JP2004035931A - 輸送型スパッタ装置及び輸送型スパッタ法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、スパッタ粒子の輸送効率を改善し、ランニングコストを低く抑えた輸送型スパッタ装置及びスパッタ法を提供することを目的とする。また、平板ターゲットを用いることが可能な輸送型スパッタ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】排気系及びガス供給系が連結された真空室と、該真空室の内部に配置されるターゲットと、前記ガス導入系と連結され、ターゲット上に高速のガス流を形成するガス導入機構と、高速のガス流により輸送されるスパッタ粒子が堆積する基板を保持する基板ホルダと、からなる輸送型スパッタ装置及びこれを用いたスパッタ法であって、前記ガス導入機構は、前記ターゲットの表面に平行な1又は複数のガス流路からなり、該ターゲットの一端の全長にわたって該ターゲットの表面近傍に高速ガスを放出させる構成としたことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】排気系及びガス供給系が連結された真空室と、該真空室の内部に配置されるターゲットと、前記ガス導入系と連結され、ターゲット上に高速のガス流を形成するガス導入機構と、高速のガス流により輸送されるスパッタ粒子が堆積する基板を保持する基板ホルダと、からなる輸送型スパッタ装置及びこれを用いたスパッタ法であって、前記ガス導入機構は、前記ターゲットの表面に平行な1又は複数のガス流路からなり、該ターゲットの一端の全長にわたって該ターゲットの表面近傍に高速ガスを放出させる構成としたことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する分野】
本発明は輸送型スパッタ装置及び輸送型スパッタ法に係り、特に、スパッタ粒子の輸送効率を向上させ、さらには平板型ターゲットに適用可能な輸送型スパッタ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパッタ法は、薄膜形成法として広く実用化されているが、高エネルギの荷電粒子や中性粒子が基板に入射することから、基板や形成される膜自体を損傷する場合があり、GaAs等の化合物半導体やビスマス系の酸化物高温超伝導体等の機能材料や有機膜が形成された有機系基板等への応用は制限されていた。
【0003】
そこで、本発明者らは、高エネルギ粒子の影響を排除し得るスパッタ法を検討する中で、ターゲットから離れた位置に基板を配置しスパッタ粒子を高速ガス流で基板まで輸送するスパッタ法(輸送型スパッタ法)に注目し、基板とターゲットの位置関係及び成膜条件を検討して、高エネルギ粒子や紫外線等の影響を受けやすい有機EL素子基板であっても金属薄膜を形成することが可能な輸送型スパッタ装置を開発した(特開2001−140066公報)。この装置の概略を図8の(a)断面図及び(b)C−C’矢視図に示す。
【0004】
図8に示すように、真空室10には、絶縁体11を介して中空カソード20が取り付けられる。中空カソード20は、放電発生用の直流電源14と接続され、その内側には中空形状のターゲット21が固定されている。
ターゲット21の一端側には、ガス導入管33が取り付けられ、流量制御装置(MFC)34、及びガス純化器35を介してガス供給源(不図示)と接続されている。また、ターゲット21の下流側には、排気口13が中空形状のターゲット21の中心軸と直交した方向に設けられ、不図示の排気系と連結されている。基板42は、基板ホルダ41上に載置され、その表面がターゲット中心軸と平行となるように、中心軸から離れた排気口13側に配置される。さらに、基板を覆うようにプリスパッタ時の膜堆積を防止するシャッタ40が配置されている。
【0005】
このような構成とすることにより、スパッタ粒子はガス配管33から導入される高速のガス流により基板上に輸送され、ダメージのない高品質の薄膜形成が可能となる。即ち、図8の装置を用いることにより、高速エネルギー粒子のみならずプラズマの基板への入射をも抑制することができ、この結果、有機EL素子のような有機系基板であってもその素子性能を低下させることなく高品質薄膜の形成が可能となった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べてきたように、輸送型スパッタ法は、高機能・高品質薄膜の作製法として注目され、種々の材料の薄膜形成が検討されるようになってきたが、高速のガス流を形成するには中空形状のターゲットが不可欠であり、ターゲットの加工コストが極めて高くなるという問題とともに、材料によっては中空形状に加工できず、材料の適用範囲が制限されるという問題があった。
また、ガスの流速が小さいとスパッタ粒子が十分輸送されずターゲット上に堆積して異常放電が発生することから、安定した薄膜形成を継続することが困難となった。即ち、中空形状であっても大流量のガスが必要となり、ランニングコストがかかるという問題があった。さらに、このガスには不純物含有量の極めて少ない高純度のガスを使用するが、流量が多くなると微量不純物であっても膜質に大きく影響する場合がある。
【0007】
