JP2004019608A - 火花点火式直噴エンジンの制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジンの始動時に実行されるクランキング時に、燃料の噴射圧力を早期に上昇させてエミッション性を効果的に改善できるようにする。
【解決手段】エンジンの始動時に気筒を識別する気筒識別手段70を備え、ポンプ室53内の燃料を加圧する加圧手段54と、ポンプ室53の燃料吸入部51を開閉する吸入弁55と、この吸入弁55を閉止方向に駆動して燃料の吐出量を制御するソレノイド60とを高圧ポンプ26に設け、エンジンの始動後に上記気筒識別が行われる前から、この気筒識別後で上記ポンプ室53内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまでの間に、高圧ポンプ26の始動時制御を実行することにより上記ソレノイド60を断続的に通電状態とするとともに、このソレノイド60の非通電時に上記吸入弁55が開放状態となるのを防止し得るように上記非通電時間を設定する高圧ポンプ制御手段73を設けた。
【選択図】 図4
【解決手段】エンジンの始動時に気筒を識別する気筒識別手段70を備え、ポンプ室53内の燃料を加圧する加圧手段54と、ポンプ室53の燃料吸入部51を開閉する吸入弁55と、この吸入弁55を閉止方向に駆動して燃料の吐出量を制御するソレノイド60とを高圧ポンプ26に設け、エンジンの始動後に上記気筒識別が行われる前から、この気筒識別後で上記ポンプ室53内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまでの間に、高圧ポンプ26の始動時制御を実行することにより上記ソレノイド60を断続的に通電状態とするとともに、このソレノイド60の非通電時に上記吸入弁55が開放状態となるのを防止し得るように上記非通電時間を設定する高圧ポンプ制御手段73を設けた。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、エンジンの始動時に気筒を識別する気筒識別手段と、この気筒識別が行われた後に燃料の噴射時期を制御する噴射時期制御手段とを備えた火花点火式直噴エンジンの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、環境保護の観点から自動車の排気ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NOx)等からなる排気ガス物質を削減することを目的として、高圧ポンプにより所定の高圧に加圧した燃料を燃料噴射弁に圧送した後、この燃料噴射弁から燃焼室内に直接噴射することにより、燃料の微粒化を促進して混合気を適正に燃焼させることを可能にし、これによってエミッション性を改善するとともに、エンジン出力を向上させることが行われている。
【0003】
例えば特開平2001−182597号公報に示されるように、エンジンにより駆動されるカムと、このカムにより駆動されてポンプ室内の燃料を加圧するプランジャと、ポンプ室の燃料吸入部を開閉する吸入弁と、この吸入弁を開放方向に付勢する付勢手段と、この付勢手段の付勢力に抗して上記吸入弁を閉止方向に駆動するソレノイドとを備えた高圧ポンプにより、燃料を高圧に加圧した状態で燃料噴射弁に圧送して燃焼室内に直接噴射するように構成された筒内噴射式エンジンが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記高圧ポンプは、エンジンによって駆動されるカムの回転に対応したプランジャの往復動に応じ、ポンプ室(加圧室)の容積を変化させて燃料吸入部からポンプ室内に吸入された燃料を加圧した状態で燃料吐出部から吐出させるとともに、この燃料の加圧時に上記吸入弁の閉止タイミングを調節することにより、上記燃料の吐出量を制御するように構成されている。したがって、エンジンの始動時に気筒識別手段による気筒識別が行われて上記プランジャの位相が把握された後でなければ、上記ソレノイドによる吸入弁の閉止タイミングを適正に調節することができず、エンジンの始動後に所定時間(例えば2秒程度)が経過するまでは、燃料の吐出圧を充分に上昇させることができないという問題がある。
【0005】
上記公報に記載されたエンジンの制御装置では、エンジンの始動時に、クランク軸の回転角度を検出するクランク角センサと、高圧ポンプを駆動するカム軸の回転角度を検出するカム角センサとの位相が確定して気筒識別が行われるまでの間に、少なくとも2回以上の駆動信号を上記高圧ポンプに出力することにより、上記気筒識別が行われる前から燃料の噴射を可能にして、エンジンの始動時間を短縮化するとともに、上記気筒識別が行われた後に、プランジャの下死点位置で上記ソレノイドを駆動して吸入弁を閉止させる全吐出制御状態に移行するように構成されている。
【0006】
しかし、エンジンの始動時にクランキングが行われている間は、エンジン回転数が200rpm程度の低い状態にあり、上記プランジャによってポンプ室内の燃料圧力を速やかに上昇させることが困難である。また、上記吸入弁を閉止方向に駆動するソレノイドを長時間に亘り通電状態とすると、ソレノイドが焼損する可能性があるので、上記吸入弁を閉止状態に保持し得る時間には限りがある。したがって、上記ソレノイドへの通電が停止された後、ポンプ室内の燃料圧力が充分に上昇する前に、上記吸入弁の設置部から燃料の供給通路に燃焼室内の燃料がリークして吸入弁が開放状態となり易く、これにより上記クランキング時に燃料圧力を上昇させることが不可能になるため、エミッション性をそれ程顕著に改善することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、エンジンの始動時に実行されるクランキング時に、燃料の噴射圧力を早期に上昇させてエミッション性を効果的に改善することができる火花点火式直噴エンジンの制御装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、この燃料噴射弁に燃料を圧送する高圧ポンプと、エンジンの始動時に気筒を識別する気筒識別手段と、この気筒識別が行われた後に燃料の噴射時期を制御する噴射時期制御手段とを備えた火花点火式エンジンの制御装置において、上記高圧ポンプに、ポンプ室内の燃料を加圧する加圧手段と、ポンプ室の燃料吸入部を開閉する吸入弁と、この吸入弁を閉止方向に駆動して燃料の吐出量を制御するソレノイドとを設け、エンジンの始動後に上記気筒識別が行われる前から、この気筒識別後で上記ポンプ室内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまでの間に、上記高圧ポンプの始動時制御を実行することにより上記ソレノイドを断続的に通電状態とするとともに、このソレノイドの非通電時に上記吸入弁が開放状態となるのを防止し得るように上記非通電時間を設定する高圧ポンプ制御手段を備えたものである。
【0009】
上記構成によれば、エンジンの始動後に上記気筒識別が行われる前から、この気筒識別後で上記ポンプ室内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまでの間に、高圧ポンプのソレノイドを断続的に通電状態とする始動時制御が実行されてソレノイドのオンオフ動作が繰り返されることにより、上記吸入弁が閉止状態に保持されるため、上記ポンプ室内の燃料圧力を効果的に上昇させることが可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明は、上記請求項1記載の火花点式直噴エンジンの制御装置において、気筒識別手段による気筒識別が行われた後、燃料の噴射圧力が基準圧力以上となった時点で、上記始動時制御を停止して通常時の制御状態に切り換えることによりエンジンの回転周期に対応したソレノイドの通電制御を実行するものである。
【0011】
上記構成によれば、気筒識別手段による気筒識別が行われた後、燃料の噴射圧力が基準圧力以上となった時点で、上記始動時制御が停止されて通常時の制御状態に移行することにより、上記始動時制御が必要以上に継続されることによる電力の浪費等が抑制されることになる。
【0012】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置において、ポンプ室内の燃料圧力が基準圧力に上昇する前に、燃料噴射を開始するものである。
【0013】
