JP2004030455A - 日射遮蔽評価システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】建築物内へ入射する日射の遮蔽効果を評価する日射遮蔽評価システムであって、気象に関する情報が地域毎に予め記憶された気象データベースと、前記建築物の開口部に取り付けられる部材の特性が記憶された開口部材データベースと、前記建築物が建築される地域を特定するための地域条件を入力する地域条件入力手段と、前記建築物の開口部と前記建築物に備えられる部材を特定するための建物条件を入力する建物条件入力手段と、前記地域条件に基づく気象データと、前記開口部取り付けられる部材のデータに基づいて、前記開口部から室内に入射する日射入射量を計算して出力する計算手段とを備える。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物内へ入射する日射を遮蔽するための遮蔽物の効果を評価する日射遮蔽評価システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
夏季における建築物の開口部から内部へ入射する日射遮蔽を目的として庇やブラインドなどの日除けを取り付けることが知られている。これらの日除けは一般的に、建築物の使用者の好みによって選定されることが多いため、意匠や色などによって選定されることが多く、日除け本来の目的である日射遮蔽という機能面での選定がされることは少ないのが現状である。
一方、住宅の省エネルギー化を目的として、財団法人住宅・建築省エネルギー機構が「住宅の次世代省エネルギー基準と指針」を規定している。この基準には、開口部の方位、日除けの種類、庇の寸法に基づいて算出する開口部の日射侵入率の基準が規定されている。次世代省エネルギー基準に適合する住宅を設計・建設するためには、日射侵入率の算出することが必須である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、規定されている基準に基づいて開口部の日射侵入率を算出するには煩雑な計算を行わなければならず、建築設計者にとっては作業負荷が大きくなるという問題がある。また、日射侵入率は、建築物の使用者にはとってはなじみのない数値であるために、直感的に日射の遮蔽効果を把握することができないという問題もある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、建築物内へ入射する日射を遮蔽するための日除け等の効果を容易に評価することが可能な日射遮蔽評価システムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、建築物内へ入射する日射の遮蔽効果を評価する日射遮蔽評価システムであって、気象に関する情報が地域毎に予め記憶された気象データベースと、前記建築物の開口部に取り付けられる部材の特性が記憶された開口部材データベースと、前記建築物が建築される地域を特定するための地域条件を入力する地域条件入力手段と、前記建築物の開口部と前記建築物に備えられる部材を特定するための建物条件を入力する建物条件入力手段と、前記地域条件に基づく気象データと、前記開口部取り付けられる部材のデータに基づいて、前記開口部から室内に入射する日射入射量を計算して出力する計算手段とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、建物の設計段階において、開口部に取り付けられる日除け等の日射遮蔽効果を容易に評価することが可能になるという効果が得られる。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記日射入射量に基づいて、月ごとに必要な冷暖房費を求めるとともに、前記開口部取り付けられる部材の費用を求めて出力する評価判定手段をさらに備えたことを特徴とする。
この構成によれば、日射遮蔽効果を建設コストと空調コストによって比較評価するようにしたため、日射の遮蔽効果を直感的に把握することができるという効果が得られる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記開口部に取り付けられる部材の制約条件を入力する制約条件入力手段と、前記制約条件に基づいて、前記部材の最適化を行う最適化処理手段とをさらに備えたことを特徴とする。
この構成によれば、逐次線形計画法等の最適化処理を行うことによって、遮蔽効果を高くするための日除け等を逆解析により求めるようにしたため、設計業務の負荷を大幅に軽減することができるという効果が得られる。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記建築物が建設される周辺の環境条件を入力する環境条件入力手段をさらに備え、前記計算手段は、前記環境条件に基づいて前記日射入射量を補正することを特徴とする。
