JP2004026667A - 二酸化炭素のメタノール変換用触媒反応システム - Google Patents
二酸化炭素のメタノール変換用触媒反応システム Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004026667A JP2004026667A JP2002181335A JP2002181335A JP2004026667A JP 2004026667 A JP2004026667 A JP 2004026667A JP 2002181335 A JP2002181335 A JP 2002181335A JP 2002181335 A JP2002181335 A JP 2002181335A JP 2004026667 A JP2004026667 A JP 2004026667A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- methanol
- carbon dioxide
- catalyst
- reaction
- water
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02P—CLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
- Y02P20/00—Technologies relating to chemical industry
- Y02P20/50—Improvements relating to the production of bulk chemicals
- Y02P20/52—Improvements relating to the production of bulk chemicals using catalysts, e.g. selective catalysts
Landscapes
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
- Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)
Abstract
【課題】二酸化炭素削減対策の一つとして、二酸化炭素をメタノールに化学変換する高耐久性・高活性な触媒反応システムを開発すること、及び、合成ガスや水素を出発原料とするのではなく、水を出発原料として二酸化炭素をメタノールに化学変換すること。
【解決手段】二酸化炭素と水を、金属、金属酸化物あるいはそれらを混合した触媒と接触させることにより、メタノールを得る。該触媒は、二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成することが可能な活性点と、水を還元して水素発生が可能な活性点をもつ金属あるいは金属酸化物であり、鉄、コバルト、ニッケル及び/又はそれらの酸化物より選ばれる一種以上が好ましく用いられる。なお、メタノール変換反応の前または後に、あるいは反応途中で、該触媒は還元・賦活化される。
【選択図】 なし
【解決手段】二酸化炭素と水を、金属、金属酸化物あるいはそれらを混合した触媒と接触させることにより、メタノールを得る。該触媒は、二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成することが可能な活性点と、水を還元して水素発生が可能な活性点をもつ金属あるいは金属酸化物であり、鉄、コバルト、ニッケル及び/又はそれらの酸化物より選ばれる一種以上が好ましく用いられる。なお、メタノール変換反応の前または後に、あるいは反応途中で、該触媒は還元・賦活化される。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属、金属酸化物あるいはそれらを混合した触媒系により、二酸化炭素と水から、一段で、メタノールに化学変換する触媒反応システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
二酸化炭素の蓄積による地球温暖化問題へのさまざまな対応が国際的な規模で検討されている。技術面では、二酸化炭素の隔離、固定化、有効利用等の技術開発が進められているが未だ、実現の見通しのついた技術は皆無に近い状況である。
【0003】
その中で、二酸化炭素を有用物質に化学変換する技術としては、金属錯体による光化学的還元、半導体を用いた光化学的還元、金属電極による電気分解還元、酵素を組込んだ反応系による二酸化炭素の変換、接触水素化、金属錯体による超臨界二酸化炭素の還元もしくは金属酸化物による亜臨界二酸化炭素の還元、あるいは天然ガスから合成ガスを生産する際の二酸化炭素改質もしくは二酸化炭素/スチーム改質などがあり、それらによって、一酸化炭素、ギ酸、メタノール、メタン、合成ガス、酢酸、フェノールなどの有用物質に変換しようとするものである。
【0004】
しかしながら、これらの技術は、いずれも次のような問題を抱えていて、実現性が遠い研究段階にとどまっているのが現状である。すなわち、高価な金属や酵素あるいは試薬を使ったり、触媒や酵素の回収および再利用は難しいというものであったり、極めてコストがかかる超臨界状態、亜臨界状態を必要とするものであったりして、経済的に現実性がないもの;あるいは、目的物質の生成量が極めて少なかったり、目的物質の選択性が低いものであったりして、技術的な実現性に乏しいもの;さらには、多量の電気エネルギーを供給しなければ成立し得ないシステムであったり、それ自体、広範囲の分野に有用である合成ガスあるいは水素等から出発したりするものであって、二酸化炭素を有用物質に変換する理念からは不適切といわざるを得ないものであったりする。
【0005】
これら二酸化炭素からの化学変換が試みられている有用物質の中でも、メタノールは、クリーン燃料として用いることができ、石油化学工業の出発原料となり得る等、今後、大きな需要が予想される極めて価値の高い物質である。しかしながら、メタノールは、各種の一酸化炭素水素化反応のなかで、熱力学的には反応の自由エネルギー変化が最も大きく、本来的に生成し難いものである。このメタノールを、二酸化炭素を原料にして得ようとした試みとして、以下のような報告、発表がある。
【0006】
本多、藤嶋らは、チタニア、酸化タングステン、酸化亜鉛、硫化カドミウム、リン化ガリウム、あるいは炭化ケイ素等の半導体を用いた光化学的還元について、水溶液中に溶存させた微少量(常温で36mmol/リットル)の二酸化炭素からメタノールが生成することを報告している(Nature,277巻,p.637,1979年)。しかし、目的物質メタノールの生成量が極めて少なく、反応液1リットルかつ反応時間1時間、触媒1g当たりのメタノールに換算して1.051mgの生成量である。
【0007】
米山らは、2〜4nmのチタニア超微粒子をポリビニルピロリドンに電気化学的に吸着させたフィルムを用いて水溶液中に溶存させた二酸化炭素の光還元を行い、反応液1リットルかつ反応時間1時間、触媒1g当たりのメタノールに換算して16.3gのメタノールが生成することを報告している(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,p.829,1995年)。しかし、本反応系は、犠牲試薬としての高価なプロパン−2−オールの共存によりはじめてメタノールが生成するために、高価なアルコール利用による比較的安価なメタノール生産のプロセスであるため実用化することの意義は極めて少なくなる。いずれにせよ、太陽光を利用した光電変換による光触媒的二酸化炭素の固定・変換は非効率的であるために実用的でないと判断されている。
【0008】
また、米山らは、ギ酸脱水素酵素とメタノール脱水素酵素が共存する反応系に70時間通電して、二酸化炭素からギ酸とホルムアルデヒドとメタノールが生成する手段を開示している(J.A.C.S.,116巻, p.5437,1994年)。反応液5mlに0.35mgのギ酸脱水素酵素と7.35mgのメタノール脱水素酵素を用いて、それぞれ1.8μmol前後の生成物が得られている。反応液1リットルかつ反応時間1時間、酵素合計1mg当たりのギ酸、ホルムアルデヒド、およびメタノールに換算して82.8μg,54.0μg,および57.7μgの生成量である。したがって、痕跡量程度の目的物質しか得られていないというのが現状である。また、高価な酵素タンパク質を利用した反応システムであり、かつ触媒の回収および再利用は難しく、かつ電気エネルギーを供給しなければ成立し得ないシステムであることに問題がある。
【0009】
Daveらは、ギ酸脱水素酵素とホルムアルデヒド脱水素酵素、並びにアルコール脱水素酵素をシリカゲルマトリックス中に固定化して共存させた酵素反応系を用いて、二酸化炭素からメタノールが生成することを報告している(J.A.C.S.,121巻,p.12192,1999年)。反応液2mlかつ反応時間3時間、酵素10mgずつ3種類(計30mg)当たりにメタノール30μmolの生成量であり、反応液1リットルかつ反応時間1時間、酵素総計1mg当たりのメタノールに換算して5.33mgの生成量となる。ごく少量の目的物質しか得られておらず、この場合もバッチ式の反応システムであることから、高価かつ希少な酵素タンパク質の回収および再利用は難しく、使い切りの反応システムになり採算がとれない。
【0010】
乾らは、銅−亜鉛混合酸化物に酸化ランタン等の希土類酸化物やパラジウムや銀等の貴金属を添加した複合触媒による水素共存下での二酸化炭素のメタノール化を開示している(現代化学増刊25,東京化学同人,p.79,1994年)。変換効率は、二酸化炭素のメタノール化では、毎時39.1mol(1.251kg) /リットルを達成している。しかしながら、高価な貴金属触媒を使用し、その耐久性にも疑問があり(反応生成物としてメタノールのほかに水ができて、この系における触媒をつぶす)、二酸化炭素の転化率やメタノールへの選択率も、なお改良が望まれる。また、如何にエネルギー負荷の小さい方法で水素を得るかという課題を残したままである。
【0011】
以上、従来の二酸化炭素からメタノールへの化学変換に関する報告は、いずれも、高価な酵素や試薬を使ったり、触媒や酵素の回収および再利用は難しかったり、メタノールの生成量が極めて少なかったりした。あるいは、電気エネルギーを供給しなければ成立し得ないシステムであったり、それ自体有用な水素等を出発原料とするものであったりした。
【0012】
なお、メタノールは、従来より、亜鉛、銅、クロム等の複合酸化物系触媒で合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)を原料として製造する手段が開発されてきた。また一方、二酸化炭素を原料とした合成ガスの製造に関しては、多くの論文や発表があるが、これらはいずれも、合成ガスの製造法の改良が目的であり、メタノール製造まで視野に置いた製造システムの研究は見当たらない。
【0013】
したがって、二酸化炭素を変換してメタノール等を得る技術であって、それ自体有効なクリーン燃料である合成ガスや水素を原料とするのではなく、安価かつ枯渇するおそれのない豊富な資源を原料とし、かつ、安価で耐久性のある安定な触媒反応系により、高効率でメタノールを生産することができれば、地球規模の二酸化炭素削減問題への対策として、また、エネルギー問題への対策として、望ましい、実現性のある方法になることが期待できる。二酸化炭素の有用物質への化学変換について、このような理想的な方法が追求されるべきであろう。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような実情に鑑み、本発明の目的は、二酸化炭素をメタノールに化学変換する高耐久性・高活性な触媒反応システムを開発することにある。また、本発明は、合成ガスや水素を原料とするのではなく、水を出発原料として二酸化炭素をメタノールに化学変換することを目的とする。
【0015】
【問題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意研究を重ねた結果、鉄などの安価な金属あるいは金属酸化物触媒を用いて、二酸化炭素と水から一段でメタノールへ変換し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。さらに、反応前あるいは反応後に、または反応中に同時に、該触媒系を還元、賦活化することが、耐久性ある、クローズドシステムの触媒系とする工業的な製造プロセスとすることに重要であることを知見した。
【0016】
すなわち、本発明は、二酸化炭素と水を、金属、金属酸化物あるいはそれらを混合した触媒と接触させることにより、メタノールを得ることを特徴とする触媒反応システムを提供するものである。該触媒は、二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成することが可能な活性点と、水を還元して水素発生が可能な活性点をもつ金属あるいは金属酸化物であり、鉄、コバルト、ニッケル及びそれらの酸化物からなる群から選ばれる一種以上が好ましく用いられる。また、メタノール変換反応の前後に、または反応中に、該触媒は還元・賦活化されることが重要である。触媒の還元・賦活化のためには、還元性ガスが用いられ、メタンが好ましく用いられる。二酸化炭素と水と、さらにメタンとを、金属、金属酸化物あるいはそれらを混合した触媒と接触させることは本発明の好ましい態様である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の二酸化炭素と水からメタノールを得る触媒反応システムについて、以下に詳細に説明する。
【0018】
本発明において使用する金属あるいは金属酸化物触媒は、基本的に、二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成することが可能な活性点と、水を還元して水素発生が可能な活性点を有するものであれば、その種類は特に限定されない。
【0019】
これら触媒は、二酸化炭素のみ、あるいは、水のみを接触させた場合には、それぞれ、一酸化炭素、水素を生成するが、二酸化炭素と水の両者を一緒に接触させたときには、一酸化炭素、水素はほとんど生成せず、メタノールが主生成物となる。そのメカニズムは不明であるが、例えば鉄の場合、二酸化炭素と水が吸着するとき触媒上の吸着活性点では、Fe−CO2およびFe−OH2を経て、Fe−CO、Fe−C、Fe−OH、Fe−H、Fe−Oなどの結合種が生成し、反応系の化合物における化学結合の切断や組換えによって、主としてメタノールが生成するものと推定される。
【0020】
かかる触媒としては、金属触媒では、例えば、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、テクネチウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金等があげられ、金属酸化物としては、それらの酸化物があげられ、さらには酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の担体に担持させた触媒を使用してもよい。これらの中でも、鉄、コバルト、ニッケルおよびそれらの酸化物が本発明における触媒活性の高さから好ましく、安価であり、酸素(O)を含有する一酸化炭素、二酸化炭素、水等に対する吸着・脱酸素活性がより高いことから、鉄、酸化鉄(とりわけ、四三酸化鉄Fe3O4あるいは酸化第一鉄FeO)が特に好ましく用いられる。
【0021】
本発明の触媒系は、上記の如く、基本的に二酸化炭素および水を表面に吸着して還元する能力を有することを要するが、高効率であるためには、比表面積が大きいことが好ましい。そのためには、粒子径が小さいこと、多孔質であることが有利であり、必要に応じて、微粒子化・超微粒子化や多孔質化のための処理が施されることが好ましい。
【0022】
たとえば、酸化鉄触媒の超微粒子化は、カチオン性界面活性剤を用いた逆ミセル中に、塩化第二鉄水溶液を可溶化し、水素化ホウ素ナトリウム等で還元する方法で、ほぼ均一粒径の5〜10nm程度の酸化鉄超微粒子を得ることができる。また、多孔質化された酸化鉄触媒は、石川らの方法(J.C.S.,Faraday Transactions,88巻, p.1173,1992年;Langmuir,9巻,p.1125,1993年)に従い、硫酸鉄7水和物を水に溶かし、水酸化ナトリウム水溶液を滴下して得られた反応液に過酸化水素水を注いで生じる沈殿物から得ることができる。後述するように、この方法で、比表面積111.0m2/g、細孔径0.932nmの酸化鉄(α−Fe2O3)が得られた。
【0023】
本発明における原料である二酸化炭素の供給形態は、特に限定されず、たとえば、二酸化炭素のみからなるガス体あるいは不活性ガス等との混合体、二酸化炭素を含む水溶液等が使用され得る。また、本発明におけるもう一方の原料である水は、二酸化炭素と一緒に供給されても、別途、液体や水蒸気として供給されてもよい。
【0024】
化学量論的には、1モルの二酸化炭素と2モルの水が、それぞれ1モルの鉄および2モルの鉄で還元されて、1モルのメタノールが生成することとなる。しかし、本発明のメタノール合成反応は、実際には、Fe−C(あるいはFe−CO)とFe−HおよびFe−OHとの間の反応であり、二酸化炭素、水の仕込み比は、モル比で水が二酸化炭素の2倍モル以上であることが好ましい。
【0025】
本発明は、二酸化炭素、水を気化させて、前記金属あるいは金属酸化物触媒に接触させる、気相反応により行われる。圧力は1〜200気圧で行うことができるが、高圧反応の取り扱い易さの観点から2〜10気圧程度が好ましい。
【0026】
本発明において、二酸化炭素と水からメタノールへ変換させるためには、反応温度の選択が極めて重要である。80℃〜1000℃で行うことができるが、低温では反応進行が遅く、高温では、メタノールの分解反応が起こり易いため、200〜500℃が好適である。
【0027】
本発明の一段の触媒反応後の生成物質としては、主生成物としてのメタノール以外に、場合によりメタンや水素の副生があり、未反応原料である二酸化炭素、水も残存する。そして、反応に関与した触媒表面は酸化されて活性を失った状態になっている。しかし、酸化された触媒表面を還元・賦活化すれば、残存する未反応原料の反応が再び進行し、メタノールの収量を高めることが可能となる。
【0028】
すなわち、本発明によれば、変換反応前に十分に還元・賦活化された比表面積の大きい触媒による一段反応により、多量のメタノールを得ることが可能であるが、さらに多量のメタノールを得るには、変換反応の反応前は勿論、反応後または反応中同時に、触媒表面の還元・賦活化を行うことが極めて重要であり、そのような還元・賦活化と変換反応のサイクルを適切にまわすことで工業的規模での本発明のメタノール変換反応が可能となる。
【0029】
化学変換前後の触媒を賦活化させるための表面改質手段としては特に限定されず、たとえば、200〜500℃程度に加熱しながら、水素や一酸化炭素もしくはメタン等のガス、あるいは固体のバイオマス、炭素と接触させる方法;塩酸や硫酸等の酸で洗浄する方法;あるいは触媒表面にレーザー光(とりわけ自由電子レーザー(FEL)光)を照射する方法;等がある。そして、循環ライン等により、還元用ガスや酸、あるいはレーザー光を高効率で回収、移送できることが好ましい。
【0030】
これらの中でも、メタンによって酸化鉄などの触媒を還元・賦活化することは、還元・賦活化作用のみならず、結果的にメタンもメタノールに変換されることになるため、特に好ましい。この場合、本発明の触媒システムは、二酸化炭素、水およびメタンが仕込み原料であり、生成物として主としてメタノールを得るクローズドシステムとなり得る。
【0031】
かかるメタンを用いた触媒の還元・賦活化の方法としては、例えば以下のいくつかの方法が可能である。
【0032】
(1)二酸化炭素と水に、さらにメタンを加えて、金属あるいは金属酸化物触媒に接触させる方法;
メタンから生じる還元性ガスが金属酸化物を常に部分的に還元された活性な金属とするため、メタノール生成反応が進行する。すなわち、メタンによる酸化鉄の還元・賦活化が起こって、二酸化炭素、水からのメタノール生成が起こり、一方、酸化鉄の還元時にメタンから直接メタノールが生成するか、または一度二酸化炭素、水まで酸化されたものが、還元鉄によりメタノールを生成する反応が伴われるものと推定される。なお、反応域は1段で済むので最も簡便なシステムである。
【0033】
(2)二酸化炭素と水に、さらにメタンを加えて金属酸化物を還元して金属触媒に賦活する第1反応工程と、第1反応工程により得られた混合ガスを金属触媒に接触させて金属酸化物に変換し同時にメタノールを生成させる第2反応工程から構成され、かつ第1反応工程と第2反応工程の導入ガスを適時切り替えて、常に該触媒を活性な金属の状態に保ってメタノール生成を行わせる方法;
メタノールの収率を向上させるためには、反応域を2段とする。1段目では、高温度条件にて酸化鉄の還元を目的にメタンを供給して、二酸化炭素、水の生成を許容して還元鉄を得る。生成した二酸化炭素、水は原料として供給する二酸化炭素、水とともに2段目の反応域に導入する。ここでは条件を温和(200〜300℃)にしてメタノール収率を向上させる。2段目の還元鉄が酸化されて活性が低下した時点で、1段目と2段目を切り替えて、2段目触媒を還元・賦活化する。
【0034】
(3)二酸化炭素と水にメタンを加えて該メタンを還元性ガスの一酸化炭素および水素に変換する前処理工程と、前処理工程により得られた還元性ガス含有ガスにより金属酸化物を還元して金属触媒に賦活する第1反応工程と、第1反応工程により得られた混合ガスを金属触媒に接触させて金属酸化物に変換し同時にメタノールを生成させる第2反応工程から構成され、かつ第1反応工程と第2反応工程の導入ガスを適時切り替えて、常に該触媒を活性な金属の状態に保ってメタノール生成を行わせる方法;
やや複雑なシステムとなるが、メタンの還元性を強力にして触媒効率を向上させることができる。
【0035】
(4)二酸化炭素と水にメタンを加えて還元性ガスの一酸化炭素および水素を含有させる前処理工程と、前処理工程で得られたガス中の還元性ガスで金属酸化物を常に部分的に還元された活性な金属とせしめてメタノールを生成させるメタノール変換工程からなる方法;
このシステムは、触媒の賦活化効率が向上するとともに、触媒に対してプロセスの切り替えがないので、大規模システムに好適である。
【0036】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
各実験は図1に示す構成を有する装置を用いて実施した。図1に示す装置は、原料供給部A、気化部B、気化ガス供給ラインC、化学変換部D、生成ガス回収ラインE、生成物質回収部Fで構成される。
装置の製作は、以下のようにして行った。
【0038】
原料供給部Aとしては、二酸化炭素1の入ったボンベとマスフローコントローラー4、ならびにストップバルブ6をステンレス製パイプ(直径1/8インチ)で連結させたラインと、水3の入った容器と送液ポンプ5、ならびに三方バルブ7を上記と同規格のステンレス製パイプで連結させたラインとを組み合わせて使用した。気化部Bとしては、気化器9(容積500ml)をパイプヒーターと温度調節器で加温しながら使用した。気化ガス供給ラインCとしては、リボンヒーター10で被覆したステンレス製パイプ(直径1/8インチ)で連結させたラインを使用し、ガス成分をインジェクションキット部から採取して確認した。化学変換部Dとしては、石英ガラス製反応管12(外径10mm, 容積10ml)を管状の反応炉11内に据え付けたものを使用した。生成ガス回収ラインEにも、リボンヒーター10で被覆したステンレス製パイプ(直径1/8インチ)で連結させたものを使用した。生成物質回収部Fとして、上記と同規格のステンレス製パイプで、その両端を三方バルブに連結させたガストラップ13をつけて、図1に示す構成を有する装置とした。
なお、本実験は発明の本質を確認することを目的としており、上記本装置は予備的な簡易型装置である。したがって、厳密な工学的基礎データがとれるほどのものではないため、以下の実施例等の実験において、たとえば、ガス流速、反応圧力等の厳密な測定ないしコントロールは行わなかった。また、生成物質の分析についても、実験操作の便宜から、ガス相のガスクロマトグラフィー分析を中心とし、ガストラップ13は空冷トラップとした。
【0039】
実施例1 メタノールの製造
化学変換部Dの反応管12内に還元鉄1mmol(56mg;粒径150μm以下、推定比表面積0.555m2/g)を入れておき、反応管12内の水が1ml、二酸化炭素が500μmol(22mg)となるように設定して、バルブを閉めた状態で反応管12内の温度を300℃にして、定常運転を4時間行い、二酸化炭素と水を原料基質としたメタノールの製造を行った。
反応混合物をガス状態で導入バルブ17から採取してガスクロマトグラフィーにより生成物質の組成を分析したところ、メタノール60nmol、メタン20nmolで、水素、一酸化炭素はほとんど検出されなかった。また、ガストラップ部には200nmolの液化メタノールが採取された。なお、以下の実施例でも同様にガス状態で検出したメタノールの約3倍量の液化メタノールが採取された。
【0040】
参考例1 一酸化炭素の生成
反応管12内の水が0mlであることと、二酸化炭素が440μmol(19.4mg)であること、反応管内温度が500℃であること、ならびに運転時間が1時間であること以外は、全て実施例1と同様にして行った。生成物質を分析したところ、200μmolの一酸化炭素が生成していたことがわかった。
【0041】
参考例2 水素の生成
反応管12内の還元鉄が5mmolであること、水が300μlであることと、二酸化炭素が0μmolであり、二酸化炭素の代わりに窒素が充填されていること、反応管内温度が125℃であること、ならびに運転時間が2.5時間であること以外は、全て実施例1と同様にして行った。生成物質を分析したところ、5μmolの水素が生成していたことがわかった。
【0042】
製造例1 酸化鉄触媒の超微粒子化
ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド等を界面活性剤として用いた逆ミセル中に、塩化第二鉄水溶液を可溶化し、水素化ホウ素ナトリウム等で還元する方法で、ほぼ均一粒径の5〜10nm程度の酸化鉄超微粒子が得られた。
【0043】
製造例2 酸化鉄触媒の多孔質化
窒素雰囲気で32.7gの硫酸鉄7水和物を200mlの水に溶かし、45℃に温めながら、10M水酸化ナトリウム水溶液100mlを滴下した。白濁した反応液をそのまま窒素雰囲気中45℃で6時間かきまぜた後、50mlの30%過酸化水素水を注いだ。得られた橙色の沈殿物をろ過して集め、大量の水で洗った後、室温、減圧下で一晩乾燥させた。この橙色の粉末10.2gを、減圧下200〜220℃で2時間加熱すると、赤橙色の粉末が得られた。粉末X線回折(XRD)測定により目的の酸化鉄(α−Fe2O3)であることを確認し、BET吸着等温線測定により、比表面積111.0m2/gであり、細孔径0.932nmであることを確認した。
【0044】
製造例3 酸化鉄触媒微粒子の還元・賦活化
図1に示す構成を有するリアクター装置の化学変換部Dの反応容器内に酸化第二鉄1mmolを入れておき、容器内の一酸化炭素が400μmolとなるように設定して、バルブを閉めた状態で容器温度220℃にて、前述のリアクターを用いて定常運転を6時間行った。容器内のガス成分をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、一酸化炭素の減少量と二酸化炭素の発生量の物質収支がほぼ一致し、BET吸着等温線測定により求めた比表面積から推定される二酸化炭素の発生量にほぼ一致することを確認することにより、酸化第二鉄Fe2O3の多孔質表面が十分還元されていることを確かめた。
【0045】
実施例2 メタノールの製造
化学変換部Dの反応管12内に、製造例2で調製したものを還元・賦活化した多孔質酸化第二鉄Fe2O31mmol(還元前の仕込み量159.7mg、比表面積111.0m2/g、細孔径0.932nm)を入れておき、反応管12内の水が1ml、二酸化炭素が500μmol(22mg)となるように設定し、反応管12内の温度を300℃にして、定常運転を3時間行い、二酸化炭素と水を原料としたメタノールの製造を行った。
反応混合物をガス状態で導入バルブ17から採取してガスクロマトグラフィーにより生成物質の組成を分析したところ、メタノール180nmol、メタン55nmolであり、水素、一酸化炭素はほとんど検出されなかった。
実施例1と実施例2の比較から、触媒多孔質化の効果は明瞭に示されているが、比表面積の増加分には遥か見合わない。前記の如く、本実験で使用した実験装置は簡易型装置であり、拡散抵抗が十分に取り除かれていないものだからである。しかしながら、実用プロセスにおいて拡散抵抗を最小化することは可能であり、多孔質化の効果が実用的レベルで十分に発現され得ることは、工学的に自明である。
【0046】
実施例3 メタノールの製造
化学変換部Dの反応管12内に、還元鉄1mmol(56mg;粒径150μm以下、推定比表面積0.555m2/g)を入れておき、水0.3ml、二酸化炭素300μmol(13.2mg)、さらにメタンが275μmolとなるように設定し、バルブを閉めた状態で反応管12内の温度を300℃にして、定常運転を5時間行い、二酸化炭素と水を原料基質としたメタノールの製造を行った。
反応混合物をガス状態で導入バルブ17から採取してガスクロマトグラフィーにより生成物質の組成を分析したところ、メタノール73nmol、水素45μmolであり、一酸化炭素はほとんど検出されなかった。
【0047】
実施例4 メタノールの製造
化学変換部Dの反応管12内に、製造例2で調製したものを還元・賦活化した多孔質酸化第二鉄Fe2O31mmol(還元前の仕込み量159.7mg、比表面積111.0m2/g、細孔径0.932nm)を入れたこと以外は、全て実施例3と同様にして、二酸化炭素と水を原料基質としたメタノールの製造を行った。
反応混合物をガス状態で導入バルブ17から採取してガスクロマトグラフィーにより生成物質の組成を分析したところ、メタノール300nmol、水素50μmolであり、一酸化炭素はほとんど検出されなかった。
【0048】
【発明の効果】
本発明の触媒反応システムを用いれば、二酸化炭素と水から一段でメタノールを生成することができる。鉄などの安価かつ耐久性のある安定な金属あるいは金属酸化物触媒を使用でき、微粒子化、多孔質化することで触媒の比表面積を上げれば、反応率を向上させることが可能である。また、メタノール変換反応の前または後に、あるいは反応途中で同時に、メタンなどにより触媒の還元・賦活化を行えば、本発明のメタノール変換反応プロセスおよび触媒システムは、二酸化炭素、水およびメタンなどからほぼメタノールのみを排出するクローズドシステムとすることが可能であり、二酸化炭素削減、クリーンエネルギーへの変換が、安価な触媒系により、一挙に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において本発明の触媒反応システムの実験に用いた装置の概略図である。
【符号の説明】
A 原料供給部 B 気化部 C 気化ガス供給ライン
D 化学変換部 E 生成ガス回収ライン F 生成物質回収部
1 二酸化炭素
2 窒素ガス(キャリアー)
3 水
4 マスフローコントローラー
5 送液ポンプ
6 ストップバルブ
7 三方バルブ
8 パージ
9 気化器
10 リボンヒーター
11 反応炉
12 反応管
13 ガストラップ
14 圧力計
15 圧力逃がし弁
16 排気
17 ガスクロマトグラフ装置導入バルブ
18 ガスクロマトグラフ装置
19 メタン
【発明の属する技術分野】
本発明は金属、金属酸化物あるいはそれらを混合した触媒系により、二酸化炭素と水から、一段で、メタノールに化学変換する触媒反応システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
二酸化炭素の蓄積による地球温暖化問題へのさまざまな対応が国際的な規模で検討されている。技術面では、二酸化炭素の隔離、固定化、有効利用等の技術開発が進められているが未だ、実現の見通しのついた技術は皆無に近い状況である。
【0003】
その中で、二酸化炭素を有用物質に化学変換する技術としては、金属錯体による光化学的還元、半導体を用いた光化学的還元、金属電極による電気分解還元、酵素を組込んだ反応系による二酸化炭素の変換、接触水素化、金属錯体による超臨界二酸化炭素の還元もしくは金属酸化物による亜臨界二酸化炭素の還元、あるいは天然ガスから合成ガスを生産する際の二酸化炭素改質もしくは二酸化炭素/スチーム改質などがあり、それらによって、一酸化炭素、ギ酸、メタノール、メタン、合成ガス、酢酸、フェノールなどの有用物質に変換しようとするものである。
【0004】
しかしながら、これらの技術は、いずれも次のような問題を抱えていて、実現性が遠い研究段階にとどまっているのが現状である。すなわち、高価な金属や酵素あるいは試薬を使ったり、触媒や酵素の回収および再利用は難しいというものであったり、極めてコストがかかる超臨界状態、亜臨界状態を必要とするものであったりして、経済的に現実性がないもの;あるいは、目的物質の生成量が極めて少なかったり、目的物質の選択性が低いものであったりして、技術的な実現性に乏しいもの;さらには、多量の電気エネルギーを供給しなければ成立し得ないシステムであったり、それ自体、広範囲の分野に有用である合成ガスあるいは水素等から出発したりするものであって、二酸化炭素を有用物質に変換する理念からは不適切といわざるを得ないものであったりする。
【0005】
これら二酸化炭素からの化学変換が試みられている有用物質の中でも、メタノールは、クリーン燃料として用いることができ、石油化学工業の出発原料となり得る等、今後、大きな需要が予想される極めて価値の高い物質である。しかしながら、メタノールは、各種の一酸化炭素水素化反応のなかで、熱力学的には反応の自由エネルギー変化が最も大きく、本来的に生成し難いものである。このメタノールを、二酸化炭素を原料にして得ようとした試みとして、以下のような報告、発表がある。
【0006】
本多、藤嶋らは、チタニア、酸化タングステン、酸化亜鉛、硫化カドミウム、リン化ガリウム、あるいは炭化ケイ素等の半導体を用いた光化学的還元について、水溶液中に溶存させた微少量(常温で36mmol/リットル)の二酸化炭素からメタノールが生成することを報告している(Nature,277巻,p.637,1979年)。しかし、目的物質メタノールの生成量が極めて少なく、反応液1リットルかつ反応時間1時間、触媒1g当たりのメタノールに換算して1.051mgの生成量である。
【0007】
米山らは、2〜4nmのチタニア超微粒子をポリビニルピロリドンに電気化学的に吸着させたフィルムを用いて水溶液中に溶存させた二酸化炭素の光還元を行い、反応液1リットルかつ反応時間1時間、触媒1g当たりのメタノールに換算して16.3gのメタノールが生成することを報告している(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,p.829,1995年)。しかし、本反応系は、犠牲試薬としての高価なプロパン−2−オールの共存によりはじめてメタノールが生成するために、高価なアルコール利用による比較的安価なメタノール生産のプロセスであるため実用化することの意義は極めて少なくなる。いずれにせよ、太陽光を利用した光電変換による光触媒的二酸化炭素の固定・変換は非効率的であるために実用的でないと判断されている。
【0008】
また、米山らは、ギ酸脱水素酵素とメタノール脱水素酵素が共存する反応系に70時間通電して、二酸化炭素からギ酸とホルムアルデヒドとメタノールが生成する手段を開示している(J.A.C.S.,116巻, p.5437,1994年)。反応液5mlに0.35mgのギ酸脱水素酵素と7.35mgのメタノール脱水素酵素を用いて、それぞれ1.8μmol前後の生成物が得られている。反応液1リットルかつ反応時間1時間、酵素合計1mg当たりのギ酸、ホルムアルデヒド、およびメタノールに換算して82.8μg,54.0μg,および57.7μgの生成量である。したがって、痕跡量程度の目的物質しか得られていないというのが現状である。また、高価な酵素タンパク質を利用した反応システムであり、かつ触媒の回収および再利用は難しく、かつ電気エネルギーを供給しなければ成立し得ないシステムであることに問題がある。
【0009】
Daveらは、ギ酸脱水素酵素とホルムアルデヒド脱水素酵素、並びにアルコール脱水素酵素をシリカゲルマトリックス中に固定化して共存させた酵素反応系を用いて、二酸化炭素からメタノールが生成することを報告している(J.A.C.S.,121巻,p.12192,1999年)。反応液2mlかつ反応時間3時間、酵素10mgずつ3種類(計30mg)当たりにメタノール30μmolの生成量であり、反応液1リットルかつ反応時間1時間、酵素総計1mg当たりのメタノールに換算して5.33mgの生成量となる。ごく少量の目的物質しか得られておらず、この場合もバッチ式の反応システムであることから、高価かつ希少な酵素タンパク質の回収および再利用は難しく、使い切りの反応システムになり採算がとれない。
【0010】
乾らは、銅−亜鉛混合酸化物に酸化ランタン等の希土類酸化物やパラジウムや銀等の貴金属を添加した複合触媒による水素共存下での二酸化炭素のメタノール化を開示している(現代化学増刊25,東京化学同人,p.79,1994年)。変換効率は、二酸化炭素のメタノール化では、毎時39.1mol(1.251kg) /リットルを達成している。しかしながら、高価な貴金属触媒を使用し、その耐久性にも疑問があり(反応生成物としてメタノールのほかに水ができて、この系における触媒をつぶす)、二酸化炭素の転化率やメタノールへの選択率も、なお改良が望まれる。また、如何にエネルギー負荷の小さい方法で水素を得るかという課題を残したままである。
【0011】
以上、従来の二酸化炭素からメタノールへの化学変換に関する報告は、いずれも、高価な酵素や試薬を使ったり、触媒や酵素の回収および再利用は難しかったり、メタノールの生成量が極めて少なかったりした。あるいは、電気エネルギーを供給しなければ成立し得ないシステムであったり、それ自体有用な水素等を出発原料とするものであったりした。
【0012】
なお、メタノールは、従来より、亜鉛、銅、クロム等の複合酸化物系触媒で合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)を原料として製造する手段が開発されてきた。また一方、二酸化炭素を原料とした合成ガスの製造に関しては、多くの論文や発表があるが、これらはいずれも、合成ガスの製造法の改良が目的であり、メタノール製造まで視野に置いた製造システムの研究は見当たらない。
【0013】
したがって、二酸化炭素を変換してメタノール等を得る技術であって、それ自体有効なクリーン燃料である合成ガスや水素を原料とするのではなく、安価かつ枯渇するおそれのない豊富な資源を原料とし、かつ、安価で耐久性のある安定な触媒反応系により、高効率でメタノールを生産することができれば、地球規模の二酸化炭素削減問題への対策として、また、エネルギー問題への対策として、望ましい、実現性のある方法になることが期待できる。二酸化炭素の有用物質への化学変換について、このような理想的な方法が追求されるべきであろう。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような実情に鑑み、本発明の目的は、二酸化炭素をメタノールに化学変換する高耐久性・高活性な触媒反応システムを開発することにある。また、本発明は、合成ガスや水素を原料とするのではなく、水を出発原料として二酸化炭素をメタノールに化学変換することを目的とする。
【0015】
【問題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意研究を重ねた結果、鉄などの安価な金属あるいは金属酸化物触媒を用いて、二酸化炭素と水から一段でメタノールへ変換し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。さらに、反応前あるいは反応後に、または反応中に同時に、該触媒系を還元、賦活化することが、耐久性ある、クローズドシステムの触媒系とする工業的な製造プロセスとすることに重要であることを知見した。
【0016】
すなわち、本発明は、二酸化炭素と水を、金属、金属酸化物あるいはそれらを混合した触媒と接触させることにより、メタノールを得ることを特徴とする触媒反応システムを提供するものである。該触媒は、二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成することが可能な活性点と、水を還元して水素発生が可能な活性点をもつ金属あるいは金属酸化物であり、鉄、コバルト、ニッケル及びそれらの酸化物からなる群から選ばれる一種以上が好ましく用いられる。また、メタノール変換反応の前後に、または反応中に、該触媒は還元・賦活化されることが重要である。触媒の還元・賦活化のためには、還元性ガスが用いられ、メタンが好ましく用いられる。二酸化炭素と水と、さらにメタンとを、金属、金属酸化物あるいはそれらを混合した触媒と接触させることは本発明の好ましい態様である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の二酸化炭素と水からメタノールを得る触媒反応システムについて、以下に詳細に説明する。
【0018】
本発明において使用する金属あるいは金属酸化物触媒は、基本的に、二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成することが可能な活性点と、水を還元して水素発生が可能な活性点を有するものであれば、その種類は特に限定されない。
【0019】
これら触媒は、二酸化炭素のみ、あるいは、水のみを接触させた場合には、それぞれ、一酸化炭素、水素を生成するが、二酸化炭素と水の両者を一緒に接触させたときには、一酸化炭素、水素はほとんど生成せず、メタノールが主生成物となる。そのメカニズムは不明であるが、例えば鉄の場合、二酸化炭素と水が吸着するとき触媒上の吸着活性点では、Fe−CO2およびFe−OH2を経て、Fe−CO、Fe−C、Fe−OH、Fe−H、Fe−Oなどの結合種が生成し、反応系の化合物における化学結合の切断や組換えによって、主としてメタノールが生成するものと推定される。
【0020】
かかる触媒としては、金属触媒では、例えば、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、テクネチウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金等があげられ、金属酸化物としては、それらの酸化物があげられ、さらには酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の担体に担持させた触媒を使用してもよい。これらの中でも、鉄、コバルト、ニッケルおよびそれらの酸化物が本発明における触媒活性の高さから好ましく、安価であり、酸素(O)を含有する一酸化炭素、二酸化炭素、水等に対する吸着・脱酸素活性がより高いことから、鉄、酸化鉄(とりわけ、四三酸化鉄Fe3O4あるいは酸化第一鉄FeO)が特に好ましく用いられる。
【0021】
本発明の触媒系は、上記の如く、基本的に二酸化炭素および水を表面に吸着して還元する能力を有することを要するが、高効率であるためには、比表面積が大きいことが好ましい。そのためには、粒子径が小さいこと、多孔質であることが有利であり、必要に応じて、微粒子化・超微粒子化や多孔質化のための処理が施されることが好ましい。
【0022】
たとえば、酸化鉄触媒の超微粒子化は、カチオン性界面活性剤を用いた逆ミセル中に、塩化第二鉄水溶液を可溶化し、水素化ホウ素ナトリウム等で還元する方法で、ほぼ均一粒径の5〜10nm程度の酸化鉄超微粒子を得ることができる。また、多孔質化された酸化鉄触媒は、石川らの方法(J.C.S.,Faraday Transactions,88巻, p.1173,1992年;Langmuir,9巻,p.1125,1993年)に従い、硫酸鉄7水和物を水に溶かし、水酸化ナトリウム水溶液を滴下して得られた反応液に過酸化水素水を注いで生じる沈殿物から得ることができる。後述するように、この方法で、比表面積111.0m2/g、細孔径0.932nmの酸化鉄(α−Fe2O3)が得られた。
【0023】
本発明における原料である二酸化炭素の供給形態は、特に限定されず、たとえば、二酸化炭素のみからなるガス体あるいは不活性ガス等との混合体、二酸化炭素を含む水溶液等が使用され得る。また、本発明におけるもう一方の原料である水は、二酸化炭素と一緒に供給されても、別途、液体や水蒸気として供給されてもよい。
【0024】
化学量論的には、1モルの二酸化炭素と2モルの水が、それぞれ1モルの鉄および2モルの鉄で還元されて、1モルのメタノールが生成することとなる。しかし、本発明のメタノール合成反応は、実際には、Fe−C(あるいはFe−CO)とFe−HおよびFe−OHとの間の反応であり、二酸化炭素、水の仕込み比は、モル比で水が二酸化炭素の2倍モル以上であることが好ましい。
【0025】
本発明は、二酸化炭素、水を気化させて、前記金属あるいは金属酸化物触媒に接触させる、気相反応により行われる。圧力は1〜200気圧で行うことができるが、高圧反応の取り扱い易さの観点から2〜10気圧程度が好ましい。
【0026】
本発明において、二酸化炭素と水からメタノールへ変換させるためには、反応温度の選択が極めて重要である。80℃〜1000℃で行うことができるが、低温では反応進行が遅く、高温では、メタノールの分解反応が起こり易いため、200〜500℃が好適である。
【0027】
本発明の一段の触媒反応後の生成物質としては、主生成物としてのメタノール以外に、場合によりメタンや水素の副生があり、未反応原料である二酸化炭素、水も残存する。そして、反応に関与した触媒表面は酸化されて活性を失った状態になっている。しかし、酸化された触媒表面を還元・賦活化すれば、残存する未反応原料の反応が再び進行し、メタノールの収量を高めることが可能となる。
【0028】
すなわち、本発明によれば、変換反応前に十分に還元・賦活化された比表面積の大きい触媒による一段反応により、多量のメタノールを得ることが可能であるが、さらに多量のメタノールを得るには、変換反応の反応前は勿論、反応後または反応中同時に、触媒表面の還元・賦活化を行うことが極めて重要であり、そのような還元・賦活化と変換反応のサイクルを適切にまわすことで工業的規模での本発明のメタノール変換反応が可能となる。
【0029】
化学変換前後の触媒を賦活化させるための表面改質手段としては特に限定されず、たとえば、200〜500℃程度に加熱しながら、水素や一酸化炭素もしくはメタン等のガス、あるいは固体のバイオマス、炭素と接触させる方法;塩酸や硫酸等の酸で洗浄する方法;あるいは触媒表面にレーザー光(とりわけ自由電子レーザー(FEL)光)を照射する方法;等がある。そして、循環ライン等により、還元用ガスや酸、あるいはレーザー光を高効率で回収、移送できることが好ましい。
【0030】
これらの中でも、メタンによって酸化鉄などの触媒を還元・賦活化することは、還元・賦活化作用のみならず、結果的にメタンもメタノールに変換されることになるため、特に好ましい。この場合、本発明の触媒システムは、二酸化炭素、水およびメタンが仕込み原料であり、生成物として主としてメタノールを得るクローズドシステムとなり得る。
【0031】
かかるメタンを用いた触媒の還元・賦活化の方法としては、例えば以下のいくつかの方法が可能である。
【0032】
(1)二酸化炭素と水に、さらにメタンを加えて、金属あるいは金属酸化物触媒に接触させる方法;
メタンから生じる還元性ガスが金属酸化物を常に部分的に還元された活性な金属とするため、メタノール生成反応が進行する。すなわち、メタンによる酸化鉄の還元・賦活化が起こって、二酸化炭素、水からのメタノール生成が起こり、一方、酸化鉄の還元時にメタンから直接メタノールが生成するか、または一度二酸化炭素、水まで酸化されたものが、還元鉄によりメタノールを生成する反応が伴われるものと推定される。なお、反応域は1段で済むので最も簡便なシステムである。
【0033】
(2)二酸化炭素と水に、さらにメタンを加えて金属酸化物を還元して金属触媒に賦活する第1反応工程と、第1反応工程により得られた混合ガスを金属触媒に接触させて金属酸化物に変換し同時にメタノールを生成させる第2反応工程から構成され、かつ第1反応工程と第2反応工程の導入ガスを適時切り替えて、常に該触媒を活性な金属の状態に保ってメタノール生成を行わせる方法;
メタノールの収率を向上させるためには、反応域を2段とする。1段目では、高温度条件にて酸化鉄の還元を目的にメタンを供給して、二酸化炭素、水の生成を許容して還元鉄を得る。生成した二酸化炭素、水は原料として供給する二酸化炭素、水とともに2段目の反応域に導入する。ここでは条件を温和(200〜300℃)にしてメタノール収率を向上させる。2段目の還元鉄が酸化されて活性が低下した時点で、1段目と2段目を切り替えて、2段目触媒を還元・賦活化する。
【0034】
(3)二酸化炭素と水にメタンを加えて該メタンを還元性ガスの一酸化炭素および水素に変換する前処理工程と、前処理工程により得られた還元性ガス含有ガスにより金属酸化物を還元して金属触媒に賦活する第1反応工程と、第1反応工程により得られた混合ガスを金属触媒に接触させて金属酸化物に変換し同時にメタノールを生成させる第2反応工程から構成され、かつ第1反応工程と第2反応工程の導入ガスを適時切り替えて、常に該触媒を活性な金属の状態に保ってメタノール生成を行わせる方法;
やや複雑なシステムとなるが、メタンの還元性を強力にして触媒効率を向上させることができる。
【0035】
(4)二酸化炭素と水にメタンを加えて還元性ガスの一酸化炭素および水素を含有させる前処理工程と、前処理工程で得られたガス中の還元性ガスで金属酸化物を常に部分的に還元された活性な金属とせしめてメタノールを生成させるメタノール変換工程からなる方法;
このシステムは、触媒の賦活化効率が向上するとともに、触媒に対してプロセスの切り替えがないので、大規模システムに好適である。
【0036】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
各実験は図1に示す構成を有する装置を用いて実施した。図1に示す装置は、原料供給部A、気化部B、気化ガス供給ラインC、化学変換部D、生成ガス回収ラインE、生成物質回収部Fで構成される。
装置の製作は、以下のようにして行った。
【0038】
原料供給部Aとしては、二酸化炭素1の入ったボンベとマスフローコントローラー4、ならびにストップバルブ6をステンレス製パイプ(直径1/8インチ)で連結させたラインと、水3の入った容器と送液ポンプ5、ならびに三方バルブ7を上記と同規格のステンレス製パイプで連結させたラインとを組み合わせて使用した。気化部Bとしては、気化器9(容積500ml)をパイプヒーターと温度調節器で加温しながら使用した。気化ガス供給ラインCとしては、リボンヒーター10で被覆したステンレス製パイプ(直径1/8インチ)で連結させたラインを使用し、ガス成分をインジェクションキット部から採取して確認した。化学変換部Dとしては、石英ガラス製反応管12(外径10mm, 容積10ml)を管状の反応炉11内に据え付けたものを使用した。生成ガス回収ラインEにも、リボンヒーター10で被覆したステンレス製パイプ(直径1/8インチ)で連結させたものを使用した。生成物質回収部Fとして、上記と同規格のステンレス製パイプで、その両端を三方バルブに連結させたガストラップ13をつけて、図1に示す構成を有する装置とした。
なお、本実験は発明の本質を確認することを目的としており、上記本装置は予備的な簡易型装置である。したがって、厳密な工学的基礎データがとれるほどのものではないため、以下の実施例等の実験において、たとえば、ガス流速、反応圧力等の厳密な測定ないしコントロールは行わなかった。また、生成物質の分析についても、実験操作の便宜から、ガス相のガスクロマトグラフィー分析を中心とし、ガストラップ13は空冷トラップとした。
【0039】
実施例1 メタノールの製造
化学変換部Dの反応管12内に還元鉄1mmol(56mg;粒径150μm以下、推定比表面積0.555m2/g)を入れておき、反応管12内の水が1ml、二酸化炭素が500μmol(22mg)となるように設定して、バルブを閉めた状態で反応管12内の温度を300℃にして、定常運転を4時間行い、二酸化炭素と水を原料基質としたメタノールの製造を行った。
反応混合物をガス状態で導入バルブ17から採取してガスクロマトグラフィーにより生成物質の組成を分析したところ、メタノール60nmol、メタン20nmolで、水素、一酸化炭素はほとんど検出されなかった。また、ガストラップ部には200nmolの液化メタノールが採取された。なお、以下の実施例でも同様にガス状態で検出したメタノールの約3倍量の液化メタノールが採取された。
【0040】
参考例1 一酸化炭素の生成
反応管12内の水が0mlであることと、二酸化炭素が440μmol(19.4mg)であること、反応管内温度が500℃であること、ならびに運転時間が1時間であること以外は、全て実施例1と同様にして行った。生成物質を分析したところ、200μmolの一酸化炭素が生成していたことがわかった。
【0041】
参考例2 水素の生成
反応管12内の還元鉄が5mmolであること、水が300μlであることと、二酸化炭素が0μmolであり、二酸化炭素の代わりに窒素が充填されていること、反応管内温度が125℃であること、ならびに運転時間が2.5時間であること以外は、全て実施例1と同様にして行った。生成物質を分析したところ、5μmolの水素が生成していたことがわかった。
【0042】
製造例1 酸化鉄触媒の超微粒子化
ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド等を界面活性剤として用いた逆ミセル中に、塩化第二鉄水溶液を可溶化し、水素化ホウ素ナトリウム等で還元する方法で、ほぼ均一粒径の5〜10nm程度の酸化鉄超微粒子が得られた。
【0043】
製造例2 酸化鉄触媒の多孔質化
窒素雰囲気で32.7gの硫酸鉄7水和物を200mlの水に溶かし、45℃に温めながら、10M水酸化ナトリウム水溶液100mlを滴下した。白濁した反応液をそのまま窒素雰囲気中45℃で6時間かきまぜた後、50mlの30%過酸化水素水を注いだ。得られた橙色の沈殿物をろ過して集め、大量の水で洗った後、室温、減圧下で一晩乾燥させた。この橙色の粉末10.2gを、減圧下200〜220℃で2時間加熱すると、赤橙色の粉末が得られた。粉末X線回折(XRD)測定により目的の酸化鉄(α−Fe2O3)であることを確認し、BET吸着等温線測定により、比表面積111.0m2/gであり、細孔径0.932nmであることを確認した。
【0044】
製造例3 酸化鉄触媒微粒子の還元・賦活化
図1に示す構成を有するリアクター装置の化学変換部Dの反応容器内に酸化第二鉄1mmolを入れておき、容器内の一酸化炭素が400μmolとなるように設定して、バルブを閉めた状態で容器温度220℃にて、前述のリアクターを用いて定常運転を6時間行った。容器内のガス成分をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、一酸化炭素の減少量と二酸化炭素の発生量の物質収支がほぼ一致し、BET吸着等温線測定により求めた比表面積から推定される二酸化炭素の発生量にほぼ一致することを確認することにより、酸化第二鉄Fe2O3の多孔質表面が十分還元されていることを確かめた。
【0045】
実施例2 メタノールの製造
化学変換部Dの反応管12内に、製造例2で調製したものを還元・賦活化した多孔質酸化第二鉄Fe2O31mmol(還元前の仕込み量159.7mg、比表面積111.0m2/g、細孔径0.932nm)を入れておき、反応管12内の水が1ml、二酸化炭素が500μmol(22mg)となるように設定し、反応管12内の温度を300℃にして、定常運転を3時間行い、二酸化炭素と水を原料としたメタノールの製造を行った。
反応混合物をガス状態で導入バルブ17から採取してガスクロマトグラフィーにより生成物質の組成を分析したところ、メタノール180nmol、メタン55nmolであり、水素、一酸化炭素はほとんど検出されなかった。
実施例1と実施例2の比較から、触媒多孔質化の効果は明瞭に示されているが、比表面積の増加分には遥か見合わない。前記の如く、本実験で使用した実験装置は簡易型装置であり、拡散抵抗が十分に取り除かれていないものだからである。しかしながら、実用プロセスにおいて拡散抵抗を最小化することは可能であり、多孔質化の効果が実用的レベルで十分に発現され得ることは、工学的に自明である。
【0046】
実施例3 メタノールの製造
化学変換部Dの反応管12内に、還元鉄1mmol(56mg;粒径150μm以下、推定比表面積0.555m2/g)を入れておき、水0.3ml、二酸化炭素300μmol(13.2mg)、さらにメタンが275μmolとなるように設定し、バルブを閉めた状態で反応管12内の温度を300℃にして、定常運転を5時間行い、二酸化炭素と水を原料基質としたメタノールの製造を行った。
反応混合物をガス状態で導入バルブ17から採取してガスクロマトグラフィーにより生成物質の組成を分析したところ、メタノール73nmol、水素45μmolであり、一酸化炭素はほとんど検出されなかった。
【0047】
実施例4 メタノールの製造
化学変換部Dの反応管12内に、製造例2で調製したものを還元・賦活化した多孔質酸化第二鉄Fe2O31mmol(還元前の仕込み量159.7mg、比表面積111.0m2/g、細孔径0.932nm)を入れたこと以外は、全て実施例3と同様にして、二酸化炭素と水を原料基質としたメタノールの製造を行った。
反応混合物をガス状態で導入バルブ17から採取してガスクロマトグラフィーにより生成物質の組成を分析したところ、メタノール300nmol、水素50μmolであり、一酸化炭素はほとんど検出されなかった。
【0048】
【発明の効果】
本発明の触媒反応システムを用いれば、二酸化炭素と水から一段でメタノールを生成することができる。鉄などの安価かつ耐久性のある安定な金属あるいは金属酸化物触媒を使用でき、微粒子化、多孔質化することで触媒の比表面積を上げれば、反応率を向上させることが可能である。また、メタノール変換反応の前または後に、あるいは反応途中で同時に、メタンなどにより触媒の還元・賦活化を行えば、本発明のメタノール変換反応プロセスおよび触媒システムは、二酸化炭素、水およびメタンなどからほぼメタノールのみを排出するクローズドシステムとすることが可能であり、二酸化炭素削減、クリーンエネルギーへの変換が、安価な触媒系により、一挙に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において本発明の触媒反応システムの実験に用いた装置の概略図である。
【符号の説明】
A 原料供給部 B 気化部 C 気化ガス供給ライン
D 化学変換部 E 生成ガス回収ライン F 生成物質回収部
1 二酸化炭素
2 窒素ガス(キャリアー)
3 水
4 マスフローコントローラー
5 送液ポンプ
6 ストップバルブ
7 三方バルブ
8 パージ
9 気化器
10 リボンヒーター
11 反応炉
12 反応管
13 ガストラップ
14 圧力計
15 圧力逃がし弁
16 排気
17 ガスクロマトグラフ装置導入バルブ
18 ガスクロマトグラフ装置
19 メタン
Claims (5)
- 二酸化炭素と水を、金属、金属酸化物あるいはそれらを混合した触媒と接触させることにより、メタノールを得ることを特徴とする触媒反応システム。
- 該触媒が、二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成することが可能な活性点と、水を還元して水素発生が可能な活性点をもつ金属あるいは金属酸化物である請求項1記載の触媒反応システム。
- 該触媒が、鉄、コバルト、ニッケル及びそれらの酸化物からなる群から選ばれる一種以上である請求項1又は2記載の触媒反応システム。
- 該触媒が、メタノール変換反応の反応前あるいは反応後に、または反応中に同時に、還元・賦活されるものである請求項1〜3記載の触媒反応システム。
- 二酸化炭素と水と、さらにメタンを加えて、該触媒と接触させることによりメタノールを得る請求項1〜4記載の触媒反応システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002181335A JP2004026667A (ja) | 2002-06-21 | 2002-06-21 | 二酸化炭素のメタノール変換用触媒反応システム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002181335A JP2004026667A (ja) | 2002-06-21 | 2002-06-21 | 二酸化炭素のメタノール変換用触媒反応システム |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004026667A true JP2004026667A (ja) | 2004-01-29 |
Family
ID=31178205
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002181335A Withdrawn JP2004026667A (ja) | 2002-06-21 | 2002-06-21 | 二酸化炭素のメタノール変換用触媒反応システム |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004026667A (ja) |
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008204777A (ja) * | 2007-02-20 | 2008-09-04 | National Institute Of Advanced Industrial & Technology | リチウム電池用活物質およびその製造方法、並びに該活物質を用いたリチウム電池 |
WO2009140478A2 (en) * | 2008-05-16 | 2009-11-19 | University Of Southern California | Mitigating or eliminating the carbon footprint of human activities |
JP2010099626A (ja) * | 2008-10-27 | 2010-05-06 | Mitsui Eng & Shipbuild Co Ltd | 二酸化炭素の還元,固定装置、および還元,固定方法 |
JP2013500973A (ja) * | 2009-07-28 | 2013-01-10 | エイチ アール ディー コーポレーション | 精製所関連ガスからの付加価値製品の高剪断製造 |
WO2013016447A2 (en) * | 2011-07-26 | 2013-01-31 | The Board Of Trustees Of The Leland Stanford Junior University | Catalysts for low temperature electrolytic co2 reduction |
CN113557084A (zh) * | 2018-12-21 | 2021-10-26 | 福斯能源有限公司 | 将二氧化碳转化为一种或多种小有机化合物的方法和产品 |
-
2002
- 2002-06-21 JP JP2002181335A patent/JP2004026667A/ja not_active Withdrawn
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008204777A (ja) * | 2007-02-20 | 2008-09-04 | National Institute Of Advanced Industrial & Technology | リチウム電池用活物質およびその製造方法、並びに該活物質を用いたリチウム電池 |
WO2009140478A2 (en) * | 2008-05-16 | 2009-11-19 | University Of Southern California | Mitigating or eliminating the carbon footprint of human activities |
WO2009140478A3 (en) * | 2008-05-16 | 2010-02-18 | University Of Southern California | Mitigating or eliminating the carbon footprint of human activities |
JP2010099626A (ja) * | 2008-10-27 | 2010-05-06 | Mitsui Eng & Shipbuild Co Ltd | 二酸化炭素の還元,固定装置、および還元,固定方法 |
JP2013500973A (ja) * | 2009-07-28 | 2013-01-10 | エイチ アール ディー コーポレーション | 精製所関連ガスからの付加価値製品の高剪断製造 |
WO2013016447A2 (en) * | 2011-07-26 | 2013-01-31 | The Board Of Trustees Of The Leland Stanford Junior University | Catalysts for low temperature electrolytic co2 reduction |
WO2013016447A3 (en) * | 2011-07-26 | 2013-04-25 | The Board Of Trustees Of The Leland Stanford Junior University | Catalysts for low temperature electrolytic co2 reduction |
US9255335B2 (en) | 2011-07-26 | 2016-02-09 | The Board Of Trustees Of The Leland Stanford Junior University | Catalysts for low temperature electrolytic CO2 reduction |
CN113557084A (zh) * | 2018-12-21 | 2021-10-26 | 福斯能源有限公司 | 将二氧化碳转化为一种或多种小有机化合物的方法和产品 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Haruta et al. | Advances in the catalysis of Au nanoparticles | |
Dai et al. | On the role of water in selective hydrogenation of cinnamaldehyde to cinnamyl alcohol on PtFe catalysts | |
Ma et al. | Heterogeneous catalysis by metals | |
Thompson | Using gold nanoparticles for catalysis | |
Costello et al. | On the potential role of hydroxyl groups in CO oxidation over Au/Al2O3 | |
Gazsi et al. | Decomposition and reforming of formic acid on supported Au catalysts: Production of CO-free H2 | |
Dey | Chemical reduction of CO2 to different products during photo catalytic reaction on TiO2 under diverse conditions: an overview | |
Cheng et al. | Role of support in CO2 reforming of CH4 over a Ni/γ-Al2O3 catalyst | |
Bamwenda et al. | The influence of the preparation methods on the catalytic activity of platinum and gold supported on TiO2 for CO oxidation | |
Jing et al. | Recent advances in synergistic effect promoted catalysts for preferential oxidation of carbon monoxide | |
Song et al. | Advances in catalytic oxidation of volatile organic compounds over Pd-supported catalysts: recent trends and challenges | |
Garron et al. | Effect of the support on tin distribution in Pd–Sn/Al2O3 and Pd–Sn/SiO2 catalysts for application in water denitration | |
Rossignol et al. | Selective oxidation of CO over model gold-based catalysts in the presence of H2 | |
RU2598931C2 (ru) | Производство водорода | |
Restivo et al. | Metal assessment for the catalytic reduction of bromate in water under hydrogen | |
Lin et al. | Methane conversion over artificial photocatalysts | |
Au et al. | Pulse studies of CH 4 interaction with NiO/Al 2 O 3 catalysts | |
You et al. | Non-noble metal-based cocatalysts for photocatalytic CO2 reduction | |
Thangudu et al. | Enhanced photofixation of dinitrogen to ammonia over a biomimetic metal (Fe, Mo)-doped mesoporous MCM-41 zeolite catalyst under ambient conditions | |
JP2004026667A (ja) | 二酸化炭素のメタノール変換用触媒反応システム | |
Zhang et al. | Elucidating the promoting role of Mo2C in methane activation using Ni-xMo2C/FAU to catalyze methane steam reforming | |
CN110152735B (zh) | 一种二氧化碳还原催化剂、制备方法及还原反应方法 | |
Pennington et al. | Metal-free hydrogen evolution over defect-rich anatase titanium dioxide | |
Morawski et al. | Effective green ammonia synthesis from gaseous nitrogen and CO2 saturated-water vapour utilizing a novel photocatalytic reactor | |
Ogihara et al. | Decomposition and coupling of methane over Pd–Au/Al2O3 catalysts to form COx-free hydrogen and C2 hydrocarbons |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20050906 |