上記構成によれば、上記始動時制御が実行されることによりポンプ室内の燃料圧力を早期に上昇させることが可能となるとともに、この燃料圧力が上記基準圧力に上昇する前に燃料噴射が開始されることにより、エンジンの始動に要する時間が大幅に短縮化されることになる。
【0014】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3の何れかに記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置において、エンジンを始動させるためのクランキング時に、少なくとも圧縮行程で燃料を噴射するものである。
【0015】
上記構成によれば、燃料噴霧がシリンダ壁等に付着することを防止するとともに、点火プラグ周りに着火可能な濃度を有する混合気を集中させることができるため、その着火性が確保されることになる。
【0016】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜3の何れかに記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置において、エンジンを始動させるためのクランキング時に、吸気行程から点火時期までの間で燃料を複数回に分割して噴射するとともに、その後期噴射時期を圧縮行程に設定したものである。
【0017】
上記構成によれば、点火プラグの近傍に混合気を層状に偏在させる成層燃焼モードの制御を実行するように構成されたエンジン等において、上記クランキング時に、吸気行程から点火時期までの間で燃料が複数回に分割されて噴射されるとともに、その後期噴射時期が圧縮行程に設定されることにより、エンジン始動時の早い段階で、上記成層燃焼モードの制御が実行されることになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る制御装置を備えた火花点火式直噴エンジンの全体的な構成を示している。これらの図において、上記エンジン本体1は、複数の気筒2が配設されたシリンダブロック3と、このシリンダブロック3上に配設されたシリンダヘッド4とを有し、各気筒2内には、ピストン5が上下方向に往復動可能に嵌装され、このピストン5とシリンダヘッド4との間に燃焼室6が形成されている。上記ピストン5は、シリンダブロック3の下方に配設されたクランク軸7に、コネクティングロッド8を介して連結されている。上記クランク軸7の一端部側には、クランク角(クランク軸7の回転角度)を検出する電磁式のクランク角センサ9が配設されている。
【0019】
上記各気筒2の燃焼室6は、その天井部が中央部分からシリンダヘッド4の下端まで延びる二つの傾斜面で構成された所謂ペントルーフ型となっている。この燃焼室6の天井部を構成する二つの傾斜面には、吸気ポート10および排気ポート11がそれぞれ二つずつ開口し、各ポート10,11の開口端には、吸気弁12および排気弁13がそれぞれ設けられている。これらの吸気弁12および排気弁13は、シリンダヘッド4の上部に軸支された二本のカム軸等を有する動弁機構14により、それぞれ各気筒2毎に所定のタイミングで開閉作動されるようになっている。
【0020】
上記燃焼室6の中央部上方には、上記四つの吸気弁12および排気弁13により取り囲まれるように点火プラグ16が配設され、この点火プラグ16の先端部が上記天井部から燃焼室6内に突出している。上記点火プラグ16には点火回路17が接続され、この点火回路17から各気筒2毎に所定のタイミングで点火プラグ16に通電されるようになっている。
【0021】
また、燃焼室6の周縁部には、この燃焼室6内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁18が、二つの吸気ポート10に挟まれるように配置されている。上記燃料噴射弁18の基端部には、全気筒2に共通の燃料分配管19が接続され、燃料供給系20から供給される高圧の燃料が、上記燃料分配管19を介して各気筒2に分配されるように構成されている。
【0022】
上記燃料噴射弁18から燃焼室6内に噴射される燃料の噴射方向は、燃焼室6内のタンブル流Tに逆行するように設定されている。すなわち、図2に示す断面において、燃焼室6の左側に位置する燃料噴射弁18から斜め右下方に向けて燃料を噴射し、この燃料噴霧を、燃焼室6内で生成されたタンブル流Tに衝突させることにより、点火プラグ16の近傍に混合気を層状に偏在させた状態で成層燃焼させるように構成されている。
【0023】
さらに、各気筒2の吸気ポート10にそれぞれ連通するように吸気通路31がエンジン本体1の一側面部に接続されるとともに、各気筒2の排気ポート11にそれぞれ連通するように排気通路32がエンジン本体1の他側面部に接続されている。上記吸気通路31は、エンジン本体1の各気筒2の燃焼室6内に、図外のエアクリーナで濾過した吸気を供給するものであり、その上流側から順に、吸気量を検出するホットワイヤ式のエアフローセンサ33と、電動モータ35により駆動されて開閉する電気式スロットル弁34と、サージタンク36とが配設されている。また、上記サージタンク36よりも下流側の吸気通路31は、各気筒2毎に分岐する独立吸気通路とされ、各独立吸気通路の下流側部は、さらに二つに分岐して上記両吸気ポート10にそれぞれ連通している。
【0024】
上記各吸気ポート10の上流側には、燃焼室6内におけるタンブル流の強度を調節するタンブル調節弁37が配設され、このタンブル調節弁37が、例えばステッピングモータからなるアクチュエータ38により開閉駆動されるようになっている。上記タンブル調節弁37は、円形のバタフライ弁の一部、例えば弁軸よりも下側の部分を切り欠くことによって形成され、タンブル調節弁37が閉じられているときに、上記切欠き部分を介して吸気を下流側に流動させることにより、燃焼室6内に強いタンブル流Tを形成し、上記タンブル調節弁37が開かれるのに応じてタンブル流Tを徐々に弱めるように構成されている。
【0025】
なお、上記吸気ポート10やタンブル調節弁37の形状は、上記形状に限定されるものではなく、例えば吸気ポート10を、上流側で一つに合流する所謂コモンポートタイプに構成してもよい。この場合、上記タンブル調節弁37は、コモンポートの断面形状に対応する形状のものをベースとして、その一部分を切り欠いた形状とすればよい。
【0026】
一方、上記排気通路32は、燃焼室6の外部に既燃ガスを導出するものであり、その上流側には各気筒2の排気ポート11に連通する排気マニフォールド39を備えている。この排気マニフォールド39の集合部には、排気中の酸素濃度を検出するリニアO2センサ40が配設されている。このリニアO2センサ40は、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出するために用いられ、理論空燃比を含む所定の空燃比範囲で酸素濃度に対してリニアな出力が得られるものである。
【0027】
上記排気マニフォールド39の集合部には、排気管41の上流端が接続され、この排気管41の下流側には排気を浄化するためのNOx浄化触媒42および三元触媒43が設けられるとともに、両触媒42,43の間に、排気温度を検出する排気温センサ44が配設されている。
【0028】
また、上記排気管41の上流側には、排気通路32を流れる排気の一部を吸気通路31に還流させるEGR通路45の上流端が接続されている。このEGR通路45の下流端は、上記電気スロットル弁34とサージタンク36との間の吸気通路31に接続され、上記EGR通路45の途中には、開閉駆動されることにより排気の還流量を調節する電気式EGR弁46と、排気を冷却するEGRクーラ47とが配設され、これらよって排気還流手段が構成されている。
【0029】
上記燃料噴射部18に燃料を供給する燃料供給系20には、図3および図4に示すように、燃料分配管19と燃料タンク21とを連通させる燃料通路22の上流側から下流側に向かって、低圧ポンプ23、低圧レギュレータ24、燃料フィルタ25および高圧ポンプ26が順に配設されている。そして、上記低圧ポンプ23により燃料タンク21から吸い上げられた燃料が、低圧レギュレータ24により調圧された後、燃料フィルタ25により濾過された状態で高圧ポンプ26に圧送されるようになっている。
【0030】
上記高圧ポンプ26は、燃料フィルタ25を介して供給された燃料を高圧(例えば略3MPa〜略13MPa、好ましくは4MPa〜7MPa程度)に加圧して上記燃料分配管19に圧送するものであり、具体的には、燃料の吸入部51および吐出部52が設けられたポンプ室53と、このポンプ室53内の燃料を加圧する加圧手段54とを有している。
【0031】
