JP2004006884A - 半導体素子 - Google Patents

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Shigeo Yoshii
吉井 重雄
Tadashi Morimoto
森本 廉
Kiyoyuki Morita
森田 清之
Haruyuki Sorada
空田 晴之
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

【課題】作製が容易で、かつ、信頼性の高い半導体素子を提供する。
【解決手段】p型シリコン基板1131上には、微粒子分散領域1133aからなる電荷保持領域1133、SiO膜からなるゲート絶縁膜1137及びゲート電極として機能するn型多結晶シリコン電極1138が下から順次積み上げられている。SiGe微粒子1135のGe含有率は、p型シリコン基板131との距離が小さいものほど小さい。蓄積された電荷の自然放出を効果的に抑制することによって、電荷保持領域1133に電荷を長時間保持できるため、信頼性の高いものとなる。
【選択図】  図12

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微粒子等に電荷を保持させてメモリとして利用できるようにした半導体素子に関わる。
【0002】
【従来の技術】
現在のULSIは、多数のMOSトランジスタからなるメモリ素子を集積したメモリ部を有している。近年、このメモリ素子における動作の高速化、消費電力の低減、長時間の記録保持の要請が高まっている。そこで、これらの要請を満たすようなMOSトランジスタの開発が進められている。
【0003】
これまでに提案され、既に試作されたメモリ素子においては、メモリの書き込み、若しくは、消去の際に、半導体等の微粒子中に、非常に少数の電荷を注入し保持することが行われている。このような従来の技術の一例として、S.Tiwariらによる複数のシリコンの微粒子(ドット)を用いたメモリの研究を挙げることができる(非特許文献1)。
【0004】
図57は、この従来の複数のシリコンの微粒子を用いたメモリとして機能する半導体メモリ素子を示す断面図である。この半導体メモリ素子においては、p型シリコン基板6201上にSiO膜からなるトンネル酸化膜6202、SiO膜6204が下から順に堆積されており、さらにその上にはn型多結晶シリコン電極6205が設けられている。トンネル酸化膜6202とSiO膜6204との間には、シリコン微粒子6203が埋め込まれている。また、下地となるp型シリコン基板6201中のn型多結晶シリコン電極6205の両側方に位置する領域には、ソース・ドレイン領域6206が設けられている。
【0005】
この半導体メモリ素子において、n型多結晶シリコン電極6205に正の電圧を印加することにより、トンネル酸化膜6202を経て、シリコン微粒子6203に電子を注入することができる。また、n型多結晶シリコン電極6205に負の電圧を印加することにより、シリコン微粒子6203中の電子を引き抜くことができる。シリコン微粒子6203におけるこの電子の有無によって、メモリ素子のしきい値電圧を変化させることができる。このしきい値電圧の高低を情報H(ハイ)と情報L(ロー)とに対応させることにより、情報の書き込み・読み出しを行う。
【0006】
なお、トンネル酸化膜6202の厚さは極めて薄い(1.5nm〜4nm程度)ため、この電子の注入過程は、FNトンネルによるのではなく、直接トンネルによることになる。
【0007】
【非特許文献1】
Appl.Phys.Lett.68(1996)1377
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者らの研究によれば、この従来の半導体素子において、実際に実用的な性能を有する半導体素子を実現しようとすると、非常に高度で微細な製造技術が必要である。
【0009】
たとえば、トンネル酸化膜6202の厚さが厚すぎる場合には、トンネル過程による電荷注入が困難となるため、低電圧の動作、及び、高速な動作が困難となる。一方、トンネル酸化膜6202の厚さが薄すぎる場合には、電荷保持時の電荷閉込めが不十分となるため、長期間の電荷保持、つまり、長期間の情報記録が困難となる。
【0010】
また、この従来の半導体素子において、実用的な特性を得るには、シリコン微粒子6203の粒径及びその分散をも高度に制御できる製造技術が必要である。つまり、シリコン微粒子6203の粒径が小さくなりすぎたり、逆に大きくなりすぎてシリコン微粒子6203の面内密度が十分でなかったりする場合には、電荷の保持期間が短すぎたり、保持できる電荷量が少なすぎたりしてしまうため、半導体素子の信頼性も低くなる。
【0011】
さらに、温度上昇により熱エネルギーが増加する等の場合には、シリコン微粒子6203からp型シリコン基板6201へのトンネル過程により、シリコン微粒子6203中に蓄積された電荷が自然放出してしまう。
【0012】
すなわち、この従来の半導体素子において、実用的な素子特性を得るには、トンネル酸化膜6202の膜質および厚さを、非常に高精度かつ均一に制御する必要があり、さらに、シリコン微粒子6203の粒径を一定に保ちつつ、高い面内密度で、しかも、均一な分散状態でシリコン微粒子6203を作成しなければならない。しかし、p型シリコン基板6201上の全面においてこのような制御を行うには非常に高度な製造技術が要求される。よって、この従来の半導体素子を製造しても、その製造工程において、実用的な特性を有する素子を得られる可能性は低い。また、製造された従来の半導体素子の信頼性は低いものとなる。つまり、本発明者らの研究によれば、この従来の半導体素子において、高速の電荷注入・引き抜きを行い、しかも、長期間の電荷保持を行うことは困難である。
【0013】
そこで、本発明は、作製が容易で、かつ、信頼性の高い半導体素子を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の半導体素子は、導体層を有する基板と、上記導体層の上に設けられ、電荷の移動に対して障壁として機能する第1の障壁層と、上記第1の障壁層の上に設けられた第1の粒子体と、上記第1の粒子体の上に設けられ、電荷の移動に対して障壁として機能する第2の障壁層と、上記第2の障壁層上に設けられた第2の粒子体とを備え、上記第2の粒子体の保持・放出しようとする電荷に対するポテンシャルが、上記第1の粒子体のポテンシャルよりも低い。
【0015】
これにより、低いポテンシャルを有する第2の粒子体の方が第1の粒子体よりも電荷保持能力が高いことを利用して、第2の粒子体を情報保持体として利用することが可能になる。
【0016】
上記保持・放出しようとする電荷が電子である場合、上記第2の粒子体の電子親和力が上記第1の粒子体の電子親和力より大きいことが好ましく、さらに上記導体層が半導体層である場合には、上記第2の粒子体の電子親和力が半導体層の電子親和力よりも大きいことが好ましい。
【0017】
上記保持・放出しようとする電荷が正孔である場合、第2の粒子体の電子親和力と禁制帯幅との和が、上記第1の粒子体の電子親和力と禁制帯幅との和よりも小さいことが好ましく、さらに、上記導体層が半導体層である場合には、上記第2の粒子体の電子親和力と禁制帯幅との和が、半導体基板の電子親和力と禁制帯幅との和よりも小さいことが好ましい。
【0018】
上記第2の粒子体の上に設けられた絶縁体層と、上記絶縁体層の上に設けられたゲート電極と、上記導体層における上記ゲート電極の両側方に位置する領域に設けられたソース・ドレイン領域とをさらに備えることにより、MIS型トランジスタとして機能する半導体素子が得られる。
【0019】
本発明の第2の半導体素子は、導体層を有する基板と、上記導体層の上に設けられた第1の絶縁体層と、上記第1の絶縁体層の上に設けられた第1の粒子体と、上記第1の粒子体の上に設けられた電荷の移動に対して障壁として機能する第1の障壁層と、上記第1の障壁層の上に設けられた第2の粒子体と、上記第2の粒子体の上に設けられ、電荷の移動に対して障壁として機能する第2の障壁層と、上記第2の障壁層上に設けられた第3の粒子体とを備え、上記第1の粒子体及び第3の粒子体の保持・放出しようとする電荷に対するポテンシャルが、上記第2の粒子体のポテンシャルよりもそれぞれ低い。
【0020】
これにより、上述のように、第1,第3の粒子体の電荷保持機能が第2の粒子体の電荷保持機能よりも高いことを利用して、第1の粒子体と第3の粒子体との間で、第2の粒子体を電荷の受け渡し部材として電荷をやりとりすることができるので、第1の粒子体及び第3の粒子体を情報保持体として利用することが可能になる。
【0021】
上記保持・放出しようとする電荷が電子である場合、上記第1,第3の粒子体の電子親和力が上記第2の粒子体の電子親和力よりそれぞれ大きいことが好ましく、上記保持・放出しようとする電荷が正孔である場合には、第1,第3の粒子体の電子親和力と禁制帯幅との和が、上記第2の粒子体の電子親和力と禁制帯幅との和よりもそれぞれ小さいことが好ましい。
【0022】
上記第3の粒子体の上に設けられた絶縁体層と、上記絶縁体層の上に設けられたゲート電極と、上記導体層における上記ゲート電極の両側方に位置する領域に設けられたソース・ドレイン領域とをさらに備えることにより、MIS型トランジスタとして機能する半導体素子が得られる。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
―第1の実施形態に係る半導体素子の構造―
図1は、第1の実施形態に係る半導体素子の断面図である。この半導体素子において、p型シリコン基板1011上には、いくつかの微粒子分散領域1012aからなる電荷保持領域1012(厚さ20nm程度)、絶縁膜として機能するSiO膜1015(厚さ20nm)、及び上部電極として機能するn型多結晶シリコン電極1016が下から順に設けられている。また、各微粒子分散領域1012aでは、シリコン微粒子1013(粒径5nm)が、絶縁体であるSiO1014中に分散されている。微粒子分散領域1012aの微粒子を除いた部分(マトリクス)は、微粒子より大きなバンドギャップを有する半導体でもよい。なお、SiO膜1015の厚さを5〜20nm、シリコン微粒子1013の粒径を2〜10nm程度、シリコン微粒子1013の分散密度を1×1017cm−3〜1×1020cm−3程度とするのが好ましい。
【0024】
―第1の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
図13(a)、(b)、(c)は、第1の実施形態に係る半導体素子の製造工程を示す断面図である。
【0025】
まず、図13(a)に示す工程で、p型シリコン基板1011を設置したスパッタ装置内において、SiO上にシリコンのタブレットを並べ、そこに、加速したイオンを衝突させる。この際の衝撃によってはじき出された原子、分子1017をp型シリコン基板1011上に堆積する。
【0026】
その後、図13(b)に示す工程で、基板の熱処理を行う。これらの工程によって、p型シリコン基板1011上において、SiO1014中でシリコン微粒子1013が析出した膜、つまり、いくつかの微粒子分散領域1012aからなる電荷保持領域1012を形成する。
【0027】
次に、図13(c)に示す工程で、CVD装置のチャンバー内のサセプター上に基板を設置し、SiO膜1015を微粒子分散領域1012a上に堆積した後、同一のチャンバー内で、n型多結晶シリコン電極1016をSiO膜1015上に堆積する。
【0028】
―従来の半導体素子の電子注入・保持・引き抜き機構―
上述のように、従来の半導体素子には、図57に示すように、p型シリコン基板6201上にSiO膜からなるトンネル酸化膜6202、SiO膜6204が下から順に堆積されており、さらにその上にはn型多結晶シリコン電極6205が設けられている。トンネル酸化膜6202とSiO膜6204との間には、シリコン微粒子6203が埋め込まれている。
【0029】
図2は、図57に示す従来の半導体素子におけるSiO膜6204、シリコン微粒子6203、トンネル酸化膜6202及びp型シリコン基板6201のエネルギーバンド構造を示すバンド図である。シリコン微粒子6203内では、シリコン微粒子6203の粒径が極めて小さいため、シリコン微粒子中の電子がとりうるエネルギー状態(エネルギー準位)が量子化されている。この従来の半導体素子においては、シリコン微粒子6203への電子注入・電子引き抜きは、p型シリコン基板6201−シリコン微粒子6203間のトンネル過程によって起こる。
【0030】
図3(a)、(b)は、この従来の半導体素子における電子注入・電子保持を行う際のエネルギーバンド状態をそれぞれ示す部分バンド図である。なお、図3(a)、(b)においては、理解を容易にするため、荷電子帯の図示は省略されている。
【0031】
図3(a)に示すように、この従来の素子では、一定値以上の正の電圧をn型多結晶シリコン電極6205に印加すると、外部電界が生じ、シリコン微粒子6203の電位は、p型シリコン基板6201の電位に比べ、上昇することになる。このとき、電子が、トンネル現象によって、p型シリコン基板6201における伝導帯からトンネル酸化膜6202を経て、シリコン微粒子6203へと注入される。
【0032】
一方、図3(b)に示すように、n型多結晶シリコン電極6205への正の電圧の印加をやめると、シリコン微粒子6203に蓄積された電子によって、シリコン微粒子6203自身のポテンシャルが上昇する。このため、電子注入時とは逆に、トンネル過程によって、電子をシリコン微粒子6203から、トンネル酸化膜6202を経て、p型シリコン基板6201へと自然放出しようとする力が生ずる。このポテンシャル上昇が十分小さければ電子はシリコン微粒子6203に保持される。
【0033】
また、負の電圧をn型多結晶シリコン電極6205に印加すると、シリコン微粒子6203から、トンネル酸化膜6202を経て、p型シリコン基板6201における伝導帯へと引き抜かれる。
【0034】
なお、半導体基板内のエネルギー準位─微粒子のエネルギー準位間のトンネル過程の詳細なメカニズムとその遷移確率とについては明らかにされていない。しかし、電圧を印加することにより微粒子内の電子の注入が起こること、電圧の印加をやめたときにも微粒子中に電子が保持されること、及び、室温において微粒子から電子が徐々に自然放出されることが観測されているため、上述のようなトンネル過程の存在は明確である。
【0035】
―第1の実施形態に係る半導体素子の電子注入・保持・引き抜き機構―
次に、第1の実施形態に係る半導体素子における電子注入・保持・引き抜きの機構について、図1を参照しながら説明する。
【0036】
ある一定の正の電圧をn型多結晶シリコン電極1016に印加すると、従来の半導体素子と同様にトンネル過程によって、SiO1014を介してp型シリコン基板1011からp型シリコン基板1011に隣接するシリコン微粒子1013へと電子が注入される。しかし、第1の実施形態に係る半導体素子は、従来の半導体素子と異なりシリコン微粒子1013が厚さ方向にも分散した電荷保持領域領域1012を有しているので、電子はp型シリコン基板1011に隣接した位置のシリコン微粒子1013から、さらにn型多結晶シリコン電極1016側(図1において上方)のシリコン微粒子1013に移動しようとする。
【0037】
ここで、各シリコン微粒子1013間は、SiO1014により隔てられている。このSiO1014によって、周囲のシリコン微粒子1013と遠く離れて孤立しているシリコン微粒子1013には、周囲のシリコン微粒子1013から電子が注入されにくいが、逆に、周囲のシリコン微粒子1013に近接しているシリコン微粒子1013には、周囲のシリコン微粒子1013から電子が注入され易い。
【0038】
また、p型シリコン基板1011に隣接するシリコン微粒子1013の静電容量は、p型シリコン基板1011から離れたシリコン微粒子1013の静電容量よりも大きい。静電容量が大きなシリコン微粒子1013では電荷注入による電位の上昇が小さいので電子移動が容易であり、静電容量が小さなシリコン微粒子1013では電荷注入による電位上昇が大きいので電荷注入による電子移動が起こりにくくなる。すなわち、シリコン微粒子1013への電荷移動は、p型シリコン基板1011との距離が小さいものほど容易である。
【0039】
したがって、p型シリコン基板1011に隣接するシリコン微粒子1013では、電子移動は容易となり、多くの電子はp型シリコン基板1011と隣接する位置からさらにn型多結晶シリコン電極1016側に移動する。このようにして、電子はp型シリコン基板1011側から、電子移動が容易な経路を選択しながら、n型多結晶シリコン電極1016側に移動していき、最後には、それ以上の電子移動が困難な比較的孤立したシリコン微粒子1013に蓄積される。
【0040】
なお、最終的に電子がたどり着く位置は、n型多結晶シリコン電極1016層に印加する電圧に依存する。より大きな電圧をn型多結晶シリコン電極1016層に印加することによって、より多くの経路を経て、より多くの電子が、電子注入がより困難なシリコン微粒子1013、つまり、n型多結晶シリコン電極1016層により近い位置にあるシリコン微粒子1013に蓄積されることになる。
【0041】
次に、バンド図によって、第1の実施形態に係る半導体素子における電子注入・保持・引き抜きの機構について説明する。
【0042】
図4は、第1の実施形態に係る半導体素子におけるバンド図である。電荷保持領域1012では、実際には多くのシリコン微粒子1013が存在するが、図4においては、p型シリコン基板1011に隣接するシリコン微粒子Aの各エネルギー準位と、p型シリコン基板1011には隣接していないがSiO膜1015とは隣接しており、電荷保持を行うシリコン微粒子Bの各エネルギー準位の2つのみを、説明を簡単にするため示す。
【0043】
なお、ここでは説明を簡単にするため、シリコン微粒子A─シリコン微粒子B間のトンネル過程を取り上げて説明するが、さらに多数のシリコン微粒子を経る電荷移動でも同じ原理により電荷保持が行われる。
【0044】
シリコン微粒子1013内では、シリコン微粒子1013の粒径が極めて小さいため、シリコン微粒子中の電子がとりうるエネルギー状態(エネルギー準位)が量子化されている。よって、図4に示すように、シリコン微粒子A及びシリコン微粒子B双方においては、エネルギー準位が量子化されている。
【0045】
また、シリコン微粒子1013の各エネルギー準位間の間隔(以下では、「離散エネルギー幅」という。)は、エネルギー準位が低次の場合には大きく、エネルギー準位が高次の場合には小さい。
【0046】
通常のトンネル過程では、通過する障壁層の両側のエネルギー準位のポテンシャルが同一である必要がある。よって、シリコン微粒子B―シリコン微粒子A間では、電圧の印加されていない状態では、第2のトンネル障壁膜1014の両側でいずれも量子化されているシリコン微粒子Bのエネルギー準位の1つとシリコン微粒子Aのエネルギー準位の1つとのポテンシャルが互いに一致したときのみトンネリングが生じるため、トンネリングが生じる確率は非常に低いものになる。したがって、シリコン微粒子B―シリコン微粒子A間では、両者の間で量子化されているエネルギー準位同士のポテンシャルが等しくなるような電圧を加えた場合のみ、共鳴トンネル過程によって電子移動が効率よく行われる一方、それ以外の場合の電子移動は抑制される。つまり、シリコン微粒子B―シリコン微粒子A間の電子移動は外部から加える電圧によって制御でき、かつ、シリコン微粒子Bに一旦注入された電子は長期間保持されることになる。
【0047】
一方、p型シリコン基板1011の伝導帯においては、電子がとり得るエネルギー状態であるエネルギー準位は、ほぼ連続的に存在しており、その状態密度は高い。よって、シリコン微粒子Aの量子化されているエネルギー準位のいずれに対しても、同じポテンシャルを有するエネルギー準位がp型シリコン基板1011に存在すると考えられるので、シリコン微粒子A―p型シリコン基板1011間のトンネル過程は、少なくともエネルギー的には禁止されることはない。また、シリコン微粒子Aの面積は十分大きいので、SiO1014を挟むシリコン微粒子Aとp型シリコン基板1011との準位間では、状態関数の空間的重なりが大きい。したがって、n型多結晶シリコン電極1016に印加する電圧をどのように変化させても、シリコン微粒子A―p型シリコン基板1011間では迅速なトンネル過程が生ずるため、シリコン微粒子Aはp型シリコン基板1011と等電位となる。つまり、シリコン微粒子A―p型シリコン基板1011間の電子移動は容易である。
【0048】
図5(a)、(b)、(c)は、第1の実施形態の半導体素子における電子注入・電子保持を行う際のエネルギーバンド状態をそれぞれ示す部分バンド図である。なお、図5(a)、(b)、(c)においては、理解を容易にするため、荷電子帯のエネルギーバンド状態の図示は省略する。
【0049】
図5(a)に示すように、n型多結晶シリコン電極1016に電圧を印加する前には、p型シリコン基板1011と、シリコン微粒子Aあるいはシリコン微粒子Bとの間での電子移動は起こらない。
【0050】
しかし、図5(b)に示すように、ある一定の正の電圧をn型多結晶シリコン電極1016に印加すると、上述のようにp型シリコン基板1011からシリコン微粒子Aの空のエネルギー準位への電子移動と、シリコン微粒子Aのエネルギー準位からシリコン微粒子B中の空のエネルギー準位への電子移動とが容易に起こる。ここで、通常、複数のシリコン微粒子Bの粒径は、ばらついているため、シリコン微粒子Bの量子化されているエネルギー準位のポテンシャルもばらつく。よって、特に厳密に電圧の制御を行わなくても、加えられた一定の電圧によりシリコン微粒子Aの電子のエネルギー準位のいくつかと、いくつかのシリコン微粒子Bの各エネルギー準位とが、同じポテンシャルとなる。よって、n型多結晶シリコン電極1016に正の電圧を加えると、p型シリコン基板1011からシリコン微粒子Aを経て複数のシリコン微粒子Bへの電子注入を行うことができることとなる。
【0051】
また、量子化されたエネルギー準位間の間隔(離散エネルギー幅)は、ポテンシャルが大きくなるほど小さくなるので、より高い電圧を加えることで、シリコン微粒子B及びシリコン微粒子Aの量子化されたエネルギー準位群の高次の密な部分同士が同じポテンシャルを持つようになり、状態密度も増大するので、より多くの高次のシリコン微粒子Bへの電子注入が起こる。さらに、印加電圧をある一定範囲で掃引したり、高周波を重畳することでより多くのシリコン微粒子Bへの電子注入が可能となる。
【0052】
図5(c)に示すように、複数のシリコン微粒子Bへの電子注入の後、n型多結晶シリコン電極1016への電圧の印加をなくすと、シリコン微粒子Bのポテンシャルは上昇し、p型シリコン基板1011の伝導帯のポテンシャルは低下する。つまり、電圧の印加をなくすることにより、シリコン微粒子Aの各エネルギー準位、シリコン微粒子Bの各エネルギー準位、p型シリコン基板の伝導帯の相対的なポテンシャルの上下関係が変化する。なお、複数のシリコン微粒子Bへの電子注入の後では、シリコン微粒子Bのポテンシャルが、電子注入前(図5(a))と比べ、上昇している。
【0053】
このとき、印加電圧が除かれた際の電位において、一部のシリコン微粒子Bのエネルギー準位のポテンシャルは、シリコン微粒子Aのエネルギー準位のポテンシャルと偶然、一致することによりトンネル過程が許容されてしまうため、シリコン微粒子Bに注入された電子が失われることもある。この点において、従来の半導体素子と同様である。しかし、第1の実施形態に係る半導体素子においては、従来の半導体素子と異なり、電子が注入された多くのシリコン微粒子Bのエネルギー準位のポテンシャルは、シリコン微粒子Bのエネルギー準位のポテンシャルとは、一致しないため、シリコン微粒子B―シリコン微粒子A間のトンネル過程による電子移動が禁止される。したがって、大多数のシリコン微粒子B中に電子が安定に保持されるので、第1の実施形態に係る半導体素子においては、長期の電子保持が可能となる。
【0054】
上記とは逆に負の電圧をn型多結晶シリコン電極1016に印加することによって、電荷の消去を行うことができる。つまり、n型多結晶シリコン電極1016に十分大きい負の電圧を加えると、シリコン微粒子Bのエネルギー準位のポテンシャルとシリコン微粒子Aのエネルギー準位のポテンシャルとが一致したとき、シリコン微粒子Bからシリコン微粒子Aへと電子が引き抜かれる。シリコン微粒子Bへの電子注入時と同様に、印加する負の電圧を比較的大きくすること、印加電圧を掃引しること、あるいは、高周波を重畳することによって、より効率よく電荷消去ができるようになる。
【0055】
第1の実施形態に係る半導体素子においては、静電容量が小さいシリコン微粒子1013とp型シリコン基板1011との間に、静電容が大きいシリコン微粒子1013が存在しているので、静電容量が小さいシリコン微粒子1013とp型シリコン基板1011との間の電荷の移動は、この静電容量が大きいシリコン微粒子1013を介して容易に行なわれる。したがって、n型多結晶シリコン電極1016とp型シリコン基板1011との間に電荷注入用電圧を印加すれば、静電容量の小さい上方のシリコン微粒子1013への電荷の注入が容易に行なわれる。
【0056】
特に、第1の実施形態に係る半導体素子においては、従来の複数のシリコンの微粒子を用いた半導体素子と異なり、電荷保持領域1012中において離散エネルギー幅が大きい量子化された多くのシリコン微粒子1013を設けることによって、蓄積された電子の自然放出を効果的に抑制し、シリコン微粒子B中に、長期間、電子を保持することが可能となる。また、シリコン微粒子1013が量子化されていることによって、電荷の注入・放出を、電圧により、制御することが容易になる。
【0057】
したがって、第1の実施形態に係る半導体素子は、蓄積された電荷の自然放出を効果的に抑制することによって、電荷保持領域1012に電荷を長時間保持できるため、信頼性の高いものとなる。つまり、第1の実施形態に係る半導体素子は、従来の半導体素子に比べ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものであるといえる。
【0058】
また、従来の半導体素子において、容易な電子注入を実現するためには、図57に示すシリコン微粒子6203の粒径を微小とし、かつ、シリコン微粒子6203の粒径を高精度に揃え、また、トンネル酸化膜6202の厚さをも高精度で、かつ、均一に制御する必要があった。一方、第1の実施形態に係る半導体素子においては、種々の粒径を有するシリコン微粒子13がランダムにSiO1014中に拡散されているため、電圧印加時には電子の注入が容易なシリコン微粒子1013から、自動的かつ選択的に、電子が注入され、また、最も電子が保持され易いシリコン微粒子1013で電子保持が行われる。よって、第1の実施形態に係る半導体素子においては、トンネル酸化膜の厚さ及びシリコン微粒子1013の粒径を制御する必要がないので、従来の半導体素子の製造工程よりも第1の実施形態に係る半導体素子の製造工程のほうが容易となる。
【0059】
さらに、第1の実施形態に係る半導体素子においては、電荷保持領域1012中に、様々な静電容量のシリコン微粒子1013が存在しているため、ある電子保持期間(記録時間)を実現するのに必要最小限の電圧によって電子注入を行うことも可能となる。また、同じ大きさの必要最小限の電圧によって電荷消去を行うこともできる。
【0060】
また、従来の半導体素子においては、図57に示すp型シリコン基板6201─シリコン微粒子6203間のみのトンネル過程を利用するので、単一の面上にシリコン微粒子6203を配置する必要があった。よって、半導体素子において保持できる電子量が単一の面上に作製できるシリコン微粒子6203の数により制限されていた。一方、第1の実施形態に係る半導体素子においては、図1に示すp型シリコン基板1011─シリコン微粒子1013間のトンネル過程だけでなく、各シリコン微粒子1013間のトンネル過程をも利用するため、シリコン微粒子1013を厚み方向にも配置できる。したがって、第1の実施形態に係る半導体素子においては、従来の半導体素子よりも多くの電子量を保持することができるという利点もある。
【0061】
上述のように、第1の実施形態に係る新規な構造を有する半導体素子および第1の実施形態に係る半導体素子の製造方法によって、従来になく、作製プロセスが容易で、かつ、微粒子への電荷注入・保持・消去の信頼性の高い半導体素子が提供される。
【0062】
なお、第1の実施形態に係る半導体素子は、微小な電荷の移動・蓄積を制御する種々の半導体素子に応用できるものであることはいうまでもない。
【0063】
(第2の実施形態)
―第2の実施形態に係る半導体素子の構造―
図6は、第2の実施形態に係る半導体素子を示す断面図である。図6に示すように、第2の実施形態に係る半導体素子は、MIS型トランジスタ構造を有している。この半導体素子において、p型シリコン基板1071上には、いくつかの微粒子分散領域1073aからなる電荷保持領域1073、SiO膜からなるゲート絶縁膜1076及びゲート電極として機能するn型多結晶シリコン電極1078が下から順次積み上げられている。また、各微粒子分散領域1073aでは、シリコン微粒子1074が、絶縁体であるSiO1075中に分散されている。また、下地となるp型シリコン基板1071中のn型多結晶シリコン電極1077の両側方に位置する領域にはn型拡散領域(ソース・ドレイン領域)1072が設けられている。さらに、n型拡散領域1072上には、ソース・ドレイン電極として機能する金属電極1078が設けられている。電荷保持領域1073の微粒子を除いた部分(マトリクス)は、微粒子より大きなバンドギャップを有する半導体でもよい。
【0064】
―第2の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
次に、第2の実施形態に係る半導体素子の製造工程について説明する。第1の実施形態と同様の半導体基板を形成した後、各膜の形成とフォトリソグラフィー及びエッチングによってp型シリコン基板1071上に、電荷保持領域1073、ゲート絶縁膜1076及びn型多結晶シリコン電極1077を形成する。次に、イオン注入によって、n型拡散領域1072を形成した後、スパッタ法及びエッチングによって、金属電極1079を形成する。これにより、第2の実施形態に係る半導体素子を製造することができる。
【0065】
─第2の実施形態に係る半導体素子の特性─
