JP2004000149A - 新規dnaおよびその用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】新規DNAおよびその用途などの提供。
【解決手段】本発明のDNAを用いることにより、ノックアウト動物の作出が可能となる。これにより、GALPの生理作用がさらに明らかとなり、LH分泌不全に関係する各種疾患、LH過剰分泌に関係する各種疾患、肥満症、摂食障害などの予防・治療作用を有する化合物の探索・評価の実施が可能となる。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明のDNAを用いることにより、ノックアウト動物の作出が可能となる。これにより、GALPの生理作用がさらに明らかとなり、LH分泌不全に関係する各種疾患、LH過剰分泌に関係する各種疾患、肥満症、摂食障害などの予防・治療作用を有する化合物の探索・評価の実施が可能となる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラニン・レセプターに対するリガンドペプチドのゲノムDNAおよびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くのホルモンや神経伝達物質は細胞膜に存在する特異的なレセプターを通じて生体機能を調節している。これらのレセプターの多くは共役しているグアニンヌクレオチド結合性タンパク質(guanine nucleotide−binding protein、以下Gタンパク質と略称する場合がある)の活性化を通じて細胞内のシグナル伝達を行う。Gタンパク質共役型レセプターであるガラニン・レセプター・サブタイプ2(GALR2)に対するペプチド性リガンドとして、ブタ型のリガンド、ヒト型のリガンドおよびラット型のリガンド(特開2000−157273号公報)、さらにマウス型のリガンド(配列番号:16)(特許文献1 WO 01/77166号公報)が取得されている。これらのリガンドを、Galanin−like Peptide(GALP)と略称することもある(J. Biol. Chem. 274巻, 37041頁, 1999年参照)。GALPは、ガラニン・レセプターに結合するガラニンに比べてGALR2に強い親和性を示す。GALPは、血中黄体形成ホルモン(LH)濃度の特異的な上昇作用(LH分泌促進作用)を有し、その反応性はレプチン受容体に異常が見られるZucker fattyラットにおいて亢進すること、GALPはLHの分泌促進作用を有するため、LH分泌不全に関係する各種疾患の予防・治療剤として有用なこと、GALPは、そのレセプターとの親和性が高いため、GALPまたはGALPをコードするDNAの投与量が増えるとLH分泌に対し脱感作が起こる結果、LH分泌を抑制する作用も有するため、GALPはLH分泌抑制剤として、LH過剰分泌に関係する各種疾患の予防・治療薬としても用いることができることが報告されている(特許文献2 WO 02/66064号公報)。また、ラットの脳室内にGALPを投与すると、投与直後の摂餌量が著しく亢進すること(Neuroscience Letters, 322巻, 67−69頁, 2002年;J. Neuroendocrinology, 14巻, 853−860頁)、その逆に投与後24時間後の摂食量が減少すること(J. Neuroendocrinology, 14巻, 853−860頁)も報告されている。また、GALPを脳室内投与されたマウスにおいては、投与1時間後および24時間後の摂食量が何れも減少したことが報告されている(Endocrinology, 144巻, 813−822頁, 2003年)。
【特許文献1】
WO 01/77166号公報
【特許文献2】
WO 02/66064号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
GALP遺伝子の発現を破壊した動物または部分的に不完全にした動物、すなわちノックアウト(k/o)動物は、GALPの生理作用をさらに明らかにし、GALP発現異常に伴う疾患、例えば、LH分泌不全に関係する疾患、LH過剰分泌に関係する疾患、肥満症、摂食障害などの予防・治療作用を有する薬物の探索・評価を実施する上でたいへん有用である。このようなノックアウト動物は、マウスを用いて作出される場合が多いが、その作出にはゲノム上のマウスGALP遺伝子の構造を明らかにする必要があったものの、マウスGALP遺伝子の構造は明らかにされていなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、マウスGALPのゲノムDNAを見出すことに成功した。さらに、本発明者らは、この知見に基づきこのゲノムDNAを用いてノックアウト動物の作出が可能であることを見出した。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)配列番号:17で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列を含有するDNA、
(2)配列番号:9で表される塩基配列を含有する前記(1)記載のDNA、
(3)配列番号:19で表される塩基配列を含有する前記(1)記載のDNA、(4)ゲノムDNAである前記(1)記載のDNAなどを提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
配列番号:17で表される塩基配列は、マウスGALP遺伝子のエキソン1、イントロン1、エキソン2、イントロン2、エキソン3、イントロン3、エキソン4、イントロン4、エキソン5、イントロン5およびエキソン6を有する塩基配列である。
配列番号:17で表される塩基配列と実質的同一の塩基配列を含有するDNA(以下、本発明のDNAと略記することもある)としては、例えば、配列番号:17で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、マウスGALPをコードするDNAなどが挙げられる。
配列番号:17で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:17で表される塩基配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約85%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning, 2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
配列番号:17で表される塩基配列を含有するDNAとしては、例えば、配列番号:9で表される塩基配列を含有するDNAなどが挙げられる。配列番号:9で表される塩基配列を含有するDNAとしては、配列番号:19で表される塩基配列を含有するDNAなどが挙げられる。
【0007】
本発明のDNAのクローニングの手段としては、マウスGALPをコードする塩基配列の一部分を含有する合成DNAプライマーを用いたPCR法による増幅、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによる選別があげられる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、Molecular Cloning, 2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
DNAの塩基配列の置換は、PCRや公知のキット、例えば、MutanTM−super Express Km(宝酒造)、MutanTM−K(宝酒造)等を用いて、ODA−LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行うことができる。
本発明のクローン化されたDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明のDNAを含有する発現ベクターは、例えば、(イ)マウスGALPをコードするDNAを含有する、例えばcDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0008】
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0009】
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のタンパク質のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoAシグナル配列、OmpAシグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼシグナル配列、サブチリシンシグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFαシグナル配列、SUC2シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリンシグナル配列、α−インターフェロンシグナル配列、抗体分子シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明のタンパク質をコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
【0010】
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,60巻,160 (1968)〕,JM103〔Nucleic Acids Research,9巻,309 (1981)〕,JA221〔Journal of Molecular Biology,120巻,517 (1978)〕,HB101〔Journal of Molecular Biology,41巻,459 (1969)〕,C600〔Genetics,39巻,440 (1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔Gene,24巻,255 (1983)〕,207−21〔Journal of Biochemistry,95巻,87 (1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R−,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
【0011】
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213−217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔Nature,315巻,592
(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7、Vero、チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr−)細胞と略記)、マウスL細胞、マウスAtT−20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、69巻、2110 (1972);Gene、17巻、107 (1982)などに記載の方法に従って行うことができる。
【0012】
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、Molecular & General Genetics、168巻、111 (1979)などに記載の方法に従って行うことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、Methods in Enzymology、194巻、182−187(1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、75巻、1929 (1978)などに記載の方法に従って行うことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、Bio/Technology、6巻、47−55(1988)などに記載の方法に従って行うことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、Virology、52巻、456 (1973)に記載の方法に従って行うことができる。
このようにして、タンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0013】
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔Journal of Experiments in Molecular Genetics,431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77巻,4505 (1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace, T.C.C., Nature, 195, 788 (1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔Science,122巻,501 (1952)〕,DMEM培地〔Virology,8巻,396 (1959)〕,RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association,199巻,519 (1967)〕,199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外にマウスGALPを生成せしめることができる。
【0014】
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行うことができる。
本発明のタンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりタンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される場合には、培養終了後、公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるタンパク質の精製は、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行うことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
【0015】
本発明のDNAは、ノックアウト動物作成のために用いられる。
本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
(1)本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
(2)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された上記(1)記載の胚幹細胞、
(3)ネオマイシン耐性である上記(1)記載の胚幹細胞、
(4)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である上記(1)記載の胚幹細胞、
(5)ゲッ歯動物がマウスである上記(4)記載の胚幹細胞、
(6)本発明のDNAが不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
(7)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる上記(6)記載の非ヒト哺乳動物、
(8)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である上記(6)記載の非ヒト哺乳動物、
(9)ゲッ歯動物がマウスである上記(8)記載の非ヒト哺乳動物、および
(10)上記(7)記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、あるいは該DNAがコードしている本発明のタンパク質の活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的に本発明のタンパク質の発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
【0016】
本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲティングベクター上のDNA配列とターゲティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
ターゲティングベクターとしては、マウスGALP遺伝子のエキソン1、イントロン1およびエキソン2を欠損させたDNA配列を有するDNA鎖、エキソン2、イントロン2およびエキソン3を欠損させたDNA配列を有するDNA鎖などが挙げられる。好ましくは、マウスGALP遺伝子のエキソン1、イントロン1およびエキソン2を欠損させたDNA配列を有するDNA鎖である。
【0017】
また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知 EvansとKaufmanの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
【0018】
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1〜10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001〜0.5%トリプシン/0.1〜5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1〜3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり(M. J. Evans及びM. H. Kaufman, Nature, 第292巻, 154頁, 1981年;G. R. Martin, Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A. , 第78巻, 7634頁, 1981年;T. C. Doetschmanら,、Journal of embryology and experimental morphology, 第87巻, 27頁, 1985年)、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおける本発明のタンパク質の細胞生物学的検討において有用である。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
【0019】
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲティングベクター(例、マウスGALP遺伝子のエキソン1およびエキソン2を欠損させたDNA配列を有するDNA鎖、エキソン2およびエキソン3を欠損させたDNA配列を有するDNA鎖など)をマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。
本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲティングベクター上のDNA配列と、ターゲティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。
該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、本発明のタンパク質のヘテロ発現不全個体であり、本発明のタンパク質のヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔から本発明のタンパク質のホモ発現不全個体を得ることができる。
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することにより、ターゲティングベクター(例、マウスGALP遺伝子のエキソン1およびエキソン2を欠損させたDNA配列を有するDNA鎖、エキソン2およびエキソン3を欠損させたDNA配列を有するDNA鎖など)を染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のタンパク質により誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、本発明のタンパク質の生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0020】
(a)本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものがあげられる。
【0021】
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
例えば、視床下部GALP発現量の異常を来した本発明のDNA発現非ヒト哺乳動物では、摂食量の増大、摂食量の減少、ホルモン分泌または性成熟の異常などの生殖障害を引き起こすことが予想される。従って、該動物に試験化合物を投与し、その後の摂食量、血中LHレベルおよび思春期の発来(性周期の開始)などを測定し、肥満症、摂食障害またはLH分泌不全に関係する疾患に対する予防・治療作用を有する化合物を探索する。
該スクリーニング方法を用いて得られる化合物は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のタンパク質の欠損や損傷などによって引き起こされる疾患に対して予防・治療効果を有し、安全で低毒性な、例えばLH分泌不全に関係する疾患〔例、不妊症(例、月経不順、月経困難症、無月経症、体重減少性無月経症、続発性無月経症など)、月経前症候群、更年期障害、下垂体機能不全など〕、LH過剰分泌に関係する疾患(例、前立腺癌、前立腺肥大症、卵巣癌、子宮内膜症、思春期早発症、LH産生下垂体腫瘍など)、頻尿、痴呆、糖尿病、肥満症、摂食障害などの予防・治療剤として使用することができる。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
【0022】
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のタンパク質を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、該化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)の肥満症の患者においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、該化合物を注射剤の形で通常成人(体重60kgとして)の肥満症の患者に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0023】
(b)本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
【0024】
本発明のDNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、本発明のタンパク質をコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、本発明のタンパク質の発現する組織で、本発明のタンパク質の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便に本発明のタンパク質の動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、本発明のタンパク質欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物である。
【0025】
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)、塩基などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、本発明のタンパク質の発現を促進し、該タンパク質の機能を促進することができるので、例えば、LH分泌不全に関係する疾患〔例、不妊症(例、月経不順、月経困難症、無月経症、体重減少性無月経症、続発性無月経症など)、月経前症候群、更年期障害、下垂体機能不全など〕、LH過剰分泌に関係する疾患(例、前立腺癌、前立腺肥大症、卵巣癌、子宮内膜症、思春期早発症、LH産生下垂体腫瘍など)、頻尿、痴呆、糖尿病、肥満症、摂食障害などの予防・治療剤などの医薬として有用である。
また、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、本発明のタンパク質の発現を阻害し、該タンパク質の機能を阻害することができるので、例えば肥満症、LH分泌不全に関係する疾患などの予防・治療剤などの医薬として有用である。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
【0026】
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のタンパク質またはその塩を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)の肥満症の患者において、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物を注射剤の形で通常成人(体重60kgとして)の肥満症の患者に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0027】
一方、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)の不妊症の患者においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物を注射剤の形で通常成人(体重60kgとして)の不妊症の患者に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発に大きく貢献することができる。
また、本発明のDNAのプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々のタンパク質をコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にそのポリペプチドを合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポーター遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、本発明のタンパク質そのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
【0028】
本明細書において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
【0029】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
マウスGALP cDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:2〕
実施例1で用いられたプライマーmG−138Fの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
実施例1で用いられたプライマーmG−300Rの塩基配列を示す。
〔配列番号:4〕
実施例1で用いられたプライマーmG−201Fの塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
実施例1で用いられたプライマーmG−264Rの塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕
実施例1で得られたDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
実施例1で用いられたプライマー3148Fの塩基配列を示す。
〔配列番号:8〕
実施例1で用いられたプライマー3558Rの塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕
実施例1で得られたマウスGALP遺伝子エキソン1からエキソン6までの配列およびマウスGALP遺伝子のプロモーター部分を含む5’側上流配列ならびに3’側下流配列を含むマウスGALP遺伝子の全塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕
実施例1で得られたマウスGALP遺伝子配列のエキソン1の塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
実施例1で得られたマウスGALP遺伝子配列のエキソン2の塩基配列を示す。
〔配列番号:12〕
実施例1で得られたマウスGALP遺伝子配列のエキソン3の塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕
実施例1で得られたマウスGALP遺伝子配列のエキソン4の塩基配列を示す。
〔配列番号:14〕
実施例1で得られたマウスGALP遺伝子配列のエキソン5の塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕
実施例1で得られたマウスGALP遺伝子配列のエキソン6の塩基配列を示す。
〔配列番号:16〕
マウスGALPのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:17〕
マウスGALP遺伝子エキソン1、イントロン1、エキソン2、イントロン2、エキソン3、イントロン3、エキソン4、イントロン4、エキソン5、イントロン5およびエキソン6を有する塩基配列を示す。
〔配列番号:18〕
実施例2で得られたDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:19〕
実施例2で得られたマウスGALP遺伝子エキソン1からエキソン6までの配列およびマウスGALP遺伝子のプロモーター部分を含む5’側上流配列ならびに3’側下流配列を含むマウスGALP遺伝子の全塩基配列を示す。
〔配列番号:20〕
実施例3(1)で用いる5’−アンカー1FのDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:21〕
実施例3(2)で用いる5’−アンカー2FのDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:22〕
実施例3(1)で用いる3’−アンカー1RのDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:23〕
実施例3(2)で用いる3’−アンカー2RのDNAの塩基配列を示す。
【0030】
後述の実施例1で取得された大腸菌(Escherichia coli)DH10B/BAC−27727は、2002年3月22日から、日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7971として、2002年3月5日から大阪府大阪市淀川区十三本町2−17−85(郵便番号532−8686)の財団法人 発酵研究所(IFO)に受託番号IFO 16778としてそれぞれ寄託されている。
【0031】
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作法は、モレキュラー・クローニング(Molecular cloning)に記載されている方法に従った。
実施例1
ゲノム マウスGALP遺伝子配列を含有するバクテリア人工染色体(BAC)のクローニング
マウスGALP cDNAの塩基配列(配列番号:1)を基にしてプライマーmG−138F(配列番号:2)、プライマーmG−300R(配列番号:3)、プライマーmG−201F(配列番号:4)およびプライマーmG−264R(配列番号:5)を設計した。
マウスゲノムDNAを鋳型として、プライマーmG−138FおよびプライマーmG−300Rを用いてPCR反応を行った。該PCR反応の反応液はAdvantage 2 polymerase(Clontech社)を1 μl、添付の10x Advantage 2 PCR bufferを5 μl、2.5 mM dNTP mixtureを4 μl、プライマーmG−138FおよびプライマーmG−300R(ともに10 μM)を各1 μl、鋳型DNA(前述のマウスゲノムDNA)を1 μl、および蒸留水37μlを混合して作製した。反応条件は94℃の変性反応と、それに続く72℃または67℃の伸長反応により実施した。すなわち、94℃・25秒−72℃・4分のサイクル反応を7回、94℃・25秒−67℃・4分のサイクル反応を32回、および67℃・4分の最終伸長反応とした。続いて、このPCR反応の反応液を蒸留水で50倍希釈した溶液を鋳型として用い、プライマーmG−201FおよびプライマーmG−264Rを用いてnested PCRを実施した。反応液はAdvantage 2 polymerase(Clontech社)を1 μl、添付の10x Advantage 2PCR bufferを5 μl、2.5 mM dNTP mixtureを4 μl、プライマーmG−201FおよびmG−264R(ともに10 μM)を各1 μl、該鋳型DNA(前述の50倍希釈した溶液)を1 μl、及び蒸留水37μlを混合して作製した。反応条件は94℃の変性反応と、それに続く72℃または67℃の伸長反応により実施した。すなわち、94℃・25秒−72℃・4分のサイクル反応を5回、94℃・25秒−67℃・4分のサイクル反応を20回、および67℃・4分の最終伸長反応とした。
該PCR 産物を1 %アガロースゲル電気泳動を行い、サイバーグリーン染色される約5 kbのPCR 産物であるバンドを含むゲル片を剃刀で切り出しGene Clean spin DNA 抽出キット(BIO 101社)を用いてDNA断片mGALP−int1を回収した。該DNA断片の塩基配列決定のための反応をBigDye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems Inc.)を用いて行い、蛍光式自動シークエンサー(DNA sequencer Prism 377:Applied Biosystems Inc.)を用いて塩基配列を解読した。その結果、DNA断片mGALP−int1は、配列番号:6で表される塩基配列を有していた。
得られた配列よりプライマー3148F(配列番号:7)およびプライマー3558R(配列番号:8)を作成し、この2つのプライマーをゲノムDNAライブラリーPCRスクリーニングサービス(カタログ番号;BAC−4922、ライブラリーの種類;マウスES129SvjI、KURABO社)に供し、この2つのプライマーにより増幅されるbacterial artificial chromosome(BAC)クローンを含む大腸菌のスクリーニングを行い、その結果、BACクローンBAC−27727を含む大腸菌Escerichia coli DH10B/BAC−27727を取得した。該大腸菌よりBACクローン BAC−27727 DNAを精製し、そのDNAの部分配列を蛍光式自動シークエンサー(DNA sequencer Prism:Applied Biosystems Inc.)により解読した。その結果、BAC−27727 DNAは、配列番号:9で表される塩基配列を有していた。これは、マウスGALP遺伝子エキソン1からエキソン6までの配列、およびマウスGALP遺伝子のプロモーター部分を含む5’側上流配列ならびに3’側下流配列からなるマウスGALP遺伝子の全塩基配列である。
また、マウスGALP遺伝子配列中に見出された、6個のエキソン(エキソン1〜エキソン6)の塩基配列を、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14および配列番号:15にそれぞれ示す。該エキソンの塩基配列のサイズおよび配列番号:9で表される塩基配列における位置を〔表1〕に示す。
【0032】
〔表1〕
エキソン サイズ 位置
エキソン1 263bp 2830番−3092番
エキソン2 85bp 8189番−8273番
エキソン3 49bp 13855番−13903番
エキソン4 81bp 16692番−16772番
エキソン5 78bp 19227番−19304番
エキソン6 94bp 21434 番− 21527 番
【0033】
実施例2
ゲノム マウスGALP遺伝子配列を含有するバクテリア人工染色体(BAC)の塩基配列決定
実施例1で取得したbacterial artificial chromosome (BAC)クローンBAC−27727 DNAを鋳型として用いて、DNAの部分配列を蛍光式自動シークエンサー(DNA sequencer Prism:Applied Biosystems Inc.)により解読した。その結果、BAC−27727 DNAは、配列番号:9で表される塩基配列の5’側上流に配列番号:18で表される塩基配列を有していた。これらの配列を連結して、配列番号:19で表される塩基配列を得た。これは、マウスGALP遺伝子エキソン1からエキソン6までの配列、およびマウスGALP遺伝子のプロモーター部分を含む5’側上流配列ならびに3’側下流配列からなるマウスGALP遺伝子の全塩基配列である。
【0034】
実施例3
ターゲティングベクターの構築およびES相同組み換え体の作製
(1)GALP遺伝子のエキソン1から上流5kbの配列およびエキソン2(開始コドンを有するエキソン)から下流5kb配列をアンカー配列としたベクターを考案し、相同組み換え用アンカー配列の間にポジティブマーカーであるネオマイシン耐性遺伝子(neo)を挿入し、エキソン1、エキソン2およびイントロン1を欠失させるためのターゲティングベクターを構築する。
エキソン1を含まずエキソン1よりもさらに上流に位置する配列の一部分である5’−アンカー1F(配列番号:20)を5’−アンカー配列とし、エキソン2を含まずエキソン2の下流に位置する配列の一部分である3’−アンカー1R(配列番号:22)を3’−アンカー配列とする。
上記5’−アンカー配列および3’−アンカー配列は、それぞれ適当な制限酵素を用いて、実施例1で得られたBAC−27727 DNAから切り出すか、またはBAC−27727 DNAを鋳型として定法に従い任意のプライマーセットを用いてPCR増幅して取得する。
5’−アンカー配列および3’−アンカー配列それぞれのDNA断片は、ゲノム上に存在する配列の順序に従い配置し、これらの間に、ネオマイシン耐性遺伝子(neo)配列を有するDNA断片を挿入し、T4 DNAライゲースによるライゲーション反応により結合する。ネオマイシン耐性遺伝子をコードするDNA断片はGALP配列の向きとは逆向きに挿入する。ターゲティングベクターの構造の概略を、図1および図2に示す。さらに、結合したDNA断片の末端に、ネガティブマーカーであるジフテリア毒素遺伝子をコードするDNA断片を定法に従って結合し、DNA断片を作製する。
プラスミドベクターの制限酵素切断部位に対する、上記で得られるターゲティングDNA断片(5’−アンカー配列−neo配列−3’−アンカー配列)のライゲーション反応を行い、大腸菌を形質転換し、該DNA断片を有するターゲティングベクターを取得する。
ジーンパルサー エレクトロポレーションシステム(バイオラッド社製)を用い、230 V、500 μFの条件で、上記ターゲティングベクター(DNA量:10〜100μg)を、129SvEv 由来W9.5細胞(マウスES細胞)107 cellsに導入する。
導入後の細胞を、0.2〜0.5 mg/mlのG418を含有する培養液中で、限界希釈法を用いて培養し、単一クローン化する。
単一クローン化したES細胞 500株について、サザン解析の一次スクリーニングを行う。マウスゲノムDNAを、制限酵素 Bam HIを用いて37℃、終夜反応により完全消化する。ターゲティングDNA断片の3’アンカー配列よりも3’外側に位置する塩基配列の一部を、PCR DIG probe synthesis kit(Roche社)を用いて標識し、標識プローブとする。Bam HI消化したゲノムに、前述の標識プローブをハイブリダイズ(42℃、終夜反応)させ、65℃の0.1x SSCに0.1% SDSを添加した溶液中で15分、2回洗浄する。サザン解析の結果、非組み換え由来の10 kbの断片がバンドとして検出され、該バンドと同程度の濃さで相同組み換え由来の5 kbバンドが検出され、これらのゲノムを採集した10株のES細胞は、ES相同組み換え体であると判断できる。この10株のES相同組み換え体のうち生育が良好な5株からDNAを抽出して、二次スクリーニングとして一次スクリーニングと同条件でサザン解析による確認を行う。その結果、一次スクリーニングと同様に、5株に陽性バンドを認める。さらに、三次スクリーニングとしてターゲティングDNA断片の5’アンカー配列よりも5’外側配列の一部を標識プローブに用い、上記と同様にサザン解析を行い、5株にES相同組み換え体を示すバンドを認め、サザン解析陽性クローンと判定する。
三次スクリーニングでDNA組み換えを確認したサザン解析陽性クローンのES相同組み換え体 5株について、核型解析により、染色体型が正常であることを確認する。それぞれ50個の核型分析を行って正常率(2n = 40)が 60%以上である場合、生殖系列移行に関して影響はないと考える。
(2)GALP遺伝子のエキソン2(開始コドンを有するエキソン)から上流5kbの配列およびエキソン3(活性発現に必要なガラニン相同配列を含むエキソン)から下流5kb配列をアンカー配列とするベクターを考案し、相同組み換え用アンカー配列の間にポジティブマーカーであるネオマイシン耐性遺伝子(neo)を挿入し、エキソン2、エキソン3およびイントロン2を欠失させるためのターゲティングベクターを構築する。
エキソン2を含まずエキソン2よりも上流に位置する配列の一部分である5’−アンカー2F(配列番号:21)を5’−アンカー配列と、エキソン3を含まずエキソン3より下流に位置する配列の一部分である3’−アンカー 2R(配列番号:23)を3’−アンカー配列とする。
実施例3(1)と同様の操作を行い、ES相同組み換え体を得る。
【0035】
実施例4
ノックアウトマウスの作製
実施例3で得られるES相同組み換え体(ES細胞)の、C57BL/6J系統マウス胚盤胞へのマイクロインジェクションは数回に分けて実施する。
第1回目のインジェクションは、胚盤胞50個を用いて行い、インジェクションされた胚盤胞は、別途、精管結紮マウスと交配することによって得られた偽妊娠マウス卵管に移植することによって妊娠させる。その結果、8個体の産仔が得られ、そのうち5個体のキメラマウスが得られる。そのうち80%以上の高いキメラ率を有するマウスを実験に用いる。
第2回目のインジェクションは、第1回目のインジェクションと同様に、50個の胚盤胞にインジェクションを行う。その結果、8個体の産仔が得られ、そのうち5個体のキメラマウスが得られる。そのうち80%以上の高いキメラ率を有するマウスを実験に用いる。
キメラ率が、100%に近い値を示した雄キメラマウスをC57BL/6系統雌マウスと交配し、産仔での生殖系列移行の確認およびヘテロマウスの取得を行う。
キメラマウスとC57BL/6 系統マウスとの交配により、実施例3で得られるES細胞由来マウスが50匹得られる。
該ES細胞由来マウス尾組織から定法によりゲノムDNAを精製し、以下のように合成するプライマーを用いて、PCR反応を行い、ヘテロ欠損マウスを得る。
プライマーは、野生型であれば0.2 kbのDNA断片を検出、ヘテロ欠損マウスであれば、0.2 kbおよび1 kbのDNA断片を検出できるように設計する。ターゲティングによりヘテロ欠損型では欠失したゲノムGALP領域の3’側に位置する塩基配列に基づいて、野生型検出用およびヘテロ欠損型検出用の3’側用プライマーをデザインして合成する。エキソン1、イントロン1もしくはエキソン2内、またはエキソン2、イントロン2もしくはエキソン3内の塩基配列に基づいて、野生型検出用の5’側用プライマーを、ネオマイシン耐性遺伝子の塩基配列に基づいて、ヘテロ欠損型検出用の5’側用プライマーをそれぞれデザインして合成する。
さらに、サザン解析により遺伝子欠損の確認を行う。
上記ES細胞由来マウス尾組織から定法によりゲノムDNAを精製し、上記の野生型検出用プライマーを用いて増幅できるDNA断片をプローブとして用いて、サザン解析を行い、ヘテロ欠損マウスを得る。
サザン解析の結果、野生型由来の10 kbの断片がバンドとして検出され、該バンドと同程度の濃さで相同組み換え体由来の5 kbバンドが検出されるゲノムを採集した個体は、ヘテロ欠損マウスであることがわかる。
ヘテロ欠損マウスと判定された雄個体および雌個体を交配し、ホモ欠損マウスを取得する。
【0036】
【発明の効果】
本発明のDNAを用いることにより、ノックアウト動物の作出が可能となる。これにより、GALPの生理作用がさらに明らとなり、LH分泌不全に関係する疾患〔例、不妊症(例、月経不順、月経困難症、無月経症、体重減少性無月経症、続発性無月経症など)、月経前症候群、更年期障害、下垂体機能不全など〕、LH過剰分泌に関係する疾患(例、前立腺癌、前立腺肥大症、卵巣癌、子宮内膜症、思春期早発症、LH産生下垂体腫瘍など)、頻尿、痴呆、糖尿病、肥満症、摂食障害などの予防・治療作用を有する化合物またはその塩の探索および評価が可能となる。
【0037】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】マウスゲノムDNA上のGALPエキソン(エキソン1〜6)の位置および代表的な5’−アンカー配列および3’−アンカー配列の位置関係を示す図である。
【図2】GALPターゲティングベクター中の5’−アンカー配列ならびに3’−アンカー配列およびネオマイシン耐性遺伝子(neo)の位置関係を簡略して示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラニン・レセプターに対するリガンドペプチドのゲノムDNAおよびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くのホルモンや神経伝達物質は細胞膜に存在する特異的なレセプターを通じて生体機能を調節している。これらのレセプターの多くは共役しているグアニンヌクレオチド結合性タンパク質(guanine nucleotide−binding protein、以下Gタンパク質と略称する場合がある)の活性化を通じて細胞内のシグナル伝達を行う。Gタンパク質共役型レセプターであるガラニン・レセプター・サブタイプ2(GALR2)に対するペプチド性リガンドとして、ブタ型のリガンド、ヒト型のリガンドおよびラット型のリガンド(特開2000−157273号公報)、さらにマウス型のリガンド(配列番号:16)(特許文献1 WO 01/77166号公報)が取得されている。これらのリガンドを、Galanin−like Peptide(GALP)と略称することもある(J. Biol. Chem. 274巻, 37041頁, 1999年参照)。GALPは、ガラニン・レセプターに結合するガラニンに比べてGALR2に強い親和性を示す。GALPは、血中黄体形成ホルモン(LH)濃度の特異的な上昇作用(LH分泌促進作用)を有し、その反応性はレプチン受容体に異常が見られるZucker fattyラットにおいて亢進すること、GALPはLHの分泌促進作用を有するため、LH分泌不全に関係する各種疾患の予防・治療剤として有用なこと、GALPは、そのレセプターとの親和性が高いため、GALPまたはGALPをコードするDNAの投与量が増えるとLH分泌に対し脱感作が起こる結果、LH分泌を抑制する作用も有するため、GALPはLH分泌抑制剤として、LH過剰分泌に関係する各種疾患の予防・治療薬としても用いることができることが報告されている(特許文献2 WO 02/66064号公報)。また、ラットの脳室内にGALPを投与すると、投与直後の摂餌量が著しく亢進すること(Neuroscience Letters, 322巻, 67−69頁, 2002年;J. Neuroendocrinology, 14巻, 853−860頁)、その逆に投与後24時間後の摂食量が減少すること(J. Neuroendocrinology, 14巻, 853−860頁)も報告されている。また、GALPを脳室内投与されたマウスにおいては、投与1時間後および24時間後の摂食量が何れも減少したことが報告されている(Endocrinology, 144巻, 813−822頁, 2003年)。
【特許文献1】
WO 01/77166号公報
【特許文献2】
WO 02/66064号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
GALP遺伝子の発現を破壊した動物または部分的に不完全にした動物、すなわちノックアウト(k/o)動物は、GALPの生理作用をさらに明らかにし、GALP発現異常に伴う疾患、例えば、LH分泌不全に関係する疾患、LH過剰分泌に関係する疾患、肥満症、摂食障害などの予防・治療作用を有する薬物の探索・評価を実施する上でたいへん有用である。このようなノックアウト動物は、マウスを用いて作出される場合が多いが、その作出にはゲノム上のマウスGALP遺伝子の構造を明らかにする必要があったものの、マウスGALP遺伝子の構造は明らかにされていなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、マウスGALPのゲノムDNAを見出すことに成功した。さらに、本発明者らは、この知見に基づきこのゲノムDNAを用いてノックアウト動物の作出が可能であることを見出した。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)配列番号:17で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列を含有するDNA、
(2)配列番号:9で表される塩基配列を含有する前記(1)記載のDNA、
(3)配列番号:19で表される塩基配列を含有する前記(1)記載のDNA、(4)ゲノムDNAである前記(1)記載のDNAなどを提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
配列番号:17で表される塩基配列は、マウスGALP遺伝子のエキソン1、イントロン1、エキソン2、イントロン2、エキソン3、イントロン3、エキソン4、イントロン4、エキソン5、イントロン5およびエキソン6を有する塩基配列である。
配列番号:17で表される塩基配列と実質的同一の塩基配列を含有するDNA(以下、本発明のDNAと略記することもある)としては、例えば、配列番号:17で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、マウスGALPをコードするDNAなどが挙げられる。
配列番号:17で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:17で表される塩基配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約85%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning, 2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
配列番号:17で表される塩基配列を含有するDNAとしては、例えば、配列番号:9で表される塩基配列を含有するDNAなどが挙げられる。配列番号:9で表される塩基配列を含有するDNAとしては、配列番号:19で表される塩基配列を含有するDNAなどが挙げられる。
【0007】
本発明のDNAのクローニングの手段としては、マウスGALPをコードする塩基配列の一部分を含有する合成DNAプライマーを用いたPCR法による増幅、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによる選別があげられる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、Molecular Cloning, 2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
DNAの塩基配列の置換は、PCRや公知のキット、例えば、MutanTM−super Express Km(宝酒造)、MutanTM−K(宝酒造)等を用いて、ODA−LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行うことができる。
本発明のクローン化されたDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明のDNAを含有する発現ベクターは、例えば、(イ)マウスGALPをコードするDNAを含有する、例えばcDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0008】
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0009】
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のタンパク質のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoAシグナル配列、OmpAシグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼシグナル配列、サブチリシンシグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFαシグナル配列、SUC2シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリンシグナル配列、α−インターフェロンシグナル配列、抗体分子シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明のタンパク質をコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
【0010】
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,60巻,160 (1968)〕,JM103〔Nucleic Acids Research,9巻,309 (1981)〕,JA221〔Journal of Molecular Biology,120巻,517 (1978)〕,HB101〔Journal of Molecular Biology,41巻,459 (1969)〕,C600〔Genetics,39巻,440 (1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔Gene,24巻,255 (1983)〕,207−21〔Journal of Biochemistry,95巻,87 (1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R−,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
【0011】
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213−217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔Nature,315巻,592
(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7、Vero、チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr−)細胞と略記)、マウスL細胞、マウスAtT−20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、69巻、2110 (1972);Gene、17巻、107 (1982)などに記載の方法に従って行うことができる。
【0012】
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、Molecular & General Genetics、168巻、111 (1979)などに記載の方法に従って行うことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、Methods in Enzymology、194巻、182−187(1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、75巻、1929 (1978)などに記載の方法に従って行うことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、Bio/Technology、6巻、47−55(1988)などに記載の方法に従って行うことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、Virology、52巻、456 (1973)に記載の方法に従って行うことができる。
このようにして、タンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0013】
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔Journal of Experiments in Molecular Genetics,431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77巻,4505 (1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace, T.C.C., Nature, 195, 788 (1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔Science,122巻,501 (1952)〕,DMEM培地〔Virology,8巻,396 (1959)〕,RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association,199巻,519 (1967)〕,199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外にマウスGALPを生成せしめることができる。
【0014】
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行うことができる。
本発明のタンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりタンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される場合には、培養終了後、公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるタンパク質の精製は、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行うことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
【0015】
本発明のDNAは、ノックアウト動物作成のために用いられる。
本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
(1)本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
(2)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された上記(1)記載の胚幹細胞、
(3)ネオマイシン耐性である上記(1)記載の胚幹細胞、
(4)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である上記(1)記載の胚幹細胞、
(5)ゲッ歯動物がマウスである上記(4)記載の胚幹細胞、
(6)本発明のDNAが不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
(7)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる上記(6)記載の非ヒト哺乳動物、
(8)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である上記(6)記載の非ヒト哺乳動物、
(9)ゲッ歯動物がマウスである上記(8)記載の非ヒト哺乳動物、および
(10)上記(7)記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、あるいは該DNAがコードしている本発明のタンパク質の活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的に本発明のタンパク質の発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
【0016】
本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲティングベクター上のDNA配列とターゲティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
ターゲティングベクターとしては、マウスGALP遺伝子のエキソン1、イントロン1およびエキソン2を欠損させたDNA配列を有するDNA鎖、エキソン2、イントロン2およびエキソン3を欠損させたDNA配列を有するDNA鎖などが挙げられる。好ましくは、マウスGALP遺伝子のエキソン1、イントロン1およびエキソン2を欠損させたDNA配列を有するDNA鎖である。
【0017】
また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知 EvansとKaufmanの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
【0018】
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1〜10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001〜0.5%トリプシン/0.1〜5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1〜3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり(M. J. Evans及びM. H. Kaufman, Nature, 第292巻, 154頁, 1981年;G. R. Martin, Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A. , 第78巻, 7634頁, 1981年;T. C. Doetschmanら,、Journal of embryology and experimental morphology, 第87巻, 27頁, 1985年)、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおける本発明のタンパク質の細胞生物学的検討において有用である。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
【0019】
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲティングベクター(例、マウスGALP遺伝子のエキソン1およびエキソン2を欠損させたDNA配列を有するDNA鎖、エキソン2およびエキソン3を欠損させたDNA配列を有するDNA鎖など)をマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。
本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲティングベクター上のDNA配列と、ターゲティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。
該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、本発明のタンパク質のヘテロ発現不全個体であり、本発明のタンパク質のヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔から本発明のタンパク質のホモ発現不全個体を得ることができる。
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することにより、ターゲティングベクター(例、マウスGALP遺伝子のエキソン1およびエキソン2を欠損させたDNA配列を有するDNA鎖、エキソン2およびエキソン3を欠損させたDNA配列を有するDNA鎖など)を染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のタンパク質により誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、本発明のタンパク質の生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0020】
(a)本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものがあげられる。
【0021】
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
例えば、視床下部GALP発現量の異常を来した本発明のDNA発現非ヒト哺乳動物では、摂食量の増大、摂食量の減少、ホルモン分泌または性成熟の異常などの生殖障害を引き起こすことが予想される。従って、該動物に試験化合物を投与し、その後の摂食量、血中LHレベルおよび思春期の発来(性周期の開始)などを測定し、肥満症、摂食障害またはLH分泌不全に関係する疾患に対する予防・治療作用を有する化合物を探索する。
該スクリーニング方法を用いて得られる化合物は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のタンパク質の欠損や損傷などによって引き起こされる疾患に対して予防・治療効果を有し、安全で低毒性な、例えばLH分泌不全に関係する疾患〔例、不妊症(例、月経不順、月経困難症、無月経症、体重減少性無月経症、続発性無月経症など)、月経前症候群、更年期障害、下垂体機能不全など〕、LH過剰分泌に関係する疾患(例、前立腺癌、前立腺肥大症、卵巣癌、子宮内膜症、思春期早発症、LH産生下垂体腫瘍など)、頻尿、痴呆、糖尿病、肥満症、摂食障害などの予防・治療剤として使用することができる。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
【0022】
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のタンパク質を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、該化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)の肥満症の患者においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、該化合物を注射剤の形で通常成人(体重60kgとして)の肥満症の患者に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0023】
(b)本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
【0024】
本発明のDNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、本発明のタンパク質をコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、本発明のタンパク質の発現する組織で、本発明のタンパク質の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便に本発明のタンパク質の動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、本発明のタンパク質欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物である。
【0025】
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)、塩基などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、本発明のタンパク質の発現を促進し、該タンパク質の機能を促進することができるので、例えば、LH分泌不全に関係する疾患〔例、不妊症(例、月経不順、月経困難症、無月経症、体重減少性無月経症、続発性無月経症など)、月経前症候群、更年期障害、下垂体機能不全など〕、LH過剰分泌に関係する疾患(例、前立腺癌、前立腺肥大症、卵巣癌、子宮内膜症、思春期早発症、LH産生下垂体腫瘍など)、頻尿、痴呆、糖尿病、肥満症、摂食障害などの予防・治療剤などの医薬として有用である。
また、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、本発明のタンパク質の発現を阻害し、該タンパク質の機能を阻害することができるので、例えば肥満症、LH分泌不全に関係する疾患などの予防・治療剤などの医薬として有用である。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
【0026】
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のタンパク質またはその塩を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)の肥満症の患者において、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物を注射剤の形で通常成人(体重60kgとして)の肥満症の患者に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0027】
一方、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)の不妊症の患者においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物を注射剤の形で通常成人(体重60kgとして)の不妊症の患者に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発に大きく貢献することができる。
また、本発明のDNAのプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々のタンパク質をコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にそのポリペプチドを合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポーター遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、本発明のタンパク質そのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
【0028】
本明細書において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
【0029】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
マウスGALP cDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:2〕
実施例1で用いられたプライマーmG−138Fの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
実施例1で用いられたプライマーmG−300Rの塩基配列を示す。
〔配列番号:4〕
実施例1で用いられたプライマーmG−201Fの塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
実施例1で用いられたプライマーmG−264Rの塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕
実施例1で得られたDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
実施例1で用いられたプライマー3148Fの塩基配列を示す。
〔配列番号:8〕
実施例1で用いられたプライマー3558Rの塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕
実施例1で得られたマウスGALP遺伝子エキソン1からエキソン6までの配列およびマウスGALP遺伝子のプロモーター部分を含む5’側上流配列ならびに3’側下流配列を含むマウスGALP遺伝子の全塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕
実施例1で得られたマウスGALP遺伝子配列のエキソン1の塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
実施例1で得られたマウスGALP遺伝子配列のエキソン2の塩基配列を示す。
〔配列番号:12〕
実施例1で得られたマウスGALP遺伝子配列のエキソン3の塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕
実施例1で得られたマウスGALP遺伝子配列のエキソン4の塩基配列を示す。
〔配列番号:14〕
実施例1で得られたマウスGALP遺伝子配列のエキソン5の塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕
実施例1で得られたマウスGALP遺伝子配列のエキソン6の塩基配列を示す。
〔配列番号:16〕
マウスGALPのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:17〕
マウスGALP遺伝子エキソン1、イントロン1、エキソン2、イントロン2、エキソン3、イントロン3、エキソン4、イントロン4、エキソン5、イントロン5およびエキソン6を有する塩基配列を示す。
〔配列番号:18〕
実施例2で得られたDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:19〕
実施例2で得られたマウスGALP遺伝子エキソン1からエキソン6までの配列およびマウスGALP遺伝子のプロモーター部分を含む5’側上流配列ならびに3’側下流配列を含むマウスGALP遺伝子の全塩基配列を示す。
〔配列番号:20〕
実施例3(1)で用いる5’−アンカー1FのDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:21〕
実施例3(2)で用いる5’−アンカー2FのDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:22〕
実施例3(1)で用いる3’−アンカー1RのDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:23〕
実施例3(2)で用いる3’−アンカー2RのDNAの塩基配列を示す。
【0030】
後述の実施例1で取得された大腸菌(Escherichia coli)DH10B/BAC−27727は、2002年3月22日から、日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7971として、2002年3月5日から大阪府大阪市淀川区十三本町2−17−85(郵便番号532−8686)の財団法人 発酵研究所(IFO)に受託番号IFO 16778としてそれぞれ寄託されている。
【0031】
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作法は、モレキュラー・クローニング(Molecular cloning)に記載されている方法に従った。
実施例1
ゲノム マウスGALP遺伝子配列を含有するバクテリア人工染色体(BAC)のクローニング
マウスGALP cDNAの塩基配列(配列番号:1)を基にしてプライマーmG−138F(配列番号:2)、プライマーmG−300R(配列番号:3)、プライマーmG−201F(配列番号:4)およびプライマーmG−264R(配列番号:5)を設計した。
マウスゲノムDNAを鋳型として、プライマーmG−138FおよびプライマーmG−300Rを用いてPCR反応を行った。該PCR反応の反応液はAdvantage 2 polymerase(Clontech社)を1 μl、添付の10x Advantage 2 PCR bufferを5 μl、2.5 mM dNTP mixtureを4 μl、プライマーmG−138FおよびプライマーmG−300R(ともに10 μM)を各1 μl、鋳型DNA(前述のマウスゲノムDNA)を1 μl、および蒸留水37μlを混合して作製した。反応条件は94℃の変性反応と、それに続く72℃または67℃の伸長反応により実施した。すなわち、94℃・25秒−72℃・4分のサイクル反応を7回、94℃・25秒−67℃・4分のサイクル反応を32回、および67℃・4分の最終伸長反応とした。続いて、このPCR反応の反応液を蒸留水で50倍希釈した溶液を鋳型として用い、プライマーmG−201FおよびプライマーmG−264Rを用いてnested PCRを実施した。反応液はAdvantage 2 polymerase(Clontech社)を1 μl、添付の10x Advantage 2PCR bufferを5 μl、2.5 mM dNTP mixtureを4 μl、プライマーmG−201FおよびmG−264R(ともに10 μM)を各1 μl、該鋳型DNA(前述の50倍希釈した溶液)を1 μl、及び蒸留水37μlを混合して作製した。反応条件は94℃の変性反応と、それに続く72℃または67℃の伸長反応により実施した。すなわち、94℃・25秒−72℃・4分のサイクル反応を5回、94℃・25秒−67℃・4分のサイクル反応を20回、および67℃・4分の最終伸長反応とした。
該PCR 産物を1 %アガロースゲル電気泳動を行い、サイバーグリーン染色される約5 kbのPCR 産物であるバンドを含むゲル片を剃刀で切り出しGene Clean spin DNA 抽出キット(BIO 101社)を用いてDNA断片mGALP−int1を回収した。該DNA断片の塩基配列決定のための反応をBigDye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems Inc.)を用いて行い、蛍光式自動シークエンサー(DNA sequencer Prism 377:Applied Biosystems Inc.)を用いて塩基配列を解読した。その結果、DNA断片mGALP−int1は、配列番号:6で表される塩基配列を有していた。
得られた配列よりプライマー3148F(配列番号:7)およびプライマー3558R(配列番号:8)を作成し、この2つのプライマーをゲノムDNAライブラリーPCRスクリーニングサービス(カタログ番号;BAC−4922、ライブラリーの種類;マウスES129SvjI、KURABO社)に供し、この2つのプライマーにより増幅されるbacterial artificial chromosome(BAC)クローンを含む大腸菌のスクリーニングを行い、その結果、BACクローンBAC−27727を含む大腸菌Escerichia coli DH10B/BAC−27727を取得した。該大腸菌よりBACクローン BAC−27727 DNAを精製し、そのDNAの部分配列を蛍光式自動シークエンサー(DNA sequencer Prism:Applied Biosystems Inc.)により解読した。その結果、BAC−27727 DNAは、配列番号:9で表される塩基配列を有していた。これは、マウスGALP遺伝子エキソン1からエキソン6までの配列、およびマウスGALP遺伝子のプロモーター部分を含む5’側上流配列ならびに3’側下流配列からなるマウスGALP遺伝子の全塩基配列である。
また、マウスGALP遺伝子配列中に見出された、6個のエキソン(エキソン1〜エキソン6)の塩基配列を、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14および配列番号:15にそれぞれ示す。該エキソンの塩基配列のサイズおよび配列番号:9で表される塩基配列における位置を〔表1〕に示す。
【0032】
〔表1〕
エキソン サイズ 位置
エキソン1 263bp 2830番−3092番
エキソン2 85bp 8189番−8273番
エキソン3 49bp 13855番−13903番
エキソン4 81bp 16692番−16772番
エキソン5 78bp 19227番−19304番
エキソン6 94bp 21434 番− 21527 番
【0033】
実施例2
ゲノム マウスGALP遺伝子配列を含有するバクテリア人工染色体(BAC)の塩基配列決定
実施例1で取得したbacterial artificial chromosome (BAC)クローンBAC−27727 DNAを鋳型として用いて、DNAの部分配列を蛍光式自動シークエンサー(DNA sequencer Prism:Applied Biosystems Inc.)により解読した。その結果、BAC−27727 DNAは、配列番号:9で表される塩基配列の5’側上流に配列番号:18で表される塩基配列を有していた。これらの配列を連結して、配列番号:19で表される塩基配列を得た。これは、マウスGALP遺伝子エキソン1からエキソン6までの配列、およびマウスGALP遺伝子のプロモーター部分を含む5’側上流配列ならびに3’側下流配列からなるマウスGALP遺伝子の全塩基配列である。
【0034】
実施例3
ターゲティングベクターの構築およびES相同組み換え体の作製
(1)GALP遺伝子のエキソン1から上流5kbの配列およびエキソン2(開始コドンを有するエキソン)から下流5kb配列をアンカー配列としたベクターを考案し、相同組み換え用アンカー配列の間にポジティブマーカーであるネオマイシン耐性遺伝子(neo)を挿入し、エキソン1、エキソン2およびイントロン1を欠失させるためのターゲティングベクターを構築する。
エキソン1を含まずエキソン1よりもさらに上流に位置する配列の一部分である5’−アンカー1F(配列番号:20)を5’−アンカー配列とし、エキソン2を含まずエキソン2の下流に位置する配列の一部分である3’−アンカー1R(配列番号:22)を3’−アンカー配列とする。
上記5’−アンカー配列および3’−アンカー配列は、それぞれ適当な制限酵素を用いて、実施例1で得られたBAC−27727 DNAから切り出すか、またはBAC−27727 DNAを鋳型として定法に従い任意のプライマーセットを用いてPCR増幅して取得する。
5’−アンカー配列および3’−アンカー配列それぞれのDNA断片は、ゲノム上に存在する配列の順序に従い配置し、これらの間に、ネオマイシン耐性遺伝子(neo)配列を有するDNA断片を挿入し、T4 DNAライゲースによるライゲーション反応により結合する。ネオマイシン耐性遺伝子をコードするDNA断片はGALP配列の向きとは逆向きに挿入する。ターゲティングベクターの構造の概略を、図1および図2に示す。さらに、結合したDNA断片の末端に、ネガティブマーカーであるジフテリア毒素遺伝子をコードするDNA断片を定法に従って結合し、DNA断片を作製する。
プラスミドベクターの制限酵素切断部位に対する、上記で得られるターゲティングDNA断片(5’−アンカー配列−neo配列−3’−アンカー配列)のライゲーション反応を行い、大腸菌を形質転換し、該DNA断片を有するターゲティングベクターを取得する。
ジーンパルサー エレクトロポレーションシステム(バイオラッド社製)を用い、230 V、500 μFの条件で、上記ターゲティングベクター(DNA量:10〜100μg)を、129SvEv 由来W9.5細胞(マウスES細胞)107 cellsに導入する。
導入後の細胞を、0.2〜0.5 mg/mlのG418を含有する培養液中で、限界希釈法を用いて培養し、単一クローン化する。
単一クローン化したES細胞 500株について、サザン解析の一次スクリーニングを行う。マウスゲノムDNAを、制限酵素 Bam HIを用いて37℃、終夜反応により完全消化する。ターゲティングDNA断片の3’アンカー配列よりも3’外側に位置する塩基配列の一部を、PCR DIG probe synthesis kit(Roche社)を用いて標識し、標識プローブとする。Bam HI消化したゲノムに、前述の標識プローブをハイブリダイズ(42℃、終夜反応)させ、65℃の0.1x SSCに0.1% SDSを添加した溶液中で15分、2回洗浄する。サザン解析の結果、非組み換え由来の10 kbの断片がバンドとして検出され、該バンドと同程度の濃さで相同組み換え由来の5 kbバンドが検出され、これらのゲノムを採集した10株のES細胞は、ES相同組み換え体であると判断できる。この10株のES相同組み換え体のうち生育が良好な5株からDNAを抽出して、二次スクリーニングとして一次スクリーニングと同条件でサザン解析による確認を行う。その結果、一次スクリーニングと同様に、5株に陽性バンドを認める。さらに、三次スクリーニングとしてターゲティングDNA断片の5’アンカー配列よりも5’外側配列の一部を標識プローブに用い、上記と同様にサザン解析を行い、5株にES相同組み換え体を示すバンドを認め、サザン解析陽性クローンと判定する。
三次スクリーニングでDNA組み換えを確認したサザン解析陽性クローンのES相同組み換え体 5株について、核型解析により、染色体型が正常であることを確認する。それぞれ50個の核型分析を行って正常率(2n = 40)が 60%以上である場合、生殖系列移行に関して影響はないと考える。
(2)GALP遺伝子のエキソン2(開始コドンを有するエキソン)から上流5kbの配列およびエキソン3(活性発現に必要なガラニン相同配列を含むエキソン)から下流5kb配列をアンカー配列とするベクターを考案し、相同組み換え用アンカー配列の間にポジティブマーカーであるネオマイシン耐性遺伝子(neo)を挿入し、エキソン2、エキソン3およびイントロン2を欠失させるためのターゲティングベクターを構築する。
エキソン2を含まずエキソン2よりも上流に位置する配列の一部分である5’−アンカー2F(配列番号:21)を5’−アンカー配列と、エキソン3を含まずエキソン3より下流に位置する配列の一部分である3’−アンカー 2R(配列番号:23)を3’−アンカー配列とする。
実施例3(1)と同様の操作を行い、ES相同組み換え体を得る。
【0035】
実施例4
ノックアウトマウスの作製
実施例3で得られるES相同組み換え体(ES細胞)の、C57BL/6J系統マウス胚盤胞へのマイクロインジェクションは数回に分けて実施する。
第1回目のインジェクションは、胚盤胞50個を用いて行い、インジェクションされた胚盤胞は、別途、精管結紮マウスと交配することによって得られた偽妊娠マウス卵管に移植することによって妊娠させる。その結果、8個体の産仔が得られ、そのうち5個体のキメラマウスが得られる。そのうち80%以上の高いキメラ率を有するマウスを実験に用いる。
第2回目のインジェクションは、第1回目のインジェクションと同様に、50個の胚盤胞にインジェクションを行う。その結果、8個体の産仔が得られ、そのうち5個体のキメラマウスが得られる。そのうち80%以上の高いキメラ率を有するマウスを実験に用いる。
キメラ率が、100%に近い値を示した雄キメラマウスをC57BL/6系統雌マウスと交配し、産仔での生殖系列移行の確認およびヘテロマウスの取得を行う。
キメラマウスとC57BL/6 系統マウスとの交配により、実施例3で得られるES細胞由来マウスが50匹得られる。
該ES細胞由来マウス尾組織から定法によりゲノムDNAを精製し、以下のように合成するプライマーを用いて、PCR反応を行い、ヘテロ欠損マウスを得る。
プライマーは、野生型であれば0.2 kbのDNA断片を検出、ヘテロ欠損マウスであれば、0.2 kbおよび1 kbのDNA断片を検出できるように設計する。ターゲティングによりヘテロ欠損型では欠失したゲノムGALP領域の3’側に位置する塩基配列に基づいて、野生型検出用およびヘテロ欠損型検出用の3’側用プライマーをデザインして合成する。エキソン1、イントロン1もしくはエキソン2内、またはエキソン2、イントロン2もしくはエキソン3内の塩基配列に基づいて、野生型検出用の5’側用プライマーを、ネオマイシン耐性遺伝子の塩基配列に基づいて、ヘテロ欠損型検出用の5’側用プライマーをそれぞれデザインして合成する。
さらに、サザン解析により遺伝子欠損の確認を行う。
上記ES細胞由来マウス尾組織から定法によりゲノムDNAを精製し、上記の野生型検出用プライマーを用いて増幅できるDNA断片をプローブとして用いて、サザン解析を行い、ヘテロ欠損マウスを得る。
サザン解析の結果、野生型由来の10 kbの断片がバンドとして検出され、該バンドと同程度の濃さで相同組み換え体由来の5 kbバンドが検出されるゲノムを採集した個体は、ヘテロ欠損マウスであることがわかる。
ヘテロ欠損マウスと判定された雄個体および雌個体を交配し、ホモ欠損マウスを取得する。
【0036】
【発明の効果】
本発明のDNAを用いることにより、ノックアウト動物の作出が可能となる。これにより、GALPの生理作用がさらに明らとなり、LH分泌不全に関係する疾患〔例、不妊症(例、月経不順、月経困難症、無月経症、体重減少性無月経症、続発性無月経症など)、月経前症候群、更年期障害、下垂体機能不全など〕、LH過剰分泌に関係する疾患(例、前立腺癌、前立腺肥大症、卵巣癌、子宮内膜症、思春期早発症、LH産生下垂体腫瘍など)、頻尿、痴呆、糖尿病、肥満症、摂食障害などの予防・治療作用を有する化合物またはその塩の探索および評価が可能となる。
【0037】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】マウスゲノムDNA上のGALPエキソン(エキソン1〜6)の位置および代表的な5’−アンカー配列および3’−アンカー配列の位置関係を示す図である。
【図2】GALPターゲティングベクター中の5’−アンカー配列ならびに3’−アンカー配列およびネオマイシン耐性遺伝子(neo)の位置関係を簡略して示す図である。
Claims (4)
- 配列番号:17で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列を含有するDNA。
- 配列番号:9で表される塩基配列を含有する請求項1記載のDNA。
- 配列番号:19で表される塩基配列を含有する請求項1記載のDNA。
- ゲノムDNAである請求項1記載のDNA。
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