支持体であって、前記シート状支持体の一方の側に、水溶性樹脂と、平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子と、下記一般式(I)で表され、かつ数平均分子量10万以下の水溶性のカチオンポリマーとを含む色材受容層を有し、かつ他方の側に、(A)水性溶媒中、反応性乳化剤の存在下で2以上の単量体を乳化重合してなる水分散体と、(B)カルボキシル基及びスルホン基を有する水溶性高分子化合物およびその金属塩、並びに親水性有機高分子水分散物からなる群より選択される少なくとも一種とを含む塗布液が塗布された、ことを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【0013】
【化2】
【0014】
前記一般式(I)中、R及びR4は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R1、R2、R3、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Y及びZは、それぞれ独立に2価の連結基を表し、X1 −及びX2 −はそれぞれ独立にアニオン基を表し、Qはエチレン性不飽和基を有する1種若しくは2種以上の単量体から誘導される繰り返し単位を表す。nは0〜100モル%を表し、pは0〜100モル%を表し、qは0〜60モル%を表し、n+p+q=100%を満たすが、n及びpが同時に0%となることはない。mは1〜6の整数を表す。
【0015】
<2> 前記塗布液がコロイド状シリカを更に含む前記<1>に記載のインクジェット記録用シートである。
<3> 前記2以上の単量体が、芳香族系エチレン性不飽和単量体、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、及び前記3つの単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体である前記<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用シートである。
<4> 前記親水性有機高分子水分散物が、親水性ブロック及び疎水性ブロックを有するブロック共重合体の乳化物からなる前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用シートである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録用シートにおいては、特に、水溶性樹脂と共に水溶性のカチオンポリマーにより分散された無機微粒子を含む色材受容層がシート状支持体の片側に設けられ、その逆側にはカール防止のための塗布液が塗布される。以下、本発明のインクジェット記録用シートについて詳細に説明する。
【0017】
(シート状支持体)
本発明のインクジェット記録用シートは、シート状の原紙の両方の側に両表面を覆うようにポリオレフィン樹脂が付与され、両面がポリオレフィン樹脂層で被覆されたシート状支持体で構成される。
【0018】
前記原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。前記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及び/又はLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0019】
パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理を行なって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0020】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0021】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0022】
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0023】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0024】
原紙の片側の表面およびその逆側の裏面は、ポリオレフィン樹脂によって被覆され、ポリオレフィン樹脂層が設けられる(該層を有するものを本発明において「シート状支持体」と称する。)。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなど適宜選択することができる。ポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEや、ポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0025】
特に、色材受容層を形成する一方の側を被覆するポリエチレン層(ポリオレフィン樹脂層)は、写真用印画紙で広く行なわれているように、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度及び色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、原紙の両側の層とも10〜50μmが好適である。
【0026】
更に、ポリオレフィン樹脂層(例えばポリエチレン層)上には、色材受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、PVAが好ましい。また、下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
【0027】
ポリオレフィン樹脂層を有するシート状支持体は、光沢紙として用いることも、また、ポリオレフィン(例えばポリエチレン)を原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行なって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
【0028】
前記シート状支持体の厚みには特に制限はないが、取扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
【0029】
また、シート状支持体の表面には、濡れ特性及び接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0030】
本発明のインクジェット記録用シートは、上記よりなるシート状支持体の、一方の側に色材受容層を少なくとも一層有すると共に、他方の側に後述の成分(A)及び(B)を含んでなる塗布液が塗布されて構成される。
【0031】
まず、シート状支持体の一方の側について詳述する。
シート状支持体(以下、単に「支持体」ということがある。)の一方の側には、上記のように、色材受容層がシート状支持体のポリオレフィン樹脂層上に設けられる。本発明に係る色材受容層は、水溶性樹脂と、無機微粒子と、以下に示す一般式(I)で表され、かつ数平均分子量10万以下の水溶性のカチオンポリマーとを少なくとも含んで構成される。好ましくは、更に媒染剤を含んで構成され、必要に応じて、架橋剤等の他の添加剤等を含んで構成することができる。
【0032】
−無機微粒子−
本発明に係る色材受容層は、平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子を、後述の一般式(I)で表されるカチオンポリマーによって分散された状態で含有する。インクジェット記録用シートの色材受容層は、無機微粒子を含有することにより多孔質構造が得られ、これによりインクの吸収性能を向上させ得る。ここで、この無機微粒子と共に特定のカチオンポリマーを存在させて上記多孔質構造を形成することによって、高湿度環境下に保持した場合であっても形成画像の経時ニジミを効果的に防止することができる。
【0033】
また更に、無機微粒子の色材受容層における固形分含有量を60質量%以上、より好ましくは65質量%を超える範囲とすることによって、更に良好な多孔質構造を形成することが可能となり、充分なインク吸収性を備えると同時に、吸収されたインクの経時ニジミを抑止したインクジェット記録用シートを得ることができる。ここで、無機微粒子の色材受容層における固形分含有量とは、色材受容層を構成する組成物中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
【0034】
前記無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミナ、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。これらの中でも、良好な多孔質構造を形成する観点より、シリカ微粒子、コロイダルシリカ又は擬ベーマイト、アルミナ微粒子が好ましい。
【0035】
前記無機微粒子は、一次粒子のまま用いても、あるいは二次粒子を形成した状態で使用してもよい。これら無機微粒子の平均一次粒径は30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。平均一次粒子径を30nm以下とすると、インク吸収特性を効果的に向上させ得ると共に、色材受容層表面の光沢性を高めることができる。特に、平均一次粒径が20nm以下のシリカ微粒子、平均一次粒径が20nm以下のアルミナ微粒子、あるいは平均細孔半径が2〜15nmの擬ベーマイトがより好ましい。
【0036】
シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。本発明に用いるシリカ微粒子としては、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
【0037】
気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を表すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2で多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
【0038】
気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散をおこなえば受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る点で重要である。
【0039】
前記気相法シリカの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3〜10nmが最も好ましい。気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下とすることで空隙率の大きい多孔質構造を形成でき、インク吸収特性を効果的に向上させ得ると共に、色材受容層表面の光沢性を高めることができる。
【0040】
また、シリカ微粒子は、前述の他の無機微粒子と併用してもよい。該他の無機微粒子と上記気相法シリカとを併用する場合、全無機微粒子中の気相法シリカの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0041】
本発明における無機微粒子としては、アルミナ微粒子、アルミナ水和物、これらの混合物又は複合物も好ましい。この内、アルミナ水和物は、インクを良く吸収し定着することなどから好ましく、特に、擬ベーマイト(Al2O3・nH2O)が好ましい。アルミナ水和物は、種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。
【0042】
擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1〜30nmが好ましく、2〜15nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3〜2.0cc/gが好ましく、0.5〜1.5cc/gがより好ましい。ここで、上記細孔半径及び細孔容積の測定は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製の商品名「オムニソープ369」)により測定できる。
また、アルミナ微粒子の中では気相法アルミナ微粒子が比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましい。
【0043】
上述の無機微粒子をインクジェット記録用シートに用いる場合は、例えば、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号等公報に開示された態様でも、好ましく用いることができる。
【0044】
また、前記無機微粒子の分散性を改善する目的で、該無機微粒子表面をシランカップリング剤で処理してもよい。該シランカップリング剤としては、カップリング処理を行なう部位の他に、有機官能基(例えば、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、クロロ基、アルキル基、フェニル基、エステル基等)を有するものが好ましい。
【0045】
−一般式(I)で表されるカチオンポリマー−
本発明に係る色材受容層は、前記無機微粒子と共に、下記一般式(I)で表され、かつ数平均分子量10万以下の水溶性のカチオンポリマーを含有する。このカチオンポリマーは、前記無機微粒子を分散する際の凝集防止剤(分散剤)として用いられ、無機微粒子を分散した状態で無機微粒子と共に含有される。これにより、分散性の良好な無機微粒子分散液を調製し得ると共に、アニオン性のインクに作用して高湿度下でのインクのニジミを効果的に防止することができる。このカチオンポリマーは、媒染剤としての機能をも有する。
【0046】
下記一般式(I)で表されるカチオンポリマーについて説明する。
【化3】
【0047】
前記一般式(I)において、R及びR4は、それぞれ独立に水素原子または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。R1、R2、R3、R5、R6及びR7は、それぞれ独立にアルキル基を表し、好ましくはメチル基またはエチル基である。このアルキル基はいずれも置換基を有していてもよい。
【0048】
Y及びZは、それぞれ独立に2価の連結基を表す。特に、Yは単結合、−CONH−または−COO−が好ましく、Zは単結合または−CON(R″)−が好ましい(R″は水素原子、または置換基を有していてもよいアルキル基を表す)。X1 −及びX2 −は、それぞれ独立にアニオン基(ハロゲンイオン、メチル硫酸イオン、pートルエンスルホン酸イオン等)を表す。
【0049】
Qは、エチレン性不飽和基を有する単量体から誘導される繰り返し単位を表す。Qで表される単量体の具体例としては、スチレン、ブタジエン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキルエチルメタクリレート、酢酸ビニル、ビニルエーテル、アクリルアミド、Nーメチルアクリルアミド、N−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、等が挙げられる。
また、Qは1種の単量体から誘導されるのみならず、2種以上の単量体の共重合、すなわち2種以上の単量体に由来して誘導される繰り返し単位であってもよい。
【0050】
一般式(I)中のnは、0〜100モル%を表し、好ましくは20〜80モル%であり、pは0〜100モル%を表し、好ましくは10〜60モル%であり、qは0〜60モル%を表し、好ましくは0〜40モル%である。n+p+q=100%であるが、nとpが同時に0%となることはない。また、mは1〜6の整数を表し、好ましくは2〜4である。
尚、前記一般式(I)を構成する3つの繰り返し単位は、ランダム、ブロック、交互、グラフトのいずれの形態の共重合体であってもよい。
【0051】
以下、前記一般式(I)で表されるカチオンポリマーの具体例(例示化合物K−1〜K−21)を示す。
【0052】
【化4】
【0053】
【化5】
【0054】
【化6】
【0055】
【化7】
【0056】
【化8】
【0057】
【化9】
【0058】
前記一般式(I)で表されるカチオンポリマーは、数平均分子量が10万以下であることが必要である。この数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められたポリスチレン値に換算した値である。数平均分子量が10万を超える場合には、カチオンポリマーの水溶液を表面がアニオン性である無機微粒子を含有する分散液に添加した際に凝集物の発生が激しく、また、その後に分散処理を施しても均一にしにくく、粗大粒子が多数存在して均一な分散液が得られ難い。このようなカチオンポリマーと無機微粒子とで構成される無機微粒子分散液を使用してインクジェット用光沢紙に適用した場合には、高い光沢性が得られなくなる。
【0059】
上記の中でも、好ましくは5万以下である。数平均分子量の下限としては、画像形成後の耐水性の点から、概ね2000以上であり、特に5000以上が好ましい。
【0060】
色材受容層における無機微粒子(s)とカチオンポリマー(p)との比率(s:p)は、無機微粒子の種類や粒径、あるいはカチオンポリマーの種類や平均分子量で適宜変更すればよく、概ね1:0.01〜1:1とすることが好ましい。
【0061】
前記一般式(I)で表されるカチオンポリマーは無機微粒子の分散剤(凝集防止剤)として用いられ、上記の無機微粒子は、該カチオンポリマーを含有する水溶液に無機微粒子を混合し、分散処理を行なって得られた分散液として用いることができる。
【0062】
上記のように分散処理を行うことにより無機微粒子の分散液が得られるが、この分散処理には、高速回転分散機、媒体攪拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、ロールミル分散機、高圧分散機など従来公知の各種分散機を使用することができる。形成されるダマ状微粒子の分散を効率的に行なうという点から、超音波分散機または高圧分散機が好ましい。
【0063】
この分散液を調製する際には、各種の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、ノニオン性またはカチオン性の各種の界面活性剤(アニオン性界面活性剤は凝集物を形成するために好ましくない)、消泡剤、ノニオン性の親水性ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、各種の糖類、ゼラチン、プルラン等)、ノニオン性またはカチオン性のラテックス分散液、水混和性有機溶媒(酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、nープロパノール、アセトンなど)、無機塩類、pH調整剤などが挙げられ、これらは必要に応じて適宜使用することができる。
【0064】
特に水混和性有機溶媒は、無機微粒子とカチオンポリマーを混合した際の微小なダマの形成が抑制される点で好ましい。水混和性有機溶媒は、分散液中に0.1〜20質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%使用される。
【0065】
無機微粒子の分散液を調製する際のpHは、無機微粒子の種類やカチオンポリマーの種類、各種の添加剤等により広範に変化し得るが、一般的にはpHが1〜8であり、特に2〜7が好ましい。また、上記の分散は2種以上を併用することも可能である。
【0066】
−水溶性樹脂−
水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
【0067】
以上の中でも、特にポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。該ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号等に記載されたものなどが挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11−165461号公報の段落「0011」〜「0014」に記載の化合物なども挙げられる。
【0068】
これら水溶性樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記水溶性樹脂の含有量としては、色材受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
【0069】
インクジェット記録用シートの色材受容層を主として構成する前記水溶性樹脂と前記無機微粒子とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系を使用してもよい。また、透明性を保持する観点からは、無機微粒子、特にシリカ微粒子と組合される水溶性樹脂の種類が重要となる。前記気相法シリカを用いる場合には、該水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、その中でも、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
【0070】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記シリカ微粒子の表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造の色材受容層が形成されると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質の色材受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0071】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、前記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。該他の水溶性樹脂と上記ポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0072】
<無機微粒子と水溶性樹脂との含有比>
無機微粒子(x)と水溶性樹脂(y)との質量含有比〔PB比(x/y)〕は、色材受容層の膜構造及び膜強度にも大きな影響を与える。即ち、質量含有比〔PB比〕が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなるが、密度や強度は低下する傾向にある。
【0073】
本発明に係る色材受容層は、上記質量含有比〔PB比(x/y)〕としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5〜10が好ましい。
【0074】
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、記録用シートに応力が加わることがあるので、色材受容層は十分な膜強度を有していることが必要である。またシート状に裁断加工する場合、色材受容層の割れや剥がれ等を防止する上でも、色材受容層には十分な膜強度を有していることが必要である。これらの場合を考慮すると、前記質量比(x/y)としては5以下がより好ましく、一方インクジェットプリンターで、高速インク吸収性を確保する観点からは、2以上であることがより好ましい。
【0075】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカ微粒子と水溶性樹脂とを、質量比(x/y)2〜5で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が30nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0076】
−媒染剤−
本発明においては、形成画像の耐経時ニジミ及び耐水性の更なる向上を図る目的で媒染剤を併用することができる。
媒染剤としては、カチオン性ポリマー(カチオン性媒染剤)等の有機媒染剤、及び水溶性金属化合物等の無機媒染剤が好ましく、該媒染剤を色材受容層内の少なくとも上層に存在させることにより、アニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用が働き該色材を安定化して、耐水性や耐経時ニジミを改善することができる。
【0077】
前記カチオン性媒染剤としては、カチオン性の官能基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
前記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染剤モノマー)の単独重合体や、該媒染剤モノマーと他の単量体(非媒染剤モノマー)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー又は水分散性ラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0078】
前記媒染剤モノマーとしては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド;
【0079】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート;
【0080】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、又はそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0081】
具体的な化合物としては、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド;
【0082】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
【0083】
また、アリルアミンやジアリルアミン、その誘導体、塩なども利用できる。このような化合物の例としてはアリルアミン、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硫酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルエチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルジメチルアンモニウム塩(該塩の対アニオンとしてはクロライド、酢酸イオン硫酸イオンなど)等が挙げられる。尚、これらのアリルアミン及びジアリルアミン誘導体はアミンの形態では重合性が劣るので塩の形で重合し、必要に応じて脱塩することが一般的な製法である。
また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの重合単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、及びこれを塩にしたものも利用できる。
【0084】
前記非媒染剤モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェット用インク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さい単量体をいう。
前記非媒染剤モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0085】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。前記非媒染剤モノマーも、一種単独で又は二種以上を組合せて使用できる。
【0086】
更に、前記ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びその誘導体、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カオチン樹脂、ジシアンアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カオチン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリンアンモニウムクロリド−SO2共重合物、ジアリルアミン塩−SO2共重合物等も好ましいものとして挙げることができる。
【0087】
前記ポリマー媒染剤として、具体的には、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号、特開平1−161236号、同10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号の各公報に記載のもの等が挙げられる。中でも、ポリアリルアミン及びその誘導体が特に好ましい。
【0088】
前記無機媒染剤としては、多価の水溶性金属塩や疎水性金属塩化合物が挙げられる。例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスロプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属の塩又は錯体が挙げられる。
【0089】
具体例としては、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミナ、アルミナミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミナ、亜硫酸アルミナ、チオ硫酸アルミナ、ポリ塩化アルミナ、硝酸アルミナ九水和物、塩化アルミナ六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、
【0090】
ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリン酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリン酸n氷和物、硝酸カリウム、酢酸マンガン、硝酸ゲルマニウム、硝酸ストロンチウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硝酸インジウム、硝酸ランタン、塩化ランタン酢酸ランタン、安息香酸ランタン、塩化セリウム、硫酸セリウム、オクチル酸セリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジミウム、硝酸サマリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、塩化ハフニウム、硝酸ビスマス等が挙げられる。
【0091】
前記無機媒染剤の中でも、アルミナ含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、元素周期律表第IIIB族シリーズの金属化合物(塩又は錯体)が好ましい。
【0092】
前記媒染剤の色材受容層における含有量としては、0.01〜5g/m2が好ましく、0.1〜3g/m2がより好ましい。
【0093】
−架橋剤−
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、無機微粒子及び水溶性樹脂等を含む塗布層が、更に該水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含み、該架橋剤と水溶性樹脂との架橋反応によって硬化された多孔質層である態様が好ましい。
【0094】
上記の水溶性樹脂、特にポリビニルアルコール系樹脂の架橋には、ホウ素化合物が好ましい。該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二硼酸塩(例えば、Mg2B2O5、Co2B2O5)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四硼酸塩(例えば、Na2B4O7・10H2O)、五硼酸塩(例えば、KB5O8・4H2O、Ca2B6O11・7H2O、CsB5O5)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
【0095】
上記水溶性樹脂の架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
【0096】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。
上記の架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0097】
架橋剤は、色材受容層形成用の塗布液(色材受容層塗布液)を塗布する際に色材受容層塗布液中および/または色材受容層の隣接層を形成するための塗布液中に添加してもよく、あるいは予め架橋剤を含む塗布液を塗布した支持体上に、前記色材受容層塗布液を塗布する、架橋剤非含有の色材受容層塗布液を塗布・乾燥後に架橋剤溶液をオーバーコートする、等して色材受容層に架橋剤を供給することができる。好ましくは、製造効率の点から、色材受容層塗布液またはこの隣接層形成用の塗布液中に架橋剤を添加し、色材受容層の形成と同時に架橋剤を供給するのが好ましい。
【0098】
例えば、以下のようにして好適に架橋剤を付与することができる。ここでは、ホウ素化合物を例に説明する。すなわち、色材受容層が色材受容層形成用の塗布液Aを塗布した塗布層を架橋硬化させた層である場合、架橋硬化は、(1)前記塗布液Aを塗布して塗布層を形成すると同時、(2)前記塗布液Aを塗布して形成される塗布層の乾燥塗中であって該塗布層が減率乾燥を示す前のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液(塗布液B)を前記塗布層に付与することにより行われる。架橋剤たるホウ素化合物は、塗布液A又は塗布液Bのいずれかに含有すればよく、塗布液A及び塗布液Bの両方に含有させておいてもよい。
【0099】
架橋剤の使用量は、層中の水溶性樹脂の質量に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0100】
−その他の成分−
本発明のインクジェット記録用シートは、必要に応じて更に各種の公知の添加剤、例えば、酸、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、モノマー、重合開始剤、重合禁止剤、滲み防止剤、防腐剤、粘度安定剤、消泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、マット剤、カール防止剤、耐水化剤等を含有することができる。
【0101】
本発明に係る色材受容層は酸を含有していてもよい。酸を添加して色材受容層の表面pHを3〜8、好ましくは5〜7.5に調整することによって、白地部の耐黄変性が向上させることができる。表面pHの測定は、日本紙パルプ技術協会(J.TAPPI)の定めた表面PHの測定の内A法(塗布法)により行うことができ、例えば、前記A法に相当する(株)共立理化学研究所製の紙面用PH測定セット「形式MPC」を使用して行うことができる。
