JP2004010312A - 物の仕分け方法と仕分け装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】供給される仕分け対象物をそれぞれ特性を揃えて複数のグループに分けるときに、互いの量的な比率を確保することを目標として自動的に仕分ける方法を技術課題とした。供給の途中では仕分けの量的比率を決めるしきい値は仮の値であり変動するが既に仕分けた物は変更が利かない。また特性値が確率分布に従う限り避けられない一時的な出現の偏りによる比率の偏りに対し、しきい値を操作して量的な比率を回復しようとすることもまた、特性を揃えることと矛盾する。
【解決手段】仕分けのため測定等で得た特性値の分布状態の分析に基づき目標値に対応するしきい値を決定する開ループ制御と、目標からの誤差を修正する閉ループ制御を組み合わせ、閉ループ制御に目標の比率に適合した制御ゲインを与え、またしきい値に制限を加えることで安定した制御を可能にする。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は農水産物等を始め種々の仕分け対象物を、加工条件を揃えたり、用途を分けたり、差別化した商品にしたり、貯蔵や運送の条件を改善したりする目的で、個々のあるいは集合の特性に応じて、仕分ける技術に関するもので、予め定められている基準にそって分ける選別と異なり、仕分けた結果あるまとまった量を得ることを主要な目的とする方法と装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
農水産物を始め多くの物が生産・流通の過程で選別操作を受ける。選別はあらかじめ設定されている規格を根拠にして行われる。その規格は流通上の必要を満たすために設けられ、何らかの測定(五感等による評価判定等を含む。以下単に測定等という)可能な特性値で表現されている。農水産物、例えば果物の特性値である重量、サイズ、糖度、酸度などは確率分布に従う(図3参照…実務的にはヒストグラムで表し、数学的には確率密度関数で表す。)から、選別された量は確率分布関数に従う(確率密度関数を−∞から積分したもので、実務的には累積頻度(確率)グラフに相当する。)ことになるが、多くの場合そのことは意識されていない。強いて挙げれば、多量の対象物を並列処理する選別工程で個々の特性に応じて選別するような場合は、各ランクに分けた量を流れとして認識できるから比率を見ながら調節している例はある。しかし荷口単位の選別にせよ個々の選別にせよ比率を意識して分ける例は見ない。ところが規格が設定されていなくても、何かの特性値に基づいて区分けすることは、設備効率を高めたり、加工条件を揃えたり、用途を分けたり、差別化した商品にしたり、貯蔵や運送の条件を改善したりと、メリットがある。このような仕分けの操作では、特性値に対する絶対的な要求よりも、量ないし量的な比率に対する要求に意味があることも多い。特性値の確率分布関数が既知であれば、所要の量的比率を分け取るための境目になる特性値(以下、これをしきい値と呼ぶ。)を算出できる。
【0003】
ところが農水産物等では、▲1▼確率分布関数は日により、産地により変化するし、来歴の異なるものが混入した状態で供給されることもあるので、確率分布は一定しない(図2にそのパラメータの変化を示す)。仕分けの対象物から均等にサンプリングして特性値を計測できるなら、確率分布関数を推定できるが、これらの産物の加工場や集荷場では、集荷時間に幅があり、しかも限られた時間に処理を求められているから、全体から均等にサンプリングすることは望むべくもない。少数のサンプル測定等で確率分布関数を推定しようとすれば、不安定な結果しか得られない。▲2▼確率分布関数が安定している場合についても、特性値の変化は確率的現象であるから仕分けられた比率は大きく変動する。このように確率分布に従うものを、量ないしは量的比率を目標として区分するには、二つの問題があって困難だった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
