JP2004025270A - 消耗電極式アーク溶接におけるアーク発生位置推定方法および溶接条件制御方法 - Google Patents
消耗電極式アーク溶接におけるアーク発生位置推定方法および溶接条件制御方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】消耗電極式アーク溶接において、アーク電圧が比較的低い実用条件域でもワイヤ突出し長さを正確に推定することにより、被溶接材表面から板厚方向への電極先端の進入深さ(アーク発生位置)を正確に推定する方法および溶接条件制御方法を提供する。
【解決手段】消耗電極式アーク溶接において、電極チップ3と被溶接材1間の電圧を消耗電極である溶接ワイヤ4の送給速度が変化するときの臨界電圧以下で使用する場合には、溶接中に溶接電流、電極チップと被溶接材間の電圧、およびワイヤ送給速度を検出器10、11、12により検出し、これら3つの検出値から指定の演算式を用いて、演算器14にて電極チップ先端からのワイヤ突出し長さを演算するとともに、この算出したワイヤ突出し長さから電極チップ先端から被溶接材表面までの距離を差し引くことによって、被溶接材表面を原点とする板厚方向の電極先端の進入深さであるアーク発生位置を推定する。
【選択図】 図1
【解決手段】消耗電極式アーク溶接において、電極チップ3と被溶接材1間の電圧を消耗電極である溶接ワイヤ4の送給速度が変化するときの臨界電圧以下で使用する場合には、溶接中に溶接電流、電極チップと被溶接材間の電圧、およびワイヤ送給速度を検出器10、11、12により検出し、これら3つの検出値から指定の演算式を用いて、演算器14にて電極チップ先端からのワイヤ突出し長さを演算するとともに、この算出したワイヤ突出し長さから電極チップ先端から被溶接材表面までの距離を差し引くことによって、被溶接材表面を原点とする板厚方向の電極先端の進入深さであるアーク発生位置を推定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、消耗電極式アーク溶接におけるアークの発生位置を推定する方法、並びに得られたアーク発生位置を適切に制御することにより、溶接能率および溶接品質の向上を図ることを目的とした消耗電極式アーク溶接における溶接条件の制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
消耗電極式アーク溶接における一つの課題は、アークの発生位置をできるだけ正確に知ることである。消耗電極式アーク溶接において、アークの発生位置を正確に知ることができれば、溶接線倣い制御の精度向上、ひいては溶接品質の向上につながる。このような見地から、例えば、特開昭59−85374号公報では、アーク長とワイヤ突出し長さの和であるチップ・溶接金属間距離を求め、その値を利用して溶接線自動倣い方法を提案している。しかしながら、ここで、ワイヤ突出し長さを溶接パラメータから演算する場合、従来はこの公報に示すように溶接電流(平均値および実効値)とワイヤ送給速度のみから演算していた。
【0003】
さらに、片面溶接において裏ビードを制御する場合には、特開昭58−1411861号公報のように、被溶接材の裏面に貫通したアーク光の光量を検出し、その光量に基づいて溶接電流を制御する方法や、また、特開昭64−15278号公報のように、溶接中の被溶接材と裏当材に設けた導電性材料との間の電圧を検出し、その電圧が基準電圧と一致するように溶接パラメータを制御する方法などがとられていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
消耗電極式アーク溶接において、比較的高いアーク電圧範囲においては、溶接電流とワイヤ送給速度のみにてワイヤ突出し長さがほぼ決定され、従来の推定方法にてほぼ正確なワイヤ突出し長さを推定することが可能であった。しかしながら、実際にアーク溶接を工業的に使用する場合、そのほとんどが電極と被溶接材の間で短絡現象を伴うような比較的低いアーク電圧範囲である。このような比較的低いアーク電圧範囲においては、実際のワイヤ突出し長さとその推定値が大きく異なるという問題があった。
【0005】
また、実際の消耗電極式アーク溶接では、狭い開先内で溶接が行われるため、被溶接材表面から板厚方向への電極先端の進入深さ(アーク発生位置)を監視することが困難であり(特に、サブマージアーク溶接においては、フラックスに覆われた中でアーク溶接が行われるため、アーク発生部は全く見えない)、溶込み深さを監視することはできなかった。このため、所定の溶込み深さが得られる溶接条件を実験により予め求め、その条件にて実際の施工を行っていた。
しかしながら、このような方法では、予備実験に費用と労力がかかるうえに、実際の溶接では開先形状の加工誤差や開先ギャップの変動などが発生するため、安定して所定の溶接結果を得ることができなかった。
【0006】
また、被溶接材の裏面まで表側から溶接を行う片面溶接では、先に示した従来技術等により裏ビードを制御することが可能であったが、アーク光を検出するための装置や裏当材に導電性材料を設ける必要があり、そのための費用や煩わしい作業が必要であった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、消耗電極式アーク溶接において、アーク電圧が比較的低い実用条件域でもワイヤ突出し長さを正確に推定することにより、被溶接材表面から板厚方向への電極先端の進入深さ(アーク発生位置)を正確に推定する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、実際の溶接での開先形状および開先ギャップの変動などに対応して所定の溶込み深さおよび/または裏ビード形状を得るための制御方法を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、消耗電極式アーク溶接において、溶接能率および溶接品質を向上させる制御方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る消耗電極式アーク溶接におけるアーク発生位置推定方法は、消耗電極式アーク溶接において、電極チップと被溶接材間の電圧をアーク長の固有自己制御特性があらわれる臨界電圧以下で使用する場合には、溶接中に溶接電流、電極チップと被溶接材間の電圧、および電極送給速度を検出し、これら3つの検出値から指定の演算式を用いて、電極チップ先端からの電極突出し長さを演算するとともに、この算出した電極突出し長さから電極チップ先端から被溶接材表面までの距離を差し引くことによって、被溶接材表面を原点とする板厚方向の電極先端の進入深さであるアーク発生位置を推定することを特徴としている。
【0009】
