JP2004041484A - 薬液注入装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】薬液を供給するシリンジ7が取り付けられるハウジング1に対して、ハンドル6により回転操作が付与される。ハンドル6には周方向に傾斜した傾斜部を有したディスク4を備え、ハンドル6が回転操作されると、ピストンピン2bが傾斜部に沿って移動して、ハウジング内をピストン2が軸方向に移動する。また、ハウジング1に一端が係止されて、ディスクと反対方向にピストン2はスプリング3により付勢される。このハウジング1にはシリンジバレル7aが固定され、ピストン2にシリンジプランジャ7bが固定されるので、ハンドル6を回転操作させることにより、シリンジプランジャ7bを軸方向に移動させて薬液をシリンジバレル7aから吐出する構成とした。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬液注入装置に関するものであり、特に、操作部材を回転操作することにより、薬液の注入が行われる簡易型の薬液注入装置の構造に係わる。
【0002】
【従来の技術】
従来より人体における血管の血栓性閉塞の治療方法として、薬液(例えば、血栓溶解剤等)の投与が行われており、従来では血栓溶解剤の投与が注射器(シリンジ)による注射により行なわれていた。
【0003】
しかし、近年においては、効率的かつ正確に患部の特定部位に血栓溶解剤を投与するため、特定部位に対して血栓溶解剤を所定量繰り返し注入する方法(例えば、PST法と称されるパルススプレー血栓溶解療法)が、多くの病院において採用されている。
【0004】
このPST法は、カテーテルを血管が閉塞した患部にカテーテルを血管内に通し、間欠的に血栓溶解剤を高圧で患部である特定部位に噴射することにより、特定部位のみ効果的に血栓の溶解を行う方法がとられる。
【0005】
この様な治療に当たっては、従来では、血栓溶解剤の注入は、比較的小さな容量のシリンジを用いて手動にておこなわれているが、その煩雑さからより簡便な注入方法が提案されている。
【0006】
例えば、この様な治療を高性能な自動装置を用いて行うと、長時間にわたり安定した注入が可能となる。しかし、自動により注入を行う注入装置は高価なものとなってしまうので、自動注入による注入装置は十分に普及していない。
【0007】
そこで、簡易的な薬液注入装置としては、例えば、特表2001−519212号公報には、片手で薬液の注入が可能な注入装置が開示されている。この公報に示される装置では、ポンプの吐出側に注入カテーテルが接続され、所定量の薬液を注入カテーテル内に繰り返し分与するため、注入カテーテルの基端に連結されたポンプを備える。ポンプはチャンバを有する外筒と、外筒に取り付けられた指かけ部と、チャンバ内を摺動するプランジャと、プランジャに取り付けられたハンドルとを有しており、ハンドル操作を行うことによって、所定量の薬液を注入カテーテルに吐出することができる構成となっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
PST法を行う場合、上記した手動による注入装置を用いれば、大掛かりな自動注入装置を用いなくてもPST法を行うことができ、高額な設備は不要となって、低コストな治療が可能となる。しかしながら、上記した装置による治療では、手動によってハンドルを握って操作を行う必要がある。このために、医師等によって、手動でハンドルを握って操作しながら患部へ薬液を注入するには限界があり、長時間にわたって安定した薬液の注入を行うことは困難となる。
【0009】
つまり、治療を行う医者(術者)の握力には個人差があり、長時間の注入治療においては、握力低下が起こり得る。従って、患部への薬液の注入を高圧状態でしかも安定した状態で行うことは困難となる。
【0010】
よって、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成により、薬液を患部に対して安定した供給が行える薬液注入装置を提供することを技術的課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために講じた技術的手段は、薬液の供給を行うシリンジが取り付けられるハウジングと、該ハウジングに対して、回動自在な操作部材と、周方向に傾斜する傾斜部を有し、該操作部材と一体回転する回転体と、前記操作部材が回転操作されると、前記傾斜部に沿って移動して、前記ハウジング内を軸方向に移動するピストンと、前記ハウジングに係止され、前記回転体と反対方向に前記ピストンを付勢する弾性部材とを備え、
