JP2004043479A - 経鼻吸収用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 経口投与製剤に比較して、副作用の発現率が極めて低いものであって、鎮痛効果の発現が速やかで、そのうえ、バイオアベイラビリティの点で優れた、経鼻投与用組成物を提供すること。
【解決手段】 オピオイド鎮痛剤の有効投与量を、平均粒子径500μm以下の炭酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウムからなるキャリヤに均一に分散、付着結合させた経鼻吸収用組成物であり、より好ましくは、オピオイド鎮痛剤が塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、塩酸モルヒネ/硫酸アトロピン配合製剤、フェンタニル、クエン酸フェンタニル、ドロペリドール/クエン酸フェンタニル配合製剤、塩酸ブプレノルフィンであり、キャリヤが炭酸カルシウムである経鼻用吸収用組成物である。
【選択図】 図1
【解決手段】 オピオイド鎮痛剤の有効投与量を、平均粒子径500μm以下の炭酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウムからなるキャリヤに均一に分散、付着結合させた経鼻吸収用組成物であり、より好ましくは、オピオイド鎮痛剤が塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、塩酸モルヒネ/硫酸アトロピン配合製剤、フェンタニル、クエン酸フェンタニル、ドロペリドール/クエン酸フェンタニル配合製剤、塩酸ブプレノルフィンであり、キャリヤが炭酸カルシウムである経鼻用吸収用組成物である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、経鼻吸収用組成物に関し、組成物中に含有されるオピオイド鎮痛剤についての生体内吸収性に優れ、副作用の少ない経鼻吸収用組成物、ならびに経鼻吸収用鎮痛製剤に関する。
オピオイド受容体に特異的に結合して、中枢性に強い鎮痛作用を発現するオピオイド鎮痛剤の鎮痛効果は極めて強力なものであり、このオピオイド鎮痛剤が奏効する痛みとしては、術後疼痛と、癌性疼痛がある。オピオイド鎮痛剤は、麻薬および向精神薬取締法の規制対象である麻薬とそれ以外の非麻薬に分類されているが、この分類は、運用の際の精神的、肉体的依存形成の強さに由来するものであり、オピオイド鎮痛剤の有する薬理作用や、臨床効果の違いによるものではない(非特許文献1)。
オピオイド鎮痛剤は、中枢神経系に多く存在するオピオイド受容体(現在サブタイプとしてμ、κ、δ、σ、εなどが知られている)にアゴニストとして作用し、強い鎮痛効果を発揮する。オピオイド鎮痛剤には種々の種類があるが、それぞれの薬理学的特性は、オピオイド受容体に対する親和性と、結合した際の固有活性の違いに由来する。例えば、麻薬に分類されるモルヒネは、μ受容体の完全作動薬であるが、非麻薬に分類されるブプレノルフィンはμ受容体部分作動薬であって、かつκ受容体への親和性を持つため、モルヒネよりも耐性形成が弱いという特徴を有する。オピオイド鎮痛剤の鎮痛効果は極めて強力なものであり、その副作用に対する理解と対策を怠らなければ、その使用を躊躇する理由はないものといえる。
ところで、末期癌患者の約70%の主訴が癌性疼痛であり、この痛みを有効に取り去るために、古くからオピオイド鎮痛剤のなかでも、麻薬系鎮痛剤である塩酸モルヒネが投与されてきた。また、最近では癌患者の疼痛コントロールが系統的に施行されるようになってきており、近年、医療用モルヒネ製剤として、経口徐放性製剤の使用が一般的になってきている。
これらの経口徐放製剤としては、例えば、1日2回の経口投与による硫酸モルヒネ徐放製剤(販売名:MSコンチン(登録商標))、あるいは1日1回の経口投与による硫酸モルヒネ徐放製剤(販売名:カディアン(登録商標))があり、これら製剤の投与で、平均除痛率が80%前後得られており、末期癌患者の癌性疼痛による苦しみの緩和が行われている。
しかしながら、これら経口徐放製剤においても全く問題点がない訳ではなく、MSコンチン、カディアン共に、副作用の発現率は約50%以上にも達している。この副作用は、主に消化器系の副作用であり、例えば便秘、嘔気、嘔吐、口渇、食欲不振等が挙げられ、その他に、中枢系の副作用として眠気、錯乱等が挙げられる(非特許文献2)。
また、癌性疼痛治療のための鎮痛処方としては、1日中緩やかな波を伴って持続する痛みを抑えるための「基礎となる鎮痛薬」だけでは患者の満足を得ることは困難で、ときとして襲ってくる突発痛(incident pain)に対する「臨時の速効性の鎮痛薬」を、患者の判断で即刻服用できるように別途処方して持参させておくことがきわめて大切となる。突発痛が次々に押し寄せてくるような時期(この後で痛みが一段階増強するのでbreakthrough painともいう)はもちろん、「基礎となる鎮痛薬」だけでほぼ全日にわたって痛みが緩和できているときも、患者は突発痛がいつ襲ってくるかと恐れているので、「臨時の速効性の鎮痛薬」は別途処方して持たせておくことが大切である。このように癌性疼痛治療、とくに侵害受容性疼痛を主たる発痛メカニズムとする癌疼痛のオピオイド療法は、長時間安定した鎮痛効果を発揮するオピオイド製剤の定期的な服用と、速効性のオピオイド製剤の頓服の組み合わせからなると考えればよく、このどちらが欠けても、オピオイド療法は成り立たないと考えるべきとされている(非特許文献3)。
世界保健機構(WHO)が提唱する「癌の痛みからの解放」によれば、癌性疼痛の治療の目標は、第一に、痛みに妨げられずに夜間の良眠を確保することであり、第二に、日中の安静時の痛みを消失させることであり、第三に、体動時の痛みを消失させることであるとされている。その点からみれば、一般的に、鎮痛剤の投与は、経口投与が基本とされ、鎮痛効果を発揮する有効血中濃度の維持に努め、経口投与できない場合には、経直腸投与、皮下投与あるいは経静脈投与が行われている。特に有効血中濃度の維持を図るため、定期的に鎮痛剤を投与するが、モルヒネの初期投与における副作用は、激しい悪心と嘔吐であり、この初回投与時に悪心・嘔吐に悩まされると、モルヒネの継続投与が困難となることが散見されている。