消耗電極式アーク溶接において、電極チップと被溶接材間の電圧と消耗電極の送給速度との間にはアーク長の固有自己制御特性により消耗電極の送給速度が変化する電圧(この電圧は溶接電流に応じて異なる)が存在する。したがって、本明細書では、消耗電極の送給速度が変化するときの電圧を「臨界電圧」と呼んでいる。この臨界電圧以下の低電圧域で使用する場合には、演算パラメータとして、溶接電流と消耗電極の送給速度に加えて、電極チップと被溶接材間の電圧をも考慮に入れなければ、正確な電極突出し長さを演算することはできない。
本発明は、前記のように、従来の演算パラメータ(溶接電流と電極送給速度)に加え、電極チップと被溶接材間の電圧も演算パラメータとすることで、低電圧域での電極送給速度の増加を考慮しているため、正確な電極突出し長さを演算することができ、したがって正確なアーク発生位置を推定することができる。そのため、アーク電圧が比較的低い実用条件域でもアーク発生位置を正確に推定することができる。
【0010】
本発明は、単電極の場合だけでなく多電極の場合にも適用可能である。そこで、請求項2の発明は、複数の消耗電極を用いる多電極の消耗電極式アーク溶接においては、各電極についてアーク発生位置を求めることを特徴とする請求項1記載の消耗電極式アーク溶接におけるアーク発生位置推定方法である。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の推定方法により得られるアーク発生位置を予め求められた適切な位置に保持するように、溶接電流または電極送給速度を制御することにより、溶込み深さおよび/または裏ビード形状を制御することを特徴とする消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法である。
【0012】
すなわち、本発明では、前記の推定方法により得られるアーク発生位置を制御することにより、アーク発生位置と強い相関関係にある溶込み深さや裏ビード形状を制御するものである。したがって、従来方法のように特殊な検出装置等を必要とせず、また、必ずしもアーク光が被溶接材の裏面側に貫通している必要はないので、裏ビード制御だけでなく、溶込み深さも制御することが可能である。
【0013】
請求項4の発明は、複数の消耗電極を用いる多電極の消耗電極式アーク溶接において、請求項2記載の推定方法により得られる各電極のアーク発生位置がほぼ同一の高さとなるように、溶接電流または電極送給速度を制御することを特徴とする消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法である。
【0014】
多電極の消耗電極式アーク溶接において、各電極のアーク発生位置がほぼ同じ高さレベルにある場合、最も高速の溶接が可能となるため、前記推定方法により得られる各電極のアーク発生位置がほぼ同一の高さとなるように、溶接電流または電極送給速度を制御することにより、所定の溶込み深さの得られる条件の内、最も高速の溶接速度を選定することができる。
【0015】
請求項5の発明は、複数の消耗電極を用いる多電極の消耗電極式アーク溶接において、請求項2記載の推定方法により得られる各電極のアーク発生位置が先行電極より順次被溶接材表面側に高くなるように、溶接電流または電極送給速度を制御することを特徴とする消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法である。
【0016】
多電極の消耗電極式アーク溶接において、深い溶込み深さを得ることが必要な厚板の溶接において、各電極のアーク発生位置が先行電極より順次被溶接材表面側に高くなるようにシフトした位置にある場合、溶接欠陥等の発生を抑制することができる。よって、前記推定方法により得られる各電極のアーク発生位置が先行電極より順次被溶接材表面側に高くなるように、溶接電流または電極送給速度を制御することにより、厚板溶接における溶接品質の向上を達成できる。
【0017】
請求項6の発明は、溶接電流が変化した場合においても、アーク長がほぼ一定となるように電極チップと被溶接材間の電圧を制御することにより、溶込み深さおよび/または裏ビード形状を制御することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法である。
【0018】
溶込み深さや裏ビード形状は、アーク発生位置と強い相関関係があるが、このアーク発生位置に加え、アーク長をも考慮することにより、より強い相関関係を得ることができる。また、アーク長を一定に制御することにより、溶接電流が変化した場合においてもアークの安定性を確保することが可能となる。よって、溶接電流が変化した場合においても、アーク長がほぼ一定となるように電極チップと被溶接材間の電圧を制御することにより、溶込み深さおよび/または裏ビード形状の制御をより精度のよいものとするができるとともに、アークの安定性を確保することができる。
【0019】
請求項7の発明は、電極送給速度が変化した場合においても、溶接ビードの高さがほぼ一定となるように、溶接速度を制御することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法である。
【0020】
実際の溶接においては、溶込み深さや裏ビード形状の制御も重要であるが、上部に形成される溶接ビードの高さを適切にする必要がある。溶込み深さや裏ビード形状を適切にするために溶接電流値を制御する場合、消耗電極の送給速度も変化するため、同一の溶接速度ではビードの高さが変化することになる。そこで、電極送給速度の変化に対応して、溶接速度を制御することにより、一定したビード高さを得ることが可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。図1は本発明の消耗電極式アーク溶接におけるアーク発生位置推定方法に使用する溶接装置の概略構成図である。図1において、1は被溶接材であり、その突き合わせ面には適当な形状の開先2が設けられている。消耗電極である溶接ワイヤ4はワイヤ送給モータ7により駆動される送給ローラ6により開先2へ送り出され、通電された電極チップ3の先端より突き出し、その先端部がアーク5の熱により溶融することにより溶接が行われる。8は溶融池、9は被溶接材1と電極チップ3に接続された溶接電源である。そして、このアーク溶接回路には溶接電流I(平均値Iavおよび実効値Ieff)を検出する電流検出器10、および電極チップ3と被溶接材1間のアーク電圧VT(以下、電圧VTとする)を検出する電圧検出器11が設けられている。また、前記ワイヤ送給モータ7には溶接ワイヤ4の送給速度Vfを検出するワイヤ送給速度検出器12が設けられている。これらの電流検出器10、電圧検出器11、およびワイヤ送給速度検出器12からの出力であるアナログ信号はそれぞれ図示しないA/D変換器でデジタル信号に変換され、溶接制御装置13内の演算器14に入力される。
【0022】