シリンジバレルまたはシリンジプランジャの一方が、ハウジング側に取り付けられると共に、他方がピストン側に取り付けられ、前記操作部材を回転させることにより、前記弾性部材の付勢力を用いて、前記シリンジプランジャを軸方向に所定量だけ移動させる構成とした。
【0012】
上記した構成によれば、シリンジバレルまたはシリンジプランジャの一方をハウジング側に取り付け、他方をピストン側に取り付けて、操作部材を回転すると、操作部材と一体で回転体が回転する。回転体は周方向に傾斜した傾斜部を有しており、この傾斜部に沿ってピストンはハウジング内で軸方向に移動する。この場合、ハウジングとピストンには、シリンジバレルとシリンジプランジャのいずれかがそれぞれ固定される。この為、ハウジングに対するピストンの軸方向の移動によって、シリンジバレルに対してシリンジプランジャの移動がなされ、シリンジプランジャの移動により薬液の供給が可能となる。
【0013】
つまり、ハウジングに対して操作部材に回動操作力を付与すれば、回転操作力はピストンの軸方向の移動量に変換され、シリンジバレルに対してシリンジプランジャが軸方向に移動し、シリンジバレルから薬液を弾性部材による付勢力を用いて供給することが可能となる。つまり、この薬液注入装置では、高コストで複雑な構造は必要なく、回転力を付与するだけで、薬液注入が容易に行える装置となる。
【0014】
この場合、回転体には、複数の傾斜部を有すれば、複数の傾斜部によりピストンの往復回数を可変とすることが可能である。つまり、傾斜部の数によって、回転部材を1回転させた場合でのピストンの往復回数が決まる。
【0015】
また、回転体には、隣り合う傾斜部の間に平坦部を有すれば、操作部材を回転操作する感覚から、操作部の操作状態がわかる。
【0016】
更に、前記傾斜部は、非連続となっていれば、シリンジバレルから薬液が吐出するときの状態が、回転操作力が急激に変化することによりわかる。
【0017】
また、上記した課題を解決するために講じた技術的手段は、薬液の供給を行うシリンジと、該シリンジが取り付けられるハウジングと、該ハウジングに対して、回動自在な操作部材と、周方向に傾斜する傾斜部を有し、該操作部材と一体回転する回転体と、前記操作部材が回転操作されると、前記傾斜部に沿って移動して、前記ハウジング内で軸方向の移動に変わるピストンと、前記ハウジングに係止され、前記回転体と反対方向に前記ピストンを付勢する弾性部材とを備え、
シリンジバレルまたはシリンジプランジャの一方が、ハウジング側に取り付けられると共に、他方がピストン側に取り付けられ、前記操作部材を回転させることにより、前記弾性部材の付勢力を用いて、前記シリンジプランジャを軸方向に所定量だけ移動させる構成とした。
【0018】
上記した構成によれば、シリンジバレルまたは前記シリンジプランジャの一方をハウジング側に取り付け、他方をピストン側に取り付けて、操作部材を回転すると、操作部材と一体で回転体が回転する。回転体は周方向に傾斜した傾斜部を有しており、この傾斜部に沿ってピストンはハウジング内を軸方向に移動する。ハウジングとピストンには、シリンジのシリンジバレルとシリンジプランジャのいずれかがそれぞれ固定される。この為、ハウジングに対するピストンの軸方向の移動によって、シリンジバレルに対してシリンジプランジャを軸方向に移動させる。従って、ハウジングに対して操作部材に回動操作を与えれば、回転操作力はピストンの軸方向の移動量に変換され、シリンジバレルに対してシリンジプランジャが軸方向に移動し、シリンジバレルから薬液を供給することが可能となる。つまり、この薬液注入装置では高価で複雑な構造は必要なく、回転力を与えるだけで薬液注入が容易に行える装置となる。
【0019】
この場合、シリンジプランジャは端部に一対のフランジを有し、シリンジプランジャの取り付け部位に、フランジが取り付けられる凹部が形成され、凹部の両側に、フランジの移動を規制する抜け止め部材が設けられると、シリンジプランジャの取り付けられる凹部の両側の抜け止め部材により、シリンジプランジャは作動時に抜けが防止される。
【0020】
また、抜け止め部材は、シリンジプランジャの回転を所定位置にて規制すると共に、径方向への移動を規制する位置に設けられると、シリンジプランジャは回転させることにより抜け止めがなされる。
【0021】
更に、操作部材またはハウジングの少なくとも一方には、ハウジングに対する操作部材の回転操作位置を示すマーカーが設けられると、ハウジングに対して操作部材の回転操作を1回行った状態が、マーカーによる視覚的な認識によってわかるので、正確かつ安定した薬液注入が可能となる。