上記ポンプ室53の燃料吸入部51には、この燃料吸入部51を開閉する吸入弁55と、この吸入弁55を閉止方向に付勢する第1付勢手段56と、プッシュロッド57を介して上記吸入弁55を開放方向に付勢する圧縮コイルばねからなる第2付勢手段58と、この第2付勢手段58の付勢力に抗して上記プッシュロッド57を、ソレノイドケース59内に引き込むことにより吸入弁55から離間させる方向に駆動するソレノイド60とが設けられている。
【0032】
第1付勢手段56の付勢力は、第2付勢手段58の付勢力よりも小さな値に設定され、通常の状態では上記第2付勢手段58の付勢力に応じて吸入弁55が開放状態に保持されている。そして、上記ソレノイド60が通電状態となって上記プッシュロッド57がソレノイドケース59内に引き込まれると、上記第1付勢手段56の付勢力およびポンプ室53内の燃料圧力に応じ、吸入弁55が閉止状態となるようになっている。
【0033】
上記ポンプ室53の燃料吐出部52には、この燃料吐出部52を開閉する吐出弁61と、この吐出弁61を閉止方向に付勢する圧縮コイルばねからなる吐出弁付勢手段62とが設けられ、通常の状態では上記吐出弁付勢手段62の付勢力に応じて吐出弁61が閉止状態に保持されている。そして、上記加圧手段54によりポンプ室53内の燃料が加圧されてその燃料圧力が一定値以上に上昇すると、上記吐出弁付勢手段62の付勢力に抗して吐出弁61が開放方向に駆動されることにより、燃料が燃料噴射弁18に圧送されるように構成されている。
【0034】
また、上記加圧手段54は、ポンプ室53内の燃料に加圧力を付与するプランジャ63と、このプランジャ63を昇降駆動するカム64と、プランジャ63の下端部を下方に付勢してカム65に圧接させるプランジャ付勢手段66とを有し、上記カム65が回転駆動されるのに対応してプランジャ63が昇降駆動されることにより、ポンプ室53内に燃料が供給されて加圧されるようになっている。すなわち、上記吸入弁55の開放状態でプランジャ63が下降することにより、燃料吸入部51からポンプ室53内に燃料が吸入された後、上記吸入弁55の閉止状態でプランジャ63が上昇することにより、ポンプ室53内の燃料が加圧されるように構成されている。
【0035】
上記カム64は、180°の角度で突設された一対の突部を有するとともに、上記吸気弁7の動弁機構14を構成するカム軸14aに一体に取り付けられることにより、このカム軸14aが一回転する間に、上記プランジャ63を2回昇降駆動するように構成されている。また、上記カム軸14aは、図5に示すように、エンジン本体1のクランク軸7により駆動されるチェーン伝動機構67を介して回転駆動され、これによって上記クランク軸7が1回転するのに応じ、カム軸14aが1/2回転するとともに、上記プランジャ63が1回昇降することになる。なお、上記カム軸14aに設けられたカム64の形状は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えばプランジャ63を駆動する突部の個数を3個以上に設定してもよい。また、上記チェーン伝動機構67に代え、タイミングベルトを使用したベルト伝動機構により上記カム軸14aを回転駆動するように構成してもよい。
【0036】
上記点火回路17、燃料噴射弁18、燃料供給系20、電気式スロットル弁34を駆動する電動モータ35、タンブル調節弁37のアクチュエータ38および上記電気式EGR弁46等は、エンジンコントロールユニット(以下、ECUという)50によって制御されるように構成されている。一方、上記ECU50には、クランク角センサ9、エアフローセンサ33、リニアO2センサ40および排気温センサ44等の検出信号が入力され、さらにアクセル開度(アクセルペダルの操作量)を検出するアクセル開度センサ48の検出信号と、エンジンの回転速度を検出する回転速度センサ49の検出信号と、エンジンの冷却水温度を検出する水温センサ56の検出信号と、カム軸14aの回転角度を検出するカム角センサ68の検出信号と、燃料の噴射圧力を検出する燃圧センサ69の検出信号とが入力されるようになっている。
【0037】
また、上記ECU50には、図4に示すように、エンジンの始動時にクランク角センサ9から入力されたクランク角信号およびカム角センサ68から入力されたカム角信号に基づいて気筒を識別する気筒識別手段71と、この気筒識別が行われた後に燃料の噴射時期を制御する噴射時期制御手段72と、上記高圧ポンプ26のソレノイド60に対する通電タイミングを制御する高圧ポンプ制御手段73とが設けられている。
【0038】
上記噴射時期制御手段72は、予め設定されたマップからエンジンの運転状態に対応した燃料の噴射時期を読み出し、例えばエンジンが低回転低負荷の運転領域にある場合には、圧縮行程で燃料噴射して成層燃焼を行わせ、高負荷高回転の運転領域にある場合には、吸気行程で燃料を噴射して均一燃焼を行わせるように構成されている。また、後述するエンジンの始動時には、燃料噴射弁18から燃焼室内に燃料が複数回に分割されて噴射されるとともに、その後期噴射時期、例えば二回に分けて分割噴射する場合の2回目の噴射時期が、点火前の圧縮行程に設定されるようになっている。
【0039】
上記高圧ポンプ制御手段73は、エンジンの始動後に上記気筒識別手段71による気筒識別が行われる前から、この気筒識別後で上記ポンプ室53内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまでの間に、ポンプ室53内の燃料圧力を積極的に上昇させる始動時制御を実行するように構成されている。すなわち、上記始動時制御の実行時には、上記ソレノイド60を断続的に通電状態としてソレノイド60のオンオフ動作を繰り返すとともに、このソレノイド60の非通電時に上記吸入弁55が開放状態となるのを防止し得るように、上記非通電時間を例えば10ms程度に設定することにより、プランジャ63が上昇行程または下降行程のいずれにあるかに拘わらず、上記吸入弁55が閉止状態に維持されるようになっている。このため、上記プランジャ63の上昇時にポンプ室53内の燃料圧力が確実に上昇することになる。
【0040】
なお、上記始動時制御におけるソレノイド60に対する通電時間は、このソレノイド60が焼損を防止し得るように、例えば2ms程度に設定されている。また、上記基準圧力は、燃焼室6内に噴射された燃料の微粒化を促進して混合気を適正に燃焼させ得る値、例えば3MPa程度に設定されている。
【0041】
上記始動時制御が実行されることによりポンプ室53内の燃料圧力が上昇して、予め設定された基準圧力(3MPa程度)以上になったことが、上記燃圧センサ69の検出信号等に応じて確認された時点で、上記高圧ポンプ制御手段73による始動時制御が停止され、エンジンの回転周期に対応した上記クランク角センサ9またはカム角センサ68の検出信号に応じてソレノイド60の通電タイミングが制御される通常時の制御状態に切り換えられる。
【0042】
上記通常時の制御状態では、高圧ポンプ26のプランジャ63が下死点位置に下降した時点を基準として設定された所定時期に、上記ソレノイド60を一時的に通電状態とすることにより、上記吸入弁55が閉止状態とされてポンプ室53内の燃料圧力が上昇するとともに、上記ソレノイド60に対する通電タイミングを変化させることにより、ポンプ室53内に吸入される燃料量が調節されてその吐出量等が制御されるようになっている。
【0043】
上記構成を有するエンジンの制御装置によりエンジンの始動時に実行される燃料の噴射制御を、図6に示すタイムチャートに基づいて説明する。図6(a)に示すように、エンジンのスタータを作動させるスタータ信号が出力された時点t1において、エンジンのクランキングが行われることにより、エンジン回転数が200rpm程度まで次第に上昇する。
【0044】
また、上記クランキングが行われることにより、図6(b),(c)に示すように、クランク角センサ9のクランク角信号およびカム角センサ68のカム角信号が出力されるとともに、高圧ポンプ26のプランジャ63が昇降駆動されることにより、そのストロークが図6(d)に示すように変化し、エンジンが1回転する前の時点t2で、上記クランク角センサ信号に応じて気筒識別が行われる。
【0045】
そして、図7(a)に示すように、上記スタータ信号の出力時点t1から高圧ポンプ26のソレノイド60を断続的に通電状態とするソレノイド制御信号を出力することにより、上記吸入弁55を閉止状態とする始動時制御を開始する。この始動時制御が実行されることにより、図7(b)に示すように、ポンプ室53内の燃料圧力(燃圧)が次第に上昇し、上記気筒識別時点t2の後に、燃料圧力が噴射許容圧力に上昇した時点t3で、図7(c)に示すように、上記クランク角信号(エンジンの回転周期)に対応した所定時期に燃料噴射信号が出力されて燃料の噴射が開始される。
