JP2004026112A - 乗員保護装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】操舵ハンドルの操舵状態に拘らず、操舵ハンドル自体にて得られるエネルギー吸収荷重と衝突エネルギー吸収手段にて得られるエネルギー吸収荷重にて、運転者の衝突エネルギーを的確に吸収すること。
【解決手段】車両の前面衝突時に運転者Hの衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段(30)と、この衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重を変化させるエネルギー吸収荷重調整手段(35)を備えた乗員保護装置にて、操舵ハンドル(11)の操舵状態を検出する操舵状態検出手段(S3)を設けるとともに、この操舵状態検出手段からの検出信号に基づいてエネルギー吸収荷重調整手段の作動を制御する制御手段(ECU)を設けて、操舵ハンドル自体にて得られるエネルギー吸収荷重の操舵状態に応じた増減変化を、衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重の操舵状態に応じた変化にて補完する。
【選択図】 図1
【解決手段】車両の前面衝突時に運転者Hの衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段(30)と、この衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重を変化させるエネルギー吸収荷重調整手段(35)を備えた乗員保護装置にて、操舵ハンドル(11)の操舵状態を検出する操舵状態検出手段(S3)を設けるとともに、この操舵状態検出手段からの検出信号に基づいてエネルギー吸収荷重調整手段の作動を制御する制御手段(ECU)を設けて、操舵ハンドル自体にて得られるエネルギー吸収荷重の操舵状態に応じた増減変化を、衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重の操舵状態に応じた変化にて補完する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に装備されて車両の前面衝突時に運転者の衝突エネルギーを吸収することで運転者を保護する乗員保護装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の乗員保護装置の一つとして、車両の前面衝突時に運転者の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段を備えるとともに、この衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重を変化させるエネルギー吸収荷重調整手段を備えたものがあり、例えば、特開2002−79944号公報に示されている。また、この公報には、車両の前面衝突時に、ステアリングホイールと運転者との間隔が所定値以下である場合、ステアリングホイールを所定量前進させる技術が示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、操舵ハンドルの一形態であるステアリングホイール自体にて得られるエネルギー吸収荷重は、例えばスポーク等の配置構成により、操舵状態に応じて変化する。しかし、従来技術では、操舵状態が直進状態であるときの車両前面衝突時に操舵ハンドルによる所期のエネルギー吸収荷重が得られるように設計されていて、操舵状態については考慮されていない。このため、車両前面衝突時の操舵状態が直進状態でない場合には、操舵ハンドルによる所期のエネルギー吸収荷重が得られないおそれがある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した課題に対処すべく、車両の前面衝突時に運転者の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段を備えるとともに、この衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重を変化させるエネルギー吸収荷重調整手段を備えた乗員保護装置において、操舵ハンドルの操舵状態を検出する操舵状態検出手段を設けるとともに、この操舵状態検出手段からの検出信号に基づいてエネルギー吸収荷重調整手段の作動を制御する制御手段を設けたこと(請求項1に係る発明)に特徴がある。
【0005】
この場合において、運転者のシートベルト着用有無を検出するシートベルト着用有無検出手段を設けて、このシートベルト着用有無検出手段にて運転者のシートベルト着用が検出されたときには、運転者のシートベルト非着用が検出されたときに比して、前記衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重が小さくなるように設定すること(請求項2に係る発明)が望ましい。
【0006】
【発明の作用・効果】
本発明による乗員保護装置においては、操舵ハンドルの操舵状態を検出する操舵状態検出手段からの検出信号に基づいてエネルギー吸収荷重調整手段の作動を制御手段により制御することが可能であり、衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重を操舵状態に応じて変化させることが可能である。
【0007】
このため、操舵ハンドル自体にて得られるエネルギー吸収荷重の操舵状態に応じた増減変化を、衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重の操舵状態に応じた変化にて補完することが可能である。したがって、操舵ハンドルの操舵状態に拘らず、操舵ハンドル自体にて得られるエネルギー吸収荷重と衝突エネルギー吸収手段にて得られるエネルギー吸収荷重にて、運転者の衝突エネルギーを的確に吸収することが可能である。
【0008】
また、本発明において、運転者のシートベルト着用有無を検出するシートベルト着用有無検出手段を設けて、このシートベルト着用有無検出手段にて運転者のシートベルト着用が検出されたときには、運転者のシートベルト非着用が検出されたときに比して、衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重が小さくなるように設定した場合には、運転者がシートベルトを着用している状態での車両の前面衝突時に、衝突エネルギー吸収手段から運転者に作用する衝撃荷重を小さくすることができる。
