JP2004029520A - 光学多層膜フィルタ - Google Patents

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Abstract

【課題】光通信に適応できるバンドパス特性を得ることができる光学多層膜フィルタを提供する。
【解決手段】第1の光学媒質層と第2の光学媒質層とを交互に積層した複数の積層体を、キャビティ層を介して接続したキャビティ構造を有し、設計波長λにおける特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が1であるキャビティ構造体と、このキャビティ構造体上に積層され、第1の光学媒質層と第2の光学媒質層のうち少なくとも1層からなる付加層とを有し、第1の光学媒質の屈折率をn、第2の光学媒質の屈折率をnとした場合に、キャビティ構造体と付加層とからなる光学多層膜フィルタの特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が0、第1行第2列がi・(1/n)、第2行第1列がi・(n)、第2行第2列が0であることを特徴とする。
【選択図】    図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信装置や光学デバイス等に使用される光学多層膜フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
光学多層膜フィルタは、光学的な屈折率の異なる光学媒質膜、例えば誘電体膜を交互に積み重ねて形成され、境界面での反射光の干渉を利用して所定の光学特性を得るものである。現在、単層膜では得られない所望の光学特性を得るために、眼鏡などのガラス上およびプラスチック上への無反射コーティング、ビデオカメラの色分解プリズム、バンドパスフィルタなどの各種光学フィルタ、発光レーザの端面コーティング等に使用されている。
また、最近の状況として広帯域光波長多重(高密度波長分割多重(Dense Wavelength Division Multiplexing :DWDM)通信に用いる合波フィルタや分波フィルタ、さらに、短距離間に用いられるイーサネット(登録商標)通信において10Gbps級の広光波長多重(Wide Wavelength Division Multiplexing :WWDM)通信(IEEE802.3規格)に応用される。
【0003】
光学フィルタの設計について、図20から図23を参照して説明する。
図20に示すように、屈折率nの基板1上に、屈折率nの透明な光学媒質膜12を膜厚dで形成した単層膜フィルタにおいて、光学媒質膜12に光が入射した場合の特性マトリックス(M)は、式(1)のように定義される。但し、入射光の波長をλ、入射角は入射面の法線に対しθ、β=2π・n・d・cos(θ)/λと定義する。また、iは虚数単位を示し、m11、m12、m21、m22は、特性マトリックス(M)の行列成分であり、m11=m22=cos(β)、m12=i・1/ξ・sin(β)、m21=i・ξ・sin(β)である。
【0004】
【数1】
Figure 2004029520
【0005】
式(1)において、ξはS偏光の場合はξ=−n・cos(θ)となり、P偏光の場合は、ξ=n/cos(θ)となるが、簡単のために、今後は、S偏光の場合を考える。入射角θが0度の場合には、cos(θ)=1となるため、β=2π・n・d/λ、ξ=−nとなる。また、入射角θ=0で、かつ、光学膜厚がn・d=λ/4の場合には、β=π/2でなので、cos(β)=0、sin(β)=1となる。したがって、m11=m22=0、m12=−1/n、m21=−nとなる。さらに、入射角θ=0で、かつ、光学膜厚がn・d=λ/2の場合には、β=πであるので、cos(β)=−1、sin(β)=0となる。したがって、m11=m22=−1、m12=m21=0となる。
また、式(1)の特性マトリックス(M)から、反射率係数|r|および透過率係数tは、入射角θが0度の場合に、式(2)、式(3)となる。但し、基板の屈折率をnとし、空気の屈折率は、n=1とした。
【0006】
【数2】
Figure 2004029520
【0007】
したがって、式(2)から反射率Rは式(4)、さらに式(3)から透過率Tは式(5)となる。
【0008】
【数3】
Figure 2004029520
【0009】
式(2)から式(5)より、光学膜厚がn・d=λ/4および光学膜厚がn・d=λ/2の場合には、高い反射率、高い透過率が得られることがわかる。
【0010】
次に、図21に示すような光学多層膜の場合を考察する。図21に示すように、屈折率nの基板1上に、屈折率nの光学媒質膜17を膜厚dで形成し、その上に屈折率nk−1の光学媒質膜16を膜厚dk−1で形成し、順次同様の形成手順を繰り返し、最上層として屈折率nの光学媒質膜13を膜厚dで形成し、全体でk層の光学媒質膜を有する光学多層膜フィルタを作製する。全体の特性マトリックス(M)は、各光学媒質の特性マトリックスをM、M、M、M、...、Mk−2、Mk−1、M、Mとした場合に、式(6)となる。但し、全体特性マトリックス(M)の行列成分をmm11、mm12、mm21、mm22とした。
【0011】
【数4】
Figure 2004029520
【0012】
上記したように、特性マトリックス(M)により、式(4)や式(5)と同様に反射率Rと透過率Tを求めることが可能である。式(6)において、入射光の波長λを設計波長(または中心波長)λに固定して光学膜厚を選択することで、光学フィルタとしての設計が可能となるため、所望のバンドパスフィルタを得ることができる。
【0013】
次に、光波長多重(波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing :WDM))通信に用いる合波フィルタや分波フィルタの要求仕様について、図22の透過特性を参照して説明する。
バンドパス特性を評価する基準として、一般的に−0.5dBでのフィルタ透過幅(または透過帯幅)W(F)と、−25dBでのクロストーク透過幅(または−25dB透過波長幅)W(C)と、挿入損失とリップル強度(または透過帯域リップル)が用いられる。
【0014】
フィルタ透過幅W(F)は、光信号が透過するバンドパス信号の幅を示しており、狭いほど規定されたバンド帯域の中で多くの信号を通すことが可能となる。また、クロストーク幅W(C)は、混信することなしにバンドパス信号をどれだけ近接させることができるかを示しており、細いほど混信せずにバンドパス信号を並べることができる。つまり、フィルタ透過幅W(F)とクロストーク幅W(C)がともに狭くなることで、規定されたバンド帯域の中で通信に使用できるバンドパス信号が増えることになる。
また、挿入損失とは、バンドパス信号の最大値の値と理想的な透過率100%の強度差を示している。
さらに、リップルとは、バンドパス信号の最大値付近の部分に透過率が局所的に低下する現象が見られることであり、さざ波とも呼ばれる。リップルが発生した場合、所望のバンドパス特性が得られないことがある。リップルが発生した場合の信号最大値と局所的透過率低下値との差をリップル強度とする。理想的なバンドパス特性として、点線で示した矩形の形状が求められている。
【0015】
現在使用されているバンドパスフィルタの特性としては、−0.5dBでのフィルタ透過幅W(F)は2nm以下で、−25dBでのクロストーク透過幅W(C)が4nmから8nm程度であるが、既にフィルタ透過幅W(F)が1nm以下のバンドパスフィルタの実用化を迎えている。
さらに、次世代の広帯域光波長多重通信(DWDM通信)に用いるバンドパス特性の要求仕様としては、フィルタ透過幅W(F)が0.1nm、クロストーク透過幅W(C)が0.3nm、挿入損失が0.5dB以下、リップル強度が0.2dBという値が要求されている。このため最適なバンドパス特性の設計が求められている。
また、光学多層膜の総数も数十層から数百層と非常に多くなるため、膜厚や膜質の均一性もこれまで以上に高精度なものが要求されるようになっている。
【0016】
さらに、幹線の大規模通信だけでなく、LAN(Local Area Network)通信でデファクトスタンダードになっているイーサネット通信においても、光学多層膜フィルタが使用されつつある。現在のツイストペアによる通信に代わって光ファイバを用いた10GBASE−Xや10GBASE−Wという10Gbps級の通信がIEEE802.3規格として標準化され、普及に向けた検討が進んでいる。この場合に用いられる多重通信方式は、WWDM通信(CWDM通信ともいう)と呼ばれ、1310nmや1550nm付近の波長帯域において、数十nmずれた4つの波長で4つのデータを重ね合わせて送信し、4つの受光器で別々に読み取るものである。通信距離は約300mであるが、LANの世界では一番期待されている方式となっている。
【0017】
このWWDM通信用にも光学多層膜フィルタが用いられる。評価基準としては、図22に示したフィルタ特性で、フィルタ透過幅W(F)が10nm、クロストーク幅W(C)が20nm以下、挿入損失が1dB以下、リップル強度が0.5dBという値が要求されている。このWWDM通信用光学多層膜フィルタでは、低コスト化が最大の課題とされている。
【0018】
多層膜に用いられる薄膜材料として、シリコン(Si)、アモルファスシリコン(a−Si)、水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)、二酸化シリコン(SiO)、五酸化タンタル(Ta)、アルミナ(Al)、二酸化チタン(TiO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、二酸化ハフニウム(HfO)、二酸化ランタン(LaO)、二酸化セリウム(CeO)、三酸化アンチモン(Sb)、三酸化インジウム(In)、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化ソリウム(ThO)などの酸化物および二元以上の酸化物、あるいは、シリコン酸窒化物(SiO)、あるいは、シリコン窒化物(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化ランタン(LaN)などの窒化物および二元以上の窒化物、あるいは、フッ素化マグネシウム(MgF)、三フッ化セリウム(CeF)、二フッ化カルシウム(CaF)、フッ化リチウム(LiF)、六フッ化三ナトリウムアルミニウム(NaAlF)などのフッ素化物、あるいは、二元以上のフッ素化物などがある。
【0019】
一般には、これらの薄膜材料のうち適当な屈折率の異なる2種類の物質を選択し、透明基板上に薄膜形成装置を用いて光学多層膜フィルタを作成する。
【0020】
図23に、代表的な光学多層膜フィルタの構成例を示す。光学膜厚λ/2のキャビティ層(2L)4と呼ばれる層の上下を、屈折率nを有する第1の光学媒質からなる第1の光学媒質層2(光学膜厚λ/4;L層)と第1の光学媒質よりも高い屈折率nを有する第2の光学媒質からなる第2の光学媒質層3(光学膜厚λ/4;H層)とにより交互に積層した多層膜で挟んだ構造となっている。キャビティ層4は、第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3とを交互に積層した積層体のうち、所定の位置の層であり、光学膜厚がλ/2の整数倍の第1の光学媒質または第2の光学媒質により構成される。
【0021】
