JP2004030820A - レーザビーム強度決定方法、これに用いる臨界値の生成方法、オーバーライト回数決定プログラム及び光記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】クロスイレーズによる影響が十分に考慮されたレーザビーム強度決定方法を提供する。
【解決手段】クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数xを特定し、さらに、1回のクロスイレーズによる影響を受ける前後における信号振幅の変化とx回のクロスイレーズによる影響を受ける前後におけるジッタの変化との関係から、許容しうるジッタの変化量または変化率に対応した、1回のクロスイレーズによる影響を受ける前後における信号振幅の変化量または変化率を臨界値として特定する。そして、OPCにおいて1回のクロスイレーズによる影響を受ける前後における信号振幅の変化量または変化率を測定し、得られた値と臨界値とを比較し、その結果に基づいてレーザビームの強度を決定する。これにより、レーザビーム強度としてクロスイレーズによる影響が十分に考慮された値を得ることができる。
【選択図】 図7
【解決手段】クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数xを特定し、さらに、1回のクロスイレーズによる影響を受ける前後における信号振幅の変化とx回のクロスイレーズによる影響を受ける前後におけるジッタの変化との関係から、許容しうるジッタの変化量または変化率に対応した、1回のクロスイレーズによる影響を受ける前後における信号振幅の変化量または変化率を臨界値として特定する。そして、OPCにおいて1回のクロスイレーズによる影響を受ける前後における信号振幅の変化量または変化率を測定し、得られた値と臨界値とを比較し、その結果に基づいてレーザビームの強度を決定する。これにより、レーザビーム強度としてクロスイレーズによる影響が十分に考慮された値を得ることができる。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザビーム強度決定方法に関し、特に、書き換え型光記録媒体に照射するレーザビームの強度決定方法に関する。また、本発明は、レーザビームの強度決定を行うために用いる臨界値の生成方法及び臨界値を生成する前段階で用いるオーバーライト回数決定プログラムに関し、特に、書き換え型光記録媒体に照射するレーザビームの強度決定を行うために用いる臨界値の生成方法及びその前段階で用いるオーバーライト回数決定プログラムに関する。さらに、本発明は光記録媒体に関し、特に、書き換え型の光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、デジタルデータを記録するための記録媒体として、CDやDVDに代表される光記録媒体が広く利用されており、そのデータ記録方式としては、記録すべきデータをトラックに沿った記録マークの長さに変調するという方式が広く用いられている。例えば、ユーザによるデータの書き換えが可能な光記録媒体の一種であるDVD−RWにおいては、3T〜11T及び14T(Tは1クロック周期)に対応する長さの記録マークが用いられ、これによってデータの記録が行われる。
【0003】
このような記録マークの形成においては、強度変調されたレーザービームが光記録媒体のトラックに沿って照射され、これによって光記録媒体内の相変化材料からなる記録層に所定の長さを持ったアモルファス領域が形成され、これが記録マークとして用いられる。記録層のうちアモルファス状態でない部分は結晶状態となっており、ブランク領域として用いられる。
【0004】
記録層に記録マークを形成する場合、記録層に照射するレーザビームのパワーを十分に高いレベル(記録パワーPw)に設定することによって記録層を融点を超える温度に加熱し、その後、レーザビームのパワーを十分に低いレベル(基底パワーPb)に変化させることによって記録層を急冷する。これにより、相変化材料が結晶状態からアモルファス状態に変化し、記録マークが形成される。一方、既に形成された記録マークを消去する場合、記録層に照射するレーザビームのパワーを記録パワーPw以下、基底パワーPb以上のレベル(消去パワーPe)に設定することによって記録層を結晶化温度以上に加熱し、徐冷する。これにより、相変化材料がアモルファス状態から結晶状態に変化し、記録マークが消去される。したがって、レーザビームのパワーを記録パワーPw、消去パワーPe、基底パワーPbからなる複数のレベルに強度変調することによって、記録層の未記録領域に記録マークを形成するだけでなく、既に記録マークが形成されている領域にこれと異なる記録マークを直接上書き(ダイレクトオーバーライト)することが可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、書き換え型の光記録媒体、特に記録層が相変化材料からなる光記録媒体においては、隣のトラックに対して書き込みが行われた場合、当該トラックに既に書き込まれているデータのキャリアレベルの低下、いわゆるクロスイレーズが生じる場合がある。
【0006】
近年、データの記録密度が高められ、且つ、非常に高いデータ転送レートを実現可能な次世代型の光記録媒体が提案されている。このような次世代型の光記録媒体においては、高データ転送レートを実現するため記録線速度が従来の光記録媒体に比べて非常に高く設定されるが、一般に、記録線速度が高くなるほど記録マークの形成に必要な記録パワーPwも高くなることから、次世代型の光記録媒体においては、従来の光記録媒体に比べてクロスイレーズが非常に生じやすい。また、クロスイレーズは、トラックピッチTPとビームスポット径Dとの比(TP/D)が小さいほど生じやすくなるが、次世代型の光記録媒体においては、従来の光記録媒体に比べてトラックピッチTPとビームスポット径Dとの比(TP/D)が小さい点も、クロスイレーズが生じやすくなる大きな理由となっている。
【0007】
このため、次世代型の光記録媒体に対するデータの書き込みにおいては、クロスイレーズによる影響を十分に考慮して記録パワーPwを設定する必要がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、クロスイレーズによる影響が十分に考慮されたレーザビーム強度決定方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、クロスイレーズによる影響を十分に考慮してレーザビームの強度決定を行うために用いる臨界値の生成方法及びかかる臨界値の生成の前段階で用いられるオーバーライト回数決定プログラムを提供することである。
【0010】
また、本発明のさらに他の目的は、クロスイレーズによる影響を十分に考慮してレーザビームの強度決定を行うために用いる情報が格納された光記録媒体を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のかかる目的は、書き換え型の光記録媒体に照射するレーザビームの強度決定方法であって、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を特定するステップと、第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第1の信号特性の変化と前記特定された回数である第2の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第2の信号特性の変化との関係から、前記第2の信号特性の所定の変化量または変化率に対応した、前記第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第1の信号特性の変化量または変化率を臨界値として特定するステップと、前記第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第1の信号特性の変化量または変化率を測定し、得られた値と前記臨界値とを比較するステップとを備えるレーザビーム強度決定方法によって達成される。
【0012】
本発明によれば、第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第1の信号特性の変化を測定することによって、実際に第2の信号特性を測定することなく、第2の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第2の信号特性の変化の程度を知ることができるので、レーザビームの強度として、クロスイレーズによる影響が十分に考慮された値を得ることができる。したがって、本発明によれば、次世代型の光記録媒体のようにクロスイレーズが生じやすい光記録媒体に対してデータを記録する場合であっても、クロスイレーズの影響を十分に抑制することが可能となる。しかも、本発明によれば、実際に第2の信号特性を測定する必要がないので、レーザビーム強度決定に必要な試し書きの回数を減らすことができるとともに、測定する信号特性の種類を削減することが可能となる。さらに、本発明によれば、第2の回数としてクロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を用いているので、正確且つ短時間で臨界値を決定することが可能となる。
【0013】
また、前記第1の回数が1回であることが好ましい。これによれば、少ない回数の試し書きによって、多くの回数の試し書きを行った場合の信号特性の変化をシミュレーションすることが可能となる。
【0014】
さらに、前記第1の信号特性が信号振幅であり、前記第2の信号特性がジッタ若しくはエラーレートであることが好ましい。これによれば、実際にジッタやエラーレートを測定することなく、信号振幅を測定することによってジッタやエラーレートの変化をシミュレーションすることが可能となる。また、前記クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を特定するステップは、クロスイレーズの影響によりジッタ若しくはエラーレートが実質的に飽和する回数を特定するものであることが好ましい。
【0015】
本発明の前記目的はまた、書き換え型光記録媒体の隣接する少なくとも2本のトラックにテスト信号を記録する第1のステップと、前記2本のトラックに記録されたテスト信号を再生する第2のステップと、少なくとも、一方のトラックより得られた再生信号の第1の信号特性に関する検出値と他方のトラックより得られた再生信号の前記第1の信号特性に関する検出値に基づき、これらの差に関する値を生成する第3のステップと、前記差に関する値と臨界値とを比較する第4のステップとを備え、前記臨界値が、1回のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第1の信号特性の変化と所定回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第2の信号特性の変化との関係から、複数回のクロスイレーズによる影響を受ける前後において許容し得る前記第2の信号特性の変化量または変化率に基づいて定められたものであり、さらに、前記所定回数が、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数であることを特徴とするレーザビーム強度決定方法によって達成される。
【0016】
本発明においても、少なくとも2本のトラックにテスト信号を記録し、記録されたテスト信号の第1の信号特性を測定するだけで、実際に第2の信号特性を測定することなく、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和した場合の第2の信号特性の変化の程度を知ることができる。したがって、レーザビームの強度として、クロスイレーズによる影響が十分に考慮された値を得ることができる。
【0017】
この場合、前記第1の信号特性が信号振幅であり、前記第2の信号特性がジッタ若しくはエラーレートであることが好ましい。
【0018】
本発明の前記目的はまた、書き換え型の光記録媒体に照射するレーザビームの強度決定方法であって、クロスイレーズによる影響を受けた回数と所定の信号特性との関係を特定する第1のステップと、前記関係をもとに、クロスイレーズによる前記所定の信号特性の変化が実質的に飽和する回数を特定する第2のステップと、前記飽和する回数を示す情報を光記録媒体に記録する第3のステップとを備えるレーザビーム強度決定方法によって達成される。
【0019】
本発明によれば、クロスイレーズによる影響が飽和する回数が光記録媒体に記録されるので、いわゆるOPC(Optimum Power Control)において、レーザビームの強度としてクロスイレーズによる影響が十分に考慮された値を簡単に得ることが可能となる。
【0020】
本発明の前記目的はまた、書き換え型の光記録媒体に照射するレーザビームの強度決定に用いられる臨界値の生成方法であって、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を特定する第1のステップと、第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第1の信号特性の変化を測定する第2のステップと、前記特定された回数である第2の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第2の信号特性の変化を測定する第3のステップと、前記第2及び第3のステップによる測定の結果に基づき、前記第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第1の信号特性の変化と前記第2の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第2の信号特性の変化との関係を特定する第4のステップと、前記第2の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後において許容し得る前記第2の信号特性の変化量または変化率に対応する、前記第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第1の信号特性の変化量または変化率を前記臨界値として特定する第5のステップとを備える臨界値の生成方法によって達成される。
【0021】
本発明の前記目的はまた、コンピュータ制御により、クロスイレーズによる影響を受けた回数と所定の信号特性との関係を特定する第1のステップと、前記関係をもとに、クロスイレーズによる前記所定の信号特性の変化が実質的に飽和する回数を特定する第2のステップと、前記飽和する回数を示す情報を光記録媒体に記録する第3のステップとを実行させるためのオーバーライト回数決定プログラムによって達成される。
【0022】
本発明の前記目的はまた、書き換え型の光記録媒体であって、クロスイレーズによる所定の信号特性の変化が実質的に飽和する回数を示す情報が格納されていることを特徴とする光記録媒体によって達成される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施態様について詳細に説明する。
【0024】
図1は、本実施態様にかかるレーザビーム強度決定方法を示すフローチャートである。以下に詳述するとおり、本実施態様にかかるレーザビーム強度決定方法は、実際にユーザデータの記録を行う前に、情報記録装置(ドライブ)側において実行しても構わないし、光記録媒体の製造過程において、メーカ側において実行しても構わないが、レーザビームの強度として実際の記録環境に即した値を得るためには、実際にユーザデータの記録を行う情報記録装置側において実行することが好ましい。尚、情報記録装置において最適なレーザビームの強度を決定する方法は、一般にOPC(Optimum Power Control)と呼ばれている。
【0025】
本実施態様の方法によるレーザビーム強度決定においては、まず、対象となる光記録媒体のパワーキャリブレーションエリアに対し、記録パワーPwを所定の強度に設定して、連続する3トラックにテスト信号の記録を行う(ステップS1)。ここで、パワーキャリブレーションエリアとは、レーザビームの強度決定を行うための上記テスト信号等を記録する領域をいい、ユーザデータを格納すべき領域とは別に光記録媒体の例えば内周部分に割り当てられている。
【0026】
また、記録パワーPwの強度としては、使用する情報記録装置が任意に決定しても良いし、光記録媒体内に格納された情報に基づいて決定しても良い。さらに、テスト信号の内容は特に限定されず、単一信号であっても混合信号であっても構わない。但し、テスト信号の記録に用いるパルス列パターン(記録ストラテジ)としては、実際にユーザデータを記録する場合に使用するパルス列パターンと同じパルス列パターンを用いる必要があり、記録線速度についても、実際にユーザデータを記録する場合の記録線速度と同じ記録線速度に設定する必要がある。
【0027】
以下、ステップS1においてテスト信号が記録された3本のトラックを、図2に示すように、記録が行われた順に第1トラック、第2トラック、第3トラックと呼ぶ。この場合、第1トラックについては、第2トラックに対するデータの記録によってクロスイレーズが生じている可能性があり、また、第2トラックについては、第3トラックに対するデータの記録によってクロスイレーズが生じている可能性がある。一方、第3トラックについては、最後に記録されたトラックであることから、クロスイレーズが生じている可能性はない。
【0028】
次に、第2トラックに記録されたテスト信号の再生を行い(ステップS2)、得られる再生信号に基づいてレーザビームの強度決定に必要な信号特性を測定する(ステップS3)。ここで、レーザビームの強度決定に必要な信号特性としては、アシンメトリやβ値等を挙げることができる。尚、ステップS2においては、第2トラックに記録されたテスト信号を再生していることから、得られる信号特性は、両側からのクロストークの影響が考慮されたものとなる。
【0029】
次に、ステップS3において測定された所定の信号特性が基準値を満たしているか否かを判断する(ステップS4)。この場合、ステップS3において測定された信号特性が複数(例えば、アシンメトリとβ値)である場合には、基準値はこれら複数の信号特性ごとに設定され、その全てが基準値を満たしているか否かが判断される。