【0102】
具体的な酸の例としては、ギ酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、サリチル酸、サリチル酸金属塩(Zn,Al,Ca,Mg等の塩)、メタンスルホン酸、イタコン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スチレンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、バルビツール酸、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、4−ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸、ナフタレンジスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、トルエンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸、スルファニル酸、スルファミン酸、α−レゾルシン酸、β−レゾルシン酸、γ−レゾルシン酸、没食子酸、フロログリシン、スルホサリチル酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、ビスフェノール酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、ボロン酸等が挙げられる。これらの酸の添加量は、色材受容層の表面PHが3〜8になるように決めればよい。
【0103】
上記の酸は、金属塩(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、セシウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、ジルコニウム、ランタン、イットリウム、マグネシウム、ストロンチウム、セリウムなどの塩)、又はアミン塩(例えばアンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、ポリアリルアミンなど)の形態で使用してもよい。
【0104】
本発明においては、色材受容層が紫外線吸剤、酸化防止剤、滲み防止剤などの保存性向上剤を含有することが好ましい。
これら併用できる紫外線吸剤、酸化防止剤、滲み防止剤としては、アルキル化フェノール性化合物(ヒンダードフェノール性化合物を含む)、アルキルチオメチルフェノール性化合物、ヒドロキノン化合物、アルキル化ヒドロキノン化合物、トコフェロール化合物、チオジフェニルエーテル化合物、2個以上のチオエーテル結合を有する化合物、ビスフェノール性化合物、O−,N−及びS−ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化合物、トリアジン化合物、ホスホネート化合物、アシルアミノフェノール性化合物、エステル化合物、アミド化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール化合物、2−ヒドロキシベンゾフェノン化合物、アクリレート、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物(TEMPO化合物を含む)、2−(2−ヒドロキシフェニル)1,3,5,−トリアジン化合物、金属不活性化剤、ホスフィット化合物、ホスホナイト化合物、ヒドロキシアミン化合物、ニトロン化合物、過酸化物スカベンジャー、ポリアミド安定剤、ポリエーテル化合物、塩基性補助安定剤、核剤、ベンゾフラノン化合物、インドリノン化合物、ホスフィン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、尿素化合物、ヒドラジト化合物、アミジン化合物、糖化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が挙げられる。
【0105】
これらの中でも、アルキル化フェノール性化合物、2個以上のチオエーテル結合を有する化合物、ビスフェノール性化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、ヒドラジド化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物の内少なくても一種を組合せて用いるのが好ましい。
【0106】
具体的な化合物例は、特願2002−13005号、特開平10−182621号、特開2001−260519号、特公平4−34953号、特公平4−34513号、特開平11−170686号、特公平4−34512号、EP1138509号、特開昭60−67190号、特開平7−276808号、特開2001−94829号、特開昭47−10537号、同58−111942号、同58−212844号、同59−19945号、同59−46646号、同59−109055号、同63−53544号、特公昭36−10466号、同42−26187号、同48−30492号、同48−31255号、同48−41572号、同48−54965号、同50−10726号、米国特許第2,719,086号、同3,707,375号、同3,754,919号、同4,220,711号、
【0107】
特公昭45−4699号、同54−5324号、ヨーロッパ公開特許第223739号、同309401号、同309402号、同310551号、同第310552号、同第459416号、ドイツ公開特許第3435443号、特開昭54−48535号、同60−107384号、同60−107383号、同60−125470号、同60−125471号、同60−125472号、同60−287485号、同60−287486号、同60−287487号、同60−287488号、同61−160287号、同61−185483号、同61−211079号、同62−146678号、同62−146680号、同62−146679号、同62−282885号、同62−262047号、同63−051174号、同63−89877号、同63−88380号、同66−88381号、同63−113536号、
【0108】
同63−163351号、同63−203372号、同63−224989号、同63−251282号、同63−267594号、同63−182484号、特開平1−239282号、特開平2−262654号、同2−71262号、同3−121449号、同4−291685号、同4−291684号、同5−61166号、同5−119449号、同5−188687号、同5−188686号、同5−110490号、同5−1108437号、同5−170361号、特公昭48−43295号、同48−33212号、米国特許第4814262号、同第4980275号、等の各公報に記載のものが挙げられる。
【0109】
その他の成分は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。その他の成分は、水溶性化、分散化、ポリマー分散、エマルション化、油滴化して添加してもよく、マイクロカプセル中に内包することもできる。その他の成分を添加する場合の添加量としては、0.01〜10g/m2が好ましい。
【0110】
本発明において、色材受容層用塗布液は界面活性剤を含有することができる。該界面活性剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、フッ素系、シリコン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
【0111】
前記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリーコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセロールモノオレート等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリン等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アセチレングリコール類(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、及び該ジオールのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。該ノニオン系界面活性剤は、第1の塗布液及び第2の塗布液において使用することができる。また、前記ノニオン系界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0112】
前記両性界面活性剤としては、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型、アンモニウム硫酸エステルベタイン型、イミダゾリウムベタイン型等が挙げられ、例えば、米国特許第3,843,368号明細書、特開昭59−49535号公報、同63−236546号公報、特開平5−303205号公報、同8−262742号公報、同10−282619号公報等に記載されているものを好適に使用できる。該両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤が好ましく、該アミノ酸型両性界面活性剤としては、特開平5−303205号公報に記載されているように、例えば、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸、ヒスチジン酸等)から誘導体化されたものであり、長鎖のアシル基を導入したN−アミノアシル酸及びその塩が挙げられる。前記両性界面活性剤は1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
前記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩(例えばステアリン酸ソーダ、オレイン酸カリ)、アルキル硫酸エステル塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン)、スルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルスルホコハク酸塩(例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
前記カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩などが挙げられる。
【0114】
前記フッ素系界面活性剤としては、電解フッ素化、テロメリゼーション、オリゴメリゼーションなどの方法を用いてパーフルオロアルキル基を持つ中間体を経て誘導される化合物が挙げられる。例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0115】
前記シリコーン系界面活性剤としては、有機基で変性したシリコーンオイルが好ましく、シロキサン構造の側鎖を有機基で変性した構造、両末端を変性した構造、片末端を変性した構造をとり得る。有機基変性として、アミノ変性、ポリエーテル変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、アルキル変性、アラルキル変性、フェノール変性、フッ素変性等が挙げられる。
【0116】
前記他の界面活性剤の色材受容層用塗布液における含有量としては、0.001〜2.0%が好ましく、0.01〜1.0%がより好ましい。また、色材受容層用塗布液として2液以上を用いて塗布を行なう場合には、それぞれの塗布液に界面活性剤を添加するのが好ましい。
【0117】
本発明に係る色材受容層は、ひび割れ防止、カール防止用に高沸点有機溶剤を含有するのが好ましい。前記高沸点有機溶剤は常圧で沸点が150℃以上の有機化合物で、水溶性又は疎水性の化合物である。これらは、室温で液体でも固体でもよく、低分子でも高分子でもよい。
具体的には、芳香族カルボン酸エステル類(例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジフェニル、安息香酸フェニルなど)、脂肪族カルボン酸エステル類(例えばアジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、ステアリン酸メチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、アセチルクエン酸トリエチルなど)、リン酸エステル類(例えばリン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなど)、エポキシ類(例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸メチルなど)、アルコール類(例えば、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコールなど)、植物油(例えば大豆油、ヒマワリ油など)高級脂肪族カルボン酸(例えばリノール酸、オレイン酸など)等が挙げられる。
【0118】
次に、シート状支持体の他方の側について詳述する。
シート状支持体の色材受容層を有しない他方の側には、上記のように後述の成分(A)及び(B)を含んでなる塗布液が塗布される。塗布により裏面塗布層が形成され(必ずしも層形成されなくてもよい。)、該裏面塗布層は、少なくとも、(A)水性溶媒中、反応性乳化剤の存在下で2以上の単量体を乳化重合した水系分散体(以下、「成分(A)」ともいう。)と、(B)カルボキシル基又はスルホン基を有する水溶性高分子化合物およびその金属塩、並びに親水性有機高分子水分散物からなる群より選択される少なくとも一種(以下、「成分(B)」ともいう。)とを含有する。
【0119】
シート状支持体の色材受容層が設けられていない他方の側に、上記の塗布液を塗布すること、裏面塗布層を塗設することによって、特に耐水性、耐溶剤性を向上させることができ、高湿度環境下におけるカール(色材受容層側へのカール)を効果的に防止することができる。高湿度下でのカールが抑止されると、インクジェットプリンタでのシート走行性を安定化することができ、印字時の給紙の際にカールが原因で搬送不良(ジャミング)を起こしたり、斜めに搬送されるのを回避することができる。その結果、記録材料としての製品品質を損なわず、所定の位置に高品質の画像を安定的に形成することができる。また、帯電防止性にも優れる。
【0120】
(水系分散体)
水系分散体(成分(A))は、水性溶媒中、反応性乳化剤の存在下で2以上の単量体を乳化重合することによってポリマー粒子を含む状態で得られるものである。
【0121】
上記の「2以上の単量体」としては、芳香族系エチレン性不飽和単量体、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、又はこれら3つの単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体などを挙げることができる。以下、上記の各単量体について説明する。
【0122】
−芳香族系エチレン性不飽和単量体−
芳香族系エチレン性不飽和単量体(以下、「単量体A」ということがある。)は、1分子中に芳香族環とラジカル重合可能なビニル基とを有する単量体であり、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物や、ベンジル(メタ)アクリレート、ベンゾイル(メタ)アクリレートなどの芳香族環を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、あるいは2種以上組合せて用いてもよい。
【0123】
水系分散体における単量体Aの使用量は、使用する全単量体中、40〜99質量部であることが好ましく、より好ましくは45〜80質量部であり、更に好ましくは50〜70質量部である。単量体Aの使用量を40〜99質量部とすることにより、印刷適性、耐溶剤性がともに良好となる。
【0124】
−エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体−
エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「単量体B」ということがある。)は、1分子中にエポキシ基とラジカル重合可能なビニル基とを有する単量体であり、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メタグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、エポキジシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エポキシ化ブタジエンなどのエポキシ誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、あるいは2種以上組合せて用いてもよい。
水系分散体における単量体Bの使用量は、使用する全単量体中、0.5〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜8質量部であり、更に好ましくは2〜7質量部である。単量体Bの使用量を0.5〜10質量部とすることにより、耐溶剤性、印刷適性がともに良好となる。
【0125】
−エチレン性不飽和カルボン酸単量体−
エチレン性不飽和カルボン酸単量体(以下、「単量体C」ということがある。)は、1分子中にカルボキシル基とラジカル重合可能なビニル基を有する単量体である。ここでは、水性溶媒を用いて乳化重合する際に単量体Cに変化するものであってもよい。
【0126】
上記の単量体C、あるいは水性溶媒を用いて乳化重合する際に単量体Cに変化するものの具体例としては、例えば、以下に示す(a)〜(e)が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、あるいは2種以上組合せて用いてもよい。
(a)アクリル酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類;
(b)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類;
(c)マレイン酸メチル、イタコン酸メチル、β−メタクリルオキシエチルアシットヘキサハイドロフタレートなどのハーフエステル類;
(d)上記(a)、(b)の不飽和カルボン酸類の無水物;
例えば、アクリル酸無水物、マレイン酸無水物などは、水性溶媒中で乳化重合する際にカルボン酸に変化するので、乳化重合の際の単量体として用いることができる。
(e)上記(a)〜(d)のカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩;
【0127】
単量体Cの水系分散体における使用量は、使用する全単量体中、0.5〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.7〜7質量部であり、更に好ましくは1〜5質量部である。単量体Cの使用量を0.5〜10質量部とすることにより、耐溶剤性、耐水性、印刷適性がともに良好となる。
【0128】
−他のエチレン性不飽和単量体−
他のエチレン性不飽和単量体(以下、「単量体D」ということがある。)は、前記単量体A〜単量体Cと共重合可能な単量体であればよく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ〉アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸i−ノニル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート・ブチルアミノエチルアクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアミノアルキルエステル;ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどのカルボニル基を分子中に有する化合物;
【0129】
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどの各種官能基を有する(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)つアクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリシルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリシルメタクリレートなどの光安定化の機能を有する(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシ−4−メタクリルオキシベンゾフェノン、2−[2’−ヒドロキシ−5メタクリロルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収性の機能を有する(メタ)アクリレート化合物;1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル;エチレン性不飽和ジカルボン酸の酸無水物、モノアルキルエステル、モノアミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、アクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、あるいは2種以上組合せて用いてもよい。
【0130】
単量体Dの水系分散体における使用量は、使用する全単量体のうち、前記単量体A〜Cを除く残りの部分を占める。
【0131】
本発明においては、特に、上記の芳香族系エチレン性不飽和単量体と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体と、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、これら3つの単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを乳化重合して得られる水分散体が好ましい。
【0132】
〈平均粒子径〉
本発明に係る水系分散体において、乳化重合により得られるポリマー粒子の平均粒子径は、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは30〜150nmであり、更に好ましくは50〜100nmである。前記ポリマー粒子の平均粒子径が200nm以下とすることにより、高い耐水性を得ることができる。平均粒子径の測定は、以下の方法によって行われる。粒子の水性分散体を蒸留水で適宜希釈し、動的光散乱法粒子径測定器を用いて平均粒子径を測定する。ポリマー粒子の平均粒子径は、ラジカル重合開始剤および乳化剤の種類および量を調整することにより制御することができる。
【0133】
〈ゲル分率〉
水系分散体に含まれるポリマー粒子のゲル分率は、70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上であり、更に好ましくは85%以上である。ゲル分率が70%以上とすることにより、耐溶剤性が良好となる。
ゲル分率とは、前述したように、ポリマー粒子中において高分子量の3次元網目構造を形成する部分の占める割合をいい、通常、前記ポリマー粒子中におけるトルエン等の有機溶媒への不溶分として測定される。
ゲル分率は、単量体A〜単量体Dを本発明の範囲内で使用したうえで、ラジカル重合開始剤の種類および量、重合温度、必要により使用される連鎖移動剤の種類および量によって調節することができる。
【0134】
〈ガラス転移温度〉
水系分散体に含まれるポリマー粒子のガラス転移温度は、0〜80℃であることが好ましく、5〜60℃であることがより好ましく、10〜40℃であることが更に好ましい。前記ガラス転移温度が0℃未満であると、耐溶剤性に劣る場合がある。一方、前記ガラス転移温度が80℃を超えると、クラックなど欠損の多い塗膜となる場合がある。
【0135】
−水系分散体の製造方法−
水系分散体は、2以上の単量体からなる混合物を、水性溶媒中、後述する反応性乳化剤の存在下で、重合開始剤を添加し、共重合させることにより得られる。かかる乳化重合においては、まず、重合開始剤を熱または還元性物質の存在下でラジカル分解して重合開始反応を起こさせることにより単量体の付加重合を行わせる。
【0136】
−重合開始剤−
水系分散体の製造に用いる重合開始剤としては、例えばクメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンセンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどの有機ハイドロパーオキサイド類からなる酸化剤と含糖ピロリン酸鉄処方、スルホキシレート処方、含糖ピロリン酸鉄処方/メルボキシレート処方の混合処方などの還元剤との組合せによるレドックス系の開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2−カルバモイルアザイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物などを挙げることができ、好ましくは前記過硫酸塩および前記レドックス系の開始剤である。
【0137】
重合開始剤の使用量は、全単量体100質量部あたり、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜2質量部であるのがより好ましい。これらの重合開始剤を用いて乳化重合する際には、反応系中に重合開始剤を一括添加するか、あるいは重合開始剤の一部を回分的添加、連続的添加、あるいはこの両者を組み合わせて添加する方法を用いることができる。
【0138】
−反応性乳化剤−
前述の通り、本発明における水系分散体は、2以上の単量体を反応性乳化剤の存在下にラジカル重合して得られる。ここで、反応性乳化剤とは、乳化重合可能な程度の乳化能を有し、かつ、ラジカル重合可能である乳化剤をいう。
本発明においては、反応性乳化剤を用いて乳化重合を行なうことにより、乳化剤の使用量を低減することができ、特に水系媒体中における遊離の乳化剤の量を低減することができるため、耐水性に優れた共重合体エマルジョンが得られる。
【0139】
前記反応性乳化剤としては、例えば、ラジカル反応性基としてエチレン性不飽和基、親水基としてポリオキシエチレン基,スルホン基,硫酸基、疎水基としてアルキル基を1分子中に有する乳化剤が挙げられる。具体例として、「ラテムルS−180A」[花王(株)製]、「エレミノールJS−2」[三洋化成(株)製]、「アクアロンHS−10」「アクアロンBC−10」[第一工業製薬(株)製]、「アデカリアソープSE−10N」[旭電化工業(株)製]などのアニオン性反応性乳化剤;「アクアロンRS−20」[第一工業製薬(株)製]、「アデカリナソープNE−20」[旭電化工業(株)製]などの非イオン性反応性乳化剤を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、あるいは2種以上組合せて用いてもよい。
【0140】
反応性乳化剤の使用量としては、後述する粒子径によるが、全単量体100質量部に対し、0.5〜5質量部であるのが好ましく、0.5〜3質量部であるのがより好ましい。0.5〜5質量部とすることにより、重合反応時の安定性を保持することができ、乳化が十分で、泡立ちも適当である。
また、乳化剤として、上記反応性乳化剤の他に、陰イオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、陽イオン性乳化剤、両性イオン乳化剤、水溶性ポリマーなどの非反応性乳化剤を併用してもよい。
【0141】
陰イオン性乳化剤としては、例えば高級アルコール硫酸エステルのアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エステル塩などが挙げられる。
【0142】
非イオン性乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、糖鎖を親水基とするアルキルエーテルなどを挙げることができる。
【0143】
陽イオン性乳化剤としては、アルキルピリジニルクロライド、アルキルアンモニウムクロライドなどを挙げることができる。
【0144】
両性イオン乳化剤としては、ラウリルベタインなど.を挙げることができる。水溶性ポリマーとしては、芳香族系単量体とカルボキシル基を含む単量体とを共重合させて得られるポリカルボン酸系重合体のアルカリ中和物や、ポリビニルアルコール、酵素分解澱粉などを挙げることができる。
【0145】
これらの非反応性乳化剤の使用量は、全単量体100質量部あたり、通常5質量部以下であることが好ましく、水溶性ポリマーを使用する場合には50質量部以下であることが好ましい。
また、これらの乳化剤は、重合系にそれぞれ一括添加、回分的添加、連続的添加あるいはこの両者を組み合わせて添加されるのが好ましい。
【0146】
水系分散体の重合においては、上記の乳化剤および重合開始剤と共に、必要に応じて、連鎖移動剤、電解質、キレート剤、pH調整剤などを併用してもよい。連鎖移動剤としては、ハロゲン化炭化水素(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ブロモホルム等)、メルカプタン類(例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等)、キサントゲン類(例えば、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等)、テルペン類(例えば、ジペンテン、ターピノレン等)、1,1−ジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマー[2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(I)、2,4−ジフェニル−4−メチル−ペンテン(II)、及び1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダン(III)の少なくとも1種からなり、好ましくは(I)/((II)+(III))〔質量比〕=40〜100/0〜60であるもの]、不飽和環状炭化水素化合物(例えば、9,10−ジヒドロアントラセン、1,4−ジヒドロナフタレン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン)、不飽和ヘテロ環状化合物(例えば、キサンテン、2,5−ジヒドロフラン)等を挙げることができる。連鎖移動剤の使用量としては、全単量体100質量部あたり、0〜5質量部程度であることが好ましい。
【0147】
pH調整剤としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸水素二ナトリウムなどが挙げられる。pH調整剤の使用量はそれぞれ、全単量体100質量部あたり0〜2質量部であるのが好ましい。
【0148】
次の反応は重合法の一例である。すなわち、単量体混合物100質量部と、水100〜500質量部と、重合開始剤0.05〜5質量部と、乳化剤0.01〜5質量部と、連鎖移動剤、電解質およびpH調整剤の所定量とよりなる水性の反応系を、5〜100℃、好ましくは50〜90℃の温度条件下、0.1〜10時間にわたり反応させる。
【0149】
その際の重合方法としては、全単量体を一括添加する方法、少なくとも一部の単量体を分割または連続して添加する方法、少なくとも一部の単量体のプレエマルジョンを分割または連続して添加する方法、またはこれらの方式を段階的に組み合わせた方法等を採用することができるが、特に、水溶性の低い単量体を使用する場合は、高圧ホモジナイサーや超音波分散機を用いて、予め単量体混合物の少なくとも一部、水、乳化剤等を強制乳化させてプレエマルジョンを調製してから、残りの単量体を一括添加、あるいは分割または連続して添加する方法等により重合することもできる。
【0150】
尚、本発明において、水系分散体の製造に用いられる水の使用量は、使用する全単量体の合計量100質量部に対し、通常、50〜1000質量部、好ましくは100〜500質量部である。50〜100質量部とすることにより、容易に乳化し、乳化後のエマルジョンの安定性を保持することができるとともに、生産性が向上する。また、重合転化率は99質量%以上であることが好ましい。
【0151】
以上のようにして水系分散体が合成される。尚、水系分散体が酸性である場合には、アルカリ性化合物で中和することにより生成物を安定化させることが好ましい。かかるアルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、ジメチルアミノエタノール、モルホリンなどのアミン類などを挙げることができる。
【0152】
−その他の添加剤−
以上の水系分散体には、目的に応じて、光安定化剤、紫外線吸収剤、有機溶剤、架橋剤、水溶性高分子(例えば水溶性ポリエステル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、澱粉)、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、艶消し剤、顔料、防カビ剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0153】
水系分散体に添加含有される光安定化剤、紫外線吸収剤としては特に限定されるものではなく、塗料、合成ゴム、合成樹脂、合成繊維用の光安定化剤・紫外線吸収剤として公知のものを使用することができる。具体的には、有機ニッケル、ヒンダートアミン系などの光安定化剤;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの無機系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾールなどの有機系紫外線吸収剤などを挙げることができる。これらのうち、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ビペリジル)セバケートなどのヒンダードアミン系の光安定化剤;酸化セリウム、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤が好ましい。光安定化剤、紫外線吸収剤の添加量としては、特定の重合体(固形分)100質量部に対して、通常0.01〜10質量部であり、好ましくは0.05〜5質量部である。光安定化剤、紫外線吸収剤を含有させることによって、形成された塗布層に良好な耐侯性を発現させることができる。
【0154】
水系分散体に添加含有される有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコールなどのアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、メチルセロゾルブアセテート、エチルセロゾルブアセテート、トリブトキシメチルフォスフェートなどを挙げられる。