図23では、屈折率nを有する基板1上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とを繰り返し19層積層し、この上に第1の光学媒質からなるキャビティ層4(2L層)を形成し、さらにその上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とを繰り返し19層積層して全体で39層の多層膜となっている。空気の屈折率をnとする。このような、キャビティ層4を1つ持つ層構造を「シングルキャビティ」または「1キャビティ」と呼ぶことが多い。
さらに、キャビティ層4を2つ、3つ、4つ、5つと増した場合、それぞれ「ダブルキャビティ」または「2キャビティ」、「トリプルキャビティ」または「3キャビティ」、「4キャビティ」、「5キャビティ」と呼ぶ。
【0022】
図23を参照し、第1の光学媒質層2として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)、第2の光学媒質層3として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta)を用いた場合について詳細に説明する。但し、バンドパスフィルタとしての設計波長はλ=1550nmとした。基板1としては、一般的に使用される、BK−7や結晶化ガラス等の基板を用いた。ここでは、基板1の屈折率は1.47とした。第2の光学媒質層3の光学膜厚は181.07nmであり、第1の光学媒質層2の光学膜厚は261.82nmであり、キャビティ層4の光学膜厚は523.64nmである。
また、図23では、屈折率を層の横幅により、模式的に表した。つまり、第1の光学媒質層2よりも第2の光学媒質層3の横幅が広いのは、第2の光学媒質層3の方の屈折率が第1の光学媒質層2より大きいことを示している。
【0023】
図23に示した1キャビティ構造の光学多層膜フィルタにおいて、設計波長λに相当するβ=π/2の場合について考察する。式(6)により示される特性マトリックス(M)は式(7)のようになる。よって反射率係数|r|は式(2)より式(8)となり、さらに、式(4)より反射率Rを式(9)のように求めることができる。
【0024】
【数5】
Figure 2004029520
【0025】
屈折率nが1.47の石英基板を考えると、式(8)から|r|=0.1903、式(9)からR=0.0362となり、設計波長λの反射率係数|r|を小さくできる。このように、設計波長λにおいて、行列の計算が比較的簡単にできるため、反射率Rを比較的容易に計算することができる。
【0026】
図23に示した光学多層膜フィルタのシミュレーションにより計算した透過特性を図24に示す。設計波長λで透過率は0.9638となり、理論計算値の透過率T=1−Rから得られる値と一致する。フィルタ特性としては、極めて急峻で狭いバンドパス特性が得られている。フィルタ透過幅W(F)は、0.1nm以下、挿入損失もなく、リップルもない形状が得られていることがわかる。しかし、バンドパススペクトルの形状は、鋭い三角形の形状であり、−25dBのクロストーク幅W(C)が1nm以上で、仕様を大きく越えている。また、図22の透過特性において点線で示した矩形の形状(理想的なバンドパス特性)から外れている。したがって、シングルキャビティでDWDM通信用のフィルタを作製するのは困難であることがわかる。
【0027】
そこで、シングルキャビティを直列配置して2以上のキャビティを持つファブリペロー型と呼ばれる多層膜構造でバンドパススペクトル形状を矩形にしようとする試みがなされている。図25に、2キャビティ構造(ダブルキャビティ構造)のファブリペロー型多層膜の基本構造を示す。一般的に、第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)とを繰り返してある層数で形成した多層膜をキャビティ層4(2L層)で挟んだ1キャビティ構造を基本として、この1キャビティ構造をつないだ構造をしている。1キャビティ5は、それぞれキャビティ層(2L層)に対して必ず対称になっている。図25では、基板1側からみて片側21層の1キャビティ5と片側22層の1キャビティ5が結合した構造をしている。
【0028】
図26は、図25に示した2キャビティ構造において、例として、第1の光学媒質層2(L層)として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)、第2の光学媒質層3(H層)として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta)を用い、ユニット数を21とした2キャビティの場合のスペクトル形状を示す。全体で87層の多層膜となっている。バンドパスフィルタとしての設計波長はλ=1550nmとした。
【0029】
特性マトリックス(M)は、式(10)となり、反射率係数|r|と反射率Rは、式(8)と式(9)となる。
【0030】
【数6】
Figure 2004029520
【0031】
図26のバンドパススペクトルの形状を参照すると、−25dBのクロストーク幅W(C)はシングルキャビティよりは狭くなったが、0.3nm以上であり矩形のプロファイルではなく、要求仕様を満たさないのがわかる。
【0032】
そこで、さらにキャビティ数を増やし、バンドパススペクトルの形状を矩形のプロファイルに近づける試みがされている。例として、第1の光学媒質層2(L層)として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)、第2の光学媒質層3(H層)として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta)を用い、キャビティ数を3とした3キャビティ(トリプルキャビティ)の場合について説明する。全体で143層の多層膜からなる3キャビティの光学多層膜フィルタを作製した。バンドパスフィルタとしての設計波長はλ=1550nmとした。
【0033】
特性マトリックス(M)は、式(10)となり反射率係数|r|は式(8)となる。
【0034】
図27に3キャビティのバンドパススペクトル形状を示す。フィルタ透過幅W(F)は0.1nm以下を達成しており、−25dBのクロストーク幅W(C)も0.15nm程度となり、ほぼ矩形プロファイルが得られ、挿入損失もほぼ0dBとDWDM用の要求仕様を満たしていることがわかる。しかしながら、0.5dB以上のリップルが現れており、要求仕様を満たさない。
【0035】
このリップルが現れる現象は、4以上のキャビティでも見られる。図28に、第1の光学媒質層2として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)、第2の光学媒質層3として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta)を用い、キャビティ数を4とした4キャビティの場合とキャビティ数を5とした5キャビティのスペクトル形状を示す。設計波長はλ=1550nmとした。
【0036】
特性マトリックス(M)は、式(7)と同様となり反射率係数|r|は式(8)となる。
【0037】
4キャビティでは、基板1上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが繰り返し多層積層され、キャビティ層4(2L層)が4層配置され、全体で191層の多層膜を作製した。設計波長λにおける特性マトリックス(M)は式(7)となり、反射率係数|r|は式(8)となる。バンドパススペクトル形状を参照すると、フィルタ透過幅W(F)は0.1nm以下を達成しており、−25dBのクロストーク幅W(C)も約0.1nmとほぼ矩形のプロファイルが得られ、挿入損失も0.2dBとDWDM用の要求仕様を満たしていることがわかる。しかしながら、1dBにもおよぶリップルが現れており、要求仕様を満たさなくなってしまう。
【0038】
5キャビティでは、基板1上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが繰り返し多層積層され、キャビティ層4(2L層)が5層配置され、全体で239層の多層膜を作製した。設計波長λにおける特性マトリックス(M)は式(7)となり、反射率係数|r|は式(8)となる。バンドパススペクトル形状を参照すると、フィルタ透過幅W(F)は0.1nm以下を達成しており、−25dBのクロストーク幅W(C)も約0.1nmとほぼ矩形のプロファイルが得られ、挿入損失もほぼ0dBとDWDM用の要求仕様を満たしていることがわかる。しかしながら、2.5dBにもおよぶリップルが現れており、要求仕様を満たさない。
【0039】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、2キャビティ、3キャビティ、4キャビティ、5キャビティで見られたようなリップルが発生する現象は、6以上のキャビティでさらに顕著になる。キャビティ数が増加するにしたがって、クロストーク幅W(C)は小さくなるが、フィルタ透過幅W(F)やリップル強度は大きくなってしまう。フィルタ透過幅W(F)は、層の総数により調整できるが、リップル強度は調整できない。
【0040】
また、例に示した二酸化シリコン(SiO)と五酸化タンタル(Ta)以外、例えば五酸化タンタルと水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)とにより多層膜を形成した場合においても、また、その他の組み合わせにより多層膜を形成した場合においても、この現象は見られる。
【0041】
そのため、0.1nm程度と狭いフィルタ透過幅W(F)を実現しながら、狭いクロストーク幅W(C)と矩形に近いバンドパス特性を得るとともに、挿入損失とリップルを抑えたバンドパスプロファイルを示すフィルタ構造の実現が不可欠となっている。
【0042】
そこで、本発明は、前述した従来技術の問題点や課題を解決するためになされたものであり、その目的は、光通信に適応できるバンドパス特性を得ることができる光学多層膜フィルタを提供することである。
【0043】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を実現するため、本発明の光学多層膜フィルタは、第1の光学媒質からなる第1の光学媒質層と第1の光学媒質より高い屈折率を有する第2の光学媒質からなる第2の光学媒質層とを交互に積層した複数の積層体を、第1の光学媒質または第2の光学媒質からなるキャビティ層を介して接続したキャビティ構造を有し、バンドパスフィルタとしての設計波長λにおける特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が1であるキャビティ構造体と、このキャビティ構造体上に積層され、第1の光学媒質層と第2の光学媒質層のうち少なくとも1層からなる付加層とを有し、第1の光学媒質の屈折率をn、第2の光学媒質の屈折率をnとした場合に、キャビティ構造体と付加層とからなる光学多層膜フィルタの特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が0、第1行第2列がi・(1/n)、第2行第1列がi・(n)、第2行第2列が0、または、第1行第1列が0、第1行第2列がi・(−1/n)、第2行第1列がi・(−n)、第2行第2列が0であることを特徴とする。
【0044】
さらに、キャビティ構造体は、キャビティ層を4層以上有し、積層された両端の層を構成する光学媒質が異なる場合に、付加層は、第1の光学媒質からなり、両端の層のうち第1の光学媒質により形成された側に積層されることを特徴とする。
本発明によれば、特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が1であるキャビティ構造、例えば、キャビティ数が4、5、8、9、およびそれ以上であるキャビティ構造を有する光学多層膜フィルタのフィルタ特性の形状を調節し、また、リップルを少なくし、また、設計波長における透過率を向上させることができる。
