【0001】
【発明の属する技術分野】
ケミカルパルプの漂白方法であって、多段漂白工程中のカッパー価4〜9のパルプをアルカリ性条件下で脱リグニン及び漂白処理する反応段において、水酸化ナトリウムおよびpH緩衝剤を添加することを特徴とするパルプの漂白方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
未晒パルプ中には、蒸解・洗浄工程で溶出しなかった残留リグニンが多く含有されている。従来の塩素を使用する多段漂白工程においては、初段の塩素処理で残留リグニンを塩素化し、次段のアルカリ抽出段で塩素化リグニンの中和と溶出を行い、後段での漂白薬品の消費量を抑えるというシーケンスが通常実施されて来た。近年、パルプ工場から排出される排水中の有機塩素化合物が環境に与える影響に関心が集まる中、塩素を使用しないECF漂白や塩素系薬品を全く使用しないTCF漂白が急速に拡大している。塩素に代わる薬品としては、酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化塩素などがある。このうち、オゾン、過酸化水素、二酸化塩素などの漂白薬品は塩素と比較して薬品単価が高いため、従来の塩素を使用した漂白方法に比べ、漂白コストが高くなることが問題となっている。この観点から、ECF漂白やTCF漂白においても、塩素化リグニンの中和といった目的以外にも、安価なアルカリを用いて処理する反応段の重要性は不変である。そういった背景の中、アルカリ性条件下で処理する反応段の効率を更に高める技術の開発が求められている。
【0003】
アルカリ性条件下で処理する反応段としては、アルカリ薬剤のみで処理するE段、アルカリ薬剤と過酸化水素を併用するEp段、アルカリ薬剤と酸素、過酸化水素を併用するEop段などが公知の技術となっている。アルカリ薬剤としては、価格が安い点から通常水酸化ナトリウムが使用されている。
【0004】
E段では、アルカリ薬剤の添加量は溶出すべき残留リグニン量で決められるが、パルプ懸濁液のpHが上昇しアルカリ性が高まるほどリグニンの溶出が促進される。しかし、余り高いpHにするとパルプからのヘミセルロースの溶出が起こるため、pHには限度があり、pH=12位が適当とされている(紙パルプ技術協会編 パルプ処理および漂白 P.157)。
【0005】
Ep段のアルカリ薬剤の添加量は、前記E段で述べた観点に、過酸化水素の漂白効率およびパルプ粘度を更に加味して決められる。過酸化水素は酸性においては比較的安定であるが、中性付近から徐々に不安定となり、pH=11.5付近から徐々に分解が始まり、更にpHが高まるにつれて激しく分解する。pHが上昇すると漂白反応速度も高まり、この分解反応と漂白反応は競合関係にある。ケミカルパルプの漂白の場合、pH=4付近でパルプ白色度が最も低く、pHの上昇に伴いパルプ白色度が高くなっていく。パルプ粘度のような品質も同様な傾向にある。以上の分解反応、漂白反応速度、並びにパルプ品質を考慮して、漂白pHは10〜11の範囲が好ましいと一般的に言われている(紙パルプ技術協会編 パルプ処理および漂白P.202)。
【0006】
Eop段のアルカリ薬剤の添加量は、前記Ep段で述べた観点に、酸素の漂白効率などを加味して決められる。酸素分子内の2つの不対電子は、有機物との反応性に富み、ラジカル連鎖反応を引き起こす。その結果、リグニンは可溶化される。この反応はpH=10以下では著しく減少すると言われている(紙パルプ技術協会編 パルプ処理および漂白 P.補28,30)。
【0007】
E段では、添加したアルカリ薬剤は溶出したリグニンの分解などで一部が消費されパルプ懸濁液のpHは次第に低下し、反応終了時のpH(以下、終了pHと記述する)は適切なpH値を大きく下回ってしまう。その結果、反応開始時に比べ反応終了時におけるリグニンの溶出・分解速度は低下してしまう。
【0008】
Ep段においては、前記E段で述べたアルカリ消費に加え、次の過酸化水素によるアルカリ消費が起こる。すなわち、過酸化水素漂白においては、アルカリ性条件下で、下記の解離で生じたHOO−により漂白反応が進行するが、この解離で生じた水素イオンによりアルカリが消費され、パルプ懸濁液のpHは次第に低下し、終了pHは過酸化水素添加直後よりも低下してしまう。
解離反応:H2O2→H++HOO−
したがって、過酸化水素添加直後から漂白終了時の間を通じて最適なpH範囲を維持することは、非常に困難である。特に、過酸化水素添加量が多い場合は、最適な終了pHを得るためには、過酸化水素添加時のpHを高く設定する必要があり、反応初期のpHが最適な範囲外になってしまい、漂白効率が低下することが懸念される。一方、過酸化水素添加時のpHを高く調整しない場合には、終了pHが適切な範囲外になり、この場合もまた漂白効率が低下してしまう。
【0009】
酸素漂白では、酸素とリグニンの反応は、アルカリ溶液中で解離したフェノール性水酸基、フェノレートアニオンから酸素が電子を引き抜いて、フェノールラジカルを生成することから始まり、反応中に生成する・OH、・OOH、・O2 −などのフリーラジカルを媒体にして連鎖反応が進む。その反応の結果、可溶化されたリグニンに一部は、種々の高分子カルボン酸を始め、CO2、メタノール、アセトン、蟻酸、シュウ酸、酢酸などにまで分解される。これらの生成した酸がアルカリを消費してpHが下がると、フェノール性水酸基の解離が抑制され反応速度が低下する。従ってEop段では、前記のEp段で述べたpH低下に加えて、酸素漂白によるpH低下が進むことになる。
【0010】
