JP2004000209A - 軟骨障害マーカー及びその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】軟骨障害を反映する疾患マーカー、該疾患マーカーを利用した軟骨障害の検出方法、該障害の改善に有用な薬物のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドを、軟骨障害の疾患マーカーとして利用する。
【選択図】なし
【解決手段】5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドを、軟骨障害の疾患マーカーとして利用する。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は軟骨障害の診断に有用な疾患マーカーに関する。より詳細には、本発明は軟骨障害、例えば変形性関節症や軟骨形成異常症、変形性椎間板症、軟骨の欠損、軟骨損傷、半月板損傷、あるいは骨折の修復・治癒不全等の疾患の遺伝子診断において、プライマーまたは検出プローブとして有効に利用できる疾患マーカーに関する。
【0002】
また本発明は、上記疾患マーカーを利用して、軟骨障害を検出する方法(診断方法)、軟骨障害の改善または治療薬として有効な物質をスクリーニングする方法、および該スクリーニング方法によって得られる物質を有効成分とする軟骨障害の改善または治療薬に関する。
【0003】
【従来の技術】
軟骨は軟骨細胞とこれを取り囲む基質からなる結合組織であり、関節、脊柱の椎間板、肋軟骨、耳介、外耳道、恥骨結合、咽頭蓋などに存在する。軟骨の作用としては、骨端の摩擦の低減(関節軟骨)、弾性の保持(耳介軟骨)、運動機能(肋軟骨、恥骨軟骨など)が知られており、軟骨は生体の機能維持の上で重要な作用を有している。従来から軟骨の障害に起因する種々の疾患が知られており、例えば、変形性関節症、軟骨形成異常症、変形性椎間板症、骨折の修復・治癒不全などが例示される。特に、高齢化社会の到来、スポーツによる外傷の増加、キーパンチャー病などに代表される職業病の出現などにより、軟骨障害患者は著しく増加しており、この領域における医療の進歩が要望されている。
【0004】
従来から軟骨障害を治療するために種々の治療法が試みられてきているが、それらは直接的に原因の解消を目的とするものではなく、例えば、抗炎症剤を投与することにより、その疾患に基づく痛みなどの障害を抑制する方法、関節にヒアルロン酸製剤などを注入して関節の動きを潤滑にする方法など、対症療法的なものでしかなかった。また軟骨欠損に対する治療法として、軟骨細胞移植が行なわれているが、移植後のホスト側の軟骨基質との接着が不十分であり、治療法としての確立はなされていない。さらに軟骨細胞移植治療法は侵襲性であることから、患者への負担が大きく、また感染の可能性も否定できない。
【0005】
以上のように軟骨障害の根治的治療法は見出されていないことから、特に患者数が多い変形性関節症などでは、その有効な治療剤、および当該治療剤探索のための新規なスクリーニング系の構築が期待されている。
【0006】
また、最近の医療現場では、軟骨障害に限らず、個々の患者の症状に合わせて治療法を的確に選択することが望まれるようになってきている。高齢化社会でのQOL(Quality of life)向上の必要性が認識されてきた近年では、特に、万人に共通した治療ではなく、個々の患者の症状に合わせて適切な治療が施されることが強く求められている。このような所謂テイラーメイド治療を行うためには、個々の疾患について患者の症状やその原因(遺伝的背景)を的確に反映する疾患マーカーが有用であり、その探索並びに開発を目指した研究が精力的に行われているのが現状である。
【0007】
一方、5−HT7(非特許文献1)、EDG2(非特許文献2)、EDG1、ET(A)(非特許文献3)、GPR88、PTH2R、VIP1R(非特許文献4)、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1(非特許文献5)、PLTP、ENT1、NPT3およびIREG1はそれぞれ公知の因子であるが、これらの因子と軟骨障害との関係は知られていない。
【0008】
【非特許文献1】
J. Biol. Chem., 268(31), 23422−23426 (1993)
【非特許文献2】
Biochem. Biophys. Res. Commun., 231(3), 619−622 (1997)
【非特許文献3】
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88(8), 3185−3189 (1991)
【非特許文献4】
Biochem. Biophys. Res. Commun., 193(2), 546−553 (1993)
【非特許文献5】
J. Biol. Chem., 267, 21098−21104 (1992)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、軟骨障害の診断及び治療に有用な疾患マーカーを提供することを目的とする。より詳細には、本発明は軟骨の障害に起因する疾患(軟骨障害)を特異的に反映した疾患マーカーを提供することを目的とする。さらに本発明は該疾患マーカーを利用した軟骨障害の検出方法(遺伝子診断方法)、該疾患の改善または治療に有用な薬物をスクリーニングする方法、並びに該疾患の改善または治療に有用な薬物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行っていたところ、従来は変形性関節症等の軟骨障害との関連が知られていなかった以下の遺伝子:5−HT7遺伝子(Genbank Accession No. NM_019859)、EDG1遺伝子(Genbank Accession No. NM_001400)、ET(A)遺伝子(Genbank Accession No. NM_001957)、GPR88遺伝子(Genbank Accession No. NM_022049)、PTH2R遺伝子(Genbank Accession No. NM_005048)、VIP1R遺伝子(Genbank Accession No. NM_004624)、CLIC2遺伝子(Genbank Accession No. NM_001289)、ATA1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_030674)、ABCA1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_005502)、PLTP遺伝子(Genbank Accession No. NM_006227)、NPT3 遺伝子(Genbank Accession No. U90544)、並びに、IREG1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_014585)が、軟骨障害のモデル動物であるラット十字靭帯切断モデルの障害軟骨において、正常軟骨と比較して有意に発現が上昇していることを見出した。また、EDG2遺伝子(Genbank Accession No. NM_001401)、SCN2A遺伝子(Genbank Accession No. NM_21007, およびAF327246)、ABCG2 遺伝子(Genbank Accession No. NM_004827)、ENT1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_004955)、並びに、GAT1 遺伝子(Genbank Accession No. X54673 )が、前記モデルの障害軟骨において、正常軟骨と比較して有意に発現が減少していることを見出した。
このことから、本発明者らは、かかる遺伝子が軟骨障害の疾患マーカーであり、またこれらの遺伝子を標的として軟骨障害を伴う疾患を緩和、抑制する治療薬の候補薬をスクリーニングすることが可能であるとの確信を得た。本発明はかかる知見を基礎として完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は、下記に掲げるものである:
項1. 配列番号1に記載の5−HT7(5−Hydroxytryptamine受容体7)遺伝子の塩基配列、配列番号3に記載のEDG2(Endothelial differentiation gene 2)遺伝子の塩基配列、配列番号5に記載のEDG1(Endothelial differentiation gene 1)遺伝子の塩基配列、配列番号7に記載のET(A)(Endothelin receptor type A) 遺伝子の塩基配列、配列番号9に記載のGPR88(G−protein coupled receptor88)遺伝子の塩基配列、配列番号11に記載のPTH2R(Parathyroid hormone receptor2)遺伝子の塩基配列、配列番号13に記載のVIP1R(Vasoactive intestinal peptide receptor1)遺伝子の塩基配列、配列番号15に記載のCLIC2(Chloride intracellular channel2)遺伝子の塩基配列、配列番号17に記載のSCN2A(Voltage−gated sodium channel type II alpha subunit)遺伝子の塩基配列、配列番号19に記載のATA1(Amino acid transporter system A1)遺伝子の塩基配列、配列番号21に記載のABCA1(ATP−binding cassette, sub−family A, member1)遺伝子の塩基配列、配列番号23に記載のABCG2(ATP−binding cassette,sub−family G, member2)遺伝子の塩基配列、配列番号25に記載のGAT1(GABAtransporter1)遺伝子の塩基配列、配列番号27に記載のPLTP(Phospholipid transfer protein)遺伝子の塩基配列、配列番号29に記載のENT1(Equilibrative nucleoside transporter1)遺伝子の塩基配列、配列番号31に記載のNPT3(Sodium phosphate transporter3)遺伝子の塩基配列、または、配列番号33に記載のIREG1(Iron−regulated transporter1)遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる、軟骨障害の疾患マーカー。
項2. 軟骨障害の検出においてプローブまたはプライマーとして使用される項1記載の疾患マーカー。
項3. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、軟骨障害の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドと項1または2に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果に基づいて、軟骨障害の罹患を判断する工程。
項4. 配列番号2に記載の5−HT7のアミノ酸配列、配列番号4に記載のEDG2のアミノ酸配列、配列番号6に記載のEDG1のアミノ酸配列、配列番号8に記載のET(A)のアミノ酸配列、配列番号10に記載のGPR88のアミノ酸配列、配列番号12に記載のPTH2Rのアミノ酸配列、配列番号14に記載のVIP1Rのアミノ酸配列、配列番号16に記載のCLIC2のアミノ酸配列、配列番号18に記載のSCN2Aのアミノ酸配列、配列番号20に記載のATA1のアミノ酸配列、配列番号22に記載のABCA1 のアミノ酸配列、配列番号24に記載のABCG2のアミノ酸配列、配列番号26に記載のGAT1のアミノ酸配列、配列番号28に記載のPLTPのアミノ酸配列、配列番号30に記載のENT1のアミノ酸配列、配列番号32に記載のNPT3のアミノ酸配列、または配列番号34に記載のIREG1のアミノ酸配列からなるタンパク質を認識する抗体を含有する、軟骨障害の疾患マーカー。
項5. 軟骨障害の検出においてプローブとして使用される項4記載の疾患マーカー。
項6. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、軟骨障害の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたタンパク質と項4または5に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質またはその部分ペプチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果に基づいて、軟骨障害の罹患を判断する工程。
項7. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現を制御する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質と5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
項8. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7遺伝子の発現を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質と5−HT7遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞の5−HT7遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、5−HT7遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
項9. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、EDG2遺伝子の発現を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質とEDG2遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞のEDG2遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、EDG2遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
項10. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、VIP1R遺伝子の発現を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質とVIP1R遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞のVIP1R遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、VIP1R遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
項11. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むGAT1 遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質とGAT1 遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞のGAT1 遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、GAT1 遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
項12. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むET(A)遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質とET(A)遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞のET(A)遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、ET(A)遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
項13. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、EDG1遺伝子、GPR88遺伝子、PLTP遺伝子またはIREG1遺伝子の発現を制御する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質とEDG1遺伝子、GPR88遺伝子、PLTP遺伝子またはIREG1遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞のEDG1遺伝子、GPR88遺伝子、PLTP遺伝子またはIREG1遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、EDG1遺伝子、GPR88遺伝子、PLTP遺伝子またはIREG1遺伝子の発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
項14. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ET(A)、VIP1RまたはSCN2Aの発現を制御する物質のスクリーニング方法:
(a)ET(A)遺伝子、VIP1R遺伝子もしくはSCN2A遺伝子の発現制御領域の下流にマーカー遺伝子を結合させた融合遺伝子を含む細胞と、被験物質を接触させる工程、
(b) 前記マーカー遺伝子の発現量を測定し、該発現量を、被験物質を接触させない対照における前記マーカー遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、ET(A)、VIP1RまたはSCN2Aの発現を変動させる被験物質を選択する工程。
項15. 軟骨障害の改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、項7乃至14のいずれかに記載のスクリーニング方法、
項16. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現を制御する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質と5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を発現可能な細胞、または該細胞から調製した細胞画分とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞または細胞画分における、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現量を測定し、該発現量を、被験物質を接触させない対照細胞もしくは対照細胞画分における上記タンパク質の発現量と比較する工程、
(c) 上記(b)の比較結果に基づいて、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
項17. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の機能または活性を制御する物質のスクリーニング方法:
(a) 5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記蛋白質の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の機能(活性)を変動させる被験物質を選択する工程。
項18. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7の機能または活性を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a)5−HT7を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の5−HT7の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7の機能(活性)を亢進する被験物質を選択する工程。
項19. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、EDG2の機能または活性を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a)EDG2を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のEDG2由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分のEDG2の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のEDG2の機能(活性)を亢進する被験物質を選択する工程。
項20. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、VIP1Rの機能または活性を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a)VIP1Rを含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のVIP1R由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分のVIP1Rの機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のVIP1Rの機能(活性)を亢進する被験物質を選択する工程。
項21. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、GAT1の機能または活性を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)GAT1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のGAT1由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分のGAT1の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のGAT1の機能(活性)を抑制する被験物質を選択する工程。
項22. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ET(A)の機能または活性を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)ET(A)を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のET(A)由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分のET(A)の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のET(A)の機能(活性)を抑制する被験物質を選択する工程。
項23. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、EDG1、GPR88、PLTP、またはIREG1の機能または活性を制御する物質のスクリーニング方法:
(a) EDG1、GPR88、PLTP、またはIREG1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のEDG1、GPR88、PLTP、またはIREG1の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のEDG1、GPR88、PLTP、またはIREG1の機能(活性)を変動させる被験物質を選択する工程。
項24. 軟骨障害の改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、項16乃至23のいずれかに記載のスクリーニング方法。
項25. 5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現を制御する物質を有効成分とする軟骨障害の改善または治療剤。
項26. 5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現を制御する物質が請求項7乃至14のいずれかに記載のスクリーニング法により得られるものである、項25記載の軟骨障害の改善または治療剤。
項27. 5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、もしくは、IREG1の発現量または機能(活性)を制御する物質を有効成分とする、軟骨障害の改善または治療剤。
項28. 5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、もしくは、IREG1の発現量または機能(活性)を制御する物質が、項16乃至23のいずれかに記載のスクリーニング法により得られるものである、項27記載の軟骨障害の改善または治療剤。
項29. EDG1、GPR88、PLTPまたはIREG1の機能(活性)制御物質を有効成分とする、軟骨障害の改善または治療剤。
項30. 5−HT7、EDG2またはVIP1Rの機能(活性)亢進物質を有効成分とする、軟骨障害の改善または治療剤。
項31. ET(A)またはGAT1の機能(活性)抑制物質を有効成分とする、軟骨障害の改善または治療剤。
項32. 配列番号1に記載の5−HT7遺伝子、配列番号5に記載のEDG1遺伝子、配列番号9に記載のGPR88遺伝子、配列番号27に記載のPLTP遺伝子または配列番号33に記載のIREG1遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる、軟骨障害の疾患マーカー。
項33. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、軟骨障害の検出方法:(a) 被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドと項32に記載の疾患マーカーの疾患マーカーとを結合させる工程、
(b) 該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドの量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果が、正常者の生体試料における測定結果よりも大きいか否かを指標として軟骨障害の罹患を判断する工程。
項34. 配列番号25に記載のGAT1遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる、軟骨障害の疾患マーカー。
項35. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、軟骨障害の検出方法:
(a) 被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドと項34に記載の疾患マーカーの疾患マーカーとを結合させる工程、
(b) 該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果が、正常者の生体試料における測定結果よりも小さいか否かを指標として軟骨障害の罹患を判断する工程。
項36. 配列番号2に記載の5−HT7、配列番号6に記載のEDG1、配列番号10に記載のGPR88、配列番号28に記載のPLTPまたは配列番号34に記載のIREG1のアミノ酸配列からなるタンパク質を認識する抗体を含有する、軟骨障害の疾患マーカー。
項37. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、軟骨障害の検出方法:
(a) 被験者の生体試料から調製されたタンパク質と項36に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b) 該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のタンパク質またはその部分ペプチドの量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果が、正常者の生体試料における測定結果よりも大きいか否かを指標として軟骨障害の罹患を判断する工程。
項38. 配列番号25に記載のGAT1のアミノ酸配列からなるタンパク質を認識する抗体を含有する、軟骨障害の疾患マーカー。
項39. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、軟骨障害の検出方法:
(a) 被験者の生体試料から調製されたタンパク質と項38に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b) 該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のタンパク質またはその部分ペプチドの量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果が、正常者の生体試料における測定結果よりも小さいか否かを指標として軟骨障害の罹患を判断する工程。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC−IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、および当該分野における慣用記号に従う。
【0013】
本明細書において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書において遺伝子(DNA)とは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、およびこれらの断片のいずれもが含まれる。また当該「遺伝子」または「DNA」には、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」だけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(例えば、同族体、変異体及び誘導体など)をコードする「遺伝子」または「DNA」が包含される(本明細書において、これらを総括して上記特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」の「ホモログ」ともいう。)。かかる「ホモログ」としては具体的には、後述の(1−1)項に記載のストリンジェントな条件下で、前記特定塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」とハイブリダイズするものを挙げることができる。
例えば同族体をコードする遺伝子(オルソログ)として、ヒト遺伝子に対応するマウスやラットなど他生物種の遺伝子が例示でき、これらの遺伝子(オルソログ)は、HomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定することができる。具体的には、特定ヒト塩基配列をBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873−5877, 1993、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)にかけて一致する(Scoreが最も高く、E−valueが0でかつIdentityが100%を示す)配列のアクセッション番号を取得する。そのアクセッション番号をUnigene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)に入力して得られたUniGene Cluster ID(Hs.で示す番号)をHomoloGeneに入力する。結果として得られた他生物種遺伝子とヒト遺伝子との相関を示したリストから、ヒト遺伝子に該当するマウスやラットなど他生物種の遺伝子を選抜することができる。なお、遺伝子またはDNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むことができる。
【0014】
従って本明細書において「5−HT7遺伝子」または「5−HT7DNA」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、ヒト5−HT7(5−Hydroxytryptamine受容体7)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:1に記載の5−HT7遺伝子(アイソフォームd;Genbank Accession No.NM_000872)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、5−HT7b遺伝子、すなわちアイソフォームb(Genbank Accession No. NM_019860)]や、オルソログ[例えば、配列番号1に記載の5−HT7遺伝子のオルソログである、ラット5−HT7遺伝子(Genbank Accession No. NM_031684)やマウス5−HT7遺伝子(Genbank Accession No. NM_008315)]等が挙げられる。
また、本明細書において「EDG2 遺伝子」または「EDG2 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、ヒトEDG2(Endothelial differentiation gene 2)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:3に記載のEDG2遺伝子(Genbank Accession No.NM_001401)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、EDG2,transcriptional variant 2 遺伝子(Genbank Accession No. NM_057159)]や、オルソログ[例えば、ラットEDG2遺伝子(Genbank Accession No. NM_053936)やマウスEDG2遺伝子(Genbank Accession No. NM_010336)]等が挙げられる。また、本明細書において「EDG1遺伝子」または「EDG1 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、EDG1(Endothelial differentiation gene 1)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:5に記載のEDG1遺伝子(Genbank Accession No.NM_001400)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットEDG1遺伝子(Genbank Accession No. NM_017301)やマウスEDG1遺伝子(Genbank Accession No. NM_007901)]等が挙げられる。また、本明細書において「ET(A)遺伝子」または「ET(A) DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、ET(A)(Endothelin receptor type A)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:7に記載のET(A)遺伝子(Genbank Accession No.NM_001957)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、ET(A) delta 3遺伝子 (Genbank Accession No. AF014826)、ET(A) (Genbank Accession No. S81545)、 ET(A) delta 3−4 遺伝子(Genbank Accession No. S81545)、ET(A) delta 4 遺伝子(Genbank Accession No. S81542)]や、オルソログ[例えば、ラットET(A) 遺伝子(Genbank Accession No.NM_012550)やマウスET(A) 遺伝子(Genbank Accession No. BC008277)]等が挙げられる。
また、本明細書において「GPR88遺伝子」または「GPR88 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、GPR88(G−protein coupled receptor 88)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:9に記載のGPR88遺伝子(Genbank Accession No.NM_022049)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットGPR88遺伝子(Genbank Accession No. NM_031696)やマウスGPR88遺伝子(Genbank Accession No. AB042408)]等が挙げられる。
また、本明細書において「PTH2R遺伝子」または「PTH2R DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、PTH2R(Parathyroid Hormone receptor 2; PTH2受容体)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:11に記載のPTH2R遺伝子(Genbank Accession No.NM_005048)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットPTH2R遺伝子(Genbank Accession No. NM_031089)やマウスPTH2R遺伝子(Genbank Accession No. AF332078, AF332077)]等が挙げられる。
また、本明細書において「VIP1R遺伝子」または「VIP1R DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、VIP1R(Vasoactive intestinal peptide receptor 1)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:13に記載のVIP1R遺伝子(Genbank Accession No.NM_004624)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、VIPR related protein遺伝子(Genbank Accession No. X77777)]や、オルソログ[例えば、ラットVIP1R遺伝子(Genbank Accession No. NM_012685)や、マウスVIP1R遺伝子(Genbank Accession No. NM_011703)]等が挙げられる。
また、本明細書において「CLIC2遺伝子」または「CLIC2 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、CLIC2(Chloride intracellular channel2)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:15に記載のCLIC2遺伝子(Genbank Accession No.NM_001289)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットCLIC2遺伝子(Genbank Accession No. BF414208に記載された配列を含む遺伝子)やマウスCLIC2遺伝子(Genbank Accession No. AI391034に記載された配列を含む遺伝子)]等が挙げられる。
また、本明細書において「SCN2A遺伝子」または「SCN2A DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、SCN2A(Voltage−gated sodium channel type II alpha subunit)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:17に記載のSCN2A遺伝子(Genbank Accession No.NM_21007)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、SCN2A、alternatively spliced遺伝子(Genbank Accession No.AF327246)、SCN3A遺伝子(Genbank Accession No. AF330135)]や、オルソログ[例えば、ラットSCN2A遺伝子(Genbank Accession No. BG377948)や、マウスSCN2A遺伝子(Genbank Accession No. AK020721)]等が挙げられる。
また、本明細書において「ATA1遺伝子」または「ATA1 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、ATA1遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:19に記載のATA1遺伝子(Genbank Accession No.NM_030674)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、NGT遺伝子(Genbank Accession No.AF247166)]や、オルソログ等が挙げられる。
また、本明細書において「ABCA1遺伝子」または「ABCA1 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、ABCA1(ATP−binding cassette, sub−family A, member 1)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:21に記載のABCA1遺伝子(Genbank Accession No.NM_005502)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットABCA1遺伝子(Genbank Accession No. NM_031760)やマウスABCA1遺伝子(Genbank Accession No. NM_013454)]等が挙げられる。また、本明細書において「ABCG2遺伝子」または「ABCG2 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、ABCG2(ATP−binding cassette, sub−family G, member2)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:23に記載のABCG2遺伝子(Genbank Accession No.NM_004827)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、MXR2遺伝子(Genbank Accession No. AF093772)]や、オルソログ[例えば、ラットABCG2遺伝子(Genbank Accession No. NM_053754)やマウスABCG2遺伝子(Genbank Accession No. NM_011920)]等が挙げられる。
また、本明細書において「GAT1遺伝子」または「GAT1 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、GAT1(GABA transporter1)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:25に記載のGAT1遺伝子(Genbank Accession No.X54673)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットGAT1遺伝子(Genbank Accession No. NM_024371)やマウスGAT1遺伝子(Genbank Accession No. M92378)]等が挙げられる。
また、本明細書において「PLTP遺伝子」または「PLTP DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、PLTP(Phospholipid transfer protein)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:27に記載のPLTP遺伝子(Genbank Accession No.NM_006227)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットPLTP遺伝子(Genbank Accession No. AA817754)やマウスPLTP遺伝子(Genbank Accession No. NM_011125)]等が挙げられる。
また、本明細書において「ENT1遺伝子」または「ENT1 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、ENT1(Equilibrative nucleoside transporter1)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:29に記載のENT1遺伝子(Genbank Accession No.NM_004955)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットENT1遺伝子(Genbank Accession No. NM_031684)やマウスENT1遺伝子(Genbank Accession No. NM_022880)]等が挙げられる。
また、本明細書において「NPT3遺伝子」または「NPT3 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、NPT3(Sodium phosphate transporter3)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:31に記載のNPT3遺伝子(Genbank Accession No.U90544)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ等が挙げられる。
また、本明細書において「IREG1遺伝子」または「IREG1 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、IREG1(Iron−regulated transporter1)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:33に記載のIREG1遺伝子(Genbank Accession No.NM_014585)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットIREG1遺伝子(Genbank Accession No. NM_133315)やマウスIREG1遺伝子(Genbank Accession No. NM_016917)]等が挙げられる。
【0015】
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNAおよびDNAのいずれをも包含する趣旨で用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、及び合成のRNAのいずれもが含まれる。
【0016】
本明細書において「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」には、特定の塩基配列で示される「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」だけでなく、これらと生物学的機能が同等である「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」(例えば、同族体(オルソログ)、誘導体、および変異体等)が包含される。なお、本明細書において、これらを上記特定のアミノ酸配列で示される「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」の「ホモログ」ともいう。
該ホモログとしては、例えば同族体(オルソログ)としては、ヒトのタンパク質に該当するマウスやラットなど他生物種のタンパク質が例示でき、これらはHomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoGene/)により同定された遺伝子の塩基配列から演鐸的に同定することができる。また、変異体には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、及び人為的に欠失、置換、付加および挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。なお、上記変異体としては、変異のないタンパク質または(ポリ)ペプチドと、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを挙げることができる。
【0017】
従って本明細書において「5−HT7タンパク質」または単に「5−HT7」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、ヒト5−HT7 (5−Hydroxytryptamine受容体)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:2に記載のヒト5−HT7遺伝子(アイソフォームd;Genbank Accession No.NM_000872)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、5−HT7b、すなわちアイソフォームb(Genbank Accession No. NM_019860)]や、オルソログ[例えば、配列番号1に記載の5−HT7のオルソログである、ラット5−HT7(Genbank Accession No. NM_031684)やマウス5−HT7(Genbank Accession No. NM_008315)]等が挙げられる。また、本明細書において「EDG2タンパク質」または単に「EDG2」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、ヒトEDG2(Endothelial differenciation gene 1)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:4に記載のEDG2(Genbank Accession No.NM_001401)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、EDG2,transcriptional variant 2 (Genbank Accession No. NM_057159)]や、オルソログ[例えば、ラットEDG2(Genbank Accession No. NM_053936)やマウスEDG2(Genbank Accession No. NM_010336)]等が挙げられる。
また、本明細書において「EDG1タンパク質」または単に「EDG1」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、EDG1(Endothelial differenciation gene 2)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:6に記載のEDG1(Genbank Accession No.NM_001400)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットEDG1(Genbank Accession No. NM_017301)やマウスEDG1(Genbank Accession No. NM_007901)]等が挙げられる。
また、本明細書において「ET(A)タンパク質」または単に「ET(A)」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、ET(A)(Endothelin receptor type A)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:8に記載のET(A)(Genbank Accession No.NM_001957)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、ET(A) delta 3 (Genbank Accession No. AF014826)、ET(A) (Genbank Accession No. S81545)、 ET(A) delta 3−4 (Genbank Accession No. S81545)、ET(A) delta 4 (Genbank Accession No. S81542)]や、オルソログ[例えば、ラットET(A)(Genbank Accession No.NM_012550)やマウスET(A)(Genbank Accession No. BC008277)]等が挙げられる。
また、本明細書において「GPR88タンパク質」または単に「GPR88」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、GPR88(G−protein coupled receptor 88)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:10に記載のGPR88(Genbank Accession No.NM_022049)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットGPR88(Genbank Accession No. NM_031696)やマウスGPR88(Genbank Accession No. AB042408)]等が挙げられる。
また、本明細書において「PTH2Rタンパク質」または単に「PTH2R」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、PTH2R(Parathyroid hormone receptor 2; PTH2受容体)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:12に記載のPTH2R(Genbank Accession No.NM_005048)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットPTH2R(Genbank Accession No. NM_031089)やマウスPTH2R(Genbank Accession No. AF332078, AF332077)]等が挙げられる。また、本明細書において「VIP1Rタンパク質」または単に「VIP1R」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、VIP1R(Vasoactive intestinal peptide receptor 1)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:14に記載のVIP1R遺伝子(Genbank Accession No.NM_004624)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、VIPR related protein(Genbank Accession No. X77777)]や、オルソログ[例えば、ラットVIP1R(Genbank Accession No. NM_012685)や、マウスVIP1R(Genbank Accession No. NM_011703)]等が挙げられる。
また、本明細書において「CLIC2タンパク質」または「CLIC2」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、CLIC2(Chloride intracellular channel2)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:16に記載のCLIC2(Genbank Accession No.NM_001289)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットCLIC2(Genbank Accession No. BF414208に記載された配列を含むタンパク質)やマウスCLIC2(Genbank Accession No. AI391034に記載された配列を含むタンパク質)]等が挙げられる。
また、本明細書において「SCN2Aタンパク質」または「SCN2A」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、SCN2A(Voltage−gated sodium channel type II alpha subunit)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:18に記載のSCN2A(Genbank Accession No.NM_21007)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、SCN2A、alternatively spliced(Genbank Accession No.AF327246)、SCN3A(Genbank Accession No. AF330135)]や、オルソログ[例えば、ラットSCN2A(Genbank Accession No. BG377948)や、マウスSCN2A(Genbank Accession No. AK020721)]等が挙げられる。
また、本明細書において「ATA1タンパク質」または「ATA1」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、ATA1遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:20に記載のATA1遺伝子(Genbank Accession No.NM_030674)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、NGT(Genbank Accession No.AF247166)]や、オルソログ等が挙げられる。
また、本明細書において「ABCA1タンパク質」または「ABCA1」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、ABCA1(ATP−binding cassette, sub−family A, member 1)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:22に記載のABCA1遺伝子(Genbank Accession No.NM_005502)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットABCA1(Genbank Accession No. NM_031760)やマウスABCA1(Genbank Accession No. NM_013454)]等が挙げられる。
また、本明細書において「ABCG2タンパク質」または「ABCG2」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、ABCG2(ATP−binding cassette sub−family G, member 2)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:24に記載のABCG2(Genbank Accession No.NM_004827)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、MXR2(Genbank Accession No. AF093772)]や、オルソログ[例えば、ラットABCG2(Genbank Accession No. NM_053754)やマウスABCG2(Genbank Accession No.NM_011920)]等が挙げられる。
また、本明細書において「GAT1タンパク質」または「GAT1」といった用語を用いる場合も、配列番号で特に指定しない限り、GAT1(GABA transporter 1)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:26に記載のGAT1(Genbank Accession No.X54673)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットGAT1(GenbankAccession No. NM_024371)やマウスGAT1(Genbank Accession No. M92378)]等が挙げられる。
また、本明細書において「PLTPタンパク質」または「PLTP」といった用語を用いる場合も、配列番号で特に指定しない限り、PLTP(Phospholipid transfer protein)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:28に記載のPLTP(Genbank Accession No.NM_006227)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットPLTP(Genbank Accession No. AA817754)やマウスPLTP(Genbank Accession No. NM_011125)]等が挙げられる。
また、本明細書において「ENT1タンパク質」または「ENT1」といった用語を用いる場合も、配列番号で特に指定しない限り、ENT1(Equilibrative nucleoside transporter 1)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:30に記載のENT1(Genbank Accession No.NM_004955)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットENT1(Genbank Accession No. NM_031684)やマウスENT1(Genbank Accession No. NM_022880)]等が挙げられる。
また、本明細書において「NPT3タンパク質」または「NPT3」といった用語を用いる場合も、配列番号で特に指定しない限り、NPT3(Sodium phosphate transporter3)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:32に記載のNPT3(Genbank Accession No.AY647390)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ等が挙げられる。
また、本明細書において「IREG1タンパク質」または「IREG1」といった用語を用いる場合も、配列番号で特に指定しない限り、IREG1(Iron−regulated transporter 1)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:34に記載のIREG1(Genbank Accession No.NM_014585)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットIREG1(Genbank Accession No. NM_133315)やマウスIREG1(Genbank Accession No. NM_016917)]等が挙げられる。
【0018】
本明細書でいう「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、またはFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントなどのように抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。
【0019】
さらに本明細書において「疾患マーカー」とは、軟骨障害の罹患の有無、罹患の程度、若しくは改善の有無や改善の程度を診断するために、また軟骨障害の予防、改善または治療に有用な候補物質をスクリーニングするために、直接または間接的に利用されるものをいう。これには、軟骨の障害に関連して生体内での発現が変動する遺伝子またはタンパク質を特異的に認識し、また結合することのできる(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチドまたは抗体が包含される。これらの(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチドおよび抗体は、上記性質に基づいて、生体内で発現した上記遺伝子及びタンパク質を検出するためのプローブとして、また(オリゴ)ヌクレオチドは生体内で発現した上記遺伝子を増幅するためのプライマーとして有効に利用することができる。
【0020】
さらに本明細書において診断対象となる「関節/軟骨組織」とは、具体的には関節軟骨組織や関節滑膜組織のみならずこれら組織の周辺に存在する血液・滑液などを意味するものであり、特に言及しない限り、本明細書において「関節/軟骨組織」とは上記組織および血液・滑液などの総称として用いられる。
【0021】
本発明は、前述するように、5−HT7遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、PLTP 遺伝子、NPT3 遺伝子およびIREG1 遺伝子が、軟骨障害に罹患した動物の障害軟骨組織で、正常軟骨組織と比較して有意に発現上昇していることに基づくものである。また、EDG2遺伝子、SCN2A遺伝子、ABCG2 遺伝子、ENT1 遺伝子およびGAT1 遺伝子が、前記動物の障害軟骨組織で、正常軟骨組織と比較して有意に発現減少していることに基づくものである。尚、以下、上記遺伝子をまとめて本発明遺伝子ともいう。
従って、これらの遺伝子及びその発現産物〔タンパク質、(ポリ)(オリゴ)ペプチド〕は、軟骨障害の解明、診断、予防及び治療に有効に利用することができ、かかる利用によって医学並びに臨床学上、有用な情報や手段を得ることができる。また、これらの遺伝子及びその発現産物並びにそれらからの派生物(例えば、抗体など)は、上記軟骨障害の治療、並びに該治療に有効に用いられる薬剤の開発に好適に利用することができる。さらに、個体または関節/軟骨組織における、上記遺伝子の発現またはその発現産物の検出、または該遺伝子の変異またはその発現不全の検出は、軟骨障害の解明や診断に有効に利用することができる。
【0022】
以下、これらの本発明遺伝子、並びにその発現産物[5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1、以下まとめて本発明タンパク質ともいう]やそれらの派生物について、具体的な用途を説明する。
【0023】
(1)軟骨障害の疾患マーカー及びその応用
(1−1) ポリヌクレオチド
本発明の配列番号1に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の5−HT7遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_019859)、この取得方法についてもJ. Biol. Chem., 268 (31), 23422−23426 (1993)、および、J. Neurochem., 68 (4), 1372−1381 (1997) に記載されるように公知である。
【0024】
本発明の配列番号3に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来のEDG2遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_001401)、この取得方法についてもBiochem. Biophys. Res. Commun., 231(3), 619−622 (1997) に記載されるように公知である。
【0025】
本発明の配列番号5に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来のEDG1遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_001400)、この取得方法についてもJ. Biol. Chem., 265 (16), 9308−9313 (1990)に記載されるように公知である。
【0026】
本発明の配列番号7に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、ET(A)遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_001957)、この取得方法についてもProc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88 (8), 3185−3189 (1991) に記載されるように公知である。
【0027】
本発明の配列番号9に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、GPR88遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_022049)、この取得方法についてもGenomics, 69 (3), 314−321 (2000)に記載されるように公知である。
【0028】
本発明の配列番号11に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、PTH2R遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_005048)、この取得方法についてもJ. BIol. Chem., 270 (26), 15455−15458 (1995) に記載されるように公知である。
【0029】
本発明の配列番号13に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、VIP1R遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_004624)、この取得方法についてもBiochem. Biophys. Res. Commun., 193 (2), 546−553 (1993)に記載されるように公知である。
【0030】
本発明の配列番号15に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、CLIC2遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_001289)、この取得方法についてもGenomics, 45 (1), 224−228 (1997)に記載されるように公知である。
【0031】
本発明の配列番号17に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、SCN2A遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_21007)、この取得方法についてもProc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89 (17), 8220−8224 (1992)、および、Gene, 264 (1), 113−122, (2001) に記載されるように公知である。
【0032】
本発明の配列番号19に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、ATA1 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_030674)、この取得方法についてもBiochem. Biophys. Res. Commun. 273 (3), 1175−1179 (2000)に記載されるように公知である。
【0033】
本発明の配列番号21に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、ABCA1 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_005502)、この取得方法についてもGenomics 21 (1), 150−159 (1994)に記載されるように公知である。
【0034】
本発明の配列番号23に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、ABCG2 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_004827)、この取得方法についてもCancer Res. 58 (23), 5337−5339 (1998)に記載されるように公知である。
【0035】
本発明の配列番号25に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、GAT1 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank X54673 )、この取得方法についてもFEBS Lett. 269 (1), 181−184 (1990)に記載されるように公知である。
【0036】
本発明の配列番号27に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、PLTP 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_006227)、この取得方法についてもJ. Biol. Chem. 269, 9388−9391 (1994)に記載されるように公知である。
【0037】
本発明の配列番号29に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、ENT1 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_004955)、この取得方法についてもNat. Med. 3 (1), 89−93 (1997)に記載されるように公知である。
【0038】
本発明の配列番号31に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、NPT3 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. U90544)、この取得方法についてもGenome Res. 7 (5), 441−456 (1997)に記載されるように公知である。
【0039】
本発明の配列番号33に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、または、IREG1 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_014585)、この取得方法についてもNature 403 (6771), 776−781 (2000)に記載されるように公知である。
【0040】