ここで、個々の積層体は、第1の光学媒質層と第2の光学媒質層とを交互に積層した構造であればよく、個々の積層体を構成する第1の光学媒質層および第2の光学媒質層の層数は異なっていてもよい。
【0045】
また、第1の光学媒質からなる第1の光学媒質層と第1の光学媒質より高い屈折率を有する第2の光学媒質からなる第2の光学媒質層とを交互に積層した複数の積層体を、第1の光学媒質または第2の光学媒質からなるキャビティ層を介して接続したキャビティ構造を有し、バンドパスフィルタとしての設計波長λにおける特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が1であるキャビティ構造体と、このキャビティ構造体上に積層され、第1の光学媒質層と第2の光学媒質層のうち少なくとも1層からなる付加層とを有し、第1の光学媒質の屈折率をn、第2の光学媒質の屈折率をnとした場合に、キャビティ構造体と付加層とからなる光学多層膜フィルタの特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が(n/n)、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が(n/n)、または、第1行第1列が(−n/n)、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が(−n/n)であることを特徴とする。
【0046】
さらに、キャビティ構造体は、キャビティ層を4層以上有し、積層された両端の層を構成する光学媒質が異なる場合に、付加層は第2の光学媒質層と第1の光学媒質層とを順次積層した多層膜からなり、両端の層のうち第1の光学媒質が形成された側に積層されることを特徴とする。
本発明によれば、特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が1であるキャビティ構造、例えば、キャビティ数が4、5、8、9、およびそれ以上であるキャビティ構造を有する光学多層膜フィルタのフィルタ特性の形状を調節し、また、リップルを少なくし、また、設計波長における透過率を向上させることができる。
ここで、個々の積層体は、第1の光学媒質層と第2の光学媒質層とを交互に積層した構造であればよく、個々の積層体を構成する第1の光学媒質層および第2の光学媒質層の層数は異なっていてもよい。
【0047】
また、第1の光学媒質からなる第1の光学媒質層と第1の光学媒質より高い屈折率を有する第2の光学媒質からなる第2の光学媒質層とを交互に積層した複数の積層体を、第1の光学媒質または第2の光学媒質からなるキャビティ層を介して接続したキャビティ構造を有し、バンドパスフィルタとしての設計波長λにおける特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が−1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が−1であるキャビティ構造体と、このキャビティ構造体上に積層され、第1の光学媒質層と第2の光学媒質層のうち少なくとも1層からなる付加層とを有し、第1の光学媒質の屈折率をn、第2の光学媒質の屈折率をnとした場合に、キャビティ構造体と付加層とからなる光学多層膜フィルタの特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が0、第1行第2列がi・(1/n)、第2行第1列がi・(n)、第2行第2列が0、または、第1行第1列が0、第1行第2列がi・(−1/n)、第2行第1列がi・(−n)、第2行第2列が0であることを特徴とする。
【0048】
さらに、キャビティ構造体は、キャビティ層を3層以上有し、積層された両端の層が第2の光学媒質により形成されている場合に、付加層は、第1の光学媒質層、第2の光学媒質層と第1の光学媒質層とを順次積層した多層膜、第1の光学媒質層と第2の光学媒質層と第2の光学媒質層とを順次積層した多層膜、第1の光学媒質層と第2の光学媒質層と第1の光学媒質層と第1の光学媒質層とを順次積層した多層膜のうちいずれか一つからなることを特徴とする。
【0049】
本発明によれば、特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が−1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が−1であるキャビティ構造、例えば、キャビティ数が3、6、7、およびそれ以上であるキャビティ構造を有する光学多層膜フィルタのフィルタ特性の形状を調節し、また、リップルを少なくし、また、設計波長における透過率を向上させることができる。
ここで、個々の積層体は、第1の光学媒質層と第2の光学媒質層とを交互に積層した構造であればよく、個々の積層体を構成する第1の光学媒質層および第2の光学媒質層の層数は異なっていてもよい。
【0050】
また、第1の光学媒質からなる第1の光学媒質層と第1の光学媒質より高い屈折率を有する第2の光学媒質からなる第2の光学媒質層とを交互に積層した複数の積層体を、第1の光学媒質または第2の光学媒質からなるキャビティ層を介して接続したキャビティ構造を有し、バンドパスフィルタとしての設計波長λにおける特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が−1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が−1であるキャビティ構造体と、このキャビティ構造体上に積層され、第1の光学媒質層と第2の光学媒質層のうち少なくとも1層からなる付加層とを有し、第1の光学媒質の屈折率をn、第2の光学媒質の屈折率をnとした場合に、キャビティ構造体と付加層とからなる光学多層膜フィルタの特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が(n/n)、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が(n/n)、または、第1行第1列が(−n/n)、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が(−n/n)であることを特徴とする。
【0051】
さらに、キャビティ構造体は、キャビティ層を3層以上有し、積層された両端の層が第2の光学媒質により形成されている場合に、付加層は、第2の光学媒質層と第1の光学媒質層とを順次積層した多層膜からなることを特徴とする。
本発明によれば、特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が−1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が−1であるキャビティ構造、例えば、キャビティ数が3、6、7、およびそれ以上であるキャビティ構造を有する光学多層膜フィルタのフィルタ特性の形状を調節し、また、リップルを少なくし、また、設計波長における透過率を向上させることができる。
ここで、個々の積層体は、第1の光学媒質層と第2の光学媒質層とを交互に積層した構造であればよく、個々の積層体を構成する第1の光学媒質層および第2の光学媒質層の層数は異なっていてもよい。
【0052】
さらに、第1の光学媒質層と、第2の光学媒質層とを、これらの光学膜厚がそれぞれ、設計波長λに対して、λ/4の整数倍になるような膜厚で形成し、キャビティ層を、このキャビティ層の光学膜厚が、設計波長λに対して、λ/2の整数倍になるような膜厚で形成したことを特徴とする。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
なお、実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0054】
まず、挿入損失について実施の形態における基本的な考え方を説明する。
ファブリペロー型のマルチキャビティ構造は、第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)とを繰り返してある層数で形成した多層膜(積層体)によりキャビティ層4(2L層)を挟んだ1キャビティ構造を基本として、この1キャビティ構造をつないだ構造である。以下、1キャビティ構造とマルチキャビティ構造とを含めてキャビティ構造と呼ぶ。1キャビティ5は、それぞれキャビティ層(2L層)に対して必ず対称になっている。このキャビティ構造では、キャビティ数を問わず、設計波長λにおける特性マトリックス(M)が式(7)または式(10)となる。1キャビティ(シングルキャビティ)、4キャビティ、5キャビティ、8キャビティ、9キャビティ、10キャビティの特性マトリックスは式(7)で表され、2キャビティ、3キャビティ、6キャビティ、7キャビティの特性マトリックスは式(10)で表される。つまり、特性マトリックスの第1行第1列の行列成分が1または−1であり、特性マトリックスの第1行第2列の行列成分が0であり、特性マトリックスの第2行第1列の行列成分が0であり、特性マトリックスの第2行第2列の行列成分が1または−1である。
【0055】
このような特性マトリックス(M)から求められる反射率Rは式(9)となり、透過率Tは式(5)となる。この場合、透過率Tは、基板の屈折率nの関数となる。
図1は、特性マトリックス(M)が式(7)または式(10)で表されるキャビティ構造における場合の透過率Tと基板の屈折率nの関係を示したものである。
【0056】
図1より基板の屈折率nが大きくなると透過率Tが次第に減少する。このため、入力損失の増大を防止するためには、基板の屈折率nを小さくする必要があることがわかる。
【0057】
しかし、光学基板は、基板の屈折率nが1.47の石英基板や、基板の屈折率nが1.48から1.50程度のガラス基板が一般的である。空気の屈折率nと比較した場合、n<nの関係が成り立つ。石英基板を用いた場合は、T=0.9638が理論上の最高値となる。
また、第1の光学媒質層の屈折率をn、第2の光学媒質層の屈折率をnとした場合、n<n では基板上には第2の光学媒質層が形成され、n>nでは基板上には第1の光学媒質層が形成される。
【0058】
さらに、マルチキャビティ構造になると、リップルが大きくなるため、バンドパスフィルタのフィルタ特性の形状も考慮する必要がある。
【0059】
そこで、本発明者らは、設計波長λにおける特性マトリックス(M)が式(7)または式(10)の従来のキャビティ構造において空気側の表面層(基板の反対側の表面層)に第1の光学媒質層(L層)を配置することによって、入力損失の増大を防止することができることを見いだした。
【0060】
この場合の特性マトリックス(M)は、式(11)または式(12)となり、反射率係数|r|は、式(13)となる。但し、nは、第1の光学媒質層の屈折率である。
【0061】
【数7】
Figure 2004029520
【0062】
式(13)から、従来のマルチキャビティ構造の空気側の表面層上に、さらに光学媒質層を1層付加したフィルタ構造の反射率係数|r|は、付加した光学媒質層の屈折率(ここではn)と基板の屈折率nとにより表されることがわかる。したがって、付加する光学媒質層の屈折率を改めてnとして考えると、このフィルタ構造での透過率Tと付加した光学媒質層の屈折率nとの関係は図2に示す通りとなる。但し、基板の屈折率nは石英基板の1.47とし、透過率Tは式(5)より計算した。nはキャビティ構造において基板の反対側の表面層、言い換えれば空気側の表面層に配置される光学媒質層の屈折率である。図2より、光学媒質層の屈折率nが1.2程度で0dBとなるが、光学媒質層の屈折率nが1.2から離れるほど小さくなることがわかる。
