JP2004017500A - 水硬性組成物積層体、その製造方法および未硬化の水硬性組成物成形体の表面保護方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水硬性組成物成形体の表面に、耐酸性、耐アルカリ性などに優れるノルボルネン系樹脂層が積層されてなる水硬性積層体を効率よく製造する方法、及び水硬性組成物成形体の表面保護方法を提供する。
【解決手段】水硬性組成物成形体と、該成形体が未硬化であるうちに、その表面にノルボルネン系モノマーを金属カルベン錯体の存在下に塊状重合させて形成させたノルボルネン系樹脂層とを有する積層体、ノルボルネン系モノマーを含むモノマー液および金属カルベン錯体を含む触媒液を混合して得られる反応液を、未硬化の水硬性組成物成形体の表面に塗工し、ノルボルネン系樹脂層を形成する工程を有する積層体の製造方法、及び、前記反応液を未硬化の水硬性組成物成形体の表面に塗工することにより、該成形体の表面にノルボルネン系樹脂層を形成することを特徴とする水硬性組成物成形体の表面保護方法。
【選択図】 なし。
【解決手段】水硬性組成物成形体と、該成形体が未硬化であるうちに、その表面にノルボルネン系モノマーを金属カルベン錯体の存在下に塊状重合させて形成させたノルボルネン系樹脂層とを有する積層体、ノルボルネン系モノマーを含むモノマー液および金属カルベン錯体を含む触媒液を混合して得られる反応液を、未硬化の水硬性組成物成形体の表面に塗工し、ノルボルネン系樹脂層を形成する工程を有する積層体の製造方法、及び、前記反応液を未硬化の水硬性組成物成形体の表面に塗工することにより、該成形体の表面にノルボルネン系樹脂層を形成することを特徴とする水硬性組成物成形体の表面保護方法。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート製品やモルタル製品などの水硬性組成物成形体の表面にノルボルネン系樹脂層を積層して、その表面を改質する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート製品やモルタル製品などの水硬性組成物成形体は、建築材料、産業用の構造材などとして広く用いられている。また、水硬性組成物成形体の中性化、水、海水、酸類、塩類などによる化学的浸食、高速流速、砂礫流などによる損食などから表面を保護するために、部材表面を樹脂などで被覆することが行なわれている。
【0003】
従来、このような水硬性組成物成形体の表面を被覆・保護する方法としては、完全に硬化した状態の水硬性組成物成形体を得た後、その表面に樹脂組成物を塗工して、樹脂層を形成する方法が一般的であった。例えば、特開平6−8273号公報には、コンクリート打設硬化後に、コンクリート表面にノルボルネン系モノマー液とタングステン系、モリブデン系又はタンタル系のメタセシス重合主触媒及び共触媒を必須成分として含む樹脂組成物を塗工して、ノルボルネン系樹脂層を形成する方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、コンクリート製品などの水硬性組成物成形体の表面に、ノルボルネン系樹脂層を形成して積層体(以下、「水硬性組成物積層体」という。)を製造する場合には、上記の従来の主触媒と共触媒の組合せが、水分に弱く、水分が少量でも存在すると失活するため水硬性組成物が完全に硬化(養生が完了)し、水分が乾燥するのを待つ必要があった。そのためには長時間を要し、一旦、成形体を成形装置から取出すことが必要であり、さらにその後において、コンクリート製品などの表面にノルボルネン系樹脂層を形成することは煩雑であり、作業効率の上から問題となっていた。
【0005】
【発明の解決しようとする課題】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、水硬性組成物成形体の表面に、耐酸性、耐アルカリ性などに優れるノルボルネン系樹脂層が積層されてなる水硬性組成物積層体を効率よく製造する方法、および水硬性組成物成形体の表面保護方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題の解決を図るべく、水硬性組成物成形体の表面を効率よく保護する方法について鋭意検討した。その結果、メタセシス触媒として、金属カルベン錯体を用いることが本発明の課題を解決することにとって重要であることを見出した。水硬性組成物成形体の表面に、ノルボルネン系モノマーをこのメタセシス重合触媒の存在下に塊状重合してノルボルネン系樹脂層を形成すると、ノルボルネン系樹脂は水硬性組成物成形体との接着性に優れ、かつ、耐酸、耐アルカリ性などに優れるため、水硬性組成物成形体の表面を保護するのに好都合であった。
【0007】
さらに、メタセシス重合触媒として金属カルベン錯体を使用した上で、水硬性組成物成形体が未硬化であるうちに、ノルボルネン系樹脂層を形成することが重要であることを見出した。換言すれば、メタセシス触媒として金属カルベン錯体を使用すると、水硬性組成物成形体が未硬化であっても、その表面にノルボルネン系樹脂層を両層間の接着性よく形成することができるため、両者の積層体を効率よく製造することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
かくして本発明の第1によれば、水硬性組成物成形体と、該成形体が未硬化であるうちに、その表面にノルボルネン系モノマーを金属カルベン錯体の存在下に塊状重合させて形成させたノルボルネン系樹脂層とを有する水硬性組成物積層体が提供される。
【0009】
本発明の第2によれば、ノルボルネン系モノマーを含むモノマー液および金属カルベン錯体を含む触媒液を混合して得られる反応液を、未硬化の水硬性組成物成形体の表面に塗工し、ノルボルネン系樹脂層を形成する工程を有する水硬性組成物積層体の製造方法が提供される。
【0010】
また,本発明の第3によれば、ノルボルネン系モノマーを含むモノマー液および金属カルベン錯体を含む触媒液を混合して得られる反応液を、未硬化の水硬性組成物成形体の表面に塗工することにより、該成形体の表面にノルボルネン系樹脂層を形成することを特徴とする水硬性組成物成形体の表面保護方法が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の水硬性組成物積層体およびその製造方法、並びに水硬性組成物成形体の表面保護方法を詳細に説明する。
(1)水硬性組成物積層体
本発明の水硬性組成物積層体は、水硬性組成物成形体の表面に、ノルボルネン系モノマーを金属カルベン錯体の存在下に塊状重合して得られるノルボルネン系樹脂層が積層されてなることを特徴とする。
【0012】
水硬性組成物成形体は、水硬性組成物に適当量の水を加えて練り合わせたものを、所望の形状に成形して得ることができる。
【0013】
水硬性組成物は、水硬性粉末に所望により混和材料や骨材を混合したものであり、水を加えることにより常温で硬化する組成物である。
水硬性粉末は、水を加えることにより常温で硬化する性質をもつ鉱物質の粉末である。水硬性粉末としては、例えば、普通ポルトラルドセメント、早強ポルトラルドセメント、超早強ポルトラルドセメント、中庸熱ポルトラルドセメント、低熱ポルトラルドセメント、耐硫酸塩ポルトラルドセメントなどのポルトラルドセメント;高炉セメント(A種、B種、C種)、シリカセメント(A種、B種、C種)、フライアッシュセメント(A種、B種、C種)などの混合セメント;超速硬セメント、アルミナセメント、コロイドセメント、膨張セメントなどの特殊セメント;などが挙げられる。
【0014】
混和材料は、水硬性組成物成形体に様々な性能を付与し、その品質を向上させるために添加されるものであり、例えば、混和剤および混和材が挙げられる。
混和剤としては、例えば、アビチエン酸ソーダ塩、脂肪酸石鹸、アルキルエーテル型エステル、アルキルアリルエーテル型の界面活性剤などのAE(air entraining agent)剤;リグニンスルホン酸塩類、オキシカルボン酸塩類、ポリカルボン酸塩類、ポリオール誘導体などの減水剤、AE減水剤;ナフタレンスルホン酸類、メラミンスルホン酸類、ポリカルボン酸類、アミノスルホン酸類などの高性能減水剤、高性能AE減水剤;塩化カルシウム、ロダン酸塩、亜硝酸塩などの促進剤;オキシカルボン酸塩、ポリハイドロキシ化合物、リグニンスルホン酸塩、珪フッ化物などの遅延剤、超遅延剤;アルミン酸塩、硫酸アルミニウム、珪酸ナトリウムなどの急結剤;フレーク状のアルミニウム粉末、陰イオン系界面活性剤、樹脂石鹸類、ゼラチン、カゼインなどの蛋白質誘導体などの発泡剤;防水剤;防錆剤などが挙げられる。
【0015】
混和材としては、例えば、トラス、サントリン土、火山灰、珪藻土、珪酸白土、フライアッシュ、焼成頁岩などのポラゾン;高炉スラグ粉末;ボーキサイト、石灰石、石こうを原料として1200〜1400℃で焼成したカルシウムサルフォアルミネート系膨張材;石灰石および粘土を原料として1400〜1500℃で焼成した石灰系膨張材;鉄の酸化を利用した膨張材;シリカフューム;鋼繊維;ガラス繊維;などが挙げられる。
【0016】
骨材は水硬性組成物成形体をつくる際に、水硬性粉末および水とともに練り合わせる材料である。骨材としては、例えば、砂、砕砂、砂利、砕石、石綿、鉄筋、ピアノ線、その他これに類似の材料が挙げられる。