また、消化器系の癌の場合には、経口投与が困難であることが多く、非経口投与が行われている。しかし、経直腸投与(坐剤)には抵抗感のある患者が多く、また皮下投与あるいは経静脈投与の際の注射には痛みを伴ううえ、繰り返し行われる注射による投与部位での筋萎縮等の問題もあり、これらの問題を有しないオピオイド鎮痛剤の開発の要求が高い。しかしながら、悪心・嘔吐等の副作用は、主作用の鎮痛効果の有用性に比較してあまり問題視されず、これまで副作用を軽減させたオピオイド鎮痛剤については積極的な製剤開発検討が行われてきていないのが現状である。
ところで本発明者は、これまでに、経口投与が困難である薬物の投与ルートの検討を行ってきており、その方法のひとつとして、経鼻投与による検討を加えてきている。すなわち、経鼻投与における投与部位である鼻腔では、その鼻粘膜固有層には静脈叢が発達しており、薬物はこの鼻粘膜を通して吸収されて、全身循環系に入ることを確認してきている。
さらに本発明者は、かかる経鼻投与方法が、投与される薬物の副作用の発現を軽減させる方法として、極めて優れた方法であることを確認し、生体内吸収性が良く、また、投与に当たって鼻腔内への刺激性のない経鼻投与製剤用のキャリヤを種々提案してきている。
例えば、経鼻吸収のための薬物用キャリヤとして、多数の空隙を有し、表面積が0.1〜0.4m2/g、比重が約0.5〜1.0、結晶粒子径が15〜300μmの範囲にあるキャリヤを提案している(特許文献1)。当該キャリヤは経鼻投与された場合に、肺に到達することなく、かつ鼻粘膜に付着後その自重によって落下しないため、キャリヤに付着させた薬物の生体内吸収性が良好である旨記載されている。また、平均粒子径250μm以下の多価金属キャリヤに分子量40000以下の生理活性薬物を付着させた経鼻吸収用組成物についても開示している(特許文献2)が、本発明の薬剤であるオピオイド鎮痛剤については一切記載されていない。
また、上記特許において、種々の多価金属化合物キャリヤが開示されているが、そのうち、炭酸カルシウムまたはリン酸カルシウムは、オピオイドの付着性、溶出性、滞留性等の点よりオピオイド経鼻製剤用キャリヤとして特に好ましいことは開示されていない。好ましいと考えられていた乳酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等は、鼻腔投与時に、鼻腔内の水分により溶解する、または油状を呈する、鼻腔粘膜への刺激性が強い等の理由により経鼻製剤用キャリヤとして適していないことが判明した。
今回、本発明者は、オピオイド鎮痛剤の副作用を軽減させた投与手段としての経鼻投与方法に着目し、副作用発現の頻度の高い、塩酸モルヒネに代表されるオピオイド鎮痛剤について、経鼻投与することにより副作用の軽減が図れるのではないかと考え、経鼻投与製剤を調製し、検討を加えた。
その結果、驚くべきことに、オピオイド鎮痛剤を特定の多価金属化合物キャリヤに付着させて経鼻投与することにより、経口投与したとき以上の生体内吸収性が得られること、さらには、経口投与に比較して、生体内吸収性の立ち上がりがよく、また生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)が優れたものであることを見出した。
また、オピオイド鎮痛剤のなかには、経鼻投与により静脈内投与に匹敵する生体内吸収性が認められることも判明した。この経鼻投与による高い生体内吸収性が得られる事実は、投与量の減少をもたらすものであり、必然的に、副作用発現の頻度を軽減させることが可能となる。特に、経鼻投与による生体吸収性の立ち上がりのよさは、癌性疼痛の持続痛だけでなく突発痛にも適用可能であることから、激しい疼痛に悩まされる癌患者にとって極めて有益なものであるといえる。
その結果、驚くべきことに、オピオイド鎮痛剤を特定の多価金属化合物キャリヤに付着させて経鼻投与することにより、経口投与したとき以上の生体内吸収性が得られること、さらには、経口投与に比較して、生体内吸収性の立ち上がりがよく、また生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)が優れたものであることを見出した。
また、オピオイド鎮痛剤のなかには、経鼻投与により静脈内投与に匹敵する生体内吸収性が認められることも判明した。この経鼻投与による高い生体内吸収性が得られる事実は、投与量の減少をもたらすものであり、必然的に、副作用発現の頻度を軽減させることが可能となる。特に、経鼻投与による生体吸収性の立ち上がりのよさは、癌性疼痛の持続痛だけでなく突発痛にも適用可能であることから、激しい疼痛に悩まされる癌患者にとって極めて有益なものであるといえる。
したがって、本発明は、これまでに提案されている経口投与製剤に比較して、副作用の発現率が極めて低いものであって、鎮痛効果の発現が速やかで、そのうえ、バイオアベイラビリティの点で優れた、経鼻投与用のオピオイド鎮痛剤含有製剤組成物、ならびに経鼻投与用鎮痛製剤を提供することを課題とする。
かかる課題を解決するための基本的態様にかかる請求項1に記載の本発明は、オピオイド鎮痛剤の有効投与量を、平均粒子径500μm以下である炭酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウムからなるキャリヤに均一に分散、付着結合させた経鼻吸収用組成物である。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の発明において、オピオイド鎮痛剤が、麻薬系または非麻薬系のオピオイド鎮痛剤である経鼻吸収用組成物である。
すなわち本発明は、本発明者がこれまで提案してきた経鼻吸収用のキャリヤである多価金属化合物キャリヤのなかでも、炭酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウムを選択し、これに麻薬系または非麻薬系のオピオイド鎮痛剤を均一に分散、付着させ、経鼻投与することにより、良好な生体内吸収性を確保した点に一つの特徴を有するものである。
