JP2004018952A - 高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.05%以上0.2 %以下、Si:0.8 %以上2.5 %以下、Mn:0.5 %以上2.5 %以下、P:0.015 %以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成、および、面積%で、円相当径0.5 μm以下の炭化物:0.05%以上0.3 %以下、残留オーステナイト:3%以上15%以下、フェライト:60%以上を含み、マルテンサイト:5%以下である組織を有する熱延鋼板。圧延後の冷却− 巻取り条件を特定範囲に制御することにより前記組織を得る。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板およびその製造方法に関する。本発明に係る熱延鋼板は、例えば自動車用のバンパーやドア、キャビンの補強材等の、衝突時に許容される変形量が小さい部材で、高速変形特性、具体的には真ひずみ量0.1 までの吸収エネルギーが高く、加えて成形性を要する部品への適用を意図したものである。
【0002】
本発明において、炭化物は、その大部分(95面積%以上の部分)がセメンタイトもしくはセメンタイト中のFeの一部がCrやMn等で置換されたものからなる炭化物である。
【0003】
【従来の技術】
上述のような用途に用いられる熱延鋼板においては、従来は、通常の引張試験における強度が高いことのみが要求されている。しかし、自動車の衝突時の特性を評価するためには、衝突時のひずみ速度での特性(高速変形特性)を把握することが重要である。
【0004】
一方で、昨今の地球環境問題からの排出ガス規制に関連し、車体重量の軽減は極めて重要な問題である。それとともに乗員の安全性確保も同様に重要である。この両者を両立させるために、使用する鋼板の強度を高めることは勿論のこと、部品形状を工夫し、剛性向上および耐衝突特性向上を試みている。そのため、素材となる鋼板には従来鋼板を凌ぐ成形性および高速変形特性を兼備したものが要求される。
【0005】
この要求に応じるべく、例えば特開平10−95588号公報では、真ひずみ0.3 %までの吸収エネルギーの高い鋼板を製造するための技術が提案されている。しかし、前述した部品、すなわち自動車用のバンパーやドア、キャビンの補強材等では、乗員の安全性確保の面から、衝突時に大きく変形して衝突のエネルギーを吸収することは好ましくなく、小さな変形量で大きなエネルギー吸収能を発揮できる高速変形特性が重要であることに照らすと、前記特開平10−95588号公報所載の技術では、小さな変形量での高速変形特性についての特性向上には十分でない場合があった。
【0006】
一方、成形性向上に関して特開平7−62485 号公報所載の技術が知られているが、そこでは高速変形特性についての検討がされていない。また、特開平11−43740 号公報には高速変形特性および成形性の向上に関する技術が開示されているが、そこでの高速変形特性の向上とは高速変形時のn値を向上させることであり、真ひずみ0.1 までといった小さな変形時の吸収エネルギーを向上させることに対しては何の指針も与えない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑みて、高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板、すなわち真ひずみ0.1 の変形量での高速変形時の吸収エネルギーが大きくかつ伸び特性に優れる高張力熱延鋼板、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、鋼板組織中の微細炭化物、残留オーステナイト、マルテンサイト、およびフェライトの分率を適正範囲に制御することにより、真ひずみ0.1 の変形量での高速変形時の吸収エネルギーが上昇し、かつ伸び特性も向上するという知見を得るに至った。本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
【0009】
(1)質量%で、C:0.05%以上0.2 %以下、Si:0.8 %以上2.5 %以下、Mn:0.5 %以上2.5 %以下、P:0.015 %以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成、および、面積%で、円相当径0.5 μm以下の炭化物:0.05%以上0.3 %以下、残留オーステナイト:3%以上15%以下、フェライト:60%以上を含み、マルテンサイト:5%以下である組織を有することを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板。
【0010】