ケミカルパルプの漂白工程のE段でpHを調整する従来の技術としては、例えば特許第1774000号が挙げられる。特許第1774000号では、アルカリ性蒸解未漂白パルプに、アルカリ処理後のパルプ懸濁液のpHが9.5以上になるようにアルカリを添加して100℃以下で処理する技術が登録されている。しかし、この技術はE段の反応開始時のpHを調整しているに過ぎず、反応の進行に伴いpHは低下してしまう。
【0011】
ケミカルパルプの漂白工程のEp段でpHを調整する従来の技術としては、例えば、特許第962837号、特許第1453574号、特開2002−4188号公報などが挙げられる。特許第962837号では、パルプにマグネシウム化合物を添加後、漂白初期pH10.5〜12.0、終期pH7〜10になる量のアルカリ性物質を添加し過酸化物で漂白する技術が記載され、過酸化物として過酸化水素の使用例がある。しかし、この技術は、アルカリ性物質の添加により反応初期のpHを適切な範囲に入れるだけであり、終期pH7〜10は過酸化水素漂白の適切なpH範囲から外れている。特許第1453574号では、未漂白製紙用ケミカルパルプの過酸化水素漂白において、パルプ懸濁液にアルカリ性薬剤、アルカリ金属珪酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、金属イオン封鎖剤を添加して漂白を行う技術が登録されている。この方法によると、パルプ懸濁液、アルカリ金属珪酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、金属イオン封鎖剤から成る混合液のpHの調整用に、アルカリ薬剤を最後に添加し、pH=11〜11.5に保持すること、またアルカリ薬剤として水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが好ましいことが記載されている。この方法では、pHを11〜11.5に保持するための薬剤はアルカリ薬剤とアルカリ金属珪酸塩と考えられるが、珪酸塩を使用するため、漂白排水の回収系におけるスケール沈着などの問題が懸念される。特開2002−4188号公報では、クラフトパルプの多段漂白工程において、塩素漂白段に続くアルカリを併用した過酸化水素漂白段(E/P段)の終了pHを11以上で漂白する技術が開示され、アルカリとして水酸化ナトリウムを使用することが記載されている。しかし、この技術は、終了pHを11以上にするために水酸化ナトリウムを予め添加し、反応初期のpHを高めるものであり、反応初期のpHが最適なpH値以上になってしまうという問題がある。
【0012】
ケミカルパルプの漂白工程のEop段でpHに関わる従来の技術としては、特開平06−101186号公報が挙げられる。特開平06−101186号公報では、蒸解処理した化学パルプに酸処理を行った後、アルカリ性媒体中で過酸化物と加圧酸素で脱リグニン・漂白を行う技術が開示され、過酸化物として過酸化水素が使用できることが記載されている。しかし、この技術では、洗浄後の残留酸の中和とOP漂白に必要な量のアルカリ薬剤を添加することのみの記載であり、終了pHを調整する技術ではない。
【0013】
以上にように、E段、Ep段、Eop段において、反応初期から反応終了までの間、最適なpH範囲に入れることができる簡単なpH調整技術の開発が望まれている。
【0014】
本発明者らは、ケミカルパルプの多段漂白工程中のカッパー価4〜9のパルプを、アルカリ性条件下で脱リグニン及び漂白処理する反応段の効率改善に関して、反応時pHおよび終了pHの調整について検討した結果、水酸化ナトリウムおよび特定のpH緩衝剤を添加することにより、該反応段のパルプ懸濁液のpHを適切な範囲に調整・保持でき、その結果、該反応段の効率が向上することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明者らは、ケミカルパルプの多段漂白工程後期の過酸化水素漂白段(P段、Op段)において、カッパー価1〜4のパルプに過酸化水素を添加するに先立ち、水酸化ナトリウムと特定のpH緩衝剤を予め添加することにより、漂白効率を改善できることを見いだし出願している(特願2002−202035)。本願発明では処理するパルプのカッパー価が4〜9と高いことに示されているようにリグニン含有量が多いため、リグニンの溶出と分解にアルカリが多く消費されるので、反応開始時pHと終了pHとの差、すなわちpH低下幅がP段、Op段よりも大きい。従って、pH緩衝剤の効果がより顕著である点で異なっている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、ケミカルパルプ多段漂白工程中において、カッパー価が4〜9のパルプを、アルカリ性条件下で脱リグニン及び漂白処理する反応段の効率を高めると同時に、後続の漂白反応段の負荷を軽減できる技術を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
ケミカルパルプ多段漂白工程中のカッパー価4〜9のパルプを、アルカリ性条件下で脱リグニン及び漂白処理する反応段において、水酸化ナトリウムと特定のpH緩衝剤を添加し、反応終了時のpHを10.0〜12.0の範囲に調整する。
【0018】
【発明の実施の形態】
この発明に用いられるケミカルパルプとしては、ソーダ法、サルファイト法、クラフト法により製造されたものが挙げられる。また、材料としては針葉樹、広葉樹の他に、ケナフやワラといったいわゆる非木材原料も考えられる。さらにクラフト法については修正法として、MCC、EMCC、ITC、Lo−solid法等が知られているが、それらの方法に限定されず、また、酸素脱リグニン処理を行ったものあるいは行っていないもののどちらでも構わず適用できる。また、本発明の反応段に先立ち、塩素漂白、酸処理、オゾン漂白、二酸化塩素漂白などの漂白シーケンスも特に限定はない。