【0017】
水硬性組成物成形体とは、水硬性組成物に水を加えて硬化させてできる成形体である。水硬性組成物成形体の形状は特に制限されず、板状、柱状、管状、球状、棒状、U字状、L字状など、どのような形状のものでもよい。
【0018】
水硬性組成物に水を加えて水硬性組成物成形体を製造する方法としては、無振動成形法、震動成形法、加圧成形法、遠心力成形法などが挙げられる。無振動成形法は、水硬性組成物および水を型に流し込んだまま放置して固める成形方法である。震動成形法は、主に普通コンクリートを使用し、震動を加えて締め固める成形方法である。加圧成形法は、即時脱型が要請されるとき、主に硬練りコンクリートを使用して、充填製を高めるために加圧する締め固め成形法である。遠心力成形法は、回転する型枠内にコンクリートを投入して遠心力による締め固めを行なう成形方法である。
【0019】
また、本発明に用いる水硬性組成物成形体は、他の基体上に形成されたものであってもよい。他の基体上に形成された水硬性組成物成形体は、他の基体上に、水硬性組成物に適当量の水を加えて練り合わせたものを塗工して形成することができる。
【0020】
他の基体としては、水硬性組成物成形体を担持できるものであれば特に制約されない。他の基体の材質としては、セラミックス、レンガ、瓦、岩石、土、粘土、ほうろう、ガラスなどの無機質材料;鉄、アルミニウム、銅、各種合金などの金属材料;合成樹脂などの有機材料;などが挙げられる。
【0021】
水硬性組成物成形体の具体例としては、コンクリート製品およびモルタル製品が代表的である。例えば、ヒューム管(遠心力鉄筋コンクリート管);ボックスカルバート、埋設管、推進管、共同溝などのカルバート類;道路用端桁、PCプレキャスト床板、合成床板用PC版などの橋梁用製品;舗装用コンクリート平板、インターロッキングブロック、コンクリート境界ブロック、鉄筋コンクリートU形側溝、鉄筋コンクリートL形側溝などの道路用製品;水路ブロックなどの用排水路用製品;送信、通信電線用ポール;防火水槽、飲料水兼耐震性貯水槽、マンホール、ロック・スノージェット、スノーシェルターなどの防災施設用製品;などが挙げられる。
【0022】
これらの中でも、本発明の技術は、外面側または内面側をそのままにして、いずれか一方の面上にノルボルネン系樹脂層を形成することができる水硬性組成物成形体に対して好ましく適用できる。このような水硬性組成物成形体としては、中空状のコンクリート製品が挙げられる。中空状コンクリート製品の好ましい具体例としては、管状または柱状のヒューム管が挙げられる。中空状コンクリート製品は、例えば、遠心力成形方法により製造することができる。
【0023】
本発明の水硬性組成物積層体は、以上のようにして得られる未硬化の水硬性組成物成形体の表面に、ノルボルネン系モノマーを金属カルベン錯体の存在下に塊状重合して得られるノルボルネン系樹脂層を有する。ノルボルネン系樹脂は、水硬性組成物成形体との接着性に優れ、耐酸性、耐アルカリ性、機械強度などに優れる。
【0024】
前記水硬性組成物に所定量の水を加えて混合したものをレデーミクストコンクリートという。レデーミクストコンクリートは、混合攪拌をやめ、必要に応じて所望の形状の型内に充填された時点から硬化が始まる、硬化が始まると、降下中のコンクリートから余剰の水分(これをブリージング水という。)が、その表面ににじみ出てくる。硬化の進行を凝結といい、硬化の程度は、JISA 6204付属書1に従い、貫入抵抗で測定することができる。硬化の進行に伴い、貫入抵抗が大きくなり、貫入抵抗が3.4MPaとなる時点を凝結の始発、貫入抵抗が27.5MPaとなる時点を凝固の終結という。
【0025】
本発明で未硬化の状態とは、レデーミクストコンクリートが型内に充填された時点から、凝結が終結するまでをいう。本発明では、水硬性組成物成形体が未硬化の状態である間に、水硬性組成物成形体の表面に、ノルボルネン系モノマーを金属カルベン錯体とともに供給し、それに引き続いて、ノルボルネン系モノマーを塊状重合する。
【0026】
本発明においては、ノルボルネン系モノマーおよび金属カルベン錯体を、水硬性組成物成形体の表面に供給するまでに、ブリージング水を取り除いておくことが好ましく、ノルボルネン系モノマーおよび金属カルベン錯体を供給する時期は、好ましくは、ブリージング水が出てこれを取り除いた後で凝結の終結前である。
【0027】
凝結が進行するに従い、水硬性組成物成形体の表面に、ブリージング水とともにレイダンスと呼ばれる微粉末が堆積することが通常である。本発明では、ノルボルネン系モノマーおよび金属カルベン錯体を供給する前に、レイダンスを掻き取るなどして除去しておいてもよいし、そのままにして供給してもよい。本発明の積層体の生産効率が優れることから、レイダンスを積極的に取り除くことはせずに、そのままにしておくことが好ましい。
【0028】
ノルボルネン系モノマーを金属カルベン錯体の存在下に塊状重合して、水硬性組成物成形体の表面にノルボルネン系樹脂層を形成するには、ノルボルネン系モノマーを含むモノマー液と金属カルベン錯体とを含む触媒液を別々に調製しておき、使用直前にモノマー液と触媒液を混合して得られる反応液を、水硬性組成物成形体表面に供給すればよい。
【0029】
モノマー液は、ノルボルネン系モノマーを含有する液である。
ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環構造を有する二環若しくは三環以上の多環炭化水素化合物(以下、「ノルボルネン類」ともいう)であり、置換基を有するものであってもよい。
【0030】
ノルボルネン系モノマーの具体例としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、塩素化ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、トリメチルシリルノルボルネン、フェニルノルボルネン、シアノノルボルネン、ジシアノノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、ピリジルノルボルネン、ノルボルネンのナヂック酸無水物、ノルボルネンのナヂック酸イミドなどの二環ノルボルネン類;ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエンの二量体)、ジヒドロジシクロペンタジエンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデンまたはアリール置換体などの三環ノルボルネン類;ジメタノヘキサヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデンまたはアリール置換体などの四環ノルボルネン類;トリシクロペンタジエン(シクロペンタジエンの三量体)などの五環ノルボルネン類、ヘキサシクロヘプタデセンなどの六環ノルボルネン類;ジノルボルネン、二個のノルボルネン環を炭化水素鎖またはエステル基などで結合した化合物、これらのアルキルまたはアリール置換体などのノルボルネン環を含む化合物などが挙げられる。
【0031】
前記ノルボルネン系モノマーは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。二種以上を用いる場合には、熱可塑性樹脂となる1つの二重結合を有するノルボルネン系モノマーと、熱硬化性樹脂となる複数の二重結合を有するノルボルネン系モノマーを適宜組合せると、種々の物性を有するノルボルネン系樹脂成形体を得ることができる。また、ノルボルネン系モノマーを単独で使用する場合と比較して、二種以上を併用すると凝固点降下により、凝固点温度が高いモノマーでも液状として取扱えるという塊状重合時の利点がある。
【0032】
これらのノルボルネン系モノマーの中でも、それ自体が常温付近(20〜30℃)で液状のものが好ましい。常温で液状のノルボルネン系モノマーを使用する場合には、他の溶媒を使用することなくモノマー液を得ることができるからである。
【0033】
本発明においては、常温で液状のノルボルネン系モノマーの中でも、反応性・物性・価格・入手の容易さの点から、ジシクロペンタジエンを主たる成分として用いることがより好ましく、80重量%以上がジシクロペンタジエンであることが更に好ましい。また、ジシクロペンタジエンは純度99重量%以上のものであってもよく、シクロペンタジエンの三量体を例えば2〜20重量%の範囲で含むものであっても良い。後者を使用する場合には、機械的強度が優れるノルボルネン系樹脂を得ることができる。
【0034】
さらに、ノルボルネン系モノマーとして、ジシクロペンタジエンに加えて、エチリデンノルボルネン、メチルシクロペンタジエン、シクロペンタジエンまたはビニルノルボルネンなどを含有させたものを使用することができる。この場合は、常温下で液体状で取扱いが可能となり、作業性のよい反応液を得ることができる。
【0035】
また、本発明に用いるモノマー液の粘度は50〜1,500,000cP、好ましくは500〜1,000,000cP、より好ましくは5,000〜500,000cPの範囲である。モノマー液の粘度がこの範囲よりも低い場合には、組成物に流動性があり過ぎて液だれが生じ易くなる。一方、粘度がこの範囲よりも高い場合には、ノルボルネン系モノマーと金属カルベン錯体との混合不良が生じ易くなり、均一で良好な接着性を有するノルボルネン系樹脂層が得られなくなるおそれがある。