なお、麻薬系オピオイド鎮痛剤とは、上記のオピオイド鎮痛剤のなかでも麻薬および向精神薬取締法の規制を受ける薬剤であって、いわゆる天然麻薬系、合成麻薬系のいずれでもよい。また非麻薬系オピオイド鎮痛剤とは、上記麻薬系鎮痛剤と比較して、連用した際の身体的・精神的依存が少なく、習慣性が弱い薬剤であり、鎮痛効果を有する薬剤をいう。
より具体的な請求項3に記載の本発明は、オピオイド鎮痛剤が、アヘン、アヘン/トコン配合製剤、モルヒネ、モルヒネ/アトロピン配合製剤、アヘンアルカロイド製剤、アヘンアルカロイド/アトロピン配合製剤、アヘンアルカロイド/スコポラミン配合製剤、エチルモルヒネ、オキシコドン、オキシコドン/アトロピン配合製剤、ペチジン、ペチジン/レバロルファン配合製剤、コデイン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ドロペリドール/フェンタニル配合製剤、オキシメテバナール、レボルファノール、プロポキシフェン、メサドン、ヒドロモルホン、メペリジンから選ばれる麻薬系オピオイド鎮痛剤、あるいはブプレノルフィン、ブトルファノール、ペンタゾシン、ペンタゾシン/ナロキソン配合製剤、デゾシン、トラマドール、エプタゾシンから選ばれる非麻薬系オピオイド鎮痛剤のいずれか、またはその薬学的に許容される塩である経鼻吸収用組成物である。
ここにいう薬学的に許容される塩としては、薬学的に許容できる酸を作用させた酸付加塩が好ましく、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸等の無機塩との塩;シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、乳酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸との塩が好ましい。より好ましいものとしては、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、酒石酸、クエン酸との塩である。
したがって、さらに具体的な請求項4に記載の本発明は、オピオイド鎮痛剤が、アヘン、アヘン/トコン配合製剤、塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、塩酸モルヒネ/硫酸アトロピン配合製剤、塩酸アヘンアルカロイド製剤、塩酸アヘンアルカロイド/硫酸アトロピン配合製剤、塩酸アヘンアルカロイド/臭化水素酸スコポラミン配合製剤、塩酸エチルモルヒネ、複方オキシコドン(塩酸オキシコドン/塩酸ヒドロコルタニン)、複方オキシコドン/硫酸アトロピン配合製剤、塩酸ペチジン、塩酸ペチジン/酒石酸レバロルファン配合製剤、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、フェンタニル、クエン酸フェンタニル、ドロペリドール/クエン酸フェンタニル配合製剤、オキシメテバナール、レボルファノール、プロポキシフェン、メサドン、ヒドロモルホン、メペリジンから選ばれる麻薬系オピオイド鎮痛剤、あるいは塩酸ブプレノルフィン、酒石酸ブトルファノール、ペンタゾシン、塩酸ペンタゾシン、塩酸ペンタゾシン/ナロキソン配合製剤、デゾシン、塩酸トラマドール、臭化水素酸エプタゾシンから選ばれる非麻薬系オピオイド鎮痛剤である経鼻吸収用組成物である。
そのなかでも、もっとも好ましい具体的な請求項5に記載の本発明は、オピオイド鎮痛剤が塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、塩酸モルヒネ/硫酸アトロピン配合製剤、フェンタニル、クエン酸フェンタニル、ドロペリドール/クエン酸フェンタニル配合製剤、塩酸ブプレノルフィンから選ばれるいずれかであって、キャリヤが炭酸カルシウムであることを特徴とする経鼻吸収用組成物である。
すなわち、本発明は、特異的経鼻吸収用のキャリヤを使用して、そのキャリヤの平均粒子径を500μm以下、好ましくは250μm以下、さらに好ましくは100μm以下、もっとも好ましくは20〜100μm程度の微粉末状〜微結晶状のものとし、そのキャリヤが有する多孔質性を利用してオピオイド鎮痛剤を均一に分散、付着結合させた場合に、経鼻投与により、鼻粘膜を通して極めて良好な生体内吸収性を示す点にまたひとつの特徴を有するものである。
したがって請求項6に記載の本発明は、上記した経鼻吸収用組成物において、そのキャリヤの平均粒子径が20〜100μmである経鼻吸収用組成物である。
以下に、本発明を、より詳細に説明していく。
本発明は、上記したように、基本的には、オピオイド鎮痛剤の有効投与量を、平均粒子径500μm以下である炭酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウムからなるキャリヤに均一に分散、付着結合させた経鼻吸収用組成物である。
本発明は、上記したように、基本的には、オピオイド鎮痛剤の有効投与量を、平均粒子径500μm以下である炭酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウムからなるキャリヤに均一に分散、付着結合させた経鼻吸収用組成物である。
この場合に使用されるオピオイド鎮痛剤としては、臨床的に使用されているオピオイド鎮痛剤であり、オピオイド受容体に作用する麻薬系または非麻薬系の鎮痛剤である。これらの鎮痛剤は、主として、癌末期患者における癌性疼痛の緩和のために経口製剤、あるいは注射製剤として使用されているものである。
本発明で使用されるこのようなオピオイド鎮痛剤としては、具体的には、アヘン、アヘン/トコン配合製剤、モルヒネ、モルヒネ/アトロピン配合製剤、アヘンアルカロイド製剤、アヘンアルカロイド/アトロピン配合製剤、アヘンアルカロイド/スコポラミン配合製剤、エチルモルヒネ、オキシコドン、オキシコドン/アトロピン配合製剤、ペチジン、ペチジン/レバロルファン配合製剤、コデイン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ドロペリドール/フェンタニル配合製剤、オキシメテバナール、レボルファノール、プロポキシフェン、メサドン、ヒドロモルホン、メペリジンから選ばれる麻薬系オピオイド鎮痛剤、あるいはブプレノルフィン、ブトルファノール、ペンタゾシン、ペンタゾシン/ナロキソン配合製剤、デゾシン、トラマドール、エプタゾシンから選ばれる非麻薬系オピオイド鎮痛剤のいずれか、またはその薬学的に許容される塩を挙げることができる。
