JP2004029391A - V溝製作用型の製造方法、その型を用いたv溝構造物品の製造方法及び得られるv溝構造物品 - Google Patents

V溝製作用型の製造方法、その型を用いたv溝構造物品の製造方法及び得られるv溝構造物品 Download PDF

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Abstract

【課題】シリコン基板にV溝構造を精度よく形成して型を製造する。
【解決手段】シリコン基板20の(100)面に熱酸化膜(SiO)22を形成し、リソグラフィーとドライエッチングにより熱酸化膜22をパターン化する。この基板に対してOアッシング処理を1分間行ってレジストを除去した後、キャロス洗浄により残っているレジストを除去し、1%フッ酸水溶液で2分間エッチングして酸化薄膜28を除去する。次に85℃のKOH溶液を用いてエッチングを行い、断面がV形状で紙面垂直方向に延びたV溝30を形成する。次にキャロス洗浄を行った後に、7%フッ酸水溶液でエッチングを行って残っている酸化膜22のマスクを除去する。
【選択図】   図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光通信用アレー型多心光コネクタ、光学反射面(入射光を、反射面2面を使用して入射方向に戻すもの)のような複数のV溝をもつ物品、それらの物品の製造方法及びその製造方法で使用する型の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光通信用アレー型多心光コネクタでは、複数の光ファイバーの先端を規則正しく配列して接続するために、光ファイバーを1本ずつ配列するV溝が互いに平行に等ピッチで形成された整列部材が使用される。そのような整列部材としては、シリコン(Si)基板にV溝が形成されたものが使用されている。
【0003】
シリコン基板にV溝を形成する方法として、Si(100)基板の表面にフォトリソグラフィー法によってレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをマスクとしてアルカリエッチング液(KOH液)によってウエットエッチングしている。このエッチングではシリコン基板は単結晶面のエッチング速度の差から選択的にエッチングされ、エッチング速度の遅い(111)面が表面に現われる。この結果、エッチング後の表面には断面がV形状の溝(V溝)が形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来から様々な形でウエットエッチングのプロセスは行われてきた。しかし、エッチングムラや、転写されたパターンの高精度化が困難であるなどの理由から、非常に高精度な微細3次元形状をウエットプロセスで作成する場合、所望の性能が得られないことがあった。レジストパターンをマスクにしてシリコン基板表面のウエットエッチングを行う方法は、サイドエッチ量の制御や面内バラツキの低減が困難で、パターンの高精度化が難しく、高精度な微細3次元形状を得るには不向きとされてきた。
【0005】
そこで本発明はシリコン基板にウエットエッチングにより精密な三次元構造のV溝構造を形成する方法と、その方法により得られたV溝構造を型としてV溝構造物品を製造する方法、さらにはその製造方法により得られる物品を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シリコン基板表面に周期的なV溝構造をもつ物品を製造する型を製造する方法であり、以下の工程(A)から(D)を備えたことを特徴とする。
(A)(100)面を有するシリコン基板表面にアルカリ溶液に対して耐性をもつ皮膜を形成する工程、
(B)前記皮膜上に、互いに平行に延びる帯状開口部をもつ縞状のレジストパターンを形成するフォトリソグラフィー工程、
(C)前記レジストパターンをマスクとして前記皮膜をエッチングし前記皮膜に前記レジストパターンを転写し前記レジストパターン開口部のシリコン基板を露出させるドライエッチング工程、及び
(D)前記レジストパターンを除去した後、前記皮膜パターンをマスクとして前記シリコン基板表面をアルカリエッチング液でウエットエッチングして断面がV字型のV溝を形成する異方性ウエットエッチング工程。
【0007】
アルカリ溶液に対して耐性をもつ皮膜の例は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜もしくはシリコン酸化膜とシリコン窒化膜の積層膜、又は金属膜である。特に、シリコン酸化膜の場合には、シリコン基板の(100)面を熱酸化して形成した熱酸化膜、又は窒素雰囲気中で窒素化した窒化膜であることが好ましい。窒化膜である場合にはアンダーコートとして酸化膜が成膜されていることが望ましい。