【0036】
粘度が上記の範囲にあるモノマー液を得るには、例えば、(i)ノルボルネン系モノマー自体が高粘度のものを選定する方法、(ii)ノルボルネン系モノマーを加熱処理することにより、一部または全部をオリゴマー化する方法、または(iii)増粘剤を添加する方法などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系モノマーの重合活性を低下させることなく、所望の粘度に調整が容易であることから、(iii)の増粘剤を添加する方法が好ましく、エラストマーを増粘剤として添加する方法がより好ましい。
【0037】
エラストマーは、一般的には弾性を有する高分子物質のことで、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびこれらの水素化物などを使用できる。これらの中でも、スチレン骨格および/またはブタジエン骨格を有するものが好ましい。
【0038】
前記モノマー液には、上記ノルボルネン系モノマーに、開環重合可能なその他の重合性モノマーの一種または二種以上を添加することができる。その他の重合性モノマーとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセンなどの単環シクロオレフィンおよび置換基を有するそれらの誘導体が挙げられる。
【0039】
本発明では、メタセシス触媒として、周期律表(長周期型)第5族、6族および8族の金属原子を中心金属とする金属カルベン錯体を用いる。このような金属カルベン錯体は、従来の複触媒系の触媒と異なり共触媒を必要としない。本発明の目的には、金属カルベン錯体の中でも、8族のルテニウムやオスミウムのカルベン錯体が好ましく、ルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。塊状重合時の触媒の活性が優れるため、たとえ、未硬化の水硬性組成物であっても、その表面に効率よくノルボルネン系樹脂層を形成することができ、生産性に優れるからである。
【0040】
金属カルベン錯体は中心金属原子にカルベン化合物が結合し、金属原子(M)とカルベン炭素が直接に結合した構造(M=C)を錯体中に有するものである。カルベン化合物とは、カルベン炭素すなわちメチレン遊離基を有する化合物の総称である。
【0041】
ルテニウムカルベン錯体の中でも、少なくとも2つのカルベン炭素がルテニウム金属原子に結合しており、該カルベン炭素のうち少なくとも一つには、ヘテロ原子を含む基が結合しているルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。
【0042】
ここで、ヘテロ原子とは、周期律表第15族および第16族の原子を意味し、具体的には、N、O、P、S、As、Se原子を挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、N、O、P、S原子などが好ましく、N原子が特に好ましい。
【0043】
カルベン化合物では、カルベン炭素には、好ましくはその両側に、ヘテロ原子が隣接して結合していることが好ましく、カルベン炭素原子とその両側のヘテロ原子とを含むヘテロ環が構成されているものが更に好ましく、当該ヘテロ環は二重結合を含まない飽和環構造となっていることが特に好ましい。さらに、カルベン炭素に隣接するヘテロ原子には嵩高い置換基を有していることが好ましい。以上のような好ましい構造を持つカルベン化合物が結合したルテニウムカルベン錯体をメタセシス触媒として使用した場合に、塊状重合の活性が特に高く、ノルボルネン系樹脂層を効率よく形成することができる。
【0044】
ルテニウムカルベン錯体としては、例えば、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリドなどのヘテロ原子含有カルベン化合物と中性の電子供与性化合物が結合したルテニウムカルベン錯体;
【0045】
ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリドなどの2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したルテニウムカルベン錯体;などが挙げられる。
【0046】
金属カルベン錯体の使用量は、(金属カルベン錯体中の金属)/(ノルボルネン系モノマー)のモル比として、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000である。これが小さすぎれば塊状重合時の活性が十分でなく、大きすぎれば塊状重合の活性が高すぎて反応ムラを生じやすくなる。
【0047】
金属カルベン錯体は、金属カルベン錯体を適当な溶媒に溶解または分散させた触媒液として用いるのが好ましい。用いる溶媒としては、有機溶剤、液状エラストマーまたは液状老化防止剤などの塊状重合を阻害しない液状物質が挙げられる。
【0048】
有機溶剤としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの鎖状脂肪族炭化水素溶剤;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶剤などを使用することができる。これらの溶剤の中では、工業的に汎用されている芳香族炭化水素溶剤、脂肪族炭化水素溶剤や脂環式炭化水素溶剤が好ましい。
【0049】
液状エラストマーとしては、常温で液体であり、金属カルベン錯体に対して不活性であって、金属カルベン錯体を溶解または分散させるものであれば特に制限されない。例えば、常温で液状の天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびこれらの水素化物などが使用できる。
【0050】
液状老化防止剤としては、常温で液体のノルボルネン系樹脂の老化を防止する機能を有する化合物であり、金属カルベン錯体に対して不活性であって、金属カルベン錯体を溶解または分散させるものであれば特に制限されない。
【0051】
液状老化防止剤としては、例えば、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−オクチル−p−フェニレンジアミンなどのp−フェニレンジアミン系老化防止剤;6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール(商品名:IRGANOX1520、CIBA社製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(商品名:TINUVIN571、CIBA社製)、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール(商品名:AO−145、CIBA社製)、ベンゼンプロパン酸 3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ C7−C9側鎖アルキルエステル(商品名:IRGANOX1135、CIBA社製)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−sec−ブチルフェノール(商品名:ISONOX132、SCHENECTADY社製)などのモノフェノール系老化防止剤;などが挙げられる。これらの液状老化防止剤は、単独であるいは二種以上をブレンドして用いることができる。
【0052】
また、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどの液状UV吸収剤や、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、およびメチル 1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート混合物(商品名:TINUVIN765、CIBA社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレートなどのHALS系光安定剤;などを溶剤として使用することもできる。
【0053】
触媒液中の金属カルベン錯体の濃度は、通常0.1〜10重量%、好ましくは、0.2〜5重量%の範囲である。金属カルベン錯体の濃度が低い場合、塊状重合しない成分が多くなり、得られる硬化物の耐熱性が低下するおそれがる。逆に濃度が高すぎる場合には、ノルボルネン系モノマーと触媒液が混合しにくくなり、硬化不良を起こしやすくなる。
【0054】
また、前記モノマー液および/または触媒液には、本発明の目的を損なわない範囲で、反応遅延剤、ルイス酸などが更に配合されていてもよい。
反応遅延剤は、塊状重合の開始を遅らせて、組成物の可使時間を長くする成分であり、例えば、大面積の部材表面に塗工する場合や、予め組成物を配合しておいて暫くしてから施工する場合などのように、可使時間を長くすることが必要となる場合に有用である。
【0055】