この構成によれば、建築物が建設される周辺環境の影響を考慮して日射遮蔽評価を行うことができるという効果が得られる。
【0009】
請求項5に記載の発明は、前記評価判定手段からの出力を建築CADシステムへ受け渡すとともに、該建築CADシステムから建物条件に関する情報を前記建物条件入力手段へ受け渡すCADシステムインタフェースをさらに備えたことを特徴とする。
この構成によれば、CADシステムのデータを流用することができるため、日射遮蔽効果を評価するための入力データを新たに作成する必要が無くなり業務の負荷を低減できるという効果が得られる。
【0010】
請求項6に記載の発明は、前記日射入射量は、前記開口部における日射熱取得率に対して日射量を乗算することにより算出することを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、前記計算手段が、求めた前記日射入射量に対して採光補正係数を乗算することにより前記日射入射量を補正することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態による日射遮蔽評価システムを図面を参照して説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号1は、日射遮蔽の評価を行うための初期入力を行う入力部であり、キーボードやマウスで構成される。符号11は、地域を特定するための各都市の緯度・経度情報および空調装置使用期間が予め記憶された地域データベースである。符号12は、地表面の材質毎に太陽光の反射率が定義された地表面データベースである。符号21は、建築物が建設される地域を特定するための条件を入力部1より読み込んで記憶する地域条件記憶部である。符号22は、建築物を特定するための条件を入力部1より読み込んで記憶する建物条件記憶部である。符号23は、建築物が置かれている環境を特定するための条件を入力部1より読み込んで記憶する環境条件記憶部である。符号24は、評価を行うための計算時の制約条件を入力部1より読み込んで記憶する制約条件記憶部である。符号3は、逐次線形計画法等を用いて最適化問題を解くための入力条件設定を行う最適化処理部である。符号4は、日射遮蔽効果を評価するために必要な計算を行う計算部である。符号5は、計算部4における計算結果に基づいて、日射遮蔽効果の評価を行う評価判定部である。符号6は、計算部4における計算結果と評価判定部5における表結果を出力する出力部である。
【0013】
符号71は、地域毎の気象に関するデータが予め記憶された気象データベースである。符号72は、建築物の開口部に取り付けることが可能なガラスのデータが予め記憶されたガラスデータベースである。符号73は、建築物の開口部に取り付けることが可能な日除けのデータが予め記憶された日除けデータベースである。符号74は、開口部に取り付けられる庇の影響を計算するために必要な係数が予め記憶された庇データベースである。符号75は、建築基準法に基づく採光補正係数が定義された採光補正係数データベースである。符号81は、計算部4における計算によって得られた結果に基づいて空調装置のランニングコストを計算するための空調に関するデータが予め記憶された空調負荷データベースである。符号9は、建築物を設計するために用いられる既存の3次元建築CADシステム(以下、単にCADシステムと称する)である。符号10は、CADシステム9との間でデータの授受を行うCADシステムインタフェースである。
【0014】
次に、図2を参照して、図1に示す地域データベース11のテーブル構造を説明する。図2は、図1に示す地域データベース11のテーブル構造を示す説明図である。この図に示すように、地域データベース11は日本の主要都市毎に、緯度・経度データ、冷房使用期間、暖房使用期間が予め定義されて記憶されている。ここでいう冷房使用期間とは、日平均外気温度が所定値(例えば、15℃)以上になる期間のことである。また、暖房使用期間とは、日平均外気温度が所定値(例えば、10℃)以下になる期間のことである。
【0015】
次に、図3を参照して、図1に示す地域条件記憶部21のテーブル構造を説明する。図2は、図1に示す地域条件記憶部21のテーブル構造を示す説明図である。この図に示すように、地域条件記憶部21は、地域データベース11に記憶されている都市の中から選択した場合のデータ、または任意の値を入力された場合の入力データを記憶するテーブルであり、都市名、緯度・経度、冷房使用期間、暖房使用期間のフィールドから構成される。
【0016】