【0009】
また、運転者がシートベルトを着用していない状態での車両の前面衝突時には、運転者がシートベルトを着用している状態での車両の前面衝突時に比して、衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重を大きくして、運転者をシートベルトにて受承できないことにより生じる運転者の衝突エネルギーの吸収不足量を衝突エネルギー吸収手段にて補足することが可能である。したがって、シートベルトの着用有無に拘らず、運転者の衝突エネルギーを的確に吸収して、運転者を的確に保護することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図8は本発明による乗員保護装置を示していて、この乗員保護装置は、ステアリングホイール11に装着したエアバッグ装置20と、ステアリングコラム12と車体(図示省略)との間に装着したエネルギー吸収機構30と、シート50と車体との間に装着したシートベルト装置40を備えており、車両の前面衝突時に運転者Hの衝突エネルギーを吸収する。
【0011】
ステアリングホイール11は、ステアリングコラム12に軸方向移動不能かつ回転自在に組付けたステアリングシャフト13の後端部に一体回転可能に組付けられていて、それ自体の塑性変形にて運転者Hの衝突エネルギーを吸収する構成を備えており、図7に例示した3本スポークの構成である場合には、ステアリングホイール自体にて得られるエネルギー吸収荷重Fsが、図8に示したように、操舵状態(ステアリングホイール11の回転角θ)に応じて変化する。ステアリングコラム12は、その後方がアッパサポートブラケット14を介して車体の一部(図示省略)に支持され、かつ、その前方がエネルギー吸収機構30を介して車体の一部に支持されている。
【0012】
ステアリングシャフト13は、先端部にてステアリングリンク機構15に連結されている。アッパサポートブラケット14は、車体の一部に組付けられてステアリングコラム12を前方へブレイクアウエイ可能に支持するブラケットであり、ステアリングコラム12に車両前方に向けて所定の荷重が作用したとき、ステアリングコラム12を離脱させて前方へ移動可能とするようになっている。
【0013】
エアバッグ装置20は、ステアリングホイール11に折り畳んで収納されたエアバッグ本体(図示省略)と、このエアバッグ本体にガスを供給可能でその供給タイミングを電気制御装置ECUによって制御される一対のインフレータ(図示省略)を備えていて、車両の前面衝突時に、運転者Hとステアリングホイール11間にて膨張展開したエアバッグ本体が運転者Hを受け止めることにより、運転者Hの衝突エネルギーを吸収するようになっている。また、このエアバッグ装置20では、一対のインフレータによるガスの供給タイミングを電気制御装置ECUによって制御することにより、エアバッグ装置20にて得られるエネルギー吸収荷重Faを無段階に調整可能(可変可能)となっている。
【0014】
エネルギー吸収機構30は、車両の前面衝突時にステアリングコラム12が前方にストロークすることにより運転者Hの衝突エネルギーを吸収するものであり、ステアリングコラム12の前方を支持する支持機構を兼ねていて、図2〜図4に示したように、支持ブラケット31、支持ピン32、ロアサポートブラケット33、エネルギー吸収部材である屈曲プレート34を備えるとともに、屈曲プレート34の塑性変形を可変とする係合装置35を備えている。
【0015】
支持ブラケット31は、前後方向からみて門形形状のものであり、互いに対向する側壁部31aの下側端部にて、ステアリングコラム12の外周の上方部位に固着されている。また、支持ブラケット31の両側壁部31aには、中央部位から後方へ斜め上方に向けて延びる長孔31bが対向して形成されている。長孔31bは、基端部である円形孔部31b1と、円形孔部31b1から後方へ斜め上方に向けて延びる帯状孔部31b2と、これら両孔部31b1,31b2を連結する幅狭部31b3とからなるもので、帯状孔部31b2は円形孔部31b1の径と略同一寸法の幅に形成されている。
【0016】
支持ピン32は、支持ブラケット31の長孔31bを貫通した状態で、車体の一部に固着されるロアサポートブラケット33に組付けられるもので、ロアサポートブラケット33に組付けられた状態では、支持ブラケット31を介してステアリングコラム12の前端部を車体の一部に上下方向へ回動可能に支持する。また、支持ピン32は、図示状態にて支持ブラケット31の長孔31bにおける円形孔部31b1に挿通されていて、支持ブラケット31との相対的な移動(相対移動)により、幅狭部31b3を乗り越えて帯状孔部31b2内を後方へ移動可能である。
【0017】
屈曲プレート34は、所定幅のプレートの後端部側を略360度屈曲して形成されているもので、所定間隔を保持して対向する上側壁部34a、下側壁部34b、これら両壁部34a,34bを後端側にて連結する円弧状壁部34c、および、下側壁部34bの先端部から直交して起立する起立壁部34dにて構成されている。
【0018】
また、屈曲プレート34は、支持ブラケット31の側壁部31aにおける長孔31bの円形孔部31b1の外周を取り巻くように植設された複数のピン31cにより位置決めされた状態で支持ブラケット31に溶接固定されていて、支持ブラケット31内で支持ピン32を包囲し、起立壁部34dを支持ピン32の前側に位置にさせ、かつ、円弧状壁部34cを支持ピン32の後側にて長孔31bの帯状孔部31b2を交差して経由させている。
【0019】
この屈曲プレート34においては、図5および図6に示すように、上側壁部34aの幅方向の中央部に長さ方向に延びる上下の溝部34e1,34e2が形成されているとともに、両溝部34e1,34e2の後端部に円形状の係合孔34e3と、係合孔34e3を両溝部34e1,34e2に連結する切欠き溝34e4が形成されている。
【0020】
係合装置35は、エネルギー吸収機構30にて得られるエネルギー吸収荷重Fcを変化させるエネルギー吸収荷重調整手段であり、ソレノイド35aと、ソレノイド35aに対する通電制御により進退する剪断作用ピン35bとからなり、ソレノイド35aを支持ブラケット31の上壁部31dの前端部に固定することにより、支持ブラケット31に取付けられている。また、係合装置35は、その取付状態において、剪断作用ピン35bが支持ブラケット31の上壁部31dを貫通していて、屈曲プレート34の上側壁部34aの係合孔34e3に進退可能に対向している。剪断作用ピン35bは、漸次先細りとなるテーパ形状に形成されている。