有機溶剤の添加量としては、水系分散体固形分100質量部に対して、通常0.1〜100質量部である。有機溶剤を含有させることにより、得られる水系分散体の濡れ性および造膜性を向上させることができる。
【0155】
水系分散体に添加含有される架橋剤としては、特に制限されるものではなく、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂よりなる架橋剤、ヒドラジド化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アジリジン化合物などの有機系架橋剤、金属化合物などの無機系架橋剤など、公知の架橋剤を使用することができる。
【0156】
架橋剤として用いられるアミノ樹脂の具体例としては、ヘキサメトキジメチル化メラミン樹脂などの完全アルキル型メチル化メラミン樹脂、部分アルキル化メチル化メラミン樹脂、ベンゾグアテミン樹脂、アルキルエーテル化尿素樹脂などを挙げることができる。
架橋剤として用いられるフェノール樹脂の具体例としては、ジメチロール樹脂、ポリメチロールフェノール樹脂、フェノールホルムアミド樹脂、メチロールフェノールホルムアミド樹脂、ジメチロールフェノールホルムアミド樹脂などを挙げることができる。
【0157】
架橋剤として用いられるエポキシ樹脂の具体例としては、エチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ヘキサンジオール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、グリセリン・ジグリシジルエーテル、グリセリン・ポリグリシジルエーテル、ジグリセリン・ポリグリシジルエーテル、ソルビトール・ポリグリシジルエーテル、水添ピスフェノールA・ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・ジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのポリグリシジルエーテル、P−オキシ安息香酸のグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸・ジグリシジルエーテル、ヒダントイン環含有エポキシ樹脂、エポキシ基を側鎖に有するビニル系重合体などを挙げることができる。
【0158】
架橋剤として用いられるヒドラジド化合物は、1分子中に2個以上のヒドラジノ基を有する化合物であり、重合体中にカルボニル基が導入されている場合に架橋効果を示す化合物である。かかるヒドラジド化合物の具体例としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどを挙げることができる。
【0159】
架橋剤として用いられるイソシアネート化合物およびブロックイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートの水素添加物、トリレンジイソシアネートのアダクト、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートの水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートの水素添加物、イソホロンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、イソシアネート基をブロック化したブロック化ポリイソシアネート、並びにこれらの任意の混合物などを挙げることができる。
【0160】
架橋剤として用いられるアジリジン化合物としては、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス〔1−(2−メチル)アジリジニル〕ホスフィンオキシド、ヘキサ〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕トリホスファトリアジンなどを挙げることができる。
【0161】
架橋剤として用いられる金属化合物は、亜鉛、ジルコニウム、マグネシウム、銅、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、カドミウム、チタニウムなどの金属の酸化物または塩類を、炭酸、酢酸、ギ酸、グルタル酸、安息香酸、シュウ酸などの酸に溶解させるか、あるいはこれらの酸と多価金属化合物の水溶液を、アンモニア、アミンなどにより、pH7〜11に調整することによって得られるものであり、更に金属イオンの形になったものを含めることができる。この多価金属化合物は、炭酸亜鉛アンモニウム、炭酸アンモニウムジルコネート、亜鉛、ジルコニウムの酸化物または塩である。上記アミンで錯体形成可能なものは、モルホリン、モノエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチルアミノエタノールなどである。そのほか、一般的な酢化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸などのコンプレクサン、グリシン、アラニンなども使用できる。
【0162】
上記の架橋剤によれば、0〜280℃の温度条件下に架橋(硬化)反応を進行させることができる。そして、上記架橋剤のうち、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ブロックイソシアネート化合物よりなるものは、100℃以下の温度条件下に架橋反応を進行させることができるので好ましい。架橋剤を含有させることにより、水系分散体により形成される塗膜に更に優れた耐溶剤性および耐水性を付与することができる。
【0163】
水分散体を構成する全単量体中において、特に、単量体Aを含有することで、印刷適性を高められると共に、ガラス転移温度(Tg)を高めることができ、更に単量体Bを含み架橋することにより、耐溶剤性、耐水性、耐アルカリ性、耐酸性を向上させることができる。その結果、水系分散体を含む塗布液をシート状支持体の他方の側に塗布することによって、特にインクジェット記録用シートの耐溶剤性、耐水性を高め、湿度環境に依らずカールの発生を効果的に防止することができる。また、裏面塗布層は印刷適性、耐酸性・耐アルカリ性も付与し得る。
【0164】
次に、以上の成分(A)と共に含有する、成分(B)(カルボキシル基又はスルホン基を有する水溶性高分子化合物およびその金属塩、並びに親水性有機高分子水分散物からなる群より選択される少なくとも一種)について説明する。
【0165】
(水溶性高分子化合物およびその金属塩)
カルボキシル基を有する水溶性高分子化合物としては、炭素数4以上のエチレン系不飽和モノマー、例えば、炭素数4以上のα−オレフィン、アルキルビニルエーテル、又はスチレン等の不飽和共重合性単量体と無水マレイン酸との共重合体が好ましく、その塩は、それらを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリとともに加水分解して得られる。
【0166】
炭素数4以上の不飽和共重合性単量体と無水マレイン酸との共重合体の分子量は2000〜150000のものが好ましく、これらの具体例としては、イソブチレン、1−ペンテン、ブチルビニルエーテル、又はスチレンと、無水マレイン酸との共重合体、並びに該共重合体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリと共に加水分解して得られる溶液のpHが5.0〜9.0である反応生成物などが挙げられる。これらのほか、スチレンとイタコン酸又はクロトン酸との共重合体、メチルアクリレートとシトラコン酸との共重合体など、並びにそれらの金属塩を挙げることができる。
【0167】
スルホン基を有する水溶性高分子化合物としては、分子量が5000〜1000000のものが好ましく、例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルベンジルスルホン酸など、並びにそれらのナトリウムやカリウムなどの塩などを挙げることができる。その金属塩としては、ポリアクリル酸ソーダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ等が挙げられ、親水性有機高分子水分散物としては、カルボキシル変性ポリエチレン又はその塩等が挙げられる。
【0168】
(親水性有機高分子水分散物)
親水性有機高分子水分散物は、親水性ブロック及び疎水性ブロックを有するブロック共重合体の乳化物とすることが好ましい。
親水性ブロック及び疎水性ブロックを有するブロック共重合体において、疎水性ブロックとしては、炭化水素系の単量体を主成分とする重合体もしくは共重合体のユニットが挙げられる。このユニットとしては、ジエン系単量体を主体とする(共)重合体、芳香族ビニル化合物やオレフィンなどのオレフィン系単量体を主体とする(共)重合体あるいはこれらを水素添加した(共)重合体のユニットが好ましいものとして挙げられる。
【0169】
また、前記ブロック共重合体において、親水性ブロックとしては、前記疎水性のユニットに親水基を含有させたものが挙げられる。かかる親水基としては、スルホン基、カルボン酸基(カルボキシル基)、リン酸基、アミン基、アミド基、水酸基、アルキルエステル基、酸無水物基等が挙げられる。これらの中では、スルホン基、カルボン酸基(カルボキシル基)、リン酸基、アミン基、アミド基、水酸基が好ましく、更に好ましくはスルホン基またはカルボン酸基(カルボキシル基)、特に好ましいのはスルホン基である。
例えば、ジエン系単量体を主体とする(共)重合体、芳香族ビニル化合物やオレフィンなどのオレフィン系単量体を主体とする(共)重合体、あるいはこれらを水素添加した(共)重合体のユニットなどの炭化水素系単量体を主成分とする(共)重合体のユニットに、スルホン基などの親水基を含有させたものが挙げられる。
【0170】
また、例えば炭化水素系単量体を主成分とする(共)重合体のユニットにスルホン基などの親水基を含有させる方法としては、これら(共)重合体のユニットをスルホン化するなどの方法で親水基を導入する方法、スルホン基などの親水基を含有する単量体を共重合する方法などが挙げられる。好ましいのはジエン系単量体を主体とする(共)重合体ユニットと、芳香族ビニル化合物やオレフィンなどのオレフィン系単量体を主体とする(共)重合体ユニットとを含有するブロック共重合体(以下、「ベースポリマー」ということがある。)あるいはこれらを水素添加したブロック共重合体に親水基を導入する方法である。
【0171】
前記ジエン系単量体を主体とする(共)重合体のユニットに使用されるジエン系単量体としては、炭素数4〜12のジエン系化合物が好ましく、更に好ましくは炭素数4〜8、特に好ましくは炭素数4〜6のジエン系化合物である。ジエン系化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ペンタジエン、イソプレン、1,2−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,2−ヘプタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、2,3−ヘプタジエン、2,5−ヘプタジエン、3,4−ヘプタジエン、3,5−ヘプタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどのほか、分岐した炭素数4〜7の各種脂肪族あるいは脂環族ジエン類が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。これらのうち特に好ましいのは、1,3−ブタジエン、イソプレンである。
【0172】
また、オレフィン系単量体を主体とする(共)重合体ユニットは、芳香族ビニル化合物やオレフィンなどのオレフィン系単量体を主体とする(共)重合体ユニットである。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。また、オレフィンとしては、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。これらモノマーは1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。これらのうちで好ましいのは、芳香族ビニル化合物であり、特に好ましくはスチレンである。
【0173】
また、前記ジエン系単量体を主体とする(共)重合体、芳香族ビニル化合物やオレフィンなどのオレフィン系単量体を主体とする(共)重合体あるいはこれらを水素添加した(共)重合体のユニットには、前記単量体以外に、他の単量体を併用することもできる。他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノあるいはジカルボン酸またはジカルボン酸の無水物、(メタ)アクリロニトリルなどのビニルシアン化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルメチルエチルケトン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和化合物が挙げられる。これら他の単量体は、1種単独でまたは2種以上を併用することもできる。
【0174】
ジエン系単量体を主体とする(共)重合体ユニットには、他の単量体として前記芳香族ビニル化合物やオレフィンを劣位量共重合してもよい。また、芳香族ビニル化合物を主体とする(共)重合体ユニットには、前記ジエン系単量体やオレフィンを劣位量共重合してもよい。また、オレフィンを主体とする(共)重合体ユニットには、他の単量体として前記ジエン系単量体や芳香族ビニル化合物を劣位量共重合してもよい。これら他の単量体を併用する場合には、その単量体の使用量は、各(共)重合体ユニット中、通常60%以下であり、好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0175】
ブロック共重合体(ベースポリマー)の製造、すなわち上記のジエン系単量体を主体とする(共)重合体ユニットと、芳香族ビニル化合物やオレフィンなどのオレフィン系単量体を主体とする(共)重合体ユニットとを含有するブロック共重合体は、それぞれの単量体を開始剤を用い、必要に応じて溶剤を用いて共重合することにより製造することができる。かかる開始剤としては、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤、あるいはn−ブチルリチウム、ナトリウムナフタレン、金属ナトリウムなどのアニオン重合開始剤が挙げられる。また、重合温度は、通常、−100〜150℃、好ましくは0〜130℃である。重合方式としては、ブロック共重合体を得るという意味から、特に、アニオン重合が好ましく用いられる。
【0176】
また、前記ブロック共重合体について、ジエン系単量体に基づく残存二重結合の一部あるいは全部を水素添加(水添)して使用することもできる。この場合、公知の水添触媒が使用可能で、例えば、特開平5―222115号公報に記載されているような触媒、方法が挙げられる。ベースポリマーである前記ブロック共重合体を水添後、後述する方法で親水基を導入することもできるが、該共重合体に親水基導入したのち、水添してもよい。
【0177】
本発明において好適なベースポリマーは、ジエン系単量体を含有するポリマーユニットAとオレフィン系単量体を含有するポリマーユニットBとを含有するブロック共重合体である。そのブロック共重合体の好ましい構造としては、AB型あるいはA(BA)n型あるいはB(AB)n型あるいは(AB)n型(但し、nは好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2、特に好ましくは1)である。
【0178】
これらのうちで好ましいのは、AB型、ABA型、およびBAB型のブロック共重合体である。具体的に好ましいベースポリマーとしては、例えば、イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体、イソプレン−スチレン−イソプレン三元ブロック共重合体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体、ブタジエン−スチレン−ブタジエン三元ブロック共重合体およびこれらブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。また、ジエンモノマ−ユニットのブロック鎖中に、前記芳香族モノマーあるいは他のモノマーが一部共重合されていてもよく、また、芳香族モノマーユニットのブロック鎖中に前記ジエンモノマーあるいは他のモノマーが一部共重合されていてもよい。
【0179】
これらベースポリマーあるいはその水添物のポリスチレン換算の質量平均分子量(以下、「Mw」と記す。)は、好ましくは1,000〜1,000,000、更に好ましくは2,000〜500,000、特に好ましくは5,000〜200,000である。Mwが、1,000未満であると、帯電防止性を有するポリマー乳化物の帯電防止性が経時的に低下する場合があり、1,000,000を超えると、極性基を導入する際にゲル化する等の問題が生じる場合がある。
【0180】
ブロック共重合体において、ジエン系単量体を含有するポリマーユニットAとオレフィン系単量体を含有するポリマーユニットBの割合A/Bは、水素添加してないブロック共重合体の場合は、好ましくは1〜80/99〜20であり、更に好ましくは2〜70/98〜30、特に好ましくは5〜50/95〜50である。また、水素添加したブロック共重合体の場合は、好ましくは20〜99/80〜1であり、更に好ましくは30〜98/70〜2、特に好ましくは50〜95/50〜5である。
【0181】
各ポリマーユニットAおよびBの重合度は、水素添加してないブロック共重合体の場合は、好ましくはAが10以上、Bが20以上であり、更に好ましくはAが50以上、Bが100以上であり、特に好ましくはAが100以上、Bが200以上である。また、水素添加したブロック共重合体の場合は、好ましくはAが20以上、Bが10以上であり、更に好ましくはAが100以上、Bが50以上であり、特に好ましくはAが200以上、Bが100以上である。
【0182】
親水基を有するブロック共重合体は、前記ブロック共重合体からなるベースポリマーに親水基を含有する単量体(モノマー)を共重合する方法や、親水基の付加などの方法により含有させることにより製造することができる。親水基の付加などの方法により含有させる方法としては、公知の方法が使用できる。例えばスルホン基を導入する場合、例えば日本科学会編集、新実験講座(14巻 III、1773頁)、あるいは特開平2−227403号公報などに記載された方法でスルホン化することにより製造することができる。
【0183】
すなわち、ブロック共重合体をスルホン化することにより親水基を含有するブロック共重合体(親水基含有ブロック共重合体)を製造する場合、前記ベースポリマーを、該ポリマー中のジエン系単量体に基づく二重結合部分あるいは芳香族部分のいずれか一方を、スルホン化剤を用いて、優先的にスルホン化することより製造することができる。スルホン化する場合は次の方法が好ましい。
(1)水素添加していないベースポリマーあるいはジエンユニットが部分的に水素添加されたベースポリマーを使用する場合には、ジエンユニットを優先的にスルホン化することが好ましく、一方、(2)ジエンユニットが水素添加されたベースポリマーでは、芳香族ユニットを優先的にスルホン化することが好ましい。前記(1)のように、ジエンユニットを優先的にスルホン化する場合には、スルホン化剤としては、無水硫酸と電子供与性化合物との錯体あるいは亜硫酸水素塩(Na塩、K塩、Li塩など)などを使用することが好ましい。また、前記(2)のように、芳香族ユニットを優先的にスルホン化するためには、スルホン化剤として、前記錯体の他、無水硫酸、クロルスルホン酸、発煙硫酸、濃硫酸、アセチル硫酸などを使用することが好ましい。
【0184】
ここで、電子供与性化合物としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル類;ピリジン、ピペラジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン類;ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィドなどのスルフィド類;アセトニトリル、エチルニトリル、プロピルニトリルなどのニトリル化合物などが挙げられ、このうちでもN,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサンが好ましい。
【0185】
水素添加していないベースポリマーあるいは部分的に水素添加されたベースポリマーを使用する場合には、スルホン化剤の量は、ベースポリマー中のジエンユニット1モルに対して、0.5モル以上1.2モル以下、好ましくは、0.8モル以上1.1モル以下である。該量が、0.5モル未満であると、十分な親水性が得られないことがあり、1.2モルを超えると、未反応スルホン化剤が不純物として残ることがある。また、水素添加したベースポリマーを使用する場合には、スルホン化剤の量は、通常ベースポリマー中の芳香族ユニット1モルに対して、0.5モル以上1.2モル以下、好ましくは、0.8モル以上1.1モル以下である。このときの量が、0.5モル未満であると、十分な親水性が得られないことがあり、1.2モルを超えると、未反応スルホン化剤が不純物として残ることがある。
【0186】
このスルホン化の際には、無水硫酸、硫酸などのスルホン化剤に不活性な溶媒を使用することもでき、この溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;液体二酸化イオウ、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤、水などが挙げられる。これらの溶媒は、適宜、2種以上混合して使用することができる。
【0187】
スルホン化の反応温度としては、通常−70〜200℃であり、好ましくは−30〜50℃である。反応温度が、−70℃未満であると、スルホン化反応が遅くなり経済的でないことがあり、200℃を超えると、副反応を起こし、生成物が黒色化あるいは不溶化することがある。
【0188】
本発明に使用されるジエン系ブロック共重合体のスルホン化物は、このスルホン化生成物に水または塩基性化合物を作用させたものが好ましい。この塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩;メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、アミルリチウム、プロピルナトリウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムブロマイド、プロピルマグネシウムアイオダイド、ジエチルマグネシウム、ジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機金属化合物;アンモニア水、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、アニリン、ピペラジンなどのアミン類;ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、亜鉛などの金属化合物を挙げることができる。これらの塩基性化合物は、1種単独で使用することも、また2種以上を併用することもできる。これらの塩基性化合物の中では、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水が好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0189】
塩基性化合物の使用量は、スルホン化剤1モルに対して、好ましくは1.5モル以下、更に好ましくは1.2モル以下である。使用量が1.5モルを超えると、未反応アルカリが多く、製品の純度が低下することがある。
【0190】
この反応の際には、前記塩基性化合物を水溶液の形で使用することもでき、あるいは塩基性化合物に不活性な有機溶媒に溶解して使用することもできる。該有機溶媒としては、前記各種の有機溶媒のほか、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類などが挙げられる。これらの溶媒は、適宜、2種以上混合して使用することができる。
【0191】
塩基性化合物を水溶液または有機溶媒溶液として使用する場合、塩基性化合物の濃度は、通常1〜70質量%であり、好ましくは10〜50質量%程度である。また、この反応温度は、通常−30〜150℃であり、好ましくは0〜120℃、更に好ましくは+50〜100℃で行われ、また、常圧、減圧あるいは加圧下のいずれでも実施することができる。更に、反応時間は、通常0.1〜24時間であり、好ましくは0.5〜5時間である。また、スルホン基以外の親水基を導入する場合は、例えばカルボキシル化、リン酸エステル化、アミン化、アミド化、ヒドロキシル化等の方法を適宜行うことにより製造することができる。
【0192】
また、親水基を含有する単量体を共重合する場合は、例えばスルホン基を含有する単量体や、カルボン酸基(カルボキシル基)、アミノ基、アミド基、リン酸基や水酸基などを含有する単量体を適宜共重合することにより製造することができる。スルホン基を有する単量体としては、前記ジエン系単量体またはオレフィン系単量体にスルホン酸(塩)基が付加したものが好ましい例として挙げられる。これらの具体例としては、スルホン酸(塩)基含有ブタジエン、スルホン酸(塩)基含有イソプレン、スルホン酸(塩)基含有スチレン、スルホン酸(塩)基含有エチレン、スルホン酸(塩)基含有プロピレンなどが挙げられる。これらのうち好ましいのは、スルホン酸(塩)基含有イソプレン、スルホン酸(塩)基含有スチレンである。また、スルホン基以外の親水基を有する単量体としては(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノあるいはジカルボン酸またはジカルボン酸の無水物、(メタ)アクリルホスフェート、アミノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどを共重合することによって製造することができる。
【0193】
以上のような親水基を導入したブロック共重合体の親水基の含有量としては、通常、親水基を含有したモノマー単位の数がブロック中の構成モノマー単位の50(モル)%以上が好ましく、更に好ましくは70%以上である。50%以上にすることにより、十分な帯電防止性が得られる。尚、疎水性ブロック中に親水基を含有していてもよいが、親水基を含有したモノマー単位の数が疎水性ブロック中の構成モノマー単位の10(モル)%以下が好ましく、更に好ましくは5(モル)%以下である。
【0194】
また、親水基を導入したブロック共重合体中の極性基含量は、好ましくは0.1〜5mmol/g、より好ましくは0.2〜3mmol/g、更に好ましくは0.3〜2.5mmol/g、特に好ましくは0.5〜2mmol/gである。0.1mmol/g未満であると、帯電防止性を発現し難くなることがあり、多すぎると耐水性が問題になることがある。
【0195】
本発明においては、通常、前記親水基含有ブロック共重合体を水などの媒体中に乳化分散した状態(親水基含有ブロック共重合体乳化物)で使用する。
乳化分散する方法としては、特に制限はないが、好ましくは親水基含有ブロック共重合体の有機溶剤溶液を、水と混合し、乳化させた後、水を残したまま有機溶剤を除去することにより行うことができる。乳化する工程(乳化工程)としては一般的な方法を採用でき、親水基含有ブロック共重合体の有機溶剤溶液中に攪拌しながら水を添加する方法、攪拌しながら親水基含有ブロック共重合体の有機溶剤溶液を水中に添加する方法、水と親水基含有ブロック共重合体の有機溶剤溶液を同時に添加して攪拌する方法などが可能である。
【0196】
上記の乳化工程の際に、予め親水基含有ブロック共重合体を有機溶剤溶液とするために使用される有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤などが使用される。これら溶剤は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0197】
乳化工程の際に用いられる前記有機溶剤の使用量としては、親水基含有ブロック共重合体100質量部に対し、10〜5,000質量部が好ましく、更に好ましくは20〜2,000質量部である。該使用量が、10質量部未満であると、安定な乳化物が得られ難いことがあり、5,000質量部を超えると、経済性が低下することがある。また、乳化工程の際に用いられる水の使用量としては、親水基含有ブロック共重合体100質量部に対し、30〜10,000質量部が好ましく、更に好ましくは100〜5,000質量部である。
【0198】
尚、乳化工程においては界面活性剤を併用することもできる。この界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテルなどの非イオン系界面活性剤、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、ロジン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ドデシルピリジジニウムクロライドなどのカチオン系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0199】
前記界面活性剤は、各種ポリマーあるいは親水基含有ブロック共重合体の有機溶剤溶液中に溶解若しくは分散させて使用してもよいし、水中に溶解若しくは分散させて使用することもできる。前記界面活性剤の使用量としては、各種ポリマーおよび親水基含有ブロック共重合体の総量100質量部に対して、通常10質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましく、更に好ましくは3質量部以下である。
【0200】
また、系内のpHを調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物、塩酸、硫酸などの無機酸を添加することもできる。また、少量であれば、水以外の有機溶剤などを併用することもできる。更に、消泡剤なども添加することができる。
【0201】
このようにして得られる親水基含有ブロック共重合体乳化物の粒径は、通常、1〜500nm、好ましくは1〜300nm 、更に好ましくは1〜150nmである。また、得られるポリマー乳化物の固形分濃度は、通常、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%であり、これは、使用条件、保存条件などにより、適宜選択することができる。
【0202】
また、親水基含有ブロック共重合体乳化物は、単独で用いてもよいが、他のポリマーと併用することも可能である。すなわち、親水基含有ブロック共重合体を他のポリマーと併用して、帯電防止性ポリマーとしたものを、繊維状物質や通常の重合体等の基材の帯電防止剤として使用することができる。親水基含有のブロック共重合体を他のポリマーと併用して、帯電防止性ポリマーを製造する方法としては、(a)親水基含有ブロック共重合体と他のポリマーの乳化物をブレンドする方法、(b)親水基含有ブロック共重合体乳化物を乳化剤として使用し、公知の各種ポリマーを乳化させる方法、が挙げられる。
【0203】
前記(a)の方法における他のポリマーの乳化物としては特に制限はなく、公知のポリマーの乳化物が使用できる。好ましい乳化物としては、ウレタンエマルジョン、アクリルエマルジョン、エポキシエマルジョン、ポリエステルエマルジョン、ポリスチレンエマルジョンなどが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、前記(b)親水基含有ブロック共重合体乳化物を乳化剤として使用し、公知の各種ポリマーを乳化させる方法としては、特に制限はなく、下記(1)又は(2)の2方法が好ましい。
【0204】
(1)親水基含有ブロック共重合体乳化物を乳化剤として使用し、各種ポリマーを乳化することにより、該ポリマーの乳化物を得る方法(ポリマーの再乳化方法)。
(2)親水基含有ブロック共重合体乳化物、水および場合により溶剤の存在下で公知のモノマーを乳化させた後、ラジカル開始剤等によって該モノマーを重合するなど、公知の乳化重合法などによりポリマーの乳化物を得る方法(乳化重合方法)。
【0205】
前記(1)ポリマーの再乳化方法について説明する。親水基含有ブロック共重合体乳化物および後述する他の少なくとも1種の各種ポリマーの有機溶剤溶液を、水と混合し、乳化させた後、水を残したまま有機溶剤を除去することにより行うことができる。有機溶剤および乳化方法などは、前記親水基含有ブロック共重合体の乳化のところで述べたものが同様に使用できる。また、親水基含有ブロック共重合体乳化物と併用して帯電防止性ポリマー乳化物を得るのに使用される各種ポリマーとしては特に制限はなく、公知のポリマーが使用される。好ましいポリマーとしては、ウレタンポリマー、アクリルポリマー、エポキシポリマー、ポリエステル、ジエン系ポリマーあるいはその水添物、エチレンープロピレン系ポリマー、ポリスチレン、ポリオレフィンなどが挙げられ、これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0206】
次に、前記(2)の乳化重合方法について説明する。親水基含有ブロック共重合体乳化物の存在下に、水、開始剤およびモノマー、並びに場合により更に他の乳化剤および有機溶剤等を混合し、該モノマーの乳化重合を行なうことで帯電防止性ポリマーの乳化物を得ることができる。使用できるモノマーには特に制限はなく、前記のジエン系モノマー、芳香族モノマー、アクリルモノマー、他の単量体などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、前記開始剤としては、公知の開始剤を使用でき、好ましくはラジカル開始剤である。また、乳化剤としては、上述の界面活性剤のほか、公知の乳化剤が使用できる。
【0207】
前記帯電防止性のブロック共重合体中、親水性ブロックの含有割合は、固形分換算で、通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。50質量%を超えると帯電防止性ポリマーの乳化物の静置安定性が悪化する場合がある。
【0208】
本発明に係る成分(B)は帯電防止剤機能を有するが、他の帯電防止剤と併用してもよい。かかる他の帯電防止剤としては特に制限はないが、好ましいものとしては、ポリオキシエチレンもしくはポリオキシプロピレン骨格を有するノニオン系化合物、4級窒素構造を有するカチオン系化合物、その他スルホン基、カルボン酸基やリン酸基などのアニオン系官能基を有するアニオン系化合物などが挙げられる。また、親水基含有ブロック共重合体乳化物等には、必要に応じて潤滑剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を混ぜて使用することができる。