(2)前記(1)において鋼板がさらに質量%でCr:0.5 %以下、Mo:0.3 %以下の1種または2種を含む組成になることを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板。
(3)前記(1)または(2)において鋼板がさらに質量%でTi:0.05%以下を含む組成になることを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板。
【0011】
(4)質量%で、C:0.05%以上0.2 %以下、Si:0.8 %以上2.5 %以下、Mn:0.5 %以上2.5 %以下、P:0.015 %以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼スラブを、1000℃以上1300℃以下に加熱後圧延し、該圧延をAr3点以上の温度で仕上げた後、650 ℃以上800 ℃未満の温度まで平均冷却速度30℃/s以上で冷却し、次いで640 ℃以上780 ℃以下の温度まで3〜10秒間で空冷し、次いで下記(1) 式の値Ψ以上の平均冷却速度で10×Ψ(℃)以上10×Ψ+50(℃)以下の温度まで冷却し、該温度で巻き取ることを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板の製造方法。
【0012】
記
Ψ(℃/s)=30000 /{SRT ×(〔%C〕+〔%Mn〕/6+〔%Si〕/24+〔%Mo〕/4)} ‥‥(1)
SRT :スラブ加熱温度(℃)
〔%C〕、〔%Mn〕、〔%Si〕、〔%Mo〕:各元素の含有量(質量%)
(5)前記(4)において、鋼スラブがさらに質量%で、Cr:0.5 %以下、Mo:0.3 %以下の1種または2種を含む組成になることを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板の製造方法。
【0013】
(6)前記(4)または(5)において、鋼スラブがさらに質量%で、Ti:0.05%以下を含む組成になることを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に係る高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板(本発明鋼板)の組成の限定理由について述べる。
C:0.05%以上0.2 %以下
Cは、所定の強度を確保しかつ残留オーステナイトを生成させるために0.05%以上の含有を必要とするが、0.2 %を超えて含有すると溶接性が著しく劣化し実使用に耐えなくなるから0.2 %以下とする。好ましくは0.08%以上0.16%以下である。
【0015】
Si:0.8 %以上2.5 %以下
Siは、円相当径0.5 μm以下の微細な炭化物の生成を促進するために重要な元素であり、残留オーステナイトの生成を促進するためにも必要である。とくに鋼組織の円相当径0.5 μm以下の微細な炭化物分率を0.05%以上0.3 %以下に制御し、かつ残留オーステナイト分率を3%以上15%以下に制御するためには0.8 %以上のSi含有を必要とする。しかし、多量に添加すると冷間圧延性の低下をもたらすので、Siの上限含有量を2.5 %とする。好ましくは1.2 %以上2.0 %以下である。
【0016】
Mn:0.5 %以上2.5 %以下
Mnは、強度上昇のために0.5 %以上の含有を必要とするが、過剰な添加は鋼板の溶接性を著しく低下させるので、上限含有量を2.5 %とする。好ましくは0.8 %以上1.8 %以下である。
P:0.015 %以下
Pは、旧オーステナイト粒界に偏析して低温靭性を劣化させ、また強い鋼中偏析傾向により鋼板の異方性を増大させ加工性を低下させるので、極力低減することが望ましいが、0.015 %までは許容される。
【0017】
S:0.01%以下
Sは、旧オーステナイト粒界に偏析し、あるいはMnS を多量に生成した場合、低温靭性を劣化させ、寒冷地での鋼板使用を困難にするので、極力低減することが望ましいが、0.01%までは許容される。
Al:0.05%以下
Alは、鋼の脱酸剤として添加され、鋼の清浄度の向上に寄与し、また鋼板組織の微細化のためにも有用な元素である。この効果を得るためには0.001 %以上含有させることが好ましい。しかし、0.05%を超えて含有すると介在物が多量に発生し、冷延鋼板の疵の原因となるので、上限を0.05%とした。
【0018】
Cr:0.5 %以下
Crは、鋼板中の円相当径0.5 μm以下の微細炭化物および残留オーステナイトの分率の制御因子として適宜使用しうる。この制御効果を得るためには0.1 %以上含有させることが好ましいが、多量に添加すると部品に成形後の鋼板の電着塗装性を低下させるので、上限含有量を0.5 %とした。好ましくは0.3 %以下である。
【0019】
Mo:0.3 %以下