供給される仕分け対象物をそれぞれ特性を揃えてグループ(以下、単純にランクと呼ぶ)に分けるとき、量的な比率を確保することを目標とするなら、確率分布関数から量的な比率に対応する特性値(基準のしきい値)を求め、これによって仕分けることになる。そしてそのランクの量的な比率が不足するときに、そのランクに振り分けるべき特性値の範囲を広げれば次第に量が増え、逆に量的な比率が余っているときに、特性値の範囲を狭めれば次第に量が減り、目標の比率に近づくはずである。制御工学でいうところのフィードバック制御(言い換えれば閉ループ制御)に相当する考えである。ところが範囲を変更することは特性を揃えるという前提と矛盾する操作である。これは本質的な矛盾であり、前提をある程度緩めるしかなく、どこまで緩めるかを直接的に表現すればフィードバックでしきい値を動かせる範囲を制限すると言うことになる。ところがそれだけでは、この制御の問題は終わらない。
【0005】
まず厳しく範囲を制限すれば、確率分布関数が変動した場合に目標が達成できなくなる。また確率現象であるから一時的にかなり偏ることがあるが、確率分布関数の変化なのかそれとも一時的な偏りなのかは、制御結果を見ていても判別が付かない。一時的な偏りに応答しないようにするには、制御工学では制御ループの応答を遅くするのが一般的な手法であるが、全体の十分の一を分け取るような場合はもともと十分の九は偏っているようなものだから、全体の三分の一を分け取るような場合とは同じ一時的な偏りと言っても意味が違う。誤差の積分をフィードバックする制御もあるが、分け取った量とは蓄積された量であるから、既に量的比率自体がいわば積分された量である。派生的に判ることはこの制御が一般的なフローの制御でなくストックを制御しようとしていることである。目標としている量的比率もストックとしての比率であり、分母は仕分けの進行とともに増加する。更にひとつ制御のゲインに問題がある。特性値によって確率密度関数が変化するから同じゲインに対して制御の効果が変化するのである。このことは目標を変えると制御効果が変わるという問題と、3分割以上にするときに同じゲインでは、それぞれの制御間で誤差の大きさと制御効果量について整合性が無くなるという問題を生ずる(図4に、仕分け比率を5%上下するために必要なしきい値の操作量を示す。)。本発明が課題とすることは、確率分布に従う量を仕分けるのに一般のフィードバック制御が陥る矛盾を緩和し、実用的に調和のとれた制御システムの体系を見いだすことである。なお一般に制御工学では制御モデルを状態方程式で表し、それは時間の関数である。本発明の場合、厳密には順序の進行であって時間の進行はない。また確率分布に従うので、状態方程式ではなく上述のように確率関数で表現する。便宜上、制御工学で常用する用語を用いているが、制御工学の知識がそのまま適用できる訳ではなく、確率論に基づいて制御手法を検討しなければならない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
中心になる課題は確率的な一時的偏りなのか確率分布関数の変化なのかという問題である。これを解決するため図1のように、(1)供給される仕分け対象物をそれぞれ特性を揃えて複数のグループに分けて、互いの量的な比率を所要の目標値にする仕分け制御において、特性値の分布状態を分析して目標値に対応する基準のしきい値を決定する開ループ制御と、目標からの誤差に応じてしきい値を調整する閉ループ制御を組み合わせて構成した物の仕分け方法を用い、仕分けのために測定等で得る特性値の出現の頻度(言い換えれば確率密度関数)から累積頻度(言い換えれば確率分布関数)を求め、その時点でのしきい値を算出してこれをフィードバック制御の基準点にする。制御の誤差を見ていないから閉ループではなく開ループ制御である。これと誤差に応じた閉ループ制御を組み合わせるのである。(基準のしきい値を算出する過程に誤差を反映しても同じことである。)
【0007】
次にしきい値の基準点を得る方法は特性値の確率分布の形が分かっているか、いないかで大きく二つに分かれる。分布の形は正規確率で判定するまでもなく一般には正規分布することが多い。変数を変換して正規分布になる場合もある。また茶生葉のN/F指数のように相関性の高い成分間の比の場合でさえも正規分布と見なして差し支えないことがある。(2)上記手段(1)において、特性値がほぼ正規分布することが知られている場合には測定等で得た特性値の出現の頻度から目標の比率に対応する基準のしきい値を求める。即ち特性値の平均値と標準偏差を求め、これをパラメーターとする確率分布関数によって目標の比率に対応する基準のしきい値を求めるのである。正規分布の場合には、平均と標準偏差の値で確率分布関数(図3の正規分布の累積確率グラフに対応)が決まるからである。