第2の実施形態においても、シリコン微粒子1074の静電容量は、p型シリコン基板1071との距離が小さいものほど大きい。よって、第1の実施形態と同様の原理により、シリコン微粒子1074への電子の注入・シリコン微粒子1074内での電子の保持・シリコン微粒子1074からの電子の引き抜きを行うことができる。また、上述のように、第2の実施形態に係る半導体素子は、MIS型トランジスタ構造を有している。さらに、第2の実施形態では、電子を保持するためのシリコン微粒子1074がp型シリコン基板1071とn型多結晶シリコン電極1077との間のSiO1075中に設けられている。よって、シリコン微粒子1074における電子の有無によって、素子のしきい値電圧は高低変化する。このしきい値電圧の高低を情報H(ハイ)と情報L(ロー)とに対応させることにより、情報の書き込み・読み出しを行うことができる。
【0066】
第2の実施形態に係る半導体素子においては、静電容量が小さいシリコン微粒子1074とp型シリコン基板1071との間に、静電容量が大きいシリコン微粒子1074が存在しているので、静電容量の小さいシリコン微粒子1074とp型シリコン基板1071との間の電荷の移動は、この静電容量の大きいシリコン微粒子1074を介して容易に行なわれる。
【0067】
特に、第2の実施形態においても、電荷保持領域1073中において離散エネルギー幅が大きい量子化された多くのシリコン微粒子1074を設けることによって、蓄積された電子の自然放出を効果的に抑制し、シリコン微粒子B中に、長期間、電子を保持することが可能となる。また、シリコン微粒子1074が量子化されていることによって、電荷の注入・放出を、電圧により、制御することが容易になる。
【0068】
したがって、第2の実施形態に係る半導体素子は、蓄積された電荷の自然放出を効果的に抑制することによって、電荷保持領域1073に電荷を長時間保持できるため、信頼性の高いものとなる。よって、第2の実施形態に係る半導体素子は、素子における動作の高速化、動作消費電力の低減の要請を満たしつつ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものとなり得る。さらに、第2の実施形態においては、単一素子により基本的なメモリ動作が実現されるので、高密度の集積化が可能となる。
【0069】
また、第2の実施形態に係る半導体素子においては、第1の実施形態に係る半導体素子と同様に、トンネル酸化膜の厚さを制御する必要がないので、従来の半導体素子の製造工程よりも、第2の実施形態に係る半導体素子の製造工程のほうが容易となる。
【0070】
なお、第2の実施形態においては、n型拡散領域1072のうち少なくとも一方の上あるいは上方には、シリコン微粒子1074が存在しない領域を設けることが好ましい。これにより、n型拡散領域1072に電圧を印加した際にシリコン微粒子1074を経て短絡した電流が、n型拡散領域1072間に流れることを防止することができる。
【0071】
また、第2の実施形態においては、シリコン微粒子1074からなる層をいくつかの部分に図6に示す断面に対し垂直な方向に分割することもできる。これによっても、n型拡散領域1072に電圧を印加した際にシリコン微粒子1074を経て短絡した電流が、n型拡散領域1072間に流れることを防止することができる。
【0072】
(第3の実施形態)
―第3の実施形態に係る半導体素子の構造―
図7は、第3の実施形態に係る半導体素子の断面図である。この半導体素子において、p型シリコン基板1081上には、いくつかの微粒子分散領域1082aからなる電荷保持領域1082(厚さ20nm程度)、絶縁膜として機能するSiO膜1086(厚さ20nm)、及び上部電極として機能するn型多結晶シリコン電極1087が下から順に設けられている。また、各微粒子分散領域1082aでは、シリコン微粒子1084(粒径5nm程度)が、絶縁体であるSiO1085中に分散されている。電荷保持領域1082の微粒子を除いた部分(マトリクス)は、微粒子より大きなバンドギャップを有する半導体でもよい。なお、SiO膜1086の厚さを5〜20nm、シリコン微粒子1084の粒径を2〜10nm程度とするのが好ましい。
【0073】
図7に示すように、第1の実施形態と異なり、第3の実施形態においては、シリコン微粒子1084の分散密度は、p型シリコン基板1081に隣接する箇所からSiO膜1086に隣接する箇所に向かって、連続して減少している。なお、電荷保持領域1082においては、p型シリコン基板1081に隣接する箇所では、シリコン微粒子1084の分散密度は1×1020cm−3である一方、SiO膜1086に隣接する箇所では、シリコン微粒子1084の分散密度は1×1015cm−3である。また、電荷保持領域1082においては、界面はない。
【0074】
―第3の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
次に、第3の実施形態に係る半導体素子の製造工程について説明する。まず、p型シリコン基板1081を設置したスパッタ装置内において、SiO上にシリコンのタブレットを並べ、そこに、加速したイオンを衝突させる。この際の衝撃によってはじき出された原子、分子をp型シリコン基板1081上に堆積する。ただし、SiO上に並べるシリコンのタブレットの量を徐々に減少させながら、このスパッタを繰り返す。その後、基板の熱処理を行う。これらの工程によって、p型シリコン基板1081上において、SiO1085中でシリコン微粒子1084の分散密度が、p型シリコン基板1081に隣接する箇所からSiO2膜1086に隣接する箇所に向かって、連続して減少した膜、つまり、いくつかの微粒子分散領域1082aからなる電荷保持領域1082を形成する。次に、CVD装置のチャンバー内のサセプター上に基板を設置し、SiO膜1086を電荷保持領域1082上に堆積した後、同一のチャンバー内で、n型多結晶シリコン電極1087をSiO膜1086上に堆積する。
【0075】
なお、ここで、電荷保持領域1082のうちn型多結晶シリコン電極1087に近い箇所の微粒子の分散密度を1×1017cm−3以下という十分小さなものにすることによって、電荷保持領域1082のうちn型多結晶シリコン電極1087に近い箇所に、絶縁膜としての機能をも兼ね備えさせることができる。この場合には、第3の実施形態において、SiO膜1086の一部を形成しないこと、すなわち、SiO膜1086の一部の厚さを実質的に0とすることも可能である。
【0076】
―第3の実施形態に係る半導体素子の電子注入・保持・引き抜き機構―
第3の実施形態においては、シリコン微粒子1084の分散密度が、微粒子分散領域1082の上部になればなるほど減少するため、各シリコン微粒子1084間の平均的な距離が増大する。よって、電荷保持領域1082の上部になればなるほどシリコン微粒子1084の静電容量は減少する。すなわち、シリコン微粒子1084の静電容量は、p型シリコン基板1081との距離が小さいものほど大きい。また、トンネル障壁が厚くなるため、n型多結晶シリコン電極1087に近いシリコン微粒子1084ほど電子注入が起こりにくくなる。
【0077】
また、第3の実施形態に係る半導体素子においては、従来の複数のシリコンの微粒子を用いた半導体素子と異なり、電荷保持領域1082中において離散エネルギー幅が大きい量子化された多くのシリコン微粒子1084を設けることによって、蓄積された電子の自然放出を効果的に抑制し、シリコン微粒子1084中に、長期間、電子を保持することが可能となる。また、シリコン微粒子1084が量子化されていることによって、電荷の注入・放出を、電圧により、制御することが容易になる。
【0078】
したがって、第3の実施形態に係る半導体素子は、従来の半導体素子に比べ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものである。
【0079】
また、第3の実施形態に係る半導体素子においては、第1の実施形態に係る半導体素子と同様に、種々の粒径を有するシリコン微粒子1084がSiO1085中に拡散されているため、電圧印加時には注入が容易なシリコン微粒子1084から、自動的かつ選択的に、電子が注入され、また、最も電子が保持され易いシリコン微粒子1084で電子保持が行われる。よって、第3の実施形態に係る半導体素子においては、第1の実施形態に係る半導体素子と同様に、トンネル酸化膜の厚さ及びシリコン微粒子1084の粒径を制御する必要がないので、従来の半導体素子の製造工程よりも第3の実施形態に係る半導体素子の製造工程のほうが容易となる。
【0080】
さらに、第3の実施形態に係る半導体素子においては、第1の実施形態に係る半導体素子と同様に、電荷保持領域1082中に、様々な静電容量のシリコン微粒子1084が存在しているため、ある電子保持期間(記録時間)を実現するのに必要最小限の電圧によって電子注入を行うことも可能となる。また、同じ大きさの必要最小限の電圧によって電荷消去を行うこともできる。
【0081】
なお、第3の実施形態においては、シリコン微粒子1084の分散密度は、p型シリコン基板1081に隣接する箇所からSiO膜1086に隣接する箇所に向かって、連続して減少している。また、電荷保持領域1082においては、界面はない。しかし、電荷保持領域1082中においてシリコン微粒子1084の分散密度が連続的に変化しないような箇所を設けることも可能である。また、電荷保持領域1082中において、その上下で電荷保持領域1082の微粒子を除いた部分の組成が変化する面、その上下でシリコン微粒子1084の分散密度あるいは組成が変化する面、その他の界面を設けることも可能である。なお、界面は複数であってもよい。また、シリコン微粒子1084は、p型シリコン基板1081との距離が共通であるシリコン微粒子1084からなる複数の微粒子体群に群別されていてもよい。これらの場合においても、各シリコン微粒子1084間の静電容量は一定でないため、実質的に第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0082】
(第4の実施形態)
―第4の実施形態に係る半導体素子の構造―
図8は、第4の実施形態に係る半導体素子を示す断面図である。図8に示すように、第4の実施形態に係る半導体素子は、MIS型トランジスタ構造を有している。この半導体素子において、p型シリコン基板1091上には、いくつかの微粒子分散領域1093aからなる電荷保持領域1093、SiO膜からなるゲート絶縁膜1097及びゲート電極として機能するn型多結晶シリコン電極1098が下から順次積み上げられている。また、各微粒子分散領域1093aでは、シリコン微粒子1095が、絶縁体であるSiO1096中に分散されている。第4の実施形態においては、シリコン微粒子1095の分散密度は、p型シリコン基板1091に隣接する箇所からゲート絶縁膜1097に隣接する箇所に向かって、連続して減少している点で、第2の実施形態と異なる。また、下地となるp型シリコン基板1091中のn型多結晶シリコン電極1098の両側方に位置する領域にはn型拡散領域1092が設けられている。さらに、n型拡散領域1092上には、ソース・ドレイン電極として機能する金属電極1099が設けられている。電荷保持領域1093の微粒子を除いた部分(マトリクス)、微粒子より大きなバンドギャップを有する半導体でもよい。
【0083】
―第4の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
次に、第4の実施形態に係る半導体素子の製造工程について説明する。第3の実施形態と同様の半導体基板を形成した後、各膜の形成とフォトリソグラフィー及びエッチングによってp型シリコン基板1091上に、電荷保持領域1093、ゲート絶縁膜1097及びn型多結晶シリコン電極1098を形成する。次に、イオン注入によって、n型拡散領域1092を形成した後、スパッタ法及びエッチングによって、金属電極1099を形成する。これにより、第4の実施形態に係る半導体素子を製造することができる。
【0084】
─第4の実施形態に係る半導体素子の特性─
第4の実施形態においても、シリコン微粒子1095の静電容量は、p型シリコン基板1091との距離が小さいものほど大きい。よって、第3の実施形態と同様の原理により、シリコン微粒子1095への電子の注入・シリコン微粒子1095内での電子の保持・シリコン微粒子1095からの電子の引き抜きを行うことができる。また、上述のように、第4の実施形態に係る半導体素子は、MIS型トランジスタ構造を有している。さらに、第4の実施形態では、電子を保持するためのシリコン微粒子1095がp型シリコン基板1091とn型多結晶シリコン電極1098との間のSiO1096中に設けられている。よって、シリコン微粒子1095における電子の有無によって、素子のしきい値電圧は高低変化する。このしきい値電圧の高低を情報H(ハイ)と情報L(ロー)とに対応させることにより、情報の書き込み・読み出しを行うことができる。
【0085】
第4の実施形態に係る半導体素子においては、静電容量が小さいシリコン微粒子1095とp型シリコン基板1091との間に、静電容量が大きいシリコン微粒子1095が存在しているので、静電容量の小さいシリコン微粒子1095とp型シリコン基板1091との間の電荷の移動は、この静電容量が大きいシリコン微粒子1095を介して容易に行なわれる。
【0086】
特に、第4の実施形態においても、電荷保持領域1093中において離散エネルギー幅が大きい量子化された多くのシリコン微粒子1095を設けることによって、蓄積された電子の自然放出を効果的に抑制し、シリコン微粒子B中に、長期間、電子を保持することが可能となる。また、シリコン微粒子1095が量子化されていることによって、電荷の注入・放出を、電圧により、制御することが容易になる。
【0087】
したがって、第4の実施形態に係る半導体素子は、蓄積された電荷の自然放出を効果的に抑制することによって、電荷保持領域1093に電荷を長時間保持できるため、信頼性の高いものとなる。よって、第4の実施形態に係る半導体素子は、素子における動作の高速化、動作消費電力の低減の要請を満たしつつ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものとなり得る。さらに、第4の実施形態においては、単一素子により基本的なメモリ動作が実現されるので、高密度の集積化が可能となる。
【0088】
また、第4の実施形態に係る半導体素子においては、第3の実施形態に係る半導体素子と同様に、トンネル酸化膜の厚さを制御する必要がないので、従来の半導体素子の製造工程よりも、第4の実施形態に係る半導体素子の製造工程のほうが容易となる。
【0089】
なお、第4の実施形態においては、n型拡散領域1092のうち少なくとも一方の上あるいは上方には、シリコン微粒子1095が存在しない領域を設けることもできる。これにより、n型拡散領域1092に電圧を印加した際にシリコン微粒子1095を経て短絡した電流が、n型拡散領域1092間に流れることを防止することができる。
【0090】
また、第4の実施形態においては、シリコン微粒子1095からなる層をいくつかの部分に図8に示す断面に対し垂直な方向に分割することもできる。これによっても、n型拡散領域1092に電圧を印加した際にシリコン微粒子1095を経て短絡した電流が、n型拡散領域1092間に流れることを防止することができる。
【0091】
(第5の実施形態)
―第5の実施形態に係る半導体素子の構造―
図9は、第5の実施形態に係る半導体素子の断面図である。この半導体素子において、p型シリコン基板1101上には、いくつかの微粒子分散領域1102aからなる電荷保持領域1102(厚さ30nm程度)、絶縁膜として機能するSiO2膜1106(厚さ20nm)、及び上部電極として機能するn型多結晶シリコン電極1107が下から順に設けられている。また、各微粒子分散領域1102aでは、シリコン微粒子1104が、絶縁体であるSiO1105中に分散されている。電荷保持領域1102の微粒子を除いた部分(マトリクス)は、微粒子より大きなバンドギャップを有する半導体でもよい。なお、SiO膜1106の厚さを5〜20nm、シリコン微粒子1104の分散密度を1×1015cm−3〜1×1020cm−3程度とするのが好ましい。
【0092】
図9に示すように、第1の実施形態と異なり、第5の実施形態においては、シリコン微粒子1104の粒径は、p型シリコン基板1101に隣接する箇所からSiO膜1106に隣接する箇所に向かって、連続して減少している。なお、電荷保持領域1102においては、p型シリコン基板1101に隣接する箇所では、シリコン微粒子1104の粒径は20nm程度である一方、SiO膜1106に隣接する箇所では、シリコン微粒子1104の粒径は1nm程度とするのが好ましい。また、電荷保持領域1102においては、界面はない。
【0093】
―第5の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
次に、第5の実施形態に係る半導体素子の製造工程について説明する。まず、p型シリコン基板1101を設置したスパッタ装置内において、SiO上にシリコンのタブレットを並べ、そこに、加速したイオンを衝突させる。この際の衝撃によってはじき出された原子、分子をp型シリコン基板1101上に堆積する。その後、基板の熱処理を行う。次に、SiO上のシリコンのタブレットの量を減らし、スパッタを行った後、先程の熱処理の際の基板温度よりも低い温度で基板の熱処理を行う。その後、同様にして、スパッタによる堆積と熱処理によるシリコン微粒子1104の成長とを繰り返す。これらの工程によって、p型シリコン基板1101上において、SiO1105中でシリコン微粒子1104の粒径が、p型シリコン基板1101に隣接する箇所からSiO膜1106に隣接する箇所に向かって、連続して減少した膜、つまり、いくつかの微粒子分散領域1102aからなる電荷保持領域1102を形成する。次に、CVD装置のチャンバー内のサセプター上に基板を設置し、SiO膜1106を電荷保持領域1102上に堆積した後、同一のチャンバー内で、n型多結晶シリコン電極1107をSiO膜1106上に堆積する。
【0094】
なお、電荷保持領域1102を1回のCVD法によって形成しても、電荷保持領域1102を、SiO1105中でシリコン微粒子1104の粒径が、p型シリコン基板1101に隣接する箇所からSiO膜1106に隣接する箇所に向かって、連続して減少している膜とすることが可能である。
【0095】
また、電荷保持領域1102のうちn型多結晶シリコン電極1107に近い箇所の微粒子粒径を3nm以下という十分小さなものにすることによって、電荷保持領域1102のうちn型多結晶シリコン電極1107に近い箇所に、絶縁膜としての機能をも兼ね備えさせることができる。この場合には、第3の実施形態において、SiO膜1106の一部を形成しないこと、すなわち、SiO膜1106の一部の厚さを実質的に0とすることも可能である。
【0096】
―第5の実施形態に係る半導体素子の電子注入・保持・引き抜き機構―
第5の実施形態においては、シリコン微粒子1104の粒径が、微粒子分散領域1102の上部になればなるほど減少するため、各シリコン微粒子1104間の平均的な距離が増大する。よって、電荷保持領域1102の上部になればなるほどシリコン微粒子1104の静電容量は減少する。すなわち、シリコン微粒子1104の静電容量は、p型シリコン基板1101との距離が小さいものほど大きい。したがって、トンネル障壁が厚くなるため、n型多結晶シリコン電極1107に近いシリコン微粒子1104ほど電子注入が起こりにくくなる。
【0097】
特に、第5の実施形態に係る半導体素子においては、従来の複数のシリコンの微粒子を用いた半導体素子と異なり、電荷保持領域1102中において離散エネルギー幅が大きい量子化された多くのシリコン微粒子1104を設けることによって、蓄積された電子の自然放出を効果的に抑制し、シリコン微粒子1104中に、長期間、電子を保持することが可能となる。また、シリコン微粒子1104が量子化されていることによって、電荷の注入・放出を、電圧により、制御することが容易になる。
【0098】
したがって、第5の実施形態に係る半導体素子は、従来の半導体素子及び第1の実施形態に係る半導体素子に比べ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものである。
【0099】
また、第5の実施形態に係る半導体素子においては、第1の実施形態に係る半導体素子と同様に、種々の粒径を有するシリコン微粒子1104がSiO1105中に拡散されているため、電圧印加時には注入が容易なシリコン微粒子1104から、自動的かつ選択的に、電子が注入され、また、最も電子が保持され易いシリコン微粒子1104で電子保持が行われる。よって、第5の実施形態に係る半導体素子においては、第1の実施形態に係る半導体素子と同様に、トンネル酸化膜の厚さ及びシリコン微粒子1104の粒径を制御する必要がないので、従来の半導体素子の製造工程よりも第5の実施形態に係る半導体素子の製造工程のほうが容易となる。
【0100】
さらに、第5の実施形態に係る半導体素子においては、第1の実施形態に係る半導体素子と同様に、電荷保持領域1102中に、様々な静電容量のシリコン微粒子1104が存在しているため、ある電子保持期間(記録時間)を実現するのに必要最小限の電圧によって電子注入を行うことも可能となる。また、同じ大きさの必要最小限の電圧によって電荷消去を行うこともできる。
【0101】
なお、第5の実施形態においては、シリコン微粒子1104の粒径は、p型シリコン基板1101に隣接する箇所からSiO膜1106に隣接する箇所に向かって、連続して減少している。また、電荷保持領域1102においては、界面はない。しかし、電荷保持領域1102中においてシリコン微粒子1104の粒径が連続的に変化しないような箇所を設けることも可能である。また、電荷保持領域1102中において、その上下で電荷保持領域1102の微粒子を除いた部分の組成が変化する面、その上下でシリコン微粒子1104の粒径、分散密度、あるいは組成が変化する面、その他の界面を設けることも可能である。なお、界面は複数であってもよい。また、シリコン微粒子1104は、p型シリコン基板1101との距離が共通であるシリコン微粒子1104からなる複数の微粒子体群に群別されていてもよい。これらの場合においても、各シリコン微粒子1104間の静電容量は一定でないため、実質的に第5の実施形態と同様の効果が得られる。
【0102】
(第6の実施形態)
―第6の実施形態に係る半導体素子の構造―
図10は、第6の実施形態に係る半導体素子を示す断面図である。図10に示すように、第6の実施形態に係る半導体素子は、MIS型トランジスタ構造を有している。この半導体素子において、p型シリコン基板1111上には、いくつかの微粒子分散領域1113aからなる電荷保持領域1113、SiO膜からなるゲート絶縁膜1117及びゲート電極として機能するn型多結晶シリコン電極1118が下から順次積み上げられている。また、各微粒子分散領域1113aでは、シリコン微粒子1115が、絶縁体であるSiO1116中に分散されている。第6の実施形態においては、シリコン微粒子1115の粒径は、p型シリコン基板1111に隣接する箇所からゲート絶縁膜1117に隣接する箇所に向かって、連続して減少している点で、第2の実施形態と異なる。また、下地となるp型シリコン基板1111中のn型多結晶シリコン電極1118の両側方に位置する領域にはn型拡散領域1112が設けられている。さらに、n型拡散領域1112上には、ソース・ドレイン電極として機能する金属電極1119が設けられている。電荷保持領域1113の微粒子を除いた部分(マトリクス)は、微粒子より大きなバンドギャップを有する半導体でもよい。
【0103】
―第6の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
次に、第6の実施形態に係る半導体素子の製造工程について説明する。第5の実施形態と同様の半導体基板を形成した後、各膜の形成とフォトリソグラフィー及びエッチングによってp型シリコン基板1111上に、電荷保持領域1113、ゲート絶縁膜1117及びn型多結晶シリコン電極1118を形成する。次に、イオン注入によって、n型拡散領域1112を形成した後、スパッタ法及びエッチングによって、金属電極1119を形成する。これにより、第6の実施形態に係る半導体素子を製造することができる。
【0104】
─第6の実施形態に係る半導体素子の特性─
第6の実施形態においても、シリコン微粒子1115の静電容量は、p型シリコン基板1111との距離が小さいものほど小さい。よって、第5の実施形態と同様の原理により、シリコン微粒子1115への電子の注入・シリコン微粒子1115内での電子の保持・シリコン微粒子1115からの電子の引き抜きを行うことができる。また、上述のように、第6の実施形態に係る半導体素子は、MIS型トランジスタ構造を有している。さらに、第6の実施形態では、電子を保持するためのシリコン微粒子1115がp型シリコン基板1111とn型多結晶シリコン電極1118との間のSiO1116中に設けられている。よって、シリコン微粒子1115における電子の有無によって、素子のしきい値電圧は高低変化する。このしきい値電圧の高低を情報H(ハイ)と情報L(ロー)とに対応させることにより、情報の書き込み・読み出しを行うことができる。
【0105】
特に、第6の実施形態においても、電荷保持領域1113中において離散エネルギー幅が大きい量子化された多くのシリコン微粒子1115を設けることによって、蓄積された電子の自然放出を効果的に抑制し、シリコン微粒子B中に、長期間、電子を保持することが可能となる。また、シリコン微粒子1115が量子化されていることによって、電荷の注入・放出を、電圧により、制御することが容易になる。
【0106】
したがって、第6の実施形態に係る半導体素子は、蓄積された電荷の自然放出を効果的に抑制することによって、電荷保持領域113に電荷を長時間保持できるため、信頼性の高いものとなる。よって、第6の実施形態に係る半導体素子は、素子における動作の高速化、動作消費電力の低減の要請を満たしつつ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものとなり得る。さらに、第6の実施形態においては、単一素子により基本的なメモリ動作が実現されるので、高密度の集積化が可能となる。
【0107】
また、第6の実施形態に係る半導体素子においては、第5の実施形態に係る半導体素子と同様に、トンネル酸化膜の厚さを制御する必要がないので、従来の半導体素子の製造工程よりも、第6の実施形態に係る半導体素子の製造工程のほうが容易となる。
【0108】
なお、第6の実施形態においては、n型拡散領域1112のうち少なくとも一方の上あるいは上方には、シリコン微粒子1115が存在しない領域を設けることもできる。これにより、n型拡散領域1112に電圧を印加した際にシリコン微粒子1115を経て短絡した電流が、n型拡散領域1112間に流れることを防止することができる。
【0109】
また、第6の実施形態においては、シリコン微粒子1115からなる層をいくつかの部分に図10に示す断面に対し垂直な方向に分割することもできる。これによっても、n型拡散領域1112に電圧を印加した際にシリコン微粒子1115を経て短絡した電流が、n型拡散領域1112間に流れることを防止することができる。
【0110】
(第7の実施形態)
―第7の実施形態に係る半導体素子の構造―
図11は、第7の実施形態に係る半導体素子の断面図である。この半導体素子において、p型シリコン基板1121上には、いくつかの微粒子分散領域1122aからなる電荷保持領域1122(厚さ30nm程度)、絶縁膜として機能するSiO膜1126(厚さ20nm)、及び上部電極として機能するn型多結晶シリコン電極1127が下から順に設けられている。電荷保持領域1122の微粒子を除いた部分(マトリクス)は、微粒子より大きなバンドギャップを有する半導体でもよい。なお、SiO膜1126の厚さを5〜20nmとするのが好ましい。
【0111】
図11に示すように、第1、3、5の実施形態と異なり、第7の実施形態においては、電荷保持領域1122では、SiGe微粒子1124(粒径1〜20nm程度、分散密度1×1015cm−3〜1×1020cm−3程度)が、絶縁体であるSiO1125中に分散されている。また、SiGe微粒子1124の組成におけるGeの占める割合は、p型シリコン基板1121に隣接する箇所からSiO膜1126に隣接する箇所に向かって、連続して増加している。なお、電荷保持領域1122においては、p型シリコン基板1121に隣接する箇所では、SiGe微粒子1124の組成におけるGeの占める割合はほぼ0%である一方、SiGe微粒子1124の組成におけるGeの占める割合はほぼ100%である。また、電荷保持領域1122においては、界面はない。
【0112】
―第7の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
次に、第7の実施形態に係る半導体素子の製造工程について説明する。まず、p型シリコン基板1121を設置したスパッタ装置内において、SiO、Si、及びGeのそれぞれに、加速したイオンを衝突させる。ただし、SiO、Si、及びGeの堆積量の比は、スパッタ装置内において、SiO、Si、及びGeそれぞれに対して設けられたシャッタの開閉によって調節する。これらのシャッタを用いて、Siに対するGeの堆積量の比を増加させつつ、この際の衝撃によってはじき出された原子、分子をp型シリコン基板1121上に堆積する。その後、基板の熱処理を行う。これらの工程によって、p型シリコン基板1121上において、SiGe微粒子1124の組成におけるGeの占める割合が、p型シリコン基板1121に隣接する箇所からSiO膜1126に隣接する箇所に向かって、連続して増加するように、いくつかの微粒子分散領域1122aからなる電荷保持領域1122を形成する。次に、CVD装置のチャンバー内のサセプター上に基板を設置し、SiO膜1126を電荷保持領域1122上に堆積した後、同一のチャンバー内で、n型多結晶シリコン電極1127をSiO膜1126上に堆積する。
【0113】
―第7の実施形態に係る半導体素子の電子注入・保持・引き抜き機構―
第7の実施形態に係る半導体素子においては、SiGe微粒子1124の組成におけるGeの占める割合(Ge含有率)は、p型シリコン基板1121との距離が小さいものほど小さく、また、その電子親和力は小さく、電子親和力とバンドギャップとの和は大きい。これにより、電子及び正孔に対する周囲のSiO1125の障壁高さはシリコン基板との距離が小さいほど小さくなる。この関係については、後述する実施形態において説明する。よって、Ge含有率が大きなSiGe微粒子1124とp型シリコン基板1121との間に、Ge含有率が小さなSiGe微粒子1124が存在しているので、Ge含有率の大きなSiGe微粒子1124とp型シリコン基板1121との間の電荷の移動は、Ge含有率が小さなSiGe微粒子1124を介して容易に行なわれる。
【0114】