次に、図4を参照して、図1に示す建物条件記憶部22のテーブル構造を説明する。図4は、図1に示す建物条件記憶部22のテーブル構造を示す説明図である。この図に示すように、建物条件記憶部22は、窓等の開口部毎に、開口部を一意に特定するための開口部番号、開口部の寸法、開口部の配置位置、開口部の方位、開口部に取り付けられる庇の寸法、開口部に取り付けられる日除けの種類、開口部に取り付けられるガラスの種類が、入力部1から入力されて記憶される。
【0017】
次に、図5を参照して、図1に示す地表面データベース12のテーブル構造を説明する。図5は、図1に示す地表面データベース12のテーブル構造を示す説明図である。この図に示すように、地表面データベース12は、地表面の種類毎に太陽光の反射率が定義されている。この地表面の反射率は、太陽光が地表面で反射し、建物への影響を求めるときに用いられる。
【0018】
次に、図6を参照して、図1に示す採光補正係数データベース75のテーブル構造を説明する。図6は、図1に示す採光補正係数データベース75のテーブル構造を示す説明図である。この図に示すように採光補正係数データベース75は、建築基準法に基づく採光補正係数が地域・地区ごとに定義されている。採光補正係数は、算定式と算定式の例外とによって定義されている。算定式の変数Dは、開口部の真上にある建築物の部分と、隣地境界線または同一敷地内の他の建築物もしくは当該建築物の他の部分までの水平距離である。また、変数Hは、開口部の真上にある建築物の部分から開口部の中心までの垂直距離である。
【0019】
次に、図7を参照して、図1に示す環境条件記憶部23のテーブル構造を説明する。図7は、図1に示す環境条件記憶部23のテーブル構造を示す説明図である。この図に示すように、環境条件記憶部23は、地表面データベース12に記憶されているデータの中から選択した地表面の反射率、採光補正係数を特定するために選択された建築基準法で定める地域および建物条件記憶部22に記憶されている開口部番号を持つ開口部毎に前述の変数D、Hをそれぞれ記憶するフィールドから構成される。
【0020】
次に、図8を参照して、図1に示す制約条件記憶部24のテーブル構造を説明する。図8は、図1に示す最適化条件記憶部24のテーブル構造を示す説明図である。この図に示すように、最適化条件記憶部24は、最適化条件と入力値のフィールドから構成される。ここでいう最適化条件とは、最適化を図る場合にこの条件を満たすように最適化を図るためのもので、作業者が決定して入力する内容のものである。
【0021】
次に、図9を参照して、図1に示す気象データベース71のテーブル構造を説明する。図9は、図1に示す気象データベース71のテーブル構造を示す説明図である。この図に示すように、気象データベース71は、緯度・経度毎に各月の大気透過率が予め定義されている。ここで記憶される大気透過率は、少なくとも地域データベース11に記憶されている都市の緯度・経度の大気透過率が記憶される。
【0022】
次に、図10を参照して、図1に示すガラスデータベース72のテーブル構造を説明する。図10は、図1に示すガラスデータベース72のテーブル構造を示す説明図である。この図に示すように、ガラスデータベース72は、ガラスの種類毎に太陽光の透過率、吸収率、反射率、及び単位面積当たりの価格が定義されている。単位面積当たりの価格には、取り付けに必要な費用も含まれる。
【0023】
次に、図11を参照して、図1に示す日除けデータベース73のテーブル構造を説明する。図11は、図1に示す日除けデータベース73のテーブル構造を示す説明図である。この図に示すように、日除けデータベース73は、各日除けの種類毎に太陽光の透過率、吸収率、反射率、及び単位面積当たりの価格が定義されている。単位面積当たりの価格には、取り付けに必要な費用も含まれる。また、日除けがなしの場合は、透過率は「1」に定義されている。
【0024】
次に、図12を参照して、図1に示す日射遮蔽評価システムの動作を説明する。日射遮蔽評価システムを起動すると、入力部1は、図示しないディスプレイに、対象となる建築物を建設する地域条件を特定するように指示するメッセージを表示する。地域条件の特定方法には、2つの方法がある。一方は、緯度・経度データと冷暖房を使用する期間を任意に入力する方法であり、もう一方は、予め登録されている都市名の中から選択する方法である。作業者は、この2つの方法のいずれかを選択する。そして、任意の値を入力する方法が選択された場合、入力部1は、緯度、経度、冷房使用期間、暖房使用期間の入力指示をディスプレイに表示する。これを受けて、作業者は、緯度、経度、冷房使用期間、暖房使用期間をキーボードから入力する。一方、予め登録されている都市名の中から選択する方法が選択された場合、入力部1は、地域データベース11より地域データを読み出し、ディスプレイに表示する。ここで表示されるのは図2に示す内容である。そして、作業者は、この中から適当な都市名を任意に選択する。続いて、入力部1は、任意に入力された内容、または選択された都市名に基づいて、都市名、緯度・経度、冷房使用期間、暖房使用期間を地域条件記憶部21へ記憶する(ステップS1)。