【0019】
本発明のpH緩衝剤を添加した反応段の処理は、多段漂白工程中のカッパー価4〜9のパルプを処理対象とした、E段、Ep段、Eop段に適用できる。E段、Ep段、Eop段では、まずアルカリ薬剤がパルプ懸濁液に添加される。このアルカリ薬剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウムなどが公知であるが、本発明で使用するアルカリ薬剤は水酸化ナトリウムに限定される。水酸化ナトリウムの添加量は、前漂白段の反応終了pHや前段漂白後のパルプの洗浄程度などの左右されるが、パルプ懸濁液のpHが11.0〜12.5、好ましくは11.0〜12.0、更に好ましくは11.5〜12.0となる量を添加する。
【0020】
本発明で使用するpH緩衝剤を表1に示す。
【表1】
【0021】
表1の(1)〜(3)の化合物は、これ自体はpH緩衝作用を示さないが、E段、Ep段、Eop段で添加されるアルカリ薬剤である水酸化ナトリウムの水溶液と混合された時にpH緩衝作用を示す。すなわち、(四ホウ酸ナトリウム−水酸化ナトリウム)混合系、(リン酸水素二ナトリウム−水酸化ナトリウム)混合系、(炭酸水素ナトリウム−水酸化ナトリウム)混合系でpH緩衝作用を示すことになる。
【0022】
pH緩衝剤は、四ホウ酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウムの中から1種類を選び、水酸化ナトリウムを添加した後のパルプ懸濁液に添加する。E段における薬品の添加順序は、水酸化ナトリウム、pH緩衝剤の順が好ましい。Ep段における薬品の添加順序は、水酸化ナトリウム、pH緩衝剤、過酸化水素の順が好ましい。Eop段における薬品の添加順序は、水酸化ナトリウム、pH緩衝剤、酸素、過酸化水素の順が好ましい。
pH緩衝剤の添加量は、0.1〜7.0固形分重量%(対パルプ固形分重量)である。0.1%未満ではpH緩衝作用に乏しく、コストの面から7.0%を超える場合は実用的ではない。
【0023】
E段の処理条件は特に限定は無く、公知のパルプ濃度、反応温度、反応時間で行うことができる。E処理後の終了pHは10.0〜12.0、好ましくは11.0〜12.0、更に好ましくは11.5〜12.0の範囲である。pHが10.0未満である場合は脱リグニンの速度が低下するので好ましくない。また、pHが12.0を超える場合はヘミセルロースの溶出量が多くパルプ収率が低下するので好ましくない。
【0024】
Ep段の漂白条件は特に限定は無く、公知のパルプ濃度、反応温度、反応時間で行うことができる。Ep処理後の終了pHは10.0〜12.0、好ましくは11.0〜12.0、更に好ましくは11.5〜12.0の範囲である。pHが10.0未満である場合は、脱リグニン速度が低下するし、過酸化水素漂白の適切なpH範囲を外れるので好ましくない。また、pHが12.0を超える場合はヘミセルロースの溶出によるパルプ収率の低下と、過酸化水素の分解が起こり漂白効率が低下するので好ましくない。
【0025】
Eop段の漂白条件は特に限定は無く、公知のパルプ濃度、反応温度、反応時間で行うことができる。Eop処理後の終了pHは10.0〜12.0、好ましくは11.0〜12.0、更に好ましくは11.5〜12.0の範囲である。pHが10.0未満である場合は、脱リグニン速度が低下するし、過酸化水素漂白の適切なpH範囲を外れ、更に酸素による溶出リグニンの分解が不十分となるので好ましくない。また、pHが12.0を超える場合はヘミセルロースの溶出によるパルプ収率の低下と、過酸化水素の分解による漂白効率の低下、更に酸素によるパルプセルロースの分解が進行するので好ましくない。
【0026】
pH緩衝剤添加によりE段、Ep段、Eop段の処理効率が高まるメカニズムの詳細は明らかではないが、本発明者らは次のように推測している。緩衝剤を添加することで、E段、Ep段、Eop段の反応開始から反応終了までの間のpH低下幅を縮小でき、その結果、最適なpH範囲での反応保持時間が長くなることで、脱リグニン及び漂白効率が向上すると考えられる。また、Ep段、Eop段の場合、反応系のpHが高く維持されることから、漂白反応での過酸化水素および/または酸素の消費が促進されることもメカニズムとして考えられる。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に示すが、本発明は勿論かかる実施例に限定されるものではない。
供試パルプ:広葉樹チップをクラフト法で蒸解したパルプを酸素脱リグニン処理(O)し、続いてオゾン漂白(Z)、二酸化塩素漂白(D)を行い、カッパー価4.6、ハンター白色度60.4%のパルプを得た。このパルプを以下の実施例1〜9、比較例1〜3で使用した。
薬品添加量は固形分重量%(対絶乾パルプ)で表示した。
【0028】
【実施例1】
供試パルプに水酸化ナトリウム、pH緩衝剤を順次添加しE処理を行った。pH緩衝剤には四ホウ酸ナトリウムを使用した。終了pH、カッパー価、パルプ白色度の結果を表2の実施例1に示した。
水酸化ナトリウム添加量:パルプ懸濁液のpHが12.0になるように水酸化ナトリウムを添加した。
四ホウ酸ナトリウム添加量:1.4%
漂白条件:パルプ濃度10固形分重量%、反応温度70℃、反応時間1時間
【0029】
【実施例2】
pH緩衝剤にリン酸水素二ナトリウムを使用し1.1%添加とした以外は、実施例1と同様にE処理を行った。結果を表2の実施例2に示した。
【0030】
【実施例3】