本発明は、前述するように、5−HT7遺伝子(Genbank Accession NM_019859)、EDG1遺伝子(Genbank Accession No. NM_001400)、ET(A)遺伝子(Genbank Accession No. NM_001957)、GPR88遺伝子(Genbank Accession No. NM_022049)、PTH2R遺伝子(Genbank Accession No. NM_005048)、VIP1R遺伝子(Genbank Accession No. NM_004624)、CLIC2遺伝子(Genbank Accession No. NM_001289)、ATA1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_030674)、ABCA1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_005502)、PLTP 遺伝子(Genbank Accession No. NM_006227)、NPT3 遺伝子(Genbank Accession No. U90544)、並びに、IREG1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_014585)が、軟骨障害に罹患した動物の障害軟骨組織において、正常軟骨組織と比較して有意に発現上昇しているという知見を発端に、これらの遺伝子発現の有無や発現の程度を検出することによって上記軟骨障害の罹患の有無や罹患の程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという発想に基づくものである。また、EDG2遺伝子(Genbank Accession No. NM_001401)、SCN2A遺伝子(Genbank Accession No. NM_21007)、ABCG2 遺伝子(Genbank Accession No. NM_004827)、ENT1 遺伝子(Genbank Accession No.NM_004955)、並びに、GAT1 遺伝子(Genbank Accession No. X54673 )が、軟骨障害に罹患した動物の障害軟骨組織において、正常軟骨組織と比較して有意に発現減少しているという知見を発端に、これらの遺伝子発現の有無や発現の程度を検出することによって上記軟骨障害の罹患の有無や罹患の程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという発想に基づくものである。すなわち、本発明は、被験者における上記遺伝子(あるいは遺伝子産物)の発現の有無またはその程度を検出することによって、被験者について軟骨障害の罹患の有無またはその程度を診断することのできるツールとして有用な疾患マーカーを提供するものである。
【0041】
また、上記ポリヌクレオチドは、後述の(3−1)項に記載するような軟骨障害病の予防、改善または治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A) 遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1遺伝子、ABCA1遺伝子、ABCG2遺伝子、GAT1遺伝子、PLTP遺伝子、ENT1遺伝子、NPT3遺伝子、または、IREG1遺伝子の発現変動を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
【0042】
かかる本発明の疾患マーカーは、配列番号1に記載の5−HT7遺伝子の塩基配列、配列番号3に記載のEDG2遺伝子の塩基配列、配列番号5に記載のEDG1遺伝子の塩基配列、配列番号7に記載のET(A)遺伝子の塩基配列、配列番号9に記載のGPR88遺伝子の塩基配列、配列番号11に記載のPTH2R遺伝子の塩基配列、配列番号13に記載のVIP1R遺伝子の塩基配列、配列番号15に記載のCLIC2遺伝子の塩基配列、配列番号17に記載のSCN2A 遺伝子の塩基配列、配列番号19に記載のATA1 遺伝子の塩基配列、配列番号21に記載の、ABCA1 遺伝子の塩基配列、配列番号23に記載の、ABCG2 遺伝子の塩基配列、配列番号25に記載のGAT1 遺伝子の塩基配列、配列番号27に記載のPLTP 遺伝子の塩基配列、配列番号29に記載のENT1 遺伝子の塩基配列、配列番号31に記載のNPT3 遺伝子の塩基配列、または、配列番号33に記載のIREG1 遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなることを特徴とするものである。
【0043】
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、または33に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの全長配列、または該塩基配列において少なくとも連続した15塩基長の塩基配列を有するその部分配列(ここでは便宜上、これらを「正鎖」ともいう)に対して、A:TおよびG:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味するものである。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補関係を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA) に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
【0044】
また、正鎖側のポリヌクレオチドには、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、または33に記載の塩基配列またはその部分配列を有するものだけでなく、上記相補鎖の塩基配列に対してさらに相補的な関係にある塩基配列からなる鎖を含めることができる。
【0045】
さらに上記正鎖のポリヌクレオチド及び相補鎖(逆鎖)のポリヌクレオチドは、各々一本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されても、また二本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されてもよい。
【0046】
本発明の軟骨障害の疾患マーカーは、具体的には5−HT7遺伝子の塩基配列に関する配列番号1、EDG2遺伝子の塩基配列に関する配列番号3、EDG1遺伝子の塩基配列に関する配列番号5、ET(A)遺伝子の塩基配列に関する配列番号7、GPR88遺伝子の塩基配列に関する配列番号9、PTH2R遺伝子の塩基配列に関する配列番号11、VIP1R遺伝子の塩基配列に関する配列番号13、CLIC2遺伝子の塩基配列に関する配列番号15、SCN2A 遺伝子の塩基配列に関する配列番号17、ATA1 遺伝子の塩基配列に関する配列番号19、ABCA1 遺伝子の塩基配列に関する配列番号21、ABCG2 遺伝子の塩基配列に関する配列番号23、GAT1 遺伝子の塩基配列に関する配列番号25、PLTP 遺伝子の塩基配列に関する配列番号27、ENT1 遺伝子の塩基配列に関する配列番号29、NPT3 遺伝子の塩基配列に関する配列番号31、または、IREG1 遺伝子の塩基配列に関する配列番号33に記載される塩基配列(全長配列)からなるポリヌクレオチドであってもよいし、その相補配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。また、前記各配列番号で示される本発明遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチドを選択的に(特異的に)認識するものであれば、上記全長配列またはその相補配列の部分配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。この場合、上記全長配列またはその相補配列の塩基配列から任意に選択される少なくとも15個の連続した塩基長を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0047】
なお、ここで「選択的に(特異的に)認識する」とは、例えばノーザンブロット法を用いた場合は、、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、IREG1 遺伝子、またはこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に生成されることを意味するが、それに限定されることなく、当業者が上記検出物または生成物がこれらの遺伝子に由来するものであると判断できるものであればよい。
【0048】
そのような本発明の疾患マーカーは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、31、または33で示される本発明遺伝子の塩基配列をもとに、例えばprimer 3( HYPERLINK http://www.genome.wi.mit.edu/cgi−bin/primer/primer3.cgi http://www.genome.wi.mit.edu/cgi−bin/primer/primer3.cgi)あるいはベクターNTI(Infomax社製)を利用して設計することができる。
【0049】
具体的には、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の塩基配列をprimer 3またはベクターNTIのソフトウエアにかけて得られる、プライマーまたはプローブの候補配列、若しくは少なくとも該配列を一部に含む配列をプライマーまたはプローブとして使用することができる。
【0050】
本発明で用いる疾患マーカーは、上述するように連続する少なくとも15塩基の長さを有するものであればよいが、具体的にはマーカーの用途に応じて、長さを適宜選択し設定することができる。
【0051】
本発明において軟骨障害の検出(診断)は、被験者の生体組織、特に関節/軟骨組織における、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の少なくとも1つの発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することによって行われる。この場合、上記本発明の疾患マーカーは、上記遺伝子の発現によって生じたRNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し増幅するためのプライマーとして、または該RNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するためのプローブとして利用することができる。
【0052】
上記疾患マーカーを軟骨障害の検出(遺伝子診断)においてプライマーとして用いる場合には、通常15bp〜100bp、好ましくは15bp〜50bp、より好ましくは15bp〜35bpの塩基長を有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp〜全配列の塩基数、好ましくは15bp〜1kb、より好ましくは100bp〜1kbの塩基長を有するものが例示できる。
【0053】
本発明の疾患マーカーは、ノーザンブロット法、RT−PCR法、in situハイブリダーゼーション法などといった、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマーまたはプローブとして利用することができ、これによって軟骨障害に関連する、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することができる。なお、測定対象試料としては、使用する検出方法の種類や目的に応じて、被験者の関節/軟骨組織、例えば関節軟骨組織や関節滑膜組織の一部をバイオプシ等で採取するか、若しくはこれらの組織周辺の血液・滑液を採取し、そこから常法に従って調製したtotal RNAを用いてもよいし、さらに該RNAをもとにして調製される各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。
【0054】
また、生体組織における本発明遺伝子の遺伝子発現レベルは、DNAチップを利用して検出あるいは定量することもできる。この場合、本発明の疾患マーカーは当該DNAチップのプローブとして使用することができる(例えば、Affymetrix社のGene Chip Human Genome U95 A,B,C,D,Eの場合、25bpの長さのポリヌクレオチドプローブとして用いられる)。本発明の疾患マーカーをプローブとするDNAチップは、生体組織から採取したRNAをもとに調製される標識DNAまたはRNAとハイブリダイズさせることにより、本発明の疾患マーカー(プローブ)と標識DNAまたはRNAとの複合体が形成されるので、該複合体を該標識DNAまたはRNAの標識を指標として検出することにより、生体組織中での本発明遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)が評価できる。
【0055】
本発明の疾患マーカーは、軟骨障害の診断や検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)に有用である。具体的には、該疾患マーカーを利用した軟骨障害の診断は、被験者の関節/軟骨組織と正常者の関節/軟骨組織における、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の遺伝子発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。この場合、遺伝子発現レベルの違いには、発現のある/なしの違いだけでなく、被験者の関節/軟骨組織と正常者の関節/軟骨組織の両者ともに発現がある場合でも、両者間の発現量の格差が1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上ある場合が含まれる。
すなわち、軟骨障害に罹患した動物の障害軟骨組織において、正常軟骨組織と比較して有意に発現上昇もしくは発現減少しているという知見を発端に、これらの遺伝子発現の有無や発現の程度を検出することによって上記軟骨障害の罹患の有無や罹患の程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという発想に基づくものである。
【0056】
具体的には、5−HT7遺伝子(Genbank Accession No. NM_019859)、EDG1遺伝子(Genbank Accession No. NM_001400)、ET(A)遺伝子(Genbank Accession No. NM_001957)、GPR88遺伝子(Genbank Accession No. NM_022049)、PTH2R遺伝子(Genbank Accession No. NM_005048)、VIP1R遺伝子(Genbank Accession No. NM_004624)、CLIC2遺伝子(Genbank Accession No. NM_001289)、ATA1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_030674)、ABCA1 遺伝子(Genbank Accession No.NM_005502)、PLTP 遺伝子(Genbank Accession No. NM_006227)、NPT3 遺伝子(Genbank Accession No. U90544)、並びに、IREG1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_014585)は、軟骨障害で発現誘導(増大)を示すので、被験者の関節/軟骨組織で特異的に発現しているか、あるいは該発現量が正常な関節/軟骨組織の発現量と比べて1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上多ければ、被験者について軟骨障害の罹患が疑われる。
また、EDG2遺伝子(Genbank Accession No. NM_001401)、SCN2A遺伝子(Genbank Accession No. NM_21007)、ABCG2 遺伝子(Genbank Accession No. NM_004827)、ENT1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_004955)、並びに、GAT1 遺伝子(Genbank Accession No. X54673 )は、軟骨障害で発現抑制(減少)を示すので、被験者の関節/軟骨組織で特異的に発現しているか、あるいは該発現量が正常な関節/軟骨組織の発現量と比べて0.7倍以下、好ましくは1/2倍以下、より好ましくは1/3倍以下であれば、被験者について軟骨障害の罹患が疑われる。
【0057】
とりわけ、配列番号:1の塩基配列を有する5−HT7遺伝子、および配列番号:5の塩基配列を有するEDG1遺伝子、配列番号:9の塩基配列を有するGPR88遺伝子、配列番号:27の塩基配列を有するPLTP 遺伝子、配列番号:33の塩基配列を有するIREG1 遺伝子は、疾患モデル動物の障害軟骨を含む膝関節組織で、正常な膝関節組織に比べて3倍以上の発現増大を示していた。従って、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:9、配列番号27、若しくは配列番号33の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチド/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが特に有効である。
また、配列番号:25の塩基配列を有するGAT1 遺伝子は、疾患モデル動物の障害軟骨を含む膝関節組織で、正常な膝関節組織に比べて1/3以下の発現減少を示していた。従って、配列番号25の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチド/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが特に有効である。
【0058】
本発明において軟骨障害の検出(診断)は、被験者の生体組織、特に関節/軟骨組織における配列番号:1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,29,31,または33の塩基配列を有する本発明遺伝子の少なくとも1つの発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することによって行われる。検出(診断)の精度や正確性を高めるためには、上記本発明遺伝子のうちの2以上、好ましくは複数個の遺伝子、より好ましくは本発明遺伝子の半数以上の遺伝子について、その発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することが望ましい。
【0059】
(1−2)抗体
また本発明は、軟骨障害の疾患マーカーとして5−HT7遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「5−HT7」ともいう)、EDG2遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「EDG2」ともいう)、EDG1遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「EDG1」ともいう)、ET(A)遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「ET(A)」ともいう)、GPR88遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「GPR88」ともいう)、PTH2R遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「PTH2R」ともいう)、VIP1R遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「VIP1R」ともいう)、CLIC2遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「CLIC2」ともいう)、SCN2A遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「SCN2A」ともいう)、ATA1 遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「ATA1」ともいう)、ABCA1 遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「ABCA1」ともいう)、ABCG2 遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「ABCG2」ともいう)、GAT1 遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「GAT1」ともいう)、PLTP 遺伝子、の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「PLTP」ともいう)、ENT1 遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「ENT1」ともいう)、NPT3 遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「NPT3」ともいう)、または、IREG1遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「IREG1」ともいう)を特異的に認識することのできる抗体を提供する。
【0060】
5−HT7としては配列番号1に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、EDG2としては配列番号3に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、EDG1としては配列番号5に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、ET(A)としては配列番号7に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、GPR88としては配列番号9に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、PTH2Rとしては配列番号11に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、VIP1Rとしては配列番号13に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、CLIC2としては配列番号15に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、SCN2Aとしては配列番号17に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、ATA1としては配列番号19に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、ABCA1としては配列番号21に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、ABCG2としては配列番号23に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、GAT1としては配列番号25に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、PLTPとしては配列番号27に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、ENT1としては配列番号29に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、NPT3としては配列番号31に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、IREG1としては配列番号33に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を挙げることができる。
【0061】
なお、配列番号1に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号3に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号5に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号7に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号8で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号9に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号10で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号11に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号12で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号13に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号14で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号15に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号16で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号17に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号18で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号19に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号20で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号21に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号22で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号23に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号24で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号25に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号26で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号27に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号28で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号29に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号30で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号31に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号32で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、また配列番号33に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号34で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を例示することができる。
【0062】
なお、ここで配列番号2に示すタンパク質は、ヒト由来の5−HT7遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(J. Biol. Chem., 268 (31), 23422−23426 (1993)、および、J. Neurochem., 68 (4), 1372−1381 (1997)) に記載されるように公知である。
【0063】
また配列番号4に示すタンパク質は、ヒト由来のEDG2遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Biochem. Biophys.Res. Commun., 231(3), 619−622 (1997))に記載されるように公知である。
【0064】
また配列番号6に示すタンパク質は、ヒト由来のEDG1遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(J. Biol. Chem., 265 (16), 9308−9313 (1990))に記載されるように公知である。
【0065】
また配列番号8に示すタンパク質は、ヒト由来のET(A)遺伝子
によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88 (8), 3185−3189 (1991))に記載されるように公知である。
【0066】
また配列番号10に示すタンパク質は、ヒト由来のGPR88遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Genomics, 69 (3), 314−321 (2000))に記載されるように公知である。
【0067】
また配列番号12に示すタンパク質は、ヒト由来のPTH2R遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(J. Biol. Chem.,270 (26), 15455−15458 (1995))に記載されるように公知である。
【0068】
また配列番号14に示すタンパク質は、ヒト由来のVIP1R遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Biochem. Biophys. Res. Commun., 193 (2), 546−553 (1993))に記載されるように公知である。
【0069】
また配列番号16に示すタンパク質は、ヒト由来のCLIC2遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Genomics, 45 (1), 224−228 (1997))に記載されるように公知である。
【0070】
また配列番号18に示すタンパク質は、ヒト由来のSCN2A 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89 (17), 8220−8224 (1992)、および、Gene, 264 (1), 113−122, (2001))に記載されるように公知である。
【0071】
また配列番号20に示すタンパク質は、ヒト由来のATA1 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(J. Biol. Chem. 276, 24137−24144 (2001))に記載されるように公知である。
【0072】
また配列番号22に示すタンパク質は、ヒト由来のABCA1 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Biochem. Biophys. Res. Commun. 257 (1), 29−33 (1999))に記載されるように公知である。
【0073】
また配列番号24に示すタンパク質は、ヒト由来のABCG2 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Br. J. Cancer. 71, 52−58 (1995))に記載されるように公知である。
【0074】
また配列番号26に示すタンパク質は、ヒト由来のGAT1 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(J. Biol. Chem. 267, 21098−21104 (1992))に記載されるように公知である。
【0075】
また配列番号28に示すタンパク質は、ヒト由来のPLTP 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(J. Biol. Chem. 269, 9388−9391 (1994))に記載されるように公知である。
【0076】
また配列番号30に示すタンパク質は、ヒト由来のENT1 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Nat. Med. 3 (1), 89−93 (1997))に記載されるように公知である。
【0077】
また配列番号32に示すタンパク質は、ヒト由来のNPT3 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Biochem. J. 305, 81−85 (1995))に記載されるように公知である。
【0078】
また配列番号34に示すタンパク質は、ヒト由来のIREG1 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Mol. Cell 5 (2), 299−309 (2000))に記載されるように公知である。
【0079】
本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、前記本発明タンパク質を免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよく、さらには当該本発明タンパク質を構成するアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も、本発明の抗体に含まれる。
【0080】
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.12〜11.13)。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を用いて、あるいは常法に従って当該いずれかの本発明タンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1、あるいはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987)Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
【0081】
また、抗体の作製に使用されるタンパク質は、本発明により提供される遺伝子の配列情報(配列番号1,3,5,7,9,11,13,15,17, 19,21,23,25,27,29,31,または33)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養および培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNACloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。具体的には5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1をコードする遺伝子が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作成し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的タンパク質を回収することによって実施することができる。また、これら5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1は、本発明により提供されるアミノ酸配列の情報(配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18, 20,22,24,26,28,30,32,または34)に従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。具体的には、「ペプチド合成の基礎と実験」(泉屋信夫ら著、丸善、1987年発行)に記載された液相合成法や固相合成法を用いることができる。
【0082】
なお、本発明の5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1には、配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,または34に示すタンパク質のみならず、その相同物も包含される。該相同物としては、上記配列番号で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ上記配列番号で示されるタンパク質の機能と同等の生物学的機能を有するか、及び/または免疫学的活性において同等の活性を有するタンパク質を挙げることができる。
【0083】
なお、ここで配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,または34で示されるタンパク質の機能と同等の生物学的機能を有するタンパク質としては、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1と生化学的または薬理学的機能において同等の機能を有するタンパク質を挙げることができ、また上記タンパク質と免疫学的活性において同等の活性を有するタンパク質としては、適当な動物あるいはその細胞において特定の免疫反応を誘発し、かつ5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1に対する抗体と特異的に結合する能力を有するタンパク質を挙げることができる。
【0084】
なお、タンパク質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、その生物学的機能及び/または免疫学的活性が保持される限り制限はない。生物学的機能や免疫学的活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個置換、挿入あるいは欠失されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内である。また置換されるアミノ酸は、置換後に得られるタンパク質が5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の生物学的機能及び/または免疫学的活性を保持している限り、特に制限されないが、タンパク質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
【0085】
また本発明の抗体は、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを用いて調製されるものであってよい。かかる抗体誘導のために用いられるオリゴペプチドは、機能的な生物活性を有することは要しないが、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1のアミノ酸配列において少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドを例示することができる。
【0086】
かかるポリペプチドに対する抗体の生成は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム−パルヴムなどのヒトアジュバントなどがある。
【0087】
本発明の抗体は5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1に特異的に結合する性質を有することから、該抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現した上記本発明タンパク質を特異的に検出することができる。すなわち、当該抗体は被験者の組織内における5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1のタンパク発現の有無を検出するためのプローブとして有用である。
【0088】
具体的には、患者の関節/軟骨組織、例えば関節軟骨組織や関節滑膜組織の一部をバイオプシ等で採取するか、若しくはこれらの組織周辺の血液・滑液を採取し、そこから常法に従ってタンパク質画分を調製して、例えばウェスタンブロット法、ELISA法など公知の検出方法において、上記抗体を常法に従ってプローブとして使用することによって5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を検出することができる。
【0089】
軟骨障害の診断に際しては、被験者の関節/軟骨組織における5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、およびIREG1のいずれか少なくとも1つと正常な関節/軟骨組織におけるこれらのタンパク質との量の違いを判定すればよい。この場合、タンパク質量の違いには、タンパクのある/なし、あるいはタンパク量の違いが1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上ある場合が含まれる。具体的には、5−HT7遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、PLTP 遺伝子、NPT3 遺伝子、および/または、IREG1 遺伝子が存在しており、該量が正常な関節/軟骨組織の発現産物量と比べて1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上多いことが判定されれば、被験者について軟骨障害の罹患が疑われる。
また、EDG2遺伝子、SCN2A遺伝子、ABCG2 遺伝子、ENT1 遺伝子、および/または、GAT1 遺伝子が存在しており、該量が正常な関節/軟骨組織の発現産物量と比べて0.7倍以下、好ましくは1/2倍以下、より好ましくは1/3倍以下であることが判定されれば、被験者について軟骨障害の罹患が疑われる。
【0090】
とりわけ、配列番号:1の塩基配列を有する5−HT7遺伝子、配列番号:5の塩基配列を有するEDG1遺伝子、配列番号:9の塩基配列を有するGPR88遺伝子、配列番号:27の塩基配列を有するPLTP 遺伝子、および配列番号:33の塩基配列を有するIREG1 遺伝子は、疾患モデル動物の障害軟骨を含む膝関節組織で、正常な膝関節組織に比べて3倍以上の発現増大を示していた。このため、配列番号:1、5、9、27、もしくは33に示される塩基配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質、具体的には、例えば配列番号:2のアミノ酸配列を有する5−HT7、配列番号:6のアミノ酸配列を有するEDG1、配列番号:10のアミノ酸配列を有するGPR88、配列番号:28のアミノ酸配列を有するPLTP、もしくは配列番号:34のアミノ酸配列を有するIREG1を特異的に認識する抗体を有する疾患マーカーが、軟骨障害の検出(診断)に有用である。
また、配列番号:25の塩基配列を有するGAT1 遺伝子は、疾患モデル動物の障害軟骨を含む膝関節組織で、正常な膝関節組織に比べて1/3以下の発現減少を示していた。このため、配列番号:25に示される延期配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質、具体的には、例えば配列番号26のアミノ酸配列を有するGAT1を特異的に認識する抗体を有する疾患マーカーが、軟骨障害の検出(診断)に有用である。
【0091】
(2)軟骨障害の検出方法(診断方法)
本発明は、前述する本発明の軟骨障害の疾患マーカーを利用した軟骨障害の診断方法を提供するものである。
【0092】
具体的には、本発明の診断方法は、被験者の関節/軟骨組織、例えば関節軟骨組織や関節滑膜組織の一部をバイオプシ等で採取するか、若しくはこれらの組織周辺の血液・滑液を採取し、そこに含まれる軟骨障害に関連する5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の遺伝子発現レベル、あるいはこれらの遺伝子に由来するタンパク質(5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、IREG1)を検出し、その発現量またはそのタンパク質量を測定することにより、軟骨障害の罹患の有無またはその程度を診断するものである。
【0093】
本発明の診断方法は次の(a)、(b)及び(c)の工程を含むものである:
(a) 被験者の生体試料と本発明の疾患マーカーを接触させる工程、
(b) 生体試料中の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の遺伝子発現レベル、または5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1のタンパク質の量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c) (b)の結果をもとに、軟骨障害の罹患を判断する工程。
【0094】
ここで用いられる生体試料は、被験者の関節/軟骨組織(例えば関節軟骨組織や関節滑膜組織、あるいはこれら組織の周辺に存在する血液・滑液)、該組織から調製されるRNA若しくはそれからさらに調製されるポリヌクレオチド、または上記組織から調製されるタンパク質である。かかるRNA、ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、被験者の関節軟骨組織や関節滑膜組織の一部をバイオプシ等で採取するか、若しくはこれらの組織周辺の血液・滑液を採取し、そこから常法に従って調製することができる。
【0095】
本発明の診断方法は、測定対象として用いる生体試料の種類に応じて、具体的には下記のようにして実施される。
【0096】
(2−1) 測定対象の生体試料としてRNAを利用する場合
診断に用いる生体試料としてRNAを利用する場合は、本発明の検出方法(診断方法)は該RNA中の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現レベルを検出し、測定することによって実施される。
【0097】
この場合、本発明の検出方法は次の(a)、(b)及び(c)の工程を含む:
(a)被験者の生体試料と本発明の疾患マーカーとを接触させる工程、
(b)上記工程によって本発明の疾患マーカーに特異的に結合した、生体試料由来のRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、及び
(c)(b)の測定結果をもとに、軟骨障害の罹患を判断する工程。
本発明の軟骨障害の検出方法(診断方法)は、特に測定対象の生体試料としてRNAを利用して、該RNA中の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はその相補的なポリヌクレオチドをプライマーまたはプローブとして用いて、ノーザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法を行うことにより実施できる。
【0098】
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプローブとして用いることによって、RNA中の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、本発明の疾患マーカー(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、形成された疾患マーカー(DNAまたはRNA)とRNAとの二重鎖を、疾患マーカーの標識物(RI若しくは蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS−1800II、富士フィルム社製)または蛍光検出器で検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System (Amersham PharamciaBiotech社製)を用いて、該プロトコールに従って疾患マーカー(プローブDNA)を標識し、被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、疾患マーカーの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で検出、測定する方法を使用することもできる。
【0099】
RT−PCR法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプライマーとして用いることによって、RNA中の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の疾患マーカーから調製した一対のプライマー(上記cDNA(−鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせて、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、増幅された二本鎖DNAの検出は、上記PCRを予めRIや蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した疾患マーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT−PCR Reagents (Applied Biosystems 社製)で該プロトコールに従ってRT−PCR反応液を調製し、ABI PRIME 7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems 社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
【0100】
また、DNAチップ解析を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをDNAプローブ(1本鎖または2本鎖)として貼り付けたDNAチップを用意し、これに被験者の生体組織由来のRNAから常法によって調製されたcRNAとハイブリダイズさせて、形成されたDNAとcRNAとの二本鎖を、本発明の疾患マーカーから調製される標識プローブと結合させて検出する方法を挙げることができる。また、上記DNAチップとして、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の遺伝子発現レベルの検出、測定が可能なDNAチップを用いることもできる。かかる遺伝子の発現レベルを検出、測定することができるDNAチップとしては、Affymetrix社のGene Chip Human GenomeU95 A, B,C, D, Eを挙げることができる。かかるDNAチップを用いた、被験者RNA中の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の遺伝子発現レベルの検出、測定については、実施例において詳細に説明する。
【0101】
(2−2) 測定対象物としてタンパク質を用いる場合
測定対象物としてタンパク質を用いる場合は、本発明の検出方法(診断方法)は生体試料中の5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1を検出し、その量を測定することによって実施される。具体的には、抗体に関する本発明の疾患マーカー(配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32または34で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質を認識する抗体)を用いてウエスタンブロット法などの公知方法で、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1を検出、定量する方法を挙げることができる。ウエスタンブロット法は、一次抗体として本発明の上記疾患マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素や蛍光物質で標識した一次抗体に結合する抗体を用いて、測定対象タンパク質を標識し、該放射性同位元素若しくは蛍光物質由来のシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)若しくは蛍光検出器で検出し、測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明の上記疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detection System(Amersham Pharmacia Biotech 社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech 社製)で測定することもできる。
【0102】
軟骨障害の診断は、被験者の関節/軟骨組織、例えば関節軟骨組織や関節滑膜組織、あるいはこれらの組織周辺に存在する血液・滑液における5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の量を正常な前記組織の当該遺伝子発現レベルまたは当該タンパク質の量と比較し、両者の違いを判定することによって行うことができる。
【0103】
この場合、正常な関節/軟骨組織から採取調製した生体試料(RNAまたはタンパク質)が必要であるが、これらは軟骨障害に罹患していない人の関節/軟骨組織、例えば関節軟骨組織や関節滑膜組織の一部をバイオプシ等で採取するか、若しくはこれら組織周辺の血液・滑液を採取することによって取得することができる。なお、ここでいう「軟骨障害に罹患していない人」とは、少なくとも軟骨障害の自覚症状がなく、好ましくは他の検査方法、例えばX線フィルム撮影による診断の結果、軟骨障害でないと診断された人をいう。なお、当該「軟骨障害に罹患していない人」を以下、本明細書では単に正常者という場合もある。
【0104】
被験者の関節/軟骨組織と正常な関節/軟骨組織(軟骨障害に罹患していない人の関節/軟骨組織)との遺伝子発現レベルまたはタンパク質の量の比較は、被験者の生体試料と正常者の生体試料を対象とした測定を並行して行うことで実施できる。並行して行なわない場合は、複数(少なくとも2つ、好ましくは3以上、より好ましくは5以上)の正常な関節/軟骨組織を用いて均一な測定条件で測定して得られた5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の量の平均値または統計的中間値を、正常者の遺伝子発現レベル若しくはタンパク質の量として、比較に用いることができる。
【0105】
被験者が、軟骨障害であるかどうかの判断は、該被験者の関節/軟骨組織における前記本発明遺伝子の遺伝子発現レベル、またはその発現産物である本発明タンパク質の量の格差が、正常者のそれらと比較して1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上であることを指標として行うことができる。また、被験者の上記遺伝子発現レベルまたはタンパク質の量の格差が、いかなる正常者のそれらのレベルまたは量に比べて大きければ、軟骨障害であると判断することができる。
【0106】
なお、上記方法のうち、(2−1)測定対象の生体試料としてRNAを利用して軟骨障害を検出(診断)する場合、すなわち遺伝子の発現の有無または遺伝子発現レベル(発現量)から軟骨障害を検出(診断)する場合は、検出(診断)の精度や正確性を高めるために、本発明遺伝子のうち2以上、好ましくは複数個の遺伝子、より好ましくは本発明遺伝子の半数以上の遺伝子について、発現の有無または発現のレベル(発現量)を評価し、その結果から軟骨障害を検出(診断)することが望ましい。複数個の遺伝子について評価する場合には、個々の遺伝子での評価をスコア化し、総合的に軟骨障害を診断することが可能である。なお、この場合、評価する遺伝子数、スコアあるいは診断基準は限定されない。
【0107】
(3)候補薬のスクリーニング方法
(3−1) 遺伝子発現レベルを指標とするスクリーニング方法
本発明は、配列番号1に記載の塩基配列を有する5−HT7遺伝子、配列番号3に記載の塩基配列を有するEDG2遺伝子、配列番号5に記載の塩基配列を有するEDG1遺伝子、配列番号7に記載の塩基配列を有するET(A)遺伝子、配列番号9に記載の塩基配列を有するGPR88遺伝子、配列番号11に記載の塩基配列を有するPTH2R遺伝子、配列番号13に記載の塩基配列を有するVIP1R遺伝子、配列番号15に記載の塩基配列を有するCLIC2遺伝子、配列番号17に記載の塩基配列を有するSCN2A遺伝子、配列番号19に記載の塩基配列を有するATA1 遺伝子、配列番号21に記載の塩基配列を有するABCA1 遺伝子、配列番号23に記載の塩基配列を有するABCG2 遺伝子、配列番号25に記載の塩基配列を有するGAT1 遺伝子、配列番号27に記載の塩基配列を有するPLTP 遺伝子、配列番号29に記載の塩基配列を有するENT1 遺伝子、配列番号31に記載の塩基配列を有するNPT3 遺伝子、または配列番号33に記載の塩基配列を有するIREG1 遺伝子の発現を制御する物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0108】
本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a) 被験物質と5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記の比較結果に基づいて、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の遺伝子発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
【0109】
かかるスクリーニングに用いられる細胞としては、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子を発現する細胞であって、かつ軟骨細胞への分化が可能である、未分化間葉系細胞または初代培養軟骨細胞を挙げることができる。軟骨細胞への分化が可能な未分化間葉系細胞としては、具体的には、マウスATDC5細胞(RIKEN Cell Bank; HYPERLINK http://www.rtc.riken.go.jp/CELL/HTML/RIKEN Cell Bank. Htmlから入手可能)などを挙げることができる。なお、マウスATDC5細胞は、分化誘導物質であるインスリンの添加で軟骨細胞に分化することが知られている細胞である(J Cell Biol 133:457−468, 1996)。
【0110】
また、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子を発現する細胞であって、かつ力学的ストレスに応答可能である、初代培養軟骨細胞、軟骨細胞様細胞株または滑膜細胞様細胞株も挙げることができる。力学的ストレスに応答することが知られている細胞としては、具体的には初代培養軟骨細胞、ウサギ滑膜様細胞株HIG−82(ATCCカタログ番号CRL−1832; HYPERLINK http://www.atcc.org/SearchCatalogs/CellBiology.cfmより入手可能)、ヒト滑膜様細胞株MH7A(RIKEN Cell Bank; HYPERLINK ”http://www.rtc.riken.go.jp/CELL/HTML/RIKEN#Cell#Bank.html” から入手可能)、ヒト軟骨様細胞株HCS2/8などを挙げることができる。これらの細胞株は力学的負荷に応答して通常とは異なる細胞性質(サイトカイン・MMP産生能の亢進等)を示すことが報告されている(Journal of Bone & Mineral Research. 13(3):443−53, 1998, Bone 28:399−403, 2001, Hip Joint 23:235−239, 1997)。
【0111】
さらに、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子を発現する細胞であって、かつLPSや炎症性サイトカインによる処理を施した、初代培養軟骨細胞、軟骨細胞様細胞株又は滑膜細胞様細胞株も挙げることができる。これらの細胞株はLPSや炎症性サイトカイン(例えばIL−1、IL−6、TNF)で処理することにより障害を受け、より軟骨障害に近い状態になることが知られている(Ann.Rheum.Dis.,50,75−80,1991)。
【0112】
以上に挙げたような細胞の他、細胞の集合体である組織(例えば軟骨障害モデル動物由来の関節/軟骨組織など)も、本発明のスクリーニングに用いられる「細胞」の範疇に含まれる。
【0113】
候補物質となりえるものとしては、制限されないが、核酸(本発明遺伝子のアンチセンス核酸を含む)、ペプチド、タンパク質(本発明タンパク質に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物などであり、スクリーニングは、具体的にはこれらの候補物質となり得る被験物質を含む試料(被験試料)を上記組織/または細胞と接触させて行うことができる。かかる被験試料としては細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これに制限されない。
【0114】
また、スクリーニングに際して、被験物質と細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死なないように、その培養条件(温度、pH、培地組成など)を大きく変化させない条件を採用することが好ましい。
【0115】
実施例に示すように、軟骨障害に罹患した動物の障害関節(軟骨)組織には、特異的に5−HT7遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、PLTP 遺伝子、NPT3 遺伝子およびIREG1 遺伝子の発現が増大している。また、軟骨障害に罹患した動物の障害関節(軟骨)組織には、特異的にEDG2遺伝子、SCN2A遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子およびENT1 遺伝子の発現が減少している。この知見から、これら本発明の遺伝子の発現はは軟骨障害と関連していると考えられる。すなわち、本発明のスクリーニング方法は、上記の本発明遺伝子の発現またはその発現誘導が軟骨障害と関連していることを利用したものである。よって、該軟骨障害の緩和/抑制作用を有する(軟骨障害に対して改善/治療効果を発揮する)物質の探索には、上記5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現の有無や発現レベルの変動が指標とされる。すなわち、本発明のスクリーニング方法は、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現を制御する物質を探索することによって、軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
なお、ここで「遺伝子の発現を制御する」とは、「遺伝子の発現を抑制するように制御する」という意味と、「遺伝子の発現を亢進(誘導)するように制御する」という意味の2つの意味を含む。
【0116】
上記いずれかの遺伝子の発現を抑制(発現レベルの減少、発現誘導の抑制)するように制御する物質の探索は、具体的には5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現レベルが、被験物質を添加しない細胞のそのレベルに比して低くなること、またこれら本発明遺伝子の発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質(例えば、マウスATDC5細胞の場合はインスリン)によって誘導される発現が候補物質の存在によって抑制されること、すなわち発現誘導物質存在下で候補物質を接触させた細胞の遺伝子発現が、発現誘導物質存在下で候補物質を接触させない対照細胞(正のコントロール)に比して低くなることをもって、行うことができる。
中でも好適には、ET(A)遺伝子、またはGAT1 遺伝子の発現を抑制(発現レベルの減少、発現誘導の抑制)するように制御する物質の探索を挙げることができる。
すなわち本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むET(A)遺伝子の発現を抑制するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a)被験物質とET(A)遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞のET(A)遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞のET(A)遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、ET(A)遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【0117】
また本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むGAT1遺伝子の発現を抑制するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a)被験物質とGAT1 遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞のGAT1 遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞のGAT1 遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、GAT1 遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【0118】
また、上記いずれかの遺伝子の発現を亢進(発現レベルの増加、発現誘導の亢進)するように制御する物質の探索は、具体的には5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子が発現している細胞を用いる場合は、被験物質を添加した細胞における5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現レベルが、被験物質を添加しない細胞のそのレベルに比して高くなること、またこれら本発明遺伝子の発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質(例えば、マウスATDC5細胞の場合はインスリン)によって誘導される発現が候補物質の存在によって亢進されること、すなわち発現誘導物質存在下で候補物質を接触させた細胞の遺伝子発現が、発現誘導物質存在下で候補物質を接触させない対照細胞(正のコントロール)に比して高くなることをもって、行うことができる。
中でも好適には、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、またはVIP1R遺伝子の発現を上昇(発現レベルの増加、発現誘導の亢進)するように制御する物質の探索を挙げることができる。
【0119】
すなわち本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含む5−HT7遺伝子の発現を亢進するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a)被験物質と5−HT7遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞の5−HT7遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の5−HT7遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、5−HT7遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
【0120】
また本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むEDG2遺伝子の発現を亢進するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a)被験物質とEDG2遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞のEDG2遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞のEDG2遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、EDG2遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
【0121】
また本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むVIP1R遺伝子の発現を亢進するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a)被験物質とVIP1R遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞のVIP1R遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞のVIP1R遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、VIP1R遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
【0122】
軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質は、上記スクリーニング方法によって、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、およびIREG1 遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の発現変動を指標として選別される、上記遺伝子の発現制御物質に包含される。なお、ここでいう「発現制御物質」の中には、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子またはVIP1R遺伝子の発現亢進を指標として選別される上記遺伝子の発現亢進物質や、ET(A)遺伝子またはGAT1 遺伝子の発現抑制を指標として選別される上記遺伝子の発現抑制物質が含まれる(以下、同じ)。
【0123】
したがって、上記スクリーニング方法は、上記各遺伝子の発現制御物質の探索方法であると同時に、軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質の探索方法として位置付けることができる。
例えば、軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質としては、ET(A)遺伝子もしくはGAT1遺伝子の発現抑制物質、または5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子もしくはVIP1R遺伝子の発現亢進物質が挙げられる。
また、ET(A)遺伝子およびGAT1遺伝子の少なくとも1つの発現を抑制する物質、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子及びVIP1R遺伝子の少なくとも1つの発現を亢進する物質もまた、前記候補物質として挙げられる。
【0124】
5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の発現を制御する物質(発現制御物質)の選別(探索)または軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質の選別(探索)には、下記の方法を用いることもできる。
例えばATDC5細胞を用いる方法として、インスリンを添加したATDC5細胞(対照細胞)と、インスリンと被験物質とを同時に加えたATDC5細胞とで上記各本発明遺伝子の発現レベルを比較し、その発現レベルの変動(減少/上昇)を指標として発現制御物質または候補物質を選別する方法を挙げることができる。また、インスリンを添加して、既に本発明遺伝子が発現誘導/または発現抑制された状態のATDC5細胞に被験物質を添加し、被験物質を添加しない対照のATDC5細胞と本発明遺伝子の発現レベルを比較して、その発現レベルの低下/または上昇を指標として発現制御物質または候補物質を選別することもできる。この場合、軟骨細胞の分化亢進に起因する軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を選別することが可能となる。
【0125】
また、例えばラット初代培養関節軟骨細胞を用いて発現制御物質または候補物質をスクリーニングする方法の一つとしては、細胞伸展装置(フレクサーセルテンションシステム:米国FLEXCELL社、培養細胞伸展システム:大阪スカラテック社など)により力学的負荷をかけた初代培養関節軟骨細胞(対照細胞)と、力学的負荷と被験物質とを同時に加えた初代培養関節軟骨細胞とで上記本発明遺伝子の発現レベルを比較し、その発現レベルの減少/上昇を指標として発現制御物質または候補物質を選別する方法を挙げることができる。なお、上記遺伝子のうち5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子もしくはVIP1R遺伝子を対象とする場合は、発現レベルの増加(上昇)を指標として発現制御物質(発現上昇物質)または候補物質を選別することができる(以下において同じ)。また、上記遺伝子のうちET(A)遺伝子もしくはGAT1遺伝子を対象とする場合は、発現レベルの減少(低下)を指標として発現制御物質(発現抑制物質)または候補物質を選別することができる(以下において同じ)。
また、力学的負荷を加えて既に本発明遺伝子が発現誘導/または発現抑制された状態の初代培養関節軟骨細胞に被験物質を添加し、被験物質を添加しない対照の初代培養関節軟骨細胞と本発明遺伝子の発現レベルを比較して、その発現レベルの低下/または上昇を指標として発現制御物質または候補物質を選別することもできる。この場合、力学的負荷異常に起因する軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を選別することが可能となる。
【0126】
またラット初代培養関節軟骨細胞を用いて発現制御物質または候補物質をスクリーニングするもう一つの方法としては、IL−1若しくはTNFαを添加した初代培養関節軟骨細胞(対照細胞)と、IL−1若しくはTNFαと被験物質とを同時に加えた初代培養関節軟骨細胞とで上記各本発明遺伝子の発現レベルを比較し、その発現レベルの減少/上昇を指標として発現制御物質または候補物質を選別する方法を挙げることができる。また、IL−1若しくはTNFαを添加して、既に本発明遺伝子が発現誘導または発現抑制された状態の初代培養関節軟骨細胞に被験物質を添加し、被験物質を添加しない対照の初代培養関節軟骨細胞と本発明遺伝子の発現レベルを比較して、その発現レベルの低下または上昇を指標として発現制御物質または候補物質を選別することもできる。この場合、炎症反応に起因する軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を選別することが可能となる。