【0063】
第1の光学媒質層(L層)として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)、第2の光学媒質層(H層)として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta)を用いて、従来のキャビティ構造を作製し、空気側の表面層にさらに第1の光学媒質層(L層)を配置しても、図2より入力損失は0.2dBとなり、設計波長λにおける特性マトリックス(M)が式(7)または式(10)の従来のキャビティ構造と変わらない値が得られる。
【0064】
一方、第2の光学媒質層(H層)を、設計波長λにおける特性マトリックス(M)が式(7)または式(10)で表される従来のキャビティ構造の空気側の表面層にさらに付加配置した場合、例えばn<nとなるnが2.14の五酸化タンタル層を配置した場合には、図2から、入力損失は1.3dBと大きくなってしまうことがわかる。但し、nは第2の光学媒質層3(H層)の屈折率を示している。
【0065】
さらに、本発明者らは、設計波長λにおける特性マトリックス(M)が式(7)または式(10)により表される従来のキャビティ構造の空気側の表面層にさらに第2の光学媒質層(H層)、続いて第1の光学媒質層(L層)を配置することによって、入力損失の増大を防止することができることを見いだした。
【0066】
この場合の特性マトリックス(M)は式(14)または式(15)により表され、反射率係数|r|は式(16)により表される。但し、nは第1の光学媒質層の屈折率を、nは第2の光学媒質層の屈折率を示している。
【0067】
【数8】
Figure 2004029520
【0068】
第1の光学媒質層の屈折率nと第2の光学媒質層の屈折率nの比n/nは、n/n=nとすると、図2のnと置きかえて考えることができ、上記と同じように議論できる。図2より、比n/nが1.2程度で透過率Tは0dBとなるが、その値から比n/n=nが大きくなっても小さくなっても、入力損失が大きくなることがわかる。比n/nが、1以下の場合には、透過率Tが0dBとなる場合がない。つまり、透過率Tを大きくするためにはn>nが必要条件となる。
【0069】
多層膜を第1の光学媒質層(L層)として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)、第2の光学媒質層(H層)として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta)を用いて、従来のマルチキャビティ構造を作成し、この従来のマルチキャビティ構造の空気側の表面上に、屈折率が2.14の五酸化タンタルからなる第2の光学媒質層(H層)、続いて屈折率が1.48の二酸化シリコンからなる第1の光学媒質層(L層)を順次配置した場合、特性マトリックスは式(14)または式(15)により表され、比n/nは1.45であるので、入力損失は0.2dBとなる。設計波長λにおける特性マトリックス(M)が式(7)または式(10)により表される従来のキャビティ構造と変わらない値が得られることとなる。
【0070】
逆に、設計波長λにおける特性マトリックス(M)が式(7)または式(10)の従来のキャビティ構造の空気側の表面層上に第1の光学媒質層(L層)続いて第2の光学媒質層(H層)を順次配置した場合には、付加する光学媒質層の順序が上記の場合と逆であるため、この構造の場合の反射率係数|r|は、式(16)でのn/nをその逆数であるn/nに置き換えた形で表されることとなる。したがって、n<nからn/nが1以下になり、透過率Tの最大の値が低下することになるため、理想的な透過率100%と透過率Tの最大の値の強度差により示される入力損失が大きくなる。
例えば、第1の光学媒質層(L層)として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)、第2の光学媒質層(H層)として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta)を用いて、多層膜を作成した場合、比n/nが0.69であるため、図2から、入力損失は1dB以上になることがわかる。
【0071】
上記したように、設計波長λにおける特性マトリックス(M)が式(7)または式(10)の従来のキャビティ構造の空気側の表面層(基板の反対側の表面層)に第1の光学媒質層(L層)を配置すること、または、第2の光学媒質層(H層)を形成しさらに続いて第1の光学媒質層(L層)を配置することによって、入力損失の増大を防止することができる。これらの層を配置することによって良好なフィルタ特性を得ることができるため、光学多層膜フィルタの設計の自由度が大きく増すことが期待できる。
言い換えれば、従来のキャビティ構造を有し、バンドパスフィルタとしての設計波長λにおける特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が1であるキャビティ構造体を形成し、このキャビティ構造体の上に、第1の光学媒質層と第2の光学媒質層のうち少なくとも1層からなる付加層を形成した光学多層膜フィルタの特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が0、第1行第2列がi・(1/n)、第2行第1列がi・(n)、第2行第2列が0、または、第1行第1列が0、第1行第2列がi・(−1/n)、第2行第1列がi・(−n)、第2行第2列が0、または、第1行第1列が(n/n)、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が(n/n)、または、第1行第1列が(−n/n)、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が(−n/n)である場合に、光学媒質層の屈折率nを1.2程度、または比n/nを1.2程度とできるため、入力損失の増大を防止することができる。
【0072】
次に、実施の形態1に係る光学多層膜フィルタについて説明する。
実施の形態1に係る光学多層膜フィルタは、キャビティ数が3の3キャビティ構造を有する従来のキャビティ構造、言い換えれば、第2の光学媒質からなる第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質からなる第1の光学媒質層2(L層)とを交互に積層するという規則性を保ちつつ、シングルキャビティ5を、3個積層した構造において、空気と接している最後に形成された光学媒質層(表面層と呼ぶ)が第2の光学媒質層3(H層)である場合に、その表面層の上に、第2の光学媒質層3(H層)を形成し、続いて第1の光学媒質層2(L層)を積層した構造である。キャビティ層4は第1の光学媒質により形成した。
【0073】
具体的な構造は、図3に示すように、透明基板1上に、第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば21層積層されており、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。その上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば43層積層されており、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。その上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば43層積層されており、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。その上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)が交互に例えば21層積層されている。この場合、表面層は、第2の光学媒質層3(H層)である。また、この時点での特性マトリックス(M)は、3キャビティであるため、式(10)となる。さらにその上に、表面層と同様の第2の光学媒質層3(H層)を形成し、さらにその上に第1の光学媒質層2(L層)を形成(L層/H層の積層体と呼ぶ)した構造となっている。したがって、全体で133層の多層膜となっている。
【0074】
また、図3においても、屈折率を層の横幅により、模式的に表した。つまり、第1の光学媒質層2よりも第2の光学媒質層3の横幅が広いのは、第2の光学媒質層3の方の屈折率が第1の光学媒質層2より大きいことを示している。以下、同様の模式図により説明する。
【0075】
構造の特徴としては、キャビティ層4は、第1の光学媒質層2(L層)を2層連続して形成した2L層であるが、表面層上への第2の光学媒質層3(H層)、第1の光学媒質層2(L層)の積層体の配置によって結果的に第2の光学媒質層3(H層)を2層連続して形成した2H層が形成され、2L層と2H層とが混在することである。この場合の2H層は、キャビティ層4(2L層)とは役割が全く異なる。
【0076】
基板1としては、屈折率1.47の透明基板、第1の光学媒質層2(L層)として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)、第2の光学媒質層3(H層)として2.14の五酸化タンタル(Ta)を用いる。キャビティ層4(2L層)として1.48の二酸化シリコン(SiO)を用いる。
【0077】
それぞれの光学膜厚は、バンドパスフィルタとしての設計波長(以下、設計波長と呼ぶ)をλ=1550nmとした場合に、第1の光学媒質層2(L層)および第2の光学媒質層3(H層)は、これらの光学膜厚がそれぞれ、設計波長λに対して、λ/4の整数倍になるような膜厚で形成する。また、キャビティ層4(2L層)は、このキャビティ層4(2L層)の光学膜厚が、設計波長λに対して、λ/2の整数倍になるような膜厚で形成する。
具体的には、第1の光学媒質層2(L層)は261.82nm、第2の光学媒質層3(H層)は181.07nmである。また、キャビティ層4(2L層)は、523.64nmである。
【0078】
図3に示す3キャビティ構造の光学多層膜フィルタにおいて、設計波長λに相当するβ=π/2の場合について考察する。設計波長λ。における特性マトリックスMは、式(14)となり、反射率係数|r|は式(16)となる。
【0079】
図4は、図3に示した光学多層膜フィルタのようにL層/H層の積層体を表面層上に配置した場合のフィルタ透過特性である。従来のキャビティ構造と比較するために、L層/H層の積層体を配置しない従来の3キャビティ構造のフィルタ透過特性も合わせて示す。従来の3キャビティ構造では、リップル強度が0.6dB程度もある。これに対して、L層/H層の積層体を配置したものは、設計波長λ=1550nmからずれた部分における透過率の落ち込みがなくなり、リップル強度も0.2dBと大きく改善することがわかる。
また、設計波長λ=1550nmにおける透過率が向上することがわかる。
【0080】
従来のキャビティ構造における反射率係数|r|は、設計波長λにおいて式(8)となる。
これに対し、実施の形態1に示す構造では、式(16)となる。石英基板、第2の光学媒質層3(H層)、第1の光学媒質層2(L層)の屈折率を代入すると、反射率係数|r|=0.1743となり、式(8)から求められる反射率係数|r|よりも小さくなる。
また、L層/H層の積層体を配置することによって、図4に示すように、バンドパスフィルタ特性がより矩形になることがわかる。
【0081】
実施の形態1では、全層の数が133層であるが、所望のフィルタ幅やクロストーク幅W(C)を得るために、適宜第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)の層数を変化させて光学多層膜フィルタを構成した場合においても同様の効果が得られる。