特に、第7の実施形態に係る半導体素子においては、従来の複数のシリコンの微粒子を用いた半導体素子と異なり、電荷保持領域1122中において離散エネルギー幅が大きい量子化された多くのSiGe微粒子1124を設けることによって、蓄積された電子の自然放出を効果的に抑制し、SiGe微粒子1124中に、長期間、電子を保持することが可能となる。また、SiGe微粒子1124が量子化されていることによって、電荷の注入・放出を、電圧により、制御することが容易になる。
【0115】
よって、第7の実施形態に係る半導体素子においても、第1の実施形態と同様に、蓄積された電子の自然放出を効果的に抑制し、SiGe微粒子1124中に、長期間、電子を保持することができる。
【0116】
図14は、第7の実施形態に係る半導体素子におけるバンド図である。ここで、微粒子分散領域1125においては、実際には多くのSiGe微粒子1124が存在するが、説明を簡単にするため、SiGe微粒子1124をp型シリコン基板1121に隣接する箇所からSiO膜1126に隣接する箇所に向かって、順に、シリコン微粒子A、シリコン微粒子B、シリコン微粒子C、シリコン微粒子Dとする。そこで、図14においては、シリコン微粒子A、B、C、Dの領域、SiO1125の領域におけるバンド構造を示すこととする。
【0117】
一般に、SiGeにおいては、SiGeの組成におけるGeの占める割合が増加すればするほどに、荷電子帯と伝導帯の間の禁制帯幅であるバンドギャップは、小さくなる。ここで、上述のように、SiGe微粒子1124の組成におけるGeの占める割合は、p型シリコン基板1121に隣接する箇所からSiO膜1126に隣接する箇所に向かって、連続して増加している。よって、図14に示すように、シリコン微粒子A、シリコン微粒子B、シリコン微粒子C、シリコン微粒子Dの順に、バンドギャップは小さくなる。また、同時に、電子親和力は大きくなり、電子親和力とバンドギャップとの和は小さくなる。このため、この順に、電子及び正孔に対するトンネル障壁(障壁高さ)は大きくなる。ゆえに、この順に、トンネル過程によって、電子を注入するのは困難になる反面、電子を保持する能力は高くなる。
【0118】
したがって、第7の実施形態に係る半導体素子は、従来の半導体素子及び第1の実施形態に係る半導体素子に比べ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものである。
【0119】
また、第7の実施形態に係る半導体素子においては、第1の実施形態に係る半導体素子と同様に、種々の粒径を有するSiGe微粒子1124がSiO1125中に拡散されているため、電圧印加時には注入が容易なSiGe微粒子1124から、自動的かつ選択的に、電子が注入され、また、最も電子が保持され易いSiGe微粒子1124で電子保持が行われる。よって、第7の実施形態に係る半導体素子においては、第1の実施形態に係る半導体素子と同様に、トンネル酸化膜の厚さ及びSiGe微粒子1124の粒径を制御する必要がないので、従来の半導体素子の製造工程よりも第7の実施形態に係る半導体素子の製造工程のほうが容易となる。
【0120】
さらに、第7の実施形態に係る半導体素子においては、第1の実施形態に係る半導体素子と同様に、電荷保持領域1122中に、様々な静電容量のSiGe微粒子1124が存在しているため、ある電子保持期間(記録時間)を実現するのに必要最小限の電圧によって電子注入を行うことも可能となる。また、同じ大きさの必要最小限の電圧によって電荷消去を行うこともできる。
【0121】
微粒子のエネルギー準位を変えることによって、トンネル障壁の高さを制御するには、SiGe微粒子を用いてGe組成を変化させるほか、ZnCdSやZnSTe等の混晶を用いてCd組成やTe組成を変化させる等、他の材料系を用いることもできる。
【0122】
また、SiO1125に代えてSi(4x=2y+3z)を用いてN組成を変化させる等、微粒子周辺の材質の電子親和力あるいは導伝帯エネルギーを変化させることで障壁高さを制御することも可能である。つまり、Siにおけるyの値を大きくすることによって、バンドギャップが大きくなり、電子親和力は小さく、また、電子親和力とバンドギャップとの和は大きくなるため、障壁高さは大きくなる。これによって、上述と同様の効果が得られる。
【0123】
また、電荷保持領域1122のうちn型多結晶シリコン電極1127に近い箇所の微粒子の分散密度を1×1017cm−3以下という十分小さなものにすることによって、又は、それらの微粒子粒径を3nm以下という十分小さなものにすることによって、電荷保持領域1122のうちn型多結晶シリコン電極1127に近い箇所に、絶縁膜としての機能をも兼ね備えさせることができる。この場合には、第3の実施形態において、SiO膜1126の一部を形成しないこと、すなわち、SiO膜1126の一部の厚さを実質的に0とすることも可能である。
【0124】
なお、電荷保持領域1122においては、界面はない。しかし、電荷保持領域1122中においてバンドギャップが連続的に変化しないような箇所を設けることも可能である。また、電荷保持領域1122中において、その上下で電荷保持領域1122の微粒子を除いた部分の組成が変化する面、その上下で微粒子1124の粒径、分散密度、あるいは組成が変化する面、微粒子分散領域のバンドギャップが変化する面その他の界面を設けることも可能である。なお、界面は複数であってもよい。また、シリコン微粒子1124は、p型シリコン基板1121との距離が共通であるシリコン微粒子1124からなる複数の微粒子体群に群別されていてもよい。これらの場合においても、各微粒子1124間の静電容量は一定でないため、実質的に第7の実施形態と同様の効果が得られる。
【0125】
界面を有する半導体素子の一例として、図15に、複数のSiGe微粒子1124を有し、基板の下方から順に、電荷保持領域1122内に、配置された複数の微粒子群1128を備える半導体素子の断面図を示す。この半導体素子においては、基板の下方から順に、微粒子群1128ごとに、SiGeの組成におけるGeの占める割合が増加しているため、この順で、トンネル障壁(障壁高さ)は大きくなることになる。
【0126】
(第8の実施形態)
―第8の実施形態に係る半導体素子の構造―
図12は、第8の実施形態に係る半導体素子を示す断面図である。図12に示すように、第8の実施形態に係る半導体素子は、MIS型トランジスタ構造を有している。この半導体素子において、p型シリコン基板1131上には、いくつかの微粒子分散領域1133aからなる電荷保持領域1133、SiO膜からなるゲート絶縁膜1137及びゲート電極として機能するn型多結晶シリコン電極1138が下から順次積み上げられている。第2、4、6の実施形態と異なり、第8の実施形態においては、各微粒子分散領域1133aでは、SiGe微粒子1135が、絶縁体であるSiO1136中に分散されている。また、SiGe微粒子1135の組成におけるGeの占める割合は、p型シリコン基板1131に隣接する箇所からSiO膜1137に隣接する箇所に向かって、連続して増加している。また、下地となるp型シリコン基板1131中のn型多結晶シリコン電極1138の両側方に位置する領域にはn型拡散領域1132が設けられている。さらに、n型拡散領域1132上には、ソース・ドレイン電極として機能する金属電極1139が設けられている。電荷保持領域1133の微粒子を除いた部分(マトリクス)は、微粒子より大きなバンドギャップを有する半導体でもよい。
【0127】
―第8の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
次に、第8の実施形態に係る半導体素子の製造工程について説明する。第7の実施形態と同様の半導体基板を形成した後、各膜の形成とフォトリソグラフィー及びエッチングによってp型シリコン基板1131上に、電荷保持領域1133、ゲート絶縁膜1137及びn型多結晶シリコン電極1138を形成する。次に、イオン注入によって、n型拡散領域1132を形成した後、スパッタ法及びエッチングによって、金属電極1139を形成する。これにより、第8の実施形
態に係る半導体素子を製造することができる。
【0128】
─第8の実施形態に係る半導体素子の特性─
第8の実施形態においても、SiGe微粒子1135のGe含有率は、p型シリコン基板131との距離が小さいものほど小さい。よって、第7の実施形態と同様の原理により、SiGe微粒子1135への電子の注入・SiGe微粒子1135内での電子の保持・SiGe微粒子1135からの電子の引き抜きを行うことができる。また、上述のように、第8の実施形態に係る半導体素子は、MIS型トランジスタ構造を有している。さらに、第8の実施形態では、電子を保持するSiGe微粒子1135がp型シリコン基板1131とn型多結晶シリコン電極1127との間のSiO1136中に設けられている。よって、SiGe微粒子1135における電子の有無によって、素子のしきい値電圧は高低変化する。このしきい値電圧の高低を情報H(ハイ)と情報L(ロー)とに対応させることにより、情報の書き込み・読み出しを行うことができる。
【0129】
特に、第8の実施形態においても、電荷保持領域1133中において離散エネルギー幅が大きい量子化された多くのSiGe微粒子1135を設けることによって、蓄積された電子の自然放出を効果的に抑制し、シリコン微粒子B中に、長期間、電子を保持することが可能となる。また、SiGe微粒子1135が量子化されていることによって、電荷の注入・放出を、電圧により、制御することが容易になる。
【0130】
したがって、第8の実施形態に係る半導体素子は、蓄積された電荷の自然放出を効果的に抑制することによって、電荷保持領域1133に電荷を長時間保持できるため、信頼性の高いものとなる。よって、第8の実施形態に係る半導体素子は、素子における動作の高速化、動作消費電力の低減の要請を満たしつつ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものとなり得る。さらに、第8の実施形態においては、単一素子により基本的なメモリ動作が実現されるので、高密度の集積化が可能となる。
【0131】
また、第8の実施形態に係る半導体素子においては、第7の実施形態に係る半導体素子と同様に、トンネル酸化膜の厚さを制御する必要がないので、従来の半導体素子の製造工程よりも、第8の実施形態に係る半導体素子の製造工程のほうが容易となる。
【0132】
なお、第8の実施形態においては、n型拡散領域1132のうち少なくとも一方の上あるいは上方には、SiGe微粒子1135が存在しない領域を設けることもできる。これにより、n型拡散領域1132に電圧を印加した際にSiGe微粒子1135を経て短絡した電流が、n型拡散領域1132間に流れることを防止することができる。
【0133】
また、第8の実施形態においては、SiGe微粒子1135からなる層をいくつかの部分に図12に示す断面に対し垂直な方向に分割することもできる。これによっても、n型拡散領域1132に電圧を印加した際にSiGe微粒子1135を経て短絡した電流が、n型拡散領域1132間に流れることを防止することができる。
【0134】
(第1〜第8の実施形態の変形例)
上記第1〜第8の実施形態においては、シリコン微粒子中に注入・蓄積される電荷として電子を例に挙げて説明したが、同様にして正孔を注入・蓄積することも可能である。
【0135】
また、上記第1〜第8の実施形態において、微細なMISFETにおいて一般的に採用されているいわゆるLDD構造を利用して、ゲート電極及びゲート絶縁膜の側方に絶縁体サイドウォール(例えばシリコン酸化膜)を形成してから、ソース・ドレイン領域を形成することにより、ソース・ドレイン領域と微粒子体との間隔を広く確保することにより、希望しないときに微粒子体からソース・ドレイン領域に電荷がリークするのを確実に防止することができる。
【0136】
―基板―
上述の実施形態においては、基板としてp型シリコン基板を用いているが、この他にn型シリコン基板、GaAs基板その他の半導体材料を用いた基板を用いることもできる。
【0137】
また、上述の実施形態においては基板としてp型シリコン基板を用いているため、高精度のシリコン系プロセス技術が利用でき、また、半導体素子の高密度の集積化が可能となる。
【0138】
また、基板の上に、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びシリコン酸窒化膜のうち少なくともいずれか1つを設けてもよい。これらの膜は、トンネル膜として、機能することとなる。
【0139】
─微粒子の周辺の部材(マトリクス)やゲート絶縁膜─
上述の実施形態においては、微粒子の周辺の部材(マトリクス)やゲート絶縁膜としては、SiOを用いているが、基板─微粒子間および複数の微粒子間においてトンネル障壁として機能する材料であればSiOに代えて用いることができる。トンネル障壁として機能するこの部材は、熱拡散電流を遮るがトンネル電流を透過する性質を有し、また、半導体基板および微粒子に比較して少なくとも100meV以上の障壁高さを有する半導体もしくは絶縁体の薄膜であることが好ましい。
【0140】
ここで、絶縁体材料としてはSiO、Si、Al、CeO等が特に適している。また、これらの絶縁体膜を組み合わせたものや混合した組成を有する膜、例えば、Si(4x=2y+3z)等の組成を有する膜も利用できる。また、半導体材料としては、C(ダイヤモンド)、AlN、GaN、AlP、GaP、ZnO、ZnS、MgO、MgS等及びこれらの混晶が適している。
【0141】
なお、微粒子の周辺の部材(マトリクス)やゲート絶縁膜の材料は均一でなく、位置によって異なっていてもよい。
【0142】
―微粒子―
上述の第1〜第8の実施形態においては微粒子としてシリコン微粒子や、SiGe微粒子を用いているが、シリコン微結晶、SiGe微結晶、アモルファスシリコンや単結晶シリコン、その他の材料の半導体や金属を微粒子として用いることもできる。
【0143】
微粒子としてシリコンの粒子を用いた場合は、製造過程において高温としてもシリコンの粒子は、安定で、かつ、汚染されがたいため、高精度であるシリコンプロセス技術を容易に適用できる。また、微粒子として金属の粒子を用いた場合は、粒径の揃った高品質の微粒子を、容易に高い面内密度で均一に形成できる。
【0144】
微粒子として金属の粒子を用いた場合は、上述のような、量子化は起こらないが、静電容量に応じた電位上昇や、障壁高さに応じた電荷移動,電荷保持特性の変化は、生じるため、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0145】
また、複数の微粒子が2.0eV以上のバンドギャップを有する半導体である場合には、微粒子のエネルギー準位間の差が大きくなることにより、電荷閉じ込めの効果が増大する。さらに、微粒子の周辺の部材としてSiO等の絶縁体を用いる場合で、複数の微粒子が2.0eV以上のバンドギャップを有する半導体であるときは、トンネル障壁の高さが低くなる。よって、このときには、トンネル電流を確保しつつ各微粒子間の間隔を増大することができる。したがって、電荷を保持する微粒子の容量が低下する。
【0146】
ここで、2.0eV以上のバンドギャップを有する半導体としては、GaN、GaP、GaAs、AlAs、ZnO、ZnS、ZnSe、CdS、ZnTe、SiC等及びこれら半導体の混晶を挙げることができる。
【0147】
上述の実施形態において、微粒子の分散密度が1×1015cm−3から1×1020cm−3の間であることによって、効果的に微粒子内に電荷を保持でき、また、電荷の有無の検出も容易となるため、好ましい。
【0148】
また、上述の実施形態では、微粒子の形状を、偏平な形状としてもよい。特に、スパッタリングだけでなくCVDによって、微粒子を形成する場合には、素子の作製工程を容易にすることができる。また、微粒子の形状を、偏平な形状とした場合には、微粒子体の静電容量を増加させることができる。この場合には、電荷を保持するための微粒子とp型シリコン基板とを結ぶ直線付近に、微粒子が存在するようになることがより多くなるため、p型シリコン基板―電荷を保持するための微粒子間の微粒子体を経た電荷移動がより起こりやすくなることとなる。
【0149】
さらに、微粒子は、重なり合って複数の層を形成していてもよい。
【0150】
―第1〜第8の実施形態に係る半導体素子の応用―
なお、上述の第1〜第8の実施形態に係る半導体素子を微小な電荷の移動・蓄積を制御するために種々応用できる。例えば、走査型プローブ顕微鏡(SPM)、特に、原子間力顕微鏡(AFM)の原理を用いて、第1〜6の実施形態に係る各半導体素子における電荷の分布図を作成することによって、この分布図をメモリとして使用することが考えられる。この場合には、半導体素子においてn型多結晶シリコン電極はなくてもよい。また、上述の実施形態の中から、複数の実施形態の特徴を併せ持つ構成を有するような半導体素子であってもよい。
【0151】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形が可能である。
【0152】
(第9の実施形態)
―第9の実施形態に係る半導体素子の構造―
図16は、第9の実施形態に係る半導体素子の断面図である。この半導体素子において、p型シリコン基板2011上には、シリコン酸窒化膜からなる第1のトンネル障壁膜2012(厚さ2nm)、多結晶シリコン膜からなる半導体膜2013(厚さ5nm)、SiO 膜からなる第2のトンネル障壁膜2014(厚さ2nm)、SiO 膜からなる絶縁膜2016(厚さ20nm)及び上部電極として機能するn型多結晶シリコン電極2017が下から順に設けられている。この半導体膜2013は量子化されている。また、第2のトンネル障壁膜2014と絶縁膜2016との間には、量子化されたシリコン微粒子2015(粒径5nm)が複数埋め込まれている。なお、シリコン酸窒化膜からなる第1のトンネル障壁膜2012の厚さを2〜3nm、多結晶シリコン膜からなる半導体膜2013の厚さを2〜8nm、SiO膜からなる第2のトンネル障壁膜2014の厚さを2〜3nm、SiO膜からなる絶縁膜2016の厚さを5〜20nm、シリコン微粒子2015の粒径を2〜8nm、シリコン微粒子2015の面内密度を1×1012cm−2から3×1012cm−2程度とするのが好ましい。
【0153】
―第9の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
次に、本実施形態に係る半導体素子の製造工程について説明する。まず、窒素化合物の存在下においてp型シリコン基板2011を酸窒化(基板温度800℃)することにより、p型シリコン基板2011上にシリコン酸窒化膜からなる第1のトンネル障壁膜2012を形成する。次に、CVD装置のチャンバー内のサセプター上に基板を設置し、多結晶シリコン膜からなる半導体膜2013を第1のトンネル障壁膜2012上に堆積した後、同一のチャンバー内で、連続してSiO膜からなる第2のトンネル障壁膜2014を半導体膜2013上に堆積する。次に、同一のチャンバー内で同じサセプタ上に基板(基板温度580℃)をおいた状態で、材料ガスとしてSiHをCVD装置内のチャンバーに短時間、導入する。これにより、第2のトンネル障壁膜2014上に、複数のシリコン微粒子2015を形成する。その後、p型シリコン基板2011を酸素あるいは水蒸気の存在下に短時間暴露して各シリコン微粒子2015の表面部を1nm程度の厚み分だけ酸化することにより、各シリコン微粒子2015間をSiOによって絶縁する。次に、同一のチャンバー内で、SiO膜である絶縁膜2016を第2のトンネル障壁膜2014及びシリコン微粒子2015上に堆積した後、さらに絶縁膜2016の上に、n型多結晶シリコン電極2017を堆積する。なお、CVD法による第1のシリコン微粒子2015の形成、その後のシリコン微粒子2015の表面の酸化を繰り返すことにより、シリコン微粒子2015の面内密度を適切な値となるように増加させることができる。
【0154】
次に、本実施形態の半導体素子と、図57に示す従来の半導体素子における電子注入・保持・引き抜きの機構の相違について説明する。
【0155】
―第9の実施形態に係る半導体素子の電子注入・保持・引き抜き機構―
従来の半導体素子の構造,電子注入・保持・引き抜き機構については、第1の実施形態で説明したとおりである。
【0156】
そこで、本実施形態に係る半導体素子における電子注入・電子保持の機構について、従来の半導体素子との相違について説明する。
【0157】
図17は、第9の実施形態に係る半導体素子におけるバンド図である。シリコン微粒子2015内では、シリコン微粒子2015の粒径が極めて小さいため、シリコン微粒子中の電子がとりうるエネルギー状態(エネルギー準位)が量子化されている。また、半導体膜2013では、その厚さが極めて小さいため、半導体膜13のエネルギー準位は量子化されて離散的になっている。よって、図17に示すように、シリコン微粒子2015及び半導体膜2013双方においては、エネルギー準位が量子化されている。
【0158】
また、シリコン微粒子2015の状態密度は高エネルギーになるほど増大するので、各エネルギー準位間の間隔(以下では、「離散エネルギー幅」という。)は、一般に、エネルギー準位が低次の場合には大きく、エネルギー準位が高次の場合には小さい。また、状態密度が高いことにより電子の遷移確率も高い。一方、半導体膜2013の離散エネルギー幅も、また、エネルギー準位が低次の場合には大きく、エネルギー準位が高次の場合には小さい。しかし、半導体膜2013の離散エネルギー幅は、シリコン微粒子2015の離散エネルギー幅よりも小さい。よって、半導体膜2013の離散エネルギー幅が密である部分のポテンシャルは、シリコン微粒子2015の離散エネルギー幅が密である部分のポテンシャルよりも小さい。
【0159】
通常のトンネル過程では、通過する障壁層の両側のエネルギー準位のポテンシャルが同一である必要がある。よって、シリコン微粒子2015―半導体膜2013間では、電圧の印加されていない状態では、第2のトンネル障壁膜2014の両側でいずれも量子化されているシリコン微粒子2015のエネルギー準位の1つと半導体膜2013のエネルギー準位の1つとのポテンシャルが互いに一致したときのみトンネリングが生じるため、トンネリングが生じる確率は非常に低いものになる。また、シリコン微粒子2015の静電容量が十分小さい場合、シリコン微粒子2015―半導体膜2013間では、両者の間で量子化されているエネルギー準位同士のポテンシャルが等しくなるような電圧を加えた場合のみ、共鳴トンネル過程によって電子移動が効率よく行われる一方、それ以外の場合の電子移動は抑制される。つまり、シリコン微粒子2015―半導体膜2013間の電子移動は外部から加える電圧によって制御でき、かつ、シリコン微粒子2015に一旦注入された電子は長期間保持されることになる。
【0160】
一方、p型シリコン基板2011の伝導帯においては、電子がとり得るエネルギー状態であるエネルギー準位は、ほぼ連続的に存在しており、その状態密度は高い。よって、半導体膜2013の量子化されているエネルギー準位のいずれに対しても、同じポテンシャルを有するエネルギー準位がp型シリコン基板2011に存在すると考えられるので、半導体膜2013―p型シリコン基板2011間のトンネル過程は、少なくともエネルギー的には禁止されることはない。また、半導体膜2013の面積は十分大きいので、第1のトンネル障壁膜2012を挟む半導体膜2013とp型シリコン基板2011との準位間では状態関数の空間的重なりが大きい。したがって、n型多結晶シリコン電極2017に印加する電圧をどのように変化させても、半導体膜2013―p型シリコン基板2011間では迅速なトンネル過程が生ずるため、半導体膜2013はp型シリコン基板2011と等電位となる。つまり、半導体膜2013―p型シリコン基板2011間の電子移動は容易である。
【0161】
図18(a)、(b)、(c)は、第9の実施形態の半導体素子における電子注入・電子保持を行う際のエネルギーバンド状態をそれぞれ示す部分バンド図である。なお、図18(a)、(b)、(c)においては、理解を容易にするため、荷電子帯のエネルギーバンド状態の図示は省略する。
【0162】
図18(a)に示すように、n型多結晶シリコン電極2017に電圧を印加する前には、p型シリコン基板2011と、半導体膜2013あるいはシリコン微粒子2015との間での電子移動は起こらない。
【0163】
しかし、図18(b)に示すように、ある一定の正の電圧をn型多結晶シリコン電極2017に印加すると、上述のようにp型シリコン基板2011から半導体膜2013の空のエネルギー準位への電子移動と、半導体膜2013のエネルギー準位からシリコン微粒子2015中の空のエネルギー準位への電子移動とが容易に起こる。ここで、通常、複数のシリコン微粒子2015の粒径はばらついているため、シリコン微粒子2015の量子化されているエネルギー準位のポテンシャルもばらつく。よって、特に厳密に電圧の制御を行わなくても、加えられた一定の電圧により半導体膜2013の電子のエネルギー準位のいくつかと、いくつかのシリコン微粒子2015の各エネルギー準位とが、同じポテンシャルとなる。よって、n型多結晶シリコン電極2017に正の電圧を加えると、p型シリコン基板2011から半導体膜2013を経て複数のシリコン微粒子2015への電子注入を行うことができることとなる。
【0164】
また、量子化されたエネルギー準位間の間隔(離散エネルギー幅)は、ポテンシャルが大きくなるほど小さくなるので、より高い電圧を加えることで、シリコン微粒子2015及び半導体膜2013の量子化されたエネルギー準位群の高次の密な部分同士が同じポテンシャルを持つようになり、また、状態密度も増加するので、より多くの高次の準位を有するシリコン微粒子2015への電子注入が起こる。さらに、印加電圧をある一定範囲で掃引したり、高周波を重畳することでより多くのシリコン微粒子2015への電子注入が可能となる。
【0165】
図18(c)に示すように、複数のシリコン微粒子2015への電子注入の後、n型多結晶シリコン電極2017への電圧の印加をなくすと、シリコン微粒子2015のポテンシャルは上昇し、p型シリコン基板2011の伝導帯のポテンシャルは低下する。つまり、電圧の印加をなくすることにより、シリコン微粒子の各エネルギー準位、半導体膜の各エネルギー準位、p型シリコン基板の伝導帯の相対的なポテンシャルの上下関係が変化する。なお、複数のシリコン微粒子2015への電子注入の後では、シリコン微粒子2015のポテンシャルが、電子注入前(図18(a))と比べ、上昇している。
【0166】
このとき、印加電圧が除かれた際の電位において、一部のシリコン微粒子2015のエネルギー準位のポテンシャルは、半導体膜2013のエネルギー準位のポテンシャルと偶然、一致することによりトンネル過程が許容されてしまうため、シリコン微粒子2015に注入された電子が失われることもある。この点において、従来の半導体素子と同様である。しかし、本実施形態に係る半導体素子においては、従来の半導体素子と異なり、電子が注入された多くのシリコン微粒子2015のエネルギー準位のポテンシャルは、半導体膜のエネルギー準位のポテンシャルとは、一致しないため、シリコン微粒子2015―半導体膜2013間のトンネル過程による電子移動が禁止される。したがって、大多数のシリコン微粒子2015中に電子が安定に保持されるので、本実施形態に係る半導体素子においては、長期の電子保持が可能となる。
【0167】
上記とは逆に負の電圧をn型多結晶シリコン電極2017に印加することによって、電荷の消去を行うことができる。つまり、n型多結晶シリコン電極2017側が負となる十分大きい電圧を加えると、シリコン微粒子2015のエネルギー準位のポテンシャルと半導体膜2013のエネルギー準位のポテンシャルとが一致したとき、シリコン微粒子2015から半導体膜2013へと電子が引き抜かれる。シリコン微粒子2015への電子注入時と同様に、印加する負の電圧を比較的大きくすること、印加電圧を掃引すること、あるいは、高周波を重畳することによって、より効率よく電荷消去ができるようになる。
【0168】
すなわち、本実施形態に係る半導体素子においては、従来の複数のシリコンの微粒子を用いた半導体素子と異なり、トンネル障壁膜中にエネルギー準位が量子化された半導体膜2013を設けることによって、シリコン微粒子2015─p型シリコン基板2011間の電子移動を制御することができる。したがって、本実施形態に係る半導体素子においては、第2のトンネル障壁膜2014の厚さを薄くしても、従来の複数のシリコンの微粒子を用いた半導体素子と異なり、蓄積された電子の自然放出を効果的に抑制し、シリコン微粒子2015中に、長期間、電子を保持することが可能となる。そして、上述のような効果を利用して微粒子への電子の注入・保持・引き抜きを確実に制御できるため、本実施形態に係る半導体素子は、素子における動作の高速化、消費電力の低減の要請を満たしつつ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものであるといえる。
【0169】
(第10の実施形態)
―第10の実施形態に係る半導体素子の構造―
図19は、第10の実施形態に係る半導体素子を示す断面図である。図19に示すように、第10の実施形態に係る半導体素子は、第9の実施形態に係る半導体素子を利用したMIS型トランジスタ構造を有している。この半導体素子において、p型シリコン基板2071上には、シリコン酸窒化膜である第1のトンネル障壁膜2073、多結晶シリコン膜からなる半導体膜2074、SiO膜からなる第2のトンネル障壁膜2075、SiO膜からなるゲート絶縁膜2077及びゲート電極として機能するn型多結晶シリコン電極2078が下から順次積み上げられている。半導体膜2074は量子化されている。また、下地となるp型シリコン基板2071中のn型多結晶シリコン電極2078の両側方に位置する領域にはn型拡散領域(ソース・ドレイン領域)2072が設けられている。さらに、n型拡散領域2072上には、ソース・ドレイン電極として機能する金属電極2079が設けられている。また、第2のトンネル障壁膜2075とゲート絶縁膜2077との間には、量子化されたシリコン微粒子2076が複数埋め込まれている。
【0170】
―第10の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
次に、第10の実施形態に係る半導体素子の製造工程について説明する。第9の実施形態と同様の半導体基板を形成した後、各膜の形成とフォトリソグラフィー及びエッチングによってp型シリコン基板2071上に、第1のトンネル障壁膜2073、半導体膜2074、第2のトンネル障壁膜2075、シリコン微粒子2076、ゲート絶縁膜2077及びn型多結晶シリコン電極2078を形成する。次に、イオン注入によって、n型拡散領域2072を形成した後、スパッタ法及びエッチングによって、金属電極2079を形成する。これにより、第10の実施形態に係る半導体素子を製造することができる。
【0171】
─第10の実施形態に係る半導体素子の特性─