【0127】
このような本発明のスクリーニング方法における遺伝子の発現レベルの検出及び定量は、前記細胞から調製したRNA又は該RNAから転写された相補的なポリヌクレオチドと本発明の疾患マーカーとを用いて、前記(2−1)項に記述したように、ノーザンブロット法、RT−PCR法など公知の方法、あるいはDNAチップなどを利用する方法に従って実施できる。これら公知の方法については、前記本発明の診断方法に関する(2−1)の項を参照されたい。指標とする遺伝子発現の変動(低下(減少)/上昇)の程度は、被験物質(発現制御物質、候補物質)を添加した細胞における5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現が被験物質(発現制御物質、候補物質)を添加しない対照細胞での発現量と比較して10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上の変動(低下(減少)/上昇(増加))を例示することができる。
【0128】
また5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現レベルの検出及び定量は、これらの遺伝子の発現を制御する遺伝子領域(発現制御領域)に、例えばルシフェラーゼ遺伝子などのマーカー遺伝子をつないだ融合遺伝子を導入した細胞株を用いて、マーカー遺伝子由来のタンパク質の活性を測定することで実施することもできる。本発明の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現制御物質のスクリーニング方法には、かかるマーカー遺伝子の発現量を指標として標的物質を探索する方法も包含されるものであり、この意味において請求項7〜12のいずれかに記載する「5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子」の概念には、これら本発明遺伝子の発現制御領域とマーカー遺伝子との融合遺伝子が含まれる。
【0129】
なお、上記マーカー遺伝子としては、発光反応や呈色反応を触媒する酵素の構造遺伝子が好ましく、具体的には上記のルシフェラーゼ遺伝子のほか、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、及びエクオリン遺伝子などのレポーター遺伝子もまた使用することができる。ここで5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現制御領域としては、例えば該遺伝子の転写開始部位上流約1kb、好ましくは約2kbを用いることができる。なおET(A)遺伝子のプロモーター領域については文献(Biol. Chem., 267 (26): 18797−18804 (1992))において決定されており、またVIP1R遺伝子のプロモーター領域については文献(Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 92 (7), 2939−2943 (1995))において決定されており、またSCN2A遺伝子のプロモーター領域については文献(Brain Res. Mol. Brain Res., 81 (1−2), 187−190 (2000)、および、J. Mol. Neurosci., 11 (3), 179−182 (1998))において決定されているため、これらの文献に開示されたプロモーター領域を使用することができる。
【0130】
融合遺伝子の作成、およびマーカー遺伝子由来の活性測定は公知の方法で行うことができる。
本発明のスクリーニング方法は、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子のいずれか少なくとも1種の発現を制御(抑制・減少/または亢進・増加)させる物質を探索することによって、軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補化合物を提供するものである。
上記スクリーニング方法によって選別される発現制御物質の中から、さらに軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を選別する方法としては、従来公知である如何なる選別方法をも用いることができるが、代表的な方法として、例えばヒト軟骨様細胞株SW1353(ATCC)あるいはヒト滑膜細胞株SW982(ATCC)を用いて、軟骨破壊因子であるMMP(例えばMMP13)の産生量の変動を指標にして評価する方法を挙げることができる。
【0131】
具体的には下記の方法を例示することができる:
すなわち、10%の牛胎児血清(GIBCO BRL)を添加したDMEM(GIBCO BRL)で前記細胞を継代し、実験時、96ウエルプレートに2X105 cells/mlの細胞濃度で0.1 ml/wellずつまきこむ。終濃度10 ng/mlのHuman IL−1βを添加することで刺激を加え、同時に、被験物質(前記発現制御物質)を終濃度5 μg/mlの濃度で添加する。培養は24時間行い、上清を回収して−80℃に保存する。上清中のMMP13量は、MMP13アッセイシステム(アマシャムファルマシアバイオテク社)を用い、添付のプロトコールに従って培地を2倍希釈したものの濃度を測定する。被験物質に30%以上のMMP13産生抑制能が認められる場合は、軟骨障害治療薬としての効果がある可能性が高いと判断する。
また同様の実験を、IL−1βの代わりに他の炎症性サイトカイン(TNFα、IL−18等)を用いることによっても行うことができる。さらにMMPの代わりにPGE2産生量の変動を指標にすることによっても行うことができる。
【0132】
また、本発明のスクリーニング方法を実施する前に、上記に掲げる本発明の各遺伝子について、あらかじめ下記に説明する実験をすることにより、該遺伝子の発現を抑制する物質が軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分(候補物質)として有用なのか、また発現を誘導する物質が軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分(候補物質)として有用なのかを判断することができる。各々の遺伝子について、その発現を抑制する物質が候補物質として有用と判断された場合は、該遺伝子についての上記スクリーニング方法は、その発現の抑制を指標として実施することができ、逆にその発現を誘導する物質が候補物質として有用と判断された場合は、該遺伝子についての上記スクリーニング方法は、その発現の誘導を指標として実施することができる。
【0133】
かかる実験としては、例えば、ヒト滑膜細胞株SW982(ATCC)を用いて炎症性メデイエーターであるPGE2の産生量の変動を指標にする方法を挙げることができる。
具体的には、下記の実験においてPGE2の産生量が阻害される場合は、その遺伝子発現抑制物質を選別することによって、より高い精度で軟骨障害の改善薬または治療薬の候補物質を取得することが可能となる:
細胞は通常10%の牛胎児血清(GIBCO BRL)を添加したDMEM(GIBCO BRL)培地で培養する。実験時、1 X 105 cells/mlになるように培地で希釈し、12穴プレートに1 ml/wellの細胞を播きこむ。24時間培養の後、本発明遺伝子のアンチセンスオリゴDNAを遺伝子導入する。その後、培地交換とともに終濃度10 ng/mlのHuman IL−1βを添加することで刺激を加える。Human IL−1β 添加後24時間培養を行ったのち培養上清を回収し、Prostaglandin E2 EIAシステム(アマシャムファルマシアバイオテク社)を用いて培養上清中のPGE2量を測定する。本発明遺伝子のアンチセンスオリゴDNAの導入により当該PGE2の産生量が30%以上阻害される場合は、その遺伝子発現抑制物質が治療薬になる可能性が高いと考えられる。
また下記の実験においてPGE2の産生量が阻害される場合は、その遺伝子発現誘導(亢進)物質を選別することによって、より高い精度で軟骨障害の改善薬または治療薬の候補物質を取得することが可能となる:
哺乳動物細胞発現ベクター(ストラタジーン社pSG5等)を用い、本発明遺伝子の発現ベクターを作製し、これを対象とする上記の細胞に導入する。なお、導入は上記の方法と同様にして行うことができる。本発明遺伝子の導入により前記PGE2の産生量が30%以上阻害される場合は、その遺伝子発現誘導(亢進)物質が治療薬になる可能性が高いと考えられる。
【0134】
以上のスクリーニング方法により被験物質から選別される物質は、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子のいずれか少なくとも1種の発現制御剤として位置づけることができる。これらの物質が有する本発明遺伝子に対する発現制御作用は軟骨障害の抑制に深く関っているものと考えられる。よって、これらの物質は、軟骨障害を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補物質となりえる。
【0135】
(3−2) タンパク質の発現量を指標とするスクリーニング方法
本発明は、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現を制御する物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明スクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含む:(a)被験物質と5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を発現可能な細胞または該細胞から調製した細胞画分とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞または該細胞から調製した細胞画分における5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞または対照細胞画分における上記タンパク質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現を低下させる被験物質を選択する工程。
【0136】
本発明スクリーニング方法に用いられる細胞は、内在性および外来性を問わず、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を発現し、発現産物としての5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を有する培養細胞全般を挙げることができる。具体的には上記(3−1)項に記載された細胞を挙げることができる。
5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現は、遺伝子発現産物であるタンパク質を検出することにより、容易に確認することができる。細胞画分とは、上記細胞に由来する各種画分を意味し、これには、例えば、細胞膜画分、細胞質画分、細胞核画分などが含まれる。
本発明のスクリーニング方法には、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1のタンパク質の発現レベルを指標として、その発現量を制御する物質(発現レベルを正常レベルに戻す物質)を探索する方法が包含される。このスクリーニング方法によって、変形性関節症の緩和/抑制作用を有する(変形性関節症に対して改善/治療効果を発揮する)候補物質を提供することができる。
すなわち、本発明のスクリーニング方法は、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1のタンパク質発現量を変動させる物質を探索することによって、変形性関節症の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
なお、ここで「タンパク質発現量を制御(変動)する」とは、「タンパク質の発現量が減少するように制御する」という意味と、「タンパク質の発現量が増加するように制御する」という意味の2つの意味を含む。
【0137】
上記いずれかのタンパク質の発現を抑制(発現レベルの減少、発現誘導の抑制)するように制御する物質の探索は、具体的には5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1を発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1のタンパク質量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のタンパク質量(レベル)に比して低くなることを指標として、行うことができる。また、これらの本発明タンパク質の発現に、発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質(例えば、マウスATDC5細胞の場合はインスリン)によって誘導される発現が、候補物質の存在によって抑制されること、すなわち発現誘導物質存在下で候補物質を接触させた細胞の遺伝子発現が、発現誘導物質存在下で候補物質を接触させない対照細胞(正のコントロール)に比して低くなることをもって、行うことができる。
なかでも好適には、ET(A)またはGAT1の発現を抑制(タンパク質量の減少)するように制御する物質の探索を挙げることができる。
【0138】
また、上記いずれかのタンパク質の発現を亢進(発現レベルの増加、発現誘導の亢進)するように制御する候補物質の選別は、具体的には5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1を発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1の蛋白量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して高くなることを指標として、行うことができる。また、これらの本発明タンパク質の発現に、発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質(例えば、マウスATDC5細胞の場合はインスリン)によって誘導される発現が、候補物質の存在によって亢進されること、すなわち発現誘導物質存在下で候補物質を接触させた細胞の遺伝子発現が、発現誘導物質存在下で候補物質を接触させない対照細胞(正のコントロール)に比して高くなることをもって、行うことができる。
なかでも好適には、5−HT7、EDG2またはVIP1Rの発現を亢進(タンパク質量の増加)するように制御する物質の探索を挙げることができる。
【0139】
本発明のスクリーニング方法にかかる5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3およびIREG1のいずれかの発現量は、前述したように、例えば抗体に関する本発明疾患マーカー(例えばヒト5−HT7タンパク質またはそのホモログ、ヒトEDG2タンパク質またはそのホモログ、ヒトEDG1タンパク質またはそのホモログ、ヒトET(A)タンパク質またはそのホモログ、ヒトGPR88タンパク質またはそのホモログ、ヒトPTH2Rタンパク質またはそのホモログ、ヒトVIP1Rタンパク質またはそのホモログ、ヒトCLIC2タンパク質またはそのホモログ、ヒトSCN2Aタンパク質またはそのホモログ、ヒトATA1タンパク質またはそのホモログ、ヒトABCA1タンパク質またはそのホモログ、ヒトABCG2タンパク質またはそのホモログ、ヒトGAT1タンパク質またはそのホモログ、ヒトPLTPタンパク質またはそのホモログ、ヒトENT1タンパク質またはそのホモログ、ヒトNPT3タンパク質またはそのホモログ、およびヒトIREG1タンパク質またはそのホモログを認識する抗体)を用いたウェスタンブロット法等の公知方法に従って定量できる。ウェスタンブロット法は、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)等の酵素等で標識した一次抗体に結合する抗体を用いて標識し、これら標識物質由来のシグナルを放射線測定器(BAI−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detection System(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)を利用して該プロトコールに従って検出し、マルチバイオメージャーSTORM860(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
【0140】
候補物質となりえるものとしては、制限されないが、核酸(本発明遺伝子のアンチセンス核酸を含む)、ペプチド、タンパク質(本発明タンパク質に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物などであり、スクリーニングは、具体的にはこれらの候補物質となり得る被験物質を含む試料(被験試料)を上記組織/または細胞と接触させて行うことができる。かかる被験試料としては細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これに制限されない。
軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質は、上記スクリーニング方法によって得られる5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3またはIREG1の少なくとも1つのタンパク質の発現を制御する物質(発現制御物質)に包含される。
【0141】
(3−3) タンパク質の機能を指標とするスクリーニング方法
本発明は、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1の機能(活性)を制御する物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0142】
本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a) 5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1の機能(活性)を変動させる被験物質を選択する工程。
【0143】
かかるスクリーニングは、上記の本発明のタンパク質の少なくとも1つを含むものを対象として行うことができ、具体的には、本発明タンパク質の機能(活性)に応じて、水溶液、細胞またはその細胞画分のいずれかの形態のものを例示することができる。ここで水溶液とは、本発明タンパク質を含むものであればよく、特に制限されないが、例えば通常の水溶液の他、細胞溶解液、核抽出液あるいは培養上清なども含まれる。また細胞としては、内在性及び外来性などの由来に関わらず、本発明遺伝子を発現しており、本発明タンパク質を有する細胞を挙げることができる。また細胞画分とは、かかる細胞に由来する各種の画分を意味するものであり、例えば細胞膜画分、細胞質画分、および細胞核画分などを挙げることができる。
【0144】
実施例に示すように、本発明タンパク質である、5−HT7、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、ATA1、ABCA1、PLTP、NPT3、並びに、IREG1は、ラット十字靭帯切断モデルの障害軟骨において、正常軟骨と比較して発現上昇していた。
また、EDG2、SCN2A、ABCG2、ENT1、並びに、GAT1は、ラット十字靭帯切断モデルの障害軟骨において、正常軟骨と比較して発現減少していた。
これらの知見から、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子がコードするタンパク質は、軟骨障害の発生、進行または抑制などにおいて関連性があるものと考えられる。すなわち本発明のスクリーニング方法は、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子によりコードされるタンパク質が、軟骨障害と関連していることを利用したものである。よって、該軟骨障害の緩和/抑制作用を有する(軟骨障害に対して改善/治療効果を発揮する)物質の探索には、上記本発明タンパク質の機能または活性の変動(低下または抑制/上昇または亢進)が指標とされる。
【0145】
すなわち軟骨障害の緩和/抑制作用を有する(軟骨障害に対して改善/治療効果を発揮する)物質の探索には、まず上記に掲げる少なくとも1つの本発明タンパク質の機能または活性の変動(低下または抑制/上昇または亢進)を指標として、当該タンパク質の機能または活性を制御する物質(制御物質)を探索することが必要である。なお、ここでいう「タンパク質の機能または活性を制御する物質(制御物質)」の中には、「タンパク質の機能または活性を抑制するように制御する物質」と「タンパク質の機能または活性を亢進するように制御する物質」の2つが含まれる。本発明は、上記に掲げる少なくとも1つの本発明タンパク質の機能または活性を制御する物質(制御物質)をスクリーニングする方法を提供し、それによって得られた制御物質を軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質として提供するものである。
【0146】
本発明タンパク質の機能(活性)制御の1つの態様として、該タンパク質の機能(活性)を抑制(低下)させる方向に制御する物質の探索は、例えば5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A 、ATA1 、ABCA1 、ABCG2 、GAT1 、PLTP 、ENT1 、NPT3 、またはIREG1 を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分に被験物質を接触させた場合に得られる上記の少なくとも1つのタンパク質の機能(活性)が、被験物質を添加しない対照の水溶液、細胞または細胞画分の上記対応するタンパク質の機能(活性)に比して低くなることを指標として行うことができる。
【0147】
なかでも好適には、ET(A)またはGAT1の機能(活性)を抑制(低下)させる方向に制御する物質の探索を挙げることができる。すなわち本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むET(A)の機能または活性を抑制するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a) ET(A)を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のET(A)由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記ET(A)の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のET(A)の機能(活性)を低下させる被験物質を選択する工程。
【0148】
また、本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むGAT1の機能または活性を抑制するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a) GAT1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のGAT1由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記GAT1の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のGAT1の機能(活性)を低下させる被験物質を選択する工程。
【0149】
一方、本発明タンパク質の機能(活性)制御のもう1つの態様として、該タンパク質の機能(活性)を亢進(上昇、増加)させる方向に制御する物質の探索は、例えば5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分に被験物質を接触させた場合に得られる上記の少なくとも1つのタンパク質の機能(活性)が、被験物質を添加しない対照の水溶液、細胞または細胞画分の上記対応するタンパク質の機能(活性)に比して高くなることを指標として行うことができる。
【0150】
中でも好適には、5−HT7、EDG2またはVIP1Rの機能(活性)を亢進(上昇)させる方向に制御する物質の探索を挙げることができる。すなわち本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含む5−HT7の機能または活性を亢進するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a) 5−HT7を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記5−HT7の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7の機能(活性)を亢進させる被験物質を選択する工程。
【0151】
また、本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むEDG2の機能または活性を亢進するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a) EDG2を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のEDG2由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記EDG2の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のEDG2の機能(活性)を亢進させる被験物質を選択する工程。
【0152】
また、本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むVIP1Rの機能または活性を亢進するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a) VIP1Rを含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のVIP1R由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記VIP1Rの機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のVIP1Rの機能(活性)を上昇させる被験物質を選択する工程。
【0153】
軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質は、上記スクリーニング方法によって、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1の少なくとも1つのタンパク質の機能(活性)の変動を指標として選別される上記タンパク質の機能(活性)制御物質に包含される。なお、ここでいう「タンパク質の機能(活性)制御物質」の中には、ET(A)もしくはGAT1の少なくとも1つのタンパク質の機能(活性)の抑制を指標として選別される上記タンパク質の機能(活性)抑制物質、または5−HT7、EDG2もしくはVIP1Rの少なくとも1つのタンパク質の機能(活性)の亢進を指標として選別される上記タンパク質の機能(活性)亢進物質が含まれる(以下、同じ)。
したがって、上記スクリーニング方法は、上記各本発明タンパク質の制御物質の探索方法であると同時に、軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質の探索方法として位置付けることができる。
【0154】
ここで軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質となりえるものとしては、制限されないが、核酸(本発明遺伝子のアンチセンス核酸を含む)、ペプチド、タンパク質(本発明タンパク質に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物などであり、スクリーニングは、具体的にはこれらの候補物質となり得る被験物質を含む試料(被験試料)を上記水溶液、細胞またはその細胞画分と接触させて行うことができる。かかる被験試料としては細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これに制限されない。
【0155】
5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1の少なくとも1つの本発明タンパク質の機能(活性)を制御する物質(以下、単に「制御物質」ともいう)の選別(探索)、言い換えれば軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質(以下、単に「候補物質」ともいう)の選別(探索)には、以下の方法を用いることができる。
【0156】
I.本発明のタンパク質が受容体である場合
I−1. 受容体結合阻害活性の測定
本発明タンパク質がG蛋白共役型受容体(GPCR)である場合、すなわち本発明タンパク質が5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、またはVIP1Rである場合、被験物質が、本発明タンパク質(GPCR)と該タンパク質の既知のリガンドとの結合を阻害するか否かを測定することによって、候補物質を選別するスクリーニング方法が挙げられる。
該スクリーニング方法は、当業者の常識の範囲より適宜選択されるが、一例としては、(a)本発明タンパク質に標識リガンドを接触させた場合に、該タンパク質に結合する標識リガンド量と、(b)本発明タンパク質に標識リガンドおよび被験物質を接触させた場合に、該タンパク質に結合する標識リガンド量とを比較評価することを含むスクリーニング方法が挙げられる。
また、本発明タンパク質を発現する細胞膜画分をチップ上に固定し、該チップ上に被験物質溶液をロードして、表面プラズモン共鳴法により被験物質の膜への結合及び解離を測定し、結合及び解離の速度あるいは結合量から、被験物質と本発明タンパク質との親和性を算出する方法を用いることもできる。
ここで用いられる本発明タンパク質は、天然物であっても組み換え体であってもよい。また、ヒト型であることが好ましいが、マウス型などの他の種由来のものも利用できる。
本発明タンパク質は、Molecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等の基本書に従い、当業者にとって公知の方法で調製することができる。例えば、本発明タンパク質のcDNAをpCAGGS(Gene108, 193−199(1991))、pcDNA1.1、pcDNA3.1誘導体(インビトロジェン社)などの公知の発現ベクターに挿入する。その後、適当な宿主に導入し、培養することにより、導入した本発明タンパク質のDNAに対応するタンパク質を発現させた形質転換細胞を作製することができる。宿主としては、一般的に広く普及している、CHO細胞、C127細胞、BHK21細胞、COS細胞などを用いることができるが、これに限定されることなく、酵母、細菌、昆虫細胞などを用いることもできる。
本発明タンパク質のcDNAを有する発現ベクターの宿主細胞への導入方法としては、公知の発現ベクターの宿主細胞への導入方法であれば、どのような方法でもよく、例えばリン酸カルシウム法(J. Virol., 52, 456−467(1973))、LT−1(Panvera社製)を用いる方法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、Lipofectin;Gibco−BRL社製)を用いる方法などが挙げられる。
以上のようにして得られた本発明タンパク質を発現する形質転換細胞は、そのままスクリーニングに用いることができるが、細胞膜をスクリーニングに用いる場合は、例えば以下のようにして細胞膜画分を得ることができる。すなわちまず細胞に低張バッファーを添加し、細胞を低張破壊した後、ホモジナイズし、遠心分離することにより細胞膜画分の沈殿物を得る。そしてこの沈殿物をバッファーに懸濁することにより、本発明タンパク質である受容体を含有する細胞膜画分を得ることができる。得られた細胞膜画分は、抗体を結合させたカラム等により常法で精製することもできる。
上記スクリーニング方法には、本発明タンパク質を発現する細胞、または前記細胞の細胞膜画分を用いることもできる。該細胞は、天然の細胞であっても形質転換細胞であってもよい。
【0157】
上記のスクリーニング方法で用いられる標識リガンドは、本発明タンパク質のリガンドとして既知のものを適宜標識して用いることができる。
標識リガンドとしては、リガンドの任意の1または複数の原子を放射性同意元素で標識したリガンド、蛍光・ビオチン等で標識したリガンドなどが挙げられ、放射性同位体元素で標識したリガンドとしては、具体的には水素原子を3H(トリチウム)で標識する方法、炭素原子を14Cで標識する方法、または、硫黄原子を35Sで標識する方法が挙げられる。または、リガンドがベンゼン環を含む場合該ベンゼン環の任意の水素原子を、125Iで置換して標識することもできる。
具体的には、5−HT7の標識リガンドとしては[3H]5−HT (Amersham Biosciences社製等)または[3H]5−カルボキサミドトリプタミン([3H]5−CT;Amersham TRK.1038)を、EDG2の標識リガンドとしては1−Oleoyl[oleoyl−9,10−3H]−LPA(NEN−Dupont社製等)を、EDG1の標識リガンドとしては[3H]S−1−P (J Biol Chem 272:5291−97,1997)を、ET(A)の標識リガンドとしては[125I]Endothelin−1, [3H]BQ123(Amersham Biosciences社製等)を、PTH2Rの標識リガンドとしては[125I](Nle8,Nle18,Tyr34)PTH(1−34)amide(Amersham Biosciences社製等)を、VIP1Rの標識リガンドとしては[125I−Tyr10]VIP(Amersham Biosciences社製等)等を、それぞれ用いることができる。
また、ペプチド化合物の標識リガンドについては蛍光標識(Molecular Probes社製Alexa Protein Labeling Kits等)、ビオチン標識(Pierce社製EZ−Link Biotinylation Kits等)、化学発光色素標識(Assay Designs社製Chemiluminescence Labeling Kit等)を用いる非放射ラベル化が可能である。
【0158】
受容体結合阻害活性の測定は、具体的には、以下の手順で行うことができる。すなわち、本発明タンパク質(受容体)を含有する水溶液(通常緩衝液が用いられる。)、細胞膜画分、もしくは形質転換細胞に、10−3〜10−10Mの適当な濃度に調製した被験化合物溶液(通常溶媒には水もしくは緩衝液が用いられるが、溶解度に応じてエタノールやDMSOを添加することもできる。)を加えた後、標識リガンドを加え、室温で一定時間(通常、10分〜2時間)反応させる。
本発明タンパク質を含有する形質転換細胞もしくは細胞膜画分を用いる場合、遠心分離等により上清を単離して放射活性を測定し、上清中に含まれる標識リガンド量を計測することができる。あるいは、形質転換細胞もしくは細胞膜画分を含む沈殿物を界面活性剤、塩基を含む溶液に溶解し、その放射活性を測定し、沈殿物に含まれる標識リガンド量を計測することができる。
上記の数値を、被験化合物の代わりに溶媒をブランクとして用いて実施した場合の値と比較することにより、被験化合物が本発明タンパク質(受容体)と標識リガンドの結合を阻害するか否かを評価することができる。具体的な阻害率(%)については、以下の式:
{1−(被験物質を添加した場合に本発明タンパク質と結合した標識リガンド量)/(被験物質非添加時における本発明タンパク質と結合した標識リガンド量)}X100
で算出することによって求めることができる。
【0159】
尚、前記スクリーニング方法においては本発明タンパク質の機能を阻害する物質および亢進する物質が共に選択されるため、該物質が本発明タンパク質の機能を阻害するか亢進するかを決定するには、更に別のスクリーニング方法を実施することが望ましい。
【0160】
I−2. GTP との結合活性を測定する方法
本発明タンパク質がG蛋白共役型受容体(GPCR)である場合、該タンパク質の機能の測定は、G蛋白共役型受容体(GPCR)がGDP存在下でGTPアナログであるGTPγSと結合する性質を利用して行うことも出来る。すなわち、被験物質が、本発明タンパク質(GPCR)とGTPγSの結合を制御(阻害もしくは亢進)するか否かを調べることにより、被験物質が本発明タンパク質の機能を制御するか否かを評価することができる。すなわち、当業者に公知の方法を用いて、本発明タンパク質(GPCR)の発現ベクターを作製し、CHO−K1細胞・HEK293細胞等に過剰発現させ、培養する。ここで、必要に応じて、Gタンパク質の発現ベクターを共発現させることもできる。遠心分離等の操作により、細胞膜画分を調製する。これを、適当な緩衝液などの溶媒中で、被験物質とともに混合し、一定時間(例えば、30分〜2時間)インキュベートする。更に、[35S]−GTPγSを混合し、一定時間(例えば、30分〜2時間)インキュベートする。グラスフィルター上で、緩衝液で洗浄することにより結合反応を終了させた後、フィルター上の放射活性を測定することにより、本発明タンパク質(GPCR)とGタンパク質複合体に結合した[35S]−GTPγS量を算出することができる。被験物質存在下での結合量と、被験物質非存在下での結合量を比較することにより、被験物質を、本発明タンパク質(受容体)の活性を制御する候補物質として選別することができる。
【0161】
上記スクリーニング方法において、被験物質の存在下で放射活性(Gタンパク質複合体に結合した[35S]−GTPγS 量)が増加すれば、該被験物質はアゴニストであり、放射活性が減少すればインバースアゴニストである。
また、上記スクリーニング方法を、アゴニストリガンドの共存下に行うことにより、本発明タンパク質のアンタゴニストをスクリーニングすることができる。すなわち、アゴニストリガンドおよび被験物質の共存下で放射活性が被験物質非存在下における放射活性よりも小さければ被験物質はアンタゴニストである。
【0162】
あるいは、GαへのGTPアナログの結合を表面プラズモン共鳴法等を用いてモニタリングすることによってもスクリーニングが可能である。
【0163】
上記の方法で、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、PTH2R、およびVIP1Rの機能を制御する候補物質のスクリーニングを実施することができる。
尚、アゴニストリガンドが不明であるGPR88については、GPR88およびGタンパク質の融合タンパク質を用いる方法等を用いることにより、より効率的にアゴニストリガンド非存在下で上記のスクリーニングを実施することができる。これについては、本明細書実施例、および Methods in Enzymology. 343:260−73,2002, J Biol Chem, 276: 35883−90,2001 に記載された方法に従って実施することができる。
【0164】
I−3. 受容体の生理活性の測定
本発明タンパク質がG蛋白共役型受容体(GPCR)である場合、該タンパク質にアゴニストリガンドが結合することによって生ずる生理活性を指標として、該タンパク質の機能を制御する候補物質を選別することもできる。すなわち、(a)本発明タンパク質にアゴニストリガンドを接触させた場合における、本発明タンパク質(受容体)を介した前記生理活性と、(b)本発明タンパク質(受容体)にアゴニストリガンドおよび被験化合物を接触させた場合に生ずる生理活性とを比較評価することを含むスクリーニング方法が挙げられる。該方法により、アンタゴニスト作用を有する被験物質を選別することができる。
また、(c)本発明タンパク質に被験物質を接触させた場合における、本発明タンパク質(受容体)を介した生理活性と、(d)本発明タンパク質に溶媒などのブランクを接触させた場合における生理活性とを比較評価することにより、被験物質がアゴニスト作用又はインバースアゴニスト作用を有するか否かを評価することができる。
該生理活性としては、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、イノシトールリン酸産生(ホスホリパーゼCβ活性)、TPA(12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート)応答エレメント(TRE)のレポータージーンアッセイ、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fos活性化、アデニル酸シクラーゼ活性、cAMP応答性エレメントのレポータージーンアッセイ、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、細胞膜電位変動、またはpHの低下等を促進もしくは抑制する等の活性が挙げられる。
該生理活性は、公知の方法、または市販の測定用キットを用いて測定することができる。すなわち、本発明タンパク質(GPCR)を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。新鮮な培地、あるいは細胞毒性を示さない適当なバッファーに交換し、被験化合物、および/またはアゴニストリガンド等を添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出、あるいは上清液を回収して生成した産物をそれぞれ該当する方法に従って定量する。生理活性の指標とする物質(例えばアラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって測定不能な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を併用することもできる。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の産生量を増大させて、感度良く測定することもできる。
【0165】
具体的には、以下の方法が挙げられる。
(1)Fluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いる方法
1)本発明タンパク質遺伝子の発現ベクターと、Gq蛋白、Gqs5蛋白(Gqs5とは、C末端に、Gs蛋白のC末端アミノ酸5残基を置換したGq蛋白を意味する。)もしくはGqi5蛋白(Gqi5とは、C末端に、Gi蛋白のC末端アミノ酸5残基を置換したGq蛋白を意味する。)の発現ベクターを作製する。ここで、細胞株としては、CHO−K1細胞等を用いることができ、上記発現ベクターを遺伝子導入試薬Lipofectoamine(Invitrogen社)等を用いて共導入することができる。
2)次に該細胞を、probenecid(色素を細胞内に保持するために、multiple drug−resistance pumpの阻害剤として用いる。)、およびFluo−3 AM(Molecular Probe社)等のCa2+によって蛍光活性を示す色素を含むF12培養培地中で、CO2インキュベーターにて一定時間(例えば30分〜2時間)培養する。
3)アゴニストリガンドをprobenecidを含むHBSS等の培養培地に溶解した溶液を添加し、2分後までFLIPRにて計測する。検出は、488nmのアルゴンレーザーで細胞を励起し、カルシウムイオンが結合したFluo−3の蛍光を500−560nmの波長でとらえることによって行う。アゴニストリガンド添加直後から60秒後までの蛍光強度から、添加前の値をバックグラウンドとして差し引いた値を活性とする。被験物質を添加する場合はアゴニストリガンドを添加する前に添加し、その後アゴニストリガンドを添加する。
4)被験物質の存在下における本発明タンパク質の生理活性と、被験物質非存在下における該生理活性の差異を求めることにより、差異の大きい被験物質を、本発明タンパク質の生理活性を抑制もしくは亢進する候補物質として選別することができる。すなわち、被験物質及びアゴニストリガンドの共存下における蛍光強度が、被験物質非存在下におけるアゴニストリガンドの蛍光強度よりも小さければ、該被験物質はアンタゴニストである。
また、上記3)においてアゴニストリガンドの代わりに被験物質を添加してアッセイを行うことにより、アゴニスト活性もしくはインバースアゴニスト活性を有する化合物をスクリーニングすることができる。すなわち、被験物質存在下における蛍光強度が被験物質非存在下における蛍光強度よりも大きければ被験物質はアゴニストであり、被験物質存在下における蛍光強度が被験物質非存在下における蛍光強度よりも小さければ被験物質はインバースアゴニストである。 ここで、本発明タンパク質がアゴニスト不明であるGPR88である場合、前記1)〜4)の工程を実施するにあたって、3)の工程においてアゴニストのかわりに被験物質を用いることにより、被験物質が本発明タンパク質のアゴニスト活性を有するか否かを調べることができる。
更に、アゴニストリガンド非存在下に本発明のタンパク質(受容体)を活性化させるためにGPR88およびGタンパク質を融合タンパク質として発現させる方法を用いることができる。すなわち、前記1)〜4)の工程を実施するにあたって、1)の工程において、GPR88とGタンパク質を融合させたタンパク質を共発現させ、前記3)の工程をアゴニストリガンド非存在下に実施することにより、被験物質が本発明タンパク質の機能を阻害するか否かを調べることができる。ここで用いられるGタンパク質は、通常Gタンパク質のαサブユニットであり、4種類のクラス(αS、αi/0、αq、α12)が挙げられる。具体的なGタンパク質としては、GqファミリーのGα16、GiファミリーのGαi2、GsファミリーのGαS2が挙げられる。すなわち、それぞれのGタンパク質とGPR88との融合タンパク質を発現させ、細胞内cAMPを上昇させる活性等のGPCRの活性化に伴う生理活性を測定することによって、最もスクリーニングに適したGタンパク質を選択することができる。
【0166】
また、上記FLIPRを用いる方法以外に、3H標識したホスファチジルイノシトール−4,5−ニリン酸を添加し、生成するイノシトールリン酸量を公知の手法を用いて測定することもできる。
また、Ca2+により活性化されるTPA(12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート)応答エレメント(TRE)の下流にルシフェラーゼ、 クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、成長ホルモン、GFPなどのレポーター遺伝子を連結し、レポータージーンアッセイを行う方法が挙げられ、以下の(2)と同様の手順で実施することができる。
【0167】
(2)cAMP応答性エレメントのレポータージーンアッセイを用いる方法
cAMP応答性エレメントのレポータージーンアッセイを用いる方法は、本発明タンパク質にアゴニストが結合して生じるシグナル伝達により活性化されるcAMP応答性エレメント(CRE)の下流にルシフェラーゼ、 クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、成長ホルモン、GFPなどのレポーター遺伝子を連結し、レポータージーンアッセイを行う方法である。すなわち、
1)本発明遺伝子、GsまたはGi、およびcAMP応答性エレメント(CRE)の下流にルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、成長ホルモン、GFPなどのレポーター遺伝子を連結した遺伝子を発現するベクターを作製する。ここで、細胞株としては、CHO−K1細胞等を用いることができ、上記発現ベクターを遺伝子導入試薬Lipofectoamine (Invitrogen社)等を用いて共導入することができる。
2)次に該細胞を、適当な培地中で、CO2インキュベーターにて一定時間(例えば4〜8時間)培養する。
3)培地交換後、被験物質及び/またはアゴニストリガンドを適当な培養培地に溶解した溶液を添加し、一定時間(4時間〜24時間)後、レポーター活性を測定する。例えばルシフェラーゼの場合は、細胞溶解液で細胞を溶かし、その一部分を用いてルシフェラーゼ基質溶液(プロメガ社Luciferase assay system等)と反応させた際の発光をルミノメーターで測定する。
4)被験物質の存在下における本発明タンパク質の生理活性と、被験物質非存在下における該生理活性の差異を求めることにより、差異の大きい被験物質を、本発明タンパク質の生理活性を抑制もしくは亢進する候補物質として選別することができる。GαがGiαの場合、被験物質存在下でAC活性が増加すれば該被験物質はインバースアゴニストであり、活性が減少すればアゴニストである。一方GαがGsαの場合、被験物質存在下でAC活性が増加すれば該被験物質はアゴニストであり、活性が減少すればインバースアゴニストである。
また、アゴニストリガンドの共存下に被験物質が該アゴニストの生理活性を抑制すれば該被験物質はアンタゴニストである。
ここで、本発明タンパク質がアゴニスト不明であるGPR88である場合、前記のとおり、GPR88およびGタンパク質を融合タンパク質として発現させる方法を用いて前記1)の工程を実施し、2)から3)を前記と同様に実施することができる。
【0168】
(3)アデニル酸シクラーゼ(AC)活性を測定する方法
本発明タンパク質(GPCR)が、Gs蛋白もしくはGi蛋白と共役して存在し、アゴニスト刺激によりアデニレートサイクラーゼを活性化、細胞内cAMPを上昇させる活性を用いて、スクリーニングを行うことができる。すなわち、本発明タンパク質(GPCR)がGsαと相互作用する場合、アゴニストリガンドが結合することによってAC活性を奏する。一方本発明タンパク質(GPCR)がGiαと相互作用する場合、アゴニストリガンドが結合することによってAC活性が抑制される。
AC活性の測定には公知の方法を用いることができる。例えば、ACを含む膜画分にATPを添加し、生成するcAMP量を、抗cAMP抗体を用いてRI(125I)、酵素(アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ等)、蛍光物質(FITC、ローダミン等)等で標識したcAMPとの競合イムノアッセイにより測定する方法や、ACを含む膜画分に[α−32P]ATPを添加し、生成する[32P]cAMPをアルミナカラム等で分離後、その放射活性を測定する方法等が挙げられる。
具体的には、被験物質及び/またはアゴニストリガンドの存在下でAC活性を測定・比較する。GαがGiαの場合、被験物質存在下でAC活性が増加すれば該被験物質はインバースアゴニストであり、活性が減少すればアゴニストである。一方GαがGsαの場合、被験物質存在下でAC活性が増加すれば該被験物質はアゴニストであり、活性が減少すればインバースアゴニストである。
また、アゴニストリガンドの共存下に被験物質が該アゴニストの生理活性を抑制すれば該被験物質はアンタゴニストである。
また、細胞を[3H]アデニンで標識し、生成した[3H]cAMPの放射活性を測定することによって、AC活性を評価することもできる。
【0169】
上述の方法を用いて、本発明タンパク質(受容体)の機能に基づくスクリーニングを実施することができる。本発明タンパク質(GPCR)それぞれについて、以下の(i)〜(vii)に例示する。
(i) 5−HT7:
5−HT7は、5−Hydroxytryptamine受容体ファミリーの一つであって、Gs蛋白と共役しアデニレートサイクラーゼを活性化する(J. Biol. Chem. 268 (31), 23422−23426 (1993))。5−HT7受容体は、海馬CA2,CA3領域に高密度に存在すること、また、抗精神病薬や抗うつ薬と高親和性を示すこと等から、神経機能との関わりが指摘されている。また、末梢血リンパ球、脾臓、および胸腺でも発現が見られることから免疫機能との関わりも指摘されている(Brain, Behavior, & Immunity14:219−24、2000)。5−HT7受容体活性の測定は、Anal Biochem270:242−8,1999, PNAS95:352−7,1998に記載された方法に基づき、前記の方法で行うことができる。
また、公開特許公報:特開2003−12648に記載された、ラット5−HT7受容体を発現するHEK−293細胞を用いて被験物質による[3H]−5−カルボキサミドトリプタミンの受容体結合阻害活性を測定する方法、前記細胞を用いて被験物質のアデニル酸シクラーゼ活性を測定する方法を用いることもできる。
本発明のスクリーニング方法の好ましい態様として、5−HT7の機能を促進する物質、即ち5−HT7のアゴニストを選別する方法が挙げられる。
【0170】
(ii) EDG2:
EDG2は、リゾリン脂質(lysophospholipid)に対する受容体EDGファミリーの一つであり、lysophosphatidic acid(LPA)をアゴニストとするG蛋白共役型受容体である(Biochemical & Biophysical Research Communications 231: 619−22,1997)。LPAによるEDG2を介した細胞内カルシウム上昇作用は主としてGi蛋白を介することが百日咳毒素を用いた実験から示されている(Molecular Pharmacology54: 881−8,1998)。
EDG2活性は、当業者に公知の任意の方法で測定することができる。例えば本受容体がアゴニストであるLPAにより活性化すると細胞内カルシウムが上昇することを利用しfluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて行うことができる。また、J. Biol. Chem., 273, 4653−4659 (1998)に記載されたG12/13由来のシグナル伝達を用いる方法、Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A., 95,6151−6156 (1998)、Mol. Brain. Res., 50, 121−126 (1997)、Biochem. Biophys. Acta., 1582, 190−196 (2002)に記載された方法等を用いることもできる。本発明のスクリーニング方法の好ましい態様として、EDG2の機能を促進する物質、すなわちアゴニストを選別する方法が挙げられる。
【0171】
(iii) Endothelial differentiation, lysophosphatidic acid G−protein coupled receptor, 1:
EDG1は、リゾリン脂質(lysophospholipid)に対する受容体EDGファミリーの一つであり、Sphingosine−1−phosphate(S1P)をアゴニストとするG蛋白共役型受容体である(Science 279 (5356), 1552−1555 (1998))。S1PによるEDG1を介した細胞内カルシウム上昇作用は主としてGi蛋白を介することが百日咳毒素を用いた実験から示されている(J Biol Chem273:27104−110,1998)。
EDG1活性の測定は、本受容体がアゴニストであるS1Pにより活性化すると細胞内カルシウムが上昇することを利用し(J Biol Chem273:27104−110,1998)、fluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて行うことができる。
【0172】
(iv) ET(A):
ET(A) (EDNRA)は強力な持続性血管収縮作用を持つEndothelin(ET)の受容体として同定された因子である(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88 (8), 3185−3189 (1991))。これまでの研究によりETが血管以外の心臓・肺・腎臓・内分泌組織にも作用すること、それらの器官にもEDNRAが発現していることが明らかにされている(タンパク質核酸酵素45(6)961−6,2000)。
EDNRAの活性測定は、EDNRAがGs蛋白を介してcAMPの上昇をもたらすことから(J. Biol. Chem. 267:12468−74,1992, J. Biol. Chem. 27010072−8,1995)、G蛋白としてGqs5を用いて、fluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて行うことができる。
また、Trends Pharmacol. Sci., 15, 313 (1994)、Br. J. Pharmacol., 112, 207−213(1994)、Eur J. Pharmacol., 252, 2, R3−R4 (1994)に記載された方法を用いることもできる。
本発明のスクリーニング方法の好ましい態様として、ET(A)の機能を抑制する物質、すなわちアンタゴニストもしくはインバースアゴニストを選別する方法が挙げられる。
【0173】
(v) GPR88:
GPR88はラット脳の部位特異的に発現が変動している遺伝子としてクローニングされてきたG蛋白共役型受容体遺伝子である(Genomics. 2000 Nov 1;69(3):314−21)。内在性のアゴニストについては同定されておらず、従って機能も不明である。
GPR88の活性測定は、G蛋白共役型受容体がGDP存在下でGTPアナログであるGTPγSと結合する性質を利用して行うことが出来る。すなわち、被験物質が、GRP88とGTPγSの結合を制御(阻害もしくは亢進)するか否かを調べることにより、被験物質がGRP88の活性を制御するか否かを評価することが出来る。
【0174】
(vi) PTH2R:
PTH2R(PTH2R)はPTHの第2の受容体として同定された因子であり、いわゆるPTH1Rと比較するとPTHrPをアゴニストとしない、組織発現分布が限定されている、などの特徴がある(J Biol Chem 1995 Jun 30;270(26):15455−8)。
PTH2Rの活性測定は、アゴニスト刺激により細胞内cAMPが上昇するという性質を用い、文献(Anal Biochem270:242−8,1999, PNAS95:352−7,1998)に従って、fluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて以下のように行うことができる。
【0175】
(vii) VIP1R:
VIP1Rは52Kdaの細胞膜上G蛋白共役型受容体遺伝子であり、神経系・免疫系等に作用を及ぼすVIPのシグナルを受容する受容体である。VIP・PACAPについては近年強い抗炎症作用が報告されていることから、共通の受容体であるVIP1Rがその作用を担っていると考えられている(Nature Medicine 7:563−8,2001)。
VIP1Rの活性測定は、アゴニスト刺激により細胞内cAMPが上昇するという性質を用い、文献(Anal Biochem270:242−8,1999, PNAS95:352−7,1998)に従って、fluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いることができる。
また、Cardiovasc., Res. 49, 27−37 (2001)、J. Mol. Neurosci., 14, 61−68(2000)、Brain Res. Rev., 94, 31−36 (1996)、Ann. N. Y. Acad. Sci., 840, 540−550 (1998)、Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A., 70, 382 (1973)に記載された方法等を用いることもできる。
本発明のスクリーニング方法の好ましい態様として、VIP1Rの機能を促進する物質、すなわちアゴニストを選別する方法が挙げられる。
【0176】
II.本発明のタンパク質がトランスポーターである場合
II−1. 輸送基質の輸送量の測定
本発明タンパク質がトランスポーターである場合、すなわち、本発明タンパク質がCLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1である場合、被験物質が、本発明タンパク質が輸送基質を細胞内から細胞外へ、もしくは細胞外から細胞内へ輸送する能力を阻害又は亢進するか否かを測定することによって、候補物質を選別することができる。本発明タンパク質(トランスポーター)、および該タンパク質の輸送基質を用いて、被験物質が該タンパク質による輸送基質の細胞内外から細胞内へ、もしくは細胞内から細胞外への輸送を阻害するか否かを評価するスクリーニング方法は、当業者の常識の範囲より適宜選択されるが、一例としては、a)本発明タンパク質を発現する細胞に、標識された輸送基質を接触させた場合と、b)本発明タンパク質を発現する細胞に、標識された輸送基質および被験物質を接触させた場合とを、比較評価することを含むスクリーニング方法が挙げられる。
具体的には、以下の手順でスクリーニングを実施することができる。すなわち、
1)本発明タンパク質(トランスポーター)を発現する培養細胞に、標識された輸送基質を添加する。該培養細胞としては、通常本発明タンパク質をコードするcDNAを挿入した発現ベクターを安定導入した細胞が用いられる。
2)細胞外液を交換する。
3)細胞内に取り込まれた輸送基質量、あるいは培養上清中の輸送基質量を計測する。ここで、空ベクターのみを導入した細胞を用いて前記の測定を行い、これをバックグラウンド(在性のトランスポーター活性)として差し引くことにより導入トランスポーター活性を算出することができる。
前記1)〜3)の工程を、被験物質の存在下および非存在下でそれぞれ実施し、各トランスポーター活性を比較することにより、被験物質が該活性を制御するか否かを判別し、候補物質を選別することができる。標識された輸送基質量の測定方法としては、放射活性を測定する方法、電圧変化を指標として測定する方法、蛍光量を測定する方法など、リガンドの標識方法に応じた公知の測定方法が挙げられる。
放射活性を測定するための標識された輸送基質としては、該輸送基質の任意の1または複数の原子を放射性同位体元素で標識した輸送基質が挙げられる。具体的には水素原子を3H(トリチウム)で標識する方法、炭素原子を14Cで標識する方法、または、硫黄原子を35Sで標識する方法等が挙げられる。具体的な標識された輸送基質としては、ABCA1(ABCA1)については14Cで標識したα−(Methyl− amino)isobutyric acid([14C]MeAIB)、GAT1についてはγ−Amino−butyric acid([3H]GABA)、PLTP については[3H]phosphatidylcholine(L−a−dipalmitoyl−[2−palmitoyl−9,10−3H(N)]−phosphatidylcholine)、 ENT1 については[14C]adenosine、NPT3については、KH2 32PO4もしくはKH2 33PO4、IREG1についてはFe55(NEN)等が挙げられる。
また、輸送基質が当業者に公知の方法で検出可能な場合、標識されていない輸送基質を用いることもできる。一例として、ABCG2については、輸送基質として蛍光物質であるDaurubicinを用いることができる。
また、輸送基質がイオンである場合、NaI、KH2PO4等の無機塩を含む培養液中で細胞を培養し、トランスポーターの輸送基質である、I−、PO4 −等のイオンの細胞内から細胞外への放出量を、電圧変化を計測することにより測定する方法が挙げられる。例えば、CLIC2については、I−の輸送量をヨウ素検出電極を用いて電圧変化を計測することができる。
【0177】
II−2. 輸送基質が輸送されることによる生理活性の測定
本発明タンパク質がトランスポーターである場合、該タンパク質に輸送基質が結合することによって生ずる生理活性を指標として、該タンパク質の機能を制御する候補物質を選別することもできる。すなわち、a)本発明タンパク質に輸送基質を接触させた場合における、本発明タンパク質(トランスポーター)を介した前記生理活性と、b)本発明タンパク質(トランスポーター)に輸送基質および被験化合物を接触させた場合に生ずる生理活性とを比較評価することを含むスクリーニング方法が挙げられる。
該生理活性としては、細胞内カルシウムの増加、細胞内pHの上昇等が挙げられる。該生理活性は、公知の方法、または市販の測定用キットを用いて測定することができる。
具体的な測定手順としては、例えばFluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて、細胞内カルシウムの増加を測定する、以下の方法が挙げられる。すなわち、
1)本発明タンパク質遺伝子の発現ベクターを作製する。ここで、細胞株としては、CHO−K1細胞等を用いることができ、上記発現ベクターを遺伝子導入試薬Lipofectoamine (Invitrogen社)にて共導入することができる。
2)該細胞をdye loading medium(Fluo−3等を含むバッファー等を用いることができる。)中で、マルチウェルプレート等を用いて一定時間(例えば、30分〜2時間)培養する。
3)新鮮な培地、あるいは細胞毒性を示さない適当なバッファーに交換した後、被験物質、および輸送基質を添加して、一定時間インキュベートする。培養液はそのまま次の工程で用いる測定サンプルとすることができる。また、細胞を抽出して測定サンプルを調製したり、あるいは細胞上清を回収して測定サンプルとして用いたりすることもできる。
4)3)の測定サンプルをFLIPR (Molecular Devices社)で測定する。すなわち、488nmのアルゴンレーザーで細胞を励起し、カルシウムイオンが結合したfluo−3の蛍光を500−560nmの波長で検出する。被験物質や輸送基質の添加直後から60秒後までの蛍光強度から、実測値からバックグラウンドを差し引いたものを測定値とする。
5)被験物質の存在下における本発明タンパク質の生理活性と、被験物質非存在下における該生理活性の差異を求めることにより、差異の大きい被験物質を、本発明タンパク質の生理活性を抑制もしくは亢進する候補物質として選別することができる。すなわち、被験物質存在下における本発明タンパク質の生理活性が被験物質非存在下における生理活性よりも大きければ、該被験物質は本発明タンパク質の機能を亢進する物質であり、被験物質存在下における本発明タンパク質の生理活性が被験物質非存在下における生理活性よりも小さければ、該被験物質は本発明タンパク質の機能を抑制する物質である。また、輸送基質非存在下に被験物質のみを添加して上記3)および4)を実施することにより、輸送基質となり得る物質をスクリーニングすることもできる。すなわち、被験物質存在下における測定値と既知の輸送基質存在下における測定値を比較することにより、既知の輸送基質と同等以上の測定値を示す被験物質を選択すればよい。
【0178】
以下、本発明タンパク質(トランスポーター)の機能に基づくスクリーニングを実施する方法について、具体的に例示する。
(i) CLIC2:
CLIC2は細胞膜に発現してチャネル活性を発現することが知られている遺伝子である。KOマウスの解析より、網膜・精巣機能に重要な役割を果たしていると考えられている(EMBO Journal20:1289−99,2001)。CLIC2の活性測定は、ヨウ素をあらかじめ取り込ませておいた細胞からのヨウ素放出を指標に行うことが出来る。
【0179】
(ii) SCN2A: SCN2Aは電位依存性Naチャネル(tetrodotoxin感受性)の一種で、後根神経節や脳で発現し、活動電位の発生や伝搬に関与している。SCN2Aの活性測定は、このチャネルが活性化される際に細胞内カルシウムの増加が起こる性質を利用して文献記載(PNAS98: 7599−604, 2001)の方法に従いfluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて行うことができる。
【0180】
(iii) ATA1:
Amino acid transporter (アミノ酸トランスポーター)は、栄養分の取り込み、エネルギー代謝、化学的代謝、解毒、および神経伝達物質のサイクリングなどに重要である(J. Biol. Chem., 276, 24137 (2001) )。その中でsystem A1は短鎖の中性アミノ酸を細微膜内外のNa勾配を利用して取り込む。α−(Methyl−amino)isobutyric acid(MeAIB)はこの輸送系の特異的基質と言われている(Biochem. Biophys. Res. Commun., 273, 1175−1179, (2000))。ATA1活性の測定は文献(Biochem. Biophys. Res. Commun., 273, 1175−1179, (2000))記載の方法にて実施することができる。
【0181】
(iv) ABCA1:
ATP−binding cassette (ABC) タンパク質は保存されたATP結合ドメインと6回膜貫通型ドメインを持つ膜タンパク質である。ABC1は細胞内の脂質を細胞外へ運び出すトランスポーターで、タンジアー病(劣性遺伝性の脂質代謝異常で、血漿中の HDL がほとんど完全に欠損し、泡沫細胞中でのコレステロールの蓄積、リンパ節腫大、末梢神経傷害などの様々な所見がみとめられる)の原因遺伝子の一つであることが知られている(J. Clin. Invest., 104, R25, 1999、 Proc. Natl Acad. Sci. USA., 96, 12685, 1999)。
ABCA1活性の測定は文献(J. Clin. Invest., 104, R25, 1999)記載の方法にて実施することができる。具体的には、 [3H]cholesterolおよび acetylated LDLを、内在性LDL受容体により、細胞に取り込ませた後、ABCA1によるApolipoproteinA−I(ApoA−I)依存的なコレステロールの逆輸送をモニターする方法が挙げられる。
【0182】
(v) ABCG2:
ATP−binding cassette (ABC) タンパク質は保存されたATP結合ドメインと6回膜貫通型ドメインを持つ膜タンパク質である。ABCG2は抗がん剤のdoxorubicinやdaunorubicinなどを細胞外へ排出して、薬剤耐性に関与することが報告されている(Proc. Natl Acad. Sci. USA., 95, 15665, 1998)。
ABCG2活性の測定は文献(Proc. Natl A
cad. Sci. USA., 95, 15665, 1998)記載の方法にて実施することができる。具体的には、daunorubicin(蛍光を発する物質である。)を細胞外に排出する性質を利用して、フローサイトメトリーにて、細胞内に保持されたdaunorubicinの量を定量することができる。
【0183】
(vi) GAT1:
GAT1は脳の多くの部位に発現しているGABA輸送体でシナプス間隙に存在するニューロンやグリア細胞でGABA の再取り込みを行い、神経伝達の終了に関与することが報告されている(J. Biol. Chem., 267, 21098, 1992)。
GAT1活性の測定は文献:Proc. Natl Acad. Sci. USA., 95, 15665, 1998;Can. J. Physiol. Pharmacol., 68, 1194 (1990);Pharm. Res., 10, 1442 (1993)、Eur. J. Pharmacol., 269, 219 (1994)に記載の方法にて実施することができる。具体的には、GAT1を発現する細胞(例えばCOS−7細胞、LM(tk−)細胞を用いることができる。)を用いて、標識された輸送基質:[3H]GABAのおよび/または被験物質を添加し、37℃10分間インキュベートした後細胞内に保持された輸送基質量を測定すればよい。
本発明のスクリーニング方法の好ましい態様として、GAT1の機能を抑制する物質を選別する方法が挙げられる。
【0184】
(vii) PLTP:
ヒトの血漿はcholesterol ester transfer protein (CETP)やPLTPなどの脂質輸送タンパク質を含み、PLTPはtriglyceride−rich lipoproteinsからhigh density lipoprotein(HDL)へphospholipidsの移行を行い、HDLの変換に関与することが報告されている(Proc. Natl Acad. Sci. USA., 95, 15665, 1998)。PLTP活性の測定は文献(J. Clin. Invest., 103, 907, 1999) 記載の方法にて実施することができる。具体的には、 [3H]phosphatidyl −choline(L−a−dipalmitoyl−[2−palmitoyl−9,10−3H(N)]−phosphatidylcholine)でphospholipid vesicleを標識し、HDLと混合することによりphospholipidsの移行を測定することができる。
【0185】
(viii) ENT1:
Equilibrative nucleoside transporterはde novo のnucleotide合成経路を欠く造血系細胞などでのサルベージ経路によるnucleotide合成に必須であり、また癌やウイルス感染症の化学療法剤として用いられている細胞障害性nucleosideの細胞への取り込みを行なうことが報告されている(Naturev Medicine., 3, 89, 1997)。
ENT1活性の測定は文献(Nature Medicine., 3, 89, 1997)記載の方法にて実施することができる。
【0186】
(ix) NPT3:
Sodium phosphate transporterはナトリウムイオン依存的に無機リン酸の近位尿細管における再吸収を調節し、無機リン酸のホメオスタシスに関与することが報告されている(Biochem. J., 305, 81, 1995)。
NPT3活性の測定は文献(Biochem. J., 305, 81, 1995)に記載の方法にて実施することができる。
【0187】
(x) IREG1:
哺乳類では鉄分は必須の栄養素であり、鉄分の吸収や利用に欠損があると成体では貧血、子では知能発達障害をおこす。鉄分は成体では十二指腸から、胚では胎盤から吸収される。IREG1は十二指腸で吸収された鉄分の門脈への移行に関与することが報告されている(Mol. Cell, 5, 299, 2000)。
IREG1活性の測定は文献(Mol. Cell, 5, 299, 2000)記載の方法にて実施することができる。具体的には、プロトン共役型2価カチオントランスポーターDCT1よりFe55を細胞に取り込ませ、IREG1によって細胞外に輸送されたFe55量を測定することができる。
【0188】
また、本発明のスクリーニング方法を実施する前に、上記に掲げる各本発明タンパク質をコードする遺伝子について、あらかじめ実験により、該遺伝子の発現を抑制する物質が軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分(候補物質)として有用なのか、また発現を誘導する物質が軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分(候補物質)として有用なのかを判断することは可能であり、その具体的な方法については前述の通りである。当該実験によって本発明遺伝子の発現抑制物質が候補物質になる可能性が高いと判断された場合は、当該遺伝子がコードする本発明タンパク質の機能(活性)の抑制を指標としてスクリーニングを行うことにより、より高い精度で候補物質を選別することができ、また当該実験によって本発明遺伝子の発現誘導物質が候補物質になる可能性が高いと判断された場合は、当該遺伝子がコードする本発明タンパク質の機能(活性)の亢進を指標としてスクリーニングを行うことにより、より高い精度で候補物質を選別することができる。
【0189】
上記(3−1)〜(3−3)に記載する本発明のスクリーニング方法および上記さらなる選別によって選択された制御物質または候補物質は、さらに軟骨障害のモデル動物、すなわち十字靭帯切断モデル動物や半月板切除モデル動物、あるいはコラゲナーゼ注入モデル動物などを用いた薬効試験、安全性試験、さらに軟骨障害に罹患した患者への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的な軟骨障害の改善または治療薬を取得することができる。このようにして選別された物質は、さらにその構造解析結果に基づいて、化学的合成、生物学的合成(発酵)または遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができる。