反応遅延剤の具体例としては、n−ブチルアミン、ピリジン、4−ビニルピリジン、アセトニトリル、エチレンジアミン、N−ベンジリデンメチルアミン、ピラジン、ピペリジン、イミダゾールなどの窒素原子を含むルイス塩基化合物;トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト、n−ブチルホスフィンなどのリン原子を含むルイス塩基化合物;ビニルノルボルネン、プロペニルノルボルネン、イソプロペニルノルボルネンなどのオレフィン化合物が挙げられる。
【0056】
反応遅延剤の混合量は金属カルベン錯体(金属原子)1モルに対して、好ましくは0.1〜1000モルの割合である。反応遅延剤の混合量が多すぎるとメタセシス重合反応が充分に進行せず、良好な接着性が得られないという問題があるし、逆に反応遅延剤の混合量が少ないと充分な遅延効果が得られないからである。
【0057】
反応遅延剤は、モノマー液と触媒液を混合する際に、予め少なくとも一方に混合しておくこともできるし、モノマー液と触媒液の混合と同時に混合することもできる。また、場合によっては、モノマー液と触媒液を混合してしばらくしてから混合することもできる。
【0058】
ルイス酸は、重合反応率を向上させて硬化物の接着強度を高めるために添加される。かかるルイス酸としては、例えば、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。ルイス酸の使用量は、(金属カルベン錯体中の金属原子:ルイス酸)のモル比で、通常、1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
【0059】
また、前記モノマー液および/または触媒液には、所望により消泡剤、揺変性付与剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分子量調整剤、着色剤、高分子改質剤、難燃剤、充填材などのその他の添加剤をさらに含有させることができる。他の添加剤の添加量は、本発明の組成物が接着剤としての機能を発現するのを阻害しない範囲内であれば特に制限されず、それぞれの添加剤を添加する目的に応じてその添加量を適宜選択することができる。
【0060】
モノマー液と触媒液とを混合して水硬性組成物成形体の表面に積層するための反応液を得ることができる。モノマー液および触媒液の配合割合は、その使用される状況に応じて粘度や反応性を最適化するように混合すればよい。通常、金属カルベン錯体の使用量が、錯体中の金属原子/ノルボルネン系モノマーのモル比として、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲となる量である。この比率があまりに小さい場合には塊状重合時の活性が不十分となり、逆に大きすぎる場合には塊状重合の活性が高くなりすぎて、硬化不良などを生じ易くなる。
【0061】
モノマー液と触媒液とを混合する方法は特に制限されない。混合する方法としては、混合棒を用いる方法、回転撹拌機を用いる方法、衝突混合方法、ステックミキサーを用いる方法などの他、塗料や接着剤の分野で複数の液状物質を混合するのに用いられる公知の方法を採用することができる。
【0062】
上記いずれの混合方法においても、モノマー液と触媒液が混合されることにより、メタセシス重合反応が開始し、ノルボルネン系樹脂層が形成される。そのため、前記反応液を調製した後は、一定時間(以下、[可使時間]ともいう。)以内に、前記反応液を所望の水硬性組成物成形体の表面に適当量を供給する必要がある。
【0063】
可使時間は、通常10秒から2時間、好ましくは20秒から1時間である。この範囲である場合に組成物が扱いやすく好ましい。可使時間をこの範囲にする方法には、例えば、ノルボルネン系モノマーの種類を調製する方法、金属カルベン錯体の種類と使用量を調整する方法、または重合反応遅延剤の種類および使用量を調整する方法などが挙げられる。
【0064】
前記反応液を水硬性組成物成形体の表面に供給する方法としては、刷毛、ヘラ、コテなどの塗工具を用いて手作業で塗工する方法、スプレーガン、フローガン、コーキングガンなどの塗工機を用いて機械的に塗工する方法、回転中の中空状の水硬性組成物成形体の内側壁面などに、ポンプなどによって供給する方法などが挙げられる。
【0065】
また、ノルボルネン系樹脂層を未硬化の水硬性組成物成形体の表面のどの部分に形成するかについては、(a)表面全体に形成する場合、(b)表面側(外面側)または裏面側(内面側)のいずれか一方の面側に形成する場合のいずれでもよいが、(b)の場合が好ましい。ノルボルネン系樹脂層を形成していない面を残しておいた方が、その後において、より効率よく水硬性組成物成形体の硬化を完了させることができるからである。
【0066】
また、(b)の場合、表面側(外面側)または裏面側(内面側)のどちらの面側にノルボルネン系樹脂層を形成するかは、どちらの面側の表面を保護しなければならないかで定めることができる。例えば、ヒューム管のごとく中空状の成形体の場合には、耐酸性および耐アルカリ性などが要求される内面側にノルボルネン系樹脂層を形成することがより好ましい。
【0067】
得られるノルボルネン系樹脂層の厚さは任意である。例えば、0.1〜100mm以上の厚みの範囲で水硬性組成物成形体表面に形成することができる。
【0068】
以上のようにして未硬化の水硬性組成物成形体の表面にノルボルネン系樹脂層を形成することができる。その後は、養生を行なって、水硬性組成物成形体を完全に硬化させることにより、水硬性組成物積層体を得ることができる。養生の方法としては特に制限されず、公知の方法が採用できる。例えば、放置する方法、常圧で水蒸気雰囲気下で養生する方法、高温および高圧蒸気雰囲気下で養生する方法などが挙げられる。
【0069】
本発明により得られる水硬性組成物積層体は、耐薬品性(例えば、耐酸性および耐アルカリ性など)が要求される各種水硬性組成物成形体として用いることができる。例えば、ヒユーム管、ボックスカルバート、埋設管、推進管、共同溝、道路用端桁、PCプレキャスト床板、合成床板用PC版、舗装用コンクリート平板、インターロッキングブロック、コンクリート境界ブロック、鉄筋コンクリートU形側溝、鉄筋コンクリートL形側溝、水路ブロック、送信、通信電線用ポール、防火水槽、飲料水兼耐震性貯水槽、マンホール、ロック・スノージェット、スノーシェルターなどとして有用である。
【0070】
【実施例】
次に、実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
実施例1 内面がノルボルネン系樹脂層で被覆されたコンクリート管の製造
(未硬化コンクリート管の製造)
普通ポルトラルドセメント382重量部、細骨材778重量部、粗骨材1052重量部、水168重量部、減水剤(商品名:マイティ150、花王(株)製)2.67重量部を混練し、該混練物をφ30×高さ30cmの型枠内に投入して遠心成形により管を形成し、管内のブリージング水を取り除いて未硬化のコンクリート管を得た。
このコンクリート管の内面の貫入抵抗を測定したところ、14.8MPaであった。
【0071】
(モノマー液および触媒液の調製)
ノルボルネン系モノマーとして、ジシクロペンタジエンと5−エチリデン−2−ノルボルネンとをモル比で9:1に混合したものを用い、予め、反応遅延剤としてピリジンを、このノルボルネン系モノマー混合物に対するモル比が6/10000になるように混合撹拌しておいた。次に、第1表に示す種類および使用量のエラストマーを添加し、混合撹拌してモノマー液を調製した。
【0072】
一方、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド(Org.Lett.1999年、1巻、953頁の記載に基づいて合成したもの)62mgをトルエン3.6mlに溶解した触媒液を調製した。
【0073】
(ノルボルネン系樹脂層の形成)
上記で得た未硬化コンクリート管の内面側に、上記モノマー液と触媒液を混合して得られる反応液をスプレーガンを用いて塗工して、内壁に厚みが3mmのノルボルネン系樹脂層を形成した。反応液は、上記モノマー液と触媒液とを、金属カルベン錯体のジシクロペンタジエン/エチリデンノルボルネン混合物に対するモル比が1/10,000になるように混合撹拌を行って得た。
【0074】
次いで、内面側にノルボルネン系樹脂層を形成した未硬化のコンクリート管を養生して完全に硬化させることにより、内面にノルボルネン系樹脂層が形成された硬化コンクリート管を得た。
【0075】
このコンクリート管中に2%硫酸溶液を約2000時間通水したが、内面はほとんど侵食されていなかった。また、耐酸性試験終了直後の製品を切断し、断面を観察したところ、外側のコンクリートは乾燥した状態であり、硫酸溶液がコンクリートまで浸透していないことが分かった。
【0076】
比較例1 コンクリート管の製造
実施例1において、内面側にノルボルネン系樹脂層を形成しない以外は、実施例1と同様にして硬化したコンクリート管を製造した。このコンクリート管内に2%硫酸溶液を約2000時間通水したところ、内面のコンクリートは大きく侵食された。
【0077】
【発明の効果】
