JP2004003633A - 転動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】摩耗粉による外部環境の汚染を効果的に抑制するとともに、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間作動する転動装置を提供する。
【解決手段】内輪2と外輪3との間に複数個の転動体4が保持器5を介して周方向に転動可能に配設され、転動体4、内輪2および外輪3のうち少なくとも転動体が超硬合金、サーメットあるいはセラミックスで構成される転がり軸受1において、転動体4の表面あらさRa(σ1 )と、内・外輪2、3の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)を1 .0以下とし、且つ、転動体4の表面硬さと内輪2の表面硬さとの比、および転動体4の表面硬さと外輪3の表面硬さとの比を0.6以上2.0以下とする。
【選択図】 図1
【解決手段】内輪2と外輪3との間に複数個の転動体4が保持器5を介して周方向に転動可能に配設され、転動体4、内輪2および外輪3のうち少なくとも転動体が超硬合金、サーメットあるいはセラミックスで構成される転がり軸受1において、転動体4の表面あらさRa(σ1 )と、内・外輪2、3の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)を1 .0以下とし、且つ、転動体4の表面硬さと内輪2の表面硬さとの比、および転動体4の表面硬さと外輪3の表面硬さとの比を0.6以上2.0以下とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶パネル製造工程、半導体製造工程、ハードディスク製造工程、コンデンサ一製造工程の各種洗浄装置などの腐食環境下、半導体製造装置(電子線利用の露光・描画装置、検査装置など) の磁場環境下、鉄鋼設備、窯炉内搬送用台車(キルンカー)、連続熱処理用コンベヤおよび焼付け塗装機用トロリーなどの高温炉内搬送システムのような高温環境下、工作機械、タービンおよび各種ポンプなどのような高速・高温環境下で使用され、且つ、無潤滑或いは潤滑条件が厳しい、例えば潤滑剤が枯渇しやすく、摩耗が生じやすい用途で使用される転動装置、また、半動体製造プロセスで利用される測長SEMのような計測装置、又は分析装置や露光装置などのような製造装置に使用され、非磁性かつ導電性が要求される環境下で、好適に使用し得る転がり軸受や直動装置などの特殊環境用転動装置、更に、半導体、液晶パネルおよびハードディスク等の製造工程で用いられる各種洗浄装置や食品機械等のように水または各種洗浄溶液(酸、アルカリ)中で使用される環境下、水または各種洗浄溶液がミスト状に存在するか、飛散してかかるような環境下、あるいはドライ環境下においても使用できる転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
転動装置は、回転運動または直線運動可能な可動子、この可動子を支持する支持体、これら可動子と支持体との間に介在し、前記可動子の運動に伴って転動する複数個の転動体を具備する。また、この複数個の転動体を案内保持した状態で前記可動子の軌道と前記支持体の軌道との間に回転自在に設けられた保持器をさらに有する場合もある。
【0003】
半導体、液晶パネル、ハードディスクなどの製造工程では、半導体素子などの表面に付着する微細なパーティクルやアウトガスが製品の性能、信頼性、歩留まりなどに悪影響を及ぼすため、パーティクルやアウトガスの原因となる油やグリースを十分封入して転動装置の潤滑を行うことはせず、微量な潤滑剤や固体潤滑剤により転動装置の潤滑を行ったり、無潤滑下で転動装置を用いる場合がある。
【0004】
また、半導体、液晶パネル、ハードディスク等の製造工程における各種洗浄工程では、種々の薬品が用いられており、これらに使用される転動装置は、前記薬品の雰囲気中などの腐食環境下で作動することが要求される。
更に、半導体、液晶パネル、ハードディスクなどの製造プロセスにおいて、電子線を利用する露光、描画装置、検査装置などでは、電子銃が照射されるシリコンウエハの移動に用いられる軸受、ボールねじ装置、リニアガイド装置などの転動装置が使用されているが、該転動装置に磁性材を用いると、磁場を乱したりして、測定精度や製造精度(描画精度)が低下してしまう。
【0005】
更に、ジェットエンジンやガスタービンでは、省エネルギ―や環境問題の観点から、高効率化が進められており、ジェットエンジンやガスタービン等に用いられる転動装置は、より高速、高荷重、高温下で作動することが要求され、また、トルクを低減するために、より低粘度の潤滑剤を用いたりする。
ところで、上記転動装置には、従来から転動体をセラミックスで構成したものがある。このセラミックス製転動体は、通常、セラミック材料の粉末を加圧し、高温下で焼結成形することにより作製される。
【0006】
従来のセラミックス製転動体として、窒化けい素を主成分として焼結したセラミックスからなる転動体が開示されており(例えば特許文献1参照)、このセラミックス製転動体は次のような手順で作成される。
まず、窒化けい素粉末および焼結助剤を例えば平均粒径1.0μm以下に粉砕して混合し、それらに溶剤を加えて混練することにより平均粒径100〜150μmに造粒する。
【0007】
次いで、この造粒粉を用いて金型プレスにより外形を整え、この成形体を脱脂してから常圧焼結して、さらに等方加圧焼結処理(HIP)を行う。その後、焼結体をバレル研磨などにより仕上げる。
腐食環境下で用いられる転がり軸受としては、例えばある程度大きなポアが存在するセラミックス製転動体に関する技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0008】
また、外輪が常圧焼結法、内輪がガス圧焼結法またはHIP法で作られたセラミック材料からなる耐食性転がり軸受に関する技術が開示され(例えば特許文献3参照)、内輪、外輪および転動体をそれぞれ炭化珪素のセラミック製とした転がり軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献4参照)。
一方、磁場環境下で用いられる転がり軸受としては、例えば軌道輪および転動体の内の少なくとも一つがMn−Ni−Cu合金で形成された転がり軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献5参照)。
【0009】
一般に非磁性材としては、ベリリウム銅、非磁性ステンレス鋼、セラミックスなどがある。
従来、磁場環境で磁性材の転がり軸受を使用すると磁場環境を乱すため、内輪、外輪、転動体などの構成要素を、非磁性材で形成するようにしているが、上述材料のうちベリリウム銅、非磁性ステンレス鋼で軸受を構成すると、各材料自体の硬さが低いため、材料が摩耗し易く寿命が低下してしまう。
【0010】
そこで、軌道輪にベリリウム銅、転動体にセラミックス(窒化珪素、炭化珪素、アルミナ)を用いた転がり軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献6参照)。
また、内・外輪および転動体の内の少なくとも一つがWC−Ni系超硬合金で形成された転がり軸受、あるいは内・外輪がNiを結合相とするWC−Ni系超硬合金で形成され、且つ、転動体が非磁性セラミックスで形成された転がり軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献7参照)。
【0011】
更に、転動体を超硬合金又はサーメットで、内・外輪が軸受鋼又はステンレス鋼で形成された転がり軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献8参照)。
また、潤滑油或いはグリースを内部に封入するして潤滑を行う転動装置としては、潤滑油或いはグリースを軸受内部空間に充填して潤滑を行い、且つ接触型シール部材或いはラビリンスシールにより水等が軸受内部に侵入することを防止する転がり軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献9および特許文献10参照)。
【0012】
更に、保持器がフッ素樹脂或いは直径が2μm以下のチタン酸カリウムウィスカーの短繊維を含むエチレンテトラフロオロエチレン(ETFE)樹脂といった自己潤滑材料からなり、硬質カーボン球製転動体、および耐食材製軌道輪から軸受装置が構成され、この保持器と転動体との摩擦接触により保持器の構成材料が、転動体、内輪、外輪に移着して形成される薄い潤滑膜によって潤滑する技術が開示されている(例えば特許文献11および特許文献12参照)。
【0013】
樹脂組成物からなる転がり軸受に関しては、内外軌道輪のうちの一方が嵌着対象に緩く嵌着され、内外軌道輪の両方又は緩く嵌着されている方の軌道輪がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂で形成された玉軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献13参照)。
また、樹脂組成物からなる転がり軸受において、固体潤滑剤で表面処理された転動体を用いる樹脂製転がり軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献14参照)。
【0014】
【特許文献1】
特開昭63−101519号公報
【特許文献2】
特開2000−9146号公報
【特許文献3】
特開平8−121488号公報
【特許文献4】
特開平10−82426号公報
【特許文献5】
特開2000−130439号公報
【特許文献6】
特開平11−336755号公報
【特許文献7】
特開2000−154825号公報
【特許文献8】
特開2000−257627号公報
【特許文献9】
実開昭55−34002号公報
【特許文献10】
実開昭57−56218号公報
【特許文献11】
特公平8−26891号公報
【特許文献12】
特許第2709119号公報
【特許文献13】
特開平5−202943号公報
【特許文献14】
特開平9−303403号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1や特許文献2では、転動体が窒化けい素を主成分とするセラミックスで形成され、転動体と相対運動する内・外輪は軸受鋼などの金属で形成されるため、両者の硬さが2.2倍程度或いはそれ以上異なることになる。
この結果、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、硬いセラミックス製転動体によるアブレッシブ摩耗により、硬さが低い金属製の内・外輪が著しく摩耗し、転動装置が短時間で寿命になったり、外部環境を汚染する場合がある。
【0016】
また、特許文献1では、内部にほとんどポアがない、高強度、高品質なセラミック製転動体を製作できるが、1000気圧程度の非常な高圧を負荷する等方加圧焼結(HIP)法により製作するため、コストが極めて高くつくと共に、半導体液晶パネル及びハードディスク等の製造工程で用いられる各種洗浄装置や食品機械などでは、荷重条件が比較的低く、等方加圧焼結(HIP)法により製作されたセラミック製転動体に求められるような高い耐荷重性は要求されず、耐摩耗性が要求されるため、工作機械など高荷重が負荷され、信頼性が高く要求される用途に使用が限定されている。
【0017】
特許文献3では、外輪が常圧焼結法で製造されているため、強度や破壊じん性が著しく低く、表面や内部欠陥を起点として微小クラックが伝播し易くなり、摩耗粉が多量に発生したり、割れが生じたりして、転動装置の寿命が短い場合がある。
特に、ラジアル荷重を支持するような場合には、外輪の負荷圏に荷重が集中するため、軽荷重下でも、常圧焼結法で製作した外輪の負荷圏においてクラックが容易に伝播し、極端に寿命が短い場合がある。
【0018】
また、セラミック材料の中でも硬さは種々のものがあり、例えば窒化けい素系セラミックスではビッカース硬さHv=1350〜1850程度、炭化けい素系セラミックスでHv=2000〜2860程度、アルミナ系セラミックスでHv=1600〜2100程度、ジルコニア系セラミックスでHv=1100〜1650程度である。
【0019】
したがって、特に、無潤滑下や潤滑条件が厳しく固体接触が生じるような場合、転動体と内・外輪にセラミックスを用いても、両者の硬さが大きく違うと、硬さが高い部材によるアブレッシブ摩耗により、硬さが低い部材の方が極端に摩耗し、転動装置の寿命が著しく短くなったり、外部環境を汚染する場合がある。
特許文献4では、内輪、外輪および転動体をそれぞれ炭化珪素のセラミックス製で構成しているため、耐食性は優れるが、強度および破壊靭性が低く、荷重がある程度負荷されると、表面あるいは全体にクラックが伝播して、剥離や割れが生じてしまう場合がある。
【0020】
特に、ラジアル荷重を支持するような場合には、外輪の負荷圏に荷重が集中するため、軽荷重下においても、剥離や割れが生じ、極端に寿命が短い場合がある。
特許文献5あるいは特許文献6では、軌道輪にMn−Ni−Cu合金(Hv=340程度)やベリリウム銅(Hv=400程度)を、転動体にセラミックス(窒化珪素、炭化珪素、アルミナ)を用いる場合には、両者の硬さが約3倍以上異なる。
【0021】
このため、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、硬いセラミックス製転動体によるアブレッシブ摩耗により、軟らかいMn−Ni−Cu合金やベリリウム銅からなる内・外輪が著しく摩耗し、転動装置が短時間で寿命になったり、外部環境を汚染する場合がある。
また、Mn−Ni−Cu合金やベリリウム銅のような軟質合金では、塑性変形が比較的低荷重で生じてしまうため、低荷重でしか使用することができない。
【0022】
特許文献7では、内・外輪がNiを結合相とするWC−Ni系超硬合金で形成され、且つ転動体が非磁性セラミックスで形成された場合、セラミックスの種類によっては、内・外輪と転動体の硬さが著しく異なることがあり、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、硬さが高い部材によるアブレッシブ摩耗により、硬さが低い部材の方で極端に摩耗が生じ、転動装置の寿命が著しく短くなったり、外部環境を汚染する場合がある。
【0023】
また、Niを結合相とするWC−Ni系超硬合金においても、Niの含有率により強度、硬さあるいは焼結性が異なるため、Niの含有率がある範囲内でなければ、強度が低い、あるいは硬さ、即ち耐摩耗性が不十分であり摩耗が著しく進行し、あるいは焼結性が悪くポアが多く生じるためクラックが導入、伝播しやすくなり、比較的短時間で寿命になってしまう場合がある。
【0024】
更に、Niを結合相とするWC−Ni系超硬合金が全て非磁性ではなく、Niを結合相とするWC−Ni系超硬合金の中でもWC合金中における合金炭素量によっては強磁性となり、磁場中で使用すると磁場を乱したりして、測定精度や製造精度(描画精度)が低下してしまう場合がある。
このように、特許文献7には、非磁性となり、なおかつ、転動装置に要求される機械的強度や耐摩耗性を達成するために必要な技術内容に関しては開示されていない。
【0025】
上述したように、半導体製造プロセスで利用される測長SEMのような計測装置あるいは分析装置や露光装置などのような製造装置のシリコンウエハの移動には軸受、ボ−ルねじ装置、リニアガイド装置などの転動装置が使用されているが、該転動装置に絶縁性材、および磁性材を用いると帯電したり、磁場を乱したりして、測定精度や製造精度(描画精度)が低下してしまう。
【0026】
例えば、SEMは、電子銃から放出された電子ビームが収束レンズで絞られ試料上を走査コイルで2次元的に走査する。電子線照射によって試料表面から発生した2次電子を検出器で捕らえ、試料の表面像がブラウン管上に映し出される。特に、測長SEMでは、走査像で寸法を計測する場所を指定し、その部分の2次電子強度分布を用いて、倍率より演算して寸法を測定する。
【0027】
また、露光装置では、電子銃から発生する電子ビームを所定の形状のビームとして試料に照射することによってパターン(回路図形)を描写していく。
したがって、特許文献7、特許文献6に開示されているように転動体に絶縁性セラミックスを用いると試料表面に入射電子が蓄積され、測長するための十分な高分解能が得られなくなる。また、磁性材を用いると電子線が曲げられ、正確な電子強度分布が得られなくなる。
【0028】
以上の理由により、上記装置に使用される軸受には絶縁性であるセラミックスボールは使用できない。
特許文献8では、転動体を超硬又はサーメットで、内・外輪を軸受鋼又はステンレス鋼で形成した転がり軸受に関する技術が開示されているが、内・外輪が軸受鋼又はステンレス鋼で形成されているため、磁場、耐食環境下での使用に問題が起こる場合がある。
【0029】
特許文献9では、軸受の作動に伴いシールリップ部の摩耗が進行し、軸受内部に水等が浸入すると、潤滑剤(グリース)が軟化、劣化して潤滑剤の潤滑性が著しく低下し、また、保持器が自己潤滑性を有しない金属材料で構成されているため、保持器と転動体などの接触面で金属材料同士の直接接触が生じ、軸受の寿命が極端に短くなる場合がある。
【0030】
また、前述のように軸受内部に水等が浸入してグリースが軟化すると軸受外部への漏れや飛散が著しく増加するため、軸受装置の外部環境を汚染してしまうという間題がある。
特に半導体、液晶パネル、ハードディスク製造分野においては、ウエハ、ガラス基板、アルミ基板に軸受から流れ出たグリースなどのゴミや不純物が付着し欠陥や短絡などといった不良の原因となる場合がある。
【0031】
また、特許文献10では、ラビリンスシールを用いているが、ラビリンスシールのすきま空間から水等が浸入してグリースが軟化して劣化し、前記特許文献9と同様の問題がある。
特許文献11あるいは特許文献12では、潤滑油或いはグリースを使用していないので軸受装置の外部環境を汚染するという問題はないが、特許文献11では、軌道道輪間の転動体の存する箇所に水を流入させる開口部を設けており、また、特許文献12では、接触型のシールド板を装着しているので、水、各種洗浄液あるいは微細なゴミ、研磨粉、摩耗粉等は、開口部や非接触型のシールド板とこれと対向する面との間を通過して、軸受内部に浸入してしまう。
【0032】
すると、特許文献11およぴ特許文献12の場合には、転動体が硬質カーボン球であるから、前記硬質カーボン球の硬さは軌道輪の1.5倍以上であるが、強度が低いため、軽荷重の場合、衝撃荷重が作用した場合、或いは微細なゴミ、研磨粉、摩耗粉等が浸入した場合に、前記硬質カーボン球の一部或いは全体が欠けたり、破損したりして、その破片をかみ込んでしまうために軸受の寿命が極端に短くなる場合がある。
【0033】
また、水や各種洗浄溶液が開口部や非接触型のシールド板とこれと対向する面との間を通過して軸受内部に浸入してしまうため、保持器と転動体との摩擦接触による保持器材料の転動体等への移着が軸受内部に浸入してきた溶液により抑制されて保持器材料による潤滑膜が十分に形成されず、比較的短時間で軸受のトルクや振動が増加して寿命になってしまう場合がある。
【0034】
更に、特許文献11では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂から保持器が構成されているので、保持器の強度が低く、耐摩耗性に劣るので、保持器が異常に摩耗して軸受装置から外部に大量の粒子が飛散したり、軸受装置のトルクが著しく増加して寿命に至る場合がある。
更に、特許文献13、特許文献14では、転がり軸受を構成する樹脂組成物はポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリーレンスルフィド系樹脂あるいはポリアセタール樹脂であるため、特にドライ環境下では、比較的低荷重、低速度でも接触点におけるすべり摩擦により、簡単に接触面の温度が上昇し、摩耗が非常に多くなり、寿命が極端に短くなる場合がある。
【0035】
更に、特許文献14のように、転動体に固体潤滑剤の表面処理する場合には、ごく初期では固体潤滑膜により樹脂製軌道輪の摩耗が抑制されるが、二硫化モリブデンに代表される固体潤滑被膜は軸受の作動とともに摩耗しなくなるため、長期間作動することができないという間題がある。
本発明は上述した従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、第1の目的は、無潤滑あるいは潤滑条件が厳しい、例えば潤滑剤が枯渇しやすく、摩耗が生じやすい条件下においても、耐摩耗性に優れ、長期間作動することができ、外部環境を汚染することが少ない転動装置を提供することにある。
【0036】
また、本発明の第2の目的は、磁場環境下において、周りに磁場を乱すことがなく、また、腐食環境下で、無潤滑あるいは潤滑条件が厳しく、摩耗が生じやすい条件下においても、耐食性および耐摩耗性に優れ、長期間作動することができ、更には、外部環境を汚染することが少ない転動装置を提供することにある。
更に、本発明の第3の目的は、十分な導電性および非磁性を確保し、且つ長寿命を維持することにより、測長SEMのような計測装置あるいは分析装置、露光装置に、好適に使用し得る転がり軸受及び直動案内装置などの特殊環境用転動装置を提供することにある。
【0037】
更に、本発明の第4の目的は、比較的簡易に製造でき、実用上十分な耐荷重性を有し、潤滑条件が厳しく潤滑不良になりやすい環境下、水または各種洗浄溶液(酸、アルカリ)中で使用される環境下、水または各種洗浄溶液がミスト状に存在するか、飛散してかかるような環境下、あるいはドライ環境下においても摩耗が生じ難く、長期にわたって作動することができる転動装置を提供することにある。
【0038】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、回転運動または直線運動可能な可動子、この可動子を支持する支持体、これら可動子と支持体との間に介在し、前記可動子の運動に伴って転動する複数個の転動体を具備し、転動体、可動子および支持体のうち少なくとも転動体が超硬合金、サーメットあるいはセラミックスで構成される転動装置において、
前記転動体の表面あらさRa(σ1 )と、前記可動子あるいは前記支持体の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)が1 .0以下であり、且つ、前記転動体の表面硬さと前記可動子の表面硬さとの比、および前記転動体の表面硬さと前記支持体の表面硬さとの比が0.6以上2.0以下であることを特徴とする。
【0039】
上記構成によれば、前記転動体の表面あらさRa(σ1 )と、前記可動子あるいは前記支持体の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1 /σ2 )が1 .0 以下であり、かつ、前記転動体の表面硬さと前記可動子の表面硬さとの比、および前記転動体の表面硬さと前記支持体の表面硬さとの比が、0.6以上2.0以下としているので、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下においても、接触点におけるアブレッシブ摩耗を効果的に抑制することができる。
【0040】
この結果、摩耗粉による外部環境の汚染を効果的に抑制することができるとともに、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間の作動を確保することができる。
なお、前記転動体の表面あらさRa(σ1 )と、前記可動子あるいは前記支持体の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1 /σ2 )が1 .0 を超え、或いは、前記転動体の表面硬さと前記可動子の表面硬さとの比、および前記転動体の表面硬さと前記支持体の表面硬さとの比が、0.6未満2.0超えの場合は、両者の硬さが大きく違うことになるため、硬さが高い部材によるアブレッシブ摩耗により、硬さが低い部材の方が極端に摩耗し、転動装置の寿命が著しく短くなったり、外部環境を汚染することになる。
【0041】
ここで、より好ましくは、前記転動体の表面あらさRa(σ1 )と、前記可動子あるいは前記支持体の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1 /σ2 )が0.8以下であり、かつ、前記転動体の表面硬さと前記可動子の表面硬さとの比、および前記転動体の表面硬さと前記支持体の表面硬さとの比が、0.7以上1.9以下であり、更に好ましくは、前記転動体の表面あらさRa(σ1 )と、前記可動子あるいは前記支持体の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1 /σ2 )が0.5以下であり、かつ、前記転動体の表面硬さと前記可動子の表面硬さとの比、および前記転動体の表面硬さと前記支持体の表面硬さとの比が、0.8以上1.9以下である。
【0042】
また、酸や強アルカリ溶液中など強い腐食環境下や高温環境下においては、前記可動子および支持体が曲げ強度550MPa以上であるセラミックスで構成されることが好ましい(請求項2)。
前記可動子および支持体を構成するセラミックスの曲げ強度が550MPa未満の場合には、転動装置の作動時に繰返し応力が可動子や支持体の転走面における接触点に負荷されることにより、可動子や支持体の表面に微細なクラックが発生して伝播し、この結果、摩耗粉が多量に発生したり、クラックが可動子や支持体を貫通して割れが生じたりして、転動装置の寿命が短くなる場合がある。
