JP2003516929A - アミロイド形成性疾患の予防および治療 - Google Patents

アミロイド形成性疾患の予防および治療

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Abstract

(57)【要約】 アルツハイマー病、プリオン疾患、家族性アミロイドニューロパシーなどを包含する多数のアミロイド疾患を予防もしくは治療するための製薬学的組成物および方法が開示される。該製薬学的組成物は、免疫学的に反応性の量のアミロイド原線維成分、とりわけ原線維形成ペプチドもしくはタンパク質を包含する。こうした原線維成分と反応する免疫試薬を使用する治療的組成物および方法もまた開示される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本出願は、1999年6月1日に出願された米国仮出願第60/137,01
0号(これによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる)に対する優先権を
主張する。
【0002】 (発明の分野) 本発明は、ヒトおよび他の哺乳動物の脊椎動物におけるアミロイドに関係する
症状の処置組成物および処置方法に関する。
【0003】 (発明の背景) アミロイドーシスは、限局された部位でもしくは全身性に発生することができ
る、多数の「アミロイド沈着物」を形成するタンパク質原線維の細胞外沈着を特
徴とする多数の疾患を記述する一般的用語である。これらの沈着物の原線維組成
は、多様な形態のアミロイド疾患を同定する特徴である。例えば、主としてβア
ミロイドペプチド(β−AP)の原線維より構成される脳内および脳血管系の沈
着物はアルツハイマー病(家族性および散発性双方の形態)に特徴的であり、島
アミロイドタンパク質ペプチド(IAPP;アミリン)はII型糖尿病に関連す
る膵島細胞アミロイド沈着物中の原線維に特徴的であり、また、β2−ミクログ
ロブリンは長期の血液透析治療の結果として生じるアミロイド沈着物の主成分で
ある。より最近、クロイツフェルト−ヤーコブ病のようなプリオン関連疾患もま
たアミロイド疾患として認識されている。
【0004】 多様な形態の疾患は、主として、アミロイドーシスが根底にある全身性の疾病
と関連しているかもしくはいないかに基づいて複数のクラスに分けられている。
従って、ある種の障害は原発性アミロイドーシスであると考えられ、ここでは先
在するもしくは共存する疾患の証拠は存在しない。一般に、疾患の原発性アミロ
イドーシスは「アミロイド軽鎖型」(AL型)タンパク質原線維の存在を特徴と
し、免疫グロブリン軽鎖(κ鎖もしくはλ鎖)の多様なフラグメントに対するA
L原線維のN末端領域の相同性のためそのように命名された。
【0005】 二次性もしくは「反応性」アミロイドーシスは、血清アミロイドAタンパク質
(アポSSA)由来のAA型原線維の沈着を特徴とする。これらの形態のアミロ
イドーシスは、根底にある慢性の炎症性もしくは感染性疾患状態(例えば慢性関
節リウマチ、骨髄炎、結核、らい)を特徴とする。 根底にある慢性の炎症性もしくは感染性疾患状態(例えば慢性関節リウマチ、骨
髄炎、結核、らい)を特徴とする。
【0006】 家族遺伝性アミロイドーシスは、ATTRトランスチレチン型の関連するニュ
ーロパシー性、腎性もしくは心血管系の沈着物を有することができる。他の家族
遺伝性アミロイドーシスは他の症候群を包含し、そして異なったアミロイド成分
を有することができる(例えば、AA原線維を特徴とする家族性地中海熱)。他
の形態のアミロイドーシスは、孤立した器官に生じる病巣性のしばしば腫瘍様の
沈着物を特徴とする局所の形態を包含する。他のアミロイドーシスは加齢に関連
し、そして普遍的には心もしくは脳における斑形成を特徴とする。長期の血液透
析に関連するアミロイド沈着物もまた普遍的である。これらおよび他の形態のア
ミロイド疾患を表1に要約する。(Tan,S.Y.とPepys、Histo
pathology 25:403−414、1994;Harrison’s
Handbook of Internal Medicine、第13版、
Isselbacher,K.J.ら編、マグロウ−ヒル(McGraw−Hi
ll)、サンフランシスコ、1995)。
【0007】
【表1】
【0008】
【表2】
【0009】
【表3】
【0010】 しばしば、アミロイド沈着物の塊を形成する原線維は1種もしくはそれ以上の
一次前駆体タンパク質もしくはペプチド由来であり、そして通常、硫酸化された
グリコサミノグリカンを伴う。加えて、アミロイド沈着物は、後に続く節でより
詳細に記述されるとおり、プロテオグリカン、ガングリオシドおよび他の糖類の
ような他の成分とともに、多様な型の少ないタンパク質およびペプチドを包含す
ることができる。
【0011】 現在、アミロイド疾患のいずれに対しても、特異的なアミロイドに向けられた
治療は存在しない。根底にあるもしくは関連する疾患状態が存在する場合、治療
は、根底にある疾患を治療することによりアミロイド形成性(amyloido
genic)タンパク質の産生を減少させることに向けられる。これは、抗生物
質を用いる結核の治療により例示され、それによりミコバクテリアの負荷を低下
させ、炎症の抑制およびSSAタンパク質の関連する減少をもたらす。多発性骨
髄腫によるALアミロイドの場合には、患者に化学療法薬が投与され、形質細胞
の減少および骨髄腫免疫グロブリンのレベルの低下を引き起こす。これらのレベ
ルが減少する際に、ALアミロイドが消失することができる。共通に所有される
(co−owned)、1998年11月30日に出願された米国特許出願第U
SSN 09/201,430号明細書、および1999年5月28日に出願さ
れた同第USSN 09/322,289号明細書は、アルツハイマー病に関連
するアミロイド斑の負荷量を、β−アミロイドペプチド(Aβ)およびそのフラ
グメントに向けられる免疫応答を生じさせるもしくは賦与する作用物質の投与に
より大きく低下させる(そして予防する)ことができることを示す。多様なアミ
ロイド斑成分に対する免疫応答の誘導が広範なアミロイド疾患の治療において有
効であることが、本発明の発見である。
【0012】 (発明の要約) 本発明は、多数のアミロイド疾患を治療するための製薬学的組成物および方法
に向けられる。一局面によれば、本発明は、有効成分として、患者においてアミ
ロイド成分に対する免疫応答を誘導するのに有効である作用物質を包含する製薬
学的組成物を包含する。こうした組成物は、一般に、賦形剤もまた包含すること
ができ、そして、好ましい態様においてはアジュバントを包含することができる
。さらなる好ましい態様において、アジュバントは、例えば水酸化アルミニウム
、リン酸アルミニウム、MPL(商標)、QS−21(スティミュロン[Sti
mulon](商標))もしくはフロイントの不完全アジュバントを包含する。
関係する一態様によれば、こうした製薬学的組成物は、患者における1種以上の
アミロイド成分に対する免疫応答を誘導するのに有効な複数の作用物質を包含す
ることができる。
【0013】 関係する一態様において、作用物質は、原線維ペプチドもしくはタンパク質の
アミロイド成分に対し向けられる免疫応答を生じさせるのに有効である。好まし
くは、こうした原線維ペプチドもしくはタンパク質は、本明細書に記述されると
おり、ある種の形態のアミロイド疾患に関連することが既知の原線維前駆体タン
パク質由来である。こうした前駆体タンパク質は、限定されるものでないが、血
清アミロイドAタンパク質(アポSSA)、免疫グロブリン軽鎖、免疫グロブリ
ン重鎖、アポAI、トランスチレチン、リゾチーム、フィブローゲン(fibr
ogen)α鎖、ゲルゾリン、シスタチンC、アミロイドβタンパク質前駆体(
β−APP)、β2ミクログロブリン、プリオン前駆体タンパク質(PrP)、
心房性ナトリウム利尿因子、ケラチン、島アミロイドポリペプチド、ペプチドホ
ルモンおよびシヌクレイン(synuclein)を挙げることができる。こう
した前駆体はまた、こうした前駆体の突然変異体タンパク質、タンパク質フラグ
メントおよびタンパク質分解性ペプチドも包含する。好ましい一態様において、
作用物質は、原線維前駆体タンパク質に関して、原線維タンパク質もしくはペプ
チドにより形成される新エピトープ(neoepitope)に対し向けられる
免疫応答を誘導するのに有効である。すなわち、本明細書により詳細に記述され
るとおり、多くの原線維形成ペプチドもしくはタンパク質は、上に列挙されたも
ののような、こうした前駆体タンパク質のフラグメントである。タンパク質分解
性切断によるような、こうしたフラグメントが形成される場合、該フラグメント
が前駆体タンパク質の一部である場合に前駆体上に存在せずそして従って免疫系
に免疫学的に利用可能でないエピトープが現れることができる。こうしたエピト
ープに向けられる作用物質は好ましい治療薬であることができる。なぜなら、そ
れらは患者において自己免疫応答を誘導することがおそらくより少ない可能性が
あるからである。
【0014】 関係する一態様によれば、本発明の製薬学的組成物は、限定されるものでない
が以下の原線維ペプチドもしくはタンパク質、すなわちAA、AL、ATTR、
AアポA1、Alys、Agel、Acys、Aβ、AB2M、AScr、Ac
al、AIAPPおよびシヌクレイン−NACフラグメントを初めとする群から
選択されるもののようなアミロイド成分に向けられる作用物質を包含する。これ
らのペプチドの完全な名称および組成は本明細書に記述する。こうしたペプチド
は、本明細書に記述されるとおり、当該技術分野で公知の方法に従って作成する
ことができる。
【0015】 さらなる関係する一態様によれば、こうした製薬学的組成物に包含される作用
物質は、ある一定の硫酸化されたプロテオグリカンもまた包含する。関係する一
態様において、プロテオグリカンはヘパリン硫酸グリコサミノグリカン、好まし
くはパールカン、デルマタン硫酸、コンドロイチン−4−硫酸、もしくはペント
サンポリ硫酸である。
【0016】 別の関係する局面によれば、本発明は、哺乳動物被験体におけるアミロイド沈
着を特徴とする障害の予防もしくは治療方法を包含する。本発明のこの局面に従
い、被験体は、該被験体が罹っているアミロイド障害に特徴的なアミロイド成分
に対する免疫応答を生じさせるのに有効なある投薬量の作用物質を与えられる。
本質的に、該方法は、上述されたもののような障害に特異的な免疫原性のアミロ
イド成分を含有する製薬学的組成物を投与することを包含する。こうした方法は
、被験体における免疫原性の応答の誘導におけるそれらの有効性をさらに特徴と
する。好ましい一態様によれば、該方法は、免疫原性の作用物質が向けられるア
ミロイド成分に関して、最低1:1000の血清力価を特徴とする免疫学的応答
を生じさせるのに有効である。なおさらなる好ましい一態様において、血清力価
は原線維成分に関して最低1:5000である。関係する一態様によれば、免疫
応答は、処理前の対照の血清サンプルで測定された免疫反応性の血清レベルより
約4倍より高いより大きいに対応する免疫反応性の血清量を特徴とする。この後
者の特徴づけは、血清の免疫反応性をELISA技術により測定する場合にとり
わけ適切であるが、しかし、血清の免疫反応性のいずれかの相対的もしくは絶対
的測定値に当てはまることができる。好ましい一態様によれば、免疫反応性は約
100倍の血清希釈物で測定する。
【0017】 なおさらなる関係する一局面によれば、本発明はアミロイド障害の治療を受け
ている患者の予後の決定方法を包含する。ここで、選択された障害に特徴的なア
ミロイド成分に対する免疫反応性の患者の血清量を測定し、そして血清の免疫反
応性の基準線対照レベルの最低4倍の免疫反応性の患者の血清量は、特定のアミ
ロイド障害に関して改善された状態の予後を示すものとする。好ましい態様によ
れば、患者の血清中に存在する選択されたアミロイド成分に対する免疫反応性の
量は、アミロイド成分に関して、最低約1:1000、もしくは最低1:500
0の血清力価を特徴とする。
【0018】 さらなる関係する一局面によれば、本発明は、アミロイド疾患を予防もしくは
治療するためのいわゆる「受動免疫感作」法および製薬学的組成物もまた包含す
る。本発明の本局面によれば、患者は、選択されたアミロイド成分、好ましくは
治療されるべき疾患に特徴的なアミロイド沈着物中に存在する原線維成分に特異
的に結合する、有効投薬量の抗体を与えられる。一般に、こうした抗体は、この
節の先行する段落に記述された製薬学的組成物および方法に関して、記述された
多様なタンパク質、ペプチドおよび成分を特異的に結合するそれらの能力につい
て選択される。関係する一態様によれば、こうした方法および組成物は、最低2
種のアミロイド原線維成分を結合する抗体の組み合わせを包含することができる
。一般に、製薬学的組成物は、対照の血清サンプル中で測定された成分に対する
免疫反応性の血清レベルより最低約4倍より高い、標的のアミロイド成分に対す
る免疫反応性の血清量を提供するために投与する。抗体は、本明細書に記述され
るとおり、担体とともに投与することもまたできる。一般に、本発明の本局面に
従えば、こうした抗体は、腹腔で、経口で、鼻内に、皮下に、筋肉内に、局所で
もしくは静脈内に投与する(もしくは投与のため処方する)ことができるが、し
かし、いずれかの製薬学的に有効な経路(すなわち、上および本明細書に示され
るような、示された治療的レベルを生じさせるのに有効な)により投与すること
ができるか、もしくはそれによる投与のために処方することができる。
【0019】 関係する一態様によれば、治療的抗体は、最低1種の抗体鎖をコードするポリ
ヌクレオチドを患者に投与することにより投与することができる。本発明の本局
面によれば、ポリヌクレオチドが患者中で発現され、患者中で抗体鎖を製薬学的
有効量で産生させる。こうしたポリヌクレオチドは、抗体の重鎖および軽鎖をコ
ードすることができ、それにより患者中で重鎖および軽鎖を産生させる。
【0020】 好ましい態様によれば、上述された免疫感作レジメンは、当該技術分野で既知
の方法に従い、もしくは免疫学的応答により評価されるような患者の必要に従い
、初期免疫感作、次いで6週間隔のような時間間隔での追加抗原刺激の注入のよ
うな、6ヶ月の期間にわたるような複数の投薬量での抗体を包含する作用物質の
投与を包含することができる。あるいは、もしくは加えて、こうしたレジメンは
、当該技術分野で既知であるような、「持続性放出」製剤の使用を包含すること
ができる。
【0021】 本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、本発明の以下の詳細な記述を付
随する図面とともに読む場合により完全に明らかになるであろう。
【0022】 (発明の詳細な説明) A.定義 別の方法で示されない限り、本明細書で使用される全部の用語は、それらが本
発明の当業者にとって有するであろうと同一の意味を有する。実務者は、とりわ
け、生化学および分子生物学の技術分野で既知の定義、技術の用語および標準的
方法について、Sambrookら(1989)Molecular Clon
ing:A Laboratory Manual(第2版)、コールド スプ
リング ハーバー プレス(Cold Spring Harbor Pres
s)、ニューヨーク州プレーンビュー、およびAusubel,F.M.ら(1
998)Current Protocols in Molecular B
iology、ジョン ワイリー アンド サンズ(John Wiley &
Sons)、ニューヨーク州ニューヨークに向けられる。本発明は、記述され
る特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されないことが理解される。なぜ
なら、これらは同一の結果を生じるように変えることができるからである。
【0023】 「アジュバント」という用語は、抗原とともに投与される場合に抗原に対する
免疫応答を増強するが、しかし単独で投与される場合に抗原に対する免疫応答を
生じさせない化合物を指す。アジュバントは、リンパ球動員、Bおよび/もしく
はT細胞の刺激、ならびにマクロファージの刺激を包含するいくつかの機構によ
り免疫応答を増強することができる。
【0024】 「アミロイド疾患」もしくは「アミロイドーシス」は、症状もしくはその病理
学の一部としてアミロイド斑の蓄積もしくは形成を有する多数の障害のいずれか
を指す。
【0025】 「アミロイド斑」は、主としてタンパク質性の原線維より構成される細胞外沈
着物である。一般に、原線維は1種の優勢なタンパク質もしくはペプチドより構
成されるが;しかしながら、該斑はまた本明細書に記述されるようなペプチドも
しくは非ペプチド分子である付加的な成分も包含することができる。
【0026】 「アミロイド成分」は、こうした分子の抗原性部分を包含するアミロイド斑中
に存在するいずれかの分子の実体である。アミロイド成分は、限定されるもので
ないがタンパク質、ペプチド、プロテオグリカンおよび炭水化物を挙げることが
できる。「特定のアミロイド成分」は、目的のアミロイド斑中に主としてもしく
は独占的に見出される分子の実体を指す。
【0027】 「作用物質」は、合成もしくは生物学的起源の化学的分子である。本発明の文
脈上、作用物質は、一般に製薬学的組成物中で使用することができる分子である
【0028】 「抗アミロイド作用物質」は、能動もしくは受動免疫感作技術により投与され
る場合に、脊椎動物の被験体においてアミロイド斑成分に対する免疫応答を生じ
させることが可能である作用物質である。
【0029】 本明細書で互換可能に使用されるところの「ポリヌクレオチド」および「核酸
」という用語は、典型的なポリヌクレオチドに水素結合することが可能な塩基を
支持する主鎖を有するポリマー分子を指し、ここで、ポリマーの主鎖は、該ポリ
マー分子と典型的なポリヌクレオチド(例えば一本鎖DNA)との間で配列特異
的な様式でこうした水素結合形成を可能にする様式で塩基を提示する。こうした
塩基は、典型的にはイノシン、アデノシン、グアノシン、シトシン、ウラシルお
よびチミジンである。ポリマー分子は、二本鎖および一本鎖のRNAおよびDN
A、ならびにその主鎖の修飾(例えばメチルホスホネート結合)を包含する。
【0030】 本明細書で使用されるところの「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合
により連結されたアミノ酸残基の一本鎖から構成される化合物を指す。「タンパ
ク質」という用語は「ポリペプチド」という用語と同義であることができるか、
または2個もしくはそれ以上のポリペプチドの複合体を指すことができる。
【0031】 「ペプチド」という用語もまた、ペプチド結合により連結されたアミノ酸残基
より構成される化合物を指す。一般に、ペプチドは100もしくはより少ないア
ミノ酸より構成される一方、ポリペプチドもしくはタンパク質は100以上のア
ミノ酸を有する。本明細書で使用されるところの「タンパク質フラグメント」と
いう用語もまたペプチドを意味するように読むことができる。
【0032】 「原線維ペプチド」もしくは「原線維タンパク質」は、アミロイド斑中に存在
する原線維を形成する単量体もしくは凝集された形態のタンパク質もしくはペプ
チドを指す。こうしたペプチドおよびタンパク質の例を本明細書に提供する。
【0033】 「製薬学的組成物」は、哺乳動物の個体への投与に適する化学的もしくは生物
学的組成物を指す。こうした組成物は、限定されるものでないが経口、非経口、
静脈内、動脈内、皮下、鼻内、舌下、脊椎内、脳室内などを挙げることができる
多数の経路の1種もしくはそれ以上を介する投与のため特別に処方することがで
きる。
【0034】 「製薬学的賦形剤」もしくは「製薬学的に許容できる賦形剤」は、その中に有
効な治療薬が処方される担体(通常は液体)である。賦形剤は、一般に、該処方
にいかなる薬理学的活性も提供しないが、それは、化学的および/もしくは生物
学的安定性、放出の特徴などを提供することができる。例示的製剤は、例えば、
Remington’s Pharmaceutical Sciences、
第19版、Grennaro,A.編、1995に見出すことができる。
【0035】 「糖タンパク質」は、最低1個の炭水化物鎖(オリゴ多糖)が共有結合される
タンパク質である。
【0036】 「プロテオグリカン」は、炭水化物鎖の最低1個がグリコサミノグリカン(対
の1メンバーが通常糖酸(ウロン酸)でありかつ他方がアミノ糖である反復する
二糖の長い直線状のポリマーである)である糖タンパク質である。
【0037】 「免疫学的」もしくは「免疫」もしくは「免疫原性の」応答という用語は、脊
椎動物の個体における抗原に対し向けられた体液性(抗体に媒介される)および
/もしくは細胞性(抗原特異的T細胞もしくはそれらの分泌産物により媒介され
る)応答の発生を指す。こうした応答は、免疫原の投与により誘導される能動的
応答、または抗体もしくはプライミングされたT細胞の投与により誘導される受
動的応答であることができる。細胞性免疫応答は、抗原特異的CD4+ Tヘル
パー細胞および/もしくはCD8+ 細胞傷害性T細胞を活性化する、クラスI
もしくはクラスIIのMHC分子と共同してのポリペプチドエピトープの提示に
より導き出される。該応答はまた、単球、マクロファージ、NK細胞、好塩基球
、樹状細胞、星状細胞、小膠細胞、好酸球もしくは内在的免疫の他の成分の活性
化も必要とすることができる。細胞に媒介される免疫学的応答の存在は、当該技
術分野で既知の標準的増殖アッセイ(CD4+ T細胞)もしくはCTL(細胞
傷害性Tリンパ球)アッセイにより測定することができる。免疫原の保護もしく
は治療効果に対する体液性および細胞性の応答の相対的寄与は、免疫感作された
共通遺伝子の動物から免疫グロブリン(IgG)およびT細胞画分を別個に単離
すること、ならびに第二の被験体における保護もしくは治療効果を測定すること
により識別することができる。
【0038】 「免疫原性の作用物質」もしくは「免疫原」もしくは「抗原」は、アジュバン
トとともに、もしくはその非存在下のいずれかでの患者への投与に際して、それ
自身に対する免疫学的応答を誘導することが可能である分子である。こうした分
子は、例えば、KLH、Cd3もしくは破傷風トキシンのような担体タンパク質
に結合されたアミロイド原線維ペプチドもしくはそのフラグメントを包含する。
【0039】 「エピトープ」もしくは「抗原決定基」は、抗体の抗原結合領域に結合する抗
原の部分である。
【0040】 「Aβ」、「Aβペプチド」および「アミロイドβ」ペプチドという用語は同
義であり、そして本明細書に記述されるようなβアミロイド前駆体タンパク質(
β−APP)由来の約38〜43アミノ酸の1種もしくはそれ以上のペプチド組
成物を指す。「Aβxx」はアミロイドβペプチド1−xxを指し、ここでxx
はペプチド中のアミノ酸の番号を示す数字であり;例えば、Aβ42はAβ1−
42と同一であり、これは本明細書で「AN1792」ともまた称され、また、
Aβ40はAβ1−40と同一であり、これは本明細書で「AN1578」とも
また称される。
【0041】 成分に分けられたもしくは単量体のAβは、Aβの可溶性の単量体のペプチド
単位を意味する。単量体のAβを調製する一方法は、凍結乾燥されたペプチドを
、超音波処理を用いて正味のDMSO中に溶解することである。生じる溶液を遠
心分離していかなる不溶性の微粒子も除去する。凝集されたAβは、単量体の単
位が非共有結合により一緒に保持されるオリゴマーの混合物である。
【0042】 「裸のポリヌクレオチド」という用語は、コロイド状物質と複合体形成されな
いポリヌクレオチドを指す。裸のポリヌクレオチドは、ときに、プラスミドベク
ターにクローン化される。
【0043】 「患者」という用語は、予防的もしくは治療的のいずれかの治療を受領するヒ
トおよび他の哺乳動物の被験体を包含する。
【0044】 「と有意に異なる」、「統計学的に有意の」、「より有意に高い(もしくは低
い)」という用語、および類似の句は、データもしくは他の測定値間の比較を指
し、ここで、2個の比較された個体もしくは群の間の差異は、訓練された観察者
にとって明らかにもしくは理にかなって異なるか、または統計学的に有意である
(該句が「統計学的に」という用語を包含する場合、もしくはp値のような統計
学的検定のなんらかの表示が存在する場合、もしくは、分析される場合にデータ
が当該技術分野で既知の標準的統計学的検定により統計学的差異を生じさせる場
合)。
【0045】 1種もしくはそれ以上の列挙される要素を「含んで成る」組成物もしくは方法
は、特別に列挙されない他の要素を包含することができる。例えば、原線維成分
ペプチドを含んで成る組成物は、単離されたペプチド、およびより大きなポリペ
プチド配列の成分としてのペプチドの双方を包含する。さらなる例として、要素
AおよびBを含んで成る組成物は、A、BおよびCより成る組成物もまた包含す
る。 B.アミロイド疾患 1.概観および病因 アミロイド疾患もしくはアミロイドーシスは、広範な外見的症状を有する多数
の疾患状態を包含する。これらの障害は、普遍的に、「アミロイド沈着物」もし
くは「アミロイド斑」として知られるタンパク質原線維の異常な細胞外沈着物の
存在を有し、これらは通常直径が約10〜100μmであり、そして特定の器官
もしくは組織領域に局在する。こうした斑は主として天然に存在する可溶性のタ
ンパク質もしくはペプチドより構成される。これらの不溶性沈着物は、一般に、
直径がおよそ10〜15nmである原線維の側方(lateral)凝集物より
構成される。アミロイド原線維は、コンゴーレッド色素で染色される場合に、偏
光中で特徴的な澄んだ黄緑色の複屈折を生じさせる。該障害は、下述されるとお
り、斑沈着物を形成する主要な原線維成分に基づいて分類される。
【0046】 斑沈着物を形成するペプチドもしくはタンパク質は、しばしば、より大きな前
駆体タンパク質から産生される。より具体的には、アミロイド原線維沈着物の病
因は、一般に、「異常な」前駆体タンパク質のフラグメントへのタンパク質分解
性の切断を必要とする。これらのフラグメントは、一般に、逆平行のβプリーツ
シートに凝集するが;しかしながら、家族性アミロイド多発神経障害(変異体ト
ランスチレチン原線維)および透析に関係するアミロイドーシス(β2ミクログ
ロブリン原線維)においては、ある種の分解されない形態の前駆体タンパク質が
凝集しそして原線維を形成することが報告されている(Tanら、1994、上
記)。 2.臨床的症候群 本節は、それらの特徴的な斑原線維組成物を包含する主要な型のアミロイドー
シスの記述を提供する。アミロイド疾患を、多様な疾患特異的アミロイド沈着物
の1種の成分もしくは複数の成分に対する免疫応答を刺激するよう作用する作用
物質を投与することにより治療することができることが、本発明の全般的発見で
ある。下のC節にてより詳細に論考されるとおり、こうした成分は、好ましくは
斑を形成する原線維の構成要素である。下の節は、アミロイドーシスの主要な形
態を例示するようはたらき、そして本発明を限定することを意図していない。 a.AA(反応性)アミロイドーシス 一般に、AAアミロイドーシスは持続性の急性期応答を惹起する多数の疾患の
症状発現である。こうした疾患は、慢性炎症性障害、慢性の局所もしくは全身性
の微生物感染症、および悪性新生物を包含する。
【0047】 AA原線維は、一般に、血清アミロイドAタンパク質(アポSSA)(HDL
粒子中に存在しかつIL−1、IL−6およびTNFのようなサイトカインに応
答して肝細胞中で合成される循環するアポリポタンパク質)のタンパク質分解性
の切断により形成される、8000ダルトンのフラグメント(AAペプチドもし
くはタンパク質)より構成される。沈着は、実質器官に対する好みを伴い、身体
中で広く行き渡ることができる。脾は通常、沈着部位であり、そして腎もまた冒
されることができる。沈着はまた心および消化管でも普遍的である。
【0048】 AAアミロイド疾患は、限定されるものでないが、慢性関節リウマチ、若年性
関節炎、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節症、ライター症候群、成人スティル病
、ベーチェット症候群およびクローン病のような炎症性疾患を挙げることができ
る。AA沈着物は、らい、結核、気管支拡張症、蓐瘡潰瘍、慢性腎盂腎炎、骨髄
炎およびホウィップル病のような慢性の微生物感染症の結果としてもまた生じる
。ある種の悪性新生物もまたAA原線維アミロイド沈着物をもたらす可能性があ
る。これらは、ホジキンリンパ腫、腎癌、腸、肺および尿生殖管の癌、基底細胞
癌、ならびに毛様細胞性白血病のような病状を包含する。 b.ALアミロイドーシス ALアミロイド沈着は、一般に、形質細胞の悪性病変(多発性骨髄腫)から良
性単一クローン性高ガンマグロブリン血症までの範囲にわたる、Bリンパ球系統
のほとんどいかなる疾患にも関連する。ときに、アミロイド沈着物の存在は根底
にある疾患の主たる指標であることができる。
【0049】 ALアミロイド沈着物の原線維は、単一クローンの免疫グロブリン軽鎖もしく
はそのフラグメントより構成される。より具体的には、フラグメントは軽鎖(κ
鎖もしくはλ鎖)のN末端領域由来であり、そしてその可変(VL)ドメインの
全部もしくは部分を含有する。沈着物は、一般に間葉組織中に存在し、末梢性お
よび自律性ニューロパシー、手根管症候群、巨舌症、拘束型心筋症、大型関節の
関節症、免疫疾患、骨髄腫、ならびに不顕性疾患を引き起こす。しかしながら、
ほとんどいかなる組織、とりわけ心のような内蔵器官も関与することができるこ
とが注目されるべきである。 c.遺伝性全身性アミロイドーシス 多くの形態の遺伝性全身性アミロイドーシスが存在する。それらは比較的稀な
病状であるとは言え、症状の成人の発症およびそれらの遺伝パターン(通常、常
染色体優性)は、一般的集団においてこうした障害の持続につながる。一般に、
該症候群は変異体のアミロイド形成性のペプチドもしくはタンパク質の産生につ
ながる、前駆体タンパク質中の点突然変異に帰することができる。表2は、これ
らの障害の例示的形態の原線維組成を要約する。
【0050】
【表4】
【0051】 表2に提供されるデータは例示的であり、そして本発明の範囲を限定すること
を意図していない。例えば、トランスチレチン遺伝子中の40以上の別個の点突
然変異が記述されており、その全部は臨床的に類似の形態の家族性アミロイド多
発神経障害を生じさせる。
【0052】 トランスチレチン(TTR)は、ときにプレアルブミンともまた称される14
キロダルトンのタンパク質である。それは肝および脈絡叢により産生され、そし
てそれは甲状腺ホルモンおよびビタミンAの輸送で機能する。それぞれが単一ア
ミノ酸変化を特徴とする、該タンパク質の最低50の変異体の形態が、多様な形
態の家族性アミロイド多発神経障害の原因である。例えば、位置55のロイシン
のかわりのプロリンの置換は、とりわけ進行性の形態のニューロパシーをもたら
し;位置111のロイシンのかわりのメチオニンの置換は、デンマーク人患者で
重症の心臓障害をもたらす。全身性アミロイドーシスの患者の心組織から単離さ
れたアミロイド沈着物は、該沈着物が、TTR、および集合的にATTR(その
完全長の配列は特徴づけられている)と称されるそのフラグメントの不均質な混
合物より構成されることを示した。ATTRの原線維成分はこうした斑から抽出
することができ、そしてそれらの構造および配列は当該技術分野で既知の方法に
従って決定することができる(例えば、Gustavsson,A.ら、Lab
oratory Invest.73:703−708、1995;Kamet
ani,F.ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.1
25:622−628、1984;Pras,M.ら、PNAS 80:539
−42、1983)。
【0053】 分子アポリポタンパク質AI中に点突然変異を有する人(例えばGly→Ar
g26;Trp→Arg50;Leu→Arg60)は、タンパク質アポリポタ
ンパク質AIもしくはそのフラグメント(AアポAI)の沈着物を特徴とするあ
る形態のアミロイドーシス(エステルターク(ヨstertag)型)を表す。
これらの患者は、低レベルの高密度リポタンパク質(HDL)を有し、そして末
梢性ニューロパシーもしくは腎不全とともに現れる。
【0054】 酵素リゾチームのα鎖中の突然変異(例えばIle→Thr56もしくはAs
p→His57)は、英国人の家族で報告されている別の形態のエステルターク
(ヨstertag)型の非ニューロパシー性遺伝性アミロイドの基礎である。
ここでは、突然変異体のリゾチームタンパク質の原線維(Alys)が沈着し、
そして患者は一般に損なわれた腎機能を表す。このタンパク質は、本明細書に記
述される原線維形成タンパク質の大部分と異なり、通常は全体の(フラグメント
化されない)形態で存在する(Benson,M.D.ら CIBA Fdn.
Symp.199:104−131、1996)。
【0055】 βアミロイドペプチド(Aβ)は、βアミロイド前駆体タンパク質(βAPP
)として知られる大型のタンパク質からのタンパク質分解により生じうる39〜
43アミノ酸のペプチドである。βAPP中の突然変異は、Aβ原線維および他
の成分より構成される斑の脳沈着を特徴とする、家族性の形態のアルツハイマー
病、ダウン症候群および/もしくは老人性痴呆をもたらす(下にさらに詳細に記
述する)。アルツハイマー病に伴うAPP中の既知の突然変異は、βもしくはγ
分泌酵素(secretase)の切断部位のすぐ近く、またはAβ内に存在す
る。例えば、位置717は、そのAβへのプロセシングにおけるAPPのγ−分
泌酵素切断の部位にすぐ近く、また、位置670/671はβ−分泌酵素切断の
部位にすぐ近い。これらの残基のいずれかでの突然変異は、おそらくAPPから
生じられる42/43アミノ酸の形態のAβの量の増大を引き起こすことにより
、アルツハイマー病をもたらすことができる。多様な長さのAβペプチドの構造
および配列は当該技術分野で公知である。こうしたペプチドは当該技術分野で既
知の方法に従って作成することができる(例えば、GlennerとWong、
Biochem Biophys.Res.Comm.129:885−890
、1984;GlennerとWong、Biochem Biophys.R
es.Comm.122:1131−1135、1984)。加えて、多様な形
態のペプチドが商業的に入手可能である。
【0056】 シヌクレインはアリポプロテイン(alipoprotein)に似ているシ
ナプス関連のタンパク質であり、そしてニューロンの細胞質およびシナプス前末
端で豊富である。NACと命名されるα−シヌクレイン由来のペプチドフラグメ
ントもまたアルツハイマー病のアミロイド斑の成分である。(Claytonら
、1998)。この成分もまた、下に詳述されるとおり、本発明の免疫学的に基
づく治療の標的として作用する。
【0057】 ゲルゾリンは、およびフラグメントアクチンフィラメントに結合するカルシウ
ム結合タンパク質である。該タンパク質の位置187の突然変異(例えばAsp
→Asn;Asp→Tyr)は、フィンランドの患者ならびにオランダ人もしく
は日本人起源の人で通常見出されるある形態の遺伝性全身性アミロイドーシスを
もたらす。苦しめられる個体においては、ゲルゾリンフラグメントから形成され
る原線維(Agel)は、通常、アミノ酸173−243(68kDaのカルボ
キシ末端フラグメント)より成り、そして血管および基底膜中に沈着し、角膜変
性、および末梢性ニューロパシーに進行する頭蓋ニューロパシー、ジストロフィ
ー性の皮膚変化、ならびに他の器官への沈着をもたらす。(Kangas,H.