【0190】
なおラット十字靱帯切断モデルは、公開特許公報:特開2001−131073、または、Arthritis & Rheumatism 43, (9), 2121−2131 (2000) に記載の方法により作製することができる。具体的には、6週齢以上のラット後肢膝関節部の皮膚および膝蓋靭帯、滑膜をメスで切開し、切開した部分より関節腔内の前十字靭帯を切断する。切開した皮膚は外科用クリップで留める等の処置をし、その後は通常の飼育を数日間行う。その後、被験動物を屠殺し、大腿骨、脛骨の関節軟骨部分サンプルを採取する。
【0191】
変形性関節症様の軟骨変性等の症状について、通常は、組織標本を作製してサフラニンOの染色性およびトルイジンブルーまたはアルシアンブルーの異染性等を指標にして評価することができる。具体的には、10%中性緩衝ホルマリンで固定後、脱灰、脱水、透徹を経て、パラフィン包埋し、矢状面に薄切する。その後、通常のパラフィン除去を行った後サフラニンOとファーストグリーンまたはトルイジンブルーまたはアルシアンブルーで染色を行う。
(4)軟骨障害の改善・治療剤
本発明は、軟骨障害の改善・治療剤を提供するものである。すなわち、本発明は変形性関節症、軟骨形成異常症、変形性椎間板症、軟骨の欠損、軟骨損傷、半月板損傷、骨折の修復・治癒不全といった軟骨障害の改善・治療剤、および軟骨細胞移植時の補助療法剤を提供するものである。
本発明は5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現が軟骨障害と関連しているという新たな知見から、5−HT7遺伝子(配列番号1)、EDG2遺伝子(配列番号3)、EDG1遺伝子(配列番号5)、ET(A)遺伝子(配列番号7)、GPR88遺伝子(配列番号9)、PTH2R遺伝子(配列番号11)、VIP1R遺伝子(配列番号13)、CLIC2遺伝子(配列番号15)、SCN2A遺伝子(配列番号17)、ATA1 遺伝子(配列番号19)、ABCA1 遺伝子(配列番号21)、ABCG2 遺伝子(配列番号23)、GAT1 遺伝子(配列番号25)、PLTP 遺伝子(配列番号27)、ENT1 遺伝子(配列番号29)、NPT3 遺伝子(配列番号31)、またはIREG1 遺伝子(配列番号33)の発現を制御(抑制/亢進)する物質、あるいは、5−HT7(配列番号2)、EDG2(配列番号4)、EDG1(配列番号6)、ET(A)(配列番号8)、GPR88(配列番号10)、PTH2R(配列番号12)、VIP1R(配列番号14)、CLIC2(配列番号16)、SCN2A(配列番号18)、ATA1 (配列番号20)、ABCA1 (配列番号22)、ABCG2 (配列番号24)、GAT1 (配列番号26)、PLTP (配列番号28)、ENT1 (配列番号30)、NPT3 (配列番号32)、またはIREG1 (配列番号34)の発現や機能(活性)を制御(抑制/亢進)する物質が、上記疾患の改善または治療に有効であるという考えに基づくものである。すなわち、本発明の軟骨障害の改善・治療剤は前記本発明遺伝子の発現を制御する物質、あるいは前記本発明タンパク質の機能(活性)を制御する物質を有効成分とするものである。
【0192】
例えば、ET(A)遺伝子(配列番号7)および/またはET(A)(配列番号8)の発現を抑制する物質、あるいは、ET(A)(配列番号8)の機能(活性)を抑制する物質が、上記疾患の改善または治療に有効である。具体的には、BQ−123(D−Tryptophyl−D−aspartyl−prolyl−D−valyl−leucine cyclic amide; Morel, et al., Eur. J. Pharmacol., 252, R3−R4 (1994)、J. Med. Chem., 1992, 35(11), 2139−2142)、PD−145065(Med. Chem. Res., 1993, 3(3), 154)、PD−161721(Eur. J. Pharmacol., 2001, 432(1), 71)、FR139317(TOCRIS社品;Sogabe et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 264,1040 (1993))、BMS182874(TOCRIS社品;5−(dimethylamino)−N−(3,4−dimethyl−5−isoxazolyl)−1−naphthalenesulfonamide;Stein et al., J. Med. Chem., 37, 329 (1994))、Sulfisoxazole(TOCRIS社品;Chan et al., Biochem. Biophys. Res. Comm., 201,228 (1994))等を例示することができる。
【0193】
また、GAT1遺伝子(配列番号25)および/またはGAT1(配列番号26)の発現を抑制する物質、あるいは、GAT1(配列番号26)の機能(活性)を抑制する物質が、上記疾患の改善または治療に有効である。具体的には、CI966(TOCRIS社品;
Gen. Pharmacol., 1995, 26(5), 1061)、Tiagabine( ( − ) − (R) − 1 − [4,4 − Bis(3 − methyl − 2 − thienyl) − 3 − butenyl]piperidine − 3 − carboxylic acid hydrochloride ;Anderson et al., J. Med. Chem., 36, 1716 (1993))、SK&F89976−A(Ali et al., J. Med. Chem., 28, 653 (1985))、およびNNC−711(1−(2−(((ジフェニルメチレン)アミノ)オキシ)エチル)−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジンカルボキシリック アシッド 塩酸塩(Kubova, et al., Naunyn−Schmiedeberg’s Arch Pharmacol., 358, 334−341 (1998))等が挙げられる。
【0194】
また、5−HT7(配列番号1)および/または5−HT7(配列番号2)の発現を促進する物質、あるいは、5−HT7(配列番号2)の機能(活性)を促進する物質が、上記疾患の改善または治療に有効である。具体的には、1−[6−(ピリジン−3−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジン等の公開特許公報:特開2003−12648に記載された5−HT7アゴニスト、または6−[4−(1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)ピペラジン−1−イル]−1−(2−ヒドロキシフェニル)ヘキサン−1−オンもしくは6−[4−(1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)ピペラジン−1−イル]−1−(2−メトキシフェニル)ヘキサン−1−オン(J. Med. Chem., 46, 4, 646 (2003))が挙げられる。
【0195】
また、EDG2(配列番号3)および/またはEDG2(配列番号4)の発現を促進する物質、あるいは、EDG2(配列番号4)の機能(活性)を促進する物質が、上記疾患の改善または治療に有効である。具体的には、リゾホスファチジン酸(LPA;1−Oleoyl−sn−glycerol 3−phosphate;シグマ社カタログNo.L7260;Biochimica et Biophysica Acta, 1582, 289−294 (2002))、LPA(12:0)、LPA(14:0)、LPA(16:0)、LPA(18:1)、又はLPA(18:2)等が挙げられる。(ここで、括弧内の最初の整数はLPAにおける脂肪酸部分の総炭素数を表し、2番目の整数は二重結合の数を表す。)また、式(1):
【化1】
で表されるサイクリック ホスファチジン酸(cPA)、および式(2):
【化2】
で表されるDOXP−OHなども、EDG2のアゴニストとして挙げられる(Biochimica. Biophysica Acta., 1582, 309−317 (2002))。
【0196】
また、VIP1R(配列番号13)および/またはVIP1R(配列番号14)の発現を促進する物質、あるいは、VIP1R(配列番号14)の機能(活性)を促進する物質が、上記疾患の改善または治療に有効である。具体的には、生理活性リガンドであるVIP(シグマ社製;Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 70, 382 (1973))が挙げられる。
【0197】
当該有効成分となる本発明遺伝子の発現制御物質、あるいは本発明タンパク質の機能(活性)制御物質は、上記のスクリーニング方法を利用して選別されたもののみならず、選別された物質に関する情報に基づいて常法に従って工業的に製造されたものであってもよい。
【0198】
本発明遺伝子の発現制御物質、あるいは本発明タンパク質の機能(活性)制御物質は、そのままもしくは自体公知の薬学的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤などが含まれる)や慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製することができる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤などの非経口投与剤)等に応じて経口投与または非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象または患者の年齢、体重、症状などによって異なり一概に規定できないが、1日投与用量として、数百mg〜2g、好ましくは数十mg程度を、1日1〜数回にわけて投与することができる。
【0199】
また、上記の物質がDNAによりコードされるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組み込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。さらに、上記の物質が本発明の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子に対するアンチセンスヌクレオチド(アンチセンス核酸)の場合は、そのまま、若しくは遺伝子治療用ベクターに組み込むことにより、遺伝子治療を行うこともできる。これらの場合も、投与量、投与方法は患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0200】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
実施例1 ラット十字靭帯切断モデルの作製および軟骨採取
日本チャールス・リバー社より6週齢の雄性CD(SD)IGSを1週間おきに3回、合計100匹購入した。1週間予備飼育後外見上異常の認められない個体を実験に供した。
【0201】
エーテル麻酔下でラット後肢膝関節部の毛をバリカンで剃り、80%エーテルで切開部分を消毒した。後肢を屈曲した状態で関節腔部分の皮膚および膝蓋靭帯、滑膜をメスで5mm程度切開した。切開した部分よりマイクロ剪刀を関節腔内に差し入れ、前十字靭帯を切断した。切開した皮膚は外科用クリップで留めた。処置後は通常の飼育を行った。対照は無処置とした。
【0202】
処置1、2、3週間後に過剰エーテル麻酔下で安楽死させ、心拍の停止を確認した後、大腿骨、脛骨の関節軟骨部分のみをメスでそぎ採取した。軟骨採取した後、ただちに凍結させた。各時点25匹使用した。対照は、処置2週間後の週齢とそろえた。
【0203】
実施例2 ラット膝関節軟骨からのtotal RNAの調製
実施例1で採取したラット十字靭帯切断モデルの膝関節軟骨(以下、本明細書において「病態モデル軟骨」ともいう。)からtotal RNAを調製した。具体的には十字靭帯切断モデルを作製後、1, 2,および 3週間経過後の膝関節から採取した軟骨にTRIZOL(Gibco−BRL社製) 5ml添加し、ホモゲナイザーでつぶしてからそれぞれtotal RNAを調製した。なお、total RNAの調製は、TRIZOLを用いて付属のプロトコールに従って行った。得られたtotal RNAはDEPC処理水(ナカライテスク社製)に溶解した。
【0204】
同様にして、比較対照のため何も処理しないで飼育したラットの膝関節軟骨(以下、本明細書において「未処理軟骨」ともいう。)からtotal RNAを調製した。
【0205】
実施例3 DNAチップ解析
実施例2で調製したtotal RNAを用いてDNAチップ解析を行った。なお、DNAチップ解析はAffymetrix社Gene Chip Rat Genome U34A、U34B、U34Cを用いて行った。具体的には、解析は、(1) total RNAからcDNAの調製、(2) 該cDNAからラベル化cRNAの調製、(3) ラベル化cRNAのフラグメント化、(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ、(5) プローブアレイの染色、(6) プローブアレイのスキャン、及び(7) 遺伝子発現解析、の手順で行った。
【0206】
(1) total RNAからcDNAの調製
実施例2で得られた各total RNA 10μgとT7−(dT)24プライマー(Amersham社製)100pmolを含む11μLの混合液を、70℃、10分間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、SuperScript Choice System for cDNA Synthesis(Gibco−BRL社製)に含まれる5×First Strand cDNA Buffer 4μL、該キットに含まれる0.1M DTT (dithiothreitol)2μL、該キットに含まれる10mM dNTP Mix 1μLを添加し、42℃で2分間加熱した。更に、該キットに含まれるSuper ScriptII RT 2μL(400U)を添加し、42℃で1時間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、DEPC処理水 91μL、該キットに含まれる5×Second Strand Reaction Buffer 30μL、10mM dNTP Mix 3μL、該キットに含まれるE. coli DNA Ligase 1μL(10U)、該キットに含まれるE. coli DNA Polymerase I 4μL(40U)、該キットに含まれるE. coli RNaseH 1μL(2U)を添加し、16℃で2時間反応させた。次いで、該キットに含まれるT4 DNA Polymerase 2μL(10U)を加え、16℃で5分間反応させた後、0.5M EDTA 10μLを添加した。次いで、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール溶液(ニッポンジーン社製)162μLを添加し、混合した。該混合液を、予め室温、14,000rpm、30秒間遠心分離しておいたPhase Lock Gel Light(エッペンドルフ社製)に移し、室温で14,000rpm、2分間遠心分離した後、145μLの水層をエッペンドルフチューブに移した。得られた溶液に、7.5M酢酸アンモニウム溶液72.5μL、エタノール362.5μLを加えて混合した後、4℃で14,000rpm、20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、作製したcDNAを含むペレットを得た。その後、該ペレットに80%エタノール0.5mLを添加し、4℃で14,000rpm、5分間遠心分離した後、上清を捨てた。再度同様の操作を行った後、該ペレットを乾燥させ、DEPC処理水12μLに溶解した。以上の操作から実施例2で調製した各total RNAから、各cDNAを取得した。
【0207】
(2) cDNAからラベル化cRNAの調製
各cDNA溶液5μLに、DEPC処理水17μL、BioArray High Yield RNA Transcript Labeling Kit(ENZO社製)に含まれる10×HY Reaction Buffer 4μL、該キットに含まれる10×Biotin Labeled Ribonucleotides 4μL、該キットに含まれる10×DTT 4μL、該キットに含まれる10×RNase Inhibitor Mix 4μL、該キットに含まれる20×T7 RNA Polymerase 2μLを混合し、37℃で5時間反応させて、ラベル化cRNAを調製した。反応後、該反応液にDEPC処理水60μLを加えたのち、RNeasy Mini Kit(GIAGEN社製)を用いて添付プロトコールに従い、調製したラベル化cRNAを精製した。
【0208】
(3) ラベル化cRNAのフラグメント化
各ラベル化cRNA 20μgを含む溶液に、5×Fragmentation Buffer(200mMトリス−酢酸 pH8.1(Sigma社製)、 500mM酢酸カリウム(Sigma社製)、150mM酢酸マグネシウム(Sigma社製))8μLを加えた反応液40μLを、94℃で35分間加熱した後、氷中に置いた。これによって、ラベル化cDNAをフラグメント化した。
【0209】
(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ
各フラグメント化cRNA 40μLに、5nM Control Oligo B2(Amersham社製)4μL、100×Control cRNA Cocktail 4μL、Herring sperm DNA(Promega社製)40μg、Acetylated BSA(Gibco−BRL社製)200μg、2×MES Hybridization Buffer(200mM MES、2M [Na+], 40mM EDTA、0.02% Tween20 (Pierce社製)、pH6.5〜6.7) 200μL、及びDEPC処理水144μLを混合し、400μLのハイブリカクテルを得た。得られた各ハイブリカクテルを99℃で5分間加熱し、更に45℃で5分間加熱した。加熱後、室温で14,000rpm、5分間遠心分離し、ハイブリカクテル上清を得た。
【0210】
一方、1×MESハイブリダイゼーションバッファーで満たしたRat Genome U34A、U34B、U34Cプローブアレイ(Affymetrix社製)を、ハイブリオーブン(Affymetrix社製)内で、45℃、60rpmで10分間回転させた後、1×MESハイブリダイゼーションバッファーを除去してプローブアレイを調製した。上記で得られたハイブリカクテル上清200μLを該プローブアレイにそれぞれ添加し、ハイブリオーブン内で45℃、60rpmで16時間回転させ、フラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを得た。
【0211】
(5) プローブアレイの染色
上記で得られたハイブリダイズ済みプローブアレイそれぞれからハイブリカクテルを回収除去した後、Non−Stringent Wash Buffer(6×SSPE(20×SSPE(ナカライテスク社製)を希釈)、0.01%Tween20、0.005%Antifoam0−30(Sigma社製))で満たした。次にNon−Stringent Wash BufferおよびStringent Wash Buffer(100mM MES、0.1M NaCl、0.01%Tween20)をセットしたGeneChip Fluidics Station 400(Affymetrix社製)の所定の位置にフラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを装着した。その後染色プロトコールEuKGE−WS2に従って、1次染色液(10μg/mL Streptavidin Phycoerythrin (SAPE)(Molecular Probe社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES(2−(N−Morpholino)ethanesulfonic Acid)、1M NaCl(Ambion社製)、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)、 2次染色液(100μg/mL Goat IgG (Sigma社製)、3μg/mL Biotinylated Anti−Streptavidin antibody (Vector Laboratories社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)により染色した。
(6) プローブアレイのスキャン、及び (7) 遺伝子発現解析
染色した各プローブアレイをHP GeneArray Scanner(Affymetrix社製)に供し、染色パターンを読み取った。染色パターンをもとにGeneChip Workstation System(Affymetrix社製)によってプローブアレイ上の遺伝子の発現を解析した。次に、解析プロトコールに従ってNormalization、遺伝子発現の比較解析を行った。
【0212】
実施例4 十字靭帯切断モデル関節軟骨を用いた変形性関節症での遺伝子発現の変動解析
十字靭帯切断後、1, 2,及び3週間経過後の各関節軟骨における遺伝子発現量(average difference)を、未処理関節軟骨における発現量と、GeneChip Workstation System(Affymetrix社製)にある解析ツールComparison Analysisを用いて比較した。Comparison Analysisは解析プロトコールに基づいて行った。
これらの比較解析の結果から得られた、遺伝子発現の増減の判定(Diff Call)および発現変動倍率(Fold Change)の値から、発現変動遺伝子を選抜した。選抜方法は、各処理時間において、病態モデル軟骨での遺伝子発現量(average difference)が、未処理軟骨での遺伝子発現量と比較して、1.5倍以上の発現変動(Fold Changeが−1.5以下あるいは1.5以上)を示したプローブを選抜した。同様の解析をすべての処理時間における軟骨について行って、いずれかの処理時間において1.5倍以上の発現変動を示したプローブを選抜した。
【0213】
選抜した該プローブの中から、さらに病態との相関が高いプローブを選抜した。具体的には、DNAチップ解析結果から得られる遺伝子発現量(average difference)を指標にして、病態モデル軟骨での遺伝子発現量(average difference)がいずれの障害時間においても発現減あるいは発現増の傾向にあるプローブを選抜した。
【0214】
実施例5 病態モデル軟骨での発現変動を示した遺伝子のヒトホモログ配列の同定
実施例4において病態モデル軟骨で発現変動を示したラット遺伝子のヒトホモログ遺伝子の同定は、遺伝子名、タンパク質名をもとに、あるいはHomologene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)を用いて行った。
【0215】
【表1】
表中、Rat U34プローブ名は Rat Genome U34 Chip におけるプローブ名を示す。また表中、変動倍率は、Rat Genome U34 Chipで解析した未処理膝軟骨組織の遺伝子発現量を1とした場合における変形性関節症モデル動物の膝関節軟骨組織での遺伝子発現量を示す。また各遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を示す後記配列表の配列番号も合わせて示す。
以上のように、これら17個の遺伝子は、ラット十字靭帯切断モデルの障害軟骨において、正常軟骨と比較して発現低下あるいは発現増加していた。さらにこれらの遺伝子の発現は、いずれの障害時間においても発現減あるいは発現増の傾向を示した。これらの結果より、これら17遺伝子は軟骨障害を伴う疾患に関するマーカー遺伝子として応用可能な遺伝子であると考えられた。また、これらの遺伝子を用いることによって軟骨障害を伴う疾患を緩和、抑制する治療薬の候補薬をスクリーニングすることが可能であると考えられた。
【0216】
実施例6 5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、および/またはIREG1 遺伝子発現制御剤のスクリーニング
マウスATDC5細胞(RIKEN Cell Bank; HYPERLINK http://www.rtc.riken.go.jp/CELL/HTML/RIKEN Cell Bank. Htmlから入手可能)を5%ウシ胎児血清ヒトトランスフェリン(終濃度10μg/ml)・3x108M セレン酸ナトリウム含有DMEM/F12培地を用い、37℃、CO2濃度5%の条件下で培養する。計数したATDC5細胞を1x104 cells/cm2でプレートに播種し、37℃、CO2濃度5%で培養する。当該細胞に対して、ウシインスリン(終濃度10μg/ml)と被験物質含有溶液(100μM、10μM、および1μMの各濃度の被験物質を含む溶液)とを同時に添加するか、若しくはインスリンをあらかじめ添加して数日間培養した後に前記被験物質含有溶液を添加し、37℃、CO2濃度5%で3〜21日間、もしくは37℃、CO2濃度5%で21日間培養した後37℃、CO2濃度3%で培養する。ここで、対照実験として、被験物質無添加の細胞についても同様の培養を行う(コントロール)。これらの各培養細胞より抽出したRNAを用いて実施例3に記載された方法で、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、および/またはIREG1 遺伝子の発現量を調べる。その発現量からコントロールと比べて5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、および/またはIREG1 遺伝子の発現量が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上変動している培養系に添加した被験物質を、軟骨障害の緩和、抑制(改善、治療)する候補化合物として選択する。
【0217】
実施例7 :受容体結合阻害活性の測定
受容体結合阻害活性の測定は以下の手順で行うことができる。
1)12穴組織培養用プレートにて培養した本発明タンパク質(受容体)発現CHO細胞を、緩衝液(Hanks’ Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたものなどを用いることができる。)1mlで2回洗浄した後、測定用緩衝液を各穴に加える。
2)10−3〜10−10Mの適当な濃度に調製した被験化合物溶液(通常溶媒には水もしくは緩衝液が用いられるが、溶解度に応じてエタノールやDMSOを添加することもできる。)5μlを加えた後、標識したリガンド5μlを加え、室温で1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには、被験化合物の代わりに10−3Mのリガンドを5μl加えておく。
3)反応液を除去し、1mlの緩衝液(前記と同じものを使用できる。)で3回洗浄する。細胞に結合した標識したリガンドを0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
4)液体シンチレーションカウンターを用いて放射活性を測定する。阻害率については、以下の式[数1]で求めることができる。
[数1]
PMB(Percent Maximum Binding)= [(B−NSB)/(B0−NSB)]X100
(B:被験化合物を加えたときの値、NSB:Non−Specific BInding(非特異的結合量)、B0:最大結合量)
尚、標識したリガンドとしては、以下のものをそれぞれ用いることができる。すなわち、
5−HT7: [3H]5−HT
EDG2:1−Oleoyl[oleoyl−9,10−3H]−LPA
EDG1:[3H]S−1−P
ET(A):[125I]Endothelin−1, [3H]BQ123
PTH2R:[125I](Nle8,Nle18,Tyr34)PTH(1−34)amide
VIP1R:[125I−Tyr10]VIP
【0218】
実施例8 5−HT7 受容体活性を指標としたスクリーニング方法
5−HT7受容体活性の測定は、文献(Anal Biochem270:242−8,1999, PNAS95:352−7,1998)に記載された方法、すなわちfluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いる方法で、以下のように行うことができる。
まず、当業者に公知の方法で5−HT7受容体遺伝子の発現ベクターとGqs5蛋白(Gqs5はC末端に、Gs蛋白のC末端アミノ酸5残基を置換したGq蛋白)の発現ベクターを作製する。
細胞株はCHO−K1細胞を用い、上記発現ベクターを遺伝子導入試薬Lipofectoamine(Invitrogen社)にて共導入する。24時間後、1ウエル当たり50,000細胞を96穴黒色プレート(Corning社)に播きこむ。24時間後、培養上清をアスピレーションで除去し、20mM HEPES, 2.5mM probenecid(Sigma社:50% Hank’s balanced salt solution (HBSS), 50% 1N NaOHに溶解した250mMのストック溶液を用いる), 4μM Fluo−3 AM(Molecular Probe社:10% pluronic acidの含まれたDMSOに溶解した4mMのストック溶液を用いる)を含んだF12培養培地を100μl/well加える。(probenecidは、dyeを細胞内に保持するためmultiple drug−resistance pumpの阻害剤として用いる。)CO2インキュベーターにて1時間培養した後、20mM HEPES, 2.5mM probenecidを含んだHBSSで4回洗浄する。ただし最後の洗浄時には90μlの液を残す形で行う。アゴニストリガンドである5−HT(5−hydroxytryptamine hydrochloride)は20mM HEPES, 2.5mM probenecidを含んだHBSSで2μMに希釈し90μl加えることで終濃度1μMとし、添加した2分後までFLIPRにて計測する。検出は488nmのアルゴンレーザーで細胞を励起し、カルシウムイオンが結合したfluo−3の蛍光を500−560nmの波長でとらえることで行う。リガンド添加直後から60秒後までの蛍光強度(Vref)から、添加前の値(V0)をバックグラウンドとして差し引いた値を活性とする。被験物質を添加する場合はアゴニストリガンドを添加する前に添加し、その後アゴニストリガンドを添加し、リガンド添加直後から60秒後までの蛍光強度(Vsam)から、添加前の値(V0)をバックグラウンドとして差し引いた値と、被験物質非存在下での活性(Vref−V0)とを比較することにより、被験物質が、5−HT7受容体活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質が5−HT7受容体活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=(Vsam−V0)/(Vref−V0)
また、被験物質のアゴニスト作用を測定する場合、上記においてアゴニストリガンドのかわりに被験物質を用いて上記の測定を行う。
【0219】
上記と同様の方法で、アゴニストリガンドにPTH(1−34)(Parathyroid hormone)を用いることにより、PTH2R活性を指標としたスクリーニングを、アゴニストリガンドにVIPを用いることによりVIP1R活性を指標としたスクリーニングを、実施することができる。
【0220】
実施例9 EDG2 活性を指標としたスクリーニング方法
EDG2活性の測定は、本受容体がリガンドであるLPAにより活性化すると細胞内カルシウムが上昇することを利用しfluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて、以下のように行うことができる。
まず、当業者に公知の方法でEDG2遺伝子の発現ベクターとGqi5蛋白(Gqi5はC末端に、Gi蛋白のC末端アミノ酸5残基を置換したGq蛋白)の発現ベクターを作製する。
CHO−K1細胞に発現ベクターを遺伝子導入試薬Lipofectoamine (Invitrogen社)にて共導入する。24時間後、1ウエル当たり50,000細胞を96穴黒色プレート(Corning社)に播きこむ。24時間後、培養上清をアスピレーションで除去し、20mM HEPES, 2.5mM probenecid(Sigma社:50% Hank’s balanced salt solution (HBSS), 50% 1N NaOHに溶解した250mMのストック溶液を用いる), 4μM Fluo−3 AM(Molecular Probe社:10% pluronic acidの含まれたDMSOに溶解した4mMのストック溶液を用いる)を含んだF12培養培地を100μl/well加える。(probenecidは、dyeを細胞内に保持するためmultiple drug−resistance pumpの阻害剤として用いる。)CO2インキュベーターにて1時間培養した後、20mM HEPES, 2.5mM probenecidを含んだHBSSで4回洗浄する。ただし最後の洗浄時には90μlの液を残す形で行う。アゴニストリガンドであるLPAは20mM HEPES, 2.5mM probenecidを含んだHBSSで20μMに希釈し90μl加えることで終濃度20μMとし、添加した2分後までFLIPRにて計測する。検出は488nmのアルゴンレーザーで細胞を励起し、カルシウムイオンが結合したfluo−3の蛍光を500−560nmの波長でとらえることで行う。リガンド添加直後から60秒後までの蛍光強度(Vref)から、添加前の値(V0)をバックグラウンドとして差し引いた値を活性とする。被験物質を添加する場合はアゴニストリガンドを添加する前に添加し、その後アゴニストリガンドを添加し、リガンド添加直後から60秒後までの蛍光強度(Vsam)から、添加前の値(V0)をバックグラウンドとして差し引いた値と、被験物質非存在下での活性(Vref−V0)とを比較することにより、被験物質が、EDG2受容体活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がEDG2受容体活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=(Vsam−V0)/(Vref−V0)
EDG1活性についても、アゴニストリガンドとしてS1P(Sphingosine−1−phasphate)を用いることにより、また、EDNRA活性についても、アゴニストリガンドとしてET(Endothelin)を用いることにより、同様に測定することができる。
【0221】
実施例10 GPR88(GPR88)の機能(活性)に基くスクリーニング方法
GPR88の活性測定は、G蛋白共役型受容体がGDP存在下でGTPアナログであるGTPγSを結合する性質を利用して、以下のように行うことが出来る。
GPR88の発現ベクターを作製し、CHO−K1細胞・HEK293細胞等に過剰発現させる。超遠心により細胞の膜画分を調製し−80℃で保存する。1mM DTT, 1mM NgCl2, 1mM EGTA, 100mM NaCl, 100μM GDPを含む50mM Tris−Cl(pH.7.4)バッファーに10μgの膜蛋白・被験物質を混合して最終容量500μlとし、30℃で30分間インキュベートする。50μlの[35S]−GTPγSを終濃度0.25nMになるよう混合し、さらに30℃で30分間インキュベートする。結合反応はグラスフィルター(WhatmanGF/Bグレード)上で氷冷バッファー(50mM Tris−Cl,1mM MgCl2, pH.7.4)にて5回洗浄することにより終了する。液体シンチレーションカウンターにてフィルター上の放射能をカウントし、50μMの放射能標識されていないGTPγSをサンプルとしたときの値をバックグラウンドとして特異的結合値を産出する。
被験物質存在下での結合値(Vsam)と、被験物質非存在下での結合値(Vref)との比より、GPR88活性を制御する候補物質を選別することができる。すなわち、
GPR88制御率=Vsam/Vref x100 (%)
【0222】
実施例11 CLIC2 (CLIC2)の機能(活性)に基くスクリーニング方法
CLIC2の活性測定は、ヨウ素をあらかじめ取り込ませておいた細胞からのヨウ素放出を指標に行うことが出来る。すなわち、136mM NaI, 4mM KNO3, 2mM CaNO3/4H2O, 2mM MgNO3/6H2O, 11mM glucose, 20mM HEPESからなるpH7.4の窒素リンゲルloading buffer 1mlを用い、5% CO2, 37℃で1時間培養する。その後、被験物質の溶液もしくは溶媒のみ(ブランク)を添加し、浸透圧をSucroseで300mOsmに調製した窒素リンゲルefflux buffer(110mM NaNO3, 4mM KNO3, 2mM CaNO3/4H2O, 2mM MgNO3/6H2O, 11mM glucose, 20mM HEPES, pH7.4)を用い、細胞を合計で15秒間、3回洗浄する。この洗浄操作の後、細胞からのヨウ素放出を等張液あるいは228mOsmに調製した低張液にて、ヨウ素検出電極(Fisher社)を用いた5分以上の電圧(mV)変化を指標として測定することができる。被験物質を添加した場合の電圧変化(Vsam)とブランクにおける電圧変化(Vref)を比較することにより、被験物質がCLIC2 (CLIC2)の活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、該活性制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
【0223】
実施例12 SCN2Aの機能(活性)に基づくスクリーニング方法
SCN2Aの活性測定は、このチャネルが活性化される際に細胞内カルシウムの増加が起こる性質を利用して文献記載(PNAS98:7599−604,2001)の方法に従いfluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて行う。すなわち、96穴プレートに細胞をまきこみ、翌日接着を確認した後、1ウエル当たり100 μlのdye loading medium(4μM fluo−3 AM, 0.04% pluronic acidの含まれたLocke’s buffer, Locke’s buffer :154mM NaCl/5.6mM glucose/0.1mM glycine, pH.7.4)に培地交換し1時間培養する。その後、各ウエル200 μlのLocke’s bufferで4回洗浄後、1ウエル当たり100 μl のLocke’s buffer を入れ、FLIPR (Molecular Devices社)に載せる。
アゴニストリガンドであるantillatoxinは終濃度100nMとし、添加した2分後までFLIPRにて計測する。検出は488nmのアルゴンレーザーで細胞を励起し、カルシウムイオンが結合したfluo−3の蛍光を500−560nmの波長でとらえることで行う。リガンド添加直後から60秒後までの蛍光強度(Vref)から、添加前の値(V0)をバックグラウンドとして差し引いた値を活性とする。被験物質を添加する場合はアゴニストリガンドを添加する前に添加し、その後アゴニストリガンドを添加し、リガンド添加直後から60秒後までの蛍光強度(Vsam)から、添加前の値(V0)をバックグラウンドとして差し引いた値と、被験物質非存在下での活性(Vref−V0)とを比較することにより、被験物質が、SCN2A活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がSCN2A受容体活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=(Vsam−V0)/(Vref−V0)
また、被験物質のアゴニスト作用を測定する場合、上記においてアゴニストリガンドを用いず被験物質のみを用いて上記の測定を行う。
【0224】
実施例13 ATA1の機能(活性)に基くスクリーニング方法
ATA1活性の測定は、文献(Biochem. Biophys. Res. Commun., 273, 1175−1179,2000)記載に準じて行う。すなわち、トランポートバッファー(25mM Tris/Hepes (pH 8.5)、140mM NaCl、5.4mM KCl、1.8mM CaCl2、0.8mM MgSO4、および5mM glucose)中において、ヒトATA1を発現するヒト培養細胞(Human retinal pigment epithelial cell)に16μM [14C]MeAIB(American Radiolabeled Chemicals)を基質として添加し、37℃で15分間静置したのち、細胞外液を交換し、細胞内に取り込まれた放射活性をβ−カウンターにて計測する。内在性のトランスポーター活性を空ベクターのみを導入した細胞を用いて測定し、これを差し引くことにより導入ATA1活性を求めることができる。被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、被験物質を添加した場合のATA1活性(Vsam)と、被験物質非存在下でのATA1活性(Vref)とを比較することにより、被験物質が、ATA1活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がATA1活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
【0225】
実施例14 ABCA1の機能(活性)に基づくスクリーニング方法
ABCA1活性の測定は文献(J. Clin. Invest., 104, R25, 1999)記載の方法にて実施することができる。すなわち、ヒトABCA1を発現する培養細胞(RAW264.7(American Type Culture Collection)にヒトABCA1 cDNA挿入pcDNA3.1(Invitrogen)発現ベクターを安定導入した細胞)を2mg/ml fatty acid−free BSAを含有するDMEM(Sigma Chemical Co.)で馴化後、0.5μCi/ml[3H]cholesterol(基質)および50μg/ml acetylated LDLを添加、24時間保温して細胞を標識後、5μg/ml Apo A−I(Biodesign International)を6時間添加した細胞の培地中の放射活性とApo A−I無添加の細胞の、培地中の放射活性を測定することによりApo A−I特異的なcholesterol流出量を測定することができる。内在性のトランスポーター活性を空ベクターのみを導入した細胞を用いて測定し、これを差し引くことにより導入ABCA1活性を求める。被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、被験物質を添加した場合のABCA1活性(Vsam)と、被験物質非存在下でのABCA1活性(Vref)とを比較することにより、被験物質が、ABCA1活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がABCA1活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
【0226】
実施例15 ABCG2の機能(活性)に基づくスクリーニング方法
ABCG2活性の測定は文献(Proc. Natl Acad. Sci. USA., 95, 15665, 1998)記載の方法にて実施することができる。すなわち、ABCG2を発現する培養細胞(MCF−7(American Type Culture Collection)にABCG2 cDNA挿入pcDNA3.1(Invitrogen)発現ベクターを安定導入した細胞)に1μg/ml daunorubicin(SIGMA−ALDRICH)を添加し、37℃で180分間培養したのち、細胞を生理食塩水で洗浄、細胞外液を37℃に加温したdaunorubicin(基質)を含まない培地に交換し、16時間培養後、細胞内に保持されたdaunorubicin量をflow cytometry(Becton Dickinson)にて計測することができる。内在性のトランスポーター活性を空ベクターのみを導入した細胞を用いて測定し、これを差し引くことにより導入ABCG2活性を求めることができる。被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、その後基質を添加し、被験物質を添加した場合の蛍光強度(Vsam)から、基質添加前の値(V0)をバックグラウンドとして差し引いた値と、被験物質非存在下での活性(Vref−V0)とを比較することにより、被験物質が、ABCG2活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がABCG2活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=(Vsam−V0)/(Vref−V0)
【0227】
実施例16 GAT1の機能(活性)に基くスクリーニング方法
GAT1活性の測定は文献(Proc. Natl Acad. Sci. USA., 95, 15665, 1998)記載の方法にて実施することができる。すなわち、GAT1を発現する培養細胞(COS−7(American Type Culture Collection)にヒトGAT1 cDNA挿入pcDNA3.1(Invitrogen)発現ベクターを安定導入した細胞)をHEPES−buffered saline(HBS; 20mM HEPES(pH 7.4), 150mM NaCl, 1mM CaCl2, 10mM glucose, 5mM KCl, 1mM MgCl2)で洗浄、細胞外液を37℃に加温した培地に交換し、10分間37℃にて保温後、50nM[3H]GABA(Du Pont−New England Nuclear)を基質として添加し、37℃で10分間保温したのち細胞内に保持されたGABA 量をβ−カウンターにて計測する。内在性のトランスポーター活性を空ベクターのみを導入した細胞を用いて測定し、これを差し引くことにより導入GAT1活性を求めることができる。
被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、被験物質を添加した場合のGAT1活性(Vsam)と、被験物質非存在下でのGAT1活性(Vref)とを比較することにより、被験物質が、GAT1活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がGAT1活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
上記制御率が小さい被験物質、すなわち、GAT1活性を阻害する被験物質を、軟骨疾患治療剤候補化合物として選抜することができる。
【0228】
実施例17 PLTPの機能(活性)に基くスクリーニング方法
PLTP活性の測定は文献(J. Clin. Invest., 103, 907, 1999) 記載の方法にて実施することができる。すなわち、10nM [3H]phosphatidylcholine(L−a−dipalmitoyl− [2−palmitoyl−9,10−3H(N)]−phosphatidylcholine)を基質として含む鶏卵phosphatidylcholine 10μmolを窒素気流下にて乾燥後、1mlのresuspension buffer(10mM Tris(pH7.4)、150mM NaCl, 1mM EDTA)にて懸濁し、超音波プローブにて拡散後、スピンダウンし、標識phospholipid vesicleを調製する。マウス血漿3μlと該標識phospholipid vesicle (125nmol phosphatidyl choline)、HDL(250μg protein)を混合し、トータルボリューム400μlで37℃、1時間保温する。その後、300μlのprecipitation buffer(500mM NaCl、215mM MnCl2, 445U/ml heparin)を添加し、vesicleを沈殿させ、上清500μlの放射活性を液体シンチレーションカウンターにて計測することによりPLTP活性を測定することができる。
被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、被験物質を添加した場合の放射活性(Vsam)と、被験物質非存在下での活性(Vref)とを比較することにより、被験物質が、PLTP活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がPLTP活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
【0229】
実施例18 ENT1の機能(活性)に基くスクリーニング方法
ENT1活性の測定は文献(Nature Medicine., 3, 89, 1997)記載の方法にて実施することができる。すなわち、Xenopus laevis (Hamamatsu Jikkenn)のoocytesの小塊をカルシウムイオンフリーのORII solution(82.5mM NaCl, 2mM KCl, 1mMMgCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)中において2mg/ml collagenase(SIGMA−ALDRICH)にて90分間2回処理し、ORII solutionにて1回洗浄、改変Barth’s solution(88mM NaCl, 1mM KCl, 0.82mM MgSO4, 0.4mM CaCl2, 0.33mM Ca(NO3)2, 2.4mM NaHCO3, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)で洗浄することによりfollicular layerを除去後、oocyteを改変Barth’s solution 中にて18℃で一晩静置する。StageV oocyteにDEPC処理水にて1mg/mlに濃度調整したヒトENT1 cRNA 10ngをmanual injector(Narishige)にて注入する。20℃にて3日間培養した後、10μM [14C]adenosine(Amersham Life Sciences)を基質として含むtransport buffer(1μM deoxycoformycin, 100mM NaCl, 2mM KCl, 1mM CaCl2, 1mM MgCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)に溶液を交換し、20℃で60分間保温した保温した後、oocyteを氷冷transportbufferで6回洗浄する。各々のoocyteをシンチレーションバイアルに入れ、0.2mlの10% SDSにて溶解後、5mlの液体シンチレーションカクテル(DuPont−New England Nuclear)を添加・混合することにより、oocyte内に取り込まれた放射活性を液体シンチレーションカウンターにて計測する。ヒトENT1 cRNAの代わりにDEPC処理水を注入したoocyteを用いて同様に測定し、これを差し引くことにより導入ENT1 活性を求めることができる。
被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、被験物質を添加した場合のENT1活性(Vsam)と、被験物質非存在下でのENT1活性(Vref)とを比較することにより、被験物質が、ENT1活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がENT1活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
【0230】
実施例19 NPT3の機能(活性)に基くスクリーニング方法
NPT3活性の測定は文献(Biochem. J., 305, 81, 1995)に記載の方法にて実施することができる。すなわち、Xenopus laevis (Hamamatsu Jikkenn)のoocytesの小塊をカルシウムイオンフリーのORII solution(82.5mM NaCl, 2mM KCl, 1mMMgCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)中において2mg/ml collagenase(SIGMA−ALDRICH)にて90分間2回処理し、ORII solutionにて1回洗浄、改変Barth’s solution(88mM NaCl, 1mM KCl, 0.82mM MgSO4, 0.4mM CaCl2, 0.33mM Ca(NO3)2, 2.4mM NaHCO3, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)で洗浄することによりfollicular layerを除去後、oocyteを改変Barth’s solution 中にて18℃で一晩静置した。StageV oocyteにDEPC処理水にて1mg/mlに濃度調整したNPT−3 cRNA 5ngをmanual injector(Narishige)にて注入する。20℃にて3日間培養した後、ナトリウムイオンフリーuptake solution I(100mM choline choride, 2mM KCl, 1mM CaCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)にて洗浄し、ナトリウムイオン含有uptake solution(100mM NaCl, 2mM KCl, 1mM CaCl2, 1mM MgCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.5, 0.5mM KH2PO4(30μCi/ml))中にて60分間保温した後、oocyteを5mM KH2PO4を添加した氷冷ナトリウムイオンフリーuptake solution Iにて3回洗浄した。各々のoocyteをシンチレーションバイアルに入れ、0.2mlの10% SDSにて溶解後、5mlの液体シンチレーションカクテル(DuPont−New England Nuclear)(基質)を添加・混合することにより、oocyte内に取り込まれた放射活性を液体シンチレーションカウンターにて計測する。ナトリウムイオン非依存性のトランスポーター活性をナトリウムイオンフリーuptake solution II(100mM choline chloride, 2mM KCl, 1mM CaCl2, 1mM MgCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.5, 0.5mM KH2PO4(30μCi/ml))を用いて測定し、これを差し引くことにより導入NPT3活性を求めることができる。
被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、被験物質を添加した場合のNPT3活性(Vsam)と、被験物質非存在下でのNPT3活性(Vref)とを比較することにより、被験物質が、Sodium phosphate transporter活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がNPT3活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
【0231】
実施例20 IREG1の機能(活性)に基くスクリーニング方法
IREG1活性の測定は文献(Mol. Cell, 5, 299, 2000)記載の方法にて実施することができる。すなわち、Xenopus laevis (Hamamatsu Jikkenn)のoocytesの小塊をカルシウムイオンフリーのORII solution(82.5mM NaCl, 2mM KCl, 1mM MgCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)中において2mg/ml collagenase(SIGMA−ALDRICH)にて90分間2回処理し、OR II solutionにて1回洗浄、改変Barth’s solution(88mM NaCl, 1mM KCl, 0.82mM MgSO4, 0.4mM CaCl2, 0.33mM Ca(NO3)2, 2.4mM NaHCO3, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)で洗浄することによりfollicular layerを除去後、oocyteを改変Barth’s solution 中にて18℃で一晩静置した。Stage VI oocyteにDEPC処理水にて0.5mg/mlに濃度調整したヒト プロトン共役型2価カチオントランスポーターDCT1(GenBank accession number NM_000617) cRNA 25ngおよびIREG1cRNA 25ngをmanual injector(Narishige)にて注入した。20℃にて24時間培養した後、Fe55(NEN)を含む uptake solution(98mM NaCl, 2.0mM KCl, 0.6mM CaCl2, 1.0mM MgCl2, 1.0mM ascorbic acid, 10mM HEPES/Tris, pH6.0)に溶液を交換し、室温で30分間保温することによりFe55をプレロードする。oocyteをFe55(NEN)を含まない uptake solutionで3回洗浄し、96ウェルプレートに移した後、50μlのefflux solution(98mM NaCl, 2.0mM KCl, 0.6mM CaCl2, 1.0mM MgCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.4)中にて保温する。60分間保温した後、efflux solutionを除去し、0.2mlの10% SDSにて溶解後、5mlの液体シンチレーションカクテル(DuPont−New England Nuclear)(基質)を添加・混合することにより、oocyte内に保持された放射活性を液体シンチレーションカウンターにて計測する。IREG1非依存性のトランスポーター活性をDCT1(GenBank accession number NM_000617) cRNA 25ngのみを注入したoocyteを用いて同様に計測し、IREG1依存性のトランスポーター活性からIREG1非依存性のトランスポーター活性を差し引くことにより導入IREG1活性を求めることができる。
被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、被験物質を添加した場合のIREG1活性(Vsam)と、被験物質非存在下でのIREG1活性(Vref)とを比較することにより、被験物質が、IREG1活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がIREG1活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
【0232】
実施例21 HEK−293 細胞で発現した 5H−7 受容体結合阻害活性の測定
ラット5−HT7受容体を発現するHEK−293細胞を用いて、ラット5−HT7受容体を発現するHEK−293細胞を、公知の方法により生育させる。培地を除去することにより細胞を回収し、燐酸緩衝生理食塩水(PBS)ですすぎ、次いで、2.5mMのEDTAを含有するPBSを加える。細胞を遠心チューブにて、40,000xgで10分間遠心機にかける。上澄を捨て、この時点で残ったペレットをホモゲナイザーで50mMのトリスHClバッファー(4℃でpH7.4)中で均質化する。ホモジネートを、40,000xgで更に10分間遠心機にかける。上澄を捨て、ペレットを、新たな氷冷50mMのトリスHCl(4℃でpH7.4)バッファー中に再懸濁し、再度遠心機にかける。得られるペレットを、測定用バッファー(0.5mMのEDTA、10mM硫酸マグネシウム、2mM塩化カルシウムを含有する50mMトリス塩酸バッファー(25℃でpH7.7))にペレット湿潤重量5−15mg/mlの最終濃度で(2X最終濃度)再懸濁する。
測定用プレートに得られたペレット懸濁液(初めの湿潤重量5−15mg/mL)100μL、50μLの[3H]−5−CT(0.4nM最終濃度)、および50μLの被験物質(またはバッファー)を加える。これを2時間インキュベートする。ワットマンGF/Bガラス繊維フィルターで濾過することにより、インキュベーションを終える。フィルターの放射能を液体シンチレーション計数により定量する。特異的結合のパーセント阻害を、各濃度の被験物質について算定し、IC50値(特異的結合の50%を阻害する濃度)を決定する。
【0233】
実施例22 5−HT7 受容体が仲介するアデニル酸シクラーゼ活性
ラット5−HT7受容体を発現するHEK−293細胞を、2.5mMのEDTAを含有する燐酸緩衝生理食塩水に培地を置き替えることにより、細胞を回収する。ホモジネートを、35,000xgで10分間4℃で遠心分離する。ペレットを、チューブ当たり40マイクログラム蛋白質の最終蛋白質濃度になるように、1mMのEGTAを含有する100mMのHEPESバッファー(pH7.5)に再懸濁する。
4.0mMのMgCl2、0.5mMのATP、1.0mMのcAMP、0.5mMのIBMX、10mMのホスホクレアチン、0.31mg/mLのクレアチンホスホキナーゼ、および100μMのGTP、0.5−1マイクロキュリーの[32P]−ATPを、これらの最終濃度になるように反応液を調製する。
20μLの細胞懸濁液、20μLの被験物質(またはバッファー)および40μLの反応液を混合し37℃で15分間インキュベーションする。40,000dpm[3H]−cAMPを含有する100μLの2%SDS、1.3mMのcAMP、45mMのATP溶液を添加してインキュベーションを終了し、cAMP回収量を測定する。[32P]−ATPおよび[32P]−cAMPを分離し(Salomon, Analytical Biochemistry 58: 541−548, 1974の方法を用いることができる。)、放射能を、液体シンチレーション計数により定量する。
【0234】
実施例23 ラット十字靭帯切断モデルによる薬効評価
EDG2アゴニスト、ET(A)アンタゴニスト、VIP1RアゴニストおよびGAT1阻害剤の変形性関節症に対する治療効果を、ラット十字靭帯切断変形性関節症モデルを用いて評価した。
7週齢のCrj:CD(SD)IGS(SPF)系雄ラットを用い、実施例1に記載の方法により変形性関節症発症モデル動物を作製した。EDG2アゴニストであるリゾフォスファチディック アシッド(lysophosphatidic acid;LPA)(シグマ社製;カタログ番号 L7260)、ET(A)アンタゴニストであるBQ−123(シグマ社製;カタログ番号 B150)、VIP1RアゴニストであるVIP(シグマ社製;カタログ番号 V6130)およびGAT1阻害剤であるCI966(TOCRIS社製;カタログ番号 1296)を、十字靭帯切断手術後7〜27日まで隔日で11回、膝関節腔内投与(0.05mL/body)した。最終投与の翌日にモデル作製部位である左側膝関節を摘出し、大腿骨及び脛骨の内側及び外側顆の関節軟骨病変を病理組織学的に評価した。対照群として生理食塩液(大塚生食注、Lot No.K2C85,大塚製薬)投与群を設定し、この対照群との比較により薬効を評価した。
病理組織学的評価は、公知の評価基準(菊地ら:応用薬理、44、547−557(1992)に基づく)により行った。
すなわち軟骨病変の指標である各関節軟骨の構造変化(評点0〜10)、浅在帯細胞変化(評点0〜2)、中間帯及び深在帯細胞変化(評点0〜10)、サフラニンO染色性低下(評点0〜4)及びパンヌス形成(評点0〜3)をそれぞれ評価し、その合計評点(最大29点)を算出した。結果を表3に示した。
【表2】
対照群には,大腿骨関節軟骨の外側顆及び内側顆で合計評点が3.7及び4.1,脛骨関節軟骨の外側顆及び内側顆で合計評点が8.6及び9.6の軟骨病変が認められた。これら変化を示した対照群と比較し、LPA投与群では大腿骨関節軟骨の内側顆および脛骨関節軟骨の内側顆で合計評点がそれぞれ2.1及び4.6といずれも有意に低下した。またBQ−123投与群では脛骨関節軟骨の内側顆で合計評点が4.4、VIP投与群では脛骨関節軟骨の外側顆および内側顆で合計評点がそれぞれ4.3及び3.3、CI966投与群では大腿骨関節軟骨の内側顆および脛骨関節軟骨の外側顆および内側顆で合計評点がそれぞれ2.1、4.4及び3.0と有意に低下した。
以上の結果から、EDG2アゴニストであるLPA、ET(A)アンタゴニストであるBQ−123、VIP1RアゴニストであるVIPおよびGAT1阻害剤であるCI966は、いずれも関節軟骨病変抑制作用を有することが明らかとなった。
【0235】
実施例24 未分化間葉系細胞の軟骨細胞への分化に対する GAT1 阻害剤の薬効
マウス未分化間葉系細胞ATDC5(理研;RCB0565)は増殖条件(5%ウシ胎児血清(GIBCO)含有 DME/F12培地(シグマ)、5%CO2、37℃)から分化条件(5%ウシ胎児血清、10μg/mlウシインスリン(和光純薬)、10μg/mlヒトトランスフェリン(Boehringer Mannheim)、30nM sodium selenite(Sigma)含有αMEM(GIBCO)、3%CO2、37℃)にシフトさせることにより軟骨細胞に分化することが知られている(CELL STRUCTURE & FUNCTION, 25, 195−204, 2000)。軟骨細胞は未分化間葉系細胞と比較して酸性ムコ多糖合成活性が高いため、酸性ムコ多糖量を指標に軟骨細胞への分化程度を定量化することができる。そこで、これらの公知の性質に基いて、GAT1阻害剤:CI966の軟骨細胞への分化に対する効果を調べた。
すなわち、増殖条件で培養したATDC5細胞をDulbecco’s Phosphate Buffered Saline(GIBCO)にて洗浄、Trypsin/EDTA(GIBCO)にて剥がした後、増殖培地で3x105cells/mlに懸濁し、24ウェルプレート(IWAKI)に各ウェルあたり1mlずつまいた。増殖条件で2日間培養した後、分化誘導条件にシフトさせ、以後2日置きに培地交換をおこなった。CI966の効果の測定は分化誘導時にCI966(TOCRIS;カタログ番号 1296)をそれぞれ0.1μM、1μM、10μMを含有する分化培地を用いた点以外は上記同様に実施した。分化条件にて15日間培養した後、簡易型・酸性ムコ多糖定量キット(ホクドー;カタログ番号OP03)を用いて軟骨細胞から産生された酸性ムコ多糖量を波長650nmの吸光度(OD650)で測定することによりCI966の軟骨細胞への分化に対する効果を定量した。対照群として化合物を含有しない分化誘導条件群を設定し、この対照群との比較により薬効を評価した。
酸性ムコ多糖増加率(%)=100*{(A/C)−1} A=実験群における吸光度(600nm)、C=対象群における吸光度(600nm)
その結果、対照群と比較して10μM GAT1阻害剤:CI966で14.2%と有意に酸性ムコ多糖量が増加した。
以上の結果から、GAT1阻害剤:CI966は、軟骨分化促進作用を有することが明らかとなった。以上の知見から、GAT1阻害剤が軟骨障害治療剤となり得ることがわかった。
【表3】
*P<0.05 (t−検定、N=3)
【0236】
【発明の効果】
本発明によって、ラット十字靭帯切断モデルの障害軟骨において、正常軟骨と比較して特異的に増大している遺伝子(5−HT7遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、ATA1遺伝子、ABCA1、PLTP遺伝子、NPT3遺伝子、および、IREG1遺伝子)が明らかになった。また、ラット十字靭帯切断モデルの障害軟骨において、正常軟骨と比較して特異的に減少している遺伝子(EDG2遺伝子、SCN2A遺伝子、ABCG2 遺伝子、ENT1 遺伝子、および、GAT1 遺伝子)が明らかになった。
かかる遺伝子は軟骨障害の遺伝子診断に用いられるマーカー遺伝子(プローブ、プライマー)として有用である。該マーカー遺伝子の利用によれば、軟骨障害が検出でき、またその病因の究明および高精度の診断が可能であり、これらによりより適切な治療を施すことも可能となる。
また、上記遺伝子の発現と軟骨障害との関連から、該遺伝子の発現を制御する化合物は、軟骨障害の治療薬として有用と考えられる。例えば、5−HT7、EDG2またはVIP1Rの機能亢進剤、及びET(A)またはGAT1の機能抑制剤が軟骨障害治療薬として有効である。
従って、これらの遺伝子の発現の変動、または当該遺伝子がコードするタンパク質の機能(活性)変動を指標とすることによって、軟骨障害の治療薬となり得る候補薬をスクリーニングし選別することが可能である。本発明は、このような軟骨障害治療薬の開発技術をも提供する。
【0237】
【配列表】
【発明の属する技術分野】
本発明は軟骨障害の診断に有用な疾患マーカーに関する。より詳細には、本発明は軟骨障害、例えば変形性関節症や軟骨形成異常症、変形性椎間板症、軟骨の欠損、軟骨損傷、半月板損傷、あるいは骨折の修復・治癒不全等の疾患の遺伝子診断において、プライマーまたは検出プローブとして有効に利用できる疾患マーカーに関する。
【0002】
また本発明は、上記疾患マーカーを利用して、軟骨障害を検出する方法(診断方法)、軟骨障害の改善または治療薬として有効な物質をスクリーニングする方法、および該スクリーニング方法によって得られる物質を有効成分とする軟骨障害の改善または治療薬に関する。
【0003】
【従来の技術】
軟骨は軟骨細胞とこれを取り囲む基質からなる結合組織であり、関節、脊柱の椎間板、肋軟骨、耳介、外耳道、恥骨結合、咽頭蓋などに存在する。軟骨の作用としては、骨端の摩擦の低減(関節軟骨)、弾性の保持(耳介軟骨)、運動機能(肋軟骨、恥骨軟骨など)が知られており、軟骨は生体の機能維持の上で重要な作用を有している。従来から軟骨の障害に起因する種々の疾患が知られており、例えば、変形性関節症、軟骨形成異常症、変形性椎間板症、骨折の修復・治癒不全などが例示される。特に、高齢化社会の到来、スポーツによる外傷の増加、キーパンチャー病などに代表される職業病の出現などにより、軟骨障害患者は著しく増加しており、この領域における医療の進歩が要望されている。
【0004】
従来から軟骨障害を治療するために種々の治療法が試みられてきているが、それらは直接的に原因の解消を目的とするものではなく、例えば、抗炎症剤を投与することにより、その疾患に基づく痛みなどの障害を抑制する方法、関節にヒアルロン酸製剤などを注入して関節の動きを潤滑にする方法など、対症療法的なものでしかなかった。また軟骨欠損に対する治療法として、軟骨細胞移植が行なわれているが、移植後のホスト側の軟骨基質との接着が不十分であり、治療法としての確立はなされていない。さらに軟骨細胞移植治療法は侵襲性であることから、患者への負担が大きく、また感染の可能性も否定できない。
【0005】
以上のように軟骨障害の根治的治療法は見出されていないことから、特に患者数が多い変形性関節症などでは、その有効な治療剤、および当該治療剤探索のための新規なスクリーニング系の構築が期待されている。
【0006】
また、最近の医療現場では、軟骨障害に限らず、個々の患者の症状に合わせて治療法を的確に選択することが望まれるようになってきている。高齢化社会でのQOL(Quality of life)向上の必要性が認識されてきた近年では、特に、万人に共通した治療ではなく、個々の患者の症状に合わせて適切な治療が施されることが強く求められている。このような所謂テイラーメイド治療を行うためには、個々の疾患について患者の症状やその原因(遺伝的背景)を的確に反映する疾患マーカーが有用であり、その探索並びに開発を目指した研究が精力的に行われているのが現状である。
【0007】
一方、5−HT7(非特許文献1)、EDG2(非特許文献2)、EDG1、ET(A)(非特許文献3)、GPR88、PTH2R、VIP1R(非特許文献4)、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1(非特許文献5)、PLTP、ENT1、NPT3およびIREG1はそれぞれ公知の因子であるが、これらの因子と軟骨障害との関係は知られていない。
【0008】
【非特許文献1】
J. Biol. Chem., 268(31), 23422−23426 (1993)
【非特許文献2】
Biochem. Biophys. Res. Commun., 231(3), 619−622 (1997)
【非特許文献3】
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88(8), 3185−3189 (1991)
【非特許文献4】
Biochem. Biophys. Res. Commun., 193(2), 546−553 (1993)
【非特許文献5】
J. Biol. Chem., 267, 21098−21104 (1992)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、軟骨障害の診断及び治療に有用な疾患マーカーを提供することを目的とする。より詳細には、本発明は軟骨の障害に起因する疾患(軟骨障害)を特異的に反映した疾患マーカーを提供することを目的とする。さらに本発明は該疾患マーカーを利用した軟骨障害の検出方法(遺伝子診断方法)、該疾患の改善または治療に有用な薬物をスクリーニングする方法、並びに該疾患の改善または治療に有用な薬物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行っていたところ、従来は変形性関節症等の軟骨障害との関連が知られていなかった以下の遺伝子:5−HT7遺伝子(Genbank Accession No. NM_019859)、EDG1遺伝子(Genbank Accession No. NM_001400)、ET(A)遺伝子(Genbank Accession No. NM_001957)、GPR88遺伝子(Genbank Accession No. NM_022049)、PTH2R遺伝子(Genbank Accession No. NM_005048)、VIP1R遺伝子(Genbank Accession No. NM_004624)、CLIC2遺伝子(Genbank Accession No. NM_001289)、ATA1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_030674)、ABCA1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_005502)、PLTP遺伝子(Genbank Accession No. NM_006227)、NPT3 遺伝子(Genbank Accession No. U90544)、並びに、IREG1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_014585)が、軟骨障害のモデル動物であるラット十字靭帯切断モデルの障害軟骨において、正常軟骨と比較して有意に発現が上昇していることを見出した。また、EDG2遺伝子(Genbank Accession No. NM_001401)、SCN2A遺伝子(Genbank Accession No. NM_21007, およびAF327246)、ABCG2 遺伝子(Genbank Accession No. NM_004827)、ENT1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_004955)、並びに、GAT1 遺伝子(Genbank Accession No. X54673 )が、前記モデルの障害軟骨において、正常軟骨と比較して有意に発現が減少していることを見出した。