【0043】
なお、可動子、支持体および転動体の全てに、セラミック材料を用いる場合には、軽量で、耐摩耗性に優れ、更には、凝着しにくく、耐食性および耐熱性に優れ、剛性が向上する。
本発明の転動装置においては、可動子、支持体および転動体のうち、少なくとも一つをCr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットで構成することもでき、Niの含有率を10重量%以上、30重量%以下にすることもできる(請求項3)。
【0044】
Niの含有率が10重量%未満の場合には、焼結性が悪く、ポアが著しく多くなるため、強度が極端に低下してクラックが導入・伝播し易くなり、短時間で寿命になったり、比較的軽荷重でも割れが生じてしまう場合がある。
一方、Niの含有率が30重量%を超える場合には、硬さ、即ち、耐摩耗性が著しく低下するため、特に、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、接触点におけるアブレッシブ摩耗や凝着摩耗が急激に増加し、生じた多量の摩耗粉により外部環境を汚染したり、表面あらさが増大して著しく振動が増大し、短時間で寿命になる場合がある。
【0045】
また、超硬合金の場合には、各種酸に対する腐食は結合相の選択的溶解が主であるため、Niの含有率が30重量%を超えると、結合相の溶解が著しく増加するため、極端に耐食性が低下し、寿命が非常に短い場合がある。
Niを結合相とするWC−Ni系超硬合金において、Niの含有率が10重量%以上、30重量%以下である場合には、転動装置の部材として十分な強度、硬さ(耐摩耗性)および耐食性を有することになり、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間の作動を確保することができる。
【0046】
Niの含有率が10重量%以上、30重量%以下であるCr3 C2 −Ni系(請求項4)、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットのビッカース硬さHvは900〜1400程度で従来金属材料(例えば軸受鋼:Hv=700、SUS440CH:Hv=670)と比較して高硬度で、耐熱性に優れるため、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下においても、接触点におけるアブレッシブ摩耗或いは凝着摩耗を効果的に抑制することができ、摩耗粉による外部環境の汚染を効果的に抑制することができると共に、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間の作動を確保することができる。
【0047】
また、Cr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットのビッカース硬さは900〜1400程度であるため、塑性変形が起こりにくく、大きな荷重を支持することができる。
Cr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットの線膨張係数は8.6〜11×10−6/K程度であり、WC−Ni系超硬合金(5×10−6/K程度)より格段に従来金属材料に近いため、温度変化がある環境下においても、軸と転動装置の嵌合部材との間、あるいは、ハウジングと転動装置の嵌合部材との間で、はめあいの変化が少なくクリープや過大な応力が生じにくい。
【0048】
Cr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットの密度は7〜8×103 kg/m3 程度でWC−Ni系超硬合金(14×103 kg/m3 程度)の1/2程度であるため、WC−Ni系超硬合金のように高密度に起因した遠心破壊は非常に起こりにくい。
Cr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットの破壊じん性値は10〜12MPa・m1/2 であり、セラミックス(窒化けい素で7 MPa・m1/2 程度)と比較して高い。そのため、より高い応力下においても、クラックが導入・伝播しにくく、より高い荷重下において長期間の作動を確保することができる。
【0049】
Cr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットは非磁性であるため、転動装置周辺の磁場を乱すことがなく、電子線を利用する計測装置あるいは分析装置や露光装置にも使用することができる。
さらに、転動体がセラミックスで構成される転動装置においては、可動子および支持体をCr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットで構成する場合には、Cr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットはセラミックスと硬さが近いため、接触点におけるアブレッシブ摩耗あるいは凝着摩耗を効果的に抑制することができる。
【0050】
この結果、摩耗粉による外部環境の汚染を効果的に抑制することができるとともに、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境においても、長時間の作動を確保することができる。
因みに、従来では、上記Cr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットは、転動装置の部材としては使用されていない。
【0051】
上述の理由により、請求項1〜請求項4の発明においては、高速回転性能および耐荷重性能に優れ、各種スピンドル、各種ポンプ、半導体製造装置(搬送装置、露光・描画装置、検査装置、など)、各種洗浄装置、工作機械、タービンなどのように、高速、腐食、高温あるいは磁場環境下で使用され、かつ、無潤滑あるいは潤滑条件が厳しい、例えば潤滑油が枯渇しやすく摩耗が生じやすい条件下で使用される場合でも、耐摩耗性に優れ、長期間の作動を確保することができ、外部環境を汚染することが少ない転動装置を提供することができる。
【0052】
また、上記第2の目的を達成するために、請求項5に係る発明は、回転運動または直線運動可能な可動子、この可動子を支持する支持体、これら可動子と支持体との間に介在し、前記可動子の運動に伴って転動する複数個の転動体を具備する転動装置において、
前記可動子、前記支持体および前記転動体のうちの少なくとも一つがNiを結合相とするTiCN−Ni系サーメットで構成され、且つNiを10重量%以上30重量%以下含有することを特徴とする。
【0053】
Niを結合相とするTiCN−Ni系サーメットにおいて、Niの含有量が10重量%未満の場合には、焼結性が悪く、ポアが生じるため、強度が極端に低下し、クラックが導入、伝播し易くなるため、短時間で寿命になったり、比較的軽荷重でも割れが生じてしまう場合がある。
一方、Niの含有量が30重量%を超える場合には、硬さ、即ち、耐摩耗性が著しく低下するため、特に、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、接触点におけるアブレッシブ摩耗あるいは凝着摩耗が急激に増加し、生じた多量の摩耗粉により外部環境を汚染したり、表面あらさが増大し著しく振動が増大し、短時間で寿命になる場合がある。
【0054】
また、サーメット材の場合には、各種酸に対する腐食は結合相の選択的溶解が主であるため、Niの含有量が30重量%を越える場合には、結合相の溶解が著しく増加するため、極端に耐食性が低下し、寿命が非常に短い場合がある。
Niを結合相とするTiCN−Ni系サーメットにおいて、Niの含有量が10重量%以上30重量%以下である場合には、転動装置として十分な強度、硬さ(耐磨耗性)および耐食性を有することになり、潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間作動することができる。
【0055】
また、TiCN−Ni系サーメットの合金中における合金炭素量は、8.0%以上18.0%以下(C/C%)が好ましい(請求項6)。
前記合金炭素量が8.0%以上18.0%以下(C/C%)の場合には、非磁性であり、磁場環境下で使用しても外部の磁場を乱すことがなく、電子線を用いて露光や測定する装置で測定精度や製造精度(描画精度)が低下することがない。
【0056】
また、転動装置として十分な強度と硬さ(耐摩耗性)を有することになり、潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間作動することができる。
前記合金炭素量が8.0%(C/C%)未満の場合も非磁性であるが、Ni3 W3 C相が生じることにより強度と耐摩耗性が低下し、合金炭素量が8.0%以上18.0%以下(C/C%)の場合より耐久性が劣る。
【0057】
また、Niを結合相とするTiCN−Ni系サーメットの破壊靭性値は、10〜20MPa・m1/2 程度であり、セラミックス(窒化珪素で7MPa・m1/2 程度)と比較して非常に高い。
そのため、より高い応力下においても、クラックが導入、伝播しにくく、より高い荷重下において長期間作動することができる。
【0058】
更に、前記TiCN−Ni系サーメットに、Mo2 C、WCおよびCr3 C2 うちの少なくとも一つの元素を単独または複合で添加されるのが好ましい(請求項7)。Mo2 C、Cr3 C2 およびWCを添加すると、さらに、耐食性、強度、硬さが向上する。
上述の理由により、請求項5〜7の発明においては、磁場環境下において、周りに磁場を乱すことがなく、また、腐食環境下で、無潤滑あるいは潤滑条件が厳しく、摩耗が生じやすい条件下においても、耐食性および耐摩耗性に優れ、長期間作動することができ、更には、外部環境を汚染することが少ない転動装置を提供することができる。
【0059】
更に、上記第3の目的を達成するために、請求項8に係る発明は、回転運動または直線運動可能な可動子、この可動子を支持する支持体、これら可動子と支持体との間に介在し、前記可動子の運動に伴って転動する複数個の転動体を具備する転動装置において、
前記可動子、前記支持体および前記転動体が非磁性・導電性材料からなり、且つ少なくとも転動体がNiを結合相とするWC−Ni系超硬合金、TiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットで構成されることを特徴とする。
【0060】
前記WC−Ni系超硬合金としては、WC−Co−Ni系、WC−Cr3 C2 −Mo2 C−Ni系、WC−TiC−TaC−Ni系等がある。
また、前記サーメットとしては、TiC−Ni系、TiC−Mo−Ni系、TiC−Co系、TiC−Mo2 C−Ni系、TiC−Mo2 C−ZrC−Ni系、TiC−Mo2 C−Co系、Mo2 C−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−Co系、TiC−TiN−Mo2 C−Mo2 C−TaC−Ni系、Ti(CN)−WC−Ni系等がある。
【0061】
請求項9に係る発明は、請求項8において、前記可動子および前記支持体がチタン合金からなり、且つ完成品表面の硬さがHv400以上であることを特徴とする。
前記完成品の硬さがHv400未満だと、転動体に対して摩耗が多くなり、摩耗粉が生じるが、Hv400以上の硬さを有すると、摩耗が減少する。
【0062】
チタン合金としては、Ti−Al−V系、Ti一Mo−Zr−Al系、Ti−Mo−Zr系、Ti−V−Cr−Sn−A1系等がある。
更に、可動子および支持体が非磁性、導電性のチタン合金からなり、転動体が非磁性で導電性のあるWC−Ni系超硬合金、TiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットにすることで、非磁性で且つ導電性を有する転動装置を提供することができる。
【0063】
転動体をWC−Ni系超硬合金とした場合には、Niの含有量が6重量%以上15量%以下であることが好ましい(請求項10)。
Niの含有量が6重量%未満の場合には、焼結性が悪く、ポアが著しく多くなるため、強度が極端に低下し、クラックが導入,伝播し易くなり、短時間で寿命になったり、比較的軽荷重でも割れが生じてしまう場合がある。
【0064】
一方、Niの含有量が15重量%を越える場合には、硬さ、即ち、耐摩耗性が著しく低下するため、特に、無潤滑条件下などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、接触点におけるアブレッシブ摩耗あるいは凝着摩耗が急激に増加し、生じた多量の摩耗粉により外部環境を汚染したり、表面粗さ、振動が増大し、短時間で寿命になる場合がある。
【0065】
また、転動体をTiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットとした場合は、Niの含有量が10重量%以上30重量%以下であることが好ましい(請求項11)。
Niの含有量が10重量%未満の場合には、焼結性が悪く、ポアが著しく多くなるため、強度が極端に低下し、クラックが導入、伝播し易くなり、短時間で寿命になったり、比較的軽荷重でも割れが生じてしまう場合がある。
【0066】
一方、Niの含有量が30重量%を越える場合には、硬さ、即ち、耐摩耗性が著しく低下するため、特に、無潤滑条件下などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、接触点におけるアブレッシブ摩耗あるいは凝着摩耗が急激に増加し、生じた多量の摩耗粉により外部環境を汚染したり、表面粗さ、振動が増大し、短時間で寿命になる場合がある。
【0067】
ここで、可動体および支持体に用いる非磁性、導電性材料は特に限定されず、チタン合金(透磁率1.0001)の他に、非磁性超硬合金(透磁率1.0001)、非磁性ステンレス鋼(透磁率1.0002)、ベリリウム銅合金(1.000004)などが例として挙げられる。その中でも非磁性超硬合金を用いる場合には、十分な硬さを有するので好適に使用できる。
【0068】
上述の理由により、請求項8〜11の発明においては、十分な導電性および非磁性を確保し、且つ長寿命を維持することができるので、測長SEMのような計測装置あるいは分析装置、露光装置に、好適に使用し得る転がり軸受及び直動案内装置などの特殊環境用転動装置を提供することができる。
更に、上記第4の目的を違成するために、請求項12に係る発明は、回転運動または直線運動可能な可動子、この可動子を支持する支持体、これら可動子と支持体との間に介在し、前記可動子の運動に伴って転動する複数個の転動体を具備する転動装置において、
前記可動子および前記支持体のうちの少なくとも一方が耐熱性樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、且つ前記転動体がサーメットで構成されていることを特徴とする。
【0069】
上記構成によれば、前記可動子および前記支持体のうちの少なくとも一方を耐熱性樹脂を主成分とする樹脂組成物で構成し、且つ前記転動体をサーメットで構成しているので、耐摩耗性および耐食性が向上するため、水や各種洗浄溶液が軸受内部に浸入して潤滑条件が厳しくなる環境下やドライ環境下においても、自己潤滑性に優れる樹脂組成物が可動子、支持体から転動体に転移して潤滑膜が形成され、長期にわたって転動装置の安定した作動を確保することができる。
【0070】
また、転動体をサーメットで構成しており、サーメットはビッカース硬さでHv1000あるいはそれ以上の硬さを有し、耐摩耗性に優れるため,前記樹脂組成物に繊維状充填材が配合されている場合においても、炭素繊維などの硬さが高い繊維状充填材により、転動体が損傷、摩耗することを効果的に低減し、寿命を格段に長くすることができる。
【0071】
請求項13に係る発明は、請求項12において、転動体がNiを結合相とするサーメットで構成され、且つNiの含有率が10重量%以上30重量%以下であることを特徴とする。
Niの含有率が10重量%未満の場合には、焼結性が悪く、ポアが著しく多くなるため、強度が極端に低下して加工時などにクラックが伝播し、損傷し易くなり、樹脂組成物からなる可動子や支持体が摩耗され、短時間で寿命になる場合がある。
【0072】
一方、Niの含有量が30重量%を超える場合には、硬さ、即ち、耐摩耗性が著しく低下するため、特に無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、アブレッシブ摩耗や凝着摩耗が急激に増加し、生じた多量の摩耗粉により外部環境を汚染したり、表面あらさが増大して著しく振動が増大し、短時間で寿命になる場合がある。
【0073】
請求項14に係る発明は、請求項12又は13において、転動体を転動可能に保持する保持器が樹脂組成物で構成されること特徴とする(請求項15)。
前記保持器が樹脂組成物で構成される場合には、保持器を構成する自己潤滑性に優れる樹脂組成物が前記転動体に効果的に移着するため、潤滑性を向上することができ、より長期にわたって安定して作動することができる。
【0074】
なお、転動体にサーメットを用いることで、耐食性および耐熱性に優れ、剛性が向上する。
上述の理由により、請求項12〜14の発明においては、潤滑条件が厳しく潤滑不良になりやすい条件下、あるいは溶液中や飛散してくるような条件下においても、耐食性に優れ摩耗が生じ難いため、半導体液晶パネル、及びハードディスク等の製造工程で用いられる各種洗浄装置や食品機械等のように水または各種洗浄溶液( 酸、アルカリ)中で使用される環境下、水または各種洗浄溶液がミスト状に存在するか、飛散してかかるような環境下、あるいはドライ環境下においても、摩耗が生じ難く、長期間安定して作動することができる転動装置を提供することができる。
【0075】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例を図を参照して説明する。
図1は本発明に係る転動装置の第1の態様の実施の形態である転がり軸受の要部断面図、図2は軸受回転試験機を示す概略図、図3は転動体の表面あらさRa(σ1)と内・外輪の表面あらさRa(σ2)との比(σ1/σ2)が0.20である場合における、転動体の表面硬さと内・外輪の表面硬さとの比と、耐久性(振動寿命)との関係を示すグラフ図、図4は転動体の表面あらさRa(σ1)と内・外輪の表面あらさRa(σ2)との比(σ1 /σ2)と、転動体の表面硬さと内・外輪の表面硬さとの比と、耐久性(振動寿命)との関係を示すグラフ図、図5は回転試験の説明図、図6はNi含有率と耐久性(振動寿命)との関係を示すグラフ図、図7は本発明に係る転動装置の第2の態様の実施の形態である転がり軸受の耐久性とNi含有率との関係を示すグラフ図、図8は本発明に係る転動装置の第3の態様の実施の形態である転がり軸受のトルク寿命とNi含有率との関係を示すグラフ図、図9は本発明に係る転動装置の第4の態様の実施の形態である転がり軸受の耐久性とNi含有率との関係を示すグラフ図である。
【0076】
なお、各実施の形態共に、転動装置として転がり軸受を例に採って説明するが、転がり軸受の他に、直動案内装置やボールねじ装置等の転動装置に本発明を適用してもよいのは勿論である。
まず、図1を参照して、本発明に係る転動装置の第1の態様の実施の形態である転がり軸受から説明すると、この転がり軸受1は、内輪2の軌道溝2aと外輪3の軌道溝3aとの間に複数個の転動体4が冠形の保持器5を介して周方向に転動可能に配設されている。なお、内輪2を回転させる場合は、内輪2が本発明でいう可動子、外輪3が本発明でいう支持体となり、一方、外輪3を回転させる場合は、外輪3が本発明でいう可動子、内輪2が本発明でいう支持体となる。
【0077】
ここで、この実施の形態では、内輪2、外輪3および転動体4の内の少なくとも転動体4が超硬合金、サーメットあるいはセラミックスで構成される場合において、転動体4の表面あらさRa(σ1 )と、内輪2あるいは外輪3の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)を1 .0以下、好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.5以下とし、且つ、転動体4の表面硬さと内輪2の表面硬さとの比、および転動体4の表面硬さと外輪3の表面硬さとの比を0.6以上2.0以下、好ましくは0.7以上1.9以下、更に好ましくは0.8以上1.9以下としている。
【0078】
これにより、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下においても、接触点におけるアブレッシブ摩耗を効果的に抑制することができ、この結果、摩耗粉による外部環境の汚染を効果的に抑制することができるとともに、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間作動することができる。
【0079】
また、酸や強アルカリ溶液中など強い腐食環境下や高温環境下においては、内輪2および外輪3を曲げ強度550MPa以上であるセラミックスで構成することにより、軸受回転時に繰返し応力が内輪2や外輪3の転走面における接触点に負荷されても内輪2や外輪3の表面に微細なクラックが発生して伝播するのを防止することができる。
【0080】
【実施例】
転がり軸受としての耐久性を評価するために、図1に示す転がり軸受(型番6001:内径φ12mm、外径φ28mm、幅8mm)を複数個(実施例1〜18および比較例1〜8)作製した。
実施例1〜18および比較例1〜8に使用した原材料を一括して示すと、以下の通りである。
【0081】
(1) 窒化けい素系1(日本タングステン製NPN−3;Hv=1850、曲げ強度=1300MPa)
(2) ジルコニア系1(京セラ製Z703;Hv =1350、曲げ強度=1960MPa)
(3) ジルコニア系2(日本タングステン製NPZ−2;Hv=1450、曲げ強度=1700MPa)
(4) アルミナ系1(サンゴバンノ―トン製AZ−93;Hv=1600、曲げ強度=1180MPa)
(5) アルミナ系2(東芝製AL−16;Hv=1750、曲げ強度=320MPa)
(6) 炭化けい素系1(日本タングステン製NPS−1;Hv=2400、曲げ強度=560MPa)
(7) 炭化けい素系2(三井鉱山マテリアル製MSC;Hv=2000、曲げ強度=490MPa)
(8) 超硬系1(日本タングステン製WC−Ni−Cr系NM18;Hv =1050)
(9) 超硬系2(日本タングステン製WC−Ni−Cr系NR11;Hv =1450)
(10)超硬系3(日本タングステン製WC−TiC−TaC系RCCL;Hv =2000)
(11)超硬系4(ダイジェット工業製WC−Co 、Ni系FB01;Hv =2800)
(12)超硬系5(住友電気工業製WC−Ni−Cr系M61U;Hv =1250)
(13)サーメット系1(日本タングステン製TiC−TaN−Ni−Mo 系DUX40;Hv=1450)
(14)サーメット系2(旭ガラス製ホウ化物系UD−II35T;Hv =1000)
(15)SUS440C(Hv =670)
(16)ベリリウム銅(Hv =400)
【0082】
なお、ビッカース硬さHvは、転がり軸受を構成する部材の平坦面を対象に、JIS R1610に基づいて測定した値を用い、曲げ強度については、JIS
R1601に基づいて測定した値を用いた。
耐久性の評価試験は、図2に示す日本精工株式会社製軸受回転試験機を用い、無潤滑下で回転試験を行ない、振動値を基準として耐久性を評価した。
この軸受回転試験機は、モータに連結継ぎ手を介して連結されたスピンドルのシャフトに試験軸受としての転がり軸受の内輪(内輪回転)を嵌合して該転がり軸受を容器内の水に浸漬させており、外輪にはワイヤーおよび滑車を介して錘によりラジアル荷重が負荷され、また、外輪にはプレートを介して振動計が取り付けられている。
【0083】
試験条件は、回転速度:5000min−1、ラジアル荷重:980N、温度:常温とし、試験軸受の保持器には冠型ふっ素系樹脂保持器を用いた。そして、振動計による振動値が初期値の3倍に上昇した時点を転がり軸受の寿命とした。
なお、各実施例1〜18および比較例1〜8における転がり軸受の耐久性(振動寿命)は、比較例1の耐久性(振動寿命)を1とした相対値で示す。
試験結果を表1および表2に示す。ここで、表1については、転動体の表面粗さRa(σ1)と内・外輪の表面粗さRa(σ2)との比(σ1/σ2)は、いずれの場合も0.2とした。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
表1および表2から明らかなように、内輪2、外輪3および転動体4の内の少なくとも転動体4が超硬合金、サーメットあるいはセラミックスで構成される場合において、転動体4の表面あらさRa(σ1 )と、内輪2あるいは外輪3の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)が1 .0以下であり、且つ、転動体4の表面硬さと内輪2の表面硬さとの比、および転動体4の表面硬さと外輪3の表面硬さとの比が0.6以上2.0以下である実施例1〜18は、転動体4の表面硬さと内輪2の表面硬さとの比、および転動体4の表面硬さと外輪3の表面硬さとの比が0.6未満又は2.0を超える比較例1〜4、並びに転動体4の表面あらさRa(σ1 )と、内輪2あるいは外輪3の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)が1 .0を超える比較例5〜8と比較して耐久性が大幅に向上しているのが判る。