ら Human Mol.Genet.5(9):1237−1243、199
6)。
【0058】 フィブリノーゲンの突然変異体のα鎖(AfibA)および突然変異体のシス
タチンC(Acys)のような他の突然変異されたタンパク質もまた原線維を形
成し、そして特徴的な遺伝性障害を生じさせる。AfibA原線維は、腎疾患を
伴う非ニューロパシー性の遺伝性アミロイドに特徴的な沈着物を形成し;Acy
s沈着物は、アイスランドで報告された遺伝性脳アミロイド血管障害に特徴的で
ある。(Isselbacherら、Harrison’s Principl
es of Internal Medicine、マグロウ−ヒル(McGr
aw−Hill)、サンフランシスコ、1995;Bensonら、上記)。少
なくとも数例において、脳アミロイド血管障害(CAA)の患者では、βタンパ
ク質とともに非突然変異体の形態のシスタチンCを含有するアミロイド原線維を
有することが示されている。(Nagai,A.ら、Molec.Chem.N
europathol.33:63−78、1998)。
【0059】 ある種の形態のプリオン疾患は、今や遺伝性であると考えられ、症例の15%
までの原因であり、以前は主に性質が感染性であると考えられていた。(Bal
dwinら、Research Advances in Alzheimer
’s Disease and Related Disorders、ジョン
ワイリー アンド サンズ(John Wiley and Sons)、ニ
ューヨーク、1995中)。こうしたプリオン障害においては、患者は、正常な
プリオンタンパク質の異常なアイソフォーム(PrPc)より構成される斑を発
生する。AScrともまた称される優勢な突然変異体のアイソフォームPrPSc は、プロテアーゼ分解に対するその抵抗性、洗剤抽出後の不溶性、二次的リソゾ
ーム中の沈着、翻訳後合成、および高いβプリーツシート含量において、正常な
細胞タンパク質と異なる。クロイツフェルト−ヤーコブ病(CJD)、ゲルスト
マン−シュトロイスラー−シャインカー症候群(GSS)および致死性家族性不
眠症(FFI)をもたらす少なくとも5つの突然変異について、遺伝子の関連が
確立されている。(Baldwin)スクラピー原線維からの原線維ペプチドの
抽出、配列の決定、およびこうしたペプチドの作成方法は、当該技術分野で既知
である。(例えば、Beekes,M.ら、J.Gen.Virol.76:2
567−76、1995)。
【0060】 例えば、一形態のGSSはコドン102のPrP突然変異に結びつけられてい
る一方、終脳のGSSはコドン117の突然変異を伴い分離する。コドン198
および217の突然変異は、アルツハイマー病に特徴的な神経炎斑がAβペプチ
ドの代わりにPrPを含有する、ある形態のGSSをもたらす。ある種の形態の
家族性CJDはコドン200および210の突然変異を伴い;コドン129およ
び178の突然変異は家族性CJDおよびFFIの双方で見出されている。(B
aldwin、上記)。 d.老人性全身性アミロイドーシス 全身性もしくは病巣性のいずれかのアミロイド沈着は年齢とともに増加する。
例えば、野性型トランスチレチン(TTR)の原線維は、高齢の個体の心組織で
普遍的に見出される。これらは無症候性で臨床的に沈黙であることができるか、
もしくは心不全をもたらすことができる。無症候性の原線維の病巣性沈着物は、
脳(Aβ)、前立腺のアミロイド小体(Aβ2ミクログロブリン)、関節および
精嚢にもまた存在することができる。 e.脳アミロイドーシス アミロイドの局所沈着は、とりわけ高齢の個体において脳で普遍的である。脳
における最も頻繁な型のアミロイドは主としてAβペプチド原線維より構成され
、痴呆もしくは散発性(非遺伝性)アルツハイマー病をもたらす。事実、散発性
アルツハイマー病の発生率は、遺伝性であることが示された形態を大きく上回る
。これらの斑を形成する原線維ペプチドは、遺伝性の形態のアルツハイマー病(
AD)に関して、上述されたものに非常に類似している。 f.透析に関係するアミロイドーシス β2ミクログロブリン(Aβ2M)原線維より構成される斑は、普遍的に、長期
の血液透析もしくは腹腔透析を受領する患者で発生する。β2ミクログロブリン
は、11.8キロダルトンのポリペプチドであり、かつ、全部の有核細胞上に存
在する、クラスI MHC抗原の軽鎖である。通常の状況下では、それは細胞膜
から継続的に流され、そして通常は腎により濾過される。損なわれた腎機能の場
合におけるような消失の失敗は、腎および他の部位(主として関節のコラーゲン
豊富な組織)中の沈着につながる。Aβ2M分子は、他の原線維タンパク質と異
なり、一般に、原線維中でフラグメント化されない形態で存在する。(Bens
on、上記)。 g.ホルモン由来のアミロイドーシス 内分泌器官は、とりわけ加齢した個体において、アミロイド沈着物をもつこと
ができる。ホルモン分泌性の腫瘍もまた、ホルモン由来のアミロイド斑を含有す
ることができ、その原線維は、カルシトニン(甲状腺の髄質の癌腫)、島アミロ
イドポリペプチド(アミリン;II型糖尿病の大部分の患者に存在する)および
心房性ナトリウム利尿ペプチド(孤立性心房性アミロイドーシス)のようなポリ
ペプチドホルモンから構成される。これらのタンパク質の配列および構造は当該
技術分野で公知である。 h.雑多なアミロイドーシス アミロイドの限局された沈着物として通常明白である多様な他の形態のアミロ
イド疾患が存在する。一般に、これらの疾患は、おそらく、特定の原線維前駆体
の限局された産生および/もしくは異化作用の欠如または原線維沈着に対する(
関節のような)特定の組織の素因の結果である。こうした特発性沈着の例は、結
節のALアミロイド、皮膚のアミロイド、内分泌性アミロイドおよび腫瘍に関係
するアミロイドを包含する。 C.製薬学的組成物 アミロイド斑のある成分に向けられる免疫応答を導き出すもしくは提供するこ
とが可能な組成物は、アミロイド疾患を治療もしくはその発生を予防するのに有
効であることが、本発明の発見である。とりわけ、本明細書で提供される本発明
によれば、免疫刺激用量の抗アミロイド作用物質もしくは対応する抗アミロイド
免疫試薬を患者に投与する場合に、悩まされる個体におけるアミロイド斑負荷量
の進行を予防する、その症状を緩和する、および/もしくはそれを低下させるこ
とが可能である。この節は、アミロイド斑に対する能動ならびに受動免疫を生じ
させる例示的抗アミロイド作用物質を記述し、また、アミロイド斑負荷量に対す
るこうした組成物を使用する効果治療を示す例示的データを提供する。
【0061】 一般に、本発明の抗アミロイド作用物質は、前の節で記述されかつ下に例示さ
れるような、通常は特徴的なタンパク質、ペプチドもしくはそれらのフラグメン
トである特定の斑成分、好ましくは斑を形成する成分より構成される。より一般
的には、本発明での使用のための治療薬は、斑、もしくはより具体的にはその原
線維成分に対する免疫応答を生じさせるかもしくは誘導する。従って、こうした
作用物質は、限定されるものでないが該成分それ自身およびその変異体、成分に
対する抗体を誘導しかつ/もしくはそれと交差反応する成分の類似物および模倣
物、ならびにアミロイド成分と特異的に反応性である抗体もしくはT細胞を挙げ
ることができる。重要な一特徴によれば、製薬学的組成物は非特異的成分、すな
わち一般に循環するもしくは身体中に遍在する成分から選択されない。例として
、血清アミロイドタンパク質(SAP)は、肝で産生されかつ大部分の既知の形
態のアミロイド沈着物に結合する、循環する血漿糖タンパク質である。治療的組
成物は、好ましくはこの成分に向けられる。
【0062】 免疫応答の誘導は、免疫原が投与されて患者において該成分と反応性の抗体も
しくはT細胞を誘導する場合のように能動的、またはそれ自身が患者中でアミロ
イド成分に結合する抗体が投与される場合のように受動的であることができる。
アミロイド斑に対する免疫応答を誘導するもしくは生じさせるための例示的作用
物質を下の節に記述する。
【0063】 本発明の製薬学的組成物は、免疫原性の作用物質(1種もしくは複数)に加え
て、有効量のアジュバントおよび/もしくは賦形剤を包含することができる。製
薬学的に有効かつ有用なアジュバントおよび賦形剤は当該技術分野で公知であり
、そして後に続く節でより詳細に記述する。 1.免疫刺激剤(能動免疫応答) a.抗原線維組成物 好ましい抗アミロイド作用物質の1つの一般的な分類は、アミロイド原線維タ
ンパク質由来である作用物質より成る。上に挙げられたとおり、アミロイド疾患
の顕著な特徴は、主として原線維より成るアミロイド斑の1つの器官もしくは器
官における沈着であり、原線維は順に特徴的な原線維タンパク質もしくはペプチ
ドより構成される。本発明によれば、こうした原線維タンパク質もしくはペプチ
ド成分は、抗アミロイド免疫応答を誘導するための有用な作用物質である。
【0064】 表1および表2は、多様なアミロイド疾患に特徴的である例示的原線維形成タ
ンパク質を要約する。本発明の本局面に従えば、その相同物もしくはフラグメン
トを包含する適切な原線維タンパク質もしくはペプチドを包含する免疫刺激組成
物の、苦しめられるもしくは影響を受けやすい個体への投与は、アミロイド疾患
に関して、治療薬もしくは予防薬を提供する。
【0065】 例として、βアミロイドペプチドもしくはA4ペプチド(米国特許第4,66
6,829号明細書;GlennerとWong、Biochem.Bioph
ys.Res.Commun.120、1131(1984)を参照されたい)
としてもまた知られるAβは、アルツハイマー病の特徴的な斑の主成分である3
9〜43アミノ酸のペプチドである。Aβは、βおよびγ−分泌酵素と称される
2種の酵素によるより大きなタンパク質APPのプロセシングにより生成される
(Hardy、TINS 20、154(1997)を参照されたい)。
【0066】 実施例Iは、本発明の支持において実施された実験の結果を記述し、ここで、
Aβ42ペプチドを、位置717に突然変異をもつヒトAPPを過剰発現するヘ
テロ接合性のトランスジェニックマウスに投与した。「PDAPPマウス」とし
て知られるこれらのマウスはアルツハイマー様の病理学を表し、そしてアルツハ
イマー病の動物モデルであると考えられている(Gamesら、Nature
373:523−7、1995)。該実施例に詳述されるとおり、これらのマウ
スは、約6月齢で開始するそれらの脳における検出可能なAβ斑の神経病理学を
表し、斑の沈着は時間にわたって進行する。本明細書に記述される実験において
、凝集されたAβ42(AN1792)をマウスに投与した。処理されたマウス
の大部分(7/9)は、その全部が13月齢で有意の脳のアミロイド負荷量を示
した、(生理的食塩水を注入されたかもしくは未処理の)対照マウスと対照的に
、この齢でそれらの脳中に検出可能なアミロイドを有しなかった(図2)。これ
らの差異は海馬においてより顕著でさえあった(図3)。処理されたマウスは、
Aβに対する有意な血清抗体力価もまた表した(全部が1:1000より大きく
、8/9が1/10,000より大きい;図1、表3A)。一般に、生理的食塩
水で処理されたマウスは、試験された全部の時点で、100倍の希釈物でのAβ
に対する抗体の4〜5倍のバックグラウンドレベル未満を表し、そして従って対
照に関して有意の応答を有しないように思われた(表3B)。これらの研究は、
特定の原線維を形成するペプチドAβの注入が、Aβアミロイド斑の沈着に対す
る保護を提供することを立証した。
【0067】 血清アミロイドタンパク質(SAP)は、肝で産生され、かつ、アルツハイマ
ー病における脳アミロイド斑の原線維を包含する全部の形態のアミロイド原線維
にカルシウム依存性の様式で結合する、循環する血漿糖タンパク質である。前述
の実験の一部として、一群のマウスにSAPを注入し;これらのマウスはSAP
に対する有意の血清力価(1:1000〜1:30000)を発生したが、しか
し、Aβペプチドに対する検出可能な血清力価を発生せず、そして脳の斑の神経
病理学を発生した(図2)。
【0068】 実施例IIに詳述されるさらなる実験は、5週齢と約8月齢との間処理された
マウスにおけるAβ注入の免疫原性の効果の用量依存性を立証する。これらのマ
ウスにおいては、抗Aβペプチド抗体の平均の血清力価が、免疫感作の数および
増大する投薬量とともに増大したが;しかしながら、4回の免疫感作後、免疫感
作5日後に測定された血清力価は、より高用量(1〜300μg)にわたって約
1:10000のレベルで水平状態となった(図5)。
【0069】 本発明の支持における付加的実験を実施例IIIに記述し、ここでは、PDA
PPモデルマウスを、アミロイド斑がそれらの脳中に既に存在した後の時点(約
11月齢)で開始してAβ42で処理した。これらの研究では、動物をAβ42
もしくは生理的食塩水で免疫感作し、そして15もしくは18月齢でアミロイド
負荷量の試験のために殺した。図7に具体的に説明されるとおり、18月齢で、
Aβ42で処理されたマウスは、PBSで処理された18月齢の対照(斑負荷量
、4.7%)もしくは12月の未処理の動物(0.28%)のいずれかよりも有
意により低い平均のアミロイド斑負荷量(斑負荷量、0.01%)を表し、ここ
で、斑負荷量は実施例XIII、8部に詳述されるとおり画像分析により測定す
る。これらの実験は、現存する斑負荷量の減少および病気の個体における斑負荷
量の進行の予防における、本発明の治療方法の効力を立証する。
【0070】 本発明の本局面によれば、治療薬は、目的の疾患に特徴的である斑を含んで成
る原線維ペプチドもしくはタンパク質由来である。あるいは、こうした作用物質
は、原線維成分ともまた交差反応する免疫応答を誘導するのに十分にこうした成
分と抗原的に類似である。表1および2はこうした原線維ペプチドおよびタンパ
ク質の例を提供し、それらの組成および配列は当該技術分野で既知であるか、も
しくは当該技術分野で既知の方法に従って容易に決定することができる。(多様
な原線維ペプチド成分の抽出のための方法および/もしくは組成を特別に教示す
る参考文献については、下およびB2節に引用される参考文献を参照されたい;
さらなる例示的原線維成分を下述する。) 従って、本発明に従えば、臨床的および/もしくは生検の決定に基づいてアミ
ロイド疾患の診断がなされる場合、熟練した実務者は、該アミロイド沈着物の原
線維組成を確かめそして原線維ペプチドもしくはタンパク質に向けられる免疫応
答を誘導する作用物質を提供することが可能であることができる。
【0071】 例として、上述されたとおり、アルツハイマー病、もしくはAβ原線維の沈着
を特徴とする他のアミロイド疾患の治療で使用される治療薬は、天然に存在する
形態のAβペプチド、およびとりわけヒトの形態(すなわちAβ39、Aβ40
、Aβ41、Aβ42もしくはAβ43)のいずれかであることができる。これ
らのペプチドの配列およびAPP前駆体とのそれらの関係は、当該技術分野で既
知であり、かつ、当該技術分野で公知である(例えば、Hardyら、TINS
20、155−158(1997))。例えば、Aβ42は、配列:
【0072】
【表5】
【0073】 を有する。
【0074】 Aβ41、Aβ40およびAβ39は、該ペプチドのC末端からのそれぞれA
la、Ala−IleおよびAla−Ile−Valの省略によりAβ42と異
なる。Aβ43は、C末端の1個のトレオニン残基の存在によりAβ42と異な
る。本発明の好ましい一態様によれば、治療薬は目的の疾患の原線維成分の全部
もしくは一部分に対する免疫応答を誘導することができる。例えば、好ましいA
β免疫原性組成物は、Aβの遊離のN末端に特異的な抗体を誘導する作用物質で
ある。こうした組成物は、それが前駆体タンパク質β−APPを認識せず、それ
によりそれを自己免疫を生じさせることをおそらくより少なくするものとみなさ
れるという利点を有する。
【0075】 さらなる例として、AA原線維の沈着を特徴とする疾患、例えば上述されたよ
うな、ある種の慢性炎症性障害、慢性の局所もしくは全身性の微生物感染症およ
び悪性新生物に苦しめられる患者は、血清アミロイドAタンパク質(アポSSA
)の既知の8キロダルトンのフラグメント、AAペプチドで治療することができ
ることが真価をみとめられる。例示的AAアミロイド障害は、限定されるもので
ないが、慢性関節リウマチ、若年性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節症
、ライター症候群、成人スティル病、ベーチェット症候群、クローン病のような
炎症性疾患、らい、結核、気管支拡張症、蓐瘡潰瘍、慢性腎盂腎炎、骨髄炎およ
びホウィップル病のような慢性の微生物感染症、ならびにホジキンリンパ腫、腎
癌、腸、肺および尿生殖管の癌、基底細胞癌、ならびに毛様細胞性白血病のよう
な悪性新生物を挙げることができる。
【0076】 AAペプチドは、前駆体タンパク質の残基1、2もしくは3で開始しかつ残基
58と84の間のいずれかの点で終了する、前駆体タンパク質血清アミロイドA
(アポSSA)のN末端由来のペプチドの不均質な一群の1種もしくはそれ以上
を指し;普遍的に、AA原線維はアポSSAの残基1−76より構成される。正
確な構造および組成を決定することができ、かつ当該技術分野で公知の方法に従
って適切なペプチドを合成することができる(Liepnieks,J.J.ら
Biochem.Biophys Acta 1270:81−86、199
5)。
【0077】 さらなる例として、免疫グロブリン軽鎖(κ鎖もしくはλ鎖)の可変(VL
ドメインの全部もしくは部分を含有するN末端領域由来のフラグメントは、一般
に、間葉組織中のアミロイド沈着物を含んで成り、末梢性および自律性ニューロ
パシー、手根管症候群、巨舌症、拘束型心筋症、大型関節の関節症、免疫疾患、
骨髄腫、ならびに不顕性疾患を引き起こす。本発明の組成物は、好ましくは、軽
鎖の一部分、好ましくは「新エピトープ」(親分子のフラグメント化の結果とし
て形成されるエピトープ)に対する免疫応答を誘導して可能な自己免疫効果を低
下させることができる。
【0078】 多様な遺伝性アミロイド疾患もまた、本発明の治療方法に敏感に反応する。こ
うした疾患は上のB.2節に記述される。例えば、多様な形態の家族性アミロイ
ド多発神経障害は、それぞれが単一アミノ酸変化を特徴とする、肝により産生さ
れる14キロダルトンのタンパク質、トランスチレチン(TTR)の最低50の
突然変異体の形態の結果である。これらの形態のこの疾患の多くは、それらの特
定の病理学および/もしくは人口統計学的起源に基づいて識別可能である一方、
治療的組成物は、一般に有用な治療的組成物を提供するために、野性型TTRを
包含する2種もしくはそれ以上の形態のATTRの混合物のような、1種以上の
形態のTTRに対する免疫応答を誘導する作用物質より構成することもまたでき
ることが真価をみとめられる。
【0079】 アポAIを含有するアミロイド沈着物は、分子アポリポタンパク質AI中に点
突然変異を有する人で見出される。この形態の疾患の患者は、一般に、末梢性ニ
ューロパシーもしくは腎不全を伴って現れる。本発明によれば、治療的組成物は
、本明細書に記述されるもしくは当該技術分野で既知の多様な形態のAアポAI
の1種もしくはそれ以上を構成する。
【0080】 ある種の家族性の形態のアルツハイマー病ならびにダウン症候群は、βアミロ
イド前駆体タンパク質中の突然変異の結果であり、主としてβ−アミロイドペプ
チド(Aβ)より構成される原線維を有する斑の沈着をもたらす。本発明の治療
的組成物中でのAβペプチドの使用は上述され、かつ、本明細書に例示される。
【0081】 上で論考されたような遺伝性の形態のアミロイドーシスを治療するための他の
製剤は、遺伝性全身性アミロイドーシスの治療のためのゲルゾリンフラグメント
、遺伝性ニューロパシーの治療のための突然変異体のリゾチームタンパク質(A
lys)、腎疾患として明白な非ニューロパシー性の形態のアミロイドーシスの
ためのフィブリノーゲンの突然変異体のα鎖(AfibA)、アイスランドで報
告されたある形態の遺伝性脳血管障害の治療のための突然変異体のシスタチンC
(Acys)に対する免疫応答を生じさせる組成物を包含する。加えて、ある種
の遺伝性の形態のプリオン疾患(例えば、クロイツフェルト−ヤーコブ病(CJ
D)、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー症候群(GSS)および
致死性家族性不眠症(FFI))は、プリオンタンパク質の突然変異体のアイソ
フォーム、PrPScを特徴とする。このタンパク質は、本発明に従い、PrP斑
の沈着の治療および予防のための治療的組成物中で使用することができる。
【0082】 上で論考されたとおり、全身性もしくは病巣性のいずれかのアミロイド沈着は
加齢にもまた関連する。影響を受けやすい個体に、こうした加齢に関連する1種
もしくはそれ以上のタンパク質より成る組成物を投与することにより、こうした
沈着を予防もしくは治療することができることは、本発明のさらなる一局面であ
る。従って、野性型TTR由来のATTRより構成される斑は、高齢者の心組織
中で頻繁に見出される。同様に、ある高齢の個体は、彼らの脳中にAβの無症候
性の原線維の病巣性沈着物を発生することができ;本明細書で詳述されるような
Aβペプチド治療をこうした個体において正当化することができる。β2ミクロ
グロブリンは前立腺のアミロイド小体の頻繁な成分であり、そして従って本発明
に従ったさらなる一候補作用物質である。
【0083】 さらなる例として、しかし制限としてでなく、本発明の治療方法の候補である
多数の付加的な非遺伝性の形態のアミロイド疾患が存在する。β2ミクログロブ
リン原線維斑は、普遍的に、長期の血液透析もしくは腹腔透析を受領する患者で
発症する。こうした患者は、本発明に従い、β2ミクログロブリン、もしくは、
より好ましくは、その免疫原性のエピトープに向けられる治療的組成物を用いる
治療により治療することができる。
【0084】 ホルモンを分泌する腫瘍もまたホルモン由来のアミロイド斑を含有することが
でき、その組成は一般に冒されている特定の内分泌器官に特徴的である。従って
、こうした原線維は、カルシトニン(甲状腺の髄質の癌腫)、島アミロイドポリ
ペプチド(II型糖尿病の大部分の患者に存在する)および心房性ナトリウム利
尿ペプチド(孤立性心房性アミロイドーシス)のようなポリペプチドホルモンよ
り構成されることができる。アテローム硬化症において大動脈内膜(aorti
c intima)中で生じるアミロイド沈着物に向けられる組成物もまた本発
明により企図される。例えば、Westermarkらは、こうした斑を形成す
るアポリポタンパク質Aの69アミノ酸のN末端フラグメントを記述し(Wes
termarkら、Am.J.Path.147:1186−92;1995)
;本発明の治療的組成物はこうしたフラグメントに向けられる免疫学的試薬、な
らびにフラグメントそれ自身を包含する。
【0085】 前述の論考は、多様な形態のアミロイド疾患の治療もしくは予防において治療
薬として使用することができるアミロイド原線維成分に焦点を当てた。該治療薬
はまた、ヒトへの投与に際して類似の保護的もしくは治療的免疫応答を誘導する
エピトープを含有する天然に存在するもしくは突然変異体の原線維ペプチドもし
くはタンパク質の活性のフラグメントもしくは類似物であることもできる。免疫
原性のフラグメントは、典型的には、天然のペプチドからの最低3、5、6、1
0もしくは20の連続するアミノ酸の配列を有する。例示的Aβペプチドの免疫
原性のフラグメントは、Aβ1−5、1−6、1−7、1−10、3−7、1−
3、1−4、1−12、13−28、17−28、1−28、25−35、35
−40および35−42を包含する。天然に存在する形態の原線維成分中に存在
する最低1個、およびときに最低5もしくは10個のC末端アミノ酸を欠くフラ
グメントを、いくつかの方法で使用する。例えば、Aβ43のC末端からの5ア
ミノ酸を欠くフラグメントは、ABのN末端からの最初の38アミノ酸を包含す
る。AβのN末端の半分からのフラグメントがいくつかの方法で好ましい。類似
物は、対立遺伝子変異体、種の変異体および誘導された変異体を包含する。類似
物は、典型的には、しばしば保存的置換のゆえに、1個もしくは数個の位置で、
天然に存在するペプチドと異なる。類似物は、典型的には、天然のペプチドとの
最低80もしくは90%の配列の同一性を表す。数種の類似物は非天然のアミノ
酸またはNもしくはC末端アミノ酸の修飾もまた包含する。非天然のアミノ酸の
例は、α,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、4−ヒドロキシ
プロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、γ−N,N,N−トリメチルリシン、
γ−N−アセチルリシン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミ
ルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、ω−N−メチル
アルギニンである。
【0086】 一般に、当業者は、本発明の本局面に従って設計されるフラグメントおよび類
似物を、下述されるようなトランスジェニック動物モデルにおいて、天然に存在
する原線維成分との交差反応性、および/または予防もしくは治療効力について
スクリーニングすることができることの真価をみとめるであろう。こうしたフラ
グメントもしくは類似物は、それらの免疫反応性および動物モデルの効力が、ア
ミロイド原線維成分について測定された対応するパラメータにほぼ同等かもしく
はそれより大きい場合に、本発明の治療的組成物中で使用することができる。
【0087】 こうしたペプチド、タンパク質もしくはフラグメント、類似物および他のアミ
ロイド形成性ペプチドは、当該技術分野で公知の標準的方法に従って、固相ペプ
チド合成もしくは組換え発現により合成することができるか、または天然の供給
源から得ることができる。例示的原線維組成物、原線維の抽出の方法、原線維ペ
プチドもしくはタンパク質成分の配列は、本明細書に提供される特定の原線維成
分の記述とともに引用される参考文献の多くにより提供される。加えて、他の組
成物、配列の抽出および決定方法は、当該技術分野で既知こうした組成物を作成
しかつ使用することを所望する人に利用可能である。自動ペプチド合成機は、こ
うした組成物を作成するのに使用することができ、そしてアプライド バイオシ
ステムズ(Applied Biosystems)(パーキン エルマー(P
erkin Elmer);カリフォルニア州フォスターシティ)のような多数
の製造元から商業的に入手可能であり、また、合成ペプチドを製造するための手
順は当該技術分野で既知である。組換え発現は、大腸菌(E.coli)のよう
な細菌、酵母、昆虫細胞もしくは哺乳動物細胞中であることができるか;あるい
は、タンパク質は、当該技術分野で既知の細胞を含まないインビトロ翻訳系を使
用して製造することができる。組換え発現のための手順は、Sambrookら
、Molecular Cloning:A Laboratory Manu
al(C.S.H.P.プレス(C.S.H.P.Press)、ニューヨーク
州 第2版、1989)により記述される。ある種のペプチドおよびタンパク質
は商業的にもまた入手可能であり;例えば、いくつかの形態のAβペプチドは、
アメリカン ペプチズ カンパニー インク(American Peptid
es Company,Inc.)、カリフォルニア州サニーヴェイル、および
カリフォルニア ペプチド リサーチ インク(California Pep
tide Research,Inc.)、カリフォルニア州ナパのような供給
元から入手可能である。
【0088】 治療薬は、例えば、他のアミノ酸と一緒に活性のペプチド原線維フラグメント
もしくは類似物を包含するより長いポリペプチドより構成されることもまたでき
る。例えば、Aβペプチドは、無傷のAPPタンパク質、もしくはAβのN末端
で開始しかつAPPの末端まで続くC−100フラグメントのようなそのセグメ
ントとして存在することができる。こうしたポリペプチドを、下述されるような
動物モデルにおいて予防もしくは治療効力についてスクリーニングすることがで
きる。Aβペプチド、類似物、活性のフラグメントもしくは他のポリペプチドは
、会合された形態(すなわちアミロイドペプチドとして)もしくは解離された形
態で投与することができる。治療薬は、単量体の免疫原性の作用物質の多量体、
もしくは複合物、または担体タンパク質を包含することもまたでき、そして/あ
るいは、上で挙げられたとおり、より広範な抗アミロイド斑活性を提供するため
に、他の原線維成分に添加することができる。
【0089】 さらなる一変形物において、Aβのフラグメントのような免疫原性のペプチド
は、免疫原性の組成物の部分としてウイルスもしくは細菌により提示することが
できる。免疫原性のペプチドをコードする核酸が、ウイルスもしくは細菌のゲノ
ムもしくはエピソーム中に組込まれる。場合によっては、核酸は、分泌されるタ
ンパク質、またはペプチドが表示されるようにウイルスの外側表面タンパク質も
しくは細菌の膜貫通タンパク質との融合タンパク質として、免疫原性のペプチド
が発現されるような様式で組込まれる。こうした方法で使用されるウイルスもし
くは細菌は、非病原性であるかもしくは弱毒化されているべきである。適するウ
イルスは、アデノウイルス、HSV、ベネズエラウマ脳炎ウイルスおよび他のア
ルファウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ならびに他のラブドウイルス、ワクシ
ニアおよび鶏痘を包含する。適する細菌はサルモネラ属(Salmonella
)および赤痢菌属(Shigella)を包含する。HBVのHBsAgへの免
疫原性のペプチドの融合がとりわけ適する。治療薬はまた、Aβとの有意のアミ
ノ酸配列の類似性を必ずしも有しないがしかしにもかかわらずAβの模倣物とし
て作用しかつ類似の免疫応答を誘導する、ペプチドおよび他の化合物も包含する
。例えば、βプリーツシートを形成するいかなるペプチドおよびタンパク質も適
合性についてスクリーニングすることができる。Aβもしくは他のアミロイド形
成性ペプチドに対するモノクローナル抗体に対する抗イディオタイプ抗体もまた
使用することができる。こうした抗Id抗体は抗原を模倣し、そしてそれに対す
る免疫応答を生じさせる(Essential Immunology(Roi
t編、ブラックウェル サイエンティフィック パブリケーションズ(Blac
kwell Scientific Publications)、パロアルト
、第6版)、p.181を参照されたい)。Aβペプチド以外の作用物質は、上
に列挙されたAβの好ましいセグメント(例えば、1−10、1−7、1−3お
よび3−7)の1種もしくはそれ以上に対する免疫原性の応答を誘導するべきで
ある。好ましくは、こうした作用物質は、Aβの他のセグメントに向けられるこ
となく、これらのセグメントの1つに特異的に向けられる免疫原性の応答を誘導
する。
【0090】 ペプチドもしくは他の化合物のランダムライブラリーもまた適合性についてス
クリーニングすることができる。段階的な様式で合成することができる多くの型
の化合物について、組み合わせ(combinatorial)ライブラリーを
生じさせることができる。こうした化合物は、ポリペプチド、βターン模倣物、
多糖、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、
複素環化合物、ベンゾジアゼピン、オリゴマーのN置換グリシンおよびオリゴカ
ルバメートを包含する。化合物の大規模の組み合わせライブラリーは、アフィマ
ックス(Affymax)、国際特許出願第WO 95/12608号明細書、
アフィマックス(Affymax)、国際特許出願第WO 93/06121号
明細書、コロンビア大学、国際特許出願第WO 94/08051号明細書、フ
ァルマコペイア(Pharmacopeia)、国際特許出願第WO 95/3
5503号明細書、およびスクリップス(Scripps)、国際特許出願第W
O 95/30642号明細書(これらのそれぞれは全部の目的上引用により組
み込まれる)に記述されるコードされる合成ライブラリー(encoded s
ynthetic libraries)(ESL)法により構築することがで
きる。ペプチドライブラリーはファージディスプレイ法によってもまた生じさせ
ることができる。例えば、Devlin、国際特許出願第WO 91/1898
0号明細書を参照されたい。
【0091】 組み合わせライブラリーおよび他の化合物は、最初に、Aβ、もしくはATT
Rのような他のアミロイド形成性ペプチドに特異的であることが既知の抗体もし
くはリンパ球(BもしくはT)に結合するそれらの能力を測定することにより、
適合性についてスクリーニングする。例えば、最初のスクリーニングを、Aβ、
もしくは目的のいずれかの他のアミロイド形成性ペプチドに対するいずれかのポ
リクローナル血清もしくはモノクローナル抗体を用いて実施することができる。
その後、こうしたスクリーニングにより同定された化合物を、Aβもしくは他の
アミロイド形成性ペプチドに対する抗体もしくは反応性のリンパ球を誘導する能
力についてさらに分析する。例えば、血清の複数の希釈物を、原線維ペプチドで
予め被覆されているマイクロタイタープレート上で試験することができ、そして
、標準的ELISAを実施してAβに対する反応性抗体について試験することが
できる。その後、実施例に記述されるとおり、あるアミロイド形成性疾患に対す
る素因を作られたトランスジェニック動物において、予防および治療効力につい
て化合物を試験することができる。こうした動物は、例えば、Gamesら、上
記により記述されたAPPの717突然変異を担持するマウス、ならびに、Mc
Conlogueら、米国特許第5,612,486号明細書およびHsiao
ら、Science 274、99(1996)により記述されたようなAPP
の670/671のスウェーデン型突然変異を担持するマウス;Staufen
bielら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94、1328
7−13292(1997);Sturchler−Pierratら、Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA 94、13287−13292(1
997);Borcheltら、Neuron 19、939−945(199
7))を包含する。同一のスクリーニングアプローチは、上述された、Aβのフ
ラグメント、Aβの類似物およびAβを包含するより長いペプチドのような他の
潜在的作用物質で使用することができる。 b.他の斑成分 他のアミロイド斑成分に向けられる免疫学的応答は、アミロイド疾患における
斑沈着の予防、妨害もしくは低下においてもまた有効であることができることが
真価をみとめられる。こうした成分は、原線維の少ない成分であることができる
か、または、斑中の原線維もしくは原線維形成を伴うことができるが、但し、身
体中に遍在する、もしくはアミロイド沈着物に対し比較的非特異的である成分は
、一般に治療の標的としての使用によりあまり適さない。
【0092】 従って、特定の斑成分に対する免疫応答を誘導する作用物質がアミロイド疾患
の治療もしくはその進行の予防で有用であることが、本発明のさらなる一発見で
ある。本節は、数種の例示的アミロイド斑関連分子の背景を提供する。単独で、
または、上述された原線維成分もしくは下述される他の非原線維形成性成分のい
ずれかに対する免疫原性の治療的組成物と組み合わせでの、これらの分子のいず
れかに対する免疫応答の誘導は、本発明に従い、付加的な抗アミロイド治療レジ
メンを提供する。また、本明細書に記述されるようなこうした斑成分に基づく受
動的免疫感作レジメンも、本発明の部分を形成する。
【0093】 例として、シヌクレインは、アポリポタンパク質に構造的に類似であるがしか
しとりわけシナプス前端末の近傍のニューロンの細胞質中で見出されるタンパク
質である。α、βおよびγシヌクレインと命名される最低3形態の該タンパク質
が存在する。最近、αおよびβシヌクレインが、ある種のアミロイド疾患、とり
わけアルツハイマー病におけるアミロイド沈着物の核形成に関与していることが
示された。(Clayton,D.F.ら、TINS 21(6):249−2
55、1998)。より具体的には、αおよびβシヌクレインのNACドメイン
のフラグメント(残基61−95)が、アルツハイマー病患者のアミロイド斑か
ら単離されており;事実、このフラグメントは、ドデシル硫酸ナトリウム(SD
S)での可溶化後に不溶性のまま留まるプラークの約10%を含んで成る。(G
eorge,J.M.ら、Neurosci.News 1:12−17、19
95)。さらに、完全長のαシヌクレインおよびそのNACフラグメントの双方
が、インビトロでβアミロイドペプチドの不溶性アミロイドへの凝集を加速する
ことが報告されている。(Clayton、上記)。
【0094】 アミロイド斑に関連する付加的成分は非ペプチド成分を包含する。例えば、パ
ールカンおよびパールカン由来のグリコサミノグリカンは、アルツハイマー病、
ならびに糖尿病に関連するアミリン斑を包含する他のCNSおよび全身性のアミ
ロイドーシスのAβを含有するアミロイド斑中に存在する、大型のヘパリン硫酸
プロテオグリカンである。これらの化合物はAβ原線維形成を高めることが示さ
れている。パールカンのコアタンパク質およびグリコサミノグリカン鎖の双方が
Aβへの結合に参画していることが示されている。付加的なグリコサミノグリカ
ン、とりわけデルマタン硫酸、コンドロイチン−4−硫酸およびペントサンポリ
硫酸は、多様な型のアミロイド斑中で普遍的に見出され、そして、原線維形成を
高めることもまた示されている。デキストラン硫酸もまたこの特性を有する。こ
の増強は、該分子を脱硫酸化する場合に有意に低下される。特定のグリコサミノ
グリカンそれら自身を包含する硫酸化された形態のグリコサミノグリカンに対し
向けられる免疫原性の治療薬は、一次もしくは二次のいずれかの治療として、本
発明の付加的な一態様を形成する。こうした分子、ならびにこうした分子を含有
する適切な治療的組成物の製造は、当業者の熟練内にある。 2.受動免疫応答を誘導する作用物質 本発明の治療薬は、原線維ペプチドもしくはアミロイド斑の他の成分に特異的
に結合する、抗体のような免疫試薬もまた包含する。こうした抗体はモノクロー
ナルもしくはポリクローナルであることができ、そして標的とされるべきアミロ
イド疾患の型に一致する結合特異性を有する。治療的組成物および治療レジメン
は、斑の特定の原線維もしくは非原線維成分上の単一の結合ドメインもしくはエ
ピトープに向けられる抗体を包含することができるか、あるいは、同一の成分上
の2種もしくはそれ以上のエピトープに向けられる抗体、または斑の複数の成分
上のエピトープに向けられる抗体を包含することができる。
【0095】 例えば、本発明の支持において実施される実験において、本明細書の実施例X
Iに詳述されるとおり、8 1/2ないし10 1/2月齢のPDAPPマウス
に、ポリクローナル抗Aβ42もしくはAβペプチドの特定のエピトープに対し
調製されたモノクローナル抗Aβ抗体、または生理的食塩水の腹腔内(i.p.