【0082】
次に、製造方法について説明する。上記の材料を積み重ねて多層膜として形成するために、様々な形成装置および形成方法が試みられている。中でもスパッタ法(スパッタリング法)は、危険度の高いガスや有毒ガスなどを使用する必要がなく、堆積する膜の表面凹凸(表面モフォロジ)が比較的良好であるなどの理由により、有望な成膜装置・方法の一つとなっている。その中でも、スパッタ法において化学量論的組成の膜を得るための優れた装置・方法として酸素ガスや窒素ガスなどの反応ガスを供給し、膜中の酸素や窒素が欠落するのを防止する反応性スパッタ装置・方法が有望である。
【0083】
反応性スパッタ装置・方法の中でも、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance :ECR)と発散磁界を利用して作られたプラズマ流を基板に照射するとともに、ターゲットと接地間に高周波または直流電圧を印加し、上記ECRで発生させたプラズマ流中のイオンをターゲットに引き込み衝突させてスパッタ現象を引き起こすことにより、膜を基板に堆積させる装置・方法(以下、これをECRスパッタ法という)が良好な膜質を得られるとして最も有望である。ECRスパッタ法の特徴は、例えば、小野地、ジャパニーズジャーナルオブアプライドフィジクス、第23巻、第8号、L534頁、1984年(Jpn.J.Appl.Phys.23,no.8,L534(1984).)に記載されている。
【0084】
一般的に、RFマグネトロンスパッタ法においては、0.1Pa程度以上のガス圧力でないと安定なプラズマは得られないのに対し、上記ECRスパッタ法では、0.01Pa程度以下の分子流領域のガス圧力で安定なECRプラズマが得られる。
また、ECRスパッタ法は、高周波または直流電圧により、ECRにより生成したイオンをターゲットに当ててスパッタリングを行うため、低い圧力でスパッタリングができる。
【0085】
また、ECRスパッタ法では、基板にECRプラズマ流とスパッタされた粒子が照射される。ECRプラズマ流のイオンは、発散磁界により10eVから数10eVのエネルギーに制御される。また、気体が分子流として振る舞う程度の低い圧力でプラズマを生成・輸送しているために、基板に到達するイオンのイオン電流密度も大きく取れる。したがって、ECRプラズマ流のイオンは、スパッタされて基板に飛来した原料粒子にエネルギーを与えるとともに、原料粒子と酸素または窒素との結合反応を促進するため、膜質が改善される。
【0086】
ECRスパッタ法は、特に、外部からの加熱をしない室温に近い低い基板温度で基板上に高品質の膜が形成できることが特徴である。ECRスパッタ法による高品質な薄膜堆積については、例えば、天澤他、ジャーナルオフバキュームサイエンスアンドテクノロジー、第B17巻、第5号、2222頁、1999年(J.Vac.Sci.Technol.B17,no.5,2222(1999).)に記載されている。
【0087】
また、ECRスパッタ法で堆積した膜の表面モフォロジは、原子スケールのオーダーで平坦である。したがって、ECRスパッタ法は、ナノメーターオーダーの極薄膜からなる多層膜を形成するのに有望な装置・方法である。
【0088】
さらに、ECRスパッタ法では、反応性ガスの分圧を制御することで、堆積膜の屈折率を精度良く制御することができる。この特性を利用することにより、他のスパッタ法では困難である任意の屈折率に調整した堆積膜を形成し、多層膜として形成することができる。
本実施の形態においては、ECRスパッタ装置を用いて、光学多層膜フィルタの製造を行った。図5に電子サイクロトロン共鳴(ECR)装置の概略図を示す。
【0089】
製造方法を具体的に説明する。まず、容器内を真空にした後、ECRプラズマ源にスパッタガスおよび反応性ガスを導入し適当なガス圧にする。次に、磁気コイル9によりECRプラズマ源内に0.0875Tの磁場を発生させた後、導波管と石英窓11を通してECRプラズマ源に周波数が2.45GHzのマイクロ波を導入し、ECR領域8に電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマを生成する。
ECRプラズマは、発散磁場により基板1方向にプラズマ流を作る。実施の形態1に示すECRプラズマ源は、導入したマイクロ波電力を一旦分岐してプラズマ源の直前で再び結合させるもので、ターゲット7からの飛散粒子が石英導入窓に付着することを防ぐことにより、ランニングタイムを大幅に改善できるものである。ECRプラズマ源と基板1との間にリング状の円形ターゲット7を配置し、ターゲット7に高周波電圧を印加してスパッタリングを行って、基板ホルダ6に取り付けられた基板1上に薄膜を形成する。
【0090】
また、複数のECRプラズマ源と複数のターゲットを設置し、切り替えてスパッタリングを行うことによって、基板1上に屈折率の異なる複数の堆積膜を多層膜として形成することができる。例えば、実施の形態1においては、2つのECRプラズマ源に、それぞれ、シリコンターゲットとタンタルターゲットを設置し、第1の光学媒質層2(L層)として二酸化シリコン(SiO)を、第2の光学媒質層3(H層)として五酸化タンタル(Ta)を、キャビティ層4としてとして二酸化シリコン(SiO)または五酸化タンタル(Ta)を堆積することによって、本発明の光学多層膜フィルタを形成することができる。
【0091】
ECRスパッタ装置において、ターゲットにシリコンと純アルミニウムを用い、また、反応性ガスとして酸素ガスと窒素ガスを、さらに不活性ガスとしてアルゴンを用いた酸化シリコン薄膜と酸窒化シリコン薄膜とアルミナ薄膜の成膜を行った。ECRプラズマ源には、供給する反応性ガスの多少に関わらず、プラズマが安定に得られるだけのアルゴンを導入する。
【0092】
上記のようにして、基板1上に成膜した酸化シリコン膜と酸窒化シリコンとアルミナ膜の屈折率の酸素流量依存性を図6に示す。アルゴンガス流量が20sccmとし、酸素ガス流量を0から8sccmの間で変化させ、ECRイオン源に導入するマイクロ波電力を500W、ターゲットに印加する高周波電力を500Wとした。但し、酸窒化シリコンでは、酸素と窒素の流量の合計が10sccmとなるように調整している。また、基板1は加熱していない。なお、屈折率は638nmレーザによるエリプソメータを用いて測定した。
【0093】
図6によれば、酸化シリコン膜と酸窒化シリコン膜およびアルミナ膜の屈折率は、酸素流量の増加にしたがって減少し、屈折率が化学量論的組成を満たす二酸化シリコンまたはサファイア基板の屈折率になることがわかる。反応性ガスによって良好な膜質を保ちながら屈折率を制御できることを示している。
具体的には、屈折率を、酸化シリコン膜では1.47から3.8の範囲で、また、酸窒化シリコン膜では1.47から2.0の範囲で、また、アルミナ膜では1.61から4.3の範囲で制御できることを示している。
【0094】
さらに、二酸化シリコン膜を含む酸化シリコン膜、アルミナ膜のみならず、ECRスパッタ法で形成できる五酸化タンタル、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化ハフニウム、二酸化ランタン、二酸化セレン、二酸化セリウム、三酸化アンチモン、三酸化インジウム、酸化マグネシウム、二酸化ソリウム等の酸化物、シリコン窒化物、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン等の窒化物、および、シリコン酸窒化物等の酸窒化物、フッ素化マグネシウム、フッ素化セレン、三フッ化セリウム、二フッ化カルシウム、フッ化リチウム、六フッ化三ナトリウムアルミニウム等のフッ素化物、さらには、堆積時に水素を導入したアモルファスシリコン、あるいは、二元合金の酸化物、二元合金の窒化物などでも反応性ガスの流量(分圧)による屈折率制御ができる。
【0095】
次に、実施の形態2に係る光学多層膜フィルタについて説明する。
実施の形態2に係る光学多層膜フィルタは、キャビティ数が3の3キャビティ構造を有する従来のキャビティ構造、言い換えれば、第2の光学媒質からなる第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質からなる第1の光学媒質層2(L層)とを交互に積層するという規則性を保ちつつ、シングルキャビティ5を、3個積層した構造において、空気と接している最後に形成された光学媒質層(表面層と呼ぶ)が第2の光学媒質層3(H層)である場合に、その表面層の上に、第1の光学媒質層2(L層)を積層した構造である。キャビティ層4は第1の光学媒質により形成した。
【0096】
具体的な構造は、図7に示すように、透明基板1上に、第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば21層積層されており、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。その上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば43膚積層されており、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。その上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば43層積層されており、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。その上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば21層積層されている。この場合、表面層は、第2の光学媒質層3(H層)である。また、この時点での特性マトリックス(M)は、3キャビティであるため、式(10)となる。さらに、この上に、第1の光学媒質層2(L層)が形成された構造である。したがって、全体で132層の多層膜となっている。
【0097】
基板1としては、屈折率1.47の透明基板、第1の光学媒質層2(L層)として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)、第2の光学媒質層3(H層)として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta)を用いる。キャビティ層4として第1の光学媒質である屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)を用いる。
【0098】
それぞれの層の光学膜厚は、バンドパスフィルタとしての設計波長(以下、設計波長と呼ぶ)をλ=1550nmとした場合に、第1の光学媒質層2(L層)および第2の光学媒質層3(H層)は、これらの光学膜厚がそれぞれ、設計波長λに対して、λ/4の整数倍になるような膜厚で形成する。また、キャビティ層4(2L層)は、このキャビティ層4(2L層)の光学膜厚が、設計波長λに対して、λ/2の整数倍になるような膜厚で形成する。
具体的には、第1の光学媒質層2(L層)は261.82nm,第2の光学媒質層3(H層)は181.07nmである。また、キャビティ層4(2L層)は523.64nmである。
【0099】
図7に示す3キャビティ構造において、設計波長λに相当するβ=π/2の場合について考察する。設計波長λにおける特性マトリックス(M)は、式(11)となり、反射率係数|r|は式(13)となる。
【0100】