より具体的なオピオイド鎮痛剤としては、アヘン、アヘン/トコン配合製剤、塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、塩酸モルヒネ/硫酸アトロピン配合製剤、塩酸アヘンアルカロイド製剤、塩酸アヘンアルカロイド/硫酸アトロピン配合製剤、塩酸アヘンアルカロイド/臭化水素酸スコポラミン配合製剤、塩酸エチルモルヒネ、複方オキシコドン(塩酸オキシコドン/塩酸ヒドロコルタニン)、複方オキシコドン/硫酸アトロピン配合製剤、塩酸ペチジン、塩酸ペチジン/酒石酸レバロルファン配合製剤、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、フェンタニル、クエン酸フェンタニル、ドロペリドール/クエン酸フェンタニル配合製剤、オキシメテバナール、レボルファノール、プロポキシフェン、メサドン、ヒドロモルホン、メペリジンから選ばれる麻薬系オピオイド鎮痛剤、あるいは塩酸ブプレノルフィン、酒石酸ブトルファノール、ペンタゾシン、塩酸ペンタゾシン、塩酸ペンタゾシン/ナロキソン配合製剤、デゾシン、塩酸トラマドール、臭化水素酸エプタゾシンから選ばれる非麻薬系オピオイド鎮痛剤のいずれかを挙げることができる。
上記したオピオイド鎮痛剤は、これまで経口製剤、あるいは注射製剤、坐薬製剤として使用されているものであるが、いままで微粉末キャリヤを使用した経鼻投与による使用検討は全くなされていなかったものである。殊に、オピオイド鎮痛剤として、連続投与による習慣性、耽溺性等の発現が問題視され、その使用が大きく制限されている関係上、製剤化検討が困難であった薬物でもある。
一方、本発明が提供する経鼻吸収用組成物において使用されるキャリヤは、炭酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウムである。従来から検討されている鼻腔内投与製剤におけるキャリヤは、有効成分の生体内吸収性のためには、水溶性のキャリヤがよいとされていた。しかしながら、本発明者の知見によれば、必ずしも水溶性のキャリヤが良いものとは認められず、本発明で使用する炭酸カルシウムまたはリン酸カルシウムの如く水に溶解しないで鼻粘膜に付着するキャリヤが、担持する有効成分であるオピオイド鎮痛剤を効率的に放出し、鼻粘膜より生体内吸収を確保し得ることが判明した。
このようなキャリヤとして炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、乳酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等をあげることができる。しかしながら、そのなかでも、乳酸カルシウムは鼻腔粘膜上で溶解してしまい、また、ステアリン酸カルシウムは鼻腔粘膜上で油状物となり、キャリヤとして好ましいものではなかった。さらにまた、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムは、刺激性が強く、鼻腔内投与製剤のキャリヤとして使用するには若干問題があった。
これに対して本発明で使用する炭酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウムは、オピオイド鎮痛剤との親和性が良好なものであり、オピオイド鎮痛剤のキャリヤへの付着性、およびキャリヤからの放出性がきわめて良好なものであり、また鼻腔粘膜への刺激もない点で特に優れたものであることが判明した。そのなかでも、特に炭酸カルシウムが好ましい。
本発明で使用するキャリヤであるこれら炭酸カルシウムまたはリン酸カルシウムは、1種単独で使用してもよいし、また併用して用いてもよい。
本発明で使用するキャリヤであるこれら炭酸カルシウムまたはリン酸カルシウムは、1種単独で使用してもよいし、また併用して用いてもよい。
また、本発明で使用するキャリヤは、その平均粒子径が500μm以下であり、好ましくは250μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下であり、そのなかでも20〜100μmの範囲にあるものが、特に好ましいことが判明した。
したがって、具体的な態様としての本発明は、オピオイド鎮痛剤を平均粒子径が20〜100μmの炭酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウムであるキャリヤに均一に分散、付着結合させた経鼻吸収投与用麻薬製剤である。
そのなかでも、より具体的な態様としての本発明は、オピオイド鎮痛剤である塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、塩酸モルヒネ/硫酸アトロピン配合製剤、フェンタニル、クエン酸フェンタニル、ドロペリドール/クエン酸フェンタニル配合製剤、塩酸ブプレノルフィンであって、キャリヤが炭酸カルシウムであることを特徴とする経鼻吸収用組成物である。
より具体的な態様としては、(1)オピオイド鎮痛剤としてモルヒネまたはその酸付加塩を平均粒子径が20〜100μmの炭酸カルシウムであるキャリヤに均一に分散、付着結合させた経鼻吸収用組成物、(2)オピオイド鎮痛剤としてブプレノルフィンまたはその酸付加塩を平均粒子径が20〜100μmの炭酸カルシウムであるキャリヤに均一に分散、付着結合させた経鼻吸収用組成物、(3)オピオイド鎮痛剤としてフェンタニルまたはその酸付加塩を平均粒子径が20〜100μmの炭酸カルシウムであるキャリヤに均一に分散、付着結合させた経鼻吸収用組成物である。本発明が提供する経鼻吸収用組成物は、術後疼痛または癌性疼痛等の疼痛の治療に有効であり、特に癌性疼痛の突発痛および/または持続痛の治療に有効である。
本発明が提供する組成物に含有されるオピオイド鎮痛剤の有効投与量としての使用量は、選択すべき個々の物質、処理すべき対象疾患、所望の投与回数、必要とする個々の治療効果等によって異なる。本発明の組成物を鼻腔内投与により使用する場合には、例えば、該活性物質を含有している製剤の治療効果を、既知の他の製剤とのバイオアベイラビリティとの比較において決定することができる。