)注入を与えた。これらの実験において、循環する抗体濃度をモニターし、そし
て、抗体が作成された特定の抗原に関して1:1000より大きい循環する抗体
濃度を維持するのに必要とされるように、追加抗原刺激の注入を与えた。対照と
比較して、総Aβレベルの低下が、抗体で処理されたマウスの皮質、海馬および
小脳領域中で観察され;最高の低下はこれらの研究においてポリクローナル抗体
で処理されたマウスで表された。
【0096】 本発明の支持において実施されたさらなる実験において、予測的エクスビボア
ッセイ(実施例XIV)を使用して、NACと称されるシヌクレインのフラグメ
ントに対する抗体の消失を試験した。シヌクレインはアミロイド斑関連タンパク
質であることが示されている。NACに対する抗体を、アミロイド斑および小膠
細胞を含有する脳組織サンプルと接触させた。ウサギ血清を対照として使用した
。その後のモニタリングは、抗体の活性を消失させることを暗示する、斑の数お
よび大きさの顕著な減少を示した。
【0097】 これらのデータから、アルツハイマー病および他のアミロイド疾患に関連する
アミロイド斑の負荷を、AβペプチドのエピトープもしくはシヌクレインのNA
Cフラグメントに対し向けられる免疫試薬(アミロイド斑の負荷を低下させるの
に有効である)の投与により大きく減少させることができることが明らかである
。広範な抗体をこうした組成物中で使用することができることがさらに理解され
る。解離された形態に結合することなく凝集された形態のAβに特異的に結合す
る抗体は、凝集された形態に結合することなく解離された形態に特異的に結合す
る抗体がそうであるように、本発明での使用に適する。他の適する抗体は、凝集
された形態および解離された形態の双方に結合する。いくつかのこうした抗体は
、天然に存在する長い形態のAβ(すなわちAβ42およびAβ43)に結合す
ることなく、天然に存在する短い形態のAβ(すなわちAβ39、40もしくは
41)に結合する。いくつかの抗体は、短い形態に結合することなく長い形態に
結合する。いくつかの抗体は、完全長のアミロイド前駆体タンパク質に結合する
ことなくAβに結合する。いくつかの抗体は、約106、107、108、109
もしくは1010-1より大きいもしくはそれに等しい結合親和性でAβに結合す
る。
【0098】 ポリクローナル血清は、典型的に、Aβの長さに沿っていくつかのエピトープ
に結合する抗体の混合された集団を含有する。モノクローナル抗体は、コンホメ
ーション的もしくは非コンホメーション的エピトープであることができるAβ内
の特定のエピトープに結合する。いくつかのモノクローナル抗体は、Aβの残基
1−28(天然のAβの最初のN末端残基を1と呼称する)以内のエピトープに
結合する。他のモノクローナル抗体はAβの残基1−10をもつエピトープに結
合する。Aβの残基1−16をもつエピトープに結合するモノクローナル抗体も
また存在する。他のモノクローナル抗体はAβの残基1−25をもつエピトープ
に結合する。いくつかのモノクローナル抗体は、Aβのアミノ酸1−5、5−1
0、10−15、15−20、25−30、10−20、20、30、もしくは
10−25内のエピトープに結合する。抗体の予防および治療効力は、実施例に
記述されるトランスジェニック動物モデルの手順を使用して試験することができ
る。
【0099】 より一般的には、本明細書に提供される教示から、実務者は、本明細書に記述
される組成物を使用して、本明細書の2節に記述される疾患のような他のアミロ
イド疾患に特徴的な原線維タンパク質もしくはペプチドに向けられる抗体、なら
びに他のアミロイド成分に対する抗体を設計、製造および試験することができる
。 a.免疫グロブリンの一般的特徴 基本的な抗体構造単位はサブユニットの四量体を含んで成ることが既知である
。各四量体はポリペプチド鎖の2個の同一の対より構成され、各対は1個の「軽
」鎖(約25kDa)および1個の「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。
各鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識の原因である約100ないし110
もしくはそれ以上のアミノ酸の可変領域を包含する。各鎖のカルボキシ末端部分
は、主としてエフェクター機能の原因である定常領域を定義する。
【0100】 軽鎖はκもしくはλ鎖のいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ
もしくはε鎖として分類され、そして抗体のアイソタイプをそれぞれIgG、I
gM、IgA、IgDおよびIgEと定義する。軽鎖および重鎖内では、可変領
域および定常領域が約12もしくはそれ以上のアミノ酸の「J」領域により結合
され、重鎖は約10より多いアミノ酸の「D」領域もまた包含する。(一般に、
Fundamental Immunology(Paul,W.編、第2版、
レイヴァン プレス(Raven Press)、ニューヨーク、1989)、
第7章(全部の目的上そっくりそのまま引用により組み込まれる)を参照された
い)。
【0101】 各軽/重鎖対の可変領域は抗体結合部位を形成する。従って、無傷の抗体は2
個の結合部位を有する。二機能性もしくは二特異性の抗体においてを除き、2個
の結合部位は同一である。鎖は、全部、相補性決定領域もしくはCDRともまた
呼ばれる3個の超可変領域により結合される比較的保存された枠組み領域(FR
)の同一の一般的構造を表す。各対の2本の鎖からのCDRは枠組み領域により
整列され、特定のエピトープへの結合を可能にする。N末端からC末端まで、軽
鎖および重鎖双方がドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、C
DR3およびFR4を含んで成る。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Ka
bat、Sequences of Proteins of Immunol
ogical Interest(国立保健研究所(National Ins
titute of Health)、メリーランド州ベセスダ、1987およ
び1991)、もしくはChothiaとLesk,J.Mol.Biol.1
96:901−917(1987);Chothiaら、Nature 342
:878−883(1989)の定義に従う。 b.非ヒト抗体の産生 非ヒトモノクローナル抗体の産生(例えば、マウス、モルモット、ウサギもし
くはラット)は、例えばAβもしくは他の原線維成分のような斑成分で動物を免
疫感作することにより達成することができる。AβもしくはAβの免疫原性のフ
ラグメントを含んで成るより長いポリペプチド、またはAβに対する抗体に対す
る抗イディオタイプ抗体もまた使用することができる。例えばHarlowとL
ane、Antibodies,A Laboratory Manual(C
SHP NY、1988)(全部の目的上引用により組み込まれる)を参照され
たい。こうした免疫原は、天然の供給源から、ペプチド合成により、もしくは組
換え発現により得ることができる。場合によっては、免疫原を、下述されるよう
な担体タンパク質と融合もしくは別の方法で複合体形成されて投与することがで
きる。場合によっては、免疫原をアジュバントとともに投与することができる。
下述されるようないくつかの型のアジュバントを使用することができる。フロイ
ントの完全アジュバント、次いで不完全アジュバントが、実験動物の免疫感作に
好ましい。ウサギもしくはモルモットが、ポリクローナル抗体の作成に典型的に
使用される。マウスはモノクローナル抗体の作成に典型的に使用される。抗体を
、免疫原への特異的結合についてスクリーニングする。場合によっては、抗体を
、免疫原の特定の領域への結合についてさらにスクリーニングする。例えば、免
疫原としてAβペプチドの場合、スクリーニングは、Aβペプチドの欠失突然変
異体の集合物への抗体の結合を測定すること、およびどの欠失突然変異体が抗体
に結合するかを決定することにより達成することができる。結合は、例えばウェ
スタンブロットもしくはELISAにより評価することができる。抗体への特異
的結合を示す最小のフラグメントが抗体のエピトープを定義する。あるいは、エ
ピトープの特異性は、試験抗体および参照抗体が成分への結合について競争する
競争アッセイにより決定することができる。試験抗体および参照抗体が競争する
場合には、それらは、同一のエピトープ、もしくは一方の抗体の結合が他方の結
合を妨害する、十分に近接したエピトープに結合する。 C.キメラおよび人化抗体 キメラおよび人化抗体は、マウス、またはキメラもしくは人化抗体の構築の出
発原料を提供する他の非ヒトの抗体に同一もしくは類似の結合特異性および親和
性を有する。キメラ抗体は、その軽鎖および重鎖遺伝子が、異なる種に属する免
疫グロブリン遺伝子セグメントから典型的には遺伝子工学により構築されている
抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体からの遺伝子の可変(V)セグ
メントを、IgG1およびIgG4のようなヒトの定常(C)セグメントに結合
することができる。従って、典型的なキメラ抗体は、マウス抗体からのVもしく
は抗原結合ドメイン、およびヒト抗体からのCもしくはエフェクタードメインよ
り成るハイブリッドタンパク質である。
【0102】 人化抗体は、実質的にヒト抗体からの可変領域の枠組み残基(アクセプター抗
体と命名される)および実質的にマウス抗体からの相補性決定領域、(ドナー免
疫グロブリンと称される)を有する。Queenら、Proc.Natl.Ac
ad.Sci.USA 86:10029−10033(1989)、ならびに
国際特許出願第WO 90/07861号明細書、米国特許第5,693,76
2号、同第5,693,761号、同第5,585,089号、同第5,530
,101号、およびWinter、米国特許第5,225,539号明細書(全
部の目的上そっくりそのまま引用により組み込まれる)を参照されたい。定常領
域(1種もしくは複数)もまた、存在する場合には、実質的にもしくは完全にヒ
ト免疫グロブリンからである。ヒトの可変ドメインは、通常、その枠組み配列が
、CDRが由来したマウスの可変領域ドメインとの高程度の配列の同一性を表す
ヒト抗体から選ばれる。重鎖および軽鎖の可変領域の枠組み残基は、同一もしく
は異なるヒト抗体配列由来であることができる。ヒト抗体配列は、天然に存在す
るヒト抗体の配列であることができるか、もしくは、数種のヒト抗体のコンセン
サス配列であることができる。Carterら、国際特許出願第WO 92/2
2653号を参照されたい。ヒトの可変領域の枠組み残基からのある種のアミノ
酸が、CDRのコンホメーションおよび/もしくは抗原への結合に対するそれら
の可能な影響に基づき、置換のため選択される。こうした可能な影響の検討は、
模型を作ること、特定の位置のアミノ酸の特徴の検査、または特定のアミノ酸の
置換もしくは突然変異誘発の影響の経験的観察による。
【0103】 例えば、あるアミノ酸が、マウスの可変領域の枠組み残基と選択されたヒトの
可変領域の枠組み残基との間で異なる場合、ヒトの枠組みアミノ酸を、通常、該
アミノ酸が: (1)抗原を直接非共有結合する、 (2)CDR領域に隣接する、 (3)CDR領域と別の方法で相互作用する(例えば、CDR領域の約6A以内
である)、もしくは (4)VL−VH界面に参画する ことが合理的に期待される場合は、マウスの抗体からの同等な枠組みアミノ酸に
より置換するべきである。
【0104】 置換のための他の候補は、その位置でヒト免疫グロブリンにとって異常である
アクセプターのヒト枠組みアミノ酸である。これらのアミノ酸は、マウスドナー
抗体の同等の位置、もしくはより典型的なヒト免疫グロブリンの同等の位置から
のアミノ酸で置換することができる。置換のための他の候補は、その位置でヒト
免疫グロブリンにとって異常であるアクセプターのヒト枠組みアミノ酸である。
人化免疫グロブリンの可変領域の枠組みは、通常、ヒトの可変領域の枠組み配列
もしくはこうした配列のコンセンサスに対し最低85%の配列の同一性を示す。 d.ヒト抗体 Aβに対するヒト抗体は、下述される多様な技術により提供される。いくつか
のヒト抗体が、実施例XIで記述されるマウスモノクローナルのもののような特
定のマウス抗体と同一のエピトープ特異性を有するように、競争結合実験もしく
は別の方法により選択される。ヒト抗体はまた、免疫原としてAβのフラグメン
トのみを使用すること、および/もしくはAβの欠失突然変異体の集合物に対す
る抗体をスクリーニングすることにより、特定のエピトープ特異性についてもス
クリーニングすることができる。 (1)トリオーマの方法論 基本的アプローチ、およびこのアプローチでの使用のための一例示的細胞融合
パートナー、SPAZ−4は、Oestbergら、Hybridoma 2:
361−367(1983);Oestberg、米国特許第4,634,66
4号明細書;およびEnglemanら、米国特許第4,634,666号明細
書(それらのそれぞれは全部の目的上そっくりそのまま引用により組み込まれる
)により記述されている。この方法により得られる抗体産生細胞系は、それらが
3種の細胞、すなわち2種のヒトおよび1種のマウスから由来されるためトリオ
ーマ(trioma)と呼ばれる。最初に、マウス骨髄腫系統をヒトBリンパ球
と融合させて、Oestberg、上記により記述されるSPAZ−4細胞系の
ような非抗体産生性の異種発生性ハイブリッド細胞を得る。その後、該異種発生
性細胞を、免疫感作されたヒトBリンパ球と融合させて抗体産生トリオーマ細胞
系を得る。トリオーマは、ヒト細胞から作成された通常のハイブリドーマより安
定に抗体を産生することが見出されている。
【0105】 免疫感作されたBリンパ球は、ヒトドナーの血液、脾、リンパ節もしくは骨髄
から得る。特定の抗原もしくはエピトープに対する抗体が望ましい場合、免疫感
作にその抗原もしくはそのエピトープを使用することが好ましい。免疫感作はイ
ンビボもしくはインビトロのいずれかであることができる。インビボ免疫感作に
は、B細胞を、典型的には、Aβ、そのフラグメント、Aβもしくはフラグメン
トを含有するより大きなポリペプチド、またはAβに対する抗体に対する抗イデ
ィオタイプ抗体で免疫感作されたヒトから単離する。いくつかの方法では、B細
胞を、抗体療法が最終的に投与されるべきである同一の患者から単離する。イン
ビトロ免疫感作には、Bリンパ球を、典型的には、10%ヒト血漿を補充された
RPMI−1640(Engleman、上記を参照されたい)のような培地中
で7〜14日の期間の間、抗原に曝露する。
【0106】 免疫感作されたBリンパ球を、公知の方法により、SPAZ−4のような異種
発生性のハイブリッド細胞に融合させる。例えば、細胞を、約37度Cで約5〜
10分間、MW 1000−4000の40〜50%ポリエチレングリコールで
処理する。細胞を融合混合物から分離し、そして所望のハイブリッドについて選
択的な培地(例えばHATもしくはAH)中で繁殖させる。必要とされる結合特
異性を有する抗体を分泌するクローンを、Aβもしくはそのフラグメントに結合
する能力についてトリオーマ培地をアッセイすることにより同定する。所望の特
異性を有するヒト抗体を産生するトリオーマを、限界希釈技術によりサブクロー
ニングし、そして培地中でインビトロで成長させる。その後、得られたトリオー
マ細胞系を、Aβもしくはそのフラグメントを結合する能力について試験する。
【0107】 トリオーマは遺伝子的に安定であるが、それらは非常に高レベルで抗体を産生
しない。発現レベルは、抗体遺伝子をトリオーマから1種もしくはそれ以上の発
現ベクターにクローン化すること、および、当該技術分野で公知の方法に従って
、ベクターを標準的な哺乳動物、細菌もしくは酵母の細胞系に形質転換すること
により増大させることができる。 (2)トランスジェニックの非ヒト哺乳動物 Aβに対するヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の最低1セグメントを
コードするトランスジーン(transgene)を有する非ヒトトランスジェ
ニック哺乳動物からもまた産生することができる。通常、こうしたトランスジェ
ニック哺乳動物の内在性の免疫グロブリンの遺伝子座は機能的に不活性化されて
いる。好ましくは、ヒト免疫グロブリンの遺伝子座のセグメントは、重鎖および
軽鎖成分の再配列されない配列を包含する。内在性の免疫グロブリン遺伝子の不
活性化、および外来性の免疫グロブリン遺伝子の導入の双方は、標的を定められ
た相同的組換えもしくはYAC染色体の導入により達成することができる。この
方法から生じるトランスジェニック哺乳動物は、免疫グロブリン成分の配列を機
能的に再配列し、そして内在性の免疫グロブリン遺伝子を発現することなく、ヒ
ト免疫グロブリン遺伝子によりコードされる多様なアイソタイプの抗体のレパー
トリーを発現することが可能である。これらの特性を有する哺乳動物の産生およ
び特性は、例えば、Lonbergら、国際特許出願第WO 93/12227
号明細書(1993);米国特許第5,877,397号、同第5,874,2
99号、同第5,814,318号、同第5,789,650号、同第5,77
0,429号、同第5,661,016号、同第5,633,425号、同第5
,625,126号、同第5,569,825号,同第5,545,806号明
細書、Nature 148、1547−1553(1994)、Nature
Biotechnology 14、826(1996)、Kucherla
pati、国際特許出願第WO 91/10741号明細書(1991)(それ
らのそれぞれは全部の目的上そっくりそのまま引用により組み込まれる)により
詳細に記述される。トランスジェニックマウスはこの点に関してとりわけ適する
。抗Aβ抗体は、LonbergもしくはKucherlapati、上記によ
り記述されるようなトランスジェニックの非ヒト哺乳動物を、Aβもしくはその
フラグメントで免疫感作することにより得る。モノクローナル抗体は、例えば、
慣習的なKohler−Milsteinの技術を使用して、こうした哺乳動物
からのB細胞を適する骨髄腫細胞系に融合することにより製造する。ヒトポリク
ローナル抗体は、免疫原性の作用物質で免疫感作されたヒトからの血清の形態で
もまた提供することができる。場合によっては、こうしたポリクローナル抗体は
、親和性試薬としてAβもしくは他の免疫原アミロイドペプチドを使用する親和
性精製により濃縮することができる。 (3)ファージディスプレイ法 ヒト抗Aβ抗体を得るためのさらなる一アプローチは、Huseら、Scie
nce 246:1275−1281(1989)により概説される一般的プロ
トコルに従って、ヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングするこ
とである。例えば、トリオーマの方法論について記述されたとおり、こうしたB
細胞を、Aβ、フラグメント、Aβもしくはフラグメントを含有するより長いポ
リペプチド、または抗イディオタイプ抗体で免疫感作されたヒトから得ることが
できる。場合によっては、こうしたB細胞は抗体治療を最終的に受領するべきで
ある患者から得る。Aβもしくはそのフラグメントのような目的のアミロイド成
分のエピトープに結合する抗体を選択する。その後、こうした抗体(もしくは結
合するフラグメント)をコードする配列をクローン化しかつ増幅する。Huse
により記述されるプロトコルは、ファージディスプレイ技術と組み合わせでより
効率的にされる。例えば、Dowerら、国際特許出願第WO 91/1727
1号明細書およびMcCaffertyら、国際特許出願第WO 92/010
47号、米国特許第5,877,218号、同第5,871,907号、同第5
,858,657号、同第5,837,242号、同第5,733,743号お
よび同第5,565,332号明細書(それらのそれぞれは全部の目的上そっく
りそのまま引用により組み込まれる)を参照されたい。これらの方法においては
、メンバーがそれらの外側表面上に異なる抗体を表示するファージのライブラリ
ーを製造する。抗体は通常、FvもしくはFabフラグメントとして表示される
。所望の特異性をもつ抗体を表示するファージを、Aβペプチドもしくはそのフ
ラグメントに対する親和性濃縮により選択する。
【0108】 ファージディスプレイ法の一変形物において、選択されたマウス抗体の結合特
異性を有するヒト抗体を製造することができる。Winter、国際特許出願第
WO 92/20791号明細書を参照されたい。この方法において、選択され
たマウス抗体の重鎖もしくは軽鎖いずれかの可変領域を出発原料として使用する
。例えば、軽鎖可変領域を出発原料として選択する場合、メンバーが同一の軽鎖
可変領域(すなわちマウスの出発原料)および異なる重鎖可変領域を表示するフ
ァージライブラリーが構築される。重鎖可変領域を、再配列されたヒト重鎖可変
領域のライブラリーから得る。目的の成分に対する強い特異的結合を示すファー
ジ(例えば、最低108、および好ましくは最低109-1)を選択する。その後
、このファージからのヒト重鎖可変領域が、さらなるファージライブラリーを構
築するための出発原料として作用する。このライブラリーにおいて、各ファージ
は、同一の重鎖可変領域(すなわち第一のディスプレイライブラリーから同定さ
れる領域)および異なる軽鎖可変領域を表示する。軽鎖可変領域は、再配列され
たヒト可変軽鎖領域のライブラリーから得る。再度、アミロイドペプチド成分に
対する強い特異的結合を示すファージを選択する。これらのファージは、完全に
ヒトの抗アミロイドペプチド抗体の可変領域を表示する。これらの抗体は、通常
、マウスの出発原料に同一もしくは類似のエピトープ特異性を有する。 e.定常領域の選択 キメラ、人化もしくはヒトの抗体の重鎖および軽鎖の可変領域を、ヒト定常領
域の少なくとも一部分に連結することができる。定常領域の選択は、部分的に、
抗体依存性の補体および/もしくは細胞に媒介される毒性が望ましいかどうかに
依存する。例えば、アイソタイプIgG1およびIgG3は補体活性を有し、ま
た、アイソタイプIgG2およびIgG4は有しない。アイソタイプの選択は、
脳中への抗体の通過にもまた影響を及ぼすことができる。軽鎖定常領域はλもし
くはκ鎖であることができる。抗体は、2本の軽鎖および2本の重鎖を含有する
四量体として、別個の重鎖、軽鎖として、Fab、Fab’F(ab’)2およ
びFvとして、もしくは重鎖および軽鎖の可変ドメインがスペーサーにより連結
される一本鎖抗体として発現することができる。 f.組換え抗体の発現 キメラ、人化およびヒト抗体は、典型的に、組換え発現により産生する。組換
えポリヌクレオチド構築物は、典型的に、天然に関連したもしくは異種のプロモ
ーター領域を包含する、抗体鎖のコーディング配列に操作可能に連結された発現
制御配列を包含する。好ましくは、発現制御配列は、真核生物宿主細胞を形質転
換もしくはトランスフェクションすることが可能なベクター中の真核生物プロモ
ーター系である。ベクターが適切な宿主中に組込まれれば、宿主を該ヌクレオチ
ド配列の高レベル発現、ならびに交差反応する抗体の収集および精製に適する条
件下で維持する。
【0109】 これらの発現ベクターは、典型的に、エピソームもしくは宿主の染色体DNA
の組込み部分のいずれかとして宿主生物体中で複製可能である。普遍的には、発
現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能にする選択
マーカー(例えばアンピシリン耐性もしくはヒグロマイシン耐性)を含有する。
【0110】 大腸菌(E.coli)は、本発明のDNA配列のクローニングにとりわけ有
用な1種の原核生物宿主である。酵母のような微生物もまた発現に有用である。
サッカロミセス属(Saccharomyces)は好ましい酵母宿主であり、
適するベクターは発現制御配列、複製開始点、終止配列などを所望のとおり有す
る。典型的なプロモーターは3−ホスホグリセレートキナーゼおよび他の解糖酵
素を包含する。誘導可能な酵母のプロモーターは、とりわけ、アルコール脱水素
酵素、イソチトクロームC、ならびに麦芽糖およびガラクトースの利用を司る酵
素からのプロモーターを包含する。
【0111】 哺乳動物細胞は、免疫グロブリンもしくはそのフラグメントをコードするヌク
レオチドセグメントを発現するための好ましい宿主である。Winnacker
、From Genes to Clones、(VCH パブリッシャーズ(
VCH Publishers)、ニューヨーク、1987)を参照されたい。
無傷の異種タンパク質を分泌することが可能な多数の適する宿主細胞系が当該技
術分野で開発されており、そして、CHO細胞系、多様なCOS細胞系、HeL
a細胞、L細胞および骨髄腫細胞系を包含する。これらの細胞のための発現ベク
ターは、複製開始点、プロモーター、エンハンサーのような発現制御配列(Qu
eenら、Immunol.Rev.89:49(1986))、ならびにリボ
ソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル酸化部位および転写ター
ミネーター配列のような必要なプロセシング情報部位を包含することができる。
好ましい発現制御配列は、内在性の遺伝子、サイトメガロウイルス、SV40、
アデノウイルス、ウシパピローマウイルスなど由来のプロモーターである。Co
ら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照されたい。
【0112】 あるいは、抗体コーディング配列は、トランスジェニック動物のゲノム中への
導入およびトランスジェニック動物の乳中でのその後の発現のために、(例えば
、米国特許第5,741,957号、同第5,304,489号、同第5,84
9,992号明細書(全部はそっくりそのまま引用により本明細書に組み込まれ
る)に記述される方法に従って)トランスジーン中に組込むことができる。適す
るトランスジーンは、カゼインもしくはβラクトグロブリンのような乳腺特異的
遺伝子からのプロモーターおよびエンハンサーとの操作可能な連結で、軽鎖およ
び/もしくは重鎖のコーディング配列を包含する。
【0113】 目的のDNAセグメントを含有するベクターを、細胞宿主の型に依存して、公
知の方法により宿主細胞に移入することができる。例えば、塩化カルシウムトラ
ンスフェクションは原核生物細胞に普遍的に利用される一方、リン酸カルシウム
処理、電気穿孔法、リポフェクション、バイオリスティック(biolisti
c)もしくはウイルスに基づくトランスフェクションを、他の細胞宿主に使用す
ることができる。哺乳動物細胞を形質転換するのに使用される他の方法は、ポリ
ブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、電気穿孔法および微小注入法の使用
を包含する(全般的に、Sambrookら、上記を参照されたい)。トランス
ジェニック動物の産生のためには、トランスジーンを受精卵母細胞に微小注入す
ることができるか、もしくは胚幹細胞のゲノム中に組込むことができ、そしてこ
うした細胞の核を除核卵母細胞に移入することができる。
【0114】 抗体は、発現されれば、HPLC精製、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気
泳動などを包含する当該技術の標準的手順に従って精製することができる(全般
的に、Scopes、Protein Purification(シュプリン
ガー・フェアラーク(Springer−Verlag)、ニューヨーク、19
82)を参照されたい)。 4.他の治療薬 本方法での使用のための治療薬は、Aβペプチドのような斑成分に結合するT
細胞もまた包含する。例えば、T細胞は、昆虫細胞系からヒトMHCクラスI遺
伝子およびヒトβ−2ミクログロブリン遺伝子を発現させることによりAβペプ
チドに対し活性化することができ、それにより空の複合体が細胞の表面上に形成
され、そしてAβペプチドに結合することができる。該細胞系と接触されたT細
胞は、該ペプチドに対し特異的に活性化されたようになる。Petersonら
、米国特許第5,314,813号明細書を参照されたい。MHCクラスII抗
原を発現する昆虫細胞系は、CD4 T細胞を活性化するのに同様に使用するこ
とができる。 5.担体タンパク質 免疫応答を誘導するためのいくつかの作用物質は、アミロイド沈着物に対する
免疫応答を誘導するのに適切なエピトープを含有するが、しかし免疫原性である
には小さすぎる。この状況で、ペプチド免疫原を適する担体に連結して免疫応答
を導き出すのを助けることができる。適する担体は、血清アルブミン、KLH、
免疫グロブリン分子、チログロブリン、卵アルブミン、破傷風トキソイド、また
はジフテリア、大腸菌(E.coli)、コレラもしくはH.ピロリ(H.py
lori)のような他の病原性細菌からのトキソイド、または弱毒化されたトキ
シン誘導体を包含する。他の担体は、複数のMHC対立遺伝子(例えば全部のヒ
トMHC対立遺伝子の最低75%)に結合するT細胞エピトープを包含する。こ
うした担体はときに「普遍的T細胞エピトープ」として当該技術分野で既知であ
る。普遍的T細胞エピトープの例は: インフルエンザヘマグルチニン:HA307-319 PKYVKQNTLKLAT(
配列番号1) PADRE(普遍的残基が太字にされる) AKXVAAWTLKAAA(配列
番号2) マラリアCS:T3エピトープ EKKIAKMEKASSVFNV(配列番号
3) B型肝炎表面抗原:HBsAg19-28 FFLLTRILTI(配列番号4) 熱ショックタンパク質65:hsp65153-171 DQSIGDLIAEAMD
KVGNEG(配列番号5) カルメット−ゲラン菌 QVHFQPLPPAVVKL(配列番号6) 破傷風トキソイド:TT830-844 QYIKANSKFIGITEL(配列番号
7) 破傷風トキソイド:TT947-967 FNNFTVSFWLRVPKVSASHL
E(配列番号8) HIV gp120 T1: KQIINMWQEVGKAMYA.(配列番号
9) を包含する。
【0115】 免疫応答を刺激するもしくは高めるための他の担体は、IL−1、IL−1α
およびβペプチド、IL−2、γINF、IL−10、GM−CSFのようなサ
イトカイン、ならびにMIP1αおよびβならびにRANTESのようなケモカ
インを包含する。免疫原性の作用物質はまた、O’Mahony、国際特許出願
第WO 97/17613号および同第WO 97/17614号明細書に記述
されるとおり、組織を横切る輸送を高めるペプチドに連結することもできる。
【0116】 免疫原性の作用物質は、化学的架橋により担体に連結することができる。免疫
原を担体に連結するための技術は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジル
チオ)プロピオネート(SPDP)およびスクシンイミジル4−(N−マレイミ
ドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)を使用するジス
ルフィド結合の形成を包含する(ペプチドがスルフヒドリル基を欠く場合、これ
はシステイン残基の付加により提供することができる)。これらの試薬は、それ
ら自身と1種のタンパク質上のペプチドシステイン残基との間にジスルフィド結
合を、また、リシン上のε−アミノもしくは他のアミノ酸中の他の遊離のアミノ
基によりアミド結合を創製する。多様なこうしたジスルフィド/アミド形成剤が
、Immun.Rev.62、185(1982)により記述される。他の二官
能性のカップリング剤はジスルフィド結合よりむしろチオエーテルを形成する。
これらのチオエーテル形成剤の多くが商業的に入手可能であり、そして6−マレ
イミドカプロン酸、2−ブロモ酢酸および2−ヨード酢酸、4−(N−マレイミ
ドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸の反応性エステルを包含する。カル
ボキシル基は、スクシンイミドもしくは1−ヒドロキシ−2−ニトロ−4−スル
ホン酸ナトリウム塩とそれらを組み合わせることにより活性化することができる
【0117】 免疫原性ペプチドは、担体(すなわち異種ペプチド)との融合タンパク質とし
て発現させることもまたできる。免疫原性のペプチドを、そのアミノ末端、その
カルボキシ末端もしくは双方で担体に連結することができる。場合によっては、
免疫原性ペプチドの複数の反復配列が融合タンパク質中に存在することができる
。場合によっては、免疫原性ペプチドは、例えば該ペプチドのNおよびC双方の
末端で複数のコピーの異種ペプチドに連結することができる。いくつかの担体ペ
プチドは、該担体ペプチドに対するヘルパーT細胞応答を誘導するよう作用する
。誘導されたヘルパーT細胞は、順に、担体ペプチドに連結された免疫原性ペプ
チドに対するB細胞応答を誘導する。
【0118】 本発明のいくつかの作用物質は、AβのN末端フラグメントがそのC末端で担
体ペプチドに連結される融合タンパク質を含んで成る。こうした作用物質におい
ては、AβのフラグメントのN末端残基が融合タンパク質のN末端残基を構成す
る。従って、こうした融合タンパク質は、AβのN末端残基が遊離の形態にある
ことを必要とするエピトープに結合する抗体の誘導において有効である。本発明
のいくつかの作用物質は、1コピーもしくはそれ以上の担体ペプチドにC末端で
連結されたAβのN末端セグメントの複数の反復配列を含んで成る。こうした融
合タンパク質中に組込まれたAβのN末端フラグメントは、ときにAβ1−3で
開始しかつAβ7−11で終わる。Aβ1−7、Aβ1−3、1−4、1−5お
よび3−7がAβの好ましいN末端フラグメントである。いくつかの融合タンパ
ク質は、縦列のAβの異なるN末端セグメントを含んで成る。例えば、融合タン
パク質は、Aβ1−7、次いでAβ1−3、次いで異種ペプチドを含むことがで
きる。
【0119】 いくつかの融合タンパク質においては、AβのN末端セグメントがそのN末端
で異種担体ペプチドに融合される。同一の多様性のAβのN末端セグメントを、
C末端融合物でとのように使用することができる。いくつかの融合タンパク質は
AβのN末端セグメントのN末端に連結された異種ペプチドを含んで成り、これ
は順に縦列でAβの1個もしくはそれ以上の付加的N末端セグメントに連結され
る。
【0120】 本発明での使用に適する融合タンパク質のいくつかの例を下に示す。これらの
融合タンパク質のいくつかは、米国特許第5,196,512号、欧州特許第3
78,881号および同第427,347号明細書に記述されるような破傷風ト
キソイドのエピトープに連結されたAβのセグメントを含んで成る。いくつかの
融合タンパク質は、米国特許第5,736,142号明細書に記述された担体ペ
プチドに連結されたAβのセグメントを含んで成る。いくつかの異種ペプチドは
普遍的T細胞エピトープである。いくつかの方法において、投与のための作用物
質は、単に、直線状の配置で異種セグメントに連結されたAβセグメントとの単
一の融合タンパク質である。いくつかの方法において、作用物質は、式2xによ
り表される融合タンパク質の多量体であり、ここでxは1−5からの整数である
。好ましくは、xは1、2もしくは3であり、2が最も好ましい。xが2である
場合、こうした多量体は、MAP4(米国特許第5,229,490号明細書を
参照されたい)と称される好ましい配置で連結された4個の融合タンパク質を有
する。Aβのエピトープに下線がつけられる。
【0121】 MAP4の配置を下に示し、ここで、N末端およびリシンの側鎖アミンの双方
でペプチド合成を開始することにより、分枝状構造が生じられる。リシンが配列
中に組込まれかつ分枝することを可能にされる回数に依存して、生じる構造は複
数のN末端を提示することができる。本例では、4個の同一のN末端が分枝状の
リシン含有コア上に生じられている。こうした多重性はコグネイトのB細胞の応
答性を大きく高める。
【0122】
【表6】
【0123】 融合タンパク質の他の例(Aβの免疫原性のエピトープが太字にされる)は
【0124】
【表7】
【0125】 を包含する。
【0126】 受動免疫感作での使用のためのAβに対する抗体の生成で使用されるべき免疫
原を生成させるために、同一もしくは類似の担体タンパク質および連結方法を使
用することができる。例えば、担体に連結されたAβもしくはフラグメントを、
Aβに対するモノクローナル抗体の産生において実験動物に投与することができ
る。 6.治療薬をコードする核酸 アミロイド沈着物に対する免疫応答は、選択されたペプチド免疫原、もしくは
抗体および受動免疫感作に使用されるそれらの成分鎖をコードする核酸の投与に
よってもまた誘導することができる。こうした核酸はDNAもしくはRNAであ
ることができる。免疫原をコードする核酸セグメントは、典型的には、患者の意
図された標的細胞中で該DNAセグメントの発現を可能にする、プロモーターお
よびエンハンサーのような調節要素に連結される。免疫応答の誘導に望ましいよ
うな、血液細胞中での発現のためには、軽鎖もしくは重鎖免疫グロブリン遺伝子
からのプロモーターおよびエンハンサー要素、またはCMVの主要な中初期プロ
モーターおよびエンハンサーが、発現を指図するのに適する。連結された調節要
素およびコーディング配列は、しばしば、ベクター中にクローン化される。二本
鎖抗体の投与のためには、2本の鎖は同一もしくは別個のベクターにクローン化
することができる。
【0127】 レトロウイルス系(例えば、LawrieとTumin、Cur.Opin.