図8は、図7に示した光学多層膜フィルタのように第1の光学媒質層2(L層)を表面層上に配置した場合のフィルタ透過特性である。従来のマルチキャビティ構造と比較するために、第1の光学媒質層2(L層)を配置しない従来の3キャビティ構造のフィルタ透過特性も合わせて示す。従来の3キャビティ構造では、リップル強度が0.6dB程度もある。これに対して、第1の光学媒質層2(L層)を配置したものは、設計波長λ=1550nmからずれた部分における透過率の落ち込みがなくなり、リップル強度も0.2dBと大きく改善するのがわかる。
【0101】
従来のキャビティ構造における反射率係数|r|は、設計波長λにおいて式(8)となる。
これに対し、実施の形態2に示す構造では、式(13)となる。石英基板、第2の光学媒質層3(H層)、第1の光学媒質層2(L層)の屈折率を代入すると、反射率係数|r|=0.1969と、式(8)から求められる反射率係数|r|とほぼ同じ値になる。
また、第1の光学媒質層2(L層)を配置することにより、図8で示すように、バンドパスフィルタ特性がより矩形になることがわかる。
【0102】
実施の形態2においては、全層の数が132層であるが、所望のフィルタ幅やクロストーク幅W(C)を得るために、適宜第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)の層数を変化させて光学多層膜フィルタを構成した場合においても同様の効果が現れる。
【0103】
さらに、図9に示すように、図7に示した光学多層膜フィルタの基板1と反対側の面を構成する第1の光学媒質層2上に、第2の光学媒質層3(H層)を2層配置しても同様の結果が得られる。これは、第2の光学媒質層3(H層)を2層形成した場合の設計波長λにおける特性マトリックス(M)は式(10)で与えられるため、結果的に多層膜フィルタの設計波長λにおける特性マトリックス(M)が式(12)となるためである。
【0104】
さらに、図10に示すように、図7に示した光学多層膜フィルタの基板1と反対側の面を構成する第1の光学媒質層2上に、第2の光学媒質層3(H層)を形成し、第1の光学媒質層2(L層)を2層形成し、第2の光学媒質層3(H層)を形成した積層体からなる光学媒質層(H層/2L層/H層の積層体と呼ぶ)を配置しても同様の効果が得られる。これは、H層/2L層/H層の積層体の設計波長λにおける特性マトリックス(M)は式(7)で与えられるため、結果的に多層膜フィルタの設計波長λにおける特性マトリックス(M)が式(11)となるためである。
図9、図10に示した光学多層膜フィルタおいても、所望のフィルタ幅やクロストーク幅W(C)を得るために、適宜第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)の層数を変化させて光学多層膜フィルタを構成した場合においても同様の効果が現れる。
【0105】
また、製造方法は、実施の形態1と同様に、ECRスパッタ装置を用いて、3つのECRプラズマ源に、それぞれ、シリコンターゲットとタンタルターゲットを設置して、第1の光学媒質層2(L層)として二酸化シリコンを、第2の光学媒質層3(H層)として五酸化タンタル堆積することによって、形成することができる。
また、実施の形態2においても、図6に示したように、酸素流量を変化させることにより、屈折率を変化させることができるため、フィルタ特性を調整することができる。ECRスパッタ装置において、ターゲットの材質と反応性ガスの流量(分量)の選択で、屈折率を制御することにより、最適な屈折率を選択することによって、最適なフィルタ特性を得ることができる。
【0106】
次に、実施の形態3に係る光学多層膜フィルタについて説明する。
実施の形態1と2において、キャビティ層4が第1の光学媒質により形成された場合を示してきたが、キャビティ層4が第2の光学媒質により形成された場合にも同様の効果が得られる。例として、キャビティ数が3の3キャビティ構造で説明する。
【0107】
具体的な構造は、図11に示すように、透明基板1上に、第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば20層積層され、その上にキャビティ層4(2H層)が形成されている。その上に第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)とが交互に例えば43層積層され、その上にキャビティ層4(2H層)が形成されている。その上に第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)とが交互に例えば43層積層され、その上にキャビティ層4(2H層)が形成されている。その上に第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)とが交互に例えば20層積層されている。この時、表面層は、第2の光学媒質層3(H層)である。また、この時点での特性マトリックス(M)は、式(7)となる。さらにその上に、表面層と同じ第2の光学媒質層3(H層)を形成し、さらにその上に第1の光学媒質層2(L層)を形成した構造(L層/H層の積層体と呼ぶ)となっている。したがって、全体で131層の多層膜となっている。
【0108】
基板1としては、屈折率1.47の透明基板、第1の光学媒質層2(L層)として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)、第2の光学媒質層3(H層)として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta)を用いる。キャビティ層4(2H層)として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta)を用いる。
【0109】
それぞれの光学膜厚は、バンドパスフィルタとしての設計波長(以下、設計波長と呼ぶ)をλ=1550nmとした場合に、第1の光学媒質層2(L層)および第2の光学媒質層3(H層)は、これらの光学膜厚がそれぞれ、設計波長λに対して、λ/4の整数倍になるような膜厚で形成する。また、キャビティ層4(2H層)は、このキャビティ層4(2H層)の光学膜厚が、設計波長λに対して、λ/2の整数倍になるような膜厚で形成する。
具体的には、第1の光学媒質層2(L層)は261.82nm,第2の光学媒質層3(H層)は181.07nmである。また、キャビティ層4(2H層)は、362.14nmである。
【0110】
図12は、図11に示した光学多層膜フィルタのようにL層/H層の積層体を表面層上に配置した場合のフィルタ透過特性である。従来のキャビティ構造と比較するために、L層/H層の積層体を配置しない従来の3キャビティ構造のフィルタ透過特性を合わせて示す。従来の3キャビティ構造では、リップル強度が0.6dBもある。これに対して、L層/H層の積層体を配置したものは、設計波長λ=1550nmからずれた部分における透過率の落ち込みがなくなり、挿入損失が0.2dBと大きく改善することがわかる。
また、設計波長λ=1550nmにおける透過率が向上することがわかる。
【0111】
従来のキャビティ構造における反射率係数|r|は、設計波長λにおいて式(8)となる。
これに対し、実施の形態3に示す構造では、式(13)のようになる。石英基板1、第2の光学媒質層3(H層)、第1の光学媒質層2(L層)の屈折率を代入すると、式(8)から求められる反射率係数|r|よりも小さな値になる。
また、L層/H層の積層体を配置することによって、図12に示すように、バンドパスフィルタ特性がより矩形になることがわかる。
【0112】
実施の形態3では、全層の数が131層であるが、所望のフィルタ幅やクロストーク幅W(C)を得るために、適宜第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)の層数を変化させて光学多層膜フィルタを構成した場合においても同様の効果が得られる。
【0113】
また、キャビティ層4が第2の光学媒質により形成された場合の他の例を説明する。
具体的な構造は、図13に示すように、透明基板1上に、第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば20層積層され、その上にキャビティ層4(2H層)が形成され、その上に第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)とが交互に例えば43層積層され、その上にキャビティ層4(2H層)が形成され、その上に第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)とが交互に例えば43層積層され、その上にキャビティ層4(2H層)が形成され、その上に第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)が交互に例えば20層積層された従来のキャビティ構造の表面層の上に、第1の光学媒質層2(L層)を形成した構造である。この場合の設計波長λにおける特性マトリックス(M)は式(12)となるため、挿入損失の増大を防ぎながらバンドパスフィルタ特性を向上させることができる。
この場合においても、所望のフィルタ幅やクロストーク幅W(C)を得るために、適宜第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)の層数を変化させて光学多層膜フィルタを構成した場合においても同様の効果が得られる。
【0114】
また、製造方法は、実施の形態1と同様に、ECRスパッタ装置を用いて、3つのECRプラズマ源に、それぞれ、シリコンターゲットとタンタルターゲットを設置して、第1の光学媒質層2(L層)として二酸化シリコンを、第2の光学媒質層3(H層)として五酸化タンタル堆積することによって、形成することができる。
また、実施の形態3においても、図6に示したように、酸素流量を変化させることにより、屈折率を変化させることができるため、フィルタ特性を調整することができる。ECRスパッタ装置において、ターゲットの材質と反応性ガスの流量(分量)の選択で、屈折率を制御することにより、最適な屈折率を選択することによって、最適なフィルタ特性を得ることができる。
【0115】
次に、実施の形態4に係る光学多層膜フィルタについて説明する。
上記の実施の形態において、従来の3キャビティ構造と比較して説明したが、3キャビティ以上のマルチキャビティ構造にも有効である。例として、キャビティ数が4の4キャビティ構造で説明する。キャビティ層4は、第1の光学媒質により形成した。
【0116】
具体的な構造は、図14に示すように、透明基板1上に、第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば21層積層され、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。その上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば43層積層されており、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。その上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば45層積層され、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。その上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば43層積層され、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。さらにその上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば20層積層されている。この時、表面層は、第1の光学媒質層2(L層)である。この時点での特性マトリックス(M)は、式(7)となる。さらに表面層上に、第2の光学媒質層3(H層)を形成し、続いて、第1の光学媒質層2(L層)を形成(L層/H層の積層体と呼ぶ)した構造となっている。したがって、全体で178層の多層膜となっている。