このことから、本発明者らは、かかる遺伝子が軟骨障害の疾患マーカーであり、またこれらの遺伝子を標的として軟骨障害を伴う疾患を緩和、抑制する治療薬の候補薬をスクリーニングすることが可能であるとの確信を得た。本発明はかかる知見を基礎として完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は、下記に掲げるものである:
項1. 配列番号1に記載の5−HT7(5−Hydroxytryptamine受容体7)遺伝子の塩基配列、配列番号3に記載のEDG2(Endothelial differentiation gene 2)遺伝子の塩基配列、配列番号5に記載のEDG1(Endothelial differentiation gene 1)遺伝子の塩基配列、配列番号7に記載のET(A)(Endothelin receptor type A) 遺伝子の塩基配列、配列番号9に記載のGPR88(G−protein coupled receptor88)遺伝子の塩基配列、配列番号11に記載のPTH2R(Parathyroid hormone receptor2)遺伝子の塩基配列、配列番号13に記載のVIP1R(Vasoactive intestinal peptide receptor1)遺伝子の塩基配列、配列番号15に記載のCLIC2(Chloride intracellular channel2)遺伝子の塩基配列、配列番号17に記載のSCN2A(Voltage−gated sodium channel type II alpha subunit)遺伝子の塩基配列、配列番号19に記載のATA1(Amino acid transporter system A1)遺伝子の塩基配列、配列番号21に記載のABCA1(ATP−binding cassette, sub−family A, member1)遺伝子の塩基配列、配列番号23に記載のABCG2(ATP−binding cassette,sub−family G, member2)遺伝子の塩基配列、配列番号25に記載のGAT1(GABAtransporter1)遺伝子の塩基配列、配列番号27に記載のPLTP(Phospholipid transfer protein)遺伝子の塩基配列、配列番号29に記載のENT1(Equilibrative nucleoside transporter1)遺伝子の塩基配列、配列番号31に記載のNPT3(Sodium phosphate transporter3)遺伝子の塩基配列、または、配列番号33に記載のIREG1(Iron−regulated transporter1)遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる、軟骨障害の疾患マーカー。
項2. 軟骨障害の検出においてプローブまたはプライマーとして使用される項1記載の疾患マーカー。
項3. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、軟骨障害の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドと項1または2に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果に基づいて、軟骨障害の罹患を判断する工程。
項4. 配列番号2に記載の5−HT7のアミノ酸配列、配列番号4に記載のEDG2のアミノ酸配列、配列番号6に記載のEDG1のアミノ酸配列、配列番号8に記載のET(A)のアミノ酸配列、配列番号10に記載のGPR88のアミノ酸配列、配列番号12に記載のPTH2Rのアミノ酸配列、配列番号14に記載のVIP1Rのアミノ酸配列、配列番号16に記載のCLIC2のアミノ酸配列、配列番号18に記載のSCN2Aのアミノ酸配列、配列番号20に記載のATA1のアミノ酸配列、配列番号22に記載のABCA1 のアミノ酸配列、配列番号24に記載のABCG2のアミノ酸配列、配列番号26に記載のGAT1のアミノ酸配列、配列番号28に記載のPLTPのアミノ酸配列、配列番号30に記載のENT1のアミノ酸配列、配列番号32に記載のNPT3のアミノ酸配列、または配列番号34に記載のIREG1のアミノ酸配列からなるタンパク質を認識する抗体を含有する、軟骨障害の疾患マーカー。
項5. 軟骨障害の検出においてプローブとして使用される項4記載の疾患マーカー。
項6. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、軟骨障害の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたタンパク質と項4または5に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質またはその部分ペプチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果に基づいて、軟骨障害の罹患を判断する工程。
項7. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現を制御する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質と5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
項8. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7遺伝子の発現を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質と5−HT7遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞の5−HT7遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、5−HT7遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
項9. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、EDG2遺伝子の発現を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質とEDG2遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞のEDG2遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、EDG2遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
項10. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、VIP1R遺伝子の発現を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質とVIP1R遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞のVIP1R遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、VIP1R遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
項11. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むGAT1 遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質とGAT1 遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞のGAT1 遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、GAT1 遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
項12. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むET(A)遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質とET(A)遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞のET(A)遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、ET(A)遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
項13. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、EDG1遺伝子、GPR88遺伝子、PLTP遺伝子またはIREG1遺伝子の発現を制御する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質とEDG1遺伝子、GPR88遺伝子、PLTP遺伝子またはIREG1遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞のEDG1遺伝子、GPR88遺伝子、PLTP遺伝子またはIREG1遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、EDG1遺伝子、GPR88遺伝子、PLTP遺伝子またはIREG1遺伝子の発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
項14. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ET(A)、VIP1RまたはSCN2Aの発現を制御する物質のスクリーニング方法:
(a)ET(A)遺伝子、VIP1R遺伝子もしくはSCN2A遺伝子の発現制御領域の下流にマーカー遺伝子を結合させた融合遺伝子を含む細胞と、被験物質を接触させる工程、
(b) 前記マーカー遺伝子の発現量を測定し、該発現量を、被験物質を接触させない対照における前記マーカー遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、ET(A)、VIP1RまたはSCN2Aの発現を変動させる被験物質を選択する工程。
項15. 軟骨障害の改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、項7乃至14のいずれかに記載のスクリーニング方法、
項16. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現を制御する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質と5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を発現可能な細胞、または該細胞から調製した細胞画分とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞または細胞画分における、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現量を測定し、該発現量を、被験物質を接触させない対照細胞もしくは対照細胞画分における上記タンパク質の発現量と比較する工程、
(c) 上記(b)の比較結果に基づいて、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
項17. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の機能または活性を制御する物質のスクリーニング方法:
(a) 5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記蛋白質の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の機能(活性)を変動させる被験物質を選択する工程。
項18. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7の機能または活性を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a)5−HT7を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の5−HT7の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7の機能(活性)を亢進する被験物質を選択する工程。
項19. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、EDG2の機能または活性を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a)EDG2を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のEDG2由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分のEDG2の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のEDG2の機能(活性)を亢進する被験物質を選択する工程。
項20. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、VIP1Rの機能または活性を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a)VIP1Rを含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のVIP1R由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分のVIP1Rの機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のVIP1Rの機能(活性)を亢進する被験物質を選択する工程。
項21. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、GAT1の機能または活性を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)GAT1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のGAT1由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分のGAT1の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のGAT1の機能(活性)を抑制する被験物質を選択する工程。
項22. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ET(A)の機能または活性を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)ET(A)を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のET(A)由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分のET(A)の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のET(A)の機能(活性)を抑制する被験物質を選択する工程。
項23. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、EDG1、GPR88、PLTP、またはIREG1の機能または活性を制御する物質のスクリーニング方法:
(a) EDG1、GPR88、PLTP、またはIREG1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のEDG1、GPR88、PLTP、またはIREG1の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のEDG1、GPR88、PLTP、またはIREG1の機能(活性)を変動させる被験物質を選択する工程。
項24. 軟骨障害の改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、項16乃至23のいずれかに記載のスクリーニング方法。
項25. 5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現を制御する物質を有効成分とする軟骨障害の改善または治療剤。
項26. 5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現を制御する物質が請求項7乃至14のいずれかに記載のスクリーニング法により得られるものである、項25記載の軟骨障害の改善または治療剤。
項27. 5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、もしくは、IREG1の発現量または機能(活性)を制御する物質を有効成分とする、軟骨障害の改善または治療剤。
項28. 5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、もしくは、IREG1の発現量または機能(活性)を制御する物質が、項16乃至23のいずれかに記載のスクリーニング法により得られるものである、項27記載の軟骨障害の改善または治療剤。
項29. EDG1、GPR88、PLTPまたはIREG1の機能(活性)制御物質を有効成分とする、軟骨障害の改善または治療剤。
項30. 5−HT7、EDG2またはVIP1Rの機能(活性)亢進物質を有効成分とする、軟骨障害の改善または治療剤。
項31. ET(A)またはGAT1の機能(活性)抑制物質を有効成分とする、軟骨障害の改善または治療剤。
項32. 配列番号1に記載の5−HT7遺伝子、配列番号5に記載のEDG1遺伝子、配列番号9に記載のGPR88遺伝子、配列番号27に記載のPLTP遺伝子または配列番号33に記載のIREG1遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる、軟骨障害の疾患マーカー。
項33. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、軟骨障害の検出方法:(a) 被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドと項32に記載の疾患マーカーの疾患マーカーとを結合させる工程、
(b) 該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドの量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果が、正常者の生体試料における測定結果よりも大きいか否かを指標として軟骨障害の罹患を判断する工程。
項34. 配列番号25に記載のGAT1遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる、軟骨障害の疾患マーカー。
項35. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、軟骨障害の検出方法:
(a) 被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドと項34に記載の疾患マーカーの疾患マーカーとを結合させる工程、
(b) 該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果が、正常者の生体試料における測定結果よりも小さいか否かを指標として軟骨障害の罹患を判断する工程。
項36. 配列番号2に記載の5−HT7、配列番号6に記載のEDG1、配列番号10に記載のGPR88、配列番号28に記載のPLTPまたは配列番号34に記載のIREG1のアミノ酸配列からなるタンパク質を認識する抗体を含有する、軟骨障害の疾患マーカー。
項37. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、軟骨障害の検出方法:
(a) 被験者の生体試料から調製されたタンパク質と項36に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b) 該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のタンパク質またはその部分ペプチドの量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果が、正常者の生体試料における測定結果よりも大きいか否かを指標として軟骨障害の罹患を判断する工程。
項38. 配列番号25に記載のGAT1のアミノ酸配列からなるタンパク質を認識する抗体を含有する、軟骨障害の疾患マーカー。
項39. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、軟骨障害の検出方法:
(a) 被験者の生体試料から調製されたタンパク質と項38に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b) 該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のタンパク質またはその部分ペプチドの量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果が、正常者の生体試料における測定結果よりも小さいか否かを指標として軟骨障害の罹患を判断する工程。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC−IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、および当該分野における慣用記号に従う。
【0013】
本明細書において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書において遺伝子(DNA)とは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、およびこれらの断片のいずれもが含まれる。また当該「遺伝子」または「DNA」には、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」だけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(例えば、同族体、変異体及び誘導体など)をコードする「遺伝子」または「DNA」が包含される(本明細書において、これらを総括して上記特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」の「ホモログ」ともいう。)。かかる「ホモログ」としては具体的には、後述の(1−1)項に記載のストリンジェントな条件下で、前記特定塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」とハイブリダイズするものを挙げることができる。
例えば同族体をコードする遺伝子(オルソログ)として、ヒト遺伝子に対応するマウスやラットなど他生物種の遺伝子が例示でき、これらの遺伝子(オルソログ)は、HomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定することができる。具体的には、特定ヒト塩基配列をBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873−5877, 1993、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)にかけて一致する(Scoreが最も高く、E−valueが0でかつIdentityが100%を示す)配列のアクセッション番号を取得する。そのアクセッション番号をUnigene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)に入力して得られたUniGene Cluster ID(Hs.で示す番号)をHomoloGeneに入力する。結果として得られた他生物種遺伝子とヒト遺伝子との相関を示したリストから、ヒト遺伝子に該当するマウスやラットなど他生物種の遺伝子を選抜することができる。なお、遺伝子またはDNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むことができる。
【0014】
従って本明細書において「5−HT7遺伝子」または「5−HT7DNA」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、ヒト5−HT7(5−Hydroxytryptamine受容体7)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:1に記載の5−HT7遺伝子(アイソフォームd;Genbank Accession No.NM_000872)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、5−HT7b遺伝子、すなわちアイソフォームb(Genbank Accession No. NM_019860)]や、オルソログ[例えば、配列番号1に記載の5−HT7遺伝子のオルソログである、ラット5−HT7遺伝子(Genbank Accession No. NM_031684)やマウス5−HT7遺伝子(Genbank Accession No. NM_008315)]等が挙げられる。
また、本明細書において「EDG2 遺伝子」または「EDG2 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、ヒトEDG2(Endothelial differentiation gene 2)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:3に記載のEDG2遺伝子(Genbank Accession No.NM_001401)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、EDG2,transcriptional variant 2 遺伝子(Genbank Accession No. NM_057159)]や、オルソログ[例えば、ラットEDG2遺伝子(Genbank Accession No. NM_053936)やマウスEDG2遺伝子(Genbank Accession No. NM_010336)]等が挙げられる。また、本明細書において「EDG1遺伝子」または「EDG1 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、EDG1(Endothelial differentiation gene 1)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:5に記載のEDG1遺伝子(Genbank Accession No.NM_001400)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットEDG1遺伝子(Genbank Accession No. NM_017301)やマウスEDG1遺伝子(Genbank Accession No. NM_007901)]等が挙げられる。また、本明細書において「ET(A)遺伝子」または「ET(A) DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、ET(A)(Endothelin receptor type A)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:7に記載のET(A)遺伝子(Genbank Accession No.NM_001957)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、ET(A) delta 3遺伝子 (Genbank Accession No. AF014826)、ET(A) (Genbank Accession No. S81545)、 ET(A) delta 3−4 遺伝子(Genbank Accession No. S81545)、ET(A) delta 4 遺伝子(Genbank Accession No. S81542)]や、オルソログ[例えば、ラットET(A) 遺伝子(Genbank Accession No.NM_012550)やマウスET(A) 遺伝子(Genbank Accession No. BC008277)]等が挙げられる。
また、本明細書において「GPR88遺伝子」または「GPR88 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、GPR88(G−protein coupled receptor 88)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:9に記載のGPR88遺伝子(Genbank Accession No.NM_022049)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットGPR88遺伝子(Genbank Accession No. NM_031696)やマウスGPR88遺伝子(Genbank Accession No. AB042408)]等が挙げられる。
また、本明細書において「PTH2R遺伝子」または「PTH2R DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、PTH2R(Parathyroid Hormone receptor 2; PTH2受容体)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:11に記載のPTH2R遺伝子(Genbank Accession No.NM_005048)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットPTH2R遺伝子(Genbank Accession No. NM_031089)やマウスPTH2R遺伝子(Genbank Accession No. AF332078, AF332077)]等が挙げられる。
また、本明細書において「VIP1R遺伝子」または「VIP1R DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、VIP1R(Vasoactive intestinal peptide receptor 1)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:13に記載のVIP1R遺伝子(Genbank Accession No.NM_004624)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、VIPR related protein遺伝子(Genbank Accession No. X77777)]や、オルソログ[例えば、ラットVIP1R遺伝子(Genbank Accession No. NM_012685)や、マウスVIP1R遺伝子(Genbank Accession No. NM_011703)]等が挙げられる。
また、本明細書において「CLIC2遺伝子」または「CLIC2 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、CLIC2(Chloride intracellular channel2)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:15に記載のCLIC2遺伝子(Genbank Accession No.NM_001289)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットCLIC2遺伝子(Genbank Accession No. BF414208に記載された配列を含む遺伝子)やマウスCLIC2遺伝子(Genbank Accession No. AI391034に記載された配列を含む遺伝子)]等が挙げられる。
また、本明細書において「SCN2A遺伝子」または「SCN2A DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、SCN2A(Voltage−gated sodium channel type II alpha subunit)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:17に記載のSCN2A遺伝子(Genbank Accession No.NM_21007)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、SCN2A、alternatively spliced遺伝子(Genbank Accession No.AF327246)、SCN3A遺伝子(Genbank Accession No. AF330135)]や、オルソログ[例えば、ラットSCN2A遺伝子(Genbank Accession No. BG377948)や、マウスSCN2A遺伝子(Genbank Accession No. AK020721)]等が挙げられる。
また、本明細書において「ATA1遺伝子」または「ATA1 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、ATA1遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:19に記載のATA1遺伝子(Genbank Accession No.NM_030674)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、NGT遺伝子(Genbank Accession No.AF247166)]や、オルソログ等が挙げられる。
また、本明細書において「ABCA1遺伝子」または「ABCA1 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、ABCA1(ATP−binding cassette, sub−family A, member 1)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:21に記載のABCA1遺伝子(Genbank Accession No.NM_005502)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットABCA1遺伝子(Genbank Accession No. NM_031760)やマウスABCA1遺伝子(Genbank Accession No. NM_013454)]等が挙げられる。また、本明細書において「ABCG2遺伝子」または「ABCG2 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、ABCG2(ATP−binding cassette, sub−family G, member2)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:23に記載のABCG2遺伝子(Genbank Accession No.NM_004827)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、MXR2遺伝子(Genbank Accession No. AF093772)]や、オルソログ[例えば、ラットABCG2遺伝子(Genbank Accession No. NM_053754)やマウスABCG2遺伝子(Genbank Accession No. NM_011920)]等が挙げられる。
また、本明細書において「GAT1遺伝子」または「GAT1 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、GAT1(GABA transporter1)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:25に記載のGAT1遺伝子(Genbank Accession No.X54673)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットGAT1遺伝子(Genbank Accession No. NM_024371)やマウスGAT1遺伝子(Genbank Accession No. M92378)]等が挙げられる。
また、本明細書において「PLTP遺伝子」または「PLTP DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、PLTP(Phospholipid transfer protein)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:27に記載のPLTP遺伝子(Genbank Accession No.NM_006227)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットPLTP遺伝子(Genbank Accession No. AA817754)やマウスPLTP遺伝子(Genbank Accession No. NM_011125)]等が挙げられる。
また、本明細書において「ENT1遺伝子」または「ENT1 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、ENT1(Equilibrative nucleoside transporter1)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:29に記載のENT1遺伝子(Genbank Accession No.NM_004955)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットENT1遺伝子(Genbank Accession No. NM_031684)やマウスENT1遺伝子(Genbank Accession No. NM_022880)]等が挙げられる。
また、本明細書において「NPT3遺伝子」または「NPT3 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、NPT3(Sodium phosphate transporter3)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:31に記載のNPT3遺伝子(Genbank Accession No.U90544)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ等が挙げられる。
また、本明細書において「IREG1遺伝子」または「IREG1 DNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、IREG1(Iron−regulated transporter1)遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:33に記載のIREG1遺伝子(Genbank Accession No.NM_014585)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットIREG1遺伝子(Genbank Accession No. NM_133315)やマウスIREG1遺伝子(Genbank Accession No. NM_016917)]等が挙げられる。
【0015】
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNAおよびDNAのいずれをも包含する趣旨で用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、及び合成のRNAのいずれもが含まれる。
【0016】
本明細書において「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」には、特定の塩基配列で示される「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」だけでなく、これらと生物学的機能が同等である「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」(例えば、同族体(オルソログ)、誘導体、および変異体等)が包含される。なお、本明細書において、これらを上記特定のアミノ酸配列で示される「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」の「ホモログ」ともいう。
該ホモログとしては、例えば同族体(オルソログ)としては、ヒトのタンパク質に該当するマウスやラットなど他生物種のタンパク質が例示でき、これらはHomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoGene/)により同定された遺伝子の塩基配列から演鐸的に同定することができる。また、変異体には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、及び人為的に欠失、置換、付加および挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。なお、上記変異体としては、変異のないタンパク質または(ポリ)ペプチドと、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを挙げることができる。
【0017】
従って本明細書において「5−HT7タンパク質」または単に「5−HT7」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、ヒト5−HT7 (5−Hydroxytryptamine受容体)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:2に記載のヒト5−HT7遺伝子(アイソフォームd;Genbank Accession No.NM_000872)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、5−HT7b、すなわちアイソフォームb(Genbank Accession No. NM_019860)]や、オルソログ[例えば、配列番号1に記載の5−HT7のオルソログである、ラット5−HT7(Genbank Accession No. NM_031684)やマウス5−HT7(Genbank Accession No. NM_008315)]等が挙げられる。また、本明細書において「EDG2タンパク質」または単に「EDG2」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、ヒトEDG2(Endothelial differenciation gene 1)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:4に記載のEDG2(Genbank Accession No.NM_001401)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、EDG2,transcriptional variant 2 (Genbank Accession No. NM_057159)]や、オルソログ[例えば、ラットEDG2(Genbank Accession No. NM_053936)やマウスEDG2(Genbank Accession No. NM_010336)]等が挙げられる。
また、本明細書において「EDG1タンパク質」または単に「EDG1」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、EDG1(Endothelial differenciation gene 2)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:6に記載のEDG1(Genbank Accession No.NM_001400)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットEDG1(Genbank Accession No. NM_017301)やマウスEDG1(Genbank Accession No. NM_007901)]等が挙げられる。
また、本明細書において「ET(A)タンパク質」または単に「ET(A)」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、ET(A)(Endothelin receptor type A)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:8に記載のET(A)(Genbank Accession No.NM_001957)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、ET(A) delta 3 (Genbank Accession No. AF014826)、ET(A) (Genbank Accession No. S81545)、 ET(A) delta 3−4 (Genbank Accession No. S81545)、ET(A) delta 4 (Genbank Accession No. S81542)]や、オルソログ[例えば、ラットET(A)(Genbank Accession No.NM_012550)やマウスET(A)(Genbank Accession No. BC008277)]等が挙げられる。
また、本明細書において「GPR88タンパク質」または単に「GPR88」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、GPR88(G−protein coupled receptor 88)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:10に記載のGPR88(Genbank Accession No.NM_022049)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットGPR88(Genbank Accession No. NM_031696)やマウスGPR88(Genbank Accession No. AB042408)]等が挙げられる。
また、本明細書において「PTH2Rタンパク質」または単に「PTH2R」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、PTH2R(Parathyroid hormone receptor 2; PTH2受容体)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:12に記載のPTH2R(Genbank Accession No.NM_005048)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットPTH2R(Genbank Accession No. NM_031089)やマウスPTH2R(Genbank Accession No. AF332078, AF332077)]等が挙げられる。また、本明細書において「VIP1Rタンパク質」または単に「VIP1R」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、VIP1R(Vasoactive intestinal peptide receptor 1)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:14に記載のVIP1R遺伝子(Genbank Accession No.NM_004624)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、VIPR related protein(Genbank Accession No. X77777)]や、オルソログ[例えば、ラットVIP1R(Genbank Accession No. NM_012685)や、マウスVIP1R(Genbank Accession No. NM_011703)]等が挙げられる。
また、本明細書において「CLIC2タンパク質」または「CLIC2」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、CLIC2(Chloride intracellular channel2)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:16に記載のCLIC2(Genbank Accession No.NM_001289)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットCLIC2(Genbank Accession No. BF414208に記載された配列を含むタンパク質)やマウスCLIC2(Genbank Accession No. AI391034に記載された配列を含むタンパク質)]等が挙げられる。
また、本明細書において「SCN2Aタンパク質」または「SCN2A」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、SCN2A(Voltage−gated sodium channel type II alpha subunit)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:18に記載のSCN2A(Genbank Accession No.NM_21007)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、SCN2A、alternatively spliced(Genbank Accession No.AF327246)、SCN3A(Genbank Accession No. AF330135)]や、オルソログ[例えば、ラットSCN2A(Genbank Accession No. BG377948)や、マウスSCN2A(Genbank Accession No. AK020721)]等が挙げられる。
また、本明細書において「ATA1タンパク質」または「ATA1」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、ATA1遺伝子やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:20に記載のATA1遺伝子(Genbank Accession No.NM_030674)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、NGT(Genbank Accession No.AF247166)]や、オルソログ等が挙げられる。
また、本明細書において「ABCA1タンパク質」または「ABCA1」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、ABCA1(ATP−binding cassette, sub−family A, member 1)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:22に記載のABCA1遺伝子(Genbank Accession No.NM_005502)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットABCA1(Genbank Accession No. NM_031760)やマウスABCA1(Genbank Accession No. NM_013454)]等が挙げられる。
また、本明細書において「ABCG2タンパク質」または「ABCG2」といった用語を用いる場合、配列番号で特に指定しない限り、ABCG2(ATP−binding cassette sub−family G, member 2)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:24に記載のABCG2(Genbank Accession No.NM_004827)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォーム[例えば、MXR2(Genbank Accession No. AF093772)]や、オルソログ[例えば、ラットABCG2(Genbank Accession No. NM_053754)やマウスABCG2(Genbank Accession No.NM_011920)]等が挙げられる。
また、本明細書において「GAT1タンパク質」または「GAT1」といった用語を用いる場合も、配列番号で特に指定しない限り、GAT1(GABA transporter 1)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:26に記載のGAT1(Genbank Accession No.X54673)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットGAT1(GenbankAccession No. NM_024371)やマウスGAT1(Genbank Accession No. M92378)]等が挙げられる。
また、本明細書において「PLTPタンパク質」または「PLTP」といった用語を用いる場合も、配列番号で特に指定しない限り、PLTP(Phospholipid transfer protein)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:28に記載のPLTP(Genbank Accession No.NM_006227)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットPLTP(Genbank Accession No. AA817754)やマウスPLTP(Genbank Accession No. NM_011125)]等が挙げられる。
また、本明細書において「ENT1タンパク質」または「ENT1」といった用語を用いる場合も、配列番号で特に指定しない限り、ENT1(Equilibrative nucleoside transporter 1)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:30に記載のENT1(Genbank Accession No.NM_004955)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットENT1(Genbank Accession No. NM_031684)やマウスENT1(Genbank Accession No. NM_022880)]等が挙げられる。
また、本明細書において「NPT3タンパク質」または「NPT3」といった用語を用いる場合も、配列番号で特に指定しない限り、NPT3(Sodium phosphate transporter3)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:32に記載のNPT3(Genbank Accession No.AY647390)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ等が挙げられる。
また、本明細書において「IREG1タンパク質」または「IREG1」といった用語を用いる場合も、配列番号で特に指定しない限り、IREG1(Iron−regulated transporter 1)やそのホモログなどを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:34に記載のIREG1(Genbank Accession No.NM_014585)や、そのホモログが包含される。該ホモログとしては、アイソフォームや、オルソログ[例えば、ラットIREG1(Genbank Accession No. NM_133315)やマウスIREG1(Genbank Accession No. NM_016917)]等が挙げられる。
【0018】
本明細書でいう「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、またはFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントなどのように抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。
【0019】
さらに本明細書において「疾患マーカー」とは、軟骨障害の罹患の有無、罹患の程度、若しくは改善の有無や改善の程度を診断するために、また軟骨障害の予防、改善または治療に有用な候補物質をスクリーニングするために、直接または間接的に利用されるものをいう。これには、軟骨の障害に関連して生体内での発現が変動する遺伝子またはタンパク質を特異的に認識し、また結合することのできる(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチドまたは抗体が包含される。これらの(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチドおよび抗体は、上記性質に基づいて、生体内で発現した上記遺伝子及びタンパク質を検出するためのプローブとして、また(オリゴ)ヌクレオチドは生体内で発現した上記遺伝子を増幅するためのプライマーとして有効に利用することができる。
【0020】
さらに本明細書において診断対象となる「関節/軟骨組織」とは、具体的には関節軟骨組織や関節滑膜組織のみならずこれら組織の周辺に存在する血液・滑液などを意味するものであり、特に言及しない限り、本明細書において「関節/軟骨組織」とは上記組織および血液・滑液などの総称として用いられる。
【0021】
本発明は、前述するように、5−HT7遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、PLTP 遺伝子、NPT3 遺伝子およびIREG1 遺伝子が、軟骨障害に罹患した動物の障害軟骨組織で、正常軟骨組織と比較して有意に発現上昇していることに基づくものである。また、EDG2遺伝子、SCN2A遺伝子、ABCG2 遺伝子、ENT1 遺伝子およびGAT1 遺伝子が、前記動物の障害軟骨組織で、正常軟骨組織と比較して有意に発現減少していることに基づくものである。尚、以下、上記遺伝子をまとめて本発明遺伝子ともいう。
従って、これらの遺伝子及びその発現産物〔タンパク質、(ポリ)(オリゴ)ペプチド〕は、軟骨障害の解明、診断、予防及び治療に有効に利用することができ、かかる利用によって医学並びに臨床学上、有用な情報や手段を得ることができる。また、これらの遺伝子及びその発現産物並びにそれらからの派生物(例えば、抗体など)は、上記軟骨障害の治療、並びに該治療に有効に用いられる薬剤の開発に好適に利用することができる。さらに、個体または関節/軟骨組織における、上記遺伝子の発現またはその発現産物の検出、または該遺伝子の変異またはその発現不全の検出は、軟骨障害の解明や診断に有効に利用することができる。
【0022】
以下、これらの本発明遺伝子、並びにその発現産物[5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1、以下まとめて本発明タンパク質ともいう]やそれらの派生物について、具体的な用途を説明する。
【0023】
(1)軟骨障害の疾患マーカー及びその応用
(1−1) ポリヌクレオチド
本発明の配列番号1に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の5−HT7遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_019859)、この取得方法についてもJ. Biol. Chem., 268 (31), 23422−23426 (1993)、および、J. Neurochem., 68 (4), 1372−1381 (1997) に記載されるように公知である。
【0024】
本発明の配列番号3に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来のEDG2遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_001401)、この取得方法についてもBiochem. Biophys. Res. Commun., 231(3), 619−622 (1997) に記載されるように公知である。
【0025】
本発明の配列番号5に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来のEDG1遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_001400)、この取得方法についてもJ. Biol. Chem., 265 (16), 9308−9313 (1990)に記載されるように公知である。
【0026】
本発明の配列番号7に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、ET(A)遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_001957)、この取得方法についてもProc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88 (8), 3185−3189 (1991) に記載されるように公知である。
【0027】
本発明の配列番号9に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、GPR88遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_022049)、この取得方法についてもGenomics, 69 (3), 314−321 (2000)に記載されるように公知である。
【0028】
本発明の配列番号11に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、PTH2R遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_005048)、この取得方法についてもJ. BIol. Chem., 270 (26), 15455−15458 (1995) に記載されるように公知である。
【0029】
本発明の配列番号13に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、VIP1R遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_004624)、この取得方法についてもBiochem. Biophys. Res. Commun., 193 (2), 546−553 (1993)に記載されるように公知である。
【0030】
本発明の配列番号15に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、CLIC2遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_001289)、この取得方法についてもGenomics, 45 (1), 224−228 (1997)に記載されるように公知である。
【0031】
本発明の配列番号17に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、SCN2A遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_21007)、この取得方法についてもProc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89 (17), 8220−8224 (1992)、および、Gene, 264 (1), 113−122, (2001) に記載されるように公知である。
【0032】
本発明の配列番号19に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、ATA1 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_030674)、この取得方法についてもBiochem. Biophys. Res. Commun. 273 (3), 1175−1179 (2000)に記載されるように公知である。
【0033】
本発明の配列番号21に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、ABCA1 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_005502)、この取得方法についてもGenomics 21 (1), 150−159 (1994)に記載されるように公知である。
【0034】
本発明の配列番号23に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、ABCG2 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_004827)、この取得方法についてもCancer Res. 58 (23), 5337−5339 (1998)に記載されるように公知である。
【0035】
本発明の配列番号25に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、GAT1 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank X54673 )、この取得方法についてもFEBS Lett. 269 (1), 181−184 (1990)に記載されるように公知である。
【0036】
本発明の配列番号27に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、PLTP 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_006227)、この取得方法についてもJ. Biol. Chem. 269, 9388−9391 (1994)に記載されるように公知である。
【0037】
本発明の配列番号29に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、ENT1 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_004955)、この取得方法についてもNat. Med. 3 (1), 89−93 (1997)に記載されるように公知である。
【0038】
本発明の配列番号31に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、NPT3 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. U90544)、この取得方法についてもGenome Res. 7 (5), 441−456 (1997)に記載されるように公知である。
【0039】
本発明の配列番号33に示すポリヌクレオチドは、ヒト由来の、または、IREG1 遺伝子として公知の遺伝子であり(Genbank Accession No. NM_014585)、この取得方法についてもNature 403 (6771), 776−781 (2000)に記載されるように公知である。
【0040】
本発明は、前述するように、5−HT7遺伝子(Genbank Accession NM_019859)、EDG1遺伝子(Genbank Accession No. NM_001400)、ET(A)遺伝子(Genbank Accession No. NM_001957)、GPR88遺伝子(Genbank Accession No. NM_022049)、PTH2R遺伝子(Genbank Accession No. NM_005048)、VIP1R遺伝子(Genbank Accession No. NM_004624)、CLIC2遺伝子(Genbank Accession No. NM_001289)、ATA1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_030674)、ABCA1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_005502)、PLTP 遺伝子(Genbank Accession No. NM_006227)、NPT3 遺伝子(Genbank Accession No. U90544)、並びに、IREG1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_014585)が、軟骨障害に罹患した動物の障害軟骨組織において、正常軟骨組織と比較して有意に発現上昇しているという知見を発端に、これらの遺伝子発現の有無や発現の程度を検出することによって上記軟骨障害の罹患の有無や罹患の程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという発想に基づくものである。また、EDG2遺伝子(Genbank Accession No. NM_001401)、SCN2A遺伝子(Genbank Accession No. NM_21007)、ABCG2 遺伝子(Genbank Accession No. NM_004827)、ENT1 遺伝子(Genbank Accession No.NM_004955)、並びに、GAT1 遺伝子(Genbank Accession No. X54673 )が、軟骨障害に罹患した動物の障害軟骨組織において、正常軟骨組織と比較して有意に発現減少しているという知見を発端に、これらの遺伝子発現の有無や発現の程度を検出することによって上記軟骨障害の罹患の有無や罹患の程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという発想に基づくものである。すなわち、本発明は、被験者における上記遺伝子(あるいは遺伝子産物)の発現の有無またはその程度を検出することによって、被験者について軟骨障害の罹患の有無またはその程度を診断することのできるツールとして有用な疾患マーカーを提供するものである。
【0041】
また、上記ポリヌクレオチドは、後述の(3−1)項に記載するような軟骨障害病の予防、改善または治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A) 遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1遺伝子、ABCA1遺伝子、ABCG2遺伝子、GAT1遺伝子、PLTP遺伝子、ENT1遺伝子、NPT3遺伝子、または、IREG1遺伝子の発現変動を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
【0042】
かかる本発明の疾患マーカーは、配列番号1に記載の5−HT7遺伝子の塩基配列、配列番号3に記載のEDG2遺伝子の塩基配列、配列番号5に記載のEDG1遺伝子の塩基配列、配列番号7に記載のET(A)遺伝子の塩基配列、配列番号9に記載のGPR88遺伝子の塩基配列、配列番号11に記載のPTH2R遺伝子の塩基配列、配列番号13に記載のVIP1R遺伝子の塩基配列、配列番号15に記載のCLIC2遺伝子の塩基配列、配列番号17に記載のSCN2A 遺伝子の塩基配列、配列番号19に記載のATA1 遺伝子の塩基配列、配列番号21に記載の、ABCA1 遺伝子の塩基配列、配列番号23に記載の、ABCG2 遺伝子の塩基配列、配列番号25に記載のGAT1 遺伝子の塩基配列、配列番号27に記載のPLTP 遺伝子の塩基配列、配列番号29に記載のENT1 遺伝子の塩基配列、配列番号31に記載のNPT3 遺伝子の塩基配列、または、配列番号33に記載のIREG1 遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなることを特徴とするものである。
【0043】
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、または33に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの全長配列、または該塩基配列において少なくとも連続した15塩基長の塩基配列を有するその部分配列(ここでは便宜上、これらを「正鎖」ともいう)に対して、A:TおよびG:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味するものである。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補関係を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA) に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
【0044】
また、正鎖側のポリヌクレオチドには、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、または33に記載の塩基配列またはその部分配列を有するものだけでなく、上記相補鎖の塩基配列に対してさらに相補的な関係にある塩基配列からなる鎖を含めることができる。
【0045】
さらに上記正鎖のポリヌクレオチド及び相補鎖(逆鎖)のポリヌクレオチドは、各々一本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されても、また二本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されてもよい。
【0046】
本発明の軟骨障害の疾患マーカーは、具体的には5−HT7遺伝子の塩基配列に関する配列番号1、EDG2遺伝子の塩基配列に関する配列番号3、EDG1遺伝子の塩基配列に関する配列番号5、ET(A)遺伝子の塩基配列に関する配列番号7、GPR88遺伝子の塩基配列に関する配列番号9、PTH2R遺伝子の塩基配列に関する配列番号11、VIP1R遺伝子の塩基配列に関する配列番号13、CLIC2遺伝子の塩基配列に関する配列番号15、SCN2A 遺伝子の塩基配列に関する配列番号17、ATA1 遺伝子の塩基配列に関する配列番号19、ABCA1 遺伝子の塩基配列に関する配列番号21、ABCG2 遺伝子の塩基配列に関する配列番号23、GAT1 遺伝子の塩基配列に関する配列番号25、PLTP 遺伝子の塩基配列に関する配列番号27、ENT1 遺伝子の塩基配列に関する配列番号29、NPT3 遺伝子の塩基配列に関する配列番号31、または、IREG1 遺伝子の塩基配列に関する配列番号33に記載される塩基配列(全長配列)からなるポリヌクレオチドであってもよいし、その相補配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。また、前記各配列番号で示される本発明遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチドを選択的に(特異的に)認識するものであれば、上記全長配列またはその相補配列の部分配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。この場合、上記全長配列またはその相補配列の塩基配列から任意に選択される少なくとも15個の連続した塩基長を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0047】
