JP2004004194A - 90度分極界面を利用した光偏向素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は高速のランダムアクセスが可能であるとともに、駆動電圧の低い、高分解能の光偏向素子を提供することである。
【解決手段】領域Aと領域Bの自発分極の方向は互いに直角となっており、互いのなす角度の半分45度方向に境界面を形成している。入射面22、出射面23は光学研磨が施されており、分極界面5をはさむように対抗したITOなどの透明電極20が装着されている。波長0.532μmのグリーンレーサ゛光を入射光として使用し偏光方向は結晶の異常光となるようP偏光(紙面内方向)を入射面22に垂直方向(θ1=90度)光軸10から入射させる。
【選択図】 図1
【解決手段】領域Aと領域Bの自発分極の方向は互いに直角となっており、互いのなす角度の半分45度方向に境界面を形成している。入射面22、出射面23は光学研磨が施されており、分極界面5をはさむように対抗したITOなどの透明電極20が装着されている。波長0.532μmのグリーンレーサ゛光を入射光として使用し偏光方向は結晶の異常光となるようP偏光(紙面内方向)を入射面22に垂直方向(θ1=90度)光軸10から入射させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電気光学素子に関し、例えば光偏向素子等の電気光学効果を利用した素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気光学効果を利用した素子としては光偏向器または光偏向器がある。光偏向器については、光ビームを電子的に偏向する手段として、これまではガルバノメータ型、回転多面反射鏡形、回転ホログラム形がよく使われている。これらの偏向器はいずれも電気機械的な偏向手段からなるため高分解能であってかなりの高速の連続操作が可能であるが短時間のランダムアクセスには適していない。
他の高速の偏向器としては、音響回折光学格子によるブラッグ回折を利用するものがある。これはマイクロ秒程度のアクセス時間を持っているが、偏向角が小さく、操作可能なスポット数(分解能)に難点がある。また出力ビームも複数本にわかれてしまう。
【0003】
ある屈折率を持った媒質から屈折率が異なった媒質に入射した光ビームは、両媒質間での屈折によって進路が曲がるがこのとき電気光学効果を持った媒質であれば電気信号に応じた媒質の屈折率の変化により屈折角度が変化し、その結果電気信号によって光ビームの進路を曲げることができる。
【0004】
電気光学効果を使用した従来構造の光偏向器を図8に示す。
基板1の結晶中に断面三角状の180度分極反転領域を形成する。ニオブ酸リチウム(LiNbO3)もしくはリチウムタンタレート(LiTaO3)のr33(z方向に電界を印可した時のz方向の屈折率変化)を利用する。ここで電界Eをz方向に加えた場合の屈折率変化は
Δne≡(1/2) r33・E・ne3 (1)
屈折率n1の媒質Eから屈折率n2の媒質Fへの出射角度がθ1で入射した光ビームの媒質Eから媒質Fへの出射角度がθ2であったとするとその関係はスネルの法則より
Sinθ1/Sinθ2=n2/n1 (2)
式(2)から図中の紙面に垂直方向に電界を印加して、媒質Eの屈折率がne+Δneに媒質Fは180°自発分極の方向が異なるためne―Δneになる。
媒質Eから媒質Fへの入射各θ1に対する偏向角Δθsは
Δθs=Sin−1((ne―Δne)/ (ne+Δne)・X・Sinθ1)−θ1 (3)
一方媒質Fから媒質Eへの入射各角度θに対する偏向角Δθdは
Δθd=Sin−1((ne+Δne)/ (ne―Δne)・X・Sinθ1)−θ1 (4)
E=1KV/mmを素子に印加した時の屈折率変動Δne=0.00016となる。入射角度45とすると媒質E−媒質F−媒質Eと界面を2回通過する事による偏向角は約0.02度となる。
【0005】
これらのr33の定数は30pmV程度であるため高い電界が必要で駆動するには数kVから数十kVの高電圧電源が必要であった。
また電気光学効果を利用した偏向器は数ナノ秒の高速で動作するが分解能は一層低下する。また電気光学効果は一般に小さく大きな駆動電圧を必要とすることが問題となっている。上記したように、従来の光偏向器については電気機械的な偏向器、音響光学効果を利用した偏向器、電気光学効果を利用した偏向器はそれぞれに長所短所を持つが高速度で動作電圧が低い光偏向器は現状では存在しない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は高速のランダムアクセスが可能であるとともに、駆動電圧の低い、高分解能の光偏向素子を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、強誘電体基板中に分極方向が互いに90度となる2つの分極領域を画する分極界面が形成され、前記分極界面と垂直な2つの主面の一部に設けられた対向する電極とを備え、強誘電体基板に入射した光ビームが前記分極界面を通過するように構成され、前記電極間に電圧を印加することにより光ビームの伝播方向を変化させることを特徴とした光偏向素子である。