かかる状況において、本発明は、スパッタ粒子の輸送効率を改善し、ランニングコストを低く抑えた輸送型スパッタ装置及びスパッタ法を提供することを目的とする。また、平板ターゲットを用いることが可能な輸送型スパッタ装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の輸送型スパッタ装置は、排気系及びガス供給系が連結された真空室と、該真空室の内部に配置されるターゲットと、前記ガス供給系と連結され、ターゲット上に高速のガス流を形成するガス導入機構と、高速のガス流により輸送されるスパッタ粒子が堆積する基板を保持する基板ホルダと、からなる輸送型スパッタ装置であって、前記ガス導入機構は、前記ターゲットの表面に平行な1又は複数のガス流路からなり、該ターゲットの一端の全長にわたって該ターゲットの表面近傍に高速ガスを放出させる構成としたことを特徴とする。
このように、高速のガス流を主にターゲット表面近傍に流す構成としたため、スパッタ粒子を少量のガスで効果的に輸送することができ、ガスのランニングコストを大幅に削減することが可能となる。
【0009】
ここで、ガス導入機構を配置することにより、ターゲットは、中空ターゲット以外に、平板ターゲットを用いることも可能となる。このとき、平板ターゲットは1枚でも、あるいは2枚を対向させた構成でもよい。
前記ガス流路の高さは0.5〜5mmであり、長さが該高さの20〜100倍とするのが好ましく、さらに該ガス流路の底面を前記ターゲットの表面と略一致させるのがより好ましく、この範囲で、特に圧力が13〜1333Paの場合に、スパッタ粒子の輸送能力が一層向上する。
【0010】
本発明の輸送型スパッタ法は、排気系及びガス供給系が連結された真空室内にターゲットと基板とを配置し、前記ガス供給系と連結されたガス導入機構からガスを供給してターゲット上に高速のガス流を形成するとともに、該ターゲットに電圧を印加してプラズマを発生させ、前記ターゲット表面で発生したスパッタ粒子を前記ガス流により下流側に配置した基板上に輸送して堆積させる輸送型スパッタ法であって、前記ガス導入機構を、前記ターゲットの表面に平行な1又は複数のガス流路で構成し、該ターゲットの一端の全長にわたって該ターゲットの表面近傍に高速ガスを放出させる構成としたことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び2は、本発明の第1の実施形態を示す輸送型スパッタ装置の概略図である。図1に示すように、真空室10には、絶縁石11を介して2つの平板状カソード20、20’が固定される。それぞれのカソードは、放電発生用の直流電源14、14’と接続され、その内側には平板状ターゲット21、21’が取り付けられる。
【0012】
ターゲット21、21’のそれぞれの一端側には、ターゲットの幅全体に平行なガス流を発生させるためのガス導入機構30、30’が取り付けられている。ガス導入機構には、図2に示すように、多数のガス流路31とこれらガス流路にガスを均一に供給するマニホールド32とが形成されている。マニホールド32は、配管33、流量制御装置(MFC)34、及びガス純化器35を介してガス供給源(不図示)と連結され、高純度のガスを所望の流量で供給可能な構成となっている。
【0013】
さらに、図2(a)(図1のA−A’矢視図)に示すように、多数のガス流路31の底面は、ターゲット表面とほぼ同じ高さになるように配置される。ここで、ガス流路31の高さは0.5〜5mmであり、長さは高さの20〜100倍とするのが好ましい。さらに、高さは2mm以下とするのがより好ましい。なお、ガス流路の幅は、特に限定されないが、例えばガス流路の高さと同程度としてもよい。このような形状のガス導入機構を通してガスを高速で放出すると、2つのターゲットの主に表面近傍にガス流が形成されるため、スパッタ粒子の輸送効率が大幅に改善され、少量のガスでもスパッタ粒子を輸送することが可能となる。また、スパッタ法における動作圧は、13〜1333Paが好ましく、100〜300Paがより好ましい。この圧力範囲では、スパッタ粒子の平均自由工程は非常に短くなり(0.5mm程度以下)、高エネルギーのスパッタ粒子は数ミリ飛行する間にガス分子と衝突を繰り返し、運動のエネルギー及び方向性を失うことになる。その結果、スパッタ粒子を基板表面に輸送するには、表面近傍のみにガスを流すだけでよく、輸送効率がより向上することになる。即ち、ターゲット表面の近傍(即ち、スパッタ粒子の存在確率の高い領域)にのみ高速ガス流を流す構成とすることにより、少ないガス流量で効率よく薄膜を作製することができ、ランニングコストを削減することができる。
なお、ガス放出口31aとターゲット端との距離は1〜5mmとするのがよく、この範囲で、安定した放電を維持しつつ、輸送効率の高いガス流を形成することができる。
【0014】
図2に示したガス導入機構は一般に知られた方法で作製することができる。例えば、下板30aにガス流路となる溝31及びマニホールド部32を切削して形成し、上板30b及び配管33を溶接、接着等により取り付け、固定するることで、容易に作製することができる。
【0015】
真空室10内のターゲット下流側には、排気口13がターゲット21、21’平面と垂直な方向に設けられ、不図示の排気系と連結されている。なお、排気系は、油拡散ポンプと油回転ポンプとからなる高真空排気系と、メカニカルブースタポンプと油回転ポンプとからなる高流量排気系との2系列で構成されている。基板42は、図1に示すように、基板ホルダ41上に載置され、さらに基板を覆うようにプリスパッタ時の膜堆積を防止するシャッタ40が配置されている。基板42は、その表面がターゲット中心軸と平行となるように、該中心軸から離れた排気口13側に配置される。
【0016】