【0008】
(3)上記手段(1)において、測定等で得た特性値の累積頻度から目標の比率に対応する基準のしきい値を求める。分布の形が判っていない場合(判っている場合に適用しても構わない。)には、測定等で得た特性値を小さい方から並べ直して累積頻度グラフを作り(図3、実際の累積確率グラフの作り方)、必要に応じて補間計算、外挿計算をして直接任意の仕分け比率に対応した特性値を算出できるから、これを基準のしきい値に採用する。なお累積頻度グラフの傾斜が確率密度に対応する。累積頻度グラフでは直接基準のしきい値を求めているが、確率密度曲線のグラフで解釈すれば、しきい値と確率密度曲線で囲む面積を各グループに割り当てることに対応している。なお説明の都合上、特性値を一次元の量として説明したが、多次元であっても構わない。図5のように二つの測定値の比(右上がりの放射状の線で示す)を品質の指標にするような場合でも、二次元のしきい値でより自然な区切り方にすることもできる。累積頻度にせよ正規分布にせよ確率分布をより正確に把握するには細分した量について特性値を得る方が良いことは言うまでもない。その場合、仕分けの単位量も細分する場合と計測のみを細分する場合がある。
【0009】
次に矛盾点を解決するために、(4)上記手段(1)において、目標からの仕分け誤差に応じて調整するしきい値に制限を加える。特性値を揃えるという条件との妥協として、フィードバックによるしきい値の変動範囲を制限することで直接的に特性値の不揃いに歯止めを掛けるのである(図6〜9の制御ゲイン特性線を参照)。僅かな誤差を容認して回復を待つための不感帯やヒステリシスを持たせる方法が有効な場合もある。なおゲインを上げるほど制限が必要になると考えてもよく、その極限がしきい値切替型と言うことになる。また同じ制御ゲインに対して制御の効果が違うという問題に対しては、実務上二つの考え方がある。一つの典型例が分布の端の方を分け取る意義が異常な物を除外することにある場合で、この場合は固定的なしきい値でも良く、制御ゲインはどうでも良い。もう一つは量的な比率に仕分けの意義がある場合で、あるいは任意の比率に仕分けたい場合で、このような場合にはある程度制御ゲインを高めたいが、制御ゲインを高くすればしきい値が大きく動き、隣り合うグループ間で特性値の順序との逆転範囲が広くなることから、しきい値の変動範囲の制限が必要になる。
【0010】
(5)上記手段(1)において、目標からの仕分け誤差に応じてしきい値を調整する閉ループ制御のゲインの体系を任意の仕分け比率における確率密度に反比例した大きさに選定する。上述したように仕分けはしきい値と確率密度曲線で囲まれた面積を割り当てることであるから、フィードバック量もまた面積の割り当てとして考えることができる。目標仕分け比率を変えれば、基準のしきい値が変わり、対応する確率密度が変わる。しきい値の操作量と確率密度を掛ければフィードバック量が求まる。一つのしきい値の操作は隣り合う二つのグループのフィードバック量を変えるから、二つのしきい値に挟まれたグループでは両側のフィードバック量の差がフィードバックとして与えられたことになる。これら二つの問題は、制御ゲインを確率密度関数に反比例した体系にすることで解決する。ここでフィードバックの入力となる誤差の捉え方について説明をしておく。まず量的な比率を目標とするから比率の誤差をフィードバック入力とする考えがある。この場合の比率はストックの比率であるからだんだん検出感度が落ちる欠点があるが、それでも開ループ制御で制御できる。もちろん仕分け総量を乗数として感度補正しても良い。総量に比率を掛けて仕分け量との差を取れば、感度が落ちることはない。検出感度は後述する制御ゲインと直結しているが、制御ゲインは平均仕分けの量に比例するから誤差量を平均仕分け量で規準化しておいた方が汎用性は高い。
【0011】
(6)上記手段(1)において、目標からの仕分け誤差を算出するとき、目標比率と仕分けた量的比率の誤差、仕分け累計総量に目標比率を乗じて得た量と実仕分け量との誤差、もしくは前記量の誤差を平均の仕分け単位量で規準化した量を誤差検出量とする。開ループ制御をベースにするストックの制御に特有な事情を考慮した誤差の検出(算出)方法を提供する。
【0012】