Genet.Develop.3、102−109、1993を参照されたい)
;アデノウイルスベクター(例えば、Bettら、J.Virol.67、59
11、1993を参照されたい);アデノ随伴ウイルスベクター(例えば、Zh
ouら、J.Exp.Med.179、1867、1994を参照されたい)、
ワクシニアウイルスおよびトリポックスウイルスを包含するポックス族からのウ
イルスベクター、シンドビスウイルスおよびセムリキ森林ウイルス(例えば、D
ubenskyら、J.Virol.70、508−519、1996を参照さ
れたい)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(米国特許第5,643,576号明細
書を参照されたい)由来のもののようなアルファウイルス属からのウイルスベク
ター、ならびに水疱性口内炎ウイルス(国際特許出願第WO 96/34625
号明細書を参照されたい)およびパピローマウイルス(Oheら、Human
Gene Therapy 6、325−333、1995);Wooら、国際
特許出願第WO 94/12629号明細書およびXiaoとBrandsma
、Nucleic Acids.Res.24、2630−2622、1996
)のようなラブドウイルスを包含する多数のウイルスベクター系が利用可能であ
る。
【0128】 免疫原をコードするDNA、もしくはそれを含有するベクターを、リポソーム
中にパッケージングすることができる。適する脂質および関係する類似物は、米
国特許第5,208,036号、同第5,264,618号、同第5,279,
833号および同第5,283,185号明細書により記述される。免疫原をコ
ードするベクターおよびDNAを、微粒子担体に吸着もしくはそれと会合させる
こともまたでき、それらの例は、ポリメチルメタクリレートポリマーならびにポ
リラクチドおよびポリ(ラクチドコグリコリド)を包含する。例えばMcGee
ら、J.Micro Encap.(1996)を参照されたい。
【0129】 遺伝子治療ベクターもしくは裸のDNAは、典型的には全身投与(例えば、静
脈内、腹腔内、鼻内、胃、皮内、筋肉内、皮下もしくは頭蓋内注入)または局所
適用(例えば米国特許第5,399,346号明細書を参照されたい)による個
々の患者への投与により、インビボで送達させることができる。こうしたベクタ
ーは、ブピバカインのような促進剤をさらに包含する(米国特許第5,593,
970号明細書)。DNAはジーンガン(gene gun)を使用してもまた
投与することができる。XiaoとBrandsma、上記を参照されたい。免
疫原をコードするDNAを、微視的金属ビーズの表面上に沈殿させる。微小発射
体をショック波もしくは膨張するヘリウムガスで加速し、そして数細胞層の深さ
まで組織に浸透する。例えば、アグラシータス インク(Agracetus,
Inc.)(ウィスコンシン州ミドルトン)により製造されるアクセル[Acc
el](商標)遺伝子送達装置が適する。あるいは、化学的もしくは機械的刺激
を用いてDNAを皮膚上に単にスポットすることにより、裸のDNAを血流中に
皮膚を通過させることができる(国際特許出願第WO 95/05853号明細
書を参照されたい)。
【0130】 さらなる一変形物において、免疫原をコードするベクターは、個々の患者から
外植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄吸引物、組織生検)もしくは普遍的ド
ナー造血幹細胞のような細胞にエクスビボで送達させ、次いで通常はベクターを
組込んだ細胞についての選択後に、細胞を患者に再埋植することができる。 7.消失活性についての抗体のスクリーニング 実施例XIVは、アミロイド沈着物の消失における活性についての抗体のスク
リーニング方法を記述する。アミロイド沈着物に対する活性についてスクリーニ
ングするために、アルツハイマー病の脳組織のようなアミロイドーシスの患者か
らの組織サンプル、もしくは特徴的なアミロイドの病理学を有する動物モデルを
、インビトロで、小膠細胞のようなFc受容体を担持する食細胞および試験中の
抗体と培地中で接触させる。食細胞は、一次培養物、またはBV−2、C8−B
4もしくはTHP−1のような細胞系であることができる。これらの成分を顕微
鏡スライドガラス上で組み合わせて顕微鏡でのモニタリングを助長するか、もし
くは、複数の反応をマイクロタイター皿のウェル中で平行して実施することがで
きる。こうした形式においては、別個の縮小型の顕微鏡スライドガラスを別個の
ウェル中に据え付けることができるか、もしくは、AβのELISA検出のよう
な非微視的検出形式を使用することができる。好ましくは、一連の測定値は、反
応が進行する前の基礎値から開始するインビトロ反応混合物中のアミロイド沈着
物の量、および反応の間の1種もしくはそれ以上の試験値から構成される。抗原
は、例えば、Aβもしくはアミロイド斑の他の成分に対する蛍光で標識された抗
体で染色することにより検出することができる。染色に使用される抗体は、消失
活性について試験されている抗体と同一であってもなくてもよい。アミロイド沈
着物の反応の間の基礎に関する低下は、試験中の抗体が消失活性を有することを
示す。こうした抗体は、アルツハイマー病および他のアミロイド形成性疾患の予
防もしくは治療において有用であることがありそうである。上述されたとおり、
本発明の支持において実施された実験は、こうしたアッセイを使用して、シヌク
レインのNACフラグメントに対する抗体が、アルツハイマー病に特徴的なアミ
ロイド斑を消失させるのに有効であることを示した。 D.抗アミロイド治療レジメンに敏感に反応する患者 治療に敏感に反応する患者は、疾患の危険にさらされているがしかし症状を示
さない個体、ならびにアミロイドーシスの症状を現在示している患者を包含する
。アルツハイマー病の場合には、彼もしくは彼女が十分に長く生きている場合に
、事実上いかなる者もアルツハイマー病に罹る危険にさらされている。従って、
本方法は、被験体患者の危険のいかなる評価に対する必要もなく、一般的集団に
予防的に投与することができる。本方法は、アルツハイマー病、もしくは他の遺
伝性アミロイド疾患のいずれかの既知の遺伝的危険を有する個体にとりわけ有用
である。こうした個体は、この疾患を経験した親族を有する者、および遺伝子も
しくは生化学的マーカーの分析によりその危険が決定される者を包含する。アル
ツハイマー病に対する危険の遺伝子マーカーは、APP遺伝子中の突然変異、と
りわけ、それぞれハーディ(Hardy)型およびスウェーデン型突然変異と称
される、位置717ならびに位置670および671の突然変異を包含する(H
ardy、TINS、上記を参照されたい)。危険の他のマーカーは、プレセニ
リン(presenilin)遺伝子PS1およびPS2、ならびにアポE4中
の突然変異、ADの家族歴、高コレステロール血症もしくはアテローム硬化症で
ある。現在アルツハイマー病に罹っている個体は、特徴的な痴呆、ならびに上述
された危険因子の存在から認識することができる。加えて、ADを有する個体を
同定するための多数の診断試験が利用可能である。これらは、CSFタウおよび
Aβ42のレベルの測定を包含する。上昇されたタウおよび減少されたAβ42
のレベルはADの存在を意味する。アルツハイマー病に罹っている個体は、実施
例の節で論考されるとおり、MMSEもしくはADRDA基準によってもまた診
断することができる。
【0131】 無症候性の患者においては、治療はいかなる年齢(例えば、10、20、30
歳)でも開始することができる。しかしながら、通常、患者が40、50、60
もしくは70歳に達するまで治療を開始することは必要でない。治療は、典型的
には、時間の期間にわたって複数の用量を必要とする。治療は、本明細書の実施
例IおよびIIに記述される線に沿って、時間にわたって抗体、または治療薬(
例えばAβペプチド)に対する活性化されたT細胞もしくはB細胞応答をアッセ
イすることによりモニターすることができる。応答が下落する場合、追加抗原刺
激の投薬量が指示される。潜在的なダウン症候群の患者の場合、治療は、母親に
治療薬を投与することにより妊娠中に、もしくは出生直後に開始することができ
る。
【0132】 他の形態のアミロイドーシスは、該疾患の特定の偏向(predilecti
on)が疑われない限り、しばしば診断されずに進行する。一主症状は、他の器
官の関与の兆候もまた有する中年ないし高齢の患者における心もしくは腎疾患の
存在である。心電図の低電位もしくは極端な軸偏位、および肥厚された心室組織
が心の関与を暗示することができる。蛋白尿は腎の関与の症状である。患者の身
体検査により肝腫大が検出される場合は、肝の関与もまた疑うことができる。末
梢性ニューロパシーもまた、ある形態のアミロイドーシスにおいて普遍的な出来
事であり;体位性低血圧を特徴とする自律性ニューロパシーもまた見出されるこ
とができる。不確定の起源の進行性ニューロパシーを伴ういかなる者においても
、アミロイドーシスを疑うべきである。組織生検法を使用して該疾患の決定的な
診断を行うことができ、ここでは冒された器官(1種もしくは複数)が利用可能
である。全身性アミロイドーシスについては、吸引された脂肪パッドもしくは直
腸生検サンプルを使用することができる。生検材料をコンゴーレッドで染色し、
陽性のサンプルは偏光された光学顕微鏡下で澄んだ黄緑色の複屈折を表す。 E.治療レジメン 予防的応用においては、製薬学的組成物もしくは医薬を、特定の疾患に影響さ
れやすい、そうでなければその危険にさらされている患者に、該危険を除外もし
くは低下させる、または該疾患の発症を遅延させるのに十分な量で投与する。治
療的応用においては、組成物もしくは医薬を、こうした疾患が疑われる、もしく
は既にこうした疾患に罹っている患者に、該疾患およびその合併症の症状を治癒
させる、もしくは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与する。これ
を達成するのに十分な量を、治療的もしくは製薬学的有効用量と定義する。予防
および治療双方のレジメンにおいて、作用物質は、通常、十分な免疫応答が達成
されるまで数個の投薬量で投与する。典型的には、免疫応答をモニターし、そし
て免疫応答が弱まることを開始した場合に、反復される投薬量を与える。
【0133】 上述された病状の治療のための本発明の組成物の有効用量は、投与手段、標的
部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるかもしくは動物であるか、投与さ
れる他の医薬、および治療が予防的であるかもしくは治療的であるか、を包含す
る多くの多様な因子に依存して変動する。通常、患者はヒトであるが、しかし、
プリオンタンパク質に関連する狂牛病のようないくつかの疾患においては、患者
はウシのような非ヒトの哺乳動物であることができる。治療投薬量は安全性およ
び有効性を至適化するように決定される必要がある。免疫原の量は、アジュバン
トもまた投与されるかどうかに依存し、アジュバントの非存在下では一般により
多い投薬量が必要とされる。特定の製剤の免疫原性に依存して、投与のための免
疫原の量は、患者あたり1μgから500μgまで、そしてより通常はヒトの投
与について注入あたり5から500μgまで変動することができる。ときに、注
入あたり0.5〜5mgというより高用量を使用する。典型的には、最低約10
、20、50もしくは100μgを各ヒト注入に使用する。注入のタイミングは
、1日1回から年1回、10年に1回まで大きく変動することができ、免疫原の
連続的「後押し(boost)」がいくぶん好ましい。一般に、本明細書に提供
される教示に従えば、有効投薬量は、患者から液体サンプル(一般的には血清サ
ンプル)を得ること、ならびに、当該技術分野で公知かつ測定されるべき特定の
抗原に容易に適合させうる方法を使用して、免疫原に対し発生された抗体の力価
を測定することにより、モニターすることができる。理想的には、サンプルは最
初の投与前に採取し;その後のサンプルは各免疫感作後に採取かつ力価測定する
。一般に、100倍の血清希釈物で対照もしくは「バックグラウンド」レベルよ
り最低4倍より大きい検出可能な力価を提供する用量もしくは投与スケジュール
が望ましく、ここで、バックグラウンドは、対照血清もしくはELISAアッセ
イでのプレートのバックグラウンドに関して定義する。本発明に従えば、最低1
:1000もしくは1:5000の力価が好ましい。
【0134】 ある投薬量の免疫原を与えるいずれかの所定の日において、投薬量は通常、ア
ジュバントもまた投与される場合に患者あたり約1μgより大きく、そして好ま
しくは患者あたり10μgより大きく、また、アジュバントの非存在下では患者
あたり少なくとも10μgより大きく、そして通常は患者あたり100μgより
大きい。本発明に従って選択される個々の免疫原の用量は、本明細書に提供され
る教示とともに採用される標準的投与および力価測定方法に従って決定する。典
型的なレジメンは、免疫感作、次いで、6週間間隔のような時間間隔での追加抗
原刺激の注入より成る。別のレジメンは、免疫感作、次いで1、2および12ヶ
月後の追加抗原刺激の注入より成る。別のレジメンは生涯にわたって2ヶ月ごと
の注入を必要とする。あるいは、追加抗原刺激の注入は、免疫応答をモニターす
ることにより示されるように不定期であることができる。
【0135】 抗体での受動免疫感作のためには、投薬量は宿主体重1kgあたり約0.00
01から100mgまで、そしてより通常は0.01ないし5mg/kgの範囲
にわたる。例えば、投薬量は1mg/kg体重もしくは10mg/kg体重であ
ることができる。例示的一治療レジメンは、2週間ごとに1回、もしくは1ヶ月
に1回、もしくは3ないし6ヶ月ごとに1回、投与を必要とする。いくつかの方
法においては、異なる結合特異性をもつ2種もしくはそれ以上のモノクローナル
抗体を同時に投与し、この場合には投与される各抗体の投薬量は示される範囲内
にある。抗体は通常、複数の機会に投与する。単一投薬量の間の間隔は、週単位
、月単位もしくは年単位であることができる。間隔はまた、患者におけるAβに
対する抗体の血中濃度を測定することにより示されるとおり不規則であることも
できる。あるいは、抗体は持続性放出製剤として投与することができ、この場合
、より少なく頻繁な投与が必要とされる。投薬量および頻度は患者における抗体
の半減期に依存して変動する。一般に、ヒト抗体は最長の半減期を示し、次いで
人化抗体、キメラ抗体、そして非ヒト抗体である。投薬量および投与の頻度は、
治療が予防的であるかもしくは治療的であるかに依存して変動する可能性がある
。予防的応用においては、比較的低投薬量を時間の長い期間にわたって比較的頻
繁でない間隔で投与する。若干の患者は、彼らの生涯の残りの間、治療を受領す
ることを継続する。治療的応用においては、比較的短い間隔での比較的高投薬量
が、疾患の進行が抑制もしくは停止されるまで、および好ましくは患者が疾患の
症状の部分的もしくは完全な改善を示すまで、ときに必要とされる。その後、患
者に予防的レジメンを投与することができる。
【0136】 免疫原をコードする核酸の用量は、患者あたり約10ngから1gまで、10
0ngないし100mg、1μgないし10mg、もしくは30〜300μgの
DNAの範囲にわたる。感染性のウイルスベクターの用量は、投与あたり10か
ら100もしくはそれ以上のビリオンで変動する。
【0137】 免疫応答を誘導するための作用物質は、予防的および/もしくは治療的治療の
ため非経口、局所、静脈内、経口、皮下、腹腔内、鼻内もしくは筋肉内の手段に
より投与することができる。免疫原性の作用物質の典型的な投与経路は、筋肉内
(i.m.)、静脈内(i.v.)もしくは皮下(s.c.)であるが、とは言
え他の経路も同等に有効であることができる。筋肉内注入は腕もしくは脚の筋肉
で最も典型的に実施される。いくつかの方法においては、作用物質を、沈着物が
蓄積している特定の組織に直接注入する(例えば頭蓋内注入)。筋肉内注入もし
くは静脈内注入が抗体の投与に好ましい。いくつかの方法においては、特定の治
療的抗体を頭蓋中に直接注入する。いくつかの方法においては、抗体を、持続性
放出組成物、もしくはメディパッド[Medipad](商標)装置のような装
置として投与する。
【0138】 本発明の作用物質は、場合によっては、アミロイド形成性疾患の治療で少なく
とも部分的に有効である他の作用物質とともに投与することができる。アミロイ
ド沈着物が脳中に存在するアルツハイマー病およびダウン症候群の場合には、本
発明の作用物質を、血液−脳関門を横切る本発明の作用物質の通過を増大させる
他の作用物質とともに投与することもまたできる。さらに、1種以上のアミロイ
ド成分に対する免疫応答を惹起するよう設計された免疫原を含んで成る治療カク
テルもまた、1種の斑成分に対し向けられる抗体および異なる斑成分に向けられ
る免疫原の組み合わせがそうであるように、本発明により企図される。
【0139】 ペプチドのような本発明の免疫原性の作用物質は、ときにアジュバントととも
に投与される。免疫応答を導き出すために、Aβのようなペプチドとともに多様
なアジュバントを使用することができる。好ましいアジュバントは、応答の質的
な形態に影響を及ぼす免疫原中のコンホメーション変化を引き起こすことなく、
免疫原に対する固有の応答を増強する。好ましいアジュバントは、水酸化アルミ
ニウムおよびリン酸アルミニウム、3デ−O−アシル化モノホスホリルリピドA
(MPL(商標))(英国特許第2220211号明細書(RIBI イムノケ
ム リサーチ インク(RIBI ImmunoChem Research
Inc.)、モンタナ州ハミルトン、現在はコリクサ(Corixa)の一部)
を参照されたい)を包含する。スティミュロン[Stimulon](商標)Q
S−21は、南米で見出されたシャボンノキ(Quillaja sapona
ria Molina)の木の樹皮から単離されたトリテルペン配糖体もしくは
サポニンである(Kensilら、Vaccine Design:The S
ubunit and Adjuvant Approach(Powellと
Newman編、プレナム プレス(Plenum Press)、ニューヨー
ク、1995)中;米国特許第5,057,540号明細書、(アキラ バイオ
ファーマシューティカルズ(Aquila BioPharmaceutica
ls)、マサチューセッツ州フラミンガム)を参照されたい)。他のアジュバン
トは、場合によってはモノホスホリルリピドAのような免疫刺激剤と組み合わせ
での(スクアレンもしくはラッカセイ油のような)水中油乳剤である(Stou
teら、N.Engl.J.Med.336、86−91(1997)を参照さ
れたい)。別のアジュバントはCpGである(国際特許出願第WO 98/40
100号明細書)。あるいは、Aβをアジュバントに結合することができる。し
かしながら、こうした結合は、それに対する免疫応答の性質に影響を及ぼすよう
にAβのコンホメーションを実質的に変えるべきでない。アジュバントは、有効
成分を含む治療的組成物の一成分として投与することができるか、または、治療
的作用物質の投与と別個に、その前に、それに付随して、もしくはその後に投与
することができる。
【0140】 アジュバントの好ましい一分類は、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム
、硫酸アルミニウムのようなアルミニウム塩(明礬)である。こうしたアジュバ
ントは、MPLもしくは3−DMP、QS−21、ポリグルタミン酸もしくはポ
リリシンのようなポリマー性もしくは単量体のアミノ酸のような他の特定の免疫
刺激剤とともにもしくはそれらを伴わずに使用することができる。アジュバント
の別の分類は水中油乳剤製剤である。こうしたアジュバントは、ムラミルペプチ
ド(例えば、N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(t
hr−MDP)、N−アセチルノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミ
ン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタ
ミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3
−ヒドロキシホスホリルオキシ)エチルアミン(MTP−PE)、N−アセチル
グルクサミニル−N−アセチルムラミル−L−Al−D−イソグル−L−Ala
−ジパルミトキシプロピルアミド(DTP−DPP)テラミド[therami
de](商標)、もしくは他の細菌の細胞壁成分)のような他の特定の免疫刺激
剤とともにもしくはそれらを伴わずに使用することができる。水中油乳剤は、(
a)モデル110Y微小流動化装置(マイクロフルイディックス(Microf
luidics)、マサチューセッツ州ニュートン)のような微小流動化装置を
使用してミクロン以下の粒子からなる粒子に処方された、5%スクアレン、0.
5%トゥイーン(Tween)80および0.5%スパン(Span)85を含
有する(場合によっては多様な量のMTP−PEを含有する)MF59(国際特
許出願第WO 90/14837号明細書)、(b)ミクロン以下の粒子からな
る乳剤に微小流動化されたかもしくはより大きな粒子径の乳剤を生じるようボル
テックス攪拌されたかのいずれかの、10%スクアレン、0.4%トゥイーン(
Tween)80、5%プルロニックブロックトポリマーL121およびthr
−MDPを含有するSAF、ならびに(c)2%スクアレン、0.2%トゥイー
ン(Tween)80、ならびにモノホスホリルリピドA、二ミコール酸トレハ
ロース(TDM)および細胞壁骨格(CWS)より成る群からの1種もしくはそ
れ以上の細菌の細胞壁成分、好ましくはMPL+CWS(デトックス[Deto
x](商標))を含有するリビ[Ribi](商標)アジュバント系(RAS)
、(リビ イムノケム(Ribi Immunochem)、モンタナ州ハミル
トン)を包含する。好ましいアジュバントの別の分類は、スティミュロン[St
imulon](商標)(QS−21;アキラ(Aquila)、マサチューセ
ッツ州フラミンガム)のようなサポニンアジュバント、もしくはイスコム(IS
COM)(免疫刺激複合体)およびイスコマトリックス(ISCOMATRIX
)のようなそれから生じられた粒子である。他のアジュバントは、フロイントの
不完全アジュバント(IFA)、インターロイキン(IL−1、IL−2および
IL−12)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)ならびに腫瘍壊
死因子(TNF)のようなサイトカインを包含する。こうしたアジュバントは、
一般的に商業的供給源から入手可能である。
【0141】 アジュバントは、単一の組成物として免疫原とともに投与することができるか
、または、免疫原の投与の前、それに付随して、もしくはその後に投与すること
ができる。免疫原およびアジュバントは、同一のバイアル中に包装かつ供給する
ことができるか、もしくは、別個のバイアル中に包装しそして使用前に混合する
ことができる。免疫原およびアジュバントは、典型的には、意図された治療的応
用を示すラベルを伴い包装する。免疫原およびアジュバントを別個に包装する場
合、包装は、典型的には、使用前の混合についての指示を包含する。アジュバン
トおよび/もしくは担体の選択は、アジュバントを含有する製剤の安定性、投与
経路、投与スケジュール、ならびにワクチン投与されている種に対する該アジュ
バントの効力のような因子に依存する。ヒトでは、好ましい製薬学的に許容でき
るアジュバントは、適切な調節体によるヒト投与について承認されているもので
ある。ヒトのためのこうした好ましいアジュバントの例は、明礬、MPLおよび
QS−21を包含する。場合によっては、2種もしくはそれ以上の異なるアジュ
バントを同時に使用することができる。好ましい組み合わせ剤は、MPLを含む
明礬、QS−21を含む明礬、QS−21を含むMPL、ならびに一緒の明礬、
QS−21およびMPLを包含する。また、場合によっては明礬、QS−21お
よびMPLのいずれか、ならびにそれらの全部と組み合わせで、フロイントの不
完全アジュバントを使用することもできる(Changら、Advanced
Drug Delivery Reviews 32、173−186(199
8))。
【0142】 本発明の作用物質は、しばしば、有効な治療的作用物質および多様な他の製薬
学的に許容できる成分を含んで成る製薬学的組成物として投与される。Remi
ngton’s Pharmaceutical Science(第19版、
1995)を参照されたい。好ましい形態は、意図される投与様式および治療の
応用に依存する。組成物は、所望の製剤に依存して、製薬学的に許容できる非毒
性の担体もしくは希釈剤(これらは、動物もしくはヒトの投与のための製薬学的
組成物を処方するのに普遍的に使用されるベヒクルと定義される)もまた包含す
ることができる。希釈剤は、組み合わせ剤の生物学的活性に影響を及ぼさないよ
うに選択する。こうした希釈剤の例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝生理的食塩
水、リンゲル溶液、ブドウ糖溶液およびハンクス溶液である。加えて、製薬学的
組成物もしくは製剤は、他の担体、アジュバント、もしくは非毒性の非治療的、
非免疫原性の安定剤などもまた包含することができる。
【0143】 製薬学的組成物は、タンパク質、キトサンのような多糖、ポリ乳酸、ポリグリ
コール酸、および(ラテックスで官能性化されたセファロース、アガロース、セ
ルロースなどのような)コポリマー、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー
、ならびに(油の小滴もしくはリポソームのような)脂質凝集物のような大型の
ゆっくりと代謝される巨大分子もまた含有することができる。加えて、これらの
担体は免疫刺激剤(すなわちアジュバント)として機能することができる。
【0144】 非経口投与のためには、本発明の作用物質を、水、油、生理的食塩水、グリセ
ロールもしくはエタノールのような滅菌の液体であることができる製薬学的担体
を含む生理学的に許容できる希釈剤中の物質の溶液もしくは懸濁剤の注入可能な
投薬量として投与することができる。加えて、湿潤もしくは乳化剤、界面活性剤
、pH緩衝物質などのような補助物質が組成物中に存在することができる。製薬
学的組成物の他の成分は、石油、動物、植物もしくは合成起源のもの、例えばラ
ッカセイ油、ダイズ油および鉱物油である。一般に、プロピレングリコールもし
くはポリエチレングリコールのようなグリコールは、とりわけ注入可能な溶液に
好ましい液体担体である。抗体は、有効成分の持続性放出を可能にするような様
式で処方することができるデポー注入もしくは埋込製剤の形態で投与することが
できる。例示的一組成物は、HClでpH6.0に調節された、50mM L−
ヒスチジン、150mM NaClより成る水性緩衝液中で処方された5mg/
mLのモノクローナル抗体を含んで成る。
【0145】 典型的には、組成物は、液体の溶液もしくは懸濁液のいずれかとして注入可能
物(injectable)として製造され;注入前に液体のベヒクル中の溶液
もしくは懸濁剤に適する固体の形態もまた製造することができる。製剤は、上で
論考されたとおり、高められたアジュバント効果のために、リポソーム、または
ポリラクチド、ポリグリコリドもしくはコポリマーのような微小粒子中で乳化も
しくはその中に被包化することもまたできる(Langer、Science
249、1527(1990)およびHanes、Advanced Drug
Delivery Reviews 28、97−119(1997)を参照
されたい)。本発明の作用物質は、有効成分の持続性もしくは拍動性の放出を可
能にするような様式で処方することができるデポー注入もしくは埋込製剤の形態
で投与することができる。
【0146】 他の投与様式に適する付加的製剤は、経口、鼻内および肺の製剤、坐剤、なら
びに経皮適用を包含する。
【0147】 坐剤のためには、結合剤および担体は、例えば、ポリアルキレングリコールも
しくはトリグリセリドを包含し;こうした坐剤は、0.5%ないし10%、好ま
しくは1%〜2%の範囲の有効成分を含有する混合物から形成することができる
。経口製剤は、製薬学的等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マ
グネシウム、サッカリンナトリウム、セルロースおよび炭酸マグネシウムのよう
な賦形剤を包含する。これらの組成物は、溶液、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル
剤、持続性放出製剤もしくは散剤の形態をとり、そして10%〜95%、好まし
くは25%〜70%の有効成分を含有する。
【0148】 局所適用は経皮もしくは皮内送達をもたらすことができる。局所投与は、コレ
ラトキシンまたはその解毒された誘導体もしくはサブユニット、あるいは他の類
似の細菌のトキシンとの作用物質の共投与により助長することができる(Gle
nnら、Nature 391、851(1998)を参照されたい)。共投与
は、混合物、または化学的架橋もしくは融合タンパク質としての発現により得ら
れる連結された分子として成分を使用することにより達成することができる。
【0149】 あるいは、経皮送達は、皮膚貼付剤を使用して、もしくはトランスフェロソー
ム(transferosome)(Paulら、Eur.J.Immunol
.25、3521−24(1995);Cevcら、Biochem.Biop
hys.Acta 1368、201−15(1998))を使用して達成する
ことができる。 F.診断の方法 本発明は、アルツハイマー病に罹っているもしくはそれが疑われる患者におけ
るAβペプチドに対する免疫応答の検出方法を提供する。該方法は、患者に投与
されている1クールの治療をモニターするのにとりわけ有用である。該方法は、
症候性の患者での治療的治療、および無症候性の患者での予防的治療の双方をモ
ニターするのに使用することができる。該方法は、能動免疫感作(例えば、免疫
原の投与に応答して産生される抗体)および受動免疫感作(例えば投与された抗
体のレベルを測定すること)の双方をモニターするのに有用である。 1.能動免疫感作 幾つかの方法は、作用物質のある用量を投与する前に、患者の免疫応答の基準
線値を決定し、そしてこれを処置後の免疫応答の値と比較する必要がある。免疫
応答の値において、有意な上昇(すなわち、同じサンプルの繰り返し測定で、典
型的な許容される実験誤差より大きく、そのような測定の平均から1標準偏差で
表されるような)は、陽性の処置結果を示す(すなわち、その作用物質の投与が
免疫応答を達成したか、または増した)。免疫応答の値が有意に変化しないか、
または減少するならば、陰性の処置結果を示す。一般に、免疫原性作用物質を用
いた最初の処置のコースを受けている患者は、連続的な投薬で免疫応答の上昇を
示すと予想され、これは最終的には安定水準に達する。作用物質の投与は一般に
、免疫応答が上昇している間、続けられる。安定水準への到達は、処置の投与を
中断できるか、または投薬用量または頻度を低下できることを示すものである。
【0150】 別の方法では、免疫応答の対照値(すなわち、平均および標準偏差)が対照群
について決定される。典型的には対照群の個体は前処置を受けなかった。治療薬
を投与された後に測定された患者の免疫応答の値は、次に対照値と比較される。
対照値に対して有意な上昇(例えば、平均から1標準偏差よりも大きい)は、陽
性の処置結果を示す。有意な上昇がないか、または減少のシグナルは、陰性の処
置結果を示す。作用物質の投与は一般に、対照値に対して免疫応答が上昇してい
る間は続行される。前記のように、対照値に比べて安定水準に達すると、処置の
投与を中断できるか、または投薬用量または頻度を低下できることの指標である
【0151】 別の方法では、免疫応答の対照値(例えば平均および標準偏差)は、治療薬で
の処置を受け、そしてその免疫応答が処置に応答して安定水準に達した個体の対
照群から決定される。患者の免疫応答の測定値は、対照値と比較される。患者で
測定されたレベルが対照値と有意に異ならないならば(例えば、1標準偏差より
大きい)、処置を中断することができる。患者のレベルが対照値よりも有意に下
ならば、作用物質の投与の続行が認められる。その患者のレベルが対照値よりも
低いままならば、処置計画の変更、例えば異なるアジュバントの使用を示してい
るのかもしれない。
【0152】 別の方法では、現在処置は受けていないが、既に処置のコースを受けたことが
ある患者を、処置の再開が必要であるかどうかを決定するために免疫応答をモニ
タリングする。患者の免疫応答の測定値は、患者が以前に達成した免疫応答の値
と、前の処置コースの後に比較できる。以前の測定に比べて有意な減少(すなわ
ち、同じサンプルの繰り返し測定で、典型的な許容誤差範囲よりも大きい)は、
処置を再開できることを示している。あるいは患者の測定値を、処置のコースを
受けた後の患者群で決定した対照値(平均に標準偏差を加えた)と比較すること
ができる。あるいは患者の測定値を、疾患の症状がないままの予防的に処置した
患者群または疾患の特徴の改善を示す治療的に処置した患者の群の対照値と、比
較することができる。すべての場合で、対照レベルに対して有意な低下(すなわ
ち、標準偏差よりも大きい)は、患者の処置を再開すべきであることを示す。
【0153】 分析用の組織サンプルは、典型的には患者に由来する血液、血漿、血清、粘膜
もしくは脳脊髄液である。サンプルは任意の形態のAβペプチドのような目的と
するアミロイド成分に対する免疫応答の指標について分析する。免疫応答は、A
βペプチドのような目的の成分に特異的に結合する例えば抗体またはT-細胞の
存在から決定することができる。Aβに特異的な抗体を検出するELISA法は、実
施例の部に記載し、そして他のペプチド抗原に応用することができる。反応性T
-細胞を検出する方法は、当該技術分野では周知である。 2.受動免疫感作 一般に、受動免疫感作をモニタリングする手順は、上記の能動免疫感作をモニ
タリングする手順と同様である。しかし受動免疫感作後の抗体プロフィールは、
典型的には抗体濃度の即座のピーク、続いて指数的減少を示す。さらなる投薬用
量なしで、この減少は投与した抗体の半減期に依存して、数日から数カ月の期間
内に前処置レベルに達する。例えばヒトの抗体の中には半減期が20日の単位のも
のもある。
【0154】 幾つかの方法では、患者のAβに対する抗体の基準線測定は投与前に行い、第
二測定はピーク抗体レベルを決定するためにその後すぐに行い、そして1以上の
さらなる測定を抗体レベルの減少をモニタリングするための間隔で行う。抗体の
レベルが基準線または予め定めた割合のピーク低下基準線(例えば、50%、25%
または10%)に達した時、さらなる抗体の用量を投与する。幾つかの方法では、
ピークまたは続いて測定されるバックグラウント未満のレベルを、既に定めた参
照レベルと比較して、他の患者に有益な予防的または治療的処置計画を構成する
。測定される抗体レベルが参照レベルよりも有意に低いならば(例えば、平均か
ら処置の利益を享受する患者群の参照値の1標準偏差を引いたものより低い)、
抗体のさらなる用量の投与を示している。 3.診断キット 本発明はさらに、上記の診断法を行うための診断キットを提供する。典型的に
は、そのようなキットはAβのようなアミロイド班成分に対する抗体に特異的に
結合する、またはその成分に特異的なT−細胞と反応する作用物質を含む。キッ
トは、標識も含むことができる。Aβに対する抗体を検出するために、標識は典
型的には標識された抗-イディオタイプ抗体の状態である。抗体の検出には、作
用物質をマイクロタイター皿のウェルのような固体相に予め結合して供給するこ
とができる。反応性T-細胞の検出には、増殖性の応答を測定する標識は3H-チミ
ジンとして供給することができる。またキットは、典型的にはキットの使用につ
いて指示するラベルを含む。このラベルはAβに対する抗体またはAβと反応性
のT-細胞のレベルと測定したラベルのレベルを相関させるチャートまたは他の
対応する型(regime)を含んでもよい。用語ラベルとは、製造、輸送、販売また
は使用の任意の時にキットに付けられた、または関連する記載または記録された
データを称する。例えば、用語ラベルには広告用リーフレットおよび小冊子、包
装材料、使用説明書、オーディオまたはビデオカセット、コンピューターディス
ク、ならびにキットに直接印字された記載を包含する。
【0155】
【実施例】
実施例 I.アルツハイマー病(AD)に対するAβの予防的効能 これらの実施例は、アルツハイマー様の神経病状を発症し易い717位(APP717VF)での突然変異を有するAPPを過剰発現しているトランスジェニックマウスへ
のAβ42ペプチドの投与を説明する。これらのマウス(PDAPPマウス)の作出およ
び特性は、Games et al.,Nature、同上に記載されている。これらの動物はそれ
らのヘテロ接合体状態で、6月齢から先にAβを沈着し始める。15月齢までに、
それらはアルツハイマー病に見られるものに等しいAβ沈着のレベルを表す。PD
APPマウスには凝集したAβ42(凝集Aβ42)またはリン酸緩衝化生理食塩水を
注射した。凝集したAβ42は、Aβの多くのエピトープに対する抗体を誘導でき
る能力から選択した。 A.方法 1.マウスの起源 30匹のPDAPP異質メスマウスを、無作為に以下の群に分けた:10匹のマウスに
は凝集Aβ42を注射し(1匹は移動中に死亡した)、5匹はPBS/アジュバントま
たはPBSを注射し、そして10匹は未注射対照であった。5匹のマウスには血清ア
ミロイドタンパク質(SAP)の配列から誘導したペプチドを注射した。
【0156】 2.免疫原の調製 凝集Aβ42の調製:2ミリグラムのAβ42(USペプチド社:ロットK-42-12)
を、0.9mlの水に溶解し、そして0.1mlの10×PBSを加えて1mlとした。これをボ
ルテックスで混合し、そして37℃で一晩、インキューベーションし、この条件下
でペプチドが凝集した。使用しなかったAβは乾燥した凍結乾燥粉末として次に
注射するまで−20℃で保存した。
【0157】 注射についてそのような市販のペプチドを使用する時、乾燥重量は塩重量を含
んでもよく;本明細書中の実施例で報告する重量は特に示さない限り、塩の重量
を含む。ペプチドの正確な質量は、既知の組成物と組み合わせた窒素測定のよう
な調製物の標準的アッセイを使用して決定することができる。
【0158】 3.注射の準備 各注射には、マウスあたりPBS中に100μgの凝集Aβ42を、初回の免疫感作に
は1:1で完全フロイントアジュバント(CFA)と最終容量400μlのエマルショ
ンに乳化し、続いて同量の免疫原の追加免疫は、完全フロイントアジュバント(
IFA)中で2週間目に行った。IFA中さらに2回の用量を1カ月の間隔で与えた。
後の免疫感作は1カ月の間隔で500μlのPBS中で行った。注射は腹腔内(i.p.)