【0030】
その結果、基準値を満たしていないと判断された場合には、ステップS1において設定した記録パワーPwのレベルが不適切であることが原因と考えられるので、これを変更して再度連続する3トラック(第1、第2及び第3トラック)にテスト信号の記録を行う(ステップS5)。この場合、テスト信号の記録を行う3本のトラックとしては、未記録のトラックを用いることが好ましい。
【0031】
一方、ステップS4において基準値を満たしていると判断された場合には、第2トラック及び第3トラックに記録されたテスト信号の再生を行い(ステップS6)、得られる再生信号の振幅を測定する(ステップS7)。ここで、再生信号の振幅とは、記録マークが形成された領域における反射率とブランク領域における反射率との差を意味し、テスト信号が混合信号である場合には最長マークの振幅を測定することが好ましい。尚、ステップS3において第2トラックに記録されたテスト信号の振幅が既に測定されている場合には、ステップS6においては、第3トラックに記録されたテスト信号の再生を行う必要はない。この場合、上述の通り、第2トラックに記録されたテスト信号はクロスイレーズの影響を受けている可能性がある一方、第3トラックに記録されたテスト信号はクロスイレーズの影響を受けていないことから、通常は、第2トラックより得られる再生信号の振幅(D2)は第3トラックより得られる再生信号の振幅(D3)よりも小さくなるはずである。
【0032】
次に、第2トラックより得られた再生信号の振幅(D2)と第3トラックより得られた再生信号の振幅(D3)に基づいて、第1の信号振幅減少率(R1)を算出する(ステップS8)。この場合、第1の信号振幅減少率(R1)としては、振幅(D2)と振幅(D3)との差を振幅(D3)で規格化した値、すなわち、
(D3−D2)/D3
とすることが好ましい。
【0033】
次に、ステップS8において算出された第1の信号振幅減少率(R1)が臨界値以下であるか否かを判断する(ステップS9)。ステップS9で用いる臨界値は、後述する方法により決定される。
【0034】
その結果、第1の信号振幅減少率(R1)が臨界値を越えている場合には、クロスイレーズの影響が大きいことが分かるので、記録パワーPwを低くして再度連続する3トラック(第1、第2及び第3トラック)にテスト信号の記録を行う(ステップS10)。この場合も、テスト信号の記録を行う3本のトラックとしては、未記録のトラックを用いることが好ましい。一方、第1の信号振幅減少率(R1)が臨界値以下である場合には、クロスイレーズの影響が十分に小さいことが分かるので、当該記録パワーPwを最適パワーとして決定する(ステップS11)。
【0035】
以上のような方法を用いることにより、記録パワーPwをクロスイレーズによる影響が十分に考慮されたレベルに設定することが可能となる。尚、図1に示すレーザビーム強度決定方法は、「レーザビーム強度決定プログラム」をコンピュータが実行することによって実施可能である。
【0036】
次に、ステップS9で用いる臨界値の決定方法について説明する。
【0037】
図3は、ステップS9で用いる臨界値の決定方法を示すフローチャートである。以下に詳述するとおり、かかる臨界値の決定については、可能であれば実際にユーザデータの記録を行う前に情報記録装置(ドライブ)側において実行しても構わないが、ジッタの測定を行う必要があること、並びに、多数回に亘ってテストデータの記録を行う必要があることから、光記録媒体の製造過程においてメーカ側が実行することが好ましい。
【0038】
臨界値の決定においては、まず、変数iを0にリセットし(ステップS21)、次に、対象となる光記録媒体のパワーキャリブレーションエリアに対し、記録パワーPwを予め定められた最低パワーPw(min)に設定して(ステップS22)、連続する3トラックにテスト信号の記録を行う(ステップS23)。テスト信号の内容は特に限定されず、単一信号であっても混合信号であっても構わないが、テスト信号の記録に用いるパルス列パターン(記録ストラテジ)としては、実際にユーザデータを記録する場合に使用するパルス列パターンと同じパルス列パターンを用いる必要があり、記録線速度についても、実際にユーザデータを記録する場合の記録線速度と同じ記録線速度に設定する必要がある。また、図2に示したとおり、ステップS23においてテスト信号が記録された3本のトラックを、記録した順に第1トラック、第2トラック、第3トラックと呼ぶ。
【0039】
次に、第2トラック及び第3トラックに記録されたテスト信号の再生を行い(ステップS24)、得られる再生信号に基づいてジッタ及び信号振幅を測定する(ステップS25)。この場合、第3トラックに記録されたテスト信号のジッタ及び信号振幅は、クロスイレーズによる影響を受けていない場合の値(Single)であり、第2トラックに記録されたテスト信号のジッタ及び信号振幅は、クロスイレーズの影響を片側から1回受けた状態における値(Cross1)である。したがって、Cross1の値はSingleの値よりも悪化していることが一般的である。尚、ステップS24におけるジッタの測定は、第2トラックについてのみ行えば足り、第3トラックについてはこれを行わなくても構わない。
【0040】
次に、変数iをインクリメントした後(ステップS26)、上記第1トラック及び第3トラックに対してダイレクトオーバーライトを行う(ステップS27)。記録条件としては、ステップS23における記録条件と同様の条件に設定する必要がある。これにより、第2トラックに記録されたテスト信号は、クロスイレーズの影響を両側からそれぞれ1回及び2回受けた状態となる。
【0041】
次に、変数iが所定値xに一致しているか否かを判断し(ステップS28)、その結果、変数iが所定値xに一致していなければ(1〜x−1であれば)、ステップS26に戻って変数iのインクリメントを行った後(ステップS26)、再び第1トラック及び第3トラックに対するダイレクトオーバーライトを行う(ステップS27)。ステップS28で用いる所定値xとは、クロスイレーズの影響が実質的に飽和する回数であり、後述する方法により決定される。
【0042】
一方、ステップS28において変数iが所定値xに一致していれば、第2トラックに記録されたテスト信号の再生を行い(ステップS29)、得られる再生信号に基づいてジッタ及び信号振幅を測定する(ステップS30)。ステップS28において変数iが所定値xに一致していると言うことは、ステップS26〜ステップS28からなるループをx回繰り返したことを意味するため、この場合、第2トラックに記録されたテスト信号のジッタ及び信号振幅は、クロスイレーズの影響を両側からそれぞれx回及びx+1回受けた状態における値(Cross(x+1))となっている。したがって、Cross(x+1)の値は上記Cross1の値よりもさらに悪化していることが一般的である。
【0043】
以上より、現在設定されている記録パワーPwに対応するジッタ及び信号振幅のSingle、Cross1及びCross(x+1)の値を得ることができる。
【0044】
そして、現在設定されている記録パワーPwに予め定められたパワー(α)を付加して新たに設定された記録パワーPwとし(ステップS31)、その結果、新たに設定された記録パワーPwが予め設定された最高パワーPw(max)を越えたか否かを判断する(ステップS32)。
【0045】
その結果、新たに設定された記録パワーPwが予め設定された最高パワーPw(max)を越えていない場合には、ステップS21に戻って、再びステップS21〜ステップS32からなるループを実行する。これにより、新たに設定された記録パワーPwに対応するジッタ及び信号振幅のSingle、Cross1及びCross(x+1)の値を得ることができる。
【0046】
一方、ステップS32において、新たに設定された記録パワーPwが予め設定された最高パワーPw(max)を越えている場合には、ステップS21〜ステップS32からなるループを終了する。これにより、各記録パワーPwに対応するジッタ及び信号振幅のSingle、Cross1及びCross(x+1)の値が全て得られたことになる。
【0047】
次に、このようにして得られた各記録パワーPwに対応するジッタ及び信号振幅のSingle、Cross1及びCross(x+1)の値を用いて、図4に示すテーブルTを作成する(ステップS33)。図4に示すように、テーブルTには、各記録パワーPwごとの第1の信号振幅減少率(R1)、第2の信号振幅減少率(R2)及びジッタ劣化度(R3)が示されている。
【0048】
ここで、第1の信号振幅減少率(R1)とは、信号振幅のSingleの値とCross1の値との差を信号振幅のSingleの値で規格化した値、すなわち、
(信号振幅Single−信号振幅Cross1)/信号振幅Single
で示される値であり、これが各記録パワーPwごとに算出される。このうち、信号振幅のSingleの値は上述した振幅D3に対応し、信号振幅Cross1の値は上述した振幅D2に対応している。また、第2の信号振幅減少率(R2)とは、信号振幅のCross1の値とCross(x+1)の値との差を信号振幅のCross1の値で規格化した値、すなわち、
(信号振幅Cross1−信号振幅Cross(x+1))/信号振幅Cross1
で示される値であり、これが各記録パワーPwごとに算出される。さらに、ジッタ劣化度(R3)とは、ジッタのCross1の値とCross(x+1)の値との差、すなわち、
ジッタCross(x+1)−ジッタCross1
で示される値であり、これが各記録パワーPwごとに算出される。
【0049】
このようにしてテーブルTが作成されると、次に、テーブルTを参照することによって、第2の信号振幅減少率(R2)とジッタ劣化度(R3)との関係式(第1の関係式)を導く(ステップS34)。具体的には、テーブルTに含まれる第2の信号振幅減少率(R2)とこれに対応するジッタ劣化度(R3)との関係を仮想的なグラフ上にプロットし、これに基づいて近似式を作成すればよい。図5は、第2の信号振幅減少率(R2)とこれに対応するジッタ劣化度(R3)との関係を示す仮想的なグラフの一例を示す図である。図5に示すように、かかるグラフにおいては、第2の信号振幅減少率(R2)とジッタ劣化度(R3)との関係は、概ね1次関数で表すことができる。
【0050】
次に、テーブルTを参照することによって、第1の信号振幅減少率(R1)と第2の信号振幅減少率(R2)との関係式(第2の関係式)を導く(ステップS35)。具体的には、テーブルTに含まれる第1の信号振幅減少率(R1)とこれに対応する第2の信号振幅減少率(R2)との関係を仮想的なグラフ上にプロットし、これに基づいて近似式を作成すればよい。図6は、第1の信号振幅減少率(R1)とこれに対応する第2の信号振幅減少率(R2)との関係を示す仮想的なグラフの一例を示す図である。図6に示すように、かかるグラフにおいては、第1の信号振幅減少率(R1)と第2の信号振幅減少率(R2)との関係は、概ね2次関数で表すことができる。
【0051】
そして、ステップS34において作成した第1の関係式を用いて、実使用状態において許容できるジッタ劣化度(R3)からこれに対応する第2の信号振幅減少率(R2)を算出し、さらに、ステップS35において作成した第2の関係式を用いて、上記算出された第2の信号振幅減少率(R2)からこれに対応する第1の信号振幅減少率(R1)を算出し、これを臨界値として決定する(ステップS36)。例えば、実使用状態において許容できるジッタ劣化度(R3)が「a」である場合、図5に示すように、これに対応する第2の信号振幅減少率(R2)は「b」となり、さらに、図6に示すように、これに対応する第1の信号振幅減少率(R1)は「c」となるので、最終的に臨界値として「c」を得ることができる。
【0052】
以上により、ステップS9で用いる臨界値として、実使用状態において許容できるジッタ劣化度(R3)に対応した第1の信号振幅減少率(R1)を得ることが可能となる。ここで、ジッタ劣化度(R3)とは、上述の通り、ジッタのCross1の値とCross(x+1)の値との差で示される値、すなわち、クロスイレーズの影響を片側から1回受けた状態におけるジッタと、クロスイレーズの影響を両側からそれぞれ9回及び10回受けた状態におけるジッタとの差であることから、得られる臨界値は、多数回のクロスイレーズによるジッタの劣化が許容量を越える場合に得られるであろう第1の信号振幅減少率(R1)に一致する。
【0053】
したがって、上述した方法により得られた臨界値を上記ステップS9において用いれば、図1に示すレーザビームの強度決定において、実際に多数回のオーバーライトを行ったりジッタを測定したりすることなく、多数回のクロスイレーズによるジッタの劣化を考慮した最適記録パワーPwの決定を行うことが可能となる。尚、図3に示す臨界値の決定方法は、「臨界値決定プログラム」をコンピュータが実行することによって実施可能である。
【0054】
次に、ステップS28で用いる所定値xの決定方法について説明する。
【0055】
図7は、ステップS28で用いる所定値xの決定方法を示すフローチャートである。以下に詳述するとおり、かかる所定値xの決定については、可能であれば実際にユーザデータの記録を行う前に情報記録装置(ドライブ)側において実行しても構わないが、上記臨界値の決定方法と同様、ジッタの測定を行う必要があること、並びに、多数回に亘ってテストデータの記録を行う必要があることから、光記録媒体の製造過程においてメーカ側が実行することが好ましい。
【0056】
所定値xの決定においては、まず、変数jを0にリセットし(ステップS41)、次に、対象となる光記録媒体のパワーキャリブレーションエリアに対し、記録パワーPwを予め定められた最低パワーPw(min)に設定して(ステップS42)、連続する3トラックにテスト信号の記録を行う(ステップS43)。ステップS42において用いる最低パワーPw(min)としては、ステップS22において用いる最低パワーPw(min)と同じであっても異なっていても構わないが、所定値xの決定に際しては、臨界値の決定ほど広範囲に亘る測定を行う必要はないので、ステップS22において用いる最低パワーPw(min)よりも高いレベルに設定することが好ましい。
【0057】
また、ステップS43において記録するテスト信号の内容は特に限定されず、単一信号であっても混合信号であっても構わないが、テスト信号の記録に用いるパルス列パターン(記録ストラテジ)としては、実際にユーザデータを記録する場合に使用するパルス列パターンと同じパルス列パターンを用いる必要があり、記録線速度についても、実際にユーザデータを記録する場合の記録線速度と同じ記録線速度に設定する必要がある。また、図2に示したとおり、ステップS43においてテスト信号が記録された3本のトラックを、記録した順に第1トラック、第2トラック、第3トラックと呼ぶ。
【0058】
次に、第2トラック及び第3トラックに記録されたテスト信号の再生を行い(ステップS44)、得られる再生信号に基づいてジッタを測定する(ステップS45)。この場合、第3トラックに記録されたテスト信号のジッタは、クロスイレーズによる影響を受けていない場合の値(ジッタSingle)であり、第2トラックに記録されたテスト信号のジッタは、クロスイレーズの影響を片側から1回受けた状態における値(ジッタCross1)である。このため、上述の通り、Cross1の値(ジッタCross1)はSingleの値(ジッタSingle)よりも悪化していることが一般的である。
【0059】
次に、変数jをインクリメントした後(ステップS46)、上記第1トラック及び第3トラックに対してダイレクトオーバーライトを行う(ステップS47)。記録条件としては、ステップS43における記録条件と同様の条件に設定する必要がある。これにより、第2トラックに記録されたテスト信号は、クロスイレーズの影響を両側からそれぞれ1回及び2回受けた状態となる。
【0060】
次に、第2トラックに記録されたテスト信号の再生を行い(ステップS48)、得られる再生信号に基づいてジッタを測定する(ステップS49)。この場合、第2トラックに記録されたテスト信号のジッタは、クロスイレーズの影響を両側からそれぞれ1回及び2回受けた状態における値(ジッタCross2)である。このため、クロスイレーズの影響が既に飽和していない限り、Cross2の値(ジッタCross2)はCross1の値(ジッタCross1)よりも悪化しているはずである。
【0061】
次に、変数jが所定値yに一致しているか否かを判断し(ステップS50)、その結果、変数jが所定値yに一致していなければ(1〜y−1であれば)、ステップS46に戻って変数jのインクリメントを行った後(ステップS46)、再び第1トラック及び第3トラックに対するダイレクトオーバーライト(ステップS47)、第2トラックに記録されたテスト信号の再生(ステップS48)及びジッタの測定(ステップS49)を行う。ここで、ステップS50で用いる所定値yとは、記録パワーPwが最適強度またはこれに近い強度である場合に、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を十分に越える回数に設定され、通常、最適な記録パワーを用いた場合にはクロスイレーズによる影響が10回以内に飽和することを考慮すれば、所定値yの具体的な回数としては10回〜20回程度に設定することが好ましい。
【0062】
一方、ステップS50において変数jが所定値yに一致していれば、現在設定されている記録パワーPwに予め定められたパワー(α)を付加して新たに設定された記録パワーPwとし(ステップS51)、その結果、新たに設定された記録パワーPwが予め設定された最高パワーPw(max)を越えたか否かを判断する(ステップS52)。ステップS51において付加されるパワー(α)としては、ステップS31において付加されるパワー(α)と同じであっても異なっていても構わないが、所定値xの決定に際しては、臨界値の決定ほど厳密な測定を行う必要はないので、ステップS31において付加されるパワー(α)よりも大きな値に設定することが好ましい。また、ステップS52において用いる最高パワーPw(max)としては、ステップS32において用いる最高パワーPw(max)と同じであっても異なっていても構わないが、上述の通り、所定値xの決定に際しては臨界値の決定ほど広範囲に亘る測定を行う必要はないので、ステップS32において用いる最高パワーPw(max)よりも低いレベルに設定することが好ましい。