このようにして、ガス導入機構30、30’からターゲット21、21’表面を流れ、排気口13に向かう高速ガス流が形成され、この流れの中に置かれた基板上にスパッタ粒子が輸送され、堆積される。なお、図1の装置構成では、高速エネルギー粒子のみならずプラズマや紫外線等の基板への入射をも抑制することができ、基板及び形成される薄膜のダメージを低減させることができる。結果として、有機EL素子のような有機系基板であってもその性能を低下させることなく高品質薄膜の形成が可能となる。
【0017】
また、本発明においては、高速ガス流によりプラズマがターゲット端から放出される場合があるため、ターゲット中心軸方向の基板とターゲット端との距離は、該プラズマの放出距離よりも大きくとるのが好ましく、通常5cm以上、特に基板上に有機薄膜が形成されている場合は10cm以上とするのが好ましい。 さらに、本発明においては、基板ホルダ41に、基板バイアス電圧印加手段を設けてもよく、これにより、例えば飛来する電子を反発させ、電子による基板及び基板上の薄膜の性能劣化を防止することができる。この基板バイアス印加手段は、特に、有機膜その他の絶縁膜が形成された基板上への薄膜形成に有効である。
【0018】
次に、図1の輸送型スパッタ装置を用いた薄膜形成法の一例を説明する。
真空室10は、油拡散ポンプの高真空排気系により、1x10−4Pa程度の真空度に排気する。次に、流量制御装置34を所定の流量に設定し、高純度のスパッタガスを真空室10内に導入し、排気系(不図示)をメカニカルブースタポンプに切り替え、真空計12が所定の動作圧力となるように、排気口の下流側に設けられたメインバルブ(不図示)を調節する。
【0019】
続いて、DC電源14、14’からカソード20、20’に所定の負電圧を印加し、平板ターゲット21とアース(真空室)間で放電を発生させる。所定時間プリスパッタを行った後、シャッタ40を開け成膜を開始する。ターゲット21、21’の表面近傍で生成したスパッタ原子はターゲット表面を高速に流れるスパッタガスにより基板42上まで輸送され、薄膜が形成される。
【0020】
輸送型スパッタ法においては、上述したように、スパッタガスはターゲット21、21’を衝撃してスパッタリング現象を発生させる目的の他に、放出されたスパッタ粒子を基板43上に輸送する目的で導入され、例えばArガス等の不活性ガスが用いられる。また、スパッタ粒子を輸送するためには、高流速のガス流が必要であり、所望の成膜速度、膜質に応じて流速が選択されるが、流速は1m/s〜50m/sとするのが好ましい。なお、ガス流速は、動作圧力、ガス流量及びターゲットの内径により定めることができ、これらを調整することにより、所望の流速のガス流を得ることができる。
【0021】
次に、本発明の効果を確認するために、有機EL膜上に陰極材料(Al/Li)の薄膜を形成する実験を行った。ここで、ターゲットには、幅90mm、長さ60mmの板状ターゲットを2枚を20mmの間隔をあけて配置する構成としたガス導入機構は、高さ及び幅がいずれも0.5mmで、長さが40mmのガス流路を0.5mmの間隔をあけて多数形成したものを用いた。Arガスを種々の流量で導入し、真空室内の圧力が133Paになるようにメインバルブを調節した。なお、高流量排気系としては、排気量100m3/hのメカニカルブースタポンプを用いた。また、基板は、ターゲット端から10cm離れ、ターゲット面間の中心軸から7cm下で排気口13の真上に配置した。
このような条件で、Al/Li膜の成膜を10分間行った。
【0022】
図1の本実施形態の装置を用いた場合、Ar流量300〜350sccmで異常放電することなく、10nm/minの成膜速度が得られた。一方、図8に示した装置(内径40mm、長さ60mmの中空ターゲット)で、同じ成膜速度を得るためには500sccmの流量が必要であった。
以上のように、図2に示したガス導入機構を用いることにより、従来、困難であった平板状ターゲットの輸送型スパッタリングが実用上初めて可能となり、また、中空ターゲットの場合と比べてもスパッタ粒子の輸送効率が大幅に改善され、ガス使用量を低減できることが分かった。結果として、ターゲットの複雑な加工が不要となりターゲットコストを低減できるとともに、加工が困難な材料についても輸送型スパッタリングを適用でき、材料の適用範囲を大幅に拡大することが可能となった。
【0023】
本発明においては、図2に示したガス導入機構の他、図3に示した構造のものを用いることも可能である。図3(a)はガス導入機構の構造を示す(a)概略斜視図であり、図3(b)は図2(a)に相当する矢視図である。ここで、ガス流路として小配管31が用いられ、マニホールド32、配管33を介してガス供給系と連結されている。即ち、ターゲット21、21’の全表面にガス流を形成するための小配管31が、ターゲットの一端の幅全長にわたり配置されている。ここで、小配管31の内径は0.5〜5mmであり、長さは内径の20〜100倍とするのが好ましい。さらに、内径は2mm以下とするのがより好ましい。さらに、本発明のガス導入機構は、ガス流路を多数に分割せずに1つのガス流路とし、スリット状の放出口としてもよい。この場合も、ガス流路の高さに対し長さを20〜100倍とするのが好ましい。
このようなガス導入機構によっても、ターゲット表面近傍に高速ガス流を形成することができ、スパッタ粒子の輸送効率が大幅に改善される。
【0024】
次に、本発明の第2の実施形態を図4に示す。
図4は、1つの平板ターゲットを用いた輸送型スパッタ装置の一例を示す概略断面図であり、平板ターゲット21とガス導入機構30を1組、配置した構成の装置である。このような構成とすることにより、ターゲット表面全幅にわたり高速のガス流を形成することが可能となる。なお、ガス導入機構は、図2や図3に示したガス導入機構が好適に用いられる。
【0025】