【0021】
この係合装置35においては、ソレノイド35aに対する印加電流値を電気制御装置ECUによって制御することにより、剪断作用ピン35bの突出長さを無段階に調整可能(可変可能)であり、エネルギー吸収機構30にて剪断作用ピン35bが屈曲プレート34を剪断することにより得られるエネルギー吸収荷重Fc1を無段階に調整可能である。なお、支持ピン32が屈曲プレート34を引き延ばすように変形させることにより得られるエネルギー吸収荷重Fc2(剪断作用ピン35bが屈曲プレート34を剪断するときにおいて略同時に得られる荷重)は略一定であって不変であり、上記した両荷重の和(Fc1+Fc2)がエネルギー吸収機構30にて得られるエネルギー吸収荷重Fcである。
【0022】
シートベルト装置40は、図1に示したように、シートベルト41、タングプレート42、バックル43、ショルダーベルトアンカ44を備えるとともに、プリテンショナ機構およびフォースリミッタ機構を内蔵したリトラクタ45を備えていて、バックル43内のスイッチS1がタングプレート42の有無をON・OFFにて検知することにより、運転者Hのシートベルト着用・非着用が検出されるようになっている。
【0023】
なお、プリテンショナ機構は、車両の前面衝突時の初期にシートベルト41を瞬時に巻き取り、運転者Hの身体をしっかりと拘束する機構である。また、フォースリミッタ機構は、車両の前面衝突時に運転者Hが衝撃の反動で前方へ移動したときに、シートベルト41の拘束力を少し緩めて、運転者Hの胸部にかかる荷重を設定荷重Fvに低減する機構である。
【0024】
電気制御装置ECUは、車両の前面衝突時に、エアバッグ装置20とエネルギー吸収機構30の作動を、ステアリングホイール11の回転操作量と運転者Hのシートベルト着用・非着用に応じて制御するものであり、エアバッグ装置20とエネルギー吸収機構30に電気的に接続されるとともに、運転者Hのシートベルト着用・非着用をON・OFFにて検出するバックル43内のスイッチS1、車両の前面衝突時を検出するための減速度センサS2、ステアリングホイール11の回転操作量(回転角θ)をステアリングシャフト13の回転から検出する舵角センサS3にそれぞれ電気的に接続されている。
【0025】
また、電気制御装置ECUは、CPU、ROM、RAM、インターフェース等を有するマイクロコンピュータを備えるとともに、エアバッグ装置20におけるインフレータの作動を制御する通電回路と、エネルギー吸収機構30におけるソレノイド35aの作動を制御する通電回路を備えていて、図9のフローチャートに対応した通電制御プログラムを所定の短時間(例えば、5msec)毎に繰り返し実行して、エアバッグ装置20とエネルギー吸収機構30にて得られる各エネルギー吸収荷重Fa,Fcを制御する。
【0026】
上記のように構成したこの実施形態においては、運転者Hがシートベルト41を着用している状態での車両の前面衝突時には、バックル43内のスイッチS1がON状態で、減速度センサS2にて検出される減速度Gが車両の前面衝突を判定するための設定値Gref以上となる。このため、電気制御装置ECUにおけるマイクロコンピュータのCPUが、図9のステップ102と104にて「Yes」と判定して、図9のステップ106と108を順次実行する。
【0027】
図9のステップ106では、マイクロコンピュータのCPUが、エアバッグ装置20にて得られるエネルギー吸収荷重Faを最小値Faminとする制御信号(一方のインフレータのみを作動させる信号)を出力し、ステップ108では、マイクロコンピュータのCPUが、エネルギー吸収機構30にて得られるエネルギー吸収荷重Fcを最小値Fcminとする制御信号(剪断作用ピン35bが屈曲プレート34を剪断しない位置まで移動されて、支持ピン32が屈曲プレート34を引き延ばすように変形させることにより得られるエネルギー吸収荷重Fc2のみが得られるようにする信号)を出力する。
【0028】
このため、運転者Hがシートベルト41を着用している状態での車両の前面衝突時には、運転者Hの胸部移動に伴って、シートベルト装置40が機能するとともに、ステアリングホイール11に装着したエアバッグ装置20の作動と、ステアリングコラム12と車体(図示省略)との間に装着したエネルギー吸収機構30の作動が順次得られて、図11の(a)にて概略的に示したような性能(シートベルト装置40によって得られる略一定のエネルギー吸収荷重Fv,エアバッグ装置20によって得られるエネルギー吸収荷重Famin,エネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重Fcmin)が得られて、運転者Hの衝突エネルギーが吸収される。なお、この場合には、エアバッグ装置20によって得られるエネルギー吸収荷重Faminと、エネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重Fcminが小さいため、ステアリングホイール11自体の塑性変形は生じず、エネルギー吸収荷重Fsは得られない。
【0029】
また、運転者Hがシートベルト41を着用していない状態での車両の前面衝突時には、バックル43内のスイッチS1がOFF状態で、減速度センサS2にて検出される減速度Gが設定値Gref以上となる。このため、電気制御装置ECUにおけるマイクロコンピュータのCPUが、図9のステップ102にて「Yes」と判定しかつステップ104にて「No」と判定して、図9のステップ110と112と114を順次実行する。
【0030】
図9のステップ110では、マイクロコンピュータのCPUが、エアバッグ装置20にて得られるエネルギー吸収荷重Faを最大値Famaxとする制御信号(全てのインフレータを作動させる信号)を出力し、ステップ112では、マイクロコンピュータのCPUが、舵角センサS3にて検出されるステアリングホイール11の回転角θに基づいて、図10のマップを参照して、エネルギー吸収機構30にて得るべきエネルギー吸収荷重Fc=(Fc1+Fc2)を演算し、ステップ114では、マイクロコンピュータのCPUが、エネルギー吸収機構30にて得られるエネルギー吸収荷重Fcを上記演算値(Fc1+Fc2)とする制御信号を出力する。
【0031】