本発明の積層体は、表面に密着性、耐酸性および耐アルカリ性に優れるノルボルネン系樹脂層を有するので、長期に渡って良好な表面保護性能が保持されるものである。本発明の表面保護方法によれば、未硬化の水硬性組成物成形体の表面に、耐アルカリ性、耐酸性に優れるノルボルネン系樹脂層を容易に形成することができる。また本発明によれば、未硬化の水硬性組成物成形体を得た後、連続的にその表面にノルボルネン系樹脂層を形成することができる。したがって、より効率よく表面が保護された水硬性組成物成形体を得ることができ、作業性、生産性の面で有利である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート製品やモルタル製品などの水硬性組成物成形体の表面にノルボルネン系樹脂層を積層して、その表面を改質する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート製品やモルタル製品などの水硬性組成物成形体は、建築材料、産業用の構造材などとして広く用いられている。また、水硬性組成物成形体の中性化、水、海水、酸類、塩類などによる化学的浸食、高速流速、砂礫流などによる損食などから表面を保護するために、部材表面を樹脂などで被覆することが行なわれている。
【0003】
従来、このような水硬性組成物成形体の表面を被覆・保護する方法としては、完全に硬化した状態の水硬性組成物成形体を得た後、その表面に樹脂組成物を塗工して、樹脂層を形成する方法が一般的であった。例えば、特開平6−8273号公報には、コンクリート打設硬化後に、コンクリート表面にノルボルネン系モノマー液とタングステン系、モリブデン系又はタンタル系のメタセシス重合主触媒及び共触媒を必須成分として含む樹脂組成物を塗工して、ノルボルネン系樹脂層を形成する方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、コンクリート製品などの水硬性組成物成形体の表面に、ノルボルネン系樹脂層を形成して積層体(以下、「水硬性組成物積層体」という。)を製造する場合には、上記の従来の主触媒と共触媒の組合せが、水分に弱く、水分が少量でも存在すると失活するため水硬性組成物が完全に硬化(養生が完了)し、水分が乾燥するのを待つ必要があった。そのためには長時間を要し、一旦、成形体を成形装置から取出すことが必要であり、さらにその後において、コンクリート製品などの表面にノルボルネン系樹脂層を形成することは煩雑であり、作業効率の上から問題となっていた。
【0005】
【発明の解決しようとする課題】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、水硬性組成物成形体の表面に、耐酸性、耐アルカリ性などに優れるノルボルネン系樹脂層が積層されてなる水硬性組成物積層体を効率よく製造する方法、および水硬性組成物成形体の表面保護方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題の解決を図るべく、水硬性組成物成形体の表面を効率よく保護する方法について鋭意検討した。その結果、メタセシス触媒として、金属カルベン錯体を用いることが本発明の課題を解決することにとって重要であることを見出した。水硬性組成物成形体の表面に、ノルボルネン系モノマーをこのメタセシス重合触媒の存在下に塊状重合してノルボルネン系樹脂層を形成すると、ノルボルネン系樹脂は水硬性組成物成形体との接着性に優れ、かつ、耐酸、耐アルカリ性などに優れるため、水硬性組成物成形体の表面を保護するのに好都合であった。
【0007】
さらに、メタセシス重合触媒として金属カルベン錯体を使用した上で、水硬性組成物成形体が未硬化であるうちに、ノルボルネン系樹脂層を形成することが重要であることを見出した。換言すれば、メタセシス触媒として金属カルベン錯体を使用すると、水硬性組成物成形体が未硬化であっても、その表面にノルボルネン系樹脂層を両層間の接着性よく形成することができるため、両者の積層体を効率よく製造することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
かくして本発明の第1によれば、水硬性組成物成形体と、該成形体が未硬化であるうちに、その表面にノルボルネン系モノマーを金属カルベン錯体の存在下に塊状重合させて形成させたノルボルネン系樹脂層とを有する水硬性組成物積層体が提供される。
【0009】
本発明の第2によれば、ノルボルネン系モノマーを含むモノマー液および金属カルベン錯体を含む触媒液を混合して得られる反応液を、未硬化の水硬性組成物成形体の表面に塗工し、ノルボルネン系樹脂層を形成する工程を有する水硬性組成物積層体の製造方法が提供される。
【0010】
また,本発明の第3によれば、ノルボルネン系モノマーを含むモノマー液および金属カルベン錯体を含む触媒液を混合して得られる反応液を、未硬化の水硬性組成物成形体の表面に塗工することにより、該成形体の表面にノルボルネン系樹脂層を形成することを特徴とする水硬性組成物成形体の表面保護方法が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の水硬性組成物積層体およびその製造方法、並びに水硬性組成物成形体の表面保護方法を詳細に説明する。
(1)水硬性組成物積層体
本発明の水硬性組成物積層体は、水硬性組成物成形体の表面に、ノルボルネン系モノマーを金属カルベン錯体の存在下に塊状重合して得られるノルボルネン系樹脂層が積層されてなることを特徴とする。
【0012】
水硬性組成物成形体は、水硬性組成物に適当量の水を加えて練り合わせたものを、所望の形状に成形して得ることができる。
【0013】
水硬性組成物は、水硬性粉末に所望により混和材料や骨材を混合したものであり、水を加えることにより常温で硬化する組成物である。
水硬性粉末は、水を加えることにより常温で硬化する性質をもつ鉱物質の粉末である。水硬性粉末としては、例えば、普通ポルトラルドセメント、早強ポルトラルドセメント、超早強ポルトラルドセメント、中庸熱ポルトラルドセメント、低熱ポルトラルドセメント、耐硫酸塩ポルトラルドセメントなどのポルトラルドセメント;高炉セメント(A種、B種、C種)、シリカセメント(A種、B種、C種)、フライアッシュセメント(A種、B種、C種)などの混合セメント;超速硬セメント、アルミナセメント、コロイドセメント、膨張セメントなどの特殊セメント;などが挙げられる。
【0014】
混和材料は、水硬性組成物成形体に様々な性能を付与し、その品質を向上させるために添加されるものであり、例えば、混和剤および混和材が挙げられる。
混和剤としては、例えば、アビチエン酸ソーダ塩、脂肪酸石鹸、アルキルエーテル型エステル、アルキルアリルエーテル型の界面活性剤などのAE(air entraining agent)剤;リグニンスルホン酸塩類、オキシカルボン酸塩類、ポリカルボン酸塩類、ポリオール誘導体などの減水剤、AE減水剤;ナフタレンスルホン酸類、メラミンスルホン酸類、ポリカルボン酸類、アミノスルホン酸類などの高性能減水剤、高性能AE減水剤;塩化カルシウム、ロダン酸塩、亜硝酸塩などの促進剤;オキシカルボン酸塩、ポリハイドロキシ化合物、リグニンスルホン酸塩、珪フッ化物などの遅延剤、超遅延剤;アルミン酸塩、硫酸アルミニウム、珪酸ナトリウムなどの急結剤;フレーク状のアルミニウム粉末、陰イオン系界面活性剤、樹脂石鹸類、ゼラチン、カゼインなどの蛋白質誘導体などの発泡剤;防水剤;防錆剤などが挙げられる。
【0015】
混和材としては、例えば、トラス、サントリン土、火山灰、珪藻土、珪酸白土、フライアッシュ、焼成頁岩などのポラゾン;高炉スラグ粉末;ボーキサイト、石灰石、石こうを原料として1200〜1400℃で焼成したカルシウムサルフォアルミネート系膨張材;石灰石および粘土を原料として1400〜1500℃で焼成した石灰系膨張材;鉄の酸化を利用した膨張材;シリカフューム;鋼繊維;ガラス繊維;などが挙げられる。
【0016】
骨材は水硬性組成物成形体をつくる際に、水硬性粉末および水とともに練り合わせる材料である。骨材としては、例えば、砂、砕砂、砂利、砕石、石綿、鉄筋、ピアノ線、その他これに類似の材料が挙げられる。
【0017】
水硬性組成物成形体とは、水硬性組成物に水を加えて硬化させてできる成形体である。水硬性組成物成形体の形状は特に制限されず、板状、柱状、管状、球状、棒状、U字状、L字状など、どのような形状のものでもよい。
【0018】
水硬性組成物に水を加えて水硬性組成物成形体を製造する方法としては、無振動成形法、震動成形法、加圧成形法、遠心力成形法などが挙げられる。無振動成形法は、水硬性組成物および水を型に流し込んだまま放置して固める成形方法である。震動成形法は、主に普通コンクリートを使用し、震動を加えて締め固める成形方法である。加圧成形法は、即時脱型が要請されるとき、主に硬練りコンクリートを使用して、充填製を高めるために加圧する締め固め成形法である。遠心力成形法は、回転する型枠内にコンクリートを投入して遠心力による締め固めを行なう成形方法である。
【0019】
また、本発明に用いる水硬性組成物成形体は、他の基体上に形成されたものであってもよい。他の基体上に形成された水硬性組成物成形体は、他の基体上に、水硬性組成物に適当量の水を加えて練り合わせたものを塗工して形成することができる。
【0020】