【0209】
また、本発明における裏面塗布層には、コロイド状シリカを含有させることが好ましい。該コロイド状シリカとしては、一般に市販されているシリカゾル懸濁液、例えば、ルドックスHS、ルドックスAS等(デュポン社)、及びスノーテックスO、スノーテックスC、スノーテックス20等(日産化学工業社)を挙げることができる。
【0210】
また、マット化剤として、コロイド状シリカ、無機若しくは有機の粉体又は水分散体を用いることもできる。該コロイド状シリカは平均粒径5〜100nmが好ましく、そのシリカ表面にはアルミナ等のコーティングが施されてもよい。また、コロイド状シリカのpHは2.5〜12のものが用いられる。また、無機若しくは有機の粉体は平均粒径0.2〜12μmのものを用いることができ、無機粉体の具体例としては、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。有機粉体の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリメタクリル酸等が挙げられ、それらに耐薬品性を付与したり、硬度を上げるために架橋基が導入されてもよく、粒子内に空隙を持つものを用いてもよい。
【0211】
(インクジェット記録用シートの作製)
本発明において、インクジェット記録用シートを構成する色材受容層および必要に応じて適宜設けられる下塗り層など各種層を、シート状支持体の一方の側に形成するには、公知の方法を適宜選択することができる。好ましい方法としては、支持体上に各層を構成する塗布液を塗布、乾燥する方法がある。この場合、2層以上を同時塗布によって形成することもでき、特に全ての親水性層を1回の塗布で行なう同時塗布が好ましい。また、シート状支持体の他方の側に上記の成分(A)及び(B)を含む塗布液(裏面塗布層用塗布液)を塗布するには、公知の塗布方法を適用することができる。
【0212】
形成される色材受容層の空隙容量としては、概ね20〜40ml/m2が好適であり、その空隙率としては概ね50〜80%が好適である。色材受容層が2層以上で構成される場合は、該2層の構成は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0213】
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、以下に示す方法によって形成することも好適である。
即ち、シート状支持体の表面に、前記一般式(I)で表されるカチオンポリマーで予め分散された無機微粒子と水溶性樹脂とを少なくとも含有する塗布液A(色材受容層用塗布液)を塗布して塗布層を形成し、更に前記塗布液A及び/又は下記塩基性溶液に架橋剤を添加し、かつ(i)前記塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、又は(ii)前記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前のいずれかのときに、pHが8以上の塩基性溶液を前記塗布層に付与し、前記塗布層を架橋硬化させる方法(Wet−on−Wet法)によって好適に形成することができる。ここで、前記水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤は、前記塗布液あるいは塩基性溶液の少なくとも一方又は両方に含有せしめることができる。このようにして架橋硬化させた色材受容層を設けることは、インク吸収性や膜のひび割れ防止などの観点から好ましい。
【0214】
媒染剤は、色材受容層表面からの媒染剤存在部分の厚みが受容層厚みに対し10〜60%であるように存在させる。例えば、▲1▼無機微粒子、水溶性樹脂等を含む塗布層を形成し、媒染剤含有溶液をその上に塗布する方法、▲2▼無機微粒子、水溶性樹脂等を含む塗布液と媒染剤含有溶液を重層塗布する方法など任意の方法で形成できる。また、媒染剤含有溶液中に無機微粒子、水溶性樹脂、架橋剤等が含有されていてもよい。
【0215】
前記のようにすると、媒染剤が色材受容層の所定の部分に多く存在するので、インクジェットの色材が充分に媒染され、色濃度、経時ニジミ、印画部光沢、印字後の文字や画像の耐水性、耐オゾン性が向上するので好ましい。媒染剤の一部は最初に支持体に設ける層に含有させてもよく、その場合は、後から付与する媒染剤は同じものでも異なっていてもよい。
【0216】
本発明において、一般式(I)で表されるカチオンポリマーで分散された無機微粒子と水溶性樹脂(例えばPVA)とを少なくとも含む色材受容層用塗布液(塗布液A)は、例えば、以下のようにして調製することができる。即ち、
気相法シリカとこの分散剤であるカチオンポリマーとを水中に添加して(例えば、水中のシリカ微粒子は10〜20質量%)、高速回転湿式コロイドミル(例えば、エム・テクニック(株)製の「クレアミックス」)を用いて、例えば10000rpm(好ましくは5000〜20000rpm)の高速回転の条件で例えば20分間(好ましくは10〜30分間)かけて分散させて水分散物とした後、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液(例えば、前記気相法シリカの1/3程度の質量のPVAとなるように)とを加え、前記と同じ回転条件で分散を行なうことにより調製することができる。塗布液に安定性を付与するためにアンモニア水等でpH=9.2程度に調節すること、又は分散剤を用いることが好ましい。得られた塗布液は均一なゾル状態であり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布し乾燥させることにより、三次元網目構造を有する多孔質性の色材受容層を形成することができる。
【0217】
水分散物を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的に行なうという点から、媒体撹拌型分散機、コロイドミル分散機又は高圧分散機が好ましい。
【0218】
また、各工程における溶媒として水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。この塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0219】
上記のように分散剤にはカオチンポリマーが用いられるが、この場合、塗布液Aは、無機微粒子とカオチンポリマーとを分散した水分散物に、ポリビニルアルコールを少なくとも含む水溶液や界面活性剤液を添加し、これを再分散して得ることもでき、この塗布液Aを支持体表面に塗布して塗布層を形成し、前記(i)又は(ii)のいずれかのときに、pHが8以上の塩基性溶液を前記塗布層に付与し、前記塗布層を架橋硬化させるようにしてもよい。この方法によると、光沢度及び印画濃度を向上させることができる。水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を、塗布液A及び塩基性溶液の少なくとも一方に含有するのが好ましい。
【0220】
また、前記無機微粒子とカオチンポリマー(分散剤)とを分散してなる水分散物を調製する場合、無機微粒子を含む水分散物を予め調製し、この水分散物を分散剤水溶液に添加するようにしてもよいし、分散剤水溶液を前記水分散物に添加するようにしてもよいし、無機微粒子とカオチンポリマー(分散剤)とを溶媒と共に同時に混合してもよい。また、他の無機微粒子(例えば、粉体の気相法シリカ等)を分散剤水溶液に添加するようにしてもよい。
無機微粒子とカオチンポリマー(分散剤)とを混合する場合、混合後の混合液を分散機を用いて細粒化することで平均粒子径50〜300nmの水分散物を得ることができる。ここでの分散機としては上記同様のものを使用できる。
【0221】
色材受容層用塗布液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法によって行うことができる。
【0222】
色材受容層用塗布液(塗布液A)の塗布と同時又は塗布した後に、該塗布層に塩基性溶液(塗布液B)を付与する場合、該塗布液Bは、塗布後の塗布層が減率乾燥を示すようになる前に付与してもよい。即ち、色材受容層用塗布液(塗布液A)の塗布後、この塗布層が恒率乾燥を示す間に塗布液Bを導入する。この塗布液Bには、媒染剤を含有せしめてもよい。
【0223】
ここで、前記「塗布層が減率乾燥を示すようになる前」とは、通常、色材受容層用塗布液の塗布直後から数分間の過程を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥」の現象を示す。この「恒率乾燥」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0224】
上記のように、塗布層は減率乾燥速度を示すようになるまで乾燥されるが、このときの乾燥は一般に50〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行われる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが、通常は上記範囲が適当である。
【0225】
前記塗布層が減率乾燥を示すようになる前に付与する方法としては、▲1▼塗布液Bを塗布層上に更に塗布する方法、▲2▼スプレー等の方法により噴霧する方法、▲3▼塗布液B中に、該塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
【0226】
前記方法▲1▼において、塗布液Bを塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法を利用することができる。特に、エクストリュージョンダイコーター、カーテンフローコーター、バーコーター等のように、既に形成されている第一塗布層にコーターが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
【0227】
塗布液Bの付与後は、一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥及び硬化がおこなわれる。中でも、40〜150℃で1〜20分間加熱することが好ましい。
【0228】
また、前記塩基性溶液(塗布液B)を、色材受容層塗布液(塗布液A)を塗布すると同時に付与する場合、塗布液A及び塗布液Bを、塗布液Aが支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることにより色材受容層を形成することができる。
【0229】
前記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗布方法により行なうことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することにより行なわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することにより行なわれる。
【0230】
前記同時塗布(重層塗布)を、例えば、エクストルージョンダイコーターにより行なった場合、同時に吐出される二種の塗布液は、エクストルージョンダイコーターの吐出口附近で、即ち、支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された二層の塗布液は、支持体に移る際、既に二液の界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコーターの吐出口付近では、吐出される二液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。従って、上記のように同時塗布する際は、塗布液A及び塗布液Bの塗布と共に、バリアー層液(中間層液)を上記二液間に介在させて同時三重層塗布することが好ましい。
【0231】
前記バリアー層液は、特に制限なく選択できる。例えば、水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。前記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、セルロース系樹脂(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス等)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。尚、バリアー層液には、前記媒染剤を含有させることもできる。
【0232】
支持体上に色材受容層を形成した後、該色材受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性及び塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定して行なう必要がある。
【0233】
カレンダー処理を行なう場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
【0234】
前記色材受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mm2で、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。この点を考慮すると、インクジェット記録の場合には、色材受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
【0235】
また、色材受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。前記空隙率及び細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター((株)島津製作所製の商品名「ボアサイザー9320−PC2」)を用いて測定することができる。
【0236】
また、色材受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、色材受容層を透明フィルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。前記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株)製)を用いて測定することができる。
【0237】
本発明のインクジェット記録用シートの構成層(例えば色材受容層)には、ポリマー微粒子分散物を添加してもよい。このポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止等のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、同62−1316648号、同62−110066号の各公報に記載がある。尚、ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を、前記媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。
【0238】
一方、裏面塗布層は、シート状支持体の一方の側に色材受容層を形成する前または形成後に、あるいは色材受容層の形成と同時に、成分(A)及び(B)を含んで調製された塗布液を他方の側のオレフィン樹脂層上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。ここでの塗布は、上記の色材受容層を塗布形成する場合の公知の塗布方法と同様の方法により行なうことができる。
【0239】
この塗布液の塗布量としては、0.05〜4g/m2が好ましく、0.15〜1g/m2がより好ましい。該塗布量が、0.05g/m2未満であると、色材受容層側へのカールを許容範囲に抑止することができないことがあり、4g/m2を超えると、色材受容層側とは逆側(塗布する側)にカールしてしまう等カールバランスを保てなくなることがある。
【0240】
本発明のインクジェット記録用シートを用いて画像形成する場合、水性インクを用いた記録方法が好適である。ここでいう水性インクは、下記着色剤及び溶媒(液媒体)並びに他の添加剤からなる液体である。着色剤としては、インクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料あるいは水分散性顔料が挙げられる。
【0241】
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。
【0242】
これら水溶性の有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0243】
水性インクにおける他の添加剤としては、例えば、pH調節剤、金属封鎖剤、防バイ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤、及び防錆剤などが挙げられる。水性インクは、色材受容層面に対する濡れ性を良好にする点で、20℃において、25〜60dyn/cmの表面張力を有することが好ましく、30〜50dyn/cmの表面張力を有することがより好ましい。
【0244】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を表す。
【0245】
(実施例1)
<色材受容層塗布液の調製>
−シリカ分散液の調製−
イオン交換水632.011kgに、カチオンポリマーK−21(既述の一般式(I)の例示化合物;固形分51.5%、数平均分子量=9000)を9.422kg加えてディゾルバーにて回転数1200rpmで攪拌し、これに気相法シリカQS−30((株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm;無機微粒子)を113.067kg添加した後、更に回転数2000rpmで120分間攪拌した。引き続き、直径0.65mmのジルコニアビーズを70%充填したダイノミル分散機で更に分散を行ない、シリカ粒子径が0.10〜0.16μmでかつ5μm以上の粒子が5%以下であるシリカ分散液を得た。
【0246】
−バインダー溶液の調製−
イオン交換水330.159kg、PVA124((株)クラレ製;水溶性樹脂)24.988kg、エマルゲン109P(花王(株)製;ノニオン系界面活性剤)10%水溶液3.18kg、およびジエチレングリコールモノブチルエーテル0.673kgを混合して85〜95℃で3時間溶解し、バインダー溶液を得た。
【0247】
−界面活性剤液の調製−
イオン交換水56.24kg、エマルゲン109P(100%、花王(株)製;ノニオン系界面活性剤)1.06kg、およびメガファックF−1405(大日本インキ化学工業(株)製;テロマー型フッ素系界面活性剤)0.6kgを混合して十分に攪拌し、界面活性剤液を得た。
【0248】
−ブレンド液の調製−
上記より得たシリカ分散液754.5kg、イオン交換水14.1kg、および硼酸水溶液(5.32%)86.5kgを混合した後、ディゾルバーで回転数2000rpmで10分間攪拌した。これに更に、上記より得たバインダー溶液359kgと界面活性剤液57.9kgとを添加し、回転数750rpmで15分間攪拌し、ブレンド液(色材受容層塗布液)を得た。
【0249】
<裏面塗布層塗布液>
−成分(A)の調製−
反応性乳化剤(アデカリアソープSE−10N、旭電化工業(株)製)の存在下で、芳香族エチレン性不飽和単量体(単量体A)としてスチレン62部と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(単量体B)としてグリシジルメタクリレート5部と、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(単量体C)としてアクリル酸3部と、これら3種の単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体(単量体D)として2−エチルヘキシルアクリレート30部とを乳化重合し、スチレン−アクリル酸エステルの水分散体(成分(A))を得た。
【0250】
−成分(B)の調製−
次に、スチレン−イソプレンAB型ブロック共重合体(スチレン/イソプレン=80/20[モル比]、重量平均分子量7500)をスルホン化(スルホン酸含量2mmol/g)し、水酸化ナトリウムで中和したナトリウム塩からなる水溶性高分子化合物Na塩(成分(B))を得た。
【0251】
−裏面塗布層塗布液−
上記より得た成分(A)14部および成分(B)8部と、コロイド状シリカ6部と、メタノール20部とを混合し、これに更に水を加えて全量100部とし、裏面塗布層塗布液を得た。
【0252】
<シート状支持体の作製>
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量して170g/m2の原紙を抄造した。
【0253】
上記より得た原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(Whitex BB、住友化学工業(株)製)0.04%を添加し、これを絶乾質量換算で0.5g/m2となるように上記原紙に含浸させ、乾燥した後、更にキャレンダー処理を施して密度1.05g/ccに調整された基紙を得た。
【0254】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理を行なった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の樹脂層に更にコロナ放電処理を施し、その後、上記より得られた裏面塗布層塗布液を乾燥質量が0.2g/m2となるように塗布した。
【0255】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、及び蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有し、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて厚み29μmとなるように押し出し、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、シート状支持体とした。
【0256】
<塗布>
上記シート状支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、上記より得たブレンド液をエクストルージョンダイコーターを用いて170ml/m2の塗布量で塗布した。塗布は40℃に調温したブレンド液を用いて行い、塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜30℃の風で60秒間、45℃の風で60秒間、50℃の風で60秒間順次乾燥させて、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0257】
(実施例2)
実施例1において、成分(A)を下記成分(A’)に代え、かつ成分(B)として用いた水溶性高分子化合物Na塩8部を、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩(ケミスタットSA9、三洋化成(株)製)4部に代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0258】
−成分(A’)の調製−
反応性乳化剤(アデカリアソープSE−10N、旭電化工業(株)製)の存在下で、単量体Aとしてスチレン62部と、単量体Cとしてアクリル酸3部と、これら2種の単量体と共重合可能な他の単量体Dとして2−エチルヘキシルアクリレート30部とを乳化重合し、スチレン−アクリル酸エステルの水分散体(成分(A’))を得た。
【0259】
(実施例3)
実施例1において、裏面塗布層塗布液の成分(A)を実施例2で調製した成分(A’)に代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0260】
(実施例4)
実施例1において、裏面塗布層塗布液の成分(B)として用いた水溶性高分子化合物Na塩8部を、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩(ケミスタットSA9、三洋化成(株)製)4部に代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0261】
(実施例5)
実施例1において、裏面塗布層塗布液の成分(A)の調製にエチレン性不飽和カルボン酸単量体(単量体C)として用いたアクリル酸をメタクリル酸に代え、かつ裏面塗布層塗布液の成分(B)として用いた水溶性高分子化合物Na塩8部を、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩(ケミスタットSA9、三洋化成(株)製)4部に代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0262】
(実施例6)
実施例1において、裏面塗布層塗布液の成分(A)の調製にエチレン性不飽和カルボン酸単量体(単量体C)として用いたアクリル酸をメタクリル酸に代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0263】
(実施例7)
実施例1において、裏面塗布層塗布液の成分(A)の調製に3種の単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体(単量体D)として用いた2−エチルヘキシルアクリレートをn−ヘキシルアクリレートに代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0264】
(実施例8)
実施例1において、裏面塗布層塗布液の成分(A)の調製にエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(単量体B)として用いたグリシジルメタクリレートをグリシジルアクリレートに代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0265】
(比較例1)
実施例2において、成分(A)14部を、非反応性乳化剤の存在下で乳化重合してなるスチレン−アクリル酸共重合体(JSR AE620、JSR(株)製)12部に代えたこと以外、実施例2と同様にして、比較のインクジェット記録用シートを得た。
【0266】
(比較例2)
実施例4において、成分(A)の調製に用いた反応性乳化剤を非反応性乳化剤に代えたことを除いては実施例1と同様に乳化重合させてスチレン−アクリル酸エステルの水分散体(成分(A’’))を得、成分(A)14部を得られた成分(A’’)12部に代えたこと以外、実施例4と同様にして、比較のインクジェット記録用シートを得た。
【0267】
(比較例3)
実施例1において、成分(A)の調製に用いた反応性乳化剤を非反応性乳化剤に代えたことを除いては実施例1と同様に乳化重合させてスチレン−アクリル酸エステルの水分散体(成分(A’’))を得ると共に、成分(A)14部を得られた成分(A’’)12部に代え、かつ裏面塗布層塗布液の調製に成分(B)を添加しなかったこと以外、実施例1と同様にして、比較のインクジェット記録用シートを得た。
【0268】
(比較例4)
実施例1のブレンド液(色材受容層塗布液)の調製において、シリカ分散液の調製に用いたカチオンポリマーK−21を、ポリエチレンイミン(SP−200、(株)日本触媒製)に代えたこと以外、実施例1と同様にして、比較のインクジェット記録用シートを得た。
【0269】
(評価)
上記より得られた各インクジェット記録用シートを用いて、以下の評価を行なった。評価した結果は下記表1に示す。
(1) 走行性(ジャミング)
各インクジェット記録用シートの各々複数枚を35℃、80%RHの環境条件下で一昼夜調湿し、その各々1枚ずつを同一環境条件のもとでインクジェットプリンタ(PM−950、セイコーエプソン社製)にセットし印画を行なった。合計100枚印画したときに発生するジャミング(搬送不良)の頻度(回数)を調べ、走行性の良否を評価する指標とした。
【0270】
(2) カール性
上記の「(1)走行性」と同様にして、A4サイズの各インクジェット記録用シートを一昼夜調湿し、調湿後の各々のインクジェット記録用シートの色材受容層面が上になるように水平面上に置き、該水平面上に最も浮き上がった四隅の水平面からの高さの最大値(mm)を測定し、その平均値をカール値とした。このときのカールは、色材受容層面を上に向けたときに、色材受容層側にカールしたときのカール値をプラス(+)カールとし、裏面塗布層塗布液を塗布した側にカールしたときのカール値をプラス(−)カールとした。
【0271】
(3) 経時ニジミ
インクジェットプリンタ(PM−900C、セイコーエプソン社製)を用いて、各インクジェット記録用シート上にマゼンタインクとブラックインクとを隣り合わせにした格子状の線状パターン(線幅0.28mm)を印画した。印画直後に透明PP製ファイルに挿入して35℃、80%RH環境下で3日間保存し、線状パターンの黒線の幅を測定した。別途、印画直後の黒線の幅を求めておき、下記式で経時ニジミ(%)を算出し、評価の指標とした。
経時ニジミ(%)= (3日間保存後の線状パターンの黒線の幅)/(印画直後の黒線の幅)×100
【0272】
【表1】
【0273】
上記表1に示すように、反応性乳化剤の存在下で乳化重合して得た水分散体等を含む本発明に係る裏面塗布層塗布液を色材受容層形成面と逆側に塗布した本発明のインクジェット記録用シートでは、高湿度下でもカール度が小さく抑えられ、ジャミングや斜め搬送の発生はなかった。また同時に、一般式(I)で表されるカチオンポリマーを用いて分散された無機微粒子を含む色材受容層上の形成画像は滲みによって画像品質が損なわれることもなかった。
一方、比較のインクジェット記録用シートでは、高湿度下でのカール度が大きく、ジャミングや斜め搬送を起こすなど、シート走行性に大きく影響してしまった。また、無機微粒子の分散に一般式(I)で表されるカチオンポリマーを用いなかった比較例4では画像の滲み(経時ニジミ)を防止することはできなかった。
【0274】
【発明の効果】
本発明によれば、特に高湿度環境下において、形成画像の経時ニジミを抑止して高画質の画像を形成、保持できると共に、シート状にしたときのカール度が小さく、プリンタ内での走行安定性に優れたインクジェット記録用シートを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インク(色材として染料又は顔料を用いたもの)及び油性インク等の液状インクや、常温では固体であり、溶融液状化させて印画に供する固体状インク等を用いたインクジェット記録に供給される被記録材に関し、詳しくは、経時ニジミがなく良好なインク受容性能を有し、かつ高湿環境下でのプリンタ走行性、画像品質に優れたインクジェット記録用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報技術(IT)産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発され、その情報処理システムに適した記録方法及び記録装置も開発され、各々実用化されている。
これらの記録方法の中でも、インクジェット記録方法は、多種の被記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から、オフィスは勿論、いわゆるホームユースにおいても広く用いられてきている。
【0003】
また、近年のインクジェットプリンタの高解像度化に伴い、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきており、このようなハード(装置)の進歩に伴って、インクジェット記録用の記録シートも各種開発されてきている。
このインクジェット記録用の記録シートに要求される特性としては、一般的に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)インクドットの径が適正で均一であること(ニジミのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)印画部の耐水性や耐光性、耐オゾン性が良好なこと、(8)記録シートの白色度が高いこと、(9)記録シートの保存性が良好なこと(長期保存でも黄変着色を起こさないこと)、(10)変形しにくく寸法安定性が良好であること(カールが十分小さいこと)、(11)ハード走行性が良好であること等が挙げられる。
更に、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得る目的で用いられるフォト光沢紙の用途においては、上記諸特性に加えて、光沢性、表面平滑性、銀塩写真に類似した印画紙状の風合い等も要求される。
【0004】
上記した諸特性の向上を目的として、近年では色材受容層に多孔質構造を有するインクジェット記録用シートが開発され実用化されている。このようなインクジェット記録用シートは多孔質構造を有することで、インク受容性(速乾性)に優れ高い光沢を有する。
【0005】
例えば、特開平10−119423号や同10−217601号公報等では、微細な無機顔料粒子及び水溶性樹脂を含有し、高い空隙率を有する色材受容層が支持体上に設けられたインクジェット記録用シートが提案されている。
これらの記録用シート、特に、無機顔料微粒子としてシリカを用いた多孔質構造からなる色材受容層を設けたインクジェット記録用シートは、その構成によりインク吸収性に優れ、高解像度の画像を形成し得る高いインク受容性能を有し且つ高光沢を表すことができるとされている。しかしながら、高湿度環境下に保存された場合の印画画像のニジミ(経時ニジミ)の点では、未だ満足できるものではなかった。
【0006】
一方、高湿環境を含めた経時ニジミの問題を解決するために、以前から多くの技術が提案されている。例えば、特開昭57−36692号には塩基性媒染剤ラテックスを使用する旨が、特開昭53−49113号、同59−198186号および同59−198188号にはポリエチレンイミンを含浸させる方法が、特開昭58−24492号にはカチオン基を有する電解質ポリマーが、特開昭63−307979号にはカチオン性ポリマー媒染剤と親水性基を有する重合体を含有させる旨が、特開昭61−61887号、同61−72581号、同61−252189号および同62−174184号にはポリアリルアミンを媒染剤として使用することが、特開昭63−162275号にはカチオン性媒染剤とカチオン性界面活性剤を併用する旨が、特開平6−143798号にはカチオン変成ポリビニルコールが、特開平8−142496号には特定の2種類のカチオンポリマーを併用して耐水性を向上する旨が、それぞれ記載されている。
【0007】
