JP2003525021A - 受精能をモジュレートするための方法および組成物 - Google Patents

受精能をモジュレートするための方法および組成物

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JP2003525021A JP2000595697A JP2000595697A JP2003525021A JP 2003525021 A JP2003525021 A JP 2003525021A JP 2000595697 A JP2000595697 A JP 2000595697A JP 2000595697 A JP2000595697 A JP 2000595697A JP 2003525021 A JP2003525021 A JP 2003525021A
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ヘル,ジョン
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、脊椎動物のFSP95遺伝子およびそれらがコードするタンパク質産物、ならびにそれらの誘導体および類似体に関する。脊椎動物のFSP95タンパク質、誘導体および抗体の製造方法も提供する。本発明はさらに、治療用組成物ならびに診断および治療方法に関し、受精能をモジュレート(例えば、阻害または促進)するための組成物および方法、例えば避妊方法および受精能を促進する方法などが挙げられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本発明は、部分的に政府の援助によりなされたものであり、助成番号HD U54 2
9099およびP30 28934としてアメリカ国立衛生研究所(NIH)により資金援助を受
けた。アメリカ合衆国政府は本発明において一定の権利を有するものである。
【0002】1. 序 本発明は、脊椎動物のFSP95遺伝子およびそれらがコードするタンパク質産物
、ならびにそれらの誘導体および類似体に関する。脊椎動物のFSP95タンパク質
、誘導体および抗体の製造方法も提供する。本発明はさらに、受精能をモジュレ
ート(例えば、阻害または促進)するための組成物および方法、例えば避妊方法
および受精能を促進する方法を含む、治療用組成物ならびに診断および治療方法
に関する。
【0003】2. 発明の背景 射精された哺乳動物の精子は、雌の生殖管に入ると、精子が先体反応を経て透
明帯に結合し貫通するための準備をする、膜および代謝変化の複雑な系を経る(
全体として受精能獲得と呼ばれる)(Yanagimachi, 1994, The Physiology of R
eproduction(Knobil, E.およびNeill, J. D.編) pp. 189-317, Raven Press,
New York, NY)。ウシおよびヒトの精子の受精能獲得の過程において、細胞内Ca 2+ (Handrowら、1989, J. Exp. Zool. 252: 174-182;Baldiら、1991, J. Andro
l. 12: 323-330)およびサイクリック3',5'-アデノシン一リン酸(cAMP)の増加
が検出されている(ParmnaudおよびMilhet, 1996, J. Clin. Endrocrinol. Meta
b. 81: 1357-1360;Parrishら、1994, Biol. Reprod. 51: 1099-1108)。受精能
を獲得した精子はまた、細胞内のpH上昇(Vredenburgh-WilbergおよびParrish,
1995, Mol. Reprod. Dev. 40: 490-502)、および精子形質膜からのコレステロ
ールの減失(ViscontiおよびKopf, 1998, Biol. Reprod. 59: 1-6)を特徴とす
る。
【0004】 タンパク質のチロシンリン酸化もまた哺乳動物の精子の受精能獲得および運動
性と関連している。ヒトの精子は、受精能獲得の過程でタンパク質の特徴的なセ
ットがチロシンリン酸化を受けるが、そのようなタンパク質のほんの1つがクロ
ーニングおよび存在位置の決定がなされているにすぎない(Turnerら、1998, J.
Biol. Chem. 273:32135-32141)。マウス(Viscontiら、1995, Development 12
1: 1129-1137)、ウシ(Galantino-Homerら、1997, Biol. Reprod. 56: 707-719
)およびヒト(Carreraら、1996, Dev. Biol. 180: 284-296;Luconiら、1996,
Biol. Reprod. 55: 207-216;Leclercら、1998, Androl. 19: 434-443)の精子
における特定のタンパク質集団上のチロシン残基のリン酸化は、精子チロシンキ
ナーゼの活性化が受精能獲得過程で起こることを示している。受精能獲得を受け
る能力が欠損しているマウスの精巣上体上部の精子は、このようなタンパク質セ
ットのチロシンリン酸化を示さない (Viscontiら、1995, Development 121: 11
29-1137)。
【0005】 精子は、精巣上体の成熟過程で運動能力を獲得し、射精時に運動可能となり、
受精能獲得過程において活性化過剰と呼ばれるはっきりとした運動パターンを表
す(Yanagimachi, 1994, The Physiology of Reproduction(Knobil, E.およびN
eill, J. D.編) pp. 189-317, Raven Press, New York, NY)。精子の運動性の
開始および維持は、タンパク質キナーゼ基質の活性に影響を及ぼすリン酸化−脱
リン酸化事象に関与する(Tash, 1989, Cell Motil. Cytoskeleton 14 : 332-33
9;TashおよびBracho, 1994, J. Androl. 15: 505-509)。
【0006】 多くの精子タンパク質は、雄および雌の両方で免疫応答を引き起こす強力な自
己抗原および同種抗原であり、抗精子抗体(ASA)はヒトおよび動物モデルにお
いて不妊症を引き起こし得る(Primakoffら、1988, Nature 335: 543-546;Kutt
ehら、1996, Am. J. Reprod. Immunol. 35: 429-433;OhlおよびNaz, 1995, Uro
logy 46: 591-602;Nipら、1995, Hum. Reprod 10 : 564-2469)。例えば、ASA
は、精管切除を行っていない男性の2〜8%の血清中で検出されているのに対して
、精管切除後の男性の最大70%の血清中で検出されている(Raspa, 1993, Am. F
ain. Physician 48: 1264-1268)。不妊症カップルにおけるASAの発生率は9〜36
%の範囲であり、不妊症の男性においては8〜21%である(Gubinら、1998, Am. J
. Reprod. Immunol. 39: 157-160)。一方、一般的な集団におけるASAの出現率
は0〜2%の範囲である(JarowおよびSanzone, 1992, J. Urol. 148: 1805-1807)
。雌の生殖管におけるASAの存在は、複数の機構を介して精子−卵相互作用に影
響を及ぼす可能性があり(D'Cruzら、1991, J. Immunol. 146: 611-620;Peters
およびCoulam, 1992, Am. J. Reprod. Immunol. 27: 156-162;Menge, 1971, Pr
oc. J. Exp. Biol. Med. 138: 98-102;Clarkeら、1986, Fertil. Steril. 46:
435-441)、その結果として受精能が低減することになりうる(Ayvaliotisら、1
985, Fertil. Steril. 43: 739-742;Mandelbaumら、1987, Fertil. Steril. 47
: 644-651;Kobayashiら、1990, Fertil. Steril. 54: 1107-1113)。従って、
受精能をモジュレートするための新規な方法および組成物が当技術分野において
必要とされている。
【0007】 本節または他の節における参照文献の引用は、かかる文献が本発明の従来技術
であるという承認として解釈されるべきではない。
【0008】3. 発明の概要 本発明は、部分的には、95kDaの新規な繊維鞘タンパク質(FSP95)のヌクレオ
チド配列およびアミノ酸配列の発見に基づいている。該タンパク質は、精子の鞭
毛の主部にある繊維鞘のリブ(rib)に局在化しており、ヒト精子の受精能獲得
過程でチロシンリン酸化をうけ、精子の運動性に役割を果たしている。853アミ
ノ酸残基のタンパク質は、分子量94.6kDaおよびpI6.0と算出され、タンパク質キ
ナーゼCおよびカゼインキナーゼIlのための多数の潜在的なリン酸化部位、なら
びにアミノ酸435位に1つのチロシンキナーゼリン酸化部位を含有している。
【0009】 本発明は、脊椎動物の95kDaの繊維鞘タンパク質(FSP95)のヌクレオチド配列
、およびそれらがコードするタンパク質のアミノ酸配列、ならびにそれらの誘導
体(例えば断片)および類似体に関する。FSP95ヌクレオチド配列にハイブリダ
イズ可能な核酸または該配列に対し相補的な核酸も提供する。特定の実施形態に
おいて、FSP95タンパク質は哺乳動物のタンパク質であり、好ましくはヒトのタ
ンパク質である。
【0010】 本発明は、機能的に活性を有する、すなわち、完全長(野生型)FSP95タンパ
ク質に関連する1以上の既知の機能的活性を示すことができる、脊椎動物のFSP9
5誘導体および類似体に関する。かかる機能的活性としては、限定するものでは
ないが、抗原性[抗FSP95抗体に結合するまたは坑FSP95抗体への結合についてFS
P95と競合する能力]、免疫原性(FSP95に結合する抗体を生じる能力)が挙げら
れる。
【0011】 本発明はさらに、脊椎動物のFSP95タンパク質の1以上のドメインを含むFSP95
タンパク質の断片(ならびにそれらの誘導体および類似体)に関する。上記ドメ
インとしては、限定するものではないが、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細
胞内ドメイン、細胞内ターゲティングドメイン、RII結合部位、または上記の任
意の組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、FSP95の断片は、アミ
ノ酸318-335、アミノ酸368-385、および/またはアミノ酸671-688を含む。
【0012】 さらにまた本発明は、脊椎動物のFSP95タンパク質に対する抗体、その誘導体
および類似体を提供する。
【0013】 また、例えば、組換え手法による、脊椎動物のFSP95タンパク質、誘導体およ
び類似体の製造方法も提供する。
【0014】 本発明はまた、脊椎動物のFSP95タンパク質および核酸に基づく治療および診
断方法、ならびに組成物に関する。本発明は、本発明の治療用化合物の投与によ
る精子の運動性障害の治療を提供する。かかる治療用化合物としては、限定する
ものではないが、FSP95タンパク質とその類似体および誘導体(断片など);そ
れらに対する抗体;FSP95タンパク質、類似体または誘導体をコードする核酸;
ならびにFSP95アンチセンス核酸が挙げられる。好ましい実施形態において、本
発明の治療剤は不妊症を治療するために投与される。他の特定の実施形態におい
て、本発明の治療剤は、精子の運動性を低減させるために投与される。さらに他
の特定の実施形態において、本発明の治療剤は精子の運動性を高めるために投与
される。
【0015】 一実施形態において、FSP95の機能を中和または阻害する治療剤(「アンタゴ
ニスト治療剤」と呼ぶ。)は治療効果を得るために投与される。他の実施形態に
おいて、FSP95の機能を促進する治療剤(「アゴニスト治療剤」と呼ぶ。)は治
療効果を得るために投与される。
【0016】 異常または望ましくないレベルのFSP95タンパク質の発現もしくは活性または
局在化に関与する精子の運動性障害は、以下により詳細に記載するように、かか
るレベルを検出することにより診断することができる。
【0017】 好ましい態様において、本発明の治療剤は、FSP95に対する抗体のフラグメン
トであって、少なくとも該抗体の結合ドメインからなるものである。さらに他の
好ましい態様において、本発明の治療剤は、FSP95の断片であって、アミノ酸318
-335、368-385および/または671-688を含むものである。
【0018】3.1 定義 本明細書で使用する略語を以下に説明する: cAMP;サイクリック3',5'-アデノシン一リン酸、 AKAP;A-キナーゼアンカータンパク質、 PK-A;プロテインキナーゼA、 ASA;抗精子抗体、 FSP95;95kDaの繊維鞘タンパク質、 OBG;オクチル-3-D-グルコピラノシド、 BSA;ウシ血清アルブミン、 PBS;リン酸緩衝化食塩水、 RACE;cDNA末端の急速増幅(rapid amplification of cDNA ends)、 PCR;ポリメラーゼ連鎖反応、 IPTG;イソプロピル-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド、 rFSP95;組換えFSP95、 HSA;ヒト血清アルブミン、 SIY;精子不動値(sperm Immobilization value)、 pro-mAKAP82;マウスAKAP82の前駆体、 pro-hAKAP82;ヒトAKAP82の前駆体。
【0019】4. 図面の説明 (図面の説明に関しては下記参照)5. 詳細な説明 本発明は「FSP95(95KDaの繊維鞘タンパク質)」のポリヌクレオチド、ポリペ
プチド、ならびにこれらの誘導体および類似体を提供するものである。本発明は
、このような配列を避妊および受精能のモジュレートに利用する方法をさらに提
供する。
【0020】 組換えFSP95タンパク質、ならびに機能ドメイン誘導体、抗体、およびリガン
ドを含むペプチドフラグメントの産生もまた提供される。本発明はさらに、精子
を標的にして受精能をモジュレートするために上記産物を利用する組成物、キッ
ト、および方法を提供する。本発明はさらに、FSP95ポリヌクレオチドを標的と
する異種遺伝子発現のために使用する治療用組成物および方法も提供する。
【0021】 本発明は、FSP95タンパク質およびペプチド、ならびにFSP95に対する抗体(例
えば、アゴニストまたはアンタゴニストとして作用することが可能なもの)、FSP
95に結合するリガンド、またはFSP95の機能、活性もしくは発現をモジュレート
するリガンドをコードするヌクレオチドの使用もさらに包含する。加えて、制御
ヌクレオチド、および、FSP95ポリペプチドまたはFSP95もしくはそのフラグメン
トの1種以上の機能ドメイン(例えばRII結合部位)をコードするヌクレオチドは、
遺伝子治療、または細胞もしくは細胞内画分の一箇所に異種遺伝子産物を送達す
るために有効である。
【0022】 特に、後述の小節に記載する本発明の実施形態は、FSP95、FSP95の機能ドメイ
ン(例えば、RII結合部位などのリガンド結合ドメイン)に相当するポリペプチド
またはペプチド、変異型、末端切断型もしくは欠失型(例えば、1つ以上の機能ド
メインを欠失したもの、またはそれを部分的に欠失したもの)、FSP95融合タンパ
ク質、かかる遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列、およびこのようなFSP9
5の遺伝子産物を産生できる宿主細胞発現系を包含する。
【0023】 本発明はまた、抗イディオタイプ抗体を含む抗体、アンタゴニストおよびアゴ
ニスト、ならびにFSP95遺伝子の発現を阻害する化合物またはヌクレオチド構築
物(転写因子インヒビター、アンチセンス分子、およびリボザイム分子、または
、遺伝子もしくは制御配列を置換した構築物)、あるいは、FSP95の発現を促進す
る化合物またはヌクレオチド構築物(例えば、そのFSP95コード配列が、プロモー
ター、プロモーター/エンハンサーなどの発現調節エレメントと機能的な形で連
結している発現構築物)をも包含する。本発明はまた、ヒト(もしくはその突然変
異体)のFSP95制御配列またはタンパク質コード配列を発現するように、あるいは
、動物の内在性FSP95の発現を阻害またはノックアウトするように、遺伝子操作
した宿主細胞および動物を提供する。
【0024】 FSP95産物および融合タンパク質産物(即ち、該タンパク質、または例えばRII
結合部位などの該タンパク質のドメインの融合物)、抗体および抗イディオタイ
プ抗体(Fabフラグメントを含む)、モジュレーターならびにリガンドを、受精能
をモジュレートするための治療薬として用いることができる。
【0025】 FSP95と相互作用する薬剤、低分子物質、またはタンパク質をスクリーニング
する方法を本発明は提供する。本発明は、FSP95に結合するかもしくはその活性
をモジュレートすることにより、受精能に対する治療薬または診断マーカーとし
て有用な低分子物質、化合物、組換えタンパク質、ペプチド、核酸、抗体などを
スクリーニングするためのin vivoおよびin vitroの両方の方法を包含する。
【0026】 FSP95ポリヌクレオチド(即ち、FSP95遺伝子のコード領域、または制御領域)な
らびに、融合タンパク質産物(即ち、FSP95タンパク質または例えばRII結合部位
のような該タンパク質のドメインと他の異種ポリペプチドとの融合物)、抗体(抗
イディオタイプ抗体およびFabフラグメントを含むがこれらに限定はしない)、モ
ジュレーター、およびリガンドを薬物送達または遺伝子治療に利用できる。従っ
て、本発明は、避妊、ならびに不妊症および癌の治療のための医薬製剤および方
法をも包含する。
【0027】 本発明の様々な態様は、以下の小節にて詳細に記述する。
【0028】5.1 FSP95核酸 本発明は、精製FSP95から得たペプチド配列を基に設計した縮重プライマーを
用いてスクリーニングしたヒト精巣cDNAライブラリーをスクリーニングすること
により同定したFSP95核酸のヌクレオチド配列を提供する。特定したFSP95遺伝子
の核酸配列を本明細書中に記載する。本明細書中に用いる場合、「FSP95核酸」
という語句は: (a) 図3に示すFSP95のヌクレオチド配列を含む核酸分子、 (b) 図3および図4に示すFSP95のアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコー
ドするあらゆる核酸配列、 (c) 高ストリンジェントな条件下で(例えば、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸
ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中で65℃にてフィルターに結合しているDNAへのハ
イブリダイゼーション、そして、0.1xSSC/0.1%SDS中で68℃にて洗浄(Ausubel F.
M.ら編、1989、Current Protocols in Molecular Biology, Vol. I, Green Publ
ishing Associates, Inc., およびJohn Wiley & sons, Inc., New York, 2.10.3
頁))、図3および図4に示すFSP95のアミノ酸配列のいずれかをコードするDNA配
列の相補配列にハイブリダイズするあらゆるヌクレオチド配列、および/または (d) 中程度のストリンジェントな条件(例えば、0.2xSSC/0.1%SDS中で42℃に
て洗浄(Ausubel F.M.ら、1989、上述))のような、上記条件よりも低ストリンジ
ェントな条件下で、図3に示すFSP95内のアミノ酸配列のいずれかをコードするDN
A配列の相補配列にハイブリダイズし、FSP95遺伝子産物に機能的に同等な遺伝子
産物をコードする、あらゆるDNA配列、 を指す。
【0029】 本発明はまた、上記(a)〜(d)までのヌクレオチド配列にハイブリダイズする、
即ちその相補配列である、哺乳動物の核酸、好ましくはDNA分子に由来する核酸
分子も含む。この際のハイブリダイゼーション条件は、上述のように、高ストリ
ンジェントであるか、またはそれよりも低ストリンジェントな条件であってよい
。核酸分子がデオキシオリゴヌクレオチド(「オリゴ」)である場合、高ストリン
ジェントな条件とは、例えば、6XSSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中で37℃(14塩
基のオリゴの場合)、48℃(17塩基のオリゴの場合)、55℃(20塩基のオリゴの場合
)、および60℃(23塩基のオリゴの場合)にて洗浄するような条件を指す場合があ
る。これらの核酸分子は、例えば、FSP95遺伝子を制御するために有用な(FSP95
核酸配列の増幅反応におけるアンチセンスプライマー用に、または該アンチセン
スプライマーとして有用な)FSP95のアンチセンス核酸分子をコードするか、また
はかかるアンチセンス核酸分子として機能しうる。FSP95遺伝子の制御に関して
は、癌に関連する細胞増殖を阻止するために、上記技術を用いて、例えばFSP95
の制御経路を調節することができる。さらに、かかる配列は、リボザイムおよび
または三重鎖配列の一部として用いることができ、また、FSP95遺伝子の制御に
おいても有用でありうる。さらに、かかる分子を、例えば、FSP95に関連する障
害(例えば、不妊症もしくは癌などの受精障害または増殖障害など)の原因を担っ
ている特定のFSP95対立遺伝子の存在を検出するための診断方法の構成要素とし
て使用できる。
【0030】 本発明の核酸分子はさらに、上記(a)〜(d)のFSP95ヌクレオチド配列によりコ
ードされるポリペプチドに対して、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、
55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、またはもっと
高いアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を
含む。
【0031】 2種のアミノ酸配列または2種の核酸の同一性パーセントを決定するために、最
適な比較を目的として配列をアラインする(例えば、第1のアミノ酸または核酸配
列の配列内に、第2のアミノ酸または核酸配列との最適なアラインメントのため
にギャップを導入してもよい)。その後、対応するアミノ酸またはヌクレオチド
のポジションにあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列の
あるポジションに、第2の配列の対応するポジションにあるものと同じアミノ酸
残基またはヌクレオチドがある場合、これらの分子はそのポジションでは一致し
ている。2つの配列間の同一性パーセントは、それらの配列が共有する一致する
ポジションの数の関数である(即ち、同一性パーセントは、一致したオーバーラ
ップするポジションの数をオーバーラップするポジションの総数で割り、100を
掛けたものである)。ある実施形態では、2つの配列は同じ長さである。
【0032】 2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて実施
することもできる。2つの配列の比較に用いる好ましい数学的アルゴリズムとし
ては、限定するわけではないが、KarlinおよびAltschul、1990、Proc. Natl. Ac
ad. Sci. USA 87: 2264〜2268に記載のアルゴリズム、KarlinおよびAltschul、1
993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877に記載のように改変したもの
が挙げられる。このようなアルゴリズムを、Altschulら、1990、J. Mol. Biol.
215:403〜410に記載のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組込む。BLASTヌクレオ
チド検索を、スコアを100、配列(ワード)の長さを12としてNBLASTプログラムを
用いて実施して、本発明の核酸分子に相同的なヌクレオチド配列を得ることがで
きる。BLASTタンパク質検索を、スコアを50、配列(ワード)の長さを3としてXBLA
STプログラムを用いて実施して、本発明のタンパク質分子に相同的なアミノ酸配
列を得ることができる。比較する目的のためのギャップを有するアラインメント
を得るためには、ギャップ付きBLAST(Gapped BLAST)を、Altschulら、1997、Nuc
leic Acids Res. 25:3389-3402に記載されているように利用することができる。
あるいはまた、PSI-Blastを用いて、分子間の距離的関係を検出する繰り返し検
索を実施することもできる(Altschulら、1997、上述)。BLAST、ギャップ付きBLA
ST、およびPSI-Blastプログラムを用いる場合、それぞれのプログラム(例えば、
XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを用いてよい(http://www.ncbi.
nlm.nih.gov)。配列の比較に用いる他の好ましい数学的アルゴリズムとしては、
限定するわけではないが、MyersおよびMiller、1988、CABIOS4:11〜17に記載
のアルゴリズムが挙げられる。このようなアルゴリズムを、GCG配列アラインメ
ントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組
込む。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを用いる場合、PAM120重量残基表
(PAM120 weight residue table)を用い、ギャップ長ペナルティーを12、ギャッ
プペナルティを4で用いることができる。
【0033】 2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップを考慮して、またはこれを考慮
せずに、上述と同様の技法を用いて算定できる。同一性パーセントを計算する際
、典型的には正確な一致のみを計数する。
【0034】 本発明はさらに、本明細書中に開示するあらゆるヌクレオチド配列の断片も含
む。
【0035】 特定の実施形態では、FSP95核酸の断片は、FSP95 PKA RIIサブユニット結合ド
メインの配列をコードする。
【0036】 本明細書中に用いる場合、FSP95 PKA RIIサブユニット結合のドメイン配列は
、 (a) 例えば、318〜335 (LKKVLLKHAKEVVSDLID)、368〜385 (QKATDIMDAMLRKLYN
VM)、または671〜688 (EHLMNSVMKLCVLIAKSC)のアミノ酸を含む、PKA RIIサブユ
ニット結合ドメインペプチド、などのペプチドをコードするあらゆるDNA配列、 (b) 高ストリンジェントな条件下で(例えば、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸
ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中で65℃にてフィルターに結合しているDNAへのハ
イブリダイゼーション、そして、0.1xSSC/0.1%SDS中で68℃にて洗浄(Ausubel F.
M.ら編、1989、Current Protocols in Molecular Biology, Vol. I, Green Publ
ishing Associates, Inc., およびJohn Wiley & Sons, Inc., New York, 2.10.3
頁))、(a)または(b)に記載のPKA RIIサブユニット結合ドメインの配列をコード
するDNA配列の相補配列にハイブリダイズするあらゆるDNA配列、および/または (c) 中程度のストリンジェントな条件(例えば、0.2xSSC/0.1%SDS中で42℃に
て洗浄(Ausubel F.M.ら、1989、上述))などの、上記条件より低ストリンジェン
トな条件下で、(a)または(b)に記載のPKA RIIサブユニット結合ドメインの配列
をコードするDNA配列の相補配列にハイブリダイズし、FSP95 PKA RIIサブユニッ
ト結合ドメインに機能的に同等な遺伝子産物をコードする、あらゆるDNA配列、 を含む。
【0037】 本発明は、単離または精製された形のFSP95 PKA RIIサブユニット結合ドメイ
ンの配列、ならびにFSP95に対して異種であるタンパク質またはポリペプチドを
コードする核酸と機能的な形で連結されたPKA RIIサブユニット結合ドメインの
配列を含む組成物を包含する。
【0038】 本発明のFSP95配列は、真核生物のゲノム、好ましくは哺乳動物のゲノム、お
よび、さらに好ましくはヒトゲノムに由来する。特定の実施形態では、本発明の
ヌクレオチドは、高ストリンジェントな条件下で、図3に示されるヌクレオチド
配列にハイブリダイズする哺乳動物ゲノム由来のあらゆるDNA配列を包含する。
特定の実施形態では、本発明のヌクレオチドは、高ストリンジェントな条件下で
、図3に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズし、精子の運動性に関与し
、PKA RIIサブユニット結合ドメインを含む遺伝子産物をコードする、哺乳動物
ゲノム由来のあらゆるDNA配列を包含する。
【0039】 所定のアミノ酸配列をコードする核酸を参照する場合、該核酸とはcDNA分子だ
けではなく、例えばgDNA配列(これからmRNA分子種が転写され、該分子種が所定
のアミノ酸配列をコードするようにプロセシングされる)も指すと解されるべき
である。
【0040】 本発明はさらに、FSP95遺伝子を制御する核酸を含む。FSP95遺伝子のゲノム配
列は非コード5'隣接領域内に制御配列を含む。FSP95遺伝子の5'制御配列は、図3
に示すヌクレオチド配列の-5000、-3000、-2000、-1000、または-500の位置にあ
るヌクレオチドから+10、+100、または+300の位置にあるヌクレオチドまでのヌ
クレオチド配列の間に位置するポリヌクレオチド配列を含む。
【0041】 本発明はまた、 (a) 前記FSP95コード配列および/またはその相補配列(即ち、アンチセンス)
のいずれかを含有するベクター、 (b) 前記FSP95コード配列のいずれかを、該コード配列の発現を指令する制御
エレメントに機能的な形で連結して含有する発現ベクター、そして (c) 前記FSP95コード配列のいずれかを、宿主細胞内で該コード配列の発現を
指令する制御エレメントに機能的な形で連結して含有する遺伝子操作した宿主細
胞、 をも包含する。
【0042】 本明細書中で用いる場合、制御エレメントは、誘導性および非誘導性プロモー
ター、エンハンサー、オペレーター、ならびに発現を起動および制御する当業者
に公知の他のエレメントを含むが、これらに限定はしない。かかる制御エレメン
トには、サイトメガロウイルスhCMVの最初期遺伝子、アデノウイルスSV40の初期
遺伝子または後期遺伝子、lac系、trp系、TAC系、TRC系、ファージAの主要オペ
レーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の調節領域、3-ホスホグ
リセリン酸キナーゼのプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、およ
び酵母α接合因子のプロモーターが含まれるが、これらに限定はされない。
【0043】 ある実施形態では、本発明のFSP95の核酸配列は哺乳動物の核酸配列であり、
好ましくはヒトの配列である。
【0044】 さらに他の実施形態では、本発明のFSP95の核酸配列は、図3および図4に示す
アミノ酸配列に対応するポリペプチド部分(即ち、これらアミノ酸配列に類似性
のあるアミノ酸配列を示すポリペプチド部分)を含むFSP95遺伝子産物をコードす
る核酸配列であり、この場合の対応する部分とは、FSP95遺伝子産物の全長にわ
たって平均すると、図3および図4に示される配列と約50%以上のアミノ酸の同
一性を示す部分である。
【0045】 特定の実施形態では、核酸をコードするFSP95は、図3に示すヌクレオチド配列
もしくはそのコード領域のcDNA配列、またはFSP95タンパク質(例えば、図3およ
び図4に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)をコードする核酸を含む。本
発明は、FSP95核酸配列の少なくとも8個のヌクレオチド(即ちハイブリダイゼー
ションできる部分)からなる単離または精製された核酸を提供し、他の実施形態
では、該核酸は、FSP95配列の少なくとも25個の(連続した)ヌクレオチド、50、1
00、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500
、2900、もしくは2941個の隣接するヌクレオチド、または全長のFSP95コード配
列からなる。例えば、ある実施形態では、本発明は、図3に示すヌクレオチド配
列のヌクレオチド1〜200、201〜250、251〜300、301〜350、351〜400、401〜450
、451〜500、501〜750、751〜1000、1001〜1501、もしくは1501〜2000、2001〜2
500、もしくは2501〜2941からなる単離または精製された核酸を提供する。他の
実施形態では、該核酸は、25、50、75、100、200、300、400、500、1000、1500
、2000、2500、または2941ヌクレオチド長より短い。核酸は一本鎖でも二本鎖で
もよい。本発明はまた、前記配列とハイブリダイズできる、または前記配列に相
補的な核酸も提供する。特定の態様では、FSP95遺伝子の少なくとも10、25、50
、100、200、300、400、500、1000、1500、2000、2500ヌクレオチド、またはFSP
95遺伝子の全コード領域に対して相補的な配列を含む核酸が提供される。当業者
であれば理解するとおり、本発明は、上述の図3に示すヌクレオチド配列のcDNA
配列をもたらすゲノムDNA配列をも包含する。
【0046】 図3に示すヌクレオチド配列において開示されるヒトFSP95核酸配列に加えて、
他のFSP95核酸配列は、本明細書中に開示するFSP95の核酸配列と組み合わせて当
技術分野で公知の分子生物学的技法を使用することにより、過度の実験をするこ
となく特定することができ、容易に単離できる。これらの他の配列は、本発明の
範囲内である。例えば、図3に示すヌクレオチド配列に開示されたものと同じ遺
伝子座または異なる遺伝子座にある、別のヒトFSPの核酸配列を容易に単離でき
る。例えば、ヒトゲノム中の他の遺伝子座または物理的な位置にある、FSP95遺
伝子産物の1つ以上のドメインに極めて高い相同性を有するタンパク質をコード
する遺伝子、およびFSP95遺伝子産物と機能的に同等の遺伝子産物をコードする
遺伝子が存在し得る。さらに、他種に存在するFSP95に相同的な核酸配列も容易
に同定および単離できる。
【0047】 図3に示すヌクレオチド配列に開示される配列と同一の遺伝子座および物理的
な位置に存在するFSP95核酸配列の同定および単離に関しては、このような配列
は、例えば、標準的配列決定技術および細菌人工染色体(BAC)およびP1人工染色
体(PAC)技術を用いることにより容易に得ることができる。
【0048】 ヒトまたは他種(例えばマウス)のFSP遺伝子または核酸の相同体をクローニン
グするには、本明細書中に開示される単離されたFSP95核酸配列を標識し、それ
を用いて対象とする生物(例えばマウス)に由来する適当な細胞または組織(例え
ば精巣)から得られたmRNAから構築したcDNAライブラリーをスクリーニングする
とよい。cDNAライブラリーが、標識した配列が由来する生物種とは異なる生物に
由来する場合は、使用するハイブリダイゼーション条件はより低ストリンジェン
トな条件とすべきである。
【0049】 あるいはまた、標識した断片を用いて、さらに、対象の生物に由来するゲノム
ライブラリーを、適切なストリンジェントな条件を用いてスクリーニングしても
よい。低ストリンジェントな条件とは、当技術分野では公知であり、ライブラリ
ーおよび標識した配列が由来する特定の生物に応じて予測できる通りに変わる。
かかる条件に関する指針には、例えば、Sambrookら、1989、Molecular Cloning,
A Laboratory Manual , 第2版、Cold Spring Harbor Press, N.Y.; およびAusb
elら(上述)を参照のこと。さらに、FSP95遺伝子の相同体は、例えば、本明細書
中に開示されるいずれかのFSP95内にあるアミノ酸配列に基づいて設計した2つの
変性オリゴヌクレオチドプライマープールを用いてPCRを行うことにより、ヒト
核酸から単離することができる。
【0050】 該PCR産物をサブクローニングして配列決定し、増幅された配列がFSP95遺伝子
核酸配列の配列であることを確かめるとよい。その後、該PCR断片を用いて、様
々な方法により全長cDNAクローンを単離できる。例えば、その増幅断片を標識し
、それを用いてバクテリオファージcDNAライブラリーをスクリーニングすること
ができる。あるいはまた、標識化断片を用いてゲノムライブラリーをスクリーニ
ングすることによって、ゲノム由来のクローンを単離できる。
【0051】 PCR技術は、全長cDNA配列を単離するのに用いることもできる。例えば、標準
的手法に従って、適切な細胞または組織(例えば精巣)を供給源として、そこから
RNAを単離することができる。第1鎖合成を誘導するために該増幅断片のほぼ5'末
端部に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、RNAの逆転写反応を実
施するとよい。その後、ここで得られたRNA/DNAハイブリッドに、標準的な末端
トランスフェラーゼ反応を用いてグアニンテールを末端に付加することができ、
該ハイブリッドは、RNase Hで消化して、その後、ポリ-Cプライマーを用いて第2
鎖の合成を誘導することができる。従って、該増幅断片の上流にあるcDNA配列は
、容易に単離できる。利用できるクローニング法の解説としては、Sambrookら(
上述)を参照のこと。
【0052】 FSP95核酸配列をさらに用いて、FSP95遺伝子の対立遺伝子を同定することもで
きる。このような突然変異対立遺伝子を、例えば受精障害などのFSP95遺伝子障
害の症状の原因となる遺伝子型を有することが判明しているか、またはそう推測
される個体から単離することができる。このような対立遺伝子は本発明の範囲内
である。
【0053】 FSP95対立遺伝子は、一本鎖高次構造多型(SSCP)突然変異検出技術、サザンブ
ロット、および/またはPCR増幅技術により同定することができる。プロモーター
領域を含む全FSP95配列のオーバーラップする領域を増幅するためのプライマー
は、通例どおり設計できる。ある実施形態では、プライマーをエキソンとイント
ロンの境界を含むように設計して、まず、コード領域を突然変異について調べる
ことができる。正常および症状のある個体のリンパ細胞から単離されたゲノムDN
AをPCRの鋳型として用いる。正常および症状のある個体からのPCR産物を、一本
鎖高次構造多型(SSCP)突然変異検出技術および/または配列決定によって比較す
る。SSCP解析は以下の通り実施する: ゲノムDNA100ngを、最終濃度が10pmolの各プライマー、0.5UのTaq DNAポリメラ
ーゼ(Promega)、2.5μMのdNTPs(Pharmacia)中の1μCiのα-[32P]dCTP(NEN; 比活
性3000Ci/mmol)、10mMのTris-HCl(pH8.8)、50mMのKCl、1mMのMgCl2、0.01%の
ゼラチンとなるように添加した10μl反応液中で増幅させる。サーマルサイクラ
ー(MJ Research, Boston, MA, USA)で、変性(94℃)、アニーリング(プライマー
の融解温度によって56℃〜64℃)、および伸長(72℃)のサイクルを30サイクル行
った後、最後の伸長反応を72℃で7分間行う。反応混合物の2μlを0.1%SDS、10m
MのEDTAで希釈した後、20mMのNaOHを含むシーケンシング停止溶液と1:1で混
合する。サンプルを95℃で5分間加熱して、氷上で3分間冷却した後、その3μlを
5%(v/v)グリセロールを含む6%アクリルアミド/TBEゲルに載せる。室温で12〜1
5時間8Wにてゲルを泳動する。種々の時間にわたって−70℃で増感スクリーンを
用いてフィルムに暴露することにより、オートラジオグラフィーを実施する。そ
の後、突然変異型FSP95遺伝子産物の機能の消失または変化の原因となる突然変
異を調べることができる。
【0054】 あるいはまた、例えばPCRを用いて、突然変異型FSP95遺伝子のcDNAを単離する
ことができる。この際、突然変異型FSP95対立遺伝子を有すると推定される個体
で発現していることが判明しているか、またはそう推測される組織から単離した
mRNAにオリゴ-dTオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせ、逆転写酵素を用い
て新しい鎖を伸長させることにより、cDNAの第1鎖を合成できる。その後、正常
な遺伝子の5'末端に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いてcD
NAの第2鎖を合成する。これら2つのプライマーを用いて、この生成物を、PCRに
より増幅して適切なベクター内にクローニングし、当技術分野で公知の方法によ
るDNA配列解析に供する。突然変異型FSP95対立遺伝子のDNA配列を正常なFSP95対
立遺伝子のDNA配列と比較することにより、突然変異型FSP遺伝子産物の機能の消
失または変化の原因となる突然変異を調べることが可能である。
【0055】 あるいはまた、突然変異型FSP95対立遺伝子を有することが推測されるか、も
しくはそう判明している個体から得たDNAを用いてゲノムライブラリーを構築で
き、または、突然変異型FSP95対立遺伝子を発現していることが判明しているか
、もしくはそう推測される組織から得たRNAを用いてcDNAライブラリーを構築す
ることができる。その後、損傷の無いFSP95遺伝子または適当なその断片を標識
し、それをプローブとして使用して上記ライブラリー中の相当する突然変異型FS
P95対立遺伝子を同定できる。その後、突然変異型FSP95核酸配列を含むクローン
を精製し、当技術分野で公知の方法により配列解析に供することが可能である。
【0056】 さらに、発現ライブラリーを、例えば、突然変異型FSP95対立遺伝子を有する
ことが推測されるか、もしくはそう判明している個体の、突然変異型FSP95対立
遺伝子を発現していることが判明しているか、またはそう推測される組織から単
離したRNAから合成したcDNAを用いて構築することができる。このようにして、
推定される突然変異組織により作成された遺伝子産物を発現させ、5.3節に後述
するように正常なFSP95遺伝子産物に対して誘起させた抗体と標準的抗体スクリ
ーニング技術を組み合わせて用いてスクリーニングすることができる(スクリー
ニング技術については、例えばHarlowおよびLane編、1988、"Antibodies; A lab
oratory Manual" Cold Supring Harbor Press, Cold Spring Harborを参照のこ
と)。
【0057】 FSP95タンパク質の誘導体および類似体をコードする核酸、およびFSP95アンチ
センス核酸は、上述の方法により単離できる。本明細書中に用いる場合、「FSP9
5タンパク質のフラグメントまたは一部をコードする核酸」という語句は、FSP95
の上述のフラグメントまたは一部のみをコードする核酸をいい、連続的な配列で
あるFSP95タンパク質の他の隣接部分をコードする核酸を指すのではない。
【0058】 同種または異種の他のFSP95の核酸の間で保存されている(即ち、相同性のある
)領域を含むFSP95核酸の断片もまた提供される。1種以上のFSP95ドメインをコー
ドする核酸を上述の方法により単離することができる。
【0059】 FSP95突然変異が機能の変化を有する発現遺伝子産物をもたらす(例えば、ミス
センスまたはフレームシフト突然変異の結果として)ような場合、FSP95遺伝子産
物に対する一連のポリクローナル抗体が該突然変異型FSP95遺伝子産物と交差反
応すると考えられる。標識したこれらの抗体を用いる反応により検出されたライ
ブラリーのクローンを精製して、当技術分野で公知の方法による配列解析に供す
ることができる。
【0060】5.2. FSP95タンパク質およびポリペプチド 本発明はさらに、FSP95によりコードされるタンパク質およびアミノ酸配列、
ならびにこれらの誘導体(例えば断片)および類似体を提供する。特に、本発明
は、機能的に活性を有する、すなわち全長(野生型)FSP95タンパク質に関係す
る1以上の機能的活性を示すことができる、FSP95誘導体および類似体を提供す
る。このような機能的活性としては、PKAのRIIサブユニットへの結合、リン酸化
、精子運動性のモジュレート、精子マーカー、抗原性(抗FSP95抗体への結合能
または結合についてのFSP95との競合能)および免疫原性(FSP95に結合する抗体
を生成する能力)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明はさらに、FS
P95タンパク質の1以上のドメインを含むFSP95の断片(ならびにこれらの誘導体
および類似体)を提供する。具体的な実施形態において、FSP95タンパク質はヒ
トのタンパク質である。
【0061】 図3および図4に示したアミノ酸配列は、FSP95遺伝子産物を表す。FSP95遺伝
子産物は、本明細書中においてしばしば「FSP95」とも呼ばれ、上記第5.1節で記
載したFSP95核酸配列によりコードされた産物を含む。本発明に従って、FSP95遺
伝子産物をコードする核酸配列は、哺乳動物ゲノムを含む真核生物ゲノムに由来
するものである。好適な実施形態において、FSP95産物をコードする核酸配列は
、ヒトゲノムに由来するものである。
【0062】 FSP95タンパク質、ポリペプチドおよびこれらのペプチド断片は、様々な用途
のために調製することができる。例えばこのような分子は、抗体を産生するため
、診断的および治療的アッセイで使用するため、精子運動性に関与する他の精子
遺伝子産物を同定するため、または精子運動性をモジューレートする化合物を同
定するために使用することができる。
【0063】 さらに、本発明のFSP95産物は、機能的に同等な(第5.1節の定義を参照された
い)産物を表すタンパク質を含み得る。機能的に同等なFSP95産物は、上記第5.1
節で記載したFSP95核酸配列によりコードされるアミノ酸配列の中のおよび/また
はこれに隣接するアミノ酸残基の欠失(中間部欠失を含む)、付加(融合タンパ
ク質を生成する付加を含む)、または置換を含んでいてもよいが、これらの改変
は、その変化が機能的に同等なFSP95遺伝子産物を生成するような「サイレント
」変化をもたらすようなものである。アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電
荷、可溶性、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質の類似性に基づいて
行うことができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロ
イシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン
およびメチオニンが挙げられ、極性中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、
トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられ
、正電荷(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが
挙げられ、ならびに負電荷(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグ
ルタミン酸が挙げられる。
【0064】 本発明に包含されるFSP95タンパク質の具体的な機能的変異体としては、ヒト
精子の調製物(タンパク質)から得られる以下のキロダルトン分子量(MW)およ
び等電点(pI)を有する免疫反応性タンパク質が挙げられる。
【0065】 或いは、機能の改変が望まれる場合、遺伝子操作により欠失または非保存的改
変を行って、改変されたFSP95遺伝子産物を精製することができる。このような
改変は、例えばFSP95産物の生物学的機能のうちの1以上を改変することができ
る。さらに、このような改変は、選択された宿主細胞内における発現やスケール
アップ(scale up)等により適したFSP95産物を生成するように選択してもよい
。例えば、1つの実施形態において、システイン残基を欠失させたり、または他
のアミノ酸残基で置換して、ジスルフィド結合を除去することができる。他の実
施形態において、チロシン残基を欠失させるかまたは他のアミノ酸残基で置換し
て、チロシンのリン酸化を排除することができる。
【0066】 FSP95タンパク質の1以上のドメインに対応するペプチドおよび/またはタンパ
ク質、ならびにFSP95タンパク質またはFSP95タンパク質の一部(末端切断型FSP9
5タンパク質もしくはペプチド)またはFSP95タンパク質ドメインが無関係のタン
パク質に融合された融合タンパク質も、本発明の範囲内に含まれる。このような
タンパク質およびペプチドは、上記第5.1節に開示したFSP95ヌクレオチド配列に
基づいて、および/または本明細書に開示したFSP95アミノ酸配列に基づいて、設
計することができる。融合タンパク質としては、FSP95タンパク質もしくはペプ
チドを安定化させてin vivoにおける半減期を長くするIgFc融合体、その融合タ
ンパク質の細胞膜への結合を可能とする任意のアミノ酸配列との融合体、あるい
はマーカー機能を果たす酵素、蛍光タンパク質、発光タンパク質、またはフラッ
グエピトープタンパク質もしくはペプチドとFSP95タンパク質ドメインとの融合
体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】 また本発明のFSP95タンパク質は、cDNA配列の少なくとも1つのエキソンによ
ってコードされるドメインまたはその断片が欠失しているFSP95タンパク質配列
も含む。
【0068】 本発明のFSP95ポリペプチドはさらに、翻訳後修飾(ステアリン化(stearatio
n)、ミリストイル化、パルミチン化(palmitation)、グリコシル化、アセチル
化およびリン酸化を含むがこれらに限定されない)を含んでもよい。好適な実施
形態において、FSP95ポリペプチドは、ステアリン化、ミリストイル化、パルミ
チン化、および親油性アミノ酸の取り込みなどの技法を用いて修飾し、これらを
膜透過性とする。天然FSP95タンパク質がこのような修飾を可能する認識モチー
フを持たない場合、酵素認識シグナル等のモチーフをコードするFSP95遺伝子の
ヌクレオチド配列の中に導入して修飾FSP95遺伝子産物を生成することは、当業
者にとって外套手段である。
【0069】5.3. ペプチドおよびペプチド類似体の調製 5.3.1. 化学合成 本発明のペプチドまたはその類似体は、事実上、ペプチドおよびペプチド類似
体を調製するためのどのような公知技術を用いて調製してもよい。例えば、ペプ
チドは、従来の溶液または固相ペプチド合成法を用いて直鎖状で調製してその樹
脂から切断した後、精製工程を行って調製することができる(Creighton, 1983,
Protein Structures And Molecular Principles, W.H. Freeman and Co., N.Y.
)。本明細書中に記載されるペプチドを合成するのに適した手法は、当分野では
周知である。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析または配列決定によって確認
することができる(例えばEdman分解法および質量分析法)。
【0070】 さらに、該ペプチドの類似体および誘導体は、化学合成することができる。本
発明のペプチドの各アミノ酸の間の結合は、アミド、置換アミドまたはアミドの
同配体であってもよい。非古典的なアミノ酸または化学的アミノ酸類似体は、置
換または付加によって該配列中に導入することができる。非古典的アミノ酸とし
ては、一般的アミノ酸のD-異性体、α-アミノイソブチル酸、4-アミノブチル酸
(Abu)2-アミノブチル酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸(Aib)2-アミ
ノイソブチル酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリ
ン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t-ブチルグ
リシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-
アラニン、フルオロ-アミノ酸、デザイナーアミノ酸(例えばβ-メチルアミノ酸
、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸など)およびアミノ酸類似体全般が
挙げられるが、これらに限定されない。さらに、アミノ酸はD(右旋性)またはL(
左旋性)であってもよい。
【0071】 環化ペプチドは、直鎖状ペプチドの末端にCys残基を付加することにより形成
することができる。ジスルフィド結合の形成が望ましい場合は、ジスルフィド結
合は、一般に弱い酸化剤の存在下で行われる。化学酸化剤を用いても良いし、ま
たは化合物を単に大気中の酸素にさらしてこれらの結合を形成することもできる
。当分野では様々な方法が公知であり、例えばTam, J.P.ら, 1979, Synthesis 9
55-957; Stewartら, 1984, Solid Phase Peptide Synthesis, 第2版, Pierce Ch
emical Company Rockford, IL; Ahmedら, 1975, J.Biol. Chem. 250: 8477-8482
;およびPermingtonら, 1991 Peptides 1990 164-166, GiraltおよびAndreu編, E
SCOM Leiden, The Netherlandsによって記載された方法が挙げられる。さらに他
の方法は、Kamberら, 1980, Helv Chim. Acta 63:899-915に記載されている。固
相支持体上で行われる方法は、Albericio, 1985, Int. J. Peptide Protein Res
. 26:92-97により記載されている。本発明のペプチドにおいてジスルフィド結合
を形成するためには、これらの方法のいずれを使用してもよい。
【0072】5.3.2. 組換え合成 遺伝子によりコードされたアミノ酸によってそのペプチド全体が構成される場
合、またはそのペプチドの一部がそのように構成される場合、そのペプチドまた
はその関連部分は、従来の組換え遺伝子操作技法を用いて合成することもできる
【0073】 組換え産生の場合、直鎖状のペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を適
当な発現ビークル(即ち挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要なエレメ
ントを含むベクター、またはRNAウイルスベクターの場合は複製および翻訳に必
要なエレメントを含むベクター)の中に挿入する。次にこの発現ビークルを適当
な標的細胞中にトランスフェクトし、この標的細胞が該ペプチドを発現する。次
に、用いる発現系に応じて、当分野で周知の手法によって、発現されたペプチド
を単離する。組換えタンパク質およびペプチドの産生方法は、当分野では周知で
ある(例えばManiatisら, 1989, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Col
d Spring Harbor Laboratory, N.Y.; およびAusubelら,1989, Current Protocol
s in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Interscie
nce, N.Y.を参照されたい)。ヒトGAD65のコード配列が記載されている(Buら,
1992, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:2115-2119; BuおよびTobin, 1994, G
enomics 21:222-228)。本明細書中の開示に基づいた拮抗的ペプチドをコードす
るために天然配列にコドン置換を導入するための方法は、当業者には周知である
【0074】5.3.3. 組換えFSP95タンパク質、ベクターおよび細胞 FSP95遺伝子産物、そのペプチド断片およびその融合タンパク質は、当分野で
周知の技法を用いた組換えDNA技法によって産生することができる。このように
、FSP95遺伝子配列を含む核酸を発現させることによって本発明のFSP95遺伝子ポ
リペプチド、ペプチド、融合ペプチドおよび融合ポリペプチドを調製するための
方法を、本明細書中に記載する。当業者に周知の方法を用いて、FSP95遺伝子産
物のコード配列ならびに適当な転写および翻訳制御シグナルを含む発現ベクター
を構築することができる。これらの方法には、例えばin vitro組換えDNA技法、
合成技法およびin vivo遺伝子組換え法が含まれる。例えばSambrookら, 1989(
前掲)およびAusubelら,1989(前掲)に記載された技法を参照されたい。あるい
は、FSP95遺伝子産物の配列をコードすることができるRNAは、例えば合成装置を
用いて化学合成してもよい。例えば“Oligonucleotide Synthesis”, 1994, Gai
t編, IRL Press, Oxfordに記載された技術を参照されたい。
【0075】 種々の宿主発現ベクター系を用いて、本発明のFSP95遺伝子のコード配列を発
現させることができる。このような宿主発現系は、目的のコード配列を産生して
精製するために用いるビークルだけでなく、適当なヌクレオチドコード配列で形
質転換またはトランスフェクトしたときに本発明のFSP95遺伝子産物をin situで
発現することができる細胞も指す。これらの発現系には以下の微生物が挙げられ
るがこれらに限定されない:FSP95遺伝子産物のコード配列を含む組換えバクテ
リオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換さ
れた細菌(例えば大腸菌、枯草菌);FSP95遺伝子産物のコード配列を含む組換
え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えばサッカロミセス属、ピチア属
);FSP95遺伝子産物のコード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば
バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;FSP95遺伝子産物のコード配列を
含む組換えウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルスCaMV;
タバコモザイクウイルスTMV)を感染させた、またはFSP95遺伝子産物のコード配
列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換した
植物細胞系;あるいは哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えばメ
タロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター
(例えばアデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモータ
ー)を含む組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えばCOS、CHO、BHK、2
93、3T3)。
【0076】 細菌系において、発現されるFSP95遺伝子産物のための用途に応じて、多くの
発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、このようなタンパク質を
大量に産生する場合、FSP95タンパク質の医薬組成物を生成するまたはFSP95タン
パク質に対する抗体を産生するには、例えば容易に精製される融合タンパク質産
物の高レベル発現を指令するベクターが望ましいであろう。このようなベクター
には、大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherら, 1983, EMBO J. 2, 1791)(この
ベクターでは、融合タンパク質が生成されるように、FSP95遺伝子産物のコード
配列をlacZコード領域に読取り枠を合わせて該ベクター中に個々にライゲートし
得る)、pINベクター(InouyeおよびInouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13, 31
01-3109; Van HeekeおよびSchuster, 1989, J. Biol. Chem. 264, 5503-5509)
等が含まれるが、これらに限定されない。pGEXベクターを用いて外来ポリペプチ
ドをグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現
させることもできる。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、グル
タチオン-アガロースビーズに吸着させた後に遊離グルタチオンの存在下で溶出
させることによって、溶解した細胞から簡単に精製することができる。pGEXベク
ターは、クローニングされた標的遺伝子産物がGST成分から放出されうるように
、トロンビンまたは第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
【0077】 昆虫細胞系では、外来遺伝子を発現させるためにベクターとしてオートグラフ
ァ・カリフォルニア(Autographa californica)の核多角体病ウイルス(AcNPV
)を用いる。このウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugi
perda)細胞中で増殖する。該ウイルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝
子)の中にFSP95遺伝子のコード配列を個々にクローニングし、AcNPVプロモータ
ー(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。FSP95遺
伝子のコード配列を首尾良く挿入すれば、ポリヘドリン遺伝子の不活化および非
閉塞組換えウイルス(即ち、ポリヘドリン(polyhedrin)遺伝子によってコード
されるタンパク質様外被を持たないウイルスなど)の産生につながる。次にこれ
らの組換えウイルスを用いてスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugipe
rda)細胞を感染させ、該細胞中で挿入した遺伝子を発現させる(例えばSmithら
, 1983, J. Virol. 46, 584; Smith, 米国特許第4,215,051号を参照されたい)
【0078】 哺乳動物宿主細胞では、多くのウイルスに基づく発現系を用いることができる
。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、目的のFSP95遺伝子のコー
ド配列をアデノウイルス転写/翻訳制御複合体(例えば後期プロモーターおよび
3部(tripartite)リーダー配列)に連結させることができる。次にin vitroも
しくはin vivo組換えによりこのキメラ遺伝子をアデノウイルスゲノム中に挿入
することができる。該ウイルスゲノムの非必須領域(例えばE1またはE3領域)に
挿入すると、感染宿主中で生存可能であり且つFSP95遺伝子産物を発現すること
ができる組換えウイルスを得ることができる(例えばLoganおよびShenk, 1984,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3655-3659を参照されたい)。挿入されたFSP9
5遺伝子産物のコード配列の効率的な翻訳のために特異的開始シグナルが必要な
場合もある。これらのシグナルとしては、ATG開始コドンおよび隣接配列が挙げ
られる。それ自身の開始コドンおよび隣接配列を含むFSP95遺伝子全体を適当な
発現ベクターに挿入する場合、更なる翻訳制御シグナルを加える必要はない。し
かし、FSP95遺伝子のコード配列の一部のみを挿入する場合には、外来翻訳制御
シグナル(おそらくATG開始コドンを含む)を挿入しなければならない。さらに
、挿入物全体の翻訳を確実に行わせるために、所望のコード配列の読み枠に開始
コドンを揃えなければならない。これらの外来翻訳制御シグナルおよび開始コド
ンは、様々な起源(天然および合成の両方を含む)に由来するものであってよい
。適当な転写エンハンサーエレメント、転写終結因子等を含有させることによっ
て発現効率を上げることができる(Bittnerら, 1987, Methods in Enzymol. 153
, 516-544を参照されたい)。
【0079】 さらに、挿入された配列の発現をモジュレートする宿主細胞系、または望まし
い特定の方法で遺伝子産物を修飾およびプロセシングする宿主細胞系を選択して
もよい。タンパク質産物のこのような修飾(例えばグリコシル化)およびプロセ
シング(例えば切断)は、そのタンパク質の機能にとって重要である。異なる宿
主細胞は、翻訳後プロセシングならびにタンパク質および遺伝子産物の修飾のた
めの特徴的および特異的なメカニズムを有する。適当な細胞系または宿主系は、
発現される外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを確実に行えるよう
に選択することができる。このため、一次転写産物の適切なプロセシング、該遺
伝子産物のグルコシル化およびリン酸化のための細胞装置を持つ真核生物の宿主
細胞を使用することができる。このような哺乳動物の宿主細胞には、CHO、VERO
、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3およびWI38が含まれるが、これらに限定され
ない。
【0080】 組換えタンパク質を長時間にわたり高い収量で産生するためには、安定な発現
が好ましい。例えば、FSP95遺伝子産物を安定に発現する細胞系を遺伝子操作に
より作製することができる。ウイルス複製起点を含む発現ベクターを用いるので
はなく、適当な発現制御エレメント(例えばプロモーター、エンハンサー配列、
転写終結因子、ポリアデニル化部位等)によって制御されるDNAおよび選択マー
カーを用いて宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入後に、遺伝
子操作した細胞を富化培地中で1〜2日間増殖させた後、選択培地に移しかえても
よい。組換えプラスミド中の選択マーカーは、その選択に対する耐性を付与し、
そして細胞の染色体の中に該プラスミドを安定に組み込ませ、該細胞を増殖させ
て細胞増殖巣を形成させる。この細胞増殖巣は、後でクローニングして細胞系に
増殖させることができる。この方法は、FSP95遺伝子産物を発現する細胞系を遺
伝子操作により作製するために有利に使用することができる。このように遺伝子
操作された細胞系は、FSP95遺伝子産物の内因性活性に影響を及ぼす化合物のス
クリーニングおよび評価において特に有用である。
【0081】 ヘルペス単純ウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら, 1977, Cell 11:223)、
ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalskaおよび
Szybalski, 1962, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48: 2026)およびアデニンホス
ホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら, 1980, Cell 22: 817)遺伝子など(た
だしこれらに限定されない)の多くの選択系を用いることができる。これらの遺
伝子はそれぞれtk’, hgprt’またはaprt’細胞でそれぞれ使用することができ
る。また、代謝拮抗物質耐性は以下の遺伝子の選択基準として用いることができ
る:ミコフェノール酸に対する耐性を付与するdhfr(MulliganおよびBerg,1981,
Proc. Natl. Acad. Sci USA 78: 2072);アミノグリコシドG-418に対する耐性
を付与するneo(Colberre-Garapinら, 1981, J. Mol. Biol. 150:1);およびハ
イグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerreら, 1984, Gene 30;147
)。
【0082】 あるいは、発現される融合タンパク質に特異的な抗体を利用することにより任
意の融合タンパク質を簡単に精製することができる。例えば、Janknechtらによ
り記載された系によって、ヒト細胞系において発現される非変性融合タンパク質
を簡単に精製することができる(Janknechtら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci.
USA88,; 8972-8976)。この系では、目的の遺伝子をワクシニア組換えプラスミ
ド中にサブクローニングし、その遺伝子のオープンリーディングフレームを翻訳
の際に6つのヒスチジン残基を含むアミノ末端タグに融合させる。組換えワクシ
ニアウイルスを感染させた細胞から得た抽出物をNi2+ニトリロ酢酸-アガロース
カラムにローディングし、イミダゾールを含む緩衝液を用いてヒスチジン標識タ
ンパク質を選択的に溶出する。
【0083】 或いはまた、細胞内、細胞系内、または微生物内における内因性FSP95遺伝子
の発現特性は、異種DNA調節エレメントを安定な細胞系もしくはクローニングさ
れた微生物のゲノムの中に挿入し、その挿入された調節エレメントが該内因性FS
P95遺伝子に機能しうる形で連結されるようにすることにより、改変することが
できる。例えば、通常「転写的にサイレント」である内因性FSP95遺伝子(すな
わち細胞内、細胞系内または微生物内において通常は発現されないまたは非常に
低レベルでのみ発現されるFSP遺伝子)を、その細胞内、細胞系内または微生物
内で通常発現される遺伝子産物の発現を促進することができる調節エレメントを
挿入することによって、活性化させることができる。或いは、転写的にサイレン
トな内因性FSP95遺伝子を、複数の細胞型にわたって機能する無差別の調節エレ
メントを挿入することによって活性化してもよい。
【0084】 当業者に周知であり例えばChappelの米国特許第5,272,071号、国際特許出願公
開番号第WO91/06667号(1991年5月16日発行)に記載されたターゲッティング相
同組換え等の技術を用いて、異種調節エレメントを、該エレメントが内因性FSP
遺伝子と機能しうる形で連結されるように安定な細胞系またはクローニングされ
た微生物の中に挿入することができる。
【0085】 FSP95遺伝子産物は、トランスジェニック動物内において発現させることもで
きる。マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、マイクロブタ、ヤギ、ヒツ
ジおよび非ヒト霊長類(例えばヒヒ、サルおよびチンパンジーなど)を含む(た
だしこれらに限定されない)あらゆる種の動物を用いてFSP95トランスジェニッ
ク動物を作製することができる。本明細書中で使用される「トランスジェニック
」という用語は、異なる種に由来するFSP95遺伝子配列を発現する動物(例えば
ヒトFSP95配列を発現するマウス)だけでなく、内因性(すなわち同種の)FSP95
配列を過剰発現するよう遺伝子操作された動物または内因性FSP95遺伝子配列を
発現しないように遺伝子操作された動物(すなわち「ノックアウト」動物)、な
らびにこれらの子孫を指す。
【0086】 当分野で公知の技術を用いて、FSP95遺伝子のトランスジーンを動物の体内に
導入し、トランスジェニック動物の創始系(founder line)を作製することがで
きる。このような技法には、前核微量注入法(HoppeおよびWagner, 1989,米国特
許第4,873,191号)、レトロウイルスが媒介する生殖系への遺伝子導入(van der
Puttenら, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 82: 6148-6152);胚幹細胞中
における遺伝子ターゲッティング(Thompsonら, 1989, Cell 56: 313-321);胚
のエレクトロポレーション(Lo, 1983, Mol. Cell. Biol. 3: 1803-1814);お
よび精子が媒介する遺伝子導入(Lavitranoら, 1989, Cell 57: 717-723)が含
まれるが、これらに限定されない。このような技法の概説については、Gordon,
1989, Transgenic Animals, Intl. Rev. Cytol. 115: 171-229を参照されたい。
【0087】 例えば静止期へと誘導した培養胚細胞、胎児細胞または成体細胞に由来する核
の除核卵母細胞中への核移入等の当分野で公知の任意の技法を用いて、FSP95ト
ランスジーンを含むトランスジェニック動物のクローンを作製することができる
(Campbellら, 1996, Nature 380,: 64-66; Wilmutら, Nature 385,: 810-813)
【0088】 本発明は、すべての細胞中にFSP95トランスジーンを担持するトランスジェニ
ック動物、ならびに全ての細胞ではなく一部の細胞中に該トランスジーンを担持
する動物(例えばモザイク動物)を提供する。トランスジーンは、単一のトラン
スジーンとして、またはコンカテマーとして組み込まれうる(例えば頭と頭また
は頭と尾を突き合わせて並列に並べたもの)。またトランスジーンは、例えばLa
skoら(Laskoら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 6232-6236)の教示に
従って特定の細胞型中に選択的に導入され活性化されてもよい。このような細胞
型特異的活性化に必要な調節配列は、目的の特定の細胞型に依存し、当業者には
自明である。FSP95遺伝子のトランスジーンを内因性FSP95遺伝子の染色体部位の
中に組み込むことが望ましい場合、遺伝子ターゲッティングが好ましい。簡単に
まとめると、このような技法を用いる場合、内因性FSP95遺伝子に対しある程度
のヌクレオチド配列相同性を含むベクターを、染色体配列との相同組換えによっ
て、内因性FSP95遺伝子のヌクレオチド配列中に組み込んでその機能を破壊する
目的のために設計する。またトランスジーンは、例えばGuら(Guら, 1994, Scie
nce 265, 103-106)の教示に従って特定の細胞型の中に選択的に導入し、その細
胞型においてのみ内因性FSP95遺伝子を不活化することができる。このような細
胞型特異的不活性化に必要な調節配列は、目的の特定の細胞型に依存し、当業者
には自明である。
【0089】 トランスジェニック動物を作製したら、標準的な技法を用いて組換えFSP95遺
伝子の表現型発現をアッセイすることができる。動物組織を分析するためにサザ
ンブロット分析またはPCR技法によって最初のスクリーニングを行い、トランス
ジーンの組込みが生じたか否かをアッセイすることができる。またトランスジェ
ニック動物の組織中のトランスジーンのmRNA発現レベルは、動物から得た組織サ
ンプルのノーザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション分析およびRT-
PCT(逆転写酵素PCR)等の技法(ただしこれらに限定されない)を用いて評価する
こともできる。またFSP95遺伝子発現組織のサンプルは、FSP95トランスジーン産
物に特異的な抗体を用いて免疫細胞化学的に評価することもできる。
【0090】 FSP95遺伝子産物またはそのペプチド断片は、様々な用途のために調製するこ
とができる。例えばこのような遺伝子産物またはそのペプチド断片は、抗体の産
生のため、診断アッセイにおいて、または精子運動性に関与する他の細胞内もし
くは細胞外遺伝子産物のマッピングおよび同定のために、用いることができる。
このようなFSP95遺伝子産物には、FSP95遺伝子産物の1以上のドメインに対応す
るペプチドまたはポリペプチド等の可溶性誘導体(特に修飾により1以上の疎水
性ドメインを欠失させたFSP95遺伝子産物)が含まれるが、これらに限定されな
い。或いは、FSP95タンパク質に対する抗体またはFSP95遺伝子産物を模倣する抗
イディオタイプ抗体(Fabフラグメントを含む)、アンタゴニスト、またはアゴ
ニストを用いて、生殖能疾患などのFSP95関連疾患を治療することができる。さ
らに他の方法において、FSP95遺伝子産物を被験体に直接投与して、精子運動性
をモジュレートすることができる(例えば避妊薬としてまたは生殖能の増強する
ための使用)。他の実施形態において、このようなFSP95遺伝子産物をコードす
るヌクレオチド構築物を用いて、宿主細胞を遺伝子操作し、このようなFSP95遺
伝子産物をin vivoで発現させることができる。これらの遺伝子操作された細胞
は、FSP95遺伝子産物、FSP95ペプチドまたは可溶性FSP95ポリペプチドの連続的
な供給を行う体内において「バイオリアクター」として機能することができる。
【0091】5.3.4 FSP95の1以上のドメインを含む組成物 特定の実施形態において、本発明はFSP95断片、またはFSP95タンパク質の1以
上のドメイン(例えば核転位ドメイン)を含むまたは該ドメインからなる断片の
類似体および誘導体を提供する。
【0092】 特定の実施形態は、ヒトFSP95タンパク質の特定の断片に最も相同的なそれぞ
れのFSP95タンパク質のの断片である、FSP95の特定の断片を含む分子を提供する
。FSP95相同体のドメインを含む断片は、第5.3.2節または第6節に記載されるタ
ンパク質分析方法によって同定することができる。
【0093】 特定の実施形態において、本発明は、機能的RIIサブユニット結合ドメインを
有するFSP95タンパク質の断片、誘導体または類似体を提供する。機能的RIIサブ
ユニット結合ドメインをコードする核酸配列については上記第5.1節を参照され
たい。他の具体的な実施形態において、本発明は、異種タンパク質に機能的に連
結されたFSP95 RIIサブユニット結合ドメインを含む融合タンパク質を提供する
。この融合タンパク質は、該異種タンパク質を核に転位させるのに有用である。
次の6つの残基の中の3つのリジンの前のプロリンは、核へのタンパク質の転位
を指令することが分かっている(Hicks, G.R.およびRaikhel, N.V. (1995). Pro
tein import into the nucleus: an integrated view. Annu. Rev. Cell. Dev.
Biol. 11,155-158)。更に詳細な説明については後の第5.6節を参照されたい。
【0094】 他の具体的な実施形態において、FSP95タンパク質の1以上のドメイン(また
はその機能的部分)を含み且つFSP95タンパク質の1以上のドメイン(またはそ
の機能的部分)を欠損する分子が提供される。具体的な実施例において、RIIサ
ブユニット結合ドメインを欠損するFSP95タンパク質誘導体が提供される。
【0095】5.4 FSP95抗体 本発明によれば、FSP95、その断片もしくは他の誘導体、またはそれらの類似
体を免疫原として用いて、そのような免疫原に免疫特異的に結合する抗体を作製
することができる。そのような抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル
、キメラ、一本鎖、Fab断片およびFab発現ライブラリーが挙げられるが、それら
に限定されるものではない。具体的な実施形態では、ヒトFSP95タンパク質に対
する抗体が作製される。別の実施形態では、FSP95のドメイン(例えば、RIIサブ
ユニット結合ドメイン)に対する抗体が作製される。
【0096】 当業界で公知の種々の手順が、FSP95に対するポリクローナル抗体、誘導体、
または類似体の作製に用い得る。特定の実施形態では、図3に示す配列またはそ
の部分配列によりコードされるFSP95のエピトープに対するウサギポリクローナ
ル抗体を得ることができる。抗体の作製のために、天然のFSP95またはその合成
物もしくは誘導体(例えば断片)を注射することにより種々の宿主動物を免疫す
ることができ、例えばウサギ、マウス、ラットなどが挙げられるが、それらに限
定されるものではない。免疫学的応答を増大させるために、宿主の種に応じて、
種々のアジュバントを用いることができ、例えばフロイント(完全および不完全
)、水酸化アルミニウムのような鉱物ゲル、リゾレシチンのような界面活性物質
、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルジョン、キー
ホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(Calmette-Gu
erin棹菌)やCorynebacterium parvumのような有用である可能性のあるヒトアジ
ュバントが挙げられるが、それらに限定されるものではない。FSP95の配列また
はその類似体に対するモノクローナル抗体の調製のためには、培養下にある連続
細胞系により抗体分子の作製をもたらすいずれの方法でも用いることができる。
例えば、KohlerおよびMilstein(1975, Nature 256:495-497)により最初に開発
されたハイブリドーマ法、ならびにトリオーマ法およびヒトB細胞ハイブリドー
マ法(Kozborら, 1983, Immunology Today 4:72)、ならびにヒト・モノクロー
ナル抗体を作製するためのEBV-ハイブリドーマ法(Coleら, 1985、Monoclonal A
ntibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., 77-96頁)が挙げられる
。本発明のもう1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、無菌動物において
作製することができる[PCT国際公報WO 89/12690(1989年12月12日公開)を参照
]。本発明によれば、ヒト抗体を用いることが可能であり、ヒトハイブリドーマ
を用いることにより(Coteら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:2026-
2030)、またはin vitroでヒトB細胞をEBVウイルスで形質転換することにより
(Coleら, 1985、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss,
Inc., 77-96頁)得ることができる。事実、本発明によれば、適切な生物学的活
性を有するヒト抗体分子からの遺伝子と共に、FSP95に特異的なマウス抗体分子
からの該遺伝子をスプライシングすることによる「キメラ抗体」(Morrisonら,
1984, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851-6855;Neubergerら, 1984, Nat
ure 312:604-608;Takedaら, 1985, Nature 314:452-454)の作製のために開発
された技法を用いることができ、そのような抗体は本発明の範囲にある。
【0097】 本発明によれば、一本鎖抗体の作製のために記載されている技法(米国特許第
4,946,778号)を、FSP95特異的一本鎖抗体を作製するように適合させることがで
きる。本発明のもう1つの実施形態は、Fab発現ライブラリーの構築のために記
載された技法(Huseら, 1989, Science 246:1275-1281)を利用して、FSP95に対
して所望の特異性を有するモノクローナルFab断片またはその誘導体もしくは類
似体の迅速かつ容易な同定を可能にする。
【0098】 該分子のイディオタイプを含む抗体断片は、公知の技法により作製することが
できる。例えば、そのような断片としては、該抗体分子のペプシン消化により得
ることができるF(ab’)2断片;該F(ab’)2断片のジスルフィド結合を還元するこ
とにより得ることができるFab’断片;該抗体分子をパパインおよび還元剤で処
理することにより得ることができるFab断片;およびFv断片が挙げられるが、そ
れらに限定されるものではない。
【0099】 抗体の作製において、所望の抗体のスクリーニングは、当業界で公知の技法、
例えばELISA(固相酵素免疫測定法)により達成できる。例えば、FSP95の特定の
ドメインを認識する抗体を選択するためには、そのようなドメインを含むFSP95
断片に結合する生成物について作製されたハイブリドーマをアッセイしてもよい
。第1のFSP95相同体には特異的に結合するが、別のFSP95相同体には特異的に結
合しない抗体を選択するためには、該第1のFSP95相同体に対する陽性の結合およ
び該第2のFSP95相同体への結合の欠如に基づいて選択すればよい。
【0100】 FSP95のドメインに特異的な抗体も提供され、例えばPKa RIIサブユニット結合
ドメインが挙げられる。
【0101】 上記の抗体は、精子含有FSP95タンパク質の同定、精子の分離、ならびに診断
方法における本発明のFSP95ポリペプチドの位置特定および活性(例えばこれら
のタンパク質の画像形成)、適切な生理学的サンプル中でのそれらのレベルの測
定などに関連する当業界で公知の方法において用いることができる。
【0102】5.5 FSP95リガンド 天然のものおよび/または合成のもの(例えば小さな分子またはペプチドのラ
イブラリー)の両者を含む種々の外因性化合物のいずれもが、FSP95結合能力に
ついてスクリーニングできる。
【0103】 これらの方法は全て、FSP95タンパク質または断片を被験化合物と混合し、任
意の結合が起こる時間にわたって放置し、任意の結合複合体についてアッセイす
るステップを含む。そのような方法は全て、実質的に純粋なFSP95タンパク質、
実質的に純粋な機能的ドメイン断片、融合タンパク質、抗体ならびにそれらの作
製方法および使用方法の本開示内容により可能になる。
【0104】 1つの実施形態では、ペプチドライブラリーを用いて、本発明のFSP95のアゴ
ニストまたはアンタゴニストをスクリーニングでき、ランダムペプチドもしくは
コンビナトリアルペプチド、または非ペプチドライブラリーのような多様性ライ
ブラリーが、FSP95に特異的に結合する分子についてスクリーニングできる。用
い得る多くのライブラリーが当業界では公知であり、例えば、化学的に合成され
たライブラリー、組換え(例えばファージディスプレイライブラリー)、および
in vitro翻訳ベースのライブラリーが挙げられる。
【0105】 化学的に合成されたライブラリーの例は、Fodorら, 1991, Science 251:767-7
73;Houghtenら, 1991, Nature 354:84-86;Lamら, 1991, Nature 354:82-84;M
edynski, 1994, Bio/Technology 12:709-710;Gallopら, 1994, J. Medicinal C
hemistry 37(9):1233-1251;Ohlmeyerら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 9
0:10922-10926;Erbら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422-11426;H
oughtenら, 1992, Biotechniques 13:412;Jayawickremeら, 1994, Proc. Natl.
Acad. Sci. USA 91:1614-1618;Salmonら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA
90:11708-11712;PCT公報WO93/20242;およびBrennerおよびLerner, 1992, Pro
c. Natl. Acad. Sci. USA 89:5381-5383に記載されている。
【0106】 ファージディスプレイライブラリーの例は、ScottおよびSmith, 1990, Scienc
e 249:386-390;Devlinら, 1990, Science, 249:404-406;Christianら, 1992,
J. Mol. Biol. 227:711-718;Lenstra, 1992, J. Immunol. Meth. 152:149-157
;Kayら, 1993, Gene 128:59-65;およびPCT公報WO94/18318(1994年8月18日付
)に記載されている。
【0107】 in vitro翻訳ベースのライブラリーとしては、PCT公報WO91/05058(1991年4
月18日付け);およびMattheakisら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:90
22-9026に記載のものが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0108】 非ペプチドライブラリーの例としては、ベンゾジアゼピンライブラリー(例え
ばBuninら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:4708-4712を参照)を使用の
ために適合させることができ、ペプトイドライブラリー(Simonら, 1992, Proc.
Natl. Acad. Sci. USA 89:9367-9371)もまた使用可能である。化学的に形質転
換されたコンビナトリアルライブラリーを作製するのに用い得る、ペプチド中の
アミド官能価(functionalities)が過メチル化されているライブラリーの別の
例はOstreshら(1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11138-11142)により記
載されている。
【0109】 該ライブラリーのスクリーニングは、種々の一般的に公知の方法のいずれかに
より達成することができる。例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを
開示している次の参考文献を参照されたい:ParmleyおよびSmith, 1989, Adv. E
xp. Med. Biol. 251:215-218;ScottおよびSmith, 1990, Science 249:386-390
;Fowlkersら, 1992; BioTechniques 13:422-427;Oldenburgら, 1992, Proc. N
atl. Acad. Sci. USA 89:5393-5397;Yuら, 1994, Cell 76:933-945;Staudtら,
1988, Science 241:577-580;Bockら, 1992, Nature 355:564-566;Tuerkら, 1
992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:6988-6992;Ellingtonら, 1992, Nature
355:850-852;US 5,096,815, US 5,223,409およびUS 5,198,346(全てLadnerら
);RebarおよびPabo, 1993, Science 263:671-673;ならびにPCT公報WO 94/183
18。
【0110】 具体的な実施形態において、スクリーニングは、ライブラリーメンバーを、固
相に固定したFSP95タンパク質(または核酸もしくは誘導体)と接触させ、該タ
ンパク質(または核酸もしくは誘導体)と結合しているライブラリーメンバーを
収集することにより行うことができる。そのようなスクリーニング方法の例とし
て、ParmleyおよびSmith, 1988, Gene 73:305-318;Fowlkesら, 1992, Bio Tech
niques 13:422-427;PCT公報WO 94/18318;および上記で引用した文献において
「パンニング」法と命名されたものが例として記載されている。
【0111】 別の実施形態では、酵母において相互作用しているタンパク質またはペプチド
を選択するためのツーハイブリッド系(Fields & Song, 1989, Nature 340:245-
246;Chienら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:9578-9582)を用いて、F
SP95タンパク質または誘導体に特異的に結合する分子を同定することができる。
【0112】 2種以上の成分間の結合相互作用は、種々の方法で測定できる。1つのアプロ
ーチは、該成分のなかの1つを容易に検出できる標識で標識し、それを別の成分
と共に、それらが正常に相互作用する条件下におき、結合した標識化成分を未結
合の標識化成分から分離する分離ステップを行い、次に、結合成分の量を測定す
ることである。この結合反応に含まれる試験物質の効果は、この物質の存在下で
結合する標識化成分の量を、それの不在下で結合する量と比較することにより判
定できる。
【0113】 このタイプの手順における分離ステップは、種々のやり方で達成できる。1つ
のアプローチでは、結合反応の前に該標識化成分の結合パートナー(の一方)を
固相に結合させ、該結合反応の後で該固相の洗浄により未結合の標識化成分を取
り除くことができる。該結合パートナーの固相への結合は、当業者に公知の種々
の方法で達成でき、例えば、化学的架橋、プラスチック表面への非特異的付着、
該固相へ付着させた抗体との相互作用、該結合パートナーに付着させたリガンド
(例えばビオチン)と該固相に付着させたリガンド結合性タンパク質(例えばス
トレプトアビジン)との相互作用などが挙げられるが、それらに限定されるもの
ではない。
【0114】 あるいはまた、該分離ステップは、溶液中で標識化成分をその結合パートナー
と相互作用し得るようにした後で達成してもよい。該標識化成分とその結合パー
トナーとの大きさの差により、そのような分離が可能になれば、該分離は、その
結合反応の生成物を、孔部が未結合の標識化成分は通過させるがその結合パート
ナーまたはその結合パートナーへの標識化成分は通過させない限外濾過に通すこ
とにより達成できる。分離はまた、該標識化成分の結合パートナーを溶液から捕
捉できる任意の試薬を用いて行うこともでき、例えば該結合パートナーに対する
抗体、該結合パートナーと予め結合させてあるリガンドと相互作用し得るリガン
ド結合性タンパク質などが挙げられる。
【0115】5.6 FSP95核酸、タンパク質、誘導体、抗体およびモジュレーターの診断および
治療を目的とする使用のための方法および組成物 5.6.1 精巣に対する遺伝子をターゲッティングするためのFSP95調節配列の治療
目的の使用 FSP95プロモーター配列は、異種遺伝子産物の精子細胞特異的発現を駆動する
ために有利に用いることができる。異種遺伝子に機能的に連結されたFSP95プロ
モーターのヌクレオチド配列を含むベクターは、遺伝子治療および避妊に有用で
あり得る。1つの実施形態では、これらの配列は、避妊または不妊の目的で用い
得る。FSP95プロモーター配列は、発現されている該細胞を死滅させる遺伝子に
機能的に連結されたベクターに挿入できる。そのような遺伝子の例は当業界で公
知であり、例えば殺精子薬および毒素が挙げられるが、それらに限定されるもの
ではない。別の実施形態において、そのようなベクターは、精巣特異的な増殖性
障害または癌に罹患している患者の癌細胞をターゲッティングするのに用いて、
該癌細胞を増殖抑制または死滅させることができる。
【0116】 1つの実施形態において、FSP95プロモーター配列は、精巣特異的な増殖性障
害または癌に罹患している患者の細胞において遺伝子治療法を用いて薬剤または
毒素の精子細胞特異的発現を駆動するのに用いて、該癌細胞を増殖抑制または死
滅させることができる。別の実施形態では、薬剤または毒素の精子細胞特異的発
現を駆動するためにプロモーター構築物を用いる遺伝子治療法を、精巣における
不妊または避妊のために用いることができる。
【0117】 FSP95遺伝子のゲノム配列は、共に図3のポリヌクレオチド配列の非コード5’
隣接遺伝子内にある調節配列を含み、任意の公知の方法により評価できる。1つ
の実施形態において、FSP95遺伝子についての方法は、図3のヌクレオチド配列
の−2000位のヌクレオチドと+100位のヌクレオチドとの間、より好ましくは図
3の−3000位と+200位の間に位置するポリヌクレオチド配列を含む。
【0118】 FSP95遺伝子の発現の調節に関与する図3のFSP95ポリヌクレオチオ断片の5’
調節配列を同定する方法は、当業者には周知である(Sambrookら, Molecular Cl
oning A Laboratory Manual, Cold Spring harbor Laboratory, Cold Spring Ha
rbor, NY, 1989を参照)。用い得る典型的な方法の一例は、レポーター遺伝子と
図3のFSP95ゲノムプロモーター配列からのゲノム配列とを保有する組換えベク
ターを含む。簡単に説明すると、該レポーター遺伝子(例えばグリーン蛍光タン
パク質、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼまたはクロラムフェニコールア
セチルトランスフェラーゼ)の発現は、生物学的に活性なポリヌクレオチド断片
の調節下に置かれた場合に検出される。該遺伝子の第1のエキソンの上流に位置
するゲノム配列は、任意の適切なプロモーターレポーターベクターにクローニン
グすることができ、該ベクターの例としては、pSEAPBasic、pSEAP-Enhancer、p
βgal-Basic、pβgal-EnhancerまたはpEGFP-1プロモーターレポーターベクター
(Clontech社製)またはpGL2-basicもしくはpGL3-basicプロモーターのないルシ
フェラーゼレポーター遺伝子ベクター(Promega社製)が挙げられる。これらの
プロモーターレポーターベクターの各々は、迅速にアッセイ可能なタンパク質(
例えば分泌型アルカリホスファターゼ、グリーン蛍光タンパク質、ルシフェラー
ゼ、またはβ-ガラクトシダーゼ)をコードするレポーター遺伝子の上流に位置
する複数のクローニング部位を含む。第1のFSP95エキソンの上流の配列は、該レ
ポーター遺伝子の上流のクローニング部位に両方向で挿入され、適切な宿主細胞
に導入される。レポータータンパク質のレベルをアッセイし、該クローニング部
位にインサートを含まないベクターを用いて得られるレベルと比較する。対照の
ベクターに関してインサートを含むベクターにおいて発現レベルの上昇があれば
、該インサート内にはプロモーターが存在することを示している。
【0119】 FSP95遺伝子の5’非コード領域内のプロモーター配列は、エキソヌクレアーゼ
IIIまたは適切な制限エンドヌクレアーゼ消化などの慣用の方法を用いて入れ子
構造の5’および/または3’欠失を構築することによりさらに明確にすることが
できる。このようにして得られる欠失断片は、例えばColesら(Hum. Mol. Genet
. 7:791-800, 1998)による記載のようにして、該プロモーターレポーターベク
ターに挿入して、該欠失がプロモーター活性を低下または喪失させたか否かを判
定することができる。このようにして、該プロモーターの境界を規定できる。所
望により、該プロモーター内の可能性のある個々の調節部位は、部位指定突然変
異誘発またはリンカースキャニング(linker scanning)により同定して、該プ
ロモーター内の可能性のある転写因子結合部位を個々に、または組み合せて取り
除くことができる。これらの突然変異の転写レベルに及ぼす効果は、突然変異を
プロモーターレポーターベクター内のクローニング部位へ挿入することにより調
べることができる。このタイプのアッセイは当業者には周知である(WO 97/1735
9、US 5,374,544、EP 582 796, US 5,698, 389、US 5,643,746、US 5,502,176お
よびUS 5,266,488)。
【0120】 FSP95遺伝子のプロモーターの活性および特異性は、異なるタイプの細胞また
は組織においてFSP95プロモーターに機能的に連結された検出可能なポリヌクレ
オチドの発現レベルをモニタリングすることによりさらに評価できる。この検出
可能なポリヌクレオチドは、所定のオリゴヌクレオチドプローブと特異的にハイ
ブリダイズするポリヌクレオチド、またはFSP95ポリペプチドまたはその断片も
しくは変異体を含む検出可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチドのいず
れかであり得る。このタイプのアッセイは当業者には周知である(US 5,502,176
およびUS 5,266,488)。
【0121】 FSP95遺伝子コード領域の5’末端および3’末端の双方に位置する調節エレメ
ントを保有するポリヌクレオチドは、対象の異種ポリヌクレオチドの転写および
翻訳活性を調節するのに有利に用いることができ、このポリヌクレオチドは、FS
P95調節領域に関しては異種である。
【0122】 したがって、本発明は、図3のヌクレオチド配列の−2000位のヌクレオチドと
+100位のヌクレオチドとの間に位置するポリヌクレオチド配列、またはそれに
相補的な配列またはその機能的活性断片を含む、精製、単離および組換え核酸を
提供する。
【0123】 本発明による図3の配列の「機能的に活性」な断片とは、組換え細胞宿主にお
ける組換えポリペプチドまたは組換えポリヌクレオチドの発現の調節領域として
機能的である該ポリヌクレオチド断片を含む、または該断片からなるポリヌクレ
オチドを意味する。本発明の目的のために、核酸またはポリヌクレオチドが組換
えポリペプチドまたは組換えポリヌクレオチドの発現の調節領域として「機能的
」であると言えるのは、該調節ポリヌクレオチドが転写および翻訳調節情報を含
むヌクレオチド配列を含み、かつそのような配列が所望のポリペプチドまたは所
望のポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列と「機能的に連結」されて
いる場合である。
【0124】 本発明による調節ポリヌクレオチドは、有利にも、所望の宿主細胞または宿主
生物においてコード配列を発現させるのに用い得る組換え発現ベクターの一部と
なり得る。
【0125】5.6.2 遺伝子置換型送達または治療 精巣特異的遺伝子発現に関して、上記5.6.1節に記載したFSP95遺伝子調節配列
は、例えば、精巣癌などの増殖性疾患の治療に利用できる。このような治療は、
例えば、遺伝子置換型治療形態で施すことができる。特に、細胞に対して毒性の
異種遺伝子産物の産生を指示する1つ以上のコピーもしくは正常FSP95遺伝子、
またはFSP95遺伝子の一部を、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレト
ロウイルスベクターなどの(ただしこれらに限定されない)ベクターを、DNAを細
胞に導入する他の粒子(例えば、リポソーム)と共に用いて、患者内の適切な細胞
に挿入できる。このような遺伝子置換型治療法では、FSP95遺伝子配列を患者内
の精巣特異的細胞型に送達可能でなければならない。
【0126】 別の実施形態では、送達法は、このようなFSP95遺伝子配列を、FSP95核酸配列
が発現されるべき細胞の部位に直接投与することに関する。
【0127】 あるいはまた、細胞(好ましくは、同原細胞(autologous cell))を遺伝子操作
してFSP95核酸配列を発現させ、その後患者の精巣特異的疾患(例えば、癌および
腫瘍形成などの増殖性疾患または分化疾患)の緩和に適した位置に導入できる。
異種遺伝子配列の発現を適切なFSP95遺伝子調節配列により制御して、精巣細胞
内でこのような発現を生じさせる。投与される細胞が非同原細胞である場合、導
入細胞に対する宿主免疫応答を発展させない公知の技法により投与できる。例え
ば、細胞は、成分を細胞外環境とじかに交換させつつ導入細胞が宿主免疫系によ
り認識されないようなカプセル形態で導入できる。
【0128】 以下の6節にさらに詳細に記載するように、モチーフ分析により、図3のアミ
ノ酸318〜335番(LKKVLLKHAKEVVSDLID)、368〜385番(QKATDIMDAMLRKLYNVM)、およ
び671〜688番(EHLMNSVMKLCVIIAKSC)において3つのPKA RIIサブユニット結合ド
メインを同定した。
【0129】 上記5.1および5.2節に記載するように、本発明は、FSP95 PKA RIIサブユニッ
ト結合ドメイン配列をコードする核酸配列、FSP95 PKA RIIサブユニット結合ド
メインポリペプチド、およびPKA RIIサブユニット結合ドメインペプチドを、精
子運動性の阻害のために用いて避妊療法に使用する方法を包含する。
【0130】 つまり、本発明はまた、異種ポリヌクレオチドをコードする核酸と機能的に会
合している、上述したPKA RIIサブユニット結合ドメインのDNA配列を含む単離核
酸分子を包含する。本発明はまた、異種ポリペプチドと機能的に会合しているFS
P95コンセンサスPKA RIIサブユニット結合ドメインを含む単離型融合タンパク質
を包含する。
【0131】 精巣特異的遺伝子治療に関して、本発明のFSP95 PKA RIIサブユニット結合ド
メイン配列は、例えば、精子に対する遺伝子標的異種配列に使用できる。本発明
はさらに、上述したプロモーター配列を、特に精子繊維鞘に対する遺伝子標的異
種配列に使用することを包含する。
【0132】 一実施形態では、本発明はまた、精巣特異的増殖性障害または癌の患者の細胞
内で遺伝子治療技法を用いて薬剤または毒素の精子細胞特異的発現を起こして、
癌細胞の成長を阻害したり殺したりするために使用できるFSP95プロモーター配
列をそれぞれ単体で使用することを包含する。別の実施形態では、プロモーター
構築物を、単体で、または図3のアミノ酸318〜335番(LKKVLLKHAKEVVSDLID)、36
8〜385番(QKATDIMDAMLRKLYNVM)および671〜688番(EHLMNSVMKLCVIIAKSC)における
上記PKA RIIサブユニット結合ドメインをコードする核酸配列とそれぞれ組み合
わせて用いる遺伝子治療技法を、薬剤または毒素の精子細胞特異的発現を起こさ
せて、精巣において不妊または避妊のために使用できる。
【0133】5.6.3 標的障害 特定の疾患および障害について、本発明の方法により治療または予防できる遺
伝子治療疾患としては、受精能または不妊症に関与する疾患および障害、細胞増
殖における欠損、または治療もしくは予防のために細胞増殖が望ましい欠損が挙
げられるがこれらに限定されない。また、異種遺伝子を精巣特異的に導入して、
例えば、創傷治癒を促進したり、変性組織、病変組織または損傷組織などにおけ
る再生を促進したりすることにより治療または予防できる遺伝子治療疾患として
は、変性障害、成長欠損、低増殖性障害、身体的外傷、病変および創傷が挙げら
れるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、精巣障害を治療する。本発
明の範囲内にあると考える他の障害として受精能障害がある。他の点では正常な
患者または獣医学的被験体の避妊または不妊のための遺伝子治療も本発明の範囲
内に含まれる。被験体は、キツネ、ウサギ、げっ歯類動物、ウシ、ブタ、ウマ、
ニワトリ、ネコ、イヌなど(ただしこれらに限定されない)を含む動物であること
が好ましく、哺乳動物であることが好ましく、特にヒトであることが最も好まし
い。特定の実施形態では、非ヒト哺乳動物が被験体である。
【0134】5.6.4 医薬調製物および投与方法 治療薬が核酸を含む場合に採用できる処方および投与方法は、上記5.1〜5.6節
に記載されている。さらに別の適切な処方および投与経路も、以下に記載するも
のから選択できる。
【0135】 様々な送達系が知られており、本発明の治療薬を投与するために使用できる。
例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル中でのカプセル化、治療薬を発
現可能な組換え細胞、受容体仲介型エンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu, 1
987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)、レトロウイルスまたは他のベクタ
ーの一部としての治療核酸の構築などがある。導入方法としては、皮内、筋内、
腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路が挙げられるがこれらに
限定されない。化合物は、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または
粘膜皮膚内面(linings)(例えば、経口粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を介し
た吸収などの都合の良い任意の経路により投与されてもよく、他の生物学的に活
性な薬剤と共に投与されてもよい。投与は全身投与でも局所投与でもよい。さら
に、本発明の医薬組成物を、脳室内注射および髄腔内注射などを含む任意の適切
な経路により精子細胞に導入することが望ましい。脳室内注射は、例えばオマヤ
レザーバーなどのレザーバーに取り付けられた脳室内カテーテルにより容易に行
える。例えば、呼吸器または噴霧器、およびエーロゾル剤を含む製剤を用いて肺
投与も採用できる。
【0136】 特定の実施形態では、本発明の医薬組成物を、治療を必要とする領域に局所的
に投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、注射、カテーテル、坐
剤、または移植片(シアラスティック(sialastic)膜などの膜または繊維などの多
孔性、非孔性またはゼラチン質材料のもの)を用いて、手術中の局所注入、また
は例えば術後の創傷包帯と併用した局所塗布など(ただしこれらに限定されない)
により達成されうる。一実施形態では、悪性腫瘍、新形成または前新形成組織の
部位(または前部位(former site))への直接注射によって投与できる。
【0137】 別の実施形態では、治療薬は、特にリポソームなどの小胞に入れて送達できる
(Langer, Science 249:1527-1533 (1990);Treatら, Liposomes in the Therapy
of Infectious Disease and Cancer中, Lopez-BeresteinおよびFidler(編), Li
ss, New York, 353-365頁(1989);Lopez-Berestein, 同書, 317-327頁を参照;
同書を全般的に参照のこと)。
【0138】 さらに別の実施形態では、治療薬は、制御放出系に入れて送達できる。一実施
形態では、ポンプが使用できる(Langer, 前掲;Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed
. Eng. 14:201 (1987);Buchwaldら, Surgery 88:507 (1980);Saudekら, N. En
gl. J. Med. 321:574 (1989)を参照)。別の実施形態では、ポリマー材を使用で
きる(Medical Applications of Controlled Release, LangerおよびWise(編),C
RC Pres., Boca Raton, Florida (1974);Controlled Drug Bioavailability, D
rug Product Design and Performance, SmolenおよびBall(編), Wiley, New Yor
k (1984);RangerおよびPeppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:
61 (1983)を参照;Levyら, Science 228:190 (1985);Duringら, Ann. Neurol.
25:351 (1989);Howardら, J. Neurosurg. 71:105 (1989)も参照)。さらに別の
実施形態では、制御放出系を、治療標的(すなわち、精巣)の近くに配置し、必要
量を全身用の用量の一部のみとしてもよい(例えば、Goodson, 1984, Medical Ap
plications of Controlled Release, 前掲, Vol. 2中, 115-138頁を参照)。
【0139】 他の制御放出系は、Langerによる概説(1990, Science 249:1527-1533)に記載
されている。
【0140】 タンパク質治療薬をコードする核酸が治療薬である特定の実施形態では、核酸
を、レトロウイルスベクターなどを使用して(米国特許第4,980,286号を参照のこ
と)適切な核酸発現ベクターの一部として構築しそれを細胞内に投与すること、
または直接注射、または微粒子衝撃(例えば、遺伝子銃;Biolistic, Dupont)、
または脂質、細胞表面受容体、もしくはトランスフェクト剤で被覆すること、ま
たは核に入ることが知られているホメオボックス様ペプチドと連結してそれを投
与すること(例えば、Joliotら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-18
68を参照)などによりin vivo投与して、そのコードタンパク質の発現を促進でき
る。あるいはまた、核酸治療薬は、細胞内に導入され、相同組換えにより、宿主
細胞DNAに取り込まれて発現させることができる。
【0141】 本発明はまた、医薬組成物を提供する。このような組成物は、治療上有効量の
治療薬、および薬学的に許容される担体を含む。特定の実施形態では、「薬学的
に許容される」とは、動物、特にヒトにおける使用に関して、連邦政府もしくは
州政府の規制機関により許可されているか、または米国薬局方もしくは他の一般
的に認識されている薬局方にリストされていることを意味する。「担体」という用
語は、治療薬と共に投与される希釈液、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを
指す。このような製薬担体は、石油、動物、野菜または合成の由来源(落花生油
、大豆油、鉱油、ゴマ油など)の滅菌液など、水または油などの滅菌液でもよい
。医薬組成物を静脈内に投与する場合には、好ましい担体は水である。食塩水、
ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液も、特に注射可能な溶液の
ための液体担体として採用できる。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グル
コース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、
シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、
塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エ
タノールなどが挙げられる。所望であれば、組成物は、少量の湿潤剤もしくは乳
化剤、またはpH緩衝剤も含んでいてもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、
乳剤、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、徐放剤などの形態をとってもよい。組成物
は、トリグリセリドなどの従来の結合剤および担体と共に坐剤として処方しても
よい。経口製剤は、医薬品用グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、
ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシ
ウムなどの標準的担体を含むことができる。適切な製薬担体の例は、E.W. Marti
nによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このよ
うな組成物は、治療上有効量の好ましくは精製された形態の治療薬を、適量の担
体と共に含んで、患者に対して適切な投与の形態を提供する。処方は、投与様式
に適合しなければならない。
【0142】 好ましい実施形態では、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物
として、常套手段に従って処方される。典型的に、静脈内投与用の組成物は、滅
菌等張性水性緩衝液に溶解した溶液である。必要であれば、組成物はまた、溶解
剤、およびリグノカインなどの局所麻酔薬なども含んで注射部位における痛みを
和らげても良い。一般的に、成分は、例えば活性剤の量を示すアンプルまたは小
袋などの密閉封止容器に入れられた、乾燥した凍結乾燥粉末または非水分含有濃
縮物として、単位投薬剤形ごとに別々または混合されて供給される。組成物を注
入投与する場合、滅菌した医薬品用グレードの水または食塩水の入った注入瓶に
分注できる。組成物を注射投与する場合、注射用滅菌水または食塩水のアンプル
を用意して、投与前に成分を混合してもよい。
【0143】 本発明の治療薬は、中性形態または塩形態として処方できる。薬学的に許容さ
れる塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導される遊
離アミノ基で形成されたもの、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カ
ルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルア
ミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導される遊離カルボキシル
基から形成されるものが挙げられる。
【0144】 特定の障害または症状の治療に有効な本発明の治療薬の量は、障害または症状
の性質に依存し、標準的な臨床的技法により決定できる。さらに、in vitroアッ
セイをさらに採用して、最適用量範囲を確認するのを助けてもよい。処方におい
て採用される正確な用量は、投与経路、および疾患または障害の重篤度にも依存
し、実施者の判断およびそれぞれの患者の状況に応じて決定されるものである。
しかし、静脈内投与の適切な用量範囲は、通常、体重1キログラム当たり活性化
合物が約20〜500マイクログラムである。鼻腔内投与のために適切な用量範囲は
、通常、体重1kg当たり約0.01pg〜1mgである。有効用量は、in vitroまたは動
物モデル検査系から得た用量応答曲線からも外挿され得る。
【0145】 坐剤は、通常、0.5重量%〜10重量%の活性成分を含む。経口製剤は10%〜95
%の活性成分を含むことが好ましい。
【0146】 本発明はまた、本発明の医薬組成物の1つ以上の成分で充填された容器を1つ
以上含む製薬パックまたはキットを提供する。このような容器は、製薬または生
物学的製品の製造、使用または販売を規制している政府機関に指定された形式に
のっとった表示を場合により伴ってもよく、この表示は、ヒト投与のための製造
、使用または販売の許可を機関から得ていること意味する。
【0147】6. 実施例 次に、ヒト精子受精能獲得の間にチロシンのリン酸化を受け、精子A-キナーゼ
アンカープロテイン(AKAP)と類似性を有する95kDaの新規繊維鞘タンパク質(FSP9
5)のクローニングおよび配列決定を記述する。FSP95は、不妊症の男性と女性か
らの抗精子抗体を含有する血清によって認識されるので、ヒトにおいて自己抗原
性および同種抗原性の両方を示す。該853個のアミノ酸残基のタンパク質は、計
算上の分子量94.6kDaおよび6.0のpIを有し、プロテインキナーゼCおよびカゼイ
ンキナーゼIIに対する多数の潜在的リン酸化部位ならびにアミノ酸435の位置に
チロシンキナーゼリン酸化部位を1ヶ所有する。ノーザン分析により3.0kb未満の
単一の転写産物が検出され、7つの胎児組織を含む50のヒト組織のノーザンドッ
トブロット分析により精巣においてのみFSP95のmRNAが発現することが明らかと
なった。精子を固定し、精製組換えFSP95に対する抗血清を用いて間接的免疫蛍
光法および免疫学的電子顕微鏡法を実施したところ、該タンパク質は精子尾部の
主要部における繊維鞘のリブ(rib)に局在していた。該分子は、受精能獲得の間
により酸性であるイソ型を形成するという明白な証拠を示した。
【0148】6.1 実験方法 6.1.1 精子の調製、受精能獲得、および精子タンパク質の抽出 ヒト精液サンプルを、3〜4日間の性的禁欲に続くマスターベーションによって
健康なボランティアから取得した。全サンプルをHIVに対して試験をして陰性で
あった。正常な精液量、精子数および運動性のある射精液を本研究において使用
した(「世界保健機関(WHO) ヒト精液と頸管粘液との相互作用の検査のための実
験室マニュアル(Laboratory Manual for the Examination of Human Semen and
Cervical Mucus Interaction), 第3版, University Press, Cambridge, 1992)
。室温での精液サンプルの液化に続いて、新鮮な精子を精漿、生殖細胞、白血球
、および上皮細胞からパーコール(Percoll)(Pharmacia Biotech, Sweden)密度勾
配遠心法によって分離し、Naaby-Hansenら, 1997, Biol. Reprod. 56:771-787(
参照により本明細書に全体を組み入れる)で記載されている方法を使用してHams
F-b培養液(Gibco BRL, Life Technologies, NY)中で射精液を2〜3時間の範囲内
で洗浄した。
【0149】 受精能を獲得した精子を得るために、運動性のある精子をヒト血清アルブミン
を全く含まないBWW培養液(Irvine Scientific, CA)中で60分間スイムアップ法に
よって調製した(Yanagimachiら, 1979, Fertil. Steril. 31:562-574)。続いて
、運動性のある精子を該上清から回収し、受精能獲得を誘導するために5%CO2
、37℃で6時間、3.0%ヒト血清アルブミン(HSA)(Sigma, St.Louis, MO)を添加
したBWW培養液でインキュベートした(Luconiら, 1996, Biol. Reprod. 55:207-2
16, Fenichelら, 1996, Biol. Reprod. 54:1405-1411, Ohashiら, 1995, Fertil
. Steril. 63:625-630)。また、受精能獲得は、タンパク質チロシンキナーゼ阻
害であるゲニステイン(genistein)200μMの存在下でも行った(Carreraら, 1996,
Dev. Biol. 180:284-296)。
【0150】 新鮮かつ受精能を獲得した精子を、9.8%尿素、2%オクチル-β-D-グルコピラ
ノシド(OBG)(ESA Inc., MA)、2%(v:v)アンホライン、100mMジチオスレイオト
ール(Bio Rad, CA)、5mMヨードアセトアミド(Sigma, MO)、5mM EDTAならびに4つ
のプロテアーゼ阻害剤である2mM PMSF(Sigma, St.Louis, MO)、3mg/ml TLCK(Boe
hrinnger Mannheim, IN)、1.46mMペプスタチンA (Sigma)、および2.1mMロイペプ
チン(Sigma)を含有する溶解バッファー中で可溶化した。1ml中あたり5億の精子
を4℃で45分間振盪することによって可溶化した。不溶性分子を10,000×gで2分
間遠心分離することによって除去し、該上清を既知のプロトコール(Naaby-Hanse
nら, 1997, Biol.Reprod.56:771-787)に従って精子タンパク質の2次元ゲル分離
のために使用した。
【0151】6.1.2 チロシンリン酸化タンパク質の検出 受精能獲得培養液(capacitation medium)中での6.0時間のインキュベーション
後、精子を溶解バッファー中で可溶化した(Naaby-Hansenら, 1997, Biol.Reprod
.56:771-787)。該可溶化タンパク質を2次元SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動
(SDS-PAGE)によって分離し、銀染色をした(Hochstrasserら, 1988, Anal.Bioch
em.173:424-435)。該タンパク質をニトロセルロース膜に電気的にトランスファ
ーし(Towbinら, 1979, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 76:4350-4354)、膜上の非特異
的結合部位を10mM Tris (pH 7.5)、0.1M NaCl、および0.05% Tween20中の、1%
ウシ血清アルブミン(BSA)を用いて、37℃で20分間ブロッキングした。次に、ブ
ロックした膜を、上記バッファーで2500倍に希釈した、抗ホスホチロシンモノク
ローナル抗体RC-20(Transduction Laboratories, KY)を結合させたワサビペルオ
キシダーゼを用いて、37℃で20分間インキュベートした。該膜を十分に洗浄し、
製造業者の教示に従って化学発光増大アッセイ(enhanced chemiluminescence as
say)(Amersham Corp., UK)によって陽性免疫反応スポットを検出した。RC-20は
、以前に文書で説明されている(Ruff-Jamissonら, 1993, Science 261:1733-173
6, Burksら, 1995, Science 269: 83-86)ホスホチロシンに対する特異性を有す
る、十分に特性決定されたモノクローナル抗体である。
【0152】6.1.3 予めスクリーニングされた不妊症の血清を用いた精子タンパク質のイムノ ブロッティング 血清は、不妊についてのホルモン性、感染性、または生理的原因を有しない、
説明不能な不妊症の不妊男性および不妊女性から取得した。不妊患者血清中のAS
Aを間接的イムノビーズ結合試験によって検出した(Patrizioら, 1992, Fertil.S
teril. 57:183-186)。イムノブロッティング分析用に選択した血清は高いイムノ
ビーズ結合試験スコア(すなわち、ASAに特異的なIgG、IgA、および/またはIgM
を表す、60%以上の精子がビーズ結合を示したスコア)を有していた。選択した
血清全てが、精子頭部または細胞全体に対する抗体を有した。
【0153】 イムノブロッティング用に、精子タンパク質を抽出し、前記のとおり2次元SDS
-PAGEシステムによって分離した(Naaby-Hansenら, 1997, Biol.Reprod.56:771-7
87)。タンパク質の電気泳動的トランスファーに続いて、ニトロセルロース膜を
リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH 7.4)中ですすぎ、5%ドライミルクを加えたPB
S-Tween(0.05% Tween20を10mM PBSに加えたもの)中でブロックした。次に、10
00倍に希釈した試験血清と共にブロットを4℃で一晩インキュベートした。次に
、PBS-TWEENで5000倍に希釈したヤギ抗ヒトIgG/IgM2次抗体(Jackson ImmunoRes
earch Lab, PA)を結合したワサビペルオキシダーゼと該ブロットとを1時間イン
キュベートし、免疫反応性スポットを製造業者のプロトコール(Amersham Corp.,
UK)を使用して化学発光増大によって可視化した。
【0154】6.1.4 95kDa リン酸化チロシン自己抗原および同種抗原のマイクロシークエンス 2次元イムノブロットにおける自己抗原および同種抗原を含む95kDaのリン酸化
チロシンの同定に続いて、クマシーで染色したタンパク質スポットを1.5mm厚の2
次元SDS-PAGEゲルから円筒形に抜き取った。該ゲルの円筒形サンプルをさいの目
に切って小さな断片とした。これらの断片中のタンパク質をメタノール中で脱色
し、10mMジチオスレイオトールで還元し、0.1M 重炭酸アンモニウム中の50mMヨ
ードアセトアミド中でアルキル化した。試薬除去後、該ゲル片を50mM 重炭酸ア
ンモニウム中の12.5ng/plトリプシンと共に37℃で一晩インキュベートした。5%
ギ酸中の50%アセトニトリル中で該ゲル片からペプチドを抽出し、当技術分野で
公知の方法であるタンデム型質量分析によってマイクロシークエンスした。
【0155】6.1.5 cDNAのクローニング、配列決定、および分析 完全に分解したデオキシイノシンを含むセンスプライマー(5’-A/T-C/G-I GTI
TT-C/T TT-C/T AA-C/T TT-C/T A/T/C-TI A/C-GI-3’)を、質量分析によって得
られるマイクロ配列の1つ、ペプチド番号6(SVFFNFI/LR)から設計し、オリゴヌク
レオチドをGIBCO BRL(Life Technologies, CA)によって合成した。このフォワー
ドプライマーおよびアダプタープライマーを用いて、cDNA3’末端高速増幅(RACE
)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、25μlのアッセイシステム中で0.25ngのヒト精
巣マラソンレディーcDNA(Marathon ready cDNA)(Clontech, CA)を用いて40サイ
クル行なった。加熱サイクルは、94℃で1.5分間を1サイクル、94℃で30秒間、46
℃で1分間、および68℃で2分間を40サイクルずつというプログラムを使用してMJ
Research(Watertown, MA)製サーマルサイクラー(thermal cycler)(PTC-200 DNA
エンジン)中で行なった。PCR産物を1.7% NuSieve(FMC, ME)アガロースゲル上
で分離した。1.0kbのDNA断片を単離、再増幅してpCR 2.1-TOPOベクター(Invitro
gen, CA)中にクローニングし、Tao DNA ポリメラーゼとともに大きな蛍光色素タ
ーミネーター化学物質(fluorescence dye terminator chemistry)を使用してPer
kin-Elmer Applied Biosystems DNAシーケンサーで配列決定した。該3’クロー
ンは786bpのオープンリーディングフレームおよび218bpの翻訳されない領域を含
んだ。同様に、cDNAの5’末端を、アダプタープライマーおよび1.0kbの3’クロ
ーンの5’末端から118bp下流にあるアンチセンス3’遺伝子特異的プライマー(5
’-AGC CTG GGG GGA GAA GAG GCC AAC GOT C-3’)を使用して同じ鋳型から5’ R
ACE PCR法によって増幅した。2081bpの産物が得られ、pCR 2.1-TOPOベクター中
へクローン化した。該5’クローンは162bpの翻訳されない領域および1919bpのオ
ープンリーディングフレームであることが明らかとなった。cDNAクローンをベク
ター由来プライマーおよび挿入特異的プライマーを使用して双方向で配列決定を
した。ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列データをGenetics Computer Groupプ
ログラムパッケージ(Wisconsin Package Program Manual, バージョン9, Madiso
n, WI)を使用して分析した。
【0156】6.1.6 ノーザンブロット分析およびドットブロット分析 8つの選ばれたヒト組織由来のポリ(A)+RNA 2μgを含むノーザンブロットおよ
び50の異なるヒト組織由来のmRNAを89〜514ng含む標準化RNAドットブロットをCl
ontech社から取得した。ノーザンブロットは、32Pで標識した、コード領域の5’
末端から生じる2377bpのDNA断片およびcDNAの3’末端から生じる1007bpのDNA断
片を用いてプローブした。プローブはランダムオリゴヌクレオチドプライム標識
(random oligonucleotide prime labeling)(FeinbergとVolgelstein, 1983, Ana
l.Biochem.132:6-13)によって調製した。ハイブリダイゼーションは、ExpressHy
b溶液(Clontech)中、68℃で1時間行い、次に、室温で2×SSC、0.05%SDS中で3回
洗浄し、0.1×SSC、0.1%SDS中、50℃で20分間の洗浄を2回行った。該ブロット
を2枚の増感紙を用いて-70℃で60時間X線フィルムに感光させた。該ドットブロ
ットを32Pで標識した2337bpの5’ cDNAを用いてプローブした。該ブロットをサ
ケ精子DNAおよびヒト胎盤Cot-1DNAを含むExpressHyb溶液中、65℃で一晩ハイブ
リダイズした。次に、2×SSC、1%SDS中、65℃で3回洗浄し、続いて0.1×SSC、0
.5%SDS中、55℃で追加の洗浄を2回行なった。オートラジオグラフィーを2枚の
増感紙を用いて-70℃で18時間フィルターをX線フィルムに感光させることによっ
て行なった。
【0157】6.1.7 大腸菌におけるFSP95の発現および組換えタンパク質の精製 該分子を発現させるために、1〜779個のアミノ酸をコードしているFSP95 cDNA
(ORF)の91%をヒト精巣マラソンレディーcDNA(Clontech, CA)からPCRによって増
幅した。プライマーは、PCR産物の5’末端にNdeI部位を、また3’末端にXhoI部
位を形成するように設計した。増幅したDNAをpET28b発現ベクター(Novagen, WI)
のNdeI-XhoI部位へ結合した。この結果生じた構築物は、該タンパク質のいずれ
かの側に6残基のヒスチジンタグを含むベクター由来の28個のアミノ酸を追加し
た。FSP95をコードする配列の前に、ファージT7 RNAポリメラーゼに対するプロ
モーター、イニシエーターATGおよび6つの連続するヒスチジンコドンが先行して
いた。該組換えベクターを大腸菌株NovaBlue(DE3)細胞へ導入した。この細胞は
、lacプロモーターの制御下でT7 RNAポリメラーゼの染色体コピーを含む。該発
現プラスミドを構築物のリーディングフレームを検証するために5’および3’末
端で配列決定した。
【0158】 単一の陽性コロニーをNew Brunswick Scientific 発酵槽(New Brunswick, NJ)
で30μg/mlのカナマイシンを加えたLB液体培地10Lに植え付けるために使用し、
該培養物を37℃で波長600nmの吸光度が0.6になるまで培養した。次に組換えタン
パク質発現を1.0mMイソプロピル-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド(IPTG)の添加
によって誘導し、もう3時間増殖を継続した。該細胞をペレット化し、0.1%NP4O
(Sigma)および0.1mg/mlリゾチームを含有する1×結合バッファー(20mM Tris-HCl
, pH 7.9, 0.5M NaCl, 5mMイミダゾール)中、氷上で30分間再懸濁し、かつ短時
間超音波処理を行なった。15000×gで15分間遠心分離した際に、生じた不溶性ペ
レットを6M尿素を含有する1×結合バッファー中、氷上で1時間溶解した。15000
×gで15分間遠心分離して得た尿素を溶解させた該上清を、製造業者のプロトコ
ールに従って、Ni2+で活性化したヒスチジン結合樹脂カラム(Novagen, WI)にロ
ードし、該組換えタンパク質を、6M尿素を含有する1×結合バッファー中の300mM
イミダゾールで溶出した。該アフィニティー精製した組換えタンパク質を、低分
子量の全長型分解物のいくつかを除去するために調製用SDS-PAGEによってさらに
精製した。
【0159】6.1.8 組換えFSP95に対する抗血清の製造およびイムノブロット分析 フロイント完全アジュバント中のゲル精製組換えタンパク質200μgを用いてメ
スのLewisラットを免疫し、2週間の間隔を置いてフロイント不完全アジュバント
中の200μgのタンパク質を用いて2回追加接種し、各追加接種の一週間後に採血
した。FSP95に対するラット抗血清の特異性を、rFSP95およびヒト精子タンパク
質抽出物に対するウェスタンブロッティングによって試験した。
【0160】 イムノブロッティングのために3.5μgの組換えタンパク質を10%SDS-PAGEに供
し、該タンパク質をニトロセルロース膜に電気泳動的にトランスファーした(原
文明細書p.41)。ニトロセルロース膜を細長い形に切り(各々が150ng含有)、PB
S-Tween(10mM PBS, pH 7.4, 0.05% Tween20)中の5%無脂肪粉ミルクで1時間ブ
ロックし、ブロッキングバッファーで5000倍に希釈したラット抗血清で1時間イ
ンキュベートした。免疫学的検出を、ブロッキングバッファーで5000倍に希釈し
たヤギ抗ラットIgG(Jackson ImmunoResearch, PA)を結合させたワサビペルオキ
シダーゼで実施し、色原体基質であるジアミノベンジジン(Sigma)を用いて過酸
化水素中で可視化した(原文明細書p.47)。精子タンパク質のイムノブロッティン
グのために、パーコールで洗浄した精子を、尿素およびOBG(精子調製法参照)を
含有する溶解バッファー中で可溶化し、2次元SDS-PAGE分析に供した(原文明細
書p.35)。ニトロセルロースへタンパク質を電気泳動的にトランスファーしたの
に続いて、ニトロセルロース膜をブロックし、上記のように1次抗体および2次抗
体を用いてプローブした。
【0161】6.1.9 精子不動化マイクロアッセイ 新鮮な射精液をBWW培養液で2倍に希釈し、450×gで5分間遠心分離した。生じ
たペレットを、ヒト血清アルブミン(HSA)(10mg/ml)を含有するBWW培養液で2度洗
浄した。該ペレットを、5%CO2中、37℃で1時間、HSA(30mg/mi)含有BWWを用いて
層状にした。約98%の運動性のある精子を含むスイムアップ細胞のアリコートを
作業ストック溶液として1mlあたり2千万の精子となるようにスイムアップ培養液
で希釈した。不動化アッセイにおいて試験するために、rFSP95に対するラット抗
血清をスイムアップ培養液で1:1に希釈し、使用する前に56℃で30分間脱補体化
した。補体源として使用されるモルモット血清を4℃で30分間精子に2度取り込ま
せた。1:1で希釈し脱補体化した抗血清を10μl、1ml当り2千万のスイムアップ精
子を1μl、ならびに1:1に希釈したモルモット補体(1反応あたり10〜15CHSO単位
を含有)を2μl、マイクロPCRチューブ中、37℃で60分間インキュベートするこ
とによって改変した後に精子不動化マイクロアッセイ(Isojima と Koyama, 1989
Arch. Androl. 23:185-199)を行った。運動性のある精子の割合を、200倍の拡
大率で顕微鏡的に計算盤(Humagen Fertility Diagnostics, VA)で調べた。各々
の試験において熱で不活化した補体を対照として扱った。該実験は、CD59(BioSo
urce International, CA)およびSAGA-Iモノクローナル抗体(これらは、表面抗原
を認識することが知られている)を陽性対照として(JiangとPillai, 1998, Am.J
.Reprod.Immunol. 39:243-248, Diekmanら, 1997, Biol. Reprod. 57:1136-1144
)、ならびに精子尖体抗原SP10を認識するモノクローナル抗体(MHS-10)を陰性対
照として(Fosterら, 1994, Biol.Reprod. 51:1222-1231)行った。精子不動化値(
SIV)を、対照(不活化補体)中の運動性精子の割合を活性補体を有する試験血清中
での運動性精子の割合で除することによって計算した。SIVが2またはそれ以上の
場合、該試験血清は精子不動化抗体 に対して陽性であると判断される。
【0162】6.1.10 活動的または透過可能化した精子におけるFSP95の免疫蛍光の局在 スイムアップ精子は、30.5mlの精液を、mg/mlのHSAを含有するBWW培養液(Irvi
ne Scientific, CA)2mmの下に5%CO2中、37℃で1.5時間層状化することによって
調製した。次に、スイムアップ細胞を洗浄し、30mg/ml HSA含有BWW培養液中で、
5%CO2中37℃で6時間にわたり受精能を獲得させた。該運動性の、受精能を獲得
した精子を、ポリ-l-リシンで被覆したスライド(Polysciences, PA)上で風乾し
、メタノール中-20℃で30分間透過可能化(permeabilize)し、風乾し、PBS-Tween
(0.01% Tween20を含む10mM リン酸緩衝化生理食塩水)中の10%正常ヤギ血清で
30分間ブロックした。次に該精子を、ブロッキングバッファーで100倍に希釈し
た1次抗体(ラット抗rFSP95抗体)中、37℃で2時間インキュベートし、続いて、
ブロッキングバッファーで100倍に希釈した抗ラット(IgG)2次抗体(Zymed Lab, C
A)を結合させた蛍光色素(シアニン, Cy3)と共に37℃で1時間インキュベートした
。該スライドをPBS中で洗浄し、スローフェイド(slow fade)(Molecular Probes,
OR)で被覆し、カバーガラスで固定した。顕微鏡像はアクシオプラン(Axioplan)
蛍光顕微鏡(Zeiss)で1000倍の拡大率で得た。活動性精子の間接的免疫蛍光法の
ために、受精能獲得培養液で100倍に希釈した1次抗体と共に5%CO2中、37℃で2
時間インキュベートし、続いて上記の通り処理した。
【0163】6.1.11 電子顕微鏡によるFSP95の免疫的局在 プールした精子を、3%スクロース含有のHam’s F10(Gibco BRL, CA)(洗浄バ
ッファー)で2度洗浄し、4%パラホルムアルデヒドおよび0.2%グルタルアルデ
ヒドを含む洗浄バッファー中、22℃で15分間固定した。洗浄バッファーを3回交
換して固定剤を除去した後、細胞を40%〜100%の一連のエタノールを段階的に
用いて脱水し、Lowicryl K4M(Electronmicroscopy Sciences, PA)で包埋した。
該ブロックを、-20℃で72時間、紫外線光を用いて重合化し、超薄切片(100nm厚
)を製造した。
【0164】 薄切片の免疫染色法は、BerrymanとRodewald、1990, J.Histochem.Cytochem.3
8:159-170を改変したものであった。該切片を希釈していない正常ヤギ血清中で
、22℃で15分間ブロックし、次に、1%正常ヤギ血清、1%BSA、および0.1%Twee
n 20を含有する洗浄バッファーで50倍に希釈した同じ動物由来の抗rFSP95ラット
抗体、または免疫前の血清のいずれかと共に、4℃で16時間インキュベートした
。洗浄バッファー中で4回すすいだ後、該切片を、100倍に希釈した5nmの金を結
合させたヤギ抗-ラットIgG(Goldmark Biologicals, NJ)を用いて、22℃で1.5時
間インキュベートした。該検体を蒸留水で洗浄し、酢酸ウラニルで染色した後、
JEOL 100CX電子顕微鏡で調べた。
【0165】6.2 結果 in vitroでの受精能獲得の際にチロシンのリン酸化を受けるヒト精子のタンパ
ク質を同定するために、スイムアップ(swim up)後に得た活発な運動性の精子を
、受精能獲得を促進することが知られている条件下で6時間にわたりインキュベ
ートした(Yanagimachi, 1994, The Physiology of Reproduction (Knobil, E.,
およびNeill, J. D., 編) pp.189-317, Raven Press, New York, NY)。精子タン
パク質を含む抽出物を2次元SDS-PAGEにより分離し、銀染色により可視化した(
図1A)。チロシンがリン酸化されたタンパク質は、抗ホスホチロシンモノクロー
ナル抗体RC20と反応させる2次元イムノブロットにより存在位置を決定した。新
鮮な、受精能を獲得していない精子においては、6時間にわたり受精能を獲得さ
せた精子(図1C)と比較して、低レベルでチロシン残基がリン酸化されたタンパク
質の集合を示し(図1B)、95〜55kDaの大きさの範囲にあり、かつ4.0〜5.7の範囲
のpIを有する数種類のタンパク質群の免疫反応性が増大したことを示した。〜5.
3のpIを有する主要な95kDaタンパク質が、酸性で高分子量の、チロシンがリン酸
化された主要なヒト精子タンパク質の1つが見られた(図1Aおよび図1C)。抗ホス
ホチロシン抗体の反応は特異的であると考えられるが、なぜなら、RC20モノクロ
ーナル抗体を20mMのホスホチロシンとプレインキュベーションすることにより、
免疫反応性が失われたからである(データは示さず)。さらにチロシンリン酸化は
、チロシンキナーゼ阻害剤であるゲニステインと受精能獲得済細胞とをインキュ
ベートした場合にはほぼ完全に行なわれなかった(図1D)。
【0166】6.2.1 自己抗原および同種抗原としてのFSP95 ヒト精子タンパク質を、ASAに関して事前にスクリーニングした不妊男性被験
者(図2A)および不妊女性被験者(図2B)に由来する血清を用いてイムノブロッティ
ングすることにより、95kDaの分子量を有する精子タンパク質群の強力な免疫反
応性が判明した。不妊男性に由来する15の血清サンプルのうちの6つ(40%)、お
よび不妊女性に由来する6つの血清サンプルのうちの2つが前記の95kDaタンパ
ク質の群に結合した。男性、女性それぞれ5人ずつの不妊ではない被験者のうち
、2人の男性と1人の女性の血清のみが、95kDaタンパク質に対して弱い免疫反
応性を示した(図2Cおよび図2D)。これらの発見は、95kDaタンパク質は特定の女
性においては同種抗原性であり、特定の男性においては自己抗原性であることを
示した。
【0167】6.2.2 95kDA抗原のマススペクトルによるマイクロシークエンス 95kDaチロシンリン酸化抗原の1つの正体に関する構造的情報を得るために、
クマシー染色した2次元SDS-PAGEタンパク質スポットのマイクロシークエンスに
着手した。2次元ゲルの中心から切り出したスポットの位置は、図1A中で白丸に
より示す。十分に分離させた2次元ゲルにおいては、取得できるタンパク質の量
が低いので、アミノ酸配列の決定は、前記のゲル小片内のタンパク質スポットを
37℃で一晩トリプシン消化して作成したペプチドに対してタンデムマススペクト
ロメトリー技術を用いて行った。抽出したペプチドを、キャピラリーカラム液体
クロマトグラフィーエレクトロスプレー型タンデムマススペクトルにより濃縮し
、分析した。全部で18のペプチド配列を得た(表1)。分子量情報(MS-fitによる
マスマッピング)およびFasta(PearsonおよびLipman, 1988, Proc. Natl. Natl.
Acad. Sci. USA 85:2444-2448)を用いた配列情報の双方を用いてデータベースを
検索した(その結果、ゲルから誘導したタンパク質の15%のマストレランス(mass
tolerance)および1Daペプチドのマストレランスが可能となった)が、いずれの
公知のタンパク質も同定されなかった。
【0168】6.2.3 FSP95のクローニングおよび配列決定分析 前記の95kDaチロシンリン酸化タンパク質をコードするcDNAを単離するために
、ペプチド番号6から設計された完全縮重イノシン含有フォワードプライマーを
使用して、ヒト精巣由来Marathon ready cDNA (Clontech, CA)から、3'RACE PCR
により1.0kbのcDNA小片を増幅した。同様に非翻訳領域を含む5'cDNAを、3'末端
と118bpのオーバーラップを有する2.1kbのcDNAをPCRにより作成してクローニン
グした。全長cDNAのヌクレオチド配列(図3)は、翻訳開始部位のKozakコンセン
サス(Kozak, 1991, J. Biol. Chem. 266:19867-19870)と一致しているフレーム
内開始コドンをヌクレオチドの163〜165番で有する2942bpからなるものである。
翻訳開始部位は、最初のATG配列の上流にある、45bpおよび72bpの2個のフレー
ム内停止コドンの存在により、さらに信頼し得るものであることが立証された。
このcDNAは、5'末端で162bp、3'末端で218bpの非翻訳領域を有する2559bpのオー
プンリーディングフレーム、およびポリ(A)テールの11bp上流にポリアデニル化
シグナル(ATTAAA)(JureticおよびTheus, 1991, FEBS Lett. 290:4-8)を含んでい
た。該オープンリーディングフレームは、6.0の予測pIと94.6kDaの予測分子量を
有する853アミノ酸のタンパク質をコードしている。95kDaタンパク質スポットの
マイクロシークエンスにより得られた18のトリプシン性ペプチドの全てが、この
分子の予測アミノ酸配列中に含まれており(図3、下線部)、元々同定され、ゲル
中心から取り出されたタンパク質がクローニングされたことの妥当性を示してい
る。
【0169】 FPS95の予測アミノ酸配列の分析により、N末端真核生物分泌シグナルペプチド
切断部位(Nielsenら、1997, Protein Eng. 10:1-6)が存在しないことが判明した
。タンパク質配列のPrositeデータベース(Bairochら、1997, Nucleic Acids Res
. 25:217-221)との比較により、5個の潜在的N-結合グリコシル化部位(アミノ酸
87、117、180、502、763)、15個の潜在的カゼインキナーゼIIリン酸化部位(アミ
ノ酸21、34、52、102、109、120、223、280、440、448、549、659、691、713、8
16)、11個の潜在的プロテインキナーゼCリン酸化部位(アミノ酸2、89、102、217
、223、236、303、367、408、484、597)、8個のミリストリル化部位(アミノ酸6
8、116、346、366、648、722、724、814)および1個のチロシンキナーゼリン酸
化部位(アミノ酸435)の存在が示された。4個の潜在的O-結合グリコシル化部位(
アミノ酸168、504、557および745)もまた見出された(Hansenら、1997, Nucleic
Acid Res. 25:278-282)。FSP95推定配列により、明らかな膜貫通領域は存在しな
いことが判明した。
【0170】 推定FSP95配列とGenBankデータベースとを、BLAST(Altschulら、1990, J. Mol
. Biol. 215:403-410)およびFASTA(PearsonおよびLipman, 1988, Proc. Natl. N
atl. Acad. Sci. USA 85:2444-2448)を用いて比較したところ、ヒト精子FSP95と
最も近いアミノ酸同一性を有するのは、マウスAKAP82の前駆体(pro-mAKAP82)で
あるマウス精子繊維鞘AKAP(同一性33.6%、類似性42.5%)およびヒトAKAP82の前
駆体(pro-mAKAP82)であるヒト精子繊維鞘AKAP(同一性32.4%、類似性39.4%)で
あることが判明した(Turnerら、1998, J. Biol. Chem. 273:32135-32141, Carre
raら、1994, Dev. Biol. 165:272-284)。これらのタンパク質のアミノ酸配列ア
ライメントにより、これらの分子の中央とN-末端領域およびC-末端領域部分に保
存ドメインが含まれることが判明した(図4)。FSP95とこれらのAKAPとの間の全
体的な同一性は、ヒト精子FSP95は、以前には報告のない遺伝子によりコードさ
れていることを示唆するものである。興味深いことには、マウス精子pro-mAKAP8
2(Carreraら、1994, Dev. Biol. 165:272-284)の2つの潜在的な細胞内アンカー
ドメインは、pro-hAKAP82(Turnerら、1998, J. Biol. Chem. 273:32135-32141)
とヒト精子FSP95 cDNAの双方において保存されていた。これらの細胞内ターゲッ
ティング領域の双方が、高度に塩基性であるN-末端領域中に位置し、一方でこれ
らのタンパク質のC-末端領域はより酸性度が高く、長い脂肪族側鎖を有する。し
かしながら、ヒトAKAP82およびマウスAKAP82のRU-結合ドメインは、FSP95におい
ては保存されていない。
【0171】6.2.4 ヒト組織におけるFSP95 mRNAの発現 ノーザンブロット(図5A)およびドットブロット(図5B)ハイブリダイゼーション
を行い、異なるヒト組織中でのFSP95 mRNAの発現を分析した。ノーザンブロット
では、2種のFSP95プローブである2337bp 5'cDNAおよび1.0kb 3'cDNAのいずれか
とハイブリダイズさせた。双方のプローブは、精巣中にのみ存在する〜3.0kbのm
RNAとハイブリダイズした。50種の異なるヒト組織に由来するポリ(A)+ RNAを含
むRNAドットブロットとハイブリダイズさせるために、2337bp 5'cDNAをプローブ
として用いてより広汎なスクリーニングを行った。試験した組織の中では、精巣
由来のmRNAについてのみ強力なハイブリダイゼーションシグナルが見られた。こ
のことは、ヒト精子FSP95遺伝子の精巣特異的発現パターンを示すものである。
【0172】6.2.5. rFSP95の発現とウエスタンブロット分析 FSP95を残基1〜779番までコードするcDNA配列を、細菌発現ベクターpET28b中
へクローニングした。細菌に対してLPTGで1.5〜3時間誘導をかけた場合、97kDa
の分子量を有するrFSP95が産生された(図6A)。該組換えタンパク質を、セファロ
ース上に固定化されたNi2-に対する6個のHisドメインの高いアフィニティーを
利用して精製した(Van Dykeら、1992, Gene 111:99-104)。アフィニティー精製
した組換体FSP95をさらに分取用ゲル電気泳動でさらに精製し(図6B)、免疫原と
してラットの接種に用いた。rFSP95に対するラット抗体は、rFSP95、および、元
々マイクロシークエンスされた、pIが〜5.3で95kDaのスポットとして染色された
精子抽出物中に存在する「天然」FSP95、を両方とも認識した(図6Cおよび図6D)
。免疫前ラット血清はrFSP95と精子タンパク質のいずれとも反応しなかった。
【0173】6.2.6 ヒト精子におけるFSP95の所在の決定 FSP95が新鮮な受精能を獲得していないヒト精子に曝される可能性を、最初に
改変マイクロ精子不動化アッセイ(IsojimaおよびKoyama、1989, Arch. Androl.
23:185-199)により評価した。新鮮な精子の不動化は、rFSP95に対するラット抗
血清およびモルモット補体の存在下では観察されなかった(SIV=0.91±0.12、平
均±SD;n=6)。さらに、生存中の受精能獲得済精子は、いずれのドメイン上でも
免疫蛍光法によっては染色されなかった(データは図示せず)。これらの結果を総
合すると、細胞表面にはFSP95が存在しないことが示唆される。
【0174】 受精能獲得済でメタノールにより透過性化した、射出されたヒト精子に対する
間接的免疫蛍光分析を、rFSP95に対するラット血清を用いて行い、FSP95が存在
する場所は、100%の精子で、鞭毛主要部の全長(図7B)にわたると同定した。頭
部(head)、中間部(midpiece)および端部(end piece)は非反応性のままであった(
図7Aおよび7B)。免疫前抗血清は免疫蛍光を示さなかった(図7Cおよび7D)。
【0175】 FSP95の細胞内分布を、洗浄済の射出されたヒト精子の非常に薄い切断片を、
包埋後免疫標識することにより、超微細構造レベルで試験した。FSP95の所在を
示す金粒子を、縦断面(longitudinal section)と横断面(cross section)の両方
で、繊維鞘の全ての厚さにわたり結合させた。金粒子は外周のリブ(rib)上で観
察された一方、縦に切断した円筒(longitudinal column;LC)は未染色のままであ
った(図8Aおよび図8B、矢印で示す)。外部の緻密な繊維および軸糸には、標識は
結合しなかった。免疫前対照ラット血清に曝した断面においては、金粒子はほと
んど見られなかった(図8Cおよび8D)。
【0176】6.2.7 FSP95は受精能獲得により誘導されるチロシンリン酸化タンパク質である 選択し、マイクロシークエンスし、クローニングしたタンパク質が、in vitro
での受精能獲得の際に実際にチロシンリン酸化を受けたという証拠をさらに提供
するため、以下の実験を行った。受精能を獲得した精子と獲得していない精子の
双方に由来するタンパク質抽出物を、高分離能(23×23cm)2次元SDS-PAGEで分離
し、電気ブロットし、rFSP95に対するラット抗血清および抗ホスホチロシン抗体
RC20を用いて分析した。受精能を獲得していない精子の抽出物中に明瞭に見られ
る(図9A)、〜5.3のpIを有するFSP95の免疫反応性の型は、受精能獲得済精子にお
いては存在量が減少した(図9B)。これと共に、より酸性側のpIを有する、FSP95
の新規免疫反応性の型が現れた。この酸性FSP95イソ型への荷電の変化は、受精
能獲得後のチロシンリン酸化の増大(図9Cおよび図9Dを比較)およびリン酸化され
たより酸性のFSP95イソ型の出現によりもたらされた。このrFSP95に対する抗体
を使用した実証により、クローニングし配列決定したFSP95が受精能獲得の際に
チロシンリン酸化を受け、この工程においてより酸性であるイソ型をとるという
有力な証拠が提供された。
【0177】6.3 考察 本明細書において本発明者らは、繊維鞘における局在性と95kDaの計算上の分
子量を考慮してFSP95と命名した新規ヒト精子タンパク質のクローニングと特性
決定を記述するものである。2次元SDS-PAGEタンパク質スポットから誘導したマ
イクロシークエンスによりFSP95を特性決定するために、分子の3'cDNAを、単一
の遺伝子特異的イノシン含有プライマーおよびヒト精巣Marathon cDNAに由来す
るアダプタープライマーを用いて増幅した。得られたcDNAにより、マイクロシー
クエンスした4種のFSP95配列がcDNAのオープンリーディングフレーム中に存在
することが判明した。同様に、cDNAの5'末端も5'RACEによりクローニングし、同
定された最も5'側のメチオニンの上流にある2個のフレーム内停止コドンを見出
した。このことは、報告したcDNAがFSP95の完全コード配列を表すことを示す。
同様に翻訳開始部位は必須Kozakコンセンサス配列と一致している。FSP95タンパ
ク質スポット(表1;図3)から得てマイクロシークエンスした18種のペプチドの
全てが、予測されるアミノ酸配列内に包含されていた。これは、元々切り出した
タンパク質スポットがクローニングされたことの妥当性を示す。単一のマイクロ
シークエンスから誘導したプライマーを用いるこのクローニングストラテジーの
成功は重要である。なぜなら、このストラテジーはわずか約3週間のうちに完遂
されたからである。故に、このアプローチは、マイクロシークエンスデータを完
全な配列情報へ変換するための重要な方法となり、プロテオームに基づくクロー
ニングの重要性が増していることを強調するだろう。
【0178】 方法論的な見地からは、クローニング実験を開始するのに用いたペプチド配列
(ペプチド6、表1)を、消化におけるペプチドのCADスペクトルの解釈、N-末端
誘導ペプチド(Cardenasら、1997, Rapid Commun. Mass Spectrom. 11:1271-1278
)のCADスペクトルの解釈、および合成ペプチドのCADスペクトルと消化ペプチド
のCADスペクトルとの比較を組み合わせて確認したことに留意することが重要で
ある。マススペクトルデータから導き出したアミノ酸配列とペプチド6、12およ
び18についてのcDNAデータの比較においては、1塩基置換による些細な相違が見
られた。この相違では、ペプチド6においてはFからSへの置換、ペプチド12にお
いてはEからVへの置換またはTからAへの置換、およびペプチド18においてはEか
らGへの置換を生じている。これらの置換は、FSP95がマイクロシークエンスされ
る元になったドナーと、Clontech Marathon精巣cDNAが構築される元になったド
ナーとの間の、個々のDNA間の多型性によるものであろう。
【0179】 ヒト精子において、受精能獲得に伴うタンパク質のチロシンリン酸化の変化パ
ターンを特性決定することは、哺乳類の受精の準備段階である、受精能獲得に関
連した変化における種々のシグナル伝達経路の関与を分析するための重要なステ
ップである。1次元ゲル電気泳動により、ヒト精子は受精能獲得過程の間に、〜
105kDa、および〜80kDaの高い分子量を有する主要な2種のタンパク質に対する
チロシンリン酸化が増大することが、以前に示されている(Carreraら、1996, De
v. Biol. 180:284-296, Leclercら、1998, J. Androl. 19:434-443, Luconiら、
1995, Mol. Cell Endocrinol. 108:35-42)。本研究においては、受精能を獲得し
た精子、受精能を獲得していない精子およびゲニステイン処理した精子を比較す
る2次元ウエスタン分析により、受精能獲得の際に増大したチロシンリン酸化を
示す、抗原FSP95を含む複数の高分子量タンパク質を見出した(図2C)。ホスホチ
ロシン含有ブロットにおける存在量の多さによると、FSP95は、これまでに記述
した通り、受精能獲得済ヒト精子の、主要な酸性高分子量チロシンリン酸化タン
パク質の1つとして出現する。事実、FSP95における潜在的チロシンキナーゼリ
ン酸化部位は残基番号435と同定された。ホスホチロシン残基に対する抗体と組
換えFSP95に対する抗体とを用いて試験した通り、in vitro受精能獲得の際にFSP
95が酸性イソ型へ変化した際のpIの変化(図9)は、FSP95がチロシンキナーゼ基
質である有力な証拠となる。
【0180】 受精能獲得済精子におけるゲニステインによるチロシンリン酸化の阻害(図2D)
は、ヒト精子においてチロシンキナーゼが存在し活性であることを示唆する。チ
ロシンキナーゼの存在は以前、射出されたヒト精子、およびイノシシ精子の中間
部尾部領域において、イノシシ雄生殖細胞から精製したチロシンキナーゼに対す
る抗体を用いて示されている(BerrutiおよびBorgonovo, 1996, J. Cell. Sci. 1
09:851-858)。受精能獲得済精子においてゲニステインの存在下で見られる、受
精能を獲得していない細胞よりも低い、タンパク質中のチロシン残基リン酸化の
減少(図1)は、ホスファターゼの存在(おそらくはカルモジュリン依存性タンパ
ク質ホスファターゼであるカルシニューリンの活性)によることが考えられる(Ta
shら、1988, J. Cell Biol. 106:1625-1633)。このような解釈は、Ca++誘導性脱
リン酸化がカルモジュリン-カルシニューリン依存性であるという観察によって
支持される(Carreraら、1996, Dev. Biol. 180:284-296)。哺乳類精子における
チロシンのリン酸化は精子の機能亢進(hyperactivation)に関連するので(Viscon
tiおよびKopf、1998, Biol. Reprod. 59:1-6)、受精能獲得により誘導されるFSP
95のチロシンリン酸化は精子の運動性に関して役割を有すると考えられる。さら
に、主要なチロシンキナーゼ基質を利用可能とすることにより、これらの精子の
機能に関与し参加しているチロシンキナーゼの特性決定のための手段が提供され
るであろう。
【0181】 FSP95 cDNAの予測アミノ酸と利用可能なデータベースとの比較により、マウス
およびヒト精子pro-AKAP82との最も高い相同性(それぞれ34%、32%のアミノ酸
同一性)が判明した。これらのタンパク質は、PK-Aを非細胞(subcellular)位置か
ら隔離させるプロテインキナーゼAのアンカータンパク質である。このことは、F
SP95はこれらのAKAPタンパク質と共に、2つの潜在的細胞内ターゲッティングド
メインを有することを示唆している(図4)。これらのドメインは両方とも、AKAP
と類似したN-末端塩基性領域中の75および79に位置する(Glantzら、1993, J. Bi
ol. Chem. 268:12796-12804, Carrら、1992, J. Biol. Chem. 267:6816-16823)
。しかしながら、興味深いことには、これらの精子AKAPの予測されるRII-結合ド
メインは、この領域内の低い保存性および推定脂肪族へリックス結合モチーフの
欠如から判断すると、FSP95においては欠失していると判明した(Carrら、1991,
J. Biol. Chem. 266:14188-14192)。最近の研究においては、約110kDaのAKAPお
よびPK-Aの制御サブユニット(RIIα、RIIβおよびRIβ)の存在が、ヒト、ウシ、
およびサル精子において示されている(Vijayaraghavanら、1997, J. Biol. Chem
. 272:4747-4752)。さらに、PK-Aの制御サブユニットのウシ精子AKAPに対するア
ンカー作用は、PK-Aの触媒活性に関係なく、精子の運動性の制御に必須であるこ
とが示唆されている(Vijayaraghavanら、1997, J. Biol. Chem. 272:4747-4752)
。故に、FSP95のユニークな精巣特異的発現パターン(図5)およびその精子AKAP
との類似性を考慮すると、FSP95は、ヒトに対する局所的精子抑制剤の製剤のた
めの、細胞透過性アンカー作用阻害ペプチドを開発する可能性について探求され
るであろう。さらに、FSP95の、チロシンキナーゼ基質としての同定およびその
精子AKAPとの類似性により、PK-Aとチロシンキナーゼとの間にシグナル伝達経路
の相互関係がある可能性を示唆する。なぜなら、チロシンリン酸化と他の動物に
おける受精能獲得は、cAMP/PK-A依存性経路によりアップレギュレートされるこ
とが示されているからである(ViscontiおよびKopf、1998, Biol. Reprod. 59:1-
6, Galantino-Homerら、1997, Biol. Reprod. 56:707-719, Viscontiら、1995,
Development 121:1139-1150)。
【0182】 男性と女性の双方に由来する、抗精子抗体を有する血清によって認識されるた
め、FSP95は同種抗原でもあり自己抗原でもある。この発見は、FSP95転写物の発
現に関して見られた注目すべき精巣特異性と一致している。多くの精子タンパク
質が天然で抗原性である。なぜなら、精子タンパク質が組織特異的であり、減数
分裂が開始され精子特異的遺伝子が転写され始める思春期まで現れないからであ
る(Tungら、1985, The Autoimmune Disease(RoseおよびMacKay編)pp.537-590, A
cademic Press, New York, NY)。新生児である期間中に自己トレランスが誘導さ
れる間、このような新抗原は、免疫系によっては恐らく認識されない(Tungら、1
985, The Autoimmune Disease(RoseおよびMacKay編)pp.537-590, Academic Pres
s, New York, NY)が、一方で減数分裂後に雄の生殖細胞は後期には、血液-精巣
バリアおよび血液-精巣上体バリアによって免疫系から隔離されている(Setchell
ら、1990, J. Reprod. Immunol. 18:19-32, HoffeおよびHinton, 1984 Biol. Re
prod. 30:991-1004)。しかしながら、ヒト精子特異的自己抗原および同種抗原の
あるものは、不妊患者の血清によって認識される(SAGA 1、SPAG2、SPI7、FAIな
ど)(Diekmanら、1997, Biol. Reprod. 57:1136-1144 50, Diekmanら、1998, Mol
. Reprod. Dev. 50:284-293, Leaら、1997, Fertil. Steril. 67:355-361, Naz
ら、1984, Science 225:342-344)が、精子表面上で発見されたものはごく少数(S
AGA1など)のみである(Diekmanら、1997, Biol. Reprod. 57:1136-1144)-a criti
cal criteria for the selection of a potential contraceptive immunogen (H
err, 1996, Contraceptive Research and Development (HarrisonおよびRosenfi
eld編)pp. 401-429, National Academy Press, Washington DC)。このように、F
SP95は避妊用ワクチン原の候補ではない。なぜなら、マイクロ精子不動化アッセ
イと免疫蛍光法の両方により、精子表面上には存在しないことが示されたからで
ある。そうではなく、rFSP95に対する抗血清を使用した免疫細胞化学により、FS
P95の存在する場所は尾の主要部の細胞質であると判明した。
【0183】 免疫電子顕微鏡観察により、繊維鞘のリブに関連した抗原が同定された(図8)
。この抗原は、鞭毛の収縮(beat)の形状の決定に関与すると考えられている(Edd
yおよびO'Brien, 1994, The Physiology of Reproduction (KnobilおよびNeill
編) Vol. 1, pp.29-77, Raven Press, New York, NY)。膜を取り除いた(demembr
anated)マウス精子においては、繊維鞘の頭部へのスライドは微小管の末梢端部(
distal end)への押出を伴うことが示されている(SiおよびOknno, 1993, Exp. Ce
ll Res. 208:170-174)。この繊維鞘のスライドは、cAMP依存性であり、スライド
速度はATP濃度に依存する。数種類のタンパク質が、単離したヒト精子繊維鞘の
ゲル上で同定されているが(MW;97, 76, 62, 55, 33, 28, 25kDa)(Jassimら、199
2, Hum. Reprod. 7:86-94)、本発明者らの知る限り、ヒト精子繊維鞘タンパク質
であるhAKAP82のみが、FSP95以外に分子レベルで特性決定されている(Turnerら
、1998, J. Biol. Chem. 273:32135-32141)。最近、ヒト精子繊維鞘タンパク質p
ro-hAKAP82と92%の同一性を示しFSP95とも27%の同一性を示すが、存在が精子
において未だに実証されていない予測タンパク質をコードする「hi」と命名され
たヒト精巣特異的遺伝子が報告された(Mohapatraら、1998, Biochem. Biophys.
Res. Commun. 244:540-545)。
【0184】 繊維鞘構造における異常、特に縦方向の列の成分の分解および非対称的局在は
、不妊と鞭毛の運動障害にそれぞれ関連する、重大な精子の非運動性に関連する
ことが示されている(Chemesら、1987, Fertil. Steril. 48:664-669, Serresら
、1986, Cell Motil. Cytoskeleton 6:68-76)。これらの欠陥の分子レベルでの
基礎は今のところ未解明であるが、繊維鞘タンパク質をコードする遺伝子の突然
変異は、鞭毛運動障害につながる繊維鞘構造の分解に関連することが考えられる
。前述のFSP95遺伝子の崩壊に関する更なる研究により、該遺伝子が繊維鞘の構
築において果たす役割が明確となり、かつ機能亢進および受精能獲得におけるFS
P95のチロシンリン酸化の重要性を評価する助けとなるであろう。
【0185】 本発明は、本発明の各態様を個々に例示するものとして意図され、記載される
特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。さらに、機能的に等価
な方法および成分は、本発明の範囲内にある。実際、本明細書において示され、
記載されたものに加え、本発明の種々の改変が、これまでの記載および付随する
図面から当業者には明らかとなるであろう。そのような改変もまた、添付の特許
請求の範囲内に入るものと意図されている。
【0186】 本明細書で引用した全ての参考文献は、参照によりあらゆる目的のために本明
細書に組み入れるものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 2-Dイムノブロットによる、受精能を獲得したヒト精子における高分子量の主
要な酸性チロシンリン酸化タンパク質としてのFSP95の同定。スイムアップして
いる新鮮な精子は、ゲニステイン(プロテインチロシンキナーゼ阻害剤)の不在
下および存在下にて受精能を獲得させた。2-D精子プロテオームにおけるFSP95の
スポット位置は、銀染色したゲルにおいて白の長方形の枠で囲って示す(A)。
チロシン残基のリン酸化を示した高分子量の酸性タンパク質(Aの枠領域)は、
受精能獲得の前(B)および後(C)に、抗ホスホチロシン抗体で精査したブロッ
トに認められる。顕著に存在する高分子量の酸性チロシンリン酸化タンパク質(
約95 kDa、pI 5.1-5.5)は、受精能獲得によるリン酸化の増大を示す(C)。95k
Daタンパク質のリン酸化の欠損は、ゲニステインの存在下にて受精能を獲得した
細胞において観察された(D)。FSP95をマイクロシーケンシングした中心部分の
スポットは矢印と共に白丸で示してある(A)。
【図2】 抗精子抗体を用いた男性および女性におけるFSP95の抗原性。ヒト精子タンパ
ク質を二次元SDS-PAGEで分離し、ニトロセルロース膜にトランスファーし、そし
てイムノビーズ結合試験によって既に抗精子抗体についてスクリーニングされて
いる不妊症男性(A)および不妊症女性(B)由来の血清を用いて精査した。免疫
反応性タンパク質を、臨床的に生殖能力のある男性(C)および女性(D)の被験
者に由来する血清を用いて精査したウエスタンブロットと比較した。両方の性の
不妊症被験者に由来する血清を用いてFSP95を含む95kDaのタンパク質(矢印、マ
イクロシーケンシングのために選択したタンパク質スポット)は、生殖能力のあ
る被験者の血清を用いて95kDa群で観察された弱い免疫反応性と比較して、強力
な免疫反応性を示したことに留意されたい。
【図3】 ヒト精子タンパク質FSP95のヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列。ヒト
精子FSP95の推定アミノ酸配列をcDNA配列の下に示す。左側の数はヌクレオチド
配列を指し、右側の数はアミノ酸配列を指す。オープンリーディングフレームの
共通のATGおよびポリアデニル化シグナル(ATFAAA)は太字で表す。終止コドン
(TAA)には星印を付してある。5-プライムおよび3-プライムの未翻訳領域はそ
れぞれ162 bpおよび218 bpであり、イタリック体で示す。推定タンパク質の分子
量およびpIを算出したところそれぞれ94.6kDaおよび6.0であった。18個の下線を
付した配列は、マイクロシーケンシングにより得たトリプシン性ペプチドを示す
。推定チロシンキナーゼリン酸化部位は、枠内の太字で示す(残基435番)。こ
の核酸配列はGenBankに提出されている(受託番号AF087003)。
【図4】 ヒト精子FSP95の推定アミノ酸配列とマウスおよびヒトの精子繊維鞘AKAP(マ
ウス:pro-mAKAP82、受託番号148968;ヒト:pro-hAKAP82、受託番号AF072756)
の推定アミノ酸配列との相同性比較。これらの配列は、FSP95との相同性の高い
順に並べた。GCG-PILEUPプログラムを使用してアライメントを作成し、これをAL
SCRIPTバージョン2.0を用いてフォーマット化した。影付き領域は分子間のアミ
ノ酸同一性および類似性を示す(ALSCRIPTにおいてカットオフ8)。保存されて
いるAKAP様細胞内ターゲティングドメインは枠で囲って示す。マウスおよびヒト
のAKAP82のN末端RII結合ドメインは下線で強調している。
【図5】 ヒト精子FSP95発現の分析。A:レーン毎に、それぞれのヒト組織に由来する2
μgのポリ(A)+mRNAを含むノーザンブロット(Clontech)を放射性標識FSP95
cDNAを用いてハイブリダイズし、60時間露光した。RNAマーカーの移動(kb)を
左側に示す。約3.0kbの単一の転写産物は睾丸においてのみ認められた。続いて
ブロットをストリップに切断し、アクチンを用いて再度ハイブリダイズして、各
レーンにおけるRNAレベルを評価した(データは示さない)。B:50種のヒト組織
(Clontechより入手)に由来するポリ(A)+RNAを含むドットブロットを 放射
性標識FSP95 cDNAを用いてハイブリダイズし、シグナルをオートラジオグラフィ
ーで可視化した。ハイブリダイゼーションは、18時間の露光によって睾丸におい
てのみ認められた。ドットブロットには、以下の50種の組織に由来する基準量(
89〜514 ng)のポリ(A)+RNAを含有させた。すなわち、A1、脳全体;A2、扁桃
;A3、尾状核;A4、小脳;A5、大脳皮質;A6、前頭葉;A7、海馬;A8、延髄;B1
、後頭葉;B2、被殻;B3、黒質;B4、側頭葉;B5、視床;B6、視床下核;B7、脊
髄;C1、心臓;C2、大動脈;C3、骨格筋;C4、大腸;C5、膀胱;C6、子宮;C7、
前立腺;C8、胃;D1、睾丸;D2、卵巣;D3、膵臓;D4、下垂体;D5、副腎;D6、
甲状腺;D7、唾液腺;D8、乳腺;E1、腎臓;E2、肝臓;E3、小腸;E4、脾臓;E5
、胸腺;E6、末梢白血球;E7、リンパ節;E8、骨髄;F1、虫垂;F2、肺;F3、気
管;F4、胎盤;G1、胎児脳;G2、胎児心臓;G3、胎児腎臓;G4、胎児肝臓;G5、
胎児脾臓;G6、胎児胸腺;G7、胎児肺。
【図6】 大腸菌からの組換えFSP95(rFSP95)の単離ならびに組換えおよび精子FSP95の
イムノブロッティング。ヒト精子FSP95 cDNAの一部(タンパク質の残基1-779を
コードする)をpET2Sbプラスミドを用いて大腸菌で発現させ、1.0 mM IPTGを添
加して誘導し、そしてニッケルイオンアフィニティーカラムクロマトグラフィー
、続いて分取用ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行って精製した。A:クーマ
シーで染色した細菌抽出物。レーン1;非誘導、レーン2および3;誘導の1.5
時間および3.0時間後。発現されたFSP95を矢印で示す。B:免疫に使用したクー
マシー染色した精製rFSP95(2.3μg)。左側;分子量マーカー。C:5000倍希釈
したrFSP95に対するラット抗血清を用いて精査したゲル精製rFSP95(3.5μg)の
イムノブロット。レーン1:免疫前血清、レーン2;免疫血清。D:ゲル精製rFS
P95に対するラット血清を用いて精査したヒト精子タンパク質の2-Dブロット。最
初にマイクロシーケンシングしたpI-5.3における95kDa領域は抗体と免疫反応し
た(矢印)。pH勾配は上に示す。分子量マーカーは全てのパネルの左側に示す。
【図7】 受精能を獲得し、透過可能となったヒト精子におけるFSP95の位相差(A、C)
および間接免疫蛍光染色法(B、D)。免疫蛍光は、免疫血清(B)を有する鞭毛
(バー)の主部(PP)で表すが、頭部、中間部(MP)または端部(EP)では蛍光
が観察されなかった。免疫前血清(D)、または生存している受精能獲得非透過
性精子に対する免疫血清(データは示さない)を用いた場合には、免疫染色は観
察されなかった。
【図8】 電顕を用いた、射精されたヒト精子の主部の縦断面(A)および横断面(B)に
おけるFSP95のイムノゴールドの局在化。金粒子(矢印)は、繊維鞘(FS)のリ
ブ(rib)で検出されたが、縦に切断した円筒(longitudinal column; LC)の中
心部では検出されなかった。免疫反応性は、外部の緻密な繊維(ODF)または軸
糸(AXO)において検出されなかった。ラット免疫前血清で処理した対照の断面
(CおよびD)では、金粒子はまばらに検出されただけだった。
【図9】 ヒト精子のin vitroでの受精能獲得過程におけるFSP95のチロシンリン酸化。2
D SDS-PAGE、エレクトロブロッティング、ならびにrFSP95(A、B)および抗ホス
ホチロシンモノクローナル抗体(C、D)に対するラット抗血清を用いた精査の後
に、受精能未獲得精子のタンパク質(A、C)を、6時間かけて受精能獲得させた
精子(B、D)と比較した。pl -5.3の免疫反応形態のFSP95(A)は受精能獲得の
後であまり多量に存在しない(B)。一方、FSP95のより酸性度が高い形態は、受
精能獲得後に免疫反応性であった(B、矢印)。受精能獲得後の免疫反応形態のF
SP95におけるこれらの酸性電荷シフトは、チロシンリン酸化の増大およびより酸
性度の高いホスホチロシン含有アイソフォームの出現により達成される(C、D、
矢印)。
【図10】 FSP95 RIIサブユニット結合ドメインαへリックス(アミノ酸残基 671-688)
の螺旋状車輪図。疎水性残基の表面は枠で囲って示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 15/16 C07K 16/18 4C084 C07K 14/47 C12N 1/15 4C085 16/18 1/19 4H045 C12N 1/15 1/21 1/19 C12P 21/02 C 1/21 C12Q 1/02 5/10 G01N 33/15 Z C12P 21/02 33/50 Z C12Q 1/02 33/53 D G01N 33/15 N 33/50 33/577 B 33/53 C12P 21/08 C12N 15/00 ZNAA 33/577 5/00 A // C12P 21/08 A61K 37/02 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ, BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C R,CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES,FI ,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID, IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,K Z,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA ,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ, PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,S K,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG ,US,UZ,VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 マンダル,アラビンダ アメリカ合衆国 22903 バージニア州, シャルロッツビル,15番 ストリート エ ヌダブリュ 326,アパートメント 2ビ ー (72)発明者 ウォルコウイクズ,マイケル アメリカ合衆国 22901 バージニア州, シャルロッツビル,ハイドロウリック ロ ード 2607 イー (72)発明者 クロッツ,ケネス アメリカ合衆国 22937 バージニア州, エスモント,アルべレーン チャーチ レ ーン 2984 Fターム(参考) 2G045 AA25 CA26 DA12 DA13 DA14 DA36 FB02 FB03 4B024 AA01 AA11 BA80 CA04 CA11 DA01 DA02 DA05 DA11 EA01 EA02 EA03 EA04 FA01 GA01 GA11 HA01 HA03 HA11 4B063 QA01 QA18 QQ01 QQ08 QR06 QR07 QR33 QR59 QR77 QR80 QS05 QS36 QX02 4B064 AG01 AG27 CA02 CA05 CA10 CA19 CA20 CC24 DA01 DA13 4B065 AA01X AA57X AA87X AA90Y AB01 AB02 BA01 BA08 CA24 CA25 CA44 CA46 4C084 AA02 AA06 AA07 BA22 CA18 CA35 MA13 MA24 MA37 MA52 MA66 NA14 ZA861 4C085 AA13 AA14 BB11 CC04 DD22 DD23 DD81 EE01 4H045 AA10 AA11 AA20 AA30 BA10 CA40 DA00 DA76 EA20 EA50 FA72 FA74

Claims (30)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の(a)または(b)を含む単離されたポリヌクレオチド
    ; a)図3に示されるヌクレオチド配列、または b)図3に示されるヌクレオチド配列の少なくとも10の連続したヌクレオチドを
    含む断片。
  2. 【請求項2】 以下の(a)〜(d)のいずれかを含む単離されたポリヌクレ
    オチド; a)図3に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド
    配列、 b)図3に示されるアミノ酸配列の318〜335番を含むポリペプチドをコードする
    ヌクレオチド配列、 c)図3に示されるアミノ酸配列の368〜385番を含むポリペプチドをコードする
    ヌクレオチド配列、または d)図3に示されるアミノ酸配列の671〜688番を含むポリペプチドをコードする
    ヌクレオチド配列。
  3. 【請求項3】 ストリンジェントな条件下にて請求項1または2記載のポリ
    ヌクレオチドの相補配列にハイブリダイズする単離されたポリヌクレオチド。
  4. 【請求項4】 請求項1または2記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
  5. 【請求項5】 請求項1または2記載のポリヌクレオチドと、それと機能的
    に結合した、宿主細胞において該ヌクレオチド配列の発現を制御するヌクレオチ
    ド調節配列とを含む発現ベクター。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含
    有するように遺伝子操作した宿主細胞。
  7. 【請求項7】 以下の(a)、(b)または(c)を含む単離された遺伝子産
    物; a)請求項1もしくは2記載のポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配
    列、 b)図3に示されるアミノ酸配列、または c)図3に示される配列の少なくとも40の連続したアミノ酸に対して、挿入また
    は欠失がない同じサイズの領域にわたって少なくとも80%の同一性を有するアミ
    ノ酸配列。
  8. 【請求項8】 図3に示されるアミノ酸配列により特定されるタンパク質の
    少なくとも10の連続したアミノ酸を含む単離されたまたは組換えポリペプチドで
    あって、図3に示されるアミノ酸配列により特定されるタンパク質に対する抗体
    が結合することができる、上記ポリペプチド。
  9. 【請求項9】 図3に示されるアミノ酸配列の318〜335番により特定される
    PKA-RIIサブユニット結合ドメインを含む単離されたまたは組換えポリペプチド
  10. 【請求項10】 図3に示されるアミノ酸配列の368〜385番により特定され
    るPKA-RIIサブユニット結合ドメインを含む単離されたまたは組換えポリペプチ
    ド。
  11. 【請求項11】 図3に示されるアミノ酸配列の671〜688番により特定され
    るPKA-RIIサブユニット結合ドメインを含む単離されたまたは組換えポリペプチ
    ド。
  12. 【請求項12】 請求項7〜11のいずれか1項に記載の遺伝子産物と免疫
    特異的に結合する抗体。
  13. 【請求項13】 精子の運動性を阻害することができる請求項12記載の抗
    体。
  14. 【請求項14】 モノクローナル抗体である請求項12記載の抗体。
  15. 【請求項15】 薬学的に許容される担体および有効量の請求項12記載の
    抗体を含む医薬組成物。
  16. 【請求項16】 薬学的に許容される担体および有効量の請求項9〜11の
    いずれか1項に記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
  17. 【請求項17】 精子の運動性を阻害または低減させるのに有効である請求
    項15または16記載の組成物を含む避妊薬。
  18. 【請求項18】 被験体において受精を阻害する方法であって、請求項15
    または16記載の医薬組成物を該被験体に投与することを含み、該被験体中で精
    子の運動性が阻害または低減される、上記方法。
  19. 【請求項19】 FSP95もしくはその少なくとも1つのシグナル伝達経路ま
    たはFSP95を発現する細胞の活性をモジュレートする方法であって、該細胞と以
    下の(a)、(b)または(c)のいずれかとを接触させることを含む、上記方法
    : a)請求項12記載の抗体、 b)請求項7記載の遺伝子産物、または c)請求項8〜11のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  20. 【請求項20】 FSP95またはFSP95を発現する細胞の活性をモジュレートす
    る方法であって、FSP95またはFSP95を発現する細胞とキナーゼまたはホスファタ
    ーゼとを接触させることを含む、上記方法。
  21. 【請求項21】 被験体においてFSP95に対し免疫反応性である抗体の存在
    と関連する生殖関連疾患の存在または該疾患を発症する素因を診断またはスクリ
    ーニングする方法であって、該被験体から血清サンプルを採取し、そして該サン
    プル中のFSP95に対する抗体の存在を検出することを含み、ここで抗体の存在が
    生殖関連疾患の存在または素因を示す、上記方法。
  22. 【請求項22】 FSP95のモジュレーターを同定する方法であって、FSP95ま
    たはFSP95を発現する細胞と候補モジュレーターとを接触させ、FSP95の活性を測
    定または検出することを含む、上記方法。
  23. 【請求項23】 活性を精子運動性アッセイにより測定する請求項22記載
    の方法。
  24. 【請求項24】 生殖関連疾患のために被験体を治療する方法であって、有
    効量の請求項1または2記載のポリヌクレオチドを該被験体に投与することを含
    む、上記方法。
  25. 【請求項25】 生殖関連疾患のために被験体を治療する方法であって、有
    効量の請求項7記載の遺伝子産物、または請求項8〜11のいずれか1項に記載
    のポリペプチドを該被験体に投与することを含む、上記方法。
  26. 【請求項26】 生殖関連疾患のために被験体を治療する方法であって、有
    効量の請求項13または14記載の抗体を投与することを含む、上記方法。
  27. 【請求項27】 請求項7記載の遺伝子産物をコードするトランスジーン、
    または請求項8〜11のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするトラン
    スジーンを含有するトランスジェニック非ヒト動物。
  28. 【請求項28】 請求項1または2記載のポリヌクレオチドを含むトランス
    ジーンを含有するトランスジェニック非ヒト動物。
  29. 【請求項29】 FSP95の遺伝子産物の製造方法であって、請求項1または
    2記載のポリヌクレオチドを含有する組換え細胞を増殖させ、コードされている
    遺伝子産物を該細胞で発現させて、発現された遺伝子産物を回収することを含む
    、上記方法。
  30. 【請求項30】 1つ以上の容器中に、FSP95に対する抗体、FSP95のRNAに
    ハイブリダイズすることができる核酸プローブ、またはFSP95遺伝子の少なくと
    も一部分の増幅をプライミングすることができる核酸プライマー対からなる群よ
    り選択される1種の物質を含有するキット。
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