このため、運転者Hがシートベルト41を着用していない状態での車両の前面衝突時には、運転者Hの胸部移動に伴って、ステアリングホイール11に装着したエアバッグ装置20の作動と、ステアリングホイール11自体の塑性変形と、ステアリングコラム12と車体(図示省略)との間に装着したエネルギー吸収機構30の作動が順次得られて、図11の(b)にて概略的に示したような性能(エアバッグ装置20によって得られるエネルギー吸収荷重Famax,ステアリングホイール11自体の塑性変形によって得られるエネルギー吸収荷重Fs,エネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重Fc)が得られて、運転者Hの衝突エネルギーが吸収される。
【0032】
ところで、この実施形態においては、ステアリングホイール11自体の塑性変形によって得られるエネルギー吸収荷重Fsが図8に示したようにステアリングホイール11の回転角θに応じて変化し、エネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重Fcが図10に示したようにステアリングホイール11の回転角θに応じて変化する。
【0033】
このため、ステアリングホイール11自体の塑性変形によって得られるエネルギー吸収荷重Fsの操舵状態に応じた増減変化を、エネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重Fcの操舵状態に応じた変化にて補完する(FsとFcの和を常に略一定とする)ことが可能である。したがって、ステアリングホイール11の操舵状態(回転角θ)に拘らず、ステアリングホイール11自体にて得られるエネルギー吸収荷重Fsとエネルギー吸収機構30にて得られるエネルギー吸収荷重Fcにて、運転者Hの衝突エネルギーを的確に吸収することが可能である。
【0034】
また、この実施形態においては、運転者Hのシートベルト着用有無を検出するスイッチS1を設けて、このスイッチS1にて運転者Hのシートベルト着用が検出されたときには、運転者Hのシートベルト非着用が検出されたときに比して、エアバッグ装置20によって得られるエネルギー吸収荷重Faと、エネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重Fcが小さくなるように設定したため、運転者Hがシートベルト41を着用している状態での車両の前面衝突時に、エネルギー吸収機構30からステアリングホイール11を介して運転者Hに作用する衝撃荷重を小さくすることができる。
【0035】
上記実施形態においては、エネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重Fcが図10に示したようにステアリングホイール11の回転角θに応じて変化するように構成して実施したが、エアバッグ装置20によって得られるエネルギー吸収荷重Faまたはエアバッグ装置20とエネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重FaとFcがステアリングホイール11の回転角θに応じて変化するように構成して実施することも可能である。
【0036】
また、上記実施形態においては、運転者Hの衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段として、エアバッグ装置20とエネルギー吸収機構30が共に採用されている実施形態に本発明を実施したが、運転者の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段として、エアバッグ装置20またはエネルギー吸収機構30が採用されている実施形態にも本発明は上記実施形態と同様に実施することが可能である。
【0037】
また、上記実施形態においては、ステアリングコラム12が前方にストロークすることにより運転者Hの衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段としてエネルギー吸収機構30を採用して実施したが、この衝突エネルギー吸収手段は、ステアリングコラム自体にエネルギー吸収機構を備えたものでもよくて、上記実施形態に限定されるものではない。
【0038】
また、上記実施形態においては、操舵ハンドルとして3本スポークのステアリングホイール11を採用して実施したが、操舵ハンドルとしては、図12に示した4本スポークのステアリングホイールを採用して実施し得ることは勿論のこと、ステアリングレバー等の他の操舵ハンドルを採用して実施することも可能である。また、操舵ハンドルの操舵状態(ステアリングホイール11の回転角θ)を舵角センサS3にて検出して実施したが、他の検出手段にて検出するように構成して実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による乗員保護装置の一実施形態を概略的に示す側面図である。
【図2】図1に示したステアリング装置を概略的に示す平面図である。
【図3】図3に示したステアリング装置の側面図である。
【図4】図3の要部拡大一部破断側面図である。
【図5】図4に示した屈曲プレートの平面図である。
【図6】図5の6−6線に沿う拡大縦断正面図である。
【図7】図1に示した3本スポークのステアリングホイールを概略的に示した正面図である。
【図8】図7に示したステアリングホイールの塑性変形によって得られるエネルギー吸収荷重Fsと回転角θの関係を示した特性線図である。
【図9】図1の電気制御装置によって実行される通電制御プログラムを示すフローチャートである。
【図10】エネルギー吸収荷重Fcと回転角θの関係を示した線図である。
【図11】(a)はシートベルトを着用している状態での車両の前面衝突時における概略的な性能線図であり、(b)はシートベルトを着用していない状態での車両の前面衝突時における概略的な性能線図である。
【図12】4本スポークのステアリングホイールを概略的に示した正面図である。
【符号の説明】
11…ステアリングホイール、12…ステアリングコラム、13…ステアリングシャフト、14…アッパサポートブラケット、20…エアバッグ装置、30…エネルギー吸収機構、35…係合装置、40…シートベルト装置、H…運転者、S1…シートベルト着用・非着用を検出するスイッチ、S2…減速度センサ、S3…舵角センサ、ECU…電気制御装置。