一般的に、オピオイド鎮痛剤を経口投与する場合には、例えば塩酸モルヒネの場合には、その投与量は、10、30および60mg/錠である。これに対し、後述する試験例に記載のとおり、本発明が提供する経鼻吸収用組成物を用いて経鼻投与した場合には、経口投与した場合よりも生体内吸収性の立ち上がりよく、またバイオアベイラビリティが優れたものであった。したがって、本発明にあっては、少なくとも1回の投与量として、上記の経口投与における含有量を基準として、それより少ない量を含有させることが可能となる。
したがって、本発明の組成物を製造させる場合において、例えばオピオイド鎮痛剤の含有量は、製剤重量により異なるが、たとえば製剤重量100%あたり0.01〜50%、好ましくは0.02〜40%程度配合させるのが良い。
また、本発明の経鼻吸収用組成物を構成するキャリヤである炭酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウムの配合量も、製剤重量により異なるが、たとえば製剤重量100%あたり50〜99.99%、好ましくは60〜99.98%程度配合させることにより、良好な経鼻吸収が得られる。
なお、本発明が提供する経鼻吸収用組成物にあっては、製剤としての物性、外観、あるいは臭い等を改良するために、必要に応じて公知の滑沢剤、結合剤、希釈剤、着色剤、保存剤、防腐剤、矯臭剤等の添加剤を添加することもできる。そのような滑沢剤としては、例えばタルク、ステアリン酸およびその塩、ワックス等;結合剤としては、例えばコメ粉等に代表されるデンプン、デキストリン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性高分子化合物;希釈剤としては、例えばデンプン、乳糖等;着色剤としては、例えば赤色2号等;保存剤としては、例えばアスコルビン酸等;防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル等;矯臭剤としては、例えばメントール等を挙げることができる。
そのなかでも、結合剤としては、例えばコメ粉に代表されるデンプン、デキストリン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性高分子化合物を一緒に配合するのがより好ましい。このコメ粉に代表されるデンプン、デキストリン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性高分子化合物は、本発明が提供する経鼻投与製剤におけるキャリヤとオピオイド系鎮痛剤との結合を良好ならしめ、さらに製造工程中での凍結乾燥時の突沸防止剤として作用するものでもある。
本発明が提供するオピオイド鎮痛剤の有効投与量を含有する経鼻吸収用組成物を得るには、本発明の特殊なキャリヤである、平均粒子径500μm以下である粉末ないし結晶状の生理学的に許容されるキャリヤと、有効成分であるオピオイド鎮痛剤とを混合することにより得ることができる。
具体的には、例えばこの混合は、乳鉢による混合のように、圧力や剪断力を加えながら行なうことができる。
具体的には、例えばこの混合は、乳鉢による混合のように、圧力や剪断力を加えながら行なうことができる。
この場合、本発明の経鼻吸収用組成物の製造において使用するキャリヤにあっては、その平均粒子径250μm以下、好ましくは100μm以下、更に好ましくは20〜100μmであるのがよい。一方、オピオイド鎮痛剤にあっても、できるだけ微粉末であることが好ましく、その平均粒子径は、通常20μm以下、好ましくは10μm以下であるのがよい。
より詳細には、オピオイド鎮痛剤の有効投与量を、結合剤としてコメ粉等のデンプンを例えば0.1〜10%、好ましくは1〜5%程度含有する水溶液と混合し、この混合液を凍結乾燥する。次いで、この凍結乾燥粉末を、本発明のキャリヤと練合湿度55%程度にて練合し、目的とするキャリヤにオピオイド鎮痛剤が均質に付着結合した微粉末としての鼻腔内投与組成物を得る。
なお、製造方法は上記に限定されるものではなく、種々の変形、応用が可能である。
かくして得られた経鼻吸収用組成物は、使用前(例えば、鼻腔内への投与前)における活性物質の損失を防止するため、low−greaseタイプのカプセルに充填をした後、適当な包装、好ましくは密封包装とすることが可能である。かかる密封包装としては、ブリスター包装−アルミニウム包装を組み合わせるのが良い。この場合の全工程の湿度は、60%以下が好ましい。
かくして得られた経鼻吸収用組成物は、使用前(例えば、鼻腔内への投与前)における活性物質の損失を防止するため、low−greaseタイプのカプセルに充填をした後、適当な包装、好ましくは密封包装とすることが可能である。かかる密封包装としては、ブリスター包装−アルミニウム包装を組み合わせるのが良い。この場合の全工程の湿度は、60%以下が好ましい。
以下に、本発明の経鼻吸収用組成物の特異的効果を、試験例にて示す。
試験例1:
オピオイド鎮痛剤として塩酸モルヒネを選び、キャリヤとして炭酸カルシウムを選び、本発明の経鼻吸収用組成物を調製した。詳細には、塩酸モルヒネ(塩酸モルヒネ末「三共」を使用)2.0mg、炭酸カルシウム37.2mgおよびコメ粉0.4mgを混合、攪拌後、5分間放置し、凍結乾燥用の精製水を適量添加し、練合し、凍結乾燥機(EVAC社製)にて約−40℃の条件下で凍結乾燥させた。凍結乾燥後、約4時間をかけて25℃にウォームアップさせ、そこに滑沢剤としてステアリン酸カルシウム0.4mgを添加した。製剤総重量は40.0mgであった。
なお、キャリヤとしての炭酸カルシウムは、その粒子径が約62μmのものを使用した。
オピオイド鎮痛剤として塩酸モルヒネを選び、キャリヤとして炭酸カルシウムを選び、本発明の経鼻吸収用組成物を調製した。詳細には、塩酸モルヒネ(塩酸モルヒネ末「三共」を使用)2.0mg、炭酸カルシウム37.2mgおよびコメ粉0.4mgを混合、攪拌後、5分間放置し、凍結乾燥用の精製水を適量添加し、練合し、凍結乾燥機(EVAC社製)にて約−40℃の条件下で凍結乾燥させた。凍結乾燥後、約4時間をかけて25℃にウォームアップさせ、そこに滑沢剤としてステアリン酸カルシウム0.4mgを添加した。製剤総重量は40.0mgであった。