本実施形態においても、第9の実施形態と同様の原理により、印加電圧によって、シリコン微粒子2076への電子の注入・シリコン微粒子2076内での電子の保持・シリコン微粒子2076からの電子の引き抜きの制御を行うことができる。また、上述のように、第10の実施形態に係る半導体素子は、MIS型トランジスタ構造を有している。さらに、本実施形態では、電子を保持するためのシリコン微粒子2076が第2のトンネル障壁膜2075とゲート絶縁膜2077との間に設けられている。よって、シリコン微粒子2076における電子の有無によって、素子のしきい値電圧は高低変化する。このしきい値電圧の高低を情報H(ハイ)と情報L(ロー)とに対応させることにより、情報の書き込み・読み出しを行うことができる。
【0172】
また、本実施形態においても、第9の実施形態と同様に、第2のトンネル障壁膜7205の厚さを薄くしても、シリコン微粒子2076中に、長期間、電子を保持することが可能となる。したがって、本実施形態に係る半導体素子は、素子における動作の高速化、消費電力の低減の要請を満たしつつ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものであるといえる。さらに、本実施形態においては、単一素子により基本的なメモリ動作が実現されるので、高密度の集積化が可能となる。
【0173】
なお、本実施形態においては、n型拡散領域2072のうち少なくとも一方の上あるいは上方には、半導体膜2074が存在しない領域を設けることもできる。これにより、n型拡散領域2072に電圧を印加した際に半導体膜2074を経て短絡した電流が、n型拡散領域2072間に流れることを防止することができる。
【0174】
また、本実施形態においては、半導体膜2074をいくつかの部分に図19に示す断面に対し垂直な方向に分割することもできる。これによっても、n型拡散領域2072に電圧を印加した際に半導体膜2074を経て短絡した電流が、n型拡散領域2072間に流れることを防止することができる。
【0175】
(第11の実施形態)
―第11の実施形態に係る半導体素子の構造―
図20は、第11の実施形態に係る半導体素子の断面図である。この半導体素子において、p型シリコン基板8201上には、SiO膜からなる第1のトンネル障壁膜2082(厚さ1.5nm)、SiO膜からなる第2のトンネル障壁膜2084(厚さ2nm)、SiOからなる絶縁膜2086(厚さ20nm)及び上部電極として機能するn型多結晶シリコン電極2087が下から順に設けられている。また、第1のトンネル障壁膜2082と第2のトンネル障壁膜2084との間には、互いに接触する多数のシリコン微粒子からなる微粒子体群2083(粒径5nm)が埋め込まれている。この微粒子体群2083の各微粒子は量子化されている。さらに、第2のトンネル障壁膜2084と絶縁膜2086との間には、量子化されたシリコン微粒子2085(粒径5nm)が複数埋め込まれている。また、各シリコン微粒子2083の間は、第1、第2のトンネル障壁膜2082、2084と同一の材料からなるSiOにより隔てられている。なお、SiO膜からなる第1のトンネル障壁膜2082の厚さを1〜2nm、SiO膜からなる第2のトンネル障壁膜2084の厚さを2〜3nm、SiO膜からなる絶縁膜2086の厚さを5〜20nm、微粒子体群2083のシリコン微粒子の粒径を3〜10nm、微粒子体群2083のシリコン微粒子の面内密度を1×1013cm−2から1×1014cm−2程度、シリコン微粒子2085の粒径を2〜5nm、シリコン微粒子2085の面内密度を1×1012cm−2から1×1013cm−2程度とするのが好ましい。
【0176】
―第11の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
次に、第11の実施形態に係る半導体素子の製造工程について説明する。まず、p型シリコン基板2081を熱酸化(基板温度800℃)によって、p型シリコン基板2081上にSiO膜からなる第1のトンネル障壁膜2082を形成する。次に、材料ガスとしてSiHを基板温度580℃としたCVD装置内のチャンバーに短時間、導入する。これにより、第1のトンネル障壁膜2082上で、微粒子体群2083を形成する。その後、p型シリコン基板2081を酸素あるいは水蒸気の存在下に短時間暴露して各シリコン微粒子2083の表面部を1nm程度の厚み分だけ酸化することにより、各シリコン微粒子2083間をSiOによって絶縁する。次に、同一のチャンバー内で、連続してSiO膜からなる第2のトンネル障壁膜2084を微粒子体群2083及び第1のトンネル障壁膜2082上に堆積する。次に、同一チャンバー内で同じサセプタ上に基板(基板温度580℃)をおいた状態で、材料ガスとしてSiHをCVD装置内のチャンバーに短時間、導入する。これにより、第2のトンネル障壁膜2084上で、複数のシリコン微粒子2085を形成する。その後、p型シリコン基板2081を酸素あるいは水蒸気の存在下に短時間暴露して各シリコン微粒子2085の表面部を1nm程度の厚み分だけ酸化することにより、各シリコン微粒子2085間をSiOによって絶縁する。次に、同一のチャンバー内で、SiO膜からなる絶縁膜2086を第2のトンネル障壁膜2084及びシリコン微粒子2085上に堆積した後、同一のチャンバー内で、n型多結晶シリコン電極2087を堆積する。なお、CVD法による微粒子体群2083の形成、その後の微粒子体群2083の表面の酸化を繰り返すことにより、微粒子体群2083の面内密度を適切な値となるように増加させることができる。また、シリコン微粒子2085の面内密度についても同様である。
【0177】
―第11の実施形態に係る半導体素子の電子注入・保持・引き抜き機構―
第11の実施形態においても、第1の実施形態と同様の原理により、シリコン微粒子2085への電子の注入・シリコン微粒子2085内での電子の保持・シリコン微粒子2085からの電子の引き抜きを行うことができる。本実施形態では、微粒子体群2083が第1の実施形態における半導体膜2013とはぼ同様の役割を果たすからである。したがって、本実施形態に係る半導体素子もまた、第9の実施形態に係る半導体素子素子と同様に、動作の高速化、消費電力の低減の要請を満たしつつ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものであるといえる。
【0178】
本実施形態では、シリコン微粒子2085と微粒子体群2083のシリコン微粒子とが同一の材料により構成されている。また、それらの粒径は、ほぼ等しい。よって、電子を保持するためのシリコン微粒子2085の各エネルギー準位と、微粒子体群2083のシリコン微粒子の各エネルギー準位とが、同様の条件下において量子箱形状で量子化されるため、両者のバンド構造は類似している。したがって、本実施形態では、シリコン微粒子2085―微粒子体群2083間のトンネル過程による電子の注入・電子の引き抜きが起こりやすくなるため、第9の実施形態に比べ、電子の注入・電子の引き抜きの制御が容易となる。一方、シリコン微粒子2085への電子注入の後では、シリコン微粒子2085のポテンシャルが、電子注入前と比べ、上昇している。よって、仮に、微粒子体群2083のシリコン微粒子とシリコン微粒子2085とが全く同じものであっても、それらのエネルギー準位のポテンシャルが異なるようになるため、シリコン微粒子2085からの電子の自然放出は抑制される。ただし、微粒子体群2083の微粒子の構成と微粒子2085の構成とは異なるものとしてもよい。例えば、微粒子体群2083の微粒子がアモルファスシリコンにより構成され、微粒子2085が単結晶シリコンにより構成されていてもよい。
【0179】
なお、シリコン微粒子2085の各エネルギー準位と、微粒子体群2083のシリコン微粒子の各エネルギー準位とを、変化させることによって、電子の注入・電子の保持・電子の引き抜きが起きる条件を調節するため、シリコン微粒子2085の粒径を微粒子体群2083のシリコン微粒子の粒径と異なるようにすることも可能である。
【0180】
さらに、本実施形態では第9の実施形態に比べ、素子作製における微細形状の制御が容易であるという利点がある。すなわち、第9の実施形態における半導体膜2013による量子井戸に比べ、本実施形態における微粒子体群2083による量子箱では、各エネルギー準位の離散化の程度が大きい。よって、本実施形態では、微粒子体群2083のシリコン微粒子のサイズが比較的大きくても量子化の効果が大きくなるため、長期間、電子を保持することが可能となる。ゆえに、本実施形態では第9の実施形態に比べ、素子作製において、高い精度は必要とはされない。
【0181】
なお、半導体素子の製造工程においては、第9の実施形態における半導体膜2013の厚さのばらつきの方が、本実施形態における微粒子体群2083のシリコン微粒子の粒径のばらつきよりも、抑制しやすい。よって、第9の実施形態に係る半導体素子は、特性の均一性において、本実施形態に係る半導体素子よりも、有利である。
【0182】
なお、本実施形態では、微粒子体群2083の各シリコン微粒子が互いに接触しているので、微粒子群2083内の各微粒子とシリコン微粒子2085及びp型シリコン基板2081との間における迅速な電子移動が妨げられることはない。
【0183】
また、本実施形態では、第1のトンネル障壁膜2082の厚さが第2のトンネル障壁膜2084の厚さに比べて小さいことにより、微粒子体群2083とp型シリコン基板2081との間の電子の移動がさらに容易となる。
【0184】
また、本実施形態では、微粒子体群2083のシリコン微粒子の粒径を、シリコン微粒子2085の粒径より大きくしてもよい。この場合には、シリコン微粒子2085とp型シリコン基板2081とを結ぶ直線付近に、微粒子体群2083のシリコン微粒子が存在するようになることがより多くなるため、p型シリコン基板2081―シリコン微粒子2085間の微粒子体群2083を経た電子移動がより起こりやすくなることとなる。
【0185】
また、本実施形態では、微粒子体群2083のシリコン微粒子の面内密度を、第2のシリコン微粒子2085の面内密度より大きくすることによって、微粒子体群2083の各シリコン微粒子間の距離が低下する。この場合にも、シリコン微粒子2085とp型シリコン基板2081とを結ぶ直線付近に、微粒子体群2083のシリコン微粒子が存在するようになることがより多くなるため、p型シリコン基板2081―シリコン微粒子2085間の微粒子体群2083を経た電子移動がより起こりやすくなることとなる。
【0186】
(第12の実施形態)
―第12の実施形態に係る半導体素子の構造―
図21は、第12の実施形態に係る半導体素子を示す断面図である。図21に示すように、本実施形態に係る半導体素子は、MIS型トランジスタ構造を有している。この半導体素子において、p型シリコン基板2091上には、SiO膜からなる第1,第2のトンネル障壁膜2093,2095、SiO膜からなるゲート絶縁膜2097及びゲート電極として機能するn型多結晶シリコン電極2098が下から順次積み上げられている。また、下地となるp型シリコン基板2091中のn型多結晶シリコン電極2098の両側方に位置する領域にはn型拡散領域2092が設けられている。さらに、n型拡散領域2092上には、ソース・ドレイン電極として機能する金属電極2099が設けられている。また、第1のトンネル障壁膜2093と第2のトンネル障壁膜2095との間には、互いに接触する多数のシリコン微粒子からなる微粒子体群2094が埋め込まれている。この微粒子体群2094の各微粒子は量子化されている。さらに、第2のトンネル障壁膜2095とゲート絶縁膜2097との間には、量子化されたシリコン微粒子2096が複数埋め込まれている。なお、微粒子体群2094のシリコン微粒子は、図21に示すように重なり合って複数の層を形成していてもよい。また、微粒子体群2094の各シリコン微粒子の間は、第1、第2のトンネル障壁膜2093、2095と同一の材料からなるSiO膜により隔てられている。
【0187】
なお、微粒子体群2094の微粒子の構成と微粒子2096の構成とは異なるものとしてもよい。例えば、微粒子体群2094の微粒子がアモルファスシリコンにより構成され、微粒子2096が単結晶シリコンにより構成されていてもよい。
【0188】
―第12の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
次に、本実施形態に係る半導体素子の製造工程について説明する。第11の実施形態と同様の半導体基板を形成した後、各膜の形成とフォトリソグラフィー及びエッチングによってp型シリコン基板2091上に、第1のトンネル障壁膜2093、微粒子体群2094、第2のトンネル障壁膜2095、シリコン微粒子2096、ゲート絶縁膜2097及びn型多結晶シリコン電極2098を形成する。次に、イオン注入によって、n型拡散領域2092を形成した後、スパッタ法及びエッチングによって、金属電極2099を形成する。これにより、本実施形態に係る半導体素子を製造することができる。
【0189】
─第12の実施形態に係る半導体素子の特性─
本実施形態においても、第11の実施形態と同様の原理により、シリコン微粒子2096への電子の注入・シリコン微粒子2096内での電子の保持・シリコン微粒子2096からの電子の引き抜きを行うことができる。また、上述のように、本実施形態に係る半導体素子は、MIS型トランジスタ構造を有している。さらに、本実施形態では、電子を保持するためのシリコン微粒子2096が、第1、第2のトンネル障壁膜2093、2095とゲート絶縁膜2097との間に設けられている。よって、シリコン微粒子2096における電子の有無によって、素子のしきい値電圧は高低変化する。このしきい値電圧の高低を情報H(ハイ)と情報L(ロー)とに対応させることにより、情報の書き込み・読み出しを行うことができる。
【0190】
また、本実施形態に係る半導体素子は、素子における動作の高速化、消費電力の低減の要請を満たしつつ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものである。さらに、第4の実施形態においては、単一素子により基本的なメモリ動作が実現されるので、高密度の集積化が可能となる。
【0191】
なお、本実施形態においては、n型拡散領域2092のうち少なくとも一方の上あるいは上方には、微粒子体群2094が存在しない領域を設けることもできる。これにより、n型拡散領域2092に電圧を印加した際に微粒子体群2094を経て短絡した電流が、n型拡散領域2092間に流れることを防止することができる。
【0192】
また、本実施形態においては、微粒子体群2094からなる層をいくつかの部分に図21に示す断面に対し垂直な方向に分割することもできる。これによっても、n型拡散領域2092に電圧を印加した際に微粒子体群2094からなる層を経て短絡した電流が、n型拡散領域2092間に流れることを防止することができる。
【0193】
(第13の実施形態)
―第13の実施形態に係る半導体素子の構造―
図22は、第13の実施形態に係る半導体素子の断面図である。この半導体素子において、p型シリコン基板2101上には、SiO膜からなる第1のトンネル障壁膜2102(厚さ1.5nm)、SiO膜からなる第2のトンネル障壁膜2104(厚さ2nm)、SiO膜からなる絶縁膜2106(厚さ20nm)及び上部電極として機能するn型多結晶シリコン電極2107が下から順に設けられている。また、第1のトンネル障壁膜2102と第2のトンネル障壁膜2104との間には、多結晶シリコンからなる細線2103(高さ5nm、幅10nm、長さ100nm)が複数埋め込まれている。この細線2103は量子化されている。さらに、第2のトンネル障壁膜2104と絶縁膜2106との間には、量子化されたシリコン微粒子2105(粒径5nm)が複数埋め込まれている。また、各細線2103の間は、第1、第2のトンネル障壁膜2102、2104と同一の材料からなるSiO膜により隔てられている。なお、SiOからなる第1のトンネル障壁膜2102の厚さを1〜2nm、SiOからなる第2のトンネル障壁膜2104の厚さを2〜3nm、SiOからなる絶縁膜2106の厚さを5〜20nm、シリコン微粒子2105の粒径を2〜8nm、シリコン微粒子2105の面内密度を2×1012cm−2から6×1012cm−2程度とするのが好ましい。
【0194】
―第13の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
次に、本実施形態に係る半導体素子の製造工程について説明する。まず、熱酸化(基板温度800℃)によって、p型シリコン基板2101上にSiOからなる第1のトンネル障壁膜2102を形成する。次に、CVD装置のチャンバー内のサセプター上に基板を設置し、厚さ5nmの多結晶シリコン膜を堆積した後、電子ビームリソグラフィーとドライエッチングによって、第1のトンネル障壁膜2102上で、多結晶シリコンからなる複数の細線2103を形成する。次に、同一のチャンバー内で、SiOらなる第2のトンネル障壁膜2104を細線2103及び第1のトンネル障壁膜2102上に堆積する。次に、同一チャンバー内で同じサセプタ上に基板(基板温度580℃)をおいた状態で、材料ガスとしてSiHをCVD装置内のチャンバーに短時間、導入する。これにより、第2のトンネル障壁膜2104上で、複数のシリコン微粒子2105を形成する。その後、p型シリコン基板2101を酸素あるいは水蒸気の存在下に短時間暴露して各シリコン微粒子2105の表面部を1nm程度の厚み分だけ酸化することにより、各シリコン微粒子2105間をSiO膜によって絶縁する。次に、同一のチャンバー内で、SiO膜からなる絶縁膜2106を第2のトンネル障壁膜2104及びシリコン微粒子2105上に堆積した後、同一のチャンバー内で、n型多結晶シリコン電極2107を堆積する。なお、CVD法によるシリコン微粒子2105の形成、その後のシリコン微粒子2105の表面の酸化を繰り返すことにより、シリコン微粒子2105の面内密度を適切な値となるように増加させることができる。
【0195】
―第13の実施形態に係る半導体素子の電子注入・保持・引き抜き機構―
本実施形態においても、第9の実施形態と同様の原理により、シリコン微粒子2105への電子の注入・シリコン微粒子2105内での電子の保持・シリコン微粒子2105からの電子の引き抜きを行うことができる。本実施形態では、細線2103が第9の実施形態における半導体膜2013とはぼ同様の役割を果たすからである。したがって、本実施形態に係る半導体素子もまた、第9の実施形態に係る半導体素子素子と同様に、動作の高速化、消費電力の低減の要請を満たしつつ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものであるといえる。
【0196】
さらに、本実施形態では第9の実施形態に比べ、素子作製における微細形状の制御が容易であるという利点がある。すなわち、第9の実施形態における半導体膜2013による量子井戸に比べ、本実施形態における細線2103による量子細線では、各エネルギー準位の離散化の程度が大きい。よって、本実施形態では、細線2103のサイズが比較的大きくても量子化の効果が大きくなるため、長期間、電子を保持することが可能となる。ゆえに、本実施形態では第9の実施形態に比べ、素子作製において、高い精度は必要とはされない。
【0197】
(第14の実施形態)
―第14の実施形態に係る半導体素子の構造―
図23は、第14の実施形態に係る半導体素子を示す断面図である。図23に示すように、本実施形態に係る半導体素子は、MIS型トランジスタ構造を有している。この半導体素子において、p型シリコン基板2111上には、SiOからなる第1、第2のトンネル障壁膜2113、2115、SiOからなるゲート絶縁膜2117及びゲート電極として機能するn型多結晶シリコン電極2118が下から順次積み上げられている。また、下地となるp型シリコン基板2111におけるn型多結晶シリコン電極2118の両側方に位置する領域にはn型拡散領域2112が設けられている。さらに、n型拡散領域2112上には、ソース・ドレイン電極として機能する金属電極2119が設けられている。また、第1のトンネル障壁膜2113と第2のトンネル障壁膜2115との間には、多結晶シリコンからなる細線2114が複数埋め込まれている。この細線2114は量子化されているが。さらに、第2のトンネル障壁膜2115とゲート絶縁膜2117との間には、量子化されたシリコン微粒子2116が複数埋め込まれている。また、各細線2114の間は、第1、第2のトンネル障壁膜2113、2115と同一の材料からなるSiO膜により隔てられている。なお、細線2114は、重なり合って複数の層を形成していてもよい。また、各細線2114の方向は、同一でなくてもよく、さらに、任意でもよい。
【0198】
―第14の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
次に、第14の実施形態に係る半導体素子の製造工程について説明する。第13の実施形態と同様の半導体基板を形成した後、各膜の形成とフォトリソグラフィー及びエッチングによってp型シリコン基板2111上に、第1のトンネル障壁膜2113、細線2114、第2のトンネル障壁膜2115、シリコン微粒子2116、ゲート絶縁膜2117及びn型多結晶シリコン電極2118を形成する。次に、イオン注入によって、n型拡散領域2112を形成した後、スパッタ法及びエッチングによって、金属電極21119を形成する。これにより、本実施形態に係る半導体素子を製造することができる。
【0199】
─第14の実施形態に係る半導体素子の特性─
本実施形態においても、第13の実施形態と同様の原理により、シリコン微粒子2116への電子の注入・シリコン微粒子2116内での電子の保持・シリコン微粒子2116からの電子の引き抜きを行うことができる。また、上述のように、第14の実施形態に係る半導体素子は、MIS型トランジスタ構造を有している。さらに、第14の実施形態では、電子を保持するためのシリコン微粒子2116が、第1、第2のトンネル障壁膜2113、2115とゲート絶縁膜2117との間に設けられている。よって、シリコン微粒子2116における電子の有無によって、素子のしきい値電圧は高低変化する。このしきい値電圧の高低を情報H(ハイ)と情報L(ロー)とに対応させることにより、情報の書き込み・読み出しを行うことができる。
【0200】
また、本実施形態に係る半導体素子は、素子における動作の高速化、消費電力の低減の要請を満たしつつ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものである。さらに、本実施形態においては、単一素子により基本的なメモリ動作が実現されるので、高密度の集積化が可能となる。
【0201】
なお、本実施形態においては、n型拡散領域2112のうち少なくとも一方の上あるいは上方には、細線2114が存在しない領域を設けることもできる。これにより、n型拡散領域2112に電圧を印加した際に細線2114を経て短絡した電流が、n型拡散領域2112間に流れることを防止することができる。
【0202】
また、本実施形態においては、細線2114からなる層をいくつかの部分に図23に示す断面に対し垂直な方向に分割することもできる。これによっても、n型拡散領域2112に電圧を印加した際に細線2114からなる層からなる層を経て短絡した電流が、n型拡散領域2112間に流れることを防止することができる。
【0203】
(第15の実施形態)
―第15の実施形態に係る半導体素子の構造―
図24は、第15の実施形態に係る半導体素子の断面図である。この半導体素子において、p型シリコン基板2131上には、シリコン酸窒化膜からなる第1のトンネル障壁膜2132(厚さ2nm)、多結晶シリコン膜からなる半導体膜2133(厚さ5nm)、SiOからなる第2のトンネル障壁膜2134(厚さ2nm)、SiOからなる絶縁膜2136(厚さ20nm)及び上部電極として機能するn型多結晶シリコン電極2137が下から順に設けられている。半導体膜2133は量子化されている。また、第2のトンネル障壁膜2134と絶縁膜2136との間には、多結晶シリコンからなる量子化された細線2135(高さ5nm、幅10nm、長さ100nm)が複数埋め込まれている。なお、酸窒化シリコンからなる第1のトンネル障壁膜2132の厚さを2〜3nm、多結晶シリコンからなる半導体膜2133の厚さを2〜8nm、SiOからなる第2のトンネル障壁膜2134の厚さを2〜3nm、SiOからなる絶縁膜2136の厚さを5〜20nmとするのが好ましい。
【0204】
―第15の実施形態に係る半導体素子の製造工程―
次に、本実施形態に係る半導体素子の製造工程について説明する。まず、窒素化合物の存在下においてp型シリコン基板2131を酸窒化(基板温度800℃)することにより、p型シリコン基板2131上に酸窒化シリコンからなる第1のトンネル障壁膜2132を形成する。次に、CVD装置のチャンバー内のサセプター上に基板を設置し、多結晶シリコンからなる半導体膜2133を第1のトンネル障壁膜2132上に堆積した後、同一のチャンバー内で、連続してSiOからなる第2のトンネル障壁膜2134を半導体膜2133上に堆積する。次に、同一チャンバー内で、厚さ5nmの多結晶シリコン膜を堆積した後、電子ビームリソグラフィーとドライエッチングによって、第1のトンネル障壁膜2102上で、多結晶シリコンからなる複数の細線2103を形成する。次に、同一のチャンバー内で、SiOからなる絶縁膜2136を第2のトンネル障壁膜2134及び細線2135上に堆積した後、さらに絶縁膜2136の上に、n型多結晶シリコン電極2137を堆積する。
【0205】
―第15の実施形態に係る半導体素子の特性―
本実施形態においても、上述の実施形態と同様に、多結晶シリコン膜からなる半導体膜2133、及び、多結晶シリコンからなる細線2135は、量子化されている。よって、細線2135─p型シリコン基板2131間の電子移動を制御することができる。すなわち、細線2135のエネルギー準位のポテンシャルと半導体膜2133のエネルギー準位のポテンシャルとが一致した場合にのみ電子移動が起こるため、細線2135中に蓄積された電子の自然放出を効果的に抑制でき、細線2135中に、長期間、電子を保持することが可能となる。よって、適当な電界の存在下で、p型シリコン基板2131から細線2135へ電子を容易に注入でき、また、細線2135からp型シリコン基板2131へと電子を容易に引き抜くことができる。したがって、上述のような効果を利用して細線2135への電子の注入・保持・引き抜きを確実に制御できるため、本実施形態に係る半導体素子は、素子における動作の高速化、消費電力の低減の要請を満たしつつ、長時間の記録保持の要請に応える信頼性の高いものであるといえる。
【0206】
(第9〜第15の実施形態の変形例)
第9〜第15の実施形態では、シリコン微粒子中に注入・蓄積される電荷として電子を例に挙げて説明したが、同様にして正孔を注入・蓄積することも可能である。
【0207】
―基板―
第9〜第15の実施形態においては、基板としてp型シリコン基板を用いているが、この他にn型シリコン基板、GaAs基板その他の半導体材料を用いた基板を用いることもできる。
【0208】
第1〜7の実施形態においては基板としてp型シリコン基板を用いているため、高精度のシリコン系プロセス技術が利用可能であり、また、半導体素子の高密度の集積化が可能となる。
【0209】
―トンネル障壁膜―
また、第9〜第15の実施形態においては、トンネル障壁膜の材料、及び絶縁膜の材料としてはSiO等を用いているが、Si、Si(4x=2y+3z)、CeO、ZnS、ZnO、Alその他の絶縁体の材料を用いることもできる。
【0210】
ここで、第9〜第15の実施形態におけるトンネル障壁膜とは、熱拡散電流を遮るがトンネル電流を透過する性質を有する障壁膜をいう。
【0211】
また、第1、第2のトンネル障壁膜は、通常、トンネル障壁膜をはさむ上下の膜に比べ、少なくとも1eV以上の障壁高さを有し、また、厚さは50nm以下であることが望ましい。さらに、第1、第2のトンネル障壁膜の厚さが1nm以上6nm以下であり、かつ、それらの材料は、絶縁体材料であること、あるいは、第1、第2のトンネル障壁膜の厚さが3nm以上50nm以下であり、かつ、それらの材料は、半導体基板、複数の微粒子、半導体膜あるいは細線のバンドギャップに比べて大きなバンドギャップを有する半導体材料であることが望ましい。良好なトンネル障壁膜として機能させるためである。
【0212】
ここで、絶縁体材料としてはSiO、Si、Al、CeO等が特に適している。また、これらの絶縁体膜を組み合わせたものや混合した組成を有する膜、例えば、Si(4x=2y+3z)等の組成を有する膜も利用できる。非晶質のSiOを用いる場合には、その厚さは1nmから3nmの間であれば、特に良好なトンネル特性を得られる。Siを用いる場合には、厚さは2nmから6nmの間であれば、特に良好なトンネル特性を得られる。また、半導体材料としては、C(ダイヤモンド)、AlN、GaN、AlP、GaP、ZnO、ZnS、MgO、MgS等及びこれらの混晶が適している。
【0213】
その際、第1のトンネル障壁膜は電荷閉じ込めとは直接関与しない。よって、第1のトンネル障壁膜の材料として、Si、Si、CeOなどの絶縁体や半導体材料等、SiOに比べ高い誘電率を有する材料を用いることが好ましい。また、同じ理由により、第1のトンネル障壁膜の厚さは第2のトンネル障壁膜の厚さに比べ薄くてもよい。第1のトンネル障壁膜の材料を絶縁体とする場合には、その厚さは1nm以上4nm以下、あるいは、第1のトンネル障壁膜の材料を半導体とする場合には、その厚さは3nm以上20nm以下とするのが特に適している。
【0214】
一方、第2のトンネル障壁膜は電荷閉じ込めに寄与するので、第2のトンネル障壁膜の材料としては、SiO、C(ダイヤモンド)等の比較的低い誘電率を有する材料が特に好ましい。また、同じ理由により、第2のトンネル障壁膜の厚さは第1のトンネル障壁膜の厚さに比べ厚いことが好ましい。第2のトンネル障壁膜の材料を絶縁体とする場合には、その厚さは1.5nm以上6nm以下、あるいは、第2のトンネル障壁膜の材料を半導体とする場合には、その厚さは4nm以上40nm以下とするのが特に適している。
【0215】
なお、第11〜第14の実施形態では、第1のトンネル障壁膜の一部分の厚さを実質的に0、すなわち、第1のトンネル障壁膜の一部分を設けることなしに半導体素子を設けることもできる。これにより、半導体素子の作製プロセスを簡素化し、また、微粒子体群のシリコン微粒子、細線の静電容量、又は、細線の静電容量をさらに増加させることもできる。このときには、半導体素子における電荷移動が促進されることになる。
【0216】
―微粒子―
第9〜第14の実施形態においては微粒子としては、シリコン微結晶、アモルファスシリコンや単結晶シリコン、その他の材料の半導体を用いることもできる。また、それらのうちいずれか1つにより構成されていてもよい。
【0217】