に送達された。
【0159】 PBSの注射は同じスケジュールに従い、そしてマウスにはPBS/アジュバントの
1:1の混合物をマウスあたり400μlで、またはマウスあたり500μlのPBSを注
射した。SAP注射は、注射あたり100μgの用量を使用して同様に同じスケジュー
ルに従った。
【0160】 4.マウス採血の滴定、組織プレパレーションおよび免疫組織化学 上記の方法は、以下の一般的な材料および方法に記載する。 B.結果 PDAPPマウスに、凝集したAβ42(凝集Aβ42)、SAPペプチドまたはリン酸緩
衝化生理食塩水のいずれかを注射した。PDAPPマウスの群は、注射しない陽性対
照としても残した。凝集Aβ42に対するマウスの力値は、4回目の追加免疫から
1カ月おきに、マウスが1年齢になるまでモニタリングした。マウスを13カ月目
に屠殺した。調査したすべての時点で、9匹のうちの8匹の凝集Aβ42マウスが
、高い抗体力価を生じ、これは一連の注射を通して高いままであった(1/10000
よりも高い力価)。9匹目のマウスは低いが、約1/1000の測定可能な力価であっ
た(図1、表1)。SAPP-注射マウスは、この免疫原について1:1,000〜1:30,000
の力価を有し、1匹のマウスだけが1:10,0000を越えた。
【0161】
【表8】
【0162】 PBS-処置マウスの血清は、凝集Aβ42に対して6、10および20カ月目に滴定し
た。1/100希釈で、PBSマウスは凝集Aβ42に対して滴定した時、1つのデータ点
でバックグラウンドの4倍を越えただけで、それ以外はすべての時点でバックグ
ラウンドより4倍少なかった(表3)。SAP-特異的応答は、すべての力価が300
未満のこのような時点はすべて、無視することができた。
【0163】 凝集Aβ1-42処置群の9匹のうちの7匹のマウスが、それらの脳内に検出可能
なアミロイドが無かった。対照的に、SAPおよびPBS群のマウスに由来する脳組織
は、海馬ならびに前頭および帯状束皮質に多数のアミロイド沈着を含んだ。沈着
のパターンは未処置対照のパターンに類似し、歯状回の外側分子層のような脆弱
なサブ領域の特徴的な関与があった。Aβ1-42注射群からの1匹のマウスには、
海馬に限定されたアミロイド負荷量の大きな減少があった。単離した斑は別のA
β1-42処置マウスで確認された。
【0164】 海馬中のアミロイド負荷量の定量的な画像分析では、Aβ42(AN1792)-処置動
物で劇的な減少が達成されたことが証明された(図2)。PBS群(2.22%)および
未処置対照群(2.65%)のアミロイド負荷量の中央値は、AN1792で免疫感作した
群よりも有意に大きかった(0.00%、p=0.0005)。対照的に、SAPペプチド(SA
PP)で免疫感作した群の中央値は5.74%であった。未処置、対照マウスに由来す
る脳組織は、海馬ならびに夾板骨後皮質に、Aβ-特異的モノクローナル抗体(mA
b)3D6で視覚化される多数のAβアミロイド沈着を含んだ。同様なアミロイド沈
着パターンが、SAPPまたはPBSで免疫感作したマウスでも見られた(図2)。さ
らにこれらの3つの後者の群には、すべての3つのこのような群で歯状回の外側
分子層のような、ADで古典的に見られる脳の脆弱なサブ領域の特徴的な関与が
あった。
【0165】 Aβ沈着を含まなかった脳は、典型的にはPDAPPマウスでヒトのAPP抗体8E5を
用いて視覚化される神経炎局面も無かった。残りの群(SAP-注射、PBSおよび非
注射マウス)の脳のすべてが、未処置PDAPPマウスに典型的な多数の神経炎局面
を有した。少数の神経炎局面が、AN1792で処置した1匹のマウスに存在し、そし
て異栄養性の神経突起の1クラスターがAN1792で処置した第二マウスで見られた
。海馬の画像分析および図3で見られるように、PBS受容体と比較して(中央値0.
28%、p=0.0005)、AN1792-処置マウスにおける異栄養性の神経突起のほとん
どの排除が実質的に示された(中央値0.00%)。
【0166】 斑が関係する炎症の星状細胞増加症の兆候も、Aβ1-42注射群の脳には存在し
なかった。他の群のマウスに由来する脳は、豊富な、しかもクラスターとなった
Aβ斑が関係するグリオーシスに典型的なGFAP-陽性星状細胞を含んだ。GFAP-反
応したスライドのサブセットを、Aβ沈着の位置を定めるためにチオフラビンS
によりカウンター染色した。GFAP-陽性の星状細胞は、SAP、PBSおよび未処置対
照でAβ斑に関連した。そのような関連は、斑−陰性のAβ1-42処置マウスでは
見られず、一方、最小の斑が関係するグリオーシスはAN1792で処置した1匹のマ
ウスで確認された。
【0167】 図4に示す夾板骨後皮質に関する画像分析は、星状細胞増加症の減少がAN1792
で処置した群について1.56%の中央値で有意であるが、SAPペプチド、PBSで免疫
感作した群または未処置では6%より大きい中央値と確認された(p=0.0017)
【0168】 Aβ1-42およびPBS-注射マウスのサブセットからの証拠は、斑が関係するMHCI
I免疫反応性がAβ1-42注射マウスでは存在しないことを示し、Aβ-関連炎症反
応の欠如と一致した。
【0169】 マウス脳の切片も、MAC-1、細胞表面タンパク質に特異的なモノクローナル抗
体に特異的なmAbと反応した。MAC-1(CD11b)はインテグリンファミリーの員であ
り、そしてCD18とのヘテロ二量体として存在する。CD11b/CD18複合体は単球、マ
クロファージ、好中球およびナチュラルキラー細胞上に存在する(Mak and Sima
rd)。脳内に存在するMAC-1-反応性細胞型は、MAC-1と免疫反応した切片中の類
似する表現型的形態に基づきミクログリアであろう。斑が関係するMAC-1標識は
、PBS対照群と比べてAN1792で処置したマウスの脳では低く、Aβが誘導した炎
症応答の欠如と一致することが分かった。 C.結論 Aβ1-42-注射マウスの脳におけるAβ斑の欠如および反応性ニューロンおよ
び膠状の変化は、それらの脳内に沈着したアミロイドが無いか、または極めて少
なく、そしてグリオーシスおよび神経炎的な病状といった病理学的な結末は存在
しないことを示していた。Aβ1-42で処置したPDAPPマウスは、本質的に対照の
非トランスジェニックマウスと同じ病状の欠如を示す。したがってAβ1-42の注
射は脳組織からヒトAβの沈着の予防または除去に、そして続いてニューロンお
よび炎症変性的変化の排除に高度に効果的である。すなわちAβペプチドの投与
は、ADの防止に予防的および治療的利益の両方を有することができる。 II.投与量応答実験 5週齢のメスのスイス ウェブスターマウス群(1群あたりN=6)を、腹腔
中に投与したCFA/IFA中に配合した300、100、33、11、3.7、1.2、0.4または0.13
μgのAβで免疫感作した。3回の用量を隔週の間隔で、続いて4回目を1カ月
後に与えた。第一用量はCFAで乳化し、そして残りの用量はIFAで乳化した。動物
は抗体力価を測定するために、2回目の投与から始めて各免疫感作から4〜7日
後に採血した。11、33または300μgの抗原で免疫感作した3群のサブセットの動
物は、さらに免疫原製剤の投与量範囲にわたり抗体応答の減少をモニタリングす
るために、4回目の免疫感作後から4カ月間、およそ1カ月の間隔で採血した。
これらの動物は実験開始後7カ月目に5回目の最終免疫感作を受けた。動物はAN
1792に対する抗体応答を測定し、そして毒性学的分析を行うために1週間後に屠
殺した。
【0170】 減少する用量応答は、300から3.7μgで観察され、2つの低い用量では応答が
無かった。平均抗体力価は、11〜300μgの抗原を3回投与後に約1:1000、4回
投与後に約1:10,000である(図5を参照にされたい)。
【0171】 抗体力価はすべてについて劇的に上昇したが、最低の投与量群は3回目の免疫
感作後に5-から25-倍の範囲でGMTが上昇した。低い抗体応答は、0.4μgの受容
体でも検出できた。1.2および3.7μgの群は約1000のGMTに匹敵する力価を有し、
そして最高から4つの用量は約25,000のGMTに一緒に集まったが、33μgの投与量
群が3000の低いGMTであった。4回目の免疫感作後、力価の上昇はほとんどの群
でより緩和であった。検出できる抗体が無い0.14μgの受容体から、36,000のGMT
の11μgの受容体まで、0.14μgから11μgのより低い抗原投与量群の範囲で明ら
かな用量応答があった。ここでも、11〜300μgの4つの最高の投与量群の力価は
、一緒になった。このように2回の免疫感作後、抗原用量に依存する抗体力価は
、0.4〜300μgの広い範囲にわたった。第3の免疫感作までに、4つの最高の投
与量の力価はすべて同等であり、そしてそれらはさらなる免疫感作後も安定水準
のままであった。
【0172】 4回目の免疫感作から1カ月後、300μgの群で力価は免疫感作から5日後の血
液からの測定値よりも2-から3-倍高かった(図6)。この観察は、ピークの既
住性抗体応答が免疫感作から5日後よりも遅れて生じることを示唆している。こ
の時点でより緩和な(50%)上昇が33μgの群で見られた。300μgの用量群は最
後の投与から2カ月後に、GMTが約70%まで鋭く減少した。さらに1カ月後、こ
の傾斜は45%(100μg)、および33および11μgで約14%と弱くなった。すなわち
、免疫感作を終了した後の循環している抗体力価傾斜の速度は、ピーク応答の後
に最初の月で鋭く傾斜し、続いてその後によりゆるやかな減少速度の2つの局面
で現れる。
【0173】 抗体力価およびこれらのスイス ウェブスターマウスの反応の動力学は、平行
する様式で免疫感作した若いヘテロ接合性PDAPPトランスジェニックマウスのも
のと類似する。ヒトで免疫応答を誘導するために効果的な投薬用量は、典型的に
はマウスで効果的な投薬用量に類似する。 III.安定したADに対する治療的効力のスクリーニング このアッセイは、加齢マウスにおけるADの神経病理学的特徴を停止または好
転する活性について、免疫原性作用物質を試験するために計画する。42アミノ酸
長のAβ(AN1792)を用いた免疫感作を、PDAPPマウスの脳にすでにアミロイド
斑が存在する時点で開始した。
【0174】 この実験を行った期間に、未処置PDAPPマウスはADに見られるものに似た多
数の神経変性的変化を生じる(Games et al.、同上およびJohnson-Wood et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94,1550-1555(1997))。アミロイド斑中へのAβの沈
着は、異栄養性の神経突起と呼ばれる迷走性の軸索および樹状突起要素から成る
変性的なニューロン応答が付随する。異栄養性の神経突起に取り囲まれ、そして
それを含むアミロイド沈着は、神経炎症性局面と呼ぶ。ADおよびPDAPPマウス
の両方において、異栄養性の神経突起は顕著な球状構造を有し、APPおよび細胞
骨格成分を認識する抗体パネルと免疫反応性であり、そして超微細構造レベルで
複雑な細胞下の変性的変化を表す。これらの特徴は、PDAPP脳において疾患に関
連する選択的かつ再現性のある神経炎症性局面の形成の測定を可能とする。PDAP
P神経炎症性局面の異栄養性のニューロン成分は、ヒトAPPに特異的な抗体(モノ
クローナル抗体8E5)を用いて容易に視覚化され、そしてコンピューターによる
画像分析で容易に測定可能である。したがって、アミロイド斑形成に及ぼすAN17
92の効果を測定することに加えて、我々はこの処置が神経炎症性のジストロフィ
ーの発生に及ぼす効果を監視した。
【0175】 星状細胞およびミクログリアは、ニューロン傷害の程度に応答し、そして影響
を与える非−ニューロン細胞である。GFAP-陽性星状細胞およびMHC II-陽性ミク
ログリアはADで通常観察され、それらの活性化は疾患の重篤度を増す。したが
って我々はAN1792-処置マウスにおける反応性星状細胞増加症および小膠細胞症
の発生も監視した。 A.材料および方法 チャールズ リバー(Charles River)から得た48匹の、11〜11.5月齢のヘテロ
接合性のメスPDAPPマウスを無作為に2群に分けた:24匹のマウスは100μgのAN1
792で免疫感作し、そして24匹のマウスはPBSで免疫感作した(それぞれフロイン
トアジュバントと合わせた)。AN1792およびPBS群は再度、それらが〜15月齢に
達した時に分けた。15月齢で、各AN1792-およびPBS-処置動物のおよそ半分を安
楽死させ(それぞれn=10および9)、残りは〜18カ月で終了するまで免疫感作
を受け続けた(それぞれn=9および12)。全部で8匹の動物(5匹のAN1792お
よび3匹のPBS)が、実験中に死亡した。免疫感作した動物に加えて、1年齢(
n=10)、15月齢(n=10)および18月齢(n=10)の未処置PDAPPマウスを、
脳内のAβおよびAPPレベルをELISAで測定するために比較に含め;1年齢の動物
も免疫組織化学的分析に含めた。
【0176】 方法は外に示さない限り、実施例1の通りである。AN1792のUSペプチドロット
12およびカリフォルニアペプチドロットME0339を使用して、15カ月時点以前に投
与する6回の免疫感作用の抗原を調製した。カリフォルニアペプチドロットME03
39およびME0439は、15から18カ月の間に3回のさらなる免疫感作投与に使用した
【0177】 免疫感作には、200μlPBS中の100μgのAN1792またはPBS単独を、完全フロイン
トアジュバント(CFA)または不完全フロイントアジュバント(IFA)またはPBSに
、400μlの最終用量で1:1(容量/容量)に乳化した。初回免疫感作は、アジュ
バントとしてCFAを用いて送達し、次の4回の投与量はIFAを用いて与えられ、そ
して最後の4回の投与量はアジュバント無しのPBSのみを用いて与えられた。全
部で9回の免疫感作を、7カ月間にわたり2週間のスケジュールで最初の3回の
投与量を、続いて4週間の間隔で残りの注射を与えた。15月齢で安楽死させた4
カ月の処置群は、最初の6回の免疫感作を受けただけであった。 B.結果 1.アミロイド負荷量に及ぼすAβ(AN1792)処置の効果 定量的な画像分析により決定した皮質のアミロイド負荷量に及ぼすAN1792処置
の結果を図7に示す。皮質のアミロイド負荷量の中央値は、未処置の12月齢PDAP
Pマウス群では0.28%であり、実験の開始でマウスの斑の負荷量を表す値であっ
た。18カ月で、アミロイド負荷量はPBS-処置マウスで17-倍を超えて4.87%まで
増加し、一方、AN1792-処置マウスはわずか0.01%のアミロイド負荷量に大きく
減少し、12カ月の未処置および15-および18-カ月の両PBS-処置群よりも顕著に低
かった。このアミロイド負荷量は、15-(96%の減少;p=0.003)および18-カ月
(>99%減少;p=0.0002)の両AN1792受容体で、有意に減少した。
【0178】 典型的には、PDAPPマウスの皮質アミロイド沈着は、前頭および夾板骨後皮質
(RSC)から始まり、そして腹−側方向へ進行して側頭−エントルヒナル(entor
hinal)皮質(EC)を含む。ほぼAN1792が最初に投与された時期である12月齢のマ
ウスのECにはアミロイドはほとんど見いだされないか、または見いだされななか
った。AN1792処置から4カ月後、アミロイド沈着はRSCでは大きく減少し、そし
て進行的なECの関与はAN1792処置により完全に排除された。後者の観察はAN1792
が 、通常は側頭および側頭皮質を襲うアミロイドの進行を完全に止め、しかもR
SC中の沈着を停止させるか、あるいは好転させることを示した。
【0179】 AN1792処置がPDAPPマウスの皮質アミロイド負荷量の発生に及ぼす甚大な効果
は、さらに18-カ月までの7カ月間処置された群で示された。皮質アミロイドの
ほぼ完全な不在がAN1792-処置マウスで見られ、拡散した斑が全体的に欠如し、
しかも緻密な沈着が減少した。 2.Aβ(AN1792)-処置に関連する細胞的および形態学的変化 Aβ-陽性細胞群は、典型的にはアミロイド沈着を含む脳の領域で見いだされ
た。注目すべきは、AN1792受容体の幾つかの脳で、皮質アミロイド斑がほとんど
無いか、または全く見られなかったことであった。Aβ免疫反応性の大部分が、
大きな小葉または凝集細胞体を含む細胞内に含まれるようであった。表現型的に
は、これらの細胞は活性化されたミクログリアまたは単球に似ていた。それらは
活性化された単球およびミクログリア(MHCIIおよびCD11b)により発現されるリ
ガンドを認識する抗体と免疫反応性であり、そして場合により血管の壁および管
腔に付随していた。AβおよびMHCII-特異的抗体で標識した近-隣切片の比較に
より、これらの細胞の類似パターンが両クラスの抗体により認識されたことが明
らかとなった。AN1792-処置脳の詳細な調査により、MHCII-陽性細胞はこのよう
な動物内に残る限定されたアミロイド付近に限られていることが明らかとなった
。使用した固定条件下で、細胞はT細胞(CD3、CD3e)またはB細胞(CD45RA、C
D45RB)リガンドまたは白血球共通抗原(CD45)を認識する抗体と免疫反応性で
はなかったが、単球と交差反応するロイコシアリン(CD43)を認識する抗体と反
応性であった。そのような細胞はPBS-処置マウスでは見いだされなかった。
【0180】 PDAPPマウスは、海馬歯状回の外側分子層に重いアミロイド沈着を一定して発
生する。この沈着はパーホラント(perforant)経路、ADで古典的にアミロイド
斑を含む領域下に明らかなすじを形成する。PBS-処置マウスにおけるこれらの沈
着の特徴的な出現は、未処置PDAPPマウスですでに特徴つけられたものと似てい
た。アミロイド沈着は連続的バンド内に拡散および緻密化した斑の両方から成っ
た。対照的に、AN1792-処置マウスに由来する多数の脳では、このパターンは劇
的に変化した。海馬のアミロイド沈着はすでに拡散したアミロイドを含まず、そ
してバンド化したパターンは、完全に破壊された。代わりに抗-Aβ抗体と反応
性の多数の異常な点状構造が存在し、これらの幾つかはアミロイドを含有する細
胞らしかった。
【0181】 MHCII-陽性細胞は、AN1792-処置動物の細胞外アミロイド付近に観察されるこ
とが多かった。Aβ-陽性細胞とアミロイドとの会合パターンは、AN1792-処置マ
ウスに由来する幾つかの脳で大変類似した。このような単球性細胞の分布は、ア
ミロイド沈着の近位に限定され、そしてAβ斑が無い他の脳の領域には全く存在
しなかった。
【0182】 MHCII-およびMACI-標識切片の定量的画像分析では、海馬におけるMACI反応性
の測定を用いて、有意に達したPBS群に比較して、AN1792-処置マウスのRSCおよ
び海馬中で免疫反応性が上昇する傾向を明らかとした。
【0183】 これらの結果は、斑を持つ脳の領域中のアミロイドの活発な細胞性除去を示し
ている。
【0184】 3.Aβレベルに及ぼすAN1792効果:ELISA測定 (a)皮質レベル 未処置PDAPPマウスでは、12カ月時点の皮質中の全Aβの中央値レベルは1,600
ng/gであり、これが15カ月までに8,700ng/gに増大した(表4)。18カ月で値は2
2,000ng/gであり、実験期間中に10倍以上に上昇した。PBS-処置動物は8,600ng/g
の全Aβを15カ月で有し、これは18カ月で19,000ng/gに上昇した。対照的に、AN
1792-処置動物は15カ月の時点(1,600ng/g)で、PBS-免疫感作群よりも全Aβが81
%少なかった。有意に少ない(p=0.0001)全Aβ(5,200ng/g)は、18カ月でAN
1792およびPBS群を比較した時に見いだされ(表4)、存在する場合のAβに72
%の減少を表す。同様な結果がAβ42の皮質レベルを比較した時に得られ、すな
わちAN1792-処置群はより少ないAβ42を含むが、この場合、AN1792とPBS群との
間の差異は15カ月(p=0.04)および18カ月(p=0.0001、表4)の両方で有意
であった。
【0185】
【表9】
【0186】 (b)海馬レベル 未処置PDAPPマウスでは、12月齢で全Aβの海馬レベルの中央値は15,000ng/g
であり、これは15カ月で51,000ng/g、そしてさらに18カ月で81,000ng/gにまで上
昇した(表5)。同様に、PBS免疫感作マウスは、15カ月および18カ月でそれぞ
れ40,000ng/gおよび65,000ng/gの値を示した。AN1792免疫感作動物は、少ない全
Aβを表し、特に15カ月および18カ月の時点でそれぞれ25,000ng/gおよび51,000
ng/gであった。18カ月のAN1792-処置群の値は、PBS処置群よりも有意に低くかっ
た(p=0.0105;表5)。Aβ42の測定では同じ結果のパターンを与え、すなわ
ちAN1792-処置群のレベルは、18カ月の評価でPBS群よりも有意に低かった(それ
ぞれ39,000ng/g対57,000ng/g;p=0.002)(表3)。
【0187】
【表10】
【0188】 (c)小脳レベル 12カ月の未処置PDAPPマウスでは、全Aβの小脳レベルの中央値は15ng/gであ
った(表6)。15カ月で、この中央値は28ng/gに上昇し、そして18カ月までに35
ng/gまで上昇した。PBS-処置動物は15カ月で21ng/g、そして18カ月で43ng/gの全
Aβ値の中央値を示した。AN1792-処置マウスは15カ月で22ng/gの全Aβを有し
、そして18カ月で対応するPBS群よりも有意に低い(p=0.002)全Aβ(25ng/g
)を有することが見いだされた(表6)。
【0189】
【表11】
【0190】 4.APPレベルに及ぼすAN1792処置の効果 APP-αおよび完全長のAPP分子は、両方ともAβ配列の全部または一部を含み
、すなわちAN1792-が向けられる免疫応答の生成により影響を受け得る可能性が
ある。今日までの研究では、PDAPPマウスに神経病状が増えるとAPPレベルのわず
かな上昇が記録された。皮質では、APP-αが18カ月の時点でAN1792-処置対PBS-
処置で19%まで減少したことを除き、APP-α/FL(完全長)またはAPP-αのいずれ
のレベルも本質的には変化しなかった。18カ月のAN1792-処置APP値は、12カ月お
よび15カ月の未処置ならびに15カ月のPBS群の値とは有意に異ならなかった。す
べての場合て、APP値はPDAPPマウスで正常に見られる範囲内に留まった。
【0191】 5.神経変性的およびグリオティック(Gliotic)な病状に及ぼすAN1792処置の
効果 神経炎症性局面の負荷量は、PBS群に比較してAN1792-処置マウスの前頭皮質に
おいて15月齢(84%;p=0.03)および18月齢(55%;p=0.01)の両方で有意
に減少した(図8)。神経炎症性局面の負荷量の中央値は、15月齢から18月齢の
間でPBS群において0.32%から0.49%へと増加した。これは15月齢および18月齢
の群で、それぞれ0.05%および0.22%の神経炎症性局面負荷量の中央値を有する
AN1792群における神経炎症性局面の発生の大きな減少とは好対照であった。
【0192】 AN1792を用いた免疫感作は十分に寛容であり、しかも反応性の星状細胞増加症
も、両15月齢(56%;p=0.011)および18月齢(39%;p=0.028)でPBS群と
比べた時、AN1792-処置したマウスのRSCで有意に減少したようだ(図9)。PBS
群の星状細胞増加症のパーセントの中央値は、15カ月から18カ月の間で4.26%か
ら5.21%へと増加した。AN1792-処置は両時点での星状細胞増加症の発生を、そ
れぞれ1.89%および3.2%まで抑制した。これは神経網が除去プロセスにより損
傷されなかったことを示唆している。
【0193】 6.抗体応答 上記のように、11月齢のヘテロ接合性PDAPPマウス(N=24)は、フロイント
アジュバントで乳化した100μgのAN1792で、0、2、4、8、および12週に一連
の5回の免疫感作を腹腔内に投与され、そして6回目はPBSのみ(フロイントア
ジュバント無し)の免疫感作を16週に受けた。陰性対照として、平行した24匹の
月齢を合わせたトランスジェニックマウスの組が、同じアジュバントで乳化され
、そして同じスケジュールで送達されるPBSでの免疫感作を受けた。動物は2回
目の投与から出発して各免疫感作から3〜7日以内に採血した。AN1792に対する
抗体応答は、ELISAにより測定した。AN1792で免疫感作した動物に関する幾何平
均力価(GMT)は、2回目、3回目および最後(6回目)の投与後にそれぞれ約1
,900、7,600そして45,000であった。6回目の免疫感作後に対照動物のAβ特異
的抗体は測定しなかった。
【0194】 約1/2の動物はさらに3カ月間、約20、24および27週に免疫感作を受ける処
置を行った。これらの各投与量はフロイントアジュバントを含まないPBS賦形剤
単独で送達された。平均抗体力価はこの期間中、変化しないままだった。実際に
は、抗体力価は5回目から9回目の注射を網羅する期間に対応する4回目から8
回目の採血にわたり、安定であるように見えた。
【0195】 AN1792処置マウスの血清中に検出されるAβ-特異的抗体が免疫感作により誘
導されたかどうかを決定することは、沈着した脳アミロイドにも関連し、AN1792
-およびPBS-処置マウスの切片のサブセットを、マウスIgGに特異的な抗体と反応
させた。PBS群とは対照的に、AN1792-処置脳内のAβ斑は内因性のIgGに覆われ
ていた。この2群の間の差異は、15-および18-カ月の両群で見られた。これらの
マウスには重度のアミロイド負荷量が存在するにもかかわらず、特に目立ったの
はPBS群の標識が無かったことであった。これらの結果は、合成のAβタンパク
質を用いた免疫感作が、アミロイド斑中のAβをインビボで認識し、そして結合
する抗体を生成することを示す。
【0196】 7.細胞性免疫応答 脾臓を9匹のAN1792-免疫感作マウスおよび12匹のPBS-免疫感作した18月齢のP
DAPPマウスから、9回目の免疫感作から7日後に摘出した。脾細胞を単離し、そ
して72時間、Aβ40、Aβ42またはAβ40-1(逆順序のタンパク質)の存在下で
培養した。マイトジェンCoAを陽性対照として役立てた。最適な応答は>1.7μM
タンパク質で得られた。すべての9匹のAN1792-処置動物に由来する細胞は、A
β1-40またはAβ1-42タンパク質のいずれかに応答して増殖し、両方のタンパク
質について等レベルで取り込まれた(図10、上パネル)。Aβ40-1逆タンパク
質には反応しなかった。対照動物からの細胞は、いずれのAβタンパク質にも応
答しなかった(図10、下パネル)。 C.結論 この実験の結果は、現存するアミロイド沈着を有するPDAPPマウスのAN1792免
疫感作が、進行性のアミロイド沈着を遅らせ、そして防止し、そして結果的に加
齢したPDAPPマウスの脳内の神経病理学的変化を遅らせることを示す。AN1792を
用いた免疫感作は、通常はアミロイドーシスに圧倒される構造上のアミロイド発
生を本質的に停止する。すなわちAβペプチドの投与は、ADの処置に治療的利
益を有する。 IV.Aβフラグメントのスクリーニング 9〜11月齢の100匹のPDAPPマウスを、APPおよびAβの9種の異なる領域で免
疫感作し、どのエピトープが効力のある応答をもたらすかを決定した。9種の異
なる免疫原および1つの対照を、上記のようにi.p.注射した。免疫原は4種のヒ
トAβペプチド結合物1−12、13−28、32−42、1-5を含み、すべてヒツジ抗-マ
ウスIgGにシステイン連結を介してカップリングした;APPポリペプチドアミノ酸
592-695、凝集したヒトAβ1-40および凝集したヒトAβ25-35および凝集した齧
歯類Aβ42。凝集したAβ42およびPBSは、それぞれ陽性および陰性対照として
使用した。1つの処置群あたり10匹のマウスを使用した。力価は上記のようにモ
ニタリングし、そしてマウスは注射から4カ月の終わりに安楽死させた。組織化
学、Aβレベルおよび毒性学分析は死後に測定した。 A.材料および方法 1.免疫原の調製 結合したAβペプチドの調製:4種のヒトAβペプチド結合物(それぞれがヒ
ツジ抗-マウスIgGに結合したアミノ酸残基1-5、1-12、13-28および33-42)は、
架橋試薬スルホ-EMCSを使用してAβペプチドに加えた人工的なシステインを通
してカップリングすることにより調製した。Aβペプチド誘導体は、以下の最終
アミノ酸配列を用いて合成した。各々の場合で、挿入したシステイン残基の位置
は、下線で示した。Aβ13−28ペプチド誘導体も、示したカルボキシル末端シス
テイン前に2つのグリシン残基を有した。
【0197】
【表12】
【0198】 カップリング反応を調製するために、10mgのヒツジ抗-マウスIgG(ジャクソン
イムノリサーチ ラボラトリーズ:Jackson ImmunoResearch Laboratories)を、
10mM ホウ酸ナトリウムバッファー、pH8.5に対して一晩透析した。透析した抗体
を次いでアミコン(Amicon)のCentriprepチューブを使用して2mLの容量に濃縮
した。10mg スルホ-EMS。
【0199】 [N(γ-マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミド](モレキュラー サイエン
ス社:Molecular Science Co.)を、1mLの脱イオン水に溶解した。40-倍のモル過
剰のスルホ-EMCSを撹拌しながらヒツジ抗-マウスIgGに滴下し、そして溶液をさ
らに10分間撹拌した。活性化したヒツジ抗-マウスIgGを精製し、そしてバッファ
ーは0.1M NaPO4、5mM EDTA、pH6.5により平衡化した10mLのゲル濾過カラム(ピア
ス ケミカルズ((Pierce Chemicals)から得たピアス Presto Column)を通すこと
により交換した。280nmの吸収により同定した抗体含有画分をプールし、そして
吸光係数としてODあたり1.4mgを使用して約1mg/mLの濃度に希釈した。40-倍モ
ル過剰なAβペプチドを20mLの10mM NaPO4、pH8.0に溶解したが、Aβ33−42ペ
プチドに関しては10mgを最初に0.5mLのDMSOに溶解し、そして次いで10mM NaPO4
バッファーで20mLに希釈した。ペプチド溶液をそれぞれ10mLの活性化ヒツジ抗-
マウスIgGに加え、そして室温で4時間、振盪した。生成した結合物は、アミコ
ンのCentriprepチューブを使用して10mL未満の最終容量に濃縮し、そして次いで
PBSに対して透析して、バッファーを交換し、そして遊離ペプチドを除去した。
結合物は滅菌のために0.22μm-孔サイズのフィルターを通し、そして1mgの画分
に分け、そして-20℃で凍結保存した。結合物の濃度は、BCAタンパク質アッセイ
(ピアス ケミカルズ)を使用してウマIgGを標準曲線として用いて決定した。結
合は、活性化ヒツジ抗-マウスIgGに対して結合ペプチドの分子量の増加により証
明された。Aβ1-5ヒツジ抗マウス結合物は2つの結合のプールであり、残りは
1つの調製物に由来した。
【0200】 2.凝集Aβペプチドの調製 ヒト1-40(AN1528:カリフォルニアペプチド社、ロット ME0541)、ヒト1-42
(AN1792:カリフォルニアペプチド社、ロット ME0339およびME0439)、ヒト25-
35および齧歯類1-42(カリフォルニアペプチド社、ロット ME0218)ペプチドは
、-20℃で乾燥して保存しておいた凍結乾燥粉末から、各組の注射物の調製に新
たに可溶化した。この目的には、2mgのペプチドを0.9mlの脱イオン水に加え、
そして混合物をボルテックス混合して、比較的均一な溶液または懸濁液を作成し
た。4つの中のAN1528が、この段階で可溶性の唯一のペプチドであった。100μl
の10×PBSのアリコート(1×PBS:0.15M NaCl、0.01M リン酸ナトリウム、pH7.5
)を次いで加え、この時点でAN1524が沈殿し始めた。懸濁液を再度ボルテックス
混合し、そして翌日使用するために37℃で一晩、インキューベーションした。
【0201】 pB×6タンパク質の調製:pB×6(100アミノ酸のバクテリオファージMS-2ポリ
メラーゼN-末端リーダー配列、続いてAPP(βAPP)のアミノ酸592-695から成る融
合タンパク質)をコードする発現プラスミドを、Oltersdorf et al.,J.Biol.Che
m.265,4492-4497(1990)により記載されているように構築した。プラスミドを大
腸菌(E.coli)にトランスフェクトし、そしてタンパク質をプロモーターの誘導
により発現させた。細菌は8M 尿素中で溶菌させ、そしてpB×6を調製用SDS PAG
Eにより部分精製した。pB×6を含有する画分は、ウサギ抗-pB×6ポリクローナル
抗体を使用してウエスタンブロットにより確認し、プールし、アミコンCentripr
epチューブを使用して濃縮し、そしてPBSに対して透析した。クマーシーブルー
染色したSDS PAGEにより推定される調製物の純度は、約5〜10%であった。 B.結果および考察 1.実験計画 9-ないし11月齢の100匹のオスおよびメスのヘテロ接合性PDAPPトランスジェ
ニックマウスを、チャールズリバーラボラトリーおよびタコニックラボラトリー
(Taconic Laboratory)から得た。マウスは、フロイントアジュバントと組み合
わせた異なる領域のAβまたはAPPで免疫感作される10群に分けられた。動物は
できるかぎり群内の性別、月齢、血統および供給源を合わせるように分割した。
免疫原はヒト起源の配列1-5、1-12、13-28および33-42に由来する4種のAβペ
プチドを含み、各々がヒツジ抗-マウスIgGに結合していた;4種の凝集したAβ
ペプチド、ヒト1-40(AN1528)、ヒト1-42(AN1792)、ヒト25-35、および齧歯類1
-42;ならびに融合ポリペプチド、pB×6として設計し、APPアミノ酸残基592-695
を含む。10番目の群は対照としてアジュバントと組み合わせたPBSで免疫感作し
た。
【0202】 各免疫感作には、初回免疫感作用に、100μgの各Aβペプチド(200μlのPBS
中)、または200μgのAPP誘導体pB×6(同じ容量のPBS中)またはPBS単独を、1:
1(容量:容量)の完全フロイントアジュバント(CFA)で400μlの最終容量に乳化し
、続いて不完全フロイントアジュバント(IFA)中に同量の免疫原の追加免疫感
作を次の4回の投与に、そして最後の投与はPBSを用いた。免疫感作は、最初の
3回の投与量は隔週のスケジュールで、次にその後は毎月、腹腔内に送達された
。抗体力価を測定するために、動物は2回目の投与後から始めて、各免疫感作か
ら4〜7日後に採血された。動物は最終投与から約1週間後に安楽死させた。 2.脳内のAβおよびAPPレべル 種々のAβペプチドまたはAPP誘導体での免疫感作から約4カ月後に、塩類−
潅流動物から脳を摘出した。1つの半球は免疫組織化学分析に調製し、そして2
つ目はAβおよびAPPレべルの定量に使用した。種々の形態のβアミロイドペプ
チドおよびアミロイド前駆体タンパク質の濃度を測定するために、半球を切開し
、そして海馬、皮質および小脳領域のホモジネートを5M グアニジンで調製した
。これらを希釈し、そしてアミロイドおよびAPPのレベルは、ELISA形式で既知濃
度のAβペプチドまたはAPPの一連の標準希釈物と比較することにより定量した。
【0203】 PBSで免疫感作した対照群に関する全Aβの中央値濃度は、皮質よりも海馬で5