【0022】
シリンジバレルに接続され、薬液を一方向に流すチェック弁を備えれば、シリンジバレルから吐出された薬液は、チェック弁から逆流することはなくなる。
【0023】
また、チェック弁に接続され、薬液を拡散噴射させるカテーテルを更に備えれば、チェック弁を通りカテーテルにより薬液が患部に対して局所的に拡散状態で噴霧される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、薬液注入装置(以下、単に注入装置と称す)20を、例えば、血管の血栓治療を行うPST法に適用した場合における全体構成図を示す。この方法では、注入装置20にディスポ品であるシリンジ7が固定され、シリンジ7の薬液が吐出する筒先(先端)には、三方活栓(チェック弁)8が取り付けられる。
【0026】
チェック弁8は、薬液を吸い込む吸入ポート8a、薬液を吐出する吐出ポート8b、及び、吸入ポートから吸い込んだ薬液を吐出ポートに吐出させると共に、吐出ポート8aから吸入ポート8bへの連通を遮断する吸入/吐出ポート8cの3つのポートを備え、これらの3つのポート8a,8b,8cはT字状と成っている。上記した3つのポートの中で、吸入ポート8aには薬液が内部入った薬液供給源9が取り付けられ、吐出ポート8bには図2に示す構成の注入装置8bが取り付けられる。更に、吸入/吐出ポート8cには、フレキシブルなチューブ13を介して、カテーテル11が接続される。
【0027】
尚、本実施形態においては、薬液供給源としては、薬液が中に入った薬液シリンダを一例にとって説明するが、これに限定されるものではない。薬液供給源はこれ以外に薬液ボトルや薬液袋等であっても良い。
【0028】
カテーテル11は、チェック弁8の吐出ポート8bに接続されたチューブ13の先端に取り付けられ、チューブ13先端に設けられるルアーロックを介して取り付けられる。このカテーテル11は、フレキシブルで細いチューブ13がつながれるY字管15と、人体の血管30或いは人体の臓器の内部に通されるフレキシブルなチューブ14から成り、チューブ14を血管30等の特定患部(ここでは、血栓ができた部位)30aへと導くガイドワイヤー16が挿通されている。チューブ13とガイドワイヤー16はそれぞれY字管15の手前では分かれているが、Y字管15で一緒になり、Y字管15から先のチューブ13(チューブ14とする)内にガイドワイヤー16が挿通される。この場合、薬液はY字管15の手前ではチューブ13の中を通り、Y字管15から先ではカテーテル11の先端部14aに到る区間では、チューブ14とガイドワイヤー16の間を薬液が流れる構成となっている。
【0029】
カテーテル11のチューブ14の先端部14aは細くなり、先端部14aの側面には多数の小さな孔14bが形成される。ガイドワイヤー16とチューブ14との間を通ってきた薬液は、複数の孔14bから高圧で噴射されることによって、特定患部30aに薬液を直接噴き付け、血栓を溶解させて特定患部30aだけを狙った効率良い方法により、除去することができる。
【0030】
本実施形態では、ハウジング1にシリンジ7を固定した状態で、ハンドル6をハウジング1に対して回動操作することによって、シリンジプランジャ7bを軸方向に所定量だけスプリング3の付勢力を利用して移動させることにより、注入装置20にポンプ機能を付加して、薬液を供給する構成としたことを特徴としている。そこで、注入装置20の具体的な構成について、図2を参照して説明する。
【0031】
注入装置20は、柱状の樹脂より成るハウジング1に対して、ハウジング1と同じ材質から成るハンドル6がハウジング側に支持されており、ハンドル6はハウジング1に対して回転自在である。実際の構成においては、ハウジング1は中空直方体状を呈し、ハウジング1の軸方向両端にはハウジングカバー1a、1bが取り付けられ、この状態で円柱状の樹脂から成るピストン2がハウジング1の内壁に沿って摺動自在に配設されている。そして、ピストン2の軸方向における一方の端部が、ハウジングカバー1aを挿通した状態で、ピストン2が配設される。
【0032】
ハウジング内に配設されるピストン2は、図2に示す右側の軸方向端部に大径部2aを有し、この大径部2aがハウジング1の内壁に沿って摺動する。また、ピストン2の小径部2bは、先端2dがハウジングカバー1aを貫通し、その貫通した先端2dには、径方向においてピストンピン2cが1本挿通される。尚、このピストンピン2cはピストン2に一体で設けられていても良い。
【0033】