【0063】
尚、ステップS50において変数jが所定値yに一致していると言うことは、ステップS46〜ステップS50からなるループをy回繰り返したことを意味するため、この場合、第2トラックに記録されたテスト信号のジッタは、クロスイレーズの影響を両側からそれぞれy回及びy+1回受けた状態における値(Cross(y+1))となっている。上述の通り、所定値yは記録パワーPwが最適強度またはこれに近い強度である場合に、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を十分に越える回数に設定されていることから、ステップS50において変数jが所定値yに一致した場合、記録パワーPwが最適強度またはこれに近い強度である限り、クロスイレーズによる影響は十分に飽和しているはずである。これにより、現在の記録パワーPwに対応するジッタSingle及びジッタCross1〜ジッタCross(y+1)の値を得ることができる。
【0064】
そして、ステップS52における判断の結果、新たに設定された記録パワーPwが予め設定された最高パワーPw(max)を越えていない場合には、ステップS41に戻って、再びステップS41〜ステップS52からなるループを実行する。これにより、新たに設定された記録パワーPwに対応するジッタSingle及びジッタCross1〜ジッタCross(y+1)の値を得ることができる。
【0065】
一方、ステップS52において、新たに設定された記録パワーPwが予め設定された最高パワーPw(max)を越えている場合には、ステップS41〜ステップS52からなるループを終了する。これにより、各記録パワーPwに対応するジッタSingle及びジッタCross1〜ジッタCross(y+1)の値が全て得られたことになる。
【0066】
次に、このようにして得られた各記録パワーPwに対応するジッタSingle及びジッタCross1〜ジッタCross(y+1)の値を解析し、その結果に基づいて所定値xを決定する(ステップS53)。具体的には、次のようにジッタSingle及びジッタCross1〜ジッタCross(y+1)の値を解析し、所定値xを決定する。
【0067】
図8は、クロスイレーズ回数とジッタ劣化度(R4)との関係を記録パワーPwごとに示すグラフの一例である。ここで、ジッタ劣化度(R3)とは、ジッタのSingleの値とCross1〜Cross(y+1)のそれぞれの値との差、すなわち、
ジッタCross1−ジッタSingle から、
ジッタCross(y+1)−ジッタSingle
で示される各値を指す。
【0068】
図8に示すように、各記録パワーともクロスイレーズ回数が増えるにしたがって、ジッタ劣化度(R4)も増大するが、記録パワーが所定の範囲内である場合(図8ではPw1〜Pw3)には、所定の回数を越えるとジッタ劣化度(R4)はそれ以上増大しなくなる。すなわち、クロスイレーズの影響は実質的に飽和する。したがって、かかる所定の回数を「所定値x」として決定すればよい。
【0069】
一方、記録パワーが上記所定の範囲外である場合(図8ではPw4)には、上記所定の回数を超えてもジッタ劣化度(R4)の増大は続き、場合によっては最大数(y+1回)に達してもクロスイレーズの影響が飽和しない。また、ジッタ劣化度(R4)の値自体も、記録パワーが上記所定の範囲内である場合と比べて非常に大きい。このような傾向を示すのは、記録パワーPwが最適値から大きく外れていることが原因である。したがって、最大数(y+1回)に達してもクロスイレーズの影響が飽和しない場合、または、ジッタ劣化度(R4)の値が非常に大きい場合には、所定値xの決定に際してこれを考慮する必要はない。尚、ジッタ劣化度(R4)の値が非常に大きい場合とは、特に限定されるものではないが、数回のクロスイレーズによるジッタの劣化度(R4)が4%を越えるような場合が該当する。
【0070】
以上により、ステップS28で用いる所定値xとして、クロスイレーズの影響が実質的に飽和する回数を得ることが可能となる。
【0071】
したがって、上述した方法により得られた所定値xを上記ステップS28において用いれば、図3に示す臨界値の決定におけるステップS26〜ステップS28からなるループを、ちょうどクロスイレーズの影響が実質的に飽和するまで繰り返せばステップS29に進めるので、クロスイレーズの影響が飽和した後も上記ループを無駄に多数回繰り返したり、逆に、クロスイレーズの影響が飽和する前にステップS29に進んだりすることがなくなる。尚、図7に示す所定値xの決定方法は、「オーバーライト回数決定プログラム」をコンピュータが実行することによって実施可能である。
【0072】
次に、レーザビームの強度決定方法(図1参照)、臨界値の決定方法(図3参照)及び所定値xの決定方法(図7参照)を実際に実行するタイミングについて説明する。
【0073】
まず、図7に示す所定値xの決定方法については、図3に示す臨界値の決定方法を実行する前であれば、光記録媒体の製造段階において実行してもよく、実際にユーザデータの記録を行う前に情報記録装置(ドライブ)側において実行しても構わないが、上述の通り、ジッタの測定を行う必要があること、並びに、多数回に亘ってテストデータの記録を行う必要があることから、光記録媒体の製造段階において、メーカ側が実行することが好ましい。
【0074】
また、図3に示す臨界値の決定方法については、図1に示すレーザビームの強度決定方法を実行する前であれば、光記録媒体の製造段階において実行してもよく、実際にユーザデータの記録を行う前に情報記録装置(ドライブ)側において実行しても構わないが、上述の通り、ジッタの測定を行う必要があること、並びに、多数回に亘ってテストデータの記録を行う必要があることから、図7に示す所定値xの決定と同様、光記録媒体の製造段階において、メーカ側が実行することが好ましい。一方、図1に示すレーザビームの強度決定方法については、臨界値の決定を行った後、実際にユーザデータの記録を行う前であれば、情報記録装置側において実行しても構わないし、光記録媒体の製造過程において、メーカ側において実行しても構わないが、レーザビームの強度として実際の記録環境に即した値を得るためには、実際にユーザデータの記録を行う情報記録装置側において実行することが好ましい。
【0075】
ここで、所定値xの決定(図7)と臨界値の決定(図3)とを異なるタイミングに行う場合、例えば、所定値xの決定を光記録媒体の製造段階において行い、臨界値の決定を情報記録装置において行う場合には、決定された所定値xを当該光記録媒体に格納しておくことが好ましい。このように、所定値xを光記録媒体に格納しておけば、実際にユーザデータの記録を行う前に、光記録媒体に記録された所定値xを参照することにより情報記録装置側において図3に示す臨界値の決定を実行することが可能となる。この場合、図3に示す臨界値の決定を上述した「臨界値決定プログラム」に基づいて行うためには、これが情報記録装置に格納されている必要がある。しかしながら、「臨界値決定プログラム」を当該光記録媒体に格納しておけば、情報記録装置に臨界値決定プログラムが格納されていない場合であっても、光記録媒体からこれを読み出すことにより実行することが可能となる。
【0076】
さらに、臨界値の決定とレーザビームの強度決定とを異なるタイミングに行う場合、例えば、臨界値の決定を光記録媒体の製造段階において行い、レーザビームの強度決定を情報記録装置において行う場合には、決定された臨界値を当該光記録媒体に格納しておくことが好ましい。このように、臨界値を光記録媒体に格納しておけば、実際にユーザデータの記録を行う前に、光記録媒体に記録された臨界値を参照することにより情報記録装置側において図1に示すレーザビームの強度決定を容易に実行することが可能となる。この場合、図1に示すレーザビームの強度決定を上述した「レーザビーム強度決定プログラム」に基づいて行うためには、これが情報記録装置に格納されている必要がある。しかしながら、「レーザビーム強度決定プログラム」を当該光記録媒体に格納しておけば、情報記録装置にレーザビーム強度決定プログラムが格納されていない場合であっても、光記録媒体からこれを読み出すことにより実行することが可能となる。
【0077】
また、決定された臨界値とともに、または決定された臨界値に代えて、ステップS34において作成された第1の関係式及びステップS35において作成された第2の関係式を当該光記録媒体に格納しておくこともまた好ましい。第1及び第2の関係式を光記録媒体に格納しておけば、情報記録装置側において許容できるジッタ劣化度(R3)を任意に設定し、図1に示すレーザビームの強度決定においてこれに対応した臨界値を用いることが可能となる。この場合、第1の関係式と第2の関係式とを光記録媒体に別個に格納しておく必要はなく、許容できるジッタ劣化度(R3)からこれに対応する第1の信号振幅減少率(R1)、すなわち臨界値を算出可能である限り、第1の関係式と第2の関係式とが一つにまとめられた式を光記録媒体に格納しておいても構わない。
【0078】
さらに、決定された臨界値及び/又は第1及び第2の関係式とともに、またはこれらに代えて、ステップS33において作成されたテーブルTを当該光記録媒体に格納しておくこともまた好ましい。テーブルTを光記録媒体に格納しておけば、新たな記録パワーPwを用いてステップS21〜ステップS32を追加的に実行し、その結果をテーブルTに加えることによってその内容をより充実させることが可能となる。また、既にステップS21〜ステップS32において用いられた記録パワーPwと同じ記録パワーPwを用いてこれを情報記録装置側において再度実行し、その結果をテーブルTに追加し又は対応する内容を更新すれば、テーブルTの内容を実際の記録環境により即したものとすることができる。
【0079】
また、情報記録装置側において所定値xの決定を上述した「オーバーライト回数決定プログラム」に基づいて行うためには、これが情報記録装置に格納されている必要があるが、「オーバーライト回数決定プログラム」を当該光記録媒体に格納しておけば、情報記録装置にオーバーライト回数決定プログラムが格納されていない場合であっても、光記録媒体からこれを読み出すことにより実行することが可能となる。
【0080】
次に、本実施態様にかかるレーザビームの強度決定方法の適用対象となる光記録媒体の構造について説明する。
【0081】
図9は、本実施態様にかかるレーザビームの強度決定方法の適用対象となる光記録媒体の構造の一例を示す断面図である。
【0082】
図9に示すように、本実施態様にかかるレーザビームの強度決定方法の適用対象となる光記録媒体10は、基板11と、基板11上に設けられた反射層12と、反射層12上に設けられた第2の誘電体層13と、第2の誘電体層13上に設けられた記録層14と、記録層14上に設けられた第1の誘電体層15と、第1の誘電体層15上に設けられた光透過層16によって構成され、光記録媒体10の中央部分には孔17が設けられている。このような構造を有する光記録媒体10に対しては、光透過層16側からレーザビームを照射することによってデータの記録/再生が行われる。
【0083】
基板11は、光記録媒体10に求められる機械的強度を確保するための基体としての役割を果たし、その表面にはグルーブ11a及びランド11bが設けられている。これらグルーブ11a及び/又はランド11bは、データの記録及び再生を行う場合におけるレーザビームのガイドトラックとしての役割を果たす。基板11の厚さは約1.1mmに設定され、その材料としては種々の材料を用いることが可能であり、例えば、ガラス、セラミックス、あるいは樹脂を用いることができる。これらのうち、成形の容易性の観点から樹脂が好ましい。このような樹脂としてはポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。中でも、加工性などの点からポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
【0084】
反射層12は、光透過層16側から入射されるレーザビームを反射し、再び光透過層16から出射させる役割を果たし、その厚さとしては10〜300nmに設定することが好ましく、20〜200nmに設定することが特に好ましい。反射層12の材料はレーザビームを反射可能である限り特に制限されず、例えば、Mg、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ag、Pt、Au等を用いることができる。これらのうち、高い反射率を有することから、Al、Au、Ag、Cu又はこれらの合金(AlとTiとの合金等)などの金属材料を用いることが好ましい。尚、光記録媒体10に反射層12を設けることは必須でないが、これを設ければ、光記録後において多重干渉効果により高い再生信号(C/N比)が得られやすくなる。また、反射層12の腐食防止を目的として、基板11と反射層12との間に誘電体からなる防湿層を介在させても構わない。
【0085】
第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13は、これらの間に設けられる記録層14を保護する役割を果たし、記録層14はこれら第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13に挟持されることにより、光記録後、長期間にわたって記録情報の劣化が効果的に防止される。
【0086】
第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13の構成材料は、透明な誘電体であれば特に限定されず、例えば、酸化物、硫化物、窒化物又はこれらの組み合わせを主成分として用いることができる。より具体的には、基板11等の熱変形防止、並びに、記録層14の保護の観点から、第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13が、Al2O3、AlN、ZnO、ZnS、GeN、GeCrN、CeO、SiO、SiO2、SiN及びSiCからなる群より選択される少なくとも1種の誘電体を主成分とすることが好ましく、ZnS・SiO2からなる誘電体を主成分とすることがより好ましい。第1の誘電体層15と第2の誘電体層13は、互いに同じ構成材料で構成されてもよいが、異なる構成材料で構成されてもよい。さらに、第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13の少なくとも一方が、複数の誘電体膜からなる多層構造であっても構わない。
【0087】
なお、「誘電体を主成分とする」とは、第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13中において、上記誘電体の含有率が最も大きいことを言う。また、「ZnS・SiO2」とは、ZnSとSiO2との混合物を意味する。
【0088】
また、第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13の層厚は特に限定されないが、3〜200nmであることが好ましい。この層厚が3nm未満であると、上述した効果が得られにくくなる。一方、層厚が200nmを超えると、成膜時間が長くなり生産性が低下するおそれがあり、さらに、第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13のもつ応力によってクラックが発生するおそれがある。
【0089】
記録層14は相変化材料によって構成され、結晶状態である場合の反射率とアモルファス状態である場合の反射率とが異なることを利用してデータの記録が行われる。結晶状態である記録層14をアモルファス状態に変化させるためには、光透過層16側から照射されるレーザビームを記録パワーPwから基底パワーPbまでの振幅を有するパルス波形とすることによって記録層14を融点以上の温度に加熱し、その後、かかるレーザビームのパワーを基底パワーPbに設定することによって急冷する。これにより、記録パワーPwによって溶融した領域がアモルファス状態に変化し、これが記録マークとなる。一方、アモルファス状態である記録層14を結晶状態に変化させるためには、光透過層16側から照射されるレーザビームのパワーを消去パワーPeに設定することによって記録層14を結晶化温度以上の温度に加熱する。これにより、消去パワーPeによって結晶化温度以上の温度に加熱された領域は、レーザビームが遠ざかることによって徐冷されることから、当該領域が結晶状態に変化する。
【0090】
ここで、記録パワーPwのレベルは、図1に示すレーザビームの強度決定方法によって決定されるが、一般に記録パワーPw、消去パワーPe及び基底パワーPbの関係は、
Pw>Pe≧Pb
となる。したがって、レーザビームのパワーをこのように変調すれば、記録層14の未記録領域に記録マークを形成するだけでなく、既に記録マークが形成されている領域にこれと異なる記録マークを直接上書き(ダイレクトオーバーライト)することが可能となる。
【0091】
記録層14の具体的な材料としては、特に限定されるものではないがSbTeを主成分とする材料を用いることが好ましい。記録層14の厚さとしては、5〜30nmに設定することが好ましく、5〜20nmに設定することが特に好ましい。
【0092】
光透過層16は、レーザビームの入射面を構成するとともにレーザビームの光路となる層であり、その厚さとしては10〜300μmに設定することが好ましく、50〜150μmに設定することが特に好ましい。光透過層16の材料としては特に限定されないが、紫外線硬化性樹脂を用いることが好ましい。また、紫外線硬化性樹脂を硬化させてなる膜のかわりに、光透過性樹脂からなる光透過性シートと各種接着剤や粘着剤を用いて光透過層16を形成してもよい。
【0093】
次に、上記光記録媒体10の製造方法の一例について説明する。
【0094】
先ずグルーブ11a及びランド11bが形成された基板11上に反射層12を形成を形成する。反射層12の形成には、例えば反射層12の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法を用いることができる。このような気相成長法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0095】