演算器14では、溶接中、各検出器10、11、12から出力される前記溶接電流I(平均値Iavおよび実効値Ieff)、電圧VT、およびワイヤ送給速度Vfから、以下に示す演算式を用いて、電極チップ3先端からの溶接ワイヤ4の突出し部の長さであるワイヤ突出し長さLe、およびアーク長Laを算出する。ワイヤ突出し長さLeおよびアーク長Laを求める演算式に関しては、従来方法による溶接パラメータである溶接電流Iとワイヤ送給速度Vfに加え、低電圧域においては、電圧VTによるワイヤ送給速度Vfの変化の影響を考慮した構成となっている。ここで、消耗電極式アーク溶接の低電圧域において、ワイヤの溶融速度が増加する現象をアーク長の固有自己制御特性といわれているが、この特性があらわれる電圧を臨界電圧VRとする。したがって、臨界電圧VR以下の低電圧範囲においては、ワイヤ突出し長さLeを推定するにあたり、従来方法での演算パラメータ(溶接電流I、ワイヤ送給速度Vf)に加え、電圧VTを考慮する必要がある。以下に溶接パラメータと演算式を示す。演算式は溶接制御装置13内の演算器14にプログラムされている。
【0023】
ここで、
I :溶接電流(Iav:平均値、Ieff:実効値)
VT :電極チップ・被溶接材間のアーク電圧(電極チップ3と被溶接材1間の電圧)
Vf:ワイヤ送給速度
Le:ワイヤ突出し長さ(電極チップ3の先端からアーク5までの長さ)
La:アーク長(溶接ワイヤ4の先端から溶融池8までの長さ)
VR :臨界電圧
とすると、Le,Laは次のような関数関係にてあらわされる。
VT>VRのとき Le=f1(I,Vf) ……(1)
VT<VRのとき Le=f1(I,Vf)+f2(VT ) ……(2)
La=f3(I,Vf,VT ) ……(3)
したがって、演算器14では、電極チップ・被溶接材間の電圧VTと臨界電圧VRとを比較し、VT>VRならば、従来方法と同様に(1)式にて溶接中のワイヤ突出し長さLeを演算し、VT<VRならば、さらにその時の電圧VTをも考慮に入れた(2)式により溶接中のワイヤ突出し長さLeを演算する。また、アーク長Laは(3)式にて求められる。
【0024】
図2はアーク発生位置の定義を示す図である。図2に示す定義により、電極チップ3の先端から被溶接材1の表面までの距離をExとした場合、被溶接材表面を原点とした板厚方向における電極(溶接ワイヤ4)先端の進入深さ(以後、アーク発生位置Lとする)は、
L=Le−Ex ……(4)
で求められる。この時、実際には、図2に示すとおり、アーク直下には溶けた金属の厚さ(溶鋼厚さh)が存在するが、実用溶接条件範囲では、アーク直下の溶鋼厚さhはほぼ無視しても問題のないレベルである。以上から、消耗電極式アーク溶接における溶接中のアーク発生位置Lの推定(検知あるいは監視)が可能となる。しかも、演算のみで正確にアーク発生位置Lを推定することができる。
また、複数の溶接ワイヤを使用する多電極の消耗電極式アーク溶接においては、各溶接ワイヤについて、前記演算式(1)または(2)および(4)を用いて、アーク発生位置を求めればよい。
【0025】
次に、消耗電極式アーク溶接において、溶込み深さおよび/または裏ビード形状を制御する場合は、前記(4)式により溶接中得られたアーク発生位置Lを予め実験的に求められた適切な値(Lo=Leo−Ex)に保持するように、溶接中の溶接電流Iを調整する。この時、アーク発生位置が適正値となる場合の溶接条件(電流)の基準値を予め求めておく。
ここで、
基準アーク発生位置:Lo(基準ワイヤ突出し長さ:Leo)
基準溶接電流:Io
とすると、溶接制御装置13による溶接条件(電流)制御の基本アルゴリズムは以下のとおりである。
すなわち、アーク発生位置Lの制御方法は、
▲1▼Lo>L(あるいは、Leo>Le)ならば、基準電流Ioに対し、電流Iを増加させる。
▲2▼Lo=L(あるいは、Leo=Le)ならば、基準電流Ioに対し、電流Iを保持する(変化させない)。
▲3▼Lo<L(あるいは、Leo<Le)ならば、基準電流Ioに対し、電流Iを減少させる。
以上の電流制御により、溶接中のアーク発生位置Lを予め求められた適切な値(位置)に保持(制御)できるので、消耗電極式アーク溶接の溶込み深さや裏ビード形状の制御が可能となる。また、消耗電極式アーク溶接においては、溶接電流とワイヤ送給速度は比例関係にある。したがって、SAWのような定電流特性の溶接の場合には、溶接電流を制御パラメータとし、MAGのような定電圧特性の溶接の場合には、ワイヤ送給速度を制御パラメータとすればよい。
【0026】
次に、図3は多電極溶接における各電極のアーク発生位置の相違による溶接ビード形成の模式図である。図3(a)は先行電極15のアーク発生位置が後行電極16のアーク発生位置よりも低い場合である。この場合は、先行電極15のアーク力が過大となるため、溶接ビードにアンダーカットが発生しやすい。図3(b)は、逆に先行電極15のアーク発生位置が後行電極16のアーク発生位置よりも高い場合である。この場合は、後行電極16のアーク力が過大となるため、アーダーカットやハンピングビードなどの不整ビードが発生しやすい。
これに対して、図3(c)に示すように、先行電極15および後行電極16の各アーク発生位置がほぼ同じ高さである場合には、電極相互の電磁気的作用によりアーク力を抑制するため、良好なビード形状を形成するとともに、最も高速な溶接が可能となる。したがって、前記の推定方法によって得られる各電極のアーク発生位置Lをほぼ同一の高さに制御することにより、実用条件下での最も高速な溶接速度を選定することができる。
【0027】
また、より深い溶込みを得ることが必要な厚板の多電極溶接においては、図4に示すように、前記の推定方法によって得られる各電極17、18、19のアーク発生位置Lが先行の第1電極17より、順次被溶接材表面側に高くなるようにシフトした位置に制御することにより、溶接欠陥等の発生を抑制することができ、厚板溶接における溶接品質の向上が可能となる。このとき、第1電極17は、主として溶込み深さの確保および初層の裏ビード形成のために働き、第2電極18は溶融池の安定化、第3電極19は主に余盛りの形成のために働く。また、この多電極溶接方法によると、従来は板厚60mmまでが限界であった厚板溶接が板厚90mmまで1パスで可能となった。
【0028】
次に、溶込み深さや裏ビード形状は、アーク発生位置Lと強い相関があるが、アーク長Laをも考慮することにより、より強い相関を得ることができる。この場合、アーク長Laを一定に制御することにより、溶接電流Iが変化した場合においてもアークの安定性を確保することができる。したがって、前述の各制御方法において、アーク発生位置Lの制御に伴い、溶接電流Iが変化した場合においても、予め実験的に求められた適正なアーク長となるように、溶接中の電圧VTを制御する。この場合も、同様に、アーク長が適正値となる場合の電圧の基準値を予め求めておく。
ここで、
Lao:基準アーク長
VTo:基準電圧
とすると、溶接条件(電圧)制御の基本アルゴリズムは以下のとおりである。
すなわち、アーク長Laの制御方法は、
▲1▼Lao>Laならば、基準電圧VToに対し、電圧VTを増加させる。
▲2▼Lao=Laならば、基準電圧VToに対し、電圧VTを保持する(変化させない)