微粒子としてシリコンの粒子を用いた場合は、製造過程において高温としてもシリコンの粒子は、安定で、かつ、汚染されがたいため、高精度であるシリコンプロセス技術を容易に適用できる。また、微粒子として金属の粒子を用いた場合は、粒径の揃った高品質の微粒子を、容易に高い面内密度で均一に形成できる。
【0218】
また、複数の微粒子の材質が2.0eV以上のバンドギャップを有する半導体である場合には、微粒子のエネルギー準位間の差が大きくなることにより、電荷閉じ込めの効果が増大する。さらに、トンネル障壁膜としてSiO等の絶縁体を用いる場合で、複数の微粒子の材質が2.0eV以上のバンドギャップを有する半導体であるときは、トンネル障壁の高さが低くなる。よって、このときには、トンネル電流を確保しつつ第2のトンネル障壁膜の厚さを厚くすることができる。したがって、電荷を保持する微粒子の容量が低下する。
【0219】
また、第9〜第14の実施形態では、シリコン微粒子の形状を、偏平な形状としてもよい。特に、スパッタリングによって、シリコン微粒子を形成する場合には、素子の作製工程を容易にすることができる。特に、第11、第12の実施形態において、微粒子体群のシリコン微粒子の形状を、偏平な形状とした場合には、微粒子体群の静電容量を増加させることができる。この場合には、電荷を保持するためのシリコン微粒子とp型シリコン基板とを結ぶ直線付近に、微粒子体群のシリコン微粒子が存在するようになることがより多くなるため、p型シリコン基板―電荷を保持するためのシリコン微粒子間の微粒子体群を経た電荷移動がより起こりやすくなることとなる。
【0220】
さらに、第9〜第14の実施形態では、シリコン微粒子は、重なり合って複数の層を形成していてもよい。
【0221】
―半導体膜―
また、第9、第10、第15の実施形態においては半導体膜として多結晶シリコン膜を用いているが、アモルファスシリコンや単結晶シリコン、その他の材料の半導体を半導体膜として用いることもできる。また、それらのうちいずれか1つにより構成されていてもよい。半導体膜がアモルファスシリコン膜もしくは多結晶シリコン膜により構成される場合には、製造過程において高温としてもシリコンの半導体膜は、安定で、かつ、汚染されがたいため、高精度であるシリコンプロセス技術を容易に適用できる。
【0222】
また、半導体膜の材質が2.0eV以上のバンドギャップを有する半導体膜である場合には、微粒子のエネルギー準位間の差が大きくなることにより、電荷閉じ込めの効果が増大する。さらに、トンネル障壁膜としてSiO等の絶縁体を用いる場合で、半導体膜の材質が2.0eV以上のバンドギャップを有する半導体膜であるときは、トンネル障壁の高さが低くなる。よって、このときには、トンネル電流を確保しつつ第2のトンネル障壁膜の厚さを厚くすることができ、製造が容易となる。
【0223】
―細線―
第13、第14の実施形態においては細線として多結晶シリコンを用いているが、アモルファスシリコンや単結晶シリコン、カーボンナノチューブその他の材料の半導体を細線として用いることもできる。また、それらのうちいずれか1つにより構成されていてもよい。細線がアモルファスシリコンもしくは多結晶シリコンにより構成される場合には、製造過程において高温としてもシリコンの細線は、安定で、かつ、汚染されがたいため、高精度であるシリコンプロセス技術を容易に適用できる。
【0224】
また、細線の材質が2.0eV以上のバンドギャップを有する半導体である場合には、微粒子のエネルギー準位間の差が大きくなることにより、電荷閉じ込めの効果が増大する。さらに、トンネル障壁膜としてSiO等の絶縁体を用いる場合で、半導体膜の材質が2.0eV以上のバンドギャップを有する半導体であるときは、トンネル障壁の高さが低くなる。よって、このときには、トンネル電流を確保しつつ第2のトンネル障壁膜の厚さを厚くすることができる。したがって、電荷を保持する微粒子の容量が低下する。
【0225】
また、第13、第14の実施形態において、細線は、重なり合って複数の層を形成していてもよい。また、各細線の方向は、同一でなくてもよく、さらに、任意でもよい。
【0226】
ここで、2.0eV以上のバンドギャップを有する半導体としては、GaN、GaP、GaAs、AlAs、ZnO、ZnS、ZnSe、CdS、ZnTe、SiC等及びこれら半導体の混晶を挙げることができる。
【0227】
―微粒子の面内密度―
第9〜第14の実施形態において、微粒子の面内密度は、1×1011cm−2から1×1013cm−2の間であるのがよい。効果的に電荷を保持でき、また、電荷の有無の検出も容易となるためである。
【0228】
また、第11、第12の実施形態においては、第1のトンネル障壁膜と第2のトンネル障壁膜との間に埋め込まれた第1の微粒子の面内密度は1×1012cm−2以上であり、かつ、第2のトンネル障壁膜と(ゲート)絶縁膜との間に埋め込まれた第2の微粒子の面内密度以上であるのがより好ましい。第2の微粒子―第1の微粒子間の電荷移動がより容易となるためである。
【0229】
―第9〜第15の実施形態に係る半導体素子の応用―
なお、第9〜第15の実施形態に係る半導体素子を微小な電荷の移動・蓄積を制御するために種々応用できる。例えば、走査型プローブ顕微鏡(SPM)、特に、原子間力顕微鏡(AFM)の原理を用いて、第1〜7の実施形態に係る各半導体素子における電荷の分布図を作成することによって、この分布図をメモリとして使用することが考えられる。この場合には、半導体素子においてn型多結晶シリコン電極はなくてもよい。また、上述の実施形態の中から、複数の実施形態の特徴を併せ持つ構成を有するような半導体素子であってもよい。
【0230】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形が可能である。
【0231】
(第16の実施形態)
図25は、本発明の第16の実施形態における半導体素子の断面図である。同図に示すように、半導体基板としてのp型シリコン基板3011上に、まず電荷の移動に対して障壁として機能する第1の障壁層である厚さ2nm程度の熱酸化SiO膜3012が設けられている。また上記第1の障壁層である熱酸化SiO膜3012上に、第1の微粒子体として直径2nmのシリコン微粒子3013が設けられている。また上記第1の微粒子体であるシリコン微粒子3013の上に、電荷の移動に対して障壁として機能する第2の障壁層である厚さ2nm程度のSiO膜3014が設けられている。また上記第2の障壁層であるSiO膜3014の上に、第2の微粒子体である直径5〜8nmの金微粒子3015が設けられている。また上記第2の微粒子体である金微粒子3015の上に絶縁体層として厚さ10nmのSiO膜3016が設けられており、最上部には電極層であるn型多結晶シリコン電極3017が設けられている。
【0232】
ここで、上記第2の微粒子体である金微粒子3015の直径は上記第1の微粒子体であるシリコン微粒子3013の直径の2.5倍以上となっており、その静電容量は第1の微粒子体に比べて大きい。また、第2の微粒子体の電子親和力は第1の微粒子体より大きく、電子親和力と禁制帯幅の和は第1の微粒子体より小さい。
【0233】
シリコン微粒子13は、化学的気相合成(CVD)法により、1×1011cm−2〜1×1013cm−2程度の面内密度で形成され、金微粒子3015は、金コロイド溶液へのウエハ浸漬により1×1010cm−2〜1×1012cm−2程度の面内密度で固定されている。
【0234】
ここで、図57に示す従来の半導体素子においては、書込時、消去時、電荷保持時はそれぞれ微粒子体(シリコン微粒子6203)の電荷数と、微粒子体の半導体基板(p型シリコン基板6201)に対する電位とが異なるだけで、いずれも同じ微粒子体(シリコン微粒子6203)/トンネル障壁膜(トンネル酸化膜6202)/半導体基板(p型シリコン基板6201)の系でのトンネル現象を利用している。したがって、この系のトンネル電流を、上部電極(n型多結晶シリコン電極6205)への低い外部電圧(上部電極電圧)で大きく変えることは容易ではない。例えばリーク電流を抑制しようとしてトンネル障壁の高さや厚さを大きくすると、書込・消去電流も減少して書込・消去速度が低下してしまう。リーク電流の大きさは各微粒子体内に保持される電荷数にも依存するが、電子(あるいは正孔)1個のとき最もリーク電流が少ないと考えられ、改善の余地は少ない。
【0235】
また、書込み時(あるいは消去時)の微粒子体体の電位はデバイス構造と微粒子体の位置関係により決まる。ここで、微粒子体(シリコン微粒子6203)を上部電極(n型多結晶シリコン電極6205)の間の距離を小さくすると、書込み時の微粒子体の電位上昇が大きくなるので、原理的には書込電流を増大できる。しかし、微粒子体を上部電極側にあまり近付けるとデバイス読み取り時のゲート電圧シフトが小さくなり感度が下がりすぎる問題が発生する。
【0236】
また、微粒子体の静電容量を大きくすれば電荷保持時の微粒子体の電位上昇を抑制できるので、リーク電流を抑制する効果がある。しかし、実際には微粒子体の静電容量を大きくするため微粒子体の粒径を大きくしたり、微粒子体と半導体間の距離を小さくすると微粒子体/半導体基板間のトンネル確率が増大し、逆にリーク電流が増大してしまう結果となる。原理的には、微粒子体の粒径を大きくし、同時にトンネル障壁膜の厚さを大きくするとリーク電流のみをある程度抑制できる可能性があるが、あまり微粒子サイズを大きくすると微粒子体の面内密度が低下し、デバイスの感度を支えるのに必要量の電荷が保持できなくなる。さらに障壁厚さが大きすぎるとフラッシュEEPROMに近い構成となり、障壁膜に大きな電圧が印可されるので電荷移動による膜質劣化が起こる問題が発生する。また作製工程においても長寿命の素子を得るには微粒子サイズや微粒子の分布状態、障壁厚さの制御に高い精度が要求される。
【0237】
上述のように、図57に示す従来の半導体素子により、高速な書込・消去動作が可能で長寿命の記録が可能な素子を実現することは困難である。これに対して、本実施形態の半導体素子の構成によれば下記のようにして書込・消去の速度を低下することなく電荷保持時のリーク電流を大幅に低減できる。
【0238】
本実施形態においては、第1の障壁層(熱酸化SiO膜3012)を介した半導体基板と第1の微粒子体(シリコン微粒子3013)との間の電荷移動と、第2の障壁層(SiO膜3014)を介した第1の微粒子体(シリコン微粒子3013)と第2の微粒子体(金微粒子3015)の間の電荷移動が存在する。第1の障壁層を介した電荷の移動確率は、半導体基板の電子が占める状態の波動関数と、微粒子体の空の状態の波動関数の密度および空間的重なりにより決まる。半導体基板と第1の微粒子体では第1の微粒子体の方が状態密度がはるかに小さく、波動関数の広がりも少ないので、電荷移動はほぼ第1の微粒子体が支配することになる。また、第1の微粒子体は第2の微粒子体よりも粒径が小さいため状態密度および波動関数の広がりが少なく、第1の微粒子体と第2の微粒子体の間の電荷移動も第1の微粒子体が支配することとなる。この結果、第1の微粒子体を介した半導体基板と第2の微粒子体の電荷移動は主に第1の微粒子体の状態により支配され、たとえば第2の微粒子体の粒径が大きくても第1の微粒子体の粒径が小さければ、そのトンネル確率は抑制されて低いものになる。
【0239】
本発明の素子の具体的な電荷注入と電荷保持な動作を以下に説明する。電荷注入時の書込み過程では、上部電極3017に外部から書込電圧を印可することにより、まず第1の障壁層(熱酸化SiO膜3012)を介したトンネリングにより半導体基板3011から電荷が引抜かれて第1の微粒子体(シリコン微粒子3013)に移動する。この過程における第1の微粒子体の電位や第1の微粒子体と半導体表面の関係は、ほぼ従来技術の書き込み過程と同一であるので、従来技術による素子とほぼ同じ速度で第1の微粒子体(シリコン微粒子3013)への電荷移動が可能である。
【0240】
本発明では、第1の微粒子体(シリコン微粒子3013)上の電荷はさらに第2の障壁層(SiO膜3014)を介して隣接する第2の微粒子体(金微粒子3015)に移動することとなる。ここで、第2の微粒子体の粒径が大きい場合、第1の微粒子体と第2の微粒子体の間のトンネル遷移は、第1の微粒子体と半導体基板の表面の間のトンネル遷移とほぼ同等の条件下にある。従って電位差が同じ場合には、半導体基板の表面から第1の微粒子体(シリコン微粒子3013)への電荷移動速度と第1の微粒子体から第2の微粒子体(金微粒子3015)への電荷移動速度はぼぼ同じ程度となる。しかし、本実施形態では、既に電荷を有する第1の微粒子体と電荷を持たない第2の微粒子体の間には、外部からの書込電圧に加えて電荷による第1の微粒子体の電位上昇(ΔV1=Δq/Cdot1)(Δqは電荷量、Cdot1は第1の微粒子体の静電容量)に起因する電界が発生している。静電容量が小さい第1の微粒子体(シリコン微粒子3013)の電荷による電位上昇の効果は大きく、第1の微粒子体から第2の微粒子体(金微粒子3015)への電荷移動はさらに加速されることとなる。本発明の書込み過程では2回のトンネル過程を経る必要があるが、第1の微粒子体(シリコン微粒子3013)から第2の微粒子体(金微粒子3015)への電荷移動が半導体基板から第1の微粒子体への電荷移動と同等以上の速度で行われるので、全体の電荷移動速度は従来技術による素子と同等の書込み速度を実現できる。なお、ここでは書込過程について記述したが、上部電極3017に書込電圧と逆の電圧を印加して微粒子体から蓄積電荷を放出させる消去過程においても同様である。
【0241】
書込みを終了して上部からの書込電圧を除去すると、第1の微粒子体(シリコン微粒子3013)と第2の微粒子体(金微粒子3015)はそれぞれの電荷と静電容量に対応する電位になる。一部の第1の微粒子体には余剰電荷を有するものもあるが、第1の微粒子体は半導体基板に隣接しており、また静電容量が小さくて電荷あたりの電位上昇も大きいので余剰電荷は速やかに半導体基板に戻る。一方、第2の微粒子体ではその静電容量Cdot2が大きいため、その電位上昇(ΔV2=Δq/Cdot2)が低く抑制される。一方、第2の微粒子体自身は粒径が大きく状態密度も大きいが、隣接する第1の微粒子体の状態密度が低いため、電位上昇の低い第2の微粒子体から第1の微粒子体への電荷移動確率は低く抑制され、結果として第2の微粒子体に蓄積された電荷は長期間保持されることとなる。
【0242】
なお、微粒子体が複数層に渡って設けられていても、第1の微粒子体に対する第2の微粒子体の粒径が同等である場合は、第2の微粒子体のほうが半導体基板から離れているため半導体基板に対する静電容量が減少し、上述のような効果は得られない。
【0243】
上記では本発明による素子の書込・消去速度を従来の半導体素子と同等と述べたが、リーク電流が抑制されて電荷保持が安定化される効果を利用して、さらに障壁層の厚さを薄くすることにより書込・消去速度の高速化や書込・消去電圧の低電圧化を実現することもできる。
【0244】
第1の微粒子体の状態が量子化され、量子準位のエネルギー間隔が室温の熱エネルギーおよび第2の微粒子体の電位上昇に比べて大きい場合は、次に示すようにさらなる電荷保持の安定化が可能である。図26(a)〜(c)は、注入電荷として電子を用いる場合の伝導帯付近のバンド構造の概略図を示す。図26(a)に示すように、微粒子体に電荷が無い状態で、第1の微粒子体(シリコン微粒子3013)が量子化され、その基底準位3031は電子が占め、第1励起準位3032は空で両者のエネルギー間隔が熱エネルギーより十分大きいとする。外部より書込みのため電界を加えると、図26(b)のように半導体基板から第1励起準位3032を介したトンネル過程3033により電子が第2の微粒子体(金微粒子3015)に注入される。この後、外部電界を除くと第2の微粒子体の粒径が大きい場合、図26(c)のように第2の微粒子体のフェルミレベル3034は第1励起準位3032より低くなる。両者の差が熱エネルギーよりも大きい場合は電荷の放出が困難となり、第2の微粒子体内の電荷が安定に保持されることとなる。ここでは電子が注入電荷として用いられる場合について述べたが、正孔を用いる場合も同様の効果がある。
【0245】
−微粒子体のバンド構造と電荷の移動・保持との関係−
図27(a)〜(c)は、電荷として電子を用いる場合における半導体基板(又は基板上の半導体層)−第2の微粒子体間の電圧の高低と電荷の移動特性とのより好ましい関係を説明するための半導体基板,第1の障壁層,第1の微粒子体,第2の障壁層及び第2の微粒子体の伝導帯端のみを示すバンド図である。図27(a)は、電圧が印加されていないときの状態を示す図である。同図に示すように、この例においては、第1の微粒子体の電子親和力χe1よりも第2の微粒子体の電子親和力χe2の方が大きい。その結果、図27(b)に示すように、第2の微粒子体と半導体基板その間で第2の微粒子体の方が高電位となるように電界を印加した場合、半導体基板から第1の微粒子体を経て第2の微粒子体に容易に電子が流れる。一方、図27(c)に示すように、第2の微粒子体に電荷が蓄積され、その結果、第2の微粒子体の方が低電位となる弱い電界が発生した場合、第1の微粒子体から第2の微粒子体への電子の移動が困難となる。つまり、半導体基板側に所定の高い電界を印加しないと、第1の微粒子体から第2の微粒子体を経て半導体基板側に電子が移動するのが困難となる。言い換えると、第2の微粒子体における電荷の保持が容易となる。また、第2の微粒子体の電子親和力χe2の大きさが半導体基板の電子親和力χsmに比べて大きいことにより、第2の微粒子体の伝導帯端のポテンシャルが半導体基板の伝導帯端のポテンシャルよりも高くなるのを抑制でき、電荷保持力がより向上する。特に、第1の微粒子体が半導体材料により構成され、第2の微粒子体が金属材料により構成されていることにより、第2の微粒子体の伝導帯端のポテンシャルの上昇抑制効果が大きい。
【0246】
一方、電荷が正孔の場合には、図27(a)〜(c)から容易に類推できるように、第2の微粒子体の電子親和力χe2と禁制帯幅gy2との和(χe2+gy2)が、第1の微粒子体の電子親和力χe1と禁制帯幅gy1との和(χe1+gy1)よりも小さいことにより、第2の微粒子体の価電子帯端のポテンシャルの上昇を抑制できるので電荷保持が容易となる。また、第2の微粒子体の電子親和力χe2と禁制帯幅gy2との和(χe2+gy2)が、半導体基板の電子親和力χsmと禁制帯幅gsmとの和(χsm+gsm)に比べて小さいことにより、第2の微粒子体の価電子帯端のポテンシャルの上昇抑制効果が大きい。
【0247】
−第1の微粒子体の粒径及び粒径比と電荷の移動・保持との関係−
次に、第1の微粒子体の粒径と、第1,第2の微粒子体の粒径比とが電荷の保持特性に与える影響について説明する。
【0248】
図28に示すように、上部電極と基板上導電層(半導体基板)との間の距離をtg、互いに接する第1の微粒子体と第2の微粒子体の距離をd、第1の微粒子体の半径をr1、第2の微粒子体の半径をr2、絶縁体および障壁層の誘電率をε、単位電荷をeとする。
【0249】
ここで、半導体基板の導電層の電位を0Vに固定しておいて、電荷保持時には、上部電極の電位Vgを0Vとし、電荷の注入および放出はVgを制御することによって行うものとする。
【0250】
まず、微粒子体に電荷が無い状態でVg=0として電荷の無い状態の保持を行う際には、半導体基板側から微粒子体へ電荷が拡散により自然に注入してしまわないことが必要である。
【0251】
基板上の導電層から、基板に隣接する第1の微粒子体に電荷を注入する過程で、第1の微粒子体の充電エネルギーΔE1は、下記式
ΔE1=(e/8πε)・(1/r1)
のように表される。
【0252】
ここで、Vg=0のときには、第2の微粒子体に電荷が無い状態に比較して、第2の微粒子体に電荷が注入された状態はエネルギー的に高いので、第1の微粒子体に移動した電荷のうち多くは基板に戻り、第2の微粒子体にまで移動する確率は高くない。しかし、半導体基板は量子化されていないのでその状態密度は高く、半導体基板と半導体基板に隣接する第1の微粒子体間の電荷移動は比較的起こりやすい。
【0253】
そこで、上述の充電エネルギーΔE1を熱エネルギーkT(k:ボルツマン定数、T:絶対温度)よりも高くすることにより(ΔE1>kT)、熱的に励起された電荷の注入を抑制することができる。その場合、第1の微粒子体の粒径が5nm以下であれば、充電エネルギーΔE1が熱エネルギーkTに比較して十分大きくなり、電荷の自然注入を防ぐことができる。また、さらに長期の電荷の保持が要求される場合には、第1の微粒子体の粒径が2nm以下であれば、充電エネルギーΔE1が熱エネルギーkTの7倍以上となる。このときには、電子の励起確率が通常の1/1000以下となるので、素子の情報保持状態をより安定化できる点で好ましいといえる。
【0254】
次に、メモリ素子における情報の書き込み時等には、上部電極に正の電圧Vg(charge)の電圧を印加して電界を与え、基板側から第2の微粒子体に電荷を注入する。このときは、上記充電エネルギーΔE1に抗する電界を印加して第1の微粒子体に電荷を注入し、第2の微粒子体まで移動させる必要がある。従って、あまりに第1の微粒子体の粒径が小さいと充電エネルギーΔE1が過大になり、電荷の注入が阻害される可能性が有る。しかし、前述のように、半導体基板の状態密度は高いので半導体基板と第1の微粒子体との間の電荷移動は比較的起こりやすい。また、さらにVg(charge)の印加により、第2の微粒子体におけるエネルギー状態は、電荷が注入される前よりも電荷が注入された状態の方がポテンシャルが低いので、第1の微粒子体に移動した電荷は速やかに第2の微粒子体に注入される。この結果、実際には、第1の微粒子体の粒径の下限への制限は緩やかで、粒径が原子サイズオーダーの0.1nm以上であれば電荷の注入が可能であり、イオン注入により導入した原子やそれに起因する準位を第1の微粒子体として用いることも可能である。すなわち、第1の微粒子体の粒径の下限は約0.1nmである。
【0255】
なお、特に高速動作を必要とする用途においては、第1の微粒子体の粒径を0.5nm以上とすることにより、第1の微粒子体の充電エネルギーΔE1が過大になるのを抑制でき、迅速な電荷注入が可能となるので望ましい。
【0256】
次に、第2の微粒子体に単一の電荷を蓄積した状態でVg=0として電荷保持を行う際には、微粒子体側から基板側へ自然に電荷が放出してしまわないことが必要である。本発明においては、電荷の放出は第2の微粒子体からこれに隣接する第1の微粒子体への電荷移動の過程で決定される。この電荷移動に伴う電子のエネルギー変化(ΔE1−ΔE2)は第1の微粒子体と第2の微粒子体の粒径比(r2/r1)をfとすると、下記式
ΔE1−ΔE2={e(f−1)}/8π・f・r1
によって表される。ここで、第1の微粒子体の状態密度は基板表面に比較して低いので、第2の微粒子から第1の微粒子への電荷移動あるいはその逆の電荷移動は、第1の微粒子体−半導体基板表面間の電荷移動に比較して起こりにくい。しかし、熱励起作用によって第2の微粒子体のバンドエネルギーが高められると、第1の微粒子体に電荷がある確率で移動することになる。そして、第1の微粒子体にいったん電荷が保持されると、上述のように微粒子体間よりも第1の微粒子−半導体基板間の方が電界移動が容易であることから、第1の微粒子体の電荷の多くは半導体基板に移動することになる。従って、このような遷移をくい止めて安定して電荷を保持するためには、エネルギー変化が熱ΔE1−ΔE2>kTとすることが望ましい。例えば、第1の微粒子体の粒径を5nm以下とすると、第1の微粒子体と第2の微粒子体の粒径比fが1.8倍以上であれば、エネルギー変化(ΔE1−ΔE2)が熱エネルギーkTより大きくなるので、電荷の自然放出を防ぐことができる。また、さらに長期の電荷保持が要求される場合、粒径比fが4倍以上であることにより、電荷の保持をさらに安定化することができる点で好ましい。
【0257】
また、上部電極にVg(discharge)の電圧を印加して外部より電界を与え、第2の微粒子体に蓄積された電荷を放出させる際には、第2の微粒子体上の電荷が迅速に基板側へ移動する必要がある。このときには、エネルギー変化(ΔE1−ΔE2)に抗する電界を印加して第2の微粒子体から第1の微粒子体に電荷を注入し、この電荷を半導体基板まで移動させる必要がある。ここで、電圧Vg(discharge)の印加により、第2の微粒子体から電荷が放出される前の状態に比較して、第2の微粒子体から半導体基板に電荷が移動した状態の方をエネルギー的に低くすることができ、その場合には、第2の微粒子体から第1の微粒子体に電荷が移動する確率が高まる。また、第1の微粒子体に移動した電荷は、上述のようにほとんど半導体基板に放出される。しかし、微粒子体の状態密度は、半導体基板表面に比較して低いので、微粒子体間の電荷移動は微粒子体−半導体基板表面間の電荷移動に比較して起こりにくい。
【0258】
そこで、前述の第2の微粒子体から第1の微粒子体への電荷移動に伴う電子のエネルギー変化(ΔE1−ΔE2)を、外部からの電界による二つの微粒子体の電位差によるエネルギー変化ΔE’
ΔE’=eVg(discharge)・(d/tg)
に比較して、同等あるいは同等以下とすることにより、容易に第2の微粒子体上の電荷を放出させることができる。ここで、第1の微粒子体の粒径が0.1nm以上であることで、容易にエネルギー変化(ΔE1−ΔE2)をΔE’と同等にすることができ、迅速な電荷消去を行うことができる。
【0259】
また、さらに第1の微粒子体の粒径を0.5nm以上とすることにより、エネルギー変化(ΔE1−ΔE2)をΔE’より十分低くすることができ、高速動作が可能となるので望ましい。
【0260】
−第2の微粒子体の粒径及び粒径比と電荷の移動・保持との関係−
次に、第2の微粒子体の粒径と、第1,第2の微粒子体の粒径比の上限について説明する。
【0261】
本発明を利用する典型的な半導体素子として、0.4μm角程度の電荷蓄積領域を有する素子を考える。これは、例えばMIS型トランジスタ素子のゲート幅およびゲート長が0.4μmであることに対応する。ここで、第2の微粒子体が多数分散していることにより、障壁層の欠陥等に起因するリーク電流への耐性を向上することができる。そこで、第2の微粒子体の粒径を30nm以下とすることにより、上記半導体素子において電荷蓄積領域に平均40個以上と多数の第2の微粒子体を設けることができる。
【0262】
また、さらに微細化した素子に対しては、第2の微粒子体の粒径を10nm以下とすることにより、例えば0.13μm角の電荷蓄積領域にも同様に多数の第2の微粒子体を設けることができる。
【0263】
前述のように、第1の微粒子体の粒径は0.1nm以上であるから、第2の微粒子体の粒径r2と第1の微粒子体の粒径r1との比fは300倍以下であることが好ましい。また、特に微細化した素子に対しては粒径比を100倍以下にすることが、より好ましい。
【0264】
一方、第2の微粒子体の粒径をあまり小さくすると、下記式
ΔE2=(e/8πε)・(1/r2)
によって表される電荷を注入した際の電位上昇ΔE2が大きくなり、蓄積された電荷が不安定となる。ここで、第2の微粒子体の粒径を1nm以上とすることにより、過大な電位上昇を抑制し、電荷保持が容易となる。特に、第2の微粒子体の粒径を3nm以上とすることにより、長期の電荷保持が容易となる。
【0265】
以上から、第2の微粒子体の粒径r2は、第1の微粒子体の粒径r1に対して1.8倍以上300倍以下とすることが好ましい。なお、微細化した半導体素子において、電荷保持をより安定化させるには、第2の微粒子体の粒径r2は、第1の微粒子体の粒径r1に対して4倍以上100倍以下であることが、より好ましい。
【0266】
また、第1の微粒子体の粒径r1は、0.1nm以上5nm以下であることが好ましい。なお、高速で動作させ、また電荷保持をより安定化させるには第1の微粒子体の粒径r1は0.5nm以上2nm以下であることがより好ましい。
【0267】
また、第2の微粒子体の粒径r2は、1nm以上30nm以下であることが好ましい。なお、微細化した半導体素子において、電荷保持をより安定化させるには、第2の微粒子体の粒径r2は、3nm以上10nm以下とすることがより好ましい。
【0268】
以上のように、本実施形態の半導体素子では、電荷保持を担う微粒子体と電荷移動を制御する微粒子体を独立に設け、各々の機能を特化させることにより書込・消去が高速でかつ、従来になく長時間の電荷保持が可能で信頼性の高い微粒子体への電荷注入、保持、消去の手段が提供される。
【0269】
本実施形態では、微粒子体中に注入・蓄積される電荷としては、電子と正孔のいずれをも利用可能である。
【0270】
また本実施形態では、半導体基板としてp型のシリコン基板を用いたが、同様にn型の半導体基板やその他の材料の半導体基板を用いることもできる。注入電荷として電子を用いる場合はn型の半導体基板を、また注入電荷として正孔を用いる場合はp型の半導体基板を用いることにより、蓄積電荷の放出の抑制が容易となり、より好ましい。
【0271】
また、本実施形態では、微粒子体としてシリコン微粒子と金微粒子を用いたが、同様に金属や他の半導体材料を用いることもできる。
【0272】
また、本実施形態では、第2の微粒子体と半導体基板の間に第1の障壁層と第2の障壁層にはさまれた第1の微粒子体を1層のみ設けているが、第1の微粒子体を複数層設け、各層の間にさらに障壁層をはさんだ構造によりさらに第2の微粒子体内の電荷保持を安定化させることもできる。
【0273】
(第17の実施形態)
図29は、本発明の第17の実施形態における半導体メモリ素子の断面図である。同図に示すように、半導体メモリ素子は、半導体基板であるp型シリコン基板3041中に形成されたソース領域あるいはドレイン領域として機能するn型領域3042と、ソース/ドレイン電極である金属電極3049と、ゲート絶縁膜である厚さが7nmのSiOゲート絶縁層3047と、ゲート電極であるn型多結晶シリコン電極3048とを備え、MIS型トランジスタ構造を有している。また、上記MIS型トランジスタ構造のゲート絶縁膜3047と半導体基板3041の間に、以下の部材が設けらている。半導体基板上には電荷の移動に対して障壁として機能する第1の障壁層として、厚さ1.9nm程度の熱酸化SiO膜3043が設けられている。また、上記第1の障壁層である熱酸化SiO膜3043の上に、第1の微粒子体として直径2.5nmのシリコン微粒子3044が設けられている。また、上記第1の微粒子体であるシリコン微粒子3044の上に、電荷の移動に対して障壁として機能する第2の障壁層である厚さ1.8nm程度のSiO膜3045が設けられている。また上記第2の障壁層であるSiO膜3045の上に、第2の微粒子体として直径6nmの金微粒子3046が設けられている。ここで、シリコン微粒子の面内密度は1×1011cm−2〜1×1013cm−2、金微粒子の面内密度は1×1010cm−2〜1×1012cm−2程度である。
【0274】