【0008】
また本発明は、強誘電体基板中に分極方向が互いに90度となる直列に並んだ複数の分極領域を画する分極界面が複数個形成され、前記分極界面と垂直な2つの主面の一部に設けられた電極とからなり、強誘電体基板に入射した光ビームが前記分極界面を複数回通過するように構成され、前記電極間に電圧を印加することにより光ビームの伝播方向を変化させることを特徴とした光偏向素子である。
【0009】
強誘電体基板中に90度分極領域を形成することにより、光が界面を通過する際に大きく屈折することがわかった。
大きな電気光学定数を有するr51を利用し電圧を印加することにより屈折率楕円体を回転させそれにより界面での屈折角度を変化させ光の透過する角度を電気的に制御することができるようになった。
【0010】
本発明において強誘電体基板の対称性が斜方晶もしくは正方晶であることが好ましい。斜方晶もしくは正方晶においては結晶の対称性から90度分極を取りやすいからである。なかでも強誘電体基板としてKNbO3またはKTiOPO4が、室温で90度分極が安定に存在しうるので好ましい。
【0011】
また強誘電体基板としてKNbO3を用い、電気光学効果のテンソル成分としてr42もしくはr15を使用することが好ましい。これらの定数が大きな電気光学効果を持つため低電圧で駆動することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
斜方晶系に属するネオブ酸カリウム(KNbO3)を例にとり説明する。KNbO3の室温における点群はmm2で、格子定数はa=5.688、b=3.971、c=5.714、波長633nmでの主屈折率na=2.2801、nb=2.3296、nc=2.1687である。電気光学定数はr33=60pm/V、r51=105pm/Vである。通常使用されているニオブ酸リチウムLiNbO3の電気光学定数はr33=30.8pm/Vに比べて一桁以上も高い定数を有している。r51はa軸方向に電界を加えた場合a、c面内の偏光の屈折率楕円体が回転することを意味している。r51を利用するにはa軸方向に電界を加える必要がある。
【0013】
本発明者らは強誘電体材料に90度分極構造を作製できることを見出した。次にこのような90度ドメインの形成法について説明する。例としてKNbO3結晶を図6(a)のようにa−c45度方向が主面となるように矩形体に切り出し、入射面40,41を光学研磨する。次に図6(a)に示すように主面上に長手方向がb軸方向となる周期的な電極30,31を金属蒸着等の手段で装着する。電極30と電極31に分極が倒れる方向に電界を加えると、図6(b)のように電極下部分の自発分極方向がb軸を回転中心として90度回転を生じる。このため互いに直交した分極方向となる分極域を作製することが出来る。図6中では分極軸方向を矢印で、屈折率楕円体を楕円で示している。このようにして互いの極性軸が180度以外の例えば90度になるように分域制御した結晶素子を作製することができる。
【0014】
このようにして作製した90度分極界面を光を通過させる最、a軸方向の電界が加わることにより屈折角度が変化することを見出した。これを、図2をもとに説明する。
電界を印加していないときのKNbO3結晶の領域A,領域Bでの屈折率楕円体をそれぞれ実線の楕円で示している。長軸、短軸はそれぞれa軸、c軸方向に相当する。
KNbO3結晶のa軸方向に電界が加わるように外部から電界を加えると、屈折率楕円体がa−c面内で回転する。この回転した楕円体を点線の楕円で示している。この回転角度をΔθとするとΔθは次の式から計算される。
【0015】
【式】
【0016】
ここでE0は外部印加電界、Eaはa軸方向の電界成分である。
【0017】
X0軸方向の外部電界をE0=200V/mmとすると、対外に90度の分極を有する分極領域Aの屈折率楕円体が時計方向にΔθ=0.04°回転した場合、領域Bの屈折率楕円体も時計方向にΔθ=0.04°回転する。なぜならばa軸方向の電界成分はいずれの領域でも同一符合となるため回転方向も一致し、相対的な角度は90度のままである。
【0018】