次に、反射層12上に第2の誘電体層13を形成する。この第2の誘電体層13も、第2の誘電体層13の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法を用いて形成することができる。さらに、第2の誘電体層13上に記録層14を形成する。記録層14も、これを構成する相変化材料を含む化学種を用いた気相成長法を用いて形成することができる。さらに、記録層14上に第1の誘電体層15を形成する。第1の誘電体層15も、第1の誘電体層15の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法を用いて形成することができる。
【0096】
最後に、第1の誘電体層15上に光透過層16を形成する。光透過層16は、例えば、粘度調整されたアクリル系又はエポキシ系の紫外線硬化性樹脂をスピンコート法等により皮膜させ、紫外線を照射して硬化する等の方法により形成することができる。以上により、光記録媒体10の製造が完了する。
【0097】
なお、上記光記録媒体10の製造方法は、上記製造方法に特に限定されるものではなく、公知の光記録媒体の製造に採用される製造技術を用いることができる。また、上述した光記録媒体10は、本実施態様にかかるレーザビームの強度決定方法の適用対象となる光記録媒体の一例であり、書き換え可能な光記録媒体である限り、これ以外の構造を有する光記録媒体に対して本実施態様にかかるレーザビームの強度決定方法を適用することも可能である。
【0098】
次に、光記録媒体10に対して上述したレーザビームの強度決定を行うとともに、実際にユーザデータの記録を行うための情報記録装置について説明する。
【0099】
図10は、光記録媒体10に対してデータの記録を行い、また、これに先立って上述したレーザビームの強度設定(図1)を実行可能な情報記録装置50の主要部を概略的に示す図である。
【0100】
情報記録装置50は、図10に示すように光記録媒体10を回転させるためのスピンドルモータ52と、光記録媒体10にレーザビームを照射するとともにその反射光を受光するヘッド53と、スピンドルモータ52及びヘッド53の動作を制御するコントローラ54と、ヘッド53にレーザ駆動信号を供給するレーザ駆動回路55と、ヘッド53にレンズ駆動信号を供給するレンズ駆動回路56とを備えている。
【0101】
さらに、図10に示すように、コントローラ54にはフォーカスサーボ追従回路57、トラッキングサーボ追従回路58及びレーザコントロール回路59が含まれている。フォーカスサーボ追従回路57が活性化すると、回転している光記録媒体10の記録面にフォーカスがかかった状態となり、トラッキングサーボ追従回路58が活性化すると、光記録媒体10の偏芯している信号トラックに対して、レーザビームのスポットが自動追従状態となる。フォーカスサーボ追従回路57及びトラッキングサーボ追従回路58には、フォーカスゲインを自動調整するためのオートゲインコントロール機能及びトラッキングゲインを自動調整するためのオートゲインコントロール機能がそれぞれ備えられている。また、レーザコントロール回路59は、レーザ駆動回路55により供給されるレーザ駆動信号を生成する回路であり、光記録媒体10に記録されている記録条件設定情報に基づいて、適切なレーザ駆動信号の生成を行う。
【0102】
尚、これらフォーカスサーボ追従回路57、トラッキングサーボ追従回路58及びレーザコントロール回路59については、コントローラ54内に組み込まれた回路である必要はなく、コントローラ54と別個の部品であっても構わない。さらに、これらは物理的な回路である必要はなく、コントローラ54内で実行されるソフトウェアであっても構わない。
【0103】
このような構成からなる情報記録装置50を用いて光記録媒体10に対するデータの記録を行う場合、実際にユーザデータの記録を行う前に上述したレーザビームの強度設定(図1)が行われる。但し、上述したように、レーザビームの強度設定が光記録媒体の製造段階において行われ、得られた最適な記録パワーPwが当該光記録媒体に記録条件設定情報として記録されている場合には、情報記録装置50側においてこれを実行することは必須でない。
【0104】
このように、本実施態様によれば、記録パワーPwのレベルとしてクロスイレーズによる影響が十分に考慮された値を得ることができることから、次世代型の光記録媒体のようにクロスイレーズが生じやすい光記録媒体に対してデータを記録する場合であっても、クロスイレーズの影響を十分に抑制することが可能となる。具体的には、本実施態様により決定された記録パワーPwを用いれば、多数回のクロスイレーズによる影響を受けた場合のジッタの劣化度を、許容範囲内に抑制することが可能となる。
【0105】
しかも、本実施態様によれば、図3に示す臨界値の決定方法によって、ジッタ劣化度(R3)とこれに対応する第1の信号振幅減少率(R1)との関係を特定していることから、図1に示すレーザビームの強度決定においては、実際に多数回の試し書きを行う必要がないばかりか、ジッタの測定を行う必要もないことから、最適な記録パワーPwのレベルを非常に簡単に決定することができる。
【0106】
さらに、本実施態様によれば、図7に示す所定値xの決定方法によって、臨界値の決定において実行すべきステップS26〜ステップS28からなるループの繰り返し回数を決定しているので、クロスイレーズの影響が飽和した後も上記ループを無駄に多数回繰り返したり、逆に、クロスイレーズの影響が飽和する前にステップS29に進んだりすることがなくなる。これにより、正確且つ短時間で臨界値を決定することが可能となる。
【0107】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0108】
例えば、上記実施態様においては、記録パワーPwを最低パワーPw(min)から徐々に高めながら図3に示すステップS21〜ステップS32からなるループ及び図7に示すステップS41〜ステップS52からなるループを実行しているが、複数の記録パワーPwについてこれらループを実行する限り、記録パワーPwを最高パワーPw(max)から徐々に弱めながらこれらを実行しても構わないし、記録パワーPwをランダムに変更しながらこれらを実行しても構わない。
【0109】
さらに、上記実施態様においては、第1の信号振幅減少率(R1)として、信号振幅のSingleの値とCross1の値との差を信号振幅のSingleの値で規格化した値を用いているが、信号振幅のSingleの値とCross1の値との差に基づく値である限り、例えば、単に信号振幅のSingleの値とCross1の値との差を第1の信号振幅減少率(R1)として用いても構わない。但し、第1の信号振幅減少率(R1)として信号振幅のSingleの値で規格化した値を用いた場合に、最も適切な記録パワーPwの値を得ることが可能となる。同様に、上記実施態様においては、第2の信号振幅減少率(R2)として、信号振幅のCross1の値とCross(x+1)の値との差を信号振幅のCross1の値で規格化した値を用いているが、信号振幅のCross1の値とCross(x+1)の値との差に基づく値である限り、単に信号振幅のCross1の値とCross(x+1)の値との差を第2の信号振幅減少率(R2)として用いても構わない。但し、第2の信号振幅減少率(R2)として信号振幅のCross1の値で規格化した値を用いた場合に、最も適切な記録パワーPwの値を得ることが可能となる。
【0110】
一方、上記実施態様においては、ジッタ劣化度(R3)として単にジッタのCross1の値とCross(x+1)の値との差を用いているが、ジッタのCross1の値とCross(x+1)の値との差に基づく値である限り、これをジッタのCross1やCross(x+1)の値で規格化した値を用いても構わない。すなわち、ジッタ劣化度(R3)の表現方法としては、許容可能なジッタ劣化度(R3)の表現方法に合わせればよい。
【0111】
また、上記実施態様においては、クロスイレーズ回数ごとのジッタを測定することにより所定値xを決定しているが(図7参照)、測定対象とし得る信号特性としてはジッタに限定されず、他の信号特性、例えばエラーレートであっても構わない。
【0112】
尚、本発明において、手段とは、必ずしも物理的手段を意味するものではなく、各手段の機能がソフトウエアによって実現される場合も包含する。さらに、一つの手段の機能が二以上の物理的手段により実現されても、二以上の手段の機能が一つの物理的手段により実現されてもよい。
【0113】
【実施例】
次に、図7のステップS53に示す所定値xの決定方法について、具体例を挙げてより詳しく説明する。
【0114】
[サンプル1]
以下に示す手順により、図9に示す光記録媒体10に防湿層が追加された構成を有する光記録媒体サンプル1を作製した。
【0115】
まず、厚さ:1.1mm、直径:120mmのポリカーボネート基板11をスパッタリング装置にセットし、このポリカーボネート基板11上に、ZnSとSiO2の混合物(ZnSとSiO2のモル比率は80:20)からなる防湿層(層厚100nm)、Agを主成分とする反射層12(層厚:100nm)、CeO2からなる第2の誘電体層13(層厚:12nm)、Sb75Te25からなる記録層14(層厚:12nm)を順次スパッタ法により形成した。
【0116】
次に、記録層14上に、ZnSとSiO2の混合物(ZnSとSiO2のモル比率は50:50)からなる誘電体層(層厚:3nm)、ZnSとSiO2の混合物(ZnSとSiO2のモル比率は80:20)からなる誘電体層(層厚:35nm)、Al2O3からなる誘電体層(層厚:30nm)を順次スパッタ法により形成した。これらは、3層合わせて第1の誘電体層15を構成する。
【0117】
そして、第1の誘電体層15上(Al2O3からなる誘電体層上)に、アクリル系紫外線硬化性樹脂をスピンコート法によりコーティングし、これに紫外線を照射して光透過層16(層厚:100μm)を形成した。
【0118】
このようにして作製した光記録媒体サンプル1に対し、所定値yを「19」に設定して図7に示すステップS41〜ステップS52からなるループを実行した。記録には1,7RLLの変調方式を用い、記録線速度は5.3m/secに設定した。この場合、フォーマット効率を80%とした場合のデータ転送レートは約36Mbpsである。
【0119】
また、用いた記録パワーPwは、2.9mW、3.4mW、4.3mW及び5.3mWの4種類とした。測定の結果を図11に示す。
【0120】
図11に示すように、記録パワーPwを2.9mW、3.4mWまたは4.3mWに設定した場合、ジッタ劣化度(R4)の値は1回のクロスイレーズでほぼ飽和したが、記録パワーPwを5.3mWに設定した場合には、クロスイレーズ回数が20回となってもジッタ劣化度(R4)は飽和せず、また、その値も非常に大きかった(1回のクロスイレーズで6%以上)。つまり、サンプル1では、記録パワーPwとして5.3mWは不適切であることがわかる。
【0121】
したがって、この場合には所定値xを「1」に決定すればよい。
【0122】
[サンプル2]
以下に示す手順により、図9に示す光記録媒体10と同様の構成を有する光記録媒体サンプル2を作製した。
【0123】
まず、厚さ:1.1mm、直径:120mmのポリカーボネート基板11をスパッタリング装置にセットし、このポリカーボネート基板11上に、Agを主成分とする反射層12(層厚:100nm)、Al2O3からなる第2の誘電体層13(層厚:7nm)、Sb75Te25からなる記録層14(層厚:12nm)を順次スパッタ法により形成した。
【0124】
次に、記録層14上に、ZnSとSiO2の混合物(ZnSとSiO2のモル比率は50:50)からなる誘電体層(層厚:5nm)、ZnSとSiO2の混合物(ZnSとSiO2のモル比率は80:20)からなる誘電体層(層厚:110nm)を順次スパッタ法により形成した。これらは、2層合わせて第1の誘電体層15を構成する。
【0125】
そして、第1の誘電体層15上(モル比率が80:20であるZnSとSiO2の混合物からなる誘電体層上)に、アクリル系紫外線硬化性樹脂をスピンコート法によりコーティングし、これに紫外線を照射して光透過層16(層厚:100μm)を形成した。
【0126】
このようにして作製した光記録媒体サンプル2に対し、所定値yを「19」に設定して図7に示すステップS41〜ステップS52からなるループを実行した。記録には1,7RLLの変調方式を用い、記録線速度は5.3m/secに設定した。この場合、上述の通り、フォーマット効率を80%とした場合のデータ転送レートは約36Mbpsである。
【0127】
また、用いた記録パワーPwは、4.0mW、5.0mW及び6.0mWの3種類とした。測定の結果を図12に示す。
【0128】
図12に示すように、記録パワーPwを4.0mWまたは5.0mWに設定した場合、ジッタ劣化度(R4)の値は約5回のクロスイレーズでほぼ飽和したが、記録パワーPwを6.0mWに設定した場合には、クロスイレーズ回数が20回となってもジッタ劣化度(R4)は飽和せず、また、その値も非常に大きかった(1回のクロスイレーズで5%以上)。つまり、サンプル2においては、記録パワーPwとして6.0mWは不適切であることがわかる。
【0129】
したがって、この場合には所定値xを「5」に決定すればよい。
【0130】
[サンプル3]
記録層14の材料としてSb80Te20を用いた以外は、サンプル2と同様の構成を有するサンプル3を作成した。このようなサンプル3に対し、所定値yを「19」に設定して図7に示すステップS41〜ステップS52からなるループを実行した。記録には1,7RLLの変調方式を用い、記録線速度は10.5m/secに設定した。この場合、フォーマット効率を80%とした場合のデータ転送レートは約72Mbpsである。
【0131】
また、用いた記録パワーPwは、4.8mW、5.8mW及び6.8mWの3種類とした。測定の結果を図13に示す。
【0132】
図13に示すように、いずれも記録パワーに設定した場合においても、ジッタ劣化度(R4)の値は約10回のクロスイレーズでほぼ飽和した。
【0133】
したがって、この場合には所定値xを「10」に決定すればよい。
【0134】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、レーザビームの強度をクロスイレーズによる影響が十分に考慮された値に設定することが可能となる。したがって、本発明は、次世代型の光記録媒体のように、クロスイレーズが生じやすい光記録媒体に対する記録を行う場合に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施態様にかかるレーザビーム強度決定方法を示すフローチャートである。
【図2】第1トラック、第2トラック及び第3トラックの位置関係を示す略平面図である。
【図3】ステップS9で用いる臨界値の決定方法を示すフローチャートである。
【図4】テーブルTのデータ構造を示す図である。
【図5】第2の信号振幅減少率(R2)とこれに対応するジッタ劣化度(R3)との関係を示す仮想的なグラフの一例を示す図である。
【図6】第1の信号振幅減少率(R1)とこれに対応する第2の信号振幅減少率(R2)との関係を示す仮想的なグラフの一例を示す図である。
【図7】ステップS28で用いる所定値xの決定方法を示すフローチャートである。
【図8】クロスイレーズ回数とジッタ劣化度(R4)との関係を記録パワーPwごとに示すグラフの一例である。
【図9】レーザビームの強度決定方法の適用対象となる光記録媒体の構造の一例を示す断面図である。
【図10】情報記録装置50の主要部を概略的に示す図である。
【図11】サンプル1におけるクロスイレーズ回数とジッタ劣化度(R4)との関係を示すグラフである。
【図12】サンプル2におけるクロスイレーズ回数とジッタ劣化度(R4)との関係を示すグラフである。
【図13】サンプル3におけるクロスイレーズ回数とジッタ劣化度(R4)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 光記録媒体
11 基板
11a グルーブ
11b ランド
12 反射層
13 第2の誘電体層
14 記録層
15 第1の誘電体層
16 光透過層
17 孔
50 情報記録装置
52 スピンドルモータ
53 ヘッド
54 コントローラ
55 レーザ駆動回路
56 レンズ駆動回路
57 フォーカスサーボ追従回路
58 トラッキングサーボ追従回路
59 レーザコントロール回路
T テーブル
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザビーム強度決定方法に関し、特に、書き換え型光記録媒体に照射するレーザビームの強度決定方法に関する。また、本発明は、レーザビームの強度決定を行うために用いる臨界値の生成方法及び臨界値を生成する前段階で用いるオーバーライト回数決定プログラムに関し、特に、書き換え型光記録媒体に照射するレーザビームの強度決定を行うために用いる臨界値の生成方法及びその前段階で用いるオーバーライト回数決定プログラムに関する。さらに、本発明は光記録媒体に関し、特に、書き換え型の光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、デジタルデータを記録するための記録媒体として、CDやDVDに代表される光記録媒体が広く利用されており、そのデータ記録方式としては、記録すべきデータをトラックに沿った記録マークの長さに変調するという方式が広く用いられている。例えば、ユーザによるデータの書き換えが可能な光記録媒体の一種であるDVD−RWにおいては、3T〜11T及び14T(Tは1クロック周期)に対応する長さの記録マークが用いられ、これによってデータの記録が行われる。
【0003】
このような記録マークの形成においては、強度変調されたレーザービームが光記録媒体のトラックに沿って照射され、これによって光記録媒体内の相変化材料からなる記録層に所定の長さを持ったアモルファス領域が形成され、これが記録マークとして用いられる。記録層のうちアモルファス状態でない部分は結晶状態となっており、ブランク領域として用いられる。
【0004】