【0087】
特に、転動体4の表面あらさRa(σ1 )と、内輪2あるいは外輪3の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)が0.5以下であり、且つ、転動体4の表面硬さと内輪2の表面硬さとの比、および転動体4の表面硬さと外輪3の表面硬さとの比が0.8以上1.9以下であり、内輪2および外輪3がセラミックスの場合には、セラミックスの曲げ強度が550MPa以上である実施例1〜3、実施例5〜10、実施例14〜15および実施例17の耐久性が優れているのが判る。
【0088】
実施例11〜13は、σ1/σ2が0.5以下であり、転動体4の表面硬さと内輪2の表面硬さとの比、および転動体4の表面硬さと外輪3の表面硬さとの比が0.6以上2.0以下であるが、内輪2および外輪3を構成するセラミックスの曲げ強度が550MPa未満であるため、実施例1〜10、14〜18と比較すると耐久性がやや劣るものの、比較例1〜8よりは長い耐久性を有する。
【0089】
次に、図3に転動体の表面硬さと内・外輪の表面硬さとの比と耐久性(振動寿命)との関係を示す。なお、試験軸受の保持器には冠型フッ素系樹脂保持器を用いた。
また、転がり軸受の耐久性(振動寿命)は、比較例1の耐久性(振動寿命)を1とした相対値で示す。ここで、前記転動体の表面あらさRa(σ1)と、前記内・外輪の表面あらさRa(σ2)との比(σ1/σ2)はいずれの場合も0.20とした。
【0090】
図4に、転動体の表面あらさRa(σ1)と内・外輪の表面あらさRa(σ2)との比(σ1 /σ2)、および転動体の表面硬さと内・外輪の表面硬さとの比をそれぞれ変化させた場合において、転動体の表面あらさRa(σ1)と内・外輪の表面あらさRa(σ2)との比(σ1 /σ2 )と、転動体の表面硬さと内・外輪の表面硬さとの比と、耐久性(振動寿命)との関係を示す。ここで、試験軸受の保持器には冠型フッ素系樹脂保持器を用いた。
【0091】
なお、転がり軸受の耐久性(振動寿命)は、比較例1の耐久性(振動寿命)を1とした相対値とし、相対寿命が1未満の場合、相対寿命が1以上2.5未満の場合、相対寿命が2.5以上5未満の場合、相対寿命が5以上10未満の場合、相対寿命が10以上の場合に分別して表示した。
図3および図4からも明らかなように、本発明例は従来例と比べて、無潤滑のような潤滑条件が厳しい環境下においても長寿命を有することが判る。
【0092】
次に、本発明の他の実施例19〜26および比較例9〜11に使用した原材料を一括して示すと、以下の通りである。
本発明における実施例19〜22で用いたCr3 C2 −Ni系サーメットは、TiCN(粒度1〜1.5μm)を30重量%、Ni(粒度1〜1.5μm)を15重量%およびCr3 C2 (粒度2〜2.5μm)を残部とする割合で原料粉末を混合し、金型プレスで成形した。
【0093】
次に、この成形体を脱脂してから、真空炉内で焼結(1350〜1550°C程度の温度)し、研削、研磨して供試体を作成した。また、セラミックスとしては、窒化けい素(日本特殊陶業製EC−141:Hv=1500)を使用した。更に、TiCN−Ni系サーメット1,2(日本タングステン製TiC−TaN−Ni−Mo 系DUX40;Hv=1450,日本タングステン製TiC−TaN−Ni−Mo 系DUX30;Hv=1700)およびホウ化物系サーメット(旭ガラス製ホウ化物系UD−II50T;Hv =1100)により供試体を作成した。
【0094】
一方、比較例9〜11として、超硬(富士ダイス製WC−Ni 系M45;Hv=1100)、SUS440C(Hv=670)およびベリリウム銅(Hv=400)により実施例と同じ寸法形状および表面あらさの供試体を作成した。
なお、ビッカース硬さHvは、転動装置を構成する材料の平坦面を対象に、JIS R1610に基づいて測定した値を用いる。
【0095】
転がり軸受としての耐久性を評価するために、図1と同一構造の転がり軸受(型番6000:内径φ10mm、外径φ25mm、幅8mm)を表3に示す材料を用いて作成した。ここで、表3については、転動体の表面粗さRa(σ1)と内・外輪の表面粗さRa(σ2)との比(σ1/σ2)は、いずれの場合も0.2とした。
【0096】
耐荷重性は、日本精工性軸受回転試験機を用いて評価し、常温、無潤滑下、10%塩酸水溶液中で回転速度を1000min−1と一定とし、ラジアル荷重20Nから試験を開始し、ラジアル荷重を3時間毎20Nずつ増加していき、振動値が急激に増加した時点のラジアル荷重を限界荷重として、耐荷重性を評価する基準値とした。これらの結果を表3にまとめて示す。なお、各実施例および比較例における転がり軸受の耐荷重性(限界荷重)は、比較例9の耐荷重性(限界荷重)を1とした相対値で示す。
【0097】
耐久性の評価試験は、耐荷重性の評価試験に用いたものと同じ日本精工製軸受回転試験機を用いて、常温、無潤滑下、10%塩酸水溶液中で回転試験を行い、振動値を基準として耐久性を評価した。試験条件は、回転速度1000min−1、ラジアル荷重196Nである。
いずれの場合も、保持器には冠型ふっ素系樹脂保持器を用いた。ここでは、振動値が初期値の3倍に上昇した時点を転がり軸受の寿命とした。これらの結果を表3にまとめて示す。なお、各実施例および比較例における転がり軸受の耐久性(振動寿命)は比較例9の耐久性(振動寿命)を1とした相対値で示す。また、非磁性が要求される環境下で好適に使用し得るか評価するために、図5に示す回転試験を行った。
【0098】
図5では、回転軸11に取り付けられた試験軸受12に永久磁石13を近づけた状態で該試験軸受12を回転させ、その際に生じる磁束密度の変化をガウスメータ14で測定することにより、軸受が回転する際の周辺磁場への影響を評価した。結果を併せて表3に示す。
なお、軸受を回転させた際に生じる磁束密度の変化が0.1mT以下であるものを非磁性試験合格とした。非磁性の場合は○、磁性の場合は×で表示している。
【0099】
【表3】
【0100】
表3から明らかなように、本発明の実施例の転がり軸受は、比較例と比べて、無潤滑下、腐食環境下のような潤滑条件が非常に厳しい環境下においても、非磁性であり、長寿命を有することが判る。
また、内・外輪および転動体の少なくともいずれか一つをCr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットで作成する実施例の場合には、内・外輪および転動体の全てがWC−Ni系超硬合金で作成する比較例9と比較して、耐荷重性に優れ、長寿命であることが判る。
次に、本発明の他の実施例27〜29および比較例12〜15に使用した原材料を一括して示すと、表4の通りである。
【0101】
【表4】
【0102】
本発明における実施例27〜29は、Ni(粒度0.5〜2.0μm)、TiCN(粒度1.0〜2.0μm)、Cr3 C2 (粒度0.5〜2.0μm)、Mo2 C(粒度0.5〜2.0μm)、WC(粒度0.5〜2.0μm)の各原料粉末を混合し、金型プレスで成形した。次に、この成形体を脱脂してから、真空炉内で焼結(1350〜1550°C程度の温度)し、研削、研磨して供試体を作成した。
【0103】
転がり軸受としての耐久性を評価するために、図1と同一構造の転がり軸受(型番6000:内径φ10mm、外径φ26mm、幅8mm)を表4に示す材料を用いて作成した。ここで、表4については、転動体の表面粗さRa(σ1)と内・外輪の表面粗さRa(σ2)との比(σ1/σ2)は、いずれの場合も0.2とした。
【0104】
耐久性の評価試験は、図2に示す日本精工製軸受回転試験機を用いて、塩酸1規定水溶液中で回転試験を行い、振動値を基準として耐久性を評価した。試験条件は、回転速度5000min−1、ラジアル荷重78.4Nである。
いずれの場合も、保持器には冠型ふっ素系樹脂保持器を用いた。ここでは、振動値が初期値の3倍に上昇した時点を転がり軸受の寿命とした。これらの結果を表4にまとめて示す。なお、各実施例および比較例における転がり軸受の耐久性(振動寿命)は比較例12の耐久性(振動寿命)を1とした相対値で示す。
【0105】
さらに、TiCN−Mo2 C−WC−Cr3 C2 −Ni系サーメットにおいて、Mo2 Cを15重量%、WCを15重量%、Cr3 C2 を1重量%と一定とし、Ni含有率を変化させた(残部がTiCNとなる)TiCN−Mo2 C−WC−Cr3 C2 −Ni系サーメットで内、外輪を形成したとき、或いはCr3 C2 −TiCN−Ni系サーメットにおいて、TiCNを20重量%と一定とし、Ni含有率を変化させた(残部がCr3 C2 となる)Cr3 C2 −TiCN−Ni系サーメットで内、外輪を形成したときのNi含有率と耐久性(振動寿命)との関係を図6に示す。
【0106】
なお、転動体は窒化けい素球であり、保持器にはふっ素系樹脂組成物(PVdF+20体積%チタン酸カリウム繊維)製冠型保持器を用いた。試験条件は表4の場合と同様である。また、図6中において、曲線1はTiCN−Mo2 C−WC−Cr3 C2 −Ni系サーメットの場合に関するデータを示し、曲線2はCr3 C2 −TiCN−Ni系サーメットの場合に関するデータを示す。
【0107】
表4に示されるように、本発明の実施例は、比較例に比べて、特に腐食環境下といった苛酷な条件においても、長寿命を有することが判る。
また、図6より、TiCN−Mo2 C−WC−Cr3 C2 −Ni系サーメットにおいては、Ni含有率が10重量%未満或いは30重量%を超える場合には、耐久性が著しく低下し、本発明の実施例であるNi含有率が10重量%以上、30重量%以下の範囲においては耐久性が優れることが判る。
【0108】
さらに、Cr3 C2 −TiCN−Ni系サーメットにおいても、Ni含有率が10重量%未満或いは30重量%を超える場合には、耐久性が著しく低下し、本発明の実施例であるNi含有率が10重量%以上、30重量%以下の範囲においては耐久性が優れることが判る。
なお、本発明におけるCr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットは特に限定されない。
【0109】
例えば、本材料の原料粉末としては、Cr3 C2 (粒度0.5〜5.0μm)TiCN(粒度0.5〜2.0μm)およびNi(粒度0.5〜2.0μm)を用いる。これらの粉末を以下の組成で混合する。
即ち、TiCN:0〜30重量%、Ni:10〜30重量%、Cr3 C2 :残部とする割合で原料粉末を混合する。前記原料材料を所定の組成になるように均一に混合した後、成形体の強度を維持するためのバインダーを少量添加し、型に入れ、油圧或いは機械プレスで成形する。最終形状によっては、その後、更に旋盤等で機械加工してもよい。
【0110】
次に、この成形体を脱脂してから、真空炉内で焼結(1350〜1550°C程度の温度)する。更に、強度を必要とする場合には、その後、熱間静水圧加圧焼結(HIP)処理を行うことが好ましい。焼結後は、所定の寸法形状や表面粗さにするために、研削や研磨を行う。
なお、本発明におけるセラミックス、サーメットあるいは超硬合金は特に限定されない。
【0111】
サーメットあるいは超硬合金とは、周期律表で第IVa、Va、VIa族に属する9種類の金属(W、Mo、Cr、Ta、Nb、V、Hf、Zr、Ti)の炭化物粉末を鉄、コバルト、ニッケルなどの鉄族金属を用いて焼結結合した合金である。
セラミックスとしては、窒化けい素(Si3 N4 )系、ジルコニア(ZrO2 )系、アルミナ(Al2 O3 )系、炭化けい素(SiC)系、窒化アルミ(AlN)系、炭化ホウ素(B4 C)系、ホウ化チタン(TiB2 )系、窒化ホウ素(BN)系、炭化チタン(TiC)系、窒化チタン(TiN)系、あるいは、これらを複合させたセラミックス系複合材料などを例示できる。
【0112】
また、本発明に用いるセラミック材料は、破壊じん性や機械的強度などを向上させるために、繊維状充填材を配合することができる。
繊維状充填材としては、特に限定されないが、炭化ケイ素ウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、アルミナウィスカー、窒化アルミニウムウィスカー等を例示できる。
【0113】
超硬合金としては、WC−Co系、WC−Cr3 C2 −Co系、WC−TaC−Co系、WC−TiC−Co系、WC−NbC−Co系、WC−TaC−NbC−Co系、WC―TiC−TaC−NbC−Co系、WC−TiC−TaC−Co系、WC−ZrC−Co系、WC−TiC−ZrC−Co系、WC−TaC−VC−Co系、WC−Cr3 C2 −Co系、WC−TiC−Cr3 C2 −Co系、WC−TiC−TaC系などがある。
【0114】
WC−Co系の代表的な組成は、W:Co:C=70.41〜91.06:3.0〜25.0:4.59〜5.94である。
WC−TaC−NbC−Co系の代表的な組成は、W:Co:Ta:Nb:C=65.7〜86.3:5.8〜25.0:1.4〜3.1:0.3〜1.5:4.7〜5.8である。
【0115】
WC−TiC−TaC−NbC−Co系の代表的な組成は、W:Co:Ta:Ti:Nb:C=65.0〜75.3:6.0〜10.7:5.2〜7.2:3.2〜11.0:1.6〜2.4:6.2〜7.6である。
WC−TaC−Co系の代表的な組成は、W:Co:Ta=53.51〜90.30:3.5〜25.0:0.30〜25.33である。
【0116】
WC−TiC−Co系の代表的な組成は、W:Co:Ti=57.27〜78.86:4.0〜13.0:3.20〜25.59である。
WC−TiC−TaC−Co系の代表的な組成は、W:Co:Ta:Ti:C=47.38〜87.31:3.0〜10.0:0.94〜9.38:0.12〜25.59:5.96〜10.15である。
【0117】
サーメットとしては、TiC−Ni系、TiC−Mo−Ni系、TiC−Co系、TiC−Mo2 C−Ni系、TiC−Mo2 C−ZrC一Ni系、TiC−Mo2 C−Co系、Mo2 C−Ni系、Ti(C,N)−Mo2 C−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−Co系、TiC−TiN−Mo2 C−TaC−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−WC−TaC−Ni系、TiC−WC−Ni系、Ti(C,N)−WC−Ni系、TiC−Mo系、Ti(C,N)−Mo系、ホウ化物系(MoB−Ni系、B4 C/(W,Mo)B2 系など)などがある。
【0118】
ここで、Ti(C,N)−Mo2 C−Ni系、Ti(C,N)−WC−Ni系、あるいは、Ti(C,N)−Mo系は、TiC−Mo2 C−Ni系、TiC−WC−Ni系、あるいはTiC−Mo系を窒素ガス(N2 )中で焼結した合金である。
サーメットの代表的な組成は、TiC−30%Mo2 C−20%Ni、TiC−19%Mo2 C−24%Ni、TiC−8%Mo2 C−15%Ni、Ti(C,N)−25%Mo2 C−15%Ni、TiC−14%TiN−19%Mo2 C−24%Ni、TiC0.7 N0.3 −11%Mo2 C−24%Ni、TiC0.7 N0.3 −19%Mo2 C−24%Ni、TiC0.7 N0.3 −27%Mo2 C−24%Ni、TiC−20%Mo−15%Ni、TiC−30%Mo−15%Niなどである。
【0119】
更に、半導体製造プロセスで利用される測長SEMのような計測・分析装置や電子ビームを用いた露光装置などのように、非磁性が要求される用途では、前記可動子、支持体および転動体が非磁性材料で構成されることが好ましい。
可動子、支持体および転動体に用いる非磁性材料は特に限定されず、各種セラミックスの他に非磁性超硬合金(例えば透磁率1.0002以下)、チタン合金(例えば透磁率1.0001以下)、非磁性サーメット(例えば透磁率1.002〜1.04程度)、非磁性ステンレス鋼(例えば透磁率1.002〜1.04程度)などが例として挙げられる。
【0120】
非磁性超硬合金としては、WC−Ni系、WC−Mo2 C−Ni系、WC−Cr3 C2 −Ni系、WC−Cr3 C2 −VC−Ni系、WC−Cr3 C2 −Mo2 C−Ni系、WC−Ti(C,N)−TaC系、WC−Ti(C,N)系、Cr3 C2 −Ni系などを例示できる。
非磁性サーメットとしては、TiC−Ni系、TiC−Mo−Ni系、TiC−Mo2 C−Ni系、TiC−Mo2 C−ZrC−Ni系、Mo2 C−Ni系、Ti(C,N)−Mo2 C−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−TaC−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−WC−TaC−Ni系、TiC−WC−Ni系、Ti(C,N)−WC−Ni系、ホウ化物系(MoB−Ni系,B4 C/(W,Mo)B2 系など)などを例示できる。
【0121】
非磁性ステンレス鋼としては、SUS316LやSUS304に代表されるマルテンサイト系ステンレス鋼が例示できる。
次に、本発明に係る転動装置の第2の態様の実施の形態である転がり軸受を図1を流用して説明する。
本発明に係る転動装置の第2の態様の実施の形態である転がり軸受1は、内輪2、外輪3および転動体4のうちの少なくとも一つがNiを結合相とするTiCN−Ni系サーメットで構成され、且つNiの含有率が10重量%以上30重量%以下とされている。
【0122】
また、TiCN−Ni系サーメットの合金炭素量(炭化物、炭窒化物中に換算した炭素量:C/C%)が8.0%以上18.0%以下とされ、前記TiCN−Ni系サーメットに、Mo2 C、WCおよびCr3 C2 うちの少なくとも一つの元素が単独または複合で添加されている。
これにより、磁場環境下において、周りに磁場を乱すことがなく、また、腐食環境下で、無潤滑あるいは潤滑条件が厳しく、摩耗が生じやすい条件下においても、耐食性および耐摩耗性に優れ、長期間作動することができ、更には、外部環境を汚染することが少ない転がり軸受を提供することができる。
【0123】
【実施例】
転がり軸受としての耐久性を評価するために、図1と同一構造の転がり軸受(型番6000:内径φ26mm、幅8mm)を表5の材料を用いて複数個(実施例30〜35および比較例16〜18)作製した。
実施例30〜35および比較例16から18に使用した原材料を一括して示すと、以下の通りである。
【0124】
Ni(粒度1.0〜1.5μm)、Cr3 C2 (粒度0.5〜2.0μm)、Mo2 C(粒度0.5〜2.0μm)、WC(粒度1.0〜2.0μm)、TiCN(粒度0.5〜2.0μm)の原料粉末を所定量混合し、金型プレスで成形した後、この成形体を脱脂してから、真空炉内で焼結(1350〜1550°C程度の温度)し、研削、研磨して供試体を作製した。
【0125】
合金炭素量の調整は、タングステンあるいはカーボンブラックを添加して行った。合金中における炭素量の同定は、粉砕、粉末状にした合金を酸素気流中、高温で燃焼させて発生するガス(COガス)濃度を赤外線吸収法で測定することにより行った。
耐久性の評価試験は、図2に示す日本精工株式会社製軸受回転試験機を用いて、塩酸1規定水溶液中で、回転試験を行ない、振動値を基準として耐久性を評価した。試験条件は、回転速度:3000min−1、ラジアル荷重:9Nである。いずれの場合も、保持器5には冠型ふっ素系樹脂保持器を用いた。ここでは、振動値が初期値の3倍に上昇した時点を転がり軸受の寿命とした。
【0126】
これらの結果を表5にまとめて示す。なお、各実施例および比較例における転がり軸受の耐久性(振動寿命)は、比較例16の耐久性(振動寿命)を1とした相対値で示す。また、透磁率計を用いて、非磁性かどうかを測定した結果を併せて表5に示す。非磁性の場合には○、磁性の場合には×で表示している。
【0127】
【表5】
【0128】
表5から明らかなように、本発明の実施例30〜35は、比較例16〜18と比べて、特に腐食環境下といった苛酷な条件においても、耐久性に優れ、長寿命であることがわかる。また、実施例33は、Ni含有率は範囲内であるが、合金炭素量が適正範囲より少ないため、耐久性が低下することがわかる。さらに、実施例34および35は、Ni含有率は範囲内であるが、合金炭素量が適正範囲より多いため、非磁性ではなくなり、耐久性も低下することがわかる。
【0129】
次に、TiCN−Mo2 C−WC−Cr3 C2 −Niサーメットにおいて、Mo2 Cを15重量%、WCを10重量%、Cr3 C2 を1重量%一定とし、Ni含有量を変化させたTiCN−Mo2 C−WC−Cr3 C2 −Niサーメットで内輪2および外輪3を形成したときのNi含有率と耐久性(軸受寿命)との関係を図7に示す。なお、合金炭素量は10.0%(C/C%)となるように調整した。
【0130】
また、転動体4は窒化けい素球とし、保持器5にはふっ素系樹脂組成物(PVdF+20体積%チタン酸カリウム繊維)製冠型保持器を用いた。試験条件は表5の条件と同じである。
図7より、Ni含有率が10重量%未満、あるいは30重量%を超える場合には、耐久性が著しく低下し、本発明範囲であるNi含有率10重量%以上30重量%以下の範囲においては耐久性に優れることがわかる。
【0131】
なお、本発明におけるNiを結合相とするTiCN−Ni系サーメットは、例えば、前記原料材料を所定の組成になるように均一に混合した後、成形体の強度を維持するためのバインダーを少量添加し、型に入れ、油圧あるいは機械プレスで成形する。最終形状によっては、その後、さらに旋盤などで機械加工してもよい。
【0132】
次に、この成形体を脱脂してから、真空炉内で焼結(1350〜1550°C程度の温度)するが、さらにより強度を必要とする場合には、その後、熱間静水圧焼結(HIP)処理を行うのが好ましい。焼結後は、所定の寸法形状や表面粗さにするために、研削や研磨を行う。
また、本発明のNiを結合相とするTiCN−Ni系サ−メットにおいては、磁場環境下で使用する場合には、結合相であるNi中にWが多く固溶することが好ましい。
【0133】
結合相であるNi中に炭窒化物が多く固溶する場合には非磁性となり、磁場環境下で使用しても外部の磁場を乱すことがなく、電子線を用いて露光や測定する装置で測定精度や製造精度 (描画精度)が低下することがない。
低炭素合金ほど、即ち、合金中における合金炭素量がある程度少ない範囲の方が結合相であるNi中における炭窒化物の固溶量が多くなるため非磁性合金になりやすいが、低炭素合金の場合でも炭素量がある適正値よりも少ない場合には、θ相(Ni3 W3 C)が析出し強度が著しく低下し、クラックが導入、伝播し易くなるため、短時間で寿命になったり、比較的軽荷重でも割れが生じてしまう場合がある。
【0134】
一方、合金炭素量がある適正値を超える場合には、強磁性となり磁場中で使用すると磁場を乱したりして、測定精度や製造精度(描画精度)が低下してしまう場合がある。また、合金炭素量がある適正値を超える場合には、遊離炭素が生じるため、強度が低下し短時間で寿命になる場合がある。
Niを結合相とするTiCN−Ni系サーメットにおいて、非磁性であり、なおかつ、転動装置として十分な強度を有し、非磁性を達成するために適正な合金炭素量は、8%(C/C%)以上18%(C/C%)以下が好ましい。
【0135】
さらに、Niを結合相とするTiCN−Ni系サーメットにおいては、Mo2 C、Cr3 C2 およびWCを添加すると、さらに、耐食性、強度、硬さが向上する。Mo2 CおよびWCを添加する場合には、含有量は、各々25重量%以下であることが好ましい。
Cr3 C2 を添加する場合は、含有量はは2重量%以下が好ましい。Mo2 C、WCあるいはCr3 C2 を上記の範囲を超えて添加する場合には、それぞれの炭化物が偏析し、強度が著しく低下するため短時間で寿命になったり、比較的軽荷重でも割れが生じてしまう場合がある。
【0136】
これに対し、WC、Mo2 C、あるいはCr3 C2 を上記の範囲内で添加する場合には、TiCN粒子の粒成長を抑制するとともに、炭化物が結合相中に固溶するため、耐食性、強度および硬さが向上し、より長期間、腐食環境下で作動することができる。
次に、本発明に係る転動装置の第3の態様の実施の形態である転がり軸受を図1を流用して説明する。
【0137】
本発明に係る転動装置の第3の態様の実施の形態である転がり軸受1は、内輪2、外輪3および転動体4が非磁性・導電性材料からなり、且つ転動体4がNiを結合相とするWC−Ni系超硬合金、TiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットで構成されている。
また、内輪2および外輪3がチタン合金からなり、且つ完成品表面の硬さがHv400以上とされている。
【0138】
更に、転動体4をWC−Ni系超硬合金とした場合には、Niの含有量が6重量%以上15量%以下とされ、転動体4をTiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットとした場合は、Niの含有量が10重量%以上30重量%以下とされている。
これにより、十分な導電性および非磁性を確保し、且つ長寿命を維持することができ、測長SEMのような計測装置あるいは分析装置、露光装置に、好適に使用し得る特殊環境用の転がり軸受を提供することができる。
【0139】
【実施例】
表6に、Ti−15Mo−5Zr(硬さHv450)を軌道輪とし、WC−Ni系超硬合金およびTiCN−Ni系サーメットを転動体にした実施例36〜41の転がり軸受と、Ti−6Al−4V合金(硬さHv300)を軌道輪とし、窒化けい素を転動体にした比較例19の転がり軸受における軸受導電率性を示す。
【0140】