屈折率楕円体の主軸方向が0.04°回転した場合の屈折角θ2の入射角度θ1依存性を図3に示した。図3では屈折角度θ2はθ1との差θ2−θ1で示している。図中のαは電界が0の場合、β、γはX0軸方向の外部電界としてE0=200V/mm,E0=−200V/mm印加した場合である。入射角度θ1=90度の場合つまり分極界面と平行になるように入射した場合が最も大きな偏光角度差(約0.1度)を生じることがわかった。
【0019】
このように90度分極界面にa軸方向に電界を印加することにより従来よりも電電解で屈折角度を制御することが可能出ることが明らかになった。また印加電圧を高速に交流的に印加することにより出射ヒ゛ームの方向を高速スキャンすることができる。
【0020】
図1に1つの90度分極界面を通過させる光偏向器の実施形態を示す。領域Aと領域Bの自発分極の方向は互いに直角となっており、互いのなす角度の半分45度方向に境界面を形成している。入射面22、出射面23は光学研磨が施されており、分極界面5をはさむように対抗したITOなどの透明電極20が装着されている。結晶の厚み(電極間距離)は約1mmである。波長0.532μmのグリーンレーサ゛光を入射光として使用し図1に示すように偏光方向は結晶の異常光となるようP偏光(紙面内方向)を入射面22に垂直方向(θ1=90度)光軸10から入射させる。この際、異常光成分のビームウオークオフの角度ρは2.86°である。異常光成分のポインテイングベクトルは波数べクトル方向に対して2.86°ずれて伝播するため、90°分極回転領域のドメイン壁5に突入する。この際全反射は起こらず全透過を生じる。屈折角度θ2は84°となって屈折し結晶出力面23から角度θout=14°で光軸12に沿って右方向に出射される。1対のつの透明電極20が分極界面と垂直の種面22,23上に形成され、この電極対20の間に電界を印加した場合屈折角度θ2が変化するため、出射面23からの出射角度θoutはΔθ変化させることができる。図1の配置での出射角度の変化量Δθの電界強度依存性を図7に示した。200V/mmの電界強度で約0.1°出射角度を変化させることができる。
【0021】
さらに偏向角度を増すために複数個の90度分極界面を通過させた実施形態を図4に示した。領域A,領域Cと領域B,領域Dの分極方向は互いに90度となっている。入射面22、出射面23の一部には対向する金属電極25が装着されている。金属電極はアルミ、や金などを蒸着して使用する。分極界面を通過した光は入出力端面22,23の金属電極25により全反射され進行方向が折り返され、ジグザク状に伝搬させることにより複数回界面を通過させ変異角を増加させることが可能となる。入射部、出射部は金属電極がない構成になっている。
【0022】
左または右方向に進行時に偶数回界面を通過すると電圧印加による変化量Δθが打ち消され変化量がゼロとなってしまうため、右進行時に1回、左進行じにも界面を通過する回数が1回となるようにすることが重要である。図4のように分極界面5,6,7を3回通過することにより偏向角度を増加させることが可能となった。
【0023】
図4の構成での偏向角度Δθの印加電界依存性を図5に示した。偏向角度は200V/mmで約0.2°となり、界面1回通過時の場合と比較して約2倍の偏向角が得られることがわかった。さらに印加電圧の低減化、偏向角度の増大するためにはこうした素子を進行方向の複数個直列に配置することにより達成することができることはいうまでもない。
電界を高速に交流を印加することにより出射方向を高速にスキャンすることができる光偏向器を作成することができる。
【0024】
以上のように本発明によれば従来より簡単な構成でより低電圧で駆動できるため、光プローブ、光印刷、などの光偏向器として利用することが可能である。
【0025】
以上の説明は主にKNbO3結晶を例に説明したが、2軸性結晶で斜方晶結晶であるKTiOPO4、KLiNbO3,TiBaO3,RbTiOPO4などにも適用できることは言うまでもない。また単結晶材料に限定して説明したが、基板上にエピタキシャル成長した材料でも適応できることも言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例を示す図
【図2】2つの領域での屈折率楕円体を説明する図
【図3】入射角と透過角の関係を示す図
【図4】本発明の1実施例を示す図
【図5】図4の構造で印加電界と出射角を示す図
【図6】a−c45度方向を主面として切り出した結晶の分極の様子を示す図
【図7】図1の構造で印加電界と出射角を示す図
【図8】従来の光偏向器を示す図
【符号の説明】
A,B,C,D:領域
5,6,7:分極界面
10:光軸 12:光軸
20、25:電極、 22:入射面、 23:出射面
30,31:電極、 40,41:入射面