.8倍高かった(皮質の4,221ng/gに対して24,318ng/gの海馬の中央値)。対照群
の小脳中の中央値レベル(23.4ng/g組織)は、海馬よりも約1,000倍低かった。
これらのレベルはこの月齢のヘテロ接合性PDAPPトランスジェニックマウスにつ
いて以前に報告したレベルと同様であった(Johnson-Woods et al.,1997,同上)
【0204】 皮質に関して、処置群のサブセットは対照群とは有意に異なる全Aβの中央値
およびAβ1-42レベルを有し(p<0.05)、これらの動物は図11に示すように
AN1792、齧歯類Aβ1-42またはAβ1-5ペプチド結合物を受容した。これらの処
置群について全Aβの中央値レベルは、対照に比べてそれぞれ75%、79%および
61%まで減少した。いかなる群にも脳内の皮質領域にAβ-特異的抗体力価とA
βレベルとの間に識別できる相関はなかった。
【0205】 海馬では、AN1792処置に関連した全Aβの中央値の減少(46%、p=0.0543)
は、皮質で観察されるよりも大きかった(75%、p=0.0021)。しかし減少の規
模は皮質よりも海馬で一層大きく、皮質で正味3,171ng/g組織の減少に対して海
馬では正味11,186ng/g組織の減少であった。齧歯類Aβ1-42またはAβ1-5を受
けた動物群については、全Aβレベルの中央値は、それぞれ36%および26%まで
減少した。しかし群のサイズが小さいこと、および両群内の動物毎のアミロイド
ペプチドレベルの高い可変性を考慮すると、このような減少は有意ではなかった
。Aβ1-42レベルを海馬で測定した時、処置が誘導した減少が有意しなったもの
はなかった。すなわち皮質中のより小さいAβ負荷量から、この領域での変化は
処置効果のより敏感な指標である。皮質中でELISAにより測定されるAβレベル
の変化は同様であるが、免疫組織化学的分析からの結果とは同一ではない(以下
を参照のこと)。
【0206】 全Aβは、AD病により典型的には最も影響を受けることが小さい小脳でも測
定した。種々のAβペプチドまたはAPP誘導体で免疫感作したいずれの群のAβ
濃度の中央値も、脳のこの領域において対照群と異ならなかった。この結果は、
処置によりAβの非病理学的レベルは影響を受けないことを示唆している。
【0207】 APP濃度は、処置および対照マウスに由来する皮質および小脳中でELISAでも決
定した。2種の異なるAPPアッセイを使用した。第1はAPP-α/FLと呼び、APP-ア
ルファ(α、Aβ配列内が開裂されたAPPから分泌した)、およびAPPの完全長の
形態(FL)を認識し、一方2つ目は、APP-αのみを認識する。処置群のサブセッ
トでは処置が関係するAαの減少とは対照的に、APPのレベルが対照動物と比較
してすべての処置で変化しなかった。これらの結果は、Aβペプチドでの免疫感
作がAPPを減らさず;むしろ処置効果がAβに特異的であることを示す。
【0208】 要約すると、全AβおよびAβ1-42レベルは皮質中でAN1792、齧歯類Aβ1-42
またはAβ1-5結合物を用いた処置により有意に減少した。海馬では、全AβがA
N1792処置でのみ有意に減少した。海馬、皮質または小脳領域における他の処置
が関与するAβまたはAPPレベルの変化は、有意ではなかった。
【0209】 2.組織化学的分析 組織化学的分析用に6群のサブセットに由来する脳を調製した、Aβペプチド
結合物Aβ1-5、Aβ1-12およびAβ13-28で免疫感作した3群;完全長のAβ凝
集物AN1792およびAN1528で免疫感作した2群、およびPBSで処置した対照群。こ
れらの群からの脳切片中のアミロイド負荷量の画像分析の結果を、図12に示す
。3つの処置群対対照動物の皮質領域中で、アミロイド負荷量には有意な減少が
あった。アミロイド負荷量の最大の減少はAN1792を受けた群で観察され、ここで
平均値は97%まで減少した(p=0.001)。有意な減少はAN1528(95%、p=0.0
05)およびAβ1-5ペプチド結合物(67%、p=0.02)で処置した動物でも観察
された。
【0210】 ELISAによる全AβまたはAβ1-42の定量および画像分析によるアミロイド負
荷量により得られた結果は、ある程度異なった。AN1528による処置は、定量的な
画像分析により測定した時に皮質アミロイド負荷量のレベルに有意な影響を与え
たが、ELISAにより測定した時の同じ領域の全Aβ濃度には影響がなかった。こ
のような2つの結果の差異は、アッセイの特異性によるものだろう。画像分析は
斑中の不溶性のAβ凝集物のみを測定する。対照的に、ELISAは可溶性および不
溶性の両方、単量体および凝集物のすべてのAβの形態を測定する。疾患の病状
は不溶性の斑が関連するAβの形態であると考えられているので、画像分析法が
処置の効果を明らかにするためにより感度がある。しかしELISAはより迅速で容
易なアッセイであり、スクリーニングの目的には大変有用である。さらにELISA
はAβの処置が関連する減少を、全Aβよりも斑に関連してより大きく明らかに
することができる。
【0211】 処置動物の免疫感作により誘導されたAβ−特異的抗体が、脳に沈着したアミ
ロイドと反応したかどうかを決定するために、処置動物および対照マウスに由来
する切片のサブセットを、マウスIgGに特異的な抗体と反応させた。PBS群とは対
照的に、Aβペプチド結合物Aβ1-5、Aβ1-12およびAβ13-28;および完全長
Aβ凝集物AN1792およびAN1582で免疫感作した動物については、Aβ-含有斑は
内因性のIgGに覆われた。他のAβペプチドまたはAPPペプチドpB×6で免疫感作
した動物に由来する脳はこのアッセイで分析しなかった。
【0212】 3.抗体力価の測定 マウスは2回目の免疫感作から始めて全部で5回、各免疫感作から4〜7日後
に採血した。抗体力価はAβ1-42で被覆したプラスチック製のマルチ-ウェルプ
レートを使用を用いたサンドイッチELISAを使用してAβ1-42結合抗体として測
定した。図13に示すように、ピーク抗体力価は4種の免疫感作製剤について4
回目の投与後に誘導され、AN1792-特異的抗体の最大力価が誘導された:AN1792
(ピークGMT:94,647)、AN1528(ピークGMT:88,231)、Aβ1-12結合物(ピーク
GMT:47,216)および齧歯類Aβ1-42(ピークGMT:10,766)。これらの群の力価は
5およ6回目の投与後にいくぶん減少した。残りの5種の免疫原については、ピ
ーク力価に5または6回目の投与後に到達し、そしてこれらは4種の最高の力価
群よりも大変低い規模であった:Aβ1-5結合物(ピークGMT:2,356)、pB×6(
ピークGMT:1,986)、Aβ13-28結合物(ピークGMT:1,183)、Aβ33-42結合物(
ピークGMT:658)、Aβ25-35結合物(ピークGMT:125)。ホモロガスペプチドに
対する抗体力価も同じELISAサンドイッチ形式を使用して、免疫原のサブセット
について測定し、このような群をAβ1-5、Aβ13-28、Aβ25-35、Aβ33-42お
よび齧歯類Aβ1-42で免疫感作した。ホモロガスな免疫原に対する抗体力価が約
2倍高い齧歯類Aβ1-42免疫原に関する力価を除き、これらの力価はAβ1-42に
対して測定した力価とおよそ同じであった。個々の動物のAN1792-特異的抗体力
価の規模、または処置群の平均値は、皮質内のAβの減少として測定された効力
とは相関しなかった。
【0213】 4.リンパ球増殖的応答 Aβ-依存的なリンパ球増殖を、最後の6回目の免疫感作から約1週間後に回
収した脾臓細胞を使用して測定した。新しく回収した細胞(105/ウェル)を、
5μMの刺激濃度のAβ1-40の存在下で、5日間培養した。10群のうちの7群か
らのサブセットの細胞も、逆ペプチドAβ40-1の存在下で培養した。陽性対照と
して、さらなる細胞をT細胞マイトジェン(PHA)と培養し、そして陰性対照と
して、細胞をペプチドを加えずに培養した。
【0214】 大部分の動物に由来するリンパ球は、PHAに応答して増殖した。Aβ40-1逆ペ
プチドに対する有意な応答はなかった。より大きな凝集したAβペプチド、AN17
92、齧歯類Aβ1-42およびAN1528で免疫感作した動物に由来する細胞は、Aβ1-
40で刺激した時にしっかりと増殖し、最高のcpmはAN1792の受容体であった。A
β1-12結合物、Aβ13-28結合物およびAβ25-35で免疫感作した各群からの1動
物は、Aβ1-40に応答して増殖した。Aβ1-5結合物、Aβ33-42結合物pB×6ま
たはPBSを受けた残りの群には、Aβが刺激した応答を有する動物はいなかった
。 これらの結果を以下の表7にまとめる。
【0215】
【表13】
【0216】 これらの結果は、AN1792およびAN1528が強力なT細胞応答、最も多くはCD4+表
現型を刺激することを示す。Aβ1-5で免疫感作した動物においてAβ特異的T
細胞応答の不存在は、CD4+T細胞により認識されるペプチドのエピトープが通常
は約15アミノ酸長であるが、より短いペプチドが低い効率で機能できるので、驚
くことではない。すなわち4種の結合物ペプチドに対するヘルパーT細胞エピト
ープの大部分が、Aβ領域ではなくIgG結合物パートナー中にあるらしい。この
仮説は各処置群中の動物について、大変低い増殖応答の発生率に支持される。A
β1-5結合物は脳内でAβレベルを有意に下げることに効果的であるので、Aβ-
特異的T細胞の明らかな不存在で、このペプチドによる免疫感作により誘導され
た鍵となるエフェクター免疫応答は、抗体となるだろう。
【0217】 すべてのAβ残基を含むAPPアミノ酸592-695を包含する融合ペプチドpB×6か
らのT-細胞の欠如および低い抗体応答は、この特別な調製物の悪い免疫原性に
よるものかもしれない。Aβ25-35凝集物の悪い免疫原性は、ペプチドが小さす
ぎて抗体応答を誘導するために役立つ良いT細胞エピトープを含まないからであ
ろう。このペプチドがキャリアータンパク質と結合すれば、おそらくより免疫原
性となるだろうと思われる。 V.受動防御用のポリクローナル抗体の調製 125匹の非-トランスジェニックマウスをAβにアジュバントを加えて免疫感作
し、そして4〜5カ月で安楽死させた。血液を免疫感作したマウスから集めた。
IgGは他の血液成分から分離した。免疫原に特異的な抗体は、アフィニティクロ
マトグラフィーにより部分精製した。マウスあたり約0.5〜1mgの免疫原に特異
的な抗体が得られ、全部で60〜120mgとなった。 VI.Aβに対する抗体による受動免疫感作 7〜9月齢のPDAPPマウス群の各々を、以下に示すようにPBS中に0.5mgのポリ
クローナル抗-Aβまたは特異的抗-Aβモノクローナルを用いて注射した。すべ
ての抗体調製物は低いエンドトキシンレベルを有するように精製した。モノクロ
ーナルはマウスにAβのフラグメントまたはAβのより長い形態を注射し、ハイ
ブリドーマを調製し、そしてAβの他の非重複フラグメントに結合することなく
Aβの所望のフラグメントに特異的に結合する抗体のハイブリドーマをスクリー
ニングすることにより、フラグメントに対して調製することができる。
【0218】
【表14】
【0219】 マウスは、Aβ42または他の免疫原に対してELISAにより定めた1/1000より大
きいELISA力価により測定される循環抗体濃度を維持するために、4カ月の期間
中、必要こ応じてip注射された。力価は上記のようにモニタリングし、そしてマ
ウスは注射の6カ月の終わりに安楽死させた。組織化学、Aβレベルおよび毒性
学は、死後に行った。1群あたり10匹のマウスを使用した。受動免疫感作に関す
るさらなる実験は、以下の実施例XIおよびXIIに記載する。 VII.様々なアジュバントの比較 この実施例は、CFA、alumおよび水中油型エマルションおよびMPLを免疫応答を
刺激する能力について比較する。 A.材料および方法 1.実験計画 エルム ヒル ブリーディング ラボラトリーズ(Elm Hill Breeding Laboratori
es)(チェルムスフォード、マサチューセッツ州)から得た100匹の6週齢のメス
Hartley種モルモットを、種々のアジュバントと組み合わせたAN1792またはそれ
らのパルミトイル化誘導体で免疫感作するために10群に分けた。7群がa)PBS
、b)フロイントアジュバント、c)MPL、d)スクアレン、e)MPL/スクアレ
ン、f)低用量のalumまたはg)高用量のalum(300μgAN1792)と組み合わせたA
N1792(特定しない限り33μg)の注射を受けた。2群はAN1792のパルミトイル化
誘導体(33μg)の注射をa)PBSまたはb)スクアレンと組み合わせて受けた。
最後に10番目の群は、抗原およびさらなるアジュバント無しでPBSのみを受けた
。フロイントアジュバントを受ける群は、最初の投与量をCFAで乳化し、そして
残る4投与量はIFAで乳化した。抗原は高投与量のalum群を除きすべての群で33
μgの用量で投与され、高用量のalum群は300μgのAN1792を受けた。注射はCFA/I
FAには腹腔内に、そしてすべての他の群については右および左側の後脚四頭筋に
交互に筋肉内投与した。最初の3回の投与は隔週のスケジュールで、続いて毎月
の間隔で与えた。抗体力価を測定するために血液は2回目の投与後から開始して
各免疫感作から6〜7日後に採血した。 2.免疫原の調製 2mgのAβ42(カリフォルニア ペプチド ロットME0339)を、0.9mlの脱イオン
水に加え、そして混合物をボルテックス混合して比較的な懸濁液を作成した。10
0μlの10×PBSのアリコート(1×PBS、0.15M NaCl、0.01M リン酸ナトリウム、p
H7.5)を加えた。この懸濁液を再度ボルテックス混合し、そして翌日使用するた
めに37℃で一晩、インキューベーションした。未使用のAβ1-42は-20℃で凍結
乾燥した粉末として乾燥剤と一緒に保存した。
【0220】 パルミトイル化したAN1792の誘導体は、ジメチルホルムアミドに溶解した無水
パルミチン酸をAN1792のアミノ末端残基にカップリングにさせた後、樹脂から、
付いているペプチドをフッ化水素酸を用いた処理により取り出した。
【0221】 完全フロイントアジュバント(CFA)を用いて免疫原性の配合用量を調製するた
めに(群2)、初回免疫感作には33μgのAN1792(200μlのPBS中)を、1:1(容量
:容量)のCFAで400μlの最終容量に乳化した。続く免疫感作には、抗原を不完全
フロイントアジュバント(IFA)を用いて同様に乳化した。
【0222】 群5および8については、MPLを用いて配合用量を調製するために、凍結乾燥
粉末(リビ イムノケミリサーチ社、ハミルトン、マサチューセッツ州)を0.2%
の水性トリエチルアミンに加え、1mg/mlの最終濃度とし、そしてボルテックス
混合した。混合物を65〜70℃に30秒間加熱して、わずかに不透明で均一なミセル
の懸濁液を作成した。溶液は各組の注射に新しく調製した。群5の各注射には、
33μgのAN1792(16.5μlのPBS中)、50μgのMPL(50μl)および162μlのPBSを、使
用直前にホウ珪酸試験管中で混合した。
【0223】 低い水中油型のエマルションを用いて配合用量を調製するために、PBS中のAN1
792を5%スクアレン、0.5% Tween80、PBS中の0.5%Span85に加えて、250μl中
に33μgの濃度のAN1792の最終単回投与量に達した(群6)。混合物は、エマル
ションの液滴が顕微鏡下で見た時に1.0μm直径の標準ラテックスビーズのおよそ
等しい直径になるまで、2つのチャンバーを持つ手で持つデバイス(two-chambe
red hand-held device)に15〜20回通すことにより乳化した。生成した懸濁液は
不透明な乳白色であった。エマルションは各々の一連の注射のために新たに調製
した。群8に関しては、0.2%トリエチルアミン中のMPLを投与量あたり50μgの
濃度でスクアレンおよび上記のような乳化のための界面活性剤混合物に加えた。
パルミトイル化誘導体(群7)については、33μgのパルミトイル-NH-Aβ-1-42
をスクアレンに加え、そしてボルテックス混合した。Tween80およびSpan85を次
いでボルテックス混合しながら加えた。混合物をPBSに加えて5%スクアレン、0
.5%Tween80、0.5%Span85の最終濃度に到達し、そして混合物を上記のように乳
化した。
【0224】 alumを用いて配合用量を調製するために(群9および10)、PBS中のAN1792
をAlhydrogel(水酸化アルミニウムゲル、アキュレート(Accurate)、ウエスト
ベリー、ニューヨーク州)に加えて、250μlの最終投与量中に5mgのalumあたり
、33μg(低投与量、群9)または300μg(高投与量、群10)の濃度に到達した。
懸濁液をRTで4時間、穏やかに混合した。
【0225】 3.抗体力価の測定 モルモットは、2回目の免疫感作から始めて免疫感作から6〜7日後に全部で
4回採血した。Aβ42に対する抗体力価は、一般材料および方法に記載したよう
にELISAにより測定した。
【0226】 4.組織プレパレーション 約14週後、すべてのモルモットはCO2を投与することにより安楽死させた。脳
脊髄液を集め、そして脳を摘出し、そして3つの脳領域(海馬、皮質および小脳
)を切開し、そしてELISAを使用して全Aβタンパク質濃度を測定するために使
用した。 B.結果 1.抗体応答 免疫感作後にAN1792に対する抗体応答として測定した時、種々のアジュバント
に広い範囲の効力があった。図14に示すように、AN1792をPBS中で投与した時
、2または3回の免疫感作後に抗体は検出されず、そして無視できる応答が4お
よび5回目の投与後にたった約45の幾何平均力価(GMT)で検出された。o/w型エマ
ルションは3回の投与後にわずかな力価を誘導し(GMT 255)、これは4回目の
投与後も維持され(GMT 301)、そして最終投与で落ちた(GMT 54)。alumに結
合したAN1792に関して明らかな抗原投与量応答があり、すべての時点で300μgが
33μgよりも免疫原性であった。抗体応答のピークで、4回目の免疫感作後に、
2つの投与量の差異はGMTで約1940(33μg)および3400(300μg)であった。MP
Lを加えた33μgのAN1792に対する抗体応答は、alumに結合したほぼ10倍高い用量
の抗原(300μg)用量で生成された応答に大変類似した。MPLをo/w型エマルション
に加えると、配合物の効力はMPLを単なるアジュバントとした場合に比べて最大7
5%まで減少した。AN1792のパルミトイル化誘導体は、PBS中で投与した時に完全
に非免疫原性であり、そしてo/w型エマルション中に存在する時に、3回目そし
て4回目の採血について340および105のGMTのわずかな力価を与えた。最高の抗
体力価は、フロイントアジュバントで生成され、約87,000のピークGMTであり、
次に最も効力のある配合物MPLおよび高用量AN1792/alumのGMTよりもほぼ30倍大
きい値であった。
【0227】 この実験で確認された最も有望なアジュバントは、MPLおよびalumである。こ
れら2つの中で、MPLはalumで得られるものと同じ抗体力価を生成するために必
要な抗原用量が、10倍低いので好ましい。応答は抗原かつ/またはアジュバント
の用量を増すことにより、ならびに免疫感作スケジュールを至適化することによ
り上昇させることができる。o/w型エマルションはAN1792には大変弱いアジュバ
ントであり、そしてMPLアジュバントにo/w型エマルションを加えることにより、
MPL単独の固有のアジュバント活性が減少した。 2.脳内のAβレベル 約14週で、モルモットに深く麻酔をかけ、脳脊髄液(CFS)を引き抜き、そして
フロイントアジュバント(群2)、MPL(群5)、高投与量、300μgのAN1792を
含むalum(群10)、およびPBSを免疫感作した対照群(群3)の動物のサブセ
ットから脳を摘出した。Aβペプチドのレベルを測定するために、1つの海馬を
切開し、そして海馬、皮質および小脳領域のホモジネートを5M グアニジンで調
製した。これらを希釈し、そしてELISA形式で一連の既知濃度のAβ標準タンパ
ク質の希釈物と比較することにより定量した。海馬、皮質および小脳中のAβタ
ンパク質のレベルは、これらの配合物により誘導されるAβに対する広い範囲の
抗体応答にもかかわらず、すべての4群で大変類似した。約25ng/g組織の平均A
βレベルは海馬で、皮質で21ng/g、そして小脳で12ng/gが測定された。すなわち
Aβに対する高い循環抗体力価の存在は、ほぼ3カ月間、これらの動物の幾匹か
で脳内の全Aβレベルを変化させなかった。CFS中のAβレベルも群間でほぼ同
様であった。内因性Aβに及ぼすAN1792免疫感作の大きな効果の欠如は、免疫応
答がAβの病理学的状態の形成に集中していることを示す。 VIII.マウスにおける種々のアジュバントに対する免疫応答 6週齢のメスのスイス ウェブスターマウスを1群あたり10〜13匹でこの実験
に使用した。免疫感作は200μlの投与量で0、14、28、60、90および20日に皮下
に与えた。PBSはバッファーとしてすべての配合に使用した。動物はELISAによる
抗体力価の分析のために、2回目の投与後から開始して各免疫感作から7日後に
採血した。各群の処置計画を表9にまとめる。
【0228】
【表15】
【0229】 群8については、アジュバントおよび抗原を含まなかった。
【0230】 各群のAβ42に対する抗体のELISA力価を、以下の表10に示す。
【0231】
【表16】
【0232】 この表は、最高の力価が群4、5および18で得られ、ここでアジュバントは
125μgのMPL、50μgのMPLおよびMPLを加えたQS-21であった。 IX.種々のアジュバントの治療的効力 治療的効力の実験は、Aβに対する免疫応答を強化し、そして脳内のアミロイ
ド沈着の免疫性除去を誘導するアジュバントの能力を決定するために、ヒトの使
用において適するアジュバントの組を用いて、PDAPPトランスジェニックマウス
で行った。
【0233】 180匹のオスおよびメスの7.5〜8.5月齢のヘテロ接合性PDAPPトランスジェニッ
クマウスを、チャールズリバーラボラトリーズから得た。マウスは種々のアジュ
バントと組み合わせたAN1792またはAN1528で免疫感作する群あたり15〜23匹の動
物を含む9群に分けた。動物は群内でできるだけ性別、月齢および動物の血統を
合わせるように分配した。アジュバントにはalum,MPLおよびQS-21を含み、各々
を両抗原と合わせ、そしてAN1792のみと合わせたフロイントアジュバント(FA)
を含んだ。さらなる群は保存剤チメロサールを加え、アジュバントを含まないPB
Sバッファー中に配合したAN1792で免疫感作した。9群目は陰性対照としてPBS単
独で免疫感作した。
【0234】 凝集したAβペプチドの調製:ヒトAβ1-40(AN1528;カリフォルニア ペプ
チド社、ナパ、カリフォルニア州;ロット ME0541)およびヒトAβ1-42(AN179
2;カリフォルニア ペプチド社;ロット ME0439)ペプチドは、-20℃で乾燥して
保存しておいた凍結乾燥粉末から、各組の注射物の調製に新たに可溶化した。こ
の目的のために、2mgのペプチドを0.9mlの脱イオン水に加え、そして混合物を
ボルテックス混合して、比較的均一な溶液または懸濁液を作成した。AN1792とは
対照的に、AN1528はこの段階で可溶性であった。100μlの10×PBSのアリコート
(1×PBS:0.15M NaCl、0.01M リン酸ナトリウム、pH7.5)を次いで加え、この時
点でAN1528が沈殿し始めた。懸濁液を再度ボルテックス混合し、そして翌日使用
するために37℃で一晩、インキューベーションした。
【0235】 alumを用いて配合用量を調製するために(群1および5)、PBS中のAβペプ
チドをAlhydrogel(2%の水性水酸化アルミニウムゲル、サルジェント社(Sarg
ent Inc.)、クリフトン、ニュージャージー州)に加えて、1mgのalumあたり10
0μgのAβペプチド濃度に到達した。10×PBSを加えて、1×PBS中に200μlの最
終投与量とした。次いで懸濁液は注射前にRTで約4時間、穏やかに混合した。
【0236】 MPLを用いて配合用量を調製するために(群2および6)、凍結乾燥粉末(リ
ビ イムノケミリサーチ社、ハミルトン、マサチューセッツ州:ロット67039-E08
96B)を0.2%の水性トリエチルアミンに加え、1mg/mlの最終濃度とし、そして
ボルテックス混合した。混合物を65〜70℃に30秒間加熱して、わずかに不透明で
均一なミセルの懸濁液を作成した。溶液は4℃に保存した。各組の注射には、投
与(50μlのPBS中)あたり100μgのペプチド、投与量(50μl)あたり50μgのMPLお
よび投与量あたり100μlのPBSを、使用直前にホウ珪酸試験管中で混合した。
【0237】 QS-21を用いて配合用量を調製するために(群3および7)、凍結乾燥粉末(
アクイラ:Aquila、フラミンガム、マサチューセッツ州:ロットA7018R)をPBS、
pH6.6〜6.7に加えて、1mg/mlの最終濃度とし、そしてボルテックス混合した。
溶液を-20℃で保存した。各組の注射には、用量あたり100μgのペプチド(50μl
のPBS中)、用量あたり25μgのQS-21(25μlのPBS中)および用量あたり125μlのP
BSを、使用直前にホウ珪酸試験管中で混合した。
【0238】 フロイントアジュバントを用いて配合用量を調製するために(群4)、初回免
疫感作には100μgのAN1792(200μlのPBS中)を、1:1(容量:容量)で完全フロイ
ントアジュバント(CFA)と400μlの最終容量に乳化した。続く免疫感作には、抗
原を不完全フロイントアジュバント(IFA)を用いて同様に乳化した。アジュバ
ントalum、MPLまたはQS-21を含む配合には、投与量あたり100μgのAN1792または
AN1528を200μlPBSの最終投与量でalum(投与量あたり1mg)またはMPL(投与量
あたり50μg)と合わせ、そして肩甲骨の間に皮下接種により送達した。FAを受
ける群については、100μgのAN1792をを、1:1(容量:容量)の完全フロイントアジ
ュバント(CFA)で400μlの最終容量に乳化し、そして初回の免疫感作には腹腔内
に送達し、続いて5回の投与には不完全フロイントアジュバント(IFA)中の同
量の免疫原を追加免疫感作した。アジュバントを含まないAN1792を受ける群には
、10μgのAN1792を最終容量50μlのPBS中で5μgのチメロサールと合わせ、そし
て皮下で送達した。9番目の対照群は皮下送達された200μlのPBSのみ受けた。
免疫感作は最初の3回の投与については隔週のスケジュールで与え、次いでその
後は毎月のスケジュールで、0、16、28、56、85および112日に与えた。動物は
抗体力価を測定するために、2回目の投与後に初めて各免疫感作から6〜7日後
に採血した。動物は最終投与から約1週間後に安楽死させた。結果は脳内のAβ
およびAPPレベルのELISAアッセイにより、そして脳切片内のアミロイド斑の存在
の免疫組織化学的評価により測定した。さらにAβ-特異的抗体力価、およびA
β依存的増殖およびサイトカイン応答を決定した。
【0239】 表10は、Aβ1-42に対する最高の抗体がFAおよびAN1792により誘導されるこ
とを示し、その力価は4回目の免疫感作後にピークとなり(ピークGMT:75,386
)、そして最後の6回目の免疫感作までには59%まで減少した。AN1792を含むMP
Lにより誘導されたピーク平均力価は、FA(ピークGMT:28,867)での生成よりも
62%低く、そしてまた3回目の投与後の免疫感作スケジュールの初期に到達し、
続いて6回目の免疫感作後にはピークの28%まで減少した。AN1792と合わせたQS
-21で生成し たピーク平均力価(GMT:1,511)は、MPLにより得られた価よりも約
5倍低かった。さらに応答の動力学は、ピーク応答に達するまでにさらなる免疫
感作が必要とされたので、ゆっくりとしていた。alum-結合AN1792により生成さ
れた力価は、QS-21で得た価よりもわずかに大きく、そして応答の動力学はより
急速であった。チメロサールを含むPBS中で送達されたAN1792については、力価
の頻度およびサイズがPBS単独よりもかろうじて大きかった。MPLおよびAN1528で
生成したピーク力価(ピークGMT 3099)は、AN1792を用いた価よりも約9倍低か
った。alum-結合AN1792は大変悪い免疫原であり、低い力価が数匹の動物に生じ
ただけであった。PBS単独で免疫感作した対照動物に観察された抗体応答は無か
った。
【0240】
【表17】
【0241】 ELISAにより決定される12月齢のマウスにおける皮質アミロイド負荷量に及ぼ
す種々のアジュバントを用いたAN1792またはAN1528処置、あるいはチメロサール
の結果を図15に示す。PBS対照PDAPPマウスでは、12カ月での皮質中の全Aβの
中央値レベルは1,817ng/gであった。顕著なAβの減少レベルは、CFA/IFAを加え
たAN1792、alumを加えたAN1792、MPLを加えたAN1792およびAN1792を加えたQS-21
で処置したマウスで観察された。減少はCFA/IFAを加えたAN1792についてのみ、
p<0.05レベルで統計的に有意に達した。しかし実施例IおよびIIIに示すように
、免疫感作がAβレベルの減少に及ぼす効果は、15カ月および18カ月のマウスで
実質的に大きくなった。すなわちさらに配合物、特にalumを加えたAN1792、MPL
を加えたAN1792およびQS-21を加えたAN1792の組成物は、より高齢のマウスの処
置により陽性の効果を提供するだろう。対照的に、保存剤チメロサールを加えた
AN1792は、PBS処置マウスとおよそ同じAβの中央値レベルを示した。同様な結
果がAβ42の皮質レベルを比較した時に得られた。PBS対照におけるAβの中央
値レベルは、1624ng/gであった。403、1149、620および714の中央値レベルの顕
著な減少が、それぞれCFA/IFAを加えたAN1792、alumを加えたAN1792、MPLを加え
たAN1792およびQS-21を加えたAN1792で観察され、減少はCFA/IFAを加えたAN1792
処置群について統計的に有意であった(p=0.05)。AN1792チメロサール処置マ
ウスにおける中央値レベルは、1619ng/gAβ42であった。 X.毒性分析 実施例II、IIIおよびVIIに記載の実験の終わりに、組織病理学的調査のために
組織を集めた。さらに血液学および臨床化学を、実施例IIIおよびVIからの最終
血液サンプルについて行った。脳、肺、リンパ、胃腸管、肝臓、腎臓、甲状腺お
よび生殖巣を含む主な器官のほとんどを評価した。散発性の損傷が実験動物に見
られたが、AN1792処置と未処置動物間で影響を受けた組織または損傷の重篤度の
いずれにも明らかな差異はなかった。PBS-処置または未処置動物に比較して、AN
-1528-免疫感作動物に記録された独特な組織病理理学的損傷はなかった。また実
施例VIでアジュバント群とPBS処置群との間で臨床化学的なプロフィールにおい
て差異は無かった。実施例VIではPBS処置動物に比べてAN1792とフロイントアジ
ュバントで処置した動物間で、幾つかの血液学的パラメーターに有意な上昇があ
ったが、これらの効果の型は、フロイントアジュバントの処置から予想され、そ
して腹膜炎を伴い、そしてAN1792処置からの悪い効果は示していない。毒性学的
評価の一部ではないが、PDAPPマウスの脳の病状を効力の終点の一部として徹底
的に評価した。脳の形態学に及ぼす処置に関連した悪影響の兆候はいずれの実験
にも無かった。これらの結果は、AN1792の処置が十分に耐容され、そして少なく
とも実質的に副作用が無いことを示している。 XI.抗-Aβ抗体を用いた治療的処置 この章に記載する実験は、ヘテロ接合性トランスジェニックマウスの脳内で、
Aβの沈積を抑制するためのAβに対する種々のモノクローナルおよびポリクロ
ーナル抗体の能力を試験するために行った。
【0242】 A.実験1 1.実験計画 8.5〜10.5月齢の6匹のオスおよびメスのヘテロ接合性PDAPPトランスジェニッ
クマウスは、チャールズリバーラボラトリーから得た。マウスはAβに対する種
々の抗体で処置する6群に分けた。動物はできる限り群内の動物の性別、月齢、
血統および供給源を合わせるように分配した。図10に示すように、抗体には4
種のマウスAβ-特異的モノクローナル抗体、2H3(Aβ残基1-12に向けられた)
、10D5(Aβ残基1-16に向けられた)、266(Aβ残基13-28に向けられ、そして
単量体には結合するが、凝集したAN1792には結合しない)、21F12(Aβ残基33-
42に向けられた)を含んだ。5番目の群は、Aβ-特異的ポリクローナル抗体画
分(凝集したAN1792による免疫感作により生じた)で処置した。陰性対照群は抗
体を含まない希釈物PBSのみを受けた。
【0243】 モノクローナル抗体を、約10mg/kgの容量で注射した(マウスは50gと想定され
た)。注射は7日毎に平均1000より高い抗-Aβ力価を維持するために腹腔内投
与した。mAb266はこのアッセイで捕捉抗原として使用した凝集したAN1792にはよ
く結合しないので低い力価が測定されたが、同じ投与スケジュールをこの群でも
維持した。モノクローナル抗体2H3を受けた群は、抗体がインビボで急速に除去
されすぎたので、最初の3週間内に中止した。動物は各抗体力価を測定するため
に、各投与前に採血された。処置は6カ月間、全部で196日間にわたり続行した
。動物は最終投与から1週間後に安楽死させた。
【0244】
【表18】
【0245】 2.材料および方法 a.抗体の調製 抗-Aβポリクローナル抗体は、2群の動物から集めた血液から調製した。第
1群は、6〜8週齢の100匹のメスのスイス ウェブスターマウスから成った。そ
れらは、0、15および29日にCFA/IFAと合わせた100μgのAN1792で免疫感作した
。4回目の注射は、1/2の用量のAN1792を36日に与えた。動物は42日の屠殺時に
全採血し、血清を調製し、そして血清をプールして全部で64mlとした。第2群は
PDAPPマウスと同系であるが、ヒトAPP遺伝子に関しては非トランスジェニックな
24匹の6〜9週齢のメスから成った。それらは0、14、28および56日にCFA/IFA
と合わせた100μgのAN1792で免疫感作した。これらの動物も63日の屠殺時に全採
血し、血清を調製し、そして全14mlの血清をプールした。血清の2ロットをプー
ルした。抗体画分は連続して2回の50%飽和硫酸アンモニウム沈殿を使用して精
製した。最後の沈殿物をPBSに透析し、そしてエンドトキシンについて試験した
。エンドトキシンのレベルは1EU/mgで未満あった。
【0246】 抗-Aβモノクローナル抗体は腹水から調製した。流体は最初に濃硫酸デキス
トランナトリウムを氷冷腹水に氷上で撹拌しながら加えて脱脂して0.238%の最
終濃度とした。濃CaCl2を次いで撹拌しながら加えて64mMの最終濃度とした。こ
の溶液を10,×000gで遠心し、そしてペレットを捨てた。上清は等容量の飽和硫
酸アンモニウムを滴下しながら氷上で撹拌した。溶液を再度10,×000gで遠心し
、そして上清を捨てた。ペレットを再懸濁し、そして20mM Tris-HCl、0.4M NaCl
、pH7.5に対して透析した。この画分をファルマシア(Pharmacia)FPLC Sepharo
se Qカラムに添加し、そして0.4Mから0.275M NaCl(20mM Tris-HCl、pH7.5中)