【表6】
【0141】
本発明の実施例36〜41は、比較例19と比較して105 〜1015倍の軸受導電率を示し、電気的に接地することがわかる。
次に、実施例36〜41および比較例19について、図2に示す日本精工株式会社製軸受回転試験機により下記の条件で寿命試験を行った。
転がり軸受は、図1と同一構造で日本精工株式会社製の深溝玉軸受用の内・外輪(型番608:内径8mm:外径22mm:幅7mm)に比較例および実施例の転動体を組み込んだものを使用した。いずれの場合も、保持器には、フッ素系樹脂で製作した冠型保持器を用いた。
【0142】
試験条件は、温度:常温、雰囲気:真空10−3Pa、回転速度:200min−1、アキシアル荷重:490Nとし、基準のトルク値(初期値の3倍)に達するまでの軸受の回転時間を寿命とした。
図8に結果を示す。なお、図8における寿命値は、比較例19の寿命を1とした相対値で示した。
【0143】
図8から明らかなように、転動体をWC−Ni系超硬合金とした場合には、Niの含有量が6重量%以上15量%以下、転動体をTiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットとした場合は、Niの含有量が10重量%以上30重量%以下で高い軸受寿命値を示し、Niの含有量がこれらの範囲から外れると、寿命は低下することが分かる。
【0144】
次に、本発明に係る転動装置の第4の態様の実施の形態である転がり軸受を図1を流用して説明する。
本発明に係る転動装置の第4の態様の実施の形態である転がり軸受1は、内輪2および外輪3のうちの少なくとも一方が耐熱性樹脂を主成分とする樹脂組成物で構成され、転動体4がNiを結合相とするサーメットで構成され、且つNiの含有率が10重量%以上30重量%以下とされ、保持器5が樹脂組成物で構成されている。
【0145】
これにより、潤滑条件が厳しく潤滑不良になりやすい条件下、あるいは溶液中や飛散してくるような条件下においても、耐食性に優れ摩耗が生じ難いため、半導体液晶パネル、及びハードディスク等の製造工程で用いられる各種洗浄装置や食品機械等のように水または各種洗浄溶液( 酸、アルカリ)中で使用される環境下、水または各種洗浄溶液がミスト状に存在するか、飛散してかかるような環境下、あるいはドライ環境下においても、摩耗が生じ難く、長期間安定して作動することができる転がり軸受を提供することができる。
【0146】
【実施例】
転がり軸受としての耐久性を評価するために、図1と同一構造の転がり軸受(型番6000:内径1 0 mm、外径26mm、幅8mm)を表7に示す材料を用いて複数個(実施例42〜51、比較例20および21)作製した。
実施例42〜51および比較例20,21に使用した材料を一括して示すと、以下の通りである。
【0147】
(1) サーメット系1( 日本タングステン製TiC−TaN−Ni−Mo 系DUX40)
(2) サーメット系2( 日本タングステン製TiC−TaN−Ni−Mo 系DUX30)
(3) PPS( フィリップスペトローリアム社製ポリフェニレンサルファイド樹脂: ライトンR−6)
(4) PVDF( 呉羽化学工業社製:クレハKFポリマーT−#1000)
(5) TPI(三井東圧化学社製:オーラム 400)
(6) PEEK(ビクトレックス社製:ビクトレックスPEEK 150G)
(7) PEEK−PBI(ヘキストーセラニーズ社製:セラゾール TU−60)
(8) PEN(出光マテリアル社製:ID300)
(9) 炭素繊維(呉羽化学工業社製:クレカチョップM−102S、繊維径14.5μm、長さ0.2mm)
(10)チタン酸カリウムウィスカー(大塚化学社製:ティスモD−101、径0 .3 〜0.6μm、長さ10〜20μm)
(11)アラミド繊維(群栄化学工業社製カイノール繊維KF02BT、径14μm、長さ0.2mm)
(12)微細炭素繊維(昭和電工社製:気相法炭素繊維VGCF、繊維径100〜200nm、長さ10〜20μm)
(13)黒鉛(中越黒鉛工業所社製:CLX、平均粒径4.5μm)
【0148】
また、Cr3 C2 系サーメットは、TICN(粒度1〜1.5μm)を30重量%、Ni(粒度1〜1.5μm)を15重量%およびCr3 C2 (粒度2〜2.5μm)を残部とする割合で原料粉末を混合し、金型プレスで成形した後、この成形体を脱脂してから、真空炉内で焼結(1350〜1550°C程度の温度)し、研削、研磨して供試体を作製した。
【0149】
転がり軸受としての耐久性の評価には、図2に示す日本精工製軸受回転試験機を用いて、純水の噴霧環境下で回転試験を行った。転がり軸受の耐久性は振動値を基準として評価した。試験条件は、回転速度:1000min−1、ラジアル荷重:49N、温度:常温である。
いずれの場合も、保持器は射出成形により作製した冠型形状のテトラフルオロエチレン・ エチレン共重合体(ETFE)樹脂(80体積%)にチタン酸カリウムウィスカー(20体積%)を配合した樹脂組成物製保持器を用いた。ここでは、振動値が初期値の3倍に上昇した時点を転がり軸受の寿命とした。
これらの結果を表7にまとめて示す。なお、各実施例およぴ比較例における転がり軸受の耐久性は、比較例20の耐久性を1とした相対値で示す。
【0150】
【表7】
【0151】
図9に、TiCN−Ni系サーメットおよびCr3 C2 系サーメットにおいて、Ni含有率を変化させた場合におけるNi含有率と耐久性との関係を示す。
図9において、いずれの場合も、内・外輪をPVdF(80体積%)に炭素繊維(20体積%)を配合した樹脂組成物で作成し、保持器には射出成形により作成した冠型形状のテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)樹脂(80体積%)にチタン酸カリウムウィスカー(20体積%)を配合した樹脂組成物製保持器を用いた。
【0152】
図9より、サーメットでは、Ni含有率が10重量%未満あるいは30重量%を超える場合には耐久性が著しく低下するのに対し、本発明範囲であるNi含有率10重量%以上30重量%以下においては、耐久性に優れることがわかる。
表7および図9から明らかなように、実施例42〜51は比較例20,21と比べて、耐食性に優れ、潤滑条件が厳しい環境下においても耐摩耗性に優れ、長寿命を有することがわかる。
【0153】
なお、本発明において外輪および/又は内輪に用いる耐熱性樹脂からなる樹脂組成物は特に限定されないが、ポリフェリレンサルファイド(PPS)樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエールエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンとポリベンゾイミダゾールのコポリマー(PEEK−PBI)、ポリエーテルニトリル(PEN)、芳香族ポリイミド(PI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリアミドイミド(PAI)、芳香族ポリエステル(LCP)および各種含フッ素樹脂が好ましい。
【0154】
含フッ素樹脂は特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等を例示できる。
【0155】
本発明において保持器に用いる樹脂組成物は特に限定されないが、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリフェリレンサルファイド(PPS)樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンとポリベンゾイミダゾールのコポリマー(PEEK−PBI)、ポリエーテルニトリル(PEN)、芳香族ポリイミド(PI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリアミドイミド(PAI)、芳香族ポリエステル(LCP)および各種含フッ素樹脂が好ましい。
【0156】
含フッ素樹脂は特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等を例示できる。
【0157】
本発明に用いる前記樹脂組成物は、機械的強度、耐摩耗製、寸法安定性、耐熱性などを向上させるために繊維状充填材を配含することができる。
繊維状充填材としては、特に限定されないが、ホウ酸アルミニウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、カーボンウィスカー、アラミド繊維、芳香族ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維、グラファイトウィスカー、ガラス繊維、炭素繊維、気相法微細炭素繊維、カーボンナノファイバー、ボロン繊維、炭化けい素ウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、アルミナウィスカー、窒化アルミニウムウィスカー、ウォラストナイト等を例示できる。
【0158】
前記繊維状充填材のアスペクト比は3以上200以下であることが好ましい。アスペクト比が3未満の繊維状充填材では、前記溶融成形の可能な含フッ素樹脂の補強効果が十分に発揮されず、アスペクト比が200を超えると混合時の均一分散が極めて困難となる。
前記樹脂組成物における前記繊維状充填材の含有率は特に限定されないが、40重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%〜30重量%の含有率で含有することである。
【0159】
40重量%を越えて配合しても更なる機械的強度の向上が期待できないばかりでなく、樹脂組成物を溶融成形する際の流動性が著しく低下する。
本発明に用いる前記樹脂組成物は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末(PTFE)、黒鉛、六方晶窒化ホウ素(hBN)、フッ素雲母、メラミンシアヌレート(MCA)、層状の結晶構造を有するアミノ酸化合物(N−ラウロ・L−リジン)、フッ化黒鉛、フッ化ピッチ、二硫化モリブデン(MoS2 )等の固体潤滑剤を適量添加する場合には、内・外輪および保持器自身の潤滑特性がより向上し、保持器と転動体との接触面、あるいは内・外輪と転動体との接触面に発生する摩擦力が低下するため、内・外輪および保持器を形成する母材(樹脂)と共にこれらが転動体に移着し、転がり軸受を潤滑すると共に接触面に発生する摩擦力が低下するために、内・外輪および保持器の構成材料自身および転動体に形成された潤滑膜の摩耗が低減される。
【0160】
前記固体潤滑剤の前記樹脂組成物に対する含有率は40重量%以下が好ましく、より好ましくは30重量%以下の含有率である。
40重量%を越えて配合しても、更なる潤滑作用の向上が期待できないばかりでなく、樹脂組成物自体の機械的強度が低下することによって、前記樹脂組成物からなる内・外輪および保持器の摩耗が増加し、寿命が短くなってしまう場合がある。
【0161】
前記固体潤滑剤の平均粒径は0.1μm〜60μmであることが好ましく、より好ましくは0.1μm〜20μm、更に好ましくは0.1μm〜10μmである。
平均粒経が0.1μm未満の粒径の小さい粒子では、母材である樹脂と混合した際に凝集が起こり、粒子の分散が不均一になる場合がある。一方、60μmを超える粒経の大きい粒子では、成形体である内輪、外輪、あるいは保持器の表面の平滑性が低下するとともに、強度が低下するために、軸受の寿命が短くなってしまう場合がある。
【0162】
また、溶融成形の際の流動性および樹脂組成物の機械的強度の点から、前記樹脂組成物における固体潤滑剤と繊維状充填材との合計含有率は60重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%〜50重量%の含有率で含有することである。
前記樹脂組成物における固体潤滑剤および繊維状充填材の各々の含有率が40重量%以下であっても、両者の合計含有率が60重量%を超えると、樹脂組成物を溶融成形する際の流動性および樹脂組成物の機械的強度が著しく低下する場合がある。
【0163】
なお、本発明の効果を損なわない範囲内で前記樹脂組成物には各種添加剤を配合してもよい。
各種添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光保護剤、難燃剤、帯電防止剤、流動性改良剤、非粘着性付与剤、結晶化促進剤、増核剤、顔料、染料等を例示することができる。
【0164】
これら耐熱性樹脂、繊維状充填材、固体潤滑剤等の混合方法は特に限定されない。
例えば、各々別々に溶融混錬することが可能であり、また、予めこれらの材料をヘンシェルミキサー、タンブラー、リボンミキサー、ホールミル等の混合機で予備混合した後に溶融混合機へ供給することもできる。
【0165】
溶融混合機としては、単軸、または2軸押し出し機、混練ロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダープラストグラフ等の公知の溶融混練装置を使用できる。溶融混錬する際の温度は特に限定されないが、耐熱性樹脂の溶融が十分進行視、且つ分解しない温度の範囲内で適宜選定すればよい。
本発明の転がり軸受に組み込まれる樹脂組成物からなる内・外輪および保持器の製造方法は特に限定されないが、例えば、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形等の通常の方法で成形することができる。中でも射出成形法は生産性に優れ、安価な内・外輪および保持器を提供できるため好ましい。
【0166】
本発明におけるサーメットは特に限定されない。例えば、TiC−Ni系、TiC−Mo−Ni系、TiC−Mo2 C−Ni系、TiC−Mo2 C−ZrC−Ni系、Ti(C,N)−Mo2 C−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−TaC−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−WC−TaC−Ni系、TiC−WC−Ni系、Ti(C,N)−WC−Ni系、Ti(C,N)−Mo系、Cr3 C2 −Ni系を用いることができる。
【0167】
ここで、Ti(C,N)−Mo2 C−Ni系、あるいはTi(C,N)−WC−Ni系は、TiC−Mo2 C−Ni系、あるいはTiC−WC−Ni系を窒素ガス(N2 )中で焼結した合金である。
サーメットの代表的な組成は、TiC−30%Ni、TiC−10%Mo−30%Ni、TiC−20%Mo−30%Ni、TiC−30%Mo−30%Ni、TiC−11%Mo2 C−24%Ni、TiC−30%Mo2 C−20%Ni、TiC−19%Mo2 C−24%Ni、TiC−8 %Mo2 C−15%Ni、Ti(C,N)−25%Mo2 C−15%Ni、TiC−14%TiN−19%Mo2 C−24%Ni、TiC0.7 N0.3 −11%Mo2 C−24%Ni、TiC0.7 N0.3 −19%Mo2 C−24%Ni、TiC0.7 N0.3 −27%Mo2 C−24%Ni、TiC−20%Mo−15%Ni、TiC−30%Mo−15%Niなどである。
【0168】
本発明におけるサーメットの製造方法は特に限定されない。
例えば、所定の組成になるように均一に混合した後、成形体の強度を維持するためのバインダーを少量添加し、型に入れ、油圧あるいは機械プレスで成形する。最終形状によってはその後、さらに旋盤などで機械加工してもよい。
次に、この成形体を脱脂してから、真空炉内で焼結(1350〜1550°C程度の温度)する。さらに強度を必要とする場合には、その後、熱間静水圧加圧焼結(HIP)処理を行うことが好ましい。焼結後は、所定の寸法形状や表面あらさにするために研削や研磨を行う。
【0169】
【発明の効果】
上記の説明から明らかなように、請求項1の発明によれば、可動子、支持体および転動体の内の少なくとも転動体が超硬合金、サーメットあるいはセラミックスで構成される場合において、転動体の表面あらさRa(σ1 )と、支持体あるいは可動子の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)を1 .0以下とし、且つ、転動体の表面硬さと可動子の表面硬さとの比、および転動体の表面硬さと支持体の表面硬さとの比を0.6以上2.0以下としているので、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下においても、接触点におけるアブレッシブ摩耗を効果的に抑制することができる。
【0170】
この結果、摩耗粉による外部環境の汚染を効果的に抑制することができるとともに、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間作動する転動装置を提供することができる。
請求項2の発明では、請求項1の発明に加えて、酸や強アルカリ溶液中など強い腐食環境下や高温環境下においては、可動子および支持体を曲げ強度550MPa以上であるセラミックスで構成することにより、転動装置の作動時に繰返し応力が可動子や支持体の転走面における接触点に負荷されても可動子や支持体の表面に微細なクラックが発生して伝播するのを防止することができる。
【0171】
請求項3の発明では、請求項1の発明に加えて、前記可動子、前記支持体および前記転動体の内の少なくとも一つが、Niの含有率が10重量%以上、30重量%以下であるNiを結合相とするTiC−Ni系或いはTiCN−Ni系サーメットで構成されることにより、腐食、磁場、高温、高速・高温環境下で、無潤滑或いは潤滑条件の厳しい、即ち、潤滑油が枯渇し易く、摩耗が生じやすい条件下においても、耐摩耗性に優れ、長期間作動することができ、外部磁場を乱すことがない。
【0172】
請求項4の発明では、請求項1の発明に加えて、前記可動子、前記支持体および前記転動体の内の少なくとも一つが、Cr3 C2 −Ni系サーメットで構成され、且つ、Niの含有率が10重量%以上、30重量%以下であることにより、腐食、磁場、高温、高速・高温環境下で、無潤滑或いは潤滑条件の厳しい、即ち、潤滑油が枯渇し易く、摩耗が生じやすい条件下においても、耐摩耗性に優れ、長期間作動することができ、外部磁場を乱すことがない。
【0173】
請求項5の発明によれば、前記可動子、前記支持体および前記転動体のうちの少なくとも一つがNiを結合相とするTiCN−Ni系サーメットで構成され、且つNiの含有率が10重量%以上30重量%以下とされているため、磁場環境下において、周りに磁場を乱すことがなく、また、腐食環境下で、無潤滑あるいは潤滑条件が厳しく、摩耗が生じやすい条件下においても、耐食性および耐摩耗性に優れ、長期間作動することができ、更には、外部環境を汚染することが少ない転動装置を提供することができる。
【0174】
請求項6の発明では、請求項5の発明に加えて、TiCN−Ni系サーメットの合金中における合金炭素量を、8.0%以上18.0%以下(C/C%)としているので、非磁性であり、磁場環境下で使用しても外部の磁場を乱すことがなく、電子線を用いて露光や測定する装置で測定精度や製造精度(描画精度)が低下することがなくなると共に、転動装置として十分な強度と硬さ(耐摩耗性)を有することになり、潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間作動することができる。
【0175】
請求項7の発明では、請求項5又は6の発明に加えて、前記TiCN−Ni系サーメットに、Mo2 C、WCおよびCr3 C2 うちの少なくとも一つの元素を単独または複合で添加することにより、さらに、耐食性、強度、硬さを向上させることができる。
請求項8の発明によれば、前記可動子、前記支持体および前記転動体が非磁性・導電性材料からなり、且つ少なくとも転動体がNiを結合相とするWC−Ni系超硬合金、TiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットで構成されているので、十分な導電性および非磁性を確保し、且つ長寿命を維持することができ、測長SEMのような計測装置あるいは分析装置、露光装置に、好適に使用し得る転がり軸受及び直動案内装置などの特殊環境用転動装置を提供することができる。
【0176】
請求項9の発明では、請求項8の発明に加えて、前記可動子および前記支持体をチタン合金し、且つ完成品表面の硬さをHv400以上としているので、摩耗をより減少させることができる。
請求項10の発明では、請求項8又は9の発明に加えて、転動体をWC−Ni系超硬合金とした場合に、Niの含有量が6重量%以上15量%以下とすることにより、転動装置の更なる寿命延長を可能にすることができる。
【0177】
請求項11の発明では、請求項8又は9の発明に加えて、転動体をTiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットとした場合に、Niの含有量を10重量%以上30重量%以下とすることにより、転動装置の更なる寿命延長を可能にすることができる。
請求項12の発明によれば、前記可動子および前記支持体のうちの少なくとも一方が耐熱性樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、且つ前記転動体がサーメットで構成されているので、潤滑条件が厳しく潤滑不良になりやすい条件下、あるいは溶液中や飛散してくるような条件下においても、耐食性に優れ摩耗が生じ難くなり、半導体液晶パネル、及びハードディスク等の製造工程で用いられる各種洗浄装置や食品機械等のように水または各種洗浄溶液( 酸、アルカリ)中で使用される環境下、水または各種洗浄溶液がミスト状に存在するか、飛散してかかるような環境下、あるいはドライ環境下においても、摩耗が生じ難く、長期間安定して作動することができる転動装置を提供することができる。
【0178】
請求項13の発明では、請求項12の発明に加えて、転動体がNiを結合相とするサーメットで構成され、且つNiの含有率が10重量%以上30重量%以下とされているので、転動装置の更なる寿命延長を可能にすることができる。
請求項14に係る発明は、請求項12又は13の発明に加えて、転動体を転動可能に保持する保持器が樹脂組成物で構成されているので、保持器を構成する自己潤滑性に優れる樹脂組成物が前記転動体に効果的に移着して潤滑性を向上することができ、より長期にわたって安定した作動を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転動装置の第1の態様の実施の形態である転がり軸受の要部断面図である。
【図2】軸受回転試験機を示す概略図である。
【図3】転動体の表面あらさRa(σ1)と内・外輪の表面あらさRa(σ2)との比(σ1/σ2)が0.20である場合における、転動体の表面硬さと内・外輪の表面硬さとの比と、耐久性(振動寿命)との関係を示すグラフ図である。
【図4】転動体の表面あらさRa(σ1)と内・外輪の表面あらさRa(σ2)との比(σ1 /σ2)と、転動体の表面硬さと内・外輪の表面硬さとの比と、耐久性(振動寿命)との関係を示すグラフ図である。
【図5】非磁性が要求される環境下で好適に使用し得るか評価するための回転試験の説明図である。
【図6】TiCN−Mo2 C−WC−Cr3 C2 −Ni系サーメットとCr3 C2 −TiCN−Ni系サーメットとにおけるNi含有率と耐久性(振動寿命)との関係を示すグラフ図である。
【図7】本発明に係る転動装置の第2の態様の実施の形態である転がり軸受の耐久性とNi含有率との関係を示すグラフ図である。
【図8】本発明に係る転動装置の第3の態様の実施の形態である転がり軸受のトルク寿命とNi含有率との関係を示すグラフ図である。
【図9】本発明に係る転動装置の第4の態様の実施の形態である転がり軸受の耐久性とNi含有率との関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1…転がり軸受(転動装置)
2…内輪(可動子)
2a…内輪軌道溝
3…外輪(支持体)
3a…外輪軌道溝
4…転動体
5…保持器
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶パネル製造工程、半導体製造工程、ハードディスク製造工程、コンデンサ一製造工程の各種洗浄装置などの腐食環境下、半導体製造装置(電子線利用の露光・描画装置、検査装置など) の磁場環境下、鉄鋼設備、窯炉内搬送用台車(キルンカー)、連続熱処理用コンベヤおよび焼付け塗装機用トロリーなどの高温炉内搬送システムのような高温環境下、工作機械、タービンおよび各種ポンプなどのような高速・高温環境下で使用され、且つ、無潤滑或いは潤滑条件が厳しい、例えば潤滑剤が枯渇しやすく、摩耗が生じやすい用途で使用される転動装置、また、半動体製造プロセスで利用される測長SEMのような計測装置、又は分析装置や露光装置などのような製造装置に使用され、非磁性かつ導電性が要求される環境下で、好適に使用し得る転がり軸受や直動装置などの特殊環境用転動装置、更に、半導体、液晶パネルおよびハードディスク等の製造工程で用いられる各種洗浄装置や食品機械等のように水または各種洗浄溶液(酸、アルカリ)中で使用される環境下、水または各種洗浄溶液がミスト状に存在するか、飛散してかかるような環境下、あるいはドライ環境下においても使用できる転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
転動装置は、回転運動または直線運動可能な可動子、この可動子を支持する支持体、これら可動子と支持体との間に介在し、前記可動子の運動に伴って転動する複数個の転動体を具備する。また、この複数個の転動体を案内保持した状態で前記可動子の軌道と前記支持体の軌道との間に回転自在に設けられた保持器をさらに有する場合もある。