【発明の属する技術分野】
本発明は電気光学素子に関し、例えば光偏向素子等の電気光学効果を利用した素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気光学効果を利用した素子としては光偏向器または光偏向器がある。光偏向器については、光ビームを電子的に偏向する手段として、これまではガルバノメータ型、回転多面反射鏡形、回転ホログラム形がよく使われている。これらの偏向器はいずれも電気機械的な偏向手段からなるため高分解能であってかなりの高速の連続操作が可能であるが短時間のランダムアクセスには適していない。
他の高速の偏向器としては、音響回折光学格子によるブラッグ回折を利用するものがある。これはマイクロ秒程度のアクセス時間を持っているが、偏向角が小さく、操作可能なスポット数(分解能)に難点がある。また出力ビームも複数本にわかれてしまう。
【0003】
ある屈折率を持った媒質から屈折率が異なった媒質に入射した光ビームは、両媒質間での屈折によって進路が曲がるがこのとき電気光学効果を持った媒質であれば電気信号に応じた媒質の屈折率の変化により屈折角度が変化し、その結果電気信号によって光ビームの進路を曲げることができる。
【0004】
電気光学効果を使用した従来構造の光偏向器を図8に示す。
基板1の結晶中に断面三角状の180度分極反転領域を形成する。ニオブ酸リチウム(LiNbO3)もしくはリチウムタンタレート(LiTaO3)のr33(z方向に電界を印可した時のz方向の屈折率変化)を利用する。ここで電界Eをz方向に加えた場合の屈折率変化は
Δne≡(1/2) r33・E・ne3 (1)
屈折率n1の媒質Eから屈折率n2の媒質Fへの出射角度がθ1で入射した光ビームの媒質Eから媒質Fへの出射角度がθ2であったとするとその関係はスネルの法則より
Sinθ1/Sinθ2=n2/n1 (2)
式(2)から図中の紙面に垂直方向に電界を印加して、媒質Eの屈折率がne+Δneに媒質Fは180°自発分極の方向が異なるためne―Δneになる。
媒質Eから媒質Fへの入射各θ1に対する偏向角Δθsは
Δθs=Sin−1((ne―Δne)/ (ne+Δne)・X・Sinθ1)−θ1 (3)
一方媒質Fから媒質Eへの入射各角度θに対する偏向角Δθdは
Δθd=Sin−1((ne+Δne)/ (ne―Δne)・X・Sinθ1)−θ1 (4)
E=1KV/mmを素子に印加した時の屈折率変動Δne=0.00016となる。入射角度45とすると媒質E−媒質F−媒質Eと界面を2回通過する事による偏向角は約0.02度となる。
【0005】
これらのr33の定数は30pmV程度であるため高い電界が必要で駆動するには数kVから数十kVの高電圧電源が必要であった。
また電気光学効果を利用した偏向器は数ナノ秒の高速で動作するが分解能は一層低下する。また電気光学効果は一般に小さく大きな駆動電圧を必要とすることが問題となっている。上記したように、従来の光偏向器については電気機械的な偏向器、音響光学効果を利用した偏向器、電気光学効果を利用した偏向器はそれぞれに長所短所を持つが高速度で動作電圧が低い光偏向器は現状では存在しない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は高速のランダムアクセスが可能であるとともに、駆動電圧の低い、高分解能の光偏向素子を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、強誘電体基板中に分極方向が互いに90度となる2つの分極領域を画する分極界面が形成され、前記分極界面と垂直な2つの主面の一部に設けられた対向する電極とを備え、強誘電体基板に入射した光ビームが前記分極界面を通過するように構成され、前記電極間に電圧を印加することにより光ビームの伝播方向を変化させることを特徴とした光偏向素子である。
【0008】
また本発明は、強誘電体基板中に分極方向が互いに90度となる直列に並んだ複数の分極領域を画する分極界面が複数個形成され、前記分極界面と垂直な2つの主面の一部に設けられた電極とからなり、強誘電体基板に入射した光ビームが前記分極界面を複数回通過するように構成され、前記電極間に電圧を印加することにより光ビームの伝播方向を変化させることを特徴とした光偏向素子である。
【0009】
強誘電体基板中に90度分極領域を形成することにより、光が界面を通過する際に大きく屈折することがわかった。
大きな電気光学定数を有するr51を利用し電圧を印加することにより屈折率楕円体を回転させそれにより界面での屈折角度を変化させ光の透過する角度を電気的に制御することができるようになった。
【0010】