更に、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−96987号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同61−277484号、同61−293886号、同62−19483号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−203896号、同63−274583号、同63−280681号、同63−260477号、特開平1−9776号、同1−24784号、同1−40371号、同3−133686号、同6−234268号、同7−125411号などには、カチオン性媒染剤を添加してインク染料の定着性を改善する技術が多数開示されている。
【0008】
ところが、先行技術に開示されているものの殆どは、シリカの如き表面がアニオン性である無機微粒子と混合した際に凝集物が形成されやすく、良好な塗布液が調製できなかったり、あるいは塗布膜面の光沢性が著しく低下する等の問題があった。これらを改良する目的で、特開平11−348409号公報において特定のカチオンポリマーと気相法シリカとを組合せる技術が提案されているが、高湿度下における経時ニジミの防止効果としては未だ完全ではなかった。
【0009】
他方、インクジェット記録用シートが高湿度の環境下に置かれた場合、空気中の水分を吸収して色材受容層側にカールし、記録材料としての製品品質を損なう問題があった。高湿度下で上記のようなカールの程度が強くなると、プリンタでのシート走行性が悪くなり、印画の際に給紙された記録用シートのカールが原因で搬送不良(ジャミング)を起こしたり、斜めに搬送されるといった問題があった。この場合には、所定の位置に印画することができなくなったり、最終的に形成される画像の品質を低下させることになる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、これまで高画質の画像を形成しうる技術が提案されてきているものの、高湿度環境下においても常湿環境の場合と同様に、形成された画像が経時で滲んでしまうことがなく、かつプリンタ内での記録用シートの走行安定性(搬送性)を維持して安定的な画像形成が行なえるインクジェット記録用シートを提供できるまでに至っていないのが現状といえる。
【0011】
本発明は、上記に鑑みて成されたものであり、特に高湿度環境下において、形成画像の経時ニジミを抑止して高画質の画像を形成、保持できると共に、シート状にしたときのカール度が小さく、プリンタ内での走行安定性に優れたインクジェット記録用シートを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、前記支持体が、原紙の両方の側がポリオレフィン樹脂層で被覆されてなるシート状支持体であって、前記シート状支持体の一方の側に、水溶性樹脂と、平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子と、下記一般式(I)で表され、かつ数平均分子量10万以下の水溶性のカチオンポリマーとを含む色材受容層を有し、かつ他方の側に、(A)水性溶媒中、反応性乳化剤の存在下で2以上の単量体を乳化重合してなる水分散体と、(B)カルボキシル基及びスルホン基を有する水溶性高分子化合物およびその金属塩、並びに親水性有機高分子水分散物からなる群より選択される少なくとも一種とを含む塗布液が塗布された、ことを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【0013】
【化2】
【0014】
前記一般式(I)中、R及びR4は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R1、R2、R3、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Y及びZは、それぞれ独立に2価の連結基を表し、X1 −及びX2 −はそれぞれ独立にアニオン基を表し、Qはエチレン性不飽和基を有する1種若しくは2種以上の単量体から誘導される繰り返し単位を表す。nは0〜100モル%を表し、pは0〜100モル%を表し、qは0〜60モル%を表し、n+p+q=100%を満たすが、n及びpが同時に0%となることはない。mは1〜6の整数を表す。
【0015】
<2> 前記塗布液がコロイド状シリカを更に含む前記<1>に記載のインクジェット記録用シートである。
<3> 前記2以上の単量体が、芳香族系エチレン性不飽和単量体、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、及び前記3つの単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体である前記<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用シートである。
<4> 前記親水性有機高分子水分散物が、親水性ブロック及び疎水性ブロックを有するブロック共重合体の乳化物からなる前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用シートである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録用シートにおいては、特に、水溶性樹脂と共に水溶性のカチオンポリマーにより分散された無機微粒子を含む色材受容層がシート状支持体の片側に設けられ、その逆側にはカール防止のための塗布液が塗布される。以下、本発明のインクジェット記録用シートについて詳細に説明する。
【0017】
(シート状支持体)
本発明のインクジェット記録用シートは、シート状の原紙の両方の側に両表面を覆うようにポリオレフィン樹脂が付与され、両面がポリオレフィン樹脂層で被覆されたシート状支持体で構成される。
【0018】
前記原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。前記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及び/又はLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0019】
パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理を行なって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0020】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0021】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0022】
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0023】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0024】
原紙の片側の表面およびその逆側の裏面は、ポリオレフィン樹脂によって被覆され、ポリオレフィン樹脂層が設けられる(該層を有するものを本発明において「シート状支持体」と称する。)。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなど適宜選択することができる。ポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEや、ポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0025】
特に、色材受容層を形成する一方の側を被覆するポリエチレン層(ポリオレフィン樹脂層)は、写真用印画紙で広く行なわれているように、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度及び色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、原紙の両側の層とも10〜50μmが好適である。
【0026】
更に、ポリオレフィン樹脂層(例えばポリエチレン層)上には、色材受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、PVAが好ましい。また、下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
【0027】
ポリオレフィン樹脂層を有するシート状支持体は、光沢紙として用いることも、また、ポリオレフィン(例えばポリエチレン)を原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行なって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
【0028】
前記シート状支持体の厚みには特に制限はないが、取扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
【0029】
また、シート状支持体の表面には、濡れ特性及び接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0030】
本発明のインクジェット記録用シートは、上記よりなるシート状支持体の、一方の側に色材受容層を少なくとも一層有すると共に、他方の側に後述の成分(A)及び(B)を含んでなる塗布液が塗布されて構成される。
【0031】
まず、シート状支持体の一方の側について詳述する。
シート状支持体(以下、単に「支持体」ということがある。)の一方の側には、上記のように、色材受容層がシート状支持体のポリオレフィン樹脂層上に設けられる。本発明に係る色材受容層は、水溶性樹脂と、無機微粒子と、以下に示す一般式(I)で表され、かつ数平均分子量10万以下の水溶性のカチオンポリマーとを少なくとも含んで構成される。好ましくは、更に媒染剤を含んで構成され、必要に応じて、架橋剤等の他の添加剤等を含んで構成することができる。
【0032】
−無機微粒子−
本発明に係る色材受容層は、平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子を、後述の一般式(I)で表されるカチオンポリマーによって分散された状態で含有する。インクジェット記録用シートの色材受容層は、無機微粒子を含有することにより多孔質構造が得られ、これによりインクの吸収性能を向上させ得る。ここで、この無機微粒子と共に特定のカチオンポリマーを存在させて上記多孔質構造を形成することによって、高湿度環境下に保持した場合であっても形成画像の経時ニジミを効果的に防止することができる。
【0033】
また更に、無機微粒子の色材受容層における固形分含有量を60質量%以上、より好ましくは65質量%を超える範囲とすることによって、更に良好な多孔質構造を形成することが可能となり、充分なインク吸収性を備えると同時に、吸収されたインクの経時ニジミを抑止したインクジェット記録用シートを得ることができる。ここで、無機微粒子の色材受容層における固形分含有量とは、色材受容層を構成する組成物中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
【0034】
前記無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミナ、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。これらの中でも、良好な多孔質構造を形成する観点より、シリカ微粒子、コロイダルシリカ又は擬ベーマイト、アルミナ微粒子が好ましい。
【0035】
前記無機微粒子は、一次粒子のまま用いても、あるいは二次粒子を形成した状態で使用してもよい。これら無機微粒子の平均一次粒径は30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。平均一次粒子径を30nm以下とすると、インク吸収特性を効果的に向上させ得ると共に、色材受容層表面の光沢性を高めることができる。特に、平均一次粒径が20nm以下のシリカ微粒子、平均一次粒径が20nm以下のアルミナ微粒子、あるいは平均細孔半径が2〜15nmの擬ベーマイトがより好ましい。
【0036】
シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。本発明に用いるシリカ微粒子としては、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
【0037】
気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を表すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2で多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
【0038】
気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散をおこなえば受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る点で重要である。
【0039】
前記気相法シリカの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3〜10nmが最も好ましい。気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下とすることで空隙率の大きい多孔質構造を形成でき、インク吸収特性を効果的に向上させ得ると共に、色材受容層表面の光沢性を高めることができる。
【0040】
また、シリカ微粒子は、前述の他の無機微粒子と併用してもよい。該他の無機微粒子と上記気相法シリカとを併用する場合、全無機微粒子中の気相法シリカの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0041】
本発明における無機微粒子としては、アルミナ微粒子、アルミナ水和物、これらの混合物又は複合物も好ましい。この内、アルミナ水和物は、インクを良く吸収し定着することなどから好ましく、特に、擬ベーマイト(Al2O3・nH2O)が好ましい。アルミナ水和物は、種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。
【0042】
擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1〜30nmが好ましく、2〜15nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3〜2.0cc/gが好ましく、0.5〜1.5cc/gがより好ましい。ここで、上記細孔半径及び細孔容積の測定は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製の商品名「オムニソープ369」)により測定できる。
また、アルミナ微粒子の中では気相法アルミナ微粒子が比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましい。
【0043】
上述の無機微粒子をインクジェット記録用シートに用いる場合は、例えば、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号等公報に開示された態様でも、好ましく用いることができる。
【0044】
また、前記無機微粒子の分散性を改善する目的で、該無機微粒子表面をシランカップリング剤で処理してもよい。該シランカップリング剤としては、カップリング処理を行なう部位の他に、有機官能基(例えば、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、クロロ基、アルキル基、フェニル基、エステル基等)を有するものが好ましい。
【0045】
−一般式(I)で表されるカチオンポリマー−
本発明に係る色材受容層は、前記無機微粒子と共に、下記一般式(I)で表され、かつ数平均分子量10万以下の水溶性のカチオンポリマーを含有する。このカチオンポリマーは、前記無機微粒子を分散する際の凝集防止剤(分散剤)として用いられ、無機微粒子を分散した状態で無機微粒子と共に含有される。これにより、分散性の良好な無機微粒子分散液を調製し得ると共に、アニオン性のインクに作用して高湿度下でのインクのニジミを効果的に防止することができる。このカチオンポリマーは、媒染剤としての機能をも有する。
【0046】
下記一般式(I)で表されるカチオンポリマーについて説明する。
【化3】
【0047】
前記一般式(I)において、R及びR4は、それぞれ独立に水素原子または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。R1、R2、R3、R5、R6及びR7は、それぞれ独立にアルキル基を表し、好ましくはメチル基またはエチル基である。このアルキル基はいずれも置換基を有していてもよい。
【0048】
Y及びZは、それぞれ独立に2価の連結基を表す。特に、Yは単結合、−CONH−または−COO−が好ましく、Zは単結合または−CON(R″)−が好ましい(R″は水素原子、または置換基を有していてもよいアルキル基を表す)。X1 −及びX2 −は、それぞれ独立にアニオン基(ハロゲンイオン、メチル硫酸イオン、pートルエンスルホン酸イオン等)を表す。
【0049】
Qは、エチレン性不飽和基を有する単量体から誘導される繰り返し単位を表す。Qで表される単量体の具体例としては、スチレン、ブタジエン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキルエチルメタクリレート、酢酸ビニル、ビニルエーテル、アクリルアミド、Nーメチルアクリルアミド、N−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、等が挙げられる。
また、Qは1種の単量体から誘導されるのみならず、2種以上の単量体の共重合、すなわち2種以上の単量体に由来して誘導される繰り返し単位であってもよい。
【0050】
一般式(I)中のnは、0〜100モル%を表し、好ましくは20〜80モル%であり、pは0〜100モル%を表し、好ましくは10〜60モル%であり、qは0〜60モル%を表し、好ましくは0〜40モル%である。n+p+q=100%であるが、nとpが同時に0%となることはない。また、mは1〜6の整数を表し、好ましくは2〜4である。
尚、前記一般式(I)を構成する3つの繰り返し単位は、ランダム、ブロック、交互、グラフトのいずれの形態の共重合体であってもよい。
【0051】
以下、前記一般式(I)で表されるカチオンポリマーの具体例(例示化合物K−1〜K−21)を示す。
【0052】
【化4】
【0053】
【化5】
【0054】
【化6】
【0055】
【化7】
【0056】
【化8】
【0057】
【化9】
【0058】
前記一般式(I)で表されるカチオンポリマーは、数平均分子量が10万以下であることが必要である。この数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められたポリスチレン値に換算した値である。数平均分子量が10万を超える場合には、カチオンポリマーの水溶液を表面がアニオン性である無機微粒子を含有する分散液に添加した際に凝集物の発生が激しく、また、その後に分散処理を施しても均一にしにくく、粗大粒子が多数存在して均一な分散液が得られ難い。このようなカチオンポリマーと無機微粒子とで構成される無機微粒子分散液を使用してインクジェット用光沢紙に適用した場合には、高い光沢性が得られなくなる。
【0059】
上記の中でも、好ましくは5万以下である。数平均分子量の下限としては、画像形成後の耐水性の点から、概ね2000以上であり、特に5000以上が好ましい。
【0060】
色材受容層における無機微粒子(s)とカチオンポリマー(p)との比率(s:p)は、無機微粒子の種類や粒径、あるいはカチオンポリマーの種類や平均分子量で適宜変更すればよく、概ね1:0.01〜1:1とすることが好ましい。
【0061】
前記一般式(I)で表されるカチオンポリマーは無機微粒子の分散剤(凝集防止剤)として用いられ、上記の無機微粒子は、該カチオンポリマーを含有する水溶液に無機微粒子を混合し、分散処理を行なって得られた分散液として用いることができる。
【0062】
上記のように分散処理を行うことにより無機微粒子の分散液が得られるが、この分散処理には、高速回転分散機、媒体攪拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、ロールミル分散機、高圧分散機など従来公知の各種分散機を使用することができる。形成されるダマ状微粒子の分散を効率的に行なうという点から、超音波分散機または高圧分散機が好ましい。
【0063】
この分散液を調製する際には、各種の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、ノニオン性またはカチオン性の各種の界面活性剤(アニオン性界面活性剤は凝集物を形成するために好ましくない)、消泡剤、ノニオン性の親水性ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、各種の糖類、ゼラチン、プルラン等)、ノニオン性またはカチオン性のラテックス分散液、水混和性有機溶媒(酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、nープロパノール、アセトンなど)、無機塩類、pH調整剤などが挙げられ、これらは必要に応じて適宜使用することができる。
【0064】
特に水混和性有機溶媒は、無機微粒子とカチオンポリマーを混合した際の微小なダマの形成が抑制される点で好ましい。水混和性有機溶媒は、分散液中に0.1〜20質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%使用される。
【0065】
無機微粒子の分散液を調製する際のpHは、無機微粒子の種類やカチオンポリマーの種類、各種の添加剤等により広範に変化し得るが、一般的にはpHが1〜8であり、特に2〜7が好ましい。また、上記の分散は2種以上を併用することも可能である。
【0066】
−水溶性樹脂−
水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
【0067】
以上の中でも、特にポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。該ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号等に記載されたものなどが挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11−165461号公報の段落「0011」〜「0014」に記載の化合物なども挙げられる。
【0068】
これら水溶性樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記水溶性樹脂の含有量としては、色材受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
【0069】
インクジェット記録用シートの色材受容層を主として構成する前記水溶性樹脂と前記無機微粒子とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系を使用してもよい。また、透明性を保持する観点からは、無機微粒子、特にシリカ微粒子と組合される水溶性樹脂の種類が重要となる。前記気相法シリカを用いる場合には、該水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、その中でも、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
【0070】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記シリカ微粒子の表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造の色材受容層が形成されると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質の色材受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0071】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、前記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。該他の水溶性樹脂と上記ポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0072】
<無機微粒子と水溶性樹脂との含有比>
無機微粒子(x)と水溶性樹脂(y)との質量含有比〔PB比(x/y)〕は、色材受容層の膜構造及び膜強度にも大きな影響を与える。即ち、質量含有比〔PB比〕が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなるが、密度や強度は低下する傾向にある。
【0073】
本発明に係る色材受容層は、上記質量含有比〔PB比(x/y)〕としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5〜10が好ましい。
【0074】
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、記録用シートに応力が加わることがあるので、色材受容層は十分な膜強度を有していることが必要である。またシート状に裁断加工する場合、色材受容層の割れや剥がれ等を防止する上でも、色材受容層には十分な膜強度を有していることが必要である。これらの場合を考慮すると、前記質量比(x/y)としては5以下がより好ましく、一方インクジェットプリンターで、高速インク吸収性を確保する観点からは、2以上であることがより好ましい。
【0075】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカ微粒子と水溶性樹脂とを、質量比(x/y)2〜5で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が30nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0076】
−媒染剤−
本発明においては、形成画像の耐経時ニジミ及び耐水性の更なる向上を図る目的で媒染剤を併用することができる。
媒染剤としては、カチオン性ポリマー(カチオン性媒染剤)等の有機媒染剤、及び水溶性金属化合物等の無機媒染剤が好ましく、該媒染剤を色材受容層内の少なくとも上層に存在させることにより、アニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用が働き該色材を安定化して、耐水性や耐経時ニジミを改善することができる。
【0077】
前記カチオン性媒染剤としては、カチオン性の官能基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
前記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染剤モノマー)の単独重合体や、該媒染剤モノマーと他の単量体(非媒染剤モノマー)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー又は水分散性ラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0078】
前記媒染剤モノマーとしては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド;
【0079】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート;
【0080】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、又はそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0081】
具体的な化合物としては、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド;
【0082】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
【0083】
また、アリルアミンやジアリルアミン、その誘導体、塩なども利用できる。このような化合物の例としてはアリルアミン、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硫酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルエチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルジメチルアンモニウム塩(該塩の対アニオンとしてはクロライド、酢酸イオン硫酸イオンなど)等が挙げられる。尚、これらのアリルアミン及びジアリルアミン誘導体はアミンの形態では重合性が劣るので塩の形で重合し、必要に応じて脱塩することが一般的な製法である。
また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの重合単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、及びこれを塩にしたものも利用できる。
【0084】
前記非媒染剤モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェット用インク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さい単量体をいう。
前記非媒染剤モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0085】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。前記非媒染剤モノマーも、一種単独で又は二種以上を組合せて使用できる。
【0086】
更に、前記ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びその誘導体、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カオチン樹脂、ジシアンアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カオチン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリンアンモニウムクロリド−SO2共重合物、ジアリルアミン塩−SO2共重合物等も好ましいものとして挙げることができる。
【0087】
前記ポリマー媒染剤として、具体的には、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号、特開平1−161236号、同10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号の各公報に記載のもの等が挙げられる。中でも、ポリアリルアミン及びその誘導体が特に好ましい。
【0088】
前記無機媒染剤としては、多価の水溶性金属塩や疎水性金属塩化合物が挙げられる。例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスロプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属の塩又は錯体が挙げられる。
【0089】
具体例としては、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミナ、アルミナミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミナ、亜硫酸アルミナ、チオ硫酸アルミナ、ポリ塩化アルミナ、硝酸アルミナ九水和物、塩化アルミナ六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、
【0090】
ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリン酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリン酸n氷和物、硝酸カリウム、酢酸マンガン、硝酸ゲルマニウム、硝酸ストロンチウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硝酸インジウム、硝酸ランタン、塩化ランタン酢酸ランタン、安息香酸ランタン、塩化セリウム、硫酸セリウム、オクチル酸セリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジミウム、硝酸サマリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、塩化ハフニウム、硝酸ビスマス等が挙げられる。
【0091】
前記無機媒染剤の中でも、アルミナ含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、元素周期律表第IIIB族シリーズの金属化合物(塩又は錯体)が好ましい。
【0092】
前記媒染剤の色材受容層における含有量としては、0.01〜5g/m2が好ましく、0.1〜3g/m2がより好ましい。
【0093】
−架橋剤−
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、無機微粒子及び水溶性樹脂等を含む塗布層が、更に該水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含み、該架橋剤と水溶性樹脂との架橋反応によって硬化された多孔質層である態様が好ましい。
【0094】
上記の水溶性樹脂、特にポリビニルアルコール系樹脂の架橋には、ホウ素化合物が好ましい。該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二硼酸塩(例えば、Mg2B2O5、Co2B2O5)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四硼酸塩(例えば、Na2B4O7・10H2O)、五硼酸塩(例えば、KB5O8・4H2O、Ca2B6O11・7H2O、CsB5O5)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
【0095】
上記水溶性樹脂の架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
【0096】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。