【0046】
また、上記気筒識別時点t2の後に、ポンプ室53内の燃料圧力が予め3MPa程度に設定された基準圧力以上となったことが確認された時点t4で、上記始動時の制御状態から通常時の制御状態に移行し、上記カム角信号(エンジンの回転周期)に基づき、プランジャ63の下死点位置を基準として設定された所定時期にソレノイドを一時的に通電状態とすることにより、ポンプ室53の燃料を加圧する際に吸入弁55を閉止状態として燃料圧力を上昇させる制御を実行する。
【0047】
上記のように燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁18と、この燃料噴射弁18に燃料を圧送する高圧ポンプ26と、エンジンの始動時に気筒を識別する気筒識別手段71と、この気筒識別が行われた後に燃料の噴射時期を制御する噴射時期制御手段72とを備えた火花点火式エンジンの制御装置において、上記高圧ポンプ26に、ポンプ53室内の燃料を加圧する加圧手段54と、ポンプ室53の燃料吸入部51を開閉する吸入弁55と、この吸入弁55を閉止方向に駆動して燃料の吐出量および吐出圧を制御するソレノイド60とを設け、エンジンの始動後に上記気筒識別が行われる前から、この気筒識別後で上記ポンプ室53内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまでの間に、上記高圧ポンプ制御手段73において始動時制御を実行することにより、エンジンの始動時に実行されるクランキング時に、燃料の噴射圧力を早期に上昇させてエンジンの始動性を効果的に向上させることができるとともに、この始動時におけるエミッション性を効果的に改善することができるという利点がある。
【0048】
すなわち、エンジンの始動後に上記気筒識別が行われる前から、上記ソレノイド60を断続的に通電状態とすることにより、ソレノイド60の焼損等を防止しつつ、このソレノイド60の非通電時に上記吸入弁55が開放状態となるのを防止し得るように上記非通電時間を設定する始動時制御を実行するように構成したため、上記加圧手段54を構成するプランジャ63が上昇行程または下降行程のいずれにあるかが解らない上記気筒識別前に、上記吸入弁55を閉止状態に維持することにより、上記プランジャ63の上昇時にポンプ室53内の燃料圧力を効果的に上昇させることができる。
【0049】
そして、上記気筒識別後でポンプ室53内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまで、上記始動時制御を継続するように構成したため、気筒識別後にプランジャの下死点位置で吸入弁を閉止状態とする制御を実行するように構成された従来技術(特開平2001−182597)のように、エンジンのクランキング時に、エンジン回転数が低いことに起因して上記吸入弁の設置部から燃料がリークする等の問題を生じることなく、ポンプ室53内の燃料圧力を迅速かつ効果的に上昇させることができる。したがって、エンジンの始動直後から高圧の燃料を燃焼室6内に直接噴射することにより、燃料の微粒化を促進して混合気を適正に燃焼させることが可能となり、エミッション性を効果的に改善できる等の利点がある。
【0050】
また、上記実施形態では、気筒識別手段71による気筒識別が行われた後、燃料の噴射圧力が基準圧力以上となった時点で、上記始動時制御を停止して通常時の制御状態に切り換えることによりエンジンの回転周期に対応したソレノイド60の通電制御を実行するように構成したため、このソレノイド60を断続的に通電状態とする上記始動時制御が必要以上に継続されるのを防止して、電力の浪費等を抑制しつつ、上記ソレノイド60に対する通電タイミングを変化させることにより、ポンプ室53内に吸入される燃料量を適正に調節して、その吐出量等を制御できるという利点がある。
【0051】
さらに、上記実施形態に示すように、ポンプ室53内の燃料圧力が基準圧力に上昇する前に、この燃料圧力が所定値となった時点で、上記燃料噴射制御手段72による燃料噴射を開始するように構成した場合には、エンジンの始動時間を大幅に短縮することができる。すなわち、上記始動時制御を実行することにより燃料圧力を早期に上昇させることができるとともに、この燃料圧力が上記基準圧力に上昇する前に燃料噴射を開始して燃焼させることにより、エンジンの始動に要する時間を大幅に短縮化することができる。
【0052】
また、上記のようにエンジンを始動させるためのクランキング時に、少なくとも圧縮行程で燃料を噴射するように構成した場合には、燃料噴霧がシリンダ壁等に付着することに起因して燃焼性が悪化する等の弊害が生じるのを効果的に防止しつつ、点火プラグ周りに着火可能な濃度を有する混合気を集中させることにより、混合気の着火性を確保してエンジンを効果的に始動させることができる。
【0053】
特に上記実施形態では、燃料噴射弁18からの燃料噴霧を、燃焼室6内で生成されたタンブル流Tに衝突させることにより、点火プラグ16の近傍に混合気を層状に偏在させる成層燃焼モードの制御を実行するように構成されたエンジン等において、上記クランキング時に、吸気行程から点火時期までの間で燃料を複数回に分割して噴射するとともに、その後期噴射時期を圧縮行程に設定するように構成したため、エンジン始動時の早い段階で上記成層燃焼モードの制御を実行して、燃費を改善しつつ、エンジン出力を確保できるという利点がある。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、この燃料噴射弁に燃料を圧送する高圧ポンプと、エンジンの始動時に気筒を識別する気筒識別手段と、この気筒識別が行われた後に燃料の噴射時期を制御する噴射時期制御手段とを備えた火花点火式エンジンの制御装置において、上記高圧ポンプに、ポンプ室内の燃料を加圧する加圧手段と、ポンプ室の燃料吸入部を開閉する吸入弁と、この吸入弁を閉止方向に駆動して燃料の吐出量を制御するソレノイドとを設け、エンジンの始動後に上記気筒識別が行われる前から、この気筒識別後で上記ポンプ室内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまでの間に、上記高圧ポンプの始動時制御を実行することにより上記ソレノイドを断続的に通電状態とするとともに、このソレノイドの非通電時に上記吸入弁が開放状態となるのを防止し得るように上記非通電時間を設定する高圧ポンプ制御手段を設けたため、エンジンの始動時に実行されるクランキング時に、燃料の噴射圧力を早期に上昇させてエンジンの始動性を効果的に向上させることができるとともに、この始動時におけるエミッション性を効果的に改善することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る火花点火式直噴エンジンの制御装置の実施形態を示す説明図である。
【図2】エンジン本体の要部の具体的構成を示す断面図である。
【図3】燃料供給系の具体的構造を示すブロック図である。
【図4】高圧ポンプの具体的構成を示す説明図である。
【図5】高圧ポンプの設置状態を示す説明図である。
【図6】始動時制御の制御特性を示すタイムチャートである。
【図7】始動時制御の制御特性を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン本体
6 燃焼室内
18 燃料噴射弁
26 高圧ポンプ
53 ポンプ室
54 加圧手段
55 吸入弁
60 ソレノイド
70 気筒識別手段
71 噴射時期制御手段
73 高圧ポンプ制御手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、エンジンの始動時に気筒を識別する気筒識別手段と、この気筒識別が行われた後に燃料の噴射時期を制御する噴射時期制御手段とを備えた火花点火式直噴エンジンの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、環境保護の観点から自動車の排気ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NOx)等からなる排気ガス物質を削減することを目的として、高圧ポンプにより所定の高圧に加圧した燃料を燃料噴射弁に圧送した後、この燃料噴射弁から燃焼室内に直接噴射することにより、燃料の微粒化を促進して混合気を適正に燃焼させることを可能にし、これによってエミッション性を改善するとともに、エンジン出力を向上させることが行われている。