▲3▼Lao<Laならば、基準電圧VToに対し、電圧VTを減少させる。
以上から、溶接中のアーク発生位置Lの制御により、溶接電流Iが変化した場合においても、アーク長を予め求められた適切な値に保持(制御)することができるので、消耗電極式アーク溶接の溶込み深さおよび/または裏ビード形状の制御をより精度のよいものとするとともに、アークの安定性を確保することができる。
【0029】
実際の溶接においては、前述の溶込み深さや裏ビード形状の制御も重要であるが、さらに上部に形成されるビードの高さを適切にすることが必要である。前述までの各制御方法により、溶接電流を制御する場合、溶接電流の変化に伴い溶接ワイヤの送給速度Vfも変化するため、同一の溶接速度のままでは、形成されるビードの高さが変化することになる。そこで、ワイヤ送給速度Vfの変化に応じて、溶接速度Vzを制御する。この場合も、同様に、適正なビード高さとなる溶接速度の基準値を予め求めておく。
ここで、
Vzo:基準溶接速度
とすると、溶接条件(速度)制御の基本アルゴリズムは以下のとおりである。
すなわち、溶接速度の制御方法は、
▲1▼Io>I(あるいは、Vfo>Vf)ならば、基準速度Vzoに対し、速度Vzを増加させる。
▲2▼Io=I(あるいは、Vfo=Vf)ならば、基準速度Vzoに対し、速度Vzを保持する(変化させない)。
▲3▼Io<I(あるいは、Vfo<Vf)ならば、基準速度Vzoに対し、速度Vzを減少させる。
【0030】
溶接速度については、ワイヤ送給速度Vfの変化に対応して調整を行うが、ワイヤ送給速度Vfの増減は、大まかには電流Iの増減に支配されるため電流Iによる制御としている。つまり、前述までの制御方法により調整された電流Iと基準電流Ioの差から基準溶接速度Vzoを変化させる。なお、基準ワイヤ送給速度Vfoを求めておいて、ワイヤ送給速度Vfの増減により溶接速度Vzの増減を行ってもよい。
以上から、前述までの各制御方法において、溶接ワイヤの送給速度Vfが変化した場合においても、その変化量に応じて溶接速度の制御が可能であるので、形成されるビードの高さをほぼ一定とすることが可能となる。
【0031】
【実施例】
本発明の実施例として、サブマージアーク溶接におけるワイヤ送給特性および裏ビード制御結果の一例を説明する。
図5はサブマージアーク溶接におけるワイヤ送給特性を示すグラフである。溶接ワイヤは4.8mmφのワイヤを使用し、溶接電流を800A、1000A、1200A、1400Aとしたときのアーク電圧VTとワイヤ送給速度Vfとの関係を示す。図中のプロットは、溶接電流I毎に、電極チップ・被溶接材間距離Ex一定で、電圧VTを変化させた場合のワイヤ送給速度Vfの変化を示しているが、アーク長の固有自己制御特性があらわれる電圧(臨界電圧VR)以下では、ワイヤ送給速度Vfが増加していることがわかる。したがって、使用する電圧VTが臨界電圧VR以下の場合には、ワイヤ突出し長さLeを演算するにあたり、電圧VTを考慮する必要がある。実際にサブマージアーク溶接にて裏ビードを形成する場合の使用電圧は、臨界電圧VR以下の電圧である。(このようなワイヤ送給特性を有する場合には、従来の方法では、臨界電圧VR以上の電圧範囲でのみしか適用できない。)
【0032】
図6はサブマージアーク溶接における裏ビード制御結果の一例を示すチャートである。図7は供試材の開先寸法図である。溶接ワイヤは4.8mmφのワイヤを使用した。また、図6中の裏ビード形状図は、ほぼチャートで示すデータ位置に対応している。図8は図6の裏ビード形状図のA−AおよびB−B断面図である。
本実施例における裏ビード制御は、図6の前半部分▲1▼では、溶接条件制御を行っておらず、▲2▼部分にて図中の点線で示す基準ワイヤ突出し長さLeoおよび基準アーク長Laoとなるように電流・電圧を制御している。基準ワイヤ突出し長さLeoおよび基準アーク長Laoは、実験により最適値を予め求めている。図6、図8の裏ビード形状図から明らかなように、無制御部▲1▼では、細い裏ビード20しか得られていないが、制御後の▲2▼部分では、良好な裏ビード20が得られていることがわかる。
表1に、本実施例におけるアーク発生位置推定のための演算式および定数を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、消耗電極式アーク溶接におけるアーク発生位置を推定するにあたり、電極突出し長さの演算を従来のように溶接電流(平均値および実効値)と電極送給速度だけでなく、電極チップと被溶接材間の電圧による影響を考慮するよう構成したので、従来困難であった低電圧域(臨界電圧以下の電圧範囲)での電極突出し長さの正確な演算が可能となり、消耗電極式アーク溶接の実用条件範囲における正確なアーク発生位置の推定が可能となった。
そして、上記により正確に推定されるアーク発生位置を最適な位置になるように溶接電流を調整し、また溶接電流の変化に伴うアーク長の変動も上記電圧により調整し、さらにそれらの変化による電極送給速度の変化から溶接速度を調整する溶接条件制御方法としたので、裏ビード制御および従来困難であった溶込み深さの安定した制御が可能となるとともに、ビード高さの制御も行え、さらには多電極溶接におけるアーク発生位置制御が可能となった。
したがって、実際の溶接での開先形状や開先ギャップの変動などに対応して所定の溶込み深さおよび裏ビード形状を得ることができ、さらに、消耗電極式アーク溶接において、溶接能率および溶接品質を向上させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の本発明の消耗電極式アーク溶接におけるアーク発生位置推定方法に使用する溶接装置の概略構成図である。
【図2】アーク発生位置の定義を示す図である。
【図3】多電極溶接における各電極のアーク発生位置の相違による溶接ビード形成の模式図である。
【図4】多電極溶接における各電極のアーク発生位置を第1電極より順次被溶接材表面側へシフトした場合の溶接ビード形成の模式図である。
【図5】サブマージアーク溶接におけるワイヤ送給特性を示す図である。
【図6】サブマージアーク溶接における裏ビード制御結果の一例を示す図である。
【図7】供試材の開先寸法図である。
【図8】図6の裏ビード形状図のA−AおよびB−B断面図である。
【符号の説明】
1 被溶接材
2 開先
3 電極チップ
4 溶接ワイヤ
5 アーク
6 送給ローラ
7 ワイヤ送給モータ
8 溶融池
9 溶接電源
10 電流検出器
11 電圧検出器
12 ワイヤ送給速度検出器
13 溶接制御装置
14 演算器
15 先行電極
16 後行電極
17 第1電極
18 第2電極
19 第3電極
20 裏ビード
【発明の属する技術分野】
本発明は、消耗電極式アーク溶接におけるアークの発生位置を推定する方法、並びに得られたアーク発生位置を適切に制御することにより、溶接能率および溶接品質の向上を図ることを目的とした消耗電極式アーク溶接における溶接条件の制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