【0025】
次に、入力部1はディスプレイに、建設する建物の条件を特定するように指示するメッセージを表示する。建物条件の特定方法には、2つの方法がある。一方は、開口部の条件の値を任意に入力または選択する方法であり、もう一方は、CADシステムインタフェース10を介してCADシステム9からCADデータを入力して流用する方法である。作業者は、この2つの方法のいずれかを選択する。ここで入力しなければならない条件は、開口部の寸法、配置位置、方位、庇の寸法、日除けの種類、ガラスの種類である。これらの条件が全てCADシステム9において定義済みである場合は、CADシステムインタフェース10を介してCADシステム9からCADデータを入力することによって条件を特定する。また、一部の条件のみがCADシステム9において定義されている場合は、定義されている条件のみをCADシステムインタフェース10を介して入力し、定義されていない条件は、作業者が入力部1より入力する。このとき、入力部1は、日除け種類とガラス種類は、ガラスデータベース72及び日除けデータベース73から選択候補を読み出し、読み出した選択候補をディスプレイ上に表示し、この表示された選択候補の中から、作業者に選択させることにより条件の入力を行う。
【0026】
建物条件は、対象となる建築物に設けられる全ての開口部について入力する必要がある。ただし、庇の寸法、日除け種類、ガラス種類の入力は、必須ではなく、後述する最適化処理によって決定するようにしてもよい。最適化処理によって条件を決定させる場合には、これらの条件に対して、制約条件を入力するようにする。制約条件には、「制約なし」と「制約範囲」のいずれかを設定する。制約なしとは、全く制約を設けずに最適化処理によって、庇の寸法の決定や日除け、ガラスの選定を行うことである。一方、制約範囲とは、値の範囲を設定し、この範囲内で最適化処理を行わせることである。例えば、庇の張り出す部分の寸法を、「0〜200mm」と設定したり、ガラスの種類を、「××ガラスと○○ガラスのいずれか」と設定したり、日除けの種類を、「レースカーテンと内付けブラインドのいずれか」と設定する。続いて、入力部1は、ここで入力された開口部の寸法、配置位置、方位、庇の寸法、日除けの種類、ガラスの種類を建物条件記憶部22へ記憶する(ステップS2)。
【0027】
次に、入力部1はディスプレイに、建物の環境条件を特定するように指示するメッセージを表示する。ここで入力部1は、地表面データベース12に記憶されている地表面の種類を読み出し、ディスプレイに表示して、選択するように指示を出す。これを受けて、作業者は、対象となる建築物周辺の地表面を表示された選択候補の中から選択する。入力部1は、選択された地表面に対応する反射率を地表面データベース12より読み出して、環境条件記憶部23へ記憶する。続いて、入力部1は、採光補正係数データベース75に記憶されている地域・地区を読み出し、ディスプレイに表示して、選択するように指示を出す。これを受けて作業者は、対象となる建築物が建築される地域・地区を選択する。入力部1は、選択された地域・地区を環境条件記憶部23へ記憶する。続いて、入力部1は、先に建物条件記憶部22に記憶した開口部に関する条件に付与した開口部番号と開口部に関する条件を読み出して、この開口部に関して、前述した変数D(水平距離)と変数H(垂直距離)を入力するように指示を出す。これを受けて、作業者は、各開口部毎に変数Dと変数Hを入力する。入力部1は、ここで入力された変数D、Hを開口部番号と関連付けて環境条件記憶部23へ記憶する(ステップS3)。
【0028】
次に、入力部1はディスプレイに、最適化条件を特定するように指示をするメッセージを表示する。ただし、このメッセージは、建物条件中に制約範囲が設定されている場合のみである。最適化条件には、建設コストと空調コストがあり、それぞれ「最小」と「指定なし」のいずれかが選択可能である。ただし、建設コストと空調コストのいずれかまたは両方に「最小」を選択する必要がある。ここでいうコスト最小とは、前述した制約条件を満たす範囲で値を決定する際に、選択したコストが最小になるように各条件値を決定することである。例えば、建設コストが最小と設定された場合は、高価なガラスや日除けを選択せずに指定された制約条件を満たし、かつ建設コストが最小になるように、庇の寸法、日除け及びガラスの選定が行われる。また、空調コストが最小と設定された場合は、冷房や暖房に必要な費用を最小にするように庇の寸法、日除け及びガラスの選定が行われる。すなわち、夏季は日射がなるべく入射しないようにして、一方冬季は日射がなるべく入射するように庇の寸法、日除け及びガラスの選定が行われる。さらに、建設コスト及び空調コストの両方を最小に設定された場合は、建設コストが最小になるようようにするとともに、空調コストも最小になるように庇の寸法、日除け及びガラスの選定が行われる。