【0003】
例えば特開平2001−182597号公報に示されるように、エンジンにより駆動されるカムと、このカムにより駆動されてポンプ室内の燃料を加圧するプランジャと、ポンプ室の燃料吸入部を開閉する吸入弁と、この吸入弁を開放方向に付勢する付勢手段と、この付勢手段の付勢力に抗して上記吸入弁を閉止方向に駆動するソレノイドとを備えた高圧ポンプにより、燃料を高圧に加圧した状態で燃料噴射弁に圧送して燃焼室内に直接噴射するように構成された筒内噴射式エンジンが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記高圧ポンプは、エンジンによって駆動されるカムの回転に対応したプランジャの往復動に応じ、ポンプ室(加圧室)の容積を変化させて燃料吸入部からポンプ室内に吸入された燃料を加圧した状態で燃料吐出部から吐出させるとともに、この燃料の加圧時に上記吸入弁の閉止タイミングを調節することにより、上記燃料の吐出量を制御するように構成されている。したがって、エンジンの始動時に気筒識別手段による気筒識別が行われて上記プランジャの位相が把握された後でなければ、上記ソレノイドによる吸入弁の閉止タイミングを適正に調節することができず、エンジンの始動後に所定時間(例えば2秒程度)が経過するまでは、燃料の吐出圧を充分に上昇させることができないという問題がある。
【0005】
上記公報に記載されたエンジンの制御装置では、エンジンの始動時に、クランク軸の回転角度を検出するクランク角センサと、高圧ポンプを駆動するカム軸の回転角度を検出するカム角センサとの位相が確定して気筒識別が行われるまでの間に、少なくとも2回以上の駆動信号を上記高圧ポンプに出力することにより、上記気筒識別が行われる前から燃料の噴射を可能にして、エンジンの始動時間を短縮化するとともに、上記気筒識別が行われた後に、プランジャの下死点位置で上記ソレノイドを駆動して吸入弁を閉止させる全吐出制御状態に移行するように構成されている。
【0006】
しかし、エンジンの始動時にクランキングが行われている間は、エンジン回転数が200rpm程度の低い状態にあり、上記プランジャによってポンプ室内の燃料圧力を速やかに上昇させることが困難である。また、上記吸入弁を閉止方向に駆動するソレノイドを長時間に亘り通電状態とすると、ソレノイドが焼損する可能性があるので、上記吸入弁を閉止状態に保持し得る時間には限りがある。したがって、上記ソレノイドへの通電が停止された後、ポンプ室内の燃料圧力が充分に上昇する前に、上記吸入弁の設置部から燃料の供給通路に燃焼室内の燃料がリークして吸入弁が開放状態となり易く、これにより上記クランキング時に燃料圧力を上昇させることが不可能になるため、エミッション性をそれ程顕著に改善することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、エンジンの始動時に実行されるクランキング時に、燃料の噴射圧力を早期に上昇させてエミッション性を効果的に改善することができる火花点火式直噴エンジンの制御装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、この燃料噴射弁に燃料を圧送する高圧ポンプと、エンジンの始動時に気筒を識別する気筒識別手段と、この気筒識別が行われた後に燃料の噴射時期を制御する噴射時期制御手段とを備えた火花点火式エンジンの制御装置において、上記高圧ポンプに、ポンプ室内の燃料を加圧する加圧手段と、ポンプ室の燃料吸入部を開閉する吸入弁と、この吸入弁を閉止方向に駆動して燃料の吐出量を制御するソレノイドとを設け、エンジンの始動後に上記気筒識別が行われる前から、この気筒識別後で上記ポンプ室内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまでの間に、上記高圧ポンプの始動時制御を実行することにより上記ソレノイドを断続的に通電状態とするとともに、このソレノイドの非通電時に上記吸入弁が開放状態となるのを防止し得るように上記非通電時間を設定する高圧ポンプ制御手段を備えたものである。
【0009】
上記構成によれば、エンジンの始動後に上記気筒識別が行われる前から、この気筒識別後で上記ポンプ室内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまでの間に、高圧ポンプのソレノイドを断続的に通電状態とする始動時制御が実行されてソレノイドのオンオフ動作が繰り返されることにより、上記吸入弁が閉止状態に保持されるため、上記ポンプ室内の燃料圧力を効果的に上昇させることが可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明は、上記請求項1記載の火花点式直噴エンジンの制御装置において、気筒識別手段による気筒識別が行われた後、燃料の噴射圧力が基準圧力以上となった時点で、上記始動時制御を停止して通常時の制御状態に切り換えることによりエンジンの回転周期に対応したソレノイドの通電制御を実行するものである。
【0011】
上記構成によれば、気筒識別手段による気筒識別が行われた後、燃料の噴射圧力が基準圧力以上となった時点で、上記始動時制御が停止されて通常時の制御状態に移行することにより、上記始動時制御が必要以上に継続されることによる電力の浪費等が抑制されることになる。
【0012】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置において、ポンプ室内の燃料圧力が基準圧力に上昇する前に、燃料噴射を開始するものである。
【0013】
上記構成によれば、上記始動時制御が実行されることによりポンプ室内の燃料圧力を早期に上昇させることが可能となるとともに、この燃料圧力が上記基準圧力に上昇する前に燃料噴射が開始されることにより、エンジンの始動に要する時間が大幅に短縮化されることになる。
【0014】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3の何れかに記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置において、エンジンを始動させるためのクランキング時に、少なくとも圧縮行程で燃料を噴射するものである。
【0015】
上記構成によれば、燃料噴霧がシリンダ壁等に付着することを防止するとともに、点火プラグ周りに着火可能な濃度を有する混合気を集中させることができるため、その着火性が確保されることになる。
【0016】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜3の何れかに記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置において、エンジンを始動させるためのクランキング時に、吸気行程から点火時期までの間で燃料を複数回に分割して噴射するとともに、その後期噴射時期を圧縮行程に設定したものである。
【0017】
上記構成によれば、点火プラグの近傍に混合気を層状に偏在させる成層燃焼モードの制御を実行するように構成されたエンジン等において、上記クランキング時に、吸気行程から点火時期までの間で燃料が複数回に分割されて噴射されるとともに、その後期噴射時期が圧縮行程に設定されることにより、エンジン始動時の早い段階で、上記成層燃焼モードの制御が実行されることになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る制御装置を備えた火花点火式直噴エンジンの全体的な構成を示している。これらの図において、上記エンジン本体1は、複数の気筒2が配設されたシリンダブロック3と、このシリンダブロック3上に配設されたシリンダヘッド4とを有し、各気筒2内には、ピストン5が上下方向に往復動可能に嵌装され、このピストン5とシリンダヘッド4との間に燃焼室6が形成されている。上記ピストン5は、シリンダブロック3の下方に配設されたクランク軸7に、コネクティングロッド8を介して連結されている。上記クランク軸7の一端部側には、クランク角(クランク軸7の回転角度)を検出する電磁式のクランク角センサ9が配設されている。
【0019】
上記各気筒2の燃焼室6は、その天井部が中央部分からシリンダヘッド4の下端まで延びる二つの傾斜面で構成された所謂ペントルーフ型となっている。この燃焼室6の天井部を構成する二つの傾斜面には、吸気ポート10および排気ポート11がそれぞれ二つずつ開口し、各ポート10,11の開口端には、吸気弁12および排気弁13がそれぞれ設けられている。これらの吸気弁12および排気弁13は、シリンダヘッド4の上部に軸支された二本のカム軸等を有する動弁機構14により、それぞれ各気筒2毎に所定のタイミングで開閉作動されるようになっている。