他の基体としては、水硬性組成物成形体を担持できるものであれば特に制約されない。他の基体の材質としては、セラミックス、レンガ、瓦、岩石、土、粘土、ほうろう、ガラスなどの無機質材料;鉄、アルミニウム、銅、各種合金などの金属材料;合成樹脂などの有機材料;などが挙げられる。
【0021】
水硬性組成物成形体の具体例としては、コンクリート製品およびモルタル製品が代表的である。例えば、ヒューム管(遠心力鉄筋コンクリート管);ボックスカルバート、埋設管、推進管、共同溝などのカルバート類;道路用端桁、PCプレキャスト床板、合成床板用PC版などの橋梁用製品;舗装用コンクリート平板、インターロッキングブロック、コンクリート境界ブロック、鉄筋コンクリートU形側溝、鉄筋コンクリートL形側溝などの道路用製品;水路ブロックなどの用排水路用製品;送信、通信電線用ポール;防火水槽、飲料水兼耐震性貯水槽、マンホール、ロック・スノージェット、スノーシェルターなどの防災施設用製品;などが挙げられる。
【0022】
これらの中でも、本発明の技術は、外面側または内面側をそのままにして、いずれか一方の面上にノルボルネン系樹脂層を形成することができる水硬性組成物成形体に対して好ましく適用できる。このような水硬性組成物成形体としては、中空状のコンクリート製品が挙げられる。中空状コンクリート製品の好ましい具体例としては、管状または柱状のヒューム管が挙げられる。中空状コンクリート製品は、例えば、遠心力成形方法により製造することができる。
【0023】
本発明の水硬性組成物積層体は、以上のようにして得られる未硬化の水硬性組成物成形体の表面に、ノルボルネン系モノマーを金属カルベン錯体の存在下に塊状重合して得られるノルボルネン系樹脂層を有する。ノルボルネン系樹脂は、水硬性組成物成形体との接着性に優れ、耐酸性、耐アルカリ性、機械強度などに優れる。
【0024】
前記水硬性組成物に所定量の水を加えて混合したものをレデーミクストコンクリートという。レデーミクストコンクリートは、混合攪拌をやめ、必要に応じて所望の形状の型内に充填された時点から硬化が始まる、硬化が始まると、降下中のコンクリートから余剰の水分(これをブリージング水という。)が、その表面ににじみ出てくる。硬化の進行を凝結といい、硬化の程度は、JISA 6204付属書1に従い、貫入抵抗で測定することができる。硬化の進行に伴い、貫入抵抗が大きくなり、貫入抵抗が3.4MPaとなる時点を凝結の始発、貫入抵抗が27.5MPaとなる時点を凝固の終結という。
【0025】
本発明で未硬化の状態とは、レデーミクストコンクリートが型内に充填された時点から、凝結が終結するまでをいう。本発明では、水硬性組成物成形体が未硬化の状態である間に、水硬性組成物成形体の表面に、ノルボルネン系モノマーを金属カルベン錯体とともに供給し、それに引き続いて、ノルボルネン系モノマーを塊状重合する。
【0026】
本発明においては、ノルボルネン系モノマーおよび金属カルベン錯体を、水硬性組成物成形体の表面に供給するまでに、ブリージング水を取り除いておくことが好ましく、ノルボルネン系モノマーおよび金属カルベン錯体を供給する時期は、好ましくは、ブリージング水が出てこれを取り除いた後で凝結の終結前である。
【0027】
凝結が進行するに従い、水硬性組成物成形体の表面に、ブリージング水とともにレイダンスと呼ばれる微粉末が堆積することが通常である。本発明では、ノルボルネン系モノマーおよび金属カルベン錯体を供給する前に、レイダンスを掻き取るなどして除去しておいてもよいし、そのままにして供給してもよい。本発明の積層体の生産効率が優れることから、レイダンスを積極的に取り除くことはせずに、そのままにしておくことが好ましい。
【0028】
ノルボルネン系モノマーを金属カルベン錯体の存在下に塊状重合して、水硬性組成物成形体の表面にノルボルネン系樹脂層を形成するには、ノルボルネン系モノマーを含むモノマー液と金属カルベン錯体とを含む触媒液を別々に調製しておき、使用直前にモノマー液と触媒液を混合して得られる反応液を、水硬性組成物成形体表面に供給すればよい。
【0029】
モノマー液は、ノルボルネン系モノマーを含有する液である。
ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環構造を有する二環若しくは三環以上の多環炭化水素化合物(以下、「ノルボルネン類」ともいう)であり、置換基を有するものであってもよい。
【0030】
ノルボルネン系モノマーの具体例としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、塩素化ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、トリメチルシリルノルボルネン、フェニルノルボルネン、シアノノルボルネン、ジシアノノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、ピリジルノルボルネン、ノルボルネンのナヂック酸無水物、ノルボルネンのナヂック酸イミドなどの二環ノルボルネン類;ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエンの二量体)、ジヒドロジシクロペンタジエンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデンまたはアリール置換体などの三環ノルボルネン類;ジメタノヘキサヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデンまたはアリール置換体などの四環ノルボルネン類;トリシクロペンタジエン(シクロペンタジエンの三量体)などの五環ノルボルネン類、ヘキサシクロヘプタデセンなどの六環ノルボルネン類;ジノルボルネン、二個のノルボルネン環を炭化水素鎖またはエステル基などで結合した化合物、これらのアルキルまたはアリール置換体などのノルボルネン環を含む化合物などが挙げられる。
【0031】
前記ノルボルネン系モノマーは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。二種以上を用いる場合には、熱可塑性樹脂となる1つの二重結合を有するノルボルネン系モノマーと、熱硬化性樹脂となる複数の二重結合を有するノルボルネン系モノマーを適宜組合せると、種々の物性を有するノルボルネン系樹脂成形体を得ることができる。また、ノルボルネン系モノマーを単独で使用する場合と比較して、二種以上を併用すると凝固点降下により、凝固点温度が高いモノマーでも液状として取扱えるという塊状重合時の利点がある。
【0032】
これらのノルボルネン系モノマーの中でも、それ自体が常温付近(20〜30℃)で液状のものが好ましい。常温で液状のノルボルネン系モノマーを使用する場合には、他の溶媒を使用することなくモノマー液を得ることができるからである。
【0033】
本発明においては、常温で液状のノルボルネン系モノマーの中でも、反応性・物性・価格・入手の容易さの点から、ジシクロペンタジエンを主たる成分として用いることがより好ましく、80重量%以上がジシクロペンタジエンであることが更に好ましい。また、ジシクロペンタジエンは純度99重量%以上のものであってもよく、シクロペンタジエンの三量体を例えば2〜20重量%の範囲で含むものであっても良い。後者を使用する場合には、機械的強度が優れるノルボルネン系樹脂を得ることができる。
【0034】
さらに、ノルボルネン系モノマーとして、ジシクロペンタジエンに加えて、エチリデンノルボルネン、メチルシクロペンタジエン、シクロペンタジエンまたはビニルノルボルネンなどを含有させたものを使用することができる。この場合は、常温下で液体状で取扱いが可能となり、作業性のよい反応液を得ることができる。
【0035】
また、本発明に用いるモノマー液の粘度は50〜1,500,000cP、好ましくは500〜1,000,000cP、より好ましくは5,000〜500,000cPの範囲である。モノマー液の粘度がこの範囲よりも低い場合には、組成物に流動性があり過ぎて液だれが生じ易くなる。一方、粘度がこの範囲よりも高い場合には、ノルボルネン系モノマーと金属カルベン錯体との混合不良が生じ易くなり、均一で良好な接着性を有するノルボルネン系樹脂層が得られなくなるおそれがある。
【0036】
粘度が上記の範囲にあるモノマー液を得るには、例えば、(i)ノルボルネン系モノマー自体が高粘度のものを選定する方法、(ii)ノルボルネン系モノマーを加熱処理することにより、一部または全部をオリゴマー化する方法、または(iii)増粘剤を添加する方法などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系モノマーの重合活性を低下させることなく、所望の粘度に調整が容易であることから、(iii)の増粘剤を添加する方法が好ましく、エラストマーを増粘剤として添加する方法がより好ましい。
【0037】
エラストマーは、一般的には弾性を有する高分子物質のことで、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびこれらの水素化物などを使用できる。これらの中でも、スチレン骨格および/またはブタジエン骨格を有するものが好ましい。
【0038】