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
図5は、本発明の第3の実施形態を示す輸送型スパッタ装置の概略図である。図5に示すように、真空室10には、絶縁石11を介して中空カソード20が固定される。中空カソード20は、放電発生用の直流電源14と接続され、その内側には中空形状のターゲット21が取り付けられる。
ターゲット21の一端側には、ターゲット表面全周に平行なガス流を発生させるためのガス導入機構30が取り付けられている。ガス導入機構30は、図6(a)の斜視図に示すように、環状に配置された多数の小配管31とこれら配管にガスを均一に供給するマニホールド32とから構成される。マニホールド32は、配管33、流量制御装置(MFC)34、及びガス純化器35を介してガス供給源(不図示)と接続され、高純度のガスを所望の流量で供給可能な構成となっている。
【0026】
さらに、図6(b)(図1のA−A’矢視図)に示すように、多数の小配管31のガス放出口31aの外周端は、ターゲット内周表面とほぼ同じ高さになるように配置される。ここで、小配管31の内径は0.5〜5mmであり、長さは内径の20〜100倍とするのが好ましい。さらに、内径は2mm以下とするのがより好ましい。このような形状のガス導入機構を通してガスを高速で放出すると、ターゲット表面近傍にガス流(環状)が形成されて、スパッタ粒子の輸送効率が大幅に改善され、少量のガスでもスパッタ粒子を輸送することが可能となる。
【0027】
図6に示したガス導入機構は一般に知られた方法で作製することができる。例えば、マニホールド32となる空洞の円柱体の一端面に多数の孔をリング状に形成し、これらの孔にSUS製の小配管31を挿入し、溶接、接着等により固定する。同様に円柱体の他端面に孔を開け、ガス配管33を挿入固定すればよい。なお、小配管31としては、ガラス管等も用いることができる。
また、本実施形態では、小配管を用いて多数のガス放出口を形成したガス導入機構について述べてたが、図7に示すように、環状のスリット状放出口31aを1つ有するガス導入機構を用いてもよい。この場合であっても、環状スリットの高さは0.5〜5mmとし、長さをその20〜100倍とするのが好ましい。また、多数のガス放出口を有する場合であっても、図6のような小配管を用いず、図7のスリットを分割する構造としてもよい。
なお、本発明において、中空形状のターゲットとは、断面が環状の場合に限るものではなく、矩形状であってもよいことは言うまでもない。これに対応して、ガス導入機構の断面も矩形状となる。
【0028】
薄膜形成を繰り返し行うとターゲットは浸食されるため、ガス放出口とターゲット表面との距離が大きくなり、スパッタ粒子の輸送効率が低下する。従って、図1、4に示した平板ターゲットの場合は、定期的にガス導入機構を移動させて、ガス放出口とターゲット表面との距離を調節するのが好ましい。また、図5に示した中空ターゲット用のガス導入機構の場合は、リング状放出口のリング径が異なるものを複数個用意しておき、定期的に交換するのが好ましい。
また、本発明は、DCスパッタのみならずRFスパッタとすることも可能であり、反応性ガスを導入して反応性スパッタを行うことも可能である。
【0029】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、高エネルギー粒子の基板への入射を抑制するという輸送型スパッタリング法の特徴を維持しつつ、しかも成膜速度を低下させることなく、ガス使用量を大幅に低減することができる。これにより、大流量ガスを用いた場合に問題となるガス中の不純物の影響を排除することができ、高品質・高性能の薄膜形成が行うことができる。
さらに、平板状ターゲットを用いることが可能となることから、ターゲットのコストダウンとともに、薄膜形成技術の応用範囲の拡大、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す概略図である。
【図2】図1のガス導入機構の(a)斜視図及び(b)A−A’矢視図である。
【図3】本発明のガス導入機構の他の構成例を示す概略斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態輸を示す概略図である。
【図5】本発明の第3の実施形態輸を示す概略図である。
【図6】図5のガス導入機構の概略拡大図である。
【図7】本発明のガス導入機構の他の構成例を示す概略図である。
【図8】従来の輸送型スパッタ装置を示す概略図である。
【符号の説明】
10 真空室、
11 絶縁体、
12 真空計、
13 排気口、
14 直流電源、
20 カソード、
21 ターゲット、
30 ガス導入機構、
31 小配管、ガス流路、
31a ガス放出口、
32 マニホールド、
33 配管、
34 流量制御装置、
35 ガス純化器、
40 シャッタ、
41 基板ホルダ、
42 基板。
【発明の属する分野】
本発明は輸送型スパッタ装置及び輸送型スパッタ法に係り、特に、スパッタ粒子の輸送効率を向上させ、さらには平板型ターゲットに適用可能な輸送型スパッタ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパッタ法は、薄膜形成法として広く実用化されているが、高エネルギの荷電粒子や中性粒子が基板に入射することから、基板や形成される膜自体を損傷する場合があり、GaAs等の化合物半導体やビスマス系の酸化物高温超伝導体等の機能材料や有機膜が形成された有機系基板等への応用は制限されていた。
【0003】