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に装備されて車両の前面衝突時に運転者の衝突エネルギーを吸収することで運転者を保護する乗員保護装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の乗員保護装置の一つとして、車両の前面衝突時に運転者の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段を備えるとともに、この衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重を変化させるエネルギー吸収荷重調整手段を備えたものがあり、例えば、特開2002−79944号公報に示されている。また、この公報には、車両の前面衝突時に、ステアリングホイールと運転者との間隔が所定値以下である場合、ステアリングホイールを所定量前進させる技術が示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、操舵ハンドルの一形態であるステアリングホイール自体にて得られるエネルギー吸収荷重は、例えばスポーク等の配置構成により、操舵状態に応じて変化する。しかし、従来技術では、操舵状態が直進状態であるときの車両前面衝突時に操舵ハンドルによる所期のエネルギー吸収荷重が得られるように設計されていて、操舵状態については考慮されていない。このため、車両前面衝突時の操舵状態が直進状態でない場合には、操舵ハンドルによる所期のエネルギー吸収荷重が得られないおそれがある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した課題に対処すべく、車両の前面衝突時に運転者の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段を備えるとともに、この衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重を変化させるエネルギー吸収荷重調整手段を備えた乗員保護装置において、操舵ハンドルの操舵状態を検出する操舵状態検出手段を設けるとともに、この操舵状態検出手段からの検出信号に基づいてエネルギー吸収荷重調整手段の作動を制御する制御手段を設けたこと(請求項1に係る発明)に特徴がある。
【0005】
この場合において、運転者のシートベルト着用有無を検出するシートベルト着用有無検出手段を設けて、このシートベルト着用有無検出手段にて運転者のシートベルト着用が検出されたときには、運転者のシートベルト非着用が検出されたときに比して、前記衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重が小さくなるように設定すること(請求項2に係る発明)が望ましい。
【0006】
【発明の作用・効果】
本発明による乗員保護装置においては、操舵ハンドルの操舵状態を検出する操舵状態検出手段からの検出信号に基づいてエネルギー吸収荷重調整手段の作動を制御手段により制御することが可能であり、衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重を操舵状態に応じて変化させることが可能である。
【0007】
このため、操舵ハンドル自体にて得られるエネルギー吸収荷重の操舵状態に応じた増減変化を、衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重の操舵状態に応じた変化にて補完することが可能である。したがって、操舵ハンドルの操舵状態に拘らず、操舵ハンドル自体にて得られるエネルギー吸収荷重と衝突エネルギー吸収手段にて得られるエネルギー吸収荷重にて、運転者の衝突エネルギーを的確に吸収することが可能である。
【0008】
また、本発明において、運転者のシートベルト着用有無を検出するシートベルト着用有無検出手段を設けて、このシートベルト着用有無検出手段にて運転者のシートベルト着用が検出されたときには、運転者のシートベルト非着用が検出されたときに比して、衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重が小さくなるように設定した場合には、運転者がシートベルトを着用している状態での車両の前面衝突時に、衝突エネルギー吸収手段から運転者に作用する衝撃荷重を小さくすることができる。
【0009】
また、運転者がシートベルトを着用していない状態での車両の前面衝突時には、運転者がシートベルトを着用している状態での車両の前面衝突時に比して、衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重を大きくして、運転者をシートベルトにて受承できないことにより生じる運転者の衝突エネルギーの吸収不足量を衝突エネルギー吸収手段にて補足することが可能である。したがって、シートベルトの着用有無に拘らず、運転者の衝突エネルギーを的確に吸収して、運転者を的確に保護することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図8は本発明による乗員保護装置を示していて、この乗員保護装置は、ステアリングホイール11に装着したエアバッグ装置20と、ステアリングコラム12と車体(図示省略)との間に装着したエネルギー吸収機構30と、シート50と車体との間に装着したシートベルト装置40を備えており、車両の前面衝突時に運転者Hの衝突エネルギーを吸収する。
【0011】
ステアリングホイール11は、ステアリングコラム12に軸方向移動不能かつ回転自在に組付けたステアリングシャフト13の後端部に一体回転可能に組付けられていて、それ自体の塑性変形にて運転者Hの衝突エネルギーを吸収する構成を備えており、図7に例示した3本スポークの構成である場合には、ステアリングホイール自体にて得られるエネルギー吸収荷重Fsが、図8に示したように、操舵状態(ステアリングホイール11の回転角θ)に応じて変化する。ステアリングコラム12は、その後方がアッパサポートブラケット14を介して車体の一部(図示省略)に支持され、かつ、その前方がエネルギー吸収機構30を介して車体の一部に支持されている。
【0012】
ステアリングシャフト13は、先端部にてステアリングリンク機構15に連結されている。アッパサポートブラケット14は、車体の一部に組付けられてステアリングコラム12を前方へブレイクアウエイ可能に支持するブラケットであり、ステアリングコラム12に車両前方に向けて所定の荷重が作用したとき、ステアリングコラム12を離脱させて前方へ移動可能とするようになっている。
【0013】