消耗電極式アーク溶接における一つの課題は、アークの発生位置をできるだけ正確に知ることである。消耗電極式アーク溶接において、アークの発生位置を正確に知ることができれば、溶接線倣い制御の精度向上、ひいては溶接品質の向上につながる。このような見地から、例えば、特開昭59−85374号公報では、アーク長とワイヤ突出し長さの和であるチップ・溶接金属間距離を求め、その値を利用して溶接線自動倣い方法を提案している。しかしながら、ここで、ワイヤ突出し長さを溶接パラメータから演算する場合、従来はこの公報に示すように溶接電流(平均値および実効値)とワイヤ送給速度のみから演算していた。
【0003】
さらに、片面溶接において裏ビードを制御する場合には、特開昭58−1411861号公報のように、被溶接材の裏面に貫通したアーク光の光量を検出し、その光量に基づいて溶接電流を制御する方法や、また、特開昭64−15278号公報のように、溶接中の被溶接材と裏当材に設けた導電性材料との間の電圧を検出し、その電圧が基準電圧と一致するように溶接パラメータを制御する方法などがとられていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
消耗電極式アーク溶接において、比較的高いアーク電圧範囲においては、溶接電流とワイヤ送給速度のみにてワイヤ突出し長さがほぼ決定され、従来の推定方法にてほぼ正確なワイヤ突出し長さを推定することが可能であった。しかしながら、実際にアーク溶接を工業的に使用する場合、そのほとんどが電極と被溶接材の間で短絡現象を伴うような比較的低いアーク電圧範囲である。このような比較的低いアーク電圧範囲においては、実際のワイヤ突出し長さとその推定値が大きく異なるという問題があった。
【0005】
また、実際の消耗電極式アーク溶接では、狭い開先内で溶接が行われるため、被溶接材表面から板厚方向への電極先端の進入深さ(アーク発生位置)を監視することが困難であり(特に、サブマージアーク溶接においては、フラックスに覆われた中でアーク溶接が行われるため、アーク発生部は全く見えない)、溶込み深さを監視することはできなかった。このため、所定の溶込み深さが得られる溶接条件を実験により予め求め、その条件にて実際の施工を行っていた。
しかしながら、このような方法では、予備実験に費用と労力がかかるうえに、実際の溶接では開先形状の加工誤差や開先ギャップの変動などが発生するため、安定して所定の溶接結果を得ることができなかった。
【0006】
また、被溶接材の裏面まで表側から溶接を行う片面溶接では、先に示した従来技術等により裏ビードを制御することが可能であったが、アーク光を検出するための装置や裏当材に導電性材料を設ける必要があり、そのための費用や煩わしい作業が必要であった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、消耗電極式アーク溶接において、アーク電圧が比較的低い実用条件域でもワイヤ突出し長さを正確に推定することにより、被溶接材表面から板厚方向への電極先端の進入深さ(アーク発生位置)を正確に推定する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、実際の溶接での開先形状および開先ギャップの変動などに対応して所定の溶込み深さおよび/または裏ビード形状を得るための制御方法を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、消耗電極式アーク溶接において、溶接能率および溶接品質を向上させる制御方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る消耗電極式アーク溶接におけるアーク発生位置推定方法は、消耗電極式アーク溶接において、電極チップと被溶接材間の電圧をアーク長の固有自己制御特性があらわれる臨界電圧以下で使用する場合には、溶接中に溶接電流、電極チップと被溶接材間の電圧、および電極送給速度を検出し、これら3つの検出値から指定の演算式を用いて、電極チップ先端からの電極突出し長さを演算するとともに、この算出した電極突出し長さから電極チップ先端から被溶接材表面までの距離を差し引くことによって、被溶接材表面を原点とする板厚方向の電極先端の進入深さであるアーク発生位置を推定することを特徴としている。
【0009】
消耗電極式アーク溶接において、電極チップと被溶接材間の電圧と消耗電極の送給速度との間にはアーク長の固有自己制御特性により消耗電極の送給速度が変化する電圧(この電圧は溶接電流に応じて異なる)が存在する。したがって、本明細書では、消耗電極の送給速度が変化するときの電圧を「臨界電圧」と呼んでいる。この臨界電圧以下の低電圧域で使用する場合には、演算パラメータとして、溶接電流と消耗電極の送給速度に加えて、電極チップと被溶接材間の電圧をも考慮に入れなければ、正確な電極突出し長さを演算することはできない。
本発明は、前記のように、従来の演算パラメータ(溶接電流と電極送給速度)に加え、電極チップと被溶接材間の電圧も演算パラメータとすることで、低電圧域での電極送給速度の増加を考慮しているため、正確な電極突出し長さを演算することができ、したがって正確なアーク発生位置を推定することができる。そのため、アーク電圧が比較的低い実用条件域でもアーク発生位置を正確に推定することができる。
【0010】
本発明は、単電極の場合だけでなく多電極の場合にも適用可能である。そこで、請求項2の発明は、複数の消耗電極を用いる多電極の消耗電極式アーク溶接においては、各電極についてアーク発生位置を求めることを特徴とする請求項1記載の消耗電極式アーク溶接におけるアーク発生位置推定方法である。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の推定方法により得られるアーク発生位置を予め求められた適切な位置に保持するように、溶接電流または電極送給速度を制御することにより、溶込み深さおよび/または裏ビード形状を制御することを特徴とする消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法である。
【0012】
すなわち、本発明では、前記の推定方法により得られるアーク発生位置を制御することにより、アーク発生位置と強い相関関係にある溶込み深さや裏ビード形状を制御するものである。したがって、従来方法のように特殊な検出装置等を必要とせず、また、必ずしもアーク光が被溶接材の裏面側に貫通している必要はないので、裏ビード制御だけでなく、溶込み深さも制御することが可能である。
【0013】
請求項4の発明は、複数の消耗電極を用いる多電極の消耗電極式アーク溶接において、請求項2記載の推定方法により得られる各電極のアーク発生位置がほぼ同一の高さとなるように、溶接電流または電極送給速度を制御することを特徴とする消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法である。