前記モノマー液には、上記ノルボルネン系モノマーに、開環重合可能なその他の重合性モノマーの一種または二種以上を添加することができる。その他の重合性モノマーとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセンなどの単環シクロオレフィンおよび置換基を有するそれらの誘導体が挙げられる。
【0039】
本発明では、メタセシス触媒として、周期律表(長周期型)第5族、6族および8族の金属原子を中心金属とする金属カルベン錯体を用いる。このような金属カルベン錯体は、従来の複触媒系の触媒と異なり共触媒を必要としない。本発明の目的には、金属カルベン錯体の中でも、8族のルテニウムやオスミウムのカルベン錯体が好ましく、ルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。塊状重合時の触媒の活性が優れるため、たとえ、未硬化の水硬性組成物であっても、その表面に効率よくノルボルネン系樹脂層を形成することができ、生産性に優れるからである。
【0040】
金属カルベン錯体は中心金属原子にカルベン化合物が結合し、金属原子(M)とカルベン炭素が直接に結合した構造(M=C)を錯体中に有するものである。カルベン化合物とは、カルベン炭素すなわちメチレン遊離基を有する化合物の総称である。
【0041】
ルテニウムカルベン錯体の中でも、少なくとも2つのカルベン炭素がルテニウム金属原子に結合しており、該カルベン炭素のうち少なくとも一つには、ヘテロ原子を含む基が結合しているルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。
【0042】
ここで、ヘテロ原子とは、周期律表第15族および第16族の原子を意味し、具体的には、N、O、P、S、As、Se原子を挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、N、O、P、S原子などが好ましく、N原子が特に好ましい。
【0043】
カルベン化合物では、カルベン炭素には、好ましくはその両側に、ヘテロ原子が隣接して結合していることが好ましく、カルベン炭素原子とその両側のヘテロ原子とを含むヘテロ環が構成されているものが更に好ましく、当該ヘテロ環は二重結合を含まない飽和環構造となっていることが特に好ましい。さらに、カルベン炭素に隣接するヘテロ原子には嵩高い置換基を有していることが好ましい。以上のような好ましい構造を持つカルベン化合物が結合したルテニウムカルベン錯体をメタセシス触媒として使用した場合に、塊状重合の活性が特に高く、ノルボルネン系樹脂層を効率よく形成することができる。
【0044】
ルテニウムカルベン錯体としては、例えば、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリドなどのヘテロ原子含有カルベン化合物と中性の電子供与性化合物が結合したルテニウムカルベン錯体;
【0045】
ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリドなどの2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したルテニウムカルベン錯体;などが挙げられる。
【0046】
金属カルベン錯体の使用量は、(金属カルベン錯体中の金属)/(ノルボルネン系モノマー)のモル比として、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000である。これが小さすぎれば塊状重合時の活性が十分でなく、大きすぎれば塊状重合の活性が高すぎて反応ムラを生じやすくなる。
【0047】
金属カルベン錯体は、金属カルベン錯体を適当な溶媒に溶解または分散させた触媒液として用いるのが好ましい。用いる溶媒としては、有機溶剤、液状エラストマーまたは液状老化防止剤などの塊状重合を阻害しない液状物質が挙げられる。
【0048】
有機溶剤としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの鎖状脂肪族炭化水素溶剤;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶剤などを使用することができる。これらの溶剤の中では、工業的に汎用されている芳香族炭化水素溶剤、脂肪族炭化水素溶剤や脂環式炭化水素溶剤が好ましい。
【0049】
液状エラストマーとしては、常温で液体であり、金属カルベン錯体に対して不活性であって、金属カルベン錯体を溶解または分散させるものであれば特に制限されない。例えば、常温で液状の天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびこれらの水素化物などが使用できる。
【0050】
液状老化防止剤としては、常温で液体のノルボルネン系樹脂の老化を防止する機能を有する化合物であり、金属カルベン錯体に対して不活性であって、金属カルベン錯体を溶解または分散させるものであれば特に制限されない。
【0051】
液状老化防止剤としては、例えば、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−オクチル−p−フェニレンジアミンなどのp−フェニレンジアミン系老化防止剤;6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール(商品名:IRGANOX1520、CIBA社製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(商品名:TINUVIN571、CIBA社製)、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール(商品名:AO−145、CIBA社製)、ベンゼンプロパン酸 3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ C7−C9側鎖アルキルエステル(商品名:IRGANOX1135、CIBA社製)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−sec−ブチルフェノール(商品名:ISONOX132、SCHENECTADY社製)などのモノフェノール系老化防止剤;などが挙げられる。これらの液状老化防止剤は、単独であるいは二種以上をブレンドして用いることができる。
【0052】
また、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどの液状UV吸収剤や、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、およびメチル 1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート混合物(商品名:TINUVIN765、CIBA社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレートなどのHALS系光安定剤;などを溶剤として使用することもできる。
【0053】
触媒液中の金属カルベン錯体の濃度は、通常0.1〜10重量%、好ましくは、0.2〜5重量%の範囲である。金属カルベン錯体の濃度が低い場合、塊状重合しない成分が多くなり、得られる硬化物の耐熱性が低下するおそれがる。逆に濃度が高すぎる場合には、ノルボルネン系モノマーと触媒液が混合しにくくなり、硬化不良を起こしやすくなる。
【0054】
また、前記モノマー液および/または触媒液には、本発明の目的を損なわない範囲で、反応遅延剤、ルイス酸などが更に配合されていてもよい。
反応遅延剤は、塊状重合の開始を遅らせて、組成物の可使時間を長くする成分であり、例えば、大面積の部材表面に塗工する場合や、予め組成物を配合しておいて暫くしてから施工する場合などのように、可使時間を長くすることが必要となる場合に有用である。
【0055】
反応遅延剤の具体例としては、n−ブチルアミン、ピリジン、4−ビニルピリジン、アセトニトリル、エチレンジアミン、N−ベンジリデンメチルアミン、ピラジン、ピペリジン、イミダゾールなどの窒素原子を含むルイス塩基化合物;トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト、n−ブチルホスフィンなどのリン原子を含むルイス塩基化合物;ビニルノルボルネン、プロペニルノルボルネン、イソプロペニルノルボルネンなどのオレフィン化合物が挙げられる。
【0056】
反応遅延剤の混合量は金属カルベン錯体(金属原子)1モルに対して、好ましくは0.1〜1000モルの割合である。反応遅延剤の混合量が多すぎるとメタセシス重合反応が充分に進行せず、良好な接着性が得られないという問題があるし、逆に反応遅延剤の混合量が少ないと充分な遅延効果が得られないからである。
【0057】
反応遅延剤は、モノマー液と触媒液を混合する際に、予め少なくとも一方に混合しておくこともできるし、モノマー液と触媒液の混合と同時に混合することもできる。また、場合によっては、モノマー液と触媒液を混合してしばらくしてから混合することもできる。
【0058】