本実施形態でも、第16の実施形態と同様の原理により、微粒子体への電荷の注入・保持・放出を制御できる構造を実現できる。さらに、本実施形態では電荷を保持する構造がMIS型トランジスタ構造のゲート領域に形成されていることにより、第2の微粒子体中に電荷が保持されている状態と電荷が無い状態とではMIS型トランジスタ特性の閾値電圧が変化する。これにより、低電圧・高速かつ長期間の記録が可能な不揮発性の半導体メモリ素子として動作する。さらに単一素子により基本的なメモリ動作が実現されるので高密度の集積化が可能である。
【0275】
本実施形態においては、図29に示すように、ゲート領域のうち少なくともソース領域の上部および上記ソース領域に接する領域、あるいはドレイン領域の上部および上記ソース領域に接する領域において微粒子体が存在しない部分が設けられているので、ソース領域からドレイン領域に電圧を印加した際に上記微粒子体を介して短絡した電流が流れることを防止することができる。
【0276】
また、本実施形態において、微粒子体の設けられた領域が少なくともソース−ドレイン間の短絡電流を妨げる方向で複数の領域に分割された形状を有することにより、ソース領域からドレイン領域に電圧を印加した際に上記微粒子体を介して短絡した電流が流れることを防止することもできる。
【0277】
(第18の実施形態)
図30は、本発明の第18の実施形態における半導体素子の断面図である。同図に示すように、半導体基板であるp型シリコン基板3051上に、電荷の移動に対して障壁として機能する表面障壁層である厚さ1nm程度の熱酸化SiO膜3052aが設けられている。また、表面障壁層である熱酸化SiO膜3052aの上に、電荷の移動に対して障壁として機能するSiO膜が設けられ、このSiO膜に第1の微粒子体であるシリコン微粒子3054が分散した微粒子分散層であるSiO層(1.5<x<2)からなるシリコン過多酸化膜3053が設けられている。また、微粒子分散層であるシリコン過多酸化膜(Silicon rich oxide)3053の上に、障壁層として機能する堆積SiO膜3052bが設けられている。そして、堆積SiO膜2052bの上に、第2の微粒子体である直径2nmの金微粒子3055が設けられている。また、上記第2の微粒子体である金微粒子3055の上に絶縁体層である厚さ8nmのSiO膜3056が設けられており、最上部に電極層であるn型多結晶シリコン電極3057が設けられている。金微粒子3055は、金コロイド溶液へのウエハ浸漬により、直径2〜5nmの微粒子が1×1010cm−2〜1×1012cm−2程度の面内密度で固定されたものである。
【0278】
上述の第16の実施形態では、第1の微粒子体を第1の障壁層の上に微細構造として作製しているので、第1の微粒子体の粒径分布や面内分散状態等を制御する必要がある。しかし、本実施形態では、SiO層(1.5<x<2)からなるシリコン過多酸化膜3053(微粒子分散層)を用いることにより、容易に障壁層であるSiO膜中に微小なシリコン微粒子3054が分散した構造を実現できる。すなわち、SiO膜中の微小なシリコンアイランドが微粒子体として機能するので、特に微細構造を制御する必要がない。この結果、半導体素子の製造が容易となり、素子特性の再現性も高い。SiO層は、CVD法により容易に高品質の膜が製造できるが、スパッタ法等の他の方法によっても作製できる。なお、SiO層(1.5<x<2)中の酸素含有比xが1.8<x<2の範囲にあることにより、より微小なシリコンアイランドを形成することができ好ましい。SiO層(1.5<x<2)の厚さは3〜10nmの範囲にあることにより、低電圧での素子動作が可能となる。本実施形態では、厚さ6nmのSiO1.9層を用いている。ここで、第1の微粒子体として機能するSiO層(1.5<x<2)中のシリコン微粒子3054の粒径は1nm以下であり、金微粒子3055(第2の微粒子体)の直径は、このシリコン微粒子3054の直径の2倍以上である。
【0279】
特に、金微粒子3055(第2の微粒子体)とシリコン過多酸化膜3053(微粒子分散層)との間に障壁層として機能する堆積SiO膜3052bを設けたので、金微粒子3055に保持された電荷が所望しないときにシリコン過多酸化膜3053中のシリコン微粒子(第1の微粒子体)に移動するのを確実に防止することができる利点がある。
【0280】
なお、本実施形態では、作製したSiO層を特に熱処理することなくそのまま使用し、SiO層中の微小なシリコンアイランドを微粒子体として利用しているが、SiO層を1000℃程度で熱処理することにより、シリコン微粒子を成長させ、その粒径を制御することもできる。
【0281】
また、本実施形態では、微粒子分散層としてSiO層を使用しているが、絶縁体層内に半導体イオンあるいは金属イオンを注入することにより、微粒子分散層を形成することにより、本実施形態の微粒子分散層と同等の電荷制御機能を有する構造をさらに容易に形成することもできる。半導体あるいは金属イオンが注入された絶縁体層は微粒子を分散した構造とは異なるが、絶縁体中で半導体や金属原子が形成する準位は、本実施形態における粒径の小さな第1の微粒子体と実質的に同様の機能を得られるので、本実施形態における微粒子分散層として使用することができる。かかる半導体イオンや金属イオンの例としては、SiイオンやWイオン等があり、これらのイオンが注入したSiO膜などを微粒子分散層として使用することで、本実施形態の半導体素子と同様の機能を得ることができる。
【0282】
本実施形態においても、第16の実施形態と同様の原理により、微粒子体への電荷の注入・保持・放出を効率よく制御できる。さらに、本実施形態では前述のように、第1の微粒子体を微細構造として作製する必要がないため、製造が容易で素子特性の再現性が高い利点がある。
【0283】
さらに、本実施形態では第16の実施形態と異なり、半導体基板と第2の微粒子体の間の電荷移動は通常、単一の第1の微粒子体だけではなく、複数の第1の微粒子体を介して行われる。このような複数の微粒子体を介したトンネル過程では単一の微粒子体を介した過程に比べてトンネル電流は減少するが、その減少率は書込み時のような比較的強い電界下に比べて電荷保持時のような弱い電界下の方が大きい。その結果、書込・消去時のトンネル電流(書込・消去電流)と、電荷保持時のトンネル電流(リーク電流)の比がさらに増大され高速で長寿命の素子を実現できる。
【0284】
なお、第2の微粒子体を設けず、単に第1の微粒子分散層を設けただけの構造では電荷保持が静電容量の高い第1の微粒子体で行われ、さらに電荷保持時に第1の微粒子分散層の中でもより静電容量の高い半導体基板に隣接する微粒子体へと逆流するので長期間の電荷保持は困難である。また、この場合、第1の微粒子分散層では横方向に電荷が分散しやすいので一部のリーク電流により広範囲の蓄積電荷を失う場合があり信頼性の高い半導体素子の実現が困難である。
【0285】
また、後述の第xの実施形態で記載の第2の微粒子体に代えて、単一の浮遊導電体を設けた構造でも、一部のリーク電流により全ての電荷を失ってしまうことになる。本実施形態では、リーク位置の真上にある第2の微粒子体のみが電荷を失うだけで、他の第2の微粒子体には影響が及ばないので高い信頼性を有する。
【0286】
なお、本実施形態の半導体素子において、微粒子分散層と第2の微粒子体の間に、第2の障壁層が設けられていることによりリーク電流をさらに抑制することもできる。
【0287】
また、本実施形態の半導体素子においては、半導体基板と微粒子分散層の間に表面障壁層を設けているが、微粒子分散層の微粒子密度があまり高くない場合等はこれを省略して半導体基板上に直接微粒子分散層を設けることもできる。
【0288】
本実施形態の半導体素子の構造を利用して、第17の実施形態と同様の半導体メモリ素子を構成することができる。
【0289】
図31は、本実施形態の半導体素子を利用して形成される半導体メモリ素子の断面図である。半導体基板であるp型シリコン基板3061上に、ソース・ドレイン領域3062と、表面障壁層である熱酸化SiO膜3063aと、障壁層であるSiO膜中に第1の微粒子体であるシリコン微粒子3065が分散したシリコン過多酸化膜3064と、障壁層である堆積SiO膜3063bと、第2の微粒子体である金微粒子3066と、SiO膜からなるゲート絶縁膜3067と、電極層であるn型多結晶シリコン電極3068と、ソース・ドレイン電極3069とが設けられている。つまり、第17の実施形態と同様のMIS型トランジスタ構造が形成されており、そのゲート絶縁膜3067と半導体基板3061の間に、微粒子分散層(SiO層)が介在している。これにより、第2の微粒子体である金微粒子3066中に電荷が保持されている状態と電荷が無い状態とではMIS型トランジスタ特性の閾値電圧が変化し、低電圧・高速かつ長期間の記録が可能な不揮発性の半導体メモリ素子として動作する。
【0290】
また、本実施形態の半導体メモリ素子においては、ゲート領域のうち少なくともソース領域の上部および上記ソース領域に接する領域、あるいはドレイン領域の上部および上記ソース領域に接する領域のいずれか一方あるいは両方の領域において、少なくとも微粒子分散層および微粒子体が存在しない部分が設けられているので、ソース領域からドレイン領域に電圧を印加した際に上記微粒子体を通って短絡した電流が流れることをより効果的に防止することができる。
【0291】
(第19の実施形態)
図32は、本発明の第19の実施形態における半導体素子の断面図である。半導体基板であるp型シリコン基板3071の上に、電荷の移動に対して障壁として機能する表面障壁層として、厚さ1.2nm程度の熱酸化SiO膜3072aが設けられている。また、上記表面障壁層である熱酸化SiO膜3072aの上に、電荷の移動に対して障壁として機能するSiO膜中に第1の微粒子体としてシリコン微粒子3074が分散した第1の微粒子分散層となる厚さ3nm程度の第1のSiO層(1.5<x<2)からなるシリコン過多酸化膜3073が設けられている。また、第1の微粒子分散層であるシリコン過多酸化膜3073の上に、障壁層として機能する堆積SiO膜3073bと、電荷の移動に対して障壁層として機能するSiO膜中に第2の微粒子体であるシリコン微粒子3076が分散した第2の微粒子分散層である厚さ5nm程度の第2のSiO層(1.5<x<2)からなるシリコン過多酸化膜3075とが順次設けられている。また、上記第2の微粒子分散層であるシリコン過多酸化膜3075の上に絶縁体層である厚さ10nmのSiO膜3077が設けられており、最上部に電極層であるn型多結晶シリコン電極3078が設けられている。
【0292】
第1の微粒子体3074と第2の微粒子体3076はいずれもSiO層(1.5<x<2)中に分散されたシリコン微粒子であるが、SiO膜の組成制御と熱処理により微粒子体の粒径を制御できる。いずれの層も、CVD装置を用いてSiO層(1.5<x<2)を堆積した後、約1100℃で熱処理することによりシリコン微粒子を成長させているが、第2の微粒子分散層(シリコン過多酸化膜3075)のSi含有比を第1の微粒子分散層(シリコン過多酸化膜3073)のSi組成比含有比に比べて高くすることにより、第2の微粒子分散層に成長するシリコン微粒子の粒径を大きくすることができる。本実施形態では、第1の微粒子分散層(シリコン過多酸化膜3073)の組成をSiO1.9とする一方、第2の微粒子分散層(シリコン過多酸化膜3075)の組成をSiO1.7としている。ここで、第2の微粒子体の粒径は1.7nm以上である。また、第1の微粒子体の粒径は約0.8nm以下である。そして、第2の微粒子体の粒径は、第1の微粒子体の粒径の約1.8倍以上である。その結果、上述のように、第2の微粒子体における電荷の注入・保持特性を良好に発揮することができる。
【0293】
また、本実施形態では、第1,第2の微粒子分散層としてSiO層を使用しているが、絶縁体層内に半導体イオンあるいは金属イオンを注入することにより、微粒子分散層層を形成することにより、本実施形態の第1,第2の微粒子分散層と同等の電荷制御機能を有する構造をさらに容易に形成することもできる。
【0294】
本実施形態でも、第18の実施形態と同様の原理により微粒子体への電荷の注入・保持・放出を効率よく制御できる。また、第18の実施形態では第2の微粒子体を第1の微粒子分散層上に微細構造として作製する必要があるが、本実施形態では、第2の障壁層中に第2の微粒子体が分散された構造を用いることにより、さらに半導体素子の作製が容易となり素子特性の再現性も高い利点がある。
【0295】
なお、第2の微粒子分散層を設けず、単に第1の微粒子分散層を設けただけの構造では電荷保持が静電容量の小さな第1の微粒子体で行われ、さらに電荷保持時に第1の微粒子分散層の中でもより静電容量の高い半導体基板に隣接する微粒子体へと逆流するので長期間の電荷保持は困難である。
【0296】
なお、本実施形態の半導体素子において、第1の微粒子分散層と第2の微粒子分散層の間に、第2の障壁層が設けられていることによりリーク電流をさらに抑制することもできる。
【0297】
また、本実施形態の半導体素子においては、半導体基板と第1の微粒子分散層の間に表面障壁層を設けているが、第1の微粒子分散層の微粒子密度があまり高くない場合等はこれを省略して半導体基板上に直接第1の微粒子分散層を設けることもできる。
【0298】
本実施形態では、第1の微粒子分散層と第2の微粒子分散層の間に明確な界面があるが、第1の微粒子分散層と第2の微粒子分散層が連続的な微粒子密度分布を有し、両者の間に明確な界面がないような構成にすることも可能である。この場合でも実質的に本実施形態と同様の効果が得られる。
【0299】
本実施形態の半導体素子の構造を利用して、第17の実施形態と同様の半導体メモリ素子を構成することができる。
【0300】
図33は、本実施形態の半導体素子を利用して形成された半導体メモリ素子の断面図である。半導体基板であるp型シリコン基板3081上に、ソース・ドレイン領域3082と、表面障壁層である熱酸化SiO膜3083aと、障壁層であるSiO膜中に第1の微粒子体であるシリコン微粒子3085が分散した第1の微粒子分散層であるシリコン過多酸化膜3084と、障壁層として機能する堆積SiO膜3083bと、障壁層であるSiO膜中に第2の微粒子体である金微粒子3087が分散した第2の微粒子分散層であるシリコン過多酸化膜3086と、SiO膜からなるゲート絶縁膜3088と、電極層であるn型多結晶シリコン電極3089と、ソース・ドレイン電極3080とが設けられている。つまり、第17の実施形態と同様のMIS型トランジスタ構造が形成されており、そのゲート絶縁膜3088と半導体基板3081の間に、2つの微粒子分散層(SiO層及び金微粒子がSiO中に分散した層)が介在している。これにより、第2の微粒子体である金微粒子3087中に電荷が保持されている状態と電荷が無い状態とではMIS型トランジスタ特性の閾値電圧が変化し、低電圧・高速かつ長期間の記録が可能な不揮発性の半導体メモリ素子として動作する。
【0301】
なお、本実施形態の半導体メモリ素子においては、ゲート領域のうち少なくともソース領域の上部および上記ソース領域に接する領域、あるいはドレイン領域の上部および上記ソース領域に接する領域のいずれか一方あるいは両方の領域において、少なくとも微粒子分散層が存在しない部分が設けられているので、ソース領域からドレイン領域に電圧を印加した際に上記微粒子体を通って短絡した電流が流れることを防止することができる。
【0302】
(第20の実施形態)
図34は、本発明の第20の実施形態における半導体素子の断面図である。半導体基板であるp型シリコン基板3091上に、電荷の移動に対して障壁として機能する表面障壁層である厚さ1.3nm程度の熱酸化SiO膜3092が設けられている。また、上記表面障壁層上に、電荷の移動に対して障壁として機能する障壁層であるSiO膜中に第1の微粒子体であるシリコン微粒子3094と第2の微粒子体であるイオン注入されたタングステン原子3095とが分散した厚さ5nm程度の微粒子分散層3093が設けられている。また、上記微粒子分散層3093の上に絶縁体層として厚さ6nmのSiO膜3096が設けられており、最上部に電極層であるn型多結晶シリコン電極3097が設けられている。
【0303】
ここで第1の微粒子体94と第2の微粒子体3095はいずれも障壁層であるSiO膜中に分散された微粒子体であるが、第2の微粒子体3095の粒径は2.6nm以上であり実質的な粒径が約0.5nm以下の第1の微粒子体3094の1.8倍以上である。
【0304】
上述のような微粒子分散層はCVD装置を用いてSiO(1.5<x<2)膜を堆積した後、約1100℃で熱処理することによりシリコン微粒子を成長し、さらにタングステン原子をイオン注入することで作製できる。本実施形態では、第1の微粒子体である絶縁体層に注入されたタングステン原子を使用しているが、この他のイオン注入により導入された半導体原子あるいは金属原子、あるいはその他の半導体微粒子あるいは金属微粒子を利用することもできる。
【0305】
本実施形態でも、第18の実施形態と同様の原理により、微粒子体への電荷の注入・保持・放出を効率よく制御できる。また、第18の実施形態では、適切な素子動作速度と記録保持期間を得るには第1の微粒子分散層の厚さを制御する必要があるが、本実施形態では、許容される厚さ範囲が広く、素子作製が容易である。すなわち、分散された第1の微粒子体と第2の微粒子体が様々な位置関係にあるが、書込み時に半導体表面から引抜かれた電荷はより電荷移動の容易な経路を選択し、比較的注入の容易な第2の微粒子体から注入されていく。電荷保持時は、半導体表面に隣接する等の第2の微粒子体からは速やかに電荷が放出されるが、より電荷放出の困難な位置では、長期にわたり電荷の保持が行われる。本実施形態では、第18の実施形態に比べて注入される電荷に対する保持される電荷の割合が少いが、素子構成がより簡素であるため再現性の高い半導体素子を容易に作製できる利点を有する。
【0306】
なお、本実施形態では、第1の微粒子体と第2の微粒子体に明確な区別があるが、同一材料でも十分広い範囲にわたる様々な粒径を有する微粒子体を作製することにより連続的な粒径分布を有する微粒子体を設け、粒径の小さな微粒子体を第1の微粒子体として機能させ、粒径の大きな微粒子体を第2の微粒子体として機能させることもできる。この場合、第1の微粒子体と第2の微粒子体の間に明確な区別を行うことはできないが、注入された電荷は粒径が大きく静電容量の大きな微粒子に選択的に保持されるので、電荷によって選択された微粒子体が第2の微粒子体として機能することになる。半導体表面付近の微粒子体への電荷の逆流を防ぐためには微粒子体の粒径分布は少なくとも中間的な粒径を有する微粒子の0.7倍から1.4倍の範囲より広い範囲に分布を持つ必要がある。また長期の電荷保持を行うには少なくとも0.4倍から1.6倍以上の範囲に粒径分布を持つことが望ましい。
【0307】
また、微粒子体の粒径分布は、中央に谷を有し、その両側に2つのピークを有する形状とすることが好ましい。
【0308】
また、本実施形態の半導体素子においては、半導体基板と微粒子分散層の間に表面障壁層を設けているが、微粒子分散層の微粒子密度があまり高くない場合等はこれを省略して半導体基板上に直接微粒子分散層を設けることもできる。
【0309】
本実施形態の半導体素子の構造を利用して、第17の実施形態と同様の半導体メモリ素子を構成することができる。
【0310】
図35は、本実施形態の半導体素子を利用して形成された半導体メモリ素子の断面図である。半導体基板であるp型シリコン基板3101の上に、ソース・ドレイン領域3102と、表面障壁層である熱酸化SiO膜3103と、障壁層であるSiO膜中に第1の微粒子体であるシリコン微粒子3105と第2の微粒子体であるタングステン微粒子3106とが分散した微粒子分散層3104と、SiO膜からなるゲート絶縁膜3107と、電極層であるn型多結晶シリコン電極3108と、ソース・ドレイン電極3109とが設けられている。これにより、第2の微粒子体中に電荷が保持されている状態と電荷が無い状態とではMIS型トランジスタ特性の閾値電圧が変化し、低電圧・高速かつ長期間の記録が可能な不揮発性の半導体メモリ素子として動作する。
【0311】
本実施形態の半導体メモリ素子において、ゲート領域のうち少なくともソース領域の上部および上記ソース領域に接する領域、あるいはドレイン領域の上部および上記ソース領域に接する領域のいずれか一方あるいは両方の領域において、少なくとも微粒子分散層が存在しない部分が設けられていることにより、ソース領域からドレイン領域に電圧を印加した際に上記微粒子体を介して短絡した電流が流れることを防止することができる。
【0312】
(第21の実施形態)
図36は、本発明の第21の実施形態における半導体素子の断面図である。半導体基板であるp型シリコン基板3111上に、まず第1のSiO層である厚さ1nm程度の熱酸化SiO膜3112が設けられている。また、上記第1のSiO層上にSiO層(0≦x<2,0<y≦4/3)である厚さ1.2nm程度のSi層3113が設けられており、さらに上記SiO層上に厚さ1.8nm程度の第2のSiO層3114が設けられている。また上記第2のSiO層3114の上に、微粒子体である直径2nmの金微粒子3115が設けられている。また、上記微粒子体上に絶縁体層である厚さ10nmのSiO膜3116が設けられており、最上部に電極層であるn型多結晶シリコン電極3117が設けられている。金微粒子3115の面内密度は1×1010cm−2〜1×1012cm−2の範囲である。
【0313】
本実施形態では、第16の実施形態と異なり、粒径の異なる2種の微粒子体を設けてはいない。しかし、本実施形態では、SiO層(0≦x<2,0<y≦4/3)が第1のSiO層と第2のSiO層にはさまれた構成となっているので、SiO層と第2のSiO層の間の界面付近およびSiO層内部に電荷を授受することのできる準位(界面準位)が発生する。この界面準位における準位間のエネルギー間隔が大きく、また、電荷を受取った際の界面準位の電位上昇が大きいので、実効的に粒径の小さな微粒子体と同様の機能を提供することができる。すなわち、本実施形態ではSiOy 層と第2のSiO層の間の界面準位が第16の実施形態における第1の微粒子体と同等の機能を有している。その結果、本実施形態における微粒子体では、第16の実施形態における第2の微粒子体と同様に蓄積された電荷を安定に保持することができる。したがって、本実施形態でも、第16の実施形態と同様の原理により微粒子体への電荷の注入・保持・放出を効率よく制御できる。
【0314】
また、第16の実施形態では第1の微粒子体を第1の障壁層上に微細構造として作製する必要があるが、本実施形態では、SiO層を利用するので、第1の微粒子体の微細構造を特に制御する必要がない。この結果、半導体素子の製造が容易となり、素子特性の再現性も高い利点がある。SiO層はCVD法により容易に高品質の膜が製造できる。
【0315】
本実施形態では、SiO層(0≦x<2,0<y≦4/3)であるSi層を用いたが、この他、一般式SiO(0<x<2,0<y<4/3)で表される組成を有するシリコン酸窒化膜を使用することもできる。
【0316】
なお、微粒子体を設けず、単にSiO層が第1のSiO層と第2のSiO層にはさまれている構造のみでは、電荷保持が静電容量の高い界面準位で行われるので長期間の電荷保持は困難である。さらに、電荷保持が行われる界面準位間では横方向の電荷分散が無視できないので、一部のリーク電流により全ての蓄積電荷を失う場合があり半導体素子の信頼性が低い。
【0317】
本実施形態の半導体素子の構造を利用して、第17の実施形態と同様の半導体メモリ素子を構成することができる。
【0318】
図37は、本実施形態の半導体素子を利用して形成された半導体メモリ素子の断面図である。半導体基板であるp型シリコン基板3121の上に、ソース・ドレイン領域3122と、第1のSiO層である熱酸化SiO膜3123と、SiO層(0≦x<2,0<y≦4/3)であるSiO1.53.5層3124と、第2のSiO層3125と、微粒子体である金微粒子3126と、SiO膜3127と、n型多結晶シリコン電極3128と、ソース・ドレイン電極3129とが設けられている。これにより、第2の微粒子体中に電荷が保持されている状態と電荷が無い状態とではMIS型トランジスタ特性の閾値電圧が変化し、低電圧・高速かつ長期間の記録が可能な不揮発性の半導体メモリ素子として動作する。
【0319】
また、本実施形態の半導体メモリ素子においては、ゲート領域のうち少なくともソース領域の上部および上記ソース領域に接する領域、あるいはドレイン領域の上部および上記ソース領域に接する領域のいずれか一方あるいは両方の領域において、少なくともSiO層および微粒子体が存在しない部分が設けられているので、ソース領域からドレイン領域に電圧を印加した際に上記微粒子体を介して短絡した電流が流れることを防止することができる。
【0320】
(第22の実施形態)
図38は、本発明の第22の実施形態における半導体素子の断面図である。半導体基板としてp型シリコン基板3131上に、第1のSiO層である厚さ1.3nm程度の熱酸化SiO膜3132が設けられている。また、上記第1のSiO層上に厚さ1.8nm程度のSiO層(0≦x<2,0<y≦4/3)であるSiO0.5N層3133が設けられており、さらにSiO0.5N層上に、電荷の移動に対して障壁として機能する障壁層であるSiO中に微粒子体であるシリコン微粒子3135が分散した第1の微粒子分散層であるSiO層(1.5<x<2)からなるシリコン過多酸化膜3134が設けられている。また、第1の微粒子分散層上に、絶縁体層である厚さ10nmのSiO膜3136が設けられており、最上部に電極層であるn型多結晶シリコン電極3137が設けられている。本実施形態において、SiO層の厚さは約5nm、その組成はSiO1.8である。
【0321】
本実施形態においても、第21の実施形態と同様の原理により微粒子体への電荷の注入・保持・放出を効率よく制御できる。また、第21の実施形態では微粒子体を微細構造として粒径分布や面内分散状態等を制御して作製する必要があるが、本実施形態では、障壁層中に微粒子体が分散した構造を用いることにより素子の作製が容易となり再現性が高い利点がある。
【0322】
本実施形態では、SiO層(0≦x<2,0<y≦4/3)としてSiO0.5N層を用いたが、この他、Si層や、他の組成を有するシリコン酸窒化膜を使用することもできる。
【0323】
また、本実施形態において、SiO層(0≦x<2,0<y≦4/3)層と微粒子分散層の間に、第2のSiO層が設けられていることによりリーク電流をさらに抑制することもできる。
【0324】
本実施形態の半導体素子の構造を利用して、第17の実施形態と同様の半導体メモリ素子を構成することができる。
【0325】
図39は、本実施形態の半導体素子を利用して形成された半導体メモリ素子の断面図である。半導体基板であるp型シリコン基板3141の上に、ソース・ドレイン領域3142と、熱酸化SiO膜3143と、Si層3144と、微粒子体であるシリコン微粒子3146と、シリコン過多酸化膜3145と、SiO膜3147と、n型多結晶シリコン電極3148と、ソース・ドレイン電極3149とが設けられている。これにより、微粒子体中に電荷が保持されている状態と電荷が無い状態とではMIS型トランジスタ特性の閾値電圧が変化し、低電圧・高速かつ長期間の記録が可能な不揮発性の半導体メモリ素子として動作する。
【0326】
本実施形態の半導体メモリ素子においては、ゲート領域のうち少なくともソース領域の上部および上記ソース領域に接する領域、あるいはドレイン領域の上部および上記ソース領域に接する領域のいずれか一方あるいは両方の領域において、少なくともSiO層および微粒子分散層が存在しない部分が設けられているので、ソース領域からドレイン領域に電圧を印加した際に上記微粒子体を介して短絡した電流が流れることを防止することができる。
【0327】
(第23の実施形態)
図40は、本発明の第23の実施形態における半導体素子の断面図である。同図に示すように、半導体基板としてのp型シリコン基板3151上に、まず電荷の移動に対して障壁として機能する第1の障壁層である厚さ2nm程度の熱酸化SiO膜3152が設けられている。また上記第1の障壁層である熱酸化SiO膜3152上に、第1の微粒子体として直径2nmのシリコン微粒子3153が設けられている。また上記第1の微粒子体であるシリコン微粒子3153の上に、電荷の移動に対して障壁として機能する第2の障壁層である厚さ2nm程度のSiO膜3154が設けられている。また上記第2の障壁層であるSiO膜3154の上に、第2の微粒子体である直径2nmのSiGe微粒子3155が設けられている。また上記第2の微粒子体であるSiGe微粒子3155の上に絶縁体層として厚さ10nmのSiO膜3156が設けられており、最上部には電極層であるn型多結晶シリコン電極3157が設けられている。
【0328】
ここで、上記第2の微粒子体であるSiGe微粒子3155の直径は上記第1の微粒子体であるシリコン微粒子3153の直径と同じとなっているが、両者の電子親和力が異なる。すなわち、第1の微粒子体であるシリコン微粒子3153の電子親和力は、第2の微粒子体であるSiGe微粒子3155の電子親和力よりも小さい。また、この場合には、第1の微粒子体であるシリコン微粒子3153の電子親和力と禁制帯幅との和が、第2の微粒子体であるSiGe微粒子3155の電子親和力と禁制帯幅との和よりも大きい。したがって、本実施形態の構造は、第2の微粒子体であるSiGe微粒子3155に、電子,正孔のいずれをも情報媒体である電荷として保持させて使用することができる構造である。
【0329】
以上のように、本発明の新規な構造を有する半導体素子により、従来になく作製が容易で信頼性の高く、長期の電荷保持が可能な微粒子体への電荷注入、保持、消去の手段が提供される。
【0330】
図41は、本発明の第23の実施形態における半導体素子を利用して得られる半導体メモリ素子の断面図である。同図に示すように、半導体メモリ素子は、半導体基板であるp型シリコン基板3161中に形成されたソース領域あるいはドレイン領域として機能するn型領域3162と、厚さ1.9nm程度の熱酸化SiO膜3043と、第1の微粒子体であるシリコン微粒子3164と、第2の障壁層であるSiO膜3165と、第2の微粒子体であるSiGe微粒子3046と、ゲート絶縁膜であるSiOゲート絶縁層3167と、ゲート電極であるn型多結晶シリコン電極3168と、ソース/ドレイン電極である金属電極3169とを備え、MIS型トランジスタ構造を有している。
【0331】
この構造によっても、第23の実施形態と同様の原理により、微粒子体への電荷の注入・保持・放出を制御できる構造を実現できる。さらに、本実施形態では電荷を保持する構造がMIS型トランジスタ構造のゲート領域に形成されていることにより、第2の微粒子体中に電荷が保持されている状態と電荷が無い状態とではMIS型トランジスタ特性の閾値電圧が変化する。これにより、低電圧・高速かつ長期間の記録が可能な不揮発性の半導体メモリ素子として動作する。さらに単一素子により基本的なメモリ動作が実現されるので高密度の集積化が可能である。