【0014】
多電極の消耗電極式アーク溶接において、各電極のアーク発生位置がほぼ同じ高さレベルにある場合、最も高速の溶接が可能となるため、前記推定方法により得られる各電極のアーク発生位置がほぼ同一の高さとなるように、溶接電流または電極送給速度を制御することにより、所定の溶込み深さの得られる条件の内、最も高速の溶接速度を選定することができる。
【0015】
請求項5の発明は、複数の消耗電極を用いる多電極の消耗電極式アーク溶接において、請求項2記載の推定方法により得られる各電極のアーク発生位置が先行電極より順次被溶接材表面側に高くなるように、溶接電流または電極送給速度を制御することを特徴とする消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法である。
【0016】
多電極の消耗電極式アーク溶接において、深い溶込み深さを得ることが必要な厚板の溶接において、各電極のアーク発生位置が先行電極より順次被溶接材表面側に高くなるようにシフトした位置にある場合、溶接欠陥等の発生を抑制することができる。よって、前記推定方法により得られる各電極のアーク発生位置が先行電極より順次被溶接材表面側に高くなるように、溶接電流または電極送給速度を制御することにより、厚板溶接における溶接品質の向上を達成できる。
【0017】
請求項6の発明は、溶接電流が変化した場合においても、アーク長がほぼ一定となるように電極チップと被溶接材間の電圧を制御することにより、溶込み深さおよび/または裏ビード形状を制御することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法である。
【0018】
溶込み深さや裏ビード形状は、アーク発生位置と強い相関関係があるが、このアーク発生位置に加え、アーク長をも考慮することにより、より強い相関関係を得ることができる。また、アーク長を一定に制御することにより、溶接電流が変化した場合においてもアークの安定性を確保することが可能となる。よって、溶接電流が変化した場合においても、アーク長がほぼ一定となるように電極チップと被溶接材間の電圧を制御することにより、溶込み深さおよび/または裏ビード形状の制御をより精度のよいものとするができるとともに、アークの安定性を確保することができる。
【0019】
請求項7の発明は、電極送給速度が変化した場合においても、溶接ビードの高さがほぼ一定となるように、溶接速度を制御することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法である。
【0020】
実際の溶接においては、溶込み深さや裏ビード形状の制御も重要であるが、上部に形成される溶接ビードの高さを適切にする必要がある。溶込み深さや裏ビード形状を適切にするために溶接電流値を制御する場合、消耗電極の送給速度も変化するため、同一の溶接速度ではビードの高さが変化することになる。そこで、電極送給速度の変化に対応して、溶接速度を制御することにより、一定したビード高さを得ることが可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。図1は本発明の消耗電極式アーク溶接におけるアーク発生位置推定方法に使用する溶接装置の概略構成図である。図1において、1は被溶接材であり、その突き合わせ面には適当な形状の開先2が設けられている。消耗電極である溶接ワイヤ4はワイヤ送給モータ7により駆動される送給ローラ6により開先2へ送り出され、通電された電極チップ3の先端より突き出し、その先端部がアーク5の熱により溶融することにより溶接が行われる。8は溶融池、9は被溶接材1と電極チップ3に接続された溶接電源である。そして、このアーク溶接回路には溶接電流I(平均値Iavおよび実効値Ieff)を検出する電流検出器10、および電極チップ3と被溶接材1間のアーク電圧VT(以下、電圧VTとする)を検出する電圧検出器11が設けられている。また、前記ワイヤ送給モータ7には溶接ワイヤ4の送給速度Vfを検出するワイヤ送給速度検出器12が設けられている。これらの電流検出器10、電圧検出器11、およびワイヤ送給速度検出器12からの出力であるアナログ信号はそれぞれ図示しないA/D変換器でデジタル信号に変換され、溶接制御装置13内の演算器14に入力される。
【0022】
演算器14では、溶接中、各検出器10、11、12から出力される前記溶接電流I(平均値Iavおよび実効値Ieff)、電圧VT、およびワイヤ送給速度Vfから、以下に示す演算式を用いて、電極チップ3先端からの溶接ワイヤ4の突出し部の長さであるワイヤ突出し長さLe、およびアーク長Laを算出する。ワイヤ突出し長さLeおよびアーク長Laを求める演算式に関しては、従来方法による溶接パラメータである溶接電流Iとワイヤ送給速度Vfに加え、低電圧域においては、電圧VTによるワイヤ送給速度Vfの変化の影響を考慮した構成となっている。ここで、消耗電極式アーク溶接の低電圧域において、ワイヤの溶融速度が増加する現象をアーク長の固有自己制御特性といわれているが、この特性があらわれる電圧を臨界電圧VRとする。したがって、臨界電圧VR以下の低電圧範囲においては、ワイヤ突出し長さLeを推定するにあたり、従来方法での演算パラメータ(溶接電流I、ワイヤ送給速度Vf)に加え、電圧VTを考慮する必要がある。以下に溶接パラメータと演算式を示す。演算式は溶接制御装置13内の演算器14にプログラムされている。
【0023】
ここで、
I :溶接電流(Iav:平均値、Ieff:実効値)
VT :電極チップ・被溶接材間のアーク電圧(電極チップ3と被溶接材1間の電圧)
Vf:ワイヤ送給速度
Le:ワイヤ突出し長さ(電極チップ3の先端からアーク5までの長さ)
La:アーク長(溶接ワイヤ4の先端から溶融池8までの長さ)
VR :臨界電圧
とすると、Le,Laは次のような関数関係にてあらわされる。
VT>VRのとき Le=f1(I,Vf) ……(1)
VT<VRのとき Le=f1(I,Vf)+f2(VT ) ……(2)
La=f3(I,Vf,VT ) ……(3)
したがって、演算器14では、電極チップ・被溶接材間の電圧VTと臨界電圧VRとを比較し、VT>VRならば、従来方法と同様に(1)式にて溶接中のワイヤ突出し長さLeを演算し、VT<VRならば、さらにその時の電圧VTをも考慮に入れた(2)式により溶接中のワイヤ突出し長さLeを演算する。また、アーク長Laは(3)式にて求められる。
【0024】
図2はアーク発生位置の定義を示す図である。図2に示す定義により、電極チップ3の先端から被溶接材1の表面までの距離をExとした場合、被溶接材表面を原点とした板厚方向における電極(溶接ワイヤ4)先端の進入深さ(以後、アーク発生位置Lとする)は、
L=Le−Ex ……(4)
で求められる。この時、実際には、図2に示すとおり、アーク直下には溶けた金属の厚さ(溶鋼厚さh)が存在するが、実用溶接条件範囲では、アーク直下の溶鋼厚さhはほぼ無視しても問題のないレベルである。以上から、消耗電極式アーク溶接における溶接中のアーク発生位置Lの推定(検知あるいは監視)が可能となる。しかも、演算のみで正確にアーク発生位置Lを推定することができる。