ルイス酸は、重合反応率を向上させて硬化物の接着強度を高めるために添加される。かかるルイス酸としては、例えば、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。ルイス酸の使用量は、(金属カルベン錯体中の金属原子:ルイス酸)のモル比で、通常、1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
【0059】
また、前記モノマー液および/または触媒液には、所望により消泡剤、揺変性付与剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分子量調整剤、着色剤、高分子改質剤、難燃剤、充填材などのその他の添加剤をさらに含有させることができる。他の添加剤の添加量は、本発明の組成物が接着剤としての機能を発現するのを阻害しない範囲内であれば特に制限されず、それぞれの添加剤を添加する目的に応じてその添加量を適宜選択することができる。
【0060】
モノマー液と触媒液とを混合して水硬性組成物成形体の表面に積層するための反応液を得ることができる。モノマー液および触媒液の配合割合は、その使用される状況に応じて粘度や反応性を最適化するように混合すればよい。通常、金属カルベン錯体の使用量が、錯体中の金属原子/ノルボルネン系モノマーのモル比として、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲となる量である。この比率があまりに小さい場合には塊状重合時の活性が不十分となり、逆に大きすぎる場合には塊状重合の活性が高くなりすぎて、硬化不良などを生じ易くなる。
【0061】
モノマー液と触媒液とを混合する方法は特に制限されない。混合する方法としては、混合棒を用いる方法、回転撹拌機を用いる方法、衝突混合方法、ステックミキサーを用いる方法などの他、塗料や接着剤の分野で複数の液状物質を混合するのに用いられる公知の方法を採用することができる。
【0062】
上記いずれの混合方法においても、モノマー液と触媒液が混合されることにより、メタセシス重合反応が開始し、ノルボルネン系樹脂層が形成される。そのため、前記反応液を調製した後は、一定時間(以下、[可使時間]ともいう。)以内に、前記反応液を所望の水硬性組成物成形体の表面に適当量を供給する必要がある。
【0063】
可使時間は、通常10秒から2時間、好ましくは20秒から1時間である。この範囲である場合に組成物が扱いやすく好ましい。可使時間をこの範囲にする方法には、例えば、ノルボルネン系モノマーの種類を調製する方法、金属カルベン錯体の種類と使用量を調整する方法、または重合反応遅延剤の種類および使用量を調整する方法などが挙げられる。
【0064】
前記反応液を水硬性組成物成形体の表面に供給する方法としては、刷毛、ヘラ、コテなどの塗工具を用いて手作業で塗工する方法、スプレーガン、フローガン、コーキングガンなどの塗工機を用いて機械的に塗工する方法、回転中の中空状の水硬性組成物成形体の内側壁面などに、ポンプなどによって供給する方法などが挙げられる。
【0065】
また、ノルボルネン系樹脂層を未硬化の水硬性組成物成形体の表面のどの部分に形成するかについては、(a)表面全体に形成する場合、(b)表面側(外面側)または裏面側(内面側)のいずれか一方の面側に形成する場合のいずれでもよいが、(b)の場合が好ましい。ノルボルネン系樹脂層を形成していない面を残しておいた方が、その後において、より効率よく水硬性組成物成形体の硬化を完了させることができるからである。
【0066】
また、(b)の場合、表面側(外面側)または裏面側(内面側)のどちらの面側にノルボルネン系樹脂層を形成するかは、どちらの面側の表面を保護しなければならないかで定めることができる。例えば、ヒューム管のごとく中空状の成形体の場合には、耐酸性および耐アルカリ性などが要求される内面側にノルボルネン系樹脂層を形成することがより好ましい。
【0067】
得られるノルボルネン系樹脂層の厚さは任意である。例えば、0.1〜100mm以上の厚みの範囲で水硬性組成物成形体表面に形成することができる。
【0068】
以上のようにして未硬化の水硬性組成物成形体の表面にノルボルネン系樹脂層を形成することができる。その後は、養生を行なって、水硬性組成物成形体を完全に硬化させることにより、水硬性組成物積層体を得ることができる。養生の方法としては特に制限されず、公知の方法が採用できる。例えば、放置する方法、常圧で水蒸気雰囲気下で養生する方法、高温および高圧蒸気雰囲気下で養生する方法などが挙げられる。
【0069】
本発明により得られる水硬性組成物積層体は、耐薬品性(例えば、耐酸性および耐アルカリ性など)が要求される各種水硬性組成物成形体として用いることができる。例えば、ヒユーム管、ボックスカルバート、埋設管、推進管、共同溝、道路用端桁、PCプレキャスト床板、合成床板用PC版、舗装用コンクリート平板、インターロッキングブロック、コンクリート境界ブロック、鉄筋コンクリートU形側溝、鉄筋コンクリートL形側溝、水路ブロック、送信、通信電線用ポール、防火水槽、飲料水兼耐震性貯水槽、マンホール、ロック・スノージェット、スノーシェルターなどとして有用である。
【0070】
【実施例】
次に、実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
実施例1 内面がノルボルネン系樹脂層で被覆されたコンクリート管の製造
(未硬化コンクリート管の製造)
普通ポルトラルドセメント382重量部、細骨材778重量部、粗骨材1052重量部、水168重量部、減水剤(商品名:マイティ150、花王(株)製)2.67重量部を混練し、該混練物をφ30×高さ30cmの型枠内に投入して遠心成形により管を形成し、管内のブリージング水を取り除いて未硬化のコンクリート管を得た。
このコンクリート管の内面の貫入抵抗を測定したところ、14.8MPaであった。
【0071】
(モノマー液および触媒液の調製)
ノルボルネン系モノマーとして、ジシクロペンタジエンと5−エチリデン−2−ノルボルネンとをモル比で9:1に混合したものを用い、予め、反応遅延剤としてピリジンを、このノルボルネン系モノマー混合物に対するモル比が6/10000になるように混合撹拌しておいた。次に、第1表に示す種類および使用量のエラストマーを添加し、混合撹拌してモノマー液を調製した。
【0072】
一方、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド(Org.Lett.1999年、1巻、953頁の記載に基づいて合成したもの)62mgをトルエン3.6mlに溶解した触媒液を調製した。
【0073】
(ノルボルネン系樹脂層の形成)
上記で得た未硬化コンクリート管の内面側に、上記モノマー液と触媒液を混合して得られる反応液をスプレーガンを用いて塗工して、内壁に厚みが3mmのノルボルネン系樹脂層を形成した。反応液は、上記モノマー液と触媒液とを、金属カルベン錯体のジシクロペンタジエン/エチリデンノルボルネン混合物に対するモル比が1/10,000になるように混合撹拌を行って得た。
【0074】
次いで、内面側にノルボルネン系樹脂層を形成した未硬化のコンクリート管を養生して完全に硬化させることにより、内面にノルボルネン系樹脂層が形成された硬化コンクリート管を得た。
【0075】
このコンクリート管中に2%硫酸溶液を約2000時間通水したが、内面はほとんど侵食されていなかった。また、耐酸性試験終了直後の製品を切断し、断面を観察したところ、外側のコンクリートは乾燥した状態であり、硫酸溶液がコンクリートまで浸透していないことが分かった。
【0076】
比較例1 コンクリート管の製造
実施例1において、内面側にノルボルネン系樹脂層を形成しない以外は、実施例1と同様にして硬化したコンクリート管を製造した。このコンクリート管内に2%硫酸溶液を約2000時間通水したところ、内面のコンクリートは大きく侵食された。
【0077】
【発明の効果】
本発明の積層体は、表面に密着性、耐酸性および耐アルカリ性に優れるノルボルネン系樹脂層を有するので、長期に渡って良好な表面保護性能が保持されるものである。本発明の表面保護方法によれば、未硬化の水硬性組成物成形体の表面に、耐アルカリ性、耐酸性に優れるノルボルネン系樹脂層を容易に形成することができる。また本発明によれば、未硬化の水硬性組成物成形体を得た後、連続的にその表面にノルボルネン系樹脂層を形成することができる。したがって、より効率よく表面が保護された水硬性組成物成形体を得ることができ、作業性、生産性の面で有利である。
Claims (3)
- 水硬性組成物成形体と、該成形体が未硬化であるうちに、その表面にノルボルネン系モノマーを金属カルベン錯体の存在下に塊状重合させて形成させたノルボルネン系樹脂層とを有する水硬性組成物積層体。
- ノルボルネン系モノマーを含むモノマー液および金属カルベン錯体を含む触媒液を混合して得られる反応液を、未硬化の水硬性組成物成形体の表面に塗工し、ノルボルネン系樹脂層を形成する工程を有する水硬性組成物積層体の製造方法。
- ノルボルネン系モノマーを含むモノマー液および金属カルベン錯体を含む触媒液を混合して得られる反応液を、未硬化の水硬性組成物成形体の表面に塗工することにより、該成形体の表面にノルボルネン系樹脂層を形成することを特徴とする水硬性組成物成形体の表面保護方法。
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