【0117】
基板1としては、屈折率1.47の透明基板、第1の光学媒質層2(L層)として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)、第2の光学媒質層3(H層)として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta)を用いる。キャビティ層4(2L層)として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)を用いる。
それぞれの光学膜厚は、バンドパスフィルタとしての設計波長(以下、設計波長と呼ぶ)をλ=1550nmとした場合に、第1の光学媒質層2(L層)および第2の光学媒質層3(H層)は、これらの光学膜厚がそれぞれ、設計波長λに対して、λ/4の整数倍になるような膜厚で形成する。また、キャビティ層4(2L層)は、このキャビティ層4(2L層)の光学膜厚が、設計波長λに対して、λ/2の整数倍になるような膜厚で形成する。
具体的には、第1の光学媒質層2(L層)は261.82nm,第2の光学媒質層3(H層)は181.07nmである。また、キャビティ層4(2L層)は523.64nmである。
【0118】
図15は、図14に示した光学多層膜フィルタのようにL層/H層の積層体を表面層上に配置した場合のフィルタ透過特性である。従来のキャビティ構造と比較するために、L層/H層の積層体を配置しない従来の4キャビティ構造のフィルタ透過特性も合わせて示す。従来の4キャビティ構造では、挿入損失とリップル強度が1.5dBもある。これに対して、L層/H層の積層体を配置したものは、設計波長λ=1550nmからずれた部分における透過率の落ち込みがなくなり、挿入損失が0.2dB、リップル強度が約0dBと大きく改善することがわかる。
また、設計波長λ=1550nmにおける透過率が向上することがわかる。
【0119】
従来のキャビティ構造における反射率係数|r|は、設計波長λにおいて、式(8)となる。
これに対し、実施の形態4に示す構造では、式(16)となる。石英基板、第2の光学媒質層3(H層)、第1の光学媒質層2(L層)の屈折率を代入すると、式(8)から求められる反射率係数|r|よりも小さな値になる。
また、L層/H層の積層体を配置することによって、図15に示すように、バンドパスフィルタ特性がより矩形になることがわかる。
【0120】
実施の形態4では、全層の数が178層であるが、所望のフィルタ幅やクロストーク幅W(C)を得るために、適宜第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)の層数を変化させて光学多層膜フィルタを構成した場合においても同様の効果が得られる。
【0121】
さらに、図16に示すように、従来のキャビティ構造に、第1の光学媒質層2(L層)を配置した構造においても有効である。設計波長λにおける特性マトリックス(M)は式(12)となり、挿入損失の増大を防止しながらバンドパスフィルタ特性を向上させることができる。
【0122】
さらに、実施の形態4においては、キャビティ層4が第1の光学媒質により形成した場合について説明したが、キャビティ層4を第2の光学媒質により構成した場合にも有効である。
この場合、第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)とを交互に積層するという規則性を保つために、適宜第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)の層数を変化させる必要がある。
【0123】
また、製造方法は、実施の形態1と同様に、ECRスパッタ装置を用いて、2つのECRプラズマ源に、それぞれ、シリコンターゲットとタンタルターゲットを設置して、第1の光学媒質層2(L層)として二酸化シリコンを、第2の光学媒質層3(H層)として五酸化タンタルを堆積することによって、形成することができる。
また、実施の形態4においても、図6に示したように、酸素流量を変化させることにより、屈折率を変化させることができるため、フィルタ特性を調整することができる。ECRスパッタ装置において、ターゲットの材質と反応性ガスの流量(分量)の選択で、屈折率を制御することにより、最適な屈折率を選択することによって、最適なフィルタ特性を得ることができる。
【0124】
次に、実施の形態5に係る光学多層膜フィルタについて説明する。
これまでの実施の形態において、従来の3キャビティ構造と4キャビティ構造について比較して説明したが、それ以上のマルチキャビティ構造にも、有効である。キャビティ数が5の5キャビティ構造を例として説明する。キャビティ層4は第1の光学媒質により形成した。
【0125】
具体的な構造は、図17に示すように、透明基板1上に、第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば21層積層され、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。その上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば43層積層され、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。その上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば45層積層され、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。その上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば45層積層され、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。その上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば43層積層され、その上にキャビティ層4(2L層)が形成されている。さらにその上に第2の光学媒質層3(H層)と第1の光学媒質層2(L層)とが交互に例えば21層積層されている。この時、表面層は、第2の光学媒質層3(H層)である。この時点での設計波長λにおける特性マトリックス(M)は、式(7)となる。さらにその表面層上に、第2の光学媒質層3(H層)を形成し、さらにその上に第1の光学媒質層2(L層)を形成(L層/H層の積層体)した構造となっている。したがって、全体で225層の多層膜となっている。
【0126】
基板1としては、屈折率1.47の透明基板、第1の光学媒質層2(L層)として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)、第2の光学媒質層3(H層)として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta)を用いる。キャビティ層4(2L層)として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO)を用いる。
【0127】
それぞれの光学膜厚は、バンドパスフィルタとしての設計波長(以下、設計波長と呼ぶ)をλ=1550nmとした場合に、第1の光学媒質層2(H層)および第2の光学媒質層3(L層)は、これらの光学膜厚がそれぞれ、設計波長λに対して、λ/4の整数倍になるような膜厚で形成する。また、キャビティ層4(2L層)は、このキャビティ層4(2L層)の光学膜厚が、設計波長λに対して、λ/2の整数倍になるような膜厚で形成する。
具体的には、第1の光学媒質層2(L層)は261.82nm,第2の光学媒質層3(H層)は181.07nmである。また、キャビティ層4は、523.64nmである。
【0128】
図18は、図17に示した光学多層膜フィルタのようにL層/H層の積層体を表面層上に配置した場合のフィルタ透過特性である。従来のキャビティ構造と比較するために、L層/H層の積層体を配置しない従来の5キャビティ構造のフィルタ透過特性も合わせて示す。従来の5キャビティ構造では、リップル強度が1dBもある、これに対して、L層/H層の積層体を配置したものは、設計波長λ=1550nmからずれた部分における透過率の落ち込みがなくなり、挿入損失とリップル強度が0.2dBと大きく改善することがわかる。
また、設計波長λ=1550nmにおける透過率が向上することがわかる。
【0129】
従来のキャビティ構造における反射率係数|r|は、設計波長λにおいて式(8)の様になる。それに対し、実施の形態5に示す構造では、式(16)の様になる。石英基板、第2の光学媒質層3(H層)、第1の光学媒質層2(L層)の屈折率を代入すると、式(8)から求められる反射率係数|r|よりも小さな値になる。
また、L層/H層の積層体を配置することによって、図18で示すように、バンドパスフィルタ特性がより矩形になることがわかる。
【0130】
実施の形態5では、全層の数が225層であるが、所望のフィルタ幅やクロストーク幅W(C)を得るために、適宜第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)の層数を変化させて光学多層膜フィルタを構成した場合においても同様の効果が得られる。
【0131】
さらに、図19に示すように、従来の5キャビティ構造において、基板1と反対側の面を構成する第1の光学媒質層2上に、第1の光学媒質層2(L層)を配置した構造においても有効である。設計波長λにおける特性マトリックス(M)は式(12)となり、挿入損失の増大を防ぎながらバンドパスフィルタ特性を向上させることができる。
【0132】
さらに、実施の形態5では、キャビティ層4を第1の光学媒質で構成しているが、第2の光学媒質により構成した場合にも同様の効果が得られる。
この場合、第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)とを交互に積層するという規則性を保つために、適宜第1の光学媒質層2(L層)と第2の光学媒質層3(H層)の層数を変化させる必要がある
【0133】
また、製造方法は、実施の形態1と同様に、ECRスパッタ装置を用いて、3つのECRプラズマ源に、それぞれ、シリコンターゲットとタンタルターゲットを設置して、第1の光学媒質層2(L層)として二酸化シリコンを、第2の光学媒質層3(H層)として五酸化タンタルを堆積することによって、形成することができる。
また、実施の形態5においても、図6に示したように、酸素流量を変化させることにより、屈折率を変化させることができるため、フィルタ特性を調整することができる。ECRスパッタ装置において、ターゲットの材質と反応性ガスの流量(分量)の選択で、屈折率を制御することにより、最適な屈折率を選択することによって、最適なフィルタ特性を得ることができる。
【0134】
【発明の効果】