【0008】
このような皮膜をウエットプロセスでエッチングしてパターン化しようとすると、ウエットエッチングは等方性エッチングとなり、また反応ムラが存在するために高精度のパターンが得られない。そこで、本発明によりそのような皮膜をドライエッチングでパターン化することにより、シリコン基板上に精度のよい皮膜パターンによるマスクを形成することができる。ドライエッチング法によれば、ウエットエッチング法で転写する場合に比べて垂直性よく転写することが可能となるからである。
【0009】
このとき、レジスト表面の荒れが熱酸化膜皮膜又は窒化膜皮膜のパターンに転写されると精度低下の原因となるので、レジストパターン開口部の皮膜が除去された時にまだレジストが残っているように条件を設定しておく。
【0010】
工程(D)では、皮膜パターンをマスクとするので、シリコン基板表面に付着している異物を効率よく取り除くことが可能となり、エッチングムラがなくなり、高精度の形状(ライン直線性、ライン幅、溝角度、溝深さ等)を形成することを可能となる。
【0011】
工程(B)でのフォトリソグラフィー工程では、レジストパターンの帯状開口部の延びる方向はシリコン基板のb軸〈010〉に平行もしくは垂直な方向、又はc軸〈001〉に平行もしくは垂直な方向であるようにする。
【0012】
b軸〈010〉又はc軸〈001〉は種々の方法により決定されているが、新しい方法として、(100)面を有するシリコン基板表面に互いに僅かずつ角度を変化させた線状開口をもつレジストパターンを形成する工程、そのレジストパターンをマスクとして前記シリコン基板をアルカリエッチング液によりエッチングするウエットエッチング工程、及びそのウエットエッチング工程後に前記シリコン基板に形成された線状パターンの直線性に基づいてb軸〈010〉又はc軸〈001〉を決定する結晶軸決定工程を備えた方法を挙げることができる。
【0013】
この場合、レジストパターンに設ける線状開口は、±1°の角度範囲で0.1°刻みで変化させる。変化させる角度範囲を±1°と設定したのは、通常、シリコン基板の購入仕様書は「±0.5°」が規格となっているからである。
【0014】
ウエットエッチングによりシリコン基板に形成された線状パターンの直線性の評価の方法としては、次の2つの方法がある。
▲1▼マスクパターンの幅と実際にシリコン基板に形成されたパターンの幅との寸法差による評価。
▲2▼マスクパターンの線と実際にシリコン基板に形成されたパターンの線との直線性の差による評価。(角度がb軸〈010〉又はc軸〈001〉からずれていると、直線性が悪くなり、直線が階段状になる。)
【0015】
これらの方法によれば、X線測定の場合とほぼ同じ精度で決定することができ、結果として、±0.1°の精度で軸を決定することができる。
なお、X線測定の場合は、基板を治具に装着する際の誤差が大きいという問題がある。
【0016】
工程(B)でのフォトリソグラフィー工程では、レジストのポストベーク時に紫外線光の照射を併用することでレジストパターンを表面硬化させることが好ましい。これによって、レジストの熱変形を抑え、パターン端部の垂直性を維持したまま硬化させることができるので、ライン/スペースの直線性が良好となる。
【0017】
工程(C)でのドライエッチング工程の後に、そのドライエッチング時にシリコン基板露出表面に付着した有機物を除去する酸素アッシング工程を備えていることが好ましい。工程(C)でのドライエッチングでは、反応性ガス種、エッチング条件又はエッチング装置によっては、シリコン基板の表面にCxFy系のポリマーが付着する。そこで酸素アッシングでこのポリマーを除去する。
【0018】
このとき、酸素アッシングで除去しきれなかった有機物はそのままにしておくと後工程のアルカリ液によるエッチングの際に、エッチングを妨害するエッチングブロッカーとして働くことでアルカリエッチング液によるウエットエッチングの際にエッチングムラの原因となるので、基板にキャロス洗浄を施すことで、基板表面の有機物を完全に除去するのが好ましい。キャロス洗浄は硫酸とHの混合液による洗浄方法である。
【0019】
この酸素アッシング及びキャロス洗浄の際、シリコン基板表面が酸化しシリコン酸化膜の薄膜が形成される。この薄膜はアルカリ、例えばKOHとの反応性が悪く、エッチングムラの原因となる。そのため、この酸素アッシング工程及びキャロス洗浄の後に、この工程でシリコン基板露出表面に形成されたシリコン酸化物薄膜をフッ酸液で短時間処理して除去するライトエッチング工程を備えていることが好ましい。
【0020】
酸素アッシングとライトエッチングによる前処理を施すと、アルカリ液によるシリコン基板のエッチング時にシリコン基板表面に不純物がなくなるので、ムラのないエッチング反応が可能となり、高精度の微細3次元形状を得ることができる。従来のようにレジストパターンをマスクとしてシリコン基板をアルカリ異方性エッチングすると、▲1▼レジストがアルカリエッチング液で剥離したり、▲2▼アルカリエッチング液によるサイドエッチングで密着不良となる。その結果、溝幅が広がる欠点が生じる。
【0021】
工程(D)の異方性ウエットエッチング工程は、アルカリエッチング液の濃度を段階的に変更して行うことが好ましい。例えば、アルカリエッチング液の濃度を段階的に高めていくことによって、実施例で詳しく述べるように、エッチング速度を高めに維持したままで、仕上げ段階では鏡面に近い表面粗さを得ることができるようになる。
【0022】
また、工程(D)の異方性ウエットエッチング工程をムラなく行わせるために、その異方性ウエットエッチング工程の前にエキシマ光によるオゾン洗浄を行うのが好ましい。オゾン洗浄を行うとシリコン基板表面の濡れ性が改善され、ウエットエッチングが速やかにムラなく進行しやすくなる。
【0023】
本発明はまた、上記の方法により製造された型を用い、以下の工程を備えてシリコン基板でない基板の表面に周期的なV溝構造をもつV溝構造物品の製造方法も含んでいる。
【0024】
(A)V溝構造物品を製作しようとする目的基板の平坦な表面と本発明による型との間に光又は熱により硬化する硬化性材料層を挟み込み、その材料層を硬化させて面内方向と膜厚方向の両方に分布をもつその材料によるパターンを形成する工程、及び
【0025】
(B)その材料パターンと前記基板を同時にドライエッチングすることによりその材料パターンを前記基板に転写して前記基板表面に周期的なV溝構造をもつパターンを形成するドライエッチング工程。
【0026】
材料パターンを基板に転写するドライエッチング工程では、ドライエッチングの選択比とエッチング時間の少なくともいずれかを制御し、得られるV溝構造の角度及び/又は深さを制御することが好ましい。
【0027】
本発明は、さらにこのように型を用いて目的基板に転写されることにより製造された物品も含んでおり、そのような物品は複数の光ファイバーを固定するための整列部材や、他の微細3次元形状を有する物品である。
【0028】
本発明はシリコン基板の結晶軸決定方法も含んでいる。その結晶軸決定方法は、(100)面を有するシリコン基板表面に互いに僅かずつ角度を変化させた線状開口をもつレジストパターンを形成する工程、そのレジストパターンをマスクとしてシリコン基板をアルカリエッチング液によりエッチングするウエットエッチング工程、及びそのウエットエッチング工程後にシリコン基板に形成された線状パターンの直線性に基づいてb軸〈010〉又はc軸〈001〉を決定する結晶軸決定工程を備えている。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1及び図2により一実施例を説明する。
(A)結晶面として(100)面を平面に有し、OF(オリフラ)部にb軸を有するシリコン基板20を使用する。OF部はシリコン基板20の円形のウエハの外形基準となる外周部の切り欠きである。
【0030】
このシリコン基板20の表面を熱酸化するが、このときHガスとOガスを導入し1100℃で熱酸化することにより、シリコン表面に熱酸化膜(SiO)22を成膜する。
【0031】
この基板を洗浄するが、その洗浄は、キャロス(CAROS)洗浄、SC−1洗浄及びエキシマ洗浄の順に行う。更に基板にOAP処理(レジストの密着性向上処理)を施す。ここで、キャロス洗浄は先に述べたように硫酸とHの混合液による洗浄方法、SC−1洗浄はNHOHとHの混合液による洗浄方法である。また、エキシマ洗浄はOガスを流しながらエキシマ光を照射してOを発生させ、基板表面の有機物質を酸化して除去する洗浄方法である。
【0032】
(B)次に熱酸化膜22上にレジスト(東京応化社製:IP2250−13CP)を1.5μm塗布する。この時の塗布方法としてはレジスト表面荒さのばらつきを無くするためにスピンコート法を用いる。スピンコートの条件は回転数1200rpmで20秒間程度である。
【0033】
次にこのレジストに対して、ホットプレートを用い、100℃で3分間のプリベークを行う。
プリベークを行ったレジストに対して、目的のライン/スペースの微細形状がパターン化されたマスクを用いて、220mjの光を照射する。光の照射量はレジストの感度から最適な値を実験的に設定し行うと、より精度の高いパターンを転写することができる。
【0034】
次にレジストを現像(現像時間38s)し、リンスするとレジストパターン24が形成される。
レジストパターン24に対してホットプレートを用いて150℃で3分間程度のポストベークを行う。
【0035】
(C)次に酸化膜22に対して、レジストパターン24をマスクとして、RIE装置を用い上部電極パワー:1250W、下部電極(RF)パワー:200Wでドライエッチング処理を行う。エッチング条件の一例は、エッチングガスがCF:20sccm、CHF:10sccm、Ar:5sccmで、時間が3分間である。このとき、レジストパターン24の開口部の酸化膜22は完全に除去され、またレジストパターン24は残っている状態となる。
【0036】
(D)次にこの基板に対してOアッシング処理を1分間行い、レジスト24を除去する。この処理により、先のドライエッチング時にシリコン基板20の露出面に付着したCxFy系のポリマーを中心とする有機物26も除去できる。
【0037】
次にキャロス洗浄を行う。この洗浄処理により基板上に残っているレジストを完全に除去する。ここでの処理が不十分であると後工程のアルカリ液によるエッチングの際に、エッチングを妨害するエッチングブロッカーとして働くことでエッチングムラの原因となる。
【0038】
(E)次に7%フッ酸水溶液で2分間エッチング(ライトエッチング)を行う。この処理により、先のOアッシング及びキャロス洗浄処理時にシリコン基板20の露出面に生成した酸化薄膜28を除去する。
【0039】
ここで、次のKOH溶液による異方性ウエットエッチング工程に進む前に、エキシマ光によるオゾン洗浄を行う。上の工程(E)修了後のシリコン基板表面は親水性である。この状態で次のKOH溶液によるウエットエッチングを行うと、濡れ性がよくなく、ムラになる。これを改善するためにオゾン洗浄を実施するのである。オゾン洗浄を実施するとシリコン基板表面の濡れ性が改善され、ウエットエッチングが速やかにムラなく行われる。また、シリコンとKOHの反応で、以下の反応式のように、水素ガスが気泡となって発生する。
Si + 2KOH + HO = KSiO + 2H
この気泡が反応を阻害するので、気泡を微小気泡の状態で効率よく除去することが大切である。このために、シリコン基板表面の濡れ性をよくすることが重要なのである。
【0040】
(F)次にKOH溶液をエッチング液として用いてエッチングを行う。このエッチングは異方的に進行し、断面がV形状で紙面垂直方向に延びたV溝30が形成される。このエッチングは自動KOHエッチング装置を用いて、KOH溶液の濃度を段階的に変更して行う。具体的には、エッチング液の温度を85℃として42分間行うが、その濃度は次のように設定する。
【0041】
▲1▼KOH初期濃度を13%として13分間行う。
このときのシリコンのエッチング速度は速く、2.0μm/分である。13分間のエッチングによるエッチング量は26μmである。ただし、この条件では表面の粗れが大きい。
【0042】
▲2▼中間段階として、KOH濃度を自動的に23%に変更して14分間行う。
このときのシリコンのエッチング速度は1.8μm/分である。14分間のエッチングによるエッチング量は25μmである。
【0043】
▲3▼最終段階として、KOH濃度を自動的に30%に変更して15分間行う。
このときのシリコンのエッチング速度は1.6μm/分である。15分間のエッチングによるエッチング量は24μmである。
【0044】
これにより、全エッチング深さは75μmとなる。このエッチング条件の濃度変更の前後では、濃度は約5分間をかけて緩やかに変化させる。濃度変更は自動濃度調節機で実施する。
【0045】
また、自動KOHエッチング装置内では、シリコン基板がカムによって上下運動と回転運動を繰り返して実施され、シリコン基板の表面に発生する水素ガス(気泡)の除去が円滑に行われる。
【0046】
このようにKOH濃度を変化させると、低濃度では反応が速いために気泡の滞在時間が長くなり、気泡が大きくなる。そのため、表面反応が気泡によって阻害され、表面粗さが粗くなる。高濃度では反応が遅いために小さな気泡の状態で脱離する。そのため、表面粗さが小さくなる。その結果として、エッチング速度を高めに維持したままで、仕上げ時点では鏡面に近い表面粗さを得ることができる。
【0047】
このアルカリ異方性エッチングは、先の工程(D),(E)における前処理の効果により、ムラの無いエッチングとなる。この点が、従来のようにレジストパターンをマスクとしてシリコン基板をアルカリ異方性エッチングする方法と異なる点であり、従来のようにシリコン基板のエッチングの際にレジストパターンをマスクとすると、露出したシリコン基板表面に対して上のような前処理を行うことはできないからである。
【0048】
(G)次に180秒間のキャロス洗浄を行った後に、7%フッ酸水溶液で20分間のエッチングを行う。この処理により基板20の表面に残っている酸化膜22のマスクを除去する。
【0049】
本発明の方法を用いてシリコン基板表面に(111)面で囲まれた逆四角錘の凹部を形成し、その凹部内面に反射膜を成膜して、逆四角錘の凹部反射面をもつ光学部品を製造することもできる。
【0050】
次に、シリコン基板に形成したV溝をシリコン基板以外の最終使用目的材料に転写する方法を図3により説明する。
ここでは、型20aのV溝構造30の形状は、谷部がV字形に形成されており、V溝30間の山部の頂部が平坦面となった形状に形成しておく。
【0051】
(A)最終使用目的の基板材料32の表面上と、型20aの表面上に光又は熱により硬化する硬化性材料34を適量滴下し、基板材料32と型20aを硬化性材料面で合わせる。基板材料32は例えば石英ガラス基板である。このとき、泡が発生しないようにすることが重要である。この際、基板材料32の表面には接着強度向上の表面処理を施し、型20aには離型処理を施しておくのが好ましい。これらの処理を行うと、硬化性材料34の硬化後に型20aの剥離が容易となる。接着強度向上の表面処理の一例はシランカップリング処理であり、離型処理の一例はフッ素系プライマー処理である。
ここでは基板材料32として透明基板を使用する。
【0052】
(B)次に、基板材料32側から光を照射して硬化性材料34を硬化させる。硬化後の硬化性材料を34aとする。
(C)硬化後の硬化性材料34aから型20aを剥離する。硬化性材料34aに転写された形状は、型20aの表面形状とは凹凸が逆になったものであり、溝30に対応する部分が断面逆V字形の隆起30aとなり、その隆起30a間に谷部が平坦面となったV溝30bが形成される。
【0053】
(D)硬化性材料34aと基板材料32を同時にドライエッチングして硬化性材料34aの形状30a,30bを目的材料である基板材料32に転写する。基板材料32に転写される形状30a’,30b’は、基本的には型20aの表面形状とは逆の凹凸をもつ形状であるが、ドライエッチングの選択比の変更、エッチングエンドポイントの変更等によって溝角度の変更、溝形状の変更が可能となる。図3(D)中に実線と鎖線で示した溝形状は、そのような条件を変えることによって、得られる溝形状が変化することを示している。
【0054】
また、同図中に実線で示したように、硬化性材料34aが完全になくなるまでエッチングせずに幾らか残してエッチングを終了し、その後、残った硬化性材料34aを除去すれば、図3(E)に示されるように、V溝30b’間の山部の頂部が平坦面となったV溝構造が得られる。その山部の頂部の平坦面の平面度は基板材料32の平面度である。
【0055】
【発明の効果】
本発明では、シリコン基板表面に周期的なV溝構造をもつ物品を製造するために、(100)面を有するシリコン基板表面にシリコン酸化膜などの皮膜を形成し、その上にレジストパターンを形成し、ドライエッチングによりそのレジストパターンをその皮膜に転写した後、その皮膜パターンをマスクとしてシリコン基板表面をアルカリエッチングすることにより断面がV字型のV溝を形成するようにしたので、シリコン基板上に精度のよい皮膜パターンによるマスクを形成することができるとともに、皮膜パターンをマスクとするのでシリコン基板表面に付着している異物を効率よく取り除くことが可能となり、エッチングムラがなくなり、高精度の形状を形成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例において、シリコン基板にV溝を形成する工程の前半部を示す工程断面図である。
【図2】同実施例のシリコン基板にV溝を形成する同工程の後半部を示す工程断面図である。
【図3】シリコン基板に形成したV溝をシリコン基板以外の最終使用目的材料に転写する方法を示す工程断面図である。
【符号の説明】
20   シリコン基板
20a  型
22   熱酸化膜
24   レジストパターン
30   V溝
32   最終使用目的の基板材料
34   硬化性材料

Claims (15)

  1. 周期的なV溝構造をもつ物品を製造する型を製造する方法において、以下の工程(A)から(D)を備えたことを特徴とする型の製造方法。
    (A)(100)面を有するシリコン基板表面にアルカリ溶液に対して耐性をもつ皮膜を形成する工程、
    (B)前記皮膜上に、互いに平行に延びる帯状開口部をもつ縞状のレジストパターンを形成するフォトリソグラフィー工程、
    (C)前記レジストパターンをマスクとして前記皮膜をエッチングし前記皮膜に前記レジストパターンを転写し前記レジストパターン開口部のシリコン基板を露出させるドライエッチング工程、
    (D)前記レジストパターンを除去した後、前記皮膜パターンをマスクとして前記シリコン基板表面をアルカリエッチング液でウエットエッチングして断面がV字型のV溝を形成する異方性ウエットエッチング工程。
  2. 前記皮膜はシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜もしくはシリコン酸化膜とシリコン窒化膜の積層膜、又は金属膜である請求項1に記載の型の製造方法。
  3. 前記皮膜は前記シリコン基板の(100)面を熱酸化して形成した熱酸化膜又は窒素雰囲気中で窒素化した窒化膜である請求項2に記載の型の製造方法。
  4. 工程(B)でのフォトリソグラフィー工程では、前記レジストパターンの帯状開口部の延びる方向は前記シリコン基板のb軸〈010〉に平行もしくは垂直又はc軸〈001〉に平行もしくは垂直な方向である請求項1から3のいずれかに記載の型の製造方法。
  5. b軸〈010〉又はc軸〈001〉は次の方法により決定する請求項4に記載の型の製造方法。
    (100)面を有するシリコン基板表面に互いに僅かずつ角度を変化させた線状開口をもつレジストパターンを形成する工程、
    そのレジストパターンをマスクとして前記シリコン基板をアルカリエッチング液によりエッチングするウエットエッチング工程、及び
    そのウエットエッチング工程後に前記シリコン基板に形成された線状パターンの直線性に基づいてb軸〈010〉又はc軸〈001〉を決定する結晶軸決定工程。
  6. 工程(B)でのフォトリソグラフィー工程では、レジストのポストベーク時に紫外線光の照射を併用することでレジストパターンを表面硬化させる請求項1から5のいずれかに記載の型の製造方法。
  7. 工程(C)でのドライエッチング工程の後に、そのドライエッチング時に前記シリコン基板露出表面に付着した有機物を除去する酸素アッシング工程を備えている請求項1から6のいずれかに記載の型の製造方法。
  8. 前記酸素アッシング工程の後に、その酸素アッシング工程で前記シリコン基板露出表面に形成されたシリコン酸化物薄膜をフッ酸液で短時間処理して除去するライトエッチング工程を備えている請求項7に記載の型の製造方法。
  9. 工程(D)の異方性ウエットエッチング工程は、アルカリエッチング液の濃度を段階的に変更して行うものである請求項1から8のいずれかに記載の型の製造方法。
  10. 工程(C)の終了後、工程(D)の異方性ウエットエッチング工程の前に、シリコン基板にオゾン洗浄を施す請求項1から9のいずれかに記載の型の製造方法。
  11. 請求項1から10のいずれかにより製造された型を用い、以下の工程を備えてシリコン基板でない基板の表面に周期的なV溝構造をもつV溝構造物品の製造方法。
    (A)V溝構造物品を製作しようとする目的基板の平坦な表面と前記型との間に光又は熱により硬化する硬化性材料層を挟み込み、前記材料層を硬化させて面内方向と膜厚方向の両方に分布をもつ前記材料によるパターンを形成する工程、及び
    (B)前記材料パターンと前記基板を同時にドライエッチングすることにより前記材料パターンを前記基板に転写して前記基板表面に周期的なV溝構造をもつパターンを形成するドライエッチング工程。
  12. 前記ドライエッチング工程では、ドライエッチングの選択比とエッチング時間の少なくともいずれかを制御し、前記V溝構造の角度及び/又は深さを制御する請求項11に記載のV溝構造物品の製造方法。
  13. 請求項11又は12に記載の製造方法により製造された、複数の光ファイバーを固定するための整列部材
  14. 請求項11又は12に記載の製造方法により製造された、微細3次元形状を有する物品。
  15. (100)面を有するシリコン基板表面に互いに僅かずつ角度を変化させた線状開口をもつレジストパターンを形成する工程、
    そのレジストパターンをマスクとして前記シリコン基板をアルカリエッチング液によりエッチングするウエットエッチング工程、及び
    そのウエットエッチング工程後に前記シリコン基板に形成された線状パターンの直線性に基づいてb軸〈010〉又はc軸〈001〉を決定する結晶軸決定工程を備えたことを特徴とするシリコン基板の結晶軸決定方法。
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