エアバッグ装置20は、ステアリングホイール11に折り畳んで収納されたエアバッグ本体(図示省略)と、このエアバッグ本体にガスを供給可能でその供給タイミングを電気制御装置ECUによって制御される一対のインフレータ(図示省略)を備えていて、車両の前面衝突時に、運転者Hとステアリングホイール11間にて膨張展開したエアバッグ本体が運転者Hを受け止めることにより、運転者Hの衝突エネルギーを吸収するようになっている。また、このエアバッグ装置20では、一対のインフレータによるガスの供給タイミングを電気制御装置ECUによって制御することにより、エアバッグ装置20にて得られるエネルギー吸収荷重Faを無段階に調整可能(可変可能)となっている。
【0014】
エネルギー吸収機構30は、車両の前面衝突時にステアリングコラム12が前方にストロークすることにより運転者Hの衝突エネルギーを吸収するものであり、ステアリングコラム12の前方を支持する支持機構を兼ねていて、図2〜図4に示したように、支持ブラケット31、支持ピン32、ロアサポートブラケット33、エネルギー吸収部材である屈曲プレート34を備えるとともに、屈曲プレート34の塑性変形を可変とする係合装置35を備えている。
【0015】
支持ブラケット31は、前後方向からみて門形形状のものであり、互いに対向する側壁部31aの下側端部にて、ステアリングコラム12の外周の上方部位に固着されている。また、支持ブラケット31の両側壁部31aには、中央部位から後方へ斜め上方に向けて延びる長孔31bが対向して形成されている。長孔31bは、基端部である円形孔部31b1と、円形孔部31b1から後方へ斜め上方に向けて延びる帯状孔部31b2と、これら両孔部31b1,31b2を連結する幅狭部31b3とからなるもので、帯状孔部31b2は円形孔部31b1の径と略同一寸法の幅に形成されている。
【0016】
支持ピン32は、支持ブラケット31の長孔31bを貫通した状態で、車体の一部に固着されるロアサポートブラケット33に組付けられるもので、ロアサポートブラケット33に組付けられた状態では、支持ブラケット31を介してステアリングコラム12の前端部を車体の一部に上下方向へ回動可能に支持する。また、支持ピン32は、図示状態にて支持ブラケット31の長孔31bにおける円形孔部31b1に挿通されていて、支持ブラケット31との相対的な移動(相対移動)により、幅狭部31b3を乗り越えて帯状孔部31b2内を後方へ移動可能である。
【0017】
屈曲プレート34は、所定幅のプレートの後端部側を略360度屈曲して形成されているもので、所定間隔を保持して対向する上側壁部34a、下側壁部34b、これら両壁部34a,34bを後端側にて連結する円弧状壁部34c、および、下側壁部34bの先端部から直交して起立する起立壁部34dにて構成されている。
【0018】
また、屈曲プレート34は、支持ブラケット31の側壁部31aにおける長孔31bの円形孔部31b1の外周を取り巻くように植設された複数のピン31cにより位置決めされた状態で支持ブラケット31に溶接固定されていて、支持ブラケット31内で支持ピン32を包囲し、起立壁部34dを支持ピン32の前側に位置にさせ、かつ、円弧状壁部34cを支持ピン32の後側にて長孔31bの帯状孔部31b2を交差して経由させている。
【0019】
この屈曲プレート34においては、図5および図6に示すように、上側壁部34aの幅方向の中央部に長さ方向に延びる上下の溝部34e1,34e2が形成されているとともに、両溝部34e1,34e2の後端部に円形状の係合孔34e3と、係合孔34e3を両溝部34e1,34e2に連結する切欠き溝34e4が形成されている。
【0020】
係合装置35は、エネルギー吸収機構30にて得られるエネルギー吸収荷重Fcを変化させるエネルギー吸収荷重調整手段であり、ソレノイド35aと、ソレノイド35aに対する通電制御により進退する剪断作用ピン35bとからなり、ソレノイド35aを支持ブラケット31の上壁部31dの前端部に固定することにより、支持ブラケット31に取付けられている。また、係合装置35は、その取付状態において、剪断作用ピン35bが支持ブラケット31の上壁部31dを貫通していて、屈曲プレート34の上側壁部34aの係合孔34e3に進退可能に対向している。剪断作用ピン35bは、漸次先細りとなるテーパ形状に形成されている。
【0021】
この係合装置35においては、ソレノイド35aに対する印加電流値を電気制御装置ECUによって制御することにより、剪断作用ピン35bの突出長さを無段階に調整可能(可変可能)であり、エネルギー吸収機構30にて剪断作用ピン35bが屈曲プレート34を剪断することにより得られるエネルギー吸収荷重Fc1を無段階に調整可能である。なお、支持ピン32が屈曲プレート34を引き延ばすように変形させることにより得られるエネルギー吸収荷重Fc2(剪断作用ピン35bが屈曲プレート34を剪断するときにおいて略同時に得られる荷重)は略一定であって不変であり、上記した両荷重の和(Fc1+Fc2)がエネルギー吸収機構30にて得られるエネルギー吸収荷重Fcである。
【0022】
シートベルト装置40は、図1に示したように、シートベルト41、タングプレート42、バックル43、ショルダーベルトアンカ44を備えるとともに、プリテンショナ機構およびフォースリミッタ機構を内蔵したリトラクタ45を備えていて、バックル43内のスイッチS1がタングプレート42の有無をON・OFFにて検知することにより、運転者Hのシートベルト着用・非着用が検出されるようになっている。
【0023】
なお、プリテンショナ機構は、車両の前面衝突時の初期にシートベルト41を瞬時に巻き取り、運転者Hの身体をしっかりと拘束する機構である。また、フォースリミッタ機構は、車両の前面衝突時に運転者Hが衝撃の反動で前方へ移動したときに、シートベルト41の拘束力を少し緩めて、運転者Hの胸部にかかる荷重を設定荷重Fvに低減する機構である。
【0024】
電気制御装置ECUは、車両の前面衝突時に、エアバッグ装置20とエネルギー吸収機構30の作動を、ステアリングホイール11の回転操作量と運転者Hのシートベルト着用・非着用に応じて制御するものであり、エアバッグ装置20とエネルギー吸収機構30に電気的に接続されるとともに、運転者Hのシートベルト着用・非着用をON・OFFにて検出するバックル43内のスイッチS1、車両の前面衝突時を検出するための減速度センサS2、ステアリングホイール11の回転操作量(回転角θ)をステアリングシャフト13の回転から検出する舵角センサS3にそれぞれ電気的に接続されている。
【0025】
また、電気制御装置ECUは、CPU、ROM、RAM、インターフェース等を有するマイクロコンピュータを備えるとともに、エアバッグ装置20におけるインフレータの作動を制御する通電回路と、エネルギー吸収機構30におけるソレノイド35aの作動を制御する通電回路を備えていて、図9のフローチャートに対応した通電制御プログラムを所定の短時間(例えば、5msec)毎に繰り返し実行して、エアバッグ装置20とエネルギー吸収機構30にて得られる各エネルギー吸収荷重Fa,Fcを制御する。