一方、ハウジングカバー1aから突出したピストン2の先端2dの外周面には、ピストン2の小径部2bよりも径の大きい環状の樹脂より成る回転体(ロータリーディスク)4が取り付けられている。ロータリーディスク4の外周面にはピストン2の先端2dに対して軸方向から被さる様に、有底中空の樹脂より成るハンドル6がビス等の固定部材を用いて、ロータリーディスク4に固定されている。これにより、ハンドル6がハウジング1に対して回転操作されると、ロータリーディスク4も一緒に回転する。
【0034】
そこで、ロータリーディスク4の形状について、図3を参照して説明する。本実施形態で使用されるロータリーディスク4は環状形状を呈し、図3において周方向に向かって軸方向の高さが徐々に変化する傾斜部4a,4dが形成されている。この傾斜部4a,4dはディスク上に2組形成されており、ディスク4の中心をして点対称の位置関係においてディスク上に形成されている。2つの傾斜部4a、4dの間(つまり、隣り合う傾斜部部4a、4dの間)には、図3の如く、軸方向の高さが最高位置にて高い高平坦部4b,4eと、軸方向の高さが最低位置にて低い低平坦部4c,4fをそれぞれ有する。それ故に、図2に示す状態でロータリーディスク4が回転すると、ガイド面となる頂点軌跡は非連続的な軌跡となる。このロータリーディスク4を所定の回転速度以下で操作した場合には、傾斜部4a→高平坦部4b→低平坦部4c→傾斜部4d→高平坦部4e→低平坦部4f→傾斜部4a→・・・という順番で繰り返し回転する。
【0035】
ピストン2の先端2dには、ピストンピン2cが径方向において、小径部2bより突出した状態で嵌められており、ピストンピン2cはロータリーディスク4のガイド面上で、ディスク4に形成された傾斜部4a,4d、高平坦部4b,4e、低平坦部4c,4fのいずれかの2ヶ所にて当接する。また、ハウジング内においては、ピストン2の大径部2aとハウジングカバー1aとの間には、コイル状のスプリング3が所定量だけ圧縮された状態でピストン2の小径部2bに配設されている。この為、ピストン2は、スプリング3の付勢力を受けて、図2に示す右方向に常時付勢される。
【0036】
この状態下で、ピストン2に挿通されたピストンピン2cは、小径部2bよりも突出した状態となって、傾斜部4a,4d、高平坦部4b,4e、低平坦部4c,4fの3つの状態におけるいずれかの位置で当接する。そこで、ハンドル6をハウジング1に対して回動操作すると、ハンドル6に固定されたディスク4も回転し、ピストンピン2cは傾斜部4a,4d→高平坦部4b,4e→低平坦部4c,4f→傾斜部4a,4d→・・・という状態遷移を、ガイド面に当接しながら繰り返す。この遷移状態において、ピストンピン2cは軸方向に移動することにより、ピストンピン2cが挿通されるピストン2が一緒に移動する。
【0037】
例えば、図2に示す状態において、ピストンピン2cは低平坦部4c,4fに当接した状態のとき、基準位置と成る。この基準位置の状態に対して、操作状態が視覚的にわかる様にために、図5に示す様に、ハウジングカバー1bとハンドル6との間に、基準位置を視覚的に示す三角形状のマーカー21,22が設けられる。マーカー21,22は、それぞれハウジングカバー1bとハンドル6に直接的またはシール等により間接的に設けられ、ハウジング1に対してハンドル6をどれだけ回転操作したのかが、マーカー21,22の位置によって注入装置20を使用する医師等がわかる構成となっている。尚、マーカー21,22の形状、大きさ、位置、個数等に関しては、図5に一例を示すがこれに限定されない。また、マーカー21,22は、ハンドル側またはハウジング側のどちらか一方に設けられても良い。
【0038】
次に、シリンジ7の取り付け構造について、図4を参照して説明する。ハウジング1の軸方向における端部には、図4の(c)に示す様に、ハウジング1に対してハウジングカバー1bが取り付けられており、ハウジングカバー1bは(a)に示す様、ハウジングカバー1bの四隅でボルト等の固定部材41によって固定されている。ハウジング1は、シリンジ7が配設される取り付け部位(図2では右上方)にU字状の凹部1cが形成されている。また、凹部1cの開口の大きさに一致する略T字状の凹部1baが、図4の(a)に示す如く、ハウジングカバー1bに形成されている。
【0039】