(7)対象物の品質計測手段と、対象物の量の計量手段と、計測制御手段と、開ループ制御と閉ループ制御を組み合わせたしきい値を求め、該しきい値により対象物を仕分ける仕分け制御手段と、該仕分け制御手段の結果により対象物を搬送する搬送手段とより構成した物の仕分け装置を用いる。供給される仕分け対象物をそれぞれに特性の揃った複数のグループで、且つお互いの量的な比率が所要の量的比率に近くなる仕分け制御を実現する。
【0013】
【作用】
手段(1)により、仕分けのために測定等で得た特性値の出現の頻度(言い換えれば確率密度関数)から累積頻度(言い換えれば確率分布関数)を求め、その時点でのしきい値を算出してこれをフィードバック制御の基準点にするから、確率分布が変化して仕分けの量的比率に誤差を生じても、まずフィードバックの基準点が目標の量が得られる点に移動し、その上で誤差を修正回復するためのフィードバック機能が追加されることになる。以上の説明から容易に判るように、この方法はフィードバックのゲインが大きくなくても十分な修正回復力が得られる。
【0014】
手段(2)により、分布の形が一般的な正規分布の場合には、その時点の平均と標準偏差の値から任意の仕分け比率に対応した特性値を算出して基準のしきい値に採用しているから、分布の形の変化にも追従する。実際の特性値の標準偏差を移動計算するとかなりの変動が認められる場合でも、一日単位で分析するとほとんど一定であることがあり、このような場合、平均値のみの分析でも十分である。
【0015】
手段(3)により、分布の形が判っていない場合でも、測定等で得た特性値を小さい方から並べ直して累積頻度グラフを作り、直接その時点の任意の仕分け比率に対応した特性値を算出することで分布の形の変化に追従できるのである。
【0016】
次にこの開ループ制御と組み合わせる閉ループ制御(即ちフィードバック制御)の作用を説明する。一般の制御においては制御ゲインを上げすぎると出力が乱高下する安定性の問題が起こる。仕分け制御では測定等と仕分けを一回行う度にすべてが再計算できるので、制御はあくまで静的に進行する。その代わり特性値が不揃いになるという問題が起きる。本発明では、上述したように開ループ制御を組み合わせることで、フィードバック量をあまり大きくしなくても効果的に制御できるから、手段(4)により、仕分け本来の目的である特性値を揃えるためにしきい値のフィードバック操作量の限界を定めて特性値の範囲を相対的あるいは絶対的に制限することができる。このようにすれば特性値の範囲を保証できる。また実験では限度のような直接的な方法だけでなく、フィードバックの強さ、つまり制御のゲインを適度に設定しても多くの場合同等な効果が得られる。正比例でなく曲線的に上がる特性を与えれば一層近い結果になる(図9の曲線型を参照)。
【0017】
手段(5)により、量的な比率が重要な場合、あるいは任意の比率に仕分けたい場合に複数のしきい値で仕分けても、制御のゲインを確率密度関数に反比例する体系に選定したので、仕分け比率に関係なく同じ速度(仕分け回数)で誤差が復旧するように機能する。
【0018】
手段(6)により、開ループ制御をベースとする仕分けを補う誤差の検出を、必要な精度で算出し、フィードバック入力とすることが出来る。
【0019】
そして(7)の手段により、これらの仕分け制御を対象物の品質計測手段と、対象物の計量手段と、計測制御手段と、開ループ制御と閉ループ制御によりしきい値を求め、該しきい値により対象物を仕分ける仕分け制御手段と、該仕分け制御手段の結果により対象物を搬送する搬送手段とより構成した装置で的確に行うことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明を製茶工場に適用した場合を事例として、ブロックダイアグラムに基づいて説明する。製茶工場に搬入された茶生葉は品質計測手段で測定される。測定のタイミングは工場によって異なり、荷受装置に投入される前の場合もあるし、後の場合もある。品質計測手段としては茶生葉の成分を測る方式のほか、嵩密度、硬さなどの物性、大きさ、色など外観特性を測っても良い。計測と前後して品種、摘採方法、栽培方法、病虫害など計測しない項目を判定し、計測制御手段に入力する。計測制御手段では品質の計測値とその他の判定項目のデータをまとめて、仕分け制御手段と会計システムへ送る。会計システムではそれらを総合して品質判定値が決定され、茶生葉の買い入れ価格を決定するために使用される。一方、仕分け制御手段では特性の揃ったグループに仕分けるためのデータとなる。判定項目の中にはその項目だけで特別な区分けを要する場合もあるが、以下の説明では品質の計測値と組み合わせて総合的な特性値になる場合で、特性値が正規分布になる場合を例として説明する。