【0332】
本実施形態においては、図40に示すように、ゲート領域のうち少なくともソース領域の上部および上記ソース領域に接する領域、あるいはドレイン領域の上部および上記ソース領域に接する領域において微粒子体が存在しない部分が設けられているので、ソース領域からドレイン領域に電圧を印加した際に上記微粒子体を介して短絡した電流が流れることを防止することができる。
【0333】
なお、第16〜第23の実施形態においては、半導体基板としてp型シリコン基板を用いているが、本発明では、この他にn型シリコン基板、GaAs基板等他の半導体材料を用いた基板を用いることもできる。
【0334】
また、第16〜第23の実施形態においては、絶縁層を構成する材料としてSiOを用いているが、前述のように、Si、Si(4x=2y+3z)、CeO、ZnS、ZnO、Al、等他の絶縁体材料を用いることもできる。
【0335】
また、第16〜第23の実施形態においては、微粒子体としてシリコン微粒子や金微粒子、タングステン原子、SiGe微粒子等を用いているが、前述のように他の半導体材料や金属を用いることもできる。
【0336】
(第24の実施形態)
図42は、本発明の第24の実施形態の半導体素子の断面図である。半導体基板としてp型シリコン基板4011上に、第1の絶縁層である厚さ4nmのSiO膜4012が設けられ、第1の絶縁体層の上に第1の微粒子体である金微粒子4013が設けられている。また、上記第1の微粒子体上に、電荷の移動に対して障壁として機能する第1の障壁層である厚さ2nm程度の熱酸化SiO膜4014が設けられている。また上記第1の障壁層上に、第2の微粒子体である直径約1nmのシリコン微粒子4015が設けられている。また、第2の微粒子体上に、電荷の移動に対して障壁として機能する厚さ2nm程度のSiO膜4016(第2の障壁層)が設けられている。また、第2の障壁層上に、第3の微粒子体である金微粒子4017が設けられている。また、第3の微粒子体上に第2の絶縁体層である厚さ10nmのSiO膜4018が設けられており、最上部には電極層であるn型多結晶シリコン電極4019が設けられている。金微粒子はいずれも高さが約1nm、横方向の直径が5〜8nmである。ここで、第1の微粒子体および第3の微粒子体の実効的な粒径は、第2の微粒子体の1.8倍以上となっており、その静電容量は第2の微粒子体に比べて大きい。また、第1及び第3の微粒子体の電子親和力は第2の微粒子体より大きく、第1及び第3の微粒子体の電子親和力と禁制帯幅の和は第2の微粒子体より小さい。
【0337】
シリコン微粒子は、化学的気相合成(CVD)法により、1×1011cm−2〜1×1013cm−2程度の面内密度で形成されており、金微粒子は、金コロイド溶液へのウエハ浸漬により、1×1010cm−2〜1×1012cm−2程度の面内密度で固定されている。
【0338】
図57に示す従来の半導体素子においては、すでに説明したように、半導体表面の電場状態に応じて微粒子体上の電荷量が徐々に変動するため、信頼性の高い電荷保持を行うことが困難であった。これに対して、本発明の構成によれば下記のようにして大幅に素子の信頼性を高めることができる。
【0339】
本実施形態においては、第2の微粒子体を介した第1の微粒子体と第3の微粒子体の間の電荷移動により情報が記録される。情報の記録(書込・消去)は上部電極と半導体基板の間に外部から書込(消去)電界を加えることにより第1の微粒子体と第3の微粒子体の間に電場勾配を与えて両者の間で電荷を移動させ、電荷の分布状態を変化させることで行う。
【0340】
本実施形態において、第1の微粒子体と半導体基板表面の間には絶縁体層が設けられており、通常、半導体基板と微粒子体の間の電荷移動は起こらない。電荷が保持される微粒子体が半導体表面から隔離された位置に設けられているので半導体表面の状態の影響は間接的なものに抑制される。たとえ、電荷保持時に半導体表面が蓄積状態あるいは強反転状態となり、表面に多数の正孔あるいは電子が存在しても、これらは微粒子体間の電荷移動に直接関与しない。半導体基板の表面状態が変化した場合、それに対応する電場勾配の変化が第1の微粒子体と第3の微粒子体の間にも発生するが、この電場勾配は書込・消去時の外部電界による電場勾配に比較して十分小さく抑制することができる。
【0341】
上記の効果により、本実施形態による半導体素子は、半導体基板の表面状態からの影響による微粒子体の電荷保持状態の変動が少なく、信頼性の高い半導体素子を実現できる。
【0342】
本実施形態の素子の具体的な電荷注入と電荷保持の動作を以下に説明する。
【0343】
外部から書込み電圧として、例えば正電圧がn型多結晶シリコン電極4019に印可されると、第1の微粒子体(金微粒子4013)から電子が引抜かれて第2の微粒子体(シリコン微粒子4015)に移動する。ここで、第2の微粒子体の粒径は第1の微粒子体あるいは第3の微粒子体(金微粒子4017)の粒径に比べて小さいのでその静電容量は小さく、第2の微粒子体上の電荷は不安定である。このため、余剰の電子は速やかに第2の微粒子体から第3の微粒子体に移動する。この電荷移動により、第1の微粒子体に+e、第3の微粒子体に−eの電荷が蓄積される。第1の微粒子体および第3の微粒子体の静電容量は第2の微粒子体の静電容量に比較して大きいので、蓄積された電荷により生じる電界は書き込み時の外部電界に比べて十分小さく、一度蓄積された電荷は長期間放電せずに保持されることとなる。特に、第2の微粒子体の粒径が5nm以下のときは、その単電荷による電位上昇が蓄積電荷による電場勾配や熱エネルギーに比較して大きくなるため、第2の微粒子を介した電荷移動が困難となり長期の電荷保持が可能となる。なお、消去時は書込み時と反対方向で同程度の大きさの外部電界を印可することにより容易に蓄積された電荷を放電させることができる。
【0344】
第2の微粒子体の状態が量子化され、量子準位のエネルギー間隔が室温の熱エネルギーおよび第3の微粒子体の電位上昇に比べて大きい場合は、次に示すようにさらなる電荷保持の安定化が可能である。
【0345】
図43(a),(b)は、電子による電荷移動の際の伝導帯端付近のバンド構造を概略的に示すバンド図である。図43(a)に示すように、第1〜第3の微粒子体に電荷が無い状態で、第2の微粒子体が量子化され、その基底準位4032は電子が占め、第1励起準位4031は空で両者のエネルギー間隔が熱エネルギーより十分大きいとする。外部より書込みのため電界を加えると、図43(b)に示すように、第1の微粒子体から第2の微粒子体の第1励起準位4031を介したトンネル過程4035により電子が第3の微粒子体に注入される。第3の微粒子体の粒径が大きい場合は外部電界を除いても、図43(c)に示すように、第3の微粒子体のフェルミレベル4034は第1励起準位4031より低くなる。両者の差が熱エネルギーよりも小さい場合は電荷の放出が困難となり、第3の微粒子体および第1の微粒子体の電荷が安定に保持されることとなる。ここでは、電子を注入電荷として用いる場合について述べたが同様に正孔を用いることもできる。
【0346】
なお、リーク電流が抑制されて電荷保持が安定化される効果を利用して、障壁層の厚さを薄くすることにより書込・消去速度を高速化したり書込・消去電圧を低電圧化することもできる。
【0347】
電荷として電子を用いる場合には、第1の微粒子体および第3の微粒子体の電子親和力が第2の微粒子体に比べて大きいことにより、また、電荷として正孔を用いる場合には、第1の微粒子体および第3の微粒子体の電子親和力と禁制帯幅の和が第2の微粒子体に比べて小さいことにより、第2の微粒子体を介した電荷リークが抑制できるので電荷保持がさらに容易となる。特に、第2の微粒子体が半導体材料により構成され、第1の微粒子体および第3の微粒子体が金属材料により構成されることにより長期の電荷保持が安定となる。
【0348】
さらに、あらかじめ上部電極(多結晶シリコン層)4019に書込・消去時に比べて大きな電界を加えて第1の微粒子体あるいは第3の微粒子体に、p型シリコン基板4011あるいは上部電極であるn型多結晶シリコン電極4019から余剰の初期電荷を蓄積させることもできる。初期電荷として、例えば、各第1の微粒子体(金微粒子4013)あるいは第3の微粒子体(金微粒子4017)に平均1個の単電荷を与えた場合、この単電荷が第1の微粒子体にある状態と、第3の微粒子体にある状態の区別により情報を記録することができる。初期電荷が無い場合の単電荷の移動により発生する電場勾配が約2q/(C×d)(ただし、qは電荷素量、C:第1の微粒子体と第3の微粒子体の間の静電容量、d:第1の微粒子体と第3の微粒子対の間の有効距離)であるのに比較して、単電荷の初期電荷が第1の微粒子体あるいは第3の微粒子体に存在する場合の電場勾配は約q/(C×d)と小さくなる。これにより、さらに情報保持時の電荷移動は抑制され、長期間情報を保持することが容易となる。
【0349】
以上のように、本実施形態による半導体素子では、従来に無く長時間の電荷保持が可能で信頼性の高い情報記録、保持、消去の手段が提供される。
【0350】
本実施形態では、微粒子体中に注入・蓄積される電荷としては、電子と正孔のいずれをも利用可能である。
【0351】
また、本実施形態では、半導体基板としてp型のシリコン基板を用いたが、同様にn型のシリコン基板やその他の材料からなる半導体基板を用いることもできる。
【0352】
また、本実施形態では微粒子体としてシリコン微粒子と金微粒子を用いたが、同様に、金属や他の半導体材料を用いることもできる。
【0353】
また、本実施形態では第1の微粒子体(金微粒子4013)と第3の微粒子体(金微粒子4017)との間に、第1の障壁層(熱酸化SiO膜4014)と第2の障壁層(SiO膜4016)とによって挟まれた第2の微粒子体(シリコン微粒子4015)を1層のみ設けているが、第2の微粒子体を複数層設け、各層の間にさらに障壁層をはさんだ構造によりさらに第1の微粒子体および第3の微粒子体内の電荷保持を安定化させることもできる。
【0354】
本実施形態において、微粒子体が設けられた領域の周囲が絶縁体により覆われていることにより、蓄積された電荷が周辺からの短絡により消失することが無く望ましい。また特に初期電荷を蓄積する場合、電荷が外部に放出してしまわないために周囲を絶縁体で覆う必要がある。
【0355】
(第25の実施形態)
図44は、本発明の第25の実施形態における半導体メモリ素子の断面図である。半導体基板であるp型シリコン基板4041中にはソース領域あるいはドレイン領域として機能するn型伝導領域4042が設けられており、ソース/ドレイン電極である金属電極4411、ゲート絶縁膜であるSiOゲート絶縁層4049、ゲート電極であるn型多結晶シリコン電極4410と合わせてMIS型トランジスタ構造が形成されている。また、上記MIS型トランジスタ構造のゲート絶縁膜4049とp型シリコン基板4041の間に、以下の構造が設けらている。
【0356】
p型シリコン基板4041上に、絶縁層である厚さ4nmのSiO膜4043が設けられ、絶縁層上に第1の微粒子体である金微粒子4044が設けられている。第1の微粒子体上に、電荷の移動に対して障壁として機能する厚さ2nm程度の熱酸化SiO膜4045(第1の障壁層)が設けられている。第1の障壁層上に、第2の微粒子体である直径1nmのシリコン微粒子4046が設けられている。第2の微粒子体上に、電荷の移動に対して障壁として機能する厚さ2nm程度のSiO膜4047(第2の障壁層)が設けられている。第2の障壁層上に、第3の微粒子体である金微粒子4048が設けられている。さらに、SiO膜4043,金微粒子4044,熱酸化SiO膜4045,シリコン微粒子4046,SiO膜4047及び金微粒子4048の側面上に、SiOサイドウォール4412が設けられている。ここで、金微粒子4044,4048は、いずれも高さが約1nm、横方向の直径が5〜8nmである。
【0357】
ここで、第1の微粒子体(金微粒子4044)および第3の微粒子体(金微粒子4048)の実効的な粒径は、第2の微粒子体(シリコン微粒子4046)の1.8倍以上となっており、それらの静電容量は第2の微粒子体に比べてそれぞれ大きい。ここで、シリコン微粒子4044,4048の面内密度は1×1011cm−2〜1×1013cm−2であり、金微粒子の面内密度は1×1010cm−2〜1×1012cm−2程度である。また、微粒子体が設けられた領域の周囲には、絶縁体からなるSiOサイドウォール4412が設けらている。このように、微粒子体を設けた領域の周囲を絶縁体サイドウォールにより覆われているにより、蓄積された電荷が周辺からの短絡により消失するのを確実に防止することができる。また、微粒子体に初期電荷を蓄積しても、電荷が外部に放出するのを有効に抑制することができる。
【0358】
また、本実施形態の半導体メモリ素子において、ゲート領域のうち少なくともソース領域の上部および上記ソース領域に接する領域、あるいはドレイン領域の上部および上記ドレイン領域に接する領域のいずれか一方あるいは両方の領域において、少なくとも微粒子分散層が存在しない部分が設けられていることにより、ソース領域からドレイン領域に電圧を印加した際に上記微粒子体を介して短絡した電流が流れることを防止することができる。
【0359】
本実施形態においても、第24の実施形態と同様の原理により、微粒子体への電荷の注入・保持・放出を制御できる構造を実現できる。さらに、本実施形態では電荷を保持する構造がMIS型トランジスタ構造のゲート領域に形成されていることにより、第1の微粒子体および第3の微粒子体中の電荷の分布状態の変化に応じてMIS型トランジスタ特性の閾値電圧が変化する。これにより高速かつ信頼性の高い不揮発性の半導体メモリ素子として動作する。
【0360】
また、本実施形態において、ゲート領域の微粒子体の設けられた領域が少なくともソース−ドレイン間の短絡電流を妨げる方向で複数の領域に分割された形状を有することにより、ソース領域からドレイン領域に電圧を印加した際に上記微粒子体を介して短絡した電流が流れることを防止することもできる。
【0361】
(第26の実施形態)
図45は、本発明の第26の実施形態における半導体素子の断面図である。半導体基板であるp型シリコン基板4051上に、第1の絶縁体層である厚さ4nmのSiO膜4052が設けられ、第1の絶縁体層上に第1の微粒子体である直径5nmのシリコン微粒子4053が設けられている。第1の微粒子体上には、電荷の移動に対して障壁として機能する障壁層としての,SiO中に第2の微粒子体であるシリコン微粒子4055が分散した第1の微粒子分散層,つまり,CVD装置を用いて堆積したSiO(1.5<x<2)からなるシリコン過多酸化膜4054が設けられている。さらに、微粒子分散層上に、第2の微粒子体である直径5nmのシリコン微粒子4056が設けられている。
【0362】
ここで、第1の微粒子体と第3の微粒子体であるシリコン微粒子4053,4056の表面はいずれも酸化され、シリコン微粒子4053,4056の周囲は、電荷の移動に対して障壁として機能する厚さ1nm程度のSiO膜(障壁層)により覆われている。第3の微粒子体上には、第2の絶縁体層である厚さ10nmのSiO膜4057が設けられており、最上部には電極層であるn型多結晶シリコン電極4058が設けられている。
【0363】
第1,第3の微粒子体であるシリコン微粒子4053,4056は、CVD法により形成され、その面内密度は、いずれも1×1010cm−2〜1×1012cm−2程度である。
【0364】
第24の実施形態においては、第2の微粒子体を第1の障壁層上に微細構造として作製するので粒径分布や面内分散状態等を制御する必要がある。しかし、本実施形態では、SiO層(1.5<x<2)(シリコン過多酸化膜4054)を利用することにより、容易に障壁層であるSiO中に微小なシリコン微粒子4055が分散した構造を実現できる。すなわち、SiO層中の微小なシリコンアイランド(シリコン微粒子4055)が第2の微粒子体として機能するので、特に微細構造を制御する必要がない。この結果、半導体素子の製造が容易となり素子特性の再現性も高い。SiO層(シリコン過多酸化膜4054)は、CVD法により容易に高品質の膜が製造できるが、この他スパッタ法等によっても作製できる。なおSiO層(1.5<x<2)の酸素含有比xが1.8<x<2の範囲にあることにより、より微小なシリコンアイランドを形成することができ、好ましい。SiO層(1.5<x<2)の厚さは5〜20nmの範囲にあることにより、低電圧での素子動作が可能となる。本実施形態では厚さ10nmのSiO1.9を用いている。
【0365】
ここで、第2の微粒子体として機能するSiO層(1.5<x<2)中のシリコン微粒子4055の粒径は1nm以下であり、第1,第3の微粒子体であるシリコン微粒子4053,4056の直径はその1.8倍以上である。
【0366】
なお、本実施形態では、作製したSiO層を特に熱処理することなくそのまま使用し、微小なシリコンアイランドを微粒子体として利用しているが、SiO層を1000℃程度で熱処理することによりシリコン微粒子を成長させ、その粒径を制御することもできる。
【0367】
また、本実施形態では微粒子分散層としてSiO膜を用いているが、絶縁体に半導体イオンあるいは金属イオンを注入することにより作製された層を本実施形態の微粒子分散層の代わりに用いることにより、さらに容易に本実施形態の微粒子分散層と同等の電荷制御機能を有する構造を作製することもできる。半導体イオンあるいは金属イオンを注入した絶縁体は、シリコン微結晶等を分散した構造とは異なるが、絶縁体中で半導体や金属原子が形成する準位は本発明における粒径の小さな第1の微粒子体と実質的に同様の機能を発揮するので、本発明における微粒子分散層として使用することができる。例えば、SiイオンやWイオン等を注入したSiO膜などを微粒子分散層として使用することで、本実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0368】
本実施形態でも、第24の実施形態と同様の原理により、微粒子体への電荷の注入・保持・放出を効率よく制御できる。さらに、本実施形態では、前述のように、第2の微粒子体を微細構造として作製する必要がないため、製造が容易で素子特性の再現性が高い利点がある。
【0369】
さらに、本実施形態では、第24の実施形態と異なり、第1の微粒子体と第3の微粒子体との間の電荷移動は、通常、単一の第2の微粒子体だけではなく、複数の第2の微粒子体を介して行われる。複数の微粒子体を介したトンネル過程では、単一の微粒子体を介した過程に比べ、特に電荷保持時の弱い電界下でのトンネル電流が減少するので、より長期の電荷保持が容易となる。
【0370】
なお、本実施形態の半導体素子においては、第1,第3の微粒子体であるシリコン微粒子4053,4056の表面はいずれも酸化され、その周囲は電荷の移動に対して障壁として機能する障壁層により覆われているが、上記障壁層のない構造により素子作製工程を簡素化することもできる。
【0371】
また、本実施形態の半導体素子において、第1の微粒子体あるいは第3の微粒子体と微粒子分散層の間に、障壁層が設けられていることによりリーク電流をさらに抑制することもできる。
【0372】
また、本実施形態の半導体素子において、第1の微粒子体および第3の微粒子体についても、電荷の移動に対して障壁として機能する障壁層内部に分散された状態とすることにより素子作製を簡易化することもできる。
【0373】
本実施形態の半導体素子の構造を利用して、第25の実施形態と同様の半導体メモリ素子を構成することができる。
【0374】
図46は、本実施形態の半導体素子を用いて形成される半導体メモリ素子の断面図である。同図に示すように、半導体基板であるp型シリコン基板4061上に、ソース領域あるいはドレイン領域として機能するn型伝導領域4062と、SiO膜4063と、第1の微粒子体である金微粒子4064と、熱酸化SiO膜4065と、第2の微粒子体であるシリコン微粒子4067と、SiO膜4068と、n型多結晶シリコン電極4069とが設けられている。さらに、SiO膜4063,金微粒子4064,熱酸化SiO膜4065,シリコン微粒子4067及びSiO膜4068の側面上に、SiOサイドウォールが設けられている。また、n型伝導領域4062の上に、ソース/ドレイン電極である金属電極4610が設けられ、全体としてMIS型トランジスタ構造が形成されている。
【0375】
これにより、第1の微粒子体(シリコン微粒子4064)および第3の微粒子体(シリコン微粒子4067)中の電荷の分布状態の変化に応じてMIS型トランジスタ特性の閾値電圧が変化するのを利用して、この半導体素子を高速かつ信頼性の高い不揮発性の半導体メモリ素子として動作させることができる。
【0376】
本実施形態の半導体メモリ素子においても、第25の実施形態と同様に、微粒子分散層等を設けた領域の周囲が絶縁体により覆われていることにより、蓄積された電荷分布が周辺からの短絡により消失することが無く望ましい。また微粒子体に初期電荷を蓄積しても、電荷が外部に放出してしまわないので望ましい。
【0377】
また、本実施形態の半導体メモリ素子において、ゲート領域のうち少なくともソース領域の上部および上記ソース領域に接する領域、あるいはドレイン領域の上部および上記ドレイン領域に接する領域のいずれか一方あるいは両方の領域において、少なくとも微粒子分散層が存在しない部分が設けられていることにより、ソース領域からドレイン領域に電圧を印加した際に上記微粒子体を介して短絡した電流が流れることを防止することができる。
【0378】
(第27の実施形態)
図47は、本発明の第27の実施形態における半導体素子の断面図である。半導体基板であるp型シリコン基板4071の上に、第1の絶縁体層である厚さ4nmのSiO膜4072と、電荷の移動に対して障壁として機能する障壁層であるSiO層中に第1の微粒子体であるシリコン微粒子4075と第2の微粒子体であるイオン注入されたタングステン原子4074とが分散された厚さ5nm程度の微粒子分散層4073とが設けられている。微粒子分散層4073上に第2の絶縁体層である厚さ10nmのSiO膜4076が設けられており、最上部に電極層であるn型多結晶シリコン電極4077が設けられている。
【0379】
ここで、第1の微粒子体(シリコン微粒子4075)と第2の微粒子体(タングステン原子4074)とは、いずれも障壁層であるSiO層中に分散された微粒子体であるが、第2の微粒子体(タングステン原子4074)の粒径は2.6nm以上であり、実質的な粒径が約0.5nm以下である第1の微粒子体(シリコン微粒子4075)の1.8倍以上である。
【0380】
上述のような微粒子分散層4073は、CVD装置を用いてSiO膜(1.5<x<2)を堆積した後、約1100℃で熱処理することによりシリコン微粒子4075を成長させて、さらに、タングステン原子4074をイオン注入することによって作製することができる。
【0381】
本実施形態では、第2の微粒子体として、絶縁体に注入されたタングステン原子4074を用いているが、この他のイオン注入により導入された半導体粒子あるいは金属原子、あるいはその他の方法により導入された半導体粒子もしくは金属微粒子を利用することもできる。
【0382】
本実施形態においても、第24の実施形態と同様に微粒子体間の電荷移動および保持が可能である。本実施形態における第1の微粒子体は、第24の実施形態における第1の微粒子体と第3の微粒子体のいずれか、あるいは両者を兼ねた機能を担う。例えば書込み時に上部電極に正電圧を印可すると、比較的基板側にある第1の微粒子体から電子が引き抜かれ、いくつかの第2の微粒子体を介した電荷移動によって、より上部電極に近い第1の微粒子に注入・蓄積される。微粒子分散層中には第1の微粒子体と第2の微粒子体が様々な位置関係にあるが、電荷の引き抜きと蓄積はより電荷移動の容易な微粒子間から選択的に起こる。また、場合によっては蓄積された第1の微粒子体からさらに電子が引き抜かれ、より上方の第1の微粒子へと移動する。
【0383】
このようにして特に第1の微粒子体と第2の微粒子体の位置関係を制御しなくても自己選択的に容易な場所から電荷移動が起こり、最終的により下方の第1の微粒子体には正電荷が、またより上方の微粒子体には負電荷が多く分布する。書込み電圧を除去するとこの電荷分布はいくらか減少するが、多くは消失せずに長期間保持される。
【0384】
なお、初期的に上部電極に高電圧を印可する等して、外部より一定の余剰電荷(例えば電子)を微粒子分散層に注入・蓄積しておき、外部電圧により余剰電荷の分布を変化させることで情報を記録することも可能である。
【0385】
上記のように、本実施形態においても、第24の実施形態と同様の原理により、微粒子体への電荷の注入・保持・放出を効率よく制御できる。また、第24の実施形態では、適切な素子動作速度と記録保持期間を得るには微粒子分散層の厚さを制御する必要があるが、本実施形態では、電荷移動が容易な場所から選択的に行われるので許容される厚さ範囲が広く、素子作製が容易である。
【0386】
なお、本実施形態では第1の微粒子体と第2の微粒子体に明確な区別があるが、同一材料でも十分広い範囲にわたる様々な粒径を有する微粒子体を作製することにより連続的な粒径分布を有する微粒子体を設け、粒径の大きな微粒子体を第1の微粒子体として機能させ、粒径の小さな微粒子体を第2の微粒子体として機能させることもできる。この場合、第1の微粒子体と第2の微粒子体の間に明確な区別を行うことはできないが、注入された電荷は粒径が大きく静電容量の大きな微粒子に選択的に保持されるので、電荷によって選択された微粒子体が第1の微粒子体として機能することになる。電荷分布保持のためには微粒子の粒径分布は少なくとも中間的な粒径を有する微粒子の0.7倍から1.4倍の範囲より広い範囲に分布を持つ必要がある。また長期の電荷保持を行うには少なくとも0.4倍から1.6倍以上の範囲に粒径分布を持つことが望ましい。
【0387】
本実施形態の半導体素子の構造を利用して、第25の実施形態と同様の半導体メモリ素子を構成することができる。
【0388】
図48は、本実施形態の半導体素子を用いて形成される半導体メモリ素子の断面図である。同図に示すように、半導体基板であるp型シリコン基板4081上に、ソース領域あるいはドレイン領域として機能するn型伝導領域4082と、SiO膜4083と、第1の絶縁体層であるSiO膜4083と、障壁層であるSiO層中に第1の微粒子体であるシリコン微粒子4086と第2の微粒子体であるイオン注入されたタングステン原子4085とが分散された厚さ5nm程度の微粒子分散層4084と、SiO膜4087と、n型多結晶シリコン電極4088とが設けられている。さらに、SiO膜4083,微粒子分散層4084及びSiO膜4087の側面上に、SiOサイドウォール4810が設けられている。また、n型伝導領域4082の上に、ソース/ドレイン電極である金属電極4089が設けられ、全体としてMIS型トランジスタ構造が形成されている。
【0389】
これにより、第2の微粒子体中に電荷が保持されている状態と電荷が無い状態とではMIS型トランジスタ特性の閾値電圧が変化し、低電圧・高速かつ長期間の記録が可能な不揮発性の半導体メモリ素子として動作する。
【0390】
また、微粒子分散層4084の周囲に絶縁体であるSiOサイドウォール4810が設けられていることにより、蓄積された電荷が周辺からの短絡により消失することが無く望ましい。また微粒子体に初期電荷を蓄積しても、電荷が外部に放出してしまわない点でも好ましい。
【0391】
また、本実施形態の半導体メモリ素子において、ゲート領域のうち少なくともソース領域の上部および上記ソース領域に接する領域、あるいはドレイン領域の上部および上記ドレイン領域に接する領域のいずれか一方あるいは両方の領域において、少なくとも微粒子分散層が存在しない部分が設けられていることにより、ソース領域からドレイン領域に電圧を印加した際に上記微粒子体を介して短絡した電流が流れることを防止することができる。
【0392】
(第28の実施形態)
図49は、本発明の第28の実施形態における半導体素子の断面図である。半導体基板であるp型シリコン基板4091上に、第1の絶縁体層である厚さ5nmのSiO膜4092が設けられ、第1の絶縁体層上に第1の微粒子体である直径3nmのシリコン微粒子4093が設けられている。第1の微粒子体上には、第1のSiO層である厚さ1.8nm程度のSiO膜4094が設けられている。第1のSiO層上には、SiO層(0≦x<2,0<y≦4/3)である厚さ8nm程度のSi層4095が設けられており、さらにSiO層上に厚さ1.8nm程度の第2のSiO層4096が設けられている。第2のSiO層上には、第2の微粒子体である直径3nmのシリコン微粒子4097が設けられている。第2の微粒子体上には、第2の絶縁体層である厚さ12nmのSiO膜4098が設けられており、最上部には電極層であるn型多結晶シリコン電極4099が設けられている。
【0393】
ここで、第1の微粒子体と第2の微粒子体のシリコン微粒子はCVD法により形成されており、その面内密度は、いずれも1×1010cm−2〜1×1012cm−2程度である。
【0394】
本実施形態では、第24の実施形態と異なり、粒径の異なる2種の微粒子体を設けてはいない。しかし、本実施形態では、SiO層(0≦x<2,0<y≦4/3)が第1のSiO層と第2のSiO層とによって挟まれた構成となっているので、SiO層と各SiO層の間の界面付近およびSiO層内部に電荷を授受することのできる準位(界面準位)が発生する。この界面準位は、準位間のエネルギー間隔が大きく、電荷を受取った際の電位上昇が大きいので、実効的に粒径の小さな微粒子体と同様の機能を提供することができる。
【0395】
すなわち、本実施形態では、SiO層と各SiO層との間の界面付近およびSiO層内部の界面準位が第24の実施形態における第2の微粒子体と同等の機能を有している。その結果、本実施形態の半導体素子においては、第1の微粒子体(シリコン微粒子4093)と第2の微粒子体(シリコン微粒子4097)とに蓄積された電荷を安定に保持することができる。したがって、本実施形態でも、第24の実施形態と同様の原理により微粒子体への電荷の注入・保持・放出を効率よく制御できる。
【0396】
また、第24の実施形態では第2の微粒子体を第1の障壁層上に微細構造として作製する必要があるが、本実施形態では、SiO層を利用するので、この点で微細構造を特に制御する必要がない。この結果、半導体素子の製造が容易となり素子特性の再現性も高い利点がある。SiOx 層はCVD法により容易に高品質の膜が製造できる。
【0397】
本実施形態では、SiO層(0≦x<2,0<y≦4/3)であるSi層を用いたが、この他、SiO層(0<x<2,0<y<4/3)として表される組成を有するシリコン酸窒化膜を使用することもできる。
【0398】