そこで、本発明者らは、高エネルギ粒子の影響を排除し得るスパッタ法を検討する中で、ターゲットから離れた位置に基板を配置しスパッタ粒子を高速ガス流で基板まで輸送するスパッタ法(輸送型スパッタ法)に注目し、基板とターゲットの位置関係及び成膜条件を検討して、高エネルギ粒子や紫外線等の影響を受けやすい有機EL素子基板であっても金属薄膜を形成することが可能な輸送型スパッタ装置を開発した(特開2001−140066公報)。この装置の概略を図8の(a)断面図及び(b)C−C’矢視図に示す。
【0004】
図8に示すように、真空室10には、絶縁体11を介して中空カソード20が取り付けられる。中空カソード20は、放電発生用の直流電源14と接続され、その内側には中空形状のターゲット21が固定されている。
ターゲット21の一端側には、ガス導入管33が取り付けられ、流量制御装置(MFC)34、及びガス純化器35を介してガス供給源(不図示)と接続されている。また、ターゲット21の下流側には、排気口13が中空形状のターゲット21の中心軸と直交した方向に設けられ、不図示の排気系と連結されている。基板42は、基板ホルダ41上に載置され、その表面がターゲット中心軸と平行となるように、中心軸から離れた排気口13側に配置される。さらに、基板を覆うようにプリスパッタ時の膜堆積を防止するシャッタ40が配置されている。
【0005】
このような構成とすることにより、スパッタ粒子はガス配管33から導入される高速のガス流により基板上に輸送され、ダメージのない高品質の薄膜形成が可能となる。即ち、図8の装置を用いることにより、高速エネルギー粒子のみならずプラズマの基板への入射をも抑制することができ、この結果、有機EL素子のような有機系基板であってもその素子性能を低下させることなく高品質薄膜の形成が可能となった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べてきたように、輸送型スパッタ法は、高機能・高品質薄膜の作製法として注目され、種々の材料の薄膜形成が検討されるようになってきたが、高速のガス流を形成するには中空形状のターゲットが不可欠であり、ターゲットの加工コストが極めて高くなるという問題とともに、材料によっては中空形状に加工できず、材料の適用範囲が制限されるという問題があった。
また、ガスの流速が小さいとスパッタ粒子が十分輸送されずターゲット上に堆積して異常放電が発生することから、安定した薄膜形成を継続することが困難となった。即ち、中空形状であっても大流量のガスが必要となり、ランニングコストがかかるという問題があった。さらに、このガスには不純物含有量の極めて少ない高純度のガスを使用するが、流量が多くなると微量不純物であっても膜質に大きく影響する場合がある。
【0007】
かかる状況において、本発明は、スパッタ粒子の輸送効率を改善し、ランニングコストを低く抑えた輸送型スパッタ装置及びスパッタ法を提供することを目的とする。また、平板ターゲットを用いることが可能な輸送型スパッタ装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の輸送型スパッタ装置は、排気系及びガス供給系が連結された真空室と、該真空室の内部に配置されるターゲットと、前記ガス供給系と連結され、ターゲット上に高速のガス流を形成するガス導入機構と、高速のガス流により輸送されるスパッタ粒子が堆積する基板を保持する基板ホルダと、からなる輸送型スパッタ装置であって、前記ガス導入機構は、前記ターゲットの表面に平行な1又は複数のガス流路からなり、該ターゲットの一端の全長にわたって該ターゲットの表面近傍に高速ガスを放出させる構成としたことを特徴とする。
このように、高速のガス流を主にターゲット表面近傍に流す構成としたため、スパッタ粒子を少量のガスで効果的に輸送することができ、ガスのランニングコストを大幅に削減することが可能となる。
【0009】
ここで、ガス導入機構を配置することにより、ターゲットは、中空ターゲット以外に、平板ターゲットを用いることも可能となる。このとき、平板ターゲットは1枚でも、あるいは2枚を対向させた構成でもよい。
前記ガス流路の高さは0.5〜5mmであり、長さが該高さの20〜100倍とするのが好ましく、さらに該ガス流路の底面を前記ターゲットの表面と略一致させるのがより好ましく、この範囲で、特に圧力が13〜1333Paの場合に、スパッタ粒子の輸送能力が一層向上する。
【0010】
本発明の輸送型スパッタ法は、排気系及びガス供給系が連結された真空室内にターゲットと基板とを配置し、前記ガス供給系と連結されたガス導入機構からガスを供給してターゲット上に高速のガス流を形成するとともに、該ターゲットに電圧を印加してプラズマを発生させ、前記ターゲット表面で発生したスパッタ粒子を前記ガス流により下流側に配置した基板上に輸送して堆積させる輸送型スパッタ法であって、前記ガス導入機構を、前記ターゲットの表面に平行な1又は複数のガス流路で構成し、該ターゲットの一端の全長にわたって該ターゲットの表面近傍に高速ガスを放出させる構成としたことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び2は、本発明の第1の実施形態を示す輸送型スパッタ装置の概略図である。図1に示すように、真空室10には、絶縁石11を介して2つの平板状カソード20、20’が固定される。それぞれのカソードは、放電発生用の直流電源14、14’と接続され、その内側には平板状ターゲット21、21’が取り付けられる。
【0012】