上記の架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0097】
架橋剤は、色材受容層形成用の塗布液(色材受容層塗布液)を塗布する際に色材受容層塗布液中および/または色材受容層の隣接層を形成するための塗布液中に添加してもよく、あるいは予め架橋剤を含む塗布液を塗布した支持体上に、前記色材受容層塗布液を塗布する、架橋剤非含有の色材受容層塗布液を塗布・乾燥後に架橋剤溶液をオーバーコートする、等して色材受容層に架橋剤を供給することができる。好ましくは、製造効率の点から、色材受容層塗布液またはこの隣接層形成用の塗布液中に架橋剤を添加し、色材受容層の形成と同時に架橋剤を供給するのが好ましい。
【0098】
例えば、以下のようにして好適に架橋剤を付与することができる。ここでは、ホウ素化合物を例に説明する。すなわち、色材受容層が色材受容層形成用の塗布液Aを塗布した塗布層を架橋硬化させた層である場合、架橋硬化は、(1)前記塗布液Aを塗布して塗布層を形成すると同時、(2)前記塗布液Aを塗布して形成される塗布層の乾燥塗中であって該塗布層が減率乾燥を示す前のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液(塗布液B)を前記塗布層に付与することにより行われる。架橋剤たるホウ素化合物は、塗布液A又は塗布液Bのいずれかに含有すればよく、塗布液A及び塗布液Bの両方に含有させておいてもよい。
【0099】
架橋剤の使用量は、層中の水溶性樹脂の質量に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0100】
−その他の成分−
本発明のインクジェット記録用シートは、必要に応じて更に各種の公知の添加剤、例えば、酸、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、モノマー、重合開始剤、重合禁止剤、滲み防止剤、防腐剤、粘度安定剤、消泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、マット剤、カール防止剤、耐水化剤等を含有することができる。
【0101】
本発明に係る色材受容層は酸を含有していてもよい。酸を添加して色材受容層の表面pHを3〜8、好ましくは5〜7.5に調整することによって、白地部の耐黄変性が向上させることができる。表面pHの測定は、日本紙パルプ技術協会(J.TAPPI)の定めた表面PHの測定の内A法(塗布法)により行うことができ、例えば、前記A法に相当する(株)共立理化学研究所製の紙面用PH測定セット「形式MPC」を使用して行うことができる。
【0102】
具体的な酸の例としては、ギ酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、サリチル酸、サリチル酸金属塩(Zn,Al,Ca,Mg等の塩)、メタンスルホン酸、イタコン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スチレンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、バルビツール酸、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、4−ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸、ナフタレンジスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、トルエンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸、スルファニル酸、スルファミン酸、α−レゾルシン酸、β−レゾルシン酸、γ−レゾルシン酸、没食子酸、フロログリシン、スルホサリチル酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、ビスフェノール酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、ボロン酸等が挙げられる。これらの酸の添加量は、色材受容層の表面PHが3〜8になるように決めればよい。
【0103】
上記の酸は、金属塩(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、セシウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、ジルコニウム、ランタン、イットリウム、マグネシウム、ストロンチウム、セリウムなどの塩)、又はアミン塩(例えばアンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、ポリアリルアミンなど)の形態で使用してもよい。
【0104】
本発明においては、色材受容層が紫外線吸剤、酸化防止剤、滲み防止剤などの保存性向上剤を含有することが好ましい。
これら併用できる紫外線吸剤、酸化防止剤、滲み防止剤としては、アルキル化フェノール性化合物(ヒンダードフェノール性化合物を含む)、アルキルチオメチルフェノール性化合物、ヒドロキノン化合物、アルキル化ヒドロキノン化合物、トコフェロール化合物、チオジフェニルエーテル化合物、2個以上のチオエーテル結合を有する化合物、ビスフェノール性化合物、O−,N−及びS−ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化合物、トリアジン化合物、ホスホネート化合物、アシルアミノフェノール性化合物、エステル化合物、アミド化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール化合物、2−ヒドロキシベンゾフェノン化合物、アクリレート、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物(TEMPO化合物を含む)、2−(2−ヒドロキシフェニル)1,3,5,−トリアジン化合物、金属不活性化剤、ホスフィット化合物、ホスホナイト化合物、ヒドロキシアミン化合物、ニトロン化合物、過酸化物スカベンジャー、ポリアミド安定剤、ポリエーテル化合物、塩基性補助安定剤、核剤、ベンゾフラノン化合物、インドリノン化合物、ホスフィン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、尿素化合物、ヒドラジト化合物、アミジン化合物、糖化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が挙げられる。
【0105】
これらの中でも、アルキル化フェノール性化合物、2個以上のチオエーテル結合を有する化合物、ビスフェノール性化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、ヒドラジド化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物の内少なくても一種を組合せて用いるのが好ましい。
【0106】
具体的な化合物例は、特願2002−13005号、特開平10−182621号、特開2001−260519号、特公平4−34953号、特公平4−34513号、特開平11−170686号、特公平4−34512号、EP1138509号、特開昭60−67190号、特開平7−276808号、特開2001−94829号、特開昭47−10537号、同58−111942号、同58−212844号、同59−19945号、同59−46646号、同59−109055号、同63−53544号、特公昭36−10466号、同42−26187号、同48−30492号、同48−31255号、同48−41572号、同48−54965号、同50−10726号、米国特許第2,719,086号、同3,707,375号、同3,754,919号、同4,220,711号、
【0107】
特公昭45−4699号、同54−5324号、ヨーロッパ公開特許第223739号、同309401号、同309402号、同310551号、同第310552号、同第459416号、ドイツ公開特許第3435443号、特開昭54−48535号、同60−107384号、同60−107383号、同60−125470号、同60−125471号、同60−125472号、同60−287485号、同60−287486号、同60−287487号、同60−287488号、同61−160287号、同61−185483号、同61−211079号、同62−146678号、同62−146680号、同62−146679号、同62−282885号、同62−262047号、同63−051174号、同63−89877号、同63−88380号、同66−88381号、同63−113536号、
【0108】
同63−163351号、同63−203372号、同63−224989号、同63−251282号、同63−267594号、同63−182484号、特開平1−239282号、特開平2−262654号、同2−71262号、同3−121449号、同4−291685号、同4−291684号、同5−61166号、同5−119449号、同5−188687号、同5−188686号、同5−110490号、同5−1108437号、同5−170361号、特公昭48−43295号、同48−33212号、米国特許第4814262号、同第4980275号、等の各公報に記載のものが挙げられる。
【0109】
その他の成分は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。その他の成分は、水溶性化、分散化、ポリマー分散、エマルション化、油滴化して添加してもよく、マイクロカプセル中に内包することもできる。その他の成分を添加する場合の添加量としては、0.01〜10g/m2が好ましい。
【0110】
本発明において、色材受容層用塗布液は界面活性剤を含有することができる。該界面活性剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、フッ素系、シリコン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
【0111】
前記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリーコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセロールモノオレート等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリン等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アセチレングリコール類(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、及び該ジオールのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。該ノニオン系界面活性剤は、第1の塗布液及び第2の塗布液において使用することができる。また、前記ノニオン系界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0112】
前記両性界面活性剤としては、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型、アンモニウム硫酸エステルベタイン型、イミダゾリウムベタイン型等が挙げられ、例えば、米国特許第3,843,368号明細書、特開昭59−49535号公報、同63−236546号公報、特開平5−303205号公報、同8−262742号公報、同10−282619号公報等に記載されているものを好適に使用できる。該両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤が好ましく、該アミノ酸型両性界面活性剤としては、特開平5−303205号公報に記載されているように、例えば、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸、ヒスチジン酸等)から誘導体化されたものであり、長鎖のアシル基を導入したN−アミノアシル酸及びその塩が挙げられる。前記両性界面活性剤は1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
前記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩(例えばステアリン酸ソーダ、オレイン酸カリ)、アルキル硫酸エステル塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン)、スルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルスルホコハク酸塩(例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
前記カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩などが挙げられる。
【0114】
前記フッ素系界面活性剤としては、電解フッ素化、テロメリゼーション、オリゴメリゼーションなどの方法を用いてパーフルオロアルキル基を持つ中間体を経て誘導される化合物が挙げられる。例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0115】
前記シリコーン系界面活性剤としては、有機基で変性したシリコーンオイルが好ましく、シロキサン構造の側鎖を有機基で変性した構造、両末端を変性した構造、片末端を変性した構造をとり得る。有機基変性として、アミノ変性、ポリエーテル変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、アルキル変性、アラルキル変性、フェノール変性、フッ素変性等が挙げられる。
【0116】
前記他の界面活性剤の色材受容層用塗布液における含有量としては、0.001〜2.0%が好ましく、0.01〜1.0%がより好ましい。また、色材受容層用塗布液として2液以上を用いて塗布を行なう場合には、それぞれの塗布液に界面活性剤を添加するのが好ましい。
【0117】
本発明に係る色材受容層は、ひび割れ防止、カール防止用に高沸点有機溶剤を含有するのが好ましい。前記高沸点有機溶剤は常圧で沸点が150℃以上の有機化合物で、水溶性又は疎水性の化合物である。これらは、室温で液体でも固体でもよく、低分子でも高分子でもよい。
具体的には、芳香族カルボン酸エステル類(例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジフェニル、安息香酸フェニルなど)、脂肪族カルボン酸エステル類(例えばアジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、ステアリン酸メチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、アセチルクエン酸トリエチルなど)、リン酸エステル類(例えばリン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなど)、エポキシ類(例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸メチルなど)、アルコール類(例えば、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコールなど)、植物油(例えば大豆油、ヒマワリ油など)高級脂肪族カルボン酸(例えばリノール酸、オレイン酸など)等が挙げられる。
【0118】
次に、シート状支持体の他方の側について詳述する。
シート状支持体の色材受容層を有しない他方の側には、上記のように後述の成分(A)及び(B)を含んでなる塗布液が塗布される。塗布により裏面塗布層が形成され(必ずしも層形成されなくてもよい。)、該裏面塗布層は、少なくとも、(A)水性溶媒中、反応性乳化剤の存在下で2以上の単量体を乳化重合した水系分散体(以下、「成分(A)」ともいう。)と、(B)カルボキシル基又はスルホン基を有する水溶性高分子化合物およびその金属塩、並びに親水性有機高分子水分散物からなる群より選択される少なくとも一種(以下、「成分(B)」ともいう。)とを含有する。
【0119】
シート状支持体の色材受容層が設けられていない他方の側に、上記の塗布液を塗布すること、裏面塗布層を塗設することによって、特に耐水性、耐溶剤性を向上させることができ、高湿度環境下におけるカール(色材受容層側へのカール)を効果的に防止することができる。高湿度下でのカールが抑止されると、インクジェットプリンタでのシート走行性を安定化することができ、印字時の給紙の際にカールが原因で搬送不良(ジャミング)を起こしたり、斜めに搬送されるのを回避することができる。その結果、記録材料としての製品品質を損なわず、所定の位置に高品質の画像を安定的に形成することができる。また、帯電防止性にも優れる。
【0120】
(水系分散体)
水系分散体(成分(A))は、水性溶媒中、反応性乳化剤の存在下で2以上の単量体を乳化重合することによってポリマー粒子を含む状態で得られるものである。
【0121】
上記の「2以上の単量体」としては、芳香族系エチレン性不飽和単量体、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、又はこれら3つの単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体などを挙げることができる。以下、上記の各単量体について説明する。
【0122】
−芳香族系エチレン性不飽和単量体−
芳香族系エチレン性不飽和単量体(以下、「単量体A」ということがある。)は、1分子中に芳香族環とラジカル重合可能なビニル基とを有する単量体であり、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物や、ベンジル(メタ)アクリレート、ベンゾイル(メタ)アクリレートなどの芳香族環を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、あるいは2種以上組合せて用いてもよい。
【0123】
水系分散体における単量体Aの使用量は、使用する全単量体中、40〜99質量部であることが好ましく、より好ましくは45〜80質量部であり、更に好ましくは50〜70質量部である。単量体Aの使用量を40〜99質量部とすることにより、印刷適性、耐溶剤性がともに良好となる。
【0124】
−エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体−
エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「単量体B」ということがある。)は、1分子中にエポキシ基とラジカル重合可能なビニル基とを有する単量体であり、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メタグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、エポキジシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エポキシ化ブタジエンなどのエポキシ誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、あるいは2種以上組合せて用いてもよい。
水系分散体における単量体Bの使用量は、使用する全単量体中、0.5〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜8質量部であり、更に好ましくは2〜7質量部である。単量体Bの使用量を0.5〜10質量部とすることにより、耐溶剤性、印刷適性がともに良好となる。
【0125】
−エチレン性不飽和カルボン酸単量体−
エチレン性不飽和カルボン酸単量体(以下、「単量体C」ということがある。)は、1分子中にカルボキシル基とラジカル重合可能なビニル基を有する単量体である。ここでは、水性溶媒を用いて乳化重合する際に単量体Cに変化するものであってもよい。
【0126】
上記の単量体C、あるいは水性溶媒を用いて乳化重合する際に単量体Cに変化するものの具体例としては、例えば、以下に示す(a)〜(e)が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、あるいは2種以上組合せて用いてもよい。
(a)アクリル酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類;
(b)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類;
(c)マレイン酸メチル、イタコン酸メチル、β−メタクリルオキシエチルアシットヘキサハイドロフタレートなどのハーフエステル類;
(d)上記(a)、(b)の不飽和カルボン酸類の無水物;
例えば、アクリル酸無水物、マレイン酸無水物などは、水性溶媒中で乳化重合する際にカルボン酸に変化するので、乳化重合の際の単量体として用いることができる。
(e)上記(a)〜(d)のカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩;
【0127】
単量体Cの水系分散体における使用量は、使用する全単量体中、0.5〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.7〜7質量部であり、更に好ましくは1〜5質量部である。単量体Cの使用量を0.5〜10質量部とすることにより、耐溶剤性、耐水性、印刷適性がともに良好となる。
【0128】
−他のエチレン性不飽和単量体−
他のエチレン性不飽和単量体(以下、「単量体D」ということがある。)は、前記単量体A〜単量体Cと共重合可能な単量体であればよく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ〉アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸i−ノニル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート・ブチルアミノエチルアクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアミノアルキルエステル;ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどのカルボニル基を分子中に有する化合物;
【0129】
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどの各種官能基を有する(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)つアクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリシルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリシルメタクリレートなどの光安定化の機能を有する(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシ−4−メタクリルオキシベンゾフェノン、2−[2’−ヒドロキシ−5メタクリロルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収性の機能を有する(メタ)アクリレート化合物;1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル;エチレン性不飽和ジカルボン酸の酸無水物、モノアルキルエステル、モノアミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、アクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、あるいは2種以上組合せて用いてもよい。
【0130】
単量体Dの水系分散体における使用量は、使用する全単量体のうち、前記単量体A〜Cを除く残りの部分を占める。
【0131】
本発明においては、特に、上記の芳香族系エチレン性不飽和単量体と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体と、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、これら3つの単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを乳化重合して得られる水分散体が好ましい。
【0132】
〈平均粒子径〉
本発明に係る水系分散体において、乳化重合により得られるポリマー粒子の平均粒子径は、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは30〜150nmであり、更に好ましくは50〜100nmである。前記ポリマー粒子の平均粒子径が200nm以下とすることにより、高い耐水性を得ることができる。平均粒子径の測定は、以下の方法によって行われる。粒子の水性分散体を蒸留水で適宜希釈し、動的光散乱法粒子径測定器を用いて平均粒子径を測定する。ポリマー粒子の平均粒子径は、ラジカル重合開始剤および乳化剤の種類および量を調整することにより制御することができる。
【0133】
〈ゲル分率〉
水系分散体に含まれるポリマー粒子のゲル分率は、70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上であり、更に好ましくは85%以上である。ゲル分率が70%以上とすることにより、耐溶剤性が良好となる。
ゲル分率とは、前述したように、ポリマー粒子中において高分子量の3次元網目構造を形成する部分の占める割合をいい、通常、前記ポリマー粒子中におけるトルエン等の有機溶媒への不溶分として測定される。
ゲル分率は、単量体A〜単量体Dを本発明の範囲内で使用したうえで、ラジカル重合開始剤の種類および量、重合温度、必要により使用される連鎖移動剤の種類および量によって調節することができる。
【0134】
〈ガラス転移温度〉
水系分散体に含まれるポリマー粒子のガラス転移温度は、0〜80℃であることが好ましく、5〜60℃であることがより好ましく、10〜40℃であることが更に好ましい。前記ガラス転移温度が0℃未満であると、耐溶剤性に劣る場合がある。一方、前記ガラス転移温度が80℃を超えると、クラックなど欠損の多い塗膜となる場合がある。
【0135】
−水系分散体の製造方法−
水系分散体は、2以上の単量体からなる混合物を、水性溶媒中、後述する反応性乳化剤の存在下で、重合開始剤を添加し、共重合させることにより得られる。かかる乳化重合においては、まず、重合開始剤を熱または還元性物質の存在下でラジカル分解して重合開始反応を起こさせることにより単量体の付加重合を行わせる。
【0136】
−重合開始剤−
水系分散体の製造に用いる重合開始剤としては、例えばクメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンセンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどの有機ハイドロパーオキサイド類からなる酸化剤と含糖ピロリン酸鉄処方、スルホキシレート処方、含糖ピロリン酸鉄処方/メルボキシレート処方の混合処方などの還元剤との組合せによるレドックス系の開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2−カルバモイルアザイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物などを挙げることができ、好ましくは前記過硫酸塩および前記レドックス系の開始剤である。
【0137】
重合開始剤の使用量は、全単量体100質量部あたり、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜2質量部であるのがより好ましい。これらの重合開始剤を用いて乳化重合する際には、反応系中に重合開始剤を一括添加するか、あるいは重合開始剤の一部を回分的添加、連続的添加、あるいはこの両者を組み合わせて添加する方法を用いることができる。
【0138】
−反応性乳化剤−
前述の通り、本発明における水系分散体は、2以上の単量体を反応性乳化剤の存在下にラジカル重合して得られる。ここで、反応性乳化剤とは、乳化重合可能な程度の乳化能を有し、かつ、ラジカル重合可能である乳化剤をいう。
本発明においては、反応性乳化剤を用いて乳化重合を行なうことにより、乳化剤の使用量を低減することができ、特に水系媒体中における遊離の乳化剤の量を低減することができるため、耐水性に優れた共重合体エマルジョンが得られる。
【0139】
前記反応性乳化剤としては、例えば、ラジカル反応性基としてエチレン性不飽和基、親水基としてポリオキシエチレン基,スルホン基,硫酸基、疎水基としてアルキル基を1分子中に有する乳化剤が挙げられる。具体例として、「ラテムルS−180A」[花王(株)製]、「エレミノールJS−2」[三洋化成(株)製]、「アクアロンHS−10」「アクアロンBC−10」[第一工業製薬(株)製]、「アデカリアソープSE−10N」[旭電化工業(株)製]などのアニオン性反応性乳化剤;「アクアロンRS−20」[第一工業製薬(株)製]、「アデカリナソープNE−20」[旭電化工業(株)製]などの非イオン性反応性乳化剤を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、あるいは2種以上組合せて用いてもよい。
【0140】
反応性乳化剤の使用量としては、後述する粒子径によるが、全単量体100質量部に対し、0.5〜5質量部であるのが好ましく、0.5〜3質量部であるのがより好ましい。0.5〜5質量部とすることにより、重合反応時の安定性を保持することができ、乳化が十分で、泡立ちも適当である。
また、乳化剤として、上記反応性乳化剤の他に、陰イオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、陽イオン性乳化剤、両性イオン乳化剤、水溶性ポリマーなどの非反応性乳化剤を併用してもよい。
【0141】
陰イオン性乳化剤としては、例えば高級アルコール硫酸エステルのアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エステル塩などが挙げられる。
【0142】
非イオン性乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、糖鎖を親水基とするアルキルエーテルなどを挙げることができる。
【0143】
陽イオン性乳化剤としては、アルキルピリジニルクロライド、アルキルアンモニウムクロライドなどを挙げることができる。
【0144】
両性イオン乳化剤としては、ラウリルベタインなど.を挙げることができる。水溶性ポリマーとしては、芳香族系単量体とカルボキシル基を含む単量体とを共重合させて得られるポリカルボン酸系重合体のアルカリ中和物や、ポリビニルアルコール、酵素分解澱粉などを挙げることができる。
【0145】
これらの非反応性乳化剤の使用量は、全単量体100質量部あたり、通常5質量部以下であることが好ましく、水溶性ポリマーを使用する場合には50質量部以下であることが好ましい。
また、これらの乳化剤は、重合系にそれぞれ一括添加、回分的添加、連続的添加あるいはこの両者を組み合わせて添加されるのが好ましい。
【0146】
水系分散体の重合においては、上記の乳化剤および重合開始剤と共に、必要に応じて、連鎖移動剤、電解質、キレート剤、pH調整剤などを併用してもよい。連鎖移動剤としては、ハロゲン化炭化水素(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ブロモホルム等)、メルカプタン類(例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等)、キサントゲン類(例えば、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等)、テルペン類(例えば、ジペンテン、ターピノレン等)、1,1−ジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマー[2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(I)、2,4−ジフェニル−4−メチル−ペンテン(II)、及び1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダン(III)の少なくとも1種からなり、好ましくは(I)/((II)+(III))〔質量比〕=40〜100/0〜60であるもの]、不飽和環状炭化水素化合物(例えば、9,10−ジヒドロアントラセン、1,4−ジヒドロナフタレン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン)、不飽和ヘテロ環状化合物(例えば、キサンテン、2,5−ジヒドロフラン)等を挙げることができる。連鎖移動剤の使用量としては、全単量体100質量部あたり、0〜5質量部程度であることが好ましい。
【0147】
pH調整剤としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸水素二ナトリウムなどが挙げられる。pH調整剤の使用量はそれぞれ、全単量体100質量部あたり0〜2質量部であるのが好ましい。
【0148】
次の反応は重合法の一例である。すなわち、単量体混合物100質量部と、水100〜500質量部と、重合開始剤0.05〜5質量部と、乳化剤0.01〜5質量部と、連鎖移動剤、電解質およびpH調整剤の所定量とよりなる水性の反応系を、5〜100℃、好ましくは50〜90℃の温度条件下、0.1〜10時間にわたり反応させる。
【0149】
その際の重合方法としては、全単量体を一括添加する方法、少なくとも一部の単量体を分割または連続して添加する方法、少なくとも一部の単量体のプレエマルジョンを分割または連続して添加する方法、またはこれらの方式を段階的に組み合わせた方法等を採用することができるが、特に、水溶性の低い単量体を使用する場合は、高圧ホモジナイサーや超音波分散機を用いて、予め単量体混合物の少なくとも一部、水、乳化剤等を強制乳化させてプレエマルジョンを調製してから、残りの単量体を一括添加、あるいは分割または連続して添加する方法等により重合することもできる。
【0150】
尚、本発明において、水系分散体の製造に用いられる水の使用量は、使用する全単量体の合計量100質量部に対し、通常、50〜1000質量部、好ましくは100〜500質量部である。50〜100質量部とすることにより、容易に乳化し、乳化後のエマルジョンの安定性を保持することができるとともに、生産性が向上する。また、重合転化率は99質量%以上であることが好ましい。