なお、キャリヤとしての炭酸カルシウムは、その粒子径が約62μmのものを使用した。
雄性アカゲザル(体重3.35〜4.05kg)を1群3匹用い、上記の組成物40.0mgを経鼻投与(単回)し、投与後0分、5、10、20、30、60、120および240分後に橈側皮静脈または伏在静脈から採血(約2mL)し、血漿中のモルヒネ量(塩酸モルヒネとして)を、液体クロマトグラフィー−質量分析システム(LC−MS/MS)法により測定した。
経鼻投与には、(株)ユニシアジェックス製の粉末経鼻吸収剤投与器具(ジェットライザー猿用)を使用した。
経鼻投与には、(株)ユニシアジェックス製の粉末経鼻吸収剤投与器具(ジェットライザー猿用)を使用した。
比較例1として、塩酸モルヒネ(塩酸モルヒネ末「三共」を使用)2.0mgをカプセルに封入し、経口投与し、同様に採血し、血漿中のモルヒネ量(塩酸モルヒネとして)を、LC−MS/MS法により測定した。
これらの結果を、表1にまとめて示した。
これらの結果を、表1にまとめて示した。
血漿中モルヒネ濃度(塩酸モルヒネとして)単位:ng/mL
注:−は、検出限界(4.3ng)以下である。
試験例2および3:
オピオイド鎮痛剤として塩酸モルヒネを選び、キャリヤとして炭酸カルシウムを選び、本発明の経鼻吸収用組成物を調製した。詳細な調製法は、上記試験例1に準じた。
試験例2の組成としては、塩酸モルヒネ2.0mg、炭酸カルシウム37.6mg、ステアリン酸カルシウム0.4mg(製剤総重量40.0mg)であり、試験例3の組成としては、試験例1の組成を4倍量とした塩酸モルヒネ8.0mg、炭酸カルシウム148.8mg、コメ粉1.6mg、ステアリン酸カルシウム1.6mg(製剤総重量160.0mg)であった。
なお、キャリヤとしての炭酸カルシウムは、その粒子径が約62μmのものを使用した。
オピオイド鎮痛剤として塩酸モルヒネを選び、キャリヤとして炭酸カルシウムを選び、本発明の経鼻吸収用組成物を調製した。詳細な調製法は、上記試験例1に準じた。
試験例2の組成としては、塩酸モルヒネ2.0mg、炭酸カルシウム37.6mg、ステアリン酸カルシウム0.4mg(製剤総重量40.0mg)であり、試験例3の組成としては、試験例1の組成を4倍量とした塩酸モルヒネ8.0mg、炭酸カルシウム148.8mg、コメ粉1.6mg、ステアリン酸カルシウム1.6mg(製剤総重量160.0mg)であった。
なお、キャリヤとしての炭酸カルシウムは、その粒子径が約62μmのものを使用した。
試験例1で使用した雄性アカゲザル(体重3.35〜4.05kg)を、試験例2では1群3匹、試験例3では1群2匹を用い、上記の組成物を経鼻投与(単回)し、投与後0分、5、10、20、30、60、120および240分後に橈側皮静脈または伏在静脈から採血(約2mL)し、血漿中のモルヒネ量(塩酸モルヒネとして)を、LC−MS/MS法により測定した。
経鼻投与には、(株)ユニシアジェックス製の粉末経鼻吸収剤投与器具(ジェットライザー猿用)を使用した。
これらの結果を、表2にまとめて示した。
経鼻投与には、(株)ユニシアジェックス製の粉末経鼻吸収剤投与器具(ジェットライザー猿用)を使用した。
これらの結果を、表2にまとめて示した。
血漿中モルヒネ濃度(塩酸モルヒネとして)単位:ng/mL
上記で行った試験例1〜3の各種の血漿中濃度推移から線形最小二乗法を用いたモデルによらない方法(残差法)により血漿中濃度推移の消失相の消失速度定数(Kel)を算出し、半減期(T1/2)は、T1/2=Ln(2)/Kelより求めた。また最高血中濃度(Cmax)は実測値より求め、血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)は投与時間tまでは台形法により得られた値として算出した。これらの薬物動態パラメーター(Pharmacokinetic parameter)の平均値を比較すると、下記表3に記載のようにまとめられる。
また、試験例1〜3および比較例で得られた血漿中モルヒネ濃度の推移を、時間の経緯と共にグラフ化したものを図1として示した。
また、試験例1〜3および比較例で得られた血漿中モルヒネ濃度の推移を、時間の経緯と共にグラフ化したものを図1として示した。
薬物動態パラメーター(Pharmacokinetic parameter)
上記した表1〜表3に示した結果、および図1に示した結果から明らかなように、本発明の経鼻吸収用組成物は、投与後5分ないし10分において速やかな吸収が得られ、ヒトの有効鎮痛血中濃度とされる10〜20ng/mL以上の血中濃度が、持続的に得られていることが確認された。
さらに本試験例1〜3では、鎮痛、鎮静効果をみるために、時間経過毎に動物の症状観察を行なうため、アカゲザルの皮膚と筋肉とをピンセットでつねり上げた時の反応を観察した。
試験例1の動物1、2については投与後30〜60分に、動物3については投与後60分に、ピンセットでつねり上げても無反応となり、鎮痛効果が得られたことが確認された。
上記の結果から、本発明の経鼻吸収用組成物の有用性が良く理解される。
さらに本試験例1〜3では、鎮痛、鎮静効果をみるために、時間経過毎に動物の症状観察を行なうため、アカゲザルの皮膚と筋肉とをピンセットでつねり上げた時の反応を観察した。
試験例1の動物1、2については投与後30〜60分に、動物3については投与後60分に、ピンセットでつねり上げても無反応となり、鎮痛効果が得られたことが確認された。
上記の結果から、本発明の経鼻吸収用組成物の有用性が良く理解される。
また、薬物動態パラメーターの比較からみれば、塩酸モルヒネ2mg経口投与に対して、同じ2mgの経鼻吸収用組成物の投与では、Cmaxで3〜4倍、AUCで約15〜20倍の吸収促進作用があることが判明した。
試験例4:
オピオイド鎮痛剤として塩酸ブプレノルフィンを選び、キャリヤとして炭酸カルシウムを選び、本発明の経鼻吸収用組成物を調製した。詳細には、メノウ乳鉢で粉砕し100メッシュで篩過した塩酸ブプレノルフィン(MACFARLAN SMITH社製)10.8mgおよび炭酸カルシウム1969.2mgを混合後、精製水を適量添加し、練合した。凍結乾燥機(共和真空技術社製)にて約−40℃の条件下で凍結乾燥させた。凍結乾燥後、約4時間をかけて25℃にウォームアップさせ、凍結乾燥試料1961.9mgを得た。そこに滑沢剤としてステアリン酸カルシウム19.6mgを添加した後、83メッシュで篩過した。得られた製剤総重量は1980.2mgであった。キャリヤとしての炭酸カルシウムは、その平均粒子径が約46μmのものを使用した。