【0003】
半導体、液晶パネル、ハードディスクなどの製造工程では、半導体素子などの表面に付着する微細なパーティクルやアウトガスが製品の性能、信頼性、歩留まりなどに悪影響を及ぼすため、パーティクルやアウトガスの原因となる油やグリースを十分封入して転動装置の潤滑を行うことはせず、微量な潤滑剤や固体潤滑剤により転動装置の潤滑を行ったり、無潤滑下で転動装置を用いる場合がある。
【0004】
また、半導体、液晶パネル、ハードディスク等の製造工程における各種洗浄工程では、種々の薬品が用いられており、これらに使用される転動装置は、前記薬品の雰囲気中などの腐食環境下で作動することが要求される。
更に、半導体、液晶パネル、ハードディスクなどの製造プロセスにおいて、電子線を利用する露光、描画装置、検査装置などでは、電子銃が照射されるシリコンウエハの移動に用いられる軸受、ボールねじ装置、リニアガイド装置などの転動装置が使用されているが、該転動装置に磁性材を用いると、磁場を乱したりして、測定精度や製造精度(描画精度)が低下してしまう。
【0005】
更に、ジェットエンジンやガスタービンでは、省エネルギ―や環境問題の観点から、高効率化が進められており、ジェットエンジンやガスタービン等に用いられる転動装置は、より高速、高荷重、高温下で作動することが要求され、また、トルクを低減するために、より低粘度の潤滑剤を用いたりする。
ところで、上記転動装置には、従来から転動体をセラミックスで構成したものがある。このセラミックス製転動体は、通常、セラミック材料の粉末を加圧し、高温下で焼結成形することにより作製される。
【0006】
従来のセラミックス製転動体として、窒化けい素を主成分として焼結したセラミックスからなる転動体が開示されており(例えば特許文献1参照)、このセラミックス製転動体は次のような手順で作成される。
まず、窒化けい素粉末および焼結助剤を例えば平均粒径1.0μm以下に粉砕して混合し、それらに溶剤を加えて混練することにより平均粒径100〜150μmに造粒する。
【0007】
次いで、この造粒粉を用いて金型プレスにより外形を整え、この成形体を脱脂してから常圧焼結して、さらに等方加圧焼結処理(HIP)を行う。その後、焼結体をバレル研磨などにより仕上げる。
腐食環境下で用いられる転がり軸受としては、例えばある程度大きなポアが存在するセラミックス製転動体に関する技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0008】
また、外輪が常圧焼結法、内輪がガス圧焼結法またはHIP法で作られたセラミック材料からなる耐食性転がり軸受に関する技術が開示され(例えば特許文献3参照)、内輪、外輪および転動体をそれぞれ炭化珪素のセラミック製とした転がり軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献4参照)。
一方、磁場環境下で用いられる転がり軸受としては、例えば軌道輪および転動体の内の少なくとも一つがMn−Ni−Cu合金で形成された転がり軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献5参照)。
【0009】
一般に非磁性材としては、ベリリウム銅、非磁性ステンレス鋼、セラミックスなどがある。
従来、磁場環境で磁性材の転がり軸受を使用すると磁場環境を乱すため、内輪、外輪、転動体などの構成要素を、非磁性材で形成するようにしているが、上述材料のうちベリリウム銅、非磁性ステンレス鋼で軸受を構成すると、各材料自体の硬さが低いため、材料が摩耗し易く寿命が低下してしまう。
【0010】
そこで、軌道輪にベリリウム銅、転動体にセラミックス(窒化珪素、炭化珪素、アルミナ)を用いた転がり軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献6参照)。
また、内・外輪および転動体の内の少なくとも一つがWC−Ni系超硬合金で形成された転がり軸受、あるいは内・外輪がNiを結合相とするWC−Ni系超硬合金で形成され、且つ、転動体が非磁性セラミックスで形成された転がり軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献7参照)。
【0011】
更に、転動体を超硬合金又はサーメットで、内・外輪が軸受鋼又はステンレス鋼で形成された転がり軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献8参照)。
また、潤滑油或いはグリースを内部に封入するして潤滑を行う転動装置としては、潤滑油或いはグリースを軸受内部空間に充填して潤滑を行い、且つ接触型シール部材或いはラビリンスシールにより水等が軸受内部に侵入することを防止する転がり軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献9および特許文献10参照)。
【0012】
更に、保持器がフッ素樹脂或いは直径が2μm以下のチタン酸カリウムウィスカーの短繊維を含むエチレンテトラフロオロエチレン(ETFE)樹脂といった自己潤滑材料からなり、硬質カーボン球製転動体、および耐食材製軌道輪から軸受装置が構成され、この保持器と転動体との摩擦接触により保持器の構成材料が、転動体、内輪、外輪に移着して形成される薄い潤滑膜によって潤滑する技術が開示されている(例えば特許文献11および特許文献12参照)。
【0013】
樹脂組成物からなる転がり軸受に関しては、内外軌道輪のうちの一方が嵌着対象に緩く嵌着され、内外軌道輪の両方又は緩く嵌着されている方の軌道輪がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂で形成された玉軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献13参照)。
また、樹脂組成物からなる転がり軸受において、固体潤滑剤で表面処理された転動体を用いる樹脂製転がり軸受に関する技術が開示されている(例えば特許文献14参照)。
【0014】
【特許文献1】
特開昭63−101519号公報
【特許文献2】
特開2000−9146号公報
【特許文献3】
特開平8−121488号公報
【特許文献4】
特開平10−82426号公報
【特許文献5】
特開2000−130439号公報
【特許文献6】
特開平11−336755号公報
【特許文献7】
特開2000−154825号公報
【特許文献8】
特開2000−257627号公報
【特許文献9】
実開昭55−34002号公報
【特許文献10】
実開昭57−56218号公報
【特許文献11】
特公平8−26891号公報
【特許文献12】
特許第2709119号公報
【特許文献13】
特開平5−202943号公報
【特許文献14】
特開平9−303403号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1や特許文献2では、転動体が窒化けい素を主成分とするセラミックスで形成され、転動体と相対運動する内・外輪は軸受鋼などの金属で形成されるため、両者の硬さが2.2倍程度或いはそれ以上異なることになる。
この結果、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、硬いセラミックス製転動体によるアブレッシブ摩耗により、硬さが低い金属製の内・外輪が著しく摩耗し、転動装置が短時間で寿命になったり、外部環境を汚染する場合がある。
【0016】
また、特許文献1では、内部にほとんどポアがない、高強度、高品質なセラミック製転動体を製作できるが、1000気圧程度の非常な高圧を負荷する等方加圧焼結(HIP)法により製作するため、コストが極めて高くつくと共に、半導体液晶パネル及びハードディスク等の製造工程で用いられる各種洗浄装置や食品機械などでは、荷重条件が比較的低く、等方加圧焼結(HIP)法により製作されたセラミック製転動体に求められるような高い耐荷重性は要求されず、耐摩耗性が要求されるため、工作機械など高荷重が負荷され、信頼性が高く要求される用途に使用が限定されている。
【0017】
特許文献3では、外輪が常圧焼結法で製造されているため、強度や破壊じん性が著しく低く、表面や内部欠陥を起点として微小クラックが伝播し易くなり、摩耗粉が多量に発生したり、割れが生じたりして、転動装置の寿命が短い場合がある。
特に、ラジアル荷重を支持するような場合には、外輪の負荷圏に荷重が集中するため、軽荷重下でも、常圧焼結法で製作した外輪の負荷圏においてクラックが容易に伝播し、極端に寿命が短い場合がある。
【0018】
また、セラミック材料の中でも硬さは種々のものがあり、例えば窒化けい素系セラミックスではビッカース硬さHv=1350〜1850程度、炭化けい素系セラミックスでHv=2000〜2860程度、アルミナ系セラミックスでHv=1600〜2100程度、ジルコニア系セラミックスでHv=1100〜1650程度である。
【0019】
したがって、特に、無潤滑下や潤滑条件が厳しく固体接触が生じるような場合、転動体と内・外輪にセラミックスを用いても、両者の硬さが大きく違うと、硬さが高い部材によるアブレッシブ摩耗により、硬さが低い部材の方が極端に摩耗し、転動装置の寿命が著しく短くなったり、外部環境を汚染する場合がある。
特許文献4では、内輪、外輪および転動体をそれぞれ炭化珪素のセラミックス製で構成しているため、耐食性は優れるが、強度および破壊靭性が低く、荷重がある程度負荷されると、表面あるいは全体にクラックが伝播して、剥離や割れが生じてしまう場合がある。
【0020】
特に、ラジアル荷重を支持するような場合には、外輪の負荷圏に荷重が集中するため、軽荷重下においても、剥離や割れが生じ、極端に寿命が短い場合がある。
特許文献5あるいは特許文献6では、軌道輪にMn−Ni−Cu合金(Hv=340程度)やベリリウム銅(Hv=400程度)を、転動体にセラミックス(窒化珪素、炭化珪素、アルミナ)を用いる場合には、両者の硬さが約3倍以上異なる。
【0021】
このため、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、硬いセラミックス製転動体によるアブレッシブ摩耗により、軟らかいMn−Ni−Cu合金やベリリウム銅からなる内・外輪が著しく摩耗し、転動装置が短時間で寿命になったり、外部環境を汚染する場合がある。
また、Mn−Ni−Cu合金やベリリウム銅のような軟質合金では、塑性変形が比較的低荷重で生じてしまうため、低荷重でしか使用することができない。
【0022】
特許文献7では、内・外輪がNiを結合相とするWC−Ni系超硬合金で形成され、且つ転動体が非磁性セラミックスで形成された場合、セラミックスの種類によっては、内・外輪と転動体の硬さが著しく異なることがあり、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、硬さが高い部材によるアブレッシブ摩耗により、硬さが低い部材の方で極端に摩耗が生じ、転動装置の寿命が著しく短くなったり、外部環境を汚染する場合がある。
【0023】
また、Niを結合相とするWC−Ni系超硬合金においても、Niの含有率により強度、硬さあるいは焼結性が異なるため、Niの含有率がある範囲内でなければ、強度が低い、あるいは硬さ、即ち耐摩耗性が不十分であり摩耗が著しく進行し、あるいは焼結性が悪くポアが多く生じるためクラックが導入、伝播しやすくなり、比較的短時間で寿命になってしまう場合がある。
【0024】
更に、Niを結合相とするWC−Ni系超硬合金が全て非磁性ではなく、Niを結合相とするWC−Ni系超硬合金の中でもWC合金中における合金炭素量によっては強磁性となり、磁場中で使用すると磁場を乱したりして、測定精度や製造精度(描画精度)が低下してしまう場合がある。
このように、特許文献7には、非磁性となり、なおかつ、転動装置に要求される機械的強度や耐摩耗性を達成するために必要な技術内容に関しては開示されていない。
【0025】
上述したように、半導体製造プロセスで利用される測長SEMのような計測装置あるいは分析装置や露光装置などのような製造装置のシリコンウエハの移動には軸受、ボ−ルねじ装置、リニアガイド装置などの転動装置が使用されているが、該転動装置に絶縁性材、および磁性材を用いると帯電したり、磁場を乱したりして、測定精度や製造精度(描画精度)が低下してしまう。
【0026】
例えば、SEMは、電子銃から放出された電子ビームが収束レンズで絞られ試料上を走査コイルで2次元的に走査する。電子線照射によって試料表面から発生した2次電子を検出器で捕らえ、試料の表面像がブラウン管上に映し出される。特に、測長SEMでは、走査像で寸法を計測する場所を指定し、その部分の2次電子強度分布を用いて、倍率より演算して寸法を測定する。
【0027】
また、露光装置では、電子銃から発生する電子ビームを所定の形状のビームとして試料に照射することによってパターン(回路図形)を描写していく。
したがって、特許文献7、特許文献6に開示されているように転動体に絶縁性セラミックスを用いると試料表面に入射電子が蓄積され、測長するための十分な高分解能が得られなくなる。また、磁性材を用いると電子線が曲げられ、正確な電子強度分布が得られなくなる。
【0028】
以上の理由により、上記装置に使用される軸受には絶縁性であるセラミックスボールは使用できない。
特許文献8では、転動体を超硬又はサーメットで、内・外輪を軸受鋼又はステンレス鋼で形成した転がり軸受に関する技術が開示されているが、内・外輪が軸受鋼又はステンレス鋼で形成されているため、磁場、耐食環境下での使用に問題が起こる場合がある。
【0029】
特許文献9では、軸受の作動に伴いシールリップ部の摩耗が進行し、軸受内部に水等が浸入すると、潤滑剤(グリース)が軟化、劣化して潤滑剤の潤滑性が著しく低下し、また、保持器が自己潤滑性を有しない金属材料で構成されているため、保持器と転動体などの接触面で金属材料同士の直接接触が生じ、軸受の寿命が極端に短くなる場合がある。
【0030】
また、前述のように軸受内部に水等が浸入してグリースが軟化すると軸受外部への漏れや飛散が著しく増加するため、軸受装置の外部環境を汚染してしまうという間題がある。
特に半導体、液晶パネル、ハードディスク製造分野においては、ウエハ、ガラス基板、アルミ基板に軸受から流れ出たグリースなどのゴミや不純物が付着し欠陥や短絡などといった不良の原因となる場合がある。
【0031】
また、特許文献10では、ラビリンスシールを用いているが、ラビリンスシールのすきま空間から水等が浸入してグリースが軟化して劣化し、前記特許文献9と同様の問題がある。
特許文献11あるいは特許文献12では、潤滑油或いはグリースを使用していないので軸受装置の外部環境を汚染するという問題はないが、特許文献11では、軌道道輪間の転動体の存する箇所に水を流入させる開口部を設けており、また、特許文献12では、接触型のシールド板を装着しているので、水、各種洗浄液あるいは微細なゴミ、研磨粉、摩耗粉等は、開口部や非接触型のシールド板とこれと対向する面との間を通過して、軸受内部に浸入してしまう。
【0032】
すると、特許文献11およぴ特許文献12の場合には、転動体が硬質カーボン球であるから、前記硬質カーボン球の硬さは軌道輪の1.5倍以上であるが、強度が低いため、軽荷重の場合、衝撃荷重が作用した場合、或いは微細なゴミ、研磨粉、摩耗粉等が浸入した場合に、前記硬質カーボン球の一部或いは全体が欠けたり、破損したりして、その破片をかみ込んでしまうために軸受の寿命が極端に短くなる場合がある。
【0033】
また、水や各種洗浄溶液が開口部や非接触型のシールド板とこれと対向する面との間を通過して軸受内部に浸入してしまうため、保持器と転動体との摩擦接触による保持器材料の転動体等への移着が軸受内部に浸入してきた溶液により抑制されて保持器材料による潤滑膜が十分に形成されず、比較的短時間で軸受のトルクや振動が増加して寿命になってしまう場合がある。
【0034】
更に、特許文献11では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂から保持器が構成されているので、保持器の強度が低く、耐摩耗性に劣るので、保持器が異常に摩耗して軸受装置から外部に大量の粒子が飛散したり、軸受装置のトルクが著しく増加して寿命に至る場合がある。
更に、特許文献13、特許文献14では、転がり軸受を構成する樹脂組成物はポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリーレンスルフィド系樹脂あるいはポリアセタール樹脂であるため、特にドライ環境下では、比較的低荷重、低速度でも接触点におけるすべり摩擦により、簡単に接触面の温度が上昇し、摩耗が非常に多くなり、寿命が極端に短くなる場合がある。
【0035】
更に、特許文献14のように、転動体に固体潤滑剤の表面処理する場合には、ごく初期では固体潤滑膜により樹脂製軌道輪の摩耗が抑制されるが、二硫化モリブデンに代表される固体潤滑被膜は軸受の作動とともに摩耗しなくなるため、長期間作動することができないという間題がある。
本発明は上述した従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、第1の目的は、無潤滑あるいは潤滑条件が厳しい、例えば潤滑剤が枯渇しやすく、摩耗が生じやすい条件下においても、耐摩耗性に優れ、長期間作動することができ、外部環境を汚染することが少ない転動装置を提供することにある。
【0036】
また、本発明の第2の目的は、磁場環境下において、周りに磁場を乱すことがなく、また、腐食環境下で、無潤滑あるいは潤滑条件が厳しく、摩耗が生じやすい条件下においても、耐食性および耐摩耗性に優れ、長期間作動することができ、更には、外部環境を汚染することが少ない転動装置を提供することにある。
更に、本発明の第3の目的は、十分な導電性および非磁性を確保し、且つ長寿命を維持することにより、測長SEMのような計測装置あるいは分析装置、露光装置に、好適に使用し得る転がり軸受及び直動案内装置などの特殊環境用転動装置を提供することにある。
【0037】
更に、本発明の第4の目的は、比較的簡易に製造でき、実用上十分な耐荷重性を有し、潤滑条件が厳しく潤滑不良になりやすい環境下、水または各種洗浄溶液(酸、アルカリ)中で使用される環境下、水または各種洗浄溶液がミスト状に存在するか、飛散してかかるような環境下、あるいはドライ環境下においても摩耗が生じ難く、長期にわたって作動することができる転動装置を提供することにある。
【0038】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、回転運動または直線運動可能な可動子、この可動子を支持する支持体、これら可動子と支持体との間に介在し、前記可動子の運動に伴って転動する複数個の転動体を具備し、転動体、可動子および支持体のうち少なくとも転動体が超硬合金、サーメットあるいはセラミックスで構成される転動装置において、
前記転動体の表面あらさRa(σ1 )と、前記可動子あるいは前記支持体の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)が1 .0以下であり、且つ、前記転動体の表面硬さと前記可動子の表面硬さとの比、および前記転動体の表面硬さと前記支持体の表面硬さとの比が0.6以上2.0以下であることを特徴とする。
【0039】
上記構成によれば、前記転動体の表面あらさRa(σ1 )と、前記可動子あるいは前記支持体の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1 /σ2 )が1 .0 以下であり、かつ、前記転動体の表面硬さと前記可動子の表面硬さとの比、および前記転動体の表面硬さと前記支持体の表面硬さとの比が、0.6以上2.0以下としているので、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下においても、接触点におけるアブレッシブ摩耗を効果的に抑制することができる。
【0040】
この結果、摩耗粉による外部環境の汚染を効果的に抑制することができるとともに、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間の作動を確保することができる。
なお、前記転動体の表面あらさRa(σ1 )と、前記可動子あるいは前記支持体の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1 /σ2 )が1 .0 を超え、或いは、前記転動体の表面硬さと前記可動子の表面硬さとの比、および前記転動体の表面硬さと前記支持体の表面硬さとの比が、0.6未満2.0超えの場合は、両者の硬さが大きく違うことになるため、硬さが高い部材によるアブレッシブ摩耗により、硬さが低い部材の方が極端に摩耗し、転動装置の寿命が著しく短くなったり、外部環境を汚染することになる。
【0041】
ここで、より好ましくは、前記転動体の表面あらさRa(σ1 )と、前記可動子あるいは前記支持体の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1 /σ2 )が0.8以下であり、かつ、前記転動体の表面硬さと前記可動子の表面硬さとの比、および前記転動体の表面硬さと前記支持体の表面硬さとの比が、0.7以上1.9以下であり、更に好ましくは、前記転動体の表面あらさRa(σ1 )と、前記可動子あるいは前記支持体の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1 /σ2 )が0.5以下であり、かつ、前記転動体の表面硬さと前記可動子の表面硬さとの比、および前記転動体の表面硬さと前記支持体の表面硬さとの比が、0.8以上1.9以下である。
【0042】
また、酸や強アルカリ溶液中など強い腐食環境下や高温環境下においては、前記可動子および支持体が曲げ強度550MPa以上であるセラミックスで構成されることが好ましい(請求項2)。
前記可動子および支持体を構成するセラミックスの曲げ強度が550MPa未満の場合には、転動装置の作動時に繰返し応力が可動子や支持体の転走面における接触点に負荷されることにより、可動子や支持体の表面に微細なクラックが発生して伝播し、この結果、摩耗粉が多量に発生したり、クラックが可動子や支持体を貫通して割れが生じたりして、転動装置の寿命が短くなる場合がある。
【0043】
なお、可動子、支持体および転動体の全てに、セラミック材料を用いる場合には、軽量で、耐摩耗性に優れ、更には、凝着しにくく、耐食性および耐熱性に優れ、剛性が向上する。
本発明の転動装置においては、可動子、支持体および転動体のうち、少なくとも一つをCr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットで構成することもでき、Niの含有率を10重量%以上、30重量%以下にすることもできる(請求項3)。
【0044】
Niの含有率が10重量%未満の場合には、焼結性が悪く、ポアが著しく多くなるため、強度が極端に低下してクラックが導入・伝播し易くなり、短時間で寿命になったり、比較的軽荷重でも割れが生じてしまう場合がある。
一方、Niの含有率が30重量%を超える場合には、硬さ、即ち、耐摩耗性が著しく低下するため、特に、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、接触点におけるアブレッシブ摩耗や凝着摩耗が急激に増加し、生じた多量の摩耗粉により外部環境を汚染したり、表面あらさが増大して著しく振動が増大し、短時間で寿命になる場合がある。
【0045】
また、超硬合金の場合には、各種酸に対する腐食は結合相の選択的溶解が主であるため、Niの含有率が30重量%を超えると、結合相の溶解が著しく増加するため、極端に耐食性が低下し、寿命が非常に短い場合がある。
Niを結合相とするWC−Ni系超硬合金において、Niの含有率が10重量%以上、30重量%以下である場合には、転動装置の部材として十分な強度、硬さ(耐摩耗性)および耐食性を有することになり、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間の作動を確保することができる。
【0046】
Niの含有率が10重量%以上、30重量%以下であるCr3 C2 −Ni系(請求項4)、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットのビッカース硬さHvは900〜1400程度で従来金属材料(例えば軸受鋼:Hv=700、SUS440CH:Hv=670)と比較して高硬度で、耐熱性に優れるため、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下においても、接触点におけるアブレッシブ摩耗或いは凝着摩耗を効果的に抑制することができ、摩耗粉による外部環境の汚染を効果的に抑制することができると共に、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間の作動を確保することができる。
【0047】
また、Cr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットのビッカース硬さは900〜1400程度であるため、塑性変形が起こりにくく、大きな荷重を支持することができる。
Cr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットの線膨張係数は8.6〜11×10−6/K程度であり、WC−Ni系超硬合金(5×10−6/K程度)より格段に従来金属材料に近いため、温度変化がある環境下においても、軸と転動装置の嵌合部材との間、あるいは、ハウジングと転動装置の嵌合部材との間で、はめあいの変化が少なくクリープや過大な応力が生じにくい。