また、ハウジング1の内部には、上方に開口した凹部を有する2枚の樹脂状のプレート45,46がそれぞれ軸方向に配設されている。プレート45はピストン2の大径部2aの端部に対して、シリンジプランジャ7bを固定する。プレート45は、大径部2aの端部との間に樹脂またはシリコン等から成るスペーサを介して、ボルト等の固定部材42,43によってハウジング内に固定されている。プレート46はシリンジバレル7aをハウジング1に対して固定するものであって、プレート46はプレート45に所定間隔をもって対向して配設される。また、プレート46はハウジング1の軸方向における端部に固定され、ハウジングカバー1bとは所定間隔をスペーサによって保持した状態で、2本のボルト等の固定部材47,48により固定されている。固定部材47,48の設けられる位置は、図4の(a)に示す様に、水平方向に対して所定角度(例えば、−45度、+45度)傾いた状態に設定されている。
【0040】
ハウジング1に対して、シリンジ7を固定する際には、最初は、図4の(a)に示す状態で、シリンジバレル7aに形成された1対のフランジ部7aaをハウジングカバー1bとプレート46との間に挿入する。これと共に、シリンジプランジャ7bのフランジ7baを、ピストン2の大径部2aとプレート45との間に挿入する。この場合、シリンジバレル7bに形成されたフランジ7baを、図4の(a)の如く、鉛直方向にした状態で水平にシリンジ7を下ろしてゆく。そして、シリンジ7の中心がハウジング1の中心と一致するT字状の凹部1baの奥まで挿入してから、シリンジバレル自体を図4の(a)に示す状態から、(b)の状態の如く反時計方向に90度回転させる。すると、シリンジプランジャ7bのフランジ7baがピストン2とプレート45によって挟まれた状態で、シリンジバレル7aのフランジ7aaはハウジングカバー1bとプレート46との間で挟まれる。しかも、プレート46をハウジングカバー1bに対して固定している抜け止めの機能をもつ2つの固定部材(抜け止め部材)47,48により回転規制される。この場合、固定部材47,48の設けられる位置は、シリンジバレル7aに形成された対のフランジ7aaが水平状態になる様、フランジ7aaの回転軌跡上において、一方のフランジ7aaの下側および他方のフランジ7aaの上側に設けられ、シリンジバレル7aの回動が規制されると良い。
【0041】
この様に、フランジ7baが2つの固定部材47,48によって、回動が規制されると共に、シリンジプランジャ7bのフランジ7baの上下方向への浮き上がりが防止される構成となっている。尚、この場合、シリンジ7の挟み込みを行うプレート45,46を支持するスペーサは、フランジ7aa,7baの板厚分の幅もしくはそれより少し狭めの間隔で保持されると、しっかりとシリンジ7をハウジング1およびピストン2に対して取り付けることができる。
【0042】
この様なシリンジ7の取り付け構造により、治療毎に使用されるディスポ品であるシリンジ7を、簡単な取り付けおよび取り外しによって、容易に交換することができる。また、シリンジバレル7aはハウジング側に固定されると共に、シリンジプランジャ7bはピストン側に固定される。よって、ハウジング1に対してピストン2が移動すれば、これに伴って、ハウジング側に固定されたシリンジバレル7aに対して、シリンジプランジャ7bが移動する。
【0043】
次に、注入装置20の一連の作動について説明を行なうが、その作動を説明する前に組み付けについて、まず説明する。
【0044】
最初、ハウジング1に対して、図4に示す(a)、(b)の手順を経て、シリンジ7を(c)の如く固定する。そして、シリンジ7の筒先にチェック弁8の吸入/吐出ポート8cを取り付け、そして、チェック弁8の吸入ポート8aには薬液供給源(薬液シリンジ)9を取り付ける。チェック弁8の残りの吐出ポート8bにはチューブ13を取り付け、チューブ13の先にカテーテル11を取り付ける。
【0045】
この状態で、注入装置20、チューブ13、およびカテーテル内のエア抜きの作業を、ハンドル6を回転操作することにより行う。エア抜きを行った後、通常、PST法による治療により行なわれる一般的なアプローチによって、血管内にカテーテル11の先端部14aを入れ込む。そして、患者の病変部である所定患部30aに、ガイドワイヤー16をX線透視装置あるいはCT等の撮影によって、確認しながらガイドワイヤー16を操作しながら血管30の先へと進めてゆく。そして、所定患部30aまでカテーテル11の先端部14aを進める。カテーテル11が所定患部30aの位置に到達したことを確認したら、X線透視装置またはCTにより所定患部30aを常に監視しながら、注入装置20による薬液の噴射による治療を開始する。
【0046】
次に、図6を参照して作動について説明する。図6ではスプリング3の圧縮から伸展までの一動作を示している。(a)では、ピストンピン2cの位置が低平坦部4c,4fにあり、マーカー21,22の位置が図5の如く一致する基準位置から操作がなされる(初期状態)。この状態では、薬液供給源9からの薬液はシリンジ内に供給されていない状態となっている。