の逆勾配から溶出した。
【0247】 抗体ピークは280nmの吸収により同定し、そして適切な画分をプールした。精
製した抗体調製物はBCA法を使用してタンパク質濃度を、そしてSDS-PAGEを使用
して純度を測定した。このプールもエンドトキシンについて試験した。エンドト
キシンのレベルは1EU/mgで未満あった。力価は、100未満の力価を25の力価とし
て任意に割り当てた。
【0248】 3.脳内のAβおよびAPPレベル 種々の抗-Aβ抗体調製物を用いた処置からおよそ6カ月後、塩類の潅流後に
動物から脳を摘出した。1つの半球は免疫組織化学的分析のために調製し、そし
て2つ目はAβおよびAPPレベルの定量に使用した。βアミロイドペプチドおよ
びアミロイド前駆体タンパク質(APP)の種々の形態の濃度を測定するために、
半球を切開し、そして海馬、皮質および小脳領域のホモジネートを5M グアニジ
ンで調製した。これらは連続的に希釈して、ELISA形式で一連の既知濃度のAβ
ペプチドまたはAPPの希釈物と比較することにより、アミロイドペプチドまたはA
PPのレベルを定量した。
【0249】 ELISAにより測定した皮質および海馬のホモジネート中の全AβおよびAβ1-4
2のレベル、ならびに小脳中の全Aβのレベルを、それぞれ表11、12および
13に示す。PBSを接種した対照群の全Aβの中央値濃度は、皮質よりも海馬で3
.6倍高かった(皮質の17,818ng/gと比較して、海馬組織は63,389ng/gの中央値)
。対照群の小脳中の中央値レベル(30.6ng/g組織)は、海馬中よりも2,000倍多
かった。これらのレベルはこの月齢のヘテロ接合性PDAPPトランスジェニックマ
ウスで我々が以前に報告した値と同様である(Johnson-Wood et al.,1997)。
【0250】 皮質については、1つの処置群が対照群とは有意に異なる(p<0.05)Aβ1-
42として測定されたAβレベル中央値を有し、これらの動物は表13に示すポリ
クローナル抗-Aβ抗体を受容した。Aβ1-42の中央値レベルは、この処置群に
関する対照と比べて65%まで減少した。Aβ1-42の中央値レベルは、1つのさら
なる処置群において対照と比べて55%まで減少し、これらの動物はmAb 10D5を投
与された(p=0.0433)。
【0251】
【表19】
【0252】 海馬では、ポリクローナル抗-Aβ抗体を用いた処置に関連する全Aβの減少
パーセント中央値(50%、p=0.0055)は、皮質で観察された値よりも大きくな
かった(65%)(表14)。しかし、海馬での減少の絶対的規模は皮質のほぼ3
倍大きく、正味の減少は海馬の31,683ng/g組織 対 皮質の11,658ng/g組織であっ
た。全AβではなくAβのよりアミロイド形成性状態のAβ1-42のレベルとして
測定した時、ポリクローナル抗体を用いて達成された減少が有意であった(p=
0.0025)。mAb 10D5および266を用いて処置した群の中央値レベルは、それぞれ3
3%および21%まで減少した。
【0253】
【表20】
【0254】 全Aβは、小脳でも測定した(表15)。ポリクローナル抗-Aβおよび266抗
体を投与したそれらの群は、有意な全Aβレベルの減少を示し(それぞれ43%お
よび46%、p=0.0033およびp=0.0184)、そして10D5で処置した群はほぼ有意
な減少を示した(29%、p=0.0675)。
【0255】
【表21】
【0256】 APP濃度も、抗体-処置および対照、PBS-処置マウスに由来する皮質および小脳
でELISAにより決定した。2つの異なるAPPアッセイを使用した。第1に、APP-α
/FLと名付けたアッセイは、APP-アルファ(α、Aβ配列内で開裂されたAPPから
の分泌形)、およびAPPの完全長形態(FL)を認識し、一方2番目のアッセイはAP
P-αのみを認識する。処置が関係するAβの減少とは対照的に、処置群のサブセ
ットでは、対照動物と比較してすべての処置においてAPPのレベルがほとんど変
らなかった。これらの結果は、Aβ抗体を用いた免疫感作が、APPを減らさずに
Aβを減らすことを示している。
【0257】 まとめると、AβレベルはAN1792に対するポリクローナル抗体で処置した動物
の皮質、海馬および小脳で有意に減少した。程度は低いがAβ1-42のアミノ末端
領域、特にアミノ酸1-16および13-28に対するモノクローナル抗体も有意な処置
効果を示した。
【0258】 4.組織化学的分析: PBS、ポリクローナルAβ42、21F12、266および10D5処置群のマウスに由来す
る脳のサブセット中のAβ-免疫応答性斑の形態を、Aβ42を用いた標準的な免
疫感作手順に従った以前の実験と定量的に比較した。
【0259】 アミロイド斑の程度および出現の両方において最大の変化は、ポリクローナル
Aβ42抗体で免疫感作した動物で生じた。アミロイド負荷量の減少、衰退する斑
の形態および細胞性のAβ免疫反応性は、標準的な免疫感作手順により生じた効
果に極めて似ていた。これらの観察は、全AβおよびAβ42の両方で有意な減少
がポリクローナルAβ42抗体の投与により達成されたELISAの結果を支持してい
る。
【0260】 同様な定量的評価で、10D5群におけるアミロイド斑も数および外観が減少し、
幾つかの細胞性Aβ免疫反応性の証拠を示す。21F12および266群をPBS対照と比
較した時、主要な差異は見られなかった。
【0261】 5.抗体力価の測定: 各群からの3つの無作為に選択したマウスのサブセットから、各腹腔内接種の
直前に全部で30匹から採血した。抗体力価は一般材料および方法で詳細に記載し
ように、Aβ1-42を被覆したプラスチック製のマルチ−ウェルプレートを使用し
たサンドイッチELISAでAβ1-42結合抗体として測定した。各採血の平均力価は、
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体 10D5および21F12については、図
16〜18にそれぞれ示す。ポリクローナル抗体調製物について、この期間にわ
たる力価は平均約1:1000を越え、そして10D5-および21F12-処置動物よりもこの
レベルはわずかに高かった。
【0262】 6.リンパ球増殖応答: Aβ-依存的なリンパ球増殖を、最後の抗体注入から8日後に回収した脾細胞
を使用して測定した。新しく回収した細胞(105/ウェル)を、5μMの刺激濃度
のAβ1-40の存在下で、5日間培養した。陽性対照として、さらなる細胞をT細
胞マイトジェン(PHA)と培養し、そして陰性対照として、細胞はペプチドを加
えずに培養した。
【0263】 種々の抗-Aβ抗体で受動免疫感作した高齢のPDAPPマウスに由来する脾細胞は
、インビトロでAN1792を用いて刺激し、そして増殖およびサイトカイン応答を測
定した。これらのアッセイの目的は、受動免疫感作が抗原提示を可能にするかど
うか、すなわちAN1792に特異的なT細胞応答をプライミング(priming)するか
どうかを決定することであった。AN1792-特異的増殖またはサイトカイン応答が
、抗-Aβ抗体で受動免疫感作したマウスで観察された。 B.実験2 第2実験では、抗体10D5による処置を繰り返し、そして2つのさらなる抗-A
β抗体、モノクローナル抗体3D6(Aβ1-5)および16C11(Aβ33-42)を試験し
た。対照群はPBSまたは無関係なアイソタイプが合った抗体(TM2a)のいずれか
を受けた。マウスは以前の実験よりも老いており(11.5〜12月齢のヘテロ接合性
)、それ以外は実験計画は同じであった。ここでも6カ月間の処置後に、10D5は
斑の負荷量をPBSまたはアイソタイプが合った抗体対照のいずれに対しても80%
以上減少させた(p=0.003)。Aβに対する他の抗体の1つ、3D6は同等に効果
的であり、86%の減少を生じた(p=0.003)。対照的に、ペプチドに対する第
3抗体、16C11は斑の負荷量に効果を及ぼすことができなかった。同様な知見は
、Aβ42ELISA測定を用いて得られた。これらの結果は、Aβペプチドに対する
抗体応答がT細胞免疫の不存在下で、PDAPPマウスのアミロイド沈着を減少させ
るために十分であるが、すべての抗-Aβ抗体に効力があるわけではないことを
示している。Aβのアミノ酸1-5または3-7を含んで成るエピトープに対する抗体
が特に効力を有する。
【0264】 これらの実験は、受動的に投与されたAβに対する抗体がアルツハイマー病の
マウスモデルにおいて斑の沈着の程度を減少させることを示した。適度な血清濃
度(25〜70μg/ml)に保持される時、抗体はβ-アミロイド斑を修飾する(decora
te)ために十分なレベルでCNSへの接近を獲得した。CNSへ抗体が入ることは、PD
APPマウスでエバンス ブルー(Evans Blue)により測定される脈管透過性が上昇
しなかったので、血管−脳バリアの異常な漏れによるものではなかった。さらに
、老いたPDAPPマウスの脳実質中の抗体濃度は非トランスジェニックマウスでの
濃度と同じであり、血清中0.1%の抗体濃度を表した(アイソタイプに関係なく
)。 C.実験3:抗体結合のモニタリング Aβに対する抗体がCNS中で実際に作用できたのかどうかを決定するために、
実施例XIIの終わりに塩類を潅流したマウスから摘出した脳を、末梢に投与した
抗体の存在について調査した。非固定の凍結保持脳切片をマウス免疫グロブリン
(ヤギ抗-マウスIgG-Cy3)に対する蛍光試薬に暴露した。10D5および3D6群の脳
内の斑は、抗体により強く修飾され、一方16C11群には染色がなかった。完全な
程度の斑の沈着を明らかにするために、各脳の連続切片を最初に抗-Aβ抗体と
免疫反応させ、そして次に2次試薬と反応させた。末梢投与後に10D5および3D6
は、CNS内のほとんどの斑への接近を得た。斑の付加量は16C11群に比べてこのよ
うな処置群で大いに減少した。これらのデータは、末梢に投与した抗体がアミロ
イド除去を直接引き起こす(trigger)ことができる場所のCNSへ入ることができ
ることを示す。16C11も斑に接近できるが、斑には結合できなかったらしい。 XII.ヒト個体の予防および処置 ヒトでの安全性を決定するために、単回投与のフェイズI試験を行う。治療薬
は効力が予想される約0.01のレベルから始めて、効果的なマウス投薬用量の約10
倍のレベルに達するまで3の因子で増加させることにより、異なる患者に対して
投薬用量を増して投与する。
【0265】 フェイズII試験は、治療効力を決定するために行う。アルツハイマーの可能性
についてアルツハイマー病および関連障害随伴基準(ADRDA)を使用して定めた
初期から中期アルツハイマー病の患者を選択する。適当な患者はミニ-精神-状態
試験(MMSE)において12〜26点の範囲である。他の選択基準は、患者が試験期間中
に生存し、そして妨害するかもしれない併用薬剤の使用といった複雑化する問題
が無いことである。患者の機能の基準線評価は、MMSEおよびアルツハイマー病状
態および機能を持つ患者を評価するための総合的尺度であるADASのような古典的
な精神測定を使用して行う。このような精神的尺度はアルツハイマー症状の進行
の測定を提供する。適当な定性的生活尺度も処置をモニタリングするために使用
できる。疾患の進行はMRIによりモニタリングすることもできる。患者の血液プ
ロフィールも、免疫原-特異的抗体およびT-細胞応答のアッセイを含め、モニタ
リングすることができる。
【0266】 基準線測定の後、患者は処置を受け始める。彼らは無作為化され、そして治療
薬またはプラセボのいずれかを用いて盲検的様式で処置される。患者は少なくと
も6カ月毎に監視される。効力はプラセボ群に対して処置群の進行における有意
な減少により決定する。
【0267】 第2フェイズII試験は、非アルツハイマー病の初期の記憶喪失(時折、加齢に
よる記憶障害(AAMI)とも呼ばれるが)、または軽度の認知障害(MCI)から、A
DRDA基準により定められる恐らくはアルツハイマー病への転換を評価するために
行う。アルツハイマー病への転換の高い危険性を持つ患者は、記憶喪失の初期の
兆候または前−アルツハイマー病の総合的症状に付随する他の困難について参照
群をスクリーニングすることにより非臨床的群から、アルツハイマー病の家系か
ら、遺伝的危険因子、年齢、性別およびアルツハイマー病について高い危険性を
示すことが分かっている他の特徴から選択する。MMSEおよびADASを含む適当な測
定基準の基準線採点が、より正常な群を評価するために設計された他の測定基準
と一緒に集められる。これらの患者群は適当な群に分割し、プラセボを薬剤を含
む投与選択肢に対して比較する。これらの患者群は約6カ月の間隔で追跡され、
そして各患者の終点は、彼または彼女が観察の終了時にADRDA基準により定めら
れるアルツハイマー病の可能性を好転させているかどうかである。 XIII.一般材料および方法 1.抗体力価の測定 マウスは尾の静脈に小さい傷を作ることにより採血し、そして約200μlの血液
をミクロ遠心管に集めた。モルモットは最初に後膝領域の毛を剃り、18ゲイジ針
を使用して中足骨静脈に傷をつけ、そして血液をミクロ遠心管に集めることによ
り採血した。血液は室温(RT)で1時間凝固させ、ボルテックス混合し、次いで
14,000×gで10分間遠心して、血清から凝固物を分離した。次いで血清を清浄な
ミクロ遠心管に移し、そして滴定するまで4℃で保存した。
【0268】 抗体力価は、ELISAにより測定した。96-ウェルマイクロタイタープレート(コ
スター(Costar) EIAプレート)は、10μg/mlのAβ42またはSAPPあるいは他の抗
原のいずれかを含む100μlの溶液(ウェルコーティングバッファー:0.1M リン酸
ナトリウム、pH8.5,0.1%アジ化ナトリウム)で個別の報告にそれぞれ記載され
ているように被覆し、そしてRTで一晩保持した。ウェルを吸引し、そして血清を
検体希釈液(0.014M リン酸ナトリウム、pH7.4、0.15M NaCl、0.6%ウシ血清ア
ルブミン、0.05%チメロサール)で1/100希釈から始めてウェル加えた。サンプ
ルの3倍づつ7回の連続希釈物をプレートに直接作成して、最終的に1/218,700
の希釈物を作成した。この希釈物を被覆したプレートウェル中でRTにて1時間イ
ンキューベーションした。次いでプレートを4回、0.05%Tween 20を含むPBSで
洗浄した。2次抗体、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したヤギ抗-マウスIg
(ベーリンガーマンハイム(Boehringer Mannheim)から得た)をウェルに100μl
の1/3000希釈物(検体希釈液中)として加え、そしてRTで1時間インキューベー
ションした。プレートを再度4回、PBS、Tween 20で洗浄した。色原体を発色さ
せるために、100μlのSlow TMB(ピアスケミカルズから得た3,3',5,5'-テトラメ
チルベンジジン)を各ウェルに加え、そしてRTで15分間インキューベーションし
た。反応は25μlの2M H2SO4を添加することにより停止した。次に色の強度を、
モレキュラー デバイスイズ(Molecular Devices)のVmaxで読んだ(450nm〜650nm
)。
【0269】 力価は血清の相互の希釈として定め、最大ODの1/2を与えた。最大ODは、
一般に大変高い力価の場合(この場合は、最大ODを確立するために、より高い
初期の希釈が必要であった)を除き最初の1/100希釈から取られた。50%点が2
つの希釈の間に落ちたら、直線的外挿入を行って最終力価を算出した。幾何平均
抗体力価を算出するために、100未満の力価は任意に25の力価に割り当てた。
【0270】 2.リンパ球増殖アッセイ マウスにイソフルランで麻酔をかけた。脾臓を摘出し、そして10%熱−不活性
化ウシ胎児血清を含む5mlのPBS(PBS-FBS)で2回洗浄し、そして50℃のCentri
conユニット(ダコ社(Daco A/S)、デンマーク)中、1.5mlのPBS-FBSで10秒間、10
0rpmでMedimachine(ダコ)にて均質化し、続いて100ミクロン孔サイズのナイロ
ンメッシュを通して濾過した。脾細胞を15mlのPBS-FBSで1回洗浄し、次いで200
×gで5分間遠心することによりペレットとした。赤血球はペレットを5mLのバ
ッファー(0.15M NH4Cl、1M KHCO3、0.1M NaEDTA、pH7.4を含む)中にRTで5分間
、再懸濁することにより溶解した。次いで白血球は上記のように洗浄した。新し
く単離した脾細胞(ウェルあたり105細胞)を、96-ウェルのU-底組織培養-処理マ
イクロタイタープレート(コーニング(Corning)、ケンブリッジ、マサチューセ
ッツ州)中、2.05mM L グルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよ
び10%熱−不活性化FBSを補充したRPMI1640培地(JHR バイオサイエンスイズ(B
iosciences)、レネキサ、カンザス州)に3連で準備して、37℃で96時間培養し
た。種々のAβペプチド、Aβ1-16、Aβ1-40、Aβ1-42またはAβ40-1逆配列
タンパク質も、4段階で5〜0.18マイクロモルの範囲の用量で加えた。対照ウェ
ル中の細胞は、タンパク質を加えずにコンカナバリンA(ConA)(シグマ(Sigma)、
カタログ#C-5275、1マイクログラム/ml)で培養した。細胞は3H-チミジン(イ
リノイ州、アーリントンのアマーシャム社(Amersham Corp.)から得た1μCi/
ウェル)を最後の24時間適用した。次いで細胞をUniFilterプレート上に回収し
、そしてTop Count Microplate シンチレーション カウンターでカウントした(
パッカード ルンスツルメンツ(Packard Instruments)、ダウナーズ グローブ、
イリノイ州)。結果は分あたりに不溶性高分子中に取り込まれた放射活性のカウ
ントとして示す(cpm)。
【0271】 4.脳組織プレパレーション 麻酔後に脳を摘出し、そして1つの半球を免疫組織化学分析用に調製し、一方
3つの脳領域(海馬、皮質および小脳)を別の半球から切開し、そして種々のA
βタンパク質およびAPP形態の濃度を特異的ELISAを用いて測定するために使用し
た(Johnson-Wood et al.、同上)。
【0272】 ELISA用の組織を10容量の氷-冷グアニジンバッファー(5.0M グアニジン-HCl、
50mM Tris-HCl、pH8.0)中で均質化した。ホモジネートはAdams Nutator(フィ
ッシャー:Fisher)を使用してRTにて3〜4時間、ゆるやかに撹拌しながら混合
し、次いでAβおよびAPPの定量前に−20℃で保存した。事前の実験では、被検
体はこの保存条件下で安定であり、そして合成Aβタンパク質(バッケム:Bach
em)はマウスの同腹子に由来する対照脳組織のホモジネートに注射した(spiked
)時、定量的に回収された(Johnson-Wood et al.、同上)。
【0273】 5.Aβレベルの測定 脳のホモジネートを氷冷カゼイン希釈液(0.25%カゼイン、PBS、0.05%アジ
化ナトリウム、20μg/ml アプロチニン、5mM EDTA pH8.0、10μg/ml ロイペプ
チン)で1:10に希釈し、そして16,000×gで4℃にて20分間遠心した。合成Aβ
タンパク質標準(1-42アミノ酸)およびAPP標準は、最終組成物に0.5Mグアニジ
ンおよび0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むように調製した。「全」Aβサ
ンドイッチELISAは、捕捉抗体としてAβのアミノ酸13-28に特異的なモノクロー
ナル抗体モノクローナル抗体266、レポーター抗体としてAβのアミノ酸1-5に特
異的なビオチン化モノクローナル抗体3D6(Johnson-Wood et al.)を利用する。
3D6モノクローナル抗体は分泌されたAPPまたは完全長APPを認識せず、アミノ末
端アスパラギン酸を含むAβ種のみを検出する。このアッセイは〜50ng/ml(11n
M)の感度の下限を有し、そして1ng/mlの濃度まで内因性のマウスAβタンパク
質との交差反応を示さない(Johnson-Wood et al.、同上)。
【0274】 Aβ1-42特異的サンドイッチELISAは、捕捉抗体としてAβのアミノ酸33-42に
特異的なmAβ21F12を利用する。このアッセイにも約125μg/ml(28μM、Johnso
n-Wood et al.)の感度の下限を有するビオチン化mAβ3D6をレポーター抗体とし
て使用する。AβELISAには、100μlのmAβ266(10μg/mlで)またはmAβ21F1
2(5μg/mlで)のいずれかを、RTで一晩インキューベーションすることにより9
6-ウェルのイムノアッセイプレート(コスター)に被覆した。溶液を吸引除去し
、そしてウェルは200μlの0.25%ヒト血清アルブミンをPBSバッファーに少なく
ともRTで1時間、加えることによりブロッキングした。ブロッキング溶液を除去
し、そしてプレートを使用するまで4℃で乾燥保存した。プレートは洗浄バッフ
ァー[Tris-緩衝化生理食塩水(0.15M NaCl、0.01M Tris-HCl、pH7.5)に0.05%Tw
een20を加えた]で使用前に再水和した。サンプルおよび標準をウェルあたり100
μlの3連のアリコートで加え、そして次いで4℃で一晩インキューベーション
した。プレートを少なくとも3回、アッセイの各工程間で洗浄バッファーを用い
て洗浄した。カゼインアッセイバッファー(0.25%カゼイン、PBS、0.05%Tween
20、pH7.4)中に0.5μg/mlに希釈したビオチン化mAβ 3D6を加え、そしてウェ
ル中でRTにて1時間、インキューベーションした。カゼインアッセイバッファー
で1:4000に希釈したアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ結合物(カリフォル
ニア州、バーリンガムのベクター(Vector)から得たアビジン−HRP)をウェルにR
Tで1時間加えた。比色基質、Slow TMB-ELISA(ピアス)を加え、そしてRTで15
分間反応させ、その後に酵素反応を25μlの2N H2SO4を加えることにより停止し
た。反応生成物はモレキュラー デバイスイズのVmaxを、450nmおよび650nmの異
なる吸収で測定することにより定量した。
【0275】 6.APPレベルの測定 2種類のAPPアッセイを利用した。第一は、APP-α/FLと呼ばれ、APP-アルファ
(α)およびAPPの完全長(FL)形態の両方を認識する。第二アッセイは、APP-αに
特異的である。APP-α/FLアッセイは、Aβの最初の12アミノ酸を含む分泌したA
PPを認識する。レポーター抗体(2H3)はα-クリップ-部位に特異的ではないので
、APP695のアミノ酸612-613間で起こる(Esch et al.,Science 248,1122-1124(1
990);このアッセイは完全長APP(APP-FL)も認識する。脳のAPP-FLのホモジネー
トを消費させるために、APP-FLの細胞質テイルに固定化したAPP抗体を使用した
予備実験では、APP-α/FLの約30〜40%がFLであることを示唆している(データは
示さず)。APP-α/FLおよびAPP-αアッセイの両方のための捕捉抗体は、mAb 8E5
であり、APP695形態のアミノ酸444〜592に対して生じた(Games et al.、同上)
。APP-α/FLアッセイ用のレポーターmAbは、APP695のアミノ酸597〜608に特異的
なmAb 2H3であり(Johnson-Wood et al.、同上)、そしてAPP-αアッセイ用のレ
ポーター抗体は、APPのアミノ酸605〜611に対して生じたmAb 16H9のビオチン化
誘導体である。APP-α/FLアッセイの感度の下限は約11ng/ml(150pM)であり(John
son-Wood et al.)、そしてAPP-α特異的アッセイの下限は22ng/ml(0.3nM)である
。両APPアッセイについて、mAb 8E5を96-ウェルEIAプレートのウェルにmAb 266
について記載したように被覆した。精製した組換え分泌APP-αを、APP-αアッセ
イおよびAPP-α/FLアッセイの参照標準として使用した(Esch et al.,同上)。
5M グアニジン中の脳のホモジネートサンプルを、ELISA検体希釈液(0.014M リ
ン酸バッファー、pH7.4、0.6%ウシ血清アルブミン、0.05%チメロサール、0.5M
NaCl、0.1%NP40)に1:10で希釈した。それらを次いで0.5M グアニジンを含有
する検体希釈液で1:4に希釈した。希釈したホモジネートを次いで16,000×gでR
Tにて15秒間遠心した。APP標準およびサンプルを、プレートに2連のアリコート
で加え、そしてRTで1.5時間インキューベーションした。ビオチン化レポーター
抗体 2H3または16H9をサンプルとRTで1時間インキューベーションした。検体希
釈液で1:1000に希釈したストレプトアビジン−アリカリホスファターゼ(ベー
リンガー マンハイム:Boehringer Mannheim)を、ウェル中でRTで1時間インキ
ューベーションした。蛍光基質、4-メチル-ウンベリフェリル-ホスフェートをRT
で30分間インキューベーションに加え、そしてプレートをCytofluor tm 2350蛍
光計(ミリポア:Millipore)で365nmの励起および450nmの発光で読んだ。
【0276】 7.免疫組織化学 脳は40Cで3日間、4%パラホルムアルデヒド(PBS中)で固定し、そして次に
1〜7日間、4℃で1%パラホルムアルデヒド、PBS中に切開するまで保存した
。40ミクロン厚の冠状面区分をビブラトーメ(vibratome)上でRTにて切断し、そ
して免疫組織化学処理前に、低温保護下(リン酸塩バッファー中の30%グリセロ
ール、30%エチレングリコール)に−20℃で保存した。各脳について、背側海馬
のレベルで連続する240μmの間隔により各々が分けられた6つの切片を、以下の
1つの抗体と一晩インキューベーションした:(1)PBSおよび1%ウマ血清中に2
μg/ml濃度に希釈されたビオチン化抗-Aβ(mAb、3D6、ヒトAβに特異的);
または(2)PBSおよび1.0%ウマ血清中に3μg/ml濃度に希釈された、ヒトAPPに特
異的なビオチン化mAb 8E5;または(3)0.25%TritonX-100および1%ウマ血清(
Tris-緩衝化生理食塩水、pH7.4(TBS)中)で1:500に希釈された、グリアの原線
維性酸性タンパク質に特異的なmAb(GFAP;シグマケミカル社);または(4)0.25
%TritonX-100および1%ウサギ血清(TBS中)で1:100に希釈された、CD11b、MA
C-1抗原に特異的なmAb;または(5)0.25%TritonX-100および1%ウサギ血清(TB
S中)で1:100に希釈された、MHC II抗原に特異的なmAb(ファミンゲン);または(
6)PBS中の1%ウサギ血清で1:100に希釈された、CD43に特異的なmAb(ファミンゲ
ン)または(7)PBS中の1%ウサギ血清で1:100に希釈された、CD45RAに特異的なラ
ットmAb(ファミンゲン);または(8)PBS中の1%ウサギ血清で1:100に希釈された
、CD45RBに特異的なラットモノクローナルAβ(ファミンゲン);または(9)PBS中
の1%ウサギ血清で1:100に希釈された、CD45に特異的なラットモノクローナル
Aβ(ファミンゲン);または(10)PBS中の1%ウサギ血清で1:100に希釈された、
CD3eに特異的なビオチン化ポリクローナルハムスターAβ(ファミンゲン)または
(11)PBS中の1%ウサギ血清で1:200に希釈された、CD3に特異的なラットmAb(セ
ロテック;Serotec);または(12)1%正常ウマ血清を含有する1次抗体を欠くP
BS溶液。
【0277】 上記1、2および6〜12に掲げた抗体溶液と反応させた切片は、1.0%Trito
nX-100、0.4%過酸化水素(PBS中)でRTにて20分間前処理し、内因性のペルオキ
シダーゼをブロックした。それらを次いで1次抗体と4℃で一晩インキューベー
ションした。3D6または8E5またはCD3e mAbと反応させた切片は、次いでRTで1時
間、PBS中で1:75に希釈したキット成分“A”および“B”を含む西洋ワサビペ
ルオキシダーゼ−アビジン−ビオチン−複合体(Vector Elite Standard キット
、ベクターラボズ(Vector Labs)、ベーリンガム、カリフォルニア州)と反応さ
せた。CD45RA、CD45RB、CD45、CD3に特異的な抗体および1次抗体を含まないPBS
溶液と反応した切片を、RTで1時間、PBSで1:75に希釈したビオチン化抗-ラット
IgG(ベクター)と、またはPBSで1:75に希釈したビオチン化抗-マウスIgG(ベクタ
ー)と、それぞれインキューベーションした。切片を次いでRTで1時間、PBS中で
1:75に希釈したキット成分“A”および“B”を含む西洋ワサビペルオキシダー
ゼ-アビジン-ビオチン-複合体と反応させた(Vector Elite Standard キット、
ベクターラボズ、ベーリンガム、カリフォルニア州)。
【0278】 切片はRTで0.01%過酸化水素、0.05% 3,3'-ジアミノベンジジン(DAB)中にて
発色させた。GFAP-、MAC-1-およびMHCII-特異的抗体とのインキューベーション
のための切片は、0.6%過酸化水素によりRTで前処理し、内因性のペルオキシダ
ーゼをブロックし、そして1次抗体と共に4℃で一晩インキューベーションした
。GFAP抗体と反応した切片を、RTで1時間、TBSで1:200に希釈したウマで作成し
たビオチン化抗-マウスIgG(ベクターラボラトリーズ;Vectastain Elite ABCキ
ット)と反応させた。次いで切片を1時間、TBSで1:1000に希釈したアビジン-ビ
オチン-ペルオキシダーゼ複合体(ベクターラボラトリーズ;Vectastain Elite
ABCキット)と反応させた。1次抗体としてMAC-1またはMHCII-特異的モノクロー
ナル抗体とインキューベーションした切片は、続いてRTで1時間、TBSで1:200に
希釈したウサギで作成したビオチン化抗-ラットIgGと反応させ、続いて1時間、
TBSで1:1000に希釈したアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体とインキュ
ーベーションした。GFAP-、MAC-1-およびMHCII-特異的抗体とインキューベーシ
ョンした切片は、次いでRTで0.05%DAB、0.01%過酸化水素、0.04%塩化ニッケ
ル、TBSを用いて、それぞれ4および11分間処理することにより視覚化した。
【0279】 免疫標識した切片をスライドガラスに乗せ(VWR、Superfrostスライド)、一
晩風乾し、Propar(アナテック:Anatech)に浸し、そしてマウンティング媒質と
してPermount(フィッシャー)を使用してカバースリップをかぶせた。
【0280】 Aβ斑をカウンター染色するために、GFAP-陽性切片のサブセットをSuperfros
tスライドに乗せ、そして免疫組織化学的処理後に水性1%Thioflavin S(シグマ
)中に7分間インキューベーションした。切片を次いで脱水し、そしてPropar中
で清浄化し、そしてPermountを用いてカバースリップをかぶせた。
【0281】 8.画像分析 ニコン(Nikon) Microphot-FX 顕微鏡をCCDビデオカメラおよびソニー(Sony)
Trinitronモニターに連結したVideometric 150 Image System(オンコール社(O
ncor,Inc.)、ゲチスバーグ、メリーランド州)を、免疫反応スライドの定量に使
用した。切片の画像はビデオ緩衝器に保存し、そして免疫標識された構造により
占有される総ピクセル領域を選択し、そして計算するために色-および飽和-に基
づく閾値を決定した。各切片について、海馬は手で外形を書き、そして海馬によ
り占有される総ピクセル領域を算出した。パーセントアミロイド負荷量は以下の
ように測定した:(mAb 3D6と免疫反応性のAβ沈着を含む海馬領域の画分)×10
0。同様に、パーセント神経炎負荷量は以下のように測定した:(モノクローナ
ル抗体 8E5と反応性のジストロフィー軸索を含む海馬領域の画分)×100。Simple
32 ソフトウェア アプリケーションプログラムを操作するC-Imaging System(
コンピックス社(Compix,Inc)、クランベリータウンシップ、ペンシルベニア州
)をニコンMicrophot-FX 顕微鏡に光学カメラを介して連結し、そしてGFAP-陽性
星状細胞およびMAC-1-およびMHCII-陽性ミクログリアにより占有される夾板骨後
皮質の割合を定量するために使用した。免疫反応した切片の画像は、ビデオ緩衝
器に保存し、そして免疫標識した細胞により占有される総ピクセル領域を選択し
、そして算出するためにモノクロムに基づく閾値を決定した。各切片について、
夾板骨後皮質(RSC)を手で外形を描き、そしてRSCにより占有される総ピクセル
領域を算出した。パーセント星状細胞増加症は、以下のように定めた:(GFAP-
反応性星状細胞により占有されるRSCの画分)×100。同様に、パーセント小膠細
胞症は、以下のように定めた:(MAC-1-またはMHCII-反応性ミクログリアにより
占有されるRSCの画分)×100。すべての画像分析に関して、背側海馬のレベルで
6つの切片(各々が連続する240μmの間隔で分かれている)を各動物について定
量した。すべての場合で、動物の処置状況は観察者には知らされていない。 XIV.アミロイド沈着に対する抗体の活性に関するエクスビボスクリーニングア
ッセイ 抗体の斑除去に及ぼす効果を調査するために、初代ミクログリア細胞をPDAPP
マウスまたはヒトAD脳の非固定の凍結保持切片と培養するエクスビボアッセイ
を樹立した。ミクログリア細胞は、新生児DBA/2Nマウス(1〜3日)の大脳皮質
から得た。皮質は50μg/mlのDNaseI(シグマ(Sigma))を含むHBSS--(ハンクスバ
ランス塩溶液、シグマ)中で機械的に切開した。解離した細胞を100μm細胞ステ
イナー(ファルコン:Falcon)で濾過し、そして1000rpmで5分間遠心した。ペレ
ットを成長培地に再懸濁し(高グルコースDMEM、10%FBS、25ng/ml GM-CSF)、
そして細胞をT-75プラスチック培養フラスコあたり2個の脳密度でまいた。7〜
9日後、フラスコを軌道シェーカー上で200rpmにて、37℃で2時間回転させた。
細胞懸濁液を1000rpmで遠心し、そしてアッセイ媒質中に再懸濁した。
【0282】 PDAPPマウスまたはヒトAD脳(死後間隔<3時間)の10-μmの凍結保持切片を
、ポリ-リシンを被覆したガラスカバースリップ上で解凍し、そして24ウェル組
織培養プレート中に置いた。カバースリップは、H-SFM(ハイブリドーマ-無血清
培地、ギブコ(Gibco)-BRL)、1%FBS、グルタミン、ペニシリン/ストレプトマ
イシンおよび5ng/ml rmGM-CSF(R&D)から成るアッセイ媒質で2回洗浄した
。対照または抗-Aβ抗体を2×濃度(最終5μg/ml)で1時間加えた。次いで
ミクログリア細胞を0.8×106細胞/mlアッセイ媒質の密度でまいた。培養は加湿
インキュベーター(37℃、5%CO2)中で24時間以上維持した。インキューベー
ションの終わりに、カルチャーを4%パラホルムアルデヒドで固定し、そして0.