【0020】
上記燃焼室6の中央部上方には、上記四つの吸気弁12および排気弁13により取り囲まれるように点火プラグ16が配設され、この点火プラグ16の先端部が上記天井部から燃焼室6内に突出している。上記点火プラグ16には点火回路17が接続され、この点火回路17から各気筒2毎に所定のタイミングで点火プラグ16に通電されるようになっている。
【0021】
また、燃焼室6の周縁部には、この燃焼室6内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁18が、二つの吸気ポート10に挟まれるように配置されている。上記燃料噴射弁18の基端部には、全気筒2に共通の燃料分配管19が接続され、燃料供給系20から供給される高圧の燃料が、上記燃料分配管19を介して各気筒2に分配されるように構成されている。
【0022】
上記燃料噴射弁18から燃焼室6内に噴射される燃料の噴射方向は、燃焼室6内のタンブル流Tに逆行するように設定されている。すなわち、図2に示す断面において、燃焼室6の左側に位置する燃料噴射弁18から斜め右下方に向けて燃料を噴射し、この燃料噴霧を、燃焼室6内で生成されたタンブル流Tに衝突させることにより、点火プラグ16の近傍に混合気を層状に偏在させた状態で成層燃焼させるように構成されている。
【0023】
さらに、各気筒2の吸気ポート10にそれぞれ連通するように吸気通路31がエンジン本体1の一側面部に接続されるとともに、各気筒2の排気ポート11にそれぞれ連通するように排気通路32がエンジン本体1の他側面部に接続されている。上記吸気通路31は、エンジン本体1の各気筒2の燃焼室6内に、図外のエアクリーナで濾過した吸気を供給するものであり、その上流側から順に、吸気量を検出するホットワイヤ式のエアフローセンサ33と、電動モータ35により駆動されて開閉する電気式スロットル弁34と、サージタンク36とが配設されている。また、上記サージタンク36よりも下流側の吸気通路31は、各気筒2毎に分岐する独立吸気通路とされ、各独立吸気通路の下流側部は、さらに二つに分岐して上記両吸気ポート10にそれぞれ連通している。
【0024】
上記各吸気ポート10の上流側には、燃焼室6内におけるタンブル流の強度を調節するタンブル調節弁37が配設され、このタンブル調節弁37が、例えばステッピングモータからなるアクチュエータ38により開閉駆動されるようになっている。上記タンブル調節弁37は、円形のバタフライ弁の一部、例えば弁軸よりも下側の部分を切り欠くことによって形成され、タンブル調節弁37が閉じられているときに、上記切欠き部分を介して吸気を下流側に流動させることにより、燃焼室6内に強いタンブル流Tを形成し、上記タンブル調節弁37が開かれるのに応じてタンブル流Tを徐々に弱めるように構成されている。
【0025】
なお、上記吸気ポート10やタンブル調節弁37の形状は、上記形状に限定されるものではなく、例えば吸気ポート10を、上流側で一つに合流する所謂コモンポートタイプに構成してもよい。この場合、上記タンブル調節弁37は、コモンポートの断面形状に対応する形状のものをベースとして、その一部分を切り欠いた形状とすればよい。
【0026】
一方、上記排気通路32は、燃焼室6の外部に既燃ガスを導出するものであり、その上流側には各気筒2の排気ポート11に連通する排気マニフォールド39を備えている。この排気マニフォールド39の集合部には、排気中の酸素濃度を検出するリニアO2センサ40が配設されている。このリニアO2センサ40は、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出するために用いられ、理論空燃比を含む所定の空燃比範囲で酸素濃度に対してリニアな出力が得られるものである。
【0027】
上記排気マニフォールド39の集合部には、排気管41の上流端が接続され、この排気管41の下流側には排気を浄化するためのNOx浄化触媒42および三元触媒43が設けられるとともに、両触媒42,43の間に、排気温度を検出する排気温センサ44が配設されている。
【0028】
また、上記排気管41の上流側には、排気通路32を流れる排気の一部を吸気通路31に還流させるEGR通路45の上流端が接続されている。このEGR通路45の下流端は、上記電気スロットル弁34とサージタンク36との間の吸気通路31に接続され、上記EGR通路45の途中には、開閉駆動されることにより排気の還流量を調節する電気式EGR弁46と、排気を冷却するEGRクーラ47とが配設され、これらよって排気還流手段が構成されている。
【0029】
上記燃料噴射部18に燃料を供給する燃料供給系20には、図3および図4に示すように、燃料分配管19と燃料タンク21とを連通させる燃料通路22の上流側から下流側に向かって、低圧ポンプ23、低圧レギュレータ24、燃料フィルタ25および高圧ポンプ26が順に配設されている。そして、上記低圧ポンプ23により燃料タンク21から吸い上げられた燃料が、低圧レギュレータ24により調圧された後、燃料フィルタ25により濾過された状態で高圧ポンプ26に圧送されるようになっている。
【0030】
上記高圧ポンプ26は、燃料フィルタ25を介して供給された燃料を高圧(例えば略3MPa〜略13MPa、好ましくは4MPa〜7MPa程度)に加圧して上記燃料分配管19に圧送するものであり、具体的には、燃料の吸入部51および吐出部52が設けられたポンプ室53と、このポンプ室53内の燃料を加圧する加圧手段54とを有している。
【0031】
上記ポンプ室53の燃料吸入部51には、この燃料吸入部51を開閉する吸入弁55と、この吸入弁55を閉止方向に付勢する第1付勢手段56と、プッシュロッド57を介して上記吸入弁55を開放方向に付勢する圧縮コイルばねからなる第2付勢手段58と、この第2付勢手段58の付勢力に抗して上記プッシュロッド57を、ソレノイドケース59内に引き込むことにより吸入弁55から離間させる方向に駆動するソレノイド60とが設けられている。
【0032】
第1付勢手段56の付勢力は、第2付勢手段58の付勢力よりも小さな値に設定され、通常の状態では上記第2付勢手段58の付勢力に応じて吸入弁55が開放状態に保持されている。そして、上記ソレノイド60が通電状態となって上記プッシュロッド57がソレノイドケース59内に引き込まれると、上記第1付勢手段56の付勢力およびポンプ室53内の燃料圧力に応じ、吸入弁55が閉止状態となるようになっている。
【0033】
上記ポンプ室53の燃料吐出部52には、この燃料吐出部52を開閉する吐出弁61と、この吐出弁61を閉止方向に付勢する圧縮コイルばねからなる吐出弁付勢手段62とが設けられ、通常の状態では上記吐出弁付勢手段62の付勢力に応じて吐出弁61が閉止状態に保持されている。そして、上記加圧手段54によりポンプ室53内の燃料が加圧されてその燃料圧力が一定値以上に上昇すると、上記吐出弁付勢手段62の付勢力に抗して吐出弁61が開放方向に駆動されることにより、燃料が燃料噴射弁18に圧送されるように構成されている。
【0034】
また、上記加圧手段54は、ポンプ室53内の燃料に加圧力を付与するプランジャ63と、このプランジャ63を昇降駆動するカム64と、プランジャ63の下端部を下方に付勢してカム65に圧接させるプランジャ付勢手段66とを有し、上記カム65が回転駆動されるのに対応してプランジャ63が昇降駆動されることにより、ポンプ室53内に燃料が供給されて加圧されるようになっている。すなわち、上記吸入弁55の開放状態でプランジャ63が下降することにより、燃料吸入部51からポンプ室53内に燃料が吸入された後、上記吸入弁55の閉止状態でプランジャ63が上昇することにより、ポンプ室53内の燃料が加圧されるように構成されている。
【0035】
上記カム64は、180°の角度で突設された一対の突部を有するとともに、上記吸気弁7の動弁機構14を構成するカム軸14aに一体に取り付けられることにより、このカム軸14aが一回転する間に、上記プランジャ63を2回昇降駆動するように構成されている。また、上記カム軸14aは、図5に示すように、エンジン本体1のクランク軸7により駆動されるチェーン伝動機構67を介して回転駆動され、これによって上記クランク軸7が1回転するのに応じ、カム軸14aが1/2回転するとともに、上記プランジャ63が1回昇降することになる。なお、上記カム軸14aに設けられたカム64の形状は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えばプランジャ63を駆動する突部の個数を3個以上に設定してもよい。また、上記チェーン伝動機構67に代え、タイミングベルトを使用したベルト伝動機構により上記カム軸14aを回転駆動するように構成してもよい。