なお、ここで「選択的に(特異的に)認識する」とは、例えばノーザンブロット法を用いた場合は、、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、IREG1 遺伝子、またはこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に生成されることを意味するが、それに限定されることなく、当業者が上記検出物または生成物がこれらの遺伝子に由来するものであると判断できるものであればよい。
【0048】
そのような本発明の疾患マーカーは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、31、または33で示される本発明遺伝子の塩基配列をもとに、例えばprimer 3( HYPERLINK http://www.genome.wi.mit.edu/cgi−bin/primer/primer3.cgi http://www.genome.wi.mit.edu/cgi−bin/primer/primer3.cgi)あるいはベクターNTI(Infomax社製)を利用して設計することができる。
【0049】
具体的には、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の塩基配列をprimer 3またはベクターNTIのソフトウエアにかけて得られる、プライマーまたはプローブの候補配列、若しくは少なくとも該配列を一部に含む配列をプライマーまたはプローブとして使用することができる。
【0050】
本発明で用いる疾患マーカーは、上述するように連続する少なくとも15塩基の長さを有するものであればよいが、具体的にはマーカーの用途に応じて、長さを適宜選択し設定することができる。
【0051】
本発明において軟骨障害の検出(診断)は、被験者の生体組織、特に関節/軟骨組織における、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の少なくとも1つの発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することによって行われる。この場合、上記本発明の疾患マーカーは、上記遺伝子の発現によって生じたRNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し増幅するためのプライマーとして、または該RNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するためのプローブとして利用することができる。
【0052】
上記疾患マーカーを軟骨障害の検出(遺伝子診断)においてプライマーとして用いる場合には、通常15bp〜100bp、好ましくは15bp〜50bp、より好ましくは15bp〜35bpの塩基長を有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp〜全配列の塩基数、好ましくは15bp〜1kb、より好ましくは100bp〜1kbの塩基長を有するものが例示できる。
【0053】
本発明の疾患マーカーは、ノーザンブロット法、RT−PCR法、in situハイブリダーゼーション法などといった、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマーまたはプローブとして利用することができ、これによって軟骨障害に関連する、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することができる。なお、測定対象試料としては、使用する検出方法の種類や目的に応じて、被験者の関節/軟骨組織、例えば関節軟骨組織や関節滑膜組織の一部をバイオプシ等で採取するか、若しくはこれらの組織周辺の血液・滑液を採取し、そこから常法に従って調製したtotal RNAを用いてもよいし、さらに該RNAをもとにして調製される各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。
【0054】
また、生体組織における本発明遺伝子の遺伝子発現レベルは、DNAチップを利用して検出あるいは定量することもできる。この場合、本発明の疾患マーカーは当該DNAチップのプローブとして使用することができる(例えば、Affymetrix社のGene Chip Human Genome U95 A,B,C,D,Eの場合、25bpの長さのポリヌクレオチドプローブとして用いられる)。本発明の疾患マーカーをプローブとするDNAチップは、生体組織から採取したRNAをもとに調製される標識DNAまたはRNAとハイブリダイズさせることにより、本発明の疾患マーカー(プローブ)と標識DNAまたはRNAとの複合体が形成されるので、該複合体を該標識DNAまたはRNAの標識を指標として検出することにより、生体組織中での本発明遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)が評価できる。
【0055】
本発明の疾患マーカーは、軟骨障害の診断や検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)に有用である。具体的には、該疾患マーカーを利用した軟骨障害の診断は、被験者の関節/軟骨組織と正常者の関節/軟骨組織における、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の遺伝子発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。この場合、遺伝子発現レベルの違いには、発現のある/なしの違いだけでなく、被験者の関節/軟骨組織と正常者の関節/軟骨組織の両者ともに発現がある場合でも、両者間の発現量の格差が1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上ある場合が含まれる。
すなわち、軟骨障害に罹患した動物の障害軟骨組織において、正常軟骨組織と比較して有意に発現上昇もしくは発現減少しているという知見を発端に、これらの遺伝子発現の有無や発現の程度を検出することによって上記軟骨障害の罹患の有無や罹患の程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという発想に基づくものである。
【0056】
具体的には、5−HT7遺伝子(Genbank Accession No. NM_019859)、EDG1遺伝子(Genbank Accession No. NM_001400)、ET(A)遺伝子(Genbank Accession No. NM_001957)、GPR88遺伝子(Genbank Accession No. NM_022049)、PTH2R遺伝子(Genbank Accession No. NM_005048)、VIP1R遺伝子(Genbank Accession No. NM_004624)、CLIC2遺伝子(Genbank Accession No. NM_001289)、ATA1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_030674)、ABCA1 遺伝子(Genbank Accession No.NM_005502)、PLTP 遺伝子(Genbank Accession No. NM_006227)、NPT3 遺伝子(Genbank Accession No. U90544)、並びに、IREG1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_014585)は、軟骨障害で発現誘導(増大)を示すので、被験者の関節/軟骨組織で特異的に発現しているか、あるいは該発現量が正常な関節/軟骨組織の発現量と比べて1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上多ければ、被験者について軟骨障害の罹患が疑われる。
また、EDG2遺伝子(Genbank Accession No. NM_001401)、SCN2A遺伝子(Genbank Accession No. NM_21007)、ABCG2 遺伝子(Genbank Accession No. NM_004827)、ENT1 遺伝子(Genbank Accession No. NM_004955)、並びに、GAT1 遺伝子(Genbank Accession No. X54673 )は、軟骨障害で発現抑制(減少)を示すので、被験者の関節/軟骨組織で特異的に発現しているか、あるいは該発現量が正常な関節/軟骨組織の発現量と比べて0.7倍以下、好ましくは1/2倍以下、より好ましくは1/3倍以下であれば、被験者について軟骨障害の罹患が疑われる。
【0057】
とりわけ、配列番号:1の塩基配列を有する5−HT7遺伝子、および配列番号:5の塩基配列を有するEDG1遺伝子、配列番号:9の塩基配列を有するGPR88遺伝子、配列番号:27の塩基配列を有するPLTP 遺伝子、配列番号:33の塩基配列を有するIREG1 遺伝子は、疾患モデル動物の障害軟骨を含む膝関節組織で、正常な膝関節組織に比べて3倍以上の発現増大を示していた。従って、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:9、配列番号27、若しくは配列番号33の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチド/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが特に有効である。
また、配列番号:25の塩基配列を有するGAT1 遺伝子は、疾患モデル動物の障害軟骨を含む膝関節組織で、正常な膝関節組織に比べて1/3以下の発現減少を示していた。従って、配列番号25の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチド/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが特に有効である。
【0058】
本発明において軟骨障害の検出(診断)は、被験者の生体組織、特に関節/軟骨組織における配列番号:1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,29,31,または33の塩基配列を有する本発明遺伝子の少なくとも1つの発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することによって行われる。検出(診断)の精度や正確性を高めるためには、上記本発明遺伝子のうちの2以上、好ましくは複数個の遺伝子、より好ましくは本発明遺伝子の半数以上の遺伝子について、その発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することが望ましい。
【0059】
(1−2)抗体
また本発明は、軟骨障害の疾患マーカーとして5−HT7遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「5−HT7」ともいう)、EDG2遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「EDG2」ともいう)、EDG1遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「EDG1」ともいう)、ET(A)遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「ET(A)」ともいう)、GPR88遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「GPR88」ともいう)、PTH2R遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「PTH2R」ともいう)、VIP1R遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「VIP1R」ともいう)、CLIC2遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「CLIC2」ともいう)、SCN2A遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「SCN2A」ともいう)、ATA1 遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「ATA1」ともいう)、ABCA1 遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「ABCA1」ともいう)、ABCG2 遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「ABCG2」ともいう)、GAT1 遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「GAT1」ともいう)、PLTP 遺伝子、の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「PLTP」ともいう)、ENT1 遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「ENT1」ともいう)、NPT3 遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「NPT3」ともいう)、または、IREG1遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「IREG1」ともいう)を特異的に認識することのできる抗体を提供する。
【0060】
5−HT7としては配列番号1に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、EDG2としては配列番号3に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、EDG1としては配列番号5に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、ET(A)としては配列番号7に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、GPR88としては配列番号9に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、PTH2Rとしては配列番号11に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、VIP1Rとしては配列番号13に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、CLIC2としては配列番号15に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、SCN2Aとしては配列番号17に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、ATA1としては配列番号19に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、ABCA1としては配列番号21に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、ABCG2としては配列番号23に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、GAT1としては配列番号25に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、PLTPとしては配列番号27に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、ENT1としては配列番号29に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、NPT3としては配列番号31に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、IREG1としては配列番号33に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を挙げることができる。
【0061】
なお、配列番号1に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号3に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号5に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号7に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号8で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号9に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号10で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号11に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号12で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号13に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号14で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号15に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号16で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号17に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号18で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号19に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号20で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号21に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号22で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号23に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号24で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号25に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号26で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号27に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号28で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号29に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号30で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号31に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号32で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、また配列番号33に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的態様としては配列番号34で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を例示することができる。
【0062】
なお、ここで配列番号2に示すタンパク質は、ヒト由来の5−HT7遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(J. Biol. Chem., 268 (31), 23422−23426 (1993)、および、J. Neurochem., 68 (4), 1372−1381 (1997)) に記載されるように公知である。
【0063】
また配列番号4に示すタンパク質は、ヒト由来のEDG2遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Biochem. Biophys.Res. Commun., 231(3), 619−622 (1997))に記載されるように公知である。
【0064】
また配列番号6に示すタンパク質は、ヒト由来のEDG1遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(J. Biol. Chem., 265 (16), 9308−9313 (1990))に記載されるように公知である。
【0065】
また配列番号8に示すタンパク質は、ヒト由来のET(A)遺伝子
によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88 (8), 3185−3189 (1991))に記載されるように公知である。
【0066】
また配列番号10に示すタンパク質は、ヒト由来のGPR88遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Genomics, 69 (3), 314−321 (2000))に記載されるように公知である。
【0067】
また配列番号12に示すタンパク質は、ヒト由来のPTH2R遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(J. Biol. Chem.,270 (26), 15455−15458 (1995))に記載されるように公知である。
【0068】
また配列番号14に示すタンパク質は、ヒト由来のVIP1R遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Biochem. Biophys. Res. Commun., 193 (2), 546−553 (1993))に記載されるように公知である。
【0069】
また配列番号16に示すタンパク質は、ヒト由来のCLIC2遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Genomics, 45 (1), 224−228 (1997))に記載されるように公知である。
【0070】
また配列番号18に示すタンパク質は、ヒト由来のSCN2A 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89 (17), 8220−8224 (1992)、および、Gene, 264 (1), 113−122, (2001))に記載されるように公知である。
【0071】
また配列番号20に示すタンパク質は、ヒト由来のATA1 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(J. Biol. Chem. 276, 24137−24144 (2001))に記載されるように公知である。
【0072】
また配列番号22に示すタンパク質は、ヒト由来のABCA1 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Biochem. Biophys. Res. Commun. 257 (1), 29−33 (1999))に記載されるように公知である。
【0073】
また配列番号24に示すタンパク質は、ヒト由来のABCG2 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Br. J. Cancer. 71, 52−58 (1995))に記載されるように公知である。
【0074】
また配列番号26に示すタンパク質は、ヒト由来のGAT1 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(J. Biol. Chem. 267, 21098−21104 (1992))に記載されるように公知である。
【0075】
また配列番号28に示すタンパク質は、ヒト由来のPLTP 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(J. Biol. Chem. 269, 9388−9391 (1994))に記載されるように公知である。
【0076】
また配列番号30に示すタンパク質は、ヒト由来のENT1 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Nat. Med. 3 (1), 89−93 (1997))に記載されるように公知である。
【0077】
また配列番号32に示すタンパク質は、ヒト由来のNPT3 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Biochem. J. 305, 81−85 (1995))に記載されるように公知である。
【0078】
また配列番号34に示すタンパク質は、ヒト由来のIREG1 遺伝子によってコードされる公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Mol. Cell 5 (2), 299−309 (2000))に記載されるように公知である。
【0079】
本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、前記本発明タンパク質を免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよく、さらには当該本発明タンパク質を構成するアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も、本発明の抗体に含まれる。
【0080】
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.12〜11.13)。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を用いて、あるいは常法に従って当該いずれかの本発明タンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1、あるいはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987)Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
【0081】
また、抗体の作製に使用されるタンパク質は、本発明により提供される遺伝子の配列情報(配列番号1,3,5,7,9,11,13,15,17, 19,21,23,25,27,29,31,または33)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養および培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNACloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。具体的には5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1をコードする遺伝子が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作成し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的タンパク質を回収することによって実施することができる。また、これら5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1は、本発明により提供されるアミノ酸配列の情報(配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18, 20,22,24,26,28,30,32,または34)に従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。具体的には、「ペプチド合成の基礎と実験」(泉屋信夫ら著、丸善、1987年発行)に記載された液相合成法や固相合成法を用いることができる。
【0082】
なお、本発明の5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1には、配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,または34に示すタンパク質のみならず、その相同物も包含される。該相同物としては、上記配列番号で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ上記配列番号で示されるタンパク質の機能と同等の生物学的機能を有するか、及び/または免疫学的活性において同等の活性を有するタンパク質を挙げることができる。
【0083】
なお、ここで配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,または34で示されるタンパク質の機能と同等の生物学的機能を有するタンパク質としては、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1と生化学的または薬理学的機能において同等の機能を有するタンパク質を挙げることができ、また上記タンパク質と免疫学的活性において同等の活性を有するタンパク質としては、適当な動物あるいはその細胞において特定の免疫反応を誘発し、かつ5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1に対する抗体と特異的に結合する能力を有するタンパク質を挙げることができる。
【0084】
なお、タンパク質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、その生物学的機能及び/または免疫学的活性が保持される限り制限はない。生物学的機能や免疫学的活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個置換、挿入あるいは欠失されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内である。また置換されるアミノ酸は、置換後に得られるタンパク質が5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の生物学的機能及び/または免疫学的活性を保持している限り、特に制限されないが、タンパク質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
【0085】
また本発明の抗体は、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを用いて調製されるものであってよい。かかる抗体誘導のために用いられるオリゴペプチドは、機能的な生物活性を有することは要しないが、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1のアミノ酸配列において少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドを例示することができる。
【0086】
かかるポリペプチドに対する抗体の生成は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム−パルヴムなどのヒトアジュバントなどがある。
【0087】
本発明の抗体は5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1に特異的に結合する性質を有することから、該抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現した上記本発明タンパク質を特異的に検出することができる。すなわち、当該抗体は被験者の組織内における5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1のタンパク発現の有無を検出するためのプローブとして有用である。
【0088】
具体的には、患者の関節/軟骨組織、例えば関節軟骨組織や関節滑膜組織の一部をバイオプシ等で採取するか、若しくはこれらの組織周辺の血液・滑液を採取し、そこから常法に従ってタンパク質画分を調製して、例えばウェスタンブロット法、ELISA法など公知の検出方法において、上記抗体を常法に従ってプローブとして使用することによって5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を検出することができる。
【0089】
軟骨障害の診断に際しては、被験者の関節/軟骨組織における5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、およびIREG1のいずれか少なくとも1つと正常な関節/軟骨組織におけるこれらのタンパク質との量の違いを判定すればよい。この場合、タンパク質量の違いには、タンパクのある/なし、あるいはタンパク量の違いが1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上ある場合が含まれる。具体的には、5−HT7遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、PLTP 遺伝子、NPT3 遺伝子、および/または、IREG1 遺伝子が存在しており、該量が正常な関節/軟骨組織の発現産物量と比べて1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上多いことが判定されれば、被験者について軟骨障害の罹患が疑われる。
また、EDG2遺伝子、SCN2A遺伝子、ABCG2 遺伝子、ENT1 遺伝子、および/または、GAT1 遺伝子が存在しており、該量が正常な関節/軟骨組織の発現産物量と比べて0.7倍以下、好ましくは1/2倍以下、より好ましくは1/3倍以下であることが判定されれば、被験者について軟骨障害の罹患が疑われる。
【0090】
とりわけ、配列番号:1の塩基配列を有する5−HT7遺伝子、配列番号:5の塩基配列を有するEDG1遺伝子、配列番号:9の塩基配列を有するGPR88遺伝子、配列番号:27の塩基配列を有するPLTP 遺伝子、および配列番号:33の塩基配列を有するIREG1 遺伝子は、疾患モデル動物の障害軟骨を含む膝関節組織で、正常な膝関節組織に比べて3倍以上の発現増大を示していた。このため、配列番号:1、5、9、27、もしくは33に示される塩基配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質、具体的には、例えば配列番号:2のアミノ酸配列を有する5−HT7、配列番号:6のアミノ酸配列を有するEDG1、配列番号:10のアミノ酸配列を有するGPR88、配列番号:28のアミノ酸配列を有するPLTP、もしくは配列番号:34のアミノ酸配列を有するIREG1を特異的に認識する抗体を有する疾患マーカーが、軟骨障害の検出(診断)に有用である。
また、配列番号:25の塩基配列を有するGAT1 遺伝子は、疾患モデル動物の障害軟骨を含む膝関節組織で、正常な膝関節組織に比べて1/3以下の発現減少を示していた。このため、配列番号:25に示される延期配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質、具体的には、例えば配列番号26のアミノ酸配列を有するGAT1を特異的に認識する抗体を有する疾患マーカーが、軟骨障害の検出(診断)に有用である。
【0091】
(2)軟骨障害の検出方法(診断方法)
本発明は、前述する本発明の軟骨障害の疾患マーカーを利用した軟骨障害の診断方法を提供するものである。
【0092】
具体的には、本発明の診断方法は、被験者の関節/軟骨組織、例えば関節軟骨組織や関節滑膜組織の一部をバイオプシ等で採取するか、若しくはこれらの組織周辺の血液・滑液を採取し、そこに含まれる軟骨障害に関連する5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の遺伝子発現レベル、あるいはこれらの遺伝子に由来するタンパク質(5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、IREG1)を検出し、その発現量またはそのタンパク質量を測定することにより、軟骨障害の罹患の有無またはその程度を診断するものである。
【0093】
本発明の診断方法は次の(a)、(b)及び(c)の工程を含むものである:
(a) 被験者の生体試料と本発明の疾患マーカーを接触させる工程、
(b) 生体試料中の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の遺伝子発現レベル、または5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1のタンパク質の量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c) (b)の結果をもとに、軟骨障害の罹患を判断する工程。
【0094】
ここで用いられる生体試料は、被験者の関節/軟骨組織(例えば関節軟骨組織や関節滑膜組織、あるいはこれら組織の周辺に存在する血液・滑液)、該組織から調製されるRNA若しくはそれからさらに調製されるポリヌクレオチド、または上記組織から調製されるタンパク質である。かかるRNA、ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、被験者の関節軟骨組織や関節滑膜組織の一部をバイオプシ等で採取するか、若しくはこれらの組織周辺の血液・滑液を採取し、そこから常法に従って調製することができる。
【0095】
本発明の診断方法は、測定対象として用いる生体試料の種類に応じて、具体的には下記のようにして実施される。
【0096】
(2−1) 測定対象の生体試料としてRNAを利用する場合
診断に用いる生体試料としてRNAを利用する場合は、本発明の検出方法(診断方法)は該RNA中の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現レベルを検出し、測定することによって実施される。
【0097】
この場合、本発明の検出方法は次の(a)、(b)及び(c)の工程を含む:
(a)被験者の生体試料と本発明の疾患マーカーとを接触させる工程、
(b)上記工程によって本発明の疾患マーカーに特異的に結合した、生体試料由来のRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、及び
(c)(b)の測定結果をもとに、軟骨障害の罹患を判断する工程。
本発明の軟骨障害の検出方法(診断方法)は、特に測定対象の生体試料としてRNAを利用して、該RNA中の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はその相補的なポリヌクレオチドをプライマーまたはプローブとして用いて、ノーザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法を行うことにより実施できる。
【0098】
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプローブとして用いることによって、RNA中の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、本発明の疾患マーカー(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、形成された疾患マーカー(DNAまたはRNA)とRNAとの二重鎖を、疾患マーカーの標識物(RI若しくは蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS−1800II、富士フィルム社製)または蛍光検出器で検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System (Amersham PharamciaBiotech社製)を用いて、該プロトコールに従って疾患マーカー(プローブDNA)を標識し、被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、疾患マーカーの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で検出、測定する方法を使用することもできる。
【0099】
RT−PCR法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプライマーとして用いることによって、RNA中の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の疾患マーカーから調製した一対のプライマー(上記cDNA(−鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせて、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、増幅された二本鎖DNAの検出は、上記PCRを予めRIや蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した疾患マーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT−PCR Reagents (Applied Biosystems 社製)で該プロトコールに従ってRT−PCR反応液を調製し、ABI PRIME 7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems 社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
【0100】
また、DNAチップ解析を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをDNAプローブ(1本鎖または2本鎖)として貼り付けたDNAチップを用意し、これに被験者の生体組織由来のRNAから常法によって調製されたcRNAとハイブリダイズさせて、形成されたDNAとcRNAとの二本鎖を、本発明の疾患マーカーから調製される標識プローブと結合させて検出する方法を挙げることができる。また、上記DNAチップとして、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の遺伝子発現レベルの検出、測定が可能なDNAチップを用いることもできる。かかる遺伝子の発現レベルを検出、測定することができるDNAチップとしては、Affymetrix社のGene Chip Human GenomeU95 A, B,C, D, Eを挙げることができる。かかるDNAチップを用いた、被験者RNA中の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の遺伝子発現レベルの検出、測定については、実施例において詳細に説明する。
【0101】
(2−2) 測定対象物としてタンパク質を用いる場合
測定対象物としてタンパク質を用いる場合は、本発明の検出方法(診断方法)は生体試料中の5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1を検出し、その量を測定することによって実施される。具体的には、抗体に関する本発明の疾患マーカー(配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32または34で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質を認識する抗体)を用いてウエスタンブロット法などの公知方法で、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1を検出、定量する方法を挙げることができる。ウエスタンブロット法は、一次抗体として本発明の上記疾患マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素や蛍光物質で標識した一次抗体に結合する抗体を用いて、測定対象タンパク質を標識し、該放射性同位元素若しくは蛍光物質由来のシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)若しくは蛍光検出器で検出し、測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明の上記疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detection System(Amersham Pharmacia Biotech 社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech 社製)で測定することもできる。
【0102】
軟骨障害の診断は、被験者の関節/軟骨組織、例えば関節軟骨組織や関節滑膜組織、あるいはこれらの組織周辺に存在する血液・滑液における5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の量を正常な前記組織の当該遺伝子発現レベルまたは当該タンパク質の量と比較し、両者の違いを判定することによって行うことができる。
【0103】
この場合、正常な関節/軟骨組織から採取調製した生体試料(RNAまたはタンパク質)が必要であるが、これらは軟骨障害に罹患していない人の関節/軟骨組織、例えば関節軟骨組織や関節滑膜組織の一部をバイオプシ等で採取するか、若しくはこれら組織周辺の血液・滑液を採取することによって取得することができる。なお、ここでいう「軟骨障害に罹患していない人」とは、少なくとも軟骨障害の自覚症状がなく、好ましくは他の検査方法、例えばX線フィルム撮影による診断の結果、軟骨障害でないと診断された人をいう。なお、当該「軟骨障害に罹患していない人」を以下、本明細書では単に正常者という場合もある。
【0104】
被験者の関節/軟骨組織と正常な関節/軟骨組織(軟骨障害に罹患していない人の関節/軟骨組織)との遺伝子発現レベルまたはタンパク質の量の比較は、被験者の生体試料と正常者の生体試料を対象とした測定を並行して行うことで実施できる。並行して行なわない場合は、複数(少なくとも2つ、好ましくは3以上、より好ましくは5以上)の正常な関節/軟骨組織を用いて均一な測定条件で測定して得られた5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の量の平均値または統計的中間値を、正常者の遺伝子発現レベル若しくはタンパク質の量として、比較に用いることができる。
【0105】
被験者が、軟骨障害であるかどうかの判断は、該被験者の関節/軟骨組織における前記本発明遺伝子の遺伝子発現レベル、またはその発現産物である本発明タンパク質の量の格差が、正常者のそれらと比較して1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上であることを指標として行うことができる。また、被験者の上記遺伝子発現レベルまたはタンパク質の量の格差が、いかなる正常者のそれらのレベルまたは量に比べて大きければ、軟骨障害であると判断することができる。
【0106】
なお、上記方法のうち、(2−1)測定対象の生体試料としてRNAを利用して軟骨障害を検出(診断)する場合、すなわち遺伝子の発現の有無または遺伝子発現レベル(発現量)から軟骨障害を検出(診断)する場合は、検出(診断)の精度や正確性を高めるために、本発明遺伝子のうち2以上、好ましくは複数個の遺伝子、より好ましくは本発明遺伝子の半数以上の遺伝子について、発現の有無または発現のレベル(発現量)を評価し、その結果から軟骨障害を検出(診断)することが望ましい。複数個の遺伝子について評価する場合には、個々の遺伝子での評価をスコア化し、総合的に軟骨障害を診断することが可能である。なお、この場合、評価する遺伝子数、スコアあるいは診断基準は限定されない。
【0107】
(3)候補薬のスクリーニング方法
(3−1) 遺伝子発現レベルを指標とするスクリーニング方法
本発明は、配列番号1に記載の塩基配列を有する5−HT7遺伝子、配列番号3に記載の塩基配列を有するEDG2遺伝子、配列番号5に記載の塩基配列を有するEDG1遺伝子、配列番号7に記載の塩基配列を有するET(A)遺伝子、配列番号9に記載の塩基配列を有するGPR88遺伝子、配列番号11に記載の塩基配列を有するPTH2R遺伝子、配列番号13に記載の塩基配列を有するVIP1R遺伝子、配列番号15に記載の塩基配列を有するCLIC2遺伝子、配列番号17に記載の塩基配列を有するSCN2A遺伝子、配列番号19に記載の塩基配列を有するATA1 遺伝子、配列番号21に記載の塩基配列を有するABCA1 遺伝子、配列番号23に記載の塩基配列を有するABCG2 遺伝子、配列番号25に記載の塩基配列を有するGAT1 遺伝子、配列番号27に記載の塩基配列を有するPLTP 遺伝子、配列番号29に記載の塩基配列を有するENT1 遺伝子、配列番号31に記載の塩基配列を有するNPT3 遺伝子、または配列番号33に記載の塩基配列を有するIREG1 遺伝子の発現を制御する物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0108】
本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a) 被験物質と5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記の比較結果に基づいて、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の遺伝子発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
【0109】
かかるスクリーニングに用いられる細胞としては、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子を発現する細胞であって、かつ軟骨細胞への分化が可能である、未分化間葉系細胞または初代培養軟骨細胞を挙げることができる。軟骨細胞への分化が可能な未分化間葉系細胞としては、具体的には、マウスATDC5細胞(RIKEN Cell Bank; HYPERLINK http://www.rtc.riken.go.jp/CELL/HTML/RIKEN Cell Bank. Htmlから入手可能)などを挙げることができる。なお、マウスATDC5細胞は、分化誘導物質であるインスリンの添加で軟骨細胞に分化することが知られている細胞である(J Cell Biol 133:457−468, 1996)。
【0110】
また、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子を発現する細胞であって、かつ力学的ストレスに応答可能である、初代培養軟骨細胞、軟骨細胞様細胞株または滑膜細胞様細胞株も挙げることができる。力学的ストレスに応答することが知られている細胞としては、具体的には初代培養軟骨細胞、ウサギ滑膜様細胞株HIG−82(ATCCカタログ番号CRL−1832; HYPERLINK http://www.atcc.org/SearchCatalogs/CellBiology.cfmより入手可能)、ヒト滑膜様細胞株MH7A(RIKEN Cell Bank; HYPERLINK ”http://www.rtc.riken.go.jp/CELL/HTML/RIKEN#Cell#Bank.html” から入手可能)、ヒト軟骨様細胞株HCS2/8などを挙げることができる。これらの細胞株は力学的負荷に応答して通常とは異なる細胞性質(サイトカイン・MMP産生能の亢進等)を示すことが報告されている(Journal of Bone & Mineral Research. 13(3):443−53, 1998, Bone 28:399−403, 2001, Hip Joint 23:235−239, 1997)。
【0111】
さらに、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子を発現する細胞であって、かつLPSや炎症性サイトカインによる処理を施した、初代培養軟骨細胞、軟骨細胞様細胞株又は滑膜細胞様細胞株も挙げることができる。これらの細胞株はLPSや炎症性サイトカイン(例えばIL−1、IL−6、TNF)で処理することにより障害を受け、より軟骨障害に近い状態になることが知られている(Ann.Rheum.Dis.,50,75−80,1991)。
【0112】
以上に挙げたような細胞の他、細胞の集合体である組織(例えば軟骨障害モデル動物由来の関節/軟骨組織など)も、本発明のスクリーニングに用いられる「細胞」の範疇に含まれる。
【0113】
候補物質となりえるものとしては、制限されないが、核酸(本発明遺伝子のアンチセンス核酸を含む)、ペプチド、タンパク質(本発明タンパク質に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物などであり、スクリーニングは、具体的にはこれらの候補物質となり得る被験物質を含む試料(被験試料)を上記組織/または細胞と接触させて行うことができる。かかる被験試料としては細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これに制限されない。
【0114】
また、スクリーニングに際して、被験物質と細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死なないように、その培養条件(温度、pH、培地組成など)を大きく変化させない条件を採用することが好ましい。
【0115】
実施例に示すように、軟骨障害に罹患した動物の障害関節(軟骨)組織には、特異的に5−HT7遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、PLTP 遺伝子、NPT3 遺伝子およびIREG1 遺伝子の発現が増大している。また、軟骨障害に罹患した動物の障害関節(軟骨)組織には、特異的にEDG2遺伝子、SCN2A遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子およびENT1 遺伝子の発現が減少している。この知見から、これら本発明の遺伝子の発現はは軟骨障害と関連していると考えられる。すなわち、本発明のスクリーニング方法は、上記の本発明遺伝子の発現またはその発現誘導が軟骨障害と関連していることを利用したものである。よって、該軟骨障害の緩和/抑制作用を有する(軟骨障害に対して改善/治療効果を発揮する)物質の探索には、上記5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現の有無や発現レベルの変動が指標とされる。すなわち、本発明のスクリーニング方法は、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現を制御する物質を探索することによって、軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
なお、ここで「遺伝子の発現を制御する」とは、「遺伝子の発現を抑制するように制御する」という意味と、「遺伝子の発現を亢進(誘導)するように制御する」という意味の2つの意味を含む。
【0116】
上記いずれかの遺伝子の発現を抑制(発現レベルの減少、発現誘導の抑制)するように制御する物質の探索は、具体的には5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現レベルが、被験物質を添加しない細胞のそのレベルに比して低くなること、またこれら本発明遺伝子の発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質(例えば、マウスATDC5細胞の場合はインスリン)によって誘導される発現が候補物質の存在によって抑制されること、すなわち発現誘導物質存在下で候補物質を接触させた細胞の遺伝子発現が、発現誘導物質存在下で候補物質を接触させない対照細胞(正のコントロール)に比して低くなることをもって、行うことができる。
中でも好適には、ET(A)遺伝子、またはGAT1 遺伝子の発現を抑制(発現レベルの減少、発現誘導の抑制)するように制御する物質の探索を挙げることができる。
すなわち本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むET(A)遺伝子の発現を抑制するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a)被験物質とET(A)遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞のET(A)遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞のET(A)遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、ET(A)遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【0117】
また本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むGAT1遺伝子の発現を抑制するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a)被験物質とGAT1 遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞のGAT1 遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞のGAT1 遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、GAT1 遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【0118】
また、上記いずれかの遺伝子の発現を亢進(発現レベルの増加、発現誘導の亢進)するように制御する物質の探索は、具体的には5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子が発現している細胞を用いる場合は、被験物質を添加した細胞における5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現レベルが、被験物質を添加しない細胞のそのレベルに比して高くなること、またこれら本発明遺伝子の発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質(例えば、マウスATDC5細胞の場合はインスリン)によって誘導される発現が候補物質の存在によって亢進されること、すなわち発現誘導物質存在下で候補物質を接触させた細胞の遺伝子発現が、発現誘導物質存在下で候補物質を接触させない対照細胞(正のコントロール)に比して高くなることをもって、行うことができる。
中でも好適には、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、またはVIP1R遺伝子の発現を上昇(発現レベルの増加、発現誘導の亢進)するように制御する物質の探索を挙げることができる。
【0119】
すなわち本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含む5−HT7遺伝子の発現を亢進するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a)被験物質と5−HT7遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞の5−HT7遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の5−HT7遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、5−HT7遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
【0120】
また本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むEDG2遺伝子の発現を亢進するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a)被験物質とEDG2遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞のEDG2遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞のEDG2遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、EDG2遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
【0121】
また本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むVIP1R遺伝子の発現を亢進するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a)被験物質とVIP1R遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞のVIP1R遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞のVIP1R遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、VIP1R遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
【0122】
軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質は、上記スクリーニング方法によって、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、およびIREG1 遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の発現変動を指標として選別される、上記遺伝子の発現制御物質に包含される。なお、ここでいう「発現制御物質」の中には、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子またはVIP1R遺伝子の発現亢進を指標として選別される上記遺伝子の発現亢進物質や、ET(A)遺伝子またはGAT1 遺伝子の発現抑制を指標として選別される上記遺伝子の発現抑制物質が含まれる(以下、同じ)。
【0123】
したがって、上記スクリーニング方法は、上記各遺伝子の発現制御物質の探索方法であると同時に、軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質の探索方法として位置付けることができる。
例えば、軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質としては、ET(A)遺伝子もしくはGAT1遺伝子の発現抑制物質、または5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子もしくはVIP1R遺伝子の発現亢進物質が挙げられる。
また、ET(A)遺伝子およびGAT1遺伝子の少なくとも1つの発現を抑制する物質、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子及びVIP1R遺伝子の少なくとも1つの発現を亢進する物質もまた、前記候補物質として挙げられる。
【0124】
5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の発現を制御する物質(発現制御物質)の選別(探索)または軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質の選別(探索)には、下記の方法を用いることもできる。
例えばATDC5細胞を用いる方法として、インスリンを添加したATDC5細胞(対照細胞)と、インスリンと被験物質とを同時に加えたATDC5細胞とで上記各本発明遺伝子の発現レベルを比較し、その発現レベルの変動(減少/上昇)を指標として発現制御物質または候補物質を選別する方法を挙げることができる。また、インスリンを添加して、既に本発明遺伝子が発現誘導/または発現抑制された状態のATDC5細胞に被験物質を添加し、被験物質を添加しない対照のATDC5細胞と本発明遺伝子の発現レベルを比較して、その発現レベルの低下/または上昇を指標として発現制御物質または候補物質を選別することもできる。この場合、軟骨細胞の分化亢進に起因する軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を選別することが可能となる。
【0125】
また、例えばラット初代培養関節軟骨細胞を用いて発現制御物質または候補物質をスクリーニングする方法の一つとしては、細胞伸展装置(フレクサーセルテンションシステム:米国FLEXCELL社、培養細胞伸展システム:大阪スカラテック社など)により力学的負荷をかけた初代培養関節軟骨細胞(対照細胞)と、力学的負荷と被験物質とを同時に加えた初代培養関節軟骨細胞とで上記本発明遺伝子の発現レベルを比較し、その発現レベルの減少/上昇を指標として発現制御物質または候補物質を選別する方法を挙げることができる。なお、上記遺伝子のうち5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子もしくはVIP1R遺伝子を対象とする場合は、発現レベルの増加(上昇)を指標として発現制御物質(発現上昇物質)または候補物質を選別することができる(以下において同じ)。また、上記遺伝子のうちET(A)遺伝子もしくはGAT1遺伝子を対象とする場合は、発現レベルの減少(低下)を指標として発現制御物質(発現抑制物質)または候補物質を選別することができる(以下において同じ)。
また、力学的負荷を加えて既に本発明遺伝子が発現誘導/または発現抑制された状態の初代培養関節軟骨細胞に被験物質を添加し、被験物質を添加しない対照の初代培養関節軟骨細胞と本発明遺伝子の発現レベルを比較して、その発現レベルの低下/または上昇を指標として発現制御物質または候補物質を選別することもできる。この場合、力学的負荷異常に起因する軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を選別することが可能となる。
【0126】
またラット初代培養関節軟骨細胞を用いて発現制御物質または候補物質をスクリーニングするもう一つの方法としては、IL−1若しくはTNFαを添加した初代培養関節軟骨細胞(対照細胞)と、IL−1若しくはTNFαと被験物質とを同時に加えた初代培養関節軟骨細胞とで上記各本発明遺伝子の発現レベルを比較し、その発現レベルの減少/上昇を指標として発現制御物質または候補物質を選別する方法を挙げることができる。また、IL−1若しくはTNFαを添加して、既に本発明遺伝子が発現誘導または発現抑制された状態の初代培養関節軟骨細胞に被験物質を添加し、被験物質を添加しない対照の初代培養関節軟骨細胞と本発明遺伝子の発現レベルを比較して、その発現レベルの低下または上昇を指標として発現制御物質または候補物質を選別することもできる。この場合、炎症反応に起因する軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を選別することが可能となる。
【0127】
このような本発明のスクリーニング方法における遺伝子の発現レベルの検出及び定量は、前記細胞から調製したRNA又は該RNAから転写された相補的なポリヌクレオチドと本発明の疾患マーカーとを用いて、前記(2−1)項に記述したように、ノーザンブロット法、RT−PCR法など公知の方法、あるいはDNAチップなどを利用する方法に従って実施できる。これら公知の方法については、前記本発明の診断方法に関する(2−1)の項を参照されたい。指標とする遺伝子発現の変動(低下(減少)/上昇)の程度は、被験物質(発現制御物質、候補物質)を添加した細胞における5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現が被験物質(発現制御物質、候補物質)を添加しない対照細胞での発現量と比較して10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上の変動(低下(減少)/上昇(増加))を例示することができる。
【0128】
また5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現レベルの検出及び定量は、これらの遺伝子の発現を制御する遺伝子領域(発現制御領域)に、例えばルシフェラーゼ遺伝子などのマーカー遺伝子をつないだ融合遺伝子を導入した細胞株を用いて、マーカー遺伝子由来のタンパク質の活性を測定することで実施することもできる。本発明の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現制御物質のスクリーニング方法には、かかるマーカー遺伝子の発現量を指標として標的物質を探索する方法も包含されるものであり、この意味において請求項7〜12のいずれかに記載する「5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子」の概念には、これら本発明遺伝子の発現制御領域とマーカー遺伝子との融合遺伝子が含まれる。
【0129】
なお、上記マーカー遺伝子としては、発光反応や呈色反応を触媒する酵素の構造遺伝子が好ましく、具体的には上記のルシフェラーゼ遺伝子のほか、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、及びエクオリン遺伝子などのレポーター遺伝子もまた使用することができる。ここで5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現制御領域としては、例えば該遺伝子の転写開始部位上流約1kb、好ましくは約2kbを用いることができる。なおET(A)遺伝子のプロモーター領域については文献(Biol. Chem., 267 (26): 18797−18804 (1992))において決定されており、またVIP1R遺伝子のプロモーター領域については文献(Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 92 (7), 2939−2943 (1995))において決定されており、またSCN2A遺伝子のプロモーター領域については文献(Brain Res. Mol. Brain Res., 81 (1−2), 187−190 (2000)、および、J. Mol. Neurosci., 11 (3), 179−182 (1998))において決定されているため、これらの文献に開示されたプロモーター領域を使用することができる。
【0130】
融合遺伝子の作成、およびマーカー遺伝子由来の活性測定は公知の方法で行うことができる。
本発明のスクリーニング方法は、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子のいずれか少なくとも1種の発現を制御(抑制・減少/または亢進・増加)させる物質を探索することによって、軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補化合物を提供するものである。
上記スクリーニング方法によって選別される発現制御物質の中から、さらに軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を選別する方法としては、従来公知である如何なる選別方法をも用いることができるが、代表的な方法として、例えばヒト軟骨様細胞株SW1353(ATCC)あるいはヒト滑膜細胞株SW982(ATCC)を用いて、軟骨破壊因子であるMMP(例えばMMP13)の産生量の変動を指標にして評価する方法を挙げることができる。
【0131】
具体的には下記の方法を例示することができる:
すなわち、10%の牛胎児血清(GIBCO BRL)を添加したDMEM(GIBCO BRL)で前記細胞を継代し、実験時、96ウエルプレートに2X105 cells/mlの細胞濃度で0.1 ml/wellずつまきこむ。終濃度10 ng/mlのHuman IL−1βを添加することで刺激を加え、同時に、被験物質(前記発現制御物質)を終濃度5 μg/mlの濃度で添加する。培養は24時間行い、上清を回収して−80℃に保存する。上清中のMMP13量は、MMP13アッセイシステム(アマシャムファルマシアバイオテク社)を用い、添付のプロトコールに従って培地を2倍希釈したものの濃度を測定する。被験物質に30%以上のMMP13産生抑制能が認められる場合は、軟骨障害治療薬としての効果がある可能性が高いと判断する。
また同様の実験を、IL−1βの代わりに他の炎症性サイトカイン(TNFα、IL−18等)を用いることによっても行うことができる。さらにMMPの代わりにPGE2産生量の変動を指標にすることによっても行うことができる。
【0132】
また、本発明のスクリーニング方法を実施する前に、上記に掲げる本発明の各遺伝子について、あらかじめ下記に説明する実験をすることにより、該遺伝子の発現を抑制する物質が軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分(候補物質)として有用なのか、また発現を誘導する物質が軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分(候補物質)として有用なのかを判断することができる。各々の遺伝子について、その発現を抑制する物質が候補物質として有用と判断された場合は、該遺伝子についての上記スクリーニング方法は、その発現の抑制を指標として実施することができ、逆にその発現を誘導する物質が候補物質として有用と判断された場合は、該遺伝子についての上記スクリーニング方法は、その発現の誘導を指標として実施することができる。
【0133】
かかる実験としては、例えば、ヒト滑膜細胞株SW982(ATCC)を用いて炎症性メデイエーターであるPGE2の産生量の変動を指標にする方法を挙げることができる。
具体的には、下記の実験においてPGE2の産生量が阻害される場合は、その遺伝子発現抑制物質を選別することによって、より高い精度で軟骨障害の改善薬または治療薬の候補物質を取得することが可能となる:
細胞は通常10%の牛胎児血清(GIBCO BRL)を添加したDMEM(GIBCO BRL)培地で培養する。実験時、1 X 105 cells/mlになるように培地で希釈し、12穴プレートに1 ml/wellの細胞を播きこむ。24時間培養の後、本発明遺伝子のアンチセンスオリゴDNAを遺伝子導入する。その後、培地交換とともに終濃度10 ng/mlのHuman IL−1βを添加することで刺激を加える。Human IL−1β 添加後24時間培養を行ったのち培養上清を回収し、Prostaglandin E2 EIAシステム(アマシャムファルマシアバイオテク社)を用いて培養上清中のPGE2量を測定する。本発明遺伝子のアンチセンスオリゴDNAの導入により当該PGE2の産生量が30%以上阻害される場合は、その遺伝子発現抑制物質が治療薬になる可能性が高いと考えられる。