ターゲット21、21’のそれぞれの一端側には、ターゲットの幅全体に平行なガス流を発生させるためのガス導入機構30、30’が取り付けられている。ガス導入機構には、図2に示すように、多数のガス流路31とこれらガス流路にガスを均一に供給するマニホールド32とが形成されている。マニホールド32は、配管33、流量制御装置(MFC)34、及びガス純化器35を介してガス供給源(不図示)と連結され、高純度のガスを所望の流量で供給可能な構成となっている。
【0013】
さらに、図2(a)(図1のA−A’矢視図)に示すように、多数のガス流路31の底面は、ターゲット表面とほぼ同じ高さになるように配置される。ここで、ガス流路31の高さは0.5〜5mmであり、長さは高さの20〜100倍とするのが好ましい。さらに、高さは2mm以下とするのがより好ましい。なお、ガス流路の幅は、特に限定されないが、例えばガス流路の高さと同程度としてもよい。このような形状のガス導入機構を通してガスを高速で放出すると、2つのターゲットの主に表面近傍にガス流が形成されるため、スパッタ粒子の輸送効率が大幅に改善され、少量のガスでもスパッタ粒子を輸送することが可能となる。また、スパッタ法における動作圧は、13〜1333Paが好ましく、100〜300Paがより好ましい。この圧力範囲では、スパッタ粒子の平均自由工程は非常に短くなり(0.5mm程度以下)、高エネルギーのスパッタ粒子は数ミリ飛行する間にガス分子と衝突を繰り返し、運動のエネルギー及び方向性を失うことになる。その結果、スパッタ粒子を基板表面に輸送するには、表面近傍のみにガスを流すだけでよく、輸送効率がより向上することになる。即ち、ターゲット表面の近傍(即ち、スパッタ粒子の存在確率の高い領域)にのみ高速ガス流を流す構成とすることにより、少ないガス流量で効率よく薄膜を作製することができ、ランニングコストを削減することができる。
なお、ガス放出口31aとターゲット端との距離は1〜5mmとするのがよく、この範囲で、安定した放電を維持しつつ、輸送効率の高いガス流を形成することができる。
【0014】
図2に示したガス導入機構は一般に知られた方法で作製することができる。例えば、下板30aにガス流路となる溝31及びマニホールド部32を切削して形成し、上板30b及び配管33を溶接、接着等により取り付け、固定するることで、容易に作製することができる。
【0015】
真空室10内のターゲット下流側には、排気口13がターゲット21、21’平面と垂直な方向に設けられ、不図示の排気系と連結されている。なお、排気系は、油拡散ポンプと油回転ポンプとからなる高真空排気系と、メカニカルブースタポンプと油回転ポンプとからなる高流量排気系との2系列で構成されている。基板42は、図1に示すように、基板ホルダ41上に載置され、さらに基板を覆うようにプリスパッタ時の膜堆積を防止するシャッタ40が配置されている。基板42は、その表面がターゲット中心軸と平行となるように、該中心軸から離れた排気口13側に配置される。
【0016】
このようにして、ガス導入機構30、30’からターゲット21、21’表面を流れ、排気口13に向かう高速ガス流が形成され、この流れの中に置かれた基板上にスパッタ粒子が輸送され、堆積される。なお、図1の装置構成では、高速エネルギー粒子のみならずプラズマや紫外線等の基板への入射をも抑制することができ、基板及び形成される薄膜のダメージを低減させることができる。結果として、有機EL素子のような有機系基板であってもその性能を低下させることなく高品質薄膜の形成が可能となる。
【0017】
また、本発明においては、高速ガス流によりプラズマがターゲット端から放出される場合があるため、ターゲット中心軸方向の基板とターゲット端との距離は、該プラズマの放出距離よりも大きくとるのが好ましく、通常5cm以上、特に基板上に有機薄膜が形成されている場合は10cm以上とするのが好ましい。 さらに、本発明においては、基板ホルダ41に、基板バイアス電圧印加手段を設けてもよく、これにより、例えば飛来する電子を反発させ、電子による基板及び基板上の薄膜の性能劣化を防止することができる。この基板バイアス印加手段は、特に、有機膜その他の絶縁膜が形成された基板上への薄膜形成に有効である。
【0018】
次に、図1の輸送型スパッタ装置を用いた薄膜形成法の一例を説明する。
真空室10は、油拡散ポンプの高真空排気系により、1x10−4Pa程度の真空度に排気する。次に、流量制御装置34を所定の流量に設定し、高純度のスパッタガスを真空室10内に導入し、排気系(不図示)をメカニカルブースタポンプに切り替え、真空計12が所定の動作圧力となるように、排気口の下流側に設けられたメインバルブ(不図示)を調節する。
【0019】
続いて、DC電源14、14’からカソード20、20’に所定の負電圧を印加し、平板ターゲット21とアース(真空室)間で放電を発生させる。所定時間プリスパッタを行った後、シャッタ40を開け成膜を開始する。ターゲット21、21’の表面近傍で生成したスパッタ原子はターゲット表面を高速に流れるスパッタガスにより基板42上まで輸送され、薄膜が形成される。
【0020】
輸送型スパッタ法においては、上述したように、スパッタガスはターゲット21、21’を衝撃してスパッタリング現象を発生させる目的の他に、放出されたスパッタ粒子を基板43上に輸送する目的で導入され、例えばArガス等の不活性ガスが用いられる。また、スパッタ粒子を輸送するためには、高流速のガス流が必要であり、所望の成膜速度、膜質に応じて流速が選択されるが、流速は1m/s〜50m/sとするのが好ましい。なお、ガス流速は、動作圧力、ガス流量及びターゲットの内径により定めることができ、これらを調整することにより、所望の流速のガス流を得ることができる。
【0021】