pH緩衝剤に炭酸水素ナトリウムを使用し0.9%添加とした以外は、実施例1と同様にE処理を行った。結果を表2の実施例3に示した。
【0031】
【比較例1】
pH緩衝剤を添加しない以外は、実施例1と同様な漂白処理を行った。結果を表2の比較例1に示した。
【0032】
【実施例4】
供試パルプに水酸化ナトリウム、pH緩衝剤、過酸化水素を順次添加しEp漂白処理を行った。pH緩衝剤には四ホウ酸ナトリウムを使用した。終了pHとパルプ白色度の結果を表2の実施例4に示した。
水酸化ナトリウム添加量:パルプ懸濁液のpHが12.0になるように水酸化ナトリウムを添加した。
四ホウ酸ナトリウム添加量:1.4%
漂白条件:パルプ濃度10固形分重量%、過酸化水素添加量0.8%、反応温度70℃、反応時間2時間
【0033】
【実施例5】
pH緩衝剤にリン酸水素二ナトリウムを使用し1.1%添加とした以外は、実施例4と同様にEp処理を行った。結果を表2の実施例5に示した。
【0034】
【実施例6】
pH緩衝剤に炭酸水素ナトリウムを使用し0.9%添加とした以外は、実施例4と同様にEp処理を行った。結果を表2の実施例6に示した。
【0035】
【比較例2】
pH緩衝剤を添加しない以外は、実施例4と同様な漂白処理を行った。終了pH、カッパー価、パルプ白色度の結果を表2の比較例2に示した。
【0036】
【実施例7】
供試パルプに水酸化ナトリウム、酸素、pH緩衝剤、過酸化水素を順次添加しEop漂白処理を行った。pH緩衝剤には四ホウ酸ナトリウムを使用した。終了pH、カッパー価、パルプ白色度の結果を表2の実施例7に示した。
水酸化ナトリウム添加量:パルプ懸濁液のpHが12.0になるように水酸化ナトリウムを添加した。
四ホウ酸ナトリウム:1.4%
酸素添加量:0.2%
酸素圧:3.0kg/cm2
漂白条件:パルプ濃度10固形分重量%、過酸化水素添加量0.8%、反応温度80℃、反応時間2時間
【0037】
【実施例8】
pH緩衝剤に炭酸水素ナトリウムを使用し1.1%添加とした以外は、実施例7と同様にEop処理を行った。結果を表2の実施例8に示した。
【0038】
【実施例9】
pH緩衝剤に炭酸水素ナトリウムを使用し0.9%添加とした以外は、実施例7と同様にEop処理を行った。結果を表2の実施例9に示した。
【0039】
【比較例3】
pH緩衝剤を添加しない以外は、実施例7と同様な漂白処理を行った。終了pH、カッパー価、パルプ白色度の結果を表2の比較例3に示した。
【0040】
【表2】
【0041】
E処理について実施例1〜3と比較例1を比べる。実施例1、2、3はそれぞれpH緩衝剤に四ホウ酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを添加したものであるが、各終了pHは12.1、11.9、12.0であり、適切なpH範囲内にあり、各カッパー価は4.0、4.1、4.0、各パルプ白色度は60.8、60.8、60.7である。これに対して、pH緩衝剤を添加しない比較例1の終了pHは11.1であり、実施例1〜3よりも低い。カッパー価は4.2であり実施例1〜3よりも高く、パルプ白色度は60.5であり実施例1〜3よりも低い。Ep漂白について実施例4〜6と比較例2を比べる。実施例4、5、6はそれぞれpH緩衝剤に四ホウ酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを添加したものであるが、各終了pHは12.0、11.9、12.0であり、適切なpH範囲内にあり、各カッパー価は3.3、3.4、3.3、各パルプ白色度は76.9、76.1、77.5である。これに対して、pH緩衝剤を添加しない比較例2の終了pHは10.7であり、実施例4〜6よりも低い。カッパー価は3.7であり実施例4〜6よりも高く、パルプ白色度は75.2であり実施例4〜6よりも低い。Eop漂白について実施例7〜9と比較例3を比べる。実施例7、8、9はそれぞれpH緩衝剤に四ホウ酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを添加したものであるが、各終了pHは11.8、11.7、11.8であり、適切なpH範囲内にあり、各カッパー価は3.0、2.9、3.0、各パルプ白色度は78.9、79.1、79.3である。これに対して、pH緩衝剤を添加しない比較例3の終了pHは10.5であり、実施例7〜9よりも低い。カッパー価は3.2であり実施例7〜9よりも高く、パルプ白色度は77.3であり実施例7〜9よりも低い。
【0042】
【発明の効果】
ケミカルパルプの多段漂白工程中のカッパー価4〜9のパルプを、アルカリ性条件下で処理する反応段において、水酸化ナトリウムと特定のpH緩衝剤を添加し、反応終了時のpHを10.0〜12.0の範囲に調整することにより、該反応段で脱リグニン及び漂白の効率を高めることができる。[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
A method for bleaching chemical pulp, comprising adding sodium hydroxide and a pH buffer in a reaction stage for delignifying and bleaching pulp having a kappa number of 4 to 9 under alkaline conditions in a multi-stage bleaching step. The method relates to a method for bleaching pulp.