続いて、入力部1は、ここで入力された最適化条件を最適化条件記憶部24へ記憶する(ステップS4)。
【0029】
次に、最適化処理部3は、各条件の記憶が終了した時点で、各条件は全て固定値が入力されたか否かを判定する(ステップS5)。ここでは、入力された建物条件の各条件値の中に固定値でない「制約なし」や「制約範囲」の値が存在するか否かによって判定を行う。この判定の結果、全ての条件値が固定値であった場合、最適化処理部3は、地域条件記憶部21、建物条件記憶部22、環境条件記憶部23、最適化条件記憶部24に記憶している各条件値を全て読み出して、計算部4へ渡す。これを受けて計算部4は、最適化処理部3より渡された各条件値と、気象データベース71、ガラスデータベース72、日除けデータベース73に記憶されている値に基づいて、日射熱取得率及び毎月の室内入射日射量を計算する(ステップS6)。日射熱取得率及び毎月の室内入射日射量の計算は、(1)〜(18)式を使用して計算する。
【0030】
まず、計算部4は、開口部に庇がない場合の日射熱取得率η0を、(1)〜(3)式によって求める。以下の計算は、開口部それぞれについて開口部番号順に計算する。
【数1】
ここで、τe:総合日射透過率
ae1:ガラスの総合日射吸収率
ae2:ガラスの総合日射吸収率
R0:外表面総合熱伝達抵抗
Ri:内表面総合熱伝達抵抗
R1 、 2:ガラス、日除け間の熱伝達抵抗
であり、外表面総合熱伝達抵抗、内表面総合熱伝達抵抗、ガラス、日除け間の熱伝達抵抗の値はガラスデータベース72、日除けデータベース73より読み出した値である。また、τe、αe1、αe2、は、それぞれ(4)、(5)、(6)式により求める。
【0031】
【数2】
ここで、τg:ガラスの日射透過率
τb:日除けの日射透過率
αg:ガラスの日射吸収率
αb:日除けの日射吸収率
ρg:ガラスの日射反射率
ρb:日除けの日射反射率
であり、これらの値はガラスデータベース72、日除けデータベース73より読み出した値である。
【0032】
次に、計算部4は、開口部に庇を取り付けた場合の日射熱取得率η0の補正値である日射熱取得率ηを(7)〜(8)式によって求める。
【数3】
【数4】
ここで、f1、f2は、それぞれ(10)、(11)式によって求められるl1、l2、建築物が建設される地域、開口部の方位に基づいて庇データベース74から読み出した係数である。庇データベース74は、図13に示すように、(10)、(11)式によって求められるl1、l2と、各地域1〜6毎に開口部の方位毎に係数f1、f2の値が定義されている。庇データベース74における地域1〜6は、日本列島を6つの地域に分けたものであり、地域条件記憶部21に記憶されている地域条件に基づいて該当する地域を特定し、対象の係数を読み出して計算に用いる。また、y1、y2、zは、図14に示す庇の寸法である。
【0033】
次に、計算部4は、環境条件記憶部23に記憶されている建築基準法で定める地域と開口部毎の変数D、Hに基づいて、先に求めた日射熱取得率ηを補正する。日射熱取得率ηの補正値は、日射熱取得率ηに対して採光補正係数を乗算することによって求める。採光補正係数は、変数D、Hに基づき、採光補正係数データベース75に記憶されている算定式を用いて計算する。このとき、対象建築物が算定式の例外に該当する場合は、採光補正係数データベース75に記憶されている算定式の例外に基づいて採光補正係数を決定する。
この補正によって、建築物の周辺状況による日陰等の影響を考慮した日射熱取得率を得ることができる。
【0034】
次に、計算部4は、室内入射日射量JTVを、(11)〜(14)式によって求める。
【数5】
ここで、η:日射熱取得率
JDV:鉛直面直達日射量[W/m2]
JSV:鉛直面天空日射量[W/m2]
JN:法線面直達日射量[W/m2]
JSH:水平面天空日射量[W/m2]
JRV:地表面反射日射量[W/m2]
h:太陽高度[°]
α:太陽方位角[°]
ρ:地表面反射率
であり、地表面反射率ρは、環境条件記憶部23に記憶されている値である。
【0035】
また、JN、JSHは(15)、(16)式により求める。
【数6】
ここで、JO:太陽定数(=1353W/m2)
P:大気透過率
であり、大気透過率Pは、気象データベース71に記憶されている各月の値を用いる。
【0036】
また、h、αは、(17)、(18)式より求める
【数7】
ここで、φ:緯度
δ:日赤緯
τ:時角
であり、日赤緯δ、時角τは各計算時刻から算出することができる値である。
【0037】