次に、本発明の効果を確認するために、有機EL膜上に陰極材料(Al/Li)の薄膜を形成する実験を行った。ここで、ターゲットには、幅90mm、長さ60mmの板状ターゲットを2枚を20mmの間隔をあけて配置する構成としたガス導入機構は、高さ及び幅がいずれも0.5mmで、長さが40mmのガス流路を0.5mmの間隔をあけて多数形成したものを用いた。Arガスを種々の流量で導入し、真空室内の圧力が133Paになるようにメインバルブを調節した。なお、高流量排気系としては、排気量100m3/hのメカニカルブースタポンプを用いた。また、基板は、ターゲット端から10cm離れ、ターゲット面間の中心軸から7cm下で排気口13の真上に配置した。
このような条件で、Al/Li膜の成膜を10分間行った。
【0022】
図1の本実施形態の装置を用いた場合、Ar流量300〜350sccmで異常放電することなく、10nm/minの成膜速度が得られた。一方、図8に示した装置(内径40mm、長さ60mmの中空ターゲット)で、同じ成膜速度を得るためには500sccmの流量が必要であった。
以上のように、図2に示したガス導入機構を用いることにより、従来、困難であった平板状ターゲットの輸送型スパッタリングが実用上初めて可能となり、また、中空ターゲットの場合と比べてもスパッタ粒子の輸送効率が大幅に改善され、ガス使用量を低減できることが分かった。結果として、ターゲットの複雑な加工が不要となりターゲットコストを低減できるとともに、加工が困難な材料についても輸送型スパッタリングを適用でき、材料の適用範囲を大幅に拡大することが可能となった。
【0023】
本発明においては、図2に示したガス導入機構の他、図3に示した構造のものを用いることも可能である。図3(a)はガス導入機構の構造を示す(a)概略斜視図であり、図3(b)は図2(a)に相当する矢視図である。ここで、ガス流路として小配管31が用いられ、マニホールド32、配管33を介してガス供給系と連結されている。即ち、ターゲット21、21’の全表面にガス流を形成するための小配管31が、ターゲットの一端の幅全長にわたり配置されている。ここで、小配管31の内径は0.5〜5mmであり、長さは内径の20〜100倍とするのが好ましい。さらに、内径は2mm以下とするのがより好ましい。さらに、本発明のガス導入機構は、ガス流路を多数に分割せずに1つのガス流路とし、スリット状の放出口としてもよい。この場合も、ガス流路の高さに対し長さを20〜100倍とするのが好ましい。
このようなガス導入機構によっても、ターゲット表面近傍に高速ガス流を形成することができ、スパッタ粒子の輸送効率が大幅に改善される。
【0024】
次に、本発明の第2の実施形態を図4に示す。
図4は、1つの平板ターゲットを用いた輸送型スパッタ装置の一例を示す概略断面図であり、平板ターゲット21とガス導入機構30を1組、配置した構成の装置である。このような構成とすることにより、ターゲット表面全幅にわたり高速のガス流を形成することが可能となる。なお、ガス導入機構は、図2や図3に示したガス導入機構が好適に用いられる。
【0025】
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
図5は、本発明の第3の実施形態を示す輸送型スパッタ装置の概略図である。図5に示すように、真空室10には、絶縁石11を介して中空カソード20が固定される。中空カソード20は、放電発生用の直流電源14と接続され、その内側には中空形状のターゲット21が取り付けられる。
ターゲット21の一端側には、ターゲット表面全周に平行なガス流を発生させるためのガス導入機構30が取り付けられている。ガス導入機構30は、図6(a)の斜視図に示すように、環状に配置された多数の小配管31とこれら配管にガスを均一に供給するマニホールド32とから構成される。マニホールド32は、配管33、流量制御装置(MFC)34、及びガス純化器35を介してガス供給源(不図示)と接続され、高純度のガスを所望の流量で供給可能な構成となっている。
【0026】
さらに、図6(b)(図1のA−A’矢視図)に示すように、多数の小配管31のガス放出口31aの外周端は、ターゲット内周表面とほぼ同じ高さになるように配置される。ここで、小配管31の内径は0.5〜5mmであり、長さは内径の20〜100倍とするのが好ましい。さらに、内径は2mm以下とするのがより好ましい。このような形状のガス導入機構を通してガスを高速で放出すると、ターゲット表面近傍にガス流(環状)が形成されて、スパッタ粒子の輸送効率が大幅に改善され、少量のガスでもスパッタ粒子を輸送することが可能となる。
【0027】
図6に示したガス導入機構は一般に知られた方法で作製することができる。例えば、マニホールド32となる空洞の円柱体の一端面に多数の孔をリング状に形成し、これらの孔にSUS製の小配管31を挿入し、溶接、接着等により固定する。同様に円柱体の他端面に孔を開け、ガス配管33を挿入固定すればよい。なお、小配管31としては、ガラス管等も用いることができる。
また、本実施形態では、小配管を用いて多数のガス放出口を形成したガス導入機構について述べてたが、図7に示すように、環状のスリット状放出口31aを1つ有するガス導入機構を用いてもよい。この場合であっても、環状スリットの高さは0.5〜5mmとし、長さをその20〜100倍とするのが好ましい。また、多数のガス放出口を有する場合であっても、図6のような小配管を用いず、図7のスリットを分割する構造としてもよい。
なお、本発明において、中空形状のターゲットとは、断面が環状の場合に限るものではなく、矩形状であってもよいことは言うまでもない。これに対応して、ガス導入機構の断面も矩形状となる。