[0002]
[Prior art]
Unbleached pulp contains a large amount of residual lignin not eluted in the cooking / washing process. In the conventional multi-stage bleaching process using chlorine, the residual lignin is chlorinated in the first-stage chlorination, and the chlorinated lignin is neutralized and eluted in the next-stage alkali extraction stage to reduce the consumption of the bleaching chemicals in the subsequent stage. The sequence of suppression has been commonly implemented. In recent years, with the concern of the effects of organochlorine compounds in wastewater discharged from pulp mills on the environment, ECF bleaching using no chlorine and TCF bleaching using no chlorine-based chemicals have been rapidly expanding. Alternatives to chlorine include oxygen, ozone, hydrogen peroxide, chlorine dioxide, and the like. Of these, bleaching chemicals such as ozone, hydrogen peroxide, and chlorine dioxide have a higher chemical unit price than chlorine, and thus have a problem that the bleaching cost is higher than the conventional bleaching method using chlorine. . From this viewpoint, in ECF bleaching and TCF bleaching, the importance of the reaction stage using an inexpensive alkali remains unchanged for purposes other than neutralization of chlorinated lignin. Against this background, there is a demand for the development of a technique for further increasing the efficiency of the reaction stage for treatment under alkaline conditions.
[0003]
Known reaction stages for treatment under alkaline conditions include E stage in which treatment is carried out only with an alkali agent, Ep stage in which an alkali agent is used in combination with hydrogen peroxide, and Eop stage in which an alkali agent is used in combination with oxygen and hydrogen peroxide. It has become. Sodium hydroxide is usually used as the alkaline agent because of its low price.
[0004]
In the E stage, the amount of the alkaline agent to be added is determined by the amount of residual lignin to be eluted, and the elution of lignin is promoted as the pH of the pulp suspension increases and the alkalinity increases. However, if the pH is too high, the hemicellulose is eluted from the pulp, so there is a limit to the pH, and pH = 12 or so is appropriate (pulp and bleaching, edited by Pulp and Paper Technical Association P.157).
[0005]
The addition amount of the alkali agent in the Ep stage is determined in consideration of the bleaching efficiency of hydrogen peroxide and the pulp viscosity in addition to the viewpoint described in the E stage. Hydrogen peroxide is relatively stable in acidity, but becomes gradually unstable from around neutrality, gradually decomposes from around pH = 11.5, and violently decomposes as the pH increases. As the pH increases, the rate of the bleaching reaction also increases, and the decomposition reaction and the bleaching reaction are in competition. In the case of bleaching of chemical pulp, the pulp brightness is lowest around pH = 4, and the pulp brightness increases as the pH increases. Quality, such as pulp viscosity, has a similar trend. In view of the above decomposition reaction, bleaching reaction rate, and pulp quality, it is generally said that the bleaching pH is preferably in the range of 10 to 11 (Pulp treatment and bleaching, P.202, edited by Paper and Pulp Technical Association).
[0006]
The amount of the alkaline agent added in the Eop stage is determined in consideration of the bleaching efficiency of oxygen and the like from the viewpoint described in the Ep stage. The two unpaired electrons in the oxygen molecule are highly reactive with organic matter and cause a radical chain reaction. As a result, the lignin is solubilized. This reaction is said to be significantly reduced below pH = 10 (Pulping and bleaching, ed.
[0007]
In the E stage, the added alkaline agent is partially consumed due to decomposition of the eluted lignin and the like, and the pH of the pulp suspension gradually decreases, and the pH at the end of the reaction (hereinafter referred to as the end pH) is adjusted to an appropriate pH. It is much lower than the value. As a result, the rate of lignin elution and decomposition at the end of the reaction is lower than that at the start of the reaction.
[0008]
In the Ep stage, in addition to the alkali consumption described in the E stage, the next alkali consumption by hydrogen peroxide occurs. That is, in hydrogen peroxide bleaching, under alkaline conditions, the bleaching reaction proceeds due to HOO − generated by the following dissociation, but the alkali is consumed by the hydrogen ions generated by this dissociation, and the pH of the pulp suspension becomes pH The pH gradually decreases, and the end pH is lower than immediately after the addition of hydrogen peroxide.
Dissociation reaction: H 2 O 2 → H + + HOO −
Therefore, it is very difficult to maintain an optimal pH range from immediately after the addition of hydrogen peroxide to the end of bleaching. In particular, when the amount of added hydrogen peroxide is large, it is necessary to set the pH at the time of adding hydrogen peroxide to be high in order to obtain an optimum end pH, and the pH at the beginning of the reaction becomes outside the optimal range. It is feared that the bleaching efficiency is reduced. On the other hand, if the pH at the time of adding hydrogen peroxide is not adjusted to a high value, the end pH will be outside the appropriate range, and the bleaching efficiency will also decrease in this case.
[0009]
In oxygen bleaching, the reaction between oxygen and lignin begins with oxygen extracting electrons from phenolic hydroxyl groups and phenolate anions dissociated in an alkaline solution to generate phenol radicals, which are generated during the reaction. OOH, · O 2 - chain reaction proceeds in the medium free radicals, such as. As a result of the reaction, a part of the solubilized lignin is decomposed into various polymeric carboxylic acids, as well as CO 2 , methanol, acetone, formic acid, oxalic acid, acetic acid, and the like. When these generated acids consume alkali and lower the pH, the dissociation of the phenolic hydroxyl group is suppressed and the reaction rate decreases. Therefore, in the Eop stage, in addition to the pH decrease described in the Ep stage, the pH decrease due to oxygen bleaching proceeds.
[0010]
As a conventional technique for adjusting the pH in the E stage of the chemical pulp bleaching step, for example, Japanese Patent No. 1774000 is mentioned. In Japanese Patent No. 1774000, there is registered a technique in which an alkali is added to an alkaline digested unbleached pulp so that the pH of the pulp suspension after the alkali treatment becomes 9.5 or more, and the mixture is treated at 100 ° C. or less. However, this technique merely adjusts the pH at the start of the reaction in the E stage, and the pH decreases with the progress of the reaction.