Moは、Crと同様に鋼板中の微細炭化物および残留オーステナイトの分率の制御因子として適宜使用しうる。この制御効果を得るためには0.05%以上含有させることが好ましいが、多量に添加すると冷間圧延を困難ならしめるので、上限含有量を0.3 %とした。好ましくは0.2 %以下である。
【0020】
Ti:0.05%以下
Tiは、鋼板中の円相当径0.5 μm以下の微細炭化物の分率の制御因子として適宜使用しうる。この制御効果を得るためには0.001 %以上含有させることが好ましいが、多量に添加してもその効果が飽和するので、上限含有量を0.05%とした。好ましくは0.005 %以上0.03%以下である。
【0021】
上記した成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
次に、本発明鋼板の組織の限定理由について述べる。
円相当径0.5 μm以下の炭化物:0.05%以上0.3 %以下
炭化物の円相当径が小さいほど真ひずみ0.1 までの高速変形時の吸収エネルギーが増加するが、その効果は円相当径0.5 μm以下から現れるため、組織は円相当径0.5 μm以下の炭化物を含むものとした。さらに組織全部に対する円相当径0.5 μm以下の炭化物の分率(面積%で表される)について、それが大きいほど真ひずみ0.1 までの高速変形時の吸収エネルギーが増加するが、その効果は0.05%以上から現れるため、下限を0.05%とした。しかし、0.3 %を超えると残留オーステナイト中に濃化する炭素量が減少しすぎて、伸び特性が劣化するので、上限を0.3 %とした。好ましくは0.05%以上0.2 %以下である。
【0022】
残留オーステナイト:3%以上15%以下
残留オーステナイトは、伸び特性を良好として引張強さ(TS)− 伸び(El)バランスを良好とする、すなわちTS×Elを大きくするために必要である。本発明において、伸び特性に優れるとは、TS×El≧24000 MPa・%の特性を有することを意味する。TS×Elを24000 MPa・%以上とするためには残留オーステナイトの分率を面積率で3%以上15%以下とする必要がある。残留オーステナイトが3%未満では伸びが低下し、TS×El≧24000 MPa・%を達成することが困難となる。また、残留オーステナイトが15%を超えると、残留オーステナイト中への炭素の濃化が十分でないためと考えられるが、やはり伸びが低下し、TS×El≧24000 MPa・%を達成することが困難となる。なお、好ましくは5%以上10%以下である。
【0023】
フェライト:60%以上
本発明鋼板において、フェライトは、伸び特性を良好としてTS−El バランスを良好とし、TS×Elを24000 MPa・%以上とするために必要であり、フェライトの分率を面積率で60%以上とする必要がある。フェライトの分率が60%未満では、伸びが低下し、TS×El≧24000 MPa・%を達成することが困難となる。なお、このフェライトとしては、ポリゴナルフェライト(粒状フェライト)の他、ベイニティックフェライト(ラス状フェライト)が存在する。このベイニティックフェライトは、後述するように、本発明の特徴である円相当径0.5 μm以下の微細炭化物の生成と同期して生成し、該炭化物の分率0.05〜0.3 %での生成に対応して、10〜40%程度の分率で生成する。
【0024】
マルテンサイト:5%以下
マルテンサイトが存在すると伸びが低下するので、本発明では極力形成させないようにすることが好ましいが、本発明の目的の特性を得るために、面積率で5%までは許容される。
なお、本発明では他に、円相当径0.5 μmを超える炭化物あるいはさらに前記以外の低温変態相が存在し得るが、円相当径0.5 μm以下の炭化物、残留オーステナイトあるいはさらにマルテンサイトの他の残部の組織は、主に前記フェライトとすることが好ましく、円相当径0.5 μm以下の炭化物、残留オーステナイトあるいはさらにマルテンサイト以外の残部のうち95%以上をフェライトとすることが好ましい。
【0025】
次に、本発明鋼板の製造方法の限定理由について述べる。
本発明の製造方法に用いられる鋼スラブの組成は、上述した本発明鋼板の組成の範囲内とすればよい。
スラブ加熱温度:1000℃以上1300℃以下
スラブ加熱温度は、後述の圧延仕上げ温度をAr3点以上とするために最低でも1000℃とする必要があり、オーステナイト粒径の粗大化を抑制して本発明の目的の特性を確保するために1300℃以下とする必要がある。
【0026】
圧延仕上げ温度(仕上圧延終了温度):Ar3点以上
圧延をAr3点未満の温度で仕上げると、高速変形時の吸収エネルギーが低下するので、圧延仕上げ温度はAr3点以上とした。
圧延仕上げ後、650 ℃以上800 ℃未満の温度まで平均冷却速度30℃/s以上で冷却(:第1冷却)