【0036】
上記点火回路17、燃料噴射弁18、燃料供給系20、電気式スロットル弁34を駆動する電動モータ35、タンブル調節弁37のアクチュエータ38および上記電気式EGR弁46等は、エンジンコントロールユニット(以下、ECUという)50によって制御されるように構成されている。一方、上記ECU50には、クランク角センサ9、エアフローセンサ33、リニアO2センサ40および排気温センサ44等の検出信号が入力され、さらにアクセル開度(アクセルペダルの操作量)を検出するアクセル開度センサ48の検出信号と、エンジンの回転速度を検出する回転速度センサ49の検出信号と、エンジンの冷却水温度を検出する水温センサ56の検出信号と、カム軸14aの回転角度を検出するカム角センサ68の検出信号と、燃料の噴射圧力を検出する燃圧センサ69の検出信号とが入力されるようになっている。
【0037】
また、上記ECU50には、図4に示すように、エンジンの始動時にクランク角センサ9から入力されたクランク角信号およびカム角センサ68から入力されたカム角信号に基づいて気筒を識別する気筒識別手段71と、この気筒識別が行われた後に燃料の噴射時期を制御する噴射時期制御手段72と、上記高圧ポンプ26のソレノイド60に対する通電タイミングを制御する高圧ポンプ制御手段73とが設けられている。
【0038】
上記噴射時期制御手段72は、予め設定されたマップからエンジンの運転状態に対応した燃料の噴射時期を読み出し、例えばエンジンが低回転低負荷の運転領域にある場合には、圧縮行程で燃料噴射して成層燃焼を行わせ、高負荷高回転の運転領域にある場合には、吸気行程で燃料を噴射して均一燃焼を行わせるように構成されている。また、後述するエンジンの始動時には、燃料噴射弁18から燃焼室内に燃料が複数回に分割されて噴射されるとともに、その後期噴射時期、例えば二回に分けて分割噴射する場合の2回目の噴射時期が、点火前の圧縮行程に設定されるようになっている。
【0039】
上記高圧ポンプ制御手段73は、エンジンの始動後に上記気筒識別手段71による気筒識別が行われる前から、この気筒識別後で上記ポンプ室53内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまでの間に、ポンプ室53内の燃料圧力を積極的に上昇させる始動時制御を実行するように構成されている。すなわち、上記始動時制御の実行時には、上記ソレノイド60を断続的に通電状態としてソレノイド60のオンオフ動作を繰り返すとともに、このソレノイド60の非通電時に上記吸入弁55が開放状態となるのを防止し得るように、上記非通電時間を例えば10ms程度に設定することにより、プランジャ63が上昇行程または下降行程のいずれにあるかに拘わらず、上記吸入弁55が閉止状態に維持されるようになっている。このため、上記プランジャ63の上昇時にポンプ室53内の燃料圧力が確実に上昇することになる。
【0040】
なお、上記始動時制御におけるソレノイド60に対する通電時間は、このソレノイド60が焼損を防止し得るように、例えば2ms程度に設定されている。また、上記基準圧力は、燃焼室6内に噴射された燃料の微粒化を促進して混合気を適正に燃焼させ得る値、例えば3MPa程度に設定されている。
【0041】
上記始動時制御が実行されることによりポンプ室53内の燃料圧力が上昇して、予め設定された基準圧力(3MPa程度)以上になったことが、上記燃圧センサ69の検出信号等に応じて確認された時点で、上記高圧ポンプ制御手段73による始動時制御が停止され、エンジンの回転周期に対応した上記クランク角センサ9またはカム角センサ68の検出信号に応じてソレノイド60の通電タイミングが制御される通常時の制御状態に切り換えられる。
【0042】
上記通常時の制御状態では、高圧ポンプ26のプランジャ63が下死点位置に下降した時点を基準として設定された所定時期に、上記ソレノイド60を一時的に通電状態とすることにより、上記吸入弁55が閉止状態とされてポンプ室53内の燃料圧力が上昇するとともに、上記ソレノイド60に対する通電タイミングを変化させることにより、ポンプ室53内に吸入される燃料量が調節されてその吐出量等が制御されるようになっている。
【0043】
上記構成を有するエンジンの制御装置によりエンジンの始動時に実行される燃料の噴射制御を、図6に示すタイムチャートに基づいて説明する。図6(a)に示すように、エンジンのスタータを作動させるスタータ信号が出力された時点t1において、エンジンのクランキングが行われることにより、エンジン回転数が200rpm程度まで次第に上昇する。
【0044】
また、上記クランキングが行われることにより、図6(b),(c)に示すように、クランク角センサ9のクランク角信号およびカム角センサ68のカム角信号が出力されるとともに、高圧ポンプ26のプランジャ63が昇降駆動されることにより、そのストロークが図6(d)に示すように変化し、エンジンが1回転する前の時点t2で、上記クランク角センサ信号に応じて気筒識別が行われる。
【0045】
そして、図7(a)に示すように、上記スタータ信号の出力時点t1から高圧ポンプ26のソレノイド60を断続的に通電状態とするソレノイド制御信号を出力することにより、上記吸入弁55を閉止状態とする始動時制御を開始する。この始動時制御が実行されることにより、図7(b)に示すように、ポンプ室53内の燃料圧力(燃圧)が次第に上昇し、上記気筒識別時点t2の後に、燃料圧力が噴射許容圧力に上昇した時点t3で、図7(c)に示すように、上記クランク角信号(エンジンの回転周期)に対応した所定時期に燃料噴射信号が出力されて燃料の噴射が開始される。
【0046】
また、上記気筒識別時点t2の後に、ポンプ室53内の燃料圧力が予め3MPa程度に設定された基準圧力以上となったことが確認された時点t4で、上記始動時の制御状態から通常時の制御状態に移行し、上記カム角信号(エンジンの回転周期)に基づき、プランジャ63の下死点位置を基準として設定された所定時期にソレノイドを一時的に通電状態とすることにより、ポンプ室53の燃料を加圧する際に吸入弁55を閉止状態として燃料圧力を上昇させる制御を実行する。
【0047】
上記のように燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁18と、この燃料噴射弁18に燃料を圧送する高圧ポンプ26と、エンジンの始動時に気筒を識別する気筒識別手段71と、この気筒識別が行われた後に燃料の噴射時期を制御する噴射時期制御手段72とを備えた火花点火式エンジンの制御装置において、上記高圧ポンプ26に、ポンプ53室内の燃料を加圧する加圧手段54と、ポンプ室53の燃料吸入部51を開閉する吸入弁55と、この吸入弁55を閉止方向に駆動して燃料の吐出量および吐出圧を制御するソレノイド60とを設け、エンジンの始動後に上記気筒識別が行われる前から、この気筒識別後で上記ポンプ室53内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまでの間に、上記高圧ポンプ制御手段73において始動時制御を実行することにより、エンジンの始動時に実行されるクランキング時に、燃料の噴射圧力を早期に上昇させてエンジンの始動性を効果的に向上させることができるとともに、この始動時におけるエミッション性を効果的に改善することができるという利点がある。
【0048】
すなわち、エンジンの始動後に上記気筒識別が行われる前から、上記ソレノイド60を断続的に通電状態とすることにより、ソレノイド60の焼損等を防止しつつ、このソレノイド60の非通電時に上記吸入弁55が開放状態となるのを防止し得るように上記非通電時間を設定する始動時制御を実行するように構成したため、上記加圧手段54を構成するプランジャ63が上昇行程または下降行程のいずれにあるかが解らない上記気筒識別前に、上記吸入弁55を閉止状態に維持することにより、上記プランジャ63の上昇時にポンプ室53内の燃料圧力を効果的に上昇させることができる。
【0049】