[0011]
Conventional techniques for adjusting the pH at the Ep stage in the chemical pulp bleaching step include, for example, Japanese Patent No. 9662837, Japanese Patent No. 14453574, and Japanese Patent Application Laid-Open No. 2002-4188. Japanese Patent No. 962837 describes a technique in which a magnesium compound is added to pulp, and then an alkaline substance is added in an amount of pH 10.5 to 12.0 at the initial bleaching stage and pH 7 to 10 at the final stage, followed by bleaching with peroxide. There is an example of using hydrogen peroxide as a substance. However, this technique merely brings the pH at the beginning of the reaction into an appropriate range by adding an alkaline substance, and the final pH of 7 to 10 falls outside the appropriate pH range for hydrogen peroxide bleaching. Patent No. 1453574 discloses a technique of bleaching an unbleached paper pulp chemical pulp by adding an alkaline agent, an alkali metal silicate, a magnesium salt, a calcium salt, and a sequestering agent to a pulp suspension in hydrogen peroxide bleaching. Is registered. According to this method, an alkali agent is added last to adjust the pH of a mixture of a pulp suspension, an alkali metal silicate, a magnesium salt, a calcium salt, and a sequestering agent. No. 5 and that sodium hydroxide and sodium carbonate are preferred as alkaline agents. In this method, the chemicals for maintaining the pH at 11 to 11.5 are considered to be an alkaline chemical and an alkali metal silicate. However, since silicate is used, there is a concern about problems such as scale deposition in the recovery system of the bleaching wastewater. Is done. JP-A-2002-4188 discloses a technique of bleaching a hydrogen peroxide bleaching stage (E / P stage) using an alkali in combination with a chlorine bleaching stage at an end pH of 11 or more in a multi-stage bleaching process for kraft pulp. The use of sodium hydroxide as an alkali is described. However, this technique raises the pH at the beginning of the reaction by adding sodium hydroxide in advance in order to bring the end pH to 11 or more, and there is a problem that the pH at the beginning of the reaction becomes higher than the optimum pH value. is there.
[0012]
As a conventional technique relating to pH at the Eop stage in the bleaching step of chemical pulp, JP-A-06-101186 can be mentioned. Japanese Patent Application Laid-Open No. 06-101186 discloses a technique in which a digested chemical pulp is subjected to an acid treatment and then delignified and bleached with a peroxide and pressurized oxygen in an alkaline medium. It states that hydrogen oxide can be used. However, this technique only describes the addition of an alkali agent in an amount necessary for neutralization of residual acid after washing and OP bleaching, and is not a technique for adjusting the end pH.
[0013]
As described above, in the E stage, the Ep stage, and the Eop stage, there is a demand for the development of a simple pH adjustment technique that can be brought into an optimum pH range from the beginning of the reaction to the end of the reaction.
[0014]
The present inventors have studied the adjustment of the pH during the reaction and the termination pH with respect to improving the efficiency of the reaction stage of delignifying and bleaching pulp having a kappa number of 4 to 9 under alkaline conditions during the multi-stage bleaching process of chemical pulp. As a result, by adding sodium hydroxide and a specific pH buffer, the pH of the pulp suspension in the reaction stage can be adjusted and maintained in an appropriate range, and as a result, the efficiency of the reaction stage is improved. And completed the present invention.
[0015]
In the hydrogen peroxide bleaching stage (P stage, Op stage) in the latter stage of the chemical pulp multi-stage bleaching process, the present inventors specified sodium hydroxide before adding hydrogen peroxide to kappa number 1-4 pulp. And found that the bleaching efficiency can be improved by adding a pH buffer in advance (Japanese Patent Application No. 2002-202035). According to the present invention, the pulp to be treated has a high lignin content as indicated by a high Kappa number of 4 to 9, so that a large amount of alkali is consumed for elution and decomposition of lignin. The difference from the pH, that is, the pH decrease width is larger than the P stage and the Op stage. Thus, the difference is that the effect of the pH buffer is more pronounced.
[0016]
[Problems to be solved by the invention]
The problem to be solved by the present invention is to increase the efficiency of a reaction stage for delignification and bleaching of pulp having a kappa number of 4 to 9 under alkaline conditions in a chemical pulp multi-stage bleaching process, and at the same time to increase the efficiency of the subsequent bleaching process. It is an object of the present invention to provide a technique capable of reducing a load on a reaction stage.
[0017]
[Means for Solving the Problems]
Sodium hydroxide and a specific pH buffer are added to the pulp having a kappa number of 4 to 9 in the chemical pulp multi-stage bleaching step, in which the pulp is subjected to delignification and bleaching treatment under alkaline conditions. Adjust to a range of 0.0 to 12.0.
[0018]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
Examples of the chemical pulp used in the present invention include those manufactured by a soda method, a sulfite method, and a kraft method. Further, as a material, in addition to conifers and hardwoods, so-called non-wood materials such as kenaf and straw can be considered. Further, regarding the Kraft method, MCC, EMCC, ITC, Lo-solid method and the like are known as correction methods, but are not limited to these methods, and those with or without oxygen delignification treatment Either can be applied. Prior to the reaction stage of the present invention, the bleaching sequence such as chlorine bleaching, acid treatment, ozone bleaching and chlorine dioxide bleaching is not particularly limited.