仕上圧延終了後、直ちに650 ℃以上800 ℃未満の温度まで急冷することにより、パーライト変態を抑制し、後述の第2〜第3冷却において目的とする組織を得やすくする。該急冷の平均冷却速度が30℃/s未満ではパーライト変態が起こり、高速変形時の吸収エネルギーが低下するので、平均冷却速度は30℃/s以上とした。
【0027】
次いで640 ℃以上780 ℃以下の温度まで3〜10秒間で空冷(:第2冷却)
前記急冷(強制冷却)の停止に引き続き640 ℃以上780 ℃以下の温度まで空冷(放冷)を行うことにより、フェライト変態を促進し、未変態のオーステナイトへ炭素を濃化させる。2秒以下の空冷ではフェライトが十分に析出せず目的の組織が得られず、一方、11秒以上空冷しても組織の変化は小さく製造効率が悪いので、空冷時間は3〜10秒間とした。なお、ここで析出するフェライトはポリゴナルフェライトである。
【0028】
次いで前記(1) 式の値Ψ以上の平均冷却速度で10×Ψ(℃)以上10×Ψ+50(℃)以下の温度まで冷却(:第3冷却)、該温度での巻取り
この条件が、炭化物制御に最も重要である。前記(1)〜(3)のいずれかに記載の組成条件とこの第3冷却条件(および巻き取り条件)との両方が満たされた場合にのみ、鋼板中に円相当径0.5 μm以下の炭化物が0.05%以上0.3 %以下の分率で存在するようになり、高速変形時の吸収エネルギーと伸びとを共に増大させることができる。
【0029】
すなわち、目的とする微細炭化物は、Ψ(℃/s)以上の平均冷却速度で10×Ψ(℃)以上10×Ψ+50(℃)以下の温度まで冷却し、該温度で巻き取った後に析出する。この巻き取り中にオーステナイトからフェライトへの変態が起こってベイニティックフェライトが生成すると共に、この生成したベイニティックフェライトの粒界を主な析出サイトとして炭化物が析出する。また、オーステナイトからフェライトへの変態に伴い、オーステナイトへの炭素の濃化も進行してオーステナイトを安定化し、分率3〜15%の残留オーステナイトを確保できる。
【0030】
Ψ(℃/s)よりも遅い平均冷却速度で冷却すると、冷却中に炭化物が析出し始めるため、最終的に得られる炭化物が粗大化し、目的とする炭化物組織を得ることができない。また、巻取り温度を10×Ψ(℃)未満とすると、炭化物を析出させる温度が低くなりすぎるため、充分な炭化物量を得ることができず、また、マルテンサイトが多量に生成するようになり、残留オーステナイトの分率も過剰となる。一方、巻取り温度を10×Ψ+50(℃)超えとすると、炭化物が多量に析出すると共に粗大に成長するため、目的とする炭化物組織を得ることができず、オーステナイトへの炭素の濃化が不充分となり、充分な残留オーステナイト量を確保できなくなる。
【0031】
【実施例】
表1に示す組成になる鋼を転炉で溶製し、連続鋳造によりスラブとなし、該スラブを、表2に示す条件で処理(熱間圧延→第1〜第3冷却→巻取り)して、板厚2.0mm の熱延鋼板となした。得られた鋼板について、ミクロ組織、引張特性、真ひずみ0.1 までの高速変形時の吸収エネルギーを、それぞれ次の要領で調査した。
【0032】
・円相当径:0.5 μm以下の炭化物の分率:鋼板被検面(:L断面(圧延方向に平行な断面)の板厚方向の両端の10%厚み部を除いた部分)について、体積%で過塩素酸7.8 %、エタノール70%、2−ブトキシエタノール10%を含み残部が蒸留水からなる研磨液で電解研磨を施した後、原子間力顕微鏡(AFM)で10000 倍に拡大した組織を観察して炭化物を同定し、個々の炭化物の円相当径を決定するとともに面積率を測定し、該円相当径が0.5 μm以下の炭化物の総面積率を求め、これを表3に示した。
【0033】
なお、ここで円相当径は、組織の炭化物部分を各々画像処理により求めた面積から計算されたのと同じ面積の円の直径である。
・残留オーステナイトの分率:鋼板被検面について、X線回折により残留オーステナイトを同定し、その面積率を測定し、該面積率を分率とした。
・マルテンサイト、フェライト(ポリゴナルフェライト、ベイニティックフェライト)の分率:鋼板被検面について、ナイタール腐食現出組織の走査型電子顕微鏡(SEM)による2000倍拡大像を目視でそれぞれの組織に分別し、それぞれの領域を色分けした後に画像解析により定量化して面積率を測定し、これをこれら組織の分率とした。表3にはベイニティックフェライトおよびフェライト全量の面積率としてベイニティックフェライトとポリゴナルフェライトの合計量を示している。
【0034】
・引張特性:圧延方向に直交する方向を試験方向として採取したJIS5号試験片を用い、JIS Z 2241に準拠した方法で引張強さ(TS)、伸び(El)を測定した。