【0047】
そこで、(a)の状態からハンドル6をハウジング1に対して矢印方向に回転操作したとする。すると、ハウジング側は手で固定されているので、ハウジング1は非回転状態を保持した状態で、ハンドル6に対して回転操作する力が加えられる。この回転操作により、ピストンピン2cが(b)に示す様に、ロータリーディスク4に形成された傾斜部4a,4dを徐々に登っていく。この状態では、ピストンピン2cはスプリング3の付勢力に抗してスプリング3が圧縮され、ピストンピン2cが挿通されたピストン2は、図6に示す左方向に移動する。これに伴って、ピストン2に固定されたシリンジプランジャ7bは(a)に示す状態より左側に後退し、薬液供給源9から薬液を、チェック弁8を介してシリンジ内部に吸入する。ハンドル6を回転操作する力(回転操作力)は傾斜部4a,4dをピストンピン2cが登ってゆくに従って増加する。この場合、回転操作力はロータリーディスク4とピストン2に挿通されたピストンピン2cによって、軸方向の移動力(ストローク力)に変換される。
【0048】
その後、薬液はチェック弁8を介して、筒先からシリンジ内に徐々に吸い込まれてゆく。そして、(c)に示す様に、傾斜部4b,4eから高平坦部4b,4eにピストンピン2cが到達する。高平坦部4b,4eにピストンピン2cが到達して高平坦部4b,4eの領域では、更にスプリング3を圧縮するという力は発生しない。この状態では、スプリング3が最も圧縮された状態になると共に、シリンジ内には最も薬液が吸い込まれた状態となる。
【0049】
そして、(c)に示す状態から、更にハンドル6をゆっくり回転操作すると、ピストンピン2cの当接位置は、高平坦部4b,4eから低平坦部4c,4fへと急激に遷移する。この場合、(a)から(c)の状態に到るまで、ピストン2の移動により、圧縮を続けていたスプリング3の付勢力が、(d)に示す如く、急激に圧縮状態から伸展状態となる。その結果、いままで圧縮され蓄えられていたスプリング3の付勢力によって、ピストンピン2cによる圧縮規制が解放され、ピストン2は急激に図2に示す右方向、つまり、シリンジプランジャ7bをシリンジバレル7aに対して押圧する方向に移動する。
【0050】
その結果、スプリング3の付勢力を利用してシリンジ7から薬液が吐出し、吐出した薬液はチューブ13、Y字管15、及び、チューブ14を介して先端部14aまで導かれ、先端部14aの側面に設けられた複数の孔14bから血管内の特定部位30aに向けて噴射される。この場合、スプリング3の圧縮力の急激な解放に伴い、ハンドル6の回転操作力は、急激に軽くなって、操作力が抜けた感じとなるので、感覚的にスプリング3の圧縮状態から伸展状態に遷移した状態が注入装置20を操作する医師等により容易にわかる。
【0051】
そして、その後、更にハンドル6を回動させると、ピストンピン2dは、再度、傾斜部4a,4dを登り始め、ピストン2はスプリング3の圧縮と伸展との繰り返し、本実施形態においては、ハンドル6の1回の回転操作により、軸方向に2回ストロークを繰り返す構成となっている。
【0052】
この場合、本実施形態において具体的な数値を示すと、スプリング3のバネ定数:0.018N/mm、線径φ:2.7mm、長さ:107mmのコイルスプリングを使用し、圧縮時の荷重を0.6Nになるよう設定した。シリンジ7は、1回の注入量を0.5mLとするため 3mLのものを使用した。0.5mLの薬液の注入に要するピストン2のストローク量は、8.5mmであり、ロータリーディスク4の高平坦部4b,4eと低平坦部4c,4fの高低差を、8.5mmとした。また、注入装置20による薬液の噴射はハウジング1を片手で握った状態で、ハンドル6をハウジング1に対して回転操作させることによって、薬液供給源9からの薬液がカテーテル11の先端部14aの側面の複数の孔14bより噴射させる回数は、通常、0.5mLを10回/分で行う様にした。
【0053】
その結果、上記した条件のスプリング3を使用した場合、通常の圧縮状態0.6Nから、ロータリーディスク4の回転によって、更に、8.5mm圧縮されて、0.77Nとなり、シリンジプランジャ7bの押圧力は、0.6〜0.77Nの一定範囲内となるデータを得た。従って、注入装置20は、従来の注入装置の如く、手で握って操作を行う装置に比べて、短時間の高圧注入を安定して行うことができる。
【0054】