【0048】
Cr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットの密度は7〜8×103 kg/m3 程度でWC−Ni系超硬合金(14×103 kg/m3 程度)の1/2程度であるため、WC−Ni系超硬合金のように高密度に起因した遠心破壊は非常に起こりにくい。
Cr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットの破壊じん性値は10〜12MPa・m1/2 であり、セラミックス(窒化けい素で7 MPa・m1/2 程度)と比較して高い。そのため、より高い応力下においても、クラックが導入・伝播しにくく、より高い荷重下において長期間の作動を確保することができる。
【0049】
Cr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットは非磁性であるため、転動装置周辺の磁場を乱すことがなく、電子線を利用する計測装置あるいは分析装置や露光装置にも使用することができる。
さらに、転動体がセラミックスで構成される転動装置においては、可動子および支持体をCr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットで構成する場合には、Cr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットはセラミックスと硬さが近いため、接触点におけるアブレッシブ摩耗あるいは凝着摩耗を効果的に抑制することができる。
【0050】
この結果、摩耗粉による外部環境の汚染を効果的に抑制することができるとともに、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境においても、長時間の作動を確保することができる。
因みに、従来では、上記Cr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットは、転動装置の部材としては使用されていない。
【0051】
上述の理由により、請求項1〜請求項4の発明においては、高速回転性能および耐荷重性能に優れ、各種スピンドル、各種ポンプ、半導体製造装置(搬送装置、露光・描画装置、検査装置、など)、各種洗浄装置、工作機械、タービンなどのように、高速、腐食、高温あるいは磁場環境下で使用され、かつ、無潤滑あるいは潤滑条件が厳しい、例えば潤滑油が枯渇しやすく摩耗が生じやすい条件下で使用される場合でも、耐摩耗性に優れ、長期間の作動を確保することができ、外部環境を汚染することが少ない転動装置を提供することができる。
【0052】
また、上記第2の目的を達成するために、請求項5に係る発明は、回転運動または直線運動可能な可動子、この可動子を支持する支持体、これら可動子と支持体との間に介在し、前記可動子の運動に伴って転動する複数個の転動体を具備する転動装置において、
前記可動子、前記支持体および前記転動体のうちの少なくとも一つがNiを結合相とするTiCN−Ni系サーメットで構成され、且つNiを10重量%以上30重量%以下含有することを特徴とする。
【0053】
Niを結合相とするTiCN−Ni系サーメットにおいて、Niの含有量が10重量%未満の場合には、焼結性が悪く、ポアが生じるため、強度が極端に低下し、クラックが導入、伝播し易くなるため、短時間で寿命になったり、比較的軽荷重でも割れが生じてしまう場合がある。
一方、Niの含有量が30重量%を超える場合には、硬さ、即ち、耐摩耗性が著しく低下するため、特に、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、接触点におけるアブレッシブ摩耗あるいは凝着摩耗が急激に増加し、生じた多量の摩耗粉により外部環境を汚染したり、表面あらさが増大し著しく振動が増大し、短時間で寿命になる場合がある。
【0054】
また、サーメット材の場合には、各種酸に対する腐食は結合相の選択的溶解が主であるため、Niの含有量が30重量%を越える場合には、結合相の溶解が著しく増加するため、極端に耐食性が低下し、寿命が非常に短い場合がある。
Niを結合相とするTiCN−Ni系サーメットにおいて、Niの含有量が10重量%以上30重量%以下である場合には、転動装置として十分な強度、硬さ(耐磨耗性)および耐食性を有することになり、潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間作動することができる。
【0055】
また、TiCN−Ni系サーメットの合金中における合金炭素量は、8.0%以上18.0%以下(C/C%)が好ましい(請求項6)。
前記合金炭素量が8.0%以上18.0%以下(C/C%)の場合には、非磁性であり、磁場環境下で使用しても外部の磁場を乱すことがなく、電子線を用いて露光や測定する装置で測定精度や製造精度(描画精度)が低下することがない。
【0056】
また、転動装置として十分な強度と硬さ(耐摩耗性)を有することになり、潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間作動することができる。
前記合金炭素量が8.0%(C/C%)未満の場合も非磁性であるが、Ni3 W3 C相が生じることにより強度と耐摩耗性が低下し、合金炭素量が8.0%以上18.0%以下(C/C%)の場合より耐久性が劣る。
【0057】
また、Niを結合相とするTiCN−Ni系サーメットの破壊靭性値は、10〜20MPa・m1/2 程度であり、セラミックス(窒化珪素で7MPa・m1/2 程度)と比較して非常に高い。
そのため、より高い応力下においても、クラックが導入、伝播しにくく、より高い荷重下において長期間作動することができる。
【0058】
更に、前記TiCN−Ni系サーメットに、Mo2 C、WCおよびCr3 C2 うちの少なくとも一つの元素を単独または複合で添加されるのが好ましい(請求項7)。Mo2 C、Cr3 C2 およびWCを添加すると、さらに、耐食性、強度、硬さが向上する。
上述の理由により、請求項5〜7の発明においては、磁場環境下において、周りに磁場を乱すことがなく、また、腐食環境下で、無潤滑あるいは潤滑条件が厳しく、摩耗が生じやすい条件下においても、耐食性および耐摩耗性に優れ、長期間作動することができ、更には、外部環境を汚染することが少ない転動装置を提供することができる。
【0059】
更に、上記第3の目的を達成するために、請求項8に係る発明は、回転運動または直線運動可能な可動子、この可動子を支持する支持体、これら可動子と支持体との間に介在し、前記可動子の運動に伴って転動する複数個の転動体を具備する転動装置において、
前記可動子、前記支持体および前記転動体が非磁性・導電性材料からなり、且つ少なくとも転動体がNiを結合相とするWC−Ni系超硬合金、TiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットで構成されることを特徴とする。
【0060】
前記WC−Ni系超硬合金としては、WC−Co−Ni系、WC−Cr3 C2 −Mo2 C−Ni系、WC−TiC−TaC−Ni系等がある。
また、前記サーメットとしては、TiC−Ni系、TiC−Mo−Ni系、TiC−Co系、TiC−Mo2 C−Ni系、TiC−Mo2 C−ZrC−Ni系、TiC−Mo2 C−Co系、Mo2 C−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−Co系、TiC−TiN−Mo2 C−Mo2 C−TaC−Ni系、Ti(CN)−WC−Ni系等がある。
【0061】
請求項9に係る発明は、請求項8において、前記可動子および前記支持体がチタン合金からなり、且つ完成品表面の硬さがHv400以上であることを特徴とする。
前記完成品の硬さがHv400未満だと、転動体に対して摩耗が多くなり、摩耗粉が生じるが、Hv400以上の硬さを有すると、摩耗が減少する。
【0062】
チタン合金としては、Ti−Al−V系、Ti一Mo−Zr−Al系、Ti−Mo−Zr系、Ti−V−Cr−Sn−A1系等がある。
更に、可動子および支持体が非磁性、導電性のチタン合金からなり、転動体が非磁性で導電性のあるWC−Ni系超硬合金、TiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットにすることで、非磁性で且つ導電性を有する転動装置を提供することができる。
【0063】
転動体をWC−Ni系超硬合金とした場合には、Niの含有量が6重量%以上15量%以下であることが好ましい(請求項10)。
Niの含有量が6重量%未満の場合には、焼結性が悪く、ポアが著しく多くなるため、強度が極端に低下し、クラックが導入,伝播し易くなり、短時間で寿命になったり、比較的軽荷重でも割れが生じてしまう場合がある。
【0064】
一方、Niの含有量が15重量%を越える場合には、硬さ、即ち、耐摩耗性が著しく低下するため、特に、無潤滑条件下などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、接触点におけるアブレッシブ摩耗あるいは凝着摩耗が急激に増加し、生じた多量の摩耗粉により外部環境を汚染したり、表面粗さ、振動が増大し、短時間で寿命になる場合がある。
【0065】
また、転動体をTiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットとした場合は、Niの含有量が10重量%以上30重量%以下であることが好ましい(請求項11)。
Niの含有量が10重量%未満の場合には、焼結性が悪く、ポアが著しく多くなるため、強度が極端に低下し、クラックが導入、伝播し易くなり、短時間で寿命になったり、比較的軽荷重でも割れが生じてしまう場合がある。
【0066】
一方、Niの含有量が30重量%を越える場合には、硬さ、即ち、耐摩耗性が著しく低下するため、特に、無潤滑条件下などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、接触点におけるアブレッシブ摩耗あるいは凝着摩耗が急激に増加し、生じた多量の摩耗粉により外部環境を汚染したり、表面粗さ、振動が増大し、短時間で寿命になる場合がある。
【0067】
ここで、可動体および支持体に用いる非磁性、導電性材料は特に限定されず、チタン合金(透磁率1.0001)の他に、非磁性超硬合金(透磁率1.0001)、非磁性ステンレス鋼(透磁率1.0002)、ベリリウム銅合金(1.000004)などが例として挙げられる。その中でも非磁性超硬合金を用いる場合には、十分な硬さを有するので好適に使用できる。
【0068】
上述の理由により、請求項8〜11の発明においては、十分な導電性および非磁性を確保し、且つ長寿命を維持することができるので、測長SEMのような計測装置あるいは分析装置、露光装置に、好適に使用し得る転がり軸受及び直動案内装置などの特殊環境用転動装置を提供することができる。
更に、上記第4の目的を違成するために、請求項12に係る発明は、回転運動または直線運動可能な可動子、この可動子を支持する支持体、これら可動子と支持体との間に介在し、前記可動子の運動に伴って転動する複数個の転動体を具備する転動装置において、
前記可動子および前記支持体のうちの少なくとも一方が耐熱性樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、且つ前記転動体がサーメットで構成されていることを特徴とする。
【0069】
上記構成によれば、前記可動子および前記支持体のうちの少なくとも一方を耐熱性樹脂を主成分とする樹脂組成物で構成し、且つ前記転動体をサーメットで構成しているので、耐摩耗性および耐食性が向上するため、水や各種洗浄溶液が軸受内部に浸入して潤滑条件が厳しくなる環境下やドライ環境下においても、自己潤滑性に優れる樹脂組成物が可動子、支持体から転動体に転移して潤滑膜が形成され、長期にわたって転動装置の安定した作動を確保することができる。
【0070】
また、転動体をサーメットで構成しており、サーメットはビッカース硬さでHv1000あるいはそれ以上の硬さを有し、耐摩耗性に優れるため,前記樹脂組成物に繊維状充填材が配合されている場合においても、炭素繊維などの硬さが高い繊維状充填材により、転動体が損傷、摩耗することを効果的に低減し、寿命を格段に長くすることができる。
【0071】
請求項13に係る発明は、請求項12において、転動体がNiを結合相とするサーメットで構成され、且つNiの含有率が10重量%以上30重量%以下であることを特徴とする。
Niの含有率が10重量%未満の場合には、焼結性が悪く、ポアが著しく多くなるため、強度が極端に低下して加工時などにクラックが伝播し、損傷し易くなり、樹脂組成物からなる可動子や支持体が摩耗され、短時間で寿命になる場合がある。
【0072】
一方、Niの含有量が30重量%を超える場合には、硬さ、即ち、耐摩耗性が著しく低下するため、特に無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下では、アブレッシブ摩耗や凝着摩耗が急激に増加し、生じた多量の摩耗粉により外部環境を汚染したり、表面あらさが増大して著しく振動が増大し、短時間で寿命になる場合がある。
【0073】
請求項14に係る発明は、請求項12又は13において、転動体を転動可能に保持する保持器が樹脂組成物で構成されること特徴とする(請求項15)。
前記保持器が樹脂組成物で構成される場合には、保持器を構成する自己潤滑性に優れる樹脂組成物が前記転動体に効果的に移着するため、潤滑性を向上することができ、より長期にわたって安定して作動することができる。
【0074】
なお、転動体にサーメットを用いることで、耐食性および耐熱性に優れ、剛性が向上する。
上述の理由により、請求項12〜14の発明においては、潤滑条件が厳しく潤滑不良になりやすい条件下、あるいは溶液中や飛散してくるような条件下においても、耐食性に優れ摩耗が生じ難いため、半導体液晶パネル、及びハードディスク等の製造工程で用いられる各種洗浄装置や食品機械等のように水または各種洗浄溶液( 酸、アルカリ)中で使用される環境下、水または各種洗浄溶液がミスト状に存在するか、飛散してかかるような環境下、あるいはドライ環境下においても、摩耗が生じ難く、長期間安定して作動することができる転動装置を提供することができる。
【0075】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例を図を参照して説明する。
図1は本発明に係る転動装置の第1の態様の実施の形態である転がり軸受の要部断面図、図2は軸受回転試験機を示す概略図、図3は転動体の表面あらさRa(σ1)と内・外輪の表面あらさRa(σ2)との比(σ1/σ2)が0.20である場合における、転動体の表面硬さと内・外輪の表面硬さとの比と、耐久性(振動寿命)との関係を示すグラフ図、図4は転動体の表面あらさRa(σ1)と内・外輪の表面あらさRa(σ2)との比(σ1 /σ2)と、転動体の表面硬さと内・外輪の表面硬さとの比と、耐久性(振動寿命)との関係を示すグラフ図、図5は回転試験の説明図、図6はNi含有率と耐久性(振動寿命)との関係を示すグラフ図、図7は本発明に係る転動装置の第2の態様の実施の形態である転がり軸受の耐久性とNi含有率との関係を示すグラフ図、図8は本発明に係る転動装置の第3の態様の実施の形態である転がり軸受のトルク寿命とNi含有率との関係を示すグラフ図、図9は本発明に係る転動装置の第4の態様の実施の形態である転がり軸受の耐久性とNi含有率との関係を示すグラフ図である。
【0076】
なお、各実施の形態共に、転動装置として転がり軸受を例に採って説明するが、転がり軸受の他に、直動案内装置やボールねじ装置等の転動装置に本発明を適用してもよいのは勿論である。
まず、図1を参照して、本発明に係る転動装置の第1の態様の実施の形態である転がり軸受から説明すると、この転がり軸受1は、内輪2の軌道溝2aと外輪3の軌道溝3aとの間に複数個の転動体4が冠形の保持器5を介して周方向に転動可能に配設されている。なお、内輪2を回転させる場合は、内輪2が本発明でいう可動子、外輪3が本発明でいう支持体となり、一方、外輪3を回転させる場合は、外輪3が本発明でいう可動子、内輪2が本発明でいう支持体となる。
【0077】
ここで、この実施の形態では、内輪2、外輪3および転動体4の内の少なくとも転動体4が超硬合金、サーメットあるいはセラミックスで構成される場合において、転動体4の表面あらさRa(σ1 )と、内輪2あるいは外輪3の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)を1 .0以下、好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.5以下とし、且つ、転動体4の表面硬さと内輪2の表面硬さとの比、および転動体4の表面硬さと外輪3の表面硬さとの比を0.6以上2.0以下、好ましくは0.7以上1.9以下、更に好ましくは0.8以上1.9以下としている。
【0078】
これにより、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下においても、接触点におけるアブレッシブ摩耗を効果的に抑制することができ、この結果、摩耗粉による外部環境の汚染を効果的に抑制することができるとともに、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間作動することができる。
【0079】
また、酸や強アルカリ溶液中など強い腐食環境下や高温環境下においては、内輪2および外輪3を曲げ強度550MPa以上であるセラミックスで構成することにより、軸受回転時に繰返し応力が内輪2や外輪3の転走面における接触点に負荷されても内輪2や外輪3の表面に微細なクラックが発生して伝播するのを防止することができる。
【0080】
【実施例】
転がり軸受としての耐久性を評価するために、図1に示す転がり軸受(型番6001:内径φ12mm、外径φ28mm、幅8mm)を複数個(実施例1〜18および比較例1〜8)作製した。
実施例1〜18および比較例1〜8に使用した原材料を一括して示すと、以下の通りである。
【0081】
(1) 窒化けい素系1(日本タングステン製NPN−3;Hv=1850、曲げ強度=1300MPa)
(2) ジルコニア系1(京セラ製Z703;Hv =1350、曲げ強度=1960MPa)
(3) ジルコニア系2(日本タングステン製NPZ−2;Hv=1450、曲げ強度=1700MPa)
(4) アルミナ系1(サンゴバンノ―トン製AZ−93;Hv=1600、曲げ強度=1180MPa)
(5) アルミナ系2(東芝製AL−16;Hv=1750、曲げ強度=320MPa)
(6) 炭化けい素系1(日本タングステン製NPS−1;Hv=2400、曲げ強度=560MPa)
(7) 炭化けい素系2(三井鉱山マテリアル製MSC;Hv=2000、曲げ強度=490MPa)
(8) 超硬系1(日本タングステン製WC−Ni−Cr系NM18;Hv =1050)
(9) 超硬系2(日本タングステン製WC−Ni−Cr系NR11;Hv =1450)
(10)超硬系3(日本タングステン製WC−TiC−TaC系RCCL;Hv =2000)
(11)超硬系4(ダイジェット工業製WC−Co 、Ni系FB01;Hv =2800)
(12)超硬系5(住友電気工業製WC−Ni−Cr系M61U;Hv =1250)
(13)サーメット系1(日本タングステン製TiC−TaN−Ni−Mo 系DUX40;Hv=1450)
(14)サーメット系2(旭ガラス製ホウ化物系UD−II35T;Hv =1000)
(15)SUS440C(Hv =670)
(16)ベリリウム銅(Hv =400)
【0082】
なお、ビッカース硬さHvは、転がり軸受を構成する部材の平坦面を対象に、JIS R1610に基づいて測定した値を用い、曲げ強度については、JIS
R1601に基づいて測定した値を用いた。
耐久性の評価試験は、図2に示す日本精工株式会社製軸受回転試験機を用い、無潤滑下で回転試験を行ない、振動値を基準として耐久性を評価した。
この軸受回転試験機は、モータに連結継ぎ手を介して連結されたスピンドルのシャフトに試験軸受としての転がり軸受の内輪(内輪回転)を嵌合して該転がり軸受を容器内の水に浸漬させており、外輪にはワイヤーおよび滑車を介して錘によりラジアル荷重が負荷され、また、外輪にはプレートを介して振動計が取り付けられている。
【0083】
試験条件は、回転速度:5000min−1、ラジアル荷重:980N、温度:常温とし、試験軸受の保持器には冠型ふっ素系樹脂保持器を用いた。そして、振動計による振動値が初期値の3倍に上昇した時点を転がり軸受の寿命とした。
なお、各実施例1〜18および比較例1〜8における転がり軸受の耐久性(振動寿命)は、比較例1の耐久性(振動寿命)を1とした相対値で示す。
試験結果を表1および表2に示す。ここで、表1については、転動体の表面粗さRa(σ1)と内・外輪の表面粗さRa(σ2)との比(σ1/σ2)は、いずれの場合も0.2とした。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
表1および表2から明らかなように、内輪2、外輪3および転動体4の内の少なくとも転動体4が超硬合金、サーメットあるいはセラミックスで構成される場合において、転動体4の表面あらさRa(σ1 )と、内輪2あるいは外輪3の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)が1 .0以下であり、且つ、転動体4の表面硬さと内輪2の表面硬さとの比、および転動体4の表面硬さと外輪3の表面硬さとの比が0.6以上2.0以下である実施例1〜18は、転動体4の表面硬さと内輪2の表面硬さとの比、および転動体4の表面硬さと外輪3の表面硬さとの比が0.6未満又は2.0を超える比較例1〜4、並びに転動体4の表面あらさRa(σ1 )と、内輪2あるいは外輪3の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)が1 .0を超える比較例5〜8と比較して耐久性が大幅に向上しているのが判る。
【0087】
特に、転動体4の表面あらさRa(σ1 )と、内輪2あるいは外輪3の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)が0.5以下であり、且つ、転動体4の表面硬さと内輪2の表面硬さとの比、および転動体4の表面硬さと外輪3の表面硬さとの比が0.8以上1.9以下であり、内輪2および外輪3がセラミックスの場合には、セラミックスの曲げ強度が550MPa以上である実施例1〜3、実施例5〜10、実施例14〜15および実施例17の耐久性が優れているのが判る。
【0088】
実施例11〜13は、σ1/σ2が0.5以下であり、転動体4の表面硬さと内輪2の表面硬さとの比、および転動体4の表面硬さと外輪3の表面硬さとの比が0.6以上2.0以下であるが、内輪2および外輪3を構成するセラミックスの曲げ強度が550MPa未満であるため、実施例1〜10、14〜18と比較すると耐久性がやや劣るものの、比較例1〜8よりは長い耐久性を有する。
【0089】
次に、図3に転動体の表面硬さと内・外輪の表面硬さとの比と耐久性(振動寿命)との関係を示す。なお、試験軸受の保持器には冠型フッ素系樹脂保持器を用いた。
また、転がり軸受の耐久性(振動寿命)は、比較例1の耐久性(振動寿命)を1とした相対値で示す。ここで、前記転動体の表面あらさRa(σ1)と、前記内・外輪の表面あらさRa(σ2)との比(σ1/σ2)はいずれの場合も0.20とした。
【0090】
図4に、転動体の表面あらさRa(σ1)と内・外輪の表面あらさRa(σ2)との比(σ1 /σ2)、および転動体の表面硬さと内・外輪の表面硬さとの比をそれぞれ変化させた場合において、転動体の表面あらさRa(σ1)と内・外輪の表面あらさRa(σ2)との比(σ1 /σ2 )と、転動体の表面硬さと内・外輪の表面硬さとの比と、耐久性(振動寿命)との関係を示す。ここで、試験軸受の保持器には冠型フッ素系樹脂保持器を用いた。
【0091】
なお、転がり軸受の耐久性(振動寿命)は、比較例1の耐久性(振動寿命)を1とした相対値とし、相対寿命が1未満の場合、相対寿命が1以上2.5未満の場合、相対寿命が2.5以上5未満の場合、相対寿命が5以上10未満の場合、相対寿命が10以上の場合に分別して表示した。
図3および図4からも明らかなように、本発明例は従来例と比べて、無潤滑のような潤滑条件が厳しい環境下においても長寿命を有することが判る。
【0092】
次に、本発明の他の実施例19〜26および比較例9〜11に使用した原材料を一括して示すと、以下の通りである。
本発明における実施例19〜22で用いたCr3 C2 −Ni系サーメットは、TiCN(粒度1〜1.5μm)を30重量%、Ni(粒度1〜1.5μm)を15重量%およびCr3 C2 (粒度2〜2.5μm)を残部とする割合で原料粉末を混合し、金型プレスで成形した。
【0093】
次に、この成形体を脱脂してから、真空炉内で焼結(1350〜1550°C程度の温度)し、研削、研磨して供試体を作成した。また、セラミックスとしては、窒化けい素(日本特殊陶業製EC−141:Hv=1500)を使用した。更に、TiCN−Ni系サーメット1,2(日本タングステン製TiC−TaN−Ni−Mo 系DUX40;Hv=1450,日本タングステン製TiC−TaN−Ni−Mo 系DUX30;Hv=1700)およびホウ化物系サーメット(旭ガラス製ホウ化物系UD−II50T;Hv =1100)により供試体を作成した。