【0151】
以上のようにして水系分散体が合成される。尚、水系分散体が酸性である場合には、アルカリ性化合物で中和することにより生成物を安定化させることが好ましい。かかるアルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、ジメチルアミノエタノール、モルホリンなどのアミン類などを挙げることができる。
【0152】
−その他の添加剤−
以上の水系分散体には、目的に応じて、光安定化剤、紫外線吸収剤、有機溶剤、架橋剤、水溶性高分子(例えば水溶性ポリエステル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、澱粉)、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、艶消し剤、顔料、防カビ剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0153】
水系分散体に添加含有される光安定化剤、紫外線吸収剤としては特に限定されるものではなく、塗料、合成ゴム、合成樹脂、合成繊維用の光安定化剤・紫外線吸収剤として公知のものを使用することができる。具体的には、有機ニッケル、ヒンダートアミン系などの光安定化剤;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの無機系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾールなどの有機系紫外線吸収剤などを挙げることができる。これらのうち、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ビペリジル)セバケートなどのヒンダードアミン系の光安定化剤;酸化セリウム、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤が好ましい。光安定化剤、紫外線吸収剤の添加量としては、特定の重合体(固形分)100質量部に対して、通常0.01〜10質量部であり、好ましくは0.05〜5質量部である。光安定化剤、紫外線吸収剤を含有させることによって、形成された塗布層に良好な耐侯性を発現させることができる。
【0154】
水系分散体に添加含有される有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコールなどのアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、メチルセロゾルブアセテート、エチルセロゾルブアセテート、トリブトキシメチルフォスフェートなどを挙げられる。
有機溶剤の添加量としては、水系分散体固形分100質量部に対して、通常0.1〜100質量部である。有機溶剤を含有させることにより、得られる水系分散体の濡れ性および造膜性を向上させることができる。
【0155】
水系分散体に添加含有される架橋剤としては、特に制限されるものではなく、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂よりなる架橋剤、ヒドラジド化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アジリジン化合物などの有機系架橋剤、金属化合物などの無機系架橋剤など、公知の架橋剤を使用することができる。
【0156】
架橋剤として用いられるアミノ樹脂の具体例としては、ヘキサメトキジメチル化メラミン樹脂などの完全アルキル型メチル化メラミン樹脂、部分アルキル化メチル化メラミン樹脂、ベンゾグアテミン樹脂、アルキルエーテル化尿素樹脂などを挙げることができる。
架橋剤として用いられるフェノール樹脂の具体例としては、ジメチロール樹脂、ポリメチロールフェノール樹脂、フェノールホルムアミド樹脂、メチロールフェノールホルムアミド樹脂、ジメチロールフェノールホルムアミド樹脂などを挙げることができる。
【0157】
架橋剤として用いられるエポキシ樹脂の具体例としては、エチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ヘキサンジオール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、グリセリン・ジグリシジルエーテル、グリセリン・ポリグリシジルエーテル、ジグリセリン・ポリグリシジルエーテル、ソルビトール・ポリグリシジルエーテル、水添ピスフェノールA・ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・ジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのポリグリシジルエーテル、P−オキシ安息香酸のグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸・ジグリシジルエーテル、ヒダントイン環含有エポキシ樹脂、エポキシ基を側鎖に有するビニル系重合体などを挙げることができる。
【0158】
架橋剤として用いられるヒドラジド化合物は、1分子中に2個以上のヒドラジノ基を有する化合物であり、重合体中にカルボニル基が導入されている場合に架橋効果を示す化合物である。かかるヒドラジド化合物の具体例としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどを挙げることができる。
【0159】
架橋剤として用いられるイソシアネート化合物およびブロックイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートの水素添加物、トリレンジイソシアネートのアダクト、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートの水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートの水素添加物、イソホロンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、イソシアネート基をブロック化したブロック化ポリイソシアネート、並びにこれらの任意の混合物などを挙げることができる。
【0160】
架橋剤として用いられるアジリジン化合物としては、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス〔1−(2−メチル)アジリジニル〕ホスフィンオキシド、ヘキサ〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕トリホスファトリアジンなどを挙げることができる。
【0161】
架橋剤として用いられる金属化合物は、亜鉛、ジルコニウム、マグネシウム、銅、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、カドミウム、チタニウムなどの金属の酸化物または塩類を、炭酸、酢酸、ギ酸、グルタル酸、安息香酸、シュウ酸などの酸に溶解させるか、あるいはこれらの酸と多価金属化合物の水溶液を、アンモニア、アミンなどにより、pH7〜11に調整することによって得られるものであり、更に金属イオンの形になったものを含めることができる。この多価金属化合物は、炭酸亜鉛アンモニウム、炭酸アンモニウムジルコネート、亜鉛、ジルコニウムの酸化物または塩である。上記アミンで錯体形成可能なものは、モルホリン、モノエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチルアミノエタノールなどである。そのほか、一般的な酢化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸などのコンプレクサン、グリシン、アラニンなども使用できる。
【0162】
上記の架橋剤によれば、0〜280℃の温度条件下に架橋(硬化)反応を進行させることができる。そして、上記架橋剤のうち、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ブロックイソシアネート化合物よりなるものは、100℃以下の温度条件下に架橋反応を進行させることができるので好ましい。架橋剤を含有させることにより、水系分散体により形成される塗膜に更に優れた耐溶剤性および耐水性を付与することができる。
【0163】
水分散体を構成する全単量体中において、特に、単量体Aを含有することで、印刷適性を高められると共に、ガラス転移温度(Tg)を高めることができ、更に単量体Bを含み架橋することにより、耐溶剤性、耐水性、耐アルカリ性、耐酸性を向上させることができる。その結果、水系分散体を含む塗布液をシート状支持体の他方の側に塗布することによって、特にインクジェット記録用シートの耐溶剤性、耐水性を高め、湿度環境に依らずカールの発生を効果的に防止することができる。また、裏面塗布層は印刷適性、耐酸性・耐アルカリ性も付与し得る。
【0164】
次に、以上の成分(A)と共に含有する、成分(B)(カルボキシル基又はスルホン基を有する水溶性高分子化合物およびその金属塩、並びに親水性有機高分子水分散物からなる群より選択される少なくとも一種)について説明する。
【0165】
(水溶性高分子化合物およびその金属塩)
カルボキシル基を有する水溶性高分子化合物としては、炭素数4以上のエチレン系不飽和モノマー、例えば、炭素数4以上のα−オレフィン、アルキルビニルエーテル、又はスチレン等の不飽和共重合性単量体と無水マレイン酸との共重合体が好ましく、その塩は、それらを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリとともに加水分解して得られる。
【0166】
炭素数4以上の不飽和共重合性単量体と無水マレイン酸との共重合体の分子量は2000〜150000のものが好ましく、これらの具体例としては、イソブチレン、1−ペンテン、ブチルビニルエーテル、又はスチレンと、無水マレイン酸との共重合体、並びに該共重合体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリと共に加水分解して得られる溶液のpHが5.0〜9.0である反応生成物などが挙げられる。これらのほか、スチレンとイタコン酸又はクロトン酸との共重合体、メチルアクリレートとシトラコン酸との共重合体など、並びにそれらの金属塩を挙げることができる。
【0167】
スルホン基を有する水溶性高分子化合物としては、分子量が5000〜1000000のものが好ましく、例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルベンジルスルホン酸など、並びにそれらのナトリウムやカリウムなどの塩などを挙げることができる。その金属塩としては、ポリアクリル酸ソーダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ等が挙げられ、親水性有機高分子水分散物としては、カルボキシル変性ポリエチレン又はその塩等が挙げられる。
【0168】
(親水性有機高分子水分散物)
親水性有機高分子水分散物は、親水性ブロック及び疎水性ブロックを有するブロック共重合体の乳化物とすることが好ましい。
親水性ブロック及び疎水性ブロックを有するブロック共重合体において、疎水性ブロックとしては、炭化水素系の単量体を主成分とする重合体もしくは共重合体のユニットが挙げられる。このユニットとしては、ジエン系単量体を主体とする(共)重合体、芳香族ビニル化合物やオレフィンなどのオレフィン系単量体を主体とする(共)重合体あるいはこれらを水素添加した(共)重合体のユニットが好ましいものとして挙げられる。
【0169】
また、前記ブロック共重合体において、親水性ブロックとしては、前記疎水性のユニットに親水基を含有させたものが挙げられる。かかる親水基としては、スルホン基、カルボン酸基(カルボキシル基)、リン酸基、アミン基、アミド基、水酸基、アルキルエステル基、酸無水物基等が挙げられる。これらの中では、スルホン基、カルボン酸基(カルボキシル基)、リン酸基、アミン基、アミド基、水酸基が好ましく、更に好ましくはスルホン基またはカルボン酸基(カルボキシル基)、特に好ましいのはスルホン基である。
例えば、ジエン系単量体を主体とする(共)重合体、芳香族ビニル化合物やオレフィンなどのオレフィン系単量体を主体とする(共)重合体、あるいはこれらを水素添加した(共)重合体のユニットなどの炭化水素系単量体を主成分とする(共)重合体のユニットに、スルホン基などの親水基を含有させたものが挙げられる。
【0170】
また、例えば炭化水素系単量体を主成分とする(共)重合体のユニットにスルホン基などの親水基を含有させる方法としては、これら(共)重合体のユニットをスルホン化するなどの方法で親水基を導入する方法、スルホン基などの親水基を含有する単量体を共重合する方法などが挙げられる。好ましいのはジエン系単量体を主体とする(共)重合体ユニットと、芳香族ビニル化合物やオレフィンなどのオレフィン系単量体を主体とする(共)重合体ユニットとを含有するブロック共重合体(以下、「ベースポリマー」ということがある。)あるいはこれらを水素添加したブロック共重合体に親水基を導入する方法である。
【0171】
前記ジエン系単量体を主体とする(共)重合体のユニットに使用されるジエン系単量体としては、炭素数4〜12のジエン系化合物が好ましく、更に好ましくは炭素数4〜8、特に好ましくは炭素数4〜6のジエン系化合物である。ジエン系化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ペンタジエン、イソプレン、1,2−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,2−ヘプタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、2,3−ヘプタジエン、2,5−ヘプタジエン、3,4−ヘプタジエン、3,5−ヘプタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどのほか、分岐した炭素数4〜7の各種脂肪族あるいは脂環族ジエン類が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。これらのうち特に好ましいのは、1,3−ブタジエン、イソプレンである。
【0172】
また、オレフィン系単量体を主体とする(共)重合体ユニットは、芳香族ビニル化合物やオレフィンなどのオレフィン系単量体を主体とする(共)重合体ユニットである。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。また、オレフィンとしては、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。これらモノマーは1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。これらのうちで好ましいのは、芳香族ビニル化合物であり、特に好ましくはスチレンである。
【0173】
また、前記ジエン系単量体を主体とする(共)重合体、芳香族ビニル化合物やオレフィンなどのオレフィン系単量体を主体とする(共)重合体あるいはこれらを水素添加した(共)重合体のユニットには、前記単量体以外に、他の単量体を併用することもできる。他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノあるいはジカルボン酸またはジカルボン酸の無水物、(メタ)アクリロニトリルなどのビニルシアン化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルメチルエチルケトン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和化合物が挙げられる。これら他の単量体は、1種単独でまたは2種以上を併用することもできる。
【0174】
ジエン系単量体を主体とする(共)重合体ユニットには、他の単量体として前記芳香族ビニル化合物やオレフィンを劣位量共重合してもよい。また、芳香族ビニル化合物を主体とする(共)重合体ユニットには、前記ジエン系単量体やオレフィンを劣位量共重合してもよい。また、オレフィンを主体とする(共)重合体ユニットには、他の単量体として前記ジエン系単量体や芳香族ビニル化合物を劣位量共重合してもよい。これら他の単量体を併用する場合には、その単量体の使用量は、各(共)重合体ユニット中、通常60%以下であり、好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0175】
ブロック共重合体(ベースポリマー)の製造、すなわち上記のジエン系単量体を主体とする(共)重合体ユニットと、芳香族ビニル化合物やオレフィンなどのオレフィン系単量体を主体とする(共)重合体ユニットとを含有するブロック共重合体は、それぞれの単量体を開始剤を用い、必要に応じて溶剤を用いて共重合することにより製造することができる。かかる開始剤としては、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤、あるいはn−ブチルリチウム、ナトリウムナフタレン、金属ナトリウムなどのアニオン重合開始剤が挙げられる。また、重合温度は、通常、−100〜150℃、好ましくは0〜130℃である。重合方式としては、ブロック共重合体を得るという意味から、特に、アニオン重合が好ましく用いられる。
【0176】
また、前記ブロック共重合体について、ジエン系単量体に基づく残存二重結合の一部あるいは全部を水素添加(水添)して使用することもできる。この場合、公知の水添触媒が使用可能で、例えば、特開平5―222115号公報に記載されているような触媒、方法が挙げられる。ベースポリマーである前記ブロック共重合体を水添後、後述する方法で親水基を導入することもできるが、該共重合体に親水基導入したのち、水添してもよい。
【0177】
本発明において好適なベースポリマーは、ジエン系単量体を含有するポリマーユニットAとオレフィン系単量体を含有するポリマーユニットBとを含有するブロック共重合体である。そのブロック共重合体の好ましい構造としては、AB型あるいはA(BA)n型あるいはB(AB)n型あるいは(AB)n型(但し、nは好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2、特に好ましくは1)である。
【0178】
これらのうちで好ましいのは、AB型、ABA型、およびBAB型のブロック共重合体である。具体的に好ましいベースポリマーとしては、例えば、イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体、イソプレン−スチレン−イソプレン三元ブロック共重合体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体、ブタジエン−スチレン−ブタジエン三元ブロック共重合体およびこれらブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。また、ジエンモノマ−ユニットのブロック鎖中に、前記芳香族モノマーあるいは他のモノマーが一部共重合されていてもよく、また、芳香族モノマーユニットのブロック鎖中に前記ジエンモノマーあるいは他のモノマーが一部共重合されていてもよい。
【0179】
これらベースポリマーあるいはその水添物のポリスチレン換算の質量平均分子量(以下、「Mw」と記す。)は、好ましくは1,000〜1,000,000、更に好ましくは2,000〜500,000、特に好ましくは5,000〜200,000である。Mwが、1,000未満であると、帯電防止性を有するポリマー乳化物の帯電防止性が経時的に低下する場合があり、1,000,000を超えると、極性基を導入する際にゲル化する等の問題が生じる場合がある。
【0180】
ブロック共重合体において、ジエン系単量体を含有するポリマーユニットAとオレフィン系単量体を含有するポリマーユニットBの割合A/Bは、水素添加してないブロック共重合体の場合は、好ましくは1〜80/99〜20であり、更に好ましくは2〜70/98〜30、特に好ましくは5〜50/95〜50である。また、水素添加したブロック共重合体の場合は、好ましくは20〜99/80〜1であり、更に好ましくは30〜98/70〜2、特に好ましくは50〜95/50〜5である。
【0181】
各ポリマーユニットAおよびBの重合度は、水素添加してないブロック共重合体の場合は、好ましくはAが10以上、Bが20以上であり、更に好ましくはAが50以上、Bが100以上であり、特に好ましくはAが100以上、Bが200以上である。また、水素添加したブロック共重合体の場合は、好ましくはAが20以上、Bが10以上であり、更に好ましくはAが100以上、Bが50以上であり、特に好ましくはAが200以上、Bが100以上である。
【0182】
親水基を有するブロック共重合体は、前記ブロック共重合体からなるベースポリマーに親水基を含有する単量体(モノマー)を共重合する方法や、親水基の付加などの方法により含有させることにより製造することができる。親水基の付加などの方法により含有させる方法としては、公知の方法が使用できる。例えばスルホン基を導入する場合、例えば日本科学会編集、新実験講座(14巻 III、1773頁)、あるいは特開平2−227403号公報などに記載された方法でスルホン化することにより製造することができる。
【0183】
すなわち、ブロック共重合体をスルホン化することにより親水基を含有するブロック共重合体(親水基含有ブロック共重合体)を製造する場合、前記ベースポリマーを、該ポリマー中のジエン系単量体に基づく二重結合部分あるいは芳香族部分のいずれか一方を、スルホン化剤を用いて、優先的にスルホン化することより製造することができる。スルホン化する場合は次の方法が好ましい。
(1)水素添加していないベースポリマーあるいはジエンユニットが部分的に水素添加されたベースポリマーを使用する場合には、ジエンユニットを優先的にスルホン化することが好ましく、一方、(2)ジエンユニットが水素添加されたベースポリマーでは、芳香族ユニットを優先的にスルホン化することが好ましい。前記(1)のように、ジエンユニットを優先的にスルホン化する場合には、スルホン化剤としては、無水硫酸と電子供与性化合物との錯体あるいは亜硫酸水素塩(Na塩、K塩、Li塩など)などを使用することが好ましい。また、前記(2)のように、芳香族ユニットを優先的にスルホン化するためには、スルホン化剤として、前記錯体の他、無水硫酸、クロルスルホン酸、発煙硫酸、濃硫酸、アセチル硫酸などを使用することが好ましい。
【0184】
ここで、電子供与性化合物としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル類;ピリジン、ピペラジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン類;ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィドなどのスルフィド類;アセトニトリル、エチルニトリル、プロピルニトリルなどのニトリル化合物などが挙げられ、このうちでもN,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサンが好ましい。
【0185】
水素添加していないベースポリマーあるいは部分的に水素添加されたベースポリマーを使用する場合には、スルホン化剤の量は、ベースポリマー中のジエンユニット1モルに対して、0.5モル以上1.2モル以下、好ましくは、0.8モル以上1.1モル以下である。該量が、0.5モル未満であると、十分な親水性が得られないことがあり、1.2モルを超えると、未反応スルホン化剤が不純物として残ることがある。また、水素添加したベースポリマーを使用する場合には、スルホン化剤の量は、通常ベースポリマー中の芳香族ユニット1モルに対して、0.5モル以上1.2モル以下、好ましくは、0.8モル以上1.1モル以下である。このときの量が、0.5モル未満であると、十分な親水性が得られないことがあり、1.2モルを超えると、未反応スルホン化剤が不純物として残ることがある。
【0186】
このスルホン化の際には、無水硫酸、硫酸などのスルホン化剤に不活性な溶媒を使用することもでき、この溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;液体二酸化イオウ、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤、水などが挙げられる。これらの溶媒は、適宜、2種以上混合して使用することができる。
【0187】
スルホン化の反応温度としては、通常−70〜200℃であり、好ましくは−30〜50℃である。反応温度が、−70℃未満であると、スルホン化反応が遅くなり経済的でないことがあり、200℃を超えると、副反応を起こし、生成物が黒色化あるいは不溶化することがある。
【0188】
本発明に使用されるジエン系ブロック共重合体のスルホン化物は、このスルホン化生成物に水または塩基性化合物を作用させたものが好ましい。この塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩;メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、アミルリチウム、プロピルナトリウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムブロマイド、プロピルマグネシウムアイオダイド、ジエチルマグネシウム、ジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機金属化合物;アンモニア水、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、アニリン、ピペラジンなどのアミン類;ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、亜鉛などの金属化合物を挙げることができる。これらの塩基性化合物は、1種単独で使用することも、また2種以上を併用することもできる。これらの塩基性化合物の中では、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水が好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0189】
塩基性化合物の使用量は、スルホン化剤1モルに対して、好ましくは1.5モル以下、更に好ましくは1.2モル以下である。使用量が1.5モルを超えると、未反応アルカリが多く、製品の純度が低下することがある。
【0190】
この反応の際には、前記塩基性化合物を水溶液の形で使用することもでき、あるいは塩基性化合物に不活性な有機溶媒に溶解して使用することもできる。該有機溶媒としては、前記各種の有機溶媒のほか、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類などが挙げられる。これらの溶媒は、適宜、2種以上混合して使用することができる。
【0191】
塩基性化合物を水溶液または有機溶媒溶液として使用する場合、塩基性化合物の濃度は、通常1〜70質量%であり、好ましくは10〜50質量%程度である。また、この反応温度は、通常−30〜150℃であり、好ましくは0〜120℃、更に好ましくは+50〜100℃で行われ、また、常圧、減圧あるいは加圧下のいずれでも実施することができる。更に、反応時間は、通常0.1〜24時間であり、好ましくは0.5〜5時間である。また、スルホン基以外の親水基を導入する場合は、例えばカルボキシル化、リン酸エステル化、アミン化、アミド化、ヒドロキシル化等の方法を適宜行うことにより製造することができる。
【0192】
また、親水基を含有する単量体を共重合する場合は、例えばスルホン基を含有する単量体や、カルボン酸基(カルボキシル基)、アミノ基、アミド基、リン酸基や水酸基などを含有する単量体を適宜共重合することにより製造することができる。スルホン基を有する単量体としては、前記ジエン系単量体またはオレフィン系単量体にスルホン酸(塩)基が付加したものが好ましい例として挙げられる。これらの具体例としては、スルホン酸(塩)基含有ブタジエン、スルホン酸(塩)基含有イソプレン、スルホン酸(塩)基含有スチレン、スルホン酸(塩)基含有エチレン、スルホン酸(塩)基含有プロピレンなどが挙げられる。これらのうち好ましいのは、スルホン酸(塩)基含有イソプレン、スルホン酸(塩)基含有スチレンである。また、スルホン基以外の親水基を有する単量体としては(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノあるいはジカルボン酸またはジカルボン酸の無水物、(メタ)アクリルホスフェート、アミノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどを共重合することによって製造することができる。
【0193】
以上のような親水基を導入したブロック共重合体の親水基の含有量としては、通常、親水基を含有したモノマー単位の数がブロック中の構成モノマー単位の50(モル)%以上が好ましく、更に好ましくは70%以上である。50%以上にすることにより、十分な帯電防止性が得られる。尚、疎水性ブロック中に親水基を含有していてもよいが、親水基を含有したモノマー単位の数が疎水性ブロック中の構成モノマー単位の10(モル)%以下が好ましく、更に好ましくは5(モル)%以下である。
【0194】
また、親水基を導入したブロック共重合体中の極性基含量は、好ましくは0.1〜5mmol/g、より好ましくは0.2〜3mmol/g、更に好ましくは0.3〜2.5mmol/g、特に好ましくは0.5〜2mmol/gである。0.1mmol/g未満であると、帯電防止性を発現し難くなることがあり、多すぎると耐水性が問題になることがある。
【0195】
本発明においては、通常、前記親水基含有ブロック共重合体を水などの媒体中に乳化分散した状態(親水基含有ブロック共重合体乳化物)で使用する。
乳化分散する方法としては、特に制限はないが、好ましくは親水基含有ブロック共重合体の有機溶剤溶液を、水と混合し、乳化させた後、水を残したまま有機溶剤を除去することにより行うことができる。乳化する工程(乳化工程)としては一般的な方法を採用でき、親水基含有ブロック共重合体の有機溶剤溶液中に攪拌しながら水を添加する方法、攪拌しながら親水基含有ブロック共重合体の有機溶剤溶液を水中に添加する方法、水と親水基含有ブロック共重合体の有機溶剤溶液を同時に添加して攪拌する方法などが可能である。
【0196】
上記の乳化工程の際に、予め親水基含有ブロック共重合体を有機溶剤溶液とするために使用される有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤などが使用される。これら溶剤は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0197】
乳化工程の際に用いられる前記有機溶剤の使用量としては、親水基含有ブロック共重合体100質量部に対し、10〜5,000質量部が好ましく、更に好ましくは20〜2,000質量部である。該使用量が、10質量部未満であると、安定な乳化物が得られ難いことがあり、5,000質量部を超えると、経済性が低下することがある。また、乳化工程の際に用いられる水の使用量としては、親水基含有ブロック共重合体100質量部に対し、30〜10,000質量部が好ましく、更に好ましくは100〜5,000質量部である。
【0198】
尚、乳化工程においては界面活性剤を併用することもできる。この界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテルなどの非イオン系界面活性剤、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、ロジン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ドデシルピリジジニウムクロライドなどのカチオン系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0199】
前記界面活性剤は、各種ポリマーあるいは親水基含有ブロック共重合体の有機溶剤溶液中に溶解若しくは分散させて使用してもよいし、水中に溶解若しくは分散させて使用することもできる。前記界面活性剤の使用量としては、各種ポリマーおよび親水基含有ブロック共重合体の総量100質量部に対して、通常10質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましく、更に好ましくは3質量部以下である。
【0200】
また、系内のpHを調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物、塩酸、硫酸などの無機酸を添加することもできる。また、少量であれば、水以外の有機溶剤などを併用することもできる。更に、消泡剤なども添加することができる。
【0201】
このようにして得られる親水基含有ブロック共重合体乳化物の粒径は、通常、1〜500nm、好ましくは1〜300nm 、更に好ましくは1〜150nmである。また、得られるポリマー乳化物の固形分濃度は、通常、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%であり、これは、使用条件、保存条件などにより、適宜選択することができる。
【0202】
また、親水基含有ブロック共重合体乳化物は、単独で用いてもよいが、他のポリマーと併用することも可能である。すなわち、親水基含有ブロック共重合体を他のポリマーと併用して、帯電防止性ポリマーとしたものを、繊維状物質や通常の重合体等の基材の帯電防止剤として使用することができる。親水基含有のブロック共重合体を他のポリマーと併用して、帯電防止性ポリマーを製造する方法としては、(a)親水基含有ブロック共重合体と他のポリマーの乳化物をブレンドする方法、(b)親水基含有ブロック共重合体乳化物を乳化剤として使用し、公知の各種ポリマーを乳化させる方法、が挙げられる。
【0203】
前記(a)の方法における他のポリマーの乳化物としては特に制限はなく、公知のポリマーの乳化物が使用できる。好ましい乳化物としては、ウレタンエマルジョン、アクリルエマルジョン、エポキシエマルジョン、ポリエステルエマルジョン、ポリスチレンエマルジョンなどが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、前記(b)親水基含有ブロック共重合体乳化物を乳化剤として使用し、公知の各種ポリマーを乳化させる方法としては、特に制限はなく、下記(1)又は(2)の2方法が好ましい。
【0204】
(1)親水基含有ブロック共重合体乳化物を乳化剤として使用し、各種ポリマーを乳化することにより、該ポリマーの乳化物を得る方法(ポリマーの再乳化方法)。