本発明において強誘電体基板の対称性が斜方晶もしくは正方晶であることが好ましい。斜方晶もしくは正方晶においては結晶の対称性から90度分極を取りやすいからである。なかでも強誘電体基板としてKNbO3またはKTiOPO4が、室温で90度分極が安定に存在しうるので好ましい。
【0011】
また強誘電体基板としてKNbO3を用い、電気光学効果のテンソル成分としてr42もしくはr15を使用することが好ましい。これらの定数が大きな電気光学効果を持つため低電圧で駆動することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
斜方晶系に属するネオブ酸カリウム(KNbO3)を例にとり説明する。KNbO3の室温における点群はmm2で、格子定数はa=5.688、b=3.971、c=5.714、波長633nmでの主屈折率na=2.2801、nb=2.3296、nc=2.1687である。電気光学定数はr33=60pm/V、r51=105pm/Vである。通常使用されているニオブ酸リチウムLiNbO3の電気光学定数はr33=30.8pm/Vに比べて一桁以上も高い定数を有している。r51はa軸方向に電界を加えた場合a、c面内の偏光の屈折率楕円体が回転することを意味している。r51を利用するにはa軸方向に電界を加える必要がある。
【0013】
本発明者らは強誘電体材料に90度分極構造を作製できることを見出した。次にこのような90度ドメインの形成法について説明する。例としてKNbO3結晶を図6(a)のようにa−c45度方向が主面となるように矩形体に切り出し、入射面40,41を光学研磨する。次に図6(a)に示すように主面上に長手方向がb軸方向となる周期的な電極30,31を金属蒸着等の手段で装着する。電極30と電極31に分極が倒れる方向に電界を加えると、図6(b)のように電極下部分の自発分極方向がb軸を回転中心として90度回転を生じる。このため互いに直交した分極方向となる分極域を作製することが出来る。図6中では分極軸方向を矢印で、屈折率楕円体を楕円で示している。このようにして互いの極性軸が180度以外の例えば90度になるように分域制御した結晶素子を作製することができる。
【0014】
このようにして作製した90度分極界面を光を通過させる最、a軸方向の電界が加わることにより屈折角度が変化することを見出した。これを、図2をもとに説明する。
電界を印加していないときのKNbO3結晶の領域A,領域Bでの屈折率楕円体をそれぞれ実線の楕円で示している。長軸、短軸はそれぞれa軸、c軸方向に相当する。
KNbO3結晶のa軸方向に電界が加わるように外部から電界を加えると、屈折率楕円体がa−c面内で回転する。この回転した楕円体を点線の楕円で示している。この回転角度をΔθとするとΔθは次の式から計算される。
【0015】
【式】
【0016】
ここでE0は外部印加電界、Eaはa軸方向の電界成分である。
【0017】
X0軸方向の外部電界をE0=200V/mmとすると、対外に90度の分極を有する分極領域Aの屈折率楕円体が時計方向にΔθ=0.04°回転した場合、領域Bの屈折率楕円体も時計方向にΔθ=0.04°回転する。なぜならばa軸方向の電界成分はいずれの領域でも同一符合となるため回転方向も一致し、相対的な角度は90度のままである。
【0018】
屈折率楕円体の主軸方向が0.04°回転した場合の屈折角θ2の入射角度θ1依存性を図3に示した。図3では屈折角度θ2はθ1との差θ2−θ1で示している。図中のαは電界が0の場合、β、γはX0軸方向の外部電界としてE0=200V/mm,E0=−200V/mm印加した場合である。入射角度θ1=90度の場合つまり分極界面と平行になるように入射した場合が最も大きな偏光角度差(約0.1度)を生じることがわかった。
【0019】
このように90度分極界面にa軸方向に電界を印加することにより従来よりも電電解で屈折角度を制御することが可能出ることが明らかになった。また印加電圧を高速に交流的に印加することにより出射ヒ゛ームの方向を高速スキャンすることができる。
【0020】