・真ひずみ0.1 までの高速変形時の吸収エネルギー:圧延方向を試験方向として試験片を採取し、ひずみ速度2000/sで文献(鉄と鋼,83(1997)748 )に示されるようなホプキンソン・プレッシャー・バーという方法で引張試験を行い、得られた応力− ひずみ曲線を真ひずみ0.0 〜0.1 の範囲で積分することにより吸収エネルギーを求めた。
【0035】
これらの調査結果を表3に示す。また、表3に示した実施例と比較例について、TSと真ひずみ0.1 までの吸収エネルギーの関係をグラフにして図1に示す。表3および図1より明らかなように、実施例では、ひずみ速度2000/sでの真ひずみ0.1 までの吸収エネルギーが同じTSレベルの比較例よりも格段に高く、かつTS×Elが24000 MPa・%以上を呈する。また、TSレベルの異なる鋼板同士の高速変形特性を比較するため、TS1MPa当りの真ひずみ0.1 までの吸収エネルギーを計算し、表3に結果を示す。該結果より、実施例ではTS1MPa当り0.110 MJ・m−3以上の吸収エネルギーを確保できることがわかる。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、炭化物組織を制御し、さらに残留オーステナイト、マルテンサイト、フェライトの分率を調整することにより、ひずみ速度2000/sでの真ひずみ0.1 までの吸収エネルギーが高く、かつTS×Elが24000 MPa・%以上になる高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板が得られるから、自動車用部品の板厚低減および自動車の衝突安全性向上を助成し、自動車車体の高性能化に大きく寄与するという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例と比較例についてTSと真ひずみ0.1 までの吸収エネルギーの関係を示すグラフである。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.05%以上0.2 %以下、Si:0.8 %以上2.5 %以下、Mn:0.5 %以上2.5 %以下、P:0.015 %以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成、および、面積%で、円相当径0.5 μm以下の炭化物:0.05%以上0.3 %以下、残留オーステナイト:3%以上15%以下、フェライト:60%以上を含み、マルテンサイト:5%以下である組織を有することを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板。
- 請求項1において、鋼板がさらに質量%でCr:0.5 %以下、Mo:0.3 %以下の1種または2種を含む組成になることを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板。
- 請求項1または2において、鋼板がさらに質量%でTi:0.05%以下を含む組成になることを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板。
- 質量%で、C:0.05%以上0.2 %以下、Si:0.8 %以上2.5 %以下、Mn:0.5 %以上2.5 %以下、P:0.015 %以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼スラブを、1000℃以上1300℃以下に加熱後圧延し、該圧延をAr3点以上の温度で仕上げた後、650 ℃以上800 ℃未満の温度まで平均冷却速度30℃/s以上で冷却し、次いで640 ℃以上780 ℃以下の温度まで3〜10秒間で空冷し、次いで下記(1) 式の値Ψ以上の平均冷却速度で10×Ψ(℃)以上10×Ψ+50(℃)以下の温度まで冷却し、該温度で巻き取ることを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板の製造方法。
記
Ψ(℃/s)=30000 /{SRT ×(〔%C〕+〔%Mn〕/6+〔%Si〕/24+〔%Mo〕/4)} ‥‥(1)
SRT :スラブ加熱温度(℃)
〔%C〕、〔%Mn〕、〔%Si〕、〔%Mo〕:各元素の含有量(質量%) - 請求項4において、鋼スラブがさらに質量%でCr:0.5 %以下、Mo:0.3 %以下の1種または2種を含む組成になることを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板の製造方法。
- 請求項4または5において、鋼スラブがさらに質量%でTi:0.05%以下を含む組成になることを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れる高張力熱延鋼板の製造方法。
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