なお、塩酸ブプレノルフィン10.8mgは、ブプレノルフィンとして10.0mgに相当する。
雄性カニクイザル(体重2.60〜3.00kg)を1群3匹用い、上記の組成物をブプレノルフィンとして0.1mg/kgの用量で経鼻投与(単回)し、投与後0分、10、30、60、120、240および480分後に橈側皮静脈または伏在静脈から採血(約2mL)し、血漿中のブプレノルフィン量を、液体クロマトグラフィー−質量分析システム(LC−MS/MS)法により測定した。
経鼻投与には、(株)ユニシアジェックス製の粉末経鼻吸収剤投与器具(ジェットライザー猿用)を使用した。
オピオイド鎮痛剤として塩酸ブプレノルフィンを選び、キャリヤとして炭酸カルシウムを選び、本発明の経鼻吸収用組成物を調製した。詳細には、メノウ乳鉢で粉砕し100メッシュで篩過した塩酸ブプレノルフィン(MACFARLAN SMITH社製)10.8mgおよび炭酸カルシウム1969.2mgを混合後、精製水を適量添加し、練合した。凍結乾燥機(共和真空技術社製)にて約−40℃の条件下で凍結乾燥させた。凍結乾燥後、約4時間をかけて25℃にウォームアップさせ、凍結乾燥試料1961.9mgを得た。そこに滑沢剤としてステアリン酸カルシウム19.6mgを添加した後、83メッシュで篩過した。得られた製剤総重量は1980.2mgであった。キャリヤとしての炭酸カルシウムは、その平均粒子径が約46μmのものを使用した。
なお、塩酸ブプレノルフィン10.8mgは、ブプレノルフィンとして10.0mgに相当する。
雄性カニクイザル(体重2.60〜3.00kg)を1群3匹用い、上記の組成物をブプレノルフィンとして0.1mg/kgの用量で経鼻投与(単回)し、投与後0分、10、30、60、120、240および480分後に橈側皮静脈または伏在静脈から採血(約2mL)し、血漿中のブプレノルフィン量を、液体クロマトグラフィー−質量分析システム(LC−MS/MS)法により測定した。
経鼻投与には、(株)ユニシアジェックス製の粉末経鼻吸収剤投与器具(ジェットライザー猿用)を使用した。
比較例として、塩酸ブプレノルフィンをブプレノルフィンとして0.1mg/kgの用量で静脈内投与し、同様に採血し、血漿中のブプレノルフィン量を、LC−MS/MS法により測定した。
また、ブプレノルフィン坐剤(レペタン坐剤:大塚製薬製造)を、ブプレノルフィンとして0.1mg/kgの用量で直腸内投与し、同様に採血し、血漿中のブプレノルフィン量を、LC−MS/MS法により測定した。
これらの結果を、以下の表4(試験例4:経鼻投与)、表5(比較例2:静脈内投与)および表6(比較例3:直腸内投与)にそれぞれ示した。また,それらの結果をグラフ化したものを図2および図3に示した。
また、ブプレノルフィン坐剤(レペタン坐剤:大塚製薬製造)を、ブプレノルフィンとして0.1mg/kgの用量で直腸内投与し、同様に採血し、血漿中のブプレノルフィン量を、LC−MS/MS法により測定した。
これらの結果を、以下の表4(試験例4:経鼻投与)、表5(比較例2:静脈内投与)および表6(比較例3:直腸内投与)にそれぞれ示した。また,それらの結果をグラフ化したものを図2および図3に示した。
血漿中ブプレノルフィン濃度(単位:ng/mL)
血漿中ブプレノルフィン濃度(単位:ng/mL)
血漿中ブプレノルフィン濃度(単位:ng/mL)
上記に示した表4〜表6の結果からも判明するように、本発明の経鼻投与製剤は、投与後5分ないし10分において速やかな吸収が得られ、市販されている塩酸ブプレノルフィンの坐薬製剤(レペタン坐剤)に比較して、極めて高い血中濃度を示すものであり、また、その血中濃度は静脈内投与に比較して約1/4程度のものであって、良好な生体内吸収性を示した。さらに、鎮痛に有効な血中濃度が長時間維持されることが確認された。
試験例5:
オピオイド鎮痛剤としてクエン酸フェンタニルを選び、キャリヤとして炭酸カルシウムを選び、本発明の経鼻吸収用組成物を調製した。詳細には、クエン酸フェンタニル2.073mgおよび炭酸カルシウム344.6mgを混合、攪拌後、5分間放置し、凍結乾燥用の精製水を適量添加し、練合し、凍結乾燥機(共和真空技術社製)にて約−40℃の条件下で凍結乾燥させた。凍結乾燥後、約4時間をかけて25℃にウォームアップさせ、そこに滑沢剤としてステアリン酸カルシウム3.503mgを添加した。製剤総重量は350.2mgであった。
なお、キャリヤとしての炭酸カルシウムは、その粒子径が約65μmのものを使用した。
雄性カニクイザル(体重2.60〜3.30kg)を1群3匹用い、上記の組成物をフェンタニルとして0.03mg/kgの用量で経鼻投与(単回)し、投与後0分、10、30、60、120、240および480分後に橈側皮静脈または伏在静脈から採血(約2mL)し、血漿中のフェンタニル量を、液体クロマトグラフィー−質量分析システム(LC−MS/MS)法により測定した。
また、経鼻投与には、(株)ユニシアジェックス製の粉末経鼻吸収剤投与器具(ジェットライザー猿用)を使用した。
オピオイド鎮痛剤としてクエン酸フェンタニルを選び、キャリヤとして炭酸カルシウムを選び、本発明の経鼻吸収用組成物を調製した。詳細には、クエン酸フェンタニル2.073mgおよび炭酸カルシウム344.6mgを混合、攪拌後、5分間放置し、凍結乾燥用の精製水を適量添加し、練合し、凍結乾燥機(共和真空技術社製)にて約−40℃の条件下で凍結乾燥させた。凍結乾燥後、約4時間をかけて25℃にウォームアップさせ、そこに滑沢剤としてステアリン酸カルシウム3.503mgを添加した。製剤総重量は350.2mgであった。
なお、キャリヤとしての炭酸カルシウムは、その粒子径が約65μmのものを使用した。
雄性カニクイザル(体重2.60〜3.30kg)を1群3匹用い、上記の組成物をフェンタニルとして0.03mg/kgの用量で経鼻投与(単回)し、投与後0分、10、30、60、120、240および480分後に橈側皮静脈または伏在静脈から採血(約2mL)し、血漿中のフェンタニル量を、液体クロマトグラフィー−質量分析システム(LC−MS/MS)法により測定した。