また下記の実験においてPGE2の産生量が阻害される場合は、その遺伝子発現誘導(亢進)物質を選別することによって、より高い精度で軟骨障害の改善薬または治療薬の候補物質を取得することが可能となる:
哺乳動物細胞発現ベクター(ストラタジーン社pSG5等)を用い、本発明遺伝子の発現ベクターを作製し、これを対象とする上記の細胞に導入する。なお、導入は上記の方法と同様にして行うことができる。本発明遺伝子の導入により前記PGE2の産生量が30%以上阻害される場合は、その遺伝子発現誘導(亢進)物質が治療薬になる可能性が高いと考えられる。
【0134】
以上のスクリーニング方法により被験物質から選別される物質は、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子のいずれか少なくとも1種の発現制御剤として位置づけることができる。これらの物質が有する本発明遺伝子に対する発現制御作用は軟骨障害の抑制に深く関っているものと考えられる。よって、これらの物質は、軟骨障害を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補物質となりえる。
【0135】
(3−2) タンパク質の発現量を指標とするスクリーニング方法
本発明は、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現を制御する物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明スクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含む:(a)被験物質と5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を発現可能な細胞または該細胞から調製した細胞画分とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞または該細胞から調製した細胞画分における5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞または対照細胞画分における上記タンパク質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現を低下させる被験物質を選択する工程。
【0136】
本発明スクリーニング方法に用いられる細胞は、内在性および外来性を問わず、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を発現し、発現産物としての5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を有する培養細胞全般を挙げることができる。具体的には上記(3−1)項に記載された細胞を挙げることができる。
5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現は、遺伝子発現産物であるタンパク質を検出することにより、容易に確認することができる。細胞画分とは、上記細胞に由来する各種画分を意味し、これには、例えば、細胞膜画分、細胞質画分、細胞核画分などが含まれる。
本発明のスクリーニング方法には、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1のタンパク質の発現レベルを指標として、その発現量を制御する物質(発現レベルを正常レベルに戻す物質)を探索する方法が包含される。このスクリーニング方法によって、変形性関節症の緩和/抑制作用を有する(変形性関節症に対して改善/治療効果を発揮する)候補物質を提供することができる。
すなわち、本発明のスクリーニング方法は、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1のタンパク質発現量を変動させる物質を探索することによって、変形性関節症の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
なお、ここで「タンパク質発現量を制御(変動)する」とは、「タンパク質の発現量が減少するように制御する」という意味と、「タンパク質の発現量が増加するように制御する」という意味の2つの意味を含む。
【0137】
上記いずれかのタンパク質の発現を抑制(発現レベルの減少、発現誘導の抑制)するように制御する物質の探索は、具体的には5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1を発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1のタンパク質量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のタンパク質量(レベル)に比して低くなることを指標として、行うことができる。また、これらの本発明タンパク質の発現に、発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質(例えば、マウスATDC5細胞の場合はインスリン)によって誘導される発現が、候補物質の存在によって抑制されること、すなわち発現誘導物質存在下で候補物質を接触させた細胞の遺伝子発現が、発現誘導物質存在下で候補物質を接触させない対照細胞(正のコントロール)に比して低くなることをもって、行うことができる。
なかでも好適には、ET(A)またはGAT1の発現を抑制(タンパク質量の減少)するように制御する物質の探索を挙げることができる。
【0138】
また、上記いずれかのタンパク質の発現を亢進(発現レベルの増加、発現誘導の亢進)するように制御する候補物質の選別は、具体的には5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1を発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1の蛋白量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して高くなることを指標として、行うことができる。また、これらの本発明タンパク質の発現に、発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質(例えば、マウスATDC5細胞の場合はインスリン)によって誘導される発現が、候補物質の存在によって亢進されること、すなわち発現誘導物質存在下で候補物質を接触させた細胞の遺伝子発現が、発現誘導物質存在下で候補物質を接触させない対照細胞(正のコントロール)に比して高くなることをもって、行うことができる。
なかでも好適には、5−HT7、EDG2またはVIP1Rの発現を亢進(タンパク質量の増加)するように制御する物質の探索を挙げることができる。
【0139】
本発明のスクリーニング方法にかかる5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3およびIREG1のいずれかの発現量は、前述したように、例えば抗体に関する本発明疾患マーカー(例えばヒト5−HT7タンパク質またはそのホモログ、ヒトEDG2タンパク質またはそのホモログ、ヒトEDG1タンパク質またはそのホモログ、ヒトET(A)タンパク質またはそのホモログ、ヒトGPR88タンパク質またはそのホモログ、ヒトPTH2Rタンパク質またはそのホモログ、ヒトVIP1Rタンパク質またはそのホモログ、ヒトCLIC2タンパク質またはそのホモログ、ヒトSCN2Aタンパク質またはそのホモログ、ヒトATA1タンパク質またはそのホモログ、ヒトABCA1タンパク質またはそのホモログ、ヒトABCG2タンパク質またはそのホモログ、ヒトGAT1タンパク質またはそのホモログ、ヒトPLTPタンパク質またはそのホモログ、ヒトENT1タンパク質またはそのホモログ、ヒトNPT3タンパク質またはそのホモログ、およびヒトIREG1タンパク質またはそのホモログを認識する抗体)を用いたウェスタンブロット法等の公知方法に従って定量できる。ウェスタンブロット法は、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)等の酵素等で標識した一次抗体に結合する抗体を用いて標識し、これら標識物質由来のシグナルを放射線測定器(BAI−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detection System(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)を利用して該プロトコールに従って検出し、マルチバイオメージャーSTORM860(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
【0140】
候補物質となりえるものとしては、制限されないが、核酸(本発明遺伝子のアンチセンス核酸を含む)、ペプチド、タンパク質(本発明タンパク質に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物などであり、スクリーニングは、具体的にはこれらの候補物質となり得る被験物質を含む試料(被験試料)を上記組織/または細胞と接触させて行うことができる。かかる被験試料としては細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これに制限されない。
軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質は、上記スクリーニング方法によって得られる5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3またはIREG1の少なくとも1つのタンパク質の発現を制御する物質(発現制御物質)に包含される。
【0141】
(3−3) タンパク質の機能を指標とするスクリーニング方法
本発明は、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1の機能(活性)を制御する物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0142】
本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a) 5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1の機能(活性)を変動させる被験物質を選択する工程。
【0143】
かかるスクリーニングは、上記の本発明のタンパク質の少なくとも1つを含むものを対象として行うことができ、具体的には、本発明タンパク質の機能(活性)に応じて、水溶液、細胞またはその細胞画分のいずれかの形態のものを例示することができる。ここで水溶液とは、本発明タンパク質を含むものであればよく、特に制限されないが、例えば通常の水溶液の他、細胞溶解液、核抽出液あるいは培養上清なども含まれる。また細胞としては、内在性及び外来性などの由来に関わらず、本発明遺伝子を発現しており、本発明タンパク質を有する細胞を挙げることができる。また細胞画分とは、かかる細胞に由来する各種の画分を意味するものであり、例えば細胞膜画分、細胞質画分、および細胞核画分などを挙げることができる。
【0144】
実施例に示すように、本発明タンパク質である、5−HT7、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、ATA1、ABCA1、PLTP、NPT3、並びに、IREG1は、ラット十字靭帯切断モデルの障害軟骨において、正常軟骨と比較して発現上昇していた。
また、EDG2、SCN2A、ABCG2、ENT1、並びに、GAT1は、ラット十字靭帯切断モデルの障害軟骨において、正常軟骨と比較して発現減少していた。
これらの知見から、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子がコードするタンパク質は、軟骨障害の発生、進行または抑制などにおいて関連性があるものと考えられる。すなわち本発明のスクリーニング方法は、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子によりコードされるタンパク質が、軟骨障害と関連していることを利用したものである。よって、該軟骨障害の緩和/抑制作用を有する(軟骨障害に対して改善/治療効果を発揮する)物質の探索には、上記本発明タンパク質の機能または活性の変動(低下または抑制/上昇または亢進)が指標とされる。
【0145】
すなわち軟骨障害の緩和/抑制作用を有する(軟骨障害に対して改善/治療効果を発揮する)物質の探索には、まず上記に掲げる少なくとも1つの本発明タンパク質の機能または活性の変動(低下または抑制/上昇または亢進)を指標として、当該タンパク質の機能または活性を制御する物質(制御物質)を探索することが必要である。なお、ここでいう「タンパク質の機能または活性を制御する物質(制御物質)」の中には、「タンパク質の機能または活性を抑制するように制御する物質」と「タンパク質の機能または活性を亢進するように制御する物質」の2つが含まれる。本発明は、上記に掲げる少なくとも1つの本発明タンパク質の機能または活性を制御する物質(制御物質)をスクリーニングする方法を提供し、それによって得られた制御物質を軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質として提供するものである。
【0146】
本発明タンパク質の機能(活性)制御の1つの態様として、該タンパク質の機能(活性)を抑制(低下)させる方向に制御する物質の探索は、例えば5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A 、ATA1 、ABCA1 、ABCG2 、GAT1 、PLTP 、ENT1 、NPT3 、またはIREG1 を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分に被験物質を接触させた場合に得られる上記の少なくとも1つのタンパク質の機能(活性)が、被験物質を添加しない対照の水溶液、細胞または細胞画分の上記対応するタンパク質の機能(活性)に比して低くなることを指標として行うことができる。
【0147】
なかでも好適には、ET(A)またはGAT1の機能(活性)を抑制(低下)させる方向に制御する物質の探索を挙げることができる。すなわち本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むET(A)の機能または活性を抑制するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a) ET(A)を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のET(A)由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記ET(A)の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のET(A)の機能(活性)を低下させる被験物質を選択する工程。
【0148】
また、本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むGAT1の機能または活性を抑制するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a) GAT1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のGAT1由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記GAT1の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のGAT1の機能(活性)を低下させる被験物質を選択する工程。
【0149】
一方、本発明タンパク質の機能(活性)制御のもう1つの態様として、該タンパク質の機能(活性)を亢進(上昇、増加)させる方向に制御する物質の探索は、例えば5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分に被験物質を接触させた場合に得られる上記の少なくとも1つのタンパク質の機能(活性)が、被験物質を添加しない対照の水溶液、細胞または細胞画分の上記対応するタンパク質の機能(活性)に比して高くなることを指標として行うことができる。
【0150】
中でも好適には、5−HT7、EDG2またはVIP1Rの機能(活性)を亢進(上昇)させる方向に制御する物質の探索を挙げることができる。すなわち本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含む5−HT7の機能または活性を亢進するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a) 5−HT7を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記5−HT7の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7の機能(活性)を亢進させる被験物質を選択する工程。
【0151】
また、本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むEDG2の機能または活性を亢進するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a) EDG2を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のEDG2由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記EDG2の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のEDG2の機能(活性)を亢進させる被験物質を選択する工程。
【0152】
また、本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含むVIP1Rの機能または活性を亢進するように制御する物質のスクリーニング方法を包含するものである:
(a) VIP1Rを含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のVIP1R由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記VIP1Rの機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のVIP1Rの機能(活性)を上昇させる被験物質を選択する工程。
【0153】
軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質は、上記スクリーニング方法によって、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1の少なくとも1つのタンパク質の機能(活性)の変動を指標として選別される上記タンパク質の機能(活性)制御物質に包含される。なお、ここでいう「タンパク質の機能(活性)制御物質」の中には、ET(A)もしくはGAT1の少なくとも1つのタンパク質の機能(活性)の抑制を指標として選別される上記タンパク質の機能(活性)抑制物質、または5−HT7、EDG2もしくはVIP1Rの少なくとも1つのタンパク質の機能(活性)の亢進を指標として選別される上記タンパク質の機能(活性)亢進物質が含まれる(以下、同じ)。
したがって、上記スクリーニング方法は、上記各本発明タンパク質の制御物質の探索方法であると同時に、軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質の探索方法として位置付けることができる。
【0154】
ここで軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質となりえるものとしては、制限されないが、核酸(本発明遺伝子のアンチセンス核酸を含む)、ペプチド、タンパク質(本発明タンパク質に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物などであり、スクリーニングは、具体的にはこれらの候補物質となり得る被験物質を含む試料(被験試料)を上記水溶液、細胞またはその細胞画分と接触させて行うことができる。かかる被験試料としては細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これに制限されない。
【0155】
5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1の少なくとも1つの本発明タンパク質の機能(活性)を制御する物質(以下、単に「制御物質」ともいう)の選別(探索)、言い換えれば軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質(以下、単に「候補物質」ともいう)の選別(探索)には、以下の方法を用いることができる。
【0156】
I.本発明のタンパク質が受容体である場合
I−1. 受容体結合阻害活性の測定
本発明タンパク質がG蛋白共役型受容体(GPCR)である場合、すなわち本発明タンパク質が5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、またはVIP1Rである場合、被験物質が、本発明タンパク質(GPCR)と該タンパク質の既知のリガンドとの結合を阻害するか否かを測定することによって、候補物質を選別するスクリーニング方法が挙げられる。
該スクリーニング方法は、当業者の常識の範囲より適宜選択されるが、一例としては、(a)本発明タンパク質に標識リガンドを接触させた場合に、該タンパク質に結合する標識リガンド量と、(b)本発明タンパク質に標識リガンドおよび被験物質を接触させた場合に、該タンパク質に結合する標識リガンド量とを比較評価することを含むスクリーニング方法が挙げられる。
また、本発明タンパク質を発現する細胞膜画分をチップ上に固定し、該チップ上に被験物質溶液をロードして、表面プラズモン共鳴法により被験物質の膜への結合及び解離を測定し、結合及び解離の速度あるいは結合量から、被験物質と本発明タンパク質との親和性を算出する方法を用いることもできる。
ここで用いられる本発明タンパク質は、天然物であっても組み換え体であってもよい。また、ヒト型であることが好ましいが、マウス型などの他の種由来のものも利用できる。
本発明タンパク質は、Molecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等の基本書に従い、当業者にとって公知の方法で調製することができる。例えば、本発明タンパク質のcDNAをpCAGGS(Gene108, 193−199(1991))、pcDNA1.1、pcDNA3.1誘導体(インビトロジェン社)などの公知の発現ベクターに挿入する。その後、適当な宿主に導入し、培養することにより、導入した本発明タンパク質のDNAに対応するタンパク質を発現させた形質転換細胞を作製することができる。宿主としては、一般的に広く普及している、CHO細胞、C127細胞、BHK21細胞、COS細胞などを用いることができるが、これに限定されることなく、酵母、細菌、昆虫細胞などを用いることもできる。
本発明タンパク質のcDNAを有する発現ベクターの宿主細胞への導入方法としては、公知の発現ベクターの宿主細胞への導入方法であれば、どのような方法でもよく、例えばリン酸カルシウム法(J. Virol., 52, 456−467(1973))、LT−1(Panvera社製)を用いる方法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、Lipofectin;Gibco−BRL社製)を用いる方法などが挙げられる。
以上のようにして得られた本発明タンパク質を発現する形質転換細胞は、そのままスクリーニングに用いることができるが、細胞膜をスクリーニングに用いる場合は、例えば以下のようにして細胞膜画分を得ることができる。すなわちまず細胞に低張バッファーを添加し、細胞を低張破壊した後、ホモジナイズし、遠心分離することにより細胞膜画分の沈殿物を得る。そしてこの沈殿物をバッファーに懸濁することにより、本発明タンパク質である受容体を含有する細胞膜画分を得ることができる。得られた細胞膜画分は、抗体を結合させたカラム等により常法で精製することもできる。
上記スクリーニング方法には、本発明タンパク質を発現する細胞、または前記細胞の細胞膜画分を用いることもできる。該細胞は、天然の細胞であっても形質転換細胞であってもよい。
【0157】
上記のスクリーニング方法で用いられる標識リガンドは、本発明タンパク質のリガンドとして既知のものを適宜標識して用いることができる。
標識リガンドとしては、リガンドの任意の1または複数の原子を放射性同意元素で標識したリガンド、蛍光・ビオチン等で標識したリガンドなどが挙げられ、放射性同位体元素で標識したリガンドとしては、具体的には水素原子を3H(トリチウム)で標識する方法、炭素原子を14Cで標識する方法、または、硫黄原子を35Sで標識する方法が挙げられる。または、リガンドがベンゼン環を含む場合該ベンゼン環の任意の水素原子を、125Iで置換して標識することもできる。
具体的には、5−HT7の標識リガンドとしては[3H]5−HT (Amersham Biosciences社製等)または[3H]5−カルボキサミドトリプタミン([3H]5−CT;Amersham TRK.1038)を、EDG2の標識リガンドとしては1−Oleoyl[oleoyl−9,10−3H]−LPA(NEN−Dupont社製等)を、EDG1の標識リガンドとしては[3H]S−1−P (J Biol Chem 272:5291−97,1997)を、ET(A)の標識リガンドとしては[125I]Endothelin−1, [3H]BQ123(Amersham Biosciences社製等)を、PTH2Rの標識リガンドとしては[125I](Nle8,Nle18,Tyr34)PTH(1−34)amide(Amersham Biosciences社製等)を、VIP1Rの標識リガンドとしては[125I−Tyr10]VIP(Amersham Biosciences社製等)等を、それぞれ用いることができる。
また、ペプチド化合物の標識リガンドについては蛍光標識(Molecular Probes社製Alexa Protein Labeling Kits等)、ビオチン標識(Pierce社製EZ−Link Biotinylation Kits等)、化学発光色素標識(Assay Designs社製Chemiluminescence Labeling Kit等)を用いる非放射ラベル化が可能である。
【0158】
受容体結合阻害活性の測定は、具体的には、以下の手順で行うことができる。すなわち、本発明タンパク質(受容体)を含有する水溶液(通常緩衝液が用いられる。)、細胞膜画分、もしくは形質転換細胞に、10−3〜10−10Mの適当な濃度に調製した被験化合物溶液(通常溶媒には水もしくは緩衝液が用いられるが、溶解度に応じてエタノールやDMSOを添加することもできる。)を加えた後、標識リガンドを加え、室温で一定時間(通常、10分〜2時間)反応させる。
本発明タンパク質を含有する形質転換細胞もしくは細胞膜画分を用いる場合、遠心分離等により上清を単離して放射活性を測定し、上清中に含まれる標識リガンド量を計測することができる。あるいは、形質転換細胞もしくは細胞膜画分を含む沈殿物を界面活性剤、塩基を含む溶液に溶解し、その放射活性を測定し、沈殿物に含まれる標識リガンド量を計測することができる。
上記の数値を、被験化合物の代わりに溶媒をブランクとして用いて実施した場合の値と比較することにより、被験化合物が本発明タンパク質(受容体)と標識リガンドの結合を阻害するか否かを評価することができる。具体的な阻害率(%)については、以下の式:
{1−(被験物質を添加した場合に本発明タンパク質と結合した標識リガンド量)/(被験物質非添加時における本発明タンパク質と結合した標識リガンド量)}X100
で算出することによって求めることができる。
【0159】
尚、前記スクリーニング方法においては本発明タンパク質の機能を阻害する物質および亢進する物質が共に選択されるため、該物質が本発明タンパク質の機能を阻害するか亢進するかを決定するには、更に別のスクリーニング方法を実施することが望ましい。
【0160】
I−2. GTP との結合活性を測定する方法
本発明タンパク質がG蛋白共役型受容体(GPCR)である場合、該タンパク質の機能の測定は、G蛋白共役型受容体(GPCR)がGDP存在下でGTPアナログであるGTPγSと結合する性質を利用して行うことも出来る。すなわち、被験物質が、本発明タンパク質(GPCR)とGTPγSの結合を制御(阻害もしくは亢進)するか否かを調べることにより、被験物質が本発明タンパク質の機能を制御するか否かを評価することができる。すなわち、当業者に公知の方法を用いて、本発明タンパク質(GPCR)の発現ベクターを作製し、CHO−K1細胞・HEK293細胞等に過剰発現させ、培養する。ここで、必要に応じて、Gタンパク質の発現ベクターを共発現させることもできる。遠心分離等の操作により、細胞膜画分を調製する。これを、適当な緩衝液などの溶媒中で、被験物質とともに混合し、一定時間(例えば、30分〜2時間)インキュベートする。更に、[35S]−GTPγSを混合し、一定時間(例えば、30分〜2時間)インキュベートする。グラスフィルター上で、緩衝液で洗浄することにより結合反応を終了させた後、フィルター上の放射活性を測定することにより、本発明タンパク質(GPCR)とGタンパク質複合体に結合した[35S]−GTPγS量を算出することができる。被験物質存在下での結合量と、被験物質非存在下での結合量を比較することにより、被験物質を、本発明タンパク質(受容体)の活性を制御する候補物質として選別することができる。
【0161】
上記スクリーニング方法において、被験物質の存在下で放射活性(Gタンパク質複合体に結合した[35S]−GTPγS 量)が増加すれば、該被験物質はアゴニストであり、放射活性が減少すればインバースアゴニストである。
また、上記スクリーニング方法を、アゴニストリガンドの共存下に行うことにより、本発明タンパク質のアンタゴニストをスクリーニングすることができる。すなわち、アゴニストリガンドおよび被験物質の共存下で放射活性が被験物質非存在下における放射活性よりも小さければ被験物質はアンタゴニストである。
【0162】
あるいは、GαへのGTPアナログの結合を表面プラズモン共鳴法等を用いてモニタリングすることによってもスクリーニングが可能である。
【0163】
上記の方法で、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、PTH2R、およびVIP1Rの機能を制御する候補物質のスクリーニングを実施することができる。
尚、アゴニストリガンドが不明であるGPR88については、GPR88およびGタンパク質の融合タンパク質を用いる方法等を用いることにより、より効率的にアゴニストリガンド非存在下で上記のスクリーニングを実施することができる。これについては、本明細書実施例、および Methods in Enzymology. 343:260−73,2002, J Biol Chem, 276: 35883−90,2001 に記載された方法に従って実施することができる。
【0164】
I−3. 受容体の生理活性の測定
本発明タンパク質がG蛋白共役型受容体(GPCR)である場合、該タンパク質にアゴニストリガンドが結合することによって生ずる生理活性を指標として、該タンパク質の機能を制御する候補物質を選別することもできる。すなわち、(a)本発明タンパク質にアゴニストリガンドを接触させた場合における、本発明タンパク質(受容体)を介した前記生理活性と、(b)本発明タンパク質(受容体)にアゴニストリガンドおよび被験化合物を接触させた場合に生ずる生理活性とを比較評価することを含むスクリーニング方法が挙げられる。該方法により、アンタゴニスト作用を有する被験物質を選別することができる。
また、(c)本発明タンパク質に被験物質を接触させた場合における、本発明タンパク質(受容体)を介した生理活性と、(d)本発明タンパク質に溶媒などのブランクを接触させた場合における生理活性とを比較評価することにより、被験物質がアゴニスト作用又はインバースアゴニスト作用を有するか否かを評価することができる。
該生理活性としては、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、イノシトールリン酸産生(ホスホリパーゼCβ活性)、TPA(12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート)応答エレメント(TRE)のレポータージーンアッセイ、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fos活性化、アデニル酸シクラーゼ活性、cAMP応答性エレメントのレポータージーンアッセイ、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、細胞膜電位変動、またはpHの低下等を促進もしくは抑制する等の活性が挙げられる。
該生理活性は、公知の方法、または市販の測定用キットを用いて測定することができる。すなわち、本発明タンパク質(GPCR)を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。新鮮な培地、あるいは細胞毒性を示さない適当なバッファーに交換し、被験化合物、および/またはアゴニストリガンド等を添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出、あるいは上清液を回収して生成した産物をそれぞれ該当する方法に従って定量する。生理活性の指標とする物質(例えばアラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって測定不能な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を併用することもできる。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の産生量を増大させて、感度良く測定することもできる。
【0165】
具体的には、以下の方法が挙げられる。
(1)Fluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いる方法
1)本発明タンパク質遺伝子の発現ベクターと、Gq蛋白、Gqs5蛋白(Gqs5とは、C末端に、Gs蛋白のC末端アミノ酸5残基を置換したGq蛋白を意味する。)もしくはGqi5蛋白(Gqi5とは、C末端に、Gi蛋白のC末端アミノ酸5残基を置換したGq蛋白を意味する。)の発現ベクターを作製する。ここで、細胞株としては、CHO−K1細胞等を用いることができ、上記発現ベクターを遺伝子導入試薬Lipofectoamine(Invitrogen社)等を用いて共導入することができる。
2)次に該細胞を、probenecid(色素を細胞内に保持するために、multiple drug−resistance pumpの阻害剤として用いる。)、およびFluo−3 AM(Molecular Probe社)等のCa2+によって蛍光活性を示す色素を含むF12培養培地中で、CO2インキュベーターにて一定時間(例えば30分〜2時間)培養する。
3)アゴニストリガンドをprobenecidを含むHBSS等の培養培地に溶解した溶液を添加し、2分後までFLIPRにて計測する。検出は、488nmのアルゴンレーザーで細胞を励起し、カルシウムイオンが結合したFluo−3の蛍光を500−560nmの波長でとらえることによって行う。アゴニストリガンド添加直後から60秒後までの蛍光強度から、添加前の値をバックグラウンドとして差し引いた値を活性とする。被験物質を添加する場合はアゴニストリガンドを添加する前に添加し、その後アゴニストリガンドを添加する。
4)被験物質の存在下における本発明タンパク質の生理活性と、被験物質非存在下における該生理活性の差異を求めることにより、差異の大きい被験物質を、本発明タンパク質の生理活性を抑制もしくは亢進する候補物質として選別することができる。すなわち、被験物質及びアゴニストリガンドの共存下における蛍光強度が、被験物質非存在下におけるアゴニストリガンドの蛍光強度よりも小さければ、該被験物質はアンタゴニストである。
また、上記3)においてアゴニストリガンドの代わりに被験物質を添加してアッセイを行うことにより、アゴニスト活性もしくはインバースアゴニスト活性を有する化合物をスクリーニングすることができる。すなわち、被験物質存在下における蛍光強度が被験物質非存在下における蛍光強度よりも大きければ被験物質はアゴニストであり、被験物質存在下における蛍光強度が被験物質非存在下における蛍光強度よりも小さければ被験物質はインバースアゴニストである。 ここで、本発明タンパク質がアゴニスト不明であるGPR88である場合、前記1)〜4)の工程を実施するにあたって、3)の工程においてアゴニストのかわりに被験物質を用いることにより、被験物質が本発明タンパク質のアゴニスト活性を有するか否かを調べることができる。
更に、アゴニストリガンド非存在下に本発明のタンパク質(受容体)を活性化させるためにGPR88およびGタンパク質を融合タンパク質として発現させる方法を用いることができる。すなわち、前記1)〜4)の工程を実施するにあたって、1)の工程において、GPR88とGタンパク質を融合させたタンパク質を共発現させ、前記3)の工程をアゴニストリガンド非存在下に実施することにより、被験物質が本発明タンパク質の機能を阻害するか否かを調べることができる。ここで用いられるGタンパク質は、通常Gタンパク質のαサブユニットであり、4種類のクラス(αS、αi/0、αq、α12)が挙げられる。具体的なGタンパク質としては、GqファミリーのGα16、GiファミリーのGαi2、GsファミリーのGαS2が挙げられる。すなわち、それぞれのGタンパク質とGPR88との融合タンパク質を発現させ、細胞内cAMPを上昇させる活性等のGPCRの活性化に伴う生理活性を測定することによって、最もスクリーニングに適したGタンパク質を選択することができる。
【0166】
また、上記FLIPRを用いる方法以外に、3H標識したホスファチジルイノシトール−4,5−ニリン酸を添加し、生成するイノシトールリン酸量を公知の手法を用いて測定することもできる。
また、Ca2+により活性化されるTPA(12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート)応答エレメント(TRE)の下流にルシフェラーゼ、 クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、成長ホルモン、GFPなどのレポーター遺伝子を連結し、レポータージーンアッセイを行う方法が挙げられ、以下の(2)と同様の手順で実施することができる。
【0167】
(2)cAMP応答性エレメントのレポータージーンアッセイを用いる方法
cAMP応答性エレメントのレポータージーンアッセイを用いる方法は、本発明タンパク質にアゴニストが結合して生じるシグナル伝達により活性化されるcAMP応答性エレメント(CRE)の下流にルシフェラーゼ、 クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、成長ホルモン、GFPなどのレポーター遺伝子を連結し、レポータージーンアッセイを行う方法である。すなわち、
1)本発明遺伝子、GsまたはGi、およびcAMP応答性エレメント(CRE)の下流にルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、成長ホルモン、GFPなどのレポーター遺伝子を連結した遺伝子を発現するベクターを作製する。ここで、細胞株としては、CHO−K1細胞等を用いることができ、上記発現ベクターを遺伝子導入試薬Lipofectoamine (Invitrogen社)等を用いて共導入することができる。
2)次に該細胞を、適当な培地中で、CO2インキュベーターにて一定時間(例えば4〜8時間)培養する。
3)培地交換後、被験物質及び/またはアゴニストリガンドを適当な培養培地に溶解した溶液を添加し、一定時間(4時間〜24時間)後、レポーター活性を測定する。例えばルシフェラーゼの場合は、細胞溶解液で細胞を溶かし、その一部分を用いてルシフェラーゼ基質溶液(プロメガ社Luciferase assay system等)と反応させた際の発光をルミノメーターで測定する。
4)被験物質の存在下における本発明タンパク質の生理活性と、被験物質非存在下における該生理活性の差異を求めることにより、差異の大きい被験物質を、本発明タンパク質の生理活性を抑制もしくは亢進する候補物質として選別することができる。GαがGiαの場合、被験物質存在下でAC活性が増加すれば該被験物質はインバースアゴニストであり、活性が減少すればアゴニストである。一方GαがGsαの場合、被験物質存在下でAC活性が増加すれば該被験物質はアゴニストであり、活性が減少すればインバースアゴニストである。
また、アゴニストリガンドの共存下に被験物質が該アゴニストの生理活性を抑制すれば該被験物質はアンタゴニストである。
ここで、本発明タンパク質がアゴニスト不明であるGPR88である場合、前記のとおり、GPR88およびGタンパク質を融合タンパク質として発現させる方法を用いて前記1)の工程を実施し、2)から3)を前記と同様に実施することができる。
【0168】
(3)アデニル酸シクラーゼ(AC)活性を測定する方法
本発明タンパク質(GPCR)が、Gs蛋白もしくはGi蛋白と共役して存在し、アゴニスト刺激によりアデニレートサイクラーゼを活性化、細胞内cAMPを上昇させる活性を用いて、スクリーニングを行うことができる。すなわち、本発明タンパク質(GPCR)がGsαと相互作用する場合、アゴニストリガンドが結合することによってAC活性を奏する。一方本発明タンパク質(GPCR)がGiαと相互作用する場合、アゴニストリガンドが結合することによってAC活性が抑制される。
AC活性の測定には公知の方法を用いることができる。例えば、ACを含む膜画分にATPを添加し、生成するcAMP量を、抗cAMP抗体を用いてRI(125I)、酵素(アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ等)、蛍光物質(FITC、ローダミン等)等で標識したcAMPとの競合イムノアッセイにより測定する方法や、ACを含む膜画分に[α−32P]ATPを添加し、生成する[32P]cAMPをアルミナカラム等で分離後、その放射活性を測定する方法等が挙げられる。
具体的には、被験物質及び/またはアゴニストリガンドの存在下でAC活性を測定・比較する。GαがGiαの場合、被験物質存在下でAC活性が増加すれば該被験物質はインバースアゴニストであり、活性が減少すればアゴニストである。一方GαがGsαの場合、被験物質存在下でAC活性が増加すれば該被験物質はアゴニストであり、活性が減少すればインバースアゴニストである。
また、アゴニストリガンドの共存下に被験物質が該アゴニストの生理活性を抑制すれば該被験物質はアンタゴニストである。
また、細胞を[3H]アデニンで標識し、生成した[3H]cAMPの放射活性を測定することによって、AC活性を評価することもできる。
【0169】
上述の方法を用いて、本発明タンパク質(受容体)の機能に基づくスクリーニングを実施することができる。本発明タンパク質(GPCR)それぞれについて、以下の(i)〜(vii)に例示する。
(i) 5−HT7:
5−HT7は、5−Hydroxytryptamine受容体ファミリーの一つであって、Gs蛋白と共役しアデニレートサイクラーゼを活性化する(J. Biol. Chem. 268 (31), 23422−23426 (1993))。5−HT7受容体は、海馬CA2,CA3領域に高密度に存在すること、また、抗精神病薬や抗うつ薬と高親和性を示すこと等から、神経機能との関わりが指摘されている。また、末梢血リンパ球、脾臓、および胸腺でも発現が見られることから免疫機能との関わりも指摘されている(Brain, Behavior, & Immunity14:219−24、2000)。5−HT7受容体活性の測定は、Anal Biochem270:242−8,1999, PNAS95:352−7,1998に記載された方法に基づき、前記の方法で行うことができる。
また、公開特許公報:特開2003−12648に記載された、ラット5−HT7受容体を発現するHEK−293細胞を用いて被験物質による[3H]−5−カルボキサミドトリプタミンの受容体結合阻害活性を測定する方法、前記細胞を用いて被験物質のアデニル酸シクラーゼ活性を測定する方法を用いることもできる。
本発明のスクリーニング方法の好ましい態様として、5−HT7の機能を促進する物質、即ち5−HT7のアゴニストを選別する方法が挙げられる。
【0170】
(ii) EDG2:
EDG2は、リゾリン脂質(lysophospholipid)に対する受容体EDGファミリーの一つであり、lysophosphatidic acid(LPA)をアゴニストとするG蛋白共役型受容体である(Biochemical & Biophysical Research Communications 231: 619−22,1997)。LPAによるEDG2を介した細胞内カルシウム上昇作用は主としてGi蛋白を介することが百日咳毒素を用いた実験から示されている(Molecular Pharmacology54: 881−8,1998)。
EDG2活性は、当業者に公知の任意の方法で測定することができる。例えば本受容体がアゴニストであるLPAにより活性化すると細胞内カルシウムが上昇することを利用しfluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて行うことができる。また、J. Biol. Chem., 273, 4653−4659 (1998)に記載されたG12/13由来のシグナル伝達を用いる方法、Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A., 95,6151−6156 (1998)、Mol. Brain. Res., 50, 121−126 (1997)、Biochem. Biophys. Acta., 1582, 190−196 (2002)に記載された方法等を用いることもできる。本発明のスクリーニング方法の好ましい態様として、EDG2の機能を促進する物質、すなわちアゴニストを選別する方法が挙げられる。
【0171】
(iii) Endothelial differentiation, lysophosphatidic acid G−protein coupled receptor, 1:
EDG1は、リゾリン脂質(lysophospholipid)に対する受容体EDGファミリーの一つであり、Sphingosine−1−phosphate(S1P)をアゴニストとするG蛋白共役型受容体である(Science 279 (5356), 1552−1555 (1998))。S1PによるEDG1を介した細胞内カルシウム上昇作用は主としてGi蛋白を介することが百日咳毒素を用いた実験から示されている(J Biol Chem273:27104−110,1998)。
EDG1活性の測定は、本受容体がアゴニストであるS1Pにより活性化すると細胞内カルシウムが上昇することを利用し(J Biol Chem273:27104−110,1998)、fluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて行うことができる。
【0172】
(iv) ET(A):
ET(A) (EDNRA)は強力な持続性血管収縮作用を持つEndothelin(ET)の受容体として同定された因子である(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88 (8), 3185−3189 (1991))。これまでの研究によりETが血管以外の心臓・肺・腎臓・内分泌組織にも作用すること、それらの器官にもEDNRAが発現していることが明らかにされている(タンパク質核酸酵素45(6)961−6,2000)。
EDNRAの活性測定は、EDNRAがGs蛋白を介してcAMPの上昇をもたらすことから(J. Biol. Chem. 267:12468−74,1992, J. Biol. Chem. 27010072−8,1995)、G蛋白としてGqs5を用いて、fluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて行うことができる。
また、Trends Pharmacol. Sci., 15, 313 (1994)、Br. J. Pharmacol., 112, 207−213(1994)、Eur J. Pharmacol., 252, 2, R3−R4 (1994)に記載された方法を用いることもできる。
本発明のスクリーニング方法の好ましい態様として、ET(A)の機能を抑制する物質、すなわちアンタゴニストもしくはインバースアゴニストを選別する方法が挙げられる。
【0173】
(v) GPR88:
GPR88はラット脳の部位特異的に発現が変動している遺伝子としてクローニングされてきたG蛋白共役型受容体遺伝子である(Genomics. 2000 Nov 1;69(3):314−21)。内在性のアゴニストについては同定されておらず、従って機能も不明である。
GPR88の活性測定は、G蛋白共役型受容体がGDP存在下でGTPアナログであるGTPγSと結合する性質を利用して行うことが出来る。すなわち、被験物質が、GRP88とGTPγSの結合を制御(阻害もしくは亢進)するか否かを調べることにより、被験物質がGRP88の活性を制御するか否かを評価することが出来る。
【0174】
(vi) PTH2R:
PTH2R(PTH2R)はPTHの第2の受容体として同定された因子であり、いわゆるPTH1Rと比較するとPTHrPをアゴニストとしない、組織発現分布が限定されている、などの特徴がある(J Biol Chem 1995 Jun 30;270(26):15455−8)。
PTH2Rの活性測定は、アゴニスト刺激により細胞内cAMPが上昇するという性質を用い、文献(Anal Biochem270:242−8,1999, PNAS95:352−7,1998)に従って、fluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて以下のように行うことができる。
【0175】
(vii) VIP1R:
VIP1Rは52Kdaの細胞膜上G蛋白共役型受容体遺伝子であり、神経系・免疫系等に作用を及ぼすVIPのシグナルを受容する受容体である。VIP・PACAPについては近年強い抗炎症作用が報告されていることから、共通の受容体であるVIP1Rがその作用を担っていると考えられている(Nature Medicine 7:563−8,2001)。
VIP1Rの活性測定は、アゴニスト刺激により細胞内cAMPが上昇するという性質を用い、文献(Anal Biochem270:242−8,1999, PNAS95:352−7,1998)に従って、fluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いることができる。
また、Cardiovasc., Res. 49, 27−37 (2001)、J. Mol. Neurosci., 14, 61−68(2000)、Brain Res. Rev., 94, 31−36 (1996)、Ann. N. Y. Acad. Sci., 840, 540−550 (1998)、Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A., 70, 382 (1973)に記載された方法等を用いることもできる。
本発明のスクリーニング方法の好ましい態様として、VIP1Rの機能を促進する物質、すなわちアゴニストを選別する方法が挙げられる。
【0176】
II.本発明のタンパク質がトランスポーターである場合
II−1. 輸送基質の輸送量の測定
本発明タンパク質がトランスポーターである場合、すなわち、本発明タンパク質がCLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、またはIREG1である場合、被験物質が、本発明タンパク質が輸送基質を細胞内から細胞外へ、もしくは細胞外から細胞内へ輸送する能力を阻害又は亢進するか否かを測定することによって、候補物質を選別することができる。本発明タンパク質(トランスポーター)、および該タンパク質の輸送基質を用いて、被験物質が該タンパク質による輸送基質の細胞内外から細胞内へ、もしくは細胞内から細胞外への輸送を阻害するか否かを評価するスクリーニング方法は、当業者の常識の範囲より適宜選択されるが、一例としては、a)本発明タンパク質を発現する細胞に、標識された輸送基質を接触させた場合と、b)本発明タンパク質を発現する細胞に、標識された輸送基質および被験物質を接触させた場合とを、比較評価することを含むスクリーニング方法が挙げられる。
具体的には、以下の手順でスクリーニングを実施することができる。すなわち、
1)本発明タンパク質(トランスポーター)を発現する培養細胞に、標識された輸送基質を添加する。該培養細胞としては、通常本発明タンパク質をコードするcDNAを挿入した発現ベクターを安定導入した細胞が用いられる。
2)細胞外液を交換する。
3)細胞内に取り込まれた輸送基質量、あるいは培養上清中の輸送基質量を計測する。ここで、空ベクターのみを導入した細胞を用いて前記の測定を行い、これをバックグラウンド(在性のトランスポーター活性)として差し引くことにより導入トランスポーター活性を算出することができる。
前記1)〜3)の工程を、被験物質の存在下および非存在下でそれぞれ実施し、各トランスポーター活性を比較することにより、被験物質が該活性を制御するか否かを判別し、候補物質を選別することができる。標識された輸送基質量の測定方法としては、放射活性を測定する方法、電圧変化を指標として測定する方法、蛍光量を測定する方法など、リガンドの標識方法に応じた公知の測定方法が挙げられる。
放射活性を測定するための標識された輸送基質としては、該輸送基質の任意の1または複数の原子を放射性同位体元素で標識した輸送基質が挙げられる。具体的には水素原子を3H(トリチウム)で標識する方法、炭素原子を14Cで標識する方法、または、硫黄原子を35Sで標識する方法等が挙げられる。具体的な標識された輸送基質としては、ABCA1(ABCA1)については14Cで標識したα−(Methyl− amino)isobutyric acid([14C]MeAIB)、GAT1についてはγ−Amino−butyric acid([3H]GABA)、PLTP については[3H]phosphatidylcholine(L−a−dipalmitoyl−[2−palmitoyl−9,10−3H(N)]−phosphatidylcholine)、 ENT1 については[14C]adenosine、NPT3については、KH2 32PO4もしくはKH2 33PO4、IREG1についてはFe55(NEN)等が挙げられる。
また、輸送基質が当業者に公知の方法で検出可能な場合、標識されていない輸送基質を用いることもできる。一例として、ABCG2については、輸送基質として蛍光物質であるDaurubicinを用いることができる。
また、輸送基質がイオンである場合、NaI、KH2PO4等の無機塩を含む培養液中で細胞を培養し、トランスポーターの輸送基質である、I−、PO4 −等のイオンの細胞内から細胞外への放出量を、電圧変化を計測することにより測定する方法が挙げられる。例えば、CLIC2については、I−の輸送量をヨウ素検出電極を用いて電圧変化を計測することができる。
【0177】
II−2. 輸送基質が輸送されることによる生理活性の測定
本発明タンパク質がトランスポーターである場合、該タンパク質に輸送基質が結合することによって生ずる生理活性を指標として、該タンパク質の機能を制御する候補物質を選別することもできる。すなわち、a)本発明タンパク質に輸送基質を接触させた場合における、本発明タンパク質(トランスポーター)を介した前記生理活性と、b)本発明タンパク質(トランスポーター)に輸送基質および被験化合物を接触させた場合に生ずる生理活性とを比較評価することを含むスクリーニング方法が挙げられる。
該生理活性としては、細胞内カルシウムの増加、細胞内pHの上昇等が挙げられる。該生理活性は、公知の方法、または市販の測定用キットを用いて測定することができる。
具体的な測定手順としては、例えばFluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて、細胞内カルシウムの増加を測定する、以下の方法が挙げられる。すなわち、
1)本発明タンパク質遺伝子の発現ベクターを作製する。ここで、細胞株としては、CHO−K1細胞等を用いることができ、上記発現ベクターを遺伝子導入試薬Lipofectoamine (Invitrogen社)にて共導入することができる。
2)該細胞をdye loading medium(Fluo−3等を含むバッファー等を用いることができる。)中で、マルチウェルプレート等を用いて一定時間(例えば、30分〜2時間)培養する。
3)新鮮な培地、あるいは細胞毒性を示さない適当なバッファーに交換した後、被験物質、および輸送基質を添加して、一定時間インキュベートする。培養液はそのまま次の工程で用いる測定サンプルとすることができる。また、細胞を抽出して測定サンプルを調製したり、あるいは細胞上清を回収して測定サンプルとして用いたりすることもできる。
4)3)の測定サンプルをFLIPR (Molecular Devices社)で測定する。すなわち、488nmのアルゴンレーザーで細胞を励起し、カルシウムイオンが結合したfluo−3の蛍光を500−560nmの波長で検出する。被験物質や輸送基質の添加直後から60秒後までの蛍光強度から、実測値からバックグラウンドを差し引いたものを測定値とする。
5)被験物質の存在下における本発明タンパク質の生理活性と、被験物質非存在下における該生理活性の差異を求めることにより、差異の大きい被験物質を、本発明タンパク質の生理活性を抑制もしくは亢進する候補物質として選別することができる。すなわち、被験物質存在下における本発明タンパク質の生理活性が被験物質非存在下における生理活性よりも大きければ、該被験物質は本発明タンパク質の機能を亢進する物質であり、被験物質存在下における本発明タンパク質の生理活性が被験物質非存在下における生理活性よりも小さければ、該被験物質は本発明タンパク質の機能を抑制する物質である。また、輸送基質非存在下に被験物質のみを添加して上記3)および4)を実施することにより、輸送基質となり得る物質をスクリーニングすることもできる。すなわち、被験物質存在下における測定値と既知の輸送基質存在下における測定値を比較することにより、既知の輸送基質と同等以上の測定値を示す被験物質を選択すればよい。
【0178】
以下、本発明タンパク質(トランスポーター)の機能に基づくスクリーニングを実施する方法について、具体的に例示する。
(i) CLIC2:
CLIC2は細胞膜に発現してチャネル活性を発現することが知られている遺伝子である。KOマウスの解析より、網膜・精巣機能に重要な役割を果たしていると考えられている(EMBO Journal20:1289−99,2001)。CLIC2の活性測定は、ヨウ素をあらかじめ取り込ませておいた細胞からのヨウ素放出を指標に行うことが出来る。
【0179】
(ii) SCN2A: SCN2Aは電位依存性Naチャネル(tetrodotoxin感受性)の一種で、後根神経節や脳で発現し、活動電位の発生や伝搬に関与している。SCN2Aの活性測定は、このチャネルが活性化される際に細胞内カルシウムの増加が起こる性質を利用して文献記載(PNAS98: 7599−604, 2001)の方法に従いfluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて行うことができる。
【0180】
(iii) ATA1:
Amino acid transporter (アミノ酸トランスポーター)は、栄養分の取り込み、エネルギー代謝、化学的代謝、解毒、および神経伝達物質のサイクリングなどに重要である(J. Biol. Chem., 276, 24137 (2001) )。その中でsystem A1は短鎖の中性アミノ酸を細微膜内外のNa勾配を利用して取り込む。α−(Methyl−amino)isobutyric acid(MeAIB)はこの輸送系の特異的基質と言われている(Biochem. Biophys. Res. Commun., 273, 1175−1179, (2000))。ATA1活性の測定は文献(Biochem. Biophys. Res. Commun., 273, 1175−1179, (2000))記載の方法にて実施することができる。
【0181】
(iv) ABCA1:
ATP−binding cassette (ABC) タンパク質は保存されたATP結合ドメインと6回膜貫通型ドメインを持つ膜タンパク質である。ABC1は細胞内の脂質を細胞外へ運び出すトランスポーターで、タンジアー病(劣性遺伝性の脂質代謝異常で、血漿中の HDL がほとんど完全に欠損し、泡沫細胞中でのコレステロールの蓄積、リンパ節腫大、末梢神経傷害などの様々な所見がみとめられる)の原因遺伝子の一つであることが知られている(J. Clin. Invest., 104, R25, 1999、 Proc. Natl Acad. Sci. USA., 96, 12685, 1999)。
ABCA1活性の測定は文献(J. Clin. Invest., 104, R25, 1999)記載の方法にて実施することができる。具体的には、 [3H]cholesterolおよび acetylated LDLを、内在性LDL受容体により、細胞に取り込ませた後、ABCA1によるApolipoproteinA−I(ApoA−I)依存的なコレステロールの逆輸送をモニターする方法が挙げられる。
【0182】
(v) ABCG2:
ATP−binding cassette (ABC) タンパク質は保存されたATP結合ドメインと6回膜貫通型ドメインを持つ膜タンパク質である。ABCG2は抗がん剤のdoxorubicinやdaunorubicinなどを細胞外へ排出して、薬剤耐性に関与することが報告されている(Proc. Natl Acad. Sci. USA., 95, 15665, 1998)。
ABCG2活性の測定は文献(Proc. Natl A
cad. Sci. USA., 95, 15665, 1998)記載の方法にて実施することができる。具体的には、daunorubicin(蛍光を発する物質である。)を細胞外に排出する性質を利用して、フローサイトメトリーにて、細胞内に保持されたdaunorubicinの量を定量することができる。
【0183】
(vi) GAT1:
GAT1は脳の多くの部位に発現しているGABA輸送体でシナプス間隙に存在するニューロンやグリア細胞でGABA の再取り込みを行い、神経伝達の終了に関与することが報告されている(J. Biol. Chem., 267, 21098, 1992)。
GAT1活性の測定は文献:Proc. Natl Acad. Sci. USA., 95, 15665, 1998;Can. J. Physiol. Pharmacol., 68, 1194 (1990);Pharm. Res., 10, 1442 (1993)、Eur. J. Pharmacol., 269, 219 (1994)に記載の方法にて実施することができる。具体的には、GAT1を発現する細胞(例えばCOS−7細胞、LM(tk−)細胞を用いることができる。)を用いて、標識された輸送基質:[3H]GABAのおよび/または被験物質を添加し、37℃10分間インキュベートした後細胞内に保持された輸送基質量を測定すればよい。
本発明のスクリーニング方法の好ましい態様として、GAT1の機能を抑制する物質を選別する方法が挙げられる。
【0184】
(vii) PLTP:
ヒトの血漿はcholesterol ester transfer protein (CETP)やPLTPなどの脂質輸送タンパク質を含み、PLTPはtriglyceride−rich lipoproteinsからhigh density lipoprotein(HDL)へphospholipidsの移行を行い、HDLの変換に関与することが報告されている(Proc. Natl Acad. Sci. USA., 95, 15665, 1998)。PLTP活性の測定は文献(J. Clin. Invest., 103, 907, 1999) 記載の方法にて実施することができる。具体的には、 [3H]phosphatidyl −choline(L−a−dipalmitoyl−[2−palmitoyl−9,10−3H(N)]−phosphatidylcholine)でphospholipid vesicleを標識し、HDLと混合することによりphospholipidsの移行を測定することができる。
【0185】
(viii) ENT1:
Equilibrative nucleoside transporterはde novo のnucleotide合成経路を欠く造血系細胞などでのサルベージ経路によるnucleotide合成に必須であり、また癌やウイルス感染症の化学療法剤として用いられている細胞障害性nucleosideの細胞への取り込みを行なうことが報告されている(Naturev Medicine., 3, 89, 1997)。
ENT1活性の測定は文献(Nature Medicine., 3, 89, 1997)記載の方法にて実施することができる。
【0186】
(ix) NPT3:
Sodium phosphate transporterはナトリウムイオン依存的に無機リン酸の近位尿細管における再吸収を調節し、無機リン酸のホメオスタシスに関与することが報告されている(Biochem. J., 305, 81, 1995)。
NPT3活性の測定は文献(Biochem. J., 305, 81, 1995)に記載の方法にて実施することができる。
【0187】
(x) IREG1:
哺乳類では鉄分は必須の栄養素であり、鉄分の吸収や利用に欠損があると成体では貧血、子では知能発達障害をおこす。鉄分は成体では十二指腸から、胚では胎盤から吸収される。IREG1は十二指腸で吸収された鉄分の門脈への移行に関与することが報告されている(Mol. Cell, 5, 299, 2000)。
IREG1活性の測定は文献(Mol. Cell, 5, 299, 2000)記載の方法にて実施することができる。具体的には、プロトン共役型2価カチオントランスポーターDCT1よりFe55を細胞に取り込ませ、IREG1によって細胞外に輸送されたFe55量を測定することができる。
【0188】
また、本発明のスクリーニング方法を実施する前に、上記に掲げる各本発明タンパク質をコードする遺伝子について、あらかじめ実験により、該遺伝子の発現を抑制する物質が軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分(候補物質)として有用なのか、また発現を誘導する物質が軟骨障害の改善薬または治療薬の有効成分(候補物質)として有用なのかを判断することは可能であり、その具体的な方法については前述の通りである。当該実験によって本発明遺伝子の発現抑制物質が候補物質になる可能性が高いと判断された場合は、当該遺伝子がコードする本発明タンパク質の機能(活性)の抑制を指標としてスクリーニングを行うことにより、より高い精度で候補物質を選別することができ、また当該実験によって本発明遺伝子の発現誘導物質が候補物質になる可能性が高いと判断された場合は、当該遺伝子がコードする本発明タンパク質の機能(活性)の亢進を指標としてスクリーニングを行うことにより、より高い精度で候補物質を選別することができる。
【0189】
上記(3−1)〜(3−3)に記載する本発明のスクリーニング方法および上記さらなる選別によって選択された制御物質または候補物質は、さらに軟骨障害のモデル動物、すなわち十字靭帯切断モデル動物や半月板切除モデル動物、あるいはコラゲナーゼ注入モデル動物などを用いた薬効試験、安全性試験、さらに軟骨障害に罹患した患者への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的な軟骨障害の改善または治療薬を取得することができる。このようにして選別された物質は、さらにその構造解析結果に基づいて、化学的合成、生物学的合成(発酵)または遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができる。
【0190】
なおラット十字靱帯切断モデルは、公開特許公報:特開2001−131073、または、Arthritis & Rheumatism 43, (9), 2121−2131 (2000) に記載の方法により作製することができる。具体的には、6週齢以上のラット後肢膝関節部の皮膚および膝蓋靭帯、滑膜をメスで切開し、切開した部分より関節腔内の前十字靭帯を切断する。切開した皮膚は外科用クリップで留める等の処置をし、その後は通常の飼育を数日間行う。その後、被験動物を屠殺し、大腿骨、脛骨の関節軟骨部分サンプルを採取する。
【0191】
変形性関節症様の軟骨変性等の症状について、通常は、組織標本を作製してサフラニンOの染色性およびトルイジンブルーまたはアルシアンブルーの異染性等を指標にして評価することができる。具体的には、10%中性緩衝ホルマリンで固定後、脱灰、脱水、透徹を経て、パラフィン包埋し、矢状面に薄切する。その後、通常のパラフィン除去を行った後サフラニンOとファーストグリーンまたはトルイジンブルーまたはアルシアンブルーで染色を行う。
(4)軟骨障害の改善・治療剤
本発明は、軟骨障害の改善・治療剤を提供するものである。すなわち、本発明は変形性関節症、軟骨形成異常症、変形性椎間板症、軟骨の欠損、軟骨損傷、半月板損傷、骨折の修復・治癒不全といった軟骨障害の改善・治療剤、および軟骨細胞移植時の補助療法剤を提供するものである。
本発明は5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子の発現が軟骨障害と関連しているという新たな知見から、5−HT7遺伝子(配列番号1)、EDG2遺伝子(配列番号3)、EDG1遺伝子(配列番号5)、ET(A)遺伝子(配列番号7)、GPR88遺伝子(配列番号9)、PTH2R遺伝子(配列番号11)、VIP1R遺伝子(配列番号13)、CLIC2遺伝子(配列番号15)、SCN2A遺伝子(配列番号17)、ATA1 遺伝子(配列番号19)、ABCA1 遺伝子(配列番号21)、ABCG2 遺伝子(配列番号23)、GAT1 遺伝子(配列番号25)、PLTP 遺伝子(配列番号27)、ENT1 遺伝子(配列番号29)、NPT3 遺伝子(配列番号31)、またはIREG1 遺伝子(配列番号33)の発現を制御(抑制/亢進)する物質、あるいは、5−HT7(配列番号2)、EDG2(配列番号4)、EDG1(配列番号6)、ET(A)(配列番号8)、GPR88(配列番号10)、PTH2R(配列番号12)、VIP1R(配列番号14)、CLIC2(配列番号16)、SCN2A(配列番号18)、ATA1 (配列番号20)、ABCA1 (配列番号22)、ABCG2 (配列番号24)、GAT1 (配列番号26)、PLTP (配列番号28)、ENT1 (配列番号30)、NPT3 (配列番号32)、またはIREG1 (配列番号34)の発現や機能(活性)を制御(抑制/亢進)する物質が、上記疾患の改善または治療に有効であるという考えに基づくものである。すなわち、本発明の軟骨障害の改善・治療剤は前記本発明遺伝子の発現を制御する物質、あるいは前記本発明タンパク質の機能(活性)を制御する物質を有効成分とするものである。
【0192】
例えば、ET(A)遺伝子(配列番号7)および/またはET(A)(配列番号8)の発現を抑制する物質、あるいは、ET(A)(配列番号8)の機能(活性)を抑制する物質が、上記疾患の改善または治療に有効である。具体的には、BQ−123(D−Tryptophyl−D−aspartyl−prolyl−D−valyl−leucine cyclic amide; Morel, et al., Eur. J. Pharmacol., 252, R3−R4 (1994)、J. Med. Chem., 1992, 35(11), 2139−2142)、PD−145065(Med. Chem. Res., 1993, 3(3), 154)、PD−161721(Eur. J. Pharmacol., 2001, 432(1), 71)、FR139317(TOCRIS社品;Sogabe et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 264,1040 (1993))、BMS182874(TOCRIS社品;5−(dimethylamino)−N−(3,4−dimethyl−5−isoxazolyl)−1−naphthalenesulfonamide;Stein et al., J. Med. Chem., 37, 329 (1994))、Sulfisoxazole(TOCRIS社品;Chan et al., Biochem. Biophys. Res. Comm., 201,228 (1994))等を例示することができる。
【0193】
また、GAT1遺伝子(配列番号25)および/またはGAT1(配列番号26)の発現を抑制する物質、あるいは、GAT1(配列番号26)の機能(活性)を抑制する物質が、上記疾患の改善または治療に有効である。具体的には、CI966(TOCRIS社品;
Gen. Pharmacol., 1995, 26(5), 1061)、Tiagabine( ( − ) − (R) − 1 − [4,4 − Bis(3 − methyl − 2 − thienyl) − 3 − butenyl]piperidine − 3 − carboxylic acid hydrochloride ;Anderson et al., J. Med. Chem., 36, 1716 (1993))、SK&F89976−A(Ali et al., J. Med. Chem., 28, 653 (1985))、およびNNC−711(1−(2−(((ジフェニルメチレン)アミノ)オキシ)エチル)−1,2,5,6−テトラヒドロ−3−ピリジンカルボキシリック アシッド 塩酸塩(Kubova, et al., Naunyn−Schmiedeberg’s Arch Pharmacol., 358, 334−341 (1998))等が挙げられる。
【0194】
また、5−HT7(配列番号1)および/または5−HT7(配列番号2)の発現を促進する物質、あるいは、5−HT7(配列番号2)の機能(活性)を促進する物質が、上記疾患の改善または治療に有効である。具体的には、1−[6−(ピリジン−3−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジン等の公開特許公報:特開2003−12648に記載された5−HT7アゴニスト、または6−[4−(1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)ピペラジン−1−イル]−1−(2−ヒドロキシフェニル)ヘキサン−1−オンもしくは6−[4−(1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)ピペラジン−1−イル]−1−(2−メトキシフェニル)ヘキサン−1−オン(J. Med. Chem., 46, 4, 646 (2003))が挙げられる。
【0195】
また、EDG2(配列番号3)および/またはEDG2(配列番号4)の発現を促進する物質、あるいは、EDG2(配列番号4)の機能(活性)を促進する物質が、上記疾患の改善または治療に有効である。具体的には、リゾホスファチジン酸(LPA;1−Oleoyl−sn−glycerol 3−phosphate;シグマ社カタログNo.L7260;Biochimica et Biophysica Acta, 1582, 289−294 (2002))、LPA(12:0)、LPA(14:0)、LPA(16:0)、LPA(18:1)、又はLPA(18:2)等が挙げられる。(ここで、括弧内の最初の整数はLPAにおける脂肪酸部分の総炭素数を表し、2番目の整数は二重結合の数を表す。)また、式(1):