【0026】
上記のように構成したこの実施形態においては、運転者Hがシートベルト41を着用している状態での車両の前面衝突時には、バックル43内のスイッチS1がON状態で、減速度センサS2にて検出される減速度Gが車両の前面衝突を判定するための設定値Gref以上となる。このため、電気制御装置ECUにおけるマイクロコンピュータのCPUが、図9のステップ102と104にて「Yes」と判定して、図9のステップ106と108を順次実行する。
【0027】
図9のステップ106では、マイクロコンピュータのCPUが、エアバッグ装置20にて得られるエネルギー吸収荷重Faを最小値Faminとする制御信号(一方のインフレータのみを作動させる信号)を出力し、ステップ108では、マイクロコンピュータのCPUが、エネルギー吸収機構30にて得られるエネルギー吸収荷重Fcを最小値Fcminとする制御信号(剪断作用ピン35bが屈曲プレート34を剪断しない位置まで移動されて、支持ピン32が屈曲プレート34を引き延ばすように変形させることにより得られるエネルギー吸収荷重Fc2のみが得られるようにする信号)を出力する。
【0028】
このため、運転者Hがシートベルト41を着用している状態での車両の前面衝突時には、運転者Hの胸部移動に伴って、シートベルト装置40が機能するとともに、ステアリングホイール11に装着したエアバッグ装置20の作動と、ステアリングコラム12と車体(図示省略)との間に装着したエネルギー吸収機構30の作動が順次得られて、図11の(a)にて概略的に示したような性能(シートベルト装置40によって得られる略一定のエネルギー吸収荷重Fv,エアバッグ装置20によって得られるエネルギー吸収荷重Famin,エネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重Fcmin)が得られて、運転者Hの衝突エネルギーが吸収される。なお、この場合には、エアバッグ装置20によって得られるエネルギー吸収荷重Faminと、エネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重Fcminが小さいため、ステアリングホイール11自体の塑性変形は生じず、エネルギー吸収荷重Fsは得られない。
【0029】
また、運転者Hがシートベルト41を着用していない状態での車両の前面衝突時には、バックル43内のスイッチS1がOFF状態で、減速度センサS2にて検出される減速度Gが設定値Gref以上となる。このため、電気制御装置ECUにおけるマイクロコンピュータのCPUが、図9のステップ102にて「Yes」と判定しかつステップ104にて「No」と判定して、図9のステップ110と112と114を順次実行する。
【0030】
図9のステップ110では、マイクロコンピュータのCPUが、エアバッグ装置20にて得られるエネルギー吸収荷重Faを最大値Famaxとする制御信号(全てのインフレータを作動させる信号)を出力し、ステップ112では、マイクロコンピュータのCPUが、舵角センサS3にて検出されるステアリングホイール11の回転角θに基づいて、図10のマップを参照して、エネルギー吸収機構30にて得るべきエネルギー吸収荷重Fc=(Fc1+Fc2)を演算し、ステップ114では、マイクロコンピュータのCPUが、エネルギー吸収機構30にて得られるエネルギー吸収荷重Fcを上記演算値(Fc1+Fc2)とする制御信号を出力する。
【0031】
このため、運転者Hがシートベルト41を着用していない状態での車両の前面衝突時には、運転者Hの胸部移動に伴って、ステアリングホイール11に装着したエアバッグ装置20の作動と、ステアリングホイール11自体の塑性変形と、ステアリングコラム12と車体(図示省略)との間に装着したエネルギー吸収機構30の作動が順次得られて、図11の(b)にて概略的に示したような性能(エアバッグ装置20によって得られるエネルギー吸収荷重Famax,ステアリングホイール11自体の塑性変形によって得られるエネルギー吸収荷重Fs,エネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重Fc)が得られて、運転者Hの衝突エネルギーが吸収される。
【0032】
ところで、この実施形態においては、ステアリングホイール11自体の塑性変形によって得られるエネルギー吸収荷重Fsが図8に示したようにステアリングホイール11の回転角θに応じて変化し、エネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重Fcが図10に示したようにステアリングホイール11の回転角θに応じて変化する。
【0033】
このため、ステアリングホイール11自体の塑性変形によって得られるエネルギー吸収荷重Fsの操舵状態に応じた増減変化を、エネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重Fcの操舵状態に応じた変化にて補完する(FsとFcの和を常に略一定とする)ことが可能である。したがって、ステアリングホイール11の操舵状態(回転角θ)に拘らず、ステアリングホイール11自体にて得られるエネルギー吸収荷重Fsとエネルギー吸収機構30にて得られるエネルギー吸収荷重Fcにて、運転者Hの衝突エネルギーを的確に吸収することが可能である。
【0034】
また、この実施形態においては、運転者Hのシートベルト着用有無を検出するスイッチS1を設けて、このスイッチS1にて運転者Hのシートベルト着用が検出されたときには、運転者Hのシートベルト非着用が検出されたときに比して、エアバッグ装置20によって得られるエネルギー吸収荷重Faと、エネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重Fcが小さくなるように設定したため、運転者Hがシートベルト41を着用している状態での車両の前面衝突時に、エネルギー吸収機構30からステアリングホイール11を介して運転者Hに作用する衝撃荷重を小さくすることができる。
【0035】