上記した構成においては、スプリング3の圧縮状態から伸展状態に遷移する場合のスプリング3の反発力を利用しているため、短時間での薬液の高圧注入が行なえ、しかも、一定範囲内での注入圧力を得ることができる。また、薬液注入が個人(個人の握力の大小、経時的な疲労による握力低下等)に依存しないため安定した薬液注入が行える。これには、専用の注入装置20が不要であり、非常に簡単な操作で迅速な注入が可能である。
【0055】
本実施形態においては、シリンジ7のシリンジバレル7aをハウジング側に取り付け、シリンジプランジャ7bをピストン側に取り付けたが、これに限定されるものではなく、シリンジバレル7aをピストン側に取り付け、シリンジプランジャ7bをハウジング側に取り付けても良い。
【0056】
また、図2に示す構成の注入装置20は、更に、薬液供給源9、チェック弁8、チューブ13、Y字管15、および、カテーテル11を少なくとも一つ以上を備えていても良い。
【0057】
また、本実施形態においては、一例として血管の血栓治療を行うPST法に適用した場合について説明を行ったが、これに限定されるものではなく、PST法以外でも、特定患部30aに薬液を供給する装置において適用が可能である。
【0058】
また、ピストンピン2cが高平坦部4b,4eに達した状態で、ハンドル6を急激に逆回転させて元に戻すことでも、同様の薬液の噴出が得られる。
【0059】
更に、この様な構成を取れば、簡単な回転操作で薬液の注入が可能であることから、図7に示す装置による自動化も容易に達成できる。図7に示す装置は、主として、ハウジング1の固定部51、ハンドル6を固定して回転自在なホルダ部52、ホルダ部を回転させる駆動部(モータ)52から構成され、モータ53による駆動力はギヤ54によりハンドル6を固定部51に対して支持すると共に、ハンドル6を回転させるシャフト55へと伝達され、シャフト55が回転駆動されることにより、ハンドル6がホルダ52を介して回転し、薬液の注入を行う構成としても良い。この場合、モータの回転数を制御するだけで分間あたりの注入回数を容易に設定することができる。
【0060】
尚、本装置は各種血管等の診断カテーテルにおける造影剤の注入や血管内内視鏡検査における視野確保のための生理食塩水の注入等にも適用が可能である。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、ハウジングに対して操作部材に回動操作力を付与すれば、回転操作力はピストンの軸方向の移動量に変換され、シリンジバレルに対してシリンジプランジャが軸方向に移動し、シリンジバレルから薬液を弾性部材による付勢力を用いて供給することができ、この薬液注入装置では、高コストで複雑な構造は必要なく、回転力を付与するだけで、薬液注入が容易に行える装置とすることができる。
【0062】
この場合、回転体には、複数の傾斜部を有すれば、複数の傾斜部によりピストンの往復回数を可変とし、傾斜部の数によって、回転部材を1回転させた場合でのピストンの往復回数を設定できる。
【0063】
また、回転体には、隣り合う傾斜部の間に平坦部を有すれば、操作部材を回転操作する感覚から、操作部材の操作状態が操作感覚からわかる構成とすることができる。
【0064】
更に、傾斜部は、非連続となっていれば、シリンジバレルから薬液が吐出するときの状態が、回転操作力が急激に変化する操作感覚からわかる構成とすることができる。
【0065】
また、シリンジが固定されるハウジングに対して操作部材に回動操作を与えれば、回転操作力はピストンの軸方向の移動量に変換され、シリンジバレルに対してシリンジプランジャが軸方向に移動し、シリンジバレルから薬液を供給することができ、この薬液注入装置では高価で複雑な構造は必要なく、回転力を与えるだけで薬液注入が容易に行える装置とすることができる。
【0066】
この場合、シリンジプランジャは端部に一対のフランジを有し、シリンジプランジャの取り付け部位に、フランジが取り付けられる凹部が形成され、凹部の両側に、フランジの移動を規制する抜け止め部材が設けられると、シリンジプランジャの取り付けられる凹部の両側の抜け止め部材により、シリンジプランジャの抜けが防止できる。
【0067】
また、抜け止め部材は、シリンジプランジャの回転を所定位置にて規制すると共に、径方向への移動を規制する位置に設けられると、シリンジプランジャは回転させることにより簡単な方法により抜け止めがなされる構成とすることができる。
【0068】
更に、操作部材またはハウジングの少なくとも一方には、ハウジングに対する操作部材の回転操作位置を示すマーカーが設けられると、ハウジングに対して操作部材の回転操作を1回行った状態が、マーカーによる視覚的な認識によってわかるので、正確かつ安定した薬液注入ができる。
【0069】