前述した(11)式によって求められる室内入射日射量JTVは、ある日時の値であるので、日付を1月1日から12月31日まで変化させるともに、各日付において時刻を0時から24時まで変化させるのに伴い変化する太陽高度h、太陽方位角α、大気透過率Pを変化させて繰り返し計算を行うことにより、毎月の室内入射日量を求める。これにより、室内に入射する日射量の変化を得ることができる。
【0038】
次に、計算部4は、計算して得られた日射熱取得率及び毎月の室内入射日射量を評価判定部5へ渡す。これを受けて評価判定部5は、コスト計算を行う(ステップS7)。ここで計算するコストは、建設コストと空調コストである。建設コストは、選定したガラスと日除けのコストをガラスデータベース72及び日除けデータベース73にそれぞれ記憶されている単位面積当たりの価格に基づいて計算する。また、空調コストは、毎月の室内入射日射量と空調負荷データベース81に記憶されている空調負荷データを参照して、月ごとに必要とする冷暖房能力を計算する。
【0039】
次に、計算部4と評価判定部5は、計算した日射熱取得率、毎月の室内入射日射量、建設コスト及び空調コストをそれぞれ出力部6に対して出力する。これによって計算結果がディスプレイ表示またはプリンタ印刷される(ステップS8)。このように、固定値を入力した場合は、日射熱取得率、毎月の室内入射日射量、建設コスト及び空調コストを出力することが可能なため、入力値である条件値を変更して再度計算を行えば、条件を変えた状態の日射遮蔽効果の相対比較によって効果を評価することが可能となる。
【0040】
次に、ステップS5における判定の結果、各条件値が全て固定値でない場合、最適化処理部3は、地域条件記憶部21、建物条件記憶部22、環境条件記憶部23、最適化条件記憶部24に記憶している各条件値を全て読み出して、固定値でない条件の値を仮決めする(ステップS9)。この仮決めは、例えば、制約範囲内の中間値としたり、最小値とすればよい。そして、最適化処理部3は、仮決めした値と記憶部より読み出した値を計算部4へ渡す。これを受けて計算部4は、最適化処理部3より渡された各条件値と、気象データベース71、ガラスデータベース72、日除けデータベース73に記憶されている値に基づいて、日射熱取得率及び毎月の室内入射日射量を計算する(ステップS10)。日射熱取得率及び毎月の室内入射日射量の計算は、(1)〜(18)式を使用して計算する。
【0041】
次に、計算部4は、計算して得られた日射熱取得率及び毎月の室内入射日射量を評価判定部5へ渡す。これを受けて評価判定部5は、コスト計算を行う。ここで計算するコストは、前述した建設コストと空調コストである。続いて、評価判定部5は、計算した建設コストと空調コストを最適化処理部3へ渡し、最適化条件を満たしたか否かを評価する(ステップS11)。これを受けて、最適化処理部3は、逐次線形計画法に基づき最適値が得られた否かを判定し(ステップS12)、最適値が得られなければ、逐次線形計画法に基づいて仮決めした値を変更する(ステップS13)。そして、ステップS10、S11の処理を最適値が得られるまで繰り返す。
なお、ここでは最適化処理として逐次線形計画法を用いたが、最適化問題をとくことができる他の方法を用いてもよい。
【0042】
次に、繰り返し処理によって最適値が得られれば、計算部4と評価判定部5は、計算した日射熱取得率、毎月の室内入射日射量、建設コスト及び空調コスト及び最適化処理によって得られた条件値(庇の寸法、選定したガラス種類、設定した日除け種類)をそれぞれ出力部6に対して出力する。これによって計算結果がディスプレイ表示またはプリンタ印刷される(ステップS14)。また、最適化処理によって求めた庇の寸法、選定したガラス種類、設定した日除け種類は、CADシステムインタフェース10を介して、CADシステム9へ出力する。これによって、最適化処理によって求めた条件値をCADデータに反映することが可能となる。
【0043】
このように、建物の設計段階において、開口部に取り付けられる日除け等の日射遮蔽効果を容易に評価することが可能になるとともに、逐次線形計画法等の最適化処理を行うことによって、遮蔽効果を高くするための日除け等を逆解析により求めるようにしたため、設計業務の負荷を大幅に軽減することができる。
【0044】
なお、図1における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより日射遮蔽評価処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0045】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、建物の設計段階において、開口部に取り付けられる日除け等の日射遮蔽効果を容易に評価することが可能になるとともに、逐次線形計画法等の最適化処理を行うことによって、遮蔽効果を高くするための日除け等を逆解析により求めるようにしたため、設計業務の負荷を大幅に軽減することができるという効果が得られる。