【0094】
一方、比較例9〜11として、超硬(富士ダイス製WC−Ni 系M45;Hv=1100)、SUS440C(Hv=670)およびベリリウム銅(Hv=400)により実施例と同じ寸法形状および表面あらさの供試体を作成した。
なお、ビッカース硬さHvは、転動装置を構成する材料の平坦面を対象に、JIS R1610に基づいて測定した値を用いる。
【0095】
転がり軸受としての耐久性を評価するために、図1と同一構造の転がり軸受(型番6000:内径φ10mm、外径φ25mm、幅8mm)を表3に示す材料を用いて作成した。ここで、表3については、転動体の表面粗さRa(σ1)と内・外輪の表面粗さRa(σ2)との比(σ1/σ2)は、いずれの場合も0.2とした。
【0096】
耐荷重性は、日本精工性軸受回転試験機を用いて評価し、常温、無潤滑下、10%塩酸水溶液中で回転速度を1000min−1と一定とし、ラジアル荷重20Nから試験を開始し、ラジアル荷重を3時間毎20Nずつ増加していき、振動値が急激に増加した時点のラジアル荷重を限界荷重として、耐荷重性を評価する基準値とした。これらの結果を表3にまとめて示す。なお、各実施例および比較例における転がり軸受の耐荷重性(限界荷重)は、比較例9の耐荷重性(限界荷重)を1とした相対値で示す。
【0097】
耐久性の評価試験は、耐荷重性の評価試験に用いたものと同じ日本精工製軸受回転試験機を用いて、常温、無潤滑下、10%塩酸水溶液中で回転試験を行い、振動値を基準として耐久性を評価した。試験条件は、回転速度1000min−1、ラジアル荷重196Nである。
いずれの場合も、保持器には冠型ふっ素系樹脂保持器を用いた。ここでは、振動値が初期値の3倍に上昇した時点を転がり軸受の寿命とした。これらの結果を表3にまとめて示す。なお、各実施例および比較例における転がり軸受の耐久性(振動寿命)は比較例9の耐久性(振動寿命)を1とした相対値で示す。また、非磁性が要求される環境下で好適に使用し得るか評価するために、図5に示す回転試験を行った。
【0098】
図5では、回転軸11に取り付けられた試験軸受12に永久磁石13を近づけた状態で該試験軸受12を回転させ、その際に生じる磁束密度の変化をガウスメータ14で測定することにより、軸受が回転する際の周辺磁場への影響を評価した。結果を併せて表3に示す。
なお、軸受を回転させた際に生じる磁束密度の変化が0.1mT以下であるものを非磁性試験合格とした。非磁性の場合は○、磁性の場合は×で表示している。
【0099】
【表3】
【0100】
表3から明らかなように、本発明の実施例の転がり軸受は、比較例と比べて、無潤滑下、腐食環境下のような潤滑条件が非常に厳しい環境下においても、非磁性であり、長寿命を有することが判る。
また、内・外輪および転動体の少なくともいずれか一つをCr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットで作成する実施例の場合には、内・外輪および転動体の全てがWC−Ni系超硬合金で作成する比較例9と比較して、耐荷重性に優れ、長寿命であることが判る。
次に、本発明の他の実施例27〜29および比較例12〜15に使用した原材料を一括して示すと、表4の通りである。
【0101】
【表4】
【0102】
本発明における実施例27〜29は、Ni(粒度0.5〜2.0μm)、TiCN(粒度1.0〜2.0μm)、Cr3 C2 (粒度0.5〜2.0μm)、Mo2 C(粒度0.5〜2.0μm)、WC(粒度0.5〜2.0μm)の各原料粉末を混合し、金型プレスで成形した。次に、この成形体を脱脂してから、真空炉内で焼結(1350〜1550°C程度の温度)し、研削、研磨して供試体を作成した。
【0103】
転がり軸受としての耐久性を評価するために、図1と同一構造の転がり軸受(型番6000:内径φ10mm、外径φ26mm、幅8mm)を表4に示す材料を用いて作成した。ここで、表4については、転動体の表面粗さRa(σ1)と内・外輪の表面粗さRa(σ2)との比(σ1/σ2)は、いずれの場合も0.2とした。
【0104】
耐久性の評価試験は、図2に示す日本精工製軸受回転試験機を用いて、塩酸1規定水溶液中で回転試験を行い、振動値を基準として耐久性を評価した。試験条件は、回転速度5000min−1、ラジアル荷重78.4Nである。
いずれの場合も、保持器には冠型ふっ素系樹脂保持器を用いた。ここでは、振動値が初期値の3倍に上昇した時点を転がり軸受の寿命とした。これらの結果を表4にまとめて示す。なお、各実施例および比較例における転がり軸受の耐久性(振動寿命)は比較例12の耐久性(振動寿命)を1とした相対値で示す。
【0105】
さらに、TiCN−Mo2 C−WC−Cr3 C2 −Ni系サーメットにおいて、Mo2 Cを15重量%、WCを15重量%、Cr3 C2 を1重量%と一定とし、Ni含有率を変化させた(残部がTiCNとなる)TiCN−Mo2 C−WC−Cr3 C2 −Ni系サーメットで内、外輪を形成したとき、或いはCr3 C2 −TiCN−Ni系サーメットにおいて、TiCNを20重量%と一定とし、Ni含有率を変化させた(残部がCr3 C2 となる)Cr3 C2 −TiCN−Ni系サーメットで内、外輪を形成したときのNi含有率と耐久性(振動寿命)との関係を図6に示す。
【0106】
なお、転動体は窒化けい素球であり、保持器にはふっ素系樹脂組成物(PVdF+20体積%チタン酸カリウム繊維)製冠型保持器を用いた。試験条件は表4の場合と同様である。また、図6中において、曲線1はTiCN−Mo2 C−WC−Cr3 C2 −Ni系サーメットの場合に関するデータを示し、曲線2はCr3 C2 −TiCN−Ni系サーメットの場合に関するデータを示す。
【0107】
表4に示されるように、本発明の実施例は、比較例に比べて、特に腐食環境下といった苛酷な条件においても、長寿命を有することが判る。
また、図6より、TiCN−Mo2 C−WC−Cr3 C2 −Ni系サーメットにおいては、Ni含有率が10重量%未満或いは30重量%を超える場合には、耐久性が著しく低下し、本発明の実施例であるNi含有率が10重量%以上、30重量%以下の範囲においては耐久性が優れることが判る。
【0108】
さらに、Cr3 C2 −TiCN−Ni系サーメットにおいても、Ni含有率が10重量%未満或いは30重量%を超える場合には、耐久性が著しく低下し、本発明の実施例であるNi含有率が10重量%以上、30重量%以下の範囲においては耐久性が優れることが判る。
なお、本発明におけるCr3 C2 −Ni系、TiC−Ni系、TiCN−Ni系サーメットは特に限定されない。
【0109】
例えば、本材料の原料粉末としては、Cr3 C2 (粒度0.5〜5.0μm)TiCN(粒度0.5〜2.0μm)およびNi(粒度0.5〜2.0μm)を用いる。これらの粉末を以下の組成で混合する。
即ち、TiCN:0〜30重量%、Ni:10〜30重量%、Cr3 C2 :残部とする割合で原料粉末を混合する。前記原料材料を所定の組成になるように均一に混合した後、成形体の強度を維持するためのバインダーを少量添加し、型に入れ、油圧或いは機械プレスで成形する。最終形状によっては、その後、更に旋盤等で機械加工してもよい。
【0110】
次に、この成形体を脱脂してから、真空炉内で焼結(1350〜1550°C程度の温度)する。更に、強度を必要とする場合には、その後、熱間静水圧加圧焼結(HIP)処理を行うことが好ましい。焼結後は、所定の寸法形状や表面粗さにするために、研削や研磨を行う。
なお、本発明におけるセラミックス、サーメットあるいは超硬合金は特に限定されない。
【0111】
サーメットあるいは超硬合金とは、周期律表で第IVa、Va、VIa族に属する9種類の金属(W、Mo、Cr、Ta、Nb、V、Hf、Zr、Ti)の炭化物粉末を鉄、コバルト、ニッケルなどの鉄族金属を用いて焼結結合した合金である。
セラミックスとしては、窒化けい素(Si3 N4 )系、ジルコニア(ZrO2 )系、アルミナ(Al2 O3 )系、炭化けい素(SiC)系、窒化アルミ(AlN)系、炭化ホウ素(B4 C)系、ホウ化チタン(TiB2 )系、窒化ホウ素(BN)系、炭化チタン(TiC)系、窒化チタン(TiN)系、あるいは、これらを複合させたセラミックス系複合材料などを例示できる。
【0112】
また、本発明に用いるセラミック材料は、破壊じん性や機械的強度などを向上させるために、繊維状充填材を配合することができる。
繊維状充填材としては、特に限定されないが、炭化ケイ素ウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、アルミナウィスカー、窒化アルミニウムウィスカー等を例示できる。
【0113】
超硬合金としては、WC−Co系、WC−Cr3 C2 −Co系、WC−TaC−Co系、WC−TiC−Co系、WC−NbC−Co系、WC−TaC−NbC−Co系、WC―TiC−TaC−NbC−Co系、WC−TiC−TaC−Co系、WC−ZrC−Co系、WC−TiC−ZrC−Co系、WC−TaC−VC−Co系、WC−Cr3 C2 −Co系、WC−TiC−Cr3 C2 −Co系、WC−TiC−TaC系などがある。
【0114】
WC−Co系の代表的な組成は、W:Co:C=70.41〜91.06:3.0〜25.0:4.59〜5.94である。
WC−TaC−NbC−Co系の代表的な組成は、W:Co:Ta:Nb:C=65.7〜86.3:5.8〜25.0:1.4〜3.1:0.3〜1.5:4.7〜5.8である。
【0115】
WC−TiC−TaC−NbC−Co系の代表的な組成は、W:Co:Ta:Ti:Nb:C=65.0〜75.3:6.0〜10.7:5.2〜7.2:3.2〜11.0:1.6〜2.4:6.2〜7.6である。
WC−TaC−Co系の代表的な組成は、W:Co:Ta=53.51〜90.30:3.5〜25.0:0.30〜25.33である。
【0116】
WC−TiC−Co系の代表的な組成は、W:Co:Ti=57.27〜78.86:4.0〜13.0:3.20〜25.59である。
WC−TiC−TaC−Co系の代表的な組成は、W:Co:Ta:Ti:C=47.38〜87.31:3.0〜10.0:0.94〜9.38:0.12〜25.59:5.96〜10.15である。
【0117】
サーメットとしては、TiC−Ni系、TiC−Mo−Ni系、TiC−Co系、TiC−Mo2 C−Ni系、TiC−Mo2 C−ZrC一Ni系、TiC−Mo2 C−Co系、Mo2 C−Ni系、Ti(C,N)−Mo2 C−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−Co系、TiC−TiN−Mo2 C−TaC−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−WC−TaC−Ni系、TiC−WC−Ni系、Ti(C,N)−WC−Ni系、TiC−Mo系、Ti(C,N)−Mo系、ホウ化物系(MoB−Ni系、B4 C/(W,Mo)B2 系など)などがある。
【0118】
ここで、Ti(C,N)−Mo2 C−Ni系、Ti(C,N)−WC−Ni系、あるいは、Ti(C,N)−Mo系は、TiC−Mo2 C−Ni系、TiC−WC−Ni系、あるいはTiC−Mo系を窒素ガス(N2 )中で焼結した合金である。
サーメットの代表的な組成は、TiC−30%Mo2 C−20%Ni、TiC−19%Mo2 C−24%Ni、TiC−8%Mo2 C−15%Ni、Ti(C,N)−25%Mo2 C−15%Ni、TiC−14%TiN−19%Mo2 C−24%Ni、TiC0.7 N0.3 −11%Mo2 C−24%Ni、TiC0.7 N0.3 −19%Mo2 C−24%Ni、TiC0.7 N0.3 −27%Mo2 C−24%Ni、TiC−20%Mo−15%Ni、TiC−30%Mo−15%Niなどである。
【0119】
更に、半導体製造プロセスで利用される測長SEMのような計測・分析装置や電子ビームを用いた露光装置などのように、非磁性が要求される用途では、前記可動子、支持体および転動体が非磁性材料で構成されることが好ましい。
可動子、支持体および転動体に用いる非磁性材料は特に限定されず、各種セラミックスの他に非磁性超硬合金(例えば透磁率1.0002以下)、チタン合金(例えば透磁率1.0001以下)、非磁性サーメット(例えば透磁率1.002〜1.04程度)、非磁性ステンレス鋼(例えば透磁率1.002〜1.04程度)などが例として挙げられる。
【0120】
非磁性超硬合金としては、WC−Ni系、WC−Mo2 C−Ni系、WC−Cr3 C2 −Ni系、WC−Cr3 C2 −VC−Ni系、WC−Cr3 C2 −Mo2 C−Ni系、WC−Ti(C,N)−TaC系、WC−Ti(C,N)系、Cr3 C2 −Ni系などを例示できる。
非磁性サーメットとしては、TiC−Ni系、TiC−Mo−Ni系、TiC−Mo2 C−Ni系、TiC−Mo2 C−ZrC−Ni系、Mo2 C−Ni系、Ti(C,N)−Mo2 C−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−TaC−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−WC−TaC−Ni系、TiC−WC−Ni系、Ti(C,N)−WC−Ni系、ホウ化物系(MoB−Ni系,B4 C/(W,Mo)B2 系など)などを例示できる。
【0121】
非磁性ステンレス鋼としては、SUS316LやSUS304に代表されるマルテンサイト系ステンレス鋼が例示できる。
次に、本発明に係る転動装置の第2の態様の実施の形態である転がり軸受を図1を流用して説明する。
本発明に係る転動装置の第2の態様の実施の形態である転がり軸受1は、内輪2、外輪3および転動体4のうちの少なくとも一つがNiを結合相とするTiCN−Ni系サーメットで構成され、且つNiの含有率が10重量%以上30重量%以下とされている。
【0122】
また、TiCN−Ni系サーメットの合金炭素量(炭化物、炭窒化物中に換算した炭素量:C/C%)が8.0%以上18.0%以下とされ、前記TiCN−Ni系サーメットに、Mo2 C、WCおよびCr3 C2 うちの少なくとも一つの元素が単独または複合で添加されている。
これにより、磁場環境下において、周りに磁場を乱すことがなく、また、腐食環境下で、無潤滑あるいは潤滑条件が厳しく、摩耗が生じやすい条件下においても、耐食性および耐摩耗性に優れ、長期間作動することができ、更には、外部環境を汚染することが少ない転がり軸受を提供することができる。
【0123】
【実施例】
転がり軸受としての耐久性を評価するために、図1と同一構造の転がり軸受(型番6000:内径φ26mm、幅8mm)を表5の材料を用いて複数個(実施例30〜35および比較例16〜18)作製した。
実施例30〜35および比較例16から18に使用した原材料を一括して示すと、以下の通りである。
【0124】
Ni(粒度1.0〜1.5μm)、Cr3 C2 (粒度0.5〜2.0μm)、Mo2 C(粒度0.5〜2.0μm)、WC(粒度1.0〜2.0μm)、TiCN(粒度0.5〜2.0μm)の原料粉末を所定量混合し、金型プレスで成形した後、この成形体を脱脂してから、真空炉内で焼結(1350〜1550°C程度の温度)し、研削、研磨して供試体を作製した。
【0125】
合金炭素量の調整は、タングステンあるいはカーボンブラックを添加して行った。合金中における炭素量の同定は、粉砕、粉末状にした合金を酸素気流中、高温で燃焼させて発生するガス(COガス)濃度を赤外線吸収法で測定することにより行った。
耐久性の評価試験は、図2に示す日本精工株式会社製軸受回転試験機を用いて、塩酸1規定水溶液中で、回転試験を行ない、振動値を基準として耐久性を評価した。試験条件は、回転速度:3000min−1、ラジアル荷重:9Nである。いずれの場合も、保持器5には冠型ふっ素系樹脂保持器を用いた。ここでは、振動値が初期値の3倍に上昇した時点を転がり軸受の寿命とした。
【0126】
これらの結果を表5にまとめて示す。なお、各実施例および比較例における転がり軸受の耐久性(振動寿命)は、比較例16の耐久性(振動寿命)を1とした相対値で示す。また、透磁率計を用いて、非磁性かどうかを測定した結果を併せて表5に示す。非磁性の場合には○、磁性の場合には×で表示している。
【0127】
【表5】
【0128】
表5から明らかなように、本発明の実施例30〜35は、比較例16〜18と比べて、特に腐食環境下といった苛酷な条件においても、耐久性に優れ、長寿命であることがわかる。また、実施例33は、Ni含有率は範囲内であるが、合金炭素量が適正範囲より少ないため、耐久性が低下することがわかる。さらに、実施例34および35は、Ni含有率は範囲内であるが、合金炭素量が適正範囲より多いため、非磁性ではなくなり、耐久性も低下することがわかる。
【0129】
次に、TiCN−Mo2 C−WC−Cr3 C2 −Niサーメットにおいて、Mo2 Cを15重量%、WCを10重量%、Cr3 C2 を1重量%一定とし、Ni含有量を変化させたTiCN−Mo2 C−WC−Cr3 C2 −Niサーメットで内輪2および外輪3を形成したときのNi含有率と耐久性(軸受寿命)との関係を図7に示す。なお、合金炭素量は10.0%(C/C%)となるように調整した。
【0130】
また、転動体4は窒化けい素球とし、保持器5にはふっ素系樹脂組成物(PVdF+20体積%チタン酸カリウム繊維)製冠型保持器を用いた。試験条件は表5の条件と同じである。
図7より、Ni含有率が10重量%未満、あるいは30重量%を超える場合には、耐久性が著しく低下し、本発明範囲であるNi含有率10重量%以上30重量%以下の範囲においては耐久性に優れることがわかる。
【0131】
なお、本発明におけるNiを結合相とするTiCN−Ni系サーメットは、例えば、前記原料材料を所定の組成になるように均一に混合した後、成形体の強度を維持するためのバインダーを少量添加し、型に入れ、油圧あるいは機械プレスで成形する。最終形状によっては、その後、さらに旋盤などで機械加工してもよい。
【0132】
次に、この成形体を脱脂してから、真空炉内で焼結(1350〜1550°C程度の温度)するが、さらにより強度を必要とする場合には、その後、熱間静水圧焼結(HIP)処理を行うのが好ましい。焼結後は、所定の寸法形状や表面粗さにするために、研削や研磨を行う。
また、本発明のNiを結合相とするTiCN−Ni系サ−メットにおいては、磁場環境下で使用する場合には、結合相であるNi中にWが多く固溶することが好ましい。
【0133】
結合相であるNi中に炭窒化物が多く固溶する場合には非磁性となり、磁場環境下で使用しても外部の磁場を乱すことがなく、電子線を用いて露光や測定する装置で測定精度や製造精度 (描画精度)が低下することがない。
低炭素合金ほど、即ち、合金中における合金炭素量がある程度少ない範囲の方が結合相であるNi中における炭窒化物の固溶量が多くなるため非磁性合金になりやすいが、低炭素合金の場合でも炭素量がある適正値よりも少ない場合には、θ相(Ni3 W3 C)が析出し強度が著しく低下し、クラックが導入、伝播し易くなるため、短時間で寿命になったり、比較的軽荷重でも割れが生じてしまう場合がある。
【0134】
一方、合金炭素量がある適正値を超える場合には、強磁性となり磁場中で使用すると磁場を乱したりして、測定精度や製造精度(描画精度)が低下してしまう場合がある。また、合金炭素量がある適正値を超える場合には、遊離炭素が生じるため、強度が低下し短時間で寿命になる場合がある。
Niを結合相とするTiCN−Ni系サーメットにおいて、非磁性であり、なおかつ、転動装置として十分な強度を有し、非磁性を達成するために適正な合金炭素量は、8%(C/C%)以上18%(C/C%)以下が好ましい。
【0135】
さらに、Niを結合相とするTiCN−Ni系サーメットにおいては、Mo2 C、Cr3 C2 およびWCを添加すると、さらに、耐食性、強度、硬さが向上する。Mo2 CおよびWCを添加する場合には、含有量は、各々25重量%以下であることが好ましい。
Cr3 C2 を添加する場合は、含有量はは2重量%以下が好ましい。Mo2 C、WCあるいはCr3 C2 を上記の範囲を超えて添加する場合には、それぞれの炭化物が偏析し、強度が著しく低下するため短時間で寿命になったり、比較的軽荷重でも割れが生じてしまう場合がある。
【0136】
これに対し、WC、Mo2 C、あるいはCr3 C2 を上記の範囲内で添加する場合には、TiCN粒子の粒成長を抑制するとともに、炭化物が結合相中に固溶するため、耐食性、強度および硬さが向上し、より長期間、腐食環境下で作動することができる。
次に、本発明に係る転動装置の第3の態様の実施の形態である転がり軸受を図1を流用して説明する。
【0137】
本発明に係る転動装置の第3の態様の実施の形態である転がり軸受1は、内輪2、外輪3および転動体4が非磁性・導電性材料からなり、且つ転動体4がNiを結合相とするWC−Ni系超硬合金、TiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットで構成されている。
また、内輪2および外輪3がチタン合金からなり、且つ完成品表面の硬さがHv400以上とされている。
【0138】
更に、転動体4をWC−Ni系超硬合金とした場合には、Niの含有量が6重量%以上15量%以下とされ、転動体4をTiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットとした場合は、Niの含有量が10重量%以上30重量%以下とされている。
これにより、十分な導電性および非磁性を確保し、且つ長寿命を維持することができ、測長SEMのような計測装置あるいは分析装置、露光装置に、好適に使用し得る特殊環境用の転がり軸受を提供することができる。
【0139】
【実施例】
表6に、Ti−15Mo−5Zr(硬さHv450)を軌道輪とし、WC−Ni系超硬合金およびTiCN−Ni系サーメットを転動体にした実施例36〜41の転がり軸受と、Ti−6Al−4V合金(硬さHv300)を軌道輪とし、窒化けい素を転動体にした比較例19の転がり軸受における軸受導電率性を示す。
【0140】
【表6】
【0141】
本発明の実施例36〜41は、比較例19と比較して105 〜1015倍の軸受導電率を示し、電気的に接地することがわかる。
次に、実施例36〜41および比較例19について、図2に示す日本精工株式会社製軸受回転試験機により下記の条件で寿命試験を行った。
転がり軸受は、図1と同一構造で日本精工株式会社製の深溝玉軸受用の内・外輪(型番608:内径8mm:外径22mm:幅7mm)に比較例および実施例の転動体を組み込んだものを使用した。いずれの場合も、保持器には、フッ素系樹脂で製作した冠型保持器を用いた。
【0142】
試験条件は、温度:常温、雰囲気:真空10−3Pa、回転速度:200min−1、アキシアル荷重:490Nとし、基準のトルク値(初期値の3倍)に達するまでの軸受の回転時間を寿命とした。
図8に結果を示す。なお、図8における寿命値は、比較例19の寿命を1とした相対値で示した。
【0143】
図8から明らかなように、転動体をWC−Ni系超硬合金とした場合には、Niの含有量が6重量%以上15量%以下、転動体をTiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットとした場合は、Niの含有量が10重量%以上30重量%以下で高い軸受寿命値を示し、Niの含有量がこれらの範囲から外れると、寿命は低下することが分かる。
【0144】
次に、本発明に係る転動装置の第4の態様の実施の形態である転がり軸受を図1を流用して説明する。
本発明に係る転動装置の第4の態様の実施の形態である転がり軸受1は、内輪2および外輪3のうちの少なくとも一方が耐熱性樹脂を主成分とする樹脂組成物で構成され、転動体4がNiを結合相とするサーメットで構成され、且つNiの含有率が10重量%以上30重量%以下とされ、保持器5が樹脂組成物で構成されている。
【0145】
これにより、潤滑条件が厳しく潤滑不良になりやすい条件下、あるいは溶液中や飛散してくるような条件下においても、耐食性に優れ摩耗が生じ難いため、半導体液晶パネル、及びハードディスク等の製造工程で用いられる各種洗浄装置や食品機械等のように水または各種洗浄溶液( 酸、アルカリ)中で使用される環境下、水または各種洗浄溶液がミスト状に存在するか、飛散してかかるような環境下、あるいはドライ環境下においても、摩耗が生じ難く、長期間安定して作動することができる転がり軸受を提供することができる。
【0146】
【実施例】
転がり軸受としての耐久性を評価するために、図1と同一構造の転がり軸受(型番6000:内径1 0 mm、外径26mm、幅8mm)を表7に示す材料を用いて複数個(実施例42〜51、比較例20および21)作製した。
実施例42〜51および比較例20,21に使用した材料を一括して示すと、以下の通りである。
【0147】
(1) サーメット系1( 日本タングステン製TiC−TaN−Ni−Mo 系DUX40)
(2) サーメット系2( 日本タングステン製TiC−TaN−Ni−Mo 系DUX30)
(3) PPS( フィリップスペトローリアム社製ポリフェニレンサルファイド樹脂: ライトンR−6)
(4) PVDF( 呉羽化学工業社製:クレハKFポリマーT−#1000)
(5) TPI(三井東圧化学社製:オーラム 400)
(6) PEEK(ビクトレックス社製:ビクトレックスPEEK 150G)