また、複数の溶接ワイヤを使用する多電極の消耗電極式アーク溶接においては、各溶接ワイヤについて、前記演算式(1)または(2)および(4)を用いて、アーク発生位置を求めればよい。
【0025】
次に、消耗電極式アーク溶接において、溶込み深さおよび/または裏ビード形状を制御する場合は、前記(4)式により溶接中得られたアーク発生位置Lを予め実験的に求められた適切な値(Lo=Leo−Ex)に保持するように、溶接中の溶接電流Iを調整する。この時、アーク発生位置が適正値となる場合の溶接条件(電流)の基準値を予め求めておく。
ここで、
基準アーク発生位置:Lo(基準ワイヤ突出し長さ:Leo)
基準溶接電流:Io
とすると、溶接制御装置13による溶接条件(電流)制御の基本アルゴリズムは以下のとおりである。
すなわち、アーク発生位置Lの制御方法は、
▲1▼Lo>L(あるいは、Leo>Le)ならば、基準電流Ioに対し、電流Iを増加させる。
▲2▼Lo=L(あるいは、Leo=Le)ならば、基準電流Ioに対し、電流Iを保持する(変化させない)。
▲3▼Lo<L(あるいは、Leo<Le)ならば、基準電流Ioに対し、電流Iを減少させる。
以上の電流制御により、溶接中のアーク発生位置Lを予め求められた適切な値(位置)に保持(制御)できるので、消耗電極式アーク溶接の溶込み深さや裏ビード形状の制御が可能となる。また、消耗電極式アーク溶接においては、溶接電流とワイヤ送給速度は比例関係にある。したがって、SAWのような定電流特性の溶接の場合には、溶接電流を制御パラメータとし、MAGのような定電圧特性の溶接の場合には、ワイヤ送給速度を制御パラメータとすればよい。
【0026】
次に、図3は多電極溶接における各電極のアーク発生位置の相違による溶接ビード形成の模式図である。図3(a)は先行電極15のアーク発生位置が後行電極16のアーク発生位置よりも低い場合である。この場合は、先行電極15のアーク力が過大となるため、溶接ビードにアンダーカットが発生しやすい。図3(b)は、逆に先行電極15のアーク発生位置が後行電極16のアーク発生位置よりも高い場合である。この場合は、後行電極16のアーク力が過大となるため、アーダーカットやハンピングビードなどの不整ビードが発生しやすい。
これに対して、図3(c)に示すように、先行電極15および後行電極16の各アーク発生位置がほぼ同じ高さである場合には、電極相互の電磁気的作用によりアーク力を抑制するため、良好なビード形状を形成するとともに、最も高速な溶接が可能となる。したがって、前記の推定方法によって得られる各電極のアーク発生位置Lをほぼ同一の高さに制御することにより、実用条件下での最も高速な溶接速度を選定することができる。
【0027】
また、より深い溶込みを得ることが必要な厚板の多電極溶接においては、図4に示すように、前記の推定方法によって得られる各電極17、18、19のアーク発生位置Lが先行の第1電極17より、順次被溶接材表面側に高くなるようにシフトした位置に制御することにより、溶接欠陥等の発生を抑制することができ、厚板溶接における溶接品質の向上が可能となる。このとき、第1電極17は、主として溶込み深さの確保および初層の裏ビード形成のために働き、第2電極18は溶融池の安定化、第3電極19は主に余盛りの形成のために働く。また、この多電極溶接方法によると、従来は板厚60mmまでが限界であった厚板溶接が板厚90mmまで1パスで可能となった。
【0028】
次に、溶込み深さや裏ビード形状は、アーク発生位置Lと強い相関があるが、アーク長Laをも考慮することにより、より強い相関を得ることができる。この場合、アーク長Laを一定に制御することにより、溶接電流Iが変化した場合においてもアークの安定性を確保することができる。したがって、前述の各制御方法において、アーク発生位置Lの制御に伴い、溶接電流Iが変化した場合においても、予め実験的に求められた適正なアーク長となるように、溶接中の電圧VTを制御する。この場合も、同様に、アーク長が適正値となる場合の電圧の基準値を予め求めておく。
ここで、
Lao:基準アーク長
VTo:基準電圧
とすると、溶接条件(電圧)制御の基本アルゴリズムは以下のとおりである。
すなわち、アーク長Laの制御方法は、
▲1▼Lao>Laならば、基準電圧VToに対し、電圧VTを増加させる。
▲2▼Lao=Laならば、基準電圧VToに対し、電圧VTを保持する(変化させない)
▲3▼Lao<Laならば、基準電圧VToに対し、電圧VTを減少させる。
以上から、溶接中のアーク発生位置Lの制御により、溶接電流Iが変化した場合においても、アーク長を予め求められた適切な値に保持(制御)することができるので、消耗電極式アーク溶接の溶込み深さおよび/または裏ビード形状の制御をより精度のよいものとするとともに、アークの安定性を確保することができる。
【0029】
実際の溶接においては、前述の溶込み深さや裏ビード形状の制御も重要であるが、さらに上部に形成されるビードの高さを適切にすることが必要である。前述までの各制御方法により、溶接電流を制御する場合、溶接電流の変化に伴い溶接ワイヤの送給速度Vfも変化するため、同一の溶接速度のままでは、形成されるビードの高さが変化することになる。そこで、ワイヤ送給速度Vfの変化に応じて、溶接速度Vzを制御する。この場合も、同様に、適正なビード高さとなる溶接速度の基準値を予め求めておく。
ここで、
Vzo:基準溶接速度
とすると、溶接条件(速度)制御の基本アルゴリズムは以下のとおりである。
すなわち、溶接速度の制御方法は、
▲1▼Io>I(あるいは、Vfo>Vf)ならば、基準速度Vzoに対し、速度Vzを増加させる。
▲2▼Io=I(あるいは、Vfo=Vf)ならば、基準速度Vzoに対し、速度Vzを保持する(変化させない)。
▲3▼Io<I(あるいは、Vfo<Vf)ならば、基準速度Vzoに対し、速度Vzを減少させる。
【0030】
溶接速度については、ワイヤ送給速度Vfの変化に対応して調整を行うが、ワイヤ送給速度Vfの増減は、大まかには電流Iの増減に支配されるため電流Iによる制御としている。つまり、前述までの制御方法により調整された電流Iと基準電流Ioの差から基準溶接速度Vzoを変化させる。なお、基準ワイヤ送給速度Vfoを求めておいて、ワイヤ送給速度Vfの増減により溶接速度Vzの増減を行ってもよい。
以上から、前述までの各制御方法において、溶接ワイヤの送給速度Vfが変化した場合においても、その変化量に応じて溶接速度の制御が可能であるので、形成されるビードの高さをほぼ一定とすることが可能となる。
【0031】
【実施例】
本発明の実施例として、サブマージアーク溶接におけるワイヤ送給特性および裏ビード制御結果の一例を説明する。