[0019]
The treatment in the reaction stage to which the pH buffer of the present invention is added can be applied to the E stage, the Ep stage, and the Eop stage, which are to process pulp having a kappa number of 4 to 9 in the multi-stage bleaching process. In the E, Ep, and Eop stages, an alkaline agent is first added to the pulp suspension. As the alkaline agent, sodium hydroxide, potassium hydroxide, sodium carbonate, potassium carbonate, calcium hydroxide and the like are known, but the alkaline agent used in the present invention is limited to sodium hydroxide. The amount of sodium hydroxide to be added depends on the pH at the end of the reaction in the pre-bleaching stage and the degree of washing of the pulp after the pre-bleaching, but the pH of the pulp suspension is 11.0 to 12.5, preferably 11.1. An amount of 0 to 12.0, more preferably 11.5 to 12.0, is added.
[0020]
Table 1 shows the pH buffers used in the present invention.
[Table 1]
[0021]
The compounds of (1) to (3) in Table 1 do not themselves exhibit a pH buffering action, but were mixed with an aqueous solution of sodium hydroxide, which is an alkaline agent added in the E, Ep, and Eop stages. Sometimes exhibits a pH buffering action. That is, the pH buffering action is exhibited by the (sodium tetraborate-sodium hydroxide) mixed system, the (disodium hydrogen phosphate-sodium hydroxide) mixed system, and the (sodium hydrogen carbonate-sodium hydroxide) mixed system.
[0022]
The pH buffer is selected from sodium tetraborate, disodium hydrogen phosphate, and sodium hydrogen carbonate, and added to the pulp suspension after the addition of sodium hydroxide. The order of adding the chemicals in the E stage is preferably sodium hydroxide and a pH buffer. The order of adding the chemicals in the Ep stage is preferably sodium hydroxide, a pH buffer, and hydrogen peroxide. The order of adding the chemicals in the Eop stage is preferably sodium hydroxide, a pH buffer, oxygen, and hydrogen peroxide.
The amount of the pH buffer added is 0.1 to 7.0% by weight of solid content (based on the weight of pulp solid content). If it is less than 0.1%, the pH buffer action is poor, and if it exceeds 7.0%, it is not practical from the viewpoint of cost.
[0023]
The treatment conditions in the E stage are not particularly limited, and the treatment can be performed at a known pulp concentration, reaction temperature and reaction time. The end pH after the E treatment is in the range of 10.0 to 12.0, preferably 11.0 to 12.0, and more preferably 11.5 to 12.0. If the pH is less than 10.0, the rate of delignification decreases, which is not preferable. On the other hand, if the pH exceeds 12.0, the amount of hemicellulose eluted is large and the pulp yield is undesirably reduced.
[0024]
The bleaching conditions at the Ep stage are not particularly limited, and the bleaching can be performed at a known pulp concentration, reaction temperature, and reaction time. The end pH after the Ep treatment is in the range of 10.0 to 12.0, preferably 11.0 to 12.0, and more preferably 11.5 to 12.0. If the pH is less than 10.0, the delignification rate is decreased, and the pH is out of the appropriate pH range for hydrogen peroxide bleaching, which is not preferable. On the other hand, if the pH exceeds 12.0, the pulp yield decreases due to the elution of hemicellulose, and the decomposition of hydrogen peroxide occurs, leading to a decrease in bleaching efficiency.
[0025]
The bleaching conditions in the Eop stage are not particularly limited, and the bleaching can be performed at a known pulp concentration, reaction temperature and reaction time. The end pH after the Eop treatment is in the range of 10.0 to 12.0, preferably 11.0 to 12.0, and more preferably 11.5-12.0. If the pH is less than 10.0, the delignification rate decreases, the pH falls outside the appropriate pH range for bleaching with hydrogen peroxide, and the decomposition of the lignin eluted by oxygen is not preferred. On the other hand, when the pH exceeds 12.0, the pulp yield decreases due to elution of hemicellulose, the bleaching efficiency decreases due to decomposition of hydrogen peroxide, and the decomposition of pulp cellulose due to oxygen proceeds, which is not preferable.
[0026]
Although the details of the mechanism by which the processing efficiency of the E, Ep, and Eop stages is increased by the addition of the pH buffer are not clear, the present inventors speculate as follows. By adding a buffer, the range of pH decrease from the start of the reaction to the end of the reaction in the E, Ep, and Eop stages can be reduced, and as a result, the reaction holding time in the optimal pH range becomes longer. It is believed that the efficiency of delignification and bleaching is improved. In addition, in the case of the Ep stage and the Eop stage, since the pH of the reaction system is maintained at a high level, it is considered that the mechanism of promoting the consumption of hydrogen peroxide and / or oxygen in the bleaching reaction is also considered.
[0027]
【Example】
Hereinafter, the present invention will be described more specifically with reference to examples, but the present invention is not limited to the examples.
Test pulp: Pulp obtained by pulping hardwood chips by the craft method is subjected to oxygen delignification treatment (O), followed by ozone bleaching (Z) and chlorine dioxide bleaching (D), with a kappa number of 4.6 and a Hunter brightness of 60. 0.4% pulp was obtained. This pulp was used in Examples 1 to 9 and Comparative Examples 1 to 3 below.
The amount of the chemical added was expressed in terms of solid content weight% (vs. absolutely dry pulp).
[0028]
Embodiment 1
Sodium hydroxide and a pH buffer were sequentially added to the test pulp, and E treatment was performed. Sodium tetraborate was used as the pH buffer. The end pH, kappa number, and pulp whiteness results are shown in Example 1 of Table 2.
Sodium hydroxide addition amount: Sodium hydroxide was added so that the pH of the pulp suspension became 12.0.
Addition amount of sodium tetraborate: 1.4%
Bleaching conditions: pulp concentration 10 solid content weight%, reaction temperature 70 ° C, reaction time 1 hour
Embodiment 2
The E treatment was performed in the same manner as in Example 1, except that disodium hydrogen phosphate was used as the pH buffer and 1.1% was added. The results are shown in Example 2 of Table 2.