図1に1つの90度分極界面を通過させる光偏向器の実施形態を示す。領域Aと領域Bの自発分極の方向は互いに直角となっており、互いのなす角度の半分45度方向に境界面を形成している。入射面22、出射面23は光学研磨が施されており、分極界面5をはさむように対抗したITOなどの透明電極20が装着されている。結晶の厚み(電極間距離)は約1mmである。波長0.532μmのグリーンレーサ゛光を入射光として使用し図1に示すように偏光方向は結晶の異常光となるようP偏光(紙面内方向)を入射面22に垂直方向(θ1=90度)光軸10から入射させる。この際、異常光成分のビームウオークオフの角度ρは2.86°である。異常光成分のポインテイングベクトルは波数べクトル方向に対して2.86°ずれて伝播するため、90°分極回転領域のドメイン壁5に突入する。この際全反射は起こらず全透過を生じる。屈折角度θ2は84°となって屈折し結晶出力面23から角度θout=14°で光軸12に沿って右方向に出射される。1対のつの透明電極20が分極界面と垂直の種面22,23上に形成され、この電極対20の間に電界を印加した場合屈折角度θ2が変化するため、出射面23からの出射角度θoutはΔθ変化させることができる。図1の配置での出射角度の変化量Δθの電界強度依存性を図7に示した。200V/mmの電界強度で約0.1°出射角度を変化させることができる。
【0021】
さらに偏向角度を増すために複数個の90度分極界面を通過させた実施形態を図4に示した。領域A,領域Cと領域B,領域Dの分極方向は互いに90度となっている。入射面22、出射面23の一部には対向する金属電極25が装着されている。金属電極はアルミ、や金などを蒸着して使用する。分極界面を通過した光は入出力端面22,23の金属電極25により全反射され進行方向が折り返され、ジグザク状に伝搬させることにより複数回界面を通過させ変異角を増加させることが可能となる。入射部、出射部は金属電極がない構成になっている。
【0022】
左または右方向に進行時に偶数回界面を通過すると電圧印加による変化量Δθが打ち消され変化量がゼロとなってしまうため、右進行時に1回、左進行じにも界面を通過する回数が1回となるようにすることが重要である。図4のように分極界面5,6,7を3回通過することにより偏向角度を増加させることが可能となった。
【0023】
図4の構成での偏向角度Δθの印加電界依存性を図5に示した。偏向角度は200V/mmで約0.2°となり、界面1回通過時の場合と比較して約2倍の偏向角が得られることがわかった。さらに印加電圧の低減化、偏向角度の増大するためにはこうした素子を進行方向の複数個直列に配置することにより達成することができることはいうまでもない。
電界を高速に交流を印加することにより出射方向を高速にスキャンすることができる光偏向器を作成することができる。
【0024】
以上のように本発明によれば従来より簡単な構成でより低電圧で駆動できるため、光プローブ、光印刷、などの光偏向器として利用することが可能である。
【0025】
以上の説明は主にKNbO3結晶を例に説明したが、2軸性結晶で斜方晶結晶であるKTiOPO4、KLiNbO3,TiBaO3,RbTiOPO4などにも適用できることは言うまでもない。また単結晶材料に限定して説明したが、基板上にエピタキシャル成長した材料でも適応できることも言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例を示す図
【図2】2つの領域での屈折率楕円体を説明する図
【図3】入射角と透過角の関係を示す図
【図4】本発明の1実施例を示す図
【図5】図4の構造で印加電界と出射角を示す図
【図6】a−c45度方向を主面として切り出した結晶の分極の様子を示す図
【図7】図1の構造で印加電界と出射角を示す図
【図8】従来の光偏向器を示す図
【符号の説明】
A,B,C,D:領域
5,6,7:分極界面
10:光軸 12:光軸
20、25:電極、 22:入射面、 23:出射面
30,31:電極、 40,41:入射面
Claims (5)
- 強誘電体基板中に分極方向が互いに90度となる2つの分極領域を画する分極界面が形成され、前記分極界面と垂直な2つの主面の一部に設けられた対向する電極とを備え、強誘電体基板に入射した光ビームが前記分極界面を通過するように構成され、前記電極間に電圧を印加することにより光ビームの伝播方向を変化させることを特徴とした光偏向素子。
- 強誘電体基板中に分極方向が互いに90度となる直列に並んだ複数の分極領域を画する分極界面が複数個形成され、前記分極界面と垂直な2つの主面の一部に設けられた電極とからなり、強誘電体基板に入射した光ビームが前記分極界面を複数回通過するように構成され、前記電極間に電圧を印加することにより光ビームの伝播方向を変化させることを特徴とした光偏向素子。
- 強誘電体基板の対称性が正方晶もしくは斜方晶であることを特徴とする請求項1または2に記載の光偏向素子。
- 強誘電体基板としてKNbO3またはKTiOPO4を使用したことを特徴とする請求項3に記載の光偏向素子。
- 強誘電体基板としてKNbO3を用い、電気光学効果のテンソル成分としてr42もしくはr15を使用したことを特徴とする請求項4に記載の光偏向素子。
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