また、経鼻投与には、(株)ユニシアジェックス製の粉末経鼻吸収剤投与器具(ジェットライザー猿用)を使用した。
比較例として、クエン酸フェンタニルをフェンタニルとして0.03mg/kgの用量で静脈内投与し、同様に採血し、血漿中のフェンタニル量を、LC−MS/MS法により測定した。
これらの結果を、以下の表7(試験例5:経鼻投与)、表8(比較例4:静脈内投与)にそれぞれ示した。
また、その推移を図4に示した。
これらの結果を、以下の表7(試験例5:経鼻投与)、表8(比較例4:静脈内投与)にそれぞれ示した。
また、その推移を図4に示した。
血漿中フェンタニル濃度(単位:ng/mL)
血漿中フェンタニル濃度(単位:ng/mL)
以上の表7および表8に示した結果から、本発明のクエン酸フェンタニルを含有する経鼻投与製剤は、静脈内投与により得られているフェンタニルの血中濃度と同様の血中濃度を示しており、極めて生体内吸収性がよいことが判明した。また、経鼻投与および静脈内投与における血漿中フェンタニル濃度の推移を、時間の経緯と共にグラフ化した図4から判明するように、経鼻投与による生体内吸収性の立ち上がりは、静脈内投与に匹敵するものであり、その血中濃度の推移も静脈内投与と同程度の推移を示すものであった。さらに、一般状態観察においても鎮痛を示す所見も観察された。
この点から判断すると、本発明が提供する経鼻投与製剤は、激しい疼痛に悩まされる癌患者にとって極めて有益なものであるといえる。
この点から判断すると、本発明が提供する経鼻投与製剤は、激しい疼痛に悩まされる癌患者にとって極めて有益なものであるといえる。
以上のように、本発明によれば、これまでに提案されている経口投与製剤に比較して、副作用の発現率が極めて低く、鎮痛効果の発現が速やかで、そのうえ、生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)の点で優れた、経鼻投与用のオピオイド鎮痛剤組成物、ならびに経鼻投与用製剤が提供される。特に経鼻投与により、投与後速やかな鎮痛効果の発現は、癌末期患者の癌性疼痛を速やかに緩和するものであり、持続痛だけでなく突発型の疼痛に対しても適用でき、また、便秘、嘔気、嘔吐等の消化器系の副作用を低減させることは、疼痛コントロール上、極めて有効なものであり、さらに、注射のような治療行為が不要であり、患者自らあるいは医師不在の施設において使用可能であり,疼痛に苦しむ患者の使用範囲が広がり,したがって、本発明の医療上の利点は多大なものである。
Claims (8)
- オピオイド鎮痛剤の有効投与量を、平均粒子径500μm以下である炭酸カルシウムおよび/またはリン酸カルシウムからなるキャリヤに均一に分散、付着結合させた経鼻吸収用組成物。
- オピオイド鎮痛剤が、麻薬系または非麻薬系のオピオイド鎮痛剤である請求項1に記載の経鼻吸収用組成物。
- オピオイド鎮痛剤が、アヘン、アヘン/トコン配合製剤、モルヒネ、モルヒネ/アトロピン配合製剤、アヘンアルカロイド製剤、アヘンアルカロイド/アトロピン配合製剤、アヘンアルカロイド/スコポラミン配合製剤、エチルモルヒネ、オキシコドン、オキシコドン/アトロピン配合製剤、ペチジン、ペチジン/レバロルファン配合製剤、コデイン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ドロペリドール/フェンタニル配合製剤、オキシメテバナール、レボルファノール、プロポキシフェン、メサドン、ヒドロモルホン、メペリジンから選ばれる麻薬系オピオイド鎮痛剤、あるいはブプレノルフィン、ブトルファノール、ペンタゾシン、ペンタゾシン/ナロキソン配合製剤、デゾシン、トラマドール、エプタゾシンから選ばれる非麻薬系オピオイド鎮痛剤のいずれか、またはその薬学的に許容される塩である請求項1または2に記載の経鼻吸収用組成物。
- オピオイド鎮痛剤が、アヘン、アヘン/トコン配合製剤、塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、塩酸モルヒネ/硫酸アトロピン配合製剤、塩酸アヘンアルカロイド製剤、塩酸アヘンアルカロイド/硫酸アトロピン配合製剤、塩酸アヘンアルカロイド/臭化水素酸スコポラミン配合製剤、塩酸エチルモルヒネ、複方オキシコドン(塩酸オキシコドン/塩酸ヒドロコルタニン)、複方オキシコドン/硫酸アトロピン配合製剤、塩酸ペチジン、塩酸ペチジン/酒石酸レバロルファン配合製剤、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、フェンタニル、クエン酸フェンタニル、ドロペリドール/クエン酸フェンタニル配合製剤、オキシメテバナール、レボルファノール、プロポキシフェン、メサドン、ヒドロモルホン、メペリジンから選ばれる麻薬系オピオイド鎮痛剤、あるいは塩酸ブプレノルフィン、酒石酸ブトルファノール、ペンタゾシン、塩酸ペンタゾシン、塩酸ペンタゾシン/ナロキソン配合製剤、デゾシン、塩酸トラマドール、臭化水素酸エプタゾシンから選ばれる非麻薬系オピオイド鎮痛剤のいずれかである請求項1または2に記載の経鼻吸収用組成物。
- オピオイド鎮痛剤が塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、塩酸モルヒネ/硫酸アトロピン配合製剤、フェンタニル、クエン酸フェンタニル、ドロペリドール/クエン酸フェンタニル配合製剤、塩酸ブプレノルフィンであって、キャリヤが炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1または2記載の経鼻吸収用組成物。
- キャリヤの平均粒子径が20〜100μmである請求項1ないし5のいずれかに記載の経鼻吸収用組成物。
- オピオイド鎮痛剤の含有量が0.01〜50重量%、キャリヤの含有量が50〜99.99重量%である請求項1ないし6のいずれかに記載の経鼻吸収用組成物。
- 術後疼痛または癌性疼痛用鎮痛剤である請求項1ないし7のいずれかに記載の経鼻吸収用組成物。
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