【化1】
で表されるサイクリック ホスファチジン酸(cPA)、および式(2):
【化2】
で表されるDOXP−OHなども、EDG2のアゴニストとして挙げられる(Biochimica. Biophysica Acta., 1582, 309−317 (2002))。
【0196】
また、VIP1R(配列番号13)および/またはVIP1R(配列番号14)の発現を促進する物質、あるいは、VIP1R(配列番号14)の機能(活性)を促進する物質が、上記疾患の改善または治療に有効である。具体的には、生理活性リガンドであるVIP(シグマ社製;Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 70, 382 (1973))が挙げられる。
【0197】
当該有効成分となる本発明遺伝子の発現制御物質、あるいは本発明タンパク質の機能(活性)制御物質は、上記のスクリーニング方法を利用して選別されたもののみならず、選別された物質に関する情報に基づいて常法に従って工業的に製造されたものであってもよい。
【0198】
本発明遺伝子の発現制御物質、あるいは本発明タンパク質の機能(活性)制御物質は、そのままもしくは自体公知の薬学的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤などが含まれる)や慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製することができる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤などの非経口投与剤)等に応じて経口投与または非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象または患者の年齢、体重、症状などによって異なり一概に規定できないが、1日投与用量として、数百mg〜2g、好ましくは数十mg程度を、1日1〜数回にわけて投与することができる。
【0199】
また、上記の物質がDNAによりコードされるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組み込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。さらに、上記の物質が本発明の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、またはIREG1 遺伝子に対するアンチセンスヌクレオチド(アンチセンス核酸)の場合は、そのまま、若しくは遺伝子治療用ベクターに組み込むことにより、遺伝子治療を行うこともできる。これらの場合も、投与量、投与方法は患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0200】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
実施例1 ラット十字靭帯切断モデルの作製および軟骨採取
日本チャールス・リバー社より6週齢の雄性CD(SD)IGSを1週間おきに3回、合計100匹購入した。1週間予備飼育後外見上異常の認められない個体を実験に供した。
【0201】
エーテル麻酔下でラット後肢膝関節部の毛をバリカンで剃り、80%エーテルで切開部分を消毒した。後肢を屈曲した状態で関節腔部分の皮膚および膝蓋靭帯、滑膜をメスで5mm程度切開した。切開した部分よりマイクロ剪刀を関節腔内に差し入れ、前十字靭帯を切断した。切開した皮膚は外科用クリップで留めた。処置後は通常の飼育を行った。対照は無処置とした。
【0202】
処置1、2、3週間後に過剰エーテル麻酔下で安楽死させ、心拍の停止を確認した後、大腿骨、脛骨の関節軟骨部分のみをメスでそぎ採取した。軟骨採取した後、ただちに凍結させた。各時点25匹使用した。対照は、処置2週間後の週齢とそろえた。
【0203】
実施例2 ラット膝関節軟骨からのtotal RNAの調製
実施例1で採取したラット十字靭帯切断モデルの膝関節軟骨(以下、本明細書において「病態モデル軟骨」ともいう。)からtotal RNAを調製した。具体的には十字靭帯切断モデルを作製後、1, 2,および 3週間経過後の膝関節から採取した軟骨にTRIZOL(Gibco−BRL社製) 5ml添加し、ホモゲナイザーでつぶしてからそれぞれtotal RNAを調製した。なお、total RNAの調製は、TRIZOLを用いて付属のプロトコールに従って行った。得られたtotal RNAはDEPC処理水(ナカライテスク社製)に溶解した。
【0204】
同様にして、比較対照のため何も処理しないで飼育したラットの膝関節軟骨(以下、本明細書において「未処理軟骨」ともいう。)からtotal RNAを調製した。
【0205】
実施例3 DNAチップ解析
実施例2で調製したtotal RNAを用いてDNAチップ解析を行った。なお、DNAチップ解析はAffymetrix社Gene Chip Rat Genome U34A、U34B、U34Cを用いて行った。具体的には、解析は、(1) total RNAからcDNAの調製、(2) 該cDNAからラベル化cRNAの調製、(3) ラベル化cRNAのフラグメント化、(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ、(5) プローブアレイの染色、(6) プローブアレイのスキャン、及び(7) 遺伝子発現解析、の手順で行った。
【0206】
(1) total RNAからcDNAの調製
実施例2で得られた各total RNA 10μgとT7−(dT)24プライマー(Amersham社製)100pmolを含む11μLの混合液を、70℃、10分間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、SuperScript Choice System for cDNA Synthesis(Gibco−BRL社製)に含まれる5×First Strand cDNA Buffer 4μL、該キットに含まれる0.1M DTT (dithiothreitol)2μL、該キットに含まれる10mM dNTP Mix 1μLを添加し、42℃で2分間加熱した。更に、該キットに含まれるSuper ScriptII RT 2μL(400U)を添加し、42℃で1時間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、DEPC処理水 91μL、該キットに含まれる5×Second Strand Reaction Buffer 30μL、10mM dNTP Mix 3μL、該キットに含まれるE. coli DNA Ligase 1μL(10U)、該キットに含まれるE. coli DNA Polymerase I 4μL(40U)、該キットに含まれるE. coli RNaseH 1μL(2U)を添加し、16℃で2時間反応させた。次いで、該キットに含まれるT4 DNA Polymerase 2μL(10U)を加え、16℃で5分間反応させた後、0.5M EDTA 10μLを添加した。次いで、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール溶液(ニッポンジーン社製)162μLを添加し、混合した。該混合液を、予め室温、14,000rpm、30秒間遠心分離しておいたPhase Lock Gel Light(エッペンドルフ社製)に移し、室温で14,000rpm、2分間遠心分離した後、145μLの水層をエッペンドルフチューブに移した。得られた溶液に、7.5M酢酸アンモニウム溶液72.5μL、エタノール362.5μLを加えて混合した後、4℃で14,000rpm、20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、作製したcDNAを含むペレットを得た。その後、該ペレットに80%エタノール0.5mLを添加し、4℃で14,000rpm、5分間遠心分離した後、上清を捨てた。再度同様の操作を行った後、該ペレットを乾燥させ、DEPC処理水12μLに溶解した。以上の操作から実施例2で調製した各total RNAから、各cDNAを取得した。
【0207】
(2) cDNAからラベル化cRNAの調製
各cDNA溶液5μLに、DEPC処理水17μL、BioArray High Yield RNA Transcript Labeling Kit(ENZO社製)に含まれる10×HY Reaction Buffer 4μL、該キットに含まれる10×Biotin Labeled Ribonucleotides 4μL、該キットに含まれる10×DTT 4μL、該キットに含まれる10×RNase Inhibitor Mix 4μL、該キットに含まれる20×T7 RNA Polymerase 2μLを混合し、37℃で5時間反応させて、ラベル化cRNAを調製した。反応後、該反応液にDEPC処理水60μLを加えたのち、RNeasy Mini Kit(GIAGEN社製)を用いて添付プロトコールに従い、調製したラベル化cRNAを精製した。
【0208】
(3) ラベル化cRNAのフラグメント化
各ラベル化cRNA 20μgを含む溶液に、5×Fragmentation Buffer(200mMトリス−酢酸 pH8.1(Sigma社製)、 500mM酢酸カリウム(Sigma社製)、150mM酢酸マグネシウム(Sigma社製))8μLを加えた反応液40μLを、94℃で35分間加熱した後、氷中に置いた。これによって、ラベル化cDNAをフラグメント化した。
【0209】
(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ
各フラグメント化cRNA 40μLに、5nM Control Oligo B2(Amersham社製)4μL、100×Control cRNA Cocktail 4μL、Herring sperm DNA(Promega社製)40μg、Acetylated BSA(Gibco−BRL社製)200μg、2×MES Hybridization Buffer(200mM MES、2M [Na+], 40mM EDTA、0.02% Tween20 (Pierce社製)、pH6.5〜6.7) 200μL、及びDEPC処理水144μLを混合し、400μLのハイブリカクテルを得た。得られた各ハイブリカクテルを99℃で5分間加熱し、更に45℃で5分間加熱した。加熱後、室温で14,000rpm、5分間遠心分離し、ハイブリカクテル上清を得た。
【0210】
一方、1×MESハイブリダイゼーションバッファーで満たしたRat Genome U34A、U34B、U34Cプローブアレイ(Affymetrix社製)を、ハイブリオーブン(Affymetrix社製)内で、45℃、60rpmで10分間回転させた後、1×MESハイブリダイゼーションバッファーを除去してプローブアレイを調製した。上記で得られたハイブリカクテル上清200μLを該プローブアレイにそれぞれ添加し、ハイブリオーブン内で45℃、60rpmで16時間回転させ、フラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを得た。
【0211】
(5) プローブアレイの染色
上記で得られたハイブリダイズ済みプローブアレイそれぞれからハイブリカクテルを回収除去した後、Non−Stringent Wash Buffer(6×SSPE(20×SSPE(ナカライテスク社製)を希釈)、0.01%Tween20、0.005%Antifoam0−30(Sigma社製))で満たした。次にNon−Stringent Wash BufferおよびStringent Wash Buffer(100mM MES、0.1M NaCl、0.01%Tween20)をセットしたGeneChip Fluidics Station 400(Affymetrix社製)の所定の位置にフラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを装着した。その後染色プロトコールEuKGE−WS2に従って、1次染色液(10μg/mL Streptavidin Phycoerythrin (SAPE)(Molecular Probe社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES(2−(N−Morpholino)ethanesulfonic Acid)、1M NaCl(Ambion社製)、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)、 2次染色液(100μg/mL Goat IgG (Sigma社製)、3μg/mL Biotinylated Anti−Streptavidin antibody (Vector Laboratories社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)により染色した。
(6) プローブアレイのスキャン、及び (7) 遺伝子発現解析
染色した各プローブアレイをHP GeneArray Scanner(Affymetrix社製)に供し、染色パターンを読み取った。染色パターンをもとにGeneChip Workstation System(Affymetrix社製)によってプローブアレイ上の遺伝子の発現を解析した。次に、解析プロトコールに従ってNormalization、遺伝子発現の比較解析を行った。
【0212】
実施例4 十字靭帯切断モデル関節軟骨を用いた変形性関節症での遺伝子発現の変動解析
十字靭帯切断後、1, 2,及び3週間経過後の各関節軟骨における遺伝子発現量(average difference)を、未処理関節軟骨における発現量と、GeneChip Workstation System(Affymetrix社製)にある解析ツールComparison Analysisを用いて比較した。Comparison Analysisは解析プロトコールに基づいて行った。
これらの比較解析の結果から得られた、遺伝子発現の増減の判定(Diff Call)および発現変動倍率(Fold Change)の値から、発現変動遺伝子を選抜した。選抜方法は、各処理時間において、病態モデル軟骨での遺伝子発現量(average difference)が、未処理軟骨での遺伝子発現量と比較して、1.5倍以上の発現変動(Fold Changeが−1.5以下あるいは1.5以上)を示したプローブを選抜した。同様の解析をすべての処理時間における軟骨について行って、いずれかの処理時間において1.5倍以上の発現変動を示したプローブを選抜した。
【0213】
選抜した該プローブの中から、さらに病態との相関が高いプローブを選抜した。具体的には、DNAチップ解析結果から得られる遺伝子発現量(average difference)を指標にして、病態モデル軟骨での遺伝子発現量(average difference)がいずれの障害時間においても発現減あるいは発現増の傾向にあるプローブを選抜した。
【0214】
実施例5 病態モデル軟骨での発現変動を示した遺伝子のヒトホモログ配列の同定
実施例4において病態モデル軟骨で発現変動を示したラット遺伝子のヒトホモログ遺伝子の同定は、遺伝子名、タンパク質名をもとに、あるいはHomologene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)を用いて行った。
【0215】
【表1】
表中、Rat U34プローブ名は Rat Genome U34 Chip におけるプローブ名を示す。また表中、変動倍率は、Rat Genome U34 Chipで解析した未処理膝軟骨組織の遺伝子発現量を1とした場合における変形性関節症モデル動物の膝関節軟骨組織での遺伝子発現量を示す。また各遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を示す後記配列表の配列番号も合わせて示す。
以上のように、これら17個の遺伝子は、ラット十字靭帯切断モデルの障害軟骨において、正常軟骨と比較して発現低下あるいは発現増加していた。さらにこれらの遺伝子の発現は、いずれの障害時間においても発現減あるいは発現増の傾向を示した。これらの結果より、これら17遺伝子は軟骨障害を伴う疾患に関するマーカー遺伝子として応用可能な遺伝子であると考えられた。また、これらの遺伝子を用いることによって軟骨障害を伴う疾患を緩和、抑制する治療薬の候補薬をスクリーニングすることが可能であると考えられた。
【0216】
実施例6 5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、および/またはIREG1 遺伝子発現制御剤のスクリーニング
マウスATDC5細胞(RIKEN Cell Bank; HYPERLINK http://www.rtc.riken.go.jp/CELL/HTML/RIKEN Cell Bank. Htmlから入手可能)を5%ウシ胎児血清ヒトトランスフェリン(終濃度10μg/ml)・3x108M セレン酸ナトリウム含有DMEM/F12培地を用い、37℃、CO2濃度5%の条件下で培養する。計数したATDC5細胞を1x104 cells/cm2でプレートに播種し、37℃、CO2濃度5%で培養する。当該細胞に対して、ウシインスリン(終濃度10μg/ml)と被験物質含有溶液(100μM、10μM、および1μMの各濃度の被験物質を含む溶液)とを同時に添加するか、若しくはインスリンをあらかじめ添加して数日間培養した後に前記被験物質含有溶液を添加し、37℃、CO2濃度5%で3〜21日間、もしくは37℃、CO2濃度5%で21日間培養した後37℃、CO2濃度3%で培養する。ここで、対照実験として、被験物質無添加の細胞についても同様の培養を行う(コントロール)。これらの各培養細胞より抽出したRNAを用いて実施例3に記載された方法で、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、および/またはIREG1 遺伝子の発現量を調べる。その発現量からコントロールと比べて5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、および/またはIREG1 遺伝子の発現量が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上変動している培養系に添加した被験物質を、軟骨障害の緩和、抑制(改善、治療)する候補化合物として選択する。
【0217】
実施例7 :受容体結合阻害活性の測定
受容体結合阻害活性の測定は以下の手順で行うことができる。
1)12穴組織培養用プレートにて培養した本発明タンパク質(受容体)発現CHO細胞を、緩衝液(Hanks’ Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたものなどを用いることができる。)1mlで2回洗浄した後、測定用緩衝液を各穴に加える。
2)10−3〜10−10Mの適当な濃度に調製した被験化合物溶液(通常溶媒には水もしくは緩衝液が用いられるが、溶解度に応じてエタノールやDMSOを添加することもできる。)5μlを加えた後、標識したリガンド5μlを加え、室温で1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには、被験化合物の代わりに10−3Mのリガンドを5μl加えておく。
3)反応液を除去し、1mlの緩衝液(前記と同じものを使用できる。)で3回洗浄する。細胞に結合した標識したリガンドを0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
4)液体シンチレーションカウンターを用いて放射活性を測定する。阻害率については、以下の式[数1]で求めることができる。
[数1]
PMB(Percent Maximum Binding)= [(B−NSB)/(B0−NSB)]X100
(B:被験化合物を加えたときの値、NSB:Non−Specific BInding(非特異的結合量)、B0:最大結合量)
尚、標識したリガンドとしては、以下のものをそれぞれ用いることができる。すなわち、
5−HT7: [3H]5−HT
EDG2:1−Oleoyl[oleoyl−9,10−3H]−LPA
EDG1:[3H]S−1−P
ET(A):[125I]Endothelin−1, [3H]BQ123
PTH2R:[125I](Nle8,Nle18,Tyr34)PTH(1−34)amide
VIP1R:[125I−Tyr10]VIP
【0218】
実施例8 5−HT7 受容体活性を指標としたスクリーニング方法
5−HT7受容体活性の測定は、文献(Anal Biochem270:242−8,1999, PNAS95:352−7,1998)に記載された方法、すなわちfluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いる方法で、以下のように行うことができる。
まず、当業者に公知の方法で5−HT7受容体遺伝子の発現ベクターとGqs5蛋白(Gqs5はC末端に、Gs蛋白のC末端アミノ酸5残基を置換したGq蛋白)の発現ベクターを作製する。
細胞株はCHO−K1細胞を用い、上記発現ベクターを遺伝子導入試薬Lipofectoamine(Invitrogen社)にて共導入する。24時間後、1ウエル当たり50,000細胞を96穴黒色プレート(Corning社)に播きこむ。24時間後、培養上清をアスピレーションで除去し、20mM HEPES, 2.5mM probenecid(Sigma社:50% Hank’s balanced salt solution (HBSS), 50% 1N NaOHに溶解した250mMのストック溶液を用いる), 4μM Fluo−3 AM(Molecular Probe社:10% pluronic acidの含まれたDMSOに溶解した4mMのストック溶液を用いる)を含んだF12培養培地を100μl/well加える。(probenecidは、dyeを細胞内に保持するためmultiple drug−resistance pumpの阻害剤として用いる。)CO2インキュベーターにて1時間培養した後、20mM HEPES, 2.5mM probenecidを含んだHBSSで4回洗浄する。ただし最後の洗浄時には90μlの液を残す形で行う。アゴニストリガンドである5−HT(5−hydroxytryptamine hydrochloride)は20mM HEPES, 2.5mM probenecidを含んだHBSSで2μMに希釈し90μl加えることで終濃度1μMとし、添加した2分後までFLIPRにて計測する。検出は488nmのアルゴンレーザーで細胞を励起し、カルシウムイオンが結合したfluo−3の蛍光を500−560nmの波長でとらえることで行う。リガンド添加直後から60秒後までの蛍光強度(Vref)から、添加前の値(V0)をバックグラウンドとして差し引いた値を活性とする。被験物質を添加する場合はアゴニストリガンドを添加する前に添加し、その後アゴニストリガンドを添加し、リガンド添加直後から60秒後までの蛍光強度(Vsam)から、添加前の値(V0)をバックグラウンドとして差し引いた値と、被験物質非存在下での活性(Vref−V0)とを比較することにより、被験物質が、5−HT7受容体活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質が5−HT7受容体活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=(Vsam−V0)/(Vref−V0)
また、被験物質のアゴニスト作用を測定する場合、上記においてアゴニストリガンドのかわりに被験物質を用いて上記の測定を行う。
【0219】
上記と同様の方法で、アゴニストリガンドにPTH(1−34)(Parathyroid hormone)を用いることにより、PTH2R活性を指標としたスクリーニングを、アゴニストリガンドにVIPを用いることによりVIP1R活性を指標としたスクリーニングを、実施することができる。
【0220】
実施例9 EDG2 活性を指標としたスクリーニング方法
EDG2活性の測定は、本受容体がリガンドであるLPAにより活性化すると細胞内カルシウムが上昇することを利用しfluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて、以下のように行うことができる。
まず、当業者に公知の方法でEDG2遺伝子の発現ベクターとGqi5蛋白(Gqi5はC末端に、Gi蛋白のC末端アミノ酸5残基を置換したGq蛋白)の発現ベクターを作製する。
CHO−K1細胞に発現ベクターを遺伝子導入試薬Lipofectoamine (Invitrogen社)にて共導入する。24時間後、1ウエル当たり50,000細胞を96穴黒色プレート(Corning社)に播きこむ。24時間後、培養上清をアスピレーションで除去し、20mM HEPES, 2.5mM probenecid(Sigma社:50% Hank’s balanced salt solution (HBSS), 50% 1N NaOHに溶解した250mMのストック溶液を用いる), 4μM Fluo−3 AM(Molecular Probe社:10% pluronic acidの含まれたDMSOに溶解した4mMのストック溶液を用いる)を含んだF12培養培地を100μl/well加える。(probenecidは、dyeを細胞内に保持するためmultiple drug−resistance pumpの阻害剤として用いる。)CO2インキュベーターにて1時間培養した後、20mM HEPES, 2.5mM probenecidを含んだHBSSで4回洗浄する。ただし最後の洗浄時には90μlの液を残す形で行う。アゴニストリガンドであるLPAは20mM HEPES, 2.5mM probenecidを含んだHBSSで20μMに希釈し90μl加えることで終濃度20μMとし、添加した2分後までFLIPRにて計測する。検出は488nmのアルゴンレーザーで細胞を励起し、カルシウムイオンが結合したfluo−3の蛍光を500−560nmの波長でとらえることで行う。リガンド添加直後から60秒後までの蛍光強度(Vref)から、添加前の値(V0)をバックグラウンドとして差し引いた値を活性とする。被験物質を添加する場合はアゴニストリガンドを添加する前に添加し、その後アゴニストリガンドを添加し、リガンド添加直後から60秒後までの蛍光強度(Vsam)から、添加前の値(V0)をバックグラウンドとして差し引いた値と、被験物質非存在下での活性(Vref−V0)とを比較することにより、被験物質が、EDG2受容体活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がEDG2受容体活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=(Vsam−V0)/(Vref−V0)
EDG1活性についても、アゴニストリガンドとしてS1P(Sphingosine−1−phasphate)を用いることにより、また、EDNRA活性についても、アゴニストリガンドとしてET(Endothelin)を用いることにより、同様に測定することができる。
【0221】
実施例10 GPR88(GPR88)の機能(活性)に基くスクリーニング方法
GPR88の活性測定は、G蛋白共役型受容体がGDP存在下でGTPアナログであるGTPγSを結合する性質を利用して、以下のように行うことが出来る。
GPR88の発現ベクターを作製し、CHO−K1細胞・HEK293細胞等に過剰発現させる。超遠心により細胞の膜画分を調製し−80℃で保存する。1mM DTT, 1mM NgCl2, 1mM EGTA, 100mM NaCl, 100μM GDPを含む50mM Tris−Cl(pH.7.4)バッファーに10μgの膜蛋白・被験物質を混合して最終容量500μlとし、30℃で30分間インキュベートする。50μlの[35S]−GTPγSを終濃度0.25nMになるよう混合し、さらに30℃で30分間インキュベートする。結合反応はグラスフィルター(WhatmanGF/Bグレード)上で氷冷バッファー(50mM Tris−Cl,1mM MgCl2, pH.7.4)にて5回洗浄することにより終了する。液体シンチレーションカウンターにてフィルター上の放射能をカウントし、50μMの放射能標識されていないGTPγSをサンプルとしたときの値をバックグラウンドとして特異的結合値を産出する。
被験物質存在下での結合値(Vsam)と、被験物質非存在下での結合値(Vref)との比より、GPR88活性を制御する候補物質を選別することができる。すなわち、
GPR88制御率=Vsam/Vref x100 (%)
【0222】
実施例11 CLIC2 (CLIC2)の機能(活性)に基くスクリーニング方法
CLIC2の活性測定は、ヨウ素をあらかじめ取り込ませておいた細胞からのヨウ素放出を指標に行うことが出来る。すなわち、136mM NaI, 4mM KNO3, 2mM CaNO3/4H2O, 2mM MgNO3/6H2O, 11mM glucose, 20mM HEPESからなるpH7.4の窒素リンゲルloading buffer 1mlを用い、5% CO2, 37℃で1時間培養する。その後、被験物質の溶液もしくは溶媒のみ(ブランク)を添加し、浸透圧をSucroseで300mOsmに調製した窒素リンゲルefflux buffer(110mM NaNO3, 4mM KNO3, 2mM CaNO3/4H2O, 2mM MgNO3/6H2O, 11mM glucose, 20mM HEPES, pH7.4)を用い、細胞を合計で15秒間、3回洗浄する。この洗浄操作の後、細胞からのヨウ素放出を等張液あるいは228mOsmに調製した低張液にて、ヨウ素検出電極(Fisher社)を用いた5分以上の電圧(mV)変化を指標として測定することができる。被験物質を添加した場合の電圧変化(Vsam)とブランクにおける電圧変化(Vref)を比較することにより、被験物質がCLIC2 (CLIC2)の活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、該活性制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
【0223】
実施例12 SCN2Aの機能(活性)に基づくスクリーニング方法
SCN2Aの活性測定は、このチャネルが活性化される際に細胞内カルシウムの増加が起こる性質を利用して文献記載(PNAS98:7599−604,2001)の方法に従いfluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて行う。すなわち、96穴プレートに細胞をまきこみ、翌日接着を確認した後、1ウエル当たり100 μlのdye loading medium(4μM fluo−3 AM, 0.04% pluronic acidの含まれたLocke’s buffer, Locke’s buffer :154mM NaCl/5.6mM glucose/0.1mM glycine, pH.7.4)に培地交換し1時間培養する。その後、各ウエル200 μlのLocke’s bufferで4回洗浄後、1ウエル当たり100 μl のLocke’s buffer を入れ、FLIPR (Molecular Devices社)に載せる。
アゴニストリガンドであるantillatoxinは終濃度100nMとし、添加した2分後までFLIPRにて計測する。検出は488nmのアルゴンレーザーで細胞を励起し、カルシウムイオンが結合したfluo−3の蛍光を500−560nmの波長でとらえることで行う。リガンド添加直後から60秒後までの蛍光強度(Vref)から、添加前の値(V0)をバックグラウンドとして差し引いた値を活性とする。被験物質を添加する場合はアゴニストリガンドを添加する前に添加し、その後アゴニストリガンドを添加し、リガンド添加直後から60秒後までの蛍光強度(Vsam)から、添加前の値(V0)をバックグラウンドとして差し引いた値と、被験物質非存在下での活性(Vref−V0)とを比較することにより、被験物質が、SCN2A活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がSCN2A受容体活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=(Vsam−V0)/(Vref−V0)
また、被験物質のアゴニスト作用を測定する場合、上記においてアゴニストリガンドを用いず被験物質のみを用いて上記の測定を行う。
【0224】
実施例13 ATA1の機能(活性)に基くスクリーニング方法
ATA1活性の測定は、文献(Biochem. Biophys. Res. Commun., 273, 1175−1179,2000)記載に準じて行う。すなわち、トランポートバッファー(25mM Tris/Hepes (pH 8.5)、140mM NaCl、5.4mM KCl、1.8mM CaCl2、0.8mM MgSO4、および5mM glucose)中において、ヒトATA1を発現するヒト培養細胞(Human retinal pigment epithelial cell)に16μM [14C]MeAIB(American Radiolabeled Chemicals)を基質として添加し、37℃で15分間静置したのち、細胞外液を交換し、細胞内に取り込まれた放射活性をβ−カウンターにて計測する。内在性のトランスポーター活性を空ベクターのみを導入した細胞を用いて測定し、これを差し引くことにより導入ATA1活性を求めることができる。被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、被験物質を添加した場合のATA1活性(Vsam)と、被験物質非存在下でのATA1活性(Vref)とを比較することにより、被験物質が、ATA1活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がATA1活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
【0225】
実施例14 ABCA1の機能(活性)に基づくスクリーニング方法
ABCA1活性の測定は文献(J. Clin. Invest., 104, R25, 1999)記載の方法にて実施することができる。すなわち、ヒトABCA1を発現する培養細胞(RAW264.7(American Type Culture Collection)にヒトABCA1 cDNA挿入pcDNA3.1(Invitrogen)発現ベクターを安定導入した細胞)を2mg/ml fatty acid−free BSAを含有するDMEM(Sigma Chemical Co.)で馴化後、0.5μCi/ml[3H]cholesterol(基質)および50μg/ml acetylated LDLを添加、24時間保温して細胞を標識後、5μg/ml Apo A−I(Biodesign International)を6時間添加した細胞の培地中の放射活性とApo A−I無添加の細胞の、培地中の放射活性を測定することによりApo A−I特異的なcholesterol流出量を測定することができる。内在性のトランスポーター活性を空ベクターのみを導入した細胞を用いて測定し、これを差し引くことにより導入ABCA1活性を求める。被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、被験物質を添加した場合のABCA1活性(Vsam)と、被験物質非存在下でのABCA1活性(Vref)とを比較することにより、被験物質が、ABCA1活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がABCA1活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
【0226】
実施例15 ABCG2の機能(活性)に基づくスクリーニング方法
ABCG2活性の測定は文献(Proc. Natl Acad. Sci. USA., 95, 15665, 1998)記載の方法にて実施することができる。すなわち、ABCG2を発現する培養細胞(MCF−7(American Type Culture Collection)にABCG2 cDNA挿入pcDNA3.1(Invitrogen)発現ベクターを安定導入した細胞)に1μg/ml daunorubicin(SIGMA−ALDRICH)を添加し、37℃で180分間培養したのち、細胞を生理食塩水で洗浄、細胞外液を37℃に加温したdaunorubicin(基質)を含まない培地に交換し、16時間培養後、細胞内に保持されたdaunorubicin量をflow cytometry(Becton Dickinson)にて計測することができる。内在性のトランスポーター活性を空ベクターのみを導入した細胞を用いて測定し、これを差し引くことにより導入ABCG2活性を求めることができる。被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、その後基質を添加し、被験物質を添加した場合の蛍光強度(Vsam)から、基質添加前の値(V0)をバックグラウンドとして差し引いた値と、被験物質非存在下での活性(Vref−V0)とを比較することにより、被験物質が、ABCG2活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がABCG2活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=(Vsam−V0)/(Vref−V0)
【0227】
実施例16 GAT1の機能(活性)に基くスクリーニング方法
GAT1活性の測定は文献(Proc. Natl Acad. Sci. USA., 95, 15665, 1998)記載の方法にて実施することができる。すなわち、GAT1を発現する培養細胞(COS−7(American Type Culture Collection)にヒトGAT1 cDNA挿入pcDNA3.1(Invitrogen)発現ベクターを安定導入した細胞)をHEPES−buffered saline(HBS; 20mM HEPES(pH 7.4), 150mM NaCl, 1mM CaCl2, 10mM glucose, 5mM KCl, 1mM MgCl2)で洗浄、細胞外液を37℃に加温した培地に交換し、10分間37℃にて保温後、50nM[3H]GABA(Du Pont−New England Nuclear)を基質として添加し、37℃で10分間保温したのち細胞内に保持されたGABA 量をβ−カウンターにて計測する。内在性のトランスポーター活性を空ベクターのみを導入した細胞を用いて測定し、これを差し引くことにより導入GAT1活性を求めることができる。
被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、被験物質を添加した場合のGAT1活性(Vsam)と、被験物質非存在下でのGAT1活性(Vref)とを比較することにより、被験物質が、GAT1活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がGAT1活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
上記制御率が小さい被験物質、すなわち、GAT1活性を阻害する被験物質を、軟骨疾患治療剤候補化合物として選抜することができる。
【0228】
実施例17 PLTPの機能(活性)に基くスクリーニング方法
PLTP活性の測定は文献(J. Clin. Invest., 103, 907, 1999) 記載の方法にて実施することができる。すなわち、10nM [3H]phosphatidylcholine(L−a−dipalmitoyl− [2−palmitoyl−9,10−3H(N)]−phosphatidylcholine)を基質として含む鶏卵phosphatidylcholine 10μmolを窒素気流下にて乾燥後、1mlのresuspension buffer(10mM Tris(pH7.4)、150mM NaCl, 1mM EDTA)にて懸濁し、超音波プローブにて拡散後、スピンダウンし、標識phospholipid vesicleを調製する。マウス血漿3μlと該標識phospholipid vesicle (125nmol phosphatidyl choline)、HDL(250μg protein)を混合し、トータルボリューム400μlで37℃、1時間保温する。その後、300μlのprecipitation buffer(500mM NaCl、215mM MnCl2, 445U/ml heparin)を添加し、vesicleを沈殿させ、上清500μlの放射活性を液体シンチレーションカウンターにて計測することによりPLTP活性を測定することができる。
被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、被験物質を添加した場合の放射活性(Vsam)と、被験物質非存在下での活性(Vref)とを比較することにより、被験物質が、PLTP活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がPLTP活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
【0229】
実施例18 ENT1の機能(活性)に基くスクリーニング方法
ENT1活性の測定は文献(Nature Medicine., 3, 89, 1997)記載の方法にて実施することができる。すなわち、Xenopus laevis (Hamamatsu Jikkenn)のoocytesの小塊をカルシウムイオンフリーのORII solution(82.5mM NaCl, 2mM KCl, 1mMMgCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)中において2mg/ml collagenase(SIGMA−ALDRICH)にて90分間2回処理し、ORII solutionにて1回洗浄、改変Barth’s solution(88mM NaCl, 1mM KCl, 0.82mM MgSO4, 0.4mM CaCl2, 0.33mM Ca(NO3)2, 2.4mM NaHCO3, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)で洗浄することによりfollicular layerを除去後、oocyteを改変Barth’s solution 中にて18℃で一晩静置する。StageV oocyteにDEPC処理水にて1mg/mlに濃度調整したヒトENT1 cRNA 10ngをmanual injector(Narishige)にて注入する。20℃にて3日間培養した後、10μM [14C]adenosine(Amersham Life Sciences)を基質として含むtransport buffer(1μM deoxycoformycin, 100mM NaCl, 2mM KCl, 1mM CaCl2, 1mM MgCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)に溶液を交換し、20℃で60分間保温した保温した後、oocyteを氷冷transportbufferで6回洗浄する。各々のoocyteをシンチレーションバイアルに入れ、0.2mlの10% SDSにて溶解後、5mlの液体シンチレーションカクテル(DuPont−New England Nuclear)を添加・混合することにより、oocyte内に取り込まれた放射活性を液体シンチレーションカウンターにて計測する。ヒトENT1 cRNAの代わりにDEPC処理水を注入したoocyteを用いて同様に測定し、これを差し引くことにより導入ENT1 活性を求めることができる。
被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、被験物質を添加した場合のENT1活性(Vsam)と、被験物質非存在下でのENT1活性(Vref)とを比較することにより、被験物質が、ENT1活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がENT1活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
【0230】
実施例19 NPT3の機能(活性)に基くスクリーニング方法
NPT3活性の測定は文献(Biochem. J., 305, 81, 1995)に記載の方法にて実施することができる。すなわち、Xenopus laevis (Hamamatsu Jikkenn)のoocytesの小塊をカルシウムイオンフリーのORII solution(82.5mM NaCl, 2mM KCl, 1mMMgCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)中において2mg/ml collagenase(SIGMA−ALDRICH)にて90分間2回処理し、ORII solutionにて1回洗浄、改変Barth’s solution(88mM NaCl, 1mM KCl, 0.82mM MgSO4, 0.4mM CaCl2, 0.33mM Ca(NO3)2, 2.4mM NaHCO3, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)で洗浄することによりfollicular layerを除去後、oocyteを改変Barth’s solution 中にて18℃で一晩静置した。StageV oocyteにDEPC処理水にて1mg/mlに濃度調整したNPT−3 cRNA 5ngをmanual injector(Narishige)にて注入する。20℃にて3日間培養した後、ナトリウムイオンフリーuptake solution I(100mM choline choride, 2mM KCl, 1mM CaCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)にて洗浄し、ナトリウムイオン含有uptake solution(100mM NaCl, 2mM KCl, 1mM CaCl2, 1mM MgCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.5, 0.5mM KH2PO4(30μCi/ml))中にて60分間保温した後、oocyteを5mM KH2PO4を添加した氷冷ナトリウムイオンフリーuptake solution Iにて3回洗浄した。各々のoocyteをシンチレーションバイアルに入れ、0.2mlの10% SDSにて溶解後、5mlの液体シンチレーションカクテル(DuPont−New England Nuclear)(基質)を添加・混合することにより、oocyte内に取り込まれた放射活性を液体シンチレーションカウンターにて計測する。ナトリウムイオン非依存性のトランスポーター活性をナトリウムイオンフリーuptake solution II(100mM choline chloride, 2mM KCl, 1mM CaCl2, 1mM MgCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.5, 0.5mM KH2PO4(30μCi/ml))を用いて測定し、これを差し引くことにより導入NPT3活性を求めることができる。
被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、被験物質を添加した場合のNPT3活性(Vsam)と、被験物質非存在下でのNPT3活性(Vref)とを比較することにより、被験物質が、Sodium phosphate transporter活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がNPT3活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
【0231】
実施例20 IREG1の機能(活性)に基くスクリーニング方法
IREG1活性の測定は文献(Mol. Cell, 5, 299, 2000)記載の方法にて実施することができる。すなわち、Xenopus laevis (Hamamatsu Jikkenn)のoocytesの小塊をカルシウムイオンフリーのORII solution(82.5mM NaCl, 2mM KCl, 1mM MgCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)中において2mg/ml collagenase(SIGMA−ALDRICH)にて90分間2回処理し、OR II solutionにて1回洗浄、改変Barth’s solution(88mM NaCl, 1mM KCl, 0.82mM MgSO4, 0.4mM CaCl2, 0.33mM Ca(NO3)2, 2.4mM NaHCO3, 10mM Hepes/Tris, pH7.5)で洗浄することによりfollicular layerを除去後、oocyteを改変Barth’s solution 中にて18℃で一晩静置した。Stage VI oocyteにDEPC処理水にて0.5mg/mlに濃度調整したヒト プロトン共役型2価カチオントランスポーターDCT1(GenBank accession number NM_000617) cRNA 25ngおよびIREG1cRNA 25ngをmanual injector(Narishige)にて注入した。20℃にて24時間培養した後、Fe55(NEN)を含む uptake solution(98mM NaCl, 2.0mM KCl, 0.6mM CaCl2, 1.0mM MgCl2, 1.0mM ascorbic acid, 10mM HEPES/Tris, pH6.0)に溶液を交換し、室温で30分間保温することによりFe55をプレロードする。oocyteをFe55(NEN)を含まない uptake solutionで3回洗浄し、96ウェルプレートに移した後、50μlのefflux solution(98mM NaCl, 2.0mM KCl, 0.6mM CaCl2, 1.0mM MgCl2, 10mM Hepes/Tris, pH7.4)中にて保温する。60分間保温した後、efflux solutionを除去し、0.2mlの10% SDSにて溶解後、5mlの液体シンチレーションカクテル(DuPont−New England Nuclear)(基質)を添加・混合することにより、oocyte内に保持された放射活性を液体シンチレーションカウンターにて計測する。IREG1非依存性のトランスポーター活性をDCT1(GenBank accession number NM_000617) cRNA 25ngのみを注入したoocyteを用いて同様に計測し、IREG1依存性のトランスポーター活性からIREG1非依存性のトランスポーター活性を差し引くことにより導入IREG1活性を求めることができる。
被験物質を添加する場合は基質を添加する前に添加し、被験物質を添加した場合のIREG1活性(Vsam)と、被験物質非存在下でのIREG1活性(Vref)とを比較することにより、被験物質が、IREG1活性を制御するか否かを評価することができる。すなわち、被験物質がIREG1活性を制御する場合、その制御率は、下記の式により算出する。
制御率=Vsam/Vref
【0232】
実施例21 HEK−293 細胞で発現した 5H−7 受容体結合阻害活性の測定
ラット5−HT7受容体を発現するHEK−293細胞を用いて、ラット5−HT7受容体を発現するHEK−293細胞を、公知の方法により生育させる。培地を除去することにより細胞を回収し、燐酸緩衝生理食塩水(PBS)ですすぎ、次いで、2.5mMのEDTAを含有するPBSを加える。細胞を遠心チューブにて、40,000xgで10分間遠心機にかける。上澄を捨て、この時点で残ったペレットをホモゲナイザーで50mMのトリスHClバッファー(4℃でpH7.4)中で均質化する。ホモジネートを、40,000xgで更に10分間遠心機にかける。上澄を捨て、ペレットを、新たな氷冷50mMのトリスHCl(4℃でpH7.4)バッファー中に再懸濁し、再度遠心機にかける。得られるペレットを、測定用バッファー(0.5mMのEDTA、10mM硫酸マグネシウム、2mM塩化カルシウムを含有する50mMトリス塩酸バッファー(25℃でpH7.7))にペレット湿潤重量5−15mg/mlの最終濃度で(2X最終濃度)再懸濁する。
測定用プレートに得られたペレット懸濁液(初めの湿潤重量5−15mg/mL)100μL、50μLの[3H]−5−CT(0.4nM最終濃度)、および50μLの被験物質(またはバッファー)を加える。これを2時間インキュベートする。ワットマンGF/Bガラス繊維フィルターで濾過することにより、インキュベーションを終える。フィルターの放射能を液体シンチレーション計数により定量する。特異的結合のパーセント阻害を、各濃度の被験物質について算定し、IC50値(特異的結合の50%を阻害する濃度)を決定する。
【0233】
実施例22 5−HT7 受容体が仲介するアデニル酸シクラーゼ活性
ラット5−HT7受容体を発現するHEK−293細胞を、2.5mMのEDTAを含有する燐酸緩衝生理食塩水に培地を置き替えることにより、細胞を回収する。ホモジネートを、35,000xgで10分間4℃で遠心分離する。ペレットを、チューブ当たり40マイクログラム蛋白質の最終蛋白質濃度になるように、1mMのEGTAを含有する100mMのHEPESバッファー(pH7.5)に再懸濁する。
4.0mMのMgCl2、0.5mMのATP、1.0mMのcAMP、0.5mMのIBMX、10mMのホスホクレアチン、0.31mg/mLのクレアチンホスホキナーゼ、および100μMのGTP、0.5−1マイクロキュリーの[32P]−ATPを、これらの最終濃度になるように反応液を調製する。
20μLの細胞懸濁液、20μLの被験物質(またはバッファー)および40μLの反応液を混合し37℃で15分間インキュベーションする。40,000dpm[3H]−cAMPを含有する100μLの2%SDS、1.3mMのcAMP、45mMのATP溶液を添加してインキュベーションを終了し、cAMP回収量を測定する。[32P]−ATPおよび[32P]−cAMPを分離し(Salomon, Analytical Biochemistry 58: 541−548, 1974の方法を用いることができる。)、放射能を、液体シンチレーション計数により定量する。
【0234】
実施例23 ラット十字靭帯切断モデルによる薬効評価
EDG2アゴニスト、ET(A)アンタゴニスト、VIP1RアゴニストおよびGAT1阻害剤の変形性関節症に対する治療効果を、ラット十字靭帯切断変形性関節症モデルを用いて評価した。
7週齢のCrj:CD(SD)IGS(SPF)系雄ラットを用い、実施例1に記載の方法により変形性関節症発症モデル動物を作製した。EDG2アゴニストであるリゾフォスファチディック アシッド(lysophosphatidic acid;LPA)(シグマ社製;カタログ番号 L7260)、ET(A)アンタゴニストであるBQ−123(シグマ社製;カタログ番号 B150)、VIP1RアゴニストであるVIP(シグマ社製;カタログ番号 V6130)およびGAT1阻害剤であるCI966(TOCRIS社製;カタログ番号 1296)を、十字靭帯切断手術後7〜27日まで隔日で11回、膝関節腔内投与(0.05mL/body)した。最終投与の翌日にモデル作製部位である左側膝関節を摘出し、大腿骨及び脛骨の内側及び外側顆の関節軟骨病変を病理組織学的に評価した。対照群として生理食塩液(大塚生食注、Lot No.K2C85,大塚製薬)投与群を設定し、この対照群との比較により薬効を評価した。
病理組織学的評価は、公知の評価基準(菊地ら:応用薬理、44、547−557(1992)に基づく)により行った。
すなわち軟骨病変の指標である各関節軟骨の構造変化(評点0〜10)、浅在帯細胞変化(評点0〜2)、中間帯及び深在帯細胞変化(評点0〜10)、サフラニンO染色性低下(評点0〜4)及びパンヌス形成(評点0〜3)をそれぞれ評価し、その合計評点(最大29点)を算出した。結果を表3に示した。
【表2】
対照群には,大腿骨関節軟骨の外側顆及び内側顆で合計評点が3.7及び4.1,脛骨関節軟骨の外側顆及び内側顆で合計評点が8.6及び9.6の軟骨病変が認められた。これら変化を示した対照群と比較し、LPA投与群では大腿骨関節軟骨の内側顆および脛骨関節軟骨の内側顆で合計評点がそれぞれ2.1及び4.6といずれも有意に低下した。またBQ−123投与群では脛骨関節軟骨の内側顆で合計評点が4.4、VIP投与群では脛骨関節軟骨の外側顆および内側顆で合計評点がそれぞれ4.3及び3.3、CI966投与群では大腿骨関節軟骨の内側顆および脛骨関節軟骨の外側顆および内側顆で合計評点がそれぞれ2.1、4.4及び3.0と有意に低下した。
以上の結果から、EDG2アゴニストであるLPA、ET(A)アンタゴニストであるBQ−123、VIP1RアゴニストであるVIPおよびGAT1阻害剤であるCI966は、いずれも関節軟骨病変抑制作用を有することが明らかとなった。
【0235】
実施例24 未分化間葉系細胞の軟骨細胞への分化に対する GAT1 阻害剤の薬効
マウス未分化間葉系細胞ATDC5(理研;RCB0565)は増殖条件(5%ウシ胎児血清(GIBCO)含有 DME/F12培地(シグマ)、5%CO2、37℃)から分化条件(5%ウシ胎児血清、10μg/mlウシインスリン(和光純薬)、10μg/mlヒトトランスフェリン(Boehringer Mannheim)、30nM sodium selenite(Sigma)含有αMEM(GIBCO)、3%CO2、37℃)にシフトさせることにより軟骨細胞に分化することが知られている(CELL STRUCTURE & FUNCTION, 25, 195−204, 2000)。軟骨細胞は未分化間葉系細胞と比較して酸性ムコ多糖合成活性が高いため、酸性ムコ多糖量を指標に軟骨細胞への分化程度を定量化することができる。そこで、これらの公知の性質に基いて、GAT1阻害剤:CI966の軟骨細胞への分化に対する効果を調べた。
すなわち、増殖条件で培養したATDC5細胞をDulbecco’s Phosphate Buffered Saline(GIBCO)にて洗浄、Trypsin/EDTA(GIBCO)にて剥がした後、増殖培地で3x105cells/mlに懸濁し、24ウェルプレート(IWAKI)に各ウェルあたり1mlずつまいた。増殖条件で2日間培養した後、分化誘導条件にシフトさせ、以後2日置きに培地交換をおこなった。CI966の効果の測定は分化誘導時にCI966(TOCRIS;カタログ番号 1296)をそれぞれ0.1μM、1μM、10μMを含有する分化培地を用いた点以外は上記同様に実施した。分化条件にて15日間培養した後、簡易型・酸性ムコ多糖定量キット(ホクドー;カタログ番号OP03)を用いて軟骨細胞から産生された酸性ムコ多糖量を波長650nmの吸光度(OD650)で測定することによりCI966の軟骨細胞への分化に対する効果を定量した。対照群として化合物を含有しない分化誘導条件群を設定し、この対照群との比較により薬効を評価した。
酸性ムコ多糖増加率(%)=100*{(A/C)−1} A=実験群における吸光度(600nm)、C=対象群における吸光度(600nm)
その結果、対照群と比較して10μM GAT1阻害剤:CI966で14.2%と有意に酸性ムコ多糖量が増加した。
以上の結果から、GAT1阻害剤:CI966は、軟骨分化促進作用を有することが明らかとなった。以上の知見から、GAT1阻害剤が軟骨障害治療剤となり得ることがわかった。
【表3】
*P<0.05 (t−検定、N=3)
【0236】
【発明の効果】
本発明によって、ラット十字靭帯切断モデルの障害軟骨において、正常軟骨と比較して特異的に増大している遺伝子(5−HT7遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、ATA1遺伝子、ABCA1、PLTP遺伝子、NPT3遺伝子、および、IREG1遺伝子)が明らかになった。また、ラット十字靭帯切断モデルの障害軟骨において、正常軟骨と比較して特異的に減少している遺伝子(EDG2遺伝子、SCN2A遺伝子、ABCG2 遺伝子、ENT1 遺伝子、および、GAT1 遺伝子)が明らかになった。
かかる遺伝子は軟骨障害の遺伝子診断に用いられるマーカー遺伝子(プローブ、プライマー)として有用である。該マーカー遺伝子の利用によれば、軟骨障害が検出でき、またその病因の究明および高精度の診断が可能であり、これらによりより適切な治療を施すことも可能となる。
また、上記遺伝子の発現と軟骨障害との関連から、該遺伝子の発現を制御する化合物は、軟骨障害の治療薬として有用と考えられる。例えば、5−HT7、EDG2またはVIP1Rの機能亢進剤、及びET(A)またはGAT1の機能抑制剤が軟骨障害治療薬として有効である。
従って、これらの遺伝子の発現の変動、または当該遺伝子がコードするタンパク質の機能(活性)変動を指標とすることによって、軟骨障害の治療薬となり得る候補薬をスクリーニングし選別することが可能である。本発明は、このような軟骨障害治療薬の開発技術をも提供する。
【0237】
【配列表】
Claims (27)
- 配列番号1に記載の5−HT7(5−Hydroxytryptamine受容体7)遺伝子の塩基配列、配列番号3に記載のEDG2(Endothelial differentiation gene 2)遺伝子の塩基配列、配列番号5に記載のEDG1(Endothelial differentiation gene 1)遺伝子の塩基配列、配列番号7に記載のET(A)(Endothelin receptor type A) 遺伝子の塩基配列、配列番号9に記載のGPR88(G−protein coupled receptor88)遺伝子の塩基配列、配列番号11に記載のPTH2R(Parathyroid hormonereceptor2)遺伝子の塩基配列、配列番号13に記載のVIP1R(Vasoactive intestinal peptide receptor1)遺伝子の塩基配列、配列番号15に記載のCLIC2(Chloride intracellular channel2)遺伝子の塩基配列、配列番号17に記載のSCN2A(Voltage−gated sodium channel type II alpha subunit)遺伝子の塩基配列、配列番号19に記載のATA1(Amino acid transporter system A1)遺伝子の塩基配列、配列番号21に記載のABCA1(ATP−binding cassette, sub−family A,member1)遺伝子の塩基配列、配列番号23に記載のABCG2(ATP−binding cassette, sub−family G, member2)遺伝子の塩基配列、配列番号25に記載のGAT1(GABA transporter1)遺伝子の塩基配列、配列番号27に記載のPLTP(Phospholipid transfer protein)遺伝子の塩基配列、配列番号29に記載のENT1(Equilibrative nucleoside transporter1)遺伝子の塩基配列、配列番号31に記載のNPT3(Sodium phosphate transporter3)遺伝子の塩基配列、または、配列番号33に記載のIREG1(Iron−regulated transporter1)遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる、軟骨障害の疾患マーカー。
- 軟骨障害の検出においてプローブまたはプライマーとして使用される請求項1記載の疾患マーカー。
- 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、軟骨障害の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドと請求項1または2に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果に基づいて、軟骨障害の罹患を判断する工程。 - 配列番号2に記載の5−HT7のアミノ酸配列、配列番号4に記載のEDG2のアミノ酸配列、配列番号6に記載のEDG1のアミノ酸配列、配列番号8に記載のET(A)のアミノ酸配列、配列番号10に記載のGPR88のアミノ酸配列、配列番号12に記載のPTH2Rのアミノ酸配列、配列番号14に記載のVIP1Rのアミノ酸配列、配列番号16に記載のCLIC2のアミノ酸配列、配列番号18に記載のSCN2Aのアミノ酸配列、配列番号20に記載のATA1のアミノ酸配列、配列番号22に記載のABCA1 のアミノ酸配列、配列番号24に記載のABCG2のアミノ酸配列、配列番号26に記載のGAT1のアミノ酸配列、配列番号28に記載のPLTPのアミノ酸配列、配列番号30に記載のENT1のアミノ酸配列、配列番号32に記載のNPT3のアミノ酸配列、または配列番号34に記載のIREG1のアミノ酸配列からなるタンパク質を認識する抗体を含有する、軟骨障害の疾患マーカー。
- 軟骨障害の検出においてプローブとして使用される請求項4記載の疾患マーカー。
- 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、軟骨障害の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたタンパク質と請求項4または5に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質またはその部分ペプチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果に基づいて、軟骨障害の罹患を判断する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現を制御する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質と5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞の5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現量を変動させる被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7遺伝子の発現を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質と5−HT7遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞の5−HT7遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、5−HT7遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、EDG2遺伝子の発現を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質とEDG2遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞のEDG2遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、EDG2遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、VIP1R遺伝子の発現を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質とVIP1R遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞のVIP1R遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、VIP1R遺伝子の発現量を増加させる被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むGAT1 遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質とGAT1 遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞のGAT1 遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、GAT1 遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むET(A) 遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質とET(A) 遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞のET(A) 遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、ET(A) 遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。 - 軟骨障害の改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、請求項7乃至12のいずれかに記載のスクリーニング方法。
- 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現を制御する物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質と5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を発現可能な細胞、または該細胞から調製した細胞画分とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞または細胞画分における、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現量を測定し、該発現量を、被験物質を接触させない対照細胞もしくは対照細胞画分における上記タンパク質の発現量と比較する工程、
(c) 上記(b)の比較結果に基づいて、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の発現量を変動させる被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の機能または活性を制御する物質のスクリーニング方法:
(a) 5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の上記蛋白質の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、または、IREG1の機能(活性)を変動させる被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、5−HT7の機能または活性を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a)5−HT7を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分の5−HT7の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分の5−HT7の機能(活性)を亢進する被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、EDG2の機能または活性を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a)EDG2を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のEDG2由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分のEDG2の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のEDG2の機能(活性)を亢進する被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、VIP1Rの機能または活性を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a)VIP1Rを含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のVIP1R由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分のVIP1Rの機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のVIP1Rの機能(活性)を亢進する被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、GAT1の機能または活性を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)GAT1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のGAT1由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分のGAT1の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のGAT1の機能(活性)を抑制する被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ET(A)の機能または活性を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)ET(A)を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた水溶液、細胞またはその細胞画分のET(A)由来の機能(活性)を測定し、該機能(活性)を被験物質を接触させない対照水溶液、対照細胞またはその細胞画分のET(A)の機能(活性)と比較する工程、
(c)(b)の比較結果に基づいて、上記水溶液、細胞またはその細胞画分のET(A)の機能(活性)を抑制する被験物質を選択する工程。 - 軟骨障害の改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、請求項14乃至20のいずれかに記載のスクリーニング方法。
- 5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現を制御する物質を有効成分とする軟骨障害の改善または治療剤。
- 5−HT7遺伝子、EDG2遺伝子、EDG1遺伝子、ET(A)遺伝子、GPR88遺伝子、PTH2R遺伝子、VIP1R遺伝子、CLIC2遺伝子、SCN2A 遺伝子、ATA1 遺伝子、ABCA1 遺伝子、ABCG2 遺伝子、GAT1 遺伝子、PLTP 遺伝子、ENT1 遺伝子、NPT3 遺伝子、または、IREG1 遺伝子の発現を制御する物質が請求項7乃至12のいずれかに記載のスクリーニング法により得られるものである、請求項22記載の軟骨障害の改善または治療剤。
- 5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、もしくは、IREG1の発現量または機能(活性)を制御する物質を有効成分とする、軟骨障害の改善または治療剤。
- 5−HT7、EDG2、EDG1、ET(A)、GPR88、PTH2R、VIP1R、CLIC2、SCN2A、ATA1、ABCA1、ABCG2、GAT1、PLTP、ENT1、NPT3、もしくは、IREG1の発現量または機能(活性)を制御する物質が、請求項14乃至20のいずれかに記載のスクリーニング法により得られるものである、請求項24記載の軟骨障害の改善または治療剤。
- 5−HT7、EDG2またはVIP1Rの機能(活性)亢進物質を有効成分とする、軟骨障害の改善または治療剤。
- ET(A)またはGAT1の機能(活性)抑制物質を有効成分とする、軟骨障害の改善または治療剤。
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