[0030]
Embodiment 3
The E treatment was performed in the same manner as in Example 1 except that sodium hydrogen carbonate was used as a pH buffer and 0.9% was added. The results are shown in Example 3 of Table 2.
[0031]
[Comparative Example 1]
A bleaching treatment was carried out in the same manner as in Example 1 except that no pH buffer was added. The results are shown in Comparative Example 1 of Table 2.
[0032]
Embodiment 4
Sodium hydroxide, a pH buffer, and hydrogen peroxide were sequentially added to the test pulp to perform Ep bleaching treatment. Sodium tetraborate was used as the pH buffer. The end pH and pulp whiteness results are shown in Example 4 of Table 2.
Sodium hydroxide addition amount: Sodium hydroxide was added so that the pH of the pulp suspension became 12.0.
Addition amount of sodium tetraborate: 1.4%
Bleaching conditions: Pulp concentration 10 solids content% by weight, hydrogen peroxide addition 0.8%, reaction temperature 70 ° C, reaction time 2 hours
Embodiment 5
Ep treatment was performed in the same manner as in Example 4 except that disodium hydrogen phosphate was used as the pH buffer and 1.1% was added. The results are shown in Example 5 of Table 2.
[0034]
Embodiment 6
Ep treatment was performed in the same manner as in Example 4, except that sodium hydrogen carbonate was used as a pH buffer and 0.9% was added. The results are shown in Example 6 of Table 2.
[0035]
[Comparative Example 2]
A bleaching treatment was carried out in the same manner as in Example 4 except that no pH buffer was added. The results of the end pH, kappa number, and pulp whiteness are shown in Comparative Example 2 in Table 2.
[0036]
Embodiment 7
Sodium hydroxide, oxygen, a pH buffer, and hydrogen peroxide were sequentially added to the test pulp to perform an Eop bleaching treatment. Sodium tetraborate was used as the pH buffer. The end pH, kappa number, and pulp whiteness results are shown in Example 7 of Table 2.
Sodium hydroxide addition amount: Sodium hydroxide was added so that the pH of the pulp suspension became 12.0.
Sodium tetraborate: 1.4%
Oxygen addition: 0.2%
Oxygen pressure: 3.0 kg / cm2
Bleaching conditions: pulp concentration 10 solid content wt%, hydrogen peroxide addition 0.8%, reaction temperature 80 ° C, reaction time 2 hours
Embodiment 8
Eop treatment was performed in the same manner as in Example 7, except that sodium hydrogen carbonate was used as the pH buffer and 1.1% was added. The results are shown in Example 8 of Table 2.
[0038]
Embodiment 9
Eop treatment was performed in the same manner as in Example 7, except that sodium hydrogen carbonate was used as a pH buffer and 0.9% was added. The results are shown in Example 9 of Table 2.
[0039]
[Comparative Example 3]
A bleaching treatment was carried out in the same manner as in Example 7, except that no pH buffer was added. The results of the end pH, kappa number, and pulp brightness are shown in Comparative Example 3 in Table 2.
[0040]
[Table 2]
[0041]
The E processing is compared between Examples 1 to 3 and Comparative Example 1. In Examples 1, 2, and 3, sodium tetraborate, disodium hydrogen phosphate, and sodium bicarbonate were added to a pH buffer, respectively, and the end pH was 12.1, 11.9, and 12.0, respectively. And within the appropriate pH range, each Kappa number is 4.0, 4.1, 4.0, and each pulp brightness is 60.8, 60.8, 60.7. On the other hand, the end pH of Comparative Example 1 in which no pH buffer was added was 11.1, which was lower than Examples 1 to 3. The kappa number is 4.2, which is higher than Examples 1-3, and the pulp brightness is 60.5, which is lower than Examples 1-3. Examples 4-6 and Comparative Example 2 are compared for Ep bleaching. In Examples 4, 5, and 6, sodium tetraborate, disodium hydrogen phosphate, and sodium hydrogen carbonate were added to a pH buffer, respectively, and the end pHs were 12.0, 11.9, and 12.0, respectively. And within the appropriate pH range, each Kappa number is 3.3, 3.4, 3.3, and each pulp brightness is 76.9, 76.1, 77.5. On the other hand, the end pH of Comparative Example 2 in which no pH buffer was added was 10.7, which was lower than Examples 4 to 6. The kappa number is 3.7, which is higher than Examples 4 to 6, and the pulp brightness is 75.2, which is lower than Examples 4 to 6. Examples 7-9 and Comparative Example 3 are compared for Eop bleaching. In Examples 7, 8, and 9, sodium tetraborate, disodium hydrogen phosphate, and sodium hydrogen carbonate were added to a pH buffer, respectively, and the end pHs were 11.8, 11.7, and 11.8, respectively. And within the appropriate pH range, each Kappa number is 3.0, 2.9, 3.0, and each pulp brightness is 78.9, 79.1, 79.3. On the other hand, the end pH of Comparative Example 3 in which no pH buffer was added was 10.5, which was lower than Examples 7 to 9. The kappa number is 3.2, which is higher than Examples 7 to 9, and the pulp brightness is 77.3, which is lower than Examples 7 to 9.
[0042]
【The invention's effect】
In a reaction stage in which pulp having a kappa number of 4 to 9 is treated under alkaline conditions during a multi-stage bleaching process of chemical pulp, sodium hydroxide and a specific pH buffer are added to adjust the pH at the end of the reaction to 10.0 to By adjusting the ratio to 12.0, the efficiency of delignification and bleaching in the reaction stage can be increased.