(2)親水基含有ブロック共重合体乳化物、水および場合により溶剤の存在下で公知のモノマーを乳化させた後、ラジカル開始剤等によって該モノマーを重合するなど、公知の乳化重合法などによりポリマーの乳化物を得る方法(乳化重合方法)。
【0205】
前記(1)ポリマーの再乳化方法について説明する。親水基含有ブロック共重合体乳化物および後述する他の少なくとも1種の各種ポリマーの有機溶剤溶液を、水と混合し、乳化させた後、水を残したまま有機溶剤を除去することにより行うことができる。有機溶剤および乳化方法などは、前記親水基含有ブロック共重合体の乳化のところで述べたものが同様に使用できる。また、親水基含有ブロック共重合体乳化物と併用して帯電防止性ポリマー乳化物を得るのに使用される各種ポリマーとしては特に制限はなく、公知のポリマーが使用される。好ましいポリマーとしては、ウレタンポリマー、アクリルポリマー、エポキシポリマー、ポリエステル、ジエン系ポリマーあるいはその水添物、エチレンープロピレン系ポリマー、ポリスチレン、ポリオレフィンなどが挙げられ、これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0206】
次に、前記(2)の乳化重合方法について説明する。親水基含有ブロック共重合体乳化物の存在下に、水、開始剤およびモノマー、並びに場合により更に他の乳化剤および有機溶剤等を混合し、該モノマーの乳化重合を行なうことで帯電防止性ポリマーの乳化物を得ることができる。使用できるモノマーには特に制限はなく、前記のジエン系モノマー、芳香族モノマー、アクリルモノマー、他の単量体などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、前記開始剤としては、公知の開始剤を使用でき、好ましくはラジカル開始剤である。また、乳化剤としては、上述の界面活性剤のほか、公知の乳化剤が使用できる。
【0207】
前記帯電防止性のブロック共重合体中、親水性ブロックの含有割合は、固形分換算で、通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。50質量%を超えると帯電防止性ポリマーの乳化物の静置安定性が悪化する場合がある。
【0208】
本発明に係る成分(B)は帯電防止剤機能を有するが、他の帯電防止剤と併用してもよい。かかる他の帯電防止剤としては特に制限はないが、好ましいものとしては、ポリオキシエチレンもしくはポリオキシプロピレン骨格を有するノニオン系化合物、4級窒素構造を有するカチオン系化合物、その他スルホン基、カルボン酸基やリン酸基などのアニオン系官能基を有するアニオン系化合物などが挙げられる。また、親水基含有ブロック共重合体乳化物等には、必要に応じて潤滑剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を混ぜて使用することができる。
【0209】
また、本発明における裏面塗布層には、コロイド状シリカを含有させることが好ましい。該コロイド状シリカとしては、一般に市販されているシリカゾル懸濁液、例えば、ルドックスHS、ルドックスAS等(デュポン社)、及びスノーテックスO、スノーテックスC、スノーテックス20等(日産化学工業社)を挙げることができる。
【0210】
また、マット化剤として、コロイド状シリカ、無機若しくは有機の粉体又は水分散体を用いることもできる。該コロイド状シリカは平均粒径5〜100nmが好ましく、そのシリカ表面にはアルミナ等のコーティングが施されてもよい。また、コロイド状シリカのpHは2.5〜12のものが用いられる。また、無機若しくは有機の粉体は平均粒径0.2〜12μmのものを用いることができ、無機粉体の具体例としては、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。有機粉体の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリメタクリル酸等が挙げられ、それらに耐薬品性を付与したり、硬度を上げるために架橋基が導入されてもよく、粒子内に空隙を持つものを用いてもよい。
【0211】
(インクジェット記録用シートの作製)
本発明において、インクジェット記録用シートを構成する色材受容層および必要に応じて適宜設けられる下塗り層など各種層を、シート状支持体の一方の側に形成するには、公知の方法を適宜選択することができる。好ましい方法としては、支持体上に各層を構成する塗布液を塗布、乾燥する方法がある。この場合、2層以上を同時塗布によって形成することもでき、特に全ての親水性層を1回の塗布で行なう同時塗布が好ましい。また、シート状支持体の他方の側に上記の成分(A)及び(B)を含む塗布液(裏面塗布層用塗布液)を塗布するには、公知の塗布方法を適用することができる。
【0212】
形成される色材受容層の空隙容量としては、概ね20〜40ml/m2が好適であり、その空隙率としては概ね50〜80%が好適である。色材受容層が2層以上で構成される場合は、該2層の構成は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0213】
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、以下に示す方法によって形成することも好適である。
即ち、シート状支持体の表面に、前記一般式(I)で表されるカチオンポリマーで予め分散された無機微粒子と水溶性樹脂とを少なくとも含有する塗布液A(色材受容層用塗布液)を塗布して塗布層を形成し、更に前記塗布液A及び/又は下記塩基性溶液に架橋剤を添加し、かつ(i)前記塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、又は(ii)前記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前のいずれかのときに、pHが8以上の塩基性溶液を前記塗布層に付与し、前記塗布層を架橋硬化させる方法(Wet−on−Wet法)によって好適に形成することができる。ここで、前記水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤は、前記塗布液あるいは塩基性溶液の少なくとも一方又は両方に含有せしめることができる。このようにして架橋硬化させた色材受容層を設けることは、インク吸収性や膜のひび割れ防止などの観点から好ましい。
【0214】
媒染剤は、色材受容層表面からの媒染剤存在部分の厚みが受容層厚みに対し10〜60%であるように存在させる。例えば、▲1▼無機微粒子、水溶性樹脂等を含む塗布層を形成し、媒染剤含有溶液をその上に塗布する方法、▲2▼無機微粒子、水溶性樹脂等を含む塗布液と媒染剤含有溶液を重層塗布する方法など任意の方法で形成できる。また、媒染剤含有溶液中に無機微粒子、水溶性樹脂、架橋剤等が含有されていてもよい。
【0215】
前記のようにすると、媒染剤が色材受容層の所定の部分に多く存在するので、インクジェットの色材が充分に媒染され、色濃度、経時ニジミ、印画部光沢、印字後の文字や画像の耐水性、耐オゾン性が向上するので好ましい。媒染剤の一部は最初に支持体に設ける層に含有させてもよく、その場合は、後から付与する媒染剤は同じものでも異なっていてもよい。
【0216】
本発明において、一般式(I)で表されるカチオンポリマーで分散された無機微粒子と水溶性樹脂(例えばPVA)とを少なくとも含む色材受容層用塗布液(塗布液A)は、例えば、以下のようにして調製することができる。即ち、
気相法シリカとこの分散剤であるカチオンポリマーとを水中に添加して(例えば、水中のシリカ微粒子は10〜20質量%)、高速回転湿式コロイドミル(例えば、エム・テクニック(株)製の「クレアミックス」)を用いて、例えば10000rpm(好ましくは5000〜20000rpm)の高速回転の条件で例えば20分間(好ましくは10〜30分間)かけて分散させて水分散物とした後、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液(例えば、前記気相法シリカの1/3程度の質量のPVAとなるように)とを加え、前記と同じ回転条件で分散を行なうことにより調製することができる。塗布液に安定性を付与するためにアンモニア水等でpH=9.2程度に調節すること、又は分散剤を用いることが好ましい。得られた塗布液は均一なゾル状態であり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布し乾燥させることにより、三次元網目構造を有する多孔質性の色材受容層を形成することができる。
【0217】
水分散物を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的に行なうという点から、媒体撹拌型分散機、コロイドミル分散機又は高圧分散機が好ましい。
【0218】
また、各工程における溶媒として水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。この塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0219】
上記のように分散剤にはカオチンポリマーが用いられるが、この場合、塗布液Aは、無機微粒子とカオチンポリマーとを分散した水分散物に、ポリビニルアルコールを少なくとも含む水溶液や界面活性剤液を添加し、これを再分散して得ることもでき、この塗布液Aを支持体表面に塗布して塗布層を形成し、前記(i)又は(ii)のいずれかのときに、pHが8以上の塩基性溶液を前記塗布層に付与し、前記塗布層を架橋硬化させるようにしてもよい。この方法によると、光沢度及び印画濃度を向上させることができる。水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を、塗布液A及び塩基性溶液の少なくとも一方に含有するのが好ましい。
【0220】
また、前記無機微粒子とカオチンポリマー(分散剤)とを分散してなる水分散物を調製する場合、無機微粒子を含む水分散物を予め調製し、この水分散物を分散剤水溶液に添加するようにしてもよいし、分散剤水溶液を前記水分散物に添加するようにしてもよいし、無機微粒子とカオチンポリマー(分散剤)とを溶媒と共に同時に混合してもよい。また、他の無機微粒子(例えば、粉体の気相法シリカ等)を分散剤水溶液に添加するようにしてもよい。
無機微粒子とカオチンポリマー(分散剤)とを混合する場合、混合後の混合液を分散機を用いて細粒化することで平均粒子径50〜300nmの水分散物を得ることができる。ここでの分散機としては上記同様のものを使用できる。
【0221】
色材受容層用塗布液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法によって行うことができる。
【0222】
色材受容層用塗布液(塗布液A)の塗布と同時又は塗布した後に、該塗布層に塩基性溶液(塗布液B)を付与する場合、該塗布液Bは、塗布後の塗布層が減率乾燥を示すようになる前に付与してもよい。即ち、色材受容層用塗布液(塗布液A)の塗布後、この塗布層が恒率乾燥を示す間に塗布液Bを導入する。この塗布液Bには、媒染剤を含有せしめてもよい。
【0223】
ここで、前記「塗布層が減率乾燥を示すようになる前」とは、通常、色材受容層用塗布液の塗布直後から数分間の過程を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥」の現象を示す。この「恒率乾燥」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0224】
上記のように、塗布層は減率乾燥速度を示すようになるまで乾燥されるが、このときの乾燥は一般に50〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行われる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが、通常は上記範囲が適当である。
【0225】
前記塗布層が減率乾燥を示すようになる前に付与する方法としては、▲1▼塗布液Bを塗布層上に更に塗布する方法、▲2▼スプレー等の方法により噴霧する方法、▲3▼塗布液B中に、該塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
【0226】
前記方法▲1▼において、塗布液Bを塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法を利用することができる。特に、エクストリュージョンダイコーター、カーテンフローコーター、バーコーター等のように、既に形成されている第一塗布層にコーターが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
【0227】
塗布液Bの付与後は、一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥及び硬化がおこなわれる。中でも、40〜150℃で1〜20分間加熱することが好ましい。
【0228】
また、前記塩基性溶液(塗布液B)を、色材受容層塗布液(塗布液A)を塗布すると同時に付与する場合、塗布液A及び塗布液Bを、塗布液Aが支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることにより色材受容層を形成することができる。
【0229】
前記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗布方法により行なうことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することにより行なわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することにより行なわれる。
【0230】
前記同時塗布(重層塗布)を、例えば、エクストルージョンダイコーターにより行なった場合、同時に吐出される二種の塗布液は、エクストルージョンダイコーターの吐出口附近で、即ち、支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された二層の塗布液は、支持体に移る際、既に二液の界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコーターの吐出口付近では、吐出される二液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。従って、上記のように同時塗布する際は、塗布液A及び塗布液Bの塗布と共に、バリアー層液(中間層液)を上記二液間に介在させて同時三重層塗布することが好ましい。
【0231】
前記バリアー層液は、特に制限なく選択できる。例えば、水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。前記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、セルロース系樹脂(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス等)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。尚、バリアー層液には、前記媒染剤を含有させることもできる。
【0232】
支持体上に色材受容層を形成した後、該色材受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性及び塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定して行なう必要がある。
【0233】
カレンダー処理を行なう場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
【0234】
前記色材受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mm2で、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。この点を考慮すると、インクジェット記録の場合には、色材受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
【0235】
また、色材受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。前記空隙率及び細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター((株)島津製作所製の商品名「ボアサイザー9320−PC2」)を用いて測定することができる。
【0236】
また、色材受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、色材受容層を透明フィルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。前記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株)製)を用いて測定することができる。
【0237】
本発明のインクジェット記録用シートの構成層(例えば色材受容層)には、ポリマー微粒子分散物を添加してもよい。このポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止等のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、同62−1316648号、同62−110066号の各公報に記載がある。尚、ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を、前記媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。
【0238】
一方、裏面塗布層は、シート状支持体の一方の側に色材受容層を形成する前または形成後に、あるいは色材受容層の形成と同時に、成分(A)及び(B)を含んで調製された塗布液を他方の側のオレフィン樹脂層上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。ここでの塗布は、上記の色材受容層を塗布形成する場合の公知の塗布方法と同様の方法により行なうことができる。
【0239】
この塗布液の塗布量としては、0.05〜4g/m2が好ましく、0.15〜1g/m2がより好ましい。該塗布量が、0.05g/m2未満であると、色材受容層側へのカールを許容範囲に抑止することができないことがあり、4g/m2を超えると、色材受容層側とは逆側(塗布する側)にカールしてしまう等カールバランスを保てなくなることがある。
【0240】
本発明のインクジェット記録用シートを用いて画像形成する場合、水性インクを用いた記録方法が好適である。ここでいう水性インクは、下記着色剤及び溶媒(液媒体)並びに他の添加剤からなる液体である。着色剤としては、インクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料あるいは水分散性顔料が挙げられる。
【0241】
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。
【0242】
これら水溶性の有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0243】
水性インクにおける他の添加剤としては、例えば、pH調節剤、金属封鎖剤、防バイ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤、及び防錆剤などが挙げられる。水性インクは、色材受容層面に対する濡れ性を良好にする点で、20℃において、25〜60dyn/cmの表面張力を有することが好ましく、30〜50dyn/cmの表面張力を有することがより好ましい。
【0244】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を表す。
【0245】
(実施例1)
<色材受容層塗布液の調製>
−シリカ分散液の調製−
イオン交換水632.011kgに、カチオンポリマーK−21(既述の一般式(I)の例示化合物;固形分51.5%、数平均分子量=9000)を9.422kg加えてディゾルバーにて回転数1200rpmで攪拌し、これに気相法シリカQS−30((株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm;無機微粒子)を113.067kg添加した後、更に回転数2000rpmで120分間攪拌した。引き続き、直径0.65mmのジルコニアビーズを70%充填したダイノミル分散機で更に分散を行ない、シリカ粒子径が0.10〜0.16μmでかつ5μm以上の粒子が5%以下であるシリカ分散液を得た。
【0246】
−バインダー溶液の調製−
イオン交換水330.159kg、PVA124((株)クラレ製;水溶性樹脂)24.988kg、エマルゲン109P(花王(株)製;ノニオン系界面活性剤)10%水溶液3.18kg、およびジエチレングリコールモノブチルエーテル0.673kgを混合して85〜95℃で3時間溶解し、バインダー溶液を得た。
【0247】
−界面活性剤液の調製−
イオン交換水56.24kg、エマルゲン109P(100%、花王(株)製;ノニオン系界面活性剤)1.06kg、およびメガファックF−1405(大日本インキ化学工業(株)製;テロマー型フッ素系界面活性剤)0.6kgを混合して十分に攪拌し、界面活性剤液を得た。
【0248】
−ブレンド液の調製−
上記より得たシリカ分散液754.5kg、イオン交換水14.1kg、および硼酸水溶液(5.32%)86.5kgを混合した後、ディゾルバーで回転数2000rpmで10分間攪拌した。これに更に、上記より得たバインダー溶液359kgと界面活性剤液57.9kgとを添加し、回転数750rpmで15分間攪拌し、ブレンド液(色材受容層塗布液)を得た。
【0249】
<裏面塗布層塗布液>
−成分(A)の調製−
反応性乳化剤(アデカリアソープSE−10N、旭電化工業(株)製)の存在下で、芳香族エチレン性不飽和単量体(単量体A)としてスチレン62部と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(単量体B)としてグリシジルメタクリレート5部と、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(単量体C)としてアクリル酸3部と、これら3種の単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体(単量体D)として2−エチルヘキシルアクリレート30部とを乳化重合し、スチレン−アクリル酸エステルの水分散体(成分(A))を得た。
【0250】
−成分(B)の調製−
次に、スチレン−イソプレンAB型ブロック共重合体(スチレン/イソプレン=80/20[モル比]、重量平均分子量7500)をスルホン化(スルホン酸含量2mmol/g)し、水酸化ナトリウムで中和したナトリウム塩からなる水溶性高分子化合物Na塩(成分(B))を得た。
【0251】
−裏面塗布層塗布液−
上記より得た成分(A)14部および成分(B)8部と、コロイド状シリカ6部と、メタノール20部とを混合し、これに更に水を加えて全量100部とし、裏面塗布層塗布液を得た。
【0252】
<シート状支持体の作製>
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量して170g/m2の原紙を抄造した。
【0253】
上記より得た原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(Whitex BB、住友化学工業(株)製)0.04%を添加し、これを絶乾質量換算で0.5g/m2となるように上記原紙に含浸させ、乾燥した後、更にキャレンダー処理を施して密度1.05g/ccに調整された基紙を得た。
【0254】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理を行なった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の樹脂層に更にコロナ放電処理を施し、その後、上記より得られた裏面塗布層塗布液を乾燥質量が0.2g/m2となるように塗布した。
【0255】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、及び蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有し、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて厚み29μmとなるように押し出し、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、シート状支持体とした。
【0256】
<塗布>
上記シート状支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、上記より得たブレンド液をエクストルージョンダイコーターを用いて170ml/m2の塗布量で塗布した。塗布は40℃に調温したブレンド液を用いて行い、塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜30℃の風で60秒間、45℃の風で60秒間、50℃の風で60秒間順次乾燥させて、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0257】
(実施例2)
実施例1において、成分(A)を下記成分(A’)に代え、かつ成分(B)として用いた水溶性高分子化合物Na塩8部を、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩(ケミスタットSA9、三洋化成(株)製)4部に代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0258】
−成分(A’)の調製−
反応性乳化剤(アデカリアソープSE−10N、旭電化工業(株)製)の存在下で、単量体Aとしてスチレン62部と、単量体Cとしてアクリル酸3部と、これら2種の単量体と共重合可能な他の単量体Dとして2−エチルヘキシルアクリレート30部とを乳化重合し、スチレン−アクリル酸エステルの水分散体(成分(A’))を得た。
【0259】
(実施例3)
実施例1において、裏面塗布層塗布液の成分(A)を実施例2で調製した成分(A’)に代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0260】
(実施例4)
実施例1において、裏面塗布層塗布液の成分(B)として用いた水溶性高分子化合物Na塩8部を、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩(ケミスタットSA9、三洋化成(株)製)4部に代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0261】
(実施例5)
実施例1において、裏面塗布層塗布液の成分(A)の調製にエチレン性不飽和カルボン酸単量体(単量体C)として用いたアクリル酸をメタクリル酸に代え、かつ裏面塗布層塗布液の成分(B)として用いた水溶性高分子化合物Na塩8部を、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩(ケミスタットSA9、三洋化成(株)製)4部に代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0262】
(実施例6)
実施例1において、裏面塗布層塗布液の成分(A)の調製にエチレン性不飽和カルボン酸単量体(単量体C)として用いたアクリル酸をメタクリル酸に代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0263】
(実施例7)
実施例1において、裏面塗布層塗布液の成分(A)の調製に3種の単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体(単量体D)として用いた2−エチルヘキシルアクリレートをn−ヘキシルアクリレートに代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0264】
(実施例8)
実施例1において、裏面塗布層塗布液の成分(A)の調製にエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(単量体B)として用いたグリシジルメタクリレートをグリシジルアクリレートに代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シートを得た。
【0265】
(比較例1)
実施例2において、成分(A)14部を、非反応性乳化剤の存在下で乳化重合してなるスチレン−アクリル酸共重合体(JSR AE620、JSR(株)製)12部に代えたこと以外、実施例2と同様にして、比較のインクジェット記録用シートを得た。
【0266】
(比較例2)
実施例4において、成分(A)の調製に用いた反応性乳化剤を非反応性乳化剤に代えたことを除いては実施例1と同様に乳化重合させてスチレン−アクリル酸エステルの水分散体(成分(A’’))を得、成分(A)14部を得られた成分(A’’)12部に代えたこと以外、実施例4と同様にして、比較のインクジェット記録用シートを得た。
【0267】
(比較例3)
実施例1において、成分(A)の調製に用いた反応性乳化剤を非反応性乳化剤に代えたことを除いては実施例1と同様に乳化重合させてスチレン−アクリル酸エステルの水分散体(成分(A’’))を得ると共に、成分(A)14部を得られた成分(A’’)12部に代え、かつ裏面塗布層塗布液の調製に成分(B)を添加しなかったこと以外、実施例1と同様にして、比較のインクジェット記録用シートを得た。
【0268】
(比較例4)
実施例1のブレンド液(色材受容層塗布液)の調製において、シリカ分散液の調製に用いたカチオンポリマーK−21を、ポリエチレンイミン(SP−200、(株)日本触媒製)に代えたこと以外、実施例1と同様にして、比較のインクジェット記録用シートを得た。
【0269】
(評価)
上記より得られた各インクジェット記録用シートを用いて、以下の評価を行なった。評価した結果は下記表1に示す。
(1) 走行性(ジャミング)
各インクジェット記録用シートの各々複数枚を35℃、80%RHの環境条件下で一昼夜調湿し、その各々1枚ずつを同一環境条件のもとでインクジェットプリンタ(PM−950、セイコーエプソン社製)にセットし印画を行なった。合計100枚印画したときに発生するジャミング(搬送不良)の頻度(回数)を調べ、走行性の良否を評価する指標とした。
【0270】
(2) カール性
上記の「(1)走行性」と同様にして、A4サイズの各インクジェット記録用シートを一昼夜調湿し、調湿後の各々のインクジェット記録用シートの色材受容層面が上になるように水平面上に置き、該水平面上に最も浮き上がった四隅の水平面からの高さの最大値(mm)を測定し、その平均値をカール値とした。このときのカールは、色材受容層面を上に向けたときに、色材受容層側にカールしたときのカール値をプラス(+)カールとし、裏面塗布層塗布液を塗布した側にカールしたときのカール値をプラス(−)カールとした。
【0271】
(3) 経時ニジミ
インクジェットプリンタ(PM−900C、セイコーエプソン社製)を用いて、各インクジェット記録用シート上にマゼンタインクとブラックインクとを隣り合わせにした格子状の線状パターン(線幅0.28mm)を印画した。印画直後に透明PP製ファイルに挿入して35℃、80%RH環境下で3日間保存し、線状パターンの黒線の幅を測定した。別途、印画直後の黒線の幅を求めておき、下記式で経時ニジミ(%)を算出し、評価の指標とした。
経時ニジミ(%)= (3日間保存後の線状パターンの黒線の幅)/(印画直後の黒線の幅)×100
【0272】
【表1】
【0273】
上記表1に示すように、反応性乳化剤の存在下で乳化重合して得た水分散体等を含む本発明に係る裏面塗布層塗布液を色材受容層形成面と逆側に塗布した本発明のインクジェット記録用シートでは、高湿度下でもカール度が小さく抑えられ、ジャミングや斜め搬送の発生はなかった。また同時に、一般式(I)で表されるカチオンポリマーを用いて分散された無機微粒子を含む色材受容層上の形成画像は滲みによって画像品質が損なわれることもなかった。
一方、比較のインクジェット記録用シートでは、高湿度下でのカール度が大きく、ジャミングや斜め搬送を起こすなど、シート走行性に大きく影響してしまった。また、無機微粒子の分散に一般式(I)で表されるカチオンポリマーを用いなかった比較例4では画像の滲み(経時ニジミ)を防止することはできなかった。
【0274】
【発明の効果】
本発明によれば、特に高湿度環境下において、形成画像の経時ニジミを抑止して高画質の画像を形成、保持できると共に、シート状にしたときのカール度が小さく、プリンタ内での走行安定性に優れたインクジェット記録用シートを提供することができる。
Claims (4)
- 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、
前記支持体が、原紙の両方の側がポリオレフィン樹脂層で被覆されてなるシート状支持体であって、
前記シート状支持体の一方の側に、水溶性樹脂と、平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子と、下記一般式(I)で表され、かつ数平均分子量10万以下の水溶性のカチオンポリマーとを含む色材受容層を有し、かつ
他方の側に、(A)水性溶媒中、反応性乳化剤の存在下で2以上の単量体を乳化重合してなる水分散体と、(B)カルボキシル基及びスルホン基を有する水溶性高分子化合物およびその金属塩、並びに親水性有機高分子水分散物からなる群より選択される少なくとも一種とを含む塗布液が塗布された、ことを特徴とするインクジェット記録用シート。
- 前記塗布液がコロイド状シリカを更に含む請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記2以上の単量体が、芳香族系エチレン性不飽和単量体、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、及び前記3つの単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体である請求項1又は2に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記親水性有機高分子水分散物が、親水性ブロック及び疎水性ブロックを有するブロック共重合体の乳化物からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用シート。
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