本発明によれば、従来のキャビティ構造を有し、バンドパスフィルタとしての設計波長λにおける特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が1であるキャビティ構造体を形成し、このキャビティ構造体の上に、第1の光学媒質層と第2の光学媒質層のうち少なくとも1層からなる付加層を形成した光学多層膜フィルタの特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が0、第1行第2列がi・(1/n)、第2行第1列がi・(n)、第2行第2列が0、または、第1行第1列が0、第1行第2列がi・(−1/n)、第2行第1列がi・(−n)、第2行第2列が0、または、第1行第1列が(n/n)、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が(n/n)、または、第1行第1列が(−n/n)、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が(−n/n)である場合に、光学媒質層の屈折率nを1.2程度、または比n/nを1.2程度とでき、透過率を向上させることができるため、入力損失の増大を防止することができる。
【0135】
また、フィルタ特性の形状を調節し、また、リップルを少なくし、また、設計波長における透過率を向上させることにより、光通信に適応できるバンドパス特性を有する光学多層膜フィルタを得ることができる。さらに、従来のキャビティ構造よりも少ない層数で同様のフィルタ特性を得ることができ、経済的に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】基板の屈折率と透過率との関係を説明するための図である。
【図2】光学媒質層の屈折率と透過率との関係を説明するための図である。
【図3】実施の形態1に係る光学多層膜フィルタの構造を説明するための図である。
【図4】実施の形態1に係る光学多層膜フィルタのフィルタ特性を説明するための図である。
【図5】電子サイクロトロン共鳴(ECR)装置を説明するための概略図である。
【図6】電子サイクロトロン共鳴(ECR)装置を用いて作製した膜の特性を示す図である。
【図7】実施の形態2に係る光学多層膜フィルタの構造を説明するための図である。
【図8】実施の形態2に係る光学多層膜フィルタのフィルタ特性を説明するための図である。
【図9】実施の形態2に係る光学多層膜フィルタの他の構造を説明するための図である。
【図10】実施の形態2に係る光学多層膜フィルタの他の構造を説明するための図である。
【図11】実施の形態3に係る光学多層膜フィルタの構造を説明するための図である。
【図12】実施の形態3に係る光学多層膜フィルタのフィルタ特性を説明するための図である。
【図13】実施の形態3に係る光学多層膜フィルタの他の構造を説明するための図である。
【図14】実施の形態4に係る光学多層膜フィルタの構造を説明するための図である。
【図15】実施の形態4に係る光学多層膜フィルタのフィルタ特性を説明するための図である。
【図16】実施の形態4に係る光学多層膜フィルタの他の構造を説明するための図である。
【図17】実施の形態5に係る光学多層膜フィルタの構造を説明するための図である。
【図18】実施の形態5に係る光学多層膜フィルタのフィルタ特性を説明するための図である。
【図19】実施の形態5に係る光学多層膜フィルタの他の構造を説明するための図である。
【図20】光学多層膜フィルタの原理を説明するための図である。
【図21】光学多層膜フィルタを説明するための図である。
【図22】光学多層膜フィルタの特性における性能を説明するための図である。
【図23】光学多層膜フィルタの構造を説明するための図である。
【図24】光学多層膜フィルタの透過特性を示す図である。
【図25】マルチキャビティ構造の光学多層膜フィルタの構造を説明するための図である。
【図26】従来の2キャビティの光学多層膜フィルタの透過特性を説明するための図である。
【図27】従来の3キャビティの光学多層膜フィルタの透過特性を説明するための図である。
【図28】従来の4キャビティと5キャビティの光学多層膜フィルタの透過特性を説明するための図である。
【符号の説明】
1…基板、2…第1の光学媒質層、3…第2の光学媒質層、4…キャビティ層、5…シングルキャビティ(1キャビティ)、6…基板ホルダ、7…ターゲット、8…ECR領域、9…磁気コイル、10…高周波電力、11…石英窓、12…光学媒質膜、13…第1の光学媒質膜、14…第2の光学媒質膜、15…第k−2の光学媒質膜、16…第k−1の光学媒質膜、17…第kの光学媒質膜。

Claims (9)

  1. 第1の光学媒質からなる第1の光学媒質層と第1の光学媒質より高い屈折率を有する第2の光学媒質からなる第2の光学媒質層とを交互に積層した複数の積層体を、前記第1の光学媒質または前記第2の光学媒質からなるキャビティ層を介して接続したキャビティ構造を有し、バンドパスフィルタとしての設計波長λにおける特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が1であるキャビティ構造体と、
    このキャビティ構造体上に積層され、前記第1の光学媒質層と前記第2の光学媒質層のうち少なくとも1層からなる付加層と、
    を有し、
    前記第1の光学媒質の屈折率をn、前記第2の光学媒質の屈折率をnとした場合に、前記キャビティ構造体と前記付加層とからなる光学多層膜フィルタの特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が0、第1行第2列がi・(1/n)、第2行第1列がi・(n)、第2行第2列が0、または、第1行第1列が0、第1行第2列がi・(−1/n)、第2行第1列がi・(−n)、第2行第2列が0であることを特徴とする光学多層膜フィルタ。
  2. 第1の光学媒質からなる第1の光学媒質層と第1の光学媒質より高い屈折率を有する第2の光学媒質からなる第2の光学媒質層とを交互に積層した複数の積層体を、前記第1の光学媒質または前記第2の光学媒質からなるキャビティ層を介して接続したキャビティ構造を有し、バンドパスフィルタとしての設計波長λにおける特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が1であるキャビティ構造体と、
    このキャビティ構造体上に積層され、前記第1の光学媒質層と前記第2の光学媒質層のうち少なくとも1層からなる付加層と、
    を有し、
    前記第1の光学媒質の屈折率をn、前記第2の光学媒質の屈折率をnとした場合に、前記キャビティ構造体と前記付加層とからなる光学多層膜フィルタの特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が(n/n)、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が(n/n)、または、第1行第1列が(−n/n)、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が(−n/n)であることを特徴とする光学多層膜フィルタ。
  3. 第1の光学媒質からなる第1の光学媒質層と第1の光学媒質より高い屈折率を有する第2の光学媒質からなる第2の光学媒質層とを交互に積層した複数の積層体を、前記第1の光学媒質または前記第2の光学媒質からなるキャビティ層を介して接続したキャビティ構造を有し、バンドパスフィルタとしての設計波長λにおける特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が−1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が−1であるキャビティ構造体と、
    このキャビティ構造体上に積層され、前記第1の光学媒質層と前記第2の光学媒質層のうち少なくとも1層からなる付加層と、
    を有し、
    前記第1の光学媒質の屈折率をn、前記第2の光学媒質の屈折率をnとした場合に、前記キャビティ構造体と前記付加層とからなる光学多層膜フィルタの特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が0、第1行第2列がi・(1/n)、第2行第1列がi・(n)、第2行第2列が0、または、第1行第1列が0、第1行第2列がi・(−1/n)、第2行第1列がi・(−n)、第2行第2列が0であることを特徴とする光学多層膜フィルタ。
  4. 第1の光学媒質からなる第1の光学媒質層と第1の光学媒質より高い屈折率を有する第2の光学媒質からなる第2の光学媒質層とを交互に積層した複数の積層体を、前記第1の光学媒質または前記第2の光学媒質からなるキャビティ層を介して接続したキャビティ構造を有し、バンドパスフィルタとしての設計波長λにおける特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が−1、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が−1であるキャビティ構造体と、
    このキャビティ構造体上に積層され、前記第1の光学媒質層と前記第2の光学媒質層のうち少なくとも1層からなる付加層と、
    を有し、
    前記第1の光学媒質の屈折率をn、前記第2の光学媒質の屈折率をnとした場合に、前記キャビティ構造体と前記付加層とからなる光学多層膜フィルタの特性マトリックスの行列成分の第1行第1列が(n/n)、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が(n/n)、または、第1行第1列が(−n/n)、第1行第2列が0、第2行第1列が0、第2行第2列が(−n/n)であることを特徴とする光学多層膜フィルタ。
  5. 請求項1に記載の光学多層膜フィルタにおいて、
    前記キャビティ構造体は、前記キャビティ層を4層以上有し、
    積層された両端の層を構成する前記光学媒質が異なる場合に、前記付加層は、前記第1の光学媒質からなり、前記両端の層のうち前記第1の光学媒質により形成された側に積層されることを特徴とする光学多層膜フィルタ。
  6. 請求項2に記載の光学多層膜フィルタにおいて、
    前記キャビティ構造体は、前記キャビティ層を4層以上有し、積層された両端の層を構成する前記光学媒質が異なる場合に、前記付加層は前記第2の光学媒質層と前記第1の光学媒質層とを順次積層した多層膜からなり、前記両端の層のうち前記第1の光学媒質が形成された側に積層されることを特徴とする光学多層膜フィルタ。
  7. 請求項3に記載の光学多層膜フィルタにおいて、
    前記キャビティ構造体は、前記キャビティ層を3層以上有し、積層された両端の層が前記第2の光学媒質により形成されている場合に、
    前記付加層は、前記第1の光学媒質層、前記第2の光学媒質層と前記第1の光学媒質層とを順次積層した多層膜、前記第1の光学媒質層と前記第2の光学媒質層と前記第2の光学媒質層とを順次積層した多層膜、前記第1の光学媒質層と前記第2の光学媒質層と前記第1の光学媒質層と前記第1の光学媒質層とを順次積層した多層膜のうちいずれか一つからなることを特徴とする光学多層膜フィルタ。
  8. 請求項4に記載の光学多層膜フィルタにおいて、
    前記キャビティ構造体は、前記キャビティ層を3層以上有し、積層された両端の層が前記第2の光学媒質により形成されている場合に、前記付加層は、前記第2の光学媒質層と前記第1の光学媒質層とを順次積層した多層膜からなることを特徴とする光学多層膜フィルタ。
  9. 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の光学多層膜フィルタにおいて、
    前記第1の光学媒質層と、前記第2の光学媒質層とを、これらの光学膜厚がそれぞれ、設計波長λに対して、λ/4の整数倍になるような膜厚で形成し、
    前記キャビティ層を、この前記キャビティ層の光学膜厚が、設計波長λに対して、λ/2の整数倍になるような膜厚で形成したことを特徴とする光学多層膜フィルタ。
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