記録層に記録マークを形成する場合、記録層に照射するレーザビームのパワーを十分に高いレベル(記録パワーPw)に設定することによって記録層を融点を超える温度に加熱し、その後、レーザビームのパワーを十分に低いレベル(基底パワーPb)に変化させることによって記録層を急冷する。これにより、相変化材料が結晶状態からアモルファス状態に変化し、記録マークが形成される。一方、既に形成された記録マークを消去する場合、記録層に照射するレーザビームのパワーを記録パワーPw以下、基底パワーPb以上のレベル(消去パワーPe)に設定することによって記録層を結晶化温度以上に加熱し、徐冷する。これにより、相変化材料がアモルファス状態から結晶状態に変化し、記録マークが消去される。したがって、レーザビームのパワーを記録パワーPw、消去パワーPe、基底パワーPbからなる複数のレベルに強度変調することによって、記録層の未記録領域に記録マークを形成するだけでなく、既に記録マークが形成されている領域にこれと異なる記録マークを直接上書き(ダイレクトオーバーライト)することが可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、書き換え型の光記録媒体、特に記録層が相変化材料からなる光記録媒体においては、隣のトラックに対して書き込みが行われた場合、当該トラックに既に書き込まれているデータのキャリアレベルの低下、いわゆるクロスイレーズが生じる場合がある。
【0006】
近年、データの記録密度が高められ、且つ、非常に高いデータ転送レートを実現可能な次世代型の光記録媒体が提案されている。このような次世代型の光記録媒体においては、高データ転送レートを実現するため記録線速度が従来の光記録媒体に比べて非常に高く設定されるが、一般に、記録線速度が高くなるほど記録マークの形成に必要な記録パワーPwも高くなることから、次世代型の光記録媒体においては、従来の光記録媒体に比べてクロスイレーズが非常に生じやすい。また、クロスイレーズは、トラックピッチTPとビームスポット径Dとの比(TP/D)が小さいほど生じやすくなるが、次世代型の光記録媒体においては、従来の光記録媒体に比べてトラックピッチTPとビームスポット径Dとの比(TP/D)が小さい点も、クロスイレーズが生じやすくなる大きな理由となっている。
【0007】
このため、次世代型の光記録媒体に対するデータの書き込みにおいては、クロスイレーズによる影響を十分に考慮して記録パワーPwを設定する必要がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、クロスイレーズによる影響が十分に考慮されたレーザビーム強度決定方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、クロスイレーズによる影響を十分に考慮してレーザビームの強度決定を行うために用いる臨界値の生成方法及びかかる臨界値の生成の前段階で用いられるオーバーライト回数決定プログラムを提供することである。
【0010】
また、本発明のさらに他の目的は、クロスイレーズによる影響を十分に考慮してレーザビームの強度決定を行うために用いる情報が格納された光記録媒体を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のかかる目的は、書き換え型の光記録媒体に照射するレーザビームの強度決定方法であって、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を特定するステップと、第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第1の信号特性の変化と前記特定された回数である第2の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第2の信号特性の変化との関係から、前記第2の信号特性の所定の変化量または変化率に対応した、前記第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第1の信号特性の変化量または変化率を臨界値として特定するステップと、前記第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第1の信号特性の変化量または変化率を測定し、得られた値と前記臨界値とを比較するステップとを備えるレーザビーム強度決定方法によって達成される。
【0012】
本発明によれば、第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第1の信号特性の変化を測定することによって、実際に第2の信号特性を測定することなく、第2の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第2の信号特性の変化の程度を知ることができるので、レーザビームの強度として、クロスイレーズによる影響が十分に考慮された値を得ることができる。したがって、本発明によれば、次世代型の光記録媒体のようにクロスイレーズが生じやすい光記録媒体に対してデータを記録する場合であっても、クロスイレーズの影響を十分に抑制することが可能となる。しかも、本発明によれば、実際に第2の信号特性を測定する必要がないので、レーザビーム強度決定に必要な試し書きの回数を減らすことができるとともに、測定する信号特性の種類を削減することが可能となる。さらに、本発明によれば、第2の回数としてクロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を用いているので、正確且つ短時間で臨界値を決定することが可能となる。
【0013】
また、前記第1の回数が1回であることが好ましい。これによれば、少ない回数の試し書きによって、多くの回数の試し書きを行った場合の信号特性の変化をシミュレーションすることが可能となる。
【0014】
さらに、前記第1の信号特性が信号振幅であり、前記第2の信号特性がジッタ若しくはエラーレートであることが好ましい。これによれば、実際にジッタやエラーレートを測定することなく、信号振幅を測定することによってジッタやエラーレートの変化をシミュレーションすることが可能となる。また、前記クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を特定するステップは、クロスイレーズの影響によりジッタ若しくはエラーレートが実質的に飽和する回数を特定するものであることが好ましい。
【0015】
本発明の前記目的はまた、書き換え型光記録媒体の隣接する少なくとも2本のトラックにテスト信号を記録する第1のステップと、前記2本のトラックに記録されたテスト信号を再生する第2のステップと、少なくとも、一方のトラックより得られた再生信号の第1の信号特性に関する検出値と他方のトラックより得られた再生信号の前記第1の信号特性に関する検出値に基づき、これらの差に関する値を生成する第3のステップと、前記差に関する値と臨界値とを比較する第4のステップとを備え、前記臨界値が、1回のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第1の信号特性の変化と所定回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第2の信号特性の変化との関係から、複数回のクロスイレーズによる影響を受ける前後において許容し得る前記第2の信号特性の変化量または変化率に基づいて定められたものであり、さらに、前記所定回数が、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数であることを特徴とするレーザビーム強度決定方法によって達成される。
【0016】
本発明においても、少なくとも2本のトラックにテスト信号を記録し、記録されたテスト信号の第1の信号特性を測定するだけで、実際に第2の信号特性を測定することなく、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和した場合の第2の信号特性の変化の程度を知ることができる。したがって、レーザビームの強度として、クロスイレーズによる影響が十分に考慮された値を得ることができる。
【0017】
この場合、前記第1の信号特性が信号振幅であり、前記第2の信号特性がジッタ若しくはエラーレートであることが好ましい。
【0018】
本発明の前記目的はまた、書き換え型の光記録媒体に照射するレーザビームの強度決定方法であって、クロスイレーズによる影響を受けた回数と所定の信号特性との関係を特定する第1のステップと、前記関係をもとに、クロスイレーズによる前記所定の信号特性の変化が実質的に飽和する回数を特定する第2のステップと、前記飽和する回数を示す情報を光記録媒体に記録する第3のステップとを備えるレーザビーム強度決定方法によって達成される。
【0019】
本発明によれば、クロスイレーズによる影響が飽和する回数が光記録媒体に記録されるので、いわゆるOPC(Optimum Power Control)において、レーザビームの強度としてクロスイレーズによる影響が十分に考慮された値を簡単に得ることが可能となる。
【0020】
本発明の前記目的はまた、書き換え型の光記録媒体に照射するレーザビームの強度決定に用いられる臨界値の生成方法であって、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を特定する第1のステップと、第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第1の信号特性の変化を測定する第2のステップと、前記特定された回数である第2の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第2の信号特性の変化を測定する第3のステップと、前記第2及び第3のステップによる測定の結果に基づき、前記第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第1の信号特性の変化と前記第2の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第2の信号特性の変化との関係を特定する第4のステップと、前記第2の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後において許容し得る前記第2の信号特性の変化量または変化率に対応する、前記第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第1の信号特性の変化量または変化率を前記臨界値として特定する第5のステップとを備える臨界値の生成方法によって達成される。
【0021】
本発明の前記目的はまた、コンピュータ制御により、クロスイレーズによる影響を受けた回数と所定の信号特性との関係を特定する第1のステップと、前記関係をもとに、クロスイレーズによる前記所定の信号特性の変化が実質的に飽和する回数を特定する第2のステップと、前記飽和する回数を示す情報を光記録媒体に記録する第3のステップとを実行させるためのオーバーライト回数決定プログラムによって達成される。
【0022】
本発明の前記目的はまた、書き換え型の光記録媒体であって、クロスイレーズによる所定の信号特性の変化が実質的に飽和する回数を示す情報が格納されていることを特徴とする光記録媒体によって達成される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施態様について詳細に説明する。
【0024】
図1は、本実施態様にかかるレーザビーム強度決定方法を示すフローチャートである。以下に詳述するとおり、本実施態様にかかるレーザビーム強度決定方法は、実際にユーザデータの記録を行う前に、情報記録装置(ドライブ)側において実行しても構わないし、光記録媒体の製造過程において、メーカ側において実行しても構わないが、レーザビームの強度として実際の記録環境に即した値を得るためには、実際にユーザデータの記録を行う情報記録装置側において実行することが好ましい。尚、情報記録装置において最適なレーザビームの強度を決定する方法は、一般にOPC(Optimum Power Control)と呼ばれている。
【0025】
本実施態様の方法によるレーザビーム強度決定においては、まず、対象となる光記録媒体のパワーキャリブレーションエリアに対し、記録パワーPwを所定の強度に設定して、連続する3トラックにテスト信号の記録を行う(ステップS1)。ここで、パワーキャリブレーションエリアとは、レーザビームの強度決定を行うための上記テスト信号等を記録する領域をいい、ユーザデータを格納すべき領域とは別に光記録媒体の例えば内周部分に割り当てられている。
【0026】
また、記録パワーPwの強度としては、使用する情報記録装置が任意に決定しても良いし、光記録媒体内に格納された情報に基づいて決定しても良い。さらに、テスト信号の内容は特に限定されず、単一信号であっても混合信号であっても構わない。但し、テスト信号の記録に用いるパルス列パターン(記録ストラテジ)としては、実際にユーザデータを記録する場合に使用するパルス列パターンと同じパルス列パターンを用いる必要があり、記録線速度についても、実際にユーザデータを記録する場合の記録線速度と同じ記録線速度に設定する必要がある。
【0027】
以下、ステップS1においてテスト信号が記録された3本のトラックを、図2に示すように、記録が行われた順に第1トラック、第2トラック、第3トラックと呼ぶ。この場合、第1トラックについては、第2トラックに対するデータの記録によってクロスイレーズが生じている可能性があり、また、第2トラックについては、第3トラックに対するデータの記録によってクロスイレーズが生じている可能性がある。一方、第3トラックについては、最後に記録されたトラックであることから、クロスイレーズが生じている可能性はない。
【0028】
次に、第2トラックに記録されたテスト信号の再生を行い(ステップS2)、得られる再生信号に基づいてレーザビームの強度決定に必要な信号特性を測定する(ステップS3)。ここで、レーザビームの強度決定に必要な信号特性としては、アシンメトリやβ値等を挙げることができる。尚、ステップS2においては、第2トラックに記録されたテスト信号を再生していることから、得られる信号特性は、両側からのクロストークの影響が考慮されたものとなる。
【0029】
次に、ステップS3において測定された所定の信号特性が基準値を満たしているか否かを判断する(ステップS4)。この場合、ステップS3において測定された信号特性が複数(例えば、アシンメトリとβ値)である場合には、基準値はこれら複数の信号特性ごとに設定され、その全てが基準値を満たしているか否かが判断される。
【0030】
その結果、基準値を満たしていないと判断された場合には、ステップS1において設定した記録パワーPwのレベルが不適切であることが原因と考えられるので、これを変更して再度連続する3トラック(第1、第2及び第3トラック)にテスト信号の記録を行う(ステップS5)。この場合、テスト信号の記録を行う3本のトラックとしては、未記録のトラックを用いることが好ましい。
【0031】
一方、ステップS4において基準値を満たしていると判断された場合には、第2トラック及び第3トラックに記録されたテスト信号の再生を行い(ステップS6)、得られる再生信号の振幅を測定する(ステップS7)。ここで、再生信号の振幅とは、記録マークが形成された領域における反射率とブランク領域における反射率との差を意味し、テスト信号が混合信号である場合には最長マークの振幅を測定することが好ましい。尚、ステップS3において第2トラックに記録されたテスト信号の振幅が既に測定されている場合には、ステップS6においては、第3トラックに記録されたテスト信号の再生を行う必要はない。この場合、上述の通り、第2トラックに記録されたテスト信号はクロスイレーズの影響を受けている可能性がある一方、第3トラックに記録されたテスト信号はクロスイレーズの影響を受けていないことから、通常は、第2トラックより得られる再生信号の振幅(D2)は第3トラックより得られる再生信号の振幅(D3)よりも小さくなるはずである。
【0032】
次に、第2トラックより得られた再生信号の振幅(D2)と第3トラックより得られた再生信号の振幅(D3)に基づいて、第1の信号振幅減少率(R1)を算出する(ステップS8)。この場合、第1の信号振幅減少率(R1)としては、振幅(D2)と振幅(D3)との差を振幅(D3)で規格化した値、すなわち、
(D3−D2)/D3
とすることが好ましい。
【0033】
次に、ステップS8において算出された第1の信号振幅減少率(R1)が臨界値以下であるか否かを判断する(ステップS9)。ステップS9で用いる臨界値は、後述する方法により決定される。
【0034】
その結果、第1の信号振幅減少率(R1)が臨界値を越えている場合には、クロスイレーズの影響が大きいことが分かるので、記録パワーPwを低くして再度連続する3トラック(第1、第2及び第3トラック)にテスト信号の記録を行う(ステップS10)。この場合も、テスト信号の記録を行う3本のトラックとしては、未記録のトラックを用いることが好ましい。一方、第1の信号振幅減少率(R1)が臨界値以下である場合には、クロスイレーズの影響が十分に小さいことが分かるので、当該記録パワーPwを最適パワーとして決定する(ステップS11)。
【0035】
以上のような方法を用いることにより、記録パワーPwをクロスイレーズによる影響が十分に考慮されたレベルに設定することが可能となる。尚、図1に示すレーザビーム強度決定方法は、「レーザビーム強度決定プログラム」をコンピュータが実行することによって実施可能である。
【0036】
次に、ステップS9で用いる臨界値の決定方法について説明する。
【0037】
図3は、ステップS9で用いる臨界値の決定方法を示すフローチャートである。以下に詳述するとおり、かかる臨界値の決定については、可能であれば実際にユーザデータの記録を行う前に情報記録装置(ドライブ)側において実行しても構わないが、ジッタの測定を行う必要があること、並びに、多数回に亘ってテストデータの記録を行う必要があることから、光記録媒体の製造過程においてメーカ側が実行することが好ましい。
【0038】