【0021】
取引のための量として、受入れ重量の計測は一般に搬入の前後に車両ごと計測が行われるが、これとは別に加工用データとして計測と対応させて仕分け重量を積算しても良い。重量データは仕分け制御手段と会計システムへ送られる。仕分け制御手段では双方のデータの受付番号などを介して特性値と重量計測値とを対応データとして記憶する。仕分け制御手段では、記憶した特性値の平均値と標準偏差を算出し、それらに基づいて各ランクの基準となるしきい値を決定する。(平均値、標準偏差の算出と基準となるしきい値の決定を仕分けの決定後に行い、次の仕分けに適用しても実用上大きな差はない。)
【0022】
仕分け制御手段では特性値を加工上の必要性に従って設定した各ランクに対応したしきい値と比較してどのランクに仕分けるかを決定し、搬送装置を制御するが、しきい値は基準となるしきい値に後述するフィードバック操作量を加えたものである。なおここでしきい値の変動範囲を制限し、特性値の変動範囲を保証する必要がある場合にはしきい値が取りうる範囲に限度を設定する。特にそのような必要が無い場合でも、三つ以上のランクに分けると、二つのしきい値が干渉しうるから、干渉防止のための限度を設ける。
【0023】
さらに仕分け制御手段ではランク別に仕分けられた重量を積算する。また搬入された茶生葉重量を積算して、各ランクの所要の仕分け比率を乗じてその時点でのランク別の所要重量を算出する。そしてランク別の仕分け積算重量の所要重量に対する誤差を計算する。この誤差に仕分け比率に対応した確率密度関数に反比例するように体系化された制御ゲインを乗じて、しきい値のフィードバック操作量を算出する。
【0024】
なお制御の開始に当たってしきい値の初期値が必要になる。その値は過去の実績値、あるいは摘採開始日を決定するための茶園の予察等から決定する。参照できる特性値のデータがある場合には小さい順に並べ替えて、所要の量的比率になる判定数値を見つけることもできる。初期値から実勢値へのしきい値の移行は緩やかに行う。また本実施例では図7に示すように品質計測、その他の判定、重量計測、搬送装置が一系統である場合について説明したが、これらが複数の系統設置された施設であっても構わず、さらにそれらが遠隔の地であって通信線等で仕分け制御部と結ばれていても構わない。
【0025】
以上、集荷した茶生葉の仕分けについて述べたが、この他にも加工条件を揃えたり、用途を分けたり、差別化した商品にしたり、貯蔵や運送の条件を改善したり、このような仕分け技術を応用できる分野は数多くあり、ここにその一端を述べる。最近の動きとして生産者が消費者への直販の増加が見られるが、この場合、直販の顧客が最優先し、品質の良い物からその出荷量を確保したいという考え方が働く。収穫量の何パーセントを直販に振り向けるかということになれば、従来の選別ではなく「仕分け」の考えが必要になる。これとは逆に大手流通業者はもちろん外食・中食の事業者でも市場機能をバイパスした調達に走っている。これら業者が生産者と直接に取り引きするとき現実的に自分の必要とするものを経済的に得るには産物の実態に即した取引条件を設定するのが合理的であり、仕分けの技法はその実現を促進できる。このような特化する動きの根底にほとんどの産物が過剰供給の状況にあることが指摘できる。このような状況であるから生産地では市場の価格動向に非常に敏感になっており、出荷団体では情報化が進められてきた。とは言え収量や時期を自由にはできないから出荷の調整、用途の調整は避けられない。例えば果物の場合、出荷の規格とは別に貯蔵への適性の有無があるから、出荷と貯蔵の比率を定めた仕分けを選果工程と併用することができる。また生食用とジュースや缶詰などの加工用を選択できる場合には、生食用の規格内、規格外の境界を仕分け制御して量を調整することができる。さらに缶詰用を例に取れば、缶のサイズと釣り合う範囲でカット物と全形物の比率を生産計画に合わせて仕分け調整できる。以上述べたような仕分け制御を応用できる仕分け対象物は多岐にわたるが、一般的な産物を例示すれば、トマト、アスパラガス、ジャガイモ、タマネギ、メロン、柑橘類、りんご、ぶどう、もも、おうとう、すもも、うめ、くり、かつお、さんま、うなぎ、さけ、さば、いわし、あるいは魚の切り身、貝類、卵、籾米、玄米、精米等が挙げられる。