【0028】
薄膜形成を繰り返し行うとターゲットは浸食されるため、ガス放出口とターゲット表面との距離が大きくなり、スパッタ粒子の輸送効率が低下する。従って、図1、4に示した平板ターゲットの場合は、定期的にガス導入機構を移動させて、ガス放出口とターゲット表面との距離を調節するのが好ましい。また、図5に示した中空ターゲット用のガス導入機構の場合は、リング状放出口のリング径が異なるものを複数個用意しておき、定期的に交換するのが好ましい。
また、本発明は、DCスパッタのみならずRFスパッタとすることも可能であり、反応性ガスを導入して反応性スパッタを行うことも可能である。
【0029】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、高エネルギー粒子の基板への入射を抑制するという輸送型スパッタリング法の特徴を維持しつつ、しかも成膜速度を低下させることなく、ガス使用量を大幅に低減することができる。これにより、大流量ガスを用いた場合に問題となるガス中の不純物の影響を排除することができ、高品質・高性能の薄膜形成が行うことができる。
さらに、平板状ターゲットを用いることが可能となることから、ターゲットのコストダウンとともに、薄膜形成技術の応用範囲の拡大、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す概略図である。
【図2】図1のガス導入機構の(a)斜視図及び(b)A−A’矢視図である。
【図3】本発明のガス導入機構の他の構成例を示す概略斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態輸を示す概略図である。
【図5】本発明の第3の実施形態輸を示す概略図である。
【図6】図5のガス導入機構の概略拡大図である。
【図7】本発明のガス導入機構の他の構成例を示す概略図である。
【図8】従来の輸送型スパッタ装置を示す概略図である。
【符号の説明】
10 真空室、
11 絶縁体、
12 真空計、
13 排気口、
14 直流電源、
20 カソード、
21 ターゲット、
30 ガス導入機構、
31 小配管、ガス流路、
31a ガス放出口、
32 マニホールド、
33 配管、
34 流量制御装置、
35 ガス純化器、
40 シャッタ、
41 基板ホルダ、
42 基板。
Claims (9)
- 排気系及びガス供給系が連結された真空室と、該真空室の内部に配置されるターゲットと、前記ガス供給系と連結され、ターゲット上に高速のガス流を形成するガス導入機構と、高速のガス流により輸送されるスパッタ粒子が堆積する基板を保持する基板ホルダと、からなる輸送型スパッタ装置であって、
前記ガス導入機構は、前記ターゲットの表面に平行な1又は複数のガス流路からなり、該ターゲットの一端の全長にわたって該ターゲットの表面近傍に高速ガスを放出させる構成としたことを特徴とする輸送型スパッタ装置。 - 前記ターゲットは平板ターゲットであることを特徴とする請求項1に記載の輸送型スパッタ装置。
- 前記ガス流路の高さは0.5〜5mmであり、長さを該高さの20〜100倍としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の輸送型スパッタ装置。
- 前記ガス流路の底面を前記ターゲットの表面と略一致させたことを特徴とする請求項3に記載の輸送型スパッタ装置。
- 排気系及びガス供給系が連結された真空室内にターゲットと基板とを配置し、前記ガス供給系と連結されたガス導入機構からガスを供給してターゲット上に高速のガス流を形成するとともに、該ターゲットに電圧を印加してプラズマを発生させ、前記ターゲット表面で発生したスパッタ粒子を前記ガス流により下流側に配置した基板上に輸送して堆積させる輸送型スパッタ法であって、
前記ガス導入機構を、前記ターゲットの表面に平行な1又は複数のガス流路で構成し、該ターゲットの一端の全長にわたって該ターゲットの表面近傍に高速ガスを放出させる構成としたことを特徴とする輸送型スパッタ法。 - 前記ターゲットは平板ターゲットであることを特徴とする請求項5に記載の輸送型スパッタ法。
- 動作圧力が13〜1333Paであることを特徴とする請求項5又は6に記載の輸送型スパッタ法。
- 前記ガス流路の高さは0.5〜5mmであり、長さを該高さの20〜100倍としたことを特徴とする請求項5〜7いずれか1項に記載の輸送型スパッタ法。
- 前記ガス流路の底面を前記ターゲットの表面と略一致させることを特徴とする請求項8に記載の輸送型スパッタ法。
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JP2002192846A JP2004035931A (ja) | 2002-07-02 | 2002-07-02 | 輸送型スパッタ装置及び輸送型スパッタ法 |
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JP2007179797A (ja) * | 2005-12-27 | 2007-07-12 | Tokyo Electron Ltd | 成膜装置および発光素子の製造方法 |
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2002
- 2002-07-02 JP JP2002192846A patent/JP2004035931A/ja active Pending
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