そして、上記気筒識別後でポンプ室53内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまで、上記始動時制御を継続するように構成したため、気筒識別後にプランジャの下死点位置で吸入弁を閉止状態とする制御を実行するように構成された従来技術(特開平2001−182597)のように、エンジンのクランキング時に、エンジン回転数が低いことに起因して上記吸入弁の設置部から燃料がリークする等の問題を生じることなく、ポンプ室53内の燃料圧力を迅速かつ効果的に上昇させることができる。したがって、エンジンの始動直後から高圧の燃料を燃焼室6内に直接噴射することにより、燃料の微粒化を促進して混合気を適正に燃焼させることが可能となり、エミッション性を効果的に改善できる等の利点がある。
【0050】
また、上記実施形態では、気筒識別手段71による気筒識別が行われた後、燃料の噴射圧力が基準圧力以上となった時点で、上記始動時制御を停止して通常時の制御状態に切り換えることによりエンジンの回転周期に対応したソレノイド60の通電制御を実行するように構成したため、このソレノイド60を断続的に通電状態とする上記始動時制御が必要以上に継続されるのを防止して、電力の浪費等を抑制しつつ、上記ソレノイド60に対する通電タイミングを変化させることにより、ポンプ室53内に吸入される燃料量を適正に調節して、その吐出量等を制御できるという利点がある。
【0051】
さらに、上記実施形態に示すように、ポンプ室53内の燃料圧力が基準圧力に上昇する前に、この燃料圧力が所定値となった時点で、上記燃料噴射制御手段72による燃料噴射を開始するように構成した場合には、エンジンの始動時間を大幅に短縮することができる。すなわち、上記始動時制御を実行することにより燃料圧力を早期に上昇させることができるとともに、この燃料圧力が上記基準圧力に上昇する前に燃料噴射を開始して燃焼させることにより、エンジンの始動に要する時間を大幅に短縮化することができる。
【0052】
また、上記のようにエンジンを始動させるためのクランキング時に、少なくとも圧縮行程で燃料を噴射するように構成した場合には、燃料噴霧がシリンダ壁等に付着することに起因して燃焼性が悪化する等の弊害が生じるのを効果的に防止しつつ、点火プラグ周りに着火可能な濃度を有する混合気を集中させることにより、混合気の着火性を確保してエンジンを効果的に始動させることができる。
【0053】
特に上記実施形態では、燃料噴射弁18からの燃料噴霧を、燃焼室6内で生成されたタンブル流Tに衝突させることにより、点火プラグ16の近傍に混合気を層状に偏在させる成層燃焼モードの制御を実行するように構成されたエンジン等において、上記クランキング時に、吸気行程から点火時期までの間で燃料を複数回に分割して噴射するとともに、その後期噴射時期を圧縮行程に設定するように構成したため、エンジン始動時の早い段階で上記成層燃焼モードの制御を実行して、燃費を改善しつつ、エンジン出力を確保できるという利点がある。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、この燃料噴射弁に燃料を圧送する高圧ポンプと、エンジンの始動時に気筒を識別する気筒識別手段と、この気筒識別が行われた後に燃料の噴射時期を制御する噴射時期制御手段とを備えた火花点火式エンジンの制御装置において、上記高圧ポンプに、ポンプ室内の燃料を加圧する加圧手段と、ポンプ室の燃料吸入部を開閉する吸入弁と、この吸入弁を閉止方向に駆動して燃料の吐出量を制御するソレノイドとを設け、エンジンの始動後に上記気筒識別が行われる前から、この気筒識別後で上記ポンプ室内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまでの間に、上記高圧ポンプの始動時制御を実行することにより上記ソレノイドを断続的に通電状態とするとともに、このソレノイドの非通電時に上記吸入弁が開放状態となるのを防止し得るように上記非通電時間を設定する高圧ポンプ制御手段を設けたため、エンジンの始動時に実行されるクランキング時に、燃料の噴射圧力を早期に上昇させてエンジンの始動性を効果的に向上させることができるとともに、この始動時におけるエミッション性を効果的に改善することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る火花点火式直噴エンジンの制御装置の実施形態を示す説明図である。
【図2】エンジン本体の要部の具体的構成を示す断面図である。
【図3】燃料供給系の具体的構造を示すブロック図である。
【図4】高圧ポンプの具体的構成を示す説明図である。
【図5】高圧ポンプの設置状態を示す説明図である。
【図6】始動時制御の制御特性を示すタイムチャートである。
【図7】始動時制御の制御特性を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン本体
6 燃焼室内
18 燃料噴射弁
26 高圧ポンプ
53 ポンプ室
54 加圧手段
55 吸入弁
60 ソレノイド
70 気筒識別手段
71 噴射時期制御手段
73 高圧ポンプ制御手段
Claims (5)
- 燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、この燃料噴射弁に燃料を圧送する高圧ポンプと、エンジンの始動時に気筒を識別する気筒識別手段と、この気筒識別が行われた後に燃料の噴射時期を制御する噴射時期制御手段とを備えた火花点火式エンジンの制御装置において、上記高圧ポンプに、ポンプ室内の燃料を加圧する加圧手段と、ポンプ室の燃料吸入部を開閉する吸入弁と、この吸入弁を閉止方向に駆動して燃料の吐出量を制御するソレノイドとを設け、エンジンの始動後に上記気筒識別が行われる前から、この気筒識別後で上記ポンプ室内の燃料圧力が予め設定された基準圧力となるまでの間に、上記高圧ポンプの始動時制御を実行することにより上記ソレノイドを断続的に通電状態とするとともに、このソレノイドの非通電時に上記吸入弁が開放状態となるのを防止し得るように上記非通電時間を設定する高圧ポンプ制御手段を備えたことを特徴とする火花点火式直噴エンジンの制御装置。
- 気筒識別手段による気筒識別が行われた後、燃料の噴射圧力が基準圧力以上となった時点で、上記始動時制御を停止して通常時の制御状態に切り換えることによりエンジンの回転周期に対応したソレノイドの通電制御を実行することを特徴とする請求項1記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
- ポンプ室内の燃料圧力が基準圧力に上昇する前に、燃料噴射を開始することを特徴とする請求項1または2記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
- エンジンを始動させるためのクランキング時に、少なくとも圧縮行程で燃料を噴射することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
- エンジンを始動させるためのクランキング時に、吸気行程から点火時期までの間で燃料を複数回に分割して噴射するとともに、その後期噴射時期を圧縮行程に設定したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
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JP2002178266A Abandoned JP2004019608A (ja) | 2002-06-19 | 2002-06-19 | 火花点火式直噴エンジンの制御装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010059856A (ja) * | 2008-09-03 | 2010-03-18 | Toyota Motor Corp | 高圧燃料ポンプ |
JP2010101229A (ja) * | 2008-10-22 | 2010-05-06 | Denso Corp | 燃料供給システム |
US8011350B2 (en) | 2007-03-09 | 2011-09-06 | Mitsubishi Electric Corporation | High pressure fuel pump control apparatus for an internal combustion engine |
-
2002
- 2002-06-19 JP JP2002178266A patent/JP2004019608A/ja not_active Abandoned
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