シリンジバレルに接続され、薬液を一方向に流すチェック弁を備えれば、シリンジバレルから吐出された薬液は、チェック弁から逆流することが防止できる。
【0070】
また、チェック弁に接続され、薬液を拡散噴射させるカテーテルを更に備えれば、チェック弁を通りカテーテルにより薬液が患部に対して局所的に拡散した状態で噴霧できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における薬液注入装置の全体構成図である。
【図2】図1に示す薬液注入装置の構成を示す断面図である。
【図3】図2に示す回転体の形状を示した斜視図である。
【図4】図1に示すシリンジをハウジングに取り付ける場合の動作説明図である。
【図5】図2に示す薬液注入装置のハンドルとハウジングに設けられたマーカーを示した要所部分拡大図である。
【図6】図2に示す薬液注入装置の動作説明図である。
【図7】本発明の一実施形態における薬液注入装置の自動化を図った場合の構成図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
1c 凹部(取り付け部位)
1ba 凹部
2 ピストン
3 スプリング(弾性部材)
4 ロータリーディスク(回転体)
4a,4d 傾斜部
4b,4e 高平坦部
4c,4f 低平坦部
6 ハンドル(操作部材)
7 シリンジ
7a シリンジバレル
7aa フランジ
7b シリンジプランジャ
7ba フランジ
8 チェック弁
11 カテーテル
21,22 マーカー
47,48 固定部材(抜け止め部材)
Claims (10)
- 薬液の供給を行うシリンジが取り付けられるハウジングと、
該ハウジングに対して、回動自在な操作部材と、
周方向に傾斜する傾斜部を有し、該操作部材と一体回転する回転体と、
前記操作部材が回転操作されると、前記傾斜部に沿って移動して、前記ハウジング内を軸方向に移動するピストンと、
前記ハウジングに係止され、前記回転体と反対方向に前記ピストンを付勢する弾性部材とを備え、
シリンジバレルまたはシリンジプランジャの一方が、ハウジング側に取り付けられると共に、他方がピストン側に取り付けられ、前記操作部材を回転させることにより、前記弾性部材の付勢力を用いて、前記シリンジプランジャを軸方向に所定量だけ移動させることを特徴とする薬液注入装置。 - 前記回転体には、複数の傾斜部を有すること特徴とする請求項1に記載の薬液注入装置。
- 前記回転体には、隣り合う傾斜部の間に平坦部を有することを特徴とする請求項2に記載の薬液注入装置。
- 前記傾斜部は、非連続となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の薬液注入装置。
- 薬液の供給を行うシリンジと、
該シリンジが取り付けられるハウジングと、
該ハウジングに対して、回動自在な操作部材と、
周方向に傾斜する傾斜部を有し、該操作部材と一体回転する回転体と、
前記操作部材が回転操作されると、前記傾斜部に沿って移動して、前記ハウジング内で軸方向の移動に変わるピストンと、
前記ハウジングに係止され、前記回転体と反対方向に前記ピストンを付勢する弾性部材とを備え、
シリンジバレルまたはシリンジプランジャの一方が、ハウジング側に取り付けられると共に、他方がピストン側に取り付けられ、前記操作部材を回転させることにより、前記弾性部材の付勢力を用いて、前記シリンジプランジャを軸方向に所定量だけ移動させることを特徴とする薬液注入装置。 - 前記シリンジプランジャは端部に一対のフランジを有し、前記シリンジプランジャの取り付け部位に、前記フランジが取り付けられる凹部が形成され、該凹部の両側に、前記フランジの移動を規制する抜け止め部材が設けられることを特徴とする請求項5に記載の薬液注入装置。
- 前記抜け止め部材は、前記シリンジプランジャの回転を所定位置にて規制すると共に、径方向への移動を規制する位置に設けられることを特徴とする請求項6に記載の薬液注入装置。
- 前記操作部材または前記ハウジングの少なくとも一方には、前記ハウジングに対する前記操作部材の回転操作位置を示すマーカーが設けられることを特徴とする請求項1または請求項5に記載の薬液注入装置。
- 前記シリンジバレルに接続され、薬液を一方向に流すチェック弁を備えたことを特徴とする請求項5に記載の薬液注入装置。
- 前記チェック弁に接続され、薬液を拡散噴射させるカテーテルを、更に備えたことを特徴とする請求項9に記載の薬液注入装置。
に記載の薬液注入装置。
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