図5はサブマージアーク溶接におけるワイヤ送給特性を示すグラフである。溶接ワイヤは4.8mmφのワイヤを使用し、溶接電流を800A、1000A、1200A、1400Aとしたときのアーク電圧VTとワイヤ送給速度Vfとの関係を示す。図中のプロットは、溶接電流I毎に、電極チップ・被溶接材間距離Ex一定で、電圧VTを変化させた場合のワイヤ送給速度Vfの変化を示しているが、アーク長の固有自己制御特性があらわれる電圧(臨界電圧VR)以下では、ワイヤ送給速度Vfが増加していることがわかる。したがって、使用する電圧VTが臨界電圧VR以下の場合には、ワイヤ突出し長さLeを演算するにあたり、電圧VTを考慮する必要がある。実際にサブマージアーク溶接にて裏ビードを形成する場合の使用電圧は、臨界電圧VR以下の電圧である。(このようなワイヤ送給特性を有する場合には、従来の方法では、臨界電圧VR以上の電圧範囲でのみしか適用できない。)
【0032】
図6はサブマージアーク溶接における裏ビード制御結果の一例を示すチャートである。図7は供試材の開先寸法図である。溶接ワイヤは4.8mmφのワイヤを使用した。また、図6中の裏ビード形状図は、ほぼチャートで示すデータ位置に対応している。図8は図6の裏ビード形状図のA−AおよびB−B断面図である。
本実施例における裏ビード制御は、図6の前半部分▲1▼では、溶接条件制御を行っておらず、▲2▼部分にて図中の点線で示す基準ワイヤ突出し長さLeoおよび基準アーク長Laoとなるように電流・電圧を制御している。基準ワイヤ突出し長さLeoおよび基準アーク長Laoは、実験により最適値を予め求めている。図6、図8の裏ビード形状図から明らかなように、無制御部▲1▼では、細い裏ビード20しか得られていないが、制御後の▲2▼部分では、良好な裏ビード20が得られていることがわかる。
表1に、本実施例におけるアーク発生位置推定のための演算式および定数を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、消耗電極式アーク溶接におけるアーク発生位置を推定するにあたり、電極突出し長さの演算を従来のように溶接電流(平均値および実効値)と電極送給速度だけでなく、電極チップと被溶接材間の電圧による影響を考慮するよう構成したので、従来困難であった低電圧域(臨界電圧以下の電圧範囲)での電極突出し長さの正確な演算が可能となり、消耗電極式アーク溶接の実用条件範囲における正確なアーク発生位置の推定が可能となった。
そして、上記により正確に推定されるアーク発生位置を最適な位置になるように溶接電流を調整し、また溶接電流の変化に伴うアーク長の変動も上記電圧により調整し、さらにそれらの変化による電極送給速度の変化から溶接速度を調整する溶接条件制御方法としたので、裏ビード制御および従来困難であった溶込み深さの安定した制御が可能となるとともに、ビード高さの制御も行え、さらには多電極溶接におけるアーク発生位置制御が可能となった。
したがって、実際の溶接での開先形状や開先ギャップの変動などに対応して所定の溶込み深さおよび裏ビード形状を得ることができ、さらに、消耗電極式アーク溶接において、溶接能率および溶接品質を向上させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の本発明の消耗電極式アーク溶接におけるアーク発生位置推定方法に使用する溶接装置の概略構成図である。
【図2】アーク発生位置の定義を示す図である。
【図3】多電極溶接における各電極のアーク発生位置の相違による溶接ビード形成の模式図である。
【図4】多電極溶接における各電極のアーク発生位置を第1電極より順次被溶接材表面側へシフトした場合の溶接ビード形成の模式図である。
【図5】サブマージアーク溶接におけるワイヤ送給特性を示す図である。
【図6】サブマージアーク溶接における裏ビード制御結果の一例を示す図である。
【図7】供試材の開先寸法図である。
【図8】図6の裏ビード形状図のA−AおよびB−B断面図である。
【符号の説明】
1 被溶接材
2 開先
3 電極チップ
4 溶接ワイヤ
5 アーク
6 送給ローラ
7 ワイヤ送給モータ
8 溶融池
9 溶接電源
10 電流検出器
11 電圧検出器
12 ワイヤ送給速度検出器
13 溶接制御装置
14 演算器
15 先行電極
16 後行電極
17 第1電極
18 第2電極
19 第3電極
20 裏ビード
Claims (7)
- 消耗電極式アーク溶接において、電極チップと被溶接材間の電圧をアーク長の固有自己制御特性があらわれる臨界電圧以下で使用する場合には、溶接中に溶接電流、電極チップと被溶接材間の電圧、および電極送給速度を検出し、これら3つの検出値から指定の演算式を用いて、電極チップ先端からの電極突出し長さを演算するとともに、この算出した電極突出し長さから電極チップ先端から被溶接材表面までの距離を差し引くことによって、被溶接材表面を原点とする板厚方向の電極先端の進入深さであるアーク発生位置を推定することを特徴とする消耗電極式アーク溶接におけるアーク発生位置推定方法。
- 複数の消耗電極を用いる多電極の消耗電極式アーク溶接においては、各電極についてアーク発生位置を求めることを特徴とする請求項1記載の消耗電極式アーク溶接におけるアーク発生位置推定方法。
- 請求項1または2記載の推定方法により得られるアーク発生位置を予め求められた適切な位置に保持するように、溶接電流または電極送給速度を制御することにより、溶込み深さおよび/または裏ビード形状を制御することを特徴とする消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法。
- 複数の消耗電極を用いる多電極の消耗電極式アーク溶接において、請求項2記載の推定方法により得られる各電極のアーク発生位置がほぼ同一の高さとなるように、溶接電流または電極送給速度を制御することを特徴とする消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法。
- 複数の消耗電極を用いる多電極の消耗電極式アーク溶接において、請求項2記載の推定方法により得られる各電極のアーク発生位置が先行電極より順次被溶接材表面側に高くなるように、溶接電流または電極送給速度を制御することを特徴とする消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法。
- 溶接電流が変化した場合においても、アーク長がほぼ一定となるように電極チップと被溶接材間の電圧を制御することにより、溶込み深さおよび/または裏ビード形状を制御することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法。
- 電極送給速度が変化した場合においても、溶接ビードの高さがほぼ一定となるように、溶接速度を制御することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の消耗電極式アーク溶接における溶接条件制御方法。
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