【0026】
【発明の効果】
本発明は、以上のような構成により次のような効果を有する。仕分けの誤差にのみ着目したフィードバック制御に開ループ制御を組み合わせることで、フィードバックだけでは得られない的確なフィードバックの基準点が得られ、緩やかなフィードバック制御で仕分け比率を制御できる。フィードバックの基準点は仕分けのための測定等で得た特性値を分析して得るから、分布状態の変化にも対応できる。分布の形が判ってない場合でも直接累積頻度を分析して対応できる。またこれにしきい値の範囲に制限を加えることで特性値を揃えるという目的と、量的比率を確保するという目的を直接的に調和できるようになる。さらに仕分け目標比率を変えるとフィードバック制御の効果が変動したり、複数のしきい値間でフィードバック制御の効果が整合した安定した制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が課題とする確率分布に従う物を比率を目標として仕分ける方法を一般の制御工学との対応させながら示した概念図。
【図2】供給される物の特性値の変動と移動計算した標準偏差値の変動例、及び、仕分けの都度、再計算される平均値について示した図。
【図3】図2の例について特性値の分布をヒストグラムに表し、算出した平均値と標準偏差をもとに描いた正規分布と重ね合わせて示し、また密度関数を−∞から積分した確率分布関数(累積確率)も示した図。(ただし、この曲線と重なり合う実際の累積確率グラフは仕分け重量で重み付けされた累積グラフである。)
【図4】確率密度関数グラフ上で、フィードバックで同じ制御効果を得るために必要なしきい値の操作量を示した図。
【図5】相関性を持つ2次元の分布を仕分ける概念図。
【図6】制御ゲイン特性線が制限付きリニア型の場合の、仕分け誤差としきい値を基準のしきい値から振る量の関係を示した概念図。
【図7】制御ゲイン特性線が不感帯付き切替型の場合の、仕分け誤差としきい値を基準のしきい値から振る量の関係を示した概念図。
【図8】制御ゲイン特性線がヒステリシス付き折線型の場合の、仕分け誤差としきい値を基準のしきい値から振る量の関係を示した概念図。
【図9】制御ゲイン特性線が曲線型の場合の、仕分け誤差としきい値を基準のしきい値から振る量の関係を示した概念図。
【図10】制御システムのブロックダイアグラムを示した図。

Claims (7)

  1. 供給される仕分け対象物をそれぞれ特性を揃えて複数のグループに分けて、互いの量的な比率を所要の目標値にする仕分け制御において、特性値の分布状態を分析して目標値に対応する基準のしきい値を決定する開ループ制御と、目標からの誤差に応じてしきい値を調整する閉ループ制御を組み合わせて構成したことを特徴とする物の仕分け方法。
  2. ほぼ正規分布することが知られている特性値の平均値と標準偏差から、確率分布関数によって目標の比率に対応する基準のしきい値を求めることを特徴とする請求項1記載の物の仕分け方法。
  3. 仕分けのために得た特性値の累積頻度から目標の比率に対応する基準のしきい値を求めることを特徴とする請求項1記載の物の仕分け方法。
  4. 目標からの仕分け誤差に応じて調整するしきい値に制限を加えたことを特徴とする請求項1記載の物の仕分け方法。
  5. 目標からの仕分け誤差に応じてしきい値を調整する閉ループ制御のゲインの体系を任意の仕分け比率における確率密度に反比例した大きさに選定することを特徴とする請求項1記載の物の仕分け方法。
  6. 目標からの仕分け誤差を算出するとき、目標比率と仕分けた量的比率の誤差、仕分け累計総量に目標比率を乗じて得た量と実仕分け量との誤差、もしくは前記量の誤差を平均の仕分け単位量で規準化した量を誤差検出量とすることを特徴とする請求項1記載の物の仕分け方法。
  7. 対象物の品質計測手段と、対象物の量の計量手段と、計測制御手段と、開ループ制御と閉ループ制御を組み合わせたしきい値を求め、該しきい値により対象物を仕分ける仕分け制御手段と、該仕分け制御手段の結果により対象物を搬送する搬送手段とより構成することを特徴とする物の仕分け装置。
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