本実施形態の半導体素子の構造を利用して、第25の実施形態と同様の半導体メモリ素子を構成することができる。
【0399】
図50は、本実施形態の半導体素子を用いて形成される半導体メモリ素子の断面図である。同図に示すように、半導体基板であるp型シリコン基板4101上に、ソース領域あるいはドレイン領域として機能するn型伝導領域4102と、第1の絶縁体層であるSiO膜4103と、第1の微粒子体であるシリコン微粒子4104と、第1のSiO層であるSiO膜4105と、SiO層(0≦x<2,0<y≦4/3)であるSi層4106と、第2のSiO層4107と、第2の微粒子体であるシリコン微粒子4108と、第2の絶縁体層であるSiO膜4109と、電極層であるn型多結晶シリコン電極4110とが設けられている。さらに、SiO膜4103,シリコン微粒子4104,SiO膜4105,Si層4106,第2のSiO層4107,シリコン微粒子4108及びSiO膜4109の側面上に、SiOサイドウォールが設けられている。また、n型伝導領域4102の上に、ソース/ドレイン電極である金属電極4111が設けられ、全体としてMIS型トランジスタ構造が形成されている。
【0400】
これにより、第1の微粒子体および第2の微粒子体中の電荷の分布状態の変化に応じてMIS型トランジスタ特性の閾値電圧が変化し、高速かつ信頼性の高い不揮発性の半導体メモリ素子として動作する。
【0401】
本実施形態の半導体メモリ素子において、ゲート領域のうち少なくともソース領域の上部および上記ソース領域に接する領域、あるいはドレイン領域の上部および上記ドレイン領域に接する領域のいずれか一方あるいは両方の領域において、少なくとも微粒子分散層および微粒子体が存在しない部分が設けられていることにより、ソース領域からドレイン領域に電圧を印加した際に上記微粒子体を介して短絡した電流が流れることを防止することができる。
【0402】
また、微粒子体等を設けた領域の周囲が絶縁体により覆われていることにより、蓄積された電荷分布が周辺からの短絡により消失することがない点で好ましい。また、微粒子体に初期電荷を蓄積しても、電荷が外部に放出してしまわない点でも好ましい構造である。
【0403】
以上のように、本発明の新規な構造を有する半導体素子により従来になく信頼性が高く、作製が容易で長期の電荷保持が可能な微粒子体への電荷注入、保持、消去の手段が提供される。
【0404】
第24〜第28実施形態においては、半導体基板としてp型シリコン基板を用いているが、本発明ではこの他にn型シリコン基板、GaAs基板等他の半導体材料を用いた基板を用いることもできる。
【0405】
また、第24〜第28の実施形態においては、絶縁層をSiOにより構成したが、前述のように、Si、Si(4x=2y+3z)、CeO、ZnS、ZnO、Al、等の他の絶縁体材料により絶縁層を形成してもよい。
【0406】
また、第24〜第28の実施形態においては、微粒子体としてシリコン微粒子や金微粒子、タングステン原子等を用いているが、前述のように他の半導体材料や金属を用いることもできる。
【0407】
(第29の実施形態)
図51は、本発明の第29の実施形態における半導体素子の断面図である。基板上に設けられた半導体層であるp型シリコン層5011上に、電荷の移動に対して障壁として機能する障壁層である厚さ4nm程度のSiO膜5012が設けられている。障壁層上には、電荷保持担体である厚さ9nmの金属タングステン5014が設けられ、電荷保持担体上には、絶縁体層である厚さ10nmのSiO膜5015が設けられており、最上部には、電極層であるn型多結晶シリコン電極5016が設けられている。さらに、上記半導体層と上記電荷保持担体の間には、上記障壁層の内部に微粒子体である直径2nmのシリコン微粒子5013が設けられている。本実施形態では、微粒子体を設ける領域は半導体層と電荷保持担体の間の一部の領域に限定されており、シリコン微粒子5013は、化学的気相合成(CVD)法により1×1011cm−2〜1×1013cm−2程度の面内密度で形成されている。
【0408】
本構造の機能を説明するため、まず従来技術による構成と電荷注入・保持機構について記述する。
【0409】
図52は、上述の文献に記載されている従来の複数のシリコンの微粒子を用いた半導体素子を示す断面図である。この半導体メモリ素子においては、p型シリコン基板5021上にSiO膜からなるトンネル酸化膜5022、SiO膜5024が下から順に堆積されており、さらにその上にはn型多結晶シリコン電極5025が設けられている。トンネル酸化膜5022とSiO膜5024との間には、微粒子体であるシリコン微粒子5203が埋め込まれている。
【0410】
この半導体素子において、n型多結晶シリコン電極5025に正の電圧を印加することにより、トンネル酸化膜5022を経て、シリコン微粒子5023に電子を注入することができる。また、n型多結晶シリコン電極5025に負の電圧を印加することにより、シリコン微粒子5023中の電子を引き抜くことができる。シリコン微粒子5023におけるこの電子の有無によって、半導体素子を利用したメモリ素子のしきい値電圧を変化させることができる。このしきい値電圧の高低を情報H(ハイ)と情報L(ロー)とに対応させることにより、情報の書き込み・読み出しを行う。
【0411】
図52に示す従来の半導体素子によっては、高速な電荷注入・放出を可能とし、しかも長期間の電荷保持を保証できる実用的な半導体メモリ素子の作製は困難であることがわかっている。この種の半導体素子では、書込・消去の速度と電荷保持時の保持特性はいずれも障壁を介した微粒子体と半導体基板の間のトンネル遷移確率により支配される。したがって、高速で長寿命の素子を実現するには、書込・消去時のトンネル電流(書込・消去電流)と、電荷保持時のトンネル電流(リーク電流)の比を十分大きくする必要がある。
【0412】
しかし、上記図52に示す従来の半導体素子では、書込時、消去時、電荷保持時はそれぞれ微粒子体の電荷数と微粒子体の半導体基板に対する電位が異なるだけで、いずれも微粒子体/トンネル障壁/半導体基板という同じ系でのトンネル現象を利用しているので、この系のトンネル電流を低い外部電圧(上部電極電圧)で大きく変えることは容易ではない。例えばリーク電流を抑制しようとしてトンネル障壁の高さや厚さを大きくすると、書込・消去電流も減少して書込・消去速度が低下してしまう。
【0413】
また、書込み時(あるいは消去時)の微粒子体の電位はデバイス構造と微粒子体の位置関係により決まる。ここで、微粒子体を上部電極(図52におけるn型多結晶シリコン電極5025)に近付けると、書込み時の微粒子体の電位上昇が大きくなるので、原理的には書込電流を増大できる。しかし、微粒子体を上部電極側にあまり近付けるとデバイス読み取り時のゲート電圧シフトが小さくなり感度が下がりすぎる問題が発生する。
【0414】
また、微粒子体の静電容量を大きくすれば電荷保持時の微粒子体の電位上昇を抑制できるので、リーク電流を抑制する効果がある。しかし、実際には微粒子体の静電容量が大きくなるため、微粒子体の粒径を大きくしたり、微粒子体と半導体基板間の距離を小さくすると、微粒子体/半導体基板間のトンネル確率が増大し、逆にリーク電流が増大してしまう結果となる。原理的には、微粒子体の粒径を大きくし、同時にトンネル障壁の厚さを大きくすると、リーク電流のみをある程度抑制できる可能性があるが、あまり微粒子サイズを大きくすると微粒子体の面内密度が低下し、デバイスの感度を支えるのに必要量の電荷が保持できなくなる。さらに、障壁厚さが大きすぎると、フラッシュEEPROMに近い構成となり、障壁膜に大きな電圧が印可されるので電荷移動による膜質劣化が起こる問題が発生する。また、作製工程においても長寿命の素子を得るには微粒子サイズや微粒子の分布状態、障壁厚さの制御に高い精度が要求される。
【0415】
以上のように、従来技術により高速な書込・消去動作が可能で長寿命の記録が可能な素子を実現することは困難である。これに対して、本発明の構成によれば下記のようにして書込・消去の速度を低下することなく電荷保持時のリーク電流を大幅に低減できる。
【0416】
本発明の素子の具体的な電荷注入と電荷保持な動作は以下に説明する。電荷注入時の書込み過程では、上部電極(n型多結晶シリコン電極5016)に外部から書込電圧を印可することにより、まず障壁層(SiO膜5012)を介したトンネル電流により半導体基板から電荷が引抜かれて微粒子体(シリコン微粒子5013)に移動する。この過程における微粒子体の電位や微粒子体と半導体表面の関係は、ほぼ従来技術の書込み過程と同一であるので電荷移動速度も同等である。
【0417】
本発明では、微粒子体上の電荷はさらに障壁層を介して隣接する電荷保持担体(金属タングステン5015)に移動することとなる。ここで、微粒子体と電荷保持担体の間のトンネル遷移は、微粒子体と半導体表面の間のトンネル遷移とほぼ同等の条件下にある。従って電位差が同じ場合には、半導体表面から微粒子体への電荷移動速度と微粒子体から電荷保持担体への電荷移動速度はぼぼ同じ程度となる。しかし、本実施形態では、既に電荷を有する微粒子体と電荷を持たない電荷保持担体の間には、外部からの書込電圧に加えて電荷による微粒子体の電位上昇(ΔV=Δq/Cdot)(ただし、qは電荷素量,Cdotは、シリコン微粒子5013の静電容量)に起因する電界が発生している。静電容量が小さい微粒子体の電荷による電位上昇の効果は大きく、微粒子体から電荷保持担体への電荷移動はさらに加速されることとなる。本発明の書込み過程では、2回のトンネル過程を経る必要があるが、微粒子体から電荷保持担体への電荷移動が半導体基板から微粒子体への電荷移動と同等以上の速度で行われるので、全体の電荷移動速度は従来技術による素子と同等の書込み速度を実現できる。なお、ここでは書込過程について記述したが、負の電圧を微粒子体から蓄積電荷を放出させる消去過程においても同様である。
【0418】
次に、書込みを終了して上部からの書込電圧を除去すると、微粒子体と電荷保持担体はそれぞれの電荷と静電容量に対応する電位になる。一部の微粒子体には余剰電荷を有するものもあるが、微粒子体は半導体層に隣接しており、また静電容量が小さくて電荷あたりの電位上昇も大きいので余剰電荷は速やかに半導体層に戻る。一方、電荷保持担体では静電容量が大きいため、その電位上昇は低く抑制される。電荷保持担体自身は状態密度が大きいが、隣接する微粒子体の状態密度が低いため、電位上昇の低い電荷保持担体から微粒子体への電荷移動確率は低い。また電荷移動の際には、微粒子体が電位上昇の半分(ΔV/2)に相当するエネルギーを消費するので、微粒子体が十分小さい場合はこれよりエネルギーレベルの低い電荷は遷移が抑制される。以上の結果として電荷保持担体に蓄積された電荷は長期間保持されることとなる。
【0419】
上述の説明では、本発明による素子の書込・消去速度を従来技術による素子と同等としたが、リーク電流が抑制されて電荷保持が安定化される効果を利用して、さらに障壁層の厚さを薄くすることにより書込・消去速度の高速化や書込・消去電圧の低電圧化を実現することもできる。
【0420】
また、微粒子体の電子親和力が電荷保持担体に比較して小さい場合には、蓄積された電子はさらに安定化される。
【0421】
本実施形態における半導体基板,第1の障壁層,第1の微粒子体,第2の障壁層及び第2の微粒子体における伝導帯端のバンド状態の微粒子体に電荷が無い状態,電子注入状態及び電荷保持状態における変化は、図27(a)〜(c)に示すとおりである。
【0422】
すなわち、電荷保持状態(図27(c)参照)における第2の微粒子体のフェルミ準位は、電荷の無い状態(図27(a)参照)に比べて上昇しているが、微粒子体の伝導帯端のエネルギーレベルよりはポテンシャルが低いので、電荷を長期間安定して保持することができる。電荷として電子を用いる場合には、第2の微粒子体の電子親和力が第1の微粒子体の電子親和力よりも大きいことにより、電荷として正孔を用いる場合には、第2の微粒子体の禁制帯幅と電子親和力との和が第2の微粒子体よりも小さいことにより、それぞれ第2の微粒子体に電荷が安定して保持される。また、電荷として電子を用いる場合には、微粒子体の電子親和力が半導体層より小さいことにより、また電荷として正孔を用いる場合、微粒子体の電子親和力と禁制帯幅の和が半導体層より大きいことにより、第2の微粒子体に電荷が安定して保持される。
【0423】
微粒子体の状態が量子化され、量子準位のエネルギー間隔が室温の熱エネルギーおよび電荷保持担体の電位上昇に比べて大きい場合は、量子効果による電荷保持の安定化も可能である。
【0424】
図53(a)〜(c)は、注入電荷として電子を用いる場合の伝導帯端付近のバンド構造を概略的に示す図である。図53(a)に示すように、第1の微粒子体に電荷が無い状態で、微粒子体が量子化され、その基底準位5042は電子が占め、第1励起準位5041は空で両者のエネルギー間隔が熱エネルギーより十分大きいとする。外部より書込みのため電界を加えると、図53(b)に示すように、半導体基板から第1励起準位5041を介したトンネル過程5043により電子が電荷保持担体に注入される。この後、外部電界を除くと、電荷保持担体の粒径が大きい場合、図53(c)に示すように、電荷保持担体のフェルミ準位5044は第1励起準位5041より低くなる。両者の差が熱エネルギーよりも小さいと電荷の放出が困難となり、電荷保持担体内の電荷が安定に保持される。ここでは、電子が注入電荷として用いられる場合について述べたが、正孔を用いる場合も同様の効果がある。
【0425】
以上のように、本発明による半導体素子では、電荷保持担体と電荷移動を制御する微粒子体を独立に設けることにより書込・消去が高速でかつ、従来になく長時間の電荷保持が可能で信頼性の高い微粒子体への電荷注入、保持、消去の手段が提供される。
【0426】
(第30の実施形態)
図54は、本発明の第30の実施形態の半導体メモリ素子の断面図である。半導体層であるp型シリコン層5051中にはソース領域あるいはドレイン領域である機能するn型伝導領域5052が設けられている。さらに、p型シリコン層5041の上には、ソース/ドレイン電極である金属電極5058と、ゲート絶縁膜であるSiOゲート絶縁層5056と、ゲート電極であるn型多結晶シリコン電極5057とが設けられている。すなわち、本実施形態の半導体素子は、MIS型トランジスタ構造の半導体メモリ素子である。
【0427】
また、上記MIS型トランジスタ構造のゲート絶縁層5056とp型シリコン層5051との間に、以下の構造が設けらている。p型シリコン層5051の上には、電荷の移動に対して障壁として機能する障壁層である厚さ3.5nmのSiO膜53が設けられている。また、上記障壁層上に電荷保持担体である厚さ8nmの金属鉄5055が設けられている。
【0428】
さらに、上記半導体層と上記電荷保持担体の間で、上記障壁層の内部に微粒子体である直径1nmのシリコン微粒子5054が設けられている。本実施形態では、微粒子体が設けられている領域は、MIS型トランジスタのソース領域の上部および上記ソース領域に接する領域に限定されており、シリコン微粒子5054は、化学的気相合成(CVD)法により、1×1011cm−2〜1×1013cm−2程度の面内密度で形成されている。
【0429】
本実施形態においても、第29の実施形態と同様の原理により、電荷保持担体への電荷の注入・保持・放出を制御できる構造を実現できる。さらに、本実施形態では電荷を保持する構造がMIS型トランジスタ構造のゲート領域に形成されていることにより、電荷保持担体に電荷が保持されている状態と電荷が無い状態とではMIS型トランジスタ特性の閾値電圧が変化する。これにより、低電圧・高速かつ長期間の記録が可能な不揮発性の半導体メモリ素子として動作する。さらに単一素子により基本的なメモリ動作が実現されるので高密度の集積化が可能である。
【0430】
本実施形態においては、微粒子体を設ける領域をMIS型トランジスタのソース領域の上部および上記ソース領域に接する領域に限定しているので、例え素子の読出し時にドレイン領域およびチャネル領域の電位が変動しても、ソース領域の電位を一定にすれば読出し動作よる電荷保持担体との間の電荷移動を抑制できる。素子の書込/消去時には、ソース電極とゲート電極の間に読出し時より大きな電位差を加えることで電荷の注入/放出を制御できる。
【0431】
なお、半導体素子を駆動する回路方式によっては、本実施形態とは逆に微粒子体を設ける領域をMIS型トランジスタのドレイン領域の上部および上記ドレイン領域に接する領域に限定したり、あるいはチャネル領域に接する領域のみに限定することにより、より適切に電荷制御ができる場合もある。
【0432】
また、微粒子体を設ける領域を限定せず、半導体層と電荷保持担体の間の全面に微粒子体を設ける構成を用いれば、素子作製の工程を簡素化することもできる。
【0433】
以上のように、本発明の新規な構造を有する半導体素子により、従来になく作製が容易で信頼性の高く、長期の電荷保持が可能な電荷注入、保持、消去の手段が提供される。
【0434】
(第31の実施形態)
図55は、本発明の第31の実施形態における半導体素子の断面図である。基板上に設けられた半導体層であるp型シリコン層5061上に、電荷の移動に対して障壁として機能する障壁層である厚さ4nm程度のSiO膜5062が設けられている。障壁層上には、電荷保持担体である厚さ9nmの金属タングステン5064が設けられ、電荷保持担体上には、絶縁体層である厚さ10nmのSiO膜5065が設けられており、最上部には、電極層であるn型多結晶シリコン電極5066が設けられている。さらに、上記半導体層と上記電荷保持担体の間には、第29の実施形態における微粒子体に代えて、SiO層5063(0≦x<2,0<y≦4/3)(Si膜あるいはSiON膜)が設けられている。本実施形態では、SiO層5063を設ける領域は半導体層と電荷保持担体の間の一部の領域に限定されており、SiO層5063はCVD方により容易に形成される。
【0435】
本実施形態においては、SiO層5063とSiO膜5065との界面付近又はSiO層5063内部に形成される界面準位が、第29の実施形態における微粒子体と同等の電荷の受け渡し機能を有する。よって、第29の実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0436】
しかも、シリコン微粒子を形成するのに比べて、SiO層5063はCVDによって容易に形成できるので、製造の容易化を図ることができる。
【0437】
本実施形態の半導体素子の構造を利用して、第29実施形態と同様の半導体メモリ素子を構成することができる。
【0438】
図56は、第31の実施形態の半導体素子を用いて形成される半導体メモリ素子の断面図である。同図に示すように、半導体基板であるp型シリコン基板5071上に、ソース領域あるいはドレイン領域として機能するn型伝導領域5072と、絶縁体層であるSiO膜5073と、SiO層5074(0≦x<2,0<y≦4/3)と、電荷保持担体である金属タングステン5075と、SiO膜5076と、n型多結晶シリコン電極5077とが設けられている。また、n型伝導領域5072の上に、ソース/ドレイン電極である金属電極5078が設けられ、全体としてMIS型トランジスタ構造が形成されている。
【0439】
これにより、低電圧・高速かつ長期間の記録が可能な不揮発性の半導体メモリ素子として動作する。さらに単一素子により基本的なメモリ動作が実現されるので高密度の集積化が可能である。
【0440】
上記各実施形態では、微粒子体中に注入・蓄積される電荷としては、電子と正孔のいずれをも利用可能である。
【0441】
第29〜第31の実施形態においては、半導体層としてp型のシリコン層を用いたが、この他にn型シリコン層や、ポリシリコン薄膜、GaAs層等他の半導体材料膜を用いることもできる。
【0442】
また、第29〜第31の実施形態においては、微粒子体としてシリコン微粒子を用いているが、他の半導体材料や金属からなる微粒子体を用いることもできる。
【0443】
また、第29〜第31の実施形態においては、電荷保持担体としてタングステンおよび鉄を用いているが、金属や他の半導体材料を用い手も、同様の効果を発揮することができる。
【0444】
またmだい29〜第31の実施形態においては、電荷保持担体と半導体基板の間に障壁層内部に微粒子体を1層のみ設けているが、微粒子体を複数層設けたり、微粒子を分散させた領域を設けた構造にすることもできる。
【0445】
また、第29〜第31の実施形態においては、絶縁層をSiOにより構成しているが、前述のように、Si、Si(4x=2y+3z)、CeO、ZnS、ZnO、Al、等、他の絶縁体材料により絶縁層を構成してもよい。
【0446】
上記第1〜第31の実施形態において、半導体基板として、絶縁体基板の上にエピタキシャル半導体層を形成したものや、半導体基板内に絶縁層を形成したいわゆるSOI基板を用いても、上記各実施形態と同じ効果を発揮することができる。
【0447】
また、上記各実施形態のうちいくつかの実施形態においては、微粒子体を含む層の側面上にSiOサイドウォールを設けたが、必ずしもSiOサイドウォールを設ける必要はない。つまり、ソース・ドレイン領域の双方又は一方の上に微粒子が存在している構造であっても、他の手段によりリーク電流などの発生を防止することは可能である。
【0448】
【発明の効果】
本発明によれば、半導体素子において、微粒子体を絶縁体等の中に分散して構成する電荷保持領域を設けることにより、従来の半導体素子のようにトンネル酸化膜の厚さ及び微粒子体の粒径を制御する必要がなく、かつ、蓄積された電子の自然放出を効果的に抑制できるため、作製が容易で、かつ、信頼性の高い、新規な半導体素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る半導体素子の断面図である。
【図2】従来の半導体素子におけるSiO 膜、シリコン微粒子、トンネル酸化膜及びp型シリコン基板のエネルギーバンド構造を示すバンド図である。
【図3】従来の半導体素子における電子注入・電子保持を行う際のエネルギーバンド状態をそれぞれ示す部分バンド図である。
【図4】第1の実施形態に係る半導体素子におけるバンド図である。
【図5】第1の実施形態の半導体素子における電子注入・電子保持を行う際のエネルギーバンド状態をそれぞれ示す部分バンド図である。
【図6】第2の実施形態に係る半導体素子を示す断面図である。
【図7】第3の実施形態に係る半導体素子の断面図である。
【図8】第4の実施形態に係る半導体素子を示す断面図である。
【図9】第5の実施形態に係る半導体素子の断面図である。
【図10】第6の実施形態に係る半導体素子を示す断面図である。
【図11】第7の実施形態に係る半導体素子の断面図である。
【図12】第8の実施形態に係る半導体素子を示す断面図である。
【図13】第1の実施形態に係る半導体素子の製造工程を示す断面図である。
【図14】第7の実施形態に係る半導体素子におけるバンド図である。
【図15】複数のSiGe微粒子を有し、基板の下方から順に、電荷保持域内に、配置された複数の微粒子群を備える半導体素子の断面図である。
【図16】第9の実施形態に係る半導体素子の断面図である。
【図17】第9の実施形態に係る半導体素子におけるバンド図である。
【図18】(a)、(b)、(c)は、第9の実施形態の半導体素子における電子注入・電子保持を行う際のエネルギーバンド状態をそれぞれ示す部分バンド図である。
【図19】第10の実施形態に係る半導体素子を示す断面図である。
【図20】第11の実施形態に係る半導体素子の断面図である。
【図21】第12の実施形態に係る半導体素子を示す断面図である。
【図22】第13の実施形態に係る半導体素子の断面図である。
【図23】第14の実施形態に係る半導体素子を示す断面図である。
【図24】第15の実施形態に係る半導体素子の断面図である。
【図25】本発明の第16の実施形態における半導体素子の断面図である。
【図26】(a)〜(c)は、注入電荷として電子を用いる場合の伝導帯付近のバンド構造の概略図を示すバンド図である。
【図27】(a)〜(c)は、電荷として電子を用いる場合における半導体基板−第2の微粒子体間の電圧の高低と電荷の移動特性とのより好ましい関係を説明するためのバンド図である。
【図28】第1の微粒子体の粒径と、第1,第2の微粒子体の粒径比とが電荷の保持特性に与える影響について説明するための図である。
【図29】第17の実施形態における半導体メモリ素子の断面図である。
【図30】第18の実施形態における半導体素子の断面図である。
【図31】第18の実施形態の半導体素子を利用して形成される半導体メモリ素子の断面図である。
【図32】第19の実施形態における半導体素子の断面図である。
【図33】第19の実施形態の半導体素子を利用して形成された半導体メモリ素子の断面図である。
【図34】第20の実施形態における半導体素子の断面図である。
【図35】第20の実施形態の半導体素子を利用して形成された半導体メモリ素子の断面図である。
【図36】第21の実施形態における半導体素子の断面図である。
【図37】第21の実施形態の半導体素子を利用して形成された半導体メモリ素子の断面図である。
【図38】第22の実施形態における半導体素子の断面図である。
【図39】第22の実施形態の半導体素子を利用して形成された半導体メモリ素子の断面図である。
【図40】第23の実施形態における半導体素子の断面図である。
【図41】第23の実施形態における半導体素子を利用して得られる半導体メモリ素子の断面図である。
【図42】第24の実施形態の半導体素子の断面図である。
【図43】(a),(b)は、電子による電荷移動の際の伝導帯端付近のバンド構造を概略的に示すバンド図である。
【図44】第25の実施形態における半導体メモリ素子の断面図である。
【図45】第26の実施形態における半導体素子の断面図である。
【図46】第26の実施形態の半導体素子を用いて形成される半導体メモリ素子の断面図である。
【図47】第27の実施形態における半導体素子の断面図である。
【図48】第27の実施形態の半導体素子を用いて形成される半導体メモリ素子の断面図である。
【図49】第28の実施形態における半導体素子の断面図である。
【図50】第28の実施形態の半導体素子を用いて形成される半導体メモリ素子の断面図である。
【図51】第29の実施形態における半導体素子の断面図である。
【図52】従来の文献に記載されている従来の複数のシリコンの微粒子を用いた半導体素子を示す断面図である。
【図53】(a)〜(c)は、注入電荷として電子を用いる場合の伝導帯端付近のバンド構造を概略的に示す図である。
【図54】第30の実施形態の半導体メモリ素子の断面図である。
【図55】第31の実施形態における半導体素子の断面図である。
【図56】31の実施形態の半導体素子を用いて形成される半導体メモリ素子の断面図である。
【図57】従来の複数のシリコンの微粒子を用いたメモリとして機能する半導体メモリ素子を示す断面図である。
【符号の説明】
1011 p型シリコン基板
1012 電荷保持領域
1012a 微粒子分散領域
1013 シリコン微粒子
1014 SiO
1015 SiO 膜
1016 n型多結晶シリコン電極
1017 衝撃によってはじき出された原子、分子

Claims (10)

  1. 導体層を有する基板と、
    上記導体層の上に設けられ、電荷の移動に対して障壁として機能する第1の障壁層と、
    上記第1の障壁層の上に設けられた第1の粒子体と、
    上記第1の粒子体の上に設けられ、電荷の移動に対して障壁として機能する第2の障壁層と、
    上記第2の障壁層上に設けられた第2の粒子体とを備え、
    上記第2の粒子体の保持・放出しようとする電荷に対するポテンシャルが、上記第1の粒子体のポテンシャルよりも低いことを特徴とする半導体素子。
  2. 請求項1に記載の半導体素子において、
    上記保持・放出しようとする電荷は電子であり、上記第2の粒子体の電子親和力が上記第1の粒子体の電子親和力より大きいことを特徴とする半導体素子。
  3. 請求項2に記載の半導体素子において、
    上記導体層は、半導体層であり、
    上記第2の粒子体の電子親和力が半導体層の電子親和力よりも大きいことを特徴とする半導体素子。
  4. 請求項1に記載の半導体素子において、
    上記保持・放出しようとする電荷は正孔であり、第2の粒子体の電子親和力と禁制帯幅との和が、上記第1の粒子体の電子親和力と禁制帯幅との和よりも小さいことを特徴とする半導体素子。
  5. 請求項4に記載の半導体素子において、
    上記導体層は、半導体層であり、
    上記第2の粒子体の電子親和力と禁制帯幅との和が、半導体基板の電子親和力と禁制帯幅との和よりも小さいことを特徴とする半導体素子。
  6. 請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の半導体素子において、
    上記第2の粒子体の上に設けられた絶縁体層と、
    上記絶縁体層の上に設けられたゲート電極と、
    上記導体層における上記ゲート電極の両側方に位置する領域に設けられたソース・ドレイン領域とをさらに備え、
    MIS型トランジスタとして機能することを特徴とする半導体素子。
  7. 導体層を有する基板と、
    上記導体層の上に設けられた第1の絶縁体層と、
    上記第1の絶縁体層の上に設けられた第1の粒子体と、
    上記第1の粒子体の上に設けられた電荷の移動に対して障壁として機能する第1の障壁層と、
    上記第1の障壁層の上に設けられた第2の粒子体と、
    上記第2の粒子体の上に設けられ、電荷の移動に対して障壁として機能する第2の障壁層と、
    上記第2の障壁層上に設けられた第3の粒子体とを備え、
    上記第1の粒子体及び第3の粒子体の保持・放出しようとする電荷に対するポテンシャルが、上記第2の粒子体のポテンシャルよりもそれぞれ低いことを特徴とする半導体素子。
  8. 請求項7に記載の半導体素子において、
    上記保持・放出しようとする電荷は電子であり、上記第1,第3の粒子体の電子親和力が上記第2の粒子体の電子親和力よりそれぞれ大きいことを特徴とする半導体素子。
  9. 請求項7に記載の半導体素子において、
    上記保持・放出しようとする電荷は正孔であり、第1,第3の粒子体の電子親和力と禁制帯幅との和が、上記第2の粒子体の電子親和力と禁制帯幅との和よりもそれぞれ小さいことを特徴とする半導体素子。
  10. 請求項7〜8のうちいずれか1つに記載の半導体素子において、
    上記第3の粒子体の上に設けられた絶縁体層と、
    上記絶縁体層の上に設けられたゲート電極と、
    上記導体層における上記ゲート電極の両側方に位置する領域に設けられたソース・ドレイン領域とをさらに備え、
    MIS型トランジスタとして機能することを特徴とする半導体素子。
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