臨界値の決定においては、まず、変数iを0にリセットし(ステップS21)、次に、対象となる光記録媒体のパワーキャリブレーションエリアに対し、記録パワーPwを予め定められた最低パワーPw(min)に設定して(ステップS22)、連続する3トラックにテスト信号の記録を行う(ステップS23)。テスト信号の内容は特に限定されず、単一信号であっても混合信号であっても構わないが、テスト信号の記録に用いるパルス列パターン(記録ストラテジ)としては、実際にユーザデータを記録する場合に使用するパルス列パターンと同じパルス列パターンを用いる必要があり、記録線速度についても、実際にユーザデータを記録する場合の記録線速度と同じ記録線速度に設定する必要がある。また、図2に示したとおり、ステップS23においてテスト信号が記録された3本のトラックを、記録した順に第1トラック、第2トラック、第3トラックと呼ぶ。
【0039】
次に、第2トラック及び第3トラックに記録されたテスト信号の再生を行い(ステップS24)、得られる再生信号に基づいてジッタ及び信号振幅を測定する(ステップS25)。この場合、第3トラックに記録されたテスト信号のジッタ及び信号振幅は、クロスイレーズによる影響を受けていない場合の値(Single)であり、第2トラックに記録されたテスト信号のジッタ及び信号振幅は、クロスイレーズの影響を片側から1回受けた状態における値(Cross1)である。したがって、Cross1の値はSingleの値よりも悪化していることが一般的である。尚、ステップS24におけるジッタの測定は、第2トラックについてのみ行えば足り、第3トラックについてはこれを行わなくても構わない。
【0040】
次に、変数iをインクリメントした後(ステップS26)、上記第1トラック及び第3トラックに対してダイレクトオーバーライトを行う(ステップS27)。記録条件としては、ステップS23における記録条件と同様の条件に設定する必要がある。これにより、第2トラックに記録されたテスト信号は、クロスイレーズの影響を両側からそれぞれ1回及び2回受けた状態となる。
【0041】
次に、変数iが所定値xに一致しているか否かを判断し(ステップS28)、その結果、変数iが所定値xに一致していなければ(1〜x−1であれば)、ステップS26に戻って変数iのインクリメントを行った後(ステップS26)、再び第1トラック及び第3トラックに対するダイレクトオーバーライトを行う(ステップS27)。ステップS28で用いる所定値xとは、クロスイレーズの影響が実質的に飽和する回数であり、後述する方法により決定される。
【0042】
一方、ステップS28において変数iが所定値xに一致していれば、第2トラックに記録されたテスト信号の再生を行い(ステップS29)、得られる再生信号に基づいてジッタ及び信号振幅を測定する(ステップS30)。ステップS28において変数iが所定値xに一致していると言うことは、ステップS26〜ステップS28からなるループをx回繰り返したことを意味するため、この場合、第2トラックに記録されたテスト信号のジッタ及び信号振幅は、クロスイレーズの影響を両側からそれぞれx回及びx+1回受けた状態における値(Cross(x+1))となっている。したがって、Cross(x+1)の値は上記Cross1の値よりもさらに悪化していることが一般的である。
【0043】
以上より、現在設定されている記録パワーPwに対応するジッタ及び信号振幅のSingle、Cross1及びCross(x+1)の値を得ることができる。
【0044】
そして、現在設定されている記録パワーPwに予め定められたパワー(α)を付加して新たに設定された記録パワーPwとし(ステップS31)、その結果、新たに設定された記録パワーPwが予め設定された最高パワーPw(max)を越えたか否かを判断する(ステップS32)。
【0045】
その結果、新たに設定された記録パワーPwが予め設定された最高パワーPw(max)を越えていない場合には、ステップS21に戻って、再びステップS21〜ステップS32からなるループを実行する。これにより、新たに設定された記録パワーPwに対応するジッタ及び信号振幅のSingle、Cross1及びCross(x+1)の値を得ることができる。
【0046】
一方、ステップS32において、新たに設定された記録パワーPwが予め設定された最高パワーPw(max)を越えている場合には、ステップS21〜ステップS32からなるループを終了する。これにより、各記録パワーPwに対応するジッタ及び信号振幅のSingle、Cross1及びCross(x+1)の値が全て得られたことになる。
【0047】
次に、このようにして得られた各記録パワーPwに対応するジッタ及び信号振幅のSingle、Cross1及びCross(x+1)の値を用いて、図4に示すテーブルTを作成する(ステップS33)。図4に示すように、テーブルTには、各記録パワーPwごとの第1の信号振幅減少率(R1)、第2の信号振幅減少率(R2)及びジッタ劣化度(R3)が示されている。
【0048】
ここで、第1の信号振幅減少率(R1)とは、信号振幅のSingleの値とCross1の値との差を信号振幅のSingleの値で規格化した値、すなわち、
(信号振幅Single−信号振幅Cross1)/信号振幅Single
で示される値であり、これが各記録パワーPwごとに算出される。このうち、信号振幅のSingleの値は上述した振幅D3に対応し、信号振幅Cross1の値は上述した振幅D2に対応している。また、第2の信号振幅減少率(R2)とは、信号振幅のCross1の値とCross(x+1)の値との差を信号振幅のCross1の値で規格化した値、すなわち、
(信号振幅Cross1−信号振幅Cross(x+1))/信号振幅Cross1
で示される値であり、これが各記録パワーPwごとに算出される。さらに、ジッタ劣化度(R3)とは、ジッタのCross1の値とCross(x+1)の値との差、すなわち、
ジッタCross(x+1)−ジッタCross1
で示される値であり、これが各記録パワーPwごとに算出される。
【0049】
このようにしてテーブルTが作成されると、次に、テーブルTを参照することによって、第2の信号振幅減少率(R2)とジッタ劣化度(R3)との関係式(第1の関係式)を導く(ステップS34)。具体的には、テーブルTに含まれる第2の信号振幅減少率(R2)とこれに対応するジッタ劣化度(R3)との関係を仮想的なグラフ上にプロットし、これに基づいて近似式を作成すればよい。図5は、第2の信号振幅減少率(R2)とこれに対応するジッタ劣化度(R3)との関係を示す仮想的なグラフの一例を示す図である。図5に示すように、かかるグラフにおいては、第2の信号振幅減少率(R2)とジッタ劣化度(R3)との関係は、概ね1次関数で表すことができる。
【0050】
次に、テーブルTを参照することによって、第1の信号振幅減少率(R1)と第2の信号振幅減少率(R2)との関係式(第2の関係式)を導く(ステップS35)。具体的には、テーブルTに含まれる第1の信号振幅減少率(R1)とこれに対応する第2の信号振幅減少率(R2)との関係を仮想的なグラフ上にプロットし、これに基づいて近似式を作成すればよい。図6は、第1の信号振幅減少率(R1)とこれに対応する第2の信号振幅減少率(R2)との関係を示す仮想的なグラフの一例を示す図である。図6に示すように、かかるグラフにおいては、第1の信号振幅減少率(R1)と第2の信号振幅減少率(R2)との関係は、概ね2次関数で表すことができる。
【0051】
そして、ステップS34において作成した第1の関係式を用いて、実使用状態において許容できるジッタ劣化度(R3)からこれに対応する第2の信号振幅減少率(R2)を算出し、さらに、ステップS35において作成した第2の関係式を用いて、上記算出された第2の信号振幅減少率(R2)からこれに対応する第1の信号振幅減少率(R1)を算出し、これを臨界値として決定する(ステップS36)。例えば、実使用状態において許容できるジッタ劣化度(R3)が「a」である場合、図5に示すように、これに対応する第2の信号振幅減少率(R2)は「b」となり、さらに、図6に示すように、これに対応する第1の信号振幅減少率(R1)は「c」となるので、最終的に臨界値として「c」を得ることができる。
【0052】
以上により、ステップS9で用いる臨界値として、実使用状態において許容できるジッタ劣化度(R3)に対応した第1の信号振幅減少率(R1)を得ることが可能となる。ここで、ジッタ劣化度(R3)とは、上述の通り、ジッタのCross1の値とCross(x+1)の値との差で示される値、すなわち、クロスイレーズの影響を片側から1回受けた状態におけるジッタと、クロスイレーズの影響を両側からそれぞれ9回及び10回受けた状態におけるジッタとの差であることから、得られる臨界値は、多数回のクロスイレーズによるジッタの劣化が許容量を越える場合に得られるであろう第1の信号振幅減少率(R1)に一致する。
【0053】
したがって、上述した方法により得られた臨界値を上記ステップS9において用いれば、図1に示すレーザビームの強度決定において、実際に多数回のオーバーライトを行ったりジッタを測定したりすることなく、多数回のクロスイレーズによるジッタの劣化を考慮した最適記録パワーPwの決定を行うことが可能となる。尚、図3に示す臨界値の決定方法は、「臨界値決定プログラム」をコンピュータが実行することによって実施可能である。
【0054】
次に、ステップS28で用いる所定値xの決定方法について説明する。
【0055】
図7は、ステップS28で用いる所定値xの決定方法を示すフローチャートである。以下に詳述するとおり、かかる所定値xの決定については、可能であれば実際にユーザデータの記録を行う前に情報記録装置(ドライブ)側において実行しても構わないが、上記臨界値の決定方法と同様、ジッタの測定を行う必要があること、並びに、多数回に亘ってテストデータの記録を行う必要があることから、光記録媒体の製造過程においてメーカ側が実行することが好ましい。
【0056】
所定値xの決定においては、まず、変数jを0にリセットし(ステップS41)、次に、対象となる光記録媒体のパワーキャリブレーションエリアに対し、記録パワーPwを予め定められた最低パワーPw(min)に設定して(ステップS42)、連続する3トラックにテスト信号の記録を行う(ステップS43)。ステップS42において用いる最低パワーPw(min)としては、ステップS22において用いる最低パワーPw(min)と同じであっても異なっていても構わないが、所定値xの決定に際しては、臨界値の決定ほど広範囲に亘る測定を行う必要はないので、ステップS22において用いる最低パワーPw(min)よりも高いレベルに設定することが好ましい。
【0057】
また、ステップS43において記録するテスト信号の内容は特に限定されず、単一信号であっても混合信号であっても構わないが、テスト信号の記録に用いるパルス列パターン(記録ストラテジ)としては、実際にユーザデータを記録する場合に使用するパルス列パターンと同じパルス列パターンを用いる必要があり、記録線速度についても、実際にユーザデータを記録する場合の記録線速度と同じ記録線速度に設定する必要がある。また、図2に示したとおり、ステップS43においてテスト信号が記録された3本のトラックを、記録した順に第1トラック、第2トラック、第3トラックと呼ぶ。
【0058】
次に、第2トラック及び第3トラックに記録されたテスト信号の再生を行い(ステップS44)、得られる再生信号に基づいてジッタを測定する(ステップS45)。この場合、第3トラックに記録されたテスト信号のジッタは、クロスイレーズによる影響を受けていない場合の値(ジッタSingle)であり、第2トラックに記録されたテスト信号のジッタは、クロスイレーズの影響を片側から1回受けた状態における値(ジッタCross1)である。このため、上述の通り、Cross1の値(ジッタCross1)はSingleの値(ジッタSingle)よりも悪化していることが一般的である。
【0059】
次に、変数jをインクリメントした後(ステップS46)、上記第1トラック及び第3トラックに対してダイレクトオーバーライトを行う(ステップS47)。記録条件としては、ステップS43における記録条件と同様の条件に設定する必要がある。これにより、第2トラックに記録されたテスト信号は、クロスイレーズの影響を両側からそれぞれ1回及び2回受けた状態となる。
【0060】
次に、第2トラックに記録されたテスト信号の再生を行い(ステップS48)、得られる再生信号に基づいてジッタを測定する(ステップS49)。この場合、第2トラックに記録されたテスト信号のジッタは、クロスイレーズの影響を両側からそれぞれ1回及び2回受けた状態における値(ジッタCross2)である。このため、クロスイレーズの影響が既に飽和していない限り、Cross2の値(ジッタCross2)はCross1の値(ジッタCross1)よりも悪化しているはずである。
【0061】
次に、変数jが所定値yに一致しているか否かを判断し(ステップS50)、その結果、変数jが所定値yに一致していなければ(1〜y−1であれば)、ステップS46に戻って変数jのインクリメントを行った後(ステップS46)、再び第1トラック及び第3トラックに対するダイレクトオーバーライト(ステップS47)、第2トラックに記録されたテスト信号の再生(ステップS48)及びジッタの測定(ステップS49)を行う。ここで、ステップS50で用いる所定値yとは、記録パワーPwが最適強度またはこれに近い強度である場合に、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を十分に越える回数に設定され、通常、最適な記録パワーを用いた場合にはクロスイレーズによる影響が10回以内に飽和することを考慮すれば、所定値yの具体的な回数としては10回〜20回程度に設定することが好ましい。
【0062】
一方、ステップS50において変数jが所定値yに一致していれば、現在設定されている記録パワーPwに予め定められたパワー(α)を付加して新たに設定された記録パワーPwとし(ステップS51)、その結果、新たに設定された記録パワーPwが予め設定された最高パワーPw(max)を越えたか否かを判断する(ステップS52)。ステップS51において付加されるパワー(α)としては、ステップS31において付加されるパワー(α)と同じであっても異なっていても構わないが、所定値xの決定に際しては、臨界値の決定ほど厳密な測定を行う必要はないので、ステップS31において付加されるパワー(α)よりも大きな値に設定することが好ましい。また、ステップS52において用いる最高パワーPw(max)としては、ステップS32において用いる最高パワーPw(max)と同じであっても異なっていても構わないが、上述の通り、所定値xの決定に際しては臨界値の決定ほど広範囲に亘る測定を行う必要はないので、ステップS32において用いる最高パワーPw(max)よりも低いレベルに設定することが好ましい。
【0063】
尚、ステップS50において変数jが所定値yに一致していると言うことは、ステップS46〜ステップS50からなるループをy回繰り返したことを意味するため、この場合、第2トラックに記録されたテスト信号のジッタは、クロスイレーズの影響を両側からそれぞれy回及びy+1回受けた状態における値(Cross(y+1))となっている。上述の通り、所定値yは記録パワーPwが最適強度またはこれに近い強度である場合に、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を十分に越える回数に設定されていることから、ステップS50において変数jが所定値yに一致した場合、記録パワーPwが最適強度またはこれに近い強度である限り、クロスイレーズによる影響は十分に飽和しているはずである。これにより、現在の記録パワーPwに対応するジッタSingle及びジッタCross1〜ジッタCross(y+1)の値を得ることができる。
【0064】
そして、ステップS52における判断の結果、新たに設定された記録パワーPwが予め設定された最高パワーPw(max)を越えていない場合には、ステップS41に戻って、再びステップS41〜ステップS52からなるループを実行する。これにより、新たに設定された記録パワーPwに対応するジッタSingle及びジッタCross1〜ジッタCross(y+1)の値を得ることができる。
【0065】
一方、ステップS52において、新たに設定された記録パワーPwが予め設定された最高パワーPw(max)を越えている場合には、ステップS41〜ステップS52からなるループを終了する。これにより、各記録パワーPwに対応するジッタSingle及びジッタCross1〜ジッタCross(y+1)の値が全て得られたことになる。
【0066】
次に、このようにして得られた各記録パワーPwに対応するジッタSingle及びジッタCross1〜ジッタCross(y+1)の値を解析し、その結果に基づいて所定値xを決定する(ステップS53)。具体的には、次のようにジッタSingle及びジッタCross1〜ジッタCross(y+1)の値を解析し、所定値xを決定する。
【0067】
図8は、クロスイレーズ回数とジッタ劣化度(R4)との関係を記録パワーPwごとに示すグラフの一例である。ここで、ジッタ劣化度(R3)とは、ジッタのSingleの値とCross1〜Cross(y+1)のそれぞれの値との差、すなわち、
ジッタCross1−ジッタSingle から、
ジッタCross(y+1)−ジッタSingle
で示される各値を指す。
【0068】
図8に示すように、各記録パワーともクロスイレーズ回数が増えるにしたがって、ジッタ劣化度(R4)も増大するが、記録パワーが所定の範囲内である場合(図8ではPw1〜Pw3)には、所定の回数を越えるとジッタ劣化度(R4)はそれ以上増大しなくなる。すなわち、クロスイレーズの影響は実質的に飽和する。したがって、かかる所定の回数を「所定値x」として決定すればよい。
【0069】
一方、記録パワーが上記所定の範囲外である場合(図8ではPw4)には、上記所定の回数を超えてもジッタ劣化度(R4)の増大は続き、場合によっては最大数(y+1回)に達してもクロスイレーズの影響が飽和しない。また、ジッタ劣化度(R4)の値自体も、記録パワーが上記所定の範囲内である場合と比べて非常に大きい。このような傾向を示すのは、記録パワーPwが最適値から大きく外れていることが原因である。したがって、最大数(y+1回)に達してもクロスイレーズの影響が飽和しない場合、または、ジッタ劣化度(R4)の値が非常に大きい場合には、所定値xの決定に際してこれを考慮する必要はない。尚、ジッタ劣化度(R4)の値が非常に大きい場合とは、特に限定されるものではないが、数回のクロスイレーズによるジッタの劣化度(R4)が4%を越えるような場合が該当する。