(7) PEEK−PBI(ヘキストーセラニーズ社製:セラゾール TU−60)
(8) PEN(出光マテリアル社製:ID300)
(9) 炭素繊維(呉羽化学工業社製:クレカチョップM−102S、繊維径14.5μm、長さ0.2mm)
(10)チタン酸カリウムウィスカー(大塚化学社製:ティスモD−101、径0 .3 〜0.6μm、長さ10〜20μm)
(11)アラミド繊維(群栄化学工業社製カイノール繊維KF02BT、径14μm、長さ0.2mm)
(12)微細炭素繊維(昭和電工社製:気相法炭素繊維VGCF、繊維径100〜200nm、長さ10〜20μm)
(13)黒鉛(中越黒鉛工業所社製:CLX、平均粒径4.5μm)
【0148】
また、Cr3 C2 系サーメットは、TICN(粒度1〜1.5μm)を30重量%、Ni(粒度1〜1.5μm)を15重量%およびCr3 C2 (粒度2〜2.5μm)を残部とする割合で原料粉末を混合し、金型プレスで成形した後、この成形体を脱脂してから、真空炉内で焼結(1350〜1550°C程度の温度)し、研削、研磨して供試体を作製した。
【0149】
転がり軸受としての耐久性の評価には、図2に示す日本精工製軸受回転試験機を用いて、純水の噴霧環境下で回転試験を行った。転がり軸受の耐久性は振動値を基準として評価した。試験条件は、回転速度:1000min−1、ラジアル荷重:49N、温度:常温である。
いずれの場合も、保持器は射出成形により作製した冠型形状のテトラフルオロエチレン・ エチレン共重合体(ETFE)樹脂(80体積%)にチタン酸カリウムウィスカー(20体積%)を配合した樹脂組成物製保持器を用いた。ここでは、振動値が初期値の3倍に上昇した時点を転がり軸受の寿命とした。
これらの結果を表7にまとめて示す。なお、各実施例およぴ比較例における転がり軸受の耐久性は、比較例20の耐久性を1とした相対値で示す。
【0150】
【表7】
【0151】
図9に、TiCN−Ni系サーメットおよびCr3 C2 系サーメットにおいて、Ni含有率を変化させた場合におけるNi含有率と耐久性との関係を示す。
図9において、いずれの場合も、内・外輪をPVdF(80体積%)に炭素繊維(20体積%)を配合した樹脂組成物で作成し、保持器には射出成形により作成した冠型形状のテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)樹脂(80体積%)にチタン酸カリウムウィスカー(20体積%)を配合した樹脂組成物製保持器を用いた。
【0152】
図9より、サーメットでは、Ni含有率が10重量%未満あるいは30重量%を超える場合には耐久性が著しく低下するのに対し、本発明範囲であるNi含有率10重量%以上30重量%以下においては、耐久性に優れることがわかる。
表7および図9から明らかなように、実施例42〜51は比較例20,21と比べて、耐食性に優れ、潤滑条件が厳しい環境下においても耐摩耗性に優れ、長寿命を有することがわかる。
【0153】
なお、本発明において外輪および/又は内輪に用いる耐熱性樹脂からなる樹脂組成物は特に限定されないが、ポリフェリレンサルファイド(PPS)樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエールエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンとポリベンゾイミダゾールのコポリマー(PEEK−PBI)、ポリエーテルニトリル(PEN)、芳香族ポリイミド(PI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリアミドイミド(PAI)、芳香族ポリエステル(LCP)および各種含フッ素樹脂が好ましい。
【0154】
含フッ素樹脂は特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等を例示できる。
【0155】
本発明において保持器に用いる樹脂組成物は特に限定されないが、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリフェリレンサルファイド(PPS)樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンとポリベンゾイミダゾールのコポリマー(PEEK−PBI)、ポリエーテルニトリル(PEN)、芳香族ポリイミド(PI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリアミドイミド(PAI)、芳香族ポリエステル(LCP)および各種含フッ素樹脂が好ましい。
【0156】
含フッ素樹脂は特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等を例示できる。
【0157】
本発明に用いる前記樹脂組成物は、機械的強度、耐摩耗製、寸法安定性、耐熱性などを向上させるために繊維状充填材を配含することができる。
繊維状充填材としては、特に限定されないが、ホウ酸アルミニウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、カーボンウィスカー、アラミド繊維、芳香族ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維、グラファイトウィスカー、ガラス繊維、炭素繊維、気相法微細炭素繊維、カーボンナノファイバー、ボロン繊維、炭化けい素ウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、アルミナウィスカー、窒化アルミニウムウィスカー、ウォラストナイト等を例示できる。
【0158】
前記繊維状充填材のアスペクト比は3以上200以下であることが好ましい。アスペクト比が3未満の繊維状充填材では、前記溶融成形の可能な含フッ素樹脂の補強効果が十分に発揮されず、アスペクト比が200を超えると混合時の均一分散が極めて困難となる。
前記樹脂組成物における前記繊維状充填材の含有率は特に限定されないが、40重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%〜30重量%の含有率で含有することである。
【0159】
40重量%を越えて配合しても更なる機械的強度の向上が期待できないばかりでなく、樹脂組成物を溶融成形する際の流動性が著しく低下する。
本発明に用いる前記樹脂組成物は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末(PTFE)、黒鉛、六方晶窒化ホウ素(hBN)、フッ素雲母、メラミンシアヌレート(MCA)、層状の結晶構造を有するアミノ酸化合物(N−ラウロ・L−リジン)、フッ化黒鉛、フッ化ピッチ、二硫化モリブデン(MoS2 )等の固体潤滑剤を適量添加する場合には、内・外輪および保持器自身の潤滑特性がより向上し、保持器と転動体との接触面、あるいは内・外輪と転動体との接触面に発生する摩擦力が低下するため、内・外輪および保持器を形成する母材(樹脂)と共にこれらが転動体に移着し、転がり軸受を潤滑すると共に接触面に発生する摩擦力が低下するために、内・外輪および保持器の構成材料自身および転動体に形成された潤滑膜の摩耗が低減される。
【0160】
前記固体潤滑剤の前記樹脂組成物に対する含有率は40重量%以下が好ましく、より好ましくは30重量%以下の含有率である。
40重量%を越えて配合しても、更なる潤滑作用の向上が期待できないばかりでなく、樹脂組成物自体の機械的強度が低下することによって、前記樹脂組成物からなる内・外輪および保持器の摩耗が増加し、寿命が短くなってしまう場合がある。
【0161】
前記固体潤滑剤の平均粒径は0.1μm〜60μmであることが好ましく、より好ましくは0.1μm〜20μm、更に好ましくは0.1μm〜10μmである。
平均粒経が0.1μm未満の粒径の小さい粒子では、母材である樹脂と混合した際に凝集が起こり、粒子の分散が不均一になる場合がある。一方、60μmを超える粒経の大きい粒子では、成形体である内輪、外輪、あるいは保持器の表面の平滑性が低下するとともに、強度が低下するために、軸受の寿命が短くなってしまう場合がある。
【0162】
また、溶融成形の際の流動性および樹脂組成物の機械的強度の点から、前記樹脂組成物における固体潤滑剤と繊維状充填材との合計含有率は60重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%〜50重量%の含有率で含有することである。
前記樹脂組成物における固体潤滑剤および繊維状充填材の各々の含有率が40重量%以下であっても、両者の合計含有率が60重量%を超えると、樹脂組成物を溶融成形する際の流動性および樹脂組成物の機械的強度が著しく低下する場合がある。
【0163】
なお、本発明の効果を損なわない範囲内で前記樹脂組成物には各種添加剤を配合してもよい。
各種添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光保護剤、難燃剤、帯電防止剤、流動性改良剤、非粘着性付与剤、結晶化促進剤、増核剤、顔料、染料等を例示することができる。
【0164】
これら耐熱性樹脂、繊維状充填材、固体潤滑剤等の混合方法は特に限定されない。
例えば、各々別々に溶融混錬することが可能であり、また、予めこれらの材料をヘンシェルミキサー、タンブラー、リボンミキサー、ホールミル等の混合機で予備混合した後に溶融混合機へ供給することもできる。
【0165】
溶融混合機としては、単軸、または2軸押し出し機、混練ロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダープラストグラフ等の公知の溶融混練装置を使用できる。溶融混錬する際の温度は特に限定されないが、耐熱性樹脂の溶融が十分進行視、且つ分解しない温度の範囲内で適宜選定すればよい。
本発明の転がり軸受に組み込まれる樹脂組成物からなる内・外輪および保持器の製造方法は特に限定されないが、例えば、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形等の通常の方法で成形することができる。中でも射出成形法は生産性に優れ、安価な内・外輪および保持器を提供できるため好ましい。
【0166】
本発明におけるサーメットは特に限定されない。例えば、TiC−Ni系、TiC−Mo−Ni系、TiC−Mo2 C−Ni系、TiC−Mo2 C−ZrC−Ni系、Ti(C,N)−Mo2 C−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−TaC−Ni系、TiC−TiN−Mo2 C−WC−TaC−Ni系、TiC−WC−Ni系、Ti(C,N)−WC−Ni系、Ti(C,N)−Mo系、Cr3 C2 −Ni系を用いることができる。
【0167】
ここで、Ti(C,N)−Mo2 C−Ni系、あるいはTi(C,N)−WC−Ni系は、TiC−Mo2 C−Ni系、あるいはTiC−WC−Ni系を窒素ガス(N2 )中で焼結した合金である。
サーメットの代表的な組成は、TiC−30%Ni、TiC−10%Mo−30%Ni、TiC−20%Mo−30%Ni、TiC−30%Mo−30%Ni、TiC−11%Mo2 C−24%Ni、TiC−30%Mo2 C−20%Ni、TiC−19%Mo2 C−24%Ni、TiC−8 %Mo2 C−15%Ni、Ti(C,N)−25%Mo2 C−15%Ni、TiC−14%TiN−19%Mo2 C−24%Ni、TiC0.7 N0.3 −11%Mo2 C−24%Ni、TiC0.7 N0.3 −19%Mo2 C−24%Ni、TiC0.7 N0.3 −27%Mo2 C−24%Ni、TiC−20%Mo−15%Ni、TiC−30%Mo−15%Niなどである。
【0168】
本発明におけるサーメットの製造方法は特に限定されない。
例えば、所定の組成になるように均一に混合した後、成形体の強度を維持するためのバインダーを少量添加し、型に入れ、油圧あるいは機械プレスで成形する。最終形状によってはその後、さらに旋盤などで機械加工してもよい。
次に、この成形体を脱脂してから、真空炉内で焼結(1350〜1550°C程度の温度)する。さらに強度を必要とする場合には、その後、熱間静水圧加圧焼結(HIP)処理を行うことが好ましい。焼結後は、所定の寸法形状や表面あらさにするために研削や研磨を行う。
【0169】
【発明の効果】
上記の説明から明らかなように、請求項1の発明によれば、可動子、支持体および転動体の内の少なくとも転動体が超硬合金、サーメットあるいはセラミックスで構成される場合において、転動体の表面あらさRa(σ1 )と、支持体あるいは可動子の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)を1 .0以下とし、且つ、転動体の表面硬さと可動子の表面硬さとの比、および転動体の表面硬さと支持体の表面硬さとの比を0.6以上2.0以下としているので、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しく固体接触が生じる条件下においても、接触点におけるアブレッシブ摩耗を効果的に抑制することができる。
【0170】
この結果、摩耗粉による外部環境の汚染を効果的に抑制することができるとともに、無潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間作動する転動装置を提供することができる。
請求項2の発明では、請求項1の発明に加えて、酸や強アルカリ溶液中など強い腐食環境下や高温環境下においては、可動子および支持体を曲げ強度550MPa以上であるセラミックスで構成することにより、転動装置の作動時に繰返し応力が可動子や支持体の転走面における接触点に負荷されても可動子や支持体の表面に微細なクラックが発生して伝播するのを防止することができる。
【0171】
請求項3の発明では、請求項1の発明に加えて、前記可動子、前記支持体および前記転動体の内の少なくとも一つが、Niの含有率が10重量%以上、30重量%以下であるNiを結合相とするTiC−Ni系或いはTiCN−Ni系サーメットで構成されることにより、腐食、磁場、高温、高速・高温環境下で、無潤滑或いは潤滑条件の厳しい、即ち、潤滑油が枯渇し易く、摩耗が生じやすい条件下においても、耐摩耗性に優れ、長期間作動することができ、外部磁場を乱すことがない。
【0172】
請求項4の発明では、請求項1の発明に加えて、前記可動子、前記支持体および前記転動体の内の少なくとも一つが、Cr3 C2 −Ni系サーメットで構成され、且つ、Niの含有率が10重量%以上、30重量%以下であることにより、腐食、磁場、高温、高速・高温環境下で、無潤滑或いは潤滑条件の厳しい、即ち、潤滑油が枯渇し易く、摩耗が生じやすい条件下においても、耐摩耗性に優れ、長期間作動することができ、外部磁場を乱すことがない。
【0173】
請求項5の発明によれば、前記可動子、前記支持体および前記転動体のうちの少なくとも一つがNiを結合相とするTiCN−Ni系サーメットで構成され、且つNiの含有率が10重量%以上30重量%以下とされているため、磁場環境下において、周りに磁場を乱すことがなく、また、腐食環境下で、無潤滑あるいは潤滑条件が厳しく、摩耗が生じやすい条件下においても、耐食性および耐摩耗性に優れ、長期間作動することができ、更には、外部環境を汚染することが少ない転動装置を提供することができる。
【0174】
請求項6の発明では、請求項5の発明に加えて、TiCN−Ni系サーメットの合金中における合金炭素量を、8.0%以上18.0%以下(C/C%)としているので、非磁性であり、磁場環境下で使用しても外部の磁場を乱すことがなく、電子線を用いて露光や測定する装置で測定精度や製造精度(描画精度)が低下することがなくなると共に、転動装置として十分な強度と硬さ(耐摩耗性)を有することになり、潤滑条件下や低粘度油などの使用で潤滑条件が厳しい環境でも長時間作動することができる。
【0175】
請求項7の発明では、請求項5又は6の発明に加えて、前記TiCN−Ni系サーメットに、Mo2 C、WCおよびCr3 C2 うちの少なくとも一つの元素を単独または複合で添加することにより、さらに、耐食性、強度、硬さを向上させることができる。
請求項8の発明によれば、前記可動子、前記支持体および前記転動体が非磁性・導電性材料からなり、且つ少なくとも転動体がNiを結合相とするWC−Ni系超硬合金、TiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットで構成されているので、十分な導電性および非磁性を確保し、且つ長寿命を維持することができ、測長SEMのような計測装置あるいは分析装置、露光装置に、好適に使用し得る転がり軸受及び直動案内装置などの特殊環境用転動装置を提供することができる。
【0176】
請求項9の発明では、請求項8の発明に加えて、前記可動子および前記支持体をチタン合金し、且つ完成品表面の硬さをHv400以上としているので、摩耗をより減少させることができる。
請求項10の発明では、請求項8又は9の発明に加えて、転動体をWC−Ni系超硬合金とした場合に、Niの含有量が6重量%以上15量%以下とすることにより、転動装置の更なる寿命延長を可能にすることができる。
【0177】
請求項11の発明では、請求項8又は9の発明に加えて、転動体をTiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットとした場合に、Niの含有量を10重量%以上30重量%以下とすることにより、転動装置の更なる寿命延長を可能にすることができる。
請求項12の発明によれば、前記可動子および前記支持体のうちの少なくとも一方が耐熱性樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、且つ前記転動体がサーメットで構成されているので、潤滑条件が厳しく潤滑不良になりやすい条件下、あるいは溶液中や飛散してくるような条件下においても、耐食性に優れ摩耗が生じ難くなり、半導体液晶パネル、及びハードディスク等の製造工程で用いられる各種洗浄装置や食品機械等のように水または各種洗浄溶液( 酸、アルカリ)中で使用される環境下、水または各種洗浄溶液がミスト状に存在するか、飛散してかかるような環境下、あるいはドライ環境下においても、摩耗が生じ難く、長期間安定して作動することができる転動装置を提供することができる。
【0178】
請求項13の発明では、請求項12の発明に加えて、転動体がNiを結合相とするサーメットで構成され、且つNiの含有率が10重量%以上30重量%以下とされているので、転動装置の更なる寿命延長を可能にすることができる。
請求項14に係る発明は、請求項12又は13の発明に加えて、転動体を転動可能に保持する保持器が樹脂組成物で構成されているので、保持器を構成する自己潤滑性に優れる樹脂組成物が前記転動体に効果的に移着して潤滑性を向上することができ、より長期にわたって安定した作動を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転動装置の第1の態様の実施の形態である転がり軸受の要部断面図である。
【図2】軸受回転試験機を示す概略図である。
【図3】転動体の表面あらさRa(σ1)と内・外輪の表面あらさRa(σ2)との比(σ1/σ2)が0.20である場合における、転動体の表面硬さと内・外輪の表面硬さとの比と、耐久性(振動寿命)との関係を示すグラフ図である。
【図4】転動体の表面あらさRa(σ1)と内・外輪の表面あらさRa(σ2)との比(σ1 /σ2)と、転動体の表面硬さと内・外輪の表面硬さとの比と、耐久性(振動寿命)との関係を示すグラフ図である。
【図5】非磁性が要求される環境下で好適に使用し得るか評価するための回転試験の説明図である。
【図6】TiCN−Mo2 C−WC−Cr3 C2 −Ni系サーメットとCr3 C2 −TiCN−Ni系サーメットとにおけるNi含有率と耐久性(振動寿命)との関係を示すグラフ図である。
【図7】本発明に係る転動装置の第2の態様の実施の形態である転がり軸受の耐久性とNi含有率との関係を示すグラフ図である。
【図8】本発明に係る転動装置の第3の態様の実施の形態である転がり軸受のトルク寿命とNi含有率との関係を示すグラフ図である。
【図9】本発明に係る転動装置の第4の態様の実施の形態である転がり軸受の耐久性とNi含有率との関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1…転がり軸受(転動装置)
2…内輪(可動子)
2a…内輪軌道溝
3…外輪(支持体)
3a…外輪軌道溝
4…転動体
5…保持器
Claims (14)
- 回転運動または直線運動可能な可動子、この可動子を支持する支持体、これら可動子と支持体との間に介在し、前記可動子の運動に伴って転動する複数個の転動体を具備し、転動体、可動子および支持体のうち少なくとも転動体が超硬合金、サーメットあるいはセラミックスで構成される転動装置において、
前記転動体の表面あらさRa(σ1 )と、前記可動子あるいは前記支持体の表面あらさRa(σ2 )との比(σ1/σ2)が1 .0以下であり、且つ、前記転動体の表面硬さと前記可動子の表面硬さとの比、および前記転動体の表面硬さと前記支持体の表面硬さとの比が0.6以上2.0以下であることを特徴とする転動装置。 - 前記可動子および前記支持体は、曲げ強度が550MPa以上であるセラミックスで構成されたことを特徴とする請求項1記載の転動装置。
- 前記可動子、前記支持体および前記転動体の内の少なくとも一つがNiを結合相とするTiC−Ni系或いはTiCN−Ni系サーメットで構成され、且つ、Niの含有率が10重量%以上、30重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の転動装置。
- 前記可動子、前記支持体および前記転動体の内の少なくとも一つがCr3 C2 −Ni系サーメットで構成され、且つ、Niの含有率が10重量%以上、30重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の転動装置。
- 回転運動または直線運動可能な可動子、この可動子を支持する支持体、これら可動子と支持体との間に介在し、前記可動子の運動に伴って転動する複数個の転動体を具備する転動装置において、
前記可動子、前記支持体および前記転動体のうちの少なくとも一つがNiを結合相とするTiCN−Ni系サーメットで構成され、且つNiを10重量%以上30重量%以下含有することを特徴とする転動装置。 - 前記TiCN−Ni系サーメットにおいて、その合金炭素量(炭化物、炭窒化物中に換算した炭素量:C/C%)が8.0%以上18.0%以下であることを特徴とする請求項5記載の転動装置。
- 前記TiCN−Ni系サーメットに、Mo2 C、WCおよびCr3 C2 うちの少なくとも一つの元素を単独または複合で添加したことを特徴とする請求項5又は6記載の転動装置。
- 回転運動または直線運動可能な可動子、この可動子を支持する支持体、これら可動子と支持体との間に介在し、前記可動子の運動に伴って転動する複数個の転動体を具備する転動装置において、
前記可動子、前記支持体および前記転動体が非磁性・導電性材料からなり、且つ少なくとも転動体がNiを結合相とするWC−Ni系超硬合金、TiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットで構成されることを特徴とする転動装置。 - 前記可動子および前記支持体がチタン合金からなり、且つ完成品表面の硬さがHv400以上であることを特徴とする請求項8記載の転動装置。
- 前記転動体がNiを結合相とするWC−Ni系超硬合金で構成され、Niの含有量が6重量%以上15重量%以下であることを特徴とする請求項8又は9記載の転動装置。
- 前記転動体がNiを結合相とするTiC−Ni系又はTiCN−Ni系サーメットで構成され、Niの含有量が10重量%以上30重量%以下であることを特徴とする請求項8又は9記載の転動装置。
- 回転運動または直線運動可能な可動子、この可動子を支持する支持体、これら可動子と支持体との間に介在し、前記可動子の運動に伴って転動する複数個の転動体を具備する転動装置において、
前記可動子および前記支持体のうちの少なくとも一方が耐熱性樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、且つ前記転動体がサーメットで構成されていることを特徴とする転動装置。 - 前記転動体がNiを結合相とするサーメットで構成され、且つNiの含有率が10重量%以上30重量%以下であることを特徴とする請求項12記載の転動装置。
- 前記転動体を転動可能に保持する保持器が樹脂組成物からなることを特徴とする請求項12又は13記載の転動装置。
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-
2003
- 2003-04-17 JP JP2003113270A patent/JP2004003633A/ja active Pending
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EP3165782A1 (de) * | 2015-11-04 | 2017-05-10 | Heraeus Deutschland GmbH & Co. KG | Cermet-lager, insbesondere für ein implantierbares medizinisches gerät |
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