【0047】
また、この発明によれば、日射遮蔽効果を建設コストと空調コストによって比較評価するようにしたため、日射の遮蔽効果を直感的に把握することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す地域データベース11のテーブル構造を示す説明図である。
【図3】図1に示す地域条件記憶部21のテーブル構造を示す説明図である。
【図4】図1に示す建物条件記憶部22のテーブル構造を示す説明図である。
【図5】図1に示す地表面データベース12のテーブル構造を示す説明図である。
【図6】図1に示す採光補正係数データベース75のテーブル構造を示す説明図である。
【図7】図1に示す環境条件記憶部23のテーブル構造を示す説明図である。
【図8】図1に示す最適化条件記憶部24のテーブル構造を示す説明図である。
【図9】図1に示す気象データベース71のテーブル構造を示す説明図である。
【図10】図1に示すガラスデータベース72のテーブル構造を示す説明図である。
【図11】図1に示す日除けデータベース73のテーブル構造を示す説明図である。
【図12】図1に示す日射遮蔽評価システムの動作を示すフローチャートである。
【図13】図1に示す庇データベース74のテーブル構造を示す説明図である。
【図14】庇の形状を示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・入力部、 11・・・地域データベース、
12・・・地表面データベース、 21・・・地域条件記憶部、
22・・建物条件記憶部、 23・・・環境条件記憶部、
24・・・最適化条件記憶部、 3・・・最適化処理部、
4・・・計算部、 5・・・評価判定部、
6・・・出力部、 71・・・気象データベース、
72・・・ガラスデータベース、 73・・・日除けデータベース、
74・・・庇データベース、 75・・・採光補正係数データベース、
81・・・空調負荷データベース、 9・・・3次元建築CADシステム、
10・・・CADシステムインタフェース
Claims (7)
- 建築物内へ入射する日射の遮蔽効果を評価する日射遮蔽評価システムであって、
気象に関する情報が地域毎に予め記憶された気象データベースと、
前記建築物の開口部に取り付けられる部材の特性が記憶された開口部材データベースと、
前記建築物が建築される地域を特定するための地域条件を入力する地域条件入力手段と、
前記建築物の開口部と前記建築物に備えられる部材を特定するための建物条件を入力する建物条件入力手段と、
前記地域条件に基づく気象データと、前記開口部取り付けられる部材のデータに基づいて、前記開口部から室内に入射する日射入射量を計算して出力する計算手段と
を備えたことを特徴とする日射遮蔽評価システム。 - 前記日射入射量に基づいて、月ごとに必要な冷暖房費を求めるとともに、前記開口部取り付けられる部材の費用を求めて出力する評価判定手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の日射遮蔽評価システム。
- 前記開口部に取り付けられる部材の制約条件を入力する制約条件入力手段と、
前記制約条件に基づいて、前記部材の最適化を行う最適化処理手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の日射遮蔽評価システム。 - 前記建築物が建設される周辺の環境条件を入力する環境条件入力手段をさらに備え、
前記計算手段は、前記環境条件に基づいて前記日射入射量を補正することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の日射遮蔽評価システム。 - 前記評価判定手段からの出力を建築CADシステムへ受け渡すとともに、該建築CADシステムから建物条件に関する情報を前記建物条件入力手段へ受け渡すCADシステムインタフェースをさらに備えたことを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の日射遮蔽評価システム。
- 前記日射入射量は、前記開口部における日射熱取得率に対して日射量を乗算することにより算出することを特徴とする請求項1に記載の日射遮蔽評価システム。
- 前記計算手段は、求めた前記日射入射量に対して採光補正係数を乗算することにより前記日射入射量を補正することを特徴とする請求項4に記載の日射遮蔽評価システム。
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