【0070】
以上により、ステップS28で用いる所定値xとして、クロスイレーズの影響が実質的に飽和する回数を得ることが可能となる。
【0071】
したがって、上述した方法により得られた所定値xを上記ステップS28において用いれば、図3に示す臨界値の決定におけるステップS26〜ステップS28からなるループを、ちょうどクロスイレーズの影響が実質的に飽和するまで繰り返せばステップS29に進めるので、クロスイレーズの影響が飽和した後も上記ループを無駄に多数回繰り返したり、逆に、クロスイレーズの影響が飽和する前にステップS29に進んだりすることがなくなる。尚、図7に示す所定値xの決定方法は、「オーバーライト回数決定プログラム」をコンピュータが実行することによって実施可能である。
【0072】
次に、レーザビームの強度決定方法(図1参照)、臨界値の決定方法(図3参照)及び所定値xの決定方法(図7参照)を実際に実行するタイミングについて説明する。
【0073】
まず、図7に示す所定値xの決定方法については、図3に示す臨界値の決定方法を実行する前であれば、光記録媒体の製造段階において実行してもよく、実際にユーザデータの記録を行う前に情報記録装置(ドライブ)側において実行しても構わないが、上述の通り、ジッタの測定を行う必要があること、並びに、多数回に亘ってテストデータの記録を行う必要があることから、光記録媒体の製造段階において、メーカ側が実行することが好ましい。
【0074】
また、図3に示す臨界値の決定方法については、図1に示すレーザビームの強度決定方法を実行する前であれば、光記録媒体の製造段階において実行してもよく、実際にユーザデータの記録を行う前に情報記録装置(ドライブ)側において実行しても構わないが、上述の通り、ジッタの測定を行う必要があること、並びに、多数回に亘ってテストデータの記録を行う必要があることから、図7に示す所定値xの決定と同様、光記録媒体の製造段階において、メーカ側が実行することが好ましい。一方、図1に示すレーザビームの強度決定方法については、臨界値の決定を行った後、実際にユーザデータの記録を行う前であれば、情報記録装置側において実行しても構わないし、光記録媒体の製造過程において、メーカ側において実行しても構わないが、レーザビームの強度として実際の記録環境に即した値を得るためには、実際にユーザデータの記録を行う情報記録装置側において実行することが好ましい。
【0075】
ここで、所定値xの決定(図7)と臨界値の決定(図3)とを異なるタイミングに行う場合、例えば、所定値xの決定を光記録媒体の製造段階において行い、臨界値の決定を情報記録装置において行う場合には、決定された所定値xを当該光記録媒体に格納しておくことが好ましい。このように、所定値xを光記録媒体に格納しておけば、実際にユーザデータの記録を行う前に、光記録媒体に記録された所定値xを参照することにより情報記録装置側において図3に示す臨界値の決定を実行することが可能となる。この場合、図3に示す臨界値の決定を上述した「臨界値決定プログラム」に基づいて行うためには、これが情報記録装置に格納されている必要がある。しかしながら、「臨界値決定プログラム」を当該光記録媒体に格納しておけば、情報記録装置に臨界値決定プログラムが格納されていない場合であっても、光記録媒体からこれを読み出すことにより実行することが可能となる。
【0076】
さらに、臨界値の決定とレーザビームの強度決定とを異なるタイミングに行う場合、例えば、臨界値の決定を光記録媒体の製造段階において行い、レーザビームの強度決定を情報記録装置において行う場合には、決定された臨界値を当該光記録媒体に格納しておくことが好ましい。このように、臨界値を光記録媒体に格納しておけば、実際にユーザデータの記録を行う前に、光記録媒体に記録された臨界値を参照することにより情報記録装置側において図1に示すレーザビームの強度決定を容易に実行することが可能となる。この場合、図1に示すレーザビームの強度決定を上述した「レーザビーム強度決定プログラム」に基づいて行うためには、これが情報記録装置に格納されている必要がある。しかしながら、「レーザビーム強度決定プログラム」を当該光記録媒体に格納しておけば、情報記録装置にレーザビーム強度決定プログラムが格納されていない場合であっても、光記録媒体からこれを読み出すことにより実行することが可能となる。
【0077】
また、決定された臨界値とともに、または決定された臨界値に代えて、ステップS34において作成された第1の関係式及びステップS35において作成された第2の関係式を当該光記録媒体に格納しておくこともまた好ましい。第1及び第2の関係式を光記録媒体に格納しておけば、情報記録装置側において許容できるジッタ劣化度(R3)を任意に設定し、図1に示すレーザビームの強度決定においてこれに対応した臨界値を用いることが可能となる。この場合、第1の関係式と第2の関係式とを光記録媒体に別個に格納しておく必要はなく、許容できるジッタ劣化度(R3)からこれに対応する第1の信号振幅減少率(R1)、すなわち臨界値を算出可能である限り、第1の関係式と第2の関係式とが一つにまとめられた式を光記録媒体に格納しておいても構わない。
【0078】
さらに、決定された臨界値及び/又は第1及び第2の関係式とともに、またはこれらに代えて、ステップS33において作成されたテーブルTを当該光記録媒体に格納しておくこともまた好ましい。テーブルTを光記録媒体に格納しておけば、新たな記録パワーPwを用いてステップS21〜ステップS32を追加的に実行し、その結果をテーブルTに加えることによってその内容をより充実させることが可能となる。また、既にステップS21〜ステップS32において用いられた記録パワーPwと同じ記録パワーPwを用いてこれを情報記録装置側において再度実行し、その結果をテーブルTに追加し又は対応する内容を更新すれば、テーブルTの内容を実際の記録環境により即したものとすることができる。
【0079】
また、情報記録装置側において所定値xの決定を上述した「オーバーライト回数決定プログラム」に基づいて行うためには、これが情報記録装置に格納されている必要があるが、「オーバーライト回数決定プログラム」を当該光記録媒体に格納しておけば、情報記録装置にオーバーライト回数決定プログラムが格納されていない場合であっても、光記録媒体からこれを読み出すことにより実行することが可能となる。
【0080】
次に、本実施態様にかかるレーザビームの強度決定方法の適用対象となる光記録媒体の構造について説明する。
【0081】
図9は、本実施態様にかかるレーザビームの強度決定方法の適用対象となる光記録媒体の構造の一例を示す断面図である。
【0082】
図9に示すように、本実施態様にかかるレーザビームの強度決定方法の適用対象となる光記録媒体10は、基板11と、基板11上に設けられた反射層12と、反射層12上に設けられた第2の誘電体層13と、第2の誘電体層13上に設けられた記録層14と、記録層14上に設けられた第1の誘電体層15と、第1の誘電体層15上に設けられた光透過層16によって構成され、光記録媒体10の中央部分には孔17が設けられている。このような構造を有する光記録媒体10に対しては、光透過層16側からレーザビームを照射することによってデータの記録/再生が行われる。
【0083】
基板11は、光記録媒体10に求められる機械的強度を確保するための基体としての役割を果たし、その表面にはグルーブ11a及びランド11bが設けられている。これらグルーブ11a及び/又はランド11bは、データの記録及び再生を行う場合におけるレーザビームのガイドトラックとしての役割を果たす。基板11の厚さは約1.1mmに設定され、その材料としては種々の材料を用いることが可能であり、例えば、ガラス、セラミックス、あるいは樹脂を用いることができる。これらのうち、成形の容易性の観点から樹脂が好ましい。このような樹脂としてはポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。中でも、加工性などの点からポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
【0084】
反射層12は、光透過層16側から入射されるレーザビームを反射し、再び光透過層16から出射させる役割を果たし、その厚さとしては10〜300nmに設定することが好ましく、20〜200nmに設定することが特に好ましい。反射層12の材料はレーザビームを反射可能である限り特に制限されず、例えば、Mg、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ag、Pt、Au等を用いることができる。これらのうち、高い反射率を有することから、Al、Au、Ag、Cu又はこれらの合金(AlとTiとの合金等)などの金属材料を用いることが好ましい。尚、光記録媒体10に反射層12を設けることは必須でないが、これを設ければ、光記録後において多重干渉効果により高い再生信号(C/N比)が得られやすくなる。また、反射層12の腐食防止を目的として、基板11と反射層12との間に誘電体からなる防湿層を介在させても構わない。
【0085】
第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13は、これらの間に設けられる記録層14を保護する役割を果たし、記録層14はこれら第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13に挟持されることにより、光記録後、長期間にわたって記録情報の劣化が効果的に防止される。
【0086】
第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13の構成材料は、透明な誘電体であれば特に限定されず、例えば、酸化物、硫化物、窒化物又はこれらの組み合わせを主成分として用いることができる。より具体的には、基板11等の熱変形防止、並びに、記録層14の保護の観点から、第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13が、Al2O3、AlN、ZnO、ZnS、GeN、GeCrN、CeO、SiO、SiO2、SiN及びSiCからなる群より選択される少なくとも1種の誘電体を主成分とすることが好ましく、ZnS・SiO2からなる誘電体を主成分とすることがより好ましい。第1の誘電体層15と第2の誘電体層13は、互いに同じ構成材料で構成されてもよいが、異なる構成材料で構成されてもよい。さらに、第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13の少なくとも一方が、複数の誘電体膜からなる多層構造であっても構わない。
【0087】
なお、「誘電体を主成分とする」とは、第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13中において、上記誘電体の含有率が最も大きいことを言う。また、「ZnS・SiO2」とは、ZnSとSiO2との混合物を意味する。
【0088】
また、第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13の層厚は特に限定されないが、3〜200nmであることが好ましい。この層厚が3nm未満であると、上述した効果が得られにくくなる。一方、層厚が200nmを超えると、成膜時間が長くなり生産性が低下するおそれがあり、さらに、第1の誘電体層15及び第2の誘電体層13のもつ応力によってクラックが発生するおそれがある。
【0089】
記録層14は相変化材料によって構成され、結晶状態である場合の反射率とアモルファス状態である場合の反射率とが異なることを利用してデータの記録が行われる。結晶状態である記録層14をアモルファス状態に変化させるためには、光透過層16側から照射されるレーザビームを記録パワーPwから基底パワーPbまでの振幅を有するパルス波形とすることによって記録層14を融点以上の温度に加熱し、その後、かかるレーザビームのパワーを基底パワーPbに設定することによって急冷する。これにより、記録パワーPwによって溶融した領域がアモルファス状態に変化し、これが記録マークとなる。一方、アモルファス状態である記録層14を結晶状態に変化させるためには、光透過層16側から照射されるレーザビームのパワーを消去パワーPeに設定することによって記録層14を結晶化温度以上の温度に加熱する。これにより、消去パワーPeによって結晶化温度以上の温度に加熱された領域は、レーザビームが遠ざかることによって徐冷されることから、当該領域が結晶状態に変化する。
【0090】
ここで、記録パワーPwのレベルは、図1に示すレーザビームの強度決定方法によって決定されるが、一般に記録パワーPw、消去パワーPe及び基底パワーPbの関係は、
Pw>Pe≧Pb
となる。したがって、レーザビームのパワーをこのように変調すれば、記録層14の未記録領域に記録マークを形成するだけでなく、既に記録マークが形成されている領域にこれと異なる記録マークを直接上書き(ダイレクトオーバーライト)することが可能となる。
【0091】
記録層14の具体的な材料としては、特に限定されるものではないがSbTeを主成分とする材料を用いることが好ましい。記録層14の厚さとしては、5〜30nmに設定することが好ましく、5〜20nmに設定することが特に好ましい。
【0092】
光透過層16は、レーザビームの入射面を構成するとともにレーザビームの光路となる層であり、その厚さとしては10〜300μmに設定することが好ましく、50〜150μmに設定することが特に好ましい。光透過層16の材料としては特に限定されないが、紫外線硬化性樹脂を用いることが好ましい。また、紫外線硬化性樹脂を硬化させてなる膜のかわりに、光透過性樹脂からなる光透過性シートと各種接着剤や粘着剤を用いて光透過層16を形成してもよい。
【0093】
次に、上記光記録媒体10の製造方法の一例について説明する。
【0094】
先ずグルーブ11a及びランド11bが形成された基板11上に反射層12を形成を形成する。反射層12の形成には、例えば反射層12の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法を用いることができる。このような気相成長法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0095】
次に、反射層12上に第2の誘電体層13を形成する。この第2の誘電体層13も、第2の誘電体層13の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法を用いて形成することができる。さらに、第2の誘電体層13上に記録層14を形成する。記録層14も、これを構成する相変化材料を含む化学種を用いた気相成長法を用いて形成することができる。さらに、記録層14上に第1の誘電体層15を形成する。第1の誘電体層15も、第1の誘電体層15の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法を用いて形成することができる。
【0096】
最後に、第1の誘電体層15上に光透過層16を形成する。光透過層16は、例えば、粘度調整されたアクリル系又はエポキシ系の紫外線硬化性樹脂をスピンコート法等により皮膜させ、紫外線を照射して硬化する等の方法により形成することができる。以上により、光記録媒体10の製造が完了する。
【0097】
なお、上記光記録媒体10の製造方法は、上記製造方法に特に限定されるものではなく、公知の光記録媒体の製造に採用される製造技術を用いることができる。また、上述した光記録媒体10は、本実施態様にかかるレーザビームの強度決定方法の適用対象となる光記録媒体の一例であり、書き換え可能な光記録媒体である限り、これ以外の構造を有する光記録媒体に対して本実施態様にかかるレーザビームの強度決定方法を適用することも可能である。
【0098】
次に、光記録媒体10に対して上述したレーザビームの強度決定を行うとともに、実際にユーザデータの記録を行うための情報記録装置について説明する。
【0099】
図10は、光記録媒体10に対してデータの記録を行い、また、これに先立って上述したレーザビームの強度設定(図1)を実行可能な情報記録装置50の主要部を概略的に示す図である。
【0100】
情報記録装置50は、図10に示すように光記録媒体10を回転させるためのスピンドルモータ52と、光記録媒体10にレーザビームを照射するとともにその反射光を受光するヘッド53と、スピンドルモータ52及びヘッド53の動作を制御するコントローラ54と、ヘッド53にレーザ駆動信号を供給するレーザ駆動回路55と、ヘッド53にレンズ駆動信号を供給するレンズ駆動回路56とを備えている。
【0101】
さらに、図10に示すように、コントローラ54にはフォーカスサーボ追従回路57、トラッキングサーボ追従回路58及びレーザコントロール回路59が含まれている。フォーカスサーボ追従回路57が活性化すると、回転している光記録媒体10の記録面にフォーカスがかかった状態となり、トラッキングサーボ追従回路58が活性化すると、光記録媒体10の偏芯している信号トラックに対して、レーザビームのスポットが自動追従状態となる。フォーカスサーボ追従回路57及びトラッキングサーボ追従回路58には、フォーカスゲインを自動調整するためのオートゲインコントロール機能及びトラッキングゲインを自動調整するためのオートゲインコントロール機能がそれぞれ備えられている。また、レーザコントロール回路59は、レーザ駆動回路55により供給されるレーザ駆動信号を生成する回路であり、光記録媒体10に記録されている記録条件設定情報に基づいて、適切なレーザ駆動信号の生成を行う。
【0102】
尚、これらフォーカスサーボ追従回路57、トラッキングサーボ追従回路58及びレーザコントロール回路59については、コントローラ54内に組み込まれた回路である必要はなく、コントローラ54と別個の部品であっても構わない。さらに、これらは物理的な回路である必要はなく、コントローラ54内で実行されるソフトウェアであっても構わない。
【0103】
このような構成からなる情報記録装置50を用いて光記録媒体10に対するデータの記録を行う場合、実際にユーザデータの記録を行う前に上述したレーザビームの強度設定(図1)が行われる。但し、上述したように、レーザビームの強度設定が光記録媒体の製造段階において行われ、得られた最適な記録パワーPwが当該光記録媒体に記録条件設定情報として記録されている場合には、情報記録装置50側においてこれを実行することは必須でない。
【0104】
このように、本実施態様によれば、記録パワーPwのレベルとしてクロスイレーズによる影響が十分に考慮された値を得ることができることから、次世代型の光記録媒体のようにクロスイレーズが生じやすい光記録媒体に対してデータを記録する場合であっても、クロスイレーズの影響を十分に抑制することが可能となる。具体的には、本実施態様により決定された記録パワーPwを用いれば、多数回のクロスイレーズによる影響を受けた場合のジッタの劣化度を、許容範囲内に抑制することが可能となる。
【0105】
しかも、本実施態様によれば、図3に示す臨界値の決定方法によって、ジッタ劣化度(R3)とこれに対応する第1の信号振幅減少率(R1)との関係を特定していることから、図1に示すレーザビームの強度決定においては、実際に多数回の試し書きを行う必要がないばかりか、ジッタの測定を行う必要もないことから、最適な記録パワーPwのレベルを非常に簡単に決定することができる。
【0106】
さらに、本実施態様によれば、図7に示す所定値xの決定方法によって、臨界値の決定において実行すべきステップS26〜ステップS28からなるループの繰り返し回数を決定しているので、クロスイレーズの影響が飽和した後も上記ループを無駄に多数回繰り返したり、逆に、クロスイレーズの影響が飽和する前にステップS29に進んだりすることがなくなる。これにより、正確且つ短時間で臨界値を決定することが可能となる。
【0107】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0108】
例えば、上記実施態様においては、記録パワーPwを最低パワーPw(min)から徐々に高めながら図3に示すステップS21〜ステップS32からなるループ及び図7に示すステップS41〜ステップS52からなるループを実行しているが、複数の記録パワーPwについてこれらループを実行する限り、記録パワーPwを最高パワーPw(max)から徐々に弱めながらこれらを実行しても構わないし、記録パワーPwをランダムに変更しながらこれらを実行しても構わない。
【0109】
さらに、上記実施態様においては、第1の信号振幅減少率(R1)として、信号振幅のSingleの値とCross1の値との差を信号振幅のSingleの値で規格化した値を用いているが、信号振幅のSingleの値とCross1の値との差に基づく値である限り、例えば、単に信号振幅のSingleの値とCross1の値との差を第1の信号振幅減少率(R1)として用いても構わない。但し、第1の信号振幅減少率(R1)として信号振幅のSingleの値で規格化した値を用いた場合に、最も適切な記録パワーPwの値を得ることが可能となる。同様に、上記実施態様においては、第2の信号振幅減少率(R2)として、信号振幅のCross1の値とCross(x+1)の値との差を信号振幅のCross1の値で規格化した値を用いているが、信号振幅のCross1の値とCross(x+1)の値との差に基づく値である限り、単に信号振幅のCross1の値とCross(x+1)の値との差を第2の信号振幅減少率(R2)として用いても構わない。但し、第2の信号振幅減少率(R2)として信号振幅のCross1の値で規格化した値を用いた場合に、最も適切な記録パワーPwの値を得ることが可能となる。
【0110】
一方、上記実施態様においては、ジッタ劣化度(R3)として単にジッタのCross1の値とCross(x+1)の値との差を用いているが、ジッタのCross1の値とCross(x+1)の値との差に基づく値である限り、これをジッタのCross1やCross(x+1)の値で規格化した値を用いても構わない。すなわち、ジッタ劣化度(R3)の表現方法としては、許容可能なジッタ劣化度(R3)の表現方法に合わせればよい。
【0111】
また、上記実施態様においては、クロスイレーズ回数ごとのジッタを測定することにより所定値xを決定しているが(図7参照)、測定対象とし得る信号特性としてはジッタに限定されず、他の信号特性、例えばエラーレートであっても構わない。
【0112】
尚、本発明において、手段とは、必ずしも物理的手段を意味するものではなく、各手段の機能がソフトウエアによって実現される場合も包含する。さらに、一つの手段の機能が二以上の物理的手段により実現されても、二以上の手段の機能が一つの物理的手段により実現されてもよい。
【0113】
【実施例】
次に、図7のステップS53に示す所定値xの決定方法について、具体例を挙げてより詳しく説明する。
【0114】
[サンプル1]
以下に示す手順により、図9に示す光記録媒体10に防湿層が追加された構成を有する光記録媒体サンプル1を作製した。
【0115】
まず、厚さ:1.1mm、直径:120mmのポリカーボネート基板11をスパッタリング装置にセットし、このポリカーボネート基板11上に、ZnSとSiO2の混合物(ZnSとSiO2のモル比率は80:20)からなる防湿層(層厚100nm)、Agを主成分とする反射層12(層厚:100nm)、CeO2からなる第2の誘電体層13(層厚:12nm)、Sb75Te25からなる記録層14(層厚:12nm)を順次スパッタ法により形成した。
【0116】
次に、記録層14上に、ZnSとSiO2の混合物(ZnSとSiO2のモル比率は50:50)からなる誘電体層(層厚:3nm)、ZnSとSiO2の混合物(ZnSとSiO2のモル比率は80:20)からなる誘電体層(層厚:35nm)、Al2O3からなる誘電体層(層厚:30nm)を順次スパッタ法により形成した。これらは、3層合わせて第1の誘電体層15を構成する。
【0117】
そして、第1の誘電体層15上(Al2O3からなる誘電体層上)に、アクリル系紫外線硬化性樹脂をスピンコート法によりコーティングし、これに紫外線を照射して光透過層16(層厚:100μm)を形成した。
【0118】
このようにして作製した光記録媒体サンプル1に対し、所定値yを「19」に設定して図7に示すステップS41〜ステップS52からなるループを実行した。記録には1,7RLLの変調方式を用い、記録線速度は5.3m/secに設定した。この場合、フォーマット効率を80%とした場合のデータ転送レートは約36Mbpsである。
【0119】
また、用いた記録パワーPwは、2.9mW、3.4mW、4.3mW及び5.3mWの4種類とした。測定の結果を図11に示す。
【0120】
図11に示すように、記録パワーPwを2.9mW、3.4mWまたは4.3mWに設定した場合、ジッタ劣化度(R4)の値は1回のクロスイレーズでほぼ飽和したが、記録パワーPwを5.3mWに設定した場合には、クロスイレーズ回数が20回となってもジッタ劣化度(R4)は飽和せず、また、その値も非常に大きかった(1回のクロスイレーズで6%以上)。つまり、サンプル1では、記録パワーPwとして5.3mWは不適切であることがわかる。
【0121】
したがって、この場合には所定値xを「1」に決定すればよい。
【0122】
[サンプル2]
以下に示す手順により、図9に示す光記録媒体10と同様の構成を有する光記録媒体サンプル2を作製した。
【0123】
まず、厚さ:1.1mm、直径:120mmのポリカーボネート基板11をスパッタリング装置にセットし、このポリカーボネート基板11上に、Agを主成分とする反射層12(層厚:100nm)、Al2O3からなる第2の誘電体層13(層厚:7nm)、Sb75Te25からなる記録層14(層厚:12nm)を順次スパッタ法により形成した。
【0124】
次に、記録層14上に、ZnSとSiO2の混合物(ZnSとSiO2のモル比率は50:50)からなる誘電体層(層厚:5nm)、ZnSとSiO2の混合物(ZnSとSiO2のモル比率は80:20)からなる誘電体層(層厚:110nm)を順次スパッタ法により形成した。これらは、2層合わせて第1の誘電体層15を構成する。
【0125】
そして、第1の誘電体層15上(モル比率が80:20であるZnSとSiO2の混合物からなる誘電体層上)に、アクリル系紫外線硬化性樹脂をスピンコート法によりコーティングし、これに紫外線を照射して光透過層16(層厚:100μm)を形成した。
【0126】
このようにして作製した光記録媒体サンプル2に対し、所定値yを「19」に設定して図7に示すステップS41〜ステップS52からなるループを実行した。記録には1,7RLLの変調方式を用い、記録線速度は5.3m/secに設定した。この場合、上述の通り、フォーマット効率を80%とした場合のデータ転送レートは約36Mbpsである。
【0127】
また、用いた記録パワーPwは、4.0mW、5.0mW及び6.0mWの3種類とした。測定の結果を図12に示す。
【0128】
図12に示すように、記録パワーPwを4.0mWまたは5.0mWに設定した場合、ジッタ劣化度(R4)の値は約5回のクロスイレーズでほぼ飽和したが、記録パワーPwを6.0mWに設定した場合には、クロスイレーズ回数が20回となってもジッタ劣化度(R4)は飽和せず、また、その値も非常に大きかった(1回のクロスイレーズで5%以上)。つまり、サンプル2においては、記録パワーPwとして6.0mWは不適切であることがわかる。
【0129】
したがって、この場合には所定値xを「5」に決定すればよい。
【0130】
[サンプル3]
記録層14の材料としてSb80Te20を用いた以外は、サンプル2と同様の構成を有するサンプル3を作成した。このようなサンプル3に対し、所定値yを「19」に設定して図7に示すステップS41〜ステップS52からなるループを実行した。記録には1,7RLLの変調方式を用い、記録線速度は10.5m/secに設定した。この場合、フォーマット効率を80%とした場合のデータ転送レートは約72Mbpsである。
【0131】
また、用いた記録パワーPwは、4.8mW、5.8mW及び6.8mWの3種類とした。測定の結果を図13に示す。
【0132】
図13に示すように、いずれも記録パワーに設定した場合においても、ジッタ劣化度(R4)の値は約10回のクロスイレーズでほぼ飽和した。
【0133】
したがって、この場合には所定値xを「10」に決定すればよい。
【0134】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、レーザビームの強度をクロスイレーズによる影響が十分に考慮された値に設定することが可能となる。したがって、本発明は、次世代型の光記録媒体のように、クロスイレーズが生じやすい光記録媒体に対する記録を行う場合に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施態様にかかるレーザビーム強度決定方法を示すフローチャートである。
【図2】第1トラック、第2トラック及び第3トラックの位置関係を示す略平面図である。
【図3】ステップS9で用いる臨界値の決定方法を示すフローチャートである。
【図4】テーブルTのデータ構造を示す図である。
【図5】第2の信号振幅減少率(R2)とこれに対応するジッタ劣化度(R3)との関係を示す仮想的なグラフの一例を示す図である。
【図6】第1の信号振幅減少率(R1)とこれに対応する第2の信号振幅減少率(R2)との関係を示す仮想的なグラフの一例を示す図である。
【図7】ステップS28で用いる所定値xの決定方法を示すフローチャートである。
【図8】クロスイレーズ回数とジッタ劣化度(R4)との関係を記録パワーPwごとに示すグラフの一例である。
【図9】レーザビームの強度決定方法の適用対象となる光記録媒体の構造の一例を示す断面図である。
【図10】情報記録装置50の主要部を概略的に示す図である。
【図11】サンプル1におけるクロスイレーズ回数とジッタ劣化度(R4)との関係を示すグラフである。
【図12】サンプル2におけるクロスイレーズ回数とジッタ劣化度(R4)との関係を示すグラフである。
【図13】サンプル3におけるクロスイレーズ回数とジッタ劣化度(R4)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 光記録媒体
11 基板
11a グルーブ
11b ランド
12 反射層
13 第2の誘電体層
14 記録層
15 第1の誘電体層
16 光透過層
17 孔
50 情報記録装置
52 スピンドルモータ
53 ヘッド
54 コントローラ
55 レーザ駆動回路
56 レンズ駆動回路
57 フォーカスサーボ追従回路
58 トラッキングサーボ追従回路
59 レーザコントロール回路
T テーブル
Claims (11)
- 書き換え型の光記録媒体に照射するレーザビームの強度決定方法であって、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を特定するステップと、第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第1の信号特性の変化と前記特定された回数である第2の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第2の信号特性の変化との関係から、前記第2の信号特性の所定の変化量または変化率に対応した、前記第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第1の信号特性の変化量または変化率を臨界値として特定するステップと、前記第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第1の信号特性の変化量または変化率を測定し、得られた値と前記臨界値とを比較するステップとを備えるレーザビーム強度決定方法。
- 前記第1の回数は1回であることを特徴とする請求項1に記載のレーザビーム強度決定方法。
- 前記第1の信号特性が信号振幅であることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザビーム強度決定方法。
- 前記クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を特定するステップは、クロスイレーズの影響によりジッタ若しくはエラーレートが実質的に飽和する回数を特定するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザビーム強度決定方法。
- 前記第2の信号特性がジッタ若しくはエラーレートであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザビーム強度決定方法。
- 書き換え型光記録媒体の隣接する少なくとも2本のトラックにテスト信号を記録する第1のステップと、前記2本のトラックに記録されたテスト信号を再生する第2のステップと、少なくとも、一方のトラックより得られた再生信号の第1の信号特性に関する検出値と他方のトラックより得られた再生信号の前記第1の信号特性に関する検出値に基づき、これらの差に関する値を生成する第3のステップと、前記差に関する値と臨界値とを比較する第4のステップとを備え、前記臨界値が、1回のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第1の信号特性の変化と所定回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第2の信号特性の変化との関係から、複数回のクロスイレーズによる影響を受ける前後において許容し得る前記第2の信号特性の変化量または変化率に基づいて定められたものであり、さらに、前記所定回数が、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数であることを特徴とするレーザビーム強度決定方法。
- 前記第1の信号特性が信号振幅であり、前記第2の信号特性がジッタ若しくはエラーレートであることを特徴とする請求項6に記載のレーザビーム強度決定方法。
- 書き換え型の光記録媒体に照射するレーザビームの強度決定方法であって、クロスイレーズによる影響を受けた回数と所定の信号特性との関係を特定する第1のステップと、前記関係をもとに、クロスイレーズによる前記所定の信号特性の変化が実質的に飽和する回数を特定する第2のステップと、前記飽和する回数を示す情報を光記録媒体に記録する第3のステップとを備えるレーザビーム強度決定方法。
- 書き換え型の光記録媒体に照射するレーザビームの強度決定に用いられる臨界値の生成方法であって、クロスイレーズによる影響が実質的に飽和する回数を特定する第1のステップと、第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第1の信号特性の変化を測定する第2のステップと、前記特定された回数である第2の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における第2の信号特性の変化を測定する第3のステップと、前記第2及び第3のステップによる測定の結果に基づき、前記第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第1の信号特性の変化と前記第2の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第2の信号特性の変化との関係を特定する第4のステップと、前記第2の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後において許容し得る前記第2の信号特性の変化量または変化率に対応する、前記第1の回数のクロスイレーズによる影響を受ける前後における前記第1の信号特性の変化量または変化率を前記臨界値として特定する第5のステップとを備える臨界値の生成方法。
- コンピュータ制御により、クロスイレーズによる影響を受けた回数と所定の信号特性との関係を特定する第1のステップと、前記関係をもとに、クロスイレーズによる前記所定の信号特性の変化が実質的に飽和する回数を特定する第2のステップと、前記飽和する回数を示す情報を光記録媒体に記録する第3のステップとを実行させるためのオーバーライト回数決定プログラム。
- 書き換え型の光記録媒体であって、クロスイレーズによる所定の信号特性の変化が実質的に飽和する回数を示す情報が格納されていることを特徴とする光記録媒体。
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