1%Triton-X100で透過した。切片をビオチン化3D6、続いてストレプトアビジン/
Cy3結合物(ジャクソン イムノリサーチ)により染色した。外因性のミクログリ
ア細胞を核染色により視覚化した(DAPI)。カルチャーを逆転蛍光顕微鏡(ニコ
ン(Nicon)、TE300)で観察し、そして顕微鏡写真をSPOTソフトウェア(ダイア
グノスティック インスツルメンツ(Diagnostic instruments)を使用して、SPOT
デジタルカメラで取った。ウエスタンブロット分析に関しては、カルチャーを8
M尿素で抽出し、還元トリシンサンプルバッファー中で1:1に希釈し、そして16%
トリシンゲル(ノベックス(Novex))に乗せた。イモビロン(immobilon)上に移
した後、ブロットを5μg/mlのpabAβ42、続いてHRP-結合化抗-マウス抗体に暴
露し、そしてECL(アマーシャム(Amersham)で現像した。
【0283】 アッセイを抗体16C11(インビボで効力の無い、Aβに対する抗体の1つ)の
存在下でPDAPP脳切片で行った時、β-アミロイド斑は完全なまま残り、そして食
作用は観察されなかった。対照的に、隣接する切片を10D5の存在下で培養した時
、アミロイド沈着は大部分が無くなり、そしてミクログリア細胞はAβを含有す
る多数の食作用小胞を示した。同一の結果がAD脳切片でも得られた;10D5はA
D斑の食作用を誘導したが、16C11は効果的ではなかった。さらに、アッセイで
はマウスまたはヒトのミクログリアに細胞のいずれか、およびAβに対するマウ
ス、ウサギまたは霊長類の抗体で行った時に匹敵する結果を提供した。
【0284】 表16は、Aβに対する幾つかの抗体を用いて得られた結果を示し、受動輸送
実験においてエクスビボアッセイで食作用を誘導し、そしてインビボの斑の負荷
量を減少させる抗体の能力を比較する。16C11および21F12は凝集した合成Aβペ
プチドに高い親和力で結合し、これらの抗体は非固定脳切片中のβ-アミロイド
斑と反応することができず、エクスビボアッセイで食作用を引き出すことができ
ず、そしてインビボで効力的ではなかった。Aβに対する10D5、3D6およびポリ
クローナル抗体は、すべてのこれらの測定で活性であった。22C8抗体は、1およ
び7位のアスパラギン酸がイソ-アスパラギン酸に置き換えられた自然なAβの
同族形態により強く結合する。これらの結果は、インビトロの効力がCNS中の斑
の直接的な抗体が媒介する除去によることを示し、そしてエクスビボのアッセイ
がインビボの効力を予報することを示す。
【0285】 同じアッセイを使用して、NACと呼ばれるシヌクレインのフラグメントに対す
る抗体の除去を試験した。シヌクレインは、アミロイド斑に付随するタンパク質
であることが示された。NACに対する抗体はアミロイド斑を含む脳組織サンプル
、ミクログリア細胞と前のように接触させる。ウサギの血清を対照として使用し
た。続くモニタリングでは、抗体の除去活性を示す斑の数およびサイズの著しい
減少を示した。
【0286】
【表22】
【0287】 共焦点顕微鏡を使用して、Aβがエクスビボアッセイ中に内面化したことを確
認した。対照抗体の存在下で、外因性ミクログリア細胞は、組織上の共焦点板に
残り、Aβを含む食作用小胞は無く、そして斑は切片内こ完全に残った。10D5の
存在下で、ほとんどすべての斑材料が外因性ミクログリア細胞内の小胞に含まれ
た。内面化されたペプチドの運命を決定するために、10D5処理カルチャーを8M
尿素で様々な時点で抽出し、そしてウエスタンブロット分析により調査した。1
時間の時点で、食作用は未だに起こっていない時、Aβに対するポリクローナル
抗体との反応で強い4kDバンド(Aβペプチドに対応する)が明らかとなった。
Aβ免疫反応性は、1日で減少し、そして3日までに無くなった。すなわち抗体
性のAβの食作用はその分解を導く。
【0288】 エクスビボアッセイにおける食作用がFc-媒介であるかどうかを決定するため
に、抗-Aβ抗体3D36のF(ab')2フラグメントを調製した。F(ab')2フラグメント
はそれらが斑と反応するための完全な能力を保持するが、ミクログリア細胞によ
る食作用を引き出す(trigger)ことができなかった。さらに全抗体での食作用は
、マウスFcレセプターに対する試薬(抗-CD16/32)により遮断された。これらのデ
ータは、Aβのインビボ除去がFc-レセプターが媒介する食作用を通して起こる
ことを示している。 XV.抗体の血管脳バリアの通過 本明細書に記載するこの実験は、静脈内注射された後に抗体が脳を通る能力を
提供し、そして正常またはPDAPPマウスの抹消組織へ静脈内注射された後に脳に
送達された抗体の濃度を測定する手段を提供するために行った。
【0289】 PDAPPまたは対照正常マウスは、0.9% NaClを潅流した。脳領域(海馬または
皮質)を切開し、そして急速に冷凍した。脳は0.1%トライトン+プロテアーゼ
インヒビター中で均質化した。免疫グロブリンが抽出物中でELISAにより検出さ
れた。捕捉試薬としてFab'2ヤギ抗-マウスIgGを、RIAプレート上に被覆した。血
清または脳抽出物を1時間インキューベーションした。アイソタイプを抗-マウ
スIgG1-HRPまたはIgG2a-HRPまたはIgG2b-HRP(カルタグ:Caltag)で検出した。
アイソタイプにかかわらず抗体はCNSに、血中に見られる濃度の1:1000で存在し
た。例えば、IgG1の濃度が血中のIgG2aの3倍である時、脳にもIgG2aの3倍で存
在し、両方ともそれぞれの血中レベルの0.1%で存在する。この結果はトランス
ジェニックおよび非トランスジェニックマウスの両方で観察されるので、PDAPP
で独自に血管脳バリアを漏れたのではなかった。
【0290】 前述の発明は理解を明確する目的で詳細に記載してきたが、特定の修飾が前記
の特許請求の範囲内で実施できることは明らかである。本明細書に引用したすべ
ての公報および特許明細書は、それぞれが個別に記載しているものと同じ程度で
、すべての目的のためにそれらの全部を引用により本明細書に編入する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Aβ1−42の注入後のトランスジェニックマウスにおける抗体力価。
【図2】 海馬におけるアミロイド負荷量。Aβ特異的モノクローナル抗体3D6との反
応性により定義される、アミロイド斑により占有される海馬領域の面積のパーセ
ンテージを、免疫反応された脳切片のコンピュータ支援定量的画像分析により決
定した。個々のマウスの値は治療群ごとに分類されて示す。各グループ分けの水
平線は分布の中央値を示す。
【図3】 海馬における神経炎ジストロフィー。ヒトAPP特異的モノクローナル8E5
とのそれらの反応性により定義される、ジストロフィー性の軸索により占有され
る海馬領域の面積のパーセンテージを、免疫反応された脳切片の定量的コンピュ
ータ支援画像分析により決定した。個々のマウスの値は、AN1792処理され
た群およびPBS処理された対照群について示す。各グループ分けの水平線は分
布の中央値を示す。
【図4】 後板状筋皮質(retrosplenial cortex)中の星状細胞。
神経膠線維性酸性タンパク質(GFAP)陽性の星状細胞により占有される皮質
領域の面積のパーセンテージを、免疫反応された脳切片の定量的コンピュータ支
援画像分析により決定した。個々のマウスの値は治療群ごとに分類されて示し、
そして中央値の群の値を水平線により示す。
【図5】 0.14、0.4、1.2、3.7、11、33、100もしくは300μg
を含有する8用量のAβ42(「AN1792」)の範囲での免疫感作後のAβ
42に対する抗体力価の幾何平均。
【図6】 AN1792免疫感作に対する抗体応答の動力学。力価は、各群中6匹の動物
の値の幾何平均として表す。
【図7】 PBSおよびAN1792で処理されたマウスにおける皮質のアミロイド負荷
量の定量的画像分析。
【図8】 PBSおよびAN1792で処理されたマウスにおける神経炎斑の負荷量の定
量的画像分析。
【図9】 PBSおよびAN1792で処理されたマウスにおける星状細胞により占有さ
れる後板状筋皮質のパーセントの定量的画像分析。
【図10】 AN1792処理された(上図)もしくはPBS処理された(下図)マウスか
らの脾細胞でのリンパ球増殖アッセイ。
【図11】 大脳皮質における総Aβレベル。フロイントのアジュバントと組み合わせられ
たAβもしくはAPP誘導体で免疫感作されたマウスにおける個々のAβプロフ
ィルの散乱図(scatterplot)。
【図12】 Aβペプチド複合物Aβ1−5、Aβ1−12およびAβ13−28;完全長
のAβ凝集物Aβ42(「AN1792」)ならびにAβ1−40(「AN15
28」)で免疫感作されたマウス、ならびにPBS処理された対照群の免疫反応
された脳切片の定量的画像分析により決定された、皮質中のアミロイド負荷量。
【図13】 フロイントのアジュバントと組み合わせられたAβもしくはAPP誘導体で免
疫感作されたマウスの群の、Aβ特異的抗体の力価の幾何平均。
【図14】 多様なアジュバントと組み合わせられたAN1792、もしくはそのパルミト
イル化された誘導体で免疫感作されたモルモットの群の、Aβ特異的抗体の力価
の幾何平均。
【図15(A−E)】 多様なアジュバントを伴うAN1792もしくはAN1528で処理された1
2月齢のPDAPPマウスの皮質中のAβレベル。
【図16】 Aβに対するポリクローナル抗体で処理されたマウスの平均力価。
【図17】 Aβに対するモノクローナル抗体10D5で処理されたマウスの平均力価。
【図18】 Aβに対するモノクローナル抗体2F12で処理されたマウスの平均力価。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 39/395 A61K 39/44 39/44 47/48 47/48 48/00 48/00 A61P 1/04 A61P 1/04 3/00 3/00 17/00 17/00 17/06 17/06 19/00 19/00 19/02 19/02 25/28 25/28 29/00 101 29/00 101 35/00 35/00 37/00 37/00 43/00 43/00 A61K 37/02 // C12N 15/09 ZNA C12N 15/00 ZNAA (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,C H,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM, HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,K G,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT ,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW, MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,S E,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT ,TZ,UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZA, ZW Fターム(参考) 4B024 AA01 BA44 CA04 DA02 HA17 4C076 CC41 EE41 FF02 4C084 AA02 AA13 AA27 BA01 BA03 BA19 BA44 DC50 MA52 MA55 MA59 MA63 MA66 NA14 ZA02 ZA16 ZA36 ZA68 ZA89 ZA96 ZB02 ZB07 ZB15 ZB26 ZC21 4C085 AA03 AA13 BB11 BB31 CC12 DD62 EE06 FF01 FF03 FF14 FF30 GG02 GG03 GG04 GG06 GG08

Claims (57)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 患者においてアミロイド成分に対する免疫応答を誘導するの
    に有効な作用物質および製薬学的賦形剤を含んで成る製薬学的組成物。
  2. 【請求項2】 アミロイド成分が原線維ペプチドもしくはタンパク質である
    、請求項1記載の製薬学的組成物。
  3. 【請求項3】 アミロイド成分が、血清アミロイドAタンパク質(アポSS
    A)、免疫グロブリン軽鎖、免疫グロブリン重鎖、アポAI、トランスチレチン
    、リゾチーム、フィブローゲンα鎖、ゲルゾリン、シスタチンC、アミロイドβ
    タンパク質前駆体(β−APP)、β2ミクログロブリン、プリオン前駆体タン
    パク質(PrP)、心房性ナトリウム利尿因子、ケラチン、島アミロイドポリペ
    プチド、ペプチドホルモンおよびシヌクレイン(これらの突然変異体タンパク質
    、タンパク質フラグメントおよびタンパク質分解ペプチドを包含する)より成る
    タンパク質もしくはペプチドより成る群から選択される原線維前駆体タンパク質
    由来である、請求項2記載の製薬学的組成物。
  4. 【請求項4】 前記作用物質が、原線維前駆体タンパク質に関して、前記原
    線維タンパク質もしくはペプチドにより形成される新エピトープに対し向けられ
    る免疫応答を誘導する、請求項3記載の製薬学的組成物。
  5. 【請求項5】 前記アミロイド成分が、AA、AL、ATTR、AアポA1
    、Alys、Agel、Acys、Aβ、AB2M、AScr、Acal、AI
    APPおよびシヌクレイン−NACフラグメントより成る群から選択される、請
    求項3記載の製薬学的組成物。
  6. 【請求項6】 前記作用物質が、AA、AL、ATTR、AアポA1、Ag
    el、Acys、Aβ、AB2M、AScr、Acal、AIAPPおよびシヌ
    クレイン−NACフラグメントより成る群から選択される、請求項5記載の製薬
    学的組成物。
  7. 【請求項7】 前記組成物が、最低2種の異なるアミロイド成分に対する免
    疫原性の応答を誘導するのに有効な作用物質を含んで成る、請求項1記載の製薬
    学的組成物。
  8. 【請求項8】 前記作用物質が担体タンパク質に連結されたペプチドである
    、請求項1記載の製薬学的組成物。
  9. 【請求項9】 組成物がアジュバントを包含する、請求項1ないし8のいず
    れかに記載の製薬学的組成物。
  10. 【請求項10】 前記アジュバントが、QS21、モノホスホリル脂質、明
    礬およびフロイントのアジュバントより成る群から選択される、請求項9記載の
    製薬学的組成物。
  11. 【請求項11】 哺乳動物被験体におけるアミロイド沈着を特徴とする障害
    に特徴的なアミロイド成分に対する免疫応答を生じさせるのに有効な投薬量の作
    用物質を該被験体に投与することを含んで成る、前記障害の予防もしくは治療方
    法。
  12. 【請求項12】 前記アミロイド成分が原線維タンパク質もしくはペプチド
    である、請求項11記載の方法。
  13. 【請求項13】 前記免疫応答が、血清アミロイドAタンパク質(アポSS
    A)、免疫グロブリン軽鎖、免疫グロブリン重鎖、アポAI、トランスチレチン
    、リゾチーム、フィブローゲンα鎖、ゲルゾリン、シスタチンC、アミロイドβ
    タンパク質前駆体(β−APP)、β2ミクログロブリン、プリオン前駆体タン
    パク質(PrP)、心房性ナトリウム利尿因子、ケラチン、島アミロイドポリペ
    プチド、ペプチドホルモンおよびシヌクレイン(これらの突然変異体タンパク質
    、タンパク質フラグメントもしくはペプチドを包含する)より成る群から選択さ
    れる前駆体タンパク質由来の原線維成分に向けられる、請求項12記載の方法。
  14. 【請求項14】 前記作用物質が、前記前駆体タンパク質に関して、前記ア
    ミロイド成分により形成される新エピトープに対し向けられる免疫応答を誘導す
    る、請求項13記載の方法。
  15. 【請求項15】 前記アミロイド成分が、AA、AL、ATTR、AアポA
    1、Alys、Agel、Acys、Aβ、AB2M、AScr、Acal、A
    IAPPおよびシヌクレイン−NACフラグメントより成る群から選択される、
    請求項13記載の方法。
  16. 【請求項16】 前記作用物質が、AA、AL、ATTR、AアポA1、A
    gel、Acys、Aβ、AB2M、AScr、Acal、AIAPPおよびシ
    ヌクレイン−NACフラグメントより成る群から選択される、請求項15記載の
    方法。
  17. 【請求項17】 前記作用物質が、最低2種の異なるアミロイド成分に対す
    る免疫原性の応答を誘導するのに有効である、請求項11記載の方法。
  18. 【請求項18】 前記投与することが、最低2種のアミロイド原線維成分を
    投与することを包含する、請求項17記載の方法。
  19. 【請求項19】 前記作用物質が担体タンパク質に連結されたペプチドであ
    る、請求項11記載の方法。
  20. 【請求項20】 前記投与することがアジュバントをさらに包含する、請求
    項11−19のいずれかに記載の方法。
  21. 【請求項21】 前記アジュバントが、QS21、モノホスホリル脂質、明
    礬およびフロイントのアジュバントより成る群から選択される、請求項20記載
    の方法。
  22. 【請求項22】 前記免疫学的応答が、前記アミロイド成分に関して、最低
    1:1000の血清力価を特徴とする、請求項11記載の方法。
  23. 【請求項23】 前記血清力価が、前記原線維成分に関して最低1:500
    0である、請求項22記載の方法。
  24. 【請求項24】 前記免疫学的応答が、処理前の対照の血清サンプル中で測
    定された免疫反応性の血清レベルより約4倍より高いより大きいものに相当する
    免疫反応性の血清量を特徴とする、請求項11記載の方法。
  25. 【請求項25】 前記免疫反応性の血清量が約100倍の血清希釈物で測定
    される、請求項24記載の方法。
  26. 【請求項26】 選択されたアミロイド成分に対する免疫反応性の患者の血
    清量を測定することを含んで成り、かつ、基準線対照レベルの血清の免疫反応性
    の最低4倍の免疫反応性の患者の血清量が、アミロイド障害に関して改善された
    状態の予後を示すものとする、アミロイド障害のための治療を受けている患者の
    予後の決定方法。
  27. 【請求項27】 前記選択されたアミロイド成分に対する前記免疫反応性の
    患者の血清量が、最低約1:1000の血清力価を特徴とする、請求項26記載
    の方法。
  28. 【請求項28】 前記選択されたアミロイド成分に対する前記免疫反応性の
    患者の血清量が、最低1:5000の血清力価を特徴とする、請求項27記載の
    方法。
  29. 【請求項29】 患者のアミロイド沈着物中に存在するアミロイド成分に特
    異的に結合する抗体もしくは抗体フラグメントの有効投薬量を患者に投与するこ
    とを含んで成る、患者におけるアミロイド沈着物を特徴とする疾患の予防もしく
    は治療方法。
  30. 【請求項30】 前記アミロイド成分が原線維成分である、請求項29記載
    の方法。
  31. 【請求項31】 前記抗体もしくは抗体フラグメントが、前記原線維成分の
    エピトープに結合する、請求項30記載の方法。
  32. 【請求項32】 抗体もしくは抗体フラグメントが、前記原線維成分の前駆
    体に結合することなく前記原線維成分に特異的に結合する、請求項31記載の方
    法。
  33. 【請求項33】 抗体が、原線維成分のエピトープで免疫感作されたヒト由
    来のB細胞から調製された前記原線維成分に対するヒト抗体である、請求項30
    記載の方法。
  34. 【請求項34】 前記アミロイド原線維成分が、血清アミロイドAタンパク
    質(アポSSA)、免疫グロブリン軽鎖、免疫グロブリン重鎖、アポAI、トラ
    ンスチレチン、リゾチーム、フィブローゲンα鎖、ゲルゾリン、シスタチンC、
    アミロイドβタンパク質前駆体(β−APP)、β2ミクログロブリン、プリオ
    ン前駆体タンパク質(PrP)、心房性ナトリウム利尿因子、ケラチン、島アミ
    ロイドポリペプチド、ペプチドホルモンおよびシヌクレイン(これらの突然変異
    体タンパク質、タンパク質フラグメントもしくはペプチドを包含する)より成る
    群から選択される前駆体タンパク質由来である、請求項30記載の方法。
  35. 【請求項35】 前記アミロイド原線維成分が、AA、AL、ATTR、A
    アポA1、Alys、Agel、Acys、Aβ、AB2M、AScr、Aca
    l、AIAPPおよびシヌクレイン−NACフラグメントより成る群から選択さ
    れる、請求項34記載の方法。
  36. 【請求項36】 前記投与することが、最低2種のアミロイド原線維成分を
    結合する抗体を投与することを包含する、請求項29記載の方法。
  37. 【請求項37】 前記有効投薬が、処理前の対照の血清サンプル中で測定さ
    れた前記アミロイド成分に対する免疫反応性の血清レベルより最低約4倍より高
    い前記成分に対する免疫反応性の血清量の患者におけるレベルを特徴とする、請
    求項29記載の方法。
  38. 【請求項38】 抗体もしくは抗体フラグメントが担体とともに製薬学的組
    成物として投与される、請求項29記載の方法。
  39. 【請求項39】 抗体もしくは抗体フラグメントが、腹腔内に、経口で、皮
    下に、筋肉内に、鼻内に、局所に、もしくは静脈内に投与される、請求項29記
    載の方法。
  40. 【請求項40】 抗体が、最低1種の抗体鎖をコードするポリヌクレオチド
    を患者に投与することにより投与され、かつ、ポリヌクレオチドが患者中で発現
    されて抗体鎖を産生させる、請求項29記載の方法。
  41. 【請求項41】 ポリヌクレオチドが抗体の重鎖および軽鎖をコードし、こ
    のポリヌクレオチドが患者中で発現されて重鎖および軽鎖を産生させる、請求項
    40記載の方法。
  42. 【請求項42】 抗体もしくは抗体フラグメントが、最低6ヶ月の期間にわ
    たって多数回投薬により投与される、請求項29記載の方法。
  43. 【請求項43】 抗体が持続性放出組成物として投与される、請求項29記
    載の方法。
  44. 【請求項44】 アミロイド沈着物中に存在するアミロイド成分に特異的に
    結合する、有効投薬量の抗体もしくは抗体フラグメントを含んで成る、患者にお
    ける前記沈着物を特徴とする疾患の予防もしくは治療のための製薬学的組成物。
  45. 【請求項45】 前記アミロイド成分が原線維成分である、請求項44記載
    の製薬学的組成物。
  46. 【請求項46】 前記抗体が前記原線維成分のエピトープに結合する、請求
    項45記載の製薬学的組成物。
  47. 【請求項47】 抗体が、前記原線維成分の前駆体に結合することなく前記
    原線維成分に特異的に結合する、請求項46記載の製薬学的組成物。
  48. 【請求項48】 抗体が、原線維成分のエピトープで免疫感作されたヒトか
    らのB細胞から調製された前記原線維成分に対するヒト抗体である、請求項46
    記載の製薬学的組成物。
  49. 【請求項49】 前記アミロイド原線維成分が、血清アミロイドAタンパク
    質(アポSSA)、免疫グロブリン軽鎖、免疫グロブリン重鎖、アポAI、トラ
    ンスチレチン、リゾチーム、フィブローゲンα鎖、ゲルゾリン、シスタチンC、
    アミロイドβタンパク質前駆体(β−APP)、β2ミクログロブリン、プリオ
    ン前駆体タンパク質(PrP)、心房性ナトリウム利尿因子、ケラチン、島アミ
    ロイドポリペプチド、ペプチドホルモンおよびシヌクレイン(これらの突然変異
    体タンパク質、タンパク質フラグメントもしくはペプチドを包含する)より成る
    群から選択される前駆体タンパク質由来である、請求項45記載の製薬学的組成
    物。
  50. 【請求項50】 前記アミロイド原線維成分が、AA、AL、ATTR、A
    アポA1、Alys、Agel、Acys、Aβ、AB2M、AScr、Aca
    l、AIAPPおよびシヌクレイン−NACフラグメントより成る群から選択さ
    れる、請求項49記載の製薬学的組成物。
  51. 【請求項51】 前記組成物が、最低2種のアミロイド原線維成分を結合す
    る抗体もしくは抗体フラグメントを包含する、請求項44記載の製薬学的組成物
  52. 【請求項52】 前記有効投薬量が、処理前の対照の血清サンプル中で測定
    された前記アミロイド成分に対する免疫反応性の血清レベルより最低約4倍より
    高い、前記成分に対する免疫反応性の患者血清中のレベルを生じさせるのに有効
    な抗体もしくは抗体フラグメントの量を特徴とする、請求項44記載の製薬学的
    組成物。
  53. 【請求項53】 製薬学的組成物が担体を包含する、請求項44記載の製薬
    学的組成物。
  54. 【請求項54】 製薬学的組成物が、腹腔内に、経口で、皮下に、筋肉内に
    、鼻内に、局所に、もしくは静脈内で投与のため処方される、請求項44記載の
    製薬学的組成物。
  55. 【請求項55】 製薬学的組成物が、患者中で抗体鎖を発現するのに有効な
    最低1種の抗体鎖をコードするポリヌクレオチドを包含する、請求項44記載の
    製薬学的組成物。
  56. 【請求項56】 ポリヌクレオチドが抗体の重鎖および軽鎖をコードし、こ
    のポリヌクレオチドが患者中で重鎖および軽鎖を産生するための発現が可能であ
    る、請求項55記載の製薬学的組成物。
  57. 【請求項57】 前記製薬学的組成物が持続性放出組成物として処方される
    、請求項44記載の製薬学的組成物。
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