上記実施形態においては、エネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重Fcが図10に示したようにステアリングホイール11の回転角θに応じて変化するように構成して実施したが、エアバッグ装置20によって得られるエネルギー吸収荷重Faまたはエアバッグ装置20とエネルギー吸収機構30によって得られるエネルギー吸収荷重FaとFcがステアリングホイール11の回転角θに応じて変化するように構成して実施することも可能である。
【0036】
また、上記実施形態においては、運転者Hの衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段として、エアバッグ装置20とエネルギー吸収機構30が共に採用されている実施形態に本発明を実施したが、運転者の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段として、エアバッグ装置20またはエネルギー吸収機構30が採用されている実施形態にも本発明は上記実施形態と同様に実施することが可能である。
【0037】
また、上記実施形態においては、ステアリングコラム12が前方にストロークすることにより運転者Hの衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段としてエネルギー吸収機構30を採用して実施したが、この衝突エネルギー吸収手段は、ステアリングコラム自体にエネルギー吸収機構を備えたものでもよくて、上記実施形態に限定されるものではない。
【0038】
また、上記実施形態においては、操舵ハンドルとして3本スポークのステアリングホイール11を採用して実施したが、操舵ハンドルとしては、図12に示した4本スポークのステアリングホイールを採用して実施し得ることは勿論のこと、ステアリングレバー等の他の操舵ハンドルを採用して実施することも可能である。また、操舵ハンドルの操舵状態(ステアリングホイール11の回転角θ)を舵角センサS3にて検出して実施したが、他の検出手段にて検出するように構成して実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による乗員保護装置の一実施形態を概略的に示す側面図である。
【図2】図1に示したステアリング装置を概略的に示す平面図である。
【図3】図3に示したステアリング装置の側面図である。
【図4】図3の要部拡大一部破断側面図である。
【図5】図4に示した屈曲プレートの平面図である。
【図6】図5の6−6線に沿う拡大縦断正面図である。
【図7】図1に示した3本スポークのステアリングホイールを概略的に示した正面図である。
【図8】図7に示したステアリングホイールの塑性変形によって得られるエネルギー吸収荷重Fsと回転角θの関係を示した特性線図である。
【図9】図1の電気制御装置によって実行される通電制御プログラムを示すフローチャートである。
【図10】エネルギー吸収荷重Fcと回転角θの関係を示した線図である。
【図11】(a)はシートベルトを着用している状態での車両の前面衝突時における概略的な性能線図であり、(b)はシートベルトを着用していない状態での車両の前面衝突時における概略的な性能線図である。
【図12】4本スポークのステアリングホイールを概略的に示した正面図である。
【符号の説明】
11…ステアリングホイール、12…ステアリングコラム、13…ステアリングシャフト、14…アッパサポートブラケット、20…エアバッグ装置、30…エネルギー吸収機構、35…係合装置、40…シートベルト装置、H…運転者、S1…シートベルト着用・非着用を検出するスイッチ、S2…減速度センサ、S3…舵角センサ、ECU…電気制御装置。
Claims (2)
- 車両の前面衝突時に運転者の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段を備えるとともに、この衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重を変化させるエネルギー吸収荷重調整手段を備えた乗員保護装置において、操舵ハンドルの操舵状態を検出する操舵状態検出手段を設けるとともに、この操舵状態検出手段からの検出信号に基づいてエネルギー吸収荷重調整手段の作動を制御する制御手段を設けたことを特徴とする乗員保護装置。
- 請求項1に記載の乗員保護装置において、運転者のシートベルト着用有無を検出するシートベルト着用有無検出手段を設けて、このシートベルト着用有無検出手段にて運転者のシートベルト着用が検出されたときには、運転者のシートベルト非着用が検出されたときに比して、前記衝突エネルギー吸収手段によるエネルギー吸収荷重が小さくなるように設定したことを特徴とする乗員保護装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002189565A JP2004026112A (ja) | 2002-06-28 | 2002-06-28 | 乗員保護装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002189565A JP2004026112A (ja) | 2002-06-28 | 2002-06-28 | 乗員保護装置 |
Publications (1)
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JP2004026112A true JP2004026112A (ja) | 2004-01-29 |
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Family Applications (1)
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JP2002189565A Pending JP2004026112A (ja) | 2002-06-28 | 2002-06-28 | 乗員保護装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004026112A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101046186B1 (ko) | 2004-10-21 | 2011-07-04 | 주식회사 만도 | 조향장치의 마운팅 브라켓 충격 흡수구조 |
-
2002
- 2002-06-28 JP JP2002189